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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】B型肝炎表面抗原阻害剤の結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20220131BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220131BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALN20220131BHJP
【FI】
C07D498/04 116
C07D498/04 CSP
A61P31/20
A61K31/553
C12N15/09 Z ZNA
C12Q1/6888 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529057
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2019120169
(87)【国際公開番号】W WO2020103924
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】201811399514.3
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519157897
【氏名又は名称】フーチェン コサンテール ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】BUILDING 1-7, FUYUAN INDUSTRIAL ZONE, ZHERONG COUNTY, NINGDE, FUJIAN 355300, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】胡 彦▲賓▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】施 沈一
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ ▲艶▼▲暁▼
(72)【発明者】
【氏名】丁 照中
【テーマコード(参考)】
4B063
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA06
4B063QA13
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QQ43
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C072AA01
4C072AA06
4C072BB02
4C072CC01
4C072CC11
4C072EE09
4C072FF07
4C072GG09
4C072JJ10
4C072UU01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA10
4C086CB22
4C086NA01
4C086NA20
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、B型肝炎表面抗原阻害剤の結晶形及びその製造方法を開示し、B型肝炎表面抗原阻害剤の製造における前記結晶形の使用をさらに含む。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおいて、8.04°±0.2°、16.52°±0.2°、19.52°±0.2°の2θ角に特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)化合物の結晶形A。
【化1】
【請求項2】
粉末X線回折パターンにおいて、8.04°±0.2°、10.47°±0.2°、11.90°±0.2°、16.52°±0.2°、18.06°±0.2°、19.52°±0.2°、22.02°±0.2°、25.28°±0.2°の2θ角に特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
粉末X線回折パターンが図1に示された通りである、請求項2に記載の結晶形A。
【請求項4】
示差走査熱量測定曲線において139.64±5℃に吸熱ピークの開始点を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項5】
示差走査熱量測定曲線パターンが図2に示された通りである、請求項4に記載の結晶形A。
【請求項6】
熱重量分析曲線において125.23±3℃で減量が0.4757%に達する、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項7】
熱重量分析曲線パターンが図3に示された通りである、請求項6に記載の結晶形A。
