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特表2022-513053B7-H3のIgVドメインに対するモノクローナル抗体及びその使用
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  • 特表-B7-H3のIgVドメインに対するモノクローナル抗体及びその使用 図1A
  • 特表-B7-H3のIgVドメインに対するモノクローナル抗体及びその使用 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】B7-H3のIgVドメインに対するモノクローナル抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 33/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P33/00
A61P33/10
A61P31/10
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526660
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019061887
(87)【国際公開番号】W WO2020102779
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/768,128
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520224085
【氏名又は名称】アルバート アインシュタイン カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】ALBERT EINSTEIN COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、シンシン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076EE60
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトB7-H3のIgVドメインに結合するモノクローナル抗体に関する。また、本発明は、がん及び感染症の治療並びにB7-H3陽性細胞の画像化のためにこれらの抗体を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B7-H3タンパク質のIgVドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
(a) (i) 配列番号1及び7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、(ii) 配列番号2及び8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、並びに (iii) 配列番号3、9及び15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含むVH領域;並びに、
(b) (i) 配列番号4、10及び13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、(ii) 配列番号5、11及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、並びに (iii) 配列番号6、12及び16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3を含むVL領域
を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(a) 配列番号1、2、3、7、8、9又は15から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である少なくとも1つのCDRを含むVH領域;及び、
(b) 配列番号4、5、6、10、11、12、13、14又は16のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である少なくとも1つのCDRを含むVL領域
を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体はキメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
(a) 配列番号19で示されるアミノ酸配列の残基20~139;
(b) 配列番号21で示されるアミノ酸配列の残基20~135;
(c) 配列番号23で示されるアミノ酸配列の残基20~138;
(d) 配列番号25で示されるアミノ酸配列の残基23~131;
(e) 配列番号27で示されるアミノ酸配列の残基20~133;又は
(f) 配列番号29で示されるアミノ酸配列の残基21~129、
から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体はモノクローナル抗体8B12、モノクローナル抗体12B4又はモノクローナル抗体24D12である、請求項4に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体はヒト化8B12、ヒト化12B4又はヒト化24D12である、請求項5に記載の抗体。
【請求項9】
(a) 重鎖はIGHV1-46*01、IGHV1-46*02、IGHV1-46*03、IGHD1-1*01、IGHD1-26*01、IGHD2-8*01、IGHD3-10*01、IGHD3-22*01、IGHD4-23*01、IGHJ3*01、IGHJ4*01、IGHJ4*03、IGHJ6*01若しくはIGHJ6*02から選択されるヒト生殖細胞系列のフレームワーク配列を含み;又は
(b) 軽鎖はIGKV2-18*01、IGKV2D-29*02、IGKV2-29*03、IGKV3-11*01、IGKV3-15*01、IGKV3-20*02、IGKJ1*01、IGKJ2*01、IGKJ4*01若しくはIGKJ4*02から選択されるヒト生殖細胞系列のフレームワーク配列を含む、
請求項3に記載の抗体。
【請求項10】
T細胞のT細胞受容体(TCR)複合体のCD3成分に結合するモノクローナル抗体の抗原結合断片をさらに含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
検出可能なマーカーをさらに含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体に結合した細胞毒性剤をさらに含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
医薬の製造に使用するための請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片のCDRをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を含有する組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の単離された核酸を含有する宿主細胞又はベクターをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
