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特表2022-512952燃料効率を改善するための添加剤としてのアミノアルカンジオールおよびカルボキシレート塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】燃料効率を改善するための添加剤としてのアミノアルカンジオールおよびカルボキシレート塩
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/222 20060101AFI20220131BHJP
   C10M 133/40 20060101ALI20220131BHJP
   C10L 10/08 20060101ALI20220131BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220131BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C10L1/222
C10M133/40
C10L10/08
C10N40:25
C10N30:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524411
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 IB2019059475
(87)【国際公開番号】W WO2020095189
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/756,891
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガナワン、テレサ リャン
(72)【発明者】
【氏名】マリア、アミール ガマル
(72)【発明者】
【氏名】チャーペック、リチャード ユージン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BE04C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104EB15
4H104LA03
4H104PA41
4H104PA44
(57)【要約】
摩擦調整剤および該摩擦調整剤を燃料添加剤として含有する組成物が提供される。これらの組成物を使用して燃料効率を改善するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ガソリンまたはディーゼルの範囲で沸騰する50重量%を超える炭化水素燃料と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む、燃料組成物。
【請求項2】
前記アミノアルカンジオールの構造が、
【化1】

であり、
式中、Rが、Hまたは脂肪族基である、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
前記脂肪族基が、次の炭化水素鎖、すなわち、H、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプタン-2-イル基、オクチル基、オレイル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、または4-メチルヘキシル基のうちの1つである、請求項2に記載の燃料組成物。
【請求項4】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、アルキルカルボン酸のカルボキシレートを含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項5】
前記アルキルカルボン酸が、次の酸、すなわち、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘプタン酸、酪酸、ヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、2-メチルオクタン酸、または2-エチルノナン酸のうちの1つである、請求項4に記載の燃料組成物。
【請求項6】
前記第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアミノアルカンジオールまたは前記第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、約25~5000重量ppmで存在する、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項7】
酸素化合物、アンチノック剤、清浄剤、分散剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、抗乳化剤、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン向上剤、または潤滑性添加剤をさらに含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項8】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、次の元素、すなわちC、N、O、およびHに組成上限定される、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項9】
(1)ガソリンまたはディーゼルの範囲内で沸騰する50重量%を超える炭化水素燃料と、(2)少量の前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩であって、前記第一級または第二級アミノアルカンジオールが、
