IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘレウス マテリアルズ シンガポール ピーティーイー. リミテッドの特許一覧

特表2022-512991電子部品の接触面を電気的に接続するプロセス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】電子部品の接触面を電気的に接続するプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220131BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20220131BHJP
   C22C 5/08 20060101ALI20220131BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20220131BHJP
   C22F 1/14 20060101ALN20220131BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
H01L21/60 301A
H01L21/60 301F
C22C5/06 Z
C22C5/08
C22F1/00 625
C22F1/00 630M
C22F1/00 627
C22F1/00 613
C22F1/00 681
C22F1/00 685Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/14
C22F1/00 692A
C22F1/00 692Z
C22F1/00 640A
C22F1/00 630K
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 686A
C22C21/00 A
C22F1/00 661A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525265
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 SG2018050609
(87)【国際公開番号】W WO2020122809
(87)【国際公開日】2020-06-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515298442
【氏名又は名称】ヘレウス マテリアルズ シンガポール ピーティーイー. リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】プン イェアン ミー
(72)【発明者】
【氏名】サランガパニ ムラリ
(72)【発明者】
【氏名】チャン シー
(72)【発明者】
【氏名】カン イル テ
(72)【発明者】
【氏名】バヤラス アビト ダニラ
(72)【発明者】
【氏名】チョン キム フイ
(72)【発明者】
【氏名】スティオノ シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】トク チー ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】キム テ ヨプ ジェームズ
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA02
5F044AA12
5F044BB01
5F044CC04
5F044CC05
5F044FF02
5F044FF04
5F044FF10
(57)【要約】
8~80μmの丸いワイヤを第1の電子部品の接触面にキャピラリウェッジボンディングし、ワイヤループを形成し、上記ワイヤを第2の電子部品の接触面にステッチボンディングすることにより電子部品の接触面を電気的に接続する方法であって、上記キャピラリウェッジボンディングが、0~4°の範囲の下面角を有するセラミックキャピラリを用いて行われ、上記ワイヤは、厚さ1~50nmのニッケル又はパラジウムの内層及び隣接する厚さ5~200nmの金の外層から構成される二重層被覆を有する銀又は銀系のワイヤ芯体を有するワイヤ芯体を含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品の接触面を第2の電子部品の接触面と電気的に接続する方法であって、連続する、
(1)8~80μmの範囲の平均直径を有する円形断面を有するワイヤを、前記第1の電子部品の前記接触面にキャピラリウェッジボンディングする工程と、
(2)工程(1)で形成されたキャピラリウェッジボンドと前記第2の電子部品の前記接触面との間にワイヤループを形成するために、キャピラリウェッジボンディングされたワイヤを上昇させる工程と、
(3)前記ワイヤを前記第2の電子部品の前記接触面にステッチボンディングする工程と
を備え、
工程(1)のキャピラリウェッジボンディングは、0~4°の範囲の下面角を有するセラミックキャピラリを用いて行われ、
前記ワイヤは表面を有するワイヤ芯体を含み、前記ワイヤ芯体はその表面に重ねられた二重層被覆を有し、
前記ワイヤ芯体自体は、純銀、銀含有量が99.5重量%を超えるドープ銀、及び銀含有量が少なくとも89重量%の銀合金からなる群から選択される材料からなり、
前記二重層被覆は、厚さ1~50nmのニッケル又はパラジウムの内層、及び隣接する厚さ5~200nmの金の外層から構成される方法。
【請求項2】
工程(1)がKNS-iConnボンダーを用いて行われ、前記キャピラリウェッジボンディングのプロセスパラメータが、(a’)~(g’):
(a’)50~100mAの範囲の超音波エネルギー、
(b’)10~30gの範囲の力、
(c’)0.3~0.7μm/sの範囲の一定速度、
(d’)60~70%の範囲の接触閾値、
(e’)25~175℃の範囲のボンディング温度、
(f’)200~500μmの範囲のテール長さの延長、
(g’)0~50%の範囲の超音波ランプ、
のうちの少なくとも1つを含むか、又は
工程(1)が新川ボンダーを用いて行われ、前記キャピラリウェッジボンディングのプロセスパラメータが、(a”)~(h”):
(a”)50~100mAの範囲の超音波エネルギー、
(b”)10~30gの範囲の力、
(c”)0.3~0.7μm/sの範囲の一定速度、
(d”)60~70%の範囲の接触閾値、
(e”)25~175℃の範囲のボンディング温度、
(f”)85~110μmの範囲の切断されたテールの長さ、
(g”)-6~-12μmの範囲の沈み込み量、
(h”)0~50%の範囲の超音波スロープ
のうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤ芯体が、99.95~100重量%の銀、及び最大500重量ppmの銀以外のさらなる成分からなる純銀からなる請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワイヤ芯体が、99.5超~99.997重量%の銀、30~5000重量ppm未満の少なくとも1種のドーピング元素、並びに最大500重量ppmの銀及び前記少なくとも1種のドーピング元素以外のさらなる成分からなるドープ銀からなる請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ワイヤ芯体が、89~99.50重量%の銀、0.50~11重量%の少なくとも1種の合金元素、最大5000重量ppm未満の少なくとも1種のドーピング元素、並びに最大500重量ppmの銀、前記少なくとも1種の合金元素及び前記少なくとも1種のドーピング元素以外のさらなる成分からなる銀合金からなる請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の合金元素が、パラジウム、金、ニッケル、白金、銅、ロジウム及びルテニウムからなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のドーピング元素が、カルシウム、ニッケル、白金、銅、ロジウム及びルテニウムからなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の電子部品が、接触面を有する基板又はボンドパッドの形態の接触面を有する半導体であり、前記第2の電子部品が、接触面を有する基板又はボンドパッドの形態の接触面を有する半導体である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の電子部品がボンドパッドの形態の接触面を有する半導体であり、前記第2の電子部品が接触面を有する基板である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電子部品が接触面を有する基板であり、前記第2の電子部品がボンドパッドの形態の接触面を有する半導体である請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀又は銀系の芯体と、その芯体の表面上に重ねられた二重層被覆とを含む被覆ワイヤによって、電子部品の接触面を電気的に接続するプロセスに関する。
【0002】
ワイヤボンディング技術は当業者にとっては周知である。ワイヤボンディングの過程では、第1の電子部品の接触面に第1のボンドが形成され、第2の電子部品の接触面に第2のボンドが形成される。両ボンドは、その間にある接続用ボンディングワイヤ片の端子である。
【0003】
本明細書では、「電子部品」という用語が使用されている。ここで、本文脈において、「電子部品」という用語は、電子機器又はマイクロエレクトロニクスの分野で使用されるような基板及び半導体を含むものとする。基板の例としては、リードフレーム、BGA(ボールグリッドアレイ)、PCB(プリント配線板)、フレキシブルな電子機器、ガラス基板、例えばDAB(アルミニウム直接接合)やDCB(銅直接接合)基板等のセラミック基板、IMS(絶縁金属基板)などが挙げられる。半導体の例としては、ダイオード、LED(light emitting diode、発光ダイオード)、ダイ、IGBT(insulated gate bipolar transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、IC(integrated circuit、集積回路)、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、及びセンサーが挙げられる。
【0004】
本明細書では、「接触面」という用語を用いる。この用語は、ワイヤボンディングによってボンディングワイヤを接続することができる電子部品の電気的接触面を意味する。代表的な例は、半導体のボンドパッドや、基板の接触面(メッキフィンガー、メッキグランドなど)である。ボンドパッドは、金属又は金属合金で構成されていてもよいし、特定の金属又は金属合金の薄い、例えば0.5~1μmの薄さのトップ層を持っていてもよい。ボンドパッドは、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金、又はこれらの金属のうちの1つをベースにした合金の表面を有していてもよい。ボンドパッドは、全体の厚さが例えば0.6~4μmで、面積が例えば20μm×20μm~300μm×300μm、好ましくは35μm×35μm~125μm×125μmであってもよい。
【0005】
電子機器やマイクロエレクトロニクス用途でのボンディングワイヤの使用は周知の技術である。ボンディングワイヤは、当初は金から作られていたが、現在では、銅、銅合金、銀、銀合金等、より安価な材料が使用されている。このようなワイヤは、金属被覆を有していてもよい。
【0006】
ワイヤの形状に関しては、円形断面のボンディングワイヤが最も一般的である。
【0007】
当業者に周知の日常的な微細なワイヤボンディング技術は、ボールウェッジワイヤボンディング(=略して「ボールウェッジボンディング」)であり、その過程で、ボールボンド(第1ボンド)とステッチ・ボンド(第2ボンド、ウェッジボンド)が形成される。
【0008】
最近では、上記第1のボールボンディング工程を、いわゆるキャピラリウェッジボンディング工程に置き換えた微細なワイヤボンディング技術が報告されており、例えば、Sarangapani Muraliらが執筆した論文「Aluminum Wedge-Wedge Bonding Using Capillary and Ball Bonder」、IMAPS 2017 - 50th International symposium on Microelectronics -Raleigh NC USA、2017年10月9~12日の開示を参照されたい。そのタイプの微細なワイヤボンディングプロセスは、キャピラリウェッジボンド(第1ウェッジボンド)及び従来のステッチボンド(第2ウェッジボンド)が形成されることで区別される。
【0009】
キャピラリウェッジボンディングでは、ボールボンディングにおいて典型的であるようなワイヤ先端のワイヤボールやFAB(Free Air Ball、フリーエアボール)が発生しない。キャピラリウェッジボンディングは、ボールボンディングと比較して、とりわけステップワイヤボンディング(step wire bonding)とも呼ばれることが多いいわゆるカスケードワイヤボンディング(積層ダイ用途のワイヤボンディング)に関して、生産性を向上させる。