疾患に罹患した対象に治療有効量の請求項2に記載の抗体又はその免疫原性の断片を投与することを含む前記対象を治療する方法であって、前記疾患は、前記対象の免疫機能を強化することにより前記対象が利益を得る疾患である、方法。
【請求項17】
前記疾患はがんである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、前立腺癌、肝癌、黒色腫、白血病、乳癌、卵巣癌、膵癌、大腸癌、肺癌、膀胱癌、腎癌、脳のがん、骨肉腫、副腎癌、肛門管癌、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌、胆管癌、膀胱癌、骨がん、脳及び脊髄の腫瘍、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、眼のがん(眼内黒色腫)、胆のう癌、胃腸神経内分泌(カルチノイド)腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性トロホブラスト疾患、カポジ肉腫、腎癌、喉頭及び下咽頭の癌、肝癌、肺癌、肺のカルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、メラノーマ皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、鼻腔及び副鼻腔の癌、鼻咽頭の癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、中枢神経系(CNS)の新生物、口腔及び中咽頭の癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵神経内分泌腫瘍(NET)、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、扁平上皮癌、環境が誘発したがん、がんの組合せ、がんの転移性病変、骨髄系腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、反復性の遺伝的異常を伴うAML、骨髄異形成変化を伴うAML、治療関連AML、あいまいな系統の急性白血病、骨髄増殖性腫瘍、本態性血小板血症、真性赤血球増加症、骨髄線維症(MF)、原発性骨髄線維症、全身性肥満細胞症、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性/骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、多系統形成異常を伴う不応性血球減少症、芽球増加を伴う不応性貧血(1型)、芽球増加を伴う不応性貧血(2型)、(5q)単独欠失を伴うMDS、分類不能型MDS、骨髄増殖性/骨髄異形成症候群、慢性骨髄単球性白血病、異型性慢性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、分類不能型骨髄増殖性/骨髄異形成症候群、リンパ性新生物、前駆リンパ性新生物、B細胞リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性リンパ腫、成熟B細胞新生物、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、ろ胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、マントル細胞リンパ腫、辺縁層リンパ腫、移植後リンパ増殖異常症、HIV関連リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞性B細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、多発性骨髄腫、意義不明な単クローン性異常免疫グロブリン血症(MGUS)、くすぶり型多発性骨髄腫又は孤立性形質細胞腫(孤立性の骨及び髄外)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患は感染である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記感染は、ウイルス、ウイロイド、細菌、プリオン、線虫、節足動物、真菌又は原生動物によって引き起こされる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は米国仮特許出願第62/768,128号(出願日:2018年11月16日)の利益を主張し、その内容は全体がこの出願に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が本明細書に組み込まれる。2019年11月15日に作成された上記ASCII形式の配列表の写しは、ファイル名がSequenceListing.txtで、サイズは19,181バイトである。
【背景技術】
【0003】
この明細書全体を通して、さまざまな文献を括弧内の数字により参照する。これらの参考文献の書誌事項を明細書の最後に示す。これらの文献の内容は、本発明が関係する技術をより完全に説明するために、それらの全体がこの出願に組み込まれる。
【0004】
B7-H3はI型膜貫通タンパク質であり、B7ファミリーに属する。B7-H3は、前立腺癌(3)、肝癌(4)、黒色腫(5)、白血病(6)、乳癌(7)、卵巣癌(8)、膵癌(9)、大腸癌(10)、肺癌(11)、膀胱癌(12)、腎癌(13)、脳のがん(14)及び骨肉腫(15)を含むヒトの悪性腫瘍(1,2)において過剰に発現している。いくつかの研究は、B7-H3の高発現と予後の不良に相関があることを示している(1,2)。これらの研究は、B7-H3がヒトのがん細胞が免疫細胞の機能を阻害するために使用する免疫チェックポイントであることを示唆する(1,2)。B7-H3の細胞外領域は、IgV-IgC-IgV-IgC又はIgV-IgCで構成されている。B7-H3のIgVドメインのFGループがB7-H3によるT細胞抑制において重要な役割を果たすことを、以前の研究は示した(16)。
【0005】
がん及び感染症は、米国や他の国々において深刻な公衆衛生上の問題である。本発明は、これらの疾患の治療に使用することができる抗体に関する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、ヒトB7-H3のIgVドメインに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0007】
いくつかの態様では、抗体は、(a) GYTFTSYWIT(配列番号1)を含む相補性決定領域(CDR)1、DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号2)を含むCDR2、及び/若しくはARGGTRFSPFAY(配列番号3)を含むCDR3(CDR3)を有する重鎖;並びに/又は、(b) RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号4)を含むCDR1、KVSNRFS(配列番号5)を含むCDR2、及び/若しくはFQGSHVPWT(配列番号6)を含むCDR3を有する軽鎖を含む。別の態様では、抗体は、配列番号14で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は配列番号16で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、これらの配列はリーダー配列を含んでいない。
