(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】インターロイキン21タンパク質(IL21)変異体およびその適用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20220131BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220131BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220131BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20220131BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220131BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220131BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220131BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220131BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220131BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/24 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
C07K16/00
C07K14/54
A61P37/04
A61P37/02
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K38/20
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K47/64
C07K19/00
C07K16/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529120
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2019119088
(87)【国際公開番号】W WO2020103777
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】201811400000.5
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521221283
【氏名又は名称】海珂分子(北京)科技有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】HYQUO MOLECULE (BEIJING) TECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】張 信
(72)【発明者】
【氏名】趙 云
(72)【発明者】
【氏名】杭 海英
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD23
4C076DD23D
4C076DD26
4C076DD26Z
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA26
4C084BA41
4C084CA18
4C084CA53
4C084CA56
4C084DA12
4C084DA16
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、インターロイキン-21タンパク質(IL21)変異体およびその適用に関する。前記変異体は、野生型IL21のアミノ酸配列の16位のILEおよび70位のSERの両者が、それぞれ、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成されている。前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示される。本発明は、また、前記IL21変異タンパク質を含有する融合タンパク質、および医薬の調製における前記IL21変異タンパク質または前記融合タンパク質の使用に関するものであり、好ましくは、前記医薬は免疫を調整または活性化するための医薬であるか、または抗腫瘍薬である。本発明は、また、B細胞の分化および増殖、T細胞の分化および増殖、NK細胞の分化および増殖を促進するための製剤の調製における、前記IL21変異体、前記IL21/4変異体または前記融合タンパク質の使用に関する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)野生型IL21のアミノ酸配列の16位のILEおよび70位のSERの両者が、それぞれ、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成され、前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示される、または
(2)野生型IL21のアミノ酸配列の16位のILE、17位のVAL、70位のSER、および112位のLYSの全てが、それぞれ、CYSに変異され、16位と70位との間、および17位と112位との間にジスルフィド結合の2つのグループが形成され、前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示される、
ことを特徴とする、インターロイキン-21(IL21)変異体。
【請求項2】
(1)インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラ(IL21/4)のアミノ酸配列の16位のILEおよび70位のSERの両者が、それぞれ、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成され、または
(2)インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラ(IL21/4)のアミノ酸配列の16位のILE、17位のVAL、70位のSER、および106位のLYSの全てが、それぞれ、CYSに変異され、16位と70位との間、および17位と106位との間にジスルフィド結合の2つのグループが形成され、
前記インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)のアミノ酸配列が配列番号2に示される、
ことを特徴とする、インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)変異体。
【請求項3】
請求項1記載のIL21変異体または請求項2記載のIL21/4変異体をコードすることを特徴とする、ヌクレオチド配列。
【請求項4】
請求項1記載のIL21変異体または請求項2記載のIL21/4変異体を含む融合タンパク質であって、
(1)前記IL21変異体または前記IL21/4変異体である機能性断片1と、
(2)モノクローナル抗体機能を有する機能性断片2と、
異なる前記機能性断片を連結する連結ドメインと、
を含むことを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質の、免疫調整または免疫活性化に用いるための医薬であるか、または抗腫瘍に用いるための医薬の製造における使用。
【請求項6】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質の、B細胞の分化および増殖、T細胞の分化および増殖、またはNK細胞の分化および増殖の促進に用いるための剤の製造における使用。
【請求項7】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質を有効成分とする医薬または医薬組成物であって、
治療有効量の前記IL21変異体、前記IL21/4変異体または前記融合タンパク質と、
必要な医薬賦形剤と、
を含む医薬または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に属し、特に、インターロイキン21タンパク質(IL21)変異体およびその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍免疫療法における免疫抑制の問題を解決するために、サイトカインや低分子阻害剤による治療が免疫調節の役割を果たす場合がある。サイトカインや低分子阻害剤による治療は、抑制性細胞サブセットの数または機能を特異的に抑制するか、免疫刺激分子によって抗腫瘍エフェクター細胞を活性化して患者の抗腫瘍免疫応答を増強する。IL2(インターロイキン-2)は、免疫応答における重要なメディエーターであるだけでなく、最も強力な抗腫瘍サイトカインの1つとしても知られており、広範な生物活性を有する。IL2は、胸腺T細胞に直接作用し、Treg細胞の分化を促進し、自己免疫を抑制し、また、抗原刺激によって活性化される最初のT細胞(イニシャルT細胞)のエフェクターT細胞および記憶T細胞への分化を促進することができる。これにより、ヒトを感染から保護することができる。しかし、IL2の全身投与は、強い有害反応を引き起こす場合があるため、IL2の治療量を制限することになる(非特許文献1および2)。さらに、IL2の血漿半減期は短く(約0.5~2時間)、腫瘍の局所微小環境における最適用量を達成することができない(非特許文献3)。このことによっても、IL2の臨床適用は制限される。
【0003】
サイトカインファミリーでは、IL2、IL15およびIL21はすべて共通のサイトカイン受容体γ鎖ファミリーに属する。これらはすべて、T細胞とNK細胞の活性を促進し、標的細胞に対する致死効果を高めることができる。これらの特徴により、IL2、IL15およびIL21は腫瘍免疫療法研究において魅力的なサイトカインとなっている(非特許文献4~5)。
【0004】
