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特表2022-512958トランス共刺激分子と組み合わされた抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)及びその治療的用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】トランス共刺激分子と組み合わされた抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)及びその治療的用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20220131BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220131BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/078
A61K35/17 Z
A61K35/28
A61P37/04
A61P35/00
C12N15/86 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524959
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 US2019060287
(87)【国際公開番号】W WO2020097346
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/756,683
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521000758
【氏名又は名称】ソティオ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン マクギネス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ブラント ヘリン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー モッツ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA05
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
1つ以上の共刺激ポリペプチドと抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)とが共発現する遺伝子操作型造血細胞(例えば遺伝子操作型造血幹細胞または遺伝子操作型免疫細胞)、及び治療を必要とする対象においてT細胞の抗腫瘍活性を増強するためのその使用を本明細書に開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子操作型造血細胞であって、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドと、
(ii)共刺激ポリペプチドと
を共発現し、
前記CARポリペプチドが、
(a)細胞外抗原結合ドメインであってグリピカン-3(GPC3)に対して特異的である前記細胞外結合ドメイン、
(b)膜貫通ドメイン、及び
(c)細胞質側シグナル伝達ドメイン
を含むものであり、
前記共刺激ポリペプチドが、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドであり、前記共刺激ポリペプチドが外来核酸にコードされている、前記造血細胞。
【請求項2】
前記共刺激ポリペプチドが、
CD28、CD80、CD86、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、VISTA、TMIGD2、B7-H6、及びB7-H7
からなる群から選択されるB7/CD28スーパーファミリーのメンバーまたはそのリガンドである、請求項1に記載の造血細胞。
【請求項3】
前記共刺激ポリペプチドが、
4-1BB、4-1BBL、BAFF、BAFFR、CD27、CD70、CD30、CD30L、CD40、CD40L、DR3、GITR、GITRL、HVEM、LIGHT、TNFベータ、OX40、OX40L、RELT、TACI、TL1A、TNFアルファ、TNFRII、BCMA、EDAR2、TROY、LTBR、EDAR、NGFR、OPG、RANK、DCR3、TNFR1、FN14(TweakR)、APRIL、EDA-A2、TWEAK、LTb(TNF-C)、NGF、EDA-A1、APPアミロイド前駆体タンパク質(APP)、及びTRAIL
からなる群から選択されるTNFスーパーファミリーのメンバーまたはそのリガンドである、請求項1に記載の造血細胞。
【請求項4】
前記CARポリペプチドが少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項5】
前記少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインが、
4-1BB、CD28、CD28LL→GG変異体、OX40、ICOS、CD27、GITR、ICOS、HVEM、TIM1、LFA1及びCD2
からなる群から選択される共刺激分子のものである、請求項4に記載の造血細胞。
【請求項6】
(i)前記CARポリペプチドがCD28共刺激分子の共刺激ドメインを含み、かつ
(ii)前記共刺激ポリペプチドがBAFFRまたはCD27である、
請求項4に記載の造血細胞。
【請求項7】
前記CD28共刺激分子が配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の造血細胞。
【請求項8】
(i)前記CARポリペプチドが4-1BB共刺激分子の共刺激ドメインを含み、かつ
(ii)前記共刺激ポリペプチドがCD70、LIGHTまたはOX40Lである、
請求項4に記載の造血細胞。
【請求項9】
前記4-1BB共刺激分子が配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の造血細胞。
【請求項10】
前記CD70が配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記LIGHTが配列番号43のアミノ酸配列を含み、前記OX40Lが配列番号47のアミノ酸配列を含む、請求項8または請求項9に記載の造血細胞。
【請求項11】
前記(a)の細胞外抗原結合ドメインが、GPC3に対して特異的な一本鎖抗体断片(scFv)である、請求項1~10のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項12】
前記scFvが、配列番号74として示される重鎖可変領域、及び配列番号75として示される軽鎖可変領域を含む、請求項11に記載の造血細胞。
【請求項13】
前記(b)の膜貫通ドメインが1回貫通型膜タンパク質のものである、請求項1~12のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項14】
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD8β、4-1BB、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16A、OX40、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、CD32、CD64、VEGFR2、FAS及びFGFR2Bからなる群から選択される膜タンパク質である、請求項13に記載の造血細胞。
【請求項15】
前記(b)の膜貫通ドメインが、天然に存在しない疎水性タンパク質セグメントである、請求項1~14のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項16】
前記(c)中の細胞質側シグナル伝達ドメインが免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項17】
前記(c)の細胞質側シグナル伝達ドメインが、CD3ζまたはFcεR1γの細胞質側ドメインである、請求項16に記載の造血細胞。
【請求項18】
前記CARポリペプチドが、前記(a)のC末端及び前記(b)のN末端に位置するヒンジドメインをさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項19】
前記ヒンジドメインが、CD28、CD16A、CD8αまたはIgGのものである、請求項18に記載の造血細胞。
【請求項20】
前記ヒンジドメインが、天然に存在しないペプチドである、請求項18または請求項19に記載の造血細胞。
【請求項21】
前記CARポリペプチドがそのN末端にシグナルペプチドをさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項22】
前記造血細胞が造血幹細胞または免疫細胞であり、任意選択的に前記免疫細胞が、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球またはT細胞である、請求項1~21のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項23】
前記免疫細胞が、
内在性T細胞受容体、内在性主要組織適合性複合体、内在性ベータ-2-ミクログロブリンまたはその組合せ
の発現が阻害または排除されたT細胞である、請求項22に記載の造血細胞。
【請求項24】
前記造血細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞(HSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する、請求項1~23のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項25】
前記造血細胞が、
(A)前記共刺激ポリペプチドをコードする第1外来ヌクレオチド配列、及び
(B)前記CARポリペプチドをコードする第2外来ヌクレオチド配列
を全体として含んだ核酸または核酸セットを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項26】
前記核酸または前記核酸セットがRNA分子またはRNA分子のセットである、請求項25に記載の造血細胞。
【請求項27】
前記造血細胞が、前記第1外来ヌクレオチド配列と前記第2外来ヌクレオチド配列とを両方含んだ前記核酸を含む、請求項25または請求項26に記載の造血細胞。
【請求項28】
前記核酸が、前記第1外来ヌクレオチド配列と前記第2外来ヌクレオチド配列との間に位置する第3外来ヌクレオチド配列をさらに含み、前記第3外来ヌクレオチド配列が、リボソームスキッピング部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)または第2プロモーターをコードする、請求項27に記載の造血細胞。
【請求項29】
前記第3外来ヌクレオチド配列が、P2Aペプチドであるリボソームスキッピング部位をコードする、請求項30に記載の造血細胞。
【請求項30】
前記核酸または前記核酸セットが、ベクターまたはベクターのセットの中に含まれている、請求項25~29のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項31】
前記ベクターまたはベクターのセットが、発現ベクターまたは発現ベクターのセットである、請求項30に記載の造血細胞。
【請求項32】
前記ベクターまたはベクターのセットが、1つ以上のウイルスベクターを含む、請求項30または請求項31に記載の造血細胞。
【請求項33】
前記1つ以上のウイルスベクターが、
レトロウイルスベクターであって、任意選択的にレンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである、レトロウイルスベクター
である、請求項32に記載の造血細胞。
【請求項34】
(i)前記CARポリペプチド及び(ii)前記共刺激ポリペプチドをコードする前記核酸または前記核酸セットが、トランスポゾンまたは遺伝子編集によって前記造血細胞内に送達される、請求項25~29のいずれか1項に記載の造血細胞。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1項に記載の造血細胞、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項36】
対象においてGPC3が発現している細胞を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~34のいずれか1項に記載の造血細胞の集団または請求項35に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記造血細胞が自家性である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記造血細胞が同種異系である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
エクスビボで前記造血細胞を活性化させる、増殖させる、またはその両方を行う、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、GPC3+がん細胞に関連するがんを患っているヒト患者である、請求項36~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、乳癌、胃癌、肺癌、皮膚癌、前立腺癌、大腸癌、腎細胞癌腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、胚細胞癌、肝芽腫、中皮腫、膵臓癌、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、甲状腺癌、肝細胞癌、食道癌または子宮頸癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、肝細胞癌腫、胃癌、乳癌または肺癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記造血細胞が、
抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2、フィトヘマグルチニン、及び操作型人工刺激細胞または粒子
のうちの1つ以上の存在下で活性化されたT細胞を含む免疫細胞である、請求項36~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記造血細胞が、
4-1BBリガンド、抗4-1BB抗体、IL-15、抗IL-15受容体抗体、IL-2、IL-12、IL-18、IL-21及びK562細胞
のうちの1つ以上の存在下で活性化されたナチュラルキラー細胞を含む免疫細胞である、請求項36~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒト患者が、抗がん療法を受けている、または治療されたことがある、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象に抗がん剤を投与することをさらに含む、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
(A)請求項1及び請求項4~22のいずれか1項に記載のCARポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、ならびに
(B)請求項1~3及び請求項6~11のいずれか1項に記載の共刺激ポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列
を全体として含む、核酸または核酸セット。
【請求項48】
前記核酸または前記核酸セットが、RNA分子またはRNA分子のセットである、請求項47に記載の核酸または核酸セット。
【請求項49】
前記核酸が、前記第1ヌクレオチド配列と前記第2ヌクレオチド配列とを両方含み、ここで、前記核酸が、前記第1ヌクレオチド配列と前記第2ヌクレオチド配列との間に位置する第3ヌクレオチド配列をさらに含み、前記第3ヌクレオチド配列が、リボソームスキッピング部位、配列内リボソーム進入部位(IRES)または第2プロモーターをコードする、請求項47または請求項48に記載の核酸または核酸セット。
【請求項50】
前記リボソームスキッピング部位がP2Aペプチドである、請求項49に記載の核酸または核酸セット。
【請求項51】
前記核酸または前記核酸セットが、ベクターまたはベクターのセットの中に含まれている、請求項47~50のいずれか1項に記載の核酸または核酸セット。
【請求項52】
前記ベクターまたはベクターのセットが、発現ベクターまたは発現ベクターのセットである、請求項51に記載の核酸または核酸セット。
【請求項53】
前記ベクターまたはベクターのセットが、1つ以上のウイルスベクターを含む、請求項51または請求項52に記載の核酸または核酸セット。
【請求項54】
前記1つ以上のウイルスベクターが、
レトロウイルスベクターであって、任意選択的にレンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである、レトロウイルスベクター
である、請求項53に記載の核酸または核酸セット。
【請求項55】
インビボで改変型造血細胞を生み出す方法であって、それを必要とする対象に請求項47~54のいずれか1項に記載の核酸または核酸セットを投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年11月7日に出願された米国仮出願第62/756,683号の出願日の利益を主張するものである。参照により、先の出願の内容全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
細胞療法を含めてがん免疫療法は、正常組織を温存しつつも腫瘍細胞を攻撃する免疫応答を惹起するために用いられる。それは、遺伝子関連及び細胞関連の薬物耐性機序を回避する、ならびに正常組織を温存しつつも腫瘍細胞を標的とするその潜在能力ゆえに、様々な種類のがんを治療するための有望な選択肢である。
【0003】
細胞療法は、がん細胞の方へ偏った反応性を有する細胞傷害性T細胞を必要とし得る。Eshhar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.;1993;90(2):720-724、Geiger et al.,J Immunol.1999;162(10):5931-5939、Brentjens et al.,Nat.Med.2003;9(3):279-286、Cooper et al.,Blood.2003;101(4):1637-1644、及びImai et al.,Leukemia.2004;18:676-684。1つの手法は、1つ以上のT細胞活性化シグナル伝達ドメインと融合した抗原結合ドメインを有するキメラ受容体を発現させることである。抗原結合ドメインを介したがん抗原の結合は、T細胞活性化をもたらし、細胞傷害を誘発する。前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療において、キメラ受容体が発現している自家Tリンパ球の有効性が臨床試験で実証された。Pule et al.,Nat.Med.2008;14(11):1264-1270、Porter et al.,N Engl J Med;2011;25;365(8):725-733、Brentjens et al.,Blood.2011;118(18):4817-4828、Till et al.,Blood.2012;119(17):3940-3950、Kochenderfer et al.,Blood.2012;119(12):2709-2720、及びBrentjens et al.,Sci Transl Med.2013;5(177):177ra138。
【0004】
細胞免疫療法の有効性を増強する新たな方策を開発することは、非常に興味深いことである。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、細胞免疫療法に用いるための、共刺激ポリペプチドと抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)とを共発現させる(つまり2つの別個のポリペプチドを発現させる)方策の開発に基づく。共刺激経路の調節は、造血細胞(例えば、造血幹細胞、免疫細胞、例えばT細胞またはナチュラルキラー細胞)において1つ以上の共刺激ポリペプチド、例えば本明細書に記載のものを発現(例えば過剰発現)させることによって成し遂げられ得る。ある場合には、1つ以上の共刺激ポリペプチドと、抗GPC3 CARとが共発現する造血細胞は、優れた生物活性、例えば、細胞増殖、活性化(例えば、サイトカイン産生、例えばIL-2またはIFN-γ産生の増加)、細胞傷害、及び/またはインビボでの抗腫瘍活性を発揮すると期待されよう。
【0006】
したがって、同じ種類の野生型造血細胞と比較して共刺激経路の調節のための能力を有している改変型(例えば遺伝子改変型)造血細胞(例えば、造血幹細胞、免疫細胞、例えばT細胞またはナチュラルキラー細胞)を本明細書に提供する。ある場合には、改変型造血細胞は、共刺激ポリペプチドを発現または過剰発現するものであり得る。共刺激ポリペプチドは、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドであり得る。B7/CD28スーパーファミリーのメンバーまたはそのリガンドの例としては、CD28、CD80、CD86、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、VISTA、TMIGD2、B7-H6、B7-H7、及びそれらの変異体が挙げられるが、これらに限定されない。TNFスーパーファミリーのメンバーまたはそのリガンドの例としては、4-1BB、4-1BBL、BAFF、BAFFR、CD27、CD70、CD30、CD30L、CD40、CD40L、DR3、GITR、GITRL、HVEM、LIGHT、TNFベータ、OX40、OX40L、RELT、TACI、TL1A、TNFアルファ、及びTNFRIIが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては、BCMA、EDAR2、TROY、LTBR、EDAR、NGFR、OPG、RANK、DCR3、TNFR1、FN14(TweakR)、APRIL、EDA-A2、TWEAK、LTb(TNF-C)、NGF、EDA-A1、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、TRAILが挙げられる。
【0007】
いくつかの実施形態では、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドは、野生型配列である。いくつかの実施形態では、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドは、変異体配列である(つまり、野生型配列と比較して1つ以上の挿入、欠失または突然変異を含む)。例えば4-1BBLは、4-1BBL Q89A、4-1BBL L115A、4-1BBL K127A、または4-1BBL Q227Aであり得る。いくつかの実施形態では、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドは、細胞質側ドメインが欠損したものであり得る。例示的実施形態において、4-1BBLは細胞質側ドメインが欠損している。いくつかの実施形態では、TNFスーパーファミリーのメンバーまたはそのリガンドは4-1BBLでない。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗GPC3 CARのいずれかと一緒に共発現する共刺激ポリペプチドはFKBPv36などのF506結合タンパク質(FKBP)を何ら含まない。いくつかの例では、共刺激ポリペプチドは、MyD88に由来するシグナル伝達ドメインを含まない。
【0009】
改変型造血細胞はさらに抗GPC3 CARを発現し得、当該CARは、(a)細胞外抗原結合ドメインであってGPC3に結合する当該細胞外結合ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、及び(c)細胞質側シグナル伝達ドメインを含むものであり得る。いくつかの例では、(c)は、抗GPC3 CARのC末端に位置している。ある場合には、抗GPC3 CARは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含み得る。他の例では、抗GPC3 CARは、共刺激シグナル伝達ドメインを含まないものであり得る。
【0010】
いくつかの例では、(a)の細胞外抗原結合ドメインは、GPC3に対して特異的な(つまりそれに結合する)一本鎖抗体断片である。
【0011】
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドのいずれかの中の(b)の膜貫通ドメインは、1回貫通型膜タンパク質のもの、例えば、CD8α、CD8β、4-1BB、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16A、OX40、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、CD32、CD64、VEGFR2、FAS及びFGFR2Bのものであり得る。あるいは、(b)の膜貫通ドメインは、天然に存在しない疎水性タンパク質セグメントであり得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドの少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインは、妥当な場合には共刺激分子のものであり得、当該共刺激分子は、4-1BB、CD28、CD28LL→GG変異体、OX40、ICOS、CD27、GITR、ICOS、HVEM、TIM1、LFA1及びCD2であり得る。いくつかの例では、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28共刺激シグナル伝達ドメインまたは4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインである。ある場合には、CARポリペプチドは2つの共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。ある場合には、一方の共刺激シグナル伝達ドメインはCD28共刺激シグナル伝達ドメインであり、もう一方の共刺激ドメインは、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメイン、OX40共刺激シグナル伝達ドメイン、CD27共刺激シグナル伝達ドメインまたはICOS共刺激シグナル伝達ドメインであり得る。具体例としては、CD28と4-1BB;またはCD28LL→GG変異体と4-1BBが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれかの中の(c)の細胞質側シグナル伝達ドメインは、CD3ζまたはFcεR1γの細胞質側ドメインであり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれかのヒンジドメインは、妥当な場合、CD28、CD16A、CD8αまたはIgGのものであり得る。他の例では、ヒンジドメインは、天然に存在しないペプチドである。例えば、天然に存在しないペプチドは延長組換えポリペプチド(XTEN)または(Gly4Ser)nポリペプチドであってもよく、式中のnは、端点を含む3~12の整数である。いくつかの例では、ヒンジドメインは、60個以下のアミノ酸残基を含有し得る短いセグメントである。
【0015】
具体例において、CARポリペプチドは、(i)CD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメイン、及び(ii)CD28膜貫通ドメイン、CD28ヒンジドメインまたはその組合せを含む。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、(i)CD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメイン、及び(ii)CD8膜貫通ドメイン、CD8ヒンジドメインまたはその組合せを含む。例えば、CARポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作型造血細胞はCARポリペプチドと共刺激ポリペプチドを共発現する。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドはCD28共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドはBAFFRまたはCD27である。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドはCD28共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドはBAFFRである。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドはCD28共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドはCD27である。CD28共刺激分子は配列番号12のアミノ酸配列を含み得る。BAFFRは配列番号62のアミノ酸配列を含み得、CD27は配列番号33のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、CARポリペプチドは4-1BB共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドはCD70、LIGHTまたはOX40Lである。4-1BB共刺激分子は配列番号22のアミノ酸配列を含み得る。CD70は配列番号34のアミノ酸配列を含み得、LIGHTは配列番号43のアミノ酸配列を含み得、OX40Lは配列番号47のアミノ酸配列を含み得る。
【0017】
共刺激ポリペプチド及び抗GPC3 CARが発現している本明細書に記載の造血細胞は、造血幹細胞またはその子孫であり得る。いくつかの実施形態では、造血細胞は、免疫細胞、例えば、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、好中球、好酸球またはT細胞であり得る。免疫細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞(HSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)に由来し得る。いくつかの例では、免疫細胞は、内在性T細胞受容体、内在性主要組織適合性複合体、内在性ベータ-2-ミクログロブリンまたはその組合せの発現が阻害または排除されたT細胞である。
【0018】
本明細書に記載の造血細胞のいずれかは、(a)共刺激ポリペプチドをコードする第1ヌクレオチド配列、及び(b)CARポリペプチドをコードする第2ヌクレオチド配列を全体として含んだ核酸または核酸セットを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸または核酸セットはRNA分子またはRNA分子のセットである。ある場合には、免疫細胞は、第1ヌクレオチド配列と第2ヌクレオチド配列とを両方含んだ核酸を含む。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチドのコード配列は、CARポリペプチドのそれの上流にある。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドのコード配列は、共刺激ポリペプチドのそれの上流にある。そのような核酸は、第1ヌクレオチド配列と第2ヌクレオチド配列との間に位置する第3ヌクレオチド配列をさらに含み得、第3ヌクレオチド配列はリボソームスキッピング部位(例えばP2Aペプチド)、配列内リボソーム進入部位(IRES)または第2プロモーターをコードする。
【0019】
いくつかの例では、核酸または核酸セットは、発現ベクターまたは発現ベクターのセットであってもよいベクターまたはベクターのセット(例えばウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターであって任意選択的にレンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである当該レトロウイルスベクター)の中に含まれている。核酸セットまたはベクターセットは、関心対象のポリペプチド(すなわち共刺激ポリペプチド及びCARポリペプチド)の1つを各々がコードしたものである2つ以上の核酸分子または2つ以上のベクターの群を指す。本明細書に記載の核酸はどれも本開示の範囲に含まれる。
【0020】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の造血細胞及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本明細書ではさらに、対象においてGPC3が発現している細胞を阻害する(例えば、そのような細胞の数を減らす、細胞増殖を阻止する、及び/または細胞活性を抑制する)方法であって、それを必要とする対象に、共刺激ポリペプチドとCARポリペプチドとが共発現し得る本明細書に記載の造血細胞の集団、及び/または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む、当該方法を提供する。
【0022】
いくつかの例では、造血細胞は自家性である。他の例では、造血細胞は同種異系である。本明細書に記載の方法のいずれかでは、エクスビボで造血細胞を活性化させる、増殖させる、またはその両方を行う。ある場合には、造血細胞は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2、フィトヘマグルチニン、及び操作型人工刺激細胞または粒子のうちの1つ以上の存在下で活性化されたT細胞を含む免疫細胞を含む。他の例では、免疫細胞は、4-1BBリガンド、抗4-1BB抗体、IL-15、抗IL-15受容体抗体、IL-2、IL-12、IL-18、IL-21、K562細胞、及び操作型人工刺激細胞または粒子のうちの1つ以上の存在下で活性化されたナチュラルキラー細胞を含む。
【0023】
いくつかの例では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、がんを患っているヒト患者であり得る。本開示の方法によって治療され得るがんの非限定的な具体例としては、例えば、乳癌、胃癌、神経芽腫、骨肉腫、肺癌、皮膚癌、前立腺癌、大腸癌、腎細胞癌腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、白血病、中皮腫、膵臓癌、頭頸部癌、網膜芽細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、甲状腺癌、肝細胞癌、食道癌及び子宮頸癌が挙げられる。特定の実施形態では、がんは固形腫瘍であり得る。
