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特表2022-513005クロム補助エチレンオリゴマー化プロセスにおける1-オクテンの生成のための配位子
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  • 特表-クロム補助エチレンオリゴマー化プロセスにおける1-オクテンの生成のための配位子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】クロム補助エチレンオリゴマー化プロセスにおける1-オクテンの生成のための配位子
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/34 20060101AFI20220131BHJP
   C07C 2/32 20060101ALI20220131BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20220131BHJP
   C07F 9/48 20060101ALI20220131BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B01J31/34 Z
C07C2/32 CSP
C07C11/02
C07F9/48
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525663
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2019059668
(87)【国際公開番号】W WO2020100007
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/758,783
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アル‐ネザリ,アブドゥラジ
(72)【発明者】
【氏名】コロブコヴ,イリア
(72)【発明者】
【氏名】アルバヒリ,カリド
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA06
4G169AA09
4G169AA12
4G169AA14
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BB08C
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4G169BC16B
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4G169BD12C
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE07C
4G169BE08C
4G169BE11C
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE25A
4G169BE25B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE37C
4G169BE38C
4G169BE42C
4G169BE46C
4G169CB47
4G169DA03
4G169DA04
4G169EC27
4G169FA01
4G169FC02
4G169FC04
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC21
4H006BA14
4H006BA48
4H039CA19
4H039CF10
4H039CL19
4H050AA01
4H050AB82
4H050AB84
4H050WB11
4H050WB14
(57)【要約】
触媒組成物、および1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化のためのプロセスが、記載される。前記触媒組成物は、特異的なリンおよび窒素配位子を有するトリアミノビスホスフィノ(NPNPN)配位子系を含む。末端窒素原子は、炭素原子数が3つ分異なる直鎖状アルキル炭化水素(複数)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化のための触媒組成物であって、
クロム(III)種と、
以下の式を有する配位子と、を含む、触媒組成物。
【化1】
式中、ArおよびArは、それぞれ独立に、芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。
【請求項2】
ArおよびArが、それぞれ独立に、フェニル基、置換フェニル基、または2つ以上の共役環を含む芳香族基である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
ArおよびArが、両方フェニル基である、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
nが、0であり、以下の構造を有する、請求項3に記載の触媒組成物。
【化2】
【請求項5】
nが、1であり、以下の構造を有する、請求項2に記載の触媒組成物。
【化3】
【請求項6】
活性化剤または助触媒をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記活性化剤または助触媒が、メチルアルミノキサン化合物である、請求項6に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記活性化剤または助触媒が、メチルイソブチルアルミニウムオキシド化合物である、請求項6に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記クロム(III)種が、クロム(III)アセチルアセトナート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオナート)、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、塩化クロム(III)テトラヒドロフラン錯体(1:3)、クロム(III)オクタノエート、またはナフテン酸クロム(III)である、請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
