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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】免疫寛容のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/22 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/42 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/48 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/42 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/869 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 1/04 20060101ALN20220131BHJP
   A61K 9/06 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/10
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K38/02
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/12
A61K35/407
A61K35/34
A61K35/36
A61K35/22
A61K35/39
A61K35/42
A61K35/33
A61K35/44
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/02
A61L27/38 200
A61L27/36 200
A61L27/40
A61L27/48
A61L27/42
A61L27/52
A61L27/54
A61L27/12
A61L27/10
A61L27/24
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/18
A61L27/16
A61L27/36 130
A61L27/58
C07K14/705
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/869 Z
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12N1/04
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528980
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 US2019063450
(87)【国際公開番号】W WO2020112904
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/873,017
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/771,457
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】514291680
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バティア, サンギータ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】チャブラ, アーナヴ
(72)【発明者】
【氏名】マウス, マルセラ ブイ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C081
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA09
4C076AA95
4C076BB32
4C076CC03
4C076CC26
4C076DD26
4C076DD27
4C076EE12
4C076EE23
4C076EE23P
4C076EE24
4C076EE30
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE41
4C076EE42
4C076EE43
4C076FF02
4C076FF35
4C076GG01
4C081AB11
4C081BA12
4C081BA16
4C081BA17
4C081CA081
4C081CA171
4C081CA181
4C081CD041
4C081CD081
4C081CD091
4C081CD111
4C081CD121
4C081CD151
4C081CD34
4C081CF031
4C081CF131
4C081DA12
4C081DC11
4C081EA02
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC50
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB081
4C084ZB211
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB41
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB51
4C087BB52
4C087BB55
4C087BB63
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA05
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB21
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
(57)【要約】
被験体に植え込むために適した免疫寛容性の操作されたヒト組織構築物を提供する。一部の実施形態では、免疫寛容は、誘導可能な系によって制御可能である。免疫寛容性の操作された組織構築物を作製および使用する方法を提供する。さらに、本開示は、PD-L1発現が、誘導可能な発現系を使用することによって線維芽細胞上で制御可能であったという発見に基づく。具体的には、テトラサイクリンを投与すると、Tetオペレーター領域を含むプロモーターをトランスフェクトした線維芽細胞上でのPD-L1発現が可能となった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主に植え込むために適した組成物であって、
(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、前記第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団;および
(b)前記第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団
を含む、組成物。
【請求項2】
前記第1の細胞集団が実質細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の細胞集団中の前記実質細胞が、肝細胞、膵外分泌細胞、筋細胞、膵内分泌細胞、ニューロン、腸細胞、脂肪細胞、脾細胞、腎細胞、胆管細胞、クッパー細胞、星細胞、心筋細胞、肺胞細胞、気管支細胞、クラブ細胞、尿路上皮細胞、粘液細胞、壁細胞、主細胞、G細胞、杯細胞、腸内分泌細胞、パネート細胞、M細胞、房飾細胞、グリア細胞、胆嚢細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、骨細胞、破骨細胞、食道細胞、光受容体細胞、または角膜上皮細胞である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の細胞集団が内皮細胞を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の細胞集団中の前記内皮細胞が、臍帯静脈内皮細胞、肝臓の内皮細胞、脳の内皮細胞、肺の内皮細胞、腎臓の内皮細胞、心臓の内皮細胞、脾臓の内皮細胞、精巣の内皮細胞、リンパの内皮細胞、または骨髄の内皮細胞である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2の細胞集団が、遺伝子操作された非実質細胞を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記遺伝子操作された非実質細胞が間質細胞である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記遺伝子操作された間質細胞が、内皮細胞、線維芽細胞、または周皮細胞である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記遺伝子操作された間質細胞が多能性間質細胞である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記遺伝子操作された多能性間質細胞が骨髄に由来する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記遺伝子操作された多能性間質細胞が非骨髄組織に由来する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の集団が遺伝子操作された内皮細胞を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記遺伝子操作された内皮細胞が、臍帯静脈内皮細胞、肝臓の内皮細胞、脳の内皮細胞、肺の内皮細胞、腎臓の内皮細胞、心臓の内皮細胞、脾臓の内皮細胞、精巣の内皮細胞、リンパの内皮細胞、または骨髄の内皮細胞である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2の細胞集団の細胞が、1つまたは複数のチェックポイント経路を活性化して前記第1の細胞集団に存在する細胞に対する免疫細胞の疲弊およびアネルギーを誘導するタンパク質を発現するように遺伝子操作されている、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2の細胞集団の細胞が、免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作されている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-1、PD-L1、PDL-2、CD47、CD39、CD73、CD200、HVEC、CEACAM1、CD155、TIM-3、LAG-3、CTLA-4、A2AR、B7-H3、B7-H4、HLA-E、BTLA、IDO、KIR、VISTA、またはその組合せである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第2の細胞集団の前記遺伝子操作された細胞が、前記タンパク質を発現するベクターを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ウイルスベクターがレンチウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、またはレトロウイルスである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ウイルスがレンチウイルスである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記タンパク質の発現が、構成的に活性なプロモーター、誘導型プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または時間制限型プロモーターの制御下にある、請求項18~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記プロモーターが、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)、強化型U6プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記タンパク質の発現が誘導型プロモーターの制御下にある、請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記誘導型プロモーターが、化学誘導型プロモーター、光誘導型プロモーター、または温度誘導型プロモーターである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記誘導型プロモーターが、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)-調節プロモーター、ラクトース誘導プロモーター、熱ショックプロモーター、またはテトラサイクリン調節プロモーターである、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記化学誘導型プロモーターが、テトラサイクリン依存性、lac依存性、pBad依存性、AlcA依存性、またはLexA依存性である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記温度誘導型プロモーターが、Hsp70またはHsp90由来プロモーターである、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記タンパク質の発現が空間制限型プロモーターの制御下にある、請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記空間制限型プロモーターが、肝臓特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、または光受容体特異的プロモーターである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記第2の細胞集団が、リプレッサーまたはアクチベーター構成成分をさらに含む、請求項18~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記リプレッサー構成成分がテトラサイクリンまたはlacリプレッサーである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が懸濁物中にある、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が凝集塊中にある、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
凝集塊が細胞外基質に封入される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記細胞外基質が、コラーゲン、アルギネート、アガロース、マトリゲル、シルク、ゼラチン、ヒアルロナン、キトサン、フィブリン、またはその誘導体を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記細胞外基質が天然基質である、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記天然基質が前記間質細胞によって合成される、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記細胞外基質が合成基質である、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記合成基質が、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ペプチドベースの自己組織化ゲル、温度応答性ポリ(NIPAAm)、ポリ-D,L-ラクチド(PDLLA)、ポリ-e-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシアパタイト、またはセラミックベースの生物材料である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
植え込み可能な移植片であって、
(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、前記第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団;
(b)前記第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含み、
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が細胞外基質に封入されている
移植片。
【請求項42】
前記第1の細胞集団が実質細胞を含む、請求項41に記載の移植片。
【請求項43】
前記第1の細胞集団中の前記実質細胞が、肝細胞、膵外分泌細胞、筋細胞、膵内分泌細胞、ニューロン、腸細胞、脂肪細胞、脾細胞、腎細胞、胆管細胞、クッパー細胞、星細胞、心筋細胞、肺胞細胞、気管支細胞、クラブ細胞、尿路上皮細胞、粘液細胞、壁細胞、主細胞、G細胞、杯細胞、腸内分泌細胞、パネート細胞、M細胞、房飾細胞、グリア細胞、胆嚢細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、骨細胞、破骨細胞、食道細胞、光受容体細胞、または角膜上皮細胞である、請求項41または42に記載の移植片。
【請求項44】
前記第1の細胞集団が内皮細胞を含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項45】
前記第1の細胞集団中の前記内皮細胞が、臍帯静脈内皮細胞、肝臓の内皮細胞、脳の内皮細胞、肺の内皮細胞、腎臓の内皮細胞、心臓の内皮細胞、脾臓の内皮細胞、精巣の内皮細胞、リンパの内皮細胞、または骨髄の内皮細胞である、請求項44に記載の移植片。
【請求項46】
前記第2の細胞集団が、遺伝子操作された非実質細胞を含む、請求項41~45のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項47】
前記遺伝子操作された非実質細胞が間質細胞である、請求項46に記載の移植片。
【請求項48】
前記遺伝子操作された間質細胞が、内皮細胞、線維芽細胞、または周皮細胞である、請求項47に記載の移植片。
【請求項49】
前記遺伝子操作された間質細胞が多能性間質細胞である、請求項48に記載の移植片。
【請求項50】
前記遺伝子操作された多能性間質細胞が骨髄に由来する、請求項49に記載の移植片。
【請求項51】
前記遺伝子操作された多能性間質細胞が非骨髄組織に由来する、請求項49に記載の移植片。
【請求項52】
前記第2の集団が遺伝子操作された内皮細胞を含む、請求項41~51のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項53】
前記遺伝子操作された内皮細胞が、臍帯静脈内皮細胞、肝臓の内皮細胞、脳の内皮細胞、肺の内皮細胞、腎臓の内皮細胞、心臓の内皮細胞、脾臓の内皮細胞、精巣の内皮細胞、リンパの内皮細胞、または骨髄の内皮細胞である、請求項52に記載の移植片。
【請求項54】
前記第2の細胞集団の細胞が、1つまたは複数のチェックポイント経路を活性化して前記第1の細胞集団に存在する細胞に対する免疫細胞の疲弊およびアネルギーを誘導するタンパク質を発現するように遺伝子操作されている、請求項41~53のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項55】
前記第2の細胞集団の細胞が、免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作されている、請求項54に記載の移植片。
【請求項56】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-1、PD-L1、PDL-2、CD47、CD39、CD73、CD200、HVEC、CEACAM1、CD155、TIM-3、LAG-3、CTLA-4、A2AR、B7-H3、B7-H4、HLA-E、BTLA、IDO、KIR、VISTA、またはその組合せである、請求項55に記載の移植片。
【請求項57】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せである、請求項56に記載の移植片。
【請求項58】
前記第2の細胞集団の前記遺伝子操作された細胞が、前記タンパク質を発現するベクターを含む、請求項41~57のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項59】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項58に記載の移植片。
【請求項60】
前記ウイルスベクターがレンチウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、またはレトロウイルスである、請求項59に記載の移植片。
【請求項61】
前記ウイルスがレンチウイルスである、請求項60に記載の移植片。
【請求項62】
前記タンパク質の発現が、構成的に活性なプロモーター、誘導型プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または時間制限型プロモーターの制御下にある、請求項54~61のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項63】
前記プロモーターが、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)、強化型U6プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)である、請求項62に記載の移植片。
【請求項64】
前記タンパク質の発現が誘導型プロモーターの制御下にある、請求項54~62のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項65】
前記誘導型プロモーターが、化学誘導型プロモーター、光誘導型プロモーター、または温度誘導型プロモーターである、請求項64に記載の移植片。
【請求項66】
前記誘導型プロモーターが、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)-調節プロモーター、ラクトース誘導プロモーター、熱ショックプロモーター、またはテトラサイクリン調節プロモーターである、請求項65に記載の移植片。
【請求項67】
前記化学誘導型プロモーターが、テトラサイクリン依存性、lac依存性、pBad依存性、AlcA依存性、またはLexA依存性である、請求項65に記載の移植片。
【請求項68】
前記温度誘導型プロモーターが、Hsp70またはHsp90由来プロモーターである、請求項65に記載の移植片。
【請求項69】
前記タンパク質の発現が空間制限型プロモーターの制御下にある、請求項54~62のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項70】
前記空間制限型プロモーターが、肝臓特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、または光受容体特異的プロモーターである、請求項69に記載の移植片。
【請求項71】
前記第2の細胞集団が、リプレッサーまたはアクチベーター構成成分をさらに含む、請求項54~70のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項72】
前記リプレッサー構成成分がテトラサイクリンまたはlacリプレッサーである、請求項71に記載の移植片。
【請求項73】
前記細胞外基質が、コラーゲン、アルギネート、アガロース、マトリゲル、シルク、ゼラチン、ヒアルロナン、キトサン、フィブリン、またはその誘導体を含む、請求項41~72のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項74】
前記細胞外基質が天然基質である、請求項73に記載の移植片。
【請求項75】
前記天然基質が前記間質細胞によって合成される、請求項74に記載の移植片。
【請求項76】
前記細胞外基質が合成基質である、請求項41~72のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項77】
前記合成基質が、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ペプチドベースの自己組織化ゲル、温度応答性ポリ(NIPAAm)、ポリ-D,L-ラクチド(PDLLA)、ポリ-e-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシアパタイト、またはセラミックベースの生物材料である、請求項76に記載の移植片。
【請求項78】
(a)前記第1の細胞集団が初代肝細胞を含み、および
(b)前記第2の細胞集団が、誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作された皮膚線維芽細胞(HDF)を含み、前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、
前記遺伝子操作されたHDFが前記第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する、
請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
前記免疫チェックポイントタンパク質がレンチウイルスベクターによって発現される、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
前記誘導型プロモーターがテトラサイクリンプロモーターである、請求項78または請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記HDFがテトラサイクリンリプレッサー構成成分を含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が各々、ヒト細胞から本質的になる、請求項1~40および78~81のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
(a)前記第1の細胞集団が血管内皮細胞を含み、および
(b)前記第2の細胞集団が、誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作された皮膚線維芽細胞(HDF)を含み、前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、
前記遺伝子操作されたHDFが前記第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する、
請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項84】
前記免疫チェックポイントタンパク質がレンチウイルスベクターによって発現される、請求項83に記載の組成物。
【請求項85】
前記誘導型プロモーターがテトラサイクリンプロモーターである、請求項83または請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
前記HDFがテトラサイクリンリプレッサー構成成分を含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が各々、ヒト細胞から本質的になる、請求項1~40および82~86のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項88】
(a)前記第1の細胞集団が初代肝細胞を含み、および
(b)前記第2の細胞集団が、誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作された皮膚線維芽細胞(HDF)を含み、前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、前記遺伝子操作されたHDFが前記第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害し、ならびに
(a)および(b)が細胞外基質に封入されて前記植え込み可能な移植片を形成する、
請求項41~77のいずれか一項に記載の植え込み可能な移植片。
【請求項89】
前記免疫チェックポイントタンパク質がレンチウイルスベクターによって発現される、請求項88に記載の移植片。
【請求項90】
前記誘導型プロモーターがテトラサイクリンプロモーターである、請求項88または請求項89に記載の移植片。
【請求項91】
前記HDFがテトラサイクリンリプレッサー構成成分を含む、請求項90に記載の移植片。
【請求項92】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が各々、ヒト細胞から本質的になる、請求項41~77および88~91のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項93】