【化2】

であり、式中、Rが、Hまたは脂肪族基である、アルキルカルボン酸塩と、を含む、燃料組成物。
【請求項10】
前記脂肪族基が、次の炭化水素鎖、すなわち、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、セプチル基、オクチル基、またはオレイル基のうちの1つである、請求項9に記載の燃料組成物。
【請求項11】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、アルキルカルボン酸のカルボキシレートを含む、請求項9に記載の燃料組成物。
【請求項12】
前記アルキルカルボン酸が、次の酸、すなわち、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘプタン酸、酪酸、ヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、2-メチルオクタン酸、または2-エチルノナン酸のうちの1つである、請求項11に記載の燃料組成物。
【請求項13】
内燃機関における燃料経済性を改善するための方法であって、(1)ガソリンまたはディーゼルの範囲内で沸騰する50重量%を超える炭化水素燃料と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは前記第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む、燃料組成物を、前記機関に供給することを含む、方法。
【請求項14】
前記アミノアルカンジオールの構造が、
【化3】

であり、式中、Rが、Hまたは脂肪族基である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脂肪族基が、次の炭化水素鎖、すなわち、H、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプタン-2-イル基、オクチル基、オレイル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、または4-メチルヘキシル基のうちの1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、アルキルカルボン酸のカルボキシレートを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アルキルカルボン酸が、次の酸、すなわち、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸または2-プロピルヘプタン酸のうちの1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアミノアルカンジオールまたはアルキルカルボン酸塩が、約25~5000重量ppmで存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記燃料組成物が、酸素化合物、アンチノック剤、清浄剤、分散剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、抗乳化剤、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン向上剤、または潤滑性添加剤をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、次の元素、すなわちC、N、O、およびHに組成上限定される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
(1)50重量%を超える基油と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは前記第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む、潤滑油組成物。
【請求項22】
前記アミノアルカンジオールの構造が、
【化4】

であり、式中、Rが、Hまたは脂肪族基である、請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
前記脂肪族基が、次の炭化水素鎖、すなわち、H、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプタン-2-イル基、オクチル基、オレイル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、または4-メチルヘキシル基のうちの1つである、請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、アルキルカルボン酸のカルボキシレートを含む、請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
前記アルキルカルボン酸が、次の酸、すなわち、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸、2-プロピルヘプタン酸、酪酸、ヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、2-メチルオクタン酸、または2-エチルノナン酸のうちの1つである、請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアミノアルカンジオールまたはアルキルカルボン酸塩が、約0.001~10重量%で存在する、請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアミノアルカンジオールまたはアルキルカルボン酸塩が、約0.5~5重量%で存在する、請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
