IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオインベント インターナショナル アクティエボラーグの特許一覧

特表2022-512905新規アンタゴニスト抗TNFR2抗体分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】新規アンタゴニスト抗TNFR2抗体分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220131BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/18
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P31/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K35/12
A61K35/76
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523957
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019080004
(87)【国際公開番号】W WO2020089474
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】18203993.3
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520031025
【氏名又は名称】バイオインベント インターナショナル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100185856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 栄二
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン フレンデウス
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド テイゲ
(72)【発明者】
【氏名】リンダ モルテンソン
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ ホルムコビスト
(72)【発明者】
【氏名】モニカ センリヒ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
標的細胞上のTNFR2に特異的に結合し、それによってTNF-αのTNFR2への結合を遮断するとともにTNFR2シグナル伝達を遮断する新規アンタゴニスト抗体分子が記載され、この抗体分子はFc領域を介してFc受容体にも結合する。癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療におけるそのような抗体分子の使用も記載されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞上のTNFR2に特異的に結合し、それによってTNF-αのTNFR2への結合を遮断するとともにTNFR2シグナル伝達を遮断するアンタゴニスト抗体分子であって、前記抗体分子がそのFc領域を介してFcγ受容体にも結合する、アンタゴニスト抗体分子。
【請求項2】
前記抗体が、抑制性Fcγ受容体よりも活性化Fcγ受容体に対してより高い親和性で結合する、請求項1に記載の抗体分子。
【請求項3】
前記抗体分子のTNFR2への前記結合が、病変組織におけるTNFR2発現細胞の数および/または頻度の変化をもたらす、請求項1または2に記載の抗体分子。
【請求項4】
前記抗体分子のTNFR2への前記結合が、病変組織へのT細胞および/もしくは骨髄性細胞の浸潤ならびに/または病変組織におけるT細胞および/もしくは骨髄性細胞の組成の変化をもたらす、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項5】
前記抗体分子が、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、およびFc領域を介してFc受容体に結合する能力を保持するそれらの抗原結合断片からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項6】
ヒトTNFR2(hTNFR2)に、および/またはカニクイザルTNFR2(cmTNFR2)に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項7】
前記抗体分子が、ヒトIgG抗体分子、ヒト化IgG抗体分子およびヒト由来のIgG抗体分子からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項8】
前記抗体分子がヒトIgG1抗体である、請求項7に記載の抗体分子。
【請求項9】
前記抗体分子が、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するように操作されている、請求項7または8に記載の抗体分子。
【請求項10】
前記抗体分子がモノクローナル抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項11】
前記抗体分子が、配列KCSPGを含むかまたはそれからなるエピトープに特異的に結合しない、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項12】
前記抗体分子が、CDRであるVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3のうちの1~6個を含む抗体分子からなる群から選択され、
存在する場合、VH-CDR1は、配列番号1、9および17からなる群から選択され、
存在する場合、VH-CDR2は、配列番号2、10および18からなる群から選択され、
存在する場合、VH-CDR3は、配列番号3、11および19からなる群から選択され、
存在する場合、VL-CDR1は、配列番号4、12および20からなる群から選択され、
存在する場合、VL-CDR2は、配列番号5、13および21からなる群から選択され、
存在する場合、VL-CDR3は、配列番号6、14および22からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項13】
前記抗体分子が、以下のCDR:
(i)配列番号1、配列番号2および配列番号3、もしくは
(ii)配列番号9、配列番号10および配列番号11、もしくは
(iii)配列番号17、配列番号18および配列番号19を含む可変重鎖(VH)を含み、かつ/または、前記抗体分子が、以下のCDR:
(i)配列番号4、配列番号5および配列番号6、もしくは
(ii)配列番号12、配列番号13および配列番号14、もしくは
(iii)配列番号20、配列番号21および配列番号22を含む可変軽鎖(VL)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項14】
前記抗体分子が、配列番号7、15および23からなる群から選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含み、かつ/または、前記抗体分子が、配列番号8、16および24からなる群から選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項15】
前記抗体分子が、請求項12~14のいずれか一項に記載の抗体分子と、TNFR2への結合について競合することができる抗体分子である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体分子。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体分子をコードする、単離されたヌクレオチド配列。
【請求項17】
請求項16に記載のヌクレオチド配列を含む、プラスミド。
【請求項18】
請求項16に記載のヌクレオチド配列または請求項17に記載のプラスミドを含む、ウイルス。
【請求項19】
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項18に記載のウイルス。
【請求項20】
請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項16に記載のプラスミド、または請求項18もしくは19に記載のウイルスを含む、細胞。
【請求項21】
医薬において使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体分子、請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項17に記載のプラスミド、請求項18もしくは19に記載のウイルス、および/または請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療において使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体分子、請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項17に記載のプラスミド、請求項18もしくは19に記載のウイルス、および/または請求項20に記載の細胞。
【請求項23】
治療される患者が、病変組織で高いTNFR2発現を有する患者である、請求項22に記載の使用のための抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞。
【請求項24】
癌の治療において、
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド;および/または
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む細胞、チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド、もしくはチェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むウイルス、と組み合わせて使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体分子、請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項17に記載のプラスミド、請求項19に記載のウイルス、および/または請求項20に記載の細胞。
【請求項25】
癌もしくは細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療において使用するための薬学的組成物を製造するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体分子、請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項17に記載のプラスミド、請求項18に記載のウイルス、および/または請求項20に記載の細胞の使用。
【請求項26】
前記薬学的組成物が、病変組織で高いTNFR2発現を有する患者における癌または感染の治療に使用するためのものである、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記薬学的組成物が、前記癌の治療に使用するためのものであり、
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド;および/または
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む細胞、チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド、もしくはチェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むウイルス、と組み合わせて投与される、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体分子、請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項17に記載のプラスミド、請求項18もしくは19に記載のウイルス、および/または請求項20に記載の細胞、ならびに、任意選択的に、薬学的に許容される希釈剤、担体、ビヒクルおよび/または賦形剤を含むかまたはそれらからなる薬学的組成物。
【請求項29】
癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療において使用するための、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記癌の治療において、
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド;および/または
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む細胞、チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド、もしくはチェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むウイルス、を含む薬学的組物と組み合わせて使用するための、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
患者における癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体分子、請求項16に記載のヌクレオチド配列、請求項20に記載のプラスミド、請求項21または22に記載のウイルス、請求項23に記載の細胞、または請求項29に記載の薬学的組成物の治療有効量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記患者が、病変組織で高いTNFR2発現を有する患者である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
また、治療有効量の
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列;
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド;および/または
チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む細胞、チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド、もしくはチェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むウイルス、が前記患者に投与される、請求項31または32に記載の癌の治療方法。
【請求項34】
前記チェックポイント抑制剤がPD-1である、請求項24に記載の使用のための抗体分子、請求項24に記載の使用のためのヌクレオチド配列、請求項24に記載の使用のためのプラスミド、請求項19に記載のウイルス、請求項24に記載の使用のためのウイルス、請求項24に記載の使用のための細胞、請求項27に記載の使用、請求項30に記載の薬学的組成物、または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記チェックポイント抑制剤がPD-L1である、請求項24に記載の使用のための抗体分子、請求項24に記載の使用のためのヌクレオチド配列、請求項24に記載の使用のためのプラスミド、請求項19に記載のウイルス、請求項24に記載の使用のためのウイルス、請求項24に記載の使用のための細胞、請求項27に記載の使用、請求項30に記載の薬学的組成物、または請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記癌が固形癌である、請求項22、23、24、34もしくは35に記載の使用のための抗体分子、請求項22、23、24、34もしくは35に記載の使用のためのヌクレオチド配列、請求項25、26、34もしくは35に記載の使用のためのプラスミド、請求項25、26、34もしくは35に記載の使用のためのウイルス、請求項22、23、24、34もしくは35に記載の使用のための細胞、請求項25、26、27、34もしくは35に記載の使用、請求項29、30、34もしくは35に記載の薬学的組成物、または請求項31、32、33、34もしくは35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的細胞上の腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に特異的に結合し、それによりリガンドTNF-αがTNFR2に結合するのを遮断し、またTNFR2シグナル伝達も遮断する新規アンタゴニスト抗体分子であって、当該抗体分子がFc領域を介してFc受容体にも結合する、新規アンタゴニスト抗体分子に関する。本発明はまた、癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療などの医薬におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(TNFRSF1B)およびCD120bとしても既知である、腫瘍壊死因子(TNF)受容体2(TNFR2、TNFR-2またはTNFRII)は、腫瘍壊死因子-α(TNF-αまたはTNFα)に結合する膜受容体である。すなわち、T細胞、単球およびマクロファージの表面に見られ、核因子カッパB(NF-κB)を介してTNFR2受容体発現細胞の増殖を活性化することができる。特に、TNFR2は、癌、特に腫瘍浸潤免疫細胞(制御性T細胞(Treg)、CD8細胞傷害性エフェクターT細胞など)およびさまざまな骨髄性細胞亜集団において高度に上方制御される。
【0003】
TNFR2は、癌免疫療法の有望な標的として議論されており、腫瘍内Tregおよび多くのヒト腫瘍細胞の表面で高度に発現していると説明されている(Williams GS et al,Oncotarget.2016;7(42):68278-68291;Vanamee ES et al,Trends in Molecular Medicine,2017,vol.23,issue 11,1037-1046,Frontiers in Immunology,November 2017|Volume 8|Article 1482,Sci Signal.2018 Jan 2;11(511)。
【0004】
制御性T細胞(Treg細胞、TregまたはTregと呼ばれることもあり、以前は抑制性(suppressor)T細胞または抑制性制御性T細胞として既知であった)は、通常の免疫環境下および病理学的な免疫環境下で他の免疫細胞を抑制することが可能であるT細胞の亜集団を構成する。Tregは、CD4陽性細胞(CD4細胞)である。Tregではない他のCD4T細胞があるが、ただし、非Treg CD4細胞は、FOXP3陰性(FOXP3)であるのに対し、TregはまたFOXP3陽性(FOXP3)であるという点で、Tregは非Treg CD4細胞から分離できる。また、非Treg CD4細胞は、CD25CD127またはCD25CD127のいずれかであるのに対し、TregはまたCD25CD127陰性/低であるという点で、Tregは非Treg CD4細胞から分離できる。
【0005】
TNFR2はまた、自己免疫疾患(Faustman DL et al,Front Immunol.2013;4:478,Clin Transl Immunology.2016 Jan 8;5(1):J Neurosci.2016 May 4;36(18):5128-43)および炎症性疾患(Ait-Ali D et al,Endocrinology.2008 Jun;149(6):2840-52,Sci Rep.2016 Sep 7;6:32834)に関連して論じられている。
【0006】
さまざまな特性を有する異なるタイプの抗TNFR2抗体も以前に記載されている。例えば、Williamsら(Oncotarget.2016 Oct 18;7(42):68278-68291)は、リガンド遮断およびリガンド非遮断アゴニスト抗体の両方について記載している。
【0007】
WO2014/124134は、CD4+CD25Tregに富む組成物のインビトロ産生のためのアゴニスト抗TNFR2抗体および/またはNF-κBアクチベーターなどのTNFR2アゴニストの使用を開示している。この組成物は、患者の免疫障害または感染症の治療に有用であると言われている。WO2014/124134はさらに、TNFR2の1つまたは2つのエピトープに結合することができるTNFR2アンタゴニスト抗体を開示している。これらのエピトープの最初のエピトープは配列QTAQMCCSKCSPGQHAKVFCを含み、2番目のエピトープはヒトTNFRのアミノ酸における1つの特定の位置に1つの特定のアミノ酸を含んでいた。この2番目のエピトープは配列RLCAPLRKCRPGFを含み得る。このようなTNFR2アンタゴニストは、リンパ球が豊富で、Tregが枯渇した組成物を製造するのに有用であると言われている。このPCT出願に由来する登録された米国特許第9,821,010号において、アンタゴニスト抗体は、配列RLCAPLRKCRPGFを含むエピトープなどの配列KQEGCRLCAPLRKCRPGFGV内のエピトープに選択的に結合するものとして特定されている。TNFR2アンタゴニスト、およびTNFR2アンタゴニストを使用して製造される組成物は、癌または感染症などの増殖性障害の治療に有用であると言われている。
【0008】
WO2016/187068は、TNFR2などの腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーに拮抗することができる抗体を開示している。抗体は、増殖性障害および感染症の治療のための免疫療法などで、Tregを調節するのに有用であると言われている。特に、WO2016/187068は、ヒトTNFR2の特定のエピトープに結合するアンタゴニストTNFR2抗体を開示し、かつ、そのような抗体のいくつかの特定のCDR配列を提示している。WO2016/187068のデータは、アンタゴニストTNFR2抗体のFab領域のTNFR2への特異的結合が、これらの抗体のFc領域の非特異的結合ではなく、Treg細胞増殖の調節に関与している可能性が高いことを示していると言われている。
【0009】
