(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】可変の複製多重PCRを使用した配列決定方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20220131BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20220131BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20220131BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531204
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(85)【翻訳文提出日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 IB2019056625
(87)【国際公開番号】W WO2020031048
(87)【国際公開日】2020-02-13
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521056124
【氏名又は名称】イニヴァータ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】プラノル,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】フォーシュー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ウッドハウス,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ローソン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マシュー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS25
(57)【要約】
各々が同じ試料の異なる部分を含有するPCR反応を分析することを含む配列分析のための方法であって、プライマー対のうちの少なくともいくつかが、複数のPCR反応において存在し、PCR反応のうちの少なくとも1つが、他の反応(複数可)のプライマー対のうちのいくつかを含有するが、全てを含有しない方法が、本明細書に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列分析のための方法であって、
(a)多重PCR反応に適合する複数のプライマー対を得ることと、
(b)各々、同じ試料の異なる部分を含む、少なくとも2つの多重PCR反応を設定することであって、前記プライマー対のうちの少なくともいくつかが、複数PCR反応において存在し、前記PCR反応のうちの少なくとも1つが、他の反応(複数可)の前記プライマー対のうちのいくつかを含有するが、全てを含有しない、設定することと、
(c)複数の複製アンプリコンを生成するために、前記多重PCR反応を熱循環させることと、
(d)配列リードを生成するために、前記アンプリコンを配列決定することと、
(e)選択された配列変異についてのスコアを生成するために、前記選択された配列変異について複製アンプリコンからの前記配列リードを分析することであって、前記スコアが、
i.カットオフを上回る頻度を有する配列変異を含む複製アンプリコンの数に基づいている、または
ii.前記複製物にわたる前記配列変異のための組み合わせられた証拠の強度を示す、分析することと、
(f)前記スコアに基づいて遺伝的変異として前記配列変異を呼び出すことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記プライマー対のうちの少なくともいくつかについて、選択されたプライマー対を含む反応の数が、
i.前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコンに見出される1つまたは複数の遺伝的変異の予期される頻度、
ii.前記試料が得られた患者の癌の種類、
iii.前記試料が得られた前記患者の治療歴、
iv.前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコン中に見出されると予期される遺伝的変異の臨床的有意性、
v.前記試料が得られた前記患者が受けたこれまでの試験、
vi.前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコン中に見出されると予期される1つまたは複数の遺伝子変異のエラープロファイル、および/もしくは
vii前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコンの長さ、
またはこれらの任意の組み合わせに応じて異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対が、遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し、
対象となる特定の癌に関連する遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対が、対象となる前記特定の癌に関連する遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し、
患者が療法に対して耐性を示す遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対が、患者が前記療法に対して耐性を示す遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し、
臨床的に作用可能な遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対が、臨床的に作用可能な遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し、
高いバックグラウンドの遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対が、低いバックグラウンドの遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し、
より長いアンプリコンを生成するPCRプライマー対が、より短いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(f)において、前記呼び出しが、前記スコアを閾値と比較することによって行われ、前記閾値または閾値超で遺伝的変異を呼び出すことができる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記閾値が、
(i)カットオフ頻度を上回る前記選択された配列変異を有する複製の数、および/または
(ii)複数の複製にわたる前記配列変異のための前記組み合わせられた証拠の必要な強度を示す値である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カットオフが、配列変異が増幅および/または配列決定エラーによってどのくらいの頻度で生成されるかを示すエラー分布に基づいている、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記エラー分布が、配列決定制御試料によって推定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、
i.前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコンに見出される1つまたは複数の遺伝的変異の予期される頻度、
ii.前記試料が得られた前記患者の前記癌の種類、
iii.前記試料が得られた前記患者の治療歴、
iv.前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコン中に見出されると予期される遺伝的変異の臨床的有意性、
v.前記試料が得られた前記患者が受けたこれまでの試験、
vi.前記選択されたプライマー対によって増幅された前記アンプリコン中に見出されると予期される遺伝子変異の前記エラープロファイル、
vi.前記試料中に見出される他の遺伝的変異、および/もしくは
vii前記配列決定の全体的なエラー率、
またはこれらの任意の組み合わせに基づいて、前記閾値または前記カットオフを増加または減少させることを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
