(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】オクロバクテリウム(Ochrobactrum)媒介植物形質転換のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/82 20060101AFI20220131BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20220131BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20220131BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20220131BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20220131BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220131BHJP
A01H 6/46 20180101ALN20220131BHJP
A01H 6/14 20180101ALN20220131BHJP
A01H 6/82 20180101ALN20220131BHJP
A01H 1/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/82 Z ZNA
C12N15/54
C12N15/55
C12N15/53
C12N1/21
C12N5/10
A01H6/46
A01H6/14
A01H6/82
A01H1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522527
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 US2019058741
(87)【国際公開番号】W WO2020092487
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500207899
【氏名又は名称】パイオニア ハイ-ブレッド インターナショナル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヘヨン-ジェ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AD04
2B030AD05
2B030AD06
2B030AD07
2B030AD08
2B030CA14
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA53
(57)【要約】
本出願では、改変オクロバクテリウム(Ochrobactrum)株、そのような改変オクロバクテリウム(Ochrobactrum)株を作製する方法、並びに形質転換植物を生産するためにそのような改変オクロバクテリウム(Ochrobactrum)株を使用する方法が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌であって、β-ラクタマーゼ遺伝子が欠失している、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項2】
改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌であって、セリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が欠失している、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項3】
前記改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10である、請求項2に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項4】
前記セリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子は、アレル置換により欠失している、請求項2に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項5】
前記改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-1、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-2、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-3、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-4、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-5、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-6、及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-7からなる群から選択される、請求項1に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項6】
システイン要求性株をさらに含む請求項1に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項7】
前記改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8である、請求項6に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項8】
ロイシン要求性株をさらに含む請求項1に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項9】
前記改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-9である、請求項8に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項10】
3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がアレル置換により欠失している、請求項8に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項11】
前記β-ラクタマーゼ遺伝子は、SFO-1遺伝子、OXA-1遺伝子、クラスB Zn金属酵素遺伝子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項12】
前記β-ラクタマーゼ遺伝子は、アレル置換により欠失している、請求項11に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項13】
配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項14】
配列番号24を含まない改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項15】
植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAをさらに含む請求項1、2、又は6のいずれか一項に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項16】
前記有利な形質は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項15に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項17】
ヘルパープラスミドをさらに含む請求項1、2、6、又は15のいずれか一項に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項18】
植物を形質転換する方法であって、
植物細胞と、請求項1に記載の改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌とを、前記改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌の前記植物細胞への感染を許容する条件下で接触させることであり、それにより前記植物細胞を形質転換すること;
前記形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;
及び
前記選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生すること
を含む方法。
【請求項19】
前記トランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8である改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。
【請求項22】
植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAをさらに含む請求項21に記載のオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌。
【請求項23】
前記有利な形質は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項22に記載のオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌。
【請求項24】
ヘルパープラスミドをさらに含む請求項22に記載のオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌。
【請求項25】
植物を形質転換する方法であって、
植物細胞と、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌とを、前記オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌の前記植物細胞への感染を許容する条件下で接触させることであり、それにより前記植物細胞を形質転換すること;
前記形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;
及び
前記選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生すること
を含む方法。
【請求項26】
前記トランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
植物を形質転換する方法であって、
植物細胞と、請求項22又は24に記載のオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌とを、前記オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌の前記植物細胞への感染を許容する条件下で接触させることであり、それにより前記植物細胞を形質転換すること;
前記形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;
及び
前記選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生すること
を含む方法。
【請求項29】
前記トランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、植物の遺伝子操作等の植物分子生物学の分野に関する。より具体的には、本開示は、改変オクロバクテリウム(Ochrobactrum)株、そのような改変オクロバクテリウム(Ochrobactrum)株を作製する方法、並びに形質転換植物を生産するためにそのようなオクロバクテリウム(Ochrobactrum)株を使用する方法、及びそのようにして生産された形質転換植物に関連する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/753594号明細書の利益を主張するものであり、この明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表の参照
配列表の正式な写しは、2019年9月26日に作成された、20190926_7836WOPCT_SequenceListingTXTと命名され且つ80,603バイトのサイズを有するファイルのASCIIフォーマットの配列表として、EFS-Webを介して電子的に提出され、且つ本明細書と同時に出願されている。このASCIIフォーマットの文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1 NRRL Deposit B-67078(オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1)は、植物細胞のゲノム内にT-DNAを組み込むために使用される。オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1は、スペクチノマイシン、ハイグロマイシン、カルベニシリン、バンコマイシン、チメンチン、及びセフォタキシム等の一部の抗生物質に対して耐性を示す。環境中への抗生物質耐性遺伝子の拡散は、非常に望ましくない。加えて、これらの抗生物質の多くは、組織培養で一般に使用されている。この抵抗性により、一部の組織培養プロセス中にオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1が過剰に増殖し、このことは形質転換効率に悪影響を及ぼし、結果として、形質転換された外植片が失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、組織培養プロセスで使用される抗生物質に対して感受性を示し、栄養要求性も示し、且つ温室プロセス及び他の環境下での生物学的封じ込めを容易にして環境中への抗生物質耐性遺伝子の拡散を抑制する、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1の改善株が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある態様では、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌であって、β-ラクタマーゼ遺伝子が欠失している、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。ある態様では、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌であって、セリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が欠失している、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。ある態様では、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10である。ある態様では、このセリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子は、アレル置換により、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌から欠失している。ある態様では、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-1、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-2、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-3、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-4、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-5、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-6、及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-7からなる群から選択される。ある態様では、システイン要求性株をさらに含む改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。ある態様では、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8である。ある態様では、ロイシン要求性株をさらに含む改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。ある態様では、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌は、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-9である。ある態様では、3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が、アレル置換により、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌から欠失している。ある態様では、β-ラクタマーゼ遺伝子は、SFO-1遺伝子、OXA-1遺伝子、クラスB Zn金属酵素遺伝子(Class B Zn-metalloenzyme gene)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。ある態様では、このβ-ラクタマーゼ遺伝子は、アレル置換により、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌から欠失している。ある態様では、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。ある態様では、配列番号24を含まない改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。ある態様では、植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAをさらに含む、本明細書で提供される改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌。ある態様では、この有利な形質は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせである。ある態様では、ヘルパープラスミドをさらに含む改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。ある態様では、植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAと、ヘルパープラスミドをさらに含む改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。
【0007】
ある態様では、植物を形質転換する方法であって、植物細胞と、改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌とを接触させることであり、この改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌のこの植物細胞への感染を許容する条件下で接触させ、それによりこの植物細胞を形質転換すること;この形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;及びこの選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生することを含む方法が提供される。ある態様では、このトランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む。ある態様では、この植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である。
【0008】
ある態様では、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8である改変オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1細菌が提供される。ある態様では、植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAをさらに含むオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌が提供される。ある態様では、この有利な形質は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせである。ある態様では、ヘルパープラスミドをさらに含むオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌が提供される。ある態様では、植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAと、ヘルパープラスミドをさらに含むオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌が提供される。
【0009】
ある態様では、植物を形質転換する方法であって、植物細胞と、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌とを接触させることであり、このオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌のこの植物細胞への感染を許容する条件下で接触させ、それによりこの植物細胞を形質転換すること;この形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;及びこの選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生することを含む方法が提供される。ある態様では、このトランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む。ある態様では、この植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である。
【0010】
ある態様では、植物を形質転換する方法であって、植物細胞と、植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNAを含むオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌とを接触させることであり、このオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌のこの植物細胞への感染を許容する条件下で接触させ、それによりこの植物細胞を形質転換すること;この形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;及びこの選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生することを含む方法が提供される。ある態様では、このトランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む。ある態様では、この植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である。
【0011】
ある態様では、植物を形質転換する方法であって、植物細胞と、ヘルパープラスミド、及び植物に有利な形質を付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを有するバイナリープラスミドT-DNA、及びヘルパープラスミドを含むオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌とを接触させることであり、このオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8細菌のこの植物細胞への感染を許容する条件下で接触させ、それによりこの植物細胞を形質転換すること;この形質転換された植物細胞を選択し且つスクリーニングすること;並びにこの選択され且つスクリーニングされた植物細胞からトランスジェニック植物全体を再生することを含む方法が提供される。ある態様では、このトランスジェニック植物は、ストレス耐性、栄養強化、収穫量の増大、非生物的ストレス耐性、乾燥抵抗性、寒冷耐性、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、病原体抵抗性、昆虫抵抗性、窒素利用効率(NUE)、病害抵抗性、若しくは代謝経路を変更する能力、又はこれらの任意の組み合わせを付与するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含む。ある態様では、この植物細胞は、オオムギ細胞、トウモロコシ細胞、キビ細胞、オートムギ細胞、イネ細胞、ライムギ細胞、セタリア属(Setaria)種細胞、ソルガム細胞、サトウキビ細胞、スイッチグラス細胞、ライコムギ細胞、芝草細胞、コムギ細胞、ケール細胞、カリフラワー細胞、ブロッコリー細胞、カラシナ細胞、キャベツ細胞、エンドウ細胞、クローバー細胞、アルファルファ細胞、ソラマメ細胞、トマト細胞、キャッサバ細胞、ダイズ細胞、キャノーラ細胞、ヒマワリ細胞、ベニバナ細胞、タバコ細胞、アラビドプシス(Arabidopsis)細胞、又はワタ細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】アレル置換ベクターを使用するオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株の生成の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
下記で、添付の図面を参照しながら本明細書中の開示をより詳しく説明するが、図面は可能な態様のいくつかを示すものであって全部ではない。実際、開示は、多くの異なる形態で具体化可能であり得、本明細書中で記載された態様に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの態様は、本開示が適用法的要件を満たすために提供されるものである。
【0014】
本明細書で開示されている多くの変更及び他の態様は、本開示の方法が関連する技術分野の当業者であって、以下の説明及び添付の図面に提示された教示を利用できる者であれば、思い付くであろう。従って、本開示が、開示された特定の態様に限定されるべきではないこと、並びに変更及び他の態様が添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されていることを理解しなければならない。本明細書中では特定の用語が使用されるが、それらは、一般的な且つ記述的な意味でのみ使用されるものであって、限定を目的として使用されるものではない。
【0015】
本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を説明するという目的のためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されていない。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「~を含む(comprising)」という用語には、「~からなる(consisting of)」の態様が含まれ得る。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示の方法が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同一の意味を有する。この後に続く本明細書及び特許請求の範囲においては、本明細書で定義される多くの用語について言及するであろう。
【0016】
ある態様では、本開示は、トランスジェニック植物を生産するための方法及び組成物を含む。「植物」という用語は、全植物、植物器官(例えば、葉、茎、根等)、植物組織、植物細胞、植物部分、種子、栄養繁殖体、胚、及びこれらの子孫を指す。植物細胞は、分化又は未分化であり得る(例えば、カルス、未分化カルス、未熟胚及び成熟胚、未熟接合胚、未熟子葉、胚軸、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉、葉細胞、根細胞、師管細胞、及び花粉)。植物細胞として、限定されないが、下記からの細胞が挙げられる:種子、懸濁培養物、外植片、未熟胚、胚、接合胚、体細胞胚、胚発生カルス、分裂組織、体細胞分裂組織、器官形成カルス、プロトプラスト、成熟穂生成種子由来胚、葉基、成熟植物由来葉、葉頂、未熟花序、房、未熟穂、シルク、子葉、未熟子葉、胚軸、分裂組織領域、カルス組織、葉由来細胞、葉由来細胞、茎由来細胞、根由来細胞、シュート由来細胞、配偶体、胞子体、花粉、及び小胞子由来。植物部として下記が挙げられる:分化組織及び未分化組織、例えば、限定されないが、根、茎、シュート、葉、花粉、種子、腫瘍組織、及び様々な形態の培養物中の細胞(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚、及びカルス組織)。植物組織は、植物中に存在してもよいし、植物の器官、組織、又は細胞培養物に存在してもよい。穀粒は、種の栽培又は繁殖以外の目的で栽培業者が作製する成熟種子を意味することが意図されている。再生植物の子孫、改変体、及び変異体もまた、これらの子孫、改変体、及び変異体が導入ポリヌクレオチドを含むならば、本開示の範囲に含まれる。
【0017】
本開示は、任意の植物種(例えば、限定されないが、単子葉植物及び双子葉植物)の形質転換に使用され得る。単子葉植物として下記が挙げられるが、これらに限定されない:オオムギ、トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))、キビ(millet)(例えば、トウジンビエ(ペニセツム・グラウクム(Pennisetum glaucum))、キビ(proso millet)(パニクム・ミリアセウム(Panicum miliaceum))、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica))、シコクビエ(エレウシネ・コラカナ(Eleusine coracana))、テフ(エラグロスティス・テフ(Eragrostis tef))、オートムギ、イネ、ライムギ、セタリア属(Setaria)種、ソルガム、ライコムギ、若しくはコムギ、又は葉及び茎作物、例えば、限定されないが、竹、マーラム、牧草、アシ、ライグラス、サトウキビ;芝、観賞用草本、並びにスイッチグラス及び芝草等の他の草。或いは、本開示で使用される双子葉植物として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ケール、カリフラワー、ブロッコリー、カラシナ、キャベツ、エンドウ、クローバー、アルファルファ、ソラマメ、トマト、ラッカセイ、キャッサバ、ダイズ、キャノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、ベニバナ、タバコ、アラビドプシス(Arabidopsis)、又はワタ。
【0018】
