(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】高張力鋼を接合するデュアルパス・デュアルアニール溶接法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/06 20060101AFI20220131BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20220131BHJP
C21D 1/42 20060101ALI20220131BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20220131BHJP
C21D 1/26 20060101ALI20220131BHJP
C22C 38/54 20060101ALN20220131BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20220131BHJP
C22C 38/34 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B23K11/06 320
B23K31/00 B
C21D1/42 C
C21D1/18 A
C21D1/18 E
C21D1/26 G
C22C38/54
C22C38/00 301B
C22C38/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527164
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 IB2018059096
(87)【国際公開番号】W WO2020104832
(87)【国際公開日】2020-05-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ビカス・カヌバイ
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】ポーリング,アラン
(57)【要約】
約0.45超のCeqを有する鋼のデュアルパスシーム溶接法。第1のパスは、溶接及び直後に溶接部を焼鈍する。第2のパスでは、溶接機を解放し、溶接部が第2の焼鈍に供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接法であって、下記ステップ:
少なくとも0.45の炭素当量(Ceq)を有する組成を有する、焼入れ可能な鉄合金の第1の面を提供するステップ;
少なくとも0.45の炭素当量(Ceq)を有する組成を有する、焼入れ可能な鉄合金の第2の面を提供するステップ;
前記第1の面及び前記第2の面を重ね合わせることにより、重なり部を作製するステップ;
前記第1の面及び前記第2の面の温度を少なくとも前記合金の融点まで昇温させるために十分に高い温度において前記第1の面及び前記第2の面を加熱することにより、前記第1の面を前記第2の面に溶接し、溶接部を形成するステップ;
前記溶接部を、前記合金のAC
3温度とM
f温度との間まで冷却するステップ;
前記溶接部を加熱して、前記溶接部を少なくとも10C/秒の速度で、前記合金のM
s温度とAc
1温度との間の温度にまで加熱するステップ;
前記溶接部を、前記合金のM
s温度未満まで冷却するステップ;
前記溶接部を少なくとも10C/秒の速度で加熱し、前記合金のM
s温度とAc
1温度との間の温度にするステップ;
前記溶接部を室温にまで冷却するステップ、
を含み、
Ceqは、以下のように定義され;
Ceq=C+A(C)*[Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/20+(Cr+Mo+Nb+V)/5+5B]、及び
A(C)=0.75+0.25tanh[20(C-0.12)];
さらに、元素C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、及びBのそれぞれの組成は、重量パーセントである、
溶接法。
【請求項2】
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方が、少なくとも0.5の炭素当量(Ceq)を有する組成を有する、焼入れ可能な鉄合金により形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の面が第1の鋼コイルの端部であり、前記第2の面が第2の鋼コイルの端部である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の面を前記第2の面に溶接する前記ステップが、電気抵抗シーム溶接ステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気抵抗シーム溶接ステップが、中周波直流(MFDC)シーム溶接機を使用して行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記中周波直流(MFDC)シーム溶接機が、溶接ホイール及び溶接後誘導加熱装置からなることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シーム溶接機が、前記重なり部に亘り前記溶接機の2回のパスを使用して、前記溶接部を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記2回のパスの第1のパスが、