エチレンから1-オクテンを生成するプロセスであって、1-オクテンを含むオリゴマー組成物を生成するために、オレフィン源を含む反応物ストリームを、請求項1から9のいずれか1項に記載の触媒組成物を含む溶液と接触させるステップを含む、プロセス。
【請求項11】
前記溶液が、溶媒を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記溶媒が、飽和炭化水素または芳香族炭化水素である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記溶媒が、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、またはそれらの混合物である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
生成物ストリームが、1-ヘキセンをさらに含み、1-オクテン選択率が、60重量%超であり、1-オクテンに対する1-ヘキセンの重量比が、0.3未満である、請求項10から13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
溶媒不溶性物質が、2重量%未満で生成される、請求項10から14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒組成物が、
【化4】
を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記クロム(III)種、活性化剤または助触媒をさらに含む、請求項15または16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記触媒組成物が、前記クロム(III)種、活性化剤、助触媒、および
【化5】
を含む、請求項10から17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記接触させるステップが、15℃~100℃、好ましくは40℃~70℃の温度を含む、請求項10から18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記接触させるステップが、少なくとも2MPaまたは2~20MPa、好ましくは2~7MPaの圧力を含む、請求項10から19のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月12日に出願された米国仮特許出願第62/758,783の優先権を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、エチレンを1-オクテンにオリゴマー化するための触媒に関するものである。この触媒は、クロム(III)種と、1-ヘキセンではなく1-オクテンのオリゴマー化選択性を促進する配位子と、を含む。
【背景技術】
【0003】
コモノマーグレードの1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの直鎖状アルファオレフィン(LAO)を生成する既存のプロセスは、エチレンのオリゴマー化に依存しているため、鎖長が4、6、8などのエチレン由来のオリゴマーが混在することになる可能性がある。理論に拘束されるものではないが、これは、シュルツ・フローリーまたはポアソン生成物分布に導く、競合的連鎖成長および置換反応ステップによって主に支配される化学的メカニズムに起因すると考えられている。対象マーケットセグメントはそれぞれ、マーケットの大きさおよび成長、地域、細分化などの点で異なる挙動を示す可能性があることから、商業的な観点から見ると、この製品分布はすべての範囲のLAO製造業者にとって課題となる。そのため、製品の範囲の一部は特定の経済状況下で大きな需要があるかもしれないが、一方で、他の製品フラクションは全く市場性がないか、あるいはわずかなニッチなマーケットでしか市場性がないかもしれないので、LAO生産者がマーケットの要求に順応することは困難である。例えば、特定のグレードのポリエチレン材料では、優れた引張強度や耐亀裂性などの物理的特性の向上が求められ、1-オクテンの存在が必要とされるが、他のエチレン由来のオリゴマーは必要とされない。
【0004】
エチレンのオリゴマー化は、通常、適切な触媒の存在下で進行する。いくつかの既存のエチレンのオリゴマー化、すなわち、二量体化、三量体化または四量体化の触媒は、1つ以上の欠点を有する。これらの欠点には、以下が含まれうる。
1)所望の生成物(例えば、1-オクテン)に対する低い選択率、
2)C留分内のLAO異性体に対する低い選択率(例えば、異性化、分岐オレフィン形成など)、
3)ワックス形成(例えば、重くて長鎖の(炭素数の多い)生成物の形成)、
4)LAO製品の収率を大幅に低下させ、装置を汚染する(fouling)可能性のあるポリマーの形成(分岐状および/または架橋PEを含むポリエチレン)、
5)1kgの生成物当りのコストを増大させる、不良な回転率/触媒活性、
6)高い触媒または配位子コスト、
7)不良な触媒提供可能性および高い触媒コストをもたらす、複雑なマルチステップの配位子合成、
8)活性と選択性の両方の観点から、触媒性能が微量の不純物に影響を受けやすいこと(例えば、触媒のロスや被毒の発生につながる)、
9)技術的/商業的環境での触媒成分の取り扱いの難しさ(例えば、触媒複合体の合成、前混合、不活性化、触媒回収、または配位子回収の間)、
10)特殊な設備(投資、メンテナンス、エネルギーコストの増加)を必要とする過酷な反応条件(例えば、高温、高圧)、
11)高い助触媒/活性化剤コストまたは消費、および/または
12)大量の比較的不明確な化合物が活性化剤(例えば、特定のメチルアルミノキサン(MAO)品種)として使用される場合によくある、助触媒の品質の変動に影響を受けやすいこと。
【0005】
