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特表2022-512920活性化可能抗CD166抗体およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】活性化可能抗CD166抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P35/00
A61K39/395 L
A61K38/12
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/70 401
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524049
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019059363
(87)【国際公開番号】W WO2020092881
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/788,714
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/755,247
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/789,403
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/826,465
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/810,173
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011599
【氏名又は名称】シートムエックス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カーマン,ロリ
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリー,レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】カバノー,ダブリュー.,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】テレット,ジョナサン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー,アニー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウィル,マッチアス
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA01
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4C076AA11
4C076AA72
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB24
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF67
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA25
4C084DA27
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA13
4C084ZA332
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC752
4C085AA14
4C085BB01
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、活性化されると、CD166に特異的に結合する活性化可能抗体およびCD166に特異的に結合する複合化活性化可能抗体である。また、これらの活性化可能抗体を作製する方法および様々な治療、診断および予防の適応症において、これらの活性化可能抗体を使用する方法も提供される。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌を治療する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、
治療有効量の薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)を、それを必要とする対象に投与することを含み、
前記対象は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で、薬剤に結合したAAを投与され、および
(A)前記AAが、
a.哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、
b.前記ABに結合したマスキング部分(MM)であって、前記AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166への前記ABの結合を抑制する、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、
c.前記ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMとを含む、または
(B)前記AAが、
哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号314のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、または
(C)前記AAが、
哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号246のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、方法。
【請求項2】
前記癌が、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が、乳癌、前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、または肺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象のCD166を発現する細胞の成長、増殖、または転移を抑制するか、または低減させる方法であって、
治療有効量の薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)を、それを必要とする対象に投与することを含み、
前記対象は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で、薬剤に結合した前記AAを投与され、および
(A)前記AAが、
a.哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、
b.前記ABに結合したマスキング部分(MM)であって、前記AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166への前記ABの結合を抑制する、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、
c.前記ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMとを含む、または
(B)前記AAが、
哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号314のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、または
(C)前記AAが、
哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号246のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、方法。
【請求項5】
前記対象が、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌に罹患している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、乳癌、前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、または肺癌に罹患している、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、乳腺細胞、前立腺細胞、子宮内膜細胞、卵巣細胞、頭頸部扁平上皮細胞、胆管細胞、または肺細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、メイタンシノイドまたはその誘導体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、DM4である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記DM4が、リンカーを介して前記AAに結合されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記リンカーが、SPBD部分を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ABが、前記CMに結合している、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記MMが、切断されていない状態の前記AAが、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのようなにN末端からC末端への構造的配置を含むように前記CMに結合される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記AAが、前記MMと前記CMとの間に結合ペプチドを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記AAが、前記CMとABとの間に結合ペプチドを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
結合ペプチドが、配列番号479のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記AAが、前記CMと前記ABとの間に結合ペプチドを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
結合ペプチドが、GGSのアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記AAが、第1の結合ペプチド(LP1)および第2の結合ペプチド(LP2)を含み、前記切断されていない状態の前記AAが、MM-LP1-CM-LP2-ABまたはAB-LP2-CM-LP1-MMのようなN末端からC末端への構造的配置を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記軽鎖が、そのN末端でスペーサーに結合している、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記スペーサーが、配列番号305のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記MMおよびCMが、前記軽鎖に結合している、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記MMが、前記CMに結合し、これにより、切断されていない状態の前記AAが、スペーサー-MM-LP1-CM-LP2-軽鎖のような、その軽鎖上のN末端からC末端への構造的配置を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記スペーサーが配列番号305のアミノ酸配列を含み、LP1が配列番号479のアミノ酸配列を含み、LP2がアミノ酸配列GGSを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記AAの軽鎖が、配列番号314の配列を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記AAの軽鎖が、配列番号246の配列を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、少なくとも18歳である、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象のECOGパフォーマンスステータスが0~1である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、活動性転移癌の組織学的に確認された診断を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、局所進行性切除不能固形腫瘍の組織学的に確認された診断を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、投与時に少なくとも3ヶ月の余命を有する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、乳癌を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記乳癌が、ER+である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
以前に抗ホルモン療法を受けて、疾患の進行を経験している、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、三種陰性乳癌を有し、少なくとも2種の前治療ラインを受けている、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、去勢抵抗性前立腺癌を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、少なくとも1種の前治療を受けている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、胆管癌を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、ゲムシタビン含有レジメンの少なくとも1種の前のラインで奏功していない、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、子宮内膜癌を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、子宮外または進行疾患のための少なくとも1種の白金含有レジメンを受けている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、卵巣上皮癌を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、白金抵抗性癌を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、白金難治性卵巣癌を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、BRCA変異を有し、PARP阻害剤に対して難治性であるか、あるいは不適格である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、非BRCA変異を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、頭頸部小細胞癌(HNSCC)を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、少なくとも1種の白金含有レジメンを受けている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、少なくとも1種のPD-1/PD-L1阻害剤を受けている、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、少なくとも1種の白金含有レジメンを受けている、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、少なくとも1種のチェックポイント阻害剤を受けている、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、少なくとも1種のPD-1/PD-L1阻害剤を受けている、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
投与量が、約7mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
投与量が、約8mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
投与量が、約9mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
投与量が、約10mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
投与量が、6mg/kg超~約7mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
投与量が、約7mg/kg~約8mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
投与量が、約8mg/kg~約9mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
投与量が、約9mg/kg~約10mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
投与量が、6mg/kg超~約8mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
投与量が、約7mg/kg~約9mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
投与量が、約8mg/kg~約10mg/kgである、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記対象が、約240mg超~約1000mgの固定用量で前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が、240mg超~約400mgの固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が、600mg超~約1000mgの固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記対象が、240mg超~600mg超の固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記対象が、約280mg~約700mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、約320mg~約800mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象が、約360mg~約900mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、約400mg~約1000mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、240mg超~約280mgの固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記対象が、約280mg~約320mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、約320mg~約360mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象が、約360mg~約400mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が、600mg超~約700mgの固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記対象が、約700mg~約800mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記対象が、約800mg~約900mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、約900mg~約1000mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記対象が、240mg超~約320mgの固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記対象が、約280mg~約360mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記対象が、約320mg~約400mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記対象が、600mg超~約800mgの固定用量で、前記薬剤に結合したAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記対象が、約700mg~約900mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記対象が、約800mg~約1000mgの固定用量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記対象が、前記薬剤に結合したAAを静脈内投与される、請求項1~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記対象が、前記薬剤に結合したAAを21日毎に静脈内投与される、請求項1~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記対象が、前記薬剤に結合したAAを14日毎に静脈内投与される、請求項1~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記対象が、実際の体重に基づく投与量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項54~64、87~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記対象が、対象の調整された理想体重に基づく投与量で、前記薬剤に結合しているAAを投与される、請求項54~64、87~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
対象が、急性または慢性角膜疾患の病歴を有していない、請求項1~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
予防処置を前記対象に投与し、眼の有害事象を減らすこと、または予防することを含む、請求項1~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記予防処置が、毎日の投与である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記予防処置が、潤滑用人工涙液、酒石酸ブリモニジン点眼液、眼に対する冷湿布の適用、および局所ステロイド点滴薬からなる群より選択される1種または複数の治療である、請求項93または請求項94に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、癌の治療のための抗CD166複合化活性化可能抗体を投与するための具体的投与レジメンに関する。
【0002】
配列表の参照
米国特許法施行規則37C.F.R.§1.821に基づいて本明細書と同時にコンピューター可読形式(CFR)で、ファイル名「CYTX-059-PCT_ST25」としてEFS-Web経由で電子申請された「配列表」は、参照により本明細書に組み込まれる。配列表の電子コピーは、2019年10月29日に作成され、ディスクサイズは49キロバイトである。
【背景技術】
【0003】
抗体ベース治療薬は、癌を含むいくつかの疾患に対して効果的治療薬であることが実証されたが、いくつかの事例では、幅広い標的発現に起因する毒性が、それらの治療効果を制限してきた。加えて、抗体ベース治療薬は、投与後の循環からの急速排出などの他の制約を示した。
【0004】
小分子治療薬の領域において、活性な化学物質のプロドラッグを提供する戦略が開発されてきた。このようなプロドラッグは、比較的不活性な(またはかなり活性が低い)形態で投与される。一旦投与されると、プロドラッグはインビボで活性化合物に代謝される。このようなプロドラッグ戦略は、その目的の標的のために、および有害作用の低減のために高められた薬物の選択性を提供できる。
【0005】
したがって、抗体ベース治療薬の分野において、小分子プロドラッグの望ましい特性を模倣する抗体に対する継続するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、本明細書で提供されるのは、対象の癌の症状を治療する、緩和する、またはその癌の進行を遅らせる方法であり、該方法は、治療有効量の薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)を、それを必要としている対象に投与することを含み、対象は、薬剤に結合したAAを6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で投与され、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むAB;(b)ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態である場合、ABの哺乳動物CD166に対する結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMM;および(c)ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼのための基質として機能し、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号314の配列を含み、いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号246の配列を含む。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、上皮卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌である。
【0007】
本発明の関連する態様では、本明細書で提供されるのは、対象のCD166発現細胞の成長、増殖または転移を抑制または低減する方法であり、該方法は、治療有効量の薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)を、それを必要としている対象に投与することを含み、対象は、薬剤に結合したAAを6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で投与され、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むAB;(b)ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態である場合、ABの哺乳動物CD166に対する結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMM;および(c)ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼのための基質として機能し、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号314の配列を含み、いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号246の配列を含む。
【0008】
本発明のさらなる関連態様では、本明細書で提供されるのは、対象の癌の症状を治療する、緩和する、または癌の進行を遅らせるのに使用するための薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)であり、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むAB;(b)ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態である場合、ABの哺乳動物CD166に対する結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMM;および(c)ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼのための基質として機能し、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号314の配列を含み、いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号246の配列を含む。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、上皮卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、または肺癌である。AAは、治療有効量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量である。
【0009】
本発明のまたさらなる関連態様では、本明細書で提供されるのは、対象の癌の治療のための、CD166発現細胞の成長、増殖、または転移の抑制または低減に使用するための薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)であり、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むAB;(b)ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態である場合、ABの哺乳動物CD166に対する結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMM;および(c)ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼのための基質として機能し、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号314の配列を含み、いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号246の配列を含む。AAは、治療有効量でそれを必要としている対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量である。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、上皮卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌を罹患している。いくつかの実施形態では、細胞は、乳腺細胞、前立腺細胞、子宮内膜細胞、卵巣細胞、頭頸部細胞、胆管細胞、または肺細胞である。
【0011】
いくつかの実施形態では、AAに結合した薬剤は、マイタンシノイドまたはその誘導体、例えば、AAに結合した薬剤はDM4である;いくつかの実施形態では、DM4はリンカーを介してAAに結合される;いくつかの実施形態では、リンカーはSPBD(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ブタノエート)部分を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ABは、CMに、例えば、結合ペプチドを介して結合される。いくつかの実施形態では、切断されていない状態にあるAAが、N末端からC末端への構造配置:MM-CM-ABまたはAB-CM-MMを含むように、MMはCMに結合される。いくつかの実施形態では、AAは、MMとCMとの間に結合ペプチドを含み、例えば、結合ペプチドは、配列番号479のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、AAは、CMとABとの間に結合ペプチドを含み、例えば、結合ペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、AAは、CMとABとの間に結合ペプチドを含み、例えば、結合ペプチドは、GGSのアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、AAは第1の結合ペプチド(LP1)および第2の結合ペプチド(LP2)を含み、切断されていない状態のAAは、MM-LP1-CM-LP2-ABまたはAB-LP2-CM-LP1-MMのN末端からC末端への構造配置を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、そのN末端でスペーサーに結合される;いくつかの実施形態では、スペーサーは配列番号305のアミノ酸配列を含み;いくつかの実施形態では、MMおよびCMは軽鎖に結合される;いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAがその軽鎖上にN末端からC末端への構造配置:スペーサー-MM-LP1-CM-LP2-軽鎖を含むようにMMはCMに結合される;いくつかの実施形態では、スペーサーは配列番号305のアミノ酸配列を含み、LP1は配列番号479のアミノ酸配列を含み、LP2は配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、そのN末端でスペーサーに結合される;いくつかの実施形態では、スペーサーは配列番号305のアミノ酸配列を含み;いくつかの実施形態では、MMおよびCMは軽鎖に結合される;いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAがその軽鎖上にN末端からC末端への構造配置:スペーサー-MM-LP1-CM-LP2-軽鎖を含むようにMMはCMに結合される;いくつかの実施形態では、スペーサーは配列番号305のアミノ酸配列を含み、LP1は配列番号479のアミノ酸配列を含み、LP2はGGSのアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも18才である;いくつかの実施形態では、対象はECOGパフォーマンスステータス0~1を有する;いくつかの実施形態では、対象は組織学的に確証された活動性転移性癌の診断を有する;いくつかの実施形態では、対象は組織学的に確証された局所進行性切除不能固形腫瘍を有する;いくつかの実施形態では、対象は投与時点で3ヶ月を越える余命を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、対象は乳癌を有する;いくつかの実施形態では、乳癌はER+である;いくつかの実施形態では、対象は事前の抗ホルモン療法を受けており、疾患進行を経験している;別の実施形態では、対象は三種陰性乳癌であり、少なくとも2種の前治療を受けたことがある;別の実施形態では、対象は急性または慢性角膜疾患の治療歴がない。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象は去勢抵抗性前立腺癌を有し、いくつかの実施形態では、対象は少なくとも1回の前治療を受けている。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象は胆管癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1種の前のゲムシタビン含有レジメンで奏功しなかった。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象は、子宮内膜癌である;いくつかの実施形態では、対象は、子宮外または進行疾患のための少なくとも1回の白金含有レジメンを受けている。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象は、卵巣上皮癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は、白金抵抗性癌である;いくつかの実施形態では、対象は、白金難治性卵巣癌である;いくつかの実施形態では、対象は、BRCA変異を有し、PARP阻害剤に対して難治性である。他の実施形態では、対象は、非BRCA変異を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、対象は、頭頸部小細胞癌(HNSCC)である;いくつかの実施形態では、対象は、1回を超える白金含有レジメンを受けている;いくつかの実施形態では、対象は、1回を超えるPD-1/PD-L1阻害剤を受けている。
【0022】
いくつかの実施形態では、対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)を有し、いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1回の白金含有レジメンを受けている;いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤を少なくとも1回受けているいくつかの実施形態では、対象は、チェックポイント阻害剤を少なくとも1回受けている。
【0023】
いくつかの実施形態では、対象は、皮膚病変を有する。いくつかの実施形態では、皮膚病変は、皮膚転移である。
【0024】
いくつかの実施形態では、対象は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で薬剤に結合したAAを投与される;例えば、投与量は6mg/kg超である;投与量は約7mg/kgである;投与量は約8mg/kgである;投与量は約9mg/kgである;投与量は約10mg/kgである。
【0025】
いくつかの実施形態では、対象は、6mg/kg超~約7mg/kgの投与量で薬剤に結合したAAを投与される;例えば、投与量は約7mg/kg~約8mg/kgである;投与量は約8mg/kg~約9mg/kgである;投与量は約9mg/kg~約10mg/kgである;投与量は6mg/kg超~約8mg/kgである;投与量は7mg/kg~約9mg/kgである;投与量は約8mg/kg~約10mg/kgである。
【0026】
いくつかの実施形態では、対象は、約240mg超~約1000mgの固定用量または約240mg超~約400mgの固定用量、または約600mg超~約1000mgの固定用量または約240mg超~約600mg超の固定用量で薬剤に結合したAAを投与される;例えば、投与される固定用量は、約280mg~約700mgである;投与される固定用量は、約320mg~約800mgである;投与される固定用量は、約360mg~約900mgである;投与される固定用量は、約400mg~約1000mgである;投与される固定用量は、約240mg超~約280mgである;投与される固定用量は、約280mg~約320mgである;投与される固定用量は、約320mg~約360mgである;投与される固定用量は、約360mg~約400mgである;投与される固定用量は、約600mg超~約700mgである;投与される固定用量は、約700mg~約800mgである。投与される固定用量は、約800mg~約900mgである;投与される固定用量は、約900mg~約1000mgである;投与される固定用量は、約240mg超~約320mgである;投与される固定用量は、約280mg~約360mgである;投与される固定用量は、約320mg~約400mgである;投与される固定用量は、約600mg超~約800mgである;投与される固定用量は、約700mg~約900mgである;投与される固定用量は、約800mg~約1000mgである。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象は、約360mg超~約600mgの固定用量で薬剤に結合したAAを投与される;例えば、投与される固定用量は、約360mg超~約420mgである;投与される固定用量は、約420mg~約480mgである;投与される固定用量は、約480mg~約540mgである;投与される固定用量は、約540mg~約600mgである;投与される固定用量は360超~約480mgである;投与される固定用量は、約420mg~約540mgである;投与される固定用量は、約480mg~約600mgである。
【0028】
いくつかの実施形態では、対象は、約480mg超~約800mgの固定用量で薬剤に結合したAAを投与される;例えば、投与される固定用量は、約480mg超~約560mgである;投与される固定用量は、約560mg~約640mgである;投与される固定用量は、約640mg~約720mgである;投与される固定用量は、約720mg~約800mgである;投与される固定用量は480超~約560mgである;投与される固定用量は、約560mg~約720mgである;投与される固定用量は、約640mg~約800mgである。
【0029】
いくつかの実施形態では、対象は、薬剤に結合したAAを静脈内に投与される;いくつかの実施形態では、対象は、薬剤に結合したAAを21日毎に静脈内に投与される;いくつかの実施形態では、対象は、薬剤に結合したAAを14日毎に静脈内に投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象は、薬剤に結合したAAを、対象の実際の体重を基準にした投与量で投与される。いくつかの実施形態では、対象は、薬剤に結合したAAを、対象の調節された理想体重を基準にした投薬量で投与される。
【0031】
いくつかの実施形態では、対象は、1種または複数の予防的処置が投与されて、眼の有害事象を低減または防止される;いくつかの実施形態では、1種または複数の予防的処置は、毎日投与される;いくつかの実施形態では、予防処置は、潤滑用人工涙液、酒石酸ブリモニジン点眼液、眼に対する冷湿布の適用、および局所ステロイド点滴薬からなる群より選択される1種または複数の治療である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】腫瘍特異的プロテアーゼが存在する腫瘍微小環境において選択的に活性化される活性化可能抗CD166抗体薬物複合体を示す図である。
図2】免疫組織化学(IHC)によるヒト腫瘍試料でのCD166の発現を示す。
図3】TNBCマウス腫瘍モデルにおける活性化可能抗CD166抗体薬物複合体および抗CD166抗体薬物複合体の抗腫瘍活性を示す図である。免疫組織化学的検査(IHC)により、CD166発現も示されている。(AADC=活性化可能抗CD166抗体薬物複合体;ADC=抗CD166薬物複合体)
図4】マウス腫瘍モデルにおける活性化可能抗CD166抗体薬物複合体および抗CD166抗体薬物複合体の抗腫瘍活性を示す図である。IHCにより、CD166発現も示されている。
図5】卵巣癌のマウス患者由来異種移植(PDX)モデルにおける、活性化可能抗CD166抗体薬物複合体および抗CD166抗体薬物複合体の抗腫瘍活性を示す図である。IHCにより、CD166発現も示されている。
図6】活性化可能抗CD166抗体薬物複合体のパートAおよびパートB臨床試験デザインを示す図である。
図7A-B】腫瘍における活性化可能抗CD166抗体の選択的活性化を示す図である。
図8A-B】マトリプターゼ(MT-SP1)またはMMP14によって部分的に活性化された、活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の未活性化型および活性型の分離を示す図である。
図9A-F】ヒト対象における活性化可能抗CD166抗体薬物複合体投与後の経時的な様々な分析物の血清レベルの例示的な薬物動態データを示す図である。
図10A-D】本開示の活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の投与後のヒト対象における腫瘍病変測定値のベースラインからの最良の変化の例示的結果を示す図である。
図11A-C】本開示の活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の投与後の乳癌のヒト対象における腫瘍病変測定値のベースラインからの最良の変化の例示的結果を示す図である。
図12A-B】患者の腫瘍中のCD166発現レベルで分類した、本開示の活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の投与後のヒト対象における腫瘍病変測定値のベースラインからの最良の変化の例示的結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)としても知られるCD166に特異的に結合する活性化可能モノクローナル抗体を提供する。いくつかの実施形態では、活性化可能モノクローナル抗体は、CD166を含む細胞によって内部に取り込まれる。CD166は、スカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)タンパク質スーパーファミリー(SRCRSF)に属する細胞表面受容体であるCD6に結合する細胞接着分子である。CD166は、細胞間相互作用、細胞-マトリックス相互作用、細胞接着、細胞遊走、T細胞の活性化および増殖に関連することが知られている。CD166の異常発現および/または活性ならびにCD166関連シグナル伝達は、癌、炎症、および自己免疫などの多くの疾患および障害の病因に結びつけられてきた。例えば、CD166は、例えば前立腺癌、乳癌、NSCLCおよび/またはSCLCなどの肺癌、中咽頭癌、子宮頸癌、およびHNSCCなどの頭頸部癌など、様々な種類の癌で高発現している。
【0034】
本開示は、異常なCD166の発現および/または活性に関連する疾患または障害の症状を治療する、予防する、症状の進行を遅延させる、症状を改善するおよび/または緩和する方法に有用な活性化可能抗CD166抗体を提供する。例えば、活性化可能抗CD166抗体は、癌または他の腫瘍状態の症状を治療する、予防する、症状の進行を遅延させる、症状を改善するおよび/または緩和する方法で使用される。
【0035】
本開示は、CD166の発現に関連する疾患または障害の症状を治療する、予防する、症状の進行を遅延させる、症状を改善するおよび/または緩和する方法に有用な活性化可能抗CD166抗体を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、異常CD166発現および/または活性に関連している。いくつかの実施形態では、細胞は、正常なCD166発現および/または活性に関連している。例えば、活性化可能抗CD166抗体は、癌または他の腫瘍状態の症状を治療する、予防する、症状の進行を遅延させる、症状を改善するおよび/または緩和する方法で使用される。
【0036】
本開示は、疾患細胞がCD166を発現している疾患または障害の症状を治療する、予防する、症状の進行を遅延させる、症状を改善するおよび/または緩和する方法に有用な活性化可能抗CD166抗体を提供する。いくつかの実施形態では、疾患細胞は、異常CD166発現および/または活性に関連している。いくつかの実施形態では、疾患細胞は、正常なCD166発現および/または活性に関連している。例えば、活性化可能抗CD166抗体は、癌または他の腫瘍状態の症状を治療する、予防する、症状の進行を遅延させる、症状を改善するおよび/または緩和する方法で使用される。
【0037】
活性化可能抗CD166抗体は、マスキング部分(MM)に結合されているCD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、MMが結合することにより、抗体またはその抗原結合フラグメントがCD166に結合する能力を低下させるようになる。MMは、プロテアーゼ、例えば、対象の治療部位においてCD166と共存下のプロテアーゼ、の基質を含む配列(切断可能部分、CM)を介して抗体/抗原結合フラグメントに結合される。
【0038】
定義
特に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。「a」実体または「an」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を指す。例えば、化合物は、1種または複数の化合物を指す。したがって、「a」、「an」、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」という用語は同義的に使用され得る。さらに、文脈により別義が要求されない限り、単数用語は複数を含むものとし、複数用語は単数を含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチドの化学およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、および技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクションなど)には標準的な手法が用いられる。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様に従って、または当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実施される。前述の技術および手順は、一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書全体を通して引用され、考察されている様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているとおりに実施される。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照のこと。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、および医薬品化学(medicinal and pharmaceutical chemistry)に関連して利用される命名法、ならびにこれらの実験室の手順および技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。標準的な手法は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、配合、送達、および対象の治療に使用される。