目的の植物種の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:トウモロコシ(ズィー・メイス(Zea mays))、ブラシカ属(Brassica)種(例えば、B.ナプス(B.napus)、B.ラパ(B.rapa)、B.ジュンセア(B.juncea))、特に、種子油源として有用なブラシカ属(Brassica)種、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、ライムギ(セカレ・ケレアレ(Secale cereale))、ソルガム(ソルガム・ビコロール(Sorghum bicolor)、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare))、キビ(millet)(例えば、トウジンビエ(ペニセツム・グラウクム(Pennisetum glaucum))、キビ(proso millet)(パニクム・ミリアセウム(Panicum miliaceum))、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica))、シコクビエ(エレウシネ・コラカナ(Eleusine coracana))、ヒマワリ(ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus))、ベニバナ(カルタムス・ティンクトリウス(Carthamus tinctorius))、コムギ(トリーティクム・アエスティウム(Triticum aestivum))、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max)、タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum))、ジャガイモ(ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum))、ラッカセイ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、ワタ(ゴシピウム・バルバデンセ(Gossypium barbadense)、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum))、サツマイモ(イポモエア・バタツス(Ipomoea batatus))、キャッサバ(マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta))、コーヒー(コフィア属(Coffea)種)、ココナツ(ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、カンキツ樹(シトラス属(Citrus)種)、ココア(テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao))、チャノキ(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))、バナナ(ムサ属(Musa)種)、アボカド(ペルセア・アメリカーナ(Persea americana))、イチジク(フィクス・カシカ(Ficus casica))、グアバ(プシディウム・グアジャバ(Psidium guajava))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica))、オリーブ(オレア・エウロパエア(Olea europaea))、パパイア(カリカ・パパヤ(Carica papaya))、カシュー(アナカルジウム・オクシデンタレ(Anacardium occidentale))、マカダミア(マカダミア・インテグリフォリア(Macadamia integrifolia))、アーモンド(プルヌス・アミグダルス(Prunus amygdalus))、テンサイ(ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris))、サトウキビ(サッカルム属(Saccharum)種)、カラスムギ、オオムギ、野菜、観賞植物、及び球果植物。
【0019】
高等植物を本開示に使用し得、例えば、被子植物類(Angiospermae)及び裸子植物類(Gymnospermae)の綱を本開示に使用し得る。本開示に有用で好適な植物種は、キツネノマゴ科(Acanthaceae)、ネギ科(Alliaceae)、ユリズイセン科(Alstroemeriaceae)、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、キョウチクトウ科(Apocynaceae)、ヤシ科(Arecaceae)、キク科(Asteraceae)、メギ科(Berberidaceae)、ベニノキ科(Bixaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、アサ科(Cannabaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、イヌガヤ科(Cephalotaxaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、イヌサフラン科(Colchicaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)、マオウ科(Ephedraceae)、ユカノキ科(Erythroxylaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、シソ科(Lamiaceae)、アマ科(Linaceae)、ヒカゲノカズラ科(Lycopodiaceae)、アオイ科(Malvaceae)、メランチウム科(Melanthiaceae)、バショウ科(Musaceae)、フトモモ科(Myrtaceae)、ヌマミズキ科(Nyssaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、マツ科(Pinaceae)、オオバコ科(Plantaginaceae)、イネ科(Poaceae)、バラ科(Rosaceae)、アカネ科(Rubiaceae)、ヤナギ科(Salicaceae)、ムクロジ科(Sapindaceae)、ナス科(Solanaceae)、イチイ科(Taxaceae)、ツバキ科(Theaceae)、及びブドウ科(Vitaceae)由来であり得る。トロロアオイ属(Abelmoschus)、モミ属(Abies)、カエデ属(Acer)、コヌカグサ属(Agrostis)、ネギ属(Allium)、ユリズイセン属(Alstroemeria)、パイナップル属(Ananas)、アンドログラフィス属(Andrographis)、ウシクサ属(Andropogon)、ヨモギ属(Artemisia)、ダンチク属(Arundo)、アトローパ属(Atropa)、メギ属(Berberis)、フダンソウ属(Beta)、ベニノキ属(Bixa)、ブラシカ属(Brassica)、キンセンカ属(Calendula)、ツバキ属(Camellia)、カンレンボク属(Camptotheca)、アサ属(Cannabis)、トウガラシ属(Capsicum)、ベニバナ属(Carthamus)、ニチニチソウ属(Catharanthus)、イヌガヤ属(Cephalotaxus)、キク属(Chrysanthemum)、キナ属(Cinchona)、スイカ属(Citrullus)、コヒア属(Coffea)、イヌサフラン属(Colchicum)、コリウス属(Coleus)、キュウリ属(Cucumis)、カボチャ属(Cucurbita)、ギョウギシバ属(Cynodon)、チョウセンアサガオ属(Datura)、ナデシコ属(Dianthus)、ジギタリス属(Digitalis)、ヤマノイモ属(Dioscorea)、アブラヤシ属(Elaeis)、マオウ属(Ephedra)、エリアンサス属(Erianthus)、エリスロキシルム属(Erythroxylum)、ユーカリ属(Eucalyptus)、ウシノケグサ属(Festuca)、オランダイチゴ属(Fragaria)、ガランサス属(Galanthus)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、ヒマワリ属(Helianthus)、パラゴムノキ属(Hevea)、オオムギ属(Hordeum)、ヒヨス属(Hyoscyamus)、ナンヨウアブラギリ属(Jatropha)、アキノノゲシ属(Lactuca)、ヤマ属(Linum)、ドクムギ属(Lolium)、ルピナス属(Lupinus)、トマト属(Lycopersicon)、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)、イモノキ属(Manihot)、ウマゴヤシ属(Medicago)、メンタ属(Mentha)、ススキ属(Miscanthus)、バショウ属(Musa)、タバコ属(Nicotiana)、イネ属(Oryza)、キビ属(Panicum)、ケシ属(Papaver)、ヨモギキク属(Parthenium)、チカラシバ属(Pennisetum)、ペチュニア属(Petunia)、クサヨシ属(Phalaris)、アワガエリ属(Phleum)、マツ属(Pinus)、ポア属(Poa)、ポインセチア属(Poinsettia)、ポプラ属(Populus)、ラウオルフィア属(Rauwolfia)、トウゴマ属(Ricinus)、バラ属(Rosa)、サトウキビ属(Saccharum)、ヤナギ属(Salix)、サングイナリア属(Sanguinaria)、ハシリドコロ属(Scopolia)、ライムギ属(Secale)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、スパルティナ属(Spartina)、ホウレンソウ属(Spinacea)、ヨモギギク属(Tanacetum)、イチイ属(Taxus)、カカオ属(Theobroma)、ライコムギ属(Triticosecale)、コムギ属(Triticum)、ウニオラ属(Uniola)、シュロソウ属(Veratrum)、ビンカ属(Vinca)、ブドウ属(Vitis)、及びトウモロコシ属(Zea)のメンバーからの植物が、本開示の方法で使用され得る。
【0020】
農業、園芸、(液体燃料分子及び他の化学物質の作製のための)バイオマス作製、並びに/又は林業にとって重要な又は興味深い植物は、本開示の方法で使用され得る。非限定的な例として、例えば下記が挙げられる:パニクム・ウィルガツム(Panicum virgatum)(スイッチグラス)、ミスカンツス・ギガンテウス(Miscanthus giganteus)(ススキ)、サトウキビ属(Saccharum)種(サトウキビ、エネルギーケーン(energycane))、ポプルス・バルサミフェラ(Populus balsamifera)(ポプラ)、ワタ(ゴシピウム・バルバデンセ(Gossypium barbadense)、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum))、ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus)(ヒマワリ)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)(アルファルファ)、ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris)(テンサイ)、ソルガム(ソルガム・ビコロール(Sorghum bicolor)、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare))、エリアンサス属(Erianthus)種、アンドロポゴン・ゲラルディー(Andropogon gerardii)(ビッグブルーステム)、ペニセタム・プルプレウム(Pennisetum purpureum)(エレファントグラス)、ファラリスアルンディナケア(Phalaris arundinacea)(クサヨシ)、シノドン・ダクチロン(Cynodon dactylon)(ギョウギシバ)、フェスツカ・アルンディナケア(Festuca arundinacea)(トールフェスキュ)、スパルティナ・ペクチナータ(Spartina pectinata)(プレーリーコードグラス)、アルンド・ドナックス(Arundo donax)(ダンチク)、セカレ・ケレアレ(Secale cereale)(ライムギ)、ヤナギ属(Salix)種(ヤナギ)、ユーカリ属(Eucalyptus)種(ユーカリ、例えば、E.グランディス(E.grandis)(及び、「ウログランディス」として知られるそのハイブリッド)、E.グロブルス(E.globulus)、E.カマルドレンシス(E.camaldulensis)、E.テレティコルニス(E.tereticorni)、E.ビミナリス(E.viminalis)、E.ニテンス(E.nitens)、E.サリグナ(E.saligna)、及びE.ウロフィラ(E.urophylla))、ライコムギ属(Triticosecale)種(コムギ属(triticum)-コムギ×ライムギ)、テフ(エラグロスティス・テフ(Eragrostis tef))、竹、カルタムス・ティンクトリウス(Carthamus tinctorius)(ベニバナ)、ヤトロファ・クルカス(Jatropha curcas)(ヤトロファ属(jatropha))、リシヌス・コムニス(Ricinus communis)(トウゴマ)、エラエイス・グネーンシス(Elaeis guineensis)(ヤシ)、リヌム・ウシタティスシムム(Linum usitatissimum)(亜麻)、マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta)(キャッサバ)、リコペルシコン・エクスレンタム(Lycopersicon esculentum)(トマト)、ラクチュカ・サティバ(Lactuca sativa)(レタス)、ファセオルス・ウルガリス(Phaseolus vulgaris)(サヤインゲン)、ファセオルス・リメンシス(Phaseolus limensis)(ライマメ)、レンリソウ属(Lathyrus)種(エンドウマメ)、ムサ・パラディシアカ(Musa paradisiaca)(バナナ)、ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum)(ジャガイモ)、ブラシカ属(Brassica)種(B.ナプス(B.napus)(キャノーラ)、B.ラパ(B.rapa)、B.ジュンセア(B.juncea))、ブラシカ・オレラケア(Brassica oleracea)(ブロッコリー、カリフラワー、メキャベツ)、カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)(チャノキ)、フラガリア・アナナッサ(Fragaria ananassa)(イチゴ)、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)(ココア)、コフェア・アラビカ(Coffea arabica)(コーヒーノキ)、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)(ブドウ)、アナナス・コモスス(Ananas comosus)(パイナップル)、カプシカム・アンヌム(Capsicum annum)(トウガラシ及びピーマン)、アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea)(ラッカセイ)、イポモエア・バタツス(Ipomoea batatus)(サツマイモ)、ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera)(ココナツ)、ミカン属(Citrus)種(カンキツ類の木)、ペルセア・アメリカーナ(Persea americana)(アボカド)、イチジク(フィクス・カシカ(Ficus casica))、グアバ(シジウム・グアジャバ(Psidium guajava))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica))、オリーブ(オレア・エウロパエ(Olea europaea))、カリカ・パパヤ(Carica papaya)(パパイア)、アナカルジウム・オクシデンタレ(Anacardium occidentale)(カシュー)、マカダミア・インテグリフォリア(Macadamia integrifolia)(マカダミアの木)、プルヌス・アミグダルス(Prunus amygdalus)(アーモンド)、タマネギ(Allium cepa)(タマネギ)、ククミス・メロ(Cucumis melo)(マスクメロン)、ククミス・サチブス(Cucumis sativus)(キュウリ)、ククミス・カンタルペンシス(Cucumis cantalupensis)(カンタロープ)、ククルビタ・マクシマ(Cucurbita maxima)(スクワシュ)、ククルビタ・モスカータ(Cucurbita moschata)(スクワシュ)、スピナケア・オレラケア(Spinacea oleracea)(ホウレンソウ)、キトルッルス・ラナトゥス(Citrullus lanatus)(スイカ)、アベルモスクス・エスクレンツス(Abelmoschus esculentus)(オクラ)、ソラヌム・メロンゲナ(Solanum melongena)(ナス)、シアムプシス・テトラゴノロバ(Cyamopsis tetragonoloba)(グアーマメ)、ケラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua)(イナゴマメ)、トリゴネラ・フォエヌム-グラエクム(Trigonella foenum-graecum)(フェヌグリーク)、ビグナ・ラディアタ(Vigna radiata)(リョクトウ)、ビグナ・ウンギィクラタ(Vigna unguiculata)(ササゲ)、ビシア・ファバ(Vicia faba)(ソラマメ)、キセル・アリエチヌム(Cicer arietinum)(ヒヨコマメ)、レンズ・クリナリス(Lens culinaris)(レンズマメ)、パパフェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)(ケシ)、パパフェル・オリエンターレ(Papaver orientale)、タクスス・バッカータ(Taxus baccata)、タクスス・ブレウィフォリア(Taxus brevifolia)、アルテミシア・アヌア((Artemisia annua)、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)、カムプトテカ・アクミナーテ(Camptotheca acuminate)、カタランツス・ロセウス(Catharanthus roseus)、ビンカ・ロセア(Vinca rosea)、キンコナ・オッフィキナリス(Cinchona officinalis)、イヌサフラン(Colchicum autumnale)、カリフォルニアバイケイソウ(Veratrum californica.)、ケジギタリス(Digitalis lanata)、ジギタリス・プルプレア(Digitalis purpurea)、ヤマノイモ属(Dioscorea)種、センシンレン(Andrographis paniculata)、ベラドンナ(Atropa belladonna)、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stomonium)、メギ属(Berberis)種、イヌガヤ属(Cephalotaxus)種、シナマオウ属(Ephedrasinica)種、マオウ属(Ephedra)種、コカノキ(Erythroxylum coca)、マツユキソウ(Galanthus wornorii)、ハシリドコロ属(Scopolia)種、ホソバノトウゲシバ(Lycopodium serratum)(トウゲシバ(Huperzia serrata))、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)種、インドジャボク(Rauwolfia serpentina)、ラウオルフィア属(Rauwolfia)種、サンギナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis)、ヒヨス属(Hyoscyamus)種、キンセンカ(Calendula officinalis)、コシロギク(Chrysanthemum parthenium)、コレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)、ナツシロギク(Tanacetum parthenium)、グアユールゴムノキ(Parthenium argentatum)(グアユール)、パラゴムノキ属(Hevea)種(ゴムノキ)、オランダハッカ(Mentha spicata)(ミント)、コショウハッカ(Mentha piperita)(ミント)、ベニノキ(Bixa orellana)(ベニノキ)、ユリズイセン属(Alstroemeria)種、バラ属(Rosa)種(バラ)、ツツジ属(Rhododendron)種(アザレア)、アザレア(Macrophylla hydrangea)(アザレア)、ブッソウゲ(Hibiscus rosasanensis)(ハイビスカス)、チューリップ属(Tulipa)種(チューリップ)、スイセン属(Narcissus)種(ラッパズイセン)、ペチュニア・ハイブリダ(Petunia hybrida)(ペチュニア)、カーネーション(Dianthus caryophyllus)(カーネーション)、ポインセチア(Euphorbia pulcherrima)(ポインセチア)、キク、タバコ(Nicotiana tabacum)(タバコ)、シロバナルピナス(Lupinus albus)(ルピナス)、ユニオラ・パニクラタ(Uniola paniculata)(カラスムギ)、ベントグラス(コヌカグサ属(Agrostis)種)、ヤマナラシ(Populus tremuloides)(ヤマナラシ)、マツ属(Pinus)種(マツ)、モミ属(Abies)種(モミ)、カエデ属(Acer)種(メープル)、オオムギ(Hordeum vulgare)(オオムギ)、ナガハグサ(Poa pratensis)(ブルーグラス)、ドクムギ属(Lolium)種(ライグラス)、オオアワガエリ(Phleum pratense)(オオアワガエリ)、及び球果植物。
【0021】
本開示では球果植物を使用し得、球果植物として、例えば下記が挙げられる:マツ、例えば、テーダマツ(テーダマツ(Pinus taeda))、スラッシュパイン(スラッシュパイン(Pinus elliotii))、ポンデローサマツ(ポンデローサマツ(Pinus ponderosa))、ロッジポールパイン(コントルタマツ(Pinus contorta))、及びモントレーパイン(ラジアータパイン(Pinus radiata));ダグラスファー(ベイマツ(Pseudotsuga menziesii));カナダツガ(カナダツガ(Tsuga canadensis));アメリカツガ(アメリカツガ(Tsuga heterophylla));マウンテンヘムロック(マウンテンヘムロック(Tsuga mertensiana));アメリカカラマツ又はカラマツ(ラリックス・オキシデンタリス(Larix occidentalis));ベイトウヒ(カナダトウヒ(Picea glauca));セコイア(セコイア(Sequoia sempervirens));トゥルーモミ、例えば、ヨーロッパモミ(アビエス・アマビリス(Abies amabilis))、及びバルサムモミ(バルサムモミ(Abies balsamea));並びにシーダー、例えば、ベイスギ(ベイスギ(Thuja plicata))、及びアラスカイエローシーダー(イエローシーダー(Chamaecyparis nootkatensis))。
【0022】
本開示では芝草を使用し得、芝草として下記が挙げられるが、これらに限定されない:スズメノカタビラ(スズメノカタビラ(Poa annua));ネズミムギ(ネズミムギ(Lolium multiflorum));カナダブルーグラス(コイチゴツナギ(Poa compressa));コロニアルベントグラス(イトコヌカグサ(Agrostistenuis));クリーピングベントグラス(コヌカグサ(Agrostis palustris));クレステッドホイートグラス(アグロピロン・デセルトルム(Agropyron desertorum));フェアウェイホイートグラス(アグロピロン・クリスタツム(Agropyron cristatum));ハードフェスク(フェストゥカ・ロンギホリア(Festuca longifolia));ケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ(Poa pratensis));オーチャードグラス(カモガヤ(Dactylis glomerata));ペレニアルライグラス(ホソムギ(Lolium perenne));レッドフェスク(オオウシノケグサ(Festuca rubra));レッドトップ(コヌカグサ(Agrostis alba));ラフブルーグラス(オオスズメノカタビラ(Poa trivialis));ウシノケグサ(ウシノケグサ(Festuca ovina));スムーズブロムグラス(コスズメノチャヒキ(Bromus inermis));オオアワガエリ(オオアワガエリ(Phleum pratense));ベルベットベントグラス(ヒメヌカボ(Agrostis canina));ウィーピングアルカリグラス(アレチタチドジョウツナギ(Puccinellia distans));ヒメカモジグサ(アグロピロン・スミチイ(Agropyron smithii));セントオーガスチングラス(イヌシバ(Stenotaphrum secundatum));ノシバ(シバ属(Zoysia)種);バヒアグラス(アメリカスズメノヒエ(Paspalum notatum));カーペットグラス(ホソバツルメヒシバ(Axonopus affinis));センチビードグラス(チャボウシノシッペイ(Eremochloa ophiuroides));キクユグラス(キクユグラス(Pennisetum clandesinum));シーショアパスパラム(サワスズメノヒエ(Paspalum vaginatum));ブルーグラマ(ブルーグラマ(Bouteloua gracilis));バッファローグラス(バッファローグラス(Buchloe dactyloids));アゼガヤモドキ(アゼガヤモドキ(Bouteloua curtipendula))。
【0023】
特定の態様では、本明細書で開示されている組成物及び方法を使用して形質転換される植物は、作物(例えば、トウモロコシ、アルファルファ、ヒマワリ、ブラシカ属(Brassica)、ダイズ、ワタ、ベニバナ、ラッカセイ、イネ、ソルガム、コムギ、キビ、タバコ等)である。特に目的の植物として、目的の種子を提供する穀物植物、油糧種子植物、及びマメ科植物が挙げられる。目的の種子として、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、イネ、ソルガム、ライムギ等の穀物の種子が挙げられる。油糧種子植物として、ワタ、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリ、ブラシカ属(Brassica)、トウモロコシ、アルファルファ、パーム、ココナツ等が挙げられ、マメ科植物として、マメ及びエンドウマメが挙げられるが、これらに限定されない。マメとして、グアー、イナゴマメ、フェヌグリーク、ダイズ、インゲンマメ、ササゲ、リョクトウ、ライマメ、ソラマメ、レンズマメ、及びヒヨコマメが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
ある態様では、本開示はまた、本明細書で開示されている組成物及び方法を使用して得られた植物も含む。ある態様では、本開示はまた、本明細書で開示されている組成物及び方法を使用することにより得られた植物からの種子も含む。トランスジェニック植物は、導入遺伝子を含む成熟した稔性植物と定義される。
【0025】
本開示の方法では、未熟胚、1~5mmの接合胚、3~5mmの胚、並びに、成熟した雌穂由来の種子、葉基、十分に成長した植物体の葉、葉頂、未熟花序、雄穂、未熟雌穂、及びシルクに由来する胚等の様々な植物由来の外植片を使用し得る。ある態様では、本開示の方法で使用される外植片は、成熟した雌穂由来の種子、葉基、十分に成長した植物体の葉、葉頂、未熟花序、雄穂、未熟雌穂、及びシルクに由来し得る。本開示の方法で使用される外植片は、本明細書で説明されている植物のいずれかに由来し得る。
【0026】
本開示は、単離されたか又は実質的に精製された核酸組成物を包含する。「単離された」か又は「精製された」核酸分子若しくはタンパク質又はそれらの生物学的に活性な部分は、その天然に存在する環境において見出されるような核酸分子若しくはタンパク質に通常付随するか若しくは相互作用する他の細胞物質若しくは成分を実質的に含まないか、又は組み換え技術により生成される場合には培養培地を実質的に含まず、若しくは化学的に合成される場合には化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。「単離された」核酸は、この核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて天然ではこの核酸に隣接している配列(例えばタンパク質コード配列)(即ち、この核酸の5’末端及び3’末端に位置する配列)を実質的に含まない。例えば、様々な態様では、単離された核酸分子は、この核酸が由来する細胞のゲノムDNAにおいて天然ではこの核酸分子に隣接しているヌクレオチド配列を、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、又は0.1kb未満含み得る。細胞物質を実質的に含んでいないタンパク質として、夾雑タンパク質が約30%、20%、10%、5%、又は1%未満(乾燥重量で)であるタンパク質調製物が挙げられる。本開示の方法に有用なタンパク質、又はその生物学的に活性な部分が組み換え技術によって作られた場合には、最適には、培養培地中の化学的前駆体又は非目的タンパク質の化学物質は、約30%、20%、10%、5%又は1%未満(乾燥重量で)である。本開示の方法に有用な配列を、それぞれの転写開始部位に隣接している5’非翻訳領域から単離し得る。本開示は、本開示の方法に有用な単離されたか又は実質的に精製された核酸又はタンパク質組成物を包含する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、核酸配列の一部を指す。本開示の方法に有用な配列の断片は、核酸配列の生物学的活性を保持する。或いは、ハイブリダイゼーションプローブとして有用なヌクレオチド配列の断片は、必ずしも生物学的活性を保持し得ない。本明細書で開示されているヌクレオチド配列の断片は、少なくとも約20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875、1900、1925、1950、1975、2000、2025、2050、2075、2100、2125、2150、2175、2200、2225、2250、2275、2300、2325、2350、2375、2400、2425、2450、2475、2500、2525、2550、2575、2600、2625、2650、2675、2700、2725、2750、2775、2800、2825、2850、2875、2900、2925、2950、2975、3000、3025、3050、3075、3100、3125、3150、3175、3200、3225、3250、3275、3300、3325、3350、3375、3400、3425、3450、3475、3500、3525、3550、3575、3600、3625、3650、3675、3700、3725、3750、3775、3800、3825、3850、3875、3900、3925、3950、3975、4000、4025、4050、4075、4100、4125、4150、4175、4200、4225、4250、4275、4300、4325、4350、4375、4400、4425、4450、4475、4500、4525、4550、4575、4600、4625、4650、4675、4700、4725、4750、4775、4800、4825、4850、4875、4900、4925、4950、4975、5000、5025、5050、5075、5100、5125、5150、5175、5200、5225、5250、5275、5300、5325、5350、5375、5400、5425、5450、5475、5500、5525、5550、5575、5600、5625、5650、5675、5700、5725、5750、5775、5800、5825、5850、5875、5900、5925、5950、5975、6000、6025、6050、6075、6100、6125、6150、6175、6200、又は6225個のヌクレオチドから対象配列の完全長までの範囲であり得る。ヌクレオチド配列の生物学的に活性な部分を、この配列の一部を単離し、その部分の活性を評価することにより調製し得る。
【0028】
本開示の方法に有用なヌクレオチド配列の断片及び改変体、並びにそれらによりコードされるタンパク質もまた、包含される。本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、ヌクレオチド配列の一部を指し、従って、この一部によりコードされるタンパク質、又はアミノ酸配列の一部を指す。ヌクレオチド配列の断片は、天然タンパク質の生物学的活性を保持しているタンパク質断片をコードし得る。或いは、ハイブリダイゼーションプローブとして有用なヌクレオチド配列の断片は、生物学的活性を保持している断片タンパク質を一般にコードしない。従って、ヌクレオチド配列の断片は、少なくとも約20個のヌクレオチド、約50個のヌクレオチド、約100個のヌクレオチドから、本開示の方法で有用なタンパク質をコードする完全長のヌクレオチド配列までの範囲であり得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「改変体」という用語は、本明細書で開示されている配列と実質的類似性を有する配列を意味する。改変体は、天然のポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの1つ若しくは複数の内部部位における1つ若しくは複数のヌクレオチド若しくはペプチドの欠失及び/若しくは付加、並びに/又は天然のポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの1つ若しくは複数の部位における1つ若しくは複数のヌクレオチド若しくはペプチドの置換を含む。本明細書で使用される場合、「天然の」ヌクレオチド配列又はペプチド配列は、それぞれ、天然に存在するヌクレオチド配列又はペプチド配列を含む。ヌクレオチド配列では、天然に存在する改変体を、公知の分子生物学的手法(例えば、ポリヌクレアーゼ連鎖反応(PCR)、及び本明細書で概説されているようなハイブリダイゼーション手法)を使用して同定し得る。本開示の方法に有用なタンパク質の生物学的活性を有する改変体は、その天然のタンパク質と、僅かに1~15個のアミノ酸残基、僅かに1~10個、例えば6~10個、僅かに5個、僅かに4個、3個、2個、又はたった1個のアミノ酸残基が異なり得る。