・前記溶接ホイールによって行われる、シーム溶接のステップ、及び
・直後に、前記溶接後誘導加熱装置を使用して、前記シーム溶接部を焼鈍するステップ、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記2回のパスの第2のパスが、
・前記溶接ホイールを解放するステップ、及び
・前記溶接後誘導加熱装置を使用して、前記溶接部を焼鈍するステップ、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶接部が、少なくとも70%の荷重率及び延性率を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接技術に関するものである。より詳細には、本発明は、例えば、自動車用高張力鋼(AHSS)などの高張力鋼を接合するための技術に関する。最も詳細には、本発明は、AHSSタイプの鋼を接合するための、デュアルパス・デュアルアニール溶接技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、溶接及び熱処理の装置、並びに方法に関する。より詳細には、本発明は、溶接部の硬度が低下し、並びに溶接部の延性及び靭性が改善された、シーム溶接及びバット溶接の製造方法に関する。本発明は、特に、冷間圧延機で冷間圧延されている、鋼のコイル間の高張力溶接部の生産に有用である。
【0003】
全ての近代産業界を通じて広範に用いられているように、溶接された鉄合金は、構造部品の設計において、事実上の業界標準となっている。多くの分野において、現在の動向としては、低張力の一般的な軟鋼から離れ、高張力鋼及び超張力鋼に、関心の焦点が移ってきている。これらの合金は、、熱機械的処理の間に生成する特定の微細組織により、低炭素鋼より大きな引張強度を有するように配合されている。自動車産業において現在使用されている、高張力鋼のいくつかの例としては、二層鋼、マルテンサイト鋼、ホウ化処理鋼、焼入れ-パーティション鋼、及び変態誘起塑性鋼が挙げられる。他の高張力合金としては、空気、油及び水で焼入れ可能な炭素鋼及びマルテンサイト系ステンレス鋼が挙げられる。これら全ては、素材の微細組織中に、ある程度の体積パーセントのマルテンサイトが形成するように設計されている。焼入れした状態で形成した結果得られた、歪んだ体心立方(BCC)又は体心正方(BCT)マルテンサイト結晶構造が、高張力を金属に与える。これらの材料は、高張力及び靭性に対する要求を満たし、理想的には、構造部品及び組立体に好適である。
【0004】
非常に競争の激しい自動車市場においては、エネルギー及び環境への懸念に伴い、自動車メーカーは、常に燃料消費及びCO2の排出量を低減する方法を継続的に模索している。これは、第3世代の高張力鋼板の採用による、自動車の効率的な重量削減によって達成可能であり、それはまた、自動車車体部品の衝突性能をも改善する。
【0005】
あいにく、これらの及び他の超高張力合金が有する、マルテンサイトを形成し、及び比較的高い焼入れ性を呈する傾向は、溶接に困難を示す。高張力鋼グレードの化学は、高温におけるフェライトからオーステナイトへの完全な変態と、その後の、急冷中における高硬度のマルテンサイト相への変化をもたらす。シーム/バット溶接の用途では、溶接の自然冷却速度は、1000℃/秒の高さにもなりえ、ほとんどの高張力高炭素合金内に、マルテンサイト構造を生成するのに十分な速さである。生成した結果得られたマルテンサイト構造は、焼戻しされていない状態では極端に脆い。溶接部の亀裂が、歪んだBCCマルテンサイト結晶構造中に捕捉された水素による水素誘起低温割れを含む、いくつかの理由により発生する。溶接部に印加される引張応力は、割れのリスクを増大させる。溶接時に加えられる熱、接合部の拘束度、及びマルテンサイト変態時における体積変化による、熱誘起応力がある。
【0006】
ほとんどの形態の割れは、溶接金属が周囲温度に冷却される際に発生する、収縮歪みに起因する。収縮が制限されている場合、歪みは残留引張応力を誘発し、それは割れを発生させる。金属の収縮により誘起される応力、及び母材による周囲部の剛性という、2つの相反する力がある。大きな溶接サイズ、高い入力熱、及び深く浸透する溶接技法は、収縮歪みを増大させる。高張力の母材を使用した際には、これらの歪みにより誘起された応力は増大するだろう。降伏強度が高くなると、より大きな残留応力が発生するだろう。
【0007】
最近の、製品鋼の開発では、高合金(Cが0.3wt%を超える)マルテンサイト系第3世代AHSSグレード高が開発されてきている。このような鋼は、約2000MPa又はそれを超える(M2000)極限引張強さを有する。これらの製品は、鋳造、酸洗、及び焼鈍により製造することができる。残念ながら、現在利用可能な溶接技術は、そのような鋼のコイルを接合するのに大きな困難を伴うので、鋼のコイルは未だ連続焼鈍ラインで加工することができない。コイル端部を溶接した後、溶接部とその周囲領域は、完全にマルテンサイト構造に変換され、ナゲット内に多くの亀裂を有する非常に脆い溶接部となる。この脆い部分に少しでも負荷が印加されると、溶接部の破壊及びプラントの中断時間につながる。
【0008】