【0010】
米国特許出願公開第2015/0187729A1号明細書は、金ワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウムワイヤのキャピラリウェッジボンディングを開示する。
【0011】
国際公開第2017/091144A1号パンフレットは、表面に重ねられた被覆層を有する銀又は銀系のワイヤ芯体を含むボンディングワイヤであって、この被覆層は、金若しくはパラジウムの1~1000nmの単層、又は1~100nm、好ましくは1~20nmの厚さのニッケル若しくはパラジウムの内層と、隣接する1~200nm、好ましくは1~40nmの厚さの金の外層とからなる二重層であるボンディングワイヤを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0187729A1号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/091144A1号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Sarangapani Muraliら、「Aluminum Wedge-Wedge Bonding Using Capillary and Ball Bonder」、IMAPS 2017 - 50th International symposium on Microelectronics -Raleigh NC USA、2017年10月9~12日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
出願人は、特定のタイプの被覆銀ワイヤ又は被覆された銀系のワイヤが、第1のキャピラリウェッジワイヤボンディング工程に焦点を当てた第1のキャピラリウェッジ/第2のステッチワイヤボンディング用途におけるボンディングワイヤとしての使用に予想外に適していることを見出した。すなわち、上記特定のタイプの被覆銀ワイヤ又は被覆された銀系のワイヤを用いて実施された場合の上記第1のキャピラリウェッジワイヤボンディング工程は、予想外に広いキャピラリウェッジボンディングプロセスウィンドウによって際立っていることが見出された。
【0015】
他のワイヤボンディングプロセスと同様に、キャピラリウェッジボンディングは、いわゆるプロセスウィンドウを呈する。以下に、そのようなキャピラリウェッジボンディングプロセスウィンドウは、あとでさらに説明する。
【0016】
上述した特定のタイプの被覆銀ワイヤ又は被覆された銀系のワイヤは、表面を有するワイヤ芯体を含み、このワイヤ芯体は、その表面に重ねられた二重層被覆を有し、このワイヤ芯体自体は、純銀、銀含有量が99.5重量%を超えるドープ銀、及び銀含有量が少なくとも89重量%の銀合金からなる群から選択される材料からなり、上記二重層被覆は、厚さ1~50nmのニッケル又はパラジウムの内層、及び隣接する厚さ5~200nmの金の外層から構成される。
【0017】
それゆえ、本発明は、第1の電子部品の接触面を第2の電子部品の接触面と電気的に接続する方法であって、連続する、
(1)8~80μmの範囲の平均直径を有する円形断面を有するワイヤを、上記第1の電子部品の接触面にキャピラリウェッジボンディングする工程と、
(2)工程(1)で形成されたキャピラリウェッジボンドと上記第2の電子部品の接触面との間にワイヤループを形成するために、キャピラリウェッジボンディングされたワイヤを上昇させる工程と、
(3)上記ワイヤを上記第2の電子部品の接触面にステッチボンディングする工程と
を備え、
工程(1)のキャピラリウェッジボンディングは、0~4°の範囲の下面角を有するセラミックキャピラリを用いて行われ、
上記ワイヤは表面を有するワイヤ芯体を含み、このワイヤ芯体はその表面に重ねられた二重層被覆を有し、
上記ワイヤ芯体自体は、純銀、銀含有量が99.5重量%を超えるドープ銀、及び銀含有量が少なくとも89重量%の銀合金からなる群から選択される材料からなり、
上記二重層被覆は、厚さ1~50nmのニッケル又はパラジウムの内層、及び隣接する厚さ5~200nmの金の外層から構成される方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の方法の工程(1)では、ワイヤが第1の電子部品の接触面にキャピラリウェッジボンディングされる。この工程(1)では、ボンディングツールとして、0~4°の範囲の下面角(下側フェース角)を有するセラミックキャピラリが採用される。
【0019】
セラミックキャピラリは、超音波エネルギー及び圧縮力を供給する。セラミックキャピラリの例としては、アルミナ又はジルコニアを添加したアルミナのキャピラリが挙げられる。
【0020】
工程(1)のキャピラリウェッジボンディングは、従来のウェッジボンディング装置を用いて行われてもよく、その装置の例としては、KNS-iConnボンダー(Kulicke & Soffa Industries Inc.(キューリック & ソファ・インダストリーズ)、フォートワシントン(Fort Washington)、ペンシルベニア州、米国)のようなKNSボンダー、又は新川-UTC-5000、NeoCuボンダー(日本)のような新川ボンダーが挙げられる。
【0021】
工程(1)のキャピラリウェッジボンディングのプロセスパラメータは、下記(a)~(i)の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、最も好ましくは全てを含むことが好ましい。
(a)50~100mAの範囲の超音波エネルギー、
(b)10~30gの範囲の力(圧縮力)、
(c)0.3~0.7μm/sの範囲の一定速度であって、一定速度とは、ワイヤがボンドパッドに接触する時の速度を意味する、一定速度、
(d)60~70%の範囲の接触閾値であって、接触閾値は、ボンドパッド又は接触面との接触を検出する際のボンドヘッドの感度を制御するパラメータであり、接触速度(contact velocity)(KNS用語、すなわちKNS-iConnボンダーが採用されている場合)又はサーチ速度(search speed)(新川用語、すなわち新川ボンダーが採用されている場合)の低下率で測定される、接触閾値、
(e)25~175℃の範囲のボンディング温度、
(f)85~110μmの範囲の切断されたテールの長さ(cut tail length)(新川用語、すなわち新川ボンダーが採用されている場合)、
(g)200~500μmの範囲のテール長さの延長(tail length extension)(KNS用語、すなわちKNS-iConnボンダーが採用されている場合)、
