(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】RGMc選択的阻害剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20220131BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220131BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220131BHJP
A61P 13/12 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61P7/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12N15/12
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021521334
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 US2019057687
(87)【国際公開番号】W WO2020086736
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515120006
【氏名又は名称】スカラー ロック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOLAR ROCK,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ドノヴァン アドリアーナ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド メーガン
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ アビシェック
(72)【発明者】
【氏名】カピリ アラン
(72)【発明者】
【氏名】ダグベイ ケヴィン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】レルナー ロレナ
(72)【発明者】
【氏名】ゾン レオナルド イラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン ジャスティン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ブコウスキー ジョン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
反発性ガイダンス分子C(RGMc)の選択的阻害剤が記載される。作製方法、ならびに、貧血のような障害の治療におけるこれらの阻害剤の治療的使用を含む関連する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト反発性ガイダンス分子C(RGMc)に特異的に結合する単離された抗体であって、
a)前記抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;
b)前記抗体は、ヒト反発性ガイダンス分子A(RGMa)およびヒト反発性ガイダンス分子B(RGMb)に結合せず;および
c)前記抗体は、BMP6とRGMcの相互作用を阻害または減少させる、
抗体。
【請求項2】
ヒトRGMc内のエピトープに結合する単離された抗体であって、
a)前記抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;および
b)前記抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基および/またはFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むエピトープに結合し、ここで前記エピトープは、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基およびFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよい、
抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体であって、
前記抗体は、配列番号30、31、および32にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2、およびH-CDR3配列、ならびに、配列番号33、34、および35にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、およびL-CDR3配列を含み;
ここで、
前記H-CDR1の4位のR残基はKまたはSで置換されてもよく;前記H-CDR1の5位のS残基はTで置換されてもよく;前記H-CDR1の7位のS残基はAで置換されてもよく;および/または、前記H-CDR1の9位のS残基はQで置換されてもよく;
さらに:
前記H-CDR2の8位のV残基はHまたはTで置換されてもよく;および/または前記H-CDR2の10位のN残基はS、TまたはEで置換されてもよい、
抗体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体であって、
前記抗体は、
a)配列番号36と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;および/または
b)配列番号37と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する可変の軽鎖可変領域を含み、
ここで、前記抗体は、
c)配列番号36に示される重鎖可変領域配列;および
d)配列番号37に示される軽鎖可変領域配列を含んでもよい、
抗体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体であって、
前記抗体は、完全ヒトまたはヒト化抗体であり、
ここで前記抗体は、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体であってもよく、ここで前記抗体は、ヒトIgG4抗体であってもよく、さらに前記ヒトIgG4抗体は、IgG
1様ヒンジを生じさせるSerからProへの主鎖置換を含んでいてもよい、
抗体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体であって、
前記抗体は、0.1×10
-9(0.1nM)未満のK
D値でRGMcに結合し、ここで前記抗体は、抗体抗原複合体の内部移行を誘導してもよい、
抗体。
【請求項7】
ヒトRGMcに特異的に結合する単離された抗体であって、
前記抗体は、請求項2の抗体と、ヒトRGMcに対する結合に関して競合(例えば交差競合)する、および/または、同一のエピトープに結合する、
抗体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容できる担体を含む、
医薬組成物。
【請求項9】
ヒト対象における貧血の治療のための方法での使用のための請求項8の組成物であって、
前記治療は、前記貧血を治療するのに効果的な量での前記対象への前記組成物の投与を含み、
ここで前記貧血は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)または慢性疾患の貧血(ACD)であってもよい、
組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の使用のための組成物であって、
前記貧血は、がん関連の貧血または化学療法によって誘導される貧血である、
組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の使用のための組成物であって、
前記ACDは、慢性腎疾患(CKD)の貧血であり、
前記対象は、透析依存性または非透析依存性であってもよい、
組成物。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物であって、
前記組成物は、さらなる治療的薬剤と組み合わせて投与されて、
ここで前記のさらなる治療的薬剤は、エリスロポエチン刺激剤(ESA)、HIF安定剤、鉄補給剤または輸血であってもよい、
組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の使用のための組成物であって、
前記方法は、ESA、HIF安定剤、鉄補給剤または輸血と関連する毒性を減少させて、ここで前記毒性は、鉄過剰またはがんリスクを含んでもよい、
組成物。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一項に記載の使用のための組成物であって、
前記対象は、
a)鉄療法中であるが鉄療法の用量減少が有利である;
b)鉄療法を受けたことがあるが毒性のせいで中断している;
c)鉄療法を受けたことがあり、鉄療法の用量減少が有利である;
d)がんリスクがある;および/または
e)がんと診断されたことがある、
組成物。
【請求項15】
対象における血清鉄レベルを増大させる方法であって、
前記方法は、請求項8の医薬組成物を、
i)前記対象における血清鉄レベルを増大させる;
ii)前記対象におけるヘプシジンを下方調節する;
iii)肝臓ヘプシジンmRNAレベルを減少させる;
iv)肝臓ヘプシジンタンパク質レベル、血清(循環)ヘプシジンタンパク質レベル、またはその両方を減少させる;
v)前記対象におけるトランスフェリン飽和度を増大させる;
vi)前記対象における赤血球産生を増大させる;
vii)前記対象における不飽和鉄結合能を低減させる;
viii)前記対象における総鉄結合能を低減させる;および/または、
ix)前記対象における血清フェリチンレベルを増大させる
のに効果的な量で前記対象へ投与するステップを含み、ここで前記量は、血液のミリリットルあたり≧20ナノグラムの血清フェリチンレベルを達成するのに効果的な量であってもよい、
方法。
【請求項16】
請求項9から14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物または請求項15に記載の方法であって、
前記対象は、エリスロポエチン(EPO/ESA)療法、HIF安定剤療法、IV鉄補給、またはそれらの組み合わせを受けたことがあり、
ここで前記対象は、EPO療法、HIF安定剤療法またはIV鉄補給と関連する有害事象が現れたことがある対象であってもよく、または、そのリスクがある対象であってもよい、
医薬組成物または方法。
【請求項17】
RGMc選択的阻害剤(例えば、中和抗体)を含んでいる医薬組成物を作製する方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
i)RGMaおよびRGMbよりもRGMcに選択的に結合する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;
ii)ステップ(i)に基づいて、RGMc活性をインビボで阻害/中和する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;
iii)ステップ(i)および(ii)に基づいて、医薬組成物への製剤化に関して、阻害/中和抗体を選択するステップ
を含み、
ここでステップ(i)は、ポジティブ選択を含んでもよく、さらに、ネガティブ選択を含んでもよい、
方法。
【請求項18】
請求項17のいずれか1つの方法であって、
同定ステップ(i)は、ライブラリーをスクリーニングするステップを含み、
ここで前記ライブラリーは、ファージライブラリーまたは酵母ライブラリーであってもよく;
ここで同定ステップ(ii)は、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、不飽和鉄結合能(UIBC)、およびトランスフェリン飽和度からなる群より選択される鉄パラメータを測定するステップを含んでもよく、
さらに、ステップ(ii)は、ヘプシジン発現を測定するステップを含んでもよく、ここで前記ヘプシジン発現は、肝臓ヘプシジンレベルおよび/または血清ヘプシジンレベルであってもよく、
さらに、ステップ(ii)は、インビボで血清鉄レベルを上昇および/またはヘプシジン発現を抑制することが可能な中和抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップを含んでもよく、
さらに、前記医薬組成物は、静脈内または皮下投与のために製剤化されてもよく、
さらに、ステップ(i)は、RGMaおよびRGMbよりもRGMcに関して選択的に確認するステップを含んでもよい、
方法。
【請求項19】
対象における鉄障害を治療するための方法での使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、
RGMc特異的阻害剤は、RGMaおよびRGMbを阻害せず、ここで前記鉄障害は、前記対象において貧血を生じさせる、
RGMc選択的阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
この国際特許出願は、2018年10月23日に出願された米国仮出願番号62/749,469の利益および優先権を主張し、その内容は、それらの全体で参照により本明細書中に援用される。
【0002】
[本発明の分野]
本発明は概して、RGMcを特異的および選択的に阻害するがRGMaまたはRGMbを阻害しない、RGMc結合剤(例えば、抗体および抗原結合フラグメントを含む分子)に関する。
【背景技術】
【0003】
[背景]
鉄恒常性の異常は、治療が困難であり得る複数の疾患と関連する。かかる障害は、2つのカテゴリー:i)硬変、心筋症、糖尿病などを含む鉄過剰疾患;および、ii)鉄制限性の貧血、慢性疾患の貧血(「ACD」)などを含む鉄欠乏性疾患に広く分類することができる。
【0004】
ヘプシジンは、全身性鉄恒常性の主要な調節因子であり、その発現は主に肝臓に限定されている。ヘプシジンは、プロペプチドとして産生され、フューリンまたはフューリン様プロテアーゼによって成熟した活性ペプチドにプロセッシングされる。ヘプシジンは、その受容体フェロポーチン(唯一の細胞の鉄排出輸送体)に結合することによって鉄利用率を負に調節し、両者の内部移行および分解を引き起こす。したがって、ヘプシジンは、食物由来の鉄吸収のための主要な細胞(腸細胞)、ヘモグロビン鉄の再生(マクロファージ)および肝細胞からの貯蔵鉄の放出による鉄排出をブロックして、全身性の鉄利用率の減少をもたらす。全身性鉄恒常性におけるヘプシジンの中心的な役割は、その遺伝子の不活性化が、肝臓および膵臓における重度の鉄過剰と関連するという知見によってすぐに明確に認識された。
【0005】
BMP6およびBMP2発現が、マウスにおける鉄恒常性の維持に必要であることが示されている。骨形態形成タンパク質6および2(それぞれBMP6およびBMP2)はいずれも、鉄代謝/恒常性を含む様々な生物学的プロセスに関与することが知られる成長因子のTGFβスーパーファミリーのメンバーである。BMP6およびBMP2発現は、マウスにおける鉄恒常性の維持に必要であることが示されている。鉄調節に関与するという概念と一致して、BMP6の遺伝子機能障害は、重度の組織鉄過剰を引き起こす。同様に、BMP6突然変異は、遺伝性ヘマクロマトーシスを有する患者(実質の鉄過剰を特徴とする遺伝的障害の異種群)において見られている。
【0006】
BMP6は、I型およびII型セリントレオニンキナーゼ受容体(例えば、Alk2、Alk3、BMPR2、およびActRIIA)に結合する。さらに、BMP6は、その共受容体、反発性ガイダンス分子CすなわちRGMc(ヘモジュベリンまたはHJVとしても知られる)に直接結合することも示されている。BMP6がその受容体に結合して、次いで、HJV、HFE、TFR2、およびネオゲニンを含むより大きな多量体複合体が、細胞内SMADリン酸化を活性化し、それにより、核移行およびヘプシジン転写の増大を誘導する。したがって、BMP6/HJV/SMAD軸は、鉄状態に応答するヘプシジン発現の主要な調節因子である。
【0007】
化学療法によって誘導される貧血および慢性腎疾患の貧血のような貧血を含む臨床徴候の治療のために現在利用可能な治療は、静脈内鉄(例えば、鉄補給剤および輸血)および赤血球産生刺激剤(ESA)を含む。ESAの例は、エリスロポエチン(Epo);エポエチンα(Procrit/Epogen);エポエチンβ(NeoRecormon);ダルベポエチンα(Aranesp);および、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンβ(Mircera)を含む。これらの治療は最適以下であり、不要な副作用または有害事象、例えば、鉄過剰、心血管系および発がんのリスクとも関連し得る。
【0008】
鉄補給剤、例えばIV鉄を頻繁に摂取する貧血患者における鉄過剰は、危険な副作用である。過剰な体内の鉄は非常に毒性であり得て、複数の臓器に影響し得て、肝臓疾患、心疾患、糖尿病、ホルモン異常、および機能障害性免疫系などの様々な重篤な疾患をもたらす。同様に、輸血を受ける患者は、鉄過剰と関連する毒性のリスクがある。例えば、1単位の輸血血液は、およそ250mgの鉄を含む。非常に多くの輸血を受ける患者、とりわけ、重症型サラセミア、鎌状赤血球症、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、溶血性貧血、および難治性鉄芽球性貧血の患者であって、輸血依存性になり得る患者においては、輸血される赤血球による過剰鉄は、様々な組織において次第に蓄積して、罹患および死亡を引き起こす。したがって、治療によって誘導される体内の過剰鉄は、心血管系、胃腸系、免疫系、骨/軟骨系、生殖系、および腎臓系に対する毒性を含む重度の有害反応を引き起こし得る。IV鉄に対する追加または代替の治療選択肢として、ESA(例えば、AmgenによるEpogen(登録商標)などのEPO)療法が、患者におけるがん関連および化学療法によって誘導される貧血を患っている者を含む広範な患者集団に広く施されている。しかしながら逆説的に、前臨床および臨床試験は、ESA(例えば、EPO)が、がん患者において潜在的に腫瘍増殖を加速させて生存を脅かし得ることを示している。
【0009】
外因的に投与されるESAおよび鉄補給剤(例えば輸血)と関連するこれらの不要な副作用の少なくとも一部を回避する試みにおいて、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ(HIF-PH)が、内因性EPO産生を促進することを目的とする潜在的な治療的標的として大きな注目を得ている。この目的を達成するために、最近では、複数のHIF安定剤(例えば、HIF-PH阻害剤)が開発中である。これらは、例えば、roxadustat(Fibrogen)、daprodustat(GSK)、vadadustat(Akebia)およびmolidustat(Bayer)を含む。初期の効能データでは、ESA治療よりも優れたまたは劣らないことが示されたにもかかわらず、主な負の心血管イベントのリスクおよびがんリスクの増大に対して長期の不安が残る。特に、HIF軸は、幅広い本質的なインビボの生物学的機能(例えば血管新生)を調節するので、このパスウェイの全身的介入は、赤血球産生に対して意図された効果を超える望ましくない効果をもたらし得る。
【0010】
代替のアプローチとして、中和抗体を含むBMP6阻害剤が、貧血患者を治療する試みにおいて数社によって探求されている(例えば抗-BMP6抗体(例えば、WO2016/098079、Novartis;および、KY-1070、KyMab)。しかしながら、これらの阻害剤は、骨および軟骨の形成、卵巣機能、ならびに脂質代謝を含むBMP6シグナリングの他の側面を不利に調整するリスクがある。
【0011】
それとは別に、2015年の論文(The AAPS Journal 17(4):930-938)において、Boserら(AbbVie)は、2つの前臨床モデルを用いて、ヘプシジン調節不全と関連する貧血状態の治療において、RGMaおよびRGMc(すなわち、RGMa/c)の両方に結合する2つの抗体の治療的使用を記載しており、非選択的RGMa/c抗体によるインビボでの鉄の可動化の増大を示した。しかしながら、RGMaは、腫瘍抑制因子、ならびに免疫調整剤として機能することが推測されるが、RGMaパスウェイの阻害の潜在的な長期のリスクについてはこの論文では議論されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、鉄関連の疾患、特に、過剰なヘプシジンに起因する鉄抑制性の障害、例えば、慢性疾患の貧血(ACD)、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)および慢性腎疾患(CKD)の貧血のための改善された治療を提供する重大な未解決の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の発明者らは、潜在的な不要な全身性効果を最小限にしながら、鉄恒常性を調節するシグナリング経路をより特異的に阻害するために、より高いレベルの選択性を達成することの利益を認識した。その目的のために、本発明者らは、反発性ガイダンス分子c(RGMc)(ヘモジュベリン(HJV)またはヘマクロマトーシス2型タンパク質(HFE2)としても知られる)を特異的に標的化することにより、肝臓に選択的な様式でBMP6シグナリングを阻害することを探求した。その理由は、このようにして、RGMc選択的阻害剤が、他の生物学的機能に必要なさらなるパスウェイに影響する既存のアプローチと比較して改善された安全性プロファイルを達成しながら、鉄制限性の障害の治療に関する効能を提供し得るからであった。したがって、本開示に係るRGMc選択的阻害剤は、改善された安全性プロファイル(例えば、毒性または有害事象/効果の減少)、例えば、主な負の心臓イベント(例えば、脳卒中)のリスクの減少および/またはがん進行のリスクの減少を達成し得ると考えられる。有利に、RGMc選択的阻害剤は、外因的に投与される鉄(例えば、IV鉄または輸血)と関連する鉄過剰のリスクを減少させ得る。RGMc選択的阻害剤は、鉄制限性の貧血患者が、より少ない用量のESAおよび/または鉄補給剤の療法、例えば、より少ない頻度のIV鉄または輸血を必要とするのを可能にし得る。
【0014】
RGMcは、RGMクラスのタンパク質、すなわち、RGMa、RGMbおよびRGMcのメンバーである。RGMは、BMP6を含む成長因子のBMPクラスの複数のメンバーと相互作用することが報告されている。RGMcは、哺乳類において膜結合型および可溶型として発現され、BMP6軸内の鉄恒常性/代謝において役割を果たす。
【0015】
RGMaおよびRGMbはいずれも神経系および免疫系に見られ、一方で、RGMcは骨格筋に見られるが、主に肝臓に見られる。これらのファミリーメンバーのそれぞれは、大きな構造相同性を、特にそれらのBMP結合ドメインにわたって共有するが、それらの生理学的な役割はかなり異なる。RGMaおよびRGMbは、神経系生物学、免疫、炎症、血管新生、および増殖における役割を有することが報告されている。RGMaおよびRGMbとは異なり、RGMcの公知の機能は、主に肝細胞に局在化している。したがって、RGMaまたはRGMbに結合しないRGMc選択的抗体の同定は、BMP6生物学の肝臓特異的な調整に関する潜在性を提供し得る。
【0016】
したがって、RGMcは、BMP6のような特定のBMPに関する肝臓に発現される偏性共受容体であり、ヘプシジン発現を増大させ、その結果として鉄輸送を阻害する。換言すれば、RGMa、RGMb、およびBMP6よりも発現が限定的であるRGMcを標的化することによって、より組織特異的な効果が、オフターゲット効果を減少させながら達成され得る。この手法は、体全体にわたってRGMおよびBMP6機能を広く阻害することなく、鉄制限性の貧血および鉄過剰状態の両方を対処する潜在性を提供する。
【0017】
したがって、本発明は、RGMcの選択的な標的化が、直接的なBMP6拮抗薬およびRGMc/RGMa/RGMb非選択的阻害剤のような従来の手法と比較して効能および安全性(毒性の減少)の両方を達成するための有利な手法を提供するという認識を含む。有利に、RGMcに非選択的に結合する従来技術の抗体(例えば、PCT/US2012/069586を参照)とは異なり、本発明の抗体は、RGMaおよびRGMbよりもRGMcに選択的である。
【0018】
したがって、一態様では、本発明は、RGMcに選択的に結合するという点で特徴付けられる、RGMc特異的抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、ヒトRGMcに選択的に結合し、ヒトRGMaおよびヒトRGMbには結合しないか、または結合が減少する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、BMP(例えば、BMP6)とRGMcの相互作用を阻害または減少させる。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ネオゲニンとのRGMcの相互作用を阻害または減少させない。
【0019】
他の態様では、本発明は、RGMc上の特定の部分(単数または複数)に結合し、それによりRGMa/bよりもRGMcに対する特に有利な選択性を提供し得る、RGMc特異的抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。一部の実施態様では、本発明に包含されるRGMc特異的抗体は、ヒトRGMcの第1および/または第2の結合領域に結合し、ここで、第1の結合領域はα1ヘリックス・ドメイン内のYVSSTLSL(配列番号46)であり、第2の結合領域はα3ヘリックス・ドメイン内のFHSAVHGIEDL(配列番号47)である。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第1の結合領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し、および/または、第2の結合領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する。
【0020】
したがって、本開示は、YVSSTLSL(配列番号46)の1つまたは複数のアミノ酸残基を含み、さらに、FHSAVHGIEDL(配列番号47)の1つまたは複数のアミノ酸残基を含んでもよいエピトープに結合する、RGMc選択的抗体を提供する。
【0021】
本開示は、FHSAVHGIEDL(配列番号47)の1つまたは複数のアミノ酸残基を含み、さらにYVSSTLSL(配列番号46)の1つまたは複数のアミノ酸残基を含んでもよいエピトープに結合する、RGMc選択的抗体を提供する。
【0022】
一部の実施態様では、RGMc選択的抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の1つまたは複数のアミノ酸残基およびFHSAVHGIEDL(配列番号47)の1つまたは複数のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。
【0023】
他の態様では、本発明は、RGMc特異的抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで抗体は、その相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、および変異体によって定義される。例えば、抗体は、配列番号6~11、配列番号14~19、配列番号22~27、配列番号30~35、および配列番号38~43から選択される1つまたは複数のCDR配列を含んでよい。一部の実施態様では、それぞれのCDRは、対応するCDR配列と比較して、1、2、3、4、または、5個までのアミノ酸残基の変動を含む。
【0024】
他の態様では、本発明は、RGMc特異的抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで抗体は、その重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の配列によって定義される。例えば、一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12、配列番号20、配列番号28、配列番号36、または配列番号44に示されるアミノ酸を有する重鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号13、配列番号21、配列番号29、配列番号37、または配列番号45に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体は、本明細書において開示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域は、本明細書において開示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有する。
【0025】
他の態様では、本発明は、ヒトRGMcに対する結合に関して競合し、および/または本明細書において開示される抗体と同一のエピトープに結合する、RGMc特異的抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0026】
一部の実施態様では、本開示に係る好ましい抗体は、以下のプロファイルを有する:i)かかる抗体の作用機序は、抗体がRGMcに結合して、それにより、BMP6-ヘプシジンのシグナリング軸においてBMP6結合に直接競合するものである;ii)かかる抗体は、RGMaまたはRGMbよりもRGMcの選択的結合剤であり、好ましくは、検出可能な交差反応性を伴わない;iii)かかる抗体は、ヒトRGMc、齧歯類(マウスおよびラット)および非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル(cyno))に対して種交差反応性を示す;iv)かかる抗体は、1nM以下のKD(すなわち、KD≦1nM)、より好ましくは≦0.1nMの、ヒトRGMcに対する(好ましくは齧歯類にも)親和性を有する;v)かかる抗体は、24~48時間後(好ましくは24時間後)に、10mg/kgの用量またはより少ない用量(好ましくは5mg/kg以下、例えば、1mg/kg以下)で、1つまたは複数の適切な前臨床モデル(例えば、ラット)におけるインビボ効能を示す;および/または、vi)かかる抗体は、少なくとも50mg/mL、より好ましくは≧100mg/mLの溶解度での製剤化が可能である(潜在的な皮下投与のため)。特に好ましい実施態様では、上記基準(i)~(vi)の全てが満たされる。
【0027】
他の態様では、本明細書において開示される抗体を含んでいる医薬組成物、および、かかる抗体/組成物の治療的使用が提供される。かかる抗体および組成物は、ヒト対象におけるRGMcと関連する疾患を治療する方法において用いられ得る。一部の実施態様では、RGMcと関連する疾患は、貧血、例えば、鉄制限性の貧血(または機能性鉄欠乏症)である。一部の実施態様では、貧血は、鉄欠乏性貧血(IRIDA)、慢性疾患の貧血(ACD)、治療によって誘導される貧血(例えば、化学療法によって誘導される貧血)、がん関連の貧血、または慢性腎疾患(CKD)と関連する貧血であってよい。CKDは、透析依存性CKDであってよい。CKDは、非透析依存性CKDであってよい。
【0028】
一部の実施態様では、医薬組成物/抗体は、他の治療的薬剤(例えば、エリスロポエチン刺激剤、HIF安定剤、鉄補給剤、鉄輸血、抗がん剤、および/または抗炎症剤)を受けている患者または受けたことのある患者へ投与されてよい。一部の実施態様では、当該方法は、ESA、鉄補給剤または鉄輸血に関連する毒性を減少させる。
【0029】
したがって、貧血のための他の療法(例えば、エリスロポエチン刺激剤、HIF安定剤、鉄補給剤、鉄輸血、抗がん剤、および/または抗炎症剤)とともに用いられる場合、本明細書において開示されるRGMc選択的阻害剤は、その療法に関する必要性を低減させ得て、したがって、その療法の用量および/または頻度は減少され得る。
【0030】
一部の実施態様では、医薬組成物/抗体は、対象において、貧血のための他の療法(例えば、エリスロポエチン刺激剤、HIF安定剤、鉄補給剤、鉄輸血、抗がん剤、および/または抗炎症剤)とともに用いられた場合、貧血のより早い軽減を達成するために用いられ得る。
【0031】
一部の実施態様では、医薬組成物/抗体は、患者における輸血およびIV鉄のような鉄療法と関連する鉄過剰を減少させるために用いられ得る。
【0032】
一部の実施態様では、医薬組成物/抗体は、ESA反応性低下の貧血を感受性にさせるために用いられ得る。例えば、ESA療法を受けたことのある、CKDを有する患者のおよそ5~10%が、ESAに対する反応性低下(ESA抵抗性)を示す。本明細書において開示されるRGMc選択的阻害剤は、このタイプの貧血を、ESA療法に対してより応答性にさせるために用いられ得る。
【0033】
本発明によれば、本明細書中に包含されるRGMc選択的阻害剤は、以下:対象における血清鉄の増大、対象におけるヘプシジン発現の下方調節、対象におけるトランスフェリン飽和度の増大、対象における赤血球産生の増大、対象における不飽和鉄結合能(UIBC)の低減、対象における総鉄結合能(TIBC)の低減、および/または対象における血清フェリチンレベルの増大の、1つまたは複数を達成するのに効果的な量で、貧血の治療において用いることができる。
【0034】
他の態様では、本発明は、RGMc選択的阻害剤を含んでいる医薬組成物を作製する方法を提供し、当該方法は、i)RGMaおよびRGMbよりもRGMcに選択的に結合する能力に関して、抗体またはその抗原結合フラグメントを同定するステップ;ii)ステップ(i)に基づいて、RGMc活性をインビボで阻害/中和する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;および、iii)ステップ(i)と(ii)に基づいて、医薬組成物への製剤化に関して、阻害/中和抗体を選択するステップを含む。一部の実施態様では、作製方法は、さらにポジティブ選択のステップを含み、ネガティブ選択のステップを含んでもよい。一部の実施態様では、同定ステップ(ii)は、血清鉄、TIBC、UIBC、ヘプシジン発現、およびトランスフェリン飽和度からなる群より選択される鉄パラメータを測定するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】炎症/慢性疾患の貧血における、ヘプシジンと血清鉄レベルの間の関係を示す。図は、RGMc拮抗薬(例えば、RGMc特異的抗体)が、どのようにヘプシジンレベルを減少させ、血清鉄を増大させると予想されるのかについても示す。
【
図2】RGMa、RGMb、およびRGMcに対する第1世代のRGMc特異的抗体のOctet(登録商標)結合親和性を示すグラフである。
【
図3】
図3Aは、HepG2細胞を用いたインビトロBMP6活性アッセイの図である。BMP6活性の増大(平均±SD)は、抗体によって仲介される、RGMcに対するBMP6結合の阻害を示す。
図3Bは、SR-RC-AB3およびSR-RC-AB4の存在下でのBMP6活性の増大(平均±SD)を示す図である。高親和性の非特異的なRGM結合タンパク質をポジティブ・コントロールとして、ネガティブのアイソタイプ・コントロールとともに用いた。
【
図4】
図4Aは、RGMa-his(一価形態)またはRGMa-Fc(avid形態)に対する親和性成熟RGMc抗体の結合を示すグラフである。RGM01(高親和性の非特異的なRGM結合タンパク質)をポジティブ・コントロールとして用いた。
図4Bは、ヒトおよびマウスRGMc抗原の両方に対する交差反応性が、親和性成熟プロセスの全体にわたって維持されたことを示す。
【
図5】
図5Aは、インビトロBMP6アッセイにおける親和性成熟抗体のSR-RC-AB3ファミリーの活性(平均±SD)を示すグラフである。
図5Bは、インビトロBMP6アッセイにおける親和性成熟抗体のSR-RC-AB4ファミリーの活性(平均±SD)を示すグラフである。高親和性の非特異的なRGM結合タンパク質をポジティブ・コントロールとして、ネガティブのアイソタイプ・コントロールとともに用いた。
【
図6】
図6Aは、ラットにおける血清鉄レベル(平均±SD)に対する親和性成熟抗体の効果を示すグラフである。
図6Bは、ラットにおける非結合の(unbound)鉄結合能(UIBC)(平均±SD)に対する親和性成熟抗体の効果を示すグラフである。高親和性の非特異的なRGM結合タンパク質をポジティブ・コントロールとして、ネガティブのアイソタイプ・コントロールとともに用いた。有意性を、アイソタイプ・コントロールに対する1-way ANOVAによって判定した;
*p値<0.05、
**p値<0.01、
***p値<0.001。
【
図7】
図7Aは、SR-RC-AB8またはSR-RC-AB9(20mg/kg)の単回用量で処置した場合の、経時的な雌Sprague-Dawleyラットにおける血清鉄レベル(平均±SEM)を示すグラフである。アイソタイプ抗体をコントロールとして用いた。
図7Bは、PK/PD試験における血清鉄(上)およびUIBC(下)の測定(平均±SEM)を示し、ここで雌Sprague-Dawleyラットは、単回IV用量のSR-RC-AB8(0.6mg/kg~20mg/kg)が投与された(n=5~11匹の動物/群)。
図7Cは、
図7Bと同一の動物における抗体血清濃度(平均±SEM)を示す。
図7Dは、20mg/kgにおける抗体曝露(PK)と鉄パラメータ(PD)の間の関係を示す(全ての値は平均±SEMである)。
【
図8A】SR-RC-AB9 Fabの存在下での、RGMc領域AおよびBを表わすペプチドにおける、重水素取り込みの減少を示すグラフである。
【
図8B】RGMファミリータンパク質にわたって並べられた、重水素保護領域AおよびBのアミノ酸配列を示す。
【
図8C】BMP2存在下のRGMcの構造をモデル化する図解である。H/D交換保護領域AおよびBが強調されている。
【
図8D】SR-RC-AB9 fabエピトープをBMP2結合部位上にマップ化し、H/D交換保護領域B内の潜在的な接触残基を強調している図解である。
【
図8E】RGMa/b/cのαヘリックス1/2/3内のH/D交換保護領域Aの構造相同性を示し、RGMaおよびRGMbよりもRGMcに対するSR-RC-AB9特異性の潜在的な構造決定因子を強調している図解である。
【
図8F】RGMcの結合領域AおよびBの表面に及ぶことのできるCDR H1~H3を強調している、抗体のFabフラグメントの典型的な構造を示す図解である。
【
図9】
図9Aは、雌カニクイザル・マカクにおける、単回I.V.用量のSR-RC-AB8(10mg/kg)の後の経時的な血清鉄パラメータ(血清鉄およびUIBC、平均±SEM))を示す。
図9Bは、投与の10週後までの、SR-RC-AB8の平均血清濃度(平均±SEM)を示す。
図9Cは、抗体曝露(PK)と血清鉄パラメータ(PD)の間の関係を示す。全ての値は平均±SDである。
【
図10】
図10Aは、雌Lewisラットにおける慢性疾患の貧血(ACD)のPGPSモデルにおいて、SR-RC-AB8(20mg/kg)を単独またはエポエチン(epoietin)α(EPO)(10μg/kg)と組み合わせて毎週注入した、ベースライン(-3日目)からの血清鉄の変化(平均±SEM)を示す。
図10B(平均±SD)は、24日目における絶対的血清鉄レベルを示す。有意性を、ACDアイソタイプ・コントロールに対する1-way ANOVAによって判定した;
**p値<0.01。
図10Cは、SR-RC-AB8(20mg/kg)、EPO(10μg/kg)または両方の毎週の投与に応答した、ベースライン測定値(-3日目)からのヘモグロビンの変化(平均±SEM)を示す。24日目における絶対的ヘモグロビンレベル(平均±SD)を
図10Dに示す。有意性をACDアイソタイプ・コントロールに対する1-way ANOVAによって判定した;
**p値<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[定義]
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。これらの定義は、本開示の残部に照らして、当業者によって理解されるように読まれるべきである。別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらなる定義が、詳細な説明の全体にわたって示される。
【0037】
親和性:親和性は、分子(例えば抗体)の、そのリガンド(例えば抗原)に対する結合の強度である。それは典型的に、平衡解離定数(KD)によって測定および報告される。KDは、抗体の、抗体会合速度(「on rate」またはKon)(その抗原にどれくらい速く結合するか)に対する、抗体解離速度(「off rate」またはKoff)(その抗原からどれくらい速く解離するか)の比である。例えば、≦5nMの親和性を有する抗体は、適切なインビトロ結合アッセイ、例えば、バイオレイヤー干渉法(BLI)に基づくアッセイ(例えば、Octet(登録商標))、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイ(例えば、Biacore)および溶液平衡滴定に基づくアッセイ(例えば、Meso Scale DiscoveryまたはMDS)によって決定される、5nM以下のKD値(すなわち、5nM以上の親和性)を有する。
【0038】
貧血:貧血は、赤血球カウントまたはヘモグロビンが正常よりも少ない医学的状態である。男性については、貧血は典型的に、13.5グラム/100mlよりも低いヘモグロビンレベルとして定義され、女性については、12.0グラム/100mlよりも低いヘモグロビンとして定義される。貧血は、赤血球またはヘモグロビンの産生の低減、または損失の増大(通常は出血に起因する)もしくは赤血球の破壊によって引き起こされ得る。貧血は、例えば血清鉄パラメータを測定することによって診断され得て、それは、正常範囲から逸脱した場合に貧血を表わし得る。有用な鉄パラメータは、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、不飽和鉄結合能(UIBC)、およびトランスフェリン飽和度を含む。トランスフェリン飽和度は、血清鉄を総鉄結合能(TIBC)で割ることによって計算することができ、パーセンテージとして表される。
【0039】
慢性疾患の貧血:本明細書において用いられる用語「慢性疾患の貧血」または「ACD」は、別の症状の結果である貧血の形態を指す。かかる症状は、慢性の感染、慢性の免疫活性化、および/または悪性腫瘍(例えば、慢性腎疾患またはがん)と関連し得る。
【0040】
抗体:用語「抗体」は、本明細書中の他のどこかにさらに説明される、任意の天然起源、組み換え、改変または操作された免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン様構造、またはそれらの抗原結合フラグメントもしくは部分、またはそれらの誘導体を包含する。したがって、その用語は、標的抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指し、例えば、キメラ、ヒト化、完全ヒト、および二重特異性抗体を含む。無傷の抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含むが、場合によっては、重鎖のみを含み得るラクダ類の天然起源抗体のように、より少ない鎖を含んでよい。抗体は、単一の由来単独から得てよく、または、「キメラ」であってよく、すなわち、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してよい。抗体、またはその抗原結合部分は、組み換えDNA技術によって、または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって、ハイブリドーマにおいて産生され得る。本明細書において用いられる用語「抗体」は、それぞれ、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書において「抗体模倣物」と呼ぶことがある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物(本明細書において「抗体コンジュゲート」と呼ぶことがある)を含む。一部の実施態様では、その用語は、ぺプチボディも包含する。
【0041】
抗原:用語「抗原」は、抗体またはフラグメントが特異的に結合する結合領域(単数または複数)内の抗原性決定因子を含んでいる任意の分子を広く含む。抗原は、単一単位分子(例えばタンパク質単量体またはフラグメント)、または、複数の構成要素で構成される複合体であってよい。抗原は、選択的結合剤、例えば抗原結合タンパク質(例えば抗体を含む)による結合が可能な、エピトープ、例えば、分子もしくは分子の部分、または、分子もしくは分子の部分の複合体を提供する。したがって、選択的結合剤は、複合体において2以上の構成要素によって形成される抗原に特異的に結合し得る。一部の実施態様では、抗原は、その抗原に結合することが可能な抗体を産生するために動物において用いられ得る。抗原は、異なる抗原結合タンパク質、例えば抗体と、相互作用することが可能な1つまたは複数のエピトープを保有してよい。
【0042】
抗原結合部分/フラグメント:本明細書において用いられる用語、抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」は、抗原(例えば、RGMc/HJV)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。抗原結合部分は、限定されないが、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然起源の、酵素的に得ることのできる、合成の、または遺伝学的に操作された、ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。一部の実施態様では、抗体の抗原結合部分は、例えば、抗体の可変(定常でもよい)ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む、タンパク質分解または組み換え遺伝子工学技術のような任意の適切な標準的技術を用いて、完全な抗体分子から取得してよい。抗原結合部分の非限定的な例は、(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント);(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子(例えば、Bird et al.(1988)SCIENCE 242:423-426;およびHuston et al.(1988)PROC.NAT’L.ACAD.SCI.USA 85:5879-5883を参照);(vi)dAbフラグメント(例えば、Ward et al.(1989)NATURE 341:544-546を参照);および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR))を含む。単鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディも包含される。抗体の抗原結合部分という用語は、他には、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)およびリンカーを含んでいる「scFab」として知られる「単鎖Fabフラグメント」を含み、ここで、前記抗体ドメインおよび前記リンカーは、N末端からC末端の方向で、以下の順番の1つ:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1またはd)VL-CH1-リンカー-VH-CLを有し;ここで前記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32~50個のアミノ酸のポリペプチドである。
【0043】
結合領域:本明細書において用いられる「結合領域」は、抗体またはそのフラグメントに結合した場合に、抗体と抗原の相互作用の界面を形成することのできる抗原の部分である。抗体結合の際、結合領域は、表面露出から保護されて、それは、水素重水素交換質量分析(HDX-MS)のような適切な技術によって検出することができる。抗体と抗原の相互作用は、複数(例えば2以上)の結合領域を介して仲介され得る。結合領域は、抗原性決定因子、すなわちエピトープを含んでよい。