AHSSグレードのコイルのほとんどは、溶接後熱処理(PWHT)工程を使用して接合され、それにより、溶接部の靭性が増大する。現在は、鋼コイルを仕上圧延機(被覆、焼鈍など)内で溶接するのに、文献上では3種の利用可能な方法がある。本明細書で使用する場合、Ac1は、加熱時にオーステナイトの形成が開始される温度であり、及びAc3は、加熱時にフェライトからオーステナイトの変態が完了する温度である。マルテンサイト化反応は、冷却時に、オーステナイトがマルテンサイト開始温度(Ms)に到達すると開始され、親オーステナイトが機械的に不安定になる。Mfはマルテンサイト終了温度である。
【0009】
方法1は、「シングルパス溶接のみ法」として知られており、溶接後熱処理なしに溶接が行われる。
【0010】
方法2は、「シングルパス焼鈍法」として知られており、溶接後、直ちに焼鈍が行われる。この方法では、冷却が、Ar3(オーステナイト-フェライト変態温度)とMf(マルテンサイト終了温度)との間で制御される。
【0011】
方法3は、「ダブルパス・セカンドパスアニール」法として知られている。この方法では、溶接後の焼鈍が直ちに施されるのではなく、むしろ、溶接工程が終了した後に施される。一度、溶接温度がMs温度未満まで下がったのちに、溶接後熱処理(PWHT)が施される。
【0012】
M2000及び0.35C-0.6Mn-0.5Siのコイル端部を溶接するために、3つの先行技術全てを使用して、溶接試験を行った。0.35C-0.6Mn-0.5Siは、ホットプレス成型における熱処理後に、1800MPaを超える極限引張強さ(UTS)を得ることができる鋼である。残念ながら、これらの先行技術のいずれを使用しても、満足いく溶接靭性は達成できなかった。CCT(連続冷却温度)線図上における、M2000の相変態(フェライトーパーライト)曲線が、以前の世代のAHSSグレード鋼よりも、さらに右側に寄る。かくして、最終的な微細組織を、よりフェライトーパーライト微細組織に変態させるためには、溶接金属内で、高温がより長時間保持されなければならない。これは、連続生産において溶接に限られた時間しか利用できない、コイル接合を適用しても達成できない。方法1及び2では、脆く亀裂を生じやすい、大量のマルテンサイト相が生成する。方法3では、通常、溶接後に発生するマルテンサイト組織を焼戻すことで、高合金製品内に完全な接合部を生成する。しかしながら、この方法を使用すると、例えばM2000のような合金で、溶接直後にナゲット内に亀裂を生成し、重なり部の端部に空隙を作り出す。亀裂に富んだナゲット領域に溶接後焼鈍を施しても、役に立たない。
【0013】
これまでのところ、高炭素高合金鋼を接合するこれら3つの従来の方法を除いて、コイル接合用途でこの種の高合金鋼を溶接するための、利用可能な方法はなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かくして、当該分野において、最上の(prime-to-prime)M2000タイプの合金の端から端へ、十分に堅牢であり、連続焼鈍ラインを通じて製品を得られるような、完全な溶接部を生成する新規な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶接方法である。本方法は、
1)少なくとも0.45の炭素当量(Ceq)を有する組成を有する、焼入れ可能な鉄合金の第1の面を提供するステップ;
2)少なくとも0.45の炭素当量(Ceq)を有する組成を有する、焼入れ可能な鉄合金の第2の面を提供するステップ;
3)第1の面及び第2の面を重ね合わせることにより、重なり部を作製するステップ;
4)第1の面及び第2の面の温度を少なくとも合金の融点まで昇温させるために十分に高い温度において第1の面及び第2の面を加熱することにより、第1の面を第2の面に溶接し、溶接部を形成するステップ;
5)溶接部を、合金のAC3温度とMf温度との間まで冷却するステップ;
6)溶接部を加熱して、溶接部を少なくとも10C/秒の速度で、合金のMs温度とAc1温度との間の温度にまで加熱するステップ;
7)溶接部を、合金のMs温度未満まで冷却するステップ;
8)溶接部を少なくとも10C/秒の速度で加熱し、合金のMs温度とAc1温度との間の温度にするステップ;
9)溶接部を室温にまで冷却するステップ、
を含み、
Ceqは、以下のように定義され;
Ceq=C+A(C)*[Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/20+(Cr+Mo+Nb+V)/5+5B]、及び
A(C)=0.75+0.25tanh[20(C-0.12)];
元素C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、及びBのそれぞれの組成は、重量パーセントである、
方法である。
【0016】
第1の面及び第2の面の少なくとも一方は、少なくとも0.5の炭素当量(Ceq)を有する組成を有する、焼入れ可能な鉄合金で形成されていてよい。
【0017】
第1の面は、第1の鋼コイルの端部であってよく、及び第2の面は、第2の鋼コイルの端部であってよい。第1の面を第2の面に溶接するステップは、電気抵抗シーム溶接ステップを含んでよい。電気抵抗シーム溶接ステップは、中周波直流(MFDC)シーム溶接機を使用して行われてよい。中周波直流(MFDC)シーム溶接機は、溶接ホイール、及び溶接後誘導加熱装置を含んでいてもよい。