(b)において設定された各反応が、少なくとも5つのプライマー対を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、少なくとも3つおよび10未満の多重PCR反応を設定することを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記配列変異が、複数の変異体の置換、挿入、欠失、再配列、または組み合わせである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、cfDNAである、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記複製アンプリコンが、増幅中に複製識別子でタグ付けされ、前記方法が、配列決定の前に異なる増幅反応をプールすることを含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
各アンプリコンの長さが、独立して、50bp~500bpの範囲内である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記配列変異のための前記組み合わせられた証拠が、尤度値を使用して要約され、前記閾値が、尤度閾値である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記配列変異のための前記組み合わせられた証拠が、ベイズ統計を使用して要約され、前記閾値が、事前分布によって変化し得るベイズ因子である、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記閾値が、機械学習を使用して確立される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、cfDNAであり、前記方法が、同じ対象からのcfRNAを分析することをさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、cfDNAであり、前記方法が、前記同じ対象からの白血球DNAを分析することをさらに含む、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記配列変異が、特定の疾患、状態、または治療を示す、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
(g)前記配列変異に関する情報を含む報告書を第三者に転送することをさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年8月8日に出願された米国仮特許出願第62/716,082号の利益を主張するものであり、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患は、遺伝的変異、例えば、体細胞突然変異によって引き起こされる。遺伝的変異は、しばしば、身体内の細胞の一部にのみ生じるため、それらは、次世代配列決定(NGS)によって検出することが困難であり得る。1つの問題は、全てのライブラリ調製方法および配列決定プラットフォームが、エラー、例えば、PCRエラーおよび配列決定エラーを含有する配列リードをもたらすことである。系統的エラー(例えば、配列決定サイクル数、鎖、配列コンテキスト、および塩基置換確率を含む既知のパラメータと相関するもの)を修正することが可能であることがあるが、配列中の変異がエラーによって引き起こされるのか、またはそれが「実際の」遺伝的変異であるかどうかを確実に把握することは不可能である場合が多い。この問題は、試料の量が限定され、突然変異含有ポリヌクレオチドが、典型的には、血液から単離された無細胞DNAの場合と同様に、試料中の比較的低いレベル(例えば、5%未満)でのみ存在する場合に悪化する。例えば、試料が、それらが変異を含有しないことを除き、それ以外の場合、突然変異含有ポリヌクレオチドと同一である100個のポリヌクレオチドのバックグラウンドにおいて1つのコピーのみの突然変異含有ポリヌクレオチドを含有する場合、それらのポリヌクレオチドが配列決定された後、その変異(配列リードの約1/100でのみ観察され得る)が増幅または配列決定中に生じたエラーであるかどうかを判断することができない場合が多い。したがって、疾患を引き起こす体細胞突然変異の検出は、確実に検出することが極めて困難であり得る。
【発明の概要】
【0003】
低頻度の配列変異、例えば、血液からの無細胞DNAの同定を容易にするワークフローが、以下に説明される。いくつかの実施形態において、本方法は、PCR反応を分析することを含み得、各々、同じ試料の異なる部分を含有し、プライマー対のうちの少なくともいくつかは、1つを超えるPCR反応において存在し、PCR反応のうちの少なくとも1つは、他の反応(複数可)のプライマー対のうちのいくつかを含有するが、全てを含有しない。この方法では、いくつかのプライマー対は、多くの因子に応じて、他の反応よりも多くの反応において存在する。
【0004】
いくつかの実施形態において、本方法は、
(a)多重PCR反応に適合する複数のプライマー対を得ることと、
(b)少なくとも2つの多重PCR反応を設定することであって、各々、同じ試料の異なる部分を含有し、プライマー対のうちの少なくともいくつかが、1つを超えるPCR反応において存在し、PCR反応のうちの少なくとも1つが、他の反応(複数可)のプライマー対のうちのいくつかを含有するが、全てを含有せず、全てのPCR反応において存在しないプライマー対の少なくともいくつかについては、プライマー対を含む反応の数が、プライマー対によって増幅されたアンプリコンにおいて予期される1つ以上の配列変異の認識された重要性、尤度、および/または種類に応じて異なる、設定することと、
(c)複数の複製アンプリコンを生成するために、多重PCR反応を熱循環させることと、
(d)配列リードを生成するために、アンプリコンを配列決定することと、
(e)選択された配列変異についてのスコアを生成するために、選択された配列変異について複製アンプリコンからの配列リードを分析することであって、スコアが、i.カットオフを上回る頻度を有する配列変異を含む複製アンプリコンの数に基づいている、またはii.複製物にわたる配列変異のために組み合わせられた証拠の強度を示す、分析することと
(f)スコアに基づいて配列変異を呼び出すことと、を含み得る。
【0005】
いかに方法が実装されるかに応じて、本方法は、従来の方法よりもある特定の利点を有し得る。例えば、本方法は、単に多重PCR反応の数を増加させることなく、方法のユーザによってより重要と見なされる遺伝的変異を同定するより高い確率を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
当業者は、以下に記載される図面が例示目的のみのためのものであることを理解するであろう。図面は、いずれの方法においても、本教示の範囲を限定するものではない。
【0007】
【
図1】特許請求の範囲の方法で生成することができる一連の多重PCR反応の例を概略的に例示する。この例は、方法の原理のいくつかを単に例示しており、いずれの方法においても、方法を制限するべきではない。
【
図2】カットオフ頻度を上回る選択された配列変異を有する複製物の数を使用して、いかに遺伝的変異を呼び出すことができるかを例示する。
【
図3】複数の複製物にわたる遺伝的変異のために組み合わせられた証拠を使用することによって、いかに遺伝的変異を呼び出すことができるかを例示する。
【0008】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。さらに、参照を明確かつ容易にするために、ある特定の要素が、定義される。
【0009】
本明細書で使用される核酸化学、生化学、遺伝学、および分子生物学の用語および記号は、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman,New York,1992)、Lehninger,Biochemistry,Second Edition(Worth Publishers,New York,1975)、Strachan and Read,Human Molecular Genetics,Second Edition(Wiley-Liss,New York,1999)、Eckstein,editor,Oligonucleotides and Analogs:A Practical Approach(Oxford University Press,New York,1991)、Gait,editor,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1984)などの当該分野における標準的な論文およびテキストの用語および記号に従う。
【0010】
「ヌクレオチド」という用語は、既知のプリンおよびピリミジン塩基だけでなく、修飾された他の複素環式塩基も含有する部分を含むことが意図されている。そのような修飾は、メチル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジン、アルキル化リボースまたは他の複素環を含む。加えて、「ヌクレオチド」という用語は、ハプテンまたは蛍光標識を含有する部分を含み、従来のリボースおよびデオキシリボース糖だけでなく、他の糖も含有し得る。例えば、ヒドロキシル基のうちの1つ以上がハロゲン原子もしくは脂肪族基で置き換えられるか、またはエーテル、アミンなどとして官能化される場合、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドもまた、糖部分に修飾を含む。