【0044】
バイオレイヤー干渉法(BLI):BLIは、例えば、バイオセンサーチップ表面上に固定化されたリガンドと溶液中の分析物の間の、生体分子の相互作用を光学的に測定するための、標識フリーの技術であり、抗体の親和性のリアルタイムの測定が可能である。BLIは、結合特異性、会合速度(例えば、「on」rate)および解離速度(例えば、「off」rate)、または濃度を、精密および正確にモニターする能力を提供する。BLIプラットフォーム機器は、例えばForteBioによって市販され、一般にOctet(登録商標)Systemと呼ばれる。
【0045】
BMP6/BMP-6:本明細書において用いられる用語「骨形成タンパク質6」、「BMP6(またはBMP-6)」、「VGR」、および「VGR1」は全て、共受容体としてRGMc分子と相互作用するタンパク質の骨形態形成ファミリーのメンバーであるタンパク質を指し、例えば、ヒトBMP6アクセッション番号NP_001709である。
【0046】
がん関連の貧血:用語「がん関連の貧血」またはCRAは、「がんと関係がある貧血」とも呼ばれ得て、がんの存在と関連する、がんの存在によって引き起こされる、および/または、がんの存在によって悪化される、貧血を意味する。
【0047】
化学療法によって誘導される貧血:用語「化学療法によって誘導される貧血」、またはCIAは、「化学療法と関係がある貧血」とも呼ばれ、治療によって誘導される貧血の1つのタイプであり、化学療法によって引き起こされる、および/または、化学療法によって悪化される、貧血を指す。本開示の文脈における用語「化学療法」は、患者におけるがんの治療(例えば、悪性細胞の死滅化)を目的とする、任意の抗がん剤、薬物および治療を包含し、それは、造血を減じさせるものである。
【0048】
慢性腎疾患:用語「慢性腎疾患」(CKD)は、何ヶ月から何年もの期間にわたって腎機能が徐々に失われる腎疾患を指す。例えば、かかる腎疾患は、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎、および多発性嚢胞腎疾患によって引き起こされ得る。CKDは、腎細胞によるエリスロポエチン(EPO)の不十分な産生と関連し、それにより、骨髄において産生される赤血球がより少なくなり、最終的に貧血をもたらす。
【0049】
臨床利益:本明細書において用いられる用語「臨床利益」は、療法の効能および安全性の両方を含むことが意図される。したがって、望ましい臨床利益を達成する治療的処置は、有効かつ安全である(例えば、耐容または許容できる毒性または有害事象を有する)。
【0050】
併用療法:「併用療法」は、2以上の治療的薬剤を含む臨床徴候のための治療レジメンを指す。したがって、その用語は、第1の組成物(例えば、活性成分)を含んでいる第1の療法が、第2の組成物(活性成分)を含んでいる第2の療法とともに対象に施される治療的レジメンを指し、同一または重複する疾患または臨床状態を治療することが意図される。第1および第2の組成物はいずれも同一の細胞標的、または別々の細胞標的に対して作用し得る。語句「とともに」は、併用療法の文脈において、併用療法を受ける対象において第1の療法の治療的効果が第2の療法の治療的効果と時間的および/または空間的に重複することを意味する。したがって、併用療法は、治療の同時的な投与のための単一の製剤として、または連続的な投与のための別個の製剤として、製剤化されてよい。
【0051】
組合せ(Combinatory)またはコンビナトリアル(combinatorial)エピトープ:コンビナトリアル・エピトープは、抗原の構成要素(単数または複数)の非連続部分によって形成されていて、三次元構造において、ごく接近してエピトープを形成する部位(すなわち、抗原性決定因子)における、コンビナトリアル抗体によって認識および結合されるエピトープである。コンビナトリアル・エピトープは、不連続エピトープとも呼ばれる。したがって、本発明の抗体は、RGMcの2以上の構成要素(例えば、部分または区分)によって形成されたエピトープに結合してよい。組合せエピトープは、RGMcの第1の部分/構成要素由来のアミノ酸残基(単数または複数)およびRGMcの第2の部分/構成要素由来のアミノ酸残基(単数または複数)などを含んでよい。それぞれの部分/構成要素は、抗原性複合体の単一のタンパク質または2以上のタンパク質のものであってよい。組合せエピトープは、抗原または抗原複合体の2以上の構成要素(例えば部分または区分、例えばアミノ酸残基)による構造寄与によって形成される。
【0052】
競合または交差競合:用語「競合する」は、同一のエピトープに関して競合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)の関連において用いられる場合、抗原結合タンパク質が試験されるアッセイによって判定される抗原結合タンパク質間の競合が、共通抗原(例えば、RGMcまたはそのフラグメント)への参照抗原結合タンパク質の特異的な結合を妨げること、または阻害する(例えば減少させる)ことを意味する。ある抗原結合タンパク質が他と競合するかどうか決定するために、非常に多くのタイプの競合結合アッセイ、例えば:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ;固相直接ビオチン-アビジンEIA;固相直接標識アッセイ、および固相直接標識サンドイッチアッセイを用いることができる。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、共通抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的な結合を、少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%または75%以上阻害する(例えば減少させる)。場合によっては、結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、または97%以上阻害される。一部の実施態様では、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントおよび第2の抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、BiacorまたはOctetによって、例えば製造元の説明書に従って標準的な試験条件を用いてアッセイして(例えば、結合は、室温、約20~25℃でアッセイされる)、同一抗原に関して互いに交差阻害(cross-block)する。一部の実施態様では、第1の抗体またはそのフラグメントおよび第2の抗体またはそのフラグメントは、同一のエピトープを有してよい。他の実施態様では、第1の抗体またはそのフラグメントおよび第2の抗体またはそのフラグメントは、同一ではないが重複するエピトープを有してよい。さらなる実施態様では、第1の抗体またはそのフラグメントおよび第2の抗体またはそのフラグメントは、三次元空間において極めて接近している別個の(異なる)エピトープを有してよく、それにより、立体障害を介して抗体結合が交差阻害される。「交差阻害」は、抗原への第1の抗体の結合が、同一抗原への第2の抗体の結合を妨げ、同様に、抗原への第2の抗体の結合が、同一抗原への第1の抗体の結合を妨げることを意味する。
【0053】
相補性決定領域:本明細書において用いられる、用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれにおいて3つのCDRが存在し、可変領域のそれぞれに関して、CDR1、CDR2およびCDR3と指定される。本明細書において用いられる用語「CDRセット」は、抗原に結合することのできる単一の可変領域内に生じる3つのCDRのグループを指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムによって異なって定義されている。Kabatによって記載されるシステム(Kabat et al.(1987;1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.)は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明白な残基ナンバリングシステムを提供するだけでなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれ得る。Chothiaおよび共同研究者(Chothia&Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;およびChothia et al.(1989)Nature 342:877-883)は、Kabat CDR内の特定のサブ部分が、アミノ酸配列レベルで高い多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド主鎖コンフォメーションを取ることを見いだした。これらのサブ部分は、L1、L2およびL3またはH1、H2およびH3と指定された(ここで「L」および「H」は、それぞれ軽鎖領域および重鎖領域を指定する)。これらの領域は、Chothia CDRと呼ばれ得て、Kabat CDRと重複する境界を有する。Kabat CDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan(1995)FASEB J.9:133-139およびMacCallum(1996)J.Mol.Biol.262(5):732-45によって記載されている。さらに他のCDR境界の定義は、本明細書におけるシステムの1つに厳密に従わなくてよいが、それでもなおKabat CDRと重複するが、特定の残基もしくは残基群またはCDR全体でさえも抗原結合に著しく影響を与えないという予測または実験的知見に照らすと、それらは短くまたは長くされ得る。本明細書において用いられる方法は、任意のこれらのシステムに従って定義されるCDRを利用し得るが、特定の実施態様は、KabatまたはChothiaによって定義されたCDRを用いる。
【0054】
立体構造的エピトープ:立体構造的エピトープは、三次元コンフォメーションで立体構造的抗体によって認識および結合されるが、同一のアミノ酸配列の折りたたまれていないペプチドでは認識および結合されないエピトープである。立体構造的エピトープは、コンフォメーション特異的エピトープ、コンフォメーション依存性エピトープ、またはコンフォメーション感受性エピトープと呼ばれ得る。そのようなエピトープに特異的に結合する対応する抗体またはそのフラグメントは、コンフォメーション特異的抗体、コンフォメーション選択的抗体、またはコンフォメーション依存性抗体と呼ばれ得る。立体構造的エピトープへの抗原の結合は、抗原または抗原複合体の三次元構造(コンフォメーション)に依存する。
【0055】
定常領域:免疫グロブリン定常ドメインは、重鎖または軽鎖定常ドメインを指す。ヒトIgG重鎖および軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当技術分野で知られている。
【0056】
有効量:「有効量」(または治療的有効量)は、患者集団において統計的に有意な臨床利益を達成する用量または投与レジメンである。
【0057】
エピトープ:用語「エピトープ」は、抗原性決定因子とも呼ばれてよく、結合剤、免疫グロブリンまたはT細胞受容体によって特異的に結合され得る、分子決定因子(例えば、ポリペプチド決定因子)である。エピトープ決定因子は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルのような分子の化学的に活性の表面グループを含み、特定の実施態様では、特定の三次元構造の特性、および/または特定の電荷特性を有してよい。抗体または抗体の抗原結合フラグメントによって認識されるエピトープは、抗体またはフラグメントのCDR(例えば相補部位)と相互作用する抗原の構造要素である。エピトープは、数個のアミノ酸残基の寄与によって形成されてよく、それが抗体のCDRと相互作用して、特異性を生じさせる。抗原性フラグメントは、1つよりも多いエピトープを含んでよい。特定の実施態様では、抗体は、タンパク質および/または高分子の複合体混合物におけるその標的抗原を認識する場合に、抗原に特異的に結合すると言われる(is the to)。例えば、抗体は、抗体が交差競合する(一方が、他方の結合または調整効果を妨げる)場合、「同一のエピトープに結合する」と言われる。
【0058】
赤血球産生刺激剤:本明細書において用いられる用語「赤血球産生刺激剤」または「ESA」は、骨髄が赤血球を産生するように刺激する薬物を指す。エリスロポエチンまたはEPOは、ESAの1つの例であり、エリスロポエチンα、δ、ω、およびζを含んでよく、エリスロポエチンの操作された形態、例えば、ダルベポエチンαを含む。用語「EPO療法」は、1つまたは複数のESA薬剤を用いる療法を広く包含するために用いられ得る。
【0059】
ヒト抗体:本明細書において用いられる用語「ヒト抗体」(または「完全ヒト抗体」)は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本開示のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3内に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボで体細胞突然変異によって、導入された突然変異)を含んでよい。しかしながら、本明細書において用いられる用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列中にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0060】
ヒト化抗体:用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例えば、マウス)由来の重鎖および軽鎖可変領域配列を含むが、VHおよび/またはVL配列の少なくとも一部は、より「ヒト様」に、すなわち、ヒト生殖細胞系可変配列により似ているように変更されている抗体を指す。ヒト化抗体の1つのタイプは、CDRグラフト抗体であり、ヒトCDR配列が非ヒトVHおよびVL配列内に導入されて、対応する非ヒトCDR配列を置き換える。また、「ヒト化抗体」は、目的の抗原に免疫特異的に結合する抗体、またはその変異体、誘導体、アナログまたはフラグメントであり、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するFR領域および実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有するCDR領域を含む。本明細書において用いられる、CDRの文脈における用語「実質的に」は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的に2つの、可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的に全てを含み、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。一実施態様では、ヒト化抗体は、免疫グロブリンFc領域(典型的にヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部も含む。一部の実施態様では、ヒト化抗体は、軽鎖、ならびに、重鎖の少なくとも可変ドメインを含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域も含んでよい。一部の実施態様では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含む。一部の実施態様では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含む。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメインおよび/またはヒト化重鎖のみを含む。
【0061】
水素/重水素交換質量分析(HDX-MS):HDX-MSは、溶媒露出度の程度を測定することによって溶液中のタンパク質の確認(confirmation)およびタンパク質間相互作用を調べるために用いられるよく知られた技術である。例えば、Wei et al.,(2014)Drug Discov Today 19(1):95-102.「Hydrogen/deuterium exchange mass spectrometry for probing higher order structure of protein therapeutics:methodology and applications.」を参照。
【0062】
低酸素誘導因子(HIF)安定剤:HIFプロリル-ヒドロキシラーゼ(HIF-PH)阻害剤は、HIF(例えば、HIF-2α)を安定化することができ、それにより、エリスロポエチン(EPO)のインビボでの内因性の産生を増大させ得る。これらの薬剤は、「HIFアクチベーター」と呼ばれてもよい。HIF安定剤の例は、限定されないが:Roxadustat(FG-4592);Vadadustat(AKB-6548)、Daprodustat(GSK1278863)、Dsidustat(ZYAN-1)、Molidustat(Bay 85-3934);MK-8617、YC-1、IOX-2、2-メトキシエストラジオール、GN-44028、AKB-4924、Bay 87-2243、FG-2216およびFG-4497を含む。
【0063】
鉄療法:本明細書において用いられる「鉄療法」は、鉄補給剤(例えば、経口または静脈内投与(i.v.)の鉄)を含む治療的処置を指す。
【0064】
単離された:本明細書において用いられる「単離された」抗体は、異なる抗原性特異性を有する他の抗体から実質的にフリーである抗体を指す。一部の実施態様では、単離された抗体は、他の意図しない細胞物質および/または化学物質から実質的にフリーである。
【0065】
力価(Potency):本明細書において用いられる用語「力価」は、規定の効果を生じる薬物の濃度または量に関する、薬物(例えば、阻害活性を有する阻害抗体(またはフラグメント))の活性を指す。例えば、所定の用量で特定の効果を生じることが可能な抗体は、同等の効果を生じるために2倍の量(用量)を必要とする他の抗体よりも、強力(potent)である。力価は、例えば、本明細書において記載されるように、BMP6活性化/阻害アッセイのようなインビトロアッセイによって測定され得る。力価は、本明細書において記載されるように、ヘプシジン発現、血清鉄、フェリチン発現、および鉄結合能を測定するもののようなインビボアッセイによっても測定され得る。典型的に、より高い親和性を有する抗体は、より低い親和性を有する抗体よりも高い力価を示す傾向がある。
【0066】
(溶媒曝露からの)保護:タンパク質間相互作用(例えば抗体抗原結合)のHDX-MSに基づく評価の関連において、タンパク質(例えば、エピトープを含んでいるタンパク質の領域)が溶媒に曝露されて、それによりプロトン交換を生じさせる程度は、結合/相互作用の程度と逆相関である。したがって、本明細書中に記載の抗体が抗原の領域に結合する場合、タンパク質間相互作用によって、結合領域に周囲溶媒がアクセスするのを妨げるので、結合領域は、溶媒に対する曝露から「保護」される。したがって、保護領域は、相互作用の部位を表わしている。典型的に、適切な溶媒は生理学的バッファーである。
【0067】
RGM:本明細書において用いられる「RGM」は、反発性ガイダンス分子ファミリーに属するタンパク質のクラスを指す。
【0068】
RGMc:本明細書において用いられる用語「反発性ガイダンス分子C」、「RGMc」、「ヘモジュベリン」、「HJV」、「ヘマクロマトーシス2型タンパク質」、および「HFE2A」は全て、共受容体としてBMP分子と相互作用するタンパク質の反発性ガイダンス分子ファミリーのメンバーであるタンパク質を指し、例えば、ヒトRGMcアクセッション番号NP_998818;配列番号1である。
【0069】
RGMcと関係がある障害:「RGMcと関係がある障害」は、i)病因および/または進行の少なくとも一部がRGMcシグナリングまたはその調節不全に起因し得る任意の疾患または障害、および/または、ii)RGMcの阻害が臨床利益を提供し得る症状を意味する。RGMc障害は、例えば:炎症/慢性疾患と関連する貧血(例えば、キャッスルマン症候群、慢性腎疾患、糖尿病、心不全/心疾患、特発性自己免疫性溶血性貧血、特発性肺動脈性高血圧、炎症性腸疾患、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、全身性若年性特発性関節炎)、がん/増殖性障害と関連する貧血(例えば、急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、頭頚部がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、および腎がん)、感染と関連する貧血(例えば、心内膜炎、ヘリコバクター・ピロリ感染、肝炎、ヒト免疫不全ウイルス、マラリア)、神経障害と関連する貧血(例えば、急性虚血性脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、限局性脳虚血/再灌流、頭蓋内脳出血、およびくも膜下出血)、治療によって誘導される、または治療と関係がある貧血(例えば、抗生物質によって誘導される、肥満外科的処置と関係がある、化学療法によって誘導される、二次的な鉄過剰)、遺伝的障害または他の状態と関連する貧血(例えば、年齢と関係がある(高齢者の貧血)、重病の貧血、外科的処置の貧血、失血/出血、カルシフィラキシー、セリアック病、銅欠乏症、ファンコニー貧血、遺伝性ヘマクロマトーシス(4型)、遺伝性球状赤血球症、IRIDA、肥満、臓器移植、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球貧血、スポーツ/エクササイズによって誘導される貧血、サラセミア、血栓性血小板減少性紫斑病)を含んでよい。
【0070】
RGM阻害剤:用語「RGM阻害剤」または「RGM拮抗薬」は、RGM(例えば、RGMa、RGMb、および/またはRGMc)の生物学的活性または機能に拮抗することが可能な任意の薬剤を指す。その用語は、その作用機序を限定することを意図せず、例えば、中和抗体、競合阻害剤、受容体拮抗薬、フューリンおよび/またはTMPRSS6切断エンハンサー、および可溶性RGMペプチドを含む。
【0071】
RGMc選択的阻害剤:用語「RGMc選択的」(または「RGMc特異的」)阻害剤は、RGMaおよびRGMbよりもRGMcの生物学的活性または機能を選択的に拮抗することが可能な薬剤(小分子および生物製剤、例えば、抗体を含む)を指す。明確性のために、RGMaおよびRGMcの両方に結合および阻害/中和するモノクローナル抗体は、RGMc選択的阻害剤ではない。
【0072】
特異的結合:本明細書において用いられる用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、抗原と抗体またはその抗原結合フラグメントの相互作用が、特定の構造(例えば、抗原性決定因子またはエピトープ)の存在に依存していることを意味する。例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、タンパク質一般ではなく、特定のタンパク質に結合する。
【0073】
一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、抗体の標的に関するKDが、少なくとも、約10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、またはそれよりも低い場合に、標的、例えば、RGMcに特異的に結合する。一部の実施態様では、本明細書において用いられる用語「RGMcのエピトープに対する特異的な結合」、「RGMcのエピトープに特異的に結合する」、「RGMcに対する特異的な結合」、または「RGMcに特異的に結合する」は、RGMcに結合し、適切なインビトロ結合アッセイ、例えば表面プラズモン共鳴およびバイオレイヤー干渉法(BLI)によって判定して1.0×10-7Mまたはそれよりも低い解離定数(KD)を有する、抗体、またはその抗原結合フラグメントを指す。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、RGMcのヒトおよび非ヒト(例えば、マウス)相同分子種の両方に特異的に結合し得る。例えば、一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒト、マウス、ラット(rate)および/またはカニクイザルのRGMcに対する交差反応性の違いが5倍未満である。
【0074】
抗体、またはその抗原結合フラグメントは、他のRGMファミリーメンバー(例えば、ヒトRGMaおよびヒトRGMb)と低い交差反応性を有してもよい。したがって、一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトRGMaおよび/またはヒトRGMbよりも高い親和性でヒトRGMcに結合する(すなわち、交差反応性が低い)。例えば、一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトRGMaおよび/またはヒトRGMbよりも少なくとも1000倍高い親和性(すなわち、1000倍低いKD)で、ヒトRGMcに結合する。
【0075】
対象:治療的適用の文脈における用語「対象」は、臨床ケアまたは介入、例えば治療、診断などを受ける個体を指す。適切な対象は、制限されないが、哺乳類(例えば、ヒトおよび非ヒト哺乳類)を含む脊椎動物を含む。対象がヒト対象である場合、用語「患者」は相互交換可能に用いられてよい。臨床文脈では、用語「患者集団」または「患者亜集団」は、臨床基準のような基準(例えば、症状(disease presentations)、疾患ステージ、特定の状態に対する感受性、治療に対する反応性など)、病歴、健康状態、性別、年齢群、遺伝子基準(例えば、特定の突然変異、多型、遺伝子重複、DNA配列反復などのキャリア)およびライフスタイル因子(例えば、喫煙、アルコール消費量、運動など)のセットに入る個体の群を指すために用いられる。
【0076】
表面プラズモン共鳴(SPR):表面プラズモン共鳴は、標識していない相互作用物をリアルタイムで検出することが可能な光学的現象である。Biacoreによって市販されるもののようなSPRに基づくバイオセンサーを用いて、抗原抗体結合のようなタンパク質間相互作用を含む、生体分子の相互作用を測定することができる。その技術は当技術分野で広く知られており、結合親和性、運動速度定数および熱力学のようなパラメータの決定に有用である。
【0077】
総鉄結合能:本明細書において用いられる用語「総鉄結合能」、「TIBC」、または「トランスフェリン鉄結合能」は、鉄をトランスフェリンと結合させる血液の能力を測定する実験試験を指す。TIBCは、血液が運搬することのできる鉄の最大量を測定することによって決定され、それはトランスフェリンの間接的な測定である。典型的に、TIBCは、血清鉄および血清不飽和鉄結合能(UIBC)を測定することによって計算されて、その2つの値が足される。あるいは、TIBCは、過剰量の鉄をサンプルに加えて、結合しない鉄を除去して、トランスフェリンから解離した鉄を測定することによって、直接測定することができる。一般に、TIBCの「正常な」範囲は、例えば、255~450ug/dL)であるが、測定値は集団の間で異なってよい。
【0078】
毒性:本明細書において用いられる用語「毒性(単数または複数)」は、患者に施された療法と関連する患者における不要なインビボ効果、例えば、望ましくない副作用および有害事象を指す。「耐容性」は、毒性のせいで療法を中断せずに患者によって合理的に耐容され得る、療法または治療的レジメンと関連する毒性のレベルを指す。本開示の文脈において、毒性は、限定されないが:死亡、不利な心血管系の応答および/または脳卒中に関するより高いリスク(慢性腎疾患(CKD)などの慢性疾患と関連し得る)、および、全生存期間の短縮、がん患者における腫瘍進行または再発のリスク増大を含んでよい。
【0079】
治療する(Treat)/治療(treatment):用語「治療する」または「治療」は、治療的治療、予防的治療、および、対象が障害または他の危険因子を発症するリスクを減少させる適用を含む。したがって、その用語は、例えば、体の免疫を高めるまたはブーストすることによって;免疫抑制を減少または反転させることによって;体から有害な細胞または物質を減少、除去または根絶させることによって;疾患負荷(例えば、腫瘍負荷)を減少させることによって;再発またはぶり返しを防止することによって;不応期を延長させることによって、および/または、他の方法で生存を改善することによって、患者において治療的利益を引き起こすことを広く意味することが意図される。その用語は、治療的治療、予防的治療、および、対象が障害または他の危険因子を発症するリスクを減少させる適用を含む。治療は、障害の完全な治癒を必要とせず、症候または根底にある危険因子を減少させる実施態様を包含する。併用療法の文脈において、その用語は、i)第2の治療が、第1の治療の効果的な用量を減少させて、それにより副作用を減少させて耐容性を増大させる能力;ii)第2の療法が、第1の療法に対して患者をより応答性(例えば感受性)にさせる能力;iii)相加的または相乗的な臨床利益を実現する能力;および/または、iv)軽減(例えば、治療的利益)のより早い発生を達成する能力を指してもよい。
【0080】
非結合の(unbound)鉄結合能:本明細書において用いられる用語「非結合の(unbound)鉄結合能」または「UIBC」は、トランスフェリンの利用可能な鉄の結合能の量を指す。UIBCは、しばしば、TIBCと血清鉄の量との間の違いを評価することによって計算される。あるいは、UIBCは、公知量の過剰鉄をサンプルに添加して、残っている非結合の鉄を引くことによって、直接計算することができる。一般に、測定値は集団または個体の間で異なってよいが、UIBCに関する「正常の」範囲は、例えば、120~470ug/dL(21~84umol/L)である。
【0081】
可変領域:用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の軽鎖および/または重鎖の部分を指し、典型的に、重鎖内のおよそアミノ末端120~130アミノ酸および軽鎖内の約100~110アミノ末端アミノ酸を含む。特定の実施態様では、異なる抗体の可変領域は、同一種の抗体の間でさえ、アミノ酸配列が広範囲に異なる。抗体の可変領域は典型的に、その標的に関する特定の抗体の特異性を決定する。
【0082】
実施例以外、または別段の指示がない場合、本明細書中で用いられる成分の量または反応条件を表わす全ての数字は、全ての例において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。
【0083】
明細書および特許請求の範囲において、本明細書において用いられる不定冠詞「a」および「an」は、明確に逆が指示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0084】
明細書および特許請求の範囲において、本明細書において用いられる語句「および/または」は、そのように結合されたエレメントの「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合では分離して存在するエレメントを意味すると理解されるべきである。「および/または」節によって明確に特定されるエレメント以外の他のエレメントは、明確に逆が指示されない限り、具体的に特定されるこれらのエレメントと関係するまたは関係しないにかかわらず、存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」という言及は、「含む(comprising)」のようなオープンエンド言語とともに用いられる場合、一実施態様では、Bを伴わずにAを指してよく(B以外のエレメントを含んでもよい);別の実施態様では、Aを伴わずにBを指してよく(A以外のエレメントを含んでもよい);さらに別の実施態様では、AおよびBの両方を指してよい(他のエレメントを含んでもよい);などである。
【0085】
明細書および特許請求の範囲において、本明細書において用いられるように、1つまたは複数のエレメントのリストに対する言及における語句「少なくとも1つ」は、エレメントのリスト内の任意の1つまたは複数のエレメントから選択される少なくとも1つのエレメントを意味すると理解されるべきであるが、エレメントのリスト内に具体的に挙げられる1つ1つのエレメントの少なくとも1つを必ずしも含むのではなく、エレメントのリスト内のエレメントの任意の組み合わせを除外しない。この定義は、語句「少なくとも1つ」が指すエレメントのリスト内に具体的に特定されるエレメント以外のエレメントが(具体的に特定されるこれらのエレメントに関係するまたは関係しないにかかわらず)存在してもよいことも許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施態様では、少なくとも1つの(1つよりも多くを含んでもよい)Aを、Bは存在せずに指してよく(B以外のエレメントを含んでもよい);別の実施態様では、少なくとも1つの(1つよりも多くを含んでもよい)Bを、Aは存在せずに指してよい(A以外のエレメントを含んでもよい);さらに別の実施態様では、少なくとも1つの(1つよりも多くを含んでもよい)A、および、少なくとも1つの(1つよりも多くを含んでもよい)B(他のエレメントを含んでもよい);などを指してよい。
【0086】
請求項エレメントを修飾するための特許請求の範囲における、順序を表わす用語、例えば、「第1」、「第2」、「第3」などの使用は、それ自体では、一方のクレームエレメントの他方に対するいかなる優先、先行、もしくは順序、または方法の行為が行なわれる時間的順序を含意しないが、請求項エレメントを区別するために、特定の名称を有する一方の請求項エレメントを、(順序を表わす用語を使用しなければ請求項エレメントを区別できない)同一の名称を有する別のエレメントから、区別するためのラベルとして単に用いられる。
【0087】
本明細書において提供される範囲は、範囲内の全ての値に関する省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または、サブ範囲、例えば、10~20、1~10、30~40などを含むと理解される。
【0088】
[BMP6/ヘプシジン軸を介した鉄恒常性の調節]
ヘプシジンは、肝臓によって分泌される小ペプチドであり、体内の鉄恒常性の中心的な調節因子である。その主な機能は、3つの主な由来(十二指腸の腸細胞を通した食物由来の鉄の吸収、再生赤血球からのヘモグロビン鉄の放出、および、肝細胞からの貯蔵鉄の放出)による、細胞から血液の血漿区画への鉄の輸送を阻害することである。鉄の調節は、十二指腸の腸細胞、肝臓および脾臓に常在性の細網内皮系マクロファージ、および肝細胞の表面上にある鉄排出輸送体フェロポーチンの、ヘプシジン介在性の分解によって達成される。フェロポーチンが分解されるので、マクロファージおよび十二指腸の腸細胞は、もはや鉄を血中に放出することができず、その結果として、トランスフェリンへの鉄運搬は減少する。したがって、
図1に示されるように、ヘプシジンの発現が増大すると、鉄排出は低減する。反対に、ヘプシジンの発現が低減すると、鉄排出は増大する。したがって、正常なヘプシジン産生を狂わす遺伝性および後天性の障害は、鉄欠乏(高レベルのヘプシジン)または鉄過剰(ヘプシジン欠乏)をもたらし得る。
【0089】
鉄恒常性を維持する主な因子として、ヘプシジン合成が、細胞内および細胞外鉄濃度、赤血球形成の需要(erythropoeitic demand)、および炎症を含むいくつかの刺激によって、転写的に調節される。健康な個体では、ヘプシジンは、鉄調節複合体内の調和(coordinating)タンパク質のグループの活性に起因して恒常レベルで維持される。遺伝子突然変異が組織/臓器毒性を伴って過剰の食物由来鉄吸収および周辺における貯蔵を引き起こす遺伝性ヘマクロマトーシス(HH)を患っている患者の遺伝子解析により、鉄恒常性を調節している主要なタンパク質が同定された。HHの最も一般的なタイプは、トランスフェリンとトランスフェリン受容体の結合を妨げる異型MHCクラスタンパク質をコードするHFE遺伝子における突然変異に起因する。HHのより稀な形態は、TFR2、ヘプシジン、およびHJV(以降、「RGMc」と呼ぶ)に突然変異を有する患者で生じる。これらの稀な形態はそれぞれ、不適切に低いヘプシジンレベルによって特徴付けられ、ヘプシジン発現の上流調節におけるRGMc、HFE、およびTFR2に関する役割を支持している。興味深いことに、RGMcにおける突然変異は、若年性HHの重度の形態の最も一般的な原因であり、治療しないままでいると致命的となり得る。
【0090】
ヘプシジン発現は、炎症性シグナルIL-6、および発達上のシグナリング(developmental signaling)骨形成タンパク質(BMP)を含む、細胞外刺激によって刺激される。BMPシグナリング構成要素(特異的なリガンド、受容体、および共受容体)の欠失が標的化されたマウスは、鉄過剰の表現型によって特徴付けられ、ヘプシジン発現におけるBMPシグナリングの重要な役割を強調する。BMPシグナリングの調節は、シグナルの特異性および微調整をもたらすために複数レベルで生じ;共受容体の増大またはリガンドと受容体の相互作用の妨害が、BMPシグナリング調節に関する主なメカニズムである。RGMcは、BMPが介在する肝臓におけるヘプシジン発現の増大に関する重要な共受容体であり、正常な生理学的条件下で肝細胞を低いBMPレベルに対して感受性にさせて、それにより、ヘプシジン発現を増大させ、鉄恒常性を調節すると考えられる。RGMcは、鉄調節におけるその力価および限られた役割に起因して、ヘプシジン関連の鉄制限が重要な役割を果たす障害、例えば慢性疾患の貧血のための、魅力的な治療的ターゲットである。
【0091】
BMPは、もともとは骨および軟骨の形成を誘導する能力によって発見されたTGFβスーパーファミリー内の成長因子の広範なサブファミリーである。骨との関連性以外に、多くの他の成長因子と同様、BMPは、生物学的プロセスの様々なセットに関与する。例えば、BMP6は、脂質代謝および卵巣生理機能を含む多くの異なる生物学における役割があるが、肝臓においては、鉄恒常性の中心的な調節因子であるヘプシジンの調節を介して、ヒトでの鉄調整における重要な制御ポイントとして機能する。
【0092】
したがって、BMP6は、鉄調節不全を伴う疾患および障害を治療するための代替的な治療的ターゲットとなっている。Eli LillyおよびNovartisを含む複数のグループが、BMP6に特異的に結合して中和する抗体を開発して、貧血のような症状を治療するための、かかる抗体の治療的使用を提案した。しかしながら、BMP6シグナリングを全身性に直接阻害することを目的とするこれらの手法は、BMP6が関与している非常に多くの異なる生理学的プロセスをかき乱す可能性があり、意図しない不要な効果(例えば、毒性)を生じさせるリスクが高くなる。
【0093】
最近では、反発性ガイダンス分子(RGM)が、BMPに相互作用するタンパク質として同定されている。タンパク質のRGMファミリーは、少なくとも3つの公知のメンバー、すなわち、RGMa、RGMb、およびRGMcを含み、胚形成中の軸索成長をガイドする最初のメンバー(founding member)であるRGMaの役割に起因してそのように呼ばれている。
【0094】
構造的に、RGMは、N末端シグナル配列、RGDモチーフ(RGMaおよびRGMc)、部分的フォンビルブラントD型(vWFD)ドメイン、および自己触媒的Gly-Asp-Pro-His(GDPH)切断部位からなる、グリコシルホスファチジル-イノシトール(GPI)アンカータンパク質である。RGMは、共受容体として、BMP6を含む成長因子のBMPクラスの複数のメンバーと相互作用することが報告されている。RGMファミリーメンバーのそれぞれは、特にそれらのBMP結合ドメインにわたって大きな構造相同性を共有している(表1参照)。RGMaおよびRGMcは特に、高い配列相同性を共有している。
【0095】
ファミリーメンバー間のかなりの相同性にもかかわらず、それらの発現および生物学的機能は全く異なって見える。RGMaおよびRGMbは、神経系生物学、免疫、炎症、血管新生、および増殖における役割を有していると報告されているが、RGMcは肝臓(例えば、肝細胞)において主に発現され、それはヘプシジン合成の主な部位であり、鉄代謝の調節に関与している。
【0096】
証拠は、BMP6/RGMc軸の阻害が、鉄調節不全を治療するための魅力的な治療的アプローチであり得るという概念を支持する。例えば、US2013/0330343A1は、RGMa/cに結合して中和するモノクローナル抗体が、処置された動物において、1)ヘプシジンレベルを低減させ、2)血清鉄レベルおよびトランスフェリン飽和度を増大させ、3)不飽和鉄結合能(UIBC)を低減させることが可能であると開示した。
【0097】
本開示の発明者らは、RGMc選択的阻害が、改善された安全性プロファイルを提供し得ることを認識した。その理由は、かかる阻害剤が、RGMaおよびRGMbの正常な生物学的機能をそのままで維持しながら、肝臓によって発現されるRGMcのみを標的化するはずであるからであった。したがって、本発明者らは、BMP6活性の肝臓特異的な調整を達成するために、RGMaまたはRGMbに結合しないRGMc選択的抗体を同定することを探求した。
【0098】
【0099】
[RGMc/ヘモジュベリン(HJV)]
ヒトRGMcの少なくとも3つのアイソフォームが存在し、前駆体タンパク質(アイソフォームa;配列番号1)および2つのスプライス変異体(アイソフォームbおよびアイソフォームc;それぞれ配列番号2および3)を含む。主要アイソフォームであるヒトRGMcアイソフォーム「a」は、426アミノ酸からなり、最も長い転写産物を代表している。本明細書において別段の指示がない限り、用語「RGMc」は、RGMcアイソフォームaの全長タンパク質、ヘテロ二量体、または切断産物を指す。以下は、RGMcアイソフォーム、RGMa、およびRGMbのアミノ酸配列である。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
RGMcは、BMP6、BMP6結合I型およびII型セリントレオニンキナーゼ受容体(例えば、Alk2、Alk3、BMPR2、およびActRIIA)、ネオゲニン、RGMc(HJV)、HFE、およびTFR2を含むより大きな多量体タンパク質複合体の一部である、BMP6に関する共受容体である。BMP6のその受容体への結合、次いで、より大きな多量体複合体は、下流SMADリン酸化を誘導し、ヘプシジン転写の増大を仲介する転写因子の核移行を誘導する。したがって、BMP6シグナリングは、ヘプシジン発現の調節を通して鉄恒常性を直接調整することが示されている。
【0106】
RGMcは、哺乳類において膜結合型および可溶型で発現される。膜結合型RGMcは、2つの異なる形態、単鎖全長形態、およびジスルフィド結合した2つの鎖(ヘテロ二量体)形態で、細胞表面上に見られる。RGMcのヘテロ二量体の形態は、約35kDのC末端フラグメントおよび約20kDのN末端フラグメントを産出する、FGDPHモチーフにおいて生じる自己タンパク分解の結果であり、ジスルフィド結合によって結合したままである。単鎖、全長RGMcは、BMP2と相互作用することが示されたが、以前の研究は、自己タンパク分解がタンパク質の正しい折りたたみに重要であること、および、自己触媒的プロセッシングがRGMの一般的かつ重要な特色であることを示唆している。例えば、RGMcのヘテロ二量体形態のみが、ヘプシジン発現をインビトロで活性化し、RGMaの自己触媒的プロセッシングは、軸索に対するその増殖阻害作用に必要であることが示されている。さらに、いくつかのJHHと関係がある突然変異が、RGMc自己触媒的切断部位の近くにあり、これらの突然変異は、シグナリング活性が低く、しばしばERにおいて保持されている。
【0107】
さらに、少なくとも2つのプロテアーゼ、フューリンおよびTMPRSS6が、RGMcを切断してRGMcのいくつかの可溶型(s-RGMcまたはs-HJV)を産生することが示されている。特に、フューリンの切断は、約40kDのs-RGMcフラグメントを産生する。このフラグメントは、BMPリガンドに対する結合に関して膜結合型RGMcと競合するデコイ受容体として作用して、それにより、ヘプシジン発現を減少させ、血清鉄レベルを増大させることが示されている。興味深いことに、フューリン活性は、鉄欠乏症および低酸素症において増大することが示されている。しかしながら、フューリンは、プロ-ヘプシジンのプロセッシングにも関与しているので、ヘプシジン発現に対するフューリンの効果は複雑であり得て、特定の細胞状態に依存する可能性が最も高い。
【0108】
一方で、TMPRSS6は、複数の部位でRGMcを切断することができ、様々な機能を有する切断フラグメントをもたらす。ヘプシジン発現を調節するTMPRSS6の役割は、マウスにおけるその不活性化が、ヘプシジンレベルの増大、鉄吸収のブロック、および貧血をもたらすことを示している研究によって示された。さらに、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)は、TMPRSS6/マトリプターゼ-2をコードする遺伝子における突然変異によって引き起こされ得る。しかしながら、TMPRSS6によってシェディングされたRGMcフラグメントは、BMPに結合する能力が減少することも示されている。
【0109】
上述のように、ヘプシジンは、全身性の鉄の可動化の主要な調節因子であり、骨形成タンパク質(BMP)が介在するシグナリング(特にBMP6)によって調節される。RGMcは、BMP6に結合して、Smadが介在するパスウェイを調節し、ヘプシジン発現の調節をもたらし、次いで、フェロポーチン(鉄輸送体タンパク質)の分解をもたらし、それにより、マクロファージおよび腸細胞から循環中への鉄放出をブロックする。したがって、RGMc活性の増大は、ヘプシジン発現を増大させ、細胞からの鉄放出の減少をもたらすと考えられる。この状況では、RGMc活性は、全身性の鉄枯渇に起因して鉄恒常性の不均衡を生じさせ得て、鉄関連の疾患をもたらす。換言すれば、RGMcが介在するヘプシジンレベルの増大は貧血をもたらし得て、一方で、その発現の低減は、多くのヘモクロマトーシス(鉄過剰)疾患における原因となる特徴であり得る。
【0110】
したがって、本出願は、特異的に結合して、RGMaまたはRGMbと交差反応せずにRGMc活性をインビボで阻害する、RGMc選択的モノクローナル抗体およびそのフラグメントを提供する。出願人が知っている限り、これらの抗体およびフラグメントは、かかる阻害剤の新規のクラスを代表する。この手法に関する理論的根拠は以下を含む。第1に、ヘプシジンが鉄恒常性の主要な調節因子であり、BMP6がそのプロセスに必要であるという認識に基づいて、このシグナリング軸をブロックする阻害剤が望ましい。第2に、BMP6は広く発現され、様々な範囲の生物学的役割を果たすので、BMP6の直接的な標的化を避けることが有利である。タンパク質のRGMファミリーは、BMP6、BMP2およびBMP4のようなBMPと相互作用し、それらの共受容体であることが知られているので、共受容体の標的化は、シグナリングをブロックしてヘプシジンを調節する代替的および魅力的な手法を提供し得る。しかしながら、第3に、RGMaおよびRGMbは全く異なる生物学的機能を発揮するという認識があるので、かかる阻害剤は、RGMa/bに影響せずにRGMcを選択的に阻害するべきである。このようにして、肝臓RGMcの選択的阻害は、BMP6、RGMaおよびRGMbの正常な機能を不注意および全身的にブロックすることから生じ得る潜在的な不要な副作用を最小限にしながら達成され得る。
【0111】
