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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】産物、使用及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220131BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
A61K35/76
A61P31/04
A61K9/127
A61K9/14
A61K48/00
C12N15/09 110
C12N15/31
C12N15/55
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520393
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019077760
(87)【国際公開番号】W WO2020078893
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】1816700.7
(32)【優先日】2018-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1817509.1
(32)【優先日】2018-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】16/201,736
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520188592
【氏名又は名称】エスエヌアイピーアール・バイオーム・アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ビルヒニア・マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】ルベン・バスケス-ウリベ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・タコス
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ファン・デル・ヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー・クリューブ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA31
4C076CC32
4C076FF02
4C076FF04
4C076FF12
4C084AA13
4C084MA24
4C084MA41
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087MA24
4C087MA41
4C087NA14
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、Casをコードする配列及びそれらを含むベクターの産生及び使用に関する。本発明の態様は、細菌又は古細菌細胞においてCasをコードする配列を産生するための産物、ベクター、送達ビヒクル、使用及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I型Cas3をコードする第1のヌクレオチド配列及び1個又は複数個のカスケードタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、前記第1及び第2の配列が、細胞内にタンパク質を発現するためのベクターに含まれる1個又は複数個のプロモーターの制御下にある、宿主細胞に導入するための核酸ベクター。
【請求項2】
前記ベクターが、CasモジュールからCas3及びカスケードタンパク質を細胞内で発現するためのオペロンを含み、前記モジュールが、前記Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、前記オペロンが、前記Cas3及びカスケードタンパク質の両方の発現を制御するプロモーターの制御下にある前記Casモジュールを含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
(a)前記第1の配列が、前記オペロン中の前記プロモーターと前記第2の配列との間にあり、
(b)前記オペロンが、前記プロモーターと前記第1のヌクレオチド配列との間にCasをコードするヌクレオチド配列を含まず、及び/又は
(c)前記オペロンが、前記プロモーター、前記第1の配列及び前記第2の配列を(5'から3'の方向に)含む、
請求項2に記載のベクター。
【請求項4】
前記第1の配列が、0.5>AS>0.1のアンダーソン・スコア(AS) を有するプロモーターの制御下にある、請求項1から3のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項5】
前記第1の配列(及び任意選択で前記第2の配列)が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、前記EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項6】
前記ベクターが、Cas適応モジュールを欠いている、並びに/又は前記ベクターが、Cas1、Cas2、Cas4、Cas6、Cas7及びCas8のうちの1つ、それ以上若しくは全てをコードするヌクレオチド配列を欠いている、請求項1から5のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項7】
高コピー数ベクターである、請求項1から6のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項8】
(a)前記ベクターが、Cas11、Cas7及びCas8a1のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む、
(c)前記Cas3'及び/又はCas3"をコードする前記ヌクレオチド配列が、プロモーターと(a)に記載された配列との間にある、並びに
(d)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IB、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項9】
(a)前記ベクターが、Cas8b1、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと(a)に記載された配列との間に含む、並びに
(c)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IA、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項10】
(a)前記ベクターが、Cas5、Cas8c及びCas7のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと(a)に記載された配列との間に含む、並びに
(c)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IA、B、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項11】
(a)前記ベクターが、Cas8U2、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと(a)に記載された配列との間に含む、並びに
(c)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項12】
(a)前記ベクターが、Cas10d、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む、
(c)前記Cas3'及び/又はCas3"をコードする前記ヌクレオチド配列が、プロモーターと(a)に記載された配列との間にある、並びに
(d)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IA、B、C、U、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項13】
(a)前記ベクターが、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと(a)に記載された配列との間に含む、並びに
(c)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はF型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項14】
(a)前記ベクターが、Cas8f、Cas5、Cas7及びCas6fのうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、
(b)前記ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと(a)に記載された配列との間に含む、
(c)前記ベクターが、Casを更にコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと前記Cas3をコードする配列との間に有しない、並びに
(d)任意選択で、前記宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はE型のCRISPR/Cas系を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項15】
前記Cas及びカスケードが、
(a)IB型Cas及びカスケードタンパク質、又は
(b)IE型Cas及びカスケードタンパク質である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項16】
前記Cas3が第1の細菌又は古細菌種のCRISPR/Cas遺伝子座のCas3であり、前記遺伝子座のCas3をコードする配列とその同族プロモーターとの距離が、ベクターに含まれるCas3をコードする配列と対応するプロモーターとの距離より遠く離れている、請求項1から15のいずれか一項に記載のベクター、或いは前記プロモーターと、前記Cas3をコードする配列及び/又はカスケードタンパク質をコードする配列との距離が、対応する野生型のI型遺伝子座におけるものより短い、請求項1から15のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項17】
前記Cas及びカスケードが、大腸菌Cas及びカスケードタンパク質又はクロストリジウム(例えば、C.ディフィシル)Cas及びカスケードタンパク質である、請求項1から7のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項18】
前記ベクターが、(i)宿主細胞にcrRNAを産生するCRISPRアレイ、及び/又は(ii)1つ又は複数のガイドRNA(gRNA若しくはシングルgRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、前記crRNA又はgRNAがCas3と同族である(及び任意選択で、カスケードタンパク質と同族である)、請求項1から17のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項19】
前記アレイ若しくはgRNAをコードする配列がオペロンに含まれ、プロモーターの制御下にある、又は前記アレイ又はgRNAをコードする配列が、Cas3の発現を制御するプロモーターと異なるプロモーターの制御下にある、請求項2に従属する場合の請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のベクターを含む送達ビヒクルであって、前記送達ビヒクルが前記ベクターを宿主細胞に送達することができ、任意選択で、前記送達ビヒクルが、ファージ、非複製伝達粒子、ナノ粒子担体、細菌又はリポソームである、送達ビヒクル。
【請求項21】
前記宿主細胞が、細菌又は古細菌細胞であり、(任意選択で前記宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である)、或いは前記細胞が、真核細胞(任意選択で、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞又は酵母細胞)である、請求項1から20のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
【請求項22】
対象において疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するために、ヒト又は動物対象に投与するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクルであって、任意選択で、前記疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)による前記対象の感染である、又は前記疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)により媒介される、ベクター又はビヒクル。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクルと、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Casをコードする配列及びそれらを含むベクターの産生及び使用に関する。本発明の態様は、細菌又は古細菌細胞においてCasをコードする配列を産生するための産物、ベクター、送達ビヒクル、使用及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、CRISPR/Cas系を用いるベクター及びそれらの使用が記載されている。例えば、参照は、国際公開第2017/118598号、米国特許出願公開第20180140698号、米国特許出願公開第20170246221号、米国特許出願公開第20180273940号、米国特許出願公開第20160115488号、米国特許出願公開第20180179547号、米国特許出願公開第20170175142号、米国特許出願公開第20160024510号、米国特許出願公開第20150064138号、米国特許出願公開第20170022499号、米国特許出願公開第20160345578号、米国特許出願公開第20180155729号、米国特許出願公開第20180200342号、国際公開第2017112620号、国際公開第2018081502号、国際出願PCT/EP2018/066954号、国際出願PCT/EP2018/066980号、国際出願PCT/EP2018/071454号及び米国特許出願第15/985,658号、並びに米国特許商標庁(USPTO)又はWIPOによる同等の公報に対して行われ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/118598号
【特許文献2】米国特許出願公開第20180140698号
【特許文献3】米国特許出願公開第20170246221号
【特許文献4】米国特許出願公開第20180273940号
【特許文献5】米国特許出願公開第20160115488号
【特許文献6】米国特許出願公開第20180179547号
【特許文献7】米国特許出願公開第20170175142号
【特許文献8】米国特許出願公開第20160024510号
【特許文献9】米国特許出願公開第20150064138号
【特許文献10】米国特許出願公開第20170022499号
【特許文献11】米国特許出願公開第20160345578号
【特許文献12】米国特許出願公開第20180155729号
【特許文献13】米国特許出願公開第20180200342号
【特許文献14】国際公開第2017112620号
【特許文献15】国際公開第2018081502号
【特許文献16】国際出願PCT/EP2018/066954号
【特許文献17】国際出願PCT/EP2018/066980号
【特許文献18】国際出願PCT/EP2018/071454号
【特許文献19】米国特許出願第15/985,658号
【特許文献20】国際公開第2016177682号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の構成を提供する。
【0005】
第1の構成
I型Cas3をコードする第1のヌクレオチド配列及び1個又は複数個のカスケードタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、第1及び第2の配列が、細胞内にタンパク質を発現するためのベクターに含まれる1個又は複数個のプロモーターの制御下にある、宿主細胞に導入するための核酸ベクター。
【0006】
一例において、ベクターは、CasモジュールからCas3及びカスケードタンパク質を細胞内で発現するためのオペロンを含み、モジュールは、Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、オペロンは、Cas3及びカスケードタンパク質の両方の発現を制御するプロモーターの制御下にあるCasモジュールを含む。
【0007】
本発明は、ベクターを含む送達ビヒクル、並びにベクター又はビヒクル及び薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物も提供する。
【0008】
本発明は、ヒト又は動物対象において疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減する方法であって、ベクター、ビヒクル又は組成物を対象に投与する工程及びベクターを対象(例えば、対象の腸内細菌叢、肺、眼又は血液)における標的宿主細菌又は古細菌細胞に導入する工程を含み、Casが標的細胞において1つ又は複数の標的配列を切断(そうでなければ、修飾)し、細胞が死滅する又は細胞の増殖若しくは繁殖が低減される方法も提供する。
