(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】高複雑性合成腸細菌群集
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220131BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220131BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20220131BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220131BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220131BHJP
C12R 1/145 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61P1/00
A61K35/741
A61P31/04
A61P1/16
C12R1:145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528361
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 US2019062689
(87)【国際公開番号】W WO2020106999
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520091661
【氏名又は名称】チャン ザッカーバーグ バイオハブ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュバック, マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブランボー, エーリエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, アリス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ドッド, ディラン
(72)【発明者】
【氏名】ソネンバーグ, ジャスティン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ファング, カーウィン シー.
(72)【発明者】
【氏名】アランダ-ディアス, アンドレス ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンボトム, スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, フェイチャオ ブライアン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA21X
4B065AA23X
4B065AC20
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087MA52
4C087MA59
4C087MA60
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、実質的生着を達成し、ヒト便群集微生物曝露後に安定性を有することが可能な、高複雑性の定義された腸微生物群集、およびこれを生成する方法を提供する。また、動物における腸内毒素症または病態の処置に高複雑性の定義された腸微生物群集を使用する方法を提供する。複数の40~500の間の定義された微生物株を含む、高複雑性の定義された腸微生物群集であって、定義された腸微生物群集が、ノトバイオートマウスに投与される場合、実質的生着を達成し、生着した定義された腸微生物群集が、ヒト便群集微生物曝露後に安定である、高複雑性の定義された腸微生物群集を本明細書において開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の40~500の間の定義された微生物株を含む、高複雑性の定義された腸微生物群集であって、
前記定義された腸微生物群集が、ノトバイオートマウスに投与される場合、実質的生着を達成し、
前記生着した定義された腸微生物群集が、ヒト便群集微生物曝露後に安定である、高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項2】
群集安定性が、前記定義された微生物株の最大10%が前記微生物曝露後にドロップアウトすることにより特徴付けられる、請求項1に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項3】
群集安定性が、前記ヒト便群集に起因する新たな株の出現の最大10%が前記微生物曝露後に現れることにより特徴付けられる、請求項1または2に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項4】
前記定義された微生物株の少なくとも50%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項1に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項5】
前記定義された微生物株の少なくとも60%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項4に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項6】
前記定義された微生物株の少なくとも70%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項5に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項7】
前記定義された微生物株の少なくとも80%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項6に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項8】
前記定義された微生物株の少なくとも90%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項7に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項9】
前記定義された微生物株の少なくとも95%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項8に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項10】
前記定義された微生物株の少なくとも99%が、前記微生物曝露後に検出可能である、請求項9に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項11】
群集安定性が、前記微生物曝露後の前記マウスから得られた便試料のメタゲノム解析により特徴付けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項12】
メタゲノム解析が、全ゲノム配列決定、リボソーム遺伝子配列決定、またはリボソームRNA配列決定から選択される、請求項11に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項13】
全ゲノム配列決定が、全ゲノムショットガン配列決定である、請求項12に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項14】
前記定義された腸微生物群集が、100~200の間の定義された微生物株を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項15】
前記定義された腸微生物群集が、100~130の間の定義された微生物株を含む、請求項14に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項16】
定義された各微生物株が、分子的に同定される、請求項1から15のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項17】
前記分子同定が、前記定義された微生物株のそれぞれを独自に同定する核酸配列の同定を含む、請求項16に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項18】
前記核酸配列が、16S rRNA配列を含む、請求項17に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項19】
前記核酸配列が、全ゲノム配列を含む、請求項17に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項20】
前記分子同定が、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析を含む、請求項16に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項21】
持続性Clostridium difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、前記定義された腸微生物群集が、糞便1μlあたりのC.difficileのコロニー形成単位(cfu)数を少なくとも1~2log減少させる、請求項1から19のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項22】
持続性C.difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、前記定義された腸微生物群集が、糞便1μlあたりのC.difficileのcfu数を少なくとも2~3log減少させる、請求項21に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項23】
持続性C.difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、前記定義された腸微生物群集が、糞便1μlあたりのC.difficileのcfu数を少なくとも3~4log減少させる、請求項22に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項24】
持続性C.difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、前記定義された腸微生物群集が、糞便1μlあたりのC.difficileのcfu数を少なくとも4~5log減少させる、請求項23に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項25】
持続性C.difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、前記定義された腸微生物群集が、糞便1μlあたりのC.difficileのcfu数を少なくとも5~6log減少させる、請求項24に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項26】
前記定義された腸微生物群集が、前記マウスの糞便に存在する胆汁酸のプロファイルを、同質遺伝子ノトバイオート対照マウスと比較して有意に変更する、請求項1から25のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項27】
前記定義された腸微生物群集が、前記マウスの糞便に存在する胆汁酸の濃度を、同質遺伝子ノトバイオート対照マウスと比較して有意に変更する、請求項1から26のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項28】
前記胆汁酸が、Tβ-MCA、Tα-MCA、TUDCA、THDCA、TCA、7β-CA、7-oxo-CA、TCDCA、Tω-MCA、TDCA、α-MCA、β-MCA、ω-MCA、Muro-CA、d4-CA、CA、TLCA、UDCA、HDCA、CDCA、DCAおよびLCAからなる群から選択される、請求項26または27に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項29】
前記定義された腸微生物群集が、前記マウスの尿における1つまたは複数の代謝物の濃度を、同質遺伝子ノトバイオート対照マウスと比較して有意に変更する、請求項1から28のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項30】
前記1つまたは複数の代謝物が、4-ヒドロキシ安息香酸、L-チロシン、4-ヒドロキシフェニル酢酸、DL-p-ヒドロキシフェニル乳酸、p-クマル酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)ピルビン酸、インドール-3-カルボン酸、チラミン、L-フェニルアラニン、フェニル酢酸、3-インドール酢酸、DL-3-フェニル乳酸、L-トリプトファン、DL-インドール-3-乳酸、フェニルピルビン酸、trans-3-インドールアクリル酸、3-インドールピルビン酸、3-インドールプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、trans-桂皮酸、トリプタミン、フェノール、インドール-3-カルボキシアルデヒド、p-クレゾール、インドール、4-ビニルフェノール、および4-エチルフェノールからなる群から選択される、請求項29に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項31】
前記定義された微生物株の1つまたは複数が、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO
2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生からなる群から選択される少なくとも2種の代謝表現型を有する、請求項1から30のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項32】
前記定義された微生物株の1つまたは複数が、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO
2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生からなる群から選択される少なくとも3種の代謝表現型を有する、請求項31に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項33】
前記定義された微生物株の1つまたは複数が、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO
2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生からなる群から選択される少なくとも5種の代謝表現型を有する、請求項32に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項34】
前記定義された微生物株の1つまたは複数が、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO
2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生からなる群から選択される少なくとも10種の代謝表現型を有する、請求項33に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項35】
前記定義された微生物株の1つまたは複数が、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO
2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生からなる群からのすべての代謝表現型を有する、請求項34に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項36】
前記定義された微生物株が、Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes putredinis DSM 17216、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium adolescentis L2-32、Bifidobacterium breve DSM 20213、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium longum infantis ATCC 55813、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Bryantella formatexigens DSM 14469、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Clostridium sporogenes ATCC 15579、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dialister invisus DSM 15470、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Lactococcus lactis subsp.lactis Il1403 -> sub DSMZ 20729、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Olsenella uli DSM 7084、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii L2-32、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum variabile DSM 15176、Veillonella dispar ATCC 17748、Veillonella sp.3_1_44 HM 64、およびVeillonella sp.6_1_27 HM 49を含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項37】
前記定義された微生物株が、Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes putredinis DSM 17216、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium adolescentis L2-32、Bifidobacterium breve DSM 20213、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium longum infantis ATCC 55813、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Bryantella formatexigens DSM 14469、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Clostridium sporogenes ATCC 15579、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dialister invisus DSM 15470、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Lactococcus lactis subsp.lactis Il1403 -> sub DSMZ 20729、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Olsenella uli DSM 7084、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii L2-32、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum variabile DSM 15176、Veillonella dispar ATCC 17748、Veillonella sp.3_1_44 HM 64、およびVeillonella sp.6_1_27 HM 49からなる、請求項36に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項38】
