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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】3次元印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20220131BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20220131BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20220131BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220131BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20220131BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20220131BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220131BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220131BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220131BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220131BHJP
   B29C 64/357 20170101ALN20220131BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/124
B29C64/255
B29C64/264
B29C64/321
B29C64/232
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525079
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 US2019060219
(87)【国際公開番号】W WO2020097299
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/758,413
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518113546
【氏名又は名称】ネクサ3ディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】メダルジー イズハル
(72)【発明者】
【氏名】トリンガリ ルチアーノ
(72)【発明者】
【氏名】バーカー ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】バーカー スティーブ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP04
4F213AQ03
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL72
4F213WL74
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL87
(57)【要約】
本発明によるバット重合装置は、樹脂循環システムを含む。樹脂循環システムは、ポンプを含み、使用済みの光硬化樹脂をタンクから抜出し、それを新しい樹脂等にリフレッシュする。樹脂の流れは、複数のバルブを使用して調節される。複数のバルブを開閉して、所望の循環プロセスを達成する。放射線透過性で可撓性の膜が、膜を伸ばすフレーム内に支持され、膜組立体を構成する。フレームのリップがタンクの底リムに固着されるので、膜組立体は、タンクの底部を構成する。フレーム内の膜の張力を調整する張力調整機構が採用される。フレームは、その周囲に分散配置された磁力による整列支援により、タンクと整列する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
樹脂を収容するように構成されたタンクと、
樹脂循環システムと、を有し、
前記タンクは、入口ポートと、出口ポートを含み、
前記樹脂循環システムは、第1のポンプを含み、第1のポンプは、樹脂を前記タンクの出口ポートを通して前記タンクから抜出して、樹脂を分岐箇所に向かって流すように構成され、分岐箇所は、第1のポンプと、第1のバルブと、第2のバルブに流体的に接続され、第1のバルブは、第1の分岐箇所から第1のリザーバの入口への樹脂の流れを調節し、第2のバルブは、第1の分岐箇所から第1の合流箇所への樹脂の流れを調節し、
前記樹脂循環システムは、更に、第3のバルブと、第4のバルブを含み、第3のバルブは、第1のリザーバの出口から第2の合流箇所への樹脂の流れを調節し、第4のバルブは、第1の合流箇所から第2の合流箇所への樹脂の流れを調節し、
前記樹脂循環システムは、更に、第2のリザーバを含み、第2のリザーバは、フレッシュな樹脂及び添加剤の少なくとも一方を含む流体を第1の合流箇所に供給するように構成され、
前記樹脂循環システムは、更に、第2のポンプを含み、第2のポンプは、樹脂、前記流体、又は樹脂と前記流体の組合せを第2の合流箇所から抜出して、可能なときは、前記タンクの入口ポートを介して前記タンクに流すように構成される、装置。
【請求項2】
更に、膜組立体を含み、前記膜組立体は、放射線透過性で可撓性の膜と、前記放射線透過性で可撓性の膜の周囲に固定されたフレームを含み、前記フレームは、前記放射線透過性で可撓性の膜を第1の平面に沿って伸ばすように構成され、前記フレームは、前記第1の平面に対して垂直に延びるリップを含み、前記リップは、前記タンクの側壁の底リムに固着されるように構成され、前記膜組立体は、それが前記側壁に固着されたとき、前記タンクの底部を構成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記膜組立体は、更に、前記放射線透過性で可撓性の膜に結合された張力調整機構を含み、前記張力調整機構は、前記放射線透過性で可撓性の膜の張力を調整するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記膜組立体は、更に、前記射線透過性で可撓性の膜の表面に固定された張力センサを含み、前記張力センサは、前記放射線透過性で可撓性の膜の張力を測定するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記張力センサは、前記放射線透過性で可撓性の膜の表面に固定された歪ゲージを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記膜組立体は、更に、前記放射線透過性で可撓性の膜に埋込まれた張力センサを含み、前記張力センサは、前記放射線透過性で可撓性の膜の張力を測定するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記張力センサは、前記放射線透過性で可撓性の膜に埋込まれた導電性ストリップを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記タンクは、溝を含む底リムを有する側壁と、前記側壁に結合された張力センサと、前記放射線透過性で可撓性の膜をその周囲のところで支持する第1のフレームを含み、前記第1のフレームは、リップを含み、前記タンクの側壁の底リムの溝と前記リップとの係合によって前記タンクに固着され、前記張力センサは、前記放射線透過性で可撓性の膜の張力が低下したときに前記放射線透過性で可撓性の膜の移動を検出するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