本開示は、RGMcまたはRGMc含有複合体に特異的に結合してその機能を阻害するが、RGMaおよびRGMbには結合せず、または機能を阻害しない、抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体、およびその抗原結合フラグメントは、BMP(例えばBMP6)とRGMcの相互作用を阻害する。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体またはフラグメントは、ネオゲニンとRGMcの相互作用を阻害しない。任意の実施態様において、本発明によって包含される抗体およびフラグメントは、RGMcパスウェイの絶妙な特異性および標的化を提供する。有利に、かかる抗体またはフラグメントは、毒性の低減を達成し得る。重要なことに、RGMc発現は組織のサブセットに限定されるので、RGMcが介在するBMP6パスウェイの阻害は、BMP6自体との直接拮抗またはRGMファミリーの広範な阻害とは違い、組織選択的な効果を達成するはずであり、それ故に、全身性効果に由来する毒性を減少させる。
【0112】
したがって、本発明は、RGMcの選択的阻害剤の使用が、非選択的阻害剤と比較して、鉄調節不全を伴う症状の治療のための有利な手法を提供するという認識を包含する。この目的を達成するために、本開示の発明者らは、インビボで、RGMaまたはRGMbを標的化せずにRGMcを特異的および選択的に標的化する抗体またはそのフラグメントを設計および生産することを探求した。これは、選択性が、かかる阻害剤のインビボ投与に関して改善された安全性プロファイル(例えば、毒性または副作用の減少)を提供するという概念に少なくとも一部基づく。
【0113】
例えば、RGMaおよび/またはRGMbとともにRGMcを標的化することは、RGMa/bの広範囲の非肝臓組織発現およびそれらの公知の役割 様々な生理学的プロセスと関連する潜在的な毒性を増大させ得る。特に、RGMaは、胚発生に重大であることが示されており、成体マウスの脳、皮膚、心臓、肝臓、肺、腎臓、精巣、および消化管を含む複数の組織において発現される。これらのデータと一致して、RGMa遺伝子が欠損したマウスのおよそ半数が、外脳症のような(exancephalic)表現型および主な形態学上および発達上の欠点を有して子宮内で死亡する。RGMaは、損傷後のニューロンの再生、回復および生存において重要な役割を果たすことも示されている。病理学的に、RGMaレベルの上昇は、損傷および虚血性脳卒中による脳病変;アルツハイマー病アミロイド斑;およびパーキンソン病患者の黒質において観察される。しかしながら、減少したRGMa発現および増大したプロモーターメチル化状態は、結腸直腸がんの起源および進行と密接に関連することが示されている(Zhao et al.,Oncol Rep 2012;27(5):1653-9)。これらの証拠は、RGMa/c交差反応性抗体が、例えば、がん進行の原因となり得て、または悪化させ得ることを示唆している。
【0114】
胚発生およびニューロン再生に加えて、RGMaは、損傷に対する免疫応答を調節することも示されていて;それは、脳および脊髄病変において樹状細胞によって発現され、T細胞応答を調整する。特に、RGMaの阻害は、多発性硬化症(実験的な自己免疫性脳脊髄炎;EAE)のマウスモデルにおいてT細胞応答を抑制することが示されている。ヒトでは、RGMa阻害は、T細胞増殖および末梢血単核細胞(PBMC)における炎症促進性サイトカインの産生を減少させる。さらに、T細胞サブセットの中では、RGMaは、Th17細胞上に高発現されることが示されている。Th17細胞は、とりわけ、感染組織へ好中球およびマクロファージを動員することによって感染に対する宿主防御において重要な役割を果たすので、正常な免疫機能の薬理学的混乱は望ましくない。有利に、RGMcを選択的に標的化および阻害し、RGMaについてはしないことにより、そのような副作用を効果的に避けることができる。
【0115】
これらの機能の多くは損傷に関するものであるが、RGMaは、健康な個体におけるニューロン再生も調整し得る。損傷に対するCNS応答の調節におけるその重要な役割、免疫応答、および様々な臓器における未知の役割を考慮すると、RGMa活性の阻害は、潜在的なオフターゲット副作用のリスクのため望ましくない。
【0116】
また、RGMbは、成体マウスにおける脳、骨、心臓、肺、肝臓、腎臓、精巣、卵巣、子宮、精巣上体および下垂体を含む複数の組織内に発現されることが示されている。RGMbノックアウトマウスは、出生後12日目までに死亡し、発育が妨げられる。RGMbは、RGMa同様に、免疫応答における役割も有している。特に、RGMbは、肺マクロファージおよび樹状細胞において高レベルで発現される。それが不存在の場合、IL-6レベルがこれらの細胞型において上昇し、炎症を調節する役割を示唆している。RGMbは、神経突起伸長を促進することも示されている。最近では、RGMbは、肺におけるPD-L2に関する結合パートナーとして説明され、この相互作用のブロックは呼吸器耐性の発達を妨げ、肺免疫におけるRGMbに関する役割が強調された。そのことは、RGMb機能を妨げる阻害剤が、免疫応答の調節不全を引き起こし得る可能性を高める。
【0117】
さらに、RGMbは、場合によりSMAD活性化を阻害することにより、腫瘍抑制因子として作用し得ることが示唆されている。実際に、RGMbの発現減少は、非小細胞肺癌腫における予後不良と関連する。RGMb遺伝子は、結腸直腸がんのサブタイプにおいて不活化され、RGMbは、インビトロで、乳がん増殖の負の調節因子であることが示されている。したがって、RGMbの阻害は、免疫系および神経系に対する効果があり得るだけでなく、そのような阻害は、がんの進行および/または発達も増大させ得る。
【0118】
要約すると、関連するファミリーメンバーRGMaおよびRGMbの様々な生物学的プロセスにおける広範な発現パターンおよび多面的機能は、RGMcの限定された発現パターンおよび鉄恒常性の維持における集中した役割とは対照的である。このことは、オフターゲット効果を悪化させずに鉄制限性の貧血のための新規の治療学の発見へ向けてRGMc特異的手法を取る重要性を強調する。
【0119】
したがって、一態様では、本発明は、インビボで、RGMaおよびRGMb活性の妨害と関連する潜在的な副作用または毒性を引き起こさずにRGMc機能を阻害することを目的とする。RGMc機能の介入によるBMP6シグナリングの肝臓選択的阻害は、慢性腎疾患の貧血、がんの貧血および慢性炎症の貧血を含む様々な鉄制限性の貧血を標的化する方法を提供し得ると考えられる。
【0120】
本発明によれば、RGMcの選択的阻害剤は、RGMaおよびRGMbのような他の密接に関連した因子を阻害しない。かかる阻害剤は、様々な形態の貧血または鉄制限性の貧血を伴う疾患の治療を含む、鉄恒常性を正常化するために用いることができる。実際に、本明細書中に説明されるように、RGMc特異的抗体は、骨形成タンパク質6(BMP6)-ヘプシジン軸を選択的に抑制し、赤血球産生のための鉄利用率を増大させることが示されている。
【0121】
[RGMc阻害剤]
本発明の方法を実施するために、RGM/HJVの任意の適切な阻害剤を、かかる薬剤がRGMcアイソフォームに関して十分な選択性でRGMを阻害または拮抗するのであれば用いてよい。好ましくは、かかるRGMc阻害剤は、ヒト対象へ投与した場合に臨床利益(例えば、治療的効能および許容できる毒性プロファイル)を提供する用量で、RGMaおよびRGMbに対して測定可能な阻害活性を有さない。
【0122】
本明細書において用いられる用語「阻害剤」は、RGMcシグナリングをブロックまたは拮抗することが可能な任意の薬剤を指す。適切な阻害剤は、小分子、核酸に基づく薬剤、生物製剤(例えば、ポリペプチドに基づく薬剤、例えば抗体および他の発見薬剤)、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0123】
一部の実施態様では、かかる薬剤は、BMP受容体複合体とRGMcの関連を阻害することにより、RGMc活性を妨げることができ、または減少させることができる。一部の実施態様では、かかる薬剤は、BMPへのRGMcの結合を阻害することにより、RGMc活性を妨げることができ、または減少させることができる。一部の実施態様では、かかる薬剤は、BMP6へのRGMcの結合を阻害することにより、RGMc活性を妨げることができ、または減少させることができる。一部の実施態様では、かかる薬剤は、ネオゲニンへのRGMcの結合を阻害することにより、RGMc活性を妨げることができ、または減少させることができる。一部の実施態様では、かかる薬剤は、RGMc/BMP6結合の競合阻害剤である。一部の実施態様では、かかる薬剤は、RGMc/ネオゲニン結合の競合阻害剤である。
【0124】
一部の実施態様では、阻害剤は、抗体(そのフラグメント、例えば、米国特許6,291,158;6,582,915;6,593,081;6,172,197;および6,696,245に記載されるようなドメイン抗体(dAb)を含む)、小分子阻害剤、Adnectin、Affibody、DARPin、Anticalin、Avimer、Versabodyまたは遺伝子療法であってよい。本発明によって包含される阻害剤の使用は、抗体模倣物、例えばモノボディおよび単一ドメイン抗体も含む。モノボディは、典型的に分子足場としてフィブロネクチンIII型ドメイン(FN3)を用いる合成の結合タンパク質である。モノボディは、10番目のフィブロネクチンIII型ドメインに基づくAdnectins(商標)を含む。
【0125】
[RGMc特異的抗体]
最近では、RGMa/RGMcに特異的に結合するモノクローナル抗体が、ラットおよびカニクイザルにおいてヘプシジンを下方調節することによって血清鉄を増大させることが示された(Boser et al.(2015)AAPS J.2015 Jul;17(4):930-938)。この事例において、研究者らは、RGMa/RGMc抗体を受け取った健康な動物における明らかな毒性は報告しておらず、血液パラメータの正常化が投与期間後の回復期間(約12週)後に見られた。しかしながら、例えば神経系に対する、RGMaの同時的な阻害と関連する潜在的リスクは、公表された研究からは分からない。さらに、RGMaの肝細胞ではない発現と関連する毒性(例えば、脳、皮膚、心臓、肺、腎臓、精巣、および消化管と関連する毒性)のような、非常に多くの他の毒性が、上記に概説されるように、ヒトではあり得る。RGMa発現の減少は、結腸直腸がんの起源および進行と関連することも示されている。さらに、RGMa発現は、損傷に対する免疫応答を調節することが示されている。したがって、本発明は、RGMaおよび/またはRGMb活性/機能に結合および阻害しない、新規のRGMc選択的阻害剤を提供する。
【0126】
本発明の一部の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、BMPとRGMcの相互作用を阻害または減少させる。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、BMP6とRGMcの相互作用を阻害または減少させる。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤は、ネオゲニンとの相互作用を阻害または減少させない。
【0127】
一部の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、以下の相互作用タンパク質;HFE、TFR2、ALK2、ALK3、BMPR2、ACVR2AおよびTMPRSS6のうちの1つまたは複数とRGMcの相互作用を調整する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、以下の相互作用タンパク質;HFE、TFR2、ALK2、ALK3、BMPR2、ACVR2AおよびTMPRSS6のうちの1つまたは複数とRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、HFEとRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、TFR2とRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、ALK2とRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、ALK3とRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、BMPR2とRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、ACVR2AとRGMcの相互作用を阻害する。別の実施態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、抗体)は、TMPRSS6とRGMcの相互作用を阻害する。
【0128】
一部の実施態様では、RGMcは、天然起源の哺乳類アミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMcは、天然起源のヒトアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMcは、ヒト、サル、ラットまたはマウスのアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMcは、配列番号1に示されるヒトRGMc配列、またはそのフラグメントである。一部の実施態様では、RGMaは、RGMcの可溶型である。
【0129】
一部の実施態様では、RGMc選択的阻害剤は、Octet(登録商標)またはMSDのような適切なインビトロ結合アッセイにおいて、≦5nM(例えば、≦0.1nM)のKDでRGMcに結合する。一方で、以前に記載されたRGMc抗体とは異なり、これらのRGMc特異的抗体は、同一のアッセイ条件下でRGMaまたはRGMbに対していかなる検出可能な結合も示さない。例えば、RGMc選択的阻害剤は、≦0.1nMのKDでRGMcに結合し得るが、同一のアッセイ条件下でMSDによってRGMaまたはRGMbに対していかなる検出可能な結合も示さない。
【0130】
一部の実施態様では、RGMaは、天然起源の哺乳類アミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMaは、天然起源のヒトアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMaは、ヒト、サル、ラットまたはマウスのアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMaは、配列番号4に示されるヒトRGMa配列、またはそのフラグメントである。一部の実施態様では、RGMaは、RGMaの可溶型である。
【0131】
一部の実施態様では、RGMbは、天然起源の哺乳類アミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMbは、天然起源のヒトアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMbは、ヒト、サル、ラットまたはマウスのアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、RGMbは、配列番号5に示されるヒトRGMb配列、またはそのフラグメントである。一部の実施態様では、RGMbは、RGMbの可溶型である。
【0132】
本発明の態様は、RGMcに選択的に結合し、6個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0133】
一態様では、RGMcに選択的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対応するCDR領域を比較してCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、および/またはCDRL3と実質的に類似する1つまたは複数のCDR配列を有する。例えば、抗体は、配列番号6~11、配列番号14~19、配列番号22~27、配列番号30~35、または配列番号38~43の任意の1つにおける対応するCDR領域と比較して1、2、3、4、または、5個までのアミノ酸残基変動をそれぞれ含んでいる1つまたは複数のCDR配列(例えば、配列番号6~11、配列番号14~19、配列番号22~27、配列番号30~35、または配列番号38~43)を含んでよい。
【0134】
本明細書において用いられる語句「アミノ酸変動」または「アミノ酸変更」または「アミノ酸残基の変更」は、アミノ酸置換および/または欠失を含む。
【0135】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、以下から選択される少なくとも3つのCDR(CDRのそれぞれに関して3個までのアミノ酸変更、例えば1、2、または3個のアミノ酸変更を含んでもよい):CDR-H1:配列番号6;CDR-H2:配列番号7;CDR-H3:配列番号8;CDR-L1:配列番号9;CDR-L2:配列番号10;および、CDR-L3:配列番号11を含む。
【0136】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、以下から選択される少なくとも3つのCDR(CDRのそれぞれに関して3個までのアミノ酸変更、例えば1、2、または3個のアミノ酸変更を含んでもよい):CDR-H1:配列番号14;CDR-H2:配列番号15;CDR-H3:配列番号16;CDR-L1:配列番号17;CDR-L2:配列番号18;および、CDR-L3:配列番号19を含む。
【0137】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、以下から選択される少なくとも3つのCDR(CDRのそれぞれに関して3個までのアミノ酸変更、例えば1、2、または3個のアミノ酸変更を含んでもよい):CDR-H1:配列番号22;CDR-H2:配列番号23;CDR-H3:配列番号24;CDR-L1:配列番号25;CDR-L2:配列番号26;および、CDR-L3:配列番号27を含む。
【0138】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、以下から選択される少なくとも3個(例えば、3、4、5個、または好ましくは6個すべて)のCDR(CDRのそれぞれに関して3個までのアミノ酸変更、例えば1、2、または3個のアミノ酸変更を含んでもよい):CDR-H1:配列番号30;CDR-H2:配列番号31;CDR-H3:配列番号32;CDR-L1:配列番号33;CDR-L2:配列番号34;および、CDR-L3:配列番号35を含む。
【0139】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、以下から選択される少なくとも3つのCDR(CDRのそれぞれに関して3個までのアミノ酸変更、例えば1、2、または3個のアミノ酸変更を含んでもよい):CDR-H1:配列番号38;CDR-H2:配列番号39;CDR-H3:配列番号40;CDR-L1:配列番号41;CDR-L2:配列番号42;および、CDR-L3:配列番号43を含む。
【0140】
別の態様では、本発明は、特定のアミノ酸変更を有するCDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3を含んでいる重鎖可変領域を含む、抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0141】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号14の4位のセリン残基はアルギニンで置換されてよいという条件で、配列番号14に示されるCDR-H1を含む。別の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号14の7位のアラニン残基はセリンで置換されてよいという条件で、配列番号14に示されるCDR-H1を含む。別の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号14の9位のセリン残基はグルタミンで置換されてよいという条件で、配列番号14に示されるCDR-H1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、(i)配列番号14の4位のセリン残基はアルギニンで置換されてよい;(ii)配列番号14の7位のアラニン残基はセリンで置換されてよい;および/または(ii)配列番号14の9位のセリン残基はグルタミンで置換されてよいという条件で、配列番号14に示されるCDR-H1を含む。
【0142】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15の8位のトレオニン残基はバリンで置換されてよいという条件で、配列番号15に示されるCDR-H2を含む。別の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15の10位のアスパラギン残基はセリンで置換されてよいという条件で、配列番号15に示されるCDR-H2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、(i)配列番号15の8位のトレオニン残基はバリンで置換されてよい;および/または(ii)配列番号15の10位のアスパラギン残基はセリンで置換されてよいという条件で、配列番号15に示されるCDR-H2を含む。
【0143】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号16の5位のイソロイシン残基はチロシンで置換されてよいという条件で、配列番号16に示されるCDR-H3を含む。別の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号16の6位のアラニン残基はバリンで置換されてよいという条件で、配列番号16に示されるCDR-H3を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、(i)配列番号16の5位のイソロイシン残基はチロシンで置換されてよい;および/または(ii)配列番号16の6位のアラニン残基はバリンで置換されてよいという条件で、配列番号16に示されるCDR-H3を含む。
【0144】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号17に示されるCDR-L1を含み、3個までのアミノ酸変更を含んでもよい。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号18に示されるCDR-L2を含み、3個までのアミノ酸変更を含んでもよい。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号19に示されるCDR-L3を含み、3個までのアミノ酸変更を含んでもよい。
【0145】
特定の実施態様では、本発明は、ヒトRGMcに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり、ここで抗体は、以下の6個のCDRのうち少なくとも3個を含む:
a)以下の条件で、CDR-H1:配列番号14:
i)配列番号14の4位のセリン残基はアルギニンで置換されてよい;
ii)配列番号14の7位のアラニン残基はセリンで置換されてよい;および/または
iii)配列番号14の9位のセリン残基はグルタミンで置換されてよい;
b)以下の条件で、CDR-H2:配列番号15:
i)配列番号15の8位のトレオニン残基はバリンで置換されてよい;および/または
ii)配列番号15の10位のアスパラギン残基はセリンで置換されてよい;
c)以下の条件で、CDR-H3:配列番号16:
i)配列番号16の5位のイソロイシン残基はチロシンで置換されてよい;および/または
ii)配列番号16の6位のアラニン残基はバリンで置換されてよい;
d)CDR-L1:配列番号17;
e)CDR-L2:配列番号18;および
f)CDR-L3:配列番号19。
【0146】
一部の実施態様では、かかる抗体は、Octet(登録商標)またはMSDのような適切なインビトロ結合アッセイにおいて測定して<1nM(好ましくは<0.1nM)のKDでヒトRGMcに結合する。好ましい実施態様では、かかる抗体は、RGMcに選択的に結合して活性を阻害し、RGMaおよびRGMbには結合せず活性を阻害しないという点で、アイソフォーム特異的でもある。
【0147】
一部の実施態様では、重鎖CDRおよび/または軽鎖CDR配列は、いかなるアミノ酸変更も含まない。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号6に示される配列を含んでいるCDR-H1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号7に示される配列を含んでいるCDR-H2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8に示される配列を含んでいるCDR-H3を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号9に示される配列を含んでいるCDR-L1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号10に示される配列を含んでいるCDR-L2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号11に示される配列を含んでいるCDR-L3を含む。
【0148】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含んでいる重鎖可変領域および配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR-L3を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR-H2を含んでいる重鎖可変領域および配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR-L2を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR-H1を含んでいる重鎖可変領域および配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR-L1を含んでいる軽鎖可変領域を含む。
【0149】
特定の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号6、7、および8にそれぞれ示される重鎖CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびに、配列番号9、10、および11にそれぞれ示される軽鎖CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。
【0150】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号14に示される配列を含んでいるCDR-H1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15に示される配列を含んでいるCDR-H2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号16に示される配列を含んでいるCDR-H3を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号17に示される配列を含んでいるCDR-L1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号18に示される配列を含んでいるCDR-L2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号19に示される配列を含んでいるCDR-L3を含む。
【0151】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含んでいる重鎖可変領域および配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR-L3を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR-H2を含んでいる重鎖可変領域および配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR-L2を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR-H1を含んでいる重鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR-L1を含んでいる軽鎖可変領域を含む。
【0152】
特定の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号14、15、および16にそれぞれ示される重鎖CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびに、配列番号17、18、および19にそれぞれ示される軽鎖CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。
【0153】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号22に示される配列を含んでいるCDR-H1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号23に示される配列を含んでいるCDR-H2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号24に示される配列を含んでいるCDR-H3を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号25に示される配列を含んでいるCDR-L1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号26に示される配列を含んでいるCDR-L2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号27に示される配列を含んでいるCDR-L3を含む。
【0154】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含んでいる重鎖可変領域および配列番号27のアミノ酸配列を有するCDR-L3を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR-H2を含んでいる重鎖可変領域および配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR-L2を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR-H1を含んでいる重鎖可変領域および配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR-L1を含んでいる軽鎖可変領域を含む。
【0155】
特定の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号22、23、および24にそれぞれ示される重鎖CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびに、配列番号25、26、および27にそれぞれ示される軽鎖CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。
【0156】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号30に示される配列を含んでいるCDR-H1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号31に示される配列を含んでいるCDR-H2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号32に示される配列を含んでいるCDR-H3を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号33に示される配列を含んでいるCDR-L1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号34に示される配列を含んでいるCDR-L2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号35に示される配列を含んでいるCDR-L3を含む。
【0157】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号32のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含んでいる重鎖可変領域および配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR-L3を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号31のアミノ酸配列を有するCDR-H2を含んでいる重鎖可変領域および配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR-L2を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR-H1を含んでいる重鎖可変領域および配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR-L1を含んでいる軽鎖可変領域を含む。
【0158】
特定の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号30、31、および32にそれぞれ示される重鎖CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびに、配列番号33、34、および35にそれぞれ示される軽鎖CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。
【0159】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号38に示される配列を含んでいるCDR-H1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号39に示される配列を含んでいるCDR-H2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号40に示される配列を含んでいるCDR-H3を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号41に示される配列を含んでいるCDR-L1を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号42に示される配列を含んでいるCDR-L2を含む。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号43に示される配列を含んでいるCDR-L3を含む。
【0160】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含んでいる重鎖可変領域および配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR-L3を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR-H2を含んでいる重鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR-L2を含んでいる軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR-H1を含んでいる重鎖可変領域および配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR-L1を含んでいる軽鎖可変領域を含む。
【0161】
特定の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号38、39、および40にそれぞれ示される重鎖CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびに、配列番号41、42、および43にそれぞれ示される軽鎖CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。
【0162】
本発明の態様は、RGMcに選択的に結合し、重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含む、モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0163】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12、配列番号20、配列番号28、配列番号36、または配列番号44と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号13、配列番号21、配列番号29、配列番号37、または配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0164】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および/または、配列番号13と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変、または、配列番号13と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および、配列番号13と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0165】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および/または、配列番号21と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、または、配列番号21と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および、配列番号21と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0166】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および/または、配列番号29と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、または、配列番号29と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および、配列番号29と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0167】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号36と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および/または、配列番号37と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号36と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、または、配列番号37と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号36と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および、配列番号37と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0168】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および/または、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、または、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0169】
一部の実施態様では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域配列は、本明細書中に提供される任意のCDR配列において異ならない。例えば、一部の実施態様では、配列変動の程度(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)が、本明細書中に提供される任意のCDR配列を除き、重鎖可変および/または軽鎖可変アミノ酸配列内に生じてよい。
【0170】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび/または配列番号13に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインまたは配列番号13に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび配列番号13に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0171】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび/または配列番号21に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインまたは配列番号21に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび配列番号21に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0172】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび/または配列番号29に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインまたは配列番号29に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび配列番号29に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0173】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび/または配列番号37に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインまたは配列番号37に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび配列番号37に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0174】
一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび/または配列番号45に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインまたは配列番号45に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変ドメインおよび配列番号45に示されるアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変ドメインを含む。
【0175】
一部の実施態様では、2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990(Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873-77,1993で改変)のアルゴリズムを用いて決定される。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行なって、目的のタンパク質分子と相同のアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合は、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載のようにGapped BLASTが使用され得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが用いられ得る。
【0176】
本明細書に記載の任意の抗体または抗原結合フラグメントにおいて、1つまたは複数の保存的突然変異が、残基が抗体抗原相互作用に関与する可能性がない位置においてCDRまたはフレームワーク配列内に導入され得る。一部の実施態様では、そのような保存的突然変異(単数または複数)は、結晶構造に基づいて決定されるように、残基が、RGMcとの相互作用に関与する可能性がない位置(単数または複数)においてCDRまたはフレームワーク配列内に導入され得る。一部の実施態様では、同様の界面(例えば、抗原抗体相互作用に関与する残基)は、構造類似性を共有する他の抗原に関する公知の構造情報から推定され得る。
【0177】
本明細書において用いられる「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷またはサイズ特性を変更しないアミノ酸置換を指す。変異は、そのような方法を集める参考文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、または、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,New York)に見られるような、当業者に公知のポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換は、以下の群:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D内のアミノ酸の間でなされる置換を含む。
【0178】
一部の実施態様では、本明細書において提供される抗体は、望ましい特性を抗体に与える突然変異を含む。例えば、Fabアーム交換(ネイティブIgG4 mAbで生じることが知られる)に起因する潜在的な合併症を避けるために、本明細書において提供される抗体は、安定化「Adair」突然変異を含んでよく(Angal et al.,「A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human(IgG4)antibody」,Mol Immunol 30,105-108;1993)、ここで、セリン228(EUナンバリング;残基241 Kabatナンバリング)は、プロリンに転換されて、IgG1様(CPPCP(配列番号48))ヒンジ配列をもたらす。したがって、任意の抗体は、安定化「Adair」突然変異またはアミノ酸配列CPPCP(配列番号48)を含んでよい。一実施態様では、本明細書中に記載の抗体は、IgG1様ヒンジを生じさせて鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にするSerからProへの主鎖置換を有するヒトIgG4の重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0179】
