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特表2022-513056植物体でウイルス様粒子を発現する組み換えベクター及びこれを利用したサーコウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法
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  • 特表-植物体でウイルス様粒子を発現する組み換えベクター及びこれを利用したサーコウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】植物体でウイルス様粒子を発現する組み換えベクター及びこれを利用したサーコウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220131BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220131BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20220131BHJP
   A01H 6/54 20180101ALN20220131BHJP
   A01H 6/82 20180101ALN20220131BHJP
   A01H 6/14 20180101ALN20220131BHJP
   A01H 6/20 20180101ALN20220131BHJP
   A01H 6/46 20180101ALN20220131BHJP
   A01H 6/56 20180101ALN20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
A61K39/00 G ZNA
A61K39/12
A61K39/39
A61P31/20
A61P37/04
A01H1/00 A
C12P21/00 C
C12N15/29
C12N15/34
A01H6/54
A01H6/82
A01H6/14
A01H6/20
A01H6/46
A01H6/56
C12N1/21
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526675
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2019013581
(87)【国際公開番号】W WO2020101187
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0141184
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0127987
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519142114
【氏名又は名称】バイオアプリケーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAPPLICATIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ウン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン ジク
(72)【発明者】
【氏名】イ、サンミン
【テーマコード(参考)】
2B030
4B064
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD20
2B030CA17
2B030CB02
4B064AG01
4B064AG31
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC13
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA11X
4B065AA11Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA51
4C085CC07
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
(57)【要約】
本発明は、葉緑体で標的化される植物体発現用組み換えベクターを利用して形質転換させた植物体から分離されたPCV2をワクチン組成物として作製する技術に関するものであり、葉緑体標的化タンパク質とPCV2カプシドタンパク質が融合した組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターが提供される。また、前記組み換えベクターにより形質転換された形質転換植物体、前記形質転換植物体から目的タンパク質を分離精製する方法、これを利用してウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法及び前記製造方法によるワクチン組成物等が提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)をコードするポリヌクレオチド、及び配列番号3又は配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含むPCV2(Porcine circovirus type 2)カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、植物体発現用組み換えベクター。
【請求項2】
前記ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号2で表示される塩基配列を含み、前記PCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号6で表示される塩基配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の植物体発現用組み換えベクター。
【請求項3】
前記組み換えベクターが、配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含むポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の植物体発現用組み換えベクター。
【請求項4】
前記組み換えベクターが、プロモーターとターミネータとの間に、ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチド、及びPCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていることを特徴とする、請求項3に記載の植物体発現用組み換えベクター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組み換えベクターで形質転換された、形質転換植物体。
【請求項6】
下記の段階を含む、組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製方法:
(S1)請求項1~4のいずれか一項に記載の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体をタンパク質抽出緩衝溶液と混合して植物体混合液を製造する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得した混合液をアガロースで充填されたカラムに注入して、PCV2カプシドタンパク質にポリヒスチジンタグが連結された組み換えタンパク質を前記アガロースに吸着させる段階;
(S4)洗浄溶液をカラムに注入して洗浄する段階;及び
(S5)溶出溶液をカラムに注入してアガロースに吸着した前記組み換えタンパク質を溶出させる段階。
【請求項7】
前記タンパク質抽出緩衝溶液が、10~100mMトリス(Tris)、100~300mM塩化ナトリウム(NaCl)、0.01~0.5%Triton X-100(polyethylene glycol p-(1、1、3、3-tetramethylbutyl)-phenylether)、及び5~300mMイミダゾールを含むことを特徴とする、請求項6に記載の分離精製方法。
【請求項8】
前記アガロースは、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロースであることを特徴とする、請求項6に記載の分離精製方法。
【請求項9】
前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換することを特徴とする、請求項6に記載の分離精製方法。
【請求項10】
前記バクテリアは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることを特徴とする、請求項9に記載の分離精製方法。
【請求項11】
下記の段階を含む、ウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法:
(S1)請求項1~4のいずれか1項に記載の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体からPCV2カプシドタンパク質を分離精製する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得したPCV2カプシドタンパク質をウイルス様粒子に製造する段階;及び
(S4)前記(S3)段階で収得したウイルス様粒子を含むワクチン組成物を製造する段階。
【請求項12】