更に、照明組立体を有し、前記照明組立体は、第2のフレーム内に固着されたガラスプレートと、第3のフレーム内に固着された液晶ディスプレイ(LCD)を有し、
前記第2のフレームは、前記第3のフレームに固着され、前記放射線透過性で可撓性の膜の一部分を前記第1の平面から遠ざけて前記第1の平面と平行な第2の平面に変位させるように構成され、前記第1の平面は、前記第2のフレームによる前記放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位がないときに前記放射線透過性で可撓性の膜が位置する領域を構成する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
更に、前記第3のフレーム及び前記液晶ディスプレイ(LCD)の少なくとも一方を支持するように構成されたベース部分と、
前記第1のフレームと前記ベース部分の間に配置された高さ調整機構と、を含み、前記高さ調整機構は、前記ベース部分に対する前記第1のフレームの垂直方向位置を調整するように構成され、それにより、前記第1の平面に対する前記放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位を調整する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
更に、前記第1のフレームを支持するように構成されたベース部分と、
前記ベース部分と前記第3のフレーム及び前記液晶ディスプレイ(LCD)の少なくとも一方との間に配置された高さ調整機構と、を含み、前記高さ調整機構は、前記ベース部分に対する前記液晶ディスプレイ(LCD)の垂直方向位置を調整するように構成され、それにより、前記第1の平面に対する前記放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位を調整する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
更に、第1のフレームを含むフレーム組立体と、第2のフレームと液晶ディスプレイ(LCD)を含む液晶ディスプレイ(LCD)組立体を含み、
前記第1のフレームは、ガラスプレート及び/又は放射線透過性で可撓性の膜を支持し、前記第1のフレームの表面の周りに分散配置された第1の複数の通し孔及び第1の複数の磁化された部分を含み、
前記第2のフレームは、前記液晶ディスプレイ(LCD)を保持するように構成され、前記第2のフレームの表面の周りに分散配置された第2の複数の通し孔及び第2の複数の磁化された部分を含み、
(i)前記第1の複数の通し孔が前記第1のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンは、前記第2の複数の通し孔が前記第2のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンの鏡像であり、(ii)前記第1の複数の磁化された部分が前記第1のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンは、前記第2の複数の磁化された部分が前記第2のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンの鏡像であり、(iii)前記第1の複数の磁化された部分の各々は、それに対応する前記第2の複数の磁化された部分の1つに引付けられ、その結果、前記第1のフレームが前記第2のフレームに近接して配置されたとき、(I)前記第1のフレームの表面は、前記第2のフレームの表面に自動的に接触し、(II)前記第1の複数の通し孔の各々は、それに対応する前記第2の複数の通し孔の1つと自動的に整列する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
更に、前記第1のフレームの表面と前記第2のフレームの表面との間の境界領域内に又はその近くに配置されたガスケットを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
装置を操作する方法であって、
前記装置は、樹脂を収容するように構成されたタンクと、樹脂循環システムを含み、前記タンクは、入口ポートと、出口ポートを含み、前記樹脂循環システムは、(i)樹脂を前記タンクの出口ポートを介して前記タンクから抜出して、樹脂を分岐箇所に向かって流すように構成された第1のポンプと、(ii)前記第1のポンプ、第1のバルブ、及び第2のバルブと流体的に接続された分岐箇所と、(iii)第1の分岐箇所から第1のリザーバの入口への樹脂の流れを調節する第1のバルブと、(iv)前記第1の分岐箇所から第1の合流箇所への樹脂の流れを調節する第2のバルブと、(v)前記第1のリザーバの出口から第2の合流箇所への樹脂の流れを調節する第3のバルブと、(vi)前記第1の合流箇所から前記第2の合流箇所への樹脂の流れを調節する第4のバルブと、(vii)フレッシュな樹脂及び添加剤の少なくとも一方を含む流体を前記第1の合流箇所に供給するように構成された第2のリザーバと、(viii)樹脂、前記流体、又は樹脂と前記流体の組合せを前記第2の合流箇所から抜出して、前記タンクの入口ポートに向かって流すように構成された第2のポンプを含み、
第1の期間中、前記第1のバルブ及び前記第3のバルブを開き、前記第2のバルブ及び前記第4のバルブを閉じ、それにより、樹脂を前記タンクから前記第1のリザーバを通るように流して、前記タンクに戻し、
第2の期間中、前記第1のバルブ及び前記第3のバルブを閉じ、前記第2のバルブ及び前記第4のバルブを開き、それにより、樹脂を前記タンクから前記第2のリザーバに取付けられた前記第1の合流箇所に流して、樹脂と前記流体の組合せを前記タンクに流す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年11月9日に出願した米国仮特許出願第62/758,413号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、物体を製作するときにタンク内の感光性樹脂が放射線への露出によって硬化される積層造形システムに関し、特に、かかるシステムの樹脂循環システム及びタンクと膜の組立体構成要素に関する。
【背景技術】
【0003】
積層造形、所謂、3次元印刷又は3D印刷の分野において、粘性液体樹脂(典型的には、液体ポリマー)を一層ごとに光硬化させることによって、所望の物体を形成することが非常に人気になっている。この分野では、2つの基本技術、即ち、約400nmの放射線を放射するレーザを使用して液体樹脂を硬化させる立体リソグラフィー(SL)印刷と、プロジェクタに類似する装置が放射した蛍光放射線に液体樹脂を露出させるデジタル光処理(DLP)印刷が採用される。DLP印刷の変形例は、紫外線(UV)スペクトル内で放射する1又は2以上の発光ダイオード(LED)で構成される光エンジンを採用する。
【0004】
