(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】細胞傷害性ベンゾジアゼピン誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/02 20060101AFI20220131BHJP
C07K 5/062 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20220131BHJP
A61K 31/5517 20060101ALN20220131BHJP
A61K 38/05 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K1/02
C07K5/062
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K31/5517
A61K38/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524308
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 US2019060679
(87)【国際公開番号】W WO2020102053
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504039155
【氏名又は名称】イミュノジェン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】リアドン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,リチャード・エイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA06
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA32
4C084CA59
4C084DA27
4C084ZB211
4C084ZB261
4C086AA04
4C086CB11
4C086GA16
4C086ZB21
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA11
4H045BA51
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、インドリノベンゾジアゼピン二量体化合物を調製するために使用することができる式(IIa)の化合物を調製するための新規の方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IIIa)の化合物:
【化1】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)式(Ia)の化合物:
【化2】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化3】
またはその塩(例えば、HCl塩)と反応させて、式(IIa)の化合物:
【化4】
を形成するステップと、
(b)前記式(IIa)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、前記式(IIIa)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、前記方法。
【請求項2】
前記方法が、前記式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化5】
と反応させて、式(Va)の化合物を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【化6】
【請求項3】
P
1が、-O
tBu、-OMe、-OBn、または-O-シリルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
P
1が、-O
tBuである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Eが、-OHであり、前記式(Ia)の化合物と前記式(a)の化合物との間の前記反応が、活性化剤の存在下で行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロギ酸エステルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記活性化剤が、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の前記カルボン酸脱保護剤が、酸である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸が、トリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
(a)式(Ia1)の化合物:
【化7】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化8】
またはその塩(例えば、HClもしくはTFA塩)と、活性化剤の存在下で反応させて、式(IIa1)の化合物:
【化9】
を形成するステップと、
(b)前記式(IIa1)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、前記式(IIIa)の化合物を形成するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)の前記活性化剤が、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)の前記カルボン酸脱保護剤が、トリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
式(Va)の化合物:
【化10】
を調製する方法であって、
(a)式(Ia)の化合物:
【化11】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化12】
またはその塩(例えば、HClもしくはTFA塩)と反応させて、式(IIa)の化合物を形成するステップと、
【化13】
(b)前記式(IIa)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物:
【化14】
またはその塩を形成するステップと、
(c)前記式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化15】
と反応させて、前記式(Va)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、前記方法。
【請求項15】
P
1が、-O
tBu、-OMe、-OBn、または-O-シリルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
P
1が、-O
tBuである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Eが、-OHであり、前記式(Ia)の化合物と前記式(a)の化合物との間の前記反応が、活性化剤の存在下で行われる、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロギ酸エステルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシドである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化剤が、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシドである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)の前記カルボン酸脱保護剤が、酸である、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記酸が、トリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、
(a)式(Ia1)の化合物:
【化16】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化17】
またはその塩(例えば、HClもしくはTFA塩)と、活性化剤の存在下で反応させて、式(IIa1)の化合物:
【化18】
を形成するステップと、
(b)前記式(IIa1)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、前記式(IIIa)の化合物:
【化19】
またはその塩を形成するステップと、