【0039】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0040】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的な活性部分、例えば、免疫グロブリン(Ig)分子の抗原結合部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(抗原に対して免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を指す。「特異的に結合する」または「免疫反応する」または「免疫特異的に結合する」とは、抗体が所望の抗原の1個または複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドと反応しないか、またははるかに低い親和性(K>10-6)で結合することを意味する。抗体としては、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ドメイン抗体、単鎖、Fab、およびF(ab’)フラグメント、scFv、およびFab発現ライブラリーが挙げられる。
【0041】
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが既知である。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を画定する。一般に、ヒトから得られた抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのクラスのいずれかに関連し、これらは、分子内に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスは、IgG、IgGなどのサブクラスも有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はカッパ鎖またはラムダ鎖であり得る。
【0042】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」(mAb)または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、固有の軽鎖遺伝子産物および固有の重鎖遺伝子産物からなる、1つの分子種のみの抗体分子を含む抗体分子の集団を指す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、集団のすべての分子で同一である。MAbは、それに対する固有の結合親和性により特徴付けられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0043】
「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と称される重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に異なるストレッチは、「フレームワーク領域」または「FR」として知られる、より保存された隣接拡張部間に挿入される。したがって、用語「FR」は、免疫グロブリンの超可変領域間に、およびそれに隣接して天然で認められるアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、抗原結合表面を形成するために3次元空間で互いに対して配置される。抗原結合表面は、結合された抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda、Md.(1987年および1991年))、またはChothia&Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987年)、Chothiaら、Nature 342:878-883(1989年)の定義に従う。
【0044】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体に特異的に結合することができるあらゆるタンパク質決定基を含む。「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができるあらゆるタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの化学的に活性な分子表面基で構成されており、通常、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端ペプチドまたはC末端ペプチドに対して産生させ得る。解離定数が1μm以下、いくつかの実施形態では、100nM以下、いくつかの実施形態では、10nM以下の場合、抗体は抗原に特異的に結合すると言われる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」、「免疫学的結合」、および「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じるタイプの非共有結合相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(K)で表すことができ、Kが小さいほど親和性が高いことを示す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の方法を使用して定量化できる。このような方法の1つは、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度を測定することを伴う。これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響を与える幾何学的パラメーターに依存する。したがって、「オン速度定数」(Kon)および「オフ速度定数」(Koff)は両方とも、濃度、ならびに会合および解離の実際の速度を計算することによって決定され得る(Nature 361:186-87(1993年)を参照されたい)。Koff/Konの比率は、親和性に関係のないすべてのパラメーターを解除することができ、また、解離定数Kdと等しい(一般に、Daviesら(1990年)Annual Rev Biochem 59:439-473を参照されたい)。本開示の抗体は、放射性リガンド結合アッセイまたは当業者に既知の同様のアッセイなどのアッセイによって測定した場合、結合定数(K)が1μM以下、いくつかの実施形態では100nM以下、いくつかの実施形態では10nM以下、いくつかの実施形態では100pM以下~約1pMである場合、標的に特異的に結合すると言われる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、または合成起源のポリヌクレオチド、またはそれらのいくつかの組み合わせを意味するものとする。その起源により「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が天然で認められるポリヌクレオチドの全てまたは一部と関連していないか、(2)天然では連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されているか、または(3)天然では、より大きい配列の一部としては発生しない。本開示によるポリヌクレオチドは、本明細書に示される重鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子、および本明細書に示される軽鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子を含む。
【0047】
本明細書で言及される「単離されたタンパク質」という用語は、cDNA、組換えRNA、または合成起源またはそれらのいくつかの組み合わせのタンパク質を意味し、その起源または誘導源により、「単離されたタンパク質」は、(1)天然で認められるタンパク質には関連していないか、(2)同じ供給源の他のタンパク質を含まない、例えばマウスタンパク質を含まないか、(3)異なる種からの細胞によって発現されるか、または(4)天然で発生しない。
【0048】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、ポリペプチド配列の天然のタンパク質、フラグメント、または類似体を指す総称として使用される。したがって、天然のタンパク質フラグメントおよび類似体は、ポリペプチド属の種である。本開示によるポリペプチドは、本明細書に示される重鎖免疫グロブリン分子、および本明細書に示される軽鎖免疫グロブリン分子、ならびに重鎖免疫グロブリン分子と軽鎖免疫グロブリン分子、例えばカッパ軽鎖免疫グロブリン分子およびその逆を含む組み合わせによって形成される抗体分子、ならびにそれらのフラグメントおよび類似体を含む。
【0049】
本明細書において目的物に適用される「天然に存在する」という用語は、物体を天然で見つけることができることを意味する。例えば、天然の供給源から単離することができ、実験室その他において人によって意図的に改変されていない生物(ウイルスなど)内に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然起源である。
【0050】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、そのように記述された構成要素の位置を指し、それらを意図された様式で機能させることができる関係にあることを指す。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合する条件下で達成されるように連結される。
【0051】
本明細書で使用される「制御配列」という用語は、それらが連結されるコード配列の発現およびプロセシングを行うのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、原核生物内の宿主生物に依存し、このような制御配列としては、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および真核生物内の転写終結配列が挙げられ、一般的に、このような制御配列としては、プロモーターおよび転写終結配列が挙げられる。「制御配列」という用語は、少なくとも、その存在が発現およびプロセッシングに必須であるすべての成分を含むことを意図しており、その存在が有益である追加の成分、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。本明細書で言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも10塩基長のヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾された形態を意味する。この用語は、一本鎖および二本鎖の形態のDNAを含む。
【0052】
本明細書で言及されるオリゴヌクレオチドという用語は、天然に存在するヌクレオチド、および天然に存在するオリゴヌクレオチドの結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチドの結合によって共に結合されている修飾ヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドは、一般に、200塩基以下の長さを含むポリヌクレオチドサブセットである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、長さが10~60塩基であり、いくつかの実施形態では、長さが12、13、14、15、16、17、18、19、または20~40塩基である。オリゴヌクレオチドは通常、例えば、プローブ用に一本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築に使用するために二本鎖であり得る。本開示のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかである。
【0053】
本明細書で言及される「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「修飾型ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書で言及される用語「オリゴヌクレオチド連結」には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレルロエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロンミデートなどのオリゴヌクレオチド連結を含む。例えば、LaPlanche et al.Nucl.Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984),Stein et al.Nucl.Acids Res.16:3209(1988),Zon et al.Anti Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al.Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.U.S.Patent No.5,151,510;Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543(1990)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、検出のための標識を含み得る。
【0054】
本明細書で使用する場合、20個の従来のアミノ酸およびそれらの略語は従来の用法に従う。Immunology-A Synthesis(第2版、E.S.Golub and D.R.Green、編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass(1991年))を参照されたい。20個の従来のアミノ酸、α-、α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、および他の従来のものではないアミノ酸などの非天然アミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)も、本開示のポリペプチドの好適な成分であり得る。従来のものではないアミノ酸の例として、以下が挙げられる:4ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリシン、ε-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、σ-N-メチルアルギニン、および他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)。本明細書で使用されるポリペプチド表記では、標準の使用法および慣例に従って、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0055】
同様に、特に明記しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は5’方向と称される。新生RNA転写産物の5’方向から3’方向への付加は、転写方向配列と称され、RNAと同じ配列を有し、RNA転写産物の5’から5’末端にあるDNA鎖の配列領域は、「上流配列」と称され、RNAと同じ配列を有し、RNA転写産物の3’から3’末端にあるDNA鎖の配列領域は、「下流配列」と称される。
【0056】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的に同一である」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ加重を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどにより最適に整列された場合、少なくとも80%の配列同一性、いくつかの実施形態では、少なくとも90%の配列同一性、いくつかの実施形態では、少なくとも95%の配列同一性、いくつかの実施形態では、少なくとも99%の配列同一性を共有していることを意味する。
【0057】
いくつかの実施形態では、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0058】
本明細書で考察されるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列のわずかな変化は、本開示に包含されるものと考えられ、アミノ酸配列の変化は、少なくとも75%、いくつかの実施形態では少なくとも80%、90%、95%、およびいくつかの実施形態では99%を維持することを条件とする。特に、保存的アミノ酸置換が意図される。保存的置換とは、側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般的に次のファミリーに分類される:(1)酸性アミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸である、(2)塩基性アミノ酸はリシン、アルギニン、ヒスチジンである、(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンである、および(4)非荷電極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、グルタミン、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リシン、セリン、およびトレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸としては、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが挙げられる。アミノ酸の他のファミリーとしては、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリンおよびスレオニン、(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギンおよびグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ならびに(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシン、グルタミン酸塩によるアスパラギン酸塩、セリンによるトレオニンの単独置換、または構造的に関連したアミノ酸によるアミノ酸の同様の置換は、特に置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を伴わない場合、得られる分子の結合または特性に大きな影響を有さないと予測することが合理的である。アミノ酸の変化が機能性ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の比活性をアッセイすることにより容易に判断され得る。アッセイは、本明細書において詳細に記載している。抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたは類似体は、当業者によって容易に調製され得る。フラグメントまたは類似体の好適なアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に生じる。構造的ドメインおよび機能的ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公開配列データベースまたは独自の配列データベースと比較することにより同定され得る。いくつかの実施形態では、コンピューター化された比較方法を使用して、既知の構造および/または機能の他のタンパク質において生じる配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンフォメーションドメインを同定する。既知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は、既知である。Bowie et al.Science 253:164(1991)。したがって、前述の例は、当業者が、本開示に従って構造的ドメインおよび機能的ドメインを決定するために使用できる配列モチーフおよび構造コンフォメーションを認識できることを実証している。
【0059】
好適なアミノ酸置換は、以下のものである:(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させること、(2)酸化に対する感受性を低下させること、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させること、(4)結合親和性を変化させること、および(5)このような類似体の他の物理化学的特性または機能的特性を付与するか、または変更すること。類似体としては、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々なムテインを挙げることができる。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列(例えば、分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分)で行われ得る。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させてはならない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に生じるらせんを破壊する傾向のないものとするか、または親配列を特徴とする他のタイプの二次構造を破損させる傾向がないものとする)。技術的に認められたポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));およびThornton et al.Nature 354:105(1991)に記載されている。
【0060】
本明細書で使用される用語「ポリペプチドフラグメント」は、例えば、完全長のcDNA配列から導き出される天然に存在する配列内において、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失、および/または1つまたは複数の内部欠失を有するが、残りのアミノ酸配列が対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。フラグメントは、典型的には少なくとも5、6、8または10アミノ酸長であり、いくつかの実施形態では少なくとも14アミノ酸長であり、いくつかの実施形態では少なくとも20アミノ酸長であり、通常少なくとも50アミノ酸長であり、いくつかの実施形態では、少なくとも70アミノ酸長である。本明細書で使用される用語「類似体」は、推定されるアミノ酸配列の一部分に対する実質的な同一性を有し、かつ好適な結合条件下で標的に対する特異的結合を有する少なくとも25個のアミノ酸のセグメントから構成されるポリペプチドを指す。通常、ポリペプチド類似体は、天然に存在する配列に対して、保存的アミノ酸置換(または付加または欠失)を含む。類似体は、通常少なくとも20アミノ酸長であり、いくつかの実施形態では少なくとも50アミノ酸長以上であり、多くの場合、完全長の天然に存在するポリペプチドと同じ長さであり得る。
【0061】
用語の「薬剤」は、本明細書では、化学化合物、化学化合物の混合物、生体巨大分子、または生体材料からの抽出物を示すために使用される。
【0062】
本明細書で使用する「標識」または「標識された」という用語は、例えば、放射標識されたアミノ酸の組み込みによる、またはマークされたアビジン(例えば、光学的方法または熱量測定法によって検出できる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出できるビオチニル部分のポリペプチドへの結合による検出可能なマーカーの組み込みを指す。特定の状況では、標識またはマーカーも治療薬となり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野において既知であり、使用し得る。ポリペプチドの標識の例として、これらに限定されないが、放射性同位元素または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられる。いくつかの実施形態では、標識は、潜在的な立体障害を減少させるために、様々な長さのスペーサーアームによって結合される。本明細書で使用される用語「医薬品または薬物」は、対象に適切に投与されたときに所望の治療効果を誘導することができる化学化合物または組成物を指す。
【0063】
本明細書の他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw-Hill,San Francisco(1985))に例示される当技術分野における従来の用法に従って使用される。
【0064】
本明細書で使用される「実質的に純粋な」は、対象種が存在している優勢な種であることを意味し(すなわち、モル基準で、組成物中の他の個々のいかなる種よりも豊富である)、いくつかの実施形態では、実質的に精製された画分は、存在するすべての巨大分子種の少なくとも約50パーセント(モル基準)が対象種である組成物である。
【0065】
一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての巨大分子種の約80パーセント超、いくつかの実施形態では約85%、90%、95%、および99%超を含む。いくつかの実施形態では、対象種は、本質的に均一になり、組成物が本質的に単一の高分子種からなるまで(従来の検出方法では、組成物中に汚染種が検出され得ない)精製する。
用語のヒト対象および獣医学対象。
【0066】
活性化可能抗体(AA)
本開示は、哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)を含むAAを提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、哺乳動物CD166は、ヒトCD166およびカニクイザルCD166からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ABは、1nM未満の解離定数でヒトCD166またはカニクイザルCD166に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、哺乳動物CD166は、ヒトCD166である。いくつかの実施形態では、哺乳動物CD166は、カニクイザルCD166である。いくつかの実施形態では、ABは以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:(a)ABはヒトCD166に特異的に結合する;および(b)ABは、ヒトCD166およびカニクイザルCD166に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ABは以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:(a)ABは、ヒトCD166およびカニクイザルCD166に特異的に結合する;(b)ABは、哺乳動物CD6の哺乳動物CD166への結合を抑制する;(c)ABは、ヒトCD6のヒトCD166への結合を抑制する;および(d)ABは、カニクイザルCD6のカニクイザルCD166への結合を抑制する。
【0068】
いくつかの実施形態では、ABは、天然のリガンドまたは受容体の、5nM以下、10nM以下、50nM以下、100nM以下、500nM以下、および/または1000nM以下のEC50で哺乳動物CD166に結合する能力を遮断する。いくつかの実施形態では、ABは、哺乳動物CD6の、5nM以下、10nM以下、50nM以下、100nM以下、500nM以下、および/または1000nM以下のEC50で哺乳動物CD166に結合する能力を遮断する。いくつかの実施形態では、CD166の天然のリガンドまたは受容体はCD6である。
【0069】
いくつかの実施形態では、ABは、5nM~1000nM、5nM~500nM、5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~10nM、10nM~1000nM、10nM~500nM、10nM~100nM、10nM~50nM、50nM~1000nM、50nM~500nM、50nM~100nM、100nM~1000nM、100nM~500nM、150nM~400nM、200nM~300nM、500nM~1000nMのEC50で哺乳動物CD166に結合する天然リガンドの能力を遮断する。いくつかの実施形態では、ABは、5nM~1000nM、5nM~500nM、5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~10nM、10nM~1000nM、10nM~500nM、10nM~100nM、10nM~50nM、15nM~75nM、30nM~80nM、40nM~150nM、50nM~1000nM、50nM~500nM、50nM~100nM、100nM~1000nM、100nM~500nM、150nM~400nM、200nM~300nM、500nM~1000nMのEC50で哺乳動物CD6が哺乳動物CD166に結合する能力を遮断する。いくつかの実施形態では、CD166の天然のリガンドまたは受容体はCD6である。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示のABは、哺乳動物CD166を発現する細胞の成長、増殖、および/または転移を抑制するか、または低減させる。いかなる理論によっても拘束されるものではないが、本開示のABは、CD166に特異的に結合し、哺乳動物CD166に対する天然のリガンドまたは受容体の結合を抑制、遮断、および/または防止することにより、哺乳動物CD166を発現する細胞の成長、増殖、および/または転移を抑制または低減し得る。いくつかの実施形態では、哺乳動物CD166の天然のリガンドまたは受容体は、哺乳動物CD6である。
【0071】
AAの抗体またはその抗原結合フラグメントは、マスキング部分(MM)に結合される。MMが結合することにより、抗体またはその抗原結合フラグメントのCD166と結合する能力を低下させるようになる。いくつかの実施形態では、MMは、プロテアーゼ、例えば、患部組織中で活性なおよび/または対象の治療部位でCD166と共存するプロテアーゼのための基質を含む配列を介して結合される。本明細書で提供される活性化可能抗CD166抗体(本明細書では、抗CD166AAまたはCD166活性化可能抗体とも同義的に称される)は、循環中で安定であり、意図された治療および/または診断部位で活性化されるが、正常な、例えば、健康な組織または治療および/もしくは診断の標的ではない他の組織では活性化されず、また、活性化されたとき、対応する非改変抗体(本明細書では親抗体とも呼ばれる)に少なくとも匹敵するCD166への結合を示す。
【0072】
本開示は、AA内で使用するための、哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)を提供する。いくつかの実施形態では、抗体としては、CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが挙げられる。いくつかの実施形態では、CD166に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、単鎖、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、scAb、dAb、単一ドメイン重鎖抗体、または単一ドメイン軽鎖抗体である。いくつかの実施形態では、CD166に結合するこのような抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス、他のげっ歯類、キメラ、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0073】
したがって、本明細書で提供されるのは、(1)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)と、ABに結合されたマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166へのABの結合を抑制するMMと、ABに結合された切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであるCMと、を含む活性化可能抗体(AA)である。
【0074】
本開示のAA中の抗体(AB)は、例えば、哺乳動物CD166および/またはヒトCD166などのCD166標的に特異的に結合する。
【0075】
いくつかの実施形態では、ABは、哺乳動物CD166への結合について、約100nM以下の解離定数を有する。いくつかの実施形態では、ABは、哺乳動物CD166への結合について、約10nM以下の解離定数を有する。いくつかの実施形態では、ABは、CD166への結合について、約5nM以下の解離定数を有する。いくつかの実施形態では、ABは、CD166への結合について、約1nM以下の解離定数を有する。いくつかの実施形態では、ABは、CD166への結合について、約0.5nM以下の解離定数を有する。いくつかの実施形態では、ABは、CD166への結合について、約0.1nM以下の解離定数を有する。いくつかの実施形態では、ABは、哺乳動物CD166への結合について、0.01nM~100nM、0.01nM~10nM、0.01nM~5nM、0.01nM~1nM、0.01~0.5nM、0.01nm~0.1nM、0.01nm~0.05nM、0.05nM~100nM、0.05nM~10nM、0.05nM~5nM、0.05nM~1nM、0.05~0.5nM、0.05nm~0.1nM、0.1nM~100nM、0.1nM~10nM、0.1nM~5nM、0.1nM~1nM、0.1~0.5nM、0.5nM~100nM、0.5nM~10nM、0.5nM~5nM、0.5nM~1nM、1nM~100nM、1nM~10nM、1nM~5nM、5nM~100nM、5nM~10nM、または10nM~100nMの解離定数を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAは、1nM以下、5nM以下、10nM以下、15nM以下、20nM以下、25nM以下、50nM以下、100nM以下、150nM以下、250nM以下、500nM以下、750nM以下、1000nM以下、および122/または2000nM以下の解離定数で哺乳動物CD166に特異的に結合する。
【0077】
いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAは、1nM以上、5nM以上、10nM以上、15nM以上、20nM以上、25nM以上、50nM以上、100nM以上、150nM以上、250nM以上、500nM以上、750nM以上、1000nM以上、および122/または2000nM以上の解離定数で哺乳動物CD166に特異的に結合する。
【0078】
いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAは、1nM~2000nM、1nM~1000nM、1nM~750nM、1nM~500nM、1nM~250nM、1nM~150nM、1nM~100nM、1nM~50nM、1nM~25nM、1nM~15nM、1nM~10nM、1nM~5nM、5nM~2000nM、5nM~1000nM、5nM~750nM、5nM~500nM、5nM~250nM、5nM~150nM、5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~25nM、5nM~15nM、5nM~10nM、10nM~2000nM、10nM~1000nM、10nM~750nM、10nM~500nM、10nM~250nM、10nM~150nM、10nM~100nM、10nM~50nM、10nM~25nM、10nM~15nM、15nM~2000nM、15nM~1000nM、15nM~750nM、15nM~500nM、15nM~250nM、15nM~150nM、15nM~100nM、15nM~50nM、15nM~25nM、25nM~2000nM、25nM~1000nM、25nM~750nM、25nM~500nM、25nM~250nM、25nM~150nM、25nM~100nM、25nM~50nM、50nM~2000nM、50nM~1000nM、50nM~750nM、50nM~500nM、50nM~250nM、50nM~150nM、50nM~100nM、100nM~2000nM、100nM~1000nM、100nM~750nM、100nM~500nM、100nM~250nM、100nM~150nM、150nM~2000nM、150nM~1000nM、150nM~750nM、150nM~500nM、150nM~250nM、250nM~2000nM、250nM~1000nM、250nM~750nM、250nM~500nM、500nM~2000nM、500nM~1000nM、500nM~750nM、500nM~500nM、500nM~250nM、500nM~150nM、500nM~100nM、500nM~50nM、750nM~2000nM、750nM~1000nM、または1000nM~2000nMの範囲の解離定数で哺乳動物CD166に特異的に結合する。
【0079】
いくつかの実施形態では、活性化状態のAAは、解離定数が0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、1nM、5nM、または10nM以下の解離定数で、哺乳動物CD166に特異的に結合する。
【0080】
いくつかの実施形態では、活性化状態のAAは、解離定数が0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、1nM、5nM、または10nM以上の解離定数で、哺乳動物CD166に特異的に結合する。
【0081】
いくつかの実施形態では、活性化状態のAAは、0.01nM~100nM、0.01nM~10nM、0.01nM~5nM、0.01nM~1nM、0.01~0.5nM、0.01nm~0.1nM、0.01nm~0.05nM、0.05nM~100nM、0.05nM~10nM、0.05nM~5nM、0.05nM~1nM、0.05~0.5nM、0.05nm~0.1nM、0.1nM~100nM、0.1nM~10nM、0.1nM~5nM、0.1nM~1nM、0.1~0.5nM、0.5nM~100nM、0.5nM~10nM、0.5nM~5nM、0.5nM~1nM、1nM~100nM、1nM~10nM、1nM~5nM、5nM~100nM、5nM~10nM、または10nM~100nMの範囲の解離定数で哺乳動物CD166に特異的に結合する。
【0082】
本発明の例示的な活性化可能抗CD166抗体には、例えば、下記に示す重鎖可変アミノ酸配列および軽鎖可変アミノ酸配列を含むかまたはこれらに由来する重鎖および軽鎖を含む活性化可能抗体(AA)が含まれる:
【化1】
【0083】
いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、対応する抗体の半減期よりも長く、例えば、AAのpKは対応する抗体のpKよりも長い。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、対応する抗体の半減期とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも15日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも12日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも11日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも10日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも9日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも8日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも7日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも6日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも5日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも4日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも3日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも2日である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも24時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも20時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも18時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも16時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも14時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも12時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも10時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも8時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも6時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも4時間である。いくつかの実施形態では、AAの血清半減期は、生物に投与された場合、少なくとも3時間である。
【0084】
例示的活性化可能抗体
例示的な実施形態では、本開示のAAは、以下の配列のいずれか1種または複数を含む:
【化2】
【0085】
例示的実施形態では、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、(b)ABに結合されたマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166へのABの結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、(c)ABに結合された切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMと、を含む。
【0086】
例示的実施形態では、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号246のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含み、spdbリンカーを介してDM4に結合している(この例示的な複合化AAは、本明細書では「スペーサー-7614.6-3001-HcCD166-SPDB-DM4」と呼ばれ、「組み合わせ55」とも呼ばれる)。リンカー毒素SPDB-DM4は、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ブタノエート-N2’-デアセチル-N2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシンとしても知られる。
【0087】
別の例示的実施形態では、AAは、(a)哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号314のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含み、さらにspdbリンカーを介してDM4に結合している。この例示的な複合化AAは、本明細書では「7614.6-3001-HcCD166-SPDB-DM4」と呼ばれ、「組み合わせ60」とも呼ばれる)。
【0088】
マスキング部分(MM)
本明細書に記載の活性化可能抗CD166抗体は、抗体治療薬、特にインビボで少なくとも幾分毒性であることが知られている抗体治療薬の制限を克服する。標的を介した毒性は、治療抗体の開発にとって大きな制限となる。本明細書で提供される活性化可能抗CD166抗体は、従来の治療用抗体による正常組織中の標的の阻害に関連する毒性に対処するように設計されている。これらの活性化可能抗CD166抗体は、疾患部位でタンパク質分解的に活性化されるまでマスキングされたままである。親治療用抗体としての抗CD166抗体から始めて、本発明の活性化可能抗CD166抗体を、プロテアーゼ基質(CM)を組み込んだリンカーを介して抗体を抑制性マスク(マスキング部分MM)に結合することにより改変させた。
【0089】
したがって、本明細書で提供される活性化可能抗CD166抗体は、マスキング部分(MM)を含む。いくつかの実施形態では、MMは、抗CD166抗体に結合しているか、別の方法で抗CD166抗体に取り付けられているアミノ酸配列であり、活性化可能抗CD166抗体構築物内に位置付けられ、これにより、MMが、CD166に特異的に結合する抗CD166抗体の能力を低下させるようになる。好適なマスキング部分は、種々の既知の技術のいずれかを用いて特定される。例えば、ペプチドマスキング部分は、Daughertyらによる国際公開第WO2009/025846号に記載されている方法(本内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を使用して特定される。
【0090】
いくつかの実施形態では、CD166の存在下で、MMは、例えば、国際公開第WO2010/081173号(この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のアッセイなど、標的置換アッセイを使用してインビトロでアッセイした場合に、CMが切断される場合と比較して、CMが切断されていないときに、ABのCD166への結合能力を少なくとも90%低下させる。
【0091】
いくつかの実施形態では、MMは、2~40個のアミノ酸長さのポリペプチドである。いくつかの実施形態では、MMは、最大40個のアミノ酸長さのポリペプチドである。
【0092】
いくつかの実施形態では、MMポリペプチド配列は、CD166とは異なる。いくつかの実施形態では、MMポリペプチド配列は、ABのいずれかの天然の結合パートナーと50%以下の同一性である。いくつかの実施形態では、MMポリペプチド配列は、CD166の配列とは異なり、ABのいずれかの天然の結合相手に対し40%、30%、25%、20%、15%、または10%以下の同一性である。
【0093】
一例示的実施形態では、本明細書において提供されるAAは、MMを含み、そのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化3】
【0094】
ABがMMで修飾され、標的の存在下にある場合、MMで修飾されていないABの特異的結合または親ABの標的への特異的結合と比較して、ABの標的への特異的結合は減少または抑制される。
【0095】
MMにより修飾されたABの標的に対するKは、MMにより修飾されていないABまたは親ABの標的に対するKの少なくとも5、10、25、50、100、250、500、1,000、2,500、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000、1,000,000、5,000,000、10,000,000、50,000,000、もしくはそれ以上、または5~10、10~100、10~1,000、10~10,000、10~100,000、10~1,000,000、10~10,000,000、25~50、50~250、100~1,000、100~10,000、100~100,000、100~1,000,000、100~10,000,000、500~2,500、1,000~10,000、1,000~100,000、1,000~1,000,000、1000~10,000,000、2,500~5,000、5,000~50,000、10,000~100,000、10,000~1,000,000、10,000~10,000,000、50,000~5,000,000、100,000~1,000,000、もしくは100,000~10,000,000倍以上である。逆に、MMにより修飾されたABの標的に対する結合親和性は、MMにより修飾されていないABまたは親ABの標的に対する結合親和性よりも少なくとも2、3、4、5、10、25、50、100、250、500、1,000、2,500、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000、1,000,000、5,000,000、10,000,000、50,000,000もしくはそれ以上、または5~10、10~100、10~1,000、10~10,000、10~100,000、10~1,000,000、10~10,000,000、25~50、50~250、100~1,000、100~10,000、100~100,000、100~1,000,000、100~10,000,000、500~2,500、1,000~10,000、1,000~100,000、1,000~1,000,000、1000~10,000,000、2,500~5,000、5,000~50,000、10,000~100,000、10,000~1,000,000、10,000~10,000,000、50,000~5,000,000、100,000~1,000,000、もしくは100,000~10,000,000倍低い。