【請求項8】
B型肝炎治療薬の製造における請求項1~7のいずれか1項に記載の結晶形Aの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、出願日が2018年11月22日である中国特許出願CN2018113995143の優先権を主張している。本出願はこの中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、B型肝炎表面抗原阻害剤の結晶形及びその製造方法に関し、B型肝炎表面抗原阻害剤の製造における前記結晶形の使用をさらに含む。
【背景技術】
【0003】
B型ウイルス性肝炎は、B型肝炎と略称され、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus、HBVと略称される)が生体に感染して引き起こした疾患である。B型肝炎ウイルスはヘパドナウイルスの1つであり、主に肝細胞内に存在し、肝細胞を損害し、肝細胞の炎症、壊死、繊維化を引き起こす。B型ウイルス性肝炎は急性と慢性の2種類に分けられる。急性B型肝炎は、成人ではほとんどが自身の免疫機序を通じて自己治癒することができる。しかし、慢性B型肝炎(CHB)はすでに全世界の健康保健が直面する大きな挑戦になっており、慢性肝疾患、肝硬変(cirrhosis)や肝癌(HCC)の主な原因でもある。全世界では20億人が慢性B型肝炎ウイルスに感染しており、3億5千万人を超える人口がすでにB型肝炎に進行し、毎年60万人近くが慢性B型肝炎の合併症で死亡したと予測されている。中国はB型肝炎の高発区域であり、累積したB型肝炎患者が多く、危害が深刻である。資料によると、中国の現在のB型肝炎ウイルス感染者は約9300万であり、その中の約2000万の患者は慢性B型肝炎と確診され、その中で、10%~20%は肝硬変、1%~5%は肝臓癌に発展する可能性がある。
【0004】
B型肝炎の機能的治癒の鍵はHBsAg(B型肝炎ウイルス表面抗原)を除去し、表面抗体を発生させることである。HBsAg定量化は非常に重要な生物学的指標である。慢性感染患者では、HBsAgの減少と血清形質転換はほとんど観察されず、これは現在の治療の最終的な目的である。
【0005】
B型肝炎ウイルス(HBV)の表面抗原タンパク質はHBVが肝細胞に侵入する過程において非常に重要な役割を発揮し、HBV感染の予防・治療に重要な意義がある。表面抗原タンパク質は大(L)、中(M)及び小(S)の表面抗原タンパク質を含み、共通のC末端S領域を共有する。これらはオープンリーディングフレームから発現され、その異なる長さがリーディングフレームの3つのAUG開始コドンによって決定される。これら3つの表面抗原タンパク質は、フロントS1/フロントS2/S、フロントS2/S、及びSドメインを含む。HBV表面抗原タンパク質は小胞体(ER)膜に組み込まれて、N末端シグナル配列によって起動される。それらはウイルス体の基本構造を構成するだけでなく、球形と糸状の亜ウイルス粒子(SVPs、HBsAg)を形成し、ER、宿主ER、及びプレゴルジ体に集積し、SVPは大部分のS表面抗原タンパク質を含む。Lタンパク質は、ウイルスの形態発生とヌクレオカプシドとの相互作用において重要であるが、SVPの形成には必須なものではない。これらはヌクレオカプシドを欠いているため、前記SVPsは非感染性である。SVPsは疾患の進行に大きく関与しており、特にB型肝炎ウイルスに対する免疫応答において、感染者の血液中のSVPsの量は少なくともウイルス数の10,000倍であり、免疫系をトラップし、B型肝炎ウイルスに対する人体の免疫反応を弱める。HBsAgはヒトの自然免疫を阻害することもでき、多糖(LPS)やIL-2により誘導されるサイトカイン産生を阻害し、樹状細胞DC機能やERK-1/2やc-Jun N末端の干渉キナーゼ-1/2に対するLPSの単球での誘導活性を阻害することができる。なお、肝硬変や肝細胞癌への行進は、持続的に分泌されるHBsAgにも大きく関与している。これらの研究結果から、HBsAgが慢性肝炎の発展に重要な役割を果たすことが明らかになる。
【0006】
現在市販が承認されている抗HBV薬は主に免疫調節剤(インターフェロン-αとペグインターフェロン-α-2α)と抗ウイルス治療薬(ラミブジン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、ビブジン、テノホビル、クラフィジンなど)である。その中でも、抗ウイルス治療薬はヌクレオチド類薬物に属し、その作用機序はHBV DNAの合成を阻害することであり、HBsAgレベルを直接低下させることはできない。延長治療と同様に、ヌクレオチド類薬物により示されるHBsAg除去速度が自然観察結果と類似している。
【0007】
臨床の既存の治療法はHBsAgを低下させる治療効果が不十分であり、そのため、HBsAgを効果的に低下できる小分子経口阻害剤の開発は現在臨床薬品用のために急務となっている。
【0008】