【0009】
第2の構成
細胞の細菌又は古細菌産生株における機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするDNAのコピーを増幅する方法であって、
(a)各細胞が前記DNAのコピーを含み、各DNAが前記Casをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列が、産生株細胞におけるCasの発現を制御するプロモーターの制御下にあり、DNAが、DNAの複製のために細胞中に作動可能な複製起点を含む、産生株細胞を準備する工程と、
(b)細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによってDNAを増幅する工程と、
(c)任意選択で、DNAのコピーを単離する工程と、
を含み、
任意選択で、プロモーターが減弱構成プロモーターである、方法。
【0010】
第3の構成
細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、産生宿主細菌により産生される増幅DNAの収率を向上させるための使用。
【0011】
第4の構成
細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、産生株におけるCasの毒性を低減するための使用。
【0012】
第5の構成
細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、産生株におけるDNA(任意選択で、Casをコードする配列)の変異を低減するための使用。
【0013】
第6の構成
細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択でCasヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、DNAの増幅の際に産生細胞の生存度を促進するための使用。
【0014】
第7の構成
細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、DNAのCas切断の発生を低減するための使用。
【0015】
第8の構成
細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNA構築物の増幅コピーの収率を向上させ、構築物が、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含む方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
【0016】
第9の構成
DNA構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群において機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)の毒性を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
【0017】
第10の構成
構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群において機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするDNA構築物の変異を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
【0018】
第11の構成
細胞に含まれるDNA構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群の産生細胞生存度を促進し、構築物が、機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
【0019】
第12の構成
構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNA構築物を切断するCasヌクレアーゼの発生を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】大腸菌(E. coli)MG1655を標的にするC.ディフィシル(C. difficile)のI型CRISPR-Cas系である。(A) CRISPR Guided Vector(商標)、CGV(商標)の配置である。プラスミド1:pSC101複製起点(ori)、pBADプロモーター(アラビノースにより誘導)、cas3及びカスケード遺伝子。プラスミド2:pCloDF13複製起点、pTacプロモーター(IPTGにより誘導)、CRISPRアレイ。(B)インデューサーを用いた及び用いなかったLB寒天プレートにおける、CGVを持つ大腸菌MG1655の液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~106)である。(C)RISPR誘導は、個体群の99.9%を死滅させた(灰色バー)。誘導が非存在のときの増殖が、黒色で示されている。CGV(商標)はCRISPR Guided Vector(商標)を指し、これは、CRISPR/Cas成分をコードするヌクレオチド配列を含む核酸ベクターである。
図2】大腸菌MG1655を標的にするC.ディフィシルのI型CRISPR-Cas系である。(A)CRISPR Guided Vector(商標)、CGV(商標)の配置である。pSC101複製起点、pTacプロモーター(IPTGにより誘導)、CRISPRアレイ、pBADプロモーター(アラビノースにより誘導)、cas3及びカスケード遺伝子。(B)インデューサーを用いた及び用いなかったSM寒天プレートにおける、CGVを持つ大腸菌MG1655の液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~106)である。(C)CRISPR誘導は、個体群の99%を死滅させた(灰色バー)。誘導が非存在のときの増殖が、黒色で示されている。CGV(商標)はCRISPR Guided Vector(商標)を指し、これは、CRISPR/Cas成分をコードするヌクレオチド配列を含む核酸ベクターである。
図3】CGVを持つ大腸菌MG1655の時間-殺菌曲線(time-kill curve)である。(A)CRISPR誘導は、60分間で個体群の99%を死滅させた(破線)。誘導が非存在のときの増殖が、黒線で示されている。CRISPR/Casは0時点で誘導され、120分までモニターされた。(B)誘導の60分後の大腸菌MG1655のSM寒天プレートにおける液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~106)である。
図4】合成微生物コンソーシアム(microbial consortium)におけるC.ディフィシルのI-B型CRISPR-Cas系による大腸菌EG1655の特異的死滅である。(A)3つの異なる株から構成される合成個体群の細菌数である。CRISPRは0時点で誘導され、60分間モニターされた。誘導が非存在のときの増殖が、黒色で示されている。CRISPRによる誘導は標的株の大腸菌MG1655の生存細胞の1-log10の低減を促し、一方、大腸菌Top10及びL.ラクティス(L. lactis)NZ9000個体群をインタクトのままにした(暗灰色バー)。(B)誘導の60分後の細菌群集混合物(bacterial community mixture)の液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~106)である。大腸菌MG1655はBHI+ストレプトマイシンに選択的に増殖し、大腸菌Top10はアンピシリンに選択的に増殖し、L.ラクティスNZ9000はクロラムフェニコールに選択的に増殖する。
図5】大腸菌MG1655の純粋培養物と比較した合成微生物コンソーシアムにおけるC.ディフィシルのI-B型CRISPR-Cas系による大腸菌EG1655の死滅である。(A)CRISPRによる誘導は、純粋培養物及び群集混合物の両方において、標的株の大腸菌MG1655の生存細胞に4-log10の低減を生じた(灰色バー)。誘導が非存在のときの増殖が、黒色で示されている。(B)インデューサーを用いた及び用いなかったストレプトマイシンプレートにおける大腸菌EG1655の純粋培養物及び細菌群集混合物の希釈系列である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、Casをコードする配列及びそれらを含むベクターの産生及び使用に関する。本発明の態様は、細菌又は古細菌細胞においてCasをコードする配列を産生するための産物、ベクター、送達ビヒクル、使用及び方法を提供する。
【0022】
本発明の態様は、シングルベクター(single vector)からのCas、また任意選択でカスケードタンパク質の発現の制御を、例えば、オペロンにおけるCasモジュールの制御的使用及び/又は減弱プロモーターの使用によって提供する。
【0023】
概念:
本発明の態様は、I型Cas及び任意選択でI型CRISPR/Cas系の他の成分を発現するために、任意の真核生物又は原核生物種の標的宿主細胞に(例えば、ex vivo又はin vitroで)導入するのに有用な核酸ベクターを提供する。したがって有用なことに一部の例においてベクターは、完全に外来性のI型CRISPR/Cas系を、標的細胞におけるDNAの修飾(例えば、Casによる切断)のために標的細胞に導入するシングルベクター手段を提供することができる。一例では、染色体標的配列(即ち、Cas3と同族であるプロトスペーサー)が修飾される。別の例では、エピソームDNA配列が修飾され、例えば、細胞に導入されたプラスミド配列又はDNAである。後者は、標的細胞における外来性DNAがCas3により切断され、このことは任意選択で切断DNAと目的の更なるDNAとの組み合わせのために1つ又は複数の組み換え誘導末端を産生し、それによって細胞中に組み換え産物を産生する本発明の組み換え方法に有用であり得る。例えば、そのような組み換え方法において、標的細胞は、例えばred/Et系を含む組み換え誘導大腸菌細胞である。別の例において、標的細胞は望ましくない細胞(例えば、ヒト又は動物に対して病原性である種又は株、例えば、細菌性疾患を引き起こす種又は株の細胞)であり、Cas3による切断は細胞を死滅させる。このことは、標的細胞を持つヒト又は動物において感染を治療又は予防するのに有用であり得る。Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas3)、同族アクセサリータンパク質(例えば、カスケードタンパク質)及び少なくとも1つのCRISPRアレイ(又はガイドRNA(例えば、シングルガイドRNA)をコードするヌクレオチド配列)を最小限に発現し、Cas、アクセサリータンパク質及びアレイ(又はヌクレオチド配列)が機能性CRISPR/Cas系を含むシングルベクター手段を提供することは、より好都合であり、本発明者たちは、2個若しくは3個、又はそれ以上の別個のベクター(例えば、Casヌクレアーゼをコードするベクター及びアクセサリータンパク質をコードする異なるベクター、並びに可能であれば、アレイ(又はgRNAをコードするヌクレオチド配列)を含む更なるベクターであり、これらは、全て系が機能するように標的細胞をトランスフォームする必要がある)を使用するより、標的細胞に導入して、標的配列のCRISPR/Cas修飾を実施することがより効率的であると考える。したがって、このことは1つ又は複数の利益を提供することができ、例えば、送達を単純化する(故に、送達ビヒクルの設計)を単純化すること、ベクター及びビヒクルの構築を単純化すること、並びに/又はより良好な切断若しくは死滅効率を提供することである。したがって都合の良いことに本発明の例は、Cas及びアクセサリータンパク質(また、任意選択でgRNAをコードする配列)の標的細胞における調和的発現のためにオペロンを使用する。任意の特定の理論に束縛されることなく、本発明によるシングルベクターの導入(例えば、オペロンを使用する)は、Cas及びアクセサリータンパク質の発現(並びに、任意選択でcRNA又はgRNAの産生)を、これらが標的細胞において過度な遅延を有することなく一緒に作動するために利用されるように有利に調和させることができる。このことは、一方では侵入性ファージ及びDNAを探索及び分解する内在性抗制限、内在性Cas又は他の内在性の機構を使用する標的細胞と、他方では本発明のベクターの侵入性CRISPR成分による効率的な細胞死滅又はそのような機構の不活性化との均衡を崩すために重要であり得る。そのような軍拡競争(arms race)では、細胞内のCRISPR成分の協調的及び早期の作動が、優勢を勝ち取って細胞死滅を実施するために重要であると思われる。本発明は、このことを助ける手段を提供する。
【0024】
故に、例として本発明は以下の概念を提供する。
1.I型Cas3をコードする第1のヌクレオチド配列及び1個又は複数個のカスケードタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、第1及び第2の配列が、細胞内にタンパク質を発現するためのベクターに含まれる1個又は複数個のプロモーターの制御下にある、宿主細胞に導入するための核酸ベクター。
2.ベクターが、CasモジュールからCas3及びカスケードタンパク質を細胞内で発現するためのオペロンを含み、モジュールが、Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、オペロンが、Cas3及びカスケードタンパク質の両方の発現を制御するプロモーターの制御下にあるCasモジュールを含む、概念1に記載のベクター。
3.(a)第1の配列が、オペロン中のプロモーターと第2の配列との間にあり、
(b)オペロンが、プロモーターと第1のヌクレオチド配列との間にCasをコードするヌクレオチド配列を含まず、及び/又は
(c)オペロンが、プロモーター、第1の配列及び第2の配列を(5'から3'の方向に)含む、
概念2に記載のベクター。
4.各プロモーターが構成プロモーターである、概念1から3のいずれか一項に記載のベクター。
5.プロモーターが抑制される(任意選択で、テトラサイクリンリプレッサー又はlacリプレッサーにより抑制される)、概念1から3のいずれか一項に記載のベクター。
6.プロモーターが誘導性である、概念1から3のいずれか一項に記載のベクター。
7.第1の配列が中強度のプロモーターの制御下にある、概念1から6のいずれか一項に記載のベクター。
8.第1の配列が、アンダーソン・スコア(Anderson Score)(AS)の0.5>AS>0.1を有するプロモーターの制御下にある、概念1から7のいずれか一項に記載のベクター。
9.第1の配列(及び任意選択で第2の配列)が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(expression operating unit)(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、概念1から8のいずれか一項に記載のベクター。
10.第1のEOUを使用した蛍光が、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~2倍である、概念9に記載のベクター。
11.ベクターが、宿主細胞において作動可能な複製起点を含む、概念1から10のいずれか一項に記載のベクター。
12.ベクターが、ベクター産生株の細菌細胞において作動可能な複製起点を含み、Cas3が、産生株細胞において染色体配列を標的にして切断するように作動可能ではない、概念1から11のいずれか一項に記載のベクター。
13.第1の配列が、産生株細胞に対して毒性ではないレベルでCas3の発現を制御することができるプロモーターの制御下にある、概念12に記載のベクター。
14.高コピー数ベクターである、概念1から13のいずれか一項に記載のベクター。
15.第1のヌクレオチド配列又はオペロンが可動遺伝要素に含まれている、概念1から14のいずれか一項に記載のベクター。
16.ベクターが、Cas適応モジュールを欠いている、概念1から15のいずれか一項に記載のベクター。
17.ベクターが、Cas1、Cas2、Cas4、Cas6、Cas7及びCas8のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を欠いている、概念1から16のいずれか一項に記載のベクター。
18.ベクターが、Cas11、Cas7及びCas8a1のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
19.ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む、概念18に記載のベクター。
20.Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターと、概念18に列挙されている配列との間にある、概念19に記載のベクター。
21.宿主細胞が、Cas3と同族であるIA型CRISPRアレイを含む、概念18から20のいずれか一項に記載のベクター。
22.宿主細胞が、内在性IB、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、概念18から20のいずれか一項に記載のベクター。
23.ベクターが、Cas8b1、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
24.ベクターが、プロモーターと、概念23に列挙されている配列との間にあるCas3をコードするヌクレオチド配列を含む、概念23に記載のベクター。
25.宿主細胞が、Cas3と同族であるIB型CRISPRアレイを含む、概念23又は24に記載のベクター。
26.宿主細胞が、内在性IA、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、概念23又は24に記載のベクター。
