(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】タンパク質処理のための賦形剤化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 1/00 20060101AFI20220131BHJP
C07K 1/16 20060101ALN20220131BHJP
C07K 1/22 20060101ALN20220131BHJP
C07K 1/34 20060101ALN20220131BHJP
C12P 21/00 20060101ALN20220131BHJP
C12N 7/04 20060101ALN20220131BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K1/00
C07K1/16
C07K1/22
C07K1/34
C12P21/00
C12N7/04
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529834
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 US2019063374
(87)【国際公開番号】W WO2020112855
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519009851
【氏名又は名称】リフォーム バイオロジクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,デービッド,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヴュートリッヒ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マホニー,ロバート,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ムーディ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ダニエル,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】シャウアー,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ナイク,スバシュチャンドラ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064DA01
4B065AA95X
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA57
4H045EA20
4H045GA10
4H045GA26
(57)【要約】
ヒンダードアミン、芳香族および陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤、および水素結合因子を有するクラウディング剤からなる群より選択される粘度低減賦形剤化合物を提供する工程、ならびに粘度低減量の粘度低減賦形剤化合物を、タンパク質関連プロセスのための担体溶液に添加する工程を含む、タンパク質関連プロセスのパラメーターを向上するための方法が本明細書に開示され、ここで担体溶液は、目的のタンパク質および目的のタンパク質が溶解された液体培体を含む担体溶液ならびに粘度低減賦形剤を含み、担体溶液の粘度は、粘度低減賦形剤の存在以外は該担体溶液と実質的に同様の対照溶液の粘度よりも(that)低い粘度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質関連プロセスのパラメーターを向上させる方法であって、
ヒンダードアミン、芳香族および陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤、および水素結合因子を有するクラウディング剤からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤化合物を含む粘度低減賦形剤添加剤を提供する工程、ならびに
粘度低減量の少なくとも1つの賦形剤化合物を、目的のタンパク質を含むタンパク質関連プロセスのための担体溶液に添加して、それによりパラメーターを向上させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
該パラメーターが、タンパク質産生のコスト、タンパク質産生の量、タンパク質産生の速度、産生されたタンパク質の純度およびタンパク質産生の効率からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該パラメーターが、タンパク質精製のコスト、タンパク質精製の量、タンパク質精製の速度、精製されたタンパク質の純度およびタンパク質精製の効率からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該パラメーターが代理パラメーターである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
代理パラメーターが低減されたタンパク質-タンパク質相互作用である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
低減されたタンパク質-タンパク質相互作用が、バイオレイヤー干渉法、表面プラスモン共鳴、内因性蛍光測定、外因性蛍光測定、動的光散乱、kD値、静的光散乱、B22値、等温滴定カロリメトリーおよびインシリコシミュレーションからなる群より選択される技術により決定される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
タンパク質関連プロセスが上流処理プロセスである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
上流処理プロセスが、担体溶液について細胞培養培地を使用する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
タンパク質関連プロセスが下流処理プロセスである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
下流処理プロセスがクロマトグラフィープロセスである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
クロマトグラフィープロセスがプロテインAクロマトグラフィープロセスである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
クロマトグラフィープロセスが目的のタンパク質を回収し、目的のタンパク質が、対照溶液と比較して、向上した純度、向上した収率、より少ない粒子、より少ないミスフォールディング、向上した生物学的活性、単量体形態で回収された増加したパーセンテージおよびより少ない凝集からなる群より選択される向上したタンパク質関連パラメーターを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項13】
向上したタンパク質関連パラメーターが、クロマトグラフィープロセスからの向上した収率である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
タンパク質関連プロセスが、濾過、タンジェンシャルフローフィルトレーション、滅菌濾過、精密濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離濃縮、インラインフィルトレーション、注入、注射(syringing)、ポンプ輸送、混合、遠心分離、膜分離および凍結乾燥からなる群より選択されるプロセスである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該プロセスが、プロセス特異的対照プロセスよりも小さい力を必要とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
タンパク質関連プロセスが、細胞培養プロセス、細胞培養採取プロセス、クロマトグラフィープロセス、ウイルス不活性化プロセスおよび濾過プロセスからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
タンパク質関連プロセスがウイルス不活性化プロセスである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ウイルス不活性化プロセスが、約2.5~約5.0のpHレベルで実施される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ウイルス不活性化プロセスが、ウイルス不活性化特異的対照プロセスよりも高いpHで実施される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
タンパク質関連プロセスが濾過プロセスである、請求項16記載の方法。
【請求項21】
濾過プロセスが、ウイルス除去濾過プロセス、滅菌濾過プロセスまたは限外濾過/ダイアフィルトレーションプロセスである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
濾過プロセスが、向上した濾過関連パラメーターを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項23】
向上した濾過関連パラメーターが、対照溶液の濾過速度よりも速い濾過速度である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
向上した濾過関連パラメーターが、対照濾過プロセスにより産生される凝集タンパク質の量よりも少ない量の凝集タンパク質の生産である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
向上した濾過関連パラメーターが、対照濾過プロセスの質量移送効率よりも高い質量移送効率である、請求項22記載の方法。
【請求項26】
向上した濾過関連パラメーターが、対照濾過プロセスにより産生された標的タンパク質の濃度または収率よりも高い標的タンパク質の濃度または収率である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
粘度低減賦形剤添加剤が2つ以上の賦形剤化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの賦形剤化合物がヒンダードアミンである、請求項1記載の方法。
【請求項29】
ヒンダードアミンが、ピリミジン、メチル置換ピリミジンおよびフェネチルアミンからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ヒンダードアミンがピリミジン化合物である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ヒンダードアミンがフェネチルアミン化合物である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
フェネチルアミン化合物が、非精神活性フェネチルアミンである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの賦形剤化合物が、水素結合因子を有するクラウディング剤である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
水素結合因子を有するクラウディング剤が、ラフィノース、イヌリン、プルランおよびシニストリンからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
水素結合因子を有するクラウディング剤がラフィノースである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つの賦形剤化合物が、カフェイン、ニコチンアミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ジエチルニコチンアミド、タウリン、イミダゾール、オルニチン、イミノ二酢酸、ニコチン酸およびスルファニル酸からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの賦形剤化合物が、カフェイン、ニコチンアミド、タウリンおよびイミダゾールからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの賦形剤化合物がカフェインである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの賦形剤化合物が、プロピオン酸カルシウムおよびソルビン酸カリウムからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項40】
粘度低減量が約1mM~約1000mMの少なくとも1つの賦形剤化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項41】
粘度低減量が約1mM~約400mMの少なくとも1つの賦形剤化合物である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
粘度低減量が約1mg/mL~約100mg/mLの少なくとも1つの賦形剤化合物である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
粘度低減量が約2mM~約150mMの量である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
担体溶液が、保存剤、糖、ポリオール、多糖、アルギニン、プロリン、界面活性剤、安定化剤およびバッファからなる群より選択されるさらなる薬剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
目的のタンパク質が治療タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項46】
治療タンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、融合タンパク質、PEG化タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、合成ポリペプチド、タンパク質断片、リポ蛋白、酵素および構造ペプチドからなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
治療タンパク質が組換えタンパク質である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
第2の粘度低減賦形剤を担体溶液に添加する工程をさらに含む方法であって、第2の粘度低減化合物を添加する工程が、パラメーターにさらなる向上を追加する、請求項1記載の方法。
【請求項49】
目的のタンパク質が溶解された液体培体および粘度低減添加剤を含む担体溶液であって、対照溶液の粘度よりも(that)低い粘度を有する、担体溶液。
【請求項50】
保存剤、糖、ポリオール、多糖、アルギニン、プロリン、界面活性剤、安定化剤およびバッファからなる群より選択されるさらなる薬剤をさらに含む、請求項49記載の担体溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/773,018号の利益を主張する。上記出願の全内容は、本明細書において、参照により援用される。
【0002】
出願の分野
本願は一般的に、バイオポリマーを送達および処理するための製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
バイオポリマーは、治療または非治療目的で使用され得る。抗体または酵素製剤などのバイオポリマー系治療薬は、疾患の治療に広く使用される。酵素、ペプチドおよび構造タンパク質などの非治療バイオポリマーは、家庭、栄養、商業および工業用途などの非治療用途において有用性を有する。
【0004】
治療用途に使用されるバイオポリマーは、疾患の治療のために、身体内へのその導入を可能にするように製剤化されなければならない。例えば、抗体およびタンパク質/ペプチドバイオポリマー製剤を、これらの製剤を静脈内(IV)注射により投与する代わりに、特定の情況下では皮下(SC)または筋内(IM)経路で送達することが有利である。SCまたはIM注射により、より良い患者コンプライアンスおよび快適さを達成するためではあるが、シリンジ内の液体体積は典型的には2~3ccに制限され、製剤の粘度は典型的には約20センチポアズ(cP)よりも低いので、製剤は、従来の医学的デバイスおよび小口径の針を使用して送達され得る。これらの送達パラメーターは、送達されている製剤のための投与要件と常に良好に適合するわけではない。
【0005】
例えば抗体は、それらの意図される治療効果を発揮するために高用量レベルで送達される必要があり得る。高用量レベルの抗体製剤を送達するために制限された液体体積を使用することは、送達ビヒクル中、時々150mg/mLのレベルを超える高濃度の抗体を必要とし得る。この用量レベルで、タンパク質溶液の粘度 対 濃度プロットは、それらの線形-非線形遷移(linear-nonlinear transition)より上に位置し、製剤の粘度は、濃度の増加に伴って劇的に上昇する。しかしながら、増加した粘度は、標準的なSCまたはIM送達系と適合性ではない。バイオポリマー系治療薬の溶液はまた、沈殿、濁り、乳光、変性、液体-液体相分離、ゲル形成、および可逆的または不可逆的凝集などの安定性問題を被りやすい。安定性問題は、溶液の貯蔵寿命を制限するかまたは特殊な処理を必要とする。
【0006】
注射のためのタンパク質製剤の製造のための1つのアプローチは、治療タンパク質溶液を、再構成されてSCまたはIM送達に適した懸濁液を形成し得る粉末に変換することである。凍結乾燥は、タンパク質粉末を生成するための標準的な技術である。凍結乾燥(freeze-drying)、噴霧乾燥およびさらに超臨界流体抽出に続く沈殿は、その後の再構成のためのタンパク質粉末を作製するために使用されている。粉末化された懸濁物は、(同じ全体用量での溶液と比較して)再溶解の前の粘度が低いので、SCまたはIM注射に適切であり得るが、ただし粒子は、針を通ることに適合する(fit through needle)ように十分に小さい。しかしながら、粉末中に存在するタンパク質結晶は、免疫応答を引き起こすという固有のリスクを有する。再溶解後の不確実なタンパク質安定性/活性はさらなる懸念を与える。タンパク質粉末懸濁物により導入される制限を回避しながら、当該技術分野において、治療目的のための低粘度タンパク質製剤を生成するための技術の必要性が残る。
【0007】
上述のタンパク質の治療用途に加えて、酵素、ペプチドおよび構造タンパク質などのバイオポリマーは、非治療用途において使用され得る。これらの非治療バイオポリマーは、例えば植物供給源、動物供給源に由来するまたはいくつかの異なる経路から産生され得る細胞培養物から産生され得る。
【0008】
非治療タンパク質は、顆粒もしくは粉末化された材料として、または通常は水中の溶液もしくは懸濁液として生成、輸送、貯蔵および処理され得る。非治療用途のためのバイオポリマーは、球状または繊維状のタンパク質であり得、これらの材料の特定の形態は、水中の溶解性を制限し得るか、または溶解の際に高粘度を示し得る。これらの溶液特性は、非治療材料の製剤化、処理、貯蔵、ポンプ輸送および性能に対して難題を提示し得るので、非治療タンパク質溶液の粘度を低減するためならびにその溶解性および安定性を向上するための方法についての必要性がある。
【0009】
タンパク質は複雑なバイオポリマーであり、それぞれは特有の折り畳まれた3-D構造および表面エネルギーマップ(疎水性/親水性領域および電荷)を有する。濃縮されたタンパク質溶液において、これらの高分子は、それらの正確な形状および表面エネルギー分布に依存して、強力に相互作用し得、さらに複雑な様式でインターロック(inter-lock)し得る。強力な特異的相互作用のための「ホットスポット」は、タンパク質クラスター化をもたらし、溶液粘度を増加する。これらの懸念に対処するために、局所的な相互作用およびクラスター化を妨げることにより溶液粘度を低減することを意図して、バイオ治療製剤においていくつかの賦形剤化合物が使用される。これらの努力はしばしば経験的に、個々に調整され、時々インシリコ(in silico)シミュレーションにより誘導される。賦形剤化合物の組合せが提供され得るが、これらの組合せを再度最適化することは、経験的におよび個別ベースで進めなければならない。
【0010】
当該技術分野において、非線形条件下で所定の濃度でのタンパク質製剤において粘度を低減するための真に普遍的なアプローチの必要性が残る。当該技術分野において、タンパク質の活性を保ちながらこの粘度の低減を達成するためのさらなる必要性がある。調整可能で持続的な放出プロフィールを有する製剤と共に使用するため、およびデポー注射に適合された製剤と共に使用するために、粘度低減系を適合させることがさらに望ましい。また、タンパク質および他のバイオポリマーを産生するためのプロセスを向上することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
概要
態様において、タンパク質ならびにヒンダードアミン、陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤および水素結合因子を有するクラウディング剤(crowding agent)からなる群より選択される賦形剤化合物を含む液体製剤が本明細書に開示され、賦形剤化合物は粘度低減量で添加される。態様において、タンパク質はPEG化タンパク質であり、賦形剤は低分子量脂肪族多価酸である。態様において、製剤は医薬組成物であり、治療製剤は治療タンパク質を含み、賦形剤化合物は薬学的に許容され得る賦形剤化合物である。態様において、製剤は非治療製剤であり、非治療製剤は非治療タンパク質を含む。態様において、粘度低減量は、製剤の粘度を対照製剤の粘度よりも低い粘度に低減する。態様において、製剤の粘度は、対照製剤の粘度よりも少なくとも約10%低いか、または対照製剤の粘度よりも少なくとも約30%低いか、または対照製剤の粘度よりも少なくとも約50%低いか、または対照製剤の粘度よりも少なくとも約70%低いか、または対照製剤の粘度よりも少なくとも約90%低い。態様において、粘度は、約100cP未満であるか、または約50cP未満であるか、または約20cP未満であるか、または約10cP未満である。態様において、賦形剤化合物は、<5000Daまたは<1500Daまたは<500Daの分子量を有する。態様において、製剤は、少なくとも約25mg/mLのタンパク質または少なくとも約100mg/mLのタンパク質または少なくとも約200mg/mLのタンパク質または少なくとも約300mg/mLのタンパク質を含む。態様において、製剤は、約5mg/mL~約300mg/mLの賦形剤化合物を含むか、または約10mg/mL~約200mg/mLの賦形剤化合物を含むか、または約20mg/mL~約100mg/mLを含むか、または約25mg/mL~約75mg/mLの賦形剤化合物を含む。態様において、製剤は、対照製剤と比較した場合に向上された安定性を有する。態様において、賦形剤化合物はヒンダードアミンである。態様において、ヒンダードアミンは、カフェイン、テオフィリン、チラミン、プロカイン、リドカイン、イミダゾール、アスパルテーム、サッカリンおよびアセスルファムカリウムからなる群より選択される。態様において、ヒンダードアミンはカフェインである。態様において、ヒンダードアミンは注射可能な局所麻酔化合物である。ヒンダードアミンは、独立の薬理学的特性を有し得、ヒンダードアミンは、独立した薬理学的効果を有する量で製剤中に存在し得る。態様において、ヒンダードアミンは、治療有効量未満である量で製剤中に存在し得る。独立した薬理学的活性は、局所麻酔活性であり得る。態様において、独立した薬理学的活性を有するヒンダードアミンは、製剤の粘度をさらに低下させる第2の賦形剤化合物と合わされる。第2の賦形剤化合物は、カフェイン、テオフィリン、チラミン、プロカイン、リドカイン、イミダゾール、アスパルテーム、サッカリンおよびアセスルファムカリウムからなる群より選択され得る。態様において、製剤は、保存剤、界面活性剤、糖、多糖、アルギニン、プロリン、ヒアルロニダーゼ、安定化剤およびバッファからなる群より選択されるさらなる薬剤を含み得る。
【0012】
哺乳動物に液体治療製剤を投与する工程を含む、哺乳動物において疾患または障害を治療する方法が本明細書にさらに開示され、ここで該治療製剤は、治療有効量の治療タンパク質を含み、該製剤は、ヒンダードアミン、陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤、ならびに水素結合因子を有するクラウディング剤からなる群より選択される薬学的に許容され得る賦形剤化合物をさらに含み;該治療製剤は、疾患または障害の治療に有効である。態様において、治療タンパク質はPEG化タンパク質であり、賦形剤化合物は低分子量脂肪族多価酸である。態様において、賦形剤はヒンダードアミンである。態様において、ヒンダードアミンは局所麻酔化合物である。態様において、該製剤は、皮下注射または筋内注射または静脈内注射により投与される。態様において、賦形剤化合物は、粘度低減量で治療製剤中に存在し、粘度低減量は、治療製剤の粘度を、対照製剤の粘度未満の粘度まで低減する。態様において、治療製剤は、対照製剤と比較した場合に向上された安定性を有する。態様において、賦形剤化合物は本質的に純粋である。
【0013】
注射により液体治療製剤を投与する工程を含む、治療タンパク質の注射部位での疼痛を低減する必要がある哺乳動物において、治療タンパク質の注射部位で疼痛を低減する方法が本明細書にさらに開示され、ここで治療製剤は、治療有効量の治療タンパク質を含み、該製剤は、注射可能な局所麻酔化合物からなる群より選択される薬学的に許容され得る賦形剤化合物をさらに含み、薬学的に許容され得る賦形剤化合物は、粘度低減量で製剤に添加され;哺乳動物は、賦形剤化合物を含む治療製剤の投与により、対照治療製剤の投与による疼痛よりも小さい疼痛を経験し、対照治療製剤は該賦形剤化合物を含まず、それ以外は治療製剤と同一である。
【0014】
態様において、治療タンパク質ならびにヒンダードアミン、陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤、および水素結合因子を有するクラウディング剤からなる群より選択される賦形剤化合物を含む液体タンパク質製剤を調製する工程を含む、液体タンパク質製剤の安定性を向上する方法が本明細書に開示され、該液体タンパク質製剤は、対照液体タンパク質製剤と比較して向上された安定性を示し、対照液体タンパク質製剤は、該賦形剤化合物を含まず、それ以外は液体タンパク質製剤と同一である。液体製剤の安定性は、冷貯蔵条件安定性、室温安定性または高温安定性であり得る。
【0015】
態様において、タンパク質ならびにヒンダードアミン、陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤および水素結合因子を有するクラウディング剤からなる群より選択される賦形剤化合物を含む液体製剤も本明細書に開示され、ここで製剤中の賦形剤化合物の存在は、タンパク質拡散相互作用パラメーターkDまたは第2のビリアル係数B22により測定された場合に向上されたタンパク質-タンパク質相互作用特性を生じる。態様において、該製剤は、治療製剤であり、治療タンパク質を含む。態様において、該製剤は、非治療製剤であり、非治療タンパク質を含む。
【0016】
態様において、上述の液体製剤を提供する工程および処理方法において該製剤を使用する工程を含む、タンパク質関連プロセスを向上する方法が本明細書にさらに開示される。態様において、処理方法は、濾過、(例えばタンジェンシャルフローフィルトレーション、滅菌濾過、精密濾過(microfiltration)、限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離濃縮およびインラインフィルトレーション(in-line filtration))、ポンプ輸送、混合、遠心分離、膜分離、凍結乾燥またはクロマトグラフィーを含む。態様において、処理方法は、細胞培養採取、プロテインAクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、ウイルス不活性化ならびに濾過からなる群より選択される。態様において、処理方法は、クロマトグラフィープロセスまたは濾過プロセスである。態様において、濾過プロセスは、ウイルス濾過プロセスまたは限外濾過/ダイアフィルトレーションプロセスである。
【0017】
