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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】融合タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28
A61K38/17
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/06
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525715
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2019117856
(87)【国際公開番号】W WO2020098672
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201811356690.9
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520302486
【氏名又は名称】杭州尚健生物技術有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520302497
【氏名又は名称】尚健単抗(北京)生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呂 明
(72)【発明者】
【氏名】丁 暁然
(72)【発明者】
【氏名】繆 仕偉
(72)【発明者】
【氏名】談 彬
(72)【発明者】
【氏名】王 学恭
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA02
4C084BA41
4C084DA01
4C084NA14
4C084ZB08
4C084ZB26
4C085AA14
4C085BB01
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1結合ドメインと、ヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含むCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを持つ融合タンパク質を提供する。さらに、上記の融合タンパク質に関連する免疫複合体、核酸分子、ベクター、組成物、細胞、調製方法、および医薬品の調製におけるそれらの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1結合ドメイン、およびSEQ ID NO:50で表される配列に比べて、33位~149位における1つまたは複数の位置にアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含むヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含むCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを持つ、
融合タンパク質。
【請求項2】
前記突然変異体は、R22、I29、I61、V63、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、D96、K98、N100、R107、G109およびV132からなる群から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記突然変異体は、
(1)I61、V63、E77、E84、V93、L96、K98、N100およびV132、
(2)I61、E77、Q82、K83およびE84、
(3)I61、V63、K83、E84およびV132、
(4)I61、E77、E84、R107およびV132、
(5)I61、V63、E77、K83、E84およびN100、
(6)I61、E77、Q82、K83、E84およびR107、
(7)I61、E77、Q82、E84、V93、L96、N100、R107、G109およびV132、
(8)I61、E77、Q82、K83、E84およびV132、
(9)I61、
(10)I61、D95、L96、G109およびV132、
(11)I61、D95、L96、K98、G109およびV132、
(12)I61、E77、E84、V93、R107およびV132、
(13)E77、L96、N100、G109およびV132、
(14)I61、V63、Q82、E84、D95、L96、N100およびV132、
(15)I61、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、L96、K98、N100およびV132、
(16)I61、E77、Q82、K83、E84およびV93、
(17)I61、V63、E77、K83、E84、D95、L96、K98およびN100、
(18)I61、V63、E77、K83、D95、L96、K98、N100およびG109、
(19)I61、E77、Q82、E84、V93、D95、L96、K98およびN100、ならびに、
(20)I61、V63、E77、Q82およびE84からなる群から選ばれるアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、
請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記突然変異体は、R22C、I29L、I61L/V/F、V63I、E77I/N/Q/K/H/M/R/N/V/L、Q82S/R/G/N、K83R、E84K/H/D/R/G、V93L/A、D95H/R/E、D96S/T、K98R、N100G/K/D/E、R107N/S、G109R/HおよびV132L/R/I/Sからなる群から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記突然変異体は、
(1)I61L、V63I、E77I、E84K、V93L、L96S、K98R、N100GおよびV132L、
(2)I61V、E77N、Q82S、K83RおよびE84H、
(3)I61F、V63I、K83R、E84KおよびV132I、
(4)I61L、E77Q、E84D、R107NおよびV132I、
(5)I61L、V63I、E77K、K83R、E84DおよびN100G、
(6)I61V、E77H、Q82R、K83R、E84HおよびR107S、
(7)I61L、E77I、Q82G、E84R、V93L、L96T、N100G、R107S、G109RおよびV132R、
(8)I61L、E77M、Q82G、K83R、E84DおよびV132L、
(9)I61L、
(10)I61F、D95H、L96S、G109HおよびV132S、
(11)I61F、D95H、L96S、K98R、G109HおよびV132S、
(12)I61L、E77Q、E84D、V93A、R107NおよびV132I、
(13)E77K、L96S、N100K、G109HおよびV132L、
(14)I61L、V63I、Q82G、E84G、D95R、L96S、N100DおよびV132I、
(15)I61L、E77R、Q82N、K83R、E84G、V93L、D95E、L96T、K98R、N100DおよびV132L、
(16)I61V、E77N、Q82S、K83R、E84HおよびV93A、
(17)I61V、V63I、E77V、K83R、E84D、D95E、L96T、K98RおよびN100E、
(18)I61L、V63I、E77V、K83R、D95E、L96S、K98R、N100DおよびG109R、
(19)I61V、E77L、Q82G、E84G、V93L、D95E、L96T、K98RおよびN100G、ならびに、
(20)I61L、V63I、E77N、Q82GおよびE84Gからなる群から選ばれるアミノ酸置換を有する、
請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記突然変異体は、SEQ ID NO:51-70のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記第1結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記抗体は、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト化抗体からなる群から選ばれる、
請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab')2、F(ab)2、dAb、散在している相補性決定領域CDR、FvおよびscFvからなる群から選ばれる、
請求項7~8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片の前記変異体は、
a)前記抗体または前記その抗原結合断片における1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失または付加されたタンパク質またはポリペプチド、および
b)前記抗体または前記その抗原結合断片と少なくとも90%の配列相同性を持つタンパク質またはポリペプチドからなる群から選ばれる、
請求項7~9のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記腫瘍関連抗原は、非固形腫瘍および/または固形腫瘍関連の腫瘍関連抗原を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記腫瘍関連抗原は、CD38、AXLおよびTrop2からなる群から選ばれる、
請求項1~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記第1結合ドメインは、CD38抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記CD38はヒトCD38である、
請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5およびSEQ ID NO: 6であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む、
請求項7~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 8のようなアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含む、
請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記抗体重鎖またはその断片は、IgGを有する重鎖定常領域を含む、
請求項15~16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記IgGは、IgG1およびIgG4からなる群から選ばれる、
請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記抗体重鎖は、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 19およびSEQ ID NO: 21からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有する、
請求項15~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 3であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む、
請求項7~19のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 7のようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含む、
請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記抗体軽鎖またはその断片は、Igκを有する軽鎖定常領域を含む、
請求項20~21のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記抗体軽鎖は、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 18およびSEQ ID NO: 20からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有する、
請求項20~22のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
前記第1結合ドメインは、AXL抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記AXLはヒトAXLである、
請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26およびSEQ ID NO: 27であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む、
請求項24~25のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 29のようなアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含む、
請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記抗体重鎖またはその断片は、IgGを有する重鎖定常領域を含む、
請求項26~27のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記IgGは、IgG1およびIgG4からなる群から選ばれる、
請求項28に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記抗体重鎖は、SEQ ID NO: 34のようなアミノ酸配列を有する、
請求項24~29のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23およびSEQ ID NO:24であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む、
請求項24~30のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 28のようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含む、
請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記抗体軽鎖またはその断片は、Igκを有する軽鎖定常領域を含む、
請求項31~32のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
前記抗体軽鎖は、SEQ ID NO: 32のようなアミノ酸配列を有する、
請求項31~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記第1結合ドメインは、Trop2抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記Trop2はヒトTrop2である、
請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40およびSEQ ID NO: 41であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む、
請求項35~36のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
前記抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 43のようなアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含む、
請求項37に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
前記抗体重鎖またはその断片は、IgGを有する重鎖定常領域を含む、
請求項37~38のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
前記IgGは、IgG1およびIgG4からなる群から選ばれる、
請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
前記抗体重鎖は、SEQ ID NO: 48のようなアミノ酸配列を有する、
請求項37~40のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む、
請求項35~41のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
前記抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 42のようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含む、
請求項42に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
前記抗体軽鎖またはその断片は、Igκを有する軽鎖定常領域を含む、
請求項42~43のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
前記抗体軽鎖は、SEQ ID NO:46のようなアミノ酸配列を有する、
請求項42~44のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
前記第1結合ドメインは、前記第2結合ドメインのN末端に位置する、
請求項1~45のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
前記融合タンパク質は、さらに、前記第1結合ドメインのC末端かつ前記第2結合ドメインのN末端にあるリンカーを有する、
請求項1~46のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項48】
前記リンカーは、SEQ ID NO:73-74のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項49】
少なくとも2つの前記第2結合ドメインを持つ、
請求項1~48のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項50】
各前記第2結合ドメインは、それぞれ前記第1結合ドメインのC末端に位置する、
請求項49に記載の融合タンパク質。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む、
免疫複合体。
【請求項52】
請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項51に記載の免疫複合体をコード化する、
1つまたは複数の単離された核酸分子。
【請求項53】
請求項52に記載の核酸分子を含む、
1つまたは複数のベクター。
【請求項54】
請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項51に記載の免疫複合体または請求項52に記載の核酸分子、および任意選択で薬学的に許容可能な賦形剤を含む、
組成物。
【請求項55】
請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項51に記載の免疫複合体、請求項52に記載の核酸分子、または請求項53に記載のベクターを含む、
細胞。
【請求項56】
前記融合タンパク質を発現可能な条件で、請求項55に記載の細胞を培養することを含む、
請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質の調製方法。
【請求項57】
腫瘍あるいは自己免疫疾患の治療のための医薬品の調製における請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項51に記載の免疫複合体、請求項52に記載の核酸分子、請求項53に記載のベクター、請求項54に記載の組成物、または請求項55に記載の細胞の使用。
【請求項58】
前記腫瘍は、非固形腫瘍と固形腫瘍を含む、
請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記腫瘍は、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、胚細胞腫瘍、肉腫、中皮腫、胎盤腫、脳癌、骨癌、皮膚がん、鼻咽頭癌、肺癌、口腔がん、食道がん、胃癌、肝臓がん、膵臓癌、前立腺がん、腸癌、乳がん、子宮頚部癌、卵巣癌および精巣癌を含む、
請求項57に記載の使用。
【請求項60】
前記自己免疫疾患は、慢性リンパ球性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、インスリン依存型糖尿病、重症筋無力症、慢性潰瘍性結腸炎、慢性萎縮性胃炎合併悪性貧血、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変症、多発性脳脊髄硬化症、急性特発性多発神経炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症および結節性多発動脈炎を含む、
請求項57に記載の使用。
【請求項61】