【0011】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では互換的に使用して、ヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドからなる、任意の長さ、例えば、約2塩基を超える、約10塩基を超える、約100塩基を超える、約500塩基を超える、1000塩基を超える、10,000塩基を超える、100,000塩基を超える、約1,000,000、最大約1010またはそれ以上の塩基のポリマーを記載し、これは、酵素によってまたは合成によって生成することができ(例えば、米国特許第5,948,902号およびその中に引用された参照文献中に記載されたPNA)、2つの天然に存在する核酸のものに類似する配列特異的な様式で天然に存在する核酸にハイブリダイズすることができ、例えば、ワトソン-クリック塩基対形成相互作用に関与することができる。天然に存在するヌクレオチドには、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル(それぞれ、G、C、A、T、およびU)が含まれる。DNAおよびRNAは、それぞれ、デオキシリボースおよびリボース糖骨格を有し、一方で、PNAの骨格は、ペプチド結合によって連結された反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位からなる。PNAでは、様々なプリンおよびピリミジン塩基は、メチレンカルボニル結合によってその骨格に連結されている。ロックド核酸(LNA)は、しばしばアクセス制限(inaccessible)RNAと称され、それは修飾されたRNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素と4’炭素を接続する追加の架橋により修飾されている。この架橋が、しばしばA型二本鎖に見られる3’-エンド(North)構造のリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、所望であればいつでも、オリゴヌクレオチド中のDNAまたはRNA残基と混合することができる。「非構造化核酸」または「UNA」という用語は、低い安定性で互いに結合する非天然ヌクレオチドを含有する核酸である。例えば、非構造化核酸は、G’残基およびC’残基を含有することができ、これらの残基は、低い安定性で互いに塩基対を形成するが、天然に存在するCおよびGの残基とそれぞれ塩基対を形成する能力を保持する、GおよびCの天然に存在しない形、すなわち類似体に対応する。非構造化核酸は、US20050233340に記載されており、これは、UNAの開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書で使用される「核酸試料」という用語は、核酸を含有する試料を示す。本明細書で使用される核酸試料は、それらが配列を含有する複数の異なる分子を含有するという点において複合体であってもよい。哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)からのゲノムDNA試料は、複合試料の種類である。複合試料は、約104、105、106もしくは107、108、109、または1010個を超える異なる核酸分子を有し得る。核酸、例えば、組織培養細胞からのゲノムDNAを含有する任意の試料、または組織試料が、本明細書で採用され得る。
【0013】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、約2~200ヌクレオチド、最大500ヌクレオチド長のヌクレオチドの一本鎖多量体を示す。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよいか、または酵素的に作製されてもよく、いくつかの実施形態において、30~150ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマーを含有してもよいか(すなわち、オリゴリボヌクレオチドであってもよく)、またはデオキシリボヌクレオチドモノマー、またはリボヌクレオチドモノマーおよびデオキシリボヌクレオチドモノマーの両方を含有してもよい。オリゴヌクレオチドは、例えば、10~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、80~100、100~150、または150~200ヌクレオチド長であり得る。
【0014】
「プライマー」とは、ポリヌクレオチド鋳型と二本鎖を形成するとき、核酸合成の開始地点として作用することができ、伸長した二本鎖が形成されるように鋳型に沿ってその3’末端から伸長することができる、天然のまたは合成されたオリゴヌクレオチドを意味する。伸長プロセス中に加えられるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定される。プライマーは、DNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーは、一般に、プライマー伸長生成物の合成におけるそれらの使用に適合する長さであり、通常、8~200ヌクレオチド長、例えば10~100ヌクレオチド長または15~80ヌクレオチド長の範囲内である。プライマーは、鋳型にハイブリダイズしない5’尾部を含有してよい。
【0015】
プライマーは、通常、増幅における最大効率のために一本鎖であるが、代替的に、二本鎖または部分的に二本鎖であり得る。Zhangら(Nature Chemistry 2012 4:208-214)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、トーホールド交換プライマーも、この定義中に含まれる。
【0016】
したがって、「プライマー」は、鋳型に相補的であり、鋳型との水素結合またはハイブリダイゼーションによって複合体を形成して、ポリメラーゼによる合成の開始のためにプライマー/鋳型複合体を与え、それはDNA合成プロセスで鋳型に相補的なその3’末端に連結している共有結合した塩基の添加によって伸長する。
【0017】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」という用語は、正常なハイブリダイゼーション条件下で核酸鎖の領域が第2の相補的な核酸鎖にアニールして、ホモ二本鎖またはヘテロ二本鎖のいずれかの安定した二本鎖を形成し、無関係な核酸分子とは同じ正常なハイブリダイゼーション条件下で安定した二本鎖を形成しないプロセスを指す。二本鎖の形成は、ハイブリダイゼーション反応における2つの相補的核酸鎖領域をアニールすることによって達成される。ハイブリダイゼーション反応は、2本の核酸鎖が、実質的にまたは完全に相補的である特定の配列の特定数のヌクレオチドを含有しない限り、2本の核酸鎖が安定した二本鎖、例えば正常なストリンジェンシー条件下で二本鎖形成の領域を保持する二本鎖を形成しないように、そのハイブリダイゼーション反応が起こる下でのハイブリダイゼーション条件の調節によって高度に特異的に行うことができる。「正常なハイブリダイゼーションまたは正常なストリンジェンシー条件」は、任意の所与のハイブリダイゼーション反応のために容易に判定される。例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、またはSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション(hybridizing)」または「ハイブリダイゼーション(hybridization)」という用語は、核酸の鎖が塩基対形成を通して相補鎖と結合する任意のプロセスを指す。
【0018】
核酸は、2つの配列が中等度から高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で互いに特異的にハイブリダイズする場合、参照核酸配列に「選択的にハイブリダイゼーション可能」であると考えられる。中等度および高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が既知である(例えば、Ausubel,et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons 1995およびSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,2001 Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。
【0019】
本明細書で使用される「二本鎖」または「二本鎖化」という用語は、塩基対形成した、すなわち、一緒にハイブリダイズした2つの相補的ポリヌクレオチド領域を記載する。
【0020】
