(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】拡張型心筋症の細胞療法に対する応答性を判定する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20220131BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220131BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20220131BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20220131BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20220131BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220131BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20220131BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20220131BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P9/00
A61P9/04
A61K35/34
A61K35/545
C12N5/0735
C12N5/10
C12N5/074
C12N5/0775
C12Q1/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525336
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 US2019060562
(87)【国際公開番号】W WO2020097525
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515354830
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ マイアミ
【氏名又は名称原語表記】University of Miami
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘアー、ジョシュア、エム.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
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4C087AA01
4C087BB65
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
本開示は、心血管障害(例えば、心筋症)を患う対象において細胞療法に対する応答性を判定する方法、および心血管障害を患う対象を治療する方法を対象とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管障害の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、
細胞療法に対するハイパーレスポンダーとして同定された対象に、前記対象において前記心血管障害を治療するのに有効な量の細胞を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記細胞療法が、間葉系幹細胞療法、心臓幹細胞療法、人工多能性幹細胞療法、または胚性幹細胞療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞療法が、間葉系幹細胞療法である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞療法が、同種間葉系幹細胞療法である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞療法が、自己間葉系幹細胞療法である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記対象の試料における心血管障害に関連する1つ以上の遺伝子における病的変異の有無を判定することを含み、前記病的遺伝子変異(複数可)の欠如により、前記対象を細胞療法に対するハイパーレスポンダーと同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の遺伝子が、ACTC、NYH7、MYH6、MYBPC3、TNNT2、TNNC1、TNNI3、TPM1、TTN、DMD、DES、LDB3、SGCD、PDLIM3、VCL、RYAB、ILK、LAMA4、FLNC、TCAP、CSRP3、ACTN2、MYPN、ANKRD1、BAG3、LMNA、TMPO、PSEN1、PSEN2、PLN、EYA4、TAZ/G4.5、CPT2、ACADVL、RBM20、ABCC、SCN5A、GATAD1、PRDM16、GAA、FKRP、CTNNA3、DSP、PKP2、SOS2、およびALMS1ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の遺伝子が、ANKRD、BAG3、DMD、GATAD1、LDB3、LMNA、MYBPC3、MYH6、RBM20、TNNT2、TTNおよびRBM20、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記心血管障害が、心不全、アドリアマイシン誘発性心筋症、特発性拡張型心筋症、虚血性心筋症、心筋炎、虚血性心疾患、浸潤性心筋症による心筋症、アミロイドーシスによる心筋症、サルコイドーシスによる心筋症、ヘモクロマトーシスによる心筋症、周産期心筋症、高血圧による心筋症、ヒト免疫不全ウイルス感染による心筋症、結合組織疾患による心筋症、強皮症による心筋症、全身性紅斑性狼瘡による心筋症、マルファン症候群による心筋症、結節性多発動脈炎による心筋症、非特異的結合組織疾患による心筋症、強直性脊椎炎による心筋症、リウマチ性関節炎による心筋症、再発性多発軟骨炎による心筋症、ウェゲナー肉芽腫症による心筋症、混合性結合組織疾患による心筋症、物質乱用による心筋症、慢性アルコール乱用による心筋症、コカイン乱用による心筋症、ドキソルビシン療法による心筋症、拘束性心筋症、家族性心筋症、心臓弁疾患による心筋症、内分泌機能障害による心筋症、甲状腺疾患による心筋症、カルシノイドによる心筋症、褐色細胞腫による心筋症、末端肥大症による心筋症、神経筋疾患による心筋症、腫瘍性心疾患による心筋症、先天性心疾患による心筋症、冠動脈バイパス手術の合併症による心筋症、放射線による心筋症、重症疾患による心筋症、心内膜線維弾性症による心筋症、血栓性血小板減少性紫斑病による心筋症、リウマチ性心炎による心筋症、ロイコトリエン療法による心筋症、リチウム療法による心筋症、またはプレドニゾン療法による心筋症である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、経心内膜注射によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、約2000万~約10
