(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】強化された生分解性複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20220131BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20220131BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20220131BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220131BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20220131BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08L67/02
C08L67/04
C08K7/14
C08J5/04 CFD
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522441
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2019078797
(87)【国際公開番号】W WO2020083959
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520132403
【氏名又は名称】アークティック・バイオマテリアルズ・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Arctic Biomaterials Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】レフトネン,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ラーッコネン,ミカ
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB09
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4J002CF03W
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4J200DA28
4J200EA05
4J200EA07
(57)【要約】
本発明の開示は、ガラス繊維と、ポリ乳酸(PLA)及びポリブチレンサクシネート(PBS)を含むポリマーブレンドとを含む複合材料に関し、ここで、該複合材料は、約10重量%~約80重量%のガラス繊維を含み、かつ、該ポリマーブレンドは約20重量%~約60重量%のPLA及び約40重量%~約80重量%のPBSを含む。本開示は、該強化複合材料を含む物品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維と、ポリ乳酸(PLA)及びポリブチレンサクシネート(PBS)を含むポリマーブレンドとを含む複合材料であって、ここで、該複合材料は、約10重量%~約80重量%のガラス繊維を含み、かつ、該ポリマーブレンドは約20重量%~約60重量%のPLAと約40重量%~約80重量%のPBSとを含む、複合材料。
【請求項2】
ポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの重量に基づいて、約30重量%~約55重量%、特に約40重量%~約50重量%、より特に約50重量%のPLAを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの重量に基づいて、約45重量%~約70%重量%、特に約50重量%~約60重量%、より特に約50重量%のPBSを含む、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
複合材料におけるポリマーブレンドの含量は、複合材料の重量に基づいて、約20重量%~約90重量%の範囲、特に約60重量%~約90重量%の範囲である、請求項1~3のいずれかに記載の複合材料。
【請求項5】
複合材料は、約10重量%~約70重量%、特に約15重量%~約60重量%、より特に約20重量%~約50重量%、さらにより特に約30重量%~約40重量%のガラス繊維を含む、請求項1~4のいずれかに記載の複合材料。
【請求項6】
ガラス繊維は以下:
SiO
2 65-75重量%
Na
2O 12-17重量%
CaO 8-11重量%
MgO 3-6重量%
P
2O
5 0.5-2.5重量%
B
2O
3 1-4重量%
K
2O >0.5重量%-4重量%
SrO 0-4重量%、及び
Al
2O
3及びFe
2O
3の合計で最大で0.3重量%
の組成を有する、請求項1~5のいずれかに記載の複合材料。
【請求項7】
複合材料は、約20重量%~約40重量%のガラス繊維と、約60重量%~約80重量%の、約50重量%のPLA及び約50重量%のPBSを含むポリマーブレンドとを含む、請求項1~6のいずれかに記載の複合材料。
【請求項8】
複合材料の熱たわみ温度は、ISO 75 方法Aにより測定して、85℃以上、特に90℃以上、より特に95℃以上、さらにより特に100℃以上である、請求項1~7のいずれかに記載の複合材料。
【請求項9】