必要のある被験者に、有効量の請求項1~50のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項51に記載の免疫複合体、請求項52に記載の核酸分子、請求項53に記載のベクター、請求項54に記載の組成物、または請求項55に記載の細胞を投与することを含む、
CD47タンパク質とSIRPαの相互作用を遮断する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオメディカル分野に関して、具体的に、多重特異的融合タンパク質に関して、さらに、腫瘍および/あるいは自己免疫疾患の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、腫瘍の治療分野には、標的薬物の投与と免疫の治療といった2つの方法がある。この2つの治療方法は、相互作用の可能性があり、細胞毒性をより強く作用させることによって、腫瘍を安定的で永続的に寛解する。しかし、標的薬物と免疫治療の間の相互作用は、非常に複雑であり、併用療法は、種類、用量、順番、剤形などのいろんな要因によって、全体の抗腫瘍効果や毒性特性が影響される。
【0003】
CD47タンパク質は、膜貫通型糖タンパク質であって、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーに属し、正常組織細胞によるCD47の発現に以外、CD47が多くの腫瘍細胞によって過剰に発現される。腫瘍細胞表面のCD47は、マクロファージ表面のSIRPαに結合することによって腫瘍細胞に対するマクロファージの貪食を阻止し、これは、腫瘍細胞が生体免疫監視から逃避するメカニズムであると見なされる。CD47タンパク質とSIRPαの相互作用を遮断することによって、腫瘍成長を抑制することができる。
【0004】
しかし、従来のCD47タンパク質とSIRPαの相互作用を遮断するための試薬は、認識活性に限界があり、CD47タンパク質との親和性が不十分なものが多く、腫瘍抑制能が制限されている。同時に、従来の標的CD47という抗体類医薬品には、貧血反応または血小板減少をきたす副作用がある。そして、CD47タンパク質と腫瘍関連抗原への同時特異性標的指向の有効治療方法を得るよう望んでいる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1結合ドメインと、CD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを持つ融合タンパク質を提供する。本発明は、該融合タンパク質を含む免疫複合体、該融合タンパク質をコード化する核酸分子、該融合タンパク質を含むおよび/または発現することができるベクター、組成物ならびに細胞、および上記の融合タンパク質の調製方法をさらに提供する。本発明の融合タンパク質、免疫複合体、核酸分子、ベクター、組成物および細胞は、1)CD47タンパク質と腫瘍関連抗原に同時に特異的に結合することができ、2)CD47タンパク質とSIRPαの相互作用を特異的に遮断することができ、3)腫瘍または腫瘍細胞の成長および/または増殖を効果的に抑制することができるという特性を1種または複数種備える。
【0006】
一方、本発明は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1結合ドメインと、SEQ ID NO:50で表される配列に比べて、33位~149位における1つまたは複数の位置にアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含むヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含むCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを持つ融合タンパク質を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記の突然変異体は、R22、I29、I61、V63、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、D96、K98、N100、R107、G109およびV132からなる群から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記の突然変異体は、(1)I61、V63、E77、E84、V93、L96、K98、N100およびV132、(2)I61、E77、Q82、K83およびE84、(3)I61、V63、K83、E84およびV132、(4)I61、E77、E84、R107およびV132、(5)I61、V63、E77、K83、E84およびN100、(6)I61、E77、Q82、K83、E84およびR107、(7)I61、E77、Q82、E84、V93、L96、N100、R107、G109およびV132、(8)I61、E77、Q82、K83、E84およびV132、(9)I61、(10)I61、D95、L96、G109およびV132、(11)I61、D95、L96、K98、G109およびV132、(12)I61、E77、E84、V93、R107およびV132、(13)E77、L96、N100、G109およびV132、(14)I61、V63、Q82、E84、D95、L96、N100およびV132、(15)I61、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、L96、K98、N100およびV132、(16)I61、E77、Q82、K83、E84およびV93、(17)I61、V63、E77、K83、E84、D95、L96、K98およびN100、(18)I61、V63、E77、K83、D95、L96、K98、N100およびG109、(19)I61、E77、Q82、E84、V93、D95、L96、K98およびN100、ならびに、(20)I61、V63、E77、Q82およびE84からなる群から選ばれるアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記の突然変異体は、R22C、I29L、I61L/V/F、V63I、E77I/N/Q/K/H/M/R/N/V/L、Q82S/R/G/N、K83R、E84K/H/D/R/G、V93L/A、D95H/R/E、D96S/T、K98R、N100G/K/D/E、R107N/S、G109R/HおよびV132L/R/I/Sからなる群から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸置換を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記の突然変異体は、(1)I61L、V63I、E77I、E84K、V93L、L96S、K98R、N100GおよびV132L、(2)I61V、E77N、Q82S、K83RおよびE84H、(3)I61F、V63I、K83R、E84KおよびV132I、(4)I61L、E77Q、E84D、R107NおよびV132I、(5)I61L、V63I、E77K、K83R、E84DおよびN100G、(6)I61V、E77H、Q82R、K83R、E84HおよびR107S、(7)I61L、E77I、Q82G、E84R、V93L、L96T、N100G、R107S、G109RおよびV132R、(8)I61L、E77M、Q82G、K83R、E84DおよびV132L、(9)I61L、(10)I61F、D95H、L96S、G109HおよびV132S、(11)I61F、D95H、L96S、K98R、G109HおよびV132S、(12)I61L、E77Q、E84D、V93A、R107NおよびV132I、(13)E77K、L96S、N100K、G109HおよびV132L、(14)I61L、V63I、Q82G、E84G、D95R、L96S、N100DおよびV132I、(15)I61L、E77R、Q82N、K83R、E84G、V93L、D95E、L96T、K98R、N100DおよびV132L、(16)I61V、E77N、Q82S、K83R、E84HおよびV93A、(17)I61V、V63I、E77V、K83R、E84D、D95E、L96T、K98RおよびN100E、(18)I61L、V63I、E77V、K83R、D95E、L96S、K98R、N100DおよびG109R、(19)I61V、E77L、Q82G、E84G、V93L、D95E、L96T、K98RおよびN100G、ならびに、(20)I61L、V63I、E77N、Q82GおよびE84Gからなる群から選ばれるアミノ酸置換を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記の突然変異体は、SEQ ID NO:51-70のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記の第1結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト化抗体からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態において、上記の抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab')2、F(ab)2、dAb、散在している相補性決定領域CDR、FvおよびscFvからなる群から選ばれる。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記の抗体またはその抗原結合断片の上記の変異体は、
a)上記の抗体または上記のその抗原結合断片における1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失または付加されたタンパク質またはポリペプチド、および
b)上記の抗体または上記のその抗原結合断片と少なくとも90%の配列相同性を持つタンパク質またはポリペプチドからなる群から選ばれる。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍関連抗原は、非固形腫瘍および/または固形腫瘍関連の腫瘍関連抗原を含む。いくつかの実施形態において、上記の腫瘍関連抗原は、CD38、AXLおよびTrop2からなる群から選ばれる。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記の第1結合ドメインは、CD38抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む。いくつかの実施形態において、上記のCD38はヒトCD38である。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5およびSEQ ID NO: 6であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 8からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片は、IgGを有する重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、上記のIgGは、IgG1およびIgG4からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖は、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 19およびSEQ ID NO: 21からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 3であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 7からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、Igκを有する軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖は、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 18およびSEQ ID NO: 20からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記の第1結合ドメインは、AXL抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む。いくつかの実施形態において、上記のAXLはヒトAXLである。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26およびSEQ ID NO:27であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 29からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片は、IgGを有する重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、上記のIgGは、IgG1およびIgG4からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖は、SEQ ID NO: 34からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23およびSEQ ID NO: 24であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 28からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、Igκを有する軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖は、SEQ ID NO: 32からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記の第1結合ドメインは、Trop2抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む。いくつかの実施形態において、上記のTrop2はヒトTrop2である。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40およびSEQ ID NO: 41であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 43からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片は、IgGを有する重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、上記のIgGは、IgG1およびIgG4からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖は、SEQ ID NO: 48からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO:38であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO: 42からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、Igκを有する軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖は、SEQ ID NO: 46からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記の第1結合ドメインは、上記の第2結合ドメインのN末端に位置する。いくつかの実施形態において、上記の融合タンパク質は、さらに、上記の第1結合ドメインのC末端かつ上記の第2結合ドメインのN末端にあるリンカーを有する。いくつかの実施形態において、上記のリンカーは、SEQ ID NO:73-74のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記の融合タンパク質は、少なくとも2つの上記の第2結合ドメインを持つ。いくつかの実施形態において、各上記の第2結合ドメインは、それぞれ上記の第1結合ドメインのC末端に位置する。
【0025】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質を含む免疫複合体を提供する。
【0026】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質または上記の免疫複合体をコード化する1つまたは複数の単離された核酸分子を提供する。
【0027】
他方、本発明は、上記の核酸分子を含む1つまたは複数のベクターを提供する。
【0028】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、または上記の核酸分子、および任意選択で薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を提供する。
【0029】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、または上記のベクターを含む細胞を提供する。
【0030】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質を発現可能な条件で、上記の細胞を培養することを含む上記の融合タンパク質の調製方法を提供する。
【0031】
他方、本発明は、腫瘍あるいは自己免疫疾患の治療のための医薬品の調製における上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞の使用を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍は、非固形腫瘍と固形腫瘍を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍は、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、胚細胞腫瘍、肉腫、中皮腫、胎盤腫、脳癌、骨癌、皮膚がん、鼻咽頭癌、肺癌、口腔がん、食道がん、胃癌、肝臓がん、膵臓癌、前立腺がん、腸癌、乳がん、子宮頚部癌、卵巣癌および精巣癌を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記の自己免疫疾患は、慢性リンパ球性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、インスリン依存型糖尿病、重症筋無力症、慢性潰瘍性結腸炎、慢性萎縮性胃炎合併悪性貧血、グッドパスチャー症候群(goodpasture syndrome)、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変症、多発性脳脊髄硬化症、急性特発性多発神経炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症および結節性多発動脈炎を含む。
【0035】
他方、本発明は、腫瘍あるいは自己免疫疾患を治療する上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞を提供する。
【0036】
他方、本発明は、必要のある被験者に、有効量の上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞を投与することを含むCD47タンパク質とSIRPαの相互作用を遮断する方法を提供する。
【0037】
他方、本発明は、必要のある被験者に、有効量の上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞を投与することを含む腫瘍または腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害する方法を提供する。
【0038】
当該技術分野における当業者は、以降の詳細な記載からの本開示のその他の側面や利点の把握が容易であろう。以下の詳細な記載では、本開示の例示的実施形態しか表現して記載していない。当該技術分野における当業者にとって、本開示の詳細によって、本発明に係る趣旨や範囲を逸脱しない限り、公開されている具体的な実施形態を変更してもよい。それに応じて、本発明において、図面や明細書の記載があくまでも例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明に係る具体的な特徴は、添付の請求項のように示されたものである。本発明に係る特徴やメリットは、以下詳しく記載されている例示的実施形態や図面を参照することによって、より確実的に把握されるだろう。図面に関しては、以下のように概略的に説明する。
【0040】
図1は、本発明に記載の融合タンパク質の構造例を示す。
【0041】
図2~3は、本発明に記載の融合タンパク質の生物学的活性を示す。
【0042】
図4A~4Bは、本発明に記載の融合タンパク質の生物学的活性を示す。
【0043】
図5は、本発明に記載の融合タンパク質とCD38およびCD47の間の相互作用を測定する方法・原理を示す模式図である。
【0044】
図6は、本発明に記載の融合タンパク質の生物学的活性を示す。
【0045】
図7は、本発明に記載の融合タンパク質とCD38およびCD47の間の相互作用を測定する方法・原理を示す模式図である。
【0046】
図8~9は、本発明に記載の融合タンパク質の生物学的活性を示す。
【0047】
図10は、CD47タンパク質とSIRPαの相互作用に対する本発明に記載の融合タンパク質による遮断を示す。