RGMcに選択的に結合する本開示の抗体は、抗体定常領域またはその部分を含んでもよい。例えば、VLドメインは、そのC末端においてCκまたはCλのような軽鎖定常ドメインに付着されてよい。同様に、VHドメインまたはそのフラグメントは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのような重鎖、ならびに任意のアイソタイプサブクラスの全てまたは部分に付着されてよい。抗体は、適切な定常領域を含んでよい(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,No.91-3242,National Institutes of Health Publications,Bethesda,Md.(1991)を参照)。したがって、本開示の範囲内の抗体は、VHおよびVLドメイン、またはその抗原結合フラグメントを、任意の適切な定常領域と組み合わせて含んでよい。例示的な実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1またはヒトIgG4定常ドメインの全てまたはフラグメントを含んでいる重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgλ定常ドメインまたはヒトIgκ定常ドメインの全てまたはフラグメントを含んでいる軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0180】
一部の実施態様では、RGMcに選択的に結合する抗体は、本明細書中に開示される抗体のフレームワーク領域を含んでよく、または含まなくてよい。一部の実施態様では、RGMcに選択的に結合する抗体はミューリン抗体であり、ミューリンフレームワーク領域配列を含む。他の実施態様では、抗体は、キメラ抗体、またはその抗原結合フラグメントである。別の実施態様では、抗体は、ヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントである。別の実施態様では、抗体は、完全ヒト抗体、またはその抗原結合フラグメントである。一実施態様では、抗体は、ヒト生殖細胞系アミノ酸配列を含んでいるフレームワーク領域を含む。
【0181】
本明細書中に記載の抗体、およびその抗原結合フラグメントは、抗原に結合するのに適切な任意の構造を有してよい。例えば、一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、2つの重鎖可変領域と2つの軽鎖可変領域を含んでいる4つのポリペプチド鎖を含む。別の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域を含む。例示的な実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFabフラグメント、scFv、またはダイアボディである。
【0182】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1定常ドメインまたはヒトIgG4定常ドメインの重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。例示的な実施態様では、重鎖免疫グロブリン定常ドメインは、ヒトIgG4定常ドメインである。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、立体構造的エピトープに結合する。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、コンビナトリアルまたは不連続のエピトープに結合する。
【0183】
一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IgG1様ヒンジを生じさせて鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にするSerからProへの主鎖置換を有するヒトIgG4定常ドメインの重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。一実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgλ定常ドメイン、またはヒトIgκ定常ドメインを含んでいる軽鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含む。
【0184】
一実施態様では、抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖である4つのポリペプチド鎖を有するIgGである。例示的な実施態様では、抗体は、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体であってよい。一実施態様では、抗体は、ヒト生殖細胞系アミノ酸配列を有するフレームワークを含む。
【0185】
一実施態様では、本発明は、本明細書中に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと結合に関して競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、本明細書中に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと同一のエピトープに結合する、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0186】
本発明の別の態様では、RGMc特異的抗体のクラスが提供され、それぞれ、RGMaおよび/またはRGMbに結合しない。RGMcに特異的に結合する抗体(例えば本明細書中に記載の抗体)は、≦5nM(例えば、≦5nM、≦4nM、≦3nM、≦2nM、≦1nM、≦0.5nM、≦0.1nM、および≦0.05nM)のKDで結合する。一実施態様では、抗体は、≦5nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦4nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦3nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦2nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦1nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦0.5nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦0.1nMのKDでヒトRGMcに結合する。別の実施態様では、抗体は、≦0.05nMのKDでヒトRGMcに結合する。当該分野は、インビトロで結合活性を決定するために用いられ得る適切な技術およびアッセイに精通している。
【0187】
好ましい実施態様では、抗体のその抗原(単数または複数)に対する親和性を測定する適切な手段は、限定されないが、いわゆるバイオレイヤー干渉法(BLI)技術および表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイを含む。前者はOctet(登録商標)システムを含み、後者はBiacoreシステムを含む。別の実施態様では、抗体のその抗原(単数または複数)に対する親和性を測定する適切な手段は、Meso Scale Discovery(MSD)を含む。
【0188】
本開示の態様は、本明細書において提供される特異的抗体、またはその抗原結合フラグメント、例えば、上述の1つまたは複数のCDR配列(1、2、3、4、5、または6個のCDR配列)を有する抗体のいずれかと、競合または交差競合する抗体に関する。一実施態様では、本発明は、配列番号6、配列番号7、および配列番号8に示される重鎖CDR配列、および/または配列番号9、配列番号10、および配列番号11に示される軽鎖CDR配列を有する抗体と競合または交差競合する抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号12を含む重鎖可変領域配列、および/または配列番号13を含む軽鎖可変領域配列を有する抗体、またはその抗原結合フラグメントと競合または交差競合する抗体を提供する。
【0189】
一実施態様では、本発明は、配列番号14、配列番号15、および配列番号16に示される重鎖CDR配列、および/または配列番号17、配列番号18、および配列番号19に示される軽鎖CDR配列を有する抗体と競合または交差競合する抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号20を含む重鎖可変領域配列、および/または配列番号21を含む軽鎖可変領域配列を有する抗体、またはその抗原結合フラグメントと競合または交差競合する抗体を提供する。
【0190】
一実施態様では、本発明は、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に示される重鎖CDR配列、および/または配列番号25、配列番号26、および配列番号27に示される軽鎖CDR配列を有する抗体と競合または交差競合する抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号28を含む重鎖可変領域配列、および/または配列番号29を含む軽鎖可変領域配列を有する抗体、またはその抗原結合フラグメントと競合または交差競合する抗体を提供する。
【0191】
一実施態様では、本発明は、配列番号30、配列番号31、および配列番号32に示される重鎖CDR配列、および/または配列番号33、配列番号34、および配列番号35に示される軽鎖CDR配列を有する抗体と競合または交差競合する抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号36を含む重鎖可変領域配列、および/または配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を有する抗体、またはその抗原結合フラグメントと競合または交差競合する抗体を提供する。
【0192】
一実施態様では、本発明は、配列番号38、配列番号39、および配列番号40に示される重鎖CDR配列、および/または配列番号41、配列番号42、および配列番号43に示される軽鎖CDR配列を有する抗体と競合または交差競合する抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供する。一実施態様では、本発明は、配列番号44を含む重鎖可変領域配列、および/または配列番号45を含む軽鎖可変領域配列を有する抗体、またはその抗原結合フラグメントと競合または交差競合する抗体を提供する。
【0193】
一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、本明細書中に提供される抗体のいずれかと同一のエピトープにおいて、またはその付近に結合する。一部の実施態様では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、エピトープの15個以内のアミノ酸残基の範囲内で結合する場合は、エピトープの付近に結合する。一部の実施態様では、本明細書中に提供される任意の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、本明細書中に提供される抗体のいずれかによって結合されるエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基の範囲内で結合する。
【0194】
別の実施態様では、抗体とタンパク質の間の平衡解離定数(KD)が10-8M未満で、本明細書中に提供される抗原のいずれか(例えばヒトRGMc)に対する結合に関して競合または交差競合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントが本明細書において提供される。他の実施態様では、抗体は、10-11M~10-8Mの範囲内のKDでRGMcに対する結合に関して競合または交差競合する。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと結合に関して競合する、RGMc特異的抗体またはその抗原結合フラグメントが本明細書において提供される。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと同一のエピトープに結合する、RGMc特異的抗体またはその抗原結合フラグメントが本明細書において提供される。
【0195】
本明細書において提供される抗体は、任意の適切な方法を用いて特徴付けられ得る。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、すなわち「エピトープマッピング」である。タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴付けるための多くの適切な方法が存在し、抗体抗原複合体の結晶構造解析、競合アッセイ、遺伝子フラグメント発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイ(例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999の第11章に記載)を含む。さらなる例では、エピトープマッピングは、抗体が結合する配列を決定するために用いられ得る。エピトープは、線形エピトープであってよく、すなわち、一続きのアミノ酸で含まれてよく、または、アミノ酸の三次元相互作用によって形成された立体構造的エピトープであってよく、それは一続き(一次構造の線形配列)で必ずしも含まれなくてよい。
【0196】
異なる長さ(例えば、少なくとも4~6アミノ酸長)のペプチドは、単離または(例えば、組換えによって)合成されてよく、抗体による結合アッセイに用いられてよい。別の例では、抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列に由来する重複するペプチドを用いることによって、そして、抗体による結合を決定することによって、体系的なスクリーニングにおいて決定され得る。遺伝子フラグメント発現アッセイによれば、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、無作為に、または特異的な遺伝子構築のいずれかによってフラグメント化されて、試験されるべき抗体と発現された抗原フラグメントの反応度が決定される。遺伝子フラグメントは、例えば、PCRによって生産されてよく、それから、放射性アミノ酸の存在下で、インビトロで転写およびタンパク質に翻訳されてよい。放射能標識された抗原フラグメントに対する抗体の結合は、それから、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。特定のエピトープは、ファージ粒子の表面上にディスプレイされたランダムペプチド配列の大きなライブラリー(ファージライブラリー)を用いることによって同定されてもよい。あるいは、重複ペプチドフラグメントの定義されたライブラリーは、単純な結合アッセイにおいて試験抗体に対する結合に関して試験されてよい。さらなる例では、抗原結合ドメインの突然変異誘発、ドメインスワップ実験およびアラニンスキャニング突然変異誘発を行なって、エピトープ結合に必要な、十分な、および/または必須の、残基を同定することができる。例えば、ドメインスワップ実験は、RGMcの様々なフラグメントが、密接に関連するが抗原性が異なるタンパク質、例えばRGMcタンパク質ファミリーの別のメンバー(例えば、RGMaまたはRGMb)由来の配列で置換(スワップ)されている標的抗原の突然変異体を用いて行なうことができる。突然変異体RGMcに対する抗体の結合を評価することにより、抗体結合に対する特定の抗原フラグメントの重要性を評価することができる。
【0197】
あるいは、競合アッセイは、一方の抗体が他方の抗体と同一のエピトープに結合するかどうか決定するために、同一抗原に結合することが知られている他の抗体を用いて行なうことができる。競合アッセイは、当業者によく知られている。
【0198】
さらに、RGMc内の1つまたは複数の残基と本明細書において提供される任意の抗体の相互作用は、日常的な技術によって決定することができる。例えば、結晶構造を決定することができ、それにより、RGMc内の残基および抗体(または抗原結合フラグメント)内の1つまたは複数の残基の間の距離を決定することができる。かかる距離に基づいて、RGMc内の特定の残基が抗体内の1つまたは複数の残基と相互作用するかどうか判定することができる。さらに、競合アッセイおよび標的突然変異誘発アッセイのような適切な方法を用いて、候補抗体の優先的な結合を判定することができる。
【0199】
一部の実施態様では、RGMcに選択的に結合する本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書中に記載の相補性決定領域(CDR)の1つまたは複数を含む。一部の実施態様では、本発明は、本明細書中に記載のRGMcに選択的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を提供する。一実施態様では、核酸分子は、本明細書中に記載のCDR配列の1つまたは複数をコードする。
【0200】
[H/DX-MSによるRGMc特異的抗体結合領域]
本開示の文脈において、抗原の「結合領域(単数または複数)」は、抗体抗原相互作用のための構造基礎を提供する。本明細書において用いられる「結合領域」は、生理学的溶液中でRGMcに結合した場合に、抗体またはフラグメントが結合領域を溶媒曝露から保護する(水素/重水素交換質量分析(H/DX-MS)のような適切な技術によって決定される)、抗体と抗原の間の界面領域を指す。
【0201】
当該分野は、溶液におけるタンパク質コンフォメーションまたはタンパク質間相互作用を調べるために広く用いられる技術であるH/DX-MSに精通している。この方法は、タンパク質主鎖アミド内の水素を溶液中に存在する重水素と交換することに依拠する。水素-重水素交換速度を測定することにより、タンパク質の動態およびコンフォメーションに関する情報を得ることができる(Wei et al.(2014)「Hydrogen/deuteriumex change mass spectrometry for probing higher order structure of protein therapeutics:methodology and applications.」Drug Disco Today.19(1):95-102に概説され;参照により援用される)。この技術の適用は、抗体抗原複合体が形成すると、結合パートナー間の界面が溶媒を塞ぎ得て、それにより、溶媒の立体障害に起因してH/D交換速度を減少させ、または妨げるという前提に基づく。
【0202】
この技術を用いて、抗体(またはFabのようなフラグメント)によるRGMcの結合領域を決定することができる。一部の実施態様では、本明細書中に示される選択基準を満たす抗体またはフラグメントに結合するのに重要であることが特定されたヒトRGMc上の部分は、RGMcのα-1ヘリックス・ドメイン内に存在するアミノ酸ストレッチYVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも一部を含む。同じ領域は、全長RGMc(配列番号1)上のアミノ酸残基46~53として特定され得る。
図8Bに示されるように、この結合領域は、RGMファミリーメンバー間の配列多様性を示す。したがって、特定の理論によって拘束されずに、この第1の結合領域(領域A)は、RGMaおよびRGMbを上回るRGMcの特異性に寄与し得ると考えられる。一部の実施態様では、抗体(または抗原結合フラグメント)に関するエピトープは、結合領域、YVSSTLSLの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。一部の実施態様では、抗体(または抗原結合フラグメント)に関するエピトープは、結合領域の2以上のアミノ酸残基を含む。
【0203】
一部の実施態様では、本明細書中に示される選択基準を満たす抗体またはフラグメントに結合するのに重要であることが特定されたヒトRGMc上の部分は、RGMcのα-3ヘリックス・ドメイン内に存在するアミノ酸ストレッチFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも一部を含む。RGMc/BMP2構造モデルに示されるように(
図8C)、α-3ヘリックスは、BMP2にごく接近している。したがって、特定の理論によって拘束されずに、この第2の結合領域(領域B)は、本明細書中に記載のBMP競合抗体の機能性(例えば、阻害)効果に寄与し得ると考えられる。一部の実施態様では、抗体(または抗原結合フラグメント)に関するエピトープは、結合領域、FHSAVHGIEDLの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。一部の実施態様では、抗体(または抗原結合フラグメント)に関するエピトープは、結合領域の2以上のアミノ酸残基を含む。
【0204】
いくつかの観察は、SR-RC-AB3-由来抗体(例えば、SR-RC-AB9)が、RGMcの領域Aおよび/または領域B内の少なくとも1つのアミノ酸に結合するという概念を支持する。
【0205】
第1に、SR-RC-AB9 FabとRGMcのHDX-MSデータに基づき、領域AおよびBは、相対的に柔軟であり、かつ、溶媒によるアクセスが可能である。したがって、それらは抗体への結合に利用可能であり得る。RGMcの非結合形態におけるこれらの領域の相対的重水素取り込みは、約50~60%の相対的重水素取り込みを示した。よりアクセスしにくい領域は通常、30%未満の相対的重水素取り込みである。RGMcのN末端ドメインの高い立体構造的動力学を考慮すれば、ドメインは、抗体結合の可能性を増大させるいくつかのコンフォメーションを取ることができると考えられる(例えば、
図8C,PDB ID 4UI1,BMP2に結合したRGMcを参照)。
【0206】
第2に、領域AおよびBは、BMP2のためのいくつかの接触ポイントも有しており(
図8Dおよび
図8Eを参照)、これらの領域が結合相互作用のための「ホットスポット」であることを示唆している。さらに、領域AおよびBにより近づいて見てみると、いくつかの残基は、RGMaおよびRGMbを上回るRGMc特異性の構造決定因子として働き得る(
図8Eを参照)。
【0207】
第3に、抗体のCDR(H1~H3)は、RGMcのN末端ドメインの領域AおよびBの表面に及ぶことができる(
図8Fを参照)。このことは、それぞれの領域の少なくとも1つ(例えば、1つまたは複数)の残基が、抗体結合のためのエピトープとして関与することを示唆し得る。さらに、重水素取り込み曲線の形(
図8A)は、時間ポイントにわたり有意なH/D交換を示し、領域AおよびB内の抗体抗原相互作用がかなり安定していることを示唆した。
【0208】
最後に、RGMc SR-RC-AB9 fabとRGMcのN末端に関する結合データは、両方のヘリックス(1&3)が抗体結合に必要であり得るという考えも明らかにし得る。特に、RGMcに対するSR-RC-AB9の高い結合親和性は、抗原/抗体相互作用のかなりの界面埋没表面(significant interfacial buried surface)が存在するはずであることを示唆する。これらの非常に埋没した(highly buried)表面領域は、領域A(ヘリックス1)およびB(ヘリックス3)の両方が抗体に対する結合に関与する場合に可能であり得る。
【0209】
したがって、一実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基(reside)に結合する。別の実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、FHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する。別の実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基および/またはFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する。別の実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基およびFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の第1および第2の結合領域のそれぞれの少なくとも1つのアミノ酸を含む不連続のエピトープに結合し、ここで第1の結合領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み;および/または、第2の結合領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施態様では、RGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の第1および第2の結合領域のそれぞれの少なくとも1つのアミノ酸を含む不連続のエピトープに結合し、ここで第1の結合領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み;および、第2の結合領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含む。
【0210】
一部の実施態様では、本明細書において提供されるヒトRGMc特異的抗体は、アミノ酸配列YVSSTLSL(配列番号46)を有する結合領域(領域A)の少なくとも一部に結合する。別の実施態様では、本明細書において提供されるRGMc特異的抗体は、アミノ酸配列FHSAVHGIEDL(配列番号47)を有する結合領域(領域B)の少なくとも一部に結合する。別の実施態様では、本明細書において提供されるRGMc特異的抗体は、アミノ酸配列YVSSTLSL(配列番号46)を有する結合領域の少なくとも一部、および/またはアミノ酸配列FHSAVHGIEDL(配列番号47)を有する結合領域の少なくとも一部に結合する。別の実施態様では、本明細書において提供されるRGMc特異的抗体は、アミノ酸配列YVSSTLSL(配列番号46)を有する結合領域の少なくとも一部、およびアミノ酸配列FHSAVHGIEDL(配列番号47)を有する結合領域の少なくとも一部、またはそれらの一部に結合する。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の第1および第2の結合領域の少なくとも一部を含む不連続のエピトープに結合し、ここで第1の結合領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み;および/または、第2の結合領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施態様では、RGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の第1および第2の結合領域の少なくとも一部を含む不連続のエピトープに結合し、ここで第1の結合領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み;および、第2の結合領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含む。
【0211】
一部の実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の不連続のエピトープに結合し、ここでa)抗体は全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;b)抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む第1の結合領域に結合する。別の実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の不連続のエピトープに結合し、ここでa)抗体は全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;b)抗体は、FHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む第2の結合領域に結合する。別の実施態様では、本発明のRGMc特異的抗体は、ヒトRGMc内の不連続のエピトープに結合し、ここでa)抗体は全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;b)抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む第1の結合領域に結合し;および、c)抗体は、FHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む第2の結合領域に結合する。
【0212】
[核酸]
一部の実施態様では、本開示の抗体、その抗原結合フラグメント、および/または組成物は、核酸分子によってコードされてよい。かかる核酸分子は、制限されずに、DNA分子、RNA分子、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、mRNA分子、ベクター、プラスミドなどを含む。一部の実施態様では、本開示は、本開示の化合物および/または組成物をコードする核酸分子を発現するようにプログラムまたは生産される細胞を含んでよい。
【0213】
一部の実施態様では、本発明は、前述の抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を提供する。例えば、一実施態様では、本発明は、本明細書中に記載のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、もしくはCDRL3、またはそれらの組み合わせを含むポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。核酸分子は、一部の実施態様では、本明細書中に記載のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含むポリペプチドをコードしてよい。一部の実施態様では、核酸分子は、本明細書中に記載のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含むポリペプチドをコードしてよい。一部の実施態様では、核酸分子は、本明細書中に記載のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、もしくはCDRL3、またはそれらの組み合わせのいずれか1つにおける対応するCDR領域と比較して、5、4、3、2、または1個までのアミノ酸残基変動を含んでよいポリペプチドをコードする。
【0214】
1つの実施態様では、核酸分子は、配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する重鎖可変ドメイン、および/または配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードする。1つの実施態様では、核酸分子は、配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する重鎖可変ドメイン、および/または配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードする。1つの実施態様では、核酸分子は、配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する重鎖可変ドメイン、および/または配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードする。1つの実施態様では、核酸分子は、配列番号36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する重鎖可変ドメイン、および/または配列番号37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードする。1つの実施態様では、核酸分子は、配列番号44に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する重鎖可変ドメイン、および/または配列番号45に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードする。
【0215】
一部の実施態様では、核酸分子は、配列番号12、配列番号20、配列番号28、配列番号36、配列番号44に示される重鎖可変ドメインアミノ酸配列、および配列番号13、配列番号21、配列番号29、配列番号37、または配列番号45に示される軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする。一部の実施態様では、核酸分子は、配列番号12に示される重鎖可変ドメインアミノ酸配列、および配列番号13に示される軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする。一部の実施態様では、核酸分子は、配列番号20に示される重鎖可変ドメインアミノ酸配列、および配列番号21に示される軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする。一部の実施態様では、核酸分子は、配列番号28に示される重鎖可変ドメインアミノ酸配列、および配列番号29に示される軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする。一部の実施態様では、核酸分子は、配列番号36に示される重鎖可変ドメインアミノ酸配列、および配列番号37に示される軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする。一部の実施態様では、核酸分子は、配列番号44に示される重鎖可変ドメインアミノ酸配列、および配列番号45に示される軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする。
【0216】
場合によっては、本開示の核酸は、コドン最適化核酸を含む。コドン最適化核酸を作製する方法は当技術分野で知られており、限定されないが、米国特許番号5,786,464および6,114,148に記載されるものを含んでよく、それぞれの内容はそれらの全体で参照により本明細書中に援用される。
【0217】
[RGMcに結合する抗体の産生]
本発明は、高親和性でRGMcに結合しRGMaおよび/またはRGMbには結合しない抗体またはそのフラグメントのスクリーニング方法、生産方法および製造プロセス、ならびに、それを含んでいる医薬組成物および関連するキットを包含する。当該分野は、本開示の抗体、またはその抗原結合フラグメントを取得するために用いられ得る様々な技術および方法に精通している。例えば、抗体は、組み換えDNA方法、ハイブリドーマ技術、ファージまたは酵母ディスプレイ技術、トランスジェニック動物(例えば、XenoMouse(登録商標))またはそれらの何らかの組合せを用いて生産することができる。
【0218】
i.免疫化およびハイブリドーマ
本明細書中に記載される一部の方法では、特定の抗原(例えば、RGMcペプチドまたはタンパク質、例えば、可溶性RGMcペプチドまたはタンパク質)を用いて、非ヒト動物(「宿主」)、例えば、齧歯類、例えば、マウス、ハムスター、またはラットに免疫付与することができる。一実施態様では、非ヒト動物はマウスである。別の実施態様では、宿主はラクダ類であってよい。さらなる実施態様では、宿主はサメであってよい。
【0219】
免疫付与(抗原曝露(例えば注入)の単一または多数のステップを含んでもよい)後、脾細胞を動物から採取して、関係があるB細胞を不死化骨髄腫細胞と融合して抗体産生のためのハイブリドーマを形成する。ハイブリドーマは、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein(1975)Nature,256:495-499を参照)に従って生産され得る。それから、この様式で形成されたハイブリドーマを、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、Bio-Layer干渉法(BLI)技術(例えば、OCTET)および表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE)分析のような標準的な方法を用いてスクリーニングして、特定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する1つまたは複数のハイブリドーマを同定する。組み換え抗原、天然起源形態、それらの任意の変異体またはフラグメント、ならびにそれらの抗原性ペプチド(例えば、線形エピトープとして本明細書中に記載される任意のエピトープまたは立体構造的エピトープとして足場内)のような、任意の形態の特定の抗原を免疫原として用いてよい。
【0220】
ii.スクリーニングライブラリー(単数/複数)
一部の実施態様では、抗体を作製または同定する方法またはプロセスは、抗体またはそのフラグメント(例えば、scFv)を発現するタンパク質発現ライブラリー、例えば、ファージ、酵母、またはリボソーム・ディスプレイ・ライブラリーをスクリーニングするステップを含む。例えば、ヒトコンビナトリアル抗体またはscFvフラグメントのライブラリーを、ファージまたは酵母上に合成することができ、それから、そのライブラリーを、目的の抗原またはその抗体結合フラグメントを用いてスクリーニングして、抗原に結合するファージまたは酵母を単離して、そこから抗体または免疫反応性フラグメントを取得してよい(Vaughanら,1996,PMID:9630891;Sheetsら,1998、PMID:9600934;Boderら,1997,PMID:9181578;Pepperら,2008,PMID:18336206)。
【0221】
ファージディスプレイは、例えば、Ladner et al.,米国特許番号5,223,409;Smith(1985)Science 228:1315-1317;Clackson et al.(1991)Nature,352:624-628;Marks et al.(1991)J.Mol.Biol.,222:581-597;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;およびWO90/02809にさらに記載される。酵母ディスプレイは、例えば、US7,700,302およびUS8,877,688にさらに記載される。特定の方法では、酵母ディスプレイ・ライブラリーは全長抗体を発現する。
【0222】
ファージまたは酵母ディスプレイ・ライブラリーを作製するためのキットは市販されている。抗体ディスプレイ・ライブラリーの作製およびスクリーニングにおいて用いることのできる他の方法および試薬も存在する(US5,223,409;WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690;およびBarbasら,1991,PMID:1896445を参照)。かかる技術は、大量の候補抗体のスクリーニングを有利に可能にする。
【0223】
どのように取得するかには関係なく、抗体産生細胞(例えば、酵母コロニー、ハイブリドーマなど)は、例えば、強い増殖、高い抗体産生、ならびに、目的抗原に対する高親和性および特異的結合のような望ましい抗体の特徴/特性を含む望ましい特徴について、選択されてよく、クローニングされてよく、さらにスクリーニングされてよい。好ましくは、かかる抗体は、≦5nM、好ましくは≦1nM、より好ましくは≦0.1nMのKD値を有するインビトロ結合活性を示す。したがって、本明細書において本発明によって包含されるRGMc抗体は、組み換えRGMcに対して、≦5nM、好ましくは≦1nM、より好ましくは≦0.1nMのKD値を有する。
【0224】
他の選択基準は、多特異性試薬(PSR)スコアおよび/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)保持時間を含んでよい。PSRスコアは、タンパク質に対する一般的な結合(すなわち、非特異的な結合)の程度/度合を決定する1つの方法である。例えば、場合によっては、多特異性試薬(PSR)は、293および/またはCHO細胞由来の可溶性膜の調製物である。低い(0.1~0.33)またはゼロの(0~0.10)PSRスコアが最も望ましいプロファイルであり、中程度(0.33~0.66)または高い(0.66~1.00)スコアは望ましくない。PSRスコアを決定する方法は当業者によく知られている。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体またはその抗-結合フラグメントは、<0.1のPSRスコアを有する。他の実施態様では、本明細書中に記載の抗体またはその抗-結合フラグメントは、0のPSRスコアを有する。
【0225】
一方で、HIC保持時間は、抗体が自己相互作用する成功(prosperity)を判定する1つの方法であり、それにより、抗体が溶液中で可溶性/単分散性のままかどうかが予測される(凝集傾向とも呼ばれる)。高いHIC保持時間は、より大きな凝集傾向を示す。この特性は、抗体内の疎水性残基/アミノ酸のパッチに起因し得る。あるいは、翻訳後の修飾(特に糖類)の存在は、低いHIC保持時間を有する抗体を生じさせ得る。したがって、一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、低いHIC保持時間(例えば、10.5分未満)を有する。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、中程度のHIC保持時間(例えば、10.5分以上11.5分未満)を有する。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、高いHIC保持時間(例えば11.5分以上)を有する。
【0226】
コロニーおよび/またはハイブリドーマを選択、クローニングおよび拡張する方法は、当業者によく知られている。所望の抗体が同定された時点で、関連のある遺伝物質が、一般的な、当該分野で認識されている分子生物学および生化学的技術を用いて、単離、操作および発現され得る。
【0227】
iii.ヒト化
本発明の抗体またはフラグメントは、好ましくは完全ヒト抗体またはヒト化抗体である。したがって、由来が何であれ、当該方法は、1つまたは複数の抗体またはそのフラグメントをヒト化するステップを含んでよく、ここでヒト抗体配列は、当該分野で公知の分子工学技術を用いて作製され得て、本明細書中に記載の発現系および宿主細胞内に導入され得ることが理解されよう。そのような非天然の組み換えによって生産されたヒト抗体(および対象組成物)は、本開示の教示と完全に適合し、本発明の範囲内に明白に含まれる。特定の選択態様では、本発明のRGMc抗体は、組み換えによって生産されたヒト抗体を含む。
【0228】
iv.親和性成熟および最適化
一部の実施態様では、上述の方法によって生産される抗体は、中程度の親和性(例えば、約106~107M-1のKaまたは約10-6~10-7MのKD)であってよい。したがって、抗体またはそのフラグメントは、必要に応じて、最適化の一部として親和性成熟のプロセスに供されてよい。用語「親和性成熟」は、当業者によって容易に理解される意味を有する。手短には、候補抗体またはフラグメントのアミノ酸配列(しばしば「親(parent)」または「親の(parental)」と呼ばれる)をさらに改変して、特定の抗原に対して改善された結合プロファイルを達成することを指す。典型的に、親の抗体および親和性成熟の相対物(しばしば「子孫(progeny)」または「子(offspring)」と呼ばれる)は、同一のエピトープを保持する。適切なインビトロ結合アッセイが、親和性成熟プロセス中の適切なステップ(単数または複数)において、改善されたバインダーに関するスクリーニングのために行なわれてよい。任意選択で、一部の実施態様では、機能性アッセイ(例えば、細胞に基づく力価アッセイ、インビトロ機能性アッセイなど)が、所望の機能を確認するために行なわれてもよい。
【0229】
親和性成熟は、配列多様化および/または突然変異誘発を典型的に含むが、突然変異または配列変更を導入または作製する正確な手段は限定されない。一部の実施態様では、突然変異誘発は、1つまたは複数のCDRのアミノ酸残基における1つまたは複数の変更(例えば、置換または欠失)の導入を含む。したがって、一部の実施態様では、本明細書中に記載のVRまたはCDR配列は、参照配列(例えば親配列のもの)と比較して、1、2、3、または4個までのアミノ酸変更を含んでよい。一部の実施態様では、本明細書中に記載のVRまたはCDR配列は、1、2、3、または4個までのアミノ酸置換を含んでよい。一部の実施態様では、本明細書中に記載のVRまたはCDR配列は、1、2、3、または4個までの欠失を含んでよい。追加または代替で、突然変異誘発のプロセスは、可変領域またはCDRのいわゆるオリゴ-ウォーキングを含んでよい。
【0230】
例えば、抗体の親和性成熟は、ランダム突然変異誘発(Gram H.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1992)89,3576-3580、およびHawkins R.E.,et al.J.Mol.Biol.(1992)226,889-896)、CDR配列のランダム突然変異誘発、例えば、CDRウォーキング(Yang W.P.,et al.,J.Mol.Biol.(1995)254、392-403)、残基の方向付けられた突然変異誘発(Ho M.,et al.,J.Biol.Chem.(2005)280,607-617およびHo M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2006)103,9637-9642)、および、体細胞高頻度突然変異(SHM)をインビトロで再現する手法(Bowers P.M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2011)108,20455-20460)を含む、複数の方法によって達成することができる。
【0231】
一実施態様では、抗体は、可変重鎖または可変軽鎖領域に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変重鎖CDRまたは可変軽鎖CDRのいずれか一方に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変重鎖CDR3に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変重鎖CDR2に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変重鎖CDR1に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変軽鎖CDR3に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変軽鎖CDR2に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。別の実施態様では、抗体は、可変軽鎖CDR1に対して突然変異誘発を行なうことによって親和性成熟され得る。
【0232】
一部の実施態様では、親和性成熟は、1つまたは複数のCDRの変異体を含んでいる抗体ライブラリ(「レパートリー」)をスクリーニングするステップを含み、それを親抗体の少なくとも1つのCDRと組み合わせてよい。このプロセスはしばしばCDRシャッフルまたはCDR多様化と呼ばれる。一部の実施態様では、可変重鎖CDR3(例えば、CDR-H3)を用いて、可変重鎖CDR1およびCDR2(例えば、CDR-H1およびCDR-H2)変異体レパートリーを含むライブラリーをスクリーニングしてよい(CDR-H1/H2多様化とも呼ばれる)。一部の実施態様では、可変軽鎖CDR3(例えば、CDR-L3)を用いて、可変軽鎖CDR1およびCDR2(例えば、CDR-L1およびCDR-L2)変異体レパートリーを含むライブラリーをスクリーニングしてよい(CDR-L1/L2多様化とも呼ばれる)。
【0233】