ゲノムまたは標的ポリヌクレオチドに関する「遺伝学的遺伝子座」、「遺伝子座」、「対象となる遺伝子座」、「領域」、または「セグメント」は、そのゲノムまたは標的ポリヌクレオチドの連続的なサブ領域またはセグメントを意味する。本明細書で使用される場合、遺伝学的遺伝子座、遺伝子座、または対象となる遺伝子座は、ゲノムにおけるヌクレオチド、遺伝子、または一部の遺伝子の位置を指し得るか、またはそれが、遺伝子内に存在する、もしくはそれに関連しているかどうかにかかわらず、ゲノム配列の任意の連続的な部分、例えば、コード配列を指し得る。遺伝学的遺伝子座、遺伝子座、または対象となる遺伝子座は、単一のヌクレオチドから、長さが数百個または数千個のヌクレオチド長またはそれ以上のセグメントに由来し得る。一般に、対象となる遺伝子座は、それと関連した参照配列を有する(以下の「参照配列」の説明を参照されたい)。
【0021】
本明細書で使用される「参照配列」という用語は、既知のヌクレオチド配列、例えば、その配列がNCBIのGenbankデータベースまたは他のデータベースに堆積される染色体領域を指す。参照配列は、野生型配列であり得る。
【0022】
「大多数」、「集団」、および「収集物」という用語は、少なくとも2人のメンバーを含有するものを指すために互換的に使用される。ある特定の場合において、大多数、集団、または収集物は、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、または少なくとも109、またはそれ以上のメンバーを有し得る。
【0023】
「試料識別子配列」、「試料インデックス」、「多重識別子」、または「MID」という用語は、標的ポリヌクレオチドに付加されるヌクレオチドの配列であり、配列は、標的ポリヌクレオチド(すなわち、標的ポリヌクレオチドが由来する試料からの試料)の供給源を同定する。使用中、各試料は、異なる試料識別子配列でタグ付けされ(例えば、1つの配列が各試料に付加され、異なる試料が異なる配列に付加される)、タグ付けされた試料がプールされる。プールした試料を配列決定した後、試料識別子配列を使用して、配列の源を同定することができる。試料識別子配列は、ポリヌクレオチドの5’末端またはポリヌクレオチドの3’末端に加えられ得る。ある特定の場合において、試料識別子配列のいくつかは、ポリヌクレオチドの5’末端であり得、試料識別子配列の残りは、ポリヌクレオチドの3’末端であり得る。試料識別子の要素が各末端で配列を有する場合、3’および5’試料識別子配列は、一緒に試料を同定する。多くの例では、試料識別子配列は、標的オリゴヌクレオチドに付加される塩基のサブセットのみである。
【0024】
「複製識別子配列」という用語は、異なる複製物からの配列リードを互いに区別することを可能にする付加配列を指す。複製識別子配列は、異なる試料ではなく、試料の複製物上で使用されることを除いて、上述の試料識別子配列と同じように機能する。
【0025】
「可変」という用語は、可変である2つ以上の核酸配列の文脈において、互いに異なるヌクレオチド配列を有する2つ以上の核酸を指す。換言すれば、集団のポリヌクレオチドが可変配列を有する場合、集団のポリヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、分子によって異なり得る。「可変」という用語は、集団内の全ての分子が、集団内の他の分子と異なる配列を有することを必要とするように読み取られるべきではない。
【0026】
「実質的に」という用語は、ハミング距離、レーベンシュタイン距離、ジャカード距離、コサイン距離などを含むが、これらに限定されない、相似関数によって測定されるほぼ二重鎖である配列を指す(一般に、Kemena et al,Bioinformatics 2009 25:2455-65を参照されたい)。正確な閾値は、分析を実施するために使用される試料調製および配列決定のエラー率によって異なり、より高いエラー率は、より低い類似閾値を必要とする。ある特定の場合において、実質的に同一の配列は、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0027】
本明細書で使用される「配列変異」という用語は、試料中の他の分子と比較して50%未満の頻度で存在する変異体であり、試料中の他の分子は、配列変異を含有する分子と実質的に同一である。場合によっては、特定の配列変異は、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、または0.5%未満の頻度で試料中に存在し得る。
【0028】
「核酸鋳型」という用語は、増幅中にコピーされる初期核酸分子を指すよう意図されている。この文脈におけるコピーは、特定の一本鎖核酸の相補体の形成を含むことができる。「初期」核酸は、既に処理されている核酸、例えば、アダプタで増幅、伸長、標識されている核酸などを含むことができる。
【0029】
「尾部」という用語は、尾部プライマーまたは5’尾部を有するプライマーの文脈において、プライマーの3’末端と同じ標的物にハイブリダイズしない、または部分的にハイブリダイズしない領域(例えば、少なくとも12~50ヌクレオチドの領域)をその5’末端で有するプライマーを指す。
【0030】
「初期鋳型」という用語は、増幅される標的配列を含有する試料を指す。本明細書で使用される「増幅する」という用語は、標的核酸を鋳型として使用して、1つ以上のコピーの標的核酸を生成することを指す。
【0031】
本明細書で使用される「アンプリコン」という用語は、PCR反応における特定のプライマー対によって増幅された生成物(または「バンド」)を指す。
【0032】
本明細書で使用される「複製アンプリコン」は、試料の異なる部分を使用して増幅された同じアンプリコンを指す。典型的な複製アンプリコンは、鋳型における配列変異、PCRエラー、および各複製物に使用されるプライマーの配列の違い(例えば、複製識別子配列などのプライマーの5’末端の違いなど)を除いて、ほぼ同一の配列を有する。
【0033】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、1つ以上の配列特異的プライマー対を使用して特異的鋳型DNAを増幅する酵素反応である。
【0034】
「PCR条件」は、当該技術分野で既知であるように、PCRが実施される条件であり、試薬(例えば、ヌクレオチド、緩衝液、ポリメラーゼなど)、ならびに温度サイクル(例えば、変性、再飽和、および伸長に好適な温度のサイクルを通して)の存在を含む。
【0035】
「多重ポリメラーゼ連鎖反応」または「多重PCR」は、異なる標的鋳型に対して2つ以上のプライマー対を採用する酵素反応である。標的鋳型が反応中に存在する場合、多重ポリメラーゼ連鎖反応は、対応する数の配列特異的プライマー対を使用して単一反応で共増幅される2つ以上の増幅DNA生成物をもたらす。
【0036】
本明細書で使用される「配列特異的プライマー」という用語は、研究中で、試料中で独自の部位にのみ結合し、それで伸長するプライマーを指す。ある特定の実施形態において、「配列特異的」オリゴヌクレオチドは、研究中で、試料中で独自である相補的ヌクレオチド配列にハイブリダイズし得る。
【0037】
「次世代配列決定」という用語は、核酸配列決定を実施する、いわゆる高度に並列化された方法を指し、Illumina、Life Technologies、Pacific Biosciences and Rocheなどによって現在採用されている合成による配列決定またはライゲーションプラットフォームによる配列決定を含む。次世代配列決定方法には、Oxford Nanoporeによって提供されるようなナノ細孔配列決定方法、またはLife Technologiesによって商品化されたIon Torrent技術などの電子検出ベースの方法も含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
「配列リード」という用語は、シーケンサーの出力を指す。配列リードは、典型的には、50~1000塩基以上の長さのG、A、T、およびCの文字列を含有し、多くの場合、配列リードの各塩基は、塩基コールの質を示すスコアと関連し得る。
【0039】
「の存在を評価すること(assessing)」および「の存在を評価すること(evaluating)」という用語は、要素が存在するかどうかを判定することと、要素の量を推定することと、を含む、任意の形態の測定を含む。「判定すること」、「測定すること」、「評価すること(evaluating)」、「評価すること(assessing)」、および「アッセイすること」という用語は、互換的に使用され、定量的および定質的な判定を含む。評価することは、相対的または絶対的であり得る。「の存在を評価すること」は、存在するものの量を判定すること、および/またはそれが存在するか否かを判定することを含む。
【0040】
2つの核酸が「相補的」である場合、それらは高ストリンジェンシー条件下で互いにハイブリダイズする。「完全に相補的」という用語は、核酸塩基のうちの1つの各塩基が他の核酸中の相補的ヌクレオチドと対合する二本鎖を説明するために使用される。多くの場合、相補的である2つの配列は、少なくとも10、例えば、少なくとも12または15ヌクレオチドの相補性を有する。
【0041】