(a)前記第1の細胞集団が血管内皮細胞を含み、および
(b)前記第2の細胞集団が、誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作された皮膚線維芽細胞(HDF)を含み、前記免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、前記遺伝子操作されたHDFが前記第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害し、ならびに
(a)および(b)が細胞外基質に封入されて前記植え込み可能な移植片を形成する、
請求項41~77のいずれか一項に記載の植え込み可能な移植片。
【請求項94】
前記免疫チェックポイントタンパク質がレンチウイルスベクターによって発現される、請求項93に記載の移植片。
【請求項95】
前記誘導型プロモーターがテトラサイクリンプロモーターである、請求項93または請求項94に記載の移植片。
【請求項96】
前記HDFがテトラサイクリンリプレッサー構成成分を含む、請求項95に記載の移植片。
【請求項97】
前記第1の細胞集団および前記第2の細胞集団が各々、ヒト細胞から本質的になる、請求項41~77および93~96のいずれか一項に記載の移植片。
【請求項98】
第1の細胞集団および第2の細胞集団を、細胞培養培地において前記細胞の生存度を維持するために十分な条件下で混合するステップを含む、請求項1~40および78~87のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法。
【請求項99】
(i)第1の細胞集団および第2の細胞集団を細胞培養培地において前記細胞の生存度を維持する条件下で混合するステップ、
(ii)間質細胞によって合成された細胞外基質が細胞混合物を封入して細胞凝集塊を形成するまで前記細胞混合物を共培養するステップ、および
(iv)植え込み可能な移植片を形成するために十分な時間、フィブリンの形成を促進する条件下でフィブリノゲンおよびトロンビンを含む溶液中に凝集塊を懸濁するステップ
を含む、請求項41~77および88~97のいずれか一項に記載の植え込み可能な移植片を作製する方法。
【請求項100】
被験体における移植片の免疫拒絶を阻害する方法であって、請求項1~40および78~87のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップ、または請求項41~77および88~97のいずれか一項に記載の移植片を前記被験体に植え込むステップを含む、方法。
【請求項101】
免疫活性化の低減を必要とする被験体における免疫活性化を低減させる方法であって、請求項1~40および78~87のいずれか一項に記載の組成物、または請求項41~77および88~97のいずれか一項に記載の植え込み可能な移植片を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項102】
免疫寛容の促進を必要とする被験体における免疫寛容を促進する方法であって、請求項11~40および78~87のいずれか一項に記載の組成物、または請求項41~77および88~97のいずれか一項に記載の植え込み可能な移植片を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項103】
前記組成物または前記移植片が同種異系細胞を含む、請求項100~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記組成物または前記移植片が異種細胞を含む、請求項100~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記組成物または前記移植片が、心細胞、皮膚細胞、腎細胞、膵細胞、肝細胞、肺細胞、または内分泌臓器からの細胞を含む、請求項100~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記被験体が自己免疫状態を有する、請求項100~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記被験体における線維症を阻害する、請求項100~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記組成物または前記移植片が、皮下、筋肉内、静脈内、血管内、門脈内、脾臓内、または腹腔内に投与される、請求項100~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記組成物または前記移植片が同所部位に投与される、請求項100~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記組成物または前記移植片が異所部位に投与される、請求項100~107のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その各々の全内容が、全体が参照により本明細書に組み込まれている、2018年11月26日に提出された米国特許仮出願第62/771,457号および2019年7月11日に提出された米国特許仮出願第62/873,017号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
臓器移植は、毎年何千人もの人に、完全で活動的な人生を送る新たな機会を与える。例えば、末期の肝臓、肺、および心疾患の場合、移植は一般的に唯一の利用可能な治療選択肢である。免疫抑制薬および補助ケアの改善は、極めて優れた短期(1~3年)の患者の生存率および移植片生存率をもたらした。この成功は、長期間(>5年)の移植片生存率が不良であること、持続的な免疫抑制薬が必要であること、および臓器の需要と供給の間の相違を含むいくつかの問題によって制限される。例えば、臓器および組織の需要はその供給をはるかに上回っている。例えば、2017年では、移植待ちリストには114,605人の候補者が存在したが(UNOS http://unos.org/)、2017年に実施された移植はわずか34,770例であった。このことは、毎日およそ20人が移植を待ちながら死亡することを意味する。その上、心血管疾患、日和見感染症、および悪性疾患のリスクの顕著な増大を含む継続的な免疫抑制療法の合併症が、後に移植片を失うという問題に伴う。
【0003】
同種移植は、ドナー組織の供給を増加させるために開発されている。しかし、同種異系免疫応答を制限することは大きい難題である。同種異系移植は、レシピエントの免疫系、特にT細胞の増殖および活性がダウンレギュレートされなければ成功しない。さらに、臓器全体の移植の場合、同種移植に対する免疫応答のダウンレギュレーションを、一生涯にわたって継続しなければならない。T細胞の機能の抑制は、同種異系移植片を許容するために必要であるが、レシピエントの免疫調節に続発する意図しない臨床上の副作用が起こる可能性がある。例えば、現在の臨床標準は、全身性の免疫抑制薬の使用であるが、これは移植片の有効性を低減させ、感染症のリスクを実質的に増加させる。
【0004】
局所的な免疫抑制を提供するために開発中である現在のモダリティは、大部分が生物材料の改変型、または保護する必要がある(シス媒介性の)細胞の遺伝子操作に集中している。しかし、実質細胞は既に数が限られており、操作することが難しく、局所的な免疫抑制を生物材料に組み込むこともまた、別の不利な点を有する。例えば、Vegas et al. (Nature Medicine 22(3):306, 2016)は、化学改変アルギン酸ハイドロゲルに封入した幹細胞由来β細胞が、異物応答を改善することを示した。一方、Headen et al. (Nature Materials 17(8):732, 2018)は、Fasリガンドのアポトーシス型をコーティングしたマイクロゲルが、糖尿病マウスにおいて同種異系島移植片の持続的な生存をもたらすことを例証した。しかし、そのような生物材料はしばしば、in vivoで即座にリモデリングを起こし、および/または分解する。
【0005】
一部のグループは、細胞ベースのアプローチを試みている。Gornalusse et al. (Nature Biotechnology 35(8):765, 2017)は、全てのヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子の表面発現を除去すること、およびHLA-Eのアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介発現によって広く適合性の多能性幹細胞を作製した。しかし、この戦略は多能性細胞分化に依存し、これはいくつかの細胞タイプにとって主な制限である。
【0006】
その上、現在の局所免疫寛容戦略の多くが抱える問題は、その免疫調節効果が時間と共に悪化することである(Vegas et al.、前記;Headen et al.、前記)。臨床では、移植片がレシピエント免疫系によって非自己であると認識されることから、これは移植片の拒絶をもたらし得る。
【0007】
したがって、移植片の転帰を改善する、持続的な免疫抑制の必要性をなくす、および移植のための臓器のプールを増大させる手段として移植の寛容を誘導する方法の開発は、なおも大きい難題である。HLAが一致した臓器を得ることができない患者の広く適合性の解決策がなおも必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Vegasら、Nature Medicine(2016)22(3):306
【非特許文献2】Headenら、Nature Materials(2018)17(8):732
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、免疫調節タンパク質(例えば、PD-L1)を発現するように操作された支持細胞(例えば、線維芽細胞および内皮細胞)が、移植された細胞、組織、および臓器の機能を改善するという発見に少なくとも部分的に基づく。同様に、遺伝子操作された支持細胞における免疫調節タンパク質の発現は、誘導型フォーマットで生成される場合に制御可能であることも実証されている。理論に拘束されないが、in vivoで植え込まれると、少なくとも1つの集団が免疫調節タンパク質を発現するように遺伝子操作されている少なくとも2つの細胞集団を含有する混合物(例えば、懸濁物、凝集塊、オルガノイド等)は、宿主免疫系に対して阻害性のシグナルを提供して局所免疫寛容を可能にし、これは一部の実施形態では制御可能である。
【0010】
本開示はまた、PD-L1を発現するように操作された線維芽細胞および内皮細胞がT細胞媒介細胞傷害に対して感受性が低いという発見にも少なくとも部分的に基づく。加えて、PD-L1を発現するように操作された線維芽細胞およびヒト肝細胞を含む構築物が、免疫媒介性の除去、例えばCAR T細胞媒介性の細胞傷害から保護されることが実証された。PD-L1を発現するように遺伝子操作された線維芽細胞を含む植え込み可能な移植片は、非改変線維芽細胞を含む移植片と比較して免疫コンピテントマウスへの植え込みの2週間後にin vivoでより多く生存していることもまた示された。
【0011】
さらに、本開示は、PD-L1発現が、誘導可能な発現系を使用することによって線維芽細胞上で制御可能であったという発見に基づく。具体的には、テトラサイクリンを投与すると、Tetオペレーター領域を含むプロモーターをトランスフェクトした線維芽細胞上でのPD-L1発現が可能となった。
【0012】
T細胞の機能を抑制することは、同種異系移植片の受容にとって必要であるが、同様にレシピエントの免疫調節に続発する意図されない臨床副作用の可能性も提供することから、植え込み可能な細胞治療に誘導型プロモーターを組み込むことは、副作用が生じる場合に、免疫調節のスイッチをオフにする機会を医師に提供すると考えられる。
【0013】
現在の局所免疫寛容戦略によって提供される免疫調節効果は、時間と共に悪化し、レシピエントの免疫系によって非自己であると認識されることにより移植片の拒絶をもたらし得る。理論に拘束されないが、本明細書に提供される植え込み可能な細胞治療は、生物材料または静脈内注入される生物製剤とは対照的に細胞の自己複製集団を含むことから、この治療は移植片の寿命を通して免疫細胞に阻害性のシグナルの持続的な供給源を提供すると考えられる。その上、HLA不適合の細胞ベースの治療を受けた患者は、全身性の免疫抑制剤を一生涯にわたって処方され、これはがんのような悪性疾患および感染症、高血圧症、神経毒性、骨粗鬆症、および他の多くに対する感受性の増加などの無数の副作用を有する。理論に拘束されないが、移植片の外部の細胞に影響を及ぼさない局所的な免疫抑制を可能にすることによって、本明細書に提供される組成物および方法は、これらの問題を改善することができると考えられる。
【0014】
さらに、本明細書に記載される植え込み可能な移植片は、多様な細胞ベースの治療と適合性であると考えられる。本明細書において実証されるように、遺伝子改変細胞は、実質細胞の機能を促進することが示されている。各々の臨床シナリオに合わせて実質細胞を改変することは非効率的であり、時間がかかり、費用もかかることから、免疫寛容の供給源を実質細胞から切り離すことによって、多様な同種異系移植片を組み込むためのアプローチが可能となり、広く適合性の解決策を提供する。
【0015】
したがって、本開示は、細胞、組織、または臓器全体の移植に対する代替法を提供する、または自己免疫障害および線維症などの他の状態の医学的介入の際の支持体としての、操作された細胞集団を含有する組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0016】
一態様では、本開示は、被験体への植え込みにとって適した組成物であって、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含む組成物を提供する。
【0017】
一部の態様では、本開示は、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含む組成物を提供する。他の態様では、本開示は、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含む組成物を提供する。
【0018】
一態様では、本開示は、被験体への植え込みにとって適した組成物であって、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含む組成物を提供する。
【0019】
他の態様では、本開示は、被験体への植え込みにとって適した組成物であって、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含み、第1および第2の細胞集団が、細胞外基質に封入されている組成物を提供する。
【0020】
他の態様では、本開示は、被験体への植え込みにとって適した組成物であって、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含み、第1および第2の細胞集団が細胞外基質に封入されている組成物を提供する。
【0021】
別の態様では、本開示は、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含み、第1および第2の細胞集団が細胞外基質に封入されている、植え込み可能な移植片を提供する。
【0022】
別の態様では、本開示は、(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団;および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含み、第1および第2の細胞集団が細胞外基質に封入されている、植え込み可能な移植片を提供する。
【0023】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、第1の細胞集団の細胞は、初代肝細胞、血管内皮細胞である。
【0024】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、第2の細胞集団の細胞は、1つまたは複数のチェックポイント経路を活性化して、第1の細胞集団に存在する細胞に対する免疫細胞の疲弊およびアネルギーを誘導するタンパク質(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)を発現するように遺伝子操作されている。一部の態様では、免疫チェックポイントタンパク質は、PD-1、PD-L1、PDL-2、CD47、CD39、CD73、CD200、HVEC、CEACAM1、CD155TIM-3、LAG-3、CTLA-4、A2AR、B7-H3、B7-H4、HLA-E、BTLA、IDO、KIR、VISTA、またはその組合せである。ある特定の態様では、免疫チェックポイントタンパク質は、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せである。
【0025】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、遺伝子操作された第2の細胞集団は、内皮細胞、線維芽細胞、または周皮細胞である。一部の態様では、遺伝子操作された第2の細胞集団は、遺伝子操作されたヒト皮膚線維芽細胞(HDF)である。
【0026】
一部の態様では、本開示は、被験体への植え込みにとって適した組成物であって、(a)初代肝細胞を含む第1の細胞集団;および(b)誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、遺伝子操作されたHDFが、第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する組成物を提供する。
【0027】
一部の態様では、本開示は、(a)初代肝細胞を含む第1の細胞集団;および(b)誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、遺伝子操作されたHDFが第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害し、ならびに(a)および(b)が細胞外基質に封入されて植え込み可能な移植片を形成する、植え込み可能な移植片(graph)を提供する。
【0028】
一部の態様では、本開示は、被験体への移植にとって適した組成物であって、(a)血管内皮細胞を含む第1の細胞集団;および(b)誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せであり、遺伝子操作されたHDFが、第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する組成物を提供する。
【0029】
一部の態様では、本開示は、(a)血管内皮細胞を含む第1の細胞集団;および(b)誘導型プロモーターによって制御される免疫チェックポイントタンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73またはその組合せであり、遺伝子操作されたHDFが第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害し、(a)および(b)が細胞外基質に封入されて、植え込み可能な移植片を形成する、植え込み可能な移植片を提供する。
【0030】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、第2の細胞集団の細胞はタンパク質を発現するベクターを含む。一部の態様では、ベクターはウイルスベクター、例えばレンチウイルスまたはアデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルスベクターである。一部の態様では、タンパク質の発現は、構成的に活性なプロモーター、誘導型プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または時間制限型プロモーターの制御下にある。ある特定の態様では、第2の細胞集団によって発現されるタンパク質の発現は、化学誘導型プロモーター、光誘導型プロモーター、温度誘導型プロモーター、または空間制限型プロモーターの制御下にある。一部の態様では、第2の細胞集団は、リプレッサーまたはアクチベーター構成成分をさらに含む。
【0031】
一部の態様では、本開示は、被験体における植え込みにとって適した組成物であって、(i)実質細胞を含む第1の細胞集団;および(ii)免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作された非実質細胞を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質の発現が誘導型プロモーターの制御下にある組成物を提供する。
【0032】
一部の態様では、本開示は、被験体における植え込みにとって適した組成物であって、(i)内皮細胞を含む第1の細胞集団;および(ii)免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作された非実質細胞を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質の発現が誘導型プロモーターの制御下にある組成物を提供する。
【0033】
一部の態様では、本開示は、被験体における植え込みにとって適した組成物であって、(i)肝細胞を含む第1の細胞集団;および(ii)免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作された間質細胞を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質の発現が誘導型プロモーターの制御下にある組成物を提供する。
【0034】
一部の態様では、本開示は、被験体における植え込みにとって適した組成物であって、(i)内皮細胞を含む第1の細胞集団;および(ii)免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作された間質細胞を含む第2の細胞集団を含み、免疫チェックポイントタンパク質の発現が誘導型プロモーターの制御下にある組成物を提供する。
【0035】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、本明細書に提供される組成物および移植片は、懸濁物中、凝集塊中にあるか、または例えば間質細胞によって産生される天然基質であり得る細胞外基質に封入されている。他の態様では、基質は、合成基質、例えばポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ペプチドベースの自己組織化ゲル、温度応答性ポリ(NIPAAm)、ポリ-D,L-ラクチド(PDLLA)、ポリ-e-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシアパタイト、またはセラミックベースの生物材料である。
【0036】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片を産生する方法を提供する。一部の態様では、方法は、細胞の生存度を維持するために十分な条件下で、細胞培養培地中で第1の細胞集団および第2の細胞集団を混合するステップを含む。一部の態様では、方法は、間質細胞によって合成された細胞外基質が細胞混合物を封入して細胞凝集塊を形成するまで細胞混合物を共培養するステップ、および植え込み可能な移植片を形成するために十分な時間、フィブリンの形成を促進する条件下でフィブリノゲンおよびトロンビンを含む溶液中に凝集塊を懸濁するステップをさらに含む。
【0037】
一部の態様では、本開示は、植え込み可能な移植片を産生する方法であって、
(i)(a)実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む細胞の第1の細胞集団、および(b)第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を、細胞培養培地中、細胞の生存度を維持する条件下で混合するステップ;
(ii)間質細胞によって合成された細胞外基質が細胞混合物を封入して細胞凝集塊を形成するまで細胞混合物を共培養するステップ;および
(iii)植え込み可能な移植片を形成するために十分な時間、フィブリンの形成を促進する条件下でフィブリノゲンおよびトロンビンを含む溶液中に凝集塊を懸濁するステップ
を含む方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本開示は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって移植片の免疫拒絶を阻害する方法を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、例えば被験体への細胞、組織、または臓器の移植に応答した免疫活性化を低減させる方法を提供する。
【0040】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、被験体における免疫寛容を促進する方法を提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、例えば被験体への細胞、組織、または臓器の移植に応答した免疫寛容を促進する方法を提供する。
【0042】
一部の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、免疫拒絶の阻害に使用するための組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0043】
一部の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、免疫活性化の阻害に使用するための組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0044】
一部の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、免疫寛容の促進に使用するための組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0045】
一部の態様では、本明細書に提供される方法は、被験体における同種異系細胞、組織、または臓器に対する免疫応答を低減、阻害、もしくは改善するか、または免疫寛容を促進する。一部の態様では、本明細書に提供される方法は、被験体における異種細胞、組織、または臓器に対する免疫応答を低減、阻害、もしくは改善するか、または免疫寛容を促進する。他の態様では、本明細書に提供される方法は、例えば自己免疫障害における同型分子に対する免疫応答を阻害、低減、もしくは改善するか、または免疫寛容を促進する。
【0046】
一部の態様では、本明細書に提供される組成物および植え込み可能な移植片は、被験体における同種異系細胞、組織、または臓器に対する免疫応答を低減、阻害、もしくは改善するか、または免疫寛容を促進する。一部の態様では、本明細書に提供される組成物および植え込み可能な移植片は、被験体における異種細胞、組織、または臓器に対する免疫応答を低減、阻害、もしくは改善するか、または免疫寛容を促進する。他の態様では、本明細書に提供される組成物および植え込み可能な移植片は、例えば自己免疫障害における同型分子に対する免疫応答を阻害、低減、もしくは改善するか、または免疫寛容を促進する。
【0047】
これらおよび他の態様および実施形態を、本明細書においてより詳しく記載する。
【0048】
本発明の制限の各々は、本発明の様々な実施形態を包含し得る。したがって、任意の1つの要素または要素の組合せを伴う本発明の制限の各々は、本発明の各々の態様に含まれ得ると予想される。本発明は、以下の説明に記載されるか、または図面に例証される構成成分の構築および/または配置の詳細にその適用が限定されない。
【0049】
以下の図面は、一定の拡大縮小比で描かれていないと意図される。明快にする目的のために、必ずしも全ての構成成分が全ての図面に表示されていないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1Aは、様々なトランスジーンを有するレンチウイルス構築物の概略図である。図1Bは、様々な分子を標的化するタグ付き抗体によるHDFまたはHUVEC(標識)のフローサイトメトリー分析を描写する。
【0051】
図2-1】図2Aは、形質導入集団と対照HDF集団との間のPD-L1の転写の比較を描写するグラフである(独立した株に関してn=3;TおよびB細胞活性化に関連する84個の遺伝子)。図2Bは、T細胞活性化、増殖、極性化、および分化に関連する遺伝子のヒートマップを描写する。各々の列は独立した細胞株である。
図2-2】同上。
【0052】
