(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】アプタマーを有効成分として含む退行性脳疾患の治療及び予防用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/711 20060101AFI20220131BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220131BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220131BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K31/711 ZNA
A61K31/375
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P3/02 107
A61P39/06
A61P43/00 121
C12N15/115 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526288
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(85)【翻訳文提出日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2019013383
(87)【国際公開番号】W WO2020101181
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0140074
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0055758
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519110146
【氏名又は名称】ネクスモス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXMOS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Dongcheon-dong) #2207,767,Sinsu-ro Suji-gu,Yongin-si Gyeonggi-do 16827 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン インシク
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZB21
4C086ZC28
4C086ZC37
4C086ZC75
(57)【要約】
【要約】本発明は、ビタミンCと前記ビタミンCに結合するアプタマーとの複合体を有効成分として含む退行性脳疾患の治療及び予防用組成物に関し、本発明の組成物はパーキンソン病の実験モデルにおいて改善及び治療効果を示すので、これを含む退行性脳疾患を有した患者のための医薬品及び健康機能食品などに使用できる効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンCに結合するアプタマーを有効成分として含む、退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【請求項2】
前記組成物はビタミンCをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【請求項3】
前記アプタマーは、配列番号1に記載された塩基配列からなることを特徴とする、請求項1に記載の退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【請求項4】
前記ビタミンCとアプタマーとの混合比は、10:1~500:1の重量比の範囲であることを特徴とする、請求項2に記載の退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【請求項5】
前記組成物は神経細胞保護効果を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【請求項6】
前記退行性脳疾患は、脳卒中、中風、認知症、アルツハイマー疾患(Alzheimer’s disease)、パーキンソン疾患(Parkinson’s disease)、ハンチントン疾患(Huntington’s disease)、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)で構成された群から選択されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【請求項7】
前記退行性脳疾患はパーキンソン疾患であることを特徴とする、請求項6に記載の退行性脳疾患の治療及び予防用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンCに結合するアプタマーを有効成分として含む退行性脳疾患の治療及び予防用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
退行性脳疾患は、特定の神経細胞集団の漸進的な喪失及びタンパク質凝集体と関連して定義される老化に関係する疾病であって、臨床的に現れる主な症状及び侵される脳部位を考慮して、アルツハイマー病、パーキンソン病及び筋萎縮性側索硬化症などに区分される。これらの疾病の共通の特徴は、未だに根源的な治療が難しく、発病の原因も明確ではないが、神経細胞の機能障害又は死を招き得る酸化ストレスが疾病の病因に寄与するということである。脳は、特に酸化ストレスに脆弱である。脳は、多くの機能を維持するために高い金属イオン濃度を必要とする器官であって、酸化ストレスを処理できる能力が不足し、再生能力がほとんどないため、一度死滅した神経細胞を蘇らせることができない。
