(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】医用装置のための支持構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20220131BHJP
G02B 23/24 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61B1/005 524
A61B1/005 522
G02B23/24 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523287
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019057705
(87)【国際公開番号】W WO2020092096
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド マシュー マイケル
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA14
2H040DA17
2H040DA19
4C161AA07
4C161DD03
4C161HH32
4C161HH36
4C161HH37
4C161HH47
4C161JJ01
4C161JJ06
(57)【要約】
中空コアと、医用デバイスがねじれるのを防ぐための少なくとも1つの支持ワイヤとを有する多関節医用デバイスであって、デバイスは、空洞を通して操縦して低侵襲で標的に到達することが可能であり、医用デバイスが標的に到達すると、標的での医療処置(内視鏡、カメラ及びカテーテルを含む)を容易にするように、中空中央コアを通して医用ツールを誘導することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能体であって、前記湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、及び前記空洞の周囲に形成された壁を有する湾曲可能体と、
前記壁内にスライド自在に位置するとともに、前記湾曲可能体の遠位端で前記壁に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、
前記壁内にスライド自在に位置する少なくとも1つの支持ワイヤと、
を備える医用装置。
【請求項2】
前記制御ワイヤを前記壁に取り付けるために前記湾曲可能体の前記遠位端に構成されたアンカーを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記壁は、前記少なくとも1つの制御ワイヤ及び前記少なくとも1つの支持ワイヤをスライド自在に収容するための少なくとも2つのルーメンを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのルーメンは、それぞれ前記壁の端から端まで延びる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の前記遠位端で前記壁に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記壁内にスライド自在に位置する第2の支持ワイヤを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の近位端でばねに取り付けられ、前記ばねは、前記支持ワイヤの曲げ剛性を変更するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の近位端で駆動ユニットに取り付けられ、前記駆動ユニットは、前記支持ワイヤの曲げ剛性を変更するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、アウターワイヤ及びインナーワイヤを更に備え、前記インナーワイヤは、前記アウターワイヤ内にスライド自在に入れ子になっている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記支持ワイヤ及び前記制御ワイヤは、放射線不透過性材料から成る、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の曲げ剛性を変更するために、ガース、長さ、剛性、及び前記壁内の位置について設定可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
湾曲可能体であって、前記湾曲可能体の端から端まで延びる空洞と、前記空洞の周囲に形成された壁と、前記壁内にスライド自在に位置するとともに、前記湾曲可能体の遠位端で前記壁に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、前記壁内にスライド自在に位置する少なくとも1つの支持ワイヤと、を有する湾曲可能体を提供するステップと、
前記湾曲可能体の前記遠位端を加熱して、前記制御ワイヤを前記壁に取り付けるステップと、
前記湾曲可能体を冷却して、前記取付けを固めるステップと、
を含むプロセスによって製造される医用装置。
【請求項13】