前記定義された微生物株が、Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Adlercreutzia equolifaciens DSM 19450、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes finegoldii DSM 17242、Alistipes ihumii AP11、Alistipes indistinctus YIT 12060/DSM 22520、Alistipes onderdonkii DSM 19147、Alistipes putredinis DSM 17216、Alistipes senegalensis JC50/DSM 25460、Alistipes shahii WAL 8301/DSM 19121、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides rodentium DSM 26882、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis、ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Bilophila wadsworthia ATCC 49260、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Blautia sp.KLE 1732(HM 1032)、Blautia wexlerae DSM 19850、Bryantella formatexigens DSM 14469、Burkholderiales bacterium 1_1_47、Butyricimonas virosa DSM 23226、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridiales bacterium VE202-03、Clostridiales bacterium VE202-14、Clostridiales bacterium VE202-27、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.ATCC 29733 VPI C48-50、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Intestinimonas butyriciproducens DSM 26588、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Odoribacter splanchnicus DSM 20712、Olsenella uli DSM 7084、Oscillibacter sp.KLE 1728、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii ATCC、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gauvreauii DSM 19829、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Subdoligranulum variabile DSM 15176、およびVeillonella dispar ATCC 17748を含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項39】
前記定義された微生物株が、Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Adlercreutzia equolifaciens DSM 19450、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes finegoldii DSM 17242、Alistipes ihumii AP11、Alistipes indistinctus YIT 12060/DSM 22520、Alistipes onderdonkii DSM 19147、Alistipes putredinis DSM 17216、Alistipes senegalensis JC50/DSM 25460、Alistipes shahii WAL 8301/DSM 19121、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides rodentium DSM 26882、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis、ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Bilophila wadsworthia ATCC 49260、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Blautia sp.KLE 1732(HM 1032)、Blautia wexlerae DSM 19850、Bryantella formatexigens DSM 14469、Burkholderiales bacterium 1_1_47、Butyricimonas virosa DSM 23226、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridiales bacterium VE202-03、Clostridiales bacterium VE202-14、Clostridiales bacterium VE202-27、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.ATCC 29733 VPI C48-50、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Intestinimonas butyriciproducens DSM 26588、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Odoribacter splanchnicus DSM 20712、Olsenella uli DSM 7084、Oscillibacter sp.KLE 1728、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii ATCC、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gauvreauii DSM 19829、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Subdoligranulum variabile DSM 15176、およびVeillonella dispar ATCC 17748からなる、請求項38に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集を投与するステップを含む、腸内毒素症または病態を有する動物を処置する方法。
【請求項41】
前記動物が、哺乳動物である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記動物が、ヒトである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記腸内毒素症または病態が、持続性C.difficile感染症である、請求項40から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記腸内毒素症または病態が、胆汁うっ滞性疾患である、請求項40から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記胆汁うっ滞性疾患が、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性胆管炎、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、および非アルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記高複雑性の定義された腸微生物群集が、経口、直腸、便(浣腸による)、および経鼻/経口胃管栄養法からなる群から選択される経路を介して投与される、請求項40から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記複数の定義された微生物株のそれぞれを個別に培養し、次いで、組み合わせて前記定義された腸微生物群集を形成させる、請求項1から39のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集を作製する方法。
【請求項48】
前記複数の定義された微生物株のすべてを一緒に培養して前記定義された腸微生物群集を形成させる、請求項1から39のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集を作製する方法。
【請求項49】
前記複数の定義された微生物株の1つまたは複数を個別に培養し、前記定義された微生物株の2つまたはこれよりも多くを一緒に培養し、前記個別に培養した定義された微生物株および前記共培養した定義された微生物株を一緒に組み合わせて前記定義された腸微生物群集を形成させる、請求項1から39のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集を作製する方法。
【請求項50】
請求項1から39のいずれか一項に記載の高複雑性の定義された腸微生物群集および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む製剤。
【請求項51】
高複雑性の定義された腸微生物群集をin vivoでのバックフィルにより生成する方法であって、in vivoでのバックフィルが、
i)複数の定義された微生物株を組み合わせるステップと、
ii)前記組み合わせた複数の定義された微生物株を動物の腸内に生着させて、生着動物を生成するステップと、
iii)前記生着動物にヒト便試料を曝露するステップと、
iv)前記ヒト便試料の微生物株による前記動物の腸内コロニー形成に十分な時間、前記曝露した生着動物を維持し、これにより前記動物の腸において腸内群集を生成するステップと、
v)前記腸内群集の微生物株をメタゲノム解析により同定するステップと、
vi)前記腸内群集を構成する前記微生物株と、前記組み合わせた複数の定義された微生物株を構成する前記微生物株との間の差が存在するかどうかを同定するステップと、
vii)前記腸内群集を構成する前記微生物株と、前記組み合わせた複数の定義された微生物株を構成する前記微生物株との間の有意差が存在する場合、ステップi)に存在しなかった1つもしくは1つよりも多い追加の定義された微生物株を、前記組み合わせた複数の定義された微生物株に加えるか、またはステップi)の前記組み合わせた複数の定義された微生物株に存在していた定義された微生物株を除去して、修飾した、組み合わせた複数の定義された微生物株を生成し、前記修飾した、組み合わせた複数の定義された微生物株を、前記組み合わせた複数の定義された微生物株として使用して、まったく生着していない動物においてステップii)~vi)を繰り返すステップと
を含み、最小限の差が存在する場合、最終ステップvii)の前記修飾した定義された微生物群集が、高複雑性の定義された腸微生物群集である、方法。
【請求項52】
ステップi)が、フルクタン、イヌリン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、グルコマンナン、βマンナン、デキストラン、デンプン、アラビナン、キシログルカン、ガラクツロナン、βグルカン、ガラクトマンナン、ラムノガラクツロナンI、ラムノガラクツロナンII、アラビノガラクタン、ムチンO結合型グリカン、酵母αマンナン、酵母βグルカン、キチン、アルギン酸、ポルフィリン、ラミナリン、カラギーナン、アガロース、アルテルナン、レバン、キサンタンガム、ガラクトオリゴ糖、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グリシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン、アルギニン、セリン、メチオニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、カルニチン、ヒドロキシプロリン、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸、コレステロール、桂皮酸、クマル酸、シナピン酸、フェルラ酸、カフェー酸、キナ酸、クロロゲン酸、カテキン、エピカテキン、没食子酸、ピロガロール、カテコール、ケルセチン、ミリセチン、カンフェロール、ルテオリン、アピゲニン、ナリンゲニン、およびヘスペリジンからなる群から選択される基質を変換する能力を有する1つまたは1つよりも多い定義された微生物株を組み合わせるステップを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組み合わせた複数の定義された微生物株が、請求項52に列挙する基質の少なくとも60種を代謝することが可能である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記組み合わせた複数の定義された微生物株が、請求項52に列挙する基質の少なくとも70種を代謝することが可能である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組み合わせた複数の定義された微生物株が、請求項52に列挙する基質の少なくとも80種を代謝することが可能である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記組み合わせた複数の定義された微生物株が、請求項52に列挙する基質のすべてを代謝することが可能である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
viii)持続性C.difficile感染症を有する動物から得られた糞便試料についてC.difficileのプレートカウントを実施するステップと、
ix)前記高複雑性の定義された腸微生物群集を、前記持続性C.difficile感染症を有する前記動物の腸内に生着させて、生着感染動物を生成するステップと、
x)前記高複雑性の定義された腸微生物群集の微生物株による腸内コロニー形成に十分な時間、前記生着感染動物を維持し、これにより前記生着感染動物の腸において生着感染群集を生成するステップと、
xi)前記生着感染動物から得られた糞便試料について、追加のC.difficileのプレートカウントを実施するステップと、
xii)ステップxi)の前記プレートカウントから得られたC.difficileのCFU数が、ステップviii)の前記プレートカウントから得られたC.difficileのCFU数よりも有意には少なくない場合、ステップix)に存在しなかった1つまたは1つよりも多い追加の定義された微生物株を、前記高複雑性の定義された腸微生物群集に加えて、修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集を生成し、前記修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集を前記高複雑性の定義された腸微生物群集として使用して、まったく生着していない、持続性C.difficile感染症を有する動物においてステップviii)~xi)を繰り返すステップと
をさらに含み、ステップxi)の前記プレートカウントから得られたC.difficileのCFU数における統計学的に有意な減少が、ステップviii)の前記プレートカウントから得られたC.difficileのCFU数と比較して存在する場合、最終ステップxi)の前記修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集が、最終の高複雑性の定義された腸微生物群集である、請求項51から56のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援による研究開発の下になされた発明の権利に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(NIH)による助成金番号:DK113598の下、政府の支援により行われた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2018年11月21日出願の米国特許仮出願第62/770,706号の利益および優先権を主張し、この開示は、すべての目的のために、この全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
便微生物叢移植(FMT)は、再発性C.difficile感染症(CDI)のような症状の処置に高度に有効であると判明した有望な治療アプローチである。糞便使用の不都合を回避するために、Allen-VercoeおよびPetrofは、分離菌のサブセットから開発した合成細菌生態系33株を使用した、再発性CDIの処置を提唱した。Allen-Vercoe, E. and Petrof, EO, 2013, ”Artificial stool transplantation: progress towards a safer, more effective and acceptable alternative,” Expert Rev. Gastroenterol. Hepatol. 7(4), 291-293 (2013);国際公開第2013/037068号明細書。
【0004】
FMTは、患者の血流、尿、胆汁および/または便中の多様な代謝物を、腸細菌群集の分子出力を操作することにより変化させる治療介入として、Fischbach他により提唱されている。Dodd et al., 2017, ”A gut bacterial pathway metabolizes aromatic amino acids into nine circulating metabolites,” Nature 551: 648-652;Fischbach MA, 2018, ”Microbiome: Focus on Causation and Mechanism,” Cell 174(4):785-790。
FMTは、治療手法として非常に有望であるが、所望の活性を有する治療薬を開発するためのより良い方法として、移植可能なより良い組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Allen-Vercoe, E. and Petrof, EO, 2013, ”Artificial stool transplantation: progress towards a safer, more effective and acceptable alternative,” Expert Rev. Gastroenterol. Hepatol. 7(4), 291-293 (2013)
【非特許文献2】Dodd et al., 2017, ”A gut bacterial pathway metabolizes aromatic amino acids into nine circulating metabolites,” Nature 551: 648-652
【非特許文献3】Fischbach MA, 2018, ”Microbiome: Focus on Causation and Mechanism,” Cell 174(4):785-790
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の40~500の間の定義された微生物株を含む、高複雑性の定義された腸微生物群集であって、定義された腸微生物群集が、ノトバイオートマウスに投与される場合、実質的生着を達成し、生着した定義された腸微生物群集が、ヒト便群集微生物曝露後に安定である、高複雑性の定義された腸微生物群集を本明細書において開示する。
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集の安定性は、定義された微生物株の最大10%が微生物曝露後にドロップアウトすること、および/またはヒト便群集に起因する新たな株の出現の最大10%が微生物曝露後に現れることにより特徴付けられる。
【0008】
一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集の定義された微生物株の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%が、微生物曝露後に検出可能である。
【0009】