IL21(インターロイキン21)は、2000年に発見されたI型サイトカインであり、γcファミリーに属し、134アミノ酸から構成される。IL21は、主にTH17細胞やTFH(T follicular helper)細胞などのCD4+T細胞サブセットから分泌される。NKT細胞も、高濃度のIL21を分泌することができる(非特許文献19~20)。IL21受容体(IL21R)は、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、および単球/マクロファージの表面に発現し、IL21は、広範囲の免疫調節作用を有するサイトカインであることが報告されている。
【0005】
多くの前臨床試験によると、IL21が自然免疫系および獲得免疫系を含む種々のメカニズムによって腫瘍に抵抗することが示唆されている(非特許文献6)。IL21は、メラノーマおよび腎癌を治療するためのヒト臨床試験に使用することが承認されており、良好な治療効果を示している(非特許文献7~8)。IL21は、セツキシマブでプレコートされた膵癌細胞に対するNK細胞の反応を増強することができる(非特許文献9)。動物実験において、IL21およびモノクローナル抗体リツキシマブ(抗CD20)によって構築された融合タンパク質は、アポトーシスを直接的に誘導するか、またはエフェクター細胞を介して非ホジキンリンパ腫(NHL)を死滅させることが分かった(非特許文献10)。
【0006】
本発明者らは、先行研究により、マウス乳癌モデルにおいて、IL21が、腫瘍の薬剤耐性や悪性度を高めるM2マクロファージを、抗腫瘍機能を有するM1マクロファージに形質転換することにより、乳癌の抗体(ハーセプチン)の腫瘍殺傷作用が有意に向上することを見出した(非特許文献11)。
【0007】
一方、IL21に関する臨床適用研究の多くは、IL21の毒性副作用が同用量のIL2またはIFN-αより少なく、これらは主に発熱、疲労、頭痛、発疹などの軽度の症状として発現し、腹痛、血小板減少症、低リン酸血症、肝機能障害などの重篤な症状としても発現することを示唆した。それにもかかわらず、30g/kgの通常の投与量では、種々の毒性副作用の発生率は依然として100%までである(非特許文献12)。この問題は必然的に、全身投与において慎重に取り扱われるべきである。実際、IL21の臨床適用は長年研究されてきたが、未だに前臨床第I相、第II相試験が進行中である。重要な理由は、毒性副作用の発生率が高いという問題があることである。
【0008】
腫瘍部の局所におけるサイトカインの有効濃度を高めて全身性の毒性反応を避けるために、抗体のターゲティング能力を利用してサイトカインの送達を試みる研究者もいる。サイトカインの免疫療法力と抗体の標的抗腫瘍反応を組み合わせることにより、腫瘍部の局所に高濃度のサイトカインが集中し、細胞性免疫応答を効果的に刺激する場合がある。サイトカインと細胞特異的抗体との組合せは、免疫サイトカインと呼ばれる(非特許文献13)。
【0009】
しかしながら、IL21の血漿中半減期が短く、約3.09時間しかないことを示した臨床研究もある。IL21およびモノクローナル抗体によって構築された融合タンパク質は約180kDまでの分子量を有するが、血漿半減期は依然として短い。IL21およびリツキシマブ(抗CD20)によって構築された融合タンパク質の血漿半減期は、動物実験においてわずか約18.94時間であり、依然として創薬可能性が低い(非特許文献10)。従って、IL21の安定性を向上し、その半減期を増加させて創薬可能性を向上することが必要である。
【0010】
構造解析によると、IL21タンパク質は、安定的な立体構造および不安定な立体構造の2つの立体構造を有しており、これが、IL21の半減期が短い理由である。キメラIL21/4は、IL21のタンパク質構造における不安定領域をIL4(インターロイキン-4)の相同領域で置換することによって構築できることが報告されている。この結果から、キメラIL21/4が独特で安定的なタンパク質立体構造を有し、向上した生物学的活性を有していることが分かった(非特許文献14)。
【0011】
本発明者らは、先行研究において、タンパク質立体構造のin vitro制御のための安定的な哺乳動物細胞表面タンパク質ディスプレイシステムを確立したが(特許文献1、特許文献2)、これは合理的に設計されたタンパク質またはランダム変異をスクリーニング、および同定するために使用することができる。本発明において、このシステムを使用して、インターロイキン-21(IL21)を安定的にディスプレイし、タンパク質構造解析に基づく設計を通して、変異体IL21タンパク質の群を最適化して取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国特許出願公開第201410803422号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第201810795499号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Roth JA, Cristiano RJ, Gene therapy for cancer: what have we done and where are we going?J.Natl.Cancer Inst.1997;89:21-39.
【非特許文献2】Zatloukal K, Schneeberger A, Berger M et al. Elicitation of a systemic and protective anti-melanoma immune response by an IL-2 based vaccine. Assessment of critical cellular and molecular parameters. J. Immunol.1995;154:3406-3419.
【非特許文献3】Lotze MT, et al. In vivo administration of purified human interleukin 2.I. Half-life and immunologic effects of the Jurkat cell line-derived interleukin 2. [J] Immunol.1985;134(1):157-66.
【非特許文献4】Overwijk,W.W., Schluns,K.S. Functions of γc cytokines in immune homeostasis: Current and potential clinical applications[J].Clin Immunol.2009;132(2):153-165.
【非特許文献5】Malek TR, Castro I.Interleukin-2 Receptor Signaling: At the Interface between Tolerance and Immunity[J].Immunity.2010;33(2):153-165.
【非特許文献6】Rosanne S, Warren J.L.Interleukin-21: Basic Biology and Implications for Cancer and Autoimmunity[J].Annu.Rev.Immunol.2008.26:57-79.
【非特許文献7】Schmidt H, Brown J, Mouritzen U, et al. Safety and clinical effect of subcutaneous human Interleukin-21 in patients with metastatic melanoma or renal cell carcinoma: a phase I trial[J]. Clin Cancer Res.2010; 16 (21):5312-9.8.
【非特許文献8】Davis ID, Skrumsager BK, Cebon J, et al. An open-label, two-arm, phase I trial of recombinant human interleukin-21in patients with metastatic melanoma [J].Clin Cancer Res.2007; 13 (12):3630-6.
【非特許文献9】McMichael EL, Jaime-Ramirez AC, Guenterberg KD, et al. IL21 Enhances Natural Killer Cell Response to Cetuximab-Coated Pancreatic Tumor Cells [J]. Clin Cancer Res.2017; 23 (2):489-502.
【非特許文献10】Bhatt S, Parvin S, Zhang Y, et al.Anti-CD20-interleukin-21 fusokine targets malignant B cells via direct apoptosis and NK-cell-dependent cytotoxicity [J].Blood.2017;129(16):2246-2256.
【非特許文献11】Xu M, Liu M, Du X, et al. Intratumoral Delivery of IL-21 Overcomes Anti-Her2/Neu Resistance through Shifting Tumor-Associated Macrophages from M2 to M1 Phenotype [J]. J Immunol.2015; 194 (10):4997-5006.
【非特許文献12】Thompson JA, Curti BD, Redman BG, et al. Phase I Study of Recombinant Interleukin-21 in Patients With Metastatic Melanoma and Renal Cell Carcinoma [J]. Clin Oncol, 2008 Apr 20;26(12):2034-9.
【非特許文献13】Recombinant Antibody, SHEN Beifen, CHEN Zhinan, LIU Minpei, Science Press, 2005, P373.