ロシュ社はB型肝炎の治療のためにRG7834と呼ばれる表面抗原阻害剤を開発しており、モルモット抗B型肝炎モデルにおけるこの化合物の薬効として、RG7834を単剤として使用した場合、2.57 Logの表面抗原を低下させ、1.7 LogのHBV-DNAを低下できることを報告している。この化合物は、活性が良いが、分子合成過程で異性体を分割する必要があり、このため、収率が低下し、コストが増加する。
【0009】
WO2017013046A1は、B型肝炎ウイルス感染の治療又は予防用の一連の2-オキソ-7,8-ジヒドロ-6H-ピリド[2,1,a][2]ベンザゼピン-3-カルボン酸誘導体を開示している。このシリーズの縮合環化合物の最高活性の実施例3によれば、IC50は419nMであり、活性を大きく高める余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開公報2017013046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この一連の化合物に含まれるキラル中心は、不斉合成の難易度が高い。通常、7員炭素環は水溶性が悪く、酸化・代謝しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、粉末X線回折パターンにおいて8.04°±0.2°、16.52°±0.2°、19.52°±0.2°の2θ角に特徴的な回折ピークを有する、式(I)化合物の結晶形Aを提供する。
【化1】
【0013】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの粉末X線回折パターンにおいて8.04°±0.2°、10.47°±0.2°、11.90°±0.2°、16.52°±0.2°、18.06°±0.2°、19.52°±0.2°、22.02°±0.2°、25.28°±0.2°の2θ角に特徴的な回折ピークを有する。
【0014】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの粉末X線回折パターンが図1に示されたと通りである。
【0015】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形AのXRPDパターン分析データが表1に示された通りである。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの示差走査熱量測定曲線において139.64±5℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0018】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの示差走査熱量測定曲線パターンが図2に示された通りである。
【0019】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの熱重量分析曲線において125.23±3℃で減量が0.4757%に達する。
【0020】
本発明のいくつかの形態では、上記結晶形Aの熱重量分析曲線パターンは図3に示された通りである。
【0021】
本発明は、B型肝炎治療薬の製造における上記結晶形Aの使用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の化合物は顕著な抗B型肝炎ウイルス活性を有する。本発明の化合物は適度な血漿タンパク質結合率を有し、チトクロームP450アイソザイムを阻害せず、薬物-薬物相互作用のリスクが低いことを示し、ラット、ヒト、及びマウスの3つの種属における肝ミクロソームの安定性に優れており、化合物が代謝されにくいことを示し、良好な曝露量と生物学的利用率を有し、単回投与の神経毒性研究では耐性が良好である。本発明の化合物は、合成プロセスがシンプルで経済的である。
【0023】
本発明の結晶形は、溶解性が良く、入手しやすく、物理的安定性と化学的安定性の両方に優れている。
定義及び説明
【0024】
特に断らない限り、本明細書で使用されている以下の用語及び句は、以下の意味を有することを意図している。1つの特定の句又は用語は、特に定義しない場合、不確実又は不明瞭とみなされるべきではなく、一般的な意味で理解されるべきである。本明細書で商品名が現れる場合、それに対応する商品又はその有効成分を指すことを意図している。
【0025】
本発明の中間体化合物は、当業者に周知の複数の合成方法によって製造することができ、以下に列挙された具体的な実施形態、これらの実施形態と他の化学合成方法との組み合わせからなる実施形態、及び当業者に周知の同等の代替形態を含み、好ましい実施形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の具体的な実施形態の化学反応は、適切な溶媒にて行われ、前記溶媒は、本発明の化学的変化並びにそれに必要な試薬及び材料に適切でなければならない。本発明の化合物を得るためには、当業者が既存の実施形態に基づいて合成ステップ又は反応手順を修正又は選択する必要がある場合がある。