【0003】
したがって、酸化ストレスによる神経細胞の死滅による退行性脳疾患を防止する新たな治療剤の開発に対する必要性が益々増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2013-0139771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の必要性によって案出されたものであって、本発明の目的は、退行性脳疾患の治療及び予防効果を有する新規な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ビタミンCに結合するアプタマーを有効成分として含む退行性脳疾患の治療及び予防用組成物を提供する。
【0007】
本発明の一具現例において、前記組成物はビタミンCをさらに含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0008】
本発明の他の具現例において、前記アプタマーは、配列番号1に記載された塩基配列からなることが好ましいが、前記塩基配列に1つ以上の置換、欠損、転位及び付加などによって本発明の効果を達成できる全てのアプタマー配列も本発明の範囲に含まれる。
【0009】
本発明の更に他の具現例において、前記ビタミンCとアプタマーとの混合比は、10:1~500:1の重量比の範囲であることが好ましく、20:1~50:1の範囲であることがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0010】
本発明の一具現例において、前記組成物は神経細胞保護効果を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0011】
本発明において、前記退行性脳疾患は、脳卒中、中風、認知症、アルツハイマー疾患(Alzheimer’s disease)、パーキンソン疾患(Parkinson’s disease)、ハンチントン疾患(Huntington’s disease)、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)などが含まれ、脳疾患は、脳神経系の情報伝達に最も重要な脳神経細胞の死滅、脳神経細胞と脳神経細胞との間の情報を伝達するシナプスの形成や機能上の問題、脳神経の電気的活動性の異常な症状や減少による疾患を意味する。
【0012】
本発明の一実施例において、前記退行性脳疾患は、パーキンソン疾患(Parkinson’s disease)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0013】
本発明に係る薬学組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願に使用される「非経口」という用語は、皮下、血内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内及び頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はまた、直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。
【0014】
本発明の薬学組成物は、これらに限定されるものではないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液及び溶液を含め、経口的に許容されるいかなる用量型でも経口投与することができる。経口用錠剤の場合、よく使用される担体としては、ラクトース及びトウモロコシ澱粉が含まれる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤がまた典型的に添加される。カプセル型で経口投与する場合、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥されたトウモロコシ澱粉が含まれる。水性懸濁液が経口投与される際に、活性成分は乳化剤及び懸濁化剤と配合される。必要に応じて、甘味剤及び/又は風味剤及び/又は着色剤が添加されてもよい。
【0015】
本発明の薬学組成物は、使用された本発明の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定食、投与時間、投与経路、排出率、薬物の配合、及び予防又は治療される特定の疾患の重症度を含む様々な要因によって多様に変わり得る。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形剤形化され得る。
【0016】
本発明において、前記薬学組成物は、カルシウムチャネル遮断剤、抗酸化剤、グルタミン酸拮抗剤、抗凝固剤、抗高血圧剤、抗血栓剤、抗ヒスタミン剤、消炎鎮痛剤、抗癌剤及び抗生剤からなる群から選択された1つ以上の薬剤と共に製剤化するか、または併用して使用することができる。
【0017】
また、本発明は、退行性脳疾患の予防及び改善効果を有するアプタミンC又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する食品または食品添加剤に関する。
【0018】
本発明の機能性食品は、炎症予防のための薬剤、食品及び飲料などに多様に用いることができる。本発明の機能性食品は、例えば、各種食品類、キャンデー、チョコレート、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがあり、粉末、顆粒、錠剤、カプセルまたは飲料の形態で使用されてもよい。
【0019】
本発明の機能性食品に有効成分として含有されたアプタミンCは酸化的ストレス抑制活性に優れるので、食品に使用する場合に優れた効能を示すことは当業者に自明であろう。