LAOを生成する試みが説明されている。例として、クロム化合物と、式(R)(R)N-P(R)-N(R)-P(R)-N(R)(R)(式中、R、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アミノ、トリメチルシリル、またはC-C20ヒドロカルビル、好ましくは直鎖状もしくは分岐状C-C10アルキル、フェニル、C-C20アリール、またはC-C20アルキル置換フェニルである。)の官能化されたトリアミノジホスフィン(NPNPN)配位子と、を含み得る触媒組成物の使用が記載されている、Al-Hazmiらの米国特許出願公開第2017/0203288号が挙げられる。この触媒は、約8重量%を超えるC10+を生成し、1-オクテンに対する1-ヘキセンが約50:50重量%になるという欠点がある。Cに対するCの比率が高くなると、C10+の量も増えてしまい、所望の生成物の全体量が少なくなってしまう。さらに別の例では、Peulecke(Dalton Transactions, 2016 45;8869-8874)では、式(R)(R)N-P(Ph)-N(R)-P(Ph)-N(R)(R)のNPNPN配位子を用いた1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物の生成が記載されている。この触媒系では、11重量%を超えるC10+が生成され、1-オクテンの収率が1-ヘキセンの収率よりも高くなると、C10+炭化水素の生成量が増加するという欠点がある。
【0006】
そのため、高い選択率と純度で1-オクテンを生成することができるエチレンのオリゴマー化のための触媒系が、当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化に関連する問題の少なくともいくつかに対する解決策が発見された。この解決策は、特異的な末端アミンアルキル置換基とリンとを有するNPN(CH)PN配位子系の使用を前提としている。注目すべきは、リンの置換基は、芳香族基および/またはアルキル置換芳香族基に限定され、末端アミンは、炭素原子数が3つ分異なる直鎖状アルキル基(複数)を含むことである。実施例に非限定的に示されているように、リン原子の置換基を芳香族基または置換芳香族基に限定し、末端窒素原子上の炭化水素鎖の長さを限定すると、99%超の1-オクテンの選択率で少なくとも60重量%のC8炭化水素と、2重量%未満の溶媒不溶性物質(例えば、ポリマー)が得られることが、驚くべきことに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化のための触媒組成物が記載される。触媒組成物は、クロム(III)種と、以下の式を有する配位子と、を含み得る。
【化1】
式中、ArおよびArは、それぞれ独立に、芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。
いくつかの実施形態では、ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニル基またはアルキル置換フェニル基であり、好ましくは両方ともフェニル基である。一例では、nは0であり、前記触媒は、(CH)(n-C)NP(C)N(CH)NP(C)N(CH)(n-C)であり、次の構造で表される。
【化2】
別の例では、nは1であり、前記触媒は、(CHCH)(n-C11)NP(C)N(CH)NP(C)N(CHCH)(n-C11)であり、次の構造で表される。
【化3】
前記触媒組成物は、活性化剤または助触媒(例えば、メチルアルミノキサン化合物、好ましくは、メチルイソブチルアルミニウムオキシド化合物)も含み得る。クロム(III)種は、クロムの価数が+3である任意の無機または有機クロム化合物を含み得る。クロム(III)種の非限定的な例としては、クロム(III)アセチルアセトナート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオナート)、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、塩化クロム(III)テトラヒドロフラン錯体(1:3)、クロム(III)オクタノエート、またはナフテン酸クロム(III)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0009】
本発明の触媒組成物を用いて1-オクテンを生成するプロセスも記載されている。1-オクテンを生成するプロセスは、1-オクテンを含むオリゴマー組成物を生成するために、オレフィン源を含む反応物ストリームを、本発明の触媒組成物を含む溶液と接触させるステップを含み得る。前記触媒組成物はまた、溶媒(例えば、飽和炭化水素または芳香族炭化水素、好ましくはn-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、またはそれらの混合物)を含み得る。前記接触させるステップは、15℃~100℃、好ましくは40℃~70℃の温度、および/または、少なくとも2MPaまたは2~20MPa、好ましくは2~7MPaの圧力を含み得る。前記プロセス中、溶媒不溶性物質(例えば、ポリマー物質)は、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満で生成され得るか、または全く生成されない。いくつかの例では、前記触媒組成物は、下記化合物、クロム(III)種、および活性化剤または助触媒を含み得る。
【化4】
他の例では、前記触媒組成物は、下記化合物、前記クロム(III)種、および前記活性化剤または助触媒を含み得る。
【化5】
いくつかの実施形態では、生成物ストリームは、1-ヘキセンを含み得る。そのような実施形態では、1-オクテンに対する反応選択率は99%超であり得、および/または1-オクテンに対する1-ヘキセンの重量比は0.3未満であり得る。
【0010】
本発明の文脈において、少なくとも20の実施形態がここで説明される。実施形態1は、1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化のための触媒組成物である。前記触媒組成物は、クロム(III)種、および次の式を有する配位子を含む。
【化6】
【0011】
式中、ArおよびArは、それぞれ独立に、芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。実施形態2は、式中、ArおよびArがそれぞれ独立に、フェニル基、置換フェニル基、または2つ以上の共役環を含む芳香族基である、実施形態1の触媒組成物である。実施形態3は、式中、ArおよびArが両方フェニル基である、実施形態2の触媒組成物である。実施形態4は、式中、nは0であり、前記触媒が以下の構造を有する、実施形態3の触媒組成物である。
【化7】
【0012】
実施形態5は、式中、nが1であり、前記触媒が以下の構造を有する、実施形態2の触媒組成物である。
【化8】
【0013】