【0030】
改変体ヌクレオチド配列はまた、合成的に誘導されたヌクレオチド配列(例えば、部位特異的変異誘発を使用して生成されたもの等)も含む。一般に、本明細書で開示されているヌクレオチド配列の改変体は、本明細書の他の箇所で説明されている配列アラインメントプログラム(デフォルトパラメーターを使用)で測定した場合に、そのヌクレオチド配列に対して少なくとも40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%~95%、96%、97%、98%、99%、又はより高い配列同一性を有するであろう。本明細書で開示されているヌクレオチド配列の生物学的に活性な改変体も包含される。生物学的活性を、ノーザンブロット解析、転写融合体で行うレポーター活性測定等の手法を使用して測定し得る。例えば、Sambrook,et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)(以下、「Sambrook」)(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。或いは、ヌクレオチド断片又は改変体に作動可能に連結されたプロモーターの制御下で生成される緑色蛍光タンパク質(GFP)又は黄色蛍光タンパク質(YFP)又は同類のもの等のレポーター遺伝子のレベルを測定し得る。例えば、Matz et al.(1999)Nature Biotechnology 17:969-973;米国特許第6,072,050号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる);Nagai,et al.,(2002)Nature Biotechnology 20(1):87-90を参照されたい。改変体ヌクレオチド配列にはまた、DNAシャフリング等の変異組み換え手順により生成される配列も包含される。そのような手順により、1つ又は複数の異なるヌクレオチド配列を操作して、新たなヌクレオチド配列を作製し得る。このようにして、実質的な配列同一性を有し且つインビトロ又はインビボで相同的に組み換えられ得る配列領域を含む関連配列のポリヌクレオチドの集団から、組み換えポリヌクレオチドのライブラリが作られる。そのようなDNAシャフリングのための戦略は、当該技術分野で既知である。例えば、Stemmer,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747-10751;Stemmer,(1994)Nature 370:389 391;Crameri,et al.,(1997)Nature Biotech.15:436-438;Moore,et al.,(1997)J.Mol.Biol.272:336-347;Zhang,et al.,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4504-4509;Crameri,et al.,(1998)Nature 391:288-291、並びに米国特許第5,605,793号明細書及び同第5,837,458号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0031】
変異誘発及びヌクレオチド配列改変の方法は当該技術分野で公知である。例えば、Kunkel,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492、Kunkel,et al.,(1987)Methods in Enzymol.154:367-382、米国特許第4,873,192号明細書、Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)、及びこれらに引用されている参考文献(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)(参照により本明細書に組み込まれる)のモデルにおいて見出され得る。1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のものと交換する等の保存置換が最適であり得る。
【0032】
本開示のヌクレオチド配列を使用して、他の生物(具体的には他の植物、より具体的には他の単子葉植物又は双子葉植物)から対応する配列を単離し得る。このようにして、PCR、ハイブリダイゼーション、及び同類のもの等の方法を使用して、本明細書に記載されている配列に対する配列相同性に基づいて、そのような配列を同定し得る。本明細書に記載されている全配列又はその断片に対する配列同一性に基づいて単離された配列は、本開示に包含される。
【0033】
PCR法では、任意の目的の植物から抽出されたcDNA又はゲノムDNAからの対応するDNA配列を増幅するPCR反応に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計し得る。PCRプライマーを設計する方法及びPCRクローニングの方法は当該技術分野で一般に知られており、Sambrook(前出)で開示されている。また、Innis,et al.,eds.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York);Innis and Gelfand,eds.(1995)PCR Strategies(Academic Press,New York);及びInnis and Gelfand,eds.(1999)PCR Methods Manual(Academic Press,New York)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。既知のPCR方法として下記が挙げられるが、これらに限定されない:対合プライマー、ネステッドプライマー、単一特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的にミスマッチのプライマー、及び同類のものを使用する方法。
【0034】
ハイブリダイゼーション手法では、既知のヌクレオチド配列の全て又は一部を、選択された生物からのクローン化ゲノムDNA断片又はcDNA断片の集団(即ち、ゲノムライブラリ又はcDNAライブラリ)に存在する他の対応するヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするプローブとして使用する。ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、cDNA断片、RNA断片、又は他のオリゴヌクレオチドであり得、且つ32P又は任意の他の検出マーカー等の検出可能な基で標識され得る。そのため、例えば、ハイブリダイゼーション用のプローブを、本開示の配列をベースとする合成オリゴヌクレオチドを標識することにより作製し得る。ハイブリダイゼーション用のプローブの調製方法、及びゲノムライブラリの構築方法は、当該技術分野で一般に知られており、Sambrook(前出)で開示されている。
【0035】
例えば、本明細書で開示されている全配列、又はその1つ若しくは複数の部分を、対応する配列及びメッセンジャーRNAに特異的にハイブリダイズし得るプローブとして使用し得る。様々な条件下で特異的ハイブリダイゼーションを達成するために、そのようなプローブとして、配列の中でも独特であり且つ一般に少なくとも約10個のヌクレオチドの長さ又は少なくとも約20個のヌクレオチドの長さである配列が挙げられる。そのようなプローブを使用して、PCRにより、選択された植物からの対応する配列を増幅し得る。この手法を使用して、所望の生物からさらなるコード配列を単離し得るか、又はこの手法を、生物中におけるコード配列の存在を決定するための診断アッセイとして使用し得る。ハイブリダイゼーション手法として、プレーティングされたDNAライブラリ(プラーク又はコロニー、例えば、Sambrook(前出)を参照されたい)のハイブリダイゼーションスクリーニングが挙げられる。
【0036】
そのような配列のハイブリダイゼーションを、ストリンジェントな条件下で行ない得る。「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、プローブが他の配列と比べて検出可能に高い(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍)程度で標的配列にハイブリダイズする条件を意味することが意図されている。ストリンジェントな条件は、配列依存性があり、環境によって異なるであろう。ハイブリダイゼーション条件及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに100%相補的な標的配列を同定し得る(相同プロービング)。或いは、ストリンジェンシー条件を、より低い程度の類似性が検出されるように配列内での一部のミスマッチを許容するように調整し得る(非相同プロービング)。一般に、プローブは、約1000個未満のヌクレオチドの長さであり、最適には500個未満のヌクレオチドの長さである。
【0037】
典型的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0~8.3で塩濃度が約1.5M未満のNaイオン(典型的には約0.01~1.0MのNaイオン濃度)(又は、他の塩)であり、且つ温度が、短いプローブ(例えば、10~50個のヌクレオチド)の場合には少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50個超のヌクレオチド)の場合には少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミド等の不安定化物質の添加によっても達成され得る。低ストリンジェントな条件の例として、37℃での30~35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液によるハイブリダイゼーション、及び50~55℃での1×~2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)における洗浄が挙げられる。中程度のストリンジェントな条件の例として、37℃での40~45%ホルムアミド、1.0M NaCl、1%SDSにおけるハイブリダイゼーション、及び55~60℃での0.5×~1×SSCにおける洗浄が挙げられる。高ストリンジェントな条件の例として、37℃での50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSにおけるハイブリダイゼーション、及び少なくとも30分の持続時間にわたる60~65℃での0.1×SSCにおける最終洗浄が挙げられる。ハイブリダイゼーションの持続時間は、概ね約24時間未満であり、通常は約4~約12時間である。洗浄の持続時間は、少なくとも平衡に達するのに十分な長さの時間であるだろう。
【0038】
特異性は、典型的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、重要な因子は、最終洗浄溶液のイオン強度及び温度である。DNA-DNAハイブリッドでは、熱融点(Tm)を、Meinkoth and Wahl,(1984)Anal.Biochem 138:267 284の式:Tm=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)-0.61(%form)-500/L(式中、Mは、一価のカチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のグアノシンヌクレオチド及びシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは、塩基対中のハイブリッドの長さである)から概算し得る。Tmは、相補的な標的配列の50%が、完全に一致するプローブにハイブリダイズする(規定のイオン強度及びpHでの)温度である。Tmは、1%のミスマッチにつき約1℃低下し、そのため、Tm、ハイブリダイゼーション、及び/又は洗浄の条件を、所望の同一性の配列にハイブリダイズするように調整し得る。例えば、90%の同一性を有する配列を得たい場合には、Tmを10℃低下させ得る。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHでの特定の配列及びその相補配列についてのTmと比べて約5℃低くなるように選択される。しかしながら、厳しいストリンジェントな条件は、Tmと比べて1、2、3、又は4℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用し得、中程度のストリンジェントな条件は、Tmと比べて6、7、8、9、又は10℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用し得、低ストリンジェンシー条件は、Tmと比べて11、12、13、14、15、又は20℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用し得る。この式、ハイブリダイゼーション及び洗浄の組成物、並びに所望のTmを使用して、当業者は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄溶液のストリンジェンシーにおけるバリエーションが本質的に説明されていることを理解するであろう。所望のミスマッチの程度が、45℃(水溶液)又は32℃(ホルムアミド溶液)と比べて低いTmを生じる場合には、より高い温度を使用し得るようにSSC濃度を増加させることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な手引きは、Tijssen,(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Chapter 2(Elsevier,New York);及びAusubel,et al.,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 2(Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見出される。Sambrook(前出)もまた参照されたい。そのため、活性を有し、且つ本明細書で開示されている配列又はその断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離配列は、本開示に包含される。
【0039】
一般に、活性を有し、且つ本明細書中で開示されている配列にハイブリダイズする配列は、この開示されている配列と、少なくとも40%~50%相同であり、約60%、70%、80%、85%、90%、95%~98%以上相同である。換言すると、配列の配列類似性は、少なくとも約40%~50%、約60%~70%、及び約80%、85%、90%、95%~98%の配列類似性を共有する範囲であり得る。
【0040】
参照配列(対象)に関する「パーセント(%)の配列同一性」は、配列をアラインさせ、配列同一性の最大パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入し、任意のアミノ酸の保存的置換を配列同一性の一部と見なさない後の、この参照配列中の各アミノ酸残基又はヌクレオチドと同一である候補配列(クエリ)中のアミノ酸残基又はヌクレオチドのパーセンテージとして決定される。パーセントの配列同一性を決定することを目的とするアラインメントを、当該技術分野のスキル内である様々な方法で達成し得、例えば、BLAST又はBLAST-2等の公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成し得る。当業者は、配列をアラインさせるのに適切なパラメータ(例えば、比較する配列の完全長にわたり最大アラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズム)を決定し得る。2つの配列の間のパーセントの同一性は、これらの配列により共有される同一の位置の数の関数である(例えば、クエリ配列のパーセントの同一性=クエリ配列と対象配列との間の同一の位置の数/クエリ配列の位置の総数×100)。
【0041】
ヌクレオチド配列が実質的に同一であるという別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするか否かである。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHで特定の配列のTmと比べて約5℃低く選択される。しかしながら、ストリンジェントな条件は、Tmと比べて約1℃~約20℃低い範囲の温度を含み、別途本明細書中で限定されるように、所望するストリンジェンシーの程度により変わる。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならば、なお実質的に同一である。このことは、例えば、核酸のコピーが、遺伝コードにより許容される最大のコドン縮重を使用して作製される場合に起こり得る。2つの核酸配列が実質的に同一であるという1つの指標は、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性である場合である。
【0042】
「改変体」は、実質的に類似の配列を意味することが意図されている。ポリヌクレオチドでは、保存的改変体は、遺伝コードの縮重のために、本明細書で開示されている形態形成遺伝子及び/又は目的の遺伝子/ポリヌクレオチドの内の1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。改変体ポリヌクレオチドにはまた、合成的に誘導されたポリヌクレオチド(例えば、部位特異的変異誘発を使用して生成されるが、それでもなお本明細書で開示されている形態形成遺伝子及び/又は目的の遺伝子/ポリヌクレオチドのタンパク質をコードするポリヌクレオチド)も含まれる。一般に、本明細書で開示されている特定の形態形成遺伝子及び/又は目的の遺伝子/ポリヌクレオチドの改変体は、本明細書の他の箇所で記載されている配列アラインメントプログラム及びパラメータにより決定した場合に、その特定の形態形成遺伝子及び/又は目的の遺伝子/ポリヌクレオチドに対して少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はより高い配列同一性を有するであろう。
【0043】
「改変体」タンパク質は、天然タンパク質の1つ若しくは複数の内部部位での1つ若しくは複数のアミノ酸の欠失若しくは付加により、及び/又は天然タンパク質の1つ若しくは複数の部位での1つ若しくは複数のアミノ酸の置換により天然タンパク質から誘導されたタンパク質を意味することが意図されている。本開示に包含される改変体タンパク質は、生物学的活性を有し、即ち、この改変体タンパク質は、天然タンパク質の所望の生物学的活性を保持し続けており、即ち、このポリペプチドは、形態形成遺伝子及び/又は目的の遺伝子/ポリヌクレオチドの活性を有する。そのような改変体は、例えば、遺伝的多型から生じ得るか、又は人工的操作により生じ得る。本明細書で開示されている天然の形態形成遺伝子及び/又は目的の遺伝子/ポリヌクレオチドのタンパク質の生物活性を有する改変体は、本明細書の他の箇所で説明されている配列アラインメントプログラム及びパラメータにより決定した場合に、この天然のタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はより高い配列同一性を有するであろう。本開示のタンパク質の生物活性を有する改変体は、このタンパク質と、僅かに1~15個のアミノ酸残基、僅かに1~10個、例えば6~10個、僅かに5個、僅かに4個、3個、2個、又はたった1個のアミノ酸残基が異なり得る。
【0044】
本明細書で開示されている配列及び遺伝子、並びにその改変体及び断片は、植物の遺伝子操作に有用であり、例えば、形質転換植物又はトランスジェニック植物を作製するのに有用であり、目的の表現型を発現させるのに有用である。本明細書で使用される場合、「形質転換植物」及び「トランスジェニック植物」という用語は、ゲノム内に異種ポリヌクレオチドを含む植物を指す。一般に、異種ポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドが何世代にもわたって伝えられるように、トランスジェニック植物又は形質転換植物のゲノムに安定して組み込まれる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノムに単独で組み込まれてもよいし、組み換えDNAコンストラクトの一部として組み込まれてもよい。本明細書で使用される場合、「トランスジェニック」という用語には、異種核酸の存在によって表現型が改変されているあらゆる細胞、細胞系、カルス、組織、植物部又は、植物体(例えば、これらの最初にそのように改変されたトランスジェニック体、及びこの最初のトランスジェニック体から有性交配又は無性繁殖により作られたもの)が含まれることを理解しなければならない。
【0045】
トランスジェニック「イベント」は、目的の遺伝子を含む核酸発現カセット等の異種DNAコンストラクトで植物細胞を形質転換し、植物体のゲノムへ導入遺伝子を挿入することにより植物体の集団を再生し、特定のゲノム位置への挿入により特徴付けられた植物体を選択することによって作製される。イベントは、挿入遺伝子の発現により、表現型で特徴付けられる。遺伝子レベルでは、イベントは、植物体の遺伝子構造の一部である。「イベント」という用語はまた、形質転換体と別の植物との間の有性交配により作製された子孫を指し、この子孫は、異種DNAを含む。
【0046】
形質転換プロトコル、及びヌクレオチド配列を植物に導入するためのプロトコルは、形質転換の標的の植物又は植物細胞の種類により変わり得、即ち、単子葉植物であるか又は双子葉植物であるかにより変わり得る。全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20180216123号明細書で開示されているオクロバクテリウム(Ochrobactrum)媒介形質転換の使用により双子葉植物を形質転換する方法、リゾビウム科(Rhizobiaceae)媒介形質転換の使用により双子葉植物を形質転換する方法(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,365,859号明細書を参照されたい)、及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介形質転換の使用により双子葉植物を形質転換する方法、並びにトランスジェニック植物を得る方法が公開されている。
【0047】
本開示の方法は、植物にポリペプチド又はポリヌクレオチドを導入することを含む。本明細書で使用される場合、「導入する」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドを、植物に、その配列がこの植物の細胞内部に侵入する方法で提示することを意味する。本開示の方法は、植物に配列を導入する特定の方法に依存することはなく、この植物の少なくとも1つの細胞の内部にポリヌクレオチド又はポリペプチドを単に侵入させるだけである。ポリヌクレオチド又はポリペプチドを植物に導入する方法は、当該技術分野で既知であり、安定した形質転換方法、一過性の形質転換方法、及びウイルス媒介方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「安定した形質転換」とは、植物に導入されたヌクレオチドコンストラクトがこの植物のゲノムに組み込まれ、その子孫により受け継がれ得る形質転換のことである。「一過性の形質転換」は、ポリヌクレオチドが植物に導入されるがこの植物のゲノムに組み込まれないか又はポリペプチドが植物に導入されることを意味する。
【0049】
レポーター遺伝子又は選択マーカー遺伝子もまた、発現カセットに含まれ得、且つ本開示の方法で使用され得る。当該技術分野で既知の好適なレポーター遺伝子の例は、例えば、Jefferson,et al.,(1991)in Plant Molecular Biology Manual,ed.Gelvin,et al.,(Kluwer Academic Publishers),pp.1-33;DeWet,et al.,(1987)Mol.Cell.Biol.7:725-737;Goff,et al.,(1990)EMBO J.9:2517-2522;Kain,et al.,(1995)Bio Techniques 19:650-655;及びChiu,et al.,(1996)Current Biology 6:325-330(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0050】
選択マーカーは、多くの場合には特定の条件下で、ある分子若しくはこの分子を含む細胞を同定するか、又はこの分子若しくは細胞に関して選択するか、又はこの分子若しくは細胞に対して選択することを可能にするDNAセグメントを含む。このマーカーは、活性(例えば、限定されないが、RNA、ペプチド、若しくはタンパク質の産生)をコードし得るか、又はRNA、ペプチド、タンパク質、無機化合物及び有機化合物、若しくは組成物、及び同類のものに関する結合部位を提供し得る。選択マーカーの例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:制限酵素部位を含むDNAセグメント;他の毒性化合物に耐性を示す産物をコードするDNAセグメント(例えば抗生物質、例えば、スペクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、Basta、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)、及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT));受容細胞において他の方法で欠失している産物をコードするDNAセグメント(例えば、tRNA遺伝子、栄養要求性マーカー);容易に同定され得る産物をコードするDNAセグメント(例えば、表現型マーカー、例えば、β-ガラクトシダーゼ、GUS;蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP);及び細胞表面タンパク質);新しいPCR用プライマー部位の世代(例えば、前に並置されていない2つのDNA配列の並列);制限エンドヌクレアーゼ又は他のDNA修飾酵素、化学物質等の作用を受けていないか又は作用を受けたDNA配列の含有物、並びに、同定を可能にする特異的修飾(例えばメチル化)に必要とされるDNA配列の含有物。
【0051】
形質転換された細胞又は組織を選択するための選択マーカー遺伝子として、抗生物質耐性又は除草剤抵抗性を付与する遺伝子が挙げられ得る。好適な選択マーカー遺伝子の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:クロラムフェニコールに対する耐性をコードする遺伝子(Herrera Estrella,et al.,(1983)EMBO J.2:987-992);メトトレキサートに対する耐性をコードする遺伝子(Herrera Estrella,et al.,(1983)Nature 303:209-213;Meijer,et al.,(1991)Plant Mol.Biol.16:807-820);ヒグロマイシンに対する耐性をコードする遺伝子(Waldron,et al.,(1985)Plant Mol.Biol.5:103-108;及びZhijian,et al.,(1995)Plant Science108:219-227);ストレプトマイシンに対する耐性をコードする遺伝子(Jones,et al.,(1987)Mol.Gen.Genet.210:86-91);スペクチノマイシンに対する耐性をコードする遺伝子(Bretagne-Sagnard,et al.,(1996)Transgenic Res.5:131-137);ブレオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子(Hille,et al.,(1990)Plant Mol.Biol.7:171-176);スルホンアミドに対する耐性をコードする遺伝子(Guerineau,et al.,(1990)Plant Mol.Biol.15:127-36);ブロモキシニルに対する耐性をコードする遺伝子(Stalker,et al.,(1988)Science 242:419-423);グリホサートに対する耐性をコードする遺伝子(Shaw,et al.,(1986)Science 233:478-481;並びに米国特許出願第10/004,357号明細書及び同第10/427,692号明細書);ホスフィノトリシンに対する耐性をコードする遺伝子(DeBlock,et al.,(1987)EMBO J.6:2513-2518)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0052】
除草化合物に対する耐性を付与する選択マーカーとして、除草化合物(例えば、グリホサート、スルホニル尿素、グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン、及び2,4-ジクロロフェノキシアセテート(2,4-D))に対する抵抗性及び/又は耐性をコードする遺伝子が挙げられる。一般的に、Yarranton(1992)Curr.Opin.Biotech.3:506-511;Christopherson et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314-6318;Yao et al.(1992)Cell71:63-72;Reznikoff(1992)Mol.Microbiol.6:2419-2422;Barkley et al.(1980)in The Operon,pp.177-220;Hu et al.(1987)Cell 48:555-566;Brown et al.(1987)Cell 49:603-612;Figge et al.(1988)Cell 52:713-722;Deuschle et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5400-5404;Fuerst et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549-2553;Deuschle et al.(1990)Science 248:480-483;Gossen(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Reines et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917-1921;Labow et al.(1990)Mol.Cell.Biol.10:3343-3356;Zambretti et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952-3956;Baim et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072-5076;Wyborski et al.(1991)Nucleic Acids Res.19:4647-4653;Hillen and Wissman(1989)Topics Mol.Struc.Biol.10:143-162;Degenkolb et al.(1991)Antimicrob.Agents Chemother.35:1591-1595;Kleinschnidt et al.(1988)Biochemistry 27:1094-1104;Bonin(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Gossen et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551;Oliva et al.(1992)Antimicrob.Agents Chemother.36:913-919;Hlavka et al.(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78(Springer-Verlag,Berlin);Gill et al.(1988)Nature334:721-724)を参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本方法に有用な特定の選択マーカーとして下記が挙げられるが、これらに限定されず:スルホニル尿素及びイミダゾリノンに対する耐性を付与するトウモロコシHRA遺伝子(Lee et al.,1988,EMBO J 7:1241-1248)、グリホサートに対する耐性を付与するGAT遺伝子(Castle et al.,2004,Science304:1151-1154)、aadA遺伝子等のスペクチノマイシンに対する耐性を付与する遺伝子(Svab et al.,1990,Plant Mol Biol.14:197-205)、並びにグルホシネートアンモニウムに対する耐性を付与するbar遺伝子(White et al.,1990,Nucl.Acids Res.25:1062)、PAT(又はトウモロコシのmoPAT、Rasco-Gaunt et al.,2003,Plant Cell Rep.21:569-76を参照されたい)、及びマンノース含有培地での成長を許容するPMI遺伝子(Negrotto et al.,2000,Plant Cell Rep.22:684-690)は、本方法の体細胞胚形成及び胚成熟に含まれる短い経過時間中の急速な選択に非常に有用である。しかしながら、使用される選択マーカー、及び形質転換される作物、近交系、又は種に応じて、野生型エスケープ(wild-type escape)の割合は変わり得る。トウモロコシ及びソルガムでは、HRA遺伝子は、野生型エスケープの頻度の低減に有効である。