SL処理及びDLP処理の両方において、物体の印刷は、一層ごとに進行し、即ち、完成物体が形成されるまで、抜出し(又は、造形)プレートに接着している液体樹脂の第1の層を重合させ、第1の層に接着している第2の層を重合させ、更にそれを続ける。形成すべき3次元物体を表すデータは、物体の横断面を表す一連の2次元層として編成され、造形は、そのデザインに従って進行する。かかる造形を上から下に進行させて、物体全体を液体樹脂内で形成した後で全体を抜出してもよいけれども、抜出しプレート及び物体を上昇させて、樹脂のバットの底から上方に一層ごとに移動させる、所謂、ボトムアップ法の方が、小さく且つデスクトップの印刷適用例に人気である。
【発明の概要】
【0005】
液体樹脂を所望の物体層に凝固させる重合プロセスは、発熱性である。おそらく、樹脂の高粘性のため、少なくとも部分的に、このプロセスによって発生した熱は、印刷が生じる領域、所謂、造形領域内に局所的にとどまる傾向がある。この加熱は、特に連続の又はほぼ連続の印刷作業において、きわめて有害であることがあり、それは、造形領域内の過剰な熱が、例えば樹脂の望まない硬化に寄与することによって、印刷された層の品質に影響を及ぼすからである。
【0006】
樹脂の加熱に対処する技術、並びに、3D印刷システムのその他の改良を本明細書で取扱う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本発明の1つの実施形態による3次元(3D)印刷システム用の樹脂循環システムのブロックダイアグラムである。
図1B】冷却及び濾過構成要素を追加した、本発明の1つの実施形態による図1Aの樹脂循環システムの図である。
図1C】コントローラを追加した、本発明の1つの実施形態による図1Aの樹脂循環システムの図である。
図2】本発明の1つの実施形態による3D印刷システム用の膜組立体の斜視図である。
図3】本発明の1つの実施形態による3D印刷システム用のタンク側壁の斜視図である。
図4A】膜組立体がタンク側壁の底リムに固着されるプロセスを示す、本発明の1つの実施形態による膜組立体及びタンク側壁の断面図である。
図4B】膜組立体がタンク側壁の底リムに固着されるプロセスを示す、本発明の1つの実施形態による膜組立体及びタンク側壁の断面図である。
図5A】フレーム組立体が液晶ディスプレイ(LCD)組立体に固着される機構を示す、本発明の1つの実施形態によるフレーム組立体及びLCD組立体の斜視図である。
図5B】フレーム組立体が液晶ディスプレイ(LCD)組立体に固着される機構を示す、本発明の1つの実施形態によるフレーム組立体及びLCD組立体の斜視図である。
図5C】本発明の1つの実施形態による図5Bの線I-Iにおける断面図である。
図6A】3D印刷システムが組立てられるプロセスを示す、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの構成要素の断面図である。
図6B】3D印刷システムが組立てられるプロセスを示す、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの構成要素の断面図である。
図6C】本発明の1つの実施形態による膜の静止平面から変位された膜の一部分を示す拡大断面図である。
図6D】膜の一部分をその静止平面に対して調整するように構成された高さ調整機構を有する、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの断面図である。
図6E】膜の一部分をその静止平面に対して調整するように構成された代替の及び/又は追加の高さ調整機構を有する、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの断面図である。
図6F】選択的なガラスプレートが膜とLCDの間にない、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの断面図である。
図6G】膜の変位がない、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの断面図である。
図6H】膜の変位がない、本発明の1つの実施形態による別の3D印刷システムの断面図である。
図7A】本発明の1つの実施形態による、3D印刷プロセス中の3D印刷システムの断面図である。
図7B】本発明の1つの実施形態による、3D印刷プロセス中の3D印刷システムの断面図である。
図7C】本発明の1つの実施形態による、3D印刷プロセス中の3D印刷システムの断面図である。
図7D】部分的に形成された物体の垂直方向移動によって変位された膜を示す、本発明の1つの実施形態による図7Cの拡大図である。
図7E】膜がガラスプレートの上に戻されて緩められた、本発明の1つの実施形態による図7Dの形態の直ぐ後の膜の状態を示す。
図8A】張力調整機構を示す、本発明の1つの実施形態による膜組立体の一部分の断面図である。
図8B】張力センサを示す、本発明の1つの実施形態による膜組立体の一部分の断面図である。
図8C】代替の又は追加の張力センサを示す、本発明の1つの実施形態による膜組立体の一部分の断面図である。
図8D】代替の又は追加の張力センサを示す、本発明の1つの実施形態によるタンク組立体の一部分の断面図である。
図9】本発明の方法を例示する、コンピュータ読取り可能な命令を記憶し且つ実行するコンピュータシステムの構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、物体を製作するときに感光性樹脂が放射線への露出によって硬化される積層造形システム及び方法に関し、幾つかの実施形態では、感光性樹脂を、物体の造形領域に関する樹脂の変位によって冷却する方法及びシステムに関し、幾つかの実施形態では、膜組立体に関し、幾つかの実施形態では、ガラスプレートフレームを液晶ディスプレイ(LCD)フレームに自己整列させる機構に関し、幾つかの実施形態では、膜組立体と一体化された張力センサに関し、幾つかの実施形態では、タンク組立体と一体化された張力センサに関し、幾つかの実施形態では、膜組立体に埋込まれた張力調整機構に関し、幾つかの実施形態では、膜組立体の外部の張力調整機構に関し、幾つかの実施形態では、静止平面から変位された膜を使用する3次元印刷システムに関する。
【0009】
図1Aは、3次元(3D)印刷システムのための樹脂循環システムのブロックダイアグラムを示す。タンク102(「VAT」としても示される)は、3D印刷プロセス中に1又は2以上の物体を形成するのに使用される感光性液体樹脂を収容するように構成される。樹脂循環システムは、タンク102内での3D物体の印刷の前、その間、又はその後で、樹脂をタンク102から出口ポート103を介して抜出し、樹脂をタンク102の入口ポート101を介してタンク102に導入するように構成されるのがよい。その後の1又は2以上の作業は、かかる樹脂循環システムを介して達成されるのがよく、樹脂を冷却すること、光硬化ポリマーを使い果たした樹脂を排出(ドレイン)すること、不純物(例えば、硬化したポリマーの小片を含む)を樹脂から濾過すること、フレッシュな樹脂をタンクに供給すること、添加剤を樹脂に導入することを含む。
【0010】
樹脂循環システムは、ポンプ104(「P1」としても示される)を含み、ポンプ104は、樹脂をタンク102から出口ポート103を通して抜出すように構成され、樹脂を分岐箇所113に向かって流すように構成される。配管(1点鎖線で指示される)が、図1A図1Cに示す任意の2つの構成要素、例えば、ポンプ104とタンク102を流体的に接続するのに使用されることを理解すべきである。
【0011】
