IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベリカム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】自殺スイッチを有するT細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220131BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220131BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220131BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/17 Z
A61P37/06
A61P35/02
A61P7/06
C12N5/0783
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522055
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 US2019058664
(87)【国際公開番号】W WO2020092440
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/753,688
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510274452
【氏名又は名称】ベリカム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, シャオオウ リネット
(72)【発明者】
【氏名】ショー, ジョアン ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】フォスター, アーロン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】アヌムラ, マダビ
(72)【発明者】
【氏名】コリンソン-パウツ, マシュー アール.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA55
4C087ZB08
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明者らは、自殺スイッチを含む遺伝子改変T細胞の組成物の様々な改善を開示する。例えば、この組成物は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞を含み得、CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比は2未満である。本発明者らは、2つの有利な特性を有する遺伝子改変T細胞を提供する。第1に、それらはこれまでに使用されているT細胞(遺伝子改変T細胞を含む)よりGVHDを発生させる頻度がより低いことが示されている。第2に、それらは自殺スイッチのトリガーを投与することによってin vivoで容易にかつ急速に除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変CD4T細胞および遺伝子改変CD8T細胞を含む遺伝子改変T細胞を含む組成物であって、
(i)前記遺伝子改変T細胞が自殺スイッチを発現し;
(ii)前記遺伝子改変T細胞の約25%~60%がナイーブT細胞である、組成物。
【請求項2】
前記遺伝子改変T細胞の約30~60%がナイーブT細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遺伝子改変T細胞の約42~49%がナイーブT細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の遺伝子改変CD4+T細胞の遺伝子改変CD8+T細胞に対する比が2未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも10%が最終分化エフェクターメモリーT細胞であり、および/または前記遺伝子改変CD8+T細胞の58%以下がナイーブT細胞である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも30%が最終分化エフェクターメモリーT細胞であり、前記遺伝子改変CD8+T細胞の50%以下がナイーブT細胞である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記遺伝子改変T細胞が、細胞表面トランスジーンマーカーの所定範囲の発現レベルを示し、前記範囲が少なくとも10倍であり、前記発現レベルがフローサイトメトリーによって測定され、および前記発現レベルが平均蛍光強度(MFI)値として測定される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記範囲が少なくとも100倍である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記遺伝子改変T細胞が、トリガー分子に対して所定範囲の感受性を示し、特定の濃度の前記トリガー分子に対する細胞の曝露が、前記細胞の少なくとも10%の死に至るが前記細胞の少なくとも10%の生存を可能にする、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記遺伝子改変CD4+T細胞の遺伝子改変CD8+T細胞に対する比が0.5未満である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記自殺スイッチがカスパーゼ-9を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記自殺スイッチが、FKBP12領域、FKBP12バリアント領域、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)またはFRBバリアント領域を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記トリガー分子が、ラパマイシン、ラパログ、AP1903、AP20187、またはAP1510である、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記FKBP12バリアント領域が、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびアラニンからなる群から選択される36位でのアミノ酸置換を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記FKBP12バリアント領域が、2コピーのFKBP12v36を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記遺伝子改変T細胞がヒトT細胞である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
(i)前記遺伝子改変T細胞が、ΔCD19マーカーに連結され、レトロウイルス形質導入によってT細胞のゲノムに挿入されたiCasp9自殺スイッチを発現し;(ii)前記遺伝子改変T細胞が、フローサイトメトリーによって測定したΔCD19細胞表面マーカーの発現レベルの少なくとも10倍の範囲を有し;(iii)前記組成物が、前記CD4+遺伝子改変T細胞より多い数の前記CD8+遺伝子改変T細胞を含み;(iv)前記組成物が、遺伝子改変最終分化エフェクターメモリーT細胞、遺伝子改変エフェクターメモリーT細胞、および遺伝子改変セントラルメモリーT細胞を含み;(v)前記遺伝子改変T細胞の50%未満がナイーブT細胞であり;(vi)前記T細胞が、ヒトドナーから得られ、同種細胞枯渇ステップに供されなかった、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有する、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~7の平均VCNを有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約2~6の平均VCNを有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、前記遺伝子改変CD3+T細胞が約20%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約80%のCD8+T細胞を含み、
(i)前記改変CD4+T細胞が、
(a)約25%~約45%のナイーブ細胞、
(b)約15%~約30%のセントラルメモリーT(CM)細胞、
(c)約15%~約30%のエフェクターメモリーT(EM)細胞、
(d)約2%~約15%の最終分化エフェクターメモリー(TEMRA)細胞を含み;
(ii)改変CD8+T細胞が、
(a)約20%~約60%のナイーブ細胞、
(b)約1%~約10%のCM細胞、
(c)約1%~約15%のEM細胞、および
(d)約10%~約15%のTEMRA細胞を含む、組成物。
【請求項22】
遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、
(i)前記組成物中の前記T細胞の約20%~40%がCD8+ナイーブ細胞であり;
(ii)前記組成物中の前記T細胞の約1%~20%がCD8+CM細胞であり;
(iii)前記組成物中の前記T細胞の約1%~20%がCD8+EM細胞であり;
(iv)前記組成物中の前記T細胞の約5%~40%がCD8+TEMRA細胞である、組成物。
【請求項23】
前記組成物中の前記T細胞の約20%~30%がCD8+ナイーブ細胞である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物中の前記T細胞の約1%~10%がCD8+CM細胞である、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物中の前記T細胞の約1%~10%がCD8+EM細胞である、請求項22~24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物中の前記T細胞の約10%~30%がCD8+TEMRA細胞である、請求項22~25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、
(i)前記組成物中の前記T細胞の約5%~20%がCD4+ナイーブ細胞であり;
(ii)前記組成物中の前記T細胞の約1%~10%がCD4+CM細胞であり;
(iii)前記組成物中の前記T細胞の約1%~10%がCD4+EM細胞であり;
(iv)前記組成物中の前記T細胞の約1%~5%がCD4+TEMRA細胞である、組成物。
【請求項28】
前記T細胞の5%~15%がCD4+ナイーブ細胞である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記T細胞の1%~7%がCD4+CM細胞である、請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
前記T細胞の1%~10%がCD4+EM細胞である、請求項27~29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
対象を処置する方法であって、先行請求項のいずれかに記載の遺伝子改変T細胞の組成物を前記対象に導入するステップを含む、方法。
【請求項32】
対象に薬物を投与するステップを含む、前記対象を処置する方法であって、
(i)前記対象が、先行請求項のいずれかに記載の遺伝子改変T細胞の注入を以前に受けたことがあり;
(ii)前記薬物が自殺スイッチを誘発し;
(iii)前記薬物が、前記対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%を殺滅するために十分に高いが前記対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%が生存するために十分に低い用量で送達される、方法。
【請求項33】
遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死に至ることができる自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)ナイーブT細胞と比較して、最終分化エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、および/またはエフェクターメモリーT細胞の富化に有利な条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセス。
【請求項34】
ナイーブT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞の富化に有利である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死に至ることができる自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)CD4+T細胞と比較してCD8+T細胞の富化に有利な条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセス。
【請求項36】
遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)活性化濃度のIL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下でドナーT細胞を培養するステップ;(ii)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(iii)一定期間培養後、自殺スイッチおよび選択可能マーカーの両方をコードするDNAをT細胞に導入するステップ;(iv)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(v)前記選択可能マーカーを発現する細胞を選択するステップ;(vi)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(vii)前記遺伝子改変T細胞を採取するステップを含み;但し、ステップ(iv)および(vi)が必要に応じたステップである、プロセス。
【請求項37】
前記遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~10の平均VCNを有する、請求項33~36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~7の平均VCNを有する、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
ステップ(i)がプロセスの開始時(1日目)に起こる、請求項36に記載のプロセス。
【請求項40】
ステップ(iv)がプロセスの3日目に起こる、請求項36に記載のプロセス。
【請求項41】
ステップ(vi)がプロセスの6日目に起こる、請求項36に記載のプロセス。
【請求項42】
前記プロセスの終了時、前記細胞の少なくとも50%が形質導入されて生存している、請求項36~41のいずれかに記載のプロセス。
【請求項43】
前記プロセスの終了時、前記細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存している、請求項36~41のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その内容の全体が全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる2018年10月31日に提出された米国仮出願第62/753,688号の出願日の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、細胞移植、および例えば移植片対宿主病(GVHD)が発症した場合にレシピエントにおいて移植したT細胞を除去するために有用な技術の分野にある。
【背景技術】
【0003】
背景