(c)前記式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化20】
と反応させて、前記式(Va)の化合物を形成するステップと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(a)の前記活性化剤が、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)の前記カルボン酸脱保護剤が、トリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
Eが、存在する場合、-OHであり、ステップ(a)の前記反応が、HATU及びHOAtである活性化剤の存在下で行われる、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(a)の前記反応が、塩基の存在下で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記塩基が、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
Eが、-OHであり、及び前記式(IIIa)の化合物と前記式(IV)の化合物との間の前記反応が、活性化剤の存在下で行われる、請求項2~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記活性化剤が、HATU及びHOAtである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記式(IIIa)の化合物と前記式(IV)の化合物との間の前記反応が、塩基の存在下で行われる、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記塩基が、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年11月12日に出願された米国仮特許出願第62/758,819号の出願日の利益を主張するものである。上述の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、細胞傷害性インドリノベンゾジアゼピン誘導体を調製するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1つのイミン官能基及び1つのアミン官能基を有するインドリノベンゾジアゼピン二量体の細胞結合剤コンジュゲートは、2つのイミン官能基を有する以前に開示されたベンゾジアゼピン誘導体と比較して、in vivoではるかに高い治療指標(最大耐量対最小有効用量の比)を示すことが示されている。例えば、WO2012/128868を参照されたい。1つのイミン官能基及び1つのアミン官能基を有するインドリノベンゾジアゼピン二量体を作製するための以前に開示された方法は、2つのイミン官能基を有するインドリノベンゾジアゼピン二量体の部分的還元を伴う。部分的還元ステップは、一般に、完全に還元された副生成物及び未反応の出発物質の形成をもたらし、これには煩雑な精製ステップが必要であり、低収率をもたらす。
【0004】
したがって、大規模な製造プロセスのため、より効率的で好適であるインドリノベンゾジアゼピン二量体を調製するために改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、インドリノベンゾジアゼピン二量体化合物及びその合成前駆体を調製するための新規の方法を提供する。
【0006】
一実施形態において、本発明は、式(IIIa)の化合物:
【化1】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)式(Ia)の化合物:
【化2】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化3】
またはその塩と反応させて、式(IIa)の化合物:
【化4】
を形成するステップと、
(b)式(IIa)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物またはその塩を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、方法を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、式(Va)の化合物:
【化5】
を調製する方法であって、
(a)式(Ia)の化合物:
【化6】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化7】
またはその塩と反応させて、式(IIa)の化合物:
【化8】
を形成するステップと、
(b)式(IIa)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物:
【化9】
またはその塩を形成するステップと、
(c)式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化10】
と反応させて、式(Va)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本発明のある特定の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の構造及び式に例示する。本発明は列挙される実施形態と併せて説明されるが、本発明がそれらの実施形態に限定されることを意図するものではないことが理解されよう。反対に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得るすべての代替物、修正物、及び均等物を網羅することを意図している。当業者は、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載のものと同様または同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。
【0009】
本明細書に記載の実施形態のいずれも、明示的に放棄される、または不適切でない限り、本発明の1つ以上の他の実施形態と組み合わせることができることが理解されよう。実施形態の組み合わせは、多数の従属特許請求の範囲により請求されるそれらの特定の組み合わせに限定されるものではない。
【0010】
定義
本明細書で使用される「アルキル」とは、飽和直鎖または分岐鎖一価炭化水素ラジカルを指す。好ましい実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、30個以下の炭素原子(例えば、直鎖アルキル基についてはC1~C30、及び分岐アルキルについてはC3~C30)を有し、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、直鎖または分岐鎖アルキルは、10個以下の炭素原子(すなわち、直鎖アルキル基についてはC1~C10、及び分岐アルキルについてはC3~C10)を有する。他の実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、6個以下の炭素原子(すなわち、直鎖アルキル基についてはC1~C6、または分岐鎖アルキルについてはC3~C6)を有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、2-ペンチル3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル)、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、1-ヘプチル、1-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上に水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。本明細書で使用される場合、(Cx~Cxx)アルキルまたはCx~xxアルキルは、x~xx個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルを意味する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「活性化エステル」とは、ヒドロキシルまたはアミン基によって容易に置換されるエステル基を指す。例示的な活性化エステルとしては、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ニトロフェニル(例えば、2または4-ニトロフェニル)エステル、ジニトロフェニル(例えば、2,4-ジニトロフェニル)エステル、スルホ-テトラフルオロフェニル(例えば、4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)エステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ニトロピリジル(例えば、4-ニトロピリジル)エステル、トリフルオロ酢酸エステル、及び酢酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