ヒンダードアミン、芳香族および陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤および水素結合因子を有するクラウディング剤からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤化合物を含む粘度低減賦形剤添加剤を提供する工程、ならびに粘度低減量の少なくとも1つの賦形剤化合物を、タンパク質関連プロセスのための担体溶液に添加して、それによりパラメーターを向上する工程を含む、タンパク質関連プロセスのパラメーターを向上する方法も本明細書に開示され、ここで、担体溶液は目的のタンパク質を含む。態様において、液体製剤中の粘度低減賦形剤添加剤は、ピリミジン、メチル置換ピリミジンおよびフェネチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤化合物を含む。態様において、該パラメーターは、タンパク質産生のコスト、タンパク質産生の量、タンパク質産生の速度、産生されたタンパク質の純度およびタンパク質産生の効率からなる群より選択され得る。態様において、該パラメーターは、タンパク質精製のコスト、タンパク質精製の量、タンパク質精製の速度、精製されたタンパク質の純度およびタンパク質精製の効率からなる群より選択され得る。該パラメーターは代理のパラメーター(proxy parameter)であり得、該代理のパラメーターは低減されたタンパク質-タンパク質相互作用であり得る。低減されたタンパク質相互作用は、バイオレイヤー干渉法、表面プラスモン共鳴、内因性(intrinsic)蛍光測定、外因性(extrinsic)蛍光測定、動的光散乱、kD値、静的光散乱、B22値、等温滴定カロリメトリーおよびインシリコシミュレーションからなる群より選択される技術により決定され得る。態様において、タンパク質関連プロセスは上流処理プロセスである。上流処理プロセスのための担体溶液は、細胞培養培地であり得る。態様において、担体溶液が細胞培養培地である場合、担体溶液に賦形剤添加剤を添加する工程は、賦形剤添加剤を補充培地に添加して、賦形剤含有補充培地を形成する第1のサブ工程、および賦形剤含有補充培地を細胞培養培地に添加する第2のサブ工程を含む。他の態様において、タンパク質関連プロセスは下流処理プロセスである。下流プロセスはクロマトグラフィープロセスであり得、クロマトグラフィープロセスはプロテインAクロマトグラフィープロセスであり得る。態様において、クロマトグラフィープロセスは、目的のタンパク質を回収し、ここで目的のタンパク質は、対照溶液と比較して、向上した純度、向上した収率、より少ない粒子、より少ないミスフォールディング(misfolding)、向上した生物学的活性、単量体形態で回収された増加したパーセンテージまたはより少ない凝集からなる群より選択される向上したタンパク質関連パラメーターを特徴とする。態様において、向上したタンパク質関連パラメーターは、クロマトグラフィープロセスからの目的のタンパク質の向上した収率である。他の態様において、タンパク質関連プロセスは、濾過、タンジェンシャルフローフィルトレーション、滅菌濾過、精密濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離濃縮、インラインフィルトレーション、注入、注射(syringing)、ポンプ輸送、混合、遠心分離、膜分離および凍結乾燥からなる群より選択されるプロセスであり、選択されたプロセスは、プロセス特異的対照プロセスよりも小さい力を必要とし得、ここでプロセス特異的対照プロセスは、粘度低減賦形剤添加剤の非存在下で実行されるタンパク質関連プロセスである。態様において、タンパク質関連プロセスは、細胞培養プロセス、細胞培養採取プロセス、クロマトグラフィープロセス、ウイルス不活性化プロセスおよび濾過プロセスからなる群より選択される。態様において、タンパク質関連プロセスはウイルス不活性化プロセスであり、ウイルス不活性化プロセスは、約2.5~約5.0のpHレベルで実行されるか、またはウイルス不活性化プロセスは、ウイルス不活性化特異的対照プロセスよりも高いpHで実行され、ここでウイルス不活性化特異的対照プロセスは、粘度低減賦形剤添加剤の非存在下で実行されるウイルス不活性化プロセスである。他の態様において、タンパク質関連プロセスは濾過プロセスである。濾過プロセスは、ウイルス除去濾過プロセス、滅菌濾過プロセスまたは限外濾過/ダイアフィルトレーションプロセスであり得る。濾過プロセスは、向上された濾過関連パラメーターを特徴とし得る。向上された濾過関連パラメーターは、対照溶液の濾過速度よりも速い濾過速度であり得、ここで対照溶液は、粘度低減賦形剤添加剤を含まない溶液である。向上された濾過関連パラメーターは、対照濾過プロセスにより産生される凝集タンパク質の量よりも少ない量の凝集タンパク質の産生であり得、ここで対照濾過プロセスは、粘度低減賦形剤添加剤の非存在下で実行される濾過プロセスである。向上された濾過関連パラメーターは、対照濾過プロセスの物質輸送効率(mass transfer efficiency)よりも高い物質輸送効率であり得る。向上された濾過関連パラメーターは、対照濾過プロセスにより産生される標的タンパク質の濃度または収率よりも高い標的タンパク質の濃度または収率であり得る。
【0018】
粘度低減賦形剤添加剤が2つ以上賦形剤化合物を含む上述の方法が本明細書にさらに開示される。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物はヒンダードアミンである。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、ピリミジン、メチル置換ピリミジンまたはフェネチルアミンである。態様において、ヒンダードアミンはピリミジン化合物である。他の態様において、ヒンダードアミンは、非精神活性フェネチルアミンであり得るフェネチルアミン化合物である。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、ラフィノース、イヌリン、プルランおよびシニストリン(sinistrin)からなる群より選択され得るかまたはラフィノースであり得る水素結合因子を有するクラウディング剤である。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、カフェイン、サッカリン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、テオフィリン、タウリン、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、ナイアシンアミドおよびイミダゾールからなる群より選択される。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、カフェイン、タウリン、ナイアシンアミドおよびイミダゾールからなる群より選択される。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、ウラシル、1-メチルウラシル、6-メチルウラシル、5-メチルウラシル、1,3-ジメチルウラシル、シトシン、5-メチルシトシン、3-メチルシトシン、チミン、1-メチルチミン、O-4-メチルチミン、1,3-ジメチルチミンおよびジメチルチミンダイマーからなる群より選択される。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、ジフェンヒドラミン、フェネチルアミン、N-メチルフェネチルアミン、N,N-ジメチルフェネチルアミン、β-3-ジヒドロキシフェネチルアミン、β-3-ジヒドロキシ-N-メチルフェネチルアミン、3-ヒドロキシフェネチルアミン、4-ヒドロキシフェネチルアミン、チロシノール(tyrosinol)、チラミン、N-メチルチラミンおよびホルデニンからなる群より選択される。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、カフェイン、ニコチンアミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ジエチルニコチンアミド、タウリン、イミダゾール、オルニチン、イミノ二酢酸、ニコチン酸およびスルファニル酸からなる群より選択されるか、またはカフェイン、ニコチンアミド、タウリンおよびイミダゾールからなる群より選択されるか、またはカフェインである。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、プロピオン酸カルシウムおよびソルビン酸カリウムからなる群より選択される。態様において、少なくとも1つの賦形剤化合物は、芳香族または陰イオン性芳香族賦形剤であり、いくつかの態様において、陰イオン性芳香族賦形剤は4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸であり得る。態様において、粘度低減量は約1mg/mL~約100mg/mLの少なくとも1つの賦形剤化合物であるか、または粘度低減量は約1mM~約400mMの少なくとも1つの賦形剤化合物であるか、または粘度低減量は約1mM~約1000mMの少なくとも1つの賦形剤化合物であるか、または粘度低減量は約2mM~約150mMの量である。態様において、担体溶液は、保存剤、糖、ポリオール、多糖、アルギニン、プロリン、界面活性剤、安定化剤およびバッファからなる群より選択されるさらなる薬剤を含む。態様において、目的のタンパク質は治療タンパク質であり、治療タンパク質は、組換えタンパク質であり得るか、またはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、融合タンパク質、PEG化タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、合成ポリペプチド、タンパク質断片、リポ蛋白、酵素および構造ペプチドからなる群より選択され得る。態様において、該方法はさらに、第2の粘度低減賦形剤を担体溶液に添加する工程を含み、第2の粘度低減化合物を添加する工程は、パラメーターにさらなる向上を付加する。
【0019】
また、目的のタンパク質が溶解された液体培地および粘度低減添加剤を含む担体溶液が本明細書に開示され、ここで担体溶液は、対照溶液の粘度よりも(that)低い粘度を有する。担体溶液はさらに、保存剤、糖、ポリオール、多糖、アルギニン、プロリン、界面活性剤、安定化剤およびバッファからなる群より選択されるさらなる薬剤を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、治療タンパク質、例えばモノクローナル抗体を産生するための発酵プロセス(「上流処理」)における工程を示すブロック図を示す。
【
図2】
図2は、治療タンパク質、例えばモノクローナル抗体を産生するための精製プロセス(「下流処理」)における工程を示すブロック図を示す。
【
図3A】
図3Aは、遠心分離の定期的な間隔後の保持液(retentate)中の抗体の量のグラフを示す。
【
図3B】
図3Bは、遠心分離の定期的な間隔後の保持液中の抗体の量のグラフを示す。
【
図4】
図4は、遠心分離の定期的な間隔後の保持液中の推定抗体濃度のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
濃縮されたタンパク質溶液の送達を可能にする製剤およびその産生方法が本明細書に開示される。態様において、本明細書に開示されるアプローチは、従来のタンパク質溶液と比較して、より低粘度の液体製剤またはより高濃度の液体製剤中の治療もしくは非治療タンパク質を生じ得る。態様において、本明細書に開示されるアプローチは、従来のタンパク質溶液と比較した場合に向上された安定性を有する液体製剤を生じ得る。安定な製剤は、その中に含まれるタンパク質が、冷貯蔵条件、室温条件または高温貯蔵条件のいずれに関わらず貯蔵条件下での貯蔵の際に、実質的にその物理的および化学的な安定性ならびにその治療的または非治療的な効力を保持するものである。有利なことに、安定な製剤は、その中に溶解したタンパク質の凝集または沈殿に対する保護も提供し得る。例えば、冷貯蔵条件は、冷蔵庫または冷凍庫中での貯蔵を含み得る。いくつかの例において、冷貯蔵条件は、10°以下の温度での貯蔵を含み得る。さらなる例において、冷貯蔵条件は、約2°~約10℃の温度での貯蔵を含む。他の例において、冷貯蔵条件は、約4℃の温度での貯蔵を含む。さらなる例において、冷貯蔵条件は、約-20℃以下などの冷凍温度での貯蔵を含む。別の例において、冷貯蔵条件は、約-20℃~約0℃の温度での貯蔵を含む。室温貯蔵条件は、周囲温度、例えば約10℃~約30℃での貯蔵を含み得る。高(elevated)貯蔵条件は、より高い温度での貯蔵を含み得る。例えば約30℃~約50℃の温度での高温安定性は、典型的な周囲(10~30℃)条件での長期貯蔵を予想するために、促進された経年変化(aging)試験の一部として使用され得る。
【0022】
溶液中のタンパク質はもつれ(entanglement)を形成して、もつれた(entangled)鎖の並行の移動性を制限し得、タンパク質の治療または非治療効力に干渉し得る傾向があることがポリマー科学および工学の当業者に周知である。態様において、本明細書に開示される賦形剤化合物が、溶液中の賦形剤化合物と標的タンパク質の間の特異的相互作用のために、タンパク質クラスター化を抑制し得る。本明細書に開示される賦形剤化合物は、天然または合成であり得、望ましくはFDAが一般に安全とみなす(generally recognizes as safe)(「GRAS」)物質である。
【0023】
1. 定義
本開示の目的で、用語「タンパク質」は、別個の三次構造を生じるのに十分な長さの鎖長を有する、典型的に1~3000kDaの分子量を有するアミノ酸の配列をいう。いくつかの態様において、タンパク質の分子量は約50~200kDaであり;他の態様において、タンパク質の分子量は約20~1000kDaまたは約20~2000kDaである。用語「タンパク質」とは対照的に、用語「ペプチド」は、別個の三次構造を有さないアミノ酸の配列をいう。種々のバイオポリマーは、用語「タンパク質」の範囲に含まれる。例えば用語「タンパク質」は、抗体、アプタマー、融合タンパク質、PEG化タンパク質、合成ポリペプチド、タンパク質断片、リポ蛋白、酵素、構造ペプチド等を含む治療または非治療タンパク質をいい得る。
【0024】
非限定的な例として、治療タンパク質は、ホルモンおよびプロホルモン(例えばインスリンおよびプロインスリン、グルカゴン、カルシトニン、甲状腺ホルモン(T3またはT4または甲状腺刺激ホルモン)、副甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子等);凝固および抗凝固因子(例えば組織因子、フォン・ビレブランド因子、第VIIIC因子、第IX因子、プロテインC、プラスミノゲン活性化因子(ウロキナーゼ、組織型プラスミノゲン活性化因子)、トロンビン);サイトカイン、ケモカインおよび炎症メディエーター;インターフェロン;コロニー刺激因子;インターロイキン(例えばIL-1~IL-10);成長因子(例えば血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、トランスホーミング成長因子、神経栄養成長因子、インスリン様成長因子等);アルブミン;コラーゲンおよびエラスチン;フィブリン密封剤;造血因子(hematopoietic factor)(例えばエリスロポイエチン、トロンボポイエチン等);骨誘導因子(osteoinductive factor)(例えば骨形態形成タンパク質);受容体(例えばインテグリン、カドヘリン等);表面膜タンパク質;輸送タンパク質;制御タンパク質:抗原タンパク質(例えば抗原として作用するウイルス構成要素);ならびに抗体などの哺乳動物タンパク質を含み得る。用語「抗体」は、その最も広い意味において本明細書において使用され、非限定的な例として、モノクローナル抗体(例えば免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体など)、単鎖分子、二重特異的および多重特異的抗体、ダイアボディ、抗体-薬物コンジュゲート、多数エピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体(免疫低下状態(immuno-compromised)患者に対する治療として使用されるポリクローナル免疫グロブリンなど)、ならびに抗体の断片(例えばFc、Fab、FvおよびF(ab')2など)を含む。抗体はまた「免疫グロブリン」と称され得る。抗体は、生物学的に重要な物質である特定のタンパク質または非タンパク質「抗原」に対して方向づけられることが理解され;治療有効量の抗体の患者への投与は、抗原と複合体を形成して、それによりその生物学的特性を変化させ得るので、患者は治療効果を被る。
【0025】
態様において、タンパク質はPEG化され、これはタンパク質が、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)および/またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)単位を含むことを意味する。PEG化タンパク質またはPEGタンパク質コンジュゲートは、溶解性、薬物動力学、薬力学、免疫原性、腎臓クリアランスおよび安定性などのそれらの有益な特性のために治療用途における有用性を見出している。PEG化タンパク質の非限定的な例は、PEG化インターフェロン(PEG-IFN)、PEG化抗VEGF、PEGタンパク質コンジュゲート薬物、アダジェン(Adagen)、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)、ペグロティカーゼ(Pegloticase)、ペグビソマント(Pegvisomant)、PEG化エポエチンβおよびセルトリズマブペゴルである。
【0026】
PEG化タンパク質は、1つ以上の反応性官能基を有するPEG試薬を用いたタンパク質の反応などの種々の方法により合成され得る。PEG試薬上の反応性官能基は、リジン、ヒスチジン、システインおよびN末端などの標的化されたタンパク質部位でタンパク質との連結を形成し得る。典型的なPEG化試薬は、タンパク質上の標的化されたアミノ酸残基との特異的な反応性を有するアルデヒド、マレイミドまたはスクシンイミド基などの反応性官能基を有する。PEG化試薬は、約1~約1000 PEGのPEG鎖長および/またはPPG反復単位を有し得る。PEG化の他の方法としては、タンパク質が最初にグリコシル化され、次いでグリコシル化された残基が第2の工程でPEG化されるグリコ-PEG化が挙げられる。特定のPEG化プロセスは、シアリルトランスフェラーゼおよびトランスグルタミナーゼなどの酵素により補助される。
【0027】
PEG化タンパク質は天然の非PEG化タンパク質に対して治療的な利点を提供し得るが、これらの材料は、これらの材料を精製、溶解、濾過、濃縮および投与することを困難にする物理的または化学的な特性を有し得る。タンパク質のPEG化は、天然のタンパク質と比較してより高い溶液粘度をもたらし得、これは一般的に、より低い濃度でのPEG化タンパク質溶液の製剤化を必要とする。
【0028】
安定な低粘度溶液中でタンパク質治療剤を製剤化することは望ましいので、タンパク質治療剤は、最小注射体積で患者に投与され得る。例えば、薬物の皮下(SC)または筋内(IM)注射は一般的に、小さい注射体積、好ましくは2mL未満を必要とする。SCおよびIM注射経路は、自身での投与管理に良好に適合され、これは、直接的な医学的監視下のみで実施される静脈内(IV)注射と比較して、コスト的により低く、より利用しやすい治療形態である。SCまたはIM注射のための製剤化は、狭いゲージの針を通る治療溶液の容易な流れを可能にするために、一般的に30cP未満、好ましくは20cP未満の低い溶液粘度を必要とする。小さな注射体積と低い粘度の要件のこの組合せは、SCまたはIM注射経路におけるPEG化タンパク質治療薬の使用に対して難題を提示する。
【0029】
治療効果を有するこれらのタンパク質は「治療タンパク質」と称され得;治療有効量で治療タンパク質を含む製剤は、「治療製剤」と称され得る。治療製剤に含まれる治療タンパク質はまた、その「タンパク質有効成分」と称され得る。典型的に、治療製剤は、他の任意の構成要素ありまたはなしで、治療有効量のタンパク質有効成分および賦形剤を含む。本明細書で使用する場合、用語「治療(therapeutic)」は、現存する障害の治療(treatment)および障害の予防の両方を含む。治療タンパク質としては、例えばベバシズマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ダルベポエチンアルファ、エポエチンアルファ、セツキシマブ、フィルグラスチムおよびリツキシマブなどのタンパク質が挙げられる。他の治療タンパク質は当業者に良く知られる。
【0030】
「治療(treatment)」は、障害の治療(cure)、治癒、軽減、向上、矯正する(remedy)またはそうでなければ障害への有益な影響、例えば症状の開始を予防もしくは遅延することおよび/または障害の徴候を軽減もしくは改善することを意図する任意の処置を含む。治療を必要とするこれらの患者としては、既に特定の障害を有する患者および障害の予防が望ましい患者の両方が挙げられる。障害は、哺乳動物の恒常的な幸福を変化させる任意の状態、例えば急性もしくは慢性の疾患、または哺乳動物を急性もしくは慢性の疾患に罹りやすくする病理学的状態である。障害の非限定的な例としては、癌、代謝障害(例えば糖尿病)、アレルギー性障害(例えば喘息)、皮膚科学的障害、心臓血管障害、呼吸器障害、血液学的障害、骨格筋障害、炎症性またはリウマチ学的障害、自己免疫障害、胃腸障害、泌尿器科学的障害、性的および生殖障害、神経学的障害等が挙げられる。用語「哺乳動物」は、治療の目的で、哺乳動物として分類される任意の動物、例えばヒト、家畜、ペット動物、農場動物、スポーツ用動物、労働用動物等をいい得る。そのため、「治療」は、獣医学的およびヒトの治療の両方を含み得る。便宜上、かかる「治療」を受ける哺乳動物は、「患者」と称され得る。ある態様において、患者は、任意の年齢のもの、例えば子宮内の胎児動物であり得る。
【0031】
態様において、治療は、治療有効量の治療製剤を必要とする哺乳動物に治療有効量の治療製剤を提供することを含む。「治療有効量」は、現存する障害の治療または予測される障害の予防(かかる治療またはかかる予防のいずれも「治療的介入」である)をもたらすために、治療有効量の治療製剤を必要とする哺乳動物に投与される治療タンパク質の少なくとも最小濃度である。治療製剤中の有効成分として含まれ得る種々の治療タンパク質の治療有効量は当該技術分野でよく知られ得るか;または発見されるかもしくはその後の治療的介入に適用される治療タンパク質について、治療有効量は、常套的な実験以下のものを使用して当業者により実施される標準的な技術により決定され得る。
【0032】
非治療目的(すなわち治療を含まない目的)、例えば家庭、栄養、商業および工業的用途のために使用されるこれらのタンパク質は、「非治療タンパク質」と称され得る。非治療タンパク質を含む製剤は「非治療製剤」と称され得る。非治療タンパク質は、植物供給源、動物供給源に由来し得るか、または細胞培養物から産生され得;それらはまた酵素または構造タンパク質であり得る。非治療タンパク質は、家庭、栄養、商業および工業的用途、例えば触媒、ヒトおよび動物栄養、処理の補助、清掃および廃棄物処理において使用され得る。
【0033】
非治療バイオポリマーの重要なカテゴリーは酵素である。酵素は、例えば触媒、ヒトおよび動物栄養成分、処理の補助、清掃および廃棄物処理剤などのいくつかの非治療用途を有する。酵素触媒は、種々の化学反応を促進するために使用される。非治療使用のための酵素触媒の例としては、カタラーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼおよびリガーゼが挙げられる。酵素のヒトおよび動物栄養的使用としては、栄養機能食品(nutraceuticals)、タンパク質の栄養源、微量栄養素(micronutrient)のキレート化または制御送達、消化補助および栄養補助食品が挙げられ;これらは、アミラーゼ、プロテアーゼ、トリプシン、ラクターゼ等に由来し得る。酵素処理補助は、ベーキング、醸造、発酵、ジュース加工およびワイン醸造などの作業中の食品および飲料品生成物の産生を向上させるために使用される。これらの食品および飲料品加工補助の例としては、アミラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、グルカナーゼ、リパーゼおよびラクターゼが挙げられる。酵素はまた、バイオ燃料の産生に使用され得る。例えば、バイオ燃料のためのエタノールは、セルロース性およびリグノセルロース性材料などのバイオマス供給原料の酵素分解により補助され得る。セルラーゼおよびリグニナーゼ(ligninase)を用いたかかる供給原料材料の処理により、バイオマスを、燃料に発酵され得る基質に変換する。他の商業的用途において、酵素は、洗濯、食器洗浄、表面クリーニングおよび器具クリーニング用途のための界面活性剤、洗浄剤およびシミ除去(stain lifting)補助として使用される。この目的のための典型的な酵素としては、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼおよびリパーゼが挙げられる。また、非治療酵素は、セルラーゼを用いた織物の軟化、皮革の加工、廃棄物処理、汚染された沈殿物の処理、水処理、パルプ漂白、ならびにパルプの軟化および脱接着(debonding)などの種々の商業的および工業的処理において使用される。これらの目的のための典型的な酵素は、アミラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼおよびリグニナーゼである。
【0034】
非治療バイオポリマーの他の例としては、ケラチン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、フィブロイン、アクチン、チューブリン、または加水分解された、分解されたもしくは誘導体化されたそれらの形態などの繊維状または構造タンパク質が挙げられる。これらの材料は、ゼラチン、アイスクリーム、ヨーグルトおよび糖菓などの食品成分の調製および製剤化に使用され;また、増粘剤、レオロジー調整剤、食感向上剤(mouth feel improver)として、および栄養タンパク質の供給源として食品に添加される。化粧品およびパーソナルケア産業において、コラーゲン、エラスチン、ケラチンおよび加水分解されたケラチンは、スキンケアおよびヘアケア製剤における成分として広く使用される。非治療バイオポリマーのさらなる他の例は、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミンおよび血清アルブミンなどの乳漿タンパク質である。これらのホエータンパク質は、酪農作業由来の副生成物として大規模に(mass scale)産生され、種々の非治療用途のために使用されている。
【0035】
2. 測定
態様において、本明細書に記載されるタンパク質含有製剤は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定される場合、モノマー損失に抵抗性(resistant)である。本明細書で使用されるようなSEC分析において、主要な分析物ピークは一般的に、製剤に含まれる標的タンパク質に関連し、タンパク質のこの主要なピークは、モノマーピークと称される。モノマーピークは、標的タンパク質、例えば凝集(ダイマー、トリマー、オリゴマー等)または断片化状態とは異なる、モノマー状態のタンパク質有効成分の量を表す。モノマーピーク面積は、標的タンパク質に関連するモノマー、凝集物および断片ピークの総面積と比較され得る。したがって、タンパク質含有製剤の安定性は、経過時間後のモノマーの相対量により観察され得;そのため本発明のタンパク質含有製剤の安定性の向上は、該賦形剤を含まない対照製剤中のパーセントモノマーと比較した場合、一定の経過時間後のより高いパーセントモノマーとして測定され得る。
【0036】
態様において、理想的な安定性の結果は、SEC分析により測定した場合に98~100%モノマーピークを有することである。態様において、本発明のタンパク質含有製剤の安定性の向上は、ストレス条件に暴露した後、賦形剤を含まない対照製剤が同じストレス条件に暴露された場合の賦形剤を含まない対照製剤におけるパーセントモノマーと比較して、より高いパーセントモノマーとして測定され得る。態様において、ストレス条件は、低温貯蔵、高温貯蔵、空気への暴露、気泡への暴露、せん断条件への暴露または凍結/融解サイクルへの暴露であり得る。
【0037】
態様において、本明細書に記載されるタンパク質含有製剤は、動的光散乱(DLS)分析により測定した場合に、タンパク質粒子サイズの増加に抵抗性である。本明細書で使用する場合のDLS分析において、タンパク質含有製剤中のタンパク質の粒子サイズは、メジアン粒径として観察され得る。理想的には、粒径は、凝集(ダイマー、トリマー、オリゴマー等)または断片化状態とは異なるモノマー状態での活性構成要素を表すので、標的タンパク質のメジアン粒径は、DLS分析に供される場合、相対的に変化しないはずである。メジアン粒径の増加は凝集タンパク質を表し得た。したがって、タンパク質含有製剤の安定性は、経過時間後のメジアン粒径の相対的な変化により観察され得る。
【0038】
態様において、本明細書に記載されるタンパク質含有製剤は、動的光散乱(DLS)分析により測定した場合に多分散粒子サイズ分布の形成に対し抵抗性である。態様において、タンパク質含有製剤は、コロイド状タンパク質粒子の単分散粒子サイズ分布を含み得る。態様において、理想的な安定性結果は、製剤の最初のメジアン粒径と比較して、メジアン粒径において10%未満の変化を有することである。態様において、本発明のタンパク質含有製剤の安定性の向上は、賦形剤を含まない対照製剤におけるメジアン粒径と比較して、特定の経過時間後のメジアン粒径のより低いパーセント変化として測定され得る。態様において、本発明のタンパク質含有製剤の安定性の向上は、ストレス条件への暴露後、賦形剤を含まない対照製剤を同じストレス条件に暴露した場合の賦形剤を含まない対照製剤におけるメジアン粒径のパーセント変化と比較して、メジアン粒径のより低いパーセント変化として測定され得る。態様において、ストレス条件は、低温貯蔵、高温貯蔵、空気への暴露、気泡への暴露、せん断条件への暴露、または凍結/融解サイクルへの暴露であり得る。態様において、本発明のタンパク質含有製剤治療製剤の安定性の向上は、賦形剤を含まない対照製剤を同じストレス条件に暴露した場合の賦形剤を含まない対照製剤における粒子サイズ分布の多分散性と比較して、DLSにより測定した場合のより小さい多分散粒子サイズ分布として測定され得る。
【0039】
態様において、本発明のタンパク質含有製剤は、濁度、光散乱および/または粒子計数分析により測定した場合に沈殿に対して抵抗性である。濁度、光散乱または粒子計数分析において、より低い値は一般的に、製剤中のより少ない数の懸濁粒子を表す。濁度、光散乱または粒子計数の増加は、標的タンパク質の溶液が安定ではないことを示し得る。したがって、タンパク質含有製剤の安定性は、経過時間後の濁度、光散乱または粒子計数の相対量により観察され得る。態様において、理想的な安定性結果は、低いおよび相対的に一定な濁度、光散乱または粒子計数値を有することである。態様において、本発明のタンパク質含有製剤の安定性の向上は、賦形剤を含まない対照製剤における濁度、光散乱または粒子計数値と比較して、特定の経過時間後のより低い濁度、より低い光散乱またはより低い粒子計数として測定され得る。態様において、本明細書に記載されるタンパク質含有製剤の安定性の向上は、ストレス条件に暴露した後、賦形剤を含まない対照製剤を同じストレス条件に暴露した場合の賦形剤を含まない対照製剤における濁度、光散乱または粒子計数と比較して、より低い濁度、より低い光散乱またはより低い粒子計数として測定され得る。態様において、ストレス条件は、低温貯蔵、高温貯蔵、空気への暴露、気泡への暴露、せん断条件への暴露、または凍結/融解サイクルへの暴露であり得る。