WO2017/040312は、TNFR2シグナル伝達を促進し、Tregの増殖(expansion)または増殖(proliferation)に影響を与えることができる抗TNFR2抗体、特にアゴニスト抗TNFR2抗体を開示している。WO2017/040312は、配列KCSPGを含むエピトープに特異的に結合するが、配列KCRPGを含むエピトープには結合しない(したがって上記US9,821,010の抗体は除外される)、あるいは別のTNFRスーパーファミリーメンバーには結合しない抗体を開示している。アゴニスト抗体は免疫疾患の治療に有用であると言われている。WO2017/040312はさらに、ヒトTNFR2の完全な配列を提示している。
【0010】
WO2017/083525は、抗TNFR2抗体を含む薬理学的組成物、および癌などのTNF-αおよび/またはTNFR2に関連する障害の治療におけるそれらの使用について論じている。WO2017/083525は、Fcγ受容体への結合がヌルであるヒトIgG1 Fcドメインを含む抗体、およびTregの増殖の抑制についてさらに論じている。
【0011】
WO2017/197331は、特定の配列を有する相補性決定領域重鎖3を含むアンタゴニストTNFR2抗体を開示し、Tregの増殖の低減もしくは抑制および/またはTエフェクター細胞の増殖の促進について論じている。
【0012】
Fc受容体は、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、肥満細胞、好塩基球、好酸球、およびナチュラルキラー細胞、およびBリンパ球などの免疫エフェクター細胞の細胞表面に見られる膜タンパク質である。この名称は、抗体のFc領域へのそれらの結合特異性に由来する。Fc受容体は細胞膜に見られ、原形質膜または細胞質膜としても既知である。Fc受容体は、活性化FcγRと抑制性(inhibitory)FcγRに細分することができ、これらは、凝集した免疫グロブリンG Fcの結合により細胞の活性化を協調的に制御し、細胞内ITAMまたはITIMモチーフを介して活性化または抑制性シグナルを細胞に伝達することが知られている。凝集した免疫グロブリンまたは免疫複合体のFcR結合は、細胞への抗体の内在化を介在し、抗体介在性食作用、抗体依存性細胞介在性細胞傷害、または抗原提示もしくは交差提示をもたらす可能性がある。FcRは、抗体に結合した細胞表面受容体の架橋を介在または増強することも知られている。このような架橋は、標的細胞におけるシグナル伝達を活性化する、いくつかの(Li et al 2011.‘Inhibitory Fcgamma receptor engagement drives adjuvant and anti-tumor activities of agonistic CD40 antibodies’,Science,333:1030-4;White et al.2011.‘Interaction with FcgammaRIIB is critical for the agonistic activity of anti-CD40 monoclonal antibody’,J Immunol,187:1754-63)、しかしすべてではない(Richman et al 2014.‘Anti-human CD40 monoclonal antibody therapy is potent without FcR crosslinking’,Oncoimmunology,3:e28610)抗体の能力に必要であることが知られており、治療効果を達成するために必要な場合と必要でない場合がある。
【0013】
Fc受容体のサブグループは、IgG抗体に特異的なFcγ受容体(Fc-ガンマ受容体、FcガンマR、FcγR)である。Fcγ受容体には、活性化Fcγ受容体(活性化Fcγ受容体とも表される)、および抑制性Fcγ受容体の2種類がある。活性化受容体および抑制性受容体は、それぞれ、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)または免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を介して、それらのシグナルを伝達する。ヒトにおいて、FcγRIIb(CD32b)は、抑制性Fcγ受容体であり、一方FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIc(CD32c)、およびFcγRIIIa(CD16a)は、活性化Fcγ受容体である。FcγgRIIIbは、好中球上で発現するGPI結合受容体であり、ITAMモチーフが欠如しているが、脂質ラフトをクロスリンクし、他の受容体と結合するその能力によっても活性化とみなされる。マウスにおいて、活性化受容体は、FcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIVである。
【0014】
抗体がFcγ受容体との相互作用を介して免疫細胞活性を調節し得ることは、公知である。具体的には、抗体免疫複合体が免疫細胞の活性化をどのように調節するかは、活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体の相対的な関与によって判定される。異なる抗体アイソタイプは、異なる親和性で活性化Fcγ受容体および抑制性Fcγ受容体に結合し、結果として異なるA:I比率(活性化:抑制の比率)をもたらす(Nimmerjahn et al;Science.2005 Dec 2;310(5753):1510-2)。
【0015】
抑制性Fcγ受容体に結合することにより、抗体は、エフェクター細胞機能を抑制、遮断、および/または下方調節することができる。抑制性FcγRに結合することにより、抗体は、標的細胞上の抗体標的シグナル伝達受容体の凝集により細胞の活性化をさらに刺激することができる(Li et al.2011.‘Inhibitory Fcgamma receptor engagement drives adjuvant and anti-tumor activities of agonistic CD40 antibodies’,Science,333:1030-4;White et al.2011.‘Interaction with FcgammaRIIB is critical for the agonistic activity of anti-CD40 monoclonal antibody’,J Immunol,187:1754-63;White et al 2014.‘Fcgamma receptor dependency of agonistic CD40 antibody in lymphoma therapy can be overcome through antibody multimerization’,J Immunol,193:1828-35)。
【0016】
活性化Fcγ受容体に結合することにより、抗体は、エフェクター細胞の機能を活性化し、それによって抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン放出、および/または抗体依存性エンドサイトーシス、ならびに好中球の場合、ネトーシス(すなわち、NET(好中球細胞外トラップ)の活性化および放出)などの機構を誘発することができる。活性化Fcγ受容体に結合する抗体も、CD40、MHCII、CD38、CD80、および/またはCD86などの特定の活性化マーカーの増加を引き起こすことができる。
【0017】
特に、本発明者らによって発表された最近のデータは、治療効果のために、活性化FcγRおよび抑制性FcγRにそれぞれ結合するためのCD8 T細胞アゴニスト抗体およびTreg枯渇抗4-1BB抗体の重要かつ特異的な依存性を示している(Buchan et al.,‘Antibodies to Costimulatory Receptor 4-1BB Enhance Anti-tumor Immunity via T Regulatory Cell Depletion and Promotion of CD8 T Cell Effector Function’,Immunity 2018 49(5):958-970)。さらに、そして決定的に、CD8 T細胞アゴニスト抗体およびTreg枯渇抗4-1BB抗体の同時投与は、活性化FcγRおよび抑制性FcγRそれぞれへの結合に最適化され、治療活性を低下させた。これらのデータは、別個の作用機序を有する抗体の治療活性を最大化するために、活性化FcγRおよび抑制性FcγRの適切かつ調整された結合を伴う抗体を開発することが決定的に重要であることを示している。同時に、これらのデータは、活性化FcγRおよび抑制性FcγRの結合が最適でないと、治療効果を著しく低減させる可能性があることを示している。
【0018】
これらのデータは、他のTNFSRメンバーに対する抗体、特に免疫刺激性抗CD40抗体に関する所見とは対照的であり、活性化FcγRではなく、抑制性FcγRの結合が絶対的に必要であることを示していたために、驚くべきものであった(Li et al.2011.‘Inhibitory Fcgamma receptor engagement drives adjuvant and anti-tumor activities of agonistic CD40 antibodies’,Science,333:1030-4;White et al.2011.‘Interaction with FcgammaRIIB is critical for the agonistic activity of anti-CD40 monoclonal antibody’,J Immunol,187:1754-63)。まとめると、これらの結果は、FcγR依存性が、同じ受容体スーパーファミリーの異なる標的に対する抗体間で、さらには同じ標的に対する異なるタイプの抗体間でさえ、容易には予測できない様式で変化する可能性があるが、治療的使用の抗体を開発する際に理解して利用することが重要である場合があることを示している。
【発明の概要】
【0019】
本発明および並行する発明に至る研究において、強力な治療活性、ならびに異なる特徴および作用機序を有する抗TNFR2抗体の2つの主要な異なるグループが同定された。
【0020】
本発明者らは、TNF-αのTNFR2受容体への結合を遮断するアンタゴニスト抗TNFR2抗体の強力な治療活性を最初に同定した。そのような抗体の活性は、インビボ治療活性について、FcγR相互作用、特に活性化FcγRへの結合に依存することが示された。強力な抗TNFR2治療試薬のこのグループまたはカテゴリーは、1)TNF-α(リガンド)誘導性TNFR2シグナル伝達の顕著な遮断および抑制、ならびに2)FcγR結合に依存する活性を特徴とし、抑制性FcγRよりも活性化FcγRに結合することから最も強く恩恵を受けることが見出された。
【0021】
次に、本発明者らは、インビボで同等に強力な治療活性を有するが、多くの点でその特徴が第1のグループおよび本発明を構成するアンタゴニスト遮断型のTNFR2抗体の特徴と反対である抗TNFR2抗体の別個のグループを同定した。この第2のグループの抗TNFR2抗体は、治療活性について、TNF-α遮断またはTNFR2シグナル伝達の抑制に依存せず、むしろTNFR2シグナル伝達の強力な活性化を特徴とする。第1のグループの遮断抗体とはさらに対照的に、第2のグループのアゴニスト抗体は、それらの活性がFcγR:結合抗体変異体で改善されるとしても、抗体:FcγR結合への絶対的な依存を示さない。第1のグループのアンタゴニスト遮断抗体とはさらに対照的に、第2のグループのアゴニスト抗体は、抑制性FcγR対活性化FcγRへの結合が改善された抗体変異体において最大の活性を示す。
【0022】
本発明は、抗TNFR2抗体の第1のグループ、すなわち、TNFR2に特異的に結合することにより、TNF-αがTNFR2に結合するのを遮断するとともにTNFR2シグナル伝達も遮断するアンタゴニスト抗体分子に関する。これらの抗体分子はまた、Fc受容体に結合するFc領域を有し、これは、例えばTregの枯渇または腫瘍関連マクロファージの調節などの、TNFR2陽性細胞のFcγR依存性排除または機能的調節を与えるのに有用である。
【0023】
第2のグループに属するアゴニスト抗体は、本発明のアンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子と比較するために、以下の実施例において使用される。実施例では、以下でさらに説明するように、第1または第2のグループのいずれかまたは両方のものと同様のいくつかの特徴を有する他の抗体も比較のために使用される。
【0024】
標的細胞上のTNFR2に特異的に結合し、それによってTNF-αのTNFR2への結合を遮断するとともにTNFR2シグナル伝達を遮断するアンタゴニスト抗体分子であって、当該抗体分子がそれらのFc領域を介してFcγ受容体にも結合する、アンタゴニスト抗体分子に関する。
【0025】
本発明はまた、そのような新規アンタゴニスト遮断抗TNFR2抗体分子の特定の例に関する。
【0026】
本発明はまた、上記抗体分子のうちの少なくとも1つをコードする単離されたヌクレオチド配列に関する。
【0027】
本発明はまた、上記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含むプラスミドに関する。
【0028】
本発明はまた、上記ヌクレオチド配列またはプラスミドのうちの少なくとも1つを含むウイルスに関する。
【0029】
本発明はまた、上記ヌクレオチド配列のうちの1つ、または上記プラスミドのうちの1つ、または上記ウイルスのうちの1つを含む細胞に関する。
【0030】
本発明はまた、医薬において使用するための上記抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞に関する。
【0031】
本発明はまた、癌もしくは細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療において使用するための、上記抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞に関する。
【0032】
本発明はまた、癌もしくは細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療において使用するための、上記抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞に関する。
【0033】
本発明はまた、上記抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞のうちの少なくとも1つ、ならびに、任意選択的に、薬学的に許容される希釈剤、担体、ビヒクルおよび/または賦形剤を含む薬学的組成物に関する。そのような薬学的組成物は、癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療に使用することができる。
【0034】
本発明はまた、患者における癌または細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療方法であって、上記抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞および/または薬学的組成物のうちの少なくとも1つの治療有効量を患者に投与することを含む、方法に関する。
【0035】
本発明はまた、添付の説明、実施例および/または図を参照して本明細書に記載される、抗体分子、使用のための抗体分子、単離されたヌクレオチド配列、使用のための単離されたヌクレオチド配列、プラスミド、使用のためのプラスミド、ウイルス、使用のためのウイルス、細胞、使用のための細胞、使用、薬学的組成物および治療方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
標的細胞上のTNFR2に特異的に結合し、それによってTNF-αのTNFR2への結合を遮断するとともにTNFR2シグナル伝達を遮断するアンタゴニスト抗体分子であって、当該抗体分子がそれらのFc領域を介してFcγ受容体にも結合する、アンタゴニスト抗体分子に関する。
【0037】
本明細書に開示されるアンタゴニスト抗体分子は、TNF-αのTNFR2への結合およびTNFR2シグナル伝達を遮断する。アンタゴニスト抗体分子がTNF-αのTNFR2への結合を遮断するということは、本明細書では、受容体TNFR2に結合する抗体分子がリガンドTNF-αの同じ受容体への結合を妨げることを意味する。これは、実施例3でより詳細に示されている。本明細書に開示されるアンタゴニスト抗体分子がTNFR2シグナル伝達を遮断するということは、それらがTNFR2介在性細胞活性化を遮断することを意味する。TNFR2を介したTNF-α介在性シグナル伝達は、核転写因子NFκBの活性化で終わるシグナル伝達カスケードを開始することが明確に示されている(Thommesen et al.“Distinct differences between TNF receptor 1-and TNF receptor 2-mediated activation of NFkappaB”.J Biochem Mol Biol.2005 May 31;38(3):281-9;Yang et al.“Role of TNF-TNF Receptor 2 Signal in Regulatory T Cells and Its Therapeutic Implications”.Front Immunol.2018 Apr 19;9:784)。これにより、細胞が活性化され、いくつかの炎症誘発性因子が合成される。そのうちの1つは、NK細胞のIFN-γである(Liu et al.“NF-κB signaling in inflammation”.Signal Transduct Target Ther.2017;2.pii:17023;Tato et al.“Opposing roles of NF-kappaB family members in the regulation of NK cell proliferation and production of IFN-gamma”.Int Immunol.2006 Apr;18(4):505-13)。本明細書では、TNFR2シグナル伝達およびTNFR2活性化という用語は交換可能に使用される。
【0038】
抗体分子は、TNFR2に特異的に結合する。抗体が定義された標的分子または抗原に特異的に結合するか、またはそれと相互作用すること、および、これは、抗体が、標的ではない分子ではなく、その標的に優先的かつ選択的に結合することを意味することはよく知られている。「TNFR2に特異的に結合する抗体分子」または「TNFR2特異的抗体分子」とは、用量依存的にTNFR2タンパク質に結合するが、無関係のタンパク質には結合しない抗体を意味する。加えて、同じ抗体はTNFR2を内因的に発現する細胞に結合し、この結合は同じ細胞を市販のポリクローナルTNFR2抗体試薬とプレインキュベーションすることによって遮断することができる。これは、TNFR2がポリクローナル試薬でマスクされている際に非特異性結合を検出できることを示している。これを実施例2に示す。
【0039】
TNFR2に特異的に結合する抗体分子(または抗TNFR2抗体分子)は、TNFR2の細胞外ドメイン内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体分子を指す。細胞表面抗原およびエピトープは、免疫学または細胞生物学の当業者によって容易に理解される用語である。
【0040】
タンパク質の結合を評価する方法は、生化学および免疫学の当業者には既知である。当業者であれば、それらの方法を使用して、抗体の標的への結合および/または抗体のFc領域のFc受容体への結合、ならびにそれらの相互作用の相対的な強度、もしくは特異性、もしくは抑制、もしくは防止、もしくは低減を評価することができることを理解するであろう。タンパク質の結合を評価するために使用され得る方法の例は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、およびフローサイトメトリー(FACS)がある(抗体特異性に関する考察については、Fundamental Immunology 第2版,Raven Press,New York、332~336頁(1989)を参照されたい)。
【0041】
本発明に従って遮断抗体が結合するTNFR2を発現する標的細胞としては、上記および下記のような免疫細胞および/または腫瘍細胞が挙げられる。本発明によるアンタゴニスト抗体分子のTNFR2への結合の効果は、病変組織における細胞の組成変化であり得る。この組成変化は、病変組織におけるTNFR2発現細胞の数および/または頻度の変化を通じて起こり得る。例えば、癌における効果としては、腫瘍内T細胞数の増加、CD8T細胞/Tregの比率の増加(すなわち、Tregの数に対するCD8T細胞の数)、および/または、腫瘍促進特徴とは反対の抗腫瘍特徴に関連する骨髄性細胞数の増加が挙げられる。これは実施例5に示されている。いくつかの実施形態において、これらの効果は、組織Treg数の減少、CD8エフェクターT細胞の数の増加、および組織骨髄性細胞サブセットの組成変化をもたらす。本発明によるアンタゴニスト抗体分子の代理(3-F10)を用いたインビボ治療発明後の、組織におけるTNFR2発現細胞の調節は、実施例5に詳細に示されている。本発明によるヒトアンタゴニスト抗体分子の同様の効果を試験するために、マウスTNFR2が欠失し、ヒトTNFR2についてトランスジェニックにされたマウスで類似の実験を実施することができる。あるいは、および好ましくは、かなりの時間およびリソースを必要とするが、ヒトTNFR2およびヒトFcγRについてトランスジェニックな動物を、以前にCD40およびhFcγRについて記載されたものと比較して類似の方法で生成することができる(Dahan et al.2016.‘Therapeutic Activity of Agonistic,Human Anti-CD40 Monoclonal Antibodies Requires Selective FcgammaR Engagement’,Cancer Cell,29:820-31)。次に、そのようなヒト化TNFR2 FcγRマウスを同様に使用して、本発明によるヒトアンタゴニスト抗体分子の同様の効果について試験することができる。
【0042】
この文脈において、病変組織とは、腫瘍組織(すなわち、腫瘍細胞、免疫細胞、内皮細胞および間質細胞を含む、腫瘍微小環境内のすべての細胞)または細胞内病原体に感染した組織のいずれかを意味する。
【0043】
抗体分子がTNFR2へのリガンド結合を遮断するか否かを判定するために、TNFR2特異的抗体の存在下で固定化されたTNFR2受容体に結合したTNF-αリガンドの量を決定するELISAアッセイを使用することが可能である。遮断抗体は、リガンドであるTNF-αが固定化された受容体TNFR2に結合するのを妨げる。これは、以下の実施例3においてより詳細に示され、説明されている。