湾曲可能体であって、前記湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、及び前記空洞の周囲に形成された壁を有する湾曲可能体と、前記壁内にスライド自在に位置するとともに、前記湾曲可能体の遠位端で前記壁に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、前記壁内にスライド自在に位置する少なくとも1つの支持ワイヤと、を備える医用装置を提供するステップと、
前記医用装置を対象内に前進させるステップと、
前記対象内の障害物に対応するように前記医用装置を曲げるステップと、
前記医用装置が前記対象内の所望の標的まで前進したら、前記対象を治療するステップと、
を含む、対象を治療する方法。
【請求項14】
湾曲可能体であって、前記湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、前記空洞の周囲に形成された壁、及び、互いに距離を置いて配置されるとともに前記湾曲可能体の端から端まで延びる複数のルーメンを有する湾曲可能体と、
前記壁内にスライド自在に位置し、前記複数のルーメンのうちの少なくとも1つを通る少なくとも1つの制御ワイヤと、
前記壁内にスライド自在に位置するとともに、前記複数のルーメンのうちの、前記制御ワイヤが占める前記少なくとも1つとは異なる、前記複数のルーメンのうち少なくとも1つを通る、少なくとも1つの支持ワイヤと、
を備える医用装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの制御ワイヤの遠位端に構成されたアンカーを更に備え、
前記アンカーは、前記複数のルーメンのうちの前記少なくとも1つに固定される、
請求項14に記載の医用装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の前記遠位端で前記壁に取り付けられる、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の近位端でばねに取り付けられ、前記ばねは、前記支持ワイヤの曲げ剛性を変更するように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の近位端で駆動ユニットに取り付けられ、前記駆動ユニットは、前記支持ワイヤの曲げ剛性を変更するように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、アウターワイヤ及びインナーワイヤを更に有し、前記インナーワイヤは、前記アウターワイヤ内でスライド自在に入れ子になっている、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの支持ワイヤは、前記湾曲可能体の曲げ剛性を変更するために、ガース、長さ、剛性、及び前記壁内の位置について設定可能である、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2018年10月29日に提出された“Support Structure for Medical Apparatus and Method of Manufacturing Same”と題された米国仮特許出願第62/752,219号に対して優先権を主張し、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、概して、医用装置のための支持構造、並びに支持構造の製造及び組込みの方法に関する。より詳細には、本開示は、中央空洞を有する多関節医用デバイスを対象とし、デバイスは、ねじれを伴わずに患者内で操作することが可能である。支持構造は、医用装置が関節運動したときにねじれたり座屈したりしないように、医用装置に弾力性を提供するのに役立つ。医用装置の例示の用途としては、いくつか例を挙げると、内視鏡、カメラ及びカテーテルが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医用器具はよく知られており、引き続き受け入れられている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる軟性の管を有する。シースに沿って(典型的には内部に)1つ以上のツールチャネルが延びて、シースの遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にしている。
【0004】
医用器具は、医用器具の遠位端で操作されているツールを医師が制御することができるように、ねじり剛性と長手方向の剛性を維持しながら、対象となる標的につながる少なくとも1つ以上のカーブを伴う、患者内での柔軟なアクセスを提供することを目的としている。
【0005】
最近、器具の遠位端の操縦性を高めるために、遠位部分を制御するロボット化器具(「ロボット」とも呼ばれる)が登場した。一般に、このようなロボットは長い器具であり、目的の場所に到達するために、蛇行経路を通してオブジェクトの周りで操縦可能であることが意図されている。本明細書に詳述される医用デバイスは、患者の気道を下って、気管を通って肺に挿入するためのものである。ただし、本革新を他の様々な状況や解剖学的亀裂で使用できることは明らかである。
【0006】
そこで、ロボット又は操縦可能カテーテルの目的は、関心領域に到達することと、局所組織をサンプリングするために使用され得る生検鉗子等のツール用の作業チャネルを提供することである。関心領域に到達するためには、医用デバイスは、必要な深さまで挿入されている間に、肺の経路に沿って曲がるのに十分な柔軟性がなければならない。気道は非常に小さいので、医用デバイスは、肺に損傷を与えることなく、肺の周辺の気道を下って移動できるように、遠位部の直径が小さくなければならない。