酸化防止剤、無灰分散剤、耐摩耗剤、清浄剤、防錆剤、防曇剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、染料、または極圧剤をさらに含む、請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、次の元素、すなわちC、N、O、およびHに組成上限定される、請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
(1)50重量%を超える基油と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは前記第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む潤滑油組成物を内燃機関に供給することを含む、前記機関の燃料効率を改善する方法。
【請求項31】
前記内燃機関が、火花点火式である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記アミノアルカンジオールの構造が、
【化5】

であり、式中、Rが、Hまたは脂肪族基である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記脂肪族基が、次の炭化水素鎖、すなわち、H、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプタン-2-イル基、オクチル基、オレイル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、または4-メチルヘキシル基のうちの1つである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩が、アルキルカルボン酸のカルボキシレートを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記アルキルカルボン酸が、次の酸、すなわち、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸または2-プロピルヘプタン酸のうちの1つである、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩擦を低減しおよび/または摩耗を低減することによってエンジンの燃料経済性を改善する燃料添加剤または潤滑油添加剤、および該添加剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な燃料系内燃機関では、燃料のエネルギーの40%未満が機械的動力に変換される。そこから、変換された機械的動力のおおよそ1/3が摩擦によって失われる。燃料効率のこの損失を打ち消すために、燃料組成物または潤滑油組成物は、燃料効率を高めるために摩擦を低減する添加剤(「摩擦調整剤」)を含有することができる。摩擦調整剤はまた、高圧燃料ポンプおよびインジェクタを燃料によって引き起こされる摩耗から保護するよう機能することもできる。
【0003】
摩擦調整剤にはいくつかのクラスがあり、主なクラスは有機摩擦調整剤である。有機摩擦調整剤は、一般に、長鎖炭化水素に結合した極性頭部を有する細長い分子である。極性頭部は、金属に引き付けられ、炭化水素鎖が表面に対して垂直なままである間に摩擦調整剤が金属表面に固着することを可能にし、それによってざらついた状態での接触(asperity contact)を防止し、摩擦および/または摩耗を低減する。
【0004】
有機摩擦調整剤の中でも、ある特定の脂肪酸およびそれらの誘導体(エステルおよびアミド)が普通使用される。これらには、グリセロールモノオレエート(GMOまたは「グリモ」)などのグリセロール誘導体が含まれる。脂肪酸およびそれらの誘導体の脂肪性および時には蝋状の性質により、このような材料を含有する濃縮添加剤パッケージでは、これらの材料を含有する添加剤パッケージ内での固形物、沈降物および/または濃厚なゲルの形成が起こりやすい。この非理想的な低温貯蔵安定性は、特にパッケージがより低温に定期的にさらされる可能性がある領域では、これらの添加剤を含有するパッケージの取り扱い特性を結果として低下させる。
【0005】
また、硬質表面への摩擦の効果を低減させるために、別個の耐摩耗添加剤を(特に潤滑油に)添加することも普通である。最も普及している、または広く使用されている耐摩耗添加剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)である。ZDDPは、抗疲労添加剤、耐摩耗添加剤、および極圧添加剤として、配合油中にしばしば使用される汎用化合物である。亜鉛系添加剤の利点は典型的には、リスクを上回るが、ZDDPの欠点は、ZDDPがある特定の金属を腐食する傾向にあることである。ZDDPはまた、一般に、非生分解性ともみなされている。その上、金属を含有する添加剤は、典型的には、潤滑油から生成される場合に少量で許容可能であるが、燃料から生成される場合ははるかに少ない量が許容可能である灰を生成する。ますます、規制当局は、自動車エンジンからの環境上の悪影響を縮小または排除しようとしている。それゆえ、配合が容易でありかつ優れた低温安定性を示す、燃料のためのより環境に優しい摩擦調整剤添加剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、燃料添加剤または潤滑油添加剤、内燃機関のために該添加剤を含む組成物、およびエンジンの燃料効率を改善するための方法に関する。