(h)-6~-12μmの範囲の沈み込み量(sink amount)(新川用語、すなわち新川ボンダーが採用されている場合)であって、沈み込み量は、キャピラリチップを介した超音波エネルギーと圧縮力とによって引き起こされるワイヤの機械的変形を制御するプロセスパラメータであり、ワイヤの変形はワイヤ表面を基準にした下向きの変形としてμmで測定され、負の値として示される、沈み込み量、
(i)0~50%の範囲の、超音波ランプ(ultrasonic ramp)(KNS用語、すなわちKNS-iConnボンダーが採用されている場合)又は超音波スロープ(ultrasonic sloping)(新川用語、すなわち新川ボンダーが採用されている場合)。
【0022】
すなわち、工程(1)がKNS-iConnボンダーを用いて行われる場合には、工程(1)のキャピラリウェッジボンディングのプロセスパラメータが、(a’)~(g’)のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、最も好ましくは全てを含むことが好ましい。
(a’)50~100mAの範囲の超音波エネルギー、
(b’)10~30gの範囲の力、
(c’)0.3~0.7μm/sの範囲の一定速度、
(d’)60~70%の範囲の接触閾値、
(e’)25~175℃の範囲のボンディング温度、
(f’)200~500μmの範囲のテール長さの延長、
(g’)0~50%の範囲の超音波ランプ。
一方、工程(1)が新川ボンダーを用いて行われる場合には、工程(1)のキャピラリウェッジボンディングのプロセスパラメータが、(a”)~(h”)のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、最も好ましくは全てを含むことが好ましい。
(a”)50~100mAの範囲の超音波エネルギー、
(b”)10~30gの範囲の力、
(c”)0.3~0.7μm/sの範囲の一定速度、
(d”)60~70%の範囲の接触閾値、
(e”)25~175℃の範囲のボンディング温度、
(f”)85~110μmの範囲の切断されたテールの長さ、
(g”)-6~-12μmの範囲の沈み込み量、
(h”)0~50%の範囲の超音波スロープ。
【0023】
工程(1)のキャピラリウェッジボンディングは、いわゆるキャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウを呈するが、これはいくつかの異なるアプローチによって記述することができ、そのうちの3つを以下に説明する。
【0024】
第1のアプローチでは、キャピラリウェッジボンド形成は、超音波エネルギー(典型的にはmAで測定される)の印加によってサポートされた、特定の圧縮力(典型的にはグラムで測定される)の付与を含むとみなされる。キャピラリウェッジボンディングプロセスにおける加えられる力の上限値と下限値との差、及び印加される超音波エネルギーの上限値と下限値との差の数学的積が、本発明では、キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウを定義してもよい。
(加えられる力の上限-加えられる力の下限)×(印加超音波エネルギーの上限-印加超音波エネルギーの下限)=キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウ
【0025】
第2のアプローチでは、キャピラリウェッジボンド形成は、沈み込み量にサポートされた特定の力(典型的にはグラムで測定される)の付与を含むとみなされる。キャピラリウェッジボンディングプロセスにおける加えられる力の上限と下限との差、及び沈み込み量の上限と下限との差の数学的積が、本発明では、キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウを定義してもよい。
(加えられる力の上限値-加えられる力の下限値)×(沈み込み量の上限値の絶対値-沈み込み量の下限値の絶対値)=キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウ
【0026】
第3のアプローチでは、キャピラリウェッジボンド形成は、スクラブ振幅にサポートされた特定の力(通常、グラムで測定される)の付与を含むとみなされる。スクラブ振幅は、結果的にワイヤを馬蹄形の形態に変形させてワイヤ断面を薄くするキャピラリチップの機械的な動き(円形、垂直、インライン(ワイヤ軸に沿って))を制御するプロセスパラメータである。スクラブ振幅は、通常、μmで測定される。キャピラリウェッジボンディングプロセスにおける加えられる力の上限と下限との差、及びスクラブ振幅の上限と下限との差の数学的積が、本発明では、キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウを定義してもよい。
(加えられる力の上限-加えられる力の下限)×(スクラブ振幅の上限-スクラブ振幅の下限)=キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウ。
【0027】
従って、キャピラリウェッジボンディングプロセスウィンドウは、仕様を満たすワイヤボンドの形成を可能にする力の領域/超音波エネルギーの組み合わせ、又は力の領域/沈み込み量の組み合わせ、又は力の領域/スクラブ振幅の組み合わせを定義するものであり、すなわち従来のプルテストのような従来のテストに合格するものである。
【0028】
工業用途では、キャピラリウェッジボンディングプロセスの堅牢性の理由から、広いキャピラリウェッジボンディングプロセスウィンドウ(力(g)対超音波エネルギー(mA)、又は力(g)対沈み込み量(μm)、又は力(g)対スクラブ振幅(μm))を有することが望ましい。本発明の方法、より正確に言えば、本発明の方法の工程(1)は、予想外に広いキャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウによって際立っている。ワイヤのコーティングがこの予想外に広いキャピラリウェッジボンディングプロセスウィンドウへの鍵を握っていると思われる。
【0029】
本発明の方法で使用されるワイヤは、マイクロエレクトロニクスにおけるボンディングのための丸いボンディングワイヤである。それは好ましくは一体型の物体である。平均直径は、8~80μm、好ましくは12~55μm、さらには17~50μmの範囲である。
【0030】
ワイヤ又はワイヤ芯体の平均直径、又は簡単に言えば直径は、「サイジング法」によって得ることができる。この方法によれば、規定の長さのワイヤの物理的重量が決定される。この重量に基づいて、ワイヤ材料の密度を用いてワイヤ又はワイヤ芯体の直径が計算される。直径は、特定のワイヤの5つの切片の5つの測定値の算術平均として計算される。