27.ベクターが、Cas5、Cas8c及びCas7のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
28.ベクターが、プロモーターと、概念27に列挙されている配列との間にあるCas3をコードするヌクレオチド配列を含む、概念27に記載のベクター。
29.宿主細胞が、Cas3と同族であるIC型CRISPRアレイを含む、概念27又は28に記載のベクター。
30.宿主細胞が、内在性IA、B、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、概念27又は28に記載のベクター。
31.ベクターが、Cas8U2、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
32.ベクターが、プロモーターと、概念31に列挙されている配列との間にあるCas3をコードするヌクレオチド配列を含む、概念31に記載のベクター。
33.宿主細胞が、Cas3と同族であるIU型CRISPRアレイを含む、概念31又は32に記載のベクター。
34.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、概念31又は32に記載のベクター。
35.ベクターが、Cas10d、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
36.ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む、概念35に記載のベクター。
37.Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターと、概念35に列挙されている配列との間にある、概念36に記載のベクター。
38.宿主細胞が、Cas3と同族であるID型CRISPRアレイを含む、概念35から37のいずれか一項に記載のベクター。
39.宿主細胞が、内在性IA、B、C、U、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、概念35から37のいずれか一項に記載のベクター。
40.ベクターが、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
41.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと概念40に列挙されている配列との間に含む、概念40に記載のベクター。
42.宿主細胞が、Cas3と同族であるIE型CRISPRアレイを含む、概念40又は41に記載のベクター。
43.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はF型のCRISPR/Cas系を含む、概念40又は41に記載のベクター。
44.ベクターが、Cas8f、Cas5、Cas7及びCas6fのうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
45.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと概念44に列挙されている配列との間に含み、ベクターが、更なるCasをコードするヌクレオチド配列を、プロモーターとCas3をコードする配列との間に欠いている、概念44に記載のベクター。
46.宿主細胞が、Cas3と同族であるIF型CRISPRアレイを含む、概念44又は45に記載のベクター。
47.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はE型のCRISPR/Cas系を含む、概念44又は45に記載のベクター。
48.Cas及びカスケードが、
(a)IA型Cas及びカスケードタンパク質、
(b)IB型Cas及びカスケードタンパク質、
(c)IC型Cas及びカスケードタンパク質、
(d)ID型Cas及びカスケードタンパク質、
(e)IE型Cas及びカスケードタンパク質、
(f)IF型Cas及びカスケードタンパク質、又は
(g)IU型Cas及びカスケードタンパク質である、
概念1から17のいずれか一項に記載のベクター。
49.Cas及びカスケードが、大腸菌(任意選択で、IE又はIF型)Cas及びカスケードタンパク質である、概念1から48のいずれか一項に記載のベクター。
50.大腸菌が、ESBL産生大腸菌又は大腸菌ST131-O25b:H4である、概念49に記載のベクター。
51.Cas及びカスケードが、
(a)クロストリジウム(Clostridium)(例えば、C.ディフィシル(C. difficile))Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択でC.ディフィシルが、アミノグリコシド、リンコマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ペニシリン、セファロスポリン及びフルオロキノロンから選択される1つ又は複数の抗生物質に抵抗性がある、
(b)緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択で緑膿菌が、カルバペネム、アミノグリコシド、セフェピム、セフタジジム、フルオロキノロン、ピペラシリン及びタゾバクタムから選択される1つ又は複数の抗生物質に抵抗性がある、又は
(c)肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌又は広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)Cas及びカスケードタンパク質である、
概念1から50のいずれか一項に記載のベクター。
52.Cas及びカスケードが、大腸菌、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌、P.フリオスス(P furiosus)又はB.ハロデュランス(B halodurans)Cas及びカスケードタンパク質である、概念1から51のいずれか一項に記載のベクター。
53.Cas3が、第1の細菌又は古細菌種のCRISPR/Cas遺伝子座のCas3であり、この遺伝子座のCas3をコードする配列と同族プロモーターとの距離が、ベクターに含まれるCas3をコードする配列と対応するプロモーターとの距離より離れている、概念1から52のいずれか一項に記載のベクター。
54.プロモーターと、Cas3をコードする配列及び/又はカスケードタンパク質をコードする配列との距離が、対応する野生型のI型遺伝子座におけるものより短い、概念1から53のいずれか一項に記載のベクター。
55.ベクターが、(i)宿主細胞にcrRNAを産生するCRISPRアレイ、及び/又は(ii)1つ又は複数のガイドRNA(gRNA若しくはシングルgRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、crRNA又はgRNAがCas3と同族である(及び任意選択で、カスケードタンパク質と同族である)、概念1から54のいずれか一項に記載のベクター。
56.アレイ又はgRNAをコードする配列がオペロンに含まれ、プロモーターの制御下にある、概念2に従属する概念55に記載のベクター。
57.アレイ又はgRNAをコードする配列が、Cas3の発現を制御するプロモーターと異なるプロモーターの制御下にある、概念56に記載のベクター。
58. crRNA又はgRNAのうちの1個又は複数が、宿主細胞の標的ヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができるスペーサー配列を含み、標的配列がPAMに隣接し、PAMがCas3と同族である、概念56又は57に記載のベクター。
59.標的配列が宿主細胞の染色体配列である、概念58に記載のベクター。
60.Cas3が、標的配列を切断するように作動可能である、概念58又は59に記載のベクター。
61.ベクターがプラスミド又はファージミドである、概念1から60のいずれか一項に記載のベクター。
62.送達ビヒクルがベクターを宿主細胞に送達することができる、概念1から61のいずれか一項に記載のベクターを含む送達ビヒクル。
63.送達ビヒクルが、ファージ、非複製伝達粒子、ナノ粒子担体、細菌又はリポソームである、概念62に記載のビヒクル。
64.宿主細菌が、細菌又は古細菌細胞であり、任意選択で宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ(H pylori)、肺炎球菌(S pneumoniae)又は黄色ブドウ球菌(S aureus)細胞である、概念1から63のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
65.対象において疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するヒト又は動物対象へ投与のための、概念1から64のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
66.疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)による対象の感染である又は疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)により媒介される、概念65に記載のベクター又はビヒクル。
67.概念1から66のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクルと、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む、医薬組成物。
68.ヒト又は動物対象において疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減する方法であって、概念1から67のいずれか一項に記載のベクター、ビヒクル又は組成物を対象に投与する工程、並びにベクターを対象(例えば、対象の腸内細菌叢、肺、眼又は血液)中の標的宿主細菌又は古細菌細胞に導入する工程を含み、Casが標的細胞において1つ又は複数の標的配列を切断(そうでなければ、修飾)し、細胞が死滅する又は細胞の増殖若しくは繁殖が低減される、方法。
69.標的細胞が、疾患病原体種の細胞である、概念68に記載の方法。
70.標的細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である、概念68又は69に記載の方法。
【0025】
実施形態:
本発明の態様は、細菌及び古細菌産生株細胞においてDNA構築物を増幅する改善された方法を提供する。例えば、DNAは、DNAが標的宿主細菌又は宿主細胞に導入されたときに1個又は複数のCasタンパク質の発現を制御する構成プロモーターを含む、高コピー数プラスミド又はファージミドであり得る。本発明に態様によると、産生株におけるDNAの増幅の際に、プロモーター活性を減弱させることを考慮することが望ましい。このことは有用であり、それは本発明者たちが、産生株におけるCas発現が産生株細胞にとって毒性であり得ること、それによって増幅DNAの収率を低減し得ることを見出したからである。毒性は、例えば、Casがヌクレアーゼ(例えば、Cas9若しくはCas3)である場合、産生株染色体DNAのオフターゲット(off-target)切断に起因し得る、及び/又は細胞におけるCasの相対的に高レベルの発現に起因し得る。それに加えて又はそれに代えて、望ましくないことに、Cas発現又は活性は、産生細胞における変異及び変異DNA構築物の伝播(例えば、DNA構築物のCRISPR/Casオペロン、Casをコードする遺伝子、カスケードをコードする遺伝子、CRISPRアレイ及びgRNAをコードする配列のうちの1つ、それ以上又は全てにおける変異)に好都合な選択圧を課し、それによって所望の増幅構築物の収率を低減し、変異DNA組成物から所望のものを分離して有用な組成物に更に配合するために不必要な工程を課すこともある。そのような組成物は、医薬組成物、除草剤、殺虫剤、環境修復組成物等であり得る。一例において、産生株中のプロモーターの減弱は、中強度(高又は低強度ではない)プロモーターを使用して、DNA構築物のCasをコードするヌクレオチド配列を制御することによって達成される。中レベルのCas発現は産生株において耐容され得るが、それでも後にDNAが標的宿主細胞に導入されると、Casは、所望の活性を生じるのに十分に高いレベルで発現して、標的細胞において標的細胞を修飾(例えば、切断)する。代替案として本発明は抑制プロモーターを使用し、このプロモーターは産生株において抑制されているが、標的宿主細胞では抑制されない。例えば、本発明の態様は、プロモーターを抑制する産生株細胞に発現されたテトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用する
【0026】
故に、収率は、
(a)産生株においてCasの毒性を低減すること、
(b)産生株においてDNA(任意選択で、Casをコードする配列)の変異を低減すること、
(c)DNAの増幅の際に産生細胞の生存度を促進すること、及び
(d)DNAのCas切断(任意選択で、産生宿主細胞染色体DNA又は前記DNA構築物の切断)の発生を低減すること、
のうちの1つ又は複数によって向上され得る。
【0027】
そのため、本発明は以下の実施形態を提供する。
1.細胞の細菌又は古細菌産生株における機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするDNAのコピーを増幅する方法であって、
(a)各細胞が前記DNAのコピーを含み、各DNAが前記Casをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列が、産生株細胞におけるCasの発現を制御するプロモーターの制御下にあり、DNAが、DNAの複製のために細胞中に作動可能な複製起点を含む、産生株細胞を準備する工程と、
(b)細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによってDNAを増幅する工程と、
(c)任意選択で、DNAのコピーを単離することと、
を含み、
プロモーターが減弱構成プロモーターである、方法。
一例において、プロモーターは中強度プロモーターである。別の例において、プロモーターは、産生株細胞中で抑制されている。したがってプロモーターは、これらの例では減弱プロモーターである。
2.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、産生宿主細菌により産生される増幅DNAの収率を向上させるための使用。
3.使用が、
(a)産生株においてCasの毒性を低減すること、
(b)産生株においてDNA(任意選択で、Casをコードする配列)の変異を低減すること、
(c)DNAの増幅の際に産生細胞の生存度を促進すること、及び/又は
(d)DNAのCas切断(任意選択で、産生宿主細胞染色体DNA又は前記DNA構築物の切断)の発生を低減すること、
によって前記収率を向上させるためのものである、段落2に記載の使用。
4.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、産生株におけるCasの毒性を低減するための使用。
5.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、産生株におけるDNA(任意選択で、Casをコードする配列)の変異を低減するための使用。
6.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、DNAの増幅の際に産生細胞の生存度を促進するための使用。
7.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の減弱プロモーターの、DNAのCas切断の発生を低減するための使用。
8.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNA構築物の増幅コピーの収率を向上させ、構築物が、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含む方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅することを含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
9.DNA構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群において機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)の毒性を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
10.構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群において機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするDNA構築物の変異を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
11.細胞に含まれるDNA構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群の産生細胞生存度を促進し、構築物が、機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
12.構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNA構築物を切断するCasヌクレアーゼの発生を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが減弱プロモーターである方法。
13.変異又は切断が、宿主細胞染色体DNA又はDNA構築物の変異又は切断である、段落5若しくは7に記載の使用、又は段落10若しくは12に記載の方法。