前記ワクチン組成物の製造方法は、アジュバントを添加する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記植物体は、シロイヌナズナ、ダイズ、タバコ、ナス、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ハクサイ、キャベツ、及びレタスよりなる群から選ばれる双子葉植物;又はイネ、ムギ、コムギ、ライムギ、とうもろこし、サトウキビ、エンバク、及びタマネギよりなる群から選ばれる単子葉植物であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換することであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記バクテリアは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記(S3)段階は、PCV2カプシドタンパク質が含まれた緩衝溶液のpHを変化させることによってウイルス様粒子を製造することを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項17】
前記緩衝溶液は、50~100mMトリス(Tris)、300~1000mM塩化ナトリウム(NaCl)、及び10~100mMアルギニンを含み、pHは6.9~7.5であることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記pHは7.2であることを特徴とする、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項11に記載の製造方法により製造された、ワクチン組成物。
【請求項20】
前記ワクチン組成物は、アジュバントをさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記アジュバントは、アラム(alum)であることを特徴とする、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
請求項19に記載のワクチン組成物に含まれているPCV2ウイルス様粒子であり、
前記粒子は、サイズ排除クロマトグラフィーで分子量が1,800kDa以上、2,200kDa以下であり、Native-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分子量が669kDa以上で示され、ネガティブ染色法で染色後、透過電子顕微鏡で観察したとき、直径20~30nmの間の球状又は環状であることを特徴とする、PCV2ウイルス様粒子。
【請求項23】
請求項11に記載の製造方法により製造されたワクチン組成物を個体に投与して豚サーコウイルス感染症を予防する方法。
【請求項24】
請求項11に記載の製造方法により製造されたワクチン組成物の豚サーコウイルス感染症の予防用途。
【請求項25】
請求項11に記載の製造方法により製造された組成物の豚サーコウイルス感染症の予防に用いられるワクチンを生産するための用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体を利用して生産したウイルス様粒子(virus-like particles;VLPs)を含むワクチン組成物に関し、より具体的に、植物体で高効率の発現ベクター(expression vector)を利用してワクチン組成物として使用可能なPCV2(porcine circovirus type 2)カプシド(Capsid)タンパク質の生産性を高めると同時に、生産されたPCV2カプシドタンパク質でウイルス様粒子を作製して、これをワクチン組成物として製造する方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年11月15日に出願された韓国特許出願第10-2018-0141184号及び2019年10月15日に出願された韓国特許出願第10-2019-0127987号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
一般に、形質転換植物体を利用した有用生理活性物質の生産は、動物細胞や微生物で合成してタンパク質を生産する方法で発生しうるウイルス、癌遺伝子、腸毒素のような様々な汚染源を源泉排除することができ、当該有用物質の需要が急増する場合は、大量生産に必要な設備技術や費用の点から、従来の動物細胞システムと比較して絶対的に有利であり、最短期間に低費用で大量生産が可能であるという長所によって、最近、基礎科学研究とワクチン開発及び治療剤開発など各種研究分野に広く使用されている。
【0004】
しかしながら、上記提示した長所にもかかわらず、植物細胞でタンパク質を生産することは、動物細胞及び微生物を含む他の宿主に比べて相対的に低いタンパク質発現レベルと、最適化しない分離精製方法が最大の障害物となっている。これにより、多くの研究が進行されており、多様な方法による植物細胞でのタンパク質の高発現及び生産性を高めるための試みが進行されている。例えば、外来遺伝子を植物体内に効率的に伝達したり、目的タンパク質の発現量を高めるためのベクター作製技術、目的タンパク質を植物が合成できるようにする形質転換技術、形質転換体から目的タンパク質を生産することができるようにするタンパク質分離精製技術等がある。
【0005】
ここで、上記のような外来遺伝子を植物体内に効率的に伝達したり、目的タンパク質の発現を高めるベクター作製技術の例として、韓国登録特許第10-1449155号公報によれば、DNA断片は、目的タンパク質の上流に付加されて組み換えベクターを作製することによって、前記組み換えベクターで形質転換された植物体は、目的タンパク質の翻訳を向上することができ、目的タンパク質の植物体内の特定場所へ移動を誘導して目的タンパク質が安定的に蓄積され得るようにして、これによって、植物体から目的タンパク質を大量で生産できるようにする効果があることが開示されている。
【0006】
また、タンパク質の発現を高めるベクター作製技術に対する従来技術の他の例として、韓国公開特許第10-2018-0084680号公報によれば、植物細胞で目的タンパク質を生産するとき、翻訳段階で目的タンパク質の発現レベルを高める方法で糖化(N-glycosylation)を起こす小さいドメインを目的タンパク質に融合すると、タンパク質の発現レベルが高められ、これによって、形質転換植物体で目的タンパク質の生産効率を画期的に高める方法が示されている。
【0007】
また、形質転換体から目的タンパク質の生産を可能にするタンパク質分離精製技術の例として、韓国登録特許第10-1848082号公報によれば、セルロース結合ドメイン3を含む組み換えベクター及び前記組み換えベクターを利用して形質転換された植物体で合成されたタンパク質をセルロースに結合して目的タンパク質を含む融合タンパク質を分離することが可能であり、融合タンパク質にエンテロキナーゼを処理して目的タンパク質とセルロース結合ドメインを効率的に分離することができることが示されている。
【0008】
さらに、目的タンパク質を生産することができるようにするタンパク質分離精製技術のさらに他の例として、韓国公開特許第10-2015-0113934号公報によれば、生理活性タンパク質又はペプチドを免疫グロブリンFc断片と結合させた場合、免疫グロブリンFc断片が結合しない生理活性タンパク質又はペプチドより生理活性タンパク質又はペプチドの溶解度を改善する効果があることが示されている。
【0009】
したがって、上記のような従来技術を基に植物体から有用生理活性物質を生産する場合、従来使用されている方法である動物細胞や微生物を利用した生産方法を代替できる効果がある。第一に、有用生理活性物質の生産に必要な期間を短縮することができ、生産コストも画期的に減らすことができる。第二に、動物細胞や微生物で合成されたタンパク質を分離精製する過程で生じうる細胞毒性のような汚染源を源泉排除することができ、第三に、商品化された場合、種子の形態で長期間保管が可能で、保存及び保管費用を節減することができる。第四に、安全な種子の形態で輸送することができて、緊急を要求する問題が発生時に必要な地域及び国家に迅速に供給することができる。第五に、生理活性物質に対する需要が急増する場合、大量生産に必要な生産設備及びシステム構築に多くの技術が要求されなくて、容易に大量化することができ、動物細胞システムを利用した生産システムと比較して設置費用と製品生産費用を画期的に低減することができる長所があり、最短時間に大量生産が可能にして、需要に対して十分な供給が可能である。
【0010】
その他にも、植物システムは、哺乳動物で必須の翻訳後修飾過程が起こる合成経路を有していて、動物細胞を利用して生産したタンパク質とほぼ類似した形態のタンパク質生産が可能であるという長所がある。したがって、上記したようなこのような形質転換された植物体を利用して有用生理活性物質であるタンパク質を生産する方法は、動物細胞や微生物を利用して生産する方法を代替できる潜在的な可能性があり、最近大きな注目をあびている。
【0011】
前述したように、医学的に適用可能なタンパク質とワクチンそして産業的に有用な価値のある酵素を含む有用生理活性物質を植物体から効果的に合成及び分離精製する多様な技術が提供されているにもかかわらず、タンパク質ごとに有している固有な特性が互いに異なり、特定方法を一括的に適用することは好ましくないことから、個別的な研究が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述したような従来技術上の問題点を解決するために案出されたものであり、形質転換植物体で目的タンパク質であるウイルス様粒子を形成するPCV2(porcine circovirus type 2)を生産するに際して、翻訳段階でタンパク質の発現レベルを高めるために葉緑体で標的化されるようにルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)を目的タンパク質に融合し、分離精製のためにポリヒスチジンを付着した場合、タンパク質の発現レベルと分離精製効率が高まることを確認し、これを利用して形質転換植物体で目的タンパク質の生産効率を画期的に高めることができることを確認した。
【0013】
また、上記のように分離精製されたPCV2を含む溶液のpHを適切に調節すると、ウイルス様粒子が形成されることを多様な実験的な方法で確認し、このようなウイルス様粒子がウイルスを中和させる中和抗体の形成を高めることができるという点を立証することによって、本発明を完成した。
【0014】