【0040】
3. 治療製剤
一局面において、本明細書に開示される製剤および方法は、治療有効量の治療タンパク質および賦形剤化合物を含む、向上されたまたは低減された粘度の安定な液体製剤を提供する。態様において、製剤は、有効成分の許容され得る濃度および許容され得る粘度を提供しながら安定性を向上し得る。態様において、製剤は、対照製剤と比較した場合、安定性の向上を提供し;この開示の目的で、対照製剤は、全ての様式において乾燥重量基準で、賦形剤化合物を欠くこと以外は治療製剤と同一であるタンパク質有効成分を含む製剤である。態様において、タンパク質含有製剤の向上した安定性は、対照製剤と比較して、可溶性凝集物、粒状物、肉眼では見えない(subvisible)粒子、またはゲル製剤のより低いパーセンテージの形態である。
【0041】
液体タンパク質製剤の粘度は、限定されないが、タンパク質自体(例えば酵素、抗体、受容体、融合タンパク質等)の性質;そのサイズ、三次元構造、化学的組成および分子量;製剤中のその濃度;タンパク質以外の製剤の構成要素;所望のpH範囲;製剤についての貯蔵条件;ならびに製剤を患者に投与する方法を含む種々の要因により影響を受け得ることが理解される。本明細書に記載される賦形剤化合物を用いた使用に最も適切な治療タンパク質は好ましくは本質的に純粋、すなわち汚染タンパク質を有さない。態様において、「本質的に純粋」な治療タンパク質は、全て組成物中の治療タンパク質および汚染タンパク質の全重量に基づいて少なくとも90重量%の治療タンパク質、または好ましくは少なくとも95重量%、またはより好ましくは少なくとも99重量%を含むタンパク質組成物である。明確性の目的で、賦形剤として添加されるタンパク質は、この定義に含まれることを意図しない。本明細書に記載される治療製剤は、医薬品等級製剤、すなわち哺乳動物の治療における使用が意図される製剤として、タンパク質有効成分の所望の治療効力が達成され得る形態において、製剤を投与される哺乳動物に対して毒性である構成要素を含むことのない使用が意図される。
【0042】
態様において、治療製剤は少なくとも25mg/mLのタンパク質有効成分を含む。他の態様において、治療製剤は少なくとも100mg/mLのタンパク質有効成分を含む。他の態様において、治療製剤は少なくとも200mg/mLのタンパク質有効成分を含む。さらに他の態様において、治療製剤溶液は少なくとも300mg/mLのタンパク質有効成分を含む。一般的に、本明細書に開示される賦形剤化合物は、約5~約300mg/mLの量で治療製剤に添加される。態様において、賦形剤化合物は、約10~約200mg/mLの量で添加され得る。態様において、賦形剤化合物は、約20~約100mg/mLの量で添加され得る。態様において、賦形剤は、約25~約75mg/mLの量で添加され得る。
【0043】
製剤中のタンパク質有効成分と合わされる場合に、種々の分子量の賦形剤化合物が、特定の有利な特性のために選択される。賦形剤化合物を含む治療製剤の例を以下に提供する。態様において、賦形剤化合物は、<5000Daの分子量を有する。態様において、賦形剤化合物は、<1000Daの分子量を有する。態様において、賦形剤化合物は、<500Daの分子量を有する。
【0044】
態様において、本明細書に開示される賦形剤化合物は、粘度低減量で治療製剤に添加される。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に製剤の粘度を少なくとも10%低減する賦形剤化合物の量であり;この開示の目的で、対照製剤は、全ての様式において乾燥重量基準で賦形剤化合物を欠くこと以外は治療製剤と同一であるタンパク質有効成分を含む製剤である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも30%低減する賦形剤化合物の量である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも50%低減する賦形剤化合物の量である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも70%低減する賦形剤化合物の量である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも90%低減する賦形剤化合物の量である。
【0045】
態様において、粘度低減量は、100cP未満の粘度を有する治療製剤を生じる。他の態様において、治療製剤は50cP未満の粘度を有する。他の態様において、治療製剤は20cP未満の粘度を有する。さらに他の態様において、治療製剤は10cP未満の粘度を有する。用語「粘度」は、本明細書で使用する場合、本明細書に開示される方法により測定した場合の動的粘度値をいう。
【0046】
本開示による治療製剤は特定の有利な特性を有する。態様において、治療製剤は、せん断分解、相分離、クラウディングアウト(clouding out)、酸化、脱アミド化、凝集、沈殿および変性に抵抗性である。態様において、治療製剤は、対照製剤と比較してより効果的に、処理され、精製され、貯蔵され、注射され、投与され、濾過され、遠心分離される。態様において、治療製剤は、高濃度の治療タンパク質で患者に投与される。態様において、治療製剤は、治療賦形剤を欠く同様の製剤により経験されるよりも低い不快さを伴って患者に投与される。態様において、治療製剤は、デポー注射として投与される。態様において、治療製剤は、体内での治療タンパク質の半減期を延長する。
【0047】
本明細書に開示される治療製剤のこれらの特徴は、臨床状況、すなわち筋内注射の患者受け入れが、IM/SC目的に典型的な小口径針の使用および許容可能な(例えば2~3cc)の注射体積の使用を含み、かつこれらの条件が、単一注射部位での単一注射における製剤の有効量の投与を生じる状況における筋内注射または皮下注射によるかかる製剤の投与を可能にする。対照的に、従来の製剤化技術を使用した治療タンパク質の同等の投与量の注射は、従来の製剤のより高い粘度により制限されるので、従来の製剤のSC/IM注射は、臨床的状況に適切でない。本明細書に記載される賦形剤化合物を用いて製剤化される治療タンパク質の高濃度溶液は、シリンジまたはプレフィルドシリンジを使用して患者に投与され得る。
【0048】
態様において、治療賦形剤は、酸化損傷に対して治療タンパク質を安定化する抗酸化特性を有する。態様において、治療製剤は、周囲温度で、または治療タンパク質の潜在力の認識できる損失なく、冷蔵庫条件で延長された時間貯蔵される。態様において、治療製剤は、それが必要とされるまで貯蔵のために乾燥され;次いで適切な溶媒、例えば水で再構成される。有利なことに、本明細書に記載されるように調製される製剤は、数カ月から数年の延長された期間にわたり安定であり得る。例外的に長い期間の貯蔵が望ましい場合、製剤は、タンパク質変性の恐れなく冷凍庫中で保存され(その後再活性化され)得る。態様において、製剤は、冷蔵を必要としない長期貯蔵のために調製され得る。
【0049】
治療製剤を調製するための方法は当業者に良く知られ得る。本発明の治療製剤は、例えば治療タンパク質を溶液に添加する前または後に賦形剤化合物を製剤に添加することにより調製され得る。例えば、治療製剤は、治療タンパク質と賦形剤を第1の(より低い)濃度で合わせることにより製造され得、次いで第2の(より高い)濃度の治療タンパク質を製造するために、濾過または遠心分離により処理され得る。治療製剤は、カオトロープ(chaotrope)、コスモトロープ(kosmotrope)、ヒドロトロープ(hydrotrope)および塩と共に賦形剤化合物の1つ以上を使用して作製され得る。治療製剤は、例えば封入、分散、リポソーム、小胞形成等の技術を使用して賦形剤化合物の1つ以上を用いて作成され得る。本明細書に開示される賦形剤化合物を含む治療製剤を調製するための方法は、賦形剤化合物の組合せを含み得る。態様において、賦形剤の組合せは、より低い粘度、向上された安定性または低減された注射部位疼痛における利点を生じ得る。保存剤、界面活性剤、糖、スクロース、トレハロース、多糖、アルギニン、プロリン、ヒアルロニダーゼ、安定化剤、バッファ等を含む他の添加剤を、治療製剤の製造の間に治療製剤に導入してもよい。本明細書で使用する場合、薬学的に許容され得る賦形剤化合物は、無毒性であり、動物および/またはヒト投与に適切なものである。
【0050】
4. 非治療製剤
一局面において、本明細書に開示される製剤および方法は、有効量の非治療タンパク質および賦形剤化合物を含む、向上されたまたは低減された粘度の安定な液体製剤を提供する。態様において、製剤は、有効成分の許容され得る濃度および許容され得る粘度を提供しながら、安定性を向上させる。態様において、製剤は、対照製剤と比較した場合に、安定性の向上を提供し;この開示の目的で、対照製剤は、全ての様式において乾燥重量基準で、賦形剤化合物を欠くこと以外は非治療製剤と同一であるタンパク質有効成分を含む製剤である。
【0051】
液体タンパク質製剤の粘度は、限定されないが、タンパク質自体の性質(例えば酵素、構造タンパク質、加水分解の程度等);そのサイズ、三次元構造、化学的組成および分子量;製剤中のその濃度;タンパク質以外の製剤の構成要素;所望のpH範囲;ならびに製剤のための貯蔵条件を含む種々の要因により影響を受け得ることが理解される。
【0052】
態様において、非治療製剤は少なくとも25mg/mLのタンパク質有効成分を含む。他の態様において、非治療製剤は少なくとも100mg/mLのタンパク質有効成分を含む。他の態様において、非治療製剤は少なくとも200mg/mLのタンパク質有効成分を含む。さらに他の態様において、非治療製剤溶液は少なくとも300mg/mLのタンパク質有効成分を含む。一般的に、本明細書に開示される賦形剤化合物は、約5~約300mg/mLの量で非治療製剤に添加される。態様において、賦形剤化合物は約10~約200mg/mLの量で添加される。態様において、賦形剤化合物は約20~約100mg/mLの量で添加される。態様において、賦形剤は約25~約75mg/mLの量で添加される。
【0053】
製剤中でタンパク質有効成分と合わされる場合に、特定の有利な特性のために、種々の分子量の賦形剤化合物が選択される。賦形剤化合物を含む非治療製剤の例を以下に提供する。態様において、賦形剤化合物は<5000Daの分子量を有する。態様において、賦形剤化合物は<1000Daの分子量を有する。態様において、賦形剤化合物は<500Daの分子量を有する。
【0054】
態様において、本明細書に開示される賦形剤化合物は、粘度低減量で非治療製剤に添加される。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも10%低減する賦形剤化合物の量であり;この開示の目的で、対照製剤は、全ての様式において乾燥重量基準で賦形剤化合物を欠くこと以外は治療製剤と同一であるタンパク質有効成分を含む製剤である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも30%低減する賦形剤化合物の量である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも50%低減する賦形剤化合物の量である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも70%低減する賦形剤化合物の量である。態様において、粘度低減量は、対照製剤と比較した場合に、製剤の粘度を少なくとも90%低減する賦形剤化合物の量である。
【0055】
態様において、粘度低減量は、100cP未満の粘度を有する非治療製剤を生じる。他の態様において、非治療製剤は50cP未満の粘度を有する。他の態様において、非治療製剤は20cP未満の粘度を有する。さらに他の態様において、非治療製剤は10cP未満の粘度を有する。用語「粘度」は、本明細書で使用する場合、動的粘度値をいう。
【0056】
本開示による非治療製剤は、特定の有利な特性を有し得る。態様において、非治療製剤は、せん断分解、相分離、クラウディングアウト、酸化、脱アミド化、凝集、沈殿および変性に対して抵抗性である。態様において、治療製剤は、対照製剤と比較してより効果的に、処理され、精製され、貯蔵され、ポンプ輸送され、濾過され、遠心分離され得る。
【0057】
態様において、非治療賦形剤は、酸化損傷に対して非治療タンパク質を安定化する抗酸化特性を有する。態様において、非治療製剤は、周囲温度で、または非治療タンパク質についての潜在力の認識可能な損失なく、冷蔵条件で延長された時間貯蔵される。態様において、非治療製剤は、それが必要とされるまで、貯蔵のために乾燥され;次いで非治療製剤は適切な溶媒、例えば水により再構成され得る。有利なことに、本明細書に記載されるように調製される製剤は、数カ月から数年の延長された期間にわたり安定である。例外的に長い期間の貯蔵が望ましい場合、製剤は、タンパク質変性の恐れなく、冷凍庫において保存(その後再活性化)される。態様において、製剤は、冷蔵を必要としない長期間の貯蔵のために調製される。
【0058】
本明細書に開示される賦形剤化合物を含む非治療製剤を調製するための方法は、当業者に良く知られ得る。例えば、賦形剤化合物は、非治療タンパク質を溶液に添加する前または後に、製剤に添加され得る。非治療製剤は、第1の(より低い)濃度で製造され得、次いで第2の(より高い)濃度を製造するために濾過または遠心分離により処理され得る。非治療製剤は、カオトロープ、コスモトロープ、ヒドロトロープおよび塩と共に賦形剤化合物の1つ以上を使用して作製され得る。非治療製剤は、例えば封入、分散、リポソーム、小胞形成等の技術を使用して賦形剤化合物の1つ以上を用いて作製され得る。保存剤、界面活性剤、安定化剤等を含む他の添加剤を、非治療製剤の製造の間に非治療製剤に導入し得る。
【0059】
5. 賦形剤化合物
いくつかの賦形剤化合物が本明細書に記載され、それぞれは、1つ以上の治療または非治療タンパク質を用いた使用に適切であり、それぞれは、製剤が高濃度でタンパク質(1つまたは複数)を含むように製剤を構成させる。以下に記載される賦形剤化合物のカテゴリーのいくつかは:(1)ヒンダードアミン;(2)陰イオン性芳香族;(3)官能基化アミノ酸;(4)オリゴペプチド;(5)短鎖有機酸;(6)低分子量脂肪族多価酸;(7)ジオンおよびスルホン、(8)両性イオン性賦形剤および(9)水素結合因子を有するクラウディング剤である。理論に拘束されることなく、本明細書に記載される賦形剤化合物は、特定の断片、配列、構造または他の状態では粒子間(すなわちタンパク質-タンパク質)相互作用に含まれる治療タンパク質の部分(section)と結合すると考えられる。治療または非治療タンパク質とのこれらの賦形剤化合物の結合は、タンパク質間相互作用を遮断し得るので、タンパク質は、過剰な溶液粘度を生じることなく高濃度で製剤化され得る。賦形剤化合物は有利に、水溶性であり得るので、水性ビヒクルを用いた使用に適切である。態様において、賦形剤化合物は、>10mg/mLの水溶解性を有する。態様において、賦形剤化合物は、>100mg/mLの水溶解性を有する。態様において、賦形剤化合物は、>500mg/mLの水溶解性を有する。治療タンパク質に有利なことに、賦形剤化合物は、生物学的に許容され得かつ非免疫原性であるので医薬的使用に適切である材料に由来し得る。治療態様において、賦形剤化合物は、生物学的に適合性であり、非免疫原性である副生成物を生じるように、体内で代謝され得る。
【0060】
a. 賦形剤化合物カテゴリー1:ヒンダードアミン
治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、賦形剤化合物としてヒンダードアミン低分子と共に製剤化され得る。本明細書で使用する場合、用語「ヒンダードアミン」は、以下の例と一致する、少なくとも1つのかさ高いかまたは立体的に妨げられた基を含む低分子をいう。ヒンダードアミンは、遊離塩基形態で、プロトン付加形態でまたは2つの組合せで使用され得る。プロトン付加形態において、ヒンダードアミンは、塩化物、水酸化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、蟻酸塩、リン酸塩、硫酸塩またはカルボン酸塩などの陰イオン性対イオンと結合し得る。賦形剤化合物として有用なヒンダードアミン化合物は、第2級、第3級アミン、第4級アンモニウム、ピリジニウム、ピロリドン、ピロリジン、ピペラジン、モルホリンまたはグアニジニウム基を含み得るので、賦形剤化合物は、中性pHで水溶液中、陽イオン性電荷を有する。ヒンダードアミン化合物はまた、環状芳香族、脂環式、シクロヘキシルまたはアルキル基などの少なくとも1つのかさ高いかまたは立体的に妨げられた基を含む。態様において、立体的に妨げられた基はそれ自体、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、グアニジニウム、ピリジニウムまたは第4級アンモニウム基などのアミン基であり得る。理論に拘束されることなく、ヒンダードアミン化合物は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンなどのタンパク質の芳香族部分と、陽イオンπ相互作用により結合すると考えられる。態様において、ヒンダードアミンの陽イオン性基は、タンパク質中の芳香族アミノ酸残基の電子リッチπ構造に対する親和性を有し得るので、それらはタンパク質のこれらの部分を遮断し得、それによりかかる覆われたタンパク質が結合および凝集する傾向が低下される。
【0061】
態様において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、イミダゾール、イミダゾリンまたはイミダゾリジン基またはその塩、例えばイミダゾール、1-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウムクロライド、イミダゾリン、2-イミダゾリン、イミダゾリドン、2-イミダゾリドン、ヒスタミン、4-メチルヒスタミン、α-メチルヒスタミン、ベタヒスチン、β-アラニン、2-メチル-2-イミダゾリン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、ブチルイミダゾール、尿酸、尿酸カリウム、ベタゾール、カルノシン、スペルミン、スペルミジン、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムカリウム、キサンチン、テオフィリン、テオブロミン、カフェインおよびアンセリンを含む化学構造を有する。態様において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、1,3-ジメチルウラシル、1-メチルウラシル、3-メチルウラシル、1,3-ジエチルウラシル、6-メチルウラシル、ウラシル、1,3-ジメチル-テトラヒドロピリミジノン、1-メチル-2-ピリジノン、フェニルセリン、DL-3-フェニルセリン、シクロセリン、ジサイクロミン、チミン、1-メチルチミン、O-4-メチルチミン、1,3-ジメチルチミン、ジメチルチミンダイマー、シトシン、システアミン、5-メチルシトシンおよび3-メチルシトシンからなる群より選択されるピリミジン誘導体である。態様において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノプロピルアミン、トリエタノールアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノプロパン、ポリエーテルアミン、Jeffamine(登録商標)ブランドポリエーテルアミン、ポリエーテル-モノアミン、ポリエーテル-ジアミン、ポリエーテル-トリアミン、1-(1-アダマンチル)エチルアミン、ホルデニン、ベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ヘキサメチレンビグアニド、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)、イミダゾール、ジメチルグリシン、メグルミン、アグマチン、硫酸アグマチン、ジアザビシクロ [2.2.2]オクタン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、エタノールアミンホスフェート、グルコサミン、コリンクロライド、ホスホコリン、ナイアシンアミド、イソニコチンアミド、N,N-ジエチルニコチンアミド、ニコチン酸、ニコチン酸ナトリウム塩、イソニコチン酸、チラミン、N-メチルチラミン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3-ピリジンメタノール、ジピリダモール、ニコチンアミドアデノシンジヌクレオチド、ビオチン、葉酸、フォリン酸、フォリン酸カルシウム塩、モルホリン、N-メチルピロリドン、2-ピロリジノン、プロカイン、リドカイン、ジシアンジアミド-タウリン付加物、2-ピリジルエチルアミン、ジシアンジアミド-ベンジルアミン付加物、ジシアンジアミド-アルキルアミン付加物、ジシアンジアミド-シクロアルキルアミン付加物およびジシアンジアミド-アミノメタンホスホン酸付加物からなる群より選択される。態様において、本開示に一致するヒンダードアミン化合物は、プロトン付加アンモニウム塩として製剤化される。態様において、本開示に一致するヒンダードアミン化合物は、対イオンとして無機アニオンまたは有機アニオンを有する塩として製剤化される。態様において、治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、賦形剤化合物として、カフェインと安息香酸、ヒドロキシ安息香酸またはベンゼンスルホン酸との組合せにより製剤化される。態様において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、生物学的に適合性の副生成物を生じるように体内で代謝される。いくつかの態様において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、約250mg/mL以下の濃度で製剤中に存在する。さらなる態様において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、約10mg/mL~約200mg/mLの濃度で製剤中に存在する。なおさらなる局面において、ヒンダードアミン賦形剤化合物は、約20~約120mg/mLの濃度で製剤中に存在する。
【0062】
態様において、特定のヒンダードアミン賦形剤化合物は、他の薬理学的特性を有し得る。例として、キサンチンは、全身的に吸収される場合、刺激性特性および気管支拡張性特性を含む独立した薬理学的特性を有するヒンダードアミンのカテゴリーである。代表的なキサンチンとしては、カフェイン、アミノフィリン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン等が挙げられる。メチル化キサンチンは、心臓収縮、心拍数および気管支拡張の力に影響を及ぼすことが理解される。いくつかの態様において、キサンチン賦形剤化合物は、約30mg/mL以下の濃度で製剤中に存在する。
【0063】
独立した薬理学的特性を有するヒンダードアミンの別のカテゴリーは、注射可能な局所麻酔化合物である。注射可能な局所麻酔化合物は、(a)脂肪親和性芳香族環、(b)中間エステルまたはアミド結合、および(c)第2級または第3級アミンの3成分分子構造を有するヒンダードアミンである。ヒンダードアミンのこのカテゴリーは、ナトリウムイオンの流入を阻害して神経伝導を中断し、それにより局所麻酔を誘導することが理解される。局所麻酔化合物のための脂肪親和性芳香族環は、炭素原子で形成され得る(例えばベンゼン環)か、またはヘテロ原子を含み得る(例えばチオフェン環)。代表的な注射可能な局所麻酔化合物としては、限定されないが、アミロカイン(amylocaine)、アルチカイン(articaine)、ブピバカイン(bupivicaine)、ブタカイン(butacaine)、ブタニリカイン(butanilicaine)、クロロプロカイン(chlorprocaine)、コカイン、シクロメチカイン(cyclomethycaine)、ジメトカイン(dimethocaine)、エジトカイン(editocaine)、ヘキシルカイン(hexylcaine)、イソブカイン(isobucaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、リドカイン、メタブテタミン(metabutethamine)、メタブトキシカイン(metabutoxycaine)、メピバカイン、メプリルカイン、プロポキシカイン、プリロカイン、プロカイン、ピペロカイン(piperocaine)、テトラカイン、トリメカイン(trimecaine)等が挙げられる。注射可能な局所麻酔化合物は、タンパク質治療製剤において、低減された粘度、向上された安定性および注射時の低減された疼痛などの複数の利点を有し得る。いくつかの態様において、局所麻酔化合物は、約50mg/mL以下の濃度で製剤中に存在する。
【0064】
態様において、独立した薬理学的特性を有するヒンダードアミンは、本明細書に記載される製剤および方法による賦形剤化合物として使用される。いくつかの態様において、独立した薬理学的特性を有する賦形剤化合物は、薬理学的効果を有さないかおよび/または治療的に有効でない量で存在する。他の態様において、独立した薬理学的特性を有する賦形剤化合物は、薬理学的効果を有するかおよび/または治療的に有効である量で存在する。ある態様において、独立した薬理学的特性を有するヒンダードアミンは、製剤粘度を低下させるように選択された別の賦形剤化合物と組み合わせて使用され、ここで独立した薬理学的特性を有するヒンダードアミンは、その薬理学的活性の利点を付与するように使用される。例えば、注射可能な局所麻酔化合物は、製剤粘度を低下させるように、およびまた製剤の注射時の疼痛を低減させるように使用され得る。注射疼痛の低減は麻酔特性により引き起こされ得;また賦形剤により粘度が低減される場合、より低い注射力が必要とされ得る。代替的に、注射可能な局所麻酔化合物は、製剤の粘度を低減する別の賦形剤化合物と組み合され、製剤注射時に低下された局所的な感覚という所望の薬理学的利点を付与するように使用され得る。
【0065】
b. 賦形剤化合物カテゴリー2:陰イオン性芳香族
治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、賦形剤化合物として陰イオン性芳香族低分子化合物を用いて製剤化され得る。陰イオン性芳香族賦形剤化合物は、フェニル、ベンジル、アリール、アルキルベンジル、ヒドロキシベンジル、フェノール、ヒドロキシアリール、ヘテロ芳香族基または縮合芳香族基などの芳香族官能基を含み得る。陰イオン性芳香族賦形剤化合物はまた、カルボキシレート、オキシド、フェノキシド、スルホンネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェートまたはスルフィドなどの陰イオン性官能基を含み得る。陰イオン性芳香族賦形剤は酸、ナトリウム塩またはその他として記載され得るが、賦形剤は種々の塩形態で使用され得ることが理解される。理論に拘束されることなく、陰イオン性芳香族賦形剤化合物は、タンパク質の陽イオン性部分と結合し得て、タンパク質のこれらの部分を覆い得、それによりタンパク質含有製剤を粘性にするタンパク質分子の間の相互作用を低下させる、かさ高い、立体的に妨げられた分子であると考えられる。
【0066】
態様において、陰イオン性芳香族賦形剤化合物の例としては、サリチル酸、アミノサリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、パラ-アミノ安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキノンスルホン酸、スルファニル酸、バニリン酸、バニリン、バニリン-タウリン付加物、アミノフェノール、アントラニル酸、桂皮酸、クマル酸、カフェイン酸、イソニコチン酸、葉酸、フォリン酸、フォリン酸カルシウム塩、フェニルセリン、DL-3-フェニルセリン、アデノシンモノホスフェート、インドール酢酸、尿酸カリウム、フランジカルボン酸、フラン-2-アクリル酸、2-フランプロピオン酸、フェニルピルビン酸ナトリウム、ヒドロキシフェニルピルビン酸ナトリウム、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ピロガロール、安息香酸および前述の酸の塩などの化合物が挙げられる。態様において、陰イオン性芳香族賦形剤化合物は、イオン化塩形態で製剤化される。態様において、陰イオン性芳香族化合物は、ジメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシベンゾエートなどのヒンダードアミンの塩として製剤化される。態様において、陰イオン性芳香族賦形剤化合物は、有機カチオンなどの種々の対イオンを用いて製剤化される。態様において、治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、陰イオン性芳香族賦形剤化合物およびカフェインを用いて製剤化される。態様において、陰イオン性芳香族賦形剤化合物は、生物学的に適合性の副生成物を生じるように体内で代謝される。
【0067】
c. 賦形剤化合物カテゴリー3:官能基化アミノ酸
治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、1つ以上の官能基化アミノ酸を用いて製剤化され得、ここで単一の官能基化アミノ酸または1つ以上の官能基化アミノ酸を含むオリゴペプチドは、賦形剤化合物として使用され得る。態様において、官能基化アミノ酸化合物は、アミノ酸を生じるように加水分解または代謝され得る分子(「アミノ酸前駆体」)を含む。態様において、官能基化アミノ酸は、フェニル、ベンジル、アリール、アルキルベンジル、ヒドロキシベンジル、ヒドロキシアリール、ヘテロ芳香族基または縮合芳香族基などの芳香族官能基を含み得る。態様において、官能基化アミノ酸化合物は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル、シクロアルキル、グリセリル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、PEGおよびPPGエステルなどのエステル化アミノ酸を含み得る。態様において、官能基化アミノ酸化合物は、アルギニンエチルエステル、アルギニンメチルエステル、アルギニンヒドロキシエチルエステルおよびアルギニンヒドロキシプロピルエステルからなる群より選択される。態様において、官能基化アミノ酸化合物は、中性pHで水溶液中の荷電したイオン性化合物である。例えば、単一のアミノ酸は、アセテートまたはベンゾエートなどのエステルを形成することにより誘導体化され得、加水分解生成物は、両方が天然の材料である酢酸または安息香酸およびアミノ酸である。態様において、官能基化アミノ酸賦形剤化合物は、生物学的に適合性の副生成物を生じるように体内で代謝される。