【0024】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明に示す。本開示の他の特徴または利点は、いくつかの実施形態の詳細な説明及び別記の特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0025】
以下の図面は本明細書の一部をなし、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれており、本開示は、本明細書に示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】GPC3発現Hep3B細胞で刺激した後のT細胞について、前の時間点に対するT細胞の増殖倍率を示した一連のグラフである。この実験で評価したT細胞は、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号1)を単独で(A、B及びC)、またはCD70(A、配列番号34)、LIGHT(B、配列番号43)もしくはOX40L(C、配列番号47)と組み合わせて発現したか、あるいはCD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号2)を単独で(A、B、及びC)、またはCD70(A、配列番号34)、LIGHT(B、配列番号43)もしくはOX40L(C、配列番号47)と組み合わせて発現した。
図2】GPC3発現JHH7細胞で刺激した後のT細胞について、前の時間点に対するT細胞の増殖倍率を刺激回数の関数として示した(パネルA)、ならびに2回目の刺激の後のサイトカイン産生をIL-2(パネルB)、IFN-γ(パネルC)及びIL-17A(パネルD)について示した、一連のグラフである。4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号1)が単独でまたはCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)と組み合わせて発現しているT細胞についてのデータを示す。
図3】4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)を発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)またはOX40L(配列番号47)を共発現しているT細胞の、増強されたIL-2産生(パネルA)及び増殖(パネルB)を示した一連のグラフである。
図4】4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)を発現している、またはCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)と組み合わせてGPC3-CAR-4-1BBを発現しているT細胞の機能を実証する一連のグラフである。T細胞を、長期にわたる刺激の下でのそのIL-17A産生能力(パネルA)及び増殖能力(パネルB)について評価した。加えて、T細胞を単回刺激後のその増殖能力について評価した(パネルC)。
図5】CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)が発現している、またはCD27(配列番号33)と組み合わせてGPC3-CAR-CD28が発現しているT細胞の機能を実証する一連のグラフである。T細胞をその増殖能力(パネルA及びB)及びサイトカイン産生能力(パネルC及びD)について評価した。
図6】CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)を発現している、またはCD27(配列番号33)と組み合わせてGPC3-CAR-CD28を発現しているT細胞の機能を実証する一連のグラフである。T細胞を、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC、パネルA)または制御性T細胞(Treg、パネルB)の存在下でのその増殖能力について評価した。
図7】4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)を発現している、またはCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)と組み合わせてGPC3-CAR-4-1BBを発現しているT細胞の抗腫瘍活性を示した一連のグラフである。NSGマウスにおいてHepG2(パネルA)、Hep3B(パネルB)及びJHH7(パネルC)腫瘍異種移植モデルを評価した。
図8】CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)を発現している、またはCD27(配列番号33)と組み合わせてGPC3-CAR-CD28を発現しているT細胞の、NSGマウスのJHH7腫瘍異種移植モデルにおける抗腫瘍活性を示したグラフである。
図9】NSGマウスのHepG2(パネルA)及びHep3B(パネルB)腫瘍異種移植モデルからのマウス血液中のT細胞の量を示した一連のグラフである。4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号1)を単独でまたはCD70(配列番号34)と組み合わせて発現しているT細胞(パネルA)、及びCD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号2)を単独でまたはCD27(配列番号33)と組み合わせて発現しているT細胞(パネルB)についてのデータを示す。
図10】4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号1)を単独でもしくはCD70(配列番号34)と組み合わせて発現しているT細胞でのCD70発現(パネルA及びB)、またはCD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR(配列番号2)を単独でもしくはCD27(配列番号33)と組み合わせて発現しているT細胞でのCD27発現(パネルCまたはD)を示した一連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
キメラ抗原受容体(CAR)は、そのようなものを発現している免疫細胞(例えばT細胞)の結合特異性をがん細胞などの疾患細胞へと向け変える人工の細胞表面受容体であり、それによって標的疾患細胞は例えば免疫細胞のエフェクター活性によって排除される。CAR構築物は、少なくとも細胞内シグナル伝達ドメインと融合した細胞外抗原結合ドメインを含むことが多い。細胞外抗原結合ドメイン(例えば一本鎖抗体断片)は、関心対象の抗原(例えば腫瘍抗原)に対して特異的であり、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞の活性化につながる細胞シグナル伝達を媒介することができる。かくして、CAR構築物が発現している免疫細胞は、標的抗原が発現している疾患細胞(例えば腫瘍細胞)に結合して免疫細胞の活性化及び疾患細胞の排除をもたらすことができる。
【0028】
本開示は、抗グリピカン-3(GPC3)キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを共発現するエフェクター免疫細胞の活性を増強する方策の開発に少なくとも部分的に基づく。詳しくは、本開示は、好適な共刺激経路をエフェクター免疫細胞によって調節する能力を付与してそれによってそれらの成長及び生物活性を増強する方法を特徴とする。例えば、4-1BB共刺激ドメインを含む抗GPC3 CARと、特定の共刺激分子(例えば、CD70、LIGHT及びOX40L)を共発現しているT細胞、ならびにCD28共刺激ドメインを含む抗GPC3 CARと、特定の共刺激分子(例えばCD27)を共発現しているT細胞は、増強された細胞増殖及びサイトカイン産生を示した。固形腫瘍内での免疫抑制的特徴は操作型T細胞療法の成功を制限する可能性がある。抗GPC3 CARと、(トランスで共刺激シグナルを提供する)共刺激ポリペプチドとの共発現を伴う本明細書に開示される手法は、腫瘍治療、特に固形腫瘍治療におけるこの肝要な難題を少なくとも部分的に克服することを目標とする。
【0029】
ある場合には、共刺激経路を調節するエフェクター免疫細胞の能力は正常な細胞環境に認められ得る。他の例では、エフェクター免疫細胞の共刺激経路調節能力は、腫瘍微小環境にみられ得る条件の下で認められることがある。本開示は、共刺激経路を調節(例えば刺激)するための、例えば共刺激ポリペプチドを発現または過剰発現させることによるものを含めた様々な手法を提供する。本開示に用いられる共刺激ポリペプチドは、1種類以上の免疫細胞において共刺激因子として機能するB7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドであり得る。共刺激因子は、抗原特異的な主シグナルを増強して免疫細胞を完全に活性化させる受容体またはそのリガンドを指す。
【0030】
かくして、本開示は、調節(例えば増進)された共刺激経路を有する能力がある、改変型(例えば遺伝子操作型)造血細胞(例えば、造血幹細胞、免疫細胞、例えばT細胞またはナチュラルキラー細胞)を提供する。いくつかの実施形態では、改変されていない造血細胞と比較してそのような改変型造血細胞には、共刺激経路を調節する能力を付与する1つ以上の共刺激ポリペプチド、例えば本明細書に記載されているものを発現し得る。そのような遺伝子操作型造血細胞にはさらに、CARポリペプチド(共刺激ポリペプチドとは別のポリペプチド)が発現し得る。遺伝子操作型造血細胞に発現するCARポリペプチド及び共刺激ポリペプチドは両方とも、免疫細胞に対して外来性である(つまり組換え技術によって免疫細胞に導入された)核酸にコードされる。それらは、遺伝子操作の関与がない造血細胞の内在性遺伝子にはコードされていない。本開示はまた、記載される遺伝子操作型造血細胞を含んだ医薬組成物及びキットも提供する。
【0031】
共刺激ペプチドを発現する(例えば過剰発現する)本明細書に記載の遺伝子操作型造血細胞は、少なくとも、以下の利点をもたらし得る。共刺激ポリペプチドの発現は、共刺激経路を調節する能力を有するであろう。そのため、遺伝子操作型造血細胞は、共刺激ポリペプチドを発現しない(または過剰発現しない)造血細胞に比べてより良好に増殖し得、より多くのサイトカインを産生し得、より強い抗腫瘍細胞傷害を呈し得、及び/またはより多くのT細胞生存を呈し得、結果としてサイトカイン産生、生存率、細胞傷害及び/または抗腫瘍活性が増強され得る。
【0032】
I.共刺激ポリペプチド
本明細書中で使用する場合、共刺激ポリペプチドは、共刺激経路を調節(例えば刺激)する能力を有するポリペプチドを指す。そのようなポリペプチドは、共刺激経路を任意の機序によって調節(例えば増進)し得る。いくつかの例では、共刺激ポリペプチドは、共刺激受容体またはその共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。他の例では、共刺激ポリペプチドは、妥当な場合には共刺激受容体またはそのシグナル伝達ドメインのリガンドを含み得る。そのようなリガンドは、同属の共刺激受容体に結合すると共刺激シグナル伝達経路を誘発し得る。あるいは、共刺激ポリペプチドは、本明細書に開示される共刺激受容体のいずれかに対する天然に存在するリガンドの活性を模倣した天然に存在しないポリペプチドであり得る。そのような天然に存在しないポリペプチドは、共刺激受容体に対して特異的な一本鎖作動性抗体、例えば、4-1BBに対して特異的であり4-1BBLの活性を模倣したscFvであり得る。
【0033】
例示的な共刺激ポリペプチドには、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンド(例えば、CD28、CD80、CD86、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、VISTA、TMIGD2、B7-H6、B7-H7、4-1BB、4-1BBL、BAFF、BAFFR、CD27、CD70、CD30、CD30L、CD40、CD40L、DR3、GITR、GITRL、HVEM、LIGHT、TNFベータ、OX40、OX40L、RELT、TACI、TL1A、TNFアルファ、またはTNFRII)が含まれ得るが、これらに限定されない。別の例としては、BCMA、EDAR2、TROY、LTBR、EDAR、NGFR、OPG、RANK、DCR3、TNFR1、FN14(TweakR)、APRIL、EDA-A2、TWEAK、LTb(TNF-C)、NGF、EDA-A1、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、TRAILが挙げられる。任意の好適な種(例えば哺乳動物、例えばヒト)からの任意のそのようなポリペプチドが、本明細書に記載の組成物及び方法に関して用いるために企図され得る。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチドはCD40及びMyD88を含まない。
【0034】
本明細書中で使用する場合、B7/CD28スーパーファミリーのメンバーまたはTNFスーパーファミリーのメンバーである共刺激ポリペプチドは、任意の種類の免疫細胞の活性化において共刺激の役割を果たすどちらかのスーパーファミリーのメンバーを指す。そのようなメンバーは、どちらかのスーパーファミリーの天然に存在する受容体またはリガンドであり得る。あるいは、そのようなメンバーは、天然に存在する受容体またはリガンドの変異体であり得る。変異体は、天然の対応物に比べて上昇または低下した活性を有し得る。いくつかの例では、変異体は天然の対応物と比較して細胞質側ドメインまたはその一部が欠損している。以下に、本開示において使用され得る例示的な共刺激ポリペプチドについて説明する。
【0035】
CD28(分化抗原28)は、T細胞の活性化及び生存に必要とされる共刺激シグナルを提供する、T細胞上に発現するタンパク質である。それはCD80及びCD86タンパク質の受容体であり、ナイーブT細胞上に恒常的に発現する唯一のB7受容体である。例示的なヒトCD28のアミノ酸配列を以下に示す:
CD28(配列番号12)
MLRLLLALNLFPSIQVTGNKILVKQSPMLVAYDNAVNLSCKYSYNLFSREFRASLHKGLDSAVEVCVVYGNYSQQLQVYSKTGFNCDGKLGNESVTFYLQNLYVNQTDIYFCKIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
【0036】
CD80(分化抗原80、B7-1)は、樹状細胞上、活性化B細胞上、及び単球上にみられるタンパク質である。それは、T細胞の活性化及び生存に必要とされる共刺激シグナルを提供する。CD80はCD28とCTLA-4との両方のリガンドである。例示的なヒトCD80のアミノ酸配列を以下に示す:
CD80(配列番号13)
MGHTRRQGTSPSKCPYLNFFQLLVLAGLSHFCSGVIHVTKEVKEVATLSCGHNVSVEELAQTRIYWQKEKKMVLTMMSGDMNIWPEYKNRTIFDITNNLSIVILALRPSDEGTYECVVLKYEKDAFKREHLAEVTLSVKADFPTPSISDFEIPTSNIRRIICSTSGGFPEPHLSWLENGEELNAINTTVSQDPETELYAVSSKLDFNMTTNHSFMCLIKYGHLRVNQTFNWNTTKQEHFPDNLLPSWAITLISVNGIFVICCLTYCFAPRCRERRRNERLRRESVRPV
【0037】
CD86(分化抗原86、B7-2)は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであるI型膜タンパク質である。CD86は、T細胞の活性化及び生存に必要とされる共刺激シグナルを提供する抗原提示細胞上に発現する。CD86はCD28とCTLA-4との両方のリガンドである。例示的なヒトCD86のアミノ酸配列を以下に示す:
CD86(配列番号14)
MDPQCTMGLSNILFVMAFLLSGAAPLKIQAYFNETADLPCQFANSQNQSLSELVVFWQDQENLVLNEVYLGKEKFDSVHSKYMGRTSFDSDSWTLRLHNLQIKDKGLYQCIIHHKKPTGMIRIHQMNSELSVLANFSQPEIVPISNITENVYINLTCSSIHGYPEPKKMSVLLRTKNSTIEYDGVMQKSQDNVTELYDVSISLSVSFPDVTSNMTIFCILETDKTRLLSSPFSIELEDPQPPPDHIPWITAVLPTVIICVMVFCLILWKWKKKKRPRNSYKCGTNTMEREESEQTKKREKIHIPERSDEAQRVFKSSKTSSCDKSDTCF
【0038】
ICOS(CD278、誘導性T細胞共刺激因子、またはCVID1)は、CD28スーパーファミリーのメンバーである。ICOSは活性化T細胞上に発現する。例示的なヒトICOSのアミノ酸配列を以下に示す:
ICOS(配列番号15)
MKSGLWYFFLFCLRIKVLTGEINGSANYEMFIFHNGGVQILCKYPDIVQQFKMQLLKGGQILCDLTKTKGSGNTVSIKSLKFCHSQLSNNSVSFFLYNLDHSHANYYFCNLSIFDPPPFKVTLTGGYLHIYESQLCCQLKFWLPIGCAAFVVVCILGCILICWLTKKKYSSSVHDPNGEYMFMRAVNTAKKSRLTDVTL
【0039】
ICOSL(ICOSLG、B7-H2、CD275)は、T細胞特異的タンパク質ICOSのリガンドであるタンパク質である。ICOSLはT細胞増殖及びサイトカイン分泌の共刺激シグナルとして作用する。例示的なヒトICOSLのアミノ酸配列を以下に示す:
ICOSL(配列番号16)
MRLGSPGLLFLLFSSLRADTQEKEVRAMVGSDVELSCACPEGSRFDLNDVYVYWQTSESKTVVTYHIPQNSSLENVDSRYRNRALMSPAGMLRGDFSLRLFNVTPQDEQKFHCLVLSQSLGFQEVLSVEVTLHVAANFSVPVVSAPHSPSQDELTFTCTSINGYPRPNVYWINKTDNSLLDQALQNDTVFLNMRGLYDVVSVLRIARTPSVNIGCCIENVLLQQNLTVGSQTGNDIGERDKITENPVSTGEKNAATWSILAVLCLLVVVAVAIGWVCRDRCLQHSYAGAWAVSPETELTGHV
【0040】
B7-H3(CD276、分化抗原276)は、T細胞媒介免疫応答の調節に関与すると考えられている免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。例示的なヒトB7-H3のアミノ酸配列を以下に示す:
B7-H3(配列番号17)
MLRRRGSPGMGVHVGAALGALWFCLTGALEVQVPEDPVVALVGTDATLCCSFSPEPGFSLAQLNLIWQLTDTKQLVHSFAEGQDQGSAYANRTALFPDLLAQGNASLRLQRVRVADEGSFTCFVSIRDFGSAAVSLQVAAPYSKPSMTLEPNKDLRPGDTVTITCSSYQGYPEAEVFWQDGQGVPLTGNVTTSQMANEQGLFDVHSILRVVLGANGTYSCLVRNPVLQQDAHSSVTITPQRSPTGAVEVQVPEDPVVALVGTDATLRCSFSPEPGFSLAQLNLIWQLTDTKQLVHSFTEGRDQGSAYANRTALFPDLLAQGNASLRLQRVRVADEGSFTCFVSIRDFGSAAVSLQVAAPYSKPSMTLEPNKDLRPGDTVTITCSSYRGYPEAEVFWQDGQGVPLTGNVTTSQMANEQGLFDVHSVLRVVLGANGTYSCLVRNPVLQQDAHGSVTITGQPMTFPPEALWVTVGLSVCLIALLVALAFVCWRKIKQSCEEENAGAEDQDGEGEGSKTALQPLKHSDSKEDDGQEIA
【0041】
VISTA(T細胞活性化のVドメインIg抑制因子、B7-H5、PD-1H)は、免疫チェックポイントとして機能するI型膜貫通タンパク質である。VISTAはTMIGD2(CD28H)を介してT細胞を共刺激する。例示的なヒトVISTAのアミノ酸配列を以下に示す:
VISTA(配列番号18)
MGVPTALEAGSWRWGSLLFALFLAASLGPVAAFKVATPYSLYVCPEGQNVTLTCRLLGPVDKGHDVTFYKTWYRSSRGEVQTCSERRPIRNLTFQDLHLHHGGHQAANTSHDLAQRHGLESASDHHGNFSITMRNLTLLDSGLYCCLVVEIRHHHSEHRVHGAMELQVQTGKDAPSNCVVYPSSSQDSENITAAALATGACIVGILCLPLILLLVYKQRQAASNRRAQELVRMDSNIQGIENPGFEASPPAQGIPEAKVRHPLSYVAQRQPSESGRHLLSEPSTPLSPPGPGDVFFPSLDPVPDSPNFEVI
【0042】
TMIGD2(膜貫通及び免疫グロブリンドメイン含有2;CD28H)は、TMIGD2であり、AKT依存性シグナル伝達カスケードによってT細胞増殖及びサイトカイン産生を増強すると考えられている。例示的なヒトTMIGD2のアミノ酸配列を以下に示す:
TMIGD2(配列番号19)
MGSPGMVLGLLVQIWALQEASSLSVQQGPNLLQVRQGSQATLVCQVDQATAWERLRVKWTKDGAILCQPYITNGSLSLGVCGPQGRLSWQAPSHLTLQLDPVSLNHSGAYVCWAAVEIPELEEAEGNITRLFVDPDDPTQNRNRIASFPGFLFVLLGVGSMGVAAIVWGAWFWGRRSCQQRDSGNSPGNAFYSNVLYRPRGAPKKSEDCSGEGKDQRGQSIYSTSFPQPAPRQPHLASRPCPSPRPCPSPRPGHPVSMVRVSPRPSPTQQPRPKGFPKVGEE
【0043】
B7-H6(NCR3LG1、ナチュラルキラー細胞細胞傷害受容体3リガンド1)は、腫瘍細胞上に選択的に発現するB7ファミリーのメンバーである。B7-H6はNKp30と相互作用してナチュラルキラー(NK)細胞活性化及び細胞傷害をもたらす。例示的なヒトB7-H6のアミノ酸配列を以下に示す:
B7-H6(配列番号20)
MTWRAAASTCAALLILLWALTTEGDLKVEMMAGGTQITPLNDNVTIFCNIFYSQPLNITSMGITWFWKSLTFDKEVKVFEFFGDHQEAFRPGAIVSPWRLKSGDASLRLPGIQLEEAGEYRCEVVVTPLKAQGTVQLEVVASPASRLLLDQVGMKENEDKYMCESSGFYPEAINITWEKQTQKFPHPIEISEDVITGPTIKNMDGTFNVTSCLKLNSSQEDPGTVYQCVVRHASLHTPLRSNFTLTAARHSLSETEKTDNFSIHWWPISFIGVGLVLLIVLIPWKKICNKSSSAYTPLKCILKHWNSFDTQTLKKEHLIFFCTRAWPSYQLQDGEAWPPEGSVNINTIQQLDVFCRQEGKWSEVPYVQAFFALRDNPDLCQCCRIDPALLTVTSGKSIDDNSTKSEKQTPREHSDAVPDAPILPVSPIWEPPPATTSTTPVLSSQPPTLLLPLQ
【0044】
B7-H7(HHLA2、HERV-H LTR関連2)は、単球の表面にみられるタンパク質リガンドである。B7-H7は、Tリンパ球上の受容体と結合すること及びその増殖を阻害することによって細胞媒介免疫性を調節すると考えられている。例示的なヒトB7-H7のアミノ酸配列を以下に示す:
B7-H7(配列番号21)
MKAQTALSFFLILITSLSGSQGIFPLAFFIYVPMNEQIVIGRLDEDIILPSSFERGSEVVIHWKYQDSYKVHSYYKGSDHLESQDPRYANRTSLFYNEIQNGNASLFFRRVSLLDEGIYTCYVGTAIQVITNKVVLKVGVFLTPVMKYEKRNTNSFLICSVLSVYPRPIITWKMDNTPISENNMEETGSLDSFSINSPLNITGSNSSYECTIENSLLKQTWTGRWTMKDGLHKMQSEHVSLSCQPVNDYFSPNQDFKVTWSRMKSGTFSVLAYYLSSSQNTIINESRFSWNKELINQSDFSMNLMDLNLSDSGEYLCNISSDEYTLLTIHTVHVEPSQETASHNKGLWILVPSAILAAFLLIWSVKCCRAQLEARRSRHPADGAQQERCCVPPGERCPSAPDNGEENVPLSGKV
【0045】
4-1BB(CD137;TNFRSF9)は、活性化T細胞によって発現する腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーメンバーである。4-1BBの架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌、生存及び細胞溶解活性を増強する。例示的なヒト4-1BBのアミノ酸配列を以下に示す:
4-1BB(配列番号22)
MGNSCYNIVATLLLVLNFERTRSLQDPCSNCPAGTFCDNNRNQICSPCPPNSFSSAGGQRTCDICRQCKGVFRTRKECSSTSNAECDCTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELTKKGCKDCCFGTFNDQKRGICRPWTNCSLDGKSVLVNGTKERDVVCGPSPADLSPGASSVTPPAPAREPGHSPQIISFFLALTSTALLFLLFFLTLRFSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
【0046】
4-1BBL(TNFSF9、4-1BBリガンド)は、TNFスーパーファミリーに属する2型膜貫通糖タンパク質受容体である。4-1BBLは、活性化Tリンパ球上に発現し、4-1BBに結合する。特定の(天然のもの及び変異体を含めた)例示的なヒト4-1BBLポリペプチドのアミノ酸配列を以下に示す:
4-1BBL(配列番号23)
MEYASDASLDPEAPWPPAPRARACRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL-CD(細胞質側ドメインが欠損したもの、配列番号24)
MRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL Q89A(配列番号25)
MEYASDASLDPEAPWPPAPRARACRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRAGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL Q89A/CD(細胞質側ドメインが欠損したもの)(配列番号26)
MRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRAGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL L115A(配列番号27)
MEYASDASLDPEAPWPPAPRARACRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGAAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL L115A/CD(配列番号28)
MRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGAAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL K127A(配列番号29)
MEYASDASLDPEAPWPPAPRARACRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYAEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWQLTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
4-1BBL Q227A(配列番号30)
MEYASDASLDPEAPWPPAPRARACRVLPWALVAGLLLLLLLAAACAVFLACPWAVSGARASPGSAASPRLREGPELSPDDPAGLLDLRQGMFAQLVAQNVLLIDGPLSWYSDPGLAGVSLTGGLSYKEDTKELVVAKAGVYYVFFQLELRRVVAGEGSGSVSLALHLQPLRSAAGAAALALTVDLPPASSEARNSAFGFQGRLLHLSAGQRLGVHLHTEARARHAWALTQGATVLGLFRVTPEIPAGLPSPRSE
【0047】
BAFF(B細胞活性化因子、TNFSF13B)は、TNFリガンドファミリーのメンバーであり、受容体TNFRSF13B/TACI、TNFRSF17/BCMA、及びTNFRSF13C/BAFF-Rのリガンドとしての役割を果たす。BAFFは、強力なB細胞活性化因子であり、B細胞の増殖及び分化において重要な役割を果たす。例示的なヒトBAFFのアミノ酸配列を以下に示す:
BAFF(配列番号31)
MDDSTEREQSRLTSCLKKREEMKLKECVSILPRKESPSVRSSKDGKLLAATLLLALLSCCLTVVSFYQVAALQGDLASLRAELQGHHAEKLPAGAGAPKAGLEEAPAVTAGLKIFEPPAPGEGNSSQNSRNKRAVQGPEETVTQDCLQLIADSETPTIQKGSYTFVPWLLSFKRGSALEEKENKILVKETGYFFIYGQVLYTDKTYAMGHLIQRKKVHVFGDELSLVTLFRCIQNMPETLPNNSCYSAGIAKLEEGDELQLAIPRENAQISLDGDVTFFGALKLL
【0048】
BAFFR(B細胞活性化因子受容体、TNFRSF13C)は、TNF受容体スーパーファミリーの膜タンパク質であり、BAFFの受容体として作用する。BAFFRは、B細胞生存を増強するものであり、末梢B細胞集団の調節因子である。例示的なヒトBAFFRのアミノ酸配列を以下に示す:
BAFFR(配列番号32)
MRRGPRSLRGRDAPAPTPCVPAECFDLLVRHCVACGLLRTPRPKPAGASSPAPRTALQPQESVGAGAGEAALPLPGLLFGAPALLGLALVLALVLVGLVSWRRRQRRLRGASSAEAPDGDKDAPEPLDKVIILSPGISDATAPAWPPPGEDPGTTPPGHSVPVPATELGSTELVTTKTAGPEQQ
【0049】
CD27(TNFRSF7)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、T細胞免疫性の発生及び長期的維持のために必要とされる。CD27はCD70に結合し、また、B細胞活性化及び免疫グロブリン合成の調節において役割を果たす。例示的なヒトCD27のアミノ酸配列を以下に示す:
CD27(配列番号33)
MARPHPWWLCVLGTLVGLSATPAPKSCPERHYWAQGKLCCQMCEPGTFLVKDCDQHRKAAQCDPCIPGVSFSPDHHTRPHCESCRHCNSGLLVRNCTITANAECACRNGWQCRDKECTECDPLPNPSLTARSSQALSPHPQPTHLPYVSEMLEARTAGHMQTLADFRQLPARTLSTHWPPQRSLCSSDFIRILVIFSGMFLVFTLAGALFLHQRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
【0050】
CD70(CD27LG、TNFSF7)は、高度に活性化されたリンパ球に発現するタンパク質である。CD70はCD27のリガンドとして作用する。例示的なヒトCD70のアミノ酸配列を以下に示す:
CD70(配列番号34)
MPEEGSGCSVRRRPYGCVLRAALVPLVAGLVICLVVCIQRFAQAQQQLPLESLGWDVAELQLNHTGPQQDPRLYWQGGPALGRSFLHGPELDKGQLRIHRDGIYMVHIQVTLAICSSTTASRHHPTTLAVGICSPASRSISLLRLSFHQGCTIVSQRLTPLARGDTLCTNLTGTLLPSRNTDETFFGVQWVRP
【0051】
CD30(TNFRSF8)は、活性化T細胞及びB細胞によって発現するTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。CD30は、CD30L、TRAF1、TRAF2、TRAF3及びTRAF5と相互作用することが示されている細胞膜タンパク質である。例示的なヒトCD30のアミノ酸配列を以下に示す:
CD30(配列番号35)
MRVLLAALGLLFLGALRAFPQDRPFEDTCHGNPSHYYDKAVRRCCYRCPMGLFPTQQCPQRPTDCRKQCEPDYYLDEADRCTACVTCSRDDLVEKTPCAWNSSRVCECRPGMFCSTSAVNSCARCFFHSVCPAGMIVKFPGTAQKNTVCEPASPGVSPACASPENCKEPSSGTIPQAKPTPVSPATSSASTMPVRGGTRLAQEAASKLTRAPDSPSSVGRPSSDPGLSPTQPCPEGSGDCRKQCEPDYYLDEAGRCTACVSCSRDDLVEKTPCAWNSSRTCECRPGMICATSATNSCARCVPYPICAAETVTKPQDMAEKDTTFEAPPLGTQPDCNPTPENGEAPASTSPTQSLLVDSQASKTLPIPTSAPVALSSTGKPVLDAGPVLFWVILVLVVVVGSSAFLLCHRRACRKRIRQKLHLCYPVQTSQPKLELVDSRPRRSSTQLRSGASVTEPVAEERGLMSQPLMETCHSVGAAYLESLPLQDASPAGGPSSPRDLPEPRVSTEHTNNKIEKIYIMKADTVIVGTVKAELPEGRGLAGPAEPELEEELEADHTPHYPEQETEPPLGSCSDVMLSVEEEGKEDPLPTAASGK
【0052】
CD30L(CD30LG、TNFSF8)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。CD30Lは、CD30のリガンドとして作用するものであり、誘導性T細胞及び単球/マクロファージに発現する。例示的なヒトCD30Lのアミノ酸配列を以下に示す:
CD30L(配列番号36)
MDPGLQQALNGMAPPGDTAMHVPAGSVASHLGTTSRSYFYLTTATLALCLVFTVATIMVLVVQRTDSIPNSPDNVPLKGGNCSEDLLCILKRAPFKKSWAYLQVAKHLNKTKLSWNKDGILHGVRYQDGNLVIQFPGLYFIICQLQFLVQCPNNSVDLKLELLINKHIKKQALVTVCESGMQTKHVYQNLSQFLLDYLQVNTTISVNVDTFQYIDTSTFPLENVLSIFLYSNSD
【0053】
CD40(TNFRSF5)は、B細胞、単球、樹状細胞、内皮細胞及び上皮細胞の表面に発現する細胞表面受容体である。CD40は、T細胞依存性免疫グロブリンクラススイッチ、メモリーB細胞の発達及び胚中心形成に関与することが示されている。例示的なヒトCD40のアミノ酸配列を以下に示す:
CD40(配列番号37)
MVRLPLQCVLWGCLLTAVHPEPPTACREKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECLPCGESEFLDTWNRETHCHQHKYCDPNLGLRVQQKGTSETDTICTCEEGWHCTSEACESCVLHRSCSPGFGVKQIATGVSDTICEPCPVGFFSNVSSAFEKCHPWTSCETKDLVVQQAGTNKTDVVCGPQDRLRALVVIPIIFGILFAILLVLVFIKKVAKKPTNKAPHPKQEPQEINFPDDLPGSNTAAPVQETLHGCQPVTQEDGKESRISVQERQ
【0054】
CD40L(CD40LG、TRAP、TNFSF5)は、Bリンパ球、上皮細胞及びいくつかの癌腫細胞に発現するTNFスーパーファミリーのメンバーである。CD40Lは、B細胞増殖、接着及び分化を媒介するためにCD40と相互作用することが知られている膜貫通タンパク質である。例示的なヒトCD40Lのアミノ酸配列を以下に示す:
CD40L(配列番号38)
MIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKIEDERNLHEDFVFMKTIQRCNTGERSLSLLNCEEIKSQFEGFVKDIMLNKEETKKENSFEMQKGDQNPQIAAHVISEASSKTTSVLQWAEKGYYTMSNNLVTLENGKQLTVKRQGLYYIYAQVTFCSNREASSQAPFIASLCLKSPGRFERILLRAANTHSSAKPCGQQSIHLGGVFELQPGASVFVNVTDPSQVSHGTGFTSFGLLKL
【0055】
DR3(TNFR25、APO3、TRAMP、LARD、WSL-1,)は、リンパ球に発現するTNF受容体スーパーファミリーメンバーである。DR3は、TL1A誘導性T細胞共刺激を担う受容体であると考えられている。例示的なヒトDR3のアミノ酸配列を以下に示す:
DR3(配列番号39)
MEQRPRGCAAVAAALLLVLLGARAQGGTRSPRCDCAGDFHKKIGLFCCRGCPAGHYLKAPCTEPCGNSTCLVCPQDTFLAWENHHNSECARCQACDEQASQVALENCSAVADTRCGCKPGWFVECQVSQCVSSSPFYCQPCLDCGALHRHTRLLCSRRDTDCGTCLPGFYEHGDGCVSCPTSTLGSCPERCAAVCGWRQMFWVQVLLAGLVVPLLLGATLTYTYRHCWPHKPLVTADEAGMEALTPPPATHLSPLDSAHTLLAPPDSSEKICTVQLVGNSWTPGYPETQEALCPQVTWSWDQLPSRALGPAAAPTLSPESPAGSPAMMLQPGPQLYDVMDAVPARRWKEFVRTLGLREAEIEAVEVEIGRFRDQQYEMLKRWRQQQPAGLGAVYAALERMGLDGCVEDLRSRLQRGP
【0056】
GITR(グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質、AITR、TNFRSF18)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、Tリンパ球、NK細胞及び抗原提示細胞を含めたいくつかの細胞及び組織に発現する。GITRとそのリガンド(GITRL)との相互作用は共活性化シグナルを誘発する。例示的なヒトGITRのアミノ酸配列を以下に示す:
GITR(配列番号40)
MAQHGAMGAFRALCGLALLCALSLGQRPTGGPGCGPGRLLLGTGTDARCCRVHTTRCCRDYPGEECCSEWDCMCVQPEFHCGDPCCTTCRHHPCPPGQGVQSQGKFSFGFQCIDCASGTFSGGHEGHCKPWTDCTQFGFLTVFPGNKTHNAVCVPGSPPAEPLGWLTVVLLAVAACVLLLTSAQLGLHIWQLRSQCMWPRETQLLLEVPPSTEDARSCQFPEEERGERSAEEKGRLGDLW
【0057】
GITRL(TNFSF18)は、TNFリガンドファミリーに属するサイトカインであり、GITRの受容体として作用する。GITRとそのリガンド(GITRL)との相互作用は、共活性化シグナルを誘発し、末梢組織におけるTリンパ球生存を調節することが示されている。例示的なヒトGITRLのアミノ酸配列を以下に示す:
GITRL(配列番号41)
MTLHPSPITCEFLFSTALISPKMCLSHLENMPLSHSRTQGAQRSSWKLWLFCSIVMLLFLCSFSWLIFIFLQLETAKEPCMAKFGPLPSKWQMASSEPPCVNKVSDWKLEILQNGLYLIYGQVAPNANYNDVAPFEVRLYKNKDMIQTLTNKSKIQNVGGTYELHVGDTIDLIFNSEHQVLKNNTYWGIILLANPQFIS
【0058】
HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター、TNFRSF14、CD270)は、細胞表面受容体であり、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。HVEMは、LIGHT(TNFSF14)と係合した後にT細胞に刺激シグナルを提供するか、または免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのリガンドメンバーであるB及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)に結合した場合にT細胞に抑制シグナルを提供する。例示的なヒトHVEMのアミノ酸配列を以下に示す:
HVEM(配列番号42)
MEPPGDWGPPPWRSTPKTDVLRLVLYLTFLGAPCYAPALPSCKEDEYPVGSECCPKCSPGYRVKEACGELTGTVCEPCPPGTYIAHLNGLSKCLQCQMCDPAMGLRASRNCSRTENAVCGCSPGHFCIVQDGDHCAACRAYATSSPGQRVQKGGTESQDTLCQNCPPGTFSPNGTLEECQHQTKCSWLVTKAGAGTSSSHWVWWFLSGSLVIVIVCSTVGLIICVKRRKPRGDVVKVIVSVQRKRQEAEGEATVIEALQAPPDVTTVAVEETIPSFTGRSPNH
【0059】
LIGHT(TNFSF14、CD258、HVEML)は、HVEMと一緒に共刺激因子として機能するTNFリガンドファミリーのメンバーである。LIGHTは、T細胞の増殖を刺激して様々な腫瘍細胞のアポトーシスを誘発することが示されている。例示的なヒトLIGHTのアミノ酸配列を以下に示す:
LIGHT(配列番号43)
MEESVVRPSVFVVDGQTDIPFTRLGRSHRRQSCSVARVGLGLLLLLMGAGLAVQGWFLLQLHWRLGEMVTRLPDGPAGSWEQLIQERRSHEVNPAAHLTGANSSLTGSGGPLLWETQLGLAFLRGLSYHDGALVVTKAGYYYIYSKVQLGGVGCPLGLASTITHGLYKRTPRYPEELELLVSQQSPCGRATSSSRVWWDSSFLGGVVHLEAGEEVVVRVLDERLVRLRDGTRSYFGAFMV
【0060】
TNFアルファ(TNFSF2)は、例えばマクロファージ及び活性化CD4陽性T細胞によって分泌されることが知られているTNFリガンドスーパーファミリーのメンバーである。TNFアルファは、特定の共刺激分子、例えばB7h及びTNFRIIを誘導することが知られている。例示的なヒトTNFアルファのアミノ酸配列を以下に示す:
TNFアルファ(配列番号44)
MSTESMIRDVELAEEALPKKTGGPQGSRRCLFLSLFSFLIVAGATTLFCLLHFGVIGPQREEFPRDLSLISPLAQAVRSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIAL
【0061】
TNFベータ(TNFSF1、リンホトキシンアルファ)は、細胞の生存、増殖、分化及びアポトーシスの調節に関与するTNFスーパーファミリーのメンバーである。例示的なヒトTNFベータのアミノ酸配列を以下に示す:
TNFベータ(配列番号45)
MTPPERLFLPRVCGTTLHLLLLGLLLVLLPGAQGLPGVGLTPSAAQTARQHPKMHLAHSTLKPAAHLIGDPSKQNSLLWRANTDRAFLQDGFSLSNNSLLVPTSGIYFVYSQVVFSGKAYSPKATSSPLYLAHEVQLFSSQYPFHVPLLSSQKMVYPGLQEPWLHSMYHGAAFQLTQGDQLSTHTDGIPHLVLSPSTVFFGAFAL
【0062】
OX40(TNFRSF4、CD134)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。OX40は、OX40Lに結合し、T細胞の増殖、生存及びサイトカイン産生に寄与する。例示的なヒトOX40のアミノ酸配列を以下に示す:
OX40(配列番号46)
MCVGARRLGRGPCAALLLLGLGLSTVTGLHCVGDTYPSNDRCCHECRPGNGMVSRCSRSQNTVCRPCGPGFYNDVVSSKPCKPCTWCNLRSGSERKQLCTATQDTVCRCRAGTQPLDSYKPGVDCAPCPPGHFSPGDNQACKPWTNCTLAGKHTLQPASNSSDAICEDRDPPATQPQETQGPPARPITVQPTEAWPRTSQGPSTRPVEVPGGRAVAAILGLGLVLGLLGPLAILLALYLLRRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI
【0063】
OX40L(TNFSF4、CD252)は、TNFリガンドスーパーファミリーのメンバーであり、例えば、活性化されたCD4 T細胞及びCD8 T細胞、ならびに他のいくつかのリンパ系細胞及び非リンパ系細胞に発現する。OX40Lは、例えばT細胞の増殖、生存及びサイトカイン産生を調節するためにOX40と相互作用する。例示的なヒトOX40Lのアミノ酸配列を以下に示す:
OX40L(配列番号47)
MERVQPLEENVGNAARPRFERNKLLLVASVIQGLGLLLCFTYICLHFSALQVSHRYPRIQSIKVQFTEYKKEKGFILTSQKEDEIMKVQNNSVIINCDGFYLISLKGYFSQEVNISLHYQKDEEPLFQLKKVRSVNSLMVASLTYKDKVYLNVTTDNTSLDDFHVNGGELILIHQNPGEFCVL
【0064】
RELT(TNFRSF19L)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。RELTは、I型膜貫通糖タンパク質であり、CD3シグナル伝達の存在下でT細胞増殖を共刺激できると考えられている。例示的なヒトRELTのアミノ酸配列を以下に示す:
RELT(配列番号48)
MKPSLLCRPLSCFLMLLPWPLATLTSTTLWQCPPGEEPDLDPGQGTLCRPCPPGTFSAAWGSSPCQPHARCSLWRRLEAQVGMATRDTLCGDCWPGWFGPWGVPRVPCQPCSWAPLGTHGCDEWGRRARRGVEVAAGASSGGETRQPGNGTRAGGPEETAAQYAVIAIVPVFCLMGLLGILVCNLLKRKGYHCTAHKEVGPGPGGGGSGINPAYRTEDANEDTIGVLVRLITEKKENAAALEELLKEYHSKQLVQTSHRPVSKLPPAPPNVPHICPHRHHLHTVQGLASLSGPCCSRCSQKKWPEVLLSPEAVAATTPVPSLLPNPTRVPKAGAKAGRQGEITILSVGRFRVARIPEQRTSSMVSEVKTITEAGPSWGDLPDSPQPGLPPEQQALLGSGGSRTKWLKPPAENKAEENRYVVRLSESNLVI
【0065】
TACI(膜貫通型活性化因子及びCAML相互作用因子、TNFRSF13B、CD267)は、例えばB細胞の表面にみられるTNF受容体スーパーファミリーメンバーである。TACIは、リガンドであるBAFF及びAPRILと相互作用することが知られている。例示的なヒトTACIのアミノ酸配列を以下に示す:
TACI(配列番号49)
MSGLGRSRRGGRSRVDQEERFPQGLWTGVAMRSCPEEQYWDPLLGTCMSCKTICNHQSQRTCAAFCRSLSCRKEQGKFYDHLLRDCISCASICGQHPKQCAYFCENKLRSPVNLPPELRRQRSGEVENNSDNSGRYQGLEHRGSEASPALPGLKLSADQVALVYSTLGLCLCAVLCCFLVAVACFLKKRGDPCSCQPRSRPRQSPAKSSQDHAMEAGSPVSTSPEPVETCSFCFPECRAPTQESAVTPGTPDPTCAGRWGCHTRTTVLQPCPHIPDSGLGIVCVPAQEGGPGA
【0066】
TL1A(TNFSF15)は、DR3に結合することが知られているTNFリガンドスーパーファミリーのメンバーである。TL1Aは、T細胞増殖及びT細胞のサイトカイン産生を増強するように作用し得る。例示的なヒトTL1Aのアミノ酸配列を以下に示す:
TL1A(配列番号50)
MAEDLGLSFGETASVEMLPEHGSCRPKARSSSARWALTCCLVLLPFLAGLTTYLLVSQLRAQGEACVQFQALKGQEFAPSHQQVYAPLRADGDKPRAHLTVVRQTPTQHFKNQFPALHWEHELGLAFTKNRMNYTNKFLLIPESGDYFIYSQVTFRGMTSECSEIRQAGRPNKPDSITVVITKVTDSYPEPTQLLMGTKSVCEVGSNWFQPIYLGAMFSLQEGDKLMVNVSDISLVDYTKEDKTFFGAFLL
【0067】
TNFRII(TNFRSF1B)は、TNFアルファに結合するTNF受容体スーパーファミリーメンバーである。TNFRIIは、T細胞に対する共刺激受容体として、ならびに制御性T細胞(Treg)及び骨髄系抑制細胞の発達における決定的因子として作用することが示されている。例示的なヒトTNFRIIのアミノ酸配列を以下に示す:
TNFRII(配列番号51)
MAPVAVWAALAVGLELWAAAHALPAQVAFTPYAPEPGSTCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCDSCEDSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQNRICTCRPGWYCALSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTETSDVVCKPCAPGTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNASMDAVCTSTSPTRSMAPGAVHLPQPVSTRSQHTQPTPEPSTAPSTSFLLPMGPSPPAEGSTGDFALPVGLIVGVTALGLLIIGVVNCVIMTQVKKKPLCLQREAKVPHLPADKARGTQGPEQQHLLITAPSSSSSSLESSASALDRRAPTRNQPQAPGVEASGAGEARASTGSSDSSPGGHGTQVNVTCIVNVCSSSDHSSQCSSQASSTMGDTDSSPSESPKDEQVPFSKEECAFRSQLETPETLLGSTEEKPLPLGVPDAGMKPS
【0068】
BCMAは、TNF受容体スーパーファミリーの細胞表面受容体であり、腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバー13b(TNFSF13B)に結合してNFカッパB及びMAPK8/JNKの活性化をもたらす。それは成熟Bリンパ球上に優先的に発現し、B細胞の発達、機能及び調節において枢軸的な役割を果たす。例示的なヒトBCMAのアミノ酸配列を以下に示す:
BCMA(配列番号52)
MLQMAGQCSQNEYFDSLLHACIPCQLRCSSNTPPLTCQRYCNASVTNSVKGTNAILWTCLGLSLIISLAVFVLMFLLRKINSEPLKDEFKNTGSGLLGMANIDLEKSRTGDEIILPRGLEYTVEECTCEDCIKSKPKVDSDHCFPLPAMEEGATILVTTKTNDYCKSLPAALSATEIEKSISAR
【0069】
EDA2Rは、TNFR(腫瘍壊死因子受容体)スーパーファミリーのIII型膜貫通タンパク質であり、3つのシステインリッチリピート及び1つの膜貫通ドメインを含有する。それはエクトジスプラシンのEDA-A2アイソフォームに結合して毛髪及び歯の維持に重要な役割を果たす。例示的なヒトEDA2Rのアミノ酸配列を以下に示す:
EDA2R(配列番号53)
MDCQENEYWDQWGRCVTCQRCGPGQELSKDCGYGEGGDAYCTACPPRRYKSSWGHHRCQSCITCAVINRVQKVNCTATSNAVCGDCLPRFYRKTRIGGLQDQECIPCTKQTPTSEVQCAFQLSLVEADTPTVPPQEATLVALVSSLLVVFTLAFLGLFFLYCKQFFNRHCQRGGLLQFEADKTAKEESLFPVPPSKETSAESQVSENIFQTQPLNPILEDDCSSTSGFPTQESFTMASCTSESHSHWVHSPIECTELDLQKFSSSASYTGAETLGGNTVESTGDRLELNVPFEVPSP
【0070】
TROYまたはTNFR(腫瘍壊死因子受容体)スーパーファミリーメンバー19は、胎児及び成人のCNSならびに発達中の毛包に高発現するI型細胞表面受容体である。それは、細胞に過剰発現した場合にJNKシグナル伝達経路を活性化させ、TRAFファミリーメンバーと相互作用し、カスパーゼ非依存的な機序によってアポトーシスを誘発し得る。例示的なヒトTROYのアミノ酸配列を以下に示す:
TROY(配列番号54)
MALKVLLEQEKTFFTLLVLLGYLSCKVTCESGDCRQQEFRDRSGNCVPCNQCGPGMELSKECGFGYGEDAQCVTCRLHRFKEDWGFQKCKPCLDCAVVNRFQKANCSATSDAICGDCLPGFYRKTKLVGFQDMECVPCGDPPPPYEPHCASKVNLVKIASTASSPRDTALAAVICSALATVLLALLILCVIYCKRQFMEKKPSWSLRSQDIQYNGSELSCFDRPQLHEYAHRACCQCRRDSVQTCGPVRLLPSMCCEEACSPNPATLGCGVHSAASLQARNAGPAGEMVPTFFGSLTQSICGEFSDAWPLMQNPMGGDNISFCDSYPELTGEDIHSLNPELESSTSLDSNSSQDLVGGAVPVQSHSENFTAATDLSRYNNTLVESASTQDALTMRSQLDQESGAVIHPATQTSLQVRQRLGSL
【0071】
LTBRまたは腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー3(TNFRSF3)は、リンホトキシン膜形態(リンホトキシンアルファとリンホトキシンベータとの複合体)に結合する細胞表面受容体である。それは、アポトーシス、脂質代謝、ならびにリンパ組織及び形質転換細胞の発達及び組織化において役割を果たす。例示的なヒトLTBRのアミノ酸配列を以下に示す:
LTBR(配列番号55)
MLLPWATSAPGLAWGPLVLGLFGLLAASQPQAVPPYASENQTCRDQEKEYYEPQHRICCSRCPPGTYVSAKCSRIRDTVCATCAENSYNEHWNYLTICQLCRPCDPVMGLEEIAPCTSKRKTQCRCQPGMFCAAWALECTHCELLSDCPPGTEAELKDEVGKGNNHCVPCKAGHFQNTSSPSARCQPHTRCENQGLVEAAPGTAQSDTTCKNPLEPLPPEMSGTMLMLAVLLPLAFFLLLATVFSCIWKSHPSLCRKLGSLLKRRPQGEGPNPVAGSWEPPKAHPYFPDLVQPLLPISGDVSPVSTGLPAAPVLEAGVPQQQSPLDLTREPQLEPGEQSQVAHGTNGIHVTGGSMTITGNIYIYNGPVLGGPPGPGDLPATPEPPYPIPEEGDPGPPGLSTPHQEDGKAWHLAETEHCGATPSNRGPRNQFITHD
【0072】
EDAR(エクトジスプラシンA受容体)は、エクトジスプラシンAに対する細胞表面受容体であり、胎児発達、ならびに毛髪、歯及び他の外胚葉派生物の発達において枢軸的な役割を果たす。それは、核因子カッパB、JNK、及びカスパーゼ非依存的細胞死経路を活性化させ得る。例示的なヒトEDARのアミノ酸配列を以下に示す:
EDAR(配列番号56)
MAHVGDCTQTPWLPVLVVSLMCSARAEYSNCGENEYYNQTTGLCQECPPCGPGEEPYLSCGYGTKDEDYGCVPCPAEKFSKGGYQICRRHKDCEGFFRATVLTPGDMENDAECGPCLPGYYMLENRPRNIYGMVCYSCLLAPPNTKECVGATSGASANFPGTSGSSTLSPFQHAHKELSGQGHLATALIIAMSTIFIMAIAIVLIIMFYILKTKPSAPACCTSHPGKSVEAQVSKDEEKKEAPDNVVMFSEKDEFEKLTATPAKPTKSENDASSENEQLLSRSVDSDEEPAPDKQGSPELCLLSLVHLAREKSATSNKSAGIQSRRKKILDVYANVCGVVEGLSPTELPFDCLEKTSRMLSSTYNSEKAVVKTWRHLAESFGLKRDEIGGMTDGMQLFDRISTAGYSIPELLTKLVQIERLDAVESLCADILEWAGVVPPASQPHAAS
【0073】
NGFR(神経成長因子受容体)は、神経細胞の生存及び分化を刺激するタンパク質成長因子であるニューロトロフィンに対する低親和性の細胞表面受容体である。NGFRはプロニューロトロフィンにも結合し、SORT1(ソルチリン)、LINGO1及びRTN4Rを含めた他の受容体パートナーとの共受容体として機能する。それは、数ある組織の中でも脾臓、副腎及び脳において広範に発現する。例示的なヒトNGFRのアミノ酸配列を以下に示す:
NGFR(配列番号57)
MGAGATGRAMDGPRLLLLLLLGVSLGGAKEACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEANHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWADAECEEIPGRWITRSTPPEGSDSTAPSTQEPEAPPEQDLIASTVAGVVTTVMGSSQPVVTRGTTDNLIPVYCSILAAVVVGLVAYIAFKRWNSCKQNKQGANSRPVNQTPPPEGEKLHSDSGISVDSQSLHDQQPHTQTASGQALKGDGGLYSSLPPAKREEVEKLLNGSAGDTWRHLAGELGYQPEHIDSFTHEACPVRALLASWATQDSATLDALLAALRRIQRADLVESLCSESTATSPV
【0074】
OPG(オステオプロテゲリン)は、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)に結合して腫瘍細胞を含めた特定の細胞のTRAIL誘導性アポトーシスを阻害するTNFRSF11B遺伝子にコードされる腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのサイトカイン受容体である。それは骨再吸収の負の調節因子として機能し、破骨細胞発達、腫瘍成長及び転移、心疾患、免疫系発達及びシグナル伝達、精神衛生、糖尿病、ならびに妊娠中の子癇前症及び骨粗鬆症に重要な役割を果たす。例示的なヒトOPGのアミノ酸配列を以下に示す:
OPG(配列番号58)
MNNLLCCALVFLDISIKWTTQETFPPKYLHYDEETSHQLLCDKCPPGTYLKQHCTAKWKTVCAPCPDHYYTDSWHTSDECLYCSPVCKELQYVKQECNRTHNRVCECKEGRYLEIEFCLKHRSCPPGFGVVQAGTPERNTVCKRCPDGFFSNETSSKAPCRKHTNCSVFGLLLTQKGNATHDNICSGNSESTQKCGIDVTLCEEAFFRFAVPTKFTPNWLSVLVDNLPGTKVNAESVERIKRQHSSQEQTFQLLKLWKHQNKDQDIVKKIIQDIDLCENSVQRHIGHANLTFEQLRSLMESLPGKKVGAEDIEKTIKACKPSDQILKLLSLWRIKNGDQDTLKGLMHALKHSKTYHFPKTVTQSLKKTIRFLHSFTMYKLYQKLFLEMIGNQVQSVKISCL
【0075】
RANK(核因子κBの受容体活性化因子)はRANKリガンド(RANKL)の受容体であり、破骨細胞の分化及び活性化を調節するRANK/RANKL/OPGシグナル伝達経路の一部である。それは、T細胞と樹状細胞との相互作用の重要な調節因子であり、それは骨の再構築及び修復、免疫細胞機能、リンパ節発達、体温調節、ならびに乳腺発達において重要な役割を果たす。例示的なヒトRANKのアミノ酸配列を以下に示す:
RANK(配列番号59)
MAPRARRRRPLFALLLLCALLARLQVALQIAPPCTSEKHYEHLGRCCNKCEPGKYMSSKCTTTSDSVCLPCGPDEYLDSWNEEDKCLLHKVCDTGKALVAVVAGNSTTPRRCACTAGYHWSQDCECCRRNTECAPGLGAQHPLQLNKDTVCKPCLAGYFSDAFSSTDKCRPWTNCTFLGKRVEHHGTEKSDAVCSSSLPARKPPNEPHVYLPGLIILLLFASVALVAAIIFGVCYRKKGKALTANLWHWINEACGRLSGDKESSGDSCVSTHTANFGQQGACEGVLLLTLEEKTFPEDMCYPDQGGVCQGTCVGGGPYAQGEDARMLSLVSKTEIEEDSFRQMPTEDEYMDRPSQPTDQLLFLTEPGSKSTPPFSEPLEVGENDSLSQCFTGTQSTVGSESCNCTEPLCRTDWTPMSSENYLQKEVDSGHCPHWAASPSPNWADVCTGCRNPPGEDCEPLVGSPKRGPLPQCAYGMGLPPEEEASRTEARDQPEDGADGRLPSSARAGAGSGSSPGGQSPASGNVTGNSNSTFISSGQVMNFKGDIIVVYVSQTSQEGAAAAAEPMGRPVQEETLARRDSFAGNGPRFPDPCGGPEGLREPEKASRPVQEQGGAKA
【0076】
DCR3(デコイ受容体3)は、FasL及びLIGHTに媒介される細胞死を抑制することにおいて調節的な役割を果たす腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの可溶性タンパク質であり、リガンド結合において細胞死受容体と競合するデコイ受容体である。それは消化管腫瘍に過剰発現する。例示的なヒトDCR3のアミノ酸配列を以下に示す:
DCR3(配列番号60)
MRALEGPGLSLLCLVLALPALLPVPAVRGVAETPTYPWRDAETGERLVCAQCPPGTFVQRPCRRDSPTTCGPCPPRHYTQFWNYLERCRYCNVLCGEREEEARACHATHNRACRCRTGFFAHAGFCLEHASCPPGAGVIAPGTPSQNTQCQPCPPGTFSASSSSSEQCQPHRNCTALGLALNVPGSSSHDTLCTSCTGFPLSTRVPGAEECERAVIDFVAFQDISIKRLQRLLQALEAPEGWGPTPRAGRAALQLKLRRRLTELLGAQDGALLVRLLQALRVARMPGLERSVRERFLPVH
【0077】
TNFR1(腫瘍壊死因子受容体1)は、転写因子NF-κBを活性化させること、アポトーシスを媒介すること及び炎症の調節因子として機能することができるものである腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)に結合する、遍在する膜受容体である。例示的なヒトTNFR1のアミノ酸配列を以下に示す:
TNFR1(配列番号61)
MGLSTVPDLLLPLVLLELLVGIYPSGVIGLVPHLGDREKRDSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAGFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIENVKGTEDSGTTVLLPLVIFFGLCLLSLLFIGLMYRYQRWKSKLYSIVCGKSTPEKEGELEGTTTKPLAPNPSFSPTPGFTPTLGFSPVPSSTFTSSSTYTPGDCPNFAAPRREVAPPYQGADPILATALASDPIPNPLQKWEDSAHKPQSLDTDDPATLYAVVENVPPLRWKEFVRRLGLSDHEIDRLELQNGRCLREAQYSMLATWRRRTPRREATLELLGRVLRDMDLLGCLEDIEEALCGPAALPPAPSLLR
【0078】
FN14(線維芽細胞成長因子誘導性14)は、様々な細胞種において組織損傷の状況下で誘導されるものであり、増殖、遊走、分化、アポトーシス、血管新生及び炎症を含めた多くの細胞活動を制御するTNFリガンドファミリーのメンバーであるTNF様アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)によって活性化される。NFAT1はリポカリン2によってFN14及びそのリガンドTWEAKの発現を調節して、乳癌細胞浸潤を増進する。例示的なヒトFN14のアミノ酸配列を以下に示す:
FN14(配列番号62)
MARGSLRRLLRLLVLGLWLALLRSVAGEQAPGTAPCSRGSSWSADLDKCMDCASCRARPHSDFCLGCAAAPPAPFRLLWPILGGALSLTFVLGLLSGFLVWRRCRRREKFTTPIEETGGEGCPAVALIQ
【0079】
APRIL(増殖誘導性リガンド)は、TNF受容体ファミリーのメンバーであるTNFRSF17/BCMAに対するリガンドである。APRIL及びその受容体は両方ともB細胞発達に重要である。それはリンパ組織に低レベルで発現し、いくつかの腫瘍によって過剰発現する。例示的なヒトAPRILのアミノ酸配列を以下に示す:
APRIL(配列番号63)
MPASSPFLLAPKGPPGNMGGPVREPALSVALWLSWGAALGAVACAMALLTQQTELQSLRREVSRLQGTGGPSQNGEGYPWQSLPEQSSDALEAWENGERSRKRRAVLTQKQKKQHSVLHLVPINATSKDDSDVTEVMWQPALRRGRGLQAQGYGVRIQDAGVYLLYSQVLFQDVTFTMGQVVSREGQGRQETLFRCIRSMPSHPDRAYNSCYSAGVFHLHQGDILSVIIPRARAKLNLSPHGTFLGFVKL
【0080】
EDA-A2は、TNFスーパーファミリー(TNFSF)のメンバーであり、外胚葉性器官の発達中に細胞間シグナル伝達に関与し得るホモ三量体として作用する、II型膜貫通タンパク質である。この遺伝子の欠陥は、X連鎖性低汗性外胚葉形成不全症としても知られる無汗性外胚葉形成不全症の原因である。例示的なヒトEDA-A2のアミノ酸配列を以下に示す:
EDA-A2(配列番号64)
MGYPEVERRELLPAAAPRERGSQGCGCGGAPARAGEGNSCLLFLGFFGLSLALHLLTLCCYLELRSELRRERGAESRLGGSGTPGTSGTLSSLGGLDPDSPITSHLGQPSPKQQPLEPGEAALHSDSQDGHQMALLNFFFPDEKPYSEEESRRVRRNKRSKSNEGADGPVKNKKKGKKAGPPGPNGPPGPPGPPGPQGPPGIPGIPGIPGTTVMGPPGPPGPPGPQGPPGLQGPSGAADKAGTRENQPAVVHLQGQGSAIQVKNDLSGGVLNDWSRITMNPKVFKLHPRSGELEVLVDGTYFIYSQVYYINFTDFASYEVVVDEKPFLQCTRSIETGKTNYNTCYTAGVCLLKARQKIAVKMVHADISINMSKHTTFFGAIRLGEAPAS
【0081】
TWEAK(TNF関連アポトーシス弱誘導因子)は、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーに属するサイトカインであり、FN14/TWEAKR受容体のリガンドである。それはTNFと重複したシグナル伝達機能を有するが、はるかに広範な組織分布を呈する。それは、内皮細胞のアポトーシス、増殖及び遊走、ならびに血管新生において重要な役割を果たす。例示的なヒトTWEAKのアミノ酸配列を以下に示す:
TWEAK(配列番号65)
MAARRSQRRRGRRGEPGTALLVPLALGLGLALACLGLLLAVVSLGSRASLSAQEPAQEELVAEEDQDPSELNPQTEESQDPAPFLNRLVRPRRSAPKGRKTRARRAIAAHYEVHPRPGQDGAQAGVDGTVSGWEEARINSSSPLRYNRQIGEFIVTRAGLYYLYCQVHFDEGKAVYLKLDLLVDGVLALRCLEEFSATAASSLGPQLRLCQVSGLLALRPGSSLRIRTLPWAHLKAAPFLTYFGLFQVH
【0082】
LTA(リンホトキシンアルファ)は、リンパ球によって産生されるサイトカインであり、膜結合状態と可溶性状態との両方で存在する。それは、リンホトキシンアルファを細胞表面に繋ぎ止めるリンホトキシンベータとのヘテロ三量体を形成し、二次リンパ器官の形成に関与し、多種多様な炎症性、免疫刺激性及び抗ウイルス性の応答を媒介する。例示的なヒトLTAのアミノ酸配列を以下に示す:
LTB(配列番号66)
MGALGLEGRGGRLQGRGSLLLAVAGATSLVTLLLAVPITVLAVLALVPQDQGGLVTETADPGAQAQQGLGFQKLPEEEPETDLSPGLPAAHLIGAPLKGQGLGWETTKEQAFLTSGTQFSDAEGLALPQDGLYYLYCLVGYRGRAPPGGGDPQGRSVTLRSSLYRAGGAYGPGTPELLLEGAETVTPVLDPARRQGYGPLWYTSVGFGGLVQLRRGERVYVNISHPDMVDFARGKTFFGAVMVG
【0083】
NGF(神経成長因子)は神経栄養因子であり、主として特定の標的ニューロンの成長の調節、維持、増殖及び生存に関与する神経ペプチドである。より具体的には、NGFは、交感神経及び感覚ニューロンの生存のためになくてはならないものである。例示的なヒトNGFのアミノ酸配列を以下に示す:
NGF(配列番号67)
MSMLFYTLITAFLIGIQAEPHSESNVPAGHTIPQAHWTKLQHSLDTALRRARSAPAAAIAARVAGQTRNITVDPRLFKKRRLRSPRVLFSTQPPREAADTQDLDFEVGGAAPFNRTHRSKRSSSHPIFHRGEFSVCDSVSVWVGDKTTATDIKGKEVMVLGEVNINNSVFKQYFFETKCRDPNPVDSGCRGIDSKHWNSYCTTTHTFVKALTMDGKQAAWRFIRIDTACVCVLSRKAVRRA
【0084】