【0018】
シーム溶接機は、重なり部に亘り溶接機の2回のパスを使用して、溶接部を形成できる。2回のパスの第1のパスは、
1)溶接ホイールによって行われる、シーム溶接のステップ、及び
2)直後に、溶接後誘導加熱装置を使用して、シーム溶接部を焼鈍するステップ、
を含む。2回のパスの第2のパスは、
1)溶接ホイールを解放するステップ、及び
2)溶接後誘導加熱装置を使用して、溶接部を焼鈍するステップ、
を含む。
【0019】
溶接部は、少なくとも70%の、荷重率及び延性率を有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】受け取ったままの、冷間圧延後の硬質M2000鋼試料の微細組織を示す、1000倍の顕微鏡写真である。
【
図1B】受け取ったままの、冷間圧延後の硬質M2000鋼試料の微細組織を示す、3000倍の顕微鏡写真である。
【
図2】本発明の溶接方法を行うのに有用な、シーム溶接機の大まかな概略図である。
【
図4】鋼コイルストリップ1と2との間の溶接部の概略図であり、溶接線8が特に示されている。
【
図5A】先行技術の方法1を使用した、2つの硬質M2000鋼板との間のシーム溶接の、断面試料の顕微鏡写真である。
【
図5B】1000倍で撮影された、先行技術の方法1を使用した硬質M2000溶接部における、溶接ナゲット領域のSEM画像である。
【
図5C】1000倍で撮影された、先行技術の方法1を使用した硬質M2000溶接部における、溶接ナゲット領域のSEM画像である。
【
図6A】先行技術の方法2を使用して溶接されたナゲットの、試料全体を示す画像である。
【
図6B】先行技術の方法2を使用して溶接されたナゲットの、2500倍で撮影されたSEM顕微鏡画像である。
【
図7A】本発明の方法4を使用して溶接されたM2000試料の、SEM顕微鏡写真である。
【
図7B】本発明の方法4を使用して溶接されたM2000試料の、SEM顕微鏡写真である。
【
図8】4つの異なる方法を使用して溶接されたM2000の、オルセンカップ試験の結果をプロットしている。
【
図9A】本発明の溶接方法における、加熱/冷却サイクル対時間の、一般的な実施形態を描いている。
【
図9B】本発明の溶接方法4のフローチャートを描いている。
【
図10A】様々な合金グレードについて、Ceq(CEN)をプロットしている。
【
図10B】様々なCeqの鋼について、溶接性を示す表である。
【
図11A】先行技術の方法1を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図11B】先行技術の方法1を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図11C】先行技術の方法1を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図12A】先行技術の方法2を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図12B】先行技術の方法2を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図12C】先行技術の方法2を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図13A】先行技術の方法3を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図13B】先行技術の方法3を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図13C】先行技術の方法3を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図14A】先行技術の方法4を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図14B】先行技術の方法4を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図14C】先行技術の方法4を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
【
図15】4つの異なる方法を使用して溶接された0.35C-0.6Mn-0.5Siのオルセンカップ試験の結果を、プロットしている。
【
図16A】方法1についての、曲げ試験後の溶接ナゲットのマクロ写真である。
【
図16B】方法2についての、曲げ試験後の溶接ナゲットのマクロ写真である。
【
図16C】方法3についての、曲げ試験後の溶接ナゲットのマクロ写真である。
【
図16D】方法4についての、曲げ試験後の溶接ナゲットのマクロ写真である。
【実施例】
【0021】
<溶接技術試験及び実験の手順>
<M2000合金>
1.2mmの厚さを有する、冷間圧延された硬質M2000鋼試料を、溶接試験の母材(BM)として使用した。M2000鋼の、名目上の及び実際の化学組成、並びにそれらの炭素当量(Ceq)は、表1に示されている(合金は、Ti及び不可避不純物も含みうる)。受け取ったままの鋼の微細組織は、
図1A及び1B(それぞれ、1000倍、及び3000倍)に示されている。
【0022】
【0023】