【0054】
トランスジェニックイベントの回収において有用性を有し得る他の遺伝子として下記が挙げられるが、これらに限定されない:例えば、GUS(ベータ-グルクロニダーゼ;Jefferson,(1987)Plant Mol.Biol.Rep.5:387)、GFP(緑色蛍光タンパク質;Chalfie,et al.,(1994)Science 263:802)、ルシフェラーゼ(Riggs,et al.,(1987)Nucleic Acids Res.15(19):8115;及びLuehrsen,et al.,(1992)Methods Enzymol.216:397-414)、遠赤色、赤色、橙色、黄色、グリーンシアン、及び青色にわたる代替発光最適条件のスペクトルを有する様々な蛍光タンパク質(Shaner et al.,2005,Nature Methods 2:905-909)、並びにアントシアニン産生をコードするトウモロコシ遺伝子(Ludwig et al.,(1990)Science 247:449)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0055】
上に掲げた選択マーカーは、それらに限定することを意図するものではない。任意の選択マーカーが、本開示の方法で使用され得る。
【0056】
ある態様では、本開示の方法は、ポジティブな成長選択を可能にする形質転換方法を提供する。従来の植物形質転換法は、抗生物質又は除草剤(ネガティブ選択剤)を使用して、形質転換されていない細胞又は組織を阻害するか又は死滅させ、トランスジェニック細胞又は組織は、耐性遺伝子の発現に起因して成長し続けるという、上記で説明されているようなネガティブ選択スキームに主に依存していることを、当業者は認識し得る。対照的に、本開示の方法を、ネガティブ選択剤を適用することなく使用し得る。そのため、野生型細胞は阻害されずに成長し得るが、比較すると、形態形成遺伝子発現の制御の影響を受けた細胞は、周囲の野生型組織と比較して成長速度が速いため、容易に識別され得る。成長の速さを容易に観察できることに加えて、本開示の方法は、形質転換されていない細胞と比べて急速な形態形成を示すトランスジェニック細胞を提供する。従って、そのような成長及び形態発生の差を使用して、トランスジェニック植物構造体を、周囲の非形質転換組織から容易に識別し得、このプロセスを、本明細書では「ポジティブ成長選択」と称する。
【0057】
本開示は、効率良く且つ高速でトランスジェニック植物を生産する方法、及び一連の遺伝的多様性を示し且つ顕著な商業的有用性を有する形質転換近交系を含む様々な出発組織型を用いて、多数の近交系において、形質転換率が有意により高く且つ品質が有意により良好なイベント(ベクター(プラスミド)バックボーンを持たない形質遺伝子発現カセットの1コピーを含むイベント)を生じる方法を提供する。本開示の方法は、良好な形質及び特性を与えるポリヌクレオチドをさらに含み得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「形質」は、植物、又は特定の植物材料若しくは植物細胞の生理学的特性、形態学的特性、生化学的特性、又は物理的特性を指す。いくつかの例において、この特性は、種子若しくは植物体の大きさ等のヒトの目で視ることができるか、又は種子若しくは葉に含まれるタンパク質、デンプン、若しくは油の量を検出する等の生化学的手法により、又は代謝プロセス若しくは生理学的プロセスの観察により、例えば、二酸化炭素の取り込み量を測定することにより、又は遺伝子若しくは遺伝子群の発現レベルの観察により、例えば、ノーザン解析、RT-PCR、マイクロアレイ遺伝子発現アッセイ、若しくはレポーター遺伝子発現システムを用いることにより、又はストレス耐性、収穫量、病原体耐性等の農学的観察により、測定され得る。油、デンプン、及びタンパク質の含有量等の農業的に重要な形質を、伝統的な育種法を使用することに加えて、遺伝的に改変し得る。改変には、オレイン酸、飽和油、及び不飽和油の含有量の増加、リシン及び硫黄のレベルの上昇、必須アミノ酸の提供、並びにデンプンの改変が含まれる。ホルドチオニンタンパク質改変は、米国特許第5,703,049号明細書、同第5,885,801号明細書、同第5,885,802号明細書、及び同第5,990,389号明細書で説明されており、これらの明細書は、参照により本明細書に組み込まれる。別の例は、米国特許第5,850,016号明細書で説明されているダイズ2Sアルブミンによりコードされるリシン及び/又は硫黄リッチ種子タンパク質、並びにWilliamson et al.(1987)Eur.J.Biochem.165:99-106で説明されているオオムギ由来のキモトリプシン阻害剤である(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0059】
コード配列の誘導体を、予め選択したアミノ酸の、コードされたポリペプチドにおけるレベルを上昇させるための部位特異的変異誘発法により作製し得る。例えば、ヒマワリの種子(Lilley et al.(1989)Proceedings of the World Congress on Vegetable Protein Utilization in Human Foods and Animal Feedstuffs,ed.Applewhite(American Oil Chemists Society,Champaign,Ill.),pp.497-502;この文献は参照により本明細書に組み込まれる);トウモロコシ(Pedersen et al.(1986),J.Biol.Chem.261:6279;Kirihara et al.(1988)Gene 71:359;これらの両文献は、参照により本明細書に組み込まれる);及びイネ(Musumura et al.(1989)Plant Mol.Biol.12:123、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)等からのメチオニンリッチ植物タンパク質を使用する可能性がある。他の農学的に重要な遺伝子は、ラテックス、Floury 2、成長因子、種子貯蔵因子、及び転写因子をコードする。
【0060】
多くの農業形質(例えば、限定はされないが、植物の高さ、莢の数、植物体における莢の位置、節間部の数、莢の破損の発生率、穀粒サイズ、根粒形成効率及び窒素固定効率、栄養の消化効率、生物的ストレス及び非生物的ストレスに対する耐性、炭素同化、植物構造、耐倒伏性、種子の発芽率、苗の成長力、並びに幼植物の形質)が、「収穫量」に影響を及ぼし得る。収穫量に影響を及ぼし得る他の形質として、発芽効率(例えば、ストレス条件下での発芽効率)、成長速度(例えば、ストレス条件下での成長速度)、穂の数、1本の穂当たりの種子数、種子の大きさ、種子の組成(デンプン、油、タンパク質)、並びに登熟特性が挙げられる。全植物の収穫量を増大させ得るか否かは分からないが、所望の表現型特性を示すトランスジェニック植物の世代もまた目的とされる。そのような特性として、植物形態学的増強、植物生理学的増強、又はトランスジェニック植物から得られる成熟種子の成分の改善が挙げられる。
【0061】
本開示のトランスジェニック植物の「収穫量の増大」を、多くの方法(例えば、試験重量、1つの植物体当たりの種子数、種子重量、単位面積当たりの種子数(即ち、1エーカー当たりの種子、若しくは種子重量)、1エーカー当たりのブッシェル数、1エーカー当たりのトン数、及び1へクタール当たりのキロ数)で評価して測定し得る。例えば、トウモロコシの収穫量を、例えば、1エーカー当たりのブッシェル数又は1へクタール当たりのメートルトン数を単位とした、生産面積1単位当たりの、皮を剥いたトウモロコシ粒の産生量として測定し得、多くの場合には、水分調節ベース(例えば水分15.5%)で報告される。収穫量の増大は、キーとなる生化学化合物(例えば、窒素、リン、及び炭水化物)の利用の改善によりもたらされ得るか、又は環境ストレス(例えば、寒さ、熱、乾燥、塩分、及び害虫若しくは病原体による攻撃)に対する耐性の向上によりもたらされ得る。形質強化組み換えDNAを使用して、植物成長調節物質の発現の改変の結果としてか、又は細胞周期若しくは光合成経路の変更の結果として、成長及び発達が改善されており、ひいては収穫量が増大しているトランスジェニック植物も提供し得る。
【0062】
「形質の強化」は、本開示の態様の説明中で使用される場合、水使用効率若しくは乾燥耐性の改善若しくは強化、浸透圧ストレス耐性、高塩分ストレス耐性、熱ストレス耐性、低温発芽耐性等の耐寒性の強化、収穫量の増大、種子品質の改善、窒素利用効率の強化、植物の早い成長及び発達、植物の遅い成長及び発達、種子タンパク質の強化、並びに種子油の生産性の強化を含む。
【0063】
本開示の方法では、任意の目的のポリヌクレオチドを使用し得る。目的の遺伝子により付与される表現型の様々な変化として、植物中の脂肪酸組成の変更、植物のアミノ酸含有量、デンプン含有量又は炭水化物含有量の改変、植物の病原体防御機構の改変、実サイズの改変、スクロース付加の改変、及び同類のものが挙げられる。目的の遺伝子はまた、栄養の取り込みの調節、及びフィチン酸塩遺伝子の発現の調節、特に、種子中のフィチン酸塩レベルの低下させる調節にも関与し得る。これらの結果を、植物において異種産物を発現させることにより得ることができるか、又は内因性産物の発現を増大させることにより得ることができる。或いは、これらの結果を、1種又は複数種の内因性産物(特に、植物中の酵素又は補因子)の発現を低減させることにより得ることができる。これらの変化は、形質転換植物の表現型の変化をもたらす。
【0064】
目的の遺伝子は、商業市場、及び作物の開発に従事している者の関心を反映している。目的の作物及び市場が変わり、国の発展が世界市場を切り開くにつれ、新しい作物及び技術も出現してくるであろう。加えて、収穫量及び雑種強勢等の農学上の形質及び特性に対する理解が深まるにつれ、形質転換のための遺伝子の選択もそれに応じて変化するであろう。本開示の方法に有用な目的のヌクレオチド配列若しくは遺伝子の一般的な種類として、例えば、ジンクフィンガー等の情報に関与する遺伝子、キナーゼ等の伝達に関与する遺伝子、及び熱ショックタンパク質等のハウスキーピングに関与する遺伝子が挙げられる。導入遺伝子のより具体的な種類として、例えば、農学上の重要な形質、昆虫耐性、病害抵抗性、除草剤抵抗性、不稔性、環境ストレス耐性(寒冷、塩、乾燥等に対する耐性の変化)、穀粒特性、及び市場の生産物をコードする遺伝子が挙げられる。
【0065】
本明細書で開示されている方法により形質転換されたプロモーター配列により発現される異種コード配列、異種ポリヌクレオチド、及び目的のポリヌクレオチドを使用して、植物の表現型を変化させ得る。目的の表現型の様々な変化として、植物における遺伝子発現の改変、植物の病原体又は昆虫に対する防御機構の改変、植物の除草剤に対する耐性の増大、環境ストレスに応答する植物の成長の改変、塩、温度(高温及び低温)、乾燥に対する植物の応答の調節、並びに同類のものが挙げられる。これらの結果は、適切な遺伝子産物を含む目的の異種ヌクレオチド配列の発現により達成され得る。特定の態様では、目的の異種ヌクレオチド配列は、その発現レベルが植物体又は植物部で上昇する内因性の植物配列である。結果を、1種若しくは複数種の内因性遺伝子産物(特に、ホルモン、レセプター、シグナル伝達分子、酵素、トランスポーター、若しくは補因子)の発現を改変することにより得ることができるか、又は植物の栄養摂取に影響を及ぼすことにより得ることができる。これらの変化は、形質転換植物の表現型の変化をもたらす。導入遺伝子のさらに他の種類として、植物及び他の真核生物、並びに原核生物からの酵素、補因子及びホルモン等の外因性産物の発現を誘発する遺伝子が挙げられる。
【0066】
目的の任意の遺伝子、目的のポリヌクレオチド、又は目的の複数の遺伝子/ポリヌクレオチド(例えば、1つ又は複数のさらなるインプット形質(例えば、除草剤抵抗性、真菌耐性、ウイルス耐性、ストレス耐性、病害抵抗性、疾患耐性、雄性不稔性、茎強度、及び同類のもの)又はアウトプット形質(例えば、収穫量の増大、デンプンの改変、油プロファイルの改善、バランスのとれたアミノ酸、高リシン若しくは高メチオニン、消化性の増大、繊維品質の改善、乾燥耐性、及び同類のもの)が積み重ねられ得る昆虫耐性形質)が、プロモーターに作動可能に連結され得、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現され得ることが認識されている。
【0067】
プロモーターを、穀粒の品質、例えば、油のレベル(オレイン酸の含有量の増加)及び種類、飽和及び不飽和、必須アミノ酸の品質及び量、リシン及び硫黄のレベルの上昇、セルロースのレベル、並びにデンプン及びタンパク質の含有量に影響を及ぼす、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるための農学的に重要な形質に作動可能に連結することができる。プロモーターを、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためのホルドチオニンタンパク質改変を提供する遺伝子に作動可能に連結させ得、そのような遺伝子は、米国特許第5,990,389号明細書;同第5,885,801号明細書;同第5,885,802号明細書;及び同第5,703,049号明細書で説明されており、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターを作動可能に連結し得る遺伝子の別の例は、米国特許第5,850,016号明細書で説明されているダイズ2Sアルブミンによりコードされるリシン及び/又は硫黄リッチ種子タンパク質、並びにオオムギ由来のキモトリプシン阻害剤(Williamson,et al.,(1987)Eur.J.Biochem 165:99-106)であり、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
プロモーターを、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるために、収穫量の低下(yield drag)をもたらす害虫(例えば、根切り虫、ヨトウムシ、ヨーロッパアワノメイガ、及び同類もの)に対する耐性をコードする昆虫耐性遺伝子に作動可能に連結させ得る。そのような遺伝子として、例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒性タンパク質遺伝子(米国特許第5,366,892号明細書;同第5,747,450号明細書;同第5,736,514号明細書;同第5,723,756号明細書;同第5,593,881号明細書;及びGeiser,et al.,(1986)Gene 48:109(これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))が挙げられる。本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためのプロモーターに作動可能に連結され得る、病害抵抗性形質をコードする遺伝子として、例えば、フモニシンを解毒する遺伝子等の解毒遺伝子(米国特許第5,792,931号明細書);非病原性(avr)及び病害抵抗性(R)遺伝子(Jones,et al.,(1994)Science 266:789;Martin,et al.,(1993)Science 262:1432;及びMindrinos,et al.,(1994)Cell 78:1089)が挙げられ、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためのプロモーターに作動可能に連結され得る除草剤抵抗性形質として、下記が挙げられる:アセト乳酸合成酵素(ALS)の働きを阻害するように作用する除草剤、特に、スルホニル尿素系除草剤に対する耐性をコードする遺伝子(例えば、そのような耐性に導く変異、特にS4及び/又はHra変異を含むアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子)、グルタミン合成酵素の働きを阻害するように作用する除草剤、例えば、ホスフィノトリシン若しくはバスタに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、bar遺伝子)、グリホサートに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、EPSPS遺伝子及びGAT遺伝子;例えば、米国特許出願公開第2004/0082770号明細書、国際公開第03/092360号パンフレット、及び国際公開第05/012515号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、又は当該技術分野で既知の他のそのような遺伝子。bar遺伝子は除草剤のバスタに対する耐性をコードし、nptII遺伝子は抗生物質のカナマイシン及びジェネティシンに対する耐性をコードし、ALS-遺伝子変異体は除草剤のクロルスルフロンに対する耐性をコードしており、そのいずれもが、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0070】
グリホサート耐性は、変異5-エノールピルビル-3-ホスフィキメート合成酵素(EPSPS)遺伝子及びaroA遺伝子により付与され、これらの遺伝子は、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る。例えば、Shahらの米国特許第4,940,835号明細書を参照されたい。この明細書では、グリホサート耐性を付与し得るEPSPSの形態のヌクレオチド配列が開示されている。Barryらの米国特許第5,627,061号明細書ではまた、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得るEPSPS酵素をコードする遺伝子も説明されている。米国特許第6,248,876B1号明細書;同第6,040,497号明細書;同第5,804,425号明細書;同第5,633,435号明細書;同第5,145,783号明細書;同第4,971,908号明細書;同第5,312,910号明細書;同第5,188,642号明細書;同第4,940,835号明細書;同第5,866,775号明細書;同第6,225,114B1号明細書;同第6,130,366号明細書;同第5,310,667号明細書;同第4,535,060号明細書;同第4,769,061号明細書;同第5,633,448号明細書;同第5,510,471号明細書;米国再発行特許第36,449号明細書、同第37,287E号明細書、及び米国特許第5,491,288号明細書、並びに国際公開第97/04103号パンフレット;同第97/04114号パンフレット;同第00/66746号パンフレット;同第01/66704号パンフレット;同第00/66747号パンフレット、及び同第00/66748号パンフレット(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。グリホサート耐性はまた、米国特許第5,776,760号明細書、及び同第5,463,175号明細書(これらの明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)により詳しく説明されているように、グリホサート酸化還元酵素をコードする、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る遺伝子を発現する植物に付与される。グリホサート耐性を、グリホサートN-アセチルトランスフェラーゼをコードする、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る遺伝子の過剰発現によっても、植物に付与し得る。例えば、米国特許出願公開第2004/0082770号明細書、国際公開第03/092360号パンフレット、及び同第05/012515号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0071】
本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結された不稔遺伝子もまた、DNAコンストラクトにおいてコードされ得、物理的雄穂除去の代替法を提供し得る。そのような方法に使用される遺伝子の例として、雄性組織優先的遺伝子、及び米国特許第5,583,210号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)で説明されているQM等の雄性不稔性表現型を有する遺伝子が挙げられる。本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る他の遺伝子として、キナーゼ、及び雄性又は雌性の配偶体の成長に有害な化合物をコードするものが挙げられる。
【0072】
商業的形質もまた、例えばエタノール産生用デンプンを増加させる可能性があるか又はタンパク質の発現を提供する可能性がある、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結された遺伝子又は遺伝子群でコードされ得る。形質転換植物の別の重要な商業利用は、米国特許第5,602,321号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)で記載されているようなポリマー及びバイオプラスチックの生成である。ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の発現を促進するβ-ケトチオラーゼ、PHBアーゼ(ポリヒドロキシ酪酸合成酵素)、及びアセトアセチル-CoA還元酵素等の遺伝子は、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る(Schubert,et al.,(1988)J.Bacteriol.170:5837-5847(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0073】
本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る、他の適用可能な形質遺伝子及びその関連する表現型の例として、下記が挙げられる:ウイルス外皮タンパク質及び/若しくはRNAをコードする遺伝子、又はウイルス耐性を付与する他のウイルス若しくは植物遺伝子、真菌耐性を付与する遺伝子、収穫量増大を促進する遺伝子、並びに寒冷、乾燥によって生じる脱水、熱、及び塩分等のストレス、有毒な金属、若しくは微量元素等に対する耐性を与える遺伝子、又は同類のもの。
【0074】
下記は、本明細書で開示されている方法により形質転換された植物で発現させるためにプロモーターに作動可能に連結され得る遺伝子の種類の他の例のリストであるが、例示として示すものであって、限定することは意図されていない。
【0075】
1.昆虫又は病害に対する抵抗性を付与し、且つ下記をコードする導入遺伝子:
(A)植物の病害抵抗性遺伝子。植物防御は、植物中の病害抵抗性遺伝子(R)産物と病原体中の対応する非病原性(Avr)遺伝子産物との間の特異的相互作用によってしばしば活性化される。特定の病原体株に耐性を示す植物を設計するために、クローン化された耐性遺伝子で植物種を形質転換し得る。例えば、Jones,et al.,(1994)Science 266:789(cloning of the tomato Cf-9 gene for resistance to Cladosporium fulvum);Martin,et al.,(1993)Science 262:1432(tomato Pto gene for resistance to Pseudomonas syringae pv.tomato encodes a protein kinase);Mindrinos,et al.,(1994)Cell 78:1089(Arabidopsis RSP2 gene for resistance to Pseudomonas syringae);McDowell and Woffenden,(2003)Trends Biotechnol.21(4):178-83及びToyoda,et al.,(2002)Transgenic Res.11(6):567-82(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。病害抵抗性植物は、野生型植物と比較して病原体に対する耐性がより大きいものである。
【0076】
(B)バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体、又はそれをモデルとした合成ポリペプチド。例えば、Geiser,et al.,(1986)Gene 48:109を参照されたい。これには、Btデルタ-エンドトキシン遺伝子のクローニング及びヌクレオチド配列が開示されている。さらに、デルタ-エンドトキシン遺伝子をコードするDNA分子を、例えば、ATCCアクセッション番号40098、67136、31995、及び31998で、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入し得る。遺伝子操作されるバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)導入遺伝子の他の例は、下記の特許及び特許出願に記載されており、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第5,188,960号明細書;同第5,689,052号明細書;同第5,880,275号明細書;国際公開第91/14778号パンフレット;国際公開第99/31248号パンフレット;国際公開第01/12731号パンフレット;国際公開第99/24581号パンフレット;国際公開第97/40162号パンフレット;並びに米国特許出願第10/032,717号明細書;同第10/414,637号明細書;及び同第10/606,320号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0077】
(C)エクジステロイド及び幼若ホルモン等の昆虫特異的ホルモン若しくはフェロモン、その改変体、それに基づく模倣体、又はそのアンタゴニスト若しくはアゴニスト。例えば、クローン化された幼若ホルモンエステラーゼ、即ち幼若ホルモンの不活性化剤のバキュロウイルス発現に関するHammock,et al.,(1990)Nature 344:458(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)による開示を参照されたい。
【0078】
(D)発現すると、その作用を受けた害虫の生理機能を破壊する昆虫特異的ペプチド。例えば、Regan,(1994)J.Biol.Chem.269:9(発現クローニングは昆虫利尿ホルモン受容体をコードするDNAを得る);Pratt,et al.,(1989)Biochem.Biophys.Res.Comm.163:1243(アロスタチンがディプロプテラ・プンクタータ(Diploptera puntata)で特定されている);Chattopadhyay,et al.,(2004)Critical Reviews in Microbiology30(1):33-54;Zjawiony,(2004)J Nat Prod 67(2):300-310;Carlini and Grossi-de-Sa,(2002)Toxicon 40(11):1515-1539;Ussuf,et al.,(2001)Curr Sci.80(7):847-853;及びVasconcelos and Oliveira,(2004)Toxicon 44(4):385-403(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)の開示を参照されたい。また、昆虫特異的毒素をコードする遺伝子が開示されているTomalskiらの米国特許第5,266,317号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。
【0079】
(E)モノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体、又は殺虫活性を有する別の非タンパク質分子の超集積に関与する酵素。
【0080】
(F)生物活性分子の改変(例えば翻訳後の改変)に関与する酵素、例えば、解糖酵素、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミナーゼ、エステラーゼ、加水分解酵素、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼ、及びグルカナーゼ(天然であるか合成であるかを問わない)。例えば、カラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている、Scottらの名前によるPCT出願の国際公開第93/02197号パンフレット、この全体が参照により本明細書に組み込まれる、を参照されたい。キチナーゼをコードする配列を含むDNA分子を、例えば、アクセッション番号39637及び67152でATCCから入手し得る。Kramer,et al.,(1993)Insect Biochem.Molec.Biol.23:691(これには、タバコ鉤虫キチナーゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列が教示されている)、及びKawalleck,et al.,(1993)Plant Molec.Biol.21:673(これには、パセリのubi4-2ポリウビキチン遺伝子のヌクレオチド配列が提示されている)、米国特許出願第10/389,432号明細書、同第10/692,367号明細書、及び米国特許第6,563,020号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。
【0081】
(G)シグナル伝達を刺激する分子。例えば、リョクトウのカルモジュリンのcDNAクローンのヌクレオチド配列に関するBotella,et al.,(1994)Plant Molec.Biol.24:757による開示、及びトウモロコシのカルモジュリンのcDNAクローンのヌクレオチド配列を提示しているGriess,et al.,(1994)Plant Physiol.104:1467(この全体が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0082】
(H)疎水性モーメントペプチド。PCT出願の国際公開第95/16776号パンフレット及び米国特許第5,580,852号明細書(真菌植物病原体を阻害するタキプレシンのペプチド誘導体の開示)、並びにPCT出願の国際公開第95/18855号パンフレット及び米国特許第5,607,914号明細書(病害抵抗性を付与する合成抗微生物ペプチドを教示する)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0083】
(I)膜透過酵素、チャネルフォーマー、又はチャネルブロッカー。例えば、トランスジェニックタバコ植物にシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対する耐性を付与するセクロピン-ベータ溶解ペプチド類似体の異種発現に関するJaynes,et al.,(1993)Plant Sci.89:43(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)による開示を参照されたい。