複合物品の熱たわみ温度は、ISO 75 方法Bにより測定して、85℃以上、特に90℃以上、より特に95℃以上、さらにより特に100℃以上である、請求項1~8のいずれかに記載の複合材料。
【請求項10】
複合材料は、ISO 180に従って測定して、10kJ/m
2以上、特に20kJ/m
2以上、より特には30kJ/m
2以上のノッチ付きアイゾット耐衝撃性を有する、請求項1~8のいずれかに記載の複合材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の強化複合材料を含む物品。
【請求項12】
物品は、射出成形、ブロー成形、圧縮成形又は押し出しから選択される方法によって製造される、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
物品は、20℃~50℃の型温度まで成形された成形品である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
物品は、0.6mm以上の平均壁厚を有する、請求項11~13のいずれかに記載の物品。
【請求項15】
以下のステップ:
-ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、及びガラス繊維を提供するステップ、
-場合により、さらなるポリマー及び成分を提供するステップ、
-PLA、PBS、任意のさらなるポリマー及び任意の原料を、熱処理下で共にブレンドし、押出機でポリマー溶融物を提供するステップ:
-ポリマー溶融物にガラス繊維を添加し、強化ポリマー溶融物を提供するステップ、
-強化ポリマー溶融物を押し出しし、強化複合材料を提供するステップ、
-場合により、該強化複合材料をペレット化するステップ
を含む、請求項1~10のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化された生分解性複合材料に関する。より特には、本発明は、良好な耐熱性及び靭性を有する、強化されたポリ乳酸系複合材料に関する。本発明はさらに、該複合材料を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常使用されるプラスチック廃棄物による環境汚染が大きな問題となっている。この問題の考えられる1つの解決策は、汎用の合成ポリマーを、加水分解及び微生物作用を受けやすい生分解性ポリマーに代替することである。ポリ乳酸(PLA)及びポリブチレンサクシネート(PBS)は、環境にやさしい生分解性ポリマーの例であり、汎用の合成石油系ポリマーに取って代わることを目的としている。
【0003】
PLAは、再生可能な資源から製造された、生分解性熱可塑性脂肪族ポリエステルである。PLAは良好な機械的特性を有するため、種々の最終用途に良好なポリマーである。しかし、衝撃強度、熱たわみ温度(HDT)、ガス透過率、加工のための溶融粘度、靭性等のPLAの他の特性は、耐久消費財のような用途に十分良好ではない。原材料としてのPLAは非常に高価であり、PLAの生産速度は非常に遅いため、消耗品又は耐久消費財としての日常的な使用にPLAを用いることは、経済的に実現可能ではなかった。
【0004】
PLAの種々の特性は、PLAを、例えば比較的良好な耐熱性、衝撃強度及び溶融加工性を有する他の適当な生分解性ポリマーと混合することによって改良することができる。この方法は、(中間的な特性を生じることが要求される)2つのポリマーが非相溶性であるために非効果的であり得り、材料の再生可能含分及び堆肥化可能性を低減し得る。PLAは、高い柔軟性、適度な衝撃強度、耐熱性及び耐化学物質性を有するポリブチレンサクシネート(PBS)とブレンドされてきた。
【0005】
国際公開第2015/000081号には、ポリ乳酸、ポリ(ブチレンサクシネート)及び堆肥化可能なポリエステルを含む、耐熱性組成物が開示されている。
【0006】
PLAとPBSを共にブレンドすることの問題は、これらのブレンドの混和性であり、混和性の程度が完全に明らかではないことである。PBSの添加によってPLAのTgは変化しないことが報告されており、したがって、PBS含量が20重量%未満である場合にレオロジー結果は親和性を示すことがわかったが、該ブレンドは混和性ではないと結論付けられた。他方、PBSは10重量%の添加レベルまでのPLAと混和性であることが観察された。しかし、PBSとPLAとは熱力学的に非親和性であり、ブレンドは、50/50のPLA/PBS比におけるブレンド系の位相反転点を有する、非混和性相構造を示したことも報告された。
【0007】
PBSとのブレンドにおけるPLAの靭性の増加について、文献で報告された結果は、やや残念なものである。PLA/PBSブレンドの延性(ductility)(破断までの引張り(strain-to-break))における改善は、PBS含量が90重量%に達するまで見られなかった。引張強度は、80重量%までのPBS含量で増加したが、その後、80重量%より多くのPBS含量ではわずかに増加した。同様のタイプの挙動がヤングモジュラスにおいても見られた。
【0008】
