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特表2022-512843スフィンゴシンキナーゼ1とその融合タンパク質およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】スフィンゴシンキナーゼ1とその融合タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/45 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 14/76 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N9/12 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/14
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/45
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P43/00 111
C07K16/00
C07K14/76
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523243
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(85)【翻訳文提出日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 CN2019107091
(87)【国際公開番号】W WO2020082950
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】201811225720.2
(32)【優先日】2018-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521173351
【氏名又は名称】北京双因生物科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521173362
【氏名又は名称】段海峰
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】段海峰
(72)【発明者】
【氏名】解晶
(72)【発明者】
【氏名】胡顕文
(72)【発明者】
【氏名】弓景波
(72)【発明者】
【氏名】薛冰華
(72)【発明者】
【氏名】張群偉
(72)【発明者】
【氏名】肖秀孝
(72)【発明者】
【氏名】崔美蘭
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼如梦
(72)【発明者】
【氏名】王瑞
(72)【発明者】
【氏名】于▲ティン▼▲ティン▼
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050CC05
4B050CC07
4B050DD11
4B050GG06
4B050GG07
4B050LL01
4B064AG01
4B064AG24
4B064AG26
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA06
4B064DA07
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA27
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084BA42
4C084CA53
4C084DC25
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA70
4H045DA75
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、スフィンゴシンキナーゼ1とその融合タンパク質およびその使用を開示している。前記スフィンゴシンキナーゼ1とその融合タンパク質は、血糖値の低下よび体重の減少という効果が顕著であり、肥満などの代謝性疾患や糖尿病を制御するためのタンパク質薬物の調製に使用できる。本発明は、さらにタンパク質薬物を提供し、前記タンパク質薬物はスフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列を含有する融合タンパク質である。前記融合タンパク質は、スフィンゴシンキナーゼ1(SPHK1)又はその活性を有するアミノ酸配列、FC配列、及びリンカー配列を含み、前記タンパク質薬物は、血糖値、血中性脂肪、体重を大幅に減らし、脂肪代謝を改善することができる。本発明は、さらにタンパク質薬物の調製方法、コーディング遺伝子、発現コンストラクト及び宿主細胞、ならびに肥満、高血中性脂肪症又は糖尿病を予防及び/又は治療するための医薬品組成物への調製におけるタンパク質薬物、コーディング遺伝子、発現コンストラクト及び宿主細胞の使用を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満、高血中性脂肪症又は糖尿病を予防及び/又は治療するためのタンパク質薬物への調製におけるスフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列の使用。
