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  • 特表-ピロロベンゾジアゼピン複合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ピロロベンゾジアゼピン複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5517 20060101AFI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220131BHJP
   C07K 5/06 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 5/08 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K31/5517
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K47/68
C07K5/06
C07K5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021521346
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2019078402
(87)【国際公開番号】W WO2020079239
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】1817088.6
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1908126.4
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】Milstein Building,Granta Park,Cambridge CB21 6GH,England
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ウィルソン・ハワード
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ハッチンソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC26
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA12
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
式(I)の化合物であって、式中、RLは細胞結合剤に連結するためのリンカーである上記化合物。
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
の化合物であって、式中、
6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、ニトロ、Me3Sn、及びハロから独立して選択され、但し、R及びR’は、任意選択的に置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、及びC5-20アリール基から独立して選択され、
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、ニトロ、Me3Sn、及びハロから選択され、
R”は、1つ以上のヘテロ原子、例えばO、S、NRN2(但し、RN2はHもしくはC1-4アルキルである)、及び/または芳香環、例えばベンゼンもしくはピリジンが連鎖中に割り込んでいてもよいC3-12アルキレン基であり、
Y及びY’は、O、S、またはNHから選択され、
6’、R7’、R9’はそれぞれ、R6、R7、及びR9と同一の基の群から選択され、
11bは、OH、ORA(但しRAはC1-4アルキルである)から選択され、
Lは細胞結合剤に連結するためのリンカーであり、このリンカーは、
(iiia):
(式中、
Qは
(式中、QXは、Qがアミノ酸残基、ジペプチド残基、またはトリペプチド残基となるようなものである)であり、
Xは、
(式中、a=0~5、b=0~16、c=0または1、d=0~5である)であり、
Lは、リガンド単位に連結するためのリンカーである)、及び
(iiib):
(式中、
L1及びRL2は、H及びメチルから独立して選択されるか、またはそれらが結合する炭素原子と共にシクロプロピレン基もしくはシクロブチレン基を形成し、
eは0または1である)
から選択され、
(a)R20はHであり、R21はHであるか、
(b)R20はHであり、R21は=Oであるか、または
(c)R21はOHもしくはORAであり、但し、RAはC1-4アルキルであり、R20は、
(i)

(ii)

(iii)
(式中、RZは、
(z-i)

(z-ii)OC(=O)CH3
(z-iii)NO2
(z-iv)OMe、
(z-v)グルクロニド
(z-vi)NH-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-C(=O)-RZC(式中、-C(=O)-X1-NH-及び-C(=O)-X2-NH-は天然アミノ酸残基を表し、RZCは、Me、OMe、CH2CH2OMe、及び(CH2CH2O)-2Meから選択される)
から選択される)
から選択されるか
のいずれかである、
前記化合物、ならびにその塩及び溶媒和物。
【請求項2】
Y及びY’の両方がOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R”がC3-7アルキレンである、請求項1または請求項2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
R”が式:
(式中、rは1または2である)の基である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
9がHであり、R6がHであり、R7がC1-4アルキルオキシ基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
6’がR6と同一の基であり、R7’がR7と同一の基であり、R9’がR9と同一の基であり、Y’がYと同一の基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
21がOHまたはORAであり、R20

であり、-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-が、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、及び-Val-Cit-から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-が-Phe-Lys-及び-Val-Ala-から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
ZCが(CH2CH2O)2Meである、請求項7または8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
式Ia、Ib、またはIc:

の化合物であって、式中、
1aはメチル及びベンジルから選択され、
L及びR11bは請求項1において定義されたとおりである
前記化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Lが式IIIaのものであり、Qが、
CO-Phe-Lys-NH
CO-Val-Ala-NH
CO-Val-Lys-NH
CO-Ala-Lys-NH
CO-Val-Cit-NH
CO-Phe-Cit-NH
CO-Leu-Cit-NH
CO-Ile-Cit-NH
CO-Phe-Arg-NH、及び
CO-Trp-Cit-NH
から選択されるジペプチド残基である、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Lが式IIIaのものであり、aが0であり、cが1であり、dが2であり、bが0~8である、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
bが0、4、または8である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Lが式IIIaのものであり、GLが、
(式中、ArはC5-6アリーレン基を表す)
から選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
LがGL1-1である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
式Id:
の化合物であって、式中、Qは、
(a)-CH2-、
(b)-C36-、及び
(c)
から選択される前記化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式II:
L-(DLp (II)
の複合体であって、式中、
Lはリガンド単位であり、DLは式I’:
の薬物リンカー単位であり、式中、
6、R7、R9、R11b、Y、R”、Y’、R6’、R7’、R9’、R20、及びR21は請求項1~9のいずれか1項に定義されるとおりであり、
LLは細胞結合剤に連結するためのリンカーであり、このリンカーは
(iiia’):
(式中、Q及びXは請求項1及び11のいずれか1項に定義されるとおりであり、GLLはリガンド単位に連結するリンカーである)、及び
(iiib’):
(式中、RL1及びRL2は請求項1に定義されるとおりである)
から選択され、
pは1~20の整数である
前記複合体。
【請求項18】
LLが、

(式中、ArはC5-6アリーレン基を表す)
から選択される、請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
Lが式(Id’):
のものであり、式中、Qは、
(a)-CH2-、
(b)-C36-、及び
(c)
から選択される、請求項17に記載の複合体。
【請求項20】
式IV:
の化合物であって、式中、
6、R7、R9、Y、R”、Y’、R6’、R7’、及びR9’は請求項1~9のいずれか1項に定義されるとおりであり、
(a)R30はHであり、R31はHであるか、
(b)R30はHであり、R31は=Oであるか、または
(c)R30及びR31が、それらが結合しているN原子とC原子との間に二重結合を形成するか
のいずれかである
前記化合物。
【請求項21】
請求項17~19のいずれか1項に記載の複合体の混合物を含む組成物であって、前記複合体化合物の混合物における平均のpが約1~約8である、前記組成物。
【請求項22】
治療に使用するための、請求項17~19のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項23】
請求項17~19のいずれか1項に記載の複合体、及び薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
対象の増殖性疾患の治療への使用のための、請求項17~19のいずれか1項に記載の複合体または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
治療を受ける疾患ががんである、請求項24に記載の使用のための複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体であって、ピロロベンゾジアゼピン及び関連する二量体(PBD)、ならびにかかる複合体を形成するために用いられる前駆体薬物リンカーを含む上記複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロロベンゾジアゼピン(PBD)の中には、DNAの特定配列を認識して結合する能力を有するものがあり、好適な配列はPuGPuである。最初のPBD抗腫瘍抗生物質であるアントラマイシンは1965に発見された(Leimgruber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,87,5793-5795(1965);Leimgruber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,87, 5791-5793(1965))。それ以来、天然に存在するPBDがいくつか報告されており、多様な類似体を合成する10を超える合成経路が開発されている(Thurston,et al.,Chem.Rev.1994,433-465(1994))。このファミリーに属するものとしては、アベイマイシン(Hochlowski,et al.,J.Antibiotics,40,145-148(1987))、チカマイシン(Konishi,et al.,J.Antibiotics,37,200-206(1984))、DC-81(Japanese Patent 58-180487;Thurston,et al.,Chem.Brit.,26, 767-772(1990);Bose,et al.,Tetrahedron 48,751-758(1992))、マゼトラマイシン(Kuminoto,et al.,J.Antibiotics,33,665-667(1980))、ネオトラマイシンA及びB(Takeuchi,etal.,J.Antibiotics,29,93-96(1976))、ポロトラマイシン(Tsunakawa,et al.,J.Antibiotics,41,1366-1373(1988))、プロトラカルシン(Shimizu,et al,J. Antibiotics, 29, 2492-2503(1982);Langley and Thurston,J.Org.Chem.,52,91-97(1987))、シバノマイシン(DC-102)(Hara,et al.,J.Antibiotics,41,702-704(1988);Itoh,et al.,J.Antibiotics,41,1281-1284(1988))、シビロマイシン(Leber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,110,2992-2993(1988))、ならびにトママイシン(Arima,et al.,J.Antibiotics,25,437-444(1972))が挙げられる。PBDは、以下の一般式のものである。
PBDは、それらの芳香環A及びピロロ環Cの両方で、置換基の個数、種類、及び位置が異なるとともに、環Cの飽和度も異なる。環Bでは、N10-C11の位置が、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、またはカルビノ-ルアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかになっており、ここがDNAアルキル化の原因となる求電子中心である。既知の天然産物は全て、キラルなC11a位に(S)型配置を有し、このため、PBDを環Cから環Aに向かって見たときに、これらは右巻きになっている。このことが、PBDに、B型DNAの副溝との螺旋性一致(isohelicity)(イソらせん性)に適切な三次元形状を与え、その結果、結合部位でのぴったりとした一致をもたらす(Kohn,In Antibiotics III.Springer-Verlag,New York,pp.3-11(1975);Hurley and Needham-VanDevanter,Acc.Chem.Res.,19,230-237(1986))。副溝で付加体を形成するPBDの能力により、PBDはDNAプロセシングに干渉することができ、したがって、PBDを抗腫瘍剤として使用することが可能となる。
【0003】
これらの分子の生物学的活性は、該分子のC8/C’-ヒドロキシル官能基により柔軟なアルキレンリンカーを介して、2つのPBD単位を互いに結合することによって高めることができることが既報に開示されている(Bose,D.S.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,114,4939-4941(1992);Thurston,D.E.,et al.J.Org.Chem.,61,8141-8147(1996))。上記PBD二量体は、パリンドローム5’-Pu-GATC-Py-3’鎖間架橋などの配列選択的DNA損傷を形成すると考えられており(Smellie,M.,et al.,Biochemistry,42,8232-8239(2003);Martin,C.,et al.,Biochemistry,44,4135-4147)、PBD二量体の生物学的活性は主としてこれらのDNA損傷に起因すると考えられている。
【0004】
最初の二量体(Bose,D.S.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,114,4939-4941(1992))は一般式:
(式中、nは3~6である)のものであった。nが3及び5である上記化合物はインビトロで有望な細胞毒性を示した。しかしながら、n=3のこの化合物(DSB-120)の抗がん活性を検討した際に、該化合物はそれほど有望ではないことが明らかになった(Walton,M.,et al.,Cancer Chemother Pharmacol (1996) 38: 431.doi:10.1007/s002800050507)。この化合物が有望ではないことは、「インビボで、たんぱく質と強く結合すること及び/またはこの薬物が広範に代謝を受けることの結果として、腫瘍に対する選択性及び薬物の取り込みが低いことの帰結」と考えられた。
【0005】
これらの化合物に改良を加えるために、「宿主の副溝の輪郭に沿うことになるC2/C2’置換基を含む」化合物を検討した(Gregson,S.J.,et al.,Chem.Commun.,1999,797-798.doi:10.1039/A809791G)。この化合物SG2000(SJG-136):
は、「ピコモル領域で非常に強い、DSB-120よりも約9000倍強力な細胞毒性」をもつことが判明した。
【0006】
この化合物(Gregson,S.,et al.,J.Med.Chem.,44, 737-748(2001);Alley,M.C.,et al.,Cancer Research,64,6700-6706(2004);及びHartley,J.A.,et al.,Cancer Research,64,6693-6699(2004)においても考察されている)は、単剤としての治験、例えば、急性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病の治療での使用を検討しているNCT02034227(https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02034227を参照のこと)に参加している。
【0007】
WO2005/085251には、SG2202(ZC-207):
などの、エンド型不飽和と共にC2アリール置換基を有する二量体PBD化合物が、またWO2006/111759には、かかるPBD化合物の重亜硫酸塩付加物、例えばSG2285(ZC-423):
が開示される。
【0008】
これらの化合物は、非常に有用な細胞毒性剤であることが明らかになっている(Howard,P.W.,et al.,Bioorg.Med.Chem.(2009),doi:10.1016/j.bmcl.2009.09.012)。
【0009】
ADCを含むPBDの総説(Mantaj,J.,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.(2016),55,2-29;DOI:10.1002/anie.201510610)において、PBD二量体のSARが考察されている。上記SARの概要が図3-Bに示され、「C2-エキソ不飽和及びC1-C2/C2-C3不飽和が活性を高める」。より詳細な考察が2.4節でなされており、そこでは、「DSB-120は、グルタチオンなどの細胞のチオール含有分子との高い反応性に一部起因して、インビボでの活性が低い。ただし、SJG-136のようにC2/C2’-エキソ不飽和を導入することにより、DNA結合親和性及び細胞毒性が全体的に増加し、且つ細胞の求核剤に対する反応性が低下し、より多くの当該薬剤がその標的DNAに到達する可能性がある。」と述べられている。
【0010】
WO2007/085930は、抗体などの細胞結合剤に連結するためのリンカー基を有する二量体PBD化合物の製造を記載している。当該リンカーは、二量体の単量体PBD単位を連結する架橋中に存在する。
【0011】
抗体などの細胞結合剤に連結するためのリンカー基を有する二量体PBD化合物はWO2011/130598に記載されている。これらの化合物におけるリンカーは、利用可能なN10位のうちの1つに結合されており、概して該リンカー基に対する酵素の作用によって開裂する。上記二量体PBD化合物はそのC環中にエンド型及びエキソ型不飽和のいずれかを有する。
【0012】
WO2014/057074及びWO2015/052322は、一方の単量体上のN10位を介して結合した特定のPBD二量体複合体を記載し、すべてのこれらの化合物はそのC環中にエンド型不飽和を有する。
【0013】
WO2014/096365は、C環中に不飽和をもたないことと、B環がジラクタムであることが重なり、したがってDNAに共有結合する能力をもたない化合物:
を開示する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、いずれのC環もエンド型またはエキソ型不飽和を有さず、両方のC2位にヒドロキシ基をもつPBD二量体薬物リンカー及び複合体を提供する。
【0015】
本発明の第1の態様は、式I:
を有する化合物であって、式中、
6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、ニトロ、Me3Sn、及びハロから独立して選択され、但し、R及びR’は、任意選択的に置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、及びC5-20アリール基から独立して選択され、
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、ニトロ、Me3Sn、及びハロから選択され、
R”は、1つ以上のヘテロ原子、例えばO、S、NRN2(但し、RN2はHもしくはC1-4アルキルである)、及び/または芳香環、例えばベンゼンもしくはピリジンが連鎖中に割り込んでいてもよいC3-12アルキレン基であり、
Y及びY’は、O、S、またはNHから選択され、
6’、R7’、R9’はそれぞれ、R6、R7、及びR9と同一の基の群から選択され、
11bは、OH、ORA(但しRAはC1-4アルキルである)から選択され、
Lは細胞結合剤に連結するためのリンカーであり、このリンカーは、
(iiia):
(式中、
Qは
(式中、QXは、Qがアミノ酸残基、ジペプチド残基、またはトリペプチド残基となるようなものである)であり、
Xは、
(式中、a=0~5、b=0~16、c=0または1、d=0~5である)であり、
Lは、リガンド単位に連結するためのリンカーである)、及び
(iiib):
(式中、
L1及びRL2は、H及びメチルから独立して選択されるか、またはそれらが結合する炭素原子と共にシクロプロピレン基もしくはシクロブチレン基を形成し、
eは0または1である)
から選択され、
(a)R20はHであり、R21はHであるか、
(b)R20はHであり、R21は=Oであるか、または
(c)R21はOHもしくはORAであり、但し、RAはC1-4アルキルであり、R20は、
(i)

(ii)

(iii)
(式中、RZは、
(z-i)