【0031】
上記ワイヤは、表面を有するワイヤ芯体を含み、このワイヤ芯体は、その表面に重ねられた二重層被覆(2層の被覆)を有し、ワイヤ芯体自体は、純銀、銀含有量が99.5重量%を超えるドープ銀、及び銀含有量が少なくとも89重量%の銀合金からなる群から選択される材料からなり、二重層被覆は、厚さ1~50nmのニッケル又はパラジウムの内層、及び隣接する厚さ5~200nmの金の外層から構成されることが重要である。簡潔にするために、本明細書ではこの被覆されたワイヤは略して「ワイヤ」とも呼ばれる。
【0032】
本明細書では、「純銀」という用語を使用する。純銀は、99.95~100重量%の範囲の純度を有する銀を意味するものとする。純銀は、さらなる成分(銀以外の成分)を総量で最大500重量ppm含んでいてもよい。
【0033】
本明細書では、「ドープ銀」という用語を使用する。ドープ銀は、99.5超~99.997重量%の範囲の量の銀と、総量で最大<5000重量ppm、例えば30~5000重量ppm未満の少なくとも1種のドーピング元素とからなる銀の種類を意味するものとする。ドープ銀は、さらなる成分(銀及び少なくとも1種のドーピング元素以外の成分)を総量で最大500重量ppm含んでいてもよい。
【0034】
本明細書では、「銀合金」という用語を使用する。銀合金は、89~99.50重量%の範囲の量の銀と、総量で0.50~11重量%の少なくとも1種の合金元素とからなる合金、好ましくは92~99.50重量%の範囲の量の銀と、総量で0.50~8重量%の少なくとも1種の合金元素とからなる合金、さらには96~99.50重量%の範囲の量の銀と、総量で0.50~4重量%の少なくとも1種の合金元素とからなる合金を意味するものとする。銀合金は、総量で最大5000重量ppm未満、例えば30~5000重量ppm未満の少なくとも1種のドーピング元素(少なくとも1種の合金元素以外)を含んでいてもよい。銀合金は、さらなる成分(銀、少なくとも1種の合金元素、及び少なくとも1種のドーピング元素以外の成分)を総量で最大500重量ppm含んでいてもよい。
【0035】
好ましい合金元素の例としては、パラジウム、金、ニッケル、白金、銅、ロジウム及びルテニウムが挙げられる。
【0036】
好ましいドーピング元素の例としては、カルシウム、ニッケル、白金、銅、ロジウム及びルテニウムが挙げられる。
【0037】
既に述べたように、ワイヤの芯体は、総量で最大500重量ppmのいわゆるさらなる成分を含んでいてもよい。このさらなる成分は、しばしば「不可避の不純物」とも呼ばれ、使用される原材料に存在する不純物に由来するか又はワイヤの製造プロセスに由来する微量の化学元素及び/又は化合物である。さらなる成分の総量が0~500重量ppmと少ないため、ワイヤの特性の良好な再現性が確保される。芯体に存在するさらなる成分は、通常、別途に添加されない。個々のさらなる成分は、ワイヤ芯体の総重量を基準にして、30重量ppm未満、好ましくは15重量ppm未満の量で含まれてもよい。
【0038】
前述のとおり、ワイヤ芯体は、純銀、ドープ銀、又は銀合金からなる。
【0039】
ワイヤの芯体は、バルク材の均質な領域である。任意のバルク材料は常に、ある程度異なる特性を示す可能性のある表面領域を有するので、ワイヤの芯体の特性は、バルク材料の均質領域の特性として理解される。バルク材領域の表面は、形態、組成(例えば、硫黄、塩素及び/又は酸素の含有量)、及びその他の特徴の点で異なる可能性がある。表面は、ワイヤ芯体と、ワイヤ芯体に重ねられた二重層被覆との間の界面領域である。典型的には、二重層被覆は、ワイヤ芯体の表面に完全に重ねられている。ワイヤの芯体とその上に重ねられた二重層被覆の間のワイヤの領域には、芯体と二重層被覆の両方の材料の組み合わせが存在することができる。
【0040】
ワイヤの表面上に重ねられた二重層被覆は、厚さ1~50nm、好ましくは1~20nmのニッケル又はパラジウムの内層と、隣接する厚さ5~200nm、好ましくは10~100nmの金の外層とから構成されている。本文脈において、「厚さ」又は「被覆層の厚さ」という用語は、芯体の長手方向軸に垂直な方向における被覆層のサイズ(大きさ)を意味する。
【0041】
上記二重層被覆の組成に関して、その内層のニッケル又はパラジウムの含有量は、内側被覆層の総重量を基準にして、例えば少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも95重量%である。特に好ましいのは、内側被覆層が純ニッケル又は純パラジウムからなることである。純ニッケル又は純パラジウムは、通常、内側被覆層の総重量を基準にして、1重量%未満のさらなる成分(ニッケル又はパラジウム以外の成分)を有する。隣接する外側金層の金含有量は、外側被覆層の総重量を基準にして、例えば少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも95重量%である。特に好ましいのは、外側被覆層が純金からなることである。純金は、通常、外側被覆層の総重量を基準にして、1重量%未満のさらなる成分(金以外の成分)を有する。
【0042】
一実施形態では、ワイヤは、以下の外因的特性(α)~(θ)のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
(α)耐腐食性は、キャピラリウェッジリフトが5%以下、例えば0~5%の範囲(後述の「試験方法A」参照)、好ましくは0~0.1%の範囲の値を有する、
(β)耐湿性は、キャピラリウェッジリフトが5%以下、例えば0~5%の範囲(後述の「試験方法B」参照)、好ましくは0~0.1%の範囲の値を有する、
(γ)ワイヤの抵抗率が4.0μΩ・cm未満、例えば1.6~4.0μΩ・cmの範囲、好ましくは1.63~3.4μΩ・cmの範囲である(後述の「試験方法C」参照)、
(δ)ワイヤの銀のデンドライト成長が12μm/s以下、例えば0~12μm/sの範囲、好ましくは0~2μm/sの範囲である(後述の「試験方法D」参照)、
(ε)ワイヤ芯体の硬度が80HV(10mN/12s)以下、例えば50~80HVの範囲、好ましくは50~70HVの範囲である(後述の「試験方法E」参照)、
(ξ)第1のキャピラリウェッジボンディング(第1ウェッジ)についてのプロセスウィンドウ領域は、Al-0.5重量%Cuボンドパッドにキャピラリウェッジボンディングされた直径17.5μmのワイヤに対して、少なくとも200mA・g、例えば400~600mA・gの値を有する(後述の「試験方法F」参照)、
(η)第2のステッチボンディング(第2ウェッジ)のプロセスウィンドウ領域は、金フィンガーにステッチボンディングされた直径17.5μmのワイヤに対して、少なくとも50mA・g、例えば125~175mA・gの値を有する(後述の「試験方法G」参照)、