好ましくは、前記スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項2】
スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質薬物。
好ましくは、前記タンパク質薬物は、スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列を含有する融合タンパク質である。
【請求項3】
前記融合タンパク質は、スフィンゴシンキナーゼ1(SPHK1)又はその活性を有するアミノ酸配列、FC配列、及びリンカー配列を含む請求項2に記載のタンパク質薬物。
前記FC配列は、ヒト又は動物の免疫グロブリンおよびそのサブタイプと改変体のアミノ酸配列、或いはヒト又は動物アルブミンおよびその改変体のアミノ酸配列から選択される。
前記リンカー配列の一般式は(GGGGS)nであり、nが0~5の整数である。
好ましくは、前記ヒト又は動物の免疫グロブリンは、IgG4FCフラグメントから選択される。
より好ましくは、前記ヒト又は動物の免疫グロブリンは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から選択される。
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項4】
前記融合タンパク質はポリエチレングリコールで修飾され、好ましくは、前記ポリエチレングリコールの平均分子量が5~50KDである請求項2に記載のタンパク質薬物。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のタンパク質薬物のコーディングヌクレオチド配列を含有し、好ましくは、前記コーディングヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に示されているコーディング遺伝子。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか一項に記載のタンパク質薬物のコーディングヌクレオチド配列を含有し、好ましくは、前記コーディングヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に示されている発現コンストラクト。
前記発現コンストラクトは、原核発現コンストラクト又は真核発現コンストラクトである。
【請求項7】
前記原核発現コンストラクトは、pETベクターシリーズである請求項6に記載の発現コンストラクト。
前記真核発現コンストラクトは、プラスミドDNAベクターであり、好ましくはpVAX1ベクター及びpSV1.0ベクターである。
組換えウイルスベクターは好もしくは組換えワクシニアウイルスベクター、組換えアデノウイルススベクター又は組換えアデノ関連ウイルスベクターであり、
又は逆転写ウイルスベクター、好ましくはHIVウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の発現コンストラクトを含む宿主細胞。
前記発現コンストラクトは原核発現コンストラクトである場合に、前記宿主細胞は原核生物細胞であり、好ましくは細菌細胞である。
前記発現コンストラクトは真核発現コンストラクトである場合に、前記宿主細胞は真核生物細胞であり、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはCHO細胞である。
【請求項9】
請求項2~4のいずれか一項に記載のタンパク質薬物のヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングするステップを含むタンパク質薬物の調製方法。
具体的には、前記調製方法は:
1)上記タンパク質薬物の核酸配列を構築すること、
2)ステップ1)の核酸配列を含む発現ベクターを構築すること、
3)ステップ2)の発現ベクターを宿主細胞のトランスフェクト又は形質転換に用いて、前記核酸配列を宿主細胞で発現させること、を含む
好ましくは、ステップ3)において、前記宿主細胞はCHO-S細胞である。
【請求項10】
肥満、高血中性脂肪症又は糖尿病を予防及び/又は治療するための医薬品組成物への調製における請求項2~4のいずれか一項に記載のタンパク質薬物、請求項5に記載のコーディング遺伝子、請求項6又は7に記載の発現コンストラクト、請求項8に記載の宿主細胞の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に属する。本発明は、具体的には、スフィンゴシンキナーゼ1の使用に関するものであり、より具体的には、スフィンゴシンキナーゼ1の融合タンパク質、特にスフィンゴシンキナーゼ1和FC配列を含有する融合タンパク質およびその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満と2型糖尿病(T2DM)は、現代社会を悩ませている主要な公衆衛生問題の1つである。肥満とそれに伴うインスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症の重要な要因となっている。