【0048】
図11A-11B、図12A-12Bおよび図13A-13Bは、本発明の融合タンパク質と対応抗原の結合活性を示す。
【0049】
図14は、異なる治療群のマウスの腫瘍画像結果を示す。
【0050】
図15は、異なる治療群のマウスの腫瘍平均蛍光強度を示す。
【0051】
図16は、異なる治療群のマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本願発明の実施形態を、所定の具体的な実施例によって説明するが、当業者が、本明細書に公開された内容により、本願発明のその他のメリットや効果を容易に把握することができる。
【0053】
本発明において、「融合タンパク質」という用語は、通常、2つまたはより多くのタンパク質またはポリペプチドにより融合されたタンパク質を指す。融合タンパク質は、組換えDNA技術により人工的に調製されることができる。例えば、上記の2つまたはより多くのタンパク質もしくはポリペプチドをコード化する遺伝子または核酸分子は、互いに連結されることによって、上記の融合タンパク質をコード化する融合遺伝子または融合される核酸分子を形成することができる。上記の融合遺伝子の翻訳によって、融合される前の上記の2つまたはより多くのタンパク質もしくはポリペプチドのうちの少なくとも1つ、ひいては1つごとの特性をもつ単一ポリペプチドを産生する。
【0054】
本発明において、「特異的結合」という用語は、通常、抗体と該抗体を産生する抗原間の反応のような両分子間の非ランダム化の結合反応を指す。いくらかの抗原特異性抗体は、親和性の(KD)≦10-5 M(例えば、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 Mなど)で該抗原に結合するものを指し、ここで、KDとは解離定数と結合定数の比の値(koff/kon)であって、当該技術分野における当業者に周知の手段で測定されることができる。
【0055】
本発明において、「結合ドメイン」という用語は、通常、標的(例えば抗原)上の特定のエピトープに対して特異的に結合および/または認識することができるドメインを指す。本発明において、「ドメイン」という用語は、通常、タンパク質サブユニット構造におけるはっきり離れている密接な球形構造領域を指す。例えば、ポリペプチド鎖は、まず、いくつかの領域における隣接するアミノ酸残基に規則的な二次構造が形成されてよく、そして、さらに、隣接する二次構造断片を一緒に組み込むことにより超二次構造を形成し、この上で、球形に近い三次構造に折り畳まれてもよい。ポリペプチド鎖は、大きいタンパク質分子やサブユニットに対して、空間的にはっきり区別される相対的に独立したドメインとも呼ばれる領域性構造が2つまたは複数会合することによって三次構造になり得ることが多い。
【0056】
本発明において、「第1結合ドメイン」および「第2結合ドメイン」に記載の「第1」、「第2」という用語は、ただ記述上で区別されているに過ぎない。
【0057】
本発明において、「CD47タンパク質」という用語は、通常、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する複数回膜貫通型の受容体であるインテグリン関連タンパク質(IAP)を指す。例えば、CD47タンパク質は、膜インテグリン(membrane integrins)に結合してよく、その配位子のトロンボスポンジンタンパク質-1(thrombospondin-1, TSP-1)やシグナル調節タンパク質α(signal-regulatory protein alpha, SIRPα)に結合してよい。CD47タンパク質は、細胞膜表面に幅広く発現する。本発明において、上記のCD47タンパク質は、ヒトCD47の任意の変異体、アイソフォームおよび種ホモログを含む。ヒトCD47タンパク質のアミノ酸配列は、GenBankにCEJ95640.1として挙げられる。上記のCD47タンパク質は、細胞により自然に発現するか、またはCD47遺伝子によりトランスフェクトされた細胞上に発現する。
【0058】
本発明において、「SIRPα」という用語は、通常、CD47タンパク質の配位子でありうるSIRPファミリー由来の調節性膜糖タンパク質を指す。本発明において、上記のSIRPαは、ヒトSIRPαを含んでよい。例えば、SIRPα変異体1およびSIRPα変異体2を含んでよい。上記のSIRPα変異体2は、13個のアミノ酸が上記のSIRPα変異体1とは異なり、そのアミノ酸配列がGenBankにCAA71403.1として挙げられる。本発明において、「SIRPα変異体1」という用語は、通常、アミノ酸配列がNCBI RefSeq NP_542970.1として挙げられる(残基31-504が成熟型を構成する)SIRPαタンパク質を指し、この時、SIRPα変異体1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:50で表される。
【0059】
本発明において、「変異体」という用語は、通常、いかなる突然変異/改変を含んでいないタンパク質と配列相同性を持つタンパク質性分子を指し、少なくとも一部の生物学的活性タンパク質の治療および/または生物学的活性を保存する。例えば、変異体タンパク質は、比較生物学的活性タンパク質に比べて少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有することができる。いくつかの実施態様において、「変異体」は、積極的に改変される(例えば部位特異的変異導入、コード遺伝子の合成、挿入によるか、たまたま突然変異による)タンパク質を含んでよい。
【0060】
「抗体」という用語は、通常、基本的に免疫グロブリン遺伝子や免疫グロブリン遺伝子断片によってコードされるポリペプチドを1つまたは複数含むタンパク質を指す。例えば、免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εとμ定常領域遺伝子、および無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含んでよい。例えば、軽鎖は、κやλに区分され、それぞれIgκとIgλといった免疫グロブリンタイプを定義することができる。重鎖は、γ、μ、α、δやεに区分され、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEといった免疫グロブリンタイプを順次に定義することができる。例えば、抗体は、それぞれが1対ごとに1本の「軽」鎖(約25 kD)と1本の「重鎖」(約50-70 kD)を有する2対の同一ポリペプチド鎖より構成される四量体を含む構造ユニットを有してよく、各メンバーのN末端が、約100~110個またはより多くのアミノ酸の可変領域を規定することによって、主に抗原認識を担う。例えば、「軽鎖可変領域(VL)」および「重鎖可変領域(VH)」という用語は、通常、それぞれ軽鎖および重鎖の可変領域を指す。抗体は、完全免疫グロブリンとして存在するか、または、各種のペプチダーゼによる消化や新規発現によって多くの十分な特徴づけの断片として存在してよい。
【0061】
本発明において、「抗原結合断片」という用語は、通常、基本的に抗体の結合した同一抗原(例えば、CD38)に結合する能力を保持しており抗原への特異的結合を完全長抗体と競合可能な完全長抗体の1つまたは複数の部分を指す。通常、Fundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W., ed., 第2版、Raven Press, N.Y. (1989)を参照して、その内容全体が引用により本願に取り込まれる。抗原結合断片は、組換えDNA技術、または完全抗体の酵素作用または化学開裂により産生されることができる。いくつかの場合において、抗原結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、(Fab)2、Fd、Fv、dAbや相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ(diabody)およびこのようなポリペプチドを含み、ポリペプチド特異性抗原の結合能を十分に与える抗体の少なくとも一部を含む。当該技術分野における当業者に周知の従来技術(例えば、組換えDNA技術、酵素作用または化学開裂法)を用いて、所定の抗体から、抗体の抗原結合断片を得ると共に、完全抗体と同一の態様で抗体の抗原結合断片を特異的にスクリーニングすることができる。例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中ジスルフィド結合以下の抗体を消化し、F(ab')2を製造することができる。
【0062】
本発明において、「Fab」という用語は、通常、VL、VH、CLとCH1ドメインからなる抗体断片を指す。
【0063】
本発明において、「Fab'」という用語は、通常、Fab断片に比べて、CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの余分な残基を含む抗体断片を指す。例えば、Fab'は、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含んでよい。
【0064】
本発明において、「F(ab)2」という用語は、通常、システインにより連結されるペアになっているFab断片から得られる抗原結合断片を指す。
【0065】
本発明において、「dAb断片」という用語は、通常、VHドメインからなる抗体断片(Wardら, Nature 341:544-546 (1989))を指す。
【0066】
本発明において、「相補性決定領域CDR」という用語は、通常、軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)の3つの高頻度可変領域(HVR)を指し、該部位が、空間構造上、抗原決定基とと共に厳密な相補を形成しているため、高頻度可変領域が相補的決定領域とも呼ばれる。
【0067】
本発明において、「Fv断片」という用語は、通常、抗体の単一アームのVLとVHドメインからなる抗体断片を指す。
【0068】
本発明において、「scFv」という用語は、通常、抗体重鎖可変領域と軽鎖可変領域が短ペプチドリンカー(linker)により連結されている分子を意味し、一本鎖抗体とも呼ばれる。
【0069】
本発明において、「モノクローナル抗体」という用語は、通常、微量存在するかもしれない起こりうる天然突然変異を除いて同一である各抗体より構成される基本的に相同抗体である1群の抗体を指す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位に直接に対応する。なお、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含んでいる従来のポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対応する。「モノクローナル」という修飾語は、いかなる特定の方法による抗体の生産を必要とすることを意味するためのものではない。例えば、上記モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法で調製されるか、又は、組換えDNA法で細菌、真核動物や植物細胞中で産生されることができるし、例えば、ファージ抗体ライブラリーから、Clackson etal. , Nature, 352:624-628(1991)およびMarks et al., Mol.Biol.、222:581-597(1991)に記載の技術を使用して得られてもよい。
【0070】
本発明において、「キメラ抗体」という用語は、通常、各重鎖又は軽鎖アミノ酸配列の一部が、特定の種由来の抗体中で対応するアミノ酸配列と相同か、あるいは特定のクラスに属する一方で、その鎖の残りの部分が他の種由来の対応する配列と相同である抗体を意味する。例えば、軽鎖および重鎖は、可変領域がともに1つの動物種(例えば、マウス、ラット等)の抗体の可変領域に由来し、定常部分が別の種(例えばヒト)に由来する抗体の配列と相同である。例えば、キメラ抗体を得るために、非ヒトB細胞又はハイブリドーマ細胞により、可変領域を産生することができ、また、組み合わせた定常領域がヒト由来である。上記可変領域は、調製容易なメリットを有しており、その特異性は、組み合わせた定常領域由来による影響がない。同時に、キメラ抗体は、定常領域がヒト由来でありうるため、注射の場合、キメラ抗体は、定常領域が非ヒト由来である抗体よりも、免疫応答を引き起こす可能性が低い。
【0071】
本発明において、「ヒト化抗体」という用語は、通常、非ヒト生物種(例えばマウスまたはラット)由来の抗体、免疫グロブリン結合タンパク質およびポリペプチドのヒトへの免疫原性を低下させると同時に、オリジナル抗体の抗原結合特性を保持する改変抗体を指す。例えば、遺伝子工学技術を利用してヒト化抗体を調製することができ、CDR移植(Jones et al., Nature 321:522 (1986))およびその変異体と、「再構成」(reshaping)、(Verhoeyen, et al., 1988 Science 239:1534-1536; Riechmann, et al., 1988 Nature 332:323-337; Tempest, et al., Bio/Technol 1991 9:266-271)、「超キメラ化」(hyperchimerization)、(Queen, et al., 1989 Proc Natl Acad Sci USA 86:10029-10033; Co, et al., 1991 Proc Natl Acad Sci USA 88:2869-2873; Co, et al., 1992 J Immunol 148:1149-1154)および「ベニヤリング」(veneering)、(Mark, et al., “Derivation of therapeutically active humanized and veneered anti-CD18 antibodies.”In: Metcalf B W, Dalton B J, eds. Cellular adhesion: molecular definition to therapeutic potential. New York: Plenum Press, 1994: 291-312)からなる技術とを使用し、非ヒト由来の結合ドメインをヒト化することができる。その他の領域、例えばヒンジ領域および定常領域ドメインも非ヒト由来であれば、それらの領域をヒト化することもできる。
【0072】
本発明において、「完全ヒト化抗体」という用語は、通常、遺伝子工学的な改変された抗体遺伝子欠失動物にヒト抗体をコード化する遺伝子を発現することにより得られる抗体を指す。例えば、ヒト抗体遺伝子は、遺伝子組み換えまたは染色体転移技術、ヒト抗体をコード化する遺伝子を全部遺伝子工学的な改変された抗体遺伝子欠失動物に導入し、動物にヒト抗体を発現させる。
【0073】
本発明において、「配列相同性」という用語は、通常、2つまたは複数のポリヌクレオチド配列の間、あるいは2つまたは複数のポリペプチド配列の間の配列類似性や交換可能性を指す。プログラム(例えばEmboss NeedleまたはBestFit)によって2つの異なるアミノ酸配列の間の配列同一性、類似性または相同性を特定する場合に、同一性、類似性または相同性のスコアを最適化するために、デフォルト設定を用いてよく、或いは、適切なスコアマトリックス(例えば、blosum45またはblosum80)を選択してよい。いくつかの実施形態において、相同のポリヌクレオチドとは、厳しい条件でハイブリダイズを起こした配列であって、かつ、それらの配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、ひいては100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドのことである。同等の長さを持つ配列が最適に整列された場合に、相同のポリペプチドは少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0074】
本発明において、「CD38」、「CD38タンパク質」および「CD38抗原」という用語は、本発明において置換可能に使用され、また、細胞によって自然に発現するか、またはCD38遺伝子によってトランスフェクトされた細胞上に発現するヒトCD38のいかなる変異体、アイソフォームおよび種ホモログを含む。CD38の当該技術分野における公知の同義語は、ADPリボシルシクラーゼ1、cADPr加水分解酵素1、Cd38-rs1、環状ADP-リボースヒドロラーゼ1、I-19およびNIM-R5抗原を含む。CD38は、骨髄腫細胞表面に高度に発現することができる。
【0075】
本発明において、「AXL」、「AXLタンパク質」および「AXL抗原」という用語は、本発明において置換可能に使用され、通常、共通の配位子Gas6を含有可能なチロシンキナーゼファミリーに属するタンパク質である。本発明において、AXLは、高発現が腫瘍の形成と大きく関連するため、癌細胞悪化のマーカーとされてよい。本発明において、上記のAXLは、アミノ酸配列がGenBankにAAH32229として挙げられるヒトAXLであってよい。
【0076】
本発明において、「Trop2」という用語は、通常、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサ2(tumor-associated calcium signal transducer 2)を指し、TACSTD2、EGP-1、GA733-1またはGP50などとも呼ばれる。Trop2は、細胞において細胞膜に位置合わせることができ、その陽性染色による着色部が主に細胞膜にあり得る。Trop2は、正常組織において、発現量が低いが、腫瘍細胞において過剰発現するため、腫瘍治療のターゲットとされてよい。本発明において、上記のTrop2は、アミノ酸配列がGenBankにNP_002344として挙げられるヒトTrop2であってよい。
【0077】
一般的には、ポリペプチド鎖において、アミノ基が、1つの鎖になるように、ポリペプチド鎖中のもう1個のカルボキシ基に連結することができるが、タンパク質の2個の末端において、それぞれ遊離アミノ基を保有するポリペプチド鎖末端とカルボキシを保有するポリペプチド鎖末端であってそれぞれペプチド結合になっていないアミノ酸残基が残している。本発明において、「N末端」という用語は、通常、アミノ酸残基が遊離アミノ基を保有するポリペプチド鎖の末端を指す。本発明において、「C末端」という用語は、通常、アミノ酸残基が遊離カルボキシを保有するポリペプチド鎖の末端を指す。
【0078】
本発明において、「核酸分子」という用語は、通常、その天然環境から単離され、または人工合成された任意長さの単離形態であるヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、あるいはリボヌクレオチドまたはそのアナログを指す。
【0079】
本発明において、「免疫複合体」という用語は、通常、1つまたは複数の異種分子(細胞毒素を含むが限定されない)が複合しており免疫機能を持つポリペプチド分子を指す。本発明において、「複合」、「連結」、「融合」は、本発明において置換可能に使用され、かつ、通常、例えば化学複合や組換えを含む手段によって、2つまたはより多くの化学元素、配列または成分を連結することを指す。上記の異種分子は、細胞毒素、化学療法薬などであってよい。例えば、本発明に記載の融合タンパク質を1つまたは複数の異種分子(例えば、細胞毒素)に複合することにより、上記の免疫複合体を得ることができる。
【0080】
本発明において、「ベクター」という用語は、あるタンパク質をコード化するポリヌクレオチドが挿入され、タンパク質発現を得る核酸ビヒクルを指す。ベクターは、宿主細胞を転換、伝達またはトランスフェクトすることによって、ベクターが保有する遺伝物質要素を宿主細胞内で発現させることができる。例として、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)のような人工染色体、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)、λファージまたはM13ファージなどのようなファージ、および動物ウイルスなどを含む。ベクターとして用いられる動物ウイルスの種類は、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(SV40など)が挙げられる。ベクターは、1種類として、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素及びレポーター遺伝子を含んで、発現を制御する様々な要素を含み得る。加えて、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。ベクターは、ビリオン、リポソームまたはタンパク膜のような細胞への進出を支援する成分をさらに含みうるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明において、「腫瘍」という用語は、通常、哺乳類動物中の生体(例えば、細胞またはその組成)において、各種の発癌因子作用下で、局所の組織細胞の増殖により形成される新生物を指す。本発明において、腫瘍は、固形腫瘍と非固形腫瘍を含んでよい。固形腫瘍は、神経膠腫、胚細胞腫瘍、肉腫、中皮腫、胎盤腫、脳癌、骨癌、皮膚がん、鼻咽頭癌、肺癌、口腔がん、食道がん、胃癌、肝臓がん、膵臓癌、前立腺がん、腸癌、乳がん、子宮頚部癌、卵巣癌および精巣癌を含み得る。本発明において、非固形腫瘍は、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫を含み得る。