HSCTの際に、同種造血幹細胞(HSC)は、健康なドナーに由来し、患者に移植される。この処置は、悪性および非悪性の状態の場合では潜在的に治癒的であり得る。しかし、残念なことに、HSCTは、特に基礎となる悪性疾患の長期間の処置後およびT細胞枯渇移植片の使用後では、持続的な移植後免疫不全に関連し得る。特に加齢または以前の治療により胸腺がその機能のほとんどを失っている場合、T細胞およびB細胞区画が完全に再生するにはかなりの時間(約1~2年)が必要である。GVHDおよびその防止のために使用される免疫抑制薬もまた、免疫再構築をかなり遅らせ得る。加えて、再発は、一致した血縁者間または非血縁者間の同種HCTが失敗する最も一般的な原因である。
【0004】
再発を処置および防止するために、HSCTまたはHCT後にドナーリンパ球の投与または注入がしばしば使用される。しかし、慢性骨髄性白血病(CML)を例外として、特に移植後最初の12カ月以内に再発が起こる場合、ドナーリンパ球注入の有効性は血液腫瘍では不良である。患者に免疫再構築および保護を提供することに加えて、アロ反応性T細胞は強力な抗がん処置の効果を提供することができるが、これらのT細胞はレシピエントにおいてGVHDの重篤なリスクを呈する。
【0005】
GVHDが発生すると、注入回数および注入される細胞数を制限し得るか、または当然の結果として免疫抑制治療が行われ得る。これは、高率の移植後感染症合併症および高頻度の疾患再発をもたらし得る。さらに、これはがんの再発を処置するための治療的細胞の有効性を低減させる。したがって、付随するGVHDおよび他の合併症を生じることなく治療的細胞の免疫および抗腫瘍潜在性を利用するためのよりよい戦略が必要である。
【0006】
そのような1つの戦略は、GVHDなどの合併症が生じた場合に細胞を除去するために使用することができる自殺遺伝子スイッチを含有する遺伝子改変ドナーT細胞の使用である。そのような1つの治療は、「BPX-501」または「リボジェンレクルーセル(rivogenlecleucel)」として公知である。BPX-501は、リミドゥシド(以前は、AP1903として公知)に曝露された場合にin vivoでアロ反応性T細胞のアポトーシスを誘発する誘導型カスパーゼ9(「CaspaCIDe(登録商標)」安全スイッチ)を含有するように改変されたドナーT細胞に基づく。
【0007】
しかし、自殺スイッチを使用する必要性が低減されるように、GVHD発生率が低い治療細胞を提供することが必要である。加えて、反応性のGVHDを引き起こす細胞を除去するが非反応性の細胞を除去しない機構を有することも有益である。そのような改善は、細胞の活性および治療潜在性を増加させるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本発明者らは、2つの有利な特性を有する遺伝子改変T細胞を提供する。第1に、それらはこれまでに使用されているT細胞(遺伝子改変T細胞を含む)よりGVHDを発生させる頻度がより低いことが示されている。第2に、それらは自殺スイッチのトリガーを投与することによってin vivoで容易にかつ急速に除去される。
【0009】
本発明者らは、遺伝子改変T細胞を含む組成物であって、(i)遺伝子改変T細胞が自殺スイッチを発現し、および(ii)遺伝子改変T細胞の約25%~60%がナイーブT細胞である、組成物を提供する。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞の約30%~60%がナイーブT細胞である。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞の約30%~60%がナイーブT細胞である。理想的には、組成物は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞を含み、CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比は2未満、または1未満、または0.5未満である。ある特定の実施形態では、遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも10%が、最終分化エフェクターメモリーT細胞(terminal effector memory T cells)であり、および/もしくは遺伝子改変T細胞の58%以下がナイーブT細胞であるか、または遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも30%が最終分化エフェクターメモリーT細胞であるか、および/もしくは遺伝子改変T細胞の50%以下がナイーブT細胞である。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞表面トランスジーンマーカーの所定範囲の発現レベルを示し、その範囲は少なくとも10倍であり、発現レベルはフローサイトメトリーによって測定され、発現レベルは平均蛍光強度(MFI)値によって測定される。ある特定の実施形態では、範囲は少なくとも100倍である。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞が特定の濃度のトリガー分子に曝露された場合に、細胞の少なくとも10%の死に至るが細胞の少なくとも10%の生存を可能にするように、トリガー分子に対して所定範囲の感受性を示す。自殺スイッチはカスパーゼ-9を含み得る。ある特定の実施形態では、自殺スイッチはFKBP12領域、FKBP12バリアント領域、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)、またはFRBバリアント領域を含む。ある特定の実施形態では、トリガー分子は、ラパマイシン、ラパログ、AP1903、AP20187、またはAP1510である。ある特定の実施形態では、FKBP12バリアント領域は、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびアラニンからなる群から選択される36位でのアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、FKBP12バリアント領域は、2コピーのFKBP12v36を含む。遺伝子改変T細胞は、ヒト細胞であり得る。ある特定の実施形態では、(i)遺伝子改変T細胞は、レトロウイルス形質導入によってT細胞のゲノムに挿入されたΔCD19マーカーに連結されたiCasp9自殺スイッチを発現し;(ii)遺伝子改変T細胞は、フローサイトメトリーによって測定したΔCD19細胞表面マーカーの少なくとも10倍の範囲の発現レベルを有し;(iii)組成物は、CD4+遺伝子改変T細胞より多数のCD8+遺伝子改変T細胞を含み;(iv)組成物は、遺伝子改変最終分化エフェクターメモリーT細胞、遺伝子改変エフェクターメモリーT細胞、および遺伝子改変セントラルメモリーT細胞を含み;(v)遺伝子改変T細胞の50%未満がナイーブT細胞であり;(vi)T細胞がヒトドナーから得られ、同種細胞枯渇ステップに供されない。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞あたり約1~10個の平均ベクターコピー数(VCN)を有する。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞あたり約1~7個の平均ベクターコピー数(VCN)を有する。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞あたり約2~6個の平均ベクターコピー数(VCN)を有する。
【0010】
同様に、本明細書において遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、遺伝子改変CD3+T細胞が、約20%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約80%のCD8+T細胞を含み、(i)改変CD4+T細胞が(a)約25%~約45%のナイーブ細胞、(b)約15%~約30%のセントラルメモリーT(CM)細胞、(c)約15%~約30%のエフェクターメモリーT(EM)細胞、(d)約2%~約15%の最終分化エフェクターメモリー(TEMRA)細胞を含み;(ii)改変CD8+T細胞が、(a)約20%~約60%のナイーブ細胞、(b)約1%~約10%のCM細胞、(c)約1%~約15%のEM細胞、および(d)約10%~約15%のTEMRA細胞を含む組成物も提供される。
【0011】
同様に、本明細書において遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、(i)組成物中のT細胞の約20%~40%がCD8+ナイーブ細胞であり;(ii)組成物中のT細胞の約1%~20%がCD8+CM細胞であり;(iii)組成物中のT細胞の約1%~20%がCD8+EM細胞であり;(iv)組成物中のT細胞の約5%~40%がCD8+TEMRA細胞である、組成物も提供される。ある特定の実施形態では、組成物中のT細胞の約20%~30%がCD8+ナイーブ細胞である。ある特定の実施形態では、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD8+CM細胞である。ある特定の実施形態では、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD8+EM細胞である。ある特定の実施形態では、組成物中のT細胞の約10%~30%がCD8+TEMRA細胞である。
【0012】
同様に、遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、(i)組成物中のT細胞の約5%~20%がCD4+ナイーブ細胞であり;(ii)組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+CM細胞であり;(iii)組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+EM細胞であり;(iv)組成物中のT細胞の約1%~5%がCD4+TEMRA細胞である、組成物も提供される。ある特定の実施形態では、T細胞の5%~15%がCD4+ナイーブ細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞の1%~7%がCD4+CM細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞の1%~10%がCD4+EM細胞である。
【0013】
同様に、上記の特許請求の範囲のいずれかの組成物を対象に導入するステップを含む、対象を処置する方法も本明細書において提供される。
【0014】
同様に本明細書において、対象を処置する方法であって、対象に薬物を投与するステップを含み、(i)対象が上記組成物のいずれかに従う遺伝子改変T細胞の注入を以前に受けたことがあり;(ii)薬物が自殺スイッチを誘発し;(iii)薬物が、対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%を殺滅するために十分に高いが対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%が生存するために十分に低い用量で送達される、方法も提供される。
【0015】
同様に、本明細書において遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死をもたらし得る自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)ナイーブT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、および/またはエフェクターメモリーT細胞の富化に有利な条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセスも提供される。ある特定の実施形態では、方法は、ナイーブT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞の富化に有利である。
【0016】
同様に、本明細書において遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死をもたらし得る自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)CD4+T細胞と比較してCD8+T細胞の富化に都合がよい条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセスも提供される。
【0017】
同様に、本明細書において、遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)活性化濃度のIL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下でドナーT細胞を培養するステップ;(ii)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(iii)一定期間培養後、自殺スイッチおよび選択可能マーカーの両方をコードするDNAをT細胞に導入するステップ;(iv)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(v)選択可能マーカーを発現する細胞を選択するステップ;(vi)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(vii)遺伝子改変T細胞を採取するステップを含み;但しステップ(iv)および(vi)が必要に応じたステップである、プロセスも提供される。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞あたり約1~10の平均VCNを有する。ある特定の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞あたり約1~7の平均VCNを有する。ある特定の実施形態では、ステップ(i)は、プロセスの開始時(1日目)に起こる。ある特定の実施形態では、ステップ(iv)はプロセスの3日目に起こる。ある特定の実施形態では、ステップ(vi)はプロセスの6日目に起こる。ある特定の実施形態では、プロセスの終了時、細胞の少なくとも50%が形質導入されて生存している。ある特定の実施形態では、プロセスの終了時、細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存している。
【0018】
本発明者らはまた、遺伝子改変CD8+T細胞を含む組成物であって、(i)遺伝子改変CD8+T細胞が自殺スイッチを発現し;(ii)遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも1%~約30%が最終分化エフェクターメモリーT細胞であり、および/または遺伝子改変CD8+T細胞の58%以下がナイーブT細胞である、組成物も提供する。
【0019】
本発明者らはまた、遺伝子改変T細胞を含む組成物であって、(i)遺伝子改変T細胞が自殺スイッチおよび細胞表面トランスジーンマーカーを発現し;(ii)遺伝子改変T細胞が細胞表面トランスジーンマーカーの所定範囲の発現レベルを示し、その範囲が少なくとも10倍である、組成物も提供する。発現レベルはフローサイトメトリーによるMFI値として測定される。この組成物中のCD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比は、好ましくは2未満である。
【0020】
本発明者らはまた、遺伝子改変T細胞を含む組成物であって、(i)遺伝子改変T細胞が、細胞がトリガー分子に曝露された場合に、細胞死をもたらし得る自殺スイッチを発現し;(ii)遺伝子改変T細胞が、細胞が特定の濃度のトリガー分子に曝露された場合に、細胞の少なくとも10%の死に至るが細胞の少なくとも10%の生存を可能にするように、トリガー分子に対して所定範囲の感受性を示す、組成物も提供する。
【0021】
一部の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞あたり約1~10、または細胞あたり約1~8、または細胞あたり約1~7、または約1~5の平均ベクターコピー数(VCN)を有する。
【0022】