これより、本発明の目的は、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)をコードするポリヌクレオチド、及び配列番号3又は配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含むPCV2(Porcine circovirus type 2)カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、植物体発現用組み換えベクターを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、本発明の組み換えベクターで形質転換された、形質転換植物体を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、下記の段階を含む、組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製方法を提供することにある:
(S1)本発明の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体をタンパク質抽出緩衝溶液と混合して植物体混合液を製造する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得した混合液をアガロースで充填されたカラムに注入して、PCV2カプシドタンパク質にポリヒスチジンタグが連結された組み換えタンパク質を前記アガロースに吸着させる段階;
(S4)洗浄溶液をカラムに注入して洗浄する段階;及び
(S5)溶出溶液をカラムに注入してアガロースに吸着した前記組み換えタンパク質を溶出させる段階。
【0017】
また、本発明の他の目的は、下記の段階を含む、ウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法を提供することにある:
(S1)本発明の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体からPCV2カプシドタンパク質を分離精製する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得したPCV2カプシドタンパク質でウイルス様粒子を製造する段階;及び
(S4)前記(S3)段階で収得したウイルス様粒子を含むワクチン組成物を製造する段階。
【0018】
また、本発明の目的は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物を提供することにある。
【0019】
また、本発明の目的は、本発明の製造方法により製造されたワクチン組成物に含まれているPCV2ウイルス様粒子を提供することにある。
【0020】
また、本発明の目的は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物を個体に投与して豚サーコウイルス感染症を予防する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物の豚サーコウイルス感染症予防用途を提供することにある。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、本発明による製造方法により製造された組成物の豚サーコウイルス感染症の予防に用いられるワクチンを生産するための用途を提供することにある。
【0023】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)をコードするポリヌクレオチド、及び配列番号3又は配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含むPCV2(Porcine circovirus type 2)カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、植物体発現用組み換えベクターを提供する。
【0025】
本発明の一具体例において、前記ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2で表示される塩基配列を含むことができる。また、前記PCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4又は配列番号6で表示される塩基配列を含むことができる。
【0026】
本発明の他の具体例において、前記組み換えベクターは、配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含むポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができる。
【0027】
本発明のさらに他の具体例において、前記組み換えベクターは、プロモーターとターミネータとの間に、ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチド、及びPCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドが順次に連結されているものでありうるが、連結順序が制限されるものではない。
【0028】
本発明は、また、本発明の組み換えベクターで形質転換された、形質転換植物体を提供する。
【0029】
また、本発明は、下記の段階を含む、組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製方法を提供する:
(S1)本発明の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体をタンパク質抽出緩衝溶液と混合して植物体混合液を製造する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得した混合液をアガロースで充填されたカラムに注入して、PCV2カプシドタンパク質にポリヒスチジンタグが連結された組み換えタンパク質を前記アガロースに吸着させる段階;
(S4)洗浄溶液をカラムに注入して洗浄する段階;及び
(S5)溶出溶液をカラムに注入してアガロースに吸着した前記組み換えタンパク質を溶出させる段階。
【0030】
本発明の一具体例において、前記タンパク質抽出緩衝溶液は、10~100mMトリス(Tris)、100~300mM塩化ナトリウム(NaCl)、0.01~0.5%Triton X-100(polyethylene glycol p-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)-phenylether)、及び5~300mMイミダゾールを含むことができる。
【0031】
本発明の他の具体例において、前記アガロースは、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロースでありうる。
【0032】
本発明のさらに他の具体例において、前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換するものであり得、前記バクテリアは、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)でありうる。
【0033】
また、本発明は、下記の段階を含む、ウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法を提供する:
(S1)本発明の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体からPCV2カプシドタンパク質を分離精製する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得したPCV2カプシドタンパク質をウイルス様粒子に製造する段階;及び
(S4)前記(S3)段階で収得したウイルス様粒子を含むワクチン組成物を製造する段階。
【0034】
本発明の一具体例において、前記ワクチン組成物の製造方法は、アジュバントを添加する段階をさらに含むことができる。前記アジュバントには、アラム(alum)を使用できるが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明の他の具体例において、前記植物体は、シロイヌナズナ、ダイズ、タバコ、ナス、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ハクサイ、キャベツ、及びレタスよりなる群から選ばれる双子葉植物;又はイネ、ムギ、コムギ、ライムギ、とうもろこし、サトウキビ、エンバク、及びタマネギよりなる群から選ばれる単子葉植物でありうる。
【0036】
本発明のさらに他の具体例において、前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換するものであり得、前記バクテリアは、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)でありうるが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明のさらに他の具体例において、前記(S3)段階は、PCV2カプシドタンパク質が含まれた緩衝溶液のpHを変化させることによって、ウイルス様粒子を製造するものでありうる。
【0038】
本発明のさらに他の具体例において、前記緩衝溶液は、50~100mMトリス(Tris)、300~1000mM塩化ナトリウム(NaCl)、及び10~100mMアルギニンを含み、pHは6.9~7.5でありうる。
【0039】
本発明のさらに他の具体例において、前記緩衝溶液のpHは、好ましくは、7.2でありうる。
【0040】
また、本発明は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物を提供する。
【0041】
本発明の一具体例において、前記ワクチン組成物は、アジュバントをさらに含むことができる。前記アジュバントは、アラムでありうるが、これに制限されるものではない。
【0042】
また、本発明は、本発明によるワクチン組成物に含まれているPCV2ウイルス様粒子を提供する。