【非特許文献14】Kent B, Jens B, Dennis M, et al. The Existence of Multiple Conformers of Interleukin-21 Directs Engineering of a Superpotent Analogue[J].THE JOURNALOF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2007,282(32):23326-23336.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインターロイキン-21タンパク質(IL21)変異体は、野生型IL21のアミノ酸配列における16位のILE、および70位のSERの両者が、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成され、前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示されることを特徴とする。
【0015】
本発明の別のインターロイキン-21タンパク質(IL21)変異体は、野生型IL21のアミノ酸配列における16位のILE、17位のVAL、70位のSER、および112位のLYSの全てが、CYSに変異され16位-70位の間および17位-112位の間にジスルフィド結合の2つのグループが形成され、前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示されることを特徴とする。
【0016】
本発明のインターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)変異体は、インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラ(IL21/4)におけるアミノ酸配列の16位のILE、および70位のSERの両者が、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成され、インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)のアミノ酸配列が配列番号2に示されることを特徴とする。
【0017】
本発明の別のインターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)変異体は、インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラ(IL21/4)におけるアミノ酸配列の16位のILE、17位のVAL、70位のSER、および106位のLYSの全てが、CYSに変異され、16位-70位の間および17位-106位の間にジスルフィド結合の2つのグループが形成され、インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)のアミノ酸配列が配列番号2に示されることを特徴とする。
【0018】
本発明のヌクレオチド配列は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体をコードすることを特徴とする。
【0019】
本発明の融合タンパク質は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体を含む融合タンパク質であって、
(1)IL21変異体またはIL21/4変異体である機能性断片1と、
(2)モノクローナル抗体機能を有する機能性断片2と、
異なる機能性断片を連結する連結ドメインと、
を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の使用は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体の使用であって、免疫を調整または活性化するための医薬であるか、または抗腫瘍薬である医薬の調製における使用であることを特徴とする。
【0021】
本発明の使用は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体を含む融合タンパク質の使用であって、免疫を調整または活性化するための医薬であるか、または抗腫瘍薬である医薬の調製における使用であることを特徴とする。
【0022】
本発明の使用は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体の使用であって、B細胞の分化および増殖、T細胞の分化および増殖、NK細胞の分化および増殖を促進するための製剤の調製における使用であることを特徴とする。
【0023】
本発明の使用は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体を含む融合タンパク質の使用であって、B細胞の分化および増殖、T細胞の分化および増殖、NK細胞の分化および増殖を促進するための製剤の調製における使用であることを特徴とする。
【0024】
本発明の医薬または医薬組成物は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体を有効成分とする医薬または医薬組成物であって、治療有効量の前記IL21変異体または前記IL21/4変異体と、必要な医薬賦形剤と、を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の医薬または医薬組成物は、前記IL21変異体または前記IL21/4変異体を含む融合タンパク質を有効成分とする医薬または医薬組成物であって、治療有効量の前記融合タンパク質と、必要な医薬賦形剤と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、IL21/4とハーセプチン抗体との融合タンパク質の組換え置換プラスミド断片を示す。
【
図2】
図2は、FRT-IL21/4-ハーセプチンプラスミドが相同組換えによりCHOワーキングセルゲノムに置換されたことを示す模式図である。
【
図3】
図3は、FRT-IL21/4-ハーセプチンプラスミドがCHOワーキングセルに置換された後のIL21/4-ハーセプチンのディスプレイ率を示す。左のパネルはCHOワーキングセルのネガティブコントロール群を示し、右のパネルは、トランスフェクション後の実験群を示す。縦軸は、ハーセプチン重鎖の定常領域と結合した後のハーセプチンHCのディスプレイ率を示す。p3領域は、置換が成功した後のIL21/4-ハーセプチンのディスプレイ率を示し、これは約0.269%であった。
【
図4】
図4は、FRT-IL21/4-ハーセプチンプラスミドがCHOワーキングセルに置換された後、選別され、濃縮されたIL21/4-ハーセプチンのディスプレイ率を示す。左のパネルはCHOワーキングセルのネガティブコントロール群を示し、右のパネルは、トランスフェクション後の実験群を示す。横軸は、IL21受容体IL21Rαの細胞外ドメインに結合した後のディスプレイ率を示し、縦軸はIL21受容体γcの細胞外ドメインに結合した後のディスプレイ率を示す。実験群は、IL21Rαの細胞外ドメインに結合後のディスプレイ率は17.2%であり、γcの細胞外ドメインに結合後のディスプレイ率は0.3%以下であることを示した。
【
図5】
図5は、マウス抗ヒトIgG-APC抗体にIL21/4-ハーセプチン細胞が結合した後のディスプレイ率を示す。左のパネルはCHOワーキングセルのネガティブコントロール群を示し、右のパネルは、トランスフェクション後の実験群を示す。横軸はIL21受容体γcの細胞外ドメインに結合した後のディスプレイ率を示し、縦軸はハーセプチン重鎖の定常領域に結合した後のハーセプチンHCのディスプレイ率を示す。その結果、融合タンパク質に結合後のハーセプチンのディスプレイ率は2.54%であった。
【
図6】
