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特表2022-512923繊維芽細胞を用いた悪液質の治療及びその生成物
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  • 特表-繊維芽細胞を用いた悪液質の治療及びその生成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】繊維芽細胞を用いた悪液質の治療及びその生成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/33 20150101AFI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K35/33
A61P29/00
A61P37/02
A61P31/06
A61P31/18
A61P35/00
A61P11/00
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P9/10
A61P39/02
A61P3/10
A61P3/00
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524163
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 US2019059678
(87)【国際公開番号】W WO2020093050
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/755,542
(32)【優先日】2018-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516071686
【氏名又は名称】フィジーン、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FIGENE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヒーロン、ピート
(72)【発明者】
【氏名】イチム、トーマス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC21
4C087ZC35
4C087ZC37
(57)【要約】
本開示の実施形態は、悪液質又はそれに関連する炎症の治療に関連する方法及び組成物に関する。特定の実施形態において、悪液質又はそれに関連する炎症は、線維芽細胞の投与によって処置又は予防される。特定の実施形態では、線維芽細胞は、羊膜由来線維芽細胞である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における、悪液質又はそれに関連する炎症を改善するための方法であって、以下の工程を含む:
a.免疫調節活性の産生を誘導し、それによって免疫調節線維芽細胞を産生するための適切な条件下で、線維芽細胞の集団を任意に培養する工程;及び、
b.免疫調節線維芽細胞の有効量を個体に投与すること。
【請求項2】
前記悪液質又はそれに関連する炎症は、慢性炎症状態によって開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記慢性炎症状態は、慢性感染、結核、HIV/AIDS、癌、コエリアック病、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、家族性アミロイドポリニューロパチー、水銀中毒(先端痛)、クローン病、未治療/重症1型糖尿病、神経性食欲不振症、ホルモン欠損症、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記慢性炎症状態は、1つ以上の検出可能なマーカーの上昇に関連する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出可能なマーカーは、C反応性蛋白質、インターロイキン-1、インターロイキン-6、TNF-α、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記線維芽細胞は、羊水に由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
羊水に由来する前記線維芽細胞は、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ヤギ、ゾウ、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ウサギ、及びそれらの組合せからなる群より選択される種から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記線維芽細胞は、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、Oct-4、CD13、CD44、CD49b、CD105、アミノペプチダーゼN、及びそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のマーカーの検出可能なレベルを発現する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記線維芽細胞は、検出可能なレベルのSSEA1を発現しない、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記線維芽細胞は、硬膜外、脳室内、脳室内、皮内、舌下、頬側羊膜外、鼻腔内、動脈内、心臓内、海綿体内、皮内、病変内、筋肉内、眼内、眼内、骨内、腹腔内、髄腔内、子宮内、膣内、静脈内、膀胱内、硝子体内、皮下、経皮、血管周囲、経粘膜、及びそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の経路によって、悪液質又はそれに関連する炎症に冒された個体に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