【0068】
d. 賦形剤化合物カテゴリー4:オリゴペプチド
治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、賦形剤化合物としてオリゴペプチドを用いて製剤化され得る。態様において、オリゴペプチドは、構造が荷電した部分およびかさ高い部分を有するように設計される。態様において、オリゴペプチドは、2~10個のペプチドサブユニットからなる。オリゴペプチドは、二官能性、例えば無極性のものに連結した陽イオン性アミノ酸または無極性のものに連結した陰イオン性アミノ酸であり得る。態様において、オリゴペプチドは、2~5個のペプチドサブユニットからなる。態様において、オリゴペプチドは、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、ポリアルギニンおよびポリヒスチジンなどのホモペプチドである。態様において、オリゴペプチドはストレートの正の電荷を有する。他の態様において、オリゴペプチドはTrp2Lys3などのヘテロペプチドである。態様において、オリゴペプチドは、ABA反復パターンなどの互い違いの構造を有し得る。態様において、オリゴペプチドは、陰イオン性および陽イオン性のアミノ酸の両方、例えばArg-Gluを含み得る。理論に拘束されることなく、オリゴペプチドは、高粘度の溶液をもたらす分子間相互作用を低減するような様式で、タンパク質と結合し得る構造を含み;例えばオリゴペプチド-タンパク質結合は、電荷-電荷相互作用であり得、いくらかの無極性アミノ酸を残してタンパク質の周りの水和層の水素結合を破壊し、粘度を低下させる。いくつかの態様において、オリゴペプチド賦形剤は、約50mg/mL以下の濃度で組成物中に存在する。
【0069】
e. 賦形剤化合物カテゴリー5:短鎖有機酸
本明細書で使用する場合、用語「短鎖有機酸」は、C2-C6有機酸化合物およびその塩、エステルまたはラクトンをいう。このカテゴリーは、飽和および不飽和のカルボン酸、ヒドロキシ官能基化カルボン酸、ならびに直鎖、分岐または環状のカルボン酸を含む。態様において、短鎖有機酸中の酸性基は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸またはそれらの塩である。
【0070】
上述の4つの賦形剤カテゴリーに加えて、治療または非治療タンパク質の高濃度溶液は、賦形剤化合物として、短鎖有機酸、例えばソルビン酸、吉草酸、プロピオン酸、グルクロン酸、カプロン酸およびアスコルビン酸の酸または塩の形態を用いて製剤化され得る。このカテゴリーの賦形剤化合物の例としては、ソルビン酸カリウム、タウリン、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウムおよびアスコルビン酸ナトリウムが挙げられる。
【0071】
f. 賦形剤化合物カテゴリー6:低分子量脂肪族多価酸
治療または非治療PEG化タンパク質の高濃度溶液は、より低い溶液粘度を可能にする特定の賦形剤化合物を用いて製剤化され得、ここでかかる賦形剤化合物は、低分子量脂肪族多価酸である。本明細書で使用する場合、用語「低分子量脂肪族多価酸」は、<約1500の分子量を有し、少なくとも2つの酸性基を有する有機脂肪族多価酸をいい、ここで酸性基は、プロトン供与部分であることが理解される。酸性基は、プロトン付加酸性形態、塩形態またはそれらの組合せであり得る。酸性基の非限定的な例としては、カルボキシレート、ホスホネート、ホスフェート、スルホネート、スルホネート、ニトレートおよびニトライト基が挙げられる。低分子量脂肪族多価酸上の酸性基は、カルボン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、硝酸塩および亜硝酸塩などの陰イオン性塩形態であり得;それらの対イオンは、ナトリウム、カリウム、リチウムおよびアンモニウムであり得る。本明細書に記載されるPEG化タンパク質と相互作用するために適した低分子量脂肪族多価酸の具体例としては、マレイン酸、酒石酸、グルタル酸、マロン酸、イタコン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスパラギン酸、グルタミン酸、アレンドロン酸、エチドロン酸およびそれらの塩が挙げられる。それらの陰イオン性塩形態の低分子量脂肪族多価酸のさらなる例としては、ホスフェート(PO4
3-)、ハイドロジェンホスフェート(HPO4
3-)、ジハイドロジェンホスフェート(H2PO4
-)、スルフェート(SO4
2-)、バイスルフェート(HSO4
-)、ピロホスフェート(P2O7
4-)、ヘキサメタホスフェート、カルボネート(CO3
2-)およびバイカルボネート(HCO3
-)が挙げられる。陰イオン性塩についての対イオンは、Na、Li、Kまたはアンモニウムイオンであり得る。これらの賦形剤はまた、賦形剤と組み合わせて使用され得る。本明細書で使用する場合、低分子量脂肪族多価酸はまた、αヒドロキシ酸であり得、ここで第1の酸性基に隣接するヒドロキシル基、例えばグリコール酸、乳酸およびグルコン酸ならびにそれらの塩がある。態様において、低分子量脂肪族多価酸は、2つより多くの酸性基を有するオリゴマー形態、例えばポリアクリル酸、ポリリン酸塩、ポリペプチドおよびそれらの塩である。いくつかの態様において、低分子量脂肪族多価酸賦形剤は、約50mg/mL以下の濃度で組成物中に存在する。
【0072】
g. 賦形剤化合物カテゴリー7:ジオンおよびスルホン
有効な粘度低減賦形剤は、スルホン、スルホンアミド、または298Kで少なくとも1g/Lまで純水に可溶性であり、pH7でストレートの中性電荷を有するジオン官能基を含む分子であり得る。好ましくは、該分子は、1000g/mol未満およびより好ましくは500g/mol未満の分子量を有する。粘度の低減に有効なジオンおよびスルホンは、複数の二重結合を有し、水溶性であり、pH7でストレートの電荷を有さず、強力な水素結合供与体ではない。理論に束縛されることなく、二重結合特性は、タンパク質との弱いπスタッキング相互作用を可能にし得る。態様において、高いタンパク質濃度でかつ高濃度で高い粘度のみを生じるタンパク質において、荷電賦形剤は、静電的相互作用がより長い範囲の相互作用であるので有効ではない。溶媒和化したタンパク質表面は、優先的に親水性であり、該表面を可溶性にする。タンパク質の疎水性領域は一般的に、三次元構造内で覆われるが、該構造は、絶えず漸進的に変化し、アンフォールドされ、リフォールドされ(ときどき「ブリージング(breathing)」と称される)、隣接するタンパク質の疎水性領域は、互いに接触して、疎水性相互作用により凝集をもたらし得る。ジオンおよびスルホン賦形剤のπスタッキング特性は、かかる「ブリージング」の間に暴露され得る疎水性パッチを遮断し得る。賦形剤の別の他の重要な役割は、密に近接しているタンパク質間の疎水性相互作用および水素結合を妨害することであり得、これは溶液粘度を効果的に低減させる。この記載に適合するジオンおよびスルホン化合物としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルメチルスルホニルアセテート、エチルイソプロピルスルホン、ビス(メチルスルホニル)メタン、メタンスルホンアミド、メチオニンスルホン、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸メナジオンナトリウム、1,2-シクロペンタンジオン、1,3-シクロペンタンジオン、1,4-シクロペンタンジオンおよびブタン-2,3-ジオンが挙げられる。
【0073】
h. 賦形剤化合物カテゴリー8:両性イオン性賦形剤
治療または非治療タンパク質の溶液は、安定性を向上させるためまたは粘度を低減するために、賦形剤として、特定の両性イオン性化合物を用いて製剤化され得る。本明細書で使用する場合、用語「両性イオン性」は、陽イオン性荷電部分および陰イオン性荷電部分を有する化合物をいう。態様において、両性イオン性賦形剤化合物はアミンオキシドである。態様において、反対の電荷は、2~8の化学結合により互いに分離される。態様において、両性イオン性賦形剤化合物は、約50~約500g/molの分子量を有するものなどの低分子であり得るか、または約500~約2000g/molの分子量を有するものなどの中分子量分子であり得るか、または約2000~約100,000g/molの分子量を有するポリマーなどの高分子量分子であり得る。
【0074】
両性イオン性賦形剤化合物の例としては、(3-カルボキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、1-アミノシクロヘキサンカルボン酸、ホモシクロロイシン、1-メチル-4-イミダゾール酢酸、3-(1-ピリジニノ(pyridinio))-1-プロパンスルホン酸、4-アミノ安息香酸、アレンドロン酸塩、アミノエチルスルホン酸、アミノ馬尿酸、アスパルテーム、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、カルコブトロール(calcobutrol)、カルテリドール、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、クレアチン、シチジン、シチジンモノリン酸、ジアミノピメリン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ジメチルフェニルアラニン、メチルグリシン、サルコシン、ジメチルグリシン、両性イオン性ジペプチド(例えば、Arg-Glu、Lys-Glu、His-Glu、Arg-Asp、Lys-Asp、His-Asp、Glu-Arg、Glu-Lys、Glu-His、Asp-Arg、Asp-Lys、Asp-His)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、エクトイン、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、葉酸安息香酸混合物、葉酸ナイアシンアミド混合物、ゼラチン、ヒドロキシプロリン、イミノ二酢酸、イソグバシン、レシチン、ミリスタミンオキシド(myristamine oxide)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、アスパラギン酸、N-メチルアスパラギン酸、N-メチルプロリン、リジン、N-トリメチルリジン、オルニチン、オキソリン酸、リセドロン酸塩(risendronate)、アリルシステイン、S-アリル-L-システイン、ソマプシタン(somapacitan)、タウリン、テアニン、トリゴネリン(trigonelline)、ビガバトリン(vigabatrin)、エクトイン、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、o-オクチルホスホリルコリン、ニコチンアミドモノヌクレオチド、トリグリシン、テトラグリシン、β-グアニジノプロピオン酸、5-アミノレブリン酸塩酸塩、ピコリン酸、リドフェニン(lidofenin)、ホスホコリン、1-(5-カルボキシペンチル)-4-メチルピリジン-1-イウムブロミド、L-アンセリン硝酸塩、還元L-グルタチオン、N-エチル-L-グルタミン、N-メチルプロリン、(Z)-1-[N-(2-アミノエチル)-N-(2-アンモニオエチル(ammonioethyl))アミノ]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート(DETA-NONOate)、(Z)-1-[N-(3-アミノプロピル)-N-(3-アンモニオプロピル(ammoniopropyl))アミノ]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート(diolate)(DPTA-NONate)およびゾレドロン酸が挙げられる。
【0075】
理論に拘束されることなく、両性イオン性賦形剤化合物は、タンパク質と相互作用することにより、例えば電荷相互作用、疎水性相互作用および立体相互作用により、タンパク質を凝集に対してより抵抗性にすることにより、または電解質寄与、表面張力低減、利用可能な未結合の水の量の変化もしくは誘電率の変化などのタンパク質製剤中の水のバルク特性に影響することにより、粘度低減または安定化効果を発揮し得る。
【0076】
i. 賦形剤化合物カテゴリー9:水素結合因子を有するクラウディング剤
治療または非治療タンパク質の溶液は、安定性を向上させるためまたは粘度を低減するために、賦形剤として、水素結合因子を有するクラウディング剤を用いて製剤化され得る。本明細書で使用する場合、用語「クラウディング剤」は、タンパク質を溶液に溶解するために利用可能な水の量を低減し、有効なタンパク質濃度を増加する製剤添加剤をいう。態様において、クラウディング剤は、タンパク質粒子サイズを低下し得るかまたは溶液中のタンパク質アンフォールディングの量を低減し得る。態様において、クラウディング剤は、水素結合および水和効果により水の構造化を引き起こす溶媒改質剤(solvent modifier)として作用し得る。態様において、クラウディング剤は、溶液中のタンパク質間の分子間相互作用の量を低減し得る。態様において、クラウディング剤は、酸素、硫黄または窒素原子に結合した水素などの少なくとも1つの水素結合供与体因子を含む構造を有する。態様において、クラウディング剤は、約6~約11のpKaを有する少なくとも1つの弱い酸性水素結合供与体因子を含む構造を有する。態様において、クラウディング剤は、約2~約50の水素結合供与体因子を含む構造を有する。態様において、クラウディング剤は、ルイス塩基などの少なくとも1つの水素結合受容体因子を含む構造を有する。態様において、クラウディング剤は、約2~約50の水素結合受容体因子を含む構造を有する。態様において、クラウディング剤は、約50~500g/molの分子量を有する。態様において、クラウディング剤は、約100~350g/molの分子量を有する。他の態様において、ラフィノース、イヌリン、プルランまたはシニストリンなどのクラウディング剤は、500g/molを超える分子量を有し得る。
【0077】
水素結合因子を有するクラウディング剤賦形剤の例としては、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジオン(pyrimidione)、15-クラウン-5、18-クラウン-6、2-ブタノール、2-ブタノン、2-フェノキシエタノール、アセトアミノフェン、アラントイン、アラビノース、メグルミン、アラビトール、ベンジルアセトアセテート、ベンジルアルコール、クロロブタノール、コレスタノールテトラアセチル-b-グルコシド、シンナムアルデヒド、シクロヘキサノン、デオキシリボース、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、ジメチルイソソルビド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチロールエチレンウレア、ジメチルウラシル、エピラクトース、エリスリトール、エリトロース、乳酸エチル、エチルマルトール、炭酸エチレン、ホルムアミド、フコース、ガラクトース、ゲニステイン、ゲンチジン酸エタノールアミド、グルコノラクトン、グリセルアルデヒド、グリセロール、炭酸グリセロール、グリセロールホルマール、グリセロールウレタン、グリチルリチン酸、ゴッシピン(gossypin)、ハルパゴシド(harpagoside)、ヘデラコシド(hederacoside)C、イコデキストリン、イジトール、イミダゾリドン、イノシトール、イヌリン、イソマルチトール、コウジ酸、ラクチトール、ラクトビオン酸、ラクトース、ラクツロース、リキソース、マデカソサイド(madecasspsode)、マルトトリオース、マンギフェリン、マンノース、メレジトース(melzitose)、乳酸メチル、メチルピロリドン、モグロシドV、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルノイラミン酸、N-メチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルプロピオンアミド、ペンタエリスリトール、ピノレシノールジグルコシド、グルクロン酸、ピラセタム、没食子酸プロピル、炭酸プロピレン、プシコース、プルラン、ピロガロール、キナ酸、ラフィノース、レバウジオシド(rebaudioside)A、ラムノース、リビトール、リボース、リブロース、サッカリン、セドヘプツロース、シニストリン、ソルケタール(solketal)、スタキオース、スクラロース、タガトース、t-ブタノール、テトラグリコール、トリアセチン、N-アセチル-d-マンノサミン、ニストース、ケストース、ツラノース、アカルボース、D-糖酸1,4-ラクトン、チオジガラクトシド、フコイダン、ヒドロキシサフロールイエロー(safflor yellow)A、シキミ酸、ジオスミン、プラバスタチンナトリウム塩、D-アルトロース、L-グロン酸γラクトン(gulonic gamma-lactone)、ネオマイシン、ルブソシドジヒドロアルテミシニン、フロログルシノール、ナリンギン、バイカレイン、ヘスペリジン、アピゲニン、ピロガロール、モリン(morin)、サルサラート、ケンフェロール、ミリセチン、3',4',7-トリヒドロキシイソフラボン、(±)-タキシホリン、シリビン(silybin)、ペルセイトールジホルマール(perseitol diformal)、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、スルファセタミド、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド、エチル2,5-ヒドロキシベンゾエート、スペクチノマイシン、レスベラトロール、ケルセチン、硫酸カナマイシン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、2-(2-ピリジル)エチルアミン、2-イミダゾリドン、DL-1,2-イソプロピリデングリセロール、メトホルミン、m-キシレンジアミン、x-キシリレンジアミン、デメクロサイクリン(demeclocycline)、トリプロピレングリコール、ツベイモシド(tubeimoside)I、ベルベナロシド(verbenaloside)、キシリトールおよびキシロースが挙げられる。
【0078】
6. タンパク質/賦形剤溶液:特性およびプロセス
ある態様において、ヒンダードアミン、陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、または短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤、ならびに水素結合因子を有するクラウディング剤などの上で同定された賦形剤化合物またはそれらの組合せ(以降「賦形剤添加剤」)を用いて製剤化された治療または非治療タンパク質の溶液は、タンパク質拡散相互作用パラメーターkDにより、バイオレイヤー干渉法により、表面プラスモン共鳴により、または第2のビリアル係数B22を決定するによりこともしくは同様の方法により測定された場合、向上されたタンパク質-タンパク質相互作用特性またはタンパク質自己相互作用を生じる。本明細書で使用する場合、上で同定された賦形剤化合物またはそれらの組合せを使用して試験製剤により達成される1つ以上のタンパク質-タンパク質相互作用パラメーターにおける「向上」は、試験製剤を、賦形剤化合物または賦形剤添加剤を含まない同等の製剤と同等の条件下で比較した場合に、誘引性タンパク質-タンパク質相互作用における低下をいい得る。かかる向上は、全体的なプロセスまたはその局面に適用される特定のパラメーターを測定することにより同定され得、ここでパラメーターは、変更が定量され得、以前の状態または対照と比較され得るプロセスに属する任意の測定規準である。パラメーターは、プロセス自体、例えばその効率、費用、収率または速度に属し得る。
【0079】
パラメーターはまた、より大きなプロセスの特性または局面に属する代理のパラメーターであり得る。例として、kDまたはB22パラメーターなどのパラメーターは代理のパラメーターと称され得る。kDおよびB22の測定は、工業における標準的な技術を使用してなされ得、向上した溶液特性または溶液中のタンパク質の安定性などのプロセス関連パラメーターの指標であり得る。理論に拘束されることなく、高度に負のkD値は、タンパク質が強力な誘引性相互作用を有し、これにより凝集、不安定性および流動性問題がもたらされ得ることを示し得ると理解される。特定の上で同定された賦形剤化合物またはその組合せの存在下で製剤化される場合、同じタンパク質は、より小さい負のkD値または0に近いもしくは0を超えるkD値の向上した代理のパラメーターを有し得、この向上した代理のパラメーターは、プロセス関連パラメーターにおける向上と関連する。
【0080】
態様において、特定の上で同定された賦形剤化合物またはその組合せ、例えばヒンダードアミン、陰イオン性芳香族、官能基化アミノ酸、オリゴペプチド、短鎖有機酸、低分子量脂肪族多価酸、ジオンおよびスルホン、両性イオン性賦形剤、および/または水素結合因子を有するクラウディング剤は、タンパク質含有溶液の製造、処理、滅菌充填、精製および分析などのタンパク質関連プロセスを、濾過、滅菌濾過、デプス濾過、注射、移送、ポンプ輸送、混合、熱移送による加熱または冷却、気体移送、遠心分離、クロマトグラフィー、膜分離、遠心分離濃縮、タンジェンシャルフローフィルトレーション、ラジアルフローフィルトレーション、アキシャルフロー(axial flow)フィルトレーション、凍結乾燥およびゲル電気泳動などの処理方法を使用して向上させるために使用される。これらのおよび関連のあるタンパク質関連プロセスにおいて、目的のタンパク質は、目的のタンパク質を処理装置を通して運搬する溶液に溶解される。本明細書において「担体溶液」と称されるかかる溶液は、細胞培養培地(例えば分泌された目的のタンパク質を含む)、宿主細胞の溶解後の溶解物溶液(ここで目的のタンパク質は溶解物中に残る)、溶出溶液(クロマトグラフィー分離後の目的のタンパク質を含む)、電気泳動溶液、処理装置内の導管を通して目的のタンパク質を運ぶための輸送溶液等を含み得る。目的のタンパク質を含む担体溶液はまた、タンパク質含有溶液またはタンパク質溶液と称され得る。以下でより詳細に説明されるように、1つ以上の粘度低減賦形剤は、処理の種々の局面を向上するために、タンパク質含有溶液に添加され得る。本明細書で使用する場合、用語「向上する」、「向上」等は、パラメーターを対照溶液中で測定される場合の同じパラメーターと比較する場合、担体溶液中の目的のパラメーターの有利な変化をいう。本明細書で使用する場合、「対照溶液」は、粘度低減賦形剤を欠くが他の点では担体溶液と実質的に同様の溶液を意味する。本明細書で使用する場合、「対照プロセス」、例えば対照濾過プロセス、対照クロマトグラフィープロセス等は、目的のタンパク質関連プロセスと実質的に同様であり、担体溶液の代わりに対照溶液を用いて実施されるタンパク質関連プロセスである。
【0081】
例えば、タンパク質含有溶液を、導管(例えばフローチャンバー、配管またはチューブ)を通してポンプ輸送するプロセスにおいて、上述のように、ポンプ輸送プロセスの前またはその間に粘度低減賦形剤をタンパク質溶液に添加することは、溶液をポンプ輸送するために必要とされる力および動力を実質的に低減し得る。流体は一般的にフローに対して抵抗性、すなわち粘性を示すこと、およびフローを誘導および伝播するためにこの粘度を克服するための力を流体にかけなければならないことが理解される。ポンプ輸送に必要とされる動力Pは、以下の等式:
【数1】
に示されるようにヘッドHおよび容量Qに比例する。
【0082】
粘性の流体は、ポンプ輸送のための動力要件を増加し、ポンプ輸送効率を低下させ、ポンプヘッドおよび容量を低下させ、および配管内の摩擦抵抗を増加させる傾向がある。ポンプ輸送の前またはその間に、タンパク質溶液に上述の粘度低下賦形剤を添加することは、ヘッド(H、式1)もしくは容量(Q、式1)のいずれかまたはその両方を低下させることにより処理費用を実質的に低下させ得る。低下した粘度の利益は、例えば向上したスループット、増加した収率または低下した処理時間により示され得る。さらに、導管を通した流体の移送からの摩擦消失は、かかる流体を運搬することに関連する費用のかなりの部分を説明し得る。ポンプ輸送の前またはその間に、タンパク質溶液に上述の粘度低下賦形剤を添加することは、ポンプ輸送プロセスに伴う摩擦を低下させることにより処理費用を実質的に低下させ得る。処理費用の量は、粘度低減賦形剤を使用することにより向上され得る処理パラメーターを表す。
【0083】
タンパク質溶液のためのこれらのプロセスおよび処理方法は、製造、処理、精製および分析工程の間の溶液中のタンパク質のより低い粘度、向上した溶解性または向上した安定性のために、向上した効率を有し得る。処理効率の測定または溶液中のタンパク質の粘度、溶解性もしくは安定性などの代理のパラメーターの測定は、粘度低減賦形剤を使用することにより向上され得る処理パラメーターを表す。いくつかの異なる要因が、処理の間のタンパク質粘度、溶解性および安定性に有害に影響することが理解される。例えば、タンパク質含有溶液は、タンパク質溶液を、限定されないがポンプ輸送、混合、遠心分離および濾過を含む典型的な処理操作により処理することにより誘導される有意なせん断ストレスなどの製造および精製の間の種々の物理的ストレッサーに供される。また、これらの処理工程の間に、タンパク質が吸着され得る流体内に気泡が混入するようになり得る。処理の間に生じる典型的なせん断ストレスと連結されるかかる界面張力(tension force)は、吸着されたタンパク質分子をアンフォールドおよび凝集させ得る。さらに、有意なタンパク質アンフォールディングは、ポンプキャビテーション事象の間および製造の際の限外濾過およびダイアフィルトレーション膜などの固体表面への暴露の間に起こり得る。かかる事象はタンパク質折り畳みおよび生成物の質を損ない得る。
【0084】
ニュートン流体について、以下の等式:
【数2】
に示されるように、所定のプロセスにより課されるストレスτは、せん断速度
【数3】
および流体の粘度ηに比例する。
【0085】
上述の賦形剤化合物の1つ以上またはそれらの組合せを用いてタンパク質溶液を製剤化することにより、溶液粘度は低下され、したがってタンパク質溶液が遭遇するせん断ストレスが低下される。低下したせん断ストレスは、例えば処理パラメーターのより良いまたはより望ましい測定により示されるように、処理される製剤の安定性を向上し得る。かかる向上された処理パラメーターは、タンパク質凝集物、粒子もしくは肉眼では見えない粒子(濁りとして肉眼的に示される)の低減されたレベル、低減された生成物損失または向上された全体収率などの測定規準を含み得る。向上された処理パラメーターの別の例として、タンパク質含有溶液の粘度の低減は、溶液についての処理時間を減少し得る。所定の単位操作のための処理時間は一般的に、せん断速度と反比例する。そのため、所定の特徴的なストレスについて、上述の賦形剤化合物またはその組合せの添加によるタンパク質溶液粘度の減少は、せん断速度(
【数4】
式2参照)の増加およびそのために処理時間の減少に関連する。
【0086】
処理の間に、溶液中のタンパク質は、所望のタンパク質有効成分、例えば治療または非治療タンパク質であり得ることが理解される。本明細書に記載される賦形剤を使用してかかるタンパク質有効成分の処理を容易にすることは、タンパク質有効成分の収率もしくは産生の速度を増加させ得るか、または特定のプロセスの効率を向上し得るか、またはエネルギー使用等を減少させ得、そのいずれかの結果は、粘度低減賦形剤の使用により向上された処理パラメーターを表す。特定の処理技術の間、例えばバイオプロセスの発酵および精製工程の間に、タンパク質夾雑物が形成され得ることも理解される。夾雑物をより迅速に、より完全にまたはより効率的に除去することも、所望のタンパク質、すなわちタンパク質有効成分の処理を向上し得;これらの結果は、粘度低減賦形剤化合物または添加剤の使用により向上された処理パラメーターを表す。本明細書に記載されるように、本明細書に記載される特定の賦形剤は、溶液粘度を低下させること、タンパク質安定性を向上させることおよび/またはタンパク質溶解性を増加させることにより、所望のタンパク質有効成分の輸送を向上させ得、望ましくないタンパク質夾雑物質の除去を向上させ得;粘度低減賦形剤または添加剤の使用により向上された処理パラメーターを表す両方の効果は、これらの賦形剤または添加剤がタンパク質製造の全プロセスを向上させることを示す。有利なことに、処理に使用される粘度低減賦形剤は、潜在的な患者に対するその生理学的影響またはその欠如に基づいて選択される。例えば、特定の置換されたフェネチルアミンはモノアミン神経伝達物質系などの種々の神経伝達物質を調節することが理解され、これらは、中枢神経系に対するそれらの影響のために、種々の精神作用性効果(例えば興奮性、幻覚誘発性またはエンタクトゲン性(entactogenic)効果)を有し得るが、精神作用性効果を生じない、または臨床的に問題のある精神作用性効果を生じない、または用量関連様式で精神作用性効果を生じ得るが粘度低減賦形剤をプロセスの工程に添加することにより処理パラメーターを向上させるための本明細書に記載されるプロセスにより産生された製剤において見られる用量では精神作用性効果を生じない粘度低減量で粘度低減フェネチルアミン賦形剤を使用することが望ましくあり得る。同様に、他の生理学的効果(例えば心臓血管、呼吸器、胃腸、尿生殖器等)を生じないか、または臨床的に問題のある生理学的効果を生じないか、または用量関連様式で生理学的効果を生じ得るが、粘度低減賦形剤をプロセスの工程に添加することにより処理パラメーターを向上させるための本明細書に記載されるプロセスにより産生された製剤において見られる用量では生理学的効果を生じない他の粘度低減賦形剤を使用することが望ましくあり得る。
【0087】
治療タンパク質産生および精製のための特定のプラットフォーム単位操作は、本明細書に開示される粘度低減賦形剤の有利な使用のさらなる例およびこれらの賦形剤または添加剤の処理パラメーター向上のさらなる例を提供する。例えば、上述の粘度低減賦形剤の1つ以上を、以下に記載されるようにこれらの産生および精製プロセスに導入することは、分子安定性および回収における実質的な向上ならびに操作費用の低下を提供し得る。