14.プロモーターが構成プロモーターである、段落2から13のいずれか一項に記載の方法又は使用。
15.プロモーターが、産生株細胞中で抑制されている(任意選択で、テトラサイクリンリプレッサー又はlacリプレッサーにより抑制されている)、段落1から14のいずれか一項に記載の方法又は使用。
16.プロモーターが、PLtetO-1、PLlacO-1又はこれらの抑制相同体である、段落15に記載の方法又は使用。
適切な抑制プロモーターの他の例は、Ptac(lacIにより抑制される)及びファージラムダの左側プロモーター(pL)(λcIリプレッサーにより抑制される)である。一例において、プロモーターは、プロモーター配列に融合した抑制オペレーター(例えば、tetO又はlacO)を含む。対応するリプレッサーは、産生株(例えば、染色体組み込み配列又はエピソームに含まれる配列)中の核酸でコードされ、リプレッサーは、本発明のDNA又はベクター増幅方法の際に発現され、それによってプロモーター制御Cas発現が抑制される。後に単離増幅DNA/ベクターから産生される送達ビヒクルでは、ビヒクルは、リプレッサーをコードする発現可能なヌクレオチド配列を欠いており、そのためDNA/ベクターが標的宿主細胞に導入されると、プロモーターは機能する。例えば、リプレッサーが非存在であると、プロモーターはCasの発現のために構成的にONになる。したがって系は、DNA/ベクターが宿主細胞に導入されると稼働するように刺激され、この効果は、宿主細胞において作動可能な複製起点を含む高コピー数DNA/ベクターを使用することによって、更に向上され得る。高コピー数ベクター又はDNAは、DNA/ベクターの収率を向上させるためにも産生株細胞にとって望ましく、本明細書に記載される減弱プロモーター(例えば、産生株細胞における中強度プロモーター及び/又は抑制プロモーター)の使用は、増幅を最大限にし、したがってDNA/ベクターの収率を最大限するように培養しながら、Cas毒性を最小限にすることができる。
17.プロモーターが中強度プロモーターである、段落1から16のいずれか一項に記載の方法又は使用。
18.プロモーターが、アンダーソン・スコア(AS)の0.5>AS>0.1を有する、段落1から17のいずれか一項に記載の方法又は使用。
19.前記Casをコードするヌクレオチド配列が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、段落1から18のいずれか一項に記載の方法又は使用。
20.第1のEOUを使用した蛍光が、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~2倍である、段落19に記載の方法又は使用。
21.ヌクレアーゼがCas3であり、任意選択で、DNA又は細胞が同族カスケードタンパク質をコードする、段落1から20のいずれか一項に記載の方法又は使用。
22.CasがCas9である、段落1から20のいずれか一項に記載の方法又は使用。
23.産生株細胞が、細胞中にファージコートタンパク質を産生するように誘導可能なヘルパーファージゲノムを含み、方法が、ファージタンパク質の産生を誘導する工程及び増幅DNAをファージ粒子又は非自己複製伝達粒子に詰め込む工程、並びにファージ又は伝達粒子を更に単離する工程、任意選択で、対象の疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するためにヒト又は動物対象に投与される医薬組成物に、粒子を配合する工程を更に含む、段落1から22のいずれか一項に記載の方法又は使用。
24.粒子が、対象の標的宿主細胞を感染させること及び細胞にDNAを伝達することができ、DNAでコードされたCas及びcrRNA(又はガイドRNA、gRNA)が細胞中に発現し、crRNA又は(gRNA)が、Casを、細胞に含まれる標的ヌクレオチド配列(任意選択で、染色体配列)に導くように作動可能であり、Casが細胞中の標的配列を切断し、それによって、宿主細胞を死滅させ、疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減する、段落23に記載の方法又は使用。
25.宿主細菌が、細菌又は古細菌細胞であり、任意選択で宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である、段落24に記載の方法又は使用。
26.各DNAが高コピー数プラスミド又はファージミドに含まれる、段落1から25のいずれか一項に記載の方法又は使用。
27.DNA構築物が、標的宿主細胞においてCasヌクレアーゼ標的化のために作動可能であるcrRNA又はgRNAを産生する1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、段落1から26のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【0028】
段落及び一般的に適用可能な特徴:
本発明は以下の段落を提供し、これらは下記の実施例によって支持されている。概念における任意の特徴は、実施形態における任意の特徴と組み合わせ可能である。概念における任意の特徴は、実施形態における任意の特徴と組み合わせ可能である。段落における任意の特徴は、実施形態における任意の特徴と組み合わせ可能である。
【0029】
本明細書における任意の細胞(例えば、産生株細胞又は標的宿主細胞)は、細菌細胞、古細菌細胞、藻類細胞、真菌細胞、原生動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、愛玩動物の細胞、イヌの細胞、ネコの細胞、ウマの細胞、マウスの細胞、ラットの細胞、ウサギの細胞、真核細胞、原核細胞、ヒトの細胞、動物の細胞、げっ歯類細胞、昆虫細胞又は植物細胞であり得る。好ましくは、細胞は細菌細胞である。或いは、細胞はヒトの細胞である。任意選択で、産生株細胞及び標的宿主細菌は、同じ門、目、科、属、種又は株のものである。
【0030】
一例において、CasはI型系の任意のCas(例えば、Cas2、3、4、5又は6)である。この例では、ある実施形態においてCasは、標的配列を含む遺伝子の転写を増加又は低減するように作動可能である部分に融合又はコンジュゲートし得る。例えば、Casをコードする核酸は、その部分をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく、Cas及び部分は融合タンパク質として宿主細菌において発現される。一実施形態において、Casはその部分のN末端であり、別の実施形態では、その部分のC末端である。
1.I型Cas3をコードする第1のヌクレオチド配列を含み、配列が、細胞内にCas3を発現するためのベクターに含まれるプロモーターの制御下にある、宿主細胞に導入するための核酸ベクター。
一例において、ベクターはDNAベクター、例えば、ssDNAベクター又はdsDNAベクターである。
2.ベクターが、1個又は複数のカスケードタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、第1及び第2の配列が、細胞内にタンパク質を発現するためのベクターに含まれる1個又は複数のプロモーターの制御下にある、段落1に記載のベクター。
3.カスケードタンパク質がCas3と同族である、段落2に記載のベクター。
一例において、Cas3は、宿主細胞によりコードされた及び/又は第2のオペロンによりコードされたカスケードタンパク質と同族である。任意選択で、第2のオペロンはベクターに含まれている。任意選択で、第2のオペロンは、第2のオペロンを宿主細胞に導入することができる第2のベクターに含まれ、それによって、Cas3及びカスケードタンパク質は宿主細胞中のオペロンから発現され、crRNA又はgRNAによりCasが宿主細胞標的配列を標的にするように作動可能になり、Cas3は標的配列を修飾することができる。
4.ベクターが、CasモジュールからCas3及びカスケードタンパク質を細胞内で発現するためのオペロンを含み、モジュールが、Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、オペロンが、Cas3及びカスケードタンパク質の両方の発現を制御するプロモーターの制御下にあるCasモジュールを含む、段落2又は3に記載のベクター。
用語「オペロン」は、例えば、発現産物をコードするそれぞれ少なくとも2つの発現可能なヌクレオチド配列を含有するDNAの機能単位(例えば、対応する翻訳可能なmRNA)に関し、配列が共通のプロモーターの制御下にあることが、当業者に知られている。
5.第1の配列が、オペロン中のプロモーターと第2の配列との間にある、段落4に記載のベクター。
6.オペロンが、プロモーターと第1のヌクレオチド配列との間にCasをコードするヌクレオチド配列を含まない、段落4又は5に記載のベクター。
任意選択で、Cas3は第1の細菌又は古細菌種のCRISPR/Cas遺伝子座によりコードされたCas3であり、その遺伝子座において、Cas3をコードする配列は、3'のカスケードタンパク質をコードする配列である(即ち、後者はCas3と遺伝子座の最も5'に近いプロモーターとの間にある)。
任意選択で、Cas3はygcBタンパク質である(例えば、産生株細胞及び/又は宿主標的細胞が大腸菌である場合)。
任意選択で、カスケードタンパク質は、
cas5(casD、csy2)、
cas6(cas6f、cse3、casE)、
cas7(csc2、csy3、cse4、casC)、
cas8(casA、cas8a1、cas8b1、cas8c、cas10d、cas8e、cse1、cas8f、csy1)
を含む又はこれらから構成される。
任意選択で、本明細書においてプロモーターとCas3をコードする配列は、150、100、50、40、30、20又は10bp以下の隔たり、例えば、30~45又は30~40又は39又はおよそ39bpの隔たりで間隔を開けている。
任意選択で、本明細書においてリボソーム結合部位とCas3をコードする配列は、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、4又は3bp以下の隔たり、例えば、10~5、6又はおよそ6bpの隔たりで間隔を開けている。
7.オペロンが、プロモーター、第1の配列及び第2の配列を(5'から3'の方向に)含む、段落4から6のいずれか一項に記載のベクター。
8.各プロモーターが構成プロモーターである、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
9.プロモーターが抑制される(任意選択で、テトラサイクリンリプレッサー又はlacリプレッサーにより抑制される)、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
10.プロモーターが誘導性である、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
11.第1の配列が弱いプロモーターの制御下にある、段落1から10のいずれか一項に記載のベクター。
12.第1の配列が中強度のプロモーターの制御下にある、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
13.第1の配列が強力なプロモーターの制御下にある、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
一例において、プロモーターは、配列5'-aaagaggagaaa-3'(配列番号5)又はそのリボソーム結合部位相同体を含むシャイン・ダルガルノ配列と組み合わされる。
14.第1の配列が、アンダーソン・スコア(AS)のAS≧0.5を有するプロモーターの制御下にある、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
プロモーターに関するアンダーソン・スコアについての更なる情報は、Table 2を参照。
15.第1の配列が、アンダーソン・スコア(AS)の0.5>AS>0.1を有するプロモーターの制御下にある、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
16.第1の配列が、アンダーソン・スコア(AS)のAS≦0.1を有するプロモーターの制御下にある、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
17.第1の配列(及び任意選択で第2の配列)が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、段落1から7のいずれか一項に記載のベクター。
18.第1のEOUを使用した蛍光が、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~2倍である、段落17に記載のベクター。
例えば、第1のEOUを使用した蛍光は、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~X倍であり、Xは3.0~1.0、例えば、3、2.5、2、1.5又は1であり、蛍光は、481nmの励起及び507nmの発光を使用して決定される。任意選択で、指数増殖期において0.3~0.5のOD600で大腸菌培養物を使用する。
例えば、各EOUの上流インスレーター、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターは、Mutalikら(2013)に開示されている。例えば、各EOUの上流インスレーター、GFPををコードするするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターは、配列番号4の対応する配列である。例えば、大腸菌は大腸菌BW25113であり、50μg/mlのカナマイシン(kan)を補充したMOPS EZ Rich Medium(Teknova社)において、900r.p.mで振盪しながら、37℃で増殖させる。例えば、各EOUは、中型コピープラスミド、例えば、p15A複製起点及びkan耐性遺伝子を含むpFAB217に由来するプラスミドに含まれる。
19.ベクターが、宿主細胞において作動可能な複製起点を含む、段落1から18のいずれか一項に記載のベクター。
20.ベクターが、ベクター産生株の細菌細胞において作動可能な複製起点を含み、Cas3が、産生株細胞において染色体配列を標的にして切断するように作動可能ではない、段落1から19のいずれか一項に記載のベクター。
産生株細胞の一例は、大腸菌細胞である。産生株細胞は、Cas(及び任意選択でCRISPR/Cas系の他の成分)をコードするDNAを増幅するために使用される細胞である。有用なことに、株は、標的宿主細胞(例えば、細菌、古細菌、原核、真核、ヒト、動物、哺乳動物、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、アフリカツメガエル、魚類、鳥類、両生類、昆虫、植物、アメーバ又は藻類の細胞)の個体群と接触させることができる組成物を産生するために単離され得る伝達粒子に、増幅DNAを詰め込むことができ、DNAはCas(及び任意選択でCRISPR/Cas系の他の成分)の発現のために細胞に導入され、Casは、宿主細胞のプロトスペーサー標的配列へ導かれて配列を修飾(例えば、切断)する。別の例において、増幅DNAは、産生株細胞の個体群から単離され、送達ビヒクル(例えば、担体細菌、ナノ粒子又はリポソーム)と組み合わされ、送達ビヒクルを、標的宿主細胞(例えば、細菌、古細菌、原核、真核、ヒト、動物、哺乳動物、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、アフリカツメガエル、魚類、鳥類、両生類、昆虫、植物、アメーバ又は藻類の細胞)の個体群と接触させることができ、DNAはCas(及び任意選択でCRISPR/Cas系の他の成分)の発現のために細胞に導入され、Casは、宿主細胞のプロトスペーサー標的配列へ導かれて配列を修飾(例えば、切断)する。
21.第1の配列が、産生株細胞に対して毒性ではないレベルでCas3の発現を制御することができるプロモーターの制御下にある、段落20に記載のベクター。
一例において、Cas3をコードする配列が増幅されたとき、死滅する産生株細胞は実質的にない。別の例において、Cas3をコードする配列が増幅されたとき、産生株細胞の40、30、20、10、5、4、3、2又は1%以下が死滅する。例えば、このことは細胞の培養の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は24時間以内である。
22.細胞がベクターの少なくとも1000コピーを産生するために十分に増殖及び繁殖できるように、第1の配列が、産生株細胞におけるCas3の発現を制御するプロモーターの制御下にある、段落20に記載のベクター。
例えば、このことは細胞の培養の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は24時間以内である。例えば、ベクターの少なくとも104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017又は1018コピーが、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017個の産生株細胞毎にそれぞれ産生される。
23.細胞が、ベクターが含まれる場合に少なくとも2又は3logでの発現が可能である、段落20から22のいずれか一項に記載のベクター。
例えば、このことは細胞の培養の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は24時間以内である。
24.高コピー数ベクターである、段落1から23のいずれか一項に記載のベクター。
25.第1のヌクレオチド配列又はオペロンが可動遺伝要素に含まれている、段落1から24のいずれか一項に記載のベクター。
適切な可動遺伝要素、例えば、トランスポゾンは、国際公開第2016177682号及び米国特許出願公開第20170246221号に開示されており、これらの開示は、本発明における可能な使用のため及び本明細書の特許請求の範囲に1つ又は複数の特徴を提供するため、本明細書に明示的に組み込まれる。