【0007】
例示のロボットは、腱のように、遠位端に取り付けられたロボットの壁のコンジットを通るワイヤを駆動又は制御することによって動作する。駆動ワイヤは各湾曲セクションの遠位端に接続され、これらのワイヤの近位端に作用する力によって、そのセクションに曲げモーメントが発生する。1つの連続体ロボットには複数の湾曲セクションが存在する場合があるが、参照されているほとんどの医用デバイスには1つしかない。これは、湾曲セクションが複数あると、ロボットの全体サイズが大きくなるためだと考えられる。更に、制御ワイヤが複数あると、1つの湾曲セクションから別の湾曲セクションへのクロストーク効果が増大してしまう。現在、ほとんどの手動カテーテルには、医師が手動で回転させて「操縦」する事前に曲げられたセクションが1つあるので、自由度が追加されることは、業界標準からの大きな一歩である。
【0008】
連続体ロボットという名称は、デバイスに個別の回転関節が存在しないことを意味する。代わりに、曲げは、鋭い角ではなく円弧を形成するように、湾曲セクション全体に分散される。鋭い曲げは、曲げが生じたポイントがロボット自体を損傷したり、ツール(内視鏡カメラ等)がツールチャネルに挿入された場合にツールを損傷したり、ツールがツールチャネルを通して挿入されることを阻むおそれがあるので、本願では有用でない。滑らかな円弧で曲げる場合でも、特定の設計で達成できる湾曲の大きさには制限がある。このような管状デバイスでは、断面の崩壊又はねじれの脅威があり、これにより、ツールチャネルが収縮によって使用不能になってしまう。したがって、ねじれを防ぎながら、より大きな湾曲を可能にするロボット構造が必要である。
【発明の概要】
【0009】
よって、業界におけるそのような例示のニーズに対処するために、本開示の装置は、湾曲可能体であって、湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、及び空洞の周囲に形成された壁を有する湾曲可能体と、壁内にスライド自在に位置するとともに湾曲可能体の遠位端で壁に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、壁内にスライド自在に位置する少なくとも1つの支持ワイヤと、を備える装置及び方法を教示する。
【0010】
様々な実施形態では、装置は、制御ワイヤを壁に取り付けるために湾曲可能体の遠位端に構成されたアンカーを更に備える。
【0011】
他の実施形態では、壁は、少なくとも1つの制御ワイヤ及び少なくとも1つの支持ワイヤをスライド自在に収容するための少なくとも2つのルーメンを有する。更に、少なくとも2つのルーメンは、それぞれ壁の端から端まで延びてよい。
【0012】
更なる実施形態では、少なくとも1つの支持ワイヤは、湾曲可能体の遠位端で壁に取り付けられる。
【0013】
更に、第2の支持ワイヤが壁内にスライド自在に位置してよいことが考えられる。
【0014】
追加の実施形態では、少なくとも1つの支持ワイヤは、湾曲可能体の近位端でばねに取り付けられ、ばねは、支持ワイヤの曲げ剛性を変更するように構成される。
【0015】
更に、少なくとも1つの支持ワイヤは、湾曲可能体の近位端で駆動ユニットに取り付けられ、駆動ユニットは、支持ワイヤの曲げ剛性を変更するように構成される。
【0016】
他の実施形態では、少なくとも1つの支持ワイヤは、アウターワイヤ及びインナーワイヤを更に有し、インナーワイヤは、アウターワイヤ内にスライド自在に入れ子になっている。
【0017】
更に追加の実施形態では、支持ワイヤ及び制御ワイヤは、放射線不透過性材料から成る。更に、少なくとも1つの支持ワイヤは、湾曲可能体の曲げ剛性を変更するために、ガース(girth)、長さ、剛性、及び壁内の位置について設定可能である。
【0018】
本願は、以下のステップを含むプロセスによって製造される医用装置を更に教示する:湾曲可能体であって、湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、及び空洞の周囲に形成された壁を有する湾曲可能体と、壁内にスライド自在に位置するとともに湾曲可能体の遠位端で壁に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、壁内にスライド自在に位置する少なくとも1つの支持ワイヤとを提供するステップ;湾曲可能体の遠位端を加熱して、制御ワイヤを壁に取り付けるステップ;及び、湾曲可能体を冷却して、取付けを固めるステップ。
【0019】
本願は、湾曲可能体であって、湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、及び空洞の周囲に形成された壁を有する湾曲可能体と、壁内にスライド自在に位置するとともに湾曲可能体の遠位端で壁に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、壁内にスライド自在に位置する少なくとも1つの支持ワイヤと、を有する医用装置を提供することによって対象を治療する方法を、更に教示する。治療は、医用装置を対象内に前進させるステップと、対象内の障害物に対応するように医用装置を曲げるステップと、医用装置が対象内の所望の標的まで前進したら、対象を治療するステップと、を含む。
【0020】