PLAの機械的特性及び耐熱性を高める別の方法は、フィラーを添加することで複合材料を作ることである。しかし、この方法もまた、材料の耐衝撃性が低下する可能性があり、材料をさらによりもろくするため、多くの用途において望ましくない。PLAのHDTを高める別の方法は、結晶化度を高めること、ガラス転移温度で軟化するアモルファス材料の体積を減らすことであり、それによって、製品がより高温でその形状を維持可能にすることである。しかしながら、結晶化度の増加は、成形中又は押出後の下流における冷却時間を長くする必要がある場合があり、これは、生産プロセスの効率、すなわち製造スピードを低下させる。ニートポリマーとしてのPLA結晶化は遅く、結晶化を加速するために、核剤、高い結晶化温度(例えば高い型温度)を必要とし、核剤の助けを用いても、汎用の合成石油系ポリマー(例えばPP及びABS)と比べて、結晶化時間は長く、生産速度は非常に長い。さらに、このような高い型温度は、業界標準ではなく、投資を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
商業的に実行可能であり、高いバイオ系材料含量を有し、良好な耐衝撃性、特に高温での変形に対する高い耐性、良好なメルトフロー特性などの良好な機械的特性を示し、低コストである、生分解性かつ堆肥化可能なPLA系材料に対する要求がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本発明において、PLAを、ポリブチレンサクシネート、すなわち別の生分解性ポリマーとブレンド化することによって、および、該ブレンドをガラス繊維で強化することによって、PLA及びPBSブレンドの非混和性にも関わらず、PLAの機械的特性及び耐熱性を改善できることがわかった。
【0012】
さらに、驚くべきことに、本発明において、ガラス繊維をブレンドに導入することにより、PLAとPBSとのブレンドから、低コストで、良好な物理的特性を有する物品を製造することができることがわかった。
【0013】
したがって、本発明は、一態様において、ガラス繊維と、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートを含むポリマーブレンドとを含む、強化複合材料を提供する、ここで、該複合材料は、約10重量%~約80重量%のガラス繊維を含み、該ポリマーブレンドは、約20重量%~約60重量%のPLA及び約40重量%~約80重量%のPBSを含む。
【0014】
先行技術文献がPLAとPBSの20重量%超のブレンドは混和性であることを開示しているとしても、PLA及びPBSを混和性の比率でブレンドすることによって、PLAの上記の欠点は改善されない。驚くべきことに、PLA/PBS比率が約20/80重量%~約60/40重量%である場合、良好な機械的特性、高い耐熱性及び強靭性が、少なくとも10重量%のガラス繊維をPLA/PBSブレンドに組み込むことによって達成できることが分かった。さらに、ガラス繊維と共にこれらのブレンド比率を用いることで、PLA及びPBSよりも低く、PLAの結晶化を回避することができるために、製造サイクルタイムが短縮されるため、材料費及び製造コストを低く維持できる。機械的特性及び耐熱性の改善は、ガラス繊維の含有量が少なくとも10重量%になると向上する。材料費の削減は、ガラス繊維の含有量に正比例する。
【0015】
別の態様において、本発明は、本発明の強化複合材料を含む物品を提供する。該物品としては、硬質のパッケージ、家庭用品、電子機器及び自動車の内装部品が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ガラス繊維で強化された、高い耐熱性及び高い機械的特性を有する、生分解性のPLA系複合材料を提供する。
【0017】
本発明の複合材料及び本発明の複合材料から製造された物品の利点は、これらが生分解性であり、堆肥化可能であるということである。
【0018】
本発明の複合材料及び本発明の複合材料から製造された物品のさらなる利点は、これらが、高い機械的特性、良好な耐衝撃性、特に高温及び/又は負荷下での変形に対する良好な耐性、並びに射出成形のための良好なメルトフロー特性を有することである。さらに、複合材料から製造した物品のコストは、高い耐熱性、すなわち加熱歪み温度を達成するためにPLAの工程内での結晶化を必要としないため低く、汎用の合成石油系ポリマー、例えばPP及びABSと同等の冷却時間及びサイクルタイム、及び、低い型温度20-50℃で処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一態様において、本発明は、ガラス繊維と、ポリ乳酸(PLA)及びポリブチレンサクシネート(PBS)を含むポリマーブレンドとを含む、強化複合材料を提供する、ここで、該複合材料は約10重量%~約80重量%のガラス繊維を含み、ここで、該ポリマーブレンドは約20重量%~約60重量%のPLA及び約40重量%~約80重量%のPBSを含む。
【0020】
強化複合材料において、任意の適当なポリ乳酸を使用してよい。用語「ポリ乳酸」、「ポリラクチド」及び「PLA」は交換可能に使用され、特定のモノマーから形成されるポリマー、又は、最も小さい繰り返しモノマー単位を含んでなるポリマーのポリマー特性に基づいて、乳酸及びラクチドのホモポリマー及びコポリマーを含む。ポリラクチドは、乳酸の二量体エステルであり、乳酸の小さい繰返しモノマー単位を含有するように形成され得るか、または、ラクチドモノマーの重合によって製造することができ、乳酸残基含有ポリマー、及び、ラクチド残基含有ポリマーの両方として称されるポリラクチドをもたらす。しかし、用語「ポリ乳酸」、「ポリラクチド」及び「PLA」は、ポリマーが形成される方法に関して何ら限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0021】