【0008】
いくつかの態様では、抗体は、(a) GYTFTSYWMH(配列番号7)を含むCDR1、MIHPNSGSTNYNEKFKS(配列番号8)を含むCDR2、及び/若しくはYYYGSSYAMDY(配列番号9)を含むCDR3を有する重鎖;並びに/又は、(b) SASSSVSYMH(配列番号10)を含むCDR1、STSNLAS(配列番号11)を含むCDR2、及び/若しくはQQRSSYPYT(配列番号12)を含むCDR3を有する軽鎖を含む。別の態様では、抗体は、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むVH及び/又は配列番号20で示されるアミノ酸配列を含むVLを含み、これらの配列はリーダー配列を含んでいない。
【0009】
いくつかの態様では、抗体は、(a) GYTFTSYWMH(配列番号7)を含むCDR1;MIHPNSGSTNYNEKFKS(配列番号8)を含むCDR2、及び/若しくはYYGTNV(配列番号15)を含むCDR3を有する重鎖;並びに/又は、(b) KSVSTSGYSYMH(配列番号13)を含むCDR1、LVSNLES(配列番号14)を含むCDR2、及び/若しくはQHIREAYT(配列番号16)を含むCDR3を有する軽鎖を含む。別の態様では、抗体は、配列番号23で示されるアミノ酸配列を含むVH及び/又は配列番号25で示されるアミノ酸配列を含むVLを含み、これらの配列はリーダー配列を含んでいない。
【0010】
いくつかの態様では、抗体は、ヒトB7-H3のIgVドメインへの結合に関し、上記抗体又はその断片と競合する。
【0011】
ある態様では、抗体はヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0012】
また、本発明はがん及び感染症の治療並びにB7-H3陽性細胞の画像化のための抗体又は断片の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】FACSは、mAb 8B12(図1A)及び12B4(図1B)がヒトがん細胞株PC3(左)及びMDA-MB231(右)が発現する内因性のB7-H3に結合することを示す。いずれの図も、右のヒストグラムが8B12又は12B4で、左のヒストグラムがマウスIgGアイソタイプ対照抗体である。
図2】FACSは、樹状細胞(左)及び活性化T細胞(右)はB7-H3を発現していることを示す。いずれの図も、右のヒストグラムがB7-H3に対するmAbで、左のヒストグラムがマウスIgGアイソタイプ対照抗体である。
図3】mAb 8B12(図3A)及び12B4(図3B)は、混合リンパ球反応アッセイにおいてT細胞のサイトカイン産生を調節することができる。N=2~4。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、
I) a) GYTFTSYWIT(配列番号1)(相補性決定領域(CDR)、CDR1)、
DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号2)(CDR2)、若しくは
ARGGTRFSPFAY(配列番号3)(CDR3)
の1つ以上を含む重鎖;及び
b) RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号4)(CDR1)、
KVSNRFS(配列番号5)(CDR2)、若しくは
FQGSHVPWT(配列番号6)(CDR3)
の1つ以上を含む軽鎖;
II) a) GYTFTSYWMH(配列番号7)(CDR1)、
MIHPNSGSTNYNEKFKS(配列番号8)(CDR2)、若しくは
YYYGSSYAMDY(配列番号9)(CDR3)
の1つ以上を含む重鎖;及び
b) SASSSVSYMH(配列番号10)(CDR1)、
STSNLAS(配列番号11)(CDR2)、若しくは
QQRSSYPYT(配列番号12)(CDR3)
の1つ以上を含む軽鎖;又は、
III) ヒトB7-H3のIgVドメインへの結合に関し、I) 若しくはII) の抗体若しくは断片と競合する抗体若しくはその断片
を含む、ヒトB7-H3のIgVドメインに結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0015】
B7-H3 IgVドメインに結合する断片は、例えば、Fab、F(ab)2又はscFvである可能性がある。
【0016】
いくつかの態様では、抗体又は断片は、
GYTFTSYWIT(配列番号1)(CDR1)、
DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号2)(CDR2)及び
ARGGTRFSPFAY(配列番号3)(CDR3)を含む重鎖;並びに
RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号4)(CDR1)、
KVSNRFS(配列番号5)(CDR2)及び
FQGSHVPWT(配列番号6)(CDR3)を含む軽鎖、
を含む。
【0017】
いくつかの態様では、抗体又は断片は、
a) GYTFTSYWMH(配列番号7)(CDR1)、
MIHPNSGSTNYNEKFKS(配列番号8)(CDR2)、及び
YYYGSSYAMDY(配列番号9)(CDR3)を含む重鎖;並びに
b) SASSSVSYMH(配列番号10)(CDR1)、
STSNLAS(配列番号11)(CDR2)、及び
QQRSSYPYT(配列番号12)(CDR3)を含む軽鎖、
を含む。
【0018】
ある態様では、軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域はヒトフレームワーク領域であるか、又はヒトフレームワーク領域に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%以上の同一性を有する。ある態様では、抗B7-H3抗体又はそのB7-H3結合断片は、(i) ヒト生殖細胞系列GHV1-46*01、IGHV1-46*02、IGHV1-46*03、IGHD1-1*01、IGHD1-26*01、IGHD2-8*01、IGHD3-10*01、IGHD3-22*01、IGHD4-23*01、IGHJ3*01、IGHJ4*01、IGHJ4*03、IGHJ6*01若しくはIGHJ6*02のフレームワーク配列を含むVHフレームワーク;及び/又は、(ii) ヒト生殖細胞系列IGKV2-18*01、IGKV2D-29*02、IGKV2-29*03、IGKV3-11*01、IGKV3-15*01、IGKV3-20*02、IGKJ1*01、IGKJ2*01、IGKJ4*01若しくはIGKJ4*02のフレームワーク配列を含むVLフレームワークを含む。
【0019】
ある態様では、抗体又は断片は、ヒト重鎖定常ドメイン、例えばヒトFc領域を有する。いくつかの態様では、ヒト重鎖定常ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4などのヒトIgGから誘導される。いくつかの態様では、抗体又は断片は、ヒトκ軽鎖定常ドメインを含む。
【0020】
特定の態様では、抗体又は断片は、ブロッキング抗体若しくは断片、又は阻害抗体若しくは断片であり、B7-H3の生物学的活性に拮抗する。