9個の細胞の範囲の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、前記対象の心室の1つ以上の部位に、1回以上の経心内膜注射によって投与される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、前記対象の左心室の10の部位に、10回の経心内膜注射によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、前記対象の左心室の15の部位に、15回の経心内膜注射によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、前記対象の左心室の20の部位に、20回の経心内膜注射によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が、約4億個の細胞の量で投与される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞の投与が、前記対象における血流依存性血管拡張(FMD)の少なくとも3%の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞の前記投与が、前記細胞による治療前の前記対象の駆出率と比較して、前記対象における駆出率の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞の前記投与が、前記細胞による治療前の6分間歩行距離と比較して、前記対象の前記6分間歩行距離の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府の利益に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所、心肺血液研究所によって授与された助成金番号R01 HL 110737-01の下で米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月8日に出願された米国仮特許出願第62/757,748号および2018年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/758,467号の利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
本開示は、細胞療法から利益を受ける対象を同定する材料および方法、ならびにそのような対象を治療するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0004】
左心室機能(LV)の改善および/またはLV形状の回復は、逆リモデリングと呼ばれ、生活の質の向上(4)、ならびに死亡率(5)、LVAD移植、心臓移植および入院(6)の減少に関連している。駆出率が低下した心不全(HFrecEF)の治療効果は、持続的に駆出率(EF)が低下したHFと比較して、予後が改善されると認められた転帰である。(7)したがって、心筋症患者のLV機能の回復は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)治療の重要な目標である。
【0005】
早期診断および効果的な神経ホルモン治療(Groenning et al.,J.American College of Cardiology,36:2072-2080,2000、DiLenarda et al.,Brit.Heart J.,72:S46-S51,1994)およびデバイス療法の導入により、拡張型心筋症(DCM)患者の予後は過去10年間で改善された。しかし、DCMは依然として心臓移植にいたる主要な状態である(Merlo et al.,J.Amer.College of Cardiol.,57:1468-1476、2011)。MACE事象は、診断後の早期に発症し、予測できないままである。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本明細書に記載されるのは、心血管障害の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であり、本方法は、細胞療法に対するハイパーレスポンダーとして同定された対象に、対象において心血管障害を治療するためのある量の細胞を投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は、心血管障害、例えば、心不全、アドリアマイシン誘発性心筋症、特発性拡張型心筋症、虚血性心筋症、心筋炎、虚血性心疾患、浸潤性心筋症による心筋症、アミロイドーシスによる心筋症、サルコイドーシスによる心筋症、ヘモクロマトーシスによる心筋症、周産期心筋症、高血圧による心筋症、ヒト免疫不全ウイルス感染による心筋症、結合組織疾患による心筋症、強皮症による心筋症、全身性紅斑性狼瘡による心筋症、マルファン症候群による心筋症、結節性多発動脈炎による心筋症、非特異的結合組織疾患による心筋症、強直性脊椎炎による心筋症、リウマチ性関節炎による心筋症、再発性多発軟骨炎による心筋症、ウェゲナー肉芽腫症による心筋症、混合性結合組織疾患による心筋症、物質乱用による心筋症、慢性アルコール乱用による心筋症、コカイン乱用による心筋症、ドキソルビシン療法による心筋症、拘束性心筋症、家族性心筋症、心臓弁疾患による心筋症、内分泌機能障害による心筋症、甲状腺疾患による心筋症、カルシノイドによる心筋症、褐色細胞腫による心筋症、末端肥大症による心筋症、神経筋疾患による心筋症、腫瘍性心疾患による心筋症、先天性心疾患による心筋症、冠動脈バイパス手術の合併症による心筋症、放射線による心筋症、重症疾患による心筋症、心内膜線維弾性症による心筋症、血栓性血小板減少性紫斑病による心筋症、リウマチ性心炎による心筋症、ロイコトリエン療法による心筋症、リチウム療法による心筋症、またはプレドニゾン療法による心筋症などに罹患している。様々な実施形態において、本方法は血管緊張を改善する。
【0007】
いくつかの実施形態において、細胞は、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞および/または心臓幹細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は間葉系幹細胞(MSC)である。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、MSC)は、同種細胞(例えば、同種MSC)である。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、MSC)は、自己細胞(例えば、自己MSC)である。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、MSC)は、骨髄、臍帯血、脂肪組織、ウォートンゼリーまたは羊水から得られる。
【0008】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象の試料における心血管障害に関連する遺伝子における1つ以上の病的変異の有無を判定することを含み、病的遺伝子変異(複数可)の欠如により、対象を細胞療法に対するハイパーレスポンダーとして同定する。いくつかの実施形態において、対象は、
図1に示される1つ以上の病的遺伝子変異についてスクリーニングされる(すなわち、対象が
図1の1つ以上の遺伝子に変異を含むか否かが判定される)。いくつかの実施形態において、対象は、以下の遺伝子のうちの1つ以上で1つ以上の病的遺伝子変異についてスクリーニングされる。ACTC、NYH7、MYH6、MYBPC3、TNNT2、TNNC1、TNNI3、TPM1、TTN、DMD、DES、LDB3、SGCD、PDLIM3、VCL、RYAB、ILK、LAMA4、FLNC、TCAP、CSRP3、ACTN2、MYPN、ANKRD1、BAG3、LMNA、TMPO、PSEN1、PSEN2、PLN、EYA4、TAZ/G4.5、CPT2、ACADVL、RBM20、ABCC、SCN5A、GATAD1、PRDM16、GAA、FKRP、CTNNA3、DSP、PKP2、SOS2、およびALMS1(すなわち、参照遺伝子の任意の組み合わせが企図される)。したがって、いくつかの実施形態において、対象(例えば、心血管障害を呈する対象)は、