一部の実施形態では、自殺スイッチは、FKBP12領域、FKBP12バリアント領域、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)、またはFRBバリアント領域を含む。一部の実施形態では、FKBP12バリアント領域は、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびアラニンから選択される36位でのアミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、トリガー分子は、ラパマイシン、ラパログ、AP1903、AP20187、またはAP1510である。
【0023】
本発明者らはまた、遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)活性化濃度のIL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下でドナーT細胞を培養するステップ;(ii)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(iii)一定期間培養後、自殺スイッチおよび選択可能マーカーの両方をコードするDNAをT細胞に導入するステップ;(iv)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(v)選択可能マーカーを発現する細胞を選択するステップ;(vi)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(vii)遺伝子改変T細胞を採取するステップを含み;但しステップ(iv)および(vi)が必要に応じたステップである(しかし好ましくは、1つまたはより好ましくは両方が実施される)、プロセスも提供する。採取されたT細胞は、本明細書で開示されるように使用することができる。
【0024】
本発明者らはまた、遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死をもたらし得る自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)ナイーブT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、および/またはエフェクターメモリーT細胞の富化に有利な条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセスも提供する。好ましくは、方法は、ナイーブT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞の富化に有利である。ステップ(i)および(ii)はその順序で実施する必要はなく、ステップ(i)は、ステップ(ii)の最中に起こり得る。
【0025】
本発明者らはまた、遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死をもたらし得る自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)CD4+T細胞と比較してCD8+T細胞の富化に有利である条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセスも提供する。ステップ(i)および(ii)は、その順序で実施する必要はなく、ステップ(i)はステップ(ii)の最中に起こり得る。
【0026】
本発明者らはまた、対象を処置する方法であって、上記の遺伝子改変T細胞の組成物を対象に導入するステップを含む、方法も提供する。同様に、本発明者らは、(a)対象の処置に使用するための、上記の遺伝子改変T細胞の組成物、および(b)対象を処置するための医薬の製造における上記の遺伝子改変T細胞の組成物の使用を提供する。対象は、理想的にはヒト対象であり、通常、HCTまたはHSCTに関連して細胞を投与される。
【0027】
本発明者らはまた、対象を処置する方法であって、対象に薬物を投与するステップを含み、(i)対象が本明細書に記載される遺伝子改変T細胞の注入を以前に受けたことがあり;(ii)薬物が自殺スイッチを誘発し;(iii)薬物が対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%を殺滅するために十分に高いが対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%が生存するために十分に低い用量で送達される、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1Aおよび1Bは、非形質導入T細胞(NT-T)、AOS-1、およびそのCD19レベルに基づいて選別された細胞におけるCD19表面発現を示す。細胞を7AAD-/AnnV-/CD3+集団/CD19-APCでゲート設定した。各々の記号は同じ個体ドナーからの細胞を示す。
【0029】
図2図2Aおよび2Bは、非形質導入細胞、AOS-1、およびそのCD19レベルに基づいて選別された細胞におけるCD8およびCD4サブセットの割合を示す。各々の記号は同じ個体ドナーからの細胞を示す。
【0030】
図3図3は、CD3細胞中の非形質導入細胞、AOS-1、およびCD19選別細胞におけるメモリーおよびエフェクター細胞の組成を示す。各々の棒グラフは上から下への順にTEMRA、EM、CM、およびナイーブ細胞を表す。
【0031】
図4図4は、CD4およびCD8サブセット中の非形質導入細胞、AOS-1、およびCD19選別細胞におけるメモリーおよびエフェクター細胞の組成を示す。各々の棒グラフは上から下への順にTEMRA、EM、CM、およびナイーブ細胞を表す。
【0032】
図5図5Aおよび5Bは、10nMリミドゥシドによる4時間アポトーシスアッセイにおいてリミドゥシドによって誘導されたアポトーシスの結果を提供する。細胞は7AAD/AnnV/CD3/CD19によって染色した。各々の記号は、同じ個体ドナーからの細胞を示す。
【0033】
図6図6は、リミドゥシド誘導アポトーシス(生存CD3+細胞のCD19+のMFIとして測定)とiC9-ΔCD19トランスジーン発現の強度との相関を描写する。
【0034】
図7図7は、リミドゥシド誘導アポトーシス(AnnV+細胞の%として測定)とiC9-ΔCD19トランスジーン発現の強度との相関を描写する。
【0035】
図8図8は、CD19の表面発現がカスパーゼ-9タンパク質レベルに関連することを示すウェスタンブロットを提供する。
【0036】
図9図9は、リミドゥシド誘導アポトーシス(殺滅有効性として測定)とiC9-ΔCD19トランスジーン発現の強度との相関を示す。
【0037】
図10図10は、より高いCD19 MFIを有するiC9発現細胞がより高いベクターコピー数を有することを示すグラフを描写する。
【0038】
図11図11は、ex vivoでの刺激時のT細胞におけるCD25、CD69、およびPD-1のアップレギュレーションを示すグラフを描写する。
【0039】
図12図12は、ex vivoでの刺激時のCD4およびCD8T細胞サブセットにおけるCD25、CD69、およびPD-1のアップレギュレーションを示すグラフを描写する。
【0040】
図13-1】図13A、13B、および13Cは、細胞が活性化されるとリミドゥシド誘導アポトーシスが増強され得ることを実証する結果を示す。細胞を、抗CD3/抗CD28によって再度活性化し、アポトーシスを、4時間アポトーシスアッセイにおいて10nMリミドゥシドによって誘導した。
図13-2】図13A、13B、および13Cは、細胞が活性化されるとリミドゥシド誘導アポトーシスが増強され得ることを実証する結果を示す。細胞を、抗CD3/抗CD28によって再度活性化し、アポトーシスを、4時間アポトーシスアッセイにおいて10nMリミドゥシドによって誘導した。
【0041】
図14図14Aは、殺滅有効性がカスパーゼ-9および抗アポトーシスタンパク質レベルに関連することを示すウェスタンブロットを提供する。図14Bは、活性化時のナイーブおよびメモリー集団の転換を示すグラフを描写する。図14Bでは、各々の棒グラフは、上から下に順にTEMRA、EM、CM、およびナイーブ細胞を表す。
【0042】
図15図15は、iC9-T細胞の背側IVISイメージングを提供する。
【0043】
図16図16は、iC9-T細胞の腹側IVISイメージングを提供する。
【0044】
図17図17は、リミドゥシド依存的殺滅を示すT細胞のIVISイメージングを示す。
【0045】
図18図18は、脾臓におけるiC9-T細胞の検出およびiC9のより高い発現および形質導入を有するT細胞の選択的除去を示す。
【0046】
図19図19Aおよび19Bは、CD3+T細胞におけるAOS-1細胞のピーク増大ならびにAOS-1細胞におけるメモリーおよびエフェクター細胞の組成を示す。図19B(右)では、各々の棒グラフは、上から下の順にTEMRA、EM、CM、およびナイーブ細胞を表す。
【0047】
図20図20は、内因性T細胞におけるメモリーおよびエフェクター細胞の再構築および組成を描写する。図20(右)では、各々の棒グラフは、上から下の順にTEMRA、EM、CM、およびナイーブ細胞を表す。
【0048】
図21図21は、AOS-1細胞におけるメモリーおよびエフェクター細胞の生着および組成を描写する。図21(右)では、各々の棒グラフは、上から下の順にTEMRA、EM、CM、およびナイーブ細胞を表す。
【0049】
図22図22は、B細胞およびNK細胞の再構築を提供する。
【0050】
図23図23は、注入したAOS-1産物からの抗腫瘍活性を描写する。
【0051】
図24図24は、注入後の腫瘍関連抗原の検出を示す。
【0052】
図25図25は、AOS-1が内因性のT細胞と比較してより高いTCR偏向を実証することを示す。
【0053】
図26図26は、内因性およびAOS-1細胞における免疫レパートリーの偏向を描写する。各クローンに関して、棒グラフは、左から右に80日目、128日目、および180日目を表す。
【0054】
図27図27は、-1日目にAOS-1細胞1.5×10個を投与したマウスに0日目に投与した5mg/kgリミドゥシドの効果を示す。図は、マウス40匹の平均値である。図27Aは、絶対細胞数を示し、図27Bは、リミドゥシド投与の時間に対する数を示す。
【0055】
図28図28は、AOS-1細胞のVCN分布を示す。
【0056】
図29図29は、抗CD3刺激後のAOS-1細胞のIFN-γ産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
ドナーからのT細胞を遺伝子改変した後、レシピエント(例えば、HCTまたはHSCTの一部として)に投与し、それらに自殺スイッチを提供することができる。T細胞がレシピエントにおいて合併症(例えば、GVHD)を引き起こす場合、自殺スイッチを誘発し、遺伝子改変細胞の根絶をもたらすことができる。
T細胞
【0058】
本明細書に開示されるように遺伝子改変されたT細胞は、ドナーリンパ球投与によって利益を得ることができる対象に投与するために有用である。これらの対象は典型的にはヒトであり、そのため本発明は典型的にはヒトT細胞を使用して実施される。
【0059】
T細胞は、任意の健康なドナーに由来し得る。ドナーは一般的に成人(少なくとも18歳)であるが、子供もまたT細胞ドナーとして適している(例えば、Styczynski 2018, Transfus Apher Sci 57(3):323-330を参照されたい)。
【0060】
ドナーからT細胞を得るための適したプロセスは、Di Stasi et al. (2011) N Engl J Med 365:1673-83(「プロトコール」)を伴う公表されたプロトコールに記載されている。一般的にT細胞は、ドナーから得られ、遺伝子改変および選択に供され、次いでレシピエント対象に投与することができる。T細胞の有用な起源はドナー末梢血である。末梢血試料は一般的に、ロイコフェレーシスに供され、白血球に関して富化された試料を提供する。この富化された試料(ロイコパック(leukopak)としても公知である)は、単球、リンパ球、血小板、血漿、および赤血球を含む多様な血液細胞で構成され得る。ロイコパックは典型的には、静脈穿刺またはバフィーコート産物と比較してより高濃度の細胞を含有する。
【0061】
試料を、同種細胞枯渇(「プロトコール」において考察したように)に供してもよいが、試料を同種細胞枯渇に供しないことが好ましい。このため、好ましい試料は、Zhou et al. (2015) Blood 125:4103-13に考察されるように、同種細胞を備えている(alloreplete)。これらの集団は、ドナー細胞の治療上の利点を提供するためのより頑強なT細胞レパートリーを提供する。このため、本発明の好ましい組成物は、同種細胞が枯渇されたT細胞ではなく、同種細胞枯渇ステップに供されていない。
【0062】
ドナーT細胞を、一般的に培養した(通常、例えば抗CD3および/または抗CD28抗体を使用して、必要に応じてIL-2を伴う活性化条件で)後、遺伝子改変する。このステップは、改変プロセスの終了時により高い収量のT細胞を提供する。
【0063】
T細胞を、目的の自殺スイッチ(以下を参照されたい)をコードするウイルスベクターを使用して形質導入することができる。適した形質導入技術は「プロトコール」に開示されており、フィブロネクチン断片CH-296を伴い得る。ウイルスベクターを使用する形質導入の代替として、例えばリン酸カルシウム、カチオン性ポリマー(例えば、PEI)、磁気ビーズ、電気穿孔および市販の脂質に基づく試薬、例えばLipofectamine(商標)およびFugene(商標)を使用して、例えば目的の自殺スイッチおよび目的の細胞表面トランスジーンマーカーをコードするDNAを、当技術分野で公知の任意の適した方法によって細胞にトランスフェクトすることができる。形質導入/トラスフェクションステップの1つの結果は、様々なドナーT細胞が、今や目的の自殺スイッチを発現することができる遺伝子改変T細胞であるということである。
【0064】
形質転換のための好ましいウイルスベクターは、Tey et al. (2007) Biol Blood Marrow Transpl 13:913-24および上記のDi Stasi et al. (2011)に開示されているレトロウイルスベクターである。このベクターは、iCasp9自殺スイッチおよびΔCD19細胞表面トランスジーンマーカー(以下をさらに参照されたい)をコードするテナガザル白血病ウイルス(Gal-V)シュードタイプ化レトロウイルスに基づく。これは、上記のTey et al.(2007)によって考察されているようにPG13パッケージング細胞株において産生することができる。所望のタンパク質をコードする他のウイルスベクターもまた使用することができる。レトロウイルスベクター、特に細胞あたりの高コピー数のプロウイルス組み込み体を提供することができるベクターが好ましい。
【0065】
形質導入/トランスフェクション後、細胞を、形質導入/トランスフェクション材料から分離して再度培養し、遺伝子改変T細胞を増大させることができる。T細胞は、例えば「プロトコール」に開示されるように所望の最少数の遺伝子改変T細胞が達成されるように増大させることができる。
【0066】
次いで遺伝子改変T細胞を、得られている細胞集団から選択することができる。自殺スイッチは通常、所望のT細胞の正の選択にとって適していないため、遺伝子改変T細胞はまた、目的の細胞表面トランスジーンマーカーも発現すべきであることが好ましい(以下を参照されたい)。この表面マーカーを発現する細胞を、例えば免疫磁気技術を使用して選択することができる。例えば、目的の細胞表面トランスジーンマーカーを認識するモノクローナル抗体にコンジュゲートされた常磁性ビーズを、例えば「プロトコール」に開示されているように、例えばCliniMACSシステム(Miltenyi Biotecから入手可能)を使用して使用することができる。
【0067】
代替の手順では、遺伝子改変T細胞を、形質導入ステップ後に選択し、培養した後、供給する。このように、形質導入、供給、および選択の順序は変更することができる。
【0068】
これらの手順の結果は、遺伝子改変されて、このように目的の自殺スイッチ(および典型的には目的の細胞表面トランスジーンマーカー)を発現することができるドナーT細胞を含有する組成物である。これらの遺伝子改変T細胞を、レシピエントに投与することができるが、通常は、凍結保存後に(必要に応じてさらに増大後に)投与される。
CD4+およびCD8+細胞
【0069】