(z-ii)OC(=O)CH3
(z-iii)NO2
(z-iv)OMe、
(z-v)グルクロニド
(z-vi)NH-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-C(=O)-RZC(式中、-C(=O)-X1-NH-及び-C(=O)-X2-NH-は天然アミノ酸残基を表し、RZCは、Me、OMe、CH2CH2OMe、及び(CH2CH2O)2Meから選択される)
から選択される)
から選択されるか
のいずれかである、
上記化合物、ならびにその塩及び溶媒和物を含む。
【0016】
これに代わる実施形態において、R7及びR7’が、共に(i)-O-(CH2n-O-(式中、nは7~16である)、または(ii)-O-(CH2CH2O)m-(式中、mは2~5である)である基を形成してもよい。
【0017】
かかる薬物リンカーは、抗体などのリガンド単位に対して容易に複合体化することが明らかになっている。R20基が存在することが、C2-OH基とN10-C11イミン基との間の交差反応を回避するのに重要であると考えられている。同様に、N10-C11を第二級アミン基またはラクタム基で置換することによってもこの問題が回避される。
【0018】
本発明の第2の態様は、式II:
L-(DLp (II)
の複合体であって、式中、
Lはリガンド単位(すなわち、標的化薬剤)であり、DLは式I’:
の薬物リンカー単位であり、式中、
6、R7、R9、R11b、Y、R”、Y’、R6’、R7’、R9’、R20、及びR21は本発明の第1の態様に定義されるとおりであり、
LLは細胞結合剤に連結するためのリンカーであり、このリンカーは
(iiia’):
(式中、Q及びXは本発明の第1の態様に定義されるとおりであり、GLLはリガンド単位に連結するリンカーである)、及び
(iiib’):
(式中、RL1及びRL2は本発明の第1の態様に定義されるとおりである)
から選択され、
pは1~20の整数である、
上記複合体を提供する。
【0019】
上記リガンド単位は、後により詳細に説明するが、標的部分に結合する標的化薬剤である。上記リガンド単位は、例えば、特異的に細胞成分に結合することができる(細胞結合剤)、または他の目的とする標的分子に結合することができる。上記リガンド単位は、例えば、抗体などのタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド、抗体の抗原結合性断片、またはFc融合タンパク質などの他の結合性薬剤であってよい。
【0020】
これらの複合体は、高い治療指数につながる高い忍容性を有することが判明しており、それにより、これらの複合体が臨床開発の有望な候補になっている。
【0021】
本発明の第3の態様は、増殖性疾患を治療するための薬剤の製造における、本発明の第2の態様の複合体の使用を提供する。第3の態様はまた、増殖性疾患の治療に使用するための、本発明の第2の態様の複合体も提供する。第3の態様はまた、治療有効量の本発明の第2の態様の複合体を、それを必要とする患者に投与することを含む、増殖性疾患の治療方法も提供する。
【0022】
当業者であれば、候補化合物が任意の特定の細胞型による増殖性疾病を治療するかどうかを容易に判定することができる。例えば、特定の化合物によって提供される活性を評価するために簡便に使用することができるアッセイを後述する実施例に記載する。
【0023】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様の化合物(薬物リンカー)をリガンド単位と複合体化することを含む、本発明の第2の態様の複合体の合成を提供する。
【0024】
本発明の第5の態様は、式IV:
の化合物であって、式中、
6、R7、R9、Y、R”、Y’、R6’、R7’、及びR9’は本発明の第1の態様に定義されるとおりであり、
(a)R30はHであり、R31はHであるか、
(b)R30はHであり、R31は=Oであるか、または
(c)R30及びR31が、それらが結合しているN原子とC原子との間に二重結合を形成するか
のいずれかである
上記化合物を提供する。
【0025】
式IVの化合物は、第1の態様の複合体によって放出される弾頭である。
【0026】
定義
置換基
「任意選択的に置換されている」という句は、本明細書中で使用される場合、非置換であっても置換されていてもよい親基に関する。
【0027】
別段の明示がない限り、「置換されている」という用語は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の置換基を有する親基に関する。「置換基」という用語は、本明細書において従来の意味で使用されており、親基に、共有結合的に結合している、場合により縮合している化学的部分を指す。多種多様の置換基が周知されており、また、種々の親基の形成及びこれらへの導入方法も周知されている。
【0028】
置換基の例を、より詳細に以下に記載する。
【0029】
1-12アルキル:「C1-12アルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、脂肪族であっても脂環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)であってもよい、1~12個の炭素原子を有する炭化水素化合物の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分に関する。「C1-4アルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、脂肪族であっても脂環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)であってもよい、1~4個の炭素原子を有する炭化水素化合物の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分に関する。ゆえに、「アルキル」という用語は、以下に考察されている、サブクラスのアルケニル、アルキニル、シクロアルキルなどを含む。
【0030】
飽和アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)及びヘプチル(C7)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
飽和直鎖アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)及びn-ヘプチル(C7)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
飽和分岐鎖アルキル基の例としては、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)、及びネオ-ペンチル(C5)が挙げられる。
【0033】
2-12アルケニル:「C2-12アルケニル」という用語は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基に関する。
【0034】
不飽和アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、及びヘキセニル(C6)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
2-12アルキニル:「C2-12アルキニル」という用語は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基に関する。
【0036】
不飽和アルキニル基の例としては、エチニル(-C≡CH)及び2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
3-12シクロアルキル:「C3-12シクロアルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、環式炭化水素(炭素環式)化合物の1つの脂環式環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、3~7個の環原子を含めた3~7個の炭素原子を有する、上記部分であり、シクリル基でもあるアルキル基に関する。
【0038】
シクロアルキル基の例としては以下に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない:
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)及びメチルシクロヘキサン(C7)、
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)及びメチルシクロヘキセン(C7)、ならびに
飽和多環式炭化水素化合物:
ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)。
【0039】
3-20ヘテロシクリル:「C3-20ヘテロシクリル」という用語は、本明細書中で使用される場合、複素環式化合物の1つの環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、3~20個の環原子を有し、このうち1~10個が環ヘテロ原子である、上記部分に関する。好ましくは、各環が、3~7個の環原子を有し、このうち1~4個が環ヘテロ原子である。
【0040】
この文脈において、接頭語(例えば、C3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子またはヘテロ原子にかかわらず、環原子数または環原子数の範囲を示す。例えば、「C5-6ヘテロシクリル」という用語は、本明細書中で使用される場合、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。
【0041】
単環式ヘテロシクリル基の例としては以下に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない:
1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロ-ル)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7)、
1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7)、
1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7)、
2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、及びジオキセパン(C7)、
3:トリオキサン(C6)、
2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6)、
11:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6)、
11:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6)、
21:オキサジアジン(C6)、
11:オキサチオール(C5)及びオキサチアン(チオキサン)(C6)、ならびに、
111:オキサチアジン(C6)。
【0042】
置換されている単環式ヘテロシクリル基の例としては、環式形態の単糖類、例えば、フラノース(C5)、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、及びキシロフラノース、ならびにピラノース(C6)、例えば、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース及びタロピラノースに由来するものが挙げられる。
【0043】
5-20アリール:「C5-20アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、3~20個の環原子を有する上記部分に関する。「C5-7アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、5~7個の環原子を有する当該部分に関し、「C5-10アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、5~10個の環原子を有する上記部分に関する。好ましくは、各環は、5~7個の環原子を有する。
【0044】
この文脈において、接頭語(例えば、C3-20、C5-7、C5-6、C5-10など)は、炭素原子またはヘテロ原子にかかわらず、環原子数または環原子数の範囲を示す。例えば、「C5-6アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、5または6個の環原子を有するアリール基に関する。
【0045】
上記環原子は、「カルボアリール基」におけるように全て炭素原子であってよい。
【0046】
カルボアリール基の例としては、ベンゼン(すなわちフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、及びピレン(C16)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
縮合環を含み、その少なくとも1つが芳香族環であるアリール基の例としては、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、及びアセアントレン(C16)に由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
あるいは、上記環原子は、「ヘテロアリール基」におけるように1つ以上のヘテロ原子を含んでいてよい。単環式ヘテロアリール基の例としては、以下に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない:
1:ピロ-ル(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6)、
1:フラン(オキソール)(C5)、
1:チオフェン(チオール)(C5)、
11:オキサゾール(C5)、イソオキサゾール(C5)、イソキサジン(C6)、
21:オキサジアゾール(フラザン)(C5)、
31:オキサトリアゾール(C5)、
11:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5)、
2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6)、
3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6)、及び、
4:テトラゾール(C5)。
【0049】
縮合環を含むヘテロアリールの例としては:
ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、インドリジン(N1)、インドリン(N1)、イソインドリン(N1)、プリン(N4)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンズイミダゾール(N2)、インダゾール(N2)、ベンズオキサゾール(N11)、ベンズイソオキサゾール(N11)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N21)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N11)、ベンゾチアジアゾール(N2S)に由来する(2つの縮合環を含む)C9
クロメン(O1)、イソクロメン(O1)、クロマン(O1)、イソクロマン(O1)、ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、キノリジン(N1)、ベンゾキサジン(N11)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)、シンノリン(N2)、フタラジン(N2)、ナフチリジン(N2)、プテリジン(N4)に由来する(2つの縮合環を含む)C10
ベンゾジアゼピン(N2)に由来する(2つの縮合環を含む)C11
カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)、カルボリン(N2)、ペリミジン(N2)、ピリドインドール(N2)に由来する(3つの縮合環を含む)C13、ならびに、
アクリジン(N1)、キサンテン(O1)、チオキサンテン(S1)、オキサントレン(O2)、フェノキサチイン(O11)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N11)、フェノチアジン(N11)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)に由来する(3つの縮合環を含む)C14
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
単独であるか、または、別の置換基の一部であるかにかかわらず、上記基は、それ自体が、それ自体及び以下に列挙するさらなる置換基から選択される1つ以上の基によって任意選択的に置換されていてよい。
【0051】
ハロ:-F、-Cl、-Br、及び-I。
【0052】
ヒドロキシ:-OH。
【0053】
エーテル:-OR、ここで、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも称される、以下に考察されている)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも称される)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも称される)、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0054】
アルコキシ:-OR、ここで、Rは、アルキル基、例えば、C1-7アルキル基である。C1-7アルコキシ基の例としては、-OMe(メトキシ)、-OEt(エトキシ)、-O(nPr)(n-プロポキシ)、-O(iPr)(イソプロポキシ)、-O(nBu)(n-ブトキシ)、-O(sBu)(sec-ブトキシ)、-O(iBu)(イソブトキシ)、及び-O(tBu)(tert-ブトキシ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
アセタール:-CH(OR1)(OR2)、ここで、R1及びR2は、独立して、アセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、もしくはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基であり、または、「環式」アセタール基の場合、R1及びR2は、これらが結合している2つの酸素原子、及び該酸素原子が結合している炭素原子と共に、4~8個の環原子を有する複素環式環を形成している。アセタール基の例としては、-CH(OMe)2、-CH(OEt)2、及び-CH(OMe)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
ヘミアセタール:-CH(OH)(OR1)、ここで、R1は、ヘミアセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。ヘミアセタール基の例としては、-CH(OH)(OMe)及び-CH(OH)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
ケタール:-CR(OR1)(OR2)、ここで、R1及びR2は、アセタールについて定義されているとおりであり、Rは、水素以外のケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。ケタール基の例としては、-C(Me)(OMe)2、-C(Me)(OEt)2、-C(Me)(OMe)(OEt)、-C(Et)(OMe)2、-C(Et)(OEt)2、及び-C(Et)(OMe)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ヘミケタール:-CR(OH)(OR1)、ここで、R1は、ヘミアセタールについて定義されているとおりであり、Rは、水素以外のヘミケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。ヘミアセタール基の例としては、-C(Me)(OH)(OMe)、-C(Et)(OH)(OMe)、-C(Me)(OH)(OEt)、及び-C(Et)(OH)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
オキソ(ケト、-オン):=O。
【0060】
チオン(チオケトン):=S。
【0061】
イミノ(イミン):=NR、ここで、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である。エステル基の例としては、=NH、=NMe、=NEt、及び=NPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
ホルミル(カルボアルデヒド、カルボキシアルデヒド):-C(=O)H。
【0063】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここで、Rは、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルもしくはC1-7アルカノイルとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも称される)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも称される)、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例としては、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH33(t-ブチリル)、及び-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
カルボキシ(カルボン酸):-C(=O)OH。
【0065】
チオカルボキシ(チオカルボン酸):-C(=S)SH。
【0066】
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):-C(=O)SH。
【0067】
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):-C(=S)OH。
【0068】
イミド酸:-C(=NH)OH。
【0069】
ヒドロキサム酸:-C(=NOH)OH。
【0070】
エステル(カルボキシラート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例としては、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH33、及び-C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、ここで、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH33、-OC(=O)Ph、及び-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
オキシカルボイルオキシ:-OC(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例としては、-OC(=O)OCH3、-OC(=O)OCH2CH3、-OC(=O)OC(CH33、及び-OC(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
アミノ:-NR12、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノもしくはジ-C1-7アルキルアミノとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であり、あるいは、「環式」アミノ基の場合、R1及びR2は、これらが結合している窒素原子と共に、4~8個の環原子を有する複素環式環を形成している。アミノ基は、第一級(-NH2)、第二級(-NHR1)、または第三級(-NHR12)であってよく、カチオン形態では、第四級(-+NR123)であってよい。アミノ基の例としては、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH32、-N(CH32、-N(CH2CH32、及び-NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。環式アミノ基の例としては、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、及びチオモルホリノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR12、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH32、-C(=O)NHCH2CH3、及び-C(=O)N(CH2CH32、ならびに、R1及びR2が、これらが結合している窒素原子と共に、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、及びピペラジノカルボニルにおけるように複素環式構造を形成しているアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR12、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH32、及び-C(=S)NHCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、ここで、R1は、アミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基であり、R2は、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、及び-NHC(=O)Phが挙げられるが、これらに限定されない。R1及びR2は、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、及びフタルイミジル:
におけるように、共に環式構造を形成していてよい。
【0077】
アミノカルボニルオキシ:-OC(=O)NR12、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。アミノカルボニルオキシ基の例としては、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NHMe、-OC(=O)NMe2、及び-OC(=O)NEt2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
ウレイド:-N(R1)CONR23、ここで、R2及びR3は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基であり、R1は、ウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である。ウレイド基の例としては、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、及び-NMeCONEt2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
グアニジノ:-NH-C(=NH)NH2
【0080】
テトラゾリル:4個の窒素原子及び1個の炭素原子を有する5員の芳香族環:
【0081】
イミノ:=NR、ここで、Rは、イミノ置換基、例えば、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である。イミノ基の例としては、=NH、=NMe、及び=NEtが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2、ここで、各Rは、アミジン置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である。アミジン基の例としては、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2、及び-C(=NMe)NMe2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
ニトロ:-NO2
【0084】
ニトロソ:-NO。
【0085】
アジド:-N3
【0086】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0087】
イソシアノ:-NC。
【0088】
シアナト:-OCN。
【0089】
イソシアナト:-NCO。
【0090】
チオシアノ(チオシアナト):-SCN。
【0091】
イソチオシアノ(イソチオシアナト):-NCS。
【0092】
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0093】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここで、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも称される)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例としては、-SCH3及び-SCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
ジスルフィド:-SS-R、ここで、Rは、ジスルフィド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基(本明細書においてC1-7アルキルジスルフィドとも称される)である。C1-7アルキルジスルフィド基の例としては、-SSCH3及び-SSCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R、ここで、Rは、スルフィン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィン基の例としては、-S(=O)CH3及び-S(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R、ここで、Rは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは、例えば、フッ素化もしくは過フッ素化C1-7アルキル基を含めたC1-7アルキル基である。スルホン基の例としては、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3(エシル)、-S(=O)249(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2CH2CH2NH2(タウリル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4-ニトロフェニル(ノシル)、2-ナフタレンスルホナート(ナプシル)、及び5-ジメチルアミノ-ナフタレン-1-イルスルホナート(ダンシル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
【0098】
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0099】
スルフィナート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR;ここで、Rは、スルフィナート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィナート基の例としては、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;メチルスルフィナート)及び-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;エチルスルフィナート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
スルホナート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR、ここで、Rは、スルホナート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホナート基の例としては、-S(=O)2OCH3(メトキシスルホニル;メチルスルホナート)及び-S(=O)2OCH2CH3(エトキシスルホニル;エチルスルホナート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R、ここで、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例としては、-OS(=O)CH3及び-OS(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R、ここで、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例としては、-OS(=O)2CH3(メシラート)及び-OS(=O)2CH2CH3(エシラ-ト)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
サルフェート:-OS(=O)2OR、ここで、Rは、サルフェート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。サルフェート基の例としては、-OS(=O)2OCH3及び-SO(=O)2OCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
スルファミル(スルファモイル、スルフィン酸アミド、スルフィンアミド):-S(=O)NR12、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。スルファミル基の例としては、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH32、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH32、及び-S(=O)NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
スルホンアミド(スルフィナモイル、スルホン酸アミド、スルホンアミド):-S(=O)2NR12、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。スルホンアミド基の例としては、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH32、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH32、及び-S(=O)2NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
スルファミノ:-NR1S(=O)2OH、ここで、R1は、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。スルファミノ基の例としては、-NHS(=O)2OH及び-N(CH3)S(=O)2OHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここで、R1は、アミノ基について定義されているアミノ置換基であり、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、-NHS(=O)2CH3及び-N(CH3)S(=O)265が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R、ここで、R1は、アミノ基について定義されているアミノ置換基であり、Rは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例としては、-NHS(=O)CH3及び-N(CH3)S(=O)C65が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
ホスフィノ(ホスフィン):-PR2、ここで、Rは、ホスフィノ置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスフィノ基の例としては、-PH2、-P(CH32、-P(CH2CH32、-P(t-Bu)2、及び-P(Ph)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
ホスホ:-P(=O)2
【0111】
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):-P(=O)R2、ここで、Rは、ホスフィニル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスフィニル基の例としては、-P(=O)(CH32、-P(=O)(CH2CH32、-P(=O)(t-Bu)2、及び-P(=O)(Ph)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
ホスホン酸(ホスホノ):-P(=O)(OH)2
【0113】
ホスホナート(ホスホノエステル):-P(=O)(OR)2、ここで、Rは、ホスホナート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスホナート基の例としては、-P(=O)(OCH32、-P(=O)(OCH2CH32、-P(=O)(O-t-Bu)2、及び-P(=O)(OPh)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
リン酸(ホスホノオキシ):-OP(=O)(OH)2
【0115】
ホスフェート(ホスホノオキシエステル):-OP(=O)(OR)2、ここで、Rは、ホスフェート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスフェート基の例としては、-OP(=O)(OCH32、-OP(=O)(OCH2CH32、-OP(=O)(O-t-Bu)2、及び-OP(=O)(OPh)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
亜リン酸:-OP(OH)2
【0117】
ホスファイト:-OP(OR)2、ここで、Rは、ホスファイト置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスファイト基の例としては、-OP(OCH32、-OP(OCH2CH32、-OP(O-t-Bu)2、及び-OP(OPh)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
ホスホロアミダイト:-OP(OR1)-NR2 2、ここで、R1及びR2は、ホスホロアミダイト置換基、例えば、-H、(任意選択的に置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスホロアミダイト基の例としては、-OP(OCH2CH3)-N(CH32、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、及び-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
ホスホロアミダート:-OP(=O)(OR1)-NR2 2、ここで、R1及びR2は、ホスホロアミダート置換基、例えば、-H、(任意選択的に置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスホロアミダート基の例としては、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH32、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、及び-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
アルキレン
3-12アルキレン:「C3-12アルキレン」という用語は、本明細書中で使用される場合、脂肪族であっても脂環式であってもよく、また、飽和、部分不飽和、または完全不飽和であってよい、3~12個の炭素原子(別段の明示がない限り)を有する炭化水素化合物の2つの水素原子であって、両方が同一の炭素原子からであるか、2つの異なる炭素原子のそれぞれからのものであるかのいずれかである当該2つの水素原子を除去することによって得られる二座部分に関する。ゆえに、「アルキレン」という用語には、以下に考察されている、サブクラスのアルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレンなどが含まれる。
【0121】
直鎖飽和C3-12アルキレン基の例としては、nが3~12の整数である-(CH2n-、例えば、-CH2CH2CH2-(プロピレン)、-CH2CH2CH2CH2-(ブチレン)、-CH2CH2CH2CH2CH2-(ペンチレン)及び-CH2CH2CH2CH-2CH2CH2CH2-(ヘプチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
分岐鎖飽和C3-12アルキレン基の例としては、-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH2CH3)-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-CH2CH(CH2CH3)CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
直鎖部分不飽和C3-12アルキレン基(C3-12アルケニレン、及びアルキニレン基)としては、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-CH2-、-CH=CH-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH=CH-、-CH=CH-CH2-CH2-CH=CH-、及び-CH2-C≡C-CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
分岐鎖部分不飽和C3-12アルキレン基(C3-12アルケニレン及びアルキニレン基)の例としては、-C(CH3)=CH-、-C(CH3)=CH-CH2-、-CH=CH-CH(CH3)-及び-C≡C-CH(CH3)-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
脂環式飽和C3-12アルキレン基(C3-12シクロアルキレン)の例としては、シクロペンチレン(例えば、シクロペンタ-1,3-イレン)、及びシクロヘキシレン(例えば、シクロヘキサ-1,4-イレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
脂環式部分不飽和C3-12アルキレン基(C3-12シクロアルキレン)の例としては、シクロペンテニレン(例えば、4-シクロペンテン-1,3-イレン)、シクロヘキセニレン(例えば、2-シクロヘキセン-1,4-イレン、3-シクロヘキセン-1,2-イレン、2,5-シクロヘキサジエン-1,4-イレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
3-12アルキレン基にヘテロ原子が割り込んでいる場合、下付き文字はそのヘテロ原子を含む連鎖中の原子の数を指す。例えば、連鎖-C24-O-C24-はC5基となる。
【0128】
3-12アルキレン基に芳香環が割り込んでいる場合、下付き文字はその芳香環を含む連鎖中に直接存在する原子の数を指す。例えば、連鎖
はC5基となる。
【0129】
記号*及び
は同義で用いられ、化学基の結合点を表す。
【0130】
リガンド単位
リガンド単位はどの種類であってもよく、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び標的分子に特異的に結合する非ペプチド薬剤を含む。いくつかの実施形態において、リガンド単位は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドであってよい。いくつかの実施形態において、リガンド単位は環状ポリペプチドであってよい。かかるリガンド単位は、少なくとも1つの標的分子結合部位、リンフォカイン、ホルモン、成長因子、または標的に特異的に結合できる任意の他の細胞結合分子または物質を含有する抗体または抗体断片を含んでいてもよい。
【0131】
「特異的に結合する」及び「特異的結合」という用語は、抗体または他のタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドによる所定の分子(例えば抗原)への結合を指す。通常、抗体または他の分子は、少なくとも約1×107-1の親和性で結合し、所定の分子または密接に関連する分子以外の非特異的分子(例えば、BSA、カゼイン)への結合における親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で所定の分子に結合する。
【0132】
リガンド単位の例としては、本明細書に援用される、WO2007/085930に使用について記載されている薬剤が挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態において、リガンド単位は、細胞上の細胞外標的に結合する細胞結合剤である。かかる細胞結合剤は、タンパク質剤、ポリペプチド剤、ペプチド剤、または非ペプチド剤であってよい。いくつかの実施形態において、細胞結合剤は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドであってよい。いくつかの実施形態において、細胞結合剤は環状ポリペプチドであってよい。細胞結合剤はまた、抗体または抗体の抗原結合性断片であってよい。したがって、一実施形態では、本発明は、抗体薬物複合体(ADC)を提供する。
【0134】
細胞結合剤
細胞結合剤はどの種類であってもよく、ペプチド及び非ペプチドが挙げられる。これは、少なくとも1つの結合部位、リンフォカイン、ホルモン、ホルモン模倣体、ビタミン、成長因子、栄養素輸送分子、または任意の他の細胞結合分子もしくは物質を含有する抗体または抗体断片を含んでいてもよい。
【0135】
ペプチド
一実施形態では、細胞結合剤は、4~30個、好ましくは6~20個の連続したアミノ酸残基を含む線状または環状のペプチドである。本実施形態では、1つの細胞結合剤が1つの単量体または二量体のピロロベンゾジアゼピン化合物に連結されることが好ましい。
【0136】
一実施形態では、細胞結合剤は、インテグリンαvβ6に結合するペプチドを含む。このペプチドは、XYSよりもαvβ6に対して選択性を有していてもよい。
【0137】
一実施形態では、細胞結合剤は、A20FMDV-Cysポリペプチドを含む。A20FMDV-Cysの配列はNAVPNLRGDLQVLAQKVARTCである。あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されているA20FMDV-Cys配列の変異体を使用してもよい。さらに、ポリペプチドは配列NAVXXXXXXXXXXXXXXXRTCを有していてもよい。
【0138】
抗体
「抗体」という用語は、本明細書中、最も広義の意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、多価抗体、及び抗体断片を(ただし、それらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて)包含する(Miller et al(2003) Jour.of Immunology 170:4854-4861)。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または他の種由来抗体が可能である。抗体とは、免疫系により産生される、特定の抗原を認識してそれに結合することができるタンパク質である。(Janeway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immuno Biology,5th Ed.,Garland Publishing,New York)。標的抗原は、一般に、複数の抗体のCDRで認識される多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープに特異的に結合する抗体は、それぞれ異なる構造を有する。したがって、1つの抗原は、1つより多い対応する抗体を有する可能性がある。抗体として、全長免疫グロブリン分子または全長免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、注目している標的の抗原に免疫学的に結合する抗原結合部位またはその一部分を有する分子が挙げられ、かかる標的としては、がん細胞または自己免疫疾患に関連した自己免疫抗体を産生する細胞が挙げられるが、これらに限定されない。免疫グロブリンは、任意の型(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子が可能である。免疫グロブリンは、任意の種由来のものが可能であり、ヒト、マウス、またはウサギ起原が挙げられる。
【0139】
「抗体断片」は、全長抗体の一部分、一般には全長抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びscFv断片;ダイアボディ;線状抗体;Fab発現ライブラリーによって生成される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及びがん細胞抗原、ウイルス抗原、または微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合断片、単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0140】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在し得る可能性がある天然に存在する突然変異体を除いて同一であるものを指す。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に対して指向性である。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入しないように合成できる点で有利である。修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al(1975) Nature 256: 495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することも、または組換えDNA法(例えば、US4816567を参照)によって作製することもできる。モノクローナル抗体はまた、Clackson et al(1991) Nature,352:624-628;Marks et al(1991) J.Mol.Biol.,222:581-597に記載の技術を用いたファージ抗体ライブラリーからから単離することも、または完全ヒト免疫グロブリン系を保有するトランスジェニックマウス(Lonberg(2008)Curr.Opinion 20(4):450-459)から単離することもできる。
【0141】
本明細書中のモノクローナル抗体は、具体的には、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を含む。
【0142】
細胞結合剤の例としては、本明細書に援用される、WO2007/085930に使用について記載されている薬剤が挙げられる。
【0143】
本発明の実施形態で使用される腫瘍関連抗原及び同族の抗体を以下に列挙するが、これらは本明細書に援用されるWO/2017/186894の14~86ページにさらに詳細に記述されている。
(1)BMPR1B(骨形成タンパク質受容体IB型)
(2)E16(LAT1、SLC7A5)
(3)STEAP1(前立腺の6回膜貫通型上皮抗原)
(4)0772P(CA125、MUC16)
(5)MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン)
(6)Napi3b(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質輸送体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b)
(7)Sema 5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、semaドメイン、7回トロンボスポンジン反復配列(seven thrombospondin repeats)(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)、及び短細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B)
(8)PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子)
(9)ETBR(エンドセリンB型受容体)
(10)MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315)
(11)STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通型上皮抗原2、6回膜貫通型前立腺タンパク質)
(12)TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容器電位カチオン5チャンネル、サブファミリーM、メンバー4)
(13)CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形腫由来増殖因子)
(14)CD21(CR2(補体受容体2)またはC3DR(C3d/エプスタイン・バーウイルス受容体)またはHs.73792)
(15)CD79b(CD79B、CD79β、IGb(免疫グロブリン関連β)、B29)
(16)FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質 5 1a)、SPAP1B、SPAP1C)
(17)HER2(ErbB2)
(18)NCA(CEACAM6)
(19)MDP(DPEP1)
(20)IL20R-α(IL20Ra、ZCYTOR7)
(21)ブレビカン(BCAN、BEHAB)
(22)EphB2R(DRT、ERK、Hek5、EPHT3、Tyro5)
(23)ASLG659(B7h)
(24)PSCA(前立腺幹細胞抗原前駆体)
(25)GEDA
(26)BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3)
(27)CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム、BL-CAM、Lyb-8、Lyb8、SIGLEC-2、FLJ22814)
(27a)CD22(CD22分子)
(28)CD79a(CD79A、CD79α)、免疫グロブリン関連α、B細胞特異的タンパク質(Igβ(CD79B)と共有結合で相互作用し、表面でIgM分子と複合体を形成し、B細胞分化に関与するシグナルを伝達する)、pI:4.84、MW:25028、TM:2[P]、遺伝子染色体:19q13.2)。
(29)CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、CXCL13ケモカインにより活性化されるGタンパク質共役受容体、このGタンパク質共役受容体は、リンパ球遊走及び体液性防御において機能し、HIV-2感染、ならびに恐らくはAIDS、リンパ腫、骨髄腫、及び白血病の発症において10の役割を果たす)。372aa、pl:8.54、MW:41959、TM:7[P]、遺伝子染色体:11q23.3。
(30)HLA-DOB(ペプチドに結合して、20個のそのペプチドをCD4+Tリンパ球に提供するMHCクラスII分子のβサブユニット(Ia抗原))、273aa、pI:6.56、MW:30820、TM:1[P]、遺伝子染色体:6p21.3)
(31)P2X5(プリン作動性受容体P2Xリガンド開口型イオンチャンネル5、細胞外ATPにより開口するイオンチャンネルであり、このチャンネルは、シナプス伝達及び神経新生に関与している可能性があり、この不全が突発性排尿筋不安定という病態生理の一因である可能性がある)、422aa)、pI:7.63、MW:47206、TM:1[P]、遺伝子染色体:17p13.3)。
(32)CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2);359aa、pI:8.66、MW:40225、TM:15[P]、遺伝子染色体:9p13.3)。
(33)LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンに富む反復配列(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質であり、B細胞活性化及びアポトーシスを制御し、この機能喪失は、全身性エリテマトーデスの患者で疾患活性の上昇を伴う)。661aa、pI:6.20、MW:74147、TM:1[P]、遺伝子染色体:5q12)。
(34)FcRH1(Fc受容体様タンパク質1、免疫グロブリンFcドメインの推定受容体であり、C2型Ig様ドメイン及びITAMドメインを含有し、Bリンパ球20分化において役割を果たす可能性がある);429aa、pI:5.28、MW:46925 TM:1[P]、遺伝子染色体:1q21-1q22)
(35)IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2、B細胞発達及びリンパ腫形成で役割を担っている可能性がある推定免疫受容体である。転位置による遺伝子の調節解除が、ある種のB細胞悪性腫瘍で生じる)。977aa、pI:6.88、MW:106468、TM:1[P]遺伝子染色体:1q21)
(36)TENB2(TMEFF2、トモレギュリン(tomoregulin)、TPEF、HPP1、TR、推定膜貫通35プロテオグリカン、増殖因子及びフォリスタチンのEGF/ヘレグリンファミリーと関連)。374aa)
(37)PSMA-FOLH1(葉酸ヒドロラーゼ(前立腺特異的膜抗原)1)
(38)SST(ソマトスタチン受容体;注、5つのサブタイプが存在する)
(38.1)SSTR2(ソマトスタチン受容体2)
(38.2)SSTR5(ソマトスタチン受容体5)
(38.3)SSTR1
(38.4)SSTR3
(38.5)SSTR4
AvB6-両方のサブユニット(39+40)
(39)ITGAV(インテグリン、αV)
(40)ITGB6(インテグリン、β6)
(41)CEACAM5(癌胎児抗原関連細胞接着分子5)
(42)MET(met癌原遺伝子;肝細胞増殖因子受容体)
(43)MUC1(ムチン1、細胞表面関連)
(44)CA9(炭酸脱水酵素IX)
(45)EGFRvIII(上皮増殖因子受容体(EGFR)、転写物変異型3)
(46)CD33(CD33分子)
(47)CD19(CD19分子)
(48)IL2RA(インターロイキン2受容体、α)、NCBI参照配列:NM_000417.2)
(49)AXL(AXL受容体チロシンキナーゼ)
(50)CD30-TNFRSF8(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー8)
(51)BCMA(B細胞成熟抗原)-TNFRSF17(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー17)
(52)CT Ags-CTA(癌精巣抗原)
(53)CD174(ルイス式Y)-FUT3(フコシルトランスフェラーゼ3(ガラクトシド3(4)-L-フコシルトランスフェラーゼ、ルイス式血液型群)
(54)CLEC14A(C型レクチンドメインファミリー14、メンバーA、Genbank受入番号NM175060)
(55)GRP78-HSPA5(熱ショック70kDaタンパク質5(グルコース制御タンパク質、78kDa)
(56)CD70(CD70分子)L08096
(57)幹細胞特異的抗原。例えば、以下:
・5T4(以下の(63)項を参照)
・CD25(上記(48)項を参照)
・CD32
・LGR5/GPR49
・プロミニン(Prominin)/CD133
(58)ASG-5
(59)ENPP3(エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3)
(60)PRR4(プロリンリッチ4(涙腺))
(61)GCC-GUCY2C(グアニル酸シクラーゼ2C(熱安定性エンテロトキシン受容体)
(62)Liv-1-SLC39A6(溶質輸送体ファミリー39(亜鉛輸送体)、メンバー6)
(63)5T4、トロホブラスト糖タンパク質、TPBG-TPBG(トロホブラスト糖タンパク質)
(64)CD56-NCMA1(神経細胞接着分子1)
(65)CanAg(腫瘍関連抗原CA242)
(66)FOLR1(葉酸受容体1)
(67)GPNMB(糖タンパク質(膜貫通型)nmb)
(68)TIM-1-HAVCR1(A型肝炎ウイルス細胞受容体1)
(69)RG-1/前立腺腫瘍標的ミンディン-ミンディン/RG-1
(70)B7-H4-VTCN1(V-setドメイン含有T細胞活性化インヒビタ-1)
(71)PTK7(PTK7タンパク質チロシンキナーゼ7)
(72)CD37(CD37分子)
(73)CD138-SDC1(シンデカン1)
(74)CD74(CD74分子、主要組織適合遺伝子複合体、クラスIIインバリアント鎖)
(75)クローディン-CL(クローディン)
(76)EGFR(上皮増殖因子受容体)
(77)Her3(ErbB3)-ERBB3(v-erb-b2赤芽球性白血病ウイルス性癌遺伝子ホモログ3(トリ))
(78)RON-MST1R(マクロファージ刺激1受容体(c-met関連チロシンキナーゼ))
(79)EPHA2(EPH受容体A2)
(80)CD20-MS4A1(膜貫通の4つのドメイン(membrane-spanning 4-domains)、サブファミリーA、メンバー1)
(81)テネイシンC-TNC(テネイシンC)
(82)FAP(線維芽細胞活性化タンパク質、α)
(83)DKK-1(Dickkopf1ホモログ(アフリカツメガエル))
(84)CD52(CD52分子)
(85)CS1-SLAMF7(SLAMファミリーメンバー7)
(86)エンドグリン-ENG(エンドグリン)
(87)アネキシンA1-ANXA1(アネキシンA1)
(88)V-CAM(CD106)-VCAM1(血管細胞接着分子1)
【0144】
対象となるさらなる腫瘍関連抗原及び同族抗体は、
(89)ASCT2(SLC1A5としても知られるASCトランスポーター2)
である。ASCT2抗体はWO2018/089393に記載されており、該特許文献は本明細書に援用される。
【0145】
細胞結合剤を標識すると、例えば、複合体としてもしくは複合体の一部として組み込む前の薬剤の検出または精製を補助することができる。標識はビオチン標識であってもよい。別の実施形態では、細胞結合剤を放射性同位体で標識してもよい。
【0146】
治療方法
本発明の化合物は、治療方法で使用することができる。治療方法も提供され、本方法は、治療を必要としている治療対象に、治療有効量の式IIの複合体を投与することを含む。「治療有効量」という用語は、患者に対して有益性を示すのに十分な量である。かかる有益性とは、少なくとも1種の症状の少なくとも改善であってよい。実際に投与される量ならびに投与の速度及び時間経過は、治療を受けようとしている対象の性質及び重篤度に依存することとなる。治療の処方、例えば投薬量の決定は、一般医及び他の医師の責任能力の範囲内である。
【0147】
複合体は、治療しようとする疾病に応じて、単独で投与することも、または他の治療と併用で、同時にもしくは逐次でのいずれかで投与することもできる。治療及び療法の例としては、化学療法(例えば薬物をはじめとする活性薬剤の投与)、手術、及び放射線療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本発明の、及び本発明の使用のための医薬組成物は、活性成分、すなわち式IIの複合体の他に、当業者に周知である薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、または他の材料を含むことができる。かかる材料は、無毒でなければならず、かつ活性成分の効力に干渉してはならない。担体または他の材料の詳細な性質は投与経路に依存することとなり、投与経路は、経口であってもよいし、注射、例えば皮膚注射、皮下注射、または静脈内注射によるものであってもよい。
【0149】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、または液剤の形態であってよい。錠剤は、固形担体またはアジュバントを含むことができる。液状医薬組成物は一般に、液状担体、例えば、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油、または合成油を含む。生理食塩水、ブドウ糖もしくは他の糖の溶液、またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールも含めることができる。カプセル剤は、固形担体、例えばゼラチンを含むことができる。
【0150】
静脈内注射、皮膚注射、または皮下注射、あるいは患部への注射用として、活性成分は、非経口で許容される水溶液の形態であってよく、この水溶液は、発熱物質を含まず、かつ適切なpH、等張力、及び安定性を有する。当業者であれば、例えば、等張性ビヒクル(塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液など)を用いて適切な溶液を調製することが容易にできる。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び/または他の添加剤も、必要に応じて含んでいてもよい。
【0151】
本複合体は、増殖性疾患及び自己免疫疾患を治療するのに使用することができる。「増殖性疾患」という用語は、過剰なもしくは異常な細胞の望ましくないまたは制御不能の細胞増殖に関係し、かかる増殖は、インビトロまたはインビボを問わず、望ましくない、例えば腫瘍形成性または過形成性の増殖である。
【0152】
増殖性疾病の例としては、良性、前悪性、及び悪性の細胞増殖が挙げられるが、これらに限定されず、かかる細胞増殖としては、新生物及び腫瘍(例えば、組織球腫、神経膠腫、星状細胞腫、骨腫)、がん(例えば、肺癌、小細胞肺癌、胃腸癌、腸癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、脳癌、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫、黒色腫)、白血病、乾癬、骨疾患、線維増殖性障害(例えば、結合組織の障害)、及び粥状動脈硬化が挙げられるが、これらに限定されない。対象となる他のがんとしては、血液系悪性腫瘍、例えば、白血病及びリンパ腫、例えば、非ホジキンリンパ腫、ならびにサブタイプ、例えば、DLBCL、辺縁帯、マントル層及び小胞、ホジキンリンパ腫、AML、ならびにBまたはT細胞由来の他のがんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
自己免疫疾患の例としては以下、すなわち、関節リウマチ、自己免疫脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎)、乾癬性関節炎、内分泌性眼障害、ぶどう膜網膜炎、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、グレーブス病、糸球体腎炎、自己免疫肝臓障害、炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、アナフィラキシー、アレルギー反応、シェーグレン症候群、I型糖尿病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、線維筋痛、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、アジソン病、副腎炎、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃の萎縮症、慢性肝炎、ルポイド肝炎、粥状動脈硬化、亜急性皮膚エリテマトーデス、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、自己免疫性血小板減少症、突発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円形脱毛症、類天疱瘡、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、手指硬化症、及び毛細血管拡張症)、男性及び女性の自己免疫性不妊症、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、混合性結合組織病、結節性多発動脈炎、全身性壊死性血管炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、再発性流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、愛鳥家肺、中毒性表皮壊死症、アルポート症候群、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、輸血反応、高安動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サムター症候群、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、ベーチェット病、キャプラン症候群、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異慢性毛様体炎、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶反応、心筋症、イートン-ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、クリオグロブリン血症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、エバンス症候群、及び自己免疫性腺機能不全が挙げられる。
【0154】
いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、Bリンパ球の障害(例えば、全身性紅斑性狼瘡、グッドパスチャー症候群、関節リウマチ、及びI型糖尿病)、Th1リンパ球の障害(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、もしくは移植片対宿主病)、またはTh2リンパ球の障害(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性紅斑性狼瘡、アトピー性喘息、鼻結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群、全身性硬化症、もしくは慢性移植片対宿主病)である。一般に、樹状細胞が関与する障害は、Th1リンパ球またはTh2リンパ球の障害を含む。いくつかの実施形態において、自己免疫性疾患はT細胞媒介免疫障害である。
【0155】
いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.01~約10mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.01~約5mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.05~約5mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.1~約5mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.1~約4mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.05~約3mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.1~約3mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、投与される本複合体の量は、投与当り約0.1~約2mg/kgの範囲である。
【0156】
薬物負荷量
薬物負荷量(p)は、細胞結合剤(例えば抗体)当りのPBD薬物の平均数である。本発明の化合物がシステインに結合している場合、薬物負荷量は、細胞結合剤当り1~8個の薬物(D)の範囲であってよい。すなわち、1、2、3、4、5、6、7、及び8個の薬物部分が細胞結合剤に共有結合している。複合体の組成物は、1~8個の範囲の薬物と複合体化された細胞結合剤(例えば、抗体)の集合体を含む。本発明の化合物がリシンに結合している場合、薬物負荷量は、細胞結合剤当り1~80個の薬物(D)の範囲であってよいが、40、20、10、または8個を上限とすることが好ましい場合がある。複合体の組成物は、1~80、1~40、1~20、1~10、または1~8個の範囲の薬物と複合体化された細胞結合剤(例えば、抗体)の集合体を含む。
【0157】
複合体化反応からADCを調製する際の抗体当りの薬物の平均数を、UV、逆相HPLC、HIC、質量分析、ELISAアッセイ、及び電気泳動などの従来の手段で明らかにすることができる。pに関するADCの定量的な分布を測定することもできる。ADCの特定の調製におけるpの平均値をELISAにより測定することができる(Hamblett et al(2004) Clin.Cancer Res.10:7063-7070;Sanderson et al(2005) Clin.Cancer Res. 11:843-852)。ただし、ELISAの抗体抗原結合及び検出限界により、p(薬物)値の分布を識別することはできない。また、抗体薬物複合体を検出するためのELISAアッセイでは、重鎖断片もしくは軽鎖断片、または特定のアミノ酸残基などの、薬物部分が抗体に結合している場所は判定されない。場合によっては、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって、pがある値である均一なADCを、薬物負荷量が他の値であるADCから分離、精製、及びキャラクタライズすることができる。かかる技術は、他の種類の複合体にも適用可能である。
【0158】
一部の抗体薬物複合体では、抗体の結合部位の数によってpが制限される場合がある。例えば、抗体は、システインチオール基を1個のみまたは数個有する場合、またはそれを介してリンカーが結合することができる十分な反応性を有するチオール基を1個のみまたは数個有する場合がある。大きな薬物負荷量、例えばp>5の場合、ある種の抗体薬物複合体の凝集、不溶性、毒性、または細胞透過性の低下を生じる可能性がある。
【0159】
一般的には、複合体化反応時に抗体と複合体化される薬物部分の数は、理論的な最大数よりも少ない。抗体には、例えば、薬物リンカーと反応しない多くのリシン残基が含まれている場合がある。最も反応性の高いリシン基のみがアミン反応性リンカー反応剤と反応する場合がある。また、最も反応性の高いシステインチオール基のみがチオール反応性リンカー反応剤と反応する場合もある。一般に抗体は、薬物部分と連結可能な遊離の状態の反応性のシステインチオール基を、存在するとしてもあまり多くは含まない。化合物の抗体中のシステインチオール残基の大半はジスルフィド架橋として存在しており、部分的なまたは完全な還元条件下、ジチオトレイトール(DTT)またはTCEPなどの還元剤で還元する必要がある。ADCの負荷量(薬物/抗体比)は、いくつかの異なる方法で制御することができる。かかる方法としては、(i)抗体に対するモル量で過剰な薬物リンカーの制限、(ii)複合体化反応の時間または温度の制限、及び(iii)システインチオール修飾の部分的または限定的な還元条件が挙げられる。
【0160】
ある種の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。DTT(ジチオトレイトール)などの還元剤で処理することにより、リンカー反応剤による複合体化に対して抗体を反応性にすることができる。したがって、各システイン架橋は、理論的には2つの反応性チオール求核分子を形成することになる。リシンと2-イミノチオラン(トラウト試薬)との反応により、追加の求核基を抗体に導入し、アミンをチオールに変換することができる。1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のシステイン残基を操作する(例えば、1つ以上の非天然システインアミノ酸残基を含む変異抗体を調製する)ことにより、反応性チオール基を抗体(またはその断片)に導入することができる。US7521541には、反応性システインアミノ酸の導入による抗体の操作が教示されている。
【0161】
抗体の反応部位のシステインアミノ酸を操作してもよく、そのシステインアミノ酸は鎖内または分子間ジスルフィド結合を形成しない(Junutula,et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925-932;Dornan et al(2009) Blood 114(13):2721-2729;US7521541;US7723485;WO2009/052249)。操作したシステインチオールは、マレイミドまたはアルファ-ハロアミドなどのチオール反応性の求電子基を有する本発明のリンカー反応剤または薬物リンカー反応剤と反応して、システイン操作抗体とPBD薬物部分とを有するADCを形成することができる。したがって、薬物部分の位置を、設計、制御、及び把握することが可能である。操作したシステインチオール基は通常、チオール反応性リンカー反応剤または薬物リンカー反応剤と高収率で反応するため、薬物負荷量を制御することができる。IgG抗体を操作して、重鎖または軽鎖の単一の部位に、置換によりシステインアミノ酸を導入すると、対称な抗体に2つの新たなシステインが付与される。複合体生成物ADCがほぼ均一であれば、2付近の薬物負荷量を達成することができる。
【0162】
抗体の複数の求核基または求電子基が薬物リンカー中間体、またはリンカー反応剤に続いて薬物部分反応剤と反応すると、結果として得られる生成物は、抗体に結合した薬物部分の分布が、例えば、1、2、3などであるADC化合物の混合物である。ポリマー逆相(PLRP)及び疎水性相互作用(HIC)などの液体クロマトグラフィー法では、混合物中の化合物を薬物負荷値ごとに分離することができる。単一の薬物負荷値(p)をもつADCの調製物は分離可能であるが、かかる単一の負荷値のADCであっても、薬物部分がリンカーを介して抗体の異なる部位に結合している場合があるために、不均一な混合物になる可能性がある。
【0163】
したがって、本発明の抗体薬物複合体組成物は、抗体が1つ以上のPBD薬物部分を有し、薬物部分が様々なアミノ酸残基において抗体に結合している可能性がある抗体薬物複合体化合物の混合物を含む。
【0164】
一実施形態では、細胞結合剤当りの二量体ピロロベンゾジアゼピン基の平均数は1~20の範囲内である。いくつかの実施形態において、上記範囲は、1~8、2~8、2~6、2~4、及び4~8から選択される。
【0165】
いくつかの実施形態において、細胞結合剤当りの二量体ピロロベンゾジアゼピン基は1つである。
【図面の簡単な説明】
【0166】
図1】インビボでの腫瘍の増殖に対する本発明の複合体の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0167】
概括的な合成経路
PBD化合物の合成は、以下の参照文献において広く論じられており、これらの議論は本明細書に援用される:
a)WO00/12508(14~30ページ)、
b)WO2005/023814(3~10ページ)、
c)WO2004/043963(28~29ページ)、及び
d)WO2005/085251(30~39ページ)。
【0168】
合成経路
式Iの本発明の化合物(式中、R21はHまたは=Oではない)は、式2:
式2
(式中、R6、R7、R9、R6’、R7’、R9’、R11b、Y、Y’、及びR”は式Iの化合物に関して定義したとおりであり、RLLはRLの前駆体である)の化合物から合成することができ、この方法は特に、RLが式IIIaのものである式Iの化合物に適する。R20PはR20またはその前駆体のいずれかである。これらの化合物に関して、RLLは、一般的には式IIIa’:
の基などの、RLの一部となる。かかる場合には、当該の反応は基GLの付加を伴う。R20
であり、RZがNH-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-RZCである場合、R20の前駆体は類似の構造のものであってよい。
【0169】
式2の化合物は、式3:
式3
(式中、R6、R7、R9、R6’、R7’、R9’、R11b、Y、Y’、及びR”は式Iの化合物に関して定義したとおりであり、RLL-Protは保護された形態のRLLであり、ProtNは、RLL保護基に対してオルソゴナルである簡易な窒素保護基(例えば、Fmoc、Boc)を表す)の化合物のRLL基を脱保護することによって製造することができる。R20Pは式2におけるR20Pと同一であるか、または、必要に応じてその保護された形態であってよい。
【0170】
式3の化合物は、式4:
式4
の化合物の閉環によって製造することができ、上記閉環は酸化、例えばSwern酸化によって行われる。
【0171】
式4の化合物は、式5:

式5
の化合物から、2つの保護基の段階的付加によって合成することができる。これは、最終的な化合物においてイミノ結合になるアミノ基に簡易な保護を行い(例えばFmoc、Bocによって)、続いて他方のアミノ基に所望の保護基を導入することによって実現することができる。
【0172】
Lが式IIIbのものである式Iの化合物は同様の方法で合成することができる。但し、完全なRL基は、保護された前駆体を用いるのではなく、式5の化合物から開始して導入することもできる。
【0173】
式5の化合物は、WO2011/130598に開示される方法などの公知の方法によって合成することができる。
【0174】
あるいは、式4の化合物は、単量体経路によって合成することもできる。
【0175】
21がHまたは=Oである本発明の化合物は単量体経路によって合成することができ、これらの基を含む単量体は、当該化合物の残部に連結する前に完全に構築される。WO2014/096368に示される経路を参照されたい。
【0176】
薬物複合体の合成
前述のように複合体を製造することができる。抗体は、Doronina et al.,Nature Biotechnology,2003,21,778-784)に記載されているようにして薬物リンカー化合物と複合体化することができる。簡単に説明すると、pH7.4の、50mMのホウ酸ナトリウムを含有するPBS中の抗体(4~5mg/mL)を、37℃でトリス(カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって還元する。鎖間ジスルフィドを還元する反応の進行は、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)との反応によってモニタリングし、所望のチオール/mAbレベルが達成されるまで続行する。次に、還元抗体を0℃まで冷却し、抗体チオール当り1.5当量のマレイミド薬物-リンカーによってアルキル化する。1時間後、5当量のN-アセチルシステインの添加によってこの反応をクエンチする。クエンチされた薬物-リンカーをPD-10カラム上でのゲルろ過によって除去する。さらに、0.22μmシリンジフィルターを通してADCを滅菌ろ過する。タンパク質濃度は、それぞれ280nm及び329nmでのスペクトル分析によって、但し、280nmでの薬物吸光度の寄与を補正して、測定することができる。抗体凝集の程度を測定するにはサイズ排除クロマトグラフィーを使用でき、残存するNACクエンチした薬物-リンカーのレベルを測定するにはRP-HPLCを使用することができる。
【0177】
さらに好ましい形態
以下の好ましい形態は、上記の本発明の全ての態様に適用される場合もあれば、単一の態様に関する場合もある。任意の組み合わせの好ましい形態を一つに統合することができる。
【0178】
いくつかの実施形態において、R6’、R7’、R9’、及びY’は、それぞれ、R6、R7、R9、及びYと同一の基の群から選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、R6’、R7’、R9’、及びY’は、それぞれ、R6、R7、R9、及びYと同一である。
【0179】
N10’-C11’
いくつかの実施形態において、R20はHであり、R21はHである。
【0180】
いくつかの実施形態において、R20はHであり、R21は=Oである。
【0181】
いくつかの実施形態において、R21はOHまたはORAであり、但し、RAはC1-4アルキルであり、R20は、