悪液質を有するか、又は悪液質を有する危険性がある個体の体重を増加させる方法であって、個体に有効量の線維芽細胞を投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
悪液質患者は、慢性感染症、結核、HIV/AIDS、癌、腹腔疾患、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、家族性アミロイドポリニューロパチー、水銀中毒(先端疼痛症)、クローン病、未治療/重症1型糖尿病、神経性食欲不振症、ホルモン欠乏症、又はそれらの組合せを有するリスクがある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
線維芽細胞は、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、Oct-4、CD13、CD44、CD49b、CD105、アミノペプチダーゼN、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のマーカーを発現する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、Oct-4、CD13、CD44、CD49b、CD105、アミノペプチダーゼN、及びそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上のマーカーを発現する線維芽細胞を得る工程をさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/755,542号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、細胞治療、医学の分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
悪液質は、例えば、癌又はHIVのような慢性感染症の患者において特に呈する筋肉消耗に関連する状態である。炎症性メディエーターがTNF-αなどの悪液質の原因であることが研究により示されているが、炎症を阻害するための介入は臨床状況では比較的効果がなかった。この相違の1つの潜在的な理由は、癌関連炎症の多因子的性質である。
【0004】
腫瘍性形質転換の過程は細胞の制御不能な増殖と関連しており、これによりde novo組織の壊死が生じ、結果としてマクロファージの浸潤、補体の活性化、及び新生血管形成が生じる。この新生物の発現が正常な生理学的過程が妨害されるレベルで起こっている状況では炎症マーカーの全身性増加が観察され、これは患者の全体的な体質に全身性の結果を呈する過剰な慢性炎症を生じる。
【0005】
がん患者の大多数は、筋肉の消耗、代謝異常、及び多臓器不全のために疾患により死亡する。現在利用可能な介入は癌患者における腫瘍負荷の減少に焦点が当てられているが、当該技術分野において、患者の一人般生理学に対する腫瘍塊の影響に関連する病理を減少させる介入が必要とされている。本開示は、がん患者において生理学的、免疫学的及び代謝的ホメオスタシスを回復させるために線維芽細胞を使用するための手段を提供し、これにより、腫瘍の安定化及び場合によっては退縮をもたらす活動を開始し、維持し、実行するための先天的及び適応的宿主反応の可能性が可能となる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、個体に有効量の免疫調節線維芽細胞を投与する工程を包含する、個体における悪液質又はそれに関連する炎症を改善するための方法を包含する。この方法はまた、免疫調節活性の産出を誘導し、それによって免疫調節線維芽細胞を産生するための適切な条件下で、線維芽細胞の集団を培養する工程を包含し得る。悪液質、又はそれに関連する炎症は、慢性感染、結核、HIV/AIDS、癌、腹腔疾患、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、家族性アミロイドポリニューロパチー、水銀中毒(アクロディニア)、クローン病、未治療/重症1型糖尿病、神経性食欲不振症、ホルモン欠乏症、及びそれらの組合せからなる群より選択される1つのような慢性炎症状態によって開始され得る。場合によっては、慢性炎症状態は、血流中で検出される1つ以上のマーカーのような、1つ以上の検出可能なマーカーの上昇と関連する。個体は、慢性炎症状態を有することが知られているか、又は慢性炎症状態を有することが疑われるか、又は有する危険性がある。検出可能なマーカーの例としては、C反応性タンパク質、インターロイキン-1、インターロイキン-6、TNF-α、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるものがあげられる。
【0007】
本開示の特定の実施形態では、方法で利用される線維芽細胞は羊水に由来する。羊水に由来する線維芽細胞の例は、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ヤギ、ゾウ、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ウサギ、及びそれらの組合せからなる群より選択されるものであってよい。特定の実施形態において、線維芽細胞は、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、Oct-4、CD13、CD44、CD49b、CD105、アミノペプチダーゼN、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上のマーカーの検出可能なレベルを発現する。特定の例において、線維芽細胞は、検出可能なレベルのSSEA1を発現しない。