【0084】
(J)ウイルス侵入性タンパク質又はそれから誘導される複合毒素。例えば、形質転換植物細胞中のウイルス外皮タンパク質の蓄積は、外皮タンパク質遺伝子が由来するウイルス及び関連ウイルスにより引き起こされるウイルスの感染及び/又は疾患の進行に対する耐性を付与する。Beachy,et al.,(1990)Ann.Rev.Phytopathol.28:451(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。外皮タンパク質が介在する、アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコ・エッチ・ウイルス、タバコ茎壊疽ウイルス、及びタバコモザイクウイルスに対する耐性が、形質転換植物に付与されている(同文献)。
【0085】
(K)昆虫特異的抗体又はそれから誘導される免疫毒素。そのため、昆虫の消化管での重要な代謝機能を標的とした抗体は、その作用を受けた酵素を不活性化し、昆虫を死滅させるであろう。Taylor,et al.,Abstract ♯497,SEVENTH INT’L SYMPOSIUM ON MOLECULAR PLANT-MICROBE INTERACTIONS(Edinburgh,Scotland,1994)(一本鎖抗体断片の生成による、トランスジェニックタバコの酵素不活性化)(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0086】
(L)ウイルス特異的抗体。例えば、Tavladoraki,et al.,(1993)Nature 366:469を参照されたい。この文献には、組み換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物がウイルスの攻撃から保護されることが示されており、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
(M)病原体又は寄生生物により天然に産生される発達阻害タンパク質。そのため、真菌エンド-アルファ-1,4-D-ポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ-アルファ-1,4-D-ガラクツロナーゼを可溶化することにより、真菌のコロニー形成及び植物の養分放出を促進する。Lamb,et al.,(1992)Bio/Technology 10:1436(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。マメエンドポリガラクツロナーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子のクローニング及び特徴付けは、Toubart,et al.,(1992)Plant J.2:367(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている。
【0088】
(N)植物により天然に産生される発達阻害タンパク質。例えば、Logemann,et al.,(1992)Bio/Technology 10:305(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、オオムギリボソーム不活性化遺伝子を発現するトランスジェニック植物が、真菌性の疾患に対し高い耐性を有することを示している。
【0089】
(O)全身獲得抵抗性(SAR)応答に関与する遺伝子、及び/又は病因関連遺伝子。Briggs,(1995)Current Biology 5(2):128-131,Pieterse and Van Loon,(2004)Curr.Opin.Plant Bio.7(4):456-64、及びSomssich,(2003)Cell 113(7):815-6(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0090】
(P)抗真菌遺伝子(Cornelissen and Melchers,(1993)Pl.Physiol.101:709-712、及びParijs,et al.,(1991)Planta 183:258-264、及びBushnell,et al.,(1998)Can.J.of Plant Path.20(2):137-149)。また、米国特許出願第09/950,933号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0091】
(Q)フモニシン、ビューベリシン、モニリホルミン、及びゼアラレノン、並びにそれらの構造的に関連する誘導体等に対する解毒遺伝子。例えば、米国特許第5,792,931号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0092】
(R)シスタチン、及びシステインプロテイナーゼ阻害剤。米国特許出願第10/947,979号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0093】
(S)デフェンシン遺伝子。国際公開第03/000863号パンフレット及び米国特許出願第10/178,213号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0094】
(T)線虫に対する耐性を付与する遺伝子。国際公開第03/033651号パンフレット、及びUrwin,et.al.,(1998)Planta 204:472-479,Williamson(1999)Curr Opin Plant Bio.2(4):327-31(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0095】
(U)真菌コレトトリクム・グラミニコラ(Colletotrichum graminiola)により引き起こされる炭疽病による茎腐病に対する耐性を付与する、rcg1等の遺伝子。Jung,et al.,Generation-means analysis and quantitative trait locus mapping of Anthracnose Stalk Rot genes in Maize,Theor.Appl.Genet.(1994)89:413-418、及び米国仮特許出願第60/675,664号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0096】
2.除草剤に対する抵抗性を付与する導入遺伝子、例えば:
(A)イミダゾリノン又はスルホニル尿素等の、成長点又は分裂組織を阻害する除草剤。このカテゴリーの遺伝子の例は、例えば、Lee,et al.,(1988)EMBO J.7:1241及びMiki,et al.,(1990)Theor.Appl.Genet.80:449でそれぞれ説明されているような変異ALS及びAHAS酵素をコードする。また、米国特許第5,605,011号明細書;同第5,013,659号明細書、同第5,141,870号明細書、同第5,767,361号明細書、同第5,731,180号明細書、同第5,304,732号明細書、同第4,761,373号明細書、同第5,331,107号明細書、同第5,928,937号明細書、及び同第5,378,824号明細書、並びに国際公開第96/33270号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。
【0097】
(B)グリホサート(それぞれ変異5-エノールピルビル-3-ホスフィキメート合成酵素(EPSP)遺伝子及びaroA遺伝子により耐性が付与される)、及びグルホシネート等の他のホスホノ化合物(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子及びストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子)、並びにピリジノキシプロピオン酸又はフェノキシプロピオン酸、及びシクロスヘキソン(cycloshexone)(ACC酵素阻害剤をコードする遺伝子)。例えば、Shahらの米国特許第4,940,835号明細書を参照されたい。これには、グリホサート耐性を付与し得るEPSPSの形態のヌクレオチド配列が開示されている。Barryらの米国特許第5,627,061号明細書でも、EPSPS酵素をコードする遺伝子が説明されている。米国特許第6,566,587号明細書;同第6,338,961号明細書;同第6,248,876B1号明細書;同第6,040,497号明細書;同第5,804,425号明細書;同第5,633,435号明細書;同第5,145,783号明細書;同第4,971,908号明細書;同第5,312,910号明細書;同第5,188,642号明細書;同第4,940,835号明細書;同第5,866,775号明細書;同第6,225,114B1号明細書;同第6,130,366号明細書;同第5,310,667号明細書;同第4,535,060号明細書;同第4,769,061号明細書;同第5,633,448号明細書;同第5,510,471号明細書;米国再発行特許第36,449号明細書;同第37,287E号明細書;及び米国特許第5,491,288号明細書、並びに国際公開の欧州特許第1173580号明細書;国際公開第01/66704号パンフレット;欧州特許第1173581号明細書;及び欧州特許第1173582号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。グリホサート耐性はまた、米国特許第5,776,760号明細書及び同第5,463,175号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)でより詳しく説明されているグリホサート酸化還元酵素をコードする遺伝子を発現する植物にも付与される。加えて、グリホサート耐性は、グリホサートNアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の過剰発現により植物に付与され得る。例えば、米国特許出願公開第2004/0082770号明細書、国際公開第03/092360号パンフレット、及び同第05/012515号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。変異aroA遺伝子をコードするDNA分子を、ATCCアクセッション番号39256で得ることができ、この変異遺伝子のヌクレオチド配列は、Comaiの米国特許第4,769,061号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されている。Kumadaらの欧州特許出願第0 333 033号明細書、及びGoodmanらの米国特許第4,975,374号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)では、L-ホスフィノトリシン等の除草剤に対する耐性を付与するグルタミン合成酵素遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている。ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、Leemansらの欧州特許第0 242 246号明細書及び同第0 242 236号明細書、De Greef,et al.,(1989)Bio/Technology 7:61(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に示されており、これらでは、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ活性をコードするキメラbar遺伝子を発現するトランスジェニック植物の作製が説明されている。また、米国特許第5,969,213号明細書;同第5,489,520号明細書;同第5,550,318号明細書;同第5,874,265号明細書;同第5,919,675号明細書;同第5,561,236号明細書;同第5,648,477号明細書;同第5,646,024号明細書;同第6,177,616B1号明細書;及び同第5,879,903号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。フェノキシプロピオン酸及びシクロスヘキソン(例えば、セトキシジム及びハロキシホップ)に対する耐性を付与する遺伝子の例は、Marshall,et al.,(1992)Theor.Appl.Genet.83:435(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)により説明されているAcc1-S1、Acc1-S2、及びAcc1-S3遺伝子である。
【0098】
(C)トリアジン(psbA遺伝子及びgs+遺伝子)並びにベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)等の、光合成を阻害する除草剤。Przibilla,et al.,(1991)Plant Cell 3:169(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)では、変異psbA遺伝子をコードするプラスミドによるクラミドモナス属(Chlamydomonas)の形質転換が説明されている。ニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、Stalkerの米国特許第4,810,648号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されており、この遺伝子を含むDNA分子は、ATCCアクセッション番号53435、67441及び67442で入手可能である。グルタチオンS-トランスフェラーゼをコードするDNAのクローニング及び発現は、Hayes,et al.,(1992)Biochem.J.285:173(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)により説明されている。
【0099】
(D)アセトヒドロキシ酸合成酵素は、この酵素を発現する植物を複数の種類の除草剤に対して耐性を有する植物とすることが見出され、様々な植物に導入されている(例えば、Hattori,et al.,(1995)Mol Gen Genet 246:419(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。除草剤に対する耐性を付与する他の遺伝子として、下記が挙げられる:ラットシトクロムP4507A1及び酵母NADPH-シトクロムP450酸化還元酵素のキメラ蛋白質をコードする遺伝子(Shiota,et al.,(1994)Plant Physiol.106(1):17-23)、グルタチオン還元酵素及びスーパーオキシドジスムターゼの遺伝子(Aono,et al.,(1995)Plant Cell Physiol 36:1687)、並びに様々なホスホトランスフェラーゼの遺伝子(Datta,et al.,(1992)Plant Mol Biol 20:619)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0100】
(E)プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(protox)は、葉緑素の生成に必要であり、葉緑素はあらゆる植物の生存に必要である。protox酵素は、様々な除草化合物の標的として働く。これらの除草剤はまた、存在する異なる種類の植物全ての成長を阻害し、それら全体を破壊する。これらの除草剤に対し耐性を有する改変protox活性を含む植物の開発は、米国特許第6,288,306B1号明細書;同第6,282,837B1号明細書;及び同第5,767,373号明細書;並びに国際公開第01/12825号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている。
【0101】
3.下記等の改変穀粒特性を付与するか又はそれに寄与する導入遺伝子:
(A)例えば、下記による脂肪酸の改変:
(1)植物のステアリン酸含有量を増加させるステアロイル-ACP不飽和化酵素の下方制御。Knultzon,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:2624、及び国際公開第99/64579号パンフレット(トウモロコシでの脂質プロファイルを変更する不飽和化酵素の遺伝子)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
(2)FAD-2遺伝子の改変によるオレイン酸の増大、及び/又はFAD-3遺伝子の改変によるリノレン酸の減少(米国特許第6,063,947号明細書;同第6,323,392号明細書;同第6,372,965号明細書;及び国際公開第93/11245号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、
(3)国際公開第01/12800号パンフレット(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)等での共役リノレン酸含有量又はリノール酸含有量の改変、
(4)LEC1、AGP、Dek1、Superal1、mi1ps、様々なlpa遺伝子、例えば、lpa1、lpa3、hpt、又はhggtの改変。例えば、国際公開第02/42424号パンフレット、同第98/22604号パンフレット、同第03/011015号パンフレット、米国特許第6,423,886号明細書、同第6,197,561号明細書、同第6,825,397号明細書、米国特許出願公開第2003/0079247号明細書、同第2003/0204870号明細書、国際公開第02/057439号パンフレット、同第03/011015号パンフレット、及びRivera-Madrid,et.al.,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.92:5620-5624(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0102】
(B)例えば、下記によるリン含有量の変更:
(1)フィターゼをコードする遺伝子の導入は、フィチン酸の分解を増強し、形質転換植物により多くの遊離リン酸を加えるだろう。例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子のヌクレオチド配列の開示については、Van Hartingsveldt,et al.,(1993)Gene 127:87(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
(2)フィターゼ含有量を減少させる遺伝子の上方制御。トウモロコシでは、このことを、例えば、Raboy,et al.,(1990)Maydica 35:383等での低濃度のフィチン酸で特徴付けられるトウモロコシ変異体で同定されるLPAアレル等の1つ若しくは複数のアレルと関連するDNAをクローニングし、その後、再導入することにより、及び/又は国際公開第02/059324号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0009011号明細書、国際公開第03/027243号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0079247号明細書、国際公開第99/05298号パンフレット、米国特許第6,197,561号明細書、同第6,291,224号明細書、同第6,391,348号明細書、国際公開第2002/059324号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0079247号明細書、国際公開第98/45448号パンフレット、同第99/55882号パンフレット、同第01/04147号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)のようにイノシトールキナーゼ活性を変更することにより、達成し得るだろう。
【0103】
(C)例えば、デンプンの分枝パターンに作用する酵素の遺伝子、又はNTR及び/若しくはTRX等のチオレドキシンを改変する遺伝子を変えること(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,531,648号明細書を参照されたい)、並びに/又はcs27若しくはTUSC27若しくはen27等のガンマゼインノックアウト若しくは変異体(米国特許第6,858,778号明細書、及び米国特許出願公開第2005/0160488号明細書、及び同第2005/0204418号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)により得られる炭水化物の改変。Shiroza,et al.,(1988)J.Bacteriol.170:810(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)のフルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Steinmetz,et al.,(1985)Mol.Gen.Genet.200:220(バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Pen,et al.,(1992)Bio/Technology 10:292(バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)アルファ-アミラーゼを発現するトランスジェニック植物の作製)、Elliot,et al.,(1993)Plant Molec.Biol.21:515(トマトインベルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Sφgaard,et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:22480(オオムギアルファ-アミラーゼ遺伝子の部位特異的変異誘発)、及びFisher,et al.,(1993)Plant Physiol.102:1045(トウモロコシ胚乳デンプン分枝酵素II)、国際公開第99/10498号パンフレット(UDP-D-キシロース4-エピメラーゼ、Fragile1及び2、Ref1、HCHL、C4Hの修飾による消化性及び/又はデンプン抽出の改善)、米国特許第6,232,529号明細書(デンプンレベル(AGP)の改変による高油料種子の作製方法)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。上記の脂肪酸修飾遺伝子を使用して、デンプン及び油の経路の相互関係によりデンプンの含有量及び/又は組成に影響を及ぼすこともできる。
【0104】
(D)トコフェロール又はトコトリエノールの改変等の、抗酸化物質の含有量又は組成の改変。例えば、米国特許第6,787,683号明細書、米国特許出願公開第2004/0034886号明細書、及び国際公開第00/68393号パンフレット(フィチルプレニルトランスフェラーゼ(ppt)の改変による抗酸化物質レベルの操作を含む)、国際公開第03/082899号パンフレット(ホモゲンチシン酸ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(hggt)の改変による)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0105】
(E)種子の必須アミノ酸の改変。例えば、米国特許第6,127,600号明細書(種子中の必須アミノ酸の蓄積を増加させる方法)、米国特許第6,080,913号明細書(種子中の必須アミノ酸の蓄積を増加させるバイナリ方法)、米国特許第5,990,389号明細書(高リシン)、国際公開第99/40209号パンフレット(種子中のアミノ酸組成の改変)、国際公開第99/29882号パンフレット(タンパク質のアミノ酸含有量の改変方法)、米国特許第5,850,016号明細書(種子中のアミノ酸組成の改変)、国際公開第98/20133号パンフレット(必須アミノ酸レベルが高いタンパク質)、米国特許第5,885,802号明細書(高メチオニン)、米国特許第5,885,801号明細書(高トレオニン)、米国特許第6,664,445号明細書(植物アミノ酸生合成酵素)、米国特許第6,459,019号明細書(リシン及びトレオニンの増加)、米国特許第6,441,274号明細書(植物トリプトファン合成酵素ベータサブユニット)、米国特許第6,346,403号明細書(メチオニン代謝酵素)、米国特許第5,939,599号明細書(高硫黄)、米国特許第5,912,414号明細書(メチオニンの増加)、国際公開第98/56935号パンフレット(植物アミノ酸生合成酵素)、国際公開第98/45458号パンフレット(より高い割合で必須アミノ酸を含む改変種子タンパク質)、国際公開第98/42831号パンフレット(リシンの増加)、米国特許第5,633,436号明細書(含硫アミノ酸含有量の増加)、米国特許第5,559,223号明細書(植物の栄養価を改善するためにプログラム可能なレベルの必須アミノ酸を含有する、所定の構造を有する合成貯蔵タンパク質)、国際公開第96/01905号パンフレット(トレオニンの増加)、国際公開第95/15392号パンフレット(リシンの増加)、米国特許出願公開第2003/0163838号明細書、同第2003/0150014号明細書、同第2004/0068767号明細書、米国特許第6,803,498号明細書、国際公開第01/79516号パンフレット、及び同第00/09706号パンフレット(CesA:セルロース合成酵素)、米国特許第6,194,638号明細書(ヘミセルロース)、米国特許第6,399,859号明細書及び米国特許出願公開第2004/0025203号明細書(UDPGdH)、米国特許第6,194,638号明細書(RGP)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0106】
4.部位特異的DNA組み込みのための部位を作製する遺伝子
これには、FLP/FRT系に使用可能なFRT部位、及び/又はCre/Loxp系に使用可能なLox部位の導入が含まれる。例えば、Lyznik,et al.,(2003)Plant Cell Rep 21:925-932、及び国際公開第99/25821号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。使用可能な他の系として、ファージMuのGinリコンビナーゼ(Maeser,et al.,1991;Vicki Chandler,The Maize Handbook ch.118(Springer-Verlag 1994)、大腸菌のPinリコンビナーゼ(Enomoto,et al.,1983)、及びpSR1プラスミドのR/RS系(Araki,et al.,1992)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0107】
5.非生物的ストレス耐性(例えば、限定はされないが、開花、雄穂及び種子の発達、窒素利用効率の増強、窒素反応性の改変、乾燥抵抗性又は乾燥耐性、寒冷耐性又は耐寒性、並びに塩抵抗性又は耐塩性)に影響を及ぼし、且つストレス下で収穫量を増加させる遺伝子。例えば、国際公開第00/73475号パンフレット(リンゴ酸塩の改変によって水使用効率が改変される);米国特許第5,892,009号明細書、同第5,965,705号明細書、同第5,929,305号明細書、同第5,891,859号明細書、同第6,417,428号明細書、同第6,664,446号明細書、同第6,706,866号明細書、同第6,717,034号明細書、国際公開第2000/060089号パンフレット、同第2001/026459号パンフレット、同第2001/035725号パンフレット、同第2001/034726号パンフレット、同第2001/035727号パンフレット、同第2001/036444号パンフレット、同第2001/036597号パンフレット、同第2001/036598号パンフレット、同第2002/015675号パンフレット、同第2002/017430号パンフレット、同第2002/077185号パンフレット、同第2002/079403号パンフレット、同第2003/013227号パンフレット、同第2003/013228号パンフレット、同第2003/014327号パンフレット、同第2004/031349号パンフレット、同第2004/076638号パンフレット、同第98/09521号パンフレット、及び同第99/38977号パンフレット(凍結、高塩分及び乾燥という植物に対する負の効果を緩和し、植物表現型に他の正の効果を付与するのに有効な、CBF遺伝子及び転写因子等の遺伝子を説明している);米国特許出願公開第2004/0148654号明細書、及び国際公開第01/36596号パンフレット(植物中のアブシジン酸が改変され、それにより、収穫量の増加及び/又は非生物的ストレスに対する耐性の増大等の植物の表現型が改善される);国際公開第2000/006341号パンフレット、同第04/090143号パンフレット、米国特許出願第10/817483号明細書、及び米国特許第6,992,237号明細書(サイトカイニン発現が改変され、それにより、乾燥耐性等のストレス耐性が増大し、及び/又は収穫量が増加した植物が得られる)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。また、国際公開第02/02776号パンフレット、同第2003/052063号パンフレット、特開2002281975号公報、米国特許第6,084,153号明細書、国際公開第01/64898号パンフレット、米国特許第6,177,275号明細書、及び同第6,107,547号明細書(窒素利用の増強及び窒素反応性の改変)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。エチレンの改変については、米国特許出願公開第2004/0128719号明細書、同第2003/0166197号明細書、及び国際公開第2000/32761号パンフレット(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。非生物的ストレスの植物転写因子又は転写調節因子については、例えば、米国特許出願公開第2004/0098764号明細書、又は同第2004/0078852号明細書(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0108】
6.収穫量、開花、植物成長、及び/又は植物構造等の植物の成長及び農業形質に影響を及ぼす他の遺伝子及び転写因子を、植物に導入し得るか又は移入し得、例えば、国際公開第97/49811号パンフレット(LHY)、同第98/56918号パンフレット(ESD4)、同第97/10339号パンフレット、及び米国特許第6,573,430号明細書(TFL)、同第6,713,663号明細書(FT)、国際公開第96/14414号パンフレット(CON)、同第96/38560号パンフレット、同第01/21822号パンフレット(VRN1)、同第00/44918号パンフレット(VRN2)、同第99/49064号パンフレット(GI)、同第00/46358号パンフレット(FRI)、同第97/29123号パンフレット、米国特許第6,794,560号明細書、同第6,307,126号明細書(GAI)、国際公開第99/09174号パンフレット(D8及びRht)、並びに同第2004/076638号パンフレット及び同第2004/031349号パンフレット(転写因子)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0109】
本明細書で使用される場合、「アンチセンス配向」は、アンチセンス鎖が転写される方向でプロモーターに作動可能に連結されているポリヌクレオチド配列を指す。アンチセンス鎖は、内因性転写産物に十分に相補的であり、そのため内因性転写産物の翻訳は阻害されることが多い。「作動可能に連結されている」は、単一の核酸断片上の2つ以上の核酸断片が、1つの断片の機能が他の断片の影響を受けるような関係にあることを指す。例えば、プロモーターがコード配列の発現に影響を及ぼし得る(即ち、このコード配列がこのプロモーターの転写制御下にある)場合には、このプロモーターは、このコード配列に作動可能に連結されている。コード配列は、センス配向又はアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0110】