硬質M2000は、フェライト相と、微細なパーライト相のみを含む。硬質M2000の機械的特性は、表2に示されている。冷間圧延された硬質M2000のUTSは、2000MPaUTS又はそれ超を達成することが要求される、焼鈍工程の後のそれのほとんど半分である。
【0024】
【0025】
<M2000の溶接における溶接方法の試験>
全ての溶接は、中周波直流(MFDC)抵抗シーム溶接機で作製される。そのようなシーム溶接機の大まかな概略図が、
図2に示されている。溶接機4が、2つの鋼(1及び2)コイルの端部を溶接するのに使用され、酸洗ライン、連続焼鈍ライン、連続亜鉛めっき/合金化溶融亜鉛めっきラインなどの、連続加工ラインを通じて連続して加工されうる。溶接機は、溶接ホイール5(鋼の上部に1つ、及び視認できない下部に1つ)からなる。溶接電流は、鋼板1及び2を通じて、溶接ホイール5の間を通過する。この電流は、抵抗加熱により鋼を加熱させる。この熱は、2つの鋼の界面において鋼を溶融させる。溶接機4は、
図2の矢印の方向に鋼を溶接する。鋼が電極ホイール5により加熱/溶接された後、溶融した鋼板は、後研磨ホイール6(上部に1つ、及び視認できない下部にもう1つ)によって、機械的にプレスされ一体となる。この力により、鋼板1、2の溶融した金属を一緒にし、1つの溶接シーム/ナゲットを形成する。これはまた、鋼の重なった端部を平坦にし、溶接界面において「段差」の外観がなくなる。最後に、溶接部を焼鈍するために、溶接機は溶接後電磁誘導加熱装置7を含む。溶接技術に応じて、電磁誘導加熱装置は電源オン-オフできることに留意されたい。
【0026】
溶接方法における3つの先行技術、及び本発明の溶接方法を、M2000、及び0.35C-0.6Mn-0.5Siの硬質鋼試料を溶接するのに使用した。溶接した試料の全ての、微細組織及び機械的特性を比較した。
【0027】
第1の先行技術の方法では、溶接機4は、シングルパス溶接のみを作製する。すなわち、焼鈍なしで、シングルパスで溶接がなされる(例えば、溶接後誘導加熱装置7は電源がオフである)。第2の先行技術の方法では、シングルパスで、溶接直後に焼鈍がなされる。すなわち、溶接後誘導加熱装置7は電源がオンであり、溶接ナゲットは、溶接後十分に冷却される時間の経過前に直接焼鈍される。第3の先行技術の方法は、いわゆるダブルパス法であり、溶接ナゲットを焼鈍するために第2のパスがなされる。この方法では、溶接がなされ、ストリップは、溶接部の温度がその鋼グレードのMs温度に降下するまで冷却され、その後、第2のパスで焼鈍が行われる。すなわち、第1のパスでは鋼板を一緒に溶接するが、溶接後誘導加熱装置7は電源がオフであり、したがって、溶接ナゲットの温度は、Mf温度又はそれ未満に降下する。その後、第2のパスでは、溶接機が取り外され、溶接後誘導加熱装置7の電源をオンにして、溶接ナゲットを焼鈍する。以下で見られるように、これら3つの先行技術の方法のいずれも、溶接接合部を連続加工ラインに通せるほど十分に、強度があり及び耐性がある溶接部を、うまく作製することができない。
【0028】
本発明者らは、新規な、第4の溶接技術を考案した。この技術は、デュアルパス法である。第1のパスでは溶接がなされ、その直後に第1のパス上で焼鈍される。すなわち、溶接後誘導加熱装置7は電源がオンであり、溶接ナゲットは、溶接後十分に冷却される時間の経過前に直接焼鈍される。第1のパスが終了すると、溶接金属は、鋼グレードのMs温度又はMf温度未満に冷却される。その後、第2のパスで、溶接機4は取り外され、溶接後誘導加熱装置7の電源をオンにして、溶接ナゲットを焼鈍する。表3は、中周波直流(MFDC)抵抗シーム溶接機を使用した、それぞれの溶接方法の溶接パラメータを開示する。斜線で区切られた2つの値があるが、値は、それぞれ第1のパス及び第2のパスを表す。
【0029】
【0030】
<溶接特性>
硬質M2000に施された4つの種類の溶接すべてについて、機械的特性及び微細組織が得られた。機械的特性は、ボール及びマイクロ硬さ試験で試験し、並びに組織は、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察した。メタログラフィーの試料は、標準的なメタログラフィーの技術を使用して、切り出し、載せ、及び1μmの仕上げに研磨した。試料を、2%のナイタールでエッチングして、微細組織を曝露させた。ビッカースマイクロ硬さプロファイルを、研磨及びエッチングした溶接部表面より取得した。硬さ測定の押し込み跡は、200gの圧子荷重と15秒の滞留時間を用いて作製された。押し込み跡は、お互いに干渉しないように十分に間隔を空けた。断面にわたって、50個の押し込み跡を取得した。
【0031】
25.4mm/分のパンチ速度を使用して、22.2mm直径のボール10で、試料上にオルセンカップ試験を実施した。
図3A及び3Bは、オルセンカップ試験の概略図である。
図3Aは試験開始直前のものであり、
図3Bは試験終了時のものである。試験は、試験試料上に亀裂が視認された時点で中断した。試験中断時点のパンチ高さを、限界ドーム高さ(LDH)として記載した。溶接部のLDHを母材のLDHで割ることで、溶接部のLDHを母材のLDHと比較し、それを延性率とする。荷重率を、ドームに破損が生じる前に記録されたものとしての、母材の最大荷重に対する溶接部の最大荷重の比として計算した。延性率及び荷重率として、望ましい最小値は70%である。
【0032】