(θ)ワイヤの降伏強度が170MPa以下、例えば140~170MPaの範囲である(後述の「試験方法H」参照)。
【0043】
本明細書では、「外因的特性」という用語は、ワイヤ芯体に関して使用される。外因的特性は、ワイヤ芯体と採用される測定方法及び/又は測定条件等の他の要因との関係に依存するものであり、一方、内因的特性は、ワイヤ芯体がそれ自体で(他の要因とは無関係に)有する特性を意味する。
【0044】
本発明の方法で使用されるワイヤは、著しく広いキャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウでキャピラリウェッジボンディングが可能であるという予想外の利点を有する。このワイヤは、少なくとも工程(i)~(v):
(i)純銀、ドープ銀、又は銀合金からなる前駆体アイテムを提供する工程と、
(ii)7850~49000μmの範囲の中間的な断面又は100~250μm、好ましくは130~140μmの範囲の中間的な直径が得られるまで、前駆体アイテムを伸長させて伸長された前駆体アイテムを形成する工程と、
(iii)工程(ii)の完了後に得られた伸長された前駆体アイテムの表面に、ニッケル又はパラジウムの内層(ベース層)及び隣接する金の外層(トップ層)の二重層被覆を堆積させる工程と、
(iv)所望の最終的な断面又は直径が得られるまで、工程(iii)の完了後に得られた被覆された前駆体アイテムをさらに伸長する工程と、
(v)最後に、工程(iv)の完了後に得られた被覆された前駆体を、200℃~600℃の範囲のオーブン設定温度で、0.4秒~0.8秒の範囲の曝露時間でストランドアニーリングして、ワイヤを形成する工程と
を備えるプロセスによって製造することができる。
【0045】
本明細書では、「ストランドアニーリング」という用語を使用する。ストランドアニーリングは、高い再現性を有するワイヤの高速製造を可能にする連続プロセスである。本発明の文脈では、ストランドアニーリングは、アニーリングされる被覆された前駆体が従来のアニーリングオーブンを通って引っ張られるか移動され、アニーリングオーブンを出た後にリールにスプールされる間に、アニーリングが動的に行われることを意味する。ここで、アニーリングオーブンは、通常、所定の長さの円筒形のチューブの形態にある。その規定された温度プロファイルで、例えば10~60メートル/分の範囲で選択されてもよい所定のアニーリング速度で、アニーリング時間/オーブン温度のパラメータを規定及び設定することができる。
【0046】
本明細書では、「オーブン設定温度」という用語を使用する。オーブン設定温度は、アニーリングオーブンの温度コントローラに固定された温度を意味する。
【0047】
本開示は、前駆体アイテム、伸長された前駆体アイテム、被覆された前駆体アイテム、被覆された前駆体及び被覆されたワイヤを区別する。「前駆体アイテム」という用語は、ワイヤ芯体の所望の最終断面又は最終直径に達していないワイヤ前段階のものに使用され、一方、「前駆体」という用語は、所望の最終断面又は所望の最終直径のワイヤ前段階に使用される。工程(v)の完了後、すなわち、所望の最終断面又は所望の最終直径における被覆された前駆体の最終ストランドアニーリング後に、本発明の方法で使用することができるワイヤが得られる。
【0048】
工程(i)で提供される前駆体アイテムは、純銀からなってもよい。典型的には、そのような前駆体アイテムは、例えば2~25mmの直径、及び例えば2~100mの長さを有するロッドの形をしている。そのような銀のロッドは、適切な鋳型を用いて銀を連続鋳造し、続いて冷却して固化することによって作ることができる。
【0049】
代替案として、工程(i)で提供されるような前駆体アイテムは、ドープ銀又は銀合金からなっていてもよい。そのような前駆体アイテムは、銀を所望の量の必要な成分と合金化、ドーピング、又は合金化及びドーピングすることによって得ることができる。ドープ銀又は銀合金は、金属合金の技術分野の当業者に公知の従来のプロセスによって調製することができ、例えば、所望の割合で成分を一緒に溶かすことによって調製することができる。その際、1つ以上の従来の母合金を利用することが可能である。溶かすプロセスは、例えば、誘導炉を用いて行うことができ、真空下又は不活性ガス雰囲気下で作業することが好都合である。このように生成された溶融物を冷却して、銀系の前駆体アイテムの均質な部分を形成することができる。典型的には、そのような前駆体アイテムは、例えば2~25mmの直径及び例えば2~100mの長さを有するロッドの形をしている。そのようなロッドは、上記ドープ銀又は(ドープされた)銀合金の溶融物を適切な鋳型を用いて連続鋳造し、続いて冷却して固化することによって作ることができる。
【0050】
工程(ii)では、前駆体アイテムは、7850~49000μmの範囲の中間的な断面又は100~250μm、好ましくは130~140μmの範囲の中間的な直径が得られるまで、伸長されて、伸長された前駆体アイテムが形成される。前駆体アイテムを伸長させる技術は公知である。好ましい技術は、圧延、スウェージング(スウェージ加工)、ダイ延伸等であり、中でもダイ延伸が特に好ましい。ダイ延伸の場合、前駆体アイテムは、所望の中間的な断面又は所望の中間的な直径に達するまで、いくつかの工程で延伸される。このようなワイヤのダイ延伸プロセスは、当業者にとっては周知である。従来のタングステンカーバイドやダイヤモンドの伸線ダイスを採用してもよく、伸線をサポートするために従来の伸線潤滑剤を採用してもよい。
【0051】
工程(ii)は、400℃~800℃の範囲のオーブン設定温度で、50分~150分の範囲の曝露時間で、伸長された前駆体アイテムを中間バッチアニーリングする1つ以上の下位工程を含んでもよい。中間バッチアニーリングは、例えば、約2mmの直径に引き出され、ドラムに巻かれたロッドを用いて行われてもよい。
【0052】
工程(ii)の任意の中間バッチアニーリングは、不活性又は還元性の雰囲気下で行われてもよい。数多くの種類の不活性雰囲気及び還元性雰囲気が当該技術分野で公知であり、アニーリングオーブンのパージに使用される。公知の不活性雰囲気の中では、窒素又はアルゴンが好ましい。公知の還元性雰囲気の中では、水素が好ましい。別の好ましい還元性雰囲気は、水素と窒素の混合物である。好ましい水素と窒素の混合物は、90~98体積%の窒素と、それに応じて2~10体積%の水素であり、体積%の合計が100体積%である。好ましい窒素/水素の混合物は、混合物の総体積を基準にして、それぞれ90/10、93/7、95/5、97/3体積%/体積%に等しい。