組成物は、CD4+およびCD8+T細胞を含み得るが、理想的には、組成物内の遺伝子改変CD3+T細胞集団は、CD4+細胞およびCD8+細胞を含む。ロイコパック中のCD4+細胞のCD8+細胞に対する比は、典型的には2を超えているが、一部の実施形態では、本発明の組成物中の遺伝子改変CD4+細胞の遺伝子改変CD8+細胞に対する比は、2未満、例えば1.5未満である。理想的には、組成物中の遺伝子改変CD8+T細胞は、遺伝子改変CD4+T細胞より多く存在し、すなわちCD4+細胞のCD8+細胞に対する比は、1未満、例えば0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、または好ましくはさらに0.5未満である。このように、ドナー細胞から始まって遺伝子改変T細胞を産生する手順全体が、理想的にはCD4+T細胞と比較してCD8+細胞T細胞に関して富化する。好ましくは遺伝子改変T細胞の少なくとも60%がCD8+T細胞であり、より好ましくは少なくとも65%がCD8+T細胞である。遺伝子改変CD3+T細胞集団内でのCD8+T細胞の好ましい範囲は、55~75%の間、例えば63~73%である。CD8+およびCD4+T細胞の割合は、フローサイトメトリーによって容易に評価することができる。CD4+およびCD8+T細胞を選別および計数する方法は当技術分野で慣例である。
メモリーT細胞サブセット(Mahnke et al. (2013) Eur J Immunol 43:2797-809を参照されたい)
【0070】
組成物内の遺伝子改変CD3+T細胞の集団は、最終分化エフェクターメモリーT細胞(CD45RA+CD45RO-CCR7-細胞;「TEMRA」として定義される)、エフェクターメモリーT細胞(CD45RA-CD45RO+CCR7-細胞;「EM」として定義される)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-CD45RO+CCR7+細胞;「CM」として定義される)、およびナイーブT細胞(CD45RA+CD45RO-CCR7+細胞として定義される)を含み得る。これらの細胞は、フローサイトメトリーによって、CD45RA/ROおよびCCR7マーカーを使用して評価することができる。CCR7を認識し、CD45RAとCD45ROアイソフォームの間を識別することができる標識された試薬が、市販の供給元から容易に入手可能である。
【0071】
平均的なロイコパックは典型的には、最終分化エフェクターおよびエフェクターメモリーT細胞の各々を約20%含有する。ドナー細胞から遺伝子改変T細胞までの手順全体が、エフェクターメモリーT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞を富化し得る。
【0072】
一部の実施形態では、遺伝子改変T細胞の60%未満、例えば58%未満、好ましくは55%未満、およびより好ましくは50%未満がナイーブT細胞である。遺伝子改変CD3+T細胞集団内で、ナイーブT細胞の好ましい範囲は、30~60%の間、より好ましくは42~49%の間、および最も好ましくは43~46%の間である。ナイーブT細胞のこの割合は、T細胞レシピエントにおける有利なアウトカムと相関することが認められている。ナイーブEM細胞は、フローサイトメトリーによってCD45RA/ROおよびCCR7マーカーを使用して評価することができる。
【0073】
一部の実施形態では、遺伝子改変T細胞の少なくとも23%が、最終分化エフェクターメモリー(TEMRA)T細胞である。そのような実施形態では、TEMRA T細胞の画分は、好ましくは少なくとも27%、より好ましくは少なくとも30%、および最も好ましくは少なくとも33%である。一部の実施形態では、38%より多くの画分のTEMRA T細胞が観察されている。遺伝子改変CD3+T細胞の集団において、TEMRA T細胞の好ましい範囲は、23~40%の間、例えば28~40%の間、または好ましくは33~39%である。TEMRA細胞は、フローサイトメトリーによってCD45RA/ROおよびCCR7マーカーを使用して評価することができる。
【0074】
一部の実施形態では、遺伝子改変T細胞の17%以下がエフェクターメモリー(EM)T細胞である。そのような実施形態では、EM T細胞の画分は、好ましくは16%未満、より好ましくは15%未満、および最も好ましくは14%未満である。遺伝子改変CD3+T細胞の集団において、EM T細胞の好ましい範囲は7~17%の間、例えば7~15%、または好ましくは8~13%である。EM細胞は、フローサイトメトリーによってCD45RA/ROおよびCCR7マーカーを使用して評価することができる。
【0075】
遺伝子改変T細胞の集団において、TEMRA、EM、およびナイーブT細胞に加えて、セントラルメモリーT細胞の割合は、一般的に10%未満である。
【0076】
遺伝子改変T細胞のCD8+集団をより詳しく調べると、一部の実施形態では、遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも1%~約30%が最終分化エフェクターメモリーT細胞である。他の実施形態では、遺伝子改変CD8+T細胞の58%以下がナイーブT細胞である。好ましくは、少なくとも5%のTEMRA細胞および58%以下のナイーブT細胞が存在する。他の実施形態では、少なくとも5%のTEMRA細胞および少なくとも約25%~58%以下のナイーブT細胞が存在する。他の実施形態では、少なくとも10%のTEMRA細胞、および少なくとも約25%~58%以下のナイーブT細胞が存在する。他の実施形態では、少なくとも20%のTEMRA細胞、および少なくとも約25%~58%以下のナイーブT細胞が存在する。他の実施形態では、少なくとも5%のTEMRAおよび少なくとも約30%~58%以下のナイーブT細胞が存在する。平均的なロイコパックは典型的に、約25%のTEMRA CD8+T細胞および約60%のナイーブCD8+T細胞を含有する。このように、ドナー細胞から始まって遺伝子改変T細胞を産生する手順全体が、理想的にはCD8+画分においてナイーブT細胞と比較してメモリーT細胞を富化する。
【0077】
遺伝子改変CD8+T細胞の30%以上がTEMRA細胞である場合、少なくとも35%のTEMRA、より好ましくは少なくとも40%のTEMRA、および最も好ましくは少なくとも45%のTEMRAが存在することが好ましい。一部の実施形態では、50%より多くの画分のCD8+TEMRA T細胞さえ観察されている。遺伝子改変CD3+CD8+T細胞の集団において、TEMRA T細胞の好ましい範囲は、30~60%の間、例えば35~55%、または好ましくは40~55%である。
【0078】
遺伝子改変CD8+T細胞の58%以下がナイーブT細胞である場合、50%未満のナイーブT細胞、およびより好ましくは48%未満のナイーブT細胞が存在することが好ましい。遺伝子改変CD3+CD8+T細胞の集団において、ナイーブT細胞の好ましい範囲は、25%~58%の間、例えば30%~55%、または35~55%、好ましくは38~52%、および最も好ましくは40~48%である。
【0079】
遺伝子改変CD8+T細胞の集団において、TEMRA、EM、およびナイーブT細胞に加えて、セントラルメモリーT細胞の割合は一般的に4%未満である。
【0080】
一部の実施形態では、組成物内の遺伝子改変CD3+T細胞の集団は、約10%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約90%のCD8+T細胞を含む。遺伝子改変CD3+T細胞の集団は、約15%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約85%のCD8+T細胞、より好ましくは約20%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約80%のCD8+T細胞を含み得る。一部の実施形態では、改変CD4+T細胞は、約20%~約50%のナイーブ細胞、約15%~40%のCM細胞、約15%~40%のEM細胞、および約2%~約15%のTEMRA細胞を含む。一部の実施形態では、改変CD4+T細胞は、約25%~約45%のナイーブ細胞、約15%~30%のCM細胞、約15%~30%のEM細胞、および約2%~約15%のTEMRA細胞を含む。一部の実施形態では、改変CD8+T細胞は、約20%~約60%のナイーブ細胞、約1%~20%のCM細胞、約1%~20%のEM細胞、および約10%~約40%のTEMRA細胞を含む。一部の実施形態では、改変CD8+T細胞は、約20%~約60%のナイーブ細胞、約1%~10%のCM細胞、約1%~15%のEM細胞、および約10%~約40%のTEMRA細胞を含む。
【0081】
一部の実施形態では、組成物内の遺伝子改変CD3+T細胞の集団は、約20%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約80%のCD8+T細胞を含み、改変CD4+T細胞は、約25%~約45%のナイーブ細胞、約15%~30%のCM細胞、約15%~30%のEM細胞、および約2%~約15%のTEMRA細胞を含み;改変CD8+T細胞は、約20%~約60%のナイーブ細胞、約1%~10%のCM細胞、約1%~15%のEM細胞、および約10%~約40%のTEMRA細胞を含む。
【0082】
一部の実施形態では、本発明は、遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、組成物中のT細胞の約20%~40%がCD8+ナイーブ細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~20%がCD8+CM細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~20%がCD8 EM細胞であり、組成物中のT細胞の約5%~40%がCD8+TEMRA細胞である、組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、組成物中のT細胞の約20%~30%がCD8+ナイーブ細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD8+CM細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD8+EM細胞であり、組成物中のT細胞の約10%~30%がCD8+TEMRA細胞である、組成物を提供する。
【0083】
一部の実施形態では、本発明は、遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、組成物中のT細胞の約5%~20%がCD4+ナイーブ細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+CM細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+EM細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~5%がCD4+TEMRA細胞である、組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、組成物中のT細胞の約5%~15%がCD4+ナイーブ細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~7%がCD4+CM細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+EM細胞であり、組成物中のT細胞の約1%~5%がCD4+TEMRA細胞である、組成物を提供する。
自殺スイッチ
【0084】
本発明の遺伝子改変T細胞は、自殺スイッチ(当技術分野で誘導型自殺遺伝子または安全スイッチとしても公知である)を発現し、これは例えばGVHDを発症する場合に、所望の場合はin vivoでT細胞を根絶するために使用することができる。これらのスイッチは、T細胞を根絶することが望ましい場合に供給され、細胞死に至る(例えば、壊死またはアポトーシスを誘発することによって)トリガー、例えば薬物に反応する。これらの薬剤は、毒性の遺伝子産物の発現をもたらし得るが、遺伝子改変T細胞が薬剤に応答して毒性型に切り替えられるタンパク質を既に発現する場合には、より迅速な応答を得ることができる。
【0085】
好ましい自殺スイッチは、化学的二量体化誘導剤を対象に投与することによって誘発することができるアポトーシスタンパク質に基づく。アポトーシスタンパク質を、化学的二量体化誘導剤に結合するポリペプチド配列に融合すると、この化学的誘導剤またはリガンドを送達することによって、2つのアポトーシスタンパク質が近位となり得て、アポトーシスを誘発する。例えば、カスパーゼ-9を、薬剤リミドゥシドに応答して二量体化を誘導することができる改変ヒトFK結合タンパク質に融合させることができる。したがって、リミドゥシドを対象に送達すると、カスパーゼ-9スイッチを発現するT細胞のアポトーシスを誘発することができる。
【0086】
そのようなカスパーゼ-9スイッチは、上記のDi Stasi et al. (2011)に記載されており、同様にYagyu et al. (2015) Mol Ther 23(9):1475-85, Rossigloni et al. (2018) Cancer Gene Ther doi.org/10.1038/s41417-018-0034-1, Jones et al. (2014) Front Pharmacol doi.org/10.3389/fphar.2014.00254、米国特許第9,932,572号、米国特許第9,913,882号、米国特許第9,393,292号、および米国特許出願公開第2015/0328292号も参照されたい。FasまたはHSVチミジンキナーゼに基づく自殺スイッチもまた当技術分野で周知である。ヒトタンパク質、例えばカスパーゼ-9に基づく自殺スイッチは、これによって、スイッチを発現する細胞がヒト対象の免疫系によって異物と認識されるリスクが最小限となることから好ましい。
【0087】
スイッチのリガンド誘導剤の例としては、例えばKopytek, S.J., et al., Chemistry & Biology 7:313-321 (2000)およびGestwicki, J.E., et al., Combinatorial Chem. & High Throughput Screening 10:667-675 (2007); Clackson T (2006) Chem Biol Drug Des 67:440-2; Clackson, T., in Chemical Biology: From Small Molecules to Systems Biology and Drug Design (Schreiber, s., et al., eds., Wiley, 2007)に考察されるスイッチが挙げられる。
【0088】
安全スイッチに組み込まれるリガンド結合領域は、FKBP12v36改変FKBP12ポリペプチド、またはAP1903に結合するバリアントポリペプチドを含む他の適したFKBP12バリアントポリペプチド、または他の合成ホモ二量体化剤、例えばAP20187またはAP2015を含み得る。バリアントは、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、およびアラニンからなる群から選択される36位でのアミノ酸置換を有するFKBP領域を含み得る(Clackson T, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1998, 95:10437-10442)。リミドゥシドとしても公知のAP1903(CASインデックス名:2-ピペリジンカルボン酸、1-[(2S)-1-オキソ-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]-,1,2-エタンジイルビス[イミノ(2-オキソ-2,1-エタンジイル)オキシ-3,1-フェニレン[(1R)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロピリデン]]エステル、[2S-[1(R),2R[S[S[1(R),2R]]]]]-(9CI)CAS登録番号:195514-63-7;分子式:C78H98N4O20、分子量:1411.65)は、健康なボランティアにおいて安全であることが証明されている合成分子である(Iuliucci JD, et al., J Clin Pharmacol. 2001, 41:870-879)。