【0096】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも2倍大きい。
【0097】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも5倍大きい。
【0098】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも10倍大きい。
【0099】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも20倍大きい。
【0100】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも40倍大きい。
【0101】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも100倍大きいものとなる。
【0102】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも1000倍大きいものとなる。
【0103】
いくつかの実施形態では、MMがABに結合することにより、CD166に結合するABの能力が低下し、これにより、CD166に対するMMに結合されているときのABの解離定数(K)は、CD166に対するMMに結合されていないときのABのKよりも少なくとも10,000倍大きい。
【0104】
ABに対するMMの解離定数(K)は一般に、標的に対するABのKよりも大きくなる。ABに対するMMのKは、標的に対するABのKより少なくとも5、10、25、50、100、250、500、1,000、2,500、5,000、10,000、100,000、1,000,000、またはさらには10,000,000倍大きくなり得る。逆に、ABに対するMMの結合親和性は、一般に、標的に対するABの結合親和性よりも低くなる。ABに対するMMの結合親和性は、標的に対するABの結合親和性より少なくとも5、10、25、50、100、250、500、1,000、2,500、5,000、10,000、100,000、1,000,000、またはさらには10,000,000倍低くなり得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、ABに対するMMの解離定数(Kd)は、標的に対するABのKdにほぼ等しい。いくつかの実施形態では、ABに対するMMの解離定数(Kd)は、標的に対するABの解離定数以下である。
【0106】
いくつかの実施形態では、ABに対するMMの解離定数(Kd)は、標的に対するABの解離定数よりも小さい。
【0107】
いくつかの実施形態では、ABに対するMMの解離定数(Kd)は、標的に対するABの解離定数よりも大きい。
【0108】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合のK以下である、ABへの結合のKdを有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合のKよりも小さい、ABへの結合のKdを有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合のKにほぼ等しいABへの結合のKdを有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合のK以上である、ABへの結合のKdを有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合のKdよりも大きい、ABへの結合のKを有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ABに対するMMの解離定数(K)は、ABの標的への結合のKの2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、1,000倍、2,500倍、5,000倍、10,000倍、50,000倍、100,000倍、500,000倍、1,000,000倍、5,000,000倍、10,000,000倍、50,000,000倍、もしくはそれ以上を超えることはないか、または1~5倍、5~10倍、10~100倍、10~1,000倍、10~10,000倍、10~100,000倍、10~1,000,000倍、10~10,000,000倍、25~50倍、50~250倍、100~1,000倍、100~10,000倍、100~100,000倍、100~1,000,000倍、100~10,000,000倍、25~500倍、500~2,500倍、1,000~10,000倍、1,000~100,000倍、1,000~1,000,000倍、1000~10,000,000倍、2,500~5,000倍、5,000~50,000倍、10,000~100,000倍、10,000~1,000,000倍、10,000~10,000,000倍、50,000~5,000,000倍、100,000~1,000,000倍、または100,000~10,000,000倍である。いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合のKdの1~5倍、2~5倍、2~10倍、5~10倍、5~20倍、5~50倍、5~100倍、10~100倍、10~1,000倍、20~100倍、20~1000倍、または100~1,000倍のABへの結合のKdを有する。
【0114】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性よりも低い、ABへの結合の親和性を有する。
【0115】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性以下の、ABへの結合の親和性を有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性にほぼ等しい、ABへの結合の親和性を有する。
【0117】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性以上のABへの結合の親和性を有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性よりも大きいABへの結合の親和性を有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性よりも2、3、4、5、10、25、50、100、250、500、または1,000低いABへの結合の親和性を有する。いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性よりも1~5倍、2~5倍、2~10倍、5~10倍、5~20倍、5~25倍、5~50倍、5~100倍、10~100倍、10~1,000倍、20~100倍、20~1000倍、25~250倍、50~500倍、または100~1,000倍低いABへの結合の親和性を有する。いくつかの実施形態では、MMは、ABの標的への結合の親和性よりも2~20倍低いABへの結合の親和性を有する。いくつかの実施形態では、共有結合によりABに結合せず、ABと等モル濃度であるMMは、ABの標的への結合を抑制することはない。
【0120】
ABをMMで修飾し、標的の存在下にある場合、MMで修飾されていないABの特異的結合または親ABの標的への特異的結合と比較して、ABの標的への特異的結合は低減または抑制される。MMで修飾されていないABの結合または標的への親ABの結合と比較すると、MMで修飾された場合の標的を結合するABの能力は、インビボまたはインビトロアッセイで測定した場合、少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、28時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、もしくは96時間、5日、10日、15日、30日、45日、60日、90日、120日、150日、もしくは180日、または、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月、またはそれ以上、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、さらに100%低下させ得る。
【0121】
MMは、ABの標的への結合を抑制する。MMは、ABの抗原結合ドメインに結合し、ABの標的への結合を抑制する。MMは、ABの標的への結合を立体的に抑制できる。MMは、ABの標的への結合をアロステリックに抑制できる。これらの実施形態では、インビボまたはインビトロアッセイで測定した場合、少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、28時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、もしくは96時間、または5日、10日、15日、30日、45日、60日、90日、120日、150日、もしくは180日、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、もしくは12ヶ月以上の間、MMで修飾されていないAB、親AB、またはMMに結合していないABの標的への結合と比較した場合、ABがMMによって修飾されるか、MMに結合し、標的の存在下である場合、ABは、標的に結合しないか、または実質的に結合しないか、または0.001%、0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または50%以下のABの標的への結合になるかである。
【0122】
ABがMMに結合されるか、またはMMによって修飾されるとき、MMの「マスク」により、ABの標的への特異的結合が低減されるか、あるいは、抑制される。ABがMMに結合されるか、またはMMにより修飾された場合、このような結合または修飾は、ABがその標的に特異的に結合する能力を低下させるか、または抑制する構造変化を引き起こし得る。
【0123】
MMに結合した、またはMMに修飾されたABは、次の式により表すことができる(アミノ(N)末端領域からカルボキシル(C)末端領域へ順に):
(MM)-(AB)
(AB)-(MM)
(MM)-L-(AB)
(AB)-L-(MM)
式中、MMはマスキング部分であり、ABは抗体またはその抗体フラグメントであり、Lはリンカーである。多くの実施形態では、可撓性を与えるように、1個または複数のリンカー、例えば、可撓性リンカーを組成物中に挿入することが望ましい場合がある。
【0124】
特定の実施形態では、MMは、ABの天然の結合パートナーではない。いくつかの実施形態では、MMは、ABの任意の天然の結合パートナーと相同性を全く含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、MMは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%以下、ABの任意の天然の結合パートナーと類似している。いくつかの実施形態では、MMは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%以下、ABの任意の天然の結合パートナーと同一である。いくつかの実施形態では、MMは、ABの任意の天然の結合パートナーとの同一性は、25%以下である。いくつかの実施形態では、MMは、ABの任意の天然の結合パートナーとの同一性は、50%以下である。いくつかの実施形態では、MMは、ABの任意の天然の結合パートナーとの同一性は、20%以下である。いくつかの実施形態では、MMは、ABの任意の天然の結合パートナーとの同一性は、10%以下である。
【0125】
切断可能部分(CM)
本明細書で提供される活性化可能抗CD166抗体は、切断可能部分(CM)を含む。いくつかの実施形態では、CMは、プロテアーゼ、通常は細胞外プロテアーゼ、の基質であるアミノ酸配列を含む。好適な基質は、様々な既知の技術のいずれかを使用して特定され得る。例えば、ペプチド基質は、Daughertyらによる米国特許第7,666,817号、Staglianoらによる米国特許第8,563,269号、また、La Porteらによる国際公開第WO2014/026136号(その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して同定される。(Boulware et al.“Evolutionary optimization of peptide substrates for proteases that exhibit rapid hydrolysis kinetics.” Biotechnol Bioeng.106.3(2010):339-46、も参照されたい)。
【0126】
いくつかの実施形態では、CMを切断するプロテアーゼは、疾患組織において活性があり、例えば、上方制御されているか、さもなければ制御されておらず、AAがプロテアーゼに暴露されるときに、プロテアーゼはAA中のCMを切断する。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、組織内でCD166と共存し、AAがプロテアーゼに曝露されるときに、プロテアーゼはAA中のCMを切断する。図1は、腫瘍特異的プロテアーゼが存在する腫瘍微小環境において選択的に活性化される活性化可能抗CD166抗体薬物複合体を示す。
【0127】
いくつかの実施形態では、AAは、MMによって修飾されるABを含み、1つまたは複数の切断可能部分(CM)も含む。このようなAAは、ABの標的に対して活性化可能/切り替え可能な結合を示す。AAは、一般に、マスキング部分(MM)によって修飾されているか、またはマスキング部分(MM)に結合されている抗体または抗体フラグメント(AB)、および修飾可能または切断可能部分(CM)を含む。いくつかの実施形態では、CMは、少なくとも1種のプロテアーゼの基質として機能するアミノ酸配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、CMは、最大15個のアミノ酸長さのポリペプチドである。
【0129】
いくつかの実施形態では、CMは、少なくとも1種のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)に対する基質である第1の切断可能部分(CM1)および少なくとも1種のセリンプロテアーゼ(SP)に対する基質である第2の切断可能部分(CM2)を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、CM1-CM2基質のCM1基質配列およびCM2基質配列のそれぞれは、独立に、最大15個のアミノ酸長さのポリペプチドである。
【0130】
いくつかの実施形態では、CMは、以下のアミノ酸配列で表されるCM1-CM2基質である:
【化4】
【0131】
AAのエレメントは、切断された(または比較的活性な)状態では、標的の存在下で、ABが標的に結合し、AAが切断されていない(または比較的非活性である)状態では、標的の存在下で、標的へのABの特異的結合が減少または抑制されるようにMMおよびCMが位置付けられるように配置される。ABの標的への特異的結合は、MMによりABの標的への特異的結合能力が抑制されるか、またはマスキングされることにより減少し得る。
【0132】
標的に対してMMおよびCMにより修飾されたABのKは、標的に対してMMおよびCMにより修飾されていないABのKまたは親ABのKの少なくとも5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、1,000倍、2,500倍、5,000倍、10,000倍、50,000倍、100,000倍、500,000倍、1,000,000倍、5,000,000倍、10,000,000倍、50,000,000倍もしくはそれ以上、または5~10倍、10~100倍、10~1,000倍、10~10,000倍、10~100,000倍、10~1,000,000倍、10~10,000,000倍、25~50倍、50~250倍、100~1,000倍、100~10,000倍、100~100,000倍、100~1,000,000倍、100~10,000,000倍、25~500倍、500~2,500倍、1,000~10,000倍、1,000~100,000倍、1,000~1,000,000倍、1000~10,000,000倍、2,500~5,000倍、5,000~50,000倍、10,000~100,000倍、10,000~1,000,000倍、10,000~10,000,000倍、50,000~5,000,000倍、100,000~1,000,000倍、または100,000~10,000,000倍大きい。逆に、標的に対するMMおよびCMにより修飾されたABの結合親和性は、標的に対するMMおよびCMにより修飾されていないABまたは親ABの結合親和性の少なくとも5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、1,000倍、2,500倍、5,000倍、10,000倍、50,000倍、100,000倍、500,000倍、1,000,000倍、5,000,000倍、10,000,000倍、50,000,000、もしくはそれ以上、または5~10倍、10~100倍、10~1,000倍、10~10,000倍、10~100,000倍、10~1,000,000倍、10~10,000,000倍、25~50倍、50~250倍、100~1,000倍、100~10,000倍、100~100,000倍、100~1,000,000倍、100~10,000,000倍、25~500倍、500~2,500倍、1,000~10,000倍、1,000~100,000倍、1,000~1,000,000倍、1000~10,000,000倍、2,500~5,000倍、5,000~50,000倍、10,000~100,000倍、10,000~1,000,000倍、10,000~10,000,000倍、50,000~5,000,000倍、100,000~1,000,000倍、もしくは100,000~10,000,000倍低い。
【0133】
ABがMMおよびCMにより修飾され、標的の存在下にあるが、修飾剤(例えば、少なくとも1つのプロテアーゼ)の存在下にない場合、MMおよびCMにより修飾されていないABの特異的結合、または標的への親ABの特異的結合と比較して、ABのその標的への特異的結合が減少されるか、または抑制される。親ABの結合、またはMMおよびCMにより修飾されていないABのその標的への結合と比較したとき、インビボまたはインビトロアッセイで測定した場合、MMおよびCMにより修飾されたときのABの標的結合能力は、少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、28時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、または96時間、5日、10日、15日、30日、45日、60日、90日、120日、150日、もしくは180日間、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、もしくは12ヶ月、もしくはそれ以上の間、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、およびさらには100%低下し得る。
【0134】
本明細書で使用される「切断された状態」という用語は、少なくとも1つのプロテアーゼによるCMの修飾後のAAの状態を指す。本明細書で使用される「切断されていない状態」という用語は、プロテアーゼによるCMの切断がない場合のAAの状態を指す。上述のように、「活性化可能抗体」という用語は、本明細書では、その切断されていない(ネイティブ)状態とその切断状態との両方のAAを指すために使用される。いくつかの実施形態では、プロテアーゼによるCMの切断により、切断されたAAがMMを欠く場合、少なくともMMの放出がもたらされることは当業者には明らかであろう(例えば、MMが、共有結合(例えば、システイン残基間のジスルフィド結合)によりAAに結合していない場合)。
【0135】
活性化可能または切り替え可能とは、AAが抑制されているか、マスキングされているか、または切断されていない状態(すなわち、第1のコンフォメーション)にある場合に、AAが、標的に対する第1の結合レベルを示すこと、および抑制されていない、マスキングされていない、および/または切断された状態(すなわち、第2のコンフォメーション)状態にある場合に、標的に対する第2の結合レベルを示すことを意味する。このとき、標的に対する第2の結合レベルは第1の結合レベルより大きい。一般に、AAのABに対する標的の接近は、CMを切断することができる切断剤、すなわちプロテアーゼの存在下では、このような切断剤の非存在下の場合よりも大きい。したがって、AAが切断されていない状態にある場合は、ABでは、標的の結合が抑制され、標的の結合からマスキングされ得(すなわち、第1のコンフォメーションは、ABが標的に結合できないようなものである)、切断されている状態にある場合は、ABでは、標的結合が抑制されていないか、またはマスキングされていない。
【0136】
AAのCMおよびABは、ABが所定の標的の結合部分を表し、CMがプロテアーゼの基質を表すように選択される。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、対象の治療部位または診断部位において標的と共存する。本明細書で使用される場合、共存は、同じ部位または比較的近くの部位にあることを意味する。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、CMを切断し、切断部位近くに位置する標的に結合する活性化抗体を産生する。本明細書に開示のAAでは、例えば、CM内のある部位を切断することができるプロテアーゼ、すなわちプロテアーゼが、治療部位または診断部位の標的含有組織において、非治療部位の組織(例えば、健康な組織)より比較的高いレベルで存在する特定の用途が見出される。いくつかの実施形態では、本開示のCMはまた、1個または複数の他のプロテアーゼにより切断される。いくつかの実施形態では、標的と共存するのは1個または複数の他のプロテアーゼであり、インビボでのCMの切断を担う。
【0137】
いくつかの実施形態では、AAは、ABがマスキングされていないか、あるいは、標的への結合が抑制されていない場合に、別の方法では、非治療部位でのABの結合から生じることがある毒性および/または有害な副作用を、低減させる。
【0138】
一般に、AAは、目的のABを選択し、AAの残りの部分を構築することにより設計され得る。これにより、コンフォメーション上の制約がある場合には、MMにより、ABのマスキングまたはABの標的への結合の低減がもたらされる。構造設計基準は、この機能的特徴をもたらすように考慮することができる。
【0139】
制約されたコンフォメーションと約制されていないコンフォメーションにおける標的結合の望ましいダイナミックレンジの切り替え可能な表現型を示すAAが提供される。ダイナミックレンジは通常、(a)第1セットの条件下でのパラメーターの最大検出レベルの(b)第2セットの条件下のそのパラメーターの最小検出値に対する比を意味する。例えば、活性化可能抗体の場合、ダイナミックレンジとは、(a)AAのCMを切断できる少なくとも1種のプロテアーゼの存在下で、AAに結合する標的タンパク質の最大検出レベルの(b)プロテアーゼの非存在下でAAに結合する標的タンパク質の最小検出レベルに対する比率を指す。AAのダイナミックレンジは、AA切断剤(例えば、酵素)処理の解離定数に対するAA切断剤処理の解離定数の比として計算することができる。活性化可能抗体のダイナミックレンジが大きいほど、活性化可能抗体の切り替え可能な表現型が向上する。比較的高いダイナミックレンジ値(例えば、1より大きい)を有するAAは、AAによる標的タンパク質の結合が、AAのCMを切断できる切断剤(例えば、酵素)の存在下では、切断剤の非存在下よりも広い範囲で(例えば、主に)起こるように、より望ましい切り替え表現型を示す。
【0140】
CMは少なくとも1種のプロテアーゼにより、約0.001~1500x10-1-1の速度で、または少なくとも、0.001,0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2.5、5、7.5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、200、250、500、750、1000、1250、または1500x10-1-1の速度で特異的に切断される。いくつかの実施形態では、CMは、約100,000M-1-1の速度で特異的に切断される。いくつかの実施形態では、CMは、約1x10E2~約1x10E6 M-1-1(すなわち、約1x10から約1x10-1-1)の速度で特異的に切断される。
【0141】
酵素による特異的切断のために、酵素とCMとの間の接触が行われる。MMおよびCMに結合したABを含むAAが標的および十分な酵素活性の存在下にある場合、CMを切断することができる。十分な酵素活性は、酵素のCMと接触し、切断を行う能力を意味し得る。酵素がCMの近傍にあり得るが、他の細胞性因子または酵素のタンパク質修飾のために切断できないことが容易に想定され得る。
【0142】
活性化可能抗体の構造配置
本開示のAAは、様々な構造配置で提供され得る。AAの例示的な式を以下に示す。活性化可能抗体内で、AB、MM、およびCMのN末端からC末端への順序を逆にし得ることが特に意図される。また、CMおよびMMはアミノ酸配列は、例えば、CMがMM内に含まれるように、オーバーラップ可能であることも特に意図される。
【0143】
例えば、AAは、次の式により表すことができ(アミノ(N)末端領域からカルボキシル(C)末端領域への順に):
(MM)-(CM)-(AB)
(AB)-(CM)-(MM)
式中、MMはマスキング部分であり、CMは切断可能部分であり、ABは抗体またはそのフラグメントである。MMおよびCMは、上記の式では別個の成分として示されているが、本明細書に開示されるすべての例示的な実施形態(式を含む)において、MMおよびCMのアミノ酸配列は、例えば、CMが、MM内に完全にまたは部分的に含まれるように、重複し得ることが想定されることに留意されたい。加えて、上記の式は、AAエレメントのN末端またはC末端に配置し得る追加のアミノ酸配列を提供する。
【0144】
多くの実施形態では、MM-CM連結部、CM-AB連結部、またはその両方のうちの1つまたは複数において、柔軟性を付与するために、AA構築物に1個または複数のリンカー、例えば、可撓性リンカーを挿入することが望ましい場合がある。例えば、AB、MMおよび/またはCMは、所望の柔軟性を得るために、十分な数の残基(例えば、Gly、Ser、Asp、Asn、特にGlyおよびSer、特にGly)を含まなくてもよい。このため、このようなAA構築物の切り替え可能な表現型は、可撓性リンカーを提供するために1個または複数のアミノ酸を導入することにより利益が得られる場合がある。加えて、以下に記載されるように、AAがコンフォメーション上制約された構築物として提供される場合、可撓性リンカーを作動可能に挿入することで、切断されていない活性化可能抗体における環状構造の形成および維持が容易になり得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、AAは第1の結合ペプチド(LP1)および第2の結合ペプチド(LP2)を含み、切断されていない状態のAAは、MM-LP1-CM-LP2-ABまたはAB-LP2-CM-LP1-MMのN末端からC末端への構造配置を有する。いくつかの実施形態では、2個の結合ペプチドは、相互に同じである必要はない。
【0146】
いくつかの実施形態では、LP1またはLP2のうちの少なくとも一方は、(GS)、(GGS)、(GSGGS)(配列番号1)および(GGGS)(配列番号2)(nは少なくとも1の整数である)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、LP1またはLP2のうちの少なくとも一方は、GGSG(配列番号3)、GGSGG(配列番号4)、GSGSG(配列番号5)、GSGGG(配列番号6)、GGGSG(配列番号7)、およびGSSSG(配列番号8)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、LP1は、アミノ酸配列GSSGGSGGSGGSG(配列番号9)、GSSGGSGGSGG(配列番号10)、GSSGGSGGSGGS(配列番号11)、GSSGGSGGSGGSGGGS(配列番号12)、GSSGGSGGSG(配列番号13)、またはGSSGGSGGSGS(配列番号14)を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、LP2は、アミノ酸配列GSS、GGS、GGGS(配列番号15)、GSSGT(配列番号16)、またはGSSG(配列番号17)を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、ABは、CD166への結合に関し、約100nM以下の解離定数を有する。
【0151】
例えば、特定の実施形態では、AAは、次の式の1つを含み(下式はN末端からC末端方向またはC末端からN末端方向のアミノ酸配列を表す):
(MM)-LP1-(CM)-(AB)
(MM)-(CM)-LP2-(AB)
(MM)-LP1-(CM)-LP2-(AB)
式中、MM、CM、およびABは上記で定義の通りであり、LP1およびLP2は、それぞれ独立に、任意選択で存在してもしなくてもよい、少なくとも1個の可撓性アミノ酸(例えば、Gly)を含む、同じまたは異なる可撓性リンカーである。加えて、上記の式は、AAエレメントのN末端またはC末端に配置し得る追加のアミノ酸配列を提供する。例としては、限定されないが、標的化部分(例えば、標的組織に存在する細胞の受容体に対するリガンド)および血清半減期延長部分(例えば、免疫グロブリン(例えば、IgG)または血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HAS))などの血清タンパク質に結合するポリペプチドが挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、活性化された抗体が、活性化された状態または切断された状態で、プロテアーゼがCMを切断した後にLP2および/またはCM配列の少なくとも一部分を含む軽鎖アミノ酸配列を含むように、AAはプロテアーゼに曝露されて、プロテアーゼにより切断される。
【0153】
本明細書に記載の組成物での使用に好適なリンカーは、一般に、標的に対するABの結合の抑制を促進するために修飾ABまたはAAの柔軟性を提供するものである。このようなリンカーは通常、可撓性リンカーと呼ばれる。好適なリンカーは容易に選択でき、好適な異なる長さのいずれか、例えば、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸長さを含む、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸長さ、および1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸長さであり得る。
【0154】
例示的な可撓性リンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号1)および(GGGS)n(配列番号2)が挙げられ、式中、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野で既知である他の可撓性リンカーが挙げられる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは比較的構造化されていないため、成分間の中間テザーとして機能し得る。グリシンは、アラニンよりもはるかに多くのΦ-Ψ空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない(Scheraga、Rev.Computational Chem.11173-142(1992年)を参照されたい)。例示的な可撓性リンカーとしては、限定されないが、Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号3)、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly(配列番号4)、Gly-Ser-Gly-Ser-Gly(配列番号5)、Gly-Ser-Gly-Gly-Gly(配列番号6)、Gly-Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号7)、Gly-Ser-Ser-Ser-Gly(配列番号8)などが挙げられる。当業者であれば、AAの設計では、すべてがまたは部分的に可撓性リンカーを含むことができ、これにより、リンカーが、可撓性リンカーと、柔軟性の低い構造が付与されて、所望のAA構造となる1つまたは複数の部分を含み得るようになることを理解するであろう。
【0155】
いくつかの実施形態では、AAは、シグナルペプチドも含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドはスペーサーを介してAAに結合する。いくつかの実施形態では、スペーサーは、シグナルペプチドの非存在下でAAに結合する。いくつかの実施形態では、スペーサーは、活性化可能抗体のMMに直接結合される。いくつかの実施形態では、スペーサーは、スペーサーMM-CM-ABのN末端からC末端への構造的配置でAAのMMに直接結合される。AAのMMのN末端に直接結合されるスペーサーの例としては、QGQSGQ(配列番号88)が挙げられる。AAのMMのN末端に直接結合されるスペーサーの他の例としては、QGQSGQG(配列番号305)、QGQSG(配列番号306)、QGQS(配列番号307)、QGQ、QG、およびQが挙げられる。AAのMMのN末端に直接結合されるスペーサーの他の例としては、GQSGQG(配列番号359)、QSGQG(配列番号360)、SGQG(配列番号361)、GQG、およびGが挙げられる。いくつかの実施形態では、いずれのスペーサーもMMのN末端に結合していない。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QGQSGQ(配列番号88)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QGQSGQG(配列番号305)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QGQSG(配列番号306)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QGQS(配列番号307)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QGQを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QGを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸残基Qを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列GQSGQG(配列番号359)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列QSGQG(配列番号360)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列SGQG(配列番号361)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列GQGを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくともアミノ酸配列Gを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは存在しない。
【0156】
複合化活性化可能抗体
本明細書で提供されるAA組成物および方法では、活性化可能抗CD166抗体の活性(例えば、マスキング、活性化または結合活性)を損なうことなく、AB中の1個または複数のシステイン残基(例えばシステイン、リシン)への1種または複数の薬剤の結合が可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物および方法では、MM内の1個または複数のジスルフィド結合を減少させる、あるいは妨げることなく、1種または複数の薬剤がAB中の1個または複数のシステイン残基に結合できるようになる。本明細書で提供される組成物および方法は、1種または複数の薬剤、例えば、様々な治療剤、診断剤、および/または予防剤のいずれかに結合される活性化可能抗CD166抗体を生成する。例えば、いくつかの実施形態では、この薬剤のいずれもが、活性化可能抗CD166抗体のMMに結合されていない。本明細書で提供される組成物および方法では、MMが、切断されていない状態のAAのABを効果的に、効率よくマスキングする能力を保持している複合化活性化可能抗CD166抗体が産生される。本明細書で提供される組成物および方法では、CMを切断できるプロテアーゼの存在下でAAが依然として活性化されている、すなわち切断されている、複合化活性化可能抗CD166抗体が産生される。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAには、活性化可能抗体に結合した薬剤も含む。いくつかの実施形態では、複合化薬剤は、抗炎症剤および/または抗新生物剤などの治療薬である。このような実施形態では、薬剤は、活性化可能抗体の炭水化物部分に結合される。例えば、いくつかの実施形態では、炭水化物部分は、活性化可能抗体内の抗体または抗原結合フラグメントの抗原結合領域の外側に配置される。いくつかの実施形態では、薬剤は、活性化可能抗体内の抗体または抗原結合フラグメントのスルフヒドリル基に結合される。
【0158】
いくつかの実施形態では、薬剤は、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射性複合体)などの細胞毒性剤である。
【0159】
いくつかの実施形態では、薬剤は、例えば標識または他のマーカーなどの検出可能な部分である。例えば、薬剤は、放射標識アミノ酸、マークされたアビジンによって検出可能な1つまたは複数のビオチニル部分(例えば、蛍光マーカーを含むストレプトアビジンまたは光学的方法もしくは熱量測定法によって検出可能な酵素活性)、1種または複数の放射性同位体もしくは放射性核種、1種または複数の蛍光標識、1種または複数の酵素標識、および/または1種または複数の化学発光剤であるか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、スペーサー分子によって結合している。
【0160】
本開示はまた、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射性複合体)などの細胞傷害剤に結合した抗体を含む免疫複合体にも関する。好適な細胞毒性剤としては、例えば、ドラスタチンおよびその誘導体(例えば、オーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、MMAD、DMAF、DMAE)が挙げられる。例えば、薬剤はモノメチルオーリスタチンE(MMAE)またはモノメチルオーリスタチンD(MMAD)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、表1に列挙されている群から選択される薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、ドラスタチンである。いくつかの実施形態では、薬剤は、オーリスタチンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、オーリスタチンEまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、モノメチルオーリスタチンD(MMAD)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、メイタンシノイドまたはメイタンシノイド誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、DM1またはDM4である。いくつかの実施形態では、薬剤は、デュオカルマイシンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、カリケアマイシンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、ピロロベンゾジアゼピンである。例示的な実施形態では、薬剤は、DM4である。
【0161】
いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリンリンカーまたはマレイミドPEG-バリン-シトルリンリンカーを使用してABに結合される。いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリンリンカーを使用してABに結合される。いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドPEG-バリン-シトルリンリンカーを使用してABに結合される。いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドPEG-バリン-シトルリン-パラ-アミノベンジルオキシカルボニルリンカーを使用してABに結合されたモノメチルオーリスタチンD(MMAD)であり、このリンカーペイロード構築物は、本明細書では「vc-MMAD」と称される。いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドPEG-バリン-シトルリン-パラ-アミノベンジルオキシカルボニルリンカーを使用してABに結合されたモノメチルオーリスタチンE(MMAE)であり、このリンカーペイロード構築物は本明細書では「vc-MMAE」と称される。いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドPEG-バリン-シトルリンリンカーを使用してABに結合される。いくつかの実施形態では、薬剤は、マレイミドビス-PEG-バリン-シトルリン-パラ-アミノベンジルオキシカルボニルリンカーを使用してABに結合されたモノメチルオーリスタチンD(MMAD)であり、このリンカーペイロード構築物は、本明細書では「PEG2-vc-MMAD」と称される。vc-MMAD、vc-MMAE、およびPEG2-vc-MMADの構造を以下に示す:

vc-MMAD:
【化5】

vc-MMAE:
【化6】

PEG2-vc-MMAD:
【化7】
【0162】
例示的な実施形態では、薬剤はリシンを介してAAに結合されいる。例示的な実施形態では、SPDB-DM4は、AA上のリシンのイプシロン-アミノ基、例えば、リシンのイプシロン-アミノ基を介して活性化可能抗体に結合される。
【0163】
例示的な実施形態では、薬剤はDM4であり、リンカー-DMは以下のとおりである:
【化8】
【0164】
本開示は、モノメチルオーリスタチンD(MMAD)ペイロードに結合されているAAを含む複合化AAも提供する。ここで、AAは、標的、切断されていない状態のAAのABの標的への結合を抑制するマスキング部分(MM)、およびABに結合された切断可能部分(CM)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)を含み、CMは、少なくとも1種のMMPプロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである。
【0165】
いくつかの実施形態では、MMAD-複合化AAは、薬剤をABに結合させるための次のいくつかの方法のいずれかを用いて結合することができる:(a)ABの炭水化物部分への結合、または(b)ABのスルフヒドリル基への結合、または(c)ABのアミノ基への結合、または(d)ABのカルボキシレート基への結合。
【0166】
いくつかの実施形態では、MMADペイロードは、リンカーを介してABに結合される。いくつかの実施形態では、MMADペイロードは、リンカーを介してAB内のシステインに結合される。いくつかの実施形態では、MMADペイロードは、リンカーを介してAB内のリシンに結合される。いくつかの実施形態では、MMADペイロードは、リンカーを介して、本明細書に開示される残基などのABの別の残基に結合される。いくつかの実施形態では、リンカーはチオール含有リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは切断不能リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、表6および表7に示されるリンカーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、AAおよびMMADペイロードは、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリンリンカーを介して結合される。いくつかの実施形態では、AAおよびMMADペイロードは、マレイミドPEG-バリン-シトルリンリンカーを介して結合される。いくつかの実施形態では、AAおよびMMADペイロードは、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-パラ-アミノベンジルオキシカルボニルリンカーを介して結合される。いくつかの実施形態では、AAおよびMMADペイロードは、マレイミドPEG-バリン-シトルリン-パラ-アミノベンジルオキシカルボニルリンカーを介して結合される。いくつかの実施形態では、MMADペイロードは、本明細書で開示される部分的還元および結合技術を用いてABに結合される。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示のリンカーのポリエチレングリコール(PEG)成分は、2つのエチレングリコールモノマー、3つのエチレングリコールモノマー、4つのエチレングリコールモノマー、5つのエチレングリコールモノマー、6つのエチレングリコールモノマー、7つのエチレングリコールモノマー、8つのエチレングリコールモノマー、9つのエチレングリコールモノマー、または少なくとも10のエチレングリコールモノマーから形成される。本開示のいくつかの実施形態では、PEG成分は分岐ポリマーである。本開示のいくつかの実施形態では、PEG成分は非分岐ポリマーである。いくつかの実施形態では、PEGポリマー成分は、アミノ基またはその誘導体、カルボキシル基またはその誘導体、またはアミノ基またはその誘導体およびカルボキシル基またはその誘導体の両方で官能化される。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示のリンカーのPEG成分は、アミノテトラエチレングリコールカルボキシル基またはその誘導体である。いくつかの実施形態では、本開示のリンカーのPEG成分は、アミノトリエチレングリコールカルボキシル基またはその誘導体である。いくつかの実施形態では、本開示のリンカーのPEG成分は、アミノジエチレングリコールカルボキシル基またはその誘導体である。いくつかの実施形態では、アミノ誘導体は、アミノ基と、アミノ基が結合しているカルボキシル基との間のアミド結合の形成によるものである。いくつかの実施形態では、カルボキシル誘導体は、カルボキシル基と、カルボキシル基が結合しているアミノ基との間のアミド結合の形成によるものである。いくつかの実施形態では、カルボキシル誘導体は、カルボキシル基と、カルボキシル基が結合しているヒドロキシル基との間のエステル結合の形成によるものである。
【0169】
使用可能な酵素活性毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)抑制剤、クルシン、クロチン、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)抑制剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。放射性複合化抗体の産生には、様々な放射性核種が利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられる。
【0170】
N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピン酸ジメチル・塩酸塩など)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒド(glutareldehyde)など)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トリエン2,6-ジイソシアナートなど)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)など様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して、抗体と細胞毒性剤の複合体を作製する。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098(1987年)に記載のようにして調製できる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への結合のための例示的なキレート化剤である(WO94/11026号を参照されたい)。
【0171】
表1は、本明細書に記載の開示で使用し得る例示的な医薬品のいくつかを列挙しているが、決して網羅的なリストであることを意味するものではない。
【表1】
【0172】