本明細書で開示されている方法に有用な、プロモーターに作動可能に連結されている異種ヌクレオチド配列、及びそれに関連する生物学的活性を有する断片又は改変体は、標的遺伝子のアンチセンス配列であり得る。「アンチセンスDNAヌクレオチド配列」という専門用語は、このヌクレオチド配列の5’から3’という通常の方向に対して逆方向である配列を意味することが意図されている。植物細胞に送達されると、アンチセンスDNA配列の発現は、標的遺伝子のDNAヌクレオチド配列の正常な発現を妨げる。アンチセンスヌクレオチド配列は、標的遺伝子のDNAヌクレオチド配列の転写により生じた内因性メッセンジャーRNA(mRNA)に相補的であり且つハイブリダイズし得るRNA転写産物をコードする。この場合には、標的遺伝子によりコードされる天然タンパク質の産生が阻害されて、所望の表現型応答が得られる。アンチセンス配列は、対応するmRNAにハイブリダイズしてその発現を妨げる限りにおいて改変され得る。このように、対応するアンチセンス配列に対して70%、80%、85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用し得る。さらに、アンチセンスヌクレオチドの部分は、標的遺伝子の発現を妨げるために使用され得る。一般に、少なくとも50個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、又はより多くの配列を使用し得る。そのため、プロモーターは、アンチセンスDNA配列に作動可能に連結されて、本明細書で開示されている方法により形質転換された場合に、植物における天然タンパク質の発現を低減させ得るか又は阻害し得る。
【0111】
「RNAi」は、遺伝子発現を減少させる一連の関連手法を指す(例えば、米国特許第6,506,559号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。他の名称で呼ばれる旧手法は、今日、同じメカニズムに依っていると考えられるが、文献では異なる名称が付されている。これには、「アンチセンス阻害」、即ち、標的タンパク質の発現を抑制し得るアンチセンスRNA転写産物の産生、及び、同一の又は実質的に類似の外来性又は内因性の遺伝子の発現を抑制し得るセンスRNA転写産物の産生を指す「コサプレッション」又は「センスサプレッション」が含まれる(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,231,020号明細書)。そのような手法は、サイレンシングする標的遺伝子に1本の鎖が相補的な二本鎖RNAの蓄積を生じるコンストラクトの使用に依存している。
【0112】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」又は「転写開始領域」という用語は、TATAボックス、又はRNAポリメラーゼIIを誘導して特定のコード配列に適切な転写開始部位でRNA合成を開始させ得るDNA配列を通常は含むDNAの調節領域を意味する。プロモーターは、TATAボックスの上流若しくは5’に一般的に位置する他の認識配列、又はRNAポリメラーゼIIを誘導してRNA合成を開始させ得るDNA配列(転写開始速度に影響を及ぼす上流プロモーターエレメントと呼ばれる)をさらに含み得る。
【0113】
転写開始領域(即ちプロモーター)は、宿主に対してネイティブ(即ち同種)であってもよいし、外来(即ち異種)であってもよいか、又は天然配列若しくは合成配列の可能性がある。外来とは、転写開始領域が導入される野生型宿主では、この転写開始領域が見出されことが意図されている。目的のコード配列に関して、ネイティブプロモーター又は異種プロモーターを使用し得る。
【0114】
転写カセットは、転写の5’-3’方向において、植物内で機能する、転写及び翻訳の開始領域、目的のDNA配列、並びに転写及び翻訳の終止領域を含む。終止領域は、転写開始領域と共にネイティブであってもよいし、目的のDNA配列と共にネイティブであってもよいし、他のソース由来であってもよい。使いやすい終止領域を、ジャガイモプロテイナーゼ阻害剤(PinII)遺伝子から得ることができるか、又はノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ、及びオパリンシンターゼ終止領域等の、A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)のTi-プラスミドの配列から得ることができる。Guerineau et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.262:141-144;Proudfoot(1991)Cell 64:671-674;Sanfacon et al.(1991)Genes Dev.5:141-149;Mogen et al.(1990)Plant Cell 2:1261-1272;Munroe et al.(1990)Gene 91:151-158;Ballas et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:7891-7903;Joshi et al.(1987)Nucleic Acid Res.15:9627-9639もまた参照されたい。
【0115】
発現カセットは、発現カセットコンストラクト中に5’リーダー配列をさらに含み得る。そのようなリーダー配列は、翻訳を促進するよう作用し得る。翻訳リーダーは当技術分野で既知であり、下記が挙げられる:ピコルナウイルスリーダー、例えば、EMCVリーダー(脳心筋炎5’非コード領域)(Elroy-Stein、O.,Fuerst,T.R.,and Moss,B(1989)PNAS USA,86:6126-6130);ポティウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー((タバコ・エッチ・ウイルス(Tobacco Etch Virus))(Allison et al.(1986);MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス);(Virology,154:9-20)、及びヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、(Macejak,D.G.,and P.Sarnow(1991)Nature,353:90-94);アルファルファモザイクウイルスの外皮タンパク質MARNAの非翻訳リーダー(AMV RNA 4)、(Jobling,S.A.,and Gehrke,L.,(1987)Nature,325:622-625;タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)、(Gallie et al.(1989)Molecular Biology of RNA,pages 237-256、Gallie et al.(1987)Nucl.Acids Res.15:3257-3273;トウモロコシ退緑斑紋ウイルスリーダー(MCMV)(Lornmel,S.A.et al.(1991)Virology 81:382-385)。Della-Cioppa et al.(1987)Plant Physiology,84:965-968;及び内因性トウモロコシ5’非翻訳配列も参照されたい。翻訳を促進することで知られている他の方法(例えば、イントロン及び同類のもの)も利用し得る。
【0116】
発現カセットは、形質転換植物に導入されて発現される1つ又は複数の遺伝子又は核酸配列を含み得る。そのため、各核酸配列は、5’及び3’の調節配列に作動可能に連結されるだろう。或いは、複数の発現カセットが提供され得る。
【0117】
「植物プロモーター」は、植物細胞由来であるか否かに関わりなく、植物細胞において転写を開始し得るプロモーターである。植物プロモーターの例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:植物、植物ウイルス、及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)又はリゾビウム属(Rhizobium)等からの植物細胞で発現される遺伝子を含む細菌から得られるもの。発生制御下のプロモーターの例として、葉、根、又は種子等の特定の組織で優先的に転写を開始するプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、「組織優先的」を呼ばれる。特定の組織でのみ転写を開始するプロモーターは、「組織特異的」と呼ばれる。「細胞型」特異的プロモーターは、1種又は複数種の器官の特定の細胞型(例えば、根又は葉の維管束細胞)における発現を主に駆動する。組織特異的プロモーター、組織優先的プロモーター、細胞型特異的プロモーター、及び誘導性プロモーターは、「非構成的」プロモーター類を構成する。
【0118】
「誘導性」プロモーター又は「抑制性」プロモーターは、環境制御下又は外的制御下にあるプロモーターであり得る。誘導性プロモーターによる転写に影響を及ぼし得る環境条件の例として、嫌気的条件、又は特定の化学物質、又は光の存在が挙げられる。或いは、誘導性プロモーター又は抑制性プロモーターの外的制御は、標的ポリペプチドとの相互作用によりプロモーターを誘導するか又は抑制する好適な化学物質又は他の薬剤を与えることにより影響され得る。誘導性プロモーターとしては、熱誘導性プロモーター、エストラジオール応答性プロモーター、化学誘導性プロモーター、及び同類のものが挙げられる。病原体誘導性プロモーターとして、病原体の感染後に誘導される病原性関連タンパク質(PRタンパク質)(例えば、PRタンパク質、SARタンパク質、ベータ-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼ等)からのものが挙げられる。例えば、Redolfi et al.(1983)Neth.J.Plant Pathol.89:245-254;Uknes et al.(1992)The Plant Cell 4:645-656;及びVan Loon(1985)Plant Mol.Virol.4:111-116を参照されたい。本方法に有用な誘導性プロモーターとして、GLB1、OLE、LTP2、HSP17.7、HSP26、HSP18A、及びXVEプロモーターが挙げられる。
【0119】
化学誘導性プロモーターは、テトラサイクリンリプレッサー(TETR)、エタメツルフロンリプレッサー(ESR)、又はクロルスルフロンリプレッサー(CR)により抑制され得、脱抑制は、テトラサイクリン関連リガンド又はスルホニル尿素リガンドの付加により起こる。リプレッサーはTETRであり得、テトラサイクリン関連リガンドは、ドキシサイクリン又はアンヒドロテトラサイクリンである(Gatz、C.,Frohberg、C.and Wendenburg,R.(1992)Stringent repression and homogeneous de-repression by tetracycline of a modified CaMV 35S promoter in intact transgenic tobacco plants,Plant J.2,397-404)。或いは、リプレッサーはESRであり得、スルホニル尿素リガンドは、エタメツルフロン、クロルスルフロン、メツスルフロンメチル、スルホメツロンメチル、クロリムロンエチル、ニコスルフロン、プリミスルフロン、トリベヌロン、スルホスルフロン、トリフロキシスルフロン、ホラムスルフロン、ヨードスルフロン、プロスルフロン、チフェンスルフロン、リムスルフロン、メソスルフロン、又はハロスルフロンである(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20110287936号明細書)。リプレッサーがCRである場合には、CRリガンドはクロルスルフロンである。全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,580,556号明細書を参照されたい。
【0120】
「構成的」プロモーターは、ほとんどの条件下で活性を有するプロモーターである。本開示に有用なプロモーターとして、国際公開第2017/112006号パンフレットで開示されているもの、及び米国仮特許出願第62/562,663号明細書で開示されているものが挙げられる。植物の遺伝子発現で使用される構成的プロモーターは、当該技術分野で既知である。そうしたプロモーターとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(Depicker et al.(1982)Mol.Appl.Genet.1:561-573、Odell et al.(1985)Nature 313:810-812)、ユビキチンプロモーター(Christensen et al.(1992)Plant Mol.Biol.18:675-689)、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(De Almeida et al.(1989)Mol.Gen.Genet.218:78-98)、アクチン(McElroy et al.(1990)Plant J.2:163-171)、ヒストン、DnaJ(Baszczynski et al.(1997)Maydica42:189-201)等の遺伝子からのプロモーター、及び同類のもの。
【0121】
本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語はまた、通常、常にではないが、RNAポリメラーゼ及び/又は特定の部位で転写を開始するのに必要な他の因子を認識することにより、コード領域の発現を制御する配列を含む、構造遺伝子のコード配列の上流(5’)側のDNA配列も指す。RNAポリメラーゼ又は特定の部位で確実に開始させる他の転写因子を認識する調節エレメントの一例は、プロモーターエレメントである。プロモーターエレメントは、転写の開始に関与しているコアプロモーターエレメント、及び遺伝子発現を変化させる他の調節エレメントを含む。イントロン内に又はコード領域配列の3’側に位置しているヌクレオチド配列も目的のコード領域の発現の調節に寄与し得ることを理解しなければならない。好適なイントロンの例としては、トウモロコシIVS6イントロン、又はトウモロコシアクチンイントロンが挙げられるが、これらに限定されない。調節エレメントはまた、転写開始部位の下流(3’)側に、転写領域内で、又はそれらの両方に位置するエレメントも含み得る。本開示の方法との関連では、転写後の調節エレメントとして、転写開始の後に活性なエレメント、例えば、翻訳エンハンサー及び転写エンハンサー、翻訳リプレッサー及び転写リプレッサー、並びにmRNA安定性決定因子が挙げられ得る。
【0122】
「異種ヌクレオチド配列」、「目的の異種ポリヌクレオチド」、又は「異種ポリヌクレオチド」は、本開示全体を通して使用される場合、天然にはプロモーターと共に存在していないか又はプロモーターに作動可能に連結されていない配列である。このヌクレオチド配列は、プロモーター配列に対し異種であるが、宿主植物に対しては、同種の、又は天然の、又は異種の、又は外来のものであり得る。同様に、プロモーター配列は、宿主植物及び/又は目的のポリヌクレオチドに対して、同種の、又は天然の、又は異種の、又は外来のものであり得る。
【0123】
本開示の方法に有用なDNAコンストラクト及び発現カセットはまた、必要な場合には、エンハンサー(翻訳エンハンサー又は転写エンハンサー)をさらに含み得る。このエンハンサー領域は当業者に公知であり、ATG開始コドン及び隣接配列を含み得る。開始コドンは、全配列の翻訳を確かにするため、コード配列のリーディングフレームと同調していなければならない。翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方の様々な起源に由来し得る。翻訳開始領域は、転写開始領域の供給源から提供され得るか、又は構造遺伝子から提供され得る。この配列はまた、遺伝子発現のために選択された調節エレメントに由来し得、特に、mRNAの翻訳を増大させるように改変され得る。転写レベルを高めるために、エンハンサーをプロモーター領域と組み合わせて使用し得ることが認識されている。転写レベルを高めるために、エンハンサーをプロモーター領域と組み合わせて使用し得ることが認識されている。エンハンサーは、プロモーター領域の発現を増加させるように作用するヌクレオチド配列である。エンハンサーは当該技術分野で既知であり、SV40エンハンサー領域、35Sエンハンサーエレメント、及び同類のものが挙げられる。いくつかのエンハンサーはまた、通常のプロモーター発現パターンを、例えば、プロモーターを構成的に発現させることにより変更することが知られている(エンハンサーがない場合には、同一のプロモーターが1つ又は少数の特定の組織でのみ発現する)。
【0124】
一般に、「弱プロモーター」は、コード配列の発現を低レベルで駆動するプロモーターを意味する。「低レベル」の発現とは、約1/10,000転写産物~約1/100,000転写産物~約1/500,000転写産物のレベルでの発現を意味することが意図されている。逆に、強プロモーターは、高レベルで、即ち約1/10転写産物~約1/100転写産物~約1/1,000転写産物でコード配列の発現を駆動する。
【0125】
本開示の方法に有用な配列は、その天然のコード配列と共に使用され得、それによって形質転換植物の表現型の変化を生じることが認識されている。本明細書で開示される形態形成遺伝子及び目的の遺伝子、並びにそれらの改変体及び断片は、任意の植物の遺伝子操作のための本開示の方法において有用である。「作動可能に連結されている」という用語は、異種ヌクレオチド配列の転写又は翻訳が、プロモーター配列の影響下にあることを意味する。
【0126】
本開示の一態様では、発現カセットは、形態形成遺伝子及び/又は異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたている転写開始領域又はその改変体若しくは断片を含む。そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下にヌクレオチド配列を挿入するための複数の制限酵素認識部位を備え得る。この発現カセットは、選択マーカー遺伝子及び3’終止領域をさらに含み得る。
【0127】
発現カセットは、転写の5’-3’方向で、宿主生物において機能する、転写開始領域(即ち、プロモーター又はその改変体若しくは断片)、翻訳開始領域、目的の異種ヌクレオチド配列、翻訳終止領域、及び、任意選択的な転写終止領域を含み得る。本開示の方法に有用な調節領域(即ち、プロモーター、転写調節領域、及び翻訳終止領域)、目的のポリヌクレオチドは、宿主細胞に対して又は互いにネイティブ/類似であり得る。或いは、調節領域、目的のポリヌクレオチドは、宿主細胞に対して又は互いに異種であり得る。本明細書で使用される場合、配列に関連した「異種」は、外来種を起源とする配列であるか、又は同種からのものであれば、組成及び/又はゲノム遺伝子座が意図的な人的介入により天然の形態から実質的に改変されている配列である。例えば、異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、このポリヌクレオチドが由来した種と異なる種からのものであるか、又は同一/類似種からのものであれば、一方若しくは両方が元の形態及び/若しくはゲノム遺伝子座から実質的に改変されているか、又はこのプロモーターが、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの天然プロモーターではない。
【0128】
終止領域は、転写開始領域と同じ由来であってもよいし、作動可能に連結された目的のDNA配列と同じ由来であってもよいし、植物宿主と同じ由来であってもよいし、別の供給源由来(即ち、プロモーター、発現される形態形成遺伝子及び/又はDNA配列、植物宿主、又はこれらの任意の組み合わせに対して外来又は異種)であってもよい。適切な終止領域は、オクトピン合成酵素終止領域及びノパリン合成酵素終止領域等のA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)のTiプラスミドから入手可能である。また、Guerineau,et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.262:141-144;Proudfoot,(1991)Cell 64:671-674;Sanfacon,et al.,(1991)Genes Dev.5:141-149;Mogen,et al.,(1990)Plant Cell 2:1261-1272;Munroe,et al.,(1990)Gene 91:151-158;Ballas,et al.,(1989)Nucleic Acids Res.17:7891-7903;及びJoshi,et al.,(1987)Nucleic Acid Res.15:9627-9639(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0129】
異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター、目的の異種ポリヌクレオチド、異種ポリヌクレオチドヌクレオチド、又は目的の配列を含む発現カセットを使用して、任意の植物を形質転換し得る。或いは、プロモーターに作動可能に連結された目的の異種ポリヌクレオチド、異種ポリヌクレオチドヌクレオチド、又は目的の配列は、トランスファーDNAの外に配置された別個の発現カセット上にあり得る。このようにして、遺伝子組み換えが行われた植物体、植物細胞、植物組織、種子、根、及び同類のものを得ることができる。本開示の配列を含む発現カセットはまた、生物に同時形質転換される遺伝子、異種ヌクレオチド配列、目的の異種ポリヌクレオチド、又は異種ポリヌクレオチドの少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列も含み得る。或いは、この追加のヌクレオチド配列を、別の発現カセットで供してもよい。
【0130】
適切な場合には、プロモーター配列の制御下で発現されるヌクレオチド配列、及び任意の追加のヌクレオチド配列を、形質転換植物における発現を増加させるために最適化し得る。即ち、発現を改善するために、これらのヌクレオチド配列を、植物に好適なコドンを使用して合成し得る。例えば、宿主優先コドンの利用についての考察には、Campbell and Gowri(1990)Plant Physiol.92:1-11(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。植物優先遺伝子を合成する方法は、当該技術分野で利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号明細書、同第5,436,391号明細書、及びMurray,et al.,(1989)Nucleic Acids Res.17:477-498(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0131】
細胞宿主中での遺伝子発現を増強するために、追加的に配列を改変することが知られている。この改変には、遺伝子発現に有害であり得る、疑似ポリアデニル化シグナルをコードする配列、エクソン-イントロンスプライス部位シグナルをコードする配列、トランスポゾン様リピートをコードする配列、及び他のそのようなよく特徴付けられた配列の除去が含まれる。異種ヌクレオチド配列のG-C含量を、宿主細胞において発現された既知の遺伝子を参照することにより算出される、所与の細胞宿主の平均レベルに調節し得る。可能であれば、予想されるヘアピン二次mRNA構造を避けるように配列を改変する。
【0132】
本開示の方法に有用な発現カセットは、5’リーダー配列をさらに含み得る。そのようなリーダー配列は、翻訳を増強するよう作用し得る。翻訳リーダーは、当該技術分野で既知であり、下記が挙げられるが、これらに限定されない:ピコルナウイルスリーダー、例えばEMCVリーダー(脳心筋炎5’非コード領域)(Elroy-Stein,et al.,(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:6126-6130);ポティウイルス(potyvirus)リーダー、例えばTEVリーダー(タバコ・エッチ・ウイルス(Tobacco Etch Virus))(Allison,et al.,(1986)Virology 154:9-20);MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス(Maize Dwarf Mosaic Virus));ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)(Macejak,et al.,(1991)Nature 353:90-94);アルファルファモザイクウイルス(alfalfa mosaic virus)の外皮タンパク質mRNA(AMV RNA 4)由来の非翻訳リーダー(Jobling,et al.,(1987)Nature 325:622-625);タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)リーダー(TMV)(Gallie,et al.,(1989)Molecular Biology of RNA, pages 237-256);及びトウモロコシクロロティックモトルウイルス(maize chlorotic mottle virus)リーダー(MCMV)(Lommel,et al.,(1991)Virology 81:382-385)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。Della-Cioppa,et al.,(1987)Plant Physiology 84:965-968(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。mRNAの安定性を高めることが知られている方法では、イントロン(例えば、トウモロコシユビキチンイントロン(Christensen and Quail,(1996)Transgenic Res.5:213-218;Christensen,et al.,(1992)Plant Molecular Biology 18:675-689)又はトウモロコシAdhIイントロン(Kyozuka,et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.228:40-48;Kyozuka,et al.,(1990)Maydica 35:353-357)(これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、及び同類のもの)も使用され得る。
【0133】
本開示の方法に有用な発現カセットの調製では、各種DNA断片が、適当な配向で、必要ならば適当なリーディングフレームにおいて、DNA配列を提供するように操作され得る。この目標に向かって、アダプター又はリンカーがDNA断片の結合に使用され得るか、又は適当な制限酵素認識部位、不要なDNAの除去、制限酵素認識部位、又は同類のものを提供するための他の操作が行われ得る。この目的のために、インビトロでの変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えばトランジション及びトランスバージョンが行われ得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、ヌクレオチドコンストラクト(例えば発現カセット)を宿主細胞に導入するためのDNA分子(例えば、プラスミド、コスミド、又はバクテリオファージ)を指す。クローニングベクターは、典型的には、外来DNA配列を特定可能な方法で、ベクターの必須の生物学的機能を失わずに挿入し得る1つ又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位と、クローニングベクターで形質転換された細胞の識別及び選択に使用するのに好適なマーカー遺伝子とを含む。マーカー遺伝子として、典型的には、テトラサイクリン耐性、ハイグロマイシン耐性、又はアンピシリン耐性を与える遺伝子が挙げられる。
【0135】
形質転換されている細胞を、従来の方法に従って植物体に成長させ得る。例えば、McCormick,et al.,(1986)Plant Cell Reports 5:81-84(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。その後、この植物を成長させ、同じ形質転換株又は異なる株と授粉させ、それにより得られた、所望の表現型の特性を発現した子孫が確認され得る。所望の表現型特性の発現が安定して維持されて受け継がれるのを確実にするため、2世代以上生育させ、その後、所望の表現型特質の発現が達成されていることを確実にするため、種子を収穫し得る。このように、本開示は、ゲノムに安定に組み込まれた、本開示の方法に有用なヌクレオチドコンストラクト(例えば本開示の方法に有用な発現カセット)を有する形質転換種子(「トランスジェニック種子」とも称される)を提供する。
【0136】
植物組織から植物を再生する様々な方法がある。再生の特定の方法は、出発植物組織と再生する特定の植物種に依存するだろう。
【0137】
植物ゲノムの特定の位置でポリヌクレオチドをターゲティングにより挿入する方法は、当該技術分野で既知である。ゲノムの所望の位置でのポリヌクレオチドの挿入は、部位特異的組み換えシステムを使用して行われる。例えば、国際公開第99/25821号パンフレット、同第99/25854号パンフレット、同第99/25840号パンフレット、同第99/25855号パンフレット、及び同第99/25853号パンフレット(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。簡潔に説明すると、目的のポリヌクレオチドは、2つの非同一性組換え部位で挟まれている導入カセットに含まれ得る。導入カセットは、この導入カセットの部位に対応する2つの非同一性組換え部位で挟まれている標的部位がそのゲノムに安定に組み込まれた植物に導入される。適切なリコンビナーゼが提供され、トランスファーカセットが標的部位に組み込まれる。それにより、目的のポリヌクレオチドが、植物ゲノムの特定の染色体上の位置に組み込まれる。
【0138】
本開示の方法を使用して、外植片由来の植物のゲノムにおける改変のための特定の部位を標的とするのに有用なポリヌクレオチドを外植片に導入し得る。本開示の方法により導入され得る部位特異的改変として、部位特異的改変を導入する任意の方法によるものが挙げられ、例えば、限定されないが、遺伝子修復オリゴヌクレオチドの使用(例えば、米国特許出願公開第2013/0019349号明細書)、又は二本鎖切断技術(TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR-Cas、及び同類のもの)の使用によるものが挙げられる。例えば、植物体又は植物細胞のゲノム中の標的配列のゲノム改変のために、植物体を選択するために、塩基又は配列を欠失させるために、遺伝子編集のために、そして目的ポリヌクレオチドを植物体又は植物細胞のゲノムに挿入するために、本開示の方法を使用して、CRISPR-Casシステムを植物細胞又は植物体に導入し得る。そのため、本開示の方法を、CRISPR-Casシステムと共に使用して、植物体、植物細胞、又は種子のゲノム中の標的部位及び目的のヌクレオチドを変更するか又は改変するのに有効なシステムを提供し得る。Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物最適化Cas9エンドヌクレアーゼであり、この植物最適化Cas9エンドヌクレアーゼは、植物ゲノムに結合し、ゲノム標的配列に二本鎖切断を引き起こし得る。
【0139】
Casエンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドによりガイドされて、細胞のゲノムの特定の標的部位を認識し、場合により二本鎖切断を導入する。CRISPR-Casシステムは、植物体、植物細胞、又は種子のゲノム中の標的部位の改変に有効なシステムを提供する。さらに、細胞のゲノム中の標的部位の改変、及び細胞のゲノム中のヌクレオチド配列の編集に有効なシステムを提供するために、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを用いる方法が提供される。ゲノム標的部位が特定されると、様々な方法を用いて、様々な目的ポリヌクレオチドを含むように標的部位をさらに改変し得る。本開示の方法を使用して、細胞のゲノム中のヌクレオチド配列を編集するためにCRISPR-Casシステムを導入し得る。編集されるヌクレオチド配列(目的のヌクレオチド配列)は、Casエンドヌクレアーゼにより認識される標的部位中に又は標的部位外に位置し得る。
【0140】
CRISPR遺伝子座(クラスター化等間隔短鎖回文リピート)(SPIDR-スペーサー散在型ダイレクトリピートとしても既知である)は、最近説明されたDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、短く且つ高度に保存されたDNAリピート(典型的には24~40bp、1~140回の繰り返し-CRISPRリピートとも呼ばれる)から構成され、部分的に回文を形成している。反復配列(通常、種に固有である)は、一定の長さの可変配列(典型的には、CRISPR遺伝子座に依存して20~58)がスペーサーとして存在している(2007年3月1日公開の国際公開第2007/025097号パンフレット)。
【0141】