【0089】
安全スイッチは、改変活性、例えばホモ二量体化リガンドの非存在下で低減された基礎活性を有する改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含み得る。改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、例えば米国特許第9,913,882号、および上記の米国特許出願公開第2015-0328292号において考察され、例えば330位でのアミノ酸置換(例えば、D330EまたはD330A)、または例えば450位でのアミノ酸置換(例えば、N405Q)、または例えばD330E-N405QおよびD330A-N405Qを含むその組合せを含み得る。より低い基礎活性を有するカスパーゼ-9ポリペプチドは、例えば米国特許第9,434,935号、第9,932,572号、および第9,913,882号、ならびに米国特許出願第62/668,223号、第62/756,442号、第62/816,799号、第15/901,556号、第15/888,948号において以前に記載されている。
【0090】
本発明と共に使用するための最も好ましい自殺スイッチは、上記のDi Stasi et al. (2011)によって開示されるiCasp9であり、これはSGGGSリンカーを通してその内因性のカスパーゼ活性化および動員ドメインを欠如する改変ヒトカスパーゼ9(CASP9)に接続された、F36V突然変異を有するヒトFK506結合タンパク質(FKBP12)の配列からなる。F36V突然変異は、FKBP12の、合成ホモ二量体化剤AP20187およびAP1903(リミドゥシド)に対する結合親和性を増加させる。
【0091】
細胞死またはアポトーシスを誘導するために有用な安全スイッチ、および発現構築物を含む細胞死またはアポトーシスを誘導する関連する方法、ベクターを構築する方法、活性または機能に関するアッセイ、誘導型キメラポリペプチドを発現する細胞にex vivoおよびin vivoの両方でキメラポリペプチドの多量体化領域に結合する多量体化合物またはその薬学的に許容される塩を接触させることによるキメラポリペプチドの多量体化、本明細書に記載される発現ベクター、細胞、または多量体化合物、またはその薬学的に許容される塩の対象への投与、ならびに本明細書に記載される多量体化合物またはその薬学的に許容される塩の、誘導型キメラポリペプチドを発現する細胞を投与されている対象への投与の非制限的な例もまた、以下の特許および特許出願において見出すことができ、その各々は全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれている。2011年5月20日に提出された米国特許出願第13/112,739号、表題「METHODS FOR INDUCING SELECTIVE APOPTOSIS」、2011年11月24日に米国特許出願公開第2011-0286980-A1号として公開され、2015年7月28日に米国特許第9,089,520号として発行されたもの;Spencerらによって2013年3月10日に提出された米国特許出願第13/792,135号、表題「MODIFIED CASPASE POLYPEPTIDES AND USES THEREOF」、2014年9月11日に米国特許出願公開第2014-0255360-A1号として公開され、2016年9月6日に米国特許第9,434,935号として発行されたもの;2014年3月7日に提出された国際特許出願PCT/US2014/022004号、2014年10月9日にWO2014/16438号として公開されたもの;Slawinらによって2014年6月4日に提出された米国特許出願第14/296,404号、表題「METHODS FOR INDUCING PARTIAL APOPTOSIS USING CASPASE POLYPEPTIDES」、2016年6月2日に米国特許出願公開第2016-0151465-A1号として公開されたもの;Slawinらによって2014年6月4日に提出された国際特許出願PCT/US2014/040964号、2015年2月5日にWO2014/197638号として公開されたもの;2015年3月6日に提出された米国特許出願第14/640,553号、表題「CASPASE POLYPEPTIDES HAVING MODIFIED ACTIVITY AND USES THEREOF」、2015年11月19日に米国特許出願公開第2015-0328292-A1号として公開されたもの;Spencerらによって2015年3月6日に提出された国際特許出願PCT/US2015/019186号、2015年9月11日にWO2015/134877号として公開されたもの;Spencerらによって2015年12月14日に提出された米国特許出願第14/968,737号、表題「METHODS FOR CONTROLLED ELIMINATION OF THERAPEUTIC CELLS」、2016年6月16日に米国特許出願公開第2016-0166613-A1号として公開されたもの;Spencerらによって2015年12月14日に提出された国際特許出願PCT/US2015/065629号、2016年6月23日にWO2016/100236号として公開されたもの;Spencerらによって2015年12月14日に提出された米国特許出願第14/968,853号、表題「METHODS FOR CONTROLLED ACTIVATION OR ELIMINATION OF THERAPEUTIC CELLS」、2016年6月23日に米国特許出願公開第2016-0175359-A1号として公開されたもの;Spencerらによって2015年12月14日に提出された国際特許出願PCT/US2015/065646号、2016年9月15日にWO2016/100241号として公開されたもの;Bayleらによって2016年12月13日に提出された米国特許出願第15/377,776号、表題「DUAL CONTROLS FOR THERAPEUTIC CELL ACTIVATION OR ELIMINATION」、2017年6月15日に米国特許出願公開第2017-0166877-A1号として公開されたもの;およびBayleらによって2016年12月13日に提出された国際特許出願PCT/US2016/066371号、2017年6月22日にWO2017/106185号として公開されたもの、これらは全ての本文、表、および図面を含むその各々の全体が全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に記載される多量体化合物またはその薬学的に許容される塩は、本質的にこれらの刊行物に提供される実施例および本明細書に提供される他の実施例において考察されるように使用され得る。
【0092】
様々な実施形態では、本明細書において企図される組成物および方法は、任意のその間の百分率を含む、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%の形質導入効率を有する。
【0093】
様々な実施形態では、本明細書において企図される組成物および方法では、平均ベクターコピー数(VCN)は、少なくとも約1~少なくとも約10.0、少なくとも約1~少なくとも約9、少なくとも約1~少なくとも約8、少なくとも約1.0~少なくとも約7、少なくとも約1.0~少なくとも約5、または少なくとも約1.0、少なくとも約1.5、少なくとも約2.0、少なくとも約2.5、少なくとも約3.0、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、または少なくとも約5.0である。
【0094】
「ベクターコピー数」または「VCN」は、細胞のゲノムにおけるベクターまたはその部分のコピー数を指す。平均VCNは、細胞集団または個々の細胞コロニーから決定され得る。VCNを決定する例示的な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびフローサイトメトリーを含む。
【0095】
様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチによって形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも50%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。
【0096】
一部の実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は、約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。
【0097】
様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~8の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~7の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~5の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。
細胞表面トランスジーンマーカー
【0098】
上記のように、自殺スイッチの発現は通常、所望の遺伝子改変T細胞の正の選択にとって適していないため、これらの細胞は目的の細胞表面マーカーを発現すべきであることが好ましい。このマーカーは、細胞表面トランスジーンマーカーに基づく細胞の選択がまた、自殺スイッチを発現することができる細胞の選択ももたらすように、自殺スイッチと共に送達されるトランスジーンから発現されるべきである。
【0099】
理想的には、マーカーは、ドナーT細胞によって発現されないポリペプチドでなければならない。その上、理想的には、マーカーはヒトタンパク質に基づき、これによってマーカーを発現する細胞がヒト対象の免疫系によって異物として認識されるリスクが最小限となる。例えば、T細胞によって天然に発現されないヒトCDタンパク質をこの目的のために使用することができる。
【0100】
本発明と共に使用するために最も好ましい細胞表面トランスジーンマーカーは、上記のDi Stasi et al.(2011)によって開示される切断型CD19(ΔCD19)であり、これはアミノ酸333位で切断されたヒトCD19からなり、細胞質内ドメインのほとんどを除去する。細胞外CD19ドメインはなおも認識され得るものの(例えば、フローサイトメトリー、FACS、またはMACSによって)、細胞内シグナル伝達を誘発する潜在性は最小限となる。CD19は通常、T細胞ではなくてB細胞によって発現されるが、CD19+T細胞を選択することにより、遺伝子改変T細胞を非改変ドナーT細胞から分離することが可能となる。
【0101】
本発明者らは、細胞表面トランスジーンの発現レベル(および形質導入後のベクターコピー数)が、遺伝子改変T細胞内で広く異なり得ることを見出した。その上、細胞の薬物動態および薬力学特性は、マーカーのその発現レベルに応じて異なる。
【0102】
遺伝子改変T細胞は、マーカーの発現レベルの少なくとも10倍の範囲を示すことができ、すなわち最高レベルのマーカーを発現する細胞より少なくとも10倍低い細胞表面マーカーを示す一部の細胞を含む。これらの発現レベルは、トランスジーンマーカーが細胞表面上に存在することから、フローサイトメトリーを使用して、例えば平均蛍光強度(MFI)値として評価することができる。このように、FACS実験におけるマーカーに関して認められた蛍光シグナルは、少なくとも10の範囲を有する。実際に、10よりかなり高い範囲、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、またはさらには1000またはそれよりも高い範囲を達成することができる。
【0103】
発現レベルは典型的には、少なくとも10の範囲にわたって連続的に変化する(例えば、xおよび10xの発現レベルを有する2群ではなくて)。このため、発現レベルの分布が存在し、集団は、そのマーカーの発現レベルが、観察される最高発現レベルの1/10である一部の細胞を含み、多様な発現レベルがその範囲内で分布する(および、典型的にはより低い発現レベルを有する一部の細胞も)。このため、細胞表面マーカーの発現に関するFACS細胞数ヒストグラムは、少なくとも10倍変化するレベルを含み、典型的には、多様な異なる発現レベルがその範囲にわたって分布する。
【0104】
一定範囲の細胞表面トランスジーンマーカーの発現レベルを有する細胞を含めることによって、自殺スイッチの所定範囲の発現レベルもまた存在する。本発明者らは、自殺スイッチの高い発現レベルを有するT細胞が、自殺スイッチが誘発された場合により迅速かつより完全にin vivoで根絶されるが、低い発現レベルを有するT細胞はより長く生存し得ることを示した。その上、本発明者らは、T細胞が活性化されるとマーカーの発現レベルが増加することを見出した。理論に拘束されたくはないが、遺伝子改変T細胞が所定範囲の発現レベルを有することによって、ドナーT細胞を供給するという利益をなおも提供することができる一部の遺伝子改変T細胞を保持しながら、問題のある細胞(例えば、GVHDの際に)を除去することが可能であるように思われる。言い換えれば、発現レベルの範囲があることによって、GVHDに対するその関与にもかかわらず、全てのドナーT細胞を除去することによるのではなく、活性化した問題がある細胞に対してT細胞除去を標的化することが可能となる。
【0105】
このように、本発明の組成物内の遺伝子改変T細胞は、リミドゥシドなどのトリガー分子に対して所定範囲の感受性を示し得る。このように、トリガー分子を使用してT細胞のごく一部(例えば、少なくとも10%)を根絶してもよく、一方、T細胞の一部(例えば、少なくとも10%)は生存する。トリガー分子の濃度は、細胞死と生存の所望のバランスに従って選択することができ、例えばより高い割合のT細胞の根絶が望ましい場合にはより高濃度を送達する。これらの濃度は、単純な用量設定実験によって、トリガー分子に応答した細胞死のレベルのモニタリングによって決定することができる。投与される濃度は、標的T細胞の少なくとも10%を除去するために十分に高くなければならないが、それらの90%より多くを殺滅するほど高くはない。生存率は、10~90%生存のこの範囲内のいずれかであるように選択することができる。
自殺スイッチと細胞表面トランスジーンマーカーの同時発現
【0106】
上記のように、本発明の遺伝子改変T細胞は、マーカーを発現するT細胞の選択がまた、自殺スイッチを発現する細胞の選択ももたらすように、自殺スイッチと細胞表面トランスジーンマーカーの両方を発現しなければならない。
【0107】
理想的には、遺伝子改変T細胞は、自殺スイッチと細胞表面トランスジーンマーカーの固定された比を発現する。自殺スイッチと細胞表面トランスジーンマーカーが確実に共に発現されるためには、それらを単一の遺伝子から発現させることが好ましく、その翻訳されたポリペプチドを切断して両方の成熟ポリペプチドを個別に提供する。これを達成する1つの方法は、2つのポリペプチド配列を、Thosea asigna昆虫ウイルスに由来する2A様配列によって連結することである。これは、自殺スイッチと細胞表面マーカーの発現の本質的に固定された化学量論比(2つの成熟ポリペプチドが単一の2A様配列によって連結されている場合には1:1比)を提供する。コードする遺伝子の5’末端で自殺スイッチをコードすることによって、自殺スイッチを有しない(例えば、翻訳の早期終止による)細胞を選択するリスクが最小限となる。このように、細胞表面トランスジーンマーカーおよび自殺スイッチの発現は並行して起こる。
【0108】
一部の実施形態では、自殺スイッチおよび細胞表面トランスジーンマーカーは、同じ成熟ポリペプチドであり得るが、実際問題としてそれらが個別のポリペプチドであるほうがより単純であると想像される。したがって好ましい遺伝子は、5’から3’の順に:F36V突然変異を有するヒトFK506結合タンパク質(FKBP12)、これにSGGGSリンカーを通して、その内因性カスパーゼ活性化および動員ドメインを欠如する改変ヒトカスパーゼ9(CASP9)が接続され、これに2A様配列を通してΔCD19マーカーが接続されたものをコードする(上記のDi Stasi et al. (2011)の図1Cを参照されたい)。さらに、上記のように、この遺伝子は、テナガザル白血病ウイルス(Gal-V)に基づいて上記のDi Stasi et al. (2011)によっても開示されるようにレトロウイルスベクターによってコードされることが好ましい。この系は、本明細書において、遺伝子改変T細胞を選択するためのおよびヒトにおいてin vivoでそのアポトーシスを制御するための効率的な系を提供することが示されている。
