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特表2022-512709炎症性疾患及び自己免疫疾患を処置する組成物及び方法
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  • 特表-炎症性疾患及び自己免疫疾患を処置する組成物及び方法 図1
  • 特表-炎症性疾患及び自己免疫疾患を処置する組成物及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】炎症性疾患及び自己免疫疾患を処置する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220131BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/58 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220131BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 14/245 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P3/10
A61P29/00
A61P1/04
A61P37/06
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/203
A61K39/395 N
A61K9/58
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/34
A61P1/16
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61P43/00 121
A61K38/12
A61P43/00 111
C07K16/28 ZNA
C07K14/245
C07K14/47
C07K7/08
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520947
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2019079836
(87)【国際公開番号】W WO2020089396
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/753,445
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519067699
【氏名又は名称】ティジアーナ ライフ サイエンシズ パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100185856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 栄二
(72)【発明者】
【氏名】クンワル シャイルバハイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA60
4C076AA94
4C076BB01
4C076BB05
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD41
4C076EE23
4C076FF25
4C076FF32
4C076FF43
4C076FF61
4C076GG16
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA26
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA59
4C084MA65
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA11
4C084NA12
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC022
4C084ZC202
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C085GG10
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA12
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA10
4C206NA11
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZA75
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZC02
4C206ZC35
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045DA83
4H045EA20
4H045EA25
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗CD3抗体を単独で、または追加の薬剤と組み合わせて投与することにより、セリアック病などの障害を処置する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD3抗体及び腸バリア機能を改善する化合物及び/または抗炎症化合物の経口剤形を投与することを含む、障害を処置するための方法。
【請求項2】
前記障害が炎症性疾患、胃腸障害、自己免疫疾患またはがんである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症性障害が胃腸管の炎症性障害である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記胃腸障害が胃腸癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記胃腸障害が、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記自己免疫疾患が糖尿病である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記障害が、NASH、胆汁酸障害、または肝疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
腸バリア機能を改善する前記化合物が腸透過性を低下させる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
腸バリア機能を改善する前記化合物が、レチノイン酸、GC-C受容体アゴニスト、ヘパリン、ルビプロストン、グルタミン、GLP-2ペプチド、ゾルリンペプチド阻害剤、ゾヌリンアンタゴニスト、ララゾチド、プロバイオティクス細菌または酪酸である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記レチノイン酸がオールトランス-レチノイン酸、9-cis-レチノイン酸、または13-cis-レチノイン酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記GC-C受容体アゴニストが、グアニリン、ウログアニリン、リンホグアニリン、E.coliの熱安定性エンテロトキシン(ST)、リナクロチド、プレカナチドまたはドルカナチドである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記リナクロチドがLinzess(登録商標)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プレカナチドがTrulance(登録商標)である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記抗炎症化合物が、IL-17、TNF-α、α4-インテグリン、α4-β7インテグリン、IL-12、またはIL-23に特異的なモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗炎症化合物が、Remicade(登録商標)、JNK阻害剤、PI3K経路阻害剤、AKT阻害剤、mTOR阻害剤、メサラミン、Ucerisまたはスフィノシン-1-リン酸キナーゼ阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記レチノイン酸が約15~45mg/mの1日用量で投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記レチノイン酸が約45mg/mの1日用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記1日用量が2等分用量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記レチノイン酸が約22.5mg/mの用量で1日2回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記GC-C受容体アゴニストが、約1~約10mgの1日用量で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記GC-C受容体アゴニストが、3mgまたは6mgの1日用量で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記GC-Cアゴニストが、1日1回投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗CD3抗体が、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、またはマウス抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗CD3抗体が約0.1mg~約10mgの1日用量で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗CD3抗体が30日の処置サイクルで投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗CD3抗体が、15日のオン期間及び15日のオフ期間を含む処置サイクルで投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗CD3抗体及び腸バリア機能を増大させる前記化合物が、30日の処置サイクルで投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗CD3抗体及び腸バリア機能を増大させる前記化合物が、処置サイクルの間、投与され、前記処置サイクルが、前記抗CD3抗体の場合は15日のオン期間及び15日のオフ期間、ならびに腸バリア機能を増大させる前記化合物の場合は30日間のオン期間を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗CD3抗体、腸バリア機能を増大させる前記化合物、及び前記GC-C受容体アゴニストが、処置サイクルまたは30日間投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗CD3抗体、腸バリア機能を増大させる前記化合物、及び前記GC-C受容体アゴニストが、処置サイクルの間、投与され、前記処置サイクルが、前記抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントの場合は15日間のオン期間及び15日間のオフ期間、前記GC-Cアゴニストの場合は30日間のオン期間、ならびに前記レチノイン酸の場合は30日間のオン期間を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記各処置サイクルが2、3、4、5、6、7、8、9、または10回繰り返される、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗CD3抗体の前記経口剤形が腸溶性ポリマーでコーティングされた経口剤形である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記腸溶性ポリマーでコーティングされた経口剤形が、液体充填のカプセルである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記腸溶性ポリマーでコーティングされ、液体充填の経口カプセルが、単位用量の約0.1mg~10mgの抗CD3抗体、約10mM~約500mMの酢酸ナトリウム三水和物、約10mM~500mMの塩化ナトリウム、及び約0.01%~1%のポリソルベート80(w/v)を含む液体製剤を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記腸溶性ポリマーでコーティングされた経口剤形が粉末充填カプセルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記腸溶性ポリマーでコーティングされた粉末充填の経口カプセルが、単位用量の約0.1mg~10mgの抗CD3抗体及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む凍結乾燥粉末製剤を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗CD3抗体が、
(i)GYGMH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む可変重鎖相補性決定領域1(VH CDR1)、VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含む可変重鎖相補性決定領域2(VH CDR2)、QMGYWHFDL(配列番号3)のアミノ酸配列を含む可変重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)を含む重鎖;ならびにRASQSVSSYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1)、DASNRAT(配列番号5)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2)、QQRSNWPPLT(配列番号6)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖相補性決定領域3(VL CDR3)を含む軽鎖;
(ii)アミノ酸配列SYGMH(配列番号7)を含むVH CDR1;IIWYDGSKKNYADSVKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むVH CDR2;GTGYNWFDP(配列番号9)のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖;ならびにRASQSVSSSYLA(配列番号10)、RASQGISSALA(配列番号11)またはWASQGISSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を含むVL CDR1;GASSRAT(配列番号13)、YASSLQS(配列番号14)、またはDASSLGS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及びQQYGSSPIT(配列番号16)またはQQYYSTLT(配列番号17)のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖;ならびに