【0053】
工程(iii)では、ニッケル又はパラジウムの内層及び隣接する金の外層から構成される二重層被覆が、工程(ii)の完了後に得られた伸長された前駆体アイテムの表面上に、その表面上にその被覆物を重ねるように堆積される。
【0054】
当業者は、ワイヤの実施形態について開示された層の厚さのコーティングを最終的に得るために、すなわち、被覆された前駆体アイテムを最終的に伸長した後の、伸長された前駆体アイテム上のそのようなコーティングの厚さを計算する方法を知っている。当業者は、銀又は銀合金の表面に実施形態に係る材料の被覆層を形成するための多数の技術を知っている。好ましい技術は、電気めっき及び無電解めっき等のめっき、スパッタリング、イオンめっき、真空蒸着及び物理的気相成長などの気相からの材料の堆積、及び溶融物からの材料の堆積である。電気めっきが好ましい手法である。
【0055】
工程(iv)では、工程(iii)の完了後に得られた被覆された前駆体アイテムが、ワイヤの所望の最終の断面又は直径が得られるまでさらに伸長される。
【0056】
被覆された前駆体アイテムを伸長させる技術は、工程(ii)の開示で上述したものと同じ伸長技術である。
【0057】
工程(v)では、工程(iv)の完了後に得られた被覆された前駆体が、最終的に、200~600℃の範囲、好ましくは200~400℃の範囲のオーブン設定温度で、0.4~0.8秒の範囲の曝露時間でストランドアニーリングされて、被覆されたワイヤが形成される。
【0058】
好ましい実施形態では、最終的にストランドアニーリングされた被覆された前駆体、すなわちまだ熱い被覆されたワイヤは水で急冷され、この水は、一実施形態では、1種以上の添加剤、例えば0.01~0.07体積%の添加剤を含んでいてもよい。水中での急冷は、直ちに又は急速に、すなわち0.2~0.6秒以内に、最終的にストランドアニーリングされた被覆された前駆体を、工程(v)で経験した温度から室温まで、例えば浸漬又は滴下によって冷却することを意味する。
【0059】
工程(v)の完了と任意の急冷の後、被覆されたワイヤが完成する。その特性を十分に享受するためには、このワイヤをワイヤボンディング用途に直ちに使用する、すなわち、遅延なく、例えば、工程(v)の完了後28日以内に使用することが好都合である。
【0060】
本発明の方法の工程(2)では、工程(1)で形成されたキャピラリウェッジボンドと第2の電子部品の接触面との間にワイヤループを形成するように、キャピラリウェッジボンディングされたワイヤが上昇される。所望のループ形状と所望のループプロセスプロファイル(キャピラリの動き)を有するボンディングワイヤのループ形成は、当業者に公知の従来の方法で行われるので、それゆえ、詳細な説明は不要である。KNS Process User Guide for looping profile(ループ形成プロファイルのためのKNSプロセスユーザーガイド)(Kulicke & Soffa Industries Inc.、フォートワシントン、ペンシルベニア州、米国、2002)に記載されている手順に従って作業してもよい。ループ形状及びループプロセスプロファイルは、例えば、キンク高さ、逆方向の動き、キンク距離、キンク角度、ループファクター、形状角度、スパン長さ、最後のキンク角度及び/又は最後のキンク長さのようなループ形成パラメータを調整することによって決定されてもよい。ループプロセスプロファイルの例としては、Standard Loop、Worked-Loop、BGA2-Loop、BGA3-Loop、BGA4-Loop、BGA5-Loop、K-Loop、PSA-Loop、ULL-Loopが挙げられる。
【0061】
本発明の方法の工程(3)において、ボンディングワイヤは、第2の電子部品の接触面にステッチボンディングされる。工程(3)のステッチボンディング手順は、それ自体、当業者には周知であり、方法的な特異性はない。通常のステッチボンディング装置やステッチボンディングツールを用いることができる。KNS Process User Guide for stand-off stitch bond(SSB)(スタンドオフ・ステッチ・ボンド(SSB)のためのKNSプロセスユーザーガイド)(Kulicke & Soffa Industries Inc.、フォートワシントン、ペンシルベニア州、米国、2003)に記載された手順に従って作業してもよい。ステッチボンディングプロセスのパラメータは、例えば、以下のとおりであってもよい:例えば5~500gの範囲のボンディング力、例えば5~200mAの範囲の超音波エネルギー、例えば25~250℃の範囲の温度、例えば2.5~40μm/msの範囲の一定速度、例えば3~30msの範囲のボンディング時間。
【0062】
既に述べたように、本発明の方法の工程(1)~(3)は連続の工程である。しかしながら、1つ以上のさらなる副次的な工程、例えば、工程順序(1)~(3)の前、間、又は後に行われる工程があってもよい。
【0063】
本発明の方法の一実施形態では、第1の電子部品は、接触面を有する基板又はボンドパッドの形態の接触面を有する半導体であり、第2の電子部品は、接触面を有する基板又はボンドパッドの形態の接触面を有する半導体である。上記実施形態の第1の変形例では、第1の電子部品は、ボンドパッドの形態の接触面を有する半導体であり、第2の電子部品は、接触面を有する基板である。上記実施形態の第2変形例では、第1の電子部品は接触面を有する基板であり、第2の電子部品はボンドパッドの形態の接触面を有する半導体である。
【実施例
【0064】
試験方法A.~H.
すべての試験及び測定は、T=20℃及び相対湿度RH=50%で行った。
【0065】
A. キャピラリウェッジボンドの塩水浸漬試験
ワイヤをAl-0.5重量%Cuのボンドパッドにキャピラリウェッジボンディングした。そのようにボンディングしたワイヤを取り付けた試験装置を、25℃の塩水に10分間浸漬し、脱イオン(DI)水で洗浄し、その後アセトンで洗浄した。塩水は、DI水中に20重量ppmのNaClを含んでいた。浮き上がったウェッジボンドの数を低倍率の顕微鏡(Nikon MM-40)で100倍の倍率で観察した。より多くの数の浮き上がったキャピラリウェッジボンドが観察されるほど、激しい界面電解腐食を示唆する。
【0066】
B. キャピラリウェッジボンドの耐湿性試験
ワイヤをAl-0.5重量%Cuボンドパッドにキャピラリウェッジボンディングした。そのようにボンディングしたワイヤを取り付けた試験装置を130℃の温度、85%の相対湿度(RH)で8時間、高加速応力試験(HAST)チャンバーに保管し、その後、低倍率の顕微鏡(Nikon MM-40)で100倍の倍率で浮き上がったウェッジボンドの数を調べた。より多くの数の浮き上がったキャピラリウェッジボンドが観察されるほど、激しい界面電解腐食を示唆する。