(式中、-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-はジペプチドを表す)
から選択される。上記ジペプチド中のアミノ酸は天然アミノ酸の任意の組み合わせであってよい。上記ジペプチドは、カテプシン媒介性開裂の作用部位となることができる。
【0182】
一実施形態において、上記ジペプチド、-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-は、
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-、
-Val-Cit-、
-Phe-Cit-、
-Leu-Cit-、
-Ile-Cit-、
-Phe-Arg-、
-Trp-Cit-
(式中、Citはシトルリンである)
から選択される。
【0183】
好ましくは、上記ジペプチド、-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-は、
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-、
-Val-Cit-
から選択される。
【0184】
最も好ましくは、上記ジペプチド、-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-は-Phe-Lys-または-Val-Ala-である。
【0185】
Dubowchik et al.,Bioconjugate Chemistry,2002,13,855-869によって記載されるものを含む他のジペプチドの組み合わせを用いてもよく、上記文献は本明細書に援用される。
【0186】
一実施形態において、アミノ酸側鎖は、該当する場合には、誘導体化されている。例えば、アミノ酸側鎖のアミノ基またはカルボキシ基が誘導体化されていてもよい。
【0187】
一実施形態において、リシンなどの側鎖アミノ酸のアミノ基NH2は、NHR及びNRR’からなる群より選択される誘導体化された形態である。一実施形態において、アスパラギン酸などの側鎖アミノ酸のカルボキシ基COOHは、COOR、CONH2、CONHR、及びCONRR’からなる群より選択される誘導体化された形態である。
【0188】
一実施形態において、上記アミノ酸側鎖は、該当する場合には、化学的に保護されている。側鎖保護基は上述の基であってよい。本発明者らは、保護されたアミノ酸配列が酵素によって開裂可能であることを立証している。例えば、Bocで側鎖を保護したLys残基を含むジペプチド配列は、カテプシンによって開裂可能であることが立証されている。
【0189】
アミノ酸の側鎖の保護基は当技術分野で周知であり、Novabiochemカタログに記載される。更なる保護基戦略はProtective Groups in Organic Synthesis,Greene and Wutsに記載される。
【0190】
反応性側鎖官能基を有するアミノ酸に対する可能な側鎖保護基を以下に示す。
Arg:Z、Mtr、Tos、
Asn:Trt、Xan、
Asp:Bzl、t-Bu、
Cys:Acm、Bzl、Bzl-OMe、Bzl-Me、Trt、
Glu:Bzl、t-Bu、
Gln:Trt、Xan、
His:Boc、Dnp、Tos、Trt、
Lys:Boc、Z-Cl、Fmoc、Z、Alloc、
Ser:Bzl、TBDMS、TBDPS、
Thr:Bz、
Trp:Boc、
Tyr:Bzl、Z、Z-Br。
【0191】
一実施形態において、上記側鎖保護は、キャッピング基として、またはキャッピング基の一部として与えられる基(存在する場合)に対してオルソゴナルとなるように選択される。したがって、上記側鎖保護基を除去しても、上記キャッピング基、または上記キャッピング基の一部であるいずれの保護官能基も除去されない。
【0192】
本発明の他の実施形態において、選択されるアミノ酸は反応性側鎖官能基をもたないアミノ酸である。例えば、上記アミノ酸は、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、及び、Valから選択することができる。
【0193】
本発明においては、L1がジペプチドを含む場合、-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-が同一のジペプチドであることが特に好ましい。好ましい基の例は
である。
【0194】
他の好ましいR20基としては、
及び
が挙げられる。
【0195】
二量体の連結
いくつかの実施形態において、Y及びY’は共にOである。
【0196】
いくつかの実施形態において、R”は置換基をもたないC3-7アルキレン基である。これらのいくつかにおいて、R”はC3、C5、またはC7アルキレンである。特に、R”はC3またはC5アルキレンであってよい。
【0197】
他の実施形態において、R”は式:
(式中、rは1または2である)の基である。
【0198】
上記フェニレン基はピリジレン基に置換されてもよい。
【0199】
6~R9
いくつかの実施形態において、R9はHである。
【0200】
いくつかの実施形態において、R6は、H、OH、OR、SH、NH2、ニトロ、及びハロから選択され、Hまたはハロから選択されてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、R6はHである。
【0201】
いくつかの実施形態において、R7は、H、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、及びハロから選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、R7は、H、OH、及びORから選択され、但し、Rは、任意選択的に置換されているC1-7アルキル、C3-10ヘテロシクリル、及びC5-10アリール基から選択される。Rは、より好ましくはC1-4アルキル基であってよく、置換されていても置換されていなくてもよい。対象となる置換基は、C5-6アリール基(例えば、フェニル)である。7位における特に好ましい置換基は、OMe及びOCH2Phである。特に注目すべき他の置換基は、ジメチルアミノ(すなわち-NMe2)、-(OC24qOMe(但し、qは0~2である)、モルホリノ、ピペリジニル、及びN-メチルピペラジニルを含む窒素含有C6ヘテロシクリルである。
【0202】
これらの実施形態及び好ましい形態は、それぞれR9’、R6’及びR7’に適用される。
【0203】
11b
いくつかの実施形態において、R11bはOHである。
【0204】
いくつかの実施形態において、R11bはORAであり、但し、RAはC1-4アルキルである。いくつかの実施形態において、RAはメチルである。
【0205】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、本化合物は、式Ia、Ib、またはIc:

の化合物であり、式中、
1aはメチル及びベンジルから選択され、
20、R21、RL、及びR11bは上記で定義されたとおりである。
【0206】
これらの実施形態及び好ましい形態はまた、本発明の第2及び第5の態様にも適用される。
【0207】
リンカー(RL
いくつかの実施形態において、RLは式IIIaのものである。
【0208】
いくつかの実施形態において、RLLは式IIIa’のものである。
【0209】
L
Lは、
(式中、ArはC5-6アリーレン基、例えばフェニレンを表す)
から選択することができる。
【0210】
いくつかの実施形態において、GLはGL1-1及びGL1-2から選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、GLはGL1-1である。
【0211】
LL
LLは、
(式中、ArはC5-6アリーレン基、例えばフェニレンを表す)
から選択することができる。
【0212】
いくつかの実施形態において、GLLはGLL1-1及びGLL1-2から選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、GLLはGLL1-1である。
【0213】

Xは、
であり、式中、a=0~5、b=0~16、c=0または1、d=0~5である。
【0214】
aは、0、1、2、3、4、または5であってよい。いくつかの実施形態において、aは0~3である。これらの実施形態のいくつかにおいて、aは0または1である。さらなる実施形態において、aは0である。
【0215】
bは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16であってよい。いくつかの実施形態において、bは0~12である。これらの実施形態のいくつかにおいて、bは0~8であり、0、2、4、または8であってよい。
【0216】
cは0または1であってよい。
【0217】
dは、0、1、2、3、4、または5であってよい。いくつかの実施形態において、dは0~3である。これらの実施形態のいくつかにおいて、dは1または2である。さらなる実施形態において、dは2である。
【0218】
Xのいくつかの実施形態において、aは0であり、cは1であり、dは2であり、bは0~8であってよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、bは0、4、または8である。
【0219】