一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集の安定性は、微生物曝露後のマウスから得られた便試料のメタゲノム解析により特徴付けられる。一部の実施形態では、メタゲノム解析は、全ゲノム配列決定、リボソーム遺伝子配列決定、またはリボソームRNA配列決定から選択される。特定の実施形態では、メタゲノム解析は、全ゲノムショットガン配列決定である。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集は、100~200の間または100~130の間の微生物株を含む。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集の定義された各微生物株は、分子的に同定される。一部の実施形態では、分子同定は、定義された微生物株のそれぞれを独自に同定する核酸配列の同定を含む。特定の実施形態では、分子同定は、16S rRNA核酸配列の同定または全ゲノム配列決定を含む。一部の実施形態では、分子同定は、定義された微生物種を独自に同定するマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析を含む。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集は、持続性Clostridium difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、糞便1μlあたりのC.difficileのコロニー形成単位(CFU)数を少なくとも1~2log、少なくとも2~3log、少なくとも3~4log、少なくとも4~5logまたは少なくとも5~6log減少させる。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集は、マウスの糞便に存在する胆汁酸のプロファイルおよび/または濃度を、同質遺伝子ノトバイオート対照マウスと比較して有意に変更する。特定の実施形態では、胆汁酸は、Tβ-MCA、Tα-MCA、TUDCA、THDCA、TCA、7β-CA、7-oxo-CA、TCDCA、Tω-MCA、TDCA、α-MCA、β-MCA、ω-MCA、Muro-CA、d4-CA、CA、TLCA、UDCA、HDCA、CDCA、DCAおよびLCAからなる群から選択される。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集は、マウスの尿、血液または糞便における1つまたは複数の代謝物の濃度を、同質遺伝子ノトバイオート対照マウスと比較して有意に変更する。特定の実施形態では、代謝物は、4-ヒドロキシ安息香酸、L-チロシン、4-ヒドロキシフェニル酢酸、DL-p-ヒドロキシフェニル乳酸、p-クマル酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)ピルビン酸、インドール-3-カルボン酸、チラミン、L-フェニルアラニン、フェニル酢酸、3-インドール酢酸、DL-3-フェニル乳酸、L-トリプトファン、DL-インドール-3-乳酸、フェニルピルビン酸、trans-3-インドールアクリル酸、3-インドールピルビン酸、3-インドールプロピオン酸(indolepyropionic acid)、3-フェニルプロピオン酸(phenylproprionic acid)、trans-桂皮酸、トリプタミン、フェノール、インドール-3-カルボキシアルデヒド、p-クレゾール、インドール、4-ビニルフェノール、および4-エチルフェノールからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集の定義された微生物株の1つまたは複数は、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生からなる群から選択される、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも5種、少なくとも10種、または少なくとも13種の代謝表現型を有する。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集の定義された微生物株は、Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes putredinis DSM 17216、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium adolescentis L2-32、Bifidobacterium breve DSM 20213、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium longum infantis ATCC 55813、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Bryantella formatexigens DSM 14469、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Clostridium sporogenes ATCC 15579、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dialister invisus DSM 15470、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Lactococcus lactis subsp.lactis Il1403 -> sub DSMZ 20729、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Olsenella uli DSM 7084、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii L2-32、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum variabile DSM 15176、Veillonella dispar ATCC 17748、Veillonella sp.3_1_44 HM 64、およびVeillonella sp.6_1_27 HM 49を含むか、またはこれらからなる。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集の定義された微生物株は、Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Adlercreutzia equolifaciens DSM 19450、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes finegoldii DSM 17242、Alistipes ihumii AP11、Alistipes indistinctus YIT 12060/DSM 22520、Alistipes onderdonkii DSM 19147、Alistipes putredinis DSM 17216、Alistipes senegalensis JC50/DSM 25460、Alistipes shahii WAL 8301/DSM 19121、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides rodentium DSM 26882、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis、ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Bilophila wadsworthia ATCC 49260、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Blautia sp.KLE 1732(HM 1032)、Blautia wexlerae DSM 19850、Bryantella formatexigens DSM 14469、Burkholderiales bacterium 1_1_47、Butyricimonas virosa DSM 23226、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridiales bacterium VE202-03、Clostridiales bacterium VE202-14、Clostridiales bacterium VE202-27、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.ATCC 29733 VPI C48-50、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Intestinimonas butyriciproducens DSM 26588、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Odoribacter splanchnicus DSM 20712、Olsenella uli DSM 7084、Oscillibacter sp.KLE 1728、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii ATCC、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gauvreauii DSM 19829、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Subdoligranulum variabile DSM 15176、およびVeillonella dispar ATCC 17748を含むか、またはこれらからなる。
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集を投与するステップを含む、腸内毒素症または病態を有する動物を処置する方法を提供する。特定の実施形態では、動物は、哺乳動物、より詳細には、ヒトである。
【0019】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集を投与することにより、持続性C.difficile感染症を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集を投与することにより、胆汁うっ滞性疾患を処置する方法を提供する。特定の実施形態では、胆汁うっ滞性疾患は、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性胆管炎、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、または非アルコール性脂肪性肝炎である。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集は、経口、直腸、便(浣腸による)、および経鼻/経口胃管栄養法からなる群から選択される経路を介して投与される。
【0021】
一部の実施形態では、複数の定義された微生物株のそれぞれは、個別に培養し、次いで、組み合わせて高複雑性の定義された腸微生物群集を形成させる。他の実施形態では、複数の定義された微生物株のすべては、一緒に培養して高複雑性の定義された腸微生物群集を形成させる。さらなる実施形態では、複数の定義された微生物株の1つまたは複数を個別に培養して、定義された微生物株の2つまたはこれよりも多くを一緒に培養し、個別に培養した定義された微生物株および共培養した定義された微生物株を、一緒に組み合わせて定義された腸微生物群集を形成させる。
【0022】
また、本開示は、本明細書において開示する高複雑性の定義された腸微生物群集および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む製剤を提供する。
【0023】
また、高複雑性の定義された腸微生物群集をin vivoでのバックフィルにより生成する方法であって、in vivoでのバックフィルが、
i)複数の定義された微生物株を組み合わせるステップと、
ii)組み合わせた複数の定義された微生物株を動物の腸内に生着させて、生着動物を生成するステップと、
iii)生着動物にヒト便試料を曝露するステップと、
iv)ヒト便試料の微生物株による動物の腸内コロニー形成に十分な時間、曝露した生着動物を維持し、これにより動物の腸において腸内群集を生成するステップと、
v)腸内群集の微生物株をメタゲノム解析により同定するステップと、
vi)腸内群集を構成する微生物株と、組み合わせた複数の定義された微生物株を構成する微生物株との間の差が存在するかどうかを同定するステップと、
vii)腸内群集を構成する微生物株と、組み合わせた複数の定義された微生物株を構成する微生物株との間の有意差が存在する場合、ステップi)に存在しなかった1つもしくは1つよりも多い追加の定義された微生物株を、組み合わせた複数の定義された微生物株に加えるか、またはステップi)の組み合わせた複数の定義された微生物株に存在していた定義された微生物株を除去して、修飾した、組み合わせた複数の定義された微生物株を生成し、修飾した、組み合わせた複数の定義された微生物株を、組み合わせた複数の定義された微生物株として使用して、まったく生着していない動物においてステップii)~vi)を繰り返すステップと
を含み、最小限の差が存在する場合、最終ステップvii)の修飾した定義された微生物群集が、高複雑性の定義された腸微生物群集である、方法を本明細書において開示する。
【0024】
特定の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生成する方法のステップi)は、フルクタン、イヌリン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、グルコマンナン、βマンナン、デキストラン、デンプン、アラビナン、キシログルカン、ガラクツロナン、βグルカン、ガラクトマンナン、ラムノガラクツロナンI、ラムノガラクツロナンII、アラビノガラクタン、ムチンO結合型グリカン、酵母αマンナン、酵母βグルカン、キチン、アルギン酸、ポルフィリン、ラミナリン、カラギーナン、アガロース、アルテルナン、レバン、キサンタンガム、ガラクトオリゴ糖、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グリシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン、アルギニン、セリン、メチオニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、カルニチン、ヒドロキシプロリン、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸、コレステロール、桂皮酸、クマル酸、シナピン酸、フェルラ酸、カフェー酸、キナ酸、クロロゲン酸、カテキン、エピカテキン、没食子酸、ピロガロール、カテコール、ケルセチン、ミリセチン、カンフェロール、ルテオリン、アピゲニン、ナリンゲニン、およびヘスペリジンからなる群から選択される基質を変換する能力を有する1つまたは1つよりも多い定義された微生物株を組み合わせるステップを含む。一部の実施形態では、組み合わせた複数の定義された微生物株は、上に列挙する基質の少なくとも2種、少なくとも4種、少なくとも8種、少なくとも12種、少なくとも24種、少なくとも30種、少なくとも40種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種またはすべてを代謝することが可能である。
【0025】
特定の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生成する方法は、
viii)持続性C.difficile感染症を有する動物から得られた糞便試料についてC.difficileのプレートカウントを実施するステップと、
ix)高複雑性の定義された腸微生物群集を、持続性C.difficile感染症を有する動物の腸内に生着させて、生着感染動物を生成するステップと、
x)高複雑性の定義された腸微生物群集の微生物株による腸内コロニー形成に十分な時間、生着感染動物を維持し、これにより生着感染動物の腸において生着感染群集を生成するステップと、
xi)生着感染動物から得られた糞便試料について、追加のC.difficileのプレートカウントを実施するステップと、
xii)ステップxi)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数が、ステップviii)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数よりも有意には少なくない場合、ステップix)に存在しなかった1つまたは1つよりも多い追加の定義された微生物株を、高複雑性の定義された腸微生物群集に加えて、修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集を生成し、修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集を高複雑性の定義された腸微生物群集として使用して、まったく生着していない、持続性C.difficile感染症を有する動物においてステップviii)~xi)を繰り返すステップと
をさらに含み、
ステップxi)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数における統計学的に有意な減少が、ステップviii)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数と比較して存在する場合、最終ステップxi)の修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集が、最終の高複雑性の定義された腸微生物群集である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、高複雑性の定義された腸微生物群集の調製に対するワークフローを例示する模式図である。
【0027】
【
図2】
図2は、高複雑性の定義された微生物群集によりコロニー形成させ、3名の異なるヒトドナーから調製した便試料を曝露したマウスにおける微生物株の相対的存在量を示すグラフである。
【0028】
【
図3】
図3Aは、ヒト便試料によりコロニー形成させ、C.difficileを接種し、高複雑性の定義された腸微生物群集で処置したノトバイオートマウスの処置スケジュールの模式図である。
図3Bは、
図3Aの処置スケジュールに従って処置したマウスの糞便におけるC.difficile濃度のドットプロットである。
【0029】
【
図4】
図4は、ヒト糞便試料または高複雑性の定義された腸微生物群集で処置したマウス由来の糞便(
図4A)および盲腸(
図4B)における胆汁酸濃度の棒グラフである。
【0030】
【
図5】
図5は、ヒト糞便試料または高複雑性の定義された腸微生物群集で処置したマウス由来の尿試料における代謝物濃度の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.定義
用語「a」および「an」は、本明細書において使用する場合、「1つまたは複数」を意味し、文脈上適切でない限り複数形を含む。
【0032】
本明細書において使用する場合、特定の腸微小生物の「存在量」は、個人の腸における個々の生物の数を指す。存在量は、全腸集団の割合(例えば、全腸集団に対する生物の数、全腸集団の量(mass)に対する生物の量)として記載し得る。
【0033】
本明細書において使用する場合、「動物」は、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集により処置する生物を指す。動物は、それらに限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)を含み、より好ましくは、ヒトを含む。
【0034】
本明細書において使用する場合、「腸内毒素症」は、正常な多様性および/または機能が撹乱されている動物の腸のミクロビオームの状態を指す。一部の例では、腸内毒素症は、腸微生物叢の多様性の低下、1つもしくは複数の病原体もしくは病原性共生生物の過多、または病原性共生体の存在に起因し得る。
【0035】
本明細書において使用する場合、用語「有効量」は、有益なまたは所望の結果を達成するのに十分な量を指す。
【0036】
本明細書において使用する場合、「ヒト化マウス」は、ヒト腸ミクロビオームを有するマウスを指す。ヒト化マウスは、マウスの腸フローラの除去(例えば、PEG-3350および電解液、例えば、GoLYTELY(登録商標)(BraintreeLaboratories,Inc.、Braintree、MA)の投与により)および/または広域スペクトル抗生物質の投与、ならびにヒトの便由来の微小生物の調製物を用いるマウスでのコロニー形成により生成することができる。また、ヒト化マウスは、ヒト便試料によりコロニー形成させたノトバイオートマウスを指すことができる。一部の実施形態では、ヒト化マウスの腸は、洗い流した後(例えば、PEG-3350の投与により)、本明細書において記載の高複雑性腸微生物群集を接種することができる。
【0037】
本明細書において使用する場合、「同質遺伝子ノトバイオート対照マウス」は、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集の投与を受けるマウスと同一の遺伝子型を共有するが、ビヒクル対照、または他の実験的陰性対照を投与される、実験対照として使用されるマウスを指す。
【0038】
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、標準的医薬担体、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液、水、乳濁液(例えば、油/水または水/油乳濁液等)および各種の湿潤剤のいずれかを指す。また、組成物は、安定剤および保存剤を含み得る。担体、安定剤、およびアジュバントの例としては、例えば、Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences, 15th Ed. Mack Publ. Co., Easton, PA [1975]を参照されたい。
【0039】
本明細書において使用する場合、腸微小生物の「保有率」は、生物がヒト腸において見出される頻度(例えば、集団における個体数)を指す。
【0040】
本明細書において使用する場合、「有意に」または「有意」は、統計学的に関連する適切な試験に従って決定した場合の統計学的に有意な程度の測定可能なパラメータにおける変化または変更を指す。例えば、一部の実施形態では、変化または変更は、例えば、ステューデントのt検定、カイ2乗、またはマン・ホイットニー検定に従って統計学的に有意である場合、有意である。
【0041】
本明細書において使用する場合、「最小限の差」は、統計学的に関連する適切な試験に従って決定した場合に統計学的に有意ではない程度の測定可能なパラメータにおける変化または変更を指す。例えば、一部の実施形態では、変化または変更は、例えば、ステューデントのt検定、カイ2乗、またはマン・ホイットニー検定に従って統計学的に有意ではない場合、最小限に異なる。
2.便微生物叢移植
【0042】
便微生物叢移植(FMT)は、その一般性を示唆する2つの点:1)急性有害事象率が非常に低く、この手法が一般に安全であると思われることを示唆する点、および2)生着プロセスを最適化するために協調努力がなされていなくても、特定の症状の処置に既に非常に上手く機能している点において注目すべきである。まとめると、このような知見は、反直観的に、ある単一群集が、数百万の患者の腸内に原理上は安定に移植可能であり、高複雑性の定義された腸微生物群集の投与が、腸に対する表面上は単純な撹乱(例えば、1つまたは少数の株の追加または除去)よりも安全かつ予想可能であり得ることを発明者らに示唆した。高複雑性の定義された腸微生物群集の投与が、微生物叢に関連するヒト生物学の制御に関して引くことができる最も大きな「手段(lever)」であるため、これは、刺激的なことである。しかし、現在の先行技術は、便移植であるが、規模を調整することができない。このため、一方では完全に定義され、他方では天然腸群集の複雑度に取り組む、移植可能な群集のデザインおよび集合を可能とする新たな技術が必要とされている。
3.微生物群集
【0043】
本明細書において使用する場合、「群集」または「微生物群集」は、複数の異なる微小生物、通常は、複数の異なる細菌株の物理的組合せを指し、1つまたは複数の株または古細菌を含む場合もある。天然に存在する腸ミクロビオームは、群集の1つの例である。実体(identity)が公知の株の人工的に作出した混合物は、群集の別の例である。定義された腸微生物群集は、群集のさらに別の例である。本明細書において使用する場合、「定義された腸微生物群集」は、各微生物株が分子的に同定されている、動物の腸における生着のための組み合わせた複数の微生物株を意味する。
【0044】
本明細書において使用する場合、「微生物株」は、微生物の型または亜型を指す。本明細書において使用する場合、「定義された微生物株」は、分子的に同定されている微生物株、例えば、全ゲノムが配列決定されている微生物株である。本明細書において使用する場合、「複数の定義された微生物株」は、2つまたはこれよりも多い別個の微生物種由来の2つまたはこれよりも多い微生物株を意味する。一部の実施形態では、多数の微生物株は複数形で単一の微生物種(single microbial species)を表し得る。
【0045】