「ハロゲン化物」という用語は、F、Cl、BrまたはIを指す。一実施形態において、ハロゲン化物は、Clである。一実施形態において、ハロゲン化物は、Brである。一実施形態において、ハロゲン化物は、Iである。一実施形態において、ハロゲン化物は、Fである。
【0013】
「化合物」という用語は、本発明において構造または式またはその任意の誘導体が開示されている化合物、または参照により組み込まれている構造または式またはその任意の誘導体を含むことが意図される。この用語は、立体異性体、幾何異性体、または互変異性体も含む。本出願に記載の本発明のある特定の態様における「立体異性体」、「幾何異性体」、「互変異性体」、「塩」の特異的な記述は、「化合物」という用語がこれらの他の形態を記述することなく使用される本発明の他の態様におけるこれらの形態の意図的な省略と解釈されてはならない。
【0014】
所与の基の「前駆体」という用語は、任意の脱保護、化学修飾、またはカップリング反応によってその基につながり得る任意の基を指す。
【0015】
「キラル」という用語は、鏡像パートナーを重ね合わすことができない性質を有する分子を指し、「アキラル」という用語は、それらの鏡像パートナーに重ね合わせることができる分子を指す。
【0016】
「立体異性体」という用語は、同一の化学構造及び結合性を有するが、単結合を中心とした回転によって相互変換され得ない空間内のそれらの原子の異なる配向を有する化合物を指す。
【0017】
「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上の中心性キラリティを有し、その分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性、及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、結晶化、電気泳動、及びクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順下で分離し得る。
【0018】
「鏡像異性体」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像である化合物の2つの立体異性体を指す。
【0019】
本明細書で使用される立体化学の定義及び慣習は、概して、S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-Hill Book Company,New York、及びEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds,”John Wiley&Sons,Inc.,New York,1994に従う。本発明の化合物は、非対称またはキラル中心を含有し得、したがって、異なる立体異性型で存在する。これに限定されないが、ジアステレオマー、鏡像異性体、及びアトロピマー、ならびにラセミ混合物などのそれらの混合物を含む、本発明の化合物のすべての立体異性型は、本発明の一部を形成することが意図される。多くの有機化合物は、光学活性型で存在する、すなわち、平面偏光の平面を回転する能力を有する。光学活性化合物を説明する際、接頭辞D及びL、またはR及びSは、そのキラル中心(複数可)に関する分子の絶対構成を示すために使用される。接頭辞d及びlまたは(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転の兆候を表すために使用され、(-)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdを接頭辞とする化合物は、右旋性である。所与の化学構造に関して、これらの立体異性体は、互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体は、鏡像異性体とも称すことができ、そのような異性体の混合物はしばしば鏡像異性体混合物と称される。鏡像異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と称され、化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性がない場合に生じ得る。「ラセミ混合物」及び「ラセミ化合物」という用語は、光学活性がない2種の鏡像異性体種の等モル混合物を指す。
【0020】
「互変異性体」または「互変異性型」という用語は、低エネルギーバリアを介して相互変換可能である異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られている)は、プロトンの移行を介した相互変換、例えば、ケト-エノール及びイミン-エナミン異性化を含む。価互変異性体は、いくつかの結合電子の再編成による相互変換を含む。
【0021】
「保護基」または「保護部分」という用語は、化合物、その誘導体、またはそのコンジュゲート上の他の官能基を反応させながら、特定の官能性を遮断または保護するために一般的に使用される置換基を指す。
【0022】
「カルボン酸保護基」は、化合物中のカルボン酸官能性を遮断または保護するカルボニル基に結合した置換基である。かかる基は、当該技術分野において周知である(例えば、P.Wuts and T.Greene,2007,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 5,J.Wiley&Sons,NJを参照されたい)。好適なカルボン酸保護基としては、アルキルエステル(例えば、メチルエステルもしくはtert-ブチルエステル)、ベンジルエステル、チオエステル(例えば、tert-ブチルチオエステル)、シリルエステル(例えば、トリメチルシリルエステル)、9-フルオレニルメチルエステル、(2-トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステル、ジフェニルメチルエステル、またはオキサゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、カルボン酸保護基は、メチルエステル、tert-ブチルエステル、ベンジルエステル、またはトリメチルシリルエステルである。ある特定の実施形態において、カルボン酸保護基は、tert-ブチルエステルである。
【0023】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸脱保護剤」は、カルボン酸保護基を切断して遊離カルボン酸を形成することができる試薬を指す。かかる試薬は、当該技術分野において周知であり(例えば、P.Wuts and T.Greene,2007,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 5,J.Wiley&Sons,NJを参照されたい)、使用されるカルボン酸保護基に依存する。例えば、カルボン酸保護基がtert-ブチルエステルである場合、それを酸で切断することができる。ある特定の実施形態において、カルボン酸脱保護剤は、トリフルオロ酢酸である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アルコール活性化剤」は、ヒドロキシル基の反応性を増加させ、それによってヒドロキシル基をより良好な脱離基にする試薬を指す。かかるアルコール活性化剤の例としては、p-トルエンスルホニルクロリド、塩化チオニル、トリフリン酸無水物、塩化メシル、メシル無水物、トリフェニルホスフィン、塩化アシル、4-ジメチルアミノピリジン他が挙げられる。ある特定の実施形態において、アルコール活性化剤は、塩化チオニルである。ある特定の実施形態において、アルコール活性化剤は、トリフェニルホスフィンである。
【0025】
本明細書で使用される「塩」という語句は、本発明の化合物の有機または無機塩を指す。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩)、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン、または他の対イオンなどの別の分子の包含を伴い得る。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、塩は、その構造に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が塩の一部である場合は、複数の対イオンを有し得る。したがって、塩は、1つ以上の荷電原子及び/または1つ以上の対イオンを有し得る。