再生可能な資源から製造される適当なPLAとしては、通常約10,000g/mol~約800,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する、乳酸及び/又はラクチドのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。一実施形態において、Mwは約30,000g/mol~約400,000g/molの範囲である。別の実施形態において、Mwは約50,000g/mol~約200,000g/molの範囲である。
【0022】
本発明に適当な、市販され入手可能なポリ乳酸ポリマーとしては、NATUREWORKS(登録商標)又はTotal Corbionから入手可能な、種々のポリ乳酸が挙げられる。変性ポリ乳酸及びその異なる立体構成、例えばポリD-乳酸、ポリL-乳酸、ポリD,L-乳酸、及びそれらの組み合わせも使用してよい。
【0023】
ポリブチレンサクシネート(PBS)は、1,4-ブタンジオールとコハク酸の重縮合反応によって製造される、生分解性脂肪族ポリエステルである。任意の適当なPBS又はそのコポリマーを、本発明において使用することができる。PBS又はそのコポリマーは、再生可能な又は再生不可能な資源から作ることができる。今や、PBSはモノマーの選択によって完全にバイオ系であり得る。
【0024】
PBSは、高い柔軟性、及び適度な機械的特性(衝撃強度など)を有し、かつ、良好な耐熱性及び耐薬品性を有する。フィルム及び成形品の形態におけるPBSは、土壌、活性汚泥を含む水、及び海水中で、数か月以内に、顕著な生分解性を示す。PBSの欠点は、そのコストが高いことである。
【0025】
高い脆性、PLAのアモルファス状態としての低い耐熱性、及び、高コストのPBSを用いる低い機械的特性は、それらの商業化及び多くの用途についての主要な問題である。したがって、PLA及びPBS系材料を商業的に使用可能にするためには、PLA及びPBS系材料の種々の特性を改善すべきであり、製造コストを下げなければならない。
【0026】
強化複合材料は、PLA及びPBSを含むポリマーブレンドを含む。複合材料のポリマーブレンドの量は、複合材料の重量に基づいて約20重量%~約90重量%の範囲内である。一実施形態においては、該量は、約60重量%~約90重量%の範囲内である。
【0027】
一実施形態において、ポリマーブレンドのPLAの量は、ポリマーブレンドの重量に基づいて、約30重量%~約55重量%の範囲である。別の実施形態において、PLAの量は約40重量%~約50重量%の範囲である。さらなる実施形態において、PLAの量は約50重量%である。
【0028】
一実施形態において、ポリマーブレンドのPBSの量は、ポリマーブレンドの重量に基づいて、約45重量%~約70%重量%の範囲である。別の実施形態において、PBSの量は約50重量%~約60重量の範囲である。さらなる実施形態において、PBSの量は約50重量%である。
【0029】
PLA及びPBSに加えて、該ポリマーブレンドはさらなるポリマーを含み得る。一実施形態において、該任意のさらなるポリマーは生分解性である。これらとしては、該ポリマーはこれらに限定されないが、以下が挙げられる:ポリラクチド(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA);ポリグリコリド(PGA);グリコリドのコポリマー、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC);PLAの他のコポリマー、例えばラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d-バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε-カプロラクトンコポリマー、L-ラクチド/DL-ラクチドコポリマー、グリコリド/L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、ポリラクチド-コ-グリコリド;PLAのターポリマー、例えばラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε-カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー;ポリデプシペプチド(polydepsipeptides);非対称3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリヒドロキシブチレート(PHB);PHB/b-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV);ポリ-b-ヒドロキシプロピオネート(PHPA);ポリ-p-ジオキサノン(PDS);ポリ-d-バレロラクトン-ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-DL-ラクチド)コポリマー;メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー;ポリエステル-アミド;シュウ酸のポリエステル;コハク酸のポリエステル又はコポリマー;ポリジヒドロピラン;ポリアルキル-2-シアノアクリレート;ポリウレタン(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリペプチド;ポリ-b-マレイン酸(PMLA);ポリ-b-アルカン酸(alkanoic acids);ポリカーボネート;ポリオルトエステル;ポリホスフェート;ポリ(エステル無水物); 及びそれらの混合物;ならびに天然ポリマー、例えば糖、デンプン、セルロース及びセルロース誘導体、多糖類、コラーゲン、キトサン、フィブリン、ヒアリロン酸、ポリペプチド及びタンパク質など。上記の任意のポリマー及びその種々の形態の混合物を使用してもよい。