【0082】
本発明において、「リンパ腫」という用語は、通常、リンパ系の悪性腫瘍を指す。リンパ腫の発生は、リンパ節細胞やリンパ細胞増殖の制御不能によるものであり、そして、異常な能力を持ち、体全体のその他の組織に浸潤する癌細胞を産生する。患者の兆候や症状は、リンパ節腫大、発熱、寝汗、羸痩または掻痒を含み得り、また、疲労感を持続的に感じる。リンパ腫は、主にホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つである様々なサブタイプがある。本発明において、「ホジキンリンパ腫」(Hodgkin's lymphoma、HL)という用語は、通常、リンパ細胞株白血球によるリンパ腫である。ホジキンリンパ腫の症例は、Epstein-Barrウイルスによるものがほぼ半分である。本発明において、「非ホジキンリンパ腫」(Non-Hodgkin lymphoma、NHL)という用語は、通常、ホジキンリンパ腫以外のその他のリンパ腫を指す。
【0083】
本発明において、「白血病」という用語は、通常、造血系における悪性増殖性疾患であり、通常、白血病細胞の大量の増殖蓄積による疾患を指す。クローン性白血病細胞は、無制限増殖、細胞分化障害、アポトーシス阻害等のメカニズムで骨髄およびその他の造血組織に大量増殖蓄積し、そして、その他の非造血組織および器官に浸潤すると共に、正常な造血機能を阻害する。臨床では、程度の異なる貧血、出血、感染による発熱、及び肝、脾臓、リンパ節腫大並びに骨痛が見られるようになる。
【0084】
本発明において、「多発性骨髄腫」という用語は、通常、形質細胞の不正常な増殖により骨髄が侵された悪性腫瘍を意味する。多発性骨髄腫により骨髄中に癌細胞が集まることによって、健康な血液細胞が排除されてしまう。癌細胞は、正常な抗体ではなく、合併症を起こす異常タンパク質を産生する。多発性骨髄腫の発症率は、高齢者の中で高くなっていく。その化学療法計画による細胞増殖速度が低く、薬剤耐性が強いため、その化学療法効果が制限されている。90%以上の多発性骨髄腫患者は、化学療法の薬剤耐性を持っている。
【0085】
本発明において、「Raji細胞」という用語は、通常、Epstein-Barrウイルス株を産生する連続ヒト細胞株である。ウイルスによって、臍帯血リンパ細胞を形質転換すると共に、Raji細胞の早期抗原を誘導する。Raji細胞は、トランスフェクト宿主として広く用いられ、また、造血細胞およびその他の細胞の悪性腫瘍の検討に用いられている。なお、Raji細胞は、ある補体成分の幾つかの受容体及び免疫グロブリンGのFc受容体を含有および発現しているから、免疫複合体の検出にも用いられている。
【0086】
本発明において、「自己免疫疾患」という用語は、通常、自体抗原に対して生体による免疫反応で自体組織を損傷することによって引き起こす疾患を指す。自己免疫疾患は、大きく分けて、臓器特異的自己免疫疾患と全身性自己免疫疾患に分類されている。臓器特異的自己免疫疾患は、組織臓器の病的な病変や機能不全が抗体あるいは感作リンパ球が対象とするある臓器に限り、慢性リンパ球性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、インスリン依存型糖尿病、重症筋無力症、慢性潰瘍性結腸炎、慢性萎縮性胃炎合併悪性貧血、グッドパスチャー症候群(goodpasture syndrome)、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変症、多発性脳脊髄硬化症および急性特発性多発神経炎を含み得る。全身性自己免疫疾患は、抗原抗体複合体が血管壁などに広範囲に沈着することによる全身的多臓器障害であってよく、免疫損傷による血管壁や間質のセルロース様壊死性炎症、およびその後発生する多臓器の膠原繊維増殖によるものであってよく、また、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症および結節性多発動脈炎を含み得る。
【0087】
本発明において、「ADCC」という用語は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity, ADCC)であり、通常、殺傷活性を持つ細胞がその表面上に発現されるFc受容体(FcR)によって、標的抗原を被覆するFcドメインを認識することを指す。上記ADCCによって、免疫系のエフェクター細胞が、その膜表面抗原が特異性抗体によって結合された標的細胞を積極的に溶解させる。
【0088】
本発明において、「含む」という用語は、通常、明確に特定された特徴を意味するが、他の要素を除外するものではない。
【0089】
本発明において、「約」という用語は、通常、指定された数から0.5%~10%以上または以下の範囲、例えば指定された数から0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%以上または以下の範囲に変動するものを指す。
【0090】
融合タンパク質
一方、本発明は、第1結合ドメインと第2結合ドメインを含み得る融合タンパク質を提供する。上記の第1結合ドメインは、腫瘍関連抗原に特異的に結合し、上記の第2結合ドメインは、CD47タンパク質に特異的に結合し、SEQ ID NO:50で表される配列に比べて、33位~149位における1つまたは複数(例えば、1~2つ、1~3つ、1~4つ、1~5つ、1~6つ、1~7つ、1~8つ、1~9つ、1~10つまたはより多く)の位置にアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含むヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含む。本発明に記載の融合タンパク質は、腫瘍関連抗原とCD47タンパク質に同時に特異的に結合することによって、腫瘍および/あるいは自己免疫疾患の治療に機能する。
【0091】
本発明において、「第1結合ドメイン」という用語は、通常、腫瘍関連抗原に特異的に結合することができるドメインを指す。「第2結合ドメイン」という用語は、通常、CD47タンパク質に特異的に結合することができるドメインを指す。
【0092】
本発明において、上記の腫瘍関連抗原は、非固形腫瘍および/または固形腫瘍に関連する腫瘍関連抗原を含み得る。例えば、上記の腫瘍関連抗原は、CD38、AXLおよびTrop2からなる群から選ばれる。
【0093】
CD47に特異的に結合する第2結合ドメイン
本発明において、上記の突然変異体(例えば、CD47タンパク質に特異的に結合するヒトSIRPα変異体1の突然変異体)は、R22、I29、I61、V63、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、D96、K98、N100、R107、G109およびV132からなる群から選ばれる1つまたは複数(例えば、1~2つ、1~3つ、1~4つ、1~5つ、1~6つ、1~7つ、1~8つ、1~9つ、1~10つまたはより多く)のアミノ酸残基にアミノ酸置換を含む。
【0094】
本発明において、上記のアミノ酸置換におけるアミノ酸残基の位置は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列を基準として特定される残基番号である。
【0095】
本発明において、「アミノ酸置換Xn」は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列中でn位に相当する残基Xにアミノ酸置換が起こり、ここで、nが正整数であり、Xが任意のアミノ酸残基の略語である。例えば、「アミノ酸置換I61」は、SEQ ID NO:50で表されるアミノ酸配列中で61位に相当する残基Iにアミノ酸置換が起こることを意味する。
【0096】
本発明において、上記のアミノ酸置換は、非保存的置換であってよい。上記の非保存的置換は、非保存的に標的タンパク質またはポリペプチドにおけるアミノ酸残基を変え、例えば、ある種類の側鎖大きさまたはある種類の特性(例えば、親水性)を有するアミノ酸残基を異なる側鎖大きさまたは異なる特性(例えば、疎水性)を有するアミノ酸残基に変えることを含んでよい。
【0097】
本発明において、上記のアミノ酸置換は、保存的置換であってもよい。上記の保存的置換は、保存的に標的タンパク質またはポリペプチドにおけるアミノ酸残基を変え、例えば、ある種類の側鎖大きさまたはある種類の特性(例えば、親水性)を有するアミノ酸残基を同一または同様の側鎖大きさまたは同一または同様の特性(例えば、同じく親水性)を有するアミノ酸残基に変えることを含んでよい。このような保存的置換は、通常、産生されたタンパク質の構造または機能に大きく影響することがない。本発明において、上記の融合タンパク質やその断片のアミノ酸配列変異体は、タンパク質構造またはその機能(例えば、CD47とCD47タンパク質に特異的に結合するヒトSIRPα変異体1の突然変異体を遮断する)を明らかに変化させない保存的アミノ酸置換を含んでよい。
【0098】
例として、下記の各群において、1群ごとの各アミノ酸間の相互置換が本発明中で保存的置換と見られ、非極性側鎖を含むアミノ酸群:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニン。非帯電した極性側鎖を含むアミノ酸群:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミン。負帯電した極性側鎖を含むアミノ酸群:アスパラギン酸およびグルタミン酸。正帯電した塩基性アミノ酸:リシン、アルギニンおよびヒスタジン。フェニル基を持つアミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン。
【0099】
本発明において、上記の突然変異体は、(1)I61、V63、E77、E84、V93、L96、K98、N100およびV132、(2)I61、E77、Q82、K83およびE84、(3)I61、V63、K83、E84およびV132、(4)I61、E77、E84、R107およびV132、(5)I61、V63、E77、K83、E84およびN100、(6)I61、E77、Q82、K83、E84およびR107、(7)I61、E77、Q82、E84、V93、L96、N100、R107、G109およびV132、(8)I61、E77、Q82、K83、E84およびV132、(9)I61、(10)I61、D95、L96、G109およびV132、(11)I61、D95、L96、K98、G109およびV132、(12)I61、E77、E84、V93、R107およびV132、(13)E77、L96、N100、G109およびV132、(14)I61、V63、Q82、E84、D95、L96、N100およびV132、(15)I61、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、L96、K98、N100およびV132、(16)I61、E77、Q82、K83、E84およびV93、(17)I61、V63、E77、K83、E84、D95、L96、K98およびN100、(18)I61、V63、E77、K83、D95、L96、K98、N100およびG109、(19)I61、E77、Q82、E84、V93、D95、L96、K98およびN100、ならびに、(20)I61、V63、E77、Q82およびE84からなる群から選ばれるアミノ酸残基にアミノ酸置換を有してよい。
【0100】
本発明において、上記の突然変異体は、R22C、I29L、I61L/V/F、V63I、E77I/N/Q/K/H/M/R/N/V/L、Q82S/R/G/N、K83R、E84K/H/D/R/G、V93L/A、D95H/R/E、D96S/T、K98R、N100G/K/D/E、R107N/S、G109R/HおよびV132L/R/I/Sからなる群から選ばれる1つまたは複数(例えば、1~2つ、1~3つ、1~4つ、1~5つ、1~6つ、1~7つ、1~8つ、1~9つ、1~10つまたはより多く)のアミノ酸置換を有してよい。
【0101】
本発明において、アミノ酸置換「XnY/Z」は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列中でn位に相当する残基Xがアミノ酸残基Yまたはアミノ酸残基Zに置換され、ここで、nが正整数であり、X、YおよびZがそれぞれ独立的に任意のアミノ酸残基の略語であり、かつ、XがYまたはZと異なることを指す。例えば、アミノ酸置換「I61L/V/F」は、SEQ ID NO:50で表されるアミノ酸配列中で61位に相当する残基Iがアミノ酸残基L、VまたはFに置換されることを指す。
【0102】
本発明において、上記の突然変異体は、(1)I61L、V63I、E77I、E84K、V93L、L96S、K98R、N100GおよびV132L、(2)I61V、E77N、Q82S、K83RおよびE84H、(3)I61F、V63I、K83R、E84KおよびV132I、(4)I61L、E77Q、E84D、R107NおよびV132I、(5)I61L、V63I、E77K、K83R、E84DおよびN100G、(6)I61V、E77H、Q82R、K83R、E84HおよびR107S、(7)I61L、E77I、Q82G、E84R、V93L、L96T、N100G、R107S、G109RおよびV132R、(8)I61L、E77M、Q82G、K83R、E84DおよびV132L、(9)I61L、(10)I61F、D95H、L96S、G109HおよびV132S、(11)I61F、D95H、L96S、K98R、G109HおよびV132S、(12)I61L、E77Q、E84D、V93A、R107NおよびV132I、(13)E77K、L96S、N100K、G109HおよびV132L、(14)I61L、V63I、Q82G、E84G、D95R、L96S、N100DおよびV132I、(15)I61L、E77R、Q82N、K83R、E84G、V93L、D95E、L96T、K98R、N100DおよびV132L、(16)I61V、E77N、Q82S、K83R、E84HおよびV93A、(17)I61V、V63I、E77V、K83R、E84D、D95E、L96T、K98RおよびN100E、(18)I61L、V63I、E77V、K83R、D95E、L96S、K98R、N100DおよびG109R、(19)I61V、E77L、Q82G、E84G、V93L、D95E、L96T、K98RおよびN100G、ならびに、(20)I61L、V63I、E77N、Q82GおよびE84Gからなる群から選ばれるアミノ酸置換を有してよい。
【0103】
本発明において、ヒトSIRPα変異体1(例えば、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列であるヒトSIRPαのアミノ酸配列中で33~149位の残基)に基づいて、それぞれ以上の(1)~(20)のアミノ酸置換群を有するSIRPα変異体1の突然変異体が、順次にM1、M5、M12、M35、M37、M41、M57、M67、M81、M82、M84、M91、M99、M102、M111、M122、M126、M130、M135およびM145と命名される。上記のSIRPα変異体1の突然変異体は、順次に例えばSEQ ID NO:51-SEQ ID NO:70で表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記のSIRPα変異体1の突然変異体は、M91であり、例えばSEQ ID NO:62で表されるアミノ酸配列を有する。
【0105】
腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1結合ドメイン
本発明において、上記の第1結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含み得る。例えば、上記の抗体は、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体と完全ヒト化抗体からなる群から選ばれる。例えば、上記の抗原結合断片は、Fab、Fab'、(Fab')2、F(ab)2、dAb、散在している相補性決定領域CDR、FvおよびscFvからなる群から選ばれる。
【0106】
本発明において、上記の抗体またはその抗原結合断片の上記の変異体は、上記の抗体または上記のその抗原結合断片における1つまたは複数(例えば、1~2つ、1~3つ、1~4つ、1~5つ、1~6つ、1~7つ、1~8つ、1~9つ、1~10つまたはより多く)のアミノ酸が置換、欠失または付加されたタンパク質またはポリペプチドであってよい。または、上記の抗体またはその抗原結合断片の上記の変異体は、上記の抗体または上記のその抗原結合断片と少なくとも90%(例えば、例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%)の配列相同性を持つタンパク質またはポリペプチドであってよい。
【0107】
CD38に特異的に結合する第1結合ドメイン
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体は、CD38タンパク質に特異的に結合することによって、腫瘍細胞の殺傷および/または腫瘍成長の抑制を行える。例えば、上記の腫瘍は、CD38陽性の腫瘍を含み得る。例えば、上記のCD38陽性の腫瘍は、骨髄腫、リンパ腫および白血病からなる群から選ばれる。又、例えば、上記の腫瘍は、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫からなる群から選ばれる。上記の腫瘍の細胞は、Raji細胞、Daudi細胞、Ramos細胞およびRPMI8226細胞からなる群から選ばれる。本発明において、上記の抗体、その抗原結合断片または変異体は、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫細胞の殺傷または多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫成長の抑制を行える。
【0108】
本発明に記載のCD38タンパク質は、ヒトCD38タンパク質またはその機能的断片であってよい。例えば、上記のCD38タンパク質は、マウスCD38タンパク質ではなくてよく、または、ラットCD38タンパク質ではなくてよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、基本的にマウスCD38タンパク質またはラットCD38タンパク質に結合しない。
【0109】
本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、リファレンス抗体と競合して上記のCD38タンパク質に結合する。上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む。例えば、上記のリファレンス抗体の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3であるLCDR1-3を含み得る。上記のリファレンス抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6であるHCDR1-3を含み得る。
【0110】
例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:7、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:8であってよい。又、例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖がSEQ ID NO:11、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:20からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有し、かつ、重鎖がSEQ ID NO:13、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19およびSEQ ID NO:21からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有してよい。例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖がSEQ ID NO:11で表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖がSEQ ID NO:13で表されるアミノ酸配列を有してよい。例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖がSEQ ID NO:16で表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖がSEQ ID NO:17で表されるアミノ酸配列を有してよい。例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖がSEQ ID NO:18で表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖がSEQ ID NO:19で表されるアミノ酸配列を有してよい。例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖がSEQ ID NO:20で表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖がSEQ ID NO:21で表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0111】