【0008】
個体が線維芽細胞を提供される場合、それらは、硬膜外、脳室内、脳室内、皮下、舌下、頬部外-羊膜、鼻、動脈内、心臓内、海綿体内、皮内、病変内、筋肉内、眼内、骨内、腹腔内、髄腔内、子宮内、膣内、静脈内、膀胱内、硝子体内、皮下、経皮、血管周囲、経粘膜、及びそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の経路によって、悪液質、又はそれに関連する炎症に罹患した個体に投与され得る。
【0009】
本開示は、再生特性を有する線維芽細胞、再生特性を有する細胞に関連する組織、及びそれに関連する悪液質又は炎症の治療のための再生特性を有する細胞に由来する生成物の使用を包含する。1つの実施形態において、癌関連悪液質又はHIV関連悪液質(例えば)は、細胞再生に関連する特性を保持しながら、投与を可能にするように改変された再生細胞を保有する細胞又は組織の投与によって処置される。投与は、場合によっては静脈内、皮下又は筋肉内である様式でよい。
【0010】
本開示の実施形態において、個体における悪液質又はそれに関連する炎症を改善するための方法が存在し、以下の工程を包含する:a.免疫調節活性の産生を誘導するための適切な条件下で線維芽細胞の集団を培養し、それによって免疫調節線維芽細胞を産生する工程;及び、b.個体に有効量の上記免疫調節線維芽細胞を投与する工程。具体的な実施形態では悪液質、又はそれに関連する炎症は慢性感染、結核、HIV/AIDS、癌、腹腔疾患、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、家族性アミロイドポリニューロパチー、水銀中毒(先端痛症)、クローン病、未治療/重症1型糖尿病、神経性食欲不振症、ホルモン欠乏症、及びそれらの組合せからなる群より選択されるような慢性炎症状態によって開始される。特定の実施形態において、慢性炎症状態は、C反応性タンパク質、インターロイキン-1、インターロイキン-6、TNF-α、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される検出可能なマーカーのような、1つ以上の検出可能なマーカーの上昇に関連する。特定の実施形態において、線維芽細胞は羊水(例えば、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ヤギ、ゾウ、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ウサギ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される種から選択される羊水)に由来する。線維芽細胞は、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、Oct-4、CD13、CD44、CD49b、CD105、アミノペプチダーゼN、及びこれらの組合せからなる群より選択される1以上のマーカーの検出可能なレベルを発現し得る。特定の実施形態において、イブロブラストは、検出可能なレベルのSSEA1を発現しない。
【0011】
線維芽細胞は、硬膜外、脳室内、脳室内、皮下、舌下、頬部外-羊膜、鼻、動脈内、心臓内、海綿体内、皮内、病変内、筋肉内、眼内、骨内、腹腔内、髄腔内、子宮内、膣内、静脈内、膀胱内、硝子体内、皮下、経皮、血管周囲、経粘膜、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の経路によって投与される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【0012】
上記は、以下の詳細な説明がより良く理解され得るように、本開示の特徴及び技術的利点をかなり広く概説した。本明細書の特許請求の範囲の主題を形成する追加の特徴及び利点を以下に説明する。開示された概念及び特定の実施形態は、本設計の同じ目的を実行するために他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。また、そのような同等の構成は、添付の特許請求の範囲に記載される精神及び範囲から逸脱しないことが当業者によって理解されるべきである。本明細書に開示される設計の特徴であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的及び利点とともに、動作の構成及び方法の両方に関して、添付の図面と関連して考慮される場合、以下の説明からより良く理解される。しかしながら、各図は、例示及び説明の目的のためだけに提供され、本開示の限定の定義として意図されないことが明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【0014】
図1】皮膚包皮線維芽細胞を用いた悪液質の治療。異なる条件に暴露した特定のマウスの体重を測定した。4つのバーのグループの各々について左から右へ:1)腋窩の右側腹部にPBSを皮下注射した対照マウス(Ctrl群);2)腋窩の右側腹部に1×10のLLC細胞を皮下注射した悪液質マウス(CA群);3)100,000の包皮線維芽細胞(悪液質+線維芽細胞(1))で処置した悪液質マウス;及び4)200,000の包皮線維芽細胞(悪液質+線維芽細胞(2))。
【発明の詳細な説明】
【0015】
I.定義
【0016】