【0007】
一態様では、(1)ガソリンまたはディーゼルの範囲内で沸騰する50重量%を超える炭化水素燃料と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む燃料組成物が提供される。
【0008】
別の態様では、(1)ガソリンまたはディーゼルの範囲内で沸騰する50重量%を超える炭化水素燃料と、(2)少量の第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩であって、該第一級または第二級アミノアルカンジオールが、
【化1】

であり、式中、Rが、Hまたは飽和脂肪族基もしくは不飽和脂肪族基である、アルキルカルボン酸塩と、を含む燃料組成物が提供される。
【0009】
さらなる態様では、内燃機関における燃料経済性を改善するための方法であって、(1)ガソリンまたはディーゼルの範囲内で沸騰する50重量%を超える炭化水素燃料と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む燃料組成物を該機関に供給することを含む、方法が提供される。
【0010】
なおもさらなる態様では、(1)50重量%を超える基油と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む潤滑油組成物が提供される。
【0011】
依然としてさらなる態様では、内燃機関の燃料効率を改善する方法であって、(1)50重量%を超える基油と、(2)少量の1つ以上の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩と、を含む潤滑油組成物を該機関に供給することを含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書において、次の語および表現は、使用される場合、以下に帰する意味を有する。
【0013】
「摩擦調整剤」という用語または関連用語は、表面間の摩擦特性を変化させる組成物を指す。「耐摩耗添加剤」という用語は、摩擦によって引き起こされる表面損傷を低減させる組成物を指す。添加剤が摩擦調整特性および摩耗低減特性のいずれも有することは珍しくない。
【0014】
「エンジン」もしくは「燃焼エンジン」または関連用語は、燃料の燃焼が燃焼室で起こる熱機関である。「内燃機関」は、燃料の燃焼が閉鎖空間(「燃焼室」)内で生じる熱機関である。
【0015】
「ガソリン」もしくは「ガソリン沸騰範囲成分」または関連用語は、少なくとも主としてC~C12炭化水素を含有する組成物を指す。一実施形態では、ガソリンまたはガソリン沸騰範囲成分はさらに、少なくとも主としてC~C12炭化水素を含有しかつさらに約37.8℃(100°F)~約204℃(400°F)の沸騰範囲を有する組成物を指すと定義される。代替実施形態では、ガソリンまたはガソリン沸騰範囲成分は、少なくとも主としてC~C12炭化水素を含有し、約37.8℃(100°F)~約204℃(400°F)の沸騰範囲を有する組成物を指すと定義され、さらにASTM D4814を満たすと定義される。
【0016】
「ディーゼル」という用語または関連用語は、少なくとも主としてC10~C25炭化水素を含有する中間留出物燃料を指す。一実施形態では、ディーゼルはさらに、少なくとも主としてC10~C25炭化水素を含有し、さらに約165.6℃(330°F)~約371.1℃(700°F)の沸騰範囲を有する組成物を指すと定義される。代替的な実施形態では、ディーゼルは、少なくとも主としてC10~C25炭化水素を含有し、約165.6℃(330°F)~約371.1℃(700°F)の沸騰範囲を有する組成物を指すと先に定義した通りであり、さらに、ASTM D975を満たすと定義される。
【0017】
「油溶性」という用語は、所与の添加剤について、所望のレベルの活性または性能を提供するのに必要とされる量を、潤滑粘度の油の中に溶解、分散または懸濁させることによって組み込むことができることを意味する。通常、このことは、添加剤の少なくとも0.001重量%を潤滑油組成物中に組み込むことができることを意味する。「燃料可溶性」という用語は、燃料中に溶解、分散または懸濁した添加剤についての類似の表現である。
【0018】
「脂肪族」という用語または関連用語は、炭化水素の非芳香族基を指す。脂肪族基は、飽和または不飽和、直鎖状または分枝状であることができ、非芳香族環式であってよい。
【0019】
「アルキル」という用語または関連用語は、直鎖状、分枝状、環状、または環状、直鎖状および/もしくは分枝状の組み合わせであることができる飽和炭化水素基を指す。
【0020】
「少量」または関連用語は、記載された添加剤に関して、および添加剤の有効成分とみなされる組成物の総重量に関して表される、組成物の50重量%未満を意味する。
【0021】
炭化水素系配合物(特に潤滑剤)の文脈において、「灰」という用語または関連用語は、炭化水素が焼成された後に残存する金属化合物を指す。この灰は、主に、ある特定の添加剤において使用される化学物質、および固形物に由来する。「無灰」という用語または関連用語は、灰を生成しないかまたは灰の生成を制限する配合物または添加剤を指す。無灰添加剤は、一般に、金属(ホウ素を含む)、ケイ素、ハロゲンを含まないか、または典型的な機器検出限界未満の濃度でこれらの元素を含有する。
【0022】
「類似体」または関連用語は、別の化合物と同様の構造を有するが、他の原子、基、または部分構造で置き換えられた1つ以上の原子、官能基、部分構造などのある特定の成分に関して、該化合物とは異なる化合物である。