26.ベクターが、Cas適応モジュールを欠いている、段落1から25のいずれか一項に記載のベクター。
例えば、ベクターはCas1、Cas2及び/又はCas4をコードするヌクレオチド配列を欠いている。
27.ベクターが、Cas1、Cas2、Cas4、Cas6(任意選択で、Cas6f)、Cas7及びCas8(任意選択で、Cas8f)のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を欠いている、段落1から26のいずれか一項に記載のベクター。
28.ベクターが、Cas6(任意選択で、Cas6f)をコードするヌクレオチド配列を欠いている、段落1から27のいずれか一項に記載のベクター。
29.モジュールが、Cas6(任意選択で、Cas6f)をコードする、段落1から27のいずれか一項に記載のベクター。
30.ベクターが、Cas11、Cas7及びCas8a1のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
31.ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む(任意選択で、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターと、段落30に列挙されている配列との間にある)、段落30に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3(例えば、Cas3'及び/又はCas3")、Cas11、Cas7、並びにCas8a1をコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas11配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするIA型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
32.宿主細胞が、Cas3と同族であるIA型CRISPRアレイを含む、段落30又は31に記載のベクター。
33.宿主細胞が、内在性IB、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む段落30又は31に記載のベクター。
34.ベクターが、Cas8b1、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
35.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと段落34に列挙されている配列との間に含む、段落34に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3、Cas8b1、Cas7及びCas5をコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas8b1配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするIB型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
36.宿主細胞が、Cas3と同族であるIB型CRISPRアレイを含む、段落34又は35に記載のベクター。
37.宿主細胞が、内在性IA、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、段落34又は35に記載のベクター。
38.ベクターが、Cas5、Cas8c及びCas7のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
39.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと段落38に列挙されている配列との間に含む、段落38に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3、Cas5、Cas8c及びCas7をコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas5配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするIC型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
40.宿主細胞が、Cas3と同族であるIC型CRISPRアレイを含む、段落38又は39に記載のベクター。
41.宿主細胞が、内在性IA、B、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、段落38又は39に記載のベクター。
42.ベクターが、Cas8U2、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
43.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと段落42に列挙されている配列との間に含む、段落42に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3、Cas8U2、Cas7、Cas5及びCas6をコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas8U2配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするIU型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
44.宿主細胞が、Cas3と同族であるIU型CRISPRアレイを含む、段落42又は43に記載のベクター。
45.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、段落42又は43に記載のベクター。
46.ベクターが、Cas10d、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
47.ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む(任意選択で、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターと、段落46に列挙されている配列との間にある)、段落46に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3、Cas10d、Cas7及びCas5をコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas10d配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするID型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
48.宿主細胞が、Cas3と同族であるID型CRISPRアレイを含む、段落46又は47に記載のベクター。
49.宿主細胞が、内在性IA、B、C、U、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、段落46又は47に記載のベクター。
50.ベクターが、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
51.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと段落50に列挙されている配列との間に含む、段落50に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5及びCas6をコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas11配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするIE型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
52.宿主細胞が、Cas3と同族であるIE型CRISPRアレイを含む、段落50又は51に記載のベクター。
53.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はF型のCRISPR/Cas系を含む、段落50又は51に記載のベクター。
54.ベクターが、Cas8f、Cas5、Cas7及びCas6fのうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
55.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと段落54に列挙されている配列との間に含み、ベクターが、更なるCasをコードするヌクレオチド配列を、プロモーターとCas3をコードする配列との間に欠いている、段落54に記載のベクター。
一実施形態において、ベクターは、Cas3、Cas8f、Cas5、Cas7及びCas6fをコードするヌクレオチド配列を(5'から3'の方向に)含む。任意選択で、Cas6をコードするヌクレオチド配列は、Cas3配列とCas8f配列の間にある。任意選択で、ベクターは、シングルガイドRNA(gRNA)をコードするIF型CRISPRアレイ又は1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、アレイ及び各gRNAは、Cas3と同族である反復配列を含む。故に、アレイは、ベクターがガイドRNAの産生のために細胞に導入されたときに宿主細胞において作動可能であり、ガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。同様に、一実施形態においてベクターによりコードされたシングルガイドRNAは、Cas及びカスケードタンパク質が宿主細胞中の標的ヌクレオチド配列を標的にして修飾(例えば、切断)し、それにより任意選択で宿主細胞を死滅させるように作動可能である。
56.宿主細胞が、Cas3と同族であるIF型CRISPRアレイを含む、段落54又は55に記載のベクター。
57.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はE型のCRISPR/Cas系を含む、段落54又は55に記載のベクター。
58.Cas及びカスケードがIA型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
59.Cas及びカスケードがIB型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
60.Cas及びカスケードがIC型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
61.Cas及びカスケードがID型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
62.Cas及びカスケードがIE型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
63.Cas及びカスケードがIF型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
64.Cas及びカスケードがIU型Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
65.Cas及びカスケードが大腸菌(任意選択で、IE又はIF型)Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択で大腸菌が、ESBL産生大腸菌又は大腸菌ST131-O25b:H4である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
66.Cas及びカスケードが、クロストリジウム(例えば、C.ディフィシル)Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択でC.ディフィシルが、アミノグリコシド、リンコマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ペニシリン、セファロスポリン及びフルオロキノロンから選択される1つ又は複数の抗生物質に抵抗性がある、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
67.Cas及びカスケードが、緑膿菌Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択で緑膿菌が、カルバペネム、アミノグリコシド、セフェピム、セフタジジム、フルオロキノロン、ピペラシリン及びタゾバクタムから選択される1つ又は複数の抗生物質に抵抗性がある、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
68.Cas及びカスケードが、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌又は広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)Cas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
69.Cas及びカスケードが、大腸菌、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌、P.フリオスス又はB.ハロデュランスCas及びカスケードタンパク質である、段落1から29のいずれか一項に記載のベクター。
70.Cas3が、第1の細菌又は古細菌種のCRISPR/Cas遺伝子座のCas3であり、この遺伝子座のCas3をコードする配列と同族プロモーターとの距離が、ベクターに含まれるCas3をコードする配列と対応するプロモーターとの距離より遠く離れている、段落1から69のいずれか一項に記載のベクター。
本明細書において同族プロモーターは、野生型遺伝子座におけるCas3の発現を制御するものである。
71.プロモーターと、Cas3をコードする配列及び/又はカスケードタンパク質をコードする配列との距離が、対応する野生型のI型遺伝子座におけるものより短い、段落1から70のいずれか一項に記載のベクター。
対応する遺伝子座は、ベクターによってもコードされる種類のCas3及び/又はカスケードタンパク質をコードする内在性CRISPR/Cas系を含む、細菌又は古細菌の種又は株の野生型遺伝子座である。故にベクターがオペロンを含有する場合、オペロンは、天然の構成ではないCas3をコードする及びカスケードをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
72.ベクターが、(i)宿主細胞にcrRNAを産生するCRISPRアレイ、及び/又は(ii)1つ又は複数のシングルガイドRNA(gRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、crRNA又はgRNAがCas3と同族である(及び任意選択で、カスケードタンパク質と同族である)、段落1から71のいずれか一項に記載のベクター。
73.アレイ又はgRNAをコードする配列がオペロンに含まれ、プロモーターの制御下にある、段落4に従属する段落72に記載のベクター。
74.アレイ又はgRNAをコードする配列が、Cas3の発現を制御するプロモーターと異なるプロモーターの制御下にある、段落72に記載のベクター。
75.crRNA又はgRNAのうちの1個又は複数個が、宿主細胞の標的ヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができるスペーサー配列を含み、標的配列がPAMに隣接し、PAMがCas3と同族である、段落72から74のいずれか一項に記載のベクター。
故に、スペーサーはプロトスペーサーとハイブリッド形成して、Cas3をプロトスペーサーに導く。任意選択で、Cas3は、例えば、Cas3のエキソ及び/又はエンドヌクレアーゼ活性を使用して、プロトスペーサーを切断する。任意選択で、Cas3は複数(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のヌクレオチドをプロトスペーサーから取り除く。
76.標的配列が宿主細胞の染色体配列である、段落75に記載のベクター。
77.Cas3が、標的配列を切断するように作動可能である、段落75又は76に記載のベクター。
78.ベクターがプラスミド又はファージミドである、段落1から77のいずれか一項に記載のベクター。
79.送達ビヒクルがベクターを宿主細胞に送達することができる、段落1から78のいずれか一項に記載のベクターを含む送達ビヒクル。
80.送達ビヒクルが、ファージ、非複製伝達粒子、ナノ粒子担体、細菌又はリポソームである、段落79に記載のビヒクル。
ファージ又は粒子は、DNAを封入するファージコートタンパク質を含み、DNAはベクターを含む。ファージ及び粒子の適切な例は、米国特許出願第15/985,658号(及びUSPTOによる同等の公報)に開示されており、これらの開示は、本発明における可能な使用のため及び本明細書の特許請求の範囲に含まれ得る1つ又は複数の特徴を提供するため、参照により本明細書に組み込まれる。ファージ又は粒子は、細胞に感染し、それによってベクターを細胞内に導入することができる。
81.宿主細菌が、細菌又は古細菌細胞であり、任意選択で宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である、段落1から80のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