本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、抗体軽鎖またはその断片を含んでよい。例えば、上記の抗体軽鎖またはその断片は、Igκ定常領域、例えばヒトIgκ定常領域を含んでよい。
【0112】
例えば、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:1のようなアミノ酸配列を有するLCDR1を含んでよい。上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:2のようなアミノ酸配列を有するLCDR2を含んでよい。上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:3のようなアミノ酸配列を有するLCDR3を含んでよい。
【0113】
本発明に記載の抗体の軽鎖またはその断片は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:7でありうる軽鎖可変領域VLを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:20からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有してよい。
【0114】
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、抗体重鎖またはその断片を含んでよい。例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、さらに、ヒト定常領域を含む。ここで、上記のヒト定常領域は、ヒトIgG定常領域を含んでよい。ここで、上記のIgG定常領域は、ヒトIgG1定常領域またはIgG4を含んでよい。
【0115】
例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:4のようなアミノ酸配列を有するHCDR1を含んでよい。上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:5のようなアミノ酸配列を有するHCDR2を含んでよい。又、例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:6のようなアミノ酸配列を有するHCDR3を含んでよい。
【0116】
上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:8のようなアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖は、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19およびSEQ ID NO:21からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有してよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片では、LCDR1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:1、LCDR2のアミノ酸配列がSEQ ID NO:2、LCDR3のアミノ酸配列がSEQ ID NO:3を有してよく、かつ、HCDR1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:4、または、HCDR2のアミノ酸配列がSEQ ID NO:5、HCDR3のアミノ酸配列がSEQ ID NO:6を有してよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体SG003またはそれと同一のLCDR1-3およびHCDR1-3を含有する抗体を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖が、アミノ酸配列がSEQ ID NO:7を有する軽鎖可変領域を含んでよく、かつ、重鎖が、アミノ酸配列がSEQ ID NO:8を有する重鎖可変領域を含んでよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体SG003またはそれと同一の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗体を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖アミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表される軽鎖と重鎖アミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表される重鎖を含んでよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体SG003またはそれと同一の軽鎖および重鎖アミノ酸配列を含んでよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体は、SG003であってよい。抗体SG003は、LCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3で表され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:7で表され、HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6で表され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:8で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表され、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表される。
【0119】
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体は、さらに、SG003の軽鎖および/または重鎖のアミノ酸配列に1つまたは複数のランダム突然変異(例えば、1つまたは複数、例えば1つまたはいくつかのアミノ酸置換)を有してよい。例えば、上記の抗体、その抗原結合断片または変異体は、SG003の軽鎖可変領域のフレームワーク領域L-FR1-4の1つまたは複数の部位に、1つまたは複数のランダム突然変異(例えば、1つまたは複数、例えば1つまたはいくつかのアミノ酸置換)を有し、および/または、SG003の重鎖可変領域のフレームワーク領域H-FR1-4の1つまたは複数の部位に、1つまたは複数のランダム突然変異(例えば、1つまたは複数、例えば1つまたはいくつかのアミノ酸置換)を有してよい。例えば、ランダム突然変異を起こした場合に、上記の抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体は、軽鎖が、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:20からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有し、および/または、重鎖が、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19およびSEQ ID NO:21からなる群から選ばれるアミノ酸配列のうちのいずれか1つを有してよい。ランダム突然変異を起こした場合のCD38抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体であっても、ヒトCD38タンパク質に特異的に結合する能力を持つ。
【0120】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:11を有し、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:13を有し、または、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:16を有し、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:17を有し、または、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18を有し、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:19を有し、または、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:20を有し、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:21を有する。
【0121】
AXLに特異的に結合する第1結合ドメイン
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体は、AXLに特異的に結合することによって腫瘍細胞の殺傷および/または腫瘍成長の抑制を行える。例えば、上記のAXLは、ヒトAXLであってよい。
【0122】
本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、リファレンス抗体と競合して上記のAXLタンパク質に結合することができる。上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含んでよい。例えば、上記のリファレンス抗体の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24であるLCDR1-3を含んでよい。上記のリファレンス抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27であるHCDR1-3を含んでよい。
【0123】
例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:28、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:29であってよい。又、例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:32、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:34であってよい。
【0124】
本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、抗体軽鎖またはその断片を含んでよい。例えば、上記の抗体軽鎖またはその断片は、Igκ定常領域、例えば、ヒトIgκ定常領域を含んでよい。
【0125】
例えば、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:22のようなアミノ酸配列を有するLCDR1を含んでよい。上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:23のようなアミノ酸配列を有するLCDR2を含んでよい。上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:24のようなアミノ酸配列を有するLCDR3を含んでよい。
【0126】
本発明に記載の抗体の軽鎖またはその断片は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:28でありうる軽鎖可変領域VLを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片のアミノ酸配列はSEQ ID NO:32であってよい。
【0127】
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、抗体重鎖またはその断片を含んでよい。例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、さらに、ヒト定常領域を含む。ここで、上記のヒト定常領域は、ヒトIgG定常領域を含んでよい。ここで、上記のIgG定常領域は、ヒトIgG1定常領域またはIgG4を含んでよい。
【0128】
例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:25のようなアミノ酸配列を有するHCDR1を含んでよい。上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:26のようなアミノ酸配列を有するHCDR2を含んでよい。又、例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:27のようなアミノ酸配列を有するHCDR3を含んでよい。
【0129】
上記の抗体重鎖またはその断片は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:29でありうる重鎖可変領域VHを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:34であってよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、LCDR1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:22またはその変異体、LCDR2のアミノ酸配列がSEQ ID NO:23またはその変異体、LCDR3のアミノ酸配列がSEQ ID NO:24またはその変異体を含み得、かつ、HCDR1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:25またはその変異体、HCDR2のアミノ酸配列がSEQ ID NO:26またはその変異体、HCDR3のアミノ酸配列がSEQ ID NO:27またはその変異体を含み得る。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体C6G12またはそれと同一のLCDR1-3およびHCDR1-3を含有する抗体を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖が、アミノ酸配列がSEQ ID NO:28またはその変異体を有する軽鎖可変領域を含んでよく、かつ、重鎖が、アミノ酸配列がSEQ ID NO:29またはその変異体を有する重鎖可変領域を含んでよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体C6G12またはそれと同一の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する抗体を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖アミノ酸配列がSEQ ID NO:32で表される軽鎖と重鎖アミノ酸配列がSEQ ID NO:34で表される重鎖を含んでよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体C6G12またはそれと同一の軽鎖および重鎖アミノ酸配列を含んでよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体は、C6G12であってよい。抗体C6G12は、LCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24で表され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:28で表され、HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27で表され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:29で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:32で表され、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:34で表される。
【0132】
Trop2に特異的に結合する第1結合ドメイン
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体は、Trop2に特異的に結合することによって腫瘍細胞の殺傷および/または腫瘍成長の抑制を行える。例えば、上記のTrop2は、ヒトTrop2であってよい。
【0133】
本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、リファレンス抗体と競合して上記のTrop2タンパク質に結合することができる。上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含んでよい。例えば、上記のリファレンス抗体の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37およびSEQ ID NO:38であるLCDR1-3を含んでよい。上記のリファレンス抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40およびSEQ ID NO:41であるHCDR1-3を含んでよい。
【0134】
例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:42、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:43であってよい。又、例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:46、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:48であってよい。例えば、上記のリファレンス抗体は、軽鎖がSEQ ID NO:46で表されるアミノ酸配列を有し、重鎖がSEQ ID NO:48で表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0135】
本発明に記載の抗体、その抗原結合断片または変異体は、抗体軽鎖またはその断片を含んでよい。例えば、上記の抗体軽鎖またはその断片は、Igκ定常領域、例えば、ヒトIgκ定常領域を含んでよい。
【0136】
例えば、上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:36のようなアミノ酸配列を有するLCDR1を含んでよい。上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:37のようなアミノ酸配列を有するLCDR2を含んでよい。上記の抗体軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:38のようなアミノ酸配列を有するLCDR3を含んでよい。
【0137】
本発明に記載の抗体の軽鎖またはその断片は、SEQ ID NO:42のようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の抗体軽鎖またはその断片のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:46であってよい。
【0138】
本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、抗体重鎖またはその断片を含んでよい。例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、さらに、ヒト定常領域を含んでよい。ここで、上記のヒト定常領域は、ヒトIgG定常領域を含んでよい。ここで、上記のIgG定常領域は、ヒトIgG1定常領域またはIgG4を含んでよい。
【0139】
例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:39のようなアミノ酸配列を有するHCDR1を含んでよい。上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:40のようなアミノ酸配列を有するHCDR2を含んでよい。又、例えば、上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:41のようなアミノ酸配列を有するHCDR3を含んでよい。
【0140】