分岐箇所113は、ポンプ104と、バルブ112(「V1」としても示される)と、バルブ114に流体的に接続される。バルブ112は、分岐箇所113からリザーバ108の入口への樹脂の流れを調節する。1つの実施形態では、リザーバ108は、5リットルの容積を有するのがよい。作動中、リザーバ108に、部分的に又は完全に樹脂を充填する。ドレイン109が、リザーバ108の底部分に配置され、必要な時に、光硬化ポリマーを使い果たした樹脂を処分するために、樹脂を排出するのに使用される。
【0012】
バルブ114(「V2」としても示される)は、分岐箇所113から合流箇所111への樹脂の流れを調節する。バルブ114から流れる樹脂及びリザーバ110から流れる流体は、合流箇所111のところで混合された後、バルブ118に向かって流れる。流体は、フレッシュな(即ち、前に使用されていない)樹脂、添加剤、又は他の液体を含むのがよい。1つの実施形態では、リザーバ110は、1リットルの容積を有するのがよい。バルブ116(「V3」としても示される)は、リザーバ108の出口から合流箇所117への樹脂の流れを調節する。バルブ118(「V4」としても示される)は、合流箇所111から合流箇所117への樹脂の流れを調節する。ポンプ106は、樹脂、流体、又は樹脂と流体の組合せを、合流箇所117から抜出すように構成され、樹脂、流体、又は樹脂と流体の組合せを、入口ポート101を介してタンク102に流入させるように構成される。
【0013】
図1Bは、冷却及び濾過構成要素を追加した、図1Aの樹脂循環システムを示す。樹脂は、リザーバ108内で冷却ジャケット120を介して冷却され、及び/又は、配管内で冷却スリーブ122を介して冷却されるのがよい。図1Bに示すような冷却スリーブ122の箇所は、説明の目的だけのためであり、冷却スリーブ122が、出口ポート103を入口ポート101に流体的に接続する配管の任意の部分に沿って配置されてもよいことを理解すべきである。
【0014】
樹脂の冷却が、樹脂がタンク102内で硬化されるときに起こる発熱反応に起因して、必要である。もしも樹脂の冷却を行わなければ、タンク102内の樹脂は、時間とともに温まり、樹脂の意図しない硬化(及び、潜在的には、印刷プロセスにおける解像度の低下)を生じさせる。加えて、配管の一部分に沿って配置されるフィルタ124が、粒子、不純物、及び/又はその他の汚染物を、循環している樹脂から除去するのがよい。図1Bに示すようなフィルタ124の箇所は、説明の目的だけのためであり、フィルタ124が、出口ポート103を入口ポート101に流体的に接続する配管の任意の部分に沿って配置されてもよいことを理解すべきである。
【0015】
図1Cは、コントローラ126を追加した、図1Aの樹脂循環システムを示す。コントローラ126は、1又は2以上のポンプ104、106及びバルブ112、114、116、118に通信可能に接続されるのがよい。コントローラ126は、ポンプ104、106のポンプ速度、並びに、バルブ112、114、116、118の1又は2以上が開いたり閉じたりする程度を制御する。説明の明確のために、「開いている」バルブは、流体がバルブの中を流れることが可能な状態を意味し、「閉じている」バルブは、流体がバルブの中を流れることができない状態を意味する。コントローラ126の使用が、コンピュータプログラムに従うポンプ104、106及びバルブ112、114、116、118の1又は2以上の作動状態を制御するために考えられているけれども、ポンプ104、106及びバルブ112、114、116、118の1又は2以上が、人間のオペレータによって手動で制御されてもよいことも明らかに可能である。
【0016】
樹脂循環システムの幾つかの作動モードが考えられる。第1のモードでは、バルブ112、116は開いており、バルブ114、118は閉じており、ポンプ104、106は、樹脂をタンク102からリザーバ108の中を通るように循環させ、選択的には、樹脂をタンク102に戻す。第1のモードに従う作動は、フィルタ及び/又は樹脂を冷却し、濾過し、及び/又は排出する(即ち、除去する)ために行うのがよい。
【0017】
第2のモードでは、バルブ112、116は閉じており、バルブ114、118は開いており、ポンプ104、106は、樹脂をタンク102から合流箇所111を通ってタンク102に戻るように循環させる。第2のモードに従う作動は、リザーバ110から流れる流体を、タンク102から流れる樹脂に注入するために行うのがよい。上述したように、流体は、フレッシュな樹脂、添加剤、又はその他の液体を含む。
【0018】
第3のモードでは、最初に空であるタンク102を、(例えば、初期手順の一部として)リザーバ110から流れる樹脂で充填させるために、ポンプ104は停止され、ポンプ106は停止され、バルブ112、114、116は閉じており、バルブ118は開いている。
【0019】
第4のモードでは、バルブ112、114、116、118はすべて、完全に(又は、部分的に)開いている。第4のモードは、第1のモードと第2のモードの混合と機能的に等価である。
【0020】
図1A図1Cでは、バルブ112、116は、「NO」(通常は開いている)としても示され、バルブ114、118は、「NC」(通常は閉じている)としても示されている。このため、樹脂循環システムは、典型的には、第1のモードで作動し、場合によって、第2のモードの作動(第3のモードの作動及び第4のモードの作動も可能である)に切り替わることが考えられている。
【0021】
図1A図1Cに示す樹脂循環システムの1又は2以上の側面が、1つの樹脂循環システムに組込まれてもよいことを理解すべきである。樹脂循環システムの複数の側面が、図示及び説明の簡単のために、図1A図1Cに別々に示されている。
【0022】
図2は、3D印刷システム用の膜組立体200の斜視図である。膜組立体200は、放射線透過性で可撓性の膜204を含むのがよく、膜204の周囲は、フレーム202に固着されている。フレーム202は、膜204を第1の平面に沿って伸ばすように構成されている。フレーム202は、第1の平面に対して垂直な方向に延びるリップ206を含むのがよい。リップ206は、(図3に示すように)タンク側壁の底リムに固着されるのがよい。膜組立体200は、それがタンク側壁の底リムに固着されるとき、光硬化液体樹脂を収容するように構成されたタンクの底部を形成する。図2において、フレーム202は、矩形の形状を有するように示されている。フレーム202のための他の形状、例えば、正方形、楕円形、円形も可能であることを理解すべきである。
【0023】
図3は、3D印刷システム用のタンク側壁300の斜視図である。タンク側壁300は、溝304を有する底リム302を含む。フレーム202のリップ206は、膜組立体200をタンク側壁300のベース部に固着させるように、溝304に挿入されるのがよい。タンク側壁300の形状及び寸法がフレーム202の形状及び寸法に一致しなければならないことを理解すべきである。例えば、(上方から見たとき)フレーム202が矩形であれば、タンク側壁300も矩形でなければならない。
【0024】
図4A及び図4Bは、膜組立体200(フレーム202及び膜204)とタンク側壁300の断面図であり、膜組立体200がタンク側壁300の底リム302に固着されるプロセスを示している。図4Aは、タンク側壁300の溝304の下に整列したフレーム202のリップ206を示す。図4Bは、タンク側壁300の溝304に挿入されたフレーム202のリップ206を示す。リップ206及び溝304は、相互結合(例えば、スナップ嵌め取付け)されてもよいし、リップ206の表面と溝304の表面が互いに接触するように篏合(例えば、摩擦嵌め取付け)されてもよいし、その他の仕方で嵌合されてもよい。1つの実施形態では、膜組立体200は、消耗品であり、使用期限の終了時に廃棄され又は一新される。このとき、膜組立体200は、プリンタのプリンタカートリッジやかみそりのかみそり刃等と同様の役割をはたす。