EDA-A1は、ホモ三量体として作用し、外胚葉性器官の発達中に細胞間シグナル伝達に関与し得る、TNFスーパーファミリーに属するII型膜貫通タンパク質である。EDA-A1とエクトジスプラシンA受容体との結合は、分裂、成長及び成熟などの細胞活動に影響を及ぼす一連の化学的シグナルを誘発する。例示的なヒトEDA-A1のアミノ酸配列を以下に示す:
EDA-A1(配列番号68)
MGYPEVERRELLPAAAPRERGSQGCGCGGAPARAGEGNSCLLFLGFFGLSLALHLLTLCCYLELRSELRRERGAESRLGGSGTPGTSGTLSSLGGLDPDSPITSHLGQPSPKQQPLEPGEAALHSDSQDGHQMALLNFFFPDEKPYSEEESRRVRRNKRSKSNEGADGPVKNKKKGKKAGPPGPNGPPGPPGPPGPQGPPGIPGIPGIPGTTVMGPPGPPGPPGPQGPPGLQGPSGAADKAGTRENQPAVVHLQGQGSAIQVKNDLSGGVLNDWSRITMNPKVFKLHPRSGELEVLVDGTYFIYSQVEVYYINFTDFASYEVVVDEKPFLQCTRSIETGKTNYNTCYTAGVCLLKARQKIAVKMVHADISINMSKHTTFFGAIRLGEAPAS
【0085】
APP(アミロイド前駆体タンパク質)は、多くの組織に発現し、ニューロンのシナプスに集中している、内在性膜タンパク質である。それは、脳及び脊髄を含めた多くの組織に発現し、膜中のγ-セレクターゼ複合体を含めた一連の連続的なプロテアーゼによって非常に複雑な方法で速やかに代謝されるが、当該プロテアーゼは他の肝要な調節分子のプロセシングも行うものである。例示的なヒトAPPのアミノ酸配列を以下に示す:
APP(配列番号69)
MLPGLALLLLAAWTARALEVPTDGNAGLLAEPQIAMFCGRLNMHMNVQNGKWDSDPSGTKTCIDTKEGILQYCQEVYPELQITNVVEANQPVTIQNWCKRGRKQCKTHPHFVIPYRCLVGEFVSDALLVPDKCKFLHQERMDVCETHLHWHTVAKETCSEKSTNLHDYGMLLPCGIDKFRGVEFVCCPLAEESDNVDSADAEEDDSDVWWGGADTDYADGSEDKVVEVAEEEEVAEVEEEEADDDEDDEDGDEVEEEAEEPYEEATERTTSIATTTTTTTESVEEVVREVCSEQAETGPCRAMISRWYFDVTEGKCAPFFYGGCGGNRNNFDTEEYCMAVCGSAMSQSLLKTTQEPLARDPVKLPTTAASTPDAVDKYLETPGDENEHAHFQKAKERLEAKHRERMSQVMREWEEAERQAKNLPKADKKAVIQHFQEKVESLEQEAANERQQLVETHMARVEAMLNDRRRLALENYITALQAVPPRPRHVFNMLKKYVRAEQKDRQHTLKHFEHVRMVDPKKAAQIRSQVMTHLRVIYERMNQSLSLLYNVPAVAEEIQDEVDELLQKEQNYSDDVLANMISEPRISYGNDALMPSLTETKTTVELLPVNGEFSLDDLQPWHSFGADSVPANTENEVEPVDARPAADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVKMDAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIATVIVITLVMLKKKQYTSIHHGVVEVDAAVTPEERHLSKMQQNGYENPTYKFFEQMQN
【0086】
TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)は、アポトーシスを誘発するサイトカインである。それは、2つの細胞死受容体DR4(TRAIL-RI)及びDR5(TRAIL-RII)、ならびに2つのデコイ受容体DcR1及びDcR2に結合する。TRAILは、細胞死受容体に結合すること、FAS関連細胞死ドメインを動員すること、及びカスパーゼ8及び10を活性化させることによって機能し、この結果としてアポトーシスが起こる。例示的なヒトTRAILのアミノ酸配列を以下に示す:
TRAIL(配列番号70)
MAMMEVQGGPSLGQTCVLIVIFTVLLQSLCVAVTYVYFTNELKQMQDKYSKSGIACFLKEDDSYWDPNDEESMNSPCWQVKWQLRQLVRKMILRTSEETISTVQEKQQNISPLVRERGPQRVAAHITGTRGRSNTLSSPNSKNEKALGRKINSWESSRSGHSFLSNLHLRNGELVIHEKGFYYIYSQTYFRFQEEIKENTKNDKQMVQYIYKYTSYPDPILLMKSARNSCWSKDAEYGLYSIYQGGIFELKENDRIFVSVTNEHLIDMDHEASFFGAFLVG
【0087】
B7-H4は、Vセットドメイン含有T細胞活性化阻害因子1(VTCN1)としても知られ、B7ファミリーのメンバーである。このタンパク質は、抗原提示細胞の表面に発現すること、及びT細胞上のCD28またはMIM186760などのリガンドと相互作用することが分かっている。例示的なヒトB7-H4のアミノ酸配列を以下に示す:
B7-H4(配列番号71)
MASLGQILFWSIISIIIILAGAIALIIGFGISGRHSITVTTVASAGNIGEDGILSCTFEPDIKLSDIVIQWLKEGVLGLVHEFKEGKDELSEQDEMFRGRTAVFADQVIVGNASLRLKNVQLTDAGTYKCYIITSKGKGNANLEYKTGAFSMPEVNVDYNASSETLRCEAPRWFPQPTVVWASQVDQGANFSEVSNTSFELNSENVTMKVVSVLYNVTINNTYSCMIENDIAKATGDIKVTESEIKRRSHLQLLNSKASLCVSSFFAISWALLPLSPYLMLK
【0088】
具体例において、本開示に使用するための共刺激ポリペプチドとしては、CD30L、CD40、CD40L、CD27、CD70、GITRL、ICOS、ICOSL、LIGHT、OX40、OX40L、TL1A、BAFFR、4-1BB、または4-1BBLが挙げられる。ある場合には、本開示に使用するための共刺激ポリペプチドはCD80でもCD86でもない。
【0089】
共刺激ポリペプチドは、好適な種からの天然に存在するポリペプチド、例えば哺乳動物共刺激ポリペプチド、例えばヒトまたは非ヒト霊長類に由来するものであり得る。そのような天然に存在するポリペプチドは当技術分野で知られており、例えば、公的に利用できる遺伝子データベース、例えばGenBankを検索するためのクエリーとして上記アミノ酸配列のいずれかを使用して得ることができる。本開示に使用するための共刺激ポリペプチドは、上記の例示的タンパク質のいずれかとの少なくとも85%の(例えば、90%、95%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る)配列同一性を共有し得る。いくつかの実施形態では、B7/CD28スーパーファミリーのメンバー、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、またはそのリガンドは、細胞質側ドメインが欠損したものであり得る。例示的な実施形態において、4-1BBLは細胞質側ドメインが欠損している。いくつかの実施形態では、TNFスーパーファミリーのメンバーまたはそのリガンドは4-1BBLでない。
【0090】
2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムをKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993に記されているように改造したものを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれている。本発明のタンパク質分子と相同であるアミノ酸配列を得るためにBLASTタンパク質検索をXBLASTプログラムでスコア=50、ワード長さ=3で実施することができる。2つの配列の間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されているようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の初期設定パラメータが使用され得る。
【0091】
あるいは、共刺激ポリペプチドは天然の対応物の機能性変異体であり得る。そのような機能性変異体は、天然の対応物の機能性ドメイン(複数可)の中に(例えば酵素の活性部位の中に)1つ以上の突然変異を含有し得る。そのような機能性変異体は、1つ以上の突然変異を天然の対応物の機能性ドメイン(複数可)の外側に含有し得る。天然の共刺激ポリペプチドの機能性ドメインは、当技術分野で知られている場合があり、またはそのアミノ酸配列に基づいて予測することができる。機能性ドメイン(複数可)の外側の突然変異は、タンパク質の生物学的活性に実質的に影響を及ぼすとは予想されないであろう。ある場合には、機能性変異体は、天然の対応物と比較して、共刺激経路を調節(つまり刺激)する能力を有し得る。
【0092】
あるいは、またはさらに、機能性変異体は、天然の対応物の中の1つ以上の位置(例えば、20個以下の位置、15個以下の位置、10個以下の位置、5個以下、4個、3個、2個、1個の位置(複数可))に保存的突然変異(複数可)を含有し得る。本明細書中で使用する場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷または大きさの特徴を変化させないアミノ酸置換を意味する。変異体は、ポリペプチド配列を変化させるための当業者に知られている方法、例えば、そのような方法をまとめた参考文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkの中に見つかるような方法に従って調製され得る。アミノ酸の保存的置換としては、以下の群の中のアミノ酸の間でなされる置換が挙げられる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D。
【0093】
本明細書に記載の共刺激ポリペプチドは、そのようなものが発現している免疫細胞の活性を調節する上で、化学物質で誘導される(例えばリミドゥシドによって誘導される)二量体化が必要とならないものであり得る。例えば、共刺激ポリペプチドは、リミドゥシドによって誘導される二量体化を可能にするF506結合タンパク質(FKBP)またはその断片(例えばFKBPv36ドメイン)を含まないものであり得る。
【0094】
II.抗GPC3 CARポリペプチド
本明細書中で使用する場合、CARポリペプチド(CAR構築物としても知られる)は、宿主細胞の表面に発現し得る、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質側シグナル伝達ドメインを含む天然に存在しない分子を指す。細胞外抗原結合ドメインは、医学的状態(例えば疾患)に関連する天然に存在する抗原を含めた標的抗原との、または疾患関連抗原を標的とした治療剤に複合している抗原部分との特異的な結合をする(つまりそれに対して特異的である)任意のペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含み得る。CARポリペプチドは、宿主細胞上に発現したときに細胞外抗原結合ドメインが標的分子及び細胞質側シグナル伝達ドメインとの結合のために細胞外に位置するように構成される。任意選択の共刺激シグナル伝達ドメインは、活性化及び/またはエフェクターシグナル伝達を誘発すべく細胞質中に位置し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、N末端からC末端に向かって、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質側シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、N末端からC末端に向かって、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメイン、及び細胞質側シグナル伝達ドメインを含む。他の実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、N末端からC末端に向かって、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質側シグナル伝達ドメイン、及び少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0097】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質X膜貫通ドメイン」(例えば、CD8膜貫通ドメイン)という語句は、所与のタンパク質の、つまり膜を横切って延在しているタンパク質Xの、膜中で熱力学的に安定な任意の部分を指す。
【0098】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質X細胞質側シグナル伝達ドメイン」、例えばCD3ζ細胞質側シグナル伝達ドメインという語句は、細胞または細胞小器官の内部と相互作用し、免疫細胞の増殖及び/または活性化につながる主シグナルを伝え送ることができる、当技術分野で知られているタンパク質(タンパク質X)の任意の部分を指す。本明細書に記載の細胞質側シグナル伝達ドメインは、免疫細胞を完全に活性化させるための副シグナルを伝え送る共刺激シグナル伝達ドメインとは異なる。
【0099】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質X共刺激シグナル伝達ドメイン」、例えばCD28共刺激シグナル伝達ドメインという語句は、共刺激シグナル(副シグナル)を免疫細胞(例えばT細胞)内に送り込んで免疫細胞の完全な活性化をもたらすことができる、所与の共刺激タンパク質(タンパク質X、例えば、CD28、4-1BB、OX40、CD27またはICOS)の部分を指す。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、抗原結合ドメインのC末端及び膜貫通ドメインのN末端に位置し得るヒンジドメインをさらに含み得る。ヒンジは、任意の好適な長さのものであり得る。他の実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、ヒンジドメインを全く有さないものであり得る。さらに他の実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、短くした(例えば25個以下のアミノ酸残基を含む)ヒンジドメインを有し得る。
【0101】
本明細書及び別記の特許請求の範囲の中で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形の意味を含むが、但し、そうでないことが文脈から明らかである場合を除く。
【0102】
A.細胞外抗原結合ドメイン
本明細書に記載のCARポリペプチドは細胞外抗原結合ドメインを含むが、このドメインは、CARポリペプチドが発現している免疫細胞の特異性を向け変えるものである。本明細書中で使用する場合、「細胞外抗原結合ドメイン」は、関心対象の標的抗原(例えばGPC3)に対する結合特異性を有するペプチドまたはポリペプチドを指す。本明細書に記載の細胞外抗原結合ドメインは、Fc受容体の細胞外ドメインを含まないものであり、また、免疫グロブリンのFc部分に結合しないものであり得る。Fc断片に結合しない細胞外ドメインは、2つのもの同士の結合活性が、従来のアッセイを用いて検出できないか、または従来のアッセイを用いてバックグラインドのもしくは生物学的に重要でない結合活性しか検出されないことを意味する。
【0103】
ある場合には、細胞外抗原結合ドメインは一本鎖抗体断片(scFv)であり得るが、これは、標的細胞表面抗原に高い結合親和性で結合する抗体に由来するものであり得る。細胞外抗原結合ドメインは、既知の抗GPC3抗体(例えばコドリツズマブ)に由来する抗原結合断片(例えばscFv)を含んでいてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、scFvは、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYEMHWVRQAPGQGLEWMGALDPKTGDTAYSQKFKGRVTLTADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCTRFYSYTYWGQGTLV(配列番号74)
のアミノ酸配列を含んだ重鎖可変領域を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、scFvは、
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHSNRNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHVPPTFGQGTKLEI (配列番号75)
のアミノ酸配列を含んだ軽鎖可変領域を含む。
【0106】
本明細書に記載のCARポリペプチドのいずれかの細胞外抗原結合ドメインは、GPC3に適した結合親和性を有し得る。本明細書中で使用する場合、「結合親和性」は、見掛けの会合定数またはKAを指す。KAは解離定数(KD)の逆数である。本明細書に記載のCARポリペプチドに使用するための細胞外抗原結合ドメインは、標的抗原または抗原エピトープに対する少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M以下の結合親和性(KD)を有し得る。結合親和性の上昇はKDの低下に対応する。細胞外抗原結合ドメインが第1抗原に第2抗原よりも高い親和性で結合することは、第2抗原との結合のKA(または数値KD)と比較して第1抗原との結合のKAがより高い(またはKDの数値がより小さい)ことによって表され得る。そのような場合、細胞外抗原結合ドメインは第1抗原(例えば、第1配座を有する第1タンパク質またはその模倣体)に対する特異性を、第2抗原(例えば、第2配座を有する同じ第1タンパク質もしくはその模倣体、または第2タンパク質)に比べて有している。(例えば特異性または他の比較に関して)結合親和性の差は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000または105倍であり得る。
【0107】
結合親和性(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または(例えば蛍光アッセイを用いる)分光法を含めた様々な方法によって決定され得る。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液中(10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、0.005%(v/v)の界面活性剤P20)である。これらの技術を用いて、結合した結合タンパク質の濃度を標的タンパク質濃度の関数として測定することができる。結合した結合タンパク質の濃度([結合])は、以下の等式によって遊離標的タンパク質([遊離])に概して関係付けられる:
[結合]=[遊離]/(Kd+[遊離])
【0108】
しかしながら、必ずしもKAの正確な決定を行う必要はない、というのも、例えばELISAもしくはFACS分析などの方法を用いて決定され、KAに比例し、それゆえ比較、例えばより高い親和性が例えば2倍高いか否かについての判定に用いることができる親和性の定量的測定結果を得ること、親和性の定性的測定結果を得ること、または親和性の推定を例えば機能性アッセイ、例えば試験管内もしくはインビボアッセイにおける活性によって得ることで事足りる場合があるからである。
【0109】
B.膜貫通ドメイン
本明細書に記載のCARポリペプチドの膜貫通ドメインは、当技術分野で知られている任意の形態であり得る。本明細書中で使用する場合、「膜貫通ドメイン」は、細胞膜中、好ましくは真核生物細胞膜中で熱力学的に安定な任意のタンパク質構造を指す。本明細書において使用されるCARポリペプチドにおける使用に適合する膜貫通ドメインは、天然に存在するタンパク質から得られ得る。あるいはそれは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメント、例えば、細胞膜中で熱力学的に安定な疎水性タンパク質セグメントであってもよい。
【0110】
膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインの三次元構造に基づいて分類される。例えば、膜貫通ドメインは、アルファヘリックス、1つより多いアルファヘリックスの複合体、ベータバレル、または細胞のリン脂質二重層を横切って延在することができる他の任意の安定な構造を形成し得る。さらに、膜貫通ドメインは、さらに、または代わりに、膜貫通ドメインが膜を横切って行う貫通の回数及びタンパク質の配向を含めた膜貫通ドメインのトポロジーに基づいて分類されることもある。例えば、1回貫通型膜タンパク質は細胞膜を1回横切り、多回貫通型膜タンパク質は細胞膜を少なくとも2回(例えば、2、3、4、5、6、7回、またはそれを上回る回数で)横切る。
【0111】
膜タンパク質は、細胞の内側及び外側に対するその末端及び膜貫通セグメント(複数可)のトポロジーに応じてI型、II型またはIII型と定義され得る。I型膜タンパク質は単一の膜貫通領域を有し、タンパク質のN末端が細胞の脂質二重層の細胞外側に存在するように及びタンパク質のC末端が細胞質側に存在するように配向している。II型膜タンパク質も単一の膜貫通領域を有するが、タンパク質のC末端が細胞の脂質二重層の細胞外側に存在するように及びタンパク質のN末端が細胞質側に存在するように配向している。III型膜タンパク質は複数の膜貫通セグメントを有し、膜貫通セグメントの数ならびにN末端及びC末端の位置に基づいてさらに下位分類され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドの膜貫通ドメインは、I型1回貫通型膜タンパク質に由来する。1回貫通型膜タンパク質としては、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD27、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD37、CD80、CD86、CD40、CD40L/CD154、VEGFR2、FAS及びFGFR2Bが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、以下から選択される膜タンパク質からのものである:CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、CD32、CD64、VEGFR2、FAS及びFGFR2B。いくつかの例では、膜貫通ドメインはCD8のもの(例えばCD8αの膜貫通ドメイン)である。いくつかの例では、膜貫通ドメインは、4-1BB/CD137のものである。他の例では、膜貫通ドメインはCD28のものである。ある場合には、そのようなCARポリペプチドはヒンジドメインを何ら含まないものであり得る。あるいは、またはさらに、そのようなCARポリペプチドは、本明細書に記載の共刺激領域を2つ以上含み得る。他の例では、膜貫通ドメインはCD34のものである。さらに他の例では、膜貫通ドメインは、ヒトCD8αに由来するものではない。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドの膜貫通ドメインは1回貫通型アルファヘリックスである。
【0113】
多回貫通型膜タンパク質からの膜貫通ドメインも、本明細書に記載のCARポリペプチドにおける使用に適合し得る。多回貫通型膜タンパク質は、複雑なアルファヘリックス構造(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7個の、またはそれより多いアルファヘリックス)またはベータシート構造を含み得る。好ましくは、多回貫通型膜タンパク質のN末端及びC末端は脂質二重層の対向側面上に存在し、例えば、タンパク質のN末端は脂質二重層の細胞質側に存在し、タンパク質のC末端は細胞外側に存在する。本明細書に記載のCARポリペプチドを構築するために多回貫通型膜タンパク質からの1回か複数回かのどちらかのヘリックス貫通が用いられ得る。
【0114】
本明細書に記載のCARポリペプチドに使用するための膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメントの少なくとも一部を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないアルファヘリックスまたはベータシートである。いくつかの実施形態では、タンパク質セグメントは少なくともおよそ20アミノ酸、例えば、少なくとも18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸であるかまたはそれを上回る。合成の膜貫通ドメインの例は、当技術分野、例えば米国特許第7,052,906B1号及びPCT公開第WO2000/032776A2号において既知であり、参照によりこれらの各々の関連する開示内容を本明細書に援用する。
【0115】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列はシステイン残基を含まない。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は1つのシステイン残基を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は2つのシステイン残基を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は2つより多い(例えば、3、4、5個またはそれより多い)システイン残基を含む。
【0116】
膜貫通ドメインは、膜貫通領域、及び膜貫通ドメインのC末端側に位置する細胞質側領域を含み得る。膜貫通ドメインの細胞質側領域は3つ以上のアミノ酸を含み得、いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインを脂質二重層の中に配向させるのに役立つ。いくつかの実施形態では、1つ以上のシステイン残基が膜貫通ドメインの膜貫通領域に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上のシステイン残基が膜貫通ドメインの細胞質側領域に存在する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインの細胞質側領域は、正に帯電したアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインの細胞質側領域は、アミノ酸であるアルギニン、セリン及びリジンを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインの膜貫通領域は疎水性アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、大部分が疎水性であるアミノ酸残基、例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファンまたはバリンを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は疎水性である。いくつかの実施形態では、膜貫通領域はポリ-ロイシン-アラニン配列を含む。
【0118】
タンパク質またはタンパク質セグメントの疎水親水度、疎水性または親水性の特徴は、当技術分野で知られている例えばKyteとDoolittleの疎水性分析を含めた任意の方法によって評価され得る。
【0119】
C.共刺激シグナル伝達ドメイン
多くの免疫細胞は、細胞の増殖、分化及び生存を促進するためならびに細胞のエフェクター機能を活性化させるために抗原特異的シグナルの刺激に加えて共刺激を必要とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、CARポリペプチドは、CD28共刺激シグナル伝達ドメイン、または4-1BB(CD137)共刺激シグナル伝達ドメインを含有し得る。本明細書中で使用される「共刺激シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能などの免疫応答を誘導する細胞内でのシグナル伝達(副シグナル)を媒介する共刺激シグナル伝達タンパク質の少なくとも断片を指す。当技術分野で知られているように、T細胞などの免疫細胞の活性化には2つのシグナルが必要となることが多い:(1)T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞によって提示される抗原ペプチド/MHC複合体との係合が典型的にはTCR複合体の構成要素としてのCD3ζに促されて起こることによって誘発される、抗原特異的なシグナル(主シグナル)、及び(ii)共刺激受容体とそのリガンドとの相互作用によって誘発される共刺激シグナル(副シグナル)。共刺激受容体は、TCRによって誘発されるシグナル伝達に対する付加として共刺激シグナル(副シグナル)を伝達し、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球または好酸球などの免疫細胞によって媒介される応答を調節する。
【0120】
宿主細胞(例えば免疫細胞)における共刺激シグナル伝達ドメインの活性化は、細胞がサイトカインの産生及び分泌、食細胞特性、増殖、分化、生存及び/または細胞傷害を増進または減退させることを引き起こし得る。任意の共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインが、本明細書に記載のCARポリペプチドにおける使用に適合し得る。共刺激シグナル伝達ドメインの種類(複数可)は、CARポリペプチドを発現させることになる免疫細胞の種類(例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球または好酸球)、及び望まれる免疫エフェクター機能などの因子に基づいて選択される。CARポリペプチドに使用される共刺激シグナル伝達ドメインの例は、B7/CD28ファミリーのメンバー(例えば、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BTLA/CD272、CD28、CTLA-4、Gi24/VISTA/B7-H5、ICOS/CD278、PD-1、PD-L2/B7-DC、及びPDCD6);TNFスーパーファミリーのメンバー(例えば、4-1BB/TNFSF9/CD137、4-1BBリガンド/TNFSF9、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BAFF R/TNFRSF13C、CD27/TNFRSF7、CD27リガンド/TNFSF7、CD30/TNFRSF8、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40/TNFSF5、CD40リガンド/TNFSF5、DR3/TNFRSF25、GITR/TNFRSF18、GITRリガンド/TNFSF18、HVEM/TNFRSF14、LIGHT/TNFSF14、リンホトキシンアルファ/TNFベータ、OX40/TNFRSF4、OX40リガンド/TNFSF4、RELT/TNFRSF19L、TACI/TNFRSF13B、TL1A/TNFSF15、TNFアルファ、及びTNF RII/TNFRSF1B);SLAMファミリーのメンバー(例えば、2B4/CD244/SLAMF4、BLAME/SLAMF8、CD2、CD2F-10/SLAMF9、CD48/SLAMF2、CD58/LFA-3、CD84/SLAMF5、CD229/SLAMF3、CRACC/SLAMF7、NTB-A/SLAMF6、及びSLAM/CD150);及び他の任意の共刺激分子、例えば、CD2、CD7、CD53、CD82/Kai-1、CD90/Thy1、CD96、CD160、CD200、CD300a/LMIR1、HLAクラスI、HLA-DR、Ikaros、インテグリンアルファ4/CD49d、インテグリンアルファ4ベータ1、インテグリンアルファ4ベータ7/LPAM-1、LAG-3、TCL1A、TCL1B、CRTAM、DAP12、デクチン1/CLEC7A、DPPIV/CD26、EphB6、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TSLP、TSLP R、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、及びNKG2Cを含むがこれらに限定されない共刺激タンパク質の細胞質側シグナル伝達ドメインであり得る。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BB、CD28、OX40、ICOS、CD27、GITR、HVEM、TIM1、LFA1(CD11a)もしくはCD2、またはその任意の変異体のものである。
【0121】
共刺激シグナル伝達ドメインによって免疫細胞の免疫応答を調節することができるような、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの変異体も、本開示の範囲に含まれる。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、野生型対応物と比較して10個以下(例えば、1、2、3、4、5または8個)のアミノ酸残基突然変異、例えば、アミノ酸置換、欠失または付加を含む。1つ以上のアミノ酸変異(例えば、アミノ酸置換、欠失または付加)を含むそのような共刺激シグナル伝達ドメインは変異体と呼称され得る。
【0122】
共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸残基の突然変異は、突然変異を含まない共刺激シグナル伝達ドメインと比較してシグナル伝達の増進及び免疫応答の刺激の増強をもたらすことがある。共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸残基の突然変異は、突然変異を含まない共刺激シグナル伝達ドメインと比較してシグナル伝達の減退及び免疫応答の刺激の減弱をもたらすことがある。例えば、天然CD28アミノ酸配列の残基186及び187の突然変異は、CARポリペプチドの共刺激ドメインによる共刺激活性の上昇及び免疫応答の誘導をもたらし得る。いくつかの実施形態では、突然変異は、CD28共刺激ドメインのグリシン残基による位置186及び187の各々におけるリジンの置換であり、これはCD28LL→GG変異体と呼称される。共刺激シグナル伝達ドメインになされ得る、ドメインの共刺激活性を増強または低減し得るさらなる突然変異は当業者にとって明白であろう。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BB、CD28、OX40、またはCD28LL→GG変異体のものである。
【0123】