実施形態6は、前記組成物が活性化剤または助触媒をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つの触媒組成物である。実施形態7は、前記活性化剤または助触媒がメチルアルミノキサン化合物である、実施形態6の触媒組成物である。実施形態8は、前記活性化剤または助触媒が、メチルイソブチルアルミニウムオキシド化合物である、実施形態6の触媒組成物である。実施形態9は、前記クロム(III)種が、クロム(III)アセチルアセトナート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオナート)、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、塩化クロム(III)テトラヒドロフラン錯体(1:3)、クロム(III)オクタノエート、またはナフテン酸クロム(III)である、実施形態8の触媒組成物である。
【0014】
実施形態10は、エチレンから1-オクテンを生成するプロセスである。当該プロセスは、1-オクテンを含むオリゴマー組成物を生成するために、オレフィン源を含む反応物ストリームを、実施形態1~9のいずれか1つの触媒組成物を含む溶液と接触させるステップを含む。実施形態11は、前記溶液が溶媒を含む、実施形態10のプロセスである。実施形態12は、前記溶媒が飽和炭化水素または芳香族炭化水素である、実施形態11のプロセスである。実施形態13は、前記溶媒が、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、またはそれらの混合物である、実施形態12のプロセスである。実施形態14は、前記生成物ストリームが1-ヘキセンをさらに含み、1-オクテンに対する選択率が60重量%超であり、1-オクテンに対する1-ヘキセンの重量比が0.3未満である、実施形態10から13のいずれか1つのプロセスである。実施形態15は、溶媒不溶性物質が、2重量%未満で生成される、実施形態10から14のいずれか1つのプロセスである。実施形態16は、前記触媒組成物が、下記化合物を含む、実施形態15のプロセスである。
【化9】
【0015】
実施形態17は、前記クロム(III)種、前記活性化剤または助触媒をさらに含む、実施形態15または16のいずれか1つのプロセスである。実施形態18は、前記触媒組成物が、前記クロム(III)種、前記活性化剤、前記助触媒、および下記化合物を含む、実施形態10から17のいずれか1つのプロセスである。
【化10】
【0016】
実施形態19は、前記接触させるステップが、15℃~100℃、好ましくは40℃~70℃の温度を含む、実施形態10から18のいずれか1つのプロセスである。実施形態20は、前記接触させるステップが、少なくとも2MPaまたは2~20MPa、好ましくは2~7MPaの圧力を含む、実施形態10から19のいずれか1つのプロセスである。
【0017】
本発明の他の実施形態は、本出願を通して記載される。本発明の一態様に関して記載される任意の実施形態は、本発明の他の態様にも適用され、その逆もまた同様である。本明細書に記載された各実施形態は、本発明の他の態様に適用可能な本発明の実施形態であると理解される。本明細書で記載される任意の実施形態は、本発明の任意の方法または組成物に対して実施することができ、その逆もまた同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用され得る。
【0018】
本明細書で使用されている様々な用語およびフレーズの定義を、以下に示す。
【0019】
「アルキル基」とは、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素を指す。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどが挙げられる。
【0020】
「アリール」基または「芳香族」基は、各環構造内に単結合と二重結合が交互に存在する、置換された、または置換された、単環または多環の炭化水素である。アリール基の置換基の非限定的な例としては、アルキル、置換アルキル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、アミン、ニトロ、アミド、ニトリル、アシル、アルキルシラン、チオールおよびチオエーテルの置換基が挙げられる。アルキル基の非限定的な例としては、直鎖状および分岐状のC~C炭化水素が挙げられる。不飽和炭化水素の非限定的な例としては、少なくとも1つの二重結合を含むC~C炭化水素(例えば、ビニル)が挙げられる。アリール基またはアルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、アミン、ニトロ(-NO)、アミド、ニトリル(-CN)、アシル、アルキルシラン、チオール、およびチオエーテル置換基で置換され得る。ハロゲンの非限定的な例としては、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、またはフルオロ(-F)の置換基が挙げられる。ハロアルキル置換基の非限定的な例としては、-CX、-CHX、-CHCHX、-CHXCHX、-CXCHX、-CXCXが挙げられ、ここで、Xは、F、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである。アミン置換基の非限定的な例としては、-NH、-CHNH、-CHCHNH、-C(NH)CHが挙げられる。アルコキシの非限定的な例としては、-OCH、-OCHCHなどが挙げられる。アルキルシラン置換基の非限定的な例としては、-Si(CH、-Si(CHCHなどが挙げられる。多環式基の非限定的な例としては、-C10および置換10炭素共役環系などの、2つ以上の共役環(例えば、縮合芳香族環)および置換共役環を含む環系が挙げられる。
【0021】
「溶媒不溶性物質」とは、分子量が400g/モル以上(炭素数30+)の炭化水素物質で、反応条件下で反応溶媒と均一な溶液を形成しないものを指す。例えば、反応中に前記物質は析出するか、または第2相を形成する。そのような物質は、重量測定で2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量で存在する。
【0022】