図4は、鋼コイルストリップ1と鋼コイルストリップ2との間の、溶接部の概略図であり、溶接線8が示されている。5つの離れた箇所で、オルセンカップ試験を行った:11a)溶接機のライン作業員側;11b)ストリップの1/4の個所;11c)ストリップの中央;11d)ストリップの3/4の個所;及び11e)溶接機の駆動側。試験を行った箇所が、
図4に示されている。
【0033】
図5Aは、先行技術の溶接方法1(シングルパス、焼鈍なし)を使用して、2つの硬質M2000鋼板の間でシーム溶接を行った際の、断面試料のマクロ写真である。見られるように、溶接ナゲットは大きく長い亀裂12を有している。また、ノッチ13が開口しており、ノッチ付近に固体状態の結合は存在していない。かくして、荷重がかかった際の応力は、ナゲット付近で均一に配分されない。むしろ、応力は、ナゲットに集中する。
図5B及び5Cは、先行技術の溶接方法1を使用した、硬質M2000を溶接部の、溶接ナゲット領域を1000倍で撮影したSEM画像である。ここから、多数の微小な亀裂15を有する溶接微細組織中に、多くのラスマルテンサイト14が存在する、ほとんど100%のマルテンサイト相が存在することが見て取れる。
【0034】
抵抗シーム溶接(RSW)の用途において、溶接部の自然冷却速度は、1000℃/秒もの高さになり得、ほとんどの高炭素AHSSグレード中にマルテンサイト相を生成するのに十分な速さになる。
【0035】
以下で、溶接部の冷却中において熱的に誘発される応力により、溶接ナゲット中に亀裂を発生させる原因について述べる。金属板の接合面において溶融ナゲットが形成した後、熱伝導の効果によりナゲットの外層が急速に冷却される。かくして、溶接ナゲットの外層で、γ(FCC)からα
I(BCT)への相変態が発生し、それは結果としてナゲットの膨張となる。同様に、外層に近接する層でも同様の膨張効果を経て、結果的に、ナゲット全体が安定なマルテンサイト組織に変態する。それぞれの膨張過程において、縮小による収縮も発生する。溶接金属が室温にまで冷却されるにつれて、張力が発生する。こうした収縮が制限されている場合、張力は、残留応力を誘発し、亀裂を発生させる。かくして、膨張と収縮の効果が同時に起こることで、高炭素高合金鋼に亀裂を発生させる。
図5Aに示されるように、2つの鋼ストリップの間で重なった部分の端部で、間隙(ノッチ13)が存在する。この間隙は、M2000のスプリングバック効果、又は冷却中におけるナゲットの膨張により、発生したと考えられる。M2000のような金属は、通常、非常に高いスプリングバック効果を有する。かくして、溶接後、固化の段階において、溶接されたストリップは元の場所に戻ろうとし、ナゲットの領域に空隙及び亀裂を発生させる。一旦、熱的な応力、又は素材の高いスプリングバック効果により、星形の方向にマイクロクラックが生じると、鋼板のノッチ領域から開始した亀裂が、ナゲットの端部でマイクロクラックとぶつかり、ナゲット外表面に沿ってさらに伝播する。
【0036】
図6Aは、先行技術の溶接方法2(シングルパス溶接、及び直後の焼鈍)を使用して溶接した、溶接ナゲット試料全体を示す画像である。
図6Aから見られるように、亀裂は存在しない。また、溶接ナゲットを2500倍で撮影したSEM顕微鏡画像である、
図6Bの顕微鏡写真画像においても、亀裂は見られない。溶接方法2は、(焼鈍による)より緩慢な冷却速度のため、溶接部の冷却中に発生する亀裂を予防するのを助けているように見える。
図6Bは、方法2による溶接部が、ナゲットの中央において、フェライト(F)、パーライト(P)、及びマルテンサイト(M)組織を含んでいることを示している。M2000のCCT図を参照すると、溶接2の最終微細組織を理解することができる。シングルパス・シングルアニール法においては、溶接と溶接領域の焼鈍との間に、数秒の遅れが存在する。かくして、溶接部の冷却中に、溶接ナゲット温度は、M2000のM
sとM
f温度との間にあったと考えられる。このことは、微細組織中にマルテンサイトの形跡が存在することによって、確認される。焼鈍工程の間、溶接ナゲットの温度は再び上昇し、M2000のAC
1温度(~760℃)をちょうど下回る。この温度では、残存するオーステナイトが、冷却中にフェライト相及びパーライト相に変態する。しかしながら、マルテンサイトの体積分率は、シングルパス焼鈍により溶接された試料が有する微細組織のそれより高く、そのため、溶接部の靭性が制限される(後に議論する)。
【0037】
溶接方法3の第1の溶接パスでは焼鈍を行わず、そのため、溶接方法3が方法1と溶接上同様の問題を生じることは、注目すべきである。かくして、溶接ナゲットは大きく長い亀裂及びノッチを有し、並びに亀裂に富んだ領域を焼鈍しても、亀裂の問題を緩和しない。
【0038】
図7A及び7Bは、本発明の溶接方法4(ダブルパス・ダブルアニーリング)で溶接した、M2000試料のSEM顕微鏡写真を示す。
図7Aに示されるように、本方法は、シングルパス焼鈍法(方法2)を同じステップを経るので、本溶接試料でも、クラックの存在しないナゲットを達成した。ナゲット領域がカーバイド(CB)の形成に富んでいることが、
図7Bから見て取れ、このことは、第2のパス焼鈍の間に、全てのマルテンサイトが焼戻しマルテンサイトに変態したことを意味する。さらに、第2のパス焼鈍により、第1のパスの溶接及び焼鈍の間に形成した全てのパーライトが、粗大パーライトに変態している。溶接微細組織が、粗大パーライト及び焼戻マルテンサイトを含んでいるので、溶接部の靭性が改善された。