図1に示される遺伝子のうちの1つ以上で病的遺伝子変異を欠いている(例えば、ACTC、NYH7、MYH6、MYBPC3、TNNT2、TNNC1、TNNI3、TPM1、TTN、DMD、DES、LDB3、SGCD、PDLIM3、VCL、RYAB、ILK、LAMA4、FLNC、TCAP、CSRP3、ACTN2、MYPN、ANKRD1、BAG3、LMNA、TMPO、PSEN1、PSEN2、PLN、EYA4、TAZ/G4.5、CPT2、ACADVL、RBM20、ABCC、SCN5A、GATAD1、PRDM16、GAA、FKRP、CTNNA3、DSP、PKP2、SOS2、および/またはALMS1)。いくつかの実施形態において、対象は、以下の遺伝子のうちの1つ以上で病的変異を欠いている。ANKRD、BAG3、DMD、GATAD1、LDB3、LMNA、MYBPC3、MYH6、RBM20、TNNT2、TTNおよびRBM20。必要に応じて、対象は、ANKRD、BAG3、DMD、GATAD1、LDB3、LMNA、MYBPC3、MYH6、RBM20、TNNT2、TTN、およびRBM20のすべてに病的変異を欠いている。
【0009】
細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、または心臓幹細胞)は、当技術分野で既知の方法を含む任意の適切な方法に従って投与される。いくつかの実施形態において、細胞は局所投与される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、経心内膜注射によって投与される。
【0010】
細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、必要に応じて、約2000万~約100億個の細胞の範囲の量で投与される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、約2000万~約3000万個の細胞、または約2000万~約4000万個の細胞、または約2000万~約5000万個の細胞、または約2000万~約6000万個の細胞、または約2000万~約7000万個の細胞、または約2000万~約8000万個の細胞、または約2000万~約9000万個の細胞、または約3000万~約5000万個の細胞、または約3000万~約7000万、または約3000万~約9000万個の細胞、または約5000万~約1億個の細胞、または約1億~約3億個の細胞、または約2億~約4億個の細胞、または約5億~約10億個の細胞、または約5億~約100億個の細胞の範囲の量で投与される。いくつかの実施形態において、約2,000万、または約2,500万、または約3,000万、または約3,500万、または約4,000万、または約4,500万、または約5,000万、または約5,500万、または約5,000万、または約5500万、または約6000万、または約6500万、または約7000万、または約7500万、または約8000万、または約8500万、または約9000万、または約9500万、または約1億、または約2億、または約3億、または約4億、または約5億、または約6億、または約7億、または約8億、または約9億、または約10億、または約20億、または約30億、または約40億、または約50億、または約60億、または約70億、または約80億、または約90億、または約100億個の細胞が対象に投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)の対象への投与は、対象における血流依存性血管拡張(FMD)の少なくとも3%の増加をもたらす。
【0012】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、対象はヒト対象である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】個々の患者の遺伝子プロファイルを提供する表である。色付きのセルは、PV-((患者6、10、18、22、28、および34)、VUS(患者1(TTN)、患者2(GATAD1、GAA)、患者3(LDB3)、患者4(LMNA、PRDM16)、患者5(FKRP)、患者7(ACADVL)、患者9(CTNNA3、DSP、SOS2、ALMS1)、患者11(ANKRD1)、患者13(TNNT2)、患者14(DMD、CPT2)、患者15(FLNC)、患者17(TTN)、患者19(TNNT2)、患者21(TNNT2、FLNC、MYPN、PKP2)、患者25(MYH6、PSEN1)、患者26(TNNT2)、患者27(MYPN)、患者29(TTN)、患者30(MYH6、RBM20)、および患者31(BAG3))、またはPV+(患者8(LMNA)、患者12(DSP)、患者16(TTN)、患者20(TTN)、患者23(TTN)、患者24 LMNA)、患者32(MYNPC3)および患者33(DSP))、心筋症に関連しない変異(患者10(CPT2)および患者28(GAA))を表す。患者10および28は、DCMに関連する可能性のあるPVが陰性であるために重複したボックスを有するが、遺伝子データの完全性のために遺伝子に存在すると報告される。
【
図2-1】
図2A-2E:
図2Aは、V-患者がVUSと比較して12ヶ月の駆出率(EF)の増加が最も大きく、PV+患者では減少したことを示すグラフである。
図2Bは、6分間の歩行距離がVUSおよびPV+に対してV-患者で増加したことを示すグラフである。
図2Cは、ミネソタ心不全生活質問票(MLHFQ)でV-患者が大幅に改善したことを示すグラフであり、VUSとPV+を対比した。
図2Dは、ニューヨーク心臓協会(NYHA)の変化率を示すグラフであり、群間で有意差が示される。V-は、53%のVUSおよび25%のPV+とは対照的に60%向上した。
図2Eは、内皮前コロニー(EPC)がV-群のみ経時的に有意に増加したことを示すグラフである。V-=任意の病的変異群に対して陰性(左端バー)、VUS=有意性が不明な群の変異(中央バー)、PV+=病的変異群/おそらく病的変異群に対して陽性(右端バー)。
*p=<0.05、
**p=0.01
***p=0.001
****p<0.0001。
【
図2-2】
図2A-2E:
図2Aは、V-患者がVUSと比較して12ヶ月の駆出率(EF)の増加が最も大きく、PV+患者では減少したことを示すグラフである。
図2Bは、6分間の歩行距離がVUSおよびPV+に対してV-患者で増加したことを示すグラフである。
図2Cは、ミネソタ心不全生活質問票(MLHFQ)でV-患者が大幅に改善したことを示すグラフであり、VUSとPV+を対比した。
図2Dは、ニューヨーク心臓協会(NYHA)の変化率を示すグラフであり、群間で有意差が示される。V-は、53%のVUSおよび25%のPV+とは対照的に60%向上した。
図2Eは、内皮前コロニー(EPC)がV-群のみ経時的に有意に増加したことを示すグラフである。V-=任意の病的変異群に対して陰性(左端バー)、VUS=有意性が不明な群の変異(中央バー)、PV+=病的変異群/おそらく病的変異群に対して陽性(右端バー)。
*p=<0.05、
**p=0.01
***p=0.001
****p<0.0001。
【
図3A-3B】遺伝的変異は、MSC送達に応答してMACEおよび生存に影響を及ぼす。
図3A:PV-患者は100%の生存率、VUSは85%、PV+は40%の生存率であった。ログ-ランク(マンテル-コックス)検定、p=0.015。全体として、PV+患者の死亡、移植、またはLVADリスクは1年間の追跡調査で実質的に増加した。