本明細書において使用する場合、「複雑性」は、存在量にかかわらず、群集における株の数を意味する。50株を含む群集は、15株を含む群集よりも複雑である。本明細書において使用する場合、「高複雑性」は、定義された微生物株の少なくとも40株を有する群集を意味する。一部の実施形態では、高複雑性群集は、40~500の間、40~400の間、40~300の間、40~200の間、40~150の間、40~140の間、40~130の間、40~120の間、40~110の間、40~100の間、50~500の間、50~400の間、50~300の間、50~200の間、50~150の間、50~140の間、50~130の間、50~120の間、50~110の間、50~100の間、60~500の間、60~400の間、60~300の間、60~200の間、60~150の間、60~140の間、60~130の間、60~120の間、60~110の間、60~100の間、70~500の間、70~400の間、70~300の間、70~200の間、70~150の間、70~140の間、70~130の間、70~120の間、70~110の間、70~100の間、80~500の間、80~400の間、80~300の間、80~200の間、80~150の間、80~140の間、80~130の間、80~120の間、80~110の間、80~100の間、90~500の間、90~400の間、90~300の間、90~200の間、90~150の間、90~140の間、90~130の間、90~120の間、90~110の間、90~100の間、100~500の間、100~400の間、100~300の間、100~200の間、100~150の間、100~140の間、100~130の間、100~120の間、または100~110の間の定義された微生物株を含む。
3.1.微生物株および群集の培養
【0046】
本明細書において使用する場合、「培養する(culture)」(およびこの文法的変形、例えば、「培養した(cultured)」および「培養すること(culturing)」)は、液体培地中または固形培地上での微生物株または微生物群集の維持および/または成長を指す。例えば、一部の実施形態では、購入した微生物株の培養は、製造者の指示に従って実施する。
【0047】
本明細書において使用する場合、「アリコート」は、保存、培養、解析等のために他の集団から物理的に分離したin vitroでの細菌集団を指す。「アリコート」は、容器、区画、チューブ、マルチウェルプレートのウェル、クローン乳濁液、分離株のストックにおける別々の集団を指し得るか、または株の混合物、例えば、人工群集もしくは定義された腸微生物群集であり得る。
【0048】
特定の実施形態では、微生物株または微生物群集は、特別に調合した培地、例えば、以下の表1に記載するユニバーサル成長培地中で維持または成長させる。
表1
【表1-1】
【表1-2】
3.2.生着
【0049】
本明細書において使用する場合、「生着(engraftment)」(およびこの文法的変形、例えば、「生着する(engraft)」)は、動物の腸の1つまたは複数の微小環境において確立する微生物株または微生物群集の能力を指す。操作上、微生物株または微生物群集は、投与後この確立の証拠を得ることができる場合、「生着」する。一部の実施形態では、この証拠は、動物から得られた試料の分子同定(例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)、16S rRNA配列決定、またはゲノム配列決定)により得られる。一部の実施形態では、試料は、糞便試料である。一部の実施形態では、試料は、動物の腸から(例えば、動物の胃腸管に沿った部位から)採取した生検試料である。生着は、一過性であり得るか、または持続性であり得る。一部の実施形態では、一過性生着は、微生物株または微生物群集が、約1週間、約2週間、約3週間、約1カ月、約2カ月、約3カ月、約4カ月、約6カ月、約8カ月、約10カ月、約1年、約1.5年、または約2年経過後、これを投与した動物において、もはや検出不可能であることを意味する。
【0050】
本明細書において使用する場合、「実質的生着」は、動物(例えば、一部の実施形態では、ノトバイオートマウス)への微生物群集(例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集)の投与後であるが、任意の微生物群集への曝露(例えば、ヒト便群集微生物曝露)前に、定義された時点で、投与した定義された微生物株の少なくとも70%の生着の証拠を実証可能であることを指す。例えば、一部の実施形態では、実質的生着は、投与した定義された微生物株の少なくとも72%、少なくとも74%、少なくとも76%、少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%または100%が実証可能である場合、達成される。一部の実施形態では、このような証拠は、マウスから得られた糞便試料のメタゲノム解析により得られる。一部の実施形態では、「実質的生着」は、意図する代謝表現型が、投与後および微生物曝露前にレシピエントにおいて実証可能に存在する場合、達成される。一部の実施形態では、定義された時点は、1週間~52週間の間である。例えば、一部の実施形態では、定義された時点は、1週間~48週間の間、1週間~42週間の間、1週間~36週間の間、1週間~30週間の間、1週間~24週間の間、1週間~18週間の間、1週間~12週間の間、1週間~10週間の間、1週間~8週間の間、1週間~6週間の間、1週間~4週間の間、1週間~2週間の間、2週間~52週間の間、2週間~48週間の間、2週間~36週間の間、2週間~30週間の間、2週間~24週間の間、2週間~18週間の間、2週間~12週間の間、2週間~10週間の間、2週間~8週間の間、2週間~6週間の間、2週間~4週間の間、4週間~52週間の間、4週間~48週間の間、4週間~42週間の間、4週間~36週間の間、4週間~30週間の間、4週間~24週間の間、4週間~18週間の間、4週間~12週間の間、4週間~10週間の間、4週間~8週間の間、4週間~6週間の間、6週間~52週間の間、6週間~48週間の間、6週間~42週間の間、6週間~36週間の間、6週間~30週間の間、6週間~24週間の間、6週間~18週間の間、6週間~12週間の間、6週間~10週間の間、6週間~8週間の間、8週間~52週間の間、8週間~48週間の間、8週間~42週間の間、8週間~36週間の間、8週間~30週間の間、8週間~24週間の間、8週間~18週間の間、8週間~12週間の間、または8週間~10週間の間である。
3.3.安定性
【0051】
本明細書において使用する場合、「ヒト便群集微生物曝露」は、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集により、それまでにコロニー形成させた動物の腸内へのヒト糞便試料の投与を指す。
【0052】
一部の実施形態では、群集の安定性は、群集を構成する定義された微生物株が、微生物曝露後に動物の腸において存続する(すなわち、生着したままである)能力を指す。一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生着させた動物の腸における微生物曝露株のコロニー形成が可能となるのに十分な時間を考慮すると、安定な群集は、定義された微生物株の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%が、メタゲノム解析により検出可能である場合、安定な群集として定義することができる。例えば、一部の実施形態では、メタゲノム解析は、全ゲノムショットガン配列決定解析を含む。
【0053】
一部の実施形態では、安定性は、少なくとも1週間~52週間の間の範囲の時間で実証することができる。例えば、一部の実施形態では、安定性は、少なくとも1週間~48週間の間、1週間~42週間の間、1週間~36週間の間、1週間~30週間の間、1週間~24週間の間、1週間~18週間の間、1週間~12週間の間、1週間~10週間の間、1週間~8週間の間、1週間~6週間の間、1週間~4週間の間、1週間~2週間の間、2週間~52週間の間、2週間~48週間の間、2週間~36週間の間、2週間~30週間の間、2週間~24週間の間、2週間~18週間の間、2週間~12週間の間、2週間~10週間の間、2週間~8週間の間、2週間~6週間の間、2週間~4週間の間、4週間~52週間の間、4週間~48週間の間、4週間~42週間の間、4週間~36週間の間、4週間~30週間の間、4週間~24週間の間、4週間~18週間の間、4週間~12週間の間、4週間~10週間の間、4週間~8週間の間、4週間~6週間の間、6週間~52週間の間、6週間~48週間の間、6週間~42週間の間、6週間~36週間の間、6週間~30週間の間、6週間~24週間の間、6週間~18週間の間、6週間~12週間の間、6週間~10週間の間、6週間~8週間の間、8週間~52週間の間、8週間~48週間の間、8週間~42週間の間、8週間~36週間の間、8週間~30週間の間、8週間~24週間の間、8週間~18週間の間、8週間~12週間の間、または8週間~10週間の間の範囲の時間で実証することができる。
【0054】
他の実施形態では、群集の安定性は、群集を構成する定義された微生物株が、ある期間にわたって、または微生物曝露後に、代謝表現型を維持する特性を指す。例えば、一部の実施形態では、群集を構成する定義された微生物株は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも10カ月間、少なくもと1年間、少なくとも1.5年間、または少なくとも2年間、代謝表現型を維持することができる。
【0055】
一部の実施形態では、安定な群集は、群集を構成する定義された微生物株が、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、またはプロピオン酸産生の1つまたは複数の代謝表現型を、ある期間にわたって、または微生物曝露後に維持する場合、安定な群集として定義することができる。
【0056】
本明細書において使用する場合、「ドロップアウト」は、微生物群集における微生物株が、動物の腸内への投与後に安定には生着しない現象を指す。例えば、一部の実施形態では、定義された微生物株の最大10%が微生物曝露後にドロップアウトする場合、微生物群集は、安定である。一部の実施形態では、定義された微生物株の最大9%、最大8%、最大7%、最大6%、最大5%、最大4%、最大3%、最大2%または最大1%が微生物曝露後にドロップアウトする場合、微生物群集は、安定である。
【0057】
本明細書において使用する場合、「ジャンプイン」は、動物に投与される時点で微生物群集に存在しない微生物株が、動物の腸の1つまたは複数の微小環境内に安定に生着し、生着微生物群集の一部となる現象を指す。一部の実施形態では、ジャンプインする微生物株は、動物の腸共生レパートリー、便群集微生物曝露、または微生物群集の初回投与後の動物の腸内への投与に由来する。例えば、一部の実施形態では、新たな株の最大10%が微生物曝露(例えば、ヒト便群集微生物曝露)に起因する場合、微生物群集は、安定である。一部の実施形態では、新たな株の最大9%、最大8%、最大7%、最大6%、最大5%、最大4%、最大3%、最大2%または最大1%が微生物曝露に起因する場合、微生物群集は、安定である。
4.メタゲノム解析および分子同定
【0058】
本明細書において使用する場合、「メタゲノム解析」は、ミクロビオームまたは定義された腸微生物群集を解析するための超並列配列決定の使用を指す。本明細書において使用する場合、メタゲノム解析は、全ゲノム配列決定(例えば、一部の実施形態では、全ゲノムショットガン配列決定)、リボソーム遺伝子配列決定、rRNA配列決定または他の配列決定に基づく方法を含むが、これらに限定されない。例えば、Thomas et al., 2012, “Metagenomics - A guide from sampling to data analysis,” Microbial Informatics and Experimentation 2(1):3;Qin et al., 2009. “A human gut microbial gene catalogue established by metagenomic sequencing,” Nature 464 (7285): 59-65を参照されたい。例えば、一部の実施形態では、配列決定方法から得られたメタゲノム配列読取りデータ(すなわち、配列断片)は、腸群集を構成するすべての定義された微生物株の完全な配列決定ゲノムの包括的データベースに対してマッピングする。
【0059】
本明細書において使用する場合、「分子的に同定した(molecularly identified)」(およびこの文法的変形、例えば、「分子同定(molecular identification)」)は、独自の同定のための微生物種の特性決定を指す。一部の実施形態では、分子同定は、16S rRNA配列決定、全ゲノム配列決定、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)、またはある微生物種を別の微生物種から識別可能な類似の解析アッセイであり得る。一部の実施形態では、種同定は、株同定のレベルでなされる。一部の実施形態では、株同定は、全ゲノムショットガンメタゲノム配列決定により達成される。本明細書において使用する場合、全ゲノムショットガンメタゲノム配列決定は、ポリヌクレオチドを並行して、複数の微生物種を含む複雑な試料由来の複数のゲノム領域から高い配列カバー率で配列決定する方法を指す。
5.in vitro表現型および代謝表現型
【0060】
本明細書において使用する場合、「in vitro表現型」は、in vitroで測定可能な微生物群集の特性、例えば、代謝表現型を指す。一実施形態では、微生物群集は、動物の腸から回収する。一実施形態では、微生物群集は、便試料から回収する。一実施形態では、微生物群集は、人工群集または高複雑性の定義された腸微生物群集である。
【0061】
「代謝表現型」は、微生物株または微生物群集の特質である。一態様では、代謝表現型は、微生物株または微生物群集が、1つまたは複数の第1の化合物(複数可)を1つまたは複数の第2の化合物(複数可)に形質転換する能力を指す。一例では、第1の化合物は、微生物または群集により第2の化合物に酵素的に変換され、代謝表現型は、第2の化合物の量の増加である。一部の実施形態では、代謝表現型は、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生を含む。例えば、一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集の定義された微生物株の1つまたは複数は、上記の代謝表現型の少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、またはすべてを有する。
【0062】
一部の実施形態では、代謝表現型は、フルクタン、イヌリン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、グルコマンナン、βマンナン、デキストラン、デンプン、アラビナン、キシログルカン、ガラクツロナン、βグルカン、ガラクトマンナン、ラムノガラクツロナンI、ラムノガラクツロナンII、アラビノガラクタン、ムチンO結合型グリカン、酵母αマンナン、酵母βグルカン、キチン、アルギン酸、ポルフィリン、ラミナリン、カラギーナン、アガロース、アルテルナン、レバン、キサンタンガム、ガラクトオリゴ糖、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グリシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン、アルギニン、セリン、メチオニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、カルニチン、ヒドロキシプロリン、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸、コレステロール、桂皮酸、クマル酸、シナピン酸、フェルラ酸、カフェー酸、キナ酸、クロロゲン酸、カテキン、エピカテキン、没食子酸、ピロガロール、カテコール、ケルセチン、ミリセチン、カンフェロール、ルテオリン、アピゲニン、ナリンゲニン、および/またはヘスペリジンを変換する能力を含む。例えば、一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集の組み合わせた複数の定義された微生物株は、上記の化合物の少なくとも2種、少なくとも4種、少なくとも8種、少なくとも12種、少なくとも24種、少なくとも30種、少なくとも40種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種、またはすべてを代謝することが可能である。
6.微生物群集バックフィル
【0063】
本明細書では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生成するための「バックフィル」方法を記載する。バックフィル方法は、「in vitroでのバックフィル」および「in vivoでのバックフィル」を含む。in vitroでのバックフィルおよびin vivoでのバックフィルは、以下に記載するように組み合わせて使用し得る。一部の実施形態では、in vitroでのバックフィルのみを使用して群集を生成する。一部の実施形態では、in vivoでのバックフィルのみを実施して群集を生成する。また、本明細書では、このようなバックフィルプロセスにおいて使用するか、またはこれにより生成する、組成物を記載する。
【0064】
便宜上、用語「バックフィル」は、in vitroまたはin vivoでのバックフィルを行うプロセスを記載するために使用し、用語「バックフィル群集」は、バックフィルプロセスにより生成した群集を指す。
6.1 in vitroでのバックフィルによる複雑な群集の生成
【0065】
一態様では、本発明は、in vitroでのバックフィルにより、複雑な微生物群集を生成するステップを含む。1回または複数のラウンドのin vitroでのバックフィルにより生成した群集は、1回または複数のラウンドのin vivoでのバックフィルの出発ストックとして使用し得る。
6.2 微生物パントリー
【0066】
以下に考察するように、バックフィルプロセスは、個別に選択されたいくつかの細菌株を同一のアリコートにおいて組み合わせることにより人工群集を調製する、いくつかのステップを含む。本発明者らは、ヒトの腸において見出された生物109種の最初の収集物をデザインした(集団においてすこぶる優勢な細菌株104株および古細菌株4株を含む)。一態様では、本発明は、バックフィル方法を実行するための有用なツールとして、「微生物パントリー」、すなわち、アレイ、例えば、マルチウェルプレートの、クローン分離菌を含有するアリコートを提供し、この場合、表2のかなりの割合の株、例えば、少なくとも80株、少なくとも90株、少なくとも95株、または少なくとも100株がアレイのアリコートに含有される。一部の実施形態では、アレイは、マルチウェルプレートである。また、「パントリー」における個々の株の任意の組合せが、アリコートにおいて自動的ロボット制御により回収されて組み合わされ得る、系を企図する。したがって、一態様では、本発明は、細菌を移すためのコンピュータ制御下のアレイおよびロボットを含む系を含む。また、用語「微生物パントリー」は、表2に列挙する少なくともかなりの部分の株を、アレイに物理的に会合していなくても一緒に含有する、クローンアリコート(例えば、チューブ)のコレクションを指すことができるが、ただし、アリコートは、株のいかなる組合せも取得できるように、同一の位置に存在する。微生物パントリーは、典型的には使用まで凍結保存する。一部の場合では、微小生物は、芽胞として提供される。
表2:微生物パントリーの例となる株
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0067】
表2に列挙する株に加えて、天然に存在しない遺伝子改変生物を含む、他の細菌株(典型的には、嫌気性菌または通性嫌気性菌である)をバックフィル方法において使用し得ることを企図する。例となる遺伝子改変は、酵素コード遺伝子の変異またはノックアウトおよび異種遺伝子の発現を含むが、これらに限定されない。
6.3 第1のバックフィル群集
【0068】
バックフィルは、反復プロセスである。「第1のバックフィル群集」は、「足場群集」の株を「バックフィル株」と組み合わせることにより調製する。大まかに言って、かつ特定の機構に拘束されることを意図せずに、足場群集は、所望の代謝表現型をもたらすために選択された株の組合せである。バックフィル株は、第1のバックフィル群集のin vitroでの安定性に寄与し、生じる移植可能な群集のヒトの腸における安定性に寄与する株を含むように選択された株の組合せである。特定の機構に拘束されることを意図せずに、バックフィルプロセスにより群集の複雑度が上昇すること、および群集が高い複雑度を有するほど腸において、より微小環境に生息し、群集がより安定となる傾向を有することが考えられる。
6.4 足場群集
【0069】
足場群集は、ヒト腸ミクロビオームにおいて一般的な複数の株を含む。所与の足場群集は、5~100株、通常、10~30株を典型的に含む。足場群集は、表2に列挙する1つまたは複数の株、例えば、表2に列挙する少なくとも5株、少なくとも10株、少なくとも20株、少なくとも30株等を含み得る。一部のアプローチでは、足場群集における株の少なくとも50%、75%、90%またはすべてが、表2から選択される。
【0070】
足場群集は、所望の表現型、典型的には、所望の代謝表現型を示すように選択される。群集の「代謝表現型」は、上記のように、群集による代謝物の生成または消費を指す。例となる代謝表現型は、1つまたは複数の化合物の濃度を環境において微生物代謝プロセスの結果として上昇または低下させる能力である。例えば、Clostridium sporogenesを含む足場群集は、フェニルアラニンを消費してチロシンを産生することがあり、この場合、代謝表現型は、「チロシンを産生」し得る。同様に、Proteus mirabilisを、尿素を含有する環境において含む群集は、尿素の濃度を低下させてアンモニアの濃度を上昇させることがあり、Bacillus subtilisを、スクロースを含有する環境において含む群集は、スクロースの濃度を低下させてグルコースの濃度を上昇させ得る。しかし、重要なことには、このような単純な例示は、微生物生態系において生じる代謝プロセスを非常に単純化し過ぎる。例えば、微生物群集の第1のメンバーの代謝産物は、群集の第2のメンバーのための代謝基質であり得るか、または微生物群集のあるメンバーの代謝産物は、別の微生物における転写活性化因子であり得るか、もしくは他の微生物に対して有毒であり得る。数百の異なる株を含む複雑な微生物生態系では、存在する各種の実体が公知であっても、現在の方法を使用して、特定の微生物生態系の株、代謝物、および環境因子の相互作用のネットワークを正確に予想することは不可能である。さらに、微生物生態系が恒常状態にない限り、または恒常状態になるまで、集団における株の組合せは、不安定であり、予想不可能な方法で変化することがあり、これにより群集の代謝表現型が変化し得る。