【0027】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明に対するいかなる制限でもない。
【0028】
本発明に使用されるすべての溶媒は市販品であり、さらなる精製を必要とせずに使用され得る。
【0029】
化合物は手作業又はChemDraw(登録商標)ソフトウェアによって命名され、市販の化合物はベンダーカタログ名を使用する。
【0030】
本発明の粉末X線回折(X-ray powder diffractometer、XRPD)方法
機器モデル:丹東浩元DX-2700BH X線回折装置
試験方法:約10~20mgのサンプルをXRPD検出に使用する。
XRPDパラメータの詳細は次のとおりである。
管球:Cu,kα,(λ=1.54184Å)。
管球電圧:40kV、管球電流:30mA
発散スリット:1mm
検出器スリット:0.3mm
散乱防止スリット:1mm
走査範囲:3~40deg
ステップ径:0.02deg
ステップサイズ:0.5秒
【0031】
本発明の示差熱分析(Differential Scanning Calorimeter、DSC)方法
機器モデル:METTLER TOLEDO DSC1示差走査熱量計
試験方法:サンプル(2~6mg)を30ULのDSC金メッキ高圧るつぼに入れて試験を行い、10℃/分の昇温速度でサンプルを40℃から350℃まで加熱する。
【0032】
本発明の熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)方法
機器モデル:TA TGA550熱重量分析計
試験方法:サンプル(2~10mg)をアルミニウムるつぼに入れた後、白金バスケットに入れて試験を行い、窒素ガス(N)条件下、ガス流速40mL/分、昇温速度10℃/分で、サンプルを40℃から500℃まで加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】式(I)化合物の結晶形AのCu-Kα放射のXRPDスペクトルである。
図2】式(I)化合物の結晶形AのDSCスペクトルである。
図3】式(I)化合物の結晶形AのTGAスペクトルである。
図4】マウス投与後の異なる日付におけるHBsAg含有量(IU/mL)である。
図5】マウス投与後の異なる日付における体重変化である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の内容をよりよく理解できるように、以下、具体的な実施例を参照しながら、さらに説明するが、具体的な実施形態は本発明の内容を制限するものではない。
【0035】
実施例1 式(I)化合物の製造
【化2】
【0036】
ステップA:
化合物1(100.00g、762.36mmol、1.00当量)のテトラヒドロフラン(400.00ml)の溶液に、0℃を維持しながら水素化リチウムアルミニウム(80.00g、2.11mol、2.77当量)を加えた。溶液を10℃で10時間撹拌した。次に、撹拌しながら反応液に水80.00mlを加えて、15%水酸化ナトリウム水溶液240.00mlを加え、さらに水80.00mlを加えた。得た懸濁液を10℃で20分間撹拌し、ろ過して無色の清澄液を得た。減圧濃縮させ、化合物2を得た。
【0037】
ステップB:
ジクロロメタン(500.00ml)に化合物2(50.00g、426.66mmol)とトリエチルアミン(59.39ml、426.66mmol)を溶解し、ジクロロメタン(100.00ml)にジ-tert-ブチルジカーボネート(92.19g、422.40mmol)を溶解し、0℃で1滴ずつ前の反応液に滴下した。次に、反応液を25℃で12時間撹拌した。反応液を飽和食塩水(600.00ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機相を減圧濃縮させ、乾固まで回転蒸発させた後、メチルーt-ブチルエーテル/石油エーテル(50.00/100.00)で再結晶して、化合物3を得た。
【0038】
ステップC:
アセトニトリル(707.50ml)に塩化スルホキシド(100.98ml、1.39mmol)を溶解し、アセトニトリル(282.90ml)に化合物3(121.00g、556.82mmol)を溶解し、零下40℃で前の反応液に滴下し、滴下終了後、ピリジン(224.72ml、2.78mol)を反応液に一括加えた。氷浴を除去し、反応液を5~10℃で1時間撹拌した。溶媒を減圧下回転蒸発により除去した後、酢酸エチル(800.00ml)を加えて、固体を析出し、ろ過して、ろ液を減圧濃縮させた。
【0039】
第2ステップ:
得た油と水と三塩化ルテニウム(12.55g、55.68mmol)をアセトニトリル(153.80ml)に溶解し、水(153.80ml)に過ヨウ素酸ナトリウム(142.92g、668.19mmol)を懸濁させ、上記反応液にゆっくり加え、最終的な反応混合液を5~10℃で0.15時間撹拌した。反応混合液をろ過して得られたろ液を、酢酸エチル(800.00ml×2)で抽出し、有機相を飽和食塩水(800.00ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮し、乾固まで回転蒸発させた。カラム(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=50/1~20/1)に通して精製し、化合物4を得た。
【0040】
ステップD:
アセトニトリル(1300.00ml)に化合物5(100.00g、657.26mmol)を溶解し、炭酸カリウム(227.10g、1.64mol)及び1-ブロモ-3-メトキシプロパン(110.63g、722.99mmol)を加えた。反応液を85℃で6時間撹拌した。反応液を酢酸エチル600.00ml(200.00ml×3)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、減圧濃縮させ、化合物6を得た。
【0041】
ステップE:
ジクロロメタンに化合物6(70.00g、312.15mmol)を溶解し、メタクロロペルオキシ安息香酸(94.27g、437.01mmol)を加え、反応物を50℃で2時間撹拌した。反応液を冷却した後、ろ過し、ろ液をジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液2000.00ml(400.00ml×5)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮させた。茶色の油状物を得て、できるだけ少量のメタノールで溶解した後、水酸化カリウム(350.00ml)溶液を1リットル当たり2モルでゆっくり加えた(放熱)。暗色の反応液を室温で20分間撹拌し、37%塩酸で反応液のpHを5に調整した。酢酸エチル400.00ml(200.00ml×2)で抽出し、有機相を飽和食塩水200.00ml(100.00ml×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮させ、化合物7を得た。
【0042】
ステップF:
テトラヒドロフラン(330.00ml)に化合物7(33.00g、155.48mmol)を溶解し、パラホルムアルデヒド(42.02g、466.45mmol)、塩化マグネシウム(29.61g、310.97mmol)、トリエチルアミン(47.20g、466.45mmol、64.92ml)を加えた。反応液を80℃で8時間撹拌した。反応完了後、25℃で塩酸溶液2mol(200.00ml)でクエンチングし、次に、酢酸エチル600.00ml(200.00ml×3)で抽出し、有機相を飽和食塩水400.00ml(200.00ml×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮させ、残渣を得た。残渣をエタノール(30.00ml)で洗浄し、ろ過してろ過ケーキを得た。これにより、化合物8を得た。
【0043】
ステップG:
N,N-ジメチルホルムアミド(80.00ml)に化合物8(8.70g、36.21mmol)を溶解し、炭酸カリウム(10.01g、72.42mmol)及び化合物4(11.13g、39.83mmol)を加え、反応液を50℃で2時間撹拌した。反応液を1.00mol/Lの塩酸水溶液(200.00ml)でクエンチングし、酢酸エチル(150.00ml×2)で抽出した。有機相を合わせて水(150.00ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮させ、化合物9を得た。
【0044】
ステップH:
ジクロロメタン(150.00ml)に化合物9(15.80g、35.95mmol)を溶解し、トリフルオロ酢酸(43.91ml、593.12mmol)を加えた。反応液を10℃で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮させ、乾固まで回転蒸発させ、炭酸水素ナトリウム水溶液(100.00ml)、ジクロロメタン(100.00ml)を加えて抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮させ、化合物10を得た。
【0045】
ステップI:
トルエン(20.00ml)に化合物10(5.00g、15.56mmol)を溶解し、化合物11(8.04g、31.11mmol)を加え、反応液を窒素ガス保護下、120℃で12時間撹拌した。反応液を水(100.00ml)でクエンチングし、酢酸エチル(100.00ml×2)で抽出し、有機相を合わせて水(80.00ml×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮させた。残渣を逆相カラムに通して精製した。さらに、高速液体分取クロマトグラフィー(カラム:Phenomenex luna C18 250×50mm×10μm;移動相:[水(0.225%ギ酸)-アセトニトリル];溶出勾配:35%~70%、25分間)により精製し、化合物12を得た。