図3B:MACE事象は、V-患者0事象間で異なり、VUSは7事象あり、PV+は4名の患者で6事象あった(ログ-ランク(マンテル-コックス)検定=0.021)。V-=任意の病的変異群に対して陰性(グラフの下線、x軸と重なる)、VUS=有意性が不明な群の変異(グラフの中間線)、PV+=病的変異群/おそらく病的変異群に対して陽性(グラフの上線)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、少なくとも部分的に、非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)の明らかな遺伝的根拠を有するNIDCM患者が、関連する病的遺伝子変異を伴わない患者よりも間葉系幹細胞(MSC)療法に対して異なった応答を示すという発見に基づいている。NIDCM患者では、かなりの割合が家族集積性および同定可能な遺伝子変異を有し(Kayvanpour et al.,Clinical research in cardiology:official journal of the German Cardiac Society.2017;106(2):127-39)、変異には細胞骨格、核膜、サルコメア、ミトコンドリア、デスモソーム、およびRNA結合タンパク質が含まれる。環境要因、併存疾患、または表現型および転帰を調節する他の要因など、いくつかの二次修飾因子によって、これらの主要な病的変異が変化する可能性がある。実施例に記載されているように、同定されたNIDCM遺伝子型は、間葉系幹細胞療法(例えば、心筋内MSC送達)に対する個々の患者の応答性を判定する際に主要な役割を果たす。本開示は、遺伝子検査を介して細胞(例えば、MSC)療法に対して過敏に応答する患者を同定する方法を提供し、意外なことに、心血管疾患に関連する遺伝的判定因子を欠く個体は、細胞(例えば、MSC)療法によりよく応答する。
【0015】
患者が細胞(例えば、MSC)療法に対して「過敏に応答する」か否かの判定には、対象が療法に応答する程度の確率の評価が含まれる。「ハイパーレスポンダー」とは、患者が細胞(例えば、MSC)治療に対して他の患者よりも強い応答を示すことを意味する。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、MSC)療法に対して過敏に応答する患者は、細胞(例えば、MSC)療法でも治療された病的遺伝子変異を有する患者と比較して、心機能および機能容量の改善、駆出率の増加、および/または6分間歩行距離の増加のうちの1つ以上を示すであろう。
【0016】
本明細書に記載されているように、心血管障害を呈しているが、心血管障害に関連する病的遺伝子変異(例えばNIDCM、
図5で提供される関連する病的遺伝子変異)を欠く患者は、駆出率(EF)のより大きな改善を示し、V-患者の55%は、駆出率が改善した心不全(HFrecEF)に移行する。MSC療法には、強力な免疫調節性があり、全群におけるTNF-αの有意な減少という効果証拠があり、内皮機能の回復が改善され(Premer et al.,EBioMedicine,2:467-475,2014)、これはネガティブ変異の患者において始原的機構を果たし得る。これは、内皮前駆細胞コロニー(EPC)の最大増加がV-患者であったという事実によって裏付けられる一方、逆に、遺伝に基づくDCMが固有の細胞ベースでこれらの応答に耐性がある可能性を高めている。
【0017】
実施例1で提供された遺伝子データは、有意性が不明な変異(VUS)および病的変異/おそらく病的変異が陽性(PV+)の患者が軽度から消失の応答を示し、駆出率の低下した心不全(HFrEF)として維持されることを示し、駆出率が改善した心不全(HFrecEF,Kalogeropoulos et al.,JAMA Cardiology,1:510-518,2016)と比較して高い死亡率、LVAD要件、移植およびMACE事象を示す。鈍化した応答に関連する独立要因には、長い心不全(HF)期間、より大きな拡張末期容積(EDV)、ニューヨーク心不全協会(NYHA)のクラスIII~IV、および収縮期血圧の低下が含まれる(Merlo et al.,Clin.and Translational Science,6:424-428,2013)。
【0018】
いくつかの単一施設研究およびメタ分析は、特定遺伝子の変異に関連する症状および転帰の表現型の関係を評価している。ほとんどは男性の罹患で40代および50代で臨床症状を示した。より一般的な関連性には、LMNA、RBM20、ならびにTTN、MYH6、MYBPC3、およびTNNT(24)を含むサルコメア遺伝子変異の変異が含まれ、本発明者らの集団における以前記載したものと同様である。興味深いことに、LMNA、PLN、RBM20の変異がある患者は、本発明者らの移植集団と同様に、移植率が高く、転帰が不良であった。Tobitaらは、DCM患者の左心室機能および遺伝子変異に関連する逆リモデリングの有無を評価した。TTN切断変異が最も一般的であり(15)、ベースライン駆出率(EF)の低下と関連していた。本発明者らの研究におけるTTN切断変異の患者(N=6)も、Tobitaのデータとは対照的に、ベースライン駆出率が低いことを示した一方、実施例に記載のこれらの変異を保有する対象は、左心室機能を経時的に改善しなかった。それにもかかわらず、LMNA切断変異の患者と比較して、治療後のTTN切断変異の患者では、移植および死亡率の低下によって示される良好な予後が認められた(Tobita、前出)。以前の研究と同様に、LMNA PV+切断変異をもつ患者は、転帰が悪く、より多くの心臓移植を受けた(100%)。(van Rijsingen et al.,Eur.J.Heart Failures,15:376-384,2013、Hasselberg et al.,Eur.Heart J.,39:853-860,2018)。細胞送達への応答性で評価された別の要因は、複数の陽性病的変異が悪い転帰に寄与することであった。実施例2で提供されたデータは、複数のVUSが予後不良に関連するという証拠を示さなかった。心臓の構造タンパク質の遺伝的欠損は、好ましい遺伝背景と比較して、細胞送達の応答性に影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
本明細書に記載されるように、心血管障害に関連する病的変異が陰性である患者は、駆出率(EF)において大きな改善を示し、MSC治療でV-患者の55%がHFrecEFに移行した。これは、以前に同定されていなかった特定のNIDCM亜集団が細胞(例えば、MSC)療法から優先的な利益を示し、意外にも、これらの患者には障害に関連する病的遺伝子変異が欠如することを示す。
【0020】
本明細書に記載されている遺伝子データは、VUSおよびPV+患者が軽度から消失の応答を示し、HFrecEFと比較して高い死亡率、LVAD要件、移植およびMACE事象によって表されるHFrEFとして持続するという証拠を提供する。鈍化した応答に関連する独立要因には、長いHF期間、より大きいEDV、NYHAクラスIII~IV、および収縮期血圧の低下が含まれる。したがって、様々な態様では、本開示は、MSC療法に対する応答が低下した対象を同定する方法を提供し、これにより、臨床医は、他の治療とともにMSC療法を含む代替治療または併用療法を選択することができる。本方法は、
図5に示される遺伝子パネルの1つ以上の病的変異を同定することを含む(例えば、ACTC、NYH7、MYH6、MYBPC3、TNNT2、TNNC1、TNNI3、TPM1、TTN、DMD、DES、LDB3、SGCD、PDLIM3、VCL、RYAB、ILK、LAMA4、FLNC、TCAP、CSRP3、ACTN2、MYPN、ANKRD1、BAG3、LMNA、TMPO、PSEN1、PSEN2、PLN、EYA4、TAZ/G4.5、CPT2、ACADVL、RBM20、ABCC、SCN5A、GATAD1、PRDM16、GAA、FKRP、CTNNA3、DSP、PKP2、SOS2、および/またはALMS1)。いくつかの実施形態において、本方法は、以下の遺伝子のうちの1つ以上で1つ以上の病的変異を同定することを含む。ANKRD、BAG3、DMD、GATAD1、LDB3、LMNA、MYBPC3、MYH6、RBM20、TNNT2、TTNおよびRBM20。必要に応じて、対象は、ANKRD、BAG3、DMD、GATAD1、LDB3、LMNA、MYBPC3、MYH6、RBM20、TNNT2、TTN、およびRBM20のすべてに病的変異を含む。
【0021】
V-患者は、PV+患者と比較してEFが有意に増加し、生存率が大幅に増加した。興味深いことに、V-患者は生存率が高いだけでなく、1年間の追跡調査後に細胞送達後のMACE事象が有意に減少した。死亡率が高く、MACE事象があった患者では、関連する遺伝子変異が同定された。この知見は、幹細胞送達の利益を受ける患者を同定する明確さ、およびNIDCMなどの心血管疾患の治療における有意義な影響を改善する可能性がある。