「オリゴヌクレオチド結合部位」は、オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチド中でハイブリダイズする部位を指す。オリゴヌクレオチドがプライマーの結合部位を「提供する」場合、プライマーはそのオリゴヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズし得る。
【0042】
本明細書で使用される「鎖」という用語は、共有結合、例えば、ホスホジエステル結合によって一緒に共有連結されたヌクレオチドからなる核酸を指す。細胞において、DNAは通常、二本鎖形態で存在し、したがって、本明細書において「上部」および「底部」鎖と称される2本の核酸の相補鎖を有する。ある特定の場合において、染色体領域の相補鎖は、「プラス」および「マイナス」鎖、「第1の」および「第2の」鎖、「コード化」および「非コード化」鎖、「ワトソン」および「クリック」鎖、または「センス」および「アンチセンス」鎖と称され得る。上部または底部鎖としての鎖の割り当ては任意であり、いずれの特定の配向、機能、または構造を暗示するものではない。いくつかの例示的な哺乳動物染色体領域(例えば、BAC、アセンブリ、染色体など)の第1の鎖のヌクレオチド配列は既知であり、例えば、NCBIのGenbankデータベースに見出され得る。
【0043】
本明細書で使用される「伸長」という用語は、ポリメラーゼを使用したヌクレオチドの付加によってプライマーの伸長を指す。核酸にアニーリングするプライマーが伸長する場合、核酸は伸長反応の鋳型として作用する。
【0044】
本明細書で使用される「配列決定」という用語は、ポリヌクレオチドの少なくとも10個の連続するヌクレオチドの同一性(例えば、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、または少なくとも200個以上の連続するヌクレオチドの同一性)を得る方法を指す。
【0045】
本明細書で使用される「プールすること」という用語は、これらの試料または複製物内の分子が溶液中で互いに散在するように、2つ以上の試料または試料の複製物を組み合わせること、例えば混合することを指す。
【0046】
本明細書で使用される「プールした試料」という用語は、プールした生成物を指す。
【0047】
本明細書で使用される「部分」という用語は、同じ試料の異なる部分の文脈において、試料のアリコートまたはその一部を指す。例えば、100ulの試料の1マイクロリットルが、10個の異なるPCR反応の各々に加えられる場合、それらの反応は、各々、同じ試料の異なる部分を含有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「血流からの無細胞DNA」、「循環無細胞DNA」、および無細胞DNA」(「cfDNA」)という用語は、患者の末梢血中で循環しているDNAを指す。無細胞DNA中のDNA分子は、1kb未満の中央値サイズ(例えば、50bp~500bp、80bp~400bp、または100~1,000bpの範囲内)を有し得るが、この範囲外の中央値サイズを有する断片が存在し得る。無細胞DNAは、循環腫瘍DNA(ctDNA)、すなわち、癌患者の血液中で自由に循環する腫瘍DNAまたは循環胎児DNA(対象が妊娠中の女性である場合)を含有し得る。cfDNAは、全血を遠心分離して、全ての細胞を除去し、次いで残りの血漿または血清からDNAを単離することによって得ることができる。そのような方法は、周知である(例えば、Lo et al,Am J Hum Genet 1998;62:768-75を参照されたい)。循環無細胞DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。この用語は、血流中で循環している遊離DNA分子、および血流中で循環している細胞外小胞(エクソソームなど)中に存在するDNA分子を包含することが意図されている。
【0049】
本明細書で使用される場合、「循環腫瘍DNA」(または「ctDNA」)という用語は、患者の末梢血中で循環している腫瘍由来DNAである。ctDNAは、腫瘍起源のものであり、腫瘍または循環腫瘍細胞(CTC)から直接由来し、これらは、原発性腫瘍から流出し、血流またはリンパ系に入る生存可能で無傷の腫瘍細胞である。ctDNA放出の正確な機構は不明であるが、それは、死亡細胞からのアポトーシスおよび壊死、または生存腫瘍細胞からの活性放出を伴うと仮定される。ctDNAは、高度に断片化され得、場合によっては、約100~250bp、例えば、150~200bpの長さの平均断片サイズを有し得る。癌患者から単離された循環無細胞DNAの試料中のctDNAの量は大きく異なる:典型的な試料は、10%未満のctDNAを含有するが、多くの試料は、1%未満のctDNAを有し、一部の試料は、10%を超えるctDNAを有する。ctDNAの分子は、腫瘍発生性突然変異を含有するため、しばしば、同定することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「血流からの無細胞RNA」、「循環無細胞RNA」、および無細胞RNA」(「cfRNA」)という用語は、患者の末梢血中で循環しているRNAを指す。無細胞RNAは、循環腫瘍RNA(ctRNA)、すなわち、癌患者の血液中で自由に循環する腫瘍RNAまたは循環胎児RNA(対象が妊娠中の女性である場合)を含有し得る。この用語は、血流中で循環している遊離RNA分子、および血流中で循環している細胞外小胞(エクソソームなど)中に存在するRNA分子を包含することが意図されている。
【0051】
本明細書で使用される場合、「配列変異」という用語は、配列変異の位置および種類の組み合わせを指す。例えば、配列変異は、変異の位置によって、どの種類の置換(例えば、GからA、GからT、GからC、AからGなど、またはG、A、T、もしくはCなどの挿入/欠失)がその位置に存在するかによって称され得る。配列変異は、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、挿入、または再配列であり得る。本方法の文脈おいて、配列変異は、例えば、PCRエラー、配列決定エラー、または遺伝子変異によって生成され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「遺伝子変異」という用語は、核酸試料中に存在するか、または存在する可能性が高いと見なされる変異(例えば、ヌクレオチド置換、インデル、または再配列)を指す。遺伝的変異は、任意の供給源からのものであり得る。例えば、遺伝的変異は、突然変異(例えば、体細胞突然変異)、臓器移植、または妊娠によって生成され得る。配列変異が、遺伝的変異と呼ばれる場合、呼び出しは、試料が変異を含有する可能性が高いことを示し、場合によっては「呼び出し」が不正確であり得る。多くの場合、「遺伝子変異」という用語は、「突然変異」という用語に置き換えることができる。例えば、本方法を使用して、癌または変異によって引き起こされる他の疾患に関連する配列変異を検出する場合、「遺伝的変異」は、「突然変異」という用語に置き換えることができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「呼び出すこと」という用語は、特定の配列変異が試料中に存在するかどうかを示すことを意味する。これは、例えば、配列変異を含有する配列を提供すること、および/または配列変異を有する配列に注釈を付けること、配列が特定の位置でAからTへの変異を有することを示すことを伴い得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「閾値」という用語は、呼び出しを行うために必要とされる証拠のレベルを指す。閾値i.は、ある配列変異から別の配列変異に変化させることができ、ii.は、場合によっては、様々な因子に応じて、所望に応じて、他の閾値とは独立して増加または減少し得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「カットオフ」という用語は、複製物が、対照に基づく配列変異を含有する可能性が統計的に高いと同定され得る頻度でまたは頻度を上回る配列リードの頻度を指す。以下により詳細に説明されるように、少数の分子中に存在する配列変異を含有するPCR生成物を配列決定する際に、配列リードのいくつかは、変異体分子からのものとなり、他のものはそうではない(例えば、「野生型」配列からのものとなる)。変異体分子からのものであるリードの頻度は、例えば、変異体分子からのリードの数をリードの総数で除算することによって計算され得る。カットオフ頻度は、いくつかの対照試料(例えば、配列変異を含有しない試料)を配列決定することによって確立することができる。カットオフi.は、ある配列変異から別の配列変異に変化することができ、ii.は、場合によっては、様々な因子に応じて、所望に応じて、他のカットオフとは独立して増加または減少し得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「値」という用語は、証拠の強度を示すことができる数値、文字、単語(例えば、「高」、「中」、もしくは「低」)、または記述子(例えば、「+++」または「++」)を指す。値は、値がどのように分析されるかに応じて、1つの構成要素(例えば、単数)または1つを超える構成要素を含有することができる。