CRISPR遺伝子座は最初に大腸菌(E.coli)において見出された(Ishino et al.(1987)J.Bacterial.169:5429-5433;Nakata et al.(1989)J.Bacterial.171:3553-3556)。同様の間隔短配列リピートが、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、アナベナ属(Anabaena)、及びマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)で特定されている(Groenen et al.(1993)Mol.Microbiol.10:1057-1065、Hoe et al.(1999)Emerg.Infect.Dis.5:254-263;Masepohl et al.(1996)Biochim.Biophys.Acta1307:26-30;Mojica et al.(1995)Mol.Microbiol.17:85-93)。CRISPR遺伝子座は、リピートの構造が他のSSRと異なり、短等間隔リピート(short regularly spaced repeat)(SRSR)と呼ばれている(Janssen et al.(2002)OMICS J.Integ.Biol.6:23-33;Mojica et al.(2000)Mol.Microbiol.36:244-246)。リピートは、クラスターの形態で生じる短いエレメントであり、常に一定の長さの可変配列により等しい間隔をおいて存在している(Mojica et al.(2000)Mol.Microbiol.36:244-246)。
【0142】
Cas遺伝子として、一般にフランキングCRISPR遺伝子座に結合して、関連して、又は近接若しくは隣接して存在する遺伝子が挙げられる。「Cas遺伝子」及び「CRISPR関連(Cas)遺伝子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。Casタンパク質ファミリーの包括的レビューは、Haft et al.(2005)Computational Biology,PLoS Comput Biol 1(6):e60.doi:10.1371/journal.pcbi.0010060に示されている。
【0143】
4種の当初説明された遺伝子ファミリーに加え、さらに41種のCRISPR関連(Cas)遺伝子ファミリーが、米国特許出願公開第2015/0059010号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている。この文献には、CRISPRシステムが、異なるリピート配列パターン、遺伝子群、及び種の範囲を有する異なる分類に属することが示されている。所与のCRISPR遺伝子座におけるCas遺伝子の数は、種によって変わり得る。Casエンドヌクレアーゼは、Cas遺伝子によってコードされるCasタンパク質と関連しており、Casタンパク質は、DNA標的配列へ二本鎖切断を導入し得る。Casエンドヌクレアーゼは、ガイドポリヌクレオチドによりガイドされ、細胞のゲノムの特定の標的部位を認識し、場合により二本鎖切断を導入する。本明細書で使用される場合、「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステム」という用語には、DNA標的配列に二本鎖切断を導入し得る、Casエンドヌクレアーゼとガイドポリヌクレオチドとの複合体が含まれる。Casエンドヌクレアーゼは、ゲノム標的部位に近接したDNA二本鎖をほどき、標的配列を認識すると同時に、正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が標的配列の3’末端にほぼ配向されている限り、両方のDNA鎖を切断する(米国特許出願公開第2015/0059010号明細書の
図2A及び
図2Bを参照されたい)。
【0144】
ある態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、Cas9エンドヌクレアーゼであり、例えば、限定されないが、2007年3月1日公開の国際公開第2007/025097号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)の配列番号462、474、489、494、499、505、及び518に挙げられているCas9遺伝子である。別の態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物、トウモロコシ、又はダイズに最適化されたCas9エンドヌクレアーゼであり、例えば、限定されないが、米国特許出願公開第2015/0059010号明細書の
図1Aに示されているものである。
【0145】
別の態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、Casコドン領域上流のSV40核標的シグナル、及びCasコドン領域下流の二分VirD2核定位シグナル(Tinland et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7442-6)に作動可能に連結されている。
【0146】
ある態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、米国特許出願公開第2015/0059010号明細書の、配列番号1、124、212、213、214、215、216、193、若しくは配列番号5のヌクレオチド2037~6329、又はこれらの任意の機能的断片若しくは改変体からなるCas9エンドヌクレアーゼ遺伝子である。
【0147】
Casエンドヌクレアーゼに関連して、「機能的断片」、「機能的に等価である断片」、及び「機能的に等価な断片」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、二本鎖切断を起こす能力が保持されている、Casエンドヌクレアーゼ配列の一部又は部分配列を指す。
【0148】
Casエンドヌクレアーゼに関連して、「機能的改変体」、「機能的に等価である改変体」、及び「機能的に等価な改変体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、二本鎖切断を起こす能力が保持されている、Casエンドヌクレアーゼの改変体を指す。断片及び改変体を、部位特異的変異誘発法及び合成構築法(synthetic construction)等により得ることができる。
【0149】
ある態様では、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、N(12-30)NGG型の任意のゲノム配列を認識し得る植物コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9遺伝子であり、原則として標的とされ得る。
【0150】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及び二本鎖切断誘発物質ドメインからなる人工の二本鎖切断誘発物質である。
【0151】
「デッドCAS9」(dCAS9)は、本明細書で使用される場合、転写リプレッサードメインを供給するために使用される。dCAS9は、もはやDNAを切断できないように変異されている。dCAS0は、gRNAにより配列にガイドされると、なお結合し得、また、リプレッサーエレメントに融合され得る(Gilbert et al.,Cell 2013July 18;154(2):442-451、Kiani et al.,2015 November Nature Methods Vol.12 No.11:1051-1054を参照されたい)。リプレッサーエレメントに融合したdCAS9は、本明細書で説明されているように、dCAS9~REPと略され、ここで、リプレッサーエレメント(REP)は、植物において特徴付けられている既知のリプレッサーモチーフのいずれかであり得る(レビューには、Kagale and Rozxadowski,20010 PlantSignaling&Behavior5:6、691-694を参照されたい)。発現ガイドRNA(gRNA)は、dCAS9~REPタンパク質に結合し、dCAS9-REP融合タンパク質のプロモーター(T-DNA内のプロモーター)内の特定の所定のヌクレオチド配列への結合を標的とする。(TETR又はESRとは対照的に)リプレッサーに融合したdCAS9タンパク質を用いる利点は、T-DNA内の任意のプロモーターに対しこれらのリプレッサーを標的とする能力である。TETR及びESRは、同種のオペレーター結合配列に限定される。或いは、リプレッサードメインに融合した合成ジンクフィンガーヌクレアーゼを、上記のように、gRNA及びdCAS9~REPに代えて使用し得る(Urritia et al.,2003,Genome Biol.4:231)。
【0152】
細菌及び古細菌は、外来核酸の分解に短鎖RNAを使用する、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)/CRISPR-関連(Cas)システムと呼ばれる適応免疫防御を発展させている(2007年3月1日公開の国際公開第2007/025097号パンフレット)。細菌由来のII型CRISPR/Casシステムは、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的へガイドするのにcrRNA及びtracrRNAを使用する。crRNA(CRISPR RNA)は、二本鎖DNAの一方の鎖に相補的な領域と、CasエンドヌクレアーゼにDNA標的を切断させるRNA二本鎖を形成するtracrRNA(trans活性化CRISPR RNA)を有する塩基対とを含む。
【0153】
本明細書で使用される場合、「ガイドヌクレオチド」という用語は、2つのRNA分子、可変標的領域を含むcrRNA(CRISPR RNA)、及びtracrRNAの合成的融合に関する。ある態様では、ガイドヌクレオチドは、12~30個のヌクレオチド配列からなる可変標的ドメインと、Casエンドヌクレアーゼと相互作用し得るRNA断片とを含む。
【0154】
本明細書で使用される場合、「ガイドポリヌクレオチド」という用語は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成し、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、場合により切断することを可能にするポリヌクレオチド配列に関連している。ガイドポリヌクレオチドは、単分子又は二重分子であり得る。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、又はこれらの組み合わせ(RNA-DNA組み合わせ配列)であり得る。任意選択的に、ガイドポリヌクレオチドは、少なくとも1個のヌクレオチド、ホスホジエステル結合、又は連結修飾を含み得、この連結修飾として、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdC、2,6-ジアミノプリン、2’-フルオロA、2’-フルオロU、2’-O-メチルRNA、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子への連結、又は環化をもたらす5’から3’への共有結合的連結が挙げられるが、これらに限定されない。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドもまた、「ガイドヌクレオチド」と称される。
【0155】
ガイドポリヌクレオチドは、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメイン又はVTドメインとも呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン又はCERドメインとも呼ばれる)とを含む二重分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であり得る。この二重分子ガイドポリヌクレオチドのCERドメインは、相補領域に沿ってハイブリダイズされる2個の個別の分子を含む。これら2個の個別の分子は、RNA配列、DNA配列、及び/又はRNA-DNA組み合わせ配列であり得る。ある態様では、CERドメインに連結されているVTドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチドの第1の分子は、「crDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合)、又は「crRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合)、又は「crDNA-RNA」(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合)と称される。crヌクレオチドは、細菌及び古細菌中で天然に存在するcRNAの断片を含み得る。ある態様では、本明細書で開示されているcrヌクレオチド中に存在する細菌中及び古細菌中に天然に存在するcRNAの断片のサイズは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、又はより多いヌクレオチドから変動し得るが、これらに限定されない。
【0156】
ある態様では、CERドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチドの第2の分子は、「tracrRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合)、又は「tracrDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成されている場合)、又は「tracrDNA-RNA」(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合)と称される。ある態様では、RNA Cas9エンドヌクレアーゼ複合体をガイドするRNAは、二本鎖crRNA-tracrRNAを含む二本鎖RNAである。
【0157】
ガイドポリヌクレオチドはまた、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメイン又はVTドメインと呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン又はCERドメインと呼ばれる)とを含む単分子であり得る。ガイドポリヌクレオチドの「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」又は「CERドメイン」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するヌクレオチド配列(例えば、ガイドポリヌクレオチドの第2のヌクレオチド配列ドメイン)を含む。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列(例えば、本明細書で説明されている改変を参照されたい)、又はこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
【0158】
一本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、又はRNA-DNA組み合わせ配列を含み得る。ある態様では、一本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100個のヌクレオチドの長さであり得る。別の態様では、一本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、限定はされないがGAAAテトラループ配列等のテトラループ配列を含み得る。
【0159】
ガイドポリヌクレオチド、VTドメイン、及び/又はCERドメインのヌクレオチド配列改変は、5’キャップ、3’ポリアデニル化テイル、リボスイッチ配列、安定した制御配列、dsRNA二本鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドの標的を細胞内位置に設定する改変若しくは配列、トラッキングが生じる改変若しくは配列、タンパク質用の結合部位が生じる改変若しくは配列、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdCヌクレオチド、2,6-ジアミノプリンヌクレオチド、2’-フルオロAヌクレオチド、2’-フルオロUヌクレオチド;2’-O-メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18分子への連結、5’から3’への共有結合的連結、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得るが、これらに限定されない。これらの改変により、少なくとも1種の追加の有利な特徴をもたらし得、この追加の有利な特徴は、安定性の変更又は調節、細胞内ターゲティング、トラッキング、蛍光標識、タンパク質用又はタンパク質複合体用の結合部位、相補的な標的配列に対する結合親和性の変更、細胞分解に対する耐性の変更、及び細胞透過性の増大の群から選択される。
【0160】
ある態様では、ガイドヌクレオチドとCasエンドヌクレアーゼとは、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位で二本鎖切断を導入するのを可能にする複合体を形成し得る。
【0161】
本開示のある態様では、可変標的ドメインは、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のヌクレオチドの長さである。
【0162】
本開示のある態様では、ガイドヌクレオチドは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成し得るII型CRISPR/CasシステムのcRNA(又はcRNA断片)及びtracrRNA(又はtracrRNA断片)を含み、このガイドヌクレオチドCasエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを植物ゲノム標的部位へと誘導し得、Casエンドヌクレアーゼがこのゲノム標的部位に二本鎖切断を導入することを可能にする。ガイドヌクレオチドを、当該技術分野で既知の任意の方法(例えば、限定されないが、粒子衝撃法又は局所的適用法)により、植物体又は植物細胞に直接導入し得る。
【0163】
ある態様では、ガイドヌクレオチドを、植物細胞中でガイドヌクレオチドを転写し得る植物特異的プロモーターに作動可能に連結された、対応するガイドDNA配列を含む組み換えDNA分子を導入することにより、間接的に導入し得る。「対応するガイドDNA」という用語は、RNA分子の各「U」が「T」に置き替えられている以外はRNA分子と同じDNA分子を含む。
【0164】
ある態様では、ガイドヌクレオチドは、粒子衝撃法により、又は植物U6ポリメラーゼIIIプロモーターに作動可能に連結された、対応するガイドDNAを含む組み換えDNAコンストラクトをアグロバクテリウム属(Agrobacterium)により形質転換するための本開示の方法を使用して導入される。
【0165】
ある態様では、RNA Cas9エンドヌクレアーゼ複合体をガイドするRNAは、二本鎖crRNA-tracrRNAを含む二本鎖RNAである。二本鎖crRNA-tracrRNAに対してガイドヌクレオチドを使用する利点の1つは、融合ガイドヌクレオチドを発現させるために作製する必要がある発現カセットが1種のみであるということである。
【0166】
「標的部位」、「標的配列」、「標的DNA」、「標的遺伝子座」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」、及び「ゲノム標的遺伝子座」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼにより植物細胞ゲノムで二本鎖切断が導入される植物細胞のゲノム中のポリヌクレオチド配列(葉緑体DNA及びミトコンドリアDNAを含む)を指す。標的部位は、植物ゲノム中の内在性部位であり得るか、或いは、標的部位は、植物体に対して異種であり得、そのためゲノム中に天然には存在していないか、或いは標的部位は、天然で生じる場所と比較して異種のゲノム位置で見出され得る。
【0167】
本明細書で使用される場合、用語「内在性標的配列」及び「天然標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、植物ゲノムに対して内在性であるか又は天然であり、且つ植物ゲノム中の標的配列の内在性又は天然の位置に存在する標的配列を指す。ある態様では、標的部位は、LIG3-4エンドヌクレアーゼ(米国特許出願公開第2009/0133152号明細書)又はMS26++メガヌクレアーゼ(米国特許出願公開第2014/0020131号明細書)等の二本鎖切断誘発物質により特異的に認識され及び/又は結合されるDNA認識部位又は標的部位に類似する部位であり得る。
【0168】
「人工標的部位」又は「人工標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、植物のゲノム中に導入された標的配列を指す。そのような人工標的配列は、植物ゲノム中の内在性標的配列又は天然標的配列と配列が同じであり得るが、植物ゲノム中の異なる場所(即ち、非内在性又は非天然の場所)に存在し得る。
【0169】
「改変標的部位」、「改変標的配列」、「変更標的部位」、及び「変更標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、非改変標的配列を比較した場合に少なくとも1つの改変を含む、本明細書で開示されている標的部位を指す。そのような「改変」としては、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせが挙げられる。
【0170】
ある態様では、本開示の方法を使用して、植物における標的遺伝子の遺伝子抑制に有用なポリヌクレオチドを植物に導入し得る。植物における遺伝子操作のいくつかの態様では、特定の遺伝子の活性低下(遺伝子サイレンシング又は遺伝子抑制としても既知である)が望まれる。多くの遺伝子サイレンシング技術が当業者に公知であり、下記が挙げられるが、これらに限定されない:アンチセンス技術(例えば、Sheehy et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8805-8809;並びに米国特許第5,107,065号明細書;同第5,453,566号明細書;及び同第5,759,829号明細書を参照);コサプレッション(例えば、Taylor(1997)Plant Cell 9:1245;Jorgensen(1990)Trends Biotech.8(12):340-344;Flavell(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3490-3496;Finnegan et al.(1994)Bio/Technology 12:883-888;及びNeuhuber et al.(1994)Mol.Gen.Genet.244:230-241);RNA干渉(Napoli et al.(1990)Plant Cell 2:279-289、米国特許第5,034,323号明細書;Sharp(1999)Genes Dev.13:139-141;Zamore et al.(2000)Cell 101:25-33;Javier(2003)Nature 425:257-263;及びMontgomery et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:15502-15507);ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(Burton,et al.(2000)Plant Cell 12:691-705;及びBaulcombe(1999)Curr.Op.Plant Bio.2:109-113);標的RNA特異的リボザイム(Haseloff et al.(1988)Nature 334:585-591);ヘアピン構造(Smith et al.(2000)Nature 407:319-320;国際公開第99/53050号パンフレット;同第02/00904号パンフレット;及び同第98/53083号パンフレット);リボザイム(Steinecke et al.(1992)EMBO J.11:1525、米国特許第4,987,071号明細書;及びPerriman et al.(1993)Antisense Res.Dev.3:253);オリゴヌクレオチド媒介標的改変(例えば、国際公開第03/076574号パンフレット及び同第99/25853号パンフレット);Znフィンガー標的分子(例えば、国際公開第01/52620号パンフレット;同第03/048345号パンフレット;及び同第00/42219号パンフレット);人工マイクロRNA(US8106180;Schwab et al.(2006)Plant Cell 18:1121-1133);並びに当業者に既知の他の方法又は上記方法の組み合わせ。
【0171】
ある態様では、本開示の方法を使用して、植物へのヌクレオチド配列の標的組み込みに有用なポリヌクレオチドを植物に導入し得る。例えば、本開示の方法を使用して、標的部位を含む植物体を形質転換するために、非同一組み換え部位が隣接する目的のヌクレオチド配列を含むトランスファーカセットを導入し得る。ある態様では、標的部位は、トランスファーカセット上のものに対応する、非同一組み換え部位を少なくとも1セット含む。組み換え部位が隣接するヌクレオチド配列の置換は、リコンビナーゼの影響を受ける。そのため、本開示の方法を、ヌクレオチド配列の標的組み込みのためのトランスファーカセットの導入に使用し得、非同一組み換え部位が隣接するトランスファーカセットは、非同一組み換え部位を認識してこの非同一組み換え部位で組み換えを行うリコンビナーゼにより認識される。従って、本開示の方法及び組成物を使用して、非同一組み換え部位を含む植物の成長の効率及び速度を改善し得る。
【0172】
そのため、本開示の方法は、外因性ヌクレオチドの形質転換植物への、方向性を有する標的組み込みを行うための方法をさらに含み得る。ある態様では、本開示の方法は、所望の遺伝子及びヌクレオチド配列の、既に標的植物ゲノムに導入された対応する組み換え部位への方向性を有するターゲティングを促進する遺伝子ターゲティングシステムにおいて、新規の組み換え部位を使用する。
【0173】
ある態様では、2つの非同一組み換え部位が隣接するヌクレオチド配列が、目的のヌクレオチド配列の挿入のために標的部位が設けられた、標的生物のゲノム由来の外植片の1つ又は複数の細胞に導入される。安定した植物体又は培養組織が確立されると、標的部位に隣接している組み換え部位に対応する部位が隣接した第2のコンストラクト(即ち、目的のヌクレオチド配列)が、リコンビナーゼタンパク質の存在下で、安定して形質転換された植物体又は組織に導入される。このプロセスにより、標的部位の非同一組み換え部位とトランスファーカセットとの間で、ヌクレオチド配列の置換が起こる。
【0174】
この方法で調製された形質転換植物体は複数の標的部位(即ち、非同一組み換え部位のセット)を含み得ることが認識されている。この方法では、形質転換植物体の標的部位に対して複数の操作を行い得る。形質転換植物体の標的部位は、形質転換植物体のゲノムに挿入されており且つ非同一組み換え部位を含むDNA配列が意図されている。
【0175】
本開示の方法で使用される組み換え部位の例は、当該技術分野で既知であり、下記が挙げられる:FRT部位(例えば、Schlake and Bode(1994)Biochemistry 33:12746-12751;Huang et al.(1991)Nucleic Acids Research 19:443-448;Paul D.Sadowski(1995)In Progress in Nucleic Acid Research and Molecular Biology vol.51,pp.53-91;Michael M.Cox(1989)In Mobile DNA,Berg and Howe(eds)American Society of Microbiology,Washington D.C.,pp.116-670;Dixon et al.(1995)18:449-458;Umlauf and Cox(1988)The EMBO Journal 7:1845-1852;Buchholz et al.(1996)Nucleic Acids Research 24:3118-3119;Kilby et al.(1993)Trends Genet.9:413-421:Rossant and Geagy(1995)Nat.Med.1:592-594;Albert et al.(1995)The Plant J.7:649-659;Bayley et al.(1992)Plant Mol.Biol.18:353-361;Odell et al.(1990)Mol.Gen.Genet.223:369-378;及びDale and Ow(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:10558-105620(これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる);Lox(Albert et al.(1995)Plant J.7:649-659;Qui et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1706-1710;Stuurman et al.(1996)Plant Mol.Biol.32:901-913;Odell et al.(1990)Mol.Gen.Gevet.223:369-378;Dale et al.(1990)Gene 91:79-85;及びBayley et al.(1992)Plant Mol.Biol.18:353-361)。大部分の天然に存在するサッカロミケス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)株で見出される2ミクロンのプラスミドは、2つの反転リピート間のDNAの反転を促進する部位特異的リコンビナーゼをコードする。この反転は、プラスミドのコピー数増幅で中心的な役割を果たす。
【0176】
タンパク質、指定されたFLPタンパク質は、部位特異的組み換えイベントを触媒する。最小の組み換え部位(FRT)が定義されており、且つ非対称8bpスペーサーを挟んだ2つの反転13塩基対(bp)のリピートを含む。FLPタンパク質は、リピートとスペーサーとの接合部で部位を切断し、3’末端リン酸エステルによりDNAに共有結合する。FLPのような部位特異的リコンビナーゼは、特定の標的配列でDNAを切断して再ライゲートして、2つの同一部位間で正確に定義された組み換えをもたらす。機能させるには、システムは組み換え部位とリコンビナーゼとを必要とする。補助的因子は必要でない。このようにして、システム全体を植物細胞に挿入して機能させ得る。酵母のFLP/FRT部位特異的組み換えシステムが植物で機能することが示されている。今日では、このシステムは、不要なDNAの切除に利用されている。Lyznik et al.(1993)Nucleic Acid Res.21:969-975を参照されたい。対照的に、本開示は、植物ゲノムにおけるヌクレオチド配列の置換、ターゲティング、配置、挿入、及び発現の制御に、非同一FRTを使用する。
【0177】
ある態様では、ゲノムに組み込まれる標的部位を含む目的の形質転換生物(例えば、植物体からの外植片)が必要とされる。この標的部位は、非同一組み換え部位が隣接するという特徴を有する。形質転換生物の標的部位に含まれる部位に対応する非同一組み換え部位が隣接するヌクレオチド配列を含むターゲティングカセットが、さらに要求される。非同一組み換え部位を認識し且つ部位特異的組み換えを触媒するリコンビナーゼが要求される。
【0178】
リコンビナーゼは、当該技術分野で既知の任意の手段で提供され得ると認識されている。即ち、リコンビナーゼは、生物中でリコンビナーゼを発現し得る発現カセットで生物を形質転換することにより、一過性発現により、又はリコンビナーゼ若しくはリコンビナーゼタンパク質のメッセンジャーRNA(mRNA)を提供することにより、生物又は植物細胞中に提供され得る。
【0179】
「非同一組み換え部位」は、隣接する組み換え部位の配列が同一でなく、組み換えが生じないか、又は部位間の組み換えが最少になるであろうことが意図されている。即ち、1つの隣接する組み換え部位は、FRT部位であり得、第2の組み換え部位は、変異したFRT部位であり得る。本開示の方法で使用される非同一組み換え部位は、2つの隣接する組み換え部位間の組み換え、及びそこに含まれるヌクレオチド配列の切除を妨げるか、又は大きく抑制する。従って、本開示では、FRT及び変異FRT部位、FRT及びlox部位、lox及び変異lox部位、並びに当該技術分野で既知の他の組み換え部位を含む、任意の好適な非同一組み換え部位を使用し得ることが認識されている。