【0026】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の塩は、当該技術分野で利用可能な任意の好適な方法、例えば、遊離塩基を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸などの無機酸で、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸もしくはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸もしくは酒石酸などのαヒドロキシ酸、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸もしくはケイ皮酸などの芳香族酸、p-トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸などのスルホン酸などの有機塩で処理することによって調製され得る。
【0027】
本発明の化合物が酸である場合、所望の塩は、任意の好適な方法、例えば、遊離酸を、アミン(一級、二級もしくは三級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などの無機または有機塩基で処理することによって調製され得る。好適な塩の例示的な例としては、グリシン及びアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、一級、二級、及び三級アミン、ならびにピペリジン、モルホリン及びピペラジンなどの環状アミンに由来する有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムに由来する無機塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ある特定の実施形態において、塩は、薬学的に許容される塩である。「薬学的に許容される」という語句は、物質または組成物が、製剤を含む他の成分、及び/またはそれで治療されている哺乳動物と化学的及び/または毒性学的に適合していなければならないことを示す。
【0029】
本明細書で使用される場合、体積量(V)は、溶媒の量(mL)対化合物の重量(g)の比率を意味する。例えば、40体積量は、化合物1g当たり40mLの溶媒が使用されることを意味する。
【0030】
本発明の方法
本発明は、インドリノベンゾジアゼピン二量体化合物及び前駆体を調製するための新規の合成方法を提供する。
【0031】
第1の実施形態において、本発明は、式(III)の化合物:
【化11】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)式(I)の化合物:
【化12】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化13】
またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)と反応させて、式(II)の化合物:
【化14】
を形成するステップと、
(b)式(II)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(III)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)Eが、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、方法を提供する。
【0032】
第1の特定の実施形態において、本発明は、
式(IIIa)の化合物:
【化15】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)式(Ia)の化合物:
【化16】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化17】
またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)と反応させて、式(IIa)の化合物:
【化18】
を形成するステップと、
(b)式(IIa)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、方法を提供する。
【0033】
一実施形態において、第1の実施形態または第1の特定の実施形態に記載の方法について、Eは、-OHであり、及び式(I)または(Ia)の化合物は、式(I”)または(Ia”)の化合物:
【化19】
の加水分解によって調製される。
【0034】
特定の実施形態において、加水分解は、塩基の存在下で行われる。別の特定の実施形態において、塩基は、LiOH、KOH、NaOHから選択される。さらに別の特定の実施形態において、塩基は、LiOHである。
【0035】
第2の実施形態において、第1の実施形態の方法は、
式(III)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化20】
と反応させて、式(V)の化合物を形成することをさらに含む。
【化21】
【0036】
第2の特定の実施形態において、第1の特定の実施形態の方法は、式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化22】
と反応させて、式(Va)の化合物を形成することをさらに含む。
【化23】
【0037】
第3の実施形態において、本発明は、式(V)の化合物:
【化24】
を調製する方法であって、
(a)式(I)の化合物:
【化25】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化26】
またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)と反応させて、式(II)の化合物:
【化27】
を形成するステップと、
(b)式(II)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(III)の化合物:
【化28】
またはその塩を形成するステップと、
(c)式(III)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化29】
と反応させて、式(V)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、方法を提供する。
【0038】
第3の特定の実施形態において、本発明は、式(Va)の化合物:
【化30】
を調製する方法であって、
(a)式(Ia)の化合物:
【化31】
またはその塩を、式(a)の化合物:
【化32】
またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)と反応させて、式(IIa)の化合物:
【化33】
を形成するステップと、
(b)式(IIa)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物:
【化34】
またはその塩を形成するステップと、
(c)式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化35】
と反応させて、式(Va)の化合物を形成するステップと、を含み、式中、Eが、-OH、ハロゲン化物であるか、または-C(=O)E
1が、活性化エステルであり、P
1が、カルボン酸保護基である、方法を提供する。
【0039】
第4の実施形態において、第1、第2もしくは第3の実施形態、または第1、第2もしくは第3の特定の実施形態に記載の方法ついて、P1は、当該技術分野において既知の任意の好適なカルボン酸保護基であり得る。一実施形態において、カルボン酸保護基としては、アルキルエステル(例えば、メチルエステルまたはtert-ブチルエステル)、ベンジルエステル、チオエステル(例えば、tert-ブチルチオエステル)、シリルエステル(例えば、トリメチルシリルエステル)、9-フルオレニルメチルエステル、(2-トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステル、ジフェニルメチルエステルまたはオキサゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、カルボン酸保護基は、メチルエステル、tert-ブチルエステル、ベンジルエステル、またはトリメチルシリルエステルであり、すなわち、P1は、-OMe、-OtBu、-OBn、-O-シリル(例えば、-OSi(Me)3))である。別の特定の実施形態において、カルボン酸保護基は、tert-ブチルエステルであり、すなわち、P1は、-OtBuである。
【0040】