【0025】
図5A及び図5Bは、フレーム組立体500と液晶ディスプレイ(LCD)組立体501の斜視図であり、フレーム組立体500がLCD組立体501に固着される機構を説明する。フレーム組立体500は、フレーム504と、ガラスプレート502を含むのがよく、フレーム504は、ガラスプレート502を保持するように構成される。別の実施形態では、フレーム組立体500は、上述したように、ガラスプレートの代わりに又はそれに追加して、放射線透過性で可撓性の膜を支持するのがよい。フレーム504は、フレーム504の底面の周りに分散配置された通し孔510a及び磁化された部分512aを含むのがよい。LCD組立体501は、フレーム508と、液晶ディスプレイ(LCD)506を含むのがよく、フレーム508は、LCD506を保持するように構成される。フレーム506は、フレーム508の上面の周りに分散配置された通し孔510b及び磁化された部分512bを含むのがよい。
【0026】
図5Aに示すように、通し孔510aがフレーム504の底面の周りに分散配置されるパターンは、通し孔510bがフレーム508の上面の周りに分散配置されるパターンの鏡像であるのがよい。図5Aに更に示すように、磁化された部分512aがフレーム504の底面の周りに分散配置されるパターンは、磁化された部分512bがフレーム508の上面の周りに分散配置されるパターンの鏡像であるのがよい。磁化された部分512aの各々は、それに対応する磁化された部分512bの1つに引き付けられ、その結果、フレーム504をフレーム508に近接して配置したとき、フレーム504の底面は、フレーム508の上面に自動的に接触し、通し孔510aの各々は、それに対応する通し孔510bの1つと自動的に整列する。ガスケット514が、LCD506の周囲のところに又はその近くに配置されるのがよい。ガスケット514の目的は、図5Cで説明される。
【0027】
図5Bは、LCD側のフレーム508に固定されたフレーム504の斜視図である。フレーム504は、ガラスプレート502及び/又は放射線透過性で可撓性の膜を包囲している。LCD506は、図5Bでは見ることができず、ガラスパネル502のすぐ下に配置されている。小さいねじ又はピンが、整列した通し孔510aと通し孔510bの対の中に挿入されるのがよいことを理解すべきである。かかるねじ又はピンのための開口は、フレーム508の底面に配置されるのがよい(図示せず)。
【0028】
図5Cは、図5Bの線I-Iにおける断面図である。図5Cに示すように、フレーム組立体500は、LCD組立体501に固定されている。詳細には、フレーム504の底面は、フレーム508の上面に接触し、ガラスプレート502及び/又は放射線透過性で可撓性の膜は、LCD506の上方に配置される。ガスケット514は、フレーム504の底面とフレーム508の上面の間の境界領域の中に又はその近くに配置されるのがよい。樹脂(又は、他の流体)がフレーム504の底面とフレーム508の上面の間の境界領域に侵入することが可能である場合、ガスケット514は、樹脂がLCD506とガラスプレート502の間に流れること(これにより、LCD506から投影される画像に望ましくない歪を生じさせること)を阻止するのがよい。
【0029】
上述したように、磁石(又は、フレームの磁化された部分)が、通し孔510aを通し孔510bと自動的に整列させるのに使用される。それに追加して又は代替例として、フレーム504の底面とフレーム508の上面の両方に配置された溝(特に、上面の溝に対して相補的な底面の溝。例えば、鋸刃状の溝)が自己整列機構として使用されてもよい。
【0030】
図6A及び図6Bは、3D印刷システムの構成要素の断面図であり、3D印刷システムを組立てるプロセスを示す。図6A及び図6Bは、照明組立体601(ガラスプレート502、フレーム504、LCD506、フレーム508、及びベース部分602を含む)に固定されたタンク組立体600(タンク側壁300及び膜組立体200を含む)を示す。LCD506及びフレーム508の少なくとも一方は、ベース部分602の上に支持されるのがよい。ガラスプレート502は、選択的な構成要素であり、(後で説明するような)幾つかの実施形態は、ガラスプレート502を含まなくてもよいことに注目すべきである。1つの実施形態では、膜204とベース部分602の間のクリアランスは、ガラスプレート502とLCD506の組合せ高さよりも小さい。この場合、タンク組立体600を照明組立体601に固定したとき、ガラスプレート502は、膜204の一部分を第1の平面から離れるように且つ第1の平面と平行な第2の平面に変位させる。第1の平面は、タンク組立体600が照明組立体601に固定される前に膜204が配置される領域を構成し、膜204の「静止平面」とも称する。
【0031】
図6Cは、膜204の一部分が平面606内に配置され、ガラスパネル502及び/又はフレーム504によって平面604から平面606に変位させられていることを示す拡大断面図である。膜204の変位は、膜204の張力を増大させ、このことは、図7D及び図7Eのところで後述するように、3D印刷システムに有利である。図6A図6C示す実施形態において、フレーム504、508の寸法(即ち、長さ及び幅)が、フレーム202の寸法(即ち、長さ及び幅)よりも小さいことが重要であり、その結果、フレーム504、508が、フレーム202によって包囲される領域内に挿入されることに注目すべきである。
【0032】
図6Dは、3D印刷システムの断面図であり、高さ調整機構606が、フレーム202とベース部分602の間に配置されている。高さ調整機構606は、ベース部分602に対するフレーム202の垂直方向位置を調整するように構成され、したがって、平面604(即ち図6Cに示す平面604)に対する膜204の一部分の変位を調整するように構成される。高さ調整機構606は、1又は2以上の支柱、レール、トラック、ステッピングモータ、圧電変換器、又はその他の手段を含むのがよい。膜204の変位の調整が、膜204の張力の調整と関連した効果を有するので、高さ調整機構606は、「張力調整機構」とも称されることに注目すべきである。
【0033】
図6Eは、高さ調整機構608がベース部分602とLCD506及びフレーム508の少なくとも一方との間に配置されている、3D印刷システムの断面図である。高さ調整機構608は、ベース部分602に対するLCD506の垂直方向位置を調整するように構成されるのがよく、したがって、平面604(即ち、図6Cに示す平面604)に対する膜204の一部分の変位を調整するように構成されるのがよい。同様に、高さ調整機構608は、「張力調整機構」とも呼ばれる。図6Fは、膜204とLCDパネル506の間の選択的なガラスプレート502がない、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの断面図である。膜204とベース部分602の間のクリアランスは、LCD506の高さよりも小さいのがよく、同様に、LCD506(即ち、フレーム508)により、膜204を第1の平面から第2の平面に変位させて、膜204の張力を増大させる。図6Fに示す実施形態において、フレーム508の寸法(即ち、長さ及び幅)が、フレーム202の寸法(即ち、長さ及び幅)よりも小さいことが同様に重要であり、その結果、フレーム508を、フレーム202によって包囲される領域内に挿入することができることに注目すべきである。