【0088】
モノクローナル抗体などの治療タンパク質を産生および精製するための広く実施される技術は一般的に、発酵プロセス、その後の一連の精製処理のための工程からなることが、当該技術分野において理解される。発酵または上流処理(USP)は、治療タンパク質を、典型的に細菌または哺乳動物細胞株を使用して、バイオリアクター内で増殖させるこれらの工程を含む。態様において、USPは、
図1に示されるものなどの工程を含み得る。態様において、精製または下流処理(DSP)は、
図2に示されるものなどの工程を含み得る。
【0089】
図1に示されるように、USPは、マスターセルバンク(MCB)由来のバイアルを融解する工程102により始まり得る。MCBは、工程104に示されるように、作業セルバンク(示さず)を形成するためおよび/またはさらなる産生のための作業ストックを産生するために拡張(extend)され得る。細胞培養は、工程108および110に示されるように一連の播種および産生バイオリアクター内で起こり、工程114に示されるように所望の治療タンパク質が採取され得るこれらのバイオリアクター生成物112を生じる。採取114後、生成物はさらなる精製(すなわち以下により詳細に記載され
図2に示されるDSP)に供され得るか、またはこれらの生成物は、典型的に約-80℃の温度で凍結および貯蔵することにより、大量に(in bulk)貯蔵され得る。
【0090】
態様において、細胞培養技術によるタンパク質産生は、プロセス関連パラメーターにおける向上により示されるように、上で同定された賦形剤の使用により向上され得る。態様において、所望の賦形剤は、細胞培養培地の粘度を少なくとも20%低減するのに有効な量でUSPの間に添加され得る。他の態様において、所望の賦形剤は、細胞培養培地の粘度を少なくとも30%低減するのに有効な量でUSPの間に添加され得る。態様において、所望の賦形剤は、約1mM~約400mMの量で細胞培養培地に添加され得る。態様において、所望の賦形剤は、約20mM~約200mMの量で細胞培養培地に添加され得る。態様において、所望の賦形剤は、約25mM~約100mMの量で細胞培養培地に添加され得る。所望の賦形剤または賦形剤の組合せは、細胞培養培地に直接添加され得るか、またはより複雑な補充媒体、例えば別々に製剤化されて、細胞培養培地に添加される栄養含有溶液もしくは「フィード溶液」の構成要素として添加され得る。態様において、第2の粘度低減化合物は、直接または補助的媒体を介してのいずれかで担体溶液に添加され得、ここで第2の粘度低減化合物は、目的の特定のパラメーターにさらなる向上を付加する。
【0091】
以下に記載されるように、USPの間に、1つ以上の粘度低減賦形剤の使用により向上され得る多くの処理関連パラメーターがある。例えば、態様において、粘度低減賦形剤の使用は、接種物拡張104ならびに細胞培養108および110などの工程の間に細胞増殖の速度および/または程度などのパラメーターを向上し得るか、および/または種々のプロセスパラメーターにおける向上と相関する代理のパラメーターを向上し得る。例えば、産生バイオリアクター工程110などの工程で、上で同定された賦形剤をUSPプロセスに添加することは、細胞培養培地の粘度を減少し得、このことはその後熱移送効率および気体移送効率を向上し得る。細胞培養プロセスは、タンパク質発現を可能にするために細胞への酸素注入を必要とするので、細胞への酸素の拡散は律速であり得、溶液粘度の低下により気体移送効率を向上させることにより酸素取込みの速度を向上させることは、タンパク質発現および/またはその効率の速度(rate)または量を向上し得る。この文脈において、酸素取込みの速度および気体移送効率の速度などのパラメーターは代理のパラメーターと考えられ得、その向上は、向上したタンパク質発現または向上した処理効率というプロセスパラメーターにおける向上に相関する。別の例として、粘度低減賦形剤の利用可能性は、例えば接種物拡張工程104の間ならびに細胞培養工程108および110の間に、タンパク質発現に必要とされるタンパク質増殖因子の溶解性などの代理のパラメーターを向上させることにより、処理を向上させ得;向上された増殖因子溶解性により、これらの物質は細胞に対してより利用可能になり得、それにより細胞増殖が容易になる。
【0092】
態様において、USPの間のタンパク質回収の量またはタンパク質回収の速度などのプロセスパラメーターは、いくつかの機構によりUSPの間に粘度を低減することにより向上され得る。例えば、完了した細胞培養物からの採取114の間の溶解工程の終わりに、治療タンパク質の回収は、より効率的であり得るか、または別の方法では上で同定された賦形剤の使用により向上され得る。理論に拘束されることなく、発現されたタンパク質の粘度を低減することにより、これらの粘度低減賦形剤は、他の溶解物構成要素から離れる治療タンパク質の拡散の効率を増加し得る。また、膜および他の細胞残骸のタンパク質含有上清(supernate)からの分離は、粘度低減賦形剤の使用により、より速い分離速度またはより高い程度の上清純度によって達成され得、それによりUSP効率のプロセスパラメーターが向上される。さらに、賦形剤は培地の粘度を低減させるので、遠心分離または濾過工程を使用するタンパク質分離工程は、粘度低減賦形剤の使用により、より速く達成され得る。
【0093】
態様において、さらなる利益として、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集は低減されるので、細胞培養における上述の粘度低減賦形剤の使用は、USPの間のタンパク質収率などのプロセスパラメーターを増加し得る。細胞培養は最大収率の組み換えタンパク質を産生するために最適化されるので、得られたタンパク質は、ミスフォールディングを生じ得る高度に濃縮された様式で発現され;粘度低減賦形剤を添加することは、ミスフォールディングおよび凝集をもたらす誘引性のタンパク質-タンパク質相互作用を低減し得、それにより採取114のために利用可能なインタクトな組み換えタンパク質の量を増加することが理解される。
【0094】
例示的態様において
図2に示される下流処理(DSP)は、治療タンパク質、例えばモノクローナル抗体、生物医薬、ワクチンおよび他の生物製剤の回収および精製を生じる一連の工程を含む。USPの終わりに、宿主細胞から分泌された目的の治療タンパク質は、細胞培養培地に溶解し得る。治療タンパク質はまた、USPシーケンスの終わりに宿主細胞の溶解後に、流体培地に溶解され得る。DSPは、目的のタンパク質が溶解した溶液(例えば培養培地または宿主細胞溶解物培地)から目的のタンパク質を回収して、目的のタンパク質を精製するように企図される。DSPの間に、(i)培地から種々の夾雑物(例えば不溶性細胞残骸および粒状物)を除去し、(ii)抽出、沈殿、吸着または限外濾過などの技術によりタンパク質生成物を単離し、(iii)アフィニティークロマトグラフィー、沈殿または結晶化などの技術によりタンパク質生成物を精製し、(iv)生成物をさらに仕上げ(polished)、ウイルスを除去する。
【0095】
図2に示されるように、細胞培養採取物由来の供給原料200(
図1にも記載される)は最初に、典型的にプロテイン-Aクロマトグラフィーまたは他の類似のクロマトグラフィー工程を含むアフィニティークロマトグラフィー204に供される。ウイルス不活性化工程208は典型的に、供給原料を低pHホールド(pH hold)に供することを含む。1つ以上の仕上げクロマトグラフィー工程210および212は、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、電荷バリアントおよび凝集物などの不純物を除去するように実施される。陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーは一般的に、最初の仕上げクロマトグラフィー工程210として使用されるが、それに先立つかまたはそれに続くかのいずれかの第2のクロマトグラフィー工程212が付随し得る。第2のクロマトグラフィー工程212はさらに、宿主細胞関連不純物(例えばHCPまたはDNA)または凝集物などの生成物関連不純物を除去する。陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、第2のクロマトグラフィー工程212として使用され得る。ウイルス濾過214は、ウイルス除去を実行するために行われる。最終精製工程218は、限外濾過およびダイアフィルトレーション、ならびに製剤化のための調製を含み得る。
【0096】
一般的に上述されるように、精製プロセスまたは発酵プロセス後のDSPは、(1)細胞培養採取、(2)クロマトグラフィー(例えばプロテイン-Aクロマトグラフィーおよびクロマトグラフィー仕上げ(polishing)工程、例えばイオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィー)、(3)ウイルス不活性化および(4)濾過(例えばウイルス濾過、滅菌濾過、透析、ならびにタンパク質を濃縮するためおよびタンパク質を製剤化バッファに交換するための限外濾過およびダイアフィルトレーション工程)を含み得る。これらの精製プロセスに関連するプロセスパラメーターを向上するために本明細書に記載される粘度低減賦形剤を使用することの利点を説明するための例を以下に提供する。粘度低減賦形剤またはその組合せは、可溶性または安定化された形態のいずれにせよそれを担体溶液に添加することによりまたは、目的のタンパク質と賦形剤との接触を実行する任意の他の様式において、DSPの任意の段階で導入され得ることが理解される。態様において、第2の粘度低減化合物は、DSPの間に担体溶液に添加され得、ここで第2の粘度低減化合物は、目的の特定のパラメーターにさらなる向上を付加する。
【0097】
(1) 細胞培養採取:細胞培養採取は一般的に、タンパク質含有溶液から細胞性残骸が物理的に除去される遠心分離およびデプス濾過操作を含む。遠心分離工程は、粘度低減賦形剤の利点を用いて、細胞残骸からの可溶性タンパク質のより完全な分離を提供し得る。バッチプロセスまたは連続プロセスのいずれによりなされるにせよ、遠心分離(centrifuge separation)は、標的タンパク質の回収を最大化するために可能な限り多く、高密度相を固化することを必要とする。態様において、上で同定された賦形剤またはその組合せの添加は、例えば遠心分離プロセスの高密度相から離れて流れるタンパク質含有遠心分離液(centrate)の収率を増加することにより、タンパク質収率のプロセスパラメーターを増加し得る。デプス濾過工程は、律粘度(viscosity-limited)工程であるので、溶液粘度を低減する賦形剤を使用することにより効果的になり得る。これらのプロセスはまた、精製されている治療タンパク質分子を脱安定化するせん断誘導ストレスに関連(couple)し得る気泡を、タンパク質溶液に導入し得る。上述のように細胞培養採取の前および/またはその間に粘度低減賦形剤をタンパク質含有溶液に添加することは、タンパク質をこれらのストレスから保護し得、それにより定量された生成物回収のプロセスパラメーターを向上させる。
【0098】
(2) クロマトグラフィー:遠心分離または濾過による細胞培養採取後、クロマトグラフィーは典型的に、発酵培養液から治療タンパク質を分離するために使用される。プロテインAクロマトグラフィーは、治療タンパク質が抗体である場合に使用され:プロテインAは、プロテインAが高い流量および容量で動的に結合するIgG抗体に対して選択的である。陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーは、プロテインAクロマトグラフィーに対する経済的代替物として使用され得る。CEXが使用される場合、供給物(feed)のpHは、調整されなければならず、その伝導性は、動的結合能力を最適化するために、カラムに負荷される前に低減される。プロテインAクロマトグラフィーの代替物として、擬似的樹脂も使用され得る。これらの樹脂は、免疫グロブリンに結合するためのリガンド、例えばIg結合タンパク質様プロテインGまたはプロテインL、合成リガンドまたはプロテインA様多孔質ポリマーを提供する。
【0099】
DSPの間に他のクロマトグラフィープロセスが使用され得る。イオン交換クロマトグラフィー(IEC)は、以前のプロセスの間に導入された不純物、例えば浸出したプロテインA、細胞株由来のエンドトキシンもしくはウイルス、残存宿主細胞タンパク質もしくはDNAまたは培地構成要素を除去するために使用され得る。CEXまたは陰イオン交換クロマトグラフィーのいずれにせよ、IECは、プロテインAクロマトグラフィー後に直接適用され得る。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、凝集物を除去するための仕上げ工程として一般的に使用されるIECを補完し得る。態様において、上で同定された賦形剤の使用は、クロマトグラフィーカラム負荷工程の間に宿主細胞タンパク質の溶解性を増加させ得、その粘度を低下させ得る。態様において、上で同定された賦形剤の使用は、クロマトグラフィーカラム負荷工程および溶出工程の間に、治療タンパク質の溶解性を増加させ得、その粘度を低下させ得る。
【0100】
タンパク質精製の間のクロマトグラフィープロセスは、タンパク質製剤化に、(a)プロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶出の間の低pH条件、(b)クロマトグラフィー樹脂の孔空間内の上昇した局所タンパク質濃度(しばしばおよそ300~400mg/mL)、(c)イオン交換クロマトグラフィーの間の上昇した塩濃度および(d)HICカラムからの溶出の間の塩析剤の上昇した濃度などの厳しい条件を付与する。上述のように、クロマトグラフィーの前および/またはその間にタンパク質含有溶液に粘度低減賦形剤を添加することは、クロマトグラフィーカラムを通るタンパク質の移動を容易にし得るので、タンパク質は、クロマトグラフィー処理工程により付与される潜在的に損傷を与える条件への暴露が少なくなる。また、カラム孔空間内の上昇した局所タンパク質濃度は、この空間内に、カラムにかなりの背圧をかける高度に粘性の材料を生じ得る。この背圧を軽減するために、比較的大きい孔を有する培体が典型的に使用される。しかしながら、大きな孔の培地の分離力は、小さな孔の対応物よりも小さい。上述の粘度改質賦形剤の組み込みは、クロマトグラフィー培体におけるより小さい孔の使用を可能にし得る。態様において、プロテインAクロマトグラフィーからの溶出工程は、治療タンパク質を、標的タンパク質の溶解性を低減させ得その凝集を増加させ得る低pH条件に暴露し;賦形剤の添加は、標的タンパク質の溶解性を増加させ得、プロテインAクロマトグラフィー工程からの回収の収率を向上させる。他の態様において、賦形剤の使用は、より高いpHでのプロテインA樹脂からの標的タンパク質の溶出を可能にし得、これは、標的タンパク質に対する化学的ストレスを低減し得、処理の間のタンパク質分解の量を低減することにより、タンパク質収率のプロセスパラメーターの向上を生じる。
【0101】
(3) ウイルス不活性化:ウイルス不活性化プロセスは典型的に、タンパク質溶液を低pH、例えば4未満のpHに延長された時間保持することを含む。しかしながらこの環境は、治療タンパク質を不安定化させ得る。例えばウイルス不活性化プロセスの前および/またはその間に粘度低減賦形剤を添加することにより粘度低減賦形剤の存在下でタンパク質を製剤化することは、タンパク質の安定性もしくは溶解性またはそのストレートの収率などのプロセスパラメーターを向上し得る。また、安定化賦形剤の存在下でタンパク質を製剤化することは、例えばウイルス不活性化プロセスの前および/またはその間に安定化賦形剤を添加することにより、タンパク質の安定性もしくは溶解性、モノマー形態におけるその構造完全性、凝集に対するその抵抗性、またはそのストレートの収率などのプロセスパラメーターを向上し得る。
【0102】
(4) 濾過:濾過プロセスは、ウイルス粒子を除去するためのウイルス濾過プロセス(ナノフィルトレーション)、ミクロンスケールの不純物を除去するための精密濾過ならびにタンパク質溶液を濃縮するためおよびバッファ系を交換するための限外濾過/ダイアフィルトレーションプロセスを含む。
【0103】
(a) ウイルス濾過は、組換えヒトモノクローナル抗体のサイズのおよそ2倍であり得るウイルス粒子を除去することによりタンパク質溶液を精製する。したがって、ウイルス濾過のための濾過膜は、ナノサイズの孔を必要とし得る。タンパク質が通過しなければならない小さい孔サイズの結果として、この濾過工程は、タンパク質にストレスを導入し得、タンパク質凝集物粒子からの有意なレベルの膜の汚れを伴う。上述のように、例えば濾過の前および/またはその間の粘度低減賦形剤の添加は、集合的拡散率(collective diffusivity)を増加することにより濾過系における背圧などの測定可能なパラメーターを低減し得、膜の汚れを生じるタンパク質-タンパク質相互作用を和らげることにより膜の汚れに対する傾向を低減し得る。最終的な結果は、タンパク質精製の間のウイルス濾過ユニットの向上した性能を示す(indicting)これらのパラメーターにおける向上である。
【0104】
(b) 限外濾過およびダイアフィルトレーション(UF/DF)プロセスは、タンパク質溶液を濃縮し、タンパク質含有溶液を、目的のタンパク質よりも小さい特徴的な分子量カットオフを有するフィルター膜に通すことによりバッファ系を交換する。この工程において、タンパク質溶液は、フィルターユニット内での高いせん断ストレス、上昇したタンパク質濃度および典型的にUF/DFプロセスの間に使用される疎水性膜へのタンパク質の吸着に直面し、これらの全ては、タンパク質凝集を増加し得る。上述のように、例えばUF/DFプロセスの前および/またはその間の粘度低減賦形剤の添加は、集合的拡散率(例えばkDの増加により測定される)を増加することにより濾過系における背圧を低減し得る。これは膜を通過するせん断ストレスを低減するのみではなく、濾過膜から離れる逆拡散も促進するので、膜界面での有効なタンパク質濃度を低下させ、透過フラックスを増加させる。結果的に、粘度低減賦形剤の使用は、生成物損失を低減させ、ストレートの収率を増加させて、これらの濾過プロセスの間のより高いスループットに関連するパラメーターを向上させ得る。さらに、粘性の流体を、限外フィルターおよびダイアフィルターに通すことは、フィルターデバイスにわたって大きな圧力の低下を生じ得、分離を非効率的にする。上述のように、粘度低減賦形剤の存在下でタンパク質溶液を製剤化することは、フィルターデバイスにわたる圧力の低下を実質的に低減し得、それにより操作、費用および処理時間のいずれも低下させることにより、操作、費用および処理時間のプロセスパラメーターを向上させる。
【0105】
より詳細に、UF/DFは、バッファおよび他の分析物をフィルター膜に通しながら目的の生物学的分子が保持されるDSPの操作である。UF/DFにおいて、標的タンパク質は、フィルター膜自体により保持され得、フィルター膜表面でゲル層の形成をもたらす。このゲル層は、フィルター膜表面での高い局所的なタンパク質濃度の領域において、高いタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)のために処理工程の効率を効果的に制限し得、それにより、フィルタースループットを低減しおよび/または目的のタンパク質の凝集を生じる。タンパク質含有溶液に粘度低減賦形剤を組み込むことは、UF/DFの間にPPIを低減するおよび/または標的タンパク質の溶解性を増加させるという効果を有し得る。粘度低減賦形剤を組み込むことはまた、濾過効率を向上し得、操作時間を減少し得、および/または標的タンパク質の収率を増加し得る。粘度低減賦形剤はまた、ウイルス濾過および滅菌濾過などの他の濾過プロセスの間に利益を提供し得る。
【0106】
UF/DFにおいて有用な粘度低減賦形剤のための好ましい構造は、生理学的pHで0のストレートの電荷を有し、飽和または不飽和の5員または6員の炭素環式または複素環式環を含む低分子である。態様において、環構造は、ラクタム、フラン、テトラヒドロフラン、ピロール、ピロリジン、ピラン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、ジオキサン、モルホリン、ピリミジン、スルフィミド、スルホンアミドまたはそれらの組合せなどの複素環である。態様において、環構造は、構成要素の環が飽和または不飽和であり得、例えばヒドロキシル、カルボニル、カルボン酸、アミド等の官能基を含む短鎖(例えばC1-C6)脂肪族または環式の飽和または不飽和分子を含む任意の置換を有する多環式環系の一部である。
【0107】
UF/DFに有用な粘度低減賦形剤のための別の好ましい構造は、生理学的pHでストレートの正の電荷を有し、ヘテロ原子を有するかまたは有さない芳香族環構造を含む低分子である。他の好ましい構造としては、例えばヒドロキシル、カルボニル、カルボン酸、アミド等の官能基で任意に置換される、短鎖(例えばC3-C6)の脂肪族または環式の飽和もしくは不飽和の分子が挙げられる。所望の賦形剤は、処理に使用されるバッファ溶液に可溶性であり、糖分子を含まない。UF/DFに有用な粘度低減賦形剤の例としては、1,3-ジメチルウラシル、1-メチルウラシル、3-メチルウラシル、1,3-ジエチルウラシル、6-メチルウラシル、ウラシル、チミン、1-メチルチミン、O-4-メチルチミン、1,3-ジメチルチミン、ジメチルチミンダイマー、シトシン、5-メチルシトシン、3-メチルシトシン、2-ピロリジノン、N-メチルピロリドン、ジメチルイソソルビド、ジメチルフェニルアラニン、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、ジエチルニコチンアミド、2-ブタノール、2-ブタノン、イミダゾール、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムカリウム、カフェイン、テアクリン(theacrine)、シクロヘキサノン、ジメチルスルホン、ピラセタム、1,3-ジメチル-2-オキソヘキサヒドロピリミジン、トリゴネリン、スルホラン、ホルデニン、ジフェンヒドラミン、フェネチルアミン、N-メチルフェネチルアミン、N,N-ジメチルフェネチルアミン、β,3-ジヒドロキシフェネチルアミン、β,3-ジヒドロキシ-N-メチルフェネチルアミン、3-ヒドロキシフェネチルアミン、4-ヒドロキシフェネチルアミン、チロシノール、チラミン、N-メチルチラミン、ピリドキシン、ジサイクロミン、2-ピリジルエチルアミンが挙げられる。有利なことに、粘度低減賦形剤は、単独でまたはそれらの組合せで使用され得る。
【0108】
態様において、粘度低減賦形剤は、約25mM~約1000mMの有効濃度で、または約50mM~約500mMの有効濃度で、または約75mM~約300mMの有効濃度で、または約25mM~約500mMの有効濃度で、または約50mM~約300mMの有効濃度で、UF/DFについての処理バッファ溶液に溶解され得る。例示的な態様において、粘度低減賦形剤は、約25mM~約1000mM、または約50mM~約500mM、または約75mM~約300mMの濃度で、UF/DFについての処理バッファ溶液に添加される1,3-ジメチルウラシルである。別の例示的な態様において、粘度低減賦形剤は、約25mM~約500mM、または約50mM~約300mM、または約75mM~約200mMの濃度で処理バッファ溶液に添加されるホルデニンHClである。
【0109】
上流タンパク質処理または下流精製が添加された賦形剤とともに完了した後、賦形剤は、薬物物質混合物の一部として残り得るか、またはタンパク質有効成分から分離され得る。タンパク質有効成分から賦形剤を分離するために、バッファ交換、イオン交換、限外濾過および透析などの典型的な低分子分離方法が使用され得る。上に概略されるタンパク質精製プロセスに対する有益な効果に加えて、上で同定された賦形剤の使用は、タンパク質製造、処理および精製において使用される設備を保護および保存し得る。例えば、タンパク質処理設備の掃除(cleaning)、滅菌および維持などの設備関連プロセスは、減少された汚れ、減少された変性、より低い粘度および向上されたタンパク質の溶解性のために上で同定された賦形剤の使用により容易にされ得、これらのプロセスの向上に関連するパラメーターは、同様に向上される。
【0110】
下流プロセスはクロマトグラフィープロセスであり得、クロマトグラフィープロセスはプロテインAクロマトグラフィープロセスであり得る。態様において、クロマトグラフィープロセスは、目的のタンパク質を回収し、ここで目的のタンパク質は、対照溶液と比較した場合、向上した純度、向上した収率、より少ない粒子、より少ないミスフォールディング、向上した生物学的活性またはより少ない凝集からなる群より選択される向上したタンパク質関連パラメーターを特徴とする。態様において、向上したタンパク質関連パラメーターは、クロマトグラフィープロセスからの目的のタンパク質の向上した収率である。態様において、クロマトグラフィープロセスは、目的のタンパク質を回収し、ここで目的のタンパク質は、賦形剤の非存在下での回収プロセスと比較して、モノマー形態で回収された向上したパーセンテージ、すなわちより低いレベルの凝集を特徴とする。
【0111】
上流および/または下流処理を向上するための賦形剤化合物の使用は本明細書において広範囲に記載されるが、目的のパラメーターの向上などの所望の効果を達成するために、賦形剤の組合せが一緒に添加され得ることが理解される。用語「賦形剤添加剤」は、所望の効果もしくは向上したパラメーターをもたらす単一の賦形剤化合物、または賦形剤化合物の組合せのいずれかをいい得、ここで該組合せは、所望の効果または向上したパラメーターの原因である。
【実施例】
【0112】
実施例
材料:
・ウシガンマグロブリン(BGG)、>99%純度、カタログ#G5009、Sigma Aldrich
・ヒトガンマグロブリン(HGG)、Octagam 10%、Octapharma、Switzerland
・ヒスチジン、Sigma Aldrich
・以下の実施例に記載される他の材料は、そうではないと特定されないかぎりSigma Aldrichのものであった。
【0113】
実施例1:賦形剤化合物および試験タンパク質を含む製剤の調製
製剤は、賦形剤化合物および試験タンパク質を使用して調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤において使用される治療タンパク質または非治療製剤において使用される非治療タンパク質のいずれかをシミュレートすることが意図された。かかる製剤は、以下の方法での粘度測定のために、異なる賦形剤化合物を伴って50mM塩酸ヒスチジンにおいて調製された。1.94gのヒスチジンを蒸留水に溶解して、1Mの塩酸(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いてpHを約6.0に調整し、次いで容量フラスコ中、蒸留水を用いて250mLの最終体積まで希釈することにより、塩酸ヒスチジンを最初に調製した。次いで、賦形剤化合物を50mMヒスチジンHClに溶解した。賦形剤のリストを実施例4、5、6および7において以下に提供する。いくつかの場合において、賦形剤化合物をpH6に調整して、その後50mMヒスチジンHClに溶解した。この場合、賦形剤化合物を最初に、約5wt%で脱イオン水に溶解し、塩酸または水酸化ナトリウムのいずれかを用いてpHを約6.0に調整した。次いで調製された塩溶液を、約65℃で対流式実験室オーブンに入れて水を蒸発させ、固形賦形剤を単離する。一旦50mMヒスチジンHCl中の賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、賦形剤溶液1mL当たり約0.336gのBGGの割合で溶解した。これにより約280mg/mLの最終タンパク質濃度が得られた。賦形剤を伴う50mMヒスチジンHCl中BGGの溶液を20mLバイアル中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上100rpmで一晩振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで10分間遠心分離し、粘度測定の前に含まれる空気を除去した。
【0114】
実施例2:粘度測定
実施例1に記載されるように調製した製剤の粘度測定はDV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計はCP-40円錐を備え、3rpm、25℃で操作された。製剤は、0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、その後測定収集期間が20秒続いた。次いでこれに、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなる2つのさらなる工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均して、試料の粘度として記録した。
【0115】
実施例3:タンパク質濃度測定
実験溶液中のタンパク質の濃度を、UV/VIS分光計(Perkin Elmer Lambda 35)中280nmの波長でタンパク質溶液の吸光度を測定することにより決定した。最初に装置をpH6の50mMヒスチジンバッファを用いて0吸光度に較正した。次いでタンパク質溶液を、同じヒスチジンバッファで300倍に希釈し、280nmで吸光度を記録した。溶液中のタンパク質の終濃度は、1.264mL/(mg x cm)の吸光系数値を使用して計算した。
【0116】
実施例4:ヒンダードアミン賦形剤化合物を用いた製剤化
実施例1に記載されるように280mg/mL BGGを含む製剤を調製し、いくつかの試料は添加された賦形剤化合物を含んだ。これらの試験において、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ジシクロヘキシルメチルアミン(DCHMA)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)およびナイアシンアミドの塩酸塩を、ヒンダードアミン賦形剤化合物の例として試験した。また、DMCHAのヒドロキシ安息香酸塩およびタウリン-ジシアンジアミド付加物を、ヒンダードアミン賦形剤化合物の例として試験した。それぞれのタンパク質溶液の粘度は実施例2に記載されるように測定し、結果を以下の表1に示し、これは粘度の低下における添加された賦形剤化合物の利点を示す。
【表1】
【0117】
