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特表2022-512788アプタミンCを有効成分として含む点眼液組成物
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  • 特表-アプタミンCを有効成分として含む点眼液組成物 図1
  • 特表-アプタミンCを有効成分として含む点眼液組成物 図2
  • 特表-アプタミンCを有効成分として含む点眼液組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】アプタミンCを有効成分として含む点眼液組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/375 20060101AFI20220131BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220131BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K31/375
A61P27/02
A61P27/04
A61K9/08
A61K47/36
A61K47/69
A61P39/06
A61K31/7088
C12N15/115 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522022
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2019014045
(87)【国際公開番号】W WO2020085812
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0128107
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519110146
【氏名又は名称】ネクスモス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXMOS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Dongcheon-dong) #2207,767,Sinsu-ro Suji-gu,Yongin-si Gyeonggi-do 16827 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン インシク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC24
4C076EE30
4C076FF31
4C076GG41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA12
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、ビタミンC及び該ビタミンCに結合するアプタマーを有効成分として含む点眼液組成物に関し、本発明を通じて分かるように、本発明のアプタミンCを含む点眼液組成物によると、低いROSレベルを維持し、上皮細胞の損傷及び炎症反応を改善するので、このような抗酸化効果を長時間維持するアプタマーと抗酸化剤との複合体を用いることによって眼球乾燥症の改善及び治療に効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC及び該ビタミンCに結合するアプタマーを有効成分として含む点眼液組成物。
【請求項2】
前記ビタミンCに結合するアプタマーは、配列番号1の塩基配列からなることを特徴とする、請求項1に記載の点眼液組成物。
【請求項3】
前記ビタミンCと該ビタミンCに結合するアプタマーとのモル組成比は、10000:1~10:1の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の点眼液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプタミンCを有効成分として含む点眼液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、コンタクトレンズの装用、テクノストレス、アレルギーとの接触、大気汚染などによって角膜や結膜が受けるストレスが増大しており、これによって、眼球乾燥(dry eye)を発症する人が増加する傾向にある。眼球乾燥を発症すると、角膜や結膜の正常な機能が低下し、角膜上皮障害、角膜上皮びらん、角膜潰瘍、結膜炎、角膜炎、眼感染症などを引き起こしやすくなる。
【0003】
従来、眼球乾燥、又は角膜や結膜の機能低下を伴う眼疾患の予防又は治療方法としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの粘弾性物質を含む点眼剤の点眼によって角膜や結膜を保護し、保水性を付与する方法が知られている。しかし、粘弾性物質を含む点眼剤では、角膜や結膜に対する保護作用が不十分であり、十分な治療効果が得られない場合があるので、新しい点眼剤の開発が要望されていた。
【0004】