【0044】
本発明による遮断抗体分子は完全遮断剤であり、さらにTNFR2シグナル伝達に拮抗することができる。
【0045】
完全遮断剤は、アイソタイプ対照抗体分子のみの存在下でのTNF-α結合と比較して、TNFR2へのTNF-α結合を98%超、すなわち最大100%低減する抗体分子として本明細書で定義される。アイソタイプ対照抗体は、研究中のアッセイにおいていかなる形態でも存在しないタンパク質または他の構造に対して産生された抗体である。アイソタイプ対照は、理想的には、比較する抗体と同じフレームワークであるが、少なくとも同じFc部分を有する。これは当業者には公知である。本明細書で説明する例では、アイソタイプ対照は同じフレームワーク、同じFc部分を有し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に特異的であった。いくつかの実施形態において、完全遮断剤は、TNF-α結合を99.5%超低減する。
【0046】
他のタイプの遮断剤は、部分遮断剤および弱い遮断剤である。本明細書で使用される場合、部分遮断剤は、アイソタイプ対照抗体分子のみの存在下でのTNF-α結合と比較して、TNFR2へのTNF-α結合を60~98%(例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97または98%、およびその間のすべての少数)低減する抗体分子であり、弱い遮断剤は、アイソタイプ対照抗体分子のみの存在下でのTNF-α結合と比較して、TNFR2へのTNF-α結合を60%未満、例えば50~59.9%(例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または59.9%、およびその間のすべての少数)低減する抗体分子である。
【0047】
反対に、非遮断TNFR2抗体分子は、アイソタイプ対照抗体分子のみの存在下でのTNF-α結合と比較して、TNFR2へのTNF-α結合を50%未満低減する抗体分子である。いくつかの実施形態において、これは、実施例3および図6および7に示されるように、高用量のワンポイントELISAまたは用量漸増(dose-titration)ELISAにおいて決定される。
【0048】
部分遮断抗体、弱い遮断抗体および非遮断抗体は、本発明のアンタゴニスト遮断抗体分子と比較するために、実施例において使用される。
【0049】
いくつかの特性および特徴が、抗体の生物学的活性の根底にあり、それを(共)決定することができる。リガンドが受容体に結合するのを遮断する能力に加えて、そのような重要な特性としては、受容体シグナル伝達を調節する、すなわち受容体シグナル伝達を作動させる(agonize)かまたはそれに拮抗する抗体の能力、および治療活性を与えるためのFcγR相互作用への抗体依存性が含まれる。
【0050】
最初に、TNFR2シグナル伝達を調節する完全遮断抗体、部分遮断抗体および非遮断抗体の能力を特徴付けた。2つの極端な例(extremes)が同定された。
【0051】
最初の極端な例として、TNFR2へのリガンド結合を完全に遮断し、TNF-αが誘導するTNFR2シグナル伝達を遮断し、細胞内因的に発現するTNFR2に結合してもそれら自体はシグナル伝達を誘導しない抗体を同定した。このグループのリガンド遮断アンタゴニスト抗体は、本発明の基礎を形成する。
【0052】
もう一方の極端な例として、TNFR2へのリガンド結合を遮断しないが、TNFR2に結合すると、内因的に発現する細胞が受容体を作動させる抗体を同定した。この第2のグループの抗体は、別個の発明を構成し、比較のために本明細書に含まれる。
【0053】
部分遮断アゴニスト、部分遮断非アゴニスト、および完全遮断非アンタゴニストによって定義される抗体およびカテゴリーがさらに同定され、抗TNFR2抗体の複雑な生物学および大きな不均一性を示し、本発明の抗体が特有のグループを形成することを明確に示している。
【0054】
抗体がアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有するか否かを決定するために、実施例4に記載されるようにナチュラルキラー(NK)細胞アッセイを使用することが可能である。簡潔に言うと、NK細胞はIL-2およびIL-12刺激に応答してIFN-γを分泌することが報告されている。可溶性TNF-αは内因的に産生され、TNFR2シグナル伝達に対して堅牢であるが最適以下の濃度(約20~100pg/ml)で存在する。これは、IFN-γがTNFR2シグナル伝達の調節によって増減する可能性があることを意味する。結果として、TNFR2シグナル伝達の最適濃度でのTNF-αの外因的添加は、アゴニスト抗TNFR2抗体とのインキュベーションと同様、このアッセイにおけるIFN-γ濃度を高める(図8C)。逆に、抗TNF-α抗体または本明細書に記載のリガンド遮断アンタゴニスト抗体との共インキュベーションは、このアッセイにおけるIFN-γ放出を減少させる。したがって、このアッセイを使用して、抗TNFR2抗体のアゴニストまたはアンタゴニスト活性、またはそれらの欠如を同定することができる。(TNFα Augments Cytokine-Induced NK Cell IFNγ Production through TNFR2.Almishri W.et al.J Innate Immun.2016;8:617-629)結果として、この実験装置では、アンタゴニスト抗体は、TNFR2発現細胞におけるTNF-α誘導性シグナル伝達を防ぎ、TNFR2受容体に結合しても、それ自体はTNFR2受容体を刺激しない。具体的には、このアッセイにおけるアンタゴニスト抗体は、上記NK細胞に結合したときにIFN-γの放出を増加させるのではなく、IFN-γの放出を抑制する。図8に示すように、本発明に記載の完全遮断抗体は、このTNF-α含有NK細胞アッセイにおいて、TNFR2シグナル伝達を誘導するのではなく、TNFR2シグナル伝達を低下させ、その結果、放出されるIFN-γの量が低減した。したがって、図8、実施例4に示されるように、本発明の抗体は、リガンド遮断アンタゴニスト抗TNFR2抗体として分類することができる。培養物中の基礎TNF-αレベルが少なくとも20pg/mlであることを考慮すると、このアッセイを使用して、アンタゴニスト抗体は、IFN-γ放出を>30%(例えば、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%)低減する抗体として定義される。このアッセイはPBMCドナーからの一次細胞を使用するため、少なくとも4体のドナーを含める必要があり、平均値はすべてのドナーから計算すべきである。平均の計算に含まれる各ドナーからの細胞は、アイソタイプ対照での治療と比較して>100%(>2倍)増加したIFN-γレベルで陽性対照(可溶性TNF-α)治療に応答したはずである。
【0055】
アンタゴニスト活性は、IL-2を介したメモリーT細胞の活性化を使用して実証することもできる。ここでの活性化は、T細胞活性化マーカーCD25の上方制御によって測定される。このアッセイを使用して、非遮断アゴニストTNFR2抗体の添加は、CD25発現をさらに上方制御するが、本発明による遮断アンタゴニストTNFR2抗体は、アイソタイプ対照と比較して、CD25発現を低減する。これは、本発明のヒト抗体ならびにマウス代理抗体に当てはまり、実施例4に示されている。
【0056】
TNFR2に結合し、それによってTNF-αの結合およびシグナル伝達を遮断することに加えて、本発明による抗体分子はまた、Fcγ受容体に結合する。治療効果のための本発明の抗体のTNF-α遮断アンタゴニスト群に属する抗TNFR2抗体のFcγR相互作用への絶対的な依存が、FcγR結合と生産的に結合する、または生産的に結合しない抗体変異体を使用するマウス癌実験モデルにおいて実証された。インビボ治療活性のためのそのようなリガンド遮断アンタゴニスト抗体の絶対的な依存、および最大のインビボ治療活性のための抑制性FcγRを上回る活性化FcγRのそれらの優先的結合(binding)/結合(engagement)が実施例5に示されている。アゴニスト非遮断抗TNFR2抗体のFcγR非依存性インビボ活性、および最大の治療活性のための活性化FcγRを上回る抑制性FcγRのそれらの異なる優先的結合を実証するデータは、比較および対照目的のためにのみこの実施例に含まれる。まとめると、我々のデータは、いくつかのタイプの抗TNFR2抗体を生成できることを示している。さらに、我々のデータは、どの抗体変異体が治療上最も効果的であるか、それらが遮断アゴニストまたはアンタゴニスト(外因性または内因性)特性に依存するか否か、およびそれらがFcγR-結合に依存するのか、または活性化または抑制性Fcガンマ受容体への優先的/強力な結合に関連する抗体形式で最も効果的であるのかは些細なことではなく、予測できなかったことを示している。
【0057】
マウスFcγRシステムとヒトFcγRシステムとの間の比較的高い相同性は、種間の保存されたFcγR介在性メカニズムの一般的な側面の多くを説明している。しかしながら、マウスおよびヒトのIgGサブクラスは、それらの同種のFcγRに対する親和性が異なるため、マウスシステムでのFcγRを介した観察をヒトIgGベースの治療法に変換する際には、抗体、抗体サブクラスおよび/または操作されたサブクラスの変異体を選択することが重要であり、これは、ヒト活性化FcγR対抑制性FcγRへの適切な結合を示している。個々のヒトFcγ受容体に対するヒト抗体分子の親和性および/または結合力は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、遮断TNFR2抗体分子は、抑制性Fcγ受容体よりも活性化Fcγ受容体に対してより高い親和性で結合する。抑制性Fcγ受容体よりも活性化Fcγ受容体への親和性が高いため、抑制性Fcγ受容体と比較して、活性化Fcγ受容体、例えばFcγRIIA、FcγRIIIAおよび/またはFcγRIに高い親和性で結合する変異体という意味を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、抗体分子は、抗体分子のFc領域とFcγ受容体との間の通常の相互作用を介してFcγ受容体へ結合し得るIgGである。
【0059】
いくつかの実施形態では、アンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子は、ヒトIgG1である。ヒトIgG1は、活性化ヒトFcγRIに対しては高い親和性で結合し、ヒト活性化Fcγ受容体FcγRIIA、FcγRIIIAに対して、およびヒト抑制性FcγRIIBに対してはより低い親和性および類似した親和性で結合することがよく知られている。これは、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して実証されている。
【0060】
いくつかの実施形態において、アンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子は、1つまたはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善を示す、および/または1つまたはいくつかの活性化Fcγ受容体への結合を改善するために操作された、および/または抑制性Fcγ受容体に対する活性化Fcγ受容体への相対的結合を改善するために操作された、IgG抗体分子である。いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体分子は、Fc操作されたヒトIgG1抗体である。そのような操作された抗体変異体の例としては、FcγRIIIAへの選択的に改善された抗体結合を有する非フコシル化抗体、および抑制性FcγRIIBと比較して、1つまたはいくつかの活性化Fcγ受容体への結合の改善をもたらす、指向性、突然変異性、または他の手段のアミノ酸置換によって操作された抗体が含まれる(Richards et al.2008.‘Optimization of antibody binding to FcgammaRIIa enhances macrophage phagocytosis of tumor cells’,Mol Cancer Ther,7:2517-27;Lazar et al.2006.‘Engineered antibody Fc variants with enhanced effector function’,Proc Natl Acad Sci U S A,103:4005-10)。
【0061】
いくつかの実施形態において、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するために操作されたヒトIgG抗体は、そのFc部分に、2つの突然変異S239DおよびI332E、または3つの突然変異S239D、I332EおよびA330L、ならびに/またはG236A突然変異を有するヒトIgG抗体であり得る。いくつかの実施形態において、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するために操作されたヒトIgG抗体は、非フコシル化されたヒトIgG抗体であり得る。
【0062】
本発明のアンタゴニスト遮断抗体分子のFc領域が結合するFcγ受容体は、上記のように免疫エフェクター細胞を発現するFcγ受容体であり得る。
【0063】
TNFR2特異的抗体分子の標的細胞上のTNFR2表面受容体への結合、および同じ細胞または近接した免疫エフェクター細胞上のFcγRの共結合は、抗体分子が結合するTNFR2陽性標的細胞の枯渇または機能的調節をもたらす可能性がある。細胞の除去とは、本明細書では、細胞の物理的クリアランスを介した細胞の除去、欠失または排除を指す。
【0064】
細胞の枯渇は、ADCC、すなわち抗体依存性細胞媒介性細胞傷害または抗体依存性細胞傷害、および/またはADCP、すなわち抗体依存性細胞食作用を介して達成され得る。これは、本明細書に記載の抗体分子がヒトなどの患者に投与されると、それがTregなどの細胞の表面に発現されるTNFR2に特異的に結合し、この結合が細胞の枯渇をもたらすことを意味する。一般に、高発現細胞は低発現細胞と比較してより効果的に欠失される。実施例5、図14に示すように、Tregは腫瘍環境で最も発現量の多い細胞である。
【0065】
ADCCは、Fc受容体を有するエフェクター細胞が、腫瘍由来の抗原、すなわちこの場合はTNFR2、を表面に発現している--抗体でコーティングされた標的細胞を認識して死滅させる(すなわち、枯渇させる)ことができる免疫機構である。ADCPも同様の機構であるが、細胞傷害性ではなく食作用によって標的細胞を死滅させる(すなわち、枯渇させる)。
【0066】
さらに、抗体分子のFc領域のFcγ受容体への結合の改善は、ADCCまたはADCPを介したFc受容体依存性死による標的細胞の枯渇も改善する可能性がある。これは、活性化Fcγ受容体への結合が改善された抗体分子に特に関係がある。
【0067】
抗体分子がTNFR2陽性細胞に枯渇効果を有するということは、ヒトなどの患者に投与すると、そのような抗体分子がTNFR2陽性細胞の表面に発現するTNFR2に特異的に結合し、この結合がそのような標的細胞の枯渇をもたらすことを意味する。
【0068】
枯渇する細胞は、標的細胞が何であるかについての議論に関連して上で説明したような、いくつかの異なる細胞であり得る。一般に、枯渇するのはTNFR2の発現が最も高い細胞である。TNFR2も発現しているがそれほど高くない他の細胞も枯渇する可能性があるが、TNFR2の発現が最も高い細胞と比較してわずかである。
【0069】
上記のように、TNFR2は、様々な癌患者の腫瘍に見られるTreg上で高度に発現され、そのような患者において、本発明の抗体分子は、Tregに優先的に結合し、したがって、Tregを枯渇させる。Tregは、CD8陽性(CD8)細胞などの他の免疫細胞の増殖、活性化および細胞傷害性能力を抑制する効果があるため、Tregの枯渇は、少なくとも間接的に、CD8細胞の増殖、活性化および場合によっては遊走の増加、したがって腫瘍内CD8細胞の数の増加をもたらす。CD8T細胞は、腫瘍細胞の免疫介在性クリアランスに不可欠である(McKinney et al.Curr Opin Immunol.2016 Dec;43:74-80;Klebanoff et al.Immunol Rev.2006 Jun;211:214-24;Alexander-Miller.Immunol Res.2005;31(1):13-24)。したがって、CD8+T細胞の増殖、活性化および細胞傷害性能力の増加は、癌患者にとって非常に有益であり、癌の根絶につながる可能性がある。
【0070】
CD8T細胞の増殖、活性化および細胞傷害性能力の増加はまた、細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療にも非常に有益である。細胞内病原体からの抗原は、通常、CD8T細胞の活性化に役立つMHCI分子に提示される。これにより、CD8T細胞は感染細胞を認識して溶解し、病原体を破壊する。
【0071】
TNFR2特異的抗体分子の結合およびTNF-αシグナル伝達の遮断はまた、細胞表現型の機能的調節、例えば、腫瘍促進性骨髄性細胞の殺腫瘍性を有する骨髄性細胞への調節をもたらし得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、TNFR2陽性細胞は、CD4陽性(CD4)細胞、すなわち、CD4を発現する細胞である。
【0073】
いくつかの実施形態では、TNFR2陽性細胞は、CD4およびFOXP3の両方であり、すなわち、CD4およびFOXP3の両方を発現する。これらの細胞はTregである。CD8T細胞もTNFR2を発現するが、図14、実施例5に示されるように、TregはCD8陽性T細胞よりも有意に高いレベルのTNFR2を発現する。これにより、Tregは、発現の少ないCD8細胞と比較して枯渇しやすくなる。
【0074】
状況によっては、TNFR2は腫瘍微小環境の免疫細胞(腫瘍浸潤細胞、TILS)に優先的に発現する。
【0075】
いくつかの実施形態において、Tregは、腫瘍微小環境ではTNFR2の発現が最も高い細胞となり、TNFR2に特異的に結合する抗体分子(または抗TNFR2抗体分子)がTreg枯渇効果を有することとなる。これについては、以下、例えば実施例5で、図13および15に関連して詳しく説明する。
【0076】
いくつかの実施形態では、TNFR2陽性細胞は、固形腫瘍におけるTregである。そのようなTregは、TNFR2の非常に高い発現を有するため、TNFR2に特異的に結合する抗体分子を投与すると、そのようなTregの枯渇を優先的にもたらす。
【0077】
抗体分子が、本明細書で言及されるようにTNFR2陽性細胞に対する枯渇効果を有する抗体分子であるかどうかを決定するために、PBMC-NOG/SCIDモデルでのインビボ試験を使用することが可能である。このインビボ試験は、本明細書ではPBMC-NOG/SCIDモデルと呼ばれる、PBMCマウスおよびNOG/SCIDマウスの併用に基づいている。NOGマウスおよびSCIDマウスの両方が当業者に知られており(Ito M et al,(2002) NOD/SCID/γcnull mouse:an excellent recipient mouse model for engraftment of human cells.Blood 100(9):3175-3182;Bosma GC et al;Nature.1983 Feb 10;301(5900):527-30;A severe combined immunodeficiency mutation in the mouse)、PBMC-NOGモデルも知られている(Cox et al.“Antibody-mediated targeting of the Orai1 calcium channel inhibits T cell function”.PLoS One.2013 Dec 23;8(12):e82944.;and Sondergaard et al.“Human T cells depend on functional calcineurin,tumor necrosis factor-α and CD80/CD86 for expansion and activation in mice.”Clin Exp Immunol.2013 May;172(2):300-10.)。PBMC-NOG/SCIDモデルにおけるインビボ試験は、次の9つの連続したステップで構成される。
1)ヒトPBMC(末梢血単核細胞)を単離し、洗浄し、滅菌PBSに再懸濁するステップ。いくつかの実施形態では、PBMCは、75×10細胞/mlでPBSに再懸濁される。
2)NOGマウスに、ステップ1)からの細胞懸濁液の適切な量、例えば200μlを、i.v.(静脈内)注射するステップ。200μLを注射している場合は、これは15×10細胞/マウスに相当する。
3)注射後、適切な時期に例えば2週間、NOGマウスから脾臓を単離し、単一細胞懸濁液にするステップ。任意選択で、単一細胞懸濁液から少量の試料を採取して、TNFR2の発現を確認するために、FACSによってヒトT細胞上のTNFR2の発現を決定する。
4)ステップ3)の細胞懸濁液を滅菌PBSに再懸濁するステップ。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、50×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁される。任意選択のTNFR2発現決定がステップ3に含まれている場合、残りの細胞懸濁液はステップ4で再懸濁される。
5)SCIDマウスに、ステップ4からの懸濁液の適切な量、例えば200μlを、i.p.(腹腔内)注射するステップ。200μLを注射している場合は、これは10×10細胞/マウスに相当する。
6)ステップ5)の注射後、適切な時間、例えば1時間、SCIDマウスを、試験される抗体分子、陽性対照抗体(例えば、Tregを枯渇させることが知られている抗CD25抗体)またはアイソタイプ対照モノクローナル抗体のいずれかの適切な量、例えば10mg/kgで処理するステップ。
7)処理されたSCIDマウスの腹腔内液を、ステップ6)の処理後、適切な時間例えば24時間で収集するステップ。
8)ヒトT細胞サブセットを、CD45、CD4、CD8、CD25および/またはCD127のマーカーを使用してFACSによって同定および定量化するステップ。ヒトTregは、ヒトPBMC集団において、CD4CD25CD127低/-として区別できることは十分に確立されている。