上記の抗体重鎖またはその断片は、SEQ ID NO:43のようなアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の抗体重鎖またはその断片のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:48であってよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、LCDR1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:36またはその変異体、LCDR2のアミノ酸配列がSEQ ID NO:37またはその変異体、LCDR3のアミノ酸配列がSEQ ID NO:38またはその変異体を含み得、かつ、HCDR1のアミノ酸配列がSEQ ID NO:39またはその変異体、HCDR2のアミノ酸配列がSEQ ID NO:40またはその変異体、HCDR3のアミノ酸配列がSEQ ID NO:41またはその変異体を含み得る。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体SG701またはそれと同一のLCDR1-3およびHCDR1-3を含有する抗体を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖が、アミノ酸配列がSEQ ID NO:42またはその変異体を含む軽鎖可変領域を含んでよく、かつ、重鎖が、アミノ酸配列がSEQ ID NO:43またはその変異体を含む重鎖可変領域を含んでよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体SG701またはそれと同一の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する抗体を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖アミノ酸配列がSEQ ID NO:46で表される軽鎖と重鎖アミノ酸配列がSEQ ID NO:48で表される重鎖を含んでよい。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、抗体SG701またはそれと同一の軽鎖および重鎖アミノ酸配列を含んでよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の抗体は、SG701であってよい。抗体SG701は、LCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37およびSEQ ID NO:38で表され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:42で表され、 HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40およびSEQ ID NO:41で表され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:43で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:46で表され、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:48で表される。
【0143】
第1結合ドメインと第2結合ドメインの連結
本発明において、上記の第1結合ドメインは、上記の第2結合ドメインのN末端に位置してよい。例えば、上記の第1結合ドメインのC末端は、リンカーによって上記の第2結合ドメインのN末端に間接に連結してよい。いくつかの場合において、上記の第1結合ドメインのC末端は、第2結合ドメインのN末端に直接に(例えば、フレームワーク内)連結してもよい。
【0144】
本発明において、上記の融合タンパク質は、さらに、上記の第1結合ドメインのC末端かつ上記の第2結合ドメインのN末端にあるリンカーを含んでよい。例えば、上記の融合タンパク質において、第1結合ドメインのC末端は、リンカーのN末端に連結し、リンカーのC末端は、第2結合ドメインのN末端に連結してよい。例えば、上記の融合タンパク質において、N末端からC末端にかけて、順次に第1結合ドメインと、リンカーと、第2結合ドメインとを含み得る。
【0145】
本発明において、上記のリンカーは、SEQ ID NO:73-74のいずれかで表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0146】
いくつかの場合において、上記の融合タンパク質は、少なくとも2つ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10つ、またはより多く)の上記の第2結合ドメインを持ってよい。本発明において、各上記の第2結合ドメインは、それぞれ上記の第1結合ドメインのC末端に位置してよい。本発明において、上記の2つ以上の第2結合ドメインは、それぞれ上記の第1結合ドメインのC末端に直接または間接に連結してよい。
【0147】
本発明において、上記の融合タンパク質は、CD38抗原に特異的に結合する第1結合ドメイン、およびCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを含んでよく、ここで、上記の第1結合ドメインがCD38抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含んでよく、第2結合ドメインがヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含んでよく、CD38抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体のC末端がヒトSIRPα変異体1の突然変異体のN末端に直接または間接に連結してよい。例えば、上記の第2結合ドメインは、少なくとも、N末端がそれぞれCD38抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体のC末端に連結しているヒトSIRPα変異体1の突然変異体を2つ含んでよい。
【0148】
例えば、図1に示されるように、上記の融合タンパク質(SG3847L1)は、第1結合ドメインがSG003を有し、第2結合ドメインが2つのSIRPα変異体1の突然変異体M91を有してよく、用いられるリンカー1の配列がSEQ ID NO:73で表され、2つのM91のN末端がそれぞれリンカー1を介してSG003の2本の重鎖のC末端に連結しており、上記の融合タンパク質に、M91がSG003重鎖のC末端に連結することによって、第2ポリペプチド鎖を得て、SG003の軽鎖が第1ポリペプチド鎖と呼ばれる。SG3847L1の上記の第2ポリペプチド鎖と上記の第1ポリペプチド鎖のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:75とSEQ ID NO:11で表される。
【0149】
例えば、図1に示されるように、上記の融合タンパク質(SG3847L2)は、第1結合ドメインがSG003を有し、第2結合ドメインが2つのSIRPα変異体1の突然変異体M91を有してよく、用いられるリンカー2の配列がSEQ ID NO:74で表され、2つのM91のN末端がそれぞれリンカー2を介してSG003の2本の重鎖のC末端に連結しており、上記の融合タンパク質に、M91がSG003重鎖のC末端に連結することによって、第2ポリペプチド鎖を得て、SG003の軽鎖が第1ポリペプチド鎖と呼ばれる。SG3847L2の上記の第2ポリペプチド鎖と上記の第1ポリペプチド鎖のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:76とSEQ ID NO:11で表される。
【0150】
本発明において、上記の融合タンパク質は、Trop2抗原に特異的に結合する第1結合ドメイン、およびCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを含んでよく、ここで、上記の第1結合ドメインがTrop2抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含んでよく、第2結合ドメインがヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含んでよく、Trop2抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体のC末端がヒトSIRPα変異体1の突然変異体のN末端に直接または間接に連結してよい。本発明において、上記の第2結合ドメインは、少なくとも、N末端がそれぞれAXL抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体のC末端に連結しているヒトSIRPα変異体1の突然変異体を2つ含んでよい。
【0151】
例えば、図1に示されるように、上記の融合タンパク質(SGTrop247)は、第1結合ドメインが抗体SG701を有し、第2結合ドメインが2つのSIRPα変異体1の突然変異体M91を有してよく、用いられるリンカーの配列がSEQ ID NO:74で表され、2つのM91のN末端がそれぞれリンカーを介してSG701の2本の重鎖のC末端に連結しており、上記の融合タンパク質に、M91がSG701重鎖のC末端に連結することによって、第2ポリペプチド鎖を得て、SG701の軽鎖が第1ポリペプチド鎖と呼ばれる。SGTrop247の上記の第2ポリペプチド鎖と上記の第1ポリペプチド鎖のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:78とSEQ ID NO:46で表される。
【0152】
本発明において、上記の融合タンパク質は、AXL抗原に特異的に結合する第1結合ドメイン、およびCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを含んでよく、ここで、上記の第1結合ドメインがAXL抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含んでよく、第2結合ドメインがヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含んでよく、AXL抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体のC末端がヒトSIRPα変異体1の突然変異体のN末端に直接または間接に連結してよい。本発明において、上記の第2結合ドメインは、少なくとも、N末端がそれぞれAXL抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体のC末端に連結しているヒトSIRPα変異体1の突然変異体を2つ含んでよい。
【0153】
例えば、図1に示されるように、上記の融合タンパク質(SGAXL47)は、第1結合ドメインが抗体C6G12を有し、第2結合ドメインが2つのSIRPα変異体1の突然変異体M91を有してよく、用いられるリンカーの配列がSEQ ID NO:74で表され、2つのM91のN末端がそれぞれリンカーを介してC6G12の2本の重鎖のC末端に連結しており、上記の融合タンパク質に、M91がC6G12重鎖のC末端に連結することによって、第2ポリペプチド鎖を得て、C6G12の軽鎖が第1ポリペプチド鎖と呼ばれる。SGAXL47の上記の第2ポリペプチド鎖と上記の第1ポリペプチド鎖のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:77とSEQ ID NO:32で表される。
【0154】
核酸分子、ベクターおよび細胞、および調製方法
他方、本発明は、上記の融合タンパク質または上記の免疫複合体をコード化する1つまたは複数の単離された核酸分子を提供する。例えば、上記の1種または複数種の核酸分子における各核酸分子が、完全な上記の抗体またはその抗原結合断片をコード化することができるし、その一部(例えば、HCDR1-3、LCDR1-3、VL、VH、軽鎖あるいは重鎖のうちの1種または複数種)をコード化することもできる。
【0155】
本発明に記載の核酸分子は、単離されたものであって良い。例えば、それは、(i)インビトロでの増幅、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅と、(ii)クローン組換えと、(iii)精製、例えば、酵素消化およびゲル電気泳動分画と、或いは、(iv)合成、例えば、化学合成とによって産生または合成されてよい。ある実施形態において、上記単離された核酸は、組換えDNAの技術で調製される核酸分子である。
【0156】
組換えDNAおよび分子クローン技術は、Sambrook, J., Fritsch, E. F.およびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, (1989)(Maniatis)、T. J. Silhavy, M. L. BennanとL. W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1984)およびAusubel, F. M.らによるCurrent Protocols in Molecular Biology, pub. by Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience(1987)に記述の技術を含む。つまり、上記の核酸は、ゲノムDNA断片、cDNAおよびRNAから調製可能であり、細胞から直接に抽出されるか、または、各種の増幅方法(PCRおよびRT-PCRを含むが限定されない)を用いて組換えにより産生されることができる。
【0157】
核酸の直接化学合成は、通常、3'キャップと5'キャップのヌクレオチド単量体を、順次に成長中のヌクレオチド重合体鎖の末端5'ヒドロキシ基に付加し、但し、各付加は、求核攻撃により付加された単量体の3'位における成長鎖の末端5'ヒドロキシ基によって実現され、上記の単量体は、通常、りん酸トリエステル、ホスホロアミダイトなどのようなリン誘導体である。例えば、Matteuciら、Tet. Lett. 521:719 (1980)、Caruthersらに属する米国特許第4,500,707号、およびSouthernらに属する米国特許第5,436,327号と第5,700,637号を参照し、また、本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。上記のベクターは、いかなる線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどであってよい。ウイルスベクターは、非限定的な例として、レトロウイルス、アデノウイルスやアデノ随伴ウイルスを含み得る。いくつかの実施態様において、上記のベクターは、例えば、ファージディスプレイベクターなどの発現ベクターである。
【0158】
他方、本発明は、上記の核酸分子を含む1つまたは複数のベクターを提供する。例えば、上記のベクターは、本発明に記載の1種または複数種の核酸分子を含んでよい。各種のベクターには、1種または複数種の上記の核酸分子を含んでよい。なお、上記ベクターは、さらに、コード領域が適切な宿主中で正しく発現することが許容される発現調節因子を含んで良い。このような調節因子は、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子の転写やmRNAの翻訳を調節するその他の調節因子などを含めて、当該技術分野における当業者の周知のものである。ある実施形態において、上記発現調節配列が調節可能なものである。上記発現調節配列の具体な構造は、生物種や細胞種の機能により変化するが、通常、例えばTATAボックス、キャッピング配列、およびCAAT配列などそれぞれ転写および翻訳の開始を関与する5’非転写配列並びに5’および3’非翻訳配列を含む。例えば、5’非転写発現調節配列は、機能的に連結された核酸を転写制御するためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を含んで良い。上記の発現控制配列は、エンハンサー配列や上流アクチベーター配列も含み得る。本発明において、適当なプロモーターは、例えばSP6、T3およびT7ポリメラーゼに用いられるプロモーター、ヒトU6RNAプロモーター、CMVプロモーターおよびその人工雑種プロモーター(例えば、CMV)を含んでよく、ここで、プロモーターのある部分が、他の細胞タンパク質(例えば、ヒトGAPDH、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子プロモーターのある部分に融合することができ、また、別のイントロンを含んでも、含まなくてもよい。本発明に記載の1種または複数種の核酸分子は、上記の発現調節因子に操作可能に連結することができる。
【0159】
上記のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、または、例えば遺伝子工学に一般的に用いられるその他のベクターを含んで良い。いくつかの実施形態において、上記のベクターは、発現ベクターであってよい。
【0160】
上記のベクターは、さらに、発現後にベクターを保有している宿主細胞を選択するか、他の手段で同定するための1つまたは複数の表現型形質を与える1つまたは複数の選択可能標識遺伝子を含んでよい。真核細胞に用いられる適切な選択可能標識は、非限定的な例として、ジヒドロ葉酸レダクターゼとネオマイシン耐性を含む。
【0161】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、または上記のベクターを含む細胞を提供する。上記の細胞は、宿主細胞であってよい。例えば、上記の細胞は、例えば、大腸菌または枯草菌などの原核細胞、酵母細胞またはコウジカビなどの真菌細胞、S2キイロショウジョウバエ細胞またはSf9などの昆虫細胞、または、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK 293細胞もしくはヒト細胞の動物細胞などのいろんな細胞種を含み得る。
【0162】
例えば、複数種の作成された技術により、上記のベクターを宿主細胞に安定または一過性に導入する。例えば、カルシウム沈殿によりベクターを導入する塩化カルシウム処理に係る方法である。同様の方法で他の塩、例えばリン酸カルシウムを用いてよい。なお、電気穿孔(すなわち、細胞の核酸に対する透過性を高めるように電流を印加する)を用いてよい。転換方法は、他の例として、顕微注入、DEAEデキストラン媒介転換および酢酸リチウムの存在下でのヒートショックを含む。脂質複合体、リポソームやデンドリマーは、宿主細胞のトランスフェクトにも用いられる。
【0163】
異種配列を宿主細胞に導入する場合に、複数種の方法でベクターが導入された宿主細胞を同定する。一つの方法としては、単一細菌コロニーを形成するように単一細胞を継代培養し、そして、必要なタンパク質産物の発現を測定する例示的選択方法である。もう一つの方法としては、ベクターに含まれる選択可能標識遺伝子の発現により与えられる表現型形質によって異種配列を有する宿主細胞を選択するものである。
【0164】
例えば、本発明の各種の異種配列を宿主細胞に導入する場合に、PCR、SouthernブロッティングまたはNorthernブロッティングハイブリダイゼーションなどの方法で確認することができる。例えば、得られる宿主細胞から核酸を調製し、また、標的配列に対して特異的であるプライマーを用いて、PCR増幅で標的配列を特定することができる。増幅生成物のアガロースゲルゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動を行い、そして、臭化エチジウム、SYBR Green溶液などによる染色、またはUV検出によってDNAを検出する。または、ハイブリダイゼーション反応で標的配列に対して特異的な核酸プローブを利用することができる。遺伝子配列の発現は、PCR、Northernブロッティングとハイブリダイゼーションをさせるか、コード化される遺伝子産物と反応する抗体の免疫測定の逆転写を用いて対応するmRNAを検出することによって特定される。例示的免疫測定は、ELISA、放射免疫測定法やサンドイッチ免疫測定法を含むが限定されない。
【0165】
なお、本発明の各種の異種配列を宿主細胞に導入する場合に、異種配列でコード化される酵素(例えば、酵素マーカー)の酵素作用の活性によって確認することができる。酵素は、当該技術分野における周知の複数種の方法で測定される。通常、酵素活性は、産物の形成、または、検討中の酵素作用反応の基質の転換によって特定される。上記の反応は、インビトロまたはインビボで実施される。
【0166】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質を発現可能な条件で上記の細胞を培養することを含む上記の融合タンパク質の調製方法を提供する。例えば、当該技術分野における一般的な当業者にとって、適当な培地、適当な温度と培養時間などを利用するなど、これらの方法が公知である。
【0167】
いくつかの場合において、上記の方法は、さらに、上記の融合タンパク質を分離および/または精製する工程を含んでよい。例えば、プロテインG-アガロースゲルまたはプロテインA-アガロースゲルによって親和性クロマトグラフィーを行うことができるし、さらに、ゲル電気泳動および/または高速液体クロマトグラフィーなどで本発明に記載の融合タンパク質を精製および分離することができる。
【0168】
免疫複合体、組成物および使用
他方、本発明は、上記の融合タンパク質を含む免疫複合体を提供する。例えば、上記の免疫複合体は、本発明に記載の融合タンパク質が細胞毒性薬、放射性毒性薬剤(例えば、放射性同位体)および/または免疫阻害剤(例えば、免疫応答を抑制することなどによって細胞を殺傷するいかなる薬剤)などを含むが限定されない1種または複数種の治療薬と複合する融合タンパク質-薬物複合体(ADC)であってよい。いくつかの実施形態において、上記の治療薬は、腫瘍関連疾患または病症を治療可能な治療薬であってよい。
【0169】
上記の複合は、ペプチドリンカー(例えば、切断可能なリンカー)、または他の態様で行い、また、上記のリンカーは、例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ敏感リンカー、光不安定リンカーなどであってよい。
【0170】
他方、本発明は、上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、または上記の核酸分子、および任意選択で薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物を提供する。
【0171】