【0020】
本発明に係る化合物を含む組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができ、これに含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0021】
本発明の化合物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。しかし、好ましい効果のために、化合物は、1日0.0001mg/kg~1g/kgで、好ましくは0.001mg/kg~0.1g/kgで投与することがよい。投与は、一日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。したがって、前記投与量は、いずれの面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
また、本発明は、アプタミンC又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、退行性脳疾患の予防及び改善用健康機能食品を提供する。
【0023】
本発明の化合物を含む健康機能食品は、退行性脳疾患の予防及び改善のための薬剤、食品及び飲料などに多様に用いることができる。本発明の化合物を添加可能な食品の形態は、キャンデー類の各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、または健康補助食品類である食品などを含む。
【0024】
本発明の化合物は、退行性脳疾患の予防及び改善を目的として食品又は飲料に添加することができる。このとき、食品又は飲料中の前記化合物の量は、一般に本発明の健康食品組成物は全体食品重量の0.01~15重量%で加えることができ、健康飲料組成物は100mlを基準として0.02~10g、好ましくは0.3~1gの割合で加えることができる。
【0025】
本発明の健康飲料組成物は、指示された割合で必須成分として前記本発明のアプタミンCを含有すること以外に、液体成分には特別な制限はなく、通常の飲料のように種々の香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など、ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど、及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア化合物(例えば、レバウディオサイドA、グリシルリジン)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100ml当たり、一般に約1~20g、好ましくは約5~12gである。
【0026】
前記以外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。
【0027】
その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立して又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合は、あまり重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり0~約20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0028】
本発明の組成物は、組成物の総重量に対して前記化合物を0.01~99%の重量で含む。しかし、前記のような組成は、必ずしもこれに限定されるものではなく、患者の状態、疾患の種類及び進行の程度に応じて変わり得る。
【0029】
本発明の化合物を含む組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明を通じて分かるように、本発明のビタミンCと、前記ビタミンCに結合するアプタマーとの複合体を有効成分として含む組成物が神経保護効果を示すので、退行性脳疾患の予防又は治療剤として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1-3】アスコルビン酸ベースのSELEXを図式的に示した図であって、
図1は、ビタミンCは、還元された形態であるL-アスコルビン酸(ascorbic acid)と酸化した形態であるL-デヒドロアスコルビン酸(dehydroascorbic acid;DHA)があるということを示し、
図2は、L-アスコルビン酸は、早くDHAに酸化して抗酸化能を失うことを示す。L-アスコルビン酸ベースのSELEXを介して、L-アスコルビン酸の酸化を防止するアプタマーであるアプタミンC3T31を見出したことを示し、
図3は、アスコルビン酸(Ascorbic acid)とアプタミンC3T31の結合を示す図であって、アスコルビン酸とアプタミンC3T31が結合した複合体をNXP031という。
【
図4-5】アスコルビン酸の酸化を阻害する蛍光ベースのマイクロプレートアッセイを示す図である。
図4は、DHAと結合して蛍光となる物質であるOPDAを用いた実験結果であって、アスコルビン酸に過酸化水素を処理してアスコルビン酸を酸化させる条件においてアプタミンC3T31を入れると、酸化が防止されることを示す。
図5は、アプタミンC3T31+アスコルビン酸、及びアスコルビン酸を同じ条件で8週間放置した後に、DCPIPを用いて、残っているアスコルビン酸の抗酸化能を比較した。アプタミンC3T31+アスコルビン酸は、8週後にも抗酸化能が50%程度に維持された。
【
図6-7】アスコルビン酸に結合する本発明のアプタマーのITC(Isothermal Titration Calorimetry)特性を示した図であって、