【0023】
「同族体」または関連用語は、反復単位によって互いに異なる一連の化合物に属する化合物である。アルカンは、同族体の例である。例えば、エタンおよびプロパンは、反復単位(-CH-)の長さのみが異なるので、同族体である。同族体は、特定の種類の類似体とみなすことができる。
【0024】
「誘導体」または関連用語は、化学反応(例えば、酸塩基反応、水素化など)を介して類似の化合物から誘導される化合物である。置換基の文脈において、誘導体は、1つ以上の部分の組み合わせであってよい。例えば、フェノール部分は、アリール部分およびヒドロキシル部分の誘導体とみなしてよい。当業者であれば、誘導体とみなされるものの範囲および境界を知っているであろう。
【0025】
序論
ほとんどのガソリン清浄剤およびガソリン分散剤は、燃料中の低濃度添加剤として利用されるとき、顕著な摩擦低減特性を示さない。これらの添加剤をより高い濃度で使用すると、摩擦の低減が観察されるが、燃焼室内の許容し得ないレベルの堆積物などの有害な意図せぬ効果を伴う。有害な効果を軽減するために、摩擦調整剤を添加して、エンジン摩擦を低減させ、燃料経済を高めることができる。いくつかの摩擦調整剤はまた、耐摩耗特性も有し、摩擦摩耗からエンジンの表面を保護する。
【0026】
従来、摩擦調整剤化合物として、グリセロールモノオレエート(GMO)などの脂肪酸とグリセロールとのエステル、および脂肪酸とアミンとのアミドが採用されてきた。しかしながら、グリセロールモノエステル化合物および脂肪アミドは、(外界温度であっても)凝固の問題を有する可能性があり、これらの化合物の取り扱いを現場(例えば、保管、輸送など)で特に困難にする。これらの摩擦調整剤は、低温で流動的かつ均質なままである添加剤濃縮物へと配合することが困難である。摩擦調整剤を調製する上でのこの困難性は、典型的には燃料添加剤濃縮物において使用される清浄剤添加剤によってさらに悪化する可能性がある。添加剤濃縮物は通常、燃料添加剤成分を燃料にブレンドするために添加されるので、燃料添加剤濃縮物は均質であり、取り扱いを容易にするために低温(約-20℃以下まで)で流体のままであることが不可欠である。
【0027】
摩擦調整剤
燃料添加剤または潤滑油添加剤として有用である摩擦調整剤が本明細書で提供される。従来、摩擦調整剤は潤滑油中で添加剤として使用されてきたが、現代のガソリンエンジンの設計は、摩擦を調整する上で燃料添加剤が潤滑剤を支援する機会を提供する。
【0028】
エンジン内で、本発明の摩擦調整剤は、摩擦を低減させ、および/またはさまざまなエンジン表面に対する摩耗の影響を低減させる。摩擦調整剤添加剤は、一般に、液体燃料を燃焼させる内燃機関、特に炭素と化合する火花点火式ガソリンエンジン、ポート燃料噴射(PFI)エンジン、直接噴射ガソリン(DIG)エンジン、およびディーゼルエンジン内で使用することができる。これらの組成物は、内燃機関の全体的な燃料経済性を高めることができる。
【0029】
摩擦調整剤には、式1に示す一般化された構造による第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたはその類似体、同族体もしくは誘導体が含まれる。別の実施形態によれば、摩擦調整剤は、第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩またはその類似体、同族体もしくは誘導体である。
【0030】
理論によって制限されることなく、本発明の添加剤は、好ましい摩擦修正特性および/または耐摩耗特性を有する。加えて、本発明の添加剤は、優れた低温適合性を有する(表1A~表1B)。このことによって、特に濃縮形態および寒冷地でのこれらの組成物の容易な取り扱いが可能になる。摩擦調整剤はしばしば、裸の金属がそうであろうよりもはるかに低い摩擦係数を有する材料(通常はエンジン内の金属)の表面の流体膜または流体コーティングの維持を支援する。耐摩耗添加剤はしばしば、油膜が損なわれ、2つの表面を流体力学的潤滑状態に保ち、境界潤滑に入るには不十分であるときに効果を発揮する。
【0031】
アミノアルカンジオール
本開示のアミノアルカンジオールは無灰であり、C、N、O、およびHの元素に組成上限定される。いくつかの場合では、微量のヘテロ原子(非C、非N、非O、非H)が許容され得ることがある。アミノアルカンジオールの一般的な構造(式1)は、
【化2】

によって与えられ、
式中、Rは、Hまたは飽和もしくは不飽和脂肪族基であり、Rの主な炭素骨格は、1~25個の炭素、2~20個の炭素、3~15個の炭素、4~10個の炭素などである。適切な脂肪族基には、次の脂肪族基の直鎖型または分枝型、すなわち、ペンチル(式1A)、ヘキシル(式1B)、ヘプタン-2-イル(式1C)、オクチル(式1D)、オレイル(式1E)、2-メチルヘキシル(式1F)、2-エチルヘキシル(式1G)、H(式1H)、4-メチルヘキシル(式1I)などが含まれる。
【化3】
【0032】
アルキルカルボン酸
本開示のアルキルカルボン酸は無灰であり、C、N、O、およびHの元素に組成上限定される。いくつかの場合では、微量のヘテロ原子(非C、非N、非O、非H)が許容され得ることがある。アルキルカルボン酸の一般的な構造は、式2
【化4】

によって与えられ、
式中、Rはアルキル基であり、Rの主な骨格鎖は、1~25個の炭素、2~20個の炭素、3~15個の炭素、4~10個の炭素などである。適切なアルキルカルボン酸には、次のもの、すなわち、2-エチルヘキサン酸(式2A)、2-プロピルヘキサン酸(式2B)、2-エチルヘプタン酸(式2C)、2-プロピルヘプタン酸(式2D)、酪酸(式2E)、ヘキサン酸(式2F)、3-メチルヘキサン酸(式2G)、2-メチルオクタン酸(式2H)、2-エチルノナン酸(式2I)が含まれる。