図3-1】図3A~3Hは、HDFにおけるPD-L1アップレギュレーションが、CAR-T媒介細胞傷害に対して部分的な保護を提供することを示す。図3Aは、それによってCARがHDF上のEGFRを標的化するCAR-Tチャレンジの概略図である。図3Bは、EGFRを標的化するタグ付き抗体によるHDFおよび初代ヒト肝細胞(PHH)(標識)のフローサイトメトリー分析を描写する。図3Cは、様々な用量および様々な時点でEGFR CAR-Tをチャレンジした改変または対照HDFの生存度を描写する棒グラフである(n=4;平均値±SEM)。図3Dは、EGFR CAR-Tまたは形質導入していないT細胞(対照)をチャレンジ後のHDF培養上清における炎症促進性サイトカイン濃度を描写する(n=4)。HDFおよびPD-L1 Tg培養上清中の炎症促進性サイトカイン濃度を、図3E(GM-CSF)、図3F(IFN-γ)、図3G(IL-2)、および図3H(TNF-α)に描写する(n=4;平均値±SEM)。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
図3-4】同上。
【0053】
図4-1】図4A~4Cは、HUVECにおけるPD-L1アップレギュレーションがT細胞媒介細胞傷害に対する保護を提供することを示す。図4Aは、T細胞チャレンジの概略図であり、それによってHUVECは共刺激を提供し、外部から供給した抗CD3 IgG(クローンOKT3)がTCRシグナル伝達を活性化する。図4Bは、WTおよびPD-L1 Tg HUVECが内側を覆う人工血管の免疫蛍光分析を描写する。血管に、30ng/mLの活性化α-CD3 IgGの存在下でヒトT細胞をチャレンジする(代表的な画像;最大値投影法;スケールバー=50μm)。図4Cは、WTまたはPD-L1 Tg HUVECが内側を覆い、T細胞をチャレンジした人工血管のバリア透過性を描写するグラフである。
図4-2】同上。
【0054】
図5-1】図5A~5Dは、HDFにおけるPD-L1アップレギュレーションがCAR-T媒介細胞傷害に対するトランス構成のヒト肝細胞の保護を提供することを示す。図5Aは、実験のタイムラインを描写する。図5Bは、HDFがヒト肝細胞のコア周囲に保護バリアを形成することを可能にする2段階の層状作製アプローチの概略図である。図5Cは、2段階作製を介して生成された植え込み可能な構築物の免疫蛍光分析を描写する。サイトケラチン18(CK18)は、肝細胞マーカーである(代表的な画像;最大値投影法;スケールバー=100μm)。図5Dは、EGFR CAR-Tを有するおよび有しない様々な条件の上清中のアルブミン濃度を描写するグラフである(n=3;平均値±SEM)。
図5-2】同上。
【0055】
図6図6A~6Bは、PD-L1発現がHDF上で誘導可能に発現され得ることを示す。図6Aは、PD-L1の誘導型発現を描写する概略図である。(左)PD-L1および上流のTetオペレーター領域は、スーパーCMV(suCMV)プロモーターの下で発現される。(中央)Tetオペレーター領域に結合するTetRが同時発現されると、PD-L1の発現が抑制される。(右)テトラサイクリン(tet)を外部から投与すると、TetRとTetオペレーターとの結合を遮断し、このようにPD-L1の発現を可能にする。図6Bは、HDFの表面上のPD-L1発現のフローサイトメトリー分析を描写する。(左から右に)(i)ベースラインHDF、(ii)suCMVの下でのPD-L1および上流のTetオペレーターの発現を有するHDF、(iii)TetRの同時発現、(iv)様々な濃度のtetのHDF培養物への添加(フロー分析をtet誘導の3日後に実施した)、および(v)tetの洗い流し(フロー分析を培地洗浄の2日後に実施した)。
【0056】
図7図7A~7Dは、普遍的な移植戦略の概略図を示す。図7Aでは、操作された間質支持細胞を、錐体形状のマイクロウェルを使用して実質細胞と共に凝集させ、オルガノイドを作製する。図7Bでは、オルガノイドを、植え込み可能な生物材料中に埋め込む。図7Cでは、移植片を、動物の腹腔内腔に植え込む。図7Dでは、間質支持細胞は、移植片を調べるT細胞の活性を抑制するために阻害性シグナルを提供する。
【0057】
図8図8A~8Bは、肝オルガノイドの作製および特徴付けを描写する。図8Aは、HDFと共に凝集したPHHがマイクロウェル中で2日間圧縮されてオルガノイドを形成することを示す画像である。図8Bは、HDFと共に凝集したPHHが、HDFなしで凝集したPHHより良好なアルブミン合成を描写することを示すグラフである。
【0058】
図9図9A~9Bは、間質支持細胞の遺伝子操作を描写する。図9Aは、PD-L1およびトランスジェニックPD-L1によってHDFを形質導入するために使用するRFPベクターを有するレンチウイルス粒子の概略図である。図9Bは、形質導入細胞を選別および増大後、レンチウイルス粒子による感染によりPD-L1hi HDFの純粋な集団がもたらされることを示すグラフである。
【0059】
図10図10は、PD-L1の過剰発現をオンまたはオフにするための、誘導型suCMVプロモーターの下でPD-L1トランスジーンおよびsuCMVプロモーターの下でテトラサイクリン(Tet)リプレッサートランスジーンを発現するベクターの概略図である。
【0060】
図11図11は、対照およびレンチウイルストランスフェクト細胞におけるPD-L1の発現を実証する免疫蛍光分析である。
【0061】
図12図12A~12Bは、操作された肝移植片の作製を描写する。図12Aは、植え込み可能な円柱形のフィブリンゲルの中に埋め込まれた肝オルガノイドを描写する概略図である。図12Bは、移植片の中で生存した肝オルガノイドの画像である。
【0062】
図13図13は、免疫抑制を特徴付けするためのin vitroアッセイの概略図である。
【0063】
図14図14は、免疫抑制のin vivo特徴付けの概略図である。
【0064】
図15図15は、免疫コンピテントC57BL/6マウスへの皮下植え込みの2週間後の非改変およびPD-L1改変HDFの細胞生存度を描写するグラフである。各々の丸は、1つの移植片を植え込んだマウスを表す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本開示は、宿主において免疫寛容を誘発する遺伝子操作細胞集団を含有する植え込みのための方法および組成物に関する。そのような操作された細胞混合物または凝集塊は、宿主、例えばヒト、または非ヒト、動物宿主における植え込みにとって特に適している。
【0066】
本明細書に記載されるように、本明細書に提供される組成物および方法は、局所免疫寛容を誘導するタンパク質の制御可能な発現を可能にするという利点を有し、このように副作用が生じた場合に、移植された細胞および組織の免疫調節をオフにする機会を医師に提供する。加えて、免疫寛容の供給源を移植された実質または内皮細胞から切り離すことによって、本開示は、「既製品の」同種異系および/または異種細胞治療を提供する。例えば、本明細書に開示される組成物中の遺伝子操作された第2の細胞集団(例えば、支持細胞)を、多様な同種異系移植片と共に組み込んで広く適合性の細胞治療を提供することができる。
【0067】
加えて、本明細書に記載される操作された細胞混合物は、操作されたヒト組織を有する動物(例えば、マウス)を産生するために有用である。そのような場合、特に医薬の開発においておよび疾患の動物モデルとして多くの用途を有するこれらの動物が作製される。したがって、本明細書に記載される組成物および方法は、日常的な実験的研究にとって適しているのみならず、大規模な工業的適用および臨床適用にとっても適している。
【0068】
I.定義
本明細書で使用される全ての科学技術用語は、以下に定義していなければ、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有すると意図される。本明細書で使用される技術の言及は、当業者に明らかであるそれらの技術の変形形態または等価技術の置換を含む、当技術分野において一般的に理解される技術を指すと意図される。以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、本開示の主題の説明を容易にするために以下の定義を述べる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化する。それが使用される文脈を考慮して当業者に明白でない用語の使用がある場合、「約」は、特定の値の最大でプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0070】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの」、「および」および「その」は、文脈が明らかにそれ以外であることを示していない限り複数形を含む。このように、例えば「細胞凝集塊」との言及は、複数のそのような細胞凝集塊を含み、「その細胞」との言及は当業者に公知の1つまたは複数の細胞に対する言及等を含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、実体の一覧の文脈において使用する場合の用語「および/または」は、単一で存在するまたは任意の起こり得る組合せまたは小組合せで存在する実体を指す。
【0072】
用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、本質的であるか否かによらず、本開示にとって必須である組成物、方法、およびそのそれぞれの構成成分に関連して使用され、それらが本質的であるか否かによらず、明記されていない要素を含むことに対してオープンである。
【0073】
用語「から本質的になる」は、所定の態様にとって必要なそれらのエレメントを指す。この用語は、本開示のその態様の基本的かつ新規または機能的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加のエレメントの存在を許容する。
【0074】
用語「からなる」は、本明細書に記載される組成物、方法、およびそのそれぞれの構成成分を指し、態様のその説明に列挙されていないいかなるエレメントも除外する。
【0075】
「免疫応答」は、異物に対する脊椎動物内の生物応答を指し、この応答は、これらの作用剤およびそれらによって引き起こされる疾患から生物を保護する。免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、または好中球)およびこれらの細胞のいずれかまたは肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、および補体を含む)の作用によって媒介され、それによって侵襲性の病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん性もしくは他の異常な細胞、または自己免疫もしくは病的な炎症の場合には正常なヒト細胞もしくは組織の選択的標的化、結合、損傷、破壊、および/または脊椎動物の体からの除去をもたらす。免疫応答または反応は、例えばT細胞、例えばエフェクターT細胞またはTh細胞、例えばCD4+またはCD8+ T細胞の活性化もしくは阻害、またはTreg細胞の阻害を含む。
【0076】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、免疫応答において役割を果たす造血起源の細胞である。免疫細胞は、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)、ナチュラルキラー細胞、および骨髄性細胞(例えば、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球)を含む。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞媒介応答」は、エフェクターT細胞(例えば、CD8細胞)およびヘルパーT細胞(例えば、CD4細胞)を含むT細胞によって媒介される応答を指す。T細胞媒介応答としては、例えばT細胞の細胞傷害および増殖が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答」は、細胞傷害性T細胞によって誘導される免疫応答を指す。CTL応答は、主にCD8 T細胞によって媒介される。
【0078】
用語「主要組織適合遺伝子複合体」または「MHC」は、循環する細胞傷害性およびヘルパーTリンパ球にそれぞれ断片化したタンパク質のペプチドを提示することによって免疫応答を調節する古典的なMHCクラスIおよびクラスII分子として公知の多型細胞膜結合糖タンパク質をコードする遺伝子群を含有するゲノム遺伝子座を指す。ヒトでは、この遺伝子群は、「ヒト白血球抗原」または「HLA」システムとも呼ばれる。ヒトMHCクラスI遺伝子は、例えばHLA-A、HL-B、およびHLA-C分子をコードする。HLA-Aは、ヒトMHCクラスI細胞表面受容体の3つの主要なタイプの1つである。他方は、HLA-BおよびHLA-Cである。HLA-Aタンパク質はヘテロ二量体であり、重鎖α鎖およびより小さいβ鎖で構成される。α鎖はバリアントHLA-A遺伝子によってコードされ、β鎖(β2-ミクログロブリン)は、不変のβ2ミクログロブリン分子である。β2ミクログロブリンタンパク質は、ヒトゲノムの別個の領域によってコードされる。HLA-A02(A02)は、HLA-A血清型群内のヒト白血球抗原血清型である。血清型は、HLA-Aα鎖のα2ドメインの抗体認識によって決定される。A02の場合、α鎖は、HLA-A02遺伝子によってコードされ、β鎖はB2M遺伝子座によってコードされる。ヒトMHCクラスII遺伝子は、例えばHLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA、およびHLA-DRB1をコードする。ヒト主要組織適合遺伝子複合体の完全なヌクレオチド配列および遺伝子マップは公開されている(例えば、The MHC sequencing consortium, Nature 401:921-923, 1999)。
【0079】
「免疫調節タンパク質」または「免疫調節ポリペプチド」は、免疫活性をモジュレートするタンパク質である。免疫応答を「モジュレーション」または「モジュレートする」とは、免疫活性が増強または抑制されることを意味する。免疫調節タンパク質は、単一のペプチド、ポリペプチド鎖、または多量体(二量体またはより高次の多量体)であり得る。分泌可能な免疫調節タンパク質は、あるタイプの免疫調節タンパク質である。
【0080】
「免疫調節細胞」は、本明細書に記載される免疫調節タンパク質を発現する細胞である。一部の実施形態では、細胞は、免疫調節タンパク質を発現するかまたは過剰発現するように遺伝子操作されている。一部の実施形態では、細胞は、操作された細胞またはその付近の細胞に対する免疫応答が低減されるかまたは阻害されるように、免疫調節タンパク質を発現するかまたは過剰発現するように遺伝子操作されている。一部の実施形態では、細胞は、操作された細胞またはその付近の細胞に対する免疫応答が誘発されないように、免疫調節タンパク質を発現するかまたは過剰発現するように遺伝子操作されている。一部の実施形態では、免疫調節細胞は、免疫チェックポイントタンパク質を発現する。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「免疫チェックポイント」、「免疫チェックポイントタンパク質」、「免疫チェックポイント分子」、または「免疫チェックポイント調節剤」は、免疫応答をダウンモジュレートするまたは阻害する免疫系の細胞におけるシグナル伝達経路に関連する分子群を指す。免疫チェックポイント調節剤は当技術分野で公知であり、これには、CTLA-4、PD-1、PDL-1、PDL-2、LAG-3、TIM-3、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、2B4、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、BTLA、およびA2aRが挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「移植」は、ヒトまたは非ヒト動物レシピエントにおける臓器、例えば腎臓の交換を指す。交換の目的は、宿主における疾患を有する臓器または組織を除去して、これをドナーからの健康な臓器または組織と交換することである。ドナーおよびレシピエントが同じ種である場合、移植片は「同種異系移植片」として公知である。ドナーおよびレシピエントが異なる種である場合、移植片は「異種移植片」として公知である。移植のために必要な技術は多様であり、移植される臓器の性質に大きい程度に依存する。治療モダリティとして移植の成功は、可能性がある生理学的転帰の数に依存する。例えば、宿主は、抗体依存的な超急性の拒絶機構、細胞媒介性の急性拒絶、または慢性変性プロセスを介して新しい臓器を拒絶し得る。
【0083】
用語「同種移植片」、「ホモ移植片(homograft)」、および「同種異系移植片」は、死体ドナー、生きている血縁ドナー、および生きている非血縁ドナーからの移植を含む、異なる遺伝子型を有する同じ種の1つの個体から別の個体への臓器または組織の移植を指す。1つの個体から同じ個体へ移植された移植片は「自家移植片」または「自己移植片」と呼ばれる。2つの遺伝的に同一または同系の個体間で移植された移植片は、「同系移植片」と呼ばれる。異なる種の個体間で移植された移植片は、「異種移植片(xenogeneic graft)」または「異種移植片(xenograft)」と呼ばれる。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「拒絶」は、それによって臓器移植レシピエントの免疫応答が、臓器の正常な機能を損なうまたは破壊するために十分な、移植された臓器、細胞、または組織に対する反応を開始するプロセスまたは複数のプロセスを指す。免疫系の応答は、特異的(抗体およびT細胞依存的)または非特異的(食作用、補体依存的等)機構、またはその両方を伴い得る。
【0085】
超急性移植片拒絶は、ドナー組織に対して予め形成された抗体の作用によって直ちに起こる。これは一般的に、ABO型血液型不適合によって引き起こされ、手術中であっても血栓症および移植された組織の閉塞を呈する。
【0086】
急性移植片拒絶は最も一般的なタイプの宿主対移植片拒絶であり、移植後数週間から数カ月以内に起こる。これは、移植された組織の炎症および白血球浸潤を引き起こす移植された組織の外来MHCに対するT細胞媒介応答によって特徴付けられる。
【0087】
慢性移植片拒絶は、移植の数カ月から数年後に起こり得る。これは、抗原を有する自己MHC「のように見える」移植された組織の外来MHCに起因するT細胞媒介プロセスであり、移植された血管または組織の内膜肥厚および線維症ならびに移植片の萎縮をもたらす。
【0088】
移植片対宿主の移植片拒絶は、移植片組織内のドナーT細胞が増殖してレシピエントの組織を攻撃する場合に起こり、最も一般的には、骨髄移植において起こり、下痢、発疹、および黄疸をもたらす。
【0089】
本明細書で使用される場合、「増殖する」および「増殖」は、細胞分裂による集団における細胞の数の増加(成長)を指す。細胞増殖は一般的に、増殖因子および他のマイトゲンを含む環境に応答した複数のシグナル伝達経路の協調的活性化に起因すると理解される。細胞増殖はまた、細胞内または細胞外シグナルの作用から解放されることによって、および細胞増殖を遮断するまたは負に影響を及ぼす機構によって促進され得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「組織再生」または「臓器再生」は、組織または臓器の増大、成長、体積の増加を指す。再生は、失われた組織と、表現型が忠実な細胞タイプとの交換によって起こり得る(すなわち、組織または臓器の各々の細胞タイプは、増殖に入り、その自身の細胞区画を交換する)。ある特定の実施形態では、組織または臓器の再生は、細胞数の増加、細胞サイズの増加、組織もしくは臓器体積の増加、および/または組織のサイズの増加、および/または組織由来因子の産生の増加によって起こっていると思われる。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Michalopoulos (Comprehensive Physiology (2013), Vol. 3: 485-513)を参照されたい。
【0091】
用語「増大する」は、本明細書で使用される場合、組織移植片のサイズ、体積、または面積の増加を指す。ある特定の実施形態では、植え込まれた遺伝子操作された細胞混合物は、体積、重量、および面積によって決定した場合に増大する。
【0092】
細胞集団に関連する用語「単離された集団」は、本明細書で使用される場合、混合細胞集団または不均質細胞集団から除去および分離されている細胞集団を指す。一部の実施形態では、単離された集団は、細胞がそこから単離または濃縮される不均質集団と比較して実質的に純粋な細胞集団である。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「クローン集団」は、単一の細胞の伸長に由来する細胞集団を指す。すなわち、クローン集団内の細胞は全て、クローン集団を播種するために使用した単一の細胞の子孫である。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「共培養」は、1つより多くの細胞集団が互いに関連するように培養された細胞の集合体を指す。共培養は、細胞がヘテロタイプ相互作用(すなわち、異なる細胞タイプの細胞集団間の相互作用)、ホモタイプ相互作用(すなわち、同じ細胞タイプの細胞間の相互作用)を示すように行うことができるか、または細胞間のヘテロタイプおよびホモタイプ相互作用の特定のおよび/または制御された組合せを示すように共培養することができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「実質細胞」は、臓器または腺、例えば哺乳動物の臓器または腺の実質の細胞または実質に由来する細胞を指す。臓器または腺の実質は、臓器または腺の機能的組織であり、周辺の組織または支持組織または結合組織とは区別される。そのため、実質細胞は、臓器または腺の特定の機能または複数の機能、しばしば当技術分野で「組織特異的」機能と呼ばれる機能を実行するという性質を有する。実質細胞としては、肝細胞、膵細胞(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)、筋細胞、例えば平滑筋細胞、心筋細胞等、腸細胞、腎上皮細胞および他の腎細胞、脳細胞(ニューロン、星細胞、グリア細胞)、呼吸上皮細胞、幹細胞、および血液細胞(例えば、赤血球およびリンパ球)、成人および胚性幹細胞、血液-脳関門細胞、脂肪細胞、脾細胞、骨芽細胞、破骨細胞、および当技術分野で公知の他の実質細胞タイプが挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
ある特定の前駆細胞もまた、特にそれらが、肝前駆細胞、卵細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、破骨細胞、筋芽細胞、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、内皮幹細胞等)を含むがこれらに限定されない上記のより分化した細胞になることが決定されている場合には、「実質細胞」として含めることができる。一部の実施形態では、幹細胞を、所望の実質細胞タイプへと分化誘導されるように指定された条件下で封入および/または植え込むことができる。同様に、細胞株に由来する実質細胞を、本開示の方法論において使用することができると企図される。
【0097】
用語「非実質細胞」は、本明細書で使用される場合、臓器もしくは腺、例えば哺乳動物(例えば、ヒト)の臓器または腺における実質組織を取り巻くもしくは支持する組織、またはそのような臓器もしくは腺の結合組織の細胞またはそれに由来する細胞を指す。例示的な非実質細胞としては、間質細胞(例えば、線維芽細胞)、内皮細胞、星細胞、胆管細胞(cholangiocyte(bile duct cell))、クッパー細胞、ピット細胞等が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載される構築物に使用される非実質細胞の選択は、使用される実質細胞タイプに依存する。
【0098】
用語「間質細胞」は、本明細書で使用される場合、生物学的細胞、組織、または臓器の機能的な支持的フレームワークを形成する任意の臓器の結合組織細胞を指す。最も一般的な間質細胞は内皮細胞、線維芽細胞、および周皮細胞を含む。間質細胞は多能性であり得る。間葉幹細胞を含む多能性間質細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、および脂肪細胞を含むがこれらに限定されない多様な細胞タイプへと分化することができる。例えば、この用語は、他の非骨髄組織、例えば胎盤、臍帯血、脂肪組織、成体の筋肉、角膜間質、または脱落乳歯の歯髄に由来する多能性細胞を包含する。
【0099】
用語「内皮細胞」は、本明細書で使用される場合、心臓、動脈、静脈、毛細管、およびリンパ管などの循環系の全ての部分の内層を形成する細胞を指す。内皮細胞は、扁平細胞の単層である内皮を形成する。
【0100】
本明細書で使用される場合、「遺伝子発現のモジュレーション」は、遺伝子の誘導または抑制の変化を指す。遺伝子調節に関係する機構は、遺伝子材料に対する構造および化学的変化、転写を調節するための特異的DNAエレメントに対するタンパク質の結合、またはmRNAの翻訳をモジュレートする機構を含む。
【0101】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに当てはまる。用語「単離されたタンパク質」および「単離されたポリペプチド」は、互換的に使用され、他の構成成分(例えば、タンパク質、細胞材料)および/または化学物質から分離または精製されているタンパク質(例えば、可溶性、多量体タンパク質)を指す。典型的には、ポリペプチドは、それが試料中の総タンパク質の少なくとも60(例えば、少なくとも65、70、75、80、85、90、92、95、97、または99)重量%を構成する場合に精製されている。
【0102】
本明細書で使用される場合、語句「発現ベクター」および「組換え発現ベクター」は、構築物が、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチドを細胞内で発現させるために十分な条件下で細胞と接触する場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド構築物を指す。発現ベクターは、DNAおよびRNAを含むがこれらに限定されない任意のタイプのヌクレオチドを含み得、これらは一本鎖もしくは二本鎖であり得、合成するかまたは天然供給源から部分的に得ることができ、天然の、非天然の、および/または改変されたヌクレオチドを含有し得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼに結合して、下流の(3’方向の)コードまたは非コード配列の転写を開始することが可能なDNA調節領域である。本発明を定義する目的で、プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位と境界を接し、上流(5’方向)に伸長し、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最小数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列内には、転写開始部位ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出される。真核細胞プロモーターはしばしば、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有するが必ずしもそうとは限らない。
【0104】
用語「DNA調節配列」「制御エレメント」、および「調節エレメント」は、本明細書において互換的に使用され、非コード配列(例えば、ガイドRNA)もしくはコード配列(例えば、部位特異的改変ポリペプチド、またはCas9ポリペプチド)の転写を提供するおよび/もしくは調節する、および/またはコードされるポリペプチドの翻訳を調節する転写および翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナル等を指す。
【0105】
「発現カセット」は、プロモーターに作動可能に連結したDNAコード配列を含む。「作動可能に連結した」とは、記載される成分がその意図される様式でそれらを機能させる関係にある並置を指す。例えば、プロモーターは、プロモーターがその転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結している。用語「組換え発現ベクター」または「DNA構築物」は、本明細書において互換的に使用され、ベクターおよび少なくとも1つのインサートを含むDNA分子を指す。組換え発現ベクターは、通常、インサートを発現および/または増大させる目的のために、または他の組換えヌクレオチド配列の構築のために生成される。核酸は、プロモーター配列に作動可能に連結することができるかまたは連結することができず、およびDNA調節配列に作動可能に連結することができるかまたは連結することができない。
【0106】