図6は、アスコルビン酸の各滴定から発生した熱を示す生データ(raw data)を示し、
図7は、その滴定剤(titrant)の希釈された熱に対する補正後、各滴定の統合的な熱を示す。本発明のアプタマーとアスコルビン酸との結合親和度は0.9μMである、
【
図8-14】MPTP-誘導されたPDマウスモデルに対するNXP031の神経保護効果を示した図であって、アダルトC57BL/6マウスを20mg/kg MPTPの腹腔内投与(4回、2時間間隔)の前に、NXP031(4mgアプタミンC3T31/kg及び200mgアスコルビン酸/kg体重)または食塩水を腹腔内注射した。
【
図8】全体的な実験過程を要約した図であって、アダルトC57BL/6マウスを20mg/kg MPTPを腹腔内投与(4回、2時間間隔)してドーパミン神経細胞の破壊を誘導した後に、NXP031(4mgアプタミンC3T31/kg及び200mgアスコルビン酸/kg体重)を腹腔内注射してNXP031の神経保護効果を確認し、Day4には行動学実験(Pole test、Rotarod test)を行い、Day5には犠牲(Sacrifice)にして、中脳ドーパミン神経細胞をステイニング(Staining)して分析した。
【
図9】グループ間の体重の有意な差を示さないことを示す図である。
【
図10-11】それぞれ、最終MPTPの投与3日後に行ったポール(Pole)テスト及びロータロッド(Rotarod)テストの結果を示した図であって、ポールテストの結果、ビタミンC、アプタミンC3T31をそれぞれ単独で処理した実験群よりも、NXP031で処理した実験群が、効果が優れ、MPTPを処理していないShamと有意な差がないほどに回復されたことが分かり、統計的有意性はマーカー(
*P<0.02 vs sham;
# P<0.05 vs Vehicle)で表した。ロータロッドの結果、ビタミンC、アプタミンC3T31をそれぞれ単独で処理した実験群よりも、NXP031で処理した実験群が、効果が優れることが分かり、統計的有意性はマーカー(
*P<0.02 vs sham;
# P<0.05vs Vehicle)で表した。
【
図12】線条体(striatum)及び黒質(substantia nigra)のドーパミン性ニューロンをanti-TH抗体で免疫組織化学染色を用いて確認した結果であって、TH陽性ニューロンの数を立体的分析で計数した。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均±S.E.M.として示し、統計的に有意な差はマーカー(
*P<0.02 vs Control;
#,§P<0.05 vs MPTP)で表した。
【
図13】線条体光学密度(Striatal optical density)の測定結果であって、NXP031でのみvehicleよりも有意に増加した。
【
図14】SNでTH陽性ドーパミン性ニューロンの数を示したもので、SNで総TH陽性細胞(Total TH-positive cell)をカウント(count)したとき、NXP031は、MPTPによるTH陽性細胞(positive cell)の破壊がほとんど保護されたことが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本図において、ビタミンC(ascorbic acid)に結合するアプタマーをアプタミンCと命名し、特に実施例に使用されたアプタミンCをアプタミンC3T31として表し、本発明のアプタミンC3T31とビタミンCの複合体をNXP031と命名した。
【0033】
以下、本発明を非限定的な実施例によりさらに詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本発明を例示するための意図で記載されたものであって、本発明の範囲は、以下の実施例によって制限されるものと解釈されない。
【0034】
実施例1:DNAアプタマーの選択及び配列分析
Ascorbic Acid SELEX:
アスコルビン酸(Ascorbic acid)に対する9ラウンドのSELEXを、~10
15の独特なオリゴヌクレオチドで構成されたDNAライブラリー(BasePair Biotechnologies)を使用して行った。使用されたバッファーの組成は、次の通りである:50mM酢酸ナトリウム(Sodium Acetate) pH5.5(Sigma)、1mM MgCl
2(Sigma)、0.05%Tween20(Sigma)、1%BSA(Sigma)及び1mMグルタチオン(Sigma)。SELEXのストリンジェンシーを、ターゲットに対するアプタマーの結合時間を減少させ、バッファーの組成を変更し、自由分子溶出においてターゲットの濃度を減少させて変更した。DHAに対するネガティブ選択を、豊富な(enriched)ライブラリーから酸化形態のアスコルビン酸に結合するアプタマーを除去するために行った(
図2)。
【0035】
SELEX方法によって生産された豊富なライブラリーのバイオ情報分析は、候補アプタマーを得、これらの上位20個から、酸化からAAを保護する能力をスクリーニングした。配列番号1のアプタマーが最も優れた効果を示した。
【0036】
実施例2:アスコルビン酸の酸化産物に対する蛍光分析
アスコルビン酸の酸化を、Visliselなど(Vislisel,J.M.,Schafer,F.Q. and Buettner,G.R.(2007) Analytical biochemistry,365,31-39)に記載された方法を変形して、酸化した産物デヒドロアスコルビン酸(dehydroascorbic acid;DHA)を検出して逆に測定した。
【0037】
要約すると、アプタマーを、25μM H
2O