【0034】
図6Gは、膜204の変位がない、本発明の1つの実施形態による3D印刷システムの実施形態の断面図である。図6Gにおいて、フレーム508(即ち、LCD506が固着されたフレーム)の寸法は、フレーム202(即ち、膜204が固着されたフレーム)の寸法と同程度であり、その結果、フレーム202は、フレーム508の上に載せられている。図6Gの実施形態では、フレーム508もLCD506も、膜204を変位させていない。
【0035】
図6Hは、膜204の変位がない、3D印刷システムの別の実施形態の断面図である。図6Hにおいて、フレーム508(即ち、LCD506が固着されたフレーム)及びフレーム504(即ち、ガラスプレート502が固着されたフレーム)の寸法は、フレーム202(即ち、膜204が固着されたフレーム)の寸法と同程度であり、その結果、フレーム202は、フレーム504の上に載せられ、フレーム504は、フレーム508の上に載せられている。図6Hの実施形態では、フレーム504もガラス502も、膜204を変位させていない。
【0036】
図7A図7Cは、3D印刷プロセス中の3D印刷システムの断面図である。図7Aでは、光硬化液体樹脂702は、タンク組立体の中に収容されている。部分的に形成されている物体706は、抜出しプレート704に固着されている。図7Aに引き続いて且つ図7Bの前に、放射線をLCD506から放射し、LCD506は、部分的に形成されている物体706と膜204の間の領域に、画像を形成する。画像は、樹脂702を選択的に硬化させ、図7Bに示すように、部分的に形成されている物体706の新しい層708を形成する。図7Cは、高さ調整手段(図示せず)によって垂直方向に上昇させた抜出しプレート704を示し、それにより、部分的に形成されている物体706を(新しい層708と一緒に)樹脂702内で持上げる。少なくとも最初のうち、新しい層708は、部分的に、膜204に接着し、その結果、新しい層708を抜出しプレート704によって上昇させたとき、膜204は、ガラスプレート502表面から遠ざかるように(わずかに)引かれる。図7Dは、図7Cの拡大図である。図7Dの小さい下向き矢印は、膜204をガラスプレート502に向かって引戻す力を表す。前に述べたように、ガラスプレート502による膜204の変位(即ち、膜204の静止平面から遠ざかること)により、膜204の張力を増大させる。増大させた張力は、引戻し力を有利に増大させ、膜204がガラスプレート502の表面の上に再び配置される図7Eに示す状態に到達するまでにかかる時間を有利に減少させる。
【0037】
図8Aは、膜組立体200の中に埋込まれた張力調整機構804、806を示す、膜組立体200の一部分の断面図である。アンカー800は、膜204の周囲をフレーム202に対して動かない仕方で係止させるのに使用されるのがよい。膜用のフレーム202内の空所802は、膜204の変位(図8Aに示すように、平面に対して垂直な方向の且つ膜204が延びている方向の変位)を可能にする。膜係合部材804は、膜204の張力を増大させたり減少させたりする力を、膜204の表面に付与するように構成されるのがよい。ねじ806が、膜係合部材804に当接するのがよい。ねじ806のその軸線周りの回転により、膜係合部材804の一部分をフレーム202に対して調整し、したがって、膜204の張力を調整する。要素804、806は、1つの実施形態に過ぎず、他の張力調整手段も可能であることを理解すべきであり、かかる他の張力調整手段は、例えば、膜204が存在している平面と平行な方向に膜204に付与される力を調整する機構である。
【0038】
図8Bは、膜204の表面に固定された(膜の張力を測定するための)張力センサ808aを示す、膜組立体200の一部分の断面図である。さらに詳細には、張力センサ808aは、膜204の底面に固定されるのがよく、その結果、張力センサ808aは、(即ち、3D印刷システムが使用中であるとき)膜204の上面に接触する樹脂に露出されない。更に、張力センサ808aは、LCD506からの放射線をブロックする膜204の領域(即ち、周囲領域)に配置されるのがよい。電線810a、810bが、張力センサ808aに電気的に接続されるのがよく、それにより、膜204から遠隔の箇所における膜の張力の測定を可能にする。1つの実施形態では、張力センサ808aは、歪ゲージを含み、歪ゲージは、膜204の表面に固定される曲がりくねった構造を有する。図示していないけれども、電線810a、810bは、(張力レベルが人間のオペレータに表示される)ディスプレイ又はコントローラ(例えば、コントローラ126)に通信可能に接続されるのがよい。
【0039】
フィードバック制御アルゴリズムが、コントローラ126によって採用されるのがよい。例えば、コントローラ126は、張力センサ808aを使用して、膜204の張力を測定し、測定された張力値を所望の張力値と比較し、制御信号を高さ調整機構606、608又は張力調整機構804、806に供給し、膜204の張力を調整し、張力センサ808aを使用して、膜204の新しい張力値を測定するなどして、最終的に、(ある定められた許容限度内の)所望の張力値が達成される。
【0040】
図8Cは、膜204に埋込まれた(膜の張力を測定するための)代替の又は追加の張力センサ808bを示す、膜組立体200の一部分の断面図である。張力センサ808aのように、張力センサ808bは、LCD506からの放射線をブロックしない膜204の領域(即ち、周囲領域)に配置されるのがよい。電線810a、810bが、張力センサ808bに電気的に接続されるのがよく、それにより、膜204から遠隔の箇所における膜の張力の測定を可能にする。1つの実施形態では、張力センサ808bは、導電性ストリップであるのがよい。膜204を伸ばしたり緩めたりすることにより、導電性ストリップを緊張させたり変形させたりして、導電性ストリップの中を流れる電流を変化させる。引続いて、電流の測定値を、マップを使用して又は測定値を変換して、膜204の張力値にするのがよい。
【0041】
図8Dは、タンク側壁300に結合された代替の又は追加の張力センサ808cを示す、タンク組立体600の一部分の断面図である。張力センサ808は、膜204の張力が低下したとき(例えば、膜204の裂け目が広がるとき)の膜204の移動を検出するように構成されるのがよい。(図8B及び図8Cに示すように)膜組立体200に結合される代わりに、タンク側壁300に結合された(又は、それと一体にされた)張力センサ808cの1つの利点は、張力センサ808cが、「消耗される」膜組立体200とは対照的である「長持ちする」構成要素に配置されることである。張力センサ808cは、それが有効寿命に達したときにすぐに頻繁でなく交換されるに過ぎず、張力センサ808a、808bは、膜組立体200を交換するときにはいつでも交換される。言い換えれば、膜組立体200の張力センサは、必要のためでなくても交換されることがあり、膜組立体全体が交換されるために交換されることがある。
【0042】