当業者であれば、多岐にわたる適切な部分を本開示により得られる抗体に結合できることを理解するであろう(例えば、「Conjugate Vaccines”,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr(eds),Carger Press,New York,(1989)この全内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0173】
いくつかの実施形態では、AAは、薬剤の1当量または複数当量に結合される。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤の1当量に結合される。いくつかの実施形態では、AAは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超える当量の薬剤に結合される。いくつかの実施形態では、AAは、同種の等量の数の複合化薬剤を有するAAの混合物の一部である。いくつかの実施形態では、AAは、異種の等量の数の複合化薬剤を有するAAの混合物の一部である。いくつかの実施形態では、AAの混合物は、各AAに結合した薬剤の平均数が、0~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、および10以上であるようなものである。いくつかの実施形態では、AAの混合物は、各AAに結合された薬剤の平均数が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上であるようなものである。いくつかの実施形態では、各AAに結合した薬剤の平均数が3~4であるようなAAの混合物が存在する。いくつかの実施形態では、各AAに結合した薬剤の平均数が3.4~3.8であるようなAAの混合物が存在する。いくつかの実施形態では、各AAに結合した薬剤の平均数が3.4~3.6であるようなAAの混合物が存在する。いくつかの実施形態では、リシンおよび/またはシステイン残基の数が活性化可能抗体の元のアミノ酸配列に対して増加または減少するように、AAは1種または複数の部位特異的アミノ酸配列改変を含み、このため、いくつかの実施形態では、それに対応させて、活性化可能抗体に結合され得る薬剤の数を増加もしくは減少させ、またはいくつかの実施形態では、部位特異的様式でAAへの薬剤の結合が制限されるようにする。いくつかの実施形態では、改変AAは、部位特異的な様式で1個または複数の非天然アミノ酸により改変され、このため、いくつかの実施形態では、薬剤の結合が非天然アミノ酸の部位のみに制限される。
【0174】
複合化活性化可能抗体を生成するための組成物および方法
活性化可能抗CD166抗体は、(複合化AAを産生するための)薬剤に対する少なくとも1つの結合点を有する。いくつかの実施形態では、考えられるすべての結合点が使用されるわけではない。いくつかの実施形態では、いくつかの天然の接触点は、薬剤との結合に使用できなくなるように改変されるか、または除去される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の結合点は、リシンのイプシロンアミノ基などの窒素原子である。
【0175】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の結合点は、ジスルフィド結合に関与する硫黄原子である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の結合点は、鎖間ジスルフィド結合に関与する硫黄原子である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の結合点は、鎖間スルフィド結合に関与する硫黄原子であるが、鎖内ジスルフィド結合に関与する硫黄原子ではない。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の結合点は、システインの硫黄原子または硫黄原子を含む他のアミノ酸残基である。このような残基は、抗体構造中に自然に存在し得るか、または部位特異的変異誘発、化学変換、もしくは非天然アミノ酸の誤取り込みにより抗体に取り込まれ得る。
【0176】
AB内に1つまたは複数の鎖間ジスルフィド結合およびMM内に1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合を有する活性化可能抗CD166抗体の複合体を調製する方法も提供され、遊離チオールと反応する薬物が提供される。この方法は、一般に、例えばTCEPなどの還元剤でAA内の鎖間ジスルフィド結合を部分的に還元することを含み、さらに遊離チオールと反応する薬物を、部分的に還元された活性化可能抗体に結合させることを含む。本明細書で使用する場合、部分的還元という用語は、活性化可能抗CD166抗体が還元剤と接触し、すべてのジスルフィド結合よりも少ない結合、例えば、すべての可能な結合部位よりも少ない部位が還元される状況を指す。いくつかの実施形態では、すべての可能な結合部位の99%未満、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%または5%未満が還元される。
【0177】
さらに他の実施形態では、例えば、薬物などの薬剤を活性化可能抗CD166抗体を還元し、それに結合し、その結果、薬剤の配置の選択性が付与される方法が提供される。この方法は一般に、AAのマスキング部分または他のAB以外の部分の任意の結合部位が還元されないように還元剤により活性化可能抗CD166抗体を部分的に還元すること、およびAB中の鎖間チオールに薬剤を結合することを含む。結合部位は、薬剤の所望の配置を可能にして、結合が所望の部位で生じ得るように選択する。還元剤は、例えば、TCEPである。例えば、還元剤と活性化可能抗体の比、インキュベーションの長さ、インキュベーション中の温度、還元反応溶液のpHなどの還元反応条件は、MMが切断されていない状態のAAのABを効果的かつ効率的にマスキングする能力を保持している複合化AAを産生する条件を特定することによって決定される。還元剤と活性化可能抗CD166抗体との比は、活性化可能抗体によって異なる。いくつかの実施形態では、還元剤と活性化可能抗CD166抗体との比は、約20:1~1:1、約10:1~1:1、約9:1~1:1、約8:1~1:1、約7:1~1:1、約6:1~1:1、約5:1~1:1、約4:1~1:1、約3:1~1:1、約2:1~1:1、約20:1~1:1.5、約10:1~1:1.5、約9:1~1:1.5、約8:1~1:1.5、約7:1~1:1.5、約6:1~1:1.5、約5:1~1:1.5、約4:1~1:1.5、約3:1~1:1.5、約2:1~1:1.5、約1.5:1~1:1.5、または約1:1~1:1.5の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約5:1~1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約5:1~1.5:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約4:1~1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約4:1~1.5:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約8:1~1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約2.5:1~1:1の範囲である。
【0178】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体のAB中の鎖間ジスルフィド結合を還元し、薬剤、例えば薬物などのチオール含有剤を、得られた鎖間チオールに結合し、AB上に薬剤を選択的に配置する方法が提供される。この方法は一般に、ABを還元剤により部分的に還元して、活性化可能抗体においてすべての可能な鎖間チオールを形成することなく、少なくとも2つの鎖間チオールを形成すること、および部分的に還元されたABの鎖間チオールに薬剤を結合させることを含む。例えば、AAのABは、所望の還元剤:活性化可能抗体の比率を用いて、約37℃で約1時間にわたり部分的に還元される。いくつかの実施形態では、還元剤のAAに対する比は、約20:1~1:1、約10:1~1:1、約9:1~1:1、約8:1~1:1、約7:1~1:1、約6:1~1:1、約5:1~1:1、約4:1~1:1、約3:1~1:1、約2:1~1:1、約20:1~1:1.5、約10:1~1:1.5、約9:1~1:1.5、約8:1~1:1.5、約7:1~1:1.5、約6:1~1:1.5、約5:1~1:1.5、約4:1~1:1.5、約3:1~1:1.5、約2:1~1:1.5、約1.5:1~1:1.5、または約1:1~1:1.5の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約5:1~1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約5:1~1.5:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約4:1~1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約4:1~1.5:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約8:1~1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、約2.5:1~1:1の範囲である。
【0179】
チオール含有試薬は、例えば、システインまたはN-アセチルシステインであり得る。還元剤は、例えば、TCEPであり得る。いくつかの実施形態では、還元されたAAは、例えば、カラムクロマトグラフィー、透析、またはダイアフィルトレーションを使用して、結合の前に精製され得る。あるいは、部分的な還元の後および結合の前に、還元された抗体は精製されない。
【0180】
本発明はまた、活性化可能抗体内のいずれの鎖内ジスルフィド結合も妨害することなく、AA内の少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合が還元剤により還元されている、部分的に還元された活性化可能抗CD166抗体を提供し、ここで、AAは、CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)、切断されていない状態のAAのABのCD166標的への結合を抑制するマスキング部分(MM)、および、ABに結合された切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであるCMを含む。いくつかの実施形態では、MMはCMを介してABに結合される。いくつかの実施形態では、AAの1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合は、還元剤によって妨害されることはない。いくつかの実施形態では、AA内のMMの1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合は、還元剤によって妨害されることはない。いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を有する。いくつかの実施形態では、還元剤はTCEPである。
【0181】
本開示はまた、活性化可能抗体中のいずれの鎖内ジスルフィド結合も妨害することなく、AA中の少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合が還元剤で還元されている部分還元AAを提供し、AAは、標的に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)、例えばCD166、切断されていない状態でのAAのABの標的への結合を抑制するマスキング部分(MM)、およびABに結合された切断可能な部分(CM)を含み、CMは、少なくとも1つのプロテアーゼの基質として機能するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、MMはCMを介してABに結合される。いくつかの実施形態では、AAの1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合は、還元剤によって妨害されることはない。いくつかの実施形態では、AA内のMMの1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合は、還元剤によって妨害されることはない。いくつかの実施形態では、切断されていない状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を有する。いくつかの実施形態では、還元剤はTCEPである。
【0182】
さらに他の実施形態では、活性化可能抗CD166抗体をリシンおよび/またはシステイン残基の定義された数および位置で提供することにより、薬物などの薬剤を還元させて、活性化可能抗CD166抗体に結合させて、その結果、薬剤の配置に選択性をもたらす方法。いくつかの実施形態では、リシンおよび/またはシステイン残基の定義された数は、親抗体または活性化可能抗体のアミノ酸配列における対応する残基の数より多いかまたは少ない。いくつかの実施形態では、定義された数のリシンおよび/またはシステイン残基は、抗CD166抗体または活性化可能抗CD166抗体に結合することができる定義された数の薬剤同等物をもたらし得る。いくつかの実施形態では、定義された数のリシンおよび/またはシステイン残基は、部位特異的な方法で抗CD166抗体または活性化可能抗CD166抗体に結合され得る定義された数の薬剤同等物をもたらし得る。いくつかの実施形態では、改変AAは部位特異的な方法で1個または複数の非天然アミノ酸により改変され、したがっていくつかの実施形態では、薬剤の結合が非天然アミノ酸の部位のみに制限される。いくつかの実施形態では、定義された数および位置のリシンおよび/またはシステイン残基を有する抗CD166抗体または活性化可能抗CD166抗体は、AAのマスキング部分または他の非AB部分でのいずれの結合部位も還元されないように、本明細書で考察される還元剤で部分的に還元され得、それによりこの薬剤がAB中の鎖間チオールに結合され得る。
【0183】
結合は、抗体と他の部分がそれぞれの活性を保持している限り、2つの分子を結合するいずれかの化学反応によって達成され得る。この結合としては、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、錯体形成など、多くの化学的機序を挙げ得る。しかし、いくつかの実施形態では、結合は共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合、または外部架橋分子の取り込みのいずれかによって達成され得る。多くの二価または多価の連結剤は、本開示の抗体などのタンパク質分子を他の分子に結合するのに有用である。例えば、代表的なカップリング剤としては、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼン、およびヘキサメチレンジアミンなどの有機化合物を挙げることができる。このリストは、当該技術分野において既知の種々のカップリング剤を網羅することを意図するものではなく、むしろ、よりよく使われる代表的カップリング剤の例示である。(Killen and Lindstrom,Jour.Immun.133:1335-2549(1984);Jansen et al.,Immunological Reviews 62:185-216(1982);and Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)を参照されたい)。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物および方法に加えて、複合化AAは、AA配列に挿入されるか、あるいは、含まれる改変アミノ酸配列を介して部位特異的結合のために改変され得る。これらの改変アミノ酸配列は、複合化活性化可能抗体内の複合化薬剤の制御された配置および/または投薬量を可能にするように設計される。例えば、AAは、軽鎖および重鎖の位置にシステイン置換を含むように操作して、反応性チオール基をもたらし、タンパク質の折り畳みおよびアセンブリに悪影響を与えないように、または抗原結合を変化させることのないようにすることができる。いくつかの実施形態では、AAは、結合のための好適な部位を提供するために、AA内に1個または複数の非天然アミノ酸残基を含むか、または別の方法で導入するように操作することができる。いくつかの実施形態では、AAは、AA配列内に酵素的に活性化可能なペプチド配列を含むか、または別の方法で導入するように操作することができる。
【0185】
好適なリンカーは、文献に記載されている。(例えば、(Ramakrishnan,S.et al.,Cancer Res.44:201-208(1984)(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用について記載)を参照されたい)。また、オリゴペプチドリンカーを介して抗体に結合されたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用について記載している米国特許第5,030,719号も参照されたい。いくつかの実施形態では、好適なリンカーとしては、(i)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩;(ii)SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン)(Pierce Chem.Co.,Cat.(21558G);(iii)SPDP(スクシンイミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.,カタログ番号21651G);(iv)スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.カタログ番号2165-G);および(v)EDCに結合しているスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド:Pierce Chem.Co.,カタログ番号24510)が挙げられる。追加のリンカーとしては、限定されないが、SMCC((スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、スルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、SPDB(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ブタノエート)、またはスルホ-SPDB(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート)が挙げられる。
【0186】
上記のリンカーは、異なる属性を有する成分を含むため、異なる物理化学的特性を有する複合体が得られる。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ-NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのスルホ-NHSエステルよりも安定している。NHSエステル含有リンカーは、スルホNHSエステルよりも溶解性が低い。さらに、リンカーSMPTには立体障害のあるジスルフィド結合が含まれており、安定性が向上した複合体が形成できる。ジスルフィド結合は一般に、ジスルフィド結合がインビトロでは切断されるため、他の結合よりも安定性が低く、その結果利用可能な複合体が少なくなる。スルホNHSは、特に、カルボジイミドのカップリングの安定性を高めることができる。カルボジイミドのカップリング(EDCなど)は、スルホNHSと組み合わせて使用したときに、カルボジイミドカップリング反応単独である場合よりも加水分解に対して耐性の高いエステルを形成する。例示的実施形態では、リンカーは、SPDBである。別の例示的実施形態では、リンカーのSPDB剤は、DM4である。
【0187】
いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能である。いくつかの実施形態では、リンカーは切断不能である。いくつかの実施形態では、2つ以上のリンカーが存在する。2つ以上のリンカーはすべて同じである、すなわち切断可能か、もしくは切断不能であるか、または2つ以上のリンカーは異なる、すなわち少なくとも1つが切断可能であり、少なくとも1つが切断不能である。
【0188】
本開示では、薬剤をABに結合させるための次記のいくつかの方法を利用する:(a)ABの炭水化物部分への結合、または(b)ABのスルフヒドリル基への結合、または(c)ABのアミノ基への結合、または(d)ABのカルボキシレート基への結合。本開示では、ABは、少なくとも2つの反応基を有する中間リンカーを介して薬剤に共有結合により結合させることができ、1つはABと反応し、もう1つは薬剤と反応する。任意の適合性有機化合物を含み得るリンカーは、AB(または薬剤)との反応がABの反応性および選択性に悪影響を与えないように選択できる。さらに、リンカーが薬剤に結合しても、薬剤の活性を破壊しないほうがよい。酸化抗体または酸化抗体フラグメントとの反応に好適であるリンカーには、一級アミン基、二級アミン基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、ヒドロキシルアミン基、フェニルヒドラジン基、セミカルバジド基およびチオセミカルバジド基からなる群から選択されるアミンを含むものが含まれる。このような反応性官能基は、リンカーの構造の一部として存在し得、またはこのような基を含まないリンカーの好適な化学修飾により導入され得る。
【0189】
本開示では、還元されたABへの結合に好適であるリンカーとしては、還元抗体またはフラグメントのスルフヒドリル基と反応することができる特定の反応基を有するものが挙げられる。このような反応基には、これらに限定されないが、反応性ハロアルキル基(例えば、ハロアセチル基など)、p-メルクリベンゾエート基、およびマイケル型付加反応が可能な基(例えば、マレイミドおよびMitra and Lawton、1979年、J.Amer.Chem.Soc.101:3097-3110によって記載された型の基)が挙げられる。
【0190】
本開示では、酸化Abまたは還元Abのいずれにも結合しない好適なリンカーとしては、Ab内の非改変リシン残基に存在する一級アミノ基と反応できる特定の官能基を有するものが挙げられる。このような反応基としては、限定されないが、NHSカルボン酸または炭酸エステル、スルホNHSカルボン酸または炭酸エステル、4-ニトロフェニルカルボン酸または炭酸エステル、ペンタフルオロフェニルカルボン酸または炭酸エステル、アシルイミダゾール、イソシアネート、およびイソチオシアネートが挙げられる。
【0191】
本開示では、酸化Abまたは還元Abのいずれにも結合しない好適なリンカーとしては、好適な試薬により活性化されている、Ab内のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基に存在するカルボン酸基と反応できる特定の官能基を有するリンカーが挙げられる。好適な活性化試薬としては、追加されたNHSまたはスルホ-NHSの有無にかかわらず、EDC、およびカルボキサミド形成に利用される他の脱水剤が挙げられる。これらの場合、好適なリンカーに存在する官能基としては、一級および二級アミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、およびヒドラジドが挙げられる。
【0192】
リンカーがABに結合する前または後に、薬剤をリンカーに結合させ得る。特定の用途では、リンカーが、関連する薬剤を含まないAB-リンカー中間体を最初に生成することが望ましい場合もある。特定の用途に応じて、特定の薬剤をリンカーに共有結合させ得る。いくつかの実施形態では、ABは、最初にMM、CMおよび関連するリンカーに結合され、次に複合化の目的のためにリンカーに結合される。
【0193】
分岐リンカー:特定の実施形態では、薬剤を結合するための複数の部位を有する分岐リンカーが利用される。複数部位リンカーの場合、ABへの単一の共有結合により、いくつかの部位で薬剤を結合できるABリンカー中間体が得られる。これらの部位は、アルデヒド基またはスルフヒドリル基、または薬剤が結合できるいずれかの化学部位であり得る。
【0194】
いくつかの実施形態では、ABの複数の部位に単一部位リンカーを結合させることにより、より高い比活性(またはABに対する薬剤のより高い比)を達成することができる。この複数の部位は、2つの方法のいずれかによってABに導入され得る。第1の方法では、同じAB内に複数のアルデヒド基および/またはスルフヒドリル基を生成させ得る。第2の方法では、ABのアルデヒドまたはスルフヒドリルに、その後リンカーへ結合させるための複数の官能部位を有する「分岐リンカー」を結合させ得る。分岐リンカーまたは複数部位リンカーの官能部位は、アルデヒド基もしくはスルフヒドリル基であってもよく、またはリンカーが結合し得るいずれかの化学部位であり得る。これら2つの手法を組み合わせること、すなわちABの複数の部位で複数の部位リンカーを結合させることにより、さらに高い比活性が得られ得る。
【0195】
切断可能リンカー:限定されないが、u-プラスミノーゲン活性化因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、トリプシン、プラスミン、またはタンパク質分解活性を有する別の酵素など、補体系の酵素による切断を受けやすいペプチドリンカーは、本開示の一実施形態で使用され得る。本開示の一方法によれば、補体による切断を受けやすいリンカーを介して薬剤が結合される。抗体は、補体を活性化できるクラスから選択される。したがって、抗体-薬剤複合体は、補体カスケードを活性化し、標的部位で薬剤を放出する。本開示の別の方法によれば、薬剤は、u-プラスミノーゲン活性化因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、またはトリプシンなどのタンパク質分解活性を有する酵素による切断を受けやすいリンカーを介して結合される。これらの切断可能リンカーは、例えば非限定的な例として、表1に示される細胞外毒素のいずれかを含む細胞外毒素を含む複合化AAで有用である。
【0196】
切断可能リンカー配列の非限定的な例を表2に示す。
【表2】
【0197】
加えて、薬剤は、ABへのジスルフィド結合(例えば、システイン分子上でのジスルフィド結合)を介して結合され得る。多くの腫瘍は、天然では高レベルのグルタチオン(還元剤)を放出するため、これによりジスルフィド結合が還元され、その後の送達部位において薬剤の放出がもたらされる。いくつかの実施形態では、CMを改変する還元剤は、複合化活性化可能抗体のリンカーも改変する。
【0198】
スペーサーおよび切断可能エレメント:いくつかの実施形態では、薬剤と活性化可能抗体のABとの間隔を最適化するような方法でリンカーを構築することが必要な場合がある。これは、一般的構造のリンカー:
W-(CH-Q
を使用することによって達成され得る。式中、
Wは、--NH--CH--または--CH--のいずれかであり、
Qは、アミノ酸、ペプチドであり、および
nは、0~20の整数である。
【0199】
いくつかの実施形態では、リンカーは、スペーサーエレメントおよび切断可能エレメントを含み得る。スペーサーエレメントは、切断可能エレメントが切断を担う酵素により接近しやすいように、切断可能エレメントをABのコアから離して位置付けるのに役立つ。上記の特定の分岐リンカーは、スペーサーエレメントとして機能し得る。
【0200】
この考察の全体を通して、リンカーの薬剤への結合(またはスペーサーエレメントの切断可能エレメントへの結合、または切断可能エレメントの薬剤への結合)は、特定の結合様式または反応様式である必要はないことを理解されたい。好適な安定性および生物学的適合性の生成物をもたらすいずれの反応も許容される。
【0201】
血清補体およびリンカーの選択:本開示の一方法では、薬剤の放出が望まれる場合、補体を活性化できるクラスの抗体であるABが使用される。得られた複合体は、抗原に結合する能力および補体カスケードを活性化する能力の両方を保持する。したがって、本開示のこの実施形態によれば、薬剤は、切断可能リンカーまたは切断可能エレメントの一端に結合され、リンカー基の他端は、ABの特定の部位に結合される。例えば、薬剤がヒドロキシ基またはアミノ基を有する場合には、ペプチド、アミノ酸または他の適切適に選択されたリンカーのカルボキシ末端に、それぞれエステル結合またはアミド結合を介して結合させ得る。例えば、このような薬剤は、カルボジイミド反応を介してリンカーペプチドに結合させ得る。薬剤がリンカーへの結合に干渉する官能基を含んでいる場合、これらの干渉官能基は、結合前に遮断でき、生成物複合体または中間体が作製されると遮断を解除できる。次いで、リンカーの反対側またはアミノ末端が、直接使用されるか、または補体を活性化させ得るABへ結合させるためにさらに修飾した後に使用される。
【0202】
リンカー(またはリンカーのスペーサーエレメント)は、任意の所望の長さであり得、その一端は、活性化可能抗体のABの特定部位に共有結合により結合され得る。リンカーまたはスペーサーエレメントの他端は、アミノ酸またはペプチドリンカーに結合させ得る。
【0203】
したがって、これらの複合体が補体の存在下で抗原に結合すると、薬剤をリンカーに結合させるアミドまたはエステル結合が切断され、その結果、活性型の薬剤が放出される。これらの複合体は、対象に投与されると、標的部位において薬剤の送達および放出を達成し、表1に記載されているように(これらに限定されないが)、特に医薬剤、抗生物質、代謝拮抗剤、抗増殖剤などのインビボ送達に特に有効である。
【0204】
補体活性化を伴わない放出用リンカー:標的化送達のさらに別の用途では、補体カスケードの活性化が最終的に標的細胞を溶解するため、補体活性化をしない薬剤の放出が望ましい。したがって、この手法は、標的細胞を死滅させることなく薬剤の送達および放出を達成する必要がある場合に有用である。これは、ホルモン、酵素、コルチコステロイド、神経伝達物質、遺伝子または酵素などの細胞メディエーターの標的細胞への送達が望まれる場合の目標である。これらの複合体は、血清プロテアーゼによる切断を多少受けやすいリンカーを介して補体を活性化できないABに薬剤を結合させることにより調製され得る。この複合体が個体に投与されると、抗原抗体複合体が急速に形成されるのに対し、薬剤の切断はゆっくりと起こり、その結果、標的部位において化合物が放出される。
【0205】
生化学的架橋剤:いくつかの実施形態では、特定の生化学的架橋剤を使用して、AAを1種または複数の治療薬に結合させ得る。架橋剤は、2つの異なる分子の官能基を結び付ける分子架橋を形成する。2つの異なるタンパク質を段階的様式で結合するには、ヘテロ二官能性架橋剤を使用して、望ましくないホモポリマーが形成されないようにすることができる。
【0206】
リソソームプロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカー、例えばVal-Cit、Val-Alaまたは他のジペプチドも有用である。さらに、リソソームの低pH環境において切断可能な酸に不安定であるリンカー、例えば、ビス-シアリルエーテルが使用され得る。他の好適なリンカーとしては、カテプシンに不安定である基質、特に酸性pHで最適な機能を示す基質が挙げられる。
【0207】
例示的なヘテロ二官能性架橋剤は、表3に示される。
【表3】
【0208】
切断不能リンカーまたは直接結合:本開示のいくつかの実施形態では、複合体は、薬剤が標的に送達されるが放出されないように設計され得る。これは、薬剤を直接、または切断不能リンカーを介してABに結合させることにより達成され得る。
【0209】
これらの切断不能リンカーとしては、アミノ酸、ペプチド、D-アミノ酸、または本明細書に記載の方法によりABへの結合にその後利用できる官能基を含むように修飾可能な有機化合物を挙げ得る。このような有機リンカーの一般式は、
W-(CH-Q
であり得、式中、
Wは、--NH--CH--または--CH--のいずれかであり、
Qは、アミノ酸、ペプチドであり、
nは、0~20の整数である。
【0210】
切断不能複合体:いくつかの実施形態では、化合物は、補体を活性化しないABに結合させ得る。補体を活性化ができないABを使用する場合、この結合は、活性化された補体による切断を受けやすいリンカーを用いて、または活性化された補体による切断を受けにくいリンカーを使用して達成され得る。
【0211】
本明細書に開示される抗体は、免疫リポソームとしても配合できる。抗体を含むリポソームは、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwang et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980);および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載のものなど、当該分野で公知の方法により調製される。循環時間が延長されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0212】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、定義された孔径のフィルターを通して押し出され、所望の直径のリポソームが得られる。本開示の抗体のFab’フラグメントは、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286-288(1982)に記載されているリポソームにジスルフィド交換反応により結合され得る。
【0213】
多重特異性活性化可能抗体
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、単一特異性である。
【0214】
本開示は、多重特異性抗CD166活性化可能抗体も提供する。したがって、いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、例えば非限定的な例として、二重特異性または三機能性などの多重特異性である。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、プロ二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)分子の一部として配合される。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、プロキメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞または他の遺伝子改変受容体の一部として配合される。
【0215】
いくつかの実施形態では、AAまたはその抗原結合フラグメントは、多重特異性AAまたはその抗原結合フラグメントに組み込まれ、多重特異性AAの少なくとも1つのアームがCD166に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、AAまたはその抗原結合フラグメントは、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントに組み込まれ、二重特異性AAの少なくとも1つのアームがCD166に特異的に結合する。
【0216】
本明細書で提供される多重特異性AAは、CD166および少なくとも1種または複数の異なる抗原またはエピトープを認識し、かつ、多重特異性抗体の少なくとも1つの抗原またはエピトープ結合ドメインに結合されている少なくとも1つのマスキング部分(MM)を含み、MMが結合することにより、抗原またはエピトープ結合ドメインがその標的に結合する能力を低下させる、多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、MMは、少なくとも1つのプロテアーゼの基質として機能する切断可能部分(CM)を介して多重特異性抗体の抗原結合ドメインまたはエピトープ結合ドメインに結合される。本明細書で提供される活性化可能な多重特異性抗体は、循環中では安定であり、意図された治療部位および/または診断部位で活性化されるが、正常な、すなわち健康な組織では活性化されず、活性化された場合には、対応する未修飾の多重特異性抗体に少なくとも匹敵する標的への結合を示す。
【0217】
いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、免疫エフェクター細胞にエンゲージするように設計されており、本明細書では、免疫エフェクター細胞エンゲージング多重特異性活性化可能抗体とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、白血球にエンゲージするように設計されており、本明細書では、白血球エンゲージング多重特異性活性化可能抗体とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、T細胞にエンゲージするように設計されており、本明細書では、T細胞エンゲージング多重特異性活性化可能抗体とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄性単核細胞、マクロファージ、および/または別の免疫エフェクター細胞などの白血球の表面抗原にエンゲージする。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は白血球である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞はNK細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、骨髄単核細胞などの単核細胞である。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、複数の標的および/または複数のエピトープと結合するか、あるいは、相互作用するように設計されており、本明細書では、多抗原標的活性化可能抗体とも呼ばれる。本明細書で使用される場合、用語「標的」および「抗原」は同義的に使用される。
【0218】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫エフェクター細胞エンゲージング多重特異性AAには、CD166に結合する標的化抗体またはその抗原結合フラグメント、および免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合部分が含まれ、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントおよび/または免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合部分のうちの少なくとも1つがマスキングされている。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合フラグメントには、第1の免疫エフェクター細胞エンゲージング標的に結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)が含まれ、AB1は、マスキング部分(MM1)に結合し、MM1が結合することにより、第1の標的に結合するAB1の能力を低下するようになる。いくつかの実施形態では、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントには、CD166に結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含む第2の抗体またはそのフラグメントが含まれ、AB2はマスキング部分(MM2)に結合し、MM2が結合することにより、CD166に結合するAB2の能力を低下するようになる。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合フラグメントには、第1の免疫エフェクター細胞エンゲージング標的に結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)が含まれ、AB1は、マスキング部分(MM1)に結合し、MM1が結合することにより、第1の標的に結合するAB1の能力が低下するようになり、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントには、CD166に結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含む第2の抗体またはそのフラグメントが含まれ、AB2は、マスキング部分(MM2)に結合し、MM2が結合することにより、CD166に結合するAB2の能力が低下するようになる。いくつかの実施形態では、非免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体は、癌標的化抗体である。いくつかの実施形態では、非免疫細胞エフェクター抗体はIgGである。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体は、scFvである。いくつかの実施形態では、CD166標的化抗体(例えば、非免疫細胞エフェクター抗体)はIgGであり、免疫エフェクター細胞エンゲージング抗体はscFvである。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は白血球である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞はNK細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は骨髄単核細胞である。
【0219】
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞エンゲージング多重特異性AAには、CD166標的化抗体またはその抗原結合フラグメント、およびT細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合部分が含まれ、CD166標的化抗体またはその抗原結合フラグメントおよび/またはT細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合部分のうちの少なくとも1つがマスキングされている。いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合フラグメントには、第1のT細胞エンゲージング標的に結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)が含まれ、AB1は、マスキング部分(MM1)に結合し、MM1が結合することにより、第1の標的に結合するAB1の能力を低下するようになる。いくつかの実施形態では、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントには、CD166に結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含む第2の抗体またはそのフラグメントが含まれ、AB2はマスキング部分(MM2)に結合し、MM2が結合することにより、CD166に結合するAB2の能力を低下するようになる。いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージング抗体またはその抗原結合フラグメントには、第1のT細胞エンゲージング標的に結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)が含まれ、AB1は、マスキング部分(MM1)に結合し、MM1が結合することにより、第1の標的に結合するAB1の能力が低下するようになり、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントには、CD166に結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含む第2の抗体またはそのフラグメントが含まれ、AB2は、マスキング部分(MM2)に結合し、MM2が結合することにより、CD166に結合するAB2の能力が低下するようになる。
【0220】
免疫エフェクター細胞エンゲージング多重特異性活性化可能抗体のいくつかの実施形態では、1つの抗原はCD166であり、別の抗原は典型的には、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄単核細胞、マクロファージ、および/または他の免疫エフェクター細胞の表面に存在する刺激性または抑制性受容体であり、これらに限定されないが、B7-H4、BTLA、CD3、CD4、CD8、CD16a、CD25、CD27、CD28、CD32、CD56、CD137、CTLA-4、GITR、HVEM、ICOS、LAG3、NKG2D、OX40、PD-1、TIGIT、TIM3、またはVISTAが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗原は、T細胞またはNK細胞の表面に存在する刺激性受容体である。このような刺激性受容体の例としては、限定されないが、CD3、CD27、CD28、CD137(4-1BBとも称される)、GITR、HVEM、ICOS、NKG2D、およびOX40が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗原は、T細胞の表面に存在する抑制性受容体である。このような抑制性受容体の例としては、限定されないが、BTLA、CTLA-4、LAG3、PD-1、TIGIT、TIM3、およびNK発現KIRが挙げられる。T細胞表面抗原に特異性を付与する抗体ドメインは、T細胞受容体、NK細胞受容体、マクロファージ受容体、および/または限定されないが、B7-1、B7-2、B7H3、PDL1、PDL2、またはTNFSF9などの他の免疫エフェクター細胞受容体に結合するリガンドまたはリガンドドメインによって置換されてもよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージング多重特異性AAとしては、抗CD3イプシロン(CD3ε、本明細書ではCD3eおよびCD3とも称される)scFvおよび標的化抗体またはその抗原結合フラグメントが挙げられ、抗CD3ε scFvおよび/または標的化抗体またはその抗原結合部分のうちの少なくとも1つがマスキングされている。いくつかの実施形態では、CD3ε scFvとしては、CD3εに結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)が挙げられ、AB1は、マスキング部分(MM1)に結合し、MM1が結合することにより、CD3εに結合するAB1の能力を低下するようになる。いくつかの実施形態では、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントには、CD166に結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含む第2の抗体またはそのフラグメントが含まれ、AB2はマスキング部分(MM2)に結合し、MM2が結合することにより、CD166に結合するAB2の能力を低下するようになる。いくつかの実施形態では、CD3ε scFvには、CD3εに結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)が含まれ、AB1はマスキング部分(MM1)に結合し、MM1が結合することにより、CD3εに結合するAB1の能力が低下するようになり、標的化抗体またはその抗原結合フラグメントには、CD166に結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含む第2の抗体またはそのフラグメントが含まれ、AB2はマスキング部分(MM2)に結合し、MM2が結合することにより、CD166に結合するAB2の能力が低下するようになる。
【0222】
いくつかの実施形態では、多抗原標的化抗体および/または多抗原標的化AAは、少なくとも、第1の標的および/または第1のエピトープに結合する第1の抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに第2の標的および/または第2のエピトープに結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、多抗原標的化抗体および/または多抗原標的化AAは、2つ以上の異なる標的に結合する。いくつかの実施形態では、多抗原標的化抗体および/または多抗原標的化AAは、同じ標的上の2つ以上の異なるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、多抗原標的化抗体および/または多抗原標的化AAは、同じ標的上の2つ以上の異なる標的および2つ以上の異なるエピトープの組み合わせに結合する。
【0223】
いくつかの実施形態では、IgGを含む多重特異性AAは、マスキングされているIgG可変ドメインを有する。いくつかの実施形態では、scFvを含む多重特異性AAは、マスキングされているscFvドメインを有する。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、IgG可変ドメインおよびscFvドメインの両方を有し、IgG可変ドメインのうちの少なくとも1つは、マスキング部分に結合されている。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、IgG可変ドメインおよびscFvドメインの両方を有し、scFvドメインのうちの少なくとも1つは、マスキング部分に結合されている。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、IgG可変ドメインおよびscFvドメインの両方を有し、IgG可変ドメインのうちの少なくとも1つは、マスキング部分に結合され、scFvドメインのうちの少なくとも1つは、マスキング部分に結合されている。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、IgG可変ドメインおよびscFvドメインの両方を有し、IgG可変ドメインおよびscFvドメインの各々は、それ自身のマスキング部分に結合されている。いくつかの実施形態では、多特異性AAの1つの抗体ドメインは、標的抗原に対する特異性を有し、別の抗体ドメインは、T細胞表面抗原に対する特異性を有する。いくつかの実施形態では、多重特異性AAの1つの抗体ドメインは、標的抗原に対して特異性を有し、別の抗体ドメインは、別の標的抗原に対して特異性を有する。いくつかの実施形態では、多重特異性AAの1つの抗体ドメインは、標的抗原のあるエピトープに対して特異性を有し、別の抗体ドメインは、標的抗原の別のエピトープに対して特異性を有する。