6.5 バックフィル株の足場群集への追加による第1のin vitroバックフィル群集の作出
【0071】
第1のin vitroバックフィル群集を作出するために、デザインした足場群集に「バックフィル株」と呼ばれる追加の微生物株を補充する。例えば、各足場群集は、追加の株35~495種と組み合わせ得る。一部の実施形態では、各足場群集は、40~400の間、40~300の間、40~200の間、40~150の間、40~140の間、40~130の間、40~120の間、40~110の間、40~100の間、50~400の間、50~300の間、50~200の間、50~150の間、50~140の間、50~130の間、50~120の間、50~110の間、50~100の間、60~400の間、60~300の間、60~200の間、60~150の間、60~140の間、60~130の間、60~120の間、60~110の間、60~100の間、70~500の間、70~400の間、70~300の間、70~200の間、70~150の間、70~140の間、70~130の間、70~120の間、70~110の間、70~100の間、80~400の間、80~300の間、80~200の間、80~150の間、80~140の間、80~130の間、80~120の間、80~110の間、80~100の間、90~400の間、90~300の間、90~200の間、90~150の間、90~140の間、90~130の間、90~120の間、90~110の間、90~100の間、100~400の間、100~300の間、100~200の間、100~150の間、100~140の間、100~130の間、100~120の間、または100~110の間の定義された微生物株と組み合わせ得る。バックフィル株および足場群集の株は、任意の順序で組み合わせ得る。例えば、バックフィル株は、単一バッチで足場群集株のすべてに加えることができる。あるいは、足場群集株のサブセットは、バックフィル株のサブセットと、所望の順序で組み合わせ得る。
6.6 平行バックフィル群集
【0072】
in vitroでのバックフィル方法は、以下にさらに詳細に記載するように、本明細書に開示の方法に従って、多くの異なる系統および組合せを平行して試験することにより実行する。原理的には、単一の第1のin vitroバックフィル株は、単一の足場群集をバックフィル株と組み合わせることにより生成し得るが、方法の頑健性は、多数の群集の平行処理から部分的に生じる。典型的には、所定の代謝表現型を示すようにデザインした複数の第1のin vitroバックフィル群集は、足場群集およびバックフィル群集を組み合わせることにより生成する(例えば、典型的には、2~100の群集、一般には、少なくとも5、少なくとも10または少なくとも15の群集)。一アプローチでは、1つの足場群集の多数のアリコートを使用する。一アプローチでは、多数の異なる足場群集を使用し、この場合、群集は、同一の代謝表現型のためにデザインするが、株の異なる(わずかに異なるのみである場合もある)組合せによりデザインする。各アプローチでは、バックフィル株の1つの組合せ、またはバックフィル株の多数の異なる組合せを使用し得る。したがって、in vitroでのバックフィルプロセスでは、多数の第1のバックフィル群集を作出し、増殖させ、平行してアッセイし得る。
【0073】
平行してアッセイする種々の第1のバックフィル群集の数は、2~100またはこれよりも多くの範囲に及び得る。典型的には、この数は、5よりも多く、10よりも多く、25よりも多く、50よりも多く、または100よりも多い。
6.7 in vitroバックフィル群集の培養
【0074】
第1のバックフィル群集、ならびに後続のin vitroバックフィル群集(下記)は、一定期間培養し、次いで、下記のように評価する。株は、2時間~10日間培養し得るが、これよりも長いか、または短い時間を使用することもできる。例えば、バックフィル群集は、1~72時間、例えば、12~72時間、12~48時間、または24~48時間培養することができる。典型的には、株は、ヒトの腸の温度(例えば、36~38℃)および低pO2(例えば、嫌気条件下)を模倣する環境において培養する。好ましくは、単一のユニバーサル培養培地を使用し、これは、哺乳動物(例えば、ヒト)の腸において遭遇する条件に近似するようにデザインし得る。
6.8 in vitroバックフィル群集の評価および順位付け
【0075】
培養期間の終了時に、または培養期間中複数回、第1のバックフィル群集ならびに後続のin vitroバックフィル群集の1つまたは複数の特質を評価することができる。制限ではなく例示のために、評価可能な例となる特質は、代謝表現型および抗生物質耐性を含む。
6.9 株組成の評価
【0076】
培養期間の終了時に、または培養期間中所望の任意の時間に、バックフィル群集の株組成を決定することができる。株組成は、メタゲノム解析により、定量的評価、例えば、qPCRにより、微生物学的技術、例えば、コロニー計数、または方法の組合せを使用して、決定することができる。一態様では、個々の株の存在量または相対的割合を測定することができる。
6.10 株組成における変化の評価
【0077】
群集の株組成を種々の時点で決定することにより、組成物における変化を検出することができる。発明者らは、培養中および/またはin vivoでのバックフィル中に、一部の株が「ドロップアウト」することを観察した。in vitroまたはin vivoでのバックフィルの種々のラウンドまたは反復にわたる株組成における変化(以下で考察する)は、「群集組成安定性」すなわち、上に定義する安定性の尺度として使用することができる。
6.11 代謝表現型の評価
【0078】
バックフィル群集の代謝表現型は、培養期間の終了時に、または培養期間中に決定することができる。代謝表現型は、所望の表現型に基づく任意の適する様式でアッセイすることができる。例えば、一アプローチでは、1つまたは1つよりも多い第1の化合物を群集と組み合わせ、第1の化合物(複数可)の第2の化合物(複数可)への変換を経時的に、または終了時点に測定する。化合物または他の特質の検出および測定は、様々な方法のいずれかにより行うことができる。例えば、質量分析、液体クロマトグラフィー、イムノアッセイ(ELISA)、放射標識代謝物の追跡等を使用して、群集により生成または消費される化合物を検出し得る。アッセイは、哺乳動物(例えば、ヒト)の腸の条件を模倣する条件下で、または集団の個体の腸における変動を模倣する多数の条件にわたって実行し得る。
【0079】
in vitroまたはin vivoでのバックフィルの種々のラウンドまたは反復にわたる代謝表現型における変化(以下で考察する)は、「群集表現型安定性」の尺度として使用することができる。
6.12 他の評価
【0080】
また、バックフィル群集は、抗生物質感受性または耐性、夾雑等について試験し得る。一部の場合では、バックフィル群集は、病原体または他の微小生物に曝露して、例えば、病原体の追加により群集が撹乱または過剰繁殖するかどうかを決定し得る。一部の場合では、バックフィル群集は、ヒト化マウスの腸内に導入して、群集が腸内ミクロビオームを置き換え得るかどうかを決定し得る。
6.13 群集の順位付け
【0081】
第1および後続のバックフィル群集は、評価した特質、例えば、代謝表現型に従って順位付けし得る。例えば、所望の群集表現型が、定義条件下での代謝物Xの産生である場合、群集がXを産生する能力、Xが産生される率、または他の動態測定等を測定することができ、所望の表現型がより頑健なバックフィル群集は、所望の表現型が存在しないか、またはそれほど頑健でない群集よりも高く順位付けされ得る。多数の特質または判定基準を考慮することができ、等しいまたは不均等な重みを割り当て、順位付けに使用し得る。
6.14 バックフィル群集の選択
【0082】
上述のように、バックフィル群集は、特質の任意の組合せに従って順位付けし、任意の仕方で比較し得る。一アプローチでは、最も高く順位付けされた1つまたは複数のバックフィル群集を、さらなる処理のために選択する。一アプローチでは、最も高く順位付けされた群集を、さらなる処理のために選択する。一アプローチでは、最も高く順位付けされた群集の1%、5%、10%または25%を、さらなる開発のために処理する。一アプローチでは、所定の閾値を超える特質を示す群集を、さらなる処理のために選択し得る。選択されない群集は、廃棄し得る。
【0083】
さらなる処理のために選択されたバックフィル群集は、「選択されたバックフィル群集」と呼び得る。
6.15 後続バックフィル群集のさらなる処理
【0084】
選択された(最も高く順位付けされた)1つまたは複数の第1のバックフィル群集は、in vitroでのバックフィルプロセスの後続の反復またはラウンドにおいて、さらに処理し得る。一アプローチでは、選択された第1のバックフィル群集は、足場群集の処理に類似する仕方で処理する。一部の実施形態では、各々選択された第1のバックフィル群集は、平行処理のために多数のアリコートに分割し、少数のバックフィル株(例えば、1~50株)を各アリコートに加え、これにより「後続のバックフィル群集」を生成する。各アリコートに加えたバックフィル株は、第1のバックフィル群集のすべてのアリコートについて同一ではなく、むしろ異なる組合せおよび異なる複雑性のバックフィル株を加え得る。バックフィル株をあるバックフィル群集(例えば、第1のバックフィル群集)に加えて後続のバックフィル群集を生成するプロセスは、群集の「曝露(challenging)」または「進化(evolving)」と呼び得る。
【0085】
後続のバックフィル群集は、一定期間(「培養期間」)培養し、培養期間の終了時に、または培養期間中複数回、後続の群集の1つまたは複数の特質を上記のように評価し、後続の群集を、さらなる処理の追加の反復またはラウンドについて順位付けする。処理の1回のラウンドにおいて評価し、順位付けに使用した特質は、それまでの、または後続のラウンドにおいて評価した特質と同一であるか、または異なり得る。
6.16 反復
【0086】
複雑な群集を移植のために開発する場合、バックフィルプロセスの多数の反復を実行し得る。この文脈において使用する場合、第1のバックフィル群集の生成は、第1の反復であり、後続の反復は、後続のバックフィル群集を生成するために使用し、これは、序数(第2のバックフィル群集、第3のバックフィル群集等)により表す。この文脈において使用する場合、第2または後続の「反復」は、(1)少なくとも1つのバックフィル株を既存のバックフィル集団に加えて次世代集団を生成し、(2)次世代集団を培養し、(3)必要に応じて、集団の特性を決定するプロセスを含む。
【0087】
後続のバックフィル群集(すなわち、第1のバックフィル群集を含まない)を生成する反復の数は、1~20回の範囲に及び得る。典型的には、反復の数は、5~10回の反復の範囲である。一般には、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回の反復により後続のin vitroバックフィル群集を生成する。
【0088】
上述のように、選択されたバックフィル群集は、多数のアリコートに分割し、このそれぞれは、1つまたは複数のバックフィル株と組み合わせることができる(例えば、すべてのアリコートが同一のバックフィル株を受けるとは限らない場合)。群集の系統について記載することが有用である場合もある。後続のバックフィルの任意の反復では、同一の選択バックフィル群集から生成された群集は、相互の「同胞群集」および選択バックフィル群集の「子孫」と呼ぶ。選択されたバックフィル群集は、子孫群集の「祖先」と呼ぶことができる。
6.17 in vivoでのバックフィルによる移植可能な群集の生成
【0089】
in vitroでのバックフィルの最終反復の後、後続のバックフィル群集の1つまたは複数は、望ましい特質(例えば、所望の代謝表現型)を有するものとして同定してよく、第1のin vivoバックフィル群集として使用し得る。in vivoでのバックフィルプロセスは、上記のin vitroでのプロセスと、いくつかの点で一致する。in vivoでのバックフィルステップの多くは、上で考察する、対応するin vitroでのステップと同一であるか、または類似する。主な差は、
- 第1のin vivoバックフィル群集が、足場群集ではなく、通常は、in vitroでのバックフィルにより生成された群集であること、
- バックフィル群集をin vitroで培養せずに、非ヒト動物(典型的には、ノトバイオートマウス)に生着させること、および
- 生着したバックフィル群集を、株の複雑な混合物を含むヒト便移植材料と組み合わせることにより、バックフィル群集を曝露または進化させることである。また、必要に応じて、バックフィル株を投与し得る。
【0090】
in vitroでの方法と類似して、多数の第1のin vivoバックフィル群集は、以下にさらに詳細に記載するように、平行して開発し得る。したがって、制限ではなく例えば、in vivoでバックフィルする一アプローチは、次のステップ:
i.選択されたin vitroバックフィル群集を、1匹もしくは複数のマウスまたは他の非ヒト動物の腸(複数可)内に生着させるステップと、
iia.ヒト便移植材料を、ステップ(i)の前後に、1匹または複数のマウスの腸(複数可)内に導入する(すなわち、生着した群集を曝露する)ステップと、
iib.必要に応じて、バックフィル株(例えば、微生物パントリー由来)も1匹または複数のマウスに投与し得るステップと、
iii.生着および導入した株が腸にコロニー形成して「腸群集」を生じる期間、1匹または複数のマウスを維持するステップと、
iv.組成を含む腸群集の1つまたは複数の特質(すなわち、ステップ(i)において生着したin vitroバックフィル群集に対する「ジャンプイン」または「ドロップアウト」する株の存在)を評価するステップと、
v.必要に応じて、腸群集を順位付けし、1つまたは複数の腸群集を、さらなる処理のために選択するステップと、
vi.選択された各腸群集について、群集を複数のマウスに生着させるステップと、
vii.ヒト便移植材料を導入することにより(vi)のマウスに曝露し(上記のステップiiのように)、ステップ(ii)~(vi)の追加の反復を所望のエンドポイントまで実行するステップと
を含む。
【0091】
in vivoでのバックフィル方法の特定の態様は、以下にさらに詳細に記載する。
【0092】
in vivoでのバックフィルは、通常、ノトバイオートマウス、ヒト化マウス、または他の哺乳動物(例えば、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)において実行する。ノトバイオートマウスは、当技術分野において公知であり、市販されている。一部の実施形態では、in vivoでのバックフィルは、ヒト対象において実行し得る。
【0093】
選択されたin vitro群集または後続のin vivo群集は、標準方法、例えば、胃管栄養法を使用して、マウスに生着させることができる。
【0094】
生着した群集は、ヒト患者のための処置を開発する場合、ヒト便材料に曝露することができる。他の種由来の便調製物は、モデル系において、または獣医学的目的のための処置の開発において使用し得る(Hu, J et al., 2018, ”Standardized Preparation for Fecal Microbiota Transplantation in Pigs,” Front. Microbiol. 9:1328を参照)。
【0095】
便ドナーは、特定の特性、例えば、ドナーの健康について選択またはスクリーニングされ得る。
【0096】
便材料は、当技術分野において公知の方法を使用して、移植のために処理する。一部の場合では、1体よりも多い個体由来の便材料を、生着のために貯蔵する。
【0097】
便材料は、胃管栄養法によりマウスの腸内に導入し得る。生着させたマウスは、無菌条件下で1日~4週間飼育する。この間隔は、「コロニー形成期間」と呼び得る。
【0098】
コロニー形成期間の終了時に、またはコロニー形成期間中複数回、第1のバックフィル群集ならびに後続のin vitroバックフィル群集の1つまたは複数の特質を評価することができる。
【0099】
評価の目的のために、群集は、(1)便からの株の回収、(2)腸内容物の回収、および(3)腸の外科的回収(例えば、マウスの屠殺による)を含むミクロビオームの完全性を維持する任意の様式で、動物(例えば、マウス)の腸から回収し得る。
【0100】
アッセイし得る群集の特性および適する方法は、in vitroでのバックフィルのために記載するものを含み、株組成、代謝表現型、ならびに/または株および表現型の安定性における変化を含む。
【0101】
バックフィル群集の解析に加えて、マウスの表現型を解析することができる。特性は、健康全般およびマウスの活力、ならびに血液または他の組織における変化、例えば、代謝物、特には、所望の代謝表現型に関連する代謝物の血漿レベルにおける変化を含む。
【0102】
in vivoバックフィル群集は、評価した特質(例えば、代謝表現型)に従って順位付けし得る。多数の特質または判定基準を考慮することができ、等しいまたは不均等な重みを割り当て、順位付けに使用し得る。
【0103】
選択された(最も高く順位付けされた)1つまたは複数のin vivoバックフィル群集は、in vivoでのバックフィルプロセスの後続の反復またはラウンドにおいて、さらに処理し得る。2~10回の反復(通常2~5回、多くは2~4回の反復)。in vivoでのバックフィルの最終反復後、1つまたは複数のin vivo後続バックフィル群集を、治療薬としての使用に適するものとして同定し、「治療バックフィル群集」と呼び得る。
6.18 in vivoでのバックフィル
【0104】
in vivoでのバックフィルでは、1つのアプローチは、以下を含む一連のステップにより生成される定義された腸内群集を非ヒト動物に投与するステップである。
1.in vitro表現型を有する第1の定義された微生物群集を得るステップ。通常は、第1の定義された微生物群集は、in vitroでのバックフィルによる産物である。in vitro表現型は、代謝表現型であり得る。
2.動物、典型的には、マウス、例えば、無菌マウスの腸内に定義された微生物群集を生着させるステップ。この生着ステップは、複数の(すなわち、2匹またはこれよりも多い)動物において並行して実行し得る。
3.動物をヒト便群集(例えば、ヒト由来の便)に曝露するステップ。この文脈では、「曝露」は、それまでに定義された微生物群集を生着させた動物の腸内にヒト便群集を導入して、2つの群集を混合することを意味する。あるいは、2つの群集は、生着前に組み合わせて、混合物を動物に生着させることができる。曝露した生着動物は、ヒト便群集および定義された微生物群集の両方由来の微小生物を含む群集を腸において確立するのに十分な時間維持し、これは、「腸群集」と呼び得る。腸群集は、定義された微生物群集よりも少ないまたは多い株を含有し得る。腸群集は、ヒト便群集に起因する株(「ジャンプイン」した株)を含み得る。腸群集は、定義された微生物群集に存在していた株(「ドロップアウト」した株)を含まないことがある。1匹よりも多い動物に曝露する場合、これらは、同一のヒト便調製物または異なるヒト便調製物に曝露し得る。一アプローチでは、動物のすべてに同一のヒト便群集を曝露するとは限らない。
4.メタゲノム解析を実行して腸群集における株を検出し、腸群集と定義された群集との間の差が存在するか、しないかを決定するステップ。差が存在する(株がジャンプインしたか、またはドロップアウトした)場合、新たな定義された微生物群集(「後続する定義された微生物群集」)を調製する(例えば、微生物パントリーおよび/または他のソース由来の株を使用して)。後続する定義された微生物群集は、動物(例えば、それまでに生着していない動物)に生着させ、第1の定義された微生物群集として上で考察する通り処理する。このようなステップは、複数の反復について繰り返すことができる。例えば、これらは、1回、2回、3回、4回、5回または6回(例えば、典型的には1~4回)繰り返すことができる。
5.1つまたは複数のアッセイを実行して、腸群集が所望の表現型(すなわち、患者に治療的利点をもたらす表現型)を保持することを確認するステップ。表現型を保持しない腸群集は、廃棄する。一部のアプローチでは、多数の異なる腸群集を、アッセイの結果に基づいて順位付けすることができ、例えば、この場合、表現型を強力に発現する群集は、高く順位付けされる。一部のアプローチでは、高く順位付けされた群集は、さらに処理し、低く順位付けされた群集は、廃棄する。
6.定義された微生物群集が安定である場合、例えば、生着および曝露され、ジャンプインまたはドロップアウトした株の差が最小限であり、所望の表現型を保持する場合、この定義された微生物群集を治療薬として使用し得る。一部のアプローチでは、ジャンプインした株の閾値よりも少なく、および/またはドロップアウトした株の閾値よりも少ない場合、定義された微生物群集は、安定であると考えられる。一部の実施形態では、ジャンプインおよびドロップアウトの閾値は、1株、2株、3株、4株、5株、6株、7株、8株、9株または10株から独立して選択される。一部の実施形態では、ジャンプインおよびドロップアウトの閾値は、生着した定義された微生物群集における株の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%から独立して選択される。
6.19 変形形態
【0105】
特定の実施形態では、in vitroでのバックフィルプロセスを行うことなく、第1のin vitro群集(足場群集をバックフィル株と組み合わせることにより生成した)を哺乳動物に生着させることができる。
7.高複雑性の定義された腸微生物群集の生成
【0106】