【0043】
本発明の一具体例において、前記PCV2ウイルス様粒子は、サイズ排除クロマトグラフィーで分子量が約2,000kDa、Native-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分子量が669kDa以上で示され、ネガティブ染色法で染色後、透過電子顕微鏡で観察したとき、直径10nm以上、40nm以下、好ましくは、直径20nm以上、30nm以下の球状又は環状のものでありうる。
【0044】
また、本発明は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物を個体に投与して豚サーコウイルス感染症を予防する方法を提供する。
【0045】
また、本発明は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物の豚サーコウイルス感染症予防用途を提供する。
【0046】
また、本発明は、本発明による製造方法により製造された組成物の豚サーコウイルス感染症の予防に用いられるワクチンを生産するための用途を提供する。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、葉緑体で標的化される植物発現ベクターを利用して製造したウイルス様粒子を含むPCV2ワクチン組成物に関し、生産費用を顕著に減らすことができ、従来広く知られた方法(動物細胞や微生物でタンパク質を生産した後、分離精製する方法)で発生しうる様々な汚染源(ウイルス、癌遺伝子、腸毒素等)を源泉遮断することができる。また、動物細胞が必須的に含む翻訳後修飾過程が起こる真核生物タンパク質の合成経路を含んでいて、生理活性を維持しているタンパク質生産が可能であり、商品化段階でも動物細胞やバクテリアとは異なって、種子として管理が可能であるという点から有利である。ひいては、当該物質の需要が急増する場合、大量生産に必要な設備技術や費用の点から従来の動物細胞又はバクテリアを利用した生産システムと比較して、さらに効率的であり、経済的なので、需要の発生に歩調をそろえて短期間に大量生産及び供給が可能であるという長所もある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一実施例による植物体で組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現のための2つの組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現カセットを示す図である。(Rbc-TP、ルビスコトランジットペプチド;6XHis、ポリヒスチジンタグ;BiP-SP、chaperone binding proteinシグナルペプチド)
図2】本発明の一実施例による植物体で2つの組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
図3】本発明の一実施例による組み換えPCV2カプシドタンパク質のアフィニティークロマトグラフィーを利用した分離精製結果を示す図である。
図4】本発明で分離精製された組み換えPCV2カプシドタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー及びNative-PAGEとSDS-PAGEの結果を示す図である。
図5】本発明で分離精製された組み換えPCV2カプシドタンパク質で形成されたウイルス様粒子を透過電子顕微鏡で撮影したイメージを示す図である。
図6】本発明で分離精製された組み換えPCV2カプシドタンパク質の抗体形成の有無を確認するためのモルモット実験方法を図表及び概略図で示す図(上段)及び、ELISA kitで確認した結果を棒グラフで示す図(下段)である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明者らは、形質転換植物体で目的タンパク質であるウイルス様粒子を形成するPCV2(Porcine circovirus type 2)を生産するに際して、翻訳段階でタンパク質の発現レベルを高めるために葉緑体で標的化されるようにルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)を目的タンパク質に融合し、分離精製のためにポリヒスチジンを付着した場合、タンパク質の発現レベルと分離精製効率が高まることを確認し、これを利用して形質転換植物体で目的タンパク質の生産効率を画期的に高めることができることを確認することによって、本発明を完成した。
【0050】
これより、本発明の一実施例では、ポリヒスチジンタグと葉緑体で標的化させるルビスコトランジットペプチドがPCV2カプシドタンパク質に融合した組み換えタンパク質を発現する植物発現ベクター及びポリヒスチジンタグと小胞体で標的化させるBiP(chaperone binding protein)シグナルペプチドがPCV2カプシドタンパク質に融合した組み換えタンパク質を発現する植物発現ベクターを作製した(実施例1参照)。
【0051】
本発明の他の実施例では、前記植物発現ベクターをアグロバクテリウムに形質転換させた後、これをニコティアナ・ベンサミアナ葉の裏面に注入して組み換えPCV2カプシドタンパク質を植物体で発現させた(実施例2参照)。
【0052】
本発明のさらに他の実施例では、前記組み換えPCV2カプシドタンパク質が発現するニコティアナ・ベンサミアナ葉からNi-NTAアガロースレジンで充填されたカラムを利用して組み換えタンパク質を分離精製し、これをウイルス様粒子を調製するための緩衝溶液を利用してPCV2カプシドタンパク質の自己集合を誘導した(実施例3~5参照)。
【0053】
本発明のさらに他の実施例では、前記で得られたPCV2ウイルス様粒子を含む組成物をモルモットに投与して、PCV2に対する抗体が形成されることを確認した(実施例6参照)。
【0054】
本発明のさらに他の実施例では、2つの遺伝子型(genotype)のPCV2ウイルス様粒子を含む組成物をモルモットに投与して、PCV2a及びPCV2bの2つの遺伝子型の両方でウイルス中和抗体の形成能力があることを確認した(実施例7参照)。
【0055】
これより、本発明は、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)をコードするポリヌクレオチド、及び配列番号3又は配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含むPCV2(Porcine circovirus type 2)カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、植物体発現用組み換えベクターを提供することができる。
【0056】
本明細書で使用された用語「ルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)」は、ルビスコ(Ribulose-1、5-Bisphosphate Carboxylase/Oxygenase)スモールサブユニットのN末端トランジットペプチド(N-terminal transit peptide)を称するものであり、好ましくは、配列番号2の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされ、最も好ましくは、配列番号2で表示されるポリヌクレオチドによりコードされるが、配列番号2の塩基配列と80%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列によりコードされ得る。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、2つの最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域でのポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適配列に対する参考配列(追加又は削除を含まない)に比べて追加又は削除(すなわちギャップ)を含むことができる。前記ルビスコトランジットペプチドは、形質転換植物体で発現した組み換えタンパク質を葉緑体内に移動させるために使用されるものであり、発現するとき、配列の一部が切られて、一部のアミノ酸のみが残ることがある。より具体的に、本発明によるルビスコトランジットペプチドが融合した組み換えPCV2カプシドタンパク質を植物体で発現させる場合、前記ルビスコトランジットペプチドの前方の54個のアミノ酸が切られて除去され、配列番号1で表示されるアミノ酸配列のみが残ることがある。また、このような場合、DNAフレームを合わせるために、ルビスコトランジットペプチド配列とポリヒスチジン配列との間に追加的なアミノ酸が挿入され得、好ましくは、グリシン又はイソロイシンが追加で挿入され得る。
【0057】
本明細書で使用された用語「BiP(chaperone binding protein)」は、発現した組み換えタンパク質を小胞体に移動させるために使用されるものであり、好ましくは、配列番号10の塩基配列を含む遺伝子であり、最も好ましくは、配列番号10で表示される遺伝子であるが、配列番号10の塩基配列と80%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。前記BiP遺伝子は、発現するとき、配列の一部が切られて、一部のアミノ酸のみが残ることがある。
【0058】
本明細書で使用された用語「トランジットペプチド(transit peptide)」又は「シグナルペプチド(signal peptide)」は、特定の細胞小器官、細胞区画、細胞外輸送部へのタンパク質の輸送又は局在化を誘導できるアミノ酸配列を称する。この用語は、トランジットペプチド及びトランジットペプチドを暗号化する塩基配列の全部を含む。
【0059】