細胞は、そのようなDNAが細胞内に導入されている場合、外因性のDNA、例えば組換え発現ベクターによって「遺伝子改変されている」、または「遺伝子操作されている」、または「形質転換されている」または「トランスフェクトされている」。外因性のDNAが存在することによって、永続的または一過性の遺伝子変化が起こる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「細胞外基質」は、コラーゲン、プロテオグリカン/グリコサミノグリカン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、およびいくつかの他の糖タンパク質の複雑な非細胞性の三次元高分子網状構造を指す。これらの分子は、細胞によって局所的に分泌され、細胞に密接に会合したままで、構造、接着、および生化学シグナル伝達の支持体を提供する。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「封入」は、材料内、例えば生体適合性のハイドロゲル内に細胞または細胞集団を閉じ込めることを指す。用語「同時封入」は、材料、例えばハイドロゲル内に1つより多くの細胞もしくは細胞タイプ、または細胞の集団もしくは複数の集団を封入することを指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「ハイドロゲル」は、材料が大量の水または他の水溶液を吸収するように、本質的に親水性であるポリマー鎖の網状構造を指す。ハイドロゲルは、例えば、少なくとも70体積/体積%の水、少なくとも80体積/体積%の水、少なくとも90体積/体積%の水、少なくとも95%、96%、97%、98%、およびさらには99体積/体積%またはそれより多くの水(または他の水溶液)を含み得る。ハイドロゲルは、天然または合成ポリマー、しばしば高度の架橋を特徴とするポリマー網状構造を含み得る。ハイドロゲルはまた、その有意な水分含有量により、天然の組織と非常に類似の程度の柔軟性を有する。ハイドロゲルは、細胞を培養するための足場として組織工学適用において特に有用である。ある特定の実施形態では、ハイドロゲルは、生体適合性のポリマーで作製される。
【0110】
本明細書で使用される場合、状態に関連して使用する場合の用語「防止する」は、組成物を投与されない被験体と比較して被験体における医学的状態の症状の頻度を低減する、または症状の発症を遅らせる組成物の投与を指す。
【0111】
用語「改善する」は、予防、重症度もしくは進行を弱めること、寛解、または治癒を含む、疾患状態、例えば免疫障害の処置における任意の治療上有益な結果を指す。
【0112】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」または「患者」は、処置を受ける任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類等を含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、「防止を必要とする」、「処置を必要とする」、または「それを必要とする」被験体は、適切な医療従事者(例えば、医師、看護師、またはヒトの場合はナース・プラクティショナー、非ヒト哺乳動物の場合には獣医師)の判断によって所定の処置(例えば、本明細書に記載される融合タンパク質を含む組成物による処置)から妥当な利益を得る被験体である。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「低減する」は、統計学的に有意な量の減少を指す。例えば、一実施形態では、低減するは、活性を部分的もしくは完全に阻害すること、または活性を減少もしくは低下させることを指す。一実施形態では、「低減する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば参照レベルと比較して少なくとも約15%、もしくは少なくとも約20%、もしくは少なくとも約25%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約35%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約45%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約55%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約65%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約75%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは最大で100%および100%を含む減少、または参照レベルと比較して約10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「同所性」とは、体内の予想される位置に起こることを意味する。非制限的な例として、肝移植片は肝臓に植え込むことができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「異所性」は、異常な位置または場所に起こることを意味する。したがって、「異所部位での植え込み」は、異常な部位または正常な部位から外れた部位での植え込みを意味する。異所性の植え込み部位はまた、臓器内、すなわち植え込まれる構築物の供給源細胞の部位とは異なる臓器内であり得る(例えば、ヒト肝臓構築物を動物の脾臓に植え込む)。異所性の植え込み部位はまた、本明細書に記載の構築物を収容することが可能な他の体腔も含み得る。一部の実施形態では、異所部位は、例えばリンパ節を含む。用語「異所性」および「ヘテロトロピック」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「局所投与」または「局所送達」は、その意図される標的組織または部位への組成物または作用剤の血管系を介した輸送に依存しない送達を指す。例えば、組成物は、組成物を含有するデバイスの注射または植え込みによる組成物の注射または植え込みによって送達され得る。標的組織または部位の近傍での局所投与後、組成物もしくは作用剤、またはその1つもしくは複数の構成成分が、意図される標的組織または部位へと拡散し得る。
【0118】
用語「試料」は、被験体から単離された流体、細胞、または組織の集合体を指す。生物学的流体は、典型的には、生理的温度の液体であり、被験体または生物供給源に存在する、そこから採取された、そこから発現されたまたはそうでなければ抽出された天然に存在する流体を含み得る。生物学的流体の例としては、血液、血清、漿液、血漿、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液、眼の流体、嚢胞液(cystic fluid)、涙液、便、痰、粘膜分泌物、膣分泌物、婦人科の流体(gynecological fluid)、腹水、例えば非固形腫瘍に関連する腹水、胸腔、心膜、腹腔、腹部および他の体腔の流体、気管支洗浄によって収集した流体等が挙げられる。
【0119】
用語「対照試料」は、本明細書で使用される場合、例えば、健康な被験体からの試料、または評価される被験体からより初期の時点で得た試料を含む、任意の臨床的に関連する対照試料を指す。
【0120】
II.組成物
一態様では、本開示は、被験体への植え込みにとって適した組成物であって、実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団、および第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含む組成物を提供する。
【0121】
本開示は、宿主への植え込みにとって適した組成物であって、実質細胞、内皮細胞、またはその組合せを含む第1の細胞集団であって、第1の集団の細胞が遺伝子操作されていない、第1の細胞集団、および第1の細胞集団に対する免疫応答を阻害する遺伝子操作された免疫調節細胞を含む第2の細胞集団を含む組成物を提供する。
【0122】
本明細書に開示される細胞組成物は、実質細胞を、1つまたは2つまたはそれより多くのタイプの非実質細胞、例えば間質細胞、内皮細胞、星細胞、胆管細胞(cholangiocytes(bile duct cells))、クッパー細胞、ピット細胞等と共に含有し得ると理解される。一部の実施形態では、実質細胞(例えば、肝細胞)は、非実質細胞の第2の集団にヘテロタイプ的に接触して培養される。一部の実施形態では、細胞組成物は、1つより多くの非実質細胞集団を含有し得る。一部の実施形態では、組成物は、遺伝子改変されていない追加の(例えば、第3の)非実質細胞集団を含有する。一部の実施形態では、組成物は、追加の(例えば、第3の)遺伝子操作された非実質細胞集団を含有する。当業者は、一部の場合では、例えばある特定のin vivo環境を模倣することが望ましい場合には、実質細胞を取り巻く非実質細胞の特定のパターンが望ましいことがあり得ることを認識するであろう。任意の支持細胞または補助細胞が、本明細書に開示される細胞組成物および植え込み可能な移植片に含まれ得ると理解される。
【0123】
本明細書に開示される細胞組成物および植え込み可能な移植片に含めることができるさらなる細胞タイプは、膵細胞(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)、腸細胞、腎上皮細胞、星細胞、筋細胞、脳細胞、ニューロン、グリア細胞、呼吸上皮細胞、リンパ球、赤血球、血液-脳関門細胞、腎細胞、がん細胞、正常または形質転換線維芽細胞、肝前駆細胞、卵細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、破骨細胞、筋芽細胞、ベータ膵島細胞、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、内皮幹細胞等)、例えば参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2006/0258000号に記載される細胞、筋細胞、ケラチノサイト、および支持層(substrate)に接着する実際に任意の細胞タイプを含む。
【0124】
A.細胞集団
一部の態様では、本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片における第1の細胞集団は、ヒト実質細胞、内皮細胞、またはその組合せで構成される。一部の態様では、本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片における第1の細胞集団は、ヒト実質細胞、血管細胞、またはその組合せで構成される。
【0125】
一部の態様では、第1の細胞集団は実質細胞を含む。一部の態様では、第1の細胞集団は、特定の形態、表現型および/または高度に分化した機能を有する実質細胞を含有する。例示的な実質細胞としては、肝細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋細胞、膵細胞(例えば、膵臓外分泌細胞、膵島細胞)、脾細胞、腎細胞、腸細胞、ニューロン、胆管細胞、クッパー細胞、星細胞、心筋細胞、肺胞細胞、気管支細胞、クラブ細胞(club cell)、尿路上皮細胞、粘液細胞、壁細胞、主細胞、G細胞、杯細胞、腸内分泌細胞、パネート細胞、M細胞、房飾細胞(tuft cell)、グリア細胞、胆嚢細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、骨細胞、破骨細胞、食道細胞、光受容体細胞、角膜上皮細胞、および本明細書に記載される他の実質細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0126】
ある特定の実施形態では、実質細胞は、本開示の方法における使用を助ける適切な形態、表現型、および細胞機能を維持するために最適化される。初代実質細胞は、選択された実質細胞(例えば、肝細胞)が最初に、所望の形態、表現型、および細胞機能を有することを確実にするように最適化された条件下で単離および/または前培養することができ、このように本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片においてならびにin vivoで植え込み時に、前記形態、表現型、および/または機能を維持する用意ができている。
【0127】
一部の態様では、第1の細胞集団は、第1の実質細胞集団の特定の形態、表現型、および/または高度に分化した機能および/または生存度を支持する初代肝細胞、血管内皮細胞、または遺伝子操作された細胞を含む。
【0128】
他の態様では、第1の細胞集団は内皮細胞を含む。一部の実施形態では、第1の細胞集団中の内皮細胞は、臍帯静脈内皮細胞、肝臓の内皮細胞、脳の内皮細胞、肺の内皮細胞、腎臓の内皮細胞、心臓の内皮細胞、脾臓の内皮細胞、精巣の内皮細胞、リンパの内皮細胞、または骨髄の内皮細胞である。
【0129】
一部の態様では、本開示の組成物および植え込み可能な移植片は、宿主への移植後に第1の細胞集団に対する免疫応答をモジュレートするように遺伝子操作された第2の細胞集団を含む。
【0130】
一部の態様では、第2の細胞集団は、遺伝子操作された非実質細胞を含む。一部の実施形態では、第2の細胞集団は、第1の実質細胞集団の特定の形態、表現型、および/または高度に分化した機能および/または生存度を支持する遺伝子操作された非実質細胞を含む。
【0131】
一部の実施形態では、遺伝子操作された非実質細胞は間質細胞である。一部の実施形態では、遺伝子操作された間質細胞は多能性間質細胞である。一部の実施形態では、多能性間質細胞は骨髄に由来する。一部の実施形態では、遺伝子操作された多能性間質細胞は、非骨髄組織に由来する。
【0132】
一部の実施形態では、遺伝子操作された細胞は、内皮細胞、線維芽細胞、または周皮細胞である。一部の実施形態では、遺伝子操作された内皮細胞は、臍帯静脈内皮細胞、肝臓の内皮細胞、脳の内皮細胞、肺の内皮細胞、腎臓の内皮細胞、心臓の内皮細胞、脾臓の内皮細胞、精巣の内皮細胞、リンパの内皮細胞、または骨髄の内皮細胞である。内皮細胞は、上記で開示されたように得ることができる。
【0133】
一部の態様では、第2の細胞集団は、自然免疫応答、適応免疫応答、抗原提示、および抗体産生を含むがこれらに限定されない免疫応答経路の活性化を抑制または阻害する分子(例えば、タンパク質、ペプチド)を発現するように遺伝子操作されている。
【0134】
一部の態様では、第2の細胞集団は、免疫チェックポイント経路を活性化するように遺伝子操作されている。一部の実施形態では、第2の細胞集団は、免疫チェックポイント経路を活性化する分子(例えば、ペプチド、タンパク質)を発現するように遺伝子操作された間質細胞を含有する。一部の実施形態では、第2の細胞集団は、免疫チェックポイント経路を活性化する分子(例えば、ペプチド、タンパク質)を発現するように遺伝子操作された内皮細胞を含有する。一部の実施形態では、第2の細胞集団は、1つまたは両方の細胞タイプにおいて免疫チェックポイント経路を活性化するように遺伝子操作されている間質細胞および内皮細胞を含有する。
【0135】
免疫応答を「誘発しない」、または「抑制する」場合、これが宿主の免疫系が絶対的な休眠期にあることを必要とするわけではなく、単に移植された細胞に関する免疫系のいかなる活性も、組織の再生を防止、抑制、または無効にするレベル(例えば、操作されていない異種細胞に関して認められる活性のレベル)まで上昇しないことを当業者は理解するであろう。言い換えれば、免疫寛容(細胞アネルギー)状態が提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示されて提供される組成物および植え込み可能な移植片は、宿主(細胞または複数の細胞が宿主に移植された後)による免疫応答の刺激を抑制または防止するように作用する少なくとも1つの遺伝子(すなわち、遺伝子または複数の遺伝子)を発現するように操作することができる。多くのそのような候補遺伝子は当業者に公知である。
【0136】
用語「免疫活性」は、哺乳動物リンパ球の文脈において本明細書で使用される場合、1つまたは複数の細胞の生存、細胞増殖、サイトカイン産生(例えば、インターフェロン-ガンマ)、またはT細胞細胞障害活性を指す。免疫調節タンパク質の活性を評価することを含む、操作された細胞の免疫活性をアッセイする方法は当技術分野で公知であり、抗原刺激後のT細胞の増大能、再刺激の非存在下でのT細胞増大を維持する能力、および適切な動物モデルにおける抗がん活性が挙げられるがこれらに限定されない。アッセイはまた、標準的な51Cr放出アッセイ(例えば、Milone et al., (2009) Molecular Therapy 17: 1453-1464を参照されたい)、またはフローベースの細胞障害アッセイ、またはインピーダンスベースの細胞障害アッセイ(Peper et al. (2014) Journal of Immunological Methods, 405:192-198)を含む、細胞傷害を評価するアッセイも含む。操作された細胞の免疫活性を評価するアッセイを、対照の非操作細胞、または公知の活性を有する1つもしくは複数の他の操作された組換え受容体(例えば、抗原受容体)を含有する細胞と比較することができる。
【0137】
一部の態様では、第2の細胞集団は、1つまたは複数のチェックポイント経路を活性化して第1の細胞集団に存在する細胞に対する免疫細胞の疲弊およびアネルギーを誘導するように遺伝子操作されている。例えば、一部の実施形態では、第2の細胞集団は、移植された細胞がヒト白血球抗原(HLA)ミスマッチT細胞によって拒絶されないように、移植された細胞を調べる免疫細胞に対して阻害性のシグナルを付与する。一部の実施形態では、第2の細胞集団が存在することにより、T細胞上に疲弊マーカーが発現される。一部の実施形態では、疲弊マーカーはPD-1、LAG-3、およびTIM-3である。
【0138】
一部の態様では、第2の細胞集団はまた、前記形態、表現型、機能、または生存度を支持する因子、例えば可溶性因子、または生化学的合図(cue)を分泌または産生することもできる。例えば、組成物中の第2の細胞集団は、例えばin vivoで構築物の血管形成を促進する増殖因子および/またはサイトカインを分泌することができる。一部の実施形態では、第2の細胞集団中の非実質細胞は、植え込まれた細胞混合物または細胞凝集塊の部位への血管の動員を増強する。例えば、本明細書に開示される組成物の第2の細胞集団内の非実質細胞は、1つまたは複数の血管新生促進因子を分泌するその能力に基づいて選択することができる。例示的な血管新生促進因子としては、アイソフォームA、B、C、およびDを含む血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インターロイキン-6(IL-6)、および他の炎症性サイトカイン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、肝細胞増殖因子(HGF)等が挙げられるがこれらに限定されない。そのような因子を分泌する、またはそのような因子を分泌するように操作することができる(例えば、組換えにより操作されている)非実質細胞を選択することができる。
【0139】
本開示の操作された細胞混合物および方法において有用な細胞は、市販の供給源を含む複数の供給源から入手可能である。例えば、実質細胞は、肝臓、皮膚、膵臓、ニューロン組織、筋肉(例えば、心臓および骨格)、幹細胞等を含むがこれらに限定されない多様な供給源から得ることができる。実質細胞は、生物試料、例えばヒト生物試料から細胞を単離するための当技術分野で記載される方法の宿主のいずれか1つを使用して実質組織から得ることができる。実質細胞(例えば、ヒト実質細胞)は、生検によって、または死体組織から得ることができる。ある特定の実施形態では、実質細胞は、肺、腎臓、神経、心臓、脂肪、骨、筋肉、胸腺、唾液腺、膵臓、副腎、脾臓、胆嚢、肝臓、甲状腺、副甲状腺、小腸、子宮、卵巣、膀胱、皮膚、精巣、前立腺、または乳腺に由来する。一般的に、細胞はまた、灌流方法、または当技術分野で公知の他の方法、例えば米国特許出願公開第20060270032号に記載される方法によって得ることができる。本開示の操作された細胞混合物および方法において有用な細胞はまた、市販の供給源を含む多数の供給源から入手可能である。例えば、肝細胞は、ヒト肝生検または剖検材料から適合させることができる通常の方法(Berry and Friend, 1969, J. Cell Biol. 43:506-520)によって単離され得る。
【0140】
細胞は、樹立された細胞株からの細胞であり得るか、またはそれらは初代細胞であり得、「初代細胞」、「初代細胞株」、および「初代培養物」は、本明細書において互換的に使用され、in vitroで誘導され、in vitroで有限数の継代の間、すなわち、有限の培養物の分割の間に成長させる細胞および細胞培養物を指す。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回継代されているが、クライシス段階を経る回数には十分ではない培養物であり得る。初代細胞株は、in vitroで10回より少ない継代で維持することができる。標的細胞は、多くの例として単細胞生物であり得るか、または培養において成長させることができる。
【0141】
細胞が初代細胞である場合、そのような細胞を、任意の通常の方法によって個体から採取することができる。例えば、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃等などの組織からの細胞は、生検によって最も簡便に採取される。採取した細胞の分散液または懸濁物のために、適切な溶液を使用することができる。そのような溶液は一般的に、緩衝塩類溶液、例えば生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス緩衝塩類溶液等であり、簡便には、低濃度、一般的に5~25mMの許容される緩衝液と共にウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子が追加補充されている。簡便な緩衝液は、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液等を含む。細胞は直ちに使用することができ、または長期間保存、凍結することができ、融解して再利用することが可能である。そのような場合、細胞は通常、10%DMSO、50%血清、40%緩衝培地、または当技術分野で一般的に使用される一部の他のそのような溶液中で凍結し、そのような凍結温度で細胞を保存し、および凍結した培養細胞を融解するために当技術分野で一般的に公知の様式で融解される。
【0142】
B.遺伝子操作された細胞の産生
一部の態様では、本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片は、遺伝子操作された細胞を含む。例えば、一部の実施形態では、細胞は、免疫調節タンパク質を発現または過剰発現するように遺伝子操作されている。
【0143】
分子および細胞生化学における一般的方法は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている以下の標準的なテキスト、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., HaRBor Laboratory Press 2001); Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999); Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996); Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999); Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995); Immunology Methods Manual (I. Lefkovits ed., Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998)において見出され得る。
【0144】
核酸を宿主細胞に導入する方法もまた、当技術分野で公知であり、任意の公知の方法を使用して核酸(例えば、発現構築物)を細胞に導入することができる。ガイドRNA(DNAまたはRNAのいずれかとして導入される)をコードするヌクレオチドおよび/または部位特異的改変ポリペプチド(DNAまたはRNAとして導入される)をコードするヌクレオチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドを、十分に開発されたトランスフェクション技術;例えば、Angel and Yanik (2010) PLoS ONE 5(7): e 11756を参照されたい、および市販のQiagenのTransMessenger(登録商標)試薬、StemgentのStemfect(商標)RNAトランスフェクションキット、およびMims Bio LLCのTranslT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキット(Beumer et al. (2008) Efficient gene targeting in Drosophila by direct embryo injection with zinc-finger nucleases. PNAS 105(50):19821-19826もまた参照されたい)を使用して細胞に提供することができる。
【0145】
一部の実施形態では、免疫調節分子をコードする核酸を、細胞への送達のために送達ビヒクル内にまたはその表面上にパッケージングすることができる。企図される送達ビヒクルとしては、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ハイドロゲル、およびミセルが挙げられるがこれらに限定されない。当技術分野で記載されるように、多様な標的化部分を使用して、所望の細胞タイプまたは位置を有するそのようなビヒクルの優先的相互作用を増強することができる。
【0146】
本開示の複合体、ポリペプチド、および核酸の細胞への導入は、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達等を介して起こり得る。
【0147】
あるいは、核酸を発現ベクターにおいて提供することができる。核酸を標的細胞に移入するために有用な多くのベクター、例えばプラスミド、コスミド、ミニサークル、ファージ、ウイルス等が利用可能である。核酸を含むベクターは、エピソームとして、例えばプラスミド、ミニサークルDNA、ウイルス、例えばサイトメガロウイルス、アデノウイルス等として維持することができるか、またはそれらを相同組換えもしくはランダム組み込み、例えばレトロウイルス由来ベクター、例えばMMLV、HIV-1、ALV等を通して標的細胞ゲノムに組み込むことができる。
【0148】
i.免疫調節分子
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片は、少なくとも1つの免疫調節分子を発現または過剰発現するように遺伝子操作された細胞を含む。細胞を遺伝子操作するために利用され得る免疫調節分子(例えば、核酸分子、例えば、DNA、RNA、mRNA、RNAi)は、当技術分野で周知であり、そのような分子の例示的な標的もまた当技術分野で周知であり、例示的なそのような分子は本明細書に開示される。タンパク質を発現させる場合(例えば、mRNAを使用して)、そのようなタンパク質は、完全長のタンパク質またはあるいはその機能的断片(例えば、完全長のタンパク質の機能的活性が保持されるように、1つまたは複数の機能的ドメインを含む完全長のタンパク質の断片)であり得る。さらに、ある特定の実施形態では、遺伝子操作された細胞において核酸によってコードされるタンパク質は、改変タンパク質であり得、例えば1つまたは複数の異種ドメインを含み得、例えばタンパク質はタンパク質の機能が変更されるようにタンパク質に天然に存在しない1つまたは複数のドメインを含有する融合タンパク質であり得る。
【0149】
一部の態様では、免疫調節分子は、免疫活性化を抑制するために免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、骨髄性細胞、樹状細胞)の天然に存在する標的をモジュレートする(例えば、天然に存在する標的の活性をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする)。免疫調節分子はそれ自身、天然に存在する標的をコードし得るか、または天然に存在する標的をモジュレートするように機能し得る(例えば、in vivoの細胞において、例えば被験体において)。天然に存在する標的は、完全長の標的、例えば完全長のタンパク質であり得るか、または天然に存在する標的の断片もしくは一部、例えばタンパク質の断片もしくは一部であり得る。天然に存在する標的をモジュレートする作用剤(例えば、標的そのものをコードすることによって、または標的の活性をモジュレートするように機能することによって)は、オートクライン様式で作用することができ、すなわち作用剤は、作用剤が送達される細胞に直接効果を発揮する。加えてまたはあるいは、天然に存在する標的をモジュレートする作用剤は、パラクライン様式で機能することができ、すなわち作用剤は、作用剤が送達される細胞以外の細胞に間接的に効果を発揮する(例えば、作用剤を1つのタイプの細胞に送達すると、バイスタンダー細胞などの別のタイプの細胞に効果を発揮する分子の分泌が起こる)。天然に存在する標的をモジュレートする作用剤は、タンパク質発現を誘導する(例えば、増強する、刺激する、アップレギュレートする)核酸分子、例えばmRNAおよびDNAを含む。天然に存在する標的をモジュレートする作用剤はまた、タンパク質発現を低減させる(例えば、阻害する、減少させる、ダウンレギュレートする)核酸分子、例えばsiRNA、miRNA、およびアンタゴミルも含む。天然に存在する標的の非制限的な例には、可溶性タンパク質(例えば、分泌されたタンパク質)、細胞内タンパク質(例えば、細胞内シグナル伝達タンパク質、転写因子)、および膜結合または膜貫通タンパク質(例えば、受容体)を含む。