第5の実施形態において、第1、第2、第3もしくは第4の実施形態、または第1、第2もしくは第3の特定の実施形態に記載の方法について、Eは-OHであり、及び式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩と、式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、活性化剤の存在下で行われ、残りの変数は、第1、第2、第3もしくは第4の実施形態、または第1、第2もしくは第3の特定の実施形態に記載のものである。
【0041】
特定の実施形態において、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1、2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1、2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロギ酸エステルである。
【0042】
別の特定の実施形態において、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシドである。より特定の実施形態において、活性化剤は、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)である。
【0043】
さらに別の特定の実施形態において、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールもしくは1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-オール(HOAt)、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、もしくはアルキルクロロギ酸エステル、またはそれらの組み合わせである。
【0044】
別の特定の実施形態において、活性化剤は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)である。より特定の実施形態において、活性化剤は、HATU及びHOAtである。
【0045】
任意の好適な量の活性化剤を、式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩と、式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応に使用することができる。一実施形態において、式(I)または(Ia)の化合物の量に対して1.0~5.0モル当量の活性化剤(例えば、HATU)が、反応において使用される。特定の実施形態において、または1.3~1.6当量のHATUが使用される。特定の実施形態において、または1.7当量のHATUが使用される。より特定の実施形態において、1.5当量のHATUが使用される。
【0046】
一実施形態において、式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩と式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、塩基の存在下で行われる。一実施形態において、塩基は、非求核塩基である。例示的な非求核塩基には、トリエチルアミン、イミダゾール、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン、ジメチルホルムアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、またはテトラメチルピペリジンが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、塩基は、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。別の特定の実施形態において、塩基は、ジイソプロピルエチルアミンである。
【0047】
別の実施形態において、式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩と式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、上記の活性化剤及び上記の塩基の存在下で行われる。特定の実施形態において、反応は、活性化剤として2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、及び塩基としてトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下で行われる。別の特定の実施形態において、反応は、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)及びジイソプロピルエチルアミンの存在下で行われる。別の特定の実施形態において、反応は、活性化剤としてHATU及びHOAt、ならびに塩基としてジイソプロピルエチルアミンの存在下で行われる。
【0048】
式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩と、式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、任意の好適な有機溶媒(複数可)中で行われ得る。一実施形態において、反応は、ジクロロメタン中で行われる。
【0049】
別の実施形態において、式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩の化合物と、式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、不活性雰囲気下で行われる。特定の実施形態において、不活性雰囲気は、反応溶液を脱気し、反応容器を窒素またはアルゴンでパージすることによって達成される。
【0050】
式(I)もしくは(Ia)の化合物またはその塩と式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、好適な温度で行われ得る。いくつかの実施形態において、反応は、0℃~50℃、5℃~50℃、10℃~50℃、10℃~40℃、10℃~30℃、または15℃~25℃の温度で行われる。より特定の実施形態において、反応は20±3℃で行われる。
【0051】
第6の実施形態において、第1、第2、第3、第4もしくは第5の実施形態、または第1、第2もしくは第3の特定の実施形態に記載の方法について、任意の好適なカルボン酸保護基を、ステップ(b)で使用することができる。使用することができる好適な脱保護剤は、カルボン酸保護基の同一性に依存する。例えば、P1が-OtBuである場合、保護基は、酸、塩基、または好適な還元剤での処理によって除去することができる。ある特定の実施形態において、酸を使用して、tert-ブチルエステル保護基を除去することができる。例示的な酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、及びリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、トリフルオロ酢酸は、カルボン酸脱保護剤として使用される。
【0052】
一実施形態において、脱保護反応は、任意の好適な有機溶媒(複数可)中で行うことができる。例示的な有機溶媒としては、DMF、CH2CI2、ジクロロエタン、THF、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、脱保護反応は、ジクロロメタン中で行われる。
【0053】
第7の実施形態において、本発明は、式(IIIa)の化合物:
【化36】
を調製する方法であって、
(a)式(Ia1)の化合物を、
【化37】
式(a)の化合物:
【化38】
またはその塩(例えば、HClもしくはTFA塩)と、活性化剤の存在下で反応させて、式(IIa1)の化合物を形成するステップと、
【化39】
(b)式(IIa1)の化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物を形成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0054】
一実施形態において、第7の実施形態に記載の方法について、式(Ia1)の化合物は、式(Ia1”):
【化40】
の加水分解によって調製される。
【0055】
特定の実施形態において、加水分解は、塩基の存在下で行われる。別の特定の実施形態において、塩基は、LiOH、KOH、NaOHから選択される。さらに別の特定の実施形態において、塩基は、LiOHである。
【0056】
第8の実施形態において、本発明は、式(Va)の化合物:
【化41】
を調製する方法であって、
(a)式(Ia1)の化合物:
を式(a)の化合物:
【化42】
またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)と、活性化剤の存在下で反応させて、式(IIa1)の化合物:
【化43】
を形成するステップと、
(b)式(IIa1)の化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)の化合物:
【化44】
を形成するステップと、
(c)式(IIIa)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化45】
と反応させて、式(Va)の化合物を形成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0057】
第9の実施形態において、第7または第8の実施形態の方法について、式(Ia1)の化合物及び式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくTFA塩)のステップ(a)での反応は、ステップ(a)で活性化剤として2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド(T3P)の存在下で行われる。別の実施形態において、ステップ(a)で式(Ia1)の化合物及び式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)の反応は、塩基の存在下で行われ得る。一実施形態において、塩基は、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。特定の実施形態において、ステップ(a)での式(Ia1)の化合物及び式(a)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)の化合物の反応は、活性化剤として2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド(T3P)及び塩基としてジイソプロピルエチルアミンの存在下で行われ得る。一実施形態において、反応は、ジクロロメタン中で行われ得る。
【0058】
第10の実施形態において、第7、第8または第9の実施形態に記載の方法について、ステップ(b)のカルボン酸脱保護剤は、トリフルオロ酢酸(TFA)である。一実施形態において、脱保護反応は、ジクロロメタン中で行われる。
【0059】
第11の実施形態において、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9もしくは第10の実施形態、または第2もしくは第3の特定の実施形態に記載の方法について、式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩との間の反応は、活性化剤の存在下で行われ、残りの変数は、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9もしくは第10の特定の実施形態、または第2もしくは第3の特定の実施形態に記載のものである。
【0060】
特定の実施形態において、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールもしくは1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-オール(HOAt)、カルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロギ酸エステル、またはそれらの組み合わせである。
【0061】
別の特定の実施形態において、活性化剤は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)である。より特定の実施形態において、活性化剤は、HATU及びHOAtである。
【0062】
任意の好適な量の活性化剤を、式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩との間の反応に使用することができる。一実施形態において、式(IV)の化合物の量に対して1.0~5.0モル当量のHATUが、反応において使用される。特定の実施形態において、1.0~2.0、1.2~1.7、または1.3~1.6当量のHATUが使用される。特定の実施形態において、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6または1.7当量のHATUが使用される。より特定の実施形態において、1.5当量のHATUが使用される。
【0063】
別の実施形態において、式(IV)の化合物の量に対して0.1~1.0モル当量のHOAtは、フォーム(III)または(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩との間の反応において使用される。特定の実施形態において、0.2~0.8、0.3~0.7または0.4~0.6当量のHOAtが使用される。別の特定の実施形態では、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7当量のHOAtが使用される。より特定の実施形態において、0.5当量のHOAtが使用される。
【0064】
一実施形態において、式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩との間の反応は、塩基の存在下で行われる。一実施形態において、塩基は、非求核塩基である。例示的な非求核塩基には、トリエチルアミン、イミダゾール、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン、ジメチルホルムアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、またはテトラメチルピペリジンが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、塩基は、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである。別の特定の実施形態において、塩基は、ジイソプロピルエチルアミンである。
【0065】
別の実施形態において、式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩との間の反応は、上記の活性化剤及び上記の塩基の存在下で行われる。特定の実施形態において、反応は、活性化剤としてHATU及びHOAt、ならびに塩基としてジイソプロピルエチルアミンの存在下で行われる。
【0066】
別の実施形態において、式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩との間の反応は、不活性雰囲気下で行われる。特定の実施形態において、不活性雰囲気は、反応溶液を脱気し、反応容器を窒素またはアルゴンでパージすることによって達成される。
【0067】
式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、任意の好適な有機溶媒(複数可)中で行われ得る。一実施形態において、反応は、ジクロロメタン中で行われる。
【0068】
式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と式(IV)の化合物またはその塩(例えば、HCl塩もしくはTFA塩)との間の反応は、好適な温度で行われ得る。いくつかの実施形態において、反応は、0℃~50℃、5℃~50℃、10℃~50℃、10℃~40℃、10℃~30℃、または15℃~25℃の温度で行われる。より特定の実施形態において、反応は、20℃で行われる。
【0069】
第11の実施形態において、第2、第3、第4、第5、第6、第8、第9もしくは第10の実施形態、または第2もしくは第3の特定の実施形態に記載の方法について、式(IV)の化合物は、式(V)の化合物:
【化46】
と還元剤と反応させて、式(IV)の化合物を形成するステップを含む。
【0070】
第12の実施形態において、第2、第3、第4、第5、第6、第8、第9もしくは第10の実施形態、または第2もしくは第3の特定の実施形態に記載の方法について、式(IV)の化合物は、
1)式(VI)の化合物:
【化47】
をトルエン中の塩酸と反応させて、式(VII)の化合物:
【化48】
を形成するステップと、2)式(VII)の化合物を式(a1)のモノマー化合物:
【化49】
と反応させて、式(VIII)の化合物:
【化50】
またはその塩を形成するステップと、
3)式(VIII)の化合物またはその塩を式(b1)のモノマー化合物:
【化51】
と反応させて、式(V)の化合物:
【化52】
またはその塩を形成するステップと、
4)式(V)の化合物またはその塩を還元剤と反応させて、式(IV)の化合物を形成するステップと、を含む方法によって調製され得る。
【0071】