【0022】
遺伝子変異の同定
個体の核酸における本明細書に記載の方法による遺伝子変異の分析は、多型部位に存在するヌクレオチドを判定できる任意の方法または技術によって行うことができる。対象から生体試料(例えば、尿、唾液、血漿、血清などの体液、または頬組織試料もしくは頬細胞などの組織試料)が得られると、配列バリエーションまたは対立遺伝子変異SNPの検出が通常行われる。いくつかの実施形態において、本方法は、ゲノムDNAまたはcDNAのいずれかの配列を判定することと、およびこれらの配列を遺伝子の既知の対立遺伝子SNPと比較することと、を含む。配列変異を検出するために存在する様々な方法のいずれも、本発明の方法で使用することができる。
【0023】
例えば、Illumina’s Veracode Technology、Taqman(登録商標)SNP Genotyping Chemistry、およびKASPar SNP Genotyping Chemistryの直接シークエンシング技術を使用しない高処理SNP同定用に他の市販の方法がある。
【0024】
直接配列判定法のバリエーションは、Affymetrixから入手可能なGene Chip(商標)法である。あるいは、DNA配列バリエーションを検出する堅牢で安価な方法も市販されている。例えば、Perkin Elmerは、そのTAQman Assay(商標)を採用して、配列バリエーションを検出した。Orchid BioSciencesには、SNP-IT(商標)(SNP-同定技術)と呼ばれる方法があり、標識ヌクレオチド類似体によるプライマー伸長を使用して、オリゴヌクレオチドプローブのすぐ3’の位置に発生するヌクレオチドを判定し、次いで直接蛍光、間接比色アッセイ、質量分析、または蛍光偏光を使用して伸長塩基を同定する。Sequenomは、ハイブリダイゼーションキャプチャ技術とMALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型質量分析)を使用して、MassARRAY(商標)システムでSNP遺伝子型を検出する。Promegaは、READIT(商標)SNP/Genotyping System(米国特許第6,159,693号)を提供する。この方法では、DNAまたはRNAプローブが標的核酸配列にハイブリダイズする。各塩基の標的配列に相補的なプローブは、独自の酵素混合物で解重合される一方、照合位置の標的と異なるプローブはそのまま残る。本方法は、ルシフェラーゼ検出と組み合わせたピロリン酸化学を使用して、高感度で適応性の高いSNPスコアリングシステムを提供する。Third Wave Technologiesには、独自の開裂酵素を使用するInvader OS(商標)方法があり、Invaderプロセス中に形成された特定の構造のみを認識して切断する。Invader OSは、標的の指数関数的増幅ではなく、Invaderプロセスによって生成したシグナルの線形増幅に依存する。Invader OSアッセイは、アッセイのどの部分でもPCRを利用しない。さらに、遺伝子特異的PCRを使用し、続いて制限酵素消化およびゲル電気泳動(または他のサイズ分離技術)により制限断片長多型(RFLP)を検出するいくつかの法医学的DNA試験研究所および多くの研究所がある。
【0025】
いくつかの実施形態において、病的遺伝子変異の存在は、次世代シークエンシングによって判定される。(例えば、Srivatsan et al.,PLoS Genet 4:e100139(2008)、Rasmussen et al.,Nature 463:757-762(2010)、Li et al.,Nature 463:311-317(2010)、Pelak et al.,PLoS Genet 6: e1001111(2010)、Ram et al.,Syst Biol Reprod Med (57(3):117-118(2011)、McEllistrem,Future Microbiol 4:857-865(2009)、Lo et al.,Clin Chem 55:607-608(2009)、Robinson,Genome Biol 11:144(2010)、およびAraya et al.,Trends Biotechnology doi10.1016.j.tibtech.2011.04.003(2011)を参照)。例えば、そのような技術は、ゲノム核酸試料の断片化と、それに続く断片の並行シークエンシング、および元の配列を再構築するための配列決定された断片のアラインメントを含み得る。ここで、目的のゲノム核酸は断片に剪断され、「アダプター」(既知配列の短い核酸)が断片に連結される。アダプターで修飾された断片は、PCRにより濃縮できる。アダプターで修飾された断片(および存在する場合はその増幅コピー)をフローセルに流し、セルの表面に固定されたプライマーに断片をハイブリダイズさせる。次に、断片は等温ブリッジ増幅によって増幅され、元の分子と同一の何千もの分子からなるクラスターになる。次に、シークエンシングプライマーをクラスターの一方の鎖の末端にハイブリダイズさせ、可逆的に遮断し、標識ヌクレオチドを添加し得る。特定の各ヌクレオチドの添加は、標識によって同定でき、次に標識を除去し、ヌクレオチドの遮断を解除して、別の遮断および標識ヌクレオチドを添加して、核酸配列の次の位置を同定することができる。添加、検出、および遮断解除の必要な巡回数が行われると、得られる配列を整列させることができる。
【0026】
細胞療法
本明細書に記載の方法は、細胞療法に対するハイパーレスポンダーであると同定された対象に細胞療法を施すことを含む。企図する細胞療法には、間葉系幹細胞療法、心臓幹細胞療法、人工多能性幹細胞療法、および胚性幹細胞療法が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、細胞療法は、間葉系幹細胞(MSC)療法を含む。MSCは、骨髄に原型的に見られる成体幹細胞であり、複数の細胞型に分化する能力を有する。臍帯血、脂肪組織、ウォートンゼリーまたは羊水から得られたMSCも企図される。
【0028】
MSCは、内因性前駆細胞の増殖および分化を刺激し、幹細胞微小環境を維持する上で重要な役割を果たす27。さらに、MSCは、血管新生、心筋形成、新生血管形成、他の内因性幹細胞の刺激、および免疫系の調節に関与する傍分泌因子を分泌する28,29。MSCは、心臓前駆細胞および心臓の細胞周期活性を刺激することが知られている一方、他の内因性前駆体集団を刺激する際の役割はこれまで知られていなかった。本明細書で提供されるデータは、MSCが内因性EPC活性化を刺激し、機能的EPCの数および質を高めることを立証している。これらの知見は、EPCの増強が、MSCが好ましい生物学的効果を発揮する新規の作用機序を表す可能性があることを示唆している。
【0029】
過去10年間で、CV障害におけるMSCの使用に関心が生じている30。臨床試験では、MSC投与の主要な安全性プロファイルが実証されており、HFの患者における有効性が示唆されている30~32が、根底にある作用機序(複数可)は、引き続き活発に議論されている。虚血性心不全および非虚血性心不全の両患者における同種MSC注射が、特にEPC機能、FMDを回復させ、VEGFレベルを正常レベルへと低下させることにより、内皮機能の改善をもたらすという本知見は、MSCの作用機序に対する主要な新しい洞察を提供する。研究集団では、血清VEGFの増加は、EPC-CFUの減少と相関し、これはVEGFが代償的な役割を果たすという考えと一致しており、この知見は脳動脈瘤患者でも報告された26。本明細書で提供される知見は、同種MSCを使用して、EPC生物活性を刺激し、動脈生理学的血管拡張応答を改善し、CV疾患および内皮機能不全に関連する他の障害を有する患者において好ましくないサイトカイン動員を減少させることができることを立証している。
【0030】
いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、または心臓幹細胞)は、細胞療法に対して過敏に応答すると同定された対象に、当技術分野で既知の方法を含む任意の適切な方法に従って投与される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、局所投与される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、経心内膜注射によって投与される。いくつかの実施形態において、細胞は間葉系幹細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、同種または自己の間葉系幹細胞のいずれかである。
【0031】
細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、必要に応じて、約2000万~約109個の細胞の範囲の量で投与される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)は、約2000万~約3000万個の細胞、または約2000万~約4000万個の細胞、または約2000万~約5000万個の細胞、または約2000万~約6000万個の細胞、または約2000万~約7000万個の細胞、または約2000万~約8000万個の細胞、または約2000万~約9000万個の細胞、または約3000万~約5000万個の細胞、または約3000万~約7000万、または約3000万~約9000万個の細胞、または約5000万~約1億個の細胞、または約1億~約3億個の細胞、または約2億~約4億個の細胞、または約5億~約10億個の細胞、または約5億~約100億個の細胞の範囲の量で投与される。いくつかの実施形態において、約2,000万、または約2,500万、または約3,000万、または約3,500万、または約4,000万、または約4,500万、または約5,000万、または約5,500万、または約5,000万、または約5500万、または約6000万、または約6500万、または約7000万、または約7500万、または約8000万、または約8500万、または約9000万、または約9500万、または約1億、または約2億、または約3億、または約4億、または約5億、または約6億、または約7億、または約8億、または約9億、または約10億、または約20億、または約30億、または約40億、または約50億、または約60億、または約70億、または約80億、または約90億、または約100億個の細胞が対象に投与される。
【0032】
本開示は、細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)を含む医薬組成物などの組成物を調製する方法、および/または少なくとも例えば、心血管障害、心不全、または他の心臓の状態を治療するための開示方法で使用するための方法も提供する。例示的な心血管障害には、心不全、アドリアマイシン誘発性心筋症、特発性拡張型心筋症、虚血性心筋症、心筋炎、虚血性心疾患、浸潤性心筋症による心筋症、アミロイドーシスによる心筋症、サルコイドーシスによる心筋症、ヘモクロマトーシスによる心筋症、周産期心筋症、高血圧による心筋症、ヒト免疫不全ウイルス感染による心筋症、結合組織疾患による心筋症、強皮症による心筋症、全身性紅斑性狼瘡による心筋症、マルファン症候群による心筋症、結節性多発動脈炎による心筋症、非特異的結合組織疾患による心筋症、強直性脊椎炎による心筋症、リウマチ性関節炎による心筋症、再発性多発軟骨炎による心筋症、ウェゲナー肉芽腫症による心筋症、混合性結合組織疾患による心筋症、物質乱用による心筋症、慢性アルコール乱用による心筋症、コカイン乱用による心筋症、ドキソルビシン療法による心筋症、拘束性心筋症、家族性心筋症、心臓弁疾患による心筋症、内分泌機能障害による心筋症、甲状腺疾患による心筋症、カルシノイドによる心筋症、褐色細胞腫による心筋症、末端肥大症による心筋症、神経筋疾患による心筋症、腫瘍性心疾患による心筋症、先天性心疾患による心筋症、冠動脈バイパス手術の合併症による心筋症、放射線による心筋症、重症疾患による心筋症、心内膜線維弾性症による心筋症、血栓性血小板減少性紫斑病による心筋症、リウマチ性心炎による心筋症、ロイコトリエン療法による心筋症、リチウム療法による心筋症、およびプレドニゾン療法による心筋症が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、単離された細胞(例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞または心臓幹細胞)および薬学的に許容される担体を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、注射により送達される。これらの投与(送達)経路には、静脈内、動脈内(冠動脈内)、筋肉内、腹腔内、心筋内、経心内膜、経心外膜、鼻腔内投与、ならびに髄腔内および注入技術を含む皮下または非経口が含まれるが、これらに限定されない。したがって、医薬組成物は、注射に適した形態であることが好ましい。組成物を非経口投与する場合、一般に、単位投与量の注射剤型(溶液、懸濁液、乳濁液)で製剤化されるであろう。注射に適した医薬製剤には、滅菌の水溶液または分散液、および滅菌の注射液または分散液に再構成するための滅菌粉末が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。
【0035】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、またはピーナッツ油などの非水性媒体、およびミリスチン酸イソプロピルなどのエステルも、化合物組成物の溶媒系として使用することができる。さらに、抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性、滅菌性、および等張性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確保され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましいだろう。注射可能な医薬剤型の長期吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。しかし、本発明によれば、使用される賦形剤、希釈剤、または添加剤は、化合物と適合しなければならない。滅菌注射溶液は、本発明の実施において利用される化合物を、必要に応じて、各種量の他の成分とともに必要量の適切な溶媒に組み込むことによって調製することができる。
【0036】
例えば、ある量の間葉系幹細胞を含む本開示の医薬組成物は、様々な賦形剤、アジュバント、添加剤、および希釈剤などの任意の適合担体を含む注射製剤で対象に投与することができる。
【0037】
本開示の様々な実施形態を以上で説明してきたが、それらは、限定ではなく例として提示されたに過ぎないことを理解されたい。本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書の開示に従って、開示された実施形態に対して多くの変更を行うことができる。したがって、本開示の幅および範囲は、上記の実施形態のいずれにも限定されるべきではない。
【0038】
本明細書で言及されるすべての文書は、参照により本書に組み込まれる。本出願で引用されたすべての刊行物および特許文書は、個々の刊行物または特許文書が個別に示されている場合と同程度にあらゆる目的のために参照により組み込まれる。出願人は、本書において様々な参考文献を引用することにより、任意の特定の参考文献が本発明の「先行技術」であることを認めているわけではない。本発明の組成物および方法の実施形態は、以下の実施例に示される。
【実施例】
【0039】
実施例1-細胞療法に対して過敏に応答する患者の同定
以下の実施例で提供されるデータは、1つ以上の病的遺伝子変異を欠いているとも判断された拡張型心筋症の患者が、間葉系幹細胞療法に対して過敏に応答することを示している。
【0040】
方法