【0150】
一部の態様では、同種異系および異種の細胞、組織、または臓器移植の状況において観察される免疫寛容は、絶えず抗原に曝露されているT細胞が、「疲弊」と呼ばれるプロセスを通して次第に不活化されるようになることを示唆している。疲弊したT細胞は、T細胞の負の調節受容体、主にCTLA-4、PD-1、LAG-3、およびTIM-3の発現によって特徴付けられ、その作用は、免疫細胞が増殖する能力、サイトカインを産生する能力、および標的細胞を殺滅する能力および/またはTreg活性を増加させる能力を制限することである。Crespo, J., et al. (2013) Curr. Opin. Immunol. 25(2): 214-22。
【0151】
したがって、一部の態様では、第2の細胞集団の細胞は、1つまたは複数のチェックポイント経路を活性化して第1の細胞集団に存在する細胞に対する免疫細胞の疲弊およびアネルギーを誘導するタンパク質を発現するように遺伝子操作されている。一部の実施形態では、第2の細胞集団は、免疫チェックポイントタンパク質を発現するように遺伝子操作されている。適した免疫チェックポイントタンパク質としては、PD-1、PD-L1、PDL-2、CD47、CD39、CD73、CD200、HVEC、CEACAM1、CD155TIM-3、LAG-3、CTLA-4、A2AR、B7-H3、B7-H4、HLA-E、BTLA、IDO、KIR、VISTA、またはその組合せが挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質は、PD-L1、CD47、HLA-E、CD39、CD73、またはその組合せである。免疫チェックポイントタンパク質の核酸およびアミノ酸配列は当技術分野で公知であり、多くは市販されている(例えば、G&P Bio)。
【0152】
ある特定の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、PD-1シグナル伝達経路における分子を発現させるように遺伝子操作されている。プログラム細胞死1(PD-1)は、T細胞共刺激受容体のCD28ファミリーメンバーであり、活性化T細胞、B細胞、骨髄性細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞上で主に発現される(Dong H, et al., Nat Med. 1999; 5:1365-1369; Terme M, et al., Cancer Res. 2011; 71:5393-5399)。ヒトPD-1の核酸およびアミノ酸配列は公開されている(GenBank受託番号NM_005018.2およびNP_005009.2;米国特許第5,698,520号)。PD-1リガンドであるPD-L1(B7-H1およびCD274としても知られる;Freeman et al. (2000) J. Exp. Med. 192: 1027)およびPD-L2(B7-DCおよびCD273としても知られる;Latchman et al. (2001) Nat. Immunol. 2:261)は、B7ポリペプチドファミリーのメンバーである。PD-1がそのリガンドに結合すると、T細胞活性化のダウンレギュレーションをもたらし、PD-1は、T細胞活性化および寛容の調節において重要な役割を果たす(Keir ME, et al., Annu Rev Immunol 2008; 26:677-704)。
【0153】
他の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞はPD-L2を発現するように遺伝子操作されている(受託番号:NP_079515.2;受託番号:XP_005251657.1)。PD-L2は、PD-1受容体のリガンドである。PD-1がPD-L2に結合すると、T細胞受容体(TCR)媒介増殖およびCD4+ T細胞によるサイトカイン産生を劇的に阻害する。低い抗原濃度では、PD-L2-PD-1相互作用は、強いB7-CD28シグナルを阻害する。これに対し、高い抗原濃度では、PD-L2-PD-1相互作用は、サイトカイン産生を低減させるが、T細胞増殖を阻害しない(Latchman et al. Nat. Immunol. 2:261-268, 2001)。
【0154】
他の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、CD47(表面抗原分類47)を発現するように遺伝子操作されている。CD47は、膜インテグリンを有する免疫グロブリンスーパーファミリーおよびパートナーに属し、同様にリガンドであるトロンボスポンジン-1(TSP-1)およびシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)にも結合し、これは細胞が細胞外基質に接着すると起こる細胞内カルシウム濃度の増加に関係する膜タンパク質である(受託番号NP_001317657.1)。
【0155】
他の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、CD73、エクト-5-プライム-ヌクレオチダーゼを発現するように遺伝子操作され、これは中性pHでプリン5-プライムモノヌクレオチドのヌクレオシドへの変換を触媒し、好ましい基質はAMPである(受託番号NP_002517.1)。CD73は、ATPからの細胞外アデノシンの産生における律速酵素であり、例えばがん細胞における免疫逃避の駆動において重要な役割を果たすことに関連している。
【0156】
他の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、CD39を発現するように遺伝子操作され、これはトリホスホおよびジホスホヌクレオシドのγおよびβホスフェート残基のモノホスホヌクレオシド誘導体への加水分解を触媒する、細胞表面に存在するエクトヌクレオチダーゼである(受託番号NP_001157651.1)。
【0157】
一部の実施形態では、細胞は、CD200を発現するように遺伝子操作され、これは2つの細胞外免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含有するI型膜糖タンパク質である。この遺伝子は、B細胞、T細胞のサブセット、胸腺細胞、内皮細胞、およびニューロンを含む多様な細胞タイプによって発現される。コードされるタンパク質は、免疫抑制および抗腫瘍活性の調節において重要な役割を果たす。選択的スプライシングは、異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントをもたらす(受託番号NP_001305755.1)。
【0158】
一部の実施形態では、細胞は、B7-H3(受託番号NP_001019907)を発現するように遺伝子操作される。B7-H3は、T細胞応答のアクセサリ調節因子として作用する共刺激分子のB7/CD28スーパーファミリーのメンバーである。B7-H3タンパク質は、骨芽細胞、線維芽細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、および上皮細胞、ならびにヒト肝臓、肺、膀胱、精巣、前立腺、乳房、胎盤、およびリンパ系臓器において見出される。
【0159】
他の実施形態では、細胞は、B7-H4を発現するように遺伝子操作され、これはB7タンパク質ファミリーメンバーであり、T細胞シグナル伝達経路に関係する。B7-H4は、T細胞応答の負の調節因子である。ヒトおよびマウスB7-H4は、87%のアミノ酸同一性を共有し、このことは重要な進化的に保存された機能を示唆している。ヒトおよびマウスB7-H4 mRNAは、リンパ系(脾臓および胸腺)および非リンパ系臓器(肺、肝臓、精巣、卵巣、胎盤、骨格筋、膵臓、および小腸を含む)の両方において広く発現されるが、B7-H4タンパク質は免疫組織化学によって正常なヒト組織において検出されない。B7-H4ペプチドは、例えば、WO2011/026132号に記載される。
【0160】
一部の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4;CD152としても知られる)を発現するように遺伝子操作されている。CTLA4は、T細胞共刺激受容体CD28の活性を中和することによってT細胞活性化の初期段階の振幅を調節する、T細胞上に限って発現される受容体である(Schwartz et al., Cell (1992) 71:1065-1068; Rudd et al., Immunol. Rev. (2009) 229:12-26)。ヒトCTLA-4のアミノ酸およびヌクレオチド配列は公開されている(米国特許第5,811,097号および米国特許第5,434,131号)。CD28およびCTLA4は、同一のリガンド:CD80(B7.1としても公知である)およびCD86(B7.2としても公知である)を共有する。CTLA4の主な生理的役割は、CD4 T細胞の2つの主要なサブセット:ヘルパーT細胞活性のダウンモジュレーションおよび制御性T(TReg)細胞の免疫抑制活性の増強に及ぼす別個の作用を通してであるように思われる(Peggs et al., J. Exp. Med (2009) 206:1717-1725)。
【0161】
一部の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3;CD223)を発現するように遺伝子操作されている。LAG-3は、活性化CD4+およびCD8+ T細胞ならびにNKおよび樹状細胞のサブセットの細胞表面上に発現されるI型膜貫通タンパク質である(Triebel F, et al., J. Exp. Med. (1990) 171:1393-1405; Workman CJ, et al., J. Immunol. (2009) 182(4):1885-91;米国特許出願公開第2011/0180892号)。ヒトLAG-3の核酸およびポリペプチド配列は当技術分野で周知であり、公開されている(GenBank受託番号NM_002286.5およびNP_002277.4)。LAG-3は、Treg細胞の機能の増強において(Huang et al, Immunity (2004) 21:503-513; Goldberg et al., Curr. Top. Microbiol. Immuno. (2011) 344:269-278)およびCD8+エフェクターT細胞機能の阻害において(Grosso et al., J. Clin. Invest. (2007) 117:3383-3392)役割を有することが示されている。LAG3の唯一の公知のリガンドは、MHCクラスII分子である。
【0162】
他の実施形態では、第2の細胞集団中の細胞は、TIM3を発現するように遺伝子操作されている。TIM3は、T細胞/膜貫通、免疫グロブリン、およびムチン(TIM)遺伝子ファミリーのメンバーである。ヒトTIM-3の核酸およびポリペプチド配列は当技術分野で周知であり、公開されている(GenBank受託番号NM_032782.4およびNP_116171.3;米国特許出願公開第2013/0156774号)。TIM-3は、活性化CD4+ T細胞のサブセット上、分化したThl細胞上、または一部のCD8+ T細胞上、およびより低いレベルであるがTh2細胞上で発現されている(Hastings et al., Eur. J. Immunol. (2009) 39:2492-2501)。リガンド、ガレクチン9の結合は、ヘルパーT1(T1)細胞応答を阻害する(Zhu et al., Nature Immunol. (2005) 6:1245-1252)。
【0163】
第2の集団を遺伝子操作するために使用するための追加の免疫調節タンパク質はまた、HLA-E(受託番号NP_005507.3)、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)(受託番号NP_003811.2);癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(胆管糖タンパク質)(CEACAM1)(受託番号:NP_001703.2);および/またはCD155(受託番号:NP_001129241.1)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0164】
ii.ベクター
別の態様では、分泌のためのシグナル配列の作動可能な制御下で免疫調節タンパク質をコードする核酸を含み、細胞から発現された場合にコードされる免疫調節タンパク質が分泌される組換え発現ベクターが提供される。一部の実施形態では、分泌のためのシグナル配列は分泌シグナルペプチドをコードする。
【0165】
別の態様では、第2の細胞集団の遺伝子操作された免疫調節細胞は、タンパク質を発現するベクターを含む。一部の態様では、発現ベクターは、タンパク質の発現にとって適した条件下で適切な細胞において免疫調節タンパク質を発現することが可能である。一部の態様では、発現ベクターは、適切な発現制御配列に作動可能に連結された免疫調節タンパク質をコードするDNA分子を含む。DNA分子をベクターに挿入する前または後にこの作動可能な連結に影響を及ぼす方法は周知である。発現制御配列は、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、終止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関係する他のシグナルを含む。
【0166】
一部の実施形態では、ベクターは、免疫調節タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された分泌またはシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、それによって免疫調節タンパク質の分泌を可能にする。
【0167】
用語「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で調節配列に連結されていることを意味する。用語「調節配列」は、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。そのような調節配列は当技術分野で周知であり、例えばGoeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。調節配列は、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を方向付ける配列、およびある特定の宿主細胞に限ってヌクレオチド配列の発現を方向付ける配列(例えば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計は、標的細胞の選択、所望の発現レベル等などの要因に依存し得ることは当業者によって認識されるであろう。
【0168】
企図される発現ベクターとしては、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヘルペスパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス)、およびレトロウイルス、例えばラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳腺腫瘍ウイルスに由来するベクター、および他の組換えベクターに基づく)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0169】
真核標的細胞に関して企図される他のベクターとしては、ベクター:pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)が挙げられるがこれらに限定されない。他のベクターは、それらが宿主細胞と適合性である限り使用することができる。
【0170】
一部の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。一部の実施形態では、組換え発現ベクターは、組み込みおよび非組み込みウイルスベクターの両方を含むがこれらに限定されないウイルスベクターである。例示的なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヘルペスパピローマウイルス、エピソームベクター、および非エピソームベクターが挙げられるがこれらに限定されず、これらは例えば米国特許第8,119,772号;第8,552,150号;第6,277,633号、および第6,521,457号;ならびに米国特許出願公開第2012/0135034号および第2008/0254008号に開示されている。レンチウイルスベクター系はまた、例えばSan Diego、Calif.、United States of AmericaのCell Biolabs,Inc.、およびRockville、Md.、United States of AmericaのOriGene Technologies,Inc.から市販されている。一部の実施形態では、ベクターは、例えばWO2002/085287号に記載されるように、必要に応じてアデノウイルスおよび/またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくウイルスエピソームベクターである。適した非ウイルスエピソームベクターの一例はWO1998/007876号に開示されている。
【0171】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヘルペスパピローマウイルス、またはレトロウイルスである。ある特定の実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0172】
一部の実施形態では、免疫調節タンパク質の発現は、発現の制御または調節を増強するためにプロモーターによって制御される。プロモーターは、免疫調節タンパク質をコードする核酸分子の部分に作動可能に連結される。一部の実施形態では、タンパク質の発現は、構成的に活性なプロモーター、誘導型プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または時間制限型プロモーターの制御下にある。一部の実施形態では、免疫調節タンパク質は、操作された細胞が誘導剤に接触後、操作された細胞によって発現および分泌される。一部の実施形態では、免疫調節タンパク質は、T細胞活性化シグナル伝達時に操作された細胞によって発現および分泌される。
【0173】
プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(すなわち、構成的に活性/「オン」状態にあるプロモーター)であり得、誘導型プロモーター(すなわち、その状態、活性/「オン」または不活性/「オフ」が外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、またはタンパク質の存在によって制御されるプロモーター)であり得、空間的に制限されたプロモーター(すなわち、転写制御エレメント、エンハンサー等)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター等)であり得、および時間制限型プロモーター(すなわち、プロモーターは胚発生の特定の段階の間または生物プロセスの特定の段階の間、例えばマウスにおける毛包サイクルの間に「オン」状態または「オフ」状態である)であり得る。
【0174】
一部の実施形態では、プロモーターはウイルスに由来し得、したがってウイルスプロモーターと呼ぶことができ、またはそれらは原核生物もしくは真核生物を含む任意の生物に由来し得る。適したプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼによる発現を駆動するために使用することができる(例えば、pol I、pol II、pol III)。例示的なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)(Miyagishi et al., Nature Biotechnology (2002) 20:497-500)、強化型U6プロモーター(例えば、Xia et al., Nucleic Acids Res. (2003) Sep. 1, 31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0175】
適した真核生物プロモーター(すなわち、真核細胞において機能的なプロモーター)の非制限的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルスの長末端反復(LTR)、ヒト伸長因子-1プロモーター(EF1)、ニワトリベータ-アクチンプロモーター(CAG)に融合したサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッド構築物、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1遺伝子座プロモーター(PGK)、およびマウスメタロチオネイン-Iのプロモーターが挙げられる。
【0176】
例示的な構成的プロモーターとしては、サル空胞形成ウイルス40(SV40)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ユビキチンC(UbC)プロモーター、およびEF-1アルファ(EF1a)プロモーターが挙げられる。一部の実施形態では、構成的プロモーターは組織特異的である。例えば、一部の実施形態では、プロモーターは、特定の組織、例えば免疫細胞、リンパ球、またはT細胞における免疫調節タンパク質の構成的発現を可能にする。例示的な組織特異的プロモーターは、米国特許第5,998,205号に記載され、例えばフェトプロテイン、DF3、チロシナーゼ、CEA、サーファクタントタンパク質、およびErbB2プロモーターを含む。
【0177】
誘導型プロモーターの例としては、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)-調節プロモーター、ラクトース誘導プロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター(例えば、Tet-ON、Tet-OFF等)、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーター等が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、誘導型プロモーターは、ドキシサイクリン、RNAポリメラーゼ、例えばT7 RNAポリメラーゼ、エストロゲン受容体、エストロゲン受容体融合体等が挙げられるがこれらに限定されない分子によって調節され得る。
【0178】
一部の実施形態では、プロモーターは、例えばテトラサイクリン依存性、lac依存性、pBad依存性、AlcA依存性、またはLexA依存性である化学誘導型プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、温度誘導型プロモーター、例えばHsp70またはHsp90由来プロモーターである。
【0179】
一部の実施形態では、プロモーターは、空間制限型プロモーターである。一部の実施形態では、空間制限型プロモーターは、肝臓特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、または光受容体特異的プロモーターである。
【0180】
空間制限型プロモーターはまた、エンハンサー、転写制御エレメント、制御配列等と呼ぶこともできる。任意の便利な空間制限型プロモーターを使用することができ、適したプロモーター(例えば、肝臓特異的プロモーター、脳特異的プロモーター、ニューロンのサブセットにおいて発現を駆動するプロモーター、生殖系列において発現を駆動するプロモーター、肺において発現を駆動するプロモーター、筋肉において発現を駆動するプロモーター、膵臓の島細胞において発現を駆動するプロモーター等)の選択は、生物に依存する。例えば、様々な空間制限型プロモーターが、植物、飛翔昆虫(fly)、虫、哺乳動物、マウス等において公知である。このように、空間制限型プロモーターを使用して生物に応じて広く多様な異なる組織および細胞タイプにおいて部位特異的ポリペプチドをコードする核酸の発現を調節することができる。一部の空間制限型プロモーターはまた、プロモーターが胚発生の特定の段階の間または生物プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包サイクル)の間に「オン」状態または「オフ」状態であるように、時間的にも制限される。
【0181】
空間制限型プロモーターの例としては、肝臓特異的プロモーター、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、光受容体特異的プロモーター等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0182】
心筋細胞特異的な空間制限型プロモーターとしては、以下の遺伝子に由来する制御配列が挙げられるがこれらに限定されない:ミオシン軽鎖-2、a-ミオシン重鎖、AE3、心トロポニンC、心アクチン等。Franz et al., Cardiovasc. Res. (1997) 35:560-566; Robbins et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. (1995) 752:492-505; Linn et al., Circ. Res. (1995) 76:584-591; Parmacek et al., Mol. Cell. Biol. (1994) 14:1870-1885; Hunter et al., Hypertension (1993) 22:608-617; and Sartorelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:4047-4051。
【0183】
平滑筋特異的な空間制限型プロモーターとしては、SM22aプロモーター(例えば、Akyilrek et al. Mol. Med. (2000) 6:983;および米国特許第7,169,874号を参照されたい);スムーセリンプロモーター(例えば、WO2001/018048号を参照されたい);平滑筋アクチンプロモーター等が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、その中に2つのCArGエレメントが存在するSM22aプロモーターの0.4kb領域は、血管平滑筋細胞特異的発現を媒介することが示されている(例えば、Kim, et al., Mol. Cell. Biol. (1997) 17: 2266-2278; Li, et al., J. Cell Biol. (1996) 132:849-859;および Moessler, et al., Development (1996) 122:2415-2425を参照されたい)。
【0184】
光受容体特異的な空間的に制限されたプロモーターとしては、ロドプシンプロモーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al., Ophthalmol. Vis. Sci. (2003) 44:4076);ベータホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al., J. Gene Med.(2007) 9:1015);網膜色素変性症遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007)、前記);光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoud et al. (2007)、前記);IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al. Exp. Eye Res. (1992) 55:225)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0185】
使用することができる他のプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)、強化型U6プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)が挙げられる。
【0186】