いくつかの実施形態において、Qはアミノ酸残基である。上記アミノ酸残基は天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよい。
【0220】
いくつかの実施形態において、Qは、Phe、Lys、Val、Ala、Cit、Leu、Ile、Arg、及びTrpから選択され、但しCitはシトルリンである。
【0221】
いくつかの実施形態において、Qはジペプチド残基を含む。上記ジペプチド中のアミノ酸は、天然アミノ酸と非天然アミノ酸の任意の組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、上記ジペプチドは天然アミノ酸を含む。上記リンカーがカテプシンに対して不安定なリンカーである場合、上記ジペプチドはカテプシン媒介性開裂の作用部位である。その場合、上記ジペプチドはカテプシンの認識部位である。
【0222】
一実施形態において、Qは、
CO-Phe-Lys-NH
CO-Val-Ala-NH
CO-Val-Lys-NH
CO-Ala-Lys-NH
CO-Val-Cit-NH
CO-Phe-Cit-NH
CO-Leu-Cit-NH
CO-Ile-Cit-NH
CO-Phe-Arg-NH、及び
CO-Trp-Cit-NH
から選択され、式中、Citはシトルリンである。
【0223】
好ましくは、Qは、
CO-Phe-Lys-NH
CO-Val-Ala-NH
CO-Val-Lys-NH
CO-Ala-Lys-NH
CO-Val-Cit-NH
から選択される。
【0224】
最も好ましくは、Qは、CO-Phe-Lys-NHCO-Val-Cit-NH、及びCO-Val-Ala-NHから選択される。
【0225】
対象となる他のジペプチドの組み合わせとしては、
CO-Gly-Gly-NH
CO-Pro-Pro-NH、及び
CO-Val-Glu-NH
が挙げられる。
【0226】
Dubowchik et al.,Bioconjugate Chemistry, 2002, 13,855-869によって記載されるものを含む他のジペプチドの組み合わせを用いてもよく、上記文献は本明細書に援用される。
【0227】
いくつかの実施形態において、Qxはトリペプチド残基である。上記トリペプチド中のアミノ酸は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の任意の組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、上記トリペプチドは天然アミノ酸を含む。上記リンカーがカテプシンに対して不安定なリンカーである場合、上記トリペプチドはカテプシン媒介性開裂の作用部位である。その場合、上記トリペプチドはカテプシンの認識部位である。
【0228】
一実施形態において、上記アミノ酸側鎖は、該当する場合には、化学的に保護されている。側鎖保護基は後述の基であってよい。保護されたアミノ酸配列は酵素によって開裂可能である。例えば、Bocで側鎖を保護したLys残基を含むジペプチド配列は、カテプシンによって開裂可能である。
【0229】
上記アミノ酸の側鎖の保護基は当技術分野で周知であり、Novabiochemカタログに記載されており、上述のとおりである。
【0230】
いくつかの実施形態において、RLは式IIIbのものである。
【0231】
いくつかの実施形態において、RLLは式IIIb’のものである。
【0232】
L1及びRL2は、H及びメチルから独立して選択されるか、またはそれらが結合している炭素原子と共に、シクロプロペンまたはシクロブチレン基を形成する。
【0233】
いくつかの実施形態において、RL1及びRL2は両方共にHである。
【0234】
いくつかの実施形態において、RL1はHであり、RL2はメチルである。
【0235】
いくつかの実施形態において、RL1及びRL2は両方共にメチルである。
【0236】
いくつかの実施形態において、RL1及びRL2は、それらが結合している炭素原子と共にシクロプロペン基を形成する。
【0237】
L1及びRL2は、それらが結合している炭素原子と共にシクロブチレン基を形成する。
【0238】
いくつかの実施形態において、基IIIb中で、eは0である。他の実施形態において、eは1であり、ニトロ基は当該の環の任意の利用可能な位置に存在していてよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、ニトロ基はオルソ位に存在する。これらの他の実施形態において、ニトロ基はパラ位に存在する。
【0239】
1つの特定の実施形態において、本発明の第1の態様は、式Id:
の化合物を含み、式中、Qは、
(a)-CH2-、
(b)-C36-、及び
(c)
から選択される。
【0240】
1つの特定の実施形態、本発明の第2の態様において、薬物リンカー(DL)は、式(Id’):
のものであり、式中、Qは、
(a)-CH2-、
(b)-C36-、及び
(c)
から選択される。
【0241】
本発明のいくつかの実施形態において、C11置換基は、隣接する基に対する以下の立体化学的配置:
となっていてもよい。
【0242】
他の実施形態において、C11置換基は、隣接する基に対する以下の立体化学的配置:
となっていてもよい。
【0243】
本発明のいくつかの実施形態において、C2のOH置換基は、隣接する基に対する以下の立体化学的配置:
となっていてもよい。
【実施例
【0244】
全般的な情報
フラッシュクロマトグラフィーは、Biotage Isolera 1(商標)を使用し、全UV活性成分(214及び254nmで検出)がカラムから溶出されるまで、88%ヘキサン/EtOAcまたは99% DCM/MeOHのいずれかで開始する勾配溶出を用いて実施した。UV活性物質が実質的に溶出したことが観測される都度、勾配を手動で保持した。画分の純度を、アルミニウム板上の、蛍光指示薬を含むMerck Kieselgel 60 F254シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)により確認した。別段の記載がない限り、TLCの視覚化は、UV光またはヨウ素蒸気で行った。抽出及びクロマトグラフィーの溶媒はVWR U.K.から購入し、さらに精製することなく使用した。全ての精密化学薬品は、別段の記載がない限り、Sigma-AldrichまたはTCI Europeから購入した。ペグ化試薬はStratech UKを介してQuanta biodesign USから入手した。
【0245】
(反応の監視及び純度測定のための)分析用LC/MSの条件は以下のとおりであった。すなわち、ポジティブモードエレクトロスプレー質量分析は、Shimadzu Nexera(登録商標)/Prominence(登録商標)LCMS-2020を使用して実施した。使用した移動相は、溶媒A(0.1%ギ酸を含むH2O)及び溶媒B(0.1%ギ酸を含むCH3CN)であった。常用の3分間の分析時の勾配:初期組成の5%のBを25秒間保持した後、5%のBから100%のBまで1分35秒間かけて増加させた。組成を100%のBで50秒間保持した後、5秒で5%のBへと戻し、そのまま5秒間保持した。上記勾配による分析の合計所要時間は3.0分間であった。15分間の分析時の勾配:初期組成の5%のBを1分間保持した後、5%のBから100%のBまで9分かけて増加させた。組成を100%のBで2分間保持した後、10秒で5%のBへと戻し、そのまま2分50秒間保持した。上記勾配による分析の合計所要時間は15.0分間であった。流速は0.8mL/分(3分間の分析時)及び0.6mL/分(15分間の分析時)であった。検出は254nmで行った。カラム:Waters Acquity UPLC(登録商標)BEH Shield RP18 VanGuardプレカラム、130Å、1.7μm、2.1mm×5mm(常用の3分間の分析時)、及びWaters Acquity UPLC(登録商標)BEH Shield RP18 VanGuardプレカラム、130Å、1.7μm、2.1mm×5mmを装備した、ACE Excel 2 C18-AR、2μ、3.0×100mm(15分間の分析時)。
【0246】
分取HPLCの条件は以下のとおりであった。すなわち、逆相超高速液体クロマトグラフィー(UFLC)を、Phenomenex(登録商標)Gemini NX 5μ C18カラム(50℃) 150×21.2mmを使用して、Shimazdzu Prominence(登録商標)機上で実施した。用いた溶出液は、溶媒A(0.1%ギ酸を含むH2O)及び溶媒B(0.1%ギ酸を含むCH3CN)であった。すべてのUFLCの実験を、初期組成の13%のBを15分かけて60%のBまで増加させ、次いで2分かけて100%のBまで増加させ、組成を100%のBで1分間保持し、次に0.1分で13%のBに戻し、そこで1.9分間保持する勾配条件を用いて実施した。上記勾配による分析の合計所要時間は20.0分であった。流量は20.0mL/分であり、検出は254及び280nmで行った。
【0247】
実施例1
a)安息香酸(3S,5S)-5-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-1-(5-メトキシ-2-ニトロ-4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンゾイル)ピロリジン-3-イル(2)
トリフェニルホスフィン(22.49g、0.085mol、5.0当量)のTHF(300mL)溶液にアゾジカルボン酸ジエチル(17.34g、0.085mol、5.0当量)を添加し、室温で30分間撹拌した。(1)(10g、0.017mol、1.0当量)を添加し、白色沈殿が形成されるまで撹拌をさらに30分間継続した。安息香酸(2.1g、0.017mol、1.0当量)を添加したところ、上記沈殿が白色から橙色に変化し、次いで白色に戻った。30分後にこの沈殿をろ去した。ろ液を蒸発乾固させ、フラッシュクロマトグラフィー(過剰のMitsunobu試薬を除去するための10%酢酸エチル/ヘプタン、次いで生成物を白色固体として溶出するための20%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製した。収量=9.5g(81%)。LC/MS rt 2.28分 m/z (687.4) M+H。
【0248】
b)安息香酸(3S,5S)-1-(2-アミノ-5-メトキシ-4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンゾイル)-5-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)ピロリジン-3-イル(3)
(2)のメタノール(75mL)溶液に亜鉛末(18.0g、0.27mol、20当量)を添加し、室温で撹拌した。ギ酸(15mL)を添加すると、35℃の発熱が生じた。10分後に、セライトの短い層を通してろ過することによって亜鉛を除去し、次いでこの亜鉛を酢酸エチル(250mL)で洗浄した。1つにまとめた有機画分を飽和NaHCO3水溶液(100mL)、次いで飽和食塩水(50mL)で洗浄した。得られた有機相を脱水し(MgSO4)、減圧下で留去したところ黄色の残渣が生じ、これをフラッシュクロマトグラフィー(勾配の酢酸エチル/ヘプタン、15/85~20/80 v/v)によって精製し、無色油状物として(3)、8.3g(91%)を得た。LC/MS rt 2.24分 m/z (657.3) M+H。
【0249】
c)安息香酸(3S,5S)-1-(2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-メトキシ-4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンゾイル)-5-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)ピロリジン-3-イル(4)
5℃の、(3)(8.2g、12.4mmol、1.0当量)及びピリジン(1.48g、18.7mmol、5.0当量)のジクロロメタン(75mL)溶液に、クロロギ酸アリル(1.65g、13.7mmol、1.1当量)を滴加した。この反応混合物を室温まで自然に加温し、さらに60分間撹拌した。有機相を、0.1M HCl(20mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)、及び飽和食塩水(10mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に、溶媒を減圧下で除去したところ白色固体が残留し、これをさらに精製することなく次のステップに使用した(8.5g(92%))。
【0250】
d)安息香酸(3S,5S)-1-(2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-メトキシ-4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンゾイル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-イル(5)
(4)(8.5g、11.5mmol)を、酢酸(35mL)、メタノール(5mL)、THF(5mL)、及び水(10mL)の混合液に溶解した。得られた溶液を室温で終夜撹拌した。次いでこの反応混合物を酢酸エチル(100mL)に注ぎ込み、水(2×100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、及び飽和食塩水(50mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配の酢酸エチル/ヘプタン、40/60~50/50 v/v)によって精製して、白色固体として(5)、5.24g(73%)を得た。LC/MS rt 1.98分 m/z (627.5) M+H。
【0251】
e)(2S,11S,11aS)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-8-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-2,3、11、11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸アリル(6)
アルゴン雰囲気下、-78℃の、DMSO(1.63g、20.9mmol、2.5当量)の脱水ジクロロメタン(75mL)溶液に、塩化オキサリル(2M DCM溶液、4.6mL、9.20mmol、1.1当量)を滴加した。15分後に、(5)(5.24g、8.36mmol、1.0当量)のジクロロメタン(20mL)溶液を滴加し、この反応混合物をさらに30分間撹拌した。トリエチルアミン(4.2g、41.8mmol、5.0当量)を添加し、得られた溶液を室温まで自然に加温し、次いでさらに60分間撹拌した。次に有機相を、0.1M HCl(25mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)、及び飽和食塩水(10mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に、溶媒を減圧下で除去したところ白色固体が残留し、これをさらに精製することなく次のステップに使用した(4.52g(87%))。LC/MS rt 1.90分 m/z (625.3)M+H。
【0252】
f)(2S,11S,11aS)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-8-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-2,3、11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸アリル(7)
アルゴン雰囲気下、5℃の、(6)(4.5g、7.2mmol、1.0当量)及び2,6-ルチジン(3.1g、28.8mmol、4.0当量)のジクロロメタン(100mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル(5.7g、21.6mmol、3.0当量)を滴加した。この反応混合物を自然に室温まで加温し、さらに3時間撹拌した。次いで有機層を、水(25mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)、及び飽和食塩水(15mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン、50/50 v/v)によって精製して、白色固体として(7)、4.0g(76%)を得た。LC/MS rt 2.29分 m/z(739.3) M+H。
【0253】
g)(2S,11S,11aS)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-8-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸アリル(8)
(7)(4.0g、5.4mmol、1.0当量)のDMF/水(98/2、5mL)の溶液に、酢酸リチウム二水和物(0.55g、5.4mmol、1.0当量)を添加し、室温で5時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、有機相を、1Mクエン酸水溶液(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配の酢酸エチル/ヘプタン、75/25~100/0 v/v)によって精製したところ、白色固体として(8)、3.0g(95%)が残留した。LC/MS rt 1.80分 m/z (583.4) M+H。
【0254】
h)(8)から(9)への二量化の概括的方法
(8)(1.0g、1.72mmol、2.1当量)及び1,3-ジブロモプロパン、1,5-ジヨードペンタン、または1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼンのいずれか(1.0当量)のDMF(5mL)溶液に、炭酸カリウム(2.5当量)を添加した。得られた混合物を75℃で3日間撹拌した。ジクロロメタン(25mL)で希釈した後、無機分をろ去し、ろ液を減圧下で蒸発乾固させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製したところ、白色固体として生成物が残留した。
i)8,8’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))(2S,2’S,11S,11aS,11’S,11a’S)-ビス(2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸)ジアリル(9a)
(勾配:酢酸エチル/ヘプタン、50/50~100/0 v/v)。収量0.88g(90%)。LC/MS rt 2.17分 m/z (1227.4) M+Na。
ii)8,8’-(ペンタン-1,5-ジイルビス(オキシ))(2S,2’S,11S,11aS,11’S,11a’S)-ビス(2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸)ジアリル(9b)
(酢酸エチル)。収量0.82g(82%)。LC/MS rt 2.20分 m/z (1255.3) M+Na。
iii)8,8’-((1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(オキシ))(2S,2’S,11S,11aS,11’S,11a’S)-ビス(2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸)ジアリル(9c)
(勾配:酢酸エチル/ヘプタン、75/25~100/0 v/v)。収量0.9g(85%)。LC/MS rt 2.20分 m/z (1267.8) M+H。
【0255】
i)(9)から(10)へのエステル加水分解の概括的方法
(9)のメタノール(10mL)溶液に1M水酸化リチウム水溶液(1mL)を添加し、室温で2時間撹拌した。次いでメタノールを減圧下で除去し、残った水層を1Mクエン酸水溶液で酸性化した(pH6)。この生成物を酢酸エチル(30mL)中に抽出し、脱水し(MgSO4)、減圧下で留去したところ白色固体が残留し、これをフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
i)8,8’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))(2S,2’S,11S,11aS,11’S,11a’S)-ビス(11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸)ジアリル(10a)
(勾配:メタノール/ジクロロメタン、2/98~4/96 v/v)。収量0.64g(89%)。LC/MS rt 1.86分 m/z (997.4) M+H。
ii)8,8’-(ペンタン-1,5-ジイルビス(オキシ))(2S,2’S,11S,11aS,11’S,11a’S)-ビス(11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸)ジアリル(10b)
(メタノール/ジクロロメタン、5/95 v/v)。収量0.68g(93%)。LC/MS rt 1.91分 m/z (1025.7) M+H。
iii)8,8’-((1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(オキシ))(2S,2’S,11S,11aS,11’S,11a’S)-ビス(11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸)ジアリル(10c)
(勾配:メタノール/ジクロロメタン、2/98~4/96 v/v)。収量0.54g(74%)。LC/MS rt 1.92分 m/z (1060.5) M+H。
【0256】
i)(10)から(11)へのAlloc/TBS脱保護の概括的方法
(10)(1.0当量)及びピロリジン(2.5当量)のジクロロメタン溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(2mol%)を添加し、室温で30分間撹拌した。この反応混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。有機相を脱水し(MgSO4)、溶媒を減圧下で除去した。残渣を逆相HPLCによって精製したところ、白色固体として生成物が残留した。
i)(2S,2’S,11aS,11a’S)-8,8’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(2-ヒドロキシ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5-オン)(11a)
LC/MS rt 3.84分 m/z (565.3) M+H。
ii)(2S,2’S,11aS,11a’S)-8,8’-(ペンタン-1,5-ジイルビス(オキシ))ビス(2-ヒドロキシ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5-オン)(11b)
LC/MS rt 1.12分 m/z(593.3) M+H。
iii)(2S,2’S,11aS,11a’S)-8,8’-((1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(2-ヒドロキシ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5-オン)(11c)
LC/MS rt 4.51分 m/z (626.7) M+H。
【0257】
実施例2
a)安息香酸(3S,5S)-1-(2-((((4-((R)-2-((R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)-5-メトキシ-4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンゾイル)-5-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)ピロリジン-3-イル(12)
(3)(4.0g、6.0mmol、1.0当量)及びトリホスゲン(0.65g、2.2mmol、0.36当量)のTHF(40mL)溶液にトリエチルアミン(1.35g、13.4mmol、2.2当量)を添加し、N2の雰囲気下、室温で5分間拌した。Alloc-Val-Ala-p-アミノベンジルアルコール(2.75g、7.3mmol、1.2当量)及びトリエチルアミン(0.92g、9.1mmol、1.5当量)のTHF(25mL)懸濁液を添加し、得られた混合物を40℃で2時間加熱した。この反応混合物をろ過し、ろ液を蒸発乾固させ、フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン、2/98v/v)によって精製して、淡黄色固体として(12)、5.0g(78%)を得た。LC/MS rt 2.24分 m/z (1082.4) M+Na。
【0258】
b)安息香酸(3S,5S)-1-(2-((((4-((R)-2-((R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)アミノ)-5-メトキシ-4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンゾイル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-イル(13)
(12)(8.0g、7.5mmol)を、酢酸(35mL)、メタノール(5mL)、THF(5mL)、及び水(10mL)の混合液に溶解した。得られた溶液を室温で終夜撹拌した。次いでこの反応混合物を酢酸エチル(100mL)に注ぎ込み、水(2×100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、及び飽和食塩水(50mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン、3/97 v/v)によって精製して、白色固体として(13)、5.6g(79%)を得た。LC/MS rt 1.95分 m/z (946.3) M+H。
【0259】
c)(2S,11S)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-8-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(14)
アルゴン雰囲気下、-78℃の、DMSO(0.27mL、3.7mmol、2.5当量)の脱水ジクロロメタン(20mL)溶液に、塩化オキサリル(2M DCM溶液、0.83mL、1.6mmol、1.1当量)を滴加した。15分後に、(13)(1.43g、1.5mmol、1.0当量)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴加し、この反応混合物をさらに30分間撹拌した。トリエチルアミン(1.05mL、7.5mmol、5.0当量)を添加し、得られた溶液を室温まで自然に加温し、次いでさらに60分間撹拌した。次に、有機相を0.1M HCl(15mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)、及び飽和食塩水(10mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン 2/98 v/v)によって精製して、白色固体として(14)、1.1g(77%)を得た。LC/MS rt 1.86分 m/z (944.3) M+H。
【0260】
d)(2S,11S)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-8-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(15)
アルゴン雰囲気下、5℃の、(14)(1.1g、1.16mmol、1.0当量)及び2,6-ルチジン(0.5g、4.7mmol、4.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル(0.92g、3.5mmol、3.0当量)を滴加した。この反応混合物を室温まで自然に加温し、さらに3時間撹拌した。次いで有機層を、水(25mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)、及び飽和食塩水(15mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、残渣をさらに精製することなく次のステップに使用した(1.2g(97%))。LC/MS rt 2.20分 m/z (1058.4) M+H。
【0261】
e)(2S,11S)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-8-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(16)
(15)(1.1g、1.04mmol、1.0当量)のDMF/水(98/2、3mL)溶液に、酢酸リチウム二水和物(0.11g、1.04mmol、1.0当量)を添加し、室温で5時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(25mL)で希釈し、有機相を1Mクエン酸水溶液(20mL)及び飽和食塩水(20mL)で逐次洗浄した。脱水(MgSO4)後に溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配のメタノール/ジクロロメタン、1/99~3/97 v/v)によって精製したところ、白色固体として(16)、0.82g(85%)が残留した。LC/MS rt 1.77分 m/z (902.3) M+H。
【0262】
f)(2S,11S,11aS)-8-(3-(((2S,11S,11aS)-10-(((4-((S)-2-((S)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,5,10,11,11a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(17)
(8)(1.0g、1.1mmol、2.1当量)及び1,3-ジブロモプロパン(0.1g、0.05mmol、1.0当量)のDMF(5mL)溶液に、炭酸カリウム(0.18g、1.3mmol、2.5当量)を添加した。得られた混合物を75℃で3日間撹拌した。ジクロロメタン(25mL)で希釈した後に無機分をろ去し、ろ液を減圧下で蒸発乾固させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配のメタノール/ジクロロメタン、2/98~4/96 v/v)によって精製したところ、白色固体として(17)、0.77g(79%)が残留した。LC/MS rt 2.04分 m/z (1844.3) M+H。
【0263】
g)(2S,11S,11aS)-8-(3-(((2S,11S,11aS)-10-(((4-((S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,5,10,11,11a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-2-(ベンゾイルオキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(18)
(17)(0.65g、0.35mmol、1.0当量)及びピロリジン(0.15g、2.1mmol、6.0当量)のジクロロメタン(10mL)溶液にPd(Ph3P)4(21mg、5mol%)を添加し、室温で60分間撹拌した。この反応混合物を蒸発乾固させ、フラッシュクロマトグラフィー(勾配のメタノール/ジクロロメタン、5/95~20/80 v/v)によって精製したところ、白色固体として(18)、0.55g(93%)が残留した。LC/MS rt 1.39分 m/z (1676.5) M+H。
【0264】
h)(2S,11S,11aS)-8-(3-(((2S,11S,11aS)-10-(((4-((S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,5,10,11,11a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-11-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(19)
(18)(250mg、0.15mmol)のメタノール(3mL)溶液に、1M水酸化リチウム水溶液(0.5mL)を添加し、室温で4時間撹拌した。メタノールを減圧下で除去し、水相を1Mクエン酸水溶液で酸性化した(pH4)。得られた溶液を逆相Isolera(アセトニトリル/水、35/65 v/v+0.1%ギ酸)によって精製したところ、白色固体として(19)、156mg(71%)が残留した。LC/MS rt 1.24分 m/z (1468.2) M+H。
【0265】
i)(2S,11S,11aS)-8-(3-(((2S,11S,11aS)-10-(((4-((S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-2,11-ジヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,5,10,11,11a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-2,11-ジヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(20)
(19)(175mg、0.12mmol、1.0当量)のTHF(10mL)溶液にトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(96mg、0.59mmol、5.0当量)を添加し、室温で5日間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を分取HPLCによって精製したところ、白色固体として(20)、91mg(62%)が残留した。LC/MS rt 0.95分 m/z (1239.9) M+H。
【0266】
j)(2S,11S,11aS)-8-(3-(((2S,11S,11aS)-2,11-ジヒドロキシ-10-(((4-((10R,13R)-10-イソプロピル-13-メチル-8,11-ジオキソ-2,5-ジオキサ-9,12-ジアザテトラデカン-14-アミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,5,10,11,11a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-2,11-ジヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((R)-2-((R)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル(22)
炭酸水素ナトリウム(6mg、0.07mmol、1.05当量)を水(0.5mL)に溶解し、(20)(91mg、0.07mmol、1.0当量)のTHF(0.5mL)溶液に添加した。PEG2-COOH NHSエステル(18mg、0.07mmol、1.0当量)を添加し、得られた混合物を室温で20分間撹拌した。次いでこの反応混合物を分取HPLCによって精製して、2種の画分、すなわち、(21)、白色固体、18mg(16%)及び(22)、白色固体、41mg(41%)を得た。(21) LC/MS rt 1.28分 m/z (1499.8) M+H。(22) LC/MS rt 1.07分 m/z (1367.1) M-H。
【0267】
k)(2S,11S,11aS)-8-(3-(((2S,11S,11aS)-2,11-ジヒドロキシ-10-(((4-((10R,13R)-10-イソプロピル-13-メチル-8,11-ジオキソ-2,5-ジオキサ-9,12-ジアザテトラデカン-14-アミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,5,10,11,11a-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-2,11-ジヒドロキシ-7-メトキシ-5-オキソ-2,3,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-10(5H)-カルボン酸4-((2R,5R)-38-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-5-イソプロピル-2-メチル-4,7,34,36-テトラオキソ-10,13,16,19,22,25,28,31-オクタオキサ-3,6,35-トリアザオクタトリアコンタンアミド)ベンジル(23)
炭酸水素ナトリウム(3mg、0.036mmol、1.2当量)を水(0.5mL)に溶解し、(22)(41mg、0.03mmol、1.0当量)のTHF(0.5mL)溶液に添加した。Mal-PEG8-COOH NHSエステル(23mg、0.033mmol、1.1当量)を添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次いでこの反応混合物を分取HPLCによって精製したところ、白色固体として(23)、16mg(28%)が残留した。LC/MS rt 1.31分 m/z (1944.45) M+H。
【0268】
実施例3 複合体化
Conj-HER-23
特許US2014/038041A1に従って、部位特異的トラスツズマブ(30mg)を固体支持体に担持し、還元し、再酸化し、化合物(23)と複合体化し、精製し、樹脂から遊離させ、25mMヒスチジン、200mMスクロース、Tween-20 0.02%、pH6.0を担体として製剤化した。
【0269】
水及びアセトニトリルの勾配で溶出するThermo Scientific MAbPac 50mm×2.1mmカラムを使用したShimadzu Prominenceシステムでの、複合体の還元試料に対する214nm及び330nm(化合物(23)に特異的)でのUHPLC分析は、抗体当り1.9分子の化合物(23)の薬物抗体比(DAR)と一致する、非複合体化軽鎖、及び非複合体化重鎖と、化合物(23)の単一分子に結合した重鎖との混合物であることを示している。
【0270】
0.3mL/分の、200mMリン酸カリウム pH6.95、250mM塩化カリウム、及び10%イソプロパノール(v/v)を含有する滅菌ろ過SEC緩衝液で溶出する、Tosoh Bioscience TSKgel SuperSW mAb HTP 4μm 4.6×150mmカラム(4μm 3.0×20mmガードカラム付き)を使用したShimadzu Prominenceシステムでの、ADCの試料に対する280nmでのUHPLC分析は、97%を超える単量体純度を示す。UHPLC SEC分析では、最終的なADCの濃度が10.5mL中1.7mg/mLであり、得られるADCの質量は17.9mg(収率60%)である。
【0271】
Conj-HER-23*
トラスツズマブ(15mg、100ナノモル)の、PBS及び1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する還元緩衝液中の溶液7.5mLに、10mMのTCEPのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.4(PBS)の溶液(21μL、210ナノモル、2.1モル当量/抗体)を添加し、2.0mg/mLの最終抗体濃度とした。この還元混合物を、オービタルシェーカー中で穏やかに(60rpm)振とうしながら+37℃で2時間反応させた。この還元抗体溶液を室温まで放冷し、7.5mLのこの還元抗体溶液(15mg、100ナノモル)に対して、化合物(23)をDMSO溶液(10モル当量/抗体、1.0μmol、0.75mLのDMSO中)として添加し、10%(v/v)の最終DMSO濃度及び約2mg/mLの最終抗体濃度とした。この溶液を室温で1時間混合した。UHPLC分析により薬物抗体比(DAR)が低過ぎることが明らかになったことから、15mLのAmicon Ultracell 50KDa MWCOスピンフィルターを用いた、PBS+1mM EDTA中へのスピンフィルター遠心分離により複合体化混合物を精製し、5mLのこの緩衝液交換した複合体化混合物(15mgの抗体、100ナノモル)に、さらにTCEP(0.8モル当量/抗体、80ナノモル、8μL)を添加し、約3mg/mLの抗体濃度とした。この新たな還元混合物を、オービタルシェーカー中で穏やかに(60rpm)振とうしながら+37℃で1.75時間反応させた。この還元抗体溶液を室温まで放冷し、5mLのこの還元抗体溶液(15mg、100ナノモル)に対して、化合物(23)をDMSO溶液(3モル当量/抗体、0.3μmol、0.5mLのDMSO中)として添加し、10%(v/v)の最終DMSO濃度及び約3mg/mLの最終抗体濃度とした。この溶液を室温で16時間混合し、次いでN-アセチルシステイン(100mMで15μL、1.5μmol)を添加することにより複合体化をクエンチし、次に15mLのAmicon Ultracell 50KDa MWCOスピンフィルターを用いた、25mMヒスチジン 205mMスクロース pH6.0緩衝液中へのスピンフィルター遠心分離により精製し、滅菌ろ過し、分析した。次いで、Conj-Her-23*をスピンフィルター遠心分離によりPBS中へと緩衝液交換し、滅菌ろ過し、分析した。
【0272】
水及びアセトニトリルの勾配で溶出するThermo Scientific MAbPac 50mm×2.1mmカラムを使用したShimadzu Prominenceシステムでの、Conj-Her-23*の還元試料に対する214nmでのUHPLC分析は、抗体当り3.87分子の化合物(23)の薬物抗体比(DAR)と一致する、非複合体化軽鎖、化合物(23)の単一分子に結合した軽鎖、非複合体化重鎖、及び最大で3分子の化合物(23)に結合した重鎖の混合物であることを示している。
【0273】
0.3mL/分の、200mMリン酸カリウム pH6.95、250mM塩化カリウム、及び10%イソプロパノール(v/v)を含有する滅菌ろ過SEC緩衝液で溶出する、Tosoh Bioscience TSKgel SuperSW mAb HTP 4μm 4.6×150mmカラム(4μm 3.0×20mmガードカラム付き)を使用したShimadzu Prominenceシステムでの、Conj-Her-23*の試料に対する280nmでのUHPLC分析は、99%の単量体純度を示す。還元SDS-PAGE分析では、最終的なConj-Her-23*の濃度が4.4mL中1.16mg/mLで与えられ、得られるConj-Her-23*の質量は5.1mgである(収率34%)。
【0274】
Conj-HER-23**
トラスツズマブ(15mg、100ナノモル)の、PBS及び1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する還元緩衝液中の溶液7.5mLに、10mMのTCEPのリン酸緩衝生理食塩水 pH7.4(PBS)の溶液(100μL、1μmol、10モル当量/抗体)を添加し、2.0mg/mLの最終抗体濃度とした。この還元混合物を、オービタルシェーカー中で穏やかに(60rpm)振とうしながら+37℃で3時間反応させた。この還元抗体溶液を室温まで放冷し、6mLのさらなるPBS及び1mM EDTAで希釈した。13.5mLのこの還元抗体溶液(15mg、100ナノモル)に対して、化合物(23)をDMSO溶液(15モル当量/抗体、1.5μmol、1.5mLのDMSO中)として添加し、10%(v/v)の最終DMSO濃度及び1.0mg/mLの最終抗体濃度とした。この溶液を室温で16時間混合し、次いでN-アセチルシステイン(100mMで75μL、7.5μmol)を添加することにより複合体化をクエンチし、次に15mLのAmicon Ultracell 50KDa MWCOスピンフィルターを用いた、25mMヒスチジン 205mMスクロース pH6.0緩衝液中へのスピンフィルター遠心分離により精製し、滅菌ろ過し、分析した。次いで、Conj-Her-23**をスピンフィルター遠心分離によりPBS中へと緩衝液交換し、滅菌ろ過し、分析した。
【0275】
水及びアセトニトリルの勾配で溶出するThermo Scientific MAbPac 50mm×2.1mmカラムを使用したShimadzu Prominenceシステムでの、Conj-Her-23**の還元試料に対する214nmでのUHPLC分析は、抗体当り7.60分子の化合物(23)の薬物抗体比(DAR)と一致する、非複合体化軽鎖、化合物(23)の単一分子に結合した軽鎖、非複合体化重鎖、及び最大で3分子の化合物(23)に結合した重鎖の混合物であることを示している。
【0276】
0.3mL/分の、200mMリン酸カリウム pH6.95、250mM塩化カリウム、及び10%イソプロパノール(v/v)を含有する滅菌ろ過SEC緩衝液で溶出する、Tosoh Bioscience TSKgel SuperSW mAb HTP 4μm 4.6×150mmカラム(4μm 3.0×20mmガードカラム付き)を使用したShimadzu Prominenceシステムでの、Conj-Her-23**の試料に対する280nmでのUHPLC分析は、95%の単量体純度を示す。還元SDS-PAGE分析では、最終的なConj-Her-23**の濃度が6mL中0.2mg/mLで与えられ、得られるConj-Her-23**の質量は1.2mgである(収率8%)。
【0277】
実施例4-インビボアッセイ
被検複合体:Conj-Her-23
10週齢の雌のCB.17 SCIDマウスの右側腹部に、0.1mlの、50% Matrigel中の1×107のNCI-N87細胞を皮下注射した。腫瘍が100~150mm3の平均サイズに到達した時点で治療を開始した。マウスの体重を週に2回測定した。腫瘍サイズを週2回測定した。マウスを個別に監視した。実験の終点を、800mm3の腫瘍体積に到達した日または83日のいずれか早い方とした。
【0278】
10匹の異種移植マウスの群に、体重20g当り0.2mlのリン酸緩衝生理食塩水(ビヒクル)中の抗体薬物複合体(ADC)、または体重20g当り0.2mlのビヒクルのみを静脈内注射した。ADCの濃度を調整して、単回投与で0.6mg-ADC/kg-体重または6mg-ADC/kg-体重を投与した。
【0279】
正規化した腫瘍体積の経時変化を図1に示す。
【0280】
終点及び腫瘍増殖遅延(TGD)解析
週に2回、ノギスを使用して腫瘍を計測し、腫瘍が終点体積800mm3に到達した時点、または本試験の終了時(82日目)のいずれか早い方で、各マウスを安楽死させた。腫瘍体積の終点に到達したために試験から離脱したマウスは、安楽死の日付と共に、腫瘍進行(TP)により安楽死させたものと記録した。各マウスについて、解析のための終点までの時間(TTE)を、次の式:
(式中、TTEは日数で表し、終点体積はmm3で表し、bは切片であり、mは対数変換した腫瘍増殖データセットの線形回帰によって得られた直線の傾きである)によって算出した。上記データセットは、解析において用いた終点体積を超えた最初の観測値と、この終点体積に到達する直前の3回の連続した観測値からなっていた。算出したTTEは通常、マウスを腫瘍サイズが理由で安楽死させた日であるTPの日付よりも短くなる。腫瘍が終点体積に到達しなかったマウスには、本試験の最終日(82日目)に相当するTTE値をあてた。対数変換した算出TTEが終点体積に到達する前日より前であった、または腫瘍体積の終点に到達した日を超えた場合、線形内挿を行ってTTEを近似した。NTR(非治療関連(non-treatment-related))の原因によるものであって、事故により(NTRa)または原因不明で(NTRu)で死亡したと分類されたいずれのマウスも、TTEの算出(及びそれ以降のすべての解析)から除外した。TR(治療関連(treatment-related))死またはNTRm(転移に起因する非治療関連死(non-treatment-related death due to metastasis))として分類されたマウスには、死亡日に相当するTTE値をあてた。治療成績は腫瘍増殖遅延(TGD)によって評価し、TGDは、対照群と比較した治療群の終点までの時間(TTE)の中央値の増加として定義される。すなわち、
TGD=T-C
であり、日数で表されるか、または対照群のTTEの中央値に対する割合、すなわち、
であり、式中、
T=治療群についてのTTE中央値、
C=指定した対照群についてのTTE中央値
である。
【0281】
腫瘍増殖阻害
腫瘍増殖阻害(TGI)分析は、治療したマウスと対照マウスの腫瘍体積の中央値(MTV)の差を評価する。この試験では、TGIを判定するための終点は33日目であり、この日はすべての評価可能な対照マウスが本試験に留まっていた最後の日であった。TGI分析の日に、その日のマウスの数がnであり、n匹のマウスについての腫瘍体積の中央値であるMTV(n)を各群について測定した。腫瘍増殖阻害率(TGI(%))は、指定された対照群のMTVと薬物治療群のMTVの差として定義され、対照群のMTVに対する割合、すなわち、
として表される。TGI分析のデータセットには、TGI分析の日の前に治療関連(TR)または非治療関連(NTR)の原因で死亡したマウス以外の、群内のすべてのマウスが含まれていた。
【0282】
MTV及び退縮奏効の判定基準
治効は、最終日に本試験に留まっていたマウスの腫瘍体積から判定することができる。MTV(n)は、本試験の最終日における、腫瘍が終点体積に達しておらず試験に留まっていたn匹のマウスについての腫瘍体積の中央値として定義した。治効は、本試験中に観測された退縮奏効の発生率及び大きさからも判定することができる。治療によって、マウスの腫瘍の部分退縮(PR)または完全退縮(CR)が生じる可能性がある。PR奏効では、腫瘍体積は、試験の過程における連続した3回の測定で1日目の体積の50%以下であり、これら3回の測定の1回以上で13.5mm3以上であった。CR奏効では、腫瘍体積は、試験の過程における連続した3回の測定で13.5mm3未満であった。マウスが試験中に、PRまたはCR事象の一方に関してスコア付けされたのは1度のみであり、PRとCRの両方の判定基準を満たした場合にのみCRとしてスコア付けした。試験の終了時にCR奏効を示したマウスを、さらに腫瘍のない生存者(TFS)として分類した。マウスの退縮奏効を監視した。
【0283】
毒性
マウスの体重を、1~5日目には毎日、その後は試験が完結するまで週に2回測定した。マウスを、有害な治療関連(TR)副作用の明白な兆候に関して頻繁に観察し、臨床的兆候が認められた場合にはそれらを記録した。各個体の体重をプロトコルに従って監視し、1回の測定で30%を超える、または3回の連続した測定で25%を超える体重減少があったマウスは、TR死として安楽死させた。群平均体重減少もCR Discovery Servicesのプロトコルに従って監視した。許容される毒性を、本試験中の群平均体重(BW)減少が20%未満であること、及びTR死が10%以下であることと定義した。平均体重減少が許容限度を超えたいずれの群においても投与を中断した。群平均体重が許容レベルに回復した場合には、より低い投与量及び/または少ない頻度に変更して投与を再開した。死亡が治療の副作用に帰されることが臨床徴候及び/または剖検によって証明された場合に、当該の死亡をTRとして分類した。投与期間中または最後の投与から14日以内の原因不明の死亡にもTR分類をあてた。死亡が治療の副作用に関連しているという証拠がない場合、当該の死亡は非治療関連(NTR)として分類した。NTR死はさらに次のように分類される。すなわち、NTRaは、事故または人的過誤に起因する死亡を表し、NTRmは、剖検結果に基づき、浸潤及び/または転移による腫瘍の播種に起因すると考えられる死亡にあてられ、NTRuは、転移、腫瘍進行、事故、または人的過誤に関連する死亡であることの証拠が得られていない、原因不明の死亡を表わす。NTRuに分類された死亡に、治療の副作用によるものが含まれないとすることはできないことに留意されたい。
【0284】
統計学的解析及びグラフによる解析
すべての統計学的解析及びグラフ表示にWindows版GraphPad Prism 8.0を使用した。許容限度を超える毒性(>20%の群平均体重減少もしくは10%を超える治療関連死)が認められた試験群、または評価可能な観測結果が5例未満である試験群は統計学的解析に含めなかった。2つの群の全生存時間経験値間の差の有意性を、対数順位検定を用いて評価した。対数順位検定は、NTR死により本試験に留まっていないマウスを除く群内のすべてのマウスの個々のTTEを解析する。対照群と治療群の33日目の腫瘍体積中央値(MTV)の間の差の統計学的解析を、マン-ホイットニーU検定を用いて実施した。統計学的解析では、有意水準P=0.05において両側検定を実施した。Prismにおいては、検定結果が、P>0.05で有意性なし(ns)、0.01<P≦0.05で有意(記号「*」で表す)、0.001<P≦0.01で非常に有意(「**」)、及びP≦0.001で極めて有意(「***」)と要約される。統計学的有意性の検定では群間の差の大きさの推定値が提供されないため、この報告の本文中のすべての有意水準は、有意または有意性なしと記載した。散布図は、群ごとの各マウスの個体のTTE値を示すために作成した。腫瘍増殖曲線は、時間の関数として群の中央値、平均値、及び各個体の腫瘍体積を示し、誤差棒(存在する場合)は1つの平均値の標準誤差(SEM)を示す。マウスが腫瘍サイズにより本試験から離脱した場合には、当該のマウスに関して記録された最終の腫瘍体積を、その後の時点での平均体積を算出するために使用したデータと共に含めた。当該群内の50%を超える評価可能なマウスの腫瘍が終点体積まで増殖した場合には、腫瘍増殖曲線を切り詰め、該曲線は死亡がNTRと評価されたマウスのデータを除外した。カプラン・マイヤープロットは、本試験に留まっている各群のマウスの割合を時間に対して示す。カプラン・マイヤープロットと対数順位検定は同一のTTEデータセットを共有する。箱ひげ図を、群ごとに33日目の腫瘍体積データを示すように作成した。「箱」は、観測値の第一四分位数及び第四四分位数を表し、「線」は観測値の中央値を表し、「ひげ」は極端な観測値を表す。試験中の群の体重変化を、1日目からの平均変化率としてプロットした。群内の評価可能なマウスの50%が本試験から離脱した後には、体重プロットを切り詰め、該プロットは死亡がNTRと評価されたマウスのデータを除外した。