前向き設計された経皮的幹細胞注入送達効果が拡張型心筋症の新筋形成に及ぼす影響(POSEIDON-DCM、NCT01392625)(1)は、患者の転帰について自己起源対同種起源の1億個のMSC細胞を無作為に試験した。患者は、NIDCMに関連する遺伝子変異の遺伝子検査に同意した。細胞は、Biosense Webster MyoStar NOGA Catheter System(Johnson&Johnson)を使用して、10回の経心内膜幹細胞注射(TESI)によって10個の左心室部位に送達され、均一なパターンで分布した。
【0041】
心臓機能および解剖所見は、植込み型心臓デバイスに応じて、心臓CTまたはMRIによって評価された。機能容量は、6分間歩行距離試験(6MWT)および努力性呼気1秒量(FEV1)によって評価された。生活の質(QOL)評価には、ミネソタ心不全生活質問票(MLHFQ)総合得点およびニューヨーク心不全協会(NYHA)機能クラスが含まれた。全対象は、書面によるインフォームドコンセントを提出した。この研究は、マイアミ大学ミラー医学部の施設内審査委員会(IRB)によって承認された。
【0042】
心臓のCTまたはMRIによって測定されるように、駆出率(EF)、拡張末期(EDV)および収縮末期(ESV)の容積、球形度指標(SI)を含む画像パラメーターをベースライン時およびMSC注射の12ヵ月後に測定した。MLHFQ得点、6MWT、NYHA分類などの機能パラメーターも、細胞送達の3ヵ月および6ヵ月後に評価した。内皮前駆体コロニー(EPC)形成および血流依存性血管拡張(FMD)としての内皮機能パラメーターは、細胞送達の3ヵ月後に評価された。死亡(n=2、治療に関係なし)、心臓移植(n=3)、自動植込み型除細動器の留置(LVAD)(n=2)および研究からの脱落(n=3)により、10名の患者は1年間の画像パラメーターを受けておらず、8名の患者は機能パラメーターの評価を受けなかった。データ測定は、記載の通りに実行され、中央電子データシステムを使用して収集された(1)。
【0043】
遺伝子検査:POSEIDON-DCM患者(n=34)は、遺伝子分析を受け、ACMGガイドラインに従って、病的変異群/おそらく病的変異群に対して陽性(PV+、n=8)、任意の関連する可能性がある変異に対して陰性(V-、n=6)、または有意性が不明な変異として同定された患者(VUS、n=20)を含む群に分類された。分析は、遺伝性心筋症に関連する50個の遺伝子、心筋症に関連する予備的証拠のある30個の遺伝子、常染色体劣性症候性小児心筋症に関連する8個の遺伝子、およびRas-MAPK経路の遺伝子変異によって影響を受ける症候群であるRAS病に関連する17個の遺伝子からなる105個の遺伝子を含む包括的な心筋症パネルに基づくものであった。本分析には、遺伝子シークエンシングおよび欠失/重複試験の両方が含まれた。(11、12)
【0044】
DNA抽出
PAXgene DNA採血管からのDNA抽出:DNAは、FlexStar+自動DNA抽出システムでQiagenのFlexiGene chemistryを利用して、PAXgene DNA採血管から抽出された。Flexigene chemistryでは、高分子量DNAを単離するために沈殿法を利用している。DNAの品質は、0.8%アガロースゲルで評価した。試料量は、NanoDrop(商標)ND-8000分光光度計で、1ulの試料容量を使用し、標準プロトコルに従って分光光度計により測定される。試料測定は、1.7~2.0の許容A260/280範囲および3回の測定全体で15の標準偏差で3回実行される。試料量は、標的に結合した場合にのみ発光する蛍光色素を利用するQubit dsDNA BRアッセイによっても測定される。発光強度は蛍光光度計によって捕捉され、既知の濃度の試料を測定することによって生成される標準曲線を使用して、未知の濃度が内挿または外挿される。試料濃度、総量、およびA260/280比は、Nautilus LIMS(商標)内で計算および記録される。
【0045】
PBMCからのDNA抽出:QIAamp DNA Mini Kit標準プロトコルを利用して、末梢血単核細胞(PBMC)からDNAを抽出した。QIAamp Mini Kitは、細胞からのシリカ膜に基づくDNA単離法を利用している。DNAの品質は、0.8%アガロースゲルで評価した。試料量は、NanoDrop(商標)ND-8000分光光度計で、1ulの試料容量を使用し、標準プロトコルに従って分光光度計により測定される。試料測定は、1.7~2.0の許容A260/280範囲および3回の測定全体で15の標準偏差で3回実行される。試料量は、標的に結合した場合にのみ発光する蛍光色素を利用するQubit dsDNA BRアッセイによっても測定される。発光強度は蛍光光度計によって捕捉され、既知の濃度の試料を測定することによって生成される標準曲線を使用して、未知の濃度が内挿または外挿される。試料濃度、総量、およびA260/280比は、Nautilus LIMS(商標)内で計算および記録される。
【0046】
次世代シークエンシングおよびバイオインフォマティクス:遺伝子検査は、前述のようにInvitae(カリフォルニア州サンフランシスコ)で実施された(13)。簡潔に述べると、血液試料から得られたゲノムDNAは、カスタムベイトプールを備えるハイブリダイゼーション捕捉を使用して標的濃縮に曝露され、Illumina sequencing chemistryを使用して配列決定された。コミュニティ標準およびカスタムアルゴリズムを組み込んだ検証済みのバイオインフォマティクスパイプラインを使用して、配列変化およびエキソン欠失/重複を同時に同定した。第一度近親者において個別に検証された変異および以前に確認された変異を除いて、直交技術によって臨床的に重要な観察が確認された。変異の種類に応じて、確認技術には次のいずれかが含まれ得る。Sangerシークエンシング、Pacific Biosciences SMRTシークエンシング、MLPA、MLPA-seq、アレイCGH。
【0047】
統計分析:データ分布は、連続測定のためにピアソン正規性検定を使用して評価された。正規分布の連続変数を二元ANOVAによって評価し、ボンフェローニ補正とテューキー補正を使用して多重比較を行い、平均値±SEとして表した。非正規分布変数は、マン-ホイットニー検定によって評価され、中央値および四分位範囲[IQR]によって報告された。正規分布のデータ内で、対応t検定によって分析し、そうでない場合はウィルコクソンのマッチドペアによって分析した。カテゴリ変数は、ピアソンのカイ二乗検定およびフィッシャーの直接検定によって対応するものとして分析された。カプラン-マイヤー曲線は、全死因死亡、心臓移植、またはLVAD留置の複合終末事象の生存分布の評価に使用された。欠測データの補完は行われなかった。全統計は、アルファ=0.05で両側を使用して検定された。分析は、GraphPad Prism7(GraphPad Software,Inc.、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して行われた。
【0048】
結果
患者の特徴:34名のNIDCM患者が無作為化され、自己MSCおよび同種MSCで治療された。患者集団は70.6%が男性であった。細胞送達時の平均年齢は、55.12±1.92歳であり、細胞送達前の疾患期間は、4.68(1.93、9.23)年であった。8名の対象(23.5%)で病的変異が同定され、そのうち6名は心不全の家族歴が陽性であり、2名はDCMの家族歴が文書化または報告されていないにもかかわらず、DCM表現型が同定された。任意の病的変異が陰性である遺伝的サブ集団(V-)、有意性が不明な変異(VUS)、および既知の病的変異/おそらく病的変異をもつ患者(PV+)のベースライン特徴を下の表1に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