本明細書で使用された用語「PCV2」は、豚サーコウイルス2型を称するものであり、小さい(17~22nmの直径)20面体のノンエンベロープDNAウイルスであり、一本鎖の円形ゲノムを含有する。PCV2は、豚サーコウイルス1型(PCV1)と約80%の配列同一性を共有する。しかしながら、一般的に非病毒性のPCV1とは対照的に、PCV2で感染した豚は、通常、離乳後多臓器性発育不良症候群(Post-weaning Multisystemic Wasting Syndrome;PMWS)という症状を示す。PCV2は、2つの主なオープンリーディングフレーム(open reading frame;ORF)がある。ORF1は、ウイルス複製タンパク質(Rep)を作り、ORF2は、「カプシドタンパク質(capsid protein)」を作り出す。PCV2のORF2が転写して作られたカプシドタンパク質は、3つずつ集まって1個の面を成し、20面が集まった正20面体構造を取って、ウイルス様粒子(VLPs)構造が完成される。PCV2は、前記カプシドタンパク質をコードするORF2の遺伝型によってPCV2a、PCV2b、PCV2c等の遺伝子型に分けることができる。しかしながら、このような遺伝子型間の病原性はまだ不確実であり、人工感染を通した結果でも病原性の差異に対する結論を下していない。
【0060】
本明細書では、PCV2a及びPCV2bを「PCV2」と総称したが、好ましくは、PCV2aを意味する。また、必要に応じて、遺伝子型間の比較が必要な場合には、PCV2をそれぞれPCV2a及びPCV2bに分けて称した。
【0061】
本明細書で使用された用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む、一般的にリン酸ジエステル結合により互いに結合された2以上の連結されたヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体を含むオリゴマー又はポリマーを示す。ポリヌクレオチドは、また、例えばヌクレオチド類似体、又はリン酸ジエステル結合以外の「骨格」結合、例えばリン酸トリエステル結合、ホスホルアミダート結合、ホスホロチオエート結合、チオエステル結合又はペプチド結合(ペプチド核酸)を含むDNA及びRNA誘導体を含む。ポリヌクレオチドは、一本鎖及び/又は二本鎖ポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)だけでなく、RNA又はDNAのうちいずれか1つの類似体を含む。
【0062】
本明細書で使用された用語「ベクター(vector)」とは、適合した宿主内でDNAを発現させることができる適合した調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNA製造物を意味する。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は、簡単に潜在的遺伝体(ゲノム)挿入物でありうる。適当な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主のゲノムと関係なく複製し、機能することができるか、又は一部の場合にゲノムそれ自体に統合され得る。プラスミドが現在ベクターの最も通常的に使用される形態であるから、用語「プラスミド(plasmid)」及び「ベクター(vector)」は、時に相互交換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、当業界に知られた又は知られているのと同等な機能を有するベクターの他の形態を含む。
【0063】
本発明のルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2で表示される塩基配列を含むことができ、また、PCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4又は配列番号6で表示される塩基配列を含むことができる。また、本発明のルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記ポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列と90%以上、より好ましくは、95%以上、最も好ましくは、98%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。また、本発明のPCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4又は配列番号6の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記ポリヌクレオチドは、配列番号4又は配列番号6の塩基配列と90%以上、より好ましくは、95%以上、最も好ましくは、98%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。
【0064】
また、本発明の組み換えベクターは、配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含むポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができる。
【0065】
前記ポリヒスチジンタグは、本発明の目的タンパク質であるPCV2以外に追加で容易な分離のために含まれるものであり、代表的にAviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、Eタグ、FLAGタグ、HAタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、IgG Fcタグ、CTBタグ、Softag 1タグ、Softag 3タグ、Strepタグ、TCタグ、V5タグ、VSVタグ、Xpressタグ等が含まれ得る。
【0066】
また、本発明の組み換えベクターは、プロモーターとターミネータとの間に、ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチド、及びPCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドが順次に連結されているものでありうるが、連結順序が制限されるものではない。
【0067】
前記プロモーターには、一例としてpEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、Clpプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス由来の19S RNAプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーター、ユビキチンタンパク質プロモーター、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、SV40(Simian virus 40)プロモーター、RSV(Respiratory syncytial virus)プロモーター、EF-1α(Elongation factor-1 alpha)プロモーター等が含まれ得、前記ターミネータは、一例としてノパリンシンターゼ(NOS)、イネアミラーゼRAmy1 Aターミネータ、パセオリンターミネータ、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトパイン(Octopine)遺伝子のターミネータ、大腸菌のrrnB1/B2ターミネータ等であるが、前記例は、例示に過ぎず、これに制限されない。
【0068】
本発明の他の様態として、本発明による組み換えベクターで形質転換された、形質転換植物体を提供することができる。
【0069】
本明細書で使用された用語「形質転換(transformation)」は、注入されたDNAにより生物の遺伝的な性質が変わることを総称し、「形質転換植物体(transgenic plant)」とは、分子遺伝学的方法で外部の遺伝子を注入して製造された植物体であり、好ましくは、本発明の組み換え発現ベクターにより形質転換された植物体であり、前記植物体は、本発明の目的を達成するためのものであれば、制限がない。
【0070】
また、本発明による形質転換植物体は、形質転換、トランスフェクション、アグロバクテリウム媒介形質転換方法、パーティクルガン衝撃法、超音波処理法、エレクトロポレーション、又は、PEG(ポリエチレングリコール)媒介形質転換方法等の方法で製造され得るが、本発明のベクターを注入できる方法であれば、制限がない。
【0071】
本発明の他の様態として、本発明は、下記の段階を含む、組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製方法を提供する:
(S1)本発明の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体をタンパク質抽出緩衝溶液と混合して植物体混合液を製造する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得した混合液をアガロースで充填されたカラムに注入して、PCV2カプシドタンパク質にポリヒスチジンタグが連結された組み換えタンパク質を前記アガロースに吸着させる段階;
(S4)洗浄溶液をカラムに注入して洗浄する段階;及び
(S5)溶出溶液をカラムに注入してアガロースに吸着した前記組み換えタンパク質を溶出させる段階。
【0072】
本発明によるタンパク質抽出緩衝溶液は、10~100mMトリス(Tris)、100~300mM塩化ナトリウム(NaCl)、0.01~0.5%Triton X-100(polyethylene glycol p-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)-phenylether)、及び5~300mMイミダゾールを含むことができる。
【0073】
本発明によるアガロースは、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロースでありうる。
【0074】
また、本発明で前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換するものであり得、前記バクテリアは、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)でありうる。