「約(about)」または「約(approximately)」という用語は、当業者によって理解されるものに近いと定義される。1つの非限定的な実施形態において、この用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、および最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0023】
「重量%」、「体積%」、または「モル%」という用語は、それぞれ、成分を含む物質の総重量、総体積、または総モル数を基準とした、成分の重量割合、成分の体積割合、または成分のモル割合を意味する。非限定的な例では、前記物質100g中に10gの成分が含まれていると、10重量%の成分である。
【0024】
「実質的に」という用語とその変形は、10%以内、5%以内、1%以内、または0.5%以内の範囲を含むように定義される。
【0025】
特許請求の範囲および/または明細書で使用される場合の「阻害する」、「低減する」、「防止する」、もしくは「回避する」という用語またはこれらの用語の任意の変形は、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少または完全な阻害を含む。
【0026】
「効果的な」という用語は、その用語が明細書および/または特許請求の範囲で使用される場合、所望の、期待される、または意図される結果を達成するのに適切であることを意味する。
【0027】
特許請求の範囲または明細書において「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「有する」という用語のいずれかと組み合わせて使用される場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1を超える」の意味とも矛盾しない。
【0028】
「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」や「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(および「有する(have)」や「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(および「含む(includes)」や「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)または「含む(containing)」(および「含む(contains)」や「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の形態)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の引用されていない要素または方法のステップを除外するものではない。
【0029】
本発明の触媒組成物は、本明細書中に開示されている特定の成分、構成要素、組成物などから「構成される(comprise)」、「本質的に構成される(consist essentially of)」、または「からなる(consist of)」可能性がある。「本質的に構成される」という移行句に関して、非限定的な一態様では、本発明の触媒組成物の基本的かつ新規な特徴は、最小限の量の溶媒不溶性物質(例えば、2重量%未満)を生成し、生成された1-オクテンが少なくとも99%の純度を有する状態で、60%超の選択率において1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化を触媒する能力である。
【0030】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の図、詳細な説明、および実施例から明らかになるであろう。しかし、図、詳細な説明、および実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられており、限定することを意図していないことを理解されたい。さらに、本発明の主旨および範囲内の変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになることが企図されている。さらなる実施形態では、特定の実施形態からの特徴は、他の実施形態からの特徴と組み合わせることができる。例えば、ある実施形態からの特徴は、他の実施形態のいずれかからの特徴と組み合わされ得る。さらなる実施形態では、本明細書に記載された特定の実施形態に追加の特徴が加えられ得る。
【0031】
本発明の利点は、以下の詳細な説明により、添付の図面を参照することにより、当業者に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】エチレンのオリゴマー化により1-オクテンを生成するシステムの概略を示す説明図である。
【0033】
本発明は、様々な変更および代替形態を許容するものであり得るが、その具体的な実施形態が、例として図面に示されている。図面は縮尺通りではない可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0034】
エチレンのオリゴマー化により、大量の溶媒不溶性物質を生成することなく、許容できる収率で、高い選択率において1-オクテンを生成できる方法が発見された。この発見は、NPNPN配位子系の使用を前提としている。特に、そして実施例に非限定的に示されているように、オリゴマー化生成物ストリームは、少なくとも60重量%の1-オクテン、25重量%未満の1-ヘキセン、および2重量%未満の溶媒不溶性物質(例えば、ポリマー物質)を含み得る。このことは、2重量%を超えるポリマー物質を生成する先行技術の配位子とは対照的である。重要なパラメータは、リンの置換基および窒素の置換基の選択である。リンの置換基は、芳香族基またはアルキル置換芳香族基を含み、中間の窒素置換基はメチル置換基を含み、末端の窒素置換基は、炭素原子数が3つ分異なる、異なる直鎖状アルキル炭化水素基(複数)を含む。この置換基の組み合わせにより、高純度および60重量%を超える選択率で1-オクテンを生成するためのエレガントでシンプルな配位子系が得られる。
【0035】
本発明のこれらおよびその他の非限定的な態様については、以下のセクションでさらに詳しく説明される。
【0036】
A.触媒組成物