調査によると、2型糖尿病患者の80~90%は太りすぎ又は肥満(鄒大進ら,上海医学、2014、37(9)、729~734)である。したがって、血糖値と体重の効果的な管理は常に研究分野の焦点である。統計によると、現在世界で2型糖尿病患者の数はすでに4億人に達しており、全ての糖尿病患者の90%~95%を占めている。現在の治療糖尿病の治療薬には、主にインスリンとメトホルミンなどの経口血糖降下薬がある。しかしながら、これらの薬物は、低血糖を引き起こしやすく、患者さんの体重管理に明らかな効果がないという欠点がある。もう1つの薬物は、ノボノルディスク社のリラグルチド、イーライリリー社のデュラグルチドなどのGLP-1受容体アゴニストである。このような薬物は血糖値を抑えながら体重を減らす効果もあるが、主に患者の食欲を抑制し、患者の食べ物の摂取量を制御することで達成され、患者の生活の質を大幅に低下させる。
【0003】
例えばスフィンゴシンキナーゼ1(SphK1)など、人体の代謝調節において非常に重要な役割を果たす酵素がある。SphK1は、新たに発見された脂質キナーゼファミリーとして、ヒト、マウス、酵母及び植物で進化的に保存されており、該酵素はスフィンゴ脂質代謝経路における重要な酵素であり、スフィンゴシンからスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の形成を促進させ、セラミドとスフィンゴシン-1-リン酸(S1 P)の合成を調節する「バリスター」となる。SphK1は、セラミドの代謝物であるスフィンゴシンのS1Pへの生成を促進する。S1Pが受容体と結合した後、細胞増殖、アポトーシス、分化、造血などの細胞プロセスを調節することができる。SphK1/S1Pシグナル伝達経路は、腫瘍形成や糖尿病などを含む様々な生物学的プロセス及び疾患の発生に関与している。従来技術では、SphK1は細胞外に分泌される可能性があることを示しているが、細胞外での役割および細胞外受容体が存在するかどうかは依然として不明である(Venkataraman KらのBiochemical Journal、2006、397(3):46 1-71.)。さらに、SphK1を欠いたマウスでは、高糖高脂肪食で膵臓細胞のアポトーシスを促進し、それによって糖尿病の形成を誘発する可能性があった(Qi Yらの Faseb Journal、2013、27(10):4294-4304)。また、糖尿病マウスにヒトSphK1遺伝子を含むアデノウイルスを注射した後、対照群マウスと比較して低い血糖値と血中脂質レベルを示した。現在、SphK1の研究では、主に細胞内での効果に基づいて行われているため、このタンパク質を標的として開発された薬剤が主に抗体や拮抗薬を使用しており、該タンパク質が直接に治療薬にされることは今更なかった。もう1つは、例えばアデノウイルススをベクターとする遺伝子治療のようなウイルスなどをベクターとしてSPHK1遺伝子を細胞に導入して行われる遺伝子治療である。しかしながら、この方法はinvivoで薬剤耐性を生じやすく、糖尿病などの代謝性疾患の治療には長期の投薬が必要であるため、この方法の使用が制限される。したがって、人SPHK1遺伝子に基づく医薬品の開発には幅広い展望がある。
【発明の概要】
【0004】
上記に基づき、本発明の目的は、先行技術の欠点を考慮して、スフィンゴシンキナーゼ1の使用を提供することである。発明者は、意外的に、SphK1を直接にタンパク質薬物に調製し、細胞内に入らずに細胞外で機能し、顕著な血糖値の低下効果および体重の減らす効果を有することが発見した。したがって、本発明は、肥満、高血中性脂肪症又は糖尿病を予防及び/又は治療するための医薬品への調製におけるスフィンゴシンキナーゼ1の使用を提供する。本発明は、スフィンゴシンキナーゼ1(SPHK1)を含むタンパク質薬物をさらに提供する。本発明は、前記タンパク質薬物の調製方法およびその使用をさらに提供する。従来技術と比較して、本発明によって提供されるタンパク質薬物は、血糖、血中脂肪、体重を有意に減少させ、脂肪代謝を改善することができる。
【0005】
一態様では、本発明は、肥満、高血中性脂肪症又は糖尿病を予防及び/又は治療するためのタンパク質薬物への調製におけるスフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列の使用を提供する。
【0006】
好ましくは、前記スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
別の一態様では、本発明は、スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質薬物を提供する。
【0008】
好ましくは、前記タンパク質薬物は、スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列を含有する融合タンパク質である。より好ましくは、前記融合タンパク質は、スフィンゴシンキナーゼ1(SPHK1)又はその活性を有するアミノ酸配列、FC配列、及びリンカー配列を含む。
【0009】
前記FC配列は、ヒト又は動物の免疫グロブリンおよびそのサブタイプと改変体のアミノ酸配列、或いはヒト又は動物アルブミンおよびその改変体のアミノ酸配列から選択される。