1又は2以上の張力センサ808a、808b、808cが、膜204の張力を較正するのに使用されてもよいけれども、張力センサの使用を必要としない他の較正ルーチンを採用してもよい。例えば、カメラ又はその他の撮像装置が、タンク組立体600内で作成中のテスト構造(例えば、様々な幾何学的形状、即ち、線、孔、平面等を有する)を評価するのに使用されてもよい。カメラからの画像を適正に製作されたテスト構造(又は、テスト構造のシミュレーション版のコンピュータ画像)の予め記憶されている画像に対して比較してもよい。一様でない縁部、完全に開口していない孔等のような変形例を、製作下のテスト構造において特定し、それに応じて、膜204の張力を、テスト構造がある許容範囲レベル内の所望の幾何学的形状に適合するまで、(1又は2以上の上述した張力調整機構を使用して)調整してもよい。
【0043】
1つの実施形態では、複数の張力センサが、膜204の異なる部分に配置され、異なる複数の「局所的な」読取りを得るのがよい。次いで、複数の局所的な読取りを、膜の張力の1つの「全体的な」推定に到達するように組合せるのがよい。1つの実施形態では、局所的な読取りの平均を計算するのがよく、別の実施形態では、局所的な読取りの線形組合せ(例えば、各張力センサに異なる較正重みを使用する)を計算するのがよい。
【0044】
前述したことから明らかなように、本発明の側面は、様々なコンピュータシステム及びコンピュータ読取り可能な記憶媒体の使用を含み、かかる記憶媒体は、それに記憶されたコンピュータ読取り可能な命令を有する。図9は、本明細書で説明する任意の計算処理システム(例えば、コントローラ126)の代表であるシステム900の例を提供する。システム900の例は、スマートホン、デスクトップ、ラップトップ、メインフレームコンピュータ、埋込みシステム等を含む。様々なコンピュータシステムのすべてが、システム900の特徴のすべてを有しているわけではないことに注目すべきである。例えば、ディスプレイ機能が、コンピュータシステムに通信可能に接続されたクライアントのコンピュータによって提供される場合、又は、ディスプレイ機能が必要でない場合、上述したコンピュータシステムのうちのある1つは、ディスプレイを含んでいなくてもよい。かかる詳細は、本発明に重要ではない。
【0045】
コンピュータシステム900は、情報を通信するためのバス902又はその他の通信機構と、情報を処理するためにバス902と接続されたプロセッサ904を含む。コンピュータシステム900はまた、情報及びプロセッサ904によって実行すべき命令を記憶するためにバス902に接続されたメインメモリ906を含み、かかるメインメモリ906は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はその他の動的記憶装置である。メインメモリ906はまた、プロセッサ904によって実行すべき命令の実行中に一時的な変数又はその他の中間情報を記憶するために使用されるのがよい。コンピュータシステム900は、更に、静的情報及びプロセッサ904のための命令を記憶するためにバス902に接続されたリードオンリーメモリ(ROM)908又はその他の静的記憶装置を含む。プロセッサ904が読取ることができる記憶装置910、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリベースの記憶媒体、又はその他の記憶媒体が設けられ、情報及び命令(例えば、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等)を記憶するためにバス902に接続される。
【0046】
コンピュータシステム900は、バス902を介してディスプレイ912に接続されるのがよく、ディスプレイ912は、例えば、フラットパネルディスプレイであり、情報をコンピュータユーザに表示する。入力デバイス914、例えば、英数字キー及びその他のキーを含むキーボードが、情報及び命令選択をプロセッサ904に通信するために、バス902に接続されるのがよい。他の種類のユーザ入力デバイスは、マウス、トラックパッド、又は同様の入力デバイス等のカーソル制御デバイス916であり、カーソル制御デバイス916は、指示情報及び命令選択をプロセッサ904に通信するためのものであり、ディスプレイ912上のカーソル移動を制御するためのものである。その他のユーザインタフェースデバイス、例えば、マイクロホン、スピーカー等は、詳細に示されていないけれども、ユーザ入力の受付け及び/又は出力の呈示と関わっていてもよい。
【0047】
本明細書で言及するプロセスは、メインメモリ906に収容されたコンピュータ読取り可能な命令の適当なシーケンスを実行するプロセッサ904によって行われるのがよい。かかる命令は、他のコンピュータ読取り可能な媒体、例えば、記憶装置910からメインメモリ906に読込まれ、メインメモリ906に収容された命令のシーケンスの実行により、プロセッサ904に、関連した作動を実行させる。変形実施形態では、本発明を実施するために、配線接続回路又はファームウェアで制御される処理ユニットが、プロセッサ904及びそれと関連したコンピュータソフトウェア命令の代わりに又はそれと組合せて使用されてもよい。コンピュータ読取り可能な命令は、どんなコンピュータ言語で提供されてもよい。
【0048】
一般的に、上述したプロセスの説明のすべては、コンピュータで実行可能な任意のアプリケーションの特質である所定の目的を達成するためにシーケンス内で実行される任意の一連の論理ステップを含むことが意図されている。本発明の詳細な説明を通じて、「処理する」、「計算処理する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」、「受取る」、「伝達する」等の用語の使用は、特にその他のことが述べられていなければ、コンピュータシステム900又は同様の電子計算処理装置等の適当にプログラムされたコンピュータシステムの作動及びプロセスを参照し、かかるコンピュータシステムが、そのレジスタ及びメモリ内で物理的な(電子的な)量として表されているデータを操作して、そのメモリ、レジスタ、又はその他のかかる情報記憶装置、情報伝達装置、又は情報表示装置内で物理量として同様に表される他のデータに変換することを認識すべきである。
【0049】
コンピュータシステム900はまた、バス902に接続された通信インタフェース918を含む。通信インタフェース918は、上述した様々なコンピュータシステムへの及びそれらの間の接続を構築するコンピュータネットワークとの双方向データ通信チャネルを構成するのがよい。例えば、通信インタフェース918は、互換性のあるLANへのデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードであり、LAN自体は、1又は2以上のインターネットサービスプロバイダネットワークを介してインターネットに通信可能に接続されている。かかる通信経路の正確な詳細は、本発明に重要ではない。重要なことは、コンピュータシステム900が、通信インタフェース918を通してメッセージ及びデータを送受信できることであり、そのようにして、インターネットを介してアクセス可能なホストと通信する。コンピュータシステム900の構成要素は、単一の装置に配置されていてもよいし、物理的及び/又は地理的に分散された複数の装置に配置されていてもよいことに注目すべきである。
【0050】