一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集は、i)複数の定義された微生物株を組み合わせるステップと、ii)組み合わせた複数の定義された微生物株を動物の腸内に生着させて、生着動物を生成するステップと、iii)生着動物にヒト便試料を曝露するステップと、iv)ヒト便試料の微生物株による動物の腸内コロニー形成に十分な時間、曝露した生着動物を維持し、これにより動物の腸において腸内群集を生成するステップと、v)腸内群集の微生物株をメタゲノム解析により同定するステップと、vi)腸内群集を構成する微生物株と、組み合わせた複数の定義された微生物株を構成する微生物株との間の差が存在するかどうかを同定するステップと、vii)腸内群集を構成する微生物株と、組み合わせた複数の定義された微生物株を構成する微生物株との間の有意差が存在する場合、ステップi)に存在しなかった1つもしくは1つよりも多い追加の定義された微生物株を、組み合わせた複数の定義された微生物株に加えるか、またはステップi)の組み合わせた複数の定義された微生物株に存在していた定義された微生物株を除去して、修飾した、組み合わせた複数の定義された微生物株を生成し、修飾した、組み合わせた複数の定義された微生物株を、組み合わせた複数の定義された微生物株として使用して、まったく生着していない動物においてステップii)~vi)を繰り返すステップとを含み、最小限の差が存在する場合、最終ステップvii)の修飾した定義された微生物群集が、高複雑性の定義された腸微生物群集である、in vivoでのバックフィルプロセスにより生成することができる。一部の実施形態では、定義された微生物株を、微生物株の代謝表現型に基づいて組み合わせて生着のための複数の微生物株を形成するために、選択する。公知の代謝表現型を有する定義された微生物株の選択により、生着および/または1つもしくは複数の腸微小環境における安定性が向上した、高複雑性の定義された代謝群集を形成することができる。
【0107】
一部の実施形態では、代謝表現型は、ムチン分解、多糖発酵、水素利用、コハク酸代謝、酪酸産生、アミノ酸代謝、胆汁酸代謝、CO2固定、ギ酸代謝、メタン産生、酢酸産生、水素産生、およびプロピオン酸産生を含み得るが、これらに限定されない。例えば、一部の実施形態では、高複雑性の定義された代謝群集は、上記の代謝表現型の少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、またはすべてを有し得る。
【0108】
特定の実施形態では、代謝表現型は、フルクタン、イヌリン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、グルコマンナン、βマンナン、デキストラン、デンプン、アラビナン、キシログルカン、ガラクツロナン、βグルカン、ガラクトマンナン、ラムノガラクツロナンI、ラムノガラクツロナンII、アラビノガラクタン、ムチンO結合型グリカン、酵母αマンナン、酵母βグルカン、キチン、アルギン酸、ポルフィリン、ラミナリン、カラギーナン、アガロース、アルテルナン、レバン、キサンタンガム、ガラクトオリゴ糖、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グリシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン、アルギニン、セリン、メチオニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、カルニチン、ヒドロキシプロリン、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸、コレステロール、桂皮酸、クマル酸、シナピン酸、フェルラ酸、カフェー酸、キナ酸、クロロゲン酸、カテキン、エピカテキン、没食子酸、ピロガロール、カテコール、ケルセチン、ミリセチン、カンフェロール、ルテオリン、アピゲニン、ナリンゲニン、またはヘスペリジンを1つまたは複数の他の化合物に変換する能力を含み得るが、これに限定されない。例えば、一部の実施形態では、組み合わせた複数の定義された微生物株は、上記の化合物の少なくとも2種、少なくとも4種、少なくとも8種、少なくとも12種、少なくとも24種、少なくとも30種、少なくとも40種、少なくとも50種、少なくとも60種、少なくとも70種、少なくとも80種またはすべてを代謝することが可能であり得る。
【0109】
特定の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集は、微生物株:Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes putredinis DSM 17216、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium adolescentis L2-32、Bifidobacterium breve DSM 20213、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium longum infantis ATCC 55813、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Bryantella formatexigens DSM 14469、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Clostridium sporogenes ATCC 15579、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dialister invisus DSM 15470、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Lactococcus lactis subsp.lactis Il1403 -> sub DSMZ 20729、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Olsenella uli DSM 7084、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii L2-32、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum variabile DSM 15176、Veillonella dispar ATCC 17748、Veillonella sp.3_1_44 HM 64、およびVeillonella sp.6_1_27 HM 49から選択されるか、またはこれらからなる微生物株を含み得る。
【0110】
特定の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集は、微生物株:Acidaminococcus fermentans DSM 20731、Acidaminococcus sp.D21、Adlercreutzia equolifaciens DSM 19450、Akkermansia muciniphila ATCC BAA-835、Alistipes finegoldii DSM 17242、Alistipes ihumii AP11、Alistipes indistinctus YIT 12060/DSM 22520、Alistipes onderdonkii DSM 19147、Alistipes putredinis DSM 17216、Alistipes senegalensis JC50/DSM 25460、Alistipes shahii WAL 8301/DSM 19121、Anaerofustis stercorihominis DSM 17244、Anaerostipes caccae DSM 14662、Anaerotruncus colihominis DSM 17241、Bacteroides caccae ATCC 43185、Bacteroides cellulosilyticus DSM 14838、Bacteroides coprocola DSM 17136、Bacteroides coprophilus DSM 18228、Bacteroides dorei 5_1_36/D4(HM 29)、Bacteroides dorei DSM 17855、Bacteroides eggerthii DSM 20697、Bacteroides finegoldii DSM 17565、Bacteroides fragilis 3_1_12、Bacteroides intestinalis DSM 17393、Bacteroides ovatus ATCC 8483、Bacteroides pectinophilus ATCC 43243、Bacteroides plebeius DSM 17135、Bacteroides rodentium DSM 26882、Bacteroides sp.1_1_6、Bacteroides sp.2_1_16、Bacteroides sp.2_1_22、Bacteroides sp.3_1_19、Bacteroides sp.9_1_42FAA、Bacteroides sp.D2、Bacteroides stercoris ATCC 43183 DSMZ 19555、Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482、Bacteroides uniformis、ATCC 8492、Bacteroides vulgatus ATCC 8482、Bacteroides xylanisolvens SD CC 1b -> subbed w/ DSMZ 18836、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium catenulatum DSM 16992、Bifidobacterium pseudocatenulatum DSM 20438、Bilophila wadsworthia ATCC 49260、Blautia hansenii DSM 20583、Blautia hydrogenotrophica DSM 10507、Blautia sp.KLE 1732(HM 1032)、Blautia wexlerae DSM 19850、Bryantella formatexigens DSM 14469、Burkholderiales bacterium 1_1_47、Butyricimonas virosa DSM 23226、Butyrivibrio crossotus DSM 2876、Catenibacterium mitsuokai DSM 15897、Clostridiales bacterium VE202-03、Clostridiales bacterium VE202-14、Clostridiales bacterium VE202-27、Clostridium asparagiforme DSM 15981、Clostridium bartlettii DSM 16795、Clostridium bolteae ATCC BAA-613、Clostridium hathewayi DSM 13479、Clostridium hylemonae DSM 15053、Clostridium leptum DSM 753、Clostridium methylpentosum DSM 5476、Clostridium nexile DSM 1787、Clostridium saccharolyticum WM1 DSMZ 2544、Clostridium scindens ATCC 35704、Clostridium sp.ATCC 29733 VPI C48-50、Clostridium sp.L2-50、Clostridium sp.M62/1、Clostridium spiroforme DSM 1552、Collinsella aerofaciens ATCC 25986、Collinsella stercoris DSM 13279、Coprococcus comes ATCC 27758、Coprococcus eutactus ATCC 27759、Desulfovibrio piger ATCC 29098、Dorea formicigenerans ATCC 27755、Dorea longicatena DSM 13814、Eggerthella lenta DSM 2243、Ethanoligenens harbinense YUAN-3 DSMZ 18485、Eubacterium biforme DSM 3989、Eubacterium dolichum DSM 3991、Eubacterium eligens ATCC 27750 DSMZ 3376、Eubacterium hallii DSM 3353、Eubacterium rectale ATCC 33656、Eubacterium siraeum DSM 15702、Eubacterium ventriosum ATCC 27560 DSM 3988、Faecalibacterium prausnitzii A2-165、Granulicatella adiacens ATCC 49175 DSMZ 9848、Holdemania filiformis DSM 12042、Intestinimonas butyriciproducens DSM 26588、Lactobacillus ruminis ATCC 25644、Megasphaera DSMZ 102144、Mitsuokella multacida DSM 20544、Odoribacter splanchnicus DSM 20712、Olsenella uli DSM 7084、Oscillibacter sp.KLE 1728、Parabacteroides distasonis ATCC 8503、Parabacteroides johnsonii DSM 18315、Parabacteroides merdae ATCC 43184 DSMZ 19495、Parabacteroides sp.D13、Prevotella buccae D17、Prevotella buccalis ATCC 35310 DSMZ 20616、Prevotella copri DSM 18205、Roseburia intestinalis L1-82、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Ruminococcus albus株8、Ruminococcus bromii ATCC、Ruminococcus flavefaciens FD 1、Ruminococcus gauvreauii DSM 19829、Ruminococcus gnavus ATCC 29149、Ruminococcus lactaris ATCC 29176、Ruminococcus obeum ATCC 29174、Ruminococcus torques ATCC 27756、Slackia exigua ATCC 700122 DSMZ 15923、Slackia heliotrinireducens DSM 20476、Solobacterium moorei DSM 22971、Streptococcus thermophilus LMD-9(ATCC 19258)、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Subdoligranulum variabile DSM 15176、およびVeillonella dispar ATCC 17748から選択されるか、またはこれらからなる微生物株を含み得る。
【0111】
一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生成する方法は、複数の定義された微生物株のそれぞれを個別に培養した後に、定義された微生物株を組み合わせるステップを含む。他の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生成する方法は、複数の定義された微生物株のすべてを一緒に培養するステップを含む。さらに他の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集を生成する方法は、1つまたは複数の定義された微生物株を個別に培養して、定義された微生物株の2つまたはこれよりも多くを培養し、次いで、個別に培養した定義された微生物株および共培養した定義された微生物株を一緒に組み合わせるステップを含む。
8.腸内毒素症または病態の処置のための微生物群集
【0112】
本明細書に記載の方法を使用して同定されたバックフィル群集は、高複雑性の定義された腸微生物群集の投与により、患者を処置するために使用することができる。例となる患者は、腸内毒素症または病態を有する患者である。
8.1 Clostridium difficile感染症
【0113】
8.1.1 マウスモデル
一部の実施形態では、C.difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、本発明の高複雑性の定義された微生物群集は、糞便1μlあたりのC.difficileのコロニー形成単位(CFU)数を少なくとも1~2log、少なくとも2~3log、少なくとも3~4log、少なくとも4~5logまたは少なくとも5~6log減少させる。一部の実施形態では、C.difficile感染症のマウスモデルにおいて試験した場合、本発明の高複雑性の定義された微生物群集は、糞便1グラムあたりのC.difficileのコロニー形成単位(CFU)数を少なくとも1~2log、少なくとも2~3log、少なくとも3~4log、少なくとも4~5logまたは少なくとも5~6log減少させる。
8.1.2 持続性C.difficile感染症の処置
【0114】
一部の実施形態では、本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集は、持続性C.difficile感染症を有する動物を処置するために使用することができる。例えば、一部の実施形態では、動物は、哺乳動物、より詳細には、ヒトであり得る。
【0115】
一部の実施形態では、持続性C.difficile感染症の処置のための本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集を生成するための方法は、i)持続性C.difficile感染症を有する動物から得られた糞便試料についてC.difficileのプレートカウントを実施するステップと、ii)高複雑性の定義された腸微生物群集を、持続性C.difficile感染症を有する動物の腸内に生着させて、生着感染動物を生成するステップと、iii)高複雑性の定義された腸微生物群集の微生物株による腸内コロニー形成に十分な時間、生着感染動物を維持し、これにより生着感染動物の腸において生着感染群集を生成するステップと、iv)生着感染動物から得られた糞便試料について、追加のC.difficileのプレートカウントを実施するステップと、v)ステップiv)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数が、ステップi)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数よりも有意には少なくない場合、ステップii)に存在しなかった1つまたは1つよりも多い追加の定義された微生物株を高複雑性の定義された腸微生物群集に加えて、修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集を生成し、修飾した高複雑性の定義された腸微生物群集を高複雑性の定義された腸微生物群集として使用して、まったく生着していない、持続性C.difficile感染症を有する動物においてステップi)~iv)を繰り返すステップとを含み、ステップiv)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数における統計学的に有意な減少が、ステップi)のプレートカウントから得られたC.difficileのCFU数と比較して存在する場合、最終ステップiv)の修飾した、定義された安定な腸微生物群集が、最終の高複雑性の定義された腸微生物群集であり得る。
【0116】
一部の実施形態では、有効量の高複雑性の定義された最終腸微生物群集を、持続性C.difficile感染症を有する動物へ投与すると、処置動物における糞便1μlあたりのC.difficileのCFU数が効率的に減少する。一部の実施形態では、有効量の高複雑性の定義された最終腸微生物群集を、持続性C.difficile感染症を有する動物に投与すると、処置動物における糞便1gあたりのC.difficileのCFU数が効率的に減少する。
8.2 胆汁酸代謝および胆汁うっ滞性疾患
【0117】
一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集は、動物(例えば、マウス)糞便試料に存在する胆汁酸のプロファイルおよび/または濃度を、同質遺伝子ノトバイオート対照動物(例えば、同質遺伝子ノトバイオート対照マウス)と比較して有意に変更する。
【0118】
例えば、一部の実施形態では、本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集は、動物(例えば、マウス)におけるTβ-MCA、Tα-MCA、TUDCA、THDCA、TCA、7β-CA、7-oxo-CA、TCDCA、Tω-MCA、TDCA、α-MCA、β-MCA、ω-MCA、Muro-CA、d4-CA、CA、TLCA、UDCA、HDCA、CDCA、DCAおよびLCAのプロファイルおよび/または濃度を有意に変更する。
【0119】
一部の実施形態では、本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集は、胆汁うっ滞性疾患、例えば、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性胆管炎、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、または非アルコール性脂肪性肝炎等を有する動物を処置するために使用することができる。例えば、一部の実施形態では、動物は、哺乳動物、より詳細には、ヒトであり得る。
9.代謝物の修飾
【0120】
一部の実施形態では、高複雑性の定義された腸微生物群集は、動物(例えば、マウス)尿試料に存在する代謝物の濃度を、同質遺伝子ノトバイオート対照動物(例えば、同質遺伝子ノトバイオート対照マウス)と比較して有意に変更する。
【0121】