【0010】
好ましくは、前記リンカー配列の一般式は(GGGGS)nであり、nが0~5の整数であり、好ましくは、nが3である。
【0011】
好ましくは、前記ヒト又は動物の免疫グロブリンは、IgG4 FCフラグメントから選択される。より好ましくは、前記ヒト又は動物の免疫グロブリンは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から選択される。
【0012】
好ましくは、前記融合タンパク質はSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
好ましい形態では、前記融合タンパク質はポリエチレングリコールで修飾されている。好ましくは、前記ポリエチレングリコールの平均分子量が5~50KDであり、より好ましくは20~45KDである。好ましくは、前記ポリエチレングリコールが直鎖又は分岐ポリエチレングリコールである。
【0014】
別の一態様では、本発明はコーディング遺伝子を提供する。前記コーディング遺伝子は上記タンパク質薬物のコーディングヌクレオチド配列を含有する。好ましくは、前記コーディングヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に示されている。
【0015】
再一態様では、本発明は発現コンストラクトを提供する。前記発現コンストラクトは上記タンパク質薬物のコーディングヌクレオチド配列を含有する。好ましくは、前記コーディングヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に示されている。
【0016】
好ましくは、前記発現コンストラクトは原核発現コンストラクトである。より好ましくは、前記原核発現コンストラクトはpETベクターシリーズである。
【0017】
或いは、前記発現コンストラクトは真核発現コンストラクトである。好ましくは、前記真核発現コンストラクトはプラスミドDNAベクターであり、好ましくはpVAX1ベクター及びpSV1.0ベクターである。好ましくは、組換えウイルスベクターは組換えワクシニアウイルスベクター、組換えアデノウイルススベクター又は組換えアデノ関連ウイルスベクターであり、又は逆転写ウイルスベクター、好ましくはHIVウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。
【0018】
別の一態様では、本発明は上記発現コンストラクトを含む宿主細胞を提供する;
【0019】
好ましくは、前記発現コンストラクトは原核発現コンストラクトである場合に、前記宿主細胞は原核生物細胞であり、好ましくは細菌細胞である。また、前記発現コンストラクトは真核発現コンストラクトである場合に、前記宿主細胞は真核生物細胞であり、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはCHO細胞である。
【0020】
別の一態様では、本発明は、前記タンパク質薬物のヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングするステップを含むタンパク質薬物の調製方法を提供する。
【0021】
具体的には、前記調製方法は:
【0022】
1)上記タンパク質薬物の核酸配列を構築すること;
【0023】
2)ステップ1)の核酸配列を含む発現ベクターを構築すること;
【0024】
3)ステップ2)の発現ベクターを宿主細胞のトランスフェクト又は形質転換に用いて、前記核酸配列を宿主細胞で発現させること;
【0025】
4)ステップ3)で発現したタンパク質を精製すること、を含む。
【0026】
好ましくは、ステップ3)において、前記宿主細胞はCHO-S細胞である。
【0027】
本発明は、肥満、高血中性脂肪症又は糖尿病を予防及び/又は治療するための医薬品組成物への調製における上記タンパク質薬物、コーディング遺伝子、発現コンストラクト、前記の宿主細胞の使用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0028】
従来技術と比較して、本発明は以下のメリットを有する:本発明でスフィンゴシンキナーゼ1とその融合タンパク質が顕著な血糖値の低下効果および体重の減らす効果があり、肥満などの代謝性疾患と糖尿病を制御するためのタンパク質薬物の調製に使用できることを見出した。
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明のpCDH-SPHK1-L-Fcのベクターの構築の概略図である。
図2図2は、ウエスタンブロッティングによりタンパク質SPHK1-Fcの発現を検出する図である。ここで、図2のaは、レンチウイルスが細胞に感染した後の上清中のタンパク質の発現の図である。「ブランク」は、ウイルスに感染した細胞の上清であり、ヒトIgG4Fc特異的抗体によって検出された。図2のbは、精製後のSDS-PAGE電気泳動の図である。
図3図3は、II型糖尿病モデルマウスにおける空腹血糖値に対する本発明のSPHK1タンパク質およびその融合タンパク質SPHK1-Fcの影響を示す図である。対照は生理食塩水群である。*は対照と比較して有意差があることを示す(p値<0.05)。