長年の特許法条約に従い、「a」及び「an」という語は特許請求の範囲を含む、本明細書中で使用される場合、「1つ又は複数の」ことを意味し、開示の一部の実施形態は、開示の1つ又は複数の要素、方法工程、及び/又は方法から成るか、又は本質的に成ることができる。本明細書に記載される任意の方法又は組成物は、開示される本明細書に記載される任意の他の方法又は組成物に関して実施され得、それでもなお、開示の精神及び範囲から逸脱することなく、類似の又は類似の結果を得ることが企図される。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は代替のみを指すことが明示的に示されない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるか、又は代替は相互に排他的であるが、開示は代替及び「及び/又は」のみを指す定義をサポートする。
【0017】
本明細書全体にわたって、文脈がそわないことを必要とする場合を除いて、単語は「含む」、「含む」、「構成する」とは、規定された工程又は要素群の包含を意味するが、他の工程又は要素又は要素群の排除を意味しないと理解されるのであろう。工程又は要素又は要素群の除外を意味するわけではない。「構成する」とは、以下の「から成る」ことを意味する。従って、「から成る」とは、列挙された要素が必要又は必須であることを示し、他の要素が存在する可能性があることを示す。「から成る」とは、表現後に列挙された任意の要素を含み、他の要素が存在する可能性があることを意味する。「本質的に構成する」とは、記載されている要素は必須または必須であるが、その他の要素は任意であり、記載されている要素の活性または作用に影響を与えるか否かによって存在してもしなくてもよいことを示している。
【0018】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、又は「さらなる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の機能、構成、又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを手段する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特別な特徴、構造又は特質は1以上の実施形態において任意の適当な方法で組み合わせられ得る。
【0019】
本明細書で使用されるように、「又は」及び/又は「及び」又は「及び/又は」という用語は、複数の構成要素を互いに組み合わせ又は排他的に説明するために使用され、例えば、「x、y、及び/又はz」は「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)又はz」、「(x又は(y及びz)」又は「x又はy又はz」を意味することができ、具体的には、x、y、又はzが実施形態から具体的に除外されてもよいことが具体的に企図されている。
【0020】
本出願を通して、用語「約」は、値が値を決定するために使用されるデバイス又は方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために、細胞及び分子生物学の分野におけるその単純かつ通常の意味に従って使用される。
【0021】
「対象」及び「被験者」及び「個体」は、霊長類、哺乳類、及び脊椎動物などのヒト又は非ヒトのいずれかを意味する。特定の実施形態では、対象がヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシなどである。
【0022】
疾患又は状態の「処置する」又は処置は、疾患の少なくとも1つの徴候又は症状を軽減するために、1つ以上の薬物又は治療(細胞を含む)を患者に投与することを含み得るプロトコールを実行することをいう。治療の望ましくなる効果としては、疾患の進行速度を低下させること、病態を改善又は緩和すること、少なくとも1つの症状の発現を遅らせること、及び寛解又は予後を改善することがあげられる。軽減は、疾患又は症状が現れる前、ならびにその出現後、又はその両方に生じ得る。したがって、「治療する」又は「治療する」は疾患又は望ましくない状態の「予防する」又は「予防する」ことを含むことができ、さらに、「治療する」又は「治療する」は1つ又は複数の徴候又は症状の完全な緩和を必要とせず、治癒を必要とせず、具体的には患者にわずかな影響しか及ぼさないプロトコールを含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「予防する」、及び「予防する」、「予防する」などの類似語は、疾患又は状態の発生又は再発の可能性を予防、阻害、又は低減するためのアプローチを示し、例えば、癌、疾患又は状態の発生又は再発を遅延させる、又は疾患又は状態の症状の発生又は再発を遅延させる、又は本明細書で使用される場合、「予防する」及び類似語は、疾患又は状態の発症又は再発前の疾患又は状態の強度、効果、症状及び/又は負荷を低減することも含む。
【0024】
本明細書中で使用される用語「薬学的に」又は「薬理学的に許容される」は、動物又はヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物をいう。
【0025】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、ならびに植物油、コーティング、等張性及び吸収遅延剤、リポソーム、商業的に入手可能な洗浄剤などを含むが、これらに限定されない、任意の及び全ての溶媒、又は分散媒体を含む。補助的な生物活性成分もまた、このようなキャリアに組み込まれ得る。
【0026】