【化5】
【0033】
第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩
第一級または第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩は、アルキルカルボキシレートに配位したアミノアルカンジオールの塩である。該塩は、比較的簡単な2工程反応によって合成することができる。アミノヘプタニルプロパンジオール(AHPD)の2-エチルヘキサン酸塩の合成を、例示目的のために、限定することを意図せず、以下に示す。第一級または第二級アミノアルカンジオールの所望のアルキルカルボン酸塩を得るために、他の合成経路が企図されてよい。
【化6】

第1の工程(工程1)は、エタノール溶媒の存在下で1当量のアミノプロパンジオールを1当量のグリシドールと反応させることを包含する。他の適切な溶媒には、グリセロール、プロピレン、グリコール、グリコールエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが含まれる。工程2では、工程1から結果として得られた生成物をジクロロメタン溶媒の存在下で2-エチルヘキサン酸とブレンドして、アミノプロパンジオールカルボキシレート塩を形成することができる。他の適切な溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどが含まれる。
【0034】
AHPDの代わりにオクタデセニルアミノプロパンジオール(OAPD)を用いて先の反応を行うと、2-エチルヘキサン酸塩およびOAPDの塩が生成される(式4)。
【化7】
【0035】
燃料組成物
本開示の摩擦調整剤は、内燃機関における燃料効率を改善するために、摩擦を低減させ、および/または摩耗を低減させるための炭化水素燃料中の添加剤として有用であることがある。燃料中に使用されるとき、所望の摩擦低減および/または摩耗低減を達成するために必要な添加剤の適切な濃度は、使用される燃料の種類、他の清浄剤もしくは分散剤または他の添加剤の存在、燃料中の添加剤の溶解度などを含むさまざまな要因に依存する。一般に、炭化水素燃料中の本開示の添加剤の濃度の範囲は、25~5000重量百万分率(ppmw)(50~4000ppm、100~3500、150~3000、200~2500、250~2000、300~1500、350~1000などを含むがこれらに限定されない)または0.0025重量%~0.5重量%(0.005~0.4重量%、0.01~0.35重量%、0.015~0.3重量%、0.02~0.25重量%、0.025~0.2重量%、0.03~0.15重量%、0.035~0.1重量%などを含むがこれらに限定されない)の範囲であってよい。一般に、燃料添加剤は、燃料可溶性よりも多い量で添加されないものとする。他の摩擦調整剤が燃料組成物中に存在する場合、より少ない量の添加剤を使用することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、65℃~205℃の範囲で沸騰する不活性安定親油性(すなわち、炭化水素燃料中で可溶性の)有機溶媒を使用して濃縮物として配合されることができる。ベンゼン、トルエン、キシレン、またはより多量に沸騰する芳香族化合物もしくは芳香族シンナーなどの脂肪族または芳香族炭化水素溶媒を使用することができる。炭化水素溶媒と組み合わせた、エタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルカルビノール、n-ブタノールなどの2~8個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールもまた、本添加剤との使用に適している。濃縮物中で、添加剤の量は、10~70重量%、15~60重量%、20~50重量%、25~45重量%、30~40重量%などの範囲であることができる。
【0037】
ガソリンまたはガソリン燃料では、酸素化合物(oxygenate)(例えば、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル)、他のアンチノック剤、および清浄剤/分散剤(例えば、ヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリ(オキシアルキレン)アミン、スクシンイミド、マンニッヒ反応産物、ポリアルキルフェノキシアルカノールの芳香族エステル、またはポリアルキルフェノキシアミノアルカン)を含む他の周知の添加剤を採用することができる。加えて、低速早期着火添加剤、酸化防止剤、金属不活性化剤および抗乳化剤が存在してもよい。
【0038】
ディーゼル燃料では、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン向上剤などの他の周知の添加剤を採用することができる。本発明において使用される添加剤組成物と共に採用されるガソリン燃料にはまた、硫黄、芳香族化合物およびオレフィンのレベルが典型的な量からほんの微量までの範囲である清浄な燃焼ガソリンも含まれる。
【0039】
本開示の化合物と共に、燃料可溶性の不揮発性キャリヤー流体または不揮発性油もまた使用してよい。該キャリヤー流体は、オクタン必要条件の増加に圧倒的に寄与することなく、燃料添加剤組成物の不揮発性残留物(NVR)または溶媒非含有液体画分を実質的に増加させる化学的に不活性である炭化水素可溶性液体ビヒクルである。キャリヤー流体は、米国特許第3,756,793号、第4,191,537号、および第5,004,478号において、ならびに欧州特許出願公開第356,726号および第382,159号において説明されているものなど、水素化および非水素化ポリアルファオレフィン、合成ポリオキシアルキレン由来油をはじめとする、鉱油、精製石油、合成ポリアルカンおよび合成アルケンなどの天然油または合成油であってよい。