(iii)アミノ酸配列SYGMH(配列番号7)を含むVH CDR1;AIWYNGRKQDYADSVKG(配列番号18)のアミノ酸配列を含むVH CDR2;GTGYNWFDP(配列番号9)のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖;ならびにRASQSVSSYLA(配列番号4)またはRASQGISSALA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むVL CDR1;DASNRAT(配列番号5)またはDASSLES(配列番号19)のアミノ酸配列を含むVL CDR2;ならびにQQRSNWPWT(配列番号20)またはQQFNSYPIT(配列番号21)のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖、を含む、
先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗CD3抗体が、配列番号22(28F11 VH)、24(23F10 VH)、26(27H5 VH)、または32(15C3 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに配列番号23(28F11 VL)、25(23F10 VL)、27(27H5 VL1)、28(27H5 VL2)、29(27H5 VL3)、30(27H5 VL4)、31(27H5 VL5)、33(15C3 VL1)、または34(15C3 VL2)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗CD3抗体が、配列番号22(28F11 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号23(28F11 VL)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記抗CD3抗体が、配列番号24(23F10 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号25(23F10 VL)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗CD3抗体が、配列番号26(27H5 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号27(27H5 VL1)、28(27H5 VL2)、29(27H5 VL3)、30(27H5 VL4)、31(27H5VL5)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗CD3抗体が、配列番号32(15C3 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)、及び配列番号33(15C3 VL1)または34(15C3 VL2)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントが、アミノ酸配列WVRQAPGKGLEWV(配列番号35)を含むフレームワーク2領域(FWR2)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントが、アミノ酸配列RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCA(配列番号36)を含むフレームワーク3領域(FRW3)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記CD3抗体が、IgG1アイソタイプである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントが、位置234、235、265、または297のアミノ酸残基での前記重鎖の突然変異またはそれらの組み合わせを含み、T細胞からのサイトカインの放出を低減し、前記アミノ酸残基の位置がカバットに従ってナンバリングされている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記突然変異が、前記位置にアラニンまたはグルタミン酸残基をもたらす、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントが、IgG1アイソタイプであり、位置234に少なくとも第1の突然変異及び位置235に第2の突然変異を含み、前記第1の突然変異が234位にアラニン残基を、前記第2の突然変異が、235位にグルタミン酸残基をもたらし、ここで、前記アミノ酸残基の位置が、カバットに従ってナンバリングされている、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月31日に出願された米国仮出願第62/753,445号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、セリアック病(CeD)及びクローン病(CD)を含む炎症性及び自己免疫疾患を処置するための、抗CD3抗体の単独または腸バリア機能を改善する化合物及び/もしくは抗炎症性化合物と組み合わせた経口製剤、投薬量、及び投与レジメンに関する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されるテキストファイルの内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピューター可読形式のコピー(ファイル名:TIZI_018_001WO_SeqList_ST25.txt、データ記録日:2019年10月29日、ファイルサイズ約17,236バイト)。
【背景技術】
【0004】
セリアック病(CeD)は、グルテンの食事摂取に関連する自己免疫疾患である。セリアック病の患者は、腹痛、腹部膨満、下痢などの症状を引き起こすグルテンの食事摂取に極めて敏感である。セリアック病の病因は部分的にしか知られていないが、小麦及び他の穀物に存在するグルテンタンパク質の摂取が、DQ2またはDQ8のヒト白血球抗原ハプロタイプを保有する遺伝的素因のある個人の疾患の増強因子であることは十分に確認されている。プロテオミクス及び分子研究ではまた、CeDにおける組織トランスグルタミナーゼ2(TG2)の病原性の役割にある程度の光が当てられている。この酵素は、グルテンペプチドの、病原性T細胞を活性化するのに非常に強力な脱アミド化代謝物への変換を触媒する。CeD患者では、TG2が過剰発現している。さらに、CeD患者では、腸内バリア機能も微生物叢の変化及びその他の炎症性刺激により破壊される。根底にある粘膜の炎症も、腸のバリア機能を改善するための処置を妨害する。粘膜の炎症の主な理由の1つは、T制御性細胞(Treg)の機能の調節不全である。したがって、制御性T細胞(Treg)機能を正常化または刺激する化合物と腸バリア機能を改善する化合物との組み合わせを含む処置は、CeD及びCDなどの胃腸(GI)炎症性疾患に適している可能性がある。
【0005】
DQ2及びDQ8分子は、グルテン特異的CD4Tリンパ球の制限要素として機能するが、慢性の小腸炎症を引き起こすには十分ではない。グルテンタンパク質の摂取が病気の発症の前提条件であり、絨毛の平坦化または陰窩過形成をもたらすことは明らかである。伝統的に、グルテンは小麦タンパク質のみの名称であるが、グルテンは現在、主に小麦、大麦、ライ麦を含むコムギ連(triticeae)と呼ばれるある分類の草によって作られたプロリン及びグルタミン(Gln)に富むタンパク質を表す用語としてますます使用されている。グルテンフリーの食事療法は多くの疾患の兆候を逆転させるが、難治性のCeDを持つ少数の患者では十分ではない。難治性のCeD及び異常なクローンT細胞集団(II型難治性のCeD)を有する患者は、特に侵攻性の非ホジキンリンパ腫のリスクがあるためである。
【0006】
したがって、セリアック病の治療法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、抗CD3抗体ならびに腸バリア機能を改善する化合物及び/または抗炎症化合物の経口剤形を投与することによって障害を処置するための方法を提供する。腸のバリア機能を改善する化合物は、腸の透過性を低下させる。
【0008】
この障害は、炎症性疾患、胃腸障害、自己免疫疾患、またはがんである。この炎症性障害とは、胃腸管の炎症性障害である。この胃腸障害は胃腸癌である。あるいは、この胃腸障害は、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌である。自己免疫疾患は、例えば、糖尿病である。この障害はNASH、胆汁酸障害または肝疾患である。
【0009】
腸のバリア機能を改善する化合物は、腸の透過性を低下させる。
【0010】
腸のバリア機能を改善する化合物は、例えば、レチノイン酸、GC-C受容体アゴニスト、ヘパリン、ルビプロストン、グルタミン、GLP-2ペプチド、ゾヌリンペプチド阻害剤、ゾヌリンアンタゴニスト、ララゾチド、プロバイオティクス細菌または酪酸である。
【0011】
レチノイン酸は、オールトランス-レチノイン酸、9-cis-レチノイン酸、または13-cis-レチノイン酸である。レチノイン酸は、約15~45mg/mという1日用量で投与される。好ましくは、レチノイン酸は、約45mg/mという1日用量で投与される。必要に応じて、この1日用量は2つの均等に分割された用量で投与される。例えば、レチノイン酸は、約22.5mg/mの用量で1日2回投与される。
【0012】
GC-C受容体アゴニストは、グアニリン、ウログアニリン、リンフォグアニリン、E.coliの熱安定性エンテロトキシン(ST)、リナクロチド(例えば、Linzess(登録商標))、プレカナチド(例えば、Trulance(登録商標))またはドルカナチドである。GC-C受容体アゴニストは、約1~約10mgという1日用量で投与される。好ましくは、GC-C受容体アゴニストは、3mgまたは6mgという1日用量で投与される。GC-Cアゴニストは1日1回投与される。
【0013】
抗炎症化合物は、IL-17、TNF-α、α4-インテグリン、α4-β7インテグリン、IL-12、またはIL-23に特異的なモノクローナル抗体である。あるいは、抗炎症化合物は、Remicade(登録商標)、JNK阻害剤、PI3K経路阻害剤、AKT阻害剤、mTOR阻害剤、メサラミン、Uceris(ウセリス)、またはスフィノシン-1-リン酸キナーゼ阻害剤である。
【0014】
抗CD3抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、またはマウス抗体である。抗CD3抗体は約0.1mg~約10mgの1日用量で投与される。抗CD3抗体は30日の処置サイクルの間、投与される。例えば、抗CD3抗体は、15日のオン期間及び15日のオフ期間を含む処置サイクルで投与される。いくつかの態様において、抗CD3抗体及び腸バリア機能を増大させる化合物は、30日の処置サイクルの間、投与される。別の態様において、抗CD3抗体及び腸バリア機能を増大させる化合物は、処置サイクルの間、投与され、この処置サイクルは、抗CD3抗体について15日のオン期間及び15日のオフ期間、ならびに腸のバリア機能を増大させる化合物の30日のオン期間を含む。さらなる態様において、抗CD3抗体、腸バリア機能を増大させる化合物及びGC-C受容体アゴニストは、処置サイクルまたは30日間投与される。別の態様において、抗CD3抗体、腸バリア機能を増大させる化合物及びGC-C受容体アゴニストは、処置サイクルの間、投与され、この処置サイクルは、抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントの場合、15日間のオン期間及び15日間のオフ期間、GC-Cアゴニストの場合は30日間のオン期間、及びレチノイン酸の場合は30日間のオン期間を含む。
【0015】
必要に応じて、各処置サイクルを2、3、4、5、6、7、8、9、または10回繰り返す。
【0016】
抗CD3抗体の経口剤形は、液体充填カプセルまたは粉末充填カプセルなどの腸溶性ポリマーでコーティングされた経口剤形である。この腸溶性ポリマーでコーティングされた、液体充填の経口カプセルは、約0.1mg~10mgの抗CD3抗体 約10mM~約500mMの酢酸ナトリウム三水和物、約10mM~500mMの塩化ナトリウム、及び約0.01%~1%のポリソルベート80(w/v)という単位用量を有する液体製剤を含む。この腸溶性ポリマーでコーティングされた粉末充填の経口カプセルは、約0.1mg~10mgの単位用量の抗CD3抗体及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を有する凍結乾燥粉末製剤を含む。
【0017】
いくつかの態様において、抗CD3抗体は、GYGMH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む可変重鎖相補性決定領域1(VH CDR1)、VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含む可変重鎖相補性決定領域2(VH CDR2)、QMGYWHFDL(配列番号3)のアミノ酸配列を含む可変重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)を含む重鎖;ならびにRASQSVSSYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1)、DASNRAT(配列番号5)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2)、QQRSNWPPLT(配列番号6)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖相補性決定領域3(VL CDR3)を含む軽鎖、を有する。
【0018】
別の態様では、抗CD3抗体は、アミノ酸配列SYGMH(配列番号7)を含むVH CDR1;IIWYDGSKKNYADSVKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むVH CDR2;GTGYNWFDP(配列番号9)のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖;ならびにRASQSVSSSYLA(配列番号10)、RASQGISSALA(配列番号11)またはWASQGISSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を含むVL CDR1;GASSRAT(配列番号13)、YASSLQS(配列番号14)、またはDASSLGS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及びQQYGSSPIT(配列番号16)またはQQYYSTLT(配列番号17)のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖、を有する。