【0021】
また、本発明は、本明細書に記載された抗B7-H3抗体の抗原結合ドメインを含有する二重特異性抗体、及びT細胞のT細胞受容体(TCR)複合体のCD3成分に結合するモノクローナル抗体の抗原結合ドメインに関する。
【0022】
また、本発明は、
GYTFTSYWIT(配列番号1)(重鎖CDR1)、
DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号2)(重鎖CDR2)、
ARGGTRFSPFAY(配列番号3)(重鎖CDR3)、
RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号4)(軽鎖CDR1)、
KVSNRFS(配列番号5)(軽鎖CDR2)、及び
FQGSHVPWT(配列番号6)(軽鎖CDR3)
の1つ以上を含む抗B7-H3抗体の相補性決定領域をコードする単離された核酸又はcDNAに関する。
【0023】
また、本発明は、
GYTFTSYWMH(配列番号7)(重鎖CDR1)、
MIHPNSGSTNYNEKFKS(配列番号8)(重鎖CDR2)、
YYYGSSYAMDY(配列番号9)(重鎖CDR3)、
SASSSVSYMH(配列番号10)(軽鎖CDR1)、
STSNLAS(配列番号11)(軽鎖CDR2)、及び
QQRSSYPYT(配列番号12)(軽鎖CDR3)
の1つ以上を含む抗B7-H3抗体の相補性決定領域をコードする単離された核酸又はcDNAに関する。
【0024】
また、本発明は、
GYTFTSYWMH(配列番号7)(重鎖CDR1)、
KSVSTSGYSYMH(配列番号13)(軽鎖CDR1)、
MIHPNSGSTNYNEKFKS(配列番号8)(重鎖CDR2)、
LVSNLES(配列番号14)(軽鎖CDR2)、
YYGTNV(配列番号15)(重鎖CDR3)、及び
QHIREAYT(配列番号16)(軽鎖CDR3)
の1つ以上を含む抗B7-H3抗体の相補性決定領域をコードする単離された核酸又はcDNAに関する。
【0025】
上述した態様のいずれの場合も、核酸を単離してもよい。本明細書において「単離された」又は「精製された」核酸は、(1) ゲノムDNA若しくは細胞内RNAから分離された、及び/又は、(2) 天然には存在しない、核酸である。
【0026】
また、本発明は単離された核酸(例.cDNA)を含むベクター又は宿主細胞に関する。
【0027】
また、本発明は、本明細書に記載された宿主細胞が抗B7-H3 IgVドメイン抗体又はそのB7-H3 IgVドメイン結合断片を産生する条件で宿主細胞を培養することを含む、抗B7-H3 IgVドメイン抗体又はそのB7-H3 IgVドメイン結合断片を製造する方法に関する。
【0028】
さらに、本発明は、本明細書に記載された抗体又はその断片及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される担体の例には、添加剤溶液-3(AS-3)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、乳酸リンゲル溶液、ロック・リンゲル溶液、クレブス・リンゲル溶液、ハルトマンの平衡生理食塩水及びヘパリン化クエン酸ナトリウムデキストロース溶液があるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書に記載された抗体又は抗体の断片を含む組成物又は医薬組成物は、好ましくは、貯蔵及び輸送中の変性、酸化又は凝集によるタンパク質の活性又は構造的完全性の喪失を防ぐための安定剤を含む。組成物又は医薬組成物は、凝集抑制に寄与することができる、塩、界面活性剤、pH及び糖などの等張化剤の組合せのうちの1つ以上を含むことができる。本発明の組成物又は医薬組成物が注射剤である場合、ほぼ中性のpHであることが望ましい。界面活性剤の量を最小限にして、注射において有害な製剤中の気泡の生成を回避することも有利である。いくつかの態様では、組成物又は医薬組成物は液体であり、生物活性な抗体が高濃度で安定しており、吸入又は非経口での投与に適している。
【0030】
使用する薬学的に許容される担体は、投与経路に依存することができる。医薬組成物は、当該技術分野において公知の方法で投与するために製剤化することができる。いくつかの態様では、組成物又は医薬組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内及び/又は皮下注射に適している。いくつかの態様では、組成物又は医薬組成物は液体であり、泡の形成とアナフィラキシーの危険性が最小限となっている。いくつかの態様では、組成物又は医薬組成物は等張である。いくつかの態様では、組成物又は医薬組成物のpHは、6.8~7.4である。
【0031】
本発明はまた、免疫機能を強化するのに有効な量の本明細書に記載された抗体又はその断片を対象に投与することを含む、対象の免疫機能を強化する方法に関する。対象は、例えば、がん又は感染症に罹患している可能性がある。
【0032】
本発明はさらに、がんを治療するのに有効な量の本明細書に記載された抗体又はその断片を対象に投与することを含む、対象のがんを治療する方法に関する。がんは、例えば、前立腺癌、肝癌、黒色腫、白血病、乳癌、卵巣癌、膵癌、大腸癌、肺癌、膀胱癌、腎癌、脳のがん、骨肉腫、副腎癌、肛門管癌、基底細胞及び扁平上皮細胞の皮膚癌、胆管癌、膀胱癌、骨がん、脳及び脊髄の腫瘍、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、眼のがん(眼内黒色腫)、胆のう癌、胃腸神経内分泌(カルチノイド)腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性トロホブラスト疾患、カポジ肉腫、腎癌、喉頭及び下咽頭の癌、肝癌、肺癌、肺のカルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、メラノーマ皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、鼻腔及び副鼻腔の癌、鼻咽頭の癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、中枢神経系(CNS)の新生物、口腔及び中咽頭の癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵神経内分泌腫瘍(NET)、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、扁平上皮癌、環境が誘発したがん、がんの組合せ、がんの転移性病変、骨髄系腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、反復性の遺伝的異常を伴うAML、骨髄異形成変化を伴うAML、治療関連AML、あいまいな系統の急性白血病、骨髄増殖性腫瘍、本態性血小板血症、真性赤血球増加症、骨髄線維症(MF)、原発性骨髄線維症、全身性肥満細胞症、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性/骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、多系統形成異常を伴う不応性血球減少症、芽球増加を伴う不応性貧血(1型)、芽球増加を伴う不応性貧血(2型)、(5q)単独欠失を伴うMDS、分類不能型MDS、骨髄増殖性/骨髄異形成症