悪液質とは、がん、感染症、その他の異化状態に伴う意図しない体重減少のことで、栄養補給では回復できないものをいう。悪液質は例えば、末期慢性心不全、進行癌、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、HIV、及び関節リウマチなどの様々な慢性疾患に罹患している患者において、しばしばターミナルコースに付随する。過度の体重減少以外にも、食欲不振、吸収不良、悪心、無力症、神経内分泌変化、免疫系機能障害、エネルギー代謝のかく乱などの症状が追加される。悪液質を治療するためのいくつかの方法が示唆されているが、その焦点は基礎疾患に向けた治療法の開発にあった。現在のところ、悪液質に対する直接的な治療法はない。
【0027】
最近、悪液質の多因子性の性質、特にこの状態の開始及び持続における炎症性メディエーターの役割をより良く理解することにある程度の成功があった。この知見の多くは、細菌性リポ多糖(LPS)、すなわちエンドトキシンが細菌感染、敗血症及び重症疾患の病態生理学的発現に関与する初期の研究に由来する。最近、マクロファージ/単球系由来のサイトカインが多くのエンドトキシンの影響を模倣でき、悪液質の臨床表現型の原因となる中枢メディエーターであることが観察された。
【0028】
本開示は、治療を必要とする個体における悪液質を減少させる手段としての線維芽細胞の使用に関する。より詳細には、本開示が悪液質又は炎症関連悪液質を減少させる際の線維芽細胞の使用に関する。より詳細には、本開示が治療を必要とする患者における悪液質を予防又は治療するために、特定の細胞の活性を増大させる手段を提供する。治療された個体は加齢患者であってもよく、個体は癌患者であってもよく、個体はウイルス又は他の感染症に感染した患者であってもよく、及び/又は個体は症状として悪液質を有する医学的障害又は疾患を有する患者であってもよい。個体は、任意の年齢、性別、又は人種であり得る。
【0029】
特定の実施形態では、本開示は、悪液質の阻害、又は悪液質の少なくとも1つの症状の重症度の減少、及び/又は悪液質の発症の遅延のための、再生細胞、一実施形態では線維芽細胞の投与を提供する。特定の実施形態では、個体に有効量の線維芽細胞を投与すると、線維芽細胞は筋萎縮及び免疫阻害を誘導し得る腫瘍由来分子を抑制し得る。
【0030】
本開示の実施形態は、個体における悪液質又はそれに関連する炎症を改善するための方法であって、免疫調節活性の産生を誘導し、それによって免疫調節線維芽細胞を産生するための適切な条件下で線維芽細胞の集団を任意に培養する工程;及び個体に有効量の免疫調節線維芽細胞を投与する工程を包含する方法を包含する。
【0031】
特定の実施形態では、免疫調節線維芽細胞を含む有効量の線維芽細胞を個体に提供する工程を包含する、悪液質を有する個体の体重を増加させるか、又は悪液質の危険性がある個体の体重減少を予防する方法が存在する。特定の実施形態において、線維芽細胞は、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、Oct-4、CD13、CD44、CD49b、CD105、アミノペプチダーゼN、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上のマーカーの検出可能なレベルを発現する。
【0032】
本開示は、炎症を阻害し、それによって筋肉消耗を誘導する宿主体の能力を抑制する因子を分泌し得る、任意の種類の線維芽細胞(例えば、包皮由来線維芽細胞)を包含する。この細胞は培養物中で不死であり、培養物中で1年を超えて真倍数性を維持し、ヒト胚性幹細胞と1つ以上のマーカーを共有し、及び/又は発生中の胚の3つの胚葉:内胚葉、中胚葉及び外胚葉のすべてに分化することができる。
【0033】
1つの実施形態において、線維芽細胞は羊水に由来し、ここで、細胞は、ヒト妊娠の第2期の間に採取された羊膜から抽出される。羊水は複数の形態学的に区別可能な細胞型を含み、細胞の大部分は老化しやすく、培養から失われることが知られている。一実施形態では、米国特許第7,569,385号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるフィブロネクチン被覆プレート及び培養条件を使用して、正常な16~18週妊娠から羊水採取物から細胞を増殖させる。本開示の細胞は胎児由来であり、正常な二倍体の核型を有することができる。神経学的虚血状態で使用するための開示に記載された羊水由来線維芽細胞の成長は、いくつかの主要な細胞型が由来しているので、多能性である細胞を生じる。ここでいう「多能性」とは、羊水再生細胞がいくつかの主な細胞型に分化する能力をいい、羊水由来の線維芽細胞は特定の条件下で増殖して「多能性」になることもある。用語「多能性幹細胞」は特定の細胞型を生じる条件下で培養された場合に、任意の型の体細胞に分化することができる幹細胞を記載する。羊水再生細胞は、ヒトから単離され得る。しかし、羊水再生細胞は、他の種から同様の様式で単離され得る。羊水再生細胞を誘導するために使用され得る種の例としては哺乳類、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ヤギ、ゾウ、絶滅危惧種、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ウサギなどがあげられるが、これらに限定されない。
【0034】