更に追加の開示では、本願はまた、湾曲可能体であって、湾曲可能体の端から端まで延びる空洞、空洞の周囲に形成された壁、及び、互いに距離を置いて配置されるとともに湾曲可能体の端から端まで延びる複数のルーメンを有する、湾曲可能体と、壁内にスライド自在に位置するとともに、複数のルーメンのうちの少なくとも1つを通る少なくとも1つの制御ワイヤと、壁内にスライド自在に位置するとともに、複数のルーメンのうちの、制御ワイヤが占める少なくとも1つとは異なる、複数のルーメンのうち少なくとも1つを通る、少なくとも1つの支持ワイヤと、を備える医用装置を教示する。
【0021】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された段落と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図面と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0023】
【
図1】
図1Aと
図1Bは、それぞれ、既存技術に係る湾曲可能医用デバイスの正面断面図と側面斜視図である。
【
図2】
図2Aと
図2Bは、それぞれ、既存技術に係る湾曲可能医用デバイスの正面断面図と側面斜視図である。
【
図3】
図3Aと
図3Bは、それぞれ、既存技術に係る湾曲可能医用デバイスの正面断面図と側面斜視図である。
【
図4】
図4は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの斜視図である。
【
図5】
図5は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、空洞に挿入された例示の湾曲可能医用デバイスの切欠図である。
【
図6】
図6Aと
図6Bは、それぞれ、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの正面断面図と側面斜視図である。
【
図7】
図7は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面斜視図である。
【
図8】
図8A~
図8Fは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、異なる支持ワイヤ配置を包含する様々な例示の湾曲可能医用デバイスの正面断面図である。
【
図9】
図9は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面切欠斜視図である。
【
図10】
図10は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面切欠斜視図である。
【
図11】
図11は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの側面切欠斜視図である。
【0024】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。加えて、指定「´」を含む参照符号(例えば12´や24´)は、同じ性質及び/又は種類の2次要素及び/又は参照を表す。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の段落によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図3は、当技術分野で現在知られている湾曲可能医用デバイスの変形を提供する。
図1A及び
図1Bは、Davis他に対する米国特許第7,914,466号に開示された医用デバイスの図示であり、垂直軸の交互のレリーフカットにより、カットされていない管と比較して適度な量の軸方向剛性を維持しながら、管を2つの自由度ではるかに簡単に曲げることを可能にする、フレクシャカット(flexure-cut)管を詳述する。フレクシャカットの形状は非常に多様であり、具体的なニーズ及び用途に合わせてカスタマイズすることができる。フレクシャカットバックボーンは、典型的には、ニチノール又はステンレス鋼の皮下注射用管から作られ、つまり、他の構造と同じように小型化が困難であり、つまり、駆動ワイヤを管壁の内側又は外側に配線する必要がある。内側を通る場合は、ツールチャネルの直径が縮小され、管壁の外側を通る場合は、デバイスの全体の直径が増大し、これは、当技術分野で現在考えられているニーズを支持する。
【0026】
また、
図2A及び
図2Bは、当技術分野で既知の典型的な湾曲可能医用デバイスを示し、巻かれたばねのような構造では、収縮下の密着長さにより、いくらかの軸方向剛性がもたらされる。コイルはばね様であってよく、巻かれたワイヤは円形の断面をもち、又は、それは、楕円形か又は扁平な断面を備えたリボン形状に近くてもよい。この構造でも、駆動ワイヤが管断面の内側か外側のいずれかを通る必要があり、それによってカテーテルの外径が大きくなってしまうか、ツールチャネル直径が小さくなってしまうという問題がある。
【0027】
図3A及び
図3Bは、連続体ロボット工学に用いられる更に別の共通支持構造であり、剛性を提供し、ねじれを防止するために、巻き構造又は編組構造が用いられる。巻き構造又は編組構造の利点は、管又はスリーブ構造全体が高い曲げひずみに対応できることである。なぜなら、管を構成する材料の個々のストランドは、管の軸に対して非平行な方向に管の周りに配線され、個々のストランドが互いに対して並進することができるからである。この構造には、前の例ほど高い軸剛性はないものの、駆動ワイヤは管断面の内側か外側のいずれかを通る必要があるので、断面空間が追加されるという問題もある。