【0046】
ステップJ:
トルエン(20.00ml)及びエチレングリコールジメチルエーテル(20.00ml)に化合物12(875.00mg、1.90mmol)を溶解し、テトラクロロベンゾキノン(1.40g、5.69mmol)を加えた。反応液を120℃で12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸ナトリウム水溶液(50.00ml)と酢酸エチル(60.00ml)を加えた。混合液を10~15℃で20分間撹拌し、分液して有機相を得た。有機相に2.00mol/Lの塩酸水溶液(60.00ml)を加え、10~15℃で20分間撹拌して、分液して、有機相を2mol/Lの塩酸水溶液(60.00ml×2)でさらに洗浄し、分液し、水相に2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(200.00ml)とジクロロメタン(200.00ml)を加えた。分液して、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮させ、化合物13を得た。
【0047】
ステップK:
メタノール(6.00ml)に化合物13(600.00mg、1.31mmol)を溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(2.00ml、6.39当量)を4.00mol/L加えた。反応液を15℃で0.25時間撹拌した。反応液を1.00mol/Lの塩酸水溶液でpH=3~4に調整した後、ジクロロメタン(50.00ml×3)で抽出し、有機相を合わせた後、飽和食塩水(50.00ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して減圧濃縮させ、式(I)化合物を得た。ee値(エナンチオマー過剰):100%。
【0048】
SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)法:
カラム:Chiralcel OD-3 100mm×4.6mm規格、3μm。
移動相:メタノール(0.05%ジエチルアミン)二酸化炭素中、5%~40%。
流速:3ml/分間。
波長:220nm。
【0049】
実施例2 式(I)化合物の結晶形Aの製造
【0050】
ステップA:
式(I)化合物(1.89Kg)をエタノール(9.5L)に加え、加熱還流して溶解させた後、段階的に降温して、反応系の温度を約25℃まで低下させると、多量の固体が析出し、次に、ろ過して、固体を得た。
【0051】
ステップB:
ステップAで得た固体を水(9.5L)に加え、室温で3~5時間撹拌した後、ろ過して固体を得た。
【0052】
ステップC:
ステップBで得た固体を45~50℃のオーブンで48~72hベークし、式(I)化合物の結晶形Aを得た。質量スペクトル:[M+H]=432.2。H NMR(400 MHz,重水素化クロロホルム) δ 15.72(br s,1H),8.32-8.93(m,1H),6.60-6.93(m,2H),6.51(br s,1H),4.38-4.63(m,2H),4.11(br dd,J=4.52,12.23 Hz,3H),3.79-3.87(m,3H),3.46-3.54(m,2H),3.29(s,3H),2.07(quin,J=6.24 Hz,2H),0.77-1.21(m,9H)。
【0053】
実施例3 式(I)化合物のHBVインビトロ活性試験
【0054】
実験材料:
1.細胞株:HepG2.2.15細胞:
HepG2.2.15細胞培地(DMEM/F12、Invitrogen-11330032;10%血清、Invitrogen-10099141;100単位/mLペニシリンと100μg/mLストレプトマイシン、Hyclone-SV30010;1%非必須アミノ酸、Invitrogen-11140050;2mm L-GLUTAMINE、Invitrogen-25030081;300μg/mL Geneticin、Invitrogen-10131027)
【0055】
2.試薬:
トリプシン(Invitrogen-25300062)
DPBS(Corning-21031CVR)
ジメチルスルホキシド(Sigma-D2650-100ML)
ハイスループットDNA精製キット(QIAamp 96 DNA Blood Kit,Qiagen-51162)
定量的ファストスタートユニバーサルプローブ試薬(FastStart Universal Probe Master,Roche-04914058001)
B型肝炎表面抗原定量測定キット(Antu Bio,CL 0310)
【0056】
3.消耗品及び器具:
96ウェル細胞培養プレート(Corning-3599)
COインキュベーター(HERA-CELL-240)
光学封止フィルム(ABI-4311971)
定量PCR 96ウェルプレート(Applied Biosystems-4306737)
蛍光定量PCR装置(Applied Biosystems-7500 real time PCR system)
【0057】
実験方法:
1.HepG2.2.15細胞(4×10細胞/ウェル)を96ウェルプレートに接種し、37℃、5%COで一晩培養した。
【0058】
2.翌日、化合物を計8濃度で3倍勾配希釈した。異なる濃度の化合物を培養ウェルに加え、二重ウェルを設置した。培養液中のジメチルスルホキシドの最終濃度は0.5%であった。10μM ETV(エンテカビル)を100%阻害対照とし、0.5%のジメチルスルホキシドを0%阻害対照とした。
【0059】
3.5日目には、化合物を含有する新鮮な培養液に交換した。
【0060】
4.8日目には、培養ウェルの中の培養液を回収して、一部のサンプルを採取してB型肝炎ウイルスS抗原含有量についてELISA測定を行い、サンプルの一部を採取して、ハイスループットDNA精製キット(Qiagen-51162)を用いてDNAを抽出した。
【0061】
5.PCR反応液の調製は表1に示された通りである。
【0062】
【表2】
【0063】
フォワードプライマー配列:GTGTCTGCGGCGTTTTATCA(配列番号1)
リバースプライマー:GACAAACGGGCAACATACCTT(配列番号2)
プローブ配列:5´+FAM+CCTCTKCATCCTGCTGCTATGCCTCATC(配列番号3)+TAMRA-3´
【0064】
6.96ウェルPCRプレートに1ウェル当たり15μLの反応混合液を加えた後、1ウェル当たり10μLのサンプルDNA又はHBV DNAの標準品を加えた。
【0065】
7.PCRの反応条件:95℃で10分間加熱し、その後95℃で15秒間変性し、60℃で1分間伸長し、合計40サイクルとした。
【0066】
8.ELISAによるB型肝炎ウイルスS抗原含有量の測定
50μLのサンプルと標準品をそれぞれ反応プレートに加え、次に、1ウェルあたり50μLの酵素結合物を加え、振とうして均一に混合し、37℃で60分間温浴した後、洗浄液でプレートを5回洗浄し、次に1ウェルあたり50μL発光基質を加えて均一に混合し、室温で遮光下10分間反応させ、最後に、マイクロプレートリーダーを用いて化学発光強度を検出した。
【0067】
9.データ分析:
阻害率の計算:
%Inh.=(1-サンプル中の値/ジメチルスルホキシド対照値)×100。
EC50の計算:
GraphPad Prismソフトウェアを用いてHBVに対する化合物の50%阻害濃度(EC50)値を計算した。
【0068】
実験結果:
式(I)化合物はHBV-DNAとHBsAgに作用するEC50がそれぞれ2.55nMと3.88nMであった。
【0069】
実験結論:
本発明の式(I)化合物はHBV-DNA及びB型肝炎表面抗原(HBsAg)を効果的に阻害できる。
【0070】
実施例4 式(I)化合物のインビボ薬効研究
実験材料:
C57BL/6マウス、溶媒として10%HP-β-CD、参照化合物TDF(テノホビルジソプロキシル)、式(I)化合物、組換えウイルスrAAV8-1.3HBV。
本項では、主要な試薬は、QIAamp96 DNAキットと、B型肝炎ウイルス表面抗原検出キットTaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mixを含む。
機器は、遠心分離機(Beckman Allegra X-15R)、組織粉砕機(QIAGEN-Tissue lyser II)、及び分光光度計(Thermo-NANODROP 1000)を含む。
【0071】
実験方法:
a)すべてのマウスはウイルス注射後28日目に経口投与を開始し、その日を0日目とした。投与前にすべてのマウスの顎下採血を行い、血清を収集した。1日1回、4週間連続して投与した。具体的な投与スキームを表3に示した。
b)すべてのマウスは、週に2回、1回あたり約100μLの顎下採血を行い、血清を収集した。具体的な採血時間を表3に示した。
c)28日目にすべてのマウスを安楽死させ、心臓から採血して血清を収集した。
d)すべての血清サンプルを検出に供した。
【0072】
【表3】
【0073】
実験結果:
AAV/HBVマウスモデルにおける被験化合物の抗HBV活性を、血清中のHBsAg含有量を検出して評価した。結果を表4と図4に示した。マウスの体重変化を図5に示した。
【0074】
【表4】
【0075】
実験結論:
本発明の化合物は、AAV/HBVマウスモデル実験において、HBsAgを著しく低下させることができ、マウスは良好な耐性を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022513119000001.app
【国際調査報告】