候群、慢性骨髄単球性白血病、異型性慢性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、分類不能型骨髄増殖性/骨髄異形成症候群、リンパ性新生物、前駆リンパ性新生物、B細胞リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性リンパ腫、成熟B細胞新生物、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、ろ胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、マントル細胞リンパ腫、辺縁層リンパ腫、移植後リンパ増殖異常症、HIV関連リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞性B細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、多発性骨髄腫、意義不明な単クローン性異常免疫グロブリン血症(MGUS)、くすぶり型多発性骨髄腫又は孤立性形質細胞腫(孤立性の骨及び髄外)であってもよい。がんは、例えば、初期、中期、後期、局所において進行又は転移の段階であってもよく、再発若しくは他の治療法に対して不応性であるか、又は標準治療法が確立していないものであってもよい。本明細書において、がんの「治療」とは、臓器若しくは組織内のがん細胞若しくは転移した細胞の数を減らすこと、腫瘍の増殖を遅らせること、腫瘍細胞、転移した腫瘍細胞若しくは転移する可能性のある腫瘍細胞を殺すこと、体内の元の部位から別の部位への癌性細胞の拡散を防止若しくは低減すること、転移したがんの進行を阻止すること、転移の再発を防ぐこと、疾病の進行を遅らせる若しくは減らすこと、及び/又は、生存率を高めることを意味する。
【0033】
本発明はさらに、感染症を治療するのに有効な量の本明細書に記載された抗体又はその断片を対象に投与することを含む、対象の感染症を治療する方法に関する。感染は、例えば、ウイルス、ウイロイド、細菌、プリオン、線虫、節足動物、真菌又は原生動物によって引き起こされる可能性がある。本明細書において、感染症の「治療」とは、感染症の兆候若しくは症状を軽減すること、及び/又は、対象中の感染病原体の数を減らすことを意味する。
【0034】
本発明は、CAR-T技術で使用することができるキメラ抗原受容体の製造における本明細書に記載された抗体又は断片の配列(例.6つのCDR又はVH及びVLの配列)の使用も予定されている。
【0035】
本発明の抗体及びその断片、組成物、並びに二重特異的結合分子は、本明細書に記載された治療方法で使用してもよく、本明細書に記載された治療に使用するためのものであってもよく、及び/又は、本明細書に記載された治療を行うための医薬の製造において使用するためのものであってもよいことが理解される。本発明はまた、本明細書に記載された抗体及びその抗原結合部分、組成物、並びに二重特異的結合分子を含むキット及び製造物品に関する。
【0036】
本明細書に記載された抗B7-H3抗体又はその断片は、蛍光標識又は放射性標識といった検出可能なマーカーがさらに結合していてもよい。また、本発明は、B7-H3陽性細胞に検出可能に結合するのに有効な量の(例えば、検出可能なマーカーで標識された)抗体又は断片を対象に投与し、次いで抗体又は断片を検出し、それによりB7-H3陽性細胞を検出することを含む、対象におけるB7-H3陽性細胞を検出する方法に関する。標識は、例えば画像化により検知することができる。B7-H3陽性細胞は、例えば、癌細胞である可能性がある。
【0037】
さらに、本明細書に記載された抗B7-H3抗体又はその断片は、抗体薬物複合体(ADC)の一部とすることができる。本発明によるADC組成物は、例えば、細胞毒性剤及びリンカーと組み合わせた、本発明の抗体又はその断片を含んでいてもよい。用いてもよい細胞毒性剤には、アルキル化剤、二官能性アルキル化剤、単官能性アルキル化剤、アントラサイクリン類、細胞骨格破壊剤、タキサン類、エポチロン類、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド前駆体類似体、ペプチド抗生物質、白金ベースの薬剤、レチノイド類、ビンカアルカロイド類及びその誘導体、アクチノマイシン、オールトランスレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン又はビンデシンが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明によるADCは、小分子又は薬物に(例えば、共有結合で)結合した本発明の抗体又はその断片を含んでいてもよい。
【0038】
本明細書において、用語「抗体」は、インタクトな抗体、すなわち完全なFc及びFv領域を有する抗体を指す。成熟した軽鎖と重鎖の可変ドメインは、N末端からC末端方向に、領域FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4で構成される。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)又はChothia et al., Nature 342:878-883 (1989)の定義に従う。「断片」は、限定するものではない例として、Fab、F(ab)2又は一本鎖Fv(scFv)などの抗体の一部分又は連結した抗体の一部分を指し、これは、抗体全体ではなく抗原結合部分であって、特異的な結合についてインタクトな抗体と競合する。この場合、抗原はヒトB7-H3のIgVドメインである。そのような断片は、例えば、インタクトな抗体の切断、又は組換えによって製造することができる。Fundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照。抗原結合断片は、DNA組換え技術、インタクトな抗体の酵素的若しくは化学的切断、又は分子生物学の手法によって製造してもよい。
【0039】
いくつかの態様では、断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、ペプチドリンカーを介して連結した軽鎖可変ドメイン(VL)及び重鎖可変ドメイン(VH)又はダイアボディを含む、ヒトB7-H3のIgVドメインと特異的に結合するのに十分な、抗体の少なくとも一部分を含むポリペプチドである。本明細書において、Fd断片はVH及びCH1ドメインからなる抗体の断片を意味し;Fv断片は抗体の一本鎖のV1及びVHドメインからなり;dAb断片(Ward et al., Nature 341:544-546 (1989)、全体が本明細書に組み込まれる)はVHドメインからなる。いくつかの態様では、断片のアミノ酸長は少なくとも5、6、8又は10である。別の態様では、断片のアミノ酸長は、少なくとも14、少なくとも20、少なくとも50、又は、少なくとも70、80、90、100、150若しくは200である。
【0040】
いくつかの態様では、本明細書に記載されたscFvは、ヒト可変ドメインFR1、FR2、FR3及び/又はFR4と同じ配列を有する可変ドメインのフレームワーク配列を含む。いくつかの態様では、scFvは、5~30アミノ酸長のリンカーペプチドを含む。いくつかの態様では、scFvは、グリシン、セリン及びスレオニンの1つ以上を含むリンカーペプチドを含む。いくつかの態様では、scFvのリンカーのアミノ酸長は10~25である。ある態様では、ペプチドリンカーは、グリシン、セリン及び/又はスレオニンを含む。例えば、Bird et al., Science, 242: 423-426 (1988)及びHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883 (1988)を参照。