例えば、上記の薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水ポリマー、アミノ酸、糖、キレート剤、対イオン、金属複合体および/又は非イオン界面活性剤などを含んでよい。
【0172】
本発明において、当該技術分野における従来技術手段に従って、上記の組成物を薬学的に許容可能なベクターまたは希釈剤、その他の周知のいかなる補助剤および賦形剤と調製し、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第十九版、Gennaro編集、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995に公開の技術に基づき操作してよい。
【0173】
本発明において、上記の組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位におけるin situ投与、吸入、直腸投与、膣内投与、経皮投与又は皮下貯蔵部による投与のために調製されることができる。
【0174】
例えば、上記の組成物は、腫瘍成長の抑制に用いられる。例えば、本発明の組成物は、疾患の発展または進行を抑制または遅延したり、腫瘍の大きさを低減したり(ひいては、基本的に腫瘍を消去)、疾患状態を緩和および/または安定させることができる。
【0175】
例えば、本発明に記載の組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸薬、粉末剤、徐放性製剤、溶液剤、懸濁剤などの経口投与に適する態様であってよく、または、例えば、無菌液、懸濁剤やエマルションなどの腸管外注射、あるいは軟膏やクリームなどの局所投与、もしくは坐剤の経肛門投与に用いられる。上記の組成物は、正確な用量の単回投与に適する単位用量態様であってよい。上記の組成物は、さらに、従来の医薬品のベクターまたは賦形剤を含み得る。なお、上記の組成物は、他の医薬品または薬剤、ベクター、アジュバントなどを含み得る。
【0176】
本発明に記載の組成物は、治療有効量の上記の融合タンパク質を含み得る。上記の治療有効量は、進行リスクがある被験者の病気(例えば腫瘍)及び/又はそのいかなる合併症を予防及び/又は治療(少なくとも一部治療)するための用量である。上記の用量の具体的量/濃度は、投与方法や患者の必要によるものであって、例えば患者の体積、粘度および/または体重などに基づき特定してよい。例えば、適切な用量は、約0.1mgまたは1mg/kg/日から約50mg/kg/日までであってよく、より高い場合もある。これらの特定される用量は、当該技術分野における当業者(例えば、医者または薬剤師)により、所定の患者、医薬剤および/または疾患の状況に基づき、便利に調整してよいことが理解されたい。
【0177】
本発明において、「治療」、「治癒」、「寛解」または「改善」という用語は、本発明に交換可能に使用され、かつ、有用または必要な結果(治療効果および/または予防効果を含むが限定されない)を得る方法を指す。本発明において、治療効果は、通常、治療される基礎症状の重症度を根絶または軽減することを指す。なお、被験者の改善(被験者が基礎症状からの苦痛を抱えるとしても)が見られるように、重症度を根絶、軽減するか、1種または複数種の基礎症状関連兆候の発生率を減少することにより、治療効果を達成する。予防効果について、特定疾患の進行リスクにいる被験者、またはレポーター疾患における1種または複数種の兆候がある被験者に、該疾患が診断されなくても組成物を投与してもよい。
【0178】
他方、本発明は、腫瘍あるいは自己免疫疾患を治療するための医薬品の調製における上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞の使用を提供する。
【0179】
他方、本発明に記載の融合タンパク質、免疫複合体、核酸分子、ベクター、組成物または細胞は、上記の腫瘍あるいは自己免疫疾患の治療に用いられる。
【0180】
他方、本発明は、被験者に本発明に記載の融合タンパク質、免疫複合体、核酸分子、ベクター、組成物または細胞を投与することを含む腫瘍あるいは自己免疫疾患の治療方法を提供する。
【0181】
他方、本発明は、(例えば、必要のある被験者、細胞または生物学的試料に)本発明に記載の融合タンパク質または組成物を投与することを含むCD47タンパク質とSIRPαの相互作用を遮断する方法を提供する。
【0182】
他方、本発明は、本発明に記載の融合タンパク質または組成物に上記の腫瘍または腫瘍細胞を接触させることを含む腫瘍または腫瘍細胞成長および/または増殖を抑制する方法を提供する。例えば、上記の接触は、インビトロであってよい。
【0183】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍は、非固形腫瘍と固形腫瘍を含み得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍は、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、胚細胞腫瘍、肉腫、中皮腫、胎盤腫、脳癌、骨癌、皮膚がん、鼻咽頭癌、肺癌、口腔がん、食道がん、胃癌、肝臓がん、膵臓癌、前立腺がん、腸癌、乳がん、子宮頚部癌、卵巣癌および精巣癌を含み得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、上記の自己免疫疾患は、慢性リンパ球性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、インスリン依存型糖尿病、重症筋無力症、慢性潰瘍性結腸炎、慢性萎縮性胃炎合併悪性貧血、グッドパスチャー症候群(goodpasture syndrome)、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変症、多発性脳脊髄硬化症、急性特発性多発神経炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症および結節性多発動脈炎を含み得る。
【0186】
他方、本発明は、腫瘍あるいは自己免疫疾患を治療することができる上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞を提供する。
【0187】
他方、本発明は、必要のある被験者に有効量の上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞を投与することを含むCD47タンパク質とSIRPαの相互作用を遮断することができる方法を提供する。
【0188】
本発明において、「被験者」という用語は、通常、ヒトまたは非ヒト動物を指し、猫、犬、馬、ブタ、牛、羊、ヤギ、ウサギ、マウス、ラットまたはサルを含むが限定されない。
【0189】
他方、本発明は、必要のある被験者に有効量の上記の融合タンパク質、上記の免疫複合体、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の組成物、または上記の細胞を投与することを含む腫瘍または腫瘍細胞成長および/または増殖を抑制することができる方法を提供する。
【0190】
以下の実施例は、どんな理論にもよらず、本発明の融合タンパク質、調製方法や使用などを釈明することに過ぎなく、本願発明の範囲を制限するものではない
【0191】
実施例
実施例1. 活性に対する異なるリンカーの選択による影響
1.1 異なるリンカーを用いて融合タンパク質を調製する
図1に示される融合タンパク質構造を参照して、抗CD38ヒト化抗体SG003、SIRPα変異体1の突然変異体M91(SEQ ID: NO 62)を例として、N末端からC末端にかけて異なるリンカーを選んで、順次にSG003、リンカーとN末端がそれぞれSG003の重鎖のC末端に連結した2つのM91に連結し、融合タンパク質の生物学的活性に対する異なるリンカーによる影響を検討した。
【0192】
抗体SG003は、LCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3で表され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:7で表され、VLをコード化するヌクレオチド配列がSEQ ID NO:9で表され、抗体SG003のHCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6で表され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:8で表され、VHをコード化するヌクレオチド配列がSEQ ID NO:10で表される。抗体SG003は、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表され、それをコード化するヌクレオチド配列がSEQ ID NO:12で表される。抗体SG003は、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表され、それをコード化するヌクレオチド配列がSEQ ID NO:14で表される。
【0193】
リンカー1(SEQ ID: NO 73)を選択して、作成された融合タンパク質がSG3847L1と命名され、該SG3847L1は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表されるSG003の軽鎖である第1ポリペプチド鎖と、リンカー1を介してM91に連結して得られアミノ酸配列がSEQ ID NO:75で表されるSG003の重鎖である第2ポリペプチド鎖より構成される。
【0194】
リンカー2(SEQ ID: NO 74)を選択して、作成された融合タンパク質がSG3847L2と命名され、該SG3847L2は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表されるSG003の軽鎖である第1ポリペプチド鎖と、リンカー2を介してM91に連結して得られアミノ酸配列がSEQ ID NO:76で表されるSG003の重鎖である第2ポリペプチド鎖より構成される。
【0195】
1.2それぞれ二重抗原との結合活性分析
(1)SG003を対照とし、融合タンパク質とCD38の結合活性に対してELISA評価を行った。
【0196】
標的抗原CD38-His(1μg/ml)でELISAストリップを被覆して4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、濃度の異なるSG003抗体、SG3847L1またはSG3847L2融合タンパク質を加えて、37℃で1時間反応させて、PBSTによる洗浄後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Goat Anti human IgG HRP、Thermo Fisher Scientific)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、各ウェルにそれぞれ100μl TMB(eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~2min静置し、そして、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、融合タンパク質と標的抗原CD38の結合能を分析した。
【0197】
図2に示されるように、SG3847L1、SG3847L2は、SG003抗体に比べて、結合力が標的抗原CD38と同様になり、SG3847L1、SG3847L2およびSG003のEC50値がそれぞれ0.175nM、0.149nMおよび0.133nMであった。
【0198】
(2)SS002M91を対照とし、融合タンパク質とCD47の結合活性に対してELISA評価を行った。
【0199】
M91とIgG1-FC(配列がSEQ ID NO:71で表される)を、アミノ酸配列がSEQ ID NO:72で表されるSS002M91に融合した。
【0200】
標的抗原CD47-His(1μg/ml)でELISAストリップを被覆して4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、濃度の異なるSS002M91、SG3847L1またはSG3847L2を加えて、37℃で1時間反応させて、PBSTによる洗浄後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Goat Anti human IgG HRP、Thermo Fisher Scientific)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、各ウェルにそれぞれ100μl TMB(eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~2min静置し、そして、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、融合タンパク質と標的抗原CD47の結合能を分析した。
【0201】
図3に示されるように、SG3847L1、SG3847L2は、SS002M91に比べて、結合力が標的抗原CD47と同様になり、SG3847L1、SG3847L2およびSS002M91のEC50値がそれぞれ0.114nM、0.091nMおよび0.072nMであった。
【0202】
(3)それぞれSG003とSS002M91を対照とし、融合タンパク質のそれぞれのCD38およびCD47抗原との結合活性を評価した。
【0203】
遺伝子工学的な改変によってヒトCD38またはヒトCD47を発現するCHO-S細胞株を用いて、細胞表面抗原に対する融合タンパク質の結合能を評価した。対数増殖期の細胞を採取して、細胞密度を5×106個細胞/mLになるように調整して、氷上で予冷した。2%FBS含有予冷生理食塩水でSG003、SS002M91、陰性対照抗体(IgG1)、SG3847L1またはSG3847L2を異なる濃度に希釈した。
【0204】
100μlの細胞を取り、同体積の前述希釈された抗体または融合タンパク質を加え、4℃で光を避けて30min反応した。終わると、細胞を2回洗浄した。希釈された100μLのPE標識ヤギ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(PE-Goat anti-human IgG Fc Secondary Antibody、eBioscience)で、細胞を再懸濁させ、4℃で光を避けて30min反応した。反応完了後、細胞を2回洗浄した。400μlの1%ポリホルムアルデヒドで、細胞を再懸濁させた。フローサイトメーター(BD Calibur)によって融合タンパク質と細胞表面CD38またはCD47の結合能を分析した。
【0205】
図4Aと4Bに示されるように、“1”、“2、“3”、“4”、“5”、“6”、“7”、“8”および“9”は、それぞれ20μgml-1IgG1、20μgml-1SG003、20μgml-1SS002M91、20μgml-1SG3847L1、10μgml-1SG3847L1、5μgml-1SG3847L1、20μgml-1SG3847L2、10μgml-1SG3847L2および5μgml-1SG3847L2を指す。結果から、融合タンパク質SG3847L1とSG3847L2は、細胞表面に発現するCD38またはCD47抗原を特異的に認識することができることを示した。
【0206】
1.3 2個抗原との同時結合の活性分析
(1)図5の原理を参照して、抗CD38ヒト化抗体SG003を対照とし、両抗原CD38およびCD47に対する融合タンパク質SG3847L1およびSG3847L2による同時結合の生物学的活性に対してELISA分析を行った。
【0207】
標的抗原CD38-His(1μg/ml)でELISAストリップを被覆して4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、濃度の異なるSG003抗体、SG3847L1またはSG3847L2融合タンパク質を加えて、37℃で1時間反応させて、PBSTによる洗浄後、ビオチン標識CD47(Biotin-Fc-CD47)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP、Jiaxuan Biotech)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、各ウェルにそれぞれ100μl TMB(eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~2min静置し、そして、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、融合タンパク質と標的抗原CD38、CD47の同時結合能を分析した。
【0208】
図6に示されるように、融合タンパク質SG3847L1、SG3847L2は、SG003抗体に比べて、標的抗原CD38およびCD47に同時に結合することができ、SG3847L1およびSG3847L2のEC50値がそれぞれ0.020nMおよび0.024nMであった。
【0209】
(2)図7の原理を参照して、SG003およびSS002M91を対照とし、細胞表面両抗原CD38とCD47に対する融合タンパク質SG3847L1、SG3847L2による同時結合の生物学的活性を評価した。
【0210】
遺伝子工学的な改変によってヒトCD38を発現するCHO-S細胞株を用いて、細胞表面二重抗原に対する融合タンパク質による同時結合能を評価した。対数増殖期の細胞を採取して、細胞密度を5×106個細胞/mLになるように調整して、氷上で予冷した。2%FBS含有予冷生理食塩水でSG003抗体、SS002M91融合タンパク質、陰性対照抗体(IgG1)、SG3847L1またはSG3847L2を希釈した。100μlの細胞を取り、同体積の前述希釈された抗体または融合タンパク質、およびCD47-FITC(Jiaxuan Biotech)を加えて、4℃で光を避けて30min反応した。終わると、細胞を2回洗浄した。100μLの希釈されたPE標識ヤギ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(PE-Goat anti-human IgG Fc Secondary Antibody、eBioscience)すなわちFc-PEで、細胞を再懸濁させ、4℃で光を避けて30min反応した。反応完了後、細胞を2回洗浄した。400μlの1%ポリホルムアルデヒドで、細胞を再懸濁させた。フローサイトメーター(BD Calibur)で融合タンパク質の細胞表面CD38およびCD47との同時結合能を分析した。
【0211】
図8に示されるように、融合タンパク質SG3847L1、SG3847L2は、細胞表面のCD38およびCD47抗原を同時に認識することができ、かつ、SG3847L2は、二重抗原の同時認識能がより高かった。
【0212】
1.4 CD38陽性細胞殺傷のADCC活性分析
まず、実験に必要な標的細胞(Raji細胞)を、密度が2×105個細胞/mLになるように調整して、ADCC緩衝液(フェノールレッド無しのMEM培養液+1%FBS)に再懸濁させ、96ウェルプレート(50μL/ウェル)に入れた。そして、各ウェルに、濃度の異なるSG003、SG3847L1およびSG3847L2を100μL加えて均一に混合後、37℃、5%CO2のインキュベータに30min培養した。また、実験に必要なエフェクター細胞NK92MI-CD16a(華博生物)を、密度が1.2×106個細胞/mLになるように調整して、標的細胞:エフェクター細胞=1:6になるように、標的細胞付きのウェルに添加した。均一に混合後、37℃、5%CO2のインキュベータに6h培養してから、96ウェルプレートにおける原液を100μL/ウェルで排出し、LDH検出キット(CytotoxicityDetectionKit、Roche)におけるLDH反応混合物を100μL/ウェルで添加し、37℃で10min反応した。また、反応停止液を50μL/ウェルで入れて、軽く均一に混合した。マイクロプレートリーダーによって、492nmにおけるODを測定すると共に、650nmにおけるODをバックグラウンド値として測定した。実験中、同時に、対照1がADCC緩衝液、対照2が標的細胞+ADCC緩衝液、対照3が標的細胞+溶解バッファー+ADCC緩衝液、対照4が標的細胞+エフェクター細胞+ADCC緩衝液である対照群をセットした。特異性殺傷率%=((実験群-対照4)/(対照3-対照2))×100%になった。用量反応曲線は、GraphPad Prism Version 5でデータ分析を行った。
【0213】
図9に示されるように、Raji標的細胞およびNK92MI-CD16aエフェクター細胞により検出する場合に、融合タンパク質SG3847L1、SG3847L2は、よりよいADCC作用を示した。SG003、SG3847L1およびSG3847L2は、EC50値がそれぞれ0.067nM、0.014nMおよび0.013nMであった。
【0214】
1.5 CD47タンパク質とSIRPαの相互作用遮断の活性分析
SS002M91を対照とし、融合タンパク質SG3847L1、SG3847L2によるCD47タンパク質とSIRPαの相互作用遮断の生物学的活性を評価した。
【0215】