例えば、一部の実施形態では、本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集は、4-ヒドロキシ安息香酸、L-チロシン、4-ヒドロキシフェニル酢酸、DL-p-ヒドロキシフェニル乳酸、p-クマル酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)ピルビン酸、インドール-3-カルボン酸、チラミン、L-フェニルアラニン、フェニル酢酸、3-インドール酢酸、DL-3-フェニル乳酸、L-トリプトファン、DL-インドール-3-乳酸、フェニルピルビン酸、trans-3-インドールアクリル酸、3-インドールピルビン酸、3-インドールプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、trans-桂皮酸、トリプタミン、フェノール、インドール-3-カルボキシアルデヒド、p-クレゾール、インドール、4-ビニルフェノール、または4-エチルフェノールの濃度を有意に変更する。
10.医薬組成物
【0122】
in vivoでのバックフィルプロセスによる産物は、対象に生着した場合、対象に利点をもたらす公知の表現型(例えば、代謝表現型)を有する定義された微生物群集(例えば、安定な定義された微生物群集)である。
【0123】
治療バックフィル群集は、拡大し、経口投与(例えば、カプセルとして)、経鼻/経口胃管栄養法による投与、局所的(例えば、浣腸による)または直腸(例えば、結腸内視鏡検査による)投与のための賦形剤と組み合わせ得る。例となる賦形剤としては、ノーマルセーラインおよび当技術分野において公知の他の賦形剤が挙げられる。
【0124】
また、本開示では、有効量の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集を含有する医薬組成物を提供する。組成物は、様々な送達系における使用のために製剤化することができる。また、1つまたは複数の生理学的に許容される賦形剤(複数可)または担体(複数可)を、適切な製剤化のために組成物に含むことができる。本開示における使用のための適する製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed., 1985に見出される。薬物送達ための方法の簡潔な総説については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書において開示する医薬組成物は、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集、およびそれらに限定されないが、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、フルクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、デオキシリボース、ヘキソース);脂質(例えば、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、マルガリン酸(17:0)、ヘプタデセン酸(17:1)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、オクタデカテトラエン酸(18:4)、アラキジン酸(20:0)、エイコセン酸(20:1)、エイコサジエン酸(20:2)、エイコサテトラエン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)(EPA)、ドコサン酸(22:0)、ドコセン酸(22:1)、ドコサペンタエン酸(22:5)、ドコサヘキサエン酸(22:6)(DHA)およびテトラコサン酸(24:0));鉱物(例えば、塩化物、ナトリウム、カルシウム、鉄、クロム、銅、ヨウ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、およびセレン);ビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンK、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンD、ビタミンB6、葉酸、ピリドキシン、チアミン、パントテン酸、およびビオチン);緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム、および炭酸水素カルシウム);保存剤(例えば、アルファ-トコフェロール、アスコルビン酸、パラベン、クロロブタノール、およびフェノール);結合剤(例えば、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone)、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12~C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水素化植物油、ステロテックス、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、および軽鉱物油);分散剤(例えば、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木材セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、イソアモルファスシリケート(isoamorphous silicate)、および微結晶セルロース);崩壊剤(例えば、コーンスターチ(com starch)、ジャガイモデンプン、そのアルファ化および加工デンプン、甘味料、粘土、例えば、ベントナイト、微結晶セルロース、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、ガム、例えば、寒天、グアー、ローカストビーンガム、カラヤ、ペクチン(pecitin)、トラガント、クエン酸と組み合わせた炭酸水素ナトリウム、および酒石酸と組み合わせた炭酸水素ナトリウム);香味剤;甘味料;および着色剤から選択される1つまたは1つよりも多い剤を含み得る。
【0126】
特定の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、凍結乾燥粉末、カプセル、錠剤、トローチ、ロゼンジ、顆粒、ゲルまたは液体として経口的に投与される。一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、錠剤または丸剤として投与され、圧縮、多重圧縮、多層化(multiply layered)、および/またはコーティングすることができる。
11.投与量
【0127】
一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、総量が1X106~1X1013CFU、1X106~1X1012CFU、1X106~1X1011CFU、1X106~1X1010CFU、1X106~1X109CFU、1X106~1X108CFU、1X106~1X107CFU、5X106~1X1013CFU、5X106~1X1012CFU、5X106~1X1011CFU、5X106~1X1010CFU、5X106~1X109CFU、5X106~1X108CFU、5X106~1X107CFU、1X107~1X1013CFU、1X107~1X1012CFU、1X107~1X1011CFU、1X107~1X1010CFU、1X107~1X109CFU、1X107~1X108CFU、5X107~1X1013CFU、5X107~1X1012CFU、5X107~1X1011CFU、5X107~1X1010CFU、5X107~1X109CFU、5X107~1X108CFU、1X108~1X1013CFU、1X108~1X1012CFU、1X108~1X1011CFU、1X108~1X1010CFU、1X108~1X109CFU、5X108~1X1013CFU、5X108~1X1012CFU、5X108~1X1011CFU、5X108~1X1010CFU、5X108~1X109CFU、1X109~1X1013CFU、1X109~1X1012CFU、1X109~1X1011CFU、1X109~1X1010CFU、5X109~1X1013CFU、5X109~1X1012CFU、5X109~1X1011CFU、5X109~1X1010CFU、1X1010~1X1013CFU、1X1010~1X1012CFU、1X1010~1X1011CFU、5X1010~1X1013CFU、5X1010~1X1012CFU、または5X1010~1X1011CFUの微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集を有する剤形で投与される。
【0128】
一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、総量が0.1ng~500mg、0.5ng~500mg、1ng~500mg、5ng~500mg、10ng~500mg、50ng~500mg、100ng~500mg、500ng~500mg、1μg~500mg、5μg~500mg、10μg~500mg、50μg~500mg、100μg~500mg、500μg~500mg、1mg~500mg、5mg~500mg、10mg~500mg、50mg~500mg、100mg~500mg、0.1ng~100mg、0.5ng~100mg、1ng~100mg、5ng~100mg、10ng~100mg、50ng~100mg、100ng~100mg、500ng~500mg、1μg~100mg、5μg~100mg、10μg~100mg、50μg~100mg、100μg~100mg、500μg~100mg、1mg~500mg、5mg~100mg、10mg~100mg、50mg~100mg、0.1ng~50mg、0.5ng~50mg、1ng~50mg、5ng~50mg、10ng~50mg、50ng~50mg、100ng~50mg、500ng~500mg、1μg~50mg、5μg~50mg、10μg~50mg、50μg~50mg、100μg~50mg、500μg~50mg、1mg~500mg、5mg~50mg、10mg~50mg、0.1ng~10mg、0.5ng~10mg、1ng~10mg、5ng~10mg、10ng~10mg、50ng~10mg、100ng~10mg、500ng~500mg、1μg~10mg、5μg~10mg、10μg~10mg、50μg~10mg、100μg~10mg、500μg~10mg、1mg~500mg、5mg~10mg、0.1ng~5mg、0.5ng~5mg、1ng~5mg、5ng~5mg、10ng~5mg、50ng~5mg、100ng~5mg、500ng~500mg、1μg~5mg、5μg~5mg、10μg~5mg、50μg~5mg、100μg~5mg、500μg~5mg、1mg~500mg、0.1ng~1mg、0.5ng~1mg、1ng~1mg、5ng~1mg、10ng~1mg、50ng~1mg、100ng~1mg、500ng~500mg、1μg~1mg、5μg~1mg、10μg~1mg、50μg~1mg、100μg~1mg、500μg~1mg、0.1ng~500μg、0.5ng~500μg、1ng~500μg、5ng~500μg、10ng~500μg、50ng~500μg、100ng~500μg、500ng~500μg、1μg~500μg、5μg~500μg、10μg~500μg、50μg~500μg、100μg~500μg、0.1ng~100μg、0.5ng~100μg、1ng~100μg、5ng~100μg、10ng~100μg、50ng~100μg、100ng~100μg、500ng~100μg、1μg~100μg、5μg~100μg、10μg~100μg、50μg~100μg、0.1ng~50μg、0.5ng~50μg、1ng~50μg、5ng~50μg、10ng~50μg、50ng~50μg、100ng~50μg、500ng~50μg、1μg~50μg、5μg~50μg、10μg~50μg、0.1ng~10μg、0.5ng~10μg、1ng~10μg、5ng~10μg、10ng~10μg、50ng~10μg、100ng~10μg、500ng~10μg、1μg~10μg、5μg~10μg、0.1ng~5μg、0.5ng~5μg、1ng~5μg、5ng~5μg、10ng~5μg、50ng~5μg、100ng~5μg、500ng~5μg、1μg~5μg、0.1ng~1μg、0.5ng~1μg、1ng~1μg、5ng~1μg、10ng~1μg、50ng~1μg、100ng~1μg、500ng~1μg、0.1ng~500ng、0.5ng~500ng、1ng~500ng、5ng~500ng、10ng~500ng、50ng~500ng、100ng~500ng、0.1ng~100ng、0.5ng~100ng、1ng~100ng、5ng~100ng、10ng~100ng、50ng~100ng、0.1ng~50ng、0.5ng~50ng、1ng~50ng、5ng~50ng、10ng~50ng、0.1ng~10ng、0.5ng~10ng、1ng~10ng、5ng~10ng、0.1ng~5ng、0.5ng~5ng、1ng~5ng、0.1ng~1ng、0.1ng~1ng、または0.1ng~0.5ngの微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集を有する剤形で投与される。
【0129】
他の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、1日あたり1X106~1X1013CFU、1日あたり1X106~1X1012CFU、1日あたり1X106~1X1011CFU、1日あたり1X106~1X1010CFU、1日あたり1X106~1X109CFU、1日あたり1X106~1X108CFU、1日あたり1X106~1X107CFU、1日あたり5X106~1X1013CFU、1日あたり5X106~1X1012CFU、1日あたり5X106~1X1011CFU、1日あたり5X106~1X1010CFU、1日あたり5X106~1X109CFU、1日あたり5X106~1X108CFU、1日あたり5X106~1X107CFU、1日あたり1X107~1X1013CFU、1日あたり1X107~1X1012CFU、1日あたり1X107~1X1011CFU、1日あたり1X107~1X1010CFU、1日あたり1X107~1X109CFU、1日あたり1X107~1X108CFU、1日あたり5X107~1X1013CFU、1日あたり5X107~1X1012CFU、1日あたり5X107~1X1011CFU、1日あたり5X107~1X1010CFU、1日あたり5X107~1X109CFU、1日あたり5X107~1X108CFU、1日あたり1X108~1X1013CFU、1日あたり1X108~1X1012CFU、1日あたり1X108~1X1011CFU、1日あたり1X108~1X1010CFU、1日あたり1X108~1X109CFU、1日あたり5X108~1X1013CFU、1日あたり5X108~1X1012CFU、1日あたり5X108~1X1011CFU、1日あたり5X108~1X1010CFU、1日あたり5X108~1X109CFU、1日あたり1X109~1X1013CFU、1日あたり1X109~1X1012CFU、1日あたり1X109~1X1011CFU、1日あたり1X109~1X1010CFU、1日あたり5X109~1X1013CFU、1日あたり5X109~1X1012CFU、1日あたり5X109~1X1011CFU、1日あたり5X109~1X1010CFU、1日あたり1X1010~1X1013CFU、1日あたり1X1010~1X1012CFU、1日あたり1X1010~1X1011CFU、1日あたり5X1010~1X1013CFU、1日あたり5X1010~1X1012CFU、または1日あたり5X1010~1X1011CFUの比率で消費される。
【0130】
他の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、1日あたり0.1ng~500mg、1日あたり0.5ng~500mg、1日あたり1ng~500mg、1日あたり5ng~500mg、1日あたり10ng~500mg、1日あたり50ng~500mg、1日あたり100ng~500mg、1日あたり500ng~500mg、1日あたり1μg~500mg、1日あたり5μg~500mg、1日あたり10μg~500mg、1日あたり50μg~500mg、1日あたり100μg~500mg、1日あたり500μg~500mg、1日あたり1mg~500mg、1日あたり5mg~500mg、1日あたり10mg~500mg、1日あたり50mg~500mg、1日あたり100mg~500mg、1日あたり0.1ng~100mg、1日あたり0.5ng~100mg、1日あたり1ng~100mg、1日あたり5ng~100mg、1日あたり10ng~100mg、1日あたり50ng~100mg、1日あたり100ng~100mg、1日あたり500ng~500mg、1日あたり1μg~100mg、1日あたり5μg~100mg、1日あたり10μg~100mg、1日あたり50μg~100mg、1日あたり100μg~100mg、1日あたり500μg~100mg、1日あたり1mg~500mg、1日あたり5mg~100mg、1日あたり10mg~100mg、1日あたり50mg~100mg、1日あたり0.1ng~50mg、1日あたり0.5ng~50mg、1日あたり1ng~50mg、1日あたり5ng~50mg、1日あたり10ng~50mg、1日あたり50ng~50mg、1日あたり100ng~50mg、1日あたり500ng~500mg、1日あたり1μg~50mg、1日あたり5μg~50mg、1日あたり10μg~50mg、1日あたり50μg~50mg、1日あたり100μg~50mg、1日あたり500μg~50mg、1日あたり1mg~500mg、1日あたり5mg~50mg、1日あたり10mg~50mg、1日あたり0.1ng~10mg、1日あたり0.5ng~10mg、1日あたり1ng~10mg、1日あたり5ng~10mg、1日あたり10ng~10mg、1日あたり50ng~10mg、1日あたり100ng~10mg、1日あたり500ng~500mg、1日あたり1μg~10mg、1日あたり5μg~10mg、1日あたり10μg~10mg、1日あたり50μg~10mg、1日あたり100μg~10mg、1日あたり500μg~10mg、1日あたり1mg~500mg、1日あたり5mg~10mg、1日あたり0.1ng~5mg、1日あたり0.5ng~5mg、1日あたり1ng~5mg、1日あたり5ng~5mg、1日あたり10ng~5mg、1日あたり50ng~5mg、1日あたり100ng~5mg、1日あたり500ng~500mg、1日あたり1μg~5mg、1日あたり5μg~5mg、1日あたり10μg~5mg、1日あたり50μg~5mg、1日あたり100μg~5mg、1日あたり500μg~5mg、1日あたり1mg~500mg、1日あたり0.1ng~1mg、1日あたり0.5ng~1mg、1日あたり1ng~1mg、1日あたり5ng~1mg、1日あたり10ng~1mg、1日あたり50ng~1mg、1日あたり100ng~1mg、1日あたり500ng~500mg、1日あたり1μg~1mg、1日あたり5μg~1mg、1日あたり10μg~1mg、1日あたり50μg~1mg、1日あたり100μg~1mg、1日あたり500μg~1mg、1日あたり0.1ng~500μg、1日あたり0.5ng~500μg、1日あたり1ng~500μg、1日あたり5ng~500μg、1日あたり10ng~500μg、1日あたり50ng~500μg、1日あたり100ng~500μg、1日あたり500ng~500μg、1日あたり1μg~500μg、1日あたり5μg~500μg、1日あたり10μg~500μg、1日あたり50μg~500μg、1日あたり100μg~500μg、1日あたり0.1ng~100μg、1日あたり0.5ng~100μg、1日あたり1ng~100μg、1日あたり5ng~100μg、1日あたり10ng~100μg、1日あたり50ng~100μg、1日あたり100ng~100μg、1日あたり500ng~100μg、1日あたり1μg~100μg、1日あたり5μg~100μg、1日あたり10μg~100μg、1日あたり50μg~100μg、1日あたり0.1ng~50μg、1日あたり0.5ng~50μg、1日あたり1ng~50μg、1日あたり5ng~50μg、1日あたり10ng~50μg、1日あたり50ng~50μg、1日あたり100ng~50μg、1日あたり500ng~50μg、1日あたり1μg~50μg、1日あたり5μg~50μg、1日あたり10μg~50μg、1日あたり0.1ng~10μg、1日あたり0.5ng~10μg、1日あたり1ng~10μg、1日あたり5ng~10μg、1日あたり10ng~10μg、1日あたり50ng~10μg、1日あたり100ng~10μg、1日あたり500ng~10μg、1日あたり1μg~10μg、1日あたり5μg~10μg、1日あたり0.1ng~5μg、1日あたり0.5ng~5μg、1日あたり1ng~5μg、1日あたり5ng~5μg、1日あたり10ng~5μg、1日あたり50ng~5μg、1日あたり100ng~5μg、1日あたり500ng~5μg、1日あたり1μg~5μg、1日あたり0.1ng~1μg、1日あたり0.5ng~1μg、1日あたり1ng~1μg、1日あたり5ng~1μg、1日あたり10ng~1μg、1日あたり50ng~1μg、1日あたり100ng~1μg、1日あたり500ng~1μg、1日あたり0.1ng~500ng、1日あたり0.5ng~500ng、1日あたり1ng~500ng、1日あたり5ng~500ng、1日あたり10ng~500ng、1日あたり50ng~500ng、1日あたり100ng~500ng、1日あたり0.1ng~100ng、1日あたり0.5ng~100ng、1日あたり1ng~100ng、1日あたり5ng~100ng、1日あたり10ng~100ng、1日あたり50ng~100ng、1日あたり0.1ng~50ng、1日あたり0.5ng~50ng、1日あたり1ng~50ng、1日あたり5ng~50ng、1日あたり10ng~50ng、1日あたり0.1ng~10ng、1日あたり0.5ng~10ng、1日あたり1ng~10ng、1日あたり5ng~10ng、1日あたり0.1ng~5ng、1日あたり0.5ng~5ng、1日あたり1ng~5ng、1日あたり0.1ng~1ng、1日あたり0.1ng~1ng、または1日あたり0.1ng~0.5ngの比率で消費される。
【0131】