【0075】
本発明のさらに他の様態として、下記の段階を含む、ウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法を提供する:
(S1)本発明の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体からPCV2カプシドタンパク質を分離精製する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得したPCV2カプシドタンパク質をウイルス様粒子に製造する段階;及び
(S4)前記(S3)段階で収得したウイルス様粒子を含むワクチン組成物を製造する段階。
【0076】
本発明の用語「ワクチン(vaccine)」は、生体に免疫反応を起こす抗原を含有する生物学的な製剤であり、感染症の予防のためにヒトや動物に注射したり経口投与することによって、生体に免疫ができるようにする免疫原をいう。前記動物は、ヒト又は非ヒト動物であり、前記非ヒト動物は、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ヤギ、ヒツジ等が挙げられるが、これに制限されない。
【0077】
本発明の「ワクチン組成物」は、それぞれ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の経口型剤形及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用され得る。製剤化する場合には、普通使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤等の希釈剤又は賦形剤を使用して調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、前記レシチン類似乳化剤に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを使用することができ、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水溶性製剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤が含まれる。非水溶性製剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレートのような注射可能なエステル等が使用され得る。
【0078】
本発明によるワクチン組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下又は直腸が含まれるが、経口又は非経口投与が好ましい。本願に使用された用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内及び頭蓋骨内注射又は注入技術を含む。本発明のワクチン組成物は、また、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。
【0079】
本発明によるワクチン組成物又は薬学的組成物の投与量は、個体の年齢、体重、性別、身体状態などを考慮して選択される。別の副作用なしに個体に免疫保護反応を誘導するのに必要な量は、免疫原として使用された組み換えタンパク質及び賦形剤の任意存在によって多様でありうる。
【0080】
本発明で、前記ワクチン組成物の製造方法は、アジュバントを添加する段階をさらに含むことができる。
【0081】
本明細書で使用された用語「アジュバント(Adjuvant)」は、ワクチン又は薬学的に活性を有する成分に添加されて免疫反応を増加させたり影響を与えたりする物質又は組成物をいう。代表的に免疫原(immunogen)用キャリア又は補助物質及び/又は他の薬学的に活性を有する物質又は組成物を通常意味する。典型的に、用語「アジュバント」は、広い概念で解釈されなければならないし、前記アジュバントに統合されたり前記アジュバントとともに投与された抗原の免疫原性(immunogenicity)を増進させることができる広い範囲の物質又は策略(stratagerm)を意味する。また、アジュバントは、これに制限されず、免疫増強剤(immune potentiator)、抗原伝達系又はこれらの組合せに分けられることができる。
【0082】
また、本発明で、前記植物体は、シロイヌナズナ、ダイズ、タバコ、ナス、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ハクサイ、キャベツ、及びレタスよりなる群から選ばれる双子葉植物;又はイネ、ムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、サトウキビ、エンバク、及びタマネギよりなる群から選ばれる単子葉植物でありうる。
【0083】
本明細書で使用された用語「植物体」は、本発明の組み換えタンパク質を大量生産できる植物であれば、制限なしに使用され得るが、より具体的には、前記列挙した植物体群から選ばれるものであり得、好ましくは、タバコでありうる。本発明でのタバコは、タバコ属(Nicotiana genus)植物であり、タンパク質を過発現できるものであれば、特に種類の制限を受けず、形質転換方法とタンパク質大量生産の目的に合うように適切な品種を選択して本発明を実施することができる。例えばニコティアナ・ベンサミアナL.(Nicotiana benthamiana L.)又はニコティアナ・タバクムcv.クサンシ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi)等の品種を利用することができる。
【0084】
また、本発明で、前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換するものであり得、前記バクテリアは、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)でありうるが、前述したように、これに制限されるものではない。
【0085】
また、本発明で、前記(S3)段階は、PCV2カプシドタンパク質が含まれた緩衝溶液のpHを変化させることによってウイルス様粒子を製造するものでありうる。
【0086】
前記ウイルス様粒子を製造することは、組み換えPCV2カプシドタンパク質が自己集合によりウイルス様粒子を形成することができるようにフィルターを使用して緩衝溶液の交換及び濃縮過程を経ることができる。
【0087】
前記緩衝溶液は、50~100mMトリス(Tris)、300~1000mM塩化ナトリウム(NaCl)、10~100mMアルギニンを含むことができ、pHは、6.9~7.5、好ましくは、7.2でありうる。また、自己集合した組み換えPCV2ウイルス様粒子を精製するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行うことができる。
【0088】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物を提供する。
【0089】
前記ワクチン組成物には、アジュバントがさらに含まれ得る。また、前記アジュバントは、アラム(alum)でありうるが、アジュバントとして使用するに適したいずれの種類のアルミニウム塩でも本発明に使用され得る。アルミニウム塩は、アルミニウムヒドロキシド(Al(OH))、アルミニウムホスフェート(AlPO)、アルミニウムハイドロクロリド、アルミニウムサルフェート、アンモニウムアラム、ポタシウムアラム又はアルミニウムシリケート等が含まれる。好ましくは、アルミニウム塩アジュバントとしてアルミニウムヒドロキシド又はアルミニウムホスフェートが使用され得る。
【0090】
また、本発明の他の様態として、本発明は、前記ワクチン組成物に含まれているPCV2ウイルス様粒子を提供する。前記PCV2ウイルス様粒子は、サイズ排除クロマトグラフィーで分子量が約2,000kDa、Native-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分子量が669kDa以上で示され、ネガティブ染色法で染色後、透過電子顕微鏡で観察したとき、直径10nm以上、40nm以下、好ましくは、20nm以上、30nm以下の球状又は環状でありうる。ここで、前記用語「約」は、±10%を意味する。したがって、分子量約2,000kDaは、1,800kDa~2,200kDaを意味する。
【0091】
本発明の他の様態として、本発明は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物を個体に投与して豚サーコウイルス感染症を予防する方法を提供する。
【0092】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、本発明による製造方法により製造されたワクチン組成物の豚サーコウイルス感染症の予防用途を提供する。
【0093】
また、本発明の他の様態として、本発明は、本発明による製造方法により製造された組成物の豚サーコウイルス感染症の予防に用いられるワクチンを生産するための用途を提供する。
【0094】
本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解すべきものではなく、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解すべきである。
【0095】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0096】
下記実施例及び図面では、特にPCV2bと言及しない限り、PCV2は、PCV2aを意味する。
【実施例
【0097】
[実施例1:組み換えPCV2カプシドタンパク質発現用植物発現ベクターの作製]
図1の切断地図に示されたように、植物体で組み換えPCV2カプシドタンパク質を発現させることができるように組み換えした植物体発現用ベクターを作製した。
【0098】