さらなる実施形態では、誘導型プロモーターは、核酸の発現が、転写の適当な誘導剤の存在または非存在を制御することによって制御可能であるように、免疫調節タンパク質をコードする核酸分子に作動可能に連結される。例えば、プロモーターは、コードされるポリペプチドの調節された発現を可能にするために、公表されたテトラサイクリン調節系または他の調節可能な系などの調節されたプロモーターおよび転写因子発現系であり得る(例えば、公表された国際PCT出願WO01/30843号を参照されたい)。例示的な調節可能なプロモーター系は、例えばClontech(Palo Alto,CA)から入手可能なTet-On(およびTet-Off)系である。このプロモーター系は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンなどのテトラサイクリン誘導体によって制御されるトランスジーンの調節された発現を可能にする。他の調節可能なプロモーター系は公知である(例えば、公開された米国特許出願公開第2002-0168714号、タイトル「Regulation of Gene Expression Using Single-Chain, Monomeric, Ligand Dependent Polypeptide Switches」を参照されたく、これはホルモン受容体からのドメインなどのリガンド結合ドメインおよび転写調節ドメインを含有する遺伝子スイッチを記載する)。
【0187】
一部の実施形態では、プロモーターは、T細胞活性化シグナル伝達に応答性のエレメントに応答性である。単なる例として、一部の実施形態では、操作されたT細胞は、免疫調節タンパク質をコードする発現ベクターおよび免疫調節タンパク質の発現を制御するために作動可能に連結されたプロモーターを含む。操作されたT細胞は、例えば操作されたT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を通してのシグナル伝達によって活性化することができ、それによって活性化T細胞の核因子(NFAT)または活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-κB)に応答して発現される応答性プロモーターを通して免疫調節タンパク質の発現および分泌を誘発する。例えば、一部の実施形態では、誘導型プロモーターは、NFATまたはNF-κBの結合部位を含む。例えば、一部の実施形態では、プロモーターはNFATまたはNF-κBプロモーターまたはその機能的バリアントである。このように、一部の実施形態では、核酸は、免疫調節タンパク質の毒性を低減または除去しながら、免疫調節タンパク質の発現を制御することを可能にする。特に、本発明の核酸を含む操作された免疫細胞は、細胞(例えば、細胞によって発現されるT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR))が抗原によって特異的に刺激される場合に限って、および/または細胞(例えば、細胞のカルシウムシグナル伝達経路)が、例えばホルボルミリステートアセテート(PMA)/イオノマイシンによって非特異的に刺激された場合に限って免疫調節タンパク質を発現および分泌する。
【0188】
原核細胞および昆虫の誘導型プロモーター系は、哺乳動物細胞における調節された発現のために適合されている。例えば、Gossen et al. (1993) TIBS 18:471-475 and No et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:3346-3351)を参照されたい。昆虫エクジソン誘導型プロモーターは、誘導剤の非存在下で検出可能なバックグラウンド発現がないように厳密に調節される。エクジソンは、それが組織を貫通することができ、哺乳動物において不活性であり、急速なクリアランス動態を示す天然に存在する親油性ステロイドであることからin vivoで使用するために適している(No et al.)。Gupta et al.(PNAS (2004) 101:1927-1932)は、改変RNAポリメラーゼIII特異的U6プロモーターの制御下でエクジソン誘導型遺伝子発現系のレトロウイルス送達を開示している。
【0189】
lacおよびtetオペロンからの原核細胞リプレッサーが、真核細胞誘導型発現系に組み込まれている。発現の抑制は、誘導剤の非存在下での最小プロモーターの下流に配置されるオペレーター部位に結合したリプレッサーによって媒介され、抑制は誘導剤の添加によって緩和される(Brown et al., Cell (1987) 49:603-612; Hu and Davidson, Cell (1987) 48:555-566; Blau and Rossi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999) 96:797-799; and Gossen et al., Science (1995) 268:1766-1769)。例えば、RheoSwitchRTM哺乳動物誘導発現系(New England Biolabs)は、哺乳動物細胞における遺伝子発現の誘導および調節可能な制御を可能にする。プロモーターは、厳密に調節され、誘導剤の非存在下では無視できるレベルの基底発現を生じ、誘導剤であるRSL1リガンドが存在する場合、10,000倍より高い誘導を生じる。RSL1リガンドは、試験した全ての細胞株において不活性であることが示された合成化合物である。任意のポリペプチドのコード配列に作動可能に連結された誘導型プロモーターを含有する発現カセットの構築方法は、そのような発現カセットおよびそのような発現カセットを含有するベクターをホーミング細胞に導入する方法と同様に当業者に公知である。
【0190】
発現ベクターはまた、翻訳開始および転写ターミネーターのリボソーム結合部位も含有する。発現ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列も含み得る。発現ベクターはまた、非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質等)をコードするヌクレオチド配列も含み得る。非天然タグを部位特異的ポリペプチドに融合させて、このように融合タンパク質をもたらすことができる。
【0191】
一部の実施形態では、本開示の発現ベクターはまた、形質転換またはトランスフェクト宿主の選択を可能にする1つまたは複数のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例えば抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を提供するために栄養要求性宿主における補完等を含み得る。発現ベクターの適したマーカー遺伝子としては、例えばネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、およびアンピシリン耐性遺伝子が挙げられ得る。
【0192】
さらに一部の実施形態では、発現ベクターを、自殺遺伝子を含むように作製することができる。本明細書で使用される場合、語句「自殺遺伝子」は、ヌクレオチド配列を発現する細胞を死滅させるヌクレオチド配列を指す。自殺遺伝子は、一部の実施形態では、細胞が作用剤に接触するおよび/または曝露されると、作用剤が直接または間接的に細胞を死滅させるように、転写産物および/または翻訳産物としてヌクレオチド配列を発現する細胞に、作用剤(例えば薬物、しかしこれに限定されない)に対する感受性を付与するヌクレオチド配列であり得る。自殺遺伝子は当技術分野で公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、およびニトロレダクターゼ(例えば、Springer, 2004を参照されたい)を含む。
【0193】
したがって、免疫調節タンパク質の発現および分泌を、それが必要とされる時期および場所(例えば、感染疾患を引き起こす作用物質、がんの存在、または腫瘍部位)に限って起こるように制御することができ、それによって望ましくない免疫調節タンパク質相互作用を減少または回避することができる。
【0194】
ベクターは、細胞に直接提供することができる。言い換えれば、ベクターが細胞に取り込まれるように、細胞に、ガイドRNAおよび/もしくは部位特異的改変ポリペプチドおよび/もしくはキメラ部位特異的改変ポリペプチドをコードする核酸、ならびに/またはドナーポリヌクレオチドを含むベクターを接触させる。プラスミドである核酸ベクターを細胞に接触させる方法は、電気穿孔、塩化カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション、およびリポフェクションを含み、当技術分野で周知である。ウイルスベクターを送達する場合、細胞に、ガイドRNAおよび/もしくは部位特異的改変ポリペプチドおよび/もしくはキメラ部位特異的改変ポリペプチドをコードする核酸、ならびに/またはドナーポリヌクレオチドを含むウイルス粒子を接触させることができる。レトロウイルス、例えばレンチウイルスは、本発明の方法にとって適している。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは「欠陥」であり、すなわち生産的感染にとって必要なウイルスタンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞株での成長を必要とする。目的の核酸を含むウイルス粒子を生成するために、核酸を含むレトロウイルス核酸をパッケージング細胞株によってウイルスカプシドにパッケージングすることができる。異なるパッケージング細胞株は、カプシドに組み込まれる異なるエンベロープタンパク質(同種指向性、両種指向性、または異種指向性)を提供し、このエンベロープタンパク質が細胞に対するウイルス粒子の特異性を決定する(マウスおよびラットに関して同種指向性;ヒト、イヌ、およびマウスを含むほとんどの哺乳動物細胞タイプに関して両種指向性;およびマウス細胞を除くほとんどの哺乳動物細胞タイプに関して異種指向性)。細胞がパッケージングされたウイルス粒子によって確実に標的化されるように、適切なパッケージング細胞株を使用することができる。リプログラミング因子をコードする核酸を含むレトロウイルスベクターをパッケージング細胞株に導入する方法およびパッケージング株によって生成されたウイルス粒子を収集する方法は当技術分野で周知である。
【0195】
C.細胞混合物
本明細書に開示される細胞組成物は、第1および第2の細胞集団を含有する懸濁物として提供することができる。
【0196】
本明細書に記載される方法によって産生される細胞は、直ちに使用することができる。あるいは、細胞を液体窒素の温度で凍結して、長期間貯蔵することができ、融解して再使用することができる。例えば、細胞を、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、50%血清、40%緩衝培地、または当技術分野で一般的に使用される一部の他のそのような溶液中で凍結し、そのような凍結温度で細胞を保存し、および凍結した培養細胞を融解するために当技術分野で一般的に公知の様式で融解することができる。
【0197】
細胞を、様々な培養条件下でin vitroで培養することができる。細胞を培養において増大させることができ、すなわちその増殖を促進する条件下で成長させることができる。培養培地は、例えば寒天、メチルセルロース等を含有する液体または半固体であり得る。細胞集団は通常、ウシ胎仔血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、および抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンを補充した適切な栄養培地、例えばイスコフ改変DMEMまたはRPMI1640に懸濁することができる。培養物は、制御性T細胞が応答性である増殖因子を含有し得る。本明細書において定義される増殖因子は、膜貫通受容体に対する特異的効果を通して、培養中または無傷の組織のいずれかにおいて、細胞の生存、成長および/または分化を促進することが可能な分子であり得る。増殖因子は、ポリペプチドおよび非ポリペプチド因子を含む。
【0198】
本開示の細胞混合物は、その場で生着し、例えば実質細胞、内皮細胞、および間質細胞を含む局所的環境の細胞間に存在する多細胞性のパラクラインシグナル伝達ループに応答する可能性がある。近隣の細胞タイプからの局所シグナルに加えて、本開示の操作された細胞混合物は、宿主に植え込まれた後、全身性の再生シグナル(例えば、増殖因子)、例えば損傷、疾患、または感染症に起因する再生シグナルに応答する。この相互作用を媒介するシグナルは、細胞増殖および組織再生および発生を制御する増殖因子を含む。
【0199】
したがって、他の態様では、本明細書に提供される組成物は、増殖因子、リガンド、サイトカイン、薬物等を含むがこれらに限定されない追加の構成成分を含有し得る。一部の実施形態では、細胞混合物は、第1の細胞集団の増殖および増大を刺激または増強する低分子または増殖因子などの追加の微小環境合図を誘発する分子を含み得る。
【0200】
一部の実施形態では、1つまたは複数の可溶性因子を、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞混合物、例えば薬物送達ビヒクルに含める(例えば、薬物送達粒子、例えば時限放出送達粒子に封入する)。
【0201】
D.凝集塊および植え込み可能な移植片
別の態様では、細胞組成物は、第1および第2の細胞集団の凝集塊の形態で提供される。一部の実施形態では、第1および第2の細胞集団は、2つの細胞集団に凝集塊を形成させる条件下で混合される。一部の実施形態では、第1および第2の細胞集団は、組織工学技術を使用して混合される。一部の実施形態では、第1および第2の細胞集団は共培養される。一部の実施形態では、第1および第2の細胞集団は、懸滴法、マイクロウェル成形、または非接着表面によって共培養される。
【0202】
本開示の細胞凝集塊の特性を、特定の適用に適合するように変化させることができる。ある特定の実施形態では、細胞凝集塊の密度を変化させることができる。ある特定の実施形態では、直径が異なる細胞凝集塊を作製することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の細胞凝集塊の網状構造全体の組織化を、例えば、数、三次元組織化、アラインメント、直径、密度等によって定義することができる。
【0203】
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数の細胞凝集塊の幅および/または直径は、1μmより大きい、2μmより大きい、4μmより大きい、5μmより大きい、8μmより大きい、10μmより大きい、15μmより大きい、20μmより大きい、25μmより大きい、30μmより大きい、40μmより大きい、50μmより大きい、80μmより大きい、100μmより大きい、150μmより大きい、200μmより大きい、250μmより大きい、300μmより大きい、500μmより大きい、700μmより大きい、900μmより大きい、1mmより大きい、2mmより大きい、5mmより大きい、10mmより大きい、または20mmより大きい、またはその組合せであり得る。
【0204】
ある特定の実施形態では、細胞混合物内に含有される細胞凝集塊の数は、異なり得る。ある特定の実施形態では、操作された細胞混合物は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、50、100、150、200、300、400、500、1000、10,000、100,000、または1,000,000個の組織化された細胞凝集塊を含む。
【0205】
ある特定の実施形態では、操作された細胞組成物は、1つまたは複数の生物活性物質を含有し得る。生物活性物質の例としては、ホルモン、神経伝達物質、増殖因子、ホルモン受容体、神経伝達物質受容体、または増殖因子受容体、インターフェロン、インターロイキン、ケモカイン、サイトカイン、コロニー刺激因子、走化性因子、細胞外基質構成成分、ならびに接着分子、リガンドおよびペプチド;例えば成長ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、骨形成タンパク質(BMP)、トランスフォーミング増殖因子-アルファ(TGF-アルファ)、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、線維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞増殖因子(scatter factor)/肝細胞増殖因子(HGF)、フィブリン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、RGD含有ペプチドまたはポリペプチド、アンジオポエチン、ならびに血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0206】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される操作された細胞混合物は、in vivoで移植された細胞の所望の表現型の維持を容易にするために1つまたは複数の接着材料を含む。用語「接着材料」は、結合剤などの、細胞または微生物がそれに対して何らかの親和性を有する本明細書に開示される細胞混合物に組み込まれる材料である。材料を、操作された細胞混合物の植え込みの前に、例えばハイドロゲルに組み込むことができる。材料および細胞または微生物は、例えば静電気的相互作用または疎水性相互作用、共有結合、またはイオン結合を含む任意の手段を通して相互作用する。材料としては、抗体、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチドアプタマー、核酸アプタマー、糖、プロテオグリカン、または細胞受容体が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0207】
接着材料のタイプ(例えば、細胞外基質材料(ECM)、糖、プロテオグリカン等)は、一部には培養される細胞タイプまたは複数の細胞タイプによって決定される。実質細胞の天然の微小環境において見出されるECM分子は、初代細胞、前駆細胞、および/または細胞株の両方の機能を維持するために有用である。
【0208】
i.細胞外基質
一部の態様では、細胞混合物は、細胞凝集塊の形成を促進する細胞外基質を含有する。一部の実施形態では、細胞外基質は天然基質である。一部の実施形態では、細胞外基質は第2の細胞集団中の遺伝子操作された間質細胞によって産生される。一部の実施形態では、細胞外基質は、コラーゲン、アルギネート、アガロース、マトリゲル、シルク、ゼラチン、ヒアルロナン、キトサン、フィブリン、またはその誘導体を含む。
【0209】
一部の実施形態では、細胞外基質は合成基質である。一部の実施形態では、合成基質は、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ペプチドベースの自己組織化ゲル、温度応答性ポリ(NIPAAm)、ポリ-D,L-ラクチド(PDLLA)、ポリ-e-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシアパタイトまたはセラミックベースの生物材料である。
【0210】
一部の実施形態では、操作された細胞混合物を、血管形成を助けるために使用する場合、フィブリンをECM足場材料として使用することができる。インプラントの特定の目的に応じて、およびECM材料の分解特性を含むがこれに限定されないECM材料の特性に基づいて、他の適したECM材料を足場として使用することができる。例えば、一部の実施形態では、ECM足場は、環境条件へ曝露されると分解され得る。例えば、ECM足場は、加水分解酵素の存在、プロテアソーム酵素の存在、5未満のpH、および還元条件によって分解され得る。
【0211】
一部の実施形態では、細胞凝集塊を形成するために使用される天然に由来するまたは合成の足場材料は、ECM足場と比較して生物活性物質を放出することができる。例えば、細胞凝集塊を形成するために使用される天然に由来するまたは合成の足場材料は、血管新生促進因子を放出することができる。
【0212】
ii.3D足場
一部の態様では、組成物は、三次元足場または基質を含む。用語「三次元基質」または「足場」または「基質」は、本明細書で使用される場合、広い意味で生体適合性の基質、足場等を含む組成物を指す。三次元基質は、25℃で液体、ゲル、半固体、または固体であり得る。三次元基質は生体分解性または非生体分解性であり得る。一部の実施形態では、三次元基質は、生体適合性、または生物吸収性、または生体交換可能(bioreplacable)である。例示的な三次元基質は、コラーゲン、フィブリン、キトサン、MATRIGEL(商標)、ポリエチレングリコールを含むポリマーおよびハイドロゲル、化学的に架橋可能または光架橋可能なデキストランを含むデキストラン、加工された組織基質、例えば粘膜下組織等を含む。ある特定の実施形態では、三次元基質は、同種異系構成成分、自己構成成分、または同種異系構成成分と自己構成成分の両方を含む。ある特定の実施形態では、三次元基質は、合成または半合成材料を含む。ある特定の実施形態では、三次元基質は、フィブリン由来足場構造などのフレームワークまたは支持体を含む。
【0213】
一部の態様では、本開示の植え込み可能な移植片は、本明細書に記載されるプロセスによって形成することができる。ある特定の実施形態では、細胞混合物を含有する植え込み可能な移植片を作製する方法およびこれらの構造を細胞外基質に埋め込む方法は、(1)チャネルまたは溝によって画定されている3Dテンプレートを生成するステップ、(2)内皮細胞を液体コラーゲン中に懸濁し、これらの細胞をテンプレートのチャネル中で遠心分離するステップ、(3)過剰な細胞/コラーゲン懸濁物を除去して細胞凝集塊を形成させるステップ、および(4)細胞外基質足場への封入を介してテンプレートから凝集塊を除去するステップを含む。
【0214】
一部の実施形態では、パターン形成された生物材料を作製する方法は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Raghavan et al. (Tissue Engineering Part A (2010), Vol. 16(7): 2255-2263)に提供される。
【0215】
一部の実施形態では、植え込み可能な移植片を作製する方法は、(1)天然に由来するおよび/または合成の足場材料中に第1および第2の細胞集団を懸濁するステップ、(2)懸濁した細胞を3Dテンプレートのチャネル内に入れるステップ、および(3)細胞に、天然に由来するおよび/または合成の足場材料に少なくとも部分的に埋もれた1つまたは複数の凝集塊を形成させるステップを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される操作された植え込み可能な移植片を作製する方法は、細胞外基質足場への封入を介して3Dテンプレートから移植片を除去することを含み得る。
【0216】
他の実施形態では、細胞および材料を空間的配置、例えば細胞凝集塊へと組織化することは、ウェルもしくは溝の使用によって細胞/材料の配置を物理的に拘束することによって、または細胞をマイクロ流体チャネルもしくは方向性を有する空隙/細孔に注入することによって達成することができる。ある特定の実施形態では、細胞は、電場、磁気ピンセット、光学的ピンセット、超音波、圧力波、またはマイクロマニピュレータによって細胞を物理的に位置決めすることによって組織化することができる。ある特定の実施形態では、細胞は、それらを繊維上に播種することによって細胞の付着を特異的配置にパターン形成することによって組織化することができる。ある特定の実施形態では、細胞は、レイヤーバイレイヤー法または3Dプリンティングなどの新規作製法によって組織化することができる。
【0217】
一部の実施形態では、3Dテンプレートは、天然に由来するおよび/または合成材料を含み得る。例えば、テンプレートは、シリコーンまたはPDMSで構成することができる。ある特定の実施形態では、テンプレートは、1つまたは複数のチャネルを含有し得る。例えば、テンプレートは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、または40個のチャネルを含有し得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のチャネルは、平行構成で配置することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のチャネルは、非平行構成で配置することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のチャネルは、2Dまたは3D組織化において特定の分岐パターン、例えば直線格子、二分木によって、約1μm未満、約1μmより大きい、2μmより大きい、4μmより大きい、5μmより大きい、8μmより大きい、10μmより大きい、15μmより大きい、20μmより大きい、25μmより大きい、30μmより大きい、40μmより大きい、50μmより大きい、80μmより大きい、100μmより大きい、150μmより大きい、200μmより大きい、250μmより大きい、300μmより大きい、500μmより大きい、700μmより大きい、または900μmより大きいある特定の間隔で組織化することができる。各々の線、溝、および/または構造の幅は、約1μm未満、約1μmより大きい、2μmより大きい、4μmより大きい、5μmより大きい、8μmより大きい、10μmより大きい、15μmより大きい、20μmより大きい、25μmより大きい、30μmより大きい、40μmより大きい、50μmより大きい、80μmより大きい、100μmより大きい、150μmより大きい、200μmより大きい、250μmより大きい、300μmより大きい、500μmより大きい、700μmより大きい、900μmより大きい、1mmより大きい、2mmより大きい、5mmより大きい、10mmより大きい、または20mmより大きい幅であり得る。
【0218】
一部の実施形態では、テンプレートは、1つまたは複数の細胞凝集塊を形成するために1つまたは複数のウェルおよび/または溝を含有し得る。例えば、テンプレートは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、または40個のウェルを含有し得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のウェルは、約1μm未満、約1μmより大きい、2μmより大きい、4μmより大きい、5μmより大きい、8μmより大きい、10μmより大きい、15μmより大きい、20μmより大きい、25μmより大きい、30μmより大きい、40μmより大きい、50μmより大きい、80μmより大きい、100μmより大きい、150μmより大きい、200μmより大きい、250μmより大きい、300μmより大きい、500μmより大きい、700μmより大きい、900μmより大きい、1mmより大きい、2mmより大きい、5mmより大きい、10mmより大きい、または20mmより大きいある特定の間隔で組織化することができる。
【0219】
一部の実施形態では、3Dテンプレートは、成形、テンプレート法、フォトリソグラフィー、プリンティング、沈着、犠牲成形、ステレオリソグラフィー、またはその組合せによって生成することができる。
【0220】
一部の実施形態では、パターン形成された生物材料を、カスタム3Dプリンター技術の使用を通して作製し、既定の直径、間隔、および方向性を有する炭水化物ガラスフィラメントの格子を押し出すことができる。例えば、一部の実施形態では、可溶性(臨床等級、無菌的)フィブリノゲンおよびトロンビンを混合して格子の上に注ぐ。溶液が不溶性のフィブリンへと重合化した後、炭水化物フィラメントを溶解すると、後にフィブリン内にチャネルが残る。次いで、チャネルに、天然由来または合成の足場材料(例えば、可溶性のI型コラーゲン)中の細胞懸濁物を満たすことができ、次にこれを重合化してチャネル内に細胞を捕捉する。
【0221】
iii.封入
使用するために適したバイオポリマーは、その場でゲル化可能な任意のポリマー、すなわち、細胞適合性でない化学物質または条件(例えば、温度、pH)を必要としないポリマーを含む。ある特定の実施形態では、ポリマーは合成または天然のバイオポリマー(すなわち、生体適合性)である。これは安定なバイオポリマーおよび生体分解性のバイオポリマーの両方を含む。生体分解性ポリマーは、例えば封入した細胞の1つまたは複数の集団の増殖が望ましい場合には有用である。本明細書に記載される方法および構築物において使用することができるポリマーとしては、PEGハイドロゲル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ゼラチン、フィブリン、マトリゲル、アルギネート、アガロース、多糖類、コラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、ペプチドベースの自己組織化ゲル、温度応答性ポリ(NIPAAm)が挙げられるがこれらに限定されない。多数のバイオポリマーが当業者に公知である(Bryant and Anseth, J. Biomed. Mater. Res. (2002) 59(1):63-72; Mann et al., Biomaterials (2001) 22 (22): 3045-3051; Mann et al., Biomaterials (2001) 22 (5):439-444、およびPeppas et al., Eur. J. Phaim. Biopharm. (2000) 50(1), 27-46;全て参照により本明細書に組み込まれている)。