【0030】
一実施形態において、該ポリマーブレンドは、PLA及びPBSからなる。一実施形態において、該ポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの重量に基づいて約20重量%~約60%重量%のPLAと約40重量%~約80%重量%のPBSを含有し、ここで、PLA及びPBSの該総量は合計100重量%である。別の実施形態において、該ポリマーブレンドは、約30重量%~約55重量%のPLA及び約45重量%~約70重量%のPBSを含有し、PLA及びPBSの総量は100重量%である。さらなる実施形態において、該ポリマーブレンドは、約40重量%~約50重量%のPLA及び約50重量%~約60重量%のPBSを含有し、PLA及びPBSの総量は100重量%である。まださらなる実施形態において、該ポリマーブレンドは、約50重量%のPLA及び約50重量%のPBSからなり、PLA及びPBSの総量は100重量%である。
【0031】
上記に述べたポリマーブレンドに加えて、本発明の強化複合材料は、強化材としてガラス繊維を含む。任意の適当なガラス繊維を複合材料において使用することができる。ガラス繊維は、E、S、C、AR、ECRなどの従来の非分解性ガラス繊維であり得る。ガラス繊維はまた、生体適合性、生分解性、生体吸収性、又は生体溶解性のガラス繊維であり得る。一実施形態において、ガラス繊維は次の組成を有する:SiO2 60-70重量%、Na2O 5-20重量%、CaO 5-25重量%、MgO 0-10重量%、P2O5 0.5-5重量%、B2O3 0-15重量%、Al2O3 0-5重量%、Li2O 0-1重量%、及び0.5重量%未満 K。
【0032】
別の実施形態において、ガラス繊維は次の組成を有する:SiO2 65-75重量%、Na2O 12-17重量%、CaO 8-11重量%、MgO 3-7重量%、P2O5 0.5-2.5重量%、B2O3 1-4重量%、K2O >0.5-4重量%、SrO 0-4重量%、及び合計で最大0.3重量%のAl2O3及びFe2O3。
【0033】
ガラス繊維は、任意の適当な長さ及び厚さを有することができる。5mm以下の長さのガラス繊維は、通常、短ガラス繊維(SGF)として定義される。5mmを超える長さのガラス繊維は、通常、長ガラス繊維(LGF)として定義される。
【0034】
本発明の強化複合材料は、約10重量%~約80重量%のガラス繊維を含む。一実施形態において、複合材料のガラス繊維の量は、約15重量%~約70重量%である。別の実施形態において、ガラス繊維の量は、約20重量%~約60重量%である。さらなる実施形態において、ガラス繊維の量は、約20重量%~約50重量%である。まださらなる実施形態において、ガラス繊維の量は、約20重量%~約40重量%である。
【0035】
一実施形態において、本発明は、堆肥化可能及び/又は生分解性の強化複合材料を提供する。この実施形態において、複合材料は、水、二酸化炭素、及び任意選択でメタンなどの無害で環境的に許容される化学物質へと分解する生分解性ポリマーを含有する。複合材料の分解は、例えば、特定の堆肥条件下での嫌気性プロセスを通じて生じてよい。堆肥条件下でのポリマーの分解は、通常、土壌、水分、酸素、及び酵素又は微生物の存在下で達成される。
【0036】
本発明の強化複合材料は、非バイオ系および非生分解性の成分を含む、様々な追加の成分を含み得る。一実施形態において、任意の添加成分は、堆肥化可能及び/又は生分解性である。
【0037】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、衝撃性改良剤を含んでよい。コアシェルアクリル性エラストマーを含む、任意の適当な衝撃性改良剤を使用してよい。衝撃性改良剤は、例えばSukano im633(Sukano)、PARALOID BPM-520(DowDuPont)から選択され得る。衝撃性改良剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.1重量%~約20重量%である。一実施形態において、衝撃性改良剤の量は、約1重量%~約10重量%である。別の実施形態において、該量は約2重量%~約8重量%である。
【0038】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、可塑剤を含んでよい。クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセロール、乳酸(モノマー及びオリゴマー)を含む、任意の適当な可塑剤を使用してよい。可塑剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約20重量%である。一実施形態において、該量は、約0.1重量%~約10重量%である。別の実施形態において、該量は、約0.5重量%~約8重量%である。さらなる実施形態において、該量は約0.8重量%~約5重量%である。まださらなる実施形態において、該量は約1重量%~約4重量%である。