【0109】
様々な実施形態では、本明細書において企図される組成物および方法は、その間の任意の百分率を含む、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%の形質導入効率を有する。
【0110】
様々な実施形態、本明細書において企図される組成物および方法では、平均VCNは、少なくとも約1~少なくとも約10.0、少なくとも約1~少なくとも約9、少なくとも約1~少なくとも約8、少なくとも約1.0~少なくとも約7、少なくとも約1.0~少なくとも約5、または少なくとも約1.0、少なくとも約1.5、少なくとも約2.0、少なくとも約2.5、少なくとも約3.0、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、または少なくとも約5.0である。
【0111】
様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも50%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。
【0112】
一部の実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は、約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。
【0113】
様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~8の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~7の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。様々な実施形態では、T細胞集団は、本明細書に記載される自殺スイッチを形質導入され、組成物中のT細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存しており、遺伝子改変T細胞は約1~5の平均ベクターコピー数(VCN)を有することが企図される。
処置の方法
【0114】
本発明の遺伝子改変T細胞は、それを必要とするヒト対象を処置するための方法において使用することができ、そのような対象を処置するための薬剤を調製するために使用することができる。細胞は通常、注入によってレシピエント対象に送達される。対象に関するT細胞の典型的な用量は、細胞10~10個/kgの間である。小児患者は一般的に、およそ細胞10個/kgの用量を投与され、成人患者はより高用量、例えば細胞3×10個/kgを投与される。
【0115】
一般的に言えば、本発明の遺伝子改変T細胞は、公知のドナー白血球注入(DLI)と同じ方法で使用することができるが、自殺スイッチという追加の利益を有する。
【0116】
遺伝子改変T細胞を投与される対象はまた、典型的には、同種ドナーからの他の組織を投与され、例えば対象に、造血細胞および/または造血幹細胞(例えば、CD34+細胞)を投与することができる。この同種移植片組織および遺伝子改変T細胞は、理想的には同じドナーに由来し、そのためそれらは遺伝的に一致する。さらに、ドナーおよびレシピエントは好ましくはハプロタイプ一致であり、例えば一致した非血縁ドナーまたは適したファミリーメンバーである。例えば、ドナーは、レシピエントの親または子供であり得る。対象が遺伝子改変T細胞を必要とすると同定される場合、適したドナーをT細胞ドナーとして同定することができる。
【0117】
遺伝子改変T細胞を造血細胞および/または造血幹細胞と共に使用する場合、遺伝子改変T細胞は一般的に、後の時点で、例えば20~100日後の間に投与される。レシピエントが遺伝子改変T細胞の投与後に合併症を発症する(例えば、レシピエントがGVHDを発症する)場合、例えばリミドゥシドをレシピエントに投与することによって自殺スイッチを誘発することができる。
【0118】
T細胞を除去するために必要なリミドゥシドの最低用量は、レシピエントに存在する遺伝子改変T細胞の数に依存するであろう。この最低値を超える用量を投与することができるが、通常の薬学的原理に従って、過剰な投薬は回避すべきである。本発明者らは、0.4mg/kgの用量が細胞1.5×10個/kgの用量で注入された細胞を除去することができることを見出した。一般的に、0.1~5mg/kgの間のリミドゥシドの用量が投与され、通常、0.1~2mg/kgまたは0.1~1mg/kgで十分であり、好ましい用量は0.4mg/kgである。リミドゥシドの一連の複数用量を投与することができるが、例えば初回用量が全ての遺伝子改変T細胞を除去しないことが見出される場合、第2の用量を投与することができる等である。
【0119】
本明細書に示されるように、高レベルの細胞表面トランスジーンマーカー発現を発現する細胞は、自殺スイッチトリガーに対してより感受性がある。これらの細胞はまた、GVHDにとって最も問題でもあり得る。このように一部の実施形態では、最も感受性が高い細胞を殺滅するトリガー(例えば、リミドゥシド)の第1の用量を投与し、次により感受性が低い細胞を殺滅する第2の用量(第1の用量より高い用量)を投与する。さらなる用量(必要に応じて漸増する)を必要に応じて投与することができる。このように、問題があるT細胞を一度に全てではなく、順に枯渇させることが可能である。
【0120】
レシピエントに、遺伝子改変T細胞を投与する前に(および同種移植片を投与する前に)骨髄破壊的条件付けを行ってもよい。このように、レシピエント自身のα/βT細胞(およびB細胞)を枯渇させた後に、遺伝子改変T細胞を投与する(および同種移植片を投与する)ことができる。同様に、レシピエントに投与される造血(幹)細胞を、α/β細胞に関して枯渇してもよい。これに対し、レシピエントに投与される遺伝子改変ドナーT細胞は、好ましくはα/β細胞に関して枯渇されない。
【0121】
レシピエントは、子供、例えば年齢0~16歳、または0~10歳の子供であり得る。一部の実施形態では、レシピエントは成人である。
【0122】
レシピエントは、血液のがん(例えば、処置不応性血液がん)または遺伝性血液障害を有し得る。例えば、レシピエントは急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、重度複合免疫不全症(SCID)、ウィスコット-アルドリッチ症候群(WA)、ファンコニ貧血、慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、または多発性骨髄腫を有し得る。
【0123】
遺伝子改変T細胞は、レシピエントが同種移植片の移植後、移植関連感染症を制御するために役立ち得る。
AOS-1
【0124】
本発明と共に使用するために最も好ましいT細胞集団は、本明細書に開示される「AOS-1」細胞である。これらの好ましい遺伝子改変T細胞は、以下の特徴の1つまたは複数(および最も好ましくは全て)を有する:
(a)それらは、上記で考察されたようにレトロウイルス形質導入によってゲノムに挿入されたΔCD19マーカーに連結されたiCasp9自殺スイッチを発現する。
(b)それらは、フローサイトメトリーによって測定したΔCD19マーカーの発現レベルの少なくとも10倍の範囲を有する。
(c)CD8+T細胞がCD4+T細胞より多数存在する。
(d)最終分化エフェクターメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、およびセントラルメモリーT細胞が存在する。
(e)T細胞の60%未満であるが、少なくとも25%がナイーブT細胞である。
(f)それらがヒトドナーから得られ、同種細胞枯渇ステップに供されなかった。
これらの細胞は、本明細書に開示される方法を使用して得ることができる。
全般
【0125】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなり得るか、または追加の何か、例えばX+Yを含み得る。
【0126】
数値xに関連する用語「約」は、必要に応じてであり、例えばx±10%を意味する。
【0127】
2つの値に関連する用語「の間」は、それらの2つの値を含み、例えば10mgと20mg「の間」の範囲は、中でも10、15、および20mgを包含する。
【0128】
数、パーセント、または他の値に関連する用語「少なくとも「X」」は、用語「「X」またはそれより多く」と互換的であり、例えば「少なくともX%」は、「Xまたはそれより多く」と互換的である。
【実施例
【0129】
(実施例1)
AOS-1細胞の調製
上記のDi Stasi et al. (2011)は、自殺スイッチを有する遺伝子改変T細胞を調製する方法を開示している。AOS-1細胞は、異なるプロセスから得られたが、本質的に以下の通りであった:
・ 細胞をロイコフェレーシスによってドナーの末梢血試料から得て、白血球に関して富化する。単核球を、CliniMACS Prodigy(商標)装置(Miltenyi Biotec)を使用する密度勾配分離によって富化し、-130℃での貯蔵のために凍結保存する。
・ 遺伝子改変細胞を調製する場合、それらをドライバス内で融解した後(1日後)、Prodigy(商標)装置において培養バッグ中、37℃および5%COで培養する。細胞を培養培地に細胞1~3×10個/mLで播種する。培地は、T細胞を維持する(トランスフェリン、アルブミン、およびインスリンを含有する)無血清培地であり、これに100U/mL IL-2、0.2μg/mL抗CD3 mAb(Miltenyi BiotecのOKT3)、および0.5μg/mL抗CD28 mAbを添加したものである。これらの条件はT細胞を活性化する。
・ 3日目に、培養物に新鮮な100U/mL IL-2および33%の追加の新鮮な培地を供給する。
・ 5日目に、細胞をRetroNectin(商標)コーティングACバッグに移し、上記のTey et al. (2007)および上記のDi Stasi et al. (2011)によって開示されるiCasp9自殺スイッチをコードするGal-Vレトロウイルスベクターを形質導入する。IL-2を200U/mLで添加する。
・ 6日目、細胞を処理して、残存しているレトロウイルス粒子(上清)を除去し、培地中に細胞10個/mLで200U/mL IL-2と共に再懸濁させた。培養を37℃、5%COで継続する。
・ 8日目、形質導入した細胞を、再度Prodigy(商標)システムを使用してCD19発現に基づいてMACSによって選択する。CD19+細胞を上記と同様にバッグ中で、さらなるIL-2(200IU/mL)と共に細胞10個/mLで培養する。
・ 9日目、細胞を採取し、遠心分離機においてPlasmaLyte A(Rizoli (2011) J Trauma 70(5 Suppl) S17-8)によって洗浄し、同種レシピエントによって必要とされるまで-130℃での貯蔵のために凍結保存培地中に再懸濁する。
・ しかし、9日目で細胞数が適切でなかった場合(例えば、意図される処置にとって細胞が少なすぎる場合)、培養を最大15日まで継続した後、採取することができる。
【0130】
このように、Di Stasi et al. (2011)、上記と比較して重要な差は、細胞がかなり早期に活性化されること、例えばIL-2および抗CD3が5日目ではなくて1日目に培養に添加される点である。その上、抗CD28抗体を1日目に使用する。
【0131】
このプロセスによって得られた細胞は、最初のドナー細胞よりかなり低いCD4+/CD8+比を有し(CD4+細胞の大多数からCD8+細胞の大多数への変化)、このためプロセスはCD4+T細胞と比較してCD8+細胞に関して富化する。その上、それらは以前のin vivo試験において観察された頻度より少ない頻度で同種移植レシピエントにおいてGVHDを生じることが見出されている。理論に拘束されたくはないが、このリスクの低減は、GVHDとCD4+細胞との間の連結が報告されているため(例えば、Coghill et al. (2011) Blood 117:3268-76)および/またはT細胞の調製プロセスがin vivoでさらに増大するその潜在性を制限するin vitroでの増大を伴うためであり得る。
(実施例2)
同種T細胞におけるiC9の示差的発現はリミドゥシドに対する曝露後の活性化T細胞の選択的枯渇を可能にし、in vivoでの同種細胞枯渇を可能にする。
【0132】
実施例1において調製したAOS-1細胞は、幹細胞移植後のウイルスおよび腫瘍特異的免疫を提供することができる。GVHDの場合、リミドゥシドによるiC9の活性化は、同種反応性T細胞の急速な殺滅およびGVHDの寛解をもたらす。しかし、遺伝子改変T細胞は宿主において再度増大することができる。本実施例は、同種iC9改変T細胞によって処置した患者における示差的アポトーシスを理解するために、T細胞サブセットを評価し、トランスジーン発現とリミドゥシド感受性との間の関連を評価する。
【0133】
結果は、iC9によるT細胞のin vivo枯渇が、T細胞の活性化状態によって調節されるトランスジーン発現レベルに依存することを示している。高度に活性化された同種反応性T細胞は、iC9のより高いレベルを発現し、これによってそれらはリミドゥシド誘導アポトーシスに対してより感受性となり、GvHDを引き起こすT細胞を選択的に枯渇するが宿主自身のT細胞を保存するように作用する。これらの結果は、十分なiC9トランスジーン発現が、リミドゥシドによって誘導されるアポトーシスを誘発するための重要なエレメントであることを示している。同様に、アポトーシスは、iC9発現の強度に相関することも観察された。最高のトランスジーン発現細胞を選択することによって、完全な二量体化剤依存的除去を達成することができるであろう。除去は、T細胞活性化によって増強することができる。iC9トランスジーン発現は、in vitroでの再活性化によってアップレギュレートすることができ、このように、リミドゥシドの存在下でアポトーシスの誘発を可能にする。低いiC9を有する集団は、TCR活性化によって除去されるより大きい効力を有する。このことは、AOS-1が高度に活性化される場合、リミドゥシドによってさらに除去される可能性があることを示している。
プラスミド、レトロウイルス、およびレトロウイルス形質導入
【0134】
安全スイッチシステムは、カスパーゼ-9および切断型CD19(ΔCD19)に連結し、遺伝子改変T細胞(SFG-iC9-ΔCD19)の選択を可能にする突然変異したFKBP12結合タンパク質である。リミドゥシドに対する曝露は、タンパク質の二量体化を引き起こし、改変T細胞のアポトーシスが起こる。SFG-iC9-ΔCD19は、T細胞活性化および増大方法、ならびにSFG-iC9-ΔCD19構築物を導入するためのレトロウイルス形質導入法と共に、以前に記載されている(上記のDi Stasi et al. (2011);上記のTey et al. (2007))。
免疫表現型解析、スペクトル型決定、ウェスタンブロット、およびPCR
【0135】
リミドゥシド誘導アポトーシスの感受性に対するトランスジーン発現レベルの効果を評価するために、AOS-1 T細胞を抗CD19および抗CD3によって染色し、CD19染色の強度に基づいて3つの等しい集団に選別した(CD19high、CD19med、およびCD19low)。アポトーシスを測定するために、細胞5×10個を48ウェルに播種し、4時間アッセイにおいてリミドゥシドを10nMの濃度で添加した。表現型解析および機能的アッセイ(例えば、アポトーシス)を、抗CD3/抗CD28抗体を使用してT細胞再活性化の前後でフローサイトメトリー、qPCR、およびウェスタンブロットによって実施した。細胞の表現型を、フローサイトメトリー解析のために抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD19、抗CD45RA、抗CD45RO、および抗CCR7抗体によって細胞を染色することによって決定した。最終分化エフェクターメモリー細胞は、CD45RACD45ROCCR7として定義される。エフェクターメモリーT細胞は、CD45RACD45ROCCR7として定義される。セントラルメモリーT細胞は、CD45RACD45ROCCR7として定義される。ナイーブT細胞は、CD45RACD45ROCCR7として定義される。T細胞受容体レパートリーの多様性を、フローサイトメトリーによって評価した。