82.対象において疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するヒト又は動物対象へ投与のための、段落1から81のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
83.疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)による対象の感染である又は疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)により媒介される、段落82に記載のベクター又はビヒクル。
84.段落1から83のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクルと、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む、医薬組成物。
85.細胞の細菌又は古細菌産生株における機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするDNAのコピーを増幅する方法であって、
(a)各細胞が前記DNAのコピーを含み、各DNAが前記Casをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列が、産生株細胞におけるCasの発現を制御するプロモーターの制御下にあり、DNAが、DNAの複製のために細胞中に作動可能な複製起点を含む、産生株細胞を準備する工程と、
(b)細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによってDNAを増幅する工程と、
(c)任意選択で、DNAのコピーを単離する工程と、
を含む方法。
86.プロモーターが構成プロモーターである、段落85に記載の方法。
87.プロモーターが抑制される(任意選択で、テトラサイクリンリプレッサー又はlacリプレッサーにより抑制される)、段落85に記載の方法。
88.プロモーターが誘導性である、段落85に記載の方法。
89.プロモーターが中強度のプロモーターである、段落85から88のいずれか一項に記載の方法。
90.プロモーターが、アンダーソン・スコア(AS)の0.5>AS>0.1を有する、段落85から89のいずれか一項に記載の方法。
91.前記Casをコードするヌクレオチド配列が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、段落85から90のいずれか一項に記載の方法。
92.第1のEOUを使用した蛍光が、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~2倍である、段落91に記載の方法。
93.ヌクレアーゼがCas3であり、任意選択でDNA又は細胞が、Casヌクレアーゼ標的化のために作動可能である同族カスケードタンパク質及び/又は1つ又は複数のcrRNAをコードする、段落85から92のいずれかに記載の方法。
例えば、標的化は、Casを宿主細菌染色体又はそのエピソームに含まれるプロトスペーサー配列に向けて標的化することである。別の例において、標的化は組み換え方法におけるものであり、Casは、宿主細胞に導入された又は増幅されたDNAのプロトスペーサー配列に向けて標的化される。そのような組み換えの一例において、宿主細胞は大腸菌細胞である。
94.CasがCas9である、段落85から92のいずれか一項に記載の方法。
95.Casが、IIIA型csmタンパク質又はIIIB型cmrタンパク質である、段落85から92のいずれか一項に記載の方法。
96.CasがCsf1である、段落85から92のいずれか一項に記載の方法。
97.CasがCpf1である、段落85から92のいずれか一項に記載の方法。
98.CasがCas13(任意選択で、Cas13a又はCas13b)である、段落85から92のいずれか一項に記載の方法。
99.Casが、Cas3、Cas8a、Cas5、Cas8b、Cas8c、Cas10d、Cse1、Cse2、Csy1、Csy2、Csy3、GSU0054、Cas10、Csm2、Cmr5、Cas10、Csx11、Csx10、Csf1、Cas9、Csn2、Cas4、Cpf1、C2c1、C2c3、Cas13a、Cas13b及びCas13cから選択される、段落85から92のいずれか一項に記載の方法。
100.産生株細胞が、細胞中にファージコートタンパク質を産生するように誘導可能なヘルパーファージゲノムを含み、方法が、ファージタンパク質の産生を誘導する工程及び増幅DNAをファージ粒子又は非自己複製伝達粒子に詰め込む工程、並びにファージ又は伝達粒子を更に単離する工程、任意選択で、対象の疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するためにヒト又は動物対象に投与される医薬組成物に、粒子を配合する工程を更に含む、段落85から99のいずれか一項に記載の方法。
101.粒子が、対象の標的宿主細胞を感染させること及び細胞にDNAを伝達することができ、DNAでコードされたCas及びcrRNA(又はgRNA)が細胞中に発現し、crRNA又は(gRNA)が、Casを、細胞に含まれる標的ヌクレオチド配列(任意選択で、染色体配列)に導くように作動可能であり、Casが細胞中の標的配列を切断し、それによって、宿主細胞を死滅させ、疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減する、段落100に記載の方法。
102.宿主細菌が、細菌又は古細菌細胞であり、任意選択で宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である、段落101に記載の方法。
103.各DNAが、高コピー数ベクター、任意選択で高コピー数プラスミドに含まれる(任意選択で、プロモーターは構成プロモーターである)、段落85から102のいずれか一項に記載の方法。
104.各DNAが、段落1から83のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクルに含まれる、段落85から103のいずれか一項に記載の方法。
105.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の強度減弱プロモーターの、産生宿主細菌により産生される増幅DNAの収率を向上させるための使用。
故に、前記向上は、強力なプロモーター、例えば、強力な構成プロモーター(例えば、アンダーソン・スコア(AS)のAS≧0.5を有するプロモーター)を使用して生成された収率に対する相対的なものであり得る。別の例において、強力なプロモーターは、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の>4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせに含まれるプロモーターであり、EOUは、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUは、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む。
106.使用が、
(d)産生株においてCasの毒性を低減すること、
(e)産生株においてDNA(任意選択で、Casをコードする配列)の変異を低減すること、
(f)DNAの増幅の際に産生細胞の生存度を促進すること、及び/又は
(g)DNAのCas切断(任意選択で、産生宿主細胞染色体DNA又は前記DNA構築物の切断)の発生を低減すること、
によって前記収率を向上させるためのものである、段落105に記載の使用。
107.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の強度減弱プロモーターの、産生株におけるCasの毒性を低減するための使用。
108.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の強度減弱プロモーターの、産生株におけるDNA(任意選択で、Casをコードする配列)の変異を低減するための使用。
109.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の強度減弱プロモーターの、DNAの増幅の際に産生細胞の生存度を促進するための使用。
110.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNAのコピーを増幅する方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含む方法における、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物中の強度減弱プロモーターの、DNAのCas切断の発生を低減するための使用。
111.細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNA構築物の増幅コピーの収率を向上させ、構築物が、プロモーターの制御下にある機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含む方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが強度減弱プロモーターである方法。
112.DNA構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群において機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)の毒性を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが強度減弱プロモーターである方法。
113.構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群において機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするDNA構築物の変異を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが強度減弱プロモーターである方法。
114.細胞に含まれるDNA構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群の産生細胞生存度を促進し、構築物が、機能性Casタンパク質(任意選択で、Casヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが強度減弱プロモーターである方法。
115.構築物のコピーを増幅する方法における細菌又は古細菌産生株細胞の個体群においてDNA構築物を切断するCasヌクレアーゼの発生を低減し、構築物が、Casをコードするヌクレオチド配列を含み、配列が、プロモーターの制御下にある方法であって、細胞を培養して、DNAの複製を可能にし、それによって細胞中でDNAを増幅する工程を含み、プロモーターが強度減弱プロモーターである方法。
116.変異又は切断が、宿主細胞染色体DNA又はDNA構築物の変異又は切断である、段落108若しくは110に記載の使用、又は段落113若しくは115に記載の方法。
117.プロモーターが構成プロモーターである、段落105から116のいずれか一項に記載の使用又は方法。
118.プロモーターが抑制される(任意選択で、テトラサイクリンリプレッサー又はlacリプレッサーにより抑制される)、段落105から117のいずれか一項に記載の使用又は方法。
一例において、プロモーターは構成プロモーターであり、任意選択でDNAは、高コピー数プラスミド又はファージミドに含まれる。
119.プロモーターが、PLtetO-1、PLlacO-1又はこれらの抑制相同体である、段落105から118のいずれか一項に記載の使用又は方法。
PLlacO-1は、lacリプレッサー(LacR)により抑制される。PLtetO-1は、tetリプレッサー(TetR)により抑制される。
120.プロモーターが中強度のプロモーターである、段落105から119のいずれか一項に記載の使用又は方法。
121.プロモーターが、アンダーソン・スコア(AS)の0.5>AS>0.1を有する、段落105から120のいずれか一項に記載の使用又は方法。
122.前記Casをコードするヌクレオチド配列が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、段落105から121のいずれか一項に記載の使用又は方法。
123.第1のEOUを使用した蛍光が、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~2倍である、段落122に記載の使用又は方法。
124.ヌクレアーゼがCas3であり、任意選択で、DNA構築物が同族カスケードタンパク質をコードする、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
125.CasがCas9である、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
126.Casが、IIIA型csmタンパク質又はIIIB型cmrタンパク質である、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
127.CasがCsf1である、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
128.CasがCpf1である、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
129.CasがCas13(任意選択で、Cas13a又はCas13b)である、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
130.Casが、Cas3、Cas8a、Cas5、Cas8b、Cas8c、Cas10d、Cse1、Cse2、Csy1、Csy2、Csy3、GSU0054、Cas10、Csm2、Cmr5、Cas10、Csx11、Csx10、Csf1、Cas9、Csn2、Cas4、Cpf1、C2c1、C2c3、Cas13a、Cas13b及びCas13cから選択される、段落105から123のいずれか一項に記載の使用又は方法。
131.DNA構築物が、Casヌクレアーゼ標的化のために作動可能であるcrRNA又はgRNAを産生する1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、段落105から130のいずれか一項に記載の使用又は方法。
132.産生株細胞が、細胞中にファージコートタンパク質を産生するように誘導可能なヘルパーファージゲノムを含み、方法が、ファージタンパク質の産生を誘導する工程及び増幅DNAをファージ粒子又は非自己複製伝達粒子に詰め込む工程、並びにファージ又は伝達粒子を更に単離する工程、任意選択で、対象の疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するためにヒト又は動物対象に投与される医薬組成物に、粒子を配合する工程を更に含む、段落105から131のいずれか一項に記載の使用又は方法。
133.粒子が、対象の標的宿主細胞を感染させること及び細胞にDNAを伝達することができ、DNAでコードされたCas及びcrRNA(又はgRNA)が細胞中に発現し、crRNA又は(gRNA)が、Casを、細胞に含まれる標的ヌクレオチド配列(任意選択で、染色体配列)に導くように作動可能であり、Casが細胞中の標的配列を切断し、それによって、宿主細胞を死滅させ、疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減する、段落132に記載の方法。
134.宿主細菌が、細菌又は古細菌細胞であり、任意選択で宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である、段落133に記載の方法。
135.各DNAが、高コピー数ベクター、任意選択で高コピー数プラスミドに含まれる(任意選択で、プロモーターは構成プロモーターである)、段落105から134のいずれか一項に記載の使用又は方法。
136.各DNAが、段落1から78及び81から83のいずれか一項に記載のベクターに含まれる、段落105から135のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【0031】
以下の節も提供される。
節:
1.I型Cas3をコードする第1のヌクレオチド配列及び1個又は複数のカスケードタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、第1及び第2の配列が、細胞内にタンパク質を発現するためのベクターに含まれる1個又は複数のプロモーターの制御下にある、宿主細胞に導入するための核酸ベクター。
2.ベクターが、CasモジュールからCas3及びカスケードタンパク質を細胞内で発現するためのオペロンを含み、モジュールが、Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、オペロンが、Cas3及びカスケードタンパク質の両方の発現を制御するプロモーターの制御下にあるCasモジュールを含む、節1に記載のベクター。
3.(a)第1の配列が、オペロン中のプロモーターと第2の配列との間にあり、
(b)オペロンが、プロモーターと第1のヌクレオチド配列との間にCasをコードするヌクレオチド配列を含まず、及び/又は
(c)オペロンが、プロモーター、第1の配列及び第2の配列を(5'から3'の方向に)含む、
節2に記載のベクター。
4.各プロモーターが構成プロモーターである、節1から3のいずれか一項に記載のベクター。
5.プロモーターが抑制される(任意選択で、テトラサイクリンリプレッサー又はlacリプレッサーにより抑制される)、節1から3のいずれか一項に記載のベクター。
6.プロモーターが誘導性である、節1から3のいずれか一項に記載のベクター。
7.第1の配列が中強度のプロモーターの制御下にある、節1から6のいずれか一項に記載のベクター。