【0041】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書では、実質的に均質な抗体集団における抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかに存在する可能性のある突然変異体、例えば、自然に発生した突然変異体を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、異なる抗体の混合物ではないという特性を示す。ある態様では、そのようなモノクローナル抗体には、通常、ヒトB7-H3のIgVドメインに結合するポリペプチド配列を含む抗体が含まれる。異なる決定基(エピトープ)に対する抗体を含むポリクローナル抗体とは対照的に、モノクローナル抗体は、通常、抗原の単一の決定基に結合する抗体である。その特異性に加え、モノクローナル抗体は、通常、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。したがって、モノクローナル抗体は、その配列が特定された後は、非ハイブリドーマ技術、例えば、適当な組換え手段によって製造することができる。
【0042】
本明細書に記載されたいくつかの態様では、抗体又は断片は単離されている。本明細書において、用語「単離された抗体」又は「単離された抗原結合断片」は、その起源又は派生源のため、以下の特性の1つ以上を有する抗体又は断片を指す:(1) 天然の状態で含まれる成分を含んでいない、(2) 同じ種のタンパク質を含まない、(3) 異なる種の細胞が発現した、(4) 人間の手を介さなければ天然では生じない。
【0043】
ある態様では、抗体はヒト化されている。非ヒト(例.マウス)抗体の「ヒト化」形態は、最小限の非ヒト免疫グロブリンの配列を含むキメラ抗体である。いくつかの態様では、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(HVR)(又はCDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRの残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。実施の形態においては、抗体は、本明細書に記載されたマウス抗体の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ全てのCDR(重鎖と軽鎖のCDR1~3)を有する。ある態様では、マウスmAbのフレームワーク(FR)の残基は、対応するヒト免疫グロブリン可変ドメインのフレームワーク(FR)の残基に置き換えられる。これらは、抗体の性能をさらに洗練するために、発明の実施において改変してもよい。さらに、特定の態様では、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体に存在しない残基を含んでいてもよい。いくつかの態様では、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に存在しない残基を含まない。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインを実質的に含み、当該可変ドメイン中の超可変ループの全て、又はある態様では実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのループに対応し、かつ、FRの全て、又はある態様では実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、場合によっては、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンのFcも含むであろう。例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992);Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)並びに米国特許第6,982,321号及び第7,087,409号を参照;これらの文献及び明細書は全体が本明細書に組み込まれる。ヒト化抗体がレシピエント抗体又はドナー抗体に存在しない残基を含む態様では、抗体のFc領域は、国際公開第99/58572号に記載のとおりに改変してもよい;ここで、前記明細書の内容は、全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
モノクローナル抗体をヒト化する技術は周知で、例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号及び第6,180,370号に記載されている;ここで、これらの明細書はその全体が本明細書に組み込まれる。非ヒト免疫グロブリンの抗原結合部位を含む多くの「ヒト化」抗体、例えば、ヒト定常ドメインに融合したげっ歯類又は改変されたげっ歯類のV領域とその相補性決定領域(CDR)を有する抗体が知られている。例えば、Winter et al. Nature 349: 293-299 (1991);Lobuglio et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86: 4220-4224 (1989);Shaw et al. J. Immunol. 138: 4534-4538 (1987);Brown et al. Cancer Res. 47: 3577-3583 (1987)を参照。他の参考文献には、適切なヒト抗体の定常ドメインとの融合の前にヒトのフレームワーク領域(FR)に移植された、げっ歯類の超可変領域又はCDRが記載されている。例えば、Riechmann et al., Nature 332: 323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239: 1534-1536 (1988);Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986)を参照。別の参考文献は、組換えの加工されたげっ歯動物フレームワーク領域を有するげっ歯動物のCDRを記載している-欧州特許出願公開第0519596号(全体が組み込まれる)。これらの「ヒト化」分子は、げっ歯類の抗ヒト抗体による、ヒトレシピエントでの治療の期間と有効性を制限する望ましくない免疫応答を最小限とするように設計されている。抗体の定常領域は、免疫学的に不活性である(例.補体溶解を引き起こさない)ように改変することができる。例えば、国際公開第99/58572号;UK Patent Application No.9809951.8を参照。抗体をヒト化する他の方法は、Daugherty et al., Nucl. Acids Res. 19: 2471-2476 (1991)、米国特許第6,180,377号、第6,054,297号、第5,997,867号、第5,866,692号、第6,210,671号及び第6,350,861号;並びに国際公開第01/27160号参照(全体が本明細書に組み込まれる)。