一部の実施態様では、親和性成熟は、軽鎖変異体を含む抗体ライブラリー(「レパートリー」)をスクリーニングするステップを含み、それを親抗体の重鎖と組み合わせてよい(軽鎖シャッフル)。例えば、一部の実施態様では、選択された重鎖が、軽鎖変異体を含んでいる抗体ライブラリーに導入されて、それにより、改善された親和性に関してスクリーニングされ得る新たな抗体ライブラリーが作製される。一部の実施態様では、天然起源の可変領域変異体のレパートリーを、免疫付与されていないドナーから得てよい。重鎖または軽鎖シャッフルの例は、以下の文献:Marks et al.,(1992)Nature Biotech 10:779-78;Schier et al.,(1996)J.Mol.Biol.255,28-43;Park et al.,(2000)BBRC.275.553-557;およびChames et al.,(2002)J.Immunol1110-1118に記載される。一部の実施態様では、軽鎖ライブラリーは、λ軽鎖の変異体を含む。一部の実施態様では、軽鎖ライブラリーは、κ軽鎖の変異体を含む。一部の実施態様では、軽鎖ライブラリーは、λおよびκ軽鎖の変異体の両方を含む。
【0234】
親和性成熟のための様々な方法は、任意の順序で組み合わせられ得ることが理解されるべきである。例えば、一実施態様では、選択抗体は、重鎖CDR多様化されて、その後にCDR-H3突然変異誘発されてよい。別の実施態様では、選択抗体は、重鎖CDR多様化されて、その後にCDR-H3突然変異誘発されて、その後に軽鎖シャッフルされてよい。別の実施態様では、選択抗体は、重鎖CDRシャッフルされて、その後に軽鎖シャッフルされて、その後にCDR-H3突然変異誘発されてよい。好ましい実施態様では、選択抗体は、軽鎖シャッフルされて、その後にCDR-H1/H2多様化されて、その後にCDR-H3突然変異誘発されてよい。
【0235】
上述の親和性成熟に関する任意の方法において、生じる新規の抗体は、公知技術(例えば、FACS)を用いて、標的抗原(例えば、可溶性RGMc)への結合に関して選択され得る。FACSを用いて、結合特異性および親和性が、異なる抗原濃度および/または非標識(冷式)抗原に関する競合によって試験され得る。結合親和性は、ELISA、BLI(例えば、OCTET)、およびSPR(例えば、BIACORE)のような当技術分野で知られている他の技術を用いてさらに評価され得る。
【0236】
上述の親和性成熟プロセスに加えて、さらなる最適化が行なわれて所望の産物プロファイルが達成され得る。したがって、抗体は、最適化のステップにさらに供されてよく、特定の有利な物理化学的特性に基づいて選択されてよい。治療的抗体(生物製剤)については、評価され得る開発可能性に関する物理化学的基準は、限定されないが:溶解度、安定性、免疫原性、自己会合または凝集しないこと、Fc機能、内部移行プロファイル、pH感受性、グリコシル化および製造可能性、例えば細胞生存能力および/または遺伝子発現を含む。一部の実施態様では、最適化のプロセスは、定常領域内の1つまたは複数のアミノ酸配列の突然変異誘発を含む。
【0237】
一態様では、本発明は、ヒトRGMcに特異的に結合し、ヒトRGMaまたはヒトRGMbには結合しない、抗体、またはその抗原結合フラグメントを含んでいる医薬組成物を作製する方法を提供し;ここで抗体、またはその抗原結合フラグメントは、RGMcを阻害するがRGMaまたはRGMbを阻害せず、当該方法は、i)ヒトRGMc(例えば可溶性ヒトRGMc)を含む少なくとも1つの抗原を提供するステップ、ii)ヒトRGMcに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの第1のプールを選択して、それにより、ヒトRGMcの特異的なバインダーを提供するステップ;iii)RGMcと関係があるBMP6シグナリングを阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントの第2のプールを選択して、それにより、RGMc/BMP6活性の特異的な阻害剤を生産するステップ;iv)抗体の第1のプールおよび抗体の第2のプール内に存在する抗体、またはその抗原結合フラグメントを医薬組成物に製剤化して、それにより、抗体、またはその抗原結合フラグメントを含んでいる組成物を作製するステップを含む。
【0238】
好ましい実施態様では、当該方法は、抗体、またはその抗原結合フラグメントの第1のプールから、ヒトRGMaおよび/またはヒトRGMbに結合する任意の抗体、またはその抗原結合フラグメントを除去するステップをさらに含む。一実施態様では、当該方法は、ステップ(ii)および/または(iii)において選択された抗体、またはその抗原結合フラグメントの特異性を判定または確認するステップをさらに含む。一実施態様では、当該方法は、ヒトおよび齧歯類の抗原に対して交差反応性である抗体、またはその抗原結合フラグメントについて選択するステップをさらに含む。一実施態様では、当該方法は、抗体の第1のプールおよび抗体の第2のプール内に存在する抗体、またはその抗原結合フラグメントの、完全ヒトまたはヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントを作製するステップをさらに含む。一実施態様では、当該方法は、抗体の第1のプールおよび抗体の第2のプール内に存在する抗体、またはその抗原結合フラグメントを、親和性成熟および/または最適化に供して、それにより、親和性成熟および/または最適化された抗体またはそのフラグメントを提供するステップをさらに含む。
【0239】
一部の実施態様では、医薬組成物を作製する方法は、1つまたは複数の候補RGMc阻害剤(単数または複数)を少なくとも1つのインビボ・モデルにおいて試験して、鉄調節を達成または修正する効能を評価または確認するステップをさらに含む。一部の実施態様では、医薬組成物を作製する方法は、1つまたは複数の候補RGMc阻害剤(単数または複数)(例えば、インビボで効能を示す抗体)を少なくとも1つのインビボ・モデルにおいて試験して、治療的に効果的な用量またはそれよりも高い用量における安全性/耐容性を評価するステップをさらに含む。適切な治療的抗体は、動物モデルにおいて有効な用量よりも十分に高い用量において許容できる毒性を示すべきである。一部の実施態様では、インビボの効能およびまたは安全性の試験は、前臨床試験において用いられる特定の種により適合する(more closely match)非CDR部分(単数または複数)を含む抗体(単数または複数)の使用によって行なってよい(例えば、ミューリン相対物など)。
【0240】
別の実施態様では、モノクローナル抗体は非ヒト動物から得られて、それから、適切な組み換えDNA技術を用いて改変される(例えば、キメラが作製される)。キメラ抗体を作製するための様々な手法が説明されている。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851,1985;Takeda et al.,Nature 314:452,1985,Cabilly et al.,米国特許番号4,816,567;Boss et al.,米国特許番号4,816,397;Tanaguchi et al.,欧州特許公報EP171496;欧州特許公報0173494、英国特許GB2177096Bを参照。
【0241】
さらなる抗体生産技術については、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,eds.Harlow et al.,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照。本開示は、抗体の任意の特定の由来、生産方法、または他の特別な特徴に必ずしも制限されない。
【0242】
本開示の一部の態様は、ポリヌクレオチドまたはベクターによって形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核生物または真核生物細胞であってよい。宿主細胞内に存在するポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれてよく、または、染色体外に維持されてよい。宿主細胞は、任意の原核生物または真核生物細胞、例えば、細菌、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞であってよい。一部の実施態様では、真菌細胞は、例えば、Saccharomyces属のもの、特にS.cerevisiae種のものである。用語「原核生物」は、抗体または対応する免疫グロブリン鎖の発現のためにDNAまたはRNA分子によって形質転換またはトランスフェクトされ得る全ての細菌を含む。原核生物宿主は、グラム陰性ならびにグラム陽性細菌、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌、霊菌および枯草菌を含んでよい。用語「真核生物」は、酵母、高等植物、昆虫および脊椎動物細胞、例えば、NSOおよびCHO細胞のような哺乳類細胞を含む。組換え生産手順に用いられる宿主に応じて、ポリヌクレオチドによってコードされる抗体または免疫グロブリン鎖は、グリコシル化されてよく、または、グリコシル化されなくてよい。抗体または対応する免疫グロブリン鎖は、最初のメチオニンアミノ酸残基を含んでもよい。
【0243】
一部の実施態様では、ベクターが適切な宿主内に組み込まれた時点で、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルの発現に適切な条件下で維持されてよく、必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽/重鎖ダイマーまたは無傷の抗体、抗原結合フラグメントまたは他の免疫グロブリン形態の回収および精製が続いてよい;Beychok,Cells of Immunoglobulin Synthesis,Academic Press,N.Y.,(1979)を参照。したがって、ポリヌクレオチドまたはベクターが細胞内に導入されて、次いで、抗体または抗原結合フラグメントが生産される。さらに、トランスジェニック動物、好ましくは前述の宿主細胞を含む哺乳類は、抗体または抗体フラグメントの大スケールの生産のために用いられてよい。
【0244】
形質転換された宿主細胞は、発酵槽内で増殖され得て、任意の適切な技術を用いて培養され得て、最適な細胞増殖を達成する。発現された時点で、抗体全体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖、他の免疫グロブリン形態、または抗原結合フラグメントは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当該分野の標準的な手順に従って精製されてよい;Scopes,「Protein Purification」,Springer Verlag,N.Y.(1982)を参照。抗体または抗原結合フラグメントは、それから、増殖培地、細胞溶解物、または細胞膜画分から単離されてよい。例えば微生物によって発現された抗体または抗原結合フラグメントの単離および精製は、予備クロマトグラフィー分離および免疫学的分離(例えば抗体の定常領域に対して方向付けられたモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を伴うもの)のような任意の従来の手段によるものであってよい。
【0245】
本開示の態様は、モノクローナル抗体の無期限に長期の材料を提供するハイブリドーマに関する。ハイブリドーマの培養物から直接的に免疫グロブリンを得る代わりとして、不死化ハイブリドーマ細胞が、その後の発現および/または遺伝子操作のための再配列された重鎖および軽鎖座の材料として用いられ得る。再配列された抗体遺伝子を適切なmRNAから逆転写して、cDNAが生産され得る。一部の実施態様では、重鎖定常領域は、異なるアイソタイプのものに交換または完全に除去されてよい。可変領域は、単鎖Fv領域をコードするように結合されてよい。複数のFv領域が、1よりも多い標的に対する結合能力を与えるように結合されてよく、またはキメラ重軽鎖の組み合わせを用いてよい。任意の適切な方法が、抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の産生に用いられ得る。
【0246】
一部の実施態様では、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする適切な核酸が得られて、標準的な組換え宿主細胞内にトランスフェクトされ得る発現ベクター内に挿入される。様々なそのような宿主細胞が用いられ得る。一部の実施態様では、哺乳類宿主細胞は、効率的なプロセッシングおよび生産のために有利であり得る。この目的に有用である典型的な哺乳類細胞株は、CHO細胞、293細胞、またはNSO細胞を含む。抗体または抗原結合フラグメントの生産は、宿主細胞の増殖およびコード配列の発現に適切な培養条件下で、改変された組換え宿主を培養することによって行われ得る。抗体または抗原結合フラグメントは、培養物からそれらを単離することによって回収され得る。発現系は、生じる抗体が培地中に分泌されるようにシグナルペプチドを含むように設計され得るが;細胞内生産も可能である。
【0247】
本開示はまた、本明細書に記載の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施態様では、ポリヌクレオチドによってコードされる可変領域は、上述のハイブリドーマの任意の1つによって生産される抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0248】
抗体または抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、例えば、DNA、cDNA、RNA、または合成的に生産されたDNAもしくはRNA、または組み換えによって生産されたキメラ核酸分子(任意のこれらのポリヌクレオチドを単独または組み合わせのいずれかで含む)であってよい。一部の実施態様では、ポリヌクレオチドは、ベクターの一部である。そのようなベクターは、適切な宿主細胞内および適切な条件下でのβベクター(the β the vector)を可能にするマーカー遺伝子のようなさらなる遺伝子を含んでよい。
【0249】
一部の実施態様では、ポリヌクレオチドは、原核生物または真核生物細胞における発現を可能にする発現制御配列に作動可能に結合している。ポリヌクレオチドの発現は、翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核生物細胞、好ましくは哺乳類細胞における発現を確実にする調節エレメントは、当業者によく知られている。それらは、転写開始を促進する調節配列を含んでよく、転写終結および転写安定化を促進するポリ-Aシグナルを含んでもよい。さらなる調節エレメントは、転写ならびに翻訳エンハンサー、および/または、天然に関係があるまたは異種のプロモーター領域を含んでよい。原核生物宿主細胞における発現を可能にする、あり得る調節エレメントは、例えば、E.coliにおけるPL、Lac、TrpまたはTacプロモーターを含み、真核生物宿主細胞における発現を可能にする調節エレメントの例は、AOX1またはGAL1プロモーター(酵母)、または、CMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーまたはグロビンイントロン(哺乳類および他の動物細胞)である。
【0250】
転写開始を担うエレメントの他に、かかる調節エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流に、SV40-ポリ-A部位またはtk-ポリ-A部位のような転写終結シグナルを含んでもよい。さらに、用いられる発現系に応じて、ポリペプチドを細胞区画へ向けること、または、培地中へそれを分泌することが可能なリーダー配列が、ポリヌクレオチドのコード配列に追加されてよく、以前に説明されている。リーダー配列(単数または複数)は、翻訳、開始および終結配列と共に適切なフェーズにおいて集められて、および好ましくは、リーダー配列は、翻訳されたタンパク質、またはその一部を、例えば細胞外培地へ分泌するように指示することが可能である。所望の特性、例えば、発現された組換え産物の安定化または単純化された精製を与えるCまたはN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0251】
一部の実施態様では、軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドは、免疫グロブリン鎖の両方または片方のみの可変ドメインをコードしてよい。同様に、ポリヌクレオチドは、同一プロモーターの制御下であってよく、発現に関して別々に制御されてよい。さらに、一部の態様は、抗体または抗原結合フラグメントの免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む、遺伝子操作において慣習的に用いられるベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージに関し;抗体の他方の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドと組み合わせてもよい。
【0252】
一部の実施態様では、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることが可能なベクター内に真核生物プロモーター系として提供されるが、原核生物宿主に関する制御配列が用いられてもよい。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシ乳頭腫ウイルスのようなウイルス由来の発現ベクターは、標的化された細胞集団へのポリヌクレオチドまたはベクターの送達のために用いられ得る(例えば、抗体または抗原結合フラグメントを発現するように細胞を改変するため)。様々な適切な方法を用いて、組換えウイルスベクターを構築することができる。一部の実施態様では、ポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソーム内に再構成され得る。ポリヌクレオチド(例えば、免疫グロブリン鎖の重および/または軽可変ドメイン(単数または複数)をコードする配列および発現制御配列)を含むベクターは、細胞の宿主のタイプに応じて異なる適切な方法によって宿主細胞内に移行され得る。
【0253】
したがって、本発明の一態様では、RGMc選択的阻害剤(例えば、中和抗体)を含んでいる医薬組成物を作製する方法が提供されて、当該方法は、以下のステップ:i)RGMaおよびRGMbよりもRGMcに選択的に結合する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;ii)ステップ(i)に基づいて、RGMc活性をインビボで阻害/中和する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;iii)ステップ(i)および(ii)に基づいて、医薬組成物への製剤化に関して、阻害/中和抗体を選択するステップを含む。一実施態様では、ステップ(i)は、ポジティブ選択を含み、さらにネガティブ選択を含んでもよい。一部の実施態様では、同定ステップ(i)は、ライブラリーをスクリーニングするステップを含む。一部の実施態様では、ライブラリーは、ファージライブラリーまたは酵母ライブラリーである。一部の実施態様では、同定ステップ(ii)は、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、不飽和鉄結合能(UIBC)、およびトランスフェリン飽和度からなる群より選択される鉄パラメータを測定するステップを含む。一部の実施態様では、ステップ(ii)は、ヘプシジン発現を測定するステップを含む。一部の実施態様では、ヘプシジン発現は、肝臓ヘプシジンレベルおよび/または血清ヘプシジンレベルである。一部の実施態様では、ステップ(ii)は、インビボで血清鉄レベルを上昇および/またはヘプシジン発現を抑制することが可能な中和抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップを含む。一部の実施態様では、ステップ(i)は、RGMaおよびRGMbよりもRGMcに関して選択的に確認するステップを含む。
【0254】
別の実施態様では、本明細書において開示される方法によって生産される抗体または抗原結合フラグメントは、BMP6結合部位を除くエピトープに結合する。一部の実施態様では、エピトープは、ネオゲニン結合部位を除く。一部の実施態様では、エピトープは、BMP6結合部位およびネオゲニン結合部位の両方を除く。一部の実施態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、可溶性RGMcよりも膜結合型RGMcに優先的に結合する。一部の実施態様では、抗体は、抗体抗原複合体の内部移行を誘導する。
【0255】
別の実施態様では、本明細書において開示される方法によって生産される医薬組成物は、静脈内または皮下投与のために製剤化される。
【0256】
[改変]
本開示の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、制限されないが、酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属、非放射性常磁性金属イオン、およびRGMcの検出および単離のための親和性標識を含む、検出可能な標識または検出可能な部分によって改変されてよい。検出可能な物質または部分は、本開示のポリペプチドに直接的に、または、適切な技術を用いて中間体(例えばリンカーなど(例えば、切断可能なリンカー))を通して間接的に、連結またはコンジュゲートされてよい。適切な酵素の非限定的な例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族複合体の非限定的な例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光材料の非限定的な例は、ビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンを含み;発光材料の例は、ルミノールを含み;生物発光材料の非限定的な例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み;適切な放射性材料の例は、放射性金属イオン、例えば、α-エミッターまたは他の放射性同位体、例えば、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、86R、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、およびスズ(113Sn、117Sn)を含む。
【0257】
検出可能な物質は、RGMcに特異的に結合する本開示の抗体に直接的に、または、適切な技術を用いて中間体(例えばリンカーなど)を介して間接的に、連結またはコンジュゲートされてよい。検出可能な物質にコンジュゲートされた本明細書において提供される任意の抗体は、本明細書中に記載のものなどの任意の適切な診断アッセイに用いてよい。
【0258】
さらに、本開示の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、薬物によって改変されてもよい。薬物は、本開示のポリペプチドに直接的に、または、適切な技術を用いて中間体(例えばリンカー(例えば切断可能なリンカー)など)を介して間接的に、連結またはコンジュゲートされてよい。
【0259】
[医薬組成物、製剤]
ヒトおよび非ヒト対象における投与に適切な薬品として用いられる医薬組成物/製剤がさらに提供される。例えば、本発明によって包含される1つまたは複数のRGMc特異的拮抗薬(例えば抗体)は、薬学的に許容できる担体(賦形剤)(例えばバッファーを含む)によって製剤化または混合されて、医薬組成物を形成することができる。かかる製剤は、RGMcシグナリングが関与する疾患または障害の治療のために用いられ得る。特に好ましい実施態様では、製剤は、本明細書中に記載の貧血の治療のために用いられ得る。
【0260】
本発明の医薬組成物は、RGMc関連の徴候を緩和するために患者に投与されてよい。例えば、RGMc関連の徴候は、鉄制限性の貧血であってよい。本発明によって包含される鉄制限性の貧血の例は、限定されないが、慢性疾患の貧血(例えば、CKD)、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)、がんによって誘導される貧血、および/または化学療法によって誘導される貧血を含む。
【0261】
「許容できる」は、担体が組成物の活性成分と適合し(および好ましくは、活性成分を安定化することが可能である)、治療される対象にとって有害でないことを意味する。バッファーを含む薬学的に許容できる賦形剤(担体)の例は、当業者に明らかであり、以前に説明されている。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照。
【0262】
この方法で用いられる医薬組成物は、薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定剤を、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態で含んでよい(Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hoover)。
【0263】
本明細書において用いられる「薬学的に許容できる担体」は、生理的に適合する任意および全ての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊椎または上皮投与(例えば、注入またはインフュージョンによる)に適切である。投与経路に応じて、活性化合物(例えば、抗体、免疫コンジュゲート、または二重特異性分子)は、酸作用および化合物を不活性化し得る他の自然条件から化合物を保護するために材料内に被覆されてよい。
【0264】
本明細書中に記載の医薬化合物は、1つまたは複数の薬学的に許容できる塩類を含んでよい。「薬学的に許容できる塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる望ましくない毒性学的効果も与えない塩を指す(例えば、Berge,S.M.,et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。かかる塩類の例は、酸付加塩類および塩基付加塩類を含む。酸付加塩類は、非毒性の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに、非毒性の有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカノン酸、ヒドロキシアルカノン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などに由来するものを含む。塩基付加塩類は、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに、非毒性有機アミン類、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものを含む。
【0265】
本明細書中に記載の医薬組成物は、薬学的に許容できる抗酸化剤を含んでもよい。薬学的に許容できる抗酸化剤の例は、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む。
【0266】
本明細書中に記載の医薬組成物において用いられ得る適切な水性および非水性の担体の例は、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブオイルのような植物油、およびオレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散の場合は要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0267】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含んでもよい。微生物の存在の予防は、滅菌手順(上記)、および、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどの包含の両方によって確実にされ得る。等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを組成物中に含むことも望ましくあり得る。さらに、注入可能な製剤形態の延長された吸収は、モノステアレートアルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる薬剤の包含によってもたらされ得る。
【0268】
他の許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、および、グルコース、マンノース、またはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を含んでよい。薬学的に許容できる賦形剤は、本明細書においてさらに説明される。
【0269】
一部の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、RGMcに特異的に結合する抗体を含むリポソームを含み、それは、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwang et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980);および米国特許番号4,485,045および4,544,545に記載されるもののような任意の適切な方法によって調製され得る。長い循環時間を有するリポソームは、米国特許番号5,013,556に開示される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生産され得る。リポソームは、規定されたポアサイズのフィルターを通して押し出されて、所望の直径を有するリポソームを生じさせる。
【0270】
本明細書中に記載の抗体は、コロイド状薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルション中の、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メタクリル酸メチル(methylmethacylate))マイクロカプセル)中にトラップされてもよい。例示的な技術は、以前に説明されていて、例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)を参照。
【0271】
他の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、徐放性形式で製剤化され得る。徐放性製剤の適切な例は、抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、そのマトリックスは、成形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許番号3,773,919)、L-グルタミン酸および7エチル-L-グルタメートの共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体およびリュープロリドアセテートからなる注入可能なマイクロスフェア)、スクロースアセテートイソブチレート、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0272】
インビボ投与のために用いられる医薬組成物は、滅菌されなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成される。治療的抗体組成物は、一般的に、滅菌アクセスポートを有するコンテナー、例えば、皮下注入針によって突き刺すことが可能なストッパーを有する静脈内投与用の溶液バッグまたはバイアルの中に置かれる。
【0273】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与、または吸入もしくはガス注入による投与のための、単位投与形態、例えば、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁液、または坐薬であってよい。
【0274】
錠剤のような固形組成物を調製するために、主な活性成分は、調剤担体、例えば、従来の打錠用成分、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム、および、均質な本開示の化合物の混合物、またはそれらの非毒性の薬学的に許容できる塩を含む、固形予備処方組成物を形成するための他の調剤希釈剤(例えば水)と混合されてよい。これらの予備処方組成物を均質という場合、等しく効果的な単位投与形態、例えば、錠剤、丸薬およびカプセルに組成物が容易に細分され得るように、活性成分が組成物全体にわたって均等に分散されることを意味する。この固形予備処方組成物は、それから、本開示の0.1mg~約500mgの活性成分を含む上述のタイプの単位投与形態に細分化される。新規の組成物の錠剤または丸薬は、延長された作用の利益を与える剤形を提供するようにコーティングまたは他の方法で調合され得る。例えば、錠剤または丸薬は、内剤(inner dosage)および外剤(outer dosage)の構成要素を含んでよく、後者は前者の上のエンベロープの形状である。2つの構成要素は、胃内での崩壊に抵抗する役割を果たして、内側の構成要素が無傷で十二指腸へ通過すること、または放出が遅延されることを可能にする腸溶性の層によって分離され得る。様々な材料がそのような腸溶性の層またはコーティングに用いられ得て、かかる材料は、多くのポリマー酸およびシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料とポリマー酸の混合物を含む。
【0275】
適切な表面活性剤は、特に、非イオン性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン(例えばTween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えばSpan(商標)20、40、60、80または85)を含む。表面活性剤を有する組成物は、0.05~5%の表面活性剤を好適に含み、0.1~2.5%であってよい。他の成分、例えばマンニトールまたは他の薬学的に許容できるビヒクルが、必要ならば添加されてよいことが理解される。
【0276】
適切なエマルションは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)のような市販される脂肪エマルションを用いて調製され得る。活性成分は、予混合エマルション組成物内に溶解されてよく、またはあるいは、油(例えば大豆油、サフラワー油、綿実油、ゴマ油、コーン油またはアーモンド油)中、および、リン脂質(例えば卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)と水との混合の際に形成されるエマルション中に溶解されてよい。エマルションの張性を調節するために、グリセロールまたはグルコースのような他の成分が添加され得ることが理解される。適切なエマルションは、20%までの油(例えば5~20%)を典型的に含む。
【0277】
エマルション組成物は、本発明の抗体をIntralipid(商標)またはその構成要素(大豆油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製されるものであってよい。
【0278】
吸入またはガス注入のための医薬組成物は、薬学的に許容できる、水性または有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはそれらの混合物、ならびに粉末を含む。液体または固形組成物は、上記に示された適切な薬学的に許容できる賦形剤を含んでよい。一部の実施態様では、組成物は、局所または全身性効果のために経口または経鼻的な呼吸経路によって投与される。
【0279】
好ましく滅菌された薬学的に許容できる溶媒中の組成物は、ガスの使用によって霧状化されてよい。霧状化された溶液は、霧状化デバイスから直接吸われてよく、または、霧状化デバイスは、フェイスマスク、テントまたは断続的な陽圧呼吸器に取り付けられてよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口または経鼻的に投与されてよい。
【0280】
[治療的使用、治療方法、患者集団]
鉄恒常性の異常は、診断および治療が困難であり得る複数の疾患と関連する。かかる障害は、2つのカテゴリーi)硬変、心筋症、糖尿病などを含む鉄過剰疾患;および、ii)貧血、慢性疾患の貧血(「ACD」)などを含む鉄欠乏性疾患に広く分類することができる。鉄欠乏性貧血(IDA)は、2つの主な形態:絶対的鉄欠乏症(AID)および機能性鉄欠乏症(FID)に分類することができる。AIDは、体内鉄貯蔵の低減によって定義され、一方で、FIDは、総体内鉄貯蔵は正常または増大するが、骨髄への鉄供給(例えば、鉄可動化)が調節不全または不十分である障害である。
【0281】
鉄関連の疾患のための現在の治療選択肢は、IV鉄などの外部鉄補給、およびESA療法(例えば、EPOおよび同様の薬剤)を含む。しかしながら、これらの治療は不要な副作用と関連する。例えば、IV鉄などの頻繁な鉄補給剤を摂取する慢性貧血患者は、鉄過剰を発症し得ることが示されている。過剰な体内鉄は、非常に毒性であり得て、複数の臓器に影響し得て、肝臓疾患、心疾患、糖尿病、ホルモン異常、および機能障害性免疫系などの様々な重大な症状をもたらす。同様に、輸血を受ける患者は、鉄過剰と関連する毒性のリスクがある。例えば、非常に多くの輸血を受ける患者、とりわけ、重症型サラセミア、鎌状赤血球症、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、溶血性貧血、および難治性鉄芽球性貧血を有する患者であって、輸血依存性になり得る患者においては、輸血される赤血球による過剰鉄(およそ250mg/輸血)は、様々な組織において次第に蓄積して、罹患および死亡を引き起こす。したがって、治療によって誘導される体内の過剰鉄は、心血管系、胃腸系、免疫系、骨/軟骨系、生殖系、および腎臓系に対する毒性を含む重度の有害反応を引き起こし得る。
【0282】
IV鉄に対する追加または代替の治療選択肢として、ESA療法(例えば、EPO)が、患者において、がん関連および化学療法によって誘導される貧血を患っている患者を含む広範な患者集団に広く施されている。しかしながら逆説的に、最近の前臨床および臨床試験は、ESAが、がん患者において潜在的に腫瘍増殖を加速させて生存を脅かし得ることを示している。
【0283】
HIF安定剤は、外因的に加えられるエリスロポエチンまたはその等価物の代わりに、HIFシグナリング・カスケードを通して赤血球を増大させるために内因性エリスロポエチンを産生する体の能力を刺激することを目的とする。この手法は、増大したがん進行および主な負の心臓イベント(例えば、脳卒中)のようなESA治療と関連するリスク因子を潜在的に減少させ得るという仮説が立てられている。しかしながら、現在までに、改善された安全性はまだ明確に確立されていない。
【0284】
最近では、RGMa/RGMcに特異的に結合するモノクローナル抗体が、ヘプシジンを下方調節することによってラットおよびカニクイザルにおいて血清鉄を増大させることが示された(Boser et al.(2015)AAPS J.2015 Jul;17(4):930-938)。この事例において、研究者らは、RGMa/RGMc抗体を受け取った健康な動物における明らかな毒性を観察せず、血液パラメータの正常化が、投与期間後の回復期間(約12週)後に見られた。しかしながら、例えば神経系および免疫調節性効果に対するRGMaの同時的な阻害と関連する潜在的リスクは、公表された研究からは分からない。
【0285】
したがって、鉄恒常性の不均衡を伴う疾患および障害、例えば、貧血を有する患者を治療するために効果的かつ安全に用いることのできる、鉄恒常性を達成するための改善された治療が必要である。
【0286】
したがって、一態様では、本発明は、鉄代謝の混乱と関連する症状、特に、鉄欠乏症と関連する症状(例えば、貧血)を治療および/または予防するための改善された方法を提供する。RGMc選択的阻害剤(例えば、RGMcに選択的に結合および阻害するがRGMa/bには結合および阻害しないモノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメント)は、対象における機能性鉄欠乏症を伴う症状の治療において用いられ得る。治療的使用は、対象を治療するのに効果的な量での、本開示に係る1または複数のRGMc選択的阻害剤の投与を含む。治療は、貧血の1つまたは複数の症候/パラメータ、例えば、血清鉄レベル、トランスフェリン飽和度(TAST)、網状赤血球ヘモグロビン含有量(CHr)、網状赤血球カウント、赤血球カウント、ヘモグロビン、およびヘマトクリットの軽減、緩和、正常化または維持を含んでよい。RGMc選択的阻害剤は、かかる効果の治療的効果の程度および/またはカイネティクスまたはタイミング(例えば、より早い軽減、より長い効果など)の観点から、臨床利益を提供し得る。RGMc選択的阻害剤は、貧血または貧血を引き起こす根底にある疾患を治療することを目的とする療法と関連する毒性または有害事象を減少させる観点から臨床利益を提供し得る。
【0287】
本発明の方法を用いて治療および/または予防され得る症状は、鉄代謝の混乱と関連する任意の疾患、障害、または症候群を含む。鉄代謝の混乱は、鉄の取り込み、鉄吸収、鉄輸送、鉄貯蔵、鉄のプロセッシング、鉄の可動化、および鉄の利用化の1つまたは複数の妨害と関連し得る。一般に、鉄代謝の混乱は、鉄過剰または鉄欠乏をもたらす。
【0288】
鉄代謝の疾患または障害は、対象において鉄恒常性が混乱する任意の疾患または障害であってよい。この恒常性は、適切な血漿鉄レベルの適切な調節に依存している。鉄は、細胞への鉄送達のためのビヒクルであるトランスフェリンに結合して血漿中を循環する。血漿トランスフェリンは通常、鉄によって約30%飽和している。したがって、トランスフェリン飽和度は、鉄消費に関与するパスウェイからの様々なシグナルに応答して適切な生理学的レベルで維持されなければならない。
【0289】
鉄欠乏と関連する疾患は、限定されないが、慢性疾患の貧血、鉄欠乏性貧血、絶対的鉄欠乏症、機能性鉄欠乏症、および小球性貧血を含む。この鉄恒常性の崩壊は、慢性疾患の貧血も生じさせ得て、ここで疾患を有する対象は、高レベルの血液ヘプシジンを示す。用語「慢性疾患の貧血」(ACD)は、例えば、長い感染、炎症、腫瘍性障害などの結果として発症する任意の貧血を指す。発症する貧血はしばしば、短い赤血球寿命およびマクロファージにおける鉄の隔離によって特徴付けられ、それにより、新しい赤血球を作るために利用可能な鉄の量が減少する。慢性疾患の貧血と関連する症状は、限定されないが、慢性細菌性心内膜炎、骨髄炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、慢性腎疾患、および腫瘍性障害を含む。
【0290】
さらに、鉄欠乏症と関連する疾患(例えば、ACD)を有する対象は、疲労、関節痛、骨または関節の疾患(変形性関節症、骨粗鬆症)、関節リウマチ、炎症性腸疾患、息切れ、不整脈、肝臓病、糖尿病、不妊、虚弱、鬱病、気分または心の障害、低い認識能力または神経変性疾患、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血、慢性腎疾患の貧血、赤血球産生刺激剤に対する抵抗性、再生不良性貧血、がん、低形成性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、フォンビルブラント病、および血友病遺伝性出血性毛細血管拡張症のような疾患または障害を有してよく、またはそのリスクがあってよい。
【0291】
さらなる症状は、感染、炎症、および新生物と関連する疾患および障害を含み、例えば、炎症性感染(例えば、肺膿瘍、結核など)、炎症性非感染性障害(例えば、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、クローン病、肝炎、炎症性腸疾患など)、および様々ながん、腫瘍、および悪性腫瘍(例えば、癌腫、肉腫、リンパ腫など)を含む。鉄欠乏性貧血は、化学療法処置、または、例えば妊娠、月経、幼少および幼児、損傷に起因する失血などの状態にも起因し得る。
【0292】
鉄過剰と関連する症状は、一次的および二次的の両方の、鉄過剰の疾患、症候群または障害を含み、制限されないが、遺伝性ヘマクロマトーシス、晩発性皮膚ポルフィリン症、遺伝性球状赤血球症、低色素性(hyprochromic)貧血、赤血球過形成性(hysererythropoietic)貧血(CDAI)、先天性赤血球異形成貧血(CDAII)、顔面生殖器異形成(faciogenital dysplasia)(FGDY)、アースコグ症候群、無トランスフェリン血症、鉄芽球性貧血(SA)、ピリドキシン応答性の鉄芽球性貧血、赤血球酵素異常症、例えば、グルコース-6リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)またはピルビン酸キナーゼ欠乏症(PKD)、および異常ヘモグロビン症、例えばサラセミアおよび鎌状細胞を含む。いくつかの研究は、サラセミアおよびヘマクロマトーシスのような鉄代謝障害と、II型(非インスリン依存性)糖尿病およびアテローム性動脈硬化のような複数の病状の間の関連性を示唆している(A.J.Matthews et al.,J.Surg.Res.,1997,73:3540:T.P.Tuomainen et al.,Diabetes Care,1997,20:426-428)。
【0293】
研究は、鉄代謝が、心血管系疾患を含む複数の他の疾患状態において役割を果たすことも示唆している(例えば、P.Tuo mainen et al.,Circulation,1997,97:1461-1466:J.M.McCord,Circulation,1991,83:1112-1114;J.L.Sullivan,J.Clin.Epidemiol.,1996,49:1345-1352を参照)。
【0294】
神経学的状態におけるヘプシジンおよび鉄の役割は、最近になって提案されている。例えば、ヘプシジンレベルの増大は、例えば、限局性脳虚血/再灌流、脳内出血、くも膜下出血、急性虚血性脳卒中、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および慢性の軽度のストレスを含む様々な神経疾患において示されている(Vela et al.,J Transl Med 2018;16:25)。
【0295】
さらに、鉄代謝は、下肢静止不能症候群においても重要な役割を果たし得る(Daubian-Nose P.et al.,Sleep Sci 2014;7(4):234-7およびConnor et al.,Sleep Medicine 2017;31:61-70)。実際に、プロ-ヘプシジンレベルの増大が、下肢静止不能症候群を有する患者の脳組織内で示されていて、一方で、プロ-ヘプシジンレベルの低減が、若年性疾患における脳脊髄液内に観察された(Clardy et al.,J Neurol Sci 2006;247:173-9)。RLS患者の脳内の鉄デポーは低く、脳ヘプシジンのより高い発現と関連している(Rizzo G.et al,Mov Disord 2013;28:1886-90およびClardy et al.,J Neurol Sci 2006;247:173-9)。RLS患者の脳内の低レベルの鉄は、HH存在下でさえ持続する(Haba-Rubio J.et al.,J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005;76:1009-10)。さらに、RLS患者の脳微小血管系内のトランスフェリン受容体発現は低く、BBBを通過する鉄輸送が低いことを示唆している(Connor JR et al.,Brain 2011;134:959-68)。興味深いことに、下肢静止不能症候群は、関節リウマチ(両方とも、鉄調節不全と関係がある疾患である)における併存症として示唆されている(John A.Gjevre and Regina M.Taylor Gjevre,Autoimmune Diseases 2013;Article ID 352782).