【0019】
さらなる態様において、抗CD3抗体は、アミノ酸配列SYGMH(配列番号7)を含むVH CDR1;AIWYNGRKQDYADSVKG(配列番号18)のアミノ酸配列を含むVH CDR2;GTGYNWFDP(配列番号9)のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖;ならびにRASQSVSSYLA(配列番号4)またはRASQGISSALA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むVL CDR1;DASNRAT(配列番号5)またはDASSLES(配列番号19);のアミノ酸配列を含むVL CDR2;ならびにQQRSNWPWT(配列番号20)またはQQFNSYPIT(配列番号21)のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖、を有する。
【0020】
抗CD3抗体は、配列番号22(28F11 VH)、24(23F10 VH)、26(27H5 VH)、または32(15C3 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに配列番号23(28F11 VL)、25(23F10 VL)、27(27H5 VL1)、28(27H5 VL2)、29(27H5 VL3)、30(27H5 VL4)、31(27H5 VL5)、33(15C3 VL1)、または34(15C3 VL2)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0021】
別の態様では、抗CD3抗体は、配列番号22(28F11 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号23(28F11 VL)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0022】
さらなる態様では、抗CD3抗体は、配列番号24(23F10 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号25(23F10 VL)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0023】
さらに別の態様では、抗CD3抗体は、配列番号26(27H5 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号27(27H5 VL1)、28(27H5 VL2)、29(27H5 VL3)、30(27H5 VL4)、31(27H5VL5)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0024】
別の態様では、その抗CD3は、配列番号32(15C3 VH)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)、及び配列番号33(15C3 VL1)または34(15C3 VL2)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0025】
抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列WVRQAPGKGLEWV(配列番号35)を含むフレームワーク2領域(FWR2)を含む。
【0026】
いくつかの態様において、この抗CD3抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCA(配列番号36)を含むフレームワーク3領域(FRW3)を含む。
【0027】
好ましくは、抗CD3抗体はIgG1アイソタイプである。
【0028】
いくつかの態様において、抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントは、位置234、235、265、もしくは297またはそれらの組み合わせのアミノ酸残基における重鎖の突然変異を含み、T細胞からのサイトカインの放出を減少させる(ここで、このアミノ酸残基の位置は、カバット(Kabat)に従ってナンバリングされている)。この突然変異は、前記位置にアラニンまたはグルタミン酸残基をもたらす。
【0029】
別の態様では、抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG1アイソタイプであり、位置234に少なくとも第1の突然変異、及び位置235に第2の突然変異を含み、上記第1の突然変異は、位置234にアラニン残基をもたらし、上記第2の突然変異は、位置235にグルタミン酸残基をもたらす(ここで、このアミノ酸残基の位置は、カバットに従ってナンバリングされている)。
【0030】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料を、本発明の実践で使用し得るが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が明確に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、本明細書に記載の材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0031】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかになるであろうし、それらに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】セリアック病の3つの段階を示す図である。
図2】抗CD3抗体単独または他の薬剤との併用による処置の投与レジメンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、CD3イプシロン鎖(CD3ε)に対して特異的な抗体を単独で、または腸バリア機能を改善する化合物及び/もしくは抗炎症化合物と組み合わせて経口投与することによって、障害を処置する方法を提供する。処置される障害としては、炎症性疾患(例えば、胃腸管の例示的な炎症性障害)、胃腸障害、自己免疫疾患(例えば、糖尿病)、がん(例えば、胃腸癌)、NASH、胆汁障害、または肝疾患が挙げられる。胃腸障害としては、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌が挙げられる。
【0034】
具体的には、本発明は、CD3εに特異的な抗体を、単独または本明細書に記載のような組み合わせで経口投与することによって、CeDまたはCDを処置する方法を提供する。
【0035】
セリアック病
【0036】
食品中に存在するグルテンの主成分の1つであるグリアジンのフラグメントが小腸の上皮バリアを通過して固有層に入り、そこで組織TG2によって脱アミノ化され、次いで特定のHLAクラスII(DQ2またはDQ8)分子に結合することは広く認められている。HLA-グリアジン複合体の認識に特異的なT細胞受容体(TCR)の存在は、IFNγ及びインターロイキン21の産生を引き起こし、腸粘膜の損傷の原因となるCD8 + T細胞の細胞傷害性活性に有利に働く。
【0037】
最近では、CeDのTヘルパー1(TH1)CD4T細胞集団を特徴付ける変化に注目が集まっている。タンスクリプトーム次世代RNAシーケンシング(RNA-seq)分析により、CeDで炎症性サイトカインIFNγ、IL-17、及びIL-15の潜在的な重要性が確認された。古典的に、IFN-γはCD4+T細胞の分化をTH1サイトカイン型のプロファイルに向けて促進することが公知であるが、一方でTH2免疫応答及び制御性T細胞の生存を阻害することが公知である。TH1細胞は、CD8 +(細胞傷害性)T細胞の応答を増強及び維持することにより細胞媒介性免疫を発達させ、食細胞依存性の炎症状態を活性化することが公知である。さらに、CD4+T細胞は、グランザイムB及びパーフォリンを含む細胞毒性顆粒を分泌し、直接接触した際に抗原(Ag)-HLAクラスIIのように標的細胞を直接死滅させることにより、直接的な細胞毒性機能を有する。Ag提示細胞(すなわち、樹状細胞またはB細胞)は、エンドソームで貪食及びプロセシングされた外因性Agと、細胞オートファジーを介した内因性プロセシングとの両方に由来するペプチドを提示する。TH1細胞はまた、B細胞Igクラススイッチ及びHLAの提示を促進することも公知であった。
【0038】
最近の研究では、セリアック病の病因における上皮内リンパ球集団の役割が示唆されている。上皮内リンパ球の増加は、セリアック病の特徴として長年知られているが、疾患の病因におけるこれらの細胞の役割は不明なままである。上皮内リンパ球は、活性化後に上皮損傷を引き起こす重要な細胞であるように思われる。活性化されたリンパ球はまた、それらの特徴を、抗原特異的T細胞に典型的なものから、上皮細胞の損傷を媒介し得るNK様細胞の表現型に変化させ得る。サイトカインインターロイキン(IL)-15の発現は、IL-15が上皮細胞及びセリアック病の固有層の細胞によってアップレギュレートされ、上皮内リンパ球集団の特性の変化に寄与する重要な要因である可能性があるので、このプロセスの中心的な段階にあるように見えることも公知である。サイトカインIL-15は、T制御性細胞(Treg)の抗炎症機能を妨げることも公知である。制御性T細胞(Treg)の枯渇及びその機能の破壊は、おそらくCeD患者にとって最も重要な変化である。したがって、制御性T細胞のアップレギュレーション及び腸のバリア機能の改善は、CeDの治療法の開発にとって重要であり得る。
【0039】
腸上皮の基本的な機能は、栄養素、水、廃棄物のベクトル輸送をサポートしながら、腸内細菌叢、基礎となる免疫系、及び体の残りの部分などの管腔内容物間の相互作用を調節するバリアとして機能することである。腸のバリア機能には、上皮細胞の隣接層と、上皮細胞間の傍細胞空間を密閉する接合部が必要である。CeD患者では、バリア機能が破壊され、腸の透過性が高まり、密着結合タンパク質(オクルディン及びZO-1)の発現が低下し、腸の漏出が起こる。腸のバリア機能の低下は、腸及び全身の両方の多くの病状に関連している。これらの関連の大半が単に相関しているが、疾患の病因に対するバリア機能障害に関連する実験的証拠は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)及びセリアック病(CeD)を含む、いくつかの事例で存在する。グルテンペプチドへの免疫系の曝露は、CeDが臨床的に明らかになるのに必要であるので、腸のバリア機能の低下もCeDで病原性の役割を果たすと提唱されている。ただし、グルテンが内腔から固有層に渡される経路は議論の的であり、経細胞経路または傍細胞経路のいずれかが含まれる可能性がある。したがって、CeDを防ぐために、腸の透過性及び腸のバリアの完全性を維持する必要がある。
【0040】
CD103+樹状細胞(DC)は、移動性抗原提示細胞として機能し、活性化すると、腸間膜リンパ節(MLN)及びパイエル板などの二次リンパ組織に移動し、抗原物質及び生細菌を運んで獲得免疫細胞に提示する。これらの移動性DCは、フォークヘッドボックスP3(FOXP3)制御性T細胞(Treg)の分化を通じて免疫寛容を促進する。この制御性T細胞(Treg)のサブセットの産生は、TGF-ベータの存在下でビタミンAアナログレチノイン酸によって促進される。さらに、腸上皮細胞(IEC)で調整されたCD-103DCによるレチノイン酸の産生は、T細胞への腸ホーミング特性の刷り込みを担っており、再循環する成熟細胞を、腸固有層の抗原遭遇部位に標的することを可能にする。したがって、抗原特異性に基づいてナイーブT細胞の成熟を促進することに加えて、CD-103DCは、腸上皮バリアでの抗原遭遇の元の状況を中継する。制御性T細胞の産生のためのこのプロセスは、抗CD3抗体の経口投与によって刺激されることが公知である。したがって、ヒト抗CD3(フォラルマブ(Foralumab))の経口投与は、CeD患者の腸の炎症を軽減する抗炎症活性を生じ得る制御性T細胞の産生を促進すると予想される。
【0041】
したがって、CeD患者の治療戦略を図1に示しており、これには、CeDの病因の3つの段階に対処することが含まれる。グルテンの摂取、それに続く固有層でのグルテンペプチドの輸送、及びその後の脱アミド化(フェーズ1)は、バリア機能を改善することによって低減され得る。ただし、CeD患者はすでに腸の炎症を起こし、バリア機能の改善を妨げ得る、炎症誘発性サイトカインの過剰産生(フェーズ2)がある。したがって、バリア機能の改善は、制御性T細胞の産生の増大によって促進されることが期待される。制御性T細胞の産生は、抗CD3抗体を単独で、または腸バリア機能を改善する薬剤及び/もしくは抗炎症化合物と組み合わせて用いて経口処置することによって増強され得る。さらに、腸のバリア機能を改善する治療法は、抗CD3抗体の作用と相乗的であり得ることも予想される。したがって、抗CD3と、腸バリア機能を改善する薬剤及び/または抗炎症化合物との組み合わせは、CeDのさらなる進行を遅らせる場合がある。さらに、抗CD3の抗炎症作用は腸の炎症も軽減するが、これは、炎症誘発性サイトカインの産生を低下させるだけでなく、制御性T細胞の機能も強化するとは予想されていない。
【0042】
CD3イプシロン鎖(CD3ε)に特異的な抗体を単独で、または腸バリア機能を改善する化合物及び/または抗炎症性化合物と組み合わせて経口投与することにより、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌を処置する方法も本明細書で提供される。最近の研究では、経口投与された抗CD3抗体が潰瘍性大腸炎患者に免疫学的変化をもたらすことが実証された(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Boden et al.,“Immunologic Alterations Associated with Oral Delivery of Anti-CD3(OKT3)Monoclonal Antibodies in Patients with Moderate-to-Severe Ulcerative Colitis,” Crohn’s & Colitis 360,vol.1(2),July 2019)。
【0043】
CD3抗体
【0044】
CD3イプシロン鎖(CD3ε)に特異的な抗体及びその抗原結合フラグメントは、本明細書では抗CD3抗体と呼ばれる。当該技術分野で公知の任意の抗CD3抗体は、本発明での使用に適している。本発明での使用に適した抗CD3抗体としては、それぞれの内容が、参照によりその全体が組み込まれる、WO2005/118635、WO 2005/099755、及びWO 2018/044948に開示されている抗体が挙げられる。