前記触媒組成物は、本発明の配位子、クロム(III)種、および活性化剤または助触媒を含み得る。本発明の配位子は、本明細書全体および実施例に記載されているように調製され得る。前記触媒組成物は、脂肪族炭化水素溶媒または芳香族炭化水素溶媒中の溶液として提供され得る。脂肪族炭化水素溶媒としては、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、トルエンなどを挙げることができる。
【0037】
本発明の配位子は、以下の式で表すことができる。
【化11】
式中、ArおよびArはそれぞれ独立に、芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。
芳香族基または置換芳香族基には、フェニル(Ph)、C-C11アリールまたはC-C20置換アリールが含まれる。C-C11アリール基の非限定的な例としては、メチルベンジル、ジメチルベンジル(オルト置換、メタ置換、およびパラ置換)、エチルベンジル、プロピルベンジルなどが挙げられる。置換されたC-C20アリール基の置換基の非限定的な例としては、アルキル、置換されたアルキル基、直鎖状または分岐状のアルキル基、直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、アミン、ニトロ、アミド、ニトリル、アシル、アルキルシラン、チオール、およびチオエーテルの置換基が挙げられる。アルキル基の非限定的な例としては、直鎖状および分岐状のC~C炭化水素が挙げられる。不飽和炭化水素の非限定的な例としては、少なくとも1つの二重結合を含むC~C炭化水素(例えば、ビニル)が挙げられる。アリール基またはアルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、アミン、ニトロ(-NO)、アミド、ニトリル(-CN)、アシル、アルキルシラン、チオール、およびチオエーテル置換基で置換され得る。ハロゲンの非限定的な例としては、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、またはフルオロ(-F)の置換基が挙げられる。ハロアルキル置換基の非限定的な例としては、XがF、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである、-CX、-CHX、-CHCHX、-CHXCHX、-CXCHX、-CXCXが挙げられる。アミン置換基の非限定的な例としては、-NH、-CHNH、-CHCHNH、-C(NH)CHが挙げられる。アルコキシの非限定的な例としては、-OCH、-OCHCHなどが挙げられる。アルキルシラン置換基の非限定的な例としては、-Si(CH、-Si(CHCHなどが挙げられる。多環式基の非限定的な例としては、-C10および置換10炭素縮合芳香族環系などの、縮合芳香族環および置換縮合芳香族環が挙げられる。いくつかの実施形態では、C-C20アリール基は、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、トリフルオロトルエン、フェニルアミン、ニトロベンゼン、ジクロロトルエン、ベンゾニトリル、トリメチルベンジルシラン、ベンジルメチルエーテル、または縮合芳香族環(C10)である。前記配位子は、(CH)(n-C)NP(Ar)N(CH)NP(Ar)N(CH)(n-C)および(CHCH)(n-C11)NP(Ar)N(CH)NP(Ar)N(CHCH)(n-C11)、(CH)(n-C)NP(C)N(CH)NP(C)N(CH)(n-C)および(CHCH)(n-C11)NP(C)N(CH)NP(C)N(CHCH)(n-C11)であり得る。前記配位子の構造は、以下で表すことができる。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
式中、RおよびRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチルなどのアルキル基を表す。
【0038】
前記NPNPN配位子系は、当業者に公知の合成アプローチによって作成することができる。いくつかの実施形態では、配位子(1)は、スキームIに示すような反応経路によって合成可能である。
【化16】
式中、ArおよびArは、上記で定義されており、Rは、メチルまたはエチルであり、Rは、Rがメチルの場合はブチルであり、Rがエチルの場合はペンチルである。
【0039】
前記クロム種は、Cr(III)の有機塩、無機塩、配位錯体、または有機金属錯体であり得る。一実施形態では、前記クロム種は、有機金属のCr(III)種である。前記クロム種の非限定的な例としては、Cr(III)アセチルアセトナート、Cr(III)オクタノエート、CrCl(テトラヒドロフラン)、Cr(III)-2-エチルヘキサノエート、塩化クロム(III)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。モル配位子/Cr比は、約0.5~50、約0.5~5、約0.8~約2.0、約1.0~5.0、または好ましくは約1.0~約1.5であり得る。
【0040】
前記活性化剤(当技術分野では助触媒としても知られている)は、アルミニウム化合物であり得る。アルミニウム化合物の非限定的な例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、またはそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記活性化剤は、修飾メチルアルミノキサン、より好ましくはMMAO-3A(CAS番号146905-79-5)であり得、これは、7%アルミニウムを含むトルエン溶液としてAkzo Nobelから入手可能な修飾メチルアルミノキサン、タイプ3Aであり得、これは約18%のMMAO-3A濃度に相当する。モルAl/Cr比は、約1~約1000、約10~約1000、約1~500、約10~500、約10~約300、約20~約300、または好ましくは50~約300であり得る。
【0041】
前記触媒組成物は、溶媒をさらに含み得る。溶媒の非限定的な例としては、直鎖状および環状の脂肪族炭化水素、直鎖状オレフィン、エーテル、芳香族炭化水素などが挙げられる。また、前記の溶媒の少なくとも1つからなる組み合わせが、使用され得る。好ましくは、前記溶媒は、トルエン、n-ヘプタン、もしくはメチルシクロヘキサンまたはそれらの任意の混合物である。
【0042】