2(Sigma)の添加前に常温で30分間、4X濃度でAA(10.3μM)で培養した。OPDA染料(dye)(Sigma)を添加する前に、酸化剤サンプルの添加後、常温で10分間培養した。染料(954.6μM)サンプルの添加直後、対照群が収斂されるまで60秒間隔で45分間SpectraMaxR plateリーダー(Molecular Devices)で励起345nm;放出:425nmの条件で読み取った。スクリーニングデータがAAの保護を示し、酸化産物(DHA)又は分析染料(OPDA)の干渉がないということを確認するために、蛍光分析をDHA(10.3μM)(Sigma)をAAの部位で培養された選択されたアプタマーで繰り返した。全ての分析を、50mM酢酸ナトリウム(Sigma)、1%BSA(Sigma)、0.05%Tween20(Sigma)、1mM MgCl
2(Sigma) pH5.5に補正して行った。全ての蛍光分析は、ブラック384-ウェルプレート(greiner bio-one)で行った。各サンプルを3回繰り返して行った(
図4)。
【0038】
実施例3:アプタマーによるビタミンCの貯蔵性の増大
本発明のアプタミンCを8週間常温で維持させ、DCPIP(2,6-Dichlorophenolindophenol)を使用してアスコルビン酸の還元力を測定した。
図5から分かるように、本発明のアプタミンCは、アスコルビン酸の酸化を抑制し、還元力を維持することで、アスコルビン酸単独で存在する対照群に比べて貯蔵寿命を4倍以上増加させた。
【0039】
実施例4:AAに対するアプタマーの滴定
最適のアプタマー(A)の有効濃度を決定するために、それをAA(10.3μM)に対して滴定した。AAに対するアプタマーの相対的な濃度は、10x、5x、2x、1x、0.5x、0.25x及び0.1xであった。全てのアプタマー/AA混合物を、10.3μM CuSO4の添加前に30分間常温で培養し、サンプルを954.6μM OPDAの添加前に10分間さらに常温で培養した。プレートをex:345nm;em:425nmで45分間読み取り、60s毎にデータを集めた。各サンプルを3回繰り返して行った。
【0040】
図7から分かるように、本発明のアプタマーとアスコルビン酸との間の結合親和度は0.9μMである。
【0041】
実施例5:MPP
+
-誘導された細胞毒性に対するアプタミンCとビタミンCの複合体の効果
SH-SY5Y細胞(ヒト神経芽細胞腫)を記載された濃度のMPP+(1-methyl-4-phenylpyridinium)で処理した後、細胞生存率を測定し、前記細胞をNXP031(本発明のアプタマーとビタミンCの複合体)で1時間前処理した後、5mM MPP+に24時間露出させた後、細胞生存率を測定した。前記細胞生存率はMTT分析により測定した。
【0042】
実施例6:MPTPで誘導したパーキンソン病のマウスモデルに対する効果
1-1.パーキンソン病のマウスモデル
体重が25g以上である8週齢のC57BL/6マウスに20mg/kgのMPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)を2時間間隔で一日計4回連続で腹腔注射して急性にパーキンソン病を誘導した。
【0043】
1-2.組成物の製造及び投与
蒸留水にビタミンC200mg/kg体重、前記ビタミンCに結合するアプタマー(GTGGA GGCGG TGGCC AGTCT CGCGG TGGCG GC;配列番号1)4mg/kg体重を混合して組成物を製造した。前記の方法によりパーキンソン病を誘導したマウスに、最後のMPTPの投与が終わった後、1時間後、前記組成物をビタミンCの最終投与濃度が200mg/Kg、アプタミンC4mg/Kgになるように希釈して、マウスに50μlを腹腔又は経口投与した。ビタミンCとアプタミンCの単独投与は、前記組成物での濃度と同一にして50μlを腹腔又は経口投与した。組成物及びビタミンC、アプタミンCの投与は、1日1回、4日間連続して行った。
【0044】
1-3.神経行動学的評価
前記の方法で投与されたMPTP及び組成物によって誘導された神経行動学的な影響を評価するために、前記の方法でパーキンソン病を誘導してから4日後、ポールテスト(pole test)とロータロッドテスト(rotarod test)を行った。
【0045】
55cmの高さのポールを用いてポールテストを行った。ポールの上側にマウスを置き、床に降りてくる時間を測定した。
【0046】
ロータロッドテストは、ロータロッドトレッドミルにマウスを載せ、速度2.5rpmから始めて次第に速度を上げて最高速度が25rpmになるように作動するようにした後(高速の場合、3.5~35rpm)、トレッドミルを回転させたとき、マウスがバランスを失って床に落ちるまでの時間(秒)を測定した。
【0047】
1-4.脳組織の免疫組織学的染色
前記の方法で得た脳組織の切片を、内因性のペルオキシダーゼの活性の除去のために、1%過酸化水素に15分間反応させた。次に、適当な濃度に希釈したチロシンヒドロキシラーゼ抗体を加え、4℃で一晩染色する。結合されなかった1次抗体を洗浄して除去した後、ビオチン化(biotinylated)された2次抗体で常温で90分間染色する。結合されなかった2次抗体を洗浄して除去した後、ABC溶液で1時間常温で染色する。3,3-ジアミノベンジジン(3,3-diaminobenzidine)で発色反応後、顕微鏡を用いて観察した。
【0048】
図10乃至
図14から分かるように、前記実験の結果、MPTPで誘導したパーキンソン病のマウスモデルの試験において、本発明の組成物(ビタミンC及びアプタミンC)の処置により、行動学的に運動能力の欠損を有意に減少させることを確認した。また、試料を投与したマウスから得た脳組織切片でのチロシンヒドロキシラーゼに対する免疫組織学的染色を通じて組織内のドーパミン性神経細胞を確認した結果、組成物の投与群においてドーパミン性神経細胞の死滅が有意に減少したことを確認した。
【配列表】
【国際調査報告】