一実施形態において、第11または第12の実施形態に記載の方法について、ニトロ(-NO2)基をアミン(-NH2)基に変換することができる任意の好適な還元剤を、式(V)の化合物を式(IV)の化合物に変換するために使用することができる。一実施形態において、還元試薬は、水素ガス、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、塩化第一スズ、塩化チタン(II)、亜鉛、鉄、及びヨウ化サマリウムからなる群から選択される。別の実施形態において、還元試薬は、Fe/NH4Cl、Fe/NH4Cl、Zn/NH4Cl、FeSO4/NH4OH、またはスポンジニッケルである。特定の実施形態において、還元剤は、Fe/NH4Clである。
【0072】
一実施形態において、第12の実施形態に記載の方法のステップ1)について、式(VI)の化合物は、濃塩酸と反応して式(VII)の化合物を形成する。
【0073】
別の実施形態において、第12の実施形態に記載の方法のステップ2)について、式(VII)の化合物は、アルコール活性化剤及びアゾジカルボキシレートの存在下で式(a1)のモノマー化合物と反応する。特定の実施形態において、アルコール活性化剤は、トリブチルホスフィンまたはトリフェニルホスフィンである。別の特定の実施形態において、アゾジカルボキシレートは、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)、及びジ-tert-ブチルアゾジカルボキシレート(DTAD)である。別の特定の実施形態において、アルコール活性化剤は、トリブチルホスフィンまたはトリフェニルホスフィンであり、アゾジカルボキシレートは、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、1,1′-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)、及びジ-tert-ブチルアゾジカルボキシレート(DTAD)である。さらに特定の実施形態において、アルコール活性化剤は、トリブチルホスフィンであり、アゾジカルボキシレートは、DIADである。別のより特定の実施形態において、アルコール活性化剤は、トリフェニルホスフィンであり、アゾジカルボキシレートは、DIADである。一実施形態において、トリフェニルホスフィンは、式(VII)の化合物、式(a1)のモノマー化合物、及びアゾジカルボキシレートを混合した後に添加される。さらにより特定の実施形態において、トリフェニルホスフィンは、式(VII)の化合物、式(a1)のモノマー化合物、及びDIADを混合した後に添加される。
【0074】
一実施形態において、第12の実施形態に記載の方法のステップ3)について、式(VIII)の化合物と式(bl)のモノマー化合物との間の反応は、塩基の存在下で行われる。一実施形態において、塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、または水素化カリウムである。特定の実施形態において、塩基は炭酸カリウムである。別の実施形態において、式(VIII)の化合物と式(bl)のモノマー化合物との反応は、ヨウ化カリウムをさらに含む。特定の実施形態において、式(VIII)の化合物と式(bl)のモノマー化合物との間の反応は、炭酸カリウム及びヨウ化カリウムの存在下で行われる。
【0075】
本明細書及び以下の実施例において引用されるすべての参照文献は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0076】
以下の溶媒、試薬、保護基、部分、及び他の名称は、括弧内のそれらの略語によって参照され得る:
eq=モル当量
V=体積
DCMまたはCH2Cl2=ジクロロメタン DIEAまたはDIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン g=グラム
LCMS=液体クロマトグラフィー質量分析 min=分 mg=ミリグラム mL=ミリリットル mmol=ミリモル
MS=質量分析
tBMEまたはMTBE=メチルtert-ブチルエーテル
NMR=核磁気共鳴分光法
T3P=2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド
TFA=トリフルオロ酢酸
ACN=アセトニトリル
HATU=1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HAOt=1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-オール、または1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
【0077】
実施例1.(S)-tert-ブチル2-((S)-2-(6-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-6-オキソヘキサナミド)プロパンアミド)プロパノエートの合成
【化53】
窒素下で、撹拌子及び熱電対を備えた清潔で乾燥した100mL丸底フラスコに、-(((S)-1-((((S)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-6-オキソヘキサノン酸(0.51g、1.48mmol、1.0当量)、1-(2-アミノエチル)-1H-ピロール-2,5-ジオンHCl(0.27g、1.53mmol、1.1当量)及びジクロロメタン(10.0mL、20体積)を添加した。得られた混合物を撹拌し、5±3℃まで冷却した。DIPEA(0.760mL、4.4mmol、3.0当量)を混合物に添加し、続いてT3P(1.3mL、2.22mmol、1.5当量)を添加した。反応混合物をゆっくりと20±5℃まで温め、2時間撹拌した。30±5分間かけて反応混合物に水を添加することによって反応をクエンチした。有機相を分離し、半飽和ブライン(2×5.0mL、2×10体積)及び水(2×5.0mL、2×10体積)で洗浄し、濃縮した。濃縮有機相にトルエンを添加する((2×5.0mL、2×10体積)。得られた溶液を真空下で濃縮して、いかなる残存する水も除去した。得られた固体をDCM(5.0mL、10体積)及びtBME(5.0mL、10体積)中に懸濁し、5±2℃の温度で撹拌し、濃縮乾燥させて、白色固体として生成物を得た(0.557g、収率80.6%)。m/z計算値466.24、実測値467.04
【0078】
実施例2.(S)-2-((S)-2-(6-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-6-オキソヘキサナミド)プロパンアミド)プロパン酸の合成
【化54】
窒素下で、撹拌子及び熱電対を備えた清潔で乾燥した100mL丸底フラスコに、(S)-tert-ブチル2-((S)-2-(6-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-6-オキソヘキサナミド)プロパンアミド)プロパノエート(0.41g、0.88mmol、1.0当量)、続いてジクロロメタン(4.0mL、10体積)を添加した。得られた混合物を撹拌して懸濁液を形成し、続いて5±3℃まで冷却した。TFA(4.0mL、10体積)を添加し、反応物を撹拌し、20±5℃までゆっくりと温めた。反応物を20±5℃で2時間撹拌し、水(ガラスピペットで数滴添加した)でクエンチした。反応混合物を濃縮乾燥させ、トルエンを添加した。得られたトルエン溶液を濃縮して、いかなる残存する水も除去した。得られた固体をジクロロメタン(5.0mL、10体積)及びtBME(5.0mL、10体積)に懸濁し、5±2℃の温度で撹拌し、濃縮乾燥させて、生成物(S)-tert-ブチル2-((S)-2-(6-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-6-オキソヘキサナミド)プロパンアミド)プロパノエートを白色固体として得た(0.557g、収率80.6%)。m/z計算値410.18、実測値410.99。
【0079】
実施例3.(S)-9-((3-(クロロメチル)-5-ニトロベンジル)オキシ)-8-メトキシ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オンの合成
【化55】