【0045】
例示的な抗CD3抗体は、アミノ酸配列GYGMH(配列番号1)を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、アミノ酸配列VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号3)を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、アミノ酸配列QMGYWHFDL(配列番号4)を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、アミノ酸配列RASQSVSSYLA(配列番号5)を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、アミノ酸配列DASNRAT(配列番号6)を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及びアミノ酸配列QQRSNWPPLT(配列番号7)を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFKFSGYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKKYYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQMGYWHFDLWGRGTLVTVSS(配列番号8)を含む可変重鎖アミノ酸配列、及びEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPLTFGGGTKVEIK(配列番号9)を含む可変軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0047】
好ましくは、抗CD3抗体は、QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFKFSGYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKKYYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQMGYWHFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号10)を含む重鎖アミノ酸配列、及びEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号11)を含む軽鎖アミノ酸配列を含む。この抗CD3抗体は、本明細書では、NI-0401、フォラルマブ(Foralumab)、または28F11-AEと呼ばれる。(例えば、Dean Y、Depis F、Kosco-Vilbois M.“Combination therapies in the context of anti‐CD3 antibodies for the treatment of autoimmune diseases.”Swiss Med Wkly.(2012)も参照のこと(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、全長の抗CD3抗体を含む。代替の実施形態において、抗CD3抗体は、CD3に特異的に結合する抗体フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗CD3抗体製剤は、全長抗CD3抗体と、CD3に特異的に結合する抗原結合フラグメントとの組み合わせを含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、CD3に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、一本鎖、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、scAb、dAb、単一ドメイン重鎖抗体、または単一ドメイン軽鎖抗体である。いくつかの実施形態において、CD3に結合するそのような抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス、他のげっ歯類、キメラ、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0050】
必要に応じて、本開示の製剤で使用される抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む。通常、この突然変異は定常領域にある。この突然変異は、エフェクター機能が変化した抗体をもたらす。抗体のエフェクター機能は、Fc受容体または補体成分などのエフェクター分子に対する抗体の親和性を変更する、すなわち増強または低減することによって変更される。例えば、突然変異は、T細胞からのサイトカイン放出を減少し得る抗体をもたらす。例えば、突然変異は、アミノ酸残基234、235、265もしくは297、またはそれらの組み合わせの重鎖にある。好ましくは、突然変異は、位置234、235、265もしくは297のいずれかにアラニン残基、または位置235にグルタミン酸残基、あるいはそれらの組み合わせをもたらす。
【0051】
好ましくは、本明細書で提供される抗CD3抗体は、インビボでの1つ以上のサイトカイン(複数可)の重鎖定常領域媒介放出を妨げる1つ以上の突然変異を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示の処方物において使用される抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントは、完全ヒト抗体である。本明細書で用いられる完全ヒトCD3抗体としては、例えば、抗CD3抗体への暴露時にサイトカイン放出が有意に低減または排除されるような、Fc領域におけるL234235→A234235突然変異が挙げられる。本明細書で提供される抗CD3抗体のFc領域におけるL234235→A234235突然変異は、抗CD3抗体が、ヒト白血球に暴露されているとき、サイトカイン放出を減少または排除するが、下に記載される変異は、有意なサイトカイン放出能力を維持する。例えば、サイトカイン放出の有意な減少は、Fc領域におけるL234235→A234235突然変異を有する抗CD3抗体への暴露時のサイトカインの放出を、以下に記載される突然変異の1つ以上を有する別の抗CD3抗体に対する暴露の際のサイトカイン放出のレベルに対して、比較することによって、定義される。Fc領域における他の変異としては、例えば、L234235→A234235、L235→E235、N297→A297、及びD265→A265が挙げられる。
【0053】
「サイトカイン」という用語は、細胞表面に発現する細胞外受容体に結合し、それによって細胞機能を調節する、当該技術分野で公知の全てのヒトサイトカインを指し、これには限定するものではないが、IL-2、IFN-ガンマ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、及びIL-13が挙げられる。
【0054】
腸のバリア機能を改善する薬剤
【0055】
腸バリア機能を改善する薬剤としては、腸透過性の低下など、少なくとも腸バリア機能を改善する任意の薬剤が挙げられる。
【0056】
腸バリア機能を改善した例示的な薬剤としては、例えば、レチノイン酸、GC-C受容体アゴニスト、ヘパリン、ルビプロストン、グルタミン、GLP-2ペプチド、ゾルリンペプチド阻害剤、ゾヌリンアンタゴニスト、ララゾチド、プロバイオティクス細菌または酪酸が挙げられる。
【0057】
レチノイン酸としては、オールトランス-レチノイン酸、9-cis-レチノイン酸、または13-cis-レチノイン酸などが挙げられる。
【0058】
GC-C受容体アゴニストとしては、例えば、グアニリン、ウログアニリン、リンホグアニリン、E.coliの熱安定性エンテロトキシン(ST)、リナクロチド、プレカナチドまたはドルカナチドが挙げられる。好ましくは、GC-C受容体アゴニストは、Linzess(登録商標)またはTrulance(登録商標)である。
【0059】
追加の、腸バリア機能を改善するか、及び/または腸透過性を低下させる薬剤としては、例えば、非消化性炭水化物、例えば、フルクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、アラビアガム、キシロオリゴ糖、難消化性デンプンなど、ならびにLC-PUFA、例えば、アラキドン酸(AA)またはドコサヘキサン酸(DHA)、ならびに任意選択で、ヒトミルクオリゴ糖、例えば、シアリルラクトース及び/またはガングリオシド、例えば、水牛乳及び/またはミルクまたはコロストラム画分由来の脱乳糖ホエーに含まれるもの、例えば酸、レンネットもしくはミセルカゼイン、酸、スイートホエーもしくはウルトラホエー、脂肪球膜など、及び/または広範な加水分解タンパク質、例えば、ホエータンパク質の加水分解から得られるもの及び/またはスペルミンもしくはスペルミジンなどのポリアミン類及び/または1つ以上のポリアミン前駆体、特にオルニチン及びアルギニンが挙げられる。
【0060】
好ましくは、非消化性炭水化物は、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イヌリン、アラビアガム、グアーガム、難消化性デンプン及び/または乳由来オリゴ糖の群において選択され得、そして微生物カクテルに添加され得る。これらのうちの1つ以上は、約0.01~5g/100ml、好ましくは1~2g/100mlという総用量で使用され得る。2つ以上の炭水化物の混合物を使用してもよく、各炭水化物は、炭水化物混合物の5%~95%の範囲である。
【0061】
好ましくは、特定の脂質を使用してもよい。例えば、C20またはC22n-6脂肪酸及び1つのC20またはC22n-3脂肪酸などの少なくとも1つのn-3多価不飽和脂肪酸と組み合わせた、有効量の少なくとも1つのn-6多価不飽和脂肪酸。C20またはC22、n-6脂肪酸は、組成物中の全ての脂肪酸の約0.01~6.0重量%の総量で、好ましくは0.1~1%の総量で存在する。C20またはC22 n-3脂肪酸は、組成物中の全ての脂肪酸の約0.01~約6.0重量%の総量で、好ましくは0.1~1%の総量で含まれる。好ましくは、本発明で使用されるn-6多価不飽和脂肪酸は、アラキドン酸(AA、C20:4 n-6)であり、本発明で使用されるn-3多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6、n-3)である。有効なAA:DHA比は、約1:1~2.5:1、好ましくは1:1~2:1である。LC-PUFAの供給源は、卵脂質、真菌油、低EPA魚油、藻油などであり得る。
【0062】
第2のクラスの脂質であるガングリオシドもまた、例えば約1~20マイクロモル/L、及び好ましくは6~15マイクロモル/Lの量で、成分の組み合わせに添加され得る。ガングリオシドの供給源は、牛乳、牛初乳であり得るが、好ましくは、水牛乳、乳血清もしくは初乳、山羊乳、初乳もしくは血清、及び/またはいずれかの誘導体であってもよい。
【0063】
この組み合わせはまた、ポリアミン、特にスペルミジン、スペルミン、またはプトレシン、及び/または1つ以上のポリアミン前駆体、特にオルニチン及びアルギニンを含み得る。それらは約10~2,000マイクログラム/100g固形処方の量で使用してもよい。ポリアミンは、好ましくは、スペルミン、スペルミジン、プトレシン及びカダベリンからなる群より選択される少なくとも2つ以上である。好ましくは、組成物は、約10~90%のスペルミン、10~90%のスペルミジン、0~90%のプトレシン、及び0~20%のカダベリンを含む。
【0064】
好ましくは、(成長因子が豊富な)ミルク画分とは、例えば、脂肪球膜タンパク質、酸、レンネットまたはミセルカゼイン、酸、スイートまたはウルトラホエー、ホエータンパク質加水分解物の形態であり得る。それらは、約0.01~7g/100ml、及び好ましくは0.5~3g/100mlの量で使用してもよい。
【0065】
抗炎症化合物
【0066】
抗炎症化合物とは、炎症または腫れを軽減する任意の物質である。抗炎症化合物は、例えば、IL-17、TNF-α、α4-インテグリン、α4-β7インテグリン、IL-12、またはIL-23に特異的なモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体である。好ましいモノクローナル抗体としては、Humira(登録商標)、Tysabri(登録商標)、Entyvio(登録商標)、またはStelara(登録商標)が挙げられる。追加の抗炎症化合物としては、Remicade(レミケード)(登録商標)、JNK阻害剤、PI3K経路阻害剤、AKT阻害剤、mTOR阻害剤、メサラミン、ブデソニド(Uceris(登録商標))、またはスフィノシン-1-リン酸キナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0067】
抗体製剤
【0068】
抗体製剤は、以下の範囲の抗体の単位用量を含む:約0.1mg~約50mg;約0.1mg~約25mg;または0.1mg~約10mg。例えば、単位用量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9、9.5、10mg以上である。好ましくは、単位用量は、0.5mg、2.5mgまたは5.0mgである。好ましくは、この抗体は経口投与用に処方される。好ましい経口抗体製剤としては、フォラルマブ(Foralumab)、アダリムマブ(Adalimumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、ナタスリズマブ(Nataslizumab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、及びウステキヌマブ(Ustekinumab)が挙げられる。
【0069】
この抗体製剤は液体であってもよい。例えば、この液体製剤は水性である。あるいは、この抗体製剤は凍結乾燥粉末である。この抗体製剤が凍結乾燥粉末である場合、凍結乾燥ケーキに適切な構造を提供するために、さらに増量剤を添加してもよい。この追加の増量剤は、貯蔵時の凍結乾燥ケーキの安定性を向上し得る。あるいは、この追加の増量剤は、剤形、例えば経口カプセルの製造を補助し得る。増量剤は本明細書に記載されており、これには、ポリオール類、例えば、トレハロース、マンニトール、マルトース、ラクトース、スクロース、ソルビトール、またはグリセロール、デンプン、微結晶性セルロース、低水分微結晶性セルロース、例えば、Avicel(アビセル)またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。この抗体製剤は経口投与に適している。この経口カプセルは、胃の酸性度への曝露を最小限に抑えるために腸溶コーティングしてもよい。
【0070】
抗CD3抗体製剤は、1つ以上の塩(緩衝塩)、1つ以上のポリオール類、及び1つ以上の賦形剤を含む。本発明の製剤はまた、緩衝剤または防腐剤を含んでもよい。抗CD3抗体製剤は、約4~8の範囲で;約4~7の範囲で;約4~6の範囲で;約5~6の範囲で;または約5.5~6.5の範囲のpHの溶液で緩衝される。好ましくは、このpHは5.5である。