【0180】
好適な非同一組み換え部位とは、活性なリコンビナーゼの存在下で、2つの非同一組み換え部位間の配列の削除がなされるとしても、植物ゲノムへのヌクレオチド配列の組み換えによる標的配置の置換よりもかなり低い効率で生じることを意味する。そのため、本開示で使用される好適な非同一部位には、部位間の組み換え効率が低い部位、例えば、効率が約30~約50%未満、好ましくは約10~約30%未満、より好ましくは約5~約10%未満の部位が含まれる。
【0181】
上述のように、ターゲティングカセットの組み換え部位は、形質転換された植物体の標的サイトでの組み換え部位に対応する。即ち、形質転換植物体の標的部位が、FRT及び変異FRTという隣接する非同一組み換え部位を含む場合には、ターゲティングカセットは、同じFRT及び変異FRTの非同一組み換え部位を含むだろう。
【0182】
さらに、本開示の方法で使用されるリコンビナーゼは、形質転換植物体及びターゲティングカセットの標的部位の組み換え部位に依存するであろうことが認識されている。即ち、FRT部位が使用される場合、FLPリコンビナーゼが必要になるであろう。同様に、lox部位が使用される場合、Creリコンビナーゼが必要になる。非同一組み換え部位がFRT及びlox部位の両方を含む場合、植物細胞中にFLP及びCreの両リコンビナーゼが必要になるだろう。
【0183】
FLPリコンビナーゼは、DNA複製時に、S.セレビシアエ(S.cerevisiae)の2ミクロンプラスミドのコピー数の増幅に関与する部位特異的反応を触媒するタンパク質である。FLPタンパク質はクローン化されて発現されている。例えば、Cox(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:4223-4227を参照されたい。本開示で使用されるFLPリコンビナーゼを、サッカロミケス属(Saccharomyces)から得ることができる。目的の植物体での最適な発現のために、植物体に望ましいコドンを使用してリコンビナーゼを合成することが好ましい場合がある。例えば、1997年11月18日出願の、発明の名称が「Novel Nucleic Acid Sequence Encoding FLP Recombinase」である米国特許出願第08/972,258号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0184】
バクテリオファージリコンビナーゼCreは、2つのlox部位間の部位特異的組み換えを触媒する。Creリコンビナーゼは、当該技術分野で既知である。例えば、Guo et al.(1997)Nature 389:40-46;Abremski et al.(1984)J.Biol.Chem.259:1509-1514;Chen et al.(1996)Somat.Cell Mol.Genet.22:477-488;及びShaikh et al.(1977)J.Biol.Chem.272:5695-5702を参照されたい。これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。そのようなCre配列はまた、植物体に望ましいコドンを使用しても合成され得る。
【0185】
適切な場合には、植物ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列は、形質転換植物における発現を増加させるために最適化され得る。本開示において哺乳動物、酵母、又は細菌の遺伝子が使用される場合、これらを、発現改善のために、植物体に望ましいコドンを使用して合成し得る。単子葉植物における発現では、単子葉植物に望ましいコドンを使用して双子葉植物の遺伝子も合成し得ると認識されている。当該技術分野では、植物に望ましい遺伝子を合成する方法が利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号明細書、同第5,436,391号明細書,及びMurray et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:477-498(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。植物に望ましいコドンは、目的の植物で発現されるタンパク質において、より頻繁に使用されるコドンから決定され得る。単子葉植物又は双子葉植物に望ましい配列は、特定の植物種にとってその植物に望ましい配列と同様に構築され得ると認識されている。例えば、欧州特許出願公開第A0359472号明細書;欧州特許出願公開第A0385962号明細書;国際公開第91/16432号パンフレット;Perlak et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:3324-3328;及びMurray et al.(1989)Nucleic Acids Research,17:477-498.米国特許第5,380,831号明細書;同第5,436,391号明細書;並びに同類のもの(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。さらに、遺伝子配列の全て又は任意の部分が、最適化されてもよいし合成されてもよいことが認識されている。即ち、完全に最適化されたか又は部分的に最適化された配列も使用し得る。
【0186】
配列のさらなる改変が、細胞宿主中での遺伝子発現を促進することが知られており、且つ本開示で使用され得る。このような改変には、疑似ポリアデニル化シグナルをコードする配列、エクソン-イントロンスプライス部位シグナルをコードする配列、トランスポゾン様リピートをコードする配列、及び遺伝子の発現に有害であり得る他のそのようなよく特徴付けられた配列の除去が含まれる。配列のG-C含有量は、宿主細胞中で発現される既知の遺伝子を参照することによって算出される、所与の細胞宿主の平均的なレベルに調節され得る。可能であれば、配列を、予想されるヘアピン二次RNA構造を避けるように改変する。
【0187】
本開示はまた、新規のFLP組み換え標的部位(FRT)も包含する。FRTは、8塩基スペーサーで分けられた2つの13塩基対リピートを含む最小配列として特定されている。2つの13塩基リピートが8個のヌクレオチドで分離されている限り、スペーサー領域のヌクレオチドを、ヌクレオチドの組み合わせで置換し得る。スペーサーの実際のヌクレオチド配列は重要ではないが、しかしながら、本開示の実施のためには、スペース領域のヌクレオチドのいくつかの置換は、他の領域の置換より良く機能し得る。8塩基対のスペーサーは、鎖置換時のDNA-DNAの対合に関与する。この領域の非対称性は、組み換えイベントの部位アラインメントの方向を決定し、これは、その後、逆方向になるか又は切除されるかに繋がる。上述のように、スペーサーの大部分は、機能を失うことなく変異され得る。例えば、Schlake and Bode(1994)Biochemistry 33:12746-12751(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0188】
新規のFRT変異部位は、本開示の方法の実施で使用され得る。そのような変異部位は、PCRをベースとした変異誘発により構築され得る。変異FRT部位は既知である(国際公開第1999/025821号パンフレットの配列番号2、3、4、及び5を参照されたい)が、本開示の実施に別の変異FRT部位が使用され得ることが認識されている。本開示は、特定のFRT又は組み換え部位の使用ではなく、むしろ、非同一組み換え部位又はFRT部位が、植物ゲノム中のヌクレオチド配列のターゲティング挿入及び発現に使用され得る。そのため、本開示に基づいて、他の変異FRT部位が構築されて使用され得る。
【0189】
上で論じたように、リコンビナーゼの存在下で、非同一組み換え部位を有する標的部位を含むゲノムDNAを、対応する非同一組み換え部位を有するトランスファーカセットを含むベクターと一緒にすると、組み換えが起こる。隣接する組み換え部位の間に位置するトランスファーカセットのヌクレオチド配列は、隣接する組み換え部位の間に位置する標的部位のヌクレオチド配列と置換される。このようにして、目的のヌクレオチド配列を、宿主のゲノムに正確に組み込み得る。
【0190】
本開示の多くの変形を実施し得ることが認識されている。例えば、複数の非同一組み換え部位を有する標的部位を構築し得る。このように、複数の遺伝子又はヌクレオチド配列を、植物ゲノムの正確な位置に積み重ね得るか又はオーダーし得る。同様に、ゲノム内で標的部位が確立されると、トランスファーカセットのヌクレオチド配列内に追加の組み換え部位を組み込み、その部位を標的配列に移入することにより、追加の組み換え部位を導入し得る。このように、標的部位が確立されると、その後、組み換えにより部位を追加するか又は部位を変更することが可能である。
【0191】
別の変形として、生物の標的部位に作動可能に連結されたプロモーター又は転写開始領域を提供することが挙げられる。好ましくは、プロモーターは、最初の組み換え部位の5’末端側にあるだろう。コード領域を含むトランスファーカセットで生物を形質転換することにより、コード領域の発現は、トランスファーカセットが標的部位に組み込まれたときに起こるであろう。この態様は、コード配列として選択マーカー配列を提供することにより、形質転換された細胞(特に植物細胞)を選択する方法を提供する。
【0192】
本システムの別の利点として、上で論じたトランスファーカセットを使用することによる、導入遺伝子又は導入DNAを生物に組み込むことの複雑さを軽減する能力、及び単純な組み込みパターンによる生物の選択が挙げられる。同様に、数種の形質転換イベントを比較することにより、ゲノム内の好ましい部位を特定し得る。ゲノム内の好ましい部位として、必須配列の発現を妨害せず且つ導入遺伝子配列を十分に発現させるものが挙げられる。
【0193】
本開示の方法はまた、ゲノム内の1ヵ所で複数のカセットを結合させる手段も提供する。ゲノム内の標的部位で、組み換え部位を追加してもよいし欠失させてもよい。
【0194】
本開示においては、本システムの3つの成分を一緒にする、当該技術分野で既知の任意の手段を使用し得る。例えば、植物を安定して形質転換し、このゲノム内に標的部位を宿させ得る。リコンビナーゼを、一時的に発現させてもよいし、提供してもよい。或いは、リコンビナーゼを発現し得るヌクレオチド配列を、植物ゲノムに安定的に組み込み得る。対応する非同一組み換え部位が隣接するトランスファーカセットは、対応する標的部位及びリコンビナーゼの存在下で、形質転換植物のゲノムに挿入される。
【0195】
或いは、形質転換植物を有性交雑させることにより、本システムの成分を一緒にし得る。この態様では、ゲノムに組み込まれた標的部位を含む形質転換植物(即ち第1の親)を、第2の植物(即ち第1の親に対応する隣接する非同一組み換え部位を含むトランスファーカセットで遺伝子的に形質転換されている第2の親)と有性交雑し得る。第1の植物又は第2の植物は、そのゲノム内にリコンビナーゼを発現するヌクレオチド配列を含む。リコンビナーゼを、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターの制御下に置くことができる。このようにして、リコンビナーゼの発現及びその後の組み換え部位での活性を制御し得る。
【0196】
本開示の方法は、導入されるヌクレオチド配列を特定の染色体部位へ組み込むターゲティングに有用である。このヌクレオチド配列は、任意の目的のヌクレオチド配列をコードし得る。目的の特定の遺伝子としては、宿主細胞及び/又は生物に容易に分析可能な機能的特徴を提供するもの(例えばマーカー遺伝子)、並びに受容細胞の表現型を変える他の遺伝子、並びに同類のものが挙げられる。そのため、本開示では、植物の成長、高さ、病気に対する感受性、昆虫、栄養価、及び同類のものに影響する遺伝子を使用し得る。このヌクレオチド配列はまた、遺伝子の発現を停止するか又は改変させる「アンチセンス」配列もコードし得る。
【0197】
このヌクレオチド配列は、機能性発現ユニット又はカセットで使用され得ると認識されている。機能性発現ユニット又はカセットは、機能性プロモーター及び殆どの場合に終止領域を有する目的のヌクレオチド配列が意図されている。本開示の実施の中で機能性発現ユニットを実現させるには、各種の方法がある。本開示の一態様では、目的の核酸は、機能性発現ユニットとしてゲノムに導入されるか又は挿入される。
【0198】
或いは、このヌクレオチド配列を、ゲノム内のプロモーター領域の3’端側の部位へ挿入し得る。この後者の場合、プロモーター領域の3’末端側へのコード配列の挿入は、組み込み時に機能性発現ユニットを実現させるものである。植物における発現では、便宜のために、標的部位をコードする核酸、及び目的のヌクレオチド配列を含むトランスファーカセットを、発現カセットに含ませ得る。発現カセットは、目的のペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された転写開始領域(即ちプロモーター)を含むであろう。そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下での目的の遺伝子又は遺伝子群を挿入するための複数の制限部位を備えている。
【実施例】
【0199】
実施例1:配列及びプラスミド
本開示の方法及び組成物で有用な配列を、表1に列挙する。
【0200】
【0201】
【0202】
実施例2:オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株の生成
オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株を、植物形質転換に使用する(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20180216123号明細書)。チメンチンに対する感受性を示し、及び/又はシステイン若しくはロイシンに関する栄養要求性を示す株を作製した。表2を参照されたい。
【0203】
オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株H1-1~H1-7の場合には、βラクタマーゼ遺伝子(SFO-1(ΔblaA)、OXA-1(ΔblaD)、及びクラスB Zn金属酵素(ΔblaB)を、下記で説明するように及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株の生成の概略を示す
図1に示すようにアレル置換ベクターを使用して、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)から個々に及び/又は順次欠失させた。作製するオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株に応じて、下記で説明し且つ
図1に示すプロセスを1回実行するか又は複数回連続して実行する。例えば、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1を、下記で説明し且つ
図1に示すプロセスに供し、SFO-1遺伝子、クラスB Zn金属酵素遺伝子、又はOXA-1遺伝子をそれぞれ欠失させて、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-1、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-2、及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-3をそれぞれ作製した。同様に、SFO-1遺伝子が欠失しているオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-1を、下記で説明し且つ
図1に示すプロセスに再び供し、OXA-1遺伝子及びクラスB Zn金属酵素遺伝子をそれぞれ欠失させて、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-4,及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-5をそれぞれ作製した。同様に、クラスB Zn金属酵素遺伝子が欠失しているオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-2を、下記で説明し且つ
図1に示すプロセスに再び供し、OXA-1遺伝子を欠失させて、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-6を作製した。SFO-1遺伝子及びクラスB Zn金属酵素遺伝子が既に欠失しているオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-5を、下記で説明し且つ
図1に示すプロセスに再び供し、OXA-1遺伝子を欠失させて、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-7を作製した。その後、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-7を、下記で説明し且つ
図1に示すプロセスに供し、セリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を欠失させてオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8を生成し、3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を欠失させてオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-9を生成した。下記で説明し且つ
図1に示すように、野生型オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株からセリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を欠失させることにより、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10を生成した。
【0204】
【0205】
アレル置換カセットベクターの構築
β-ラクタマーゼ遺伝子(SFO-1、OXA-1、及びクラスB Zn金属酵素)、セリンアセチルトランスフェラーゼ、並びに3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の欠失の場合には、アレル置換カセットベクター+を、オーバーラップベースのNEBuilder(登録商標)HiFi(New England Biolabs,240 County Rd,Ipswich,MA 01938から入手可能なDNAアセンブリ法)で構築した。各ベクターは、それぞれβ-ラクタマーゼ遺伝子に隣接する2kbのDNAを含む。30~40bpの長いオーバーラップ領域を含むDNA断片の全てを、PCR又は制限酵素消化により生成した。PCR増幅を、製造業者の推奨に従って、Q5 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)により行ない、増幅したDNA部分を、アガロースゲル電気泳動で分析し、カラム精製又はゲル精製の後に、NEBuilder反応で使用した(データは示さない)。市販のTransforMax(商標)EPI300(商標)Electrocompetent大腸菌(E.coli)(Lucigen Corporation,2905 Parmenter St,Middleton,WI 53562)を、このアセンブリ反応 2μLで形質転換した。アセンブリを、配列決定により検証した(データは示さない)。
【0206】
本明細書で構築されて使用されるアレル置換ベクターを、表3に列挙する。
【0207】
【0208】
アレル置換実験
β-ラクタマーゼ遺伝子(SFO-1、OXA-1、及びクラスB Zn金属酵素)を、下記のように、個々に及び/又は順次欠失させた。アレル置換の第1の工程では、適切なアレル置換ベクター(pLF407、pLF408、又はpLF409)を、個々に、及び複数の欠失の場合には順次に、エレクトロポレーションによりオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1に形質転換させた。このベクターは、pUC複製基点を有し、そのため、大腸菌(E.coli)中で複製し得るがオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1中では複製し得ない。カナマイシン耐性の形質転換体の選択により、このベクターが、優先的には欠失する特定のβ-ラクタマーゼ遺伝子に隣接するクローン化された相同部位で、染色体に組み込まれているというイベントが得られる。形質転換体をカナマイシン上で画線して純度を高めた。アレル置換の第2の工程では、次いで、独立した単離体を、選択することなくブロスで継代させ、ダイレクトリピートの間でベクターをループさせて、第2の組み換えイベントを経験している細胞が増殖することを可能にした。これらのイベントは、もはやsacB遺伝子を含んでおらず、5%のスクロースが入ったプレートで選択した。
【0209】
セリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子及び3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子も、同様に欠失させた。具体的には、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-9の生成の場合には、アレル置換の第1の工程において、GP704CysEKOアレル置換ベクター又はGP704Leu2KOアレル置換ベクターを、エレクトロポレーションにより、それぞれオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-7に形質転換させた。これらのベクターはR6K複製起点を有しており、そのため、R6K pir遺伝子を発現する大腸菌(E.coli)細胞中で複製し得るが、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-7中では複製し得ない。カナマイシン耐性の形質転換体の選択により、このベクターが、優先的にはセリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子又は3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子に隣接するクローン化された相同部位で、染色体に組み込まれているというイベントが得られる。形質転換体をカナマイシン上で画線して純度を高めた。アレル置換の第2の工程では、次いで、独立した単離体を、選択することなくブロスで継代させ、ダイレクトリピートの間でベクターをループさせて、第2の組み換えイベントを経験している細胞が増殖することを可能にした。これらのイベントは、もはやsacB遺伝子を含んでおらず、5%のスクロースが入ったプレートで選択した。
【0210】
オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10の生成の場合には、アレル置換の第1の工程において、pH5557CysEKOアレル置換ベクターを、エレクトロポレーションにより、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1に形質転換させた。このベクターはpUC複製起点を有しており、そのため、大腸菌(E.coli)中で複製し得るが、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1中では複製し得ない。カナマイシン耐性の形質転換体の選択により、このベクターが、優先的にはセリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子に隣接するクローン化された相同部位で、染色体に組み込まれているというイベントが得られる。形質転換体をカナマイシン上で画線して純度を高めた。アレル置換の第2の工程では、次いで、独立した単離体を、選択することなくブロスで継代させ、ダイレクトリピートの間でベクターをループさせて、第2の組み換えイベントを経験している細胞が増殖することを可能にした。このイベントは、もはやsacB遺伝子を含んでおらず、5%のスクロースが入ったプレートで選択した。
【0211】
アレル置換用のコロニーPCRスクリーニング
各アレル置換反応からのスクロース耐性候補コロニーの一部を、各遺伝子に隣接する、表4に列挙されたプライマーによるPCRに供して、各遺伝子が欠失しているかどうかを決定した。
【0212】
プライマーBLA OXA-1 3-3(配列番号1)及びBLA OXA-1 3-5(配列番号2)を使用して、β-ラクタマーゼOXA-1遺伝子が残存しているか、又は表5に列挙された合成欠失接合部(配列番号19)に置換されているかを決定した。
【0213】
プライマーBla SFO-1 3-3(配列番号3)及びBla SFO-1 3-5(配列番号4)を使用して、β-ラクタマーゼSFO-1遺伝子が残存しているか、又は表5に列挙された合成欠失接合部(配列番号20)に置換されているかを決定した。
【0214】
プライマーBla ZnクラスB 3-3(配列番号5)及びBla ZnクラスB 3-5(配列番号6)を使用して、β-ラクタマーゼ クラスB Zn金属酵素遺伝子が残存しているか、又は表5に列挙された合成欠失接合部(配列番号21)に置換されているかを決定した。
【0215】
プライマーCysEKO-F(配列番号7)及びCysEKO-R(配列番号8)を使用して、セリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が残存しているか、又は表5に列挙された合成欠失接合部(配列番号22)に置換されているかを決定した。
【0216】
プライマーLeu2KO-F(配列番号9)及びLeu2KO-R(配列番号10)を使用して、3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が残存しているか、又は表5に列挙された合成欠失接合部(配列番号23)に置換されているかを決定した。
【0217】
【0218】
【0219】
新規のオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株H1-1~H1-7は、β-ラクタマーゼ遺伝子(OXA-1、SFO-1、及びクラスB Zn金属酵素)の内の1つ又は複数の欠失を裏付ける、チメンチンに対する様々な程度の感受性を有することが示された。加えて、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-9も、それぞれシステイン及びロイシンに関する栄養要求性も示した。オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10は、システインに関する栄養要求性を示した。
独立した単離体のゲノム配列を、Illumina配列決定技術(Illumina,Inc.5200 Illumina Way,San Diego,CA 92122)を使用して決定し、既に配列決定されているオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株と別の点で同質遺伝子的であることが分かった。次いで、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10を、実施例3で説明されるダイズを形質転換する能力に関して、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1と比較した。
【0220】
実施例3:オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1株によるダイズの形質転換
オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8、及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10を使用して、ダイズ胚軸(EA)形質転換の2回の形質転換実験での並列比較を実行した。オクロバクテリウム(Ochrobactrum)により媒介されるダイズ胚軸形質転換を、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0216123号明細書で本質的に説明されているように行なった。ダイズ栽培品種P29T50の成熟乾燥種子を、塩素ガスを使用して消毒し、暗所において室温で、5g/lのスクロース及び6g/lの寒天を含む半固体培地上で浸した。終夜のインキュベーション後、この種子を、暗所において室温で、さらなる3~4時間にわたり蒸留水に浸漬させた。蒸留した滅菌水中において、メスの刃を使用して、子葉から無傷の胚軸を単離した。胚軸外植片を、200μMのアセトシリンゴンを含む感染培地にOD600=0.5で懸濁されたヘルパーベクターPHP85634(RV005393(配列番号25))及びバイナリーベクターPHP82314(配列番号26)をそれぞれ含むオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8、又はオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10 15mLが入った深皿に移した。この皿を、パラフィルム(「Parafilm M」VWR Cat#52858)で密閉し、次いで30秒にわたり超音波処理した(Sonicator-VWR model 50T)。超音波処理後、胚軸外植片を、オートクレーブされた滅菌ろ紙(VWR#415/カタログ番号28320-020)の単層に移した。この皿を、Microporeテープ(カタログ番号1530-0、3M、St.Paul、MN))で密閉し、3日にわたり21℃で、16時間にわたる弱い光(5~10μE/m2/s、冷白色蛍光ランプ)下でインキュベートした。
【0221】
共培養後、胚軸外植片を、選択することなく、0.7%の寒天で固化したシュート誘導培地上で培養した。この外植片の基部(即ち、胚軸の根)を、この培地に埋め込んだ。18時間にわたる光周期及び40~70μE/m2/sの光強度にて、26℃でPercival Biological Incubator中において、シュートの誘導を実行した。形質転換の6~7週間後、伸びたシュート(>1~2cm)を単離し、選択剤を含む発根培地に移した。トランスジェニック小植物を土壌ポットに移し、温室中で成長させた。
【0222】
表6Aに示すように、野生型オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1で形質転換されたEAを含む9個の皿の内の8個は、形質転換実験#1で細菌の過剰増殖を示しており、形質転換実験#2では、全ての皿(7/7)が、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1の過剰増殖で汚染されていた(表6B)。オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8又はオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10のいずれかで形質転換された皿はいずれも、形質転換実験#1及び#2で細菌の加増増殖を示さなかった(表6A及び6B)。これらの結果は、栄養要求性株オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-8及びオクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1-10が、形質転換実験#1及び#2の両方で、オクロバクテリウム・ハイバルデンセ(Ochrobactrum haywardense)H1と比較して同様の形質転換効率を示した(表6A及び6B)ことを示す。
【0223】
【0224】
【0225】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。そのため、例えば、「細胞」への言及は、そのような細胞を複数含み、「タンパク質」への言及は、1つ又は複数のタンパク質及び当業者に既知のその等価物等への言及を含む。別途明確な指示がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同一の意味を有する。
【0226】
本明細書で言及された全ての特許、刊行物、及び特許出願は、本開示が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。全ての特許、刊行物、及び特許出願は、あたかも個々の特許、刊行物、又は特許出願が、明確に且つ個々に参照により全体が組み込まれるよう指示されているのと同程度に、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0227】
以上の開示は、理解を明確にする目的で、図面及び実施例によりある程度の詳しく説明してきたが、添付の請求項の範囲内で一定の変更及び修正を行ない得る。
【配列表】
【国際調査報告】