【0040】
キャリヤー流体は、炭化水素燃料の35~5000重量ppm(例えば、燃料の50~3000ppm)の範囲の量で採用することができる。燃料濃縮物中に採用されるとき、キャリヤー流体は、20~60重量%(例えば、30~50重量%)の範囲の量で存在することができる。
【0041】
潤滑油組成物
本開示の第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールまたは第一級もしくは第二級アミノアルカンジオールのアルキルカルボン酸塩はまた、燃焼エンジン内での望ましくない発火事象を防止するかまたは低減させるために、潤滑油中で使用することもできる。このようにして採用されるとき、添加剤は通常、潤滑油組成物の総重量に基づいて、0.001~10重量%の範囲(0.01~5重量%、0.2~4重量%、0.5~3重量%、1~2重量%などを含むがこれらに限定されない)の濃度で、潤滑油組成物中に存在する。他の摩擦調整剤および/または耐摩耗添加剤が潤滑油組成物中に存在する場合、より少量の添加剤を使用することができる。
【0042】
基油として使用される油は、所望の最終用途および完成油中の添加剤に応じて選択またはブレンドされて、所望の等級のエンジン油、例えば、0W、0W-20、0W30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、または15W-40の自動車技術者協会(SAE)の粘度等級を有する潤滑油組成物が得られる。
【0043】
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主要な液体構成要素であり、例えば、最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を製造するために、該油の中に添加剤およびおそらく他の油がブレンドされる。濃縮物の製造およびそこからの潤滑油組成物の製造に有用な基油は、天然の(植物の、動物のまたは鉱物の)および合成の潤滑油ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【0044】
本開示におけるベースストックおよび基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(「API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils」,December 2016)において見出されるものと同じである。第I群のベースストックは、90%未満の飽和物および/または0.03%を超える硫黄を含有し、表E-1に指定された試験方法を使用して80以上120未満の粘度指数を有する。第II群のベースストックは、90%以上の飽和物および0.03%以下の硫黄を含有し、表E-1に指定された試験方法を使用して80以上120未満の粘度指数を有する。第III群のベースストックは、90%以上の飽和物および0.03%以下の硫黄を含有し、表E-1に指定された試験方法を使用して120以上の粘度指数を有する。第IV群のベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。第V群のベースストックには、第I群、第II群、第III群、または第IV群には含まれない他のすべてのベースストックが含まれる。
【0045】
天然油には、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油およびラード油)、および鉱油が含まれる。良好な熱酸化安定性を有する動植物油を使用することができる。天然油の中でも、鉱油が好ましい。鉱油は、その粗供給源、例えば、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン系-ナフテン系混合物であるかどうかに関して幅広くさまざまである。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油は、それらの製造および精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直留であるかもしくは分解されているか、水素化精製されているか、または溶媒抽出されているかに関してもさまざまである。
【0046】
合成油には炭化水素油が含まれる。炭化水素油には、重合オレフィンおよび共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー、およびエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が含まれる。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックは、一般的に使用される合成炭化水素油である。例として、C~C14オレフィン、例えば、C、C10、C12、C14オレフィンまたはそれらの混合物に由来するPAOを利用することができる。
【0047】
基油として使用するための他の有用な流体には、高性能特性を提供するために加工された、好ましくは触媒で加工された、または合成された従来型以外のまたは非従来型のベースストックが含まれる。
【0048】