【0045】
いくつかの態様では、本明細書の抗体又は断片は、組換えで製造することができる;例えば、宿主細胞にトランスフェクトさせた組換え発現ベクターを使用して発現させた抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入した動物(例.マウス)から単離した抗体など。
【0046】
用語「K」は、本明細書では、抗体-抗原相互作用の解離定数を指すことを意図している。親和定数は解離定数の逆数である。B7-H3のIgVドメインに対する抗体のK又は結合親和性を決定する1つの方法は、抗体の単機能のFab断片の結合親和性を測定することである。単機能のFab断片を得るためには、抗体(例.IgG)をパパインで切断するか、組換え的に発現させることができる。抗ヒトB7-H3 IgVドメイン抗体の断片の親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴(BIAcore3000(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、BIAcore Inc., Piscataway N.J.)により決定することができる。CM5チップは、供給者の指示に従い、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイニド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化することができる。抗原はpH4.0の10mM酢酸ナトリウムに希釈し、濃度0.005mg/mLで活性化チップに注入できる。個々のチップチャネル全体の可変フロー時間を使用して、詳細な速度論的研究では100~200応答単位(RU)、スクリーニングアッセイでは500~600RUという2つの抗原密度を実現できる。精製し、段階希釈(推定Kの0.1~10倍)したFabを100mL/分で1分間注入し、最大で2時間の解離時間を許容する。Fabタンパク質の濃度は、(アミノ酸分析によって決定した)既知の濃度のFabを使用するELISA及び/又はSDS-PAGE電気泳動によって決定する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、BIA評価プログラムを使用してデータを1:1ラングミュア結合モデル(Karlsson, R. Roos, H. Fagerstam, L. Petersson, B. (1994). Methods Enzymology 6. 99-110、その内容は全体が本明細書に組み込まれる)にフィッティングすることによって同時に取得できる。平衡解離定数(K)の値は、koff/konとして計算される。この手順は、抗原に対する抗体又は断片の結合親和性を求めるのに適している。当該技術分野において公知の他の方法も使用することができる(例えば、ELISA)。
【0047】
エピトープに「特異的に結合する」抗体又はポリペプチドは、当該技術分野においてよく理解されている用語で、そのような特異的又は優先的結合を決定する方法も当該技術分野においてよく知られている。ある分子が、別の細胞又は物質よりも、より頻繁に、より迅速に、より長い時間及び/又はより高い親和性で、特定の細胞又は物質と反応又は会合する場合、それは「特異的結合」又は「優先的結合」を示すという。抗体が、他の物質に結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、及び/又はより長い時間、結合する場合、それは標的に「特異的に結合する」又は「優先的に結合する」。例えば、ヒトB7-H3 IgVドメインに特異的又は優先的に結合する抗体は、B7-H3の他のエピトープ又は非B7-H3エピトープに結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、及び/又はより長い時間でこのエピトープに結合する抗体である。この定義から、例えば、第1の標的に特異的又は優先的に結合する抗体(若しくは部分又はエピトープ)は、第2の標的に特異的又は優先的に結合する場合もしない場合もあることも理解される。したがって、「特異的結合」又は「優先的結合」は、必ずしも排他的な結合である必要はない(排他的な結合を含むことは可能である)。いくつかの態様では、Kが1mM以下、好ましくは100nM以下の場合、抗体は抗原に特異的に結合するといわれる。
【0048】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)をさまざまなクラスに割り当てることができる。抗体又は断片は、例えば、IgG、IgD、IgE、IgA若しくはIgM抗体又はその断片のいずれかである。いくつかの態様では、抗体は免疫グロブリンGである。いくつかの態様では、抗体断片は免疫グロブリンGの断片である。いくつかの態様では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3又はIgG4である。いくつかの態様では、抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG2a、ヒトIgG2b、ヒトIgG3又はヒトIgG4の配列を含む。これらの抗体サブタイプの組合せも使用することができる。用いる抗体の種類を選択する際に考慮すべき事項の1つは、抗体の望ましい血清半減期である。例えば、IgGの血清半減期は通常23日、IgAは6日、IgMは5日、IgDは3日及びIgEは2日である。(Abbas AK, Lichtman AH, Pober JS. Cellular and Molecular Immunology, 4th edition, W.B. Saunders Co., Philadelphia, 2000、全体が本明細書に組み込まれる。)
【0049】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端のドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「VH」と呼ばれることがある。軽鎖の可変ドメインは「VL」と呼ばれることがある。これらのドメインは一般に抗体の最も可変的な部分で、抗原結合部位を含む。用語「可変」は、可変ドメインの特定の部分は、その配列が抗体間で大きく異なり、特定の抗原に対する抗体の結合及び特異性の発揮に寄与するという事実を指す。しかし、この変化は抗体の可変ドメイン全体に均等に分布していない。これは、軽鎖及び重鎖の可変ドメインの超可変領域(HVR)(又はCDR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメイン中の高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブな重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、主にβシート構造を有する4つのFR領域を含み、ループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する3つのCDRで接続されている。FR領域によって互いに接近して位置する各鎖のCDRは、他の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991)参照)。定常ドメインは、抗原への結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害への関与など、さまざまなエフェクター機能を示す。