【0071】
塩の例としては、以下の酸:塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ホルム酸、マロン酸、コハク酸などから調製された塩が挙げられる。そのような塩はまた、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製されてもよい。緩衝剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が挙げられる。
【0072】
本発明の製剤は、緩衝系を含んでもよい。本出願で使用される場合、「緩衝液」または「緩衝系」という用語は、通常、少なくとも1つの他の化合物と組み合わせて、緩衝能力、すなわち、制限内で、元のpHの変化が比較的少ないか、または全くない酸または塩基(アルカリ)のいずれかを中和する能力を示す、溶液中の緩衝系を提供する化合物を意味する。
【0073】
緩衝液としては、ホウ酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、カルシウム緩衝液、ならびにそれらの組み合わせ及び混合物が挙げられる。ホウ酸塩緩衝液としては、例えば、ホウ酸及びその塩、例えば、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウムが挙げられる。ホウ酸緩衝液としてはまた、溶液中でホウ酸またはその塩を生成する四ホウ酸カリウムまたはメタほう酸カリウムなどの化合物も含まれる。
【0074】
リン酸緩衝液系は、1つ以上の一塩基性リン酸、二塩基性リン酸などを含む。特に有用なリン酸塩緩衝液は、アルカリ及び/またはアルカリ土類金属のリン酸塩から選択されるリン酸塩緩衝液である。適切なリン酸緩衝液の例としては、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、及び一塩基性リン酸カリウム(KH2PO4)のうちの1つ以上が挙げられる。リン酸緩衝液成分は、リン酸イオンとして計算して、0.01%または0.5%(w/v)の量で頻繁に使用される。
【0075】
他の公知の緩衝化合物、例えば、クエン酸塩、重炭酸ナトリウム、TRISなどは、CD3製剤に応じ、必要に応じて添加してもよい。溶液中の他の成分は、他の機能を持っているが、緩衝能にも影響を与え得る。例えば、錯化剤としてよく使用されるEDTAは、溶液の緩衝能に顕著な影響を与える可能性がある。
【0076】
本発明の製剤で使用するための好ましい塩としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0077】
本発明による製剤中の塩の濃度は、約10mM~500mMの間、約25M~250mMの間、約25nM~150mMの間である。
【0078】
酢酸ナトリウム三水和物は、約10mM~100mMの範囲の濃度である。例えば、酢酸ナトリウム三水和物は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mMである。好ましくは、酢酸ナトリウム三水和物は25mMである。
【0079】
約50mMから500mMの範囲の濃度の塩化ナトリウム。例えば、塩化ナトリウムは約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475または500mMである。好ましくは、塩化ナトリウムは約125mMの濃度である。
【0080】
クエン酸ナトリウムは、約10mM~100mMの範囲の濃度である。例えば、クエン酸ナトリウムは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mMである。好ましくは、クエン酸ナトリウムは、約25~50mMの範囲にある。
【0081】
いくつかの実施形態では、塩は、約25mm~100mmの範囲の濃度の酢酸ナトリウム三水和物、及び約150mm~500mmの範囲の濃度の塩化ナトリウムである。
【0082】
好ましくは、この製剤は、約25mMの酢酸ナトリウム三水和物及び約150mMの塩化ナトリウムを含む。
【0083】
製剤は、増量剤及び/または安定化賦形剤として1つ以上のポリオールを含む。ポリオール類としては、例えば、トレハロース、マンニトール、マルトース、ラクトース、スクロース、ソルビトール、またはグリセロールが挙げられる。ポリオール類は、約0.1%~50%または5%~25%の範囲の濃度である。例えば、ポリオールは、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。
【0084】
いくつかの実施形態において、ポリオールは、約1%~50%または5%~25%の範囲の濃度のトレハロースである。例えば、トレハロースは、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。好ましくは、トレハロースは、約10%または約20%の濃度である。最も好ましくは、トレハロースは、約20%の濃度である。
【0085】
いくつかの実施形態において、ポリオールは、約1%~約10%の範囲の濃度のソルビトールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、約1%~約10%の範囲の濃度のグリセロールである。
【0086】
いくつかの実施形態において、ポリオールは、約0.1%~約10%の範囲の濃度のマンニトールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、約1%~約10%の範囲の濃度のマルトースである。
【0087】
製剤は、抗体凝集を抑制するか、さもなければ低減するための1つ以上の賦形剤及び/または界面活性剤を含む。抗体凝集を低減するための適切な賦形剤としては、非限定的な例として、界面活性剤、例えば、非限定的な例として、ポリソルベート20またはポリソルベート80が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリソルベート20またはポリソルベート80は、約0.01~1%、または約0.01~0.05%の範囲の濃度で存在する。例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0%の濃度である。
【0088】
好ましくは、界面活性剤は、約0.01~0.05%の範囲の濃度のポリソルベート80である。より好ましくは、ポリソルベート80は、0.02%である。
【0089】
この製剤は、抗体の酸化を低減するための1つ以上の賦形剤を含む。抗体の酸化を低減するための適切な賦形剤としては、非限定的な例として、抗酸化剤が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、メチオニン、D-アルギニン、BHTまたはアスコルビン酸が挙げられる。酸化防止剤は、約0.01%~1%;0.1%~1%;または0.1%~0.5%の範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、抗酸化剤はメチオニンである。いくつかの実施形態において、メチオニンは、約0.01%~1%;0.1%~1%;または0.1%~0.5%の範囲の濃度で存在する。例えば、メチオニンは約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0%の濃度で存在する。好ましくは、メチオニンは約0.1%である。
【0090】
この製剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの1つ以上のキレート剤を含む。このキレート剤は、0.01%~1%;0.1%~1%;または0.1%~0.5%の範囲の濃度である。例えば、キレート剤は約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0%の濃度で存在する。好ましくは、キレート剤は、約0.1%の濃度のEDTAである。
【0091】
いくつかの実施形態では、この製剤は、安定性を高めるために1つ以上の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、安定性を増加させるための賦形剤は、ヒト血清アルブミンである。いくつかの実施形態において、ヒト血清アルブミンは、約1mg~約5mgの範囲で存在する。
【0092】
いくつかの実施形態において、この製剤は、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg)、アミノ酸、またはステアリン酸mgとアミノ酸の両方を含む。適切なアミノ酸としては、例えば、ロイシン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の賦形剤とは、低水分微結晶性セルロース、例えば、Avicel(アビセル)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはデンプンである。
【0094】
本発明の製剤に有用な薬学的に許容される担体及び賦形剤のさらなる例としては、限定するものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、抗菌剤、抗酸化剤、及びコーティング剤、例えば:結合剤(BINDER):コーンスターチ、ジャガイモデンプン、他のデンプン、ゼラチン、天然及び合成のゴム、例えば、アカシア、キサンタン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカント、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン、クロスポビドン、コポビドンなど)、メチルセルロース、メトセル(Methocel)、アルファ化デンプン(例えば、STARCH1500(登録商標)及びSTARCH 1500LM(登録商標)(Colorcon、Ltd.が販売))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース(FMC Corporation,Marcus Hook,PA,USA)、Emdex、Plasdone、またはそれらの混合物、充填剤(FILLERS):タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、デキストロース、フルクトース、蜂蜜、ラクトース無水物、ラクトース一水和物、ラクトース及びアスパルタム、ラクトース及びセルロース、ラクトース及び微結晶性セルロース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロース&amp;グアーガム、糖蜜、スクロース、またはそれらの混合物、崩壊剤(DISINTEGRANTS):寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコレートナトリウム(Explotabなど)、ジャガイモまたはタピオカデンプン、他のデンプン類、アルファ化デンプン、粘土、他のアルギン類、他のセルロース、ガム(ジェランなど)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、プロイプラスドン、またはそれらの混合物、潤滑剤(LUBRICANTS):ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、コンプリトール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム(Pruvなど)、植物ベースの脂肪酸潤滑剤、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイル及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、シロイドシリカゲル(AEROSIL 200,W.R.Grace Co.,Baltimore,MD USA)、合成シリカの凝固エアロゾル(Deaussa Co.,Piano,TX USA)、発熱性二酸化ケイ素(CAB-O-SIL,Cabot Co., Boston,MA USA)、またはそれらの混合物、凝固阻止剤(ANTI-CAKING AGENTS):ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、またはそれらの混合物、抗菌剤(ANTIMICROBIAL AGENTS):塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、セチルピリジニウムクロリド、クレゾール、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルベートカリウム、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール、またはそれらの混合物、抗酸化剤(ANTIOXIDANTS):アスコルビン酸、BHA、BHT、EDTA、またはそれらの混合物、ならびにコーティング剤(COATING AGENTS):カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタレートセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬品釉薬、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテートフタレート、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバワックス、微結晶性ワックス、ジェランガム、マルトデキストリン、メタクリレート、微結晶性セルロース及びカラギーナンまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0095】