羊水由来の線維芽細胞は、その特異的な細胞表面タンパク質によって、又は少なくとも特異的な場合には特異的な細胞タンパク質の存在によって認識され得る。典型的には、特定の細胞型が特定の細胞表面タンパク質を有する。これらの表面タンパク質は、特定の細胞型を決定又は確認するための「マーカー」として使用され得る。典型的には、これらの表面マーカーが抗体ベースの技術又は他の検出方法を用いて可視化することができる。単離された羊水由来線維芽細胞の表面マーカーを、単クローン抗体及びFACS分析を用いて、独立して採取された羊水試料から抽出し、一連の細胞表面及び他のマーカーについて試験した。これらの細胞は、以下の細胞表面マーカーによって特徴付けることができる:SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54、又はそれらの組み合わせ。線維芽細胞は、間葉細胞が細胞表面マーカーSSEA1を発現しない点で、間葉細胞と区別することができる。さらに、線維芽細胞は、幹細胞転写因子Oct-4を発現し得る。線維芽細胞は、特定の実施形態において、以下の細胞マーカーの少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも6つ、又は全ての存在によって認識され得る:いくつかの場合:SSEA3、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Tra-2-54及び/又はOct-4。
【0035】
特定の実施形態では、培養物中の本開示の線維芽細胞は、SSEA-1マーカーをほとんど又は全く発現しない。羊水由来線維芽細胞は胚性幹細胞マーカーであるSSEA3、SSEA4、Tra1-60、Tra1-81、Tra2-54、Oct-4に加えて、ヒト間葉系幹細胞上に通常認められるが、ヒト胚幹細胞上には通常認められない細胞表面抗原も高レベルで発現していた(M F Pittingerら、サイエンス 284:143-147,1999;S Gronthosら、J.Cell Physiol.189:54-63,2001)。この一連のマーカーには、CD13(99.6%)アミノペプチダーゼN、CD44(99.7%)ヒアルロン酸結合受容体、CD49b(99.8%)コラーゲン/ラミニン結合インテグリンα2、及びCD105(97%)エンドグリンが含まれる。線維芽細胞培養物上の胚性幹細胞マーカー及びhMSCマーカーの両方の存在は、ここに記載されたように増殖及び増殖された羊水由来線維芽細胞がヒト幹細胞の新規クラスを表すことを示す。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、培養物中の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の線維芽細胞がCD13を発現する。いくつかの実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がCD44を発現する。本開示のいくつかの実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の範囲がCD49bを発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がCD105を発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSSEA3を発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がSSEA4を発現する。本開示のいくつかの実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がTra-1-60を発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がTra-1-81を発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がTra-2-54を発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がOct-4を発現する。本開示の特定の実施形態では、培養物中の細胞の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%がアミノペプチダーゼNを発現する。
【0037】
「栄養培地」は、増殖を促進する栄養素を含有する細胞を培養するための培地であり、本開示の実施形態において利用され得る。栄養培地は、等張生理食塩水、緩衝液、アミノ酸、抗生物質、血清又は血清置換、及び外因的に添加された因子のいずれかを適切な組み合わせで含み得る。
【0038】
本開示の羊水再生細胞を線維芽細胞に分化させるのに有用であり得る幹細胞分化技術に関する一般的な方法は、一般的な教科書、例えば、奇形癌及び胚性幹細胞:実用的なアプローチ(E.J.Robertson,ed.,IRL Press Ltd.1987);技術の手引き(P.M.Wassermanら.eds.,Academic Press 1993);インビトロ胚性幹細胞分化(M.V.Wiles,Meth.225:900,1993);胚性幹細胞の特性及び使用:ヒト生物学及び遺伝子治療への応用の展望(P.D.Rathjenら.,Reprod.Dev.10:31,1998);ならびに幹細胞生物学(L.M.Reid,Curr.Opinion cell Biol.2:121,1990)、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
本開示の1つの実施形態において、線維芽細胞は、老化に関連する悪液質を処置するために使用される。別の実施形態において、悪液質関連因子は、悪液質が処置されることを目的とする患者に提供される線維芽細胞の用量を導くために使用される。別の実施形態において、使用される線維芽細胞は羊水由来線維芽細胞を含み、そしていくつかの場合において、線維芽細胞は、静脈内に投与される。別の実施形態では、羊膜由来線維芽細胞が投与される。羊膜は、直接投与による線維芽細胞の供給源として使用され得る。1つの実施形態において、線維芽細胞は、10~2億個の細胞の濃度で静脈内投与される。