9)試験された抗体分子で処理したマウスからのT細胞サブセットの同定および定量化の結果を、陽性対照抗体で処理したマウスからのT細胞サブセットの同定および定量化の結果、ならびにアイソタイプ対照モノクローナル抗体で処理したマウスからのT細胞サブセットの同定および定量化の結果と比較するステップ。アイソタイプ対照で処理されたマウスの腹腔内液中のTregの数と比較して、試験された抗体分子で処理されたマウスの腹腔内液中のTregの数が少ないことは、この抗体分子がTNFR2陽性Tregに対する枯渇効果を有すること示している。
【0078】
このアッセイは、図15と組み合わせて、以下の実施例5でより詳細に示されている。
【0079】
上記のように、癌細胞などの他の細胞もTNFR2を発現する可能性がある。いくつかの実施形態において、抗体分子は、癌細胞上に発現されるTNFR2に優先的に結合し、次いで、その結合は、癌細胞の枯渇を直接もたらす。
【0080】
抗体は、免疫学および分子生物学分野の当業者には公知である。通常は、抗体は、2つの重鎖(H)と、2つの軽鎖(L)と、を含む。本明細書では、時には、この完全な抗体分子をフルサイズ抗体または完全長抗体と称する。抗体の重鎖は、1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2、CH3)を含み、抗体分子の軽鎖は、1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含む。可変領域(時にF領域と総称される)は、抗体の標的、または抗原に結合する。各可変領域は、相補性決定領域(CDR)と称される3つのループを含み、これらのループが標的の結合に関与する。定常領域は、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、種々のエフェクター機能を呈する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体または免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがあり、ヒトでは、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4;IgA1およびIgA2に分割される。
【0081】
抗体の別の部分は、Fc領域(あるいはフラグメント結晶化可能ドメインとしても既知である)であり、抗体の重鎖の各々に2つの定常ドメインを含む。上で言及されるように、Fc領域は抗体とFc受容体との間の相互作用に関与する。
【0082】
本明細書で用いる場合、抗体分子という用語は、完全長抗体またはフルサイズ抗体、ならびに完全長抗体の機能的フラグメントおよびこのような抗体分子の誘導体を包含する。
【0083】
フルサイズ抗体の機能的フラグメントは、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有し、対応するフルサイズ抗体と同じ可変ドメイン(すなわち、VH配列およびVL配列)および/または同じCDR配列のいずれかを含む。 機能的フラグメントは、対応するフルサイズ抗体の6個のCDRのすべてを常に含有するわけではない。3つ以下のCDR領域(場合によっては、単一のCDRだけまたはその一部)を含有する分子は、そのCDR(複数可)に由来する抗体の抗原結合活性を保持することが可能であることが理解される。例えば、全VL鎖(3個のCDRをすべて含む)がその基質に対して高い親和性を有することが、Gao et al.,1994,J.Biol.Chem.,269:32389~93に記載されている。
【0084】
2つのCDR領域を含有する分子については、例えば、Vaughan & Sollazzo 2001,Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening,4:417~430に記載されている。418頁(右欄-3(Our Strategy for Design))に、フレームワーク領域内に散在するH1およびH2 CDR超可変領域のみを含むミニボディについて記載されている。ミニボディは、標的に結合することが可能であると記載されている。Pessi et al.,1993,Nature,362:367~9、およびBianchi et al.,1994,J.Mol.Biol.,236:649~59は、Vaughan & Sollazzoによって参照され、H1およびH2ミニボディ、ならびにその特性についてより詳細に記載している。Qiu et al.,2007,Nature Biotechnology,25:921~9では、2つの結合されたCDRからなる分子が抗原に結合することが可能であることが示されている。Quiocho 1993,Nature,362:293~4は、「ミニボディ」技術の概要を提供している。Ladner 2007,Nature Biotechnology,25:875~7は、2個のCDRを含有する分子が抗原結合活性を保持することが可能であると見解を述べている。
【0085】
単一のCDR領域を含有する抗体分子については、例えば、Laune et al.,1997,JBC,272:30937~44に記載されており、ここでは、CDRに由来する一連のヘキサペプチドが抗原結合活性を示すことが実証され、完全な単一のCDRの合成ペプチドが強力な結合活性を示すことが留意されている。Monnet et al.,1999,JBC,274:3789~96では、様々な12量体ペプチドおよび関連するフレームワーク領域が、抗原結合活性を有することが示されており、CDR3様ペプチド単独で抗原に結合することが可能であると見解を述べている。Heap et al.,2005,J.Gen.Virol.,86:1791~1800では、「マイクロ抗体」(単一のCDRを含有する分子)は抗原に結合することが可能であることが報告されており、抗HIV抗体からの環状ペプチドが、抗原結合活性および機能を有することが示されている。Nicaise et al.,2004,Protein Science,13:1882~91では、単一のCDRが、そのリゾチーム抗原に対する抗原結合活性および親和性を付与し得ることが示されている。
【0086】
したがって、5個、4個、3個またはそれ以下のCDRを有する抗体分子は、それらが由来する完全長抗体の抗原結合特性を保持することが可能である。
【0087】
抗体分子は、完全長抗体の誘導体またはそのような抗体のフラグメントであってもよい。ただし、そのような誘導体またはフラグメントがFcγ受容体結合能力を保持している場合に限る。誘導体が、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、フルサイズ抗体と同じ標的上のエピトープに結合することを意味する。
【0088】
したがって、本明細書で用いる場合、「抗体分子」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、組換えで産生された抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト由来抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体重鎖、抗体重鎖のホモ二量体、抗体重鎖のヘテロ二量体、および抗体軽鎖のヘテロ二量体を含む、すべてのタイプの抗体分子、ならびにそれらの機能的フラグメントおよびそれらの誘導体を含む。
【0089】
さらに、本明細書で用いる場合、「抗体分子」という用語は、特に明記しない限り、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含む、すべてのクラスの抗体分子および機能的フラグメントを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、抗体分子は、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子またはヒト由来の抗体分子である。いくつかのそのような実施形態において、抗体分子は、IgG抗体である。いくつかの実施形態において、抗体分子は、最適な方法で活性化Fc受容体に結合するアイソタイプのものである。いくつかの実施形態において、抗体分子は、IgG1抗体である。
【0091】
当業者は、マウスIgG2aおよびヒトIgG1が、活性化Fcγ受容体と結合し、例えばADCPおよびADCCによる、活性化Fcγ受容体を担持する免疫細胞の活性化により、標的細胞の欠失を活性化する能力を共有していることを認識する。いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体は、マウスまたはヒト化マウスIgG2a抗体である。
【0092】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、ヒトIgG2抗体分子である。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体は、ヒトTNFR2と交差反応性であるマウス抗体である。
【0094】
上記の概略のように、抗体分子の異なる種類および形態は本発明に包含され、免疫学分野の当業者には既知であろう。治療目的に使用される抗体は、多くの場合、抗体分子の特性を修正する追加の構成成分を用いて改変されることが公知である。
【0095】
したがって、本明細書に記載される抗体分子または本明細書に記載されるように使用される抗体分子(例えば、モノクローナル抗体分子、および/またはポリクローナル抗体分子、および/または二重特異性抗体分子)は、検出可能な部分および/または細胞傷害性部分を備える場合を含む。
【0096】
「検出可能な部分」とは、酵素、放射性原子、蛍光部分、化学発光部分、生物発光部分で構成される群からの1つ以上を含む。検出可能な部分により、抗体分子をインビトロ、および/またはインビボ、および/またはエクスビボで視覚化することが可能になる。
【0097】
「細胞傷害性部分」とは、放射性部分および/または酵素が挙げられ、例えば、酵素はカスパーゼおよび/または毒素であり、例えば毒素は細菌毒素または毒液であり、細胞傷害性部分は細胞溶解を誘導することが可能である。
【0098】
さらに、抗体分子は、単離された形態および/または精製された形態であってよく、ならびに/またはPEG化されてもよいことを含む。PEG化は、その挙動を改変する、例えば、その流体力学的サイズを増加させ、腎クリアランスを予防することでその半減期を延ばすように、ポリエチレングリコールポリマーを抗体分子または誘導体などの分子に付加する方法である。
【0099】
上述のように、抗体のCDRは、抗体標的に結合する。本明細書に記載の各CDRへのアミノ酸の割り当ては、Kabat EA et al.1991、“Sequences of Proteins of Immunological Interest」Fifth Edition,NIH Publication No.91~3242,pp xv-xviiによる定義に従う。
【0100】
当業者が認識するように、アミノ酸を各CDRに割り当てるための他の方法も存在する。例えば、International ImMunoGeneTics information system(IMGT(商標))(http://www.imgt.org/およびAcademic Press,2001により出版のLefranc and Lefranc“The Immunoglobulin FactsBook”published by)。
【0101】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、ヒト抗体である。
【0102】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、ヒト由来の抗体、すなわち、本明細書に記載されるように改変されたヒト由来の抗体である。
【0103】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、ヒト化抗体、すなわち、ヒト抗体に対する類似性を高めるように改変された非ヒト由来の抗体である。ヒト化抗体は、例えば、マウス抗体またはラマ抗体であってよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体は、モノクローナル抗体である。
【0105】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0106】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、以下の表1に列挙されたVH-CDR1配列のうちの1つを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、以下の表1に列挙されたVH-CDR2配列のうちの1つを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、以下の表1に列挙されたVH-CDR3配列のうちの1つを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、以下の表1に列挙されたVL-CDR1配列のうちの1つを含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、以下の表1に列挙されたVL-CDR2配列のうちの1つを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、TNFR2に特異的に結合する抗体分子は、以下の表1に列挙されたVL-CDR3配列のうちの1つを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体分子は、配列番号1、2、3、4、5および6を有する6個のCDRを含む抗体分子、配列番号9、10、11、12、13および14を有する6つのCDRを含む抗体分子、または配列番号17、18、19、20、21および22を有する6つのCDRを含む抗体分子である。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体分子は、配列番号1、2、3、4、5および6を有する6個のCDRを含む抗体分子である。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体分子は、配列番号7、15および23からなる群から選択されるVHを含む抗体分子からなる群から選択される抗体分子である。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体分子は、配列番号8、16および24からなる群から選択されるVLを含む抗体分子からなる群から選択される抗体分子である。
【0116】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体分子は、配列番号7を有するVHを含む抗体分子である。
【0117】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体分子は、配列番号8を有するVLを含む抗体分子である。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体分子は、配列番号7を有するVHおよび配列番号8を有するVHを含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体分子は、配列番号217を有するCHを含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体分子は、配列番号218を有するCLを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗TNFR2抗体分子は、配列番号7を有するVH、配列番号8を有するVH、配列番号217を有するCHおよび配列番号218を有するCLを含む。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0122】
本発明の抗体分子の特徴を決定するかまたは示すために、TNF-αリガンドがTNFR2に結合するのを遮断しない抗体分子とそれらを比較した。このような抗体を表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0123】
上記表1、2および3の配列はすべてヒト由来であり、実施例1で詳細に説明されているように、n-CoDeR(登録商標)ライブラリに由来する。
【0124】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるTNFR2に特異的に結合する抗体分子はまた、以下の表4に示される定常領域(CHおよび/またはCL)の一方または両方を含み得る。
【表4】
【0125】
上記表4の最初のCH(配列番号217)および最初のCL(配列番号218)配列は、ヒト由来のものである。表4の2番目のCH(配列番号219)および3番目のCH(配列番号220)は両方ともマウスIgG2aに由来し、その違いは、3番目のCH配列(配列番号220)にN297A突然変異が含まれている点である。2番目のCL配列(配列番号221)は、マウスラムダ軽鎖定常領域に由来する。これらのマウス配列は、代理抗体の例で使用されている。
【0126】
いくつかの実施形態において、抗体分子は、ヒトTNFR2(hTNFR2)に結合する。
【0127】
いくつかの実施形態において、抗体分子は、hTNFR2およびカニクイザルTNFR2(cmTNFR2またはcynoTNFR2)の両方に結合することが有利である。カニクイザル(crab-eating macaqueまたはMacaca fascicularis)とも呼ばれるカニクイザル(cynomolgus monkey)の細胞に発現するTNFR2との交差反応性は、特に忍容性に焦点を当てた代理抗体を使用せずに抗体分子の動物試験を可能にするため、有利である可能性がある。
【0128】
いくつかの実施形態では、マウスの関連するインビボモデルにおいて抗体分子の機能的活性を試験するには、代理抗体を使用する必要がある。ヒトにおける抗体分子の効果とマウスにおける代理抗体のインビボ結果との間の比較可能性を確実にするために、ヒト抗体分子と同じインビトロ特性を有する機能的に同等の代理抗体を選択することが不可欠である。
【0129】
いくつかの実施形態において、抗体分子は、配列KCSPGを含むか、またはそれからなるTNFR2のエピトープに特異的に結合しない。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体分子または本発明に従って使用される抗体分子は、TNFR2への結合について、本明細書で提供される特定の抗体と競合することができる、例えば、配列番号7、15および23からなる群から選択されるVH、ならびに/または配列番号8、16および24からなる群から選択されるVLを含む抗体分子と競合することができる抗体分子である。
【0131】
「競合することができる」とは、競合する抗体が、本明細書で定義される抗体分子の特定の標的TNFR2への結合を少なくとも部分的に抑制またはその他の方法で妨害する能力があることを意味する。
【0132】
例えば、そのような競合抗体分子は、本明細書に記載のアンタゴニスト遮断抗体分子の結合を、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約100%抑制する能力があり得、および/あるいは特定の標的リガンドTNF-αへのTNFR2の結合を防止もしくは低減する本明細書に記載の抗体の結合能力を少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%抑制することが可能であり得る。
【0133】
競合結合は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの当業者に公知の方法によって決定することができる。
【0134】
ELISAアッセイを使用して、エピトープ修飾抗体または遮断抗体を評価することができる。競合抗体を同定するために好適な追加の方法は、参照により本明細書に組み込まれるAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow&Laneに開示されている(例えば、567~569頁、574~576頁、583頁、および590~612頁、1988,CSHL,NY,ISBN0-87969-314-2を参照されたい)。
【0135】
いくつかの実施形態において、抗体分子自体ではなく、そのような抗体分子をコードするヌクレオチド配列を使用することを目的とする。したがって、本発明は、上記アンタゴニスト遮断TNFR-2抗体分子をコードするヌクレオチド配列を包含する。
【0136】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子およびヌクレオチド配列は、医薬において使用することができ、そして、そのような抗体分子および/またはヌクレオチド配列は、以下でさらに論じられるように、薬学的組成物に含まれ得る。
【0137】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子、ヌクレオチド配列および/または薬学的組成物は、以下でさらに論じられるように、癌の治療に使用することができる。
【0138】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子、ヌクレオチド配列および/または薬学的組成物は、以下でさらに論じられるように、細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療に使用することができる。
【0139】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子および/またはヌクレオチド配列は、癌の治療に使用するための薬学的組成物の製造に使用することができる。
【0140】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子および/またはヌクレオチド配列は細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療に使用するための薬学的組成物の製造に使用することができる。
【0141】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子および/または薬学的組成物は、治療有効量の抗体分子または薬学的組成物が患者に投与される、患者における癌の治療方法で使用することができる。
【0142】
上記アンタゴニスト遮断抗体分子および/または薬学的組成物は、治療有効量の抗体分子または薬学的組成物が患者に投与される、患者における細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療方法で使用することができる。
【0143】