【0224】
多重特異性活性化可能抗体では、scFvは、IgG活性化可能抗体の重鎖のカルボキシル末端、IgG活性化可能抗体の軽鎖のカルボキシル末端、またはIgG活性化可能抗体の重鎖および軽鎖の両方のカルボキシル末端に融合させ得る。多重特異性活性化可能抗体では、scFvは、IgG活性化可能抗体の重鎖のアミノ末端、IgG活性化可能抗体の軽鎖のアミノ末端、またはIgG活性化可能抗体の重鎖および軽鎖の両方のアミノ末端に融合させ得る。多重特異性活性化可能抗体では、scFvは、IgG活性化可能抗体の1つまたは複数のカルボキシル末端および1つまたは複数のアミノ末端の任意の組み合わせに融合させ得る。いくつかの実施形態では、切断可能部分(CM)に結合されているマスキング部分(MM)は、IgGの抗原結合ドメインに結合し、そのドメインをマスキングする。いくつかの実施形態では、切断可能部分(CM)に結合されているマスキング部分(MM)は、少なくとも1つのscFvの抗原結合ドメインに結合し、そのドメインをマスキングする。いくつかの実施形態では、切断可能部分(CM)に結合されているマスキング部分(MM)は、IgGの抗原結合ドメインに結合して、そのドメインをマスキングし、切断可能部分(CM)に結合されているマスキング部分(MM)は、少なくとも1つのscFvの抗原結合ドメインに結合して、そのドメインをマスキングする。
【0225】
本開示は、限定されないが、以下の多重特異性AA構造体の例を提供する:(VL-CL):(VH-CH1-CH2-CH3-L4-VH-L3-VL-L2-CM-L1-MM);(VL-CL):(VH-CH1-CH2-CH3-L4-VL-L3-VH-L2-CM-L1-MM);(MM-L1-CM-L2-VL-CL):(VH-CH1-CH2-CH3-L4-VH-L3-VL;(MM-L1-CM-L2-VL-CL):(VH-CH1-CH2-CH3-L4-VL-L3-VH;(VL-CL):(MM-L1-CM-L2-VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL):(MM-L1-CM-L2-VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(MM-L1-CM-L2-VL-CL):(VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(MM-L1-CM-L2-VL-CL):(VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL-L2-CM-L1-MM):(VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VL-L3-VH-L2-CM-L1-MM):(VH-CH1-CH2-CH3);(MM-L1-CM-L2-VL-L3-VH-L4-VL-CL):(VH-CH1-CH2-CH3);(MM-L1-CM-L2-VH-L3-VL-L4-VL-CL):(VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL-L2-CM-L1-MM):(MM-L1-CM-L2-VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL-L2-CM-L1-MM):(MM-L1-CM-L2-VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VL-L3-VH-L2-CM-L1-MM):(MM-L1-CM-L2-VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VL-L3-VH-L2-CM-L1-MM):(MM-L1-CM-L2-VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL:(MM-L1-CM-L2-VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL:(MM-L1-CM-L2-VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VL-L3-VH:(MM-L1-CM-L2-VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VL-L3-VH:(MM-L1-CM-L2-VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL-L2-CM-L1-MM):(VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VH-L3-VL-L2-CM-L1-MM):(VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3);(VL-CL-L4-VL-L3-VH-L2-CM-L1-MM):(VL-L3-VH-L4-VH-CH1-CH2-CH3);または(VL-CL-L4-VL-L3-VH-L2-CM-L1-MM):(VH-L3-VL-L4-VH-CH1-CH2-CH3)、式中、VLおよびVHは、IgGに含まれる第1の特異性の軽可変ドメインおよび重可変ドメインを表す;VLおよびVHは、scFvに含まれる第2の特異性の可変ドメインを表す;L1は、マスキング部分(MM)とCM(CM)とを接続するリンカーペプチドである;L2は、CM(CM)と抗体を接続するリンカーペプチドである;L3は、scFvの可変ドメインを接続するリンカーペプチドである;L4は、第1の特異性の抗体を第2の特異性の抗体に接続するリンカーペプチドである;CLは、軽鎖定常ドメインである;およびCH1、CH2、CH3は、重鎖定常ドメインである。第1および第2の特異性は、任意の抗原またはエピトープに対するものであり得る。
【0226】
T細胞エンゲージング多特異性活性化可能抗体のいくつかの実施形態では、1つの抗原は、CD166であり、別の抗原は、典型的には、通常、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄単核細胞、マクロファージ、および/または他の免疫エフェクター細胞の表面に存在する刺激性(本明細書では活性化とも呼ばれる)または抑制性受容体であり、限定されないが、B7-H4、BTLA、CD3、CD4、CD8、CD16a、CD25、CD27、CD28、CD32、CD56、CD137(TNFRSF9とも称される)、CTLA-4、GITR、HVEM、ICOS、LAG3、NKG2D、OX40、PD-1、TIGIT、TIM3、またはVISTAが挙げられる。T細胞表面抗原に特異性を付与する抗体ドメインは、T細胞受容体、NK細胞受容体、マクロファージ受容体、および/または他の免疫エフェクター細胞受容体に結合するリガンドまたはリガンドドメインによって置換されてもよい。
【0227】
いくつかの実施形態では、標的化抗体は、本明細書に開示の抗CD166抗体である。いくつかの実施形態では、標的化抗体は、活性化可能抗体の形態であり得る。いくつかの実施形態では、scFvは、Pro-scFvの形態であり得る(例えば、WO2009/025846号、WO2010/081173号を参照されたい)。
【0228】
いくつかの実施形態では、scFvはCD3εへの結合に特異的であり、CD3εに結合する抗体またはそのフラグメント、例えばCH2527、FN18、H2C、OKT3、2C11、UCHT1、またはV9を含むか、またはそれらに由来する。いくつかの実施形態では、scFvは、CTLA-4(本明細書ではCTLAおよびCTLA4とも称される)の結合に特異的である。
【0229】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4 scFvには、次のアミノ酸配列が含まれる:
【化9】
【0230】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4 scFvは、配列番号117のアミノ酸配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、抗CD3ε scFvには、次のアミノ酸配列が含まれる:
【化10】
【0232】
いくつかの実施形態では、抗CD3ε scFvは、配列番号118のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、scFvは、1個または複数のT細胞、1個または複数のNK細胞、および/または1個または複数のマクロファージの結合に特異的である。いくつかの実施形態では、scFvは、B7-H4、BTLA、CD3、CD4、CD8、CD16a、CD25、CD27、CD28、CD32、CD56、CD137、CTLA-4、GITR、HVEM、ICOS、LAG3、NKG2D、OX40、PD-1、TIGIT、TIM3、またはVISTAからなる群から選択される標的の結合に特異的である。
【0234】
いくつかの実施形態では、多重特異性AAには、ABに結合した薬剤も含む。いくつかの実施形態では、薬剤は治療薬である。いくつかの実施形態では、薬剤は抗腫瘍剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、毒素またはそのフラグメントである。いくつかの実施形態では、薬剤は、リンカーを介して多重特異性AAに結合する。いくつかの実施形態では、薬剤は、切断可能リンカーを介してABに結合する。いくつかの実施形態では、リンカーは切断不能リンカーである。いくつかの実施形態では、薬剤は微小管抑制剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、DNAアルキル化剤またはDNA挿入剤などの核酸損傷剤、または他のDNA損傷剤である。いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能リンカーである。いくつかの実施形態では、薬剤は、表1に列挙されている群から選択される薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、ドラスタチンである。いくつかの実施形態では、薬剤は、オーリスタチンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、オーリスタチンEまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、モノメチルオーリスタチンD(MMAD)である。いくつかの実施形態では、薬剤は、メイタンシノイドまたはメイタンシノイド誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、DM1またはDM4である。いくつかの実施形態では、薬剤は、デュオカルマイシンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、カリケアマイシンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、ピロロベンゾジアゼピンである。いくつかの実施形態では、薬剤は、ピロロベンゾジアゼピン二量体である。
【0235】
いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、検出可能な部分も含む。いくつかの実施形態では、検出可能な部分は診断剤である。
【0236】
いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、天然で1つまたは複数のジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、改変して、1つまたは複数のジスルフィド結合を含むようにすることができる。
【0237】
本開示はまた、本明細書に記載の多重特異性AAをコードする単離された核酸分子、ならびにこれらの単離された核酸配列を含むベクターを提供する。本開示は、活性化可能抗体の発現をもたらす条件下で細胞を培養することにより多重特異性AAを産生する方法を提供し、細胞はこのような核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、このようなベクターを含む。
【0238】
本開示はまた、(a)多重特異性活性化可能の発現をもたらす条件下で、多重特異性AAをコードする核酸構築物を含む細胞を培養すること、および(b)多重特異性活性化可能抗体を回収すること、により、本開示の多重特異性AAを製造する方法を提供する。好適なAB、MM、および/またはCMとしては、本明細書で開示されるAB、MM、および/またはCMのいずれかを含む。
【0239】
本開示はまた、第1の標的または第1のエピトープに特異的に結合する少なくとも第1の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB1)および第2の標的または第2のエピトープに結合する第2の抗体またはその抗原結合フラグメント(AB2)を含み、少なくともAB1は、マスキング部分(MM1)にカップリングさせるか、または他の方法で取り付けられ、これにより、MM1が結合することにより、標的に結合するAB1の能力を低下するようになる、多重特異性AAおよび/または多重特異性AA組成物も提供する。いくつかの実施形態では、MM1は、プロテアーゼ、例えば、対象において治療部位または診断部位でAB1の標的と共存下のプロテアーゼの基質を含む第1の切断可能部分(CM1)配列を介してAB1に結合される。本明細書で提供される多重特異性AAは、循環中において安定であり、意図された治療部位および/または診断部位で活性化されるが、正常な、すなわち健康な組織では活性化されず、活性化されたときには、対応する未修飾の多重特異性抗体に少なくとも匹敵するAB1の標的への結合を示す。好適なAB、MM、および/またはCMとしては、本明細書で開示されるAB、MM、および/またはCMのいずれかを含む。
【0240】
本開示はまた、標的に特異的に結合する少なくとも第1の抗体または抗体フラグメント(AB1)および第2の抗体または抗体フラグメント(AB2)を含む多重特異性AAを含む組成物および方法を提供し、ここでは、多重特異性AA中の少なくとも第1のABは、AB1がその標的に結合する能力を低下させるマスキング部分(MM1)に結合されている。いくつかの実施形態では、各ABは、各標的に対するその対応するABの能力を低下させるMMに結合される。例えば、二重特異性AAの実施形態では、AB1は、その標的に結合するAB1の能力を低下させる第1のマスキング部分(MM1)に結合され、AB2は、その標的に結合するAB2の能力を低下させる第2マスキング部分(MM2)に結合される。これらの実施形態のいくつかでは、多重特異性AAは、3つ以上のAB領域で構成されている;このような実施形態では、多重特異性活性化可能抗体の各ABについて、AB1は、その標的に結合するAB1の能力を低下させる第1のマスキング部分(MM1)に結合され、AB2は、その標的に結合するAB2の能力を低下させる第2マスキング部分(MM2)に結合され、AB3は、その標的に結合するAB3の能力を低下させる第3マスキング部分(MM3)に結合される。好適なAB、MM、および/またはCMとしては、本明細書で開示されるAB、MM、および/またはCMのいずれかを含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、プロテアーゼの基質である少なくとも1つの切断可能部分(CM)をさらに含み、CMにより、MMがABに結合する。例えば、いくつかの実施形態では、多重特異性AAは、標的に特異的に結合する少なくとも第1の抗体または抗体フラグメント(AB1)と、第2の抗体または抗体フラグメント(AB2)とを含み、多重特異性AA中の少なくとも第1のABは、第1の切断可能部分(CM1)を介して、その標的に結合するAB1の能力を低下させるマスキング部分(MM1)に結合される。いくつかの二重特異性AAの実施形態では、AB1は、CM1を介してMM1に結合され、AB2は、第2の切断可能部分(CM2)を介して、標的に結合するAB2の能力を低下させる第2のマスキング部分(MM2)に結合される。これらの実施形態のいくつかでは、多重特異性AAは、3つ以上のAB領域で構成されている;いくつかの実施形態では、多重特異性活性化可能抗体の各ABについて、AB1は、CM1を介してMM1に結合され、AB2は、CM2を介してMM2に結合され、AB3は、第3の切断可能部分(CM3)を介して、その標的に結合するAB3の能力を低下させる第3のマスキング部分(MM3)に結合される。好適なAB、MM、および/またはCMとしては、本明細書で開示されるAB、MM、および/またはCMのいずれかを含む。
【0242】
非結合性立体部分または非結合性立体部分の結合パートナーを有する活性化可能抗体
本開示はまた、非結合性立体部分(NB)または非結合性立体部分の結合パートナー(BP)を含むAAも提供し、BPは、NBを活性化可能抗体に動員するか、または別の方法で引き付ける。本明細書で提供されるAAには、例えば、非結合性立体部分(NB) 、切断可能リンカー(CL)、および標的に結合する抗体または抗体フラグメント(AB)を含むAA、非結合性立体部分(BP)の結合パートナー、CL、およびABを含むAA、ならびにNBが動員されているBP、CL、および標的に結合するABを含むAAが含まれる。NBが、AAのCLおよびABに共有結合により結合されているか、またはNBが、AAのCLおよびABに共有結合により結合されているBPとの相互作用によって結合されているAAは、本明細書では「NB含有活性化可能抗体」と称する。活性化可能または切替え可能とは、AAが抑制されているか、マスキングされているか、または切断されていない状態(すなわち、第1のコンフォメーション)にあるときに標的に対する第1の結合レベル、およびAAが抑制されていないか、マスキングされていないおよび/または切断されている状態にあるときに標的に対する第2の結合レベル(すなわち、第2のコンフォメーション、すなわち活性化抗体)をAAが示すことを意味し、ここで、第2の標的結合レベルは、第1の標的結合レベルよりも大きい。AA組成物は、従来の抗体治療薬と比較して、生物学的利用能の増加およびより好ましい生体内分布を示し得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、ABがマスクされていないか、さもなければ非治療部位および/または非診断部位への結合を抑制されていない場合、AAが、このような部位での結合から生じる可能性のある毒性および/または有害な副作用の低減をもたらす。
【0244】
非結合性立体部分(NB)を含む抗CD166AAは、国際公開第WO2013/192546号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された方法を使用して作製できる。
【0245】
活性化可能抗体の産生
本開示はまた、ポリペプチドの発現をもたらす条件下で細胞を培養することにより、活性化可能抗CD166抗体ポリペプチドを産生する方法を提供する。この方法では、細胞は、本明細書に記載の抗体および/またはAAをコードする単離核酸分子、および/またはこれらの単離核酸配列を含むベクターを含む。本開示は、抗体および/または活性化可能抗体の発現をもたらす条件下で細胞を培養することにより、抗体および/またはAAを産生する方法を提供する。この方法では、細胞は、本明細書に記載の抗体および/またはAAをコードする単離核酸分子、および/またはこれらの単離核酸配列を含むベクターを含む。
【0246】
本発明はまた、(a)活性化可能抗体の発現をもたらす条件下でAAをコードする核酸構築物を含む細胞を培養ステップあって、AAが、マスキング部分(MM)、切断可能部分(CM)、およびCD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)を含み、(i)CMがプロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、(ii)CMがAAに配置され、AAが切断されていない状態の場合、MMがCD166へのABの特異的結合に干渉し、切断された状態である場合、MMが、CD166へのABの特異的結合に干渉しない、またはこれらの結合と競合しないステップ、および(b)活性化可能抗体を回収するステップにより、活性化状態でCD166に結合するAAを製造する方法を提供する。好適なAB、MM、および/またはCMとしては、本明細書で開示されるAB、MM、および/またはCMのいずれかを含む。
【0247】
以下の例示的なヌクレオチド配列は、本明細書で提供されるAAおよび複合化AAを作製および使用するために使用する目的で提供される。また、以下に提供されるヌクレオチド配列と少なくとも90%、95%、またはさらには99%相同であるヌクレオチド配列も提供される。
【化11】

【0248】
活性化可能抗体および複合化活性化可能抗体の治療的使用
本開示は、CD166に結合するAA、特に、CD166に結合して、CD166の生物活性および/またはCD166媒介シグナル伝達の少なくとも1つを中和する、あるいは、抑制するAAを使用して、対象のCD166の異常発現および/または活性に関連する症状の治療、予防、および/またはその発症または進行を遅延させる、またはその症状を緩和する方法を提供する。
【0249】
本開示はまた、CD166に結合するAA、特に、CD166を発現しているまたは異常発現している細胞に結合する、細胞を標的にする、中和する、死滅させる、あるいは、その細胞の少なくとも1種の生物活性を抑制するAAを使用して、対象においてCD166を発現またはCD166を異常発現している細胞の存在、成長、増殖、転移、および/または活性に関連する症状を治療する、予防するおよび/またはその発症または進行を遅延させる、またはその症状を緩和する方法を提供する。
【0250】
本開示はまた、CD166に結合するAA、特に、CD166を発現している細胞に結合する、細胞を標的にする、中和する、死滅させる、あるいは、その細胞の少なくとも1種の生物活性を抑制するAAを使用して、対象においてCD166を発現している細胞の存在、成長、増殖、転移、および/または活性に関連する症状を治療する、予防するおよび/またはその発症または進行を遅延させる、またはその症状を緩和する方法を提供する。
【0251】
本開示はまた、CD166に結合するAA、特に、CD166を異常発現している細胞に結合する、細胞を標的にする、中和する、死滅させる、あるいは、その細胞の少なくとも1種の生物活性を抑制するAAを使用して、対象においてCD166を異常発現している細胞の存在、成長、増殖、転移、および/または活性に関連する症状を治療する、予防するおよび/またはその発症または進行を遅延させる、またはその症状を緩和する方法を提供する。
【0252】
本開示はまた、本明細書に記載の治療有効量の抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を、それを必要とする対象に投与することにより、対象の癌を予防する、癌の進行を遅延させる、またはその癌の症状を治療する、緩和する、あるいは、その癌を改善する方法を提供する。
【0253】
本開示はまた、対象のCD166の異常発現および/または活性に関連する症状の治療、予防、および/またはその発症または進行の遅延、またはその症状の緩和に使用するための、CD166に結合するAA、特に、CD166に結合して、CD166の生物活性および/またはCD166媒介シグナル伝達の少なくとも1つを中和する、あるいは、抑制するAAを提供する。
【0254】
本開示はまた、対象において、CD166を発現しているかまたは異常発現している細胞の存在、成長、増殖、転移、および/または活性に関連する症状の治療、予防、および/またはその症状の発症または進行の遅延化、またはその症状の緩和に使用するための、CD166に結合するAA、特に、CD166に結合して、CD166を発現しているまたは異常発現している細胞に結合する、その細胞を標的にする、中和する、死滅させる、あるいはその細胞の少なくとも1つの生物活性を抑制するAAを提供する。
【0255】
本開示はまた、対象において、癌の予防、その癌の進行の遅延化、その癌の症状の治療、緩和、あるいは、癌の改善に使用するための、本明細書に記載の抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を提供する。この場合、抗体は治療有効量で投与される。
【0256】
非限定的な例として、本開示のAAは、上皮または扁平上皮細胞癌、カルチノイド、および/または神経内分泌癌を治療する、予防するおよび/またはそれらの発症または進行を遅延させるために使用できる。癌の例としては、限定されないが、腺癌、胆道癌、膀胱癌、乳癌(例えば、三種陰性乳癌、Her2陰性乳癌、エストロゲン受容体陽性の乳癌)、カルチノイド癌、子宮頸癌、胆管癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌)、白血病、肝癌、肺癌(例えば、NSCLC、SCLC)、リンパ腫、黒色腫、中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌(例えば、転移性去勢抵抗性前立腺癌)、腎癌、皮膚癌、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、および尿路上皮癌が挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態では、癌は、いずれかの上皮癌または扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、中咽頭癌、および/または頭頸部癌である。
【0258】
いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、骨癌、乳癌、カルチノイド、子宮頸癌、結腸直腸癌、結腸癌、子宮内膜癌、上皮癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝癌、肺癌、黒色腫、中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、泌尿生殖器癌、および/または尿路上皮癌である。
【0259】
いくつかの実施形態では、癌は、三種陰性乳癌(TNBC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、Ras変異結腸直腸癌、まれな上皮癌、中咽頭癌、子宮頸癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、および/または前立腺癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、CD166発現腫瘍に関連している。いくつかの実施形態では、癌は、CD166発現腫瘍に起因する。
【0260】
これらの方法およびその使用の実施形態のいずれかにおいて使用される抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体、および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、これらの疾患のあらゆる段階において投与され得る。例えば、このような抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体、および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、早期から転移期まで、あらゆる段階の癌を患っている対象に投与できる。
【0261】
例示的な実施形態では、対象は、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌(CPRC)、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、および非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しているか、罹患している疑いがある。
【0262】
例示的な実施形態では、対象は、皮膚病変に罹患しているか、罹患している疑いがある。いくつかの実施形態では、皮膚病変は、皮膚転移である。
【0263】
本明細書で提供されるように、治療される対象は、ヒト、非ヒト霊長類、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ)、家畜、作業用動物、動物園動物などの哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は伴侶動物である。いくつかの実施形態では、対象は獣医師がケアしている動物である。
【0264】
いくつかの実施形態では、乳癌に罹患している、または罹患している疑いがあり、本開示のAA(例えば、組み合わせ55または組み合わせ60など)を受ける対象は、エストロゲン受容体発現(ER+)腫瘍を有し、抗ホルモン療法を受けるべきであったがその療法を受けず、本開示のAAによる治療を受ける前に疾患の進行を経験している。いくつかの実施形態では、乳癌に罹患している、または罹患している疑いがあり、本開示のAA(例えば、組み合わせ55または組み合わせ60など)を受ける対象は、三種陰性乳癌(TNBC)を有し、本開示のAAにより治療される前に2種以上の前治療を受けている。
【0265】
いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、去勢抵抗性前立腺癌に罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、本開示のAAにより治療される前に1種以上の前治療を受けている。
【0266】
いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、胆管癌に罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、本開示のAAにより治療される前に1種以上のゲムシタビン含有レジメンの前治療が奏功していない。
【0267】
いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、子宮内膜癌に罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、本開示のAAにより治療される前に1回以上の子宮外または進行性疾患のための白金含有レジメンを受けている。
【0268】
いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、卵巣上皮癌に罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、非乳癌(BRCA)変異(生殖細胞系または体細胞)を有するか、または未知のBRCA変異状態を有するか、白金抵抗性または白金難治性の卵巣癌を有するか、のいずれかである。いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、卵巣上皮癌に罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、BRCA変異を有し、PARP阻害薬に対し難治性であるか、あるいは、不適格である。
【0269】
いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、HNSCCに罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、本開示のAAにより治療される前に、1回以上の白金含有レジメンおよびPD-1/PD-L1阻害剤を受けている(対象の適応症および局所性に対し認可されている場合)。
【0270】
いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、NSCLCに罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、本開示のAAにより治療される前に、1回以上の白金含有レジメンを受けている。いくつかの実施形態では、本開示のAA、例えば組み合わせ55または組み合わせ60を受ける、NSCLCに罹患している、または罹患していることが疑われる対象は、本開示のAAにより治療される前に、チェックポイント阻害剤を以前に投与されている(対象の適応症および局所性に対し認可されている場合)。
【0271】
いくつかの実施形態では、以下のいずれかを有する対象は、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌(CPRC)、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、HNSCC、およびNSCLCの治療のために本開示のAAを受けるのに適格でない場合がある:活動性または慢性の角膜障害、角膜移植歴、活動性ヘルペス性角膜炎、継続的な治療/モニターを必要とする活動性の眼の状態、臨床的に関連する活動性感染などの重篤な併発症、自己免疫疾患の合併または既往歴、最近の心筋梗塞などの重大な心疾患、多発性硬化症または他の脱髄疾患の既往歴、イートン-ランバート症候群(腫瘍随伴症候群)、過去6ヶ月以内の出血性または虚血性脳卒中の既往歴、またはアルコール性肝疾患、根底にある新生物によって引き起こされる潰瘍性病変を除く、治癒していない創傷または潰瘍、以前のモノクローナル抗体療法に対する重度のアレルギー反応またはアナフィラキシー反応の既往歴、現在、ワルファリンによる抗凝固療法、または投与前3ヶ月以内に大きい手術(全身麻酔を必要とする)を受けている。
【0272】
活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体およびその治療用配合物は、異常なCD166の発現および/または活性に関連する疾患または障害に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与される。異常CD166発現および/または活性に関連する疾患または障害に罹患している、または罹患しやすい対象は、当該技術分野において既知の種々の方法のいずれかを用いて特定される。例えば、癌または他の腫瘍状態に罹患している対象は、種々の臨床検査および/または実験室試験、例えば、健康状態を評価するための身体検査および血液、尿および/または便分析などのいずれかを用いて特定される。例えば、健康状態を評価するための身体検査および/または体液分析、例えば、血液、尿、および/または便の分析など、様々な臨床検査および/または実験室試験のいずれかを使用して、炎症および/または炎症性障害に罹患している対象を特定する。
【0273】
抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を異常なCD166の発現および/または活性に関連する疾患または障害を患っている対象への投与は、様々な実験室または臨床目的のいずれかが達成された場合には、奏功しているものとみなされる。例えば、抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を異常なCD166の発現および/または活性に関連する疾患または障害を患っている対象への投与は、その疾患または障害に関連する症状のうちの1つまたは複数が緩和されるか、軽減されるか、もしくは抑制されるか、またはさらなる(すなわち悪化した)状態に進行していない場合、奏功しているものとみなされる。例えば、抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を異常なCD166の発現および/または活性に関連する疾患または障害を患っている対象への投与は、疾患または障害が寛解に入った場合、またはさらなる(すなわち悪化した)状態に進行していない場合、奏功しているものとみなされる。
【0274】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体およびその治療用配合物を、癌または他の腫瘍状態に罹患している対象など、疾患または障害に罹患しているか、または罹患しやすい対象に投与する。この場合、対象の疾患細胞はCD166を発現している。いくつかの実施形態では、疾患細胞は、異常CD166発現および/または活性に関連している。いくつかの実施形態では、疾患細胞は、正常なCD166発現および/または活性に関連している。対象の疾患細胞がCD166を発現している、疾患または障害に罹患している、または罹患しやすい対象は、当該技術分野において既知の種々の方法のいずれかを用いて特定される。例えば、癌または他の腫瘍状態に罹患している対象は、種々の臨床検査および/または実験室試験、例えば、健康状態を評価するための身体検査および血液、尿および/または便分析などのいずれかを用いて特定される。例えば、健康状態を評価するための身体検査および/または体液分析、例えば、血液、尿、および/または便の分析など、様々な臨床検査および/または実験室試験のいずれかを使用して、炎症および/または炎症性障害に罹患している対象を特定する。
【0275】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体およびその治療用配合物を、癌または他の腫瘍状態に罹患している対象など、CD166を発現する細胞またはそのような細胞の存在、成長、増殖、転移、および/または活性に関連する疾患または障害に罹患している、または罹患しやすい対象に投与する。いくつかの実施形態では、細胞は、異常CD166発現および/または活性に関連している。いくつかの実施形態では、細胞は、正常なCD166発現および/または活性に関連している。CD166を発現している細胞に関連する疾患または障害に罹患しているまたは罹患しやすい対象は、当該技術分野において既知の種々の方法のいずれかを用いて特定される。例えば、癌または他の腫瘍状態に罹患している対象は、種々の臨床検査および/または実験室試験、例えば、健康状態を評価するための身体検査および血液、尿および/または便分析などのいずれかを用いて特定される。例えば、健康状態を評価するための身体検査および/または体液分析、例えば、血液、尿、および/または便の分析など、様々な臨床検査および/または実験室試験のいずれかを使用して、炎症および/または炎症性障害に罹患している対象を特定する。
【0276】
抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体のCD166の発現細胞に関連する疾患または障害を患っている対象への投与は、様々な実験室または臨床目的のいずれかが達成された場合には、奏功しているものとみなされる。例えば、抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体をCD166発現細胞に関連する疾患または障害を患っている対象への投与は、その疾患または障害に関連する症状のうちの1つまたは複数が緩和するか、軽減するか、もしくは抑制されるか、またはさらなる(すなわち悪化した)状態に進行していない場合、奏功しているものとみなされる。例えば、抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体をCD166発現細胞に関連する疾患または障害を患っている対象への投与は、疾患または障害が寛解に入った場合、またはさらなる(すなわち悪化した)状態に進行していない場合、奏功しているものとみなされる。
【0277】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、例えば、化学療法剤、抗炎症剤、および/または免疫抑制剤などの1種または複数の追加の薬剤と組み合わせて、治療中および/または治療後に投与される。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、同時に投与される。例えば、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、単一の組成物に配合され得るか、または2つ以上の別個の組成物として投与され得る。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、順次投与される。
【0278】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、1種または複数の追加の薬剤、または追加の薬剤の組み合わせと併用して使用される。好適な追加の薬剤としては、例えば癌などの意図された用途のための現在の医薬品および/または外科療法を含む。例えば、抗CD166抗体、複合化抗CD166抗体、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、追加の化学療法剤または抗新生物剤と併用して使用できる。
【0279】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ドセタキセル、パクリタキセル、アブラキサン(すなわち、アルブミン結合パクリタキセル)、ドキソルビシン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、イリノテカン、およびゲムシタビンからなる群から選択される化学療法剤などの化学療法剤である。
【0280】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、チェックポイント阻害剤、キナーゼ阻害剤、腫瘍微小環境での阻害剤を標的とする薬剤、および/またはT細胞またはNKアゴニストである。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、単独の、または化学療法剤もしくは抗新生物剤などの別の追加の薬剤と組み合わせた放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ワクチン、オンコウイルス、および/またはDC活性化剤、例えば非限定的な例として、toll様受容体(TLR)アゴニストおよび/またはα-CD40である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ADCCを介してまたは毒素への直接結合を介して、腫瘍を殺傷するように設計された腫瘍標的抗体(例えば、抗体薬物複合体(ADC))である。
【0281】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、LAG-3、PD-1、CD166、TIGIT、TIM-3、B7H4、およびVistaからなる群から選択される標的の阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、B-RAFi、MEKi、およびイブルチニブなどのBtk阻害剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、クリゾチニブである。いくつかの実施形態では、腫瘍微小環境抑制剤は、IDO阻害剤、α-CSF1R阻害剤、α-CCR4阻害剤、TGF-β、骨髄由来サプレッサー細胞、またはT調節細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アゴニストは、Ox40、GITR、CD137、ICOS、CD27、およびHVEMからなる群から選択される。
【0282】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、CTLA-4阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、LAG-3阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、PD-1阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、CD166阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、TIGIT阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、TIM-3である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、B7H4阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、Vista阻害剤である。いくつかの実施形 態では、阻害剤は、B-RAFi阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、MEKi阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、Btk阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、イブルチニブである。いくつかの実施形態では、阻害剤は、クリゾチニブである。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IDO阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、α-CSF1R阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、α-CCR4阻害剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、TGFベータである。いくつかの実施形態では、阻害剤は、TGF-βである。いくつかの実施形態では、阻害剤は、骨髄由来サプレッサー細胞である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、T調節細胞である。
【0283】
いくつかの実施形態では、アゴニストは、Ox40である。いくつかの実施形態では、アゴニストは、GITRである。いくつかの実施形態では、アゴニストは、CD137である。いくつかの実施形態では、アゴニストは、ICOSである。いくつかの実施形態では、アゴニストは、CD27である。いくつかの実施形態では、アゴニストは、HVEMである。
【0284】
いくつかの実施形態では、AAおよび/または複合化AAは、治療中および/または治療後、例えば、化学療法剤、抗炎症剤、および/または免疫抑制剤などの1種または複数の追加の薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、単一の治療用組成物に配合され、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、同時に投与される。あるいは、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、互いに別個であり、例えば、それぞれが別個の治療用組成物に配合され、活性化可能抗CD166抗体および/もしくは複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、同時に投与されるか、または活性化可能抗CD166抗体および/もしくは複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、治療レジメン中の異なる時間に投与される。例えば、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、追加の薬剤が投与される前に投与されるか、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、追加の薬剤が投与された後に投与されるか、または活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、交互に投与される。本明細書に記載のように、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、単一用量または複数用量で投与される。
【0285】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、同時に投与される。例えば、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、単一の組成物に配合され得るか、または2つ以上の別個の組成物として投与され得る。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、順次投与されるか、または活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体および追加の薬剤は、治療レジメン中の異なる時間で投与される。
【0286】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体は、治療中および/または治療後、非限定的な例として、化学療法剤、抗炎症剤、および/または免疫抑制剤、例えば、アルキル化剤、抗代謝剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ抑制剤、細胞毒性抗生物質、および/または他の核酸損傷剤などの1種または複数の追加の薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、パクリタキセル(例えば、アブラキサン(登録商標))などのタキサンである。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ゲムシタビンなどの抗代謝剤である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、カルボプラチンまたはシスプラチンなどの白金ベースの化学療法などのアルキル化剤である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、キナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブまたはエルロチニブなどの標的薬である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、別の抗体、例えばモノクローナル抗体(例えばベバシズマブ)、二重特異性抗体、または多重特異性抗体などの標的薬である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブなどのプロテアソーム阻害剤である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、レナリドマイド(lenolidominde)またはIL-2などの免疫調節剤である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、放射線である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、当業者によって標準治療と考えられている薬剤である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、当業者に公知の化学療法剤である。