【0040】
哺乳動物患者への悪液質阻害細胞の投与は限定されるものではないが、静脈内、皮内、経皮、皮下、筋肉内、吸入(例えば、エアロゾルを介する)、口腔(例えば、舌下)、局所(すなわち、皮膚及び気道表面を含む粘膜表面の両方)、髄腔内、関節内、複数、脳内、動脈内、腹腔内、経口、リンパ内、鼻腔内、直腸又は膣内投与、局所カテーテルによる潅流、又は直接病変内注射を含む任意の経路によることができる。
【0041】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、規定された期間(例えば、0.5~2時間)にわたって与えられる静脈内押し又は静脈内注入によって投与される。本開示の組成物は、蠕動手段によって、又はデポー剤の形態で送達することができるが、任意の所定のケースにおける好適な経路は当技術分野で周知のように、対象の種、年齢、性別、及び全身状態などの因子、治療される状態の性質及び重症度、及び/又は投与される特定の組成物(すなわち、用量、製剤)の性質に依存する。特定の実施形態では、投与経路が週に1回又は2回、ある期間にわたるボーラス又は連続注入を介する。
【0042】
特定の実施形態では、投与経路が1つ以上の部位(例えば、大腿部、腰部、臀部、腕)に、任意に週1回又は2回、皮下注射によって与えられる。一実施形態では、本開示の組成物及び/又は方法が外来患者ベースで投与される。当業者は、投与量が対象の年齢、性別、種及び条件(例えば、悪液質の活性又はそれに関連する炎症)を含む多くの因子に基づいて選択され得ること、治療されるべき悪液質又はそれに関連する炎症の所望の程度が当業者によって決定され得ることを理解する。例えば、本開示の組成物の有効量は、インビトロ試験系又は動物モデル(例えば、コットンラット又はサル)試験系に由来する用量応答曲線から外挿され得る。
【0043】
本開示の方法において使用することができる投薬レジメンの例には日々、週3回(断続的)、週1回、又は14日毎が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、投薬レジメンは6~8週間毎の月1回の投薬又は投薬を含むが、これらに限定されない。当業者は、投与量が維持療法と比較して、一般に、より高い、及び/又は、初期治療のための投与頻度がより高いことを理解するのであろう。
【0044】
いくつかの実施形態において、悪液質に関連する医学的状態の開始時の個体は、本開示の方法に供され始める。本開示の方法は、医学的状態のための1つ以上の処置と実質的に同時に個体に提供されてもされなくてもよい。いくつかの場合において、悪液質の症状が検出可能になった場合、個体は、本開示の方法に供される。本開示の線維芽細胞は、医学的状態のための任意の処置の前、間、及び/又は後に個体に提供され得る。
【0045】
本開示の実施形態は、体重減少又は悪液質に罹患している個体を任意に同定する工程と、(1)線維芽細胞集団;(2)線維芽細胞集団を含む組織、及び/又は(3)線維芽細胞集団によって産生される生成物、及び/又は線維芽細胞集団を含む組織の有効量を個体に投与する工程とを含む、悪液質又はそれに関連する炎症を処置する方法を含む。悪液質は、筋肉の消耗と関連していることもあれば、関連していないこともある。悪液質は、腫瘍、炎症状態、慢性感染症、結核、又はHIVなどと関連している場合もあれば、関連していない場合もある。少なくともいくつかの場合において、個体は、慢性炎症に関連する1以上のマーカーの上昇を示す。慢性炎症に関連するマーカーの例としては、例えば、末梢血中のC反応性タンパク質、インターロイキン-1、インターロイキン-6、及び/又はTNF-αの上昇が年齢をマッチさせた対照と比較してあげられる。線維芽細胞は、任意の供給源に由来し得るが、特定の実施形態において、それらは包皮に由来する。少なくともいくつかの場合において、線維芽細胞はプラスチックに接着することができる。線維芽細胞は、抗悪液質活性を刺激する成長因子産生のアップレギュレーションを刺激する様式で処置されてもされなくてもよい、細切された羊膜組織の形態で個体に投与されてもよい。特定の場合において、このような処置は、低酸素状態、酸性状態、低張状態、又はこれらの組み合わせへの曝露を包含する。線維芽細胞は、単一細胞懸濁液の形態で投与されてもされなくてもよい。
【0046】
開示の特定の方法では、線維芽細胞は、筋肉消耗(悪液質を伴う又は伴わない)、代謝異常、及び多臓器不全の予防、発症の遅延、又は重症度を低下させるために、それを必要とする個体において利用される。筋消耗、悪液質、代謝異常、及び/又は多臓器不全の発症に遅延がある場合、遅延は、例えば、数週間、数年、又は数カ月の順であり得る。
【0047】
個体への投与のための任意のタイプの細胞の量は、処置される悪液質の重篤度及び/又は処置のために注射される細胞のタイプに依存し得る。細胞は、薬学的に許容される担体、例えば、滅菌生理食塩水等張溶液中での投与のために調製され得る。いくつかの実施形態において、薬学的に受容可能なキャリアは、FASリガンド、IL-2R、IL-2、IL-4、IL-8、IL-10、IL-20、IL-35、HLA-G、PD-L1、I-309、IDO、iNOS、CD200、ガレクチン3、sCR1、アルギナーゼ、PGE-2、アスピリン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ラパマイシン、IVIG、ナルトレキソン、TGF-β、VEGF、PDGF-4、抗CD45RB抗体、ヒドロキシクロロキン、レフルノフィン、ジシアノ金、スルファサラジン、メトトレキサート、グルココルチコイド、エタネルセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セタネルセプト-スズ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、シクロスポリン、IFN-γ、エベロリムス、ラパマイシン、VEGF-1、FGF-2、アンジオポエチン、HIF-1-α、又はこれらの組み合わせ等の1つ以上のさらなる薬剤を含み得る。