眼球乾燥の病態に関しては完全に明らかになっていないが、眼球乾燥は、角結膜上皮障害を引き起こし、究極的には視覚異常が生じるものとして知られている。したがって、眼球乾燥による角結膜上皮障害を早期に適宜治療することは非常に重要である。
【0005】
現在、眼球乾燥の治療法としては点眼治療が最も一般的であり、ヒアルロン酸ナトリウムを含有する点眼液が眼球乾燥の治療に汎用されている。
【0006】
ヒアルロン酸ナトリウムを含有する点眼液(以下、単に「ヒアルロン酸ナトリウム点眼液」という)に関しては、複数回にわたって使用することを目的としており、キャップなどの開封及び再密封を自由に行えるマルチドーズ型(ヒアレイン(登録商標)点眼液0.1%、ヒアレイン(登録商標)点眼液0.3%など)、及び1回の使用を目的としたユニットドーズ型(ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.1%、ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.3%など)が存在する。
【0007】
マルチドーズ型のヒアルロン酸ナトリウム点眼液に関しては、キャップの開封及び再密封を行うので、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が添加されている一方、ユニットドーズ型の場合は、1回の使用(1回用)であるので防腐剤が添加されていない。
【0008】
ベンザルコニウム塩化物などの防腐剤には、角膜障害を誘発する危険性があると指摘されており、例えば、ベンザルコニウム塩化物に関しては、Clinical and Experimental Ophthalmology、32、180-184(2004)に開示されているように、濃度依存的に角膜上皮障害を引き起こす可能性があるものとして知られている。上述したように、眼球乾燥が元々角膜上皮障害を伴う疾患であるので、重症の眼球乾燥の患者にはユニットドーズ型のヒアルロン酸ナトリウム点眼液が用いられている。一方、生産コストの問題などにより、全ての眼球乾燥の患者にユニットドーズ型のヒアルロン酸ナトリウム点眼液を処方することは困難であるので、マルチドーズ型の点眼液中の防腐剤の濃度を減少させることによって角膜上皮障害の発生リスクを低減化することも考慮される。しかし、実際には、点眼液中の防腐剤の濃度を減少させると、マルチドーズ型として使用するのに十分な保存効力を得ることができない。また、防腐剤の低減化による配合成分の変化により、前記点眼液が従来のヒアルロン酸ナトリウム点眼液と異なる物理化学的性質を有するようになるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開番号WO2002/22131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は,前記問題を解決し、前記必要性によってなされたものであって、本発明の目的は、眼球乾燥症を治療するための点眼液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、ビタミンC及び該ビタミンCに結合するアプタマーを有効成分として含む点眼液組成物を提供する。
【0012】
本発明の一具現例において、前記ビタミンCに結合するアプタマーは、配列番号1の塩基配列(AGAGCTCGCGCCGGAGTTCTCAATGCAAGAGC)からなることが好ましいが、本発明の目的を達成できる全てのアプタマーは本発明の保護範囲に含まれる。
【0013】
本発明の一具現例において、前記ビタミンCと該ビタミンCに結合するアプタマーとのモル組成比は、10000:1~10:1の範囲であることが好ましいが、これに限定されない。
【0014】
以下、本発明を説明する。
【0015】
ROSによる酸化的ストレスシグナリングは、眼球表面の上皮細胞及び杯細(goblet cell)の損傷及び炎症反応を起こし、眼球乾燥周期の促進に核心的な役割をし、過度な酸化的ストレスシグナリングを減少させるために低いROSレベルを維持する必要がある。
【0016】
本発明は、抗酸化剤(例えば、ビタミンC)の使用により、低いROSレベルを維持し、上皮細胞の損傷及び炎症反応を改善するので、このような抗酸化効果を長時間維持するアプタマーと抗酸化剤との複合体を用いることによって眼球乾燥症の改善及び治療に効果を示すことを確認した。
【0017】
本発明の点眼液の調剤において、前記のような本発明のアプタミンC複合体以外に、必要な場合、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、プロピレングリコールなどの等張化剤、硼酸、硼砂、クエン酸、リン酸水素二ナトリウム、ε-アミノカプロン酸などの緩衝剤、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロロヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチルなどの防腐剤などの薬剤学的に許容される様々な添加物を配合することができる。
【0018】
本発明の点眼液のpHは、3~8、特に4~7にすることが好ましい。
【0019】