8.第1の配列が、アンダーソン・スコア(AS)の0.5>AS>0.1を有するプロモーターの制御下にある、節1から7のいずれか一項に記載のベクター。
9.第1の配列(及び任意選択で第2の配列)が、大腸菌株BW25113細胞において第1の発現作動単位(EOU)から緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、BCD14 TIS(配列番号2)と組み合わせたP10プロモーター(配列番号1)を含む第2のEOUを使用して大腸菌株BW25113細胞において生成された蛍光の0.5~4倍の蛍光で生成することができるプロモーター及び翻訳開始部位(TIS)の組み合わせの制御下にあり、EOUが、プロモーターとTISの組み合わせだけが異なり、各EOUが、上流イニシエーター、対応するプロモーター、対応するTIS、GFPをコードするヌクレオチド配列、3'UTR、転写ターミネーター及び下流インスレーターを(5'から3'の方向に)含む、節1から8のいずれか一項に記載のベクター。
10.第1のEOUを使用した蛍光が、第2のEOUを使用した蛍光の0.5~2倍である、節9に記載のベクター。
11.ベクターが、宿主細胞において作動可能な複製起点を含む、節1から10のいずれか一項に記載のベクター。
12.ベクターが、ベクター産生株の細菌細胞において作動可能な複製起点を含み、Cas3が、産生株細胞において染色体配列を標的にして切断するように作動可能ではない、節1から11のいずれか一項に記載のベクター。
13.第1の配列が、産生株細胞に対して毒性ではないレベルでCas3の発現を制御することができるプロモーターの制御下にある、節12に記載のベクター。
14.高コピー数ベクターである、節1から13のいずれか一項に記載のベクター。
15.第1のヌクレオチド配列又はオペロンが可動遺伝要素に含まれている、節1から14のいずれか一項に記載のベクター。
16.ベクターが、Cas適応モジュールを欠いている、節1から15のいずれか一項に記載のベクター。
17.ベクターが、Cas1、Cas2、Cas4、Cas6、Cas7及びCas8のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を欠いている、節1から16のいずれか一項に記載のベクター。
18.ベクターが、Cas11、Cas7及びCas8a1のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
19.ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む、節18に記載のベクター。
20.Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターと節18に列挙されている配列との間にある、節19に記載のベクター。
21.宿主細胞が、Cas3と同族であるIA型CRISPRアレイを含む、節18から20のいずれか一項に記載のベクター。
22.宿主細胞が、内在性IB、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、節18から20のいずれか一項に記載のベクター。
23.ベクターが、Cas8b1、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
24.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと節23に列挙されている配列との間に含む、節23に記載のベクター。
25.宿主細胞が、Cas3と同族であるIB型CRISPRアレイを含む、節23又は24に記載のベクター。
26.宿主細胞が、内在性IA、C、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、節23又は24に記載のベクター。
27.ベクターが、Cas5、Cas8c及びCas7のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
28.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと節27に列挙されている配列との間に含む、節27に記載のベクター。
29.宿主細胞が、Cas3と同族であるIC型CRISPRアレイを含む、節27又は28に記載のベクター。
30.宿主細胞が、内在性IA、B、U、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、節27又は28に記載のベクター。
31.ベクターが、Cas8U2、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
32.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと節31に列挙されている配列との間に含む、節31に記載のベクター。
33.宿主細胞が、Cas3と同族であるIU型CRISPRアレイを含む、節31又は32に記載のベクター。
34.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、節31又は32に記載のベクター。
35.ベクターが、Cas10d、Cas7及びCas5のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
36.ベクターが、Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列を含む、節35に記載のベクター。
37.Cas3'及び/又はCas3"をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターと節35に列挙されている配列との間にある、節36に記載のベクター。
38.宿主細胞が、Cas3と同族であるID型CRISPRアレイを含む、節35から37のいずれか一項に記載のベクター。
39.宿主細胞が、内在性IA、B、C、U、E又はF型のCRISPR/Cas系を含む、節35から37のいずれか一項に記載のベクター。
40.ベクターが、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5及びCas6のうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
41.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと節40に列挙されている配列との間に含む、節40に記載のベクター。
42.宿主細胞が、Cas3と同族であるIE型CRISPRアレイを含む、節40又は41に記載のベクター。
43.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はF型のCRISPR/Cas系を含む、節40又は41に記載のベクター。
44.ベクターが、Cas8f、Cas5、Cas7及びCas6fのうちの1つ、それ以上又は全てをコードするヌクレオチド配列を(任意選択で、5'から3'の方向に)含む、節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
45.ベクターが、Cas3をコードするヌクレオチド配列を、プロモーターと節44に列挙されている配列との間に含み、ベクターが、更なるCasをコードするヌクレオチド配列を、プロモーターとCas3をコードする配列との間に欠いている、節44に記載のベクター。
46.宿主細胞が、Cas3と同族であるIF型CRISPRアレイを含む、節44又は45に記載のベクター。
47.宿主細胞が、内在性IA、B、C、D、U又はE型のCRISPR/Cas系を含む、節44又は45に記載のベクター。
48.Cas及びカスケードが、
(a)IA型Cas及びカスケードタンパク質、
(b)IB型Cas及びカスケードタンパク質、
(c)IC型Cas及びカスケードタンパク質、
(d)ID型Cas及びカスケードタンパク質、
(e)IE型Cas及びカスケードタンパク質、
(f)IF型Cas及びカスケードタンパク質、又は
(g)IU型Cas及びカスケードタンパク質である、
節1から17のいずれか一項に記載のベクター。
49.Cas及びカスケードが、大腸菌(任意選択で、IE又はIF型)Cas及びカスケードタンパク質である、節1から48のいずれか一項に記載のベクター。
50.大腸菌が、ESBL産生大腸菌又は大腸菌ST131-O25b:H4である、節49に記載のベクター。
51.Cas及びカスケードが、
(a)クロストリジウム(例えば、C.ディフィシル)Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択でC.ディフィシルが、アミノグリコシド、リンコマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ペニシリン、セファロスポリン及びフルオロキノロンから選択される1つ又は複数の抗生物質に抵抗性がある、
(b)緑膿菌Cas及びカスケードタンパク質であり、任意選択で緑膿菌が、カルバペネム、アミノグリコシド、セフェピム、セフタジジム、フルオロキノロン、ピペラシリン及びタゾバクタムから選択される1つ又は複数の抗生物質に抵抗性がある、又は
(c)肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌又は広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)Cas及びカスケードタンパク質である、
節1から50のいずれか一項に記載のベクター。
52.Cas及びカスケードが、大腸菌、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌、P.フリオスス又はB.ハロデュランスCas及びカスケードタンパク質である、節1から51のいずれか一項に記載のベクター。
53.Cas3が、第1の細菌又は古細菌種のCRISPR/Cas遺伝子座のCas3であり、この遺伝子座のCas3をコードする配列と同族プロモーターとの距離が、ベクターに含まれるCas3をコードする配列と対応するプロモーターとの距離より遠く離れている、節1から52のいずれか一項に記載のベクター。
54.プロモーターと、Cas3をコードする配列及び/又はカスケードタンパク質をコードする配列との距離が、対応する野生型のI型遺伝子座におけるものより短い、節1から53のいずれか一項に記載のベクター。
55.ベクターが、(i)宿主細胞にcrRNAを産生するCRISPRアレイ、及び/又は(ii)1つ又は複数のガイドRNA(gRNA若しくはシングルgRNA)をコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含み、crRNA又はgRNAがCas3と同族である(及び任意選択で、カスケードタンパク質と同族である)、節1から54のいずれか一項に記載のベクター。
56.アレイ又はgRNAをコードする配列がオペロンに含まれ、プロモーターの制御下にある、節2に従属する節55に記載のベクター。
57.アレイ又はgRNAをコードする配列が、Cas3の発現を制御するプロモーターと異なるプロモーターの制御下にある、節56に記載のベクター。
58. crRNA又はgRNAのうちの1個又は複数個が、宿主細胞の標的ヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができるスペーサー配列を含み、標的配列がPAMに隣接し、PAMがCas3と同族である、節56又は57に記載のベクター。
59.標的配列が宿主細胞の染色体配列である、節58に記載のベクター。
60.Cas3が、標的配列を切断するように作動可能である、節58又は59に記載のベクター。
61.ベクターがプラスミド又はファージミドである、節1から60のいずれか一項に記載のベクター。
62.送達ビヒクルがベクターを宿主細胞に送達することができる、節1から61のいずれか一項に記載のベクターを含む送達ビヒクル。
63.送達ビヒクルが、ファージ、非複製伝達粒子、ナノ粒子担体、細菌又はリポソームである、節62に記載のビヒクル。
64.宿主細菌が、細菌又は古細菌細胞であり、任意選択で宿主細胞が、C.ディフィシル、緑膿菌、肺炎桿菌(例えば、カルバペネム耐性肺炎桿菌若しくは広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌)、大腸菌(例えば、ESBL産生大腸菌若しくは大腸菌ST131-O25b:H4)、H.ピロリ、肺炎球菌又は黄色ブドウ球菌細胞である、節1から63のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
65.対象において疾患又は状態を治療又はそのリスクを低減するヒト又は動物対象へ投与のための、節1から64のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクル。
66.疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)による対象の感染である又は疾患若しくは状態が、宿主細胞(例えば、細菌細胞)により媒介される、節65に記載のベクター又はビヒクル。
67.節1から66のいずれか一項に記載のベクター又はビヒクルと、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む、医薬組成物。
【0032】
本明細書に記載されている特定の実施形態は、例示のために示されており、本発明を制限するものではないことが理解される。本発明の主な特長は、本発明の範囲を逸脱することなく様々な実施形態に用いることができる。当業者は、日常的なものを越えない研究を使用して、本明細書に記載されている特定の手順に対する多数の等価物を認識する、又は確認することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内であると考慮され、特許請求の範囲に網羅される。本明細書に記述されている全ての公報及び特許出願は、本発明が関連する当業者の技能レベルを示している。全ての公報及び特許出願、並びに全ての同等の米国特許出願及び特許は、あたかもそれぞれ個別の公報又は特許出願が、参照により特定的及び個別に組み込まれているかのように示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照は、国際公開第2017/118598号、米国特許出願公開第20180140698号、米国特許出願公開第20170246221号、米国特許出願公開第20180273940号、米国特許出願公開第20160115488号、米国特許出願公開第20180179547号、米国特許出願公開第20170175142号、米国特許出願公開第20160024510号、米国特許出願公開第20150064138号、米国特許出願公開第20170022499号、米国特許出願公開第20160345578号、米国特許出願公開第20180155729号、米国特許出願公開第20180200342号、国際公開第2017112620号、国際公開第2018081502号、国際出願PCT/EP2018/066954号、国際出願PCT/EP2018/066980号、国際出願PCT/EP2018/071454号及び米国特許出願第15/985,658号、並びに米国特許商標庁(USPTO)又はWIPOによる同等の公報に対して行われ、これらの開示は、本発明において使用され得る開示を提供するため及び/又は本明細書の特許請求の範囲に含まれ得る1つ又は複数の特徴(例えば、ベクター)を提供するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
語「a」又は「an」の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書における用語「含む(comprising)」と一緒に使用されるとき、「1つ」を意味し得るが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1つ又は1つを超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すこと又は代替物が相互に排他的であることが明示的に示されない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ、並びに「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願の全体を通して、用語「約」は、値が、装置に固有の変動誤差、値を決定するために用いられる方法又は研究対象の間にあるばらつきを含むことを示すために使用される。
【0034】
本出願及び請求項に使用されるとき、用語「含む(comprising)」(並びに任意の形態のcomprising、例えば、「comprise」及び「comprises」)、「有する(having)」(並びに任意の形態のhaving、例えば、「have」及び「has」)、「含まれる(including)」(並びに任意の形態のincluding、例えば、「includes」及び「include」)又は「含有する(containing)」(並びに任意の形態のcontaining、例えば、「contains」及び「contain」)は、包括的又は開放型であり、追加の非拘束要素又は方法工程を排除しない。
【0035】
用語「又はその組み合わせ」、或いは類似のものは、本明細書に使用されるとき、用語に先行して列挙された項目の全ての順列及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C又はその組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABCのうちの少なくとも1つ、特定の文脈において順序が重要な場合には、同様にBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABのうちの少なくとも1つが含まれることが意図される。この例を続けると、明確に含まれるものは、1つ又は複数の項目又は用語の繰り返し、例えば、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等を含む組み合わせである。当業者は、典型的には、文脈から明白ではない限り、任意の組み合わせにおける項目又は用語の数に制限がないことを理解する。