【0222】
本明細書で使用するためのポリマーは、好ましくは架橋されており、例えばイオン性に架橋されている。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法および構築物は、適切な波長の光への曝露によって(すなわち、光重合可能)重合化が光化学的に促進され得る(すなわち、光架橋され得る)ポリマー、または光の曝露もしくは他の刺激によって弱められたまたは可溶性となるポリマーを使用する。上記のポリマーの一部は、本来、光感受性ではない(例えば、コラーゲン、HA)が、アクリレートまたは他の光感受性基を付加することによってそれらを光感受性にすることができる。
【0223】
ある特定の実施形態では、方法は、光開始剤を利用する。光開始剤は、分子上の反応基によって定義される適切な波長の光に曝露されるとハイドロゲルの重合化を促進することが可能な分子である。本開示の文脈において、光開始剤は、細胞適合性である。異なる波長の光について使用することができる多数の光開始剤が公知である。例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、HPK 1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンおよびIrgacure 2959(ヒドロキシル-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2メチル-1プロパノン)は、全てUV光(365nm)によって活性化される。細胞適合性である光(例えば、ブルーライト)の波長によって活性化される他の架橋剤もまた、本明細書に記載される方法と共に使用することができる。
【0224】
他の実施形態では、方法は、非光化学重合可能な部分を有するポリマーの使用を伴う。ある特定の実施形態では、非光化学重合可能な部分はマイケル反応のアクセプターである。そのようなマイケル反応アクセプター部分の非制限的な例としては、α,β-不飽和ケトン、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、ホスホネートが挙げられる。マイケル反応アクセプターの追加の非制限的な例としては、キニンおよびビニルピリジンが挙げられる。一部の実施形態では、マイケル反応アクセプターの重合化は、求核試薬によって促進される。適した求核試薬としては、チオール、アミン、アルコール、ならびにチオール、アミン、およびアルコール部分を有する分子が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示は熱架橋ポリマーの使用を特徴とする。
【0225】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される構築物および方法にとって適したパターン形成細胞は、規則的形状もしくは不規則形状の三次元足場の表面上で、バイオポリマーの三次元スラブを通してランダムに局在するのではなくて三次元バイオポリマー内の反復構造で起こり得る斑点状の位置に局在するか、または二次元支持体(例えば、スライドガラス)上でパターン形成される。細胞は、バイオポリマーの比較的均一なスラブの特定の領域(最大約5ミクロンの分解能)内に細胞を配置することによって、または生きている細胞がハイドロゲル内に含有される(最大約100ミクロンの分解能)規定のパターンのパターン形成バイオポリマー足場を作製することによってパターン形成することができる。パターン形成は、直接の機械的操作、または物理的接触なく、および細胞の接着などの能動的な細胞プロセスに頼ることなく行われる。
【0226】
バイオポリマーの比較的均一なスラブは、それが重合化される注型またはDEPチャンバーと全体を通してほぼ同じ厚さであり、本質的に同じ形状である重合化バイオポリマー足場を指す。
【0227】
パターン形成バイオポリマー足場は、それが重合化される注型またはDEPチャンバーとは実質的に異なる形状であるバイオポリマー足場を指す。パターンは、形状の形態(例えば、円形、星、三角)またはメッシュもしくは他の形態であり得る。一部の実施形態では、バイオポリマーは、分岐構造などのin vivo組織構造を模倣するようにパターン形成される。
【0228】
本明細書における使用方法は、幾何学形状または様々なサイズの特徴を有する一連の反復する斑点を含む単層または多層の複数の任意のパターンを産生するために使用することができる。あるいは、様々な方向を向く単一のマスクを使用して、多層バイオポリマーゲルを生成することができる。三次元での高分解能パターン形成細胞の形成は、方法の制限を克服するために光重合化以外の方法によって達成することができる。
【0229】
光パターン形成を介したステレオリソグラフィーを使用して、灌流チャネルを導入し、このように光封入した肝細胞への酸素および栄養素の拡散的輸送を有意に改善することができる。一部の実施形態では、灌流チャネルは、単層の6角形の分岐パターンからなる。
【0230】
細胞を、バイオポリマーの選択的重合化または電場を使用する細胞のパターン形成、または両方によってハイドロゲル内でパターン形成してもよい。理論的には、単細胞を、バイオポリマー内の特定の位置に配置することによってパターン形成することができるが、一部の実施形態では、複数の細胞、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも100個、少なくとも500個の細胞がパターン形成される。パターン形成は、バイオポリマー内の単一の不連続な位置に全ての細胞を局在化させる必要はない。細胞は、細胞1つまたは2個分、または細胞複数個の幅の列で局在することができ、または比較的均一なバイオポリマー足場全体に多数の小さいクラスターとして局在化することができる(例えば、単一の足場においてそれぞれ細胞10個のおよそ20,000個のクラスター)。三次元パターン形成はまた、細胞が三次元足場に含有されることからDEPによる単一平面での細胞または他の粒子のパターン形成も含み得る。本明細書に記載される細胞パターン形成方法はまた、オルガネラ、リポソーム、ビーズ、および他の粒子のパターン形成のためにも使用することができる。
【0231】
細胞の組織化は、ハイドロゲル構造の光パターン形成によって制御することができる。アクリル酸ベースのPEGハイドロゲルの光重合化可能な性質により、パターン形成ハイドロゲル網状構造を生成するためにフォトリソグラフィー技術を適合させることが可能となる。このプロセスでは、トランスペアレンシー(transparency)上にプリントされたパターン形成マスクは、プレポリマー溶液のUV曝露を局在化するように作用し、このように、得られたハイドロゲルの構造を指示する。
【0232】
ある特定の実施形態では、既定の細胞構成を有する肝細胞ハイドロゲル構築物は、第1および第2の細胞集団を含有するPEGハイドロゲルを光パターン形成することによって調製され、3D細胞「凝集塊」からなるハイドロゲル網状構造をもたらし得る。これらのパターン形成ドメイン内での細胞の方向性のさらなる制御は、誘電泳動パターン形成技術を利用して達成され得る。誘電泳動(DEP)は、ハイドロゲルの比較的均一なスラブ内で、または光重合化法と共に、単独で細胞のパターン形成のために使用することができる。方法は、長さおよび幅が数百ミクロンから数十センチメートルまでの、および高さ数十ミクロンから数百ミクロンまでの三次元足場の形成を可能にする。光重合化法では最大100ミクロンの分解能、およびDEP法ではおそらく単細胞の分解能(10ミクロン)が達成可能である。光重合化装置、DEP装置、および三次元共培養物を産生するための他の方法は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,906,684号に記載されている。
【0233】
他の実施形態では、バイオポリマーは、細胞生存度を増強するために、または他の多くの理由のいずれかにより、さらに複数の増殖因子、接着分子、分解部位、または生物活性剤のいずれかを含有し得る。そのような分子は当業者に周知である。
【0234】
ある特定の実施形態では、細胞は、約0.1×10個/ml~約100×10個/ml、または約0.1×10個/ml~約20×10個/ml、約0.5×10個/ml、1、2、5、10、または15×10個/mlの濃度または密度で封入される。ある特定の実施形態では、遺伝子操作された非実質は、約0.1:1、0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、3:1、5:1、または10:1の比(第1の集団の細胞と比較して)で封入される。一部の実施形態では、上記の値または範囲は、封入の時点である。一部の実施形態では、上記の値または範囲は、封入または植え込み後の時点、例えば封入または植え込みの約1、2、5、12、24、36、48、72、96時間後、またはそれ以降での値または範囲であり、すなわち非改変細胞、例えば実質細胞および/または1つもしくは複数の遺伝子操作された非実質細胞集団は、より低濃度または密度で封入され、培養またはin vivoにおいてある一定時間後に増殖して表記の濃度または密度に達する。
【0235】
III.特徴付け
適切であれば、移植された細胞または組織に対するin vivo免疫抑制または寛容を、in vitroアッセイを使用して、例えば被験体から単離された細胞を使用するリンパ球混合反応において測定してもよい。同様に、ex vivoで細胞において達成された寛容および/または免疫抑制もまた、様々な細胞タイプ、例えば樹状細胞、T細胞、またはB細胞を使用してex vivoアッセイにおいて測定され得る。寛容化または寛容および/または免疫抑制をex vivo方法を使用して測定する場合、免疫刺激に対する細胞の応答が、適切な対照と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、またはそれより多く減少する場合、寛容化または寛容が起こったと考えられる。適したアッセイは、免疫応答を直接または間接的に測定し、当技術分野で公知である;それらとしては、リンパ球混合反応アッセイ、細胞傷害アッセイ、抗体価アッセイ、IL-4および/またはIL-10産生アッセイ、TGF-ベータ産生アッセイ、細胞表面マーカーの評価、およびFoxp3発現アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。
【0236】
in vitroアッセイ
指定されたタンパク質のレベルは、電気泳動、毛細管電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー、液体またはゲル沈殿反応、吸光分光法、比色測定アッセイ、分光光度測定アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散、液相アッセイ、免疫電気泳動、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、およびエレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイを含む、タンパク質レベルを測定するために当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定された細胞試料中のタンパク質の量を指す。
【0237】
in vivoアッセイ
一部の態様では、細胞組成物または移植片は、被験体に植え込まれ、機能的な操作された組織へと増大する。操作された組織の増大は、バイオマーカーを測定することによって評価することができる。例えば、操作された細胞組成物または移植片は、被験体に植え込まれ、再生合図に曝露されると、非増大細胞集団(例えば、内皮細胞および線維芽細胞)と比較した場合にヒト薬物代謝酵素および他の重要な組織特異的遺伝子(例えば、転写因子)を発現および/または誘導する。
【0238】
一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されるとフェーズIシトクロムP450酵素を発現する肝細胞を含有する。一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されると、CYP3A4および/またはCYP2B6を発現する。一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されると、フェーズII酵素を発現する。一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されるとスルホトランスフェラーゼを発現する。一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されると、フェーズIIIアニオントランスポーターを発現する。一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されるとSLCO1A2/1B1を発現する。一部の実施形態では、増大された操作された組織試料は、再生合図に曝露されるとATP結合トランスポーターを発現する。一部の実施形態では、増大した操作された組織試料は、再生合図に曝露されると、ABCB/ABCGを発現する。
【0239】
一部の実施形態では、被験体に植え込まれた操作された組織試料は、赤血球を含有する。一部の実施形態では、再生合図は、被験体に植え込まれた操作された組織試料中の血液プールの増大を促進する。一部の実施形態では、再生合図は、被験体に植え込まれた操作された細胞組成物または移植片組織における血管の形成を促進する。一部の実施形態では、操作された組織試料中の血管は、Ter-119陽性赤血球系細胞およびヒトCD31陽性内皮細胞を含有する。
【0240】
IV.使用
本明細書に記載される組成物および植え込み可能な移植片は、複数のin vitro、ex vivo、およびin vivo適用において使用することができ、宿主、例えばヒトまたは非ヒト動物宿主における植え込みのために特に適している。
【0241】
本発明の1つの態様は、宿主に移植されると、それらが宿主において免疫応答を誘発しない(それらが宿主において免疫応答を抑制する)ように操作されている細胞を提供する。本発明の別の態様は、様々な組織の再生および修復を刺激するために宿主にこれらの細胞を直接導入する方法を提供する。
【0242】
一部の態様では、本明細書に記載される組成物および移植片を使用して、植え込まれた細胞の生存、機能、および増大を増強することができる。代謝での需要のための血流および組織間の有効な物質輸送は、肝細胞と内皮細胞の間のパラクラインシグナル伝達によって表される正確に定義された微小環境に依存する。
【0243】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載される細胞組成物または植え込み可能な移植片を、それを必要とする被験体に投与することによって被験体における移植片の免疫拒絶を阻害する方法を提供する。一部の実施形態では、組成物または移植片は、心細胞、皮膚細胞、腎細胞、膵細胞、肝細胞、肺細胞、または内分泌臓器からの細胞を含む。一部の実施形態では、組成物は同種異系細胞を含む。他の実施形態では、組成物は異種細胞を含む。
【0244】
一部の実施形態では、被験体は、造血細胞もしくは骨髄移植、膵島細胞の同種異系移植、または心臓、皮膚、肝臓、肺、心肺、腎臓、膵臓、もしくは内分泌臓器(例えば、甲状腺、副甲状腺、胸腺、副腎皮質、または副腎髄質)からなる群より選択される固形臓器移植のレシピエントである。
【0245】
他の態様では、本開示は、本明細書に記載されるように開示される細胞組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、それを必要とする被験体における免疫活性化を低減する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、線維症を低減、阻害、または防止する。
【0246】
他の態様では、本開示は、本明細書に記載されるように開示される細胞組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、それを必要とする被験体における免疫寛容を促進する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、同型分子に対する免疫応答、例えば自己免疫応答を低減、阻害、または抑制する。
【0247】
別の態様では、本開示は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、被験体における、例えば細胞、組織、または臓器の移植に応答して免疫寛容を促進する方法を提供する。
【0248】
一部の態様では、本開示は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、免疫拒絶の阻害に使用するための組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0249】
一部の態様では、本開示は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、免疫活性化の阻害に使用するための組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0250】
一部の態様では、本開示は、本明細書に提供される組成物または植え込み可能な移植片を投与することによって、寛容の促進に使用するための組成物および植え込み可能な移植片を提供する。
【0251】
本明細書に記載される方法および組成物において使用される細胞は、投与時間前、投与時、および/または投与後に免疫調節ポリペプチド(例えば、免疫抑制ポリペプチド)を一過性に発現し得る。例えば、免疫調節ポリペプチドの発現が誘導型プロモーターの制御下にある実施形態では、免疫調節ポリペプチドの発現を、投与前にin vitroでおよび/または投与後にin vivoで誘導することができる。発現が投与前にin vitroで誘導される場合、一過性の発現は、投与時点で完全であり得るかまたは進行中であり得る。免疫調節ポリペプチド(例えば、免疫抑制ポリペプチド)の一過性の発現(すなわち、de novo翻訳)が投与時点で完全である場合、ポリペプチドは、投与後少なくとも2、4、6、8、12、18、24時間、またはそれより長い時間持続するために十分に安定でなければならない。あるいはまたはそれに加えて、投与後に一過性の発現を1回または複数回誘導することができる。好ましくは、細胞は、それらが二次リンパ組織に到達する時点でまたは望ましくない免疫応答の近位で目的の免疫調節ポリペプチド(例えば、免疫抑制ポリペプチド)を一過性に発現し(例えば、翻訳されたde novoタンパク質)、および/または含有する。
【0252】
本開示の他の態様では、第1の細胞集団のin situでの再生および成長は、宿主からの試料(例えば、血液試料)中での第1の細胞集団によって発現される再生因子(またはバイオマーカー)、例えば増殖因子(例えば、肝細胞増殖因子(HGF))の存在を検出することによって宿主においてモニターされる。そのようなバイオマーカーとしては、例えば血清アルブミン、アルファ-1アンチトリプシン、トランスフェリン、凝固因子、および薬物代謝が挙げられる。
【0253】
症状の治療的に有意な低減は、例えば、対照または無処置被験体と比較して測定したパラメーターの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、またはそれより多くの低減である。測定されたまたは測定可能なパラメーターは、臨床的に検出可能な疾患マーカー、例えば上昇または抑制レベルの生物マーカー、ならびに症状の臨床的に容認された尺度に関連するパラメーター、または疾患もしくは障害のマーカーを含む。本明細書に開示される組成物および製剤の総1日使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されると理解される。正確な必要量は、処置される疾患のタイプなどの要因に応じて変化するであろう。
【0254】
V.投与
一部の態様では、本明細書に記載される操作された細胞組成物および植え込み可能な移植片を被験体に植え込むことができる。非ヒト被験体の非制限的な例としては、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、家禽、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等が挙げられる。ある特定の実施形態では、被験体は任意の動物であり得る。ある特定の実施形態では、被験体は任意の哺乳動物であり得る。ある特定の実施形態では、被験体はヒトであり得る。
【0255】
組成物は、任意の適した様式で、しばしば薬学的に許容される担体と共に投与することができる。一部の態様では、組成物は、皮下、筋肉内、静脈内、血管内、門脈内、脾臓内、または腹腔内に投与することができる。一部の実施形態では、組成物または移植片は、組織または臓器の部位に植え込まれる。一部の実施形態では、組成物または移植片は、同所部位に投与される。他の実施形態では、組成物または移植片は異所部位に投与される。
【0256】
別の態様では、免疫調節タンパク質を発現する細胞組成物または遺伝子操作されたベクターは、例えば移植前に同種異系ドナーから臓器全体を灌流するためにex vivoで投与される。
【0257】
自己、同種異系、または異種細胞を使用してもよい。細胞は、任意の生理的に許容される培地中で投与され得る。一実施形態では、細胞は、5~20%DMSO、5%デキストロースおよび自己血清中で凍結保存される。当業者に周知であるように、in vivoで投与される本発明の細胞の投与量は、宿主の種、年齢、体重、および疾患状態を含む様々なパラメーターを参照して決定される。投与量はまた、宿主内で標的化される位置、例えばドナーからの組織の移植部位にも依存する。例えば、挿入された組織の部位への直接標的化は、哺乳動物宿主の血流中への投与とは異なる投与量を必要とし得る。投与量は、好ましくは投与が有効な結果を引き起こすように選択され、これは分子アッセイによって、または被験体における適した症状をモニターすることによって測定することができる。
【0258】
疾患または望ましくない免疫応答の軽減は、細胞による免疫調節ポリペプチドの発現が患者の臨床症状を安定化または改善する例を含む。疾患または障害の症状は、適切な対照、例えば処置前の症状と比較して、または処置が予防的であると意図される場合には予想される症状の重症度と比較して、必要に応じて少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、70%、90%、またはそれより多く、望ましくない症状が減少するかまたは改善する場合に低減されると考えられる。当業者は、症状の変化を評価するための技術および基準を周知している。免疫応答の機能障害または望ましくない機能によって引き起こされる疾患または障害の症状は当技術分野で公知であり、移植された組織の異常な組織学;移植された組織の異常な機能;事象後、例えば診断または移植後の生存期間の短い長さ;血中の指標タンパク質または他の化合物、例えば望ましくない抗体または望ましくない細胞(例えば、抗原特異的T細胞)の異常にまたは望ましくない高いまたは低いレベルまたは数;血中または体のいずれかでの指標細胞の異常にまたは望ましくない高いまたは低いレベルまたは数、例えば望ましくない免疫応答が開始または維持されるように調節性T細胞の望ましくない低いレベルまたは数を含む。
【0259】
一部の実施形態では、方法は、免疫抑制または免疫調節薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、免疫応答は、液性応答または抗体媒介性応答である。一部の実施形態では、方法は、移植片の拒絶を防止するか、または移植片の生存を促進する。
【0260】
本明細書に開示される細胞混合物、細胞凝集塊、および植え込み可能な移植片は、T細胞活性化を阻害する薬物(例えば、カルシニューリン(CaN)阻害剤)、普遍的な移植免疫寛容のための全身性の免疫抑制剤(コルチコステロイド、例えばメチルプレドニゾロン(Medrol)、プレドニゾンまたはプレドニゾロン)、CNI、例えばタクロリムス(Prograf、Astafraf)、シクロスポリン(Neoral、Sandimmune、Gengraf)、代謝拮抗物質、例えばミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate motefil)(Cellcept、Myfortic)、アザチオプリン(Imuran)、mTORI、例えばシロリムス(Rapamune)、エベロリムス(Afinitor)、T細胞枯渇性モノクローナル抗体、例えばムロモナブ-CD3(OKT3)、アレムツズマブ(Campath-1H)、ATG(Thymoblobulin、ATGAM)、IL-2-Raモノクローナル抗体、例えばダクリズマブ(Zenapax)、バシリキシマブ(Simulect)、N-アセチルシステイン(NAC)、Heplisav-B、Mavyret、Vosevi、Ocaliva、Zepatier、Cholbam、Daklinza、Technivie、Olysio、Sovaldi、Incivek、Victrelis、Viread、Tyzeka、Baraclude、Hepsera、Pegasys、Peg-intron、Ribavarin、およびTwinrixを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の追加の免疫抑制治療と組み合わせて投与することができる。追加の作用剤はグリタゾン(gliltazones)およびビタミンEを含む。
【実施例
【0261】
(実施例1 支持細胞集団の遺伝子操作)
本実施例では、ヒト起源の支持細胞集団(皮膚線維芽細胞および臍帯静脈内皮細胞)を、レンチウイルスベクターを使用して、免疫チェックポイントタンパク質、例えばPD-L1、CD47、CD39/73を過剰発現するように遺伝子操作し、次いで初代ヒト肝細胞(PHH)と共に同時封入した。実質細胞と同時封入すると、操作された支持細胞集団は、付近の免疫細胞に阻害性シグナルを提供し、このように同時封入された細胞をT細胞の細胞傷害から保護する。
【0262】
様々な免疫エフェクターの阻害剤を選択し、表1に示す。無数の様々な組合せの可能性が存在するが、拒絶プロセスにおける重要な点に当たる4つの因子:PD-L1、CD47、およびCD39/73を選択した。これらの4つの分子は、自然免疫応答、樹状細胞による抗原提示、適応免疫応答、および任意の残存する免疫活性を阻害するために協調して機能することができる。CD47は、マクロファージおよびNK細胞活性を阻害することができ(Ide et al., PNAS (2007) 104(12):5062-5066; Legrand et al. PNAS (2011) 108: 13224-13229)、樹状細胞活性化をダウンレギュレートすることができる(Demeure, CE., et al., J. Immunol. (2000) 164(4):2193-2199)。PD-L1は、強力なT細胞抑制剤である(Kier, ME, et al., J. Exp. Med. (2006):26(1):104-111; Iwai et al., PNAS (2002) 99(19):12293-12297)。CD39およびCD73はまた、細胞溶解に起因する細胞外ATP濃度の増加をもたらす任意の残存するT細胞媒介細胞傷害を阻害するために選択された。膜結合エクトヌクレオチダーゼ(CD39およびCD73)による細胞外ATPの加水分解は、免疫抑制性のアデノシンを生成し、このように過剰な炎症および移植片の損傷を防止するためのネガティブフィードバック機構として作用する(Deaglio et al., J. Exp. Med. (2007) 204(6):1257-1265)。
【0263】
表1. 拒絶プロセスにおける様々な時点でのアロ免疫応答をダウンレギュレートすることができる阻害性分子のパネル
【表1】
【0264】
材料および方法
線維芽細胞の培養
新生児ヒト皮膚線維芽細胞(HDF,Lonza)を購入した。HDFを、高グルコース、10%(体積/体積)ウシ胎仔血清(Gemini Bio-Products)、および1%(体積/体積)ペニシリン-ストレプトマイシン(Corning Life Sciences)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Corning Life Sciences)中、37℃、5%CO2下で培養した。維持の間、線維芽細胞を80%コンフルエンシーで継代し、全ての実験に関して6回未満の継代で維持した。
【0265】
内皮細胞培養
プールしたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、Lonza)を購入した。細胞を、EGM-2培地(Lonza)中、37℃、5%CO2下で培養した。維持の間、HUVECを80%コンフルエンシーで継代し、全ての実験に関して5回未満の継代で維持した。