【0039】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、難燃剤を含んでよい。Exolit AP 422(Clariant)、ペンタエリスリトールホスフェート(PEPA)、メラミンホスフェート(MP)及びポリヘドラルオリゴマー性シルセスキオキサン(POSS)を含む、任意の適当な難燃剤を使用してよい。難燃剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約30重量%である。一実施形態において、該量は約0.1重量%~約20重量%である。別の実施形態において、該量は約0.5重量%~約15重量%である。さらなる実施形態において、該量は約3重量%~約12重量%である。
【0040】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、抗酸化剤を含んでよい。Irganoxシリーズ(BASF)、Irgafosシリーズ(BASF)、Hostanoxシリーズ(Clariant)を含む、任意の適当な抗酸化剤を使用してよい。抗酸化剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約20重量%である。一実施形態において、該量は約0.1重量%~約10重量%である。別の実施形態において、該量は約0.5重量%~約8重量%である。さらなる実施形態において、該量は、約0.8重量%~約5重量%である。まださらなる実施形態において、該量は約1重量%~約4重量%である。
【0041】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、UV及び光安定剤を含んでよい。Hostavinシリーズ(Clariant)、Cesa blockシリーズ(Clariant)、OnCap Bioシリーズ(Polyone)を含む、任意の適当なUV及び光安定剤を使用してよい。UV及び光安定剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約20重量%である。一実施形態において、該量は約0.1重量%~約10重量%である。別の実施形態において、該量は約0.5重量%~約8重量%である。さらなる実施形態において、該量は約0.8重量%~約5重量%である。まださらなる実施形態において、該量は約1重量%~約4重量%である。
【0042】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、着色剤を含んでよい。Renol-naturシリーズ(Clariant)、OnColor Bioシリーズ(Polyone)を含む、任意の適当な着色剤を使用してよい。着色剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%である。一実施形態において、該量は、約0.1重量%~約7重量%である。別の実施形態において、該量は約0.5重量%~約5重量%である。さらなる実施形態において、該量は約0.8重量%~約3重量%である。まださらなる実施形態において、該量は約1重量%~約2重量%である。
【0043】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、抗加水分解剤を含んでよい。Carbodiliteシリーズ(Nis-shinbo chemical)、Stabaxolシリーズ(Lanxess)を含む、任意の適当な抗加水分解剤を使用してよい。抗加水分解剤の量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%である。一実施形態において、該量は約0.1重量%~約7重量%である。別の実施形態において、該量は約0.5重量%~約5重量%である。さらなる実施形態において、該量は約0.8重量%~約3重量%である。まださらなる実施形態において、該量は1重量%~約2重量%である。.
【0044】
本発明の強化複合材料の他の任意の成分の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:アラビアガム、ベントナイト、塩、スリップ剤、結晶化促進剤又は遅延剤、臭気マスキング剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、シクロデキストリン、潤滑剤、その他の加工助剤、光学光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、フィラー、タンパク質及びそれらのアルカリ塩、ワックス、粘着付与樹脂、増量剤、キチン、キトサン、及びそれらの混合物。
【0045】
本発明の強化複合材料は、既に得られている特性を損なうことなく、フィラーを含んでもよい。適当なフィラーとしては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:粘土、シリカ、雲母、ウォラストナイト、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、カオリン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、セルロース繊維、キチン、キトサン粉末、オルガノシリコーン粉末、ナイロン粉末、ポリエステル粉末、ポリプロピレン粉末、デンプン、及びそれらの混合物。フィラーの量は、通常、強化複合材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約60重量%である。