窒素下で、撹拌子及び熱電対を備えた乾燥した100mL丸底フラスコに、(S)-9-ヒドロキシ-8-メトキシ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(1.0g、3.375mmol、1.0当量)、続いてテラヒドロフラン(10.0mL、10V)を添加した。混合物を20℃±5℃で撹拌して、わずかに濁った溶液を得た。次いで3-(クロロメチル)-5-ニトロフェニル)メタノール(0.849g、4.22mmol)を溶液に添加し、反応混合物を20℃±5℃で撹拌してわずかに濁った溶液を得た。反応物を5±3℃まで冷却し、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.930mL、4.725mmol)を添加漏斗で10±2分間にわたって滴下した。トリフェニルホスフィン(1.24g、7.425mmol)をTHF(3mL、2.4V)に溶解し、得られた溶液を反応混合物に滴下して温度を≦10℃に維持した。反応混合物を5±3℃で30分間撹拌した後、5±3℃まで冷却し、水(5.0mL、5V)を添加した。得られた混合物を30分間撹拌し、DCM(40mL、40V)を添加した。得られた混合物を250mL分液漏斗に移し、水(2×10mL、2×10V)で洗浄した。有機相を分離し、濃縮して粗生成物を得、これを、0~20%DCM/酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを介して40分間にわたって精製した。純粋生成物含有画分を混合し、濃縮して、乾燥させて、所望の生成物を得た。濃縮画分を酢酸エチルに溶解し、攪拌中のt-ブチルメチルエーテル(36.0mL、18V)に滴下して、白色/オレンジ色固体を形成した。混合物を5±5℃まで冷却し、2時間撹拌した。固体を濾過して生成物を得た(1.08g、収率66.6%)。
【0080】
実施例4.化合物Vaの合成
【化56】
ステップ1a
DCM(約1.5V)を充填し、続いて化合物7a(8.6g、1当量)を充填し、DCM(14.5V)ですすいだ。マレイミド化合物8を添加し、DCM(4V)をすすぎに使用した。この溶液を5℃まで冷却した。DIPEAに続いてT3Pをゆっくりと添加し、反応混合物を20℃で撹拌した。1時間30分後、転化率を99.4%と判定した。反応混合物を10℃まで冷却し、徐々に水(20V)を加えることによってクエンチした。相分離後、水相をDCM(3×20V)で逆抽出した。有機相を混合し、15%NaCl溶液(2×10V)で洗浄した。粗生成物7bを5℃で保管した後、化合物7の合成に使用した。
【0081】
ステップ1b
ステップ1aからの粗生成物7bを10V(11.65gの理論収量と比較して)に濃縮した。混合物の温度を5℃まで低下させた。TFAを5℃でゆっくりと添加し、反応混合物を20℃まで温めて撹拌した。1時間後、転化率を99.6%と判定した。水(IV)を添加することで反応をクエンチし、濃縮乾燥させた。DCMとの共蒸発を行った(3x30V)。残留物をDCM(13V)に溶解し、MTBE(13V)にゆっくりと添加する。混合物温度を5℃まで低下させ、懸濁液を5℃で30分間撹拌した後、濾過した。固体をMTBE(2×2.5V)で洗浄した後、35℃で、深真空下で乾燥させた。
【0082】
ステップ1
化合物2(1当量)をTHF(10V)中に懸濁し、化合物1(1.25当量)を添加した。反応混合物を5℃まで冷却し、質量が10℃を超えないようにDIAD(1.4当量)を添加した。PPh3(1.4当量)をTHF(2V)に溶解し、質量が10℃を超えないようにゆっくりと反応混合物に添加した。反応混合物を5℃で30分間撹拌した。水(5V)を添加することによって反応混合物をクエンチし、混合物を5℃で30分間撹拌した。反応混合物を温め、撹拌を停止させた。相分離後、水相をDCM(20V)で抽出する。有機相を混合し、水(2×10V)で洗浄し、続いて濃縮し、DCM(2×20V)と共沸蒸留した。混合物を10Vまで濃縮し、粗生成物3の溶液を、ACN/水55/45v/vで溶出するYMC-Triart C18カラムを使用して逆相クロマトグラフィーにより精製した。主ピークを収集し、収集した画分をDCMで抽出した。抽出画分をプールし、10Vに濃縮した。
【0083】
ステップ2
ステップ1のDCM/ACN溶液中の化合物3(12.lg、1当量)を室温で、DMF(17V)で希釈した。次いで、溶液を約17Vに濃縮し、反応器(DMF(3V)を満たした)に移した。化合物4(7.8g、1.05当量)、続いてKI(2.09g、0.5当量)及びK2CO3(7.0g、2当量)を添加した。反応混合物を35℃で4時間撹拌した。別の0.1当量の化合物4を添加し、反応物を35℃で45分間撹拌した。反応混合物を20℃まで冷却し、DCMを添加し(40V)、続いて水(20V)を添加した。相を分離し、水相をDCM(20V)で再び抽出した。有機相を混合し、15%NaCl溶液(2x20V)、続いて水(2x20V)で洗浄した。有機相を10Vに濃縮し、共沸蒸留をDCM(2×20V)で行った。有機溶液を最終的に約10Vに濃縮した(計算収率77.7%)。
【0084】
ステップ3
化合物5(18.6g、1当量)を室温でTHF/MeOH/水(12.5V/1.7V/0.85V)に溶解し、反応器に移した。反応器に、NH4Cl(14.2g、10.5当量)、次いでFe(7.9g、5.6当量)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌した。反応物を20℃まで冷却し、DCMで希釈し、セライトを通して濾過し、DCMで洗浄した。濃縮乾燥後、残留物をDCM(20V)に溶解した。有機相を飽和NaCl溶液(20V)、続いて水(2×10V)で洗浄した。有機相を濃縮し、DCM(2×20V)と共蒸発させた。粗生成物を、0.34%で傾斜を有する2.4%MeOHからDCM/MEOH勾配で溶出するDalso SP-100-10-Pカラムを使用する順相シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。混合画分をほぼ乾燥するまで濃縮した(計算収率47.6%)。
【0085】
ステップ4
化合物7(1.2当量)をDCM(24V)に懸濁し、EEDQ(2.5当量)を添加した。混合物を20℃で30分間撹拌した。MeOH(5V)を添加し、混合物を20℃で5分間撹拌した。化合物6(1当量)をDCM(12V)に溶解し、この溶液を化合物7及びEEDQの反応混合物に添加した。反応混合物を、転化率が95%以上になるまで20℃で撹拌した。反応混合物を1%NaCl溶液(14V)で洗浄した。相分離後、有機相を濃縮し、DCM(3×10V)と共蒸発させた。粗化合物Vaをv/vで溶解し、5%~10%MeOHのDCM/MeOH勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィー(Daiso SP-100-10-P)によって精製した。混合した画分を濃縮し、DCMと10Vに共蒸発させた。溶液を濃縮し、残留物をDMSOに溶解し、ACN/水45/55v/vで溶出する逆相クロマトグラフィー(YMC-Triart C18)によって精製した。生成物含有画分をDCM(0.4V)中で抽出し、0.5%NaHCO3溶液(0.4V)、続いて水(2×0.4V)で洗浄した。混合画分を濃縮し、DCMと共蒸発させてほぼ乾燥させた。得られた残留物をDCM中に懸濁し、沈殿反応(75V、DCMでのすすぎを含む)に移した。ヘプタン(75V)をゆっくりと添加し、スラリーをさらに室温で30分間撹拌した。濾過後、固体をDCM/ヘプタン1/1v/vで、続いてヘプタンですすいだ。固体を深真空下、35℃で乾燥させた。
【0086】
実施例5.化合物(Va)の合成
【化57】
窒素雰囲気下で、清潔で乾燥した100mL丸底フラスコ(RBF)に、化合物7(0.640g、1.528mmol)、続いてHATU(0.587g、1.529mmol)、HOAt(0.587g、1.529mmol.)及びDCM(12mL、15体積)を充填した。混合物を20℃±5℃で5±2分間撹拌した。化合物6(0.82g、1.020mmol)をDCM(8.2mL、10体積)に溶解し、この溶液を化合物7、HATU及びHOAtの反応混合物に添加した。次いでMeOH(0.5mL、0.6体積)を添加した。反応容器を脱気し、窒素でパージした。DCM(4.1mL、5体積)中のDIPEA(0.268mL、1.529mmol)をゆっくりと反応溶液に添加した。混合物を20℃±5℃で30±5分間撹拌した。反応混合物に、中和DCM(8.2mL、10体積、炭酸水素ナトリウム溶液で予洗浄済み)、続いて5%炭酸水素ナトリウム溶液(12.3mL、15体積)を添加した。得られた溶液を20℃±5℃で30±5分間撹拌し、次いで分液漏斗に移し、中和DCM(12mL、15体積)を添加した。脱気によって溶液を混合し、次いで10±5分間分離させた。有機相を濃縮し、5~60%アセトニトリル/脱イオン水の勾配で20分間溶出し、続いて60%で10分間保持し、10分間で勾配を95%に上昇させ、95%で5分間保持する逆相クロマトグラフィー(YMC-Triart C18)によって精製した。生成物含有画分を混合し、DCM(0.7×画分の総体積)で抽出した。有機層を収集し、溶媒を蒸留によって除去して、乾燥したオフホワイトの微粉生成物化合物(Va)(0.6062g、0.529mmol、収率51.9%)を得た。
【国際調査報告】