癌の治療に関連するいくつかの実施形態において、癌は、固形または白血病癌である。固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体領域を含有しない異常な組織の塊である。固形腫瘍は良性(癌ではない)または悪性(癌である)の場合がある。悪性固形腫瘍は、本明細書では固形癌と呼ばれる。さまざまなタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞のタイプにちなんで名付けられている。固形腫瘍または癌の例は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。
【0144】
固形癌のより具体的な例は、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝癌、膵臓癌、甲状腺癌、脳癌、中枢神経系癌、黒色腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、胃癌、リンパ腫および骨癌である。
【0145】
白血病性癌のより具体的な例は、急性リンパ性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、急性非リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ増殖性疾患である。
【0146】
ウイルスまたは細菌などの細胞内病原体によって引き起こされる感染の治療に関するいくつかの実施形態において、細胞内病原体の特定の例は、Legionella pneumophila、R.rickettsia、Mycobacterium tuberculosis、Listeria monocyotogenes、Salmonella spp、侵襲性Escherichia coli、Neisseria spp、Brucella spp、Shigella spp、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、コクサッキーウイルス、エプスタイン・バーウイルスまたはライノウイルスである。
【0147】
癌の治療に関するいくつかの実施形態において、上記アンタゴニスト遮断抗体分子は、チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子と組み合わせて使用することができる。あるいは、アンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子をコードする上記ヌクレオチド配列は、チェックポイント抑制剤または共刺激アゴニスト抗体に特異的に結合する抗体分子と組み合わせて使用することができる。チェックポイント抑制剤に対する抗体としては、CTLA4、PD1、PD-L1、VISTA、TIGIT、CD200、CD200R、BTLA、LAG3、TIM3、B7-H3、B7-H4、B7-H7を標的とする抗体が挙げられる。共刺激アゴニスト抗体の例は、OX40、41BB、OX40L、41BBL、GITR、ICOS、DR3、DR4、DR5、CD40、CD27、RANK、HVEM、LIGHTおよびB7-H6を標的とする抗体である。あるいは、上記アンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子は、チェックポイント抑制剤または共刺激アゴニストに特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列と組み合わせて使用することができる。あるいは、アンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子をコードする上記ヌクレオチド配列は、チェックポイント抑制剤または共刺激アゴニストに特異的に結合する抗体分子をコードするヌクレオチド配列と組み合わせて使用することができる。いくつかのそのような実施形態において、チェックポイント抑制剤に特異的に結合する抗体分子は、抗PD-1抗体である。PD-1(または、PD1)抗体は、主にCD8T細胞においてPD-L1を介した抑制性シグナルを遮断すると考えられている。これにより、T細胞介在性抗腫瘍応答の増加が可能になる。Treg枯渇アンタゴニストTNFR2抗体は、別のメカニズムにより機能し、抗腫瘍反応を増加させる。したがって、これらの治療は互いに相乗効果を発揮する可能性がある。同じことが他のチェックポイント抑制剤およびアゴニスト共刺激抗体にも当てはまる。
【0148】
さらに、上記アンタゴニスト遮断TNFR2抗体分子は、化学療法(ドキソルビシン、パラプラチン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ミトキサントロン、ムタマイシン、エピルビシンおよびメトトレキサートなどであるが、これらに限定されない)、小分子チロシンキナーゼまたはセリン/スレオニンキナーゼ抑制剤(イブルチニブ、イマチニブ、スンチニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、バンデタニブ、ミドスタウリン、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、トラメチニブまたはアレクチニブなどであるが、これらに限定されない)、成長因子受容体を標的とする抑制剤(EGFR/HER1/ErbB1、EGFR2/HER2/ErbB2、EGFR3/HER3/ErbB3、VEGFR、PDGFR HGFR、RET、インスリン様成長因子受容体IGFR、FGFRを標的とする薬剤などであるが、これらに限定されない)、抗血管新生薬(ベバシズマブ、エベロリムス、レナリドマイド、サリドマイド、ジブアフリベルセプトなどであるが、これらに限定されない)または照射などの他の抗癌治療と組み合わせて使用することができる。通常、上記抗癌剤はすべて癌細胞死を引き起こし、これがネオ抗原の露出と炎症につながる。ネオ抗原が露出し、腫瘍に炎症細胞が流入すると、抗癌剤の相乗効果が起こり、アンタゴニストリガンド遮断TNFR2抗体を加えて、Tregを枯渇させ、それにより、免疫系をさらに強化することができる。
【0149】
例えば、薬剤が体に吸収される速度を変更するように、薬剤は、異なる添加物で改変することができ、例えば身体への特定の投与経路を可能にするように異なる形態で改変することができることは、医薬当業者には既知であろう。
【0150】
したがって、本明細書に記載されるアンタゴニスト遮断抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞を、薬学的に許容される賦形剤、担体、希釈剤、ビヒクルおよび/またはアジュバントと組み合わせて薬学的組成物にすることができることを含む。この文脈において、薬学的組成物という用語は、薬学的調製物、薬学的製剤、治療組成物、治療調製物、治療製剤、および治療実体(therapeutic entity)という用語と交換可能に使用することができる。
【0151】
本明細書に記載の薬学的組成物は、抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスまたは細胞を含み得るか、またはいくつかの実施形態ではそれらからなる。
【0152】
本明細書に記載の薬学的組成物は、いくつかの実施形態では、上記の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むかまたは上記のヌクレオチド配列を含む、プラスミドからなるか、またはそれを含み得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、細胞またはウイルスゲノムまたはビリオーム(viriome)に組み込まれた、本明細書に記載の抗体分子の一部または完全な抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含み得る。そして、薬学的組成物は、本発明の抗体の送達ビヒクル(または本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列の送達ビヒクル)としての細胞またはウイルスを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、ウイルスは、本明細書に記載される抗体分子の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列を含む治療的腫瘍溶解性ウイルスの形態であってよい。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、完全長ヒトIgG抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のヌクレオチド配列または本発明のプラスミドを含むウイルスに関する。好ましくは、ウイルスは、治療的腫瘍溶解性ウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスである。腫瘍溶解性ウイルスは、医薬およびウイルス学の当業者に既知である。
【0155】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表1に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表1に示される配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表1に示される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表1に示される配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0156】
一例として、抗体001-H10をコードするヌクレオチド配列は、表5に示されている通りである可能性がある。
【表5】
【0157】
一部の腫瘍溶解性ウイルスは、完全長のヒト抗体配列の統合に対応するのに十分な大きさのDNA挿入を受け入れるする能力を持っている。弱毒化ワクシニアウイルスおよび単純ヘルペスウイルスは、完全長のIgG抗体配列の組み込みを可能にする程ゲノムが十分に大きい治療用腫瘍溶解性ウイルスの例である(Chan et al.2014.‘Oncolytic Poxviruses’,Annu Rev Virol,1:119-41;Bommareddy.et al 2018.‘Integrating oncolytic viruses in combination cancer immunotherapy’,Nat Rev Immunol,18:498-513)。完全長IgG抗体は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスにうまく組み込まれ、ウイルス感受性宿主細胞、例えば癌細胞の感染時に完全長IgG抗体の発現と細胞外放出(産生)をもたらす。(Kleinpeter et al.2016.‘Vectorization in an oncolytic vaccinia virus of an antibody,a Fab and a scFv against programmed cell death -1 (PD-1) allows their intratumoral delivery and an improved tumor-growth inhibition’,Oncoimmunology,5:e1220467)。アデノウイルスはまた、細胞感染時に機能的に産生および分泌される完全長IgG抗体をコードするように操作することもできる(Marino et al.2017.‘Development of a versatile oncolytic virus platform for local intra-tumoural expression of therapeutic transgenes’,PLoS One,12:e0177810)。
【0158】
本発明はまた、上記の腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルス、ならびに薬学的に許容される希釈剤、ビヒクルおよび/またはアジュバントを含む薬学的組成物を包含する。
【0159】
本発明はまた、抗体薬物コンジュゲート、融合タンパク質などの他の治療法、または薬物の「形状」、およびそのような治療法を含む薬学的組成物を含む。
【0160】
本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞および/または薬学的組成物は、抗酸化剤、および/もしくはバッファー、および/もしくは静菌剤、および/もしくは、意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性および/もしくは非水性滅菌注射溶液;ならびに/または懸濁剤および/もしくは増粘剤を含み得る水性および/もしくは非水性滅菌懸濁液を含み、非経口投与に好適であり得る。本明細書に記載される抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、細胞および/または薬学的組成物は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアル内に存在させてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0161】
即時注射液および懸濁液剤は、前述の種類の滅菌散剤、および/または顆粒剤、および/または錠剤から調製され得る。
【0162】
ヒト患者への非経口投与では、抗TNFR2抗体分子の1日投与量レベルは通常、患者の体重で1mg/kg~20mg/kgであり、あるいは場合によっては、最大100mg/kgを単回または分割用量で投与するであろう。特別な状況下、例えば長期投与と組み合わせて、より低い用量を使用してもよい。いずれにしても、医師は個々の患者に最も好適であろう実際の投与量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重、および反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いかまたはより低い投与量範囲が妥当である個々の症例があり得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【0163】
典型的には、抗体分子を含む本明細書に記載される薬学的組成物(または医薬品)は、約2mg/ml~150mg/mlまたは約2mg/ml~200mg/mlの濃度で抗TNFR2抗体分子を含有するであろう。
【0164】
一般に、ヒトでは、本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞、および/または薬学的組成物の経口または非経口投与が好ましい経路であり、最も便利である。獣医学的使用のために、本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞、および/または薬学的組成物は、通常の獣医学的診療に従って適宜許容される薬剤処方として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画および投与経路を決定するであろう。したがって、本発明は、(上述および以下でさらに説明する)さまざまな状態を治療するのに有効な、本発明の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞の量を含む薬学的製剤を提供する。好ましくは、本明細書に記載される抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞、および/または薬学的組成物は、静脈内(IVまたはi.v.)、筋肉内(IMまたはi.m.)、皮下(SCまたはs.c.)を含む群から選択される経路による送達に適合される。
【0165】
本発明はまた、本発明の標的結合分子または部分の薬学的に許容される酸または塩基付加塩を含む、本明細書に記載される抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞および/または薬学的組成物を含む。本発明で有用な前述の塩基化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、とりわけ、非毒性の酸付加塩、すなわち塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモエート、[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート)]塩などの薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。また、薬学的に許容可能な塩基付加塩を使用して、本発明に従った薬剤の、薬学的に許容可能な塩の形態を生成してもよい。本質的に酸性である本薬剤の薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、そのような化合物と非毒性塩基塩を形成するものである。そのような非毒性塩基塩には、これらに限定されないが、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えばカリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属カチオン(例えばカルシウムおよびマグネシウム)、アンモニウムまたは水溶性アミン付加塩、例えばN-メチルグルカミン-(メグルミン)、および低級アルカノールアンモニウム、ならびに他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩などのそのような薬理学的に許容されるカチオンに由来するものが挙げられる。本明細書に記載される抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルスおよび/または細胞は、保存のために凍結乾燥され、使用前に適切な担体中で再構成することができる。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、および/または再構成技法を用いてもよい。凍結乾燥および再構成によって、抗体活性低下の程度の変動に至る場合があり(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも活性が大きく低下する傾向を有する)、使用レベルを上方調整して補う必要があり得ることを当業者は理解するであろう。一実施形態において、凍結乾燥(フリーズドライ)ポリペプチド結合部分は、再水和されるとき、(凍結乾燥前の)その活性のうちの約20%未満、または約25%未満、または約30%未満、または約35%未満、または約40%未満、または約45%未満、または約50%未満を損失する。
【0166】
本明細書に記載される抗TNFR2抗体分子、ヌクレオチド配列および薬学的組成物は、対象または患者における癌の治療での使用に、使用することができる。本明細書では、対象および患者という用語は交換可能に使用される。
【0167】
「患者」(または対象)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の疾患を有すると診断された、ヒトを含む動物を指す。
【0168】
いくつかの実施形態において、患者(または対象)は、癌を有すると診断された、および/または癌の症状を呈する、ヒトを含む動物である。
【0169】
いくつかの実施形態において、患者(または対象)は、病原体によって引き起こされる感染を有すると診断された、および/または病原体によって引き起こされる感染の症状を呈する、ヒトを含む動物である。
【0170】
いくつかの実施形態において、患者(または対象)は、病変組織で高いTNFR2発現を有する患者である。この文脈において、高(い)発現は、対応する健康な組織と比較して、より高いレベルのTNFR2発現を意味する。通常、このような比較に使用される健康な組織は、1または数体の健康な個体の健康な組織から収集された参照組織(または標準参照)である。発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)またはmRNA発現測定などの標準的な技法で測定できる。
【0171】
患者は、哺乳類または非哺乳類であり得る場合を含む。好ましくは、哺乳類患者は、ヒト、馬、牛、羊、豚、ラクダ、犬または猫である。最も好ましくは、哺乳類患者はヒトである。
【0172】
「癌の症状を呈する」とは、対象が、癌症状および/もしくは癌診断マーカーを表すこと、ならびに/または癌症状および/もしくは癌診断マーカーを測定、および/または評価、および/または定量化できる場合を含む。
【0173】
医薬当業者であれば、癌症状および癌診断マーカーがどのようなものであるか、ならびに癌症状の重症度に低減または増加があるかどうか、または癌診断マーカーに低減もしくは増加があるかどうかを測定および/もしくは評価および/もしくは定量化する方法、ならびに癌症状および/もしくは癌診断マーカーを使用して、癌に関する予後診断を形成することができる方法は、容易に明らかであろう。
【0174】
癌治療は、多くの場合、一連の治療として投与される、すなわち治療剤は、ある期間にわたって投与される。一連の治療の時間の長さは、他の理由のなかでもとりわけ、投与される治療薬の種類、治療される癌の種類、治療される癌の重症度、ならびに患者の年齢および健康状態を含むいくつかの要因に依存する。
【0175】
「治療中」とは、患者が現在、一連の治療を受けていること、および/または治療薬を受けていること、および/または一連の治療薬を受けている場合を含む。
【0176】
いくつかの実施形態において、本発明に従って治療される癌は、固形腫瘍である。
【0177】
上述の癌のいずれもが公知であり、症状および癌診断マーカーは、それらの癌を治療するのに使用される治療剤であるため、十分に説明されている。したがって、上記の種類の癌を治療するために用いられる症状、癌診断マーカーおよび治療剤は、医薬当業者には既知であろう。
【0178】
大多数の癌の診断、予後診断、進行の臨床的定義は、ステージ分類として既知である、ある特定の分類による。それらのステージ分類システムは、多くの異なる癌診断マーカーおよび癌症状を照合して、癌の診断、および/または予後診断、および/または進行の概要を提供するように機能する。ステージ分類システムを使用して、癌の診断、および/または予後診断、および/または進行を評価する方法、ならびにそのためにどの癌診断マーカーおよび癌症状を使用すべきかということは、腫瘍学当業者には既知であろう。
【0179】