かくして、3次元印刷システムの実施形態を説明した。本発明の第1の実施形態は、タンク(即ち、バット)と樹脂循環システムを含むバット重合装置を提供し、タンクは、樹脂を収容するように構成され、入口ポートと出口ポートを含む。樹脂循環システムは、1対のポンプを含み、第1のポンプは、樹脂をタンクの出口ポートを通してタンクから抜出すように配置され、第2のポンプは、樹脂(又は、流体、又は、樹脂と流体の組合せ)をタンクの入口ポートを介してタンクの中に流すように配置される。特に、第1のポンプは、樹脂をタンクから抜出し且つ樹脂を、第1のポンプに流体的に接続された分岐箇所に向かって流すように構成される。第1のバルブが、分岐箇所から第1のリザーバの入口までの樹脂の流れを調節し、第2のバルブが、分岐箇所から第1の合流箇所までの樹脂の流れを調節する。第1のリザーバの出口からの樹脂の流れも調節され、特に、第3のバルブが、第1のリザーバの出口から第2の合流箇所までの樹脂の流れを調節し、第4のバルブが、第1の合流箇所から第2の合流箇所までの樹脂の流れを調節する。第2のリザーバは、フレッシュな樹脂及び/又は添加剤を含む流体を第1の合流箇所に供給するように構成され、第2のポンプは、樹脂、流体、又は樹脂と流体の組合せを第2の合流箇所から抜出して、必要なときは、タンクの入口ポートを介してタンクに流入させるように構成される。
【0051】
本発明の更なる実施形態は、上述した種類のバット重合装置を作動させるプロセスを提供する。かかるプロセスでは、第1のバルブ及び第3のバルブを開き、第2のバルブ及び第4のバルブを第1の期間閉じ、それにより、樹脂をタンクから第1のリザーバに流し、タンクに戻す。第2の期間、第1のバルブ及び第3のバルブを閉じ、第2のバルブ及び第4のバルブを開き、それにより、樹脂をタンクから第2のリザーバに取付けられた第1の合流箇所に流し、樹脂と流体の組合せをタンク内に流す。
【0052】
本発明の他の実施形態は、3D印刷システム用の膜組立体に関する。膜組立体は、放射線透過性で可撓性の膜と、放射線透過性で可撓性の膜の周囲に固定されたフレームを含む。フレームは、放射線透過性で可撓性の膜を第1の平面に沿って伸ばすように構成され、第1の平面に対して垂直に延びるリップを含む。リップは、タンク側壁の底リムに固着されるように構成され、かくして、膜組立体がタンク側壁の底部に固着されたとき、膜組立体は、光硬化液体樹脂を収容するタンクの底部を形成する。
【0053】
幾つかの例では、膜組立体は、放射線透過性で可撓性の膜の張力を調整するように構成された張力調整機構を含む。張力センサ(例えば、歪ゲージ)が、放射線透過性で可撓性の膜の表面に固定され、放射線透過性で可撓性の膜の張力を測定するように構成されるのがよい。他の例では、導電性ストリップ等の張力センサが、放射線透過性で可撓性の膜内に埋込まれ、放射線透過性で可撓性の膜の張力を測定するように構成されるのがよい。
【0054】
かかる張力センサは、タンク側壁を含むタンク組立体の構成要素であってもよく、張力センサは、タンク側壁に結合され、タンク側壁の底リムは、溝を含む。放射線透過性で可撓性の膜が、フレーム内に固着され、フレームは、タンク側壁の底リムの溝と係合するリップを含むのがよい。張力センサは、放射線透過性で可撓性の膜の張力の低下時、放射線透過性で可撓性の膜の移動を検出するように構成されてもよい。
【0055】
本発明の更に別の実施形態は、フレーム組立体と液晶ディスプレイ(LCD)組立体を含む装置を提供し、フレーム組立体は、第1のフレームを有し、第1のフレームは、ガラスプレート又は放射線透過性で可撓性の膜を支持し、第1のフレームの表面の周りに分散配置された第1の複数の通し孔及び第1の複数の磁化された部分を含み、液晶ディスプレイ(LCD)組立体は、第2のフレームとLCDを含む。第2のフレームは、LCDを保持するよう構成され、第2のフレームの表面の周りに分散配置された第2の複数の通し孔及び第2の複数の磁化された部分を含む。第1の複数の通し孔が第1のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンは、第2の複数の通し孔が第2のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンの鏡像であり、第1の複数の磁化された部分が第1のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンは、第2の複数の磁化された部分が第2のフレームの表面の周りに分散配置されているパターンの鏡像である。第1の複数の磁化された部分の各々は、それに対応する第2の複数の磁化された部分の1つに引付けられ、その結果、第1のフレームを第2のフレームに近接して配置したとき、第1のフレームの表面は、第2のフレームの表面に引付けられ、自動的に接触し、その結果、第1の複数の通し孔の各々が、それに対応する第2の複数の通し孔の1つと自動的に整列する。幾つかの例では、ガスケットが、第1のフレームの表面と第2のフレームの表面の間の境界領域内に又はその近くに配置される。ガスケットは、樹脂がガラスプレートとLCDの間の領域に接触することを防止する。
【0056】
本発明の別の実施形態は、タンク側壁を含むタンク組立体と、第1のフレーム内に放射線透過性で可撓性の膜を有する3D印刷システムを提供し、タンク側壁の底リムは、溝を含み、第1のフレームは、タンク側壁の底リムの溝と係合するリップを有する。タンク組立体は、更に、照明組立体を含み、照明組立体は、第2のフレーム内に固着されたガラスプレートと、第3のフレーム内に固着された液晶ディスプレイ(LCD)を含み、第2のフレームは、第3のフレームに固着され、放射線透過性で可撓性の膜の一部分を第1の平面から第1の平面と平行な第2の平面に遠ざけるように変位させるように構成され、第1の平面は、第2のフレームによる放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位がないときに、放射線透過性で可撓性の膜が位置している領域を構成する。
【0057】
かかる組立体はまた、第3のフレーム及びLCDの少なくとも一方を支持するように構成されたベース部分と、第1のフレームとベース部分の間に配置された高さ調整機構を含んでいてもよい。高さ調整機構は、ベース部分に対する第1のフレームの垂直方向位置を調整するように構成され、したがって、第1の平面に対する放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位を調整する。変形例として、ベース部分は、第1のフレームと高さ調整機構を支持するように構成され、高さ調整機構は、ベース部分と第3のフレーム及びLCDの少なくとも一方との間に配置され、したがって、第1の平面に対する放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位を調整する。
【0058】
本発明の更に別の実施形態は、3D印刷システムを提供し、かかる3D印刷システムは、タンク組立体と、放射線透過性で可撓性の膜を含む。タンク組立体は、タンク側壁を含み、タンク側壁は、溝を含む底リムを含む。放射線透過性で可撓性の膜は、フレーム内に固着され、フレームは、タンク側壁の底リムの溝に係合するリップを有する。LCDが、第2のフレーム内に固着され、放射線透過性で可撓性の膜の一部分を、第1の平面から第1の平面と平行な第2の平面内に遠ざかる方向に変位させるように構成される。第1の平面は、第2のフレームによる放射線透過性で可撓性の膜の一部分の変位がないときに、放射線透過性で可撓性の膜が位置している領域を構成する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
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図8A
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図8D
図9
【国際調査報告】