図6は、ジスルフィド結合を変異させた後に検出されたIL21/4-ハーセプチンのディスプレイ率を示す。示されたディスプレイ率の結果は、16cIL21/4-ハーセプチン、17cIL21/4-ハーセプチンおよび4cIL21/4-ハーセプチンタンパク質がディスプレイされた濃縮後のCHO細胞からのものであった。横軸は、IL21受容体IL21Rαの細胞外ドメインに結合した後のディスプレイ率を示し、縦軸は標識抗体であるマウス抗ヒトIgG-APC抗体にハーセプチン重鎖の定常領域が結合した後のディスプレイ率を示す。ハーセプチン重鎖の定常領域に結合した後の16cIL21/4-ハーセプチン群および4cIL21/4-ハーセプチン群のディスプレイ率は、濃縮前よりも有意に高かったが、ハーセプチン重鎖の定常領域に結合した後の17cIL21/4-ハーセプチン群のディスプレイ率は濃縮後わずか1%であった。これは、受容体IL21Rαの細胞外ドメインに結合した後の16cIL21/4-ハーセプチン群および4cIL21/4-ハーセプチン群のディスプレイ率が濃縮前よりも有意に高かったことを示している。一方、17cIL21/4-ハーセプチン群と受容体IL21Rαの細胞外ドメインとの間にはコントロール群と同様に、明らかな結合は認められなかった。
【
図7】
図7は、種々の変異タンパク質IL21、16cIL21および16clL21/4の発現プラスミドの構築を示す(構造グラフ)。各変異タンパク質をコードする遺伝子をPCEP4ベクターに挿入し、Hisタグを付加した発現プラスミドを構築した。
【
図8】
図8は、IL21および各変異タンパク質のSDS-PAGEゲル電気泳動の結果を示す。
【
図9A】
図9Aは、酵素加水分解後の16cIL21および16cIL21/4変異タンパク質の質量分析図を示す。
【
図9B】
図9Bは、酵素加水分解後の16cIL21および16cIL21/4変異タンパク質の質量分析図を示す。
【
図10】
図10は、IL21および各変異タンパク質の熱安定性を決定するためのIL21、16cIL21および16cIL21/4の融解温度(Tm)を示す。
【
図11】
図11は、IL21、16cIL21および16cIL21/4タンパク質によって刺激されたKOB細胞の増殖を示す。
【
図12】
図12は、マウスにおける、融合タンパク質16cIL21/4-ハーセプチンおよびハーセプチンによりin vivoで刺激されたCD8+T細胞の増殖を示す。
【
図13】
図13は、in vitroでの融合タンパク質16clL21/4-ハーセプチンの抗腫瘍試験結果を示す。同図において、「コントロール」は、PBSが注射されたコントロール群を表し、「ハーセプチン」は、ハーセプチン単独が注射された実験群を表し、「IL-21
mutant-ハーセプチン」は、16cIL21/4およびハーセプチンの融合タンパク質を用いた実験群を表し、「IL-21
mutant+ハーセプチン」は、融合タンパク質の代わりに16cIL21/4およびハーセプチンの混合液を用いた実験群を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
PCRおよびDNA消化生成物およびプラスミドの抽出、精製および調製
PCRおよびDNA消化生成物を、AxyPrep DNAゲル抽出キット(AXYGEN)によって抽出した。Transgen Plasmid Mini Kit(Transgen、China)によって、少量のプラスミドを抽出および精製した。QIAGEN Plasmid Midi Kitにより中量のプラスミドを抽出および精製した。Tiangen EndoFree Maxiプラスミドキットにより大量のプラスミドを抽出および精製した。具体的な手順は、指示に従って行った。
【0028】
細胞培養
CHO/dhFr-(ジヒドロ葉酸還元酵素欠損チャイニーズハムスター卵巣細胞):前記細胞を、5%のCO2恒温器中、37℃で、10%のウシ血清(Hyclone)、100U/mLの二重抗体、0.1mmol/lのヒポキサンチンおよび0.016mmol/lのチミンを含むIMDM培地を使用して培養した。
【0029】
293F細胞:ヒト胚腎細胞であり、5%CO2恒温器中、125rpmおよび37℃で、振盪フラスコ内で、FreeStyle(商標)293発現培地を使用して培養した。
【0030】
KOB細胞:IL21受容体を高発現する成人Tリンパ腫細胞であり、中国科学アカデミー生物物理研究所のWANG Shengdianグループから提供された。前記細胞を、5%CO2恒温器中、37℃で、10%のウシ血清(Hyclone)および100U/mLの二重抗体を含むRPMI1640培地を使用して培養した。
【0031】
細胞トランスフェクション
CHO細胞のトランスフェクション
細胞調製:前記細胞を、トランスフェクションの1日前にウェルあたり200,000細胞の量で6ウェルプレートに播種し、トランスフェクションの時点で、80%コンフルエンスに達し、均一に分布され、十分に増殖されるようにした。
【0032】
トランスフェクション複合体の調製:5μlのLipo2000および150mlのOpti-MEM無血清培地を均等に混合し、2μgの標的プラスミドを150μlのOpti-MEM無血清培地と均等に混合した。室温で5分間静置した後、これら2つの混合物を混合してトランスフェクション複合体を調製し、これを穏やかに混合し、室温で25分間置いた。
【0033】
元の培養液を6ウェルプレートから除去し、ウェルをOpti-MEM無血清培地で3回洗浄した後、トランスフェクション複合体を細胞表面上に滴下し、その後、500μlのOpti-MEM無血清培地を添加した。4~6時間後、培地を一般的な培養液に交換し、培養を続けた。
【0034】
293F細胞のトランスフェクション(例:50mlの培養液)
細胞調製:トランスフェクションの1日前に6×105-7×105細胞/mlを播種し、トランスフェクション時の細胞濃度を1×106細胞/mlとした。
【0035】
トランスフェクション複合体の調製: 50μgの標的プラスミドを2mlのOptiPROTMSFM(Invitrogen)無血清培地で希釈し、完全に混合してDNA希釈剤を調製した。250μlのトランスフェクション試薬PEIを前記DNA希釈剤に添加してトランスフェクション複合体を調製し、これを完全に混合し、室温で15分間置いた。前記トランスフェクション複合体を293F細胞培養液に添加した後、5%CO2の恒温器中、125rpmおよび37℃で、振盪フラスコ内で96時間培養した。
【0036】
タンパク質の発現および精製
(1)真核細胞の発現および精製
標的遺伝子を含むプラスミドを293F細胞にトランスフェクトした後、前記細胞をシェーカー内で96時間連続的に培養し、その後200gで3分間遠心分離して細胞沈殿物を除去した。上清培地を回収し、10000gで15分間遠心分離して培養液中の不純物を除去し、0.45μmフィルター膜でろ過し、30kdの濃縮管中で4℃、3800rmpで遠心分離し、体積の20倍に濃縮した。
【0037】
(2)Hisタグタンパク質の精製
硫酸ニッケル(NiSO4)を充填したSepharose high performance(Amersham Bioscience)クロマトグラフィーカラムを使用した。5mmol/l、30mmol/l、60mmol/l、90mmol/l、120mmol/l、および250mmol/lのイミダゾールを含有する緩衝液をそれぞれ調製した。前記緩衝液中の他の成分は、20mmol/lのTris-HCL、500mmol/lのNaClおよび10%のグリセロールであった。
【0038】
ニッケルカラムの洗浄および平衡化:ニッケルカラムを、まず、50mlのddH2Oで洗浄し、その後5mmol/lイミダゾールを含む50mlの緩衝液で洗浄し、平衡化した。
試料充填:標的タンパク質を含有する上清を前記ニッケルカラムに滴下し、これを2~3回繰り返した。
【0039】
溶出:前記試料を充填した後、カラムを、5mmol/l、30mmol/l、60mmol/l、90mmol/l、120mmol/lおよび250mmol/lのイミダゾールをそれぞれ含有する30mlの緩衝液で溶出し、溶出液を回収した。標的タンパク質の分子量に応じて、異なる仕様の限外濾過管を選択した。前記溶出液を限外濾過管で体積の50~100倍に濃縮した。
【0040】
タンパク質保存:最終的に得られたタンパク質を別々に包装し、液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。
【0041】
(3)全長抗体および全長抗体融合タンパク質の精製
Protein A SefinoseTM-5ml(プレパックグラヴィティーカラム)クロマトグラフィーカラムを使用した。
【0042】
事前調製