【0028】
本革新は、
図4~
図12に詳述されており、様々な実施形態が企図され、開示される。簡単に言えば、本革新によって解決される問題は、湾曲可能体の断面積を増大させることなく、また、湾曲可能体の曲げ剛性を大幅に増大させることなく、ねじれを防ぐために構造に支持を追加することである。これにより、桶状の湾曲可能体のねじれ及び/又は断面崩壊を生じることなく、高い曲げ曲率が可能となる。
【0029】
図4は、湾曲可能医用デバイス3の湾曲可能セグメントを説明するための概略図である。湾曲可能医用デバイス3は、近位部19と、3つの湾曲可能セグメント(それぞれ第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12、13、14である)とを有する。湾曲可能セグメント12,13,14は、
図4及び
図5から分かるように、独立して湾曲することができ、3つの独立した曲率をもつ形状を形成することができる。
【0030】
図5は、空洞、具体的には患者の肺の気管支周囲エリア(気道を囲む側域)に挿入された例示の湾曲可能医用デバイス3の切欠図を提供する。このエリアは、従来のカテーテルの遠位での器用さが制限されるので、文献及び先行技術で特定されているように、ターゲットとなる既知の課題である。ナビゲーション段階では、気道22を通って病変に到達するために、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13は、それぞれ分岐点32を通して湾曲可能医用デバイス3をナビゲートする。分岐点32では、湾曲可能医用デバイス3が分岐点32を通って前進するにつれて、第1の湾曲可能セグメント12は娘枝に対して形状/向きを調整することができ、一方、第2の湾曲可能セグメント13は親枝に対して形状/向きを調整することができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13が分岐点32を通過すると、当該セグメントは、湾曲可能医用デバイス3の残りを導くガイドの役割を果たすことができるので、遠位セクションの深刻な逸脱を生じることなく、湾曲可能医用デバイス3の近位端からの挿入力を、湾曲可能医用デバイス3の遠位部への挿入力に効果的に変換することができる。湾曲可能医用デバイス3の遠位端24が病変の近くに到達すると、湾曲可能医用デバイス3は、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13をそれぞれ曲げることにより、遠位端24を病変23(気道周辺の側域を位置付ける)へ向けることになる。気道は病変23に直接つながっていないので、これは、従来のカテーテルにとってより難しい構成のひとつである。
【0031】
第1、第2及び第3の湾曲可能セグメント12、13、14のそれぞれを用いて、湾曲可能医用デバイス3は、全ての分岐を通ってこの病変23に至る近位部19を動かすことなく、遠位端24を方向付けることができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13の3次元に曲がる能力を用いることにより、湾曲可能医用デバイス3は、独特な操作を実行して、気管支周囲の標的化の能力を高めることができる。したがって、湾曲可能医用デバイス3は、蛇行経路を通した、対象とする病変23への改善されたアクセスを提供することができる。また、湾曲可能医用デバイス3は、接合点のサイズ又は数を増大させることなく、軸方向に沿って異なる柔軟性をもつことができる。
【0032】
図6A及び
図6Bに示される本実施形態では、湾曲可能医用デバイス3は、内径40によって確立された適切なサイズのツールチャネル18(およそ2mmの内径)を維持しながら、肺の末梢気道(約3mm)内に収まるように小型化された外径42を有する。これにより、制御ワイヤ9、10、11を収容するとともに、ねじれを防止するための剛性を確立するために、およそ0.5mmの厚さをもつ環状の壁8が残される。湾曲可能セグメント12~14の各々は、それぞれ少なくとも2つの制御ワイヤ9~11を有し、余分な空間はほとんどない。湾曲可能体7の壁8の厚さに対する制約と、壁8を既に通っている制御ワイヤ9、10、11の存在により、断面空間は厳しく制限される。
【0033】
ねじれの問題に対処するために、支持ワイヤ50は、湾曲可能体7の壁8内に設けられ、また、湾曲セグメント12~14の遠位端24に固定されてよい。支持ワイヤ50は、壁8内に構成されたルーメン34を通ることができ、ルーメン34は、湾曲可能医用デバイス3の近位部19から始まってよい。特定の実施形態では、遠位湾曲セクションの支持ワイヤ50は、近位部19を通って、同じ利点を提供する。一実施形態では、全ての支持ワイヤ50は、湾曲可能医用デバイス3の遠位端24から湾曲可能医用デバイス3の近位部19まで延びてよく、よって、湾曲可能体7の全てのセグメント12~14は、ねじれ防止の恩恵を受けることができる。
【0034】
本願では、湾曲可能医用デバイス3が曲がるとき、支持ワイヤ50は、壁8が平らになる傾向に対して復元力を提供することによって、管の断面の崩壊又はねじれを防ぐ。