【0050】
脊椎動物の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、κ及びλと呼ばれる2つの明確に異なる型のいずれかを有する。
【0051】
「フレームワーク」又は「FR」の残基は、本明細書で定義されたHVR残基以外の可変ドメインの残基である。
【0052】
本明細書における用語「超可変領域」、「HVR」又は「CDR」は、配列が超可変である及び/又は明確なループを形成する、抗体の可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)の6つのCDRを含む。ネイティブな抗体では、6つのCDRの中でH3とL3が最も多様性を示し、特にH3は抗体に細かい特異性を与えるという独特の役割を果たしていると考えられている。例えば、Xu et al., Immunity 13:37-45 (2000);Johnson and Wu, in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J., 2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然のラクダ抗体は、軽鎖がなくても機能的で安定している。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993);Sheriff et al., Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照。CDRを記述するいくつかの方法があり、それらは本明細書に含まれる。Kabatの相補性決定領域(CDR)は、配列の変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)、全体が本明細書に組み込まれる)。重鎖及び軽鎖には、それぞれにCDR1、2及び3がある。ChothiaのCDRは構造ループの位置に基づく(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM CDRは、KabatのCDRとChothiaの構造ループの間の折衷物で、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアを使用する。「接触」CDRは、複雑な結晶構造の分析に基づく。CDRは、以下のような「拡張CDR」を含む場合がある:VLの24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)及び89~97又は89~96(L3)、並びにVHの26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)及び93~102、94~102又は95~102(H3)。可変ドメインの残基は、上述した定義の中でKabatらの方法によりナンバリングされている。
【0053】
本明細書における用語「Fc領域」とは、免疫グロブリン重鎖のC末端の領域のことで、ネイティブ配列のFc領域及びバリアントのFc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動する場合があるが、ヒトIgG重鎖のFc領域の場合、通常、Cys226又はPro230のアミノ酸残基からC末端までと定義されている。Fc領域のC末端リジンは、例えば、抗体の製造若しくは精製中に、又は抗体重鎖をコードする核酸を組み換えることで除去することができる。したがって、本明細書におけるインタクトな抗体は、C末端にリジンを有していても、有していなくてもよい。
【0054】
対象は哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトである。
【0055】
いくつかの態様では、ヒトB7-H3のアミノ酸配列は以下に示すアミノ酸配列(GenBank:CAE47548.1、配列番号17)で、下線部はIgVドメインである。
【0056】
【化1】
【0057】
本明細書において、例えば、選択肢A及び/又は選択肢Bを意味する「及び/又は」は、(i) 選択肢A、(ii) 選択肢B、及び(iii) 選択肢Aと選択肢Bのいずれがである。
【0058】
全てのサブセットを含む、本明細書に記載されたさまざまな要素の全ての組合せは、本明細書においてこれとは異なる指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明の範囲内である。
【0059】
本発明は、以下の実施例からよく理解されるであろう。しかし、本発明は特許請求の範囲に記載されたもので、当業者は、以下の方法とその結果が本発明の単なる例示であることを容易に理解するであろう。
【実施例
【0060】
ヒトB7-H3及びマウスB7-H3のIgVドメインに対するmAbの製造
IgVドメインはB7-H3の機能的ドメインであり、参考文献(17)に記載されたように、B7-H3 IgVコード領域(E35~A139)をプラスミドpMT/BiPのヒトIgG1Fcタグに融合させることにより、ヒトB7-H3 IgV-Ig融合タンパク質を製造した。融合タンパク質をS2系で発現させ、精製した。マウスをB7-H3 IgV-Ig融合タンパク質で免疫し、NSOミエローマ細胞に融合した脾細胞からハイブリドーマを標準的な方法で得た。
【0061】
mAb 8B12及び12B4の特徴の検討
モノクローナル抗体(mAb)8B12及び12B4を製造した。8B12はκ軽鎖を有するIgG3であり、また、12B4はκ軽鎖を有するIgG2bである。
【0062】
表面プラズモン共鳴法により求めたヒトB7-H3及びマウスB7-H3に対する結合親和性(K)は、mAb 8B12がそれぞれ、0.30nM及び4.01nMであり、mAb 12B4がそれぞれ、8.23nM及び15.38nMであった(表1)。8B12と12B4の両者は、ヒトのがん細胞株PC3及びMDA-MB231が発現する内因性のB7-H3に強く結合した(図1)。
【0063】
樹状細胞と活性化T細胞はB7-H3を発現するので(図2)、8B12と12B4の拮抗活性を混合リンパ球反応で決定した。あるドナーのPBMCから単離した単球を分化させた成熟樹状細胞を、別のドナーのPBMCから得た精製T細胞とともに、8B12、12B4又は対照マウスIgGの存在下で4日間インキュベートした。8B12及び12B4は、T細胞のサイトカイン産生を調節することができた(図3A及び3B)。
【0064】
【表1】
【0065】
mAb 8B12、12B4及び24D12の配列
8B12の配列が決定され、特有のVH及びVL配列を有することが判明した。8B12のポリペプチド配列及びコード配列を以下に示す。
【0066】
【化2】
【0067】
12B4のポリペプチド配列及びコード配列を以下に示す。
【0068】
【化3】
【0069】
24D12のポリペプチド配列及びコード配列を以下に示す。
【0070】
【化4】
【0071】
【化5】
【0072】
参考文献
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図1A
図1B
図2
図3
【配列表】
2022513053000001.app
【国際調査報告】