結合緩衝液:0.1mol/l Na3PO4、0.15mol/l NaCl、pH7.2
溶出緩衝液:0.1mol/l クエン酸、pH2.7
中和緩衝液:1mol/l Tris-HCl、pH9.0
洗浄および平衡化:まず、前記クロマトグラフィーカラムを50mlのddH2Oで洗浄した後、50mlの溶出緩衝液で洗浄し、その後、50mlの結合緩衝液で平衡化した。
【0043】
試料充填:標的タンパク質を含有する上清を前記クロマトグラフィーカラムに滴下し、これを2~3回繰り返した。
【0044】
溶出:前記試料を充填した後、前記カラムを50mlの結合緩衝液で洗浄して、非特異的結合物を除去した。10本の15mlの遠沈管を準備し、それぞれに、800μlの予め調製した中和緩衝液を添加した。タンパク質を30mlの溶出緩衝液で溶出し、中和緩衝液を含む15mlの遠沈管によって回収し、各管に溶出液を3ml回収した。
【0045】
画分回収:溶出液を回収した後、各管中のタンパク質の濃度をナノドロップによって検出した。タンパク質濃度が0.05mg/ml未満の溶出液を廃棄した。標的タンパク質の分子量に応じて、異なる仕様の限外濾過管を選択した。前記溶出液を限外濾過管で濃縮した。
【0046】
タンパク質保存:最終的に得られた前記タンパク質を別々に包装し、液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。
【0047】
クロマトグラフィーカラムの洗浄および保存:前記クロマトグラフィーカラムを50mlの結合緩衝液で洗浄し、その後、50mlのddH2Oで洗浄し、最後に50mlの20%エタノールで洗浄し、密封した。
【0048】
タンパク質の融解温度(Tm)の決定
タンパク質の融解温度(Tm)の決定原理:タンパク質の温度が周囲温度と共に上昇し、融解温度(Tm)に達すると、タンパク質の立体構造が破壊され、疎水性コアを開く。染料は、疎水性領域と結合して、検出可能な蛍光を発することができる。
【0049】
被測定タンパク質を、まず、20~40μmol/lの濃度および24μlの体積に調整した。
【0050】
Sypro(登録商標)Orange Protein(5000×)を染料として使用し、これをDMSOで25×に希釈した。
【0051】
25μlの検出システムの調製:96ウェルプレートの各ウェルに24μlのタンパク質(20~40μmol/l)を添加し、その後、1μlのSypro(登録商標)Orange Protein(25×)を添加し、十分に混合し、光を避けて室温で保持した。
【0052】
qPCR装置中のStepone software 2.1を検出に使用し、手順に従って操作およびパラメーター設定を行った。
【0053】
実験結果を決定し、保存した。結果を、Protein Thermal Shift 3.1のプログラムによって分析した。
【実施例】
【0054】
[実施例1]
キメラIL21/4を安定的に発現可能なCHO細胞株の確立
【0055】
IL21は、安定的な構造および不安定な構造の2つのタンパク質構造を有する。IL21のタンパク質構造中の不安定領域をIL4の相同領域で置換することによって、キメラIL21/4を構築した。その結果によると、キメラIL21/4のタンパク質立体構造は独特で安定的であり、向上した生物学的活性を有していることが分かった。IL21変異体とハーセプチンの融合タンパク質の構築が実験の重要な目的であることを考慮すると、CHOワーキングセルの表面上にキメラIL21/4とハーセプチンの融合タンパク質をディスプレイした後、ハーセプチン重鎖の定常領域を検出することによってキメラIL21/4のディスプレイ効率を検出することも有益であった。従って、本発明者らは、まず、CHOワーキングセルの表面上にキメラIL21/4およびハーセプチンの融合タンパク質をディスプレイした。
【0056】
キメラIL21/4をディスプレイするための効率的かつ安定的なCHO細胞株を取得するために、本発明者らの実験室で以前に確立されたタンパク質ディスプレイシステムを使用して、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)によってCHO細胞株を構築した(詳細については特許文献1を参照のこと)。
【0057】
IL21/4とハーセプチンの融合タンパク質をディスプレイするために、まず、組換置換プラスミド断片(FRT-IL21/4-ハーセプチンプラスミド)を構築した。融合タンパク質の断片は、シグナルペプチドを有するハーセプチン軽鎖、IRES(内部リボソーム侵入部位)、ハーセプチン重鎖のシグナルペプチド、3(G4S)リンカーを介してハーセプチン重鎖のN末端に連結されたIL21/4、およびハーセプチン重鎖のC末端に連結された膜貫通領域(TM)であった。これにより、IL21/4とハーセプチンとの融合タンパク質を、膜貫通領域によってCHOワーキングセルの表面に固定し、ディスプレイすることができた。融合タンパク質の配列構造を
図1に示した(左から右へ、FRT組換え部位、ハーセプチン軽鎖のシグナルペプチド、ハーセプチン軽鎖、リボソームに結合して翻訳を開始することができるIRES(内部リボソーム侵入部位)、ハーセプチン重鎖のシグナルペプチド、IL21/4、3(G4S)リンカー、ハーセプチン重鎖、細胞表面にタンパク質分子を固定しディスプレイ可能な膜貫通領域(TM)、およびLOXp組換え部位を含む融合タンパク質)。
【0058】
組換え置換領域FRT-puromysin-Loxpの単一コピーがゲノムに挿入され、本発明者らの研究室で樹立されたCHOワーキングセル(詳細については特許文献1を参照のこと)に、FRT-IL21/4-ハーセプチンプラスミドと本発明者らの研究室で事前に構築されたpCI-2Aプラスミドを同時にトランスフェクトした。FRT-IL21/4-ハーセプチンプラスミドのLoxp部位とFRT部位の間のハーセプチンとIL21/4の融合タンパク質配列は、
図2に示すように、単一コピーでCHOワーキングセルのゲノムに組み換え、置換することができた。
【0059】
トランスフェクション後、前記細胞を定時に回収し、その後、マウス抗ヒトIgG-APC抗体で標識した。IL21/4-ハーセプチン置換後のディスプレイ率をフローサイトメトリーにより検出した。その結果(
図3)によると、ディスプレイ率は0.269%で、トランスフェクション後の置換組換えの確率が非常に低いことが示された。したがって、置換が成功し、試験結果が陽性である細胞は、濃縮後に再び検出する必要があった。偽陽性シグナルを避けるために、
図3の左上象限のp3領域に強い陽性シグナルを有する細胞をflow FACS Aria IIIによって選別し、その後、培養し、増殖させた。
【0060】
濃縮後、再び検出を行った。今回は、事前に発現および精製したIL21Rα細胞外ドメインリンカー-GFP-his融合タンパク質、γc細胞外ドメインリンカー-mRFP-his融合タンパク質およびマウス抗ヒトIgG-APC抗体を標識し、IL21/4-ハーセプチン融合タンパク質におけるIL21/4およびハーセプチンドメインの完全性を同時に検出した。その結果を
図4および
図5に示す。
図4に示すように、横軸はIL21受容体IL21Rαの細胞外ドメインに結合した後のIL21/4-ハーセプチン融合タンパク質におけるIL21/4のディスプレイ率(17.2%)を示し、縦軸は、IL21受容体γcの細胞外ドメインに結合した後のIL21/4-ハーセプチン融合タンパク質におけるIL21/4のディスプレイ率(<0.3%)を示す。報告されているように、IL21の受容体γcへの結合の親和性は、受容体IL21Rαへの結合のそれよりもはるかに低く、このことは今回の実験でも数回確認された。
【0061】
図5に示すように、横軸は、IL21/4-ハーセプチン融合タンパク質におけるIL21/4のディスプレイ率が、IL21受容体γcの細胞外ドメインに結合した後、0.3%未満であったことを示し、縦軸は、融合タンパク質におけるハーセプチン重鎖の定常領域のディスプレイ率が、標識抗体であるMouse Anti-human IgG-APC抗体に結合した後、2.54%であり、濃縮前のディスプレイ率(0.26%)よりも高かったことを示す。IL21Rα細胞外ドメインリンカー-GFP融合タンパク質の標識結果と組み合わせると、標識抗体であるマウス抗ヒトIgG-APC抗体に対するハーセプチン重鎖定常領域の親和性は、IL21Rα細胞外ドメインリンカー-GFPに対するそれよりも低いことが示された。