【0057】
用語の他の定義は、明細書全体を通して現れ得る。特許請求の範囲は、あらゆる任意の要素を除外するように作成され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「単に」、「のみ」などの排他的な用語の使用、または「否定的」な限定の使用の先行詞としての役割を果たすことが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明がより詳細に説明される前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、当然のことながら変わり得ることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される専門用語も特定の実施形態のみを記述する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないということも理解されるべきである。
【0059】
数値範囲が提供されている場合、文脈が明らかに別途指示がない限り、下限の単位の1/10まで、その範囲の上限と下限との間のそれぞれ介在する数値および規定された範囲にある他のいかなる規定値または介在する値は本発明に包含されるものと理解される。
【0060】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似または等価のいかなる方法および材料も本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をこれから記載する。
【0061】
本明細書に引用されているあらゆる刊行物および特許文書は、あたかも各個々の刊行物または特許文書が、参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれ、引用されている刊行物と関連する方法および/または材料を開示し説明するために参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであり、本発明が、従来の発明に関してこのような刊行物に先行する資格がないことの承認であると解釈されるべきではない。さらに、提供されている刊行物の日付は、実際の刊行物の日付とは異なる場合があり、独立して確認される必要があり得る。
【0062】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意の要素を除外するように作成され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「単に」、「のみ」などの排他的な用語の使用、または「否定的」な限定の使用の先行詞としての役割を果たすことが意図されている。
【0063】
本開示を読めば当業者に明らかとなるように、本明細書において記載および例示される個々の実施形態の各々は、個別の構成要素および特徴を有し、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に区別または組み合わせることができる。引用される任意の方法は、引用される事象の順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0064】
多重PCR反応に適合する複数のプライマー対を採用する配列分析のための方法が、本明細書に提供される。この文脈において、「適合性」プライマーを含有する多重PCR反応は、プライマーに対して適切な鋳型を用いた適切な熱循環条件下で反応に供されるときに、PCRプライマー対に対応するアンプリコンを生成する対象となる領域を特異的に増幅し、プライマー二量体の生成を最小限に抑えるように設計されるものである。典型的には、必ずしもそうではないが、各プライマー対は、多重PCR反応において対象となる単一領域を増幅する。多重PCRおよび適合性プライマーを設計するためのプログラムを実施するための条件は、周知である(例えば、Sint et al,Methods Ecol Evol.2012 3:898-90およびShen et al BMC Bioinformatics 2010 11:143を参照されたい)。適合性プライマー対は、多重PCR法のためのプライマー対を設計するように特異的に設計されたいくつかの異なるプログラムのいずれか1つを使用して設計され得る。例えば、プライマー対は、例えば、Yamadaら(Nucleic Acids Res.2006 34:W665-9)、Leeら(Appl.Bioinformatics 2006 5:99-109)、Valloneら(Biotechniques.2004 37:226-31)、Rachlin et al.BMC Genomics.2005 6:102、またはGorelenkovら(Biotechniques.2001 31:1326-30)の方法を使用して設計され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも5対の適合性プライマー、例えば、少なくとも10対、少なくとも50対、少なくとも100対、または少なくとも1,000対の適合性プライマーを採用してもよい。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも10個および最大50,000個のプライマー対、少なくとも10個および最大10,000個のプライマー対、少なくとも10個および最大5,000個のプライマー対、少なくとも10個および最大1,000個のプライマー対、または少なくとも10個および最大500個のプライマー対を採用してもよく、各プライマー対は、異なるアンプリコンを増幅するように設計されている。増幅されたアンプリコンは、任意の好適な長さのものであり得、長さは変化してもよい。いくつかの実施形態において、各アンプリコンの長さは、独立して、50bp~500bpの範囲内であってもよいが、いくつかの実装において、より長いまたはより短いアンプリコンを使用してもよい。
【0065】
プライマー対が得られた後、本方法は、各々、同じ試料の異なる部分(すなわち、同じ試料の異なるアリコート)を含有し、少なくとも2つの多重PCR反応(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の多重PCR反応などの最大10個の多重PCR反応)を設定することを含み得る。このステップでは、いくつかのプライマー対が全ての反応において存在し得る一方で、他のプライマー対が1つまたはいくつか(全てではないが)の反応においてのみ存在するという点で、多重PCR反応は、互いに同一ではない。例えば、3つの多重PCR反応が存在する場合、いくつかのプライマー対は、単一反応において存在してもよく、いくつかのプライマー対は、2つの反応において存在してもよく、いくつかのプライマー対は、3つ全ての反応において存在してもよい。同様に、4つの多重PCR反応が存在する場合、いくつかのプライマー対は、単一反応において存在してもよく、いくつかのプライマー対は、2つの反応において存在してもよく、いくつかのプライマー対は、3つの反応において存在してもよく、いくつかのプライマー対は、4つ全ての反応において存在してもよい。これらの実施形態において、プライマー対のうちの少なくともいくつかは、1つを超えるPCR反応において存在し、PCR反応のうちの少なくとも1つが、他の反応(複数可)のプライマー対のうちのいくつかを含有するが、全てを含有しない。特定のプライマー対を含有するPCR反応の数は、i.選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンにおける遺伝的変異を見出す可能性、ii.選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンにおける対象となる特定の癌と相関する遺伝的変異を見出す可能性、iii.試料が得られた患者の治療歴、iv.選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンにおける臨床的に有意な遺伝的変異を見出す可能性、v.試料が得られた患者が受けたこれまでの試験、vi.選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンにおいて見出されると予期される遺伝的変異のエラープロファイル(「エラープロファイル」という用語は、特定の変異が遺伝的変異に起因しない頻度を示す)、および/もしくはvii.選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンの長さ、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々な因子によって判定される。
【0066】