より具体的に、PCV2カプシドタンパク質に関する遺伝子情報を確保し、ニコティアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)での発現に最適化した配列で遺伝子(配列番号4又は配列番号6)を合成した。葉緑体で標的化される組み換えPCV2カプシドタンパク質植物発現ベクターは、pCAMBIA1300ベクターのCaMV35Sプロモーター遺伝子とNOSターミネータとの間にルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)、6個の連続したヒスチジンをコードするポリヌクレオチド(配列番号8)、PCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号4又は配列番号6)を順次に連結して作製した。葉緑体で標的化される組み換えPCV2カプシドタンパク質植物発現ベクターは、pCAMBIA1300ベクターのCaMV35Sプロモーター遺伝子とNOSターミネータとの間にBiP(chaperone binding protein)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号10)、PCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号4又は配列番号6)、6個の連続したヒスチジンをコードするポリヌクレオチド(配列番号8)及びHDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号12)を順に連結して作製した。
【0099】
[実施例2:組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現確認]
(2.1.植物発現ベクターの一過性発現)
前記実施例1で準備した植物発現ベクターをアグロバクテリウムLBA4404菌株にエレクトロポレーションを利用して形質転換させた。形質転換されたアグロバクテリウムを5mLのYEP液体培地(酵母抽出物10g、ペプトン10g、NaCl 5g、カナマイシン50mg/L、リファンピシン25mg/L)で28℃の条件で16時間の間振とう培養した後、1次培養液1mlを50mlの新しいYEP培地に接種して28℃の条件で6時間の間振とう培養した。このように培養されたアグロバクテリウムは、遠心分離(7,000rpm、4℃、5分)して収集した後、600nmの波長で吸光度(O.D)の値が1.0になるようにインフィルトレーション(Infiltration)バッファー[10mM MES(pH 5.7)、10mM MgCl、200μMアセトシリンゴン]に懸濁させた。アグロバクテリウム懸濁液は、注射針を除去した注射器を利用してニコティアナ・ベンサミアナ葉の裏面に注入する方法でアグロインフィルトレーション(Agro-infiltration)を行った。
【0100】
(2.2.植物体で組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現確認)
前記実施例2.1で準備した植物の葉からタンパク質を抽出して遠心分離した後に、水溶性画分(Supernatant;S)にあるタンパク質とペレット(Pellet;P)画分にあるタンパク質、水溶性画分とペンニッを全部含む画分(Total;T)をそれぞれ分離してウェスタンブロッティングで組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現を確認した。より詳しくは、各画分30μLをSDS試料バッファーと混合した後に加熱した。そして、10%SDS-PAGEゲルに電気泳動してサイズ別に分離したタンパク質バンドを確認し、これをPVDF膜に移動させた後に、5%スキムミルクを利用してブロッキング段階を経た後に、ポリヒスチジンと反応する抗体を結合させ、ECL溶液を製造社で提供する方法により処理して組み換えPCV2カプシドタンパク質の発現を確認した。
【0101】
その結果、図2に示されたように、葉緑体で標的化されるようにルビスコトランジットペプチドを融合した組み換えPCV2カプシドタンパク質が高い効率で発現したことを確認し、発現した組み換えPCV2カプシドタンパク質の70%以上が水溶性画分で確認され、約30%のPCV2カプシドタンパク質がペレット画分で観察された(図2の左側写真)。これと比較して、小胞体で標的化されるようにBiPシグナルペプチドを融合した組み換えPCV2カプシドタンパク質は、発現効率が非常に低かった(図2の右側写真)。これにより、下記実施例は、葉緑体で標的化されるルビスコトランジットペプチドを融合した組み換えPCV2カプシドタンパク質のみを利用して進めた。
【0102】
(実施例3:植物で発現した組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製)
前記実施例2.1で準備した組み換えPCV2カプシドタンパク質が発現するニコティアナ・ベンサミアナ葉50gにタンパク質抽出溶液[50mM Tris-HCl(pH 8.2)、300mM NaCl、10mM imidazole、0.5% Triton X-100]100mLを添加し、ブレンダーで組織を破砕した後、13,000rpmで4℃で30分間遠心分離して、タンパク質抽出液を回収した。前記タンパク質抽出液から組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製のためにNi-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロースレジンで充填されたカラムでアフィニティークロマトグラフィーを実施した。前記カラムにレジンを10mL充填した後、100mLの洗浄溶液[50mM Tris-HCl(pH8.2)、300M NaCl、10mM イミダゾール]で平衡化させた。回収したタンパク質抽出液をカラムに適用し、平衡化させた後、洗浄溶液100mLを流してレジンを洗浄し、溶出溶液[50mM Tris-HCl(pH8.2)、300mM NaCl、250mM イミダゾール]で組み換えPCV2カプシドタンパク質を溶出した。組み換えPCV2カプシドタンパク質が含まれた溶出溶液は、30kDaの大きさのフィルターを使用してウイルス様粒子を作るための緩衝溶液[50mM Tris-HCl(pH7.4)、300mM NaCl、100mM アルギニン、最終pHは7.2に調節する]でバッファー交換及び濃縮を実施した。分離精製された組み換えPCV2カプシドタンパク質は、電気泳動(SDS-PAGE)後、クマシー染色法を通じて確認した(図3参照)。
【0103】
[実施例4:組み換えPCV2カプシドタンパク質の精製]
組み換えPCV2カプシドタンパク質は、自己集合を通じて組み換えPCV2ウイルス様粒子を形成する。したがって、組み換えPCV2ウイルス様粒子を分離するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。サイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/600 SuperdexTM 200pg)は、溶出溶液[50mM Tris-Cl(pH7.4)、300mM NaCl、0.5mM EDTA]を利用して平衡化した。実施例3で得られた分離精製された組み換えPCV2カプシドタンパク質が含まれた緩衝溶液5mgをサイズ排除クロマトグラフィーカラムにローディングし、サイズ別に分離して、一番目のピーク画分を獲得した。ウイルス様粒子の形成の有無を確認するために獲得した画分は、Native-PAGE電気泳動を行った。また、分離精製した組み換えPCV2カプシドタンパク質の精製度を確認するためにSDS-PAGE電気泳動を行った。前記のサイズ排除クロマトグラフィーで分離した結果とNative-PAGE及びSDS-PAGE電気泳動結果は、図4に示した。
【0104】
[実施例5:組み換えPCV2ウイルス様粒子の確認]
サイズ排除クロマトグラフィーで分離した一番目と二番目の画分に含まれた組み換えPCV2aカプシドタンパク質を最終濃度が100nMになるように溶出溶液[50mM Tris-Cl(pH7.4)、300mM NaCl、0.5mM EDTA]に希釈してネガティブ染色を行った。5μLのタンパク質溶液をカーボンでコーティングされた銅グリッドで1分間反応させた後、濾過紙を利用してタンパク質溶液を除去し、3次蒸留水で3回洗浄した。この際、カーボンでコーティングされた銅グリッドは、プラズマ(Plasma)とともに1分間反応させて疎水性(hydrophobic)の特性を親水性(hydrophilic)特性に変換して、タンパク質がカーボンに良好に付着するようにする。最終的に1%酢酸ウラニルで1分間反応させてネガティブ染色した後、濾過紙で染色溶液を除去し、常温で12時間乾燥した。準備したグリッドは、透過電子顕微鏡(Tecnai T10、Philips、日本)を使用して20,000倍の倍率でイメージを取得した。
【0105】
その結果、図5に示されたように、一番目の画分で組み換えPCV2カプシドタンパク質で構成されたウイルス様粒子を観察することができた。
【0106】
[実施例6:組み換えPCV2カプシドタンパク質抗体形成の確認]
前記実施例5で確認された組み換えPCV2ウイルス様粒子を含む組成物の抗体形成の有無を確認するための実験を進め、動物用医薬品の国家出荷承認検証基準[1-2-04-03豚サーコウイルスtype2遺伝子組み換え不活化ワクチン(PCV2抗体力価試験)]によって進めた。体重300~350gのモルモット9匹を準備して、3匹は対照群、6匹は実験群として、筋肉で1/2頭分を接種し、2週後に2次接種を実施した。ここで、前記対照群は、抗原なしにPBSのみを1ml投与した群を意味し、実験群は、それぞれ50μg及び100μgのPCV2抗原に50%アルミニウムヒドロキシド ゲルを添加した群を意味する。2次接種2週後に3匹の対照群と共に採血して、ELISA kitで抗体価を測定した。吸光度ELISAの測定は、製造会社の試験方法によって行った。抗体形成結果は、図6に示した。
【0107】