In Vivo試験
【0136】
ルシフェラーゼを同時発現する対照または遺伝子改変T細胞のNSGマウスへのi.v.注射によって、in vivo試験を実施した。1×10個のEGFPluc+iC9-T細胞を、NSGマウスに注入した。T細胞の生物発光を、注入の2および24時間後に測定し、その後滴定用量のリミドゥシドまたはプラセボ(対照薬)のi.p.注射を行った。動物に、対照薬(テムシロリムス;1mg/kg)、リミドゥシド(0.001~1mg/kg)、またはビヒクルのいずれかを投与した。残存しているT細胞の生物発光を薬物投与の6、24、および48時間後に測定した。生物発光イメージングおよびフローサイトメトリーを実施して、iC9活性化後のin vivo枯渇を評価した。
結果
【0137】
形質導入およびCD19選択後のAOS-1細胞の純度は、95%であった(図1A)。CD19の平均蛍光強度(MFI)に基づくAOS-1細胞の選別によって、CD19 high、medium、およびlow選別集団に関してそれぞれ、73、46、および22のCD19 MFIを得た(図1B)。図2は、これらの細胞におけるCD8およびCD4区画の%に有意差がなかったことを示している。図3は、iC9-ΔCD19low発現細胞がiC9-ΔCD19highより少ない最終分化エフェクターメモリー(TEMRA)細胞およびiC9-ΔCD19highより多くのナイーブ様の細胞(それぞれ、28±6%対39±8%(TEMRA)、および57±9%対42±12%(ナイーブ)、P<0.05)を含有したことを示す。これはCD4+およびCD8+サブセットの間で一貫した(図4)。
【0138】
4時間アポトーシスアッセイにおいて、殺滅効率は、iC9-ΔCD19lowにおいて、非選別またはiC9-ΔCD19high細胞と比較して有意に減損した(それぞれ、P<0.05、P<0.001)。図5は、CD19細胞の高いMFIの95%より多くが4時間以内にアポトーシスを経験したことを示しており、殺滅有効性の中央値は選別されたhigh、medium、およびlow細胞において92%、87%、および69%である。図6および7は、アポトーシスがiC9-ΔCD19トランスジーン発現の強度と相関することを示している。図8は、iC9-ΔCD19low細胞がまた、ウェスタンブロットによって測定した場合により少ないカスパーゼ-9タンパク質も発現し、カスパーゼ-9タンパク質のレベルがリミドゥシド感受性の減少と相関することを示している。このように、iC9の十分な発現は、アポトーシスを誘発するために必須である。低いCD19発現集団は、より低いカスパーゼ-9タンパク質を有し、CD19発現がアポトーシスを誘発するための重要なエレメントであるiC9タンパク質レベルと相関することを示している。図9は、アポトーシスが、iC9-ΔCD19トランスジーン発現の強度と相関することを示している。加えて、ゲノムDNA 1μgあたりのベクターコピー数(VCN)には、highおよびmedium CD19+集団の間で統計学的な差が存在し(P=0.047)、より高いCD19 MFIを有するiC9発現細胞は、図10に示すようにより大きいVCNを有するように思われ、これは異なる細胞サブセットにおいてqPCRによって測定したゲノムDNA 1μgあたりのVCNを示す。
【0139】
動物試験から、0.001mg/kgリミドゥシドによって処置したマウスにおいてさえもCD19のMFIの用量依存的な減少が示され、iC9-ΔCD19highT細胞の優先的殺滅およびiC9-ΔCD19lowT細胞の保存を実証した(図16~18)。しかし、iC9-ΔCD19トランスジーン発現は、レトロウイルスLTRプロモーターによって調節され、T細胞の活性化状態に対して感受性であることから、本発明者らは、CD25、CD29、およびPD-1マーカーを使用してTCR架橋後の活性化状態、およびCD19を使用してトランスジーンレベルを測定した。図11は、ex vivo刺激時のCD3+T細胞におけるCD25、CD69、およびPD-1のアップレギュレーションを示す。図12は、ex vivo刺激時のCD3+CD4+およびCD3+CD8+T細胞におけるCD25、CD69、およびPD-1のアップレギュレーションを示す。図13A~Cは、非刺激iC9-ΔCD19がトランスジーン発現に基づいて示差的な殺滅を示したが(high、medium、およびlow iC9-ΔCD19に関してそれぞれ、86%、76%、および50%)、再活性化は、リミドゥシドに曝露すると、トランスジーンMFIを増加させ、全ての画分におけるアポトーシスを90%より多く増加させた。low-CD19選別細胞では、細胞をin vitroで活性化後、CD19+特異的殺滅は46%から97%に増加し(図13Aおよび13B)、CD19の平均MFIは8倍増加した(図13C)。これは、カスパーゼ-9タンパク質レベルと一貫し、トランスジーン発現を、in vitroで再活性化されるとアップレギュレートすることができ、これはリミドゥシドの存在下でアポトーシスの誘発を可能にする(図14A)。図14Aはまた、細胞を活性化した場合のiC9レベルの増加が抗アポトーシスタンパク質BCL-2の発現の減少と相関することも示している。図14Bは、活性化時のナイーブおよびメモリー集団の転換を示す。併せて考慮すると、これらの結果は、T細胞活性化とトランスジーン発現との関係を確認する。
【0140】
図15~17は、iC9-EGFPT細胞が、薬物投与の6時間後に効率的に除去されたこと、および細胞が低用量群(0.01mg/kg)において24時間および48時間でさらに枯渇されたことを示している。処置の24時間および48時間後に、1mg/kg、0.1mg/kg、および0.01mg/kgを投与したマウスにおいてBLIの有意な減少を認める(P<0.001)。1mg/kgのリミドゥシドを投与したマウスにおけるiRC9-T細胞の相対的な全光子束は、6時間、24時間、および48時間でそれぞれ、96%、98.1%、および98.1%低減された。0.1mg/kgリミドゥシドによって処置したマウスでは、6時間、24時間、および48時間でそれぞれ、92.5%、95.5%、および95.3%の低減が観察された。0.01mg/kgリミドゥシドによって処置したそれらのマウスでは、6時間、24時間、および48時間でそれぞれ、82.5%、90.5%、および90.5%の低減が観察された(P<0.001)。リミドゥシドによって誘導された殺滅スイッチの最大の除去効果は、薬物の投与後24時間で達成された。平均輝度の値を、以下の式を使用して各マウスにおける最初の輝度に対して正規化した:D平均輝度=100[時点「X」の輝度]/[時点「0」の輝度]。エラーバーはS.E.M.を表す。二元配置ANOVA検定を使用して、異なる時点での複数の群間のT細胞輝度の差の統計学的有意性を評価した。
【0141】
図18は、iC9が最も高度に発現する、最も高度に形質導入されたT細胞を選択的に除去したことを示す。図18は、薬物処置の48時間後の脾臓から採取した細胞のフローサイトメトリー解析を描写する。左のパネルは、CD3+CD19+細胞(iC9+T細胞)が、ビヒクル群と比較して0.01mg/kg、0.1mg/kg、および1mg/kgリミドゥシドによる処置後に有意に除去されたことを実証する(p<0.001)。各群においてそれぞれ、99.6%、98.6%、および89.6%の低減が観察された。図18の右のパネルは、CD3+CD19+細胞におけるCD19のMFIを示す。以前のデータと一貫して、処置した群の各々においてCD19のMFIの用量依存的減少が観察された。
(実施例3)
骨髄悪性疾患の処置のためにハプロタイプ同一の幹細胞移植を受けた子供における養子移入後のic9を発現する同種T細胞の特徴付け
【0142】
同種ドナーT細胞の養子移入は、腫瘍細胞上の白血病関連抗原(LAA)の認識またはアロ反応性を通した血液悪性疾患の有効な処置であり得る。しかし、同種反応性T細胞はまた、GvHDを引き起こし得ることから、免疫療法としてのその使用が制限される。GvHDを最小限にしながら同種T細胞の抗腫瘍効果を利用するために、本発明者らは、リミドゥシドに対する曝露後にアポトーシスを誘導するiC9安全スイッチを有するドナーT細胞を遺伝子改変した。本明細書において、本発明者らは、これらのAOS-1細胞が、骨髄悪性疾患の処置のためにα/βTCRおよびCD19を枯渇させたハプロタイプ同一のHSCTを受けた子供において持続し、増大し、および機能的LAA特異的T細胞を含有することを示している。
【0143】
結果は、iC9安全スイッチによって操作された同種AOS-1T細胞がハプロHSCTを受けた患者への養子移入後に生着して増大し、長期間の存続を実証することを示している。AOS-1産物内のLAA特異的T細胞およびアロ反応性T細胞は、注入後の末梢血において検出可能であり、おそらく骨髄悪性疾患の除去に寄与する。その上、高レベルのCD19トランスジーンマーカーを発現する細胞は、低レベルを発現する細胞よりin vivoでより急速に除去されることが示された。
方法
【0144】
注入前産物(AOS-1:iC9および切断型CD19(ΔCD19)をコードするバイシストロニックレトロウイルスベクターによって改変されたドナーT細胞)および患者の末梢血単核球(PBMC)を、α/βT細胞およびCD19 B細胞を枯渇したハプロ-HSCT後にAOS-1(細胞1×10個/kg)を投与した患者12人(AML(10)、MDS(1)、JMML(1))から分析した。iC9およびΔCD19をコードするレトロウイルスベクターによって改変したT細胞を、実施例1に記載するように調製した。
【0145】
ドナー改変T細胞の生着および存続を、フローサイトメトリーによってCD3およびCD19の同時発現によって測定した。内因性および遺伝子改変T細胞をまた、CD4:CD8比、メモリー細胞組成(TN、TCM、TEM、TEMRA;CD45RAおよびCD62L)、およびT細胞受容体Vβ多様性に関して表現型解析する。AOS-1産物および処置後試料を、10nMリミドゥシドに曝露しておよび曝露せずに、WT1、PRAME、MAGE(A1、C1、C3)、NEおよびPR3に由来するペプチドプールに対するIFN-γELIspotを使用してLAA特異的T細胞に関して特徴付けし(5aaが重複した15aa)、AOS-1の抗白血病の関与を決定した。
細胞の調製
【0146】
PBMCを、予め加温した(37℃)細胞培養培地と共に混合し、400×g rpmで、4℃で10分間遠心分離した。細胞を再懸濁させ、Cellometerを使用して計数した。次いで、細胞を再度、1200rpmで10分間遠心分離した。次いで、細胞を培養培地に1×10個/mLの濃度で再懸濁させ、各ウェルあたり100μLを添加した。
ペプチドおよびPHAの調製
【0147】
2×ペプチドストックまたはPHA 100μLを、所望のウェルに添加した。プレートを2分間軽く混合した。プレートを37℃、5%COを含むインキュベーターに移し、18~24時間インキュベートした。
ELISpotプレートの調製および顕色
【0148】
捕捉抗IFNγ抗体100μLをPBSによって予め湿らせた各ウェルに添加した。次いでプレートを4±3℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートをD-PBS 200μLによって3回洗浄した。非結合部位を、10%培養培地を含有するD-PBS 100μLによってBSC中、室温で120±15分間ブロックした。次いでプレートをD-PBS 200μLによって3回洗浄した。D-PBS 200μLをウェルに添加した。プレートを、細胞の準備ができるまで室温で放置した。
【0149】
細胞の準備ができた後、プレートをインキュベーターから取り出し、ウェルを水道水で2回すすいだ。次いで、プレートを、0.05%Tween(登録商標)20を含有するD-PBSによって5回洗浄した。ウェルおよびウェルの底を蒸留水ですすいだ。1μg/mlビオチン-抗IFNγ抗体100μLを添加し、37℃のインキュベーターにおいて1時間インキュベートした。次いでプレートを上記のように洗浄した。Extravidin-アルカリホスファターゼ100μLを各ウェルに添加し、75分間インキュベートした。次いでプレートを水道水、洗浄緩衝液、および蒸留水で洗浄した。BCIP/NBT基質溶液100μLを各ウェルに添加し、室温で5~10分間インキュベートした。プレートを水道水ですすぐことによって反応を停止させた。プレートを室温で風乾させた後、ELISpotリーダー上で読み取った。
結果
【0150】
AOS-1をHSCT後22.5日の中央値で注入した(範囲12~34日、患者1人は89日目に注入し、患者1人は147日目に注入した)。AOS-1細胞(CD3+CD19+)は、患者12人全てにおいて注入の1~2週間後に末梢血中で検出可能であり、注入の2カ月後に、総CD3+T細胞の24±17%のピーク増大存在比率の中央値、および絶対細胞数66.9±35.6個/μLに達し、これは最大24カ月まで検出することができた(図19A)。
【0151】
AOS-1T細胞は、CD8偏向表現型を示したが、内因性のT細胞は、よりバランスのとれたCD4:CD8比を示した(図19B、20、および21)。AOS-1細胞は、AOS-1注入の4カ月後に最大絶対数に達した。AOS-1は主にそれぞれ、CD45RA-CD62L+およびCD45RA-CD62L-セントラルおよびエフェクターメモリーT細胞であった(図19B)。図20は、HSCTの4カ月後のCD3+CD19-T細胞の平均絶対数が細胞697±396個/μLより多く、CD4+CD19-T細胞の平均絶対数が、HSCTの5カ月後で301±77個/μLであることを示している。CD4:CD8 CD3+CD19-Tの比は、5、6、および12カ月後でそれぞれ、1.85、1.67、および1.4であった。内因性のT細胞再構築の時間枠と一致して、絶対AOS-1細胞は、HSCT後3~4カ月で最大増大に到達したが、内因性のT細胞はなおも回復中であり、AOS-1細胞からの抗ウイルスおよび抗腫瘍免疫の有益な効果がウイルス感染症の保護および再発にとってより重要である(図21)。図22は、HSCT後の内因性のNKおよびB細胞の再構築を示す。
【0152】
AOS-1産物において、本発明者らは、WT1、PRAME、MAGE、NE、およびPR3に対して重複するペプチドプールを使用してELIspotによって、T細胞注入の2~5カ月後に得た末梢血試料においてLAA特異的T細胞を検出した(図23)。重要なことに、LAA反応性は、iC9活性化リミドゥシドに対する曝露によって大きく減損した(図23)。さらに、TCR Vβの使用を測定し、AOS-1T細胞では、HSCTの6カ月後に内因性のT細胞と比較して高度に偏向したTCRレパートリーが観察され、TCRクローンの選択および増大を示している(図25および26)。AOS-1を移植した患者3人を、GvHDを制御するためにリミドゥシドによって処置し、末梢血中のCD3+CD19+T細胞の急激な減少(62±12%)が起こった。リミドゥシドによって処置した患者では、CD3+CD19+T細胞は、GvHDのさらなる症例なく回復し、iC9を使用してアロ反応性のT細胞クローンがin vivoで枯渇されたことを示唆している。
【0153】
さらなる実験は、リミドゥシドの投与後のlow-CD19、medium-CD19、およびhigh-CD19集団の除去の速度を調べた。図27は、CD19-high細胞(■)が30分以内に除去され;CD19-medium細胞(▲)のレベルが1時間以内にほぼゼロへと低下したが;CD19-low細胞(▼)のレベルはよりゆっくりと低下したことを示している。この効果は、細胞の絶対数(図27A)および各個別の集団の開始濃度に従って正規化した数(図27B)の両方について認められた。
(実施例4)
ベクターコピー数(VCN)分析
【0154】
ベクターコピー数(VCN)は、細胞治療産物の臨床的製造からの重要な品質属性の1つであり、実施例1に記載されるように調製したAOS-1細胞に関して評価した。
方法
【0155】
多重qPCRアッセイを設計し、実施例1に記載されるように形質導入した細胞産物特異的トランスジーンおよび参照遺伝子を検出した。比較ΔΔCT法を、特徴付けされたキャリブレーターと共に使用して、試料CT値を細胞あたりのベクターコピー数に変換する。