【0046】
少なくとも10重量%のガラス繊維と、約20/80重量%~約60/40重量%の比率でのPLA/PBSのポリマーブレンドとを含む本発明の強化複合材料は、良好な耐熱性並びに良好な機械的特性及び靭性を有する経済的な複合材料を提供する。PLA/PBS系材料のコストは、本発明において、該材料に低コストのガラス繊維を導入することによって、低減することができる。
【0047】
従来のガラス繊維が生体内分解性及び生分解性のガラス繊維に置き換えられる場合、本発明は、完全に堆肥化可能な強化複合材料を提供する。
【0048】
一態様において、本発明は、本発明の強化複合材料を製造するためのプロセスを提供する。本発明のプロセスは、以下のステップを含む:
-ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、及びガラス繊維を提供するステップ、
-場合により、さらなるポリマー及び成分を提供するステップ、
-PLA、PBS、任意のさらなるポリマー及び任意の原料を、熱処理下で共にブレンドし、押出機でポリマー溶融物を提供するステップ:
-ポリマー溶融物にガラス繊維を添加し、強化ポリマー溶融物を提供するステップ、
-強化ポリマー溶融物を押し出しし、強化複合材料を提供するステップ、
-場合により、該強化複合材料をペレット化するステップ。
【0049】
補強材として短ガラス繊維(SGF)を使用する場合、通常、2軸押出機を使用して、PLA、PBS、及び短ガラス繊維、ならびに上記の任意の他の添加剤を混合する。得られた混合物をストランドに押し出しし、次にペレット化して、所望の長さのペレットにする。ストランドペレタイザーに加えて、水中又はウォーターリングペレタイザーを使用してよい。
【0050】
本発明の長ガラス繊維(LGF)強化複合材料を製造するための典型的なプロセスは、LFT(長繊維強化熱可塑性)ラインを使用することである。LFTラインは熱可塑性の引抜成形プロセスであり、連続ガラス繊維ストランド(直接ロービング又はヤーン)に、通常、二軸押出機によって含浸ダイに供給されるポリマー溶融物を含浸させる。PLA/PBSブレンドは、任意選択の添加剤と共に、二軸押出機で溶融及び混合される。次に、形成された連続ガラス繊維複合ストランドは、所望の長さにペレット化され、最終製品の製造に使用される。
【0051】
本発明の強化複合材料の熱たわみ温度(HDT)は、複合材料における補強材としてSGFを使用した場合、ISO 75:2013プラスチック-荷重下でのたわみ温度の決定、0.455MPa荷重の方法Bに従い測定された。本発明の物品のHDTは、複合材料における補強材としてLGFを使用した場合、ISO 75:2013プラスチック-荷重下でのたわみ温度の決定、1.82MPa加重の方法Aに従い測定された。
【0052】
本発明の強化複合材料は、ISO標準75方法Bに従って測定された、85℃以上の熱たわみ温度(HDT)を示す。一実施形態において、HDTは90℃以上である。別の実施形態において、HDTは95℃以上である。さらなる実施形態において、HDTは100℃以上である。
【0053】
本発明の強化複合材料は、ISO標準75方法Aに従って測定された、85℃以上の熱たわみ温度(HDT)を示す。一実施形態において、HDTは90℃以上である。別の実施形態において、HDTは95℃以上である。さらなる実施形態において、HDTは100℃以上である。
【0054】
本発明の強化複合材料は、ISO 180 方法1Aノッチ付きサンプルに従って測定して、10kJ/m2以上の耐衝撃性(アイゾットノッチ付き衝撃強度)を示す。一実施形態において、該耐衝撃性は20kJ/m2以上である。別の実施形態において、該耐衝撃性は30kJ/m2以上である
【0055】
一態様では、本発明は、本発明の強化複合材料を含む物品を提供する。一実施形態において、物品は、射出成形、ブロー成形、又は圧縮成形などの成形によって、複合材料から製造される。別の態様において、物品は、例えばパイプ、チューブ、プロファイル、ケーブル、及びフィルムを提供するために、押し出しによって複合材料から製造される。本発明の成形又は押し出しされた物品は、おもちゃ、電子機器、及び自動車部品などの固体物体、またはボトル、容器、タンポンアプリケーター、身体の開口部に薬物を挿入するためのアプリケーター、使い捨ておよび手術器具用の医療機器などの中空物体であり得る。
【0056】
一実施形態において、本発明の物品は0.6mm以上の平均壁厚を有する。
【0057】
本発明のPLA/PBS系ガラス繊維強化複合材料は、PLAが主にアモルファスであっても、有利な特性、すなわち短い冷却時間及び低い下流温度又は型温度を示す。射出成形の生産性に影響を与える重要な要素は、いわゆる「サイクルタイム」である。「サイクルタイム」という用語は、射出成形システムにおいて、部品を成形してその元の位置/状態に戻り、サイクルが完了するのに必要な時間を意味し、部品の射出成形の繰り返される一連の操作である。したがって、「サイクルタイム」という用語は、当技術分野で一般的に使用され、この用語の意味は当業者に知られている