一部の実施形態では、本発明の微生物組成物は、少なくとも1日~1週間、1週間~1カ月、1カ月~3カ月、3カ月~6カ月、6カ月~1年、または1年よりも長い期間投与される。例えば、一部の実施形態では、本発明の微生物組成物は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、または1年の期間投与される。
【0132】
一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、単回用量または複数回用量として投与される。例えば、一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、1日に1回、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、または1年間投与される。一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、毎日複数回投与される。例えば、一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、毎日2回、毎日3回、毎日4回、または毎日5回投与される。一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、間歇的に投与される。例えば、一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、毎週1回、毎月1回、または対象がそれを必要とする場合に投与される。
12.併用療法
【0133】
一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば、一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤もしくはプレバイオティクスと併せて、またはこの後に投与することができる。投与は、数時間もしくは数日の期間にわたって逐次的であるか、または同時であり得る。
【0134】
例えば、一部の実施形態では、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、フルオロキノロン系抗生物質(例えば、シプロフロキサシン、レバクイン(levaquin)、フロキシン(floxin)、テクイン(tequin)、アベロックス、およびノルフロックス(norflox))、セファロスポリン系抗生物質(例えば、セファレキシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、およびセフトビプロール)、ペニシリン系抗生物質(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、カルベニシリン、バンコマイシン、およびメチシリン);テトラサイクリン系抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびドキシサイクリン);およびカルバペネム系抗生物質(例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、およびメロペネム)から選択される1つもしくは1つよりも多い抗菌剤と併せて、またはこれらの後に投与することができる。
【0135】
例えば、一部の実施形態では、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アンプレナビル、アタザナビル、シドホビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド(Enfuviltide)、エトラビリン、ファムシクロビル、ホスカルネット(Foscamet)、ホミビルセン、ガンシクロビル、インジナビル、イドクスウリジン、ラミブジン、ロピナビル、マラビロク、MK-2048、ネルフィナビル、ネビラピン、ペンシクロビル、ラルテグラビル、リルピビリン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、イバシタビン、アマンタジン、オセルタミビル、リマンタジン(Rimantidine)、チプラナビル、ザルシタビン、ザナミビル、およびジドブジンから選択される1つもしくは1つよりも多い抗ウイルス剤と併せて、またはこれらの後に投与することができる。
【0136】
一部の実施形態では、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、オモコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、およびチオコナゾール;トリアゾール系抗真菌剤、例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール(voriconazok)、テルコナゾール、およびアルバコナゾール;チアゾール系抗真菌剤、例えば、アバファンギン(abafungin);アリルアミン系抗真菌剤、例えば、テルビナフィン、ナフチフィン、およびブテナフィン;ならびにエキノキャンディン系抗真菌剤、例えば、アニデュラファンギン、カスポファンギン、およびミカファンギン;ポリゴジアール;安息香酸;シクロピロクス;トルナフテート;ウンデシレン酸;フルシトシンまたは5-フルオロシトシン;グリセオフルビン;ならびにハロプロジンから選択される1つもしくは1つよりも多い抗真菌剤と併せて、またはこれらの後に投与することができる。
【0137】
一部の実施形態では、微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、コルチコステロイド、メサラジン、メサラミン、スルファサラジン、スルファサラジン誘導体、シクロスポリンA、メルカプトプリン、アザチオプリン(azathiopurine)、プレドニゾン、メトトレキセート、抗ヒスタミン剤、グルココルチコイド、エピネフリン、テオフィリン、クロモリンナトリウム(cromolyn sodium)、抗ロイコトリエン剤、抗コリン剤、モノクローナル抗IgE抗体、およびワクチンから選択される1つもしくは1つよりも多い抗炎症剤および/または免疫抑制剤と併せて、またはこれらの後に投与することができる。
【0138】
一部の実施形態では、本発明の微生物群集、例えば、高複雑性の定義された腸微生物群集は、それらに限定されないが、アミノ酸、ビオチン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イヌリン、ラクツロース、マンナンオリゴ糖、オリゴフルクトース強化イヌリン、オリゴフルクトース、オリゴデキストロース、タガトース、trans-ガラクトオリゴ糖、およびキシロオリゴ糖から選択されるがそれに限定されない1つもしくは1つよりも多いプレバイオティクスと併せて、またはこれらの後に投与することができる。
【実施例】
【0139】
ここで一般的に記載する本開示は、以下の実施例の参照により、さらに容易に理解され、これは、単に、本開示の特定の態様および実施形態の例示目的のために含み、本開示の範囲を制限することは決して意図しない。
(実施例1)
高複雑性の定義された腸微生物群集の調製および最適化
【0140】
図1は、高複雑性の定義された腸微生物群集の調製および最適化のためのワークフロー模式図を示す。American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から購入した定義された微生物株を、96ウェルプレート形式の凍結グリセリンストックコレクションとして組み立てた。定義された微生物株は、成長培地中96ウェルプレート形式のアリコートで、供給者の指示(「定義された微生物株コレクションの作業(“Working Defined Microbial Strain Collection))に従う培養条件で培養することにより回復させた。定義された微生物株は、24時間、2回継代培養した。培養物の光学濃度を測定し、培養物をO.D.値0.1に対して正規化した。定義された微生物株は、貯蔵して高複雑性の定義された腸微生物群集を形成させ、PBSにより洗浄および再懸濁し、次いで、ノトバイオートの6~8週齢、雌スイスウェブスターマウスに1日1回、3日間、胃管栄養法を行い、コロニー形成させた。接種したマウス由来の糞便試料は、4週間連続して毎週収集し、凍結させて後続のDNA抽出およびメタゲノム解析を行った。接種後4週間に、マウスに、3名のドナーから得たヒト便試料を曝露した。ヒト便試料は、経口胃管栄養法により投与した。曝露したマウス由来の糞便試料は、4週間連続して毎週収集し、凍結させて後続のDNA抽出およびメタゲノム解析を行った。ヒト便微生物曝露後4週間に、マウスを屠殺し、結腸試料を調製して組織学的解析を行った。群集に「ジャンプイン」したと同定される株を(メタゲノム解析により)同定し、採取して培養し、必要に応じて、高複雑性の定義された腸微生物群集に加えて、新たな高複雑性の定義された腸微生物群集を生成した。反対に、群集から「ドロップアウト」したと(メタゲノム解析により)同定された株は、新たな高複雑性の定義された腸微生物群集から除外した。
DNA抽出
【0141】
Qiagen DNesay Power Soil Kit(Qiagen、Germantown、MD)を使用し製造者の指示に従って、便試料からDNAを抽出した。便試料からDNAを抽出するための代替方法は、周知であり、当技術分野において日常的に実行されている(例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., 2001により記載されている)。
メタゲノム解析
【0142】
TruSeq Nano DNA Library Preparationキット(Illumina、San Diego、CA、US)およびNextSeqプラットフォーム(Illumina、San Diego、CA、US)を使用して、DNA試料の配列決定を実行した。簡潔には、各試料から抽出したDNAから配列決定ライブラリーを調製した。DNAは、ウルトラソニケーターを使用して機械的に断片化した。断片化したDNAは、断片の末端修復およびサイズ選択、3’末端のアデニル化に供し、アダプターと結合させ、TruSeq Nano DNA Library Preparationキットマニュアル(Illumina、San Diego、CA、US)に従ってDNA断片を富化した。試料を配列決定して、75bpの長さの末端読取りデータ3~4千万対を生成した。
【0143】
各メタゲノム解析をMetagenomic Intra-Species Diversity Analysis System(MIDAS)により実行した(Nayfach et al., 2016, “An integrated metagenomics pipeline for strain profiling reveals novel patterns of bacterial transmission and biogeography,” Genome Res. 26 (11): 1612-1625を参照)。これによって、ほぼすべての細菌ゲノムにおいて1ゲノムあたり1コピーでそれぞれ生じる5,952細菌種の15遺伝子ファミリーの参照データベースに読取りデータをマッピングすることによる、便試料における各微生物種の配列決定深度および相対的存在量が推定される。
バックフィル
【0144】
微生物群集の生着しなかった(すなわち、ドロップアウトした)定義された微生物株を、上記のメタゲノム解析により同定した。同様に、マウスの腸内に生着した(すなわち、ジャンプインした)、ヒト便微生物曝露した微生物株を、上記のメタゲノム解析により同定した。最初のヒト便微生物曝露後、接種した定義された微生物株104株のうち、定義された微生物株97株が曝露マウスの便試料に存続し、定義された微生物株7株がドロップアウトした。2匹のマウスでは、ヒト便微生物曝露した26微生物株がジャンプインし、1匹のマウスでは、ヒト便微生物曝露した44微生物株がジャンプインした。曝露マウス2匹において微生物群集にジャンプインした26微生物株のうち22株をATCCから得、ヒト便微生物曝露後に存続した定義された微生物株97株に加えて、定義された微生物群集119株からなる高複雑性の定義された腸微生物群集を生成した(表3および
図2を参照、「侵入株」=群集に「ドロップイン」した微生物株、「インプット」=マウスに接種された定義された微生物株)。
表3
【表3】
(実施例2)
持続性C.difficile感染症を有するマウスの処置
【0145】
ノトバイオートの6~8週齢、雌スイスウェブスターマウスに、ヒト糞便試料(等量のPBSで希釈したヒト糞便200μl)を用いて経口胃管栄養法によりコロニー形成させた。コロニー形成マウス由来の糞便試料は、4週間連続して毎週収集し、凍結させて後続のDNA抽出およびメタゲノム解析を行った(実施例1に記載のように)。ヒト便コロニー形成後4週間に、マウスに1mg/mlのクリンダマイシン200μlを経口胃管栄養法により処置した。クリンダマイシン処置後24時間に、マウスにC.difficileの混濁した一晩培養物200μlによる経口胃管栄養法を行い、高糖質の食餌を維持させた。接種したマウス由来の糞便試料は、接種後3日間毎日収集してCFUプレーティングを行い、凍結させて後続のDNA抽出およびメタゲノム解析を行った。C.difficileによる接種後3日に、マウスを、ヒト糞便試料、119株の高複雑性の定義された腸微生物群集、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)ビヒクル対照で処置した。処置マウス由来の糞便試料は、4日間毎日収集してCFUプレーティングを行い、凍結させて後続のDNA抽出およびメタゲノム解析を行った。処置後4日に、マウスを屠殺し、結腸試料(例えば、盲腸)を調製して質量分析および組織学的解析を行った。C.difficile感染症の模式的ワークフローおよび処置スケジュールについて
図3Aを参照されたい。
CFUプレーティング
【0146】
糞便試料をPBSで希釈し、ボルテックスミキサーを使用して均質化して、沈降させた。上清を使用して、1×10
-1~10
-5の10倍段階希釈物をPBSにより作製した。各希釈物のアリコート100μlを、CDDC選択寒天上に播種した(表4を参照)。
表4
【表4】
【0147】
37℃の嫌気的インキュベーションの48時間後、C.difficileの形態特性を有するコロニーの成長についてプレートを検査した。30~300コロニーを有するプレートを、検出限界3.0log10CFU/gにより計数した。各希釈物について、2つの複製プレートの平均を算出した。2つの連続的希釈物が30~300コロニーを産生した場合、両方の希釈物の平均数を算出した。
【0148】
図3Bに示すように、ヒト糞便試料、または定義された微生物株119株の高複雑性の定義された腸微生物群集による処置を受けるマウスでは、C.difficile感染後6日(すなわち、処置後3日)に収集した糞便試料におけるC.difficileのCFU/μl数が、PBS単独で処置したマウスと比較して有意に減少した。
(実施例3)
質量分析による胆汁酸解析
【0149】
凍結糞便試料または均質化盲腸切片は、遠心分離管にペレット化し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルは真空下で蒸発させ、ペレットは20%のDMSO/MeOH200μlに再溶解した。
【0150】
LC-MS/MSは、Agilent 6120 4重極質量分析計上で、ネガティブモードによりKinetex C18固定相(1.7μm)カラムを使用して実施した。
【0151】
図4に示すように、ヒト糞便試料で処置したマウスおよび定義された微生物株119株の高複雑性の定義された腸微生物群集で処置したマウスから収集した、糞便試料(
図4A)および盲腸ホモジネート(
図4B)における胆汁酸濃度は、MSにより定量すると、類似の胆汁酸プロファイルおよび濃度を有した。
(実施例4)
質量分析による代謝物解析
【0152】
尿試料を室温で解凍し、13,000×gで15分間、4℃の遠心分離を行って、粒子状物質を除去した。尿試料1体積当たり2体積の酢酸エチルを加え、溶液をボルテックスで混合して、タンパク質を沈殿させた。酢酸エチルは、回転蒸発により除去した。乾燥させた材料を80%のMeOH/DMSOに溶解し、逆相HPLC(Agilent 1200シリーズ)により分離して低分子精製を行った。NMRスペクトルをBruker Avance DRX500またはBruker AvanceIII 600-Iのいずれかの分光計上で収集した。酢酸エチル画分の精製は、C18逆相カラムの勾配HPLCにより行った。
【0153】
図5に示すように、ヒト糞便試料で処置したマウスおよび定義された微生物株119株の高複雑性の定義された腸微生物群集で処置したマウスから収集した尿試料は、MSにより定量すると、類似の胆汁酸プロファイルおよび濃度を有した。
(実施例5)
微生物種の分子同定
全ゲノムショットガン配列決定
【0154】
単離微生物培養物または便試料からのDNA抽出および全ゲノムショットガン配列決定を、実施例1においてこれまでに記載した方法により実施する。配列読取りデータは、腸群集を構成するすべての定義された微生物株の完全な配列決定ゲノムの包括的データベースに対してマッピングする。
16S rRNA配列決定
【0155】
液体培養物中またはPBSに再懸濁した微生物コロニーの16S rRNA配列決定による分子同定は、当業者により公知の方法により実施する(例えば、Turner et al., 1999, “Investigating Deep Phylogenetic Relationships among Cyanobacteria and Plastids by Small Subunit rRNA Sequence Analysis,” J Eukaryot Microbiol. 46:327-338;Shin et al., 2016, “Analysis of the mouse gut microbiome using full-length 16S rRNA amplicon sequencing,” Sci Rep. 6:29681を参照)。定義された各微生物株について、種レベルの同定のため、少なくとも1300bpの16S rRNA配列を得る。
MALDI-TOF MS
【0156】
液体培養物中またはPBSに再懸濁した微生物コロニーのMALDI-TOF MSによる分子同定は、当業者により公知の方法により実施する(例えば、Seuylemezian et al., 2018, “Development of a Custom MALDI-TOF MS Database for Species-Level Identification of Bacterial Isolates Collected From Spacecraft and Associated Surfaces,” Front Micrbiol. 9:780を参照)。簡潔には、微生物分離菌のスポットを、48ウェルまたは96ウェルのプレートのウェルに移し、70%のギ酸1μlで層形成して、風乾する。50%アセトニトリル-25%トリフルオロ酢酸中のα-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸マトリックス1μlを、試料上に層形成させて、風乾する。MALDI-TOF MSは、例えば、microbflex LTベンチトップ質量分析装置(Bruker Daltonics、Billerica、MA)を使用して実施する。スペクトルデータの処理は、例えば、flexAnalysisソフトウェア(Bruker Daltonics、Billerica、MA)を使用して実施する。各分離菌について、少なくとも10スペクトルを算出して、主要スペクトルプロファイルを作出し、この場合、主要スペクトルプロファイルを構成する各スペクトル線は、2.7よりも高いlogスコアおよび75%よりも高いOLE_LINK1ピーク周波数OLE_LINK1を有する。
(実施例6)
持続性C.difficile感染症のための処置方法
【0157】
本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集は、それを必要とする哺乳動物対象における持続性C.difficile感染症の処置に対する有効量で投与する。高複雑性の定義された腸微生物群集は、本明細書に記載するように、経口投与または他の非非経口経路(non-parenteral route)の投与のために製剤化した組成物として投与する。哺乳動物対象は、高複雑性の定義された腸微生物群集による処置前に、抗生物質により処置されていても、されていなくてもよい。哺乳動物対象は、1回処置した後に、持続性C.difficile感染症と関連する症状が改善するか、または哺乳動物対象の腸におけるC.difficileのCFU数が有意に減少する。あるいは、哺乳動物対象は、2回またはこれよりも多く処置した後に、持続性C.difficile感染症と関連する症状が改善するか、または哺乳動物対象の腸におけるC.difficileのCFU数が有意に減少する。
(実施例7)
胆汁うっ滞性疾患のための処置方法
【0158】
本発明の高複雑性の定義された腸微生物群集は、それを必要とする哺乳動物対象における胆汁うっ滞性疾患の処置に対する有効量で投与する。高複雑性の定義された腸微生物群集は、本明細書に記載するように、経口投与または他の非非経口経路の投与のために製剤化した組成物として投与する。哺乳動物対象は、高複雑性の定義された腸微生物群集による処置前に、抗生物質により処置されていても、されていなくてもよい。哺乳動物対象は、1回処置した後に、胆汁うっ滞性疾患と関連する症状が改善するか、または哺乳動物対象の腸における胆汁酸組成プロファイルおよび/もしくは濃度が有意に修飾される。あるいは、哺乳動物対象は、2回またはこれよりも多く処置した後に、胆汁うっ滞性疾患と関連する症状が改善するか、または哺乳動物対象の腸における胆汁酸組成プロファイルおよび/もしくは濃度が有意に修飾される。
参照による組込み
【0159】
本明細書において参照する特許文献および科学論文のそれぞれの全開示は、すべての目的のために参照により組み込む。
等価物
【0160】
本発明は、この趣旨または本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化し得る。したがって、上述の実施形態は、本明細書に記載する本発明の制限ではなく、あらゆる点において例示的であると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の明細書によってではなく、添付の特許請求の範囲により示し、特許請求の範囲の意味および等価性の範囲において生じるすべての変更は、その中に包含されることを意図する。
【国際調査報告】