【0287】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、別の抗体またはその抗原結合フラグメント、別の複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、別のAAまたはその抗原結合フラグメントおよび/または別の複合化AAまたはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、第1の抗体またはその抗原結合フラグメント、第1の複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、AAまたはその抗原結合フラグメント、および/または複合化AAまたはその抗原結合フラグメントと同じ標的、例えばCD166に対する、別の抗体またはその抗原結合フラグメント、別の複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、別のAAまたはその抗原結合フラグメントおよび/または別の複合化AAまたはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、第1の抗体またはその抗原結合フラグメント、第1の複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、AAまたはその抗原結合フラグメント、および/または複合化AAまたはその抗原結合フラグメントとは異なる標的に対する、別の抗体またはその抗原結合フラグメント、別の複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、別のAAまたはその抗原結合フラグメントおよび/または別の複合化AAまたはその抗原結合フラグメントである。
【0288】
いくつかの実施形態では、追加の抗体またはその抗原結合フラグメント、複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、AAまたはその抗原結合フラグメント、および/または複合化AAまたはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、単鎖、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメントト、scFv、scAb、dAb、単一ドメイン重鎖抗体、または単一ドメイン軽鎖抗体である。いくつかの実施形態では、追加の抗体またはその抗原結合フラグメント、複合化抗体またはその抗原結合フラグメント、AAまたはその抗原結合フラグメント、および/または複合化AAまたはその抗原結合フラグメントは、マウス、他のげっ歯類、キメラ、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0289】
本開示による治療実体の投与は、好適な担体、賦形剤、および改善された運搬、送達、耐性などをもたらすために配合物に組み込まれる他の薬剤と共に投与されることが理解されよう。多数の適切な配合物を、すべての医薬品化学者に既知である処方書、Remington’s Pharmaceutical Sciences(15th ed,Mack Publishing Company,Easton,PA(1975))、特に第87章(Blaug、Seymour)で見つけることができる。これらの配合物としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ベシクル(リポフェクチン(商標)など)、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型乳剤、カーボワックス乳剤(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックス含有半固体混合物が挙げられる。配合物中の有効成分が配合によって不活化されず、配合物が投与経路に生理学的に適合しており、かつ許容可能であるという条件で、前述の混合物はいずれも本開示による治療および治療法に適切であり得る。Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.” Regul.Toxicol Pharmacol.32(2):210-8(2000),Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int.J.Pharm.203(1-2):1-60(2000),Charman WN “Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery-some emerging concepts.” J Pharm Sci.89(8):967-78(2000),Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol.52:238-311(1998)および製薬化学者に公知である配合物、賦形剤、および担体に関連する追加情報のためのそれらの中の引用物も参照されたい。
【0290】
非限定的な例として、AAおよび/または複合化AAなどの活性化可能抗CD166抗体などの本開示の治療用配合物は、異常な標的の発現および/または活性に関連する疾患または障害を予防する、治療する、あるいは、改善するために使用される。例えば、AAおよび/または複合化活性化可能抗体などの本開示の治療用配合物は、癌または他の腫瘍状態、炎症、炎症性障害、および/または自己免疫疾患を治療、あるいは、改善するために使用される。いくつかの実施形態では、癌は、標的が発現している固形腫瘍または血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は、標的が発現している固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は、標的が発現している血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、標的は柔組織上(例えば、癌において、多くの場合、器官または組織の機能を実行する器官または組織の一部分)に発現する。いくつかの実施形態では、標的は、細胞、組織、または器官で発現する。いくつかの実施形態では、標的は、間質(すなわち、細胞、組織、または器官の結合支持フレームワーク)に発現する。いくつかの実施形態では、標的は、骨芽細胞に発現している。いくつかの実施形態では、標的は、内皮(血管系)に発現している。いくつかの実施形態では、標的は、癌幹細胞に発現している。いくつかの実施形態では、AAが結合する薬剤は、微小管阻害剤である。いくつかの実施形態では、AAが結合する薬剤は、核酸損傷剤である。
【0291】
予防、改善または治療の有効性は、例えば異常な標的発現および/または活性などの標的発現および/または活性に関連する疾患または障害を診断または治療するための任意の既知の方法に関連して決定される。対象の生存の延長、あるいは、対象における標的発現および/または活性、例えば異常な標的発現および/または活性に関連する疾患または障害の進行の遅延は、AAおよび/または複合化AAが臨床的便益をもたらすことを示している。
【0292】
AAおよび/または複合化AAは、医薬組成物の形態で投与され得る。このような組成物の調製に関わる原則および考慮事項、ならびに成分の選択におけるガイダンスが、例えば、以下により提供される;Remington :The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed.(Alfonso R.Gennaro,et al.,editors)Mack Pub.Co.,Easton,Pa.:1995;Drug Absorption Enhancement:Concepts,Possibilities,Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers,Langhorne,Pa.,1994;およびPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences,Vol.4),1991,M.Dekker,New York。
【0293】
抗体フラグメントが使用されるいくつかの実施形態では、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小のフラグメントが選択される。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するようにペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成され、および/または組換えDNA技術によって生成され得る(例えば、Marasco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889-7893(1993)を参照されたい)。配合物はまた、治療される特定の適応症に必要な複数の活性化合物(例えば、いくつかの実施形態では、相互に悪影響を及ぼすことのない補完的な活性を有するものなど)を含むことができる。いくつかの実施形態では、または追加として、組成物は、例えば細胞傷害剤、サイトカイン、化学療法剤、または成長抑制剤など、その機能を向上させる薬剤を含むことができる。このような分子は、意図する目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0294】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中で、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に封入できる。
【0295】
インビボ投与に用いられる製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を介するろ過により容易に得られる。
【0296】
徐放性調製物を調製できる。徐放性製剤の好適な例としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸およびγ-エチルL-グルタミメートの共重合体、非分解性エチレンビニル酢酸塩、分解性の乳酸-グリコール酸共重合体、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは100日間を越える長期間にわたる分子の放出が可能であるが、特定のヒドロゲルはより短い時間でタンパク質を放出する。
【0297】
診断での使用
本発明はまた、様々な診断および/または予防適応症において、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を使用する方法およびキットを提供する。例えば、本発明は、(i)対象または試料を抗CD166活性化可能抗体と接触させるステップであって、抗CD166AAは、マスキング部分(MM)、切断剤によって切断される切断可能部分(CM)、および目的の標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)を含み、切断されていない非活性化状態の抗CD166AAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABのCD166への結合を抑制するペプチドであり、MMは、ABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有さず、またABの天然の結合パートナーの改変型ではなく、また(b)ABが切断されていない非活性化状態にある場合、MMはABのCD166への特異的結合に干渉し、ABが切断された活性化状態にある場合、MMは、ABのCD166への特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはない、接触させるステップによって、および(ii)対象または試料中の活性化抗CD166AAのレベルを測定するステップであって、対象または試料中において活性化抗CD166AAが検出可能なレベルである場合は、切断剤およびCD166が対象または試料中に存在することが示され、対象または試料中において活性化抗CD166AAが検出可能なレベルにない場合は、切断剤、CD166または切断剤とCD166の両方が対象または試料中に存在していないことが示される、測定ステップによって、対象または試料中の切断剤および目的の標的の有無を検出するための方法およびキットを提供する。
【0298】
いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体は、治療用の薬剤が結合している活性化可能抗CD166抗体である。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体は、薬剤に結合していない。いくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体は、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中の活性化可能抗CD166抗体のレベルの測定は、活性化された抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して行うことができ、この試薬には、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0299】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、活性化可能抗CD166抗体は、検出可能な標識を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、検出可能な標識としては、イメージング剤、造影剤、酵素、蛍光標識、発色団、色素、1種または複数の金属イオン、またはリガンドベースの標識が挙げられる。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、イメージング剤は、放射性同位元素を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、放射性同位元素は、インジウムまたはテクネチウムである。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、造影剤は、ヨウ素、ガドリニウムまたは酸化鉄を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはβ-ガラクトシダーゼを含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、蛍光標識は、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、修飾赤色蛍光タンパク質(mRFP)、赤色蛍光タンパク質tdimer2(RFP tdimer2)、HCRED、またはユーロピウム誘導体を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、発光標識は、N-メチルアクリジウム誘導体を含む。これらの方法のいくつかの実施形態では、標識は、Alexa Fluor(登録商標)680またはAlexa Fluor(登録商標)750などのAlexa Fluor(登録商標)標識を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、リガンドベースの標識は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたは1種または複数のハプテンを含む。
【0300】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。これらの方法のいくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル(ネコ、イヌ、ウマなど)、家畜、作業用動物、動物園動物などの非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はげっ歯類である。
【0301】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、この方法はインビボ法である。これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はインサイツ法である。これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はエクスビボ法である。これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はインビトロ法である。
【0302】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、本開示の抗CD166AA抗体で治療し、その後、活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体をそれを必要としている対象への投与による治療に好適する患者集団を特定するか、あるいは、細かく区別するために使用される。例えば、標的(例えば、CD166)およびこれらの方法で試験される抗CD166AAのCM(CM)中において基質を切断するプロテアーゼの両方が陽性である患者は、このようなCMを含むこのような抗CD166AAにより治療するための好適な候補として特定され、次いで、患者に、試験を行った治療有効量の活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体を投与する。同様に、これらの方法を使用して試験が行われたAA中での標的(例えば、CD166)およびCM中の基質を切断するプロテアーゼの一方また は両方が陰性である患者は、別の治療形態の好適な候補として特定され得る。いくつかの実施形態では、このような患者は、治療に好適である抗CD166AA(例えば、疾患部位において患者によって切断されるCMを含む抗CD166AA)が特定されるまで、他の抗CD166AAを用いて試験を行ってもよい。いくつかの実施形態では、次に、試験結果が陽性であった患者に対しては、患者は治療有効量の活性化可能抗CD166抗体および/または複合化活性化可能抗CD166抗体が投与される。好適なAB、MM、および/またはCMとしては、本明細書で開示されるAB、MM、および/またはCMのいずれかを含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、AAおよび/または複合化AAは、検出可能な標識を含む。完全な抗体またはそのフラグメント(例えば、Fab、scFv、またはF(ab))が使用される。プローブまたは抗体に関する「標識された」という用語は、プローブまたは抗体へ検出可能な物質をカップリングすること(すなわち、物理的結合)によるプローブまたは抗体の直接標識、および直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接標識を包含することを意図している。間接標識の例としては、蛍光標識二次抗体を使用した一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようにビオチンを用いたDNAプローブの末端標識が挙げられる。「生体試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、および体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および体液を含むことを意図している。したがって、「生体試料」という用語の用法に含まれるのは、血液と、血清、血漿、またはリンパ液などの血液の一画分または成分である。すなわち、本開示の検出方法を使用して、インビトロおよびインビボの生体試料中の検体mRNA、タンパク質、またはゲノムDNAを検出することができる。例えば、分析物mRNAを検出するためのインビトロ技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイツハイブリダイゼーションが挙げられる。検体タンパク質を検出するためのインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、免疫化学染色、および免疫蛍光法が挙げられる。検体ゲノムDNAを検出するためのインビトロ技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。イムノアッセイを実施するための手順は、例えば、ELISA:Theory and Practice:Methods in Molecular Biology”,Vol.42,J.R.Crowther(Ed.)Human Press,Totowa,NJ,1995;“Immunoassay”,E.Diamandis and T.Christopoulus,Academic Press,Inc.,San Diego,CA,1996;および“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays”,P.Tijssen,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,1985、に記載されている。さらに、分析物タンパク質を検出するためのインビボ技術としては、標識された抗分析物タンパク質抗体を対象に導入することが挙げられる。例えば、抗体は放射性マーカーで標識することができ、対象内でのその放射性マーカーの存在および位置は、標準的な画像処理技術によって検出することができる。
【0304】
したがって、本開示のAAおよび複合化AAは、様々な診断用配合物および予防用配合物にも有用である。一実施形態では、AAおよび/または複合化AAは、前述の障害のうちの1種または複数を発症するリスクがある対象に投与される。前述の障害のうちの1種または複数に対する対象または器官の素因は、遺伝子型、血清学的または生化学的マーカーを使用して決定することができる。
【0305】
本開示のいくつかの実施形態では、AAおよび/または複合化AAを、前述の障害のうちの1種または複数の関連する臨床適応症と診断されたヒト個体に投与する。診断時に、AAおよび/または複合化AAを投与して、臨床適応症の影響を緩和させるか、または逆転させる。
【0306】
本開示の活性化可能抗体、および/または複合化AAは、対象試料中の標的の検出にも有用であり、したがって診断として有用である。例えば、本開示の抗体および/または活性化可能抗体、ならびにそれらの複合化型は、対象試料中の標的レベルを検出するためのインビトロアッセイ、例えばELISAで使用される。
【0307】
一実施形態では、本開示のAAおよび/または複合化AAは、固体支持体(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上に固定化させる。固定化されたAAおよび/または複合化AAは、試験試料中に存在し得る任意の標的に対する捕捉抗体として機能する。固定化させた活性化可能抗体、および/またはその複合化型を対象試料と接触させる前に、固体支持体をすすぎ、乳タンパク質またはアルブミンなどのブロッキング剤で処理して、分析物の非特異的吸着を防ぐ。
【0308】
その後、抗原を含んでいることが疑われる試験試料、または標準量の抗原を含む溶液でウェルを処理する。このような試料は、例えば、循環中で病理学の診断に役立つと考えられるレベルの抗原を有することが疑われる対象からの血清試料である。試験試料または標準物質を洗い流した後、固体支持体は、検出可能に標識された第2の抗体で処理される。標識された第2の抗体は、検出抗体として機能する。検出可能な標識のレベルが測定され、試験試料中の標的抗原の濃度が、標準試料から作成された検量線との比較により決定される。
【0309】
本開示のAAおよびその複合化型を使用して得られた結果に基づいて、インビトロ診断アッセイにおいて、標的抗原の発現レベルに基づいて対象の疾患のステージを決定できることが理解されよう。所定の疾患について、疾患の進行の様々なステージにある、および/または疾患の治療的処置での様々な時点にあると診断された対象から血液試料を採取する。進行または治療の各ステージについて統計的に有意な結果となる試料の集団を使用して、各ステージの特徴と見なされ得る抗原の濃度範囲が特定される。
【0310】
AAおよび/または複合化AAはまた、診断および/または画像処理方法で使用され得る。いくつかの実施形態では、このような方法は、インビトロ法である。いくつかの実施形態では、このような方法は、インビボ法である。いくつかの実施形態では、このような方法は、インサイツ法である。いくつかの実施形態では、このような方法は、エクスビボ法である。例えば、酵素的に切断可能なCMを有するAAを使用して、CMを切断できる酵素の有無を検出することができる。このようなAAは、診断において使用でき、これには、所定の宿主生物の所定の細胞または組織における測定された活性化抗体(すなわち、活性化可能抗体の切断から生じる抗体)の蓄積による、酵素活性(またはいくつかの実施形態では、還元の可能性が向上した環境、例えば、ジスルフィド結合の還元を提供できる環境など)の(例えば、定性的または定量的)インビボ検出を含むことができる。活性化抗体のこのような蓄積は、組織が酵素活性を発現する(またはCMの性質に応じて還元の可能性が高くなる)のみでなく、活性化抗体が結合する標的を組織が発現することも示す。
【0311】
例えば、CMは、腫瘍の部位、生物学的に閉じ込められた部位(例えば、膿瘍、器官など)などでのウイルスまたは細菌感染の部位で認められる少なくとも1つのプロテアーゼの基質となるように選択することができる。ABは、標的抗原に結合するものであり得る。本明細書に開示の方法、または適切な場合、当業者に周知である方法を使用して、検出可能な標識(例えば、蛍光標識または放射性標識または放射性トレーサー)をABまたは抗体および/または活性化可能抗体の他の領域に結合させ得る。好適な検出可能な標識は、上記のスクリーニング方法の場合に考察しており、追加の特定の例を以下に示す。疾患状態のタンパク質またはペプチドに特異的なABを、目的の疾患組織において活性が上昇する少なくとも1つのプロテアーゼと共に使用することにより、AAは、CM特異的酵素が、検出可能なレベルで存在していないか、または疾患組織でのレベルよりも低いレベルで存在するか、または不活性である(例えば、チモーゲン形態または阻害剤との複合体)組織と比較して、疾患組織への結合率の上昇を示す。小さいタンパク質およびペプチドは、腎臓ろ過システムによって血液から急速に除去されるため、またCMに特異的な酵素が検出可能なレベルでは存在しない(または非疾患組織では低レベルで存在するか、または不活性なコンフォメーションで存在する)ため、疾患組織における活性化抗体の蓄積は、非疾患組織と比較して増大する。
【0312】
別の例では、AAは、試料中の切断剤の有無を検出するために使用できる。例えば、AAが酵素による切断を受けやすいCMを含む場合、AAは、試料中での酵素の存在を(定性的または定量的に)検出するために使用できる。別の例では、AAが還元剤による切断を受けやすいCMを含む場合、AAは、試料中での還元条件の存在を(定性的または定量的に)検出するために使用できる。これらの方法において分析を容易にするために、AAを検出可能に標識し、支持体(例えば、スライドまたはビーズなどの固体支持体)に結合することができる。検出可能な標識は、切断後に放出されないAAの一部分に配置することができ、例えば、検出可能な標識は、消光蛍光標識または切断が起こるまで検出できない他の標識であり得る。アッセイは、例えば、固定化され、検出可能に標識されたAAを、切断が生じるのに十分な時間、酵素および/または還元剤を含むことが疑われる試料と接触させ、その後、洗浄して、過剰な試料および汚染物質を除去することにより実施できる。次いで、試料中の切断剤(例えば、酵素または還元剤)の有無は、試料との接触前のAAの検出可能なシグナルの変化、例えば、試料中の切断剤によるAAの切断による、検出可能なシグナルの存在および/またはこのシグナルの増加によって評価される。
【0313】
このような検出方法は、切断されたときに、AAのABに結合することができる標的の有無の検出をもたらすように適合させることができる。したがって、アッセイは、切断剤の有無、および目的の標的の有無を評価するように適合させることができる。切断剤の有無は、上記のAAの検出可能な標識の存在および/または増加によって検出することができ、標的の有無は、例えば検出可能に標識された抗標的抗体の使用による標的-AB複合体の検出により検出することができる。
【0314】
AAは、例えば、プロテアーゼの切断により、AAの活性および特定の標的への結合を検証するためのインサイツ画像処理にも有用である。インサイツ画像処理は、細胞培養または組織切片などの生体試料中におけるタンパク質分解活性および標的の局在化が可能になる技術である。この技術を使用することで、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)の存在に基づいて、所定の標的への結合およびタンパク質分解活性の両方を確認できる。
【0315】
これらの技術は、疾患部位(例えば、腫瘍組織)または健康組織由来のあらゆる凍結細胞または組織に有用である。これらの技術は、新しい細胞または組織の試料にも有用である。
【0316】
これらの技術では、AAは検出可能な標識で標識される。検出可能な標識は、蛍光色素(例えば、発蛍光団、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(TRITC)、Alexa Fluor(登録商標)標識)、近赤外(NIR)色素(例えば、Qdot(登録商標)ナノ結晶)、コロイド金属、ハプテン、放射性マーカー、ビオチンおよびストレプトアビジンなどの増幅試薬、または酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)であり得る。
【0317】
標識されたAAと共にインキュベートされた試料中において標識が検出されることにより、試料が標的を含み、活性化可能抗体のCMに特異的なプロテアーゼを含むことが示される。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの存在は、本明細書に記載されているような広範囲のプロテアーゼ阻害剤を使用することにより、および/またはプロテアーゼに特異的な薬剤、例えばA11などの抗体(プロテアーゼマトリプターゼに特異的であり、マトリプターゼのタンパク質分解活性を抑制する)を使用することにより確認することができる。例えば、2010年11月11日に公開の国際公開第WO2010/129609号を参照されたい。本明細書に記載されるものなどの広範囲のプロテアーゼ阻害剤を使用する、および/またはより選択的な阻害剤を使用する同じ手法を使用して、活性化可能抗体のCMに特異的なプロテアーゼを特定することができる。いくつかの実施形態では、標的の存在は、その標的に特異的な薬剤、例えば別の抗体を使用して確認できる。または、検出可能な標識は、標識されていない標的と競合させることができる。いくつかの実施形態では、標識された二次抗体またはより複雑な検出システムによる検出により、標識されていないAAを使用できる。
【0318】
同様の手法は、インビボ画像処理にも有用であり、ここでは、例えばヒトなどの哺乳動物などの対象で蛍光シグナルが検出されることにより、疾患部位が標的を含み、かつ活性化可能抗体のCMに特異的なプロテアーゼを含むことが示される。
【0319】
これらの技術は、活性化可能抗体内でのプロテアーゼ特異的CMに基づく様々な細胞、組織、および生物のプロテアーゼ活性の検出、同定、または特徴付けのためのキットおよび/または試薬としても有用である。
【0320】
本開示は、様々な診断および/または予防適応において、AAを使用する方法を提供する。例えば、本開示は、次記のステップを実施することにより、対象または試料において、切断剤および目的の標的の有無を検出する方法を提供する;(i)対象または試料を活性化可能抗体と接触させるステップであって、AAは、マスキング部分(MM)、切断剤、例えばプロテアーゼにより切断される切断可能部分(CM)、および目的の標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)を含み、切断されていない非活性化状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有さず、かつABの天然の結合パートナーの改変型ではなく、(b)切断されていない非活性化状態では、MMは標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された活性化状態では、MMは標的へのABの特異的結合に干渉しない、またはこれらの結合と競合しない、接触させるステップ、および(ii)対象または試料中の活性化されたAAのレベルを測定するステップであって、対象または試料中において活性化AAが検出可能なレベルである場合は、対象または試料中に切断剤および標的が存在していることが示され、対象または試料中において活性化AAが検出可能なレベルにない場合は、切断剤、標的または切断剤および標的の両方が対象または試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示される、測定するステップ。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0321】
本開示はまた、次記のステップを実施することにより、対象または試料における切断剤の有無を検出する方法を提供する;(i)目的の標的、例えば標的の存在下で対象または試料をAAと接触させるステップであって、AAは、マスキング部分(MM)、切断剤、例えばプロテアーゼにより切断される切断可能部分(CM)、および目的の標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)を含み、切断されていない非活性化状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有さず、かつABの天然の結合パートナーの改変型ではなく、(b)切断されていない非活性化状態では、MMは標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された活性化状態では、MMは標的へのABの特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはない、接触させるステップ、および(ii)対象または試料中の活性化されたAAのレベルを測定するステップであって、対象または試料中において活性化AAが検出可能なレベルである場合は、切断剤が対象または試料中に存在することが示されて、対象または試料中において活性化AAが検出可能なレベルにない場合は、切断剤が対象または試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示される、測定するステップ。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0322】
本開示はまた、対象または試料中の切断剤および標的の有無を検出する方法に使用するためのキットを提供し、本キットは、少なくともマスキング部分(MM)、切断剤、例えばプロテアーゼによって切断される切断可能部分(CM)、および目的の標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)を含むAAを含み、切断されていない非活性化状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有さず、また、ABの天然の結合パートナーの改変型ではなく、(b)切断されていない非活性化状態では、MMは標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された活性化状態では、MMは標的へのABの特異的結合に干渉するか、またはこれらの結合と競合することはなく、(ii)対象または試料中の活性化されたAAのレベルを測定することであって、対象または試料中において活性化AAが検出可能なレベルである場合は、切断剤が対象または試料中に存在していることが示され、対象または試料中において活性化AAが検出可能なレベルにない場合は、切断剤が対象または試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示される。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0323】
本開示はまた、(i)対象または試料を活性化可能抗体と接触させるステップであって、AAは、マスキング部分(MM)、切断剤、例えばプロテアーゼによって切断される切断可能部分(CM)、標的に特異的に結合する抗原結合ドメイン(AB)、および検出可能な標識を含み、切断されていない、非活性化状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMは、ABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有さず、またABの天然の結合パートナーの改変型ではなく、また切断されていない非活性化状態にある場合、MMはABの標的への特異的結合に干渉し、切断された活性化状態にある場合、MMは、ABの標的への特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはなく、検出可能な標識はCMの切断後に放出されるAAの一部分に位置付けられる、接触させるステップ、および(ii)対象または試料中の検出可能な標識のレベルを測定するステップであって、対象または試料中において検出可能な標識が検出可能なレベルである場合は、切断剤が対象または試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示されており、対象または試料中において検出可能な標識が検出可能なレベルにない場合は、切断剤が対象または試料中に存在していることが示される、測定するステップにより、対象または試料中の切断剤の有無を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0324】
本開示はまた、対象または試料中の切断剤および標的の有無を検出する方法において使用するためのキットを提供し、本キットは、対象または生体試料と接触する際に使用するための本明細書に記載の少なくともAAおよび/または複合化AA(例えば、治療薬が結合されているAA)、および対象または生体試料中において活性化されたAAおよび/または複合化AAのレベルを検出するための手段を含み、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルである場合は、切断剤および標的が対象または生体試料中に存在していることが示され、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルでない場合は、切断剤、標的または切断剤および標的の両方が対象または生体試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これにより、標的結合および/またはAAのプロテアーゼ切断が、対象または生体試料中では検出できないようになる。
【0325】
本開示はまた、(i)標的の存在下で対象または生体試料をAAと接触させるステップ、および(ii)対象または生体試料中の活性化されたAAのレベルを測定するステップであって、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルである場合は、切断剤が対象または生体試料中に存在していることが示されており、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルにない場合は、切断剤が、検出可能なレベルで、対象または生体試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示されており、これにより、AAのプロテアーゼ切断が対象または生体試料中において検出することができないようになる、測定するステップにより、対象または試料中における切断剤の有無を検出する方法を提供する。このようなAAには、マスキング部分(MM)、切断剤、例えばプロテアーゼによって切断される切断可能部分(CM)、および標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)が含まれ、切断されていない(すなわち、非活性化である)状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有することはない、および(b)切断されていない状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された(すなわち活性化された)状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはない。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はマスキング部分に結合される。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、プロテアーゼ切断部位のCM N末端に結合される。いくつかの実施形態では、ABの単一の抗原結合部位は、マスキングされている。いくつかの実施形態では、本開示の抗体が、少なくとも2つの抗原結合部位を有する場合、少なくとも1つの抗原結合部位がマスキングされ、少なくとも1つの抗原結合部位はマスキングされていない。いくつかの実施形態では、すべての抗原結合部位が、マスキングされている。いくつかの実施形態では、測定ステップは、検出可能な標識を含む二次試薬を使用することを含む。
【0326】
本開示はまた、対象または試料中の切断剤および標的の有無を検出する方法において使用するためのキットを提供し、本キットは、対象または生体試料を標的の存在下でAAと接触させ、対象または生体試料中の活性化されたAAのレベルを測定する際に使用するための本明細書に記載の少なくともAAおよび/または複合化AAを含み、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルである場合は、切断剤が対象または生体試料中に存在していることが示され、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルにない場合は、切断剤が対象または生体試料中に検出可能なレベルで存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これにより、AAのプロテアーゼ切断が対象または生体試料中で検出できないようになる。このようなAAは、マスキング部分(MM)、切断剤、例えばプロテアーゼによって切断される切断可能部分(CM)、および標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)を含み、切断されていない(すなわち、非活性化である)状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有することはない、および(b)切断されていない状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された(すなわち活性化された)状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはない。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はマスキング部分に結合される。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、プロテアーゼ切断部位のCM N末端に結合される。いくつかの実施形態では、ABの単一の抗原結合部位は、マスキングされている。いくつかの実施形態では、本開示の抗体が、少なくとも2つの抗原結合部位を有する場合、少なくとも1つの抗原結合部位がマスキングされ、少なくとも1つの抗原結合部位はマスキングされていない。いくつかの実施形態では、すべての抗原結合部位が、マスキングされている。いくつかの実施形態では、測定ステップは、検出可能な標識を含む二次試薬を使用することを含む。
【0327】
本開示はまた、対象または試料中での切断剤の有無を検出する方法において使用するためのキットを提供し、本キットは、対象または生体試料と接触する際に使用するための本明細書に記載の少なくともAAおよび/または複合化AA、ならびに対象または生体試料中の活性化されたAAおよび/または複合化AAのレベルを検出するための手段を含み、ここで、AAは、CMの切断後に放出されるAAの一部分に位置付けられている検出可能な標識を含み、対象または生体試料中において活性化されたAAが検出可能なレベルである場合は、対象または生体試料中に切断剤が存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これにより、AAの標的結合および/またはプロテアーゼ切断が、対象または生体試料中では検出できないようになり、対象または生体試料中において活性化されたAAが検出可能なレベルでない場合、対象または生体試料中に切断剤が検出可能なレベルで存在していることが示される。
【0328】
本開示は、(i)対象または生体試料を活性化可能抗体と接触させるステップであって、AAは、CMの切断後に放出されるAAの一部分に位置付けられる検出可能な標識を含む、接触させるステップ、および(ii)対象または生体試料中の活性化されたAAのレベルを測定するステップであって、対象または生体試料中において活性化されたAAが検出可能なレベルである場合は、切断剤、標的または切断剤および標的の両方が対象または生体試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これにより、AAの標的結合および/またはプロテアーゼ切断が、対象または生体試料中では検出できないようになり、対象または生体試料中において活性化されたAAの検出可能なレベルが低下している場合は、対象または生体試料中に切断剤および標的が存在していることが示される、測定するステップにより、対象または試料中の切断剤および標的の有無を検出する方法を提供する。検出可能な標識のレベルの低下は、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、および/または約100%の低下である。このようなAAには、マスキング部分(MM)、切断剤によって切断される切断可能部分(CM)、および標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)が含まれ、切断されていない(すなわち、非活性化されていない)状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有することはない、および(b)切断されていない状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された(すなわち、活性化された)状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはない。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0329】
本開示はまた、対象または試料中の切断剤および標的の有無を検出する方法において使用するためのキットを提供し、本キットは、対象または生体試料を接触させること、および対象または生体試料中の活性化されたAAおよび/または複合化AAのレベルを検出するための手段において使用するための本明細書に記載の少なくともAAおよび/または複合化AAを含み、対象または生体試料中の活性化されたAAが検出可能なレベルである場合は、切断剤、標的、または切断剤と標的の両方が対象または生体試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これによりAAの標的結合および/またはプロテアーゼ切断が、対象または生体試料中では検出できないようになり、対象または生体試料中において活性化されたAAの検出可能なレベルが低下している場合は、対象または生体試料中に切断剤および標的が存在していることが示される。検出可能な標識のレベルの低下は、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、および/または約100%の低下である。
【0330】
本開示はまた、(i)対象または生体試料を活性化可能抗体と接触させるステップであって、AAは、CMの切断後に放出されるAAの一部分に位置付けられる検出可能な標識を含む、接触させるステップ、および(ii)対象または生体試料中の検出可能な標識の検出可能なレベルを測定するステップであって、対象または生体試料中において検出可能な標識が検出可能なレベルである場合は、切断剤が対象または生体試料中に検出可能レベルで存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これにより、AAのプロテアーゼ切断が、対象または生体試料中では検出できないようになり、対象または生体試料中において検出可能な標識の検出可能なレベルが低下している場合は、対象または生体試料中に切断剤が存在していることが示される、測定するステップにより、対象または試料中の切断剤の有無を検出する方法を提供する。検出可能な標識のレベルの低下は、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、および/または約100%の低下である。このようなAAには、マスキング部分(MM)、切断剤によって切断される切断可能部分(CM)、および標的に特異的に結合する抗原結合ドメインまたはそのフラグメント(AB)が含まれ、切断されていない(すなわち、非活性化されていない)状態のAAは、MM-CM-ABまたはAB-CM-MMのN末端からC末端への構造的配置を含み、(a)MMは、ABの標的への結合を抑制するペプチドであり、MMはABの天然の結合パートナーのアミノ酸配列を有することはない、および(b)切断されていない状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉し、切断された(すなわち、活性化された)状態のAAのMMは、標的へのABの特異的結合に干渉することまたはこれらの結合と競合することはない。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0331】