例えば、選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンにおける遺伝的変異を検出する可能性が、他のプライマー対によって増幅されたアンプリコンと比較して高い場合(以前のおよび進行中の実験によって予測されるように)、そのプライマー対は、より多くの反応(例えば、全ての反応)において存在し得る。逆に、選択されたプライマー対によって増幅されたアンプリコンにおける遺伝的変異を検出する可能性が、他のプライマー対によって増幅されたアンプリコンと比較して低い場合(以前のおよび進行中の実験によって予測されるように)、そのプライマー対は、より少ない反応(例えば、1つまたは2つの反応)において存在し得る。別の例では、特定の疾患または状態(例えば、対象となる癌)と相関する遺伝的変異を見出す可能性が、他のアンプリコンと比較して1つのアンプリコンにおいて高い場合、プライマー対は、より多くの反応(例えば、全ての反応)において存在し得る。例えば、非小細胞肺癌に関連する突然変異の試験により関心がある場合、それらの突然変異を潜在的に含有する配列を増幅するプライマー対は、より多くの反応において存在し得る。逆に、研究者に関心がない疾患または状態と相関する遺伝的変異を潜在的に含有する断片を増幅するプライマー対は、より少ない反応(例えば、1つまたは2つの反応)において存在し得る。別の例では、試料が得られた患者の治療歴を使用して、反応が特定のプライマー対を含有する数を判定し得る。この例では、治療に対する耐性に関連する遺伝的変異を有することができる配列を増幅するプライマー対は、より多くの反応(例えば、全ての反応)において存在し得る一方で、治療に対する耐性に関連しない遺伝的変異を有することができる配列を増幅するプライマー対は、より少ない反応、例えば、1つまたは2つの反応において存在し得る。別の例では、臨床的に作用可能な遺伝的変異(すなわち、成功した治療と相関する遺伝的変異)を有することができる配列を増幅するプライマー対は、より多くの反応(例えば、全ての反応)において存在し得る一方で、臨床的に作用可能な遺伝的変異を有しない配列を増幅するプライマー対は、より少ない反応(例えば、1つまたは2つの反応)において存在し得る。別の例では、特定のプライマー対を含有する反応の数は、試料が得られた患者が受けたこれまでの試験によって判定され得る。例えば、患者が特定の遺伝的変異を有することが既に知られている場合、その遺伝的変異を潜在的に含有するアンプリコンを増幅するプライマー対は、より多くの(例えば、全ての)反応において存在し得、遺伝的変異を潜在的に含有するアンプリコンを増幅しないプライマー対は、より少ない(例えば、1つまたは2つの)反応において存在し得る。別の例では、特定のプライマー対を含有する反応の数は、プライマー対によって増幅されたアンプリコンに見出される遺伝的変異の種類によって判定され得る。ある特定の種類の配列変異(例えば、インデルおよび再配列)は、PCRおよび/または配列決定エラーによって生成される可能性は低く、したがって、インデルを標的とするプライマー対は、より少ない反応(例えば、1つまたは2つの反応)において存在し得る。より高いバックグラウンド(例えば、ヌクレオチド置換)を有する変異を標的とするプライマー対は、より多くの反応(例えば、全ての反応)において存在し得る。別の例では、対象となるDNAが無細胞DNAの場合のように断片化されるとき、より長い生成物を増幅するプライマー対は、より短い生成物を増幅するプライマー対よりも利用可能なDNAをさらに頻繁に増幅することできないため、より長い生成物を増幅するプライマー対は、より短い生成物を増幅するプライマー対よりも多くの反応において存在し得る。
【0067】
上記の原理に従って設定された4つの多重PCR反応(R1、R2、R3、およびR4)の概略図を、
図1に示す。この例では、アンプリコンA1は、他のアンプリコンと比較して遺伝的変異を含有する可能性が高く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は全ての反応において存在し、アンプリコンA2は、他のアンプリコンと比較して遺伝的変異を含有する可能性が低く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は2つの反応において存在し、アンプリコンA3は、他のアンプリコンと比較して、対象となる特定の癌、例えば非小細胞肺癌と関連する遺伝的変異を含有する可能性が高く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は全ての反応において存在し、アンプリコンA4は、他のアンプリコンと比較して、対象となる特定の癌に関連する遺伝的変異を含有する可能性が低く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は2つのアンプリコンにおいて存在し、アンプリコンA5は、臨床的に作用可能な遺伝的変異を含有する可能性がより高く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は全ての反応において存在し、アンプリコンA6は、臨床的に作用可能な遺伝的変異を含有する可能性がより低く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対はわずか3つの反応において存在し、アンプリコンA7は、高いバックグラウンド遺伝的変異を含有する可能性がより高く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は全ての反応において存在し、アンプリコンA8は、低いバックグラウンド遺伝的変異(例えば、インデルまたは転座)を含有する可能性がより高く、したがって、このアンプリコンを生成するPCRプライマー対は2つの反応において存在する。いくつかの実施形態において、より少ない反応において存在するPCRプライマー対は、多重PCR反応の各々がほぼ同じ数のプライマー対を含有するように反応の間に広がり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対は、遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し得、対象となる特定の癌に関連する遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対は、対象となる特定の癌に関連する遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し得、患者が療法に耐性を示す遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対は、患者が療法に耐性を示す遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し得、臨床的に作用可能な遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対は、臨床的に作用可能な遺伝的変異を含有する可能性がより低いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し得、および/または高いバックグラウンド遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対は、低いバックグラウンド遺伝的変異を含有する可能性がより高いアンプリコンを生成するPCRプライマー対よりも多くの反応において存在し得る。
【0069】
反応が設定された後、本方法は、複数の複製アンプリコンを生成するために増幅に好適な条件(例えば、熱循環)下で多重PCR反応を配置することを含み、「複製」アンプリコンは、2つ以上の反応において同じプライマーによって増幅されるアンプリコンである。複製アンプリコンは、一般に、同じ配列を有する(PCRエラー、試料中の遺伝的変異に対応する変異、およびPCRプライマー中の任意の変異を除く)。例によって例示すると、
図1に示される全てのアンプリコンは、複製物を有し、アンプリコンA1は、4つの複製物を有し、アンプリコンA2は、2つの複製物を有し、アンプリコンA3は、4つの複製物を有するなどである。次いで、アンプリコンは、配列リードを生成するために、配列決定される。
【0070】
アンプリコンの配列決定において、各異なる多重PCR反応に由来するアンプリコンは、互いに別個に配列決定されてもよいか、またはアンプリコンは、複製識別子でバーコード化され、次いで、配列決定の前にプールされてもよい。いくつかの実施形態において、多重PCR反応におけるプライマーは、複製識別子を含有する5’尾部を有し得、そのため、PCR反応が完了した後、プライマーの5’尾部の配列がアンプリコン中に存在する。他の実施形態において、複製識別子を含有する5’尾部を有するプライマーを使用せずに、多重PCR反応を行うことができる。これらの実施形態において、PCR生成物は、複製識別子を含有する5’尾部を有するPCRプライマーを使用する第2ラウンドの増幅において、複製識別子でバーコード化されてもよい。いずれにせよ、アンプリコンは、特定の配列決定プラットフォームとの適合性を提供する5’尾部を有するプライマーを使用して、配列決定の前に増幅されてもよい。ある特定の実施形態において、複製識別子に加えて、このステップにおいて使用されるプライマーのうちの1つ以上は、試料識別子を追加的に含有し得る。プライマーが試料識別子を有する場合、異なる試料由来の生成物は、配列決定の前にプールすることができる。いくつかの実施形態において、標的特異的プライマーは、5’から3’までの普遍的な「タグ付け」配列、任意選択の複製バーコード配列、続いて対象となる標的に設計された配列を含有する。初期多重体をさらに増幅するために使用されるプライマーは、特定の配列決定プラットフォームとの適合性を提供する5’から3’の尾部、試料バーコード、および任意選択的に複製バーコード、ならびに標的特異的プライマー上に存在するタグ付け配列の逆相補体のいずれかの部分または全てに結合することができる配列を含有する。典型的には、順方向および逆方向プライマーは、異なるタグ付け配列を有する。