【0039】
図8は、4つの異なる方法(M1、M2、M3、及びM4)を使用して溶接されたM2000に対する、オルセンカップ試験の結果を示す。特に、
図8は、M1~M3のそれぞれ2例ずつ、及びM4の3例につき、上記で定義された荷重率及び延性率をプロットしている。荷重率及び延性率は、溶接部が連続焼鈍ラインを損傷なしで通過するのに十分である程度に、溶接品質が完全なものであるべきことを考慮すると、70%超でなければならない。
図8から見られるように、方法1、2、及び3の溶接部は、所望の溶接品質の最小要求事項を満たしていない。しかしながら、対象的に、方法4を使用して製造した溶接部は、方法1、2、及び3を使用して溶接した試料と比較して、ほぼ2倍の溶接靭性を達成している。方法4を使用して溶接した試料の高い溶接靭性は、2つの要因による;
(1)亀裂のない溶接ナゲットが達成されたこと、及び
(2)焼き戻しマルテンサイト、及び粗大パーライトを有する微細組織が達成されたこと。
【0040】
本発明の溶接方法4(ダブルパス・ダブルアニーリング)において、第1の焼鈍は、溶接のすぐ直後に行われる。このことで、冷却速度が低下し、かくして亀裂の形成が防止される。第2の、重要な焼鈍により、脆弱なマルテンサイトを焼戻す。
【0041】
図9Aは、本発明の溶接方法における、加熱/冷却サイクル対時間の、一般的な実施形態を描いている。溶接部は、シーム溶接ステップからTi
1の温度まで、Vc
1の冷却速度で直接冷却される。ここで、Mf<Ti
1<AC
3である。その後、溶接部がT
1の温度まで、加熱速度VH
1で加熱される。ここで、Ms<T1<AC1である。その後、溶接部がTi
2の温度まで、冷却速度Vc
2で冷却される。ここで、Mf<Ti
2<Ac
1である。その後、溶接部がT
2の温度まで、加熱速度VH
2で再加熱される。ここで、Ms<T
2<Ac
1である。その後、溶接部は室温にまで空冷され(>10℃/秒)る。表4は、例として、合金M2000及び0.35C-0.6Mn-0.5Si合金の、温度(℃)及び加熱/冷却速度(℃/秒)を示す。
【0042】
【0043】
図9Bは、本発明の溶接方法4のフローチャートを描いている。最初に、2つの鋼部品を、好ましくは、電流溶接、例えば中周波直流(MFDC)抵抗シーム溶接などにより、互いにシーム溶接する。電流溶接が鋼の部品を接合するのに好ましい方法であるが、部品を共にシーム溶接するための任意の方法を使用することができる。一旦、溶接部が形成されると、溶接部は、溶接された特定の鋼のAc
3温度とM
f温度との間にある温度Ti
1まで、冷却速度Vc1で冷却される。その後、シーム溶接部は、Ac1温度未満でありしかしM
s温度を超える温度T
1まで、加熱速度VH
1で加熱される。次いで、シーム溶接部は、Mf温度とAc
1温度との間の温度T
2まで、冷却速度Vc
2で冷却される。次いで、シーム溶接部は、Ac
1温度未満でありしかしM
s温度を超える温度Tまで、加熱速度VH
2で再加熱される。最後に、シーム溶接部は、室温にまで、冷却速度>15℃/秒で空冷される。
【0044】
本発明者らは、本発明の方法4は、比較的高い炭素当量の組成を有する合金において、非常に有利であることを見出した。本発明者らは、Yuriokaらによって1983年に打ち立てられた炭素当量式を使用する。この炭素当量の等式は、有名なCEN(ここでは、Ceqと相互変換可能である)であり、ここで、
CEN=C+A(C)*[Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/20+(Cr+Mo+Nb+V)/5+5B]
式中、
A(C)=0.75+0.25tanh[20(C-0.12)]、
元素C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、及びBのそれぞれの組成は、重量パーセントである。
【0045】
本発明者らは、合金の炭素当量が増加するにつれ、溶接性が低下することを見出した。
図10Aは、様々な鋼合金グレードについて、Ceq(CEN)をプロットしている。
図10Bは、様々なCeqの鋼について、溶接性を示す表である。本溶接方法は、0.45以上のCeqを有する鋼を溶接するのに、最も有利に使用される。本発明の方法は、0.5以上のCeqを有する合金に対し、より有用である。前述の例のM2000合金のCeqは、名目上0.57である。以上から示されるように、本発明の方法は、0.5を超えるCeqを有するM2000合金に効果がある。
【0046】
<0.35C-0.6Mn-0.5Si>
過去に、多くの溶接の試みが、最上の硬質0.35C-0.6Mn-0.5Siに対して行われてきた。しかし、その試みのどれもが、結果として最上の溶接を成功裡に行えなかった。0.35C-0.6Mn-0.5Si及びM20000の化学及びCCTは近しいので、本発明者らは、本発明の溶接技術は、0.35C-0.6Mn-0.5Siにも効果があると考えた。本発明の溶接方法を、硬質0.35C-0.6Mn-0.5Siに対して試験した。本発明の溶接部の機械的特性及び微細組織並びに3つの先行技術の方法のそれらを、以下に議論する。
【0047】
0.35C-0.6Mn-0.5Si鋼の化学組成、及び炭素当量(Ceq)を、表5に示す。