実施例5:陰イオン性芳香族賦形剤化合物を用いた製剤化
実施例1に記載されるように280mg/mLのBGGの製剤を調製し、いくつかの試料は添加された賦形剤化合物を含んだ。それぞれの溶液の粘度は実施例2に記載されるように測定し、結果を以下の表2に示し、これは粘度の低減における添加された賦形剤化合物の利点を示す。
【表2】
【0118】
実施例6:オリゴペプチド賦形剤化合物を用いた製剤化
>95%の純度のNeoBioLab Inc. (Woburn, MA)により遊離アミンとしてN末端および遊離酸としてC末端を有するオリゴペプチド(n=5)を合成した。LifeTein LLC (Somerset, NJ)により95%の純度のジペプチド(n=2)を合成した。実施例1に記載されるように280mg/mLのBGGの製剤を調製し、いくつかの試料は添加された賦形剤化合物として合成オリゴペプチドを含んだ。それぞれの溶液の粘度は実施例2に記載されるように測定し、結果を以下の表3に示し、これは粘度の低下における添加された賦形剤化合物の利点を示す。
【表3】
【0119】
実施例8:グアニルタウリン賦形剤の合成
米国特許第2,230,965に記載される方法に従ってグアニルタウリンを調製した。タウリン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)3.53部を1.42部のジシアンジアミド(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)と混合し、乳鉢中ですりつぶし、均一な混合物が得られるまですった。次いで混合物をフラスコに入れて、200℃で4時間加熱した。生成物は、さらなる精製無しで使用した。
【0120】
実施例9:賦形剤化合物を含むタンパク質製剤
賦形剤化合物および試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤において使用される治療タンパク質または非治療製剤において使用される非治療タンパク質のいずれかをシミュレートすることを意図した。かかる製剤は、以下の様式で、粘度測定のために異なる賦形剤化合物を伴う50mMの水性塩酸ヒスチジンバッファ溶液中で調製した。1.94gのヒスチジンを蒸留水に溶解し、1M塩酸(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いてpHを約6.0に調整し、次いで容量フラスコ中蒸留水を用いて250mLの最終体積まで希釈することにより、最初に塩酸ヒスチジンバッファ溶液を調製した。次いで賦形剤化合物を50mMのヒスチジンHClバッファ溶液に溶解した。賦形剤化合物のリストを表4に提供する。いくつかの場合、賦形剤化合物を50mMのヒスチジンHClバッファ溶液に溶解し、得られた溶液のpHを少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸でpH6を達成するように調整し、次いでモデルタンパク質を溶解した。いくつかの場合、賦形剤化合物をpH6に調整した後50mMのヒスチジンHClに溶解した。この場合、賦形剤化合物は最初に、約5wt%で脱イオン水に溶解し、塩酸または水酸化ナトリウムのいずれかを用いてpHを約6.0に調整した。次いで調製した塩溶液を約65℃の対流式実験室オーブンに入れ、水を蒸発させ、固形賦形剤を単離する。一旦50mMヒスチジンHCl中で賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、約280mg/mLの最終タンパク質濃度を達成する割合で溶解した。賦形剤を伴う50mMヒスチジンHCl中のBGGの溶液を20mLバイアル中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上、100rpmで一晩振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで10分間遠心分離して、粘度測定の前に含まれる空気を除去した。
【0121】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を、0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、その後測定収集期間が20秒続いた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒間の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで、収集した3つのデータ点を平均して、試料の粘度として記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化した。標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。
【表4】
【0122】
実施例10:賦形剤組合せおよび試験タンパク質を含む製剤の調製
第1の賦形剤化合物、第2の賦形剤化合物および試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質または非治療製剤に使用される非治療タンパク質のいずれかをシミュレートすることを意図した。第1の賦形剤化合物は、以下の表5に列挙される陰イオンおよび芳香族官能基の両方を有する化合物から選択された。第2の賦形剤化合物は、以下の表5に列挙される、pH6で非イオン性または陽イオン性電荷のいずれかを有し、イミダゾリンまたはベンゼン環のいずれかを有する化合物から選択された。これらの賦形剤の製剤は、以下の様式における粘度測定のために、50mM塩酸ヒスチジンバッファ溶液中で調製した。塩酸ヒスチジンは、最初に1.94gのヒスチジンを蒸留水に溶解し、1M塩酸(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いてpHを約6.0に調整し、次いで容量フラスコ中で蒸留水を用いて250mLの最終体積まで希釈することにより調製した。次いで個々の第1および第2の賦形剤化合物を50mMヒスチジンHClに溶解した。第1および第2の賦形剤の組合せを50mMヒスチジンHClに溶解し、得られた溶液のpHを、少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸によりpH6を達成するように調整し、その後モデルタンパク質を溶解した。一旦上述のように賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、約280mg/mLの最終タンパク質濃度を達成するような割合でそれぞれの試験溶液に溶解した。賦形剤を有する50mMヒスチジンHCl中のBGGの溶液を20mLバイアル中で製剤化し、回転式振盪テーブル上、100rpmで一晩振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで10分間遠心分離し、含まれる空気を除去した後粘度測定を行った。
【0123】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を、0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベーションして、その後測定収集期間が20秒続いた。次いで、これの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化し、以下の表5にまとめた。標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。該実施例は、第1および第2の賦形剤の組合せは、単一賦形剤よりも良い結果を与え得ることを示す。
【表5】
【0124】
実施例11:賦形剤組合せおよび試験タンパク質を含む製剤の調製
第1の賦形剤化合物、第2の賦形剤化合物および試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質または非治療製剤に使用される非治療タンパク質をシミュレートすることを意図した。第1の賦形剤化合物は、以下の表6に列挙される陰イオン性および芳香族官能基の両方を有する化合物から選択された。第2の賦形剤化合物は、以下の表6に列挙されるpH6で非イオン性または陽イオン性電荷のいずれかを有し、イミダゾリンまたはベンゼン環のいずれかを有する化合物から選択された。これらの賦形剤の製剤は、以下の様式における粘度測定のために蒸留水中で調製された。第1および第2の賦形剤の組合せを蒸留水に溶解し、得られた溶液のpHを、pH6を達成するように少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整し、その後モデルタンパク質を溶解した。一旦蒸留水中で賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、約280mg/mLの最終タンパク質濃度を達成するような割合で溶解した。賦形剤を有する蒸留水中のBGGの溶液を20mLのバイアル中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上100rpmで一晩振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで10分間遠心分離し、含まれる空気を除去し、その後粘度測定を行った。
【0125】
上述のように調製した製剤の粘度測定を、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートして、次いで20秒の測定収集期間が続いた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化し、以下の表6にまとめた。標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。この例は、第1および第2の賦形剤の組合せは、単一賦形剤よりも良好な結果を与え得ることを示す。
【表6】
【0126】
実施例12:賦形剤化合物およびPEGを含む製剤の調製
材料:全ての材料はSigma-Aldrich, St. Louis, MOから購入した。製剤は賦形剤化合物およびPEGを使用して調製し、ここでPEGは、治療製剤に使用される治療PEG化タンパク質をシミュレートすることを意図した。かかる製剤は、等体積のPEGの溶液と賦形剤の溶液を混合することにより調製した。両方の溶液は、7.3のpHで10mM Tris、135mM NaCl、1mMトランス桂皮酸からなるTrisバッファ中で調製した。
【0127】
PEG溶液は、3gのポリ(エチレンオキシド)平均Mw約1,000,000(Aldrich カタログ#372781)と97gのTrisバッファ溶液を混合して調製した。完全な溶解のために混合物を一晩撹拌した。
【0128】
賦形剤溶液調製物の例は以下のとおりである:Trisバッファ中のクエン酸の約80mg/mL溶液は、0.4gのクエン酸(Aldrich cat.#251275)を5mLのTrisバッファ溶液に溶解して調製し、最小量の10M NaOH溶液を用いてpHを7.3に調整した。
【0129】
PEG賦形剤溶液は、0.5mLのPEG溶液と0.5mLの賦形剤溶液を混合して調製し、ボルテックスを数秒間使用して混合した。0.5mLのPEG溶液と0.5mLのTrisバッファ溶液を混合して対照試料を調製した。
【0130】
実施例13:賦形剤化合物およびPEGを含む製剤の粘度測定
調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、次いで20秒の測定収集期間を続けた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として記録した。
【0131】
表7に示された結果は、粘度の低減における添加された賦形剤化合物の効果を示す。
【表7】
【0132】
実施例14:BSA1分子当たり1PEG鎖を有するPEG化BSAの調製
ビーカーに、200mLのリン酸緩衝化食塩水(Aldrich Cat.#P4417)および4gのBSA(Aldrich Cat.#A7906)を添加して、磁気バーで混合した。次いで、400mgのメトキシポリエチレングリコールマレイミド、MW=5,000(Aldrich Cat.#63187)を添加した。反応混合物を室温で一晩反応させた。翌日、20滴のHCl 0.1Mを添加して反応を停止させた。反応生成物は、SDS-PageおよびSECにより特徴付けされ、明確にPEG化BSAを示した。反応混合物を30,000の分子量カットオフ(MWCO)を有するAmicon遠心分離チューブに入れ、数ミリリットルまで濃縮した。次いで、試料を、約6のpHのヒスチジンバッファ、50mMを用いて20倍希釈し、次いで高粘度流体が得られるまで濃縮した。タンパク質溶液の終濃度は、280nmで吸光度を測定して、BSAについて0.6678の吸光係数を使用して得た。結果は、溶液中のBSAの終濃度が342mg/mLであったことを示した。
【0133】
実施例15:BSA1分子当たり複数のPEG鎖を有するPEG化BSAの調製
7.2のpHのリン酸バッファ、25mM中5mg/mL溶液のBSA(Aldrich A7906)は、0.5gのBSAと100mLのバッファを混合することにより調製した。次いで1gのメトキシPEGプロピオンアルデヒドMw=20,000(JenKem Technology, Plano, TX 75024)、その後0.12gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(Aldrich 156159)を添加した。反応を室温で一晩進行させた。翌日、反応混合物を、Trisバッファ(10mM Tris、135mM NaCl、pH=7.3)で13倍希釈し、30,000のMWCOのAmicon遠心分離チューブを使用して、約150mg/mLの濃度が達成されるまで遠心分離した。
【0134】
実施例16:リゾチーム1分子当たり複数のPEG鎖を有するPEG化リゾチームの調製
7.2のpHのリン酸バッファ、25mM中5mg/mL溶液のリゾチーム(Aldrich L6876)は、0.5gのリゾチームと100mLのバッファを混合することにより調製した。次いで1gのメトキシPEGプロピオンアルデヒドMw=5,000(JenKem Technology, Plano, TX 75024)、次いで0.12gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(Aldrich 156159)を添加した。室温で一晩反応を進行させた。翌日、反応混合物を、7.2のpHの25mMのリン酸バッファで49倍希釈し、30,000のMWCOのAmicon遠心分離チューブを使用して濃縮した。タンパク質溶液の終濃度は、280nmで吸光度を測定し、リゾチームについての2.63の吸光係数を使用して得た。溶液中のリゾチームの終濃度は140mg/mLであった。
【0135】
実施例17:BSA1分子当たり1PEG鎖を有するPEG化BSAの粘度に対する賦形剤の効果
賦形剤を有するPEG化BSA(上述の実施例14由来)の製剤は、6または12ミリグラムの賦形剤塩を0.3mLのPEG化BSA溶液に添加することにより調製した。溶液は緩やかに振盪することにより混合し、粘度は500秒-1のせん断速度でA10チャンネル(100ミクロンの深さ(depth))を備えるRheoSense microViscにより測定した。周囲温度で粘度計測定を完了した。
【0136】
表8に示される結果は、粘度の低減における添加された賦形剤化合物の効果を示す。
【表8】
【0137】
実施例18:BSA1分子当たり複数のPEG鎖を有するPEG化BSAの粘度に対する賦形剤の効果
賦形剤としてクエン酸Na塩を有するPEG化BSA(上述の実施例15由来)の製剤は、8ミリグラムの賦形剤塩を0.2mLのPEG化BSA溶液に添加することにより調製した。溶液は緩やかに振盪して混合し、粘度は500秒-1のせん断速度でA10チャンネル(100ミクロンの深さ)を備えたRheoSense microViscにより測定した。粘度計測定は周囲温度で完了した。表9に示される結果は、粘度の低減における添加された賦形剤化合物の効果を示す。
【表9】
【0138】
実施例19:リゾチーム1分子当たり複数のPEG鎖を有するPEG化リゾチームの粘度に対する賦形剤の効果
賦形剤として酢酸カリウムを有するPEG化リゾチーム(上述の実施例16由来)の製剤は、6ミリグラムの賦形剤塩を0.3mLのPEG化リゾチーム溶液に添加することにより調製した。溶液は、緩やかに振盪することにより混合し、粘度は、500秒-1のせん断速度でA10チャンネル(100ミクロンの深さ)を備えたRheoSense microViscにより測定した。粘度計測定は周囲温度で完了した。次の表に示される結果は、粘度の低減における添加された賦形剤化合物の利益を示す。
【表10】
【0139】
実施例20:賦形剤組合せを含むタンパク質製剤
賦形剤化合物または2つの賦形剤化合物の組合せおよび試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質をシミュレートするように意図された。これらの製剤は、以下の様式における粘度測定のために異なる賦形剤化合物と共に20mMヒスチジンバッファ中で調製した。賦形剤組合せを20mMヒスチジンに溶解し、得られた溶液のpHは、少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いてpH6を達成するように調整し、その後モデルタンパク質を溶解した。この実施例についての賦形剤化合物を以下の表11に列挙する。一旦賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)は、約280mg/mLのタンパク質終濃度を達成する割合で溶解された。賦形剤溶液中のBGGの溶液は、5mL滅菌ポリプロピレンチューブ中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上、80~100rpmで一晩振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで約10分間遠心分離し、含まれる空気を除去してその後粘度測定を行った。
【0140】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を、0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、次いで20秒の測定収集期間を続けた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化し、結果を以下の表11に示す。標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。
【表11】
【0141】
実施例21:粘度および注射の疼痛を低減するための賦形剤を含むタンパク質製剤
賦形剤化合物、第2の賦形剤化合物および試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質をシミュレートするように意図された。第1の賦形剤化合物、賦形剤Aは、局所麻酔特性を有する化合物の群から選択された。第1の賦形剤、賦形剤Aおよび第2の賦形剤、賦形剤Bは表12に列挙される。これらの製剤は、それらの粘度が測定され得るように、以下の様式において賦形剤Aおよび賦形剤Bを使用して20mMヒスチジンバッファ中で調製した。表12に開示される量の賦形剤を20mMヒスチジンに溶解し、得られた溶液のpHを、pH6を達成するように少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整し、その後モデルタンパク質を溶解した。一旦賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)は、約280mg/mLのタンパク質終濃度を達成するような割合で賦形剤溶液中に溶解された。賦形剤溶液中のBGGの溶液を、5mL滅菌ポリプロピレンチューブ中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上80~100rpmで一晩振盪した。次いでBGG-賦形剤溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで約10分間遠心分離し、含まれる空気を除去してその後粘度測定を行った。
【0142】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤は、0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、次いで20秒の測定収集期間を続けた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化し、結果を以下の表12に示す。標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。
【表12】
【0143】
実施例22:賦形剤化合物およびPEGを含む製剤
賦形剤化合物およびPEGを使用して製剤を調製し、ここでPEGは、治療製剤に使用される治療PEG化タンパク質をシミュレートするように意図され、賦形剤化合物は、表13に列挙される量で提供された。これらの製剤は、等量のPEGの溶液と賦形剤の溶液を混合することにより調製された。両方の溶液は脱イオン(DI)水中で調製した。
【0144】
PEG溶液は、16.5gのポリ(エチレンオキシド)平均Mw約100,000(Aldrich カタログ#181986)と83.5gのDI水を混合することにより調製された。完全な溶解のために混合物を一晩撹拌した。
【0145】
賦形剤溶液は、この一般的な方法によりおよび以下の表13に詳述されるように調製した:DI水中リン酸カリウム三塩基(Aldrichカタログ#P5629)の約20mg/mL溶液は、0.05gのリン酸カリウムを5mLのDI水に溶解することにより調製した。PEG賦形剤溶液は、0.5mLのPEG溶液と0.5mLの賦形剤溶液を混合して調製し、ボルテックスを数秒間使用して混合した。対照試料は、0.5mLのPEG溶液と0.5mLのDI水を混合することにより調製した。粘度を測定し、結果を以下の表13に記録する。
【表13】
【0146】
実施例23:賦形剤を有するタンパク質溶液の向上した処理
2つのBGG溶液は、0.25gの固体BGGと4mlのバッファ溶液を混合することにより調製した。試料Aについて:バッファ溶液は20mMヒスチジンバッファ(pH=6.0)であった。試料Bについて:バッファ溶液は15mg/mlのカフェインを含む20mMヒスチジンバッファ(pH=6)であった。固体BGGの溶解は、試料を100rpmでオービタルシェーカーに配置することにより行った。カフェイン賦形剤を含むバッファ試料は、タンパク質をより速く溶解することが観察された。カフェイン賦形剤を有する試料(試料B)についてBGGの完全溶解は15分で達成された。カフェインを有さない試料(試料A)について、溶解は35分必要であった。
【0147】
次いで試料を、30,000分子量カットオフを有する2つの別個のAmicon Ultra 4遠心分離フィルターユニットに配置し、試料を10分間隔で、2,500rpmで遠心分離した。それぞれの10分遠心分離ラン後に回収された濾過液体積を記録した。表14の結果は、試料Bについてのより速い濾過液回収を示す。また、試料Bは、全てのさらなるランで濃縮され続けたが、試料Aは、最大濃度点に達し、さらなる遠心分離はさらなる試料濃縮を生じなかった。
【表14】
【0148】
実施例24:複数の賦形剤を含むタンパク質製剤
この実施例は、賦形剤としてのカフェインとアルギニンの組合せはBGG溶液の粘度の低下に対してどのように有益な効果を有するのかを示す。4つのBGG溶液は、0.18gの固体BGGと0.5mLの20mMヒスチジンバッファ、pH6を混合することにより調製した。それぞれのバッファ溶液は、以下の表に記載される異なる賦形剤または賦形剤の組合せを含んだ。溶液の粘度は先の実施例に記載されるように測定した。結果は、ヒンダードアミン賦形剤、カフェインは、アルギニンなどの公知の賦形剤と組み合され得、該組合せは、個々の賦形剤自体よりも良好な粘度低減特性を有することを示す。
【表15】
【0149】
アルギニンはヒスチジンバッファ、pH6中280mg/mL溶液のBGGに添加した。表16に示されるように、50mg/mLを超えるレベルで、より多くのアルギニンの添加は粘度をさらには低下しなかった。
【表16】
【0150】
カフェインはヒスチジンバッファ、pH6中280mg/mL溶液のBGGに添加した。表17に示されるように、10mg/mlを超えるレベルで、より多くのカフェインの添加は粘度をさらには低下しなかった。
【表17】
【0151】
実施例25:TFF濃縮プロセスの間のカフェインの効果
この実施例において、ウシガンマグロブリン(BGG)溶液は、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)を使用して、カフェインの存在下および非存在下で濃縮した。EMD Millipore (Billerica, MA)により作製された実験室スケールTFF系を使用して実験を行った。該系は、30kDa分子量カットオフを有するUltracel膜を含むPellicon XL TFFカセット(EMD Millipore, Billerica, MA)に適合された。名目上の膜表面積は50cm2であった。カセットに対する供給圧力は、保持液圧力を10psiに維持しながら、30psiで維持された。濾過物流出は、時間の関数としてその質量を測定することにより実験の経過にわたりモニタリングした。約12グラムのBGGを、15mg/mLカフェイン、150mM NaClおよび20mMヒスチジンを含み、pH6に調整された500mLのバッファに溶解した。対照試料は、12グラムのBGGを、150mM NaClおよび20mMヒスチジンを含み、pH6に調整された500mLのバッファに溶解することにより調製された。バッファ構成要素はSigma-Aldrichから購入した。両方の溶液は、TFF処理の前に0.2μm PESフィルター(VWR, Radnor, PA)を通して濾過された。TFFの間の試験試料および対照試料の性能(performance)は、質量移動係数(mass transfer coefficient)により測定された。質量移動係数は、以下の式(J. Hung, A. U. Borwankar, B. J. Dear, T. M. Truskett, K. P. Johnston, High concentration tangential flow ultrafiltration of stable monoclonal antibody solutions with low viscosities. J. Memb. Sci. 508, 113-126 (2016)に記載される):
J=kcln(Cw/Cb) (式3)
を使用してそれぞれの試料について決定された。
【0152】
式3には、濾過液フラックスJが記載され、式中k
cは質量移動係数であり、C
wは膜の近位にあるタンパク質濃度でありC
bは液体バルク中の濃度であり、それにより式3は、質量移動係数k
cの計算を可能にする。計算されたフラックスJのln(C
b)に対するグラフは、-kcの傾きを有する線形プロットを生じる。ここでフラックスJは、時間に関する濾過液質量の導関数を考慮して計算され、C
bは、質量バランスを使用して計算される。最適合質量移動係数を表18に列挙する。15mg/mLのカフェインの導入により、質量移動係数の値が約13%だけ、22.5から25.4Lm
-2hr
-1(LMH)へと増加された。
【表18】
【0153】
実施例26:TFF濃縮プロセスの間のカフェイン効果
この実施例において、ウシガンマグロブリン(BGG)溶液は、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)を使用して、カフェインの存在下および非存在下で濃縮された。EMD Millipore (Billerica, MA)により作製された実験室スケールTFF系を使用して実験を行った。該系は、30kDa分子量カットオフを有するUltracel膜を含むPellicon XL TFFカセット(EMD Millipore, Billerica, MA)に適合された。名目上の膜表面積は50cm
2であった。対照試料は、14.6グラムのBGGを、150mM NaClおよび20mMヒスチジンを含み、pH6に調整された582mLのバッファに溶解することにより調製され、開始BGG濃度は名目上25.1mg/mLであった。材料を、0.2μm PESフィルター(VWR, Radnor, PA)を通して濾過し、次いでTFFデバイス中で処理した。ポンプ速度は、供給圧力が最初に30psiであるように調整され、保持液弁は、保持液圧力が最初に10psiであるように調整された。材料は、ポンプ速度または保持液弁のいずれかを4.1時間調整することなく濃縮された。開始および終濃度は、以下の表19に示されるように、それぞれ、Bradfordアッセイにより25.4±0.6および159±6mg/mLであると決定された。カフェイン含有試料は、14.2gのBGGを、15mg/mLカフェイン、150mM NaClおよび20mMヒスチジンを含み、pH6に調整された566mLのバッファに溶解することにより調製され、開始BGG濃度は名目上25.1mg/mLであった。材料は、0.2μm PESフィルター(VWR, Radnor, PA)を通して濾過され、次いでTFFデバイス中で処理された。ポンプ速度および保持液弁は、それらの以前のものと同じレベルに設定された。供給および保持液圧力は、それぞれ以前のように30psiおよび10psiであると確認された。材料は、ポンプ速度または保持液弁のいずれかを4.1時間調整することなく濃縮された。開始および終濃度は、以下の表19に示されるように、それぞれBradfordアッセイにより、24.4±0.5および225±10mg/mLであると決定された。TFF処理中のカフェインの使用は、対照と比較した場合にタンパク質終濃度を約42%だけ、159から225mg/mLへと増加させた。
【表19】
【0154】
実施例27:BGG溶液の滅菌濾過の間のカフェイン効果