本発明の点眼液の調剤方法は、特別な手法や操作を必要とせず、通常使用されている方法によって点眼液を調剤することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明を通じて分かるように、本発明のアプタミンCを含む点眼液組成物によると、低いROSレベルを維持し、上皮細胞の損傷及び炎症反応を改善するので、このような抗酸化効果を長時間維持するアプタマーと抗酸化剤との複合体を用いることによって眼球乾燥症の改善及び治療に効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】アプタミンCによるビタミンCの還元力維持を示したグラフであって、OPDA(12-oxo-phytodienoic acid)アッセイ(5mMのビタミンC、1μMのアプタミンC)の結果を示したグラフである。
図2-3】ヒト表皮角化細胞株(human keratinocyte cell line(HaCaT細胞))で創傷治癒アッセイ(wound healing assay)を進行した結果であって、ビタミンC及びアプタミンC(ビタミンCに結合するアプタマー)を処理したとき、傷が回復する程度を時間別に確認した代表図である。 本実験では、アプタミンC 1μM(0.001%)及びビタミンC 0.5mM(0.008%)で処理することによって効力を確認した。本実験の結果、アプタミンCとビタミンCとを混合した組成物を処理したとき、傷が最もよく回復することを確認した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本図面において、ビタミンC(ascorbic acid)に結合するアプタマーをアプタミンCと命名した。
【0023】
以下、本発明を非限定的な実施例を通じてさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するために記載したものであって、本発明の範囲は、下記の実施例によって制限されるものと解釈されない。
【0024】
実施例1:本発明の組成物の製造
前記実施例1で効果を有する合成されたアプタマーとビタミンC(DSM、イギリス)を常温で記載された重量比で蒸留水に混合し、本発明の組成物を製造した。
【0025】
例えば、蒸留水にビタミンC(ascorbic acid)0.008%(w/v)と該ビタミンCに結合するアプタミンC 0.001%(w/v)とを混合し、本発明の点眼液組成物を製造した。
【0026】
実施例2:アプタマーを通じたビタミンCの還元力維持
アニーリングバッファー(Annealing buffer)に溶かしたアプタミンCを95℃に加熱した後、徐々に温度を常温に下げながらアプタマーの二次構造を作った後、これを還元されたL-アスコルビン酸と混合し、アプタマーがL-アスコルビン酸と結合できるように約30分間反応させた。その後、過酸化水素水を添加することによって酸化条件を作った後、L-アスコルビン酸の酸化は、蛍光染料であるOPDA(o-phenylenediamine)を添加して測定した。L-アスコルビン酸の酸化物であるDHAがOPDAと反応して生成されたDHA-OPDAからの蛍光量を測定し、DHAの生成程度を定量分析することができる。前記のような条件でDHA-OPDAの蛍光量を2分ごとに12時間にわたって測定した。
【0027】
図1から分かるように、OPDAアッセイの結果、ビタミンCとアプタミンCを共に処理したとき、ビタミンCの酸化が防止される結果を得たので、ビタミンC及び該ビタミンCに特異的に結合するアプタマーを有効成分として含む点眼液組成物は、ビタミンCの酸化速度を遅らせ、眼球乾燥に対する治療効能を維持させると予想される。
【0028】
実施例3:ヒト表皮角化細胞株(human keratinocyte cell line(HaCaT細胞))における創傷治癒アッセイ
6-ウェルプレートにヒト表皮角化細胞株(human keratinocyte cell line(HaCaT細胞))[大韓民国、淑明女子大学の生命システム研究所で分譲](1×10cells/ml)を500μL/ウェルにシードし、5%CO、95%空気、37℃の条件でDMEMで培養した。
【0029】
200μLのピペットチップで培養物の表面をスクラッチし、細胞に傷を付けた。
【0030】
そのスクラッチされた各HaCaT細胞は、付着していない細胞を除去するために新鮮な培地で洗浄した。
【0031】
アプタミンC 1μM(0.001%)、ビタミンC 0.5mM(0.008%)、及びアプタミンCとビタミンCとを混合した組成物をそれぞれ培地に処理し、これを24時間にわたって培養した。
【0032】
逆(inverted)位相差光源顕微鏡を使用して前記細胞の移動を測定した。
【0033】
各ウェルの損傷部位を撮影し、その面積は、Image Jを使用して測定した。
【0034】
移動した各細胞のエッジ間の平均面積は、Image Jを使用して決定した。
【0035】
前記アプタミンC及びビタミンCの単独処理、及びアプタミンCとビタミンCとを混合した組成物に対するHaCaT細胞による損傷縫合のパーセントを比較した。
図1
図2
図3
【配列表】
2022512788000001.app
【国際調査報告】