【0036】
本開示の任意の部分を、文脈から明白ではない限り、本開示の任意の他の部分と組み合わせて読むことができる。
【0037】
本明細書に開示及び特許請求されている全ての組成物及び/又は方法は、本開示を踏まえて過剰な実験を行うことなく作製及び実施することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施態様に関して記載されてきたが、本発明の概念、精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に記載されている組成物及び/又は方法、並びに方法の工程又は一連の工程に変更を適用できることが、当業者には明白である。そのような当業者に明白な同様の置換及び変更は、全て、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であることが認められる。
【0038】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてより詳細に記載される。
【実施例
【0039】
本実施例は、大腸菌(Escherichia coli)株の素早い正確な死滅を例示する。プログラム可能なヌクレアーゼ系のモデルとして、本発明者たちは、大腸菌MG1655を特異的に標的にするCRISPR Guided Vector(CGV(商標))を使用した。
【0040】
(実施例1)
シングルベクターCas3及びカスケード:大腸菌を標的にするI型CRISPR-Cas系
共通プロモーターの制御下でI型Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列により、オペロンを含むプラスミドを構築した(本発明者たちは、CRISPR Guided Vector(商標)、CGV(商標)と呼ぶ)。C.ディフィシルIB型Cas3及びカスケードを使用した。大腸菌宿主細胞染色体を標的にするC.ディフィシル反復配列及びスペーサー配列を含む同族CRISPRアレイも、標的細胞に導入した。Cas1、Cas2及びCas4を含有する適応モジュールは、ベクターから省いた(図1Aを参照)。野生型C.ディフィシルIB型CRISPR/Cas遺伝子座において、cas3遺伝子は3'のカスケード遺伝子(cas8b1、cas7及びcas5)であり、このためカスケード遺伝子の上流にあるプロモーターから離れている。本発明者たちがこの配置を試みると、大腸菌の死滅を見出したが、驚くべきことに、プロモーター、cas3、cas8b1、cas7及びcas5の合成オペロン配置(5'から3'の方向)に変えると、標的大腸菌細胞の有意に高い死滅が見られた。
【0041】
この合成オペロン配置を使用した結果を、図1に示す。図1Bでは、インデューサーを用いた及び用いなかったLB寒天プレートにおける、CGVを持つ標的大腸菌MG1655細胞の液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~106)が示されている。CRISPR/Casの誘導は、驚くべきことに、個体群の99.9%を死滅させた(図1C、灰色バー)。誘導が非存在のときの増殖が、黒色で示されている。CGV(商標)はCRISPR Guided Vector(商標)を指し、これは、CRISPR/Cas成分をコードするヌクレオチド配列を含む核酸ベクターである。
【0042】
本発明者たちは、大腸菌IE型Cas及びカスケードを、宿主細菌大腸菌染色体DNAを標的にする同族アレイと一緒に使用した以外は同様の設定を使用して、大腸菌細胞の望ましい標的化死滅を達成することもできた(データ示されず)。この場合、オペロン中にCas3、Cas8e、Cas11、Cas7、Cas5及びCas6の発現を制御するプロモーターを(5'から3'の方向に)含むベクターを使用した。
【0043】
材料及び方法
大腸菌MG1655を溶原性ブロス(LB)中において、振盪(250rpm)しながら37℃で増殖させた。必要な場合、培養物にテトラサイクリン(10μg/mL)及びスペクチノマイシン(400μg/mL)を補充した。
【0044】
アラビノース誘導性pBADプロモーター下にあるC.ディフィシルCRISPR系を含有するプラスミドを構築するため、C.ディフィシルのcas3、cas6、cas8b、cas7及びcas5遺伝子を増幅し、低コピー数プラスミド(pSC101複製起点)にクローンした。cas3をオペロンの開始点に配置し、cas6、cas8b、cas7及びcas5を後に続けた。適応モジュール(cas1、cas2及びcas4から構成される)は、ベクターから省いた(図1Aを参照)。大腸菌MG1655の染色体遺伝子間領域を標的にするIPTG誘導性シングルスペーサーアレイを含有する、第2のプラスミドを構築した(図1A)。スペーサーを、IPTG誘導性Ptrcプロモーターの制御下でCloDF13複製起点主鎖にクローンした。大腸菌MG1655のゲノム(ctttgccgcgcgcttcgtcacgtaattctcgtcgcaa)(配列番号26)から37個のヌクレオチドを含有した。加えて、3'-CCTプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が、大腸菌MG1655のゲノムの選択された標的配列に隣接して配置されている(図1A)。
【0045】
死滅アッセイを実施するため、両方のプラスミドを電気穿孔により大腸菌MG1655にトランスフォームした。トランスフォーマントを抗生物質と共に液体LBにおいて対数中期(mid-log phase)まで増殖させ、死滅効率は、LB及びLB+インデューサー(0.5mMのIPTG及び1%アラビノース)での系列希釈及びスポット平板培養によって決定した。生存度は、プレートにおけるコロニー形成単位(CFU)を数えることによって算出し、データを生存細胞濃度(CFU/ml)として算出した。
【0046】
(実施例2)
シングルベクターCas3-カスケード及びアレイ:大腸菌を標的にするI型CRISPR-Cas系
共通プロモーターの制御下でI型Cas3及びカスケードタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するオペロンを含む、プラスミド(本発明者たちは、CRISPR Guided Vector(商標)、CGV(商標)と呼ぶ)を構築した。C.ディフィシルIB型Cas3及びカスケードを使用した。Cas1、Cas2及びCas4を含有する適応モジュールは、ベクターから省いた。大腸菌宿主細胞染色体を標的にするC.ディフィシル反復配列及びスペーサー配列を含む同族CRISPRアレイも、ベクターに含めた(図2Aを参照)。
【0047】
CGVを大腸菌MG1655にトランスフォームした。この合成オペロン配置を使用した結果を、図2に示す。図2Bでは、インデューサーを用いた及び用いなかった合成培地(SM)寒天プレートにおける、CGVを持つ標的大腸菌MG1655細胞の液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~105)が示されている。CRISPR/Cas誘導は、大腸菌MG1655の生存細胞に2-log10を超える低減を生じた(図2C、灰色バー)。誘導が非存在のときの増殖が、黒色で示されている。
【0048】
誘導による大腸菌MG1655の生存は、培養物を系列希釈で平板培養して、60分毎に2時間かけて経時的に追跡した(図3)。死滅曲線は、CRISPR/Cas誘導が大腸菌MG1655の急速死滅を媒介したことを明らかにし、最初の60分間で大腸菌の2-log10の低減を生じた。図3Bは、LB寒天プレートにおける標的大腸菌MG1655の誘導及び非誘導培養物の希釈系列(101~106)の液滴スポット(5μl)を示す。
【0049】
材料及び方法
大腸菌MG1655を合成培地(SM)中において、振盪(250rpm)しながら37℃で増殖させた。必要な場合、培養物に10μg/mLのテトラサイクリンを補充した。
【0050】
アラビノース誘導性pBADプロモーター下にあるC.ディフィシルCRISPR系を含有するプラスミドを構築するため、C.ディフィシルのcas3、cas6、cas8b、cas7及びcas5遺伝子を増幅し、低コピー数プラスミド(pSC101複製起点)にクローンした。cas3をオペロンの開始点に配置し、cas6、cas8b、cas7及びcas5を後に続けた。加えて、大腸菌MG1655の染色体遺伝子間領域を標的にするIPTG誘導性シングルスペーサーアレイを、IPTG誘導性Ptrcプロモーターの制御下でベクターに含めた(図2A)。PKS遺伝子(予め大腸菌MG1655のゲノムに組み込まれた)(gtttggcgatggcgcgggtgtggttgtgcttcggcgt)(配列番号27)から37個のヌクレオチドを含有した。加えて、3'-CCTプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が、大腸菌MG1655のゲノムの選択された標的配列に隣接して配置されている。
【0051】
CGVを電気穿孔により大腸菌MG1655にトランスフォームした。トランスフォーマントを抗生物質と共に液体SMにおいて対数中期まで増殖させ、死滅効率は、LB及びLB+インデューサー(0.5mMのIPTG及び1%アラビノース)での系列希釈及びスポット平板培養によって決定した。生存度は、プレートにおけるコロニー形成単位(CFU)を数えることによって算出し、データを生存細胞濃度(CFU/ml)として算出した。
【0052】
死滅曲線を実施するため、CGVを持つ大腸菌MG1655を抗生物質と共に液体SMにおいて対数中期まで増殖させた。培養物を2本の管に分け、インデューサー(0.5mMのIPTG及び1%アラビノース)又はPBSのいずれかを加えた。株の生存は、培養物を系列希釈(101~106)の液滴スポット(5μl)で、抗生物質を有するSMプレートにおいて平板培養して、60分毎に2時間かけて経時的に追跡した。生存頻度は、プレートにおけるコロニー形成単位(CFU)を数えることによって算出し、データを生存細胞濃度(CFU/ml)として算出した。
【0053】
(実施例3)
微生物叢(microbiome)中の標的株大腸菌MG1655の正確な死滅
人工微生物コンソーシアムを構築して、C.ディフィシルのCRISPR-Cas系を担持するCGVが、ヒト微生物叢を模倣する他の微生物の存在下で大腸菌MG1655を特異的に標的にする効率を研究した。
【0054】
合成コンソーシアムは、差次的な抗生物質抵抗性プロファイルを有する3つ株(2つの異なる種)から構成され、ストレプトマイシン耐性大腸菌MG1655(標的株)、アンピシリン耐性大腸菌Top10及びクロラムフェニコール耐性ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)NZ9000である。コンソーシアムを作り出すため、細菌培養物を別個にBrain Heart Infusionブロス(BHI、L.ラクティスに最適な増殖培地)において対数中期まで増殖させ、インデューサーを用いた又は用いなかった新たなBHIブロスと混合した。30℃で1時間誘導した後、コンソーシアムの組成を、選択プレートにおいて生存コロニーを数えることによって決定した。混合群集におけるCRISPR系の誘導は、標的大腸菌MG1655の>10倍の死滅を生じ、一方で大腸菌Top10及びL.ラクティスNZ9000細胞個体群を無傷のまま残した(図4A)。図4Bでは、BHI寒天プレートにおける1時間の誘導の後、合成コンソーシアムの液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~105)が示されている。
【0055】
加えて、合成微生物コンソーシアムにおける標的株大腸菌MG1655のCRISPR死滅を、純粋培養物(即ち、別の株又は種と混合しない標的株大腸菌MG1655)と比較した。予想外なことに、両方の条件において、インデューサーを有するBHI寒天プレートで平板培養したとき、4logの死滅を達成した(図5A)。故に、驚くべきことに微生物叢設定における死滅は、純粋培養物における死滅と同様の効率であった。図5Bでは、インデューサーを用いた及び用いなかったBHI寒天プレートにおける、合成コンソーシアム及び純粋培養物中の大腸菌MG1655細胞の液滴スポット(5μl)の希釈系列(101~105)が示されている。
【0056】
材料及び方法
大腸菌MG1655、大腸菌Top10及びラクトコッカス・ラクティスNZ9000をBHIブロスにおいて、振盪(250rpm)しながら30℃で増殖させた。培養物に、1000μg/mLのストレプトマイシン、100μg/mLのアンピシリン又は10μg/mLのクロラムフェニコールをそれぞれ補充した。
【0057】
コンソーシアムを作り出すため、細菌培養物を適切な抗生物質と共にBHIにおいて対数中期まで増殖させた。培養物をPBSで2回洗浄して、抗生物質を除去し、新たなBHIブロスと混合した。混合培養物を、ストレプトマイシン、アンピシリン又はクロラムフェニコールを有するBHIプレートにスポットして、大腸菌MG1655、大腸菌Top10及びL.ラクティスNZ9000それぞれの初期濃度を定量化した。混合培養物を2本の管に分け、インデューサー(0.5mMのIPTG及び1%アラビノース)又はPBSのいずれかを加えた。30℃で1時間の誘導の後、コンソーシアムの組成は、選択プレートにおけるコロニー形成単位(CFU)を数えることによって算出し、データを生存細胞濃度(CFU/ml)として算出した。
【0058】
(実施例4)
ベクター増幅株におけるプロモーター抑制の使用
本発明者たちは、プラスミドCGVのDNAと、Tetリプレッサー(TetR)をコードする発現可能な配列とを含む大腸菌Top10産生株細胞個体群を設計した。DNAは、Tetプロモーター(pLtetO-1プロモーター)の制御下のCas9をコードするヌクレオチド配列を含んだ。プロモーターは、通常は構成的にONであるが、本発明の細胞中ではTetRにより抑制された。故に、この方法によって本発明者たちは、Cas9の発現に起因する有害な毒性を観察することなく、細胞を培養し、CGVを増幅することに成功した。
【0059】
抑制が非存在の実験では、本発明者たちは、産生株細菌のコロニーを全く観察せず、これはCas9毒性に起因すると推測した。本発明者たちは、CGVの収率を増加する方法(例えば、後のファージ又は非自己複製伝達粒子への詰め込み)の提供に加えて、抑制を使用する本発明の方法は、そうでなければより高いCas9発現及び切断(例えば、CGV切断に起因する)によって引き起こされるDNAにおける変異の選択を、最小限にすることができると考える。
【0060】
参考文献
Mutalikら、Nat Methods、2013年4月;10(4):354~60頁. doi: 10.1038/nmeth. 2404. Epub 2013年3月10日、「Precise and reliable gene expression via standard transcription and translation initiation elements」。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】
【0072】
【表12】
【0073】
【表13】
【0074】
【表14】
【0075】
【表15】
【0076】
【表16】
【0077】
【表17】
【0078】
【表18】
【0079】
【表19】
【0080】
【表20】
【0081】
【表21】
【0082】
【表22】
【0083】
【表23】
【0084】
【表24】
【0085】
【表25】
【0086】
【表26】
【0087】
【表27】
【0088】
【表28】
【0089】
【表29】
【0090】
TABLE 2:配列
本明細書の核酸配列は、5'から3'の方向で記載され、アミノ酸配列は、NからC末端の方向で記載される。
配列番号1(P10)
TTCAATTTAATCATCCGGCTCGTATAATGTGTGGA
配列番号2(BCD14)
GGGCCCAAGTTCACTTAAAAAGGAGATCAACAATGAAAGCAATTTTCGTACTGAAACATCTTAATCATGCGGTGGAGGGTTTCTAATG
配列番号3(gfp)
ATGAGCAAAGGAGAAGAACTTTTCACTGGAGTTGTC
【0091】
【表30】
【0092】
配列番号4
gaattcaaaa gatcttaagt aagtaagagt atacgtatat cggctaataa cgtattaagg cgcttcggcg ccttttttta tgggggtatt ttcatcccaa tccacacgtc caacgcacag caaacaccac gtcgacccta tcagctgcgt gctttctatg agtcgttgct gcataacttg acaattaatc atccggctcg tataatgtgt ggaa- BCD-GOI -ggat ccaaactcga gtaaggatct ccaggcatca aataaaacga aaggctcagt cgaaagactg ggcctttcgt tttatctgtt gtttgtcggt gaacgctctc tactagagtc acactggctc accttcgggt gggcctttct gcgtttata
配列番号5(シャイン・ダルガルノ配列の例)
Aaagaggagaaa
配列番号26(スペーサー配列)
ctttgccgcgcgcttcgtcacgtaattctcgtcgcaa
配列番号27(スペーサー配列)
gtttggcgatggcgcgggtgtggttgtgcttcggcgt
【0093】
【表31】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022512695000001.app
【国際調査報告】