【0285】
上記のすべての文書及び他の引用資料は本明細書に援用される。
【0286】
発明の実施形態
1.式I:
の化合物であって、式中、
6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、ニトロ、Me3Sn、及びハロから独立して選択され、但し、R及びR’は、任意選択的に置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、及びC5-20アリール基から独立して選択され、
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、ニトロ、Me3Sn、及びハロから選択され、
R”は、1つ以上のヘテロ原子、例えばO、S、NRN2(但し、RN2はHもしくはC1-4アルキルである)、及び/または芳香環、例えばベンゼンもしくはピリジンが連鎖中に割り込んでいてもよいC3-12アルキレン基であり、
Y及びY’は、O、S、またはNHから選択され、
6’、R7’、R9’はそれぞれ、R6、R7、及びR9と同一の基の群から選択され、
11bは、OH、ORA(但しRAはC1-4アルキルである)から選択され、
Lは細胞結合剤に連結するためのリンカーであり、このリンカーは、
(iiia):
(式中、
Qは
(式中、QXは、Qがアミノ酸残基、ジペプチド残基、またはトリペプチド残基となるようなものである)であり、
Xは、
(式中、a=0~5、b=0~16、c=0または1、d=0~5である)であり、
Lは、リガンド単位に連結するためのリンカーである)、及び
(iiib):
(式中、
L1及びRL2は、H及びメチルから独立して選択されるか、またはそれらが結合する炭素原子と共にシクロプロピレン基もしくはシクロブチレン基を形成し、
eは0または1である)
から選択され、
(a)R20はHであり、R21はHであるか、
(b)R20はHであり、R21は=Oであるか、または
(c)R21はOHもしくはORAであり、但し、RAはC1-4アルキルであり、R20は、
(i)