図4図4は、2週間の治療後のII型糖尿病モデルマウスの体重に対する本発明のSPHK1タンパク質およびその融合タンパク質SPHK1-Fcの影響を示す図である。対照は生理食塩水群である。*はコントロールと比較して有意差があることを示す(p値<0.05)。
図5図5は、2週間の治療後の対II型糖尿病モデルマウス耐糖能に対する本発明のSPHK1タンパク質およびその融合タンパク質SPHK1-Fcの影響を示す図である。対照は生理食塩水群である。*はコントロールと比較して有意差があることを示す(p値<0.05);**は対照と比較して有意差が顕著であることを示す(p値<0.001)。
図6図6は、II型糖尿病モデルマウス血中性脂肪レベルに対する本発明のSPHK1タンパク質およびその融合タンパク質SPHK1-Fc治療の影響を示す図である。対照は生理食塩水群である。*はコントロールと比較して有意差があることを示す(p値<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、好ましい実施の形態と実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの説明を通じて、本発明の特徴と利点がより明確になる。
【0032】
ただし、「例示性」という術語は、「例として、実施例又は説明性」を意味する。ここで「例示性」として説明した任意の実施例は、他の実施例より優れているまたはより適切であると解釈されるべきではない。
【0033】
特に指定のない限り、以下の実施例で使用される試薬は全て分析グレードの試薬であり、通常の市販で購入できる。
[実施例1 融合タンパク質SPHK1-Fcの調製]
【0034】
1.融合タンパク質SPHK1-Fcを含むレンチウイルス発現ベクターpCDH-SPHK1-L-Fcの構築
【0035】
ここで、スフィンゴシンキナーゼ1又はその活性を有するアミノ酸配列はSEQ ID NO:1を含む。
【0036】
MDPAGGPRGVLPRPCRVLVLLNPRGGKGKALQLFRSHVQPLLAEAEISFTLMLTERRNHARELVRSEELGRWDALVVMSGDGLMHEVVNGLMERPDWETAIQKPLCSLPAGSGNALAASLNHYAGYEQVTNEDLLTNCTLLLCRRLLSPMNLLSLHTASGLRLFSVLSLAWGFIADVDLESEKYRRLGEMRFTLGTFLRLAALRTYRGRLAYLPVGRVGSKTPASPVVVQQGPVDAHLVPLEEPVPSHWTVVPDEDFVLVLALLHSHLGSEMFAAPMGRCAAGVMHLFYVRAGVSRAMLLRLFLAMEKGRHMEYECPYLVYVPVVAFRLEPKDGKGVFAVDGELMVSEAVQGQVHPNYFWMVSGCVEPPPSWKPQQMPPPEEPL;
【0037】
そのコーディングヌクレオチド配列はSEQ ID NO:5に示されている。
【0038】
ATGGACCCAGCGGGCGGCCCCCGGGGCGTGCTCCCGCGGCCCTGCCGCGTGCTGGTGCTGCTGAACCCGCGCGGCGGCAAGGGCAAGGCCTTGCAGCTCTTCCGGAGTCACGTGCAGCCCCTTTTGGCTGAGGCTGAAATCTCCTTCACGCTGATGCTCACTGAGCGGCGGAACCACGCGCGGGAGCTGGTGCGGTCGGAGGAGCTGGGCCGCTGGGACGCTCTGGTGGTCATGTCTGGAGACGGGCTGATGCACGAGGTGGTGAACGGGCTCATGGAGCGGCCTGACTGGGAGACCGCCATCCAGAAGCCCCTGTGTAGCCTCCCAGCAGGCTCTGGCAACGCGCTGGCAGCTTCCTTGAACCATTATGCTGGCTATGAGCAGGTCACCAATGAAGACCTCCTGACCAACTGCACGCTATTGCTGTGCCGCCGGCTGCTGTCACCCATGAACCTGCTGTCTCTGCACACGGCTTCGGGGCTGCGCCTCTTCTCTGTGCTCAGCCTGGCCTGGGGCTTCATTGCTGATGTGGACCTAGAGAGTGAGAAGTATCGGCGTCTGGGGGAGATGCGCTTCACTCTGGGCACCTTCCTGCGTCTGGCAGCCCTGCGCACCTACCGCGGCCGACTGGCTTACCTCCCTGTAGGAAGAGTGGGTTCCAAGACACCTGCCTCCCCCGTTGTGGTCCAGCAGGGCCCGGTAGATGCACACCTTGTGCCACTGGAGGAGCCAGTGCCCTCTCACTGGACAGTGGTGCCCGACGAGGACTTTGTGCTAGTCCTGGCACTGCTGCACTCGCACCTGGGCAGTGAGATGTTTGCTGCACCCATGGGCCGCTGTGCAGCTGGCGTCATGCATCTGTTCTACGTGCGGGCGGGAGTGTCTCGTGCCATGCTGCTGCGCCTCTTCCTGGCCATGGAGAAGGGCAGGCATATGGAGTATGAATGCCCCTACTTGGTATATGTGCCCGTGGTCGCCTTCCGCTTGGAGCCCAAGGATGGGAAAGGTGTGTTTGCAGTGGATGGGGAATTGATGGTTAGCGAGGCCGTGCAGGGCCAGGTGCACCCAAACTACTTCTGGATGGTCAGCGGTTGCGTGGAGCCCCCGCCCAGCTGGAAGCCCCAGCAGATGCCACCGCCAGAAGAGCCCTTA