本開示はまた、対象または試料中の目的の切断剤の有無を検出する方法において使用するためのキットを提供し、本キットは、対象または生体試料を接触させる際に使用するために、本明細書に記載の少なくともAAおよび/または複合化AA、および対象または生体試料中の活性化されたAAおよび/または複合化AAのレベルを検出するための手段を含み、AAは、CMの切断後に放出されるAAの一部分に配置される検出可能な標識を含み、対象または生体試料中において検出可能な標識が検出可能なレベルである場合は、切断剤、標的、または切断剤と標的の両方が対象または生体試料中に存在していないこと、および/または十分に存在していないことが示され、これにより、標的結合および/またはAAのプロテアーゼ切断が、対象または生体試料中では検出できないようになり、対象または生体試料中の検出可能な標識の検出可能レベルが低下している場合は、切断剤および標的が対象または生体試料中に存在していることが示される。検出可能な標識のレベルの低下は、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、および/または約100%の低下である。
【0332】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、検出可能な標識としては、イメージング剤、造影剤、酵素、蛍光標識、発色団、色素、1種または複数の金属イオン、またはリガンドベースの標識が挙げられる。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、イメージング剤は、放射性同位元素を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、放射性同位元素は、インジウムまたはテクネチウムである。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、造影剤は、ヨウ素、ガドリニウムまたは酸化鉄を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはβ-ガラクトシダーゼを含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、蛍光標識は、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、修飾赤色蛍光タンパク質(mRFP)、赤色蛍光タンパク質tdimer2(RFP tdimer2)、HCRED、またはユーロピウム誘導体を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、発光標識は、N-メチルアクリジウム誘導体を含む。これらの方法のいくつかの実施形態では、標識は、Alexa Fluor(登録商標)680またはAlexa Fluor(登録商標)750などのAlexa Fluor(登録商標)標識を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、リガンドベースの標識は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたは1種または複数のハプテンを含む。
【0333】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル(ネコ、イヌ、ウマなど)、家畜、作業用動物、動物園動物などの非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はげっ歯類である。
【0334】
これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はインビボ法である。これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はインサイツ法である。これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はエクスビボ法である。これらの方法のいくつかの実施形態では、方法はインビトロ法である。
【0335】
いくつかの実施形態では、インサイツ画像処理および/またはインビボ画像処理は、治療する対象を特定する方法において有用である。例えば、インサイツ画像処理では、AAを使用して対象試料をスクリーニングし、適切な場所、例えば、腫瘍部位に適切なプロテアーゼおよび標的を有する対象を特定する。
【0336】
いくつかの実施形態では、インサイツ画像処理は、本開示のAAによる治療に好適である対象集団を特定するか、あるいは、細かく区別するために使用される。例えば、標的(例えば、標的)および試験が行われたAAのCM(CM)中の基質を切断するプロテアーゼ(例えば、疾患部位で活性化された抗体が蓄積する)の両方が陽性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAによる治療にとって好適な候補であると特定される。同様に、標的(例えば、標的)およびこれらの方法を使用して試験が行われたAA中のCMの基質を切断するプロテアーゼの一方または両方が陰性である対象は、別の治療形態にとって好適な候補として特定され得る。いくつかの実施形態では、第1のAAに関して陰性であるこのような対象は、治療にとって好適であるAAが特定されるまで、異なるCMを含む他のAAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAA)。いくつかの実施形態では、その後、対象に、対象が陽性反応を示した治療有効量のAAが投与される。
【0337】
いくつかの実施形態では、インビボ画像処理は、本開示のAAによる治療に好適である対象集団を特定するか、あるいは、細かく区別するために使用される。例えば、標的(例えば、標的)および試験が行われたAAのCM(CM)中の基質を切断するプロテアーゼ(例えば、疾患部位で活性化された抗体が蓄積する)の両方が陽性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAによる治療にとって好適な候補であると特定される。同様に、陰性である対象は、別の治療形態の好適な候補として特定され得る。いくつかの実施形態では、第1のAAに関して陰性であるこのような対象は、治療にとって好適であるAAが特定されるまで、異なるCMを含む他のAAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAA)。いくつかの実施形態では、その後、対象に、対象が陽性反応を示した治療有効量のAAが投与される。
【0338】
方法およびキットのいくつかの実施形態では、本方法またはキットは、本開示のAAによる治療に好適である対象集団を特定するか、あるいは、細かく区別するために使用される。例えば、標的(例えば標的)およびこれらの方法で試験が行われたAAのCM(CM)中の基質を切断するプロテアーゼの両方が陽性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAにより治療するための好適な候補として特定される。同様に、標的(例えば、標的)およびこれらの方法を使用して試験が行われたAA中のCM内の基質を切断するプロテアーゼとの両方が陰性である対象は、別の治療形態の好適な候補として特定され得る。いくつかの実施形態では、このような対象は、治療にとって好適であるAAが特定されるまで他のAAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAA)。いくつかの実施形態では、標的(例えば、標的)のいずれかが陰性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAによる治療にとって好適な候補として特定される。いくつかの実施形態では、標的(例えば、標的)のいずれかが陰性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAによる治療にとって好適な候補でないとして特定される。いくつかの実施形態では、このような対象は、治療にとって好適であるAAが特定されるまで他のAAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAA)。いくつかの実施形態では、AAは、治療薬が結合されているAAである。いくつかの実施形態では、AAは、薬剤に結合されていない。いくつかの実施形態では、AAは、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はABに配置される。いくつかの実施形態では、対象または試料中のAAのレベルを測定することは、活性化抗体に特異的に結合する二次試薬を使用して達成され、この試薬は検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、二次試薬は、検出可能な標識を含む抗体である。
【0339】
いくつかの実施形態では、方法またはキットを使用して、本開示の抗標的AAおよび/または複合化AA(例えば、治療薬が結合されているAA)による治療に好適である対象集団を特定するか、あるいは、細かく区別し、その後それを必要とする対象にそのAAおよび/または複合化AAを投与することにより治療が行われる。例えば、標的(例えば、標的)と、これらの方法で試験が行われたAAおよび/または複合化AAのCM(CM)中の基質を切断するプロテアーゼの両方が陽性である対象は、このようなCMを含むこのような抗体および/またはこのような複合化AAによる治療にとって好適である候補として特定される。次いで、対象は、試験が行われた治療的有効量のAAおよび/または複合化AAを投与される。同様に、標的(例えば、標的)およびこれらの方法を使用して試験が行われたAA中のCMの基質を切断するプロテアーゼの一方または両方が陰性である対象は、別の治療形態にとって好適な候補として特定され得る。いくつかの実施形態では、このような対象は、治療にとって好適である抗体および/または複合化AAが特定されるまで、他の抗体および/または複合化AAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAAおよび/または複合化AA)。いくつかの実施形態では、その後、対象は、対象が陽性反応を示した治療的有効量のAAおよび/または複合化AAが投与される。
【0340】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、MMは、約4~40アミノ酸の長さを有するペプチドである。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、AAは、リンカーペプチドを含み、リンカーペプチドは、MMとCMとの間に配置される。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、AAは、リンカーペプチドを含み、リンカーペプチドは、ABとCMとの間に配置される。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、AAは、第1のリンカーペプチド(LP1)および第2のリンカーペプチド(LP2)を含み、第1のリンカーペプチドは、MMとCMとの間に配置され、第2のリンカーペプチドは、ABとCMとの間に配置される。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、LP1およびLP2の各々は、長さが約1~20アミノ酸のペプチドであり、LP1およびLP2の各々が、同じリンカーである必要はない。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、LP1およびLP2の一方または両方は、グリシン-セリンポリマーを含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、LP1およびLP2の少なくとも一方は、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号1)および(GGGS)n(配列番号2)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、nは少なくとも1の整数である。これらの方法およびキットのいくついくつかの実施形態では、LP1およびLP2のうちの少なくとも一方は、式(GGS)n(式中、nは少なくとも1の整数である)を有するアミノ酸配列を含む。これらの方法およびキットのいくついくつかの実施形態では、LP1およびLP2のうちの少なくとも一方は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号3)、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly(配列番号4)、Gly-Ser-Gly-Ser-Gly(配列番号5)、Gly-Ser-Gly-Gly-Gly(配列番号6)、Gly-Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号7)、およびGly-Ser-Ser-Ser-Gly(配列番号8)。
【0341】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、ABは、本明細書に提示される交差反応性抗体配列から選択される抗体または抗体フラグメント配列を含む。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、ABは、Fabフラグメント、scFvまたは単鎖抗体(scAb)を含む。
【0342】
これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、切断剤は、対象または試料中に標的と共存下のプロテアーゼであり、CMは、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、AAが、プロテアーゼに曝露されるときに、プロテアーゼがAA中のCMを切断する。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、CMは、アミノ酸長が15以下のポリペプチドである。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、CMは、ABのN末端に結合されている。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、CMは、ABのC末端に結合されている。これらの方法およびキットのいくつかの実施形態では、CMは、ABのVL鎖のN末端に結合されている。
【0343】
本開示の抗体、複合化抗体、AAおよび複合化AAは、診断および予防配合物中で使用される。一実施形態では、AAは、前述の炎症、炎症性障害、癌、または他の障害のうちの1種または複数を発症するリスクがある対象に投与される。
【0344】
前述の障害のうちの1種または複数に対する対象または器官の素因は、遺伝子型、血清学的または生化学的マーカーを使用して決定することができる。
【0345】
本開示のいくつかの実施形態では、AAおよび/または複合化AAを、前述の障害のうちの1種または複数の関連する臨床適応症と診断されたヒト個体に投与する。診断時に、AAおよび/または複合化AAを投与して、臨床適応症の影響を緩和させるか、または回復させる。
【0346】
本開示の抗体、複合化抗体、AAおよび複合化AAは、対象試料中での標的の検出にも有用であり、したがって診断用として有用である。例えば、本開示の抗体、複合化抗体、AAおよび複合化AAは、対象試料中の標的レベルを検出するためのインビトロアッセイ、例えばELISAで使用される。
【0347】
一実施形態では、本開示の抗体および/またはAAは、固体支持体(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上に固定化される。固定化された抗体および/またはAAは、試験試料中に存在し得るあらゆる標的に対する捕捉抗体として機能する。固定化された抗体および/またはAAを対象試料と接触させる前に、固体支持体をすすぎ、乳タンパク質またはアルブミンなどのブロッキング剤で処理して、分析物の非特異的吸着を防ぐ。
【0348】
その後、抗原を含んでいることが疑われる試験試料、または標準量の抗原を含む溶液でウェルを処理する。このような試料は、例えば、循環中で病理学の診断に役立つと考えられるレベルの抗原を有することが疑われる対象からの血清試料である。試験試料または標準物質を洗い流した後、固体支持体は、検出可能に標識された第2の抗体で処理される。標識された第2の抗体は、検出抗体として機能する。検出可能な標識のレベルが測定され、試験試料中の標的抗原の濃度が、標準試料から作成された検量線との比較により決定される。
【0349】
インビトロ診断アッセイにおいて本開示の抗体および/またはAAを使用して得られた結果に基づいて、標的抗原の発現レベルに基づいて対象の疾患のステージを決定できることが理解されよう。所定の疾患について、疾患の進行の様々なステージにある、および/または疾患の治療的処置での様々な時点にあると診断された対象から血液試料を採取する。進行または治療の各ステージについて統計的に有意な結果となる試料の集団を使用して、各ステージの特徴と見なされ得る抗原の濃度範囲が特定される。
【0350】
抗体、複合化抗体、AAおよび複合化AAは、診断および/または画像処理法にも使用できる。いくつかの実施形態では、このような方法は、インビトロ法である。いくつかの実施形態では、このような方法は、インビボ法である。いくつかの実施形態では、このような方法は、インサイツ法である。いくつかの実施形態では、このような方法は、エクスビボ法である。例えば、酵素的に切断可能なCMを有するAAを使用して、CMを切断できる酵素の有無を検出することができる。このようなAAは、診断において使用でき、これには、所定の宿主生物の所定の細胞または組織における測定された活性化抗体(すなわち、活性化可能抗体の切断から生じる抗体)の蓄積による、酵素活性(またはいくつかの実施形態では、還元の可能性が高まった環境、例えば、ジスルフィド結合の還元を提供できる環境など)の(例えば、定性的または定量的)インビボ検出を含むことができる。活性化抗体のこのような蓄積は、組織が酵素活性を発現する(またはCMの性質に応じて還元の可能性が高くなる)のみでなく、活性化抗体が結合する標的を組織が発現することも示す。
【0351】
例えば、CMは、腫瘍の部位、生物学的に閉じ込められた部位(例えば、膿瘍、器官など)などでのウイルスまたは細菌感染の部位で見つかるプロテアーゼに対するプロテアーゼ基質となるように選択することができる。ABは、標的抗原に結合するものであり得る。当業者によく知られている方法を使用して、検出可能な標識(例えば、蛍光標識または放射性標識または放射性トレーサー)をABまたは活性化可能抗体の他の領域に結合させることができる。好適な検出可能な標識は、上記のスクリーニング方法の場合に考察しており、追加の特定の例を以下に示す。疾患状態のタンパク質またはペプチドに特異的なABを、目的の疾患組織中で活性が上昇しているプロテアーゼと共に使用することにより、AAは、CM特異的酵素が検出可能なレベルで存在していないか、または疾患組織内よりも低いレベルで存在しているか、または不活性である(例えば、チモーゲン形態または阻害剤との複合体)組織と比較して、疾患組織への結合率の増加を示す。小さいタンパク質およびペプチドは、腎臓ろ過システムによって血液から急速に除去されるため、またCMに特異的な酵素が検出可能なレベルでは存在しない(または非疾患組織では低レベルで存在するか、または不活性なコンフォメーションで存在する)ため、疾患組織における活性化抗体の蓄積は、非疾患組織と比較して増大する。
【0352】
別の例では、AAは、試料中の切断剤の有無を検出するために使用できる。例えば、AAが酵素による切断を受けやすいCMを含む場合、AAは、試料中での酵素の存在を(定性的または定量的に)検出するために使用できる。別の例では、AAが還元剤による切断を受けやすいCMを含む場合、AAは、試料中での還元条件の存在を(定性的または定量的に)検出するために使用できる。これらの方法において分析を容易にするために、AAを検出可能に標識し、支持体(例えば、スライドまたはビーズなどの固体支持体)に結合することができる。検出可能な標識は、切断後に放出されないAAの一部分に配置することができ、例えば、検出可能な標識は、消光蛍光標識または切断が起こるまで検出できない他の標識であり得る。アッセイは、例えば、固定化され、検出可能に標識されたAAを、切断が生じるのに十分な時間、酵素および/または還元剤を含むことが疑われる試料と接触させ、その後、洗浄して、過剰な試料および汚染物質を除去することにより実施できる。次いで、試料中の切断剤(例えば、酵素または還元剤)の有無は、試料との接触前のAAの検出可能なシグナルの変化、例えば、試料中の切断剤によるAAの切断による、検出可能なシグナルの存在および/またはこのシグナルの増加によって評価される。
【0353】
このような検出方法は、切断されたときに、AAのABに結合することができる標的の有無の検出をもたらすように適合させることができる。したがって、アッセイは、切断剤の有無、および目的の標的の有無を評価するように適合させることができる。切断剤の有無は、上記のAAの検出可能な標識の存在および/または増加によって検出することができ、標的の有無は、例えば検出可能に標識された抗標的抗体の使用による標的-AB複合体の検出により検出することができる。
【0354】
AAは、例えば、プロテアーゼの切断により、AAの活性および特定の標的への結合を検証するためのインサイツ画像処理にも有用である。インサイツ画像処理は、細胞培養または組織切片などの生体試料中におけるタンパク質分解活性および標的の局在化が可能になる技術である。この技術を使用することで、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)の存在に基づいて、所定の標的への結合およびタンパク質分解活性の両方を確認できる。
【0355】
これらの技術は、疾患部位(例えば、腫瘍組織)または健康組織由来のあらゆる凍結細胞または組織に有用である。これらの技術は、新しい細胞または組織の試料にも有用である。
【0356】
これらの技術では、AAは検出可能な標識で標識される。検出可能な標識は、蛍光色素(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(TRITC)、近赤外(NIR)色素(例えば、Qdot(登録商標)ナノ結晶)、コロイド金属、ハプテン、放射性マーカー、ビオチンおよびストレプトアビジンなどの増幅試薬、または酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)であり得る。
【0357】
標識されたAAと共にインキュベートされた試料中において標識が検出されることにより、試料が標的を含み、活性化可能抗体のCMに特異的なプロテアーゼを含むことが示される。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの存在は、本明細書に記載されているような広範囲のプロテアーゼ阻害剤を使用することにより、および/またはプロテアーゼに特異的な薬剤、例えばA11などの抗体(プロテアーゼマトリプターゼに特異的であり、マトリプターゼのタンパク質分解活性を抑制する)を使用することにより確認することができる。例えば、2010年11月11日に公開の国際公開第WO2010/129609号を参照されたい。本明細書に記載されるものなどの広範囲のプロテアーゼ阻害剤を使用する、および/またはより選択的な阻害剤を使用する同じ手法を使用して、活性化可能抗体のCMに特異的なプロテアーゼまたはプロテアーゼのクラスを特定することができる。いくつかの実施形態では、標的の存在は、その標的に特異的な薬剤、例えば別の抗体を使用して確認できる。または、検出可能な標識は、標識されていない標的と競合させることができる。いくつかの実施形態では、標識された二次抗体またはより複雑な検出システムによる検出により、標識されていないAAを使用できる。
【0358】
同様の手法は、インビボ画像処理にも有用であり、ここでは、例えばヒトなどの哺乳動物などの対象で蛍光シグナルが検出されることにより、疾患部位が標的を含み、かつ活性化可能抗体のCMに特異的なプロテアーゼを含むことが示される。
【0359】
これらの技術は、活性化可能抗体内でのプロテアーゼ特異的CMに基づく様々な細胞、組織、および生物のプロテアーゼ活性の検出、同定、または特徴付けのためのキットおよび/または試薬としても有用である。
【0360】
いくつかの実施形態では、インサイツ画像処理および/またはインビボ画像処理は、治療する対象を特定する方法において有用である。例えば、インサイツ画像処理では、AAを使用して対象試料をスクリーニングし、適切な場所、例えば、腫瘍部位に適切なプロテアーゼおよび標的を有する対象を特定する。
【0361】
いくつかの実施形態では、インサイツ画像処理は、本開示のAAによる治療に好適である対象集団を特定するか、あるいは、細かく区別するために使用される。例えば、標的および試験が行われたAAのCM(CM)中の基質を切断するプロテアーゼ(例えば、疾患部位で活性化された抗体が蓄積する)の両方が陽性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAによる治療にとって好適な候補であると特定される。同様に、標的およびこれらの方法を用いて試験が行われたAAのCM中の基質を切断するプロテアーゼの一方または両方が陰性である対象は、別の治療形態にとって好適な候補である(すなわち、試験が行われたAAによる治療にとっては好適ではない)と特定される。いくつかの実施形態では、第1のAAに関して陰性であるこのような対象は、治療にとって好適であるAAが特定されるまで、異なるCMを含む他のAAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAA)。
【0362】
いくつかの実施形態では、インビボ画像処理は、本開示のAAによる治療に好適である対象集団を特定するか、あるいは、細かく区別するために使用される。例えば、標的および試験が行われたAAのCM(CM)中の基質を切断するプロテアーゼ(例えば、疾患部位で活性化された抗体が蓄積する)の両方が陽性である対象は、このようなCMを含むこのようなAAによる治療にとって好適な候補であると特定される。同様に、陰性反応を示す対象は、別の治療形態にとって好適な候補(すなわち、試験が行われたAAによる治療には好適でない)として特定される。いくつかの実施形態では、第1のAAに関して陰性であるこのような対象は、治療にとって好適であるAAが特定されるまで、異なるCMを含む他のAAにより試験され得る(例えば、疾患部位で対象によって切断されるCMを含むAA)。
【0363】
医薬組成物
本開示のAAおよび複合化AA(本明細書では「活性化合物」とも呼ばれる)、ならびにその誘導体、フラグメント、類縁体および相同体は、投与にとって好適である医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物は通常、AAおよび/または複合化AAおよび薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合する任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。好適な担体は、本分野の標準的な参考テキストである、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み込まれるこのような担体または希釈剤の好適な例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび不揮発性油などの非水性ビークルも使用され得る。薬学的に活性な物質のためにこのような媒体および薬剤を使用することは、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0364】
本開示の医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように配合される。投与経路の例としては、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(すなわち局所)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。例示的な実施形態では、投与経路は静脈内である。
【0365】
非経口、皮内、もしくは皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、次の構成成分、注射用の水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、もしくは他の合成溶媒のような無菌希釈剤、ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンのような抗菌剤、アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート化剤、アセテート、シトレート、もしくはホスフェートのような緩衝剤、ならびに、塩化ナトリウムもしくはデキストロースのような張度調節用の薬剤を挙げることができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基により調節できる。非経口用調製剤は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または繰り返し投与用バイアル瓶に封入することができる。
【0366】
注射用途に適した医薬組成物としては、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌の注射可能溶液もしくは分散液の即時調製用の無菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモフォアEL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、注射が容易にできる程度に流動性である必要がある。それは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び菌類のような微生物の汚染作用を受けないように保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。いくつかの実施形態では、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(マニトール、ソルビトールなど)、塩化ナトリウムを組成物に含めることが望ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることにより生じさせ得る。
【0367】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込み、その後、ろ過滅菌することにより調製できる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒および上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビークルに組み込むことにより調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、その活性成分の粉末および以前に滅菌ろ過した溶液から任意の追加の所望の成分が得られる。
【0368】
経口組成物には、一般に、不活性希釈剤または食用の担体が含まれる。それらは、ゼラチンカプセルに封入することができ、または加圧して錠剤にすることができる。治療用経口投与では、活性化合物を、賦形剤とともに組み込むことができ、錠剤、トローチ剤、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、また、うがい薬として使用するために流体担体を用いて調製することもでき、その際、流体担体中の化合物は、経口適用され、うがいをして、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤、および/または補助物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤などは、微結晶セルロース、トラガカントガム、もしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチのような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはステロートなど滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤、または、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバのような香味料の内のいずれかの成分または化合物を含み得る。
【0369】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器またはディスペンサーからのエアロゾルスプレー、またはネブライザーの形態で送達される。
【0370】
全身投与はまた、経粘膜または経皮的手段によることもできる。経粘膜または経皮的投与の場合、通過すべきバリアに適した浸透剤が配合物中で使用される。このような浸透剤は一般に、当技術分野において既知であるとともに、例えば、経粘膜投与のために、浄化剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体類を含む。経粘膜投与は、鼻内噴霧または坐剤の使用により達成され得る。経皮的投与の場合、活性化合物は、該技術分野において一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに処方される。
【0371】
化合物は、坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または直腸送達用の停留かん腸剤の形態でも調製され得る。
【0372】
一実施形態では、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含め、制御放出製剤のように、該化合物が身体から急速に排泄されるのを防ぐ担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明白である。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の、当業者に既知である方法に従って調製され得る。
【0373】
投与を容易にするために、また投薬量を一様にするために、経口または非経口組成物を投薬単位形態に配合することが特に有利である。本明細書で使用するとき、投薬単位形態は、治療すべき被験体にとって1回投薬量として適している物理的に別個の単位を指しており、各単位が、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された、所定の分量の活性化合物を含有する。本開示の単位剤形形態の仕様は、活性化合物の固有の特性および得られる特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにこのような活性化合物を配合する技術おける固有の制約によって決定され、また、それらに直接依存する。
【0374】
医薬組成物は、投与のための指示書と共に容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0375】
投与
本明細書で提供されるように、対象に、約1ng/kg~100g/kgのいずれかの用量で、AAまたは複合化AAを投与される。例示的実施形態では、対象に、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。一実施形態では、対象に、6mg/kgより多い投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約7mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象は、約8mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約9mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約10mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約6mg/kg~7mg/kgより多い投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約7mg/kg~約8mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約8mg/kg~約9mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約9mg/kg~約10mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約6mg/kg超~約8mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約7mg/kg~約9mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約8mg/kg~約10mg/kgの投与量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約240mg超~約1000mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約240mg超~約400mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約600mg超~約1000mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約240mg超~約600mg超の固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約240mg超~約280mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約280mg~約320mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約320mg~約360mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約360mg~約400mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、240mg超~約320mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約280mg~約360mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約320mg~約400mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、600mg超~約700mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約700mg~約800mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約800mg~約900mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約900mg~約1000mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、600mg超~約800mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約700mg~約900mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。別の実施形態では、対象に、約800mg~約1000mgの固定用量で、AAまたは複合化AAが投与される。
【0376】
いくつかの実施形態では、対象は、対象の体重を基準にして、複合化AAが投与される。
【0377】
いくつかの実施形態では、対象は、複合化AAが投与され、その投与量(mg/kgで測定した場合)は、対象の実際の体重を基準にしている。
【0378】
いくつかの実施形態では、対象は、複合化AAが投与され、その投薬量(mg/kgで測定した場合)は、対象の調整された理想体重(AIBW)を基準にしている。いくつかの実施形態では、調整された理想体重は、特定の対象の実際の体重と、対象に対応する男性および女性対象の所定の理想体重(IBW)との差に基づいて計算される。いくつかの実施形態では、特定の対象の理想体重は、対象の身長に基づく。いくつかの実施形態では、特定の男性対象の理想体重(IBW)(キログラム)は、IBW=0.9x(身長(cm))-88として決定される。特定の女性対象のIBW(キログラム)は、IBW=0.9x(身長(cm))-92として決定される。いくつかの実施形態では、特定の対象の調整された理想体重(AIBW)(キログラム)は、AIBW=IBW+0.4x(実際の体重-IBW)により求められ、IBWは、所定の身長と性別に基づく。いくつかの実施形態では、男性対象および女性対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態では、ヒト対象のAIBWは、約40kg~約100kgである。
【0379】
いくつかの実施形態では、対象は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、11日毎、12日毎、13日毎、14日毎、15日毎、16日毎、17日毎、18日毎、19日毎、20日毎、21日毎、またはさらには30日毎にAAまたは複合化AAを静脈内投与される。いくつかの実施形態では、AAおよび/または薬剤が有効である限り、対象は、AAまたは複合化AAを静脈内投与される。
【0380】
いくつかの実施形態では、対象は、AAまたは複合化AAを1日1回投与される。いくつかの実施形態では、対象は、AAまたは複合化AAを1日に複数回、例えば、4時間毎、6時間毎、4~6時間毎、8時間毎、または12時間毎などに投与される。
【0381】
本開示のいくつかの実施形態では、対象は、本開示の複合化AAと併せて、眼毒性の軽減または防止を目的とした1種または複数の治療レジメンおよび/または予防策で治療され得る。理論に束縛されるものではないが、これらの予防処置は、本開示の複合化AAに関連するDM4などのマイタンシノイドに付随する眼毒性を軽減および/または防止することが目的である。眼毒性を軽減および/または防止するための例示的予防処置としては、UV A/B眼球保護(例えば、サングラス)の使用、人工涙液点眼薬の使用、局所血管収縮点眼薬(例えば、酒石酸ブリモニジン点眼液、テトラヒドロゾリン点眼薬)および/または局所ステロイド点眼薬(例えば、プレドニゾロンアセテート点眼薬)が挙げられる。いくつかの実施形態では、治療される対象の眼の予防処置の投与は、オプションである。いくつかの実施形態では、治療される対象の眼の予防処置の投与は、必須である。
【0382】
本発明は、以下の実施例でさらに説明され、これらは、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0383】
実施例
実施例1:CD166に結合する複合化活性化可能抗体の産生および試験
以下に示される実施例で使用されるAAは本明細書で提供され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2016/179285号に開示されている方法を使用して生成し、特徴を明らかにした。
【0384】
活性化可能抗CD166抗体薬物複合体(AADC)(図1に示す)は、ヒト異種移植腫瘍を有するマウスモデルで抗腫瘍活性があること、および前臨床試験で耐容性良好であることが実証されている(Weaver et al.AACR-NCI-EOTRC International Conference 2015)。CD166は、図2、表4A、表4Bおよび表5に示すように、多くの癌および健康な組織で広く発現している。
【表4】

【表5】

【表6】
【0385】
図3~6は、ヒト異種移植腫瘍のマウスモデルにおいて、本発明のCD166 AA薬物複合体が、予測されるヒト用量以下の用量で完全で持続的な応答を生成したことを示している。
【0386】
実施例2:高CD-166発現腫瘍を有する対象における活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の安全性を判定するための非盲検多施設用量漸増試験
この試験では、高CD166発現腫瘍(乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、胆管癌)の単剤療法として投与される活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の安全性、最大耐量(MTD)、推奨2相用量(RP2D)、用量制限毒性、および予備的な抗腫瘍活性の主要エンドポイントを評価する。
【0387】
副次的評価項目は次の通りである:(1)固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)バージョン1.1または該当する腫瘍固有の基準の応答評価に従って客観的な応答率の測定、(2)応答までの時間、(3)応答期間、(4)無増悪生存期間、(5)全生存期間、(6)AADCの薬物動態プロファイル(未活性化AADC、合計AADC、合計AADC複合化DM4、遊離DM4、およびS-メチルDM4の分析を含む)、および(7)抗薬物抗体形成の発生率。
【0388】
追加のエンドポイントとしては、(1)治療前および治療を受けている間の腫瘍検体におけるCD166発現および有糸分裂マーカー(例えば、Ki-67)などのAADCの臨床活性に関連する予測バイオマーカーを特定すること、および(2)治療中の腫瘍生検試料中および末梢血中それぞれでのプロテアーゼ活性およびADCCの活性化に関する特性評価が挙げられる。
【0389】
この実施例で示す試験は、抗CD166 AADCの非盲検多施設用量漸増概念実証1/2相試験であり、ここで、抗CD166 AADCは、本明細書で組み合わせ55と呼ばれる抗CD166活性化可能抗体のDM4複合化活性化可能抗体を含み、これは、配列番号480の重鎖配列および配列番号246の軽鎖配列を含む。
【0390】
試験には、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌(CPRC)、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、および非小細胞肺癌(NSCLC)の対象を含む。対象は、活性化可能抗CD166抗体薬物複合体を用いて、21日毎の静脈内投与により治療され、本試験は次の2つのパート、パートAとパートBで進行する。試験デザインも図6に示す。
【0391】
パートA(用量漸増)(n≦50)では、投与された抗CD166 ADCCの加速用量漸増後に、従来の3+3デザインを実施する。3+3デザインは次のように記載される:3人の対象が、最初の用量の抗CD166 AADCで治療され、副作用が記録される。毒性が観察されない場合には、投与量を増やし、追加の3人の対象が治療される。3人中1人の対象が毒性を示す場合には、最初の投与量に3名の追加対象を登録する。2~3人の対象が毒性を示す場合には、その投与量は最大耐量として示される(https: //www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2684552/に記載)。この試験は、MTDを決定するために行い、RP2Dを決定するためにMTDで治療を受けた修正毒性確率間隔2(mTPI-2)デザインコホートで終了する。
【0392】
試験のパートB(拡大投与)は、7種の癌腫においてRP2Dで投与された抗CD166 AADCの拡大投与相試験である(それぞれ最大14人の対象、n≦98)。
【0393】
治療期間は約6ヶ月で、3~6ヶ月毎、またはさらに1~2年、または対象が生存している限り、フォローアップ接触を含む。
【0394】
用量漸増コホートおよび拡大投与コホートの両方で、最大150人の対象が試験に登録される。対象の主要な適格基準を表6Aに示す。
【表7】
【0395】
用量漸増コホートおよび拡大投与コホートの両方で、最大150人の対象が試験に登録される。有害事象および併用薬は、抗CD166 AADCサイクル1の1日目、8日目、15日目に評価され、その後、続けて行われる各治療サイクルの初日およびその治療の終了時に評価される。眼症状およびECOGパフォーマンススコアの評価は、スクリーニング時、各治療サイクルの初日、および治療終了時に実施される。スクリーニング時および本試験の特定の時点で、すべての対象に対して完全な眼科検診が実施される。視力または他の眼症状の治療上の緊急変化が報告されている対象は、他のすべてのサイクルにおいて、臨床的必要性に応じて、注入前に繰り返し検査を受ける。血液学および血液生化学検査については、治療のための来院時に毎回評価を行う。パートAに参加している対象のアーカイブ組織または新しい生検試料がベースラインで提供される。パートBでは、治療前および治療中の生検および末梢血試料の収集(一部は、活性化可能な抗体の完全性を決定するため)は、各腫瘍種毎に1名以上、少なくとも7名の対象に対し必須である。場合によっては、各腫瘍種の1名以上の対象からの生検が収集され、例えば、各腫瘍種について2名、3名、4名、5名、6名、7名またはそれ以上の対象からの生検が収集される。薬物動態、薬力学、およびバイオマーカー分析用の血液試料は、事前に指定されている時点で取得される。抗CD166 AADCの最初の投与から8週間毎に、腫瘍反応評価のための画像処理が実施される。試験薬の最後の投与後、最初の1年間は、対象は3ヶ月毎に評価され、その後6ヶ月毎または死亡するまで評価される。