この製剤はまた、他の賦形剤及びそのカテゴリー、例としては、限定するものではないが、Pluronic(登録商標)、ポロキサマー(Lutrol(登録商標)及びポロキサマー188など)、アスコルビン酸、グルタチオン、プロテアーゼ阻害剤(例えば、大豆トリプシン阻害剤、有機酸)、pH低下剤、クリーム及びローション(マルトデキストリン及びカラギーナンなど);チュアブル錠の材料(デキストロース、フルクトース、ラクトース一水和物、ラクトースとアスパルタム、ラクトースとセルロース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロースとグアーガム、ソルビトール結晶など);非経口剤(マンニトール及びポビドンなど);可塑剤(セバチン酸ジブチル、コーティング用可塑剤、フタル酸ビニル酢酸ビニルなど);粉末潤滑剤(ベヘン酸グリセリルなど);ソフトゼラチンカプセル(ソルビトール特殊溶液など);コーティング用の球(砂糖粒子(sugar sphere)など);球状化剤(ベヘン酸グリセリル及び微結晶性セルロースなど);懸濁剤/ゲル化剤(カラギーナン、ジェランガム、マンニトール、微結晶性セルロース、ポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、キサンタンガムなど);甘味料(アスパルテーム、アスパルテーム、及びラクトース、デキストロース、フルクトース、蜂蜜、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、糖蜜、ソルビトール結晶、ソルビトール特殊溶液、スクロースなど);湿式造粒剤(炭酸カルシウム、ラクトース無水物、ラクトース一水和物、マルトデキストリン、マンニトール、微結晶セルロース、ポビドン、デンプンなど)、カラメル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、チェリークリームフレーバー及びチェリーフレーバー、無水クエン酸、クエン酸、粉砂糖、D&CレッドNo.33、D&Cイエロー#10アルミニウムレイク、エデト酸二ナトリウム、エチルアルコール15%、FD&CイエローNo.6アルミニウムレイク、FD&Cブルー#1アルミニウムレイク、FD&CブルーNo.1、FD&CブルーNo.2アルミニウムレイク、FD&CグリーンNo.3、FD&CレッドNo.40、FD&CイエローNo.6アルミニウムレイク、FD&CイエローNo.6、FD&CイエローNo.10、グリセリンパルミトステアレート、グリセリルモノステアレート、インディゴカルミン、レシチン、マンニトール、メチル及びプロピルパラベン、グリシルリチン酸モノアンモニウム、天然及び人工のオレンジフレーバー、医薬品釉薬、ポロキサマー188、ポリデキストロース、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリビドン、アルファ化コーンスターチ、アルファ化スターチ、赤鉄酸化物、サッカリンナトリウム、カルボキシメチルエーテルナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、イチゴフレーバー、合成黒鉄酸化物、合成赤鉄酸化物、二酸化チタン、及び白ろうが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗体製剤は液体であり、酢酸ナトリウムの濃度は、約10mM~500mMである。塩化ナトリウムの濃度は、約10mMから500mMである。ポリソルベート80の濃度は約0.01%~1%(w/v)である。トレハロースの濃度は、約5%~50%(w/v)である。そして、メチオニンの濃度は0.01%~1%(w/v)である。場合により、この製剤は、約0.01%~1%(w/v)の濃度でEDTAをさらに含む。抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントの単位用量は、約0.1mg~10mgの範囲である。いくつかの実施形態では、液体製剤は凍結乾燥されて粉末を形成する。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体製剤は液体であり、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)及び1単位用量の抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントを、約0.1mg~10mgの範囲に含む。必要に応じて、この製剤はさらに0.1%EDTA(w/v)を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は凍結乾燥されて粉末を形成する。
【0098】
特定の実施形態では、この液体抗体製剤は、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)及び0.5mgの単位用量の抗CD3抗体または抗原結合フラグメントを含む。この製剤の凍結乾燥粉末も本発明に含まれる。
【0099】
特定の実施形態では、この液体抗体製剤は、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)及び0.2.5mgの単位用量の抗CD3抗体または抗原結合フラグメントを含む。この製剤の凍結乾燥粉末もまた本発明に含まれる。
【0100】
特定の実施形態では、この液体抗体製剤は、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)及び5.0mgの単位用量の抗CD3抗体または抗原結合フラグメントを含む。この製剤の凍結乾燥粉末も本発明に含まれる。
【0101】
特定の実施形態では、この液体抗体製剤は、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)、0.1%のEDTA(w/v)及び0.5mgの単位用量の抗CD3抗体または抗原結合フラグメントを含む。この製剤の凍結乾燥粉末もまた本発明に含まれる。
【0102】
特定の実施形態では、この液体抗体製剤は、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)、0.1%のEDTA(w/v)及び0.2.5mgの単位用量の抗CD3抗体または抗原結合フラグメントを含む。この製剤の凍結乾燥粉末もまた本発明に含まれる。
【0103】
特定の実施形態では、液体抗体製剤は、25mMの酢酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80(w/v)、20%のトレハロース(w/v)、0.1%のメチオニン(w/v)、0.1%のEDTA(w/v)及び5.0mgの単位用量の抗CD3抗体または抗原結合フラグメントを含む。この製剤の凍結乾燥粉末もまた本発明に含まれる。
【0104】
いくつかの実施形態では、この製剤は、抗CD3抗体または抗原結合フラグメントとポリソルベート80との比が約1:0.01~0.1(w/w)であり;抗CD3抗体または抗原結合フラグメントとトレハロースの比が約1:10~50(w/w)であり;抗CD3抗体または抗原結合フラグメントとメチオニンの比が約1:0.1~0.5(w/w)であり;抗CD3抗体または抗原結合フラグメントと酢酸ナトリウムの比が約1:0.1~1.0(w/w)であり;かつ抗CD3抗体または抗原結合フラグメントと塩化ナトリウムの比が約1:0.5~2.0(w/w)である;凍結乾燥粉末である。必要に応じて、この製剤は、抗CD3抗体または抗原結合フラグメント対EDTAの比が約1:0.1~0.5(w/w)であるEDTAをさらに含む。抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントの単位用量は、約0.1mg~10mgの範囲である。
【0105】
いくつかの実施形態において、この抗体製剤は、粉末、例えば、単位用量の約0.1mg~10mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、及び約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに、有する凍結乾燥粉末である。任意選択で、この粉末製剤は、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたり、0.17mgのEDTAをさらに含んだ。好ましくは、この単位用量は、0.5mg、2.5mgまたは5.0mgである。
【0106】
特定の実施形態では、この抗体製剤は、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であって、単位用量の約0.5mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する凍結乾燥粉末である。
【0107】
特定の実施形態では、この抗体製剤は、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であって、単位用量の約2.5mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する凍結乾燥粉末である。
【0108】
特定の実施形態では、この抗体製剤は、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であって、単位用量の約5mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する凍結乾燥粉末である。
【0109】
特定の実施形態では、この抗体製剤は、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であって、単位用量の約0.5mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース、約0.17mgのEDTA及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する凍結乾燥粉末である。
【0110】
特定の実施形態では、この抗体製剤は、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であって、単位用量の約2.5mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース、約0.17mgのEDTA及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する凍結乾燥粉末である。
【0111】
特定の実施形態では、この抗体製剤は、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であって、単位用量の約5mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース、約0.17mgのEDTA及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する凍結乾燥粉末である。
【0112】
本発明による製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)の水分(すなわち、水)含有量は、約7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。好ましくは、水分含有量は、2~5%の範囲であり、より好ましくは、水分含有量は、1~2%の範囲であり、最も好ましくは、水分含有量は、1%未満である。水分含有量を決定する方法は当該技術分野で公知であり、例えば、水分含有量はカールフィッシャー滴定によって決定される。
【0113】
いくつかの実施形態において、製剤の浸透圧は、約800~950(例えば、約825~925)mOsm/kgである。
【0114】
本発明の抗体製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、約2℃~約4℃、15℃または周囲温度での保存に適している。いくつかの実施形態では、この製剤は、貯蔵中の水分を低減するために、乾燥剤分子篩パックと共に貯蔵される。いくつかの実施形態では、この製剤は、貯蔵中に水分を低減するために、乾燥剤分子篩パックを備えた容器、例えば、ボトルまたは他の適切な容器に貯蔵される。
【0115】
本発明の製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、製剤された抗体及びその製剤の他の任意の活性剤の化学的安定性を提供する。この文脈における「安定性」及び「安定な」とは、化学的分解及び物理的変化、例えば、所定の製造、及び調製、輸送及び貯蔵の条件下での沈降、沈殿、凝集に対する抗体及び他の任意の活性剤の耐性を指す。本発明の「安定な」製剤とはまた、好ましくは、所与の製造、調製、輸送、及び/または貯蔵条件下で、開始量または参照量の少なくとも90%、95%、98%、99%、または99.5%を保持する。抗体及び他の任意の活性剤の量は、例えば、UV-Vis分光光度法及び高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、またはSDS-PAGEなどの、当該技術分野で認められている任意の方法を使用して決定され得る。
【0116】
本発明の抗体製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、4℃、15℃、または周囲温度のいずれかで少なくとも3ヶ月間安定である。この製剤は、4℃または15℃のいずれかで3ヶ月超、例えば、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10か月、少なくとも11か月、少なくとも12か月、少なくとも18か月、少なくとも24か月、及び/または24か月を超えて、4℃、15℃、または周囲温度のいずれかで、安定である。
【0117】
本発明の抗体製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、重鎖及び軽鎖として、少なくとも90%、91%、92%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のIgGという純度を有する。
【0118】
本発明の抗体製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、5%、4%、3%、2%、1%未満の総不純物を有する。
【0119】
本発明の抗体製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、少なくとも90%、91%、92%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のIgGモノマーを有する。
【0120】
本発明の抗体製剤(液体、凍結乾燥または最終剤形(例えばカプセル)のいずれか)は、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満という総IgG凝集物を有する。
【0121】
剤形
【0122】
本発明の製剤は、経腸または非経口投与用に特別に製剤化されている。
【0123】
経腸投与、すなわち経口投与の場合、この製剤はカプセルであっても、または錠剤であってもよい。
【0124】
このカプセルには、ソフトゲルカプセルまたはハードシェルカプセルが含まれる。ソフトゲルカプセルは、ソフトゲルまたはゼラチンまたはゼラチン様物質である。ハードシェルまたはソフトゲルカプセルは、HPMCカプセルである。カプセル、ソフトゲルまたはハードシェルは、液体抗体製剤または粉末化された、例えば、凍結乾燥された抗CD3製剤で充填され得る。例示的な液体及び粉末の抗CD3製剤は上記に記載されている。
【0125】