【0062】
IL21/4-ハーセプチン融合タンパク質を安定的にディスプレイした上記CHO細胞を、flow FACS Aria IIIによって選別し、s0細胞と命名した。
【0063】
分子生物学実験プロセスにおいて、CHO細胞の表面上にキメラIL21/4を安定的にディスプレイ可能なプラスミドを構築するための工程は、以下の通りであった。
【0064】
1.pFRT-ハーセプチン LC-IRES-IL21/4-リンカー-ハーセプチン HC-TM-Loxpプラスミドを構築し、CHO細胞の表面上に変異IL21/4を安定的にディスプレイする工程。
(1)IL21を鋳型として用いてプライマーを設計し、IL21/4断片をオーバーラップPCRにより取得した。
(2)前記IL21/4断片を、オーバーラップPCRにより、リンカーを介してハーセプチン重鎖HCのN末端に連結し、その後、sp-IL21/4-リンカー-ハーセプチンHC断片を、本発明者らの研究室において構築された抗体ディスプレイプラスミドpFRTの重鎖部分に置換し、pFRT-ハーセプチン LC-IRES-IL21/4-リンカー-ハーセプチン HC-TM-Loxpプラスミドを構築した。プラスミドは、CHO細胞の表面上に変異体IL21/4を安定的にディスプレイすることができた。
【0065】
2.IL21Rα-リンカー-GFP融合タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドを構築し、IL21の機能活性を調べるためにIL21受容体αの細胞外ドメインを分泌・発現させる工程。
(1)データベースを照会し、IL21受容体IL21Rα鎖の細胞外ドメインを合成し、その後、GFPを鋳型として用いたPCRによってGFP断片を増幅するようにプライマーを設計した。
(2)IL21Rα鎖の細胞外ドメインを、オーバーラップPCRによりリンカーを介してGFPのN末端に連結し、その後、sp-IL21Rα鎖の細胞外ドメインリンカー-GFP断片をpCEP4に連結し、IL21Rα-リンカー-GFP融合タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドを構築した。
【0066】
3.γc-リンカー-mRFP融合タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドを構築し、IL21の機能活性を調べるために、IL21受容体γcの細胞外ドメインを分泌・発現する工程。
データベースを照会して、IL21受容体γc鎖の細胞外ドメインを合成し、その後、再度、mRFPを鋳型として用いたPCRによってmRFP断片を増幅するようにプライマーを設計した。γc鎖の細胞外ドメインを、オーバーラップPCRによりリンカーを介してmRFPのN末端に再度連結し、その後、sp-γc鎖の細胞外ドメインリンカーmRFP断片をpCEP4に再度連結して、γcリンカー-GFP融合タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドを構築した。
【0067】
4.IL21変異体と融合タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドを構築する工程。
(2)IL21の種々の変異体を安定的にディスプレイ可能なプラスミドの構築:IL21の別の変異体をCHO細胞表面に安定的にディスプレイするために、点変異PCR法を用いてプラスミドを構築した。pFRT-ハーセプチン LC-IRES-IL21/4-リンカー-ハーセプチン HC-TM-Loxpプラスミドを鋳型として使用してプライマーを設計し、IL21の異なる変異体を安定してディスプレイ可能なプラスミドを構築した。
(3)IL21変異タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドの構築:種々のIL21変異体をディスプレイ可能なプラスミドを鋳型としてプライマーを設計し、PCR法によりIL21変異断片を増幅した後、pCEP4に連結し、IL21変異タンパク質を分泌・発現可能なプラスミドを構築した。
【0068】
[実施例2]
タンパク質設計により異なる部位にジスルフィド結合を導入することによるIL21/4の安定性に関する研究
【0069】
1.タンパク質構造を分析および設計することにより、IL21/4タンパク質上の異なる部位を変異のために選択し、ジスルフィド結合を導入して、以下の群の変異体を取得した。ジスルフィド結合は以下のように導入した。
(1)16位のILE、および70位のSERの両方をCYSに変異させ、16-70ジスルフィド結合を導入し、16clL21/4と命名した。
(2)17位のILE、および106位のSERの両方をCYSに変異させ、17-106ジスルフィド結合を導入し、17clL21/4と命名した。
(2)16位のILE、70位のSER、17位のVAL、および106位のLYSをすべてCYSに変異させ、2つのジスルフィド結合群を同時に導入し、4clL21/4と命名した。
【0070】
2.IL21/4変異体の各々を安定的にディスプレイ可能なCHO細胞の取得。
FRT-IL21/4-ハーセプチンを鋳型として、IL21/4変異体の各々を安定的にディスプレイ可能なCHO細胞株を取得するために、まず、IL21/4変異体の各々の組換置換プラスミドを、点突然変異法により取得し、16cIL21/4-ハーセプチン、17cIL21/4-ハーセプチンおよび4cIL21/4-ハーセプチンと命名した。CHOワーキングセルに、再度、上記のプラスミド、および事前に構築したpci-2Aプラスミドを同時トランスフェクトし、組換えおよび置換の成功後に濃縮した。ディスプレイ率は、標識抗体であるマウス抗ヒトIgG-APC抗体への結合によって検出した。
【0071】
図6に示すように、横軸は、IL21受容体IL21Rαの細胞外ドメインに結合した後の種々の変異IL21/4-ハーセプチン融合タンパク質のディスプレイ率を示す。縦軸は、標識抗体であるマウス抗ヒトIgG-APC抗体に結合した後の融合タンパク質中のハーセプチン重鎖の定常領域のディスプレイ率を示す。
図6に示すように、16cIL21/4-ハーセプチンおよび4cIL21/4-ハーセプチンのディスプレイ率は、濃縮前よりも有意に高く、受容体IL21Rαの細胞外ドメインに非常によく結合していた。しかしながら、コントロール群である17cIL21/4-ハーセプチンの縦軸は、標識抗体であるマウス抗ヒトIgG-APC抗体に結合した後のディスプレイ率が、わずか1%であることを示す。受容体IL21Rαの細胞外ドメインへの明らかな結合は認められなかった。このことから、コントロール群の変異体である17cIL21/4-ハーセプチンがディスプレイされないことがわかった。
【0072】
本発明者らは、細胞膜表面に2種類のIL21/4変異体を安定的にディスプレイ可能なCHOワーキングセルを取得し、これら2つのIL21/4変異体の予備的安定性試験を行った。
【0073】
[実施例3]
IL21/4変異体の各々の予備的安定性試験
【0074】
IL21/4変異体の各々の安定性を試験するために、IL21/4-ハーセプチンをディスプレイするCHOワーキングセル、変異16cIL21/4-ハーセプチン、および変異4cIL21/4-ハーセプチンをディスプレイするCHOワーキングセルを実験群として用いた。それぞれの群を4℃~50℃の様々な温度勾配で加熱し、その後、IL21受容体IL21Rα細胞外ドメインリンカー-GFP-hisと結合し、標識した。様々な温度勾配で受容体に結合した後、各群のディスプレイ率を、フローサイトメトリーによって検出した。温度が変化すると、まず、熱安定性が不十分なタンパク質が変性し、正常な構造が破壊され、そして受容体結合の能力が失われる。このようにして、各変異体の熱安定性を調べることができた。
【0075】
具体的な実験プロセスは以下の通りであった。
(1)細胞膜の表面にIL21変異体を安定的にディスプレイするCHO細胞を、0.02%のEDTA-PBSで消化し、血清を含む培養液で溶出し、830gで3分間遠心分離した。上清を捨て、細胞を回収した。
(2)前記細胞を、4℃で予め冷却した1mlの無血清Opti-MEM培地に再懸濁し、830gで3分間遠心分離した。上清を捨て、前記細胞を回収した。その後、前記細胞を、再び4℃で予冷した無血清のOpti-MEM培地中に、約5×106細胞/50μlまで再懸濁した。