【0296】
i.鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)
鉄剤不応性鉄欠乏性貧血は、Tmprss6における突然変異に起因する常染色体劣性障害である。TMPRSS6は、膜結合型RGMcを切断して、BMP6のためのデコイ受容体として作用する可溶性RGMc(s-RGMc)を産生することによる、ヘプシジンの負の調節因子である。BMP6シグナリングの減少は、ヘプシジン発現の減少をもたらす。したがって、TMPRSS6機能を阻害する突然変異は、膜結合型RGMcの蓄積を促進し、それにより、ヘプシジン発現および鉄欠乏性貧血の増大をもたらす。IRIDAを有する患者は、血中の鉄が少なすぎて、それにより、赤血球のサイズが小さくなり(小球)、色が薄くなる(低色素)。その疾患の他の表現型は、低いトランスフェリン飽和度、低い血清フェリチン、および低い血清鉄レベルを含んでよい。残念なことに、これらの患者のヘプシジンのレベルが高いことは、経口鉄投与に対して難治性にさせる。
【0297】
膜結合型RGMcの増大(およびヘプシジンレベルの増大)をもたらすIRIDAの十分に定義されたメカニズムを考慮すると、RGMcに特異的に結合してヘプシジンレベルを減少させ、一方で、関連RGMタンパク質(例えば、RGMaおよびRGMb)を標的化することによる潜在的な副作用を制限する薬剤が有益である。
【0298】
したがって、RGMc選択的阻害剤(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体、その誘導体、それと競合するモノクローナル抗体、および、その抗原結合フラグメントを含む操作された分子)は、対象(例えば、ヒト患者)におけるIRIDAの治療のために用いられ得る。したがって、一態様では、IRIDAと関連する症候を治療、予防、または寛解させるための方法が開示される。一実施態様では、当該方法は、IRIDAを有する患者にRGMc拮抗薬を投与するステップを含む。別の実施態様では、当該方法は、IRIDAを有する患者に、RGMcに特異的に結合してその機能を阻害する抗体を投与するステップを含む。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、RGMaおよび/またはRGMbに結合しない(または結合が少ない)。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、本明細書中に記載のRGMc特異的抗体またはその任意の誘導体のいずれか1つである。一部の実施態様では、RGMc特異的(RGMc選択的)抗体は、本明細書において開示されるRGMc抗体の1つまたは複数と、抗原結合を競合(例えば、交差競合または交差阻害)する。
【0299】
ii.慢性疾患の貧血(ACD)
慢性疾患の貧血(例えば、慢性炎症の貧血)は、慢性の感染、慢性の免疫活性化(例えば炎症)、および/または悪性腫瘍などの結果である貧血の形態であり、入院患者における貧血の最も一般的な形態である。
【0300】
典型的に、ACDは、炎症性応答で始まり、その後に、疾患進行を仲介する炎症性サイトカイン放出が続く。サイトカインは、赤血球の産生を減少させ、赤血球の溶解を促進し、鉄をフェリチンとして貯蔵および保持するようにマクロファージを刺激して、最終的に不十分な鉄利用率をもたらす。さらに、インターロイキン-6(IL-6)の大きな増加があり、それによりヘプシジン発現が刺激され、その結果、フェロポーチンの分解を誘導し、それによって、マクロファージおよび腸細胞から周囲への鉄放出がブロックされる。炎症性応答に加えて、他のメカニズムも、ACDにおける役割(例えば、骨髄がエリスロポエチンに応答する能力を低減することによる、赤血球産生の減少)を果たし得る。
【0301】
上記に示唆されるように、貧血をもたらす炎症を引き起こし得る多くの症状があり、自己免疫性疾患、例えば、関節リウマチ(RA)またはループス、がん、慢性感染、例えば、HIV/AIDSおよび結核、慢性腎疾患(CKD)、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患(IBD)のような胃腸の炎症状態、糖尿病、および心不全を含む。炎症性貧血は、一般に進行が遅いが、重病の貧血は、重度の急性感染、外傷、または炎症を引き起こし得る他の症状のために入院する患者において迅速に進行し得る。さらに、化学療法のような特定の薬物治療は、炎症および貧血を迅速に誘導し得る。
【0302】
他の貧血関連の炎症性疾患は、例えば、キャッスルマン症候群、慢性腎疾患、糖尿病、心不全/心疾患、特発性自己免疫性溶血性貧血、特発性肺動脈性高血圧、炎症性腸疾患、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、および全身性若年性特発性関節炎を含んでよい。貧血を引き起こす感染性疾患は、例えば、心内膜炎、ヘリコバクター・ピロリ感染、肝炎、ヒト免疫不全ウイルス、およびマラリアを含んでよい。貧血と関連する神経疾患は、例えば、急性虚血性脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、限局性脳虚血/再灌流、頭蓋内脳出血、およびくも膜下出血を含んでよい。
【0303】
したがって、RGMc選択的阻害剤(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体、その誘導体、それと競合するモノクローナル抗体、および、その抗原結合フラグメントを含む操作された分子)は、対象(例えば、ヒト患者)における、ACD(例えば、本明細書に含まれるACD徴候の1つまたは複数)の治療のために用いられ得る。したがって、一態様では、ヒト患者における慢性疾患の貧血(ACD)を治療する(例えば、予防する、またはそれと関連する症候を寛解させる)方法が開示される。一部の実施態様では、当該方法は、ACDを有する患者にRGMc拮抗薬を投与するステップを含む。一部の実施態様では、当該方法は、ACDを有する患者に、RGMcに特異的に結合してその機能を阻害する抗体を投与するステップを含む。一部の実施態様では、RGMc特異的(RGMc選択的)抗体は、RGMaおよび/またはRGMbに結合しない(または結合が少ない)。一部の実施態様では、RGMc特異的抗体は、本明細書中に記載のRGMc特異的抗体、またはその任意の誘導体のいずれか1つである。一部の実施態様では、RGMc特異的(RGMc選択的)抗体は、本明細書において開示されるRGMc抗体の1つまたは複数と、抗原結合を競合(例えば、交差競合または交差阻害)する。
【0304】
iii.がん関連の貧血
がん患者のおよそ30~90%が、貧血による影響を受ける(Knight et al.,Am J Med 2004;116 Supp l7A:11S-26S)。例えば、非ホジキンリンパ腫患者のおよそ32%、および婦人科がん患者の49%が、診断において貧血を有している(Moullet et al.、Ann Oncol 1998;8:1109-1115およびLudwig et al.,Eur J Cancer 2004;40:2293-2306)。貧血は、がん自体と関連する因子によって引き起こされ得て(がんによって誘導される貧血)、または、化学療法の結果として引き起こされ得る(化学療法によって誘導される貧血)。さらに、骨格に対する放射線療法は、血液学的毒性と関連することが示されている(Jefferies et al.,Radiother Oncol 1998;48:23-27)。貧血の病理学は、3つのカテゴリー:1)機能赤血球(RBC)の産生の低減;2)RBCの破壊の増大;および3)失血に分類することができる。しかしながら、貧血の原因は多因子であり得て、評価および治療を複雑化させ得る。貧血は、出血、溶血、栄養障害、遺伝性疾患、腎不全、ホルモン機能障害および/またはそれらの組み合わせに起因し得る。さらに、がん細胞自体が、骨髄に浸潤することによって貧血をもたらし得て、および/または悪化させ得て、鉄の隔離(RBC産生の減少をもたらす)、RBC生存の短縮、および/または凝血の変化をもたらすサイトカインを産生し得る。
【0305】
さらに、がん患者は、血管または臓器の損傷による腫瘍部位における慢性の失血も経験し得る。がん患者における貧血に対する他の寄与因子は、食欲喪失、免疫介在性抗体による溶血、または凝血能の変化を含んでよい。
【0306】
最後に、貧血は、がん患者における反対の予後因子としても同定されている。例えば、65%増大した死亡リスク、および、患者あたり4倍近く高い平均年間健康管理費用が存在することが予測されている。したがって、がん患者における貧血治療のゴールは、患者の生活の質(QoL)を改善し、輸血に頼るのを減少させることである。輸血は、感染性疾患の伝染、輸血反応、肺損傷、および同種免疫の潜在的なリスクと関連する。輸血はまた、脳卒中、心筋梗塞、急性腎機能不全およびがんの再発を含む、死亡および罹患のリスクも増大させ得る(Annals of Oncology 21(Supplement 7):vii167-vii172,2010;PLOS ONE,DOI:10.1371/journal.pone.0163817(Sept 28,2016);Annals of Oncology 23:1954-1962,2012;および、Annals of Clinical&Laboratory Science,vol.47,no.2,2017)。
【0307】
本明細書において用いられる用語「がん」は、無調節の細胞増殖および悪性腫瘍によって典型的に特徴付けられる多細胞真核生物における生理学的状態を指す。その用語は、腫瘍、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫および骨髄腫)を含む固形および液体悪性腫瘍、ならびに骨髄線維症を広く包含する。貧血を引き起こすがんは、例えば、急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性障害(例えば、骨髄線維症)、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、頭頚部がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、脳腫瘍、肝細胞がん、腎細胞がん、精巣がん、および甲状腺がんを含んでよい(Maccio et al.,Haematologica 2015;100(1):124-132およびVela et al.,Exp&Mol Medicine 2018;50:e436。
【0308】
したがって、RGMc選択的阻害剤(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体、その誘導体、それと競合するモノクローナル抗体、および、その抗原結合フラグメントを含む操作された分子)は、対象(例えば、ヒト患者)における、がんによって誘導される貧血またはがんと関係がある貧血の治療のために用いられ得る。したがって、一態様では、がんによって誘導される貧血を治療する(例えば、予防する、または、それと関連する症候を寛解させる)ための方法。一部の実施態様では、当該方法は、RGMc拮抗薬を、がんによって誘導される貧血を有する患者に投与するステップを含む。一部の実施態様では、がんは、急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、頭頚部がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がん、脳腫瘍、腎細胞がん、精巣がん、甲状腺がん、または骨髄線維症である。一部の実施態様では、当該方法は、RGMcに特異的に結合してその機能を阻害する抗体を患者に投与するステップを含む。一部の実施態様では、RGMc特異的抗体は、RGMaおよび/またはRGMbに結合しない(または結合が少ない)。一部の実施態様では、RGMc特異的抗体は、本明細書中に記載のRGMc特異的抗体またはその任意の誘導体のいずれか1つである。一部の実施態様では、RGMc特異的(RGMc選択的)抗体は、本明細書において開示されるRGMc抗体の1つまたは複数と、抗原結合を競合(例えば、交差競合または交差阻害)する。
【0309】
iv.治療によって誘導される貧血
患者に施される様々な治療は、治療される患者における貧血を含む不要な副作用と関連する。場合によっては、患者は、貧血を既に患っていてよいが、受ける療法はその症状をさらに悪化させ得る。
【0310】
化学療法および放射線療法のようながん治療を受ける患者の大部分が、治療によって誘導される貧血を経験する。典型的に、これらの療法は、体内のがん性細胞を死滅させることを目的とするが、血液細胞(例えば、造血細胞および造血幹細胞)を含む健康な細胞にも影響し、それによって貧血を生じる。
【0311】
化学療法剤は、骨髄における造血を直接的に害することによって貧血を誘導することが示されている。さらに、腎機能に対する細胞傷害性効果は、エリスロポエチン産生の低減を通して貧血を生じさせ得る。特に、肺がん、卵巣がん、および頭頚部がんにおいて一般に用いられる白金に基づくレジメンは、骨髄および腎臓の毒性を通して貧血を誘導することが知られている(Groopman et al.,J Natl Cancer Inst 1999;91:1616-1634)。さらに、化学療法の繰り返しサイクルは、これらの患者において貧血の重症度を増大させることも示されている(Ludwig et al.,Eur J Cancer 2004;40:2293-2306)。
【0312】
興味深いことに、最近のデータは、免疫療法もまた、がん患者において貧血を引き起こし得る(および/または、そのリスクを増大させる)ことを示唆している。例えば、最近の研究によって、ニボルマブ(抗-PD-1抗体)による治療の潜在的合併症として溶血性貧血が同定された(Palla et al.,Case Rep Oncol 2016;9:691-697)。自己免疫性溶血性貧血の他の事例がニボルマブの使用後に報告されており、イピリムマブ(抗-CTLA-4抗体)およびペンブロリズマブ(抗-PD-1抗体)を受けている患者における貧血の事例を含む。したがって、抗がん剤/薬物の投与(免疫療法を含む)によって引き起こされる、または、生じる機会/リスクが高い貧血は、用語「化学療法によって誘導される貧血」によって包含される。
【0313】
最後に、上記のとおり、貧血の存在は、がん生存に関する予後因子として関連付けられている(Caro JJ et al.,Cancer 2001 15;91(12):2214-21)。したがって、がん患者、または化学療法を受けている患者において貧血を治療することは、改善された成果をもたらし得るので、非常に理にかなっている。さらに、がん、化学療法、および貧血の間の十分に説明された関係を考慮して、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)は、がんおよび化学療法によって誘導される貧血の診断、評価、および治療に関するガイドラインを定期的にリリースしている(例えば、Rodgers et al,Cancer-and Chemotherapy Induced Anemia,JNCCN 2012;10:628-53を参照)。
【0314】
したがって、RGMc選択的阻害剤(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体、その誘導体、それと競合するモノクローナル抗体、および、その抗原結合フラグメントを含む操作された分子)は、対象(例えば、ヒト患者)における、治療によって誘導される貧血(例えば、化学療法によって誘導される貧血)の治療のために用いられ得る。
【0315】
したがって、一態様では、化学療法によって誘導される貧血と関連する症候を治療する、予防する、または寛解させるための方法が提供される。一実施態様では、当該方法は、RGMc拮抗薬を、化学療法によって誘導される貧血を有している患者に投与するステップを含む。
【0316】
別の実施態様では、当該方法は、RGMcに特異的に結合してその機能を阻害する抗体を患者に投与するステップを含む。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、RGMaおよび/またはRGMbに結合しない(または結合が少ない)。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、本明細書中に記載のRGMc特異的抗体またはその任意の誘導体のいずれか1つである。一部の実施態様では、RGMc特異的(RGMc選択的)抗体は、本明細書において開示されるRGMc抗体の1つまたは複数と、抗原結合を競合(例えば、交差競合または交差阻害)する。
【0317】
v.慢性腎疾患(CKD)
貧血は、慢性腎疾患(CKD)と関連する一般的な合併症である。実際に、米国の成人集団のおよそ14%が、2007~2010年にCKDを有していて、貧血は、CKDを有する人々においてほぼ2倍普及していて、一般集団で8.4%に対し、CKD患者では15.4%であった(Stauffer and Fan,PLoS One 2014;9:e84943)。
【0318】
腎臓は、血液のフィルターとして作用し、老廃物を除去し、流体と電解質のバランスを制御することがよく知られているが、腎臓のあまり知られていない役割は、赤血球産生を刺激するエリスロポエチンを産生することである。したがって、腎機能の混乱は、貧血を生じさせる潜在性がある。さらに、CKD患者の根底にある炎症もまた、これらの患者において貧血を生じさせ得て、および/または悪化させ得る。
【0319】
CKDは、長期間(何ヶ月も、または何年も)にわたり、腎機能が徐々に失われることによって特徴付けられる。CKDの原因は、例えば、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎、および多発性嚢胞腎疾患を含む。しかしながら、特発性の事例(すなわち、原因が未知)も存在し、それはしばしば矮小腎と関連する。
【0320】
CKDの進行を遅くする、または止める治療は、通常、元々の疾患の治療を必然的に伴うが、アンジオテンシン変換酵素阻害剤またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬による血圧制御が、疾患の進行を遅らせることが見いだされているので、一般的な治療である。しかしながら、重症の事例では(例えば、末期の腎疾患)、患者は、透析または腎臓移植さえも受けなければならない。患者は透析依存性であってよく(例えば慢性血液透析患者);患者は非透析依存性であってよい。
【0321】
貧血を有するCKD患者は、経口または静脈内投与の鉄によって治療され得る。特定の事例では、治療は、エリスロポエチン(EPO)の遺伝学的に操作された形態の注入および/または輸血を含んでよい。しかしながら、鉄の置き換えは常に効果的であるわけではなく;例えば、一部の患者は、ESA治療に対して反応性低下であり、または反応性低下になる。さらに、EPO治療のようなESAは、心血管イベント、例えば心臓発作および脳卒中の機会の増大と関連している。したがって、少ない副作用で鉄レベルを調節することのできる改善された治療が必要である。
【0322】
したがって、RGMc選択的阻害剤(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体、その誘導体、それと競合するモノクローナル抗体、および、その抗原結合フラグメントを含む操作された分子)は、対象(例えば、ヒト患者)における、がんによって誘導される、または、がんと関係がある貧血の治療のために用いられ得る。したがって、一態様では、慢性腎疾患と関連する症候(例えば、貧血)を治療する、予防する、または寛解させるための方法が提供される。一実施態様では、当該方法は、慢性腎疾患を有する患者にRGMc拮抗薬を投与するステップを含む。別の実施態様では、当該方法は、RGMcに特異的に結合してその機能を阻害する抗体を患者に投与するステップを含む。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、RGMaおよび/またはRGMbに結合しない(または結合が少ない)。別の実施態様では、RGMc特異的抗体は、本明細書中に記載のRGMc特異的抗体またはその任意の誘導体のいずれか1つである。一部の実施態様では、RGMc特異的(RGMc選択的)抗体は、本明細書において開示されるRGMc抗体の1つまたは複数と、抗原結合を競合(例えば、交差競合または交差阻害)する。
【0323】
貧血、または、貧血によって特徴付けられる、または関連する疾患の治療における、上記の実施態様のいずれかにおいて、本明細書中に記載のRGMc阻害剤療法は、ESA、HIF安定剤、鉄補給剤(例えば、IV鉄)および輸血のような、患者に施される現行または標準的な療法(単数または複数)を部分的または完全に置き換え得る。一部の実施態様では、本開示に従った、治療的レジメンにおけるRGMc阻害剤療法の追加は、減少した用量または投与頻度のかかる治療を患者が受けるのを可能にする。このことは、患者において、不要な副作用または鉄過剰のような他のリスクを緩和または回避し得る。一部の実施態様では、RGMc阻害剤療法は、患者における貧血を治療するための他の療法を完全に置き換え得る。
【0324】
貧血、または、貧血によって特徴付けられる、または関連する疾患の治療における、上記の実施態様のいずれかにおいて、本明細書中に記載のRGMc阻害剤療法は、アドオンまたはアジュバント療法として、別の療法とともに用いられ得る。特定の実施態様では、患者は、貧血を治療するための他の療法を受けてよく、または受け続けてよいが、より低い用量またはより少ない頻度である。一部の実施態様では、かかる療法に対して抵抗性または応答が乏しい患者は、その療法とともにRGMc阻害剤を用いて治療した場合、その療法に対してより応答性(例えば感受性)になり得る。
【0325】
RGMc阻害剤を用いた治療のための対象の選択
本明細書中に記載の治療の方法は、対象における疾患(例えば、貧血)の存在および/または重症度を決定するために、1つまたは複数の因子を測定するステップを含んでもよい。一般に、貧血の定義は、女性でHb<12g/dlであり、男性でHb<13g/dlである。ヘモグロビンの測定は貧血の1つの測定として認められているが、貧血のタイプ(AIDまたはFID)および原因の決定は多くの異なる試験を伴い得る。例えば、対象における貧血のタイプおよび重症度を決定するのに役立ち得るいくつかのよく知られた試験が存在し、制限されないが、ヘモグロビン(Hb)、血清フェリチン(SF)、トランスフェリン飽和度(TSAT)、可溶性トランスフェリン受容体(sTfR)、フェリチン・インデックス(FI=sTfR/logSF)、低色素の網状赤血球(CHR)およびC反応性タンパク質(CRP)の測定を含む。平均赤血球容積(MCV)または平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)も、貧血のタイプと相関し得る測定値である。
【0326】
AIDおよびFIDを定義するための正確な基準は討論対象であり、試験、疾患、性別および権威によって異なる。例えば、特定の理論に拘束されずに、FIDは、1)血清トランスフェリン飽和度(TSAT)<20%およびフェリチン≧100ng/mL(Ludwig et al.、Ann Oncol 2013;24(7):1886-1892);2)TSAT<16%およびフェリチン>100ng/ml(軽度)または血清フェリチン30~100ng/ml(中程度)(Bach et al.,Clinical Interventions In Aging 2014;9:1187-1196);3)TSAT20~50%およびフェリチン30~800ng/ml(Gilreath et al.,AmJ Hematol 2014;89(2):203-212);4)TSAT<20%およびフェリチン>30ng/mlおよび>100ng/ml(がん患者)(Ludwig et al.,Wien Klin Wochenschr 2015;127:907-919)または5)TSAT<20%およびフェリチン>30ng/ml(女性)または>40ng/ml(男性)(Hedenus et al.,Med Oncol 2014;31(12):302)と定義され得る。他の例では、低色素赤血球(%)を用いてFIDを検出することができる(例えば、Bovy et al.,Nephrol Dial Tranplant 2007;22(4):1156-1162およびMurphy et al.,Ann Hematol 2006;85(7):455-457を参照)。別の例では、FIDは、患者がHb<110g/l、鉄が制限された赤血球産生(低色素血(%)>5)、全身性炎症(CRP>10)を有する場合(30~800ng/mlのフェリチン値を有してもよい)として定義される(Neoh et al.,Support Care Cancer 2017;25:1209-1214)。
【0327】
一方で、特定の理論によって拘束されずに、AIDは、例えば、1)TSAT<20%およびフェリチン<30ng/ml(Ludwig et al.,Ann Oncol 2013;24(7):1886-1892);2)TSAT<20%およびフェリチン<100ng/ml(がん患者)(Ludwig et al.,Wien Klin Wochenschr 2015;127:907-919);または3)TSAT<20%およびフェリチンレベル<40ug/L(Hashemi et al.,Int J Hematol Oncol Stem Cell Res 2017;11(3):192-198)と定義され得る。
【0328】
治療方法は、本明細書において述べられる、および当技術分野で知られている、他のマーカーの測定を伴ってもよい。例えば、ヘプシジン(例えば、US20150202224A1およびKroot et al.Clinical Chemistry2011;57(12):1650-1669を参照)、ネオゲニン、増殖分化因子15(GDF-15)、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、インターロイキン6(IL-6)、および/またはBMP6の測定。
【0329】
さらに、他のリスク因子および/または疾患の同定は、貧血の存在およびタイプを判定するのに役立ち得て、例えば、患者は、感染、がん、または慢性腎疾患を有してよい。遺伝子試験もまた、特定の鉄関連の疾患、例えば、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)、サラセミア、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、無βリポタンパク質血症、鎌状赤血球貧血、先天性赤血球異形成貧血、遺伝性ヘマクロマトーシス(HH)、および若年性ヘマクロマトーシスを判定するために役に立ち得る。
【0330】
本明細書中に記載の任意の方法における対象は、鉄欠乏性の貧血、または、鉄欠乏性の貧血と関連する疾患、障害、または症状を、有する対象、その診断がされた対象、有する疑いがある対象、または、発症するリスクがある対象であってよい。対象は哺乳類であってよく、ヒトまたは非ヒトであってよい。特定の実施態様では、対象はヒト対象である。別の実施態様では、対象は、ヒト男性対象であってよい。別の実施態様では、対象は、ヒト女性対象であってよい。別の実施態様では、対象は、化学療法を受けている、外科的処置から回復中の、救命救急患者であってよく、または、感染、がん、自己免疫性の疾患もしくは障害、慢性臓器疾患および/または炎症、および/または固形臓器移植後の臓器の慢性拒絶のリスクがあってよく、または有していてよい。感染は、急性または慢性であってよい。感染は、ウイルス、細菌、寄生虫、または真菌であってよい。がんは、血液学的または固形腫瘍のような任意のがんであってよい。自己免疫性疾患は、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡および結合組織疾患、血管炎、サルコイドーシス、および炎症性腸疾患のような任意の自己免疫疾患であってよい。慢性臓器疾患は、慢性腎疾患であってよく、その対象は、透析を受けていてよく、または受けてなくてよい。ウイルス感染は、肝炎BもしくはC感染、またはヒト免疫不全ウイルス感染であってよい。任意の疾患および障害は、ACDの根本的原因であってよい。外科的処置は、周術期または術後であってよい。外科的処置は、腫瘍の外科的処置であってよい。
【0331】
治療が必要な対象は典型的に、問題となっている疾患または症状と一致する病歴および身体検査によって評価される。本明細書中に記載の方法によって治療することのできる様々な症状の診断は、当該分野の技術内である。本明細書中に記載のRGMc拮抗薬は、鉄を送達することが臨床的に必要である対象へ、または、機能性鉄欠乏症を有する対象、例えばエリスロポエチン療法中の対象において、投与され得る。非経口またはi.v.鉄による治療の必要性に関する決定は、当業者の能力内である。例えば、必要性は、対象の鉄状態をモニターすることによって評価することができる。鉄欠乏症の診断は、上述の適切な検査試験、例えば、表2に従ったHgレベルまたはベースラインよりも>2g/dl低いこと(>2g/dl below baseline)、および/または80フェムトリットル(fL)未満のMCVを有する赤血球に基づいてよい。鉄欠乏症を診断するための他の測定は、血清フェリチン(SF)、トランスフェリン飽和度(TSAT)、可溶性トランスフェリン受容体(sTfR)、フェリチン・インデックス(FI=sTfR/logSF)、低色素網状赤血球(CHR)、C反応性タンパク質(CRP)、平均赤血球容積(MCV)および/または平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)の測定に基づいてよい。
【0332】
【0333】
治療が必要な対象は、鉄欠乏性貧血と関連する疾患、障害、または症状を患っている対象の診断を通して決定してもよい。例えば、エリスロポエチンを受けている多くの慢性腎機能不全患者は、標的鉄レベルを維持するために鉄剤を必要とする。別の例としては、大部分の血液透析患者は、透析と関係がある失血および生じる負の鉄バランスに起因して、鉄剤の投与を必要とする。
【0334】
モニター頻度は、対象が悩まされている、またはリスクがある、疾患、障害、または症状に依存し得る。例えば、エリスロポエチン療法を始めている対象において、鉄インデックスは毎月モニターされる。別の例としては、標的範囲のHbを達成した対象または静脈内投与の鉄療法を受けている対象において、TSATおよびフェリチンレベルは3月ごとにモニターされ得る。
【0335】
対象の鉄状態は、絶対的鉄欠乏症(AID)または機能性鉄欠乏症(FID)を表わし得て、両方とも、本明細書中に記載の組成物および治療的方法を用いて治療することができる。絶対的鉄欠乏症は、体の要求を満たすのに利用できる鉄の量が不十分である場合に生じる。不十分であることは、不十分な鉄の取り込み、食物由来の鉄のバイオアベイラビリティーの減少、鉄利用の増大、または慢性失血に起因し得る。長い鉄欠乏は、鉄欠乏性貧血-小赤血球、低色素貧血(鉄貯蔵が不十分である)をもたらし得る。AIDは一般に、TSAT<20%およびフェリチン<100ng/mLである場合を指す。
【0336】
TSATは、血清鉄と総鉄結合能の比に100をかけたものである。TSAT値は、鉄を結合するのに利用可能なトランスフェリンのうち、どれくらいの血清鉄が実際に結合しているのか臨床医が知ることができるものである。例えば、15%という値は、トランスフェリンの鉄結合部位の15%が鉄で占められていることを意味する。
【0337】
FIDは、十分な総体内鉄貯蔵にもかかわらず赤血球産生に関する骨髄の需要に合わせるのに十分急速に鉄を放出することができない場合に生じ得る。これらの例では、フェリチンレベルは正常または高いかもしれないが、赤血球系への鉄の供給は、低いトランスフェリン飽和度および増大した数の小球性低色素赤血球によって示されるように制限される。FIDは、以下の特徴によって特徴付けることができる:エリスロポエチンに対する不十分なヘモグロビン応答;血清フェリチンは正常または高いかもしれない;トランスフェリン飽和度(TSAT)は通常<20%;および/または減少した平均赤血球容積(MCV;例えば、80fL未満)または平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC;例えば、34±2g/dl未満)(重症な事例)。機能性鉄欠乏症(すなわち、鉄貯蔵は十分であると考えられるが鉄送達に利用可能でない)は一般に、TSAT<20%およびフェリチン>100ng/mLの場合を指す。
【0338】
鉄療法に関する必要性の評価は、例えば、National Kidney Foundation’s Kidney Disease Outcomes Quality Initiativeに従ってよい。NKF-K/DOQI,Clinical Practice Guidelines for Anemia of Chronic Kidney Disease(2000);Am J Kidney Dis(2001)37(supp 1),S182-S238を参照。DOQIは、慢性腎機能不全における貧血の治療のための最適な診療を提供する。DOQIガイドラインは、ヘモグロビン、トランスフェリン飽和度(TSAT)、およびフェリチンレベルに基づき、腎疾患の静脈内鉄治療を特定化する。
【0339】
鉄管理、および、がんおよび/または化学療法患者におけるAID対FIDの判定のためのさらなるガイドラインも示唆されており、例えば、Steinmetz et al.,Ther Adv Hematol 2012;3(3):177-91,Mikhael et al.,Curr Oncol 2007;14:209-217,European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC;Bokemeyer et al.,Eur J Cancer 2007;43:258-270;および、Aapro and Link,Oncologist 2008;13(Suppl.3):33-36)、American Society of Hematology(ASH)and the American Society of Clinical Oncology(ASCO)(例えば、Rizzo et al.,Blood 2010;100:2303-2320を参照)、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)guidelines version 3.2018 Cancer-and Chemotherapy-induced Anemia,European Society for Medical Oncology(ESMO)(例えば、Aepro et al.,Annals of Oncology 2018;0:1-15を参照)、および、National institute for Health and Care Excellence(NICE)(例えば、Technology appraisal guidance published 26 Nov 2014;nice.org.uk/guidance/ta323を参照)を参照。
【0340】
治療が必要な対象は、対象の標的鉄レベルによって決定され得る。例えば、対象の標的ヘモグロビンレベルは、11.0g/dL~12.0g/dL(ヘマトクリットおよそ33%~36%)として選択されてよい。最適エリスロポエチン用量で標的ヘモグロビンを達成するために、十分な鉄が、TSAT≧20%およびフェリチン100ng/mLを維持するように提供されてよい。最適エリスロポエチン用量での標的ヘモグロビンレベルの達成は、20%よりも高くTSATを維持するのに十分な鉄の提供と関連する。
【0341】
鉄療法は、鉄欠乏を予防して鉄過剰も予防しながら、標的ヘモグロビンを維持するように与えられ得る。ヘモグロビン、ヘマトクリット、および鉄貯蔵の検査パラメータの標的レベルを維持するための鉄の用量の調節は、当該分野の通常の技術内である。例えば、対象が貧血または鉄欠乏である場合は、患者がフェリチン<800ng/mL、TSAT<50%、および/またはヘモグロビン<12g/dLであるときに鉄剤が投与され得る。鉄過剰は、TSAT>50%および/またはフェリチン>800ng/mLに関して鉄を控えることによって避けることができる。
【0342】
対象が貧血または鉄欠乏ではないが、それでもなおRGMc拮抗薬が必要である場合、例えば対象が下肢静止不能症候群を患っている場合は、ヘモグロビンおよびTSATレベルは必ずしも関係ないが、フェリチン>800が、投与に関する一般的なカットオフポイントを提供し得る。
【0343】
[投与]
本明細書に開示される方法を実行するために、有効量の上述の医薬組成物は、適切な経路(例えば静脈内投与)を介して、例えばボーラスとして、または、長年にわたる連続的なインフュージョンによって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、髄腔内、経口、吸入または局所経路により、治療を必要とする対象(例えばヒト)に投与され得る。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含む、液体製剤のための市販される噴霧器が、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧されてよく、凍結乾燥された粉末は、再構成後に噴霧されてよい。あるいは、RGMcに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、フッ化炭素製剤および定量吸入器を用いてエアロゾル化されてよく、または、凍結乾燥および製粉された粉末として吸入されてよい。
【0344】
本明細書に記載の方法によって治療される対象は、哺乳類、より好ましくはヒトであってよい。哺乳類は、限定されないが、家畜、競技動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットを含む。治療が必要なヒト対象は、上記に記載したもの(例えば貧血)のようなRGMc関連の徴候を有する、そのリスクがある、または有する疑いがある、ヒト患者であってよい。RGMc関連の徴候を有する対象は、日常的な医学的検査、例えば、検査試験、臓器機能性試験、CTスキャン、または超音波によって同定され得る。任意のそのような徴候を有する疑いがある対象は、徴候の1つまたは複数の症候を示す。徴候に関するリスクがある対象は、その徴候に関する危険因子の1つまたは複数を有する対象であり得る。
【0345】
本明細書において用いられる用語「有効量」および「効果的な用量」は、その使用目的(単数または複数)、すなわち、許容できる利益/リスク比で組織または対象における所望の生物学的または医薬的(臨床)応答を満たすのに十分な化合物または組成物の任意の量または用量を指す。例えば、本発明の特定の実施態様では、使用目的は、RGMc活性をインビボで阻害して、RGMc阻害と関連する臨床的に有意義な成果を達成することであってよい。例えば、臨床的に意味のある効果は、血清鉄の増大、ヘモグロビンまたは赤血球カウントの復元または正常化、トランスフェリン飽和度の増大などを含んでよい。一部の実施態様では、臨床的に有意義な効果は、減少した毒性または心血管系リスク(例えば、脳卒中または心不全)およびがんのような害のリスクを含んでよい。一部の実施態様では、臨床的に有意義な効果は、鉄補給剤のような他の療法の必要が減ることを含んでよい。一部の実施態様では、臨床的に有意義な効果は、患者が感じとる生活の質または一般的幸福の改善を含んでよい。一部の実施態様では、臨床的に有意義な効果は、貧血を表わす1つまたは複数のパラメータの加速またはより早い軽減を含んでよい。かかる軽減は、RGMc阻害剤および別の療法(例えば、ESA、HIF安定剤など)を含むアドオンまたは併用療法によって達成され得る。例えば、典型的に、EPO療法(例えば、単剤療法)を開始する場合、その治療が効果を示すには1~2ヶ月(例えば、6~8週)かかる。この理由から、重度の貧血を経験する患者は、その期間中、IV鉄または輸血がさらに必要であり得る。しかしながら、本明細書中に開示されるもののようなRGMc選択的阻害剤とともに用いると、治療的効果の発生は有意により迅速(例えば、1~4週)であり得て、そのことは、さらなるIV鉄または輸血の必要を減少させ得る。
【0346】
有効量は、当業者に認識されるように、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、治療の持続時間、同時的な療法の性質(ある場合)、特定の投与経路、および、健康専門家の知識および経験内の同様の因子に応じて変化する。これらの因子は当業者によく知られていて、ルーチン実験の範囲内で対処され得る。個々の構成要素またはその組み合わせの最大投与量、すなわち、十分な医学的判断に従って最高の安全投与量が用いられることが一般に好ましい。しかしながら、医学的理由、心理的理由または実質的に任意の他の理由のために、患者が、より低い投与量または許容できる投与量を要求してよいことを、当業者は理解している。
【0347】
半減期のような経験的考察は、一般に、用量の決定に寄与する。例えば、ヒト化抗体または完全なヒト抗体のようなヒト免疫系と適合する抗体は、抗体の半減期を延長させるため、および抗体が宿主の免疫系によって攻撃されるのを防ぐために用いられ得る。投与頻度は、治療の工程にわたって決定および調節されてよく、一般に、必ずしもではないが、RGMc関連の徴候の治療および/または抑制および/または寛解および/または遅延に基づく。あるいは、RGMcに特異的に結合する抗体の維持された連続的な放出製剤が適切であり得る。徐放性を達成するための様々な製剤およびデバイスが当業者に明らかであり、本開示の範囲内である。
【0348】
1つの例では、本明細書中に記載のRGMcに特異的に結合する抗体に関する用量は、抗体の1または複数の投与(単数または複数)が与えられたことのある個体において経験的に決定されてよい。個体は、増加的な用量のRGMc拮抗薬が与えられる。効能を評価するために、RGMc関連の徴候のインディケーターが後に続いてよい。例えば、貧血を測定するための方法が当技術分野でよく知られており、本明細書においてさらに記載される。
【0349】
本発明は、RGMaおよび/またはRGMbとは対照的にRGMcシグナリングを特異的に調整することが可能な薬剤が、薬品として用いられた場合に改善された安全性プロファイルを提供し得るという認識を包含する。したがって、本発明は、RGMcに特異的に結合してその活性化を阻害するが、RGMaおよび/またはRGMbにはせず、それにより、RGMaおよび/またはRGMbシグナリングに影響を及ぼすことによる不要な副作用を最小限にしながらインビボでRGMcシグナリングの特異的な阻害を与える、抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。
【0350】
一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象に投与した場合に毒性でない。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、RGMcおよびRGMaの両方に特異的に結合する抗体と比べて、対象に投与した場合に減少した毒性を示す。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、RGMcおよびRGMbの両方に特異的に結合する抗体と比べて、対象に投与した場合に減少した毒性を示す。一部の実施態様では、本明細書中に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、RGMa、RGMbおよびRGMcに特異的に結合する抗体と比べて、対象に投与した場合に減少した毒性を示す。
【0351】
一般に、本明細書中に記載の任意の抗体の投与に関し、最初の候補用量は、例えば、毎週、2週ごと、3週ごと、毎月、3ヶ月ごとなどで、投与あたり約0.1~20mg/kg、例えば、1~20mg/kgであってよい。例えば、患者は、疾患(例えば、がん)を治療するのに効果的な量であって十分耐容性のある量(許容できる毒性または有害事象の範囲内)で、1週あたり、2週あたり、3週あたり、または4週あたりなどで、約1~10mg/kgの注入を受けてよい。
【0352】
本開示の目的のために、典型的な用量(投与、例えば注入およびインフュージョンあたり)は、上述の因子に応じて、約0.1mg/kgから1mg/kgまで、2mg/kgまで、3mg/kgまで、5mg/kgまで、10mg/kgまで、20mg/kgまで、30mg/kgまで、またはそれよりも多くのいずれかの範囲であってよい。数日またはそれよりも長い期間にわたる繰り返し投与については、症状に応じて、治療は、症候の所望の抑制が生じるまで、または、十分な治療的レベルが達成されてRGMc関連の徴候、またはその症候が緩和されるまで持続する。
【0353】
例示的な投与レジメンは、最初の用量の投与の後に、1つまたは複数の維持用量を含み、ここで後者は典型的に前者よりも少ない。例えば、最初の用量は、例えば1週間に1回または1週間に2回、約2~30mg/kgであってよい。その後に、維持用量(単数または複数)が、例えば、毎週、隔週、毎月などで、例えば、約0.1~20mg/kg(例えば、1、2、3、5、10、15mg/kg)で続けてよい。しかしながら、他の投与レジメンが、熟練者が達成しようとする薬物動態の衰退パターンに応じて有用であり得る。薬力学的(PD)実験は、前臨床動物モデル(例えばラットモデル)への本明細書において開示される抗体(例えば、Ab8;20mg/kg)の投与後少なくとも3週間、PD効果(例えば、血清鉄レベルの増大)が持続することを示した。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まずに、この投与後の持続した効果は、抗体が投与される対象(例えばヒト対象)において臨床的に効果的な血清濃度を維持しながら、抗体がより少ない頻度で投与され得るので、有利であり得る。一部の実施態様では、投与頻度は、1週ごと、2週ごと、3週ごと、4週ごと、5週ごと、6週ごと、7週ごと、8週ごと、9週ごと、または10週ごとに1回;または、1ヶ月ごと、2ヶ月ごと、または3ヶ月ごと、またはより長い期間に1回である。この療法の進行は、従来の技術およびアッセイによって簡単にモニターされる。投与レジメン(用いられる抗体を含む)は、経時的に変化してよい。
【0354】
一部の実施態様では、正常体重の成人患者について、約0.3~5.00mg/kgの範囲の投与量が投与され得る。特定の投与レジメン、例えば、投与量、タイミングおよび反復は、特定の個体およびその個体の病歴、ならびに個々の薬剤の特性(例えば、薬剤の半減期、および他の関連のある考慮)に依存する。
【0355】
本開示の目的のために、RGMcに特異的に結合する抗体の適切な用量は、用いられる特異的抗体(またはその組成物)、徴候のタイプおよび重症度、抗体が予防的または治療的目的のために投与されるのかどうか、以前の療法、患者の病歴および拮抗薬に対する応答、および、主治医の裁量に依存する。一部の実施態様では、臨床医は、RGMcに特異的に結合する抗体を、所望の結果を達成する用量が到達されるまで投与する。RGMcに特異的に結合する抗体の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与目的が治療的または予防的であるかどうか、および熟練した専門家に公知の他の因子に依存して、連続または断続してよい。RGMcに特異的に結合する抗体の投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続してよく、または、RGMc関連の徴候(例えば、貧血)を発症する前、発症している間、または発症した後のような、一連の間隔が空いた用量であってよい。
【0356】
本明細書において用いられる用語「治療(treating)」は、RGMc関連の徴候、徴候の症候、または徴候に向かう体質を有する対象への、徴候、徴候の症候、または徴候に向かう体質を、治癒する(cure)、治す(heal)、緩和する(alleviate)、軽減する(relieve)、変更する(alter)、修復する(remedy)、寛解させる(ameliorate)、改善する(improve)、または影響を及ぼす(affect)目的での、1つまたは複数の活性の薬剤を含む組成物の適用または投与を指す。
【0357】
RGMcに特異的に結合する抗体を用いてRGMc関連の徴候を緩和するステップは、徴候の発生または進行を遅延させるステップ、または、徴候の重症度を減少させるステップを含む。徴候を緩和させるステップは、治療的な結果を必ずしも必要としない。本明細書において用いられる、RGMc関連の徴候と関連する徴候の発生の「遅延」は、徴候の進行を、延ばす(defer)、妨げる(hinder)、遅らせる(slow)、妨害する(retard)、安定化させる(stabilize)、および/または、延期する(postpone)ことを意味する。この遅延は、治療される徴候および/または個体の経歴に応じて、時間の長さが変化してよい。徴候の発生を「遅延させる」または緩和する方法、または、徴候の発症を遅延させる方法は、その方法を用いない場合に比べて、所定の時間枠内で徴候の1つまたは複数の症候が発生する可能性を減少させる、および/または、所定の時間枠内で症候の程度を減少させる方法である。そのような比較は典型的に、統計的に有意な結果を与えるのに十分多くの対象を用いた臨床試験に基づく。