SIRPα-Hisでアッセイプレートを被覆して、1μg/ml、4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、10%のウシ胎児血清でそれぞれSS002M91、SG3847L1またはSG3847L2を勾配希釈しながら、試料にBiotin-Fc-CD47を最終濃度が2μg/mlになるまで入れて、37℃で30minプレインキュベートして、一次抗体とし、PBSTによるアッセイプレート洗浄後、一次抗体を加えて、37℃で1時間培養したら、PBSTによって5回洗浄して、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP、Jiaxuan Biotech)を加えて、37℃で30分間培養し、PBSTによって5回洗浄して、各ウェルにそれぞれ100μl TMB (eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~5min静置し、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、CD47/SIRPαに対するSS002M91、SG3847L1、SG3847L2による遮断作用を分析した。
【0216】
図10から、SG3847L1、SG3847L2は、SS002M91と同様に、CD47とその配位子SIRPαの結合を競合的に遮断することができることが分かった。SG3847L1のIC50値が46.8nM、SG3847L2のIC50値が78.8nM、SS002M91のIC50値が45.7nMであった。
【0217】
実施例2異なる標的抗体とヒトSIRPα変異体1の突然変異体組み合わせの採用
図1の融合タンパク質構造および実施例1の結果を参照して、抗AXL抗体(C6G12)と抗Trop2(SG701)抗体を例として、異なる標的抗体による融合タンパク質の生物学的活性への影響を検討し、用いられるリンカーがリンカー2であった。
【0218】
抗体C6G12は、LCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24で表され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:28で表され、 HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27で表され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:29で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:32で表され、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:34で表される。
【0219】
抗体SG701は、LCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39で表され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:42で表され、 HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40およびSEQ ID NO:41で表され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:43で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:46で表され、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:48で表される。
【0220】
抗AXL抗体(C6G12)、SIRPα変異体1の突然変異体M91とリンカー2(SEQ ID: NO 74)を用いて、N末端からC末端にかけて、順次にC6G12、リンカーおよびN末端がそれぞれC6G12の重鎖のC末端に連結した2つのM91に連結して、融合タンパク質を調製し、得られた融合タンパク質がSGAXL47と命名された。SGAXL47は、上記の第2ポリペプチド鎖と上記の第1ポリペプチド鎖のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:77およびSEQ ID NO:32で表される。
【0221】
抗Trop抗体(SG701)、SIRPα変異体1の突然変異体M91とリンカー2(SEQ ID: NO 74)を用いて、N末端からC末端にかけて、順次にSG701、リンカーおよびN末端がそれぞれSG701の重鎖のC末端に連結した2つのM91に連結して、融合タンパク質を調製し、得られた融合タンパク質がSGTrop247と命名された。SGTrop247は、上記の第2ポリペプチド鎖と上記の第1ポリペプチド鎖のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:78およびSEQ ID NO:46で表される。
【0222】
従来の分子生物学技術を利用して、SGAXL47およびSGTrop247の融合タンパク質の発現遺伝子で、真核発現ベクターを構築してCHO-S細胞にトランスフェクト後、上清を得て、Protein Aで親和精製することによって、標的タンパク質が得られ、その生物学的活性を合理に評価した。
【0223】
2.1二重抗原との結合活性分析
(1)異なる抗原に対するヒト化抗体を対照とし、対応する融合タンパク質と関連抗原の結合活性に対してELISA評価を行った。
【0224】
標的抗原でELISAストリップを被覆して4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、濃度の異なる抗体または融合タンパク質を加えて、37℃で1時間反応させて、PBSTによる洗浄後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Goat Anti human IgG HRP、Thermo Fisher Scientific)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、各ウェルにそれぞれ100μl TMB(eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~2min静置し、そして、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、融合タンパク質と関連標的抗原の結合能を分析した。
【0225】
図11Aに示されるように、SGAXL47は、AXL抗原への結合能がC6G12と近かった。図11Bに示されるように、SGTrop247は、Trop2抗原への結合能がSG701と近かった。これは、融合タンパク質における異なるターゲット抗体の採用が、該抗体とTrop2抗原の結合力に影響していないことを示した。
【0226】
(2)SS002M91を対照とし、融合タンパク質とCD47の結合活性に対してELISA評価を行った。
【0227】
標的抗原CD47でELISAストリップを被覆して4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、濃度の異なる融合タンパク質SS002M91または融合タンパク質を加えて、37℃で1時間反応させて、PBSTによる洗浄後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Goat Anti human IgG HRP、Thermo Fisher Scientific)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、各ウェルにそれぞれ100μl TMB(eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~2min静置し、そして、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、融合タンパク質とCD47の結合能を分析した。
【0228】
図12Aに示されるように、SGAXL47は、CD47抗原への結合能がSS002M91と近かった。図12Bに示されるように、SGTrop247は、CD47抗原への結合能がSS002M91と近かった。これは、融合タンパク質における異なるターゲット抗体の採用が、該抗体とそのCD47抗原の結合力に影響していないことを示した。
【0229】
2.2. 2個抗原との同時結合の活性分析
異なる抗原に対するヒト化抗体を対照とし、二重抗原に対する融合タンパク質による同時結合の生物学的活性に対してELISA分析を行った。
【0230】
標的抗原でELISAストリップを被覆して4℃で一晩し、PBSTによる洗浄後、10%のウシ胎児血清を添加して、37℃でブロッキングを1時間行い、濃度の異なる抗体または融合タンパク質を加えて、37℃で1時間反応させて、PBSTによる洗浄後、ビオチン標識CD47(Biotin-Fc-CD47)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP、Jiaxuan Biotech)を加えて、37℃で30分間反応させて、PBSTによる洗浄を5回行い、各ウェルにそれぞれ100μl TMB(eBioscience)を加えて、室温(20±5℃)で光のあたらない所に1~2min静置し、そして、各ウェルにそれぞれ100μl 2N H2SO4反応停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450 nmにおけるOD値を読み取り、融合タンパク質と関連抗原およびCD47の同時結合能を分析した。
【0231】
図13Aは、SGAXL47とC6G12がそれぞれAXLとCD47二重抗原に結合した様子を示し、図13Bは、SGTrop247とSS002M91がそれぞれTrop2とCD47二重抗原に結合した様子を示す。図13の結果から、融合タンパク質に異なる抗体で置換されたことは、二重抗原との同時結合に影響していないことを示した。
【0232】
実施例3 融合タンパク質のインビボ抗腫瘍活性
CB17 SCIDマウスに、尾静脈よりRaji-Luc細胞を接種し、融合タンパク質SG3847L1の抗腫瘍活性効果を評価するように、腫瘍モデルを作成した。
【0233】
5~8週齢の雌CB17 SCIDマウス(北京バイオサイトジェン社より購入)を選んで、試験を行った。Raji-Luc細胞は、北京バイオサイトジェン社がRaji細胞に基づいて、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を導入することにより得られた安定細胞株である。Raji-Luc細胞は、所望の数に蘇生培養された後、対数期増殖細胞を採取して濃度が2.5×107個/mLになるように懸濁させ、尾静脈経由で数を0.2mL/匹としCB17 SCID マウスに接種後0日目、7日目に、小さな動物用のイメージャで腫瘍成長様子および体重を観察し、そして、7日目に、腫瘍画像シグナルの適度な30匹マウスを選別して、6匹を1群として5つの群にランダムに組み分けた。そして、動物に、生理食塩水対照群、実験群(SG003、100ug/kg)、実験群(SS002M91、50ug/kg)、併用投与群(SG003+SS002M91、100ug/kg+50ug/kg)、実験群(SG3847L1、120ug/kg)を設置して1回投与し、マウス体重、腫瘍成長様子を観察した。
【0234】
結果から、SG003抗体、SS002M91融合タンパク質およびSG3847L1融合タンパク質は、ともに実験動物が耐えられるものであることを示した。各群の投与動物は、生理食塩水対照群に比べて、腫瘍成長阻害効果が著しい(図14を参照)ことを示し、また、図15から、投与後7日目に、SG003抗体治療群、SS002M91融合タンパク質治療群、SG003抗体とSS002M91融合タンパク質併用投与治療群およびSG3847L1融合タンパク質治療群は、平均蛍光強度がそれぞれ1.60E+07(標準誤差:1.02E+07)、2.42E+07(標準誤差:6.70E+06)、4.61E+06(標準誤差:7.57E+05)、5.97E+05(標準誤差:1.10E+05)であり、対照群の8.04E+08(標準誤差1.15E+08)の平均蛍光強度よりも有意に低かったことが分かった。同時に、SG3847L1融合タンパク質治療群は、腫瘍成長阻害効果がSG003抗体とSS002M91融合タンパク質併用投与群よりも顕著に優れたことが分かった。
【0235】
なお、図16から、そのうちの図における“G1 生理食塩水”、“G2 SG003”、“G3 SS002M91”、“G4 SG003+SS002M91”および“G5 SG3847L1”は、それぞれ“生理食塩水群”、“SG003抗体治療群”、“SS002M91融合タンパク質治療群”、“SG003とSS002M91併用療法群”および“SG3847L1融合タンパク質治療群”を示し、生存期間中央値は、生理食塩水群が11日、SG003抗体治療群およびSS002M91融合タンパク質治療群がそれぞれ22日および21日であり、これは、SG003およびSS002M91がマウス生存期を有意に延長させたことを示した。群分け後23日までに、SG003とSS002M91併用療法群およびSG3847L1融合タンパク質治療群は、いずれもマウス死亡が見られなかった。これは、SG003とSS002M91併用療法群およびSG3847L1単独治療群は、いずれもSG003とSS002M91の単独治療よりも、マウス生存期を延長させたことを示した。
【0236】
以上、解釈又は図示による説明を記載したが、添付の請求項範囲を限定するわけではない。これまで本明細書に記載の実施形態に、多様な変更などがあることが当業者に明らかであり、且つ、添付の請求項とその均等の実施形態の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2022513008000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1結合ドメイン、およびSEQ ID NO:50で表される配列に比べて、33位~149位における1つまたは複数の位置にアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含むヒトSIRPα変異体1の突然変異体を含むCD47タンパク質に特異的に結合する第2結合ドメインを持ち、
ここで、前記突然変異体は、R22、I29、I61、V63、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、D96、K98、N100、R107、G109およびV132からなる群から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、
融合タンパク質。
【請求項2】
前記突然変異体は、
(1)I61、V63、E77、E84、V93、L96、K98、N100およびV132、
(2)I61、E77、Q82、K83およびE84、
(3)I61、V63、K83、E84およびV132、
(4)I61、E77、E84、R107およびV132、
(5)I61、V63、E77、K83、E84およびN100、
(6)I61、E77、Q82、K83、E84およびR107、
(7)I61、E77、Q82、E84、V93、L96、N100、R107、G109およびV132、
(8)I61、E77、Q82、K83、E84およびV132、
(9)I61、
(10)I61、D95、L96、G109およびV132、
(11)I61、D95、L96、K98、G109およびV132、
(12)I61、E77、E84、V93、R107およびV132、
(13)E77、L96、N100、G109およびV132、
(14)I61、V63、Q82、E84、D95、L96、N100およびV132、
(15)I61、E77、Q82、K83、E84、V93、D95、L96、K98、N100およびV132、
(16)I61、E77、Q82、K83、E84およびV93、
(17)I61、V63、E77、K83、E84、D95、L96、K98およびN100、
(18)I61、V63、E77、K83、D95、L96、K98、N100およびG109、
(19)I61、E77、Q82、E84、V93、D95、L96、K98およびN100、ならびに、
(20)I61、V63、E77、Q82およびE84からなる群から選ばれるアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記突然変異体は、R22C、I29L、I61L/V/F、V63I、E77I/N/Q/K/H/M/R/N/V/L、Q82S/R/G/N、K83R、E84K/H/D/R/G、V93L/A、D95H/R/E、D96S/T、K98R、N100G/K/D/E、R107N/S、G109R/HおよびV132L/R/I/Sからなる群から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、
請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記突然変異体は、SEQ ID NO:51-70のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記腫瘍関連抗原は、CD38、AXLおよびTrop2からなる群から選ばれる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記第1結合ドメインは、CD38抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5およびSEQ ID NO: 6であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む、
請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 3であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む、
請求項7または8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記第1結合ドメインは、AXL抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26およびSEQ ID NO: 27であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む、
請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23およびSEQ ID NO:24であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む、
請求項10または11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記第1結合ドメインは、Trop2抗体またはその抗原結合断片もしくは変異体を含む、
請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40およびSEQ ID NO: 41であるHCDR1-3を含有する抗体重鎖またはその断片を含む、
請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記抗体は、アミノ酸配列が順次にSEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38であるLCDR1-3を含有する抗体軽鎖またはその断片を含む、
請求項13または14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記第1結合ドメインは、前記第2結合ドメインのN末端に位置する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記融合タンパク質は、さらに、前記第1結合ドメインのC末端かつ前記第2結合ドメインのN末端にあるリンカーを有する、
請求項1~16のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
少なくとも2つの前記第2結合ドメインを持ち、各前記第2結合ドメインは、それぞれ前記第1結合ドメインのC末端に位置する、
請求項1~17のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
第1ポリペプチド鎖と第2ポリペプチド鎖を持ち、ここで、
前記第1ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 11で示されるアミノ酸配列を有し、および、前記第2ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 75で示されるアミノ酸配列を有するか、
前記第1ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 11で示されるアミノ酸配列を有し、および、前記第2ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 76で示されるアミノ酸配列を有するか、
前記第1ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 46で示されるアミノ酸配列を有し、および、前記第2ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 78で示されるアミノ酸配列を有するか、または、
前記第1ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 32で示されるアミノ酸配列を有し、および、前記第2ポリペプチド鎖はSEQ ID NO: 77で示されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の融合タンパク質、おび薬学的に許容可能な賦形剤を含む、
組成物。
【請求項21】
腫瘍あるいは自己免疫疾患の治療において使用するための請求項1~19のいずれか1項に記載の融合タンパク質、または請求項20に記載の組成
【国際調査報告】