「癌のステージ分類」とは、ステージ0、ステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIVを含む、Raiステージ分類、ならびに/またはステージA、ステージB、およびステージCを含むBinetステージ分類、ならびに/またはステージI、ステージII、ステージIII、およびステージIVを含む、Ann Arbourステージ分類が挙げられる。
【0180】
癌は、細胞の形態に異常を引き起こし得ることが既知である。これらの異常は、多くの場合、ある特定の癌で再現性よく生じ、これは形態におけるこれらの変化の検査(あるいは組織学的検査としても既知である)が、癌の診断または予後診断に使用することができることを意味する。細胞の形態を検査するために試料を視覚化し、視覚化用に試料を準備するための技法は、例えば、光学顕微鏡法または共焦点顕微鏡法など、当技術分野で公知である。
【0181】
「組織学的検査」とは、小さな成熟リンパ球の存在、および/または細胞質の境界が狭い小さな成熟リンパ球の存在、識別可能な核小体が欠如する密な核を有する小さな成熟リンパ球の存在、および/または細胞質の境界が狭く、識別可能な核小体が欠如する密な核を有する小さな成熟リンパ球の存在、および/または異型細胞、および/もしくは切断細胞、および/もしくは前リンパ球の存在が挙げられる。
【0182】
癌は、細胞のDNAの変異の結果であり、これによって細胞の細胞死回避、または制御不能な増殖に至り得ることは公知である。したがって、これらの変異の検査(細胞遺伝学的検査としても既知である)は、癌の診断および/または予後診断を評価するための有用なツールであり得る。この例は、慢性リンパ球性白血病の特徴である染色体上の位置13q14.1の欠失である。細胞内の変異を検査するための技法は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)など、当技術分野で公知である。
【0183】
「細胞遺伝学的検査」とは、細胞内のDNA、具体的には染色体の検査を含む。細胞遺伝学的検査を使用して、難治性癌および/または再発した癌の存在に関連し得る、DNAの変化を同定することができる。そのようなものとしては、13番染色体の長腕の欠失、および/または染色体位置13q14.1の欠失、ならびに/または12番染色体のトリソミー、および/または12番染色体の長腕の欠失、ならびに/または11番染色体の長腕の欠失、および/または11qの欠失、ならびに/または6番染色体の長腕の欠失、および/または6qの欠失、ならびに/または17番染色体の短腕の欠失、および/または17pの欠失、ならびに/またはt(11:14)転座、ならびに/または(q13:q32)転座、ならびに/または抗原遺伝子受容体再配列、ならびに/またはBCL2再配列、ならびに/またはBCL6再配列、ならびに/またはt(14:18)転座、ならびに/またはt(11:14)転座、ならびに/または(q13:q32)転座、ならびに/または(3:v)転座、ならびに/または(8:14)転座、ならびに/または(8:v)転座、ならびに/またはt(11:14)および(q13:q32)転座を挙げることができる。
【0184】
癌患者は、ある特定の身体症状を呈することが既知であり、これは多くの場合、癌が身体に負担をかけている結果である。これらの症状は、多くの場合、同じ癌で再発するため、疾患の診断、および/または予後診断、および/または進行の特徴であり得る。医薬当業者であれば、どの身体症状がどの癌に関連しているか、ならびにそれらの身体系の評価が疾患の診断、および/または予後診断、および/または進行とどのように相関し得るかを理解するであろう。「身体的症状」としては、肝腫大および/または脾腫が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
以下の実施例では、次の図を参照している。
【0186】
図1】本発明の抗体がTNFR2に結合することを示している。図1A~D:ヒト抗体が用量依存的にヒトTNFR2タンパク質に結合し、異なるEC50値を生成することが、ELISAにより示された。図1E:マウス抗体3-F10および5-A05は同様の親和性でmTNFR2に結合する。
図2】TNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体のインビトロで活性化されたCD4T細胞への結合を示している。ヒト血液由来CD4T細胞(図2A~D)およびマウス脾臓CD4T細胞(図2E)は、IL-2およびCD3/CD28 Dynabeads(登録商標)で活性化された。活性化細胞に対するTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体の親和性を、0.002~267nM(ヒト)および0.00003~133nM(マウス)の範囲の濃度でFACSによって分析した。曲線は、アイソタイプ対照バックグラウンドを差し引いた後の平均蛍光強度(MFI)を示している(図2A(完全遮断剤および部分遮断剤)、図2B(部分遮断剤)、図CおよびD(非遮断剤)、図2E(マウス完全遮断剤(3-F10)および非遮断剤(5-A05))。 ヒトTNFR2抗体はインビトロで活性化されたCD4sに異なる親和性で結合するが(EC50値は0.59~53nMの範囲)、マウスTNFR2抗体は同様の親和性で結合する(EC50値は0.072~0.11nMの範囲)。
図3】TNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体がTNFR2に特異的に結合することを示している。ヒト血液由来CD4T細胞(図3A)およびマウス脾臓CD4T細胞(図3B)は、組換えIL-2およびCD3/CD28活性化ビーズで3日間活性化された。インビトロで活性化された細胞を、ポリクローナルTNFR2抗体(灰色の線)で遮断するか、PBS(黒色の線)に30分間放置した後、最適以下の濃度の異なるTNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体またはアイソタイプ対照(破線)で15分間染色した。次に、細胞を洗浄し、APC結合二次抗体(APC conjugated secondary antibody)と30分間インキュベートした後、フローサイトメトリーで分析した。 すべての抗体はポリクローナルTNFR2抗体によって遮断される可能性があるため、TNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体(ヒトおよびマウス)がTNFR2に特異的であることを示している。
図4】カニクイザルに対するヒトTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体の交差反応性を示している。CD4T細胞をカニクイザルの血液から単離し、PMAおよびイオノマイシンで刺激した。2日後、細胞を0.1、1、または10μg/mlのTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体またはアイソタイプ対照で標識した後、APC結合二次α-ヒト抗体とインキュベートした。細胞をフローサイトメトリーにより分析した。この図は、アイソタイプ対照に対する個々の抗体のTNFR2T細胞のパーセンテージを示している。結果は、2~3回の個別実験から得られた平均値とSDである。 ほとんどのTNFR2抗体は、カニクイザル細胞への交差反応性結合を示す。
図5】本明細書に記載されたTNFr2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体がすべて、TNFR2クローンMR2-1以外のTNFR2タンパク質上の他のエピトープに結合することを示している。ヒト血液由来のCD4T細胞を、rhIL-2およびCD3/CD28活性化ビーズで2~3日刺激した。活性化細胞を40μg/mlMR2-1抗体(図5A、黒いバー)で遮断するか、PBS(図5A、灰色のバー)を使用して30分放置した後、TNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体/ポリクローナルTNFR2(pTNFR2)を添加し、細胞を15分間インキュベートした。結合したTNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体の割合(%)を、APC結合二次抗体とのインキュベーション後にFACSで分析した。図5Bでは、活性化CD4T細胞を40μg/mlのTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体/pTNFR2(黒いバー)で遮断するか、PBS(灰色のバー)を使用して放置した後、PE結合MR2-1抗体と15分間インキュベートした。次に、細胞をFACSで分析した。 MR2-1抗体はTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体の結合を妨害せず、n-CoDeR(登録商標)抗体は活性化細胞へのMR2-1の結合に影響を与えず、n-CoDeR(登録商標)抗体がすべて、MR2-1抗体以外のTNFR2タンパク質の他のドメインに結合することを示している。
図6】抗ヒトTNFR2抗体のリガンド遮断活性を示している。hTNFR2に特異的なn-CoDeR(登録商標)mAbを用いて遮断ELISAを実施して、リガンド遮断特性を評価した。図6A:すべての抗体を10μg/mlでインキュベートした。続いて、アイソタイプ対照を用いて達成されたシグナルを50%超(点線で示されている)低減するすべての抗体を投与して、リガンド遮断の可能性をさらに調査した。図6Bは完全遮断mAbを示し、図6CおよびDは部分遮断mAbを示し、図6Eは弱い遮断mAbを示す。他のすべてのmAbは、非遮断mAbとみなされる。
図7】抗マウスTNFR2抗体のリガンド遮断活性を示している。mTNFR2に特異的なn-CoDeR(登録商標)mAbを用いて遮断ELISAを実施して、リガンド遮断特性を評価した。図7A:すべての抗体を10μg/mlでインキュベートした。続いて、アイソタイプ対照を用いて達成されたシグナルを50%超(点線で示されている)低減するすべての抗体を投与して、リガンド遮断の可能性をさらに調査した。図7Bは完全遮断mAbを示し、図7CおよびDは部分遮断mAbを示し、図7Eは弱い遮断mAbを示す。他のすべてのmAbは、非遮断mAbとみなされる。これに基づいて、抗体3-F10および5-A05を選択して、それぞれ完全遮断抗体および非遮断抗体を表した。
図8】TNFR2シグナル伝達を作動させる/に拮抗するそれらの能力およびTNF-αのTNFR2への結合を遮断する能力に応じたTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体の分類。TNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体がIFN-γ産生を増強または減少させる能力を、IL-2およびIL-12で刺激されたNK細胞を使用して監視し、上記のようにTNF-αリガンドのTNFR2への結合を遮断する抗体能力の関数としてプロットした。図8A:ヒト血液由来NK細胞を、20ng/mlのrhIL-2および20ng/mlのrhIL-12で刺激し、10μg/mlのTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体、アイソタイプ対照または100ng/mlのrhTNF-αを24時間添加した。培養上清中のIFN-γの量を、MSDを使用して測定した。IFN-γの量はアイソタイプ対照(図中、アイソタイプ対照のIFN-γ値=1)に対して正規化され、図8Aに示されている。インビトロで活性化されたCD4T細胞に対して25nMよりも高いEC50値を示したヒト抗体は分析に含まれていない。図8B:ヒトNK細胞もこれらの培養物においてTNF-αを産生する(データは2体のドナーの平均TNF-αレベルを示している)。細胞培養物の上清を収集し、産生されたIFN-γの量を、MSDを使用して分析した。結果は、アイソタイプ対照に対して正規化されている。IFN-γの結果は、2回の独立した実験における3体のドナーの平均値である。結果は、1)完全遮断およびアンタゴニスト特性を有する抗体、および2)アゴニスト非遮断特性を有する抗体それぞれを特徴とする2つの極端なグループを明らかにしている。アゴニスト非遮断抗体はアゴニスト性であり、サイトカイン刺激NK細胞からのIFN-γ産生を増強するが、遮断抗体はアンタゴニスト性であり、IFN-γ放出を抑制する。図8Cは、可溶性TNF-αの中和によりIFN-γが減少し、外因性TNF-αを添加するとIFN-γが増加するため、IFN-γの放出がTNF-αに依存することを示している。図8Dは、遮断抗TNF-α抗体を添加すると、可溶性TNF-αが用量依存的に中和されることを示している。1μg/mlの用量では、上清中に可溶性TNF-αは検出されない。
図9】非遮断アゴニストであるが遮断アンタゴニストではないTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体は、メモリーCD4T細胞集団内のCD25細胞の割合を増加させることを示している。ヒト血液由来CD4T細胞(図9A)およびマウス脾臓CD4T細胞(図9B)は、組換えIL-2およびTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体、アイソタイプ対照または組換えTNF-αで活性化された。培養の3日後、細胞をCD25およびCD45RO(ヒト)/CD44およびCD62L(マウス)で染色し、フローサイトメトリーで分析した。結果は、アイソタイプ対照を用いた培養物において回収されたCD25細胞のパーセンテージに対する、メモリー上のCD25発現細胞(CD45RO細胞(ヒト)/CD44CD62L(マウス))集団のパーセンテージを示す。結果は、7体のドナー(図9A、ヒト)と3匹のマウス(2回の独立した実験、図9B)の平均値とSEMである。ヒトおよびマウスの両方の培養物において、非遮断TNFR2抗体はCD25メモリー細胞のパーセンテージを誘導したが、遮断抗体はメモリー集団にそのような影響を与えなかった。ヒト培養物(図9A)とマウス(図9B)の両方について、外因性TNF-αの添加は、CD25メモリーT細胞集団を増加させる。*=p<0.05(一元配置分散分析により計算)。
図10】Aは、リガンド遮断アンタゴニスト抗体が、活性化Fc受容体に優先的に結合するアイソタイプであるmIgG2aとして最も顕著な抗腫瘍効果を有することを示している。Balb/cマウスに、1×10個のCT26細胞を皮下注射した。8日後、3×3mmの平均腫瘍サイズで、図に示すように、マウスを10mg/kg抗体で週2回、腹腔内処置した。腫瘍は、直径が15mmに達するまで、週に2回測定し、その後、マウスを断命した。上の図はアイソタイプ対照で処置されたマウスの腫瘍成長を示し、下の2つの図は、左のパネルにおいて、FcγR欠損Ig形式のアンタゴニストリガンド遮断剤抗体(中央の図)およびアゴニスト非リガンド遮断抗体(下の図)を示している。中央のパネルは、主に活性化FcγRに結合するマウスIgG2a形式の同じ抗体を示し、右のパネルは、主に抑制性FcγRIIbに結合するマウスIgG1形式の抗体を示している。図10Bの場合、生存マウスを70日間追跡した。図に見られるように、遮断アンタゴニスト抗体は、主に活性化FcγRに結合するIgG2a形式での腫瘍治療として最も効果的であり、FcγR結合が欠損した形式では効果がない。他方、非遮断アゴニスト抗体は、抑制性FcγRに優先的に結合するIgG1形式での腫瘍治療として最も効果的である。加えて、アゴニスト抗体は、N297A形式を使用して見られるように、本質的でFcγRに依存しない抗腫瘍効果を有する。***=p<0.001(ログランクマンテル・コックス検定によって計算されたアイソタイプ対照と比較)
図11】リガンド遮断アンタゴニスト抗体が抗PD1と組み合わせて抗腫瘍治療として有効であることを示している。C57/BL6マウスに、1×10個のMC38細胞を皮下注射した。3×3mmの平均腫瘍サイズで、図に示すように、マウスを10mg/kg抗体で週2回、腹腔内処置した。この図は、個々のマウスの腫瘍成長曲線を示している。図11A:アイソタイプ対照、図11B:PD-1標的抗体、図11C:3-F10抗体(代理抗体、リガンド遮断剤、アンタゴニスト)、図11D:3-F10とPD1との組み合わせ。腫瘍は、直径が15mmに達するまで、週に2回測定し、その後、マウスを断命した。図11Eは、4つの異なる処置群の生存曲線を示している。**=p<0.01、***=p<0.001(ログランクマンテル・コックス検定によって計算されたアイソタイプ対照と比較)。
図12】遮断アンタゴニスト抗体が抗PD-L1と組み合わせて抗腫瘍治療として有効であることを示している。C57/BL6マウスに、1×10個のMC38細胞を皮下注射した。5×5mmの平均腫瘍サイズで、マウスを、アイソタイプ対照抗体もしくは3F10で2回(1日目および4日目)処置するか、抗PD-L1で4日連続処置し、2日後に5回目の注射を行う(1、2、3、4、および7日目の合計5回の注射)か、または両方を組み合わせて行った。すべての抗体を、10mg/kgで腹腔内投与した。図は、平均腫瘍成長+/-SEM、n=10/群を示している。*=<0.05、***=p<0.001(一元配置分散分析を使用して計算)。
図13】:C57/BL6マウスに、1×10B16.F10細胞を皮下注射した。図に示すように、3日後、マウスに週2回、10mg/kgの抗体で腹腔内処置した。腫瘍は、直径が15mmに達するまで、週に2回測定し、その後、マウスを断命した。図13A:アイソタイプ対照、図13B:3-F10抗体(代理抗体、リガンド遮断剤、アンタゴニスト)。図13Cは、2つの異なる処置群の生存曲線を示している。*=p<0.05(ログランクマンテル・コックス検定によって計算されたアイソタイプ対照と比較)
図14】リガンド遮断アンタゴニスト代理抗体3F10が、腫瘍の免疫細胞組成を変化させることを示している。記載されているようにマウスにCT26腫瘍細胞を接種し、腫瘍が約7×7mmのサイズに達したら、示されたように抗体を注射した。3回の注射後、処置開始後8日目にマウスを犠牲にし、腫瘍を採取した。腫瘍単一細胞懸濁液をFACSによって免疫細胞含有量について分析した。Fig.14A:リガンド遮断アンタゴニスト代理抗体3F10はTregの枯渇を引き起こし、Fig.14B:CD8T細胞の流入または増殖を引き起こす。これにより、図14Cに示すようにCD8/TregT細胞比がシフトする。図14Dは、T細胞数だけでなく骨髄性細胞数も示している。ここでは、腫瘍関連マクロファージの数(TAM、CD11bF4/80MHCIIと定義されているが、Ly6GとLy6Cについてはいずれも陰性)が非常に大幅に低減する。リガンド非遮断アゴニスト代理抗体5A05もTAM数を調節するが、それでもリガンド遮断抗体3F10とは大きく異なる。
図15】ヒト腫瘍のT細胞が、PBMC再構成NOGマウスから回収されたT細胞と同様のレベルのTNFR2を発現することを示している。簡単に言うと、NOGマウスに、15~20×10個のPBMC細胞を静脈内注射した。10~12日後、脾臓をマウスから取り出し、単一細胞懸濁液を調製し、TNFR2発現をFACSで評価した。かつて、TNFR2の発現は、それぞれ3または9体の癌患者の血液および腫瘍サンプルから回収されたT細胞で評価されていた。図に示すように、TregおよびCD8T細胞でのTNFR2発現は、NOGマウスにおけるインビボで成長および活性化されたヒトT細胞と、ヒト腫瘍由来のT細胞との間で非常に類似している。
図16】リガンド遮断アンタゴニスト抗体1-H10がFcγR依存的にインビボでTregを枯渇させることを示している。NOGマウスに、15~20×10個のPBMC細胞を静脈内注射した。10~12日後、脾臓をマウスから取り出し、単一細胞懸濁液を調製し、SCIDマウスに腹腔内注射した(10-15×10個/マウス)。1時間後、マウスを10mg/kgの抗体で腹腔内処置し、抗体注射の24時間後、腹腔内液をマウスから収集し、液中の細胞を、FACSを使用して分析した。図16Aは、ヒトCD45集団からの染色されたTreg(CD45CD3CD4CD25CD127低/陰として定義)の平均パーセンテージを示し、Tregが遮断抗体1-H10によって有意に枯渇されていることを示している。図16Bは、ヒトCD45のうちのCD8+Tの平均パーセンテージを示し、1-H10がCD8T細胞集団を有意に増加させることを示している。図16Cは、Tregに対するCD8T細胞の比率が1-H10によって大幅に増加していることを示している。図16A~Cのデータは、各ドットが1匹のマウスを表す4つの異なる実験の平均として示されている。Yervoyおよび市販の抗CD25抗体を陽性対照として使用した。すべてのデータはアイソタイプ対照に対して正規化されているため、図16AおよびBではアイソタイプ対照は100%に設定され、図16Cでは1%に設定されている。図16Dは、FcγR結合欠損1-H10 IgG1N297Q抗体を使用して(図では1-H10NQと指定)、Treg枯渇に対するFcγR結合の依存性を評価した別の実験を示している。図に示すように、枯渇は、Fc欠損形式(1-H10NQ)と比較して、野生型IgG1形式(1-H10)で最も効果的である。
図17】アンタゴニストリガンド非遮断TNFR2抗体がインビトロでサイトカイン放出を誘発しないことを示している。さまざまなTNFR2特異的抗体によって誘導されるIFN-γ放出を、3つの異なるインビトロシステムで測定した。陽性対照として、および抗CD3抗体=OKT3、抗CD52抗体=アレムツズマブ、および抗CD28抗体を使用した。アイソタイプ対照を陰性対照として使用した。各ドットは、1体のヒトドナーからのPBMCを表す。図17Aは、高密度細胞培養物からの結果を示す。PBMCを1×10細胞/mlで培養した。48時間後、10μg/mlの抗体を加え、24時間インキュベートした。図に見られるように、アレムツズマブおよびOKT3の両方が有意なIFN-γ放出を誘導したが、TNFR2特異的抗体はいずれも誘導しなかった。図17Bは、PBMCを添加する前に96ウェルプレートのウェルを抗体でコーティングすることによって行われた固相インビトロ培養を示している。この場合も、アレムツズマブおよびOKT3の両方が、いくつかのTNFR2特異的抗体とともに有意なIFN-γ放出を誘導した。しかしながら、完全遮断抗体1-H10は、アイソタイプ対照抗体を超えるサイトカイン放出を誘導しなかった。図17Cは、抗体による全血の刺激を示している。ここでは、アレムツズマブは有意なIFN-γ放出を誘導したが、TNFR2特異的抗体はいずれも誘導しなかった。
図18】アンタゴニストリガンド非遮断TNFR2抗体がインビボでサイトカイン放出を誘発しないことを示している。NOGマウスに、25~x10個のPBMC細胞を静脈内注射した。14日後、マウスの血液が約40%のヒトT細胞からなることが示されたら、マウスを10μgの抗体で処置した。注射の1時間後に体温を測定した(図18A)。注射の5時間後に実験を終了し、IFN-γ(図18B)またはTNF-α(図18C)の含有量について血液を分析した。****=p<0.0001および**=p<0.01(一元配置分散分析で計算)。