【0358】
[併用療法]
本開示は、インビボでRGMc阻害によって利益を受け得る対象を治療するための併用療法として用いられる、医薬組成物および関連方法をさらに包含する。任意のこれらの実施態様では、かかる対象は、少なくとも1つのRGMc拮抗薬、例えば、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む第1の組成物を、同一または重複する疾患または臨床状態を治療することが意図される少なくとも1つのさらなる治療を含む第2の組成物とともに含む、併用療法を受け得る。第1および第2の組成物は両方とも、同一の細胞標的、または別個の細胞標的に対して作用し得る。一部の実施態様では、第1および第2の組成物は、疾患または臨床状態の症候または態様の同一または重複するセットを治療または緩和し得る。一部の実施態様では、第1および第2の組成物は、疾患または臨床状態の症候または態様の別個のセットを治療または緩和し得る。一例であるが提供すると、第1の組成物は、疾患または症状(例えば、CKDまたはがん)を治療し得て、一方で、第2の組成物は、同一の疾患と関連する炎症、赤血球産生の減少、または貧血などを治療し得る。かかる併用療法は、互いとともに施されてよい。併用療法の文脈における語句「とともに」は、第1の療法の治療的効果が、併用療法を受ける対象において、第2の療法の治療的効果と時間的および/または空間的に重複することを意味する。したがって、併用療法は、同時的な投与のための単一製剤、または療法の連続的投与のための別個の製剤として、処方され得る。
【0359】
好ましい実施態様では、併用療法は、疾患の治療において相乗効果を生じる。用語「相乗」は、それぞれの単剤療法を合わせた相加的効果よりも大きな効果(例えば、より大きな効能)を指す。
【0360】
一部の実施態様では、併用療法は、単剤療法よりも早い治療的効果を達成し得る。
【0361】
一部の実施態様では、本明細書に記載の医薬組成物を含む併用療法は、別の療法(例えば、第2の薬剤の単剤療法)によって生じるものと全体的に同等の効能を生じるが、第2の薬剤の単剤療法と比較して、第2の薬剤と関連する不要な副作用がより少なく、または、毒性の重度がより低い。一部の実施態様では、かかる併用療法は、より少ない用量の第2の薬剤を可能にするが、全体的な効能を維持する。かかる併用療法は、長期の治療が保証される、および/または、小児科の患者を含む患者集団に、特に適切であり得る。
【0362】
したがって、一態様では、本発明は、本明細書に記載の、RGMc活性の減少のための併用療法での使用のための医薬組成物および方法、および、RGMcシグナリングと関連する疾患または症状の治療または予防を提供する。したがって、当該方法または医薬組成物は、第2の療法をさらに含む。一部の実施態様では、第2の療法は、RGMcシグナリングと関連する疾患または症状を治療または予防するのに有用であり得る。第2の療法は、標的の疾患と関連する少なくとも1つの症候(単数または複数)を減少または治療し得る。第1および第2の療法は、同様または関係のない作用機序によってそれらの生物学的効果を発揮し得て;または、第1および第2の療法のいずれか一方または両方は、作用機序の多重性によってそれらの生物学的効果を発揮し得る。例えば、貧血の関連において、RGMc阻害剤は、赤血球産生を増大させる第2の療法(例えば、EPO療法、輸血など)と組み合わせて(例えば、連続してまたは同時に)投与され得る。あるいは、慢性疾患の貧血の関連において、RGMc阻害剤は、がんおよび免疫障害のような基礎疾患を治療する第2の療法(例えば、化学療法、放射線療法、免疫療法など)と組み合わせて(例えば、連続してまたは同時に)投与され得る。
【0363】
本明細書に記載の医薬組成物は、それぞれの記載される実施態様に関して、同一の薬学的に許容できる担体または異なる薬学的に許容できる担体中に、第1および第2の療法を有してよいことが理解されるべきである。第1および第2の療法は、記載される実施態様において、同時に、または連続して施されてよいことが、さらに理解されるべきである。
【0364】
本発明の1つまたは複数のRGMc阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、1つまたは複数のさらなる治療的薬剤を受けたことのある、または受けている、患者に投与されてよい。RGMc抗体または本発明とともに用いることのできるさらなる治療的薬剤の例は、限定されないが、エリスロポエチン刺激剤(ESA)、低酸素誘導因子(HIF)安定剤、ヘプシジン拮抗薬、鉄補給剤(例えば、経口または静脈内投与)、抗炎症および/または抗がん薬物を含む。
【0365】
ESAは、赤血球を作るように骨髄を刺激する薬剤であり、患者における様々なタイプの貧血を治療するのに有用である。しかしながら、増大した赤血球産生の存在下でさえも、十分な鉄がないと貧血は持続する。これは、赤血球は酸素を輸送するためにヘモグロビンを必要とし、鉄はヘモグロビン合成に重要であるからである。したがって、十分な鉄がないと、新しく産生された赤血球はヘモグロビンが不足し、低色素(赤いヘモグロビン色素の欠乏)および小球性(正常より小さい)になる。
【0366】
したがって、一実施態様では、本明細書中に記載のRGMc拮抗薬(例えば、RGMc抗体)は、鉄関連の疾患を治療するためにESAを受けたことがある患者または受けている患者に投与され得る。ESAの例は、限定されないが、エポエチンα、エポエチンβ、エポエチンδ(例えば、Dynepo(登録商標))、エポエチンω(例えば、Epomax(登録商標))、ダルベポエチンα(Aranesp(登録商標))、Epocept(登録商標)(Lupin pharma)、Nanokine(登録商標)(Nanogen Pharmaceutical biotechnology)、Epofit(登録商標)(Intas pharma)、Epogen(登録商標)(Amgen製)、Epogin(登録商標)(Chugai Pharma)、Eprex(登録商標)(Janssen-Cilag製)、Binocrit(登録商標)(Sandoz製)、PDpoetin(登録商標)(Pooyeshdarou Biopharmaceutical社製)、Procrit(登録商標)、Bioyetin(登録商標)(Probiomed製)、NeoRecormon(登録商標)(Hoffmann-La Roche製)、Silapo(登録商標)/Retacrit(登録商標)(Stada/Hospira製)、EPOTrust(登録商標)(Panacea Biotec Ltd製)、Erypro Safe(商標)(Biocon Ltd.製)、Repoitin(登録商標)(Serum Institute of India Limited製)、Vintor(登録商標)(Emcure Pharmaceuticals製)、Erykine(Intas Biopharmaceutica製)、Wepox(登録商標)(Wockhardt Biotech製)、Espogen(商標)(LG life sciences製)、ReliPoietin(商標)(Reliance Life Sciences製)、Shanpoietin(商標)(Shantha Biotechnics Ltd製)、Zyrop(登録商標)(Cadila Healthcare Ltd.製)、EPIAO(登録商標)(rHuEPO)(Shenyang Sunshine Pharmaceutical Co.LTD.製)、および、China Cinnapoietin(登録商標)(CinnaGen biopharmaceutical Iran製)を含む。
【0367】
ESAは一般に有効であるが、患者のサブセットは高用量でさえ治療に反応しないという証拠がある(Solak Y,et al.Blood Purification.2016;42(2):160-7)。さらに、いくつかの研究によって、ESAの使用は、より高い脳血管および心血管(CV)イベント率および死亡率をもたらし得ることが示されている(Biggar P.et al.,Kidney Research and Clinical Practice 2017 Sep;36(3):209-223)。ESAは、一部の患者においてがんリスクの増大(場合によっては抗がん治療に対するより乏しい応答)とも関連し得る。したがって、特定の理論によって拘束されずに、ESAを受けたことのある患者または受けている患者におけるRGMc阻害剤の使用は、応答率を改善し得て、効果を有するために必要とされるESAの用量を減少させ得て、それにより、不利な毒性が生じるのを減少させる。
【0368】
低酸素誘導因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼ(PH)酵素阻害剤(HIF-PHIまたはHIF安定剤としても知られる)は、貧血の治療のための薬剤の1クラスである。これらの薬剤は、HIF複合体を安定化して、内因性エリスロポエチン産生を刺激することによって作用する。したがって、エリスロポエチン産生を増大させるHIF-PH阻害剤は、血清鉄レベルを増大させる薬物(例えばRGMc阻害剤)によって補足(compliment)され得る。したがって、一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc阻害剤(例えば、RGMc抗体)は、鉄関連の疾患を治療するためにHIF安定剤またはプロリルヒドロキシラーゼ(PH)酵素阻害剤を受けたことのある患者または受けている患者に投与され得る。HIF安定剤またはHIF-PH阻害剤の例は、限定されないが、Roxadustat(FG-4592)、Vadadustat(AKB-6548)、Daprodustat(GSK-1278863)、Molidustat(BAY 85-3934)、Desidustat(ZYAN1)、DMOG(N-(2-メトキシ-2-オキソアセチル)グリシンメチルエステル)、IOX2(N-[[1,2-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-2-オキソ-1-(フェニルメチル)-3-キノリニル]カルボニル]グリシン)、JNJ-42041935(1-[6-クロロ-5-(トリフルオロメトキシ)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-1H-ピラゾール-4-カルボン酸)、N-オキサリルグリシン(2-(カルボキシメチルアミノ)-2-グリオキシル酸)、1,4-ジヒドロフェノントロリン-4-オン-3-カルボン酸、および、Adaptaquin(7-[(4-クロロフェニル)[(3-ヒドロキシ-2-ピリジニル)アミノ]メチル]-8-キノリノール)を含む。
【0369】
一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、鉄補給剤(例えば、経口または静脈内投与(i.v.)の鉄)を受けたことのある患者または受けている患者へ投与され得る。i.v.鉄製剤の例は、限定されないが、鉄デキストラン、水酸化第二鉄-デキストラン複合体、水酸化第二鉄-スクロース複合体、グルコン酸第二鉄、グルコン酸第二鉄ナトリウム、鉄スクロース、Feサッカラート、フェルモキシトール、カルボキシマルトース鉄、および鉄イソマルトシドを含む。経口鉄補給剤の例は、限定されないが、ピロリン酸第二鉄、グルコン酸第一鉄、硫酸第一鉄、フマル酸第一鉄、炭酸第一鉄、およびカルボニル鉄を含んでよい。
【0370】
静脈内および経口鉄補給は一般に有効でもあるが、研究によって、鉄と関連する様々な毒性または有害事象が示されている。有害事象の例は、細胞毒性、腎尿細管不全、好中球機能の変更、アテローム性動脈硬化の促進、腫瘍増殖の促進、およびフリーラジカルの発生(Cancado and Munoz,Rev Bras Hematol Hemoter 2011;33(6):461-9)を含む。したがって、特定の理論によって拘束されずに、i.v.または経口の鉄とともにRGMc特異的阻害剤を使用することは、応答率を改善させ得て、治療的効果を有するために必要とされる鉄の用量を減少させ得て、それにより、有害事象/毒性の発生および/または程度を減少させる。
【0371】
様々な疾患状態を治療するように設計された特定の薬物は、治療される患者における貧血(例えば、治療または薬物によって誘導される貧血、例えば、化学療法によって誘導される貧血および放射線療法によって誘導される貧血)を、しばしば誘導または悪化させることが認識されている。一部の実施態様では、患者は、貧血を含む副作用を生じさせ得る骨髄抑制性の薬物を用いて治療される。かかる患者は、骨髄抑制性療法とともに用いられる本開示のRGMc阻害剤によって恩恵を受け得る。骨髄抑制性療法の例は、限定されないが:ペグインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-n3、ペグインターフェロンアルファ-2b、アルデスロイキン、ゲムツズマブ オゾガマイシン、インターフェロンアルファコン-1、リツキシマブ、イブリツモマブ チウキセタン、トシツモマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、L-フェニルアラニン、ボルテゾミブ、クラドリビン、カルムスチン、アムサクリン、クロラムブシル、ラルチトレキセド、マイトマイシン、ベキサロテン、ビンデシン、フロクスウリジン、チオグアニン、ビノレルビン、デクスラゾキサン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、ゲムシタビン、テニポシド、エピルビシン、クロラムフェニコール、レナリドマイド、アルトレタミン、ジドブジン、シスプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、プロピルチオウラシル、ペントスタチン、メトトレキサート、カルバマゼピン、ビンブラスチン、リネゾリド、イマチニブ、クロファラビン、ペメトレキセド、ダウノルビシン、イリノテカン、メチマゾール、エトポシド、ダカルバジン、テモゾロミド、タクロリムス、シロリムス、メクロレタミン、アザシチジン、カルボプラチン、ダクチノマイシン、シタラビン、ドキソルビシン、ヒドロキシ尿素、ブスルファン、トポテカン、メルカプトプリン、サリドマイド、メルファラン、フルダラビン、フルシトシン、カペシタビン、プロカルバジン、三酸化ヒ素、イダルビシン、イホスファミド、ミトキサントロン、ロムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダサチニブ、デシタビン、ネララビン、エベロリムス、ボリノスタット、チオテパ、イキサベピロン、ニロチニブ、ベリノスタット、トラベクテジン、トラスツズマブ エムタンシン、テムシロリムス、ボスチニブ、ベンダムスチン、カバジタキセル、エリブリン、ルキソリチニブ、カーフィルゾミブ、トファシチニブ、ポナチニブ、ポマリドマイド、オビヌツズマブ、テジゾリドリン酸エステル、ブリナツモマブ、イブルチニブ、パルボシクリブ、オラパリブ、ジヌツキシマブ、およびコルヒチンを含む。
【0372】
一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、がん療法を受けたことのある患者または受けている患者へ投与されてよい。かかるがん療法は、限定されないが、化学療法、放射線療法/放射線照射療法、小分子薬物、または治療的抗体、例えば、がんワクチン;操作された免疫細胞療法;化学療法;放射線照射療法(複数);VEGF作動薬;IGF1作動薬;FXR作動薬;CCR2阻害剤;CCR5阻害剤;二重CCR2/CCR5阻害剤;リシルオキシダーゼ様-2阻害剤;ASK1阻害剤;アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤;p38キナーゼ阻害剤;ピルフェニドン;ニンテダニブ;M-CSF阻害剤(例えば、M-CSF受容体拮抗薬およびM-CSF中和剤);MAPK阻害剤(例えば、Erk阻害剤)、免疫チェックポイント作動薬または拮抗薬(例えば、抗-PD-1および抗-PD-L1);IL-11拮抗薬;およびIL-6拮抗薬などを含んでよい。RGMc特異的阻害剤とともに用いることのできるさらなる治療的薬剤の他の例は、限定されないが、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、Ser/Thrキナーゼ阻害剤、二重特異的キナーゼ阻害剤を含む。一部の実施態様では、かかる薬剤は、PI3K阻害剤、PKC阻害剤、またはJAK阻害剤であってよい。一部の実施態様では、JAK阻害剤は、骨髄増殖性障害、例えば原発性の骨髄線維症の治療において用いることのできる、JAK1阻害剤および/またはJAK2阻害剤であってよい。
【0373】
放射線療法のような他のがん治療が、がん患者において貧血を引き起こし得ることも理解されている。したがって、一実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、放射線療法とともに用いることができる。
【0374】
一部の実施態様では、併用療法として投与される、またはRGMc阻害剤とともに用いられるさらなる薬剤は、成長因子のTGFβスーパーファミリーのメンバーまたはその調節因子の阻害剤であり、または含む。一部の実施態様では、かかる阻害剤は、TGFβ中和抗体のようなTGFβ阻害剤であり、または含む。一部の実施態様では、TGFβ阻害剤は、TGFβ1およびTGFβ2を阻害する抗体である。一部の実施態様では、TGFβ阻害剤は、TGFβ1およびTGFβ3を阻害する抗体である。一部の実施態様では、TGFβ阻害剤は、TGFβ1のアイソフォーム選択的阻害剤、例えばTGFβ1活性化阻害剤である。一部の実施態様では、TGFβ阻害剤は、TGFβ3のアイソフォーム選択的阻害剤、例えばTGFβ3活性化阻害剤である。
【0375】
一部の実施態様では、対象におけるがんの治療において用いられる併用療法は、がん免疫療法(例えばチェックポイント阻害剤)、TGFβ1選択的阻害剤、および本明細書において開示されるRGMc選択的阻害剤を含み、ここで、チェックポイント阻害剤はPD-(L)1抗体であってもよく、さらに、TGFβ1選択的阻害剤はTGFβ1選択的活性化阻害剤であってもよい。
【0376】
一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、炎症と関係がある疾患または慢性腎疾患の治療に用いられる他の化合物、薬物、および/または薬剤とともに用いることができる。かかる化合物、薬物、および/または薬剤は、限定されないが、非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)、利尿剤、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、中枢交感神経遮断薬、バイカーボネート補助剤、インスリン、ビタミンD補助剤、尿酸減少剤(例えば、アロプリノール)、HMG-CaA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)、ピルフェニドン、TGFβパスウェイ阻害剤、抗炎症剤(非ステロイド性抗炎症薬を含む)、抗酸化炎症調整剤(例えば、バルドキソロンメチル)、エンドセリン-1拮抗薬(例えば、アボセンタンおよびアトラセンタン)、糖化最終生成物(advanced glycan end product)阻害剤、アスピリン、メトホルミン、アミノグアニジン、カルチトリオール、エリスロポエチン、アンドロゲン、リン酸結合剤、ビタミンB12、ならびに、ビタミンB6およびその誘導体(例えば、ピリドキサミン)を含んでよい。
【0377】
一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)またはその誘導体、例えば、Neupogen(登録商標)、Granix(登録商標)、またはZarxio(登録商標)とともに用いることができる。G-CSFは、血液細胞(例えば、白血球細胞または造血幹細胞)の産生を刺激して、それらが機能する能力を促進するために用いられる糖タンパク質である。したがって、G-CSFは、感染、貧血、および、骨髄抑制性の治療(例えば、化学療法)を受けた後の出血の問題が発生する患者のリスクを減少させるのに有用である。しかしながら、G-CSFの使用に対する副作用が存在し、それには以下が含まれる:血小板減少症、吐き気、発熱、骨の痛み、乳酸デヒドロゲナーゼの上昇、アルカリフォスファターゼの上昇、点状出血、背痛、鼻出血(鼻血)、咳、および/または呼吸困難(息切れ)。したがって、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、G-CSFの薬理学的効果を補足し得ること(例えば、貧血を減少させ、赤血球産生を促進する)、および/または、G-CSFの効果的な用量を減少させて、それにより、副作用を減少させて耐容性を増大させることが、検討される。したがって、一実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、G-CSF療法を受けたことのある患者または受けている患者へ投与されてよい。別の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、好都合な薬理学的効果を達成するのに必要な、例えば、血液細胞産生を促進するのに必要な、および/または、貧血を減少させるのに必要な、G-CSFの効果的な用量を減少させる。別の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤は、G-CSFの効果を補足し、例えば、赤血球産生をさらに増大させ、および/または、貧血減少させる。
【0378】
本明細書において検討される併用療法は、有利に、より少ない用量の投与される治療的薬剤を利用し得て、したがって、様々な単剤療法と関連するあり得る毒性または合併症を避ける。一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤の使用は、療法(例えば、標準治療)に対して応答が乏しい者または応答しない者を、より応答性にさせ得る。一部の実施態様では、本明細書中に記載のRGMc特異的阻害剤の使用は、療法(例えば、標準治療)の用量を減少させ得て、それでもなお、患者における同等の臨床効能を生じさせるが、薬物関連の毒性または有害事象はより少ないまたはより低い程度である。
【0379】
[RGMc活性の阻害]
本開示の方法は、1つまたは複数の生体系におけるRGMc活性を阻害する方法を含む。かかる方法は、本開示の抗体および/または組成物と1つまたは複数の生体系を接触させるステップを含んでよい。そのような方法に係る阻害剤(例えば、抗体)および/または組成物は、限定されないが生体分子を含んでよく、制限されないが、本明細書中に記載の組換えタンパク質、タンパク質複合体および/または抗体、またはその抗原フラグメントを含む。
【0380】
RGMcに選択的に結合する本明細書中に記載の阻害剤、例えば、抗体およびその抗原結合フラグメントは、RGMc活性の調整が所望である多種多様の適用において用いることができる。一実施態様では、本発明は、RGMcペプチドまたはタンパク質を、RGMcに選択的に結合する阻害剤、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントに曝露することにより、RGMc活性化を阻害する方法を提供する。前述の方法は、インビトロで、例えば、培養細胞におけるRGMc活性を阻害するために行なうことができる。前述の方法は、インビボで、例えば、RGMc阻害を必要とする対象において、またはRGMc阻害の効果が評価される動物モデルにおいて、行なうこともできる。
【0381】
RGMcに選択的に結合する本明細書中に記載の任意の阻害剤、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメント、および、かかる阻害剤または抗体を含んでいる任意の医薬組成物は、本発明の方法における使用に適切である。
【0382】
したがって、本発明の一態様では、RGMcに選択的に結合する阻害剤、例えば、抗体、またはその(there)抗原結合フラグメントに対してRGMcを曝露することによりRGMc活性を阻害する方法が提供される。一部の実施態様では、阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、RGMcへの結合に関してBMPと競合する。一部の実施態様では、BMPは、BMP2および/またはBMP6である。一部の実施態様では、BMPはBMP6である。
【0383】
別の実施態様では、阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、RGMcへのネオゲニンの結合を阻害する。一部の実施態様では、阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、RGMcへの結合に関してネオゲニンと競合する。
【0384】
一部の実施態様では、阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、RGMcへのネオゲニンの結合を阻害しない。一部の実施態様では、阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、RGMcへの結合に関してネオゲニンと競合しない。
【0385】
別の実施態様では、阻害剤(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、RGMcと複合体化する他の結合パートナーまたはタンパク質へのRGMcの結合を阻害する。例えば、RGMc、BMP、および/またはネオゲニンと複合体化する他の結合パートナーは、HFE、TFR2、ALK2、ALK3、BMPR2、ACVR2AおよびTMPRSS6を含む。
【0386】
別の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、他の生物学的プロセス(例えば、下流の効果)を調整することもできる。例えば、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象におけるヘプシジン発現を減少させる。一部の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象におけるフェロポーチン発現を増大させる。一部の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象におけるトランスフェリン飽和度を増大させる。一部の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象における赤血球産生を増大させる。一部の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象における不飽和鉄結合能(UIBC)を低減させる。一部の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象における総鉄結合能(TIBC)を低減させる。一部の実施態様では、RGMc活性を阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメントは、対象における血清フェリチンレベルを増大させる。
【0387】
一部の実施態様では、本明細書中に記載の方法は、対象において行なうことができる。本明細書中に記載の方法によって治療される対象は、哺乳類、より好ましくはヒトであってよい。哺乳類は、限定されないが、家畜、競技動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットを含む。治療が必要なヒト対象は、上述したもののような(例えば、貧血)、RGMc関連の徴候を有している、そのリスクがある、または有する疑いのある、ヒト患者であってよい。
【0388】
したがって、一実施態様では、対象における血清鉄レベルを増大させる方法が提供され、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象におけるヘプシジンを下方調節するのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、対象におけるヘプシジンを下方調節するための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象におけるヘプシジンを下方調節するのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、医薬組成物は、肝臓ヘプシジンmRNAレベルを減少させる。一部の実施態様では、医薬組成物は、肝臓ヘプシジンタンパク質レベル、血清(循環)ヘプシジンタンパク質レベル、またはその両方を減少させる。
【0389】
一実施態様では、対象における血清鉄レベルを増大させる方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象におけるフェロポーチン発現をベースラインと比べて増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、対象におけるフェロポーチン発現を増大させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象におけるフェロポーチン発現を増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、医薬組成物は、腸細胞(腸)フェロポーチンタンパク質レベルを増大させる。一部の実施態様では、医薬組成物は、肝細胞(肝臓)フェロポーチンタンパク質レベルを増大させる。一部の実施態様では、医薬組成物は、マクロファージのフェロポーチンタンパク質レベルを増大させる。一部の実施態様では、医薬組成物は、脂肪細胞フェロポーチンタンパク質レベルを増大させる。
【0390】
一部の実施態様では、対象におけるトランスフェリン飽和度を増大させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象におけるトランスフェリン飽和度(TSAT)を増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度を、ベースラインと比べて≧1%、≧2%、≧3%、≧4%、≧5%、≧6%、≧7%、≧8%、≧9%、または≧10%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度を≧1%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧2%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧3%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧4%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧5%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧6%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧7%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧8%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧9%増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、トランスフェリン飽和度をベースラインと比べて≧10%増大させる。
【0391】
一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧15%、≧16%、≧17%、≧18%、≧19%、≧20%、≧21%、≧22%、≧23%、≧24%、または≧25%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧15%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧16%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧17%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧18%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧19%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧20%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧21%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧22%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧23%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧24%のレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度を、≧25%のレベルまで増大させる
。
【0392】
一部の実施態様では、対象における赤血球産生を増大させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象における赤血球産生を増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0393】
一部の実施態様では、対象におけるヘモグロビン(Hb)レベルを増大させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、ヘモグロビンレベルを増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、当該方法は、Hbレベルをベースラインと比べて≧1、≧2、または≧3g/dl増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、Hbレベルをベースラインと比べて≧1g/dl増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、Hbレベルをベースラインと比べて≧2g/dl増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、Hbレベルをベースラインと比べて≧3g/dl増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象におけるHbを≧10g/dlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、Hbを≧11g/dlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、Hbを≧12g/dlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、Hbを≧13g/dlのレベルまで増大させる。
【0394】
一部の実施態様では、対象における不飽和鉄結合能(UIBC)を低減させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象における不飽和鉄結合能を低減させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。対象におけるUIBCに関する典型的な範囲は、120~470ug/dL(21~84umol/L)であるが、レベルは集団間で変化し得る。したがって、一部の実施態様では、対象は、≧400、≧450、≧500、≧550、≧600、≧650、≧700、≧750、または≧800ug/dLのUIBCを有する。他の実施態様では、有効量のRGMc特異的阻害剤は、対象におけるUIBCを≧50、≧100、≧150、≧200、≧250、≧300、≧350、または≧450ug/dL低減させる。
【0395】
一部の実施態様では、対象における総鉄結合能(TIBC)を低減させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象における総鉄結合能を低減させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。TIBCに関する典型的な範囲は255~450ug/dLであるが、レベルは集団間で変化し得る。したがって、一部の実施態様では、対象は、≧400、≧450、≧500、≧550、≧600、≧650、≧700、≧750、または≧800ug/dLのTIBCを有する。他の実施態様では、有効量のRGMc特異的阻害剤は、対象におけるTIBCを≧50、≧100、≧150、≧200、≧250、≧300、≧350、または≧450ug/dL低減させる。
【0396】
一部の実施態様では、対象における血清フェリチンレベルを増大させるための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、対象における血清フェリチンレベルを増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧5、≧10、≧15、≧20、≧30、≧40、≧50、≧60、≧70、≧80、≧90、または≧100ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧5ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧10ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧15ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧20ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧30ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧40ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧50ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧60ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧70ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧80ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧90ng/ml増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンレベルを、ベースラインと比べて≧100ng/ml増大させる。
【0397】
一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧30ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧40ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧50ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧60ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧70ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧80ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧90ng/mlのレベルまで増大させる。一部の実施態様では、当該方法は、対象における血清フェリチンを、≧100ng/mlのレベルまで増大させる。
【0398】
一部の実施態様では、対象におけるRGMcと関連する疾患を治療するための方法が提供されて、当該方法は、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書において開示されるRGMc特異的阻害剤)を、当該疾患を治療するのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。一部の実施態様では、RGMcと関連する疾患は貧血である。一部の実施態様では、貧血は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)である。一部の実施態様では、貧血は、慢性疾患の貧血(ACD)である。一部の実施態様では、ACDは、がん関連の貧血である。別の実施態様では、ACDは、慢性腎疾患(CKD)と関連する貧血である。一部の実施態様では、貧血は、化学療法によって誘導される貧血である。
【0399】
[RGMc関連の徴候と関連する疾患/障害の緩和における使用のためのキット]
本開示は、RGMc関連の徴候(例えば、貧血)と関連する疾患/障害の緩和における使用のためのキットも提供する。かかるキットは、RGMcに選択的に結合する阻害剤、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントを含んでいる1つまたは複数のコンテナーを備えてよい。
【0400】
一部の実施態様では、当該キットは、本明細書中に記載の任意の方法に従った使用のための説明書を含んでよい。含まれる説明書は、本明細書中に記載のもののような標的疾患を、治療、発症遅延、または緩和するための、RGMcに選択的に結合する阻害剤、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与の説明を含んでよい。当該キットは、個体が標的疾患を有するかどうかの同定に基づき、治療に適切な個体を選択する説明をさらに含んでよい。さらに他の実施態様では、説明書は、標的疾患のリスクがある個体への、抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与の説明を含む。
【0401】
RGMcに選択的に結合する阻害剤、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントの使用に関する説明書は、一般に、意図される治療のための、用量、投与スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。コンテナーは、単位用量、バルクのパッケージ(例えば、多数回用量パッケージ)またはサブ単位用量であってよい。本開示のキットにおいて供給される説明書は、典型的に、ラベルまたは添付文書上に記載された説明書(例えば、キット内に含まれるペーパーシート)であるが、機械可読な説明書(例えば、磁気または光ディスク記憶装置上に保持される説明書)も許容される。ラベルまたは添付文書は、組成物が、TGFβ関連の徴候と関連する疾患または障害を治療、発症遅延、および/または、緩和するために用いられることを示してよい。説明書は、本明細書に記載の任意の方法を実施するために提供され得る。
【0402】
本開示のキットは、適切なパッケージ内に提供されてよい。適切なパッケージは、制限されないが、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブルパッケージ(例えば、密封マイラまたはプラスチックバッグ)などを含む。特定のデバイス、例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、噴霧器)またはミニポンプのようなインフュージョンデバイスと組み合わせた使用のためのパッケージも検討される。キットは、滅菌アクセスポートを有してよい(例えば、コンテナーは、皮下注入針によって突き刺すことが可能なストッパーを有するバイアルまたは静脈内投与用の溶液バッグであってよい)。コンテナーは、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、コンテナーは、皮下注入針によって突き刺すことが可能なストッパーを有するバイアルまたは静脈内投与用の溶液バッグであってよい)。組成物内の少なくとも1つの活性剤は、本明細書中に記載のRGMcに選択的に結合する阻害剤、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0403】
キットは、バッファーおよび解釈上の情報のような、さらなる構成要素を提供してもよい。通常、キットは、コンテナーと、コンテナー上またはそれと関連してラベルまたは添付文書(単数または複数)とを含む。一部の実施態様では、本開示は、上述のキットの内容を含む製造物を提供する。
【0404】
本開示のいくつかの実施態様が本明細書において記載および例示されているが、当業者は、機能を発揮するため、および/または、本明細書中に記載の結果および/または1つまたは複数の利点を得るための、様々な他の手段および/または構造を容易に想像し、かかるバリエーションおよび/または改変はそれぞれ、本開示の範囲内とみなされる。より一般には、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構造は例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構造は、本開示の教示が用いられる特定の適用(単数または複数)に依存することを容易に理解する。当業者は、ルーチン実験の範囲内で、本明細書中に記載の開示の特定の実施態様に対する多くの等価物を認識し、または確認することが可能である。したがって、前述の実施態様はほんの一例として提供されること、および、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本開示は、明確に記載され特許請求の範囲に記載されるのとは別の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本開示は、本明細書中に記載のそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法に関する。さらに、かかる特徴、システム、物品、材料、および/または方法の2以上の任意の組み合わせは、かかる特徴、システム、物品、材料、および/または方法が互いに矛盾しないならば、本開示の範囲内に含まれる。
【0405】
[好ましい実施態様のリスト]
1.ヒト反発性ガイダンス分子C(RGMc)に特異的に結合する単離された抗体であって、
a)抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;
b)抗体は、ヒト反発性ガイダンス分子A(RGMa)およびヒト反発性ガイダンス分子B(RGMb)に結合せず;および
c)抗体は、BMP6とRGMcの相互作用を阻害または減少させる。
【0406】
3.実施態様1または実施態様2の抗体であって、抗体は、ヒトRGMc内の第1および第2の結合領域のぞれぞれの少なくともフラグメントを含んでいる不連続エピトープに結合し、ここで、第1の結合領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、第2の結合領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0407】
4.ヒトRGMc内のエピトープに結合する単離された抗体であって、
a)抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;および
b)抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基および/またはFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいるエピトープに結合する。
【0408】
5.実施態様4の抗体であって、エピトープは、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基およびFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0409】
6.実施態様4または5の抗体であって、抗体は、ヒトRGMaおよびヒトRGMbに結合しない。
【0410】
7.実施態様4~76のいずれか1つの抗体であって、抗体は、BMP6とRGMcの相互作用を阻害または減少させる。
【0411】
8.実施態様4~7のいずれか1つの抗体であって、抗体は、ネオゲニンとRGMcの相互作用を阻害または減少させない。
【0412】
9.ヒトRGMcに特異的に結合する単離された抗体であって、抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり、ここで抗体は、以下の6個のCDRのうちの少なくとも3個を含む:
a)以下の条件で、CDR-H1:配列番号14:
i.配列番号14の4位のセリン残基はアルギニンで置換されてよい;