(3)前記細胞懸濁液をPCRチューブに添加し、PCR装置によって設定された温度勾配で加熱した。前記PCRチューブを、予め設定した温度で0.5時間加熱した。前記PCRチューブを4℃で15分間保持した後、取り出した。
(4)IL21受容体の細胞外ドメインを特定の割合で添加し、蛍光タンパク質融合タンパク質と完全に混合した。前記混合物を、光を避けて4℃で1時間シェーカーに保持した。
(5)前記混合物を830gで3分間遠心分離し、上清を廃棄した。4℃で予冷した新たなOpti-MEMを添加し、遠心分離し上清を捨てることにより沈殿物を2回洗浄した。次に、沈殿物を、4℃で予冷した200μlのOPTI-MEMで再懸濁した。標識細胞を、FACS Aria III(BD)またはFACS Caliburによって検出または選別した。
【0076】
結果は以下の通りであった。
(1)4℃では、ネガティブコントロール群を除き、全ての群がIL21受容体IL21Rαの細胞外ドメインに結合した。変異16cIL21/4-ハーセプチンのディスプレイ率は20%であり、最も高い結合率であった。
(2)49℃で加熱した後、IL21/4-ハーセプチン群および4cIL21/4-ハーセプチン群のIL21受容体の細胞外ドメインへの結合は実質的に失われたが、変異16cIL21/4-ハーセプチン群のIL21受容体の細胞外ドメインへの結合は依然として検出可能であった。このことは、変異16cIL21/4の熱安定性が向上していることを予備的に示唆しているといえる。
【0077】
[実施例4]
野生型IL21変異体の構築と予備的安定性試験
【0078】
1.フローサイトメトリーによる変異体の熱安定性の検出
野生型IL21分子の安定性に及ぼす、同じ位置(16位および70位)でのジスルフィド結合の導入の効果を検討するために、2つの他の構造を構築した。
IL21-ハーセプチン:野生型IL21とハーセプチンの融合タンパク質
16cIL21-ハーセプチン:IL21とハーセプチンによって構築された融合タンパク質であって、同じ位置(16位のILE、70位のSER)がCYSに変異し、ジスルフィド結合を導入されている
【0079】
これらも、トランスフェクションおよび置換組換えによってCHOワーキングセル膜の表面上にディスプレイされ、その後、16cIL21/4-ハーセプチンおよびIL21/4-ハーセプチンと比較した。これらを、4℃~55℃まで異なった温度勾配で加熱し、IL21受容体IL21Rα細胞外ドメインリンカー-GFP-hisおよび標識抗体であるマウス抗ヒトIgG-APC抗体に結合することにより標識した。各群のディスプレイ率は、様々な温度勾配で受容体に結合させた後、フローサイトメトリーによって検出した。
【0080】
これらの結果から、16cIL21/4-ハーセプチンおよび16-70ジスルフィド結合が導入された16cIL21-ハーセプチンが、48℃での加熱後に受容体と結合させた後も、依然として部分的なディスプレイ率を有し、これらの安定性がIL21/4-ハーセプチンおよびIL21-ハーセプチンのそれより高いことが分かった。これらの4つのタンパク質は融合タンパク質であった。フローサイトメトリーによる検出は、予備選別のみであった。IL21および変異タンパク質のそれぞれを発現させ、精製後の熱安定性をさらに同定することが必要であった。
【0081】
2.IL21、その変異タンパク質の発現、およびジスルフィド結合構造の検出
IL21とその変異タンパク質を取得するために、まず、プラスミドを構築した。IL21および変異コード遺伝子を、それぞれ、Hisタグを付加したPCEP4ベクタープラスミドに挿入した。IL21、16cIL21および16cIL21/4変異タンパク質を発現する3つのプラスミドをそれぞれ構築した(
図7)。
【0082】
IL21、16cIL21、16cIL21/4タンパク質についてSDS-PAGE電気泳動を行い、その結果を
図8に示した。結果によると、IL21、16cIL21、および16cIL21/4のバンドは、理論上分子量と一致していた。分子量から、これら3つのタンパク質が標的タンパク質とした。
【0083】
質量分析をさらに行い、16cIL21/4タンパク質における標的ジスルフィド結合の形成を確認した。16clL21/4タンパク質を質量分析によって検出したが、電気泳動中のジスルフィド結合の切断は防がれているものとする。試料タンパク質は、まず、プロテアーゼによって加水分解され、様々なサイズのペプチドセグメントに切断された。タンパク質中のジスルフィド結合は、酵素分解の結果に影響を及ぼす。ジスルフィド結合が切断されたか否かの条件下で、試料タンパク質は異なるサイズのペプチドセグメントに切断されることになるが、ペプチドセグメントは異なる質量対電荷比の分布を有するものとする。検出された分布と理論的分布との一貫性によって、試料タンパク質中にジスルフィド結合が存在するかどうかを判定することができた。
【0084】
試料16cIL21/4中のジスルフィド結合の分析
理論上ジスルフィド結合を生成する2つのセグメントのアミノ酸配列は、IINVCIKおよびQLIDCVDQLKであった。酵素分解を還元状態で行った場合、ジスルフィド結合が切断され、Cがアルキル化される(分子量が57Da増加する)。2つのペプチドセグメントの質量電荷比の理論値は、それぞれ859.507および1231.635であった。
図9Aに示すように、還元状態(DTTを有する)では859.587および1231.769に明らかなシグナルピークが存在したが、2つのシグナルピークは非還元状態では非常に低かった。この結果によると、DTTを添加すると、ジスルフィド結合が切断され、2つのペプチドセグメントが16cIL21/4試料タンパク質において生成されたことが示唆された。DTTを添加しないと、ジスルフィド結合は切断されず、2つのペプチドセグメントのシグナルは存在しなかった。これは、理論的予測のジスルフィド結合構造と一致した。
【0085】
酵素分解を非還元状態で行った場合、2つのペプチドセグメント間のジスルフィド結合は切断されなかった。本発明者らは、2つのペプチドセグメントの合計に等しい質量電荷比を有するペプチドを検出することができた。2つのペプチドセグメントの合計の理論上の質量電荷比は、非還元状態で(859.587-57)+(1231.769-57)-2-1=1974.356となる。
図9Bでは、非還元状態で1974.230の質量電荷比を有する明らかなピークを見ることができたが、このピークのシグナルは還元状態では非常に低かった。このことから、DTTを添加しないと、試料タンパク質のジスルフィド結合は切断されず、したがって、酵素分解生成物は大きなペプチドセグメントのシグナルを有することが示唆された。DTTを添加すると、ジスルフィド結合が切断され、より大きなペプチドセグメントが分割され、したがってシグナルが消失した。
【0086】
上記の結果は、16cIL21タンパク質の酵素分解の間においても観察され、これは、ジスルフィド結合が16位のCと70位のCとの間に正しく形成されたことを示した。
【0087】
3.IL21および各変異タンパク質の融解温度(Tm)の決定
16cIL21/4タンパク質の16位と70位とのcys間のジスルフィド結合の形成を確認した後、IL21、16cIL21および16cIL21/4の3つのタンパク質の融解温度(Tm)を測定し、IL21と各変異タンパク質の熱安定性を決定した。結果を
図10に示す。
【0088】
その結果によると、IL21、16cIL21、および16cIL21/4のTm値は、16cIL21(65.62℃)>16cIL21/4(56.52℃)>IL21(48.54℃)であった。
【0089】
その結果によると、ジスルフィド結合を有する16cIL21、および16cIL21/4タンパク質の2つの変異体の熱安定性が、野生型IL21タンパク質のそれよりも有意に高いことを示唆した。ジスルフィド結合の導入が、熱安定性を向上する理由であると考えられる。
【0090】
[実施例5]
種々のIL21変異体の生物学的活性の判定
1.KOB細胞の増殖を刺激する能力