従来型以外のまたは非従来型のベースストック/基油には、1つ以上の気体-液体(GTL)材料から誘導されるベースストック(複数可)の1つ以上の混合物、ならびに天然蝋または蝋状供給物に由来するイソメレート/イソデワクセートベースストック(複数可)、スラック蝋、天然蝋などの鉱油およびまたは非鉱油蝋状供給源、ならびに軽油、蝋状燃料水素化分解装置ボトム、蝋状ラフィネート、水素化分解物、熱分解物、または他の鉱物、鉱油、または石炭液化もしくは頁岩油から受容される蝋状材料などのさらに石油以外の油由来の蝋状材料、ならびにこのようなベースストックの混合物が含まれる。
【0049】
本開示の潤滑油組成物において使用するための基油は、APIの第I群、第II群、第III群、第IV群、および第V群の油に相応する油の種類のうちのいずれか、およびこれらの混合物であり、好ましくは,これらの並外れた揮発性、安定性、粘度特徴および清浄化特徴による、APIの第II群、第III群、第IV群、および第V群の油、ならびにこれらの混合物、より好ましくは、第III群~第V群の基油である。
【0050】
典型的には、基油は、100℃(ASTM D445)で2.5~20mm/秒(例えば、3~12mm/秒、4~10mm/秒、または4.5~8mm/秒)の範囲の動粘度を有する。
【0051】
本潤滑油組成物はまた、補助機能を付与して、これらの添加剤が分散または溶解した完成潤滑油組成物を得るための従来の潤滑油添加剤を含有することもできる。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、無灰分散剤、耐摩耗剤、金属清浄剤などの清浄剤、防錆剤、防曇剤(dehazing agent)、抗乳化剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、染料、極圧剤など、およびこれらの混合物とブレンドすることができる。さまざまな添加剤が公知であり、市販されている。これらの添加剤または該添加剤の類似化合物は、通常のブレンド手順による本発明の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0052】
上述の添加剤の各々は、使用時に、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能有効量で使用される。したがって、例えば、添加剤が無灰型分散剤である場合、この無灰型分散剤の機能有効量は、潤滑剤に所望の分散特性を付与するのに十分な量であろう。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用時に、特に指定しない限り、約0.01~約10重量%など、約0.001~約20重量%の範囲であることができる。
【0053】
次の例示的な例は、非限定的であることを意図している。
【0054】
例1~3
摩擦調整剤候補を適切なストック溶液(stock solution)とブレンドすることによって、低温試験溶液を作製した。試験に応じて、ストック溶液は,2-エチルヘキサノールを含有していてよく、または2-エチルヘキサノールを含有していなくてよい。摩擦調整剤およびストック溶液を、19.03重量%の最終試験溶液を結果として得る量で30mLのガラスバイアルに添加した。バイアルに蓋をし、溶液が均質になるまで手で振盪し、次いで、-20℃に設定した冷ウェル内に入れた。試験溶液を目視検査して、設定した時間間隔で28日間、溶液の透明度および沈降物の保有率を監視した。5日間にわたるAHPD、2-EHとAHPDとの塩、およびGMOについての結果の要約を表1Aにおいて見出すことができる。表1の結果の鍵は、表1Bにおいて見出すことができる。表1Bに関して、値3、4、5、および6は液相について不合格評価とみなされるのに対し、値2および3は沈降物についての不合格評価とみなされる。AHPDおよび2-EHとAHPDとの塩はいずれも、5日間にわたってGMOよりも良好に挙動した。
【0055】
GMOの構造を以下の式5に示す。
【化8】

【表1A】

【表1B】
【0056】
例4~18
所望のブレンドされた摩擦調整剤をベースライン油配合物に所望の重量%まで添加することによって、さまざまな摩擦調整剤を含むベンチ試験試料を生成した。ベースライン油配合物中の摩擦調整剤の最終用量は、0.25重量%~1.0重量%の範囲である。第2群の基油中のベースライン油配合物は、4.0%のポリイソブテニルスクシンイミド、7.0mmol/kgのジアルキル亜鉛ジチオホスフェート、48.5mmol/kgのスルホン酸カルシウム清浄剤、0.5%のアルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤、0.05%の消泡剤および0.3%の粘度指数向上剤からなった。
【0057】
次いで、上述のベースライン油を含有する摩擦調整剤を、ミニトラクション試験機(MTM)ベンチ試験において摩擦性能について試験した。MTMは、PCS Instruments(英国ロンドン)によって製造され、市販されている。MTMは、回転ディスク(52100鋼)に対して装填された球(0.75インチの8620鋼球)で作動する。条件は、おおよそ125~150℃の温度でおおよそ10~30ニュートンの荷重、おおよそ10~2000mm/秒の速度を採用する。多種多様な特性(試験方法)を異なる用途のために設定することができる。
【0058】
このベンチ試験では、ベースライン配合物で生成された第2のストライベック曲線(混合潤滑レジーム)下の総面積を、摩擦調整剤でトップ処理したベースライン配合物で生成された第2のストライベック曲線と比較することによって、摩擦性能を試験した。総面積値が低いほど、より良好な摩擦性能に相応する。MTMの結果を以下の表2に要約する。
【表2】

【国際調査報告】