図19】個々のドメインを欠くTNFR2変異体への結合を示している。HEK細胞で発現したTNFR2変異体への抗体結合を、フローサイトメトリーアプローチで試験した。ドメイン1および2の欠如は結合に有意な影響を与えないが(図19AおよびB)、3および部分的に4は、抗体とTNFR2との間の相互作用を完全に無効にする(図19CおよびD)。同様に、ドメイン1+3の欠如は、すべての抗体(1F06を除く)の結合を完全に防ぎ(図19E)、ドメイン2+4の欠如は、アゴニスト抗体(1F02、1F06、4E08)への結合を完全に無効にし、アンタゴニスト(1H10、4H02、5B08)への結合も大幅に低減する(図19F)。濃い灰色は陽性対照を示し、白色は陰性対照抗体を示す。
図20】TNFR2のヒト(H-D3)およびマウス(M-D3)のドメイン3のアミノ酸配列の比較を示している。類似のアミノ酸は白色で示され、差異は灰色で示されている。以下の5つの配列は、抗体が試験される5つの異なるコンストラクトを表している。ヒトからマウスへの配列の交換には下線が引かれているが、下線が引かれていない配列は完全にヒトである。ドメイン1、2および4はヒトであり、置換も突然変異も含有していない。
図21】野生型ヒトおよびマウスTNFR2への結合を示す(左のパネル)。突然変異したhTNFR2コンストラクト(m1、m2、m3およびm4)を使用して、さまざまな抗hTNFR2抗体に対する結合部位を絞り込んだ。フローサイトメトリー分析により、aa119~132の突然変異は抗体結合に影響を与えないが、aa151~160の突然変異はすべての抗体の結合を完全に無効にすることが明らかになった。134~144の突然変異は、遮断アンタゴニスト抗体への結合のみを破壊し、アゴニスト抗体には大きな影響を与えない。濃い灰色のバーは、陽性対照の抗体を示し、白色は陰性対照の抗体を示す。破線は、陰性対照抗体のレベルである。
【実施例
【0187】
ここで、本発明のいくつかの態様を具体的に示す、特定の非限定的な実施例を説明する。
【0188】
多くの例、特にインビボの例では、抗体3-F10が使用されている。これは、本明細書に開示されるヒト抗体の代理抗体であるマウス抗体である。この抗体は、マウスTNFR2に結合するその能力、TNFR2に結合するマウスTNF-αリガンドのその遮断に基づき、かつ実施例4に記載されるようなマウスT細胞活性化アッセイにおけるそのアンタゴニスト活性に基づいて選択された。いくつかの例では、3-F10抗体を試験し、抑制性Fcガンマ受容体(mIgG2a)よりも活性化Fcガンマ受容体への強力かつ優先的な結合、マウス抑制性FcγR(mIgG1)への強力かつ優先的な結合、またはマウスFcγR(mIgG2aN297A)への結合の欠損に関連するさまざまな抗体形式で比較した。
【0189】
いくつかの例では、抗体5-A05が使用されている。これは、参照および比較の理由で本明細書に含まれるヒト抗TNFR2非遮断アゴニスト抗体に対するマウス代理抗体である。5-A05は、マウスTNFR2に結合するその能力、TNFR2に結合するマウスTNF-αリガンドに対する遮断効果の欠如に基づき、かつ実施例4に記載されるようなマウスT細胞活性化アッセイにおけるそのアンタゴニスト活性に基づいて選択された。いくつかの例では、5-A05抗体を試験し、抑制性Fcガンマ受容体(mIgG2a)よりも活性化Fcガンマ受容体への強力かつ優先的な結合、活性化FcγR(mIgG1)を上回るマウス抑制性FcγRへの強力かつ優先的な結合、またはマウスFcγ(N297A)への結合の欠損に関連するさまざまな抗体形式で比較した。
【0190】
いくつかの例および図では、抗体クローンのわずかに異なる名称が使用されている。例えば、クローン001-H10は1-H10または1H10に短縮される場合があり、005-B08は5-B08または5B08に短縮される場合がある。
【0191】
実施例1-TNFR2特異的抗体の生成
図1およびこの図の上記説明も参照のこと。)
scFv抗体フラグメントの単離
n-CoDeR(登録商標)scFvライブラリ(BioInvent,Soderlind E,et al Nat Biotechnol.2000;18(8):852-6)を使用して、ヒトまたはマウスTNFR2を認識するscFv抗体フラグメントを単離した。
【0192】
ファージライブラリは、組換えヒトまたはマウスタンパク質(Sino Biological)に対する3回の連続パニングで使用された。ファージのインキュベーション後、細胞を洗浄して未結合のファージを除去した。結合ファージをトリプシンで溶出し、E.coliで増幅した。得られたファージストックをscFvフォーマットに変換した。E.coliをscFv保有プラスミドで形質転換し、個々のscFvクローンを発現させた。
【0193】
特有のTNFR2結合scFvの同定
3回目のパニングからの変換されたscFvを、ホモジニアスFMAT分析(Applied Biosystems、Carlsbad、CA、USA)を使用して、ヒトもしくはマウスTNFR2または非関連タンパク質を発現するトランスフェクトされた293FT細胞への結合についてアッセイした。
【0194】
簡単に説明すると、トランスフェクトされた細胞を、発現プレートからのscFv含有上清(1:7に希釈)、マウス抗His Tag抗体(0.4μg/ml、R&D Systems)、およびAPC結合ヤギ抗マウス抗体(0.2μg/ml、カタログ番号115-136-146、Jackson Immunoresearch)とともに透明底プレートに添加した。FMATプレートを室温で9時間インキュベートした後、読み取った。TNFR2でトランスフェクトされた細胞に結合するが、非関連タンパク質でトランスフェクトされた細胞には結合しない細菌クローンは、活性物質として分類し、96ウェルプレートにチェリーピックした。
【0195】
ELISAにおけるTNFR2へのIgGの結合
96ウェルプレート(Lumitrac 600 LIAプレート、Greiner)を、1pmol/ウェルの組換えヒトまたはマウスTNFR2-Fcタンパク質(Sino Biological)で、一晩4℃でコーティングした。洗浄後、20μg/ml~0.1ng/ml(133nM~1pM)の漸増させた用量(titrated dose)の抗TNFR2mAbを1時間結合させた。次にプレートを再度洗浄し、結合した抗体を50ng/mlに希釈した抗ヒトF(ab)-HRP二次抗体(Jackson ImmunoResearch)で検出した。Super Signal ELISA Pico(Thermo Scientific)を基質として使用し、Tecan Ultra Microplate readerを使用してプレートを分析した。
【0196】
表6および図1A~Dに示されているデータは、ヒト抗TNFR2抗体がすべてヒトTNFR2タンパク質に結合することを示している。EC50値は、1-C08の0.082nMから1-A09の4.4nMまでの範囲である。
加えて、マウス抗体代理クローン3-F10および5-A05もmTNFR2タンパク質に結合する。これらの2つのクローンは、非常に類似した親和性で結合する(表6および図1E)。
【表6】
【0197】
実施例2-抗体の特異性
図2~5およびこれらの図の上記説明も参照のこと。)
CD4T細胞の単離
ヒトバフィーコートおよびカニクイザル(M.fascicularis)全血由来のPBMCを、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare)グラジエントを使用して単離した。CD4T細胞を、CD4T細胞単離キット(ヒト)またはCD4 MicroBeads、非ヒト霊長類(カニクイザル)(いずれもMiltenyi製)を使用した磁気セルソーティングによってPBMCから単離した。マウスCD4T細胞は、Miltenyi製のCD4T細胞単離キット(マウス)を用いて脾臓から単離した。
【0198】
TNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体の滴定
細胞上に発現したTNFR2に結合するTNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体の能力および親和性は、インビトロで活性化されたCD4T細胞を使用して得られた。ヒトCD4T細胞を50ng/mlのrhIL-2(R&D systems)およびDynabeads(登録商標)T-Activator CD3/CD28で刺激し、T細胞の増殖と活性化(Gibco)を37℃で2~3日行った。インビトロで活性化された細胞を、0.002~267nMの範囲のTNFR2またはアイソタイプ対照に特異的なn-CoDeR(登録商標)抗体の量を増やして標識した。次に、細胞をAPC結合a-ヒトIgG二次ab(Jackson)とインキュベートした後、フローサイトメトリー(FACSVerse、BD)で分析した。得られた滴定曲線を図2A~Dに示す。マウスCD4T細胞を135U/mlのrmIL-2(R&D systems)およびDynabeads(登録商標)T-Activator CD3/CD28で刺激し、T細胞の増殖と活性化(Gibco)を37℃で2~3日行った。インビトロで活性化された細胞を、0.00003~133nMの範囲のTNFR2またはアイソタイプ対照に特異的なn-CoDeR(登録商標)抗体の量を増やして標識した。次に、細胞をAPC結合a-マウスIgG二次ab(Jackson)とインキュベートした後、フローサイトメトリー(FACSVerse、BD)で分析した。滴定曲線を図2Eに示す。滴定曲線のEC50値は、Microsoft Excelで計算され、表7に示されている。ヒト抗体の場合、EC50値は0.6nM(4-H02)から52.7nM(1-C03)まで異なっていた。マウス抗体は、同様の親和性(0.072nM(3-F10)および0.11nM(5-A05))でインビトロで活性化された細胞に結合した。
【0199】
TNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体の特異性
TNFR2に対するTNFR2抗体の特異性は、市販のポリクローナルTNFR2抗体(R&Dシステム)を用いたFACS遮断実験で得られた。CD4T細胞(マウスおよびヒト)を、50ng/mlのrhIL-2(R&D systems)(ヒト)/135U/mlのrmIL-2(R&D systems)(マウス)およびDynabeads(登録商標)T-ActivatorCD3/CD28で2~3日間刺激して、T細胞の増殖と活性化(Gibco)を行い、40μg/mlポリクローナルTNFR2抗体(R&D systems)で30分間遮断し、直後にTNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体またはアイソタイプ対照と15分間インキュベートした。使用したn-CoDeR(登録商標)抗体の濃度は、個々のTNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体の滴定曲線に基づいており、各抗体の最適以下の濃度を選択した。次に、細胞を洗浄し、APC結合二次抗体(Jackson)と30分間インキュベートした。細胞をフローサイトメトリーにより分析した(FACSVerse、BD)。図3に示すように、TNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体(ヒトとマウスの両方)のすべての結合は、ポリクローナルTNFR2抗体によって遮断され得た。これらの結果は、TNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体がインビトロで活性化されたCD4T細胞上のTNFR2に特異的に結合することを確認している。
【0200】
TNFR2抗体クローンMR2-1に対するTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体のエピトープマッピング
TNFR2抗体クローンMR2-1(Invitrogen)は、TNFR2タンパク質の特定のドメインに結合する。MR2-1と同じドメインに結合したTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体がFACS遮断実験によって試験された場合。
【0201】
ヒトCD4T細胞は、50ng/mlのrhIL-2(R&D systems)およびDynabeads(登録商標)T-ActivatorCD3/CD28(Gibco)で2~3日間刺激し、T細胞の増殖と活性化を行った。活性化された細胞を、40μg/mlMR2-1(図5Aの黒いバー)またはPBS(図5の灰色のバー)で遮断した。30分間のインキュベーション後、細胞をTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体またはポリクローナルTNFR2(pTNFR2)で15分間直ちに染色した。APC結合二次抗ヒトIgG試薬(Jackson)とのインキュベーション後、細胞をフローサイトメトリー(FACSVerse、BD)で分析した。図5Bでは、活性化CD4T細胞を40μg/mlのTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体またはpTNFR2(黒いバー)で遮断するか、PBS(灰色のバー)を使用して放置した後、PE結合MR2-1抗体と15分間インキュベートした。また、次に、細胞をFACSで分析した。MR2-1+細胞のパーセンテージは、遮断されていない細胞と遮断されたn-CoDeR(登録商標)で同じであり(図5B)、n-CoDeR(登録商標)抗体の結合はMR2-1遮断の有無にかかわらず同じであった(図5A)。これらのデータは、n-CoDeR(登録商標)抗体が、MR2-1抗体以外のTNFR2タンパク質の他のエピトープに結合することを示している。
【0202】
TNFR2n-CoDeR(登録商標)抗体のカニクイザルへの結合
カニクイザルに対するTNFR2抗体の交差反応性を検証するために、カニクイザルCD4T細胞を50ng/mlのPMA(Sigma)および100ng/mlのイオノマイシン(Sigma)で2日間刺激して、TNFR2の上方制御を行った。細胞を3つの異なる濃度(0.1、1、および10μg/ml)のTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体とインキュベートし、次にAPC結合二次a-ヒトIgG試薬(Jackson)とインキュベートした。細胞をフローサイトメトリー(FACSVerse、BD)で分析した結果、ヒトTNFR2特異的n-CoDeR(登録商標)抗体のほとんどがカニクイザルTNFR2に結合できることが示された。個々の抗体の結果を図4に示す。
【0203】
要約すると、実施例2のデータは、ヒト抗体が、ヒト免疫細胞上で内因的に発現されるTNFR2に特異的に結合することを示している。さらに、データは、TNFR2に対するポリクローナル市販抗体を添加することによってこの結合を遮断できることを示している。これは、TNFR2に対する非常に高い特異性を示している。同じことが、マウスTNFR2を発現するマウス細胞に関する代理クローン3F10および5A05にも当てはまる。また、ヒトクローンの結合は、MR2-1と比較して異なるエピトープ特異性を示すMR2-1抗体の影響を受けない。
【表7】
【0204】
実施例3-リガンド遮断特性の試験
図6~7およびこれらの図の上記説明も参照のこと。)
ELISA法
96ウェルプレートを、ELISAコーティングバッファー(0.1M炭酸ナトリウム、pH9.5)中2.5pmol/ウェルのhTNFR2(Sinobioologicalsカタログ番号10414-H08H)またはmTNFR2(Sinobioologicalsカタログ番号50128 M08H)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。ELISA洗浄バッファー(0.05%Tween20を含むPBS)で洗浄した後、プレートをゆっくりと撹拌しながら室温で1時間、10μg/ml(1回投与ELISA)または33nMのn-CoDeR(登録商標)mAbとインキュベートし、その後、0.45%フィッシュゼラチンを含有する遮断バッファーで1:2希釈(滴定ELISA)した。続いて、組換えhTNF-α-bio(R&Dカタログ番号BT210)またはmTNF-α(Gibcoカタログ番号PMC3014)をそれぞれ5nMおよび2nMの最終濃度で添加し、さらに15分間インキュベートした。その後、プレートを洗浄した。ヒトELISAの場合、遮断バッファーで1:2000に希釈したストレプトアビジン-HRP(Jacksonカタログ番号016-030-084)を添加し、室温で1時間再度インキュベートした後、最初にELISAバッファーで、次にTrisバッファー(pH9.8)で洗浄した。次いで、基質(Thermo Scientific製Super Signal ELISA Pico(カタログ番号37069))を製造元の指示に従って希釈し、ウェルに加え、暗所で10分間インキュベートした後、Tecan Ultraで読み取った。マウスELISAの場合、ウサギ抗mTNF-α(Sinobiologicalsカタログ番号50349-RP02)を1μg/mlに希釈したものを加え、室温で1時間インキュベートさせた。洗浄後、遮断バッファーで1:10000に希釈した抗ウサギ-HRPを添加し、再び室温で1時間インキュベートした。基質の添加および読み取りを上記のように行った。
【0205】
データを、それぞれ以下の表8および表9、ならびに図6および図7に示す。
【表8】
【表9】
【0206】
遮断の定義
●完全遮断剤は、TNF-α結合を98%超低減するものと定義されている
●部分遮断剤は、TNF-α結合を60~98%低減するものと定義されている
●弱い遮断剤は、TNF-α結合を60%未満低減するものと定義されている
●非遮断抗体は、図6Aおよび7Aに示すように、高用量のワンポイントELISAで50%遮断を超えないものとして定義されている
【0207】
この例に示されているデータは、リガンドTNF-αの結合を完全に抑制する抗体から、リガンドの遮断をまったく抑制しない抗体まで、さまざまな抗体が生成されていることを示している。これは、ヒト抗体とマウス代理抗体の両方に当てはまる。
【0208】
実施例4-抗体のインビトロ機能性
図8~9およびこれらの図の上記説明も参照のこと。)
サイトカイン刺激NK細胞IFN-γ産生を調節するTNFR2抗体の能力
TNFR2特異的抗体のアゴニスト/アンタゴニスト特性は、Almishriらによって記載されたNK細胞アッセイを使用して評価された(TNFα Augments Cytokine-Induced NK Cell IFNγ Production through TNFR2.Almishri W.et al.J Innate Immun.2016;8:617-629)。
【0209】
手短に言えば、ヒトNK細胞を、「NK単離キット」(Miltenyi)を使用したMACSによってヒトPBMCから単離した。U底プレート(Corning(登録商標)96ウェルTC処理マイクロプレート、Sigma-Aldrich)において、10μg/mlのTNFR2特異的抗体、10μg/mlアイソタイプ対照または100ng/mlのTNF-α(R&D systems)と一緒に、100μlのNK細胞(1×10細胞/ml)を、20ng/mlのrhIL-2(R&D systems)および20ng/mlのrhIL-12(R&D systems)とともに培養した。24時間後に上清を回収し、産生されたIFN-γの量をMSDで評価した。
【0210】
対照として、TNF-αを中和する抗TNF-α抗体(カタログ番号AF-210-NA、R&D systems)が含まれていた。図8Dに見られるように、1μg/mlの用量は可溶性TNF-αを完全に中和し、この用量はまたIFN-γ放出を低下させた。
【0211】
ヒトの非遮断TNFR2抗体は、IL-2およびIL-12で刺激されたNK細胞のIFN-γ産生を明確に増強したが(アイソタイプ対照の2~3倍のIFN-γ)、一方、アンタゴニスト抗体(ここでは完全遮断剤で示されている)は、NK細胞に対するアンタゴニスト効果を示し、IFN-γ産生を低減した(図8A)。
【0212】
この試験は、マウス培養物で内因的に産生されたTNF-αがなく、マウスNK細胞では抑制性FcγRが発現する一方で、ヒト対応物では活性化FcγRのみが発現するため、マウス代理抗体で実施するのは代表的ではないと考えられた。代わりに、以下に記載されるようなメモリーT細胞活性化アッセイ(CD25の誘導)を使用して、マウス代理抗体のアゴニストまたはアンタゴニスト特性に対処した。
【0213】
TNFR2抗体によるCD25発現メモリーCD4T細胞の誘導
TNFR2抗体のアゴニスト/アンタゴニスト特性をさらに理解するために、CD25発現メモリーCD4T細胞の割合を増強するそれらの能力を評価した。
【0214】
簡単に説明すると、Miltenyi製の「CD4T細胞単離キット」を使用して、MACSによってPBMCからヒトCD4T細胞を単離した。CD4sを、10ng/mlのrhIL-2(R&D systems)および10μg/mlのTNFR2特異的抗体または指定量のrhTNF-α(R&D systems)とともに培養した。3日後、メモリー細胞(CD45RO細胞)でのCD25の発現をFACSで分析した(図9A)。
【0215】
同様に、マウスCD4T細胞を、「CD4T細胞単離キット」(Miltenyi)を使用してMACSによって脾臓から単離し、10ng/mlのrmIL-2(R&D systems)および10μg/mlのTNFR2特異的抗体または指定量のrmTNF-α(R&D systems)とともに培養した。メモリー細胞(CD44CD62L細胞)上のCD25の発現を、3日後にFACSによって分析した(図9B)。
【0216】
CD25発現細胞のパーセンテージが、ヒトとマウスの両方で、非遮断TNFR2で刺激されたメモリー細胞培養物において増強された。しかしながら、遮断抗体による刺激はこれらの培養物でCD25発現を増大させず、むしろこれを低減した。
【0217】
要約すると、実施例4のデータは、いくつかの方法によってインビトロで測定されるように、リガンド遮断抗体がアンタゴニストであることを示している:NK細胞介在IFN-γ放出の抑制、およびCD25発現によって測定されるCD4メモリー細胞の活性化。アンタゴニストリガンド遮断抗体が本発明に従って示され、アゴニストリガンド非遮断抗体が比較のために含まれている。
【0218】
実施例5-代理リガンド遮断、アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAbはインビボ抗腫瘍効果を有する