【0048】
【0049】
硬質0.35C-0.6Mn-0.5Siの機械的特性を、表6に示す。M2000と同様に、冷間圧延された硬質0.35C-0.6Mn-0.5Siの極限引張強さ(UTS)は、1800MPa又はそれ超を達成することが要求される、焼鈍工程の後のそれのほとんど半分である。
【0050】
【0051】
0.35C-0.6Mn-0.5Si鋼の最上の溶接は、3つの先行技術の溶接技術及び本発明の溶接方法4を使用して行われた。
図11A~11Cは、先行技術の方法1を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
図11Aは、溶接ナゲット中の、巨視的な亀裂12を示す、溶接部のマクロ写真である。
図11Bは、微視的な亀裂15を示す、2000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
図11Cは、ラスマルテンサイト14を示す、5000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
【0052】
図12A~12Cは、先行技術の方法2を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
図12Aは、溶接ナゲット中に視認できる巨視的な亀裂のないことを示す、溶接部のマクロ写真である。
図12Bは、視認できる巨視的な亀裂のないことを示す、2000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
図12Cは、(オーステナイトに変換された後)「再形成」したマルテンサイト14’を示す、5000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
【0053】
図13A~13Cは、先行技術の方法3を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ写真/顕微鏡写真である。
図13Aは、溶接ナゲット中に視認できる巨視的な亀裂のないことを示す、溶接部のマクロ写真である。
図13Bは、微視的な亀裂15を示す、2000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
図13Cは、再形成したラスマルテンサイト14’を示す、5000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
【0054】
図14A~14Cは、本発明の方法4を使用した、0.35C-0.6Mn-0.5Siの溶接部のマクロ/顕微鏡写真である。
図14Aは、溶接ナゲット中に視認できる巨視的な亀裂のないことを示す、溶接部のマクロ写真である。
図14Bは、視認できる巨視的な亀裂のないことを示す、2000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
図14Cは、カーバイド(CB)の形成及び焼戻しマルテンサイトTM示す、5000倍に拡大した溶接ナゲットの顕微鏡写真である。
【0055】
溶接部の形成後、それぞれの溶接部をオルセンカップ試験に供し、溶接部が連続加工ラインを通せるほど十分に高い品質であるかを決定した。
図15は、4つの異なる方法(M1、M2、M3,及びM4)を使用して溶接された0.35C-0.6Mn-0.5Siに対する、オルセンカップ試験の結果を示す。具体的には、
図15は、M1~M4のそれぞれ3例ずつにつき、上に定義した荷重率及び延性率をプロットしている。荷重率及び延性率は、溶接部が連続焼鈍ラインを損傷なしで通過するのに十分である程度に、溶接品質が完全なものであるべきことを考慮すると、70%超でなければならない。
図15から見られるように、方法1、2、及び3の方法による溶接部は、所望の溶接品質の最小要求事項を満たしていない。本発明の溶接方法(M4)を使用して溶接した試料は、~100%の延性率(溶接部の、母材金属(BM)の変位に対する比)、及び~100%の荷重率(溶接部の、母材金属破壊荷重に対する比)を示し、これは、所望の品質である最小の所望の値(70%)を十分に超えている。
【0056】
図16A~16Dは、方法1~4それぞれに対して試験した後の、溶接ナゲットのマクロ写真である。
図16Aは、先行技術の方法1により製造した溶接ナゲットに、溶接ナゲットを通じて伝播している、微視的な亀裂12’が発達していることを示す。この溶接部は、所望の品質ではなく、連続加工ラインを通過する際に失敗するだろう。
図16Bは、先行技術の方法2により製造した溶接ナゲットに、溶接ナゲットを通じて伝播している、微視的な亀裂12’が発達していることを示す。この溶接部もまた、所望の品質ではなく、連続加工ラインを通過する際に失敗するだろう。
図16Cは、先行技術の方法3により製造した溶接ナゲットに、溶接ナゲットを通じて伝播している、微視的な亀裂12’が発達していることを示す。またもや、この溶接部も、所望の品質ではなく、連続加工ラインを通過する際に失敗するだろう。最後に、
図16Dは、本発明の方法4により製造した溶接ナゲットを示す。巨視的な亀裂12’’が形成されたが、これは溶接ナゲットを通じて伝播していない。この溶接部は、所望の品質を達成し、連続加工ラインを通過する際に失敗しないだろう。
【国際調査報告】