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、単一の共刺激ドメイン、例えば、CD27共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、ICOS共刺激ドメインまたはOX40共刺激ドメインを含有し得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、1つより多い(例えば、2、3個またはそれより多い)共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、2つ以上の同じ共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28の共刺激シグナル伝達ドメインの2つのコピーを含む。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、異なる共刺激タンパク質、例えば、本明細書に記載の任意の2つ以上の共刺激タンパク質からの2つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。共刺激シグナル伝達ドメインの種類(複数可)の選択は、CARポリペプチドと共に使用されることになる宿主細胞の種類(例えばT細胞またはNK細胞)、及び望まれる免疫エフェクター機能などの因子に基づいて行われ得る。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、2つの共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28の共刺激シグナル伝達ドメインの2つのコピーを含む。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、異なる共刺激受容体、例えば、本明細書に記載の任意の2つ以上の共刺激受容体、例えば、CD28と4-1BB、CD28とCD27、CD28とICOS、CD28LL→GG変異体と4-1BB、CD28とOX40、またはCD28LL→GG変異体とOX40からの、2つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、2つの共刺激シグナル伝達ドメインはCD28と4-1BBである。いくつかの実施形態では、2つの共刺激シグナル伝達ドメインはCD28LL→GG変異体と4-1BBである。いくつかの実施形態では、2つの共刺激シグナル伝達ドメインはCD28とOX40である。いくつかの実施形態では、2つの共刺激シグナル伝達ドメインはCD28LL→GG変異体とOX40である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCAR構築物は、CD28とICOSLとの組合せを含有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCAR構築物は、CD28とCD27との組合せを含有し得る。特定の実施形態では、4-1BB共刺激ドメインはCD28またはCD28LL→GG変異体共刺激シグナル伝達ドメインのN末端に位置する。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは共刺激シグナル伝達ドメインを含まない。
【0126】
D.細胞質側シグナル伝達ドメイン
任意の細胞質側シグナル伝達ドメインを使用して本明細書に記載のCARポリペプチドを作り出すことができる。そのような細胞質側ドメインは、免疫細胞の増殖及び/または活性化につながる細胞シグナル伝達(主シグナル伝達)の誘発に関与する任意のシグナル伝達ドメインであり得る。本明細書に記載の細胞質側シグナル伝達ドメインは、当技術分野で知られているように免疫細胞を完全に活性化させるために共刺激または副シグナルを伝え送るものである共刺激シグナル伝達ドメインではない。
【0127】
本明細書に記載の細胞質側ドメインは、免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)ドメインを含んでいてもよいし、またはITAMを含んでいなくてもよい。本明細書中で使用する場合、「ITAM」は、多くの免疫細胞に発現したシグナル伝達分子の尾部に通常存在している保存されたタンパク質モチーフである。当該モチーフは、6~8アミノ酸によって隔てられた、アミノ酸配列YxxL/Iの2回の繰返しを含み得、式中の各xは独立して任意のアミノ酸であり、これらは、保存されたモチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iを作り出している。シグナル伝達分子中のITAMは、シグナル伝達分子が活性化された後のITAM中のチロシン残基のリン酸化によって少なくとも部分的に媒介される細胞内でのシグナル伝達において、重要なものである。ITAMは、シグナル伝達経路に関与する他のタンパク質に対するドッキング部位としても機能し得る。
【0128】
いくつかの例では、細胞質側シグナル伝達ドメインは、CD3ζまたはFcεR1γのものである。他の例では、細胞質側シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζに由来するものではない。
【0129】
1つの具体的な実施形態では、いくつかのシグナル伝達ドメインを相加または相乗効果のために融合させ得る。有用な付加的シグナル伝達ドメインの非限定的な例としては、TCRゼータ鎖、CD28、OX40/CD134、4-1BB/CD137、FcεRIy、ICOS/CD278、IL2R-ベータ/CD122、IL-2R-ガンマ/CD132、及びCD40のうちの1つ以上の一部または全てが挙げられる。
【0130】
他の実施形態では、本明細書に記載の細胞質側シグナル伝達ドメインはITAMモチーフを含まない。例としては、Jak/STAT、Toll-インターロイキン受容体(TIR)、及びチロシンキナーゼの細胞質側シグナル伝達ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
E.ヒンジドメイン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、細胞外抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメインをさらに含む。ヒンジドメインは、タンパク質の2つのドメインの間に通常みられるアミノ酸セグメントであり、タンパク質の柔軟性及び互いに対する片方または両方のドメインの運動を可能にし得る。CARポリペプチドの膜貫通ドメインに対する細胞外抗原結合ドメインのそのような柔軟性及び運動を提供する任意のアミノ酸配列を使用することができる。
【0132】
ヒンジドメインを含むことが当技術分野で知られている任意のタンパク質のヒンジドメインが、本明細書に記載のCARポリペプチドにおける使用に適合している。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインの少なくとも一部であり、CARポリペプチドに柔軟性を付与する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインはCD8のものである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8のヒンジドメインの一部、例えば、CD8のヒンジドメインの少なくとも15(例えば、20、25、30、35または40)連続アミノ酸を含有する断片である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインはCD28のものである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD28のヒンジドメインの一部、例えば、CD28のヒンジドメインの少なくとも15(例えば、20、25、30、35または40)連続アミノ酸を含有する断片である。
【0133】
抗体、例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD抗体のヒンジドメインも、本明細書に記載のCARポリペプチドにおける使用に適合している。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1及びCH2を繋ぎ合わせているヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは抗体のものであり、抗体のヒンジドメイン及び抗体の1つ以上の定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは抗体のヒンジドメイン及び抗体のCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは抗体のヒンジドメイン及び抗体のCH2定常領域及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はIgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域ならびにCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域及びCH3定常領域を含む。
【0134】
天然に存在しないペプチドを本明細書に記載のCARポリペプチドのためのヒンジドメインとして使用してもよい。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間のヒンジドメインはペプチドリンカー、例えば(GlyxSer)nリンカーであり、式中のx及びnは独立して3~12の、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の、またはそれより大きい整数であり得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)n(配列番号3)であり、式中のnは3~60の、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60の整数であり得る。特定の実施形態では、nは60より大きい整数であり得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)3(配列番号4)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)6(配列番号5)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)9(配列番号6)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)12(配列番号7)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)15(配列番号8)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)30(配列番号9)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)45(配列番号10)である。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは(Gly4Ser)60(配列番号11)である。
【0135】
他の実施形態では、ヒンジドメインは、様々な長さ(例えば10~80アミノ酸残基)の親水性残基からなる非構造化ポリペプチドである延長組換えポリペプチド(XTEN)である。XTENペプチドのアミノ酸配列は、当業者にとって明白であろうし、例えば米国特許第8,673,860号の中に見つけることができ、参照によりその関連する開示内容を本明細書に援用する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインはXTENペプチドであり、60アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインはXTENペプチドであり、30アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインはXTENペプチドであり、45アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインはXTENペプチドであり、15アミノ酸を含む。
【0136】
本明細書に記載のCARポリペプチドを作るために使用されるヒンジドメインのいずれかは、250個以下のアミノ酸残基を含有し得る。ある場合には、CARポリペプチドは、比較的長い、例えば150~250アミノ酸残基(例えば、150~180アミノ酸残基、180~200アミノ酸残基、または200~250アミノ酸残基)を含有するヒンジドメインを含有し得る。他の例では、CARポリペプチドは中くらいの大きさのヒンジドメインを含有し得、ヒンジドメインが60~150アミノ酸残基(例えば、60~80、80~100、100~120、または120~150アミノ酸残基)を含有し得る。あるいは、CARポリペプチドは短いヒンジドメインを含有し得、ヒンジドメインが60未満のアミノ酸残基(例えば、1~30アミノ酸、または31~60アミノ酸)を含有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCAR構築物はヒンジドメインを全く含有しない。
【0137】
F.シグナルペプチド
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、ポリペプチドのN末端にシグナルペプチド(シグナル配列としても知られる)も含む。一般に、シグナル配列は、ポリペプチドを細胞内の所望の部位に指向するペプチド配列である。いくつかの実施形態では、シグナル配列はCARポリペプチドを細胞の分泌経路に指向し、脂質二重層内へのCARポリペプチドの組込み及び係留を可能にすることになる。本明細書に記載のCARポリペプチドにおける使用に適合した、天然に存在するタンパク質のシグナル配列または合成の天然に存在しないシグナル配列を含むシグナル配列は、当業者にとって明白であろう。いくつかの実施形態では、CD8αからのシグナル配列である。いくつかの実施形態では、シグナル配列はCD28からのものである。いくつかの実施形態では、シグナル配列は、ネズミカッパ鎖からのものである。さらに他の実施形態では、シグナル配列はCD16からのものである。
【0138】
G.CARポリペプチドの例
表1は、本明細書に記載のCARポリペプチドの例を示す。これらの例示的な構築物は、N末端からC末端に向かって順に、シグナル配列、抗原結合ドメイン(例えば、GPC3に対して特異的であるscFv断片)、ヒンジドメイン及び膜貫通部分を有する一方で、任意選択の共刺激ドメイン及び細胞質側シグナル伝達ドメインの位置については入れ替えができる。
【0139】
【表1】
【0140】
例としてのCARポリペプチドのアミノ酸配列を以下に示す(シグナル配列を斜体で示す)。
配列番号1
【化1】
配列番号2
【化2】
【0141】
III.共刺激ポリペプチド及び抗GPC3 CARポリペプチドが発現している造血細胞
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び同じく本明細書に記載される抗GPC3 CARポリペプチド(CAR発現細胞、例えばCAR T細胞)の1つ以上が発現している遺伝子操作型宿主細胞(造血細胞、例えば、造血幹細胞及び免疫細胞、例えばT細胞またはNK細胞)を、本明細書に提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は造血細胞またはその子孫である。いくつかの実施形態では、造血細胞は造血幹細胞であり得る。他の実施形態では、宿主細胞は免疫細胞、例えばT細胞またはNK細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はNK細胞である。他の実施形態では、免疫細胞は、樹立された細胞株、例えばNK-92細胞であり得る。
【0142】
ある場合には、宿主細胞に導入される共刺激ポリペプチドは、宿主細胞の内在性タンパク質と同一である。共刺激ポリペプチドのコード配列の付加的コピーを宿主細胞に導入することで、天然の対応物と比較してポリペプチドの発現レベルが増強される(つまり過剰発現する)であろう。ある場合には、宿主細胞に導入される共刺激ポリペプチドは宿主細胞に対して異種であり、つまり、宿主細胞に存在していない、または発現しない。そのような異種共刺激ポリペプチドは、宿主細胞に発現しない天然に存在する(例えば異なる種からの)タンパク質であり得る。あるいは、異種共刺激ポリペプチドは天然のタンパク質の変異体、例えば本明細書に記載のものであり得る。いくつかの例では、外来性の(つまり、宿主細胞に元来存在していない)コード核酸コピーは染色体外に存在し得る。他の例では、外来性のコード配列コピーは宿主細胞の染色体の中に組み込まれ得、内在性遺伝子の天然の遺伝子座とは異なる部位に位置し得る、
【0143】
そのような遺伝子操作型宿主細胞には、調節された共刺激経路を有する能力がある。予想されるそれらの高い増殖速度、生物活性及び/または生存率を仮定すれば、遺伝子操作型細胞、例えばT細胞及びNK細胞は、共刺激ポリペプチドが発現しないかまたはそれがより低いレベルで発現するもしくはそのより低活性な形態が発現するCAR T細胞に比べて、より高い治療有効性を有すると予想されよう。
【0144】
免疫細胞の集団は、任意の供給源、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄または組織、例えば、脾臓、リンパ節、胸腺、幹細胞または腫瘍組織から得ることができる。あるいは、免疫細胞集団は、幹細胞、例えば造血幹細胞及び人工多能性幹細胞(iPSC)に由来するものであり得る。所望の種類の宿主細胞を得るのに適した供給源は、当業者にとって明白であろう。いくつかの実施形態では、免疫細胞の集団は、本明細書に記載の治療を必要とする患者(例えばヒト患者)から得られ得るPBMCに由来する。望ましい種類の宿主細胞(例えば、T細胞、NK細胞、またはT細胞とNK細胞)を、細胞と刺激分子との共インキュベーションによって得られた細胞集団の中で増殖させてもよい。非限定的な例を挙げると、T細胞の増殖のために抗CD3及び抗CD28抗体が使用され得る。
【0145】
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び抗GPC3ポリペプチドのいずれかが発現する免疫細胞を構築するためには、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの安定的または一過的な発現のための発現ベクターが、本明細書に記載の従来の方法によって作り出され得、免疫宿主細胞に導入され得る。例えば、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドをコードする核酸を、1つまたは2つの好適な発現ベクター、例えば、好適なプロモーターに機能可能に繋げられたウイルスベクターまたは非ウイルスベクターにクローニングしてもよい。ある場合には、CARポリペプチド及び共刺激ポリペプチドのための各コード配列は2つの別個の核酸分子の上にあり、2つの別個のベクターにクローニングされ得、これらが同時に、または順次、好適な宿主細胞に導入され得る。あるいは、CARポリペプチド及び共刺激ポリペプチドのためのコード配列は1つの核酸分子の上にあり、1つのベクターにクローニングされ得る。CARポリペプチド及び共刺激ポリペプチドのコード配列は、2つのポリペプチドの発現が異なるプロモーターによって制御されるような2つの別個なプロモーターに機能可能に繋げられ得る。あるいは、CARポリペプチド及び共刺激ポリペプチドのコード配列は、2つのポリペプチドの発現が単一のプロモーターによって制御されるような、1つのプロモーターに機能可能に繋げられ得る。1つのmRNA分子から2つの別個のポリペプチドが翻訳され得るように、2つのポリペプチドのコード配列の間に好適な配列が挿入され得る。そのような配列、例えばIRESまたはリボソームスキッピング部位は当技術分野でよく知られている。さらなる説明を以下に提供する。
【0146】
好適な条件の下で核酸及びベクター(複数可)を制限酵素と接触させて各分子上に、互いに対合し得る及びリガーゼで繋ぎ合わされ得る相補的端部を作り出すことができる。あるいは、合成核酸リンカーを、共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドをコードする核酸の末端にライゲートすることができる。合成リンカーは、ベクター内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含有し得る。発現ベクター/プラスミド/ウイルスベクターの選択は共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のための宿主細胞の種類に依拠することになるが、真核細胞内における組込み及び複製に適したものとすべきである。
【0147】
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドの発現のために、様々なプロモーター、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)中間早期プロモーター(intermediate early promoter)、ウイルスLTR、例えば、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR、サルウイルス40(SV40)早期プロモーター、ヒトEF1アルファプロモーター、または単純ヘルペスtkウイルスプロモーターを使用することができる。共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のためのさらなるプロモーターとしては、免疫細胞において恒常的に活性である任意のプロモーターが挙げられる。あるいは、免疫細胞内で発現が調節され得るような任意の調節可能なプロモーターを使用してもよい。
【0148】
加えて、ベクターは例えば以下のいくつかまたは全てを含有し得る:選択マーカー遺伝子、例えば、宿主細胞における安定的または一過的形質移入体の選択のためのネオマイシン遺伝子またはカナマイシン遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの即時早期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;ヒトEF1アルファ遺伝子のイントロン配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結及びRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマウイルス複製起点及びColE1;配列内リボソーム結合部位(IRES)、多目的な複数のクローニング部位;試験管内でのセンス及びアンチセンス鎖RNAの転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーター;誘因があるとベクターを保有する細胞の死滅を引き起こす「自殺スイッチ」または「自殺遺伝子」(例えば、HSVチミジンキナーゼまたは誘導性カスパーゼ、例えばiCasp9)、及び共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドの発現を評価するためのレポーター遺伝子。
【0149】
1つの具体的実施形態において、そのようなベクターは自殺遺伝子も含む。本明細書中で使用する場合、「自殺遺伝子」という用語は、自殺遺伝子が発現している細胞の死滅を引き起こす遺伝子を指す。自殺遺伝子は、当該遺伝子が発現する細胞に薬剤、例えば薬物に対する感受性を付与する遺伝子であり得、細胞を薬剤と接触させるかまたはそれに曝露した場合に細胞の死滅を引き起こす。自殺遺伝子は当技術分野において既知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照されたい)、それには例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ニトロレダクターゼ、及びカスパーゼ、例えばカスパーゼ8が含まれる。
【0150】
導入遺伝子を含有するベクターの製造に適したベクター及び方法は当技術分野でよく知られており利用可能である。共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドの発現のためのベクターの作製の例は、例えばUS2014/0106449の中に見つけることができ、参照によりこの全体を本明細書に援用する。
【0151】
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドをコードする核酸配列を含んでいるどのベクターも、本開示の範囲内に含まれる。そのようなベクター、またはその中に含まれている共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドをコードする配列は、宿主細胞内、例えば宿主免疫細胞内に任意の好適な方法によって送達され得る。ベクターを免疫細胞に送達する方法は当技術分野でよく知られており、これには、DNA電気穿孔、RNA電気穿孔、リポソームなどの試薬を使用するトランスフェクション、またはウイルス形質導入(例えば、レトロウイルス形質導入、例えばレンチウイルス形質導入)が含まれ得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドの発現のためのベクターは、ウイルス形質導入(例えば、レトロウイルス形質導入、例えばレンチウイルスまたはガンマレトロウイルス形質導入)によって宿主細胞に送達される。ウイルスによる送達方法の例としては、組換えレトロウイルス(例えば、PCT公開第WO90/07936号、第WO94/03622号、第WO93/25698号、第WO93/25234号、第WO93/11230号、第WO93/10218号及び第WO91/02805号;米国特許第5,219,740号及び第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;ならびに欧州特許第0 345 242号を参照されたい)、アルファウイルス系ベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開第WO94/12649号、第WO93/03769号、第WO93/19191号、第WO94/28938号、第WO95/11984号及び第WO95/00655号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のためのベクターはレトロウイルスである。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のためのベクターはレンチウイルスである。
【0153】
レトロウイルス形質導入について記載した参考文献の例としては、Anderson et al.,米国特許第5,399,346号、Mann et al.,Cell 33:153(1983)、Temin et al.,米国特許第4,650,764号、Temin et al.,米国特許第4,980,289号、Markowitz et al.,J.Virol.62:1120(1988)、Temin et al.,米国特許第5,124,263号、1995年3月16日公開のDougherty et al.による国際特許公開第WO95/07358号、及びKuo et al.,Blood 82:845(1993)が挙げられる。WO95/07358では、初代Bリンパ球の高効率の形質導入について記載されている。WO2016040441A1も参照されたく、参照によりこれを、本明細書中で言及される目的及び主題のために援用する。
【0154】
共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドをコードするベクターを宿主細胞にウイルスベクターを使用して導入する例では、免疫細胞に感染できベクターを保有するウイルス粒子は、当技術分野で知られており例えばWO1991/002805A2、WO1998/009271A1及び米国特許第6,194,191号の中に見つかり得る任意の方法によって製造され得る。ウイルス粒子は細胞培養上清から採集され、ウイルス粒子を免疫細胞に接触させる前に単離及び/または精製され得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドのいずれかをコードするRNA分子は、従来の方法(例えば試験管内での転写)によって調製され得、その後、好適な宿主細胞、例えば本明細書に記載のものの中に既知の方法、例えば、Rabinovich et al.,Human Gene Therapy 17:1027-1035によって導入され得る。
【0156】
ある場合には、共刺激ポリペプチドをコードする核酸、及び好適な抗GPC3 CARポリペプチドをコードする核酸は別個の発現ベクターにクローニングされ得、これらが同時に、または順次、好適な宿主細胞に導入され得る。例えば、共刺激ポリペプチドを発現させるための発現ベクター(またはRNA分子)をまず宿主細胞に導入してもよく、共刺激ポリペプチドが発現しているトランスフェクトされた宿主細胞を試験管内で単離及び培養してもよい。その後、共刺激ポリペプチドが発現する宿主細胞に、好適なCARポリペプチドを発現させるための発現ベクター(またはRNA分子)が導入され得、両ポリペプチドが発現しているトランスフェクトされた細胞が単離され得る。別の例では、共刺激ポリペプチド及びCARポリペプチドを発現させるための各々の発現ベクター(例えばRNA分子)が同時に宿主細胞に導入され得、両ポリペプチドが発現しているトランスフェクトされた宿主細胞が慣例的方法論によって単離され得る。
【0157】
他の例では、共刺激ポリペプチドをコードする核酸、及び抗GPC3 CARポリペプチドをコードする核酸は同じ発現ベクターにクローニングされ得る。CAR及び共刺激ポリペプチドの発現のためのポリヌクレオチドも、(中でそのようなポリヌクレオチドが少なくとも1つの調節エレメントに機能可能に繋げられているベクターを含めて)本開示の範囲内に含まれる。本開示の有用なベクターの非限定的な例としては、例えばガンマレトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)及びレンチウイルスベクターを含めたレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
【0158】
ある場合には、共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドをコードする核酸(複数可)は、トランスポゾンによって宿主細胞内に送達され得る。ある場合には、コード核酸(複数可)は、遺伝子編集、例えば、CRISPR、TALEN、ZFNまたはメガヌクレアーゼによって宿主細胞内に送達され得る。
【0159】
ある場合には、本明細書に記載の核酸は2つのコード配列を含み得、片方は本明細書に記載の抗GPC3 CARポリペプチドをコードしており、もう片方は、共刺激経路を調節することができるポリペプチド(すなわち共刺激ポリペプチド)をコードしている。本明細書に記載の2つのコード配列を含む核酸は、2つのコード配列にコードされるポリペプチドが、独立した(及び物理的に別個の)ポリペプチドとして発現し得るように、構成され得る。この目的を達成するために、本明細書に記載の核酸は、第1及び第2コード配列の間に位置する第3ヌクレオチド配列を含有し得る。この第3ヌクレオチド配列は例えばリボソームスキッピング部位をコードし得る。リボソームスキッピング部位は、正常なペプチド結合形成を減じる配列である。この機序の結果として、1つのメッセンジャーRNAからさらなるオープンリーディングフレームが翻訳される。この第3ヌクレオチド配列は、例えば、P2A、T2AまたはF2Aペプチドをコードし得る(例えば、Kim et al.,PLoS One.2011;6(4):e18556を参照されたい)。非限定的な例を挙げると、例示的なP2Aペプチドは、
ATNFSLLKQAGDVEENPGP 配列番号72
のアミノ酸配列を有し得る。
【0160】
別の実施形態では、第3ヌクレオチド配列は配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードし得る。IRESは、末端依存的な方法で翻訳開始を可能にするRNAエレメントであり、同じく1つのメッセンジャーRNAからのさらなるオープンリーディングフレームの翻訳を可能にしている。あるいは、第3ヌクレオチド配列は、第2ポリペプチドの発現を制御する第2プロモーターをコードし得る。第3ヌクレオチド配列はまた、1つより多いリボソームスキッピング配列、IRES配列、付加的プロモーター配列またはその組合せをコードするものであってもよい。
【0161】
核酸は、(限定されないが第4及び第5コード配列を含む)付加的コード配列も含み得、付加的コード配列にコードされるポリペプチドがさらなる独立した及び物理的に別個になったポリペプチドとして発現するように構成され得る。この目的のために、付加的コード配列は、1つ以上のリボソームスキッピング配列、IRES配列または付加的プロモーター配列をコードする1つ以上のヌクレオチド配列によって他のコード配列から隔てられ得る。
【0162】
いくつかの例では、核酸(例えば本明細書に記載の発現ベクターまたはRNA分子)は、共刺激ポリペプチド(例えば本明細書に記載のもの)と好適な抗GPC3 CARポリペプチドとの両方のためのコード配列を含み得、2つのコード配列は任意の順序で、P2Aペプチド(例えば、ATNFSLLKQAGDVEENPGP;配列番号72)をコードする第3ヌクレオチド配列によって隔てられている。結果として、2つの別個のポリペプチドである共刺激ポリペプチドとCARとがそのような核酸から生成し得、この場合、P2A部分であるATNFSLLKQAGDVEENPG(配列番号73)は(上流のコード配列にコードされる)上流のポリペプチドと繋がっており、P2Aペプチドからの残基Pは(下流のコード配列にコードされる)下流のポリペプチドと繋がっている。いくつかの例では、CARポリペプチドが上流のものであり、共刺激ポリペプチドが下流のものである。他の例では、共刺激ポリペプチドが上流のものであり、CARポリペプチドが下流のものである。
【0163】
いくつかの例では、上記核酸はさらに、コード配列の2つのセグメントの間、例えば上流のポリペプチドとP2Aペプチドとの間にリンカー(例えばGSGリンカー)をコードし得る。
【0164】
具体例において、本明細書に記載の核酸は、核酸がトランスフェクトされた宿主細胞の中でそれが2つの別個のポリペプチドを発現させるように構成される:(i)N末端からC末端に向かって、好適な抗GPC3 CAR(例えば配列番号1または配列番号2)、ペプチドリンカー(例えばGSGリンカー)、及びP2Aペプチド由来のATNFSLLKQAGDVEENPG(配列番号73)セグメントを含有する、第1ポリペプチド、ならびに(ii)N末端からC末端に向かって、P2Aペプチド由来のP残基、及び共刺激ポリペプチド(例えば配列番号12~71のいずれか)を含有する、第2ポリペプチド。
【0165】