図10~16およびこれらの図の上記説明も参照のこと。)
さまざまな腫瘍モデルにおける治療効果
リガンド遮断アンタゴニスト抗TNFR2mAbのインビボ抗腫瘍効果を評価するために、3F10と呼ばれるマウス代理を、異なるアイソタイプ形式を使用して、単独で、または以下に説明する抗PD-1と組み合わせて、異なる腫瘍モデルでインビボで調査した。
【0219】
マウスは、ホームオフィスのガイドラインに従って、地元の施設で飼育および維持した。6~8週齢の雌のBalbCおよびC57/BL6マウスは、Taconic(Bomholt、Denmark)から供給され、地元の動物施設で維持した。CT26、MC38およびB16.F10細胞(ATCC)を、10%FCSを添加したグルタマックス緩衝RPMIで成長させた。細胞が半コンフルエントになったとき、それらをトリプシンで剥離させ、10×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁した。マウスに1×10細胞/マウスに相当する100μlの細胞懸濁液を皮下注射した。モデルに応じて注射の3~8日後、マウスを、図に示されているように週2回、10mg/kgの抗体で腹腔内処置した(アイソタイプ対照、3-F10または5-A05)。腫瘍は、直径が15mmに達するまで、週に2回測定し、その後、マウスを断命した。
【0220】
リガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAb3-F10は、3つの異なる腫瘍モデルで治療的抗腫瘍効果を示し(図10~13)、より治療感受性の高いCT26では治療効果を示し(図10)、かつ、より治療抵抗性の高いMC38およびB16では腫瘍成長抑制効果を示す(図11~13)。
【0221】
リガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAbの抗腫瘍効果は、Fc:FcγRに依存する。
リガンド遮断アンタゴニスト抗TNFR2マウス代理mAbのインビボ抗腫瘍効果に対するFcFcγR相互作用の重要性を評価するために、この抗体のさまざまなFc形式を、以下に記載するようにCT26腫瘍モデルにおいてインビボで調査した。
【0222】
マウスは、上記のように飼育され維持された。CT26細胞(ATCC)を上記のように成長させ、注射した。腫瘍が3×3mmに達したとき、マウスを、10mg/kgの抗体(アイソタイプ対照、3-F10 IgG1、3-F10 IgG2a、または3-F10-N297A(Fc欠損)で週2回腹腔内処置した。腫瘍は、直径が15mmに達するまで、週に2回測定し、その後、マウスを断命した。
【0223】
Fc欠損3-F10-N297Aは、アイソタイプ対照と比較して最低の治療活性を示すか、または全く治療効果を示さず、Fc結合が、このリガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAbの治療効果にきわめて重要であることを示している(図10AおよびB)。IgG1およびIgG2aの両方の形式が、有意な治療効果を示す。しかしながら、活性化Fcγ受容体に優先的に結合するIgG2a形式は、Tregの枯渇/食作用を示す優れた治療効果が、このリガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAbの1つの重要な作用機序であることを示している(図10A~B)。これは、Fc欠損形式ではいくらかの活性を示し、抑制性FcγRに優先的に結合することが知られているマウスIgG1形式で最高の活性を示す非遮断アゴニスト代理抗体5A05とは対照的である。リガンド遮断アンタゴニスト抗体(3F10)は本発明によるものであり、リガンド非遮断アゴニスト抗体(5A05)は参考のために含まれている。
【0224】
抗PD-1mAbとの併用効果
リガンド遮断アンタゴニスト抗TNFR2mAb、抗PD-1を用いたマウス代理(3-F10)のインビボ抗腫瘍効果の組み合わせを評価するために、以下に記載するようにMC38腫瘍モデルにおいて治療の組み合わせをインビボで調査した。
【0225】
マウスは、上記のように飼育され維持された。MC38細胞(ATCC)を上記のように成長させ、注射した。注射の8日後、マウスを、図11A~Eに示すように、週に2回、10mg/kgの抗体(アイソタイプ対照、抗マウスPD-1、3-F10、または抗マウスPD-1と3-F10との組み合わせ)で腹腔内処置した。腫瘍は、直径が15mmに達するまで、週に2回測定し、その後、マウスを断命した。
【0226】
抗マウスPD-1およびリガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAb3-F10はいずれも、MC38モデルで実際に腫瘍成長抑制治療効果を示す(図11A~E)。抗PD1とアンタゴニスト抗マウスTNFR2mAb3-F10を組み合わせると、治療抵抗性のMC38で腫瘍が治癒する(図11D~E)。
【0227】
抗PD-L1mAbとの併用効果
リガンド遮断アンタゴニスト抗TNFR2mAbのインビボ抗腫瘍効果の組み合わせを評価するために、以下に記載するように、MC38腫瘍モデルでの治療のためにマウス代理(3F10)を抗PD-L1とさらに組み合わせた。
【0228】
マウスは、上記のように飼育され維持された。MC38細胞(サウサンプトン大学のM.Cragg博士から入手)を上記のように成長させ、注射した。注射の6日後、マウスを、アイソタイプ対照抗体もしくは3F10で2回(1日目および4日目)処置するか、抗PD-L1(クローン10F.9G2、Bioxcell)で4日連続処置し、2日後に5回目の注射を行う(1、2、3、4、および7日目の合計5回の注射)か、または両方を組み合わせて行った。すべての抗体を、10mg/kgで腹腔内投与した。腫瘍は、2000mm3の体積に達するまで、週2回ノギスで測定し、その後マウスを断命した。
【0229】
抗マウスPD-L1およびリガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2mAb3-F10はいずれも、MC38モデルで実際に腫瘍成長抑制治療効果を示す(図12)。抗PD-L1とアンタゴニスト抗マウスTNFR2mAb3-F10を組み合わせると、抗腫瘍効果がさらに高まる(図12)。
【0230】
インビボでの免疫細胞調節
インビボでの腫瘍における免疫細胞での効果を調査するために、BalbCマウスに上記のようにCT26細胞を接種した。腫瘍が約7×7mmに達した後、図に示すように、マウスを10mg/kgの抗体で腹腔内投与して治療した。マウスを1、4、7日目に処置し、8日目に断命した。腫瘍を解剖し、機械的に小片に分割し、コラゲナーゼ100μg/mlのリベラーゼおよび100μg/mlのDNaseの混合物を使用して、37℃で2×5分間、ボルテックスを間にいれて消化した。70μmのフィルタを通して濾過した後、細胞懸濁液を、10%FBSを含有するPBSで洗浄した(400gで10分間)。その後、細胞をMACSバッファーに再懸濁し、CD45、CD3、CD8、CD4、およびCD25またはMHCII、F4/80、Ly6C、CD11bおよびLy6Gを染色する抗体パネルで染色した。染色する前に、100μg/mlのIVIG(精製された静脈内免疫グロブリン)を使用して非特異的結合について細胞を遮断した。FACS Verseを使用して細胞を分析した。マウスTregをCD45CD3CD4CD25として定量化し、TAMをCD11bLy6GLy6CF4/80MHCIIとして定量化した。結果を図14に示す。
【0231】
図14に見られるように、リガンド遮断/アンタゴニストTNFR2抗体による処置は、腫瘍のTregを枯渇させる。CD8T細胞流入の増加への弱い傾向も見られる。同時に、これにより、CD8+T細胞とTregとの比率が大幅に改善される(図14C)。加えて、アンタゴニスト抗体は、腫瘍関連マクロファージの数を低減することによって骨髄性コンパートメントを調節する(図14D)。
【0232】
PBMC-NOG/SCIDモデル
リガンド遮断アンタゴニスト抗マウスTNFR2代理mAbの枯渇活性に関するインビボ所見を確認するために、以下に説明するように、PBMC-NOG/SCIDモデルにおけるリガンド遮断アンタゴニスト抗ヒトTNFR2mAb1-H10の枯渇能力をインビボで分析した。
【0233】
マウスは、ホームオフィスのガイドラインに従って、地元の施設で飼育および維持した。8週齢の雌のSCIDおよびNOGマウスは、Taconic(Bomholt、Denmark)から供給され、地元の動物施設で維持した。PBMC-NOG/SCID(初代ヒト異種移植)モデルの場合、ヒトPBMCを、Ficoll Paque PLUSを用いて単離し、洗浄した後、細胞を75×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁した。NOGマウスに、15×10細胞/マウスに相当する200μlの細胞懸濁液を静脈内注射した。注射の2週間後、脾臓を単離し、単一細胞懸濁液にした。その後、少量の試料を採取して、FACSによってヒトT細胞におけるTNFR2の発現を測定した(図15)。このFACSは、TregおよびCD8+T細胞でのTNFR2発現が、NOGマウスにおけるインビボで成長および活性化されたヒトT細胞と、ヒト腫瘍由来のT細胞との間で非常に類似していることを示した。細胞の大部分は、50×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁した。SCIDマウスに、10×10細胞/マウスに相当する200μlの懸濁液を腹腔内注射した。1時間後、マウスを10mg/kgのYervoy、抗CD25、1-H10、1-H10-N297Q(1-H10のFc欠損バージョン)またはアイソタイプ対照mAbのいずれかで処置した。マウスの腹腔内液を24時間後に収集した。ヒトT細胞サブセットは、以下のマーカー:CD45、CD3、CD4、CD8、CD25、CD127(すべてBD Biosciences製)を使用するFACSによって同定および定量化された。
【0234】
1-H10のTreg枯渇活性はYervoyおよび1-H10N297Qよりも優れており(図16)、リガンド遮断アンタゴニスト抗TNFR2mAb1-H10がTregを枯渇させ、Fc相互作用がこの枯渇に関与していることを確認した(図16D)。
【0235】
要約すると、実施例5は次のことを示している。
1.アンタゴニストリガンド遮断抗体は、いくつかの腫瘍モデルにわたって強力な抗腫瘍効果を発揮する可能性がある。
2.この効果は、抗PD1抗体と組み合わせることで高めることができる。
3.この効果は、活性化FcγRの結合に依存する。
4.アンタゴニストリガンド遮断代理抗体による処置は、腫瘍のT細胞組成を大幅に変化させ、CD8T細胞/Treg比を増加させ、腫瘍関連マクロファージを減少させる。
5.ヒト腫瘍では、TNFR2を最も発現している細胞はTregである。
6.腫瘍TNFR2発現がT細胞で模倣されるヒト異種移植モデルでは、ヒトTregが欠失し(delated)、CD8T細胞レベルが増加する。
7.このTreg欠失は、抗体が活性化FcγRに結合できる場合に最も顕著になる。
【0236】
実施例6-アンタゴニストリガンド遮断抗体は大量の炎症誘発性サイトカインを誘導しない
図17~18およびこれらの図の上記説明も参照のこと。)
大量の炎症誘発性サイトカインの放出は、患者の治療に使用される免疫調節抗体の考えられる副作用の1つである。したがって、ここでは、2つの異なる方法を使用して、アンタゴニストリガンド遮断抗体によって誘導されるサイトカイン放出を測定した。1つ目は、インビトロ培養での抗体刺激に基づいており、2つ目は、免疫不全マウスへのヒト免疫細胞の異種移植に基づいている。インビトロでは、培養設定がサイトカインの放出に大きな影響を与えることが示されている(Vessillier et al.,J Immunol Methods.2015 Sep;424:43-52)。方法論の違いを説明するために、最近の出版物に従って、3つの異なるインビトロ培養設定が使用された。
【0237】
高密度細胞培養(HDC)サイトカイン放出アッセイ(CRA)のために、PBMCを2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸、100IU/mlのペニシリンとストレプトマイシンを補充した無血清CTL-試験培地(Cell Technology Limited)に1×10細胞/mlで培養した。2mlの細胞培養物を12ウェルプレートにプレーティングした。48時間後、10μg/mlの抗体を96ウェル平底プレート内の1×10個のプレインキュベートしたPBMCに添加し、24時間インキュベートした。
【0238】
PBMC固相(SP)CRAは、96ウェルプレートのウェルを1μg/mlの抗体で1時間コーティングすることにより実施した。プレートをPBSで洗浄した後、200μlの完全培地中の1×10個のPBMCをウェルごとに添加し、48時間インキュベートした。
【0239】
サイトカイン放出は、200μlの全血を5μg/mlの抗体で48時間刺激した後にも測定された。
【0240】
インキュベーション期間の終わりに、プレートを遠心分離し、培養上清を採取して-20℃で保存した。IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-8およびTNF-αの濃度は、カスタムメイドのMSDプレートを使用して、製造元の指示(Meso Scale Discovery、USA)に従って測定した。
【0241】
要約すると、遮断アンタゴニスト抗体は、インビトロ設定のいずれにおいても有意なサイトカイン放出を誘発しなかった。陽性対照抗体であるアレムツズマブおよびOKT3はサイトカインを誘導し、すべてのうち最も顕著なのはIFN-γであったが、図17に示すように、1H10抗体はアイソタイプ対照抗体を上回ってIFN-γを誘導しなかった。他のサイトカインは1H10によって上昇しなかった(データは示さず)。
【0242】
PBMC-NOG忍容性モデル
リガンド遮断アンタゴニスト抗ヒトTNFR2mAb1-H10の忍容性を調査するために、以下に説明するように、PBMC-NOGモデルでのインビボサイトカイン放出を分析した。
【0243】
マウスは、ホームオフィスのガイドラインに従って、地元の施設で飼育および維持した。8週齢の雌のNOGマウスは、Taconic(Bomholt、Denmark)から供給され、地元の動物施設で維持した。PBMC-NOG(初代ヒト異種移植)モデルの場合、ヒトPBMCを、Ficoll Paque PLUSを用いて単離し、洗浄した後、細胞を125×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁した。NOGマウスに、25×10細胞/マウスに相当する200μlの細胞懸濁液を静脈内注射した。注射の2週間後、血液サンプルを採取して、NOGマウスの血液中のヒト細胞の量を意味する「ヒト化」のレベルを分析した。血液は約40%のヒトT細胞で構成され、マウスはヒト化されているとみなした。次に、マウスを10μgのYervoy、抗CD3(OKT-3)、1-H10またはアイソタイプ対照mAbのいずれかで処置した。抗体注射前と注射後1時間で体温を測定した、図18A図18Aに見られるように、陽性対照抗体OKT3は、以前に発表されたように、そしてこの抗体を用いた臨床実習(clinic)で見られた毒性に従って、体温の劇的な低下を誘導した。対照的に、1-H10は体温に全く影響を与えなかった。抗体の注射の5時間後に実験を終了しサイトカイン放出(MSD)の分析のために血液を採取した。測定されたサイトカインは、ヒトIFN-γ、TNF-α、IL-6およびIL1βであった。これらのうち、IFN-γとTNF-αは信頼できるほど高いレベルで定量化された。図18BおよびCに見られるように、陽性対照抗体OKT3は有意なIFN-γおよびTNF-α放出の両方を誘導したが(この抗体を用いた臨床実習で見られた毒性に従って)、1H10処置マウスには有意なIFN-γ放出がなかった。しかしながら、OKT3ほど有意ではなく劇的ではないが、TNF-α放出が増大する傾向があった。
【0244】
要約すると、実施例6は、ここでは1-H10と呼ばれる抗体で例示されるTNFR2リガンド遮断抗体が、以前に発表されたいくつかの方法によって測定されるように、実質的なレベルのサイトカイン放出を誘導しないことを示す。サイトカイン放出はいくつかの免疫調節抗体の臨床開発の制限要因であるため、これは、この点で許容できる安全性プロファイルを示している。
【0245】
実施例7-生成されたTNFR2標的化抗体のエピトープ
ドメインコンストラクトのノックアウト
最初の一連の実験では、表10に記載されている4つの細胞外ドメインのうちの1つ以上が欠落しているTNFR2のさまざまな変異体をコードするDNAコンストラクトを使用した。実験の第2のセットでは、表11に記載されているように、ドメイン3の異なる部分が対応するマウス部分と交換されたTNFR2の変異体をコードするDNAコンストラクトを使用した。いずれの抗体もマウスTNFRと交差反応しないため、後者が可能である。どちらの場合も、コンストラクトはGeneArt(ThermoFisher)から購入した。コンストラクトは、CMVプロモーターおよびプラスミド複製のOriP由来を含有する発現ベクターにクローン化され、懸濁液に適合されたHEK293-EBNA細胞で一過性に発現された。
【表10】
【表11】
【0246】
フローサイトメトリーベースの結合分析
HEK-293-E細胞を、Lipofectamin2000を使用してTNFR2変異体のそれぞれのcDNAプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を回収し、示された抗体で30分間染色した。PBSで2回洗浄した後、表面に結合した抗体をAPCに結合した二次抗IgGで染色した。BD-Verseフローサイトメーターでフローサイトメトリー分析を行う前に、細胞を洗浄し、生/死を染色した。
【0247】
トランスフェクトされたHEK293細胞のフローサイトメトリーベースの結合実験は、ドメイン1とドメイン2がこれらの細胞に対する抗体の結合に影響を与えない(ドメイン1)か、わずかに影響を与える(ドメイン2)ことを明確に示した。陽性対照として、ポリクローナル抗ヒトTNFR2抗体を使用した。陽性対照抗体は、試験したすべてのコンストラクトに対して高い結合を示したが、陰性抗体は結合を示さなかった(図19)。試験したすべての抗体は、ドメイン3を欠くTNFR2への結合の完全な欠如を示した。同様に、ドメイン4が欠落している場合、ほとんどの抗体はTNFR2に結合できなかった。すべてのアンタゴニスト抗体(1H10、4H02および5B08)は、TNFR2Δ1およびTNFR2Δ2への結合と比較して、50%を超えるTNFR2Δ4への結合の劇的な低減を示した。同様に、TNFR2からの2つのドメインの除去は、ドメイン3または4がないと、アゴニスト抗体1F06を除いて、試験したすべての抗体のTNFR2への結合が大幅に無効になり、ドメイン4がないと、アゴニスト抗体の結合が無効になり、アンタゴニスト抗体の結合が大幅に低減することを明確に示した。(図19EおよびF)。
【0248】
マウス-ヒトキメラTNFR2への結合
結合部位をさらに絞り込み、エピトープを定義するために、ヒトTNFR2ドメイン3の一部を対応するマウス配列に置き換えた。すべての抗体はマウスTNFR2に対してほとんど交差反応性を示さないため、特定のコンストラクトへの結合が失われると、結合エピトープを精製することができる。図20は、さまざまなマウス-ヒトキメラTNFR2コンストラクトを示している。ヒト配列からの14(m1)、12(m2)、10(m3)または16(m4)アミノ酸のいずれかを、対応するマウス配列と交換する4つの異なる置換が行われた。他の3つのドメイン(1、2、4)には、ヒトの配列のみが含有されている。
【0249】
次に、これらのコンストラクト(3に変異があるTNFR2ドメイン1~4)をHEK293細胞にトランスフェクトし、フローサイトメトリーアプローチを使用して抗体の結合を試験した。陽性対照として、マウスTNFR2およびヒトTNFR2に対するポリクローナル抗体を使用した。予想通り、配列の類似性により、両方のポリクローナル対照抗体は有意な交差反応性を示し、ヒトとマウスの両方のTNFR2を認識した。明らかに、抗体を目的の標的に一致させると、最良のシグナルが得られた。
【0250】
我々のモノクローナル抗体は、ヒトTNFR2に強い結合を示したが、マウスTNFR2には結合しないか、ほとんど結合しなかった(図21の左パネル)。低減がほとんどない同様の結合が、aa119~132に変異があるhTNFR2m1コンストラクトへのすべてのクローンで観察された。これは、どの抗体もその領域内のエピトープに結合しないことを示している。しかしながら、aa134~144(hTNFR2m2コンストラクト)の変異は、アンタゴニスト抗体1-H10、4-H02、5-B08に対応する、試験した抗体の半分の結合を完全に無効にし、これは、抗体がこの領域内で少なくとも部分的に結合することを示している。1-G10は部分的な遮断剤であり、この置換の影響も強く受ける。注目すべきことに、アゴニスト抗体(1-F02、1-F06および4-E08)は、コンストラクト2を使用して結合を保持し、アンタゴニスト抗体と比較して異なるエピトープを強く示唆している。興味深いことに、すべての抗体は、aa151~160に突然変異があるhTNFR2m3コンストラクトへの結合を喪失した。これは、アゴニストとアンタゴニストの両方のすべての抗体が、少なくとも、その配列内に部分的なエピトープを有していることを示している。aa130~144に突然変異があるわずかに大きいコンストラクトhTNFR2m4を試験すると、コンストラクトhTNFR2m2と同様の結合が示された。
【0251】
エピトープ結合についての結論
抗体をそれらの機能的役割にグループ化すると、アゴニスト抗体(1-F02、1-F06および4-E08)は、aa151~160を包含するドメイン3の非常に遠位のC末端部分に結合し、おそらくはドメイン4のより大きな部分に広がるようであるのに対し、アンタゴニスト(1-H10、5-B08、および4-H02)のエピトープは、aa134~160を包含するドメイン3の中心に向かってシフトし、おそらくはドメイン4のより小さな部分をカバーする。しかしながら、それにもかかわらず、それらのエピトープはある程度重複しているようである。
【0252】
ドメイン3、aa119~134のN末端部分に結合する抗体はない。ドメイン4への結合部位はすべての抗体である可能性が高いが、完全には同定されていない。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
図21
【配列表】
2022512905000001.app
【国際調査報告】