【0039】
前記融合タンパク質SPHK1-Fcのアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示されている。そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に示されている。セグメントNからCは、順次にSPHK1、リンカー配列LとFcである。
【0040】
Fcのアミノ酸配列はSEQ ID NO:12に示されている:
【0041】
【化1】
【0042】
融合タンパク質SPHK1-Fcのアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示されている。ここで、イタリック体太字の部分はリンカー配列のアミノ酸配列であり、アンダラインの部分はFcのアミノ酸配列である:
【0043】
【化2】
【0044】
ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:3に示されている。ここで、イタリック体太字の部分はリンカー配列のヌクレオチド配列であり、アンダラインの部分はFcのヌクレオチド配列である:
【0045】
【化3】
【0046】
シグナルペプチド配列はIL-2シグナルペプチド配列である(SP、アミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示されている。SEQ ID NO: 4 MYRMQLLSCIALSLALVTNS)
IL-2シグナルペプチドによってarmSP-F(上流プライマー)(SEQ ID NO:6 :CTCCATAGAAGATTCTAGAGCTAGGGATCCGCCACCATGTACAGGATGCAACTCCTG)とarmSP-R(下流プライマー) (SEQ ID NO:7 :GGGCCGCCCGCTGGGTCCATCGAATTCGTGACAAGTGCAAG)を含むプライマーを設計した。プラスミドpFUSE-hIgG4-Fc2(Dakwei Biotechnology Co., Ltd.から購入)をテンプレートとして、PCRによりフラグメントSPを増幅させた(116bp)。SEQ ID NO:5などのSPHK1のヌクレオチド配列によってSPHK1-F(上流プライマー)(SEQ ID NO:8:ATGGACCCAGCGGGCGGCC)とSPHK1-R (下流プライマー)(SEQ ID NO:9: GCCACCGCCGCTTCCTCCGCCTCCGCTTCCGCCTCCGCCTAAGGGCTCTTCTGGCGGTG)を含むプライマーを設計した。プラスミドpcDNA3.1-WSPK1c(Military Medical Academy)をテンプレートとしてPCRによりフラグメントSPHK1を増幅させた(1191bp)。
該PCR産物フラグメントの3’セグメントには、リンカー配列Lの一部が含まれる(5’-GGCGGAGGCGGAAGCGGAGGCGGAGGAAGCGGCGGTGGC-3’)。SEQ ID NO:などのFcタンパク質のヌクレオチド配列によってFc-F(SEQ ID NO:10:GCGGAGGAAGCGGCGGTGGCGGCAGCGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCATCATGC)とFc-R (SEQ ID NO:11 GTAATCCAGAGGTTGATTGTCGACTCATTTACCCGGAGACAGGG)を含むプライマーを設計した。プラスミドpFUSE-hIgG4-Fc2(Dakwei Biotechnology Co., Ltd.から購入)をテンプレートとして、PCRによりフラグメントFcを増幅させた(740bp)。該PCR産物フラグメント5’セグメントはリンカー配列Lの一部が含まれる(配列5’- GCGGAGGAAGCGGCGGTGGCGGCAGC-3’)。全てのプライマーは、Beijing Kinco Xinye Biotechnology Co., Ltd.によって合成された。PCR反応系と反応条件は表1と表2に示す通りである。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
PCRは、30サイクルを行った。
【0050】
*PCRによって増幅された様々なフラグメントのアニーリング温度は、プライマーのTm値-3℃である。#PCRによって増幅された様々なフラグメントの伸長時間は1kb/分である。
【0051】
反応後、得られた産物を1%アガロースゲル電気泳動にかけ、各PCR産物sp、SPHK1、Fcをゲル回収・精製した(ゲル回収キットは天根社から購入)。
【0052】