いくつかの例では、4-1BB、4-1BBL(例えば、天然4-1BBLの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、ICOS、ICOSL、OX40、OX40L、CD70、LIGHT、CD30L、GITRL、CD40、CD40L、TL1A、BAFFRまたはCD27などの共刺激ポリペプチドと組み合わせて抗GPC3 CARが遺伝子操作型免疫細胞に共発現する。他の例では、4-1BBL(例えば、天然4-1BBLの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、ICOSL、OX40L、CD70、LIGHT、GITRL、CD40LまたはTL1Aなどの共刺激ポリペプチドと組み合わせてCAR構築物が遺伝子操作型免疫細胞に共発現する。あるいは、CD28共刺激ドメインを含むCARが、同じくCD28共刺激ドメインを含む共刺激ポリペプチドと組み合わされて遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドはCD28共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドは、CD70、LIGHT、OX40L、TL1A、BAFFR、CD40、CD40L、CD27、4-1BB、またはICOSである。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドはCD28共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドはBAFFRまたはCD27である。CD28共刺激分子は配列番号12のアミノ酸配列を含み得る。BAFFRは配列番号31のアミノ酸配列を含み得、CD27は配列番号33のアミノ酸配列を含み得る。
【0167】
他の実施形態では、CARポリペプチドは4-1BB共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドは、CD70、LIGHT、OX40L、BAFFR、CD27またはOX40である。他の実施形態では、CARポリペプチドは4-1BB共刺激分子の共刺激ドメインを含み、共刺激ポリペプチドは、CD70、LIGHTまたはOX40Lである。4-1BB共刺激分子は配列番号22のアミノ酸配列を含み得る。CD70は配列番号34のアミノ酸配列を含み得、LIGHTは配列番号43のアミノ酸配列を含み得、OX40Lは配列番号47のアミノ酸配列を含み得る。
【0168】
他の実施形態では、4-1BB、4-1BBL(例えば、天然4-1BBLの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、ICOS、ICOSL、OX40、OX40L、CD70、LIGHT、CD30L、GITRL、CD40、CD40L、TL1A、BAFFR(例えば、天然BAFFRの変異体、例えば本明細書に記載のもの)またはCD27などの共刺激ポリペプチドと組み合わせて、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR、例えば配列番号1が遺伝子操作型免疫細胞に共発現する。いくつかの実施形態では、ICOSL、BAFFR(例えば、天然BAFFRの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、LIGHT、CD30LまたはCD27の共刺激ポリペプチドと組み合わせて、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR、例えば配列番号1が遺伝子操作型免疫細胞に共発現する。
【0169】
さらに他の実施形態では、4-1BB、4-1BBL(例えば、天然4-1BBLの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、ICOS、ICOSL、OX40、OX40L、CD70、LIGHT、CD30L、GITRL、CD40、CD40L、TL1A、BAFFR(例えば、天然BAFFRの変異体、例えば本明細書に記載のもの)またはCD27などの共刺激ポリペプチドと組み合わされた、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR、例えば配列番号2が遺伝子操作型免疫細胞に共発現する。いくつかの実施形態では、ICOSL、BAFFR(例えば、天然BAFFRの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、LIGHT、CD30LまたはCD27の共刺激ポリペプチドと組み合わせて、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CAR、例えば配列番号2が遺伝子操作型免疫細胞に共発現する。
【0170】
あるいは、4-1BBまたはCD28などの共刺激ドメインを含むCARが、同じく上記共刺激ドメインを含む共刺激ポリペプチドと組み合わされて遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。他の実施形態では、4-1BBまたはCD28などの共刺激ドメインを含むCARが、異なる共刺激ポリペプチド、例えば、4-1BB、4-1BBL(例えば、天然4-1BBLの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、ICOS、ICOSL、OX40、OX40L、CD70、LIGHT、CD30L、GITRL、CD40、CD40L、TL1A、BAFFRまたはCD27と組み合わされて遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、4-1BBまたはCD28などの共刺激ドメイン及びヒンジドメインを含むCARが、同じく共刺激ドメインを含む共刺激ポリペプチドと組み合わされて遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。いくつかの実施形態では、共刺激ドメイン、ヒンジドメイン及び共刺激ポリペプチドは、同じ共刺激分子、例えば4-1BBまたはCD28からのものである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメイン、ヒンジドメイン及び共刺激ポリペプチドは、異なる共刺激分子からのものである。あるいは、またはさらに、本明細書に開示されるCAR構築物は、CD8の膜貫通ドメインまたはその一部を含み得る。
【0172】
いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド、例えば、4-1BB、4-1BBL(例えば、天然4-1BBLの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、ICOS、ICOSL、OX40、OX40L、CD70、LIGHT、CD30L、GITRL、CD40、CD40L、TL1A、BAFFR(例えば、天然BAFFRの変異体、例えば本明細書に記載のもの)またはCD27と組み合わせて、いかなるヒンジドメインも含まないCARが遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。いくつかの実施形態では、ICOSL、BAFFR(例えば、天然BAFFRの変異体、例えば本明細書に記載のもの)、LIGHT、CD30LまたはCD27の共刺激ポリペプチドと組み合わせて、いかなるヒンジドメインも含まないCARが遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、CAR(例えば本明細書に記載のもの)、及び4-1BBLである共刺激ポリペプチドが遺伝子操作型免疫細胞に共発現し得る。ある場合には、4-1BBLは、天然に存在する4-1BBL(例えばヒト4-1BBL)の機能性変異体、例えば本明細書に開示される変異体のいずれか(例えば、4-1BBL Q89A、4-1BBL L115A、4-1BBL K127A、または4-1BBL Q227A)であり得る。いくつかの例では、4-1BBLポリペプチドは、天然に存在する対応物の短縮型変異体であって細胞質側断片が欠損した当該短縮型変異体である。
【0174】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作型免疫細胞(例えばT細胞)は、(a)4-1BB共刺激ドメイン(例えば配列番号1)またはCD28共刺激ドメイン(例えば配列番号2)を含むCAR構築物、及び(b)(外来)共刺激分子、例えば本明細書に開示されるもの(例えば、CD70、LIGHT、OX40LまたはCD27)が共発現するものであり、同じCARが発現するが外来共刺激分子が発現しない免疫細胞に比べてより高い生物活性(これはより高いIL-2分泌によって証明され得る)及び/またはより高い増殖活性を発揮する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作型免疫細胞(例えばT細胞)は、(a)4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARを含むCAR構築物(例えば、配列番号1を含むCAR構築物)、及び(b)CD70が共発現するものである。いくつかの実施形態では、遺伝子操作型免疫細胞(例えばT細胞)は、(a)4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARを含むCAR構築物(例えば、配列番号1を含むCAR構築物)、及び(b)LIGHTが共発現するものである。いくつかの実施形態では、遺伝子操作型免疫細胞(例えばT細胞)は、(a)4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARを含むCAR構築物(例えば、配列番号1を含むCAR構築物)、及び(b)OX40Lが共発現するものである。いくつかの実施形態では、遺伝子操作型免疫細胞(例えばT細胞)は、(a)CD28共刺激ドメインを含むCAR構築物(例えば、配列番号2を含むCAR構築物)、及び(b)CD27が共発現するものである。
【0175】
以下の実施例が示すように、共刺激分子と共に発現する場合にそのようなCAR構築物は、そのそれぞれの親CAR構築物に比べて、改善された増殖;改善されたサイトカイン産生;インビボマウス腫瘍モデルにおける向上した有効性;高められたT細胞持続性;MDSC抑制に対する向上した耐性;及び/またはTreg抑制に対する向上した耐性を発揮する。ある場合には、関心対象の付加的ポリペプチドも宿主免疫細胞内に導入され得る。
【0176】
本明細書に提供される共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドのいずれかをコードするベクター、または抗GPC3 CARポリペプチド及び/または共刺激ポリペプチド(例えばRNA分子)をコードする核酸を宿主細胞内に導入した後、細胞は、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現を可能にする条件の下で培養され得る。共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドをコードする核酸が調節可能なプロモーターによって調節される例では、宿主細胞は、調節可能なプロモーターが活性化される条件の下で培養され得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターであり、免疫細胞は誘導性分子の存在下、または誘導性分子が生成する条件の下で培養される。共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現するか否かを判定することは、当業者にとって明白なことであろうし、既知の任意の方法、例えば、定量的逆転写酵素PCR(qRT-PCR)による共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドをコードするmRNAの検出、またはウェスタンブロッティング、蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリーを含めた方法による共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドタンパク質の検出によって評価され得る。
【0177】
あるいは、抗GPC3 CARポリペプチドの発現は、免疫細胞を対象に投与した後にインビボで起こり得る。本明細書中で使用する場合、「対象」という用語は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、サル、マウス、ウサギまたは飼育哺乳動物を指す。例えば、対象は霊長類であり得る。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0178】
あるいは、本明細書に開示される免疫細胞のいずれかにおける共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3ポリペプチドの発現は、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドをコードするRNA分子を導入することによって成し遂げられ得る。そのようなRNA分子は、試験管内での転写、または化学合成によって調製され得る。その後、RNA分子は好適な宿主細胞、例えば免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、またはT細胞とNK細胞との両方)の中に例えば電気穿孔によって導入され得る。例えば、Rabinovich et al.,Human Gene Therapy,17:1027-1035、及びWO WO2013/040557に記載されている方法に従ってRNA分子を合成して宿主免疫細胞内に導入することができる。
【0179】
特定の実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドを含むベクター(複数可)またはRNA分子(複数可)はインビボで宿主細胞または免疫細胞に導入され得る。非限定的な例を挙げると、これは、本明細書に記載の1つ以上の共刺激ポリペプチド及び/または1つ以上のCARポリペプチドをコードするベクターまたはRNA分子を対象に(例えば静脈内投与によって)直接投与してインビボで共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドを含む宿主細胞を作り出すことによって成し遂げられ得る。
【0180】
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドのいずれかが発現している宿主細胞を調製する方法は、宿主細胞をエクスビボで活性化させることも含み得る。宿主細胞を活性化させることは、宿主細胞を、細胞がエフェクター機能(例えば細胞傷害)を行うことができ得る活性化状態に刺激することを意味する。宿主細胞を活性化させる方法は、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のために使用される宿主細胞の種類によって決まるであろう。例えば、エクスビボでT細胞を、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2、フィトヘマグルチニン、操作型人工刺激細胞もしくは粒子、またはその組合せを含むがこれらに限定されない1つ以上の分子の存在下で活性化させてもよい。操作型人工刺激細胞は、当技術分野で知られている人工の抗原提示細胞であり得る。例えば、Neal et al.,J.Immunol.Res.Ther.2017,2(1):68-79、及びTurtle et al.,Cancer J.2010,16(4):374-381を参照されたく、これをもって参照によりこれらの各々の関連する開示内容を本明細書中で言及される目的及び主題のために援用する。
【0181】
他の例では、NK細胞は、エクスビボで1つ以上の分子、例えば、4-1BBリガンド、抗4-1BB抗体、IL-15、抗IL-15受容体抗体、IL-2、IL12、IL-18、IL-21、K562細胞、及び/または操作型人工刺激細胞もしくは粒子の存在下で活性化され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドのいずれかが発現している宿主細胞(CAR及び/または共刺激ポリペプチド発現細胞)を、対象への投与の前にエクスビボで活性化させる。宿主細胞が活性化されているか否かを判定することは、当業者にとって明白なことであろうし、細胞活性化、サイトカインの発現または分泌、及び細胞形態学に関連する1つ以上の細胞表面マーカーの発現を評価することを含み得る。
【0182】
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドのいずれかが発現している宿主細胞を作製する方法は、宿主細胞をエクスビボで増殖させることを含み得る。宿主細胞を増殖させることは、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現している細胞の数の増加をもたらす任意の方法、例えば、宿主細胞が増殖するのを可能にすること、または宿主細胞を刺激して増殖させることを伴い得る。宿主細胞の増殖を刺激する方法は、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のために使用される宿主細胞の種類によって決まるであろうし、当業者にとって明白であろう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドのいずれかが発現している宿主細胞を対象への投与の前にエクスビボで増殖させる。
【0183】
いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドが発現している宿主細胞を、対象への細胞の投与の前にエクスビボで増殖及び活性化させる。宿主細胞の活性化及び増殖は、ゲノム中へのウイルスベクターの組込み、ならびに本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドをコードする遺伝子の発現を可能にするために用いられ得る。mRNA電気穿孔を用いる場合は活性化及び/または増殖を必要としなくてもよいものの、活性化された細胞に電気穿孔を実施する方がより効果的であり得る。ある場合には、好適な宿主細胞において一過的に(例えば3~5日間)共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドを発現させる。一過的発現は、毒性の可能性がある場合に有益であり得、副作用の可能性についての初期段階の臨床試験において役立つはずである。
【0184】
共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドが発現している宿主細胞のいずれかを薬学的に許容される担体と混合して医薬組成物を形成してもよく、これも本開示の範囲内に含まれる。
【0185】
本開示の組成物に関連して使用する場合、「薬学的に許容される」という語句は、哺乳動物(例えばヒト)に投与した場合に生理学的に忍容され、通常は望ましくない反応を生じない、分子実体及びそのような組成物の他の成分を意味する。好ましくは、「薬学的に許容される」という用語は、本明細書中で使用される場合、連邦または州政府の規制機関によって承認されていること、または哺乳動物、より詳しくはヒトにおける使用に関して米国薬局方もしくは他の一般に認知される薬局方に載録されていることを意味する。「許容される」は、担体が組成物の活性成分(例えば、核酸、ベクター、細胞または治療抗体)に適合しており、組成物(複数可)が投与される対象に悪影響を及ぼさないことを意味する。本発明において使用される医薬組成物のいずれかは、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤を凍結乾燥製剤または水溶液の形態で含み得る。
【0186】
薬学的に許容される担体は、緩衝剤を含めて、当技術分野でよく知られており、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた酸化防止剤;保存剤;低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;アミノ酸;疎水性ポリマー;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物;金属錯体;及び/または非イオン性界面活性剤を含み得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照されたい。
【0187】
本開示の医薬組成物は、治療する特定の適応症のために必要な1つ以上の付加的活性化合物、好ましくは、互いに対する悪影響がなく相補的な活性を有するものを含有していてもよい。考えられる付加的活性化合物の非限定的な例としては、例えば、IL-2、ならびに当技術分野で知られている及び以下の併用治療についての記述の中で列挙される様々な薬剤が挙げられる。
【0188】
IV.本明細書に記載の遺伝子操作型造血細胞を使用する免疫療法
共刺激ポリペプチド及び抗GPC3 CARポリペプチドが共発現している遺伝子操作型宿主細胞、例えば造血細胞、例えば本明細書に記載の免疫細胞を、CARポリペプチドの標的となる抗原が発現している疾患細胞を直接的または間接的に(例えば、CARポリペプチドが結合するタグに複合した治療剤によって)阻害するための免疫療法、例えばT細胞療法またはNK細胞療法に使用することができる。免疫細胞にCARポリペプチドと共に共発現した共刺激ポリペプチドは、腫瘍微小環境において低グルコース、低アミノ酸、低pH及び/または低酸素環境下で細胞が効果的に成長及び/または機能するのを可能にすることによって細胞免疫療法を容易にするであろう。非腫瘍特異的な反応の可能性を制限するためにmRNA電気穿孔を用いて共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドを一過的に発現させることによって、臨床上の安全性がさらに強化され得る。
【0189】
本明細書に記載の方法は、治療的有効量の、本開示の共刺激ポリペプチド及びCARポリペプチドが共発現する遺伝子操作型宿主細胞、例えば免疫細胞(例えばTリンパ球またはNK細胞)を対象に導入することを含み得る。対象(例えば、ヒト患者、例えばヒトがん患者)は、抗がん療法剤を含むがこれに限定されない抗がん療法で付加的に治療されたことがあってもよいし、またはそれで治療されていてもよい。
【0190】
本開示に関して、それが本明細書中に挙げられた病態のいずれかに関するものである限り、「治療する」、「治療」などの用語は、そのような症状に関連する少なくとも1つの症候を軽減もしくは緩和する、またはそのような症状の進行を減速もしくは逆転させることを意味する。本開示の趣意の範囲内で、「治療する」という用語はまた、発症(すなわち疾患の臨床的出現に先立つ期間)を阻止すること、遅らせること、及び/または疾患の発展もしくは悪化のリスクを減らすことも意味する。例えば、がんとの関連において、「治療する」という用語は、患者の腫瘍負荷をなくすかもしくは軽減すること、または転移を防止するか、遅らせるか、もしくは阻害することなどを意味し得る。
【0191】
本明細書中で使用する場合、用量または量に対して適用される「治療的に有効な」という用語は、必要とする対象に投与した時に所望の活性をもたらすのに十分な、化合物または医薬組成物のその量を意味する。活性成分の合剤(例えば、共刺激ポリペプチド及び/またはキメラ抗原受容体(CAR)構築物が発現するTリンパ球またはNK細胞の集団を含む医薬組成物と、付加的抗がん治療薬)を投与する場合に合剤の有効量が、個々に投与された場合に有効となるであろう各成分の量を含んでいてもいなくてもよいことに留意されたい。本開示との関連の中で、「治療的に有効な」という用語は、本開示の方法で治療する障害の出現を遅らせること、その進行を阻止すること、その少なくとも1つの症候を軽減または緩和することにおいて十分となる、化合物または医薬組成物のその量を意味する。
【0192】
A.細胞免疫療法の有効性の強化
本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び抗GPC3 CARポリペプチドが発現している宿主細胞(例えば免疫細胞、例えばT細胞及びNK細胞)は、標的抗原が発現している細胞を阻害する及び/または例えば腫瘍微小環境において低グルコース環境、低アミノ酸環境、低pH環境及び/または低酸素環境の下で免疫細胞の成長及び/または増殖を増強するのに有用である。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物、例えば、ヒト、サル、マウス、ウサギまたは飼育哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象はヒトがん患者である。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の治療抗体のいずれかで付加的に治療されたことがある、またはそれで治療されている。
【0193】
本明細書に記載の方法を実施するために、有効量の、本明細書に記載の共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドのいずれかが発現している免疫細胞(NK細胞及び/またはTリンパ球)またはその組成物は、治療を必要とする対象に好適な経路、例えば静脈内投与によって投与され得る。本明細書中で使用する場合、有効量は、投与された時に対象に治療効果を与える各薬剤(例えば、共刺激ポリペプチド、CARポリペプチドが発現しているNK細胞及び/またはTリンパ球、またはその組成物)の量を指す。本明細書に記載の細胞または組成物の量が治療効果をもたらしたか否かの判定は、当業者にとって明白であろう。有効量は、当業者によって認識されるように、治療する特定の症状、症状の重症度、個々の患者のパラメータ、例えば、年齢、身体的状態、サイズ、社会的性別、性別及び体重、治療の継続期間、(もしあれば)現行の療法の性質、具体的な投与経路、ならびに医師の知識及び見解の範囲内に含まれる同様の因子によって様々である。いくつかの実施形態では、有効量は、GPC3+細胞に関連のある対象における任意の疾患または障害の症候を、緩和する、軽減する、改善する、好転させる、減らす、またはその進行を遅らせる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象はヒトがん患者である。
【0194】
本開示の方法は任意のがんまたは任意の病原体の治療のために用いられ得る。本開示の方法によって治療され得るがんの非限定的な具体例としては、例えば、乳癌、胃癌、肺癌、皮膚癌、前立腺癌、大腸癌、腎細胞癌腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、胚細胞癌、肝芽腫、中皮腫、膵臓癌、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、甲状腺癌、肝細胞癌、食道癌及び子宮頸癌が挙げられる。特定の実施形態では、がんは、固形乳癌、肺癌または肝細胞癌であり得る。特定の実施形態では、がんは固形腫瘍であり得る。
【0195】
本開示の方法は、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染によって引き起こされ得る感染性疾患を治療するためにも用いられ得る。そのような場合、遺伝子操作型免疫細胞は、病原性抗原(例えば、感染症を引き起こす細菌、ウイルスまたは真菌に関連する抗原)を標的とするFc含有治療剤(例えば抗体)と併用され得る。病原性抗原の非限定的な具体例としては、細菌性、ウイルス性及び真菌性の抗原が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例を以下に示す:インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ、ヘマグルチニンもしくはM2タンパク質、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F糖タンパク質またはG糖タンパク質、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質gB、gC、gDもしくはgE、クラミジアMOMPもしくはPorBタンパク質、デングウイルスコアタンパク質、マトリックスタンパク質もしくは糖タンパク質E、麻疹ウイルスヘマグルチニン、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質gB、I型ポリオウイルスVP1、HIV1のエンベロープ糖タンパク質、B型肝炎コア抗原もしくは表面抗原、ジフテリア毒素、連鎖球菌24Mエピトープ、淋菌ピリン、仮性狂犬病ウイルスg50(gpD)、仮性狂犬病ウイルスII(gpB)、仮性狂犬病ウイルスIII(gpC)、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質H、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質E、伝染性胃腸炎糖タンパク質195、伝染性胃腸炎マトリックスタンパク質、またはヒトC型肝炎ウイルス糖タンパク質E1もしくはE2。
【0196】
いくつかの実施形態では、GPC3が発現している細胞を少なくとも20%及び/または少なくとも2倍阻害すること、例えば、標的抗原が発現している細胞を50%、80%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはそれ以上阻害することに有効な量の免疫細胞を、対象に投与する。
【0197】
付加的治療剤(例えば抗体系免疫療法剤)を使用して、当該治療剤が対象に有用であると考えられる任意の疾患または障害の症候を治療、緩和または軽減してもよい。
【0198】
本明細書に記載の細胞免疫療法の有効性は、当技術分野で知られており技能を有する医療従事者にとって明白であろう任意の方法によって評価され得る。例えば、細胞免疫療法の有効性は、対象の生存、あるいは対象またはその組織もしくは試料における腫瘍またはがん負荷によって評価され得る。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現している免疫細胞の非存在下での有効性と比較して細胞免疫療法の有効性を少なくとも20%及び/または少なくとも2倍強化すること、例えば、細胞免疫療法の有効性を50%、80%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはそれ以上強化することに有効な量の免疫細胞を、治療を必要とする対象に投与する。
【0199】
本明細書に記載の組成物または方法のいずれかにおいて、免疫細胞(例えばNK及び/またはT細胞)は、対象に対して自家性であり得、つまり、免疫細胞は、治療を必要とする対象から得られ得、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のために遺伝子操作され得、その後、同じ対象に投与され得る。1つの具体例では、自家免疫細胞(例えばTリンパ球またはNK細胞)を、対象に再導入する前にエクスビボで活性化及び/または増殖させる。対象への自家細胞の投与は、非自家細胞の投与と比較して宿主細胞の拒絶反応の軽減をもたらし得る。
【0200】
あるいは、宿主細胞は同種異系細胞であり、つまり、細胞は第1対象から得られ、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドの発現のために遺伝子操作され、種が同じであるが第1対象とは異なる第2対象に投与される。例えば、同種異系免疫細胞は、ヒトドナーに由来するものであり得、ドナーとは異なるヒトレシピエントに投与され得る。具体的な実施形態において、Tリンパ球は、内在性T細胞受容体の発現が阻害または排除された同種異系Tリンパ球である。1つの具体例では、同種異系Tリンパ球を、対象に導入する前にエクスビボで活性化及び/または増殖させる。Tリンパ球は、当技術分野で知られている任意の方法で、例えば、抗CD3/CD28、IL-2、フィトヘマグルチニン、操作型人工刺激細胞もしくは粒子、またはそれらの組合せの存在下で、活性化され得る。
【0201】
NK細胞は、当技術分野で知られている任意の方法で、例えば、CD137リガンドタンパク質、CD137抗体、IL-15タンパク質、IL-15受容体抗体、IL-2タンパク質、IL-12タンパク質、IL-18、IL-21タンパク質、及びK562細胞株、及び/または操作型人工刺激細胞もしくは粒子からなる群から選択される1つ以上の薬剤の存在下で、活性化され得る。NK細胞を増殖させる有用な方法の説明については、例えば、米国特許第7,435,596号及び第8,026,097号を参照されたい。例えば、本開示の組成物または方法に使用するNK細胞は、好ましくは、主要組織適合性複合体I及び/またはII分子の発現が欠損しているかまたは乏しく、膜結合IL-15及び4-1BBリガンド(CDI37L)が発現するように遺伝子改変されている細胞への曝露によって増殖され得る。そのような細胞株としては、K562[ATCC、CCL243;Lozzio et al.,Blood 45(3):321-334(1975)、Klein et al.,Int.J.Cancer 18:421-431(1976)]、及びウィルムス腫瘍細胞株HFWT(Fehniger et al.,Int Rev Immunol 20(3-4):503-534(2001)、Harada H,et al.,Exp Hematol 32(7):614-621(2004))、子宮内膜癌細胞株HHUA、メラノーマ細胞株HMV-II、肝芽腫細胞株HuH-6、肺小細胞癌細胞株Lu-130及びLu-134-A、神経芽腫細胞株NB19及びN1369、精巣由来胎児性癌細胞株NEC14、子宮頸癌細胞株TCO-2、及び骨髄転移神経芽腫細胞株TNB1[Harada,et al.,Jpn.J.Cancer Res 93:313-319(2002)]が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましくは、使用する細胞株は、K562及びHFWT細胞株のように、MHC I及びII分子の発現が両方とも欠損しているかまたは乏しい。固体担体を細胞株の代わりに使用してもよい。好ましくは、そのような担体の表面には、NK細胞と結合することならびに一次活性化事象及び/または増殖応答を誘発することができ、またはそのような作用を有する分子と結合することができ、それによって足場の役割を果たす、少なくとも1つの分子が結合しているべきである。担体は、その表面にCD137リガンドタンパク質、CD137抗体、IL-15タンパク質またはIL-15受容体抗体が結合したものであってもよい。担体は、その表面にIL-15受容体抗体及びCD137抗体が結合したものであることが好ましかろう。
【0202】
記載の組成物または方法の一実施形態では、対象へのTリンパ球、NK細胞、またはTリンパ球とNK細胞の導入(または再導入)の後に、治療的有効量のIL-2を対象に投与する。
【0203】
本開示によれば、患者は、体重1キログラムあたり細胞約105~1010個またはそれ以上(細胞/Kg)の範囲の治療的有効用量の、本開示の共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドを含む免疫細胞、例えばTリンパ球またはNK細胞を輸注することによって治療され得る。輸注は、患者が忍容できる頻度及び回数で、所望の応答が得られるまで繰り返され得る。適切な輸注用量及びスケジュールは患者によって様々であろうが、特定の患者の治療医師によって決定され得る。典型的には、およそ106細胞/Kgの初回用量を輸注して108細胞/Kg以上まで漸増させることになる。輸注された細胞を増殖させるためにIL-2が共投与され得る。IL-2の量は、体表面1平方メートルあたり約1~5×106国際単位であり得る。