その結果、図6に示されたように、PCV2ウイルス様粒子を含む組成物を投与することによって、モルモットの体内で抗体が形成されることを確認することができた。また、前記組成物の投与量が増加するにつれて形成される抗体の量も増加する傾向を示した。
【0108】
[実施例7:組み換えPCV2aカプシドタンパク質中和抗体形成の確認]
前記実施例5で確認されたPCV2ウイルス様粒子を含む組成物にアルミニウムヒドロキシド(Al(OH))アジュバントを添加したワクチン組成物を利用してPCV2中和抗体の形成有無を確認した。実験は、動物用医薬品の国家出荷承認検証基準(1-2-04-03豚サーコウイルス2型遺伝子組み換え不活化ワクチン)によって進めた。体重300~350gのモルモット6匹を準備し、2匹は対照群、4匹は実験群として、実験群には、筋肉で1/2頭分を接種し、2週後に2次接種を実施した。2次接種2週後に2匹の対照群と共に採血して、間接蛍光抗体検査法(Immuno-fluorescence assay)で確認した。ウイルス中和実験の結果は、下記表1に示した。
【0109】
【表1】
【0110】
その結果、前記表1に示されたように、PCV2の2つの遺伝子型PCV2a及びPCV2bは、全部ウイルス中和能があることを確認した。また、全般的にPCV2bよりPCV2aのウイルス中和能にさらに優れており、アラム(alum)アジュバントを100μg添加した場合、中和抗体価が最も高く示された。
【0111】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明による植物発現ベクターを利用する場合、生産費用を顕著に減らすことができ、ウイルス、癌遺伝子、腸毒素等の汚染源を源泉遮断することができ、翻訳後修飾過程が起こる真核生物タンパク質の合成経路を含んでいて、生理活性を維持しているタンパク質生産が可能であり、商品化段階でも種子(seed stock)として管理が可能であるという点から有利である。ひいては、当該物質の需要が急増する場合、大量生産に必要な設備技術や費用の面において従来の動物細胞又はバクテリアを利用した生産システムと比較して、さらに効率的かつ経済的なので、需要の発生に歩調をそろえて短期間に大量生産及び供給が可能であるという点から、産業的利用価値が大きいことが予想される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022513056000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むルビスコトランジットペプチド(RuBisCO transit peptide)をコードするポリヌクレオチド、及び配列番号3又は配列番号5で表示されるアミノ酸配列を含むPCV2(Porcine circovirus type 2)カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、植物体発現用組み換えベクター。
【請求項2】
前記ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号2で表示される塩基配列を含み、前記PCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号6で表示される塩基配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の植物体発現用組み換えベクター。
【請求項3】
前記組み換えベクターが、配列番号7で表示されるアミノ酸配列を含むポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の植物体発現用組み換えベクター。
【請求項4】
前記組み換えベクターが、プロモーターとターミネータとの間に、ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチド、及びPCV2カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていることを特徴とする、請求項3に記載の植物体発現用組み換えベクター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組み換えベクターで形質転換された、形質転換植物体。
【請求項6】
下記の段階を含む、組み換えPCV2カプシドタンパク質の分離精製方法:
(S1)請求項1~4のいずれか一項に記載の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体をタンパク質抽出緩衝溶液と混合して植物体混合液を製造する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得した混合液をアガロースで充填されたカラムに注入して、PCV2カプシドタンパク質にポリヒスチジンタグが連結された組み換えタンパク質を前記アガロースに吸着させる段階;
(S4)洗浄溶液をカラムに注入して洗浄する段階;及び
(S5)溶出溶液をカラムに注入してアガロースに吸着した前記組み換えタンパク質を溶出させる段階。
【請求項7】
前記タンパク質抽出緩衝溶液が、10~100mMトリス(Tris)、100~300mM塩化ナトリウム(NaCl)、0.01~0.5%Triton X-100(polyethylene glycol p-(1、1、3、3-tetramethylbutyl)-phenylether)、及び5~300mMイミダゾールを含むことを特徴とする、請求項6に記載の分離精製方法。
【請求項8】
前記アガロースは、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロースであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の分離精製方法。
【請求項9】
前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換することを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の分離精製方法。
【請求項10】
前記バクテリアは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることを特徴とする、請求項9に記載の分離精製方法。
【請求項11】
下記の段階を含む、ウイルス様粒子を含むワクチン組成物の製造方法:
(S1)請求項1~4のいずれか1項に記載の組み換えベクターを利用して植物体を形質転換する段階;
(S2)前記(S1)段階で得られた形質転換植物体からPCV2カプシドタンパク質を分離精製する段階;
(S3)前記(S2)段階で収得したPCV2カプシドタンパク質をウイルス様粒子に製造する段階;及び
(S4)前記(S3)段階で収得したウイルス様粒子を含むワクチン組成物を製造する段階。
【請求項12】
前記ワクチン組成物の製造方法は、アジュバントを添加する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記植物体は、シロイヌナズナ、ダイズ、タバコ、ナス、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ハクサイ、キャベツ、及びレタスよりなる群から選ばれる双子葉植物;又はイネ、ムギ、コムギ、ライムギ、とうもろこし、サトウキビ、エンバク、及びタマネギよりなる群から選ばれる単子葉植物であることを特徴とする請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記(S1)段階は、組み換えベクターが導入されたバクテリアを利用して植物体を形質転換することであることを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記バクテリアは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記(S3)段階は、PCV2カプシドタンパク質が含まれた緩衝溶液のpHを変化させることによってウイルス様粒子を製造することを特徴とする、請求項11~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記緩衝溶液は、50~100mMトリス(Tris)、300~1000mM塩化ナトリウム(NaCl)、及び10~100mMアルギニンを含み、pHは6.9~7.5であることを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記pHは7.2であることを特徴とする、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項11~18のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、ワクチン組成物。
【請求項20】
前記ワクチン組成物は、アジュバントをさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記アジュバントは、アラム(alum)であることを特徴とする、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
請求項19に記載のワクチン組成物に含まれているPCV2ウイルス様粒子であり、
前記粒子は、サイズ排除クロマトグラフィーで分子量が1,800kDa以上、2,200kDa以下であり、Native-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分子量が669kDa以上で示され、ネガティブ染色法で染色後、透過電子顕微鏡で観察したとき、直径20~30nmの間の球状又は環状であることを特徴とする、PCV2ウイルス様粒子。
【請求項23】
豚サーコウイルス感染症を予防するための、請求項19~21のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
請求項11~18のいずれか一項に記載の製造方法により製造された組成物の豚サーコウイルス感染症の予防に用いられるワクチンを生産するための使用
【国際調査報告】