ウシガンマグロブリン(BGG)、L-ヒスチジンおよびカフェインは、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO、それぞれ製品番号G5009、H6034およびC7731)から購入した。脱イオン(DI)水は、EMD Millipore (Billerica, MA)製のDirect-Q 3 UV濾過系を用いて水道水から作製した。0.2μmの孔を有する25mmポリエーテルスルホン(PES)フィルターは、GE Healthcare (Chicago, IL、カタログ番号6780-2502)から購入した。1mL ルアーロックシリンジは、Becton, Dickinson and Company (Franklin Lakes, NJ、参照番号309628)から購入した。20mMヒスチジンバッファ、pH6.0は、L-ヒスチジン、DI水を使用して調製され、1M HClを用いてpH6.0に滴定された。15mg/mL溶液のカフェインは、ヒスチジンバッファを使用して調製された。カフェイン非含有およびカフェイン含有バッファを使用して、BGGを約280mg/mLの終濃度まで再構成した。タンパク質濃度cは:
【数5】
を使用して計算された(式中、m
pはタンパク質質量であり、bは添加されたバッファの体積であり、vはBGGの部分比体積(partial specific volume)であり、ここでは0.74mL/gである)。それぞれの試料の粘度は、microViscレオメーター(RheoSense, San Ramon, CA)を23℃の温度および250s
-1のせん断速度で使用して測定した。BGG溶液を滅菌フィルターに通すために必要なエネルギーは、100N負荷セル(Instron, Needham, MA、部品番号2519-103)に適合されたTensile Compression Tester (TCT, Instron, Needham, MA、部品番号3343)を使用して測定した。シリンジプランジャーは、50mmの距離について159mm/分の速度で押し下げられた。エネルギー要件は、TCTにより測定された負荷-対-伸長曲線を積分して計算され、結果を以下の表20にまとめる。
【表20】
【0155】
実施例28:プロテインAクロマトグラフィー溶出を向上するための賦形剤
4つの精製された研究等級生物学的同様(biosimilar)抗体、イピリムマブ、ウステキヌマブ(ustekinumab)、オマリズマブおよびトシリズマブ(tocilizumab)はBioceros (Utrecht, The Netherlands)から購入した。これらは、40mM水性酢酸ナトリウム、50mM tris-HClバッファ、pH5.5中20、26、15および23mg/mLそれぞれのタンパク質濃度で凍結アリコートとして提供された。測定の前にタンパク質溶液を室温で融解し、その後0.2μmポリエーテルスルホンフィルターで濾過した。濾過したタンパク質ストック溶液を、タンパク質ストック溶液 対 結合バッファの1:1の比で混合した。抗体のプロテインA樹脂への結合を促進するために使用される結合バッファは、脱イオン(DI)水中0.1Mリン酸ナトリウムおよび0.15塩化ナトリウム、pH7.2で構成された。DI水は、水道水を、EMD Millipore (Billerica, MA)製のDirect-Q 3 UV精製系を用いて精製することにより作製した。これらの溶液を使用して、PierceTM Protein-A Spin Plate for IgG Screening (ThermoFisher Scientificカタログ#45202)を使用して、プロテインA結合および溶出試験を行った。プレートは96ウェルを有し、それぞれは50μLのプロテインA樹脂を含んだ。樹脂は、200μLの結合バッファをそれぞれのウェルに添加して、プレートを1000xgで1分間遠心分離して、フロースルーを廃棄することにより結合バッファで洗浄した。全てのその後の遠心分離工程は、1000xg、1分間で行った。この洗浄手順を1回繰り返した。これらの開始洗浄工程の後、希釈したタンパク質試料、すなわちイピリムマブ、ウステキヌマブ、オマリズマブおよびトシリズマブを含む試料をプレート中のウェルに添加した(1ウェル当たり200μL)。次いで、プレートをDaigger Scientific (Vernon Hills, IL) Labgeniusオービタルシェーカー上に置いて、260rpmで30分間撹拌し、その後プレートを遠心分離してフロースルーを廃棄した。次いで、500μLの結合バッファをそれぞれのウェルに添加して、プレートを遠心分離してフロースルーを廃棄することによりウェルを洗浄した。この洗浄工程を2回繰り返した。これらの洗浄工程後、異なる賦形剤が添加された溶出バッファを使用してプレートからタンパク質を溶出した。それぞれの溶出について、1Mリン酸ナトリウム、pH7からなる50μLの中和バッファを回収プレートのそれぞれのウェルに添加して、次いで200μLの溶出バッファをプレートのそれぞれのウェルに添加した。プレートを260rpmで1分間撹拌し、次いで遠心分離した。分析のためにフロースルーを回収した。この溶出工程を1回繰り返した。賦形剤を有さない対照バッファは20mMクエン酸塩を含み、2.6のpHを有した。プロテインA溶出バッファはしばしばある量の塩を含み、クエン酸バッファ中の100mM NaClの溶出バッファは第2の対照として調製した。
【0156】
表21は、この実施例に使用した賦形剤溶液、それらの濃度および溶出バッファの最終pHを列挙する。全ての賦形剤はSigma Aldrich (St. Louis, MO)から購入したが、アスパルテームはHerb Store USA (Los Angeles, CA)から購入し、トレハロースはCascade Analytical Reagents and Biochemicals (Corvallis, OR)から購入し、スクロースはResearch Products International (Mt. Prospect, IL、製品番号S24060)から購入した。全ての賦形剤含有溶出バッファは、適切な量の賦形剤と約10mLの塩非含有クエン酸バッファ対照を混合することにより調製した。溶出バッファは約100mM賦形剤で調製した。しかしながら、全ての賦形剤がこのレベルで可溶性であるわけではなく;そのため表21は、使用した賦形剤濃度の全てを列挙する。それぞれの溶出バッファのpHは必要に応じて塩酸または水酸化ナトリウムのいずれかを使用して約2.6±0.1に調整した。
【0157】
それぞれのタンパク質試料について、HPLCワークステーション(Agilent HP 1100 system)に連結されたTSKgel SuperSW3000カラム(30cm x 4.6mm ID, Tosoh Bioscience, King of Prussia, PA)を使用してASD高性能サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行った。室温で0.35mL/分の流速で分離を行った。移動相は100mMリン酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、pH7の水性バッファであった。Agilent 1100 Series G1315Bダイオードアレイ検出器を使用して、280nmの吸光度によりタンパク質濃度をモニタリングした。それぞれのタンパク質、すなわちイピリムマブ、ウステキヌマブ、オマリズマブおよびトシリズマブについてのプロテインA樹脂から溶出されたタンパク質の総量は、クロマトグラムを積分して推定した。それぞれのタンパク質、すなわちイピリムマブ、ウステキヌマブ、オマリズマブおよびトシリズマブについての積分されたピーク面積を表22~25に列挙する。表22~25はまた、塩非含有および塩含有対照の実験的ピーク面積と実験的ピーク面積を比較する。100%より高い値は、溶出バッファが、対照よりも多くのタンパク質をプロテインA樹脂から回収したことを示し、一方で100%より低い値は、溶出バッファが、対照よりも少ないタンパク質をプロテインA樹脂から回収したことを示す。
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【0158】
実施例29:プロテインAクロマトグラフィー溶出を向上するための賦形剤
この実施例に使用される試験タンパク質は実施例28におけるもの、すなわち、イピリムマブ、ウステキヌマブ、オマリズマブおよびトシリズマブと同じである。プロテインA結合および溶出試験は、実施例28におけるものと同じプレートを使用して実施した。プロテインAプレートへの抗体の負荷およびそれから抗体を溶出するための方法は、溶出工程以外は実施例28におけるものと同じであった。実施例28において、2回の溶出洗浄を行った。しかしながらこの実施例において、1回の洗浄のみを行う。実施例28においてと同様に、溶出バッファは、20mMクエン酸塩、pH2.6対照バッファから調製した。溶出バッファを以下の表26に列挙する。賦形剤の全てはSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から購入した。回収されたタンパク質は、実施例28におけるものと同じ様式でHPLCにより分析し、それぞれのタンパク質、すなわちイピリムマブ、ウステキヌマブ、オマリズマブおよびトシリズマブについてのタンパク質回収の結果を以下の表27~30に示す。
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【0159】
実施例30:プロテインAクロマトグラフィーカラムからのオマリズマブ溶出を向上する賦形剤
研究等級オマリズマブはBioceros (Utrecht, The Netherlands)から購入し、40mM水性酢酸ナトリウム、50mM tris-HClバッファ、pH5.5中15mg/mLで凍結されて提供された。実験の前にタンパク質を室温で融解し、0.2μmポリエーテルスルホンフィルターで濾過した。濾過された材料を、1:1の比で、DI水中20mMリン酸ナトリウム、pH7からなる結合バッファと混合した。EMD Millipore (Billerica, MA)製のDirect-Q 3 UV精製系を用いて水道水を精製し、DI水を作製した。GE Healthcare (Chicago, IL、製品番号29048576)製のHiTrap Protein-A HP 1mLカラムを使用して、プロテインA精製を行った。それぞれの実験について、最初にカラムを10mLの結合バッファで平衡化した。平衡化後、30mgのタンパク質をプロテインAカラムに負荷した。次いでカラムを、5mLの結合バッファで洗浄した。カラムの洗浄後、結合したオマリズマブを、以下の表31に列挙される溶出バッファの1つの画分(fraction)を使用してカラムから溶出した。溶出バッファは、示される賦形剤を、20mMクエン酸バッファ、pH4.0に溶解して調製した。全ての溶出バッファをpH4.0に調整した。5つの1mL画分を回収した。最終的に、プロテインAは、カラムを、5mLの100mMクエン酸、pH3.0バッファで洗浄して再生した。それぞれの工程についての流速は1mL/分であり、これはFusion 100注入ポンプ(Chemyx, Stafford, TX)により維持した。10mLのNormJectルアーロックシリンジを使用した(Henke Sass Wolf, Tuttlingen, Germany、参照番号4100-000V0)。
【0160】
溶出画分E1、E2、E3、E4およびE5は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により総タンパク質含有量について分析した。SEC分析は、HPLCワークステーション(Agilent HP 1100 system)に連結されたTSKgel SuperSW3000カラム(30cm x 4.6mm ID, Tosoh Bioscience, King of Prussia, PA)を使用して行った。分離は、室温、0.35mL/分の流量で行った。移動相は、100mMリン酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、pH7の水性バッファであった。タンパク質濃度は、Agilent 1100 Series G1315Bダイオードアレイ検出器を使用して、280nmでの吸光度によりモニタリングした。プロテインA樹脂から溶出されたタンパク質の総量は、クロマトグラムを積分することにより推定した。
【0161】
クエン酸塩はプロテインAクロマトグラフィーに使用される一般的な賦形剤であり、そのためここでは対照として使用した。対照試料についての溶出画分は、沈殿相の形成により証明されるように4℃で一晩の貯蔵の際に不溶性の凝集物を示した。そのため、以下の表31で報告されたピーク面積は、溶出画分中の可溶性タンパク質総量を示す。本発明者らは、対照試料のみにおいて不溶性凝集物が観察され、他の試料はいずれもかかる凝集物を示さなかったことに注意する。対照(クエン酸塩賦形剤を使用)よりも大きいピーク面積は、試験賦形剤の使用がカラムからのタンパク質のより効率的な分離を可能にし得ることを示す。
【表31】
【0162】
実施例31:異なる量のカフェイン賦形剤を有するBGGの製剤
異なるモル濃度のカフェイン(以下の表32に列挙される濃度)および試験タンパク質を用いて製剤を調整し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質をシミュレートするように意図された。この実施例についての製剤は、以下の様式における粘度測定のために20mMヒスチジンバッファ中で調製した。0および80mMのカフェインのストック溶液を20mMヒスチジン中で調製し、得られた溶液pHを、pH6を達成するように少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整し、その後モデルタンパク質を溶解した。種々のカフェイン濃度のさらなる溶液は、種々の体積比で2つのストック溶液を混ぜることにより調製され、以下の表32に列挙される濃度で一連のカフェイン含有溶液を提供した。一旦これらの賦形剤溶液を調製すると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、0.7mLのそれぞれの賦形剤溶液を0.25gの凍結乾燥BGG粉末に添加することにより約280mg/mLのタンパク質終濃度を達成する比で、それぞれの試験溶液に溶解した。BGG含有溶液は、5mL滅菌ポリプロピレンチューブ中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上100rpmで一晩振盪した。次いでこれらの溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2400rpmで約5分間遠心分離し、含まれる空気を除去してその後粘度測定を行った。
【0163】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、microVisc粘度計(RheoSense, San Ramon, CA)を用いて行った。粘度計は、100ミクロンのチャンネル深さを有するA-10チップを備え、250l/sのせん断速度および25℃で操作された。粘度を測定するために、試験製剤を粘度計に負荷し、注意して全ての気泡をピペットから除去した。負荷された試料製剤を含むピペットを装置に配置して、測定温度で約5分間インキュベートした。次いで、チャンネルが試験液で十分に平衡化されるまで装置を走らせ、安定な粘度読み取り、次いでセンチポアズで記録された粘度により示された。得られた粘度結果を以下の表32に示す。
【表32】
【0164】
実施例32:脱イオン水中の共溶質の溶液の調製
水中のカフェイン溶解性を高めるための共溶質として使用される化合物は、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から入手し、該化合物としてはナイアシンアミド、プロリン、プロカインHCl、アスコルビン酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、リドカイン、サッカリン、アセスルファムK、チラミンおよびアミノ安息香酸が挙げられた。それぞれの共溶質の溶液は、乾燥固体を脱イオン水に溶解し、いくつかの場合には必要に応じて5M塩酸または5M水酸化ナトリウムを用いてpHを約6のpH~約8のpHの値に調整することにより調製された。次いで溶液を、クラスA容量フラスコならびに溶解した化合物の質量および溶液の最終体積に基づいて記録された濃度を使用して、25mLまたは50mLのいずれかの最終体積まで希釈した。調製した溶液は、ストレート(neat)でまたは脱イオン水で希釈してのいずれかで使用した。
【0165】
実施例33:カフェイン溶解性試験
周囲温度(約23℃)でのカフェインの溶解性に対する異なる共溶質の影響を、以下の様式で評価した。乾燥カフェイン粉末(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を20mLのガラスシンチレーションバイアルに添加して、カフェインの質量を記録した。実施例32に従って調製された10mLの共溶質溶液を、ある場合においてカフェイン粉末に添加し;他の場合において、共溶質溶液と脱イオン水の混合物をカフェイン粉末に添加し、10mLの最終添加体積を維持した。乾燥カフェイン粉末の体積寄与は、これらの混合物のいずれにおいても無視できると仮定された。バイアルに小さい磁気撹拌バーを入れて、溶液を、撹拌プレート上で約10分間激しく混合させた。約10分後、バイアルを、乾燥カフェイン粉末の溶解について観察し、結果を以下の表33に示す。これらの観察は、ナイアシンアミド、プロカインHCl、2,5-ジヒドロキシ安息香酸ナトリウム塩、サッカリンナトリウム塩およびチラミン塩化物塩は全てカフェインの溶解を、報告されたカフェイン溶解限界(solubility limit)(Sigma-Aldrichによると室温で約16mg/mL)の少なくとも約4倍まで可能にしたことを示した。
【表33】
【0166】
実施例34:HUMIRA(登録商標)のプロフィール
HUMIRA(登録商標)(AbbVie Inc., Chicago, IL)は、典型的に関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患の炎症性応答、中程度~重度の慢性乾癬および若年性特発性関節炎を低減するために称される治療モノクローナル抗体アダリムマブ、TNFαブロッカーの市販の製剤である。HUMIRA(登録商標)は、40mgのアダリムマブ、4.93mg塩化ナトリウム、0.69mgリン酸ナトリウム一塩基二水和物、1.22mgリン酸ナトリウム二塩基二水和物、0.24mgクエン酸ナトリウム、1.04mgクエン酸一水和物、9.6mgマンニトールおよび0.8mgポリソルベート80を含む0.8mLの単回使用用量において固体である。この製剤の粘度 対 濃度プロフィールは、以下の様式で作成された。30kDa分子量カットオフを有するAmicon Ultra 15遠心分離濃縮器(EMD-Millipore, Billerica, MA)に、約15mLの脱イオン水を充填し、Sorvall Legend RT (ThermoFisher Scientific)中、4000rpmで10分間遠心分離して膜をすすいだ。その後、残存水を除去し、2.4mLのHUMIRA(登録商標)液体製剤を濃縮器チューブに添加し、25℃、4000rpmで60分間遠心分離した。保持液の濃度は、10マイクロリットルの保持液を1990マイクロリットルの脱イオン水で希釈し、希釈試料の吸光度を280nmで測定し、希釈係数および1.39mL/mg-cmの吸光係数を使用して濃度を計算することにより決定した。濃縮試料の粘度は、250秒
-1のせん断速度、23℃で、A05チップを備えたmicroVisc粘度計(RheoSense, San Ramon, CA)を用いて測定した。粘度測定後、試料を、少量の濾過液で希釈し、濃度および粘度の測定を繰り返した。このプロセスを使用して、以下の表34に記載される種々のアダリムマブ濃度での粘度値を作成した。
【表34】
【0167】
実施例35:粘度低減賦形剤を用いたHUMIRA(登録商標)の再製剤化
以下の実施例には、粘度低減賦形剤を有するバッファ中でHUMIRA(登録商標)を再製剤化した一般的なプロセスが記載される。粘度低減賦形剤の溶液は、約0.15gヒスチジンおよび0.75gカフェイン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を脱イオン水に溶解することにより、20mMヒスチジン中で調製した。得られた溶液のpHは、5M塩酸を用いて約5まで調整した。次いで溶液を、容量フラスコ中脱イオン水を用いて50mLの最終体積まで希釈した。次いで、得られた緩衝化粘度低減賦形剤溶液を使用して、HUMIRA(登録商標)を高mAb濃度で再製剤化した。次いで、約0.8mLのHUMIRA(登録商標)を、30kDa分子量カットオフを有するすすいだAmicon Ultra 15遠心分離濃縮器チューブに添加して、Sorvall Legend RT中、4000rpmおよび25℃で8~10分間遠心分離した。その後、上記のように調製した約14mLの緩衝化粘度低減賦形剤溶液を、遠心分離濃縮器中、濃縮されたHUMIRA(登録商標)に添加した。緩やかに混合後、試料を、4000rpmおよび25℃で約40~60分間遠心分離した。保持液は、粘度低減賦形剤を有するバッファ中で再製剤化されたHUMIRA(登録商標)の濃縮試料であった。試料の粘度および濃度を測定し、次いでいくつかの場合は少量の濾過液で希釈して、低濃度での粘度を測定した。以前の実施例における濃縮されたHUMIRA(登録商標)製剤と同じ様式で、microVisc粘度計を用いて粘度測定を完了した。脱イオン水中に希釈されたHUMIRA(登録商標)ストック溶液から作成された標準曲線を使用して、Bradfordアッセイにより濃度を決定した。以下の表35に示されるように、粘度低減賦形剤を用いたHUMIRA(登録商標)の再製剤化により、再製剤化なしで市販のバッファ中に濃縮したHUMIRA(登録商標)の粘度値と比較して、30%~60%の粘度低減がもたらされた。
【表35】
【0168】
実施例36:賦形剤としてカフェインを用いたアダリムマブ溶液の向上した安定性
カフェイン賦形剤を有するおよび有さないアダリムマブ溶液の安定性を、試料を2つの異なるストレス条件:撹拌および凍結-融解に暴露した後に評価した。実施例34により詳細に記載される性質を有するアダリムマブ薬物製剤HUMIRA(登録商標) (AbbVie)を使用した。HUMIRA(登録商標)試料を、実施例39に記載される元のバッファ溶液中で200mg/mLアダリムマブ濃度まで濃縮し;この濃縮した試料を「試料1」と指定する。第2の試料は、実施例40に記載されるように、約200mg/mLのアダリムマブおよび15mg/mLの添加したカフェインを用いて調製し;カフェインを添加したこの濃縮された試料を「試料2」と指定する。両方の試料は、以下の通りに希釈剤を用いて1mg/mLアダリムマブの終濃度まで希釈した:試料1希釈剤は元のバッファ溶液であり、試料2希釈剤は20mMヒスチジン、15mg/mLカフェイン、pH=5である。両方のHUMIRA(登録商標)希釈液を0.22μmシリンジフィルターで濾過した。全ての希釈された試料について、層流フード中で2mLのエッペンドルフチューブ内で3バッチの300μLのそれぞれを調製した。試料を以下のストレス条件に供した:撹拌について、試料を、300rpmで91時間、オービタルシェーカーに置き;凍結-融解について、1条件当たり6時間の平均の間に、試料を、-17から30℃までのサイクルに7回供した。表36は調製された試料を記載する:
【表36】
【0169】
実施例37:動的光散乱(DLS)による安定性の評価
Brookhaven Zeta Plus動的光散乱装置を使用して、実施例36由来の試料中のアダリムマブ分子の流体力学的半径を測定し、凝集物集団の形成の証拠を探した。表37には、実施例36に従って調製した6試料についてのDLSの結果を示す:それらのいくつか(1-A、1-FT、2-Aおよび2-FT)はストレス条件に暴露され(「ストレスをかけられた試料(Stressed Sample)」)、他のもの(1-Cおよび2-C)にはストレスをかけられなかった。表37におけるDLSデータは、カフェインを含まないストレスをかけられた試料におけるモノクローナル抗体の多様な粒子サイズ分布を示す。賦形剤としてのカフェインの非存在下で、ストレスをかけられた試料1-Aおよび1-FTは、ストレスをかけられなかった試料1-Cよりも大きな有効直径を示し、さらにそれらは、有意により大きな直径の粒子の第2の集団を示し;より大きな直径を有する粒子のこの新しいグループ分けは、肉眼では見えない粒子への凝集の証拠である。カフェインを含むストレスをかけられた試料(試料2-Aおよび2-FT)はストレスをかけられなかった試料2-Cと同様の粒径での、1つの粒子の集団のみを示す。これらの結果は、これらの試料へのカフェインの添加により、凝集または肉眼では見えない粒子の形成が低減されたことを示す。
【表37】
【0170】
表38Aおよび表38Bは、粒子サイズ分布を示す、実施例36由来のアダリムマブ試料のDLSの生のデータを示す。これらの表において、G(d)は、強度-荷重(intensity-weighted)示差的サイズ分布である。C(d)は、累積強度-荷重示差的サイズ分布である。
【表38A】
【表38B】
【0171】
実施例38:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による安定性の評価
サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、実施例36に記載されるストレスをかけられたおよびストレスをかけられなかったアダリムマブ試料からの約0.1ミクロン未満のサイズの肉眼では見えない粒子を検出した。SECを実施するために、ガードカラムを有するTSKgel SuperSW3000カラム(Tosoh Biosciences, Montgomeryville, PA)を使用して、280nmで溶出をモニタリングした。実施例36由来のそれぞれのストレスをかけられたおよびストレスをかけられなかった試料の合計10μLを、0.35mL/分の流速で、pH6.2バッファ(100mMリン酸塩、325mM NaCl)を用いてイソクラティックに(isocratically)溶出した。アダリムマブモノマーの保持時間は約9分であった。カフェイン賦形剤を含む試料において検出可能な凝集物は同定されず、全ての3試料中のモノマーの量は一定のままであった。
【0172】
実施例39:HERCEPTIN(登録商標)製剤の粘度低減
モノクローナル抗体トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech製)は、凍結乾燥粉末として受領して、DI水中21mg/mLに再構成した。得られた溶液を、Amicon Ultra 4遠心分離濃縮器チューブ(分子量カットオフ、30kDa)中の場合と同様に、3500rpmで1.5時間遠心分離して濃縮した。濃度は、試料を適切なバッファ中で200倍に希釈して、1.48mL/mgの吸光係数を使用して280nmで吸光度を測定することにより測定した。RheoSense microVisc粘度計を使用して、粘度を測定した。
【0173】
サリチル酸およびカフェインのいずれか単独または組合せを含む賦形剤バッファは、ヒスチジンおよび賦形剤を蒸留水に溶解し、次いでpHを適切なレベルに調整することにより調製した。バッファ系1および2の条件を表39にまとめる。
【表39】
【0174】
HERCEPTIN(登録商標)溶液を、約1:10の比で、賦形剤バッファ中で希釈し、Amicon Ultra 15 (MWCO 30kDa)濃縮器チューブ中で濃縮した。Bradfordアッセイを使用して濃度を測定し、ストックHERCEPTIN(登録商標)試料から作成した標準較正曲線と比較した。RheoSense microVisc粘度計を使用して粘度を測定した。種々のHERCEPTIN(登録商標)溶液の濃度および粘度測定値を以下の表40に示し、ここでバッファ系1および2は表39に記載されるこれらのバッファをいう。
【表40】
【0175】
サリチル酸およびカフェインの両方を含むバッファ系1は、対照試料と比較して、215mg/mLで76%の最大粘度低減を有した。カフェインのみを含むバッファ系2は、200mg/mLで59%までの粘度低減を有した。
【0176】
実施例40:AVASTIN(登録商標)製剤の粘度低減
AVASTIN(登録商標)(Genentechにより販売されるモノクローナル抗体ベバシズマブ製剤)は、ヒスチジンバッファ中25mg/mL溶液として受領した。試料は、Amicon Ultra 4遠心分離濃縮器チューブ(MWCO 30kDa)中3500rpmで濃縮した。RheoSense microViscにより粘度を測定し、280nmでの吸光度(吸光係数、1.605mL/mg)により濃度を決定した。10mg/mLカフェインと共に25mMヒスチジンHClを添加することにより賦形剤バッファを調製した。AVASTIN(登録商標)ストック溶液を賦形剤バッファで希釈して、次いでAmicon Ultra 15遠心分離濃縮器チューブ(MWCO 30kDa)中で濃縮した。賦形剤試料の濃度は、Bradfordアッセイにより決定し、粘度は、RheoSense microViscを使用して測定した。結果を以下の表41に示す。
【表41】
【0177】
AVASTIN(登録商標)は、10mg/mLのカフェインとともに213mg/mLに濃縮した場合に、対照AVASTIN(登録商標)試料と比較して、73%の最大粘度低減を示した。
【0178】
実施例41:カフェイン、第2の賦形剤および試験タンパク質を含む製剤の調製
賦形剤化合物としてカフェインまたはカフェインと第2の賦形剤化合物の組合せおよび試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質をシミュレートするように意図された。かかる製剤は、以下の様式における粘度測定のために異なる賦形剤化合物を有する20mMヒスチジンバッファ中で調製した。賦形剤組合せ(以下の表28に記載される賦形剤AおよびB)を20mMヒスチジンに溶解して、得られた溶液のpHを、少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いてpH6を達成するように調整し、その後モデルタンパク質を溶解した。一旦賦形剤溶液が調整されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、約280mg/mLのタンパク質終濃度を達成するような割合で溶解した。賦形剤溶液中のBGGの溶液は、20mLガラスシンチレーションバイアル中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上で一晩、80~100rpmで振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中2300rpmで約10分間遠心分離し、含まれる空気を除去して、その後粘度測定を行った。