ii.配列番号14の7位のアラニン残基はセリンで置換されてよい;および/または
iii.配列番号14の9位のセリン残基はグルタミンで置換されてよい;
b)以下の条件で、CDR-H2:配列番号15:
i.配列番号15の8位のトレオニン残基はバリンで置換されてよい;および/または
ii.配列番号15の10位のアスパラギン残基はセリンで置換されてよい;
c)以下の条件で、CDR-H3:配列番号16:
i.配列番号16の5位のイソロイシン残基はチロシンで置換されてよい;および/または
ii.配列番号16の6位のアラニン残基はバリンで置換されてよい;
d)CDR-L1:配列番号17;
e)CDR-L2:配列番号18;および、
f)CDR-L3:配列番号19。
【0413】
10.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、配列番号30、31、および32にそれぞれ示される重鎖CDR1(H-CDR1)、重鎖CDR2(H-CDR2)、および重鎖CDR3(H-CDR3)配列、ならびに、配列番号33、34、および35にそれぞれ示される軽鎖CDR1(L-CDR1)、軽鎖CDR2(L-CDR2)、および軽鎖CDR3(L-CDR3)配列を含み;
ここで:
H-CDR1の4位のR残基はKまたはSで置換されてもよく;H-CDR1の5位のS残基はTで置換されてもよく;H-CDR1の7位のS残基はAで置換されてもよく;および/または、H-CDR1の9位のS残基はQで置換されてもよく;
ここでさらに:
H-CDR2の8位のV残基はHまたはTで置換されてもよく;および/またはH-CDR2の10位のN残基はS、TまたはEで置換されてもよい。
【0414】
11.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、
a)配列番号36と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;および/または
b)配列番号37と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する可変の軽鎖可変領域を含む。
【0415】
12.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、
a)配列番号36に示される重鎖可変領域配列;および
b)配列番号37に示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0416】
13.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、配列番号38、39、および40にそれぞれ示される重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに、配列番号41、42、および43にそれぞれ示される軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む。
【0417】
14.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、
c)配列番号44と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;および/または
d)配列番号45と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する可変の軽鎖可変領域を含む。
【0418】
15.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、
a)配列番号44に示される重鎖可変領域配列;および
b)配列番号45に示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0419】
16.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、完全ヒトまたはヒト化抗体である。
【0420】
17.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である。
【0421】
18.先行する請求項のいずれか1つの抗体であって、ヒトIgG4抗体であり、ここでヒトIgG4抗体は、IgG1様ヒンジを生じさせるSerからProへの主鎖置換を含んでもよい。
【0422】
19.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、膜結合型ヒトRGMcを発現している細胞に結合する。
【0423】
20.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、0.1×10-9(0.1nM)未満のKD値でRGMcに結合する。
【0424】
21.先行する実施態様のいずれか1つの抗体であって、抗体は、以下の相互作用タンパク質;HFE、TFR2、ALK2、ALK3、BMPR2、ACVR2AおよびTMPRSS6の1つまたは複数とRGMcの相互作用を調整する。
【0425】
22.ヒトRGMcに特異的に結合する単離された抗体であって、抗体は、実施態様4~21のいずれか1つの抗体と、ヒトRGMcへの結合に関して競合する、および/または、同一のエピトープに結合する。
【0426】
23.先行する実施態様のいずれか1つの抗体および薬学的に許容できる担体を含んでいる、医薬組成物。
【0427】
24.ヒト対象におけるRGMcと関連する疾患の治療のための方法での使用のための実施態様23の組成物であって、治療は、症状を治療するのに効果的な量での対象への組成物の投与を含む。
【0428】
25.実施態様24に記載の使用のための組成物であって、RGMcと関連する疾患は、貧血である。
【0429】
26.実施態様25に記載の使用のための組成物であって、貧血は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)または慢性疾患の貧血(ACD)である。
【0430】
27.実施態様26に記載の使用のための組成物であって、ACDは、がん関連の貧血である。
【0431】
28.実施態様25に記載の使用のための組成物であって、貧血は、化学療法によって誘導される貧血である。
【0432】
29.実施態様26に記載の使用のための組成物であって、ACDは、慢性腎疾患(CKD)と関連する貧血である。
【0433】
30.実施態様24~29のいずれか1つに記載の使用のための組成物であって、組成物は、さらなる治療的薬剤と組み合わせて投与される。
【0434】
31.実施態様30に記載の使用のための組成物であって、さらなる治療的薬剤は、エリスロポエチン刺激剤(ESA)、HIF安定剤、鉄補給剤または輸血である。
【0435】
32.実施態様31に記載の使用のための組成物であって、当該方法は、ESA、HIF安定剤、鉄補給剤または輸血と関連する毒性を減少させる。
【0436】
33.実施態様32に記載の使用のための組成物であって、毒性は、鉄過剰、がんリスクおよび/または心血管イベント(例えば、大きな心臓の有害事象、例えば脳卒中)のリスクを含む。
【0437】
34.実施態様24~33のいずれか1つに記載の使用のための組成物であって、対象は、
a)鉄療法中であるが鉄療法の用量減少が有利である;
b)鉄療法を受けたことがあるが毒性のせいで中断している;
c)鉄療法を受けたことがあり、鉄療法の用量減少が有利である;
d)がんリスクがある;および/または
e)がんと診断されたことがある。
【0438】
35.対象におけるRGMcと関連する疾患を治療するための方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、疾患を治療するのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0439】
36.対象における血清鉄レベルを増大させる方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、対象における血清鉄レベルを増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0440】
37.対象におけるヘプシジンを下方調節するための方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、対象におけるヘプシジンを下方調節するのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0441】
38.実施態様37の方法であって、医薬組成物は、肝臓ヘプシジンmRNAレベルを減少させる。
【0442】
39.実施態様37の方法であって、医薬組成物は、肝臓ヘプシジンタンパク質レベル、血清(循環)ヘプシジンタンパク質レベル、またはその両方を減少させる。
【0443】
40.対象におけるトランスフェリン飽和度を増大させるための方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、対象におけるトランスフェリン飽和度を増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0444】
41.対象における赤血球産生を増大させるための方法であって、当該方法は、実施態様23または24の医薬組成物を、対象における赤血球産生を増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0445】
42.対象における不飽和鉄結合能(UIBC)を低減させるための方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、対象における不飽和鉄結合能を低減させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0446】
43.対象における総鉄結合能(TIBC)を低減させるための方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、対象における総鉄結合能を低減させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0447】
44.対象における血清フェリチンレベルを増大させるための方法であって、当該方法は、実施態様23の医薬組成物を、対象における血清フェリチンレベルを増大させるのに効果的な量で対象へ投与するステップを含む。
【0448】
45.実施態様44の方法であって、量は、血液のミリリットルあたり≧20ナノグラムの血清フェリチンレベルを達成するのに効果的な量である。
【0449】
46.実施態様24~34のいずれか1つに記載の使用のための医薬組成物または実施態様35~45のいずれか1つに記載の方法であって、対象は、エリスロポエチン(例えば、EPO)療法、HIF安定剤療法、IV鉄補給、またはそれらの組み合わせを受けたことがある。
【0450】
47.実施態様24~34のいずれか1つに記載の使用のための医薬組成物または実施態様35~45のいずれか1つに記載の方法であって、対象は、EPO療法またはIV鉄補給と関連する有害事象が現れたことがあり、またはそのリスクがある。
【0451】
48.RGMc選択的阻害剤(例えば、中和抗体)を含んでいる医薬組成物を作製する方法であって、当該方法は、以下のステップ:
i)RGMaおよびRGMbよりもRGMcに選択的に結合する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;
ii)ステップ(i)に基づいて、RGMc活性をインビボで阻害/中和する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;
iii)ステップ(i)および(ii)に基づいて、医薬組成物への製剤化に関して、阻害/中和抗体を選択するステップを含む。
【0452】
49.実施態様48の方法であって、ステップ(i)は、ポジティブ選択を含み、ネガティブ選択をさらに含んでもよい。
【0453】
50.実施態様48または49の方法であって、エピトープは、ネオゲニン結合部位を除く。
【0454】
51.実施態様48または実施態様49の方法であって、抗体は、可溶性RGMcよりも膜結合型RGMcに優先的に結合する。
【0455】
52.実施態様48または実施態様49の方法であって、抗体は、抗体抗原複合体の内部移行を誘導する。
【0456】
53.実施態様48~52のいずれか1つの方法であって、同定ステップ(i)は、ライブラリーをスクリーニングするステップを含む。
【0457】
54.実施態様53の方法であって、ライブラリーは、ファージライブラリーまたは酵母ライブラリーである。
【0458】
55.実施態様48~54のいずれか1つの方法であって、同定ステップ(ii)は、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、不飽和鉄結合能(UIBC)、およびトランスフェリン飽和度からなる群より選択される鉄パラメータを測定するステップを含む。
【0459】
56.実施態様48~55のいずれか1つの方法であって、ステップ(ii)は、ヘプシジン発現を測定するステップを含む。
【0460】
57.実施態様56の方法であって、ヘプシジン発現は、肝臓ヘプシジンレベルおよび/または血清ヘプシジンレベルである。
【0461】
58.実施態様48~57のいずれか1つの方法であって、ステップ(ii)は、インビボで血清鉄レベルを上昇および/またはヘプシジン発現を抑制することが可能な中和抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップを含む。
【0462】
59.実施態様48~58のいずれか1つの方法であって、医薬組成物は、静脈内または皮下投与のために製剤化される。
【0463】
60.実施態様48~59のいずれか1つの方法であって、ステップ(i)は、RGMaおよびRGMbよりもRGMcに関して選択的に確認するステップを含む。
【0464】
61.対象における鉄障害を治療するための方法での使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、RGMc特異的阻害剤は、RGMaおよびRGMbを阻害せず、ここで鉄障害は、対象において貧血を生じさせる。
【0465】
62.鉄療法と関連する毒性を減少させるための方法での使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、当該方法は、有効量のRGMc選択的阻害剤を対象へ投与するステップを含む。
【0466】
63.実施態様62に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、鉄療法は、EPO療法、鉄補給剤または輸血である。
【0467】
64.実施態様62または63に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、毒性は、鉄過剰またはがんリスクを含む。
【0468】
65.実施態様62~64のいずれ1つに記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、対象は、a)鉄療法中であるが鉄療法の用量減少が有利である;b)鉄療法を受けたことがあるが毒性のせいで中断している;c)鉄療法を受けたことがあり、鉄療法の用量減少が有利である;d)がんリスクがある;e)がんと診断されたことがある。
【0469】
66.実施態様61~65のいずれ1つに記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、RGMc選択的阻害剤はRGMc選択的抗体であり、ここでRGMc選択的抗体は中和抗体であってもよい。
【0470】
67.実施態様66に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、RGMc選択的抗体は、RGMcの細胞外部分またはそれを含む複合体に結合する。
【0471】
68.実施態様67に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、RGMc選択的抗体は、RGMcの細胞外部分またはそれを含む複合体(細胞表面上に存在)に結合する。
【0472】
69.対象における機能性鉄欠乏症の治療での使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、対象は、ESAおよび/またはHIF安定剤を受けたことがある。
【0473】
70.対象における機能性鉄欠乏症の治療での使用のための、RGMc選択的阻害剤およびエリスロポエチン療法(例えば、ESA、HIF安定剤)。
【0474】
71.実施態様70に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤およびエリスロポエチン療法(例えば、ESA、HIF安定剤)であって、当該治療は、エリスロポエチン療法単独と比べて、より早い軽減または治療的利益の発生を達成し、ここで治療的利益は、血清鉄の増大、トランスフェリン飽和度の増大、ヘモグロビンの増大、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0475】
72.実施態様70に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、RGMc選択的阻害剤は、エリスロポエチン療法を感受性にさせる。
【0476】
73.経口またはIV鉄補給剤、輸血、ESAおよびHIF安定剤から選択される鉄療法の用量または頻度を減少させる使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、RGMc選択的阻害剤は、鉄療法とともに投与された場合に治療的利益を達成する。
【0477】
74.がんを有する対象における貧血の治療での使用のためのRGMc選択的阻害剤。
【0478】
75.実施態様74に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、対象は、化学療法の候補者であり、またはそれを受けている。
【0479】
76.実施態様74に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、対象は、化学療法を受けたことがある。
【0480】
77.実施態様74に記載の使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、対象は、ESA療法またはHIF安定剤療法を受ける候補者ではない。
【0481】
78.エリスロポエチン療法または鉄補給剤に対して反応性低下である対象における機能性鉄欠乏症の治療での使用のための、RGMc選択的阻害剤。
【0482】
79.エリスロポエチン療法または鉄補給剤に対して不耐性の対象における機能性鉄欠乏症の治療での使用のための、RGMc選択的阻害剤。
【0483】
本発明は、いかなる方法においても限定されることを意図しない以下の実施例によってさらに例示される。本出願の全体にわたって挙げられる全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容全体、ならびに図面は、参照により本明細書中に援用される。
【実施例】
【0484】
RGMcは、ヘプシジン発現を増大させて、その結果として鉄輸送を阻害する、BMP6のような特定のBMPに関する肝臓で発現される偏性の共受容体である。一方で、RGMaおよびRGMbのような他のRGMファミリーメンバーは、より広範に、例えば神経系、脳、皮膚、心臓、肝臓、肺、腎臓、精巣、および消化管において発現される。さらに、BMP6は、体中に、例えば、脳、骨、肝臓、肺、腎臓、膵臓精巣、および消化管に広く発現される。したがって、RGMa、RGMb、およびBMP6よりも発現が限定的であるRGMcを標的化することにより、オフターゲット効果を減少させながら、より組織特異的な効果が達成され得る。この手法は、望ましくない毒性をもたらし得る体全体のRGMおよびBMP6機能の広範な阻害をせずに鉄制限性の貧血および鉄過剰状態の両方を対処する潜在性を提供する。
【0485】
したがって、本発明は、RGMcの選択的な標的化が、直接的なBMP6拮抗薬およびRGMa/RGMb/RGMcの非選択的阻害剤のような従来の手法と比較して、効能および安全性(毒性の低減)の両方を達成するための有利な手法を提供するという認識を含む。
【0486】
[実施例1:RGMc特異的抗体の同定]
RGMcに選択的である抗体を、本明細書中に記載のとおりに公知技術を用いて生産した。RGMaおよびRGMbを上回るRGMc特異性を、インビトロ結合アッセイ(すなわち、Octet(登録商標))を用いて確認した。試験抗体のそれらの標的に対する結合親和性を、1×Kinetics Buffer中にそれぞれの抗体を7.5ug/ml(または50nM)で取って、Pall ForteBio(登録商標)による抗-hIgG Fc Capture(AHC)バイオセンサー上にそれをローディングすることによって行なった。ローディング後、異なる濃度(900nM、300nM、100nM、および33nM)で、ヒスチジンでタグ化したhRGMc、hRGMa、またはhRGMbに対してそれらを提供することによって抗体のon rate、または会合を計算する前に、チップを1×Kinetics Buffer中に置くことによってベースラインのリーディングを得た。結合飽和に到達した後、解離ステップを行なって、チップを1×Kinetics Buffer中に戻すことによってoff rateを計算した。それから、結合解離速度を用いて、RGMファミリーメンバー(RGMaおよびRGMb)に対する交差結合がないことを確認しながら、主な標的(RGMc)に対するそれぞれの抗体のKD、すなわち結合親和性を計算することができる。
【0487】
図2は、RGMc特異的抗体SR-RC-AB3、SR-RC-AB4、およびSR-RC-AB5に関する結合プロファイルおよび親和性データ(K
D)を提供する。明白に、3つの抗体は全て、ナノモルの親和性でRGMcに結合するが、抗体はいずれも、RGMaまたはRGMbに対するいかなる検出可能な結合も示さなかった。
【0488】
[実施例2:RGMc選択的抗体は、BMP6活性をインビトロで阻害する]
改変BMPレポーターアッセイを用いて、BMP活性の抗体阻害を評価した。手短には、HEPG2BRAレポーター細胞を10,000細胞/ウェルで96ウェルプレート内に蒔いた。24時間後、抗体を別個に、Fc(CF約40nM)に融合された組み換え可溶性ヒトRGMcとともに、DMEM/0.1%BSA中で1時間プレインキュベートして、その後に、BMP6(CF=0.2nM)を溶液に加えて1時間続けた。100uL/ウェルの生じた抗体-RGMc-BMP6複合体をHEPG2BRAプレートに三重で加えて、18時間、インキュベーターに戻した。100ulのBrightGlo(商標)ルシフェラーゼ基質(Promega(登録商標))を各ウェルに加えて、プレートリーダー(Biotek(登録商標))を用いてRLUを決定した。可溶性RGMcはBMP6を隔離してその下流の転写活性を阻害するので、可溶性RGMcにBMP6が結合するのをブロックする抗体は、このアッセイにおいてBMP6レポーター活性を活性化し、BMP6競合抗体と呼ばれる。SR-RC-AB3およびSR-RC-AB4の用量応答滴定は、それらが、それぞれ6.83nMおよび1.68nMのEC50で、BREレポーターアッセイにおいて示された力価を有することを明らかにした。
【0489】
[実施例3:親和性成熟RGMc選択的抗体の開発]
SR-RC-AB3およびSR-RC-AB4を、親和性成熟のために選択した。親和性成熟を、本明細書中に記載の酵母ディスプレイなどの公知技術を用いて行なった。
【0490】
RGMa-his(一価)またはRGMa-Fc(avid)に対する結合親和性を決定するために、試験抗体を抗-ヒトFc捕捉バイオセンサー(AHC)(ForteBio(登録商標))の表面に固定化して、それからセンサーを過剰のネガティブコントロール抗体でブロックした。それから、Fcまたはヒスチジンでタグ化したRGMaに対する結合を、100nMで試験した。抗原を3分間会合させて、その後に3分解離させた。実験全体を通してKinetics Buffer(ForteBio(登録商標))を用い、それぞれの抗体抗原ペアに関して1:1フィッティング・モデルを用いてK
Dを決定した。いずれの抗体も、ヒスチジンでタグ化したRGMaタンパク質に対する結合を示さなかったが、一部のクローンは、avid(Fcタグ化形態)に対する応答を示した(
図4A)。RGMa-Fcに対する結合を示すクローンは全て同一系統由来であり、このファミリー内の潜在的に交差反応性のエピトープを示した。RGMa-Fcに対して結合するクローンは、さらなる試験に選択しなかった。
【0491】
MSD-SET(メソスケール決定-溶液平衡滴定)によって親和性を測定するために、RGMc特異的抗体(この例では、抗体のFab形態)の滴定を、一定濃度の抗原とともに20~24時間プレインキュベートして平衡に到達させた。それから、滴定を、任意のフリー抗原を溶液から枯渇させる補足抗体(NHS-スルフォタグで事前標識)で事前にコーティングされたプレートに添加した。150秒のインキュベーション後、プレートを3回洗浄して、SA-スルフォタグ試薬を加えて3分間インキュベートした。さらに洗浄した後、プレートをMesoQuickPlex SQ120で読み取った。ヒトおよびマウスRGMc抗原の両方に対するFab親和性を決定した。両方の種に対する交差反応性が親和性成熟プロセス全体にわたって維持されたことを示す(
図4B)。
【0492】
同様のMSD-SETアッセイをヒトRGMc-his抗原に対する全長抗体を用いて行ない、結合親和性(KD))を決定した。表3に示されるように、選択子孫抗体は、親抗体と比較してサブ-ナノモルの親和性に到達した。
【0493】
BRE-ルシフェラーゼ活性(インビトロでBMP-6競合を測定する)を実施例2に上述したとおりに行なった。表4に示されるように、親和性成熟抗体は、親抗体と比較してBMP競合の改善も示した。
【0494】
【0495】
[実施例4:親和性成熟RGMc選択的抗体は、BMP6活性をインビトロで阻害する]
親和性成熟RGMc選択的抗体がRGMcに対するBMP6の結合を阻害したかどうか決定するために、BMP6アッセイを実施例2に上述したとおりに行なった。
図5Aに示されるように、親和性成熟抗体のSR-RC-AB3ファミリーは、親抗体(すなわち、SR-RC-AB3)と比較して、RGMcに対するBMPの結合を阻害する改善された能力を示す(BMP活性の増大によって示される)。
図5Bに示されるように、親和性成熟抗体のSR-RC-AB4ファミリーは、親抗体(すなわち、SR-RC-AB3)と比較して、RGMcに対するBMPの結合を阻害する改善された能力を示す(相対的BMP活性の増大によって示される)。高親和性RGMバインダーを、アイソタイプ・コントロールとともに、コントロールとして用いた。表4は、BMP活性アッセイにおける計算されたEC50値を示す。合わせると、これらの結果は、親和性成熟抗体が、BMPを通してRGMc活性を阻害する改善された能力を有することを示す。
【0496】
【0497】
[実施例5:親和性成熟RGMc選択的抗体は、鉄恒常性をインビボで調整する。]
抗体のインビボでの効果を評価するために、鉄パラメータ(血清鉄、不飽和鉄結合能(UIBC)、およびトランスフェリン飽和度)を、齧歯類において、単回の抗体投与(0.2mg/kg、n=5動物/群)の24時間後に測定した。雌Sprague Dawleyラット(7~9週齢、Charles River Laboratories)に、単回i.v.用量の抗体を投与した。24時間後、動物を屠殺して、血清を、ModPまたはCobas臨床化学分析器による鉄分析のために、またはヘプシジンELISAのために回収して、肝臓をヘプシジンRNA発現の分析のために採取した。選択BMP-競合抗体は、齧歯類において、ヘプシジンを強く抑制し、鉄の可動化を増大させた。より具体的には、
図6Aおよび6Bに示されるように、SR-RC-AB1、SR-RC-AB7、SR-RC-11、SR-RC-AB8、SR-RC-AB9、SR-RC-AB2、およびSR-RC-AB10は、コントロールと比較してラットにおいて血清鉄を増大させ、健康なラットにおいて不飽和鉄結合能(UIBC)を減少させた。データは、本発明に係るRGMc選択的阻害剤が、不飽和鉄結合能(UIBC)を有意に減少させることにより(
図6B)、鉄をインビボで可動化させるのに効果的であり(
図6A)、ラットにおいて24時間後に0.2mg/kgでトランスフェリン飽和度の有意な増大を達成することを示す。
【0498】
RGMc選択的抗体の薬物動態(PK)と薬力学的(PD)の関係を試験するために、単回用量PK/PD試験を雌Sprague Dawleyラットにおいて行なった。動物に単回静脈内(IV)用量の抗体(0.6、2、6および20mg/kg)を投与し、血清鉄パラメータ(例えば、血清鉄およびUIBCレベル)を薬力学的測定値として決定し、一方で、抗体血清濃度を測定して抗体のPKプロファイルを決定した。血清鉄およびUIBCを、RX Daytona Clinical Chemistry Analyzerによって決定して、抗体濃度をELISAによって測定した。
【0499】
図7Aは、単回用量のSR-RC-AB8(n=2)またはSR-RC-AB9(n=5)を20mg/kgで用いて処置した場合の、経時的な動物における血清鉄レベル(平均±SEM)を示す。SR-RC-AB8およびSR-RC-AB9は、コントロールと比較して、血清鉄レベルを増大させ、UIBCレベルを減少させた。
図7Bは、フォローアップPK/PD試験における血清鉄(上)およびUIBC(下)の測定を示し、ここで雌Sprague-Dawleyereは、単回IV用量のSR-RC-AB8を0.6mg/kg~20mg/kgで投与された(n=5~11動物/群)。SR-RC-AB8は、評価された全ての用量で、コントロールと比較して血清鉄レベルを増大させ、UIBCレベルを減少させた。血清鉄パラメータの変化の持続時間は用量依存的であり、効果は、20mg/kgの単回投与後、21日も持続した。
図7Cは、同一の動物内の抗体血清濃度を示す。PKパラメータを、Phoenix WinNonlinソフトウェアを用いて計算して表5に要約した。標的が介在する薬物配置(TMDD)が全ての用量レベルで観察されるが、6および20mg/kgのより高い用量では、標的は早い時点で飽和するようであり、TMDDの観察およびクリアランスの変化のタイミングは、PKプロファイルにおいてより後の時点で顕著である。最大濃度は投与後1時間で達成され、C
maxは用量に比例した増大を示した。抗体の半減期は、1.2~6.7日の範囲であり、より少ない用量で観察される、より早いクリアランスおよびより短い滞留時間を示す。このことは、標的が介在する薬物配置(TMDD)を有するヒトIgG4分子と一致する。最後に、TMDDを示す分子で予想されるように、AUC
0-8によって測定される用量比例よりも高い曝露増大が観察された。
図7Dは、20mg/kgでの、抗体曝露(PK)と血清鉄パラメータ(PD)の間の関係を示す。データは、3μg/mLよりも高い濃度が連続的なPD効果に必要であることを示唆する。
【0500】
【0501】
合わせると、これらのデータは、RGMc特異的抗体によるBMP6-ヘプシジンのシグナリング経路の標的化された破壊が、インビボでの鉄利用率を増大させることを示す。これらの結果は、BMP6シグナリングの肝臓選択的阻害が、CKDの貧血およびがんまたは化学療法によって誘導される貧血を含む様々な鉄制限性の貧血を標的化するための安全かつ効果的な方法を提供し得るという概念を支持する。
【0502】
[実施例6:RGMc選択的抗体の結合領域を決定するためのHDXエピトープマッピング]
水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)は、溶液中のタンパク質コンフォメーションを調べるために広く用いられる技術である。HDX-MS方法論は、Wei et al.,Drug Discov Today,2014 January;19(1):95-102に記載され、参照によりその全体で本明細書中に援用される。手短には、HDX-MSは、溶液中の重水素とタンパク質主鎖アミド水素の交換に依拠している。弱い水素結合に関与している、またはタンパク質の表面に位置する主鎖アミド水素は、急速に交換し得て、一方で、内部に埋め込まれているものまたは水素結合の安定化に関与するものはよりゆっくり交換する。主鎖アミド水素の水素/重水素(H/D)交換速度を測定することにより、タンパク質の動態およびコンフォメーションに関する情報を得ることができる。
【0503】
HDX-MSを行なって、RGMc SR-RC-AB9内のどこが結合するのかを決定した。HDX-MSにおいては、抗体によってしっかり結合される抗原の領域は、タンパク質間相互作用に起因してH/D交換から保護され、一方で、溶媒に曝露される領域は、容易にH/D交換を受け得る。これに基づき、抗原の結合領域を同定した。
図8Aは、2つのH/D交換保護領域が、2つの結合領域(領域Aおよび領域B)(それぞれRGMcのα1およびα3ヘリックス内)を含む固有のエピトープにSR-RC-AB9が潜在的に結合することを示唆していることを示す。α3ヘリックスは、BMP結合ドメインの一部を含む。
図8Bは、領域Aおよび領域Bに対応するRGMa/b/cペプチドのアライメントである。
図8Cは、BMP2に結合した公知のRGMa構造の後にモデル化されたRGMcの構造を示す。
【0504】
実際に、RGMc特異的抗体は、潜在的な接触残基の存在に基づいてα3ヘリックス(例えば、領域B)に結合し得る(例えば、
図8Dを参照)。さらに、アイソフォーム間で、特にα1ヘリックス内に、いくつかのアミノ酸変動が存在し、SR-RC-AB3子孫抗体のアイソフォーム特異性に寄与すると考えられる(例えば、SR-RC-AB8およびSR-RC-AB9)。同様に、RGMaおよびRGMbを上回るRGMc特異性の構造決定因子として作用し得る領域A内のいくつかの残基が存在する(
図8E)。
【0505】
[実施例7:RGMC選択的抗体は、非ヒト霊長類における鉄恒常性を調整する]
RGMC選択的抗体が非ヒト霊長類における鉄恒常性を調整する能力を評価するために、雌カニクイザル・マカク(2~7年齢、Covance)における単回I.V.用量のSR-RC-AB8(10mg/kg)後に血清鉄パラメータを測定した。血清を、単回抗体投与後10週間、定期的な間隔で動物から回収した。血清鉄およびUIBCをCobras血液分析器で測定し、血清抗体曝露をELISAによって決定した。
【0506】
SR-RC-AB8は、抗体投与後に、血清鉄を効果的に増大させ、UIBCを低減させて、血清鉄レベルは、
図9Aに示されるように、投与後6週にわたって増大したままだった。8週までに、SR-RC-AB8を投与した全ての動物における血清鉄は、ベースラインまで戻った。
図9Bは、投与後10週までのSR-RC-AB8の平均血清濃度を示す。PKプロファイルは、モノクローナル抗体に関して予想されるとおりであり、242μg/mL(±21.3)のC
maxを投与後1時間で達成した。血清鉄パラメータ(PD)に対して抗体曝露(PK)を比較することにより評価されるPK/PDの関係は、3μg/mLよりも高い濃度が、連続的または長く続くPD効果を生じさせ得ることを示唆する(
図9C)。
【0507】
これらの結果により、RGMC選択的抗体が、抗体の単回投与後に、非ヒト霊長類において血清鉄に対する維持された効果を有し得ることが確認され、それにより、稀なIVインフュージョン(例えば3ヶ月ごと、または6ヶ月ごと)および/または皮下投与レジメンに関する機会を可能にし得る。
【0508】
[実施例8:RGMC選択的抗体は、慢性疾患の貧血のラットモデルにおいて、ESAと組み合わせて投与された場合、血清鉄を調整し、ヘモグロビンを増大させる。]
慢性疾患の貧血(ACD)のモデルにおける血清鉄および血液パラメータに対するRGMC選択的抗体の効果を試験するために、Lewis PG-APS ACDモデルを用いた。これは、ラットにおける慢性疾患の貧血の長期にわたるモデルであり、したがって、ヘプシジンを調整する薬物の、赤血球産生に対する効果の試験を可能にする。RGMC選択的抗体がESAの機能を高める潜在性に起因して、抗体を単独およびエポエチンα(EPO)と組み合わせて投与した。関節炎をPG-APS[15mg/kg]i.p.でラットにおいて誘導して、14日後、血液および血清鉄パラメータを決定した。これらの結果に基づき、ラットを投与に関してグループにランダム化して、投与の最初の日を0日目とラベルした。動物(n=6~8/群)をアイソタイプ・コントロールまたはSR-RC-AB8抗体(20mg/kg)および/またはEPO(10ug/kg)で毎週処置した。動物に合計4週間投与して(0日目、7日目、14日目、21日目)、血清鉄および血液パラメータを、3日目、10日目、17日目、24日目および28日目に毎週測定した。
【0509】
図10Aは、それぞれの投与群に関するおけるベースラインの測定値(-3日目)からの血清鉄の変化を示す。SR-RC-AB8単独およびEPOと組み合わせた毎週の投与は、ACD動物において、IgG単独と比較して血清鉄を増大させた。
図10Bは、試験の24日目からの絶対的血清鉄(μg/dL)データを示す。健康なコントロールとACD動物の間の血清鉄の有意差およびSR-RC-AB8を投与された動物群における血清鉄の増大に留意する。
図10Cは、それぞれの投与群に関する、ベースライン測定値(-3日目)からのヘモグロビンの変化を示す。データは、EPOと組み合わせて投与した場合、SR-RC-AB8は、ヘモグロビン増加レベルに対する強い効果(EPOまたは抗体単独よりも早くて平均が高い)を有したこと示す。24日目からの絶対的ヘモグロビン(g/dL)データのみを
図10Dに示す。ACD:アイソタイプ・コントロール群と比較すると、ACD:SR-RC-AB8+EPO投与群においてヘモグロビンが58%増大した。合わせると、これらのデータは、ACDのモデルにおいて、SR-RC-AB8が血清鉄を調整することができ、EPOと組み合わせて投与された場合、SR-RC-AB8は、Hgbの調整においてEPO単独よりもさらに高い効果を有し得ることを示す。
【0510】
本開示に含まれる特定の配列のリストが以下に提供される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト反発性ガイダンス分子C(RGMc)に
選択的に結合する単離された抗体
および薬学的に許容できる担体を含んでいる医薬組成物であって、
前記抗体は、完全ヒトまたはヒト化抗体であり、ここで:
a)前記抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;
b)前記抗体は、ヒト反発性ガイダンス分子A(RGMa)およびヒト反発性ガイダンス分子B(RGMb)に結合せず;および
c)前記抗体は、BMP6とRGMcの相互作用を阻害または減少させる、
医薬組成物。
【請求項2】
ヒトRGMc内のエピトープに結合する単離された抗体
および薬学的に許容できる担体を含んでいる医薬組成物であって、
前記抗体は、完全ヒトまたはヒト化抗体であり、ここで:
a)前記抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントであり;および
b)前記抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基および/またはFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むエピトープに結合し、ここで前記エピトープは、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基およびFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよい、
医薬組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の
医薬組成物であって、
前記抗体は、配列番号30、31、および32にそれぞれ示されるH-CDR1、H-CDR2、およびH-CDR3配列、ならびに、配列番号33、34、および35にそれぞれ示されるL-CDR1、L-CDR2、およびL-CDR3配列を含み;
ここで、
前記H-CDR1の4位のR残基はKまたはSで置換されてもよく;前記H-CDR1の5位のS残基はTで置換されてもよく;前記H-CDR1の7位のS残基はAで置換されてもよく;および/または、前記H-CDR1の9位のS残基はQで置換されてもよく;
さらに:
前記H-CDR2の8位のV残基はHまたはTで置換されてもよく;および/または前記H-CDR2の10位のN残基はS、TまたはEで置換されてもよい、
医薬組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の
医薬組成物であって、
前記抗体は、
a)配列番号36と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;および/または
b)配列番号37と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する可変の軽鎖可変領域を含み、
ここで前記抗体は、
c)配列番号36に示される重鎖可変領域配列;および
d)配列番号37に示される軽鎖可変領域配列を含んでもよい、
医薬組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の
医薬組成物であって、
前記抗体は
、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体であ
り、ここで前記抗体は、ヒトIgG4抗体であってもよく、さらに前記ヒトIgG4抗体は、IgG
1様ヒンジを生じさせるSerからProへの主鎖置換を含んでいてもよい、
医薬組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の
医薬組成物であって、
前記抗体は、0.1×10
-9(0.1nM)未満のK
D値でRGMcに結合し、ここで前記抗体は、抗体抗原複合体の内部移行を誘導してもよい、
医薬組成物。
【請求項7】
ヒトRGMcに
選択的に結合する単離された抗体
を含んでいる医薬組成物であって、
前記抗体は、
完全ヒトまたはヒト化抗体であり、
ここで前記抗体は、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基および/またはFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいるエピトープに結合する抗体と、ヒトRGMcに対する結合に関して競合(例えば交差競合)する、および/または、
同一のエピトープに結合し、ここで前記エピトープは、YVSSTLSL(配列番号46)の少なくとも1つのアミノ酸残基およびFHSAVHGIEDL(配列番号47)の少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよく、ここで前記抗体は、全長抗体またはその抗原結合フラグメントである、
医薬組成物。
【請求項8】
ヒト対象における貧血の治療のための方法での使用のための請求項
1から7のいずれか一項に記載の
医薬組成物であって、
前記治療は、前記貧血を治療するのに効果的な量での前記対象への前記組成物の投与を含み、
ここで前記貧血は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)または慢性疾患の貧血(ACD)であってもよい、
医薬組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載の使用のための
医薬組成物であって、
前記貧血は、がん関連の貧血または化学療法によって誘導される貧血である、
医薬組成物。
【請求項10】
請求項
8に記載の使用のための組成物であって、
前記ACDは、慢性腎疾患(CKD)の貧血であり、
前記対象は、透析依存性または非透析依存性であってもよい、
組成物。
【請求項11】
請求項
8から
10のいずれか一項に記載の使用のための
医薬組成物であって、
前記組成物は、さらなる治療的薬剤と組み合わせて投与されて、
ここで前記のさらなる治療的薬剤は、エリスロポエチン刺激剤(ESA)、HIF安定剤、鉄補給剤または輸血であってもよい、
医薬組成物。
【請求項12】
請求項
11に記載の使用のための
医薬組成物であって、
前記方法は、ESA、HIF安定剤、鉄補給剤または輸血と関連する毒性を減少させて、ここで前記毒性は、鉄過剰またはがんリスクを含んでもよい、
医薬組成物。
【請求項13】
請求項
8から
12のいずれか一項に記載の使用のための
医薬組成物であって、
前記対象は、
a)鉄療法中であるが鉄療法の用量減少が有利である;
b)鉄療法を受けたことがあるが毒性のせいで中断している;
c)鉄療法を受けたことがあり、鉄療法の用量減少が有利である;
d)がんリスクがある;および/または
e)がんと診断されたことがある、
医薬組成物。
【請求項14】
対象における血清鉄レベルを増大させる方法であって、
前記方法は、請求項
1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物を、
i)前記対象における血清鉄レベルを増大させる;
ii)前記対象におけるヘプシジンを下方調節する;
iii)肝臓ヘプシジンmRNAレベルを減少させる;
iv)肝臓ヘプシジンタンパク質レベル、血清(循環)ヘプシジンタンパク質レベル、またはその両方を減少させる;
v)前記対象におけるトランスフェリン飽和度を増大させる;
vi)前記対象における赤血球産生を増大させる;
vii)前記対象における不飽和鉄結合能を低減させる;
viii)前記対象における総鉄結合能を低減させる;および/または、
ix)前記対象における血清フェリチンレベルを増大させる
のに効果的な量で前記対象へ投与するステップを含み、ここで前記量は、血液のミリリットルあたり≧20ナノグラムの血清フェリチンレベルを達成するのに効果的な量であってもよい、
方法。
【請求項15】
請求項
8から
13のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物または請求項
14に記載の方法であって、
前記対象は、エリスロポエチン(EPO/ESA)療法、HIF安定剤療法、IV鉄補給、またはそれらの組み合わせを受けたことがあり、
ここで前記対象は、EPO療法、HIF安定剤療法またはIV鉄補給と関連する有害事象が現れたことがある対象であってもよく、または、そのリスクがある対象であってもよい、
医薬組成物または方法。
【請求項16】
RGMc選択的阻害剤(例えば、中和抗体)を含んでいる医薬組成物を作製する方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
i)RGMaおよびRGMbよりもRGMcに選択的に結合する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ
、ここで前記抗体は、完全ヒトまたはヒト化抗体である;
ii)ステップ(i)に基づいて、RGMc活性をインビボで阻害/中和する能力に関して、抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップ;
iii)ステップ(i)および(ii)に基づいて、医薬組成物への製剤化に関して、阻害/中和抗体を選択するステップ
を含み、
ここでステップ(i)は、ポジティブ選択を含んでもよく、さらに、ネガティブ選択を含んでもよい、
方法。
【請求項17】
請求項
16のいずれか1つの方法であって、
同定ステップ(i)は、ライブラリーをスクリーニングするステップを含み、
ここで前記ライブラリーは、ファージライブラリーまたは酵母ライブラリーであってもよく;
ここで同定ステップ(ii)は、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、不飽和鉄結合能(UIBC)、およびトランスフェリン飽和度からなる群より選択される鉄パラメータを測定するステップを含んでもよく、
さらに、ステップ(ii)は、ヘプシジン発現を測定するステップを含んでもよく、ここで前記ヘプシジン発現は、肝臓ヘプシジンレベルおよび/または血清ヘプシジンレベルであってもよく、
さらに、ステップ(ii)は、インビボで血清鉄レベルを上昇および/またはヘプシジン発現を抑制することが可能な中和抗体または抗原結合フラグメントを同定するステップを含んでもよく、
さらに、前記医薬組成物は、静脈内または皮下投与のために製剤化されてもよく、
さらに、ステップ(i)は、RGMaおよびRGMbよりもRGMcに関して選択的に確認するステップを含んでもよい、
方法。
【請求項18】
対象における鉄障害を治療するための方法での使用のためのRGMc選択的阻害剤であって、
前記RGMc
選択的阻害剤は、RGMaおよびRGMbを阻害せず、
ここで前記RGMc選択的阻害剤は、完全ヒトまたはヒト化全長抗体またはそれらの抗原結合フラグメントであり、
ここで前記鉄障害は、前記対象において貧血を生じさせる、
RGMc選択的阻害剤。
【国際調査報告】