熱安定性が向上しても、IL21、16clL21、および16clL21/4の3つのタンパク質の生物活性が維持されているかどうかを検出した。KOB細胞は、IL21受容体を発現し、IL21によって刺激されて増殖することができる。種々のIL21変異体の生物学的活性は、KOB細胞の増殖を刺激する能力によって決定することができる。具体的なプロセスは、以下の通りであった。
(1)KOB細胞の調製:KOB細胞を、5%のCO2恒温器中、37℃で、10%ウシ血清(Hyclone)および100U/mLの二重抗体を含むRPMI1640培地中で培養した。
(2)IL21および変異タンパク質の調製:IL21とHis tag付き変異タンパク質の発現プラスミドを構築し、293F細胞にトランスフェクトした。培養、発現、およびニッケルカラムによる精製の工程は、従来通りに行った。タンパク質濃度は、BCAアッセイによって決定した。
(3)生物学的活性の判定:KOB細胞を、2×104細胞/ウェルになるように96ウェルプレートに播種し、200μlの培養液、およびIL21または変異タンパク質を各ウェル添加した。IL21または変異タンパク質の勾配濃度を、0.1ng/ml、1ng/ml、および10ng/mlに設定した。前記細胞を37℃で5%のCO2恒温器中で培養し、96時間後に計数した。
【0091】
結果を
図11に示す。
繰り返しのない二元配置分散分析の結果によると、コントロール群と各タンパク質群のp値は0.05未満(p<0.05)であり、群の間に有意な差が認められた。3つのタンパク質群の間のp値は0.05以上(P>0.05)であり、3つのタンパク質群の間に有意な差は認められなかった。異なる濃度の3つのタンパク質の群の間のp値は、0.05を超え(P>0.05)、異なる濃度の3つのタンパク質の群の間に有意な差は認められなかった。
【0092】
この結果によると、3つのタンパク質はいずれもKOB細胞の増殖を刺激する効果があり、生物活性に有意な差は無かった。添加したタンパク質の勾配濃度が0.04μg/ml、0.2g/ml、および1g/mlであった場合、異なる濃度のタンパク質の群の間に有意な差が無かった。
【0093】
したがって、2つの変異タンパク質、16clL21、および16clL21/4は熱安定性が向上しており、生物学的活性が維持された。
【0094】
2.マウスにおけるハーセプチンとIL21または各変異体の融合タンパク質の血漿中半減期の試験結果
IL21の安定性の向上により動物における血漿半減期を増加できるかどうかを判定するために、IL21-ハーセプチン融合タンパク質、変異16cIL21-ハーセプチン融合タンパク質、および16cIL21/4-ハーセプチン融合タンパク質を選択し、マウスにおけるそれらの血漿半減期を検出する比較試験を行った。ハーセプチン群をコントロール群とした。結果を表4に示す:
【0095】
【0096】
結果に示されるように、16cIL21-ハーセプチンおよび16cl21/4-ハーセプチン融合タンパク質に含まれる非常に安定的なIL21変異体は、野生型IL21と比較して、マウスにおける血漿半減期を有意に増加した。前記16clL21/4-ハーセプチン融合タンパク質の血漿半減期が最も長かった。これは、IL21の安定性の向上が血漿半減期を増加させる重要な理由であることを示唆した。
【0097】
3.IL21融合タンパク質により刺激されたT細胞増殖の判定
16cIL21/4-ハーセプチン融合タンパク質の機能活性を、BT474乳癌担癌マウスモデルを用いて検出した。1.5×10
7ヒトBT474乳癌細胞をマウスの右腹部または背部に接種した。前記融合タンパク質を35日後に投与した。マウスにおける16cIL21/4-ハーセプチン融合タンパク質とハーセプチンの刺激によるCD8+T細胞の増殖を検出した。結果を
図12に示す。16cl21/4-ハーセプチン融合タンパク質群では、腫瘍接種後約53日目に末梢血中のCD8+T細胞の割合が明らかな増加を示した。一方、ハーセプチン群のT細胞は緩やかに減少する傾向を示した。
【0098】
4.IL21融合タンパク質の腫瘍抑制効果
16cIL21/4-ハーセプチン融合タンパク質の腫瘍抑制効果を、BT474乳癌担癌マウスモデルを用いて検出した。それぞれのマウスに1×10
7のBT474細胞(ヒト乳癌細胞)を接種した。マウスに、PBS(コントロール)、ハーセプチン(ハーセプチン単独)、16clL21/4-ハーセプチン融合タンパク質(IL-21
mutant-ハーセプチン)および16clL21/4とハーセプチンの混合液(IL-21
mutant+ハーセプチン)を4日に1回腹腔内注射した。各注射の用量は500μgであった。結果を
図13に示す。コントロール群、ハーセプチン群、および混合溶液群と比較して、16clL21/4-ハーセプチン融合タンパク質群は腫瘍体積を有意に減少させた。
【0099】
最後に、上記の例は、当業者が本発明の本質を理解するのを助けるためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するために使用されるべきではないことに留意されたい。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)野生型
インターロイキン-21(IL21)のアミノ酸配列の16位のILEおよび70位のSERの両者が、それぞれ、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成され、前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示される、または
(2)野生型IL21のアミノ酸配列の16位のILE、17位のVAL、70位のSER、および112位のLYSの全てが、それぞれ、CYSに変異され、16位と70位との間、および17位と112位との間にジスルフィド結合の2つのグループが形成され、前記野生型IL21のアミノ酸配列が配列番号1に示される、
ことを特徴とする、インターロイキン-21(IL21)変異体。
【請求項2】
(1)インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラ
タンパク質(IL21/4)のアミノ酸配列の16位のILEおよび70位のSERの両者が、それぞれ、CYSに変異され、前記2つの変異CYSの間にジスルフィド結合が形成され、または
(2)インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラ
タンパク質(IL21/4)のアミノ酸配列の16位のILE、17位のVAL、70位のSER、および106位のLYSの全てが、それぞれ、CYSに変異され、16位と70位との間、および17位と106位との間にジスルフィド結合の2つのグループが形成され、
前記インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)のアミノ酸配列が配列番号2に示される、
ことを特徴とする、インターロイキン-21およびインターロイキン-4キメラタンパク質(IL21/4)変異体。
【請求項3】
請求項1記載のIL21変異体または請求項2記載のIL21/4変異体をコードすることを特徴とする、
ポリヌクレオチ
ド。
【請求項4】
請求項1記載のIL21変異体または請求項2記載のIL21/4変異体を含む融合タンパク質であって、
(1)前記IL21変異体または前記IL21/4変異体である機能性断片1と、
(2)モノクローナル抗体機能を有する機能性断片2と、
異なる前記機能性断片を連結する連結ドメインと、
を含むことを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質
を含む、免疫調整
用または免疫活性化
用医薬品。
【請求項6】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質
を含む、抗腫瘍用医薬品。
【請求項7】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質
を含む、B細胞の分化および増殖、T細胞の分化および増殖、またはNK細胞の分化および増殖の促進
剤。
【請求項8】
請求項1記載のIL21変異体、請求項2記載のIL21/4変異体または請求項4記載の融合タンパク質を有効成分と
して含み、
治療有効量の前記IL21変異体、前記IL21/4変異体または前記融合タンパク質と
、
医薬賦形剤と、
を含む
、医薬組成物。
【国際調査報告】