【0204】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内であることを意味するが、これは部分的には値の測定または決定される方法、つまり測定システムの限界によって決まるであろう。例えば、「約」は、当技術分野の慣習によれば、許容される標準偏差の範囲内に入ることを意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の±20%以内、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内、さらにいっそう好ましくは±1%以内の範囲を意味し得る。あるいは、とりわけ生物学的システムまたはプロセスに関して、当該用語は値の1桁以内、好ましくは2倍以内を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲に特定の値を記載している場合、特に指定がない限り、「約」という用語が暗に含まれており、これに関して特定の値の許容誤差範囲内に入っていることを意味する。
【0205】
本明細書に記載の組成物または方法の有効性は、当技術分野で知られており技能を有する医療従事者にとって明白であろう任意の方法によって評価され得る。例えば、本明細書に記載の組成物または方法の有効性は、対象の生存、あるいは対象またはその組織もしくは試料におけるがんまたは病原体負荷によって評価され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、対象における療法(例えば、共刺激ポリペプチド及びCARポリペプチドが発現している免疫細胞の投与)の安全性または毒性に基づいて、例えば対象の健康全般及び/または有害事象もしくは重度の有害事象の存在によって、評価され得る。
【0206】
B.併用治療
本開示に記載の組成物及び方法は、がんのための他の種類の療法、例えば、化学療法、外科手術、放射線、遺伝子療法など、または抗感染症療法と併せて利用され得る。そのような療法は、本開示に係る免疫療法と同時に、または逐次的に(任意の順序で)施され得る。付加的治療剤と共投与する場合、各薬剤の好適な治療的有効投薬量は相加作用または相乗作用ゆえに低くなり得る。
【0207】
ある場合には、本明細書に開示される共刺激ポリペプチド及び/または抗GPC3 CARポリペプチドのいずれかが発現している免疫細胞(例えばTリンパ球及び/またはNK細胞)は、付加的治療剤(例えば付加的抗がん療法剤)で治療されたことがあるかまたはそれで治療されている対象に投与され得る。例えば、免疫細胞を付加的治療剤と同時にヒト対象に投与してもよい。あるいは、免疫細胞を付加的治療剤の前にヒト対象に投与してもよい。あるいは、免疫細胞を付加的治療剤の後にヒト対象に投与してもよい。
【0208】
共刺激ポリペプチドと、タグに対して特異的であるCARポリペプチドとが共発現する遺伝子操作型免疫細胞(例えばT細胞またはNK細胞)を、タグに複合した治療剤と併用してもよい。腫瘍細胞などの疾患細胞に関連する抗原に結合することができる治療剤によって、そのような遺伝子操作型免疫細胞は、疾患細胞に係合してその成長を阻害することができる。
【0209】
本開示の治療は、他の免疫調節治療、例えば、(GVAX、DC系ワクチンなどを含むがこれらに限定されない)治療ワクチン、(CTLA4、PD1、LAG3、TIM3などを遮断する薬剤を含むがこれらに限定されない)チェックポイント阻害剤、(例えばADCCまたはADCのための)治療抗体、または(41BB、OX40などを強化する薬剤を含むがこれらに限定されない)活性化剤と併用され得る。
【0210】
本開示の免疫療法と併用するのに有用な他の治療剤の非限定的な例としては、(i)抗血管新生剤(例えば、TNP-470、血小板第4因子、トロンボスポンジン-1、メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMP1及びTIMP2)、プロラクチン(16-Kd断片)、アンジオスタチン(プラスミノーゲンの38-Kd断片)、エンドスタチン、bFGF可溶性受容体、形質転換成長因子ベータ、インターフェロンアルファ、可溶性KDR及びFLT-1受容体、胎盤プロリフェリン関連タンパク質、及びCarmeliet and Jain(2000))によって列挙されているもの;(ii)VEGF拮抗薬またはVEGF受容体拮抗薬、例えば、抗VEGF抗体、VEGF変異体、可溶性VEGF受容体断片、VEGFまたはVEGFRを遮断することができるアプタマー、抗VEGFR中和抗体、VEGFRチロシンキナーゼの阻害剤、及びその任意の組合せ;ならびに(iii)化学療法薬化合物、例えば、ピリミジン類縁体(5-フルオロウラシル、フロキシウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン及びシタラビン)、プリン類縁体、葉酸拮抗薬及び関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))など;抗増殖/抗有糸分裂剤、例えば、天然物、例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、微小管妨害薬、例えばタキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビン、エピジポドフィロトキシン(エトポシド及びテニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド及びエトポシド(VP16));抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン;酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自らのアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を除去するL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂性アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類縁体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホナート-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及び類縁体、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂性代謝拮抗薬、例えば、葉酸類縁体(メトトレキサート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類縁体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化剤、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗転移剤;抗分泌剤(ブレフェルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(例えば、TNP-470、ゲニステイン、ベバシズマブ)及び成長因子阻害剤(例えば線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤及び分化誘導剤(トレチノイン);AKT阻害剤(例えば、MK-2206 2HCl、ペリフォシン(KRX-0401)、GSK690693、イパタセルチブ(GDC-0068)、AZD5363、ユプロセルチブ、アフレセルチブまたはトリシリビン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン及びイリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン及びプレドニゾロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘発剤及びカスパーゼ活性化剤;ならびにクロマチン妨害剤が挙げられる。
【0211】
さらなる有用な薬剤の例については、Physician’s Desk Reference,59.sup.th edition,(2005),Thomson P D R,Montvale N.J.、Gennaro et al.,Eds.Remington’s The Science and Practice of Pharmacy 20th edition,(2000),Lippincott Williams and Wilkins,Baltimore Md.、Braunwald et al.,Eds.Harrison’s Principles of Internal Medicine,15.sup.th edition,(2001),McGraw Hill,NY、Berkow et al.,Eds.The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,(1992),Merck Research Laboratories,Rahway N.J.も参照されたい。
【0212】
付加的治療剤の投与は、全身投与及び疾患部位(例えば腫瘍)への直接投与を含めた任意の好適な経路によって実施され得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に付加的治療剤を1回の用量で投与することを伴う。いくつかの実施形態では、方法は、対象に付加的治療剤を複数回の用量(例えば少なくとも2、3、4、5、6、7または8回の用量)で投与することを伴う。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現している免疫細胞の投与の約1、2、3、4、5、6または7日前に付加的治療剤の1回目の用量を対象に投与することとした複数回の用量で付加的治療剤を対象に投与する。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現している免疫細胞の投与の約24~48時間前の間に付加的治療剤の1回目の用量を対象に投与する。
【0214】
いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現している免疫細胞の投与の前、及びその後続けて約2週間ごとに、付加的治療剤を対象に投与する。いくつかの実施形態では、付加的治療剤の最初の2回の用量を約1週間(例えば、約6、7、8または9日間)空けて投与する。特定の実施形態では、3回目及びその後の用量を約2週間ごとに投与する。
【0215】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、付加的治療剤の投与のタイミングはおおよそのものであり、指定日の3日前及び3日後を含む(例えば、3週間ごとの投与は、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目または24日目を包含する)。
【0216】
本明細書に記載の方法の有効性は、当技術分野で知られており技能を有する医療従事者にとって明白であろう任意の方法及び/または本明細書に記載のものによって評価され得る。例えば、細胞免疫療法の有効性は、対象の生存、あるいは対象またはその組織もしくは試料におけるがん負荷によって評価され得る。いくつかの実施形態では、細胞免疫療法は、対象における療法(例えば、共刺激ポリペプチド及び/またはCARポリペプチドが発現している免疫細胞の投与)の安全性または毒性に基づいて、例えば対象の健康全般及び/または有害事象もしくは重度の有害事象の存在によって、評価される。
【0217】
V.治療用途のためのキット
本開示は、本明細書に記載の組成物を使用するためのキットも提供する。例えば、本開示は、疾患細胞、例えば腫瘍細胞の成長を阻害する及び/または低グルコース環境、低アミノ酸環境、低pH環境及び/または低酸素環境で例えば腫瘍環境中で免疫細胞の成長及び/または増殖を増強するのに使用するための、共刺激ポリペプチドと抗GPC3 CARポリペプチドとが発現する共発現する免疫細胞(例えばTリンパ球またはNK細胞)の集団を含むキットも提供する。キットは、免疫細胞上に発現したCARポリペプチドに結合するものであるタグに複合した治療剤(例えば本明細書に記載のもの)をさらに含み得る。そのようなキットは、本明細書に記載されているような共刺激ポリペプチドとCARポリペプチドとが共発現するものである本明細書に記載の遺伝子操作型免疫細胞(例えばTリンパ球及び/またはNK細胞)の集団、及び任意選択のタグに複合した治療剤を含んだ、1つ以上の容器を含み得る。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキットは、試験管内で増殖させるものである共刺激ポリペプチドが発現している及びCARが発現している免疫細胞、ならびに活性化T細胞上に存在する細胞表面抗体に対して特異的である抗体、例えば、抗CD5抗体、抗CD38抗体または抗CD7抗体を含む。共刺激ポリペプチドが発現している及びCARが発現している免疫細胞には、当技術分野で知られているまたは本明細書中に開示されているCARのいずれかが発現し得る。
【0219】
あるいは、本明細書に開示されるキットは、同じく本明細書に記載されるCARポリペプチドのいずれか及び共刺激ポリペプチドのいずれかを全体としてコードする本明細書に記載の核酸または核酸セットを含み得る。
【0220】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかにおける使用のための説明書をさらに含み得る。含まれる説明書は、意図した活性、例えば、対象における標的細胞成長の阻害、及び/または低グルコース環境、低アミノ酸環境(例えば低グルタミン環境)、低pH環境及び/または低酸素環境(例えば、低グルコース、低アミノ酸、低pHまたは低酸素腫瘍微小環境)での免疫細胞の成長及び/または増殖の増強をもたらすための、対象への第1及び第2医薬組成物の投与についての説明を含み得る。キットはさらに、対象が治療を必要とするか否かを同定することに基づいた治療に適する対象の選択についての説明を含む。いくつかの実施形態では、説明書は、遺伝子操作型免疫細胞の集団を投与することについての説明を含み、任意選択的に、タグ複合治療剤を投与することについての説明を含む。
【0221】
本明細書に記載される免疫細胞及び任意選択のタグ複合治療剤の使用に関する説明書は大抵、投薬量、投薬スケジュール及び意図した治療のための投与経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バルク包装品(例えば複数回用量包装品)または単位未満の用量であり得る。本開示のキットの中に補充される説明書は、通常、ラベルまたは包装品添付物に記載された説明書である。ラベルまたは包装品添付物は、対象における疾患または障害を治療する、発症を遅らせる及び/または緩和するために医薬組成物が使用されることを示す。
【0222】
本明細書において提供されるキットは、好適な包装材の中に入っている。好適な包装材としては、バイアル、ボトル、広口瓶、可撓性包装材などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の装置、例えば、吸入器、鼻腔内投与装置または輸注装置と組み合わせて使用するための包装品もさらに企図される。キットは、無菌的使用ポートを有し得る(例えば、容器は、静注液剤バッグ、または皮下注射針による穿刺が可能な栓を備えたバイアルであり得る)。容器もまた、無菌的使用ポートを有し得る。第1医薬組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載のCARポリペプチド及び共刺激ポリペプチドが発現する免疫細胞(例えばTリンパ球またはNK細胞)の集団である。
【0223】
キットは任意選択的に、付加的な構成要素、例えば、緩衝材及び解釈的情報を提供し得る。通常、キットは、容器、及び容器に付けられたかまたは関連付けられたラベルまたは包装品添付物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記キットの内容物を含んだ製品を提供する。
【0224】
一般的技術
本開示の実施は、特に指定されない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を採用することになるが、これらは当業者の技量の範囲内である。そのような技術は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985>>;Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984>>;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986>>;Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986>>;and B.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.)の中で十分に説明されている。
【0225】
さらなる労作をせずとも、当業者であれば上記説明に基づいて本開示を最大限に利用することができるものと考えられる。したがって、以下の具体的な実施形態は、単なる例示とみなされるべきであり、決して本開示の残部を限定するものではない。本明細書中で引用される全ての刊行物を参照により本明細書中で言及される目的及び主題のために援用する。
【実施例
【0226】
実施例1:抗GPC3 CAR変異体が発現しているT細胞の活性は共刺激ポリペプチドが共発現することによって増強される。
この実施例は、抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドまたはB7/CD28スーパーファミリーの共刺激ペプチドをT細胞に発現させることでT細胞の活性を抗GPC3 CAR単独に比べて増強できることを実証する。
【0227】
これらの実験では、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)のみをコードするか、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-CD28、配列番号1)のみをコードするか、またはこれらのCAR変異体の各々を共刺激ポリペプチドCD30L、CD40L、CD70、GITRL、ICOSL、LIGHT、OX40L、TL1A、BAFFR、CD40、CD27、OX40、ICOS及び4-1BBと組み合わせてコードするウイルスをT細胞に形質導入した。形質導入されたT細胞を、増殖、サイトカイン放出、細胞傷害及び反復刺激を含む機能性アッセイのパネルで評価した(以下の実施例の中のアッセイの詳細を参照されたい)。この試験から得られた結果は、どちらかまたは両方の抗GPC3 CARと上に列挙される共刺激ポリペプチドの1つ以上との組合せによってT細胞増殖が増強され、特定のサイトカインの産生が増加し、及び/または細胞傷害が増強されたことを示した。
【0228】
これらの実験は、抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドまたはB7/CD28スーパーファミリーの共刺激ペプチドをT細胞に発現させることでT細胞の活性を抗GPC3 CAR単独に比べて増強できることを、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド及びCD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチドのどちらに関しても実証している。向上した活性を付与する共刺激ポリペプチドは、どのCAR変異体を同じT細胞に共発現させるかによって異なる。
【0229】
実施例2:反復刺激アッセイにおいて、抗GPC3 CAR及びTNF共刺激ポリペプチドが発現しているT細胞の活性の増強は、CAR中の共刺激ドメインが何であるかによって決まる。
この実施例は、抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドCD70、LIGHT及びOX40LをT細胞に発現させることで、複数回の再刺激の条件下で標的細胞の存在下においてT細胞の活性が抗GPC3 CAR単独に比べて増強されること、ならびにCAR中の共刺激ドメインが何であるかによって増強のレベルが決まることを実証する。これらの実験では、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)のみ、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)のみ、またはこれらのCAR変異体の各々とCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)とがP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられたものをコードするウイルスを、T細胞に形質導入した。GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現している細胞を、抗CD70抗体で染色することによってフローサイトメトリーでCD70の発現について評価した。GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して、GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は、より高い蛍光強度によって証明される、より多くのCD70発現を示した(図10、パネルA及びB)。
【0230】
形質導入されたT細胞(エフェクター)とGPC3発現Hep3B細胞(標的)とを2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、10%のウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640培地の中に含ませて200μLの反応体積でインキュベートした。反応物のインキュベーションは37℃で5%CO2のインキュベータ内で行った。3日または4日ごとに、(培地100μL中の)50,000個の新鮮な標的細胞が入った新しいプレートに半量のT細胞を移すことによってT細胞を再刺激し、終体積を200μLに調整した。細胞の再刺激は3回行った。各時間点で、残存する細胞を抗CD3抗体及び生死判定染料で染色した。T細胞増殖の尺度としてCD3陽性生細胞の数をフローサイトメトリーによって見積もった。前の時間点に対するT細胞増殖倍率を時間の関数としてプロットした(図1)。
【0231】
GPC3 CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は、GPC3 CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して同程度のまたはより優れた増殖をどの回の刺激の後にも示した(図1、パネルA)。対照的に、GPC3 CAR-CD28とCD70とが共発現しているT細胞は、GPC3 CAR-CD28が単独で発現しているT細胞と比較して同程度の増殖をどの回の刺激の後にも示した。GPC3 CAR-4-1BBとLIGHTとが共発現しているT細胞は、GPC3 CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して同程度のまたはより優れた増殖をどの回の刺激の後にも示した(図1、パネルB)。対照的に、GPC3 CAR-CD28とLIGHTとが共発現しているT細胞は、GPC3 CAR-CD28が単独で発現しているT細胞と比較して同程度の増殖をほとんどの時間点で示し、3回目の刺激の後に増殖の中等度の改善を示した。GPC3 CAR-4-1BBとOX40Lとが共発現しているT細胞は、GPC3 CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して同程度のまたはより優れた増殖をどの回の刺激の後にも示した(図1、パネルC)。対照的に、GPC3 CAR-CD28とOX40Lとが共発現しているT細胞は、GPC3 CAR-CD28が単独で発現しているT細胞と比較して同程度のまたは劣る増殖をほとんどの時間点で示し、3回目の刺激の後に増殖の中等度の改善を示した。
【0232】
これらの実験は、CD70、LIGHT及びOX40LのようなTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドが、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARも発現するT細胞に共発現することで、複数回の再刺激の後にT細胞活性を増強できることを実証している。対照的に、CD70、LIGHT及びOX40Lは、抗GPC3-CD28 CARと共発現した場合にはT細胞の活性を増強しない。
【0233】
実施例3:4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドCD70、LIGHT及びOX40Lとが共発現しているT細胞は反復刺激アッセイにおいて増殖及びサイトカイン放出の増強を示す。
この例は、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドCD70、LIGHT及びOX40LをT細胞に発現させることでT細胞の活性が抗GPC3 CAR単独に比べて増強されることを実証する。これらの実験では、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)をコードするウイルス、またはP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられたGPC3-CAR-4-1BBとCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)とをコードするウイルスを、T細胞に形質導入した。
【0234】
形質導入されたT細胞(エフェクター)とGPC3発現JHH7細胞(標的)とを、2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、10%のウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640培地の中に含ませて200μLの反応体積でインキュベートした。反応物のインキュベーションは37℃で5%CO2のインキュベータ内で行った。3日または6日目に、(培地100μL中の)50,000個の新鮮な標的細胞が入った新しいプレートに半量のT細胞を移すことによってT細胞を再刺激し、終体積を200μLに調整した。各時間点で、残存する細胞を抗CD3抗体及び生死判定染料で染色した。T細胞増殖の尺度としてCD3陽性生細胞数をフローサイトメトリーによって見積もった。各回の再刺激の時間点で、前の時間点に対するT細胞増殖倍率を時間の関数としてプロットした(図2、パネルA)。
【0235】
2回目の刺激の24時間後である4日目に上清を反応物から取り出し、サイトカイン産生について分析した。サイトカインの測定は、U-PLEXアッセイキット(Meso Scale Discovery)を製造業者の説明書に従って使用して行った。IL-2、IFN-ガンマ、及びIL-17Aの測定結果を、3日目に測定したウェル内の細胞数を基準として正規化してpg/mL/細胞の値を得、3日目の刺激の後に6日目の測定で測定して認められた増殖倍率の関数としてプロットした(図2、パネルB、C及びD)。
【0236】
GPC3 CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して、GPC3 CAR-4-1BBとCD70、LIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞は、最初の2回の刺激の後には同程度の増殖を示し、3回目の刺激の後にはより優れた増殖を示した(図2、パネルA)。GPC3 CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して、GPC3 CAR-4-1BBとCD70、LIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞は、より優れたIL-2(図2、パネルB)、IFN-ガンマ(図2、パネルC)及びIL17-A(図2、パネルD)を2回目の刺激の24時間後に示した。
【0237】
これらの実験は、CD70、LIGHT及びOX40LのようなTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドが、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARも発現するT細胞に共発現することで、T細胞活性を増強できることを実証している。
【0238】
実施例4:4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドCD70、LIGHT及びOX40Lとが共発現しているT細胞はサイトカイン放出及び増殖の増強を示す。
【0239】
この実施例は、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドCD70、LIGHT及びOX40LをT細胞に発現させることでT細胞の活性が抗GPC3 CAR単独に比べて増強されることを実証する。これらの実験では、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)をコードするウイルス、またはP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられたGPC3-CAR-4-1BBとCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)とをコードするウイルスを、T細胞に形質導入した。
【0240】
形質導入されたT細胞(エフェクター)とGPC3発現Hep3B細胞(標的)とを2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で播種し、37℃で5%CO2のインキュベータ内で24時間インキュベートした。上清を反応物から取り出し、ヒトIL-2アッセイキット(Cisbio)を製造業者の説明書に従って使用してIL-2について分析した。上清中のIL-2の濃度を、試験した変異体の関数としてプロットした(図3、パネルA)。GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して、GPC3-CAR-4-1BBとCD70、LIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞はどれもより優れたIL-2産生を実証した。
【0241】
形質導入されたT細胞(エフェクター)とGPC3発現HepG2細胞(標的)とを1:1のエフェクター対標的比で混合し、37℃で5%CO2のインキュベータ内で12日間インキュベートした。6日目及び12日目に試料を採取し、生存率色素及び抗CD3抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。T細胞増殖の尺度であるCD3+生細胞の数を、試験した変異体及び時間点の関数としてプロットした(図3、パネルB)。GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較して、GPC3-CAR-4-1BBとCD70、LIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞は、6日目には同程度のレベルの増殖を示し、12日目にはより優れた増殖を示した。
【0242】
これらの実験は、CD70、LIGHT及びOX40LのようなTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドが、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARも発現するT細胞に共発現することで、T細胞活性を増強できることを実証している。
【0243】
実施例5:4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとCD70とが共発現しているT細胞は、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとLIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞に比べてより優れた活性を示す。
この実施例は、4-1BB主要共刺激ドメインを含有する抗GPC3 CAR(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)と組み合わせた場合に共刺激ポリペプチドCD70(配列番号34)が他の腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーメンバーと比較して実質的な機能的利点をもたらすことを実証する。これらの実験では、CARポリペプチド(配列番号1)のみ、またはP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられたCARポリペプチドとCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)とをコードするウイルスをT細胞に形質導入した。
【0244】
いくつかの実験では、形質導入されたT細胞T(エフェクター)とHep3B細胞(標的)とを、2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に含ませて播種し、3~4日ごとに50,000個の新鮮な標的細胞で再刺激を行った。U-PLEXアッセイキット(Meso Scale Discovery)を製造業者の説明書に従って使用して培養物上清からのサイトカイン産生(IL-17A)を経時測定した。IL-17Aレベルは実験を通してpg/mLで表される(図4のパネルA)。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとLIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞に比べてより優れたIL-17A産生を示した。
【0245】
他の実験では、形質導入されたT細胞T(エフェクター)とHep3B細胞(標的)とを、2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に含ませて播種し、7日ごとに50,000個の新鮮な標的細胞で再刺激を行い、経時的なT細胞増殖の尺度としてCD3陽性細胞の数をフローサイトメトリーによって見積もった。CAR T細胞の増殖は前の時間点に対する倍率変化として表される(図4のパネルB)。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとLIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞に比べてより優れた増殖を示した。
【0246】
他の実験では、形質導入されたT細胞(エフェクター)をHepG2標的細胞と共に、1:1のエフェクター対標的比(30,000個のエフェクター細胞、30,000個の標的細胞)で、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に含ませて播種し、12日後にT細胞増殖の尺度としてCD3陽性細胞数をフローサイトメトリーによって見積もった。T細胞の増殖はCD3+T細胞総計数によって表される(図4のパネルC)。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとLIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞に比べてより優れた増殖を示した。