プラスミドpCDH-CMV(Addgene社から購入)をBamHI和SalIで二重酵素消化して、消化産物をゲル抽出した後、シームレスクローニング法で(Streamless Assembly Cloning Kit、Clone Smarter technologies社から購入)上記の精製したPCR産物sp、SPHK1、Fcと連続した。ライゲーション産物をDH5αコンピテントセル(Tiangen Biochemical Technology Co., Ltd.から購入)に形質転換した。形質転換法はコンピテントセルの説明書を参照した。形質転換した細菌溶液を100μg/mLのアンピシリンを含むLBプレートに塗布し、37℃で一晩培養した。コロニーPCRのためにモノクローナルを選び、陽性クローンはシーケンシングのためにBeijing Kinco Xinye Biotechnology Co., Ltd.に送られ、正しいシーケンシング結果のクローンを保存してプラスミドを抽出して、pCDH-SPHK1-L-Fcと命付けた。プラスミドマップを図1に示した。
[実施例2 プラスミドpCDH-SPHK1-L-Fcを持つレンチウイルス粒子の調製]
【0053】
細胞コンフルエンスが90%以上に達している293T細胞(東北農業大学Lab217胚工学実験室)を150mmフラスコに接種し、1皿あたり1.2×107個の細胞を接種し、20mlの10%FBSを含むDMEM培地を加え、37℃、5%CO2飽和湿度で培養した。トランスフェクトの2時間前に元の培地を廃棄し、18mlの無血清DMEM培地に交換した。上記で調製したp-SPHK1-L-FcプラスミドをレンチウイルスパッケージングヘルパープラスミドpHelper1及びpHelper2(東北農業大学Lab217胚工学実験室)と同じ比率で均一に混合し、リポソームLipofectamin 2000トランスフェクトキット(Invitrogenから購入)説明書を参照して293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトして6-8時間後、トランスフェクト混合物を含む上清を廃棄し、各皿に5%FBSを含む20mlの新しいDMEM培地を追加し、37℃、5%CO2飽和湿度で培養した。24時間後、上清を回収して4℃で保存し、新しい培地20mlを加えた。24時間培養し続け、その後上清を再度回収した。2回で集めた上清を4℃、3500rpmで15分間遠心分離し、沈殿物を廃棄し、上清をAmicon Ultra-15限外ろ過チューブ(10KD、Millipore社から購入)で遠心分離・濃縮した。それぞれSPHK1-Fcを持つレンチウイルス粒子を得た。ウイルス力価測定後、ウイルス粒子を1×108TU/mlに希釈し、ウイルスを分注して-80℃で保存した。
[実施例3 レンチウイルス感染したCHO-S細胞及び陽性モノクローナルのスクリーニング和検証]
【0054】
3.1 レンチウイルス感染したCHO-S細胞
【0055】
懸濁したFreeStyle CHO-S細胞(Thermo scientific社から購入)を2×105細胞/mLで30mL CD-SFM培地(CD FortiCHO medium+8mMグルタミン+1×HT supplement、全てはThermo scientific社から購入)を含む125mLフラスコ中(CORNING社から購入)に接種し、120rpm、8%CO2、37℃で対数増殖期まで培養した。CD-SFM培地で細胞を4×104細胞/mLの細胞懸濁液に希釈した。0.5mLの細胞懸濁液を取り、感染多重度(MOI)80に従って上記のレンチウイルス粒子を添加し、32℃、800gの条件下で30分間遠心分離した。上清を廃棄し、0.5mL CD-SFM培地を再度加えて細胞を再懸濁し、24ウェルプレートに移し、37℃、5%CO2の条件下で48~72時間培養した。その後、ウエスタンブロット(Western blot)を用いて培養上清中の標的タンパク質の発現を検出した。30μLの細胞上清を取り、10%還元SDS-PAGEした後、低温湿式法でタンパク質をPVDFメンブレンに転写させた。条件は定電流300mA転写メンブレンで1時間であった。室温で5%無脂乳/TBST溶液より1時間ブロックし、HRPに結合したマウス抗ヒトIgG4Fc抗体(1:3000で希釈し、abcam社から購入)でSPHK1-Fcの発現を検出した。抗体を室温で1時間インキュベートし、TBST溶液で3回、毎回10分間洗浄した。ECL発光イメージングシステム(Beijing Yuanpinghao Biotechnology Co., Ltd.から購入)で検出して写真を撮った。結果を図2(a)に示した。90KDで特異的な発現を示すバンドが検出された。これは理論分子量よりも大きいものであり、これは主に、CHO-S細胞で発現させた場合、Fcに存在するグリコシル化部位を修飾し、分子量を増加させたためである。
【0056】
3.2 陽性モノクローナル抗体のスクリーニングと検証
【0057】
レンチウイルスに感染した細胞をCD-SFM培地+5%FBSで10個/mLに再懸濁し、96ウェルプレートの各ウェルに100μLの細胞懸濁液を加え、10~14日間培養し続けた。その後、顕微鏡下で細胞モノクローナルの形成を観察した。ヒトIgG ELISA定量キット(Beijing Dakwei Biotechnology Co., Ltd.から購入)の説明書に従って、50μLの細胞モノクローナル培養上清を取ってタンパク質の発現を検出した。高発現細胞株を選択し、最終に各タンパク質をスクリーニングしてそれぞれ2つの高発現細胞株(1B7、3E8)を取得した。検出結果を表3に示した。