いくつかの実施形態では、各カプセルは、胃の酸性度をバイパスするのに十分な腸溶コーティングを含む。任意の適切な腸溶性コーティングが、経口用抗CD3抗体製剤中で用いられてもよく、これには、非限定的な例として、腸溶性コーティング、例えば、Eudragit(登録商標)、例えば、Eudragit(登録商標)L 30D/L100-55(4または5を超えるpHで抗CD3抗体を放出する)が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、経口抗CD3抗体製剤中の各カプセルは、0~2の範囲のサイズ、例えば、サイズ0、サイズ1、及び/またはサイズ2を有するソフトゲルまたはゼラチンまたはゼラチン様物質を含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、経口抗CD3抗体製剤中のカプセルは、液体で充填されたハードカプセル(LFHC)である。任意の適切なLFHCは、本開示の経口抗CD3抗体製剤に使用してもよく、これには、非限定的な例として、Licaps(登録商標)及びCapsugel(登録商標)による他のLFHCが挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態において、この経口抗CD3抗体製剤中の各液体充填カプセルは、約1000μL未満、例えば、約75μL未満、及び/または約500μL未満の容積を含む。いくつかの実施形態では、経口抗CD3抗体製剤中の各液体充填カプセルは、約50μL~約1000μL、約100μL~約1000μL、約200μL~約1000μL、約250μL~約1000μL、約50μL~約500μL、約100μL~約500μL、約200μL~約500μL、及び/または約250μL~約500μLの範囲の容積を含む。
【0129】
好ましい経口製剤は、抗CD3抗体凍結乾燥製剤を含む腸溶コーティングされた経口カプセルを含み、この製剤は単位用量の約0.1mg~10mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、及び約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mgの塩化ナトリウム、約0.034mgのポリソルベート80、約34mgのトレハロース及び約0.17mgのメチオニンを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに有する。必要に応じて、この腸溶コーティングされた経口カプセルは、0.17mgのEDTAを、1mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントあたりに含む。投与単位は、0.5mg、2.5mgまたは5.0mgである。
【0130】
別の好ましい経口製剤には、抗CD3抗体液体製剤を含む腸溶コーティング経口カプセルが含まれ、この製剤は、単位用量の約0.1mg~10mgの抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメント、25mMの酢酸ナトリウム三水和物、125mMの塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を含む。必要に応じて、腸溶コーティングされた経口カプセルは、さらに0.1%のEDTAを含む。投与される単位は、0.5mg、2.5mg、または5.0mgである。
【0131】
いくつかの実施形態では、この抗CD3抗体製剤は、皮下製剤である。いくつかの実施形態において、この皮下抗CD3抗体製剤は、密封されたバイアルまたは他の容器に収容される。
【0132】
いくつかの実施形態において、この皮下抗CD3抗体製剤は、抗CD3抗体、少なくとも1つの塩、少なくとも1つの界面活性剤、及びこの製剤を所望の注射量にするのに必要な容積の水を含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、この皮下抗CD3抗体製剤は、約2mg/mLの抗CD3抗体、約7.31mgの塩化ナトリウム、約3.40mgの酢酸ナトリウム三水和物、約0.20mgのポリソルベート80、及び所望の注射量についてこの製剤容積を最大1mlにさせる量の水を含む。この皮下抗体製剤は、約4~6の範囲のpHでなければならない。
【0134】
いくつかの実施形態において、この皮下抗CD3抗体製剤は、例えば、約2℃~約8℃の範囲で、冷蔵下でバイアルまたは他の適切な容器に保存される。いくつかの実施形態では、この皮下抗CD3抗体製剤は、振盪されない。いくつかの実施形態では、この皮下抗CD3抗体製剤は、凍結されない。いくつかの実施形態において、この皮下抗CD3抗体製剤は、投与前に希釈される。
【0135】
いくつかの実施形態において、この皮下抗CD3抗体製剤は、約1mg/60kg体重~約10mg/60kg体重の範囲の用量で投与される。
【0136】
本開示による治療実体の投与は、移動、送達、耐性などの改善を得るために製剤に組み込まれる適切な担体、賦形剤、及び他の薬剤とともに施されることが理解されよう。多数の適切な製剤が、全ての医薬品化学者に公知の処方集に見出され得る:Remington’s Pharmaceutical Sciences(15th ed,Mack Publishing Company,Easton,PA(1975))、特にその中のBlaug,Seymourによる第87章。これらの製剤としては、例えば、粉末類、ペースト類、軟膏類、ゼリー類、ワックス類、油類、脂質類、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(リポフェクチン(商標)など)、DNAコンジュゲート類、無水吸収ペースト類、水中油型及び油中水型エマルジョン類、エマルジョンカーボワックス(さまざまな分子量のポリエチレングリコール類)、半固体ゲル類、及びカーボワックスを含む半固体混合物類が挙げられる。前述の混合物のいずれも、製剤中の有効成分が製剤によって不活化されず、その製剤が生理学的に適合性があり、投与経路に耐えられるという条件下であれば、本発明による処置及び治療に適切であり得る。Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.”Regul.Toxicol Pharmacol.32(2):210-8(2000),Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.J.Pharm.203(1-2):1-60(2000),Charman WN “Lipids, lipophilic drugs,and oral drug delivery-some emerging concepts.”J Pharm Sci.89(8):967-78(2000),Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol.52:238-311(1998)及び医薬化学者に周知の製剤、賦形剤及び担体に関連する追加情報についてはその中の引用も参照のこと。
【0137】
治療的管理
【0138】
抗CD3抗体を単独で、または腸バリア機能を改善する化合物及び/もしくは抗炎症化合物と一緒に含む、本明細書で提供される治療用製剤は、例えば、自己免疫疾患または胃腸系の炎症性障害のような胃腸障害に関連する症状を処置または緩和するために使用される。S
【0139】
具体的には、開示された製剤は、CeD及びCDに関連する症状を処置または緩和するためにも使用される。
【0140】
この治療用製剤は、自己免疫疾患または炎症性障害などの胃腸障害に罹患している対象に投与される。自己免疫疾患、炎症性障害、神経変性障害またはがんに罹患している対象は、当該技術分野で公知の方法によって特定される。
【0141】
自己免疫疾患または炎症性障害などの胃腸障害に罹患している患者への治療用製剤の投与は、様々な実験室または臨床結果のいずれかが達成された場合に成功したと見なされる。例えば、障害に関連する1つ以上の症状が緩和、軽減、抑制されるか、またはさらなる、すなわちより悪い状態に進行しない場合、処置は成功したと見なされる。
【0142】
別の実施形態では、本明細書で提供される治療用製剤は、クローン病の処置、診断、及び/または予防に使用される。クローン病は、腸の慢性的な炎症(inflammation)及び炎症(irritation)である。クローン病は、腹痛、下痢、体重減少、食欲不振、発熱、寝汗、直腸痛、及び直腸出血などの症状に関連している。本明細書で提供される治療用製剤は、クローン病に罹患しているか、そう診断されているか、またはクローン病にかかりやすい対象に投与される。本明細書で提供される抗体製剤は、クローン病の少なくとも1つの症状を緩和するか、クローン病を処置するか、クローン病を予防するか、及び/またはクローン病が対象においてさらなる病状に進行するのを防ぐのに十分な用量で投与される。
【0143】
この治療用製剤は、制御性T細胞(Treg)を活性化するために使用される。
【0144】
本明細書で使用される別の実施形態では、治療用製剤組成物は、ヒト組織への免疫細胞の動員を防止、低減、または減少させるためにヒト対象に投与される。本明細書で使用される治療用製剤は、ヒトの疾患の組織部位への異常なまたは調節解除された免疫細胞動員に関連する状態を予防及び治療するために、それを必要とする対象に投与される。
【0145】
本明細書で使用される別の実施形態では、治療用製剤組成物は、ヒト組織への免疫細胞の血管外溢出及び遊出を予防、低減または減少させるためにヒト対象に投与される。したがって、本明細書で使用される治療用製剤は、ヒトの疾患の組織部位への異常なまたは調節解除された免疫細胞浸潤に関連する状態を予防及び/または治療するために投与される。
【0146】
本明細書で使用される別の実施形態では、治療用製剤組成物は、人体内のサイトカインの放出によって媒介される効果を防止、低減、または減少させるために、ヒト対象に投与される。「サイトカイン」という用語は、細胞表面上の細胞外受容体に結合し、それによって細胞機能を調節する、当該技術分野で公知の全てのヒトサイトカインを指し、これには、限定するものではないが、IL-2、IFN-g、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、及びIL-13が挙げられる。
【0147】
本明細書で使用される別の実施形態では、治療用製剤は、人体内のサイトカイン受容体の放出によって媒介される効果を防止、低減、または減少させるために、ヒト対象に投与される。「サイトカイン受容体」という用語は、前述のサイトカインの受容体を含むがこれに限定されない、本明細書で定義される1つ以上のサイトカイン(複数可)に結合する当該技術分野の全てのヒトサイトカイン受容体を指す。したがって、本明細書で使用される治療製剤は、人体内の1つ以上のサイトカイン受容体(複数可)の異常な活性化、結合または連結によって媒介される状態を、治療及び/または予防するために投与される。インビボでの治療用製剤の投与は、そのようなヒト対象内のサイトカイン受容体(複数可)によって媒介される細胞内シグナル伝達を枯渇させることがさらに想定される。
【0148】
本明細書で使用される一態様では、治療用製剤組成物は、その中の膵臓ベータ細胞機能の低下時にヒト個体に投与される。一実施形態では、当該技術分野で公知であるように、個体は、ベータ細胞機能、インスリン分泌、またはc-ペプチドレベルについて試験される。続いて、いずれかの指標の十分な減少が通知されれば、そのヒト個体は、その中のベータ細胞機能の自己免疫破壊のさらなる進行を防ぐために、治療製剤の十分な投与レジメンで管理される。
【0149】
好ましくは、本明細書で提供される治療用抗体製剤は、対象に経口、皮下または経鼻的に投与される。他の投与経路が企図されている。例えば、抗体製剤は、静脈内、筋肉内、またはこれらの投与経路の任意の組み合わせで投与される。
【0150】
併用療法
【0151】
抗CD3抗体製剤は、例えば、腸バリア機能を改善するか及び/もしくは腸透過性を低下させる化合物、ならびに/または抗炎症化合物などの1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて、処置中及び/または処置後に投与される。
【0152】
いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は、単一の治療用組成物中に処方され、抗CD3抗体及び追加の薬剤は、同時に投与される。
【0153】
あるいは、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は互いに別個であり、例えば、それぞれが別個の治療用組成物に処方され、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は同時に投与されるか、または抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は、処置レジメン中の異なる時間に投与される。例えば、抗CD3抗体は、追加の薬剤(複数可)の投与の前に投与されるか、抗CD3抗体は、追加の薬剤(複数可)の投与の後に投与されるか、または抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)が交互の方式で投与される。本明細書に記載されるように、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は、単回投与または複数回投与で投与される。
【0154】
いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は同時に投与される。例えば、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は、単一の組成物に処方されてもよいし、または2つ以上の別個の組成物として投与されてもよい。いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び追加の薬剤(複数可)は、連続して投与されるか、または抗CD3抗体及び追加の薬剤は、処置レジメン中の異なる時間に投与される。
【0155】
炎症性疾患(例えば、消化管の炎症性障害)、胃腸障害(例えば、CeD、CD、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌)、自己免疫疾患(例えば、糖尿病)、がん(例えば、胃腸癌)、NASH、胆汁障害、または肝疾患に罹患している患者への抗CD3抗体の単独または1つ以上の追加薬剤との組み合わせでの投与は、様々な実験室または臨床目的のいずれかが達成された場合に成功したと見なされる。
【0156】
例えば、炎症性疾患(例えば、GI管の炎症性障害)、GI障害(例えば、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、刺激性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌)、自己免疫疾患(例えば、糖尿病)、がん(例えば、胃腸癌)、NASH、胆汁障害、または肝疾患に罹患している患者への、単独での、または1つ以上の追加の薬剤と組み合わせた抗CD3抗体の投与は、その疾患または障害に関連する症状のうち1つ以上が、緩和、低減、阻害されるか、またはさらなる、すなわち、より悪い状態に進行しない場合、成功したと見なされる。
【0157】
炎症性疾患(例えば、消化管の炎症性障害)、消化管障害(例えば、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、刺激性腸症候群、炎症性腸疾患、または結腸癌)、自己免疫疾患(例えば、糖尿病)、がん(例えば、胃腸癌)、NASH、胆汁障害、または肝疾患に罹患している患者への、単独での、または1つ以上の追加の薬剤と組み合わせた抗CD3抗体の投与は、その疾患または障害が、寛解するか、またはさらなる、すなわち、より悪い状態に進行しない場合、成功したと見なされる。