【0247】
まとめると、実験は、4-1BB主要共刺激ドメインを含有する抗GPC3 CAR(配列番号1)と組み合わせた場合に共刺激ポリペプチドCD70(配列番号34)が他の腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーメンバーと比較して実質的な機能的利点をもたらすことを実証している。
【0248】
実施例6:CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドCD27とが共発現しているT細胞はサイトカイン放出及び増殖の増強を示す。
【0249】
この実施例は、CD28主要共刺激ドメインを含有する抗GPC3 CAR(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)と組み合わせた場合に共刺激ポリペプチドCD27(配列番号33)が実質的な機能的利点をT細胞にもたらすことを実証する。これらの実験では、CARポリペプチド(配列番号2)のみ、またはP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられたCARポリペプチドとCD27(配列番号33)とをコードするウイルスをT細胞に形質導入した。GPC3-CAR-CD28が発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現している細胞をCD27発現についてフローサイトメトリーで抗CD27抗体による染色によって評価した。より高い平均蛍光強度によって証明されるように、GPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞に比べてより多くのCD27表面発現を示した(図10、パネルC及びD)。
【0250】
いくつかの実験では、T細胞とHep3Bとを2:1のE:T比(60,000個のエフェクター細胞、30,000個の標的細胞)で、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に入れて混合し、その後、7日間インキュベートした。T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。CD3陽性細胞数をT細胞変異体の関数としてプロットした(図5、パネルA)。同様に、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に含まれたHepG2標的細胞による1:1のエフェクター対標的比(30,000個のエフェクター細胞、30,000個の標的細胞)での単回刺激の後のT細胞増殖も評価した(図5、パネルB)。これらの実験は、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較してGPC3-CAR-4-1BB及びCD27配列が発現しているT細胞が増殖を改善したことを実証している。
【0251】
いくつかの実験では、T細胞(エフェクター)とHep3B細胞またはHepG2細胞(標的)とを4:1のエフェクター対標的比(120,000個のエフェクター細胞、30,000個の標的細胞)で、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に入れて播種し、その後、24時間インキュベートした。反応物上清からのIL-2(Hep3B、図5、パネルC)及びIFN-ガンマ(HepG2、図5、パネルD)を、それぞれヒトIL-2アッセイキット(Cisbio)またはヒトIFN-ガンマアッセイキットアッセイ(Cisbio)を製造業者の説明書に従って使用して測定した。これらの実験は、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞と比較してGPC3-CAR-4-1BB及びCD27配列が発現しているT細胞がサイトカイン産生を改善したことを実証している。
【0252】
この実施例は、CD28主要共刺激ドメインを含有する抗GPC3 CARと組み合わせた場合に共刺激ポリペプチドCD27が実質的な機能的利点をT細胞にもたらすことを実証している。
【0253】
実施例7:CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドCD27とが共発現しているT細胞は抑制性MDSC及び制御性T細胞の存在下で活性の増強を示す。
この実施例は、CD28主要共刺激ドメインを含有する抗GPC3 CAR(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)と組み合わせた場合に共刺激ポリペプチドCD27(配列番号33)が、抑制性骨髄由来抑制細胞(MDSC)または制御性T細胞(Treg)を含有するアッセイにおいて実質的な機能的利点をT細胞にもたらすことを実証する。これらの実験では、GPC3-CAR-CD28(配列番号2)のみ、またはP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられGPC3-CAR-CD28とCD27(配列番号33)とをコードするウイルスをT細胞に形質導入した。
【0254】
いくつかの実験では、ドナーが一致するPBMCからのCD14+単球からMDSCを生成させた。手短に述べると、EasySepヒトCD14陽性選択キットII(Gibco)を製造業者のプロトコールに従って使用してCD14陽性細胞を単離した。GMCSF(10ng/mL)及びPGE2(1ng/mL)の存在下、10%のウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640培地の中でCD14+細胞を培養した。細胞のインキュベーションは37度で6日間、CO2(5%)インキュベータ内で行った。2日目に培養物にGMCSF(10ng/mL)及びPGE2(1ng/mL)を補充し、4日目に培地を除去し、10%のウシ胎仔血清が補充された新鮮なRPMI1640培地、ならびにGMCSF(10ng/mL)及びPGE2(1ng/mL)を補給した。MDSCとしてアッセイに使用するために細胞を6日目に採集した。細胞をフローサイトメトリーによって特性評価してそれがCD14low/HLA-DRlow/CD33high/PDL1highであることを確認した。T細胞(エフェクター)とHep G2細胞(標的)とを2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、3:1のエフェクター対MDSCの存在下で播種し、37℃+5%CO2で7日間インキュベートした。培養培地は、MDSCによる活性化T細胞の貪食を阻止するために組換えアネキシンVタンパク質(1μg/mL)を含有していた。CAR+CD3+細胞の数をフローサイトメトリーによって見積もり、結果を、MDSCなしでの最大応答に対するパーセントとして表した(図6、パネルA)。GPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞よりも高い応答を示し、MDSC抑制に打ち勝つ能力がより高いことが実証された。
【0255】
いくつかの実験では、ドナーが一致するPBMCから誘導性Tregをラパマイシン及びhTGF-bによって生成させ、Miltenyi CD4+/CD25+/CD127dim/-ヒト制御性T細胞単離キットIIを使用して単離した。T細胞(エフェクター)とHep3b細胞(標的)とを2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、Cell Trace Violet標識CAR-T細胞に対する様々な比率(1:1、1:2、1:4のTreg対CAR-T細胞)のTregの存在下で播種し、37℃+5%CO2で7日間インキュベートした。増殖の尺度としてCell Trace Violet標識CAR+細胞の数をフローサイトメトリーによって見積もった(図6のパネルB)。GPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞よりも多くの増殖を示し、Treg抑制に打ち勝つ能力がより高いことが実証された。
【0256】
まとめると、これらの実験は、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞と比較してGPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞が、MDSCかTregかのどちらかによって働く免疫抑制に打ち勝つより優れた能力を示すことを実証している。
【0257】
実施例8:4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドCD70、LIGHTまたはOX40Lとが共発現しているT細胞はマウスの腫瘍異種移植モデルにおいて活性の増強を示す。
この実施例は、マウスのGPC3発現異種移植モデルにおいてGPC3-CAR-4-1BBでの腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ペプチドCD70、LIGHT及びOX40Lの発現が、GPC3-CAR-4-1BB単独と比較して抗腫瘍活性の上昇をもたらすことを実証する。皮下ヒト肝細胞癌(HCC)異種移植モデル(Hep G2、Hep 3b、及びJHH7)をNSG(商標)(NOD scidガンマ、NOD.Cg-Prkdcscid IL2rgtm1Wjl/SzJ、005557系)マウスに樹立した。
【0258】
Hep G2 HCC(ATCC HB-8065)異種移植片を右側腹部での5×106個の細胞の皮下注射によって樹立した。腫瘍体積がおよそ100mm3に達した時(接種後19日目)にGPC3 CAR-T細胞による処置を開始した。腫瘍体積に基づいてマウスを無作為に各々マウス5匹の処置群に割り当て、GPC3-CAR-4-1BB(配列番号1)のみ、またはGPC3-CAR-4-1BBとCD70(配列番号34)、LIGHT(配列番号43)もしくはOX40L(配列番号47)とが発現しているT細胞によって静脈内への5×105個のCAR+細胞の用量で1日目及び8日目に処置した。実験の継続期間にわたって毎週2~3回、腫瘍体積及び体重を測定した。
【0259】
GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとLIGHTとが共発現しているT細胞は、評価したCAR用量でHep G2異種移植片に対して不活性であり、腫瘍成長は未処置対照と同程度であった(図7、パネルA)。GPC3-CAR-4-1BBとOX40Lとが共発現しているT細胞は、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞よりも活性がある程度大きく、5匹の動物の間で応答にばらつきがあった。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は活性が高く、40日目までに全ての動物に完全な腫瘍退縮をもたらし、その後全ての動物で再発があった。
【0260】
Hep 3b HCC(ATCC、HB-8064)異種移植片を右側腹部での5×106個の細胞の皮下注射によって樹立した。腫瘍体積がおよそ100mm3に達した時(接種後20日目)にGPC3 CAR-T細胞による処置を開始した。腫瘍体積に基づいてマウスを無作為に各々マウス5匹の処置群に割り当て、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞、GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞、またはGPC3-CAR-4-1BBとLIGHTとが共発現しているT細胞によって静脈内への1×106個のCAR+細胞の用量で1日目及び8日目に処置した。実験の継続期間にわたって毎週2~3回、腫瘍体積及び体重を測定した。
【0261】
GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞は、評価したCAR用量でHep 3b異種移植片に対して不活性であり、腫瘍成長は未処置対照と同程度であった(図8、パネルB)。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は活性が高く、5匹中4匹の動物に完全な腫瘍退縮があり、60日目以降に全ての腫瘍の再発があった。GPC3-CAR-4-1BBとLIGHTとが共発現しているT細胞は試験において最も活性であり、全ての動物に完全な腫瘍退縮をもたらし、70日目以降に5匹中2匹の動物に再発があった。
【0262】
JHH7 HCC(JCRB、1031)異種移植片を右側腹部での5×106個の細胞の皮下注射によって樹立した。腫瘍体積がおよそ50mm3に達した時(接種後8日目)にGPC3 CAR-T細胞による処置を開始した。腫瘍体積に基づいてマウスを無作為に各々マウス5匹の処置群に割り当て、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞、GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞、またはGPC3-CAR-4-1BBとLIGHTとが共発現しているT細胞によって静脈内への5×106個のCAR+細胞の用量で1日目及び8日目に処置した。実験の継続期間にわたって毎週2~3回、腫瘍体積及び体重を測定した。
【0263】
GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞は、評価したCAR用量でJHH7異種移植片に対する活性が中程度であり、処置群の中で応答にばらつきがあった(図7、パネルC)。3匹の動物において腫瘍成長が未処置対照と同程度であった一方、5匹中2匹の動物は完全な腫瘍退縮を経験した。GPC3-CAR-4-1BBとLIGHTとが共発現しているT細胞は活性が高く、5匹のうち、完全奏効した2匹を含めた4匹の動物に腫瘍退縮があった。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞は活性が高く、5匹中4匹の動物に完全な腫瘍退縮があった。GPC3-CAR-4-1BB処置群全体にわたって、完全な退縮があったどの動物にも腫瘍再発がなかった。
【0264】
これらの実験は、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARが単独で発現しているT細胞と比較して、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーCD70、LIGHT及びOX40Lとが共発現しているT細胞がマウスの異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性の増強を示すことを実証している。
【0265】
実施例9:CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーポリペプチドCD27とが共発現しているT細胞はマウスの腫瘍異種移植モデルにおいて活性の増強を示す。
この実施例は、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞と比較して、T細胞における腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ペプチドCD27とGPC3-CAR-CD28との共発現が、マウスのGPC3発現異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性の上昇をもたらすことを実証する。皮下ヒト肝細胞癌(HCC)異種移植モデル(JHH7)をNSG(商標)(NOD scidガンマ、NOD.Cg-Prkdcscid IL2rgtm1Wjl/SzJ、005557系)マウスに樹立した。
【0266】
JHH7 HCC(JCRB、1031)異種移植片を右側腹部での5×106個の細胞の皮下注射によって樹立した。腫瘍体積がおよそ50mm3に達した時(接種後8日目)にGPC3 CAR-T細胞による処置を開始した。腫瘍体積に基づいてマウスを無作為に各々マウス5匹の処置群に割り当て、GPC3-CAR-CD28(配列番号2)が単独で発現しているT細胞、またはGPC3-CAR-CD28とCD27(配列番号33)とが共発現しているT細胞によって静脈内への5×106個のCAR+細胞の用量で1日目及び8日目に処置した。実験の継続期間にわたって毎週2~3回、腫瘍体積及び体重を測定した。
【0267】
GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞は、評価したCAR用量でJHH7異種移植片に対して活性が高く、15日目までに5匹中4匹の動物に完全な腫瘍退縮をもたらし、その後に全ての腫瘍が再発した(図8)。GPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞は活性が高く、10日目までに全ての動物に腫瘍退縮があり、実験の残り全体を通して、腫瘍再発を伴うことなく腫瘍制御が持続した。
【0268】
これらの実験は、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARが単独で発現しているT細胞と比較して、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARとTNFスーパーファミリーメンバーCD27とが共発現しているT細胞が、マウスの異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性の増強を示すことを実証している。
【0269】
実施例10:抗GPC3 CARが単独でまたはTNFスーパーファミリーポリペプチドと組み合わせて発現しているT細胞の、マウスの異種移植モデルにおける増殖
【0270】
この実施例は、GPC3-CAR-4-1BBでの腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ペプチドCD70、及びGPC3-CAR-CD28でのCD27の発現が、腫瘍保有NSGマウスにおけるCAR-Tのインビボでの増殖の増強をもたらすことを実証する。
【0271】
皮下Hep G2異種移植片を保有する動物を、腫瘍体積がおよそ100mm3に達した時(接種後19日目)にGPC3 CAR-T細胞で処置した。各々マウス5匹の群を、GPC3-CAR-4-1BB(配列番号1)が発現しているT細胞、またはGPC3-CAR-4-1BBとCD70(配列番号34)とが共発現しているT細胞によって静脈内への5×105個のCAR+細胞の用量で1日目及び8日目に処置した。7、14、27、42及び56日目に全血試料(20μl)をイソフルラン麻酔下での眼窩採血によって採取し、フローサイトメトリーのために処理する時までBamBanker cryoprotectantによって冷凍した。赤血球を溶解させ、試料を生死判定染料及び抗ヒトCD3で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。結果を血液1μLあたりのCD3+生細胞の数として表す(図9、パネルA)。各時間点は5匹の動物の平均を表し、例外は星印とそれに続く評価試料数で示されている。
【0272】
ヒトCD3+細胞は全ての時間点で末梢血試料中に検出され、計数は7日目(2回目のCAR投薬の前に)1μLあたりおよそ1個の範囲であり、GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞のどちらにおいても計数が経時的に増加した(図9、パネルA)。GPC3-CAR-4-1BBとCD70とが共発現しているT細胞についてCD3+細胞計数の増加が検出され、27日目に計数がピークに達し、56日目の測定でT細胞計数の持続性は維持されていたが、他方、GPC3-CAR-4-1BBが単独で発現しているT細胞については56日目にCD3+細胞が検出されなかった。CD70の発現はインビボでのGPC3-CAR-4-1BB CAR-Tの増殖及び持続性に益をもたらす。
【0273】
皮下Hep 3b異種移植片を保有する動物を、腫瘍体積がおよそ100mm3に達した時(接種後20日目)にGPC3 CAR-T細胞で処置した。各々マウス5匹の群を、GPC3-CAR-CD28(配列番号2)が発現しているT細胞、またはGPC3-CAR-CD28とCD27(配列番号33)とが共発現しているT細胞によって静脈内への1×106個のCAR+細胞の用量で1日目及び8日目に処置した。15、25、40及び60日目に全血試料(20μl)をイソフルラン麻酔下での眼窩採血によって採取し、フローサイトメトリーのために処理する時までBamBanker cryoprotectantによって冷凍した。赤血球を溶解させ、試料を生死判定染料及び抗ヒトCD3で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。図9のパネルBに結果を血液1μLあたりのCD3+生細胞の数として表す。各時間点は5匹の動物の平均を表し、例外は星印とそれに続く評価試料数で示されている。
【0274】
ヒトCD3+細胞は全ての時間点で末梢血試料中に検出され、計数は15日目に1μLあたりおよそ100個の範囲であり、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞、及びGPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞のどちらにおいても計数が経時的に変動した。GPC3-CAR-CD28とCD27とが共発現しているT細胞について40日目及び60日目にCD3+細胞計数の増加が検出され、計数は40日目にピークに達し、GPC3-CAR-CD28が単独で発現しているT細胞に比べておよそ10倍高いレベルであった。CD27の発現はインビボでのGPC3-CAR-CD28 CAR-Tの増殖及び持続性に益をもたらす。
【0275】
これらの実験は、抗GPC3 CAR変異体が単独で発現しているT細胞と比較して、抗GPC3 CAR変異体とCD70及びCD27のようなTNFスーパーファミリーポリペプチドとが共発現しているT細胞がマウスの腫瘍モデルにおいてインビボでの増強されたT細胞増殖及び持続性を示し得ることを実証している。
【0276】
実施例11:抗GPC3 CAR変異体が発現しているT細胞の試験管内及びインビボでの活性は共刺激ポリペプチドが共発現することによって増強される。
上記実施例は、抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドまたはB7/CD28スーパーファミリー共刺激ペプチドを発現させることで試験管内及びインビボでのT細胞の活性を抗GPC3 CAR単独に比べて増強できることを実証している。上記データは以下のようにまとめることができる:
●GPC3-4-1BB CAR+CD70、GPC3-4-1BB CAR+LIGHT、及びGPC3-4-1BB CAR+OX40L
○親CAR-4-1BBに比べて改善された、親CAR-4-1BBと比較する反復刺激アッセイにおける増殖
■CAR-4-1BB+LIGHTの組合せに特異的であり、CAR-CD28+LIGHTは、親CAR-CD28を上回る改善を示さない
○親CAR-4-1BBに比べて改善された、反復刺激後のIL-2、IFN-ガンマ及びIL-17A産生
○親CAR-4-1BBに比べて改善された、単回刺激増殖アッセイにおける増殖
○親CAR-4-1BBに比べて改善された、刺激後のIL-2産生
●GPC3-4-1BB CAR+CD70、GPC3-4-1BB CAR+LIGHT
○親CAR-4-1BBに比べて向上した、マウスの腫瘍モデルにおけるインビボでの有効性
●GPC3-4-1BB CAR+CD70
○親CAR-4-1BBに比べて向上した、マウスの腫瘍モデルにおけるインビボでのT細胞持続性
●GPC3-CD28 CAR+CD27
○親CAR-CD28に比べて改善された増殖
○親CAR-CD28に比べて改善されたIL-2産生
○親CAR-CD28に比べて向上した、MDSC抑制に対する耐性
○親CAR-CD28に比べて向上した、Treg抑制に対する耐性
○親CAR-CD28に比べて向上した、マウスの腫瘍モデルにおけるインビボでの有効性
【0277】
実施例12:抗GPC3 CAR変異体が発現しているT細胞の活性は共刺激ポリペプチドが共発現することによって増強される。
この実施例は、抗GPC3 CARと組み合わせて腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドまたはB7/CD28スーパーファミリー共刺激ペプチドをT細胞に発現させることでT細胞の活性を抗GPC3 CAR単独に比べて増強できることを実証する。
【0278】
これらの実験では、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-4-1BB、配列番号1)のみ、CD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチド(GPC3-CAR-CD28、配列番号2)のみ、またはP2Aリボソームスキッピング配列によって隔てられた表2に列挙される共刺激ポリペプチドと組み合わせたこれらのCAR変異体の各々をコードするウイルスを、T細胞に形質導入した。形質導入されたT細胞を、GPC3発現Hep 3B標的細胞と共にインキュベートした時のその増殖能力及びサイトカイン(IL-2)産生能力について評価した。形質導入されたT細胞T(エフェクター)及びHep 3B細胞(標的)を2:1のエフェクター対標的比(100,000個のエフェクター細胞、50,000個の標的細胞)で、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI1640培地の中に含ませて播種し、14日間のアッセイを通して3~4日ごとに50,000個の新鮮な標的細胞で再刺激を行った。各再刺激の時間点で、T細胞増殖の尺度としてCD3陽性細胞の数をフローサイトメトリーによって見積もり、Mac OS X用GraphPad Prism 7 バージョン7.0a、GraphPadソフトウェア、La Jolla California USAを使用してCD3+細胞の総計数の曲線下面積(AUC)を計数対時間のプロットから算出した。24時間目に、Meso Scale Discovery V-Plex ヒトIL-2キットを製造業者のプロトコールに従って使用して培養物上清からのサイトカイン産生(IL-2)を測定した。表2に示すように、各アッセイの中での付加的共刺激ポリペプチドを含んでいない対照同属GPC3 CAR変異体(親)の値に対するパーセントとして相対IL-2濃度及び増殖AUC値を算出した。ある場合には、共刺激ポリペプチドと組み合わせてGPC3-CAR-CD28が発現しているT細胞の活性を、GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞のそれと比較した。共刺激ペプチドの共発現が機能を増強したと判定されたのは、活性がIL-2産生と増殖との両方に関してその同属親のそれの115%を上回ったかまたはこれらのアッセイの少なくとも1つにおいて140%を上回った場合であった。
【0279】
これらの実験は、全ての共刺激ポリペプチドが活性を増強するわけではないものの、4-1BB共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチドとCD28共刺激ドメインを有する抗GPC3 CARポリペプチドとの両方に関してT細胞に腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー共刺激ポリペプチドまたはB7/CD28スーパーファミリー共刺激ペプチドを抗GPC3 CARと組み合わせて発現させることでT細胞の活性を抗GPC3 CAR単独に比べて増強できることを実証している。CD27共刺激ポリペプチドを共発現させることで、GPC3-CAR-4-1BBが発現しているT細胞の活性が増強され;CD40L及びTL1A共刺激ポリペプチドを共発現させることで、GPC3-CAR-CD28が発現しているT細胞の活性が増強された。
表2.親4-1BB含有または親CD28含有CAR変異体と比較したときの、抗GPC3 CARと共刺激ポリペプチドとが共発現している変異体の試験管内での増殖及びIL-2放出の採点。
【0280】
【表2】
【表3】
【0281】
他の実施形態
本明細書中に開示される特徴は全て、任意の組合せで組み合わされ得る。本明細書中に開示される各特徴を、同じ、等価な、または類似する目的に役立つ代替特徴で置き換えてもよい。したがって、開示される各特徴は、特に明記しない限り全般的な一連の均等物または類似する特徴のほんの一例であるにすぎない。
【0282】
当業者であれば上記説明から本開示の必須の特徴をその趣旨及び範囲から逸脱せずに簡単に確認することができ、本開示の様々な変更及び改変を行ってそれを様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲に含まれる。
【0283】
均等物
いくつかの本発明の実施形態を本明細書中で説明及び例示してきたが、当業者であれば、機能を実施するための、及び/または結果及び/または本明細書に記載の利点の1つ以上を得るための他の様々な手段及び/または構造を容易に考え付くであろうし、そのような変形形態及び/または改変形態は本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲に入るとみなされる。より広くは、当業者であれば、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料及び配置が例示を意図したものであり、本発明の教示内容が用いられる具体的な用途または複数の用途によって実際のパラメータ、寸法、材料及び/または配置が決まるであろうことを、容易に理解するであろう。当業者であれば、慣習的な実験しか用いずに本明細書に記載の具体的な本発明の実施形態の多くの均等物を認識するかまたは見出せるであろう。したがって、上記実施形態が例としてのみ提示されていること、ならびに本発明の実施形態の具体的に記載され特許請求されている以外の実施が別記の特許請求の範囲及びその均等物の範囲の中でなされ得ることは理解されるべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記載の各個の特徴、システム、物品、材料、キット及び/または方法に関するものである。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/または方法が相互に矛盾していない場合に本開示の本発明の範囲に含まれる。
【0284】
本明細書中で定義され使用される全ての定義は、定義された用語の辞書での定義、参照により援用される文書での定義、及び/または通常の意味よりも優先されると理解されるべきである。
【0285】
本明細書中に開示される全ての参考文献、特許及び特許出願は、参照により各々の引用の目的である主題に関して援用されるが、これはある場合には文書全体を包含し得る。
【0286】
不定冠詞「a」及び「an」は、ここに本明細書及び特許請求の範囲の中で使用される場合、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、但し、そうでないと明確に示されている場合は除く。
【0287】
「及び/または」という語句は、ここに本明細書及び特許請求の範囲の中で使用される場合、そのように繋ぎ合わされた要素の「どちらかまたは両方とも」、つまり、ある例では一緒に存在しており他の例では別個に存在している要素を意味すると理解されるべきである。「及び/または」によって連結された複数の要素は、同じように、つまり、そのように繋ぎ合わされた要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が、具体的に特定された要素との関係があろうとなかろうと任意選択的に存在していてもよい。したがって、非限定的な例を挙げると、「A及び/またはB」に対する言及は、開放形式の用語、例えば「含む」と併せて使用される場合、ある実施形態ではAのみ(B以外の要素を任意選択的に含む);別の実施形態ではBのみ(A以外の要素を任意選択的に含む);さらに別の実施形態ではAとBとの両方(他の要素を任意選択的に含む);などを意味し得る。
【0288】
ここに本明細書及び特許請求の範囲の中で使用する場合、「または」は、上に定義される「及び/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、「または」または「及び/または」は、一覧中の項目を隔てている場合、包括的である、つまり、複数または一覧の要素の少なくとも1つを包含するが1つより多くをも包含し、一覧にないさらなる項目も任意選択的に包含する、と解釈されるべきである。そうでないことを明確に示す用語、例えば、「の1つだけ」もしくは「のちょうど1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」に限っては、複数または一覧の要素のちょうど1つの要素の包含を意味することになる。総じて、本明細書中で使用される「または」という用語は、「どちらか」、「の1つ」、「の1つだけ」または「のちょうど1つ」などの排他性を有する用語が後続する場合、排他的な選択肢(すなわち、「両方ではなく片方またはもう片方」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「から本質的になる」は、特許請求の範囲の中で使用される場合、特許法の分野で使用されるときのその通常の意味を有すべきものである。
【0289】
ここに本明細書及び特許請求の範囲の中で使用する場合、1つ以上の要素の一覧に関して「少なくとも1つ」という語句は、要素の一覧の中の要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素の一覧の中で具体的に列挙されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、要素の一覧の中の要素の任意の組合せを排除するわけでもない。この定義は、「少なくとも1つ」という語句が指す要素の一覧の中で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素との関係があろうとなかろうと任意選択的に存在し得ることも許容する。したがって、非限定的な例を挙げると、「A及びBの少なくとも1つ」(または同義の「AまたはBの少なくとも1つ」、または同義の「A及び/またはBの少なくとも1つ」)は、ある実施形態でBが存在せず(B以外の要素を任意選択的に含んで)1つより多くを任意選択的に含んだ少なくとも1つのA;別の実施形態でAが存在せず(A以外の要素を任意選択的に含んで)1つより多くを任意選択的に含んだ少なくとも1つのB;さらに別の実施形態で、1つより多くを任意選択的に含んだ少なくとも1つのA、及び1つより多くを任意選択的に含んだ少なくとも1つのB(他の要素を任意選択的に含む);などを意味し得る。
【0290】
本明細書中で特許請求される、1つより多いステップまたは行為を含む任意の方法において、特段の指定が明確になされていない限り方法のステップまたは行為の順序が、必ずしも方法のステップまたは行為の列挙された順序に限定されないことも、理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022512958000001.app
【国際調査報告】