TNF-α、BNP前駆体、血中尿素、CRP、腎機能、電解質、ヘモグロビン、赤血球、血小板、およびコレステロール値などの細胞送達前の血液化学およびバイオマーカーは、群間で類似していた。アルドステロン遮断薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、ベータ遮断薬、およびスタチンなどの細胞送達前の投薬は、全群で類似していた。同様に、植込み型除細動器(ICD)の存在は、群間で類似していた。
【0052】
シークエンシングの概要および遺伝的根拠:変異は、サルコメアおよびz板を含む器質的心筋をコードする遺伝子および核膜(nuclear envelope)で主に検出された。この患者集団では、イオンチャネルおよびミトコンドリアのコーディング遺伝子は検出されなかった。ANKRD、BAG3、DMD、GATAD1、LDB3、LMNA、MYBPC3、MYH6、RBM20、TNNT2、TTNを含む、拡張型心筋症(DCM)に関連する11の遺伝子の多重変異が観察された。DCMに関連する8つの陽性病的変異が同定され、TTNで3変異、LMNAで2変異、DSPで2変異、およびMYBPC3で1変異が含まれた。さらに、ANKRD、BAG3、MYH6、RBM20、TNNT2およびTTNにおいて、病的関連にとって有意であり得る、有意性が不明な9つの変異が同定された(
図1)。
【0053】
34名の患者のうち、合計105の遺伝子が配列決定され、28名の対象において39の陽性病的変異または有意性が不明な変異が、ACMGガイドラインに従って同定された。8名の患者(100%)のうち、3つの遺伝子に8つの陽性病的変異があり、20名の患者のうち、23の遺伝子に31の有意性が不明な変異があった。コホート全体で、21名の患者(61.8%)が単一の陽性病的変異または有意性が不明な変異を有し、5名が2つの陽性病的変異(15%)を有し、2名が同一対象において4つ以上(6%)の陽性病的変異または有意性が不明な変異を有した。
【0054】
最も一般的に影響を受ける遺伝子はTTNであり、6名の患者で変異が観察され、そのうち3名(50%)がPV+であった。重要なことには、TTNイントロン248での有意性が不明な唯一の変異は、正常またはDCMの患者ではこれまで報告されていなかった一方、他のTTN VUSは、DCMおよび正常の両患者で報告されている。主に男性患者に影響を及ぼすTTNサブ集団は、重い心機能障害に関連しており、EFは30%未満であった。TNNT2は、本発明者らの研究で2番目に頻度の高い変異であり、4名の患者で見出された。重要なことに、TNNT2[p.Arg151Cys]での有意性が不明な唯一の変異は、2名の無関係な患者で共発現し、その病的関連性に大きな可能性を与える。LMNAは3番目に頻度の高い遺伝子であり、3名の男性患者で変異が見つかり、その全員がMSC療法に応答しない疾患の進行により心臓移植を受けたため、12ヵ月の追跡調査を受けなかった。
【0055】
患者の転帰:合計34名のNIDCM患者のうち、V-である患者の55%はHFrecEFに改善し、VUS患者の55%は非HFrecEF群にとどまり、PV+患者の62.5%は、心血管状態の有意な利益なしまたは悪化、LVADもしくは心臓移植の必要性、または死亡として定義される有害転帰があった。
【0056】
これらの臨床転帰の特定の測定値の中で、V-患者は12ヵ月でEFが有意に増加し、変化の中央値+13.6%(IQR=7.8、20.5;p=0.002)であった。これは、VUSカテゴリの+6.5%(0.9、11.1;p=0.005)と比較して、PV+患者の減少傾向であり、変化の中央値は-5.9%であった(IQR=-12.7、+1.0;p=0.2;群間でp=0.01)(
図6A)。EDVおよびESVを含む心臓容積は、群間で有意差を示さなかった。ESVは、PV+:+27.9mL(17.0、40.9;p=0.25;群間でp=0.26)と比較して、VUS-24mL(-54.5、14.1;p=0.04)およびV-:-38.5mL(-97.1、0.8;p=0.31)で類似していた。同様に、PV+群(群間でp=0.74)の+43.3mL(-37.7、45.7;p=0.5)に対して、V-のEDVは-42.8mL(-81.7、48.2;p=0.6)であり、VUS-は10.3mL(-38.6、24.7;p=0.5)であった。逆心臓リモデリングは、群間で経時的に差異はなかった。
【0057】
機能容量およびQOLは、V-患者で大幅に改善した。6分間歩行距離(6MWT)は、V-:+33m(30、72.5;p=0.06)で顕著に改善したが、VUS:32.5m(0、53;p=0.24)およびPV+:39m(-17、68;p=0.5;群間でp=0.9)では改善されなかった(
図2B)。V-患者は、VUS:-15.4±6.1(p=0.07)およびPV+:-6.3±11.6(p=>0.9;群間でp=0.3)と対比して、-40.2±14(p=0.0005)のMLHFQで最大の改善を示した(
図2C)。興味深いことに、NYHAクラスは、53%のVUS患者および25%のPV+患者と比較して、V-患者では60%改善された(群間のデルタ%変化p=<0.0001)(
図2D)。EPCによって評価される内皮機能は、VUS:4.1±1.7ucf(p=0.07)およびPV+:3.8±2.9ucf(p=0.4)とは対照的に、V-(p=0.009)で9.7±1.9ucf増加した(
図2E)。重要なことに、TNFαレベルは、ベースラインから1年間の追跡調査で、全群で有意に減少した。V-患者は-6.93±2.59pg/mL(p=0.044)減少し、VUSは-8.68±1.47pg/mL(<0.0001)減少し、PV+は-10.77±1.97pg/mL(p=0.0016)減少した。
【0058】
最長1年の追跡調査後、7名の対象に、死亡(n=2)、移植(n=3)、LVADの留置(n=2)などの最終的な事象があった。各群に1名ずつ、3名の患者が研究から脱落した。いずれかの変異が陰性の患者は、VUS(85%)およびPV+(40%)と比較して1年生存(100%)が高かった(ログ-ランク(マンテル-コックス)検定、p=0.015)(
図3A)。興味深いことに、移植を受けたすべての患者がLMNAに変異があった。PV+患者は、1年間の追跡調査までに死亡、移植、またはLVADのリスクが実質的に増加した。同様に、MACE事象は、7事象のVUS(42.2%)および第4事象のPV+患者と比較して、事象が発生しなかったV-患者間で異なった(61.9%;ログ-ランク(マンテル-コックス)検定、p=0.021)(
図3B)。
【0059】
考察
複数の第I相および第II相の臨床試験にもかかわらず、MSCの心筋内注射に対する応答には継続的なばらつきがあり、細胞治療の理想的な患者集団については論争がある。この研究では、NIDCM集団の遺伝子型を調査し、遺伝子型とMSC療法の有効性との関連を試験した。結果は、これらのサブ集団が表現型または人口統計の特徴によってベースラインで識別できないという概念を裏付けている。ただし、V-群は、VUSおよびPV+群と比較して、心機能および機能容量の改善など、有意に大きい臨床的有益性を示した。さらに、心筋症関連遺伝子に病的変異またはおそらく病的変異がある患者では、生存率が低下し、1年後のMACE事象が増加した。全体として、これらの知見は、NIDCM遺伝子型が心筋内MSC送達に対する個々の患者の応答性を判定する上で主要な役割を果たすという考えを強く裏付けている。したがって、これらの知見は、同様の疾患表現型をもつ患者において細胞送達に対する有益な応答の可能性を前向きに同定するために遺伝子検査を組み込むことの価値を強調している。
【0060】
概要
これらの知見は、NIDCMの遺伝子型がMSC細胞療法に対する患者の応答性を判定する上で主要な役割を果たし、心機能、MACEおよび生存率を改善することでV-患者に利益をもたらすという概念について説得力のある裏付けを提供する。対照的に、病的変異は、心臓の構造、機能、および長期的転帰に悪影響を及ぼすようである。重症度の低い表現型で発現する遺伝子変異(病的発現または発現のばらつきが少ない変異のため)は、細胞療法に対して異なる応答を示す可能性もある。
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