(ii)

(iii)
(式中、RZは、
(z-i)

(z-ii)OC(=O)CH3
(z-iii)NO2
(z-iv)OMe、
(z-v)グルクロニド
(z-vi)NH-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-C(=O)-RZC(式中、-C(=O)-X1-NH-及び-C(=O)-X2-NH-は天然アミノ酸残基を表し、RZCは、Me、OMe、CH2CH2OMe、及び(CH2CH2O)2Meから選択される)
から選択される)
から選択されるか
のいずれかである、
上記化合物、ならびにその塩及び溶媒和物。
【0287】
2.Y及びY’の両方がOである、第1項に記載の化合物。
【0288】
3.R”がC3-7アルキレンである、第1項または第2項のいずれかに記載の化合物。
【0289】
4.R”が式:
の基であり、式中、rは1または2である、第1項または第2項のいずれかに記載の化合物。
【0290】
5.R9がHである、第1項~第4項のいずれか1項に記載の化合物。
【0291】
6.R6がHである、第1項~第5項のいずれか1項に記載の化合物。
【0292】
7.R7が、H、OH、及びORから選択される、第1項~第6項のいずれか1項に記載の化合物。
【0293】
8.R7がC1-4アルキルオキシ基である、第7項に記載の化合物。
【0294】
9.R6’がR6と同一の基であり、R7’がR7と同一の基であり、R9’がR9と同一の基であり、Y’がYと同一の基である、第1項~第8項のいずれか1項に記載の化合物。
【0295】
10.R21がOHまたはORAであり、R20が、
から選択される、第1項~第9項のいずれか1項に記載の化合物。
【0296】
11.-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-が、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、及び-Val-Cit-から選択される、第1項~第10項のいずれか1項に記載の化合物。
【0297】
12.-C(=O)-X1-NHC(=O)X2-NH-が-Phe-Lys-及び-Val-Ala-から選択される、第11項に記載の化合物。
【0298】
13.RZCがCH2CH2OMe及び(CH2CH2O)-2Meから選択される、第10項~第12項のいずれか1項に記載の化合物。
【0299】
14.RZCが(CH2CH2O)-2Meである、第13項に記載の化合物。
【0300】
15.式Ia、Ib、またはIc:

の化合物であって、式中、
1aはメチル及びベンジルから選択され、
L及びR11bは第1項において定義されたとおりである
上記化合物である、第1項に記載の化合物。
【0301】
16.R11bがOHである、第1項~第15項のいずれか1項に記載の化合物。
【0302】
17.R11bがORAであり、但し、RAはC1-4アルキルである、第1項~第15項のいずれか1項に記載の化合物。
【0303】
18.RAがメチルである、第17項に記載の化合物。
【0304】
19.RLが式IIIaのものであり、Qが、Phe、Lys、Val、Ala、Cit、Leu、Ile、Arg、及びTrpから選択されるアミノ酸残基である、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0305】
20.RLが式IIIaのものであり、Qが、
CO-Phe-Lys-NH
CO-Val-Ala-NH
CO-Val-Lys-NH
CO-Ala-Lys-NH
CO-Val-Cit-NH
CO-Phe-Cit-NH
CO-Leu-Cit-NH
CO-Ile-Cit-NH
CO-Phe-Arg-NH、及び
CO-Trp-Cit-NH
から選択されるジペプチド残基である、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0306】
21.Qが、CO-Phe-Lys-NHCO-Val-Cit-NH、及びCO-Val-Ala-NHから選択される、第20項に記載の化合物。
【0307】
22.RLが式IIIaのものであり、Qがトリペプチド残基である、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0308】
23.RLが式IIIaのものであり、aが0~3である、第1項~第22項のいずれか1項に記載の化合物。
【0309】
24.aが0である、第23項に記載の化合物。
【0310】
25.RLが式IIIaのものであり、bが0~12である、第1項~第24項のいずれか1項に記載の化合物。
【0311】
26.bが0~8である、第25項に記載の化合物。
【0312】
27.RLが式IIIaのものであり、dが0~3である、第1項~第26項のいずれか1項に記載の化合物。
【0313】
28.dが2である、第27項に記載の化合物。
【0314】
29.RLが式IIIaのものであり、aが0であり、cが1であり、dが2であり、bが0~8である、第1項~第22項のいずれか1項に記載の化合物。
【0315】
30.bが0、4、または8である、第29項に記載の化合物。
【0316】
31.RLが式IIIaのものであり、GLが、


(式中、ArはC5-6アリーレン基を表す)
から選択される、第1項~第30項のいずれか1項に記載の化合物。
【0317】
32.Arがフェニレン基である、第31項に記載の化合物。
【0318】
33.GLがGL1-1及びGL1-2から選択される、第31項または第32項の何れかに記載の化合物。
【0319】
34.GLがGL1-1である、第33項に記載の化合物。
【0320】
35.RLが式IIIbのものであり、RL1及びRL2の両方がHである、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0321】
36.RLが式IIIbのものであり、RL1がHであり、RL2がメチルである、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0322】
37.RLが式IIIbのものであり、RL1及びRL2の両方がメチルである、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0323】
38.RLが式IIIbのものであり、RL1及びRL2が、それらが結合する炭素原子と共にシクロプロピレン基を形成する、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0324】
39.RLが式IIIbのものであり、RL1及びRL2が、それらが結合する炭素原子と共にシクロブチレン基を形成する、第1項~第18項のいずれか1項に記載の化合物。
【0325】
40.RLが式IIIbのものであり、eが0である、第1項~第18項及び第35項~第39項のいずれか1項に記載の化合物。
【0326】
41.RLが式IIIbのものであり、eが1である、第1項~第18項及び第35項~第39項のいずれか1項に記載の化合物。
【0327】
42.ニトロ基がパラ位に存在する、第41項に記載の化合物。
【0328】
43.式Id:
の化合物であって、式中、Qは、
(a)-CH2-、
(b)-C36-、及び
(c)

から選択される上記化合物である、第1項に記載の化合物。
【0329】
44.式II:
L-(DLp (II)
の複合体であって、式中、
Lはリガンド単位であり、DLは式I’:
の薬物リンカー単位であり、式中、
6、R7、R9、R11b、Y、R”、Y’、R6’、R7’、R9’、R20、及びR21は第1項~第18項のいずれか1項に定義されるとおりであり、
LLは細胞結合剤に連結するためのリンカーであり、このリンカーは
(iiia’):
(式中、Q及びXは第1項及び第19項~第21項のいずれか1項に定義されるとおりであり、GLLはリガンド単位に連結するリンカーである)、及び
(iiib’):
(式中、RL1及びRL2は第1項及び第35項~第39項のいずれか1項に定義されるとおりである)
から選択され、
pは1~20の整数である
上記複合体。
【0330】
45.GLLが、

(式中、ArはC5-6アリーレン基を表す)
から選択される、第44項に記載の複合体。
【0331】
46.Arがフェニレン基である、第45項に記載の複合体。
【0332】
47.GLLがGLL1-1及びGLL1-2から選択される、第45項または第46項の何れかに記載の複合体。
【0333】
48.GLLがGLL1-1である、第47項に記載の複合体。
【0334】
49.DLが式(Id’):
のものであり、式中、Qは、
(a)-CH2-、
(b)-C36-、及び
(c)
から選択される、第44項に記載の複合体。
【0335】
50.上記リガンド単位が抗体またはその活性断片である、第44項~第49項のいずれか1項に記載の複合体。
【0336】
51.上記抗体または抗体断片が腫瘍関連抗原に対する抗体または抗体断片である、第50項に記載の複合体。
【0337】
52.上記抗体または抗体断片が、(1)~(89):
(1)BMPR1B、
(2)E16、
(3)STEAP1、
(4)0772P、
(5)MPF、
(6)Napi3b、
(7)Sema 5b、
(8)PSCA hlg、
(9)ETBR、
(10)MSG783、
(11)STEAP2、
(12)TrpM4、
(13)CRIPTO、
(14)CD21、
(15)CD79b、
(16)FcRH2、
(17)HER2、
(18)NCA、
(19)MDP、
(20)IL20R-alpha、
(21)ブレビカン、
(22)EphB2R、
(23)ASLG659、
(24)PSCA、
(25)GEDA、
(26)BAFF-R、
(27)CD22、
(28)CD79a、
(29)CXCR5、
(30)HLA-DOB、
(31)P2X5、
(32)CD72、
(33)LY64、
(34)FcRH1、
(35)IRTA2、
(36)TENB2、
(37)PSMA-FOLH1、
(38)SST、
(38.1)SSTR2、
(38.2)SSTR5、
(38.3)SSTR1、
(38.4)SSTR3、
(38.5)SSTR4、
(39)ITGAV、
(40)ITGB6、
(41)CEACAM5、
(42)MET、
(43)MUC1、
(44)CA9、
(45)EGFRvIII、
(46)CD33、
(47)CD19、
(48)IL2RA、
(49)AXL、
(50)CD30-TNFRSF8、
(51)BCMA-TNFRSF17、
(52)CT Ags-CTA、
(53)CD174 (ルイスY)-FUT3、
(54)CLEC14A、
(55)GRP78-HSPA5、
(56)CD70、
(57)幹細胞特異的抗原、
(58)ASG-5、
(59)ENPP3、
(60)PRR4、
(61)GCC-GUCY2C、
(62)Liv-1-SLC39A6、
(63)5T4、
(64)CD56-NCMA1、
(65)CanAg、
(66)FOLR1、
(67)GPNMB、
(68)TIM-1-HAVCR1、
(69)RG-1/前立腺腫瘍標的ミンディン-ミンディン/RG-1、
(70)B7-H4-VTCN1、
(71)PTK7、
(72)CD37、
(73)CD138-SDC1、
(74)CD74、
(75)クローディン-CL、
(76)EGFR、
(77)Her3、
(78)RON-MST1R、
(79)EPHA2、
(80)CD20-MS4A1、
(81)テネイシンC-TNC、
(82)FAP、
(83)DKK-1、
(84)CD52、
(85)CS1-SLAMF7、
(86)エンドグリン-ENG、
(87)アネキシンA1-ANXA1、
(88)V-CAM(CD106)-VCAM1、
(89) ASCT2 (SLC1A5)
から選択される1種以上の腫瘍関連抗原または細胞表面受容体に結合する抗体である、第51項に記載の複合体。
【0338】
53.上記抗体または抗体断片がシステイン操作抗体である、第50項~第52項のいずれか1項に記載の複合体。
【0339】
54.pが1~8の整数である、第44項~第53項のいずれか1項に記載の複合体。
【0340】
55.pが、1、2、3、または4である、第54項に記載の複合体。
【0341】
56.第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体の混合物を含む組成物であって、複合体化合物の混合物における平均のpが約1~約8である、上記組成物。
【0342】
57.治療における使用のための、第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体。
【0343】
58.第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体、及び薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む医薬組成物。
【0344】
59.対象の増殖性疾患の治療における使用のための、第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体または第58項に記載の医薬組成物。
【0345】
60.治療を受ける疾患ががんである、第61項に記載の使用のための複合体。
【0346】
61.第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体または第58項に記載の医薬組成物の治療方法における使用。
【0347】
62.第58項に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む治療方法。
【0348】
63.上記治療方法が、がんを治療するためのものである、第62項に記載の方法。
【0349】
64.上記患者が、上記複合体との併用で化学療法剤を投与される、第63項に記載の方法。
【0350】
65.第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体の、増殖性疾患の治療のための医薬の製造方法における使用。
【0351】
66.有効量の第44項~第55項のいずれか1項に記載の複合体または第58項に記載の医薬組成物を投与することを含む、増殖性疾患を有する哺乳動物の治療方法。
【0352】
67.式IV:
の化合物であって、式中、
6、R7、R9、Y、R”、Y’、R6’、R7’、及びR9’は第1項~第18項のいずれか1項に定義されるとおりであり、
(a)R30はHであり、R31はHであるか、
(b)R30はHであり、R31は=Oであるか、または
(c)R30及びR31が、それらが結合しているN原子とC原子との間に二重結合を形成するか
のいずれかである
上記化合物。
図1
【国際調査報告】