【0179】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を、0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、その後20秒の測定収集期間を続けた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として以下の表42に記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化した。標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。
【表42】
【0180】
実施例42:ジメチルスルホンおよび試験タンパク質を含む製剤の調製
賦形剤化合物としてジメチルスルホン(Jarrow Formulas, Los Angeles, CA)および試験タンパク質を使用して製剤を調製し、ここで試験タンパク質は、治療製剤に使用される治療タンパク質をシミュレートするように意図された。かかる製剤は以下の様式における粘度測定のために、20mMヒスチジンバッファ中で調製した。ジメチルスルホンを20mMヒスチジンに溶解し、得られた溶液のpHを、pH6を達成するように少量の水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整し、次いで0.22ミクロンフィルターで濾過し、その後モデルタンパク質を溶解した。一旦賦形剤溶液が調製されると、試験タンパク質ウシガンマグロブリン(BGG)を、約280mg/mLの濃度で溶解した。賦形剤溶液中のBGGの溶液は20mLガラスシンチレーションバイアル中で製剤化し、オービタルシェーカーテーブル上で一晩、80~100rpmで振盪した。次いでBGG溶液を2mLマイクロ遠心分離チューブに移し、IEC MicroMaxマイクロ遠心分離機中、2300rpmで約10分間遠心分離して、含まれる空気を除去し、その後粘度測定を行った。
【0181】
上述のように調製した製剤の粘度測定は、DV-IIT LV円錐およびプレート粘度計(Brookfield Engineering, Middleboro, MA)を用いて行った。粘度計は、CP-40円錐を備え、3rpmおよび25℃で操作された。製剤を0.5mLの体積で粘度計に負荷し、所定のせん断速度および温度で3分間インキュベートし、その後20秒の測定収集期間を続けた。次いでこの後に、1分のせん断インキュベーションおよびその後の20秒の測定収集期間からなるさらなる2工程を続けた。次いで収集した3つのデータ点を平均し、試料の粘度として記録した。賦形剤を有する溶液の粘度を、賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度に対して標準化した。表43に記録された標準化された粘度は、賦形剤を有するモデルタンパク質溶液の粘度 対 賦形剤を有さないモデルタンパク質溶液の粘度の割合である。
【表43】
【0182】
実施例43:遠心分離によるHGGの濃縮の間に観察されるプロセス利益
ヒト血清由来ガンマグロブリン(HGG)の濃縮プロセスにおけるカフェインの効果の迅速な評価のために、遠心分離を使用した。100mg/mL(10% Octagam)のHGGストック溶液を最初に、30kDa-MWCO膜を有するAmicon-15遠心分離ユニットを使用して、50mMカフェインを有するかまたは有さないPBSバッファに交換して;7mLのHGGストックをAmicon-15遠心分離ユニットにピペットで移して、その後7mLの製剤ビヒクルを遠心分離ユニットに添加した。ピペッティングによる溶液の混合後、遠心分離ユニットを、2,844xgで約40分間、約7mLの濾過液を収集するまで遠心分離した。濾過液を廃棄した。次いで約7mLの対応する製剤ビヒクルを、遠心分離ユニットに添加して混合した。遠心分離およびビヒクルでの希釈のこのプロセスを2回繰り返し、次いでバッファ交換したHGG溶液を、遠心分離ユニットから収集した。対応する製剤ビヒクルを、約14gの最終質量までHGG溶液に添加した。開始製剤中のHGG濃度は約50mg/mLであり、これはその後BCAアッセイにより検証した。
【0183】
次いで、約13mLのHGG製剤を、30kDa NMWL(名目上の分子量限界)膜を有するCentriPrep遠心分離ユニットの外部チューブに添加した。製剤を1,300xgでの遠心分離により濃縮して、それぞれの製剤についての濾過液の質量を10分ごとに記録した。保持液中のHGG濃度は、それぞれ開始試料重量およびHGG濃度として13gおよび50mg/mLを使用して、濾過液収集物の質量を使用して推定した。この全プロセスを2回繰り返し、以下のデータセットを作成した:ラン#1は、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中で行い、この試料を「PBS-1」と指定し:ラン#1はカフェインを含むPBS中で行い、この試料を「PBS-カフェイン-1」と指定し;ラン#2はPBS中で行い、この試料を「PBS-2」と指定し;ラン#2はカフェインを含むPBS中で行い、この試料を「PBS-カフェイン-2」と指定する。遠心分離実験ラン#1およびラン#2は別々に行い、そのため対照データセット(PBS-1およびPBS-2)は、それらのそれぞれのカフェイン含有試料(PBS-カフェイン(caffine)-1およびPBS-カフェイン-2)と比較されるべきであった。これらの試験の結果を、グラムでの濾過液の質量およびmg/mL単位のHGGの濃度を含む以下の表44(ラン#1)および45(ラン#2)に示す。両方のラン#1およびラン#2において、保持液中のHGGの計算された濃度は、賦形剤を添加した場合に、対照製剤と比較してより高かった。これらの結果はまた、
図3Aおよび3Bのグラフに示し、ここで増加量のHGGが保持液中にある。
【表44】
【表45】
【0184】
実施例44:濃縮されたヒト免疫グロブリンのDLS粘度測定
Fisher Scientific (Hampton, NH)製の10Xリン酸緩衝化食塩水(PBS)を、使用前に、Milli-Q 1型超純水で1X濃度に希釈した。ニコチンアミド、アセスルファムK、1,3-ジメチルウラシル、アルギニンモノヒドロクロライド、サッカリン、カフェイン、チラミンおよびイミダゾールはSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から購入し、安息香酸ナトリウムはSpectrum Chemical (New Brunswick, NJ)から購入し、ホルデニンHClはBulk Supplements (Henderson, NV)から購入し、全ては以下の実験において賦形剤として使用した。
【0185】
精製ヒト免疫グロブリン(Octagam 10%)はNOVA Biologics, Inc (Oceanside, CA)から購入し、ベンチトップ型EMD Millipore (Billerica, MA)タンジェンシャルフローフィルトレーションユニットを使用してバッファを1X PBSに交換し、30kDa分子量カットオフを有するAmicon Ultra 15遠心分離濃縮器チューブ(EMD Millipore, Billerica, MA)を使用して濃縮した。ストック賦形剤溶液は1Mの濃度または化合物の溶解限界で1X PBS中で調製し、必要に応じて濃塩酸または水酸化ナトリウムのいずれかを用いてpHを約7.4に調整した。PCRチューブ中、濃縮されたヒトIgGおよび賦形剤溶液を一緒に混合した(9部のIgG濃縮液、1部の賦形剤溶液またはバッファ)。混合物に、脱イオン水中のPEG表面改質(surface modified)金ナノ粒子(nanoComposix, San Diego, CA)の溶液を添加した。IgG、賦形剤および粒子の得られた混合物を384ウェルAurora (Whitefish, MT)マイクロプレートに二連で負荷した。次いでマイクロプレートをSorvall Legend RT遠心分離中400xgで遠心分離し、次いでDynaPro II DLSプレートリーダー(Wyatt Technology Corp., Goleta, CA)に配置して、摂氏25度で金のナノ粒子の見かけの粒子サイズを測定した。タンパク質製剤中の金ナノ粒子の見かけの粒子サイズ 対 バッファ(タンパク質なし)中の金ナノ粒子の見かけの粒子サイズの割合を使用して、ストークス-アインシュタインの式に従ってタンパク質製剤の粘度を決定した。この例において、金ナノ粒子の見かけの半径 対 実際の半径の割合に、摂氏25度での水の粘度をかけて、センチポアズ(cP)でのタンパク質製剤の粘度を計算した。賦形剤の存在下での粘度の結果を、賦形剤の非存在下での結果と比較して、達成された粘度低減の大きさを決定した。
【表46】
【0186】
実施例45:濃縮されたヒト免疫グロブリンのDLS粘度測定
賦形剤としてのジメチルウラシルおよびホルデニンの効果を試験するために、100mMの賦形剤ありまたはなしのPBS中50mg/mL HGG製剤を達成するように、濃縮されたHGG(215mg/mL)と適切な量のPBSおよび10x賦形剤ストックを混合してHGG製剤を調製した。次いで、13mLのそれぞれの製剤を、CentriPrep遠心分離ユニットに添加し、上の実施例43に記載されるように遠心分離試験を行った。濾過液体積および保持液濃度を遠心分離時間の関数として記録して、100mMの濃度の賦形剤ジメチルウラシルおよびホルデニン 対 対照(PBSバッファ)を用いたこれらの試験の結果を以下の表47にまとめる。賦形剤ホルデニンおよびジメチルウラシルの添加により、対照と比較して濾過速度の向上が生じた。表47の結果は
図4のグラフにも示し、ここで保持液中の増加量のHGGは、処理性能の向上に相関する。
【表47】
【0187】
実施例46:カフェインを使用したタンジェンシャルフローフィルトレーションの向上
100mg/mLのストックをリン酸緩衝化食塩水(PBS)に希釈して35mg/mLの濃度の400mLのヒトガンマグロブリン(Octagam, Octapharma, USA)を調製した。1.8mM KH
2PO
4、10mM Na
2HPO
4、137mM NaCl、2.7mM KClを1LのMilli-Q水に溶解してバッファを調製した。50mMカフェイン、1.8mM KH
2PO
4、10mM Na
2HPO
4、137mM NaCl、2.7mM KClを1LのMilli-Q水に溶解してカフェインPBS溶液を調製した。EMD Millipore (Billerica, MA)製のDirect-Q 3 UV精製系を用いて水道水を精製してDI水を作製した。ヒトガンマグロブリン(HGG)溶液を、30KDa MWCO Pellicon XL TFFカセット(Millipore, Billerica, MA)を備える実験室スケールタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)系(Millipore, Billerica, MA)のレザバーに移した。使用の前に、カセットにMilli-Q水次いでPBSを流し、水透過性試験を行って膜完全性および有効性を確実にした。Quattroflowポンプ(Cole-Parmer, IL)を使用してHGG溶液を、カセットを通してポンプ輸送して、保持液ラインは試料レザバーへと逆に進み、透過液(permeate)はメスシリンダーにおいて収集された。スターラーバーにより、供給物と保持液の適切な混合を確実にした。120mL/分で供給物をカセットに送達するように供給ポンプを設定した。保持液制限器を使用して、大まかに20~30psiの範囲の経膜的圧力(TMP)を得て、供給ポンプおよび保持液制限器を調整することによりランを通してTMPが一定のままであることが確実にされた。圧力および流速のデータロギング(data logging)を行い、試料を30分ごとに採取した。供給物濃度を計算するために、試料をSE-HPLCで分析し、ここで50mgを、TSKgel SuperSW3000カラム(30cm×4.6mm ID, Tosoh Bioscience, King of Prussia, PA)およびAgilent G1351Bダイオードアレイ検出器が適合されたAgilent 1100 HPLC系に負荷した。移動相として0.35mL/分の流速でPBSを使用した。ピーク下の面積を積分することによりタンパク質濃度を計算した。時間の関数としてプロットされた供給物濃度を使用して、カフェイン存在下のTFF効率と対照系を使用したTFFを比較した。以下の表48に示されるように、開始供給物濃度からのより高いパーセント濃度変化は、対照と比較してカフェインにより、より短い時間で観察され、これはTFF効率の増加を示した。
【表48】
【0188】
実施例47:プロテインA樹脂からの精製収率を向上するためのカフェインの使用
20mMリン酸ナトリウム、pH7バッファ中15mg/mLでBioceros (Utrecht, The Netherlands)から購入した研究等級のオマリズマブを試験試料として使用した。このタンパク質溶液は0.2μmポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通して濾過された。濾過した材料を、20mMリン酸ナトリウムからなる結合バッファと、pH7、DI中で1:1の比で混合した。EMD Millipore (Billerica, MA)製のDirect-Q 3 UV精製系を用いて水道水を精製し、DI水を作製した。GE Healthcare (Chicago, IL)製のHiTrap Protein-A HP 1mLカラムを使用して、プロテインA精製を行った。カラム平衡化のために10mLの結合バッファを使用して、その後30mgのタンパク質を負荷した。次いでカラムを5mLの結合バッファで洗浄して、未結合のタンパク質を除去した。対照バッファとして0.1Mグリシンバッファ、pH3.5または0.1Mグリシン、50mMカフェインバッファ、pH3.5のいずれかを使用して、結合したオマリズマブを、カラムから1mL画分中に溶出した。7.5gのグリシンをDI水に溶解して、6M HClを使用してpHを3.5に調整して、体積を1Lに調整することにより対照バッファを調製した。7.5gのグリシンおよび10gのカフェインをDI水に溶解して、6M HClを使用してpHを3.5に調整して、体積を1Lに調整することによりカフェインバッファを調製した。5つの1mL画分を収集し;これらの溶出画分をE1、E2、E3、E4およびE5と標識した。最終的に、プロテインAは、カラムを5mLの0.1Mグリシン、pH3.0バッファで洗浄することにより再生した。それぞれの工程についての流速は1mL/分であり、これはFusion 100注入ポンプ(Chemyx, Stafford, TX)により維持された。10mL NormJectルアーロックシリンジを使用した(Henke Sass Wolf, Tuttlingen, Germany、参照番号4100-000V0)。
【0189】
5つの溶出画分E1、E2、E3、E4およびE5を、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により、総タンパク質含有量についてアッセイした。SEC分析は、Agilent HP 1100 HPLC系に連結されたTSKgel SuperSW3000カラム(30cm×4.6mm ID, Tosoh Bioscience, King of Prussia, PA)を使用して行った。室温、0.35mL/分の流速での移動相としてPBSを使用した。タンパク質濃度は、G1315Bダイオードアレイ検出器を使用して、280nmでの吸光度によりモニタリングした。プロテインA樹脂から溶出したタンパク質の総量は、クロマトグラムを積分することにより決定し、以下の表49に示されるように、カフェインの存在下で、収率において約8%の増加が観察された。
【表49】
【0190】
実施例48:低pH保持(hold)の間の安定化のための賦形剤
20mMリン酸ナトリウム、pH7バッファ中15mg/mLでBioceros (Utrecht, The Netherlands)から購入した研究等級のイピリムマブを試験試料として使用した。タンパク質溶液は、0.2μmポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通して濾過した。ラフィノース五水和物はSigma (St Louis, MO)から入手した。1Mの濃度でのラフィノース五水和物を0.15Mグリシンバッファ、pH2.75に溶解することにより賦形剤ストックを調製した。7.5gのグリシンを0.9L Milli-Q水に溶解し、1M HClを使用してpHを2.75に調整し、体積を0.1Lにすることによりバッファを調製した。1つの対照製剤および3つの賦形剤含有製剤は、0mM、100mM、200mMおよび400mMの最終賦形剤濃度ならびに2mg/mLの最終イピリムマブ濃度で賦形剤をイピリムマブ溶液に添加することにより調製した。試料を酸性pH(2.75)で24時間、一晩インキュベートして、SE-HPLCにより、試料を分析し、ここで50mgを、TSKgel SuperSW3000カラム(30cm×4.6mm ID, Tosoh Bioscience, King of Prussia, PA)およびAgilent G1351Bダイオードアレイ検出器が適合されたAgilent 1100 HPLC系に負荷した。0.35mL/分の流速での移動相としてPBSを使用した。モノマーピーク下の面積を積分することによりモノマータンパク質(イピリムマブ)濃度を計算した。低pHに暴露されない未処理試料からのモノマー画分を100%に対して標準化し、処理された試料のモノマー画分をこの未処理試料の変化のパーセンテージとして表した。以下の表50の結果は、試料中のラフィノースの存在が、低pH保持の後により高いパーセンテージモノマー形態のイピリムマブを生じたことを示す。
【表50】
【0191】
実施例49:バッファおよび賦形剤調製
賦形剤の製剤化およびタンパク質バッファ交換における使用のためにストックの20mM塩酸ヒスチジン(His HCl)バッファを調製した。6.206グラムのヒスチジン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を1型超純水に溶解して2リットルのHis HClを調製した。溶解したヒスチジンの溶液を、濃塩酸を使用してpH6.0に滴定した。次いで容量フラスコを使用してHis HCl溶液を2リットルにして、0.2μm膜ボトルトップフィルターデバイス(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を通して濾過した。実施例51(表51に列挙される)で試験される賦形剤を、その後の試験のための賦形剤溶液として以下のように調製した。それぞれの賦形剤は、賦形剤を、上述のこのHis HClバッファ中に溶解して、濃水酸化ナトリウムまたは濃塩酸を用いてpHを調整することにより、10X(1M)で調製した。次いでそれぞれの賦形剤溶液を、0.2μmの膜フィルターを使用して濾過した。
【0192】
実施例50:タンパク質溶液調製
2つの試験タンパク質、Bioceros (The Netherlands)から購入した精製オマリズマブおよびヒト血清由来ポリクローナルIgG(Octagam 10%)を、20kDa分子量カットオフ透析カセット(Fisher Scientific)を使用して、His HClに(実施例49で調製されるように)バッファ交換した。それぞれのタンパク質溶液を、ブイに取り付けられかつバッファ交換のためにフラスコ内に配置された透析カセットに移した。>50x開始タンパク質体積まで合計3回のバッファ交換を行った。最終バッファ交換工程で、タンパク質溶液を透析カセットから除去して、0.2μm膜フィルターを通して濾過し、His HClバッファに100倍希釈してA280によりタンパク質濃度を測定した。次いで100μLをUV透明96ハーフウェルマイクロプレート(Greiner Bio-One, Austria)に移して、Synergy HTプレートリーダー(BioTek, Winooski, VT)を用いて280nmの波長で吸光度を測定した。次いでブランクのパス長さで修正したA280測定値を、それぞれの吸光係数で割り、希釈係数をかけて、タンパク質濃度を決定した。実施例51における動的光散乱(DLS)粘度測定のために調製物中のタンパク質を濃縮するためのその後の濃縮工程が必要であった。30kDa分子量カットオフ(EMD Millipore, Billerica, MA)を有するAmicon-15遠心分離デバイスを使用して濃縮を行い、ベンチトップ遠心分離(Sorvall Legend RT)上4000xgで遠心分離することにより、遠心分離デバイス中の保持液質量に基づいて175mg/mLに濃縮した。
【0193】
実施例51:拡散相互作用パラメーターのDLS測定
この実施例において、希釈タンパク質溶液の拡散相互作用パラメーター(kD)を、0.1Mの賦形剤溶液の存在下でDLSにより測定した。試験されている賦形剤を表51に列挙する。それぞれの賦形剤について、賦形剤の0.2M溶液は、以前に調製された1M賦形剤ストックから別々に調製した。0.1M賦形剤の存在下、10mg/mL~0.6mg/mLの範囲の5つの異なる濃度のオマリズマブ(実施例50に記載されるように調製)を使用して、DLSによりkDを測定した。任意の賦形剤の非存在下、同じ濃度のオマリズマブを含む同じ一連の対照試料を調製した。それぞれの試験試料について、384ウェルプレート(Aurora Microplates, Whitefish, MT)上で20μLのタンパク質溶液を、20μLの0.2M賦形剤溶液と合わせた(1:1混合物)。試料を負荷した後、プレート振盪器上でウェルプレートを振盪して、内容物を5分間混合した。混合の際に、ウェルプレートをSorvall Legend RT中、1分間、400xgで遠心分離し、任意の空気ポケットを除去した。次いでウェルプレートをDynaPro II DLSプレートリーダー(Wyatt Technologies Corp., Goleta, CA)に負荷し、それぞれの試料の拡散係数を25℃で測定した。それぞれの賦形剤について、測定された拡散係数を、タンパク質濃度の関数としてプロットし、データの線形適合の傾斜をkDとして記録した。この例において、それぞれの測定値は、対照平均に対して標準化し、対照に対するパーセントとして報告した。これらの結果を以下の表51に示す。
【表51-1】
【表51-2】
【0194】
実施例52:DLSによる粘度測定
Bioceros (The Netherlands)から購入した精製オマリズマブおよびヒト血清由来ポリクローナルIgG(Octagam 10%, Pfizer)をモデルタンパク質系として使用して、賦形剤の粘度効果を調べた。賦形剤(表52および53に列挙される)の濃縮ストック溶液を、実施例49に記載されるプロトコルに従ってHis HClバッファ中10X (1M)で調製した。オマリズマブは、Amicon-15遠心分離(30kDa MWCO)デバイスを使用してHis HClバッファにバッファ交換して、遠心分離デバイス中保持液質量に基づいて175mg/mLに濃縮した。1部の10X賦形剤および9部のタンパク質を添加して、賦形剤および濃縮したタンパク質を200μL PCRチューブ中で合わせた。ポリエチレングリコール表面改質金ナノ粒子(nanoComposix, San Diego, CA)のさらなる2μLの5倍希釈溶液をそれぞれのPCRチューブに添加して、反転により完全に混合した。賦形剤を何ら添加しない以外は同様に対照試料を調製した。それぞれの試料(試験試料および対照)を384ウェルマイクロプレート(Aurora Microplates, Whitefish, MT)に二連で(ウェル当たり25μL)移し、400xgで1分間遠心分離し、その後分析を行った。DynaPro II DLSプレートリーダー(Wyatt Technology Corp., Goleta, CA)を使用して、25℃で金ナノ粒子の見かけの粒子サイズを測定した。金ナノ粒子の見かけの粒子サイズ 対 水中の金ナノ粒子の既知の粒子サイズの割合を使用して、ストークス-アインシュタインの式に従って、タンパク質製剤の粘度を決定した。この実施例において、それぞれの測定値を対照平均に対して標準化し、対照と比較してパーセント低減として報告し、標準偏差を示し、結果を以下の表52および53に示す。
【表52】
【表53-1】
【表53-2】
【表53-3】
【0195】
実施例53:粘度計による粘度測定
表54および55に列挙されるこれらの賦形剤についての賦形剤溶液を、His HClバッファ中0.1Mまたは0.075Mで調製し、濃水酸化ナトリウムまたは濃塩酸を使用してpHを調整した。Amicon-15遠心分離デバイス(30kDa MWCO)を使用して、オマリズマブおよびヒトIgGを、それぞれの賦形剤製剤にバッファ交換した。バッファ交換の後、遠心分離デバイス中の保持液質量に基づいて、タンパク質溶液を、オマリズマブについて150mg/mLおよびヒトIgGについて250mg/mLまで濃縮した。賦形剤の非存在下である以外は同じ様式で対照製剤を調製した。25℃に設定された温度制御封入体に封入されたA05チップを使用して、RheoSenseマイクロ粘度計で粘度測定を行った。せん断速度は250s
-1に設定した。それぞれの製剤の粘度は3回測定し、次いで20μLのそれぞれのバッファを添加して希釈し、再度粘度を測定した。5~6の異なるタンパク質濃度についての粘度データを作成するために、これをそれぞれ5~6回繰り返した。サイズ排除カラム(TOSOH TSKgel SuperSW3000)と組み合わせたAgilent 1100シリーズ高圧液体クロマトグラフィー装置を使用して、280nmでの吸光度によりタンパク質濃度を測定した。それぞれの賦形剤製剤についての濃度の関数として粘度をプロットして、散乱プロットを作成した。指数関数的近似曲線(trendline)をそれぞれの製剤に適合させ、式y=a*e
(b*x)(式中、yはcP単位の粘度であり、xはmg/mLのタンパク質の濃度であり、aおよびbは式についての適合パラメーターであり、R
2は決定の統計的係数である)による指数関数的適合に基づいて、濃度での粘度を計算した。この例について、粘度は固定された濃度の関数として報告され、結果を以下の表54および55に示す。
【表54】
【表55】
【0196】
実施例54:自己相互作用のBLI測定
この実施例において、ForteBio Octet Red-96装置を用いてバイオレイヤー干渉法(BLI)試験を行った。アミン反応性第2世代(AR2G)バイオセンサー(Molecular Devices, CA)をオマリズマブとコンジュゲートさせて、賦形剤の存在下でのタンパク質自己相互作用を検出した。表56に列挙される賦形剤についての賦形剤溶液は、His HClバッファ中0.1Mで調製した。1.679gのリン酸二塩基ナトリウム七水和物(Sigma, St. Louis)および1.895gのリン酸一塩基ナトリウム一水和物(Sigma, St. Louis)をDI水に溶解し、体積を1Lに調整することにより20mMリン酸ナトリウム、pH6.4バッファを調製した。Bioceros (Utrecht, The Netherlands)から購入した研究等級のオマリズマブは、Amicon-15遠心分離(30kDa MWCO)デバイスを使用して、リン酸バッファ、pH6.4にバッファ交換した。20mMリン酸ナトリウム、pH6.4バッファ中15mg/mLのこのオマリズマブストック溶液は、Sephadex G-25 PD-10脱塩カラム(GE Healthcare Life Sciences)を使用してさらにバッファ交換し、調製した賦形剤を0.1Mで含む20mMリン酸ナトリウム、pH6.4バッファを用いて溶出した。対照は、Sephadex G-25 PD-10脱塩カラム(GE Healthcare Life Sciences)を使用して同様に調製し、20mMリン酸ナトリウム、pH6.4バッファを用いて溶出した。UV透明(clear)96ハーフウェルマイクロプレート(Greiner Bio-One, Austria)を使用してタンパク質濃度を測定し、Synergy HTプレートリーダー(BioTek, Winooski, VT)を用いて280nmの波長で吸光度を測定した。調製した賦形剤バッファ中に希釈してタンパク質濃度を5mg/mLに調整した。黒色底96ウェルマイクロプレート(Greiner Bio-One, Austria)において、20mMリン酸ナトリウム、pH6.4バッファ中0.1Mの250μLのそれぞれの賦形剤溶液を縦列Bに移し、0.1Mの賦形剤を含む250μLの5mg/mlオマリズマブ溶液を縦列Cに移した。96ウェルプレートは、縦列が個々の製剤を示し、横列がタンパク質含有製剤を識別するように設定した。次いで分析のためにトレイをForteBio Octet Red-96に移した。オマリズマにコンジュゲートされたブバイオセンサーを、タンパク質を含まない製剤に120秒間浸し、ベースラインを作成した。次いでバイオセンサーを除去して、タンパク質を含む製剤に300秒間浸した。この例において、本発明者らは、対照の結合信号と比較して、300秒での結合信号のパーセントでのデルタを報告し、結果を以下の表56にまとめる。
【表56】
【0197】
均等物
本発明の具体的な態様が本明細書に開示されるが、上記明細書は例示的であり限定的ではない。本発明は、その好ましい態様を参照して特に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者には理解されよう。本発明の多くの変形は、本明細書の検討に際して当業者に明らかであろう。そうではないと示されない限り、反応条件、成分の量などを表す全ての数は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、全ての例において用語「約」により修飾されていると理解される。したがって、それとは反対と示されない限り、本明細書に示される数的パラメーターは、本発明が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【国際調査報告】