前記溶媒中の前記クロム化合物の濃度は、使用する特定の化合物および所望の反応速度によって異なる。いくつかの実施形態では、前記クロム化合物の濃度は、約0.01~約100ミリモル/リットル(mmol/l)、約0.01~約10mmol/l、約0.01~約1mmol/l、約0.1~約100mmol/l、約0.1~約10mmol/l、約0.1~約10mmol/l、約1~約10mmol/l、および約1~約100mmol/lである。 好ましくは、前記クロム化合物の濃度は、約0.1~約1.0mmol/lである。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記触媒組成物は、前記クロム化合物としてCr(III)アセチルアセトナート、前記NPNPN配位子としてエチル(n-ペンチル)N-P(フェニル)-N(メチル)-P(フェニル)-N(n-ペンチル)エチル、および前記活性化剤としてMMAO-3Aを含む。他の実施形態では、前記触媒組成物は、前記クロム化合物としてCr(III)アセチルアセトナート、前記NPNPN配位子としてメチル(n-ブチル)N-P(フェニル)-N(メチル)-P(フェニル)-N(n-ブチル)メチル、および前記活性化剤としてMMAO-3Aを含む。
【0044】
B.1-オクテンのオリゴマー化のためのシステム
本発明の触媒組成物は、エチレンを1-オクテンにオリゴマー化するためのプロセスにおいて使用され得る。一実施形態では、このプロセスは、1-オクテンを生成するのに効果的なエチレンのオリゴマー化条件下で、エチレンを前記触媒組成物と接触させるステップを含む。当業者は、1-オクテンを生成するためのエチレンのオリゴマー化は、エチレンの四量体化によって行うことができることを理解するであろう。
【0045】
図1は、1-オクテンを生成するシステムの概略図を示している。システム100は、エチレンを含む反応物供給のための入口102と、前記入口と流体連通するように構成される反応ゾーン104と、前記反応ゾーン104と流体連通するように構成され、前記反応ゾーンから生成物ストリームを除去するように構成された出口106と、を含み得る。前記反応物ゾーン104は、本発明の触媒組成物を含み得る。エチレン反応物供給物は、前記入口102を介して前記反応ゾーン104に入ることができる。いくつかの実施形態では、前記エチレン反応物供給物は、前記反応ゾーン104内の圧力を維持するために使用され得る。いくつかの実施形態では、前記反応物供給物ストリームは、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)を含む。十分な時間が経過した後、前記生成物ストリームは、生成物出口106を介して前記反応ゾーン104から除去され得る。前記生成物ストリームは、他の処理ユニットに送られ、保存され、および/または輸送され得る。
【0046】
システム100は、前記反応混合物の反応温度および圧力を制御するのに必要な1つ以上の加熱装置および/または冷却装置(例えば、断熱材、電気ヒーター、壁におけるジャケット式熱交換器)またはコントローラ(例えば、コンピュータ、フローバルブ、自動弁など)を含み得る。1つの反応器のみを示しているが、複数の反応器が1つのユニットに収容されるか、または複数の反応器が1つの伝熱ユニットに収容され得ることを理解されたい。
【0047】
上述したように、本発明のプロセスおよび触媒組成物により、LAO製品の分布を1-ヘキセンと1-オクテンに限定して、1-オクテンを高い選択率で生成することができる。1-オクテンに対する高い選択率は、生成物の純度を高めるという意味で有利な特徴であり、それにより、分離トレインにおける追加の精製ステップの必要性を回避することができる。本触媒組成物およびプロセスのさらなる有利な特徴は、望ましくないポリマー形成につながるエチレン重合の抑制、より穏やかな反応条件、そしてその結果として、装置の資本コスト、運用コストおよびエネルギーコストの低減である。さらに、比較的シンプルでわかりやすいプロセス設計が可能である。1-オクテンの選択率は、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、もしくは約100重量%、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値を超える。1-オクテンの純度は、少なくとも約99%、または99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%であり得る。少なくとも99.1%の純度が好ましい。一実施形態では、1-ヘキセンを生成する場合、1-オクテンに対する1-ヘキセンの重量比は、0.3未満、または0~0.3、または0.1、0.15、0.2、0.25、もしくは0.3、またはその間の任意の範囲もしくは値であり得る。
【実施例
【0048】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、例示を目的として提供されるものであり、本発明をいかなる方法でも限定することを意図するものではない。当業者であれば、本質的に同じ結果を得るために変更または修正することができる様々な非重要なパラメータを容易に認識することができるであろう。
【0049】
実施例1(配位子2、配位子3および比較配位子の合成)
上記の構造(2)および(3)を有する配位子を調製するために2つの方法が、使用され得る。比較配位子は、アミノ官能基がメチル基およびエチル基を含む(すなわち、nは3未満である)以下の構造を有していた。
【化17】
(比較配位子(6))
【0050】
ルートA、一般的な手順(スキーム1を参照)。すべての操作を、不活性雰囲気下で行った。ビス(クロロホスフィノ)アミン(PhP(Cl)N(CH)P(Cl)Ph、4.42g、14mmol)を20mLの無水トルエンに溶解した。適切な第2級アミン(29.4mmol)とNEt(35mmol)を30mLの無水トルエンと混合し、-10℃まで冷却した。ビス(クロロホスフィノ)アミンのトルエン溶液を、不活性雰囲気下で激しく撹拌しながら反応混合物に滴下した。前記試薬を加えると、白いゲル状の物質が析出した。撹拌を続けながら、溶液を3時間かけて25℃まで昇温させた後、75℃まで昇温し、さらに12時間、その温度で撹拌した。真空下ですべての揮発性化合物を蒸発させた後、残渣を無水高温のn-ヘプタンに取り込み、不溶性物質をろ過によって分離した。溶媒を蒸発させると、白色のオイルが得られた。生成物の純度は、H、13C、および31P NMRを用いて確認した。必要に応じて、前記生成物をn-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、またはn-ペンタンから再結晶して前記純度を高めることができる。