【0156】
アッセイを、Applied Biosystems 7500 Fast Real-Time PCRシステムにおいて96ウェルプレートフォーマットで、細胞産物特異的トランスジーンの同時増幅のための適格なプライマー/プローブの組合せを使用し、iカスパーゼ9特異的、FAM標識、および参照TFRC遺伝子を使用し、HEX標識TaqManプローブを使用してduplexアッセイにおいて実行した。全てのqPCR試料を調製し、PCRワークステーションまたはBSC内のqPCR 96ウェル反応プレートに移した。
【0157】
非形質導入および形質導入試料から単離したDNAを、iカスパーゼ9およびTFRC参照遺伝子の検出のために設計された適格なトランスジーンプライマー/プローブの組合せを使用して6回の反復実験でマルチプレックスqPCRアッセイによって分析する。既知のトランスジーンコピー数を有する特徴付けされたキャリブレーター細胞から単離したDNAを、PCおよびTA試料と共に分析し、これをVCN計算の参照点とする。各qPCR反応は、5ngの試料DNAを含有する。PC試料から単離したDNAを、qPCRアッセイの陰性対照とする。
結果
【0158】
実施例1に記載されるように調製したAOS-1細胞のVCNを分布で示す(図28)。近似正規分布(正規分布の2つの混合物)は、4.0に近い平均値を有し、範囲は1~7である。変動に関して、これは3標準偏差の分布であり、このことは正規分布の場合、分布から引き出された値の99.7%が3標準偏差内であることを意味する。外れ値は同定されていない。
(実施例5)
AOS-1細胞のIFNγ効力
【0159】
実施例1に記載されるように調製したこれらのAOS-1細胞の機能性を、抗CD3による刺激時の異なるIFNγ分布を介して測定した。この試験のデータは、カスパーゼ9レトロウイルスベクターによるドナーT細胞の形質導入が、日和見感染に対する免疫を提供するその能力を変更しないことを実証している。これはまた、AOS-1細胞内に含有されるT細胞の機能が正常であることを示唆している。
方法
【0160】
実施例1に記載されるように得たT細胞を再懸濁させ、CD3に対する抗体を使用してin vitroで24時間活性化した。
【0161】
分泌されたサイトカインを含有する細胞培養上清をアッセイの準備ができるまで-20℃で凍結し、ELISAを使用してサイトカイン濃度を決定した。両方のアッセイは、製造元の推奨に従って実施した。
【0162】
Corningの抗CD3抗体プレコート96ウェルフォーマットをT細胞活性化のために使用した。プレートを2~8μg/cm2(または0.64~2.56μg/ウェル)の抗CD3抗体(クローンUCHT1)によってコーティングした。
【0163】
2つの異なるAOS-1細胞試料(1Aおよび1B)を、1×10、0.5×10、0.25×10、0.125×10、および0.06×10個/mLの異なる播種密度で200μL/ウェルで播種し、24時間活性化した。分泌されたIFNγを含有する上清を収集し、新しい96ウェル組織培養処置プレートに移し、-20℃で少なくとも1日凍結した。収集した上清を融解し、細胞培養上清中のIFNγの量を定量するためにELISAによってアッセイした。
【0164】
BioCoatプレートは、細胞において強力な応答を誘発し、播種した細胞数に依存して応答を示す(図29)。
(実施例6)
代表的な実施形態
【0165】
A1.遺伝子改変CD4T細胞および遺伝子改変CD8T細胞を含む遺伝子改変T細胞を含む組成物であって、(i)遺伝子改変T細胞が自殺スイッチを発現し;(ii)遺伝子改変T細胞の約25%~60%がナイーブT細胞である、組成物。
【0166】
A2.遺伝子改変T細胞の約30~60%がナイーブT細胞である、実施形態A1に記載の組成物。
【0167】
A3.遺伝子改変T細胞の約42~49%がナイーブT細胞である、実施形態A1に記載の組成物。
【0168】
A4.組成物中の遺伝子改変CD4+T細胞の遺伝子改変CD8+T細胞に対する比が2未満である、実施形態A1に記載の組成物。
【0169】
A5.遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも10%が最終分化エフェクターメモリーT細胞であり、および/または遺伝子改変CD8+T細胞の58%以下がナイーブT細胞である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0170】
A6.遺伝子改変CD8+T細胞の少なくとも30%が最終分化エフェクターメモリーT細胞であり、遺伝子改変CD8+T細胞の50%以下がナイーブT細胞である、実施形態A5に記載の組成物。
【0171】
A7.遺伝子改変T細胞が、細胞表面トランスジーンマーカーの所定範囲の発現レベルを示し、範囲が少なくとも10倍であり、発現レベルがフローサイトメトリーによって測定され、発現レベルが平均蛍光強度(MFI)値として測定される、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0172】
A8.範囲が少なくとも100倍である、実施形態A7に記載の組成物。
A9.遺伝子改変T細胞が、トリガー分子に対して所定範囲の感受性を示し、特定の濃度のトリガー分子に対する細胞の曝露が、細胞の少なくとも10%の死に至るが細胞の少なくとも10%の生存を可能にする、実施形態A7またはA8に記載の組成物。
【0173】
A10.組成物中の遺伝子改変CD4+T細胞の遺伝子改変CD8+T細胞に対する比が0.5未満である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0174】
A11.自殺スイッチがカスパーゼ-9を含む、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0175】
A12.自殺スイッチが、FKBP12領域、FKBP12バリアント領域、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)またはFRBバリアント領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0176】
A13.トリガー分子が、ラパマイシン、ラパログ、AP1903、AP20187、またはAP1510である、実施形態A9~A12のいずれか1つに記載の組成物。
【0177】
A14.FKBP12バリアント領域が、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびアラニンからなる群から選択される36位でのアミノ酸置換を有する、実施形態A12に記載の組成物。
A15.FKBP12バリアント領域が、2コピーのFKBP12v36を含む、実施形態A13に記載の組成物。
【0178】
A16.遺伝子改変T細胞がヒトT細胞である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0179】
A17.(i)遺伝子改変T細胞が、ΔCD19マーカーに連結され、レトロウイルス形質導入によってT細胞のゲノムに挿入されたiCasp9自殺スイッチを発現し;(ii)遺伝子改変T細胞が、フローサイトメトリーによって測定したΔCD19細胞表面マーカーの発現レベルの少なくとも10倍の範囲を有し;(iii)組成物が、CD4+遺伝子改変T細胞より多くのCD8+遺伝子改変T細胞を含み;(iv)組成物が、遺伝子改変最終分化エフェクターメモリーT細胞、遺伝子改変エフェクターメモリーT細胞、および遺伝子改変セントラルメモリーT細胞を含み;(v)遺伝子改変T細胞の50%未満がナイーブT細胞であり;(vi)T細胞が、ヒトドナーから得られ、同種細胞枯渇ステップに供されなかった、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0180】
A18.遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~10の平均ベクターコピー数(VCN)を有する、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0181】
A19.遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~7の平均VCNを有する、実施形態A18に記載の組成物。
【0182】
A20.遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約2~6の平均VCNを有する、実施形態A18に記載の組成物。
【0183】
A21.遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、遺伝子改変CD3+T細胞が約20%~約40%のCD4+T細胞および約60%~約80%のCD8+T細胞を含み、
(i)改変CD4+T細胞が、
(a)約25%~約45%のナイーブ細胞、
(b)約15%~約30%のセントラルメモリーT(CM)細胞、
(c)約15%~約30%のエフェクターメモリーT(EM)細胞、
(d)約2%~約15%の最終分化エフェクターメモリー(TEMRA)細胞
を含み;
(ii)改変CD8+T細胞が、
(a)約20%~約60%のナイーブ細胞、
(b)約1%~約10%のCM細胞、
(c)約1%~約15%のEM細胞、および
(d)約10%~約15%のTEMRA細胞
を含む、組成物。
【0184】
A22.遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、
(i)組成物中のT細胞の約20%~40%がCD8+ナイーブ細胞であり;
(ii)組成物中のT細胞の約1%~20%がCD8+CM細胞であり;
(iii)組成物中のT細胞の約1%~20%がCD8+EM細胞であり;
(iv)組成物中のT細胞の約5%~40%がCD8+TEMRA細胞である、組成物。
【0185】
A23.組成物中のT細胞の約20%~30%がCD8+ナイーブ細胞である、実施形態A22に記載の組成物。
【0186】
A24.組成物中のT細胞の約1%~10%がCD8+CM細胞である、実施形態A22またはA23に記載の組成物。
【0187】
A25.組成物中のT細胞の約1%~10%がCD8+EM細胞である、実施形態A22~A24のいずれかに記載の組成物。
【0188】
A26.組成物中のT細胞の約10%~30%がCD8+TEMRA細胞である、実施形態A22~A25のいずれかに記載の組成物。
【0189】
A27.遺伝子改変CD3+T細胞を含む組成物であって、
(i)組成物中のT細胞の約5%~20%がCD4+ナイーブ細胞であり;
(ii)組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+CM細胞であり;
(iii)組成物中のT細胞の約1%~10%がCD4+EM細胞であり;
(iv)組成物中のT細胞の約1%~5%がCD4+TEMRA細胞である、組成物。
【0190】
A28.T細胞の5%~15%がCD4+ナイーブ細胞である、実施形態A27に記載の組成物。
【0191】
A29.T細胞の1%~7%がCD4+CM細胞である、実施形態A27またはA28に記載の組成物。
【0192】
A30.T細胞の1%~10%がCD4+EM細胞である、実施形態A27~A29のいずれかに記載の組成物。
【0193】
A31.対象を処置する方法であって、先行実施形態のいずれかに記載の遺伝子改変T細胞の組成物を対象に導入するステップを含む、方法。
【0194】
A32.対象に薬物を投与するステップを含む、対象を処置する方法であって、(i)対象が、先行実施形態のいずれかに記載の遺伝子改変T細胞の注入を以前に受けたことがあり;(ii)薬物が自殺スイッチを誘発し;(iii)薬物が、対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%を殺滅するために十分に高いが対象に存在する遺伝子改変T細胞の少なくとも10%が生存するために十分に低い用量で送達される、方法。
【0195】
A33.遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死に至ることができる自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)ナイーブT細胞と比較して、最終分化エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、および/またはエフェクターメモリーT細胞の富化に有利な条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセス。
【0196】
A34.ナイーブT細胞と比較して最終分化エフェクターメモリーT細胞の富化に有利である、実施形態A33に記載の方法。
【0197】
A35.遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)細胞がトリガー分子に曝露された場合に細胞死に至ることができる自殺スイッチの発現を指示できる核酸を、ドナー対象からのT細胞に導入するステップ;および(ii)CD4+T細胞と比較してCD8+T細胞の富化に有利な条件下でT細胞を培養するステップを含む、プロセス。
【0198】
A36.遺伝子改変T細胞を調製するプロセスであって、(i)活性化濃度のIL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下でドナーT細胞を培養するステップ;(ii)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(iii)一定期間培養後、自殺スイッチおよび選択可能マーカーの両方をコードするDNAをT細胞に導入するステップ;(iv)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(v)選択可能マーカーを発現する細胞を選択するステップ;(vi)一定期間培養後、さらなるIL-2を添加するステップ;(vii)遺伝子改変T細胞を採取するステップを含み;但し、ステップ(iv)および(vi)が必要に応じたステップである、プロセス。
【0199】
A37.遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~10の平均VCNを有する、実施形態A33~A36のいずれか1つに記載のプロセス。
【0200】
A38.遺伝子改変T細胞が、細胞あたり約1~7の平均VCNを有する、実施形態A37に記載のプロセス。
【0201】
A39.ステップ(i)がプロセスの開始時(1日目)に起こる、実施形態A36に記載のプロセス。
【0202】
A40.ステップ(iv)がプロセスの3日目に起こる、実施形態A36に記載のプロセス。
【0203】
A41.ステップ(vi)がプロセスの6日目に起こる、実施形態A36に記載のプロセス。
【0204】
A42.プロセスの終了時、細胞の少なくとも50%が形質導入されて生存している、実施形態A36~A41のいずれかに記載のプロセス。
【0205】
A43.プロセスの終了時、細胞の少なくとも90%が形質導入されて生存している、実施形態A36~A41のいずれかに記載のプロセス。
【0206】
本発明者らの研究は、単なる例として上記で記載されており、本発明の範囲および精神内に留まりながらそれらに改変を行うことができると理解される。
【0207】
本明細書において参照した各々の特許、特許出願、刊行物、および文書の全体は、参照により本明細書に組み込まれている。上記の特許、特許出願、刊行物、および文書の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることを認めたわけではなく、これらの刊行物または文書の内容または日付に関するいかなる承認も構成しない。その引用は関連する開示の検索を示すものではない。文書の日付または内容に関する全ての声明は、利用可能な情報に基づいており、その精度または正確性を認めたわけではない。
【0208】
本技術の基本的態様から逸脱することなく、前述に改変を行ってもよい。本技術を、1つまたは複数の特定の実施形態を参照して実質的に詳細に記載してきたが、当業者は、本出願に具体的に開示される実施形態に変更を行ってもよく、それでもなおこれらの改変および改善が本技術の範囲および精神に含まれることを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【国際調査報告】