【0058】
サイクルタイムに含まれる冷却時間は、常に物品設計と壁厚に直接関係する。この文脈では、低い冷却時間は、汎用の合成石油系ポリマー(例えばPP及びABS)と比較可能な冷却時間とサイクルタイムを意味する。本明細書で使用される場合、「主にアモルファス」という用語は、結晶化度がないか、または低いレベルを示す組成物を表す。本発明の組成物は、好ましくは完全に堆肥化可能であり、ここで、従来のガラス繊維が生体内分解性及び生分解性のガラス繊維に置き換えられている。
【0059】
本明細書の異なる部分は、任意の適当な方法で組み合わせてよいと考えられる。例えば、本発明の実施例、方法、態様、実施形態などは、本発明の他の実施形態、方法、実施例又は態様と、適切に実施又は組み合わせてよい。そうでないことが記載されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されている定義が他の場所に記載されている定義に反するか、そうでなければ矛盾する場合、本明細書に記載されている定義が他の場所に記載されている定義よりも優先される。用語の例を含む本明細書における例の使用は、例示のみを目的としており、本明細書における本発明の実施形態の範囲及び意味を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、本発明をそれに限定することなく、本発明をさらに説明する。
【0061】
NatureWorks LLC製のPLA ポリマー、HP2500グレード、及び、PTTMCC製のPBSポリマー、BioPBS FZ71を、ポリマーブレンドの製造に使用した。2つのガラス繊維グレードは、日本電気硝子から供給され、チョップドストランド(SGF)グレードはChopVantage HP3730(繊維長4.5mm、直径10ミクロン)であり、ダイレクトロービング(LGF)グレードはTufrow 4588(直径17ミクロン)であった。
【0062】
短ガラス繊維(SGF)強化PLA/PBS複合材料を、25mm二軸押出機(Coperion ZSK 26 MC18)で配合し、ペレット化し、試験サンプルへの射出成形の前に乾燥させた。
【0063】
長ガラス繊維(LGF)強化PLA/PBS複合材料を、LFTペレット(長繊維強化ペレット、繊維長8mm)への熱可塑性引抜成形プロセスによって製造し、試験サンプルへの射出成形の前に乾燥させた。
【0064】
試験サンプルは、引張、曲げ、衝撃、及びHDT特性を試験するためのISOテストバーに準拠するように作成された。試験サンプルは10x4x80mmのサイズを有していた。
【0065】
射出成形はEngel200トン射出成形機を用いて行った。PLA/PBS複合材料、非強化PLA/PBSブレンド、及び純粋なPBSと純粋なPLAをテストするための型温度は、核剤(竹本油脂株式会社製のLAK-301)を用いるPLAの工程内結晶化において110℃の型温度を用いたこと以外、30℃であった。
【0066】
使用したPLA/PBS比率、ガラス繊維含有量、及び結果を、表1及び2に示す。表に記載されている強化複合材料は、ポリマーブレンドとガラス繊維で構成されており、ブレンドの総量とガラス繊維を合計して複合材料の100重量である。各複合材料のポリマーブレンドは、表に示されている量のPLAとPBSで構成され、合計してポリマーブレンドの100重量%である。
【0067】
表1及び表2の結果は、(30℃で)冷間成形されたPLA参照材料は、許容範囲内のサイクルタイムを有するが、耐熱性HDT Bはわずか54℃であることを示す。型温度110℃で工程内結晶化(すなわちアニーリング)を使用した場合、HDT Bは122℃であり、許容レベルであるが、60秒のサイクルタイムはそうではない。型温度とサイクルタイムに関係なく、純粋なPLAの衝撃強度は非常に劣る。一方、純粋なPBSは、良好な耐熱性と短いサイクルタイムを有するが、衝撃強度を含む乏しい機械的特性を示す。ガラス繊維強化なしのPLA/PBSブレンドは、良好な耐衝撃性を示し、他の機械的特性は純粋なPLAをはるかに下回る。さらに、耐熱性も乏しい(わずか約53~55℃)。
【0068】
該結果はさらに、本発明の強化PLA/PBSブレンド(50重量%/50重量%)が、30℃の低い型温度および20秒の短いサイクルタイムで、改善されたHDT及び機械的特性を示すことを示す。耐熱性の向上は、5重量%の短ガラス繊維(SGF)の添加から増加し始めた。しかし、改善は低かった(HDT63℃)。ガラス繊維(SGF)の強化レベルが10重量%に上昇すると、耐熱性HDT Bは許容レベルに上昇し、ABS(HDT B約88℃)などの油系プラスチックに匹敵する。衝撃強度以外の機械的特性は、純粋なPLAよりも低かったが、ABSと同等であった。衝撃強度は、純粋なPLAに対して104%、耐熱性HDT Bに対して77%向上した。20重量%を超えるガラス繊維強化材を使用すると、表3に示すように、すべての特性が大幅に向上した。
【0069】
本発明の長ガラス繊維強化PLA/PBSブレンドは、30℃の型温度及び20秒の短いサイクルタイムで、純粋なPLA(表3)と比較して、機械的特性及び耐熱性においてさらに良好な改善を示す。表2に示すように、PLA/PBS比率が本発明の範囲外になると、特性(曲げ強度、引張強度、及びHDT)が低下し始めた。
【0070】
【0071】
【0072】
【国際調査報告】