【0051】
ルートB、一般的な手順(スキーム1を参照)。すべての操作を、不活性雰囲気下で行った。適切な二級アミン(10mmol)を無水n-ヘプタン20mLに溶解し、-10℃まで冷却した後、n-ヘキサン中5%モル過剰のn-BuLiで処理した。この溶液を3時間撹拌し、温度を25℃に上昇させると、白色の沈殿物が生成した。この固体を溶液から分離し、n-ヘキサンで洗浄した後、30mLの無水エーテルを入れたフラスコに移した。得られた懸濁液を-10℃まで冷却し、30mLの無水エーテル中のビス(クロロホスフィノ)アミン(PhP(Cl)N(CH)P(Cl)Ph(1.55g、4.9mmol)溶液を、激しく撹拌しながら反応混合物に滴下した。添加後、反応混合物を25℃まで温めながら12時間撹拌し続けた。反応の過程で、白色の固体が形成された。不溶性物質をろ過により分離し、エーテルで洗浄した後、廃棄した。溶液と洗浄液とを合わせて、真空中で溶媒を除去すると、白色の粘性オイルが得られた。生成物の純度は、H、13C、および31P NMRを用いて確認した。必要に応じて、生成物をn-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンまたはn-ペンタンから再結晶して、前記純度を高めることができる。
【0052】
前駆体であるPhP(Cl)N(Me)P(Cl)Phは、Jeffersonらの手順で調製した(J.Chem.Soc.Dalton Trans.1973,1414-1419)。
【0053】
実施例2(触媒組成物の調製とエチレンのオリゴマー化)
ディップチューブ、サーモウェル、メカニカルパドルスターラー、冷却コイル、温度・圧力・スターラー速度用制御ユニット(すべてデータ収集システムに接続)を備えた反応器を、真空下で130℃まで加熱することにより不活性化(inertized)して、乾燥窒素気流で30℃まで排気して冷却した。データ収集システムに接続されたガス注入制御ユニットにより、等圧エチレンの供給が維持された。エチレンの消費量は、コンピュータ化されたデータ収集システムを用いて、供給シリンダー内の圧力損失によって経時的にモニターされた。
【0054】
配位子(本発明の配位子(2)または比較配位子)およびクロム前駆体としてのCr(III)アセチルアセトナートを、配位子とCrの比率が1.20になるように調整されたストックトルエン溶液を適量に計量し、不活性雰囲気下のシュレンク管に投入した。ステンレス製の圧力反応器に無水のn-ヘプタン30mLを加え、反応温度まで昇温した。反応器の温度が安定した後、反応器をエチレンで30barに加圧し、機械的に撹拌を続けながら0.5時間放置した。その後、圧力を0.2bar(0.02MPa)に下げ、無水n-ヘプタンに溶解した0.3MのMMAO-3Aストック溶液を、Al/Cr比が300になるように、投入口から反応器に適量導入した。撹拌は10分間続けられた。続いて、Crと配位子の混合溶液を投入口から反応器に導入した。
【0055】
触媒を反応器に導入した直後に、圧力を30bar(3MPa)に上げた。標準的な反応条件は、エチレンの圧力が30bar(3MPa)、Tが45℃、攪拌機の速度が450RPMである。1時間の触媒試験(catalytic run)後、エチレンの供給を停止し、反応器の温度を5℃まで下げた。反応器からエチレンを、0.2bar(0.02MPa)の圧力まで排出した。0.3M HC1/イソプロパノール混合液でクエンチして反応を停止した。既知の量のトルエン内部標準を用いたガスクロマトグラフィーを用いて、液体生成物を分析した。ワックスやポリエチレンなどの不溶性の副生成物を、ろ過して乾燥し、重量を測定した。反応器を洗浄せずに連続した触媒実験を、上述の同じ成分と量を用いて行った。表1は、構造2を有する配位子(1回目および2回目の試験)および比較配位子の結果を示す。
【表1】
【0056】
表1は、構造式(2)で示される配位子を有する触媒および構造式(6)で示される配位子を有する比較触媒で調製した触媒系を用いて、これらの標準的な条件下でエチレンオリゴマー化実験を行った結果をまとめたものである。表には、液相中のヘキセン(C6)、オクテン(C8)、および溶媒不溶性物質のそれぞれの選択率が重量%で示されている。括弧内の数字は、全体のC6/C8フラクションにおけるそれぞれの直鎖状アルファオレフィンの選択率を示す。これらのLAOの純度は一般的に有利に高かった。比較触媒(6)は、配位子の窒素原子上の炭素鎖(すなわちエチル)が、触媒2の配位子の炭素鎖(すなわちブチル)よりも炭素2つ分短い点で、触媒(2)と異なる。S2触媒の2回の試験を示す。連続した2回目の試験は、通常、最初の試験よりも優れた性能を示すことが観察された。示されるように、2回目の連続した試験は、最初の触媒の試験よりも高い触媒活性を有していた。理論に拘束されることを望まないが、この非常に典型的な挙動は、1回目の試験中に反応器が乾燥および洗浄されたことに起因する可能性が高いと思われる。
【0057】
本願の実施形態およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される実施形態の主旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換および改変を行うことができることを理解されたい。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載されているプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば、上記の開示から容易に理解できるように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たし、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在する、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップが、利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内にそのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを含むことを意図している。
図1
【国際調査報告】