【0048】
本開示の1つの実施形態において、線維芽細胞は、低酸素領域を含む、注射(筋肉内注射など)によることを含む任意の適切な経路によって被験体に投与される。適切な経路には、静脈内、皮下、髄腔内、経口、直腸内、髄腔内、網内、脳室内、肝内、及び腎内がある。
【0049】
ある実施態様において、線維芽細胞は、皮膚、心臓、血管、骨髄、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、脂肪組織、包皮、胎盤、及び/又は臍帯を含む組織に由来してもよい。特定の実施形態では、線維芽細胞が胎盤、胎児、新生児、又は成人、又はそれらの混合物である。
【0050】
個体への細胞の投与の数は、本明細書中に記載される因子に少なくとも部分的に依存し、そして当該分野で慣用的な方法を使用して最適化され得る。特定の実施形態では、単回投与が必要である。他の実施形態では、細胞の複数回の投与が必要とされる。当然のことながら、この系は、時間及び状況によって変化し得る個体の特定の必要性、細胞の喪失又は個々の細胞の活性の結果としての細胞活性の喪失速度などのような変数に従属する。従って、各個体は適切な投薬量についてモニターされ得、そして個体をモニターするこのような実施は当該分野で日常的であることが予想される。
【0051】
本開示の1つの実施形態において、細胞(例えば、線維芽細胞)は、細胞の生存能力及び増殖能力を保存するために、当該分野で公知の手段を使用して、エクスビボで培養される。線維芽細胞についての特定の実施形態では、レシピエント免疫系に対する線維芽細胞の可視性を減少させるなど、細胞についての1つ以上の所望の効果を達成するために、公知の培養技術の改変が存在し得る。1つの実施形態において、細胞(例えば、線維芽細胞)は、1つ以上の異種成分(例えば、ウシ胎仔血清)を欠く条件下で培養される。特定の実施形態では、本開示は、例えば、細胞(線維芽細胞など)の免疫原性を低下させるための追加の特徴として、ウシ胎仔血清をヒト多血小板血漿、血小板溶解物、臍帯血清、自己血清、及び/又は規定されたサイトカイン混合物で置換することを包含する。
【実施例
【0052】
以下の実施例は、本開示の特定の非限定的な局面を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、開示される主題の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技術を表すことが、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、開示された主題の精神及び範囲から逸脱することなく、同様の又は類似の結果を依然として得ることができることを理解すべきである。
実施例1
皮膚前額部線維芽細胞を用いた悪液質の治療
【0053】
ルイス肺癌腫(LLC)細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手し、10%ウシ胎仔血清(ギブコ;サーモフィッシャーサイエンティフィック、ウォルタム、MA、米国)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ボスターバイオロジーテクノロジー、武漢、中国)を含むダルベッコ改変イーグル培地を用いて5%COと共に37℃で培養した。腫瘍接種の前に、LLC細胞を1000rpmで4℃で5分間遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。
【0054】
5~6週齢の特定の病原体を含まないC57BL/6マウスを、特定の病原体を含まない環境下で、通常の12時間の明暗サイクルで、安定な温度及び湿度の条件下で、固形飼料及び水を与えずに飼育した。C57BL/6マウスを3群(各群7匹)に無作為に割り付けた:1)腋窩の右側腹部にPBSを皮下注射した対照マウス(Ctrl群);2)腋窩の右側腹部に1×10のLLC細胞を皮下注射した悪液質マウス(CA群);3)100,000包皮線維芽細胞(ATCC)(悪液質+線維芽細胞(1))で処置した悪液質マウス;及び、4)200,000包皮線維芽細胞(悪液質+線維芽細胞(2))。各マウスの体重及び累積摂餌量(各群の全7匹のマウスを合わせて)を、腫瘍移植後3日ごとにモニターした。
【0055】
本開示及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される設計の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び変更を本明細書で行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者であれば、本開示から容易に理解するように、本明細書で説明される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又は工程を、本開示に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲はその範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又は工程を含むことが意図される。
図1
【国際調査報告】