図7に示されるように、湾曲可能体7は、支持ワイヤ50がそれぞれのルーメン34を通って自由にスライドできるようにしながら、壁8の遠位端24に取り付けられた支持ワイヤ50によって曲げられる。湾曲可能体7が外力によって曲げられたとき、湾曲可能体7の2つの対向する上面52と底面54の長さは、それらの中立曲げ軸からのオフセットに起因して、変化する。支持ワイヤ50は、ワイヤ50の一端(この例では遠位端24)にのみ固定されているので、支持ワイヤ50は、それぞれのルーメン34内で自由にスライドする。支持ワイヤ50が近位部19と遠位端24の両方に取り付けられた場合、支持ワイヤは、湾曲可能体7の上面52及び底面54の長さの変化に一致するように、長さを変化させなければならないであろう。更に、支持ワイヤ50が曲がっているが、この場合のように軸方向にひずんでいない場合、曲がった支持ワイヤ50により、復元力がもたらされ得る。
【0035】
図8A~
図8Fは、湾曲可能体7の壁8内での、制御ワイヤ9~11に対する支持ワイヤ50を配置の様々な構成を示す断面画像を示す。更に、支持ワイヤ50の数、サイズ及び配置は、特定の方向の曲げ剛性等の特定の機械的特性を提供するように、変更することができる。曲げ方向に関して曲げ剛性をカスタマイズする機能は、非対称性のある複雑な構造を設計する場合の、更に別の非常に有利な効果である。図は、所望の機械的効果を生み出すために、どのように支持ワイヤ50の数、サイズ及び位置を変更することができるかについて、いくつかの例を示している。制御ワイヤ9~11、壁8、ルーメン34及びツールチャネル18は、理解を容易にするためのものである。図から分かるように、断面の任意の位置に配置された任意の数の制御ワイヤ9~11を備えた非円形、非同心の構造もまた、支持ワイヤ50が提供する設計上の利点から恩恵を受けるであろう。
図8Aは、等間隔、等サイズの支持ワイヤ50を備えた対称レイアウトを提供する。
図8Bは、間隔を置いて密に配置された、等サイズの支持ワイヤ50を備えた対称レイアウトを示す。
図8Cは、対称に配置された大きな支持ワイヤ50を示す。
図8Dは、混合サイズの支持ワイヤ50を提供し、
図8Eは、非対称に配置された支持ワイヤ50を示す。最後に、
図8Fは、制御ワイヤ9~11の半径からオフセットして配置された支持ワイヤ50を示す。
【0036】
図9は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイス3の側面切欠斜視図を示す。例示の湾曲可能体7は、4つのルーメン34及び中央ツールチャネル18を有する。4つのルーメン34の各々は、2つの制御ワイヤ9a及び9bと、2つの支持ワイヤ50a及び50bとによって占められる。支持ワイヤ50は、アンカー21によって湾曲可能体7の遠位端24で本体7に固定されながら、それぞれのルーメン34内で自由に並進する。これは、支持ワイヤ50が単純に壁8構造に沿って受動的に曲がる、本革新の一例の実施形態を表す。この構成は、長手方向の剛性を増し、ねじれ又は結合を防止しながら、湾曲可能医用デバイス3の構造全体に最小限の追加の曲げ剛性を提供する。
【0037】
図10は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイス3の側面切欠斜視図を示す。
図9と同様ではあるが、支持ワイヤ50の近位端がばね56によって湾曲可能医用デバイス3の近位端に取り付けられる点が異なる。この実施形態の利点は、エンドユーザによって要求される所望の剛性に基づく調整可能性を考慮しながら、支持ワイヤ50を、ばね56による予荷重用に選択することができ、又は中立位置に設定することができることである。湾曲医用デバイス3は、曲げ時にわずかに硬くなり、これにより、湾曲医用デバイス3は、駆動ワイヤの力が中和されたときに、それ自体をより容易に真っ直ぐにすることができる。
【0038】
図11は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイス3の側面切欠斜視図を提供する。この実施形態では、支持ワイヤ50の近位端は、湾曲可能医用デバイス3の近位部19に取り付けられ、独立した力制御モジュール58によって作動されるので、支持ワイヤ50に長手方向に作用する総力は無視することができる。このように、湾曲可能医用デバイス3は、最小限の余分な曲げ剛性を提供しながら、ねじれに対してより大きな弾力性をもつ。繰り返しになるが、ねじれや結合を排除しながら、曲げ剛性の微調整が可能となる。
【0039】
本革新の主な利点は、追加の断面支持と追加のガースを必要とせずに、小型化された医用デバイス及び連続体ロボットに構造を組み込むことができることである。支持構造は、既存の壁内に組み込まれ、必要な駆動ワイヤと協働する。支持ワイヤは、同じ方法で同時に形成することができ、既存の制御ワイヤと協働することができる。
【0040】
更に、支持ワイヤの数、配置、剛性及びサイズを選択して、湾曲可能医用デバイス3の追加の曲げ剛性をカスタマイズして、様々な要件に適合させることができる。これは、湾曲可能医用デバイスの構造が既に非対称の特徴を有する場合に、有利である。2つの自由度をもつ湾曲セクションの場合(x及びy方向のベクトルを中心に曲げる)、湾曲可能医用デバイスをどの方向にも均一に曲げることができることが、高い優先度である。支持ワイヤ構造により、湾曲可能医用デバイスの設計自由度が向上する。同様に、支持ワイヤの配置をカスタマイズして、各湾曲セクションの全体的な曲げ剛性及び軸方向剛性(挿入性のための)を制御することができる。
【国際調査報告】