【0396】
この例示的試験では、ベースラインおよび試験の特定の時点で、すべての患者は完全な眼科検診を受ける。この例示的試験では、視力または他の眼症状の治療上の緊急変化が報告されている患者は、他のすべてのサイクルにおいて、臨床的必要性に応じて、注入前に繰り返し検査を受ける。
【0397】
78人の患者が例示的試験の治療に登録された時点で、58人の患者(74%)は、高CD166発現を有することを示し、50%以上の腫瘍細胞で3+膜染色強度と特定された。この群の78人の患者は、微小管阻害または白金含有薬(75/78人の患者;96%)、抗PD-1または抗PD-L1薬(25/78人の患者;32%)を含む、中央値6種(1~20種の範囲)の前治療で治療された。
【0398】
この例示的試験中の所与の打切日で、63/78人の患者(81%)は疾患進行(35/78人の患者;45%)、病状悪化(10/78人患者;13%)、試験薬関連有害事象(9/78人の患者;12%)、および試験責任医師の判断(3/78人の患者;4%)、患者による中止(3/78人の患者;4%)、および試験薬に無関係の死亡(3/78人の患者;4%)が原因で治療を中断した。この試験におけるこの所与の打切日までに、患者は、中央値2用量の薬物(1~13用量の範囲)を受け、中央値治療期間は、6.3週であった(0.3~42.1週の範囲)。期間および投与用量のまとめを表6Bに示す。
【表8】
【0399】
薬物-活性化可能抗CD166抗体薬物複合体の活性化および活性を評価するためのいくつかの追加の方法を表7および図7A、7Bに示す。
【表9】
【0400】
実施例3.生体試料中の活性化および未変化CD166活性化可能抗体の定量化
この実施例は、7614.6-3001-HuCD166を投与されたマウスの血漿および異種移植腫瘍試料中で活性化されている、および未活性化抗CD166活性化可能抗体7614.6-3001-HuCD166を検出する能力について記載する。
【0401】
本明細書で提示されている試験では、本明細書において7614.6-3001-HuCD166と呼ばれる(HuCD166-7614.6-3001とも呼ばれる)抗CD166活性化可能抗体を使用した。この抗体は、配列番号480の重鎖配列および配列番号246の軽鎖配列を含む。
【0402】
活性化された、および未活性化抗CD166活性化可能抗体7614.6-3001-HuCD166の定量化は、抗ヒトIgG抗体を使用してWesシステムによって評価した(抗ヒトIgG(H&L)、American Qualex Catalog#A110UK)。ヌードマウスに、マトリゲル(商標)と1:1で混合した無血清培地中の5x10e6のH292細胞を皮下に移植した。200~500mm2のH292異種移植片を保持するマウスに、5mg/kgの抗CD166活性化可能抗体7614.6-3001-HuCD166を投与した。治療の1日後、腫瘍および血漿(ヘパリン)を収集し、分析前に-80℃で保存した。腫瘍ホモジネートを、バロサイクラー(Pressure Biosciences)を使用し、Thermo Scientific Halt(商標)プロテアーゼ阻害剤Single Use Cocktail Kit(カタログ番号78430)を加えて、Thermo Scientific Pierce(商標)IP溶解緩衝液(カタログ番号87788)中で調製した。HALTプロテアーゼ阻害剤/EDTAを含むIP溶解緩衝液中のタンパク質溶解物1mg/mLおよびPBSで20分の1に希釈した血漿試料を、本明細書に記載のWesシステムにより分析した。図7Aおよび図7Bは、血漿(図7A)と比較して腫瘍(図7B)における選択的活性化を示している。
【0403】
実施例4.生体試料中の活性化および未変化抗CD166複合化活性化可能抗体の定量化
この実施例は、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した、活性化および未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)を検出する能力を特徴付ける。
【0404】
この実施例では、本明細書で組み合わせ55と呼ばれる抗CD166活性化可能抗体のDM4複合化活性化可能抗体を使用しており、これは、配列番号480の重鎖配列およびspdbリンカーを介してDM4に結合した配列番号246の軽鎖配列を含む。
【0405】
抗CD166複合化活性化可能抗体は、37Cで2時間、80ug/mlのマトリプターゼ(R&D Systemsカタログ番号3946-SE)または80ug/mlのMMP14(R&D Systemsカタログ番号918-MP)のいずれかで活性化し、未活性化複合化活性化可能抗体と混合した。次に、混合物を、抗ヒトIgG(H&L)を使用して上記のWesシステムで分析した(American Qualexカタログ番号A110UK)。図8Aおよび図8Bは、マトリプターゼ活性化(図8A)またはMMP14活性化(図8B)複合化活性化可能抗体を未活性化複合化活性化可能抗体から分離する能力を示す。
【0406】
実施例5.抗CD166活性化可能抗体薬物複合体による治療後の複数対象における部分応答のエビデンス
この実施例は、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の投与が、一連の腫瘍型の複数の治療対象における未確認の部分応答を含む、抗腫瘍活性を生じることを実証している。
【0407】
一例では、対象は頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を発現し、最初のスクリーニングでは標的病変のみを示し、非標的病変は示していない。この対象では、試験中に、いかなる新しい腫瘍の発生も観察されなかった。対象は、3週間毎に、5mg/kgのSPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)により治療された。複合化活性化可能抗体の投与された投薬量は、対象の調整された理想体重に基づくものであった。
【0408】
対象は、初期スクリーニング(41mm)からサイクル3の来院(28mm)(すなわち、最初の投与後9週間)までに、-31.7%の腫瘍量の変化を経験した。サイクル6の来院(すなわち、最初の投与後18週間)時、対象の腫瘍量は(31.6mm)であった。したがって、対象は、RECIST v1.1分類に基づく最初のスクリーニング以降、未確認部分的応答を経験した。
【0409】
表8Aおよび8Bに、少なくとも4mg/kgの複合化活性化可能抗体(組み合わせ55)を用いて、異なる打切日で治療された複数対象の例示的試験をまとめている。評価可能対象に対するまとめた評価は、RECIST v1.1分類を基準にしたベースライン後の応答評価に基づいている。「疾患抑制(Disease control)」は、未確認完全応答(CR)、未確認部分応答(PR)、および安定疾患を示した対象の合計を意味する。安定疾患分類には、治療開始後7週以上の安定疾患評価が少なくとも1つあり、治療後、完全応答も進行性疾患も示さなかった患者が含まれた。「評価不能(Not evaluable)」には、治療開始後7週未満のただ1つの評価可能なベースライン後の腫瘍スキャンを有する患者が含まれる。「早期中断(Early discontinuation)」には、ベースライン後スキャンを可能にすることなく試験を中断した患者が含まれる。表8Bの未確認部分応答を示した7人の患者の内で、5人の患者は、グレード≧2の眼毒性を経験し、このため、投与の遅れまたは試験治療の中断を生じた。
【表10】

【表11】
【0410】
5人の例示的対象の内、2人の対象に卵巣上皮癌が現れ、2人の対象に乳癌が現れ、1人の対象に頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)が現れた。対象は、3週間毎に、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)により治療された。複合化活性化可能抗体の投与された投薬量は、対象の調整された理想体重に基づくものであった。これらの患者それぞれに対し、複合化活性化可能抗体の投与量およびそれぞれのベースライン測定値からの腫瘍量減少(すなわち、腫瘍縮小)の概略値を表9にまとめている。
【表12】
【0411】
三種陰性乳癌を発現し、9mg/kgの複合化活性化可能抗体で治療された対象では、ベースラインおよび治療開始の8週後に実施された横断CTスキャンは、肺およびリンパ節での腫瘍縮小を示し、少なくとも2つの断面で未確認部分応答と一致した。この対象は、以前に、複数の化学療法および局所放射線治療ラインで治療後再発した。
【0412】
三種陰性乳癌を発現し、8mg/kgの複合化活性化可能抗体で治療されたペムブロリズマブ難治性対象では、皮膚病変として現れている転移が複合化活性化可能抗体を用いた3サイクルにわたる治療で消散した。この対象は、以前に、ネオアジュバント細胞除去化学療法、手術、および放射線治療で治療後再発した。
【0413】
これらの例示的結果は、4mg/kg以上の投与量のDM4複合化抗CD166活性化可能抗体が、一連の腫瘍で未確認部分応答を含む抗腫瘍活性を示したことを実証している。
【0414】
実施例6.治療後のヒト対象における合計および未変化抗CD166活性化可能抗体および代謝物の薬物動態
この実施例は、ヒト対象への投与後、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した合計および未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の薬物動態を示す。
【0415】
上記試験の用量漸増部分では、この試験は、複合化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の0.25mg/kg~4.0mg/kgの投与量(対象の調整された理想体重に基づく)を受けた対象の薬物動態(PK)およびADAを評価するように設計された。PK試験では、複数の分析を使用して、以下の血清レベルを決定した;(1)複合化DM4含有および非含有の両方での未活性化活性化可能CD166抗体、(2)複合化DM4含有および非含有の両方での合計(すなわち、未活性化のものと切断されたものとの両方)抗CD166活性化可能抗体、(3)DM4が結合している抗CD166活性化可能抗体の合計(すなわち、未活性化ものと切断されたものとの両方)、(4)遊離DM4、および(5)S-メチルDM4、細胞毒性DM4代謝産物。
【0416】
試験は、未活性化複合化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の投与を受けたヒト対象から採取された血液試料を分析することにより実施した。サイクル1(すなわち、第1ラウンドの薬物の投与)では、試験は、注入前、注入終了時、および対象の来院中の2日目、3日目、4日目、8日目、および15日目に評価対象から血液試料を採取するように設計した。本試験は、その後のサイクル2、4、6、8、およびその後8サイクル毎に、各サイクルで注入前に血液試料を採取するように設計された。サイクル3では、試験は、注入前、注入終了時、および対象の来院中の8日目および15日目に血液試料を採取するように設計された。本試験は、対象の来院中の治験終了時に最終血液試料を採取するように設計された。
【0417】
図9A~9Fに示すように、指示された投薬量の組み合わせ55を投与後のPK分析の例示的な結果が示されている。各グラフで、点線は各アッセイの定量化レベルの下限値(LLOQ)を示し、この線より下の点には値LLOQ/2が割り当てられている。図9Aのグラフは、ヒト対象に対して、指示された投薬量(AIBWに基づいて)の組み合わせ55を投与後、非結合であるか、またはDM4に結合された未活性化(すなわち、切断されていない)抗CD166活性化抗体の経時的血清濃度を示している。図9Bのグラフは、ヒト対象に対して、指示された投薬量(AIBWに基づく)で組み合わせ55を投与後、DM4に結合した抗CD166活性化可能抗体の合計(すなわち、切断されているものと切断されていないもの)の経時的血清濃度を示している。図9Cのグラフでは、ヒト対象に対する、指示された投薬量(AIBWに基づく)で組み合わせ55を投与後、遊離DM4の経時的血清濃度を示している。図9Dのグラフは、ヒト対象に対する、指示された投薬量(AIBWに基づく)で組み合わせ55を投与後、S-メチルDM4(DM4-Me)の経時的血清濃度を示している。図9Eのグラフは、ヒト対象に対する、指示された投薬量(AIBWに基づく)で組み合わせ55を投与後、DM4に結合されていないか、または結合された抗CD166活性化可能抗体の合計(すなわち、切断されているものと切断されていないもの)の経時的血清濃度を示している。図9Fのグラフは、ヒト対象に対する、指示された投薬量(AIBWに基づく)で組み合わせ55を投与後、DM4に結合されていないか、または結合された抗CD166活性化可能抗体の合計(すなわち、切断されているものと切断されていないもの)の経時的血清濃度を示している。点線は、合計抗CD166活性化可能抗体(AA)の量を示し、実線は、未活性化抗CD166活性化可能抗体(AA)の量を示す。
【0418】
本開示のいくつかの例示的試験では、複合化活性化可能抗CD166抗体(組み合わせ55)がヒト対象に投与され、対象腫瘍内の活性化型(例えば、切断された)の活性化可能抗CD166抗体の量が決定された。これらの例示的試験では、切断活性化可能抗体の量は、活性化可能抗体に特異的なモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット分析により決定された。これらの試験の特定の例示的結果では、4~8mg/kgの範囲の複合化活性化可能抗体の投与量(AIBWに基づく)を投与されたヒト対象は、11種の腫瘍組織を提供し、これらの組織の活性化活性化可能抗体の濃度がアッセイされた。例示的結果は、増大した腫瘍内活性化活性化可能抗体の量と、初期投与量(4~8mg/kgの範囲の)との相関を示した。
【0419】
例示的PKデータは、抗CD166活性化可能抗体が主に未活性化の形態で血清中を循環していることを示している。遊離DM4およびDM4-Meは両方とも、抗CD166活性化可能抗体の合計の1.9mol%未満として循環した。未活性化抗CD166活性化可能抗体t1/2の中央値は3.71~8.57日の範囲であった。複数回投与したときに、未活性化抗CD166活性化可能抗体の最小血漿濃度(Cmin)の蓄積比(用量3:用量1)が1.34を超えることはなく、用量による傾向はなかった。
【0420】
例示的なデータは、用量1 AUC0-tau(投与間隔最終時手まで評価される曲線下面積)およびCmax(最大血漿濃度)に関して、合計抗CD166活性化可能抗体に対する未活性化抗CD166活性化可能抗体の比もほぼ一貫していると考えられることも示している。複合化抗CD166活性化可能抗体の単回投与後の未活性化抗CD166活性化可能抗体およびこれらの抗体の合計の曝露は、通常、AUC0-tauおよびCmaxによって測定される用量の増加と共に増加した。
【0421】
実施例7.抗CD166活性化可能抗体で治療後の対象の最大耐量(MTD)の決定
この実施例は、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の10mg/kg(調整理想的体重に基づく)までの投与は、最大耐量(MTD)に達しなかったことを示している。
【0422】
試験のパートA2と命名されたこの実施例では、対象は、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣上皮癌、子宮内膜癌、または頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を発現している。加えて、対象は、それらの腫瘍中でCD166の高発現を示し、これは、アーカイブ腫瘍組織試料中の50位%以上の腫瘍細胞が3+(強)強度の染色免疫組織化学的検査(IHC)染色であるとして特定され、この場合、腫瘍細胞内の膜結合性染色のみが、これらの基準に対し評価された。対象は、SPDBリンカーを介してマイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の用量漸増試験において、3週毎に、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgを投与された。複合化活性化可能抗体の投与投薬量は、対象の調整された理想体重に基づくものであった。投与後21日間にわたり、各対象に対する用量規制毒性(DLT)の評価を実施した。
【0423】
DLT評価期間中、有害事象共通用語規準のためのNCI有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)v4.03に従って有害事象を把握した。これらの有害事象(AE)基準に基づき、DLTを治療関連グレード5AE、特定の治療関連グレード4AE(グレード4眼障害を含む)、および特定の治療関連グレード3AEとして定義した。これらのDLT診断基準に基づいて、MTDは、評価期間中に、その値を超える投与量で、2DLT以上がコホート中の3人の対象で(または2DLT以上がコホート中の6人の対象で)観察された場合のその投与量として決定され得る。この実施例では、最大10mg/kgまでの投与量では、MTDには到達しなかった。
【0424】
実施例8.抗CD166活性化可能抗体薬物複合体による単剤療法後の対象において観察された有害事象
この実施例は、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の最大10mg/kg(全投与量は調整された理想的体重に基づく)までの投与後の対象で観察された有害事象の量およびグレードを示す。
【0425】
この例示的試験では、例示的試験のパートA(すなわち、単剤療法用量漸増試験)由来の0.25mg/kg~10mg/kgの組み合わせ55で治療された対象、および例示的試験のパートA2(すなわち、パートAを通過した単4mg/kg以上の単剤療法投与量を受けているCD166+++患者)由来の4mg/kg~10mg/kgの組み合わせ55で治療された対象の両方で有害事象の観察を実施した。全ての投薬量は、対象の調整された理想体重に基づくものであった。投与後21日間にわたり、各対象の有害事象の評価を実施した。
【0426】
評価期間中、NCI有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)v4.03に従って有害事象を把握した。有害事象の示した型およびグレードを有する治療対象の数を表10に示す。
【表13】
【0427】
これらの実施例データは、最大10mg/kgまでの投与量では、投与薬物に対するMTDには到達しなかったことを示す。加えて、これらの例示的データはまた、投与された薬物は、グレード3~4種の治療関連有害事象(例えば、悪心、嘔吐、疲労、角膜炎、低カリウム血漿、低ナトリウム血症、末梢神経障害、肝臓官能基試験、および貧血)が観察された対象の数に基づいたこの例示的試験では、好ましい安全性プロファイルを示した。この例示的試験では、重篤なAE(グレード3~4)は27人(35%)の患者で観察された。2人以上の患者で発生した重篤なAEの例は、悪心(n=4)、嘔吐(n=4)、腹痛(n=3)、小腸閉塞(n=3)、低カリウム血漿(n=2)、低ナトリウム血症(n=2)、注入関連反応(n=2)、および心膜液貯留(n=2)が挙げられる。この例示的試験では、治療関連AE(TRAE)は、69人(89%)の患者で観察され、ほとんどは、CTCAEグレード1および2であった。最もよくある(>10%)任意のグレードのTRAEは、悪心(32%)、疲労(24%)、食欲減退(23%)、下痢(19%)、角膜炎(19%)、注入関連反応(18%)、かすみ目(17%)、嘔吐(15%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加(13%)であった。全てのイベントは、医学的に扱いやすく、投与遅延、中断、および/または投与量低減後に改善または解決される。この例示的試験では、18人の患者が、少なくとも1治療遅延を有し、治療遅延の最もよくある理由には、眼毒性(n=12人、67%)および末梢神経障害(n=4人、22%)が含まれた。
【0428】
グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)を観察した対象の数とパーセンテージを表11Aおよび11Bにまとめている。
【表14】

【表15】
【0429】
この例示的試験での所与の打切時に、9/78人の患者(12%)は、治療関連有害事象(TRAE)を有し、これは、治療中断に繋がった。これらの内で、角膜炎は6人の患者で中断が生じたTRAEで、かすみ目、末梢神経障害、および悪心はそれぞれ1人の患者で中断を生じたTRAEであった。これらの内で、2人の患者(2.6%)は、グレード4 TRAE(各1人:角膜炎、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増大)を有した。この試験では、眼球予防薬(例えば、ステロイド性点滴剤)を最上位2種の投与レベル(例えば、9および10mg/kg)に対し導入した。
【0430】
実施例9.抗CD166活性化可能抗体薬物複合体による治療後の複数対象において観察された活性
この例示的試験は、SPDBリンカーを介してメイタンシノイド毒素DM4に結合した未活性化抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)の投与が、特定の対象において、一連の腫瘍型の複数の治療対象における未確認の部分応答を含む、抗腫瘍活性を生じるという例示的結果を示している。
【0431】
本明細書で記載の例示的試験のパートAまたはパートA2では、SPDBリンカーを介してマイタンシノイド毒素DM4に結合した抗CD166活性化可能抗体複合体(組み合わせ55)は、3週毎に種々投与量でヒト対象に投与された。対象の腫瘍病変の平均サイズは、投与の前後で測定された。
【0432】
図10A~10Cを参照すると、対象は示した癌(BR=乳癌、CC=胆管癌、EM=子宮内膜癌、HN=頭頸部扁平上皮癌、LU=非小細胞肺癌、OV=卵巣上皮癌)を発現し、複合化活性化可能抗CD166抗体(組み合わせ55)を、調整された理想的体重を基準にしてmg/kg単位で表した付随番号の投与量(例えば、OV-10は、上皮卵巣癌を発現している対象に相当し、10mg/kg AIBWの薬物を3週毎に投与された)で投与された。図10Bを参照すると、プロットは、この例示的試験における示した投与量での種々の適応症の複数の患者に対する腫瘍量の変化パーセントを示す。図10Bは、部分応答(PR)、進行性疾患(PD)、安定疾患(SD)、または評価不能(NE)を示した患者を示す。これらの図は、有効性を評価可能であるが、(1)打切時の不完全なスキャンデータである(n=9)、(2)ベースラインで測定不能な疾患がある(n=2)患者を含まない。安定疾患として評価された治療開始から7週未満で1つの評価可能ベースライン後腫瘍スキャンを有する患者(n=3)は、評価不能の最良総合効果を有すると見なされた。図10Aの例示的測定値で示すように、グラフは、各対象のそれぞれのベースライン測定値からの標的病変測定値の合計の最良の変化パーセンテージを示す。これらの例示的結果は、4mg/kg以上の投与量のDM4複合化抗CD166活性化可能抗体が、複数の癌適応症における腫瘍縮小に基づく抗腫瘍活性を示したことを実証している。
【0433】
図10Cおよび10Dに示す例示的結果で示すように、グラフは、それぞれのベースライン測定値からの各対象の標的病変測定値の合計の最良の変化パーセンテージを示す。図10Cに示される対象は、以前に、PD経路阻害剤で治療され、一方、図10Dに示される対象は、PD経路阻害剤で治療されていなかった。これらの例示的結果は、4mg/kg以上の投与量のDM4複合化抗CD166活性化可能抗体が、対象が以前にPD経路阻害剤で治療されたことがあるかどうかに関係なく、複数の癌適応症における腫瘍縮小に基づく抗腫瘍活性を示したことを実証する。
【0434】
図11Aおよび11Bを参照すると、これらの例示的結果は、この例示的試験において、4~10mg/kgのDM4に結合した抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)で治療された乳癌の患者の応答を示す。これらのグラフは、それぞれのベースライン測定値からの各対象の標的病変測定値の合計の最良の変化パーセンテージを示す。図11Cは、対応する患者の治療時間を示し、各バーは、薬物投与後3週間の期間を示し、ギャップは、患者がその後、以前の投与の3週後に投与を受けなかった期間を示す。患者1は、不完全な有効性評価を伴う追跡調査腫瘍スキャンを有し、この評価のプロットでは、評価不能として示される。有効性の評価可能であるが、データ打切日時点で入力された不完全なスキャンデータを有する患者(N=3)が図に含まれていない。安定疾患として評価された治療開始から7週未満で1つの評価可能ベースライン後腫瘍スキャンを有する患者(N=2)は、評価不能の最良総合効果を有すると見なされる。これらの例示的結果は、4mg/kg以上の投与量のDM4複合化抗CD166活性化可能抗体を投与された3人のこれらの応答評価可能患者は、打切日時に、部分応答を示すことを実証している。
【0435】
図12Aおよび12Bの例示的結果で示されるように、これらの例示的結果は、パートAおよび/またはA2およびそれらの腫瘍細胞中のそれらのCD166の発現レベルにおける患者の応答を示す。本明細書で記載のように、この例示的試験では、患者は、4~10mg/kgのDM4に結合した抗CD166活性化可能抗体(組み合わせ55)で治療された。図12Aは、高CD166発現を有する患者の結果を示した。この高CD166発現は、アーカイブ腫瘍組織試料中の50位%以上の腫瘍細胞が3+(強)強度の染色免疫組織化学的検査(IHC)染色であるとして特定され、この場合、腫瘍細胞内の膜結合性染色のみがこれらの基準に対し評価された。図12Bは、より低いCD166発現を有する患者の結果を示す。これらのグラフは、それぞれのベースライン測定値からの各対象の標的病変測定値の合計の最良の変化パーセンテージを示す。これらの例示的結果は、患者のCD166発現のレベルと、高CD166発現を有する患者が部分応答を示したという観察を含む薬物による治療の有効性との間の相関を示す。
【0436】
例示的な実施形態
本発明は、以下に列挙された例示的な実施形態を参照することにより明確にされ得る。
実施形態1.対象の癌を治療する、癌の症状を緩和する、または癌の進行を遅延させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)をそれを必要としている対象に投与することを含み、対象は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で、薬剤に結合したAAを投与され、
(A)AAは、
a.哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、
b.ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166へのABの結合を抑制する、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、
c.ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMと、を含む、または
(B)AAは、哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号314のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、または
(C)AAは、哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号246のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、方法、および/または、あるいは別の言い方をすると、実施形態1は、対象の癌の治療、癌の症状の緩和、または癌の進行の遅延に使用するための、薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)であって、
(A)AAは、
a.哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、
b.ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166へのABの結合を抑制する、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、
c.ABに結合された切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMとを含む、または
(B)AAは、哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号314のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む、または
(C)AAは、哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480または配列番号239のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号246のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABを含む。
【0437】
実施形態2.癌が、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌である、実施形態1に記載の方法または使用。
【0438】
実施形態3.癌が、乳癌、前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、または肺癌である、実施形態1に記載の方法または使用。
【0439】
実施形態4.対象のCD166を発現している細胞の成長、増殖、または転移を抑制するか、または低減させる方法であって、治療有効量の薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)を、それを必要としている対象に投与することを含み、対象は、6mg/kg超~約10mg/kgの投与量で薬剤に結合したAAを投与され、AAは、
a.哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、
b.ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166へのABの結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、
c.ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMと、を含む、方法。
【0440】
および/または、あるいは別の言い方をすれば、実施形態3は、例えば、対象の癌の治療のために、CD166を発現している細胞の成長、増殖、または転移の抑制、または低減に使用するための、薬剤に結合した活性化可能抗体(AA)であって、AAは、
a.哺乳動物CD166に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント(AB)であって、配列番号480のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号240のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むABと、
b.ABに結合したマスキング部分(MM)であって、AAが切断されていない状態にある場合に哺乳動物CD166へのABの結合を抑制し、配列番号222のアミノ酸配列を含むMMと、
c.ABに結合した切断可能部分(CM)であって、プロテアーゼの基質として機能するポリペプチドであり、配列番号76のアミノ酸配列を含むCMと、を含む。
【0441】
実施形態5.対象が、乳癌、去勢抵抗性前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣上皮癌、頭頸部扁平上皮癌、または非小細胞肺癌に罹患している、実施形態4に記載の方法または使用。
【0442】
実施形態6.癌が、乳癌、前立腺癌、胆管癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、または肺癌である、実施形態4に記載の方法または使用。
【0443】
実施形態7.細胞が、乳腺細胞、前立腺細胞、子宮内膜細胞、卵巣細胞、頭頸部細胞、胆管細胞、または肺細胞である、実施形態4に記載の方法。
【0444】
実施形態8.薬剤が、メイタンシノイドまたはその誘導体である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0445】
実施形態9.薬剤がDM4である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0446】
実施形態10.DM4がリンカーを介してAAに結合されている、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0447】
実施形態11.リンカーが、SPBD部分を含む、実施形態10に記載の方法または使用。
【0448】
実施形態12.ABがCMに結合される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0449】
実施形態13.MMは、切断されていない状態のAAが次記のようにN末端からC末端への構造的配置を含むようにCMに結合される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法または使用:MM-CM-ABまたはAB-CM-MM。
【0450】
実施形態14.AAが、MMとCMとの間に結合ペプチドを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0451】
実施形態15.AAが、CMとABとの間に結合ペプチドを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0452】
実施形態16.結合ペプチドが、配列番号479のアミノ酸配列を含む、実施形態14に記載の方法または使用。
【0453】
実施形態17.AAが、CMとABとの間に結合ペプチドを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0454】
実施形態18.結合ペプチドが、GGSのアミノ酸配列を含む、実施形態17に記載の方法または使用。
【0455】
実施形態19.AAが、第1の結合ペプチド(LP1)および第2の結合ペプチド(LP2)を含み、切断されていない状態にあるAAは、以下のようにN末端からC末端への構造的配置を有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法または使用:MM-LP1-CM-LP2-ABまたはAB-LP2-CM-LP1-MM。
【0456】
実施形態20.軽鎖が、そのN末端でスペーサーに結合している、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0457】
実施形態21.スペーサーが、配列番号305のアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載の方法または使用。
【0458】
実施形態22.MMおよびCMが軽鎖に結合されている、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0459】
実施形態23.MMがCMに結合され、これにより、切断されていない状態のAAが、スペーサー-MM-LP1-CM-LP2-軽鎖のようにその軽鎖上のN末端からC末端への構造的配置を含む、実施形態22に記載の方法または使用。
【0460】
実施形態24.スペーサーが配列番号305のアミノ酸配列を含み、LP1が配列番号479のアミノ酸配列を含み、LP2がアミノ酸配列GGSを含む、実施形態23に記載の方法または使用。
【0461】
実施形態25.AAの軽鎖が、配列番号314の配列を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0462】
実施形態26.AAの軽鎖が、配列番号246の配列を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0463】
実施形態27.対象が、少なくとも18歳である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0464】
実施形態28.対象のECOGパフォーマンスステータスが0~1である、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0465】
実施形態29.対象が活動性転移癌の組織学的に確認された診断を有する、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0466】
実施形態30.対象が、局所進行性切除不能固形腫瘍の組織学的に確認された診断を有する、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0467】
実施形態31.対象が、投与時または使用時に少なくとも3ヶ月の余命を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0468】
実施形態32.対象が乳癌を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0469】
実施形態33.乳癌がER+である、実施形態32に記載の方法または使用。
【0470】
実施形態34.以前に抗ホルモン療法を受けており、疾患の進行を経験している、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0471】
実施形態35.対象が三種陰性乳癌を有し、少なくとも2種の前治療ラインを受けている、実施形態32に記載の方法または使用。
【0472】
実施形態36.対象が去勢抵抗性前立腺癌を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0473】
実施形態37.対象が少なくとも1つの前治療を受けている、実施形態36に記載の方法または使用。
【0474】
実施形態38.対象が胆管癌を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0475】
実施形態39.対象が、前のゲムシタビン含有レジメンの少なくとも1つのラインで奏功していない、実施形態38に記載の方法または使用。
【0476】
実施形態40.対象が子宮内膜癌を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0477】
実施形態41.対象が子宮外または進行疾患のための少なくとも1種の白金含有レジメンを受けている、実施形態40に記載の方法または使用。
【0478】
実施形態42.対象が卵巣上皮癌を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0479】
実施形態43.対象が白金抵抗性癌を有する、実施形態42に記載の方法または使用。
【0480】
実施形態44.対象が白金難治性卵巣癌を有する、実施形態42に記載の方法または使用。
【0481】
実施形態45.対象がBRCA変異を有し、PARP阻害剤に対して難治性であるか、あるいは不適格である、実施形態42に記載の方法または使用。
【0482】
実施形態46.対象が非BRCA変異を有する、実施形態42に記載の方法または使用。
【0483】
実施形態47.対象が頭頸部小細胞癌(HNSCC)を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0484】
実施形態48.対象が少なくとも1種の白金含有レジメンを受けている、実施形態47に記載の方法または使用。
【0485】
実施形態49.対象が少なくとも1種のPD-1/PD-L1阻害剤を受けている、実施形態47に記載の方法または使用。
【0486】
実施形態50.対象が非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0487】
実施形態51.対象が少なくとも1種の白金含有レジメンを受けている、実施形態50に記載の方法または使用。
【0488】
実施形態52.対象が、少なくとも1種のチェックポイント阻害剤を受けている、実施形態50に記載の方法または使用。
【0489】
実施形態53.対象が、少なくとも1種のPD-1/PD-L1阻害剤を受けている、実施形態50に記載の方法または使用。
【0490】
実施形態54.投与量が、約7mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0491】
実施形態55.投与量が、約8mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0492】
実施形態56.投与量が、約9mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0493】
実施形態57.投与量が、約10mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0494】
実施形態58.投与量が、6mg/kg超~約7mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0495】
実施形態59.投与量が、約7mg/kg~約8mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0496】
実施形態60.投与量が、約8mg/kg~約9mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0497】
実施形態61.投与量が、約9mg/kg~約10mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0498】
実施形態62.投与量が、6mg/kg超~約8mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0499】
実施形態63.投与量が、約7mg/kg~約9mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0500】
実施形態64.投与量が、約8mg/kg~約10mg/kgである、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0501】
実施形態65.薬剤に結合したAAが、240mg超~約1000mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0502】
実施形態66.薬剤に結合したAAが、240mg超~約400mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0503】
実施形態67.薬剤に結合したAAが、600mg超~約1000mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0504】
実施形態68.薬剤に結合したAAが、240mg超~600mg超の固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0505】
実施形態69.薬剤に結合したAAが、約280mg~約700mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0506】
実施形態70.薬剤に結合したAAが、約320mg~約800mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0507】
実施形態71.薬剤に結合したAAが、約360mg~約900mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0508】
実施形態72.薬剤に結合したAAが、約400mg~約1000mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0509】
実施形態73.薬剤に結合したAAが、240mg超~約280mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0510】
実施形態74.薬剤に結合したAAが、約280mg~約320mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0511】
実施形態75.薬剤に結合したAAが、約320mg~約360mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0512】
実施形態76.薬剤に結合したAAが、約360mg~約400mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0513】
実施形態77.薬剤に結合したAAが、600mg超~約700mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0514】
実施形態78.薬剤に結合したAAが、約700mg~約800mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0515】
実施形態79.薬剤に結合したAAが、約800mg~約900mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0516】
実施形態80.薬剤に結合したAAが、約900mg~約1000mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0517】
実施形態81.薬剤に結合したAAが、240mg超~約320mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0518】
実施形態82.薬剤に結合したAAが、約280mg~約360mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0519】
実施形態83.薬剤に結合したAAが、約320mg~約400mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0520】
実施形態84.薬剤に結合したAAが、600mg超~約800mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0521】
実施形態85.薬剤に結合したAAが、約700mg~約900mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0522】
実施形態86.薬剤に結合したAAが、約800mg~約1000mgの固定用量である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0523】
実施形態87.対象が薬剤に結合したAAを静脈内に投与されるか、またはAAが静脈内使用のために処方される、実施形態1~86のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0524】
実施形態88.対象が、薬剤に結合したAAを21日毎に静脈内投与されるか、または21日毎に使用するために処方される、実施形態1~83のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0525】
実施形態89.対象が、薬剤に結合したAAを14日毎に静脈内投与されるか、または14日毎に使用するために処方される、実施形態1~83のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0526】
実施形態90.AAが、対象の実際の体重に基づく投与量で薬剤に結合している、実施形態54~64および、87~89のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0527】
実施形態91.AAが、対象の調整された理想的体重に基づく投与量で薬剤に結合している、実施形態54~64および、87~89のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0528】
実施形態92.対象が、急性または慢性角膜疾患の病歴を有していない、実施形態1~91のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0529】
実施形態93.方法が、予防処置を対象に投与し、眼の有害事象を減らすこと、または予防することを含む、実施形態1~92のいずれか1つに記載の方法または使用。
【0530】
実施形態94.予防処置が、毎日の投与である、実施形態93に記載の方法または使用。
【0531】
実施形態95.予防処置が、潤滑用人工涙液、酒石酸ブリモニジン点眼液、眼に対する冷湿布の適用、および局所ステロイド点滴薬からなる群より選択される1種または複数の治療である、実施形態93または94に記載の方法または使用。
【0532】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前出の説明は、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することを意図するものではない。他の態様、利点、および変形は、下記の範囲内に入る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2021-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022512920000001.app
【国際調査報告】