【0058】
【表3】

[実施例4 SPHK1-Fcタンパク質の精製と定量]
【0059】
モノクローナル1B7を500mLフラスコに拡大培養し、1200rpmで10分間遠心分離し、細胞沈殿物を廃棄して上清を回収した。上清を0.22μm濾過膜でろ過し、細胞破片を除去した。protein AアフィニティーカラムHiTrap MabSelect SuReをカラム容量の5倍量の緩衝液(5.6mM NaH2PO4、14.4mM Na2HPO4、0.15M NaCl、pH7.2)で処理(GE通用社から購入)した。上清をローディングした後、緩衝液(5.6mM NaH2PO4・H2O、14.4mM Na2HPO4、0.5 M NaCl、pH7.2)で結合不十分な不純タンパク質をベースラインまで洗い流した。次に、溶出液50mMクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液(0.02%Tween-80+5%マンニトールを含む、pH3.2)でタンパク質を溶出した。次に、1M Tris-Cl(pH8.0)でpHを7.0に調整した。精製したサンプルを0.22μm濾過膜でろ過し、滅菌して4℃で保存した。
【0060】
精製したサンプルは、BCAタンパク質定量キット(Beijing Yuanpinghao Biotechnology Co., Ltd.から購入)を用いてタンパク質の濃度を測定した。定量の結果に従って、10μgのタンパク質を取り、10%ゲルでSDS-PAGE電気泳動を行い、迅速なタンパク質染色キット(Beijing Yuanpinghao Biotechnology Co., Ltd.から購入)で染色・現像した。結果はスキャンされて保存された。図2(b)に示した。精製後に得られた主なタンパク質のサイズは、実施例3.1のウエスタンブロットの結果と一致している。
[実施例5 SPHK1-Fcタンパク質のin vivoでの有効性に関する研究。]
【0061】
4~8週齢オス18匹のII型糖尿病モデルマウスBKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/Nju(南京大学モデル動物研究所から購入)は、体重と空腹血糖値に従い、各群に6匹で対照群(control、生理食塩水)、投与群1(SPHK1-Fcタンパク質)と投与群2(SPHK1タンパク質、Beijing Yiqiao Shenzhou Biotechnology Co., Ltd.から購入、カタログ番号15679-HNCB)の3つのグループに分けられた。各群の投与方法はいずれも皮下注射であり、投与量はいずれも2mg/kgであった。対照群と投与群1は週2回投与で行い、投与群2は毎日1回投与で行った。毎週にマウスの体重を測定し記録した。マウスの空腹血糖値の測定は、投与日の夕方にマウスを12時間絶食させ(通常の給水)、翌朝血糖値を測定した。マウスの平均血糖値に従って血糖値変化曲線を描いた。図3の結果から、2週間の治療後、2つの投与群のマウスの空腹血糖値が対照群より有意に低いことを示した。図4の結果は、2つの投与群のマウスの体重も対照群より有意に軽いことを示した。ただし、2つの投与群間の空腹血糖値と体重増加の違いは統計的に有意ではなかった。これは、SPHK1とSPHK1-Fcとも血糖値と体重の制御に大きな効果を与えることを示している。
【0062】
2週間治療後のブドウ糖負荷の検出:測定前夜から12時間絶食させ、測定中に1gブドウ糖/kgの量で腹腔内にブドウ糖を注入し、0分間、30分間、60分間と120分間においてマウスの血糖値を測定した。図5の結果は、各テストポイントで、2つの投与群の血糖値が対照群の血糖値よりも低いことを示し、2つの投与群間でブドウ糖負荷に有意さがなかった。これは、マウスが投与後に耐糖能に顕著な改善があることを示した。
【0063】
ブドウ糖負荷試験の5日後に血清生化学的指標を検出した。マウスの眼球から血液を採取し、3000rpmで10分間遠心分離して血清を分離した。サンプルは、指標であるトリグリセリド(TG)、総コレステロール(CHOL)、高密度リポタンパク質(HDLC)、低密度リポタンパク質(LDLC)を検出するために、Beijing North Biomedical Technology Co., Ltd.に送られた。図6の結果は、SPHK1-FcとSPHK1のタンパク質治療後は、マウスのCHOL、TGとLDLCのレベルが対照群より有意に低いことを示した。これは、SPHK1-FcとSPHK1が血中性脂肪代謝に調節効果を持ち、血中性脂肪レベルを効果的に制御できることを示している。
以上は、具体的な実施の形態と例示的な例を参照して本発明に詳細に説明したが、これらの説明は本発明の限定として理解することはできない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明およびその実施の形態の技術的解決策に対して様々な同等の置換、修正または改善を行うことができ、これらはすべて本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022512843000001.app
【国際調査報告】