【0067】
C. 電気抵抗率
試験片、すなわち長さ1.0mのワイヤの両端を、一定の電流/電圧を供給する電源に接続した。供給された電圧に対して、装置で抵抗値を記録した。測定装置はHIOKI(日置電機)のモデル3280-10であり、試験は少なくとも10個の試験片で繰り返し行った。測定値の算術平均を以下の計算に用いた。
【0068】
抵抗値Rは、R=V/Iにより算出した。
【0069】
比抵抗ρは、ρ=(R×A)/L(式中、Aはワイヤの平均断面積であり、Lは電圧測定装置の2つの測定点間のワイヤの長さである)により算出した。
【0070】
比電気伝導度σは、σ=1/ρにより算出した。
【0071】
D. ワイヤのエレクトロマイグレーション試験
直径75μmの2本のワイヤをガラス板の上で、低倍率の顕微鏡Nikon MM40モデルの対物レンズで50倍の倍率のもとで、1mm以内の距離で平行に保った。電気的に接続される2本のワイヤの間にマイクロピペットで水滴を形成した。一方のワイヤを陽極に、もう一方のワイヤを陰極に接続し、ワイヤに+5Vを与えた。10kΩの抵抗器を直列に接続した閉回路で、2本のワイヤに+5Vの直流電流を流した。電解液として脱イオン水を数滴垂らして2本のワイヤを濡らして回路を閉じた。銀は電解液の中でカソードからアノードへ電気的に移動して銀のデンドライトを形成し、ときには2本のワイヤが橋渡しされることもあった。銀デンドライトの成長速度は、ワイヤの被覆層と、銀合金ワイヤの芯体の場合は、合金形成添加物に強く依存していた。
【0072】
E. ビッカース微小硬度
硬度は、ビッカース圧子を取り付けたMitutoyo HM-200試験機を用いて測定した。ワイヤの試験片に10mNの押込み荷重の力を加え、12秒の滞留時間を設けた。試験は、ワイヤの中心部又はFABで行った。
【0073】
F. キャピラリウェッジボンディング(第1ウェッジ)のプロセスウィンドウ領域
キャピラリウェッジボンディングのプロセスウィンドウ領域の測定は、標準的な手順で行った。KNS-iConnボンダーツール(Kulicke & Soffa Industries Inc.、フォートワシントン、ペンシルベニア州、米国)を用いて、シリコンダイのAl-0.5重量%Cuボンドパッドに試験ワイヤをキャピラリウェッジボンディングした。重要なキャピラリウェッジボンディングのプロセスパラメータは、超音波エネルギー75mA、圧縮力20g、一定速度0.5μm/s、接触閾値65%、ボンディング温度150℃、テール長さの延長350μm、超音波ランプ25%であった。プロセスウィンドウの値は、平均直径17.5μmを有するワイヤを基準とした。
【0074】
プロセスウィンドウの4つのコーナーは、2つの主要な不良モードを克服することで導き出された。
(1)低すぎる力と超音波エネルギーの供給は、ワイヤのパッド上不着(non-stick on pad、NSOP)につながり、
(2)高すぎる力と超音波エネルギーの供給は、短いワイヤテール(short wire tail、SHTL)につながる。
【0075】
G. ステッチボンディング(第2ウェッジ)のプロセスウィンドウ領域
ステッチボンディングのプロセスウィンドウ領域の測定は、標準的な手順で行った。KNS-iConnボンダーツール(Kulicke & Soffa Industries Inc.、フォートワシントン、ペンシルベニア州、米国)を用いて、BGA(ボールグリッドアレイ)基板上の金メッキされたリードフィンガーに試験ワイヤをステッチボンディングした。プロセスウィンドウの値は、平均直径17.5μmを有するワイヤを基準とした。
【0076】
プロセスウィンドウの4つのコーナーは、2つの主要な不良モードを克服することで導き出された。
(1)低すぎる力と超音波エネルギーの供給は、ワイヤのリードフィンガー上不着(non-stick on lead finger、NSOL)につながり、
(2)高すぎる力と超音波エネルギーの供給は、短いワイヤテール(SHTL)につながる。
【0077】
H. 伸び(EL)
Instron-5564装置を用いて、ワイヤの引張特性を試験した。ワイヤは2.54cm/分の速度で、254mmのゲージ長(L)で試験した。荷重と破壊(破断)伸びは、ASTM規格F219-96に基づいて取得した。伸びは、引張試験の開始と終了の間のワイヤのゲージ長の差(ΔL)であり、通常、記録された荷重対伸びの引張プロットから計算され、(100×ΔL/L)としてパーセントで報告される。引張強度と降伏強度は、破断荷重と降伏荷重をワイヤの面積で割って算出した。ワイヤの実際の直径は、標準の長さのワイヤを計量し、その密度を利用したサイジング法で測定した。
【0078】
ワイヤサンプル1~12
いずれも純度99.99%以上(「4N」)の銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)を所定量だけるつぼで溶かした。少量の銀-ニッケル、銀-カルシウム、銀-白金、銀-銅の母合金を溶融物に加え、撹拌して添加成分の均一な分布を確認した。以下の母合金を使用した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の合金については、対応する組み合わせの母合金を加えた。
【0081】
次に、8mmのロッドの形態のワイヤ芯体前駆体アイテムを溶融物から連続鋳造した。次いで、このロッドを複数の延伸工程で延伸して、直径134μmの円形断面を有するワイヤ芯体前駆体を形成した。このワイヤ芯体前駆体を、オーブン設定温度500℃で曝露時間60分の中間バッチアニーリングを行った後、内側のパラジウム(又はニッケル)層と外側の金層からなる二重層被覆を電気めっきし、その後、最終直径17.5μm、及び最終のパラジウム層又はニッケル層の厚さが1~4nmの範囲、最終の金層の厚さが10~18nmの範囲になるようにさらに延伸した後、オーブン設定温度220℃で0.6秒の曝露時間で最終ストランドアニーリングを行い、そのように得た被覆されたワイヤを、0.07体積%の界面活性剤を含む水で直ちに急冷した。
【0082】
この手順によって、複数の異なるサンプル1~12の被覆された銀及び銀系のワイヤと、純度4Nの非被覆基準銀ワイヤ(基準)を製造した。表1は、17.5μmの直径を有するワイヤの組成を示す。組成はICPで測定した。
【0083】
【表2】
【0084】
下記表2は、特定の試験結果を示す。直径75μmのワイヤで行ったエレクトロマイグレーション試験を除き、すべての試験は、17.5μmの直径を有するワイヤで行った。
【0085】
【表3】
【国際調査報告】