【0158】
本発明の組成物及び方法と共に使用するのに適した追加の薬剤としては、例えば、レチノイン酸、例えば、オールトランス-レチノイン酸、9-cis-レチノイン酸、または13-cis-レチノイン酸、GC-C受容体アゴニスト、例えば、グアニリン、ウログアニリン、リンフォグアニリン、E.coli の熱安定性エンテロトキシン(ST)、リナクロチド、プレカナチドまたはドルカナチド、ヘパリン、ルビプロストン、グルタミン、GLP-2ペプチド、ゾルリンペプチド阻害剤、ゾヌリン拮抗薬、ララゾチド、プロバイオティクス細菌または酪酸が挙げられる。好ましくは、GC-C受容体アゴニストは、Linzess(登録商標)またはTrulance(登録商標)である。
【0159】
本発明の組成物及び方法と共に使用するのに適した追加の薬剤としては、抗炎症化合物が挙げられる。抗炎症性化合物としては、例えば、IL-17、TNF-α、α4-インテグリン、α4-β7インテグリン、IL-12、またはIL-23に特異的なモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体、Remicade(登録商標)、JNK阻害剤、PI3K経路阻害剤、AKT阻害剤、mTOR阻害剤、メサラミン、ウセリス、またはスフィノシン-1-リン酸キナーゼ阻害剤が挙げられる。好ましいモノクローナル抗体としては、Humira(登録商標)、Tysabri(登録商標)、Entyvio(登録商標)、またはStelara(登録商標)が挙げられる。
【0160】
いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び少なくとも第2の治療剤を含む併用療法は、図2に示される投薬レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、この併用療法は、抗CD3抗体及び少なくとも第2の治療剤が、図2に示す投与レジメンで投与され、この投与レジメンが繰り返されるということを含む。いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び少なくとも第2の治療剤を含む併用療法は、図2に示される投薬レジメンで投与され、この投薬レジメンが、休薬期間の後に繰り返される。いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び少なくとも第2の治療剤を含む併用療法は、図2に示される投薬レジメンで投与され、そしてこの休薬サイクルが繰り返される。いくつかの実施形態において、抗CD3抗体及び少なくとも第2の治療剤を含む併用療法は、図2に示される投薬レジメンで投与され、この投薬レジメン及び休薬サイクルが繰り返される。
【0161】
定義
【0162】
本明細書において別途定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別途要求されない限り、単数形の用語は、複数形の用語を含むものとし、複数形の用語は単数形の用語を含むものとする。一般に、本明細書に記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質及びオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法及びそれらの技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。標準的技術が、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換に使用される(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行される。前述の技術及び手順は一般に、当該技術分野において周知である従来の方法に従って、かつ本明細書全体を通して引用され、考察される、一般的かつより具体的な様々な参考文献に記載されるように実行される。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照のこと。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの実験手順及び技術は、周知であり、当該技術分野で一般に使用されるものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的調製物、製剤及び送達、ならびに患者の処置に使用される。
【0163】
本開示に従って利用される場合、別段示されない限り、以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0164】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン(Ig)分子(すなわち、抗原に特異的に結合する(それと免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)の免疫学的に活性な部分を指す。このような抗体としては、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2フラグメント、及びFab発現ライブラリーが挙げられる。「に特異的に結合する」または「と免疫反応する」とは、その抗体が、所望の抗原の1つ以上の抗原決定因子と反応し、他のポリペプチドと反応(すなわち、結合)したり、または他のポリペプチドとかなり低い親和性(K>10-6)で結合したりはしないことを意味する。
【0165】
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110以上のアミノ酸長の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定義する。ヒト軽鎖はカッパ軽鎖とラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)またはイプシロン(ε)として分類され、そして、抗体のアイソタイプは、それぞれ、IgM、IgD、IgA及びIgEとして定義される。軽鎖及び重鎖内では、可変領域と定常領域は、約12アミノ酸以上の「J」領域によって結合されており、重鎖には、さらに約10アミノ酸の「D」領域も含まれている。一般的に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ea.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。各軽鎖/重鎖対の可変領域が抗体結合部位を形成する。
【0166】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、固有の軽鎖遺伝子産物及び固有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含む抗体分子の集団を指す。具体的には、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、その集団の全ての分子内で同一である。MAbは、それに対する固有の結合親和性を特徴とする抗原の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位を含む。
【0167】
一般に、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDのうちのいずれかに関連し、これは、分子内に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスは、IgG、IgG、及びその他のものなどのサブクラスも有する。さらに、ヒトにおいて、この軽鎖は、カッパ鎖であっても、またはラムダ鎖であってもよい。
【0168】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体に特異的に結合し得る任意のタンパク質決定基を含む。「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合し得る任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常は、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面分類からなり、通常は、特定の3次元構造特徴ならびに特定の電荷特性を有する。抗体は、解離定数が1μM以下;好ましくは100nM以下、及び最も好ましくは10nM以下である場合に、抗原に特異的に結合するとされる。
【0169】
本明細書で使用される場合、「免疫学的結合」及び「免疫学的結合特性」及び「特異的結合」という用語は、免疫グロブリン分子とその免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じる、その種類の非共有結合的相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(K)の観点から表すことができ、より小さなKはより大きな親和性を表す。選択されるポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の方法を用いて定量される。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成及び解離の速度の測定を伴い、それらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向において速度に等しく影響する幾何的パラメータに依存する。したがって、「オン速度定数」(kon)及び「オフ速度定数」(koff)の両方とも、濃度ならびに会合及び解離の実際の速度を計算することによって決定され得る。(Nature 361:186-87(1993)を参照のこと)。koff/konの比率は、親和性に関連しない全てのパラメータの解除を可能にし、解離定数Kに等しい。(一般には、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439-473を参照のこと)。本発明の抗体は、放射性リガンド結合アッセイまたは当業者に公知の同様のアッセイなどのアッセイによって測定して、平衡結合定数(K)が1μM以下、好ましくは100nM以下、より好ましくは10nM以下、最も好ましくは100pM以下~約1pMの場合、CD3エピトープに特異的に結合すると言われる。
【0170】
保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニンバリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0171】
本明細書において考察されるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列のわずかなバリエーションは、本発明によって包含されることが企図されるが、但し、そのアミノ酸配列のバリエーションが、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、及び最も好ましくは99%を維持することを条件とする。具体的には、保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換とは、それらの側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。遺伝子学的にコードされるアミノ酸は、一般には以下のファミリーに分類される:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩であり、(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり、(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、そして(4)無電荷極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、グルタミン、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リジン、セリン、及びスレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸としては、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが挙げられる。アミノ酸の他のファミリーとしては、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリン及びスレオニン、(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギン及びグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、ならびに(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンが挙げられる。
【0172】
「薬剤」という用語は、本明細書において、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子、または生物学的材料から抽出された抽出物を示すために使用される。
【0173】
「患者」という用語は、ヒト及び動物対象を含む。
【0174】
本開示はまた、F、Fab、Fab’及びF(ab’)2抗CD3抗体フラグメント、一本鎖抗CD3抗体、二重特異性抗CD3抗体、ヘテロコンジュゲート抗CD3抗体、三重特異性抗体、免疫複合体及びそのフラグメントも含む。
【0175】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体である。この場合、結合特異性の一方はCD3に対するものである。第2の結合標的は、任意の他の抗原であり、有利には、細胞表面タンパク質または受容体もしくは受容体サブユニットである。
【0176】
本明細書で挙げられた全ての刊行物及び特許文献は、このような刊行物または文献の各々が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文献の引用は、関連する先行技術を認めることを意図するものではなく、その内容または日付に関するなんらの承認を構成するものでもない。本開示は、書面による説明によって説明されているが、当業者は、本開示が様々な実施形態で実施可能であること、ならびに前述の説明及び以下の例は、例示を目的とするものであり、以下の特許請求の範囲を限定するものではないことを認識する。
【0177】
他の実施形態
本開示は、その詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の範囲を説明することを意図しており、それを限定するものではない。その他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
【配列表】
2022512709000001.app
【国際調査報告】