【0266】
阻害性分子のトランスジェニック過剰発現
目的の遺伝子のためのレンチウイルス粒子を、G&P Bioから購入した。細胞に、8μg/mL臭化ヘキサジメトリン(Polybrene、Sigma Aldrich)を含有する培地中で40%コンフルエントに達した場合に、レンチウイルス粒子(推定MOI=5)を形質導入した。形質導入の48時間後、ウェルは、培地を新しい通常の培地に交換した。培地交換の24時間後、ピューロマイシン(Sigma Aldrich)を2μg/mLの濃度で、またはブラスチシジン(Santa Cruz Biotech)を1μg/mLの濃度でウェルに添加した。細胞を、抗生物質補充培地中で2回継代し、さらに使用するまで凍結保存した。
【0267】
転写プロファイリング
ウェル中の細胞を、培地を除去後、TRIzol(Thermo Fisher Scientific)中で溶解してホモジナイズした。総RNAを、クロロホルム抽出を介して単離し、NucleoSpin RNAキット(Takara Bio)を使用して精製した。cDNA合成を、RT第1鎖合成キット(Qiagen)を使用して実施し、定量的PCRを、BioRad CFX96リアルタイムシステムにおいて製造元の使用説明書に従ってヒトT細胞およびB細胞活性化に関してRTプロファイラーPCRアレイ(Qiagen)を使用して実施した。相対的mRNA定量を、プレート上のハウスキーピング遺伝子を使用して、ΔΔCt法を使用して計算した。
【0268】
in vitroマイクロ流体血管の構築
1チャネルマイクロ流体デバイスを作製し、既に記載されたように(Polacheck, WJ, et al. Nature (2017) 552:258-262 ; Polacheck, WJ, et al., Nature Protocols (2010) 107:3141-3145)フォトおよびソフトリソグラフィーを使用して組み立てた。100Wで30秒間プラズマ処理した後、組み立てたデバイスを、0.01%ポリ-L-リシン(Sigma Aldrich)および1%グルタルアルデヒド(Sigma Aldrich)によって各々室温で5分間表面官能化し、デバイス表面への細胞外基質(ECM)の結合を促進した。次いでデバイスを水によって室温で一晩洗浄した。細胞播種の日、各デバイスを70%エタノールで洗浄し、スチール製の鍼灸用針(直径300μm、Hwato)によって挿入し、その後15分間のUV滅菌を行った。2.5mg/mlウシフィブリノゲン(Sigma Aldrich)、1U/mlウシトロンビン(Sigma Aldrich)、およびDPBSの溶液をデバイスのECMチャンバーに添加して、室温で10分間架橋させた後、培地を添加した。針をデバイスから除去するとフィブリンに囲まれた中空のマイクロ流体チャネルが形成される。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、Lonza)の懸濁物を、50万個/mlで、マイクロ流体チャネルに接続したリザーバーに添加し、細胞をチャネルの上下表面に各々37℃で5分間接着された。次いでデバイスを新しい培地によってすすぎ、非接着細胞を除去し、流動条件の場合は傾斜揺動機(5rpm)上または静止条件の場合には平坦な表面上のいずれかで37℃で維持した。全てのT細胞実験は、ヒドロコルチゾンの非存在下でEGM-2培地(Lonza)中で実施した。
【0269】
3D PHH-線維芽細胞凝集
錐体インサートを含有する24ウェルポリスチレンプレートを、5%Pluronic(Sigma Aldrich)を使用して30分間不動態化した。その後、各ウェルを、1ウェルあたり1%(体積/体積)ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するDMEM 500μLによって3回すすいだ。改変ITS培地は、1%(体積/体積)ITSユニバーサル培養サプリメント(Corning Life Sciences)、1%(体積/体積)ペニシリン/ストレプトマイシン、10%(体積/体積)ウシ胎仔血清、15.4mM HEPES(Thermo Fisher Scientific)、および70ng/mLグルカゴン(Sigma Aldrich)を補充したL-グルタミンを含むDMEMから調製した。デキサメタゾンは通常のITS培地カクテルの一部であるが、これはT細胞活性を抑制し得ることから除去した。凍結保存したPHHを融解し、DMEM中、60×gで6分間遠心沈降させ、ITS培地に再懸濁した。120,000個のPHHを、改変ITS培地500μL中に錐体インサートを含有する24ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加した。次いでプレートを、60×gで6分間遠心沈降させ、37℃、5%CO2で24時間インキュベートし、細胞を凝集させた。翌日、プレートを再度60×gで6分間遠心沈降させ、PHH凝集塊の上の培地を除去した。ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を、TrypLE Express(Thermo Fisher)を使用して解離した。HDFを1000rpmで5分間遠心沈降させ、改変ITS培地に再懸濁した。次いで、360,000個のHDFを、120,000個のPHH/ウェルを含有する24ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加した。次いでプレートを60×gで6分間遠心沈降させ、37℃、5%CO2で24時間インキュベートし、HDFにPHH周囲にバリアを形成させた。
【0270】
免疫蛍光
マイクロ流体デバイスを、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA、Electron Microscopy Sciences)によって揺動機上、37℃で15分間固定した。次いでデバイスをPBSによって3回洗浄し、0.25%Triton(登録商標)X-100(Sigma Aldrich)によって15分間透過性にした。PBSによってさらに3回洗浄後、細胞を、PBS中の3%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma Aldrich)によって4℃で一晩ブロックした。一次抗体をブロッキング溶液中で希釈し、デバイス中で揺り動かしながら4℃で一晩インキュベートした。次いでデバイスをPBSによって4℃で一晩洗浄した。二次抗体およびHoechst(Thermo Fisher Scientific)を、ブロッキング溶液中で希釈し、デバイス中で揺り動かしながら4℃で一晩インキュベートした後、PBSによって4℃で一晩洗浄した。染色したデバイスを、イメージングするまでPBS中、4℃で保存した。免疫蛍光イメージングの場合、デバイスを、10倍空気対物レンズまたは25倍水浸対物レンズおよびEvolve EMCCDカメラ(Photometrics)を備えたYokogawa CSU-21/Zeiss Ax-iovert 200M倒立スピンディスク顕微鏡上に置いた。蛍光画像を、明るさ/コントラストに関して調節し、ImageJ(NIH)を使用してマージした。
【0271】
抗体
一次抗体を、以下の供給源から購入し、以下の希釈で利用した:VE-カドヘリン(F-8、Santa Cruz Biotechnology、1:200)、アルギナーゼ-1(Sigma Aldrich、1:400)、アセチル化αチューブリン(Santa Cruz Biotechnology、1:100)、HNF4α(Santa Cruz Biotechnology、1:400)。Dylight 649コンジュゲートUlex EuropaeusアグルチニンIレクチン(1:200)を、Vector Laboratoriesから購入した。二次抗体に関して、Alexa Fluor 488、568、594、および647抗マウス、抗ヤギ、および抗ウサギIgG二次抗体をLife Technologiesから購入した。
【0272】
遺伝子発現
デバイス中の細胞を、培地を除去後TRIzol(Thermo Fisher Scientific)中で溶解し、ホモジナイズした。総RNAを、クロロホルム抽出を介して単離し、RNeasy MinElute Cleanupキット(QIAGEN)を使用して精製した。cDNA合成を、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad)を使用して実施し、定量的PCRを、Taqman遺伝子発現アッセイシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、BioRad CFX96リアルタイムシステムにおいて製造元の使用説明書に従って実施した。使用したFAM標識Taqmanプローブ(Thermo Fisher Scientific)は以下の通りであった:KLF2(Hs00360439 g1)、NOS3(Hs01574659 m1)、およびCOX-2(Hs00153133 m1)。相対的mRNA定量を、GAPDHプローブをハウスキーピング遺伝子として使用して△△Ct法によって計算した。
【0273】
結果
レンチウイルス媒介遺伝子移入を使用して生成したプロテクター細胞
プロテクター細胞集団に関して、ヒト肝細胞の機能を支持する細胞を同定し、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を選択した。以前の試験において、HUVECおよびHDFはいずれも、in vitro(Stevens, KR, et al, Sci. Transl. Med. (2017) 9(399):eaah5505)およびin vivo(Stevens, KR, et al., Nat. Comm. (2013) 4:1847)でヒト肝細胞機能を実証可能に改善した。
【0274】
次いで、同定された細胞集団を、レンチウイルスベクターの使用を通して選択された免疫チェックポイント分子を過剰発現するように操作した。具体的には、これらの細胞の表面は、自然免疫系および抗原提示(CD47)、適応免疫系(PD-L1)を選択的に阻害する分子、ならびに任意の残存免疫細胞活性を除去するためのフィードバックループとして作用する分子(CD39/CD73)を示す。このプロセスは、図1Aに描写するように、発現ベクター、例えばレンチウイルスベクターの使用によって達成された。図1Bは、NHDFにおけるPD-L1、CD47、およびCD39/73の過剰発現、ならびにHUVECにおけるPD-L1の過剰発現を示す。
【0275】
レンチ-PDL1を形質導入したHDFは、PD-L1の発現が増加しているが、他の免疫マーカーの発現は増加していないことが転写により確認された(図2A~2B)。
【0276】
プロテクター間質細胞はT細胞活性を阻害した
PD-L1トランスジェニック(Tg)HDFがT細胞媒介細胞傷害に対する保護を提供するか否かを試験するために、細胞に、in vitroアッセイにおいて、上皮成長因子受容体(EGFR)に対して標的化されるキメラ抗原受容体(CAR)を有するヒトT細胞をチャレンジした。EGFR標的化CAR-T細胞は、参照により本明細書に組み込まれている、O’Rourke, D.M., et al., Sci. Transl. Med. (2007) 9, eaaa0984に記載されている。図3Aは、PD-1を発現する抗EGFR CAR T細胞がEGFRおよびPD-L1を発現するHDFと相互作用する概略図を示す。1万個の非改変またはPD-L1 Tg HDF標的細胞を96ウェルプレートに24時間平板培養した。次いで、抗EGFR CAR-T細胞を表記の標的-エフェクター比でウェルに添加した。細胞生存度を、CellTiterGloアッセイ(Promega)を使用して1、2、および4日目にアッセイした。HDFおよびヒト肝細胞はいずれも陽性のEGFR発現を示し(図3B)、このようにCAR-T細胞によって標的化することができる。チャレンジアッセイから、PD-L1 Tg HDFが、野生型(WT)HDFより、CAR-T媒介細胞傷害に対して改善された保護を一貫して示したことが実証された(図3C)。HDF培養上清を収集し、炎症促進性サイトカインに関してアッセイした。発現レベルを示すヒートマップを図3Dに示す。炎症促進性サイトカインの産生、具体的には顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、図3E)、インターフェロンガンマ(IFN-γ、図3F)、インターロイキン-2(IL-2、図3G)、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα、図3H)の産生は、WT HDF馴化上清と比較して、PD-L1 Tg HDF馴化上清において低減された。
【0277】
プロテクター内皮細胞はT細胞活性を阻害した
次いで、PD-L1アップレギュレーションを試験して、これがHUVECに関して類似の保護的利益を提供できるか否かを決定した。図4Aは、抗CD3抗体と相互作用するTCR複合体を発現するT細胞、およびCD80/CD86を発現するHUVECと相互作用するCD28の概略図を示す。方法の節に記載するように、マイクロ流体血管を作製し、これにWT HUVECおよびPD-L1 Tg HUVECを播種した。これらの血管に、30ng/mlの濃度の抗CD3 IgG(クローンOKT3)を使用して活性化した形質導入していないヒトT細胞を24時間チャレンジした(Kurrle et al., T Cell Activation by CD3 Antibodies BT - Leukocyte Typing II, 137-146 Reinherz, E.L., Haynes, B.F., Nadler, L.M., Bernstein, I.D. (Eds.) (Springer, NY)(1986))。チャレンジアッセイは、PD-L1 Tg HUVECが、WT対照と比較してT細胞媒介細胞傷害から保護されたことを実証した。PD-L1条件は、無傷の血管を示すが、WT対照条件ではバリアは分解している(図4B)。
【0278】
さらに、血管の血管透過性を測定した。具体的には、12.5μg/mL蛍光標識デキストラン(異なるサイズの分子の拡散を測定するための10kDaテキサスレッドまたは79kDaテキサスレッド)を含有する灌流媒体を血管に導入し、周囲のハイドロゲルへのデキストランの拡散を、倒立スピンディスク顕微鏡およびタイムラプス写真を使用してリアルタイムで測定した。得られた拡散プロファイルを、動的質量保存式にフィットさせて拡散透過性を決定した。PD-L1 Tg HUVECを播種した血管は、WT HUVEC播種血管と比較して良好なバリア機能を実証した。図4C。形質導入していないヒトT細胞+活性化抗CD3 IgGのチャレンジ後、WT HUVECの完全性は、透過性の増加によって実証されるように低減され、PD-L1 HUVEC播種血管は、バリア機能を維持することができた。
【0279】
プロテクター間質細胞はT細胞の細胞傷害から肝細胞を保護した
次いで、PD-L1のアップレギュレーションが非改変細胞を保護する能力を調べた。具体的には、非改変PHHを、遺伝子改変PD-L1 Tg HDFと混合し、2段階プロセスを使用してPHHの周囲にバリアを作製した(作成手順は、方法の節に詳細に記載する)。図5Aは、実験のタイムラインの概略図を示し、図5Bは2段階プロセスの概略図を示す。予想されたように、免疫蛍光から、PHHがコアに留まり、HDFが周囲のバリアを形成することが示された(図5C)。
【0280】
PD-L1 Tg HDFのこの層が、浸潤するT細胞からのバリアを提供するか否かを決定するために、EGFR CAR-Tを培養物に添加することによって構築物に対してチャレンジを行った。図3Bに示すように、PHHおよびHDFはいずれもその表面上にEGFRを発現し、このようにそれらをEGFR CAR-T媒介細胞傷害に対して感受性にする。数日間培養後、PHHからのアルブミン分泌は、WT HDFによる培養条件では低下し始めた(図5D)。一方、PD-L1 Tg HDFによる培養条件からのアルブミン分泌は、いかなるCAR-T細胞も含まない対照条件の分泌と類似のレベルで維持され(図5D)、HDFにおける遺伝子改変がトランス構成でPHHを保護することができることを示唆した。
【0281】
プロテクター間質細胞は誘導的に活性化された
この保護的プラットフォームの臨床への変換を改善するために、HDFにおけるPD-L1発現への制御スイッチを、テトラサイクリン誘導可能構築物を使用して添加した(GenTarget,San Diego CA)。HDF40000個/ウェルを24ウェルプレートに24時間平板培養した。次いで、誘導型レンチウイルスを、8μg/mLポリブレンと共にMOI 10で添加した。形質導入培地を48時間後に培養培地と交換した。24時間休ませた後、細胞に4ラウンドのピューロマイシン(2μg/mL)を与えた。PD-L1発現を、フローサイトメトリーを介して測定した。
【0282】
テトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)の形質導入後、PD-L1発現は抑制される。しかし、テトラサイクリン(tet)を外部から投与すると、Tetオペレーター領域に対するTetRの結合を阻害することができ、このように発現を活性化することができる。図6Aは、PD-L1の誘導可能な発現の概略図を示す。図6Bは、tetの様々な濃度でのHDFの表面上のPD-L1発現のフローサイトメトリー分析を示す。この系によって、ユーザーは迅速な動態でHDF上のPD-L1発現を制御することができる。さらに、ドキシサイクリン(テトラサイクリンのアナログ)は臨床での使用に関して既に承認されている。
【0283】
考察
本試験において、多数の細胞ベースの治療のための新規の制御可能な持続的な免疫寛容供給源が実証された。免疫阻害因子をアップレギュレートする遺伝子改変間質細胞、例えばHDFは、HDFに対する標的化T細胞の細胞傷害を阻害した。加えて、これらの遺伝子改変細胞は、非改変PHHに対して保護を提供することができた。このトランスに基づくバイスタンダー保護は、それによって改変細胞を保存することができ、任意の数の細胞ベースの治療に対する寛容を付与するための「既製品」としての利用を可能にすることから貴重である。実質細胞は数が限定され、遺伝子改変は無効である傾向がある。バンクに預けた遺伝子改変細胞を利用することおよびそれらを非改変実質細胞と混合することは、この問題に対する解決策を提供する。
【0284】
移植が必要であるが、移植を受けることができない患者にとって、制限となる要因は組織の利用可能性である。細胞ベースの治療は代替方法を提供するが、in vivoでのその持続は慢性の免疫拒絶によって妨害される。細胞ベースの治療に局所免疫抑制を提供する現行の技術の大多数は、a)阻害性シグナルを提示する操作された生物材料、またはb)保護を必要とする細胞の遺伝子操作のいずれかに基づく。免疫抑制シグナルを生物材料に結びつけることは局所的で有効であり得るが、これはしばしば長期間持続しない。生物材料は、in vivoでリモデリングを起こし分解する傾向がある。一方、細胞は、免疫抑制シグナルの産生および提示のための長期間持続する合成工場として作用することができる。
【0285】
要約すると、免疫調節タンパク質を発現するように操作された細胞の利用は、植え込み可能な移植片のトランスフォーマットでの制御可能で持続的な免疫寛容供給源を提供する。
【0286】
承認された細胞治療、例えばKymriahは、現在約500,000ドルで記載されている。1回の細胞ベースの治療によって得られる臨床での利益は膨大であり得るが、そのような治療の不適切に高い値段の大部分は、それらに伴う製造の難しさから生じる。例えばCAR-T細胞は、各患者に合わせた別個の製造を必要とし、したがって規模の経済からの利益を得ることができない。広く多様な細胞ベースの治療の普遍的適合性を可能にすることによって、本開示の組成物および方法は、製造の難しさを指数関数的に低減させる治療解決策を提供することができる。
【0287】
(実施例2 PD-L1を発現する支持細胞を含有する肝オルガノイドの分析)
本実施例では、正常な組織微小環境を、遺伝子改変支持間質細胞および/または血管系を裏打ちする内皮細胞における免疫チェックポイント阻害経路の制御された活性化によってトランス保護的な様式で機能するように操作し、保護を必要とする実質細胞と混合した場合に免疫細胞の疲弊およびアネルギーを誘導した。
【0288】
プロトタイプとして、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)は、in vitroおよびin vivoで肝細胞の機能を改善することが示されている細胞(Keir et al., J. Exp. Med. (2006) 203:883-895; Stevens et al., Sci. Transl. Med. (2017) 9:399)であり、これをその表面上にPD-L1を過剰発現するように操作し、実施例1に記載するように初代ヒト肝細胞(PHH)と同時封入した。同時封入した細胞をフィブリンハイドロゲルに入れて、機能的な肝移植片を作製した。
【0289】
肝オルガノイドを、錐体形状のマイクロウェルのアレイを利用して汎用可能な凝集プロセスを介して合成した(図7A)。錐体インサートを含有する6ウェルポリスチレンプレートを、5%Pluronic(Sigma Aldrich)によって30分間不動態化した。次いで、各ウェルを、ウェルあたり1%(体積/体積)ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するDMEM 2mLによって3回すすいだ。
【0290】
凍結保存した非改変PHHを融解し、DMEM中、60×gで6分間遠心沈降させ、ITS培地(1%(体積/体積)ITSユニバーサル培養サプリメント(Corning Life Sciences)、1%(体積/体積)ペニシリン/ストレプトマイシン、10%(体積/体積)ウシ胎仔血清、15.4mM HEPES(Thermo Fisher Scientific)、70ng/mLグルカゴン(Sigma Aldrich)、および40ng/mlデキサメタゾン(Sigma Aldrich)を補充したL-グルタミンを含むDMEM)に再懸濁した。成長が停止した線維芽細胞を、1%(体積/体積)ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するDMEMによって数回洗浄した後、0.25%トリプシン(Thermo Fisher)を使用して解離させた。線維芽細胞を1000rpmで5分間遠心沈降させ、ITS培地に再懸濁した。2つの細胞集団を、錐体インサートを含有するポリスチレンプレートの各ウェルに以下の割合で添加した:ITS培地2mL中に0.6M PHHおよび0.6M線維芽細胞。次いでプレートを60×gで6分間遠心沈降させ、37℃、5%CO2で2日間インキュベートし、細胞を凝集させた。2日間の間に、支持細胞は細胞外基質を合成し、2つの細胞集団は圧縮してオルガノイドを形成する。図7Bは、フィブリンハイドロゲルに入れられた得られたオルガノイドの肝移植片を示し、図7Cは、マウスにおける肝移植片の配置を示す概略図である。図7Dは、移植片における実質細胞(例えば、肝細胞)を保護するための、肝移植片中の操作された間質支持細胞と内因性のT細胞との相互作用を示す。図8Aは、錐体形状のマイクロウェルにおいて形成されたオルガノイドの画像である。細胞培養上清を収集し、アルブミン分泌をヒトアルブミン特異的ELISA定量キット(Bethyl Laboratories)を使用して測定した。図8Bに示すように、PHHのアルブミン分泌は、非改変間質支持細胞の存在下で増加する。これらの結果は、オルガノイドが肝細胞の表現型を安定化するために役立ち、多様な下流の構成に適していることを示している。
【0291】
PD-L1を過剰発現するように遺伝子操作されたHDF集団を生成するために、誘導型スーパーサイトメガロウイルス(suCMV)プロモーター(GenTarget)の下でPD-L1配列を有するレンチウイルスベクターを利用して、HDFにおける表面タンパク質をトランスジェニックに過剰発現させた(図9A)。形質導入されたHDFを、フローサイトメトリーを使用して赤色蛍光タンパク質に関して選択し、増大させてPD-L1hi HDFの純粋な集団を単離した(図9B)。PD-L1は、suCMVプロモーターの誘導型の下で発現されたことから、細胞にテトラサイクリンリプレッサーベクターを形質導入し、そのPD-L1の過剰発現が必要に応じてオンまたはオフにされる制御可能な細胞株を作製した(図10)。図11は、対照およびレンチウイルストランスフェクト細胞におけるPD-L1の発現を実証する免疫蛍光分析である。
【0292】
次に、天然の生物材料、具体的にはフィブリン中に肝オルガノイドを埋め込むことによって、植え込み可能な移植片を作製した。
【0293】
PHHおよびPD-L1hi HDFを有するオルガノイドをマイクロウェルから取り出して2.5mg/mlウシフィブリノゲン(Sigma Aldrich)、1U/mlウシトロンビン(Sigma Aldrich)、およびDPBSの溶液中に懸濁し、型に入れて、室温で10分間架橋させた後に培地を添加した。この溶液を円柱状の型に入れた(図12A)。溶液が重合化してフィブリンを形成した後、植え込み可能な移植片を、1mm生検パンチを使用して型から切り出した。各々の打ち抜いた単位は、肝移植片を表し、これを動物に異所性に植え込んで、in vivoで多くのヒト肝機能を維持することができる(図12B)。
【0294】
PD-L1などの免疫調節タンパク質を誘導可能なフォーマットで過剰発現する間質支持細胞の集団を操作した。マイクロウェルにおいて凝集および培養した場合、これらの操作された支持細胞は、実質細胞の機能を改善し、圧縮されてオルガノイドを形成する。オルガノイドを生物材料に封入して、in vivoでT細胞に阻害性シグナルを提供する植え込み可能な移植片を作製することができる。このプラットフォームは、移植の状況において局所の制御可能な免疫寛容を可能にする。このアプローチは、既存の植え込み可能な同種異系治療を補い、HLAが一致した臓器を得ることができない患者にとって普遍的に適合性の解決策を提供すると想像される。
【0295】
多様な実質細胞に対して局所免疫寛容を付与するための容易に変換することができる汎用性の高いモジュール性のプラットフォームが設計されたことから、この技術の適用を、複数の異なる臓器(腎臓、膵臓、心臓、および肺)の同種異系移植に拡大することができる。
【0296】
(実施例3 免疫抑制を特徴付けるためのin vitroおよびin vivo試験)
複数の合理的に選択された阻害性因子を発現する細胞は、各因子、例えばPD-L1、CD47、CD39、およびCD73を発現する1つまたは複数の核酸を細胞にトランスフェクトすることによって生成される。1つ、2つ、3つ、または全ての改変を有する間質細胞および内皮細胞株の両方に対して、in vitro(図13)またはin vivo(図14)で同時にチャレンジを行い、各分子の相加的な利益を評価した。次いで、植え込み可能な移植片を、適切な免疫保護を提供するために必要な最小数の改変を有するプロテクター細胞によって作製する。
【0297】
in vitro試験において、非改変の、または選択された阻害性因子によって改変された植え込み可能な移植片に、EGFR CAR-T細胞をチャレンジする。図13。植え込み可能な移植片の生存度および機能、例えばアルブミン分泌を、チャレンジ後の異なる時点で測定する。
【0298】
in vivo試験では、上記の実施例に記載されるPD-L1を発現するように操作されたHDFの植え込み可能な移植片を免疫コンピテント動物、具体的にはC57BL/6マウスに植え込み、それらに動物の免疫系の完全なレパートリーをチャレンジした(図14)。陽性対照として、全身性の免疫抑制(シクロスポリンA)を投与する条件を含めた。植え込み前、移植片を、CMVプロモーターの下でファイアフライルシフェラーゼによってタグを付けた。PD-L1改変および非改変の植え込み可能な移植片の生存度を、植え込みの2週間後に測定した。図15。D-ルシフェリン(30mg/mL)を、移植片近くの皮下領域に直接注射し、発光を、IVIS生物発光イメージングシステムを使用して測定した。データは、PD-L1改変移植片が高い細胞生存度を保持したが、非改変移植片では生存度が減少したことを示している。
【0299】
これらの実験は、最小の免疫抑制の存在下で植え込まれた移植片の長期の生存度を測定するために有用である。非ヒト霊長類モデルにおいて追加の試験を実施することができる。
【0300】
参照による組み込み
本明細書に記載される、特許文書およびウェブサイトを含む全ての文書および参考文献は、それらがこの文書に完全にまたは部分的に書かれているのと同程度に本文書に個々に参照により組み込まれる。
【0301】
均等物
当業者は、単なる慣用的な実験を使用して、本明細書に記載される特定の実施形態の多くの均等物を認識または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されると意図される。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】