【0071】
増幅ステップのために使用されるプライマーは、プライマー伸長が使用される任意の次世代配列決定プラットフォーム、例えば、Illuminaの可逆的ターミネーター法、Rocheのパイロシーケンシング法(454)、ライゲーションによるLife Technologiesの配列決定(SOLiDプラットフォーム)、Life TechnologiesのIon Torrentプラットフォーム、またはPicific Biosciencesの蛍光塩基開裂法での使用と適合し得る。そのような方法の例は、以下の参考文献:Marguliesら(Nature 2005 437:376-80)、Ronaghiら(Analytical Biochemistry 1996 242:84-9)、Shendure(Science 2005 309:1728)、Imelfortら(Brief Bioinform.2009 10:609-18)、Foxら(Methods Mol Biol.2009;553:79-108)、Applebyら(Methods Mol Biol.2009;513:19-39) English(PLoS One.2012 7:e47768)、およびMorozova(Genomics.2008 92:255-64)に記載されており、これらは、ステップの各々における全ての出発生成物、試薬、および最終生成物を含む、方法の一般的な説明および方法の特定のステップについて参照により組み込まれる。
【0072】
配列決定ステップは、任意の都合の良い次世代配列決定方法を使用して行われ得、少なくとも10,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも500,000、少なくとも1M、少なくとも10M、少なくとも100M、少なくとも1B、または少なくとも10Bの配列リードをもたらし得る。場合によっては、このリードはペアエンドリードであり得る。
【0073】
次いで、配列リードを計算的に処理する。初期処理ステップは、バーコード(試料識別子または複製識別子配列を含む)の同定、および低品質またはアダプタ配列を除去するために、リードをトリミングすることを含み得る。加えて、データセットが許容できる品質であることを保証するために、品質評価メトリックを実行することができる。
【0074】
配列リードが初期処理を受けた後、それらを分析して、遺伝的変異を同定する。変異体配列は、一般に少数(例えば、配列の10%未満)であるため、無細胞DNAにおける遺伝的変異の呼び出しは、困難であり得る。したがって、アンプリコン配列決定戦略が採用される場合、各アンプリコンについての配列は、ほとんどが野生型配列であり得る。配列の10%未満で表され得る少数の変異体は、アーチファクト、例えば、配列決定および/PCRエラーと区別することが困難である。本方法では、アンプリコンは、各配列変異について、PCRエラーまたは配列決定アーチファクトとは対照的に、配列変異が遺伝的変異(例えば、試料中のDNAにおける突然変異)を表す可能性が高いかどうかを示すスコアを生成するために分析される。これらの実施形態において、本方法は、選択された配列変異についてのスコアを生成するために、選択された配列変異について複製アンプリコンからの配列リードを分析することを含み得る。これらの実施形態において、スコアは、カットオフを上回る頻度を有する配列変異を含む複製アンプリコンの数に基づき得るか、または複製物にわたる配列変異のために組み合わせられた証拠の強度を示し得る。配列変異は、スコアに基づいて遺伝的変異として呼び出され得る。いくつかの実施形態において、遺伝的変異は、スコアを閾値と比較することによって呼び出され得る。スコアが閾値以上である場合、遺伝的変異を呼び出すことができる。
【0075】
スコアが、カットオフを上回る頻度を有する配列変異を含む複製アンプリコンの数に基づいている実施形態において、カットオフは、配列変異が増幅および/または配列決定エラーによって生成される頻度を示すエラー分布に基づき得る。このエラー分布は、遺伝的変異を有し得るか否かの対照試料を使用して確立され得る。いくつかの実施形態において、カットオフは、対照試料の配列決定に基づいて、二項式、過剰分散二項式、ベータ、正常、指数関数式、またはガンマ確率分布モデルを使用して決定され得る。いくつかの実施形態において、エラー分布は、どのくらいの頻度で増幅および/または配列決定エラーが異なる配列決定深さで発生するかを示し得る。このようなエラー分布の例を、
図2に示す。
図2に示される例では、アンプリコンの各位置における配列変異の頻度(すなわち、その位置の配列リードの総数に対する位置に配列変異を含有する配列リードの数)は、各位置に関する配列変異のバックグラウンドレベルを確立するために、いくつかの対照試料の配列決定深さ(すなわち、配列リードの総数)に対してプロットすることができる(そのバックグラウンドは、遺伝子変異ではなく、配列決定アーチファクトに起因すると推定される)。この例では、「カットオフ」は、統計的にバックグラウンドである可能性が低い変異を同定するためのベースラインを確立する。これらの実施形態において、カットオフを上回る頻度を有する配列変異を含む複製アンプリコンの数は、変異が遺伝的変異であるかどうかを判定するために使用することができるスコアを提供する。例えば、
図2に示す例では、変異体の頻度は、4つの複製のうちの3つにおいてカットオフを上回る。この実施例では、スコアは、「3/4」、0.75、または単に「3」であり得、変異が3つの複製において正に同定されたことを示す。次いで、このスコアは、変異が遺伝的変異の結果である可能性が高いかどうかを判定するために閾値と比較される。この閾値は、位置ごとに変化させることができ、すべての潜在的な遺伝的変異において同じである必要はない。例えば、
図2に示す例では、閾値は、例えば、2または3であり得、この場合、データを
図2に示す変異体は、変異が見出される複製物の数がカットオフ以上であるため、遺伝的変異に起因する可能性が高い。この実施例で閾値が4である場合、スコアが閾値未満であるため、変異を遺伝的変異として呼び出すことはできない。理解され得るように、閾値は、いくつのアンプリコンの複製物が配列決定され、いくつかの他の因子に応じて増加または減少し得る。カットオフはまた、いくつかの因子に基づいて増加または減少し得る。いくつかの実施形態において、この方法は、(i)特定のアンプリコンの各ヌクレオチド位置について、異なる配列決定深さで増幅および/または配列決定エラーがどのくらいの頻度で発生するかを示すエラー分布を判定する、例えば、プロット化することと、(ii)配列の各位置についての分布に基づいて、各異なる配列決定深さに対して、遺伝的変異を検出することができるカットオフでまたはカットオフを上回るカットオフを判定することと、(iii)同じ試料から複数の複製アンプリコンを配列決定して、複製アンプリコンについて複数のリードを得ることと、(iv)アンプリコンの各位置について、配列リードにおける配列変異の頻度がカットオフを上回るか、または下回るかを判定することと、を含み得る。カットオフで、またはそれを上回るのアンプリコンの数が、スコアを提供する。これらの実施形態において、「プロット化」という用語は、計算上行われ得、したがって、この方法は、グラフを物理的に描くことなく行われ得る。
【0076】
スコアが複製物にわたる配列変異についての組み合わせられた証拠の強度を示す実施形態において、データは、頻度論またはベイジアンのいずれかの統計的手順に供され得、変異についての証拠は、ベイズ分析の文脈において、尤度値、または代替的にベイズ因子もしくは事後確率として要約され得る。これらの実施形態において、この統計的スコアは、それが蓄積されるにつれて他のデータによって変更され得る。例えば、配列変異についての組み合わせられた証拠(その証拠は、例えば、変異を有する配列リードが同定された複製物の数、および各アンプリコンについて、i.変異を有する配列リードの数、ii.アンプリコンについての配列リードの総数、iii.配列リードにおける遺伝的変異の頻度、ならびにiv他の指標を含み得る)は、スコア(例えば、P値など)として要約することができ、スコアを閾値と比較して、変異を遺伝的変異として呼び出すことができるかどうかを判定することができる。例えば、組み合わせた証拠を要約するスコアが0.91であり、遺伝的変異を呼び出す尤度閾値が0.95である場合、遺伝的変異を呼び出すことはできない。他方では、組み合わせた証拠を要約するスコアが0.98であり、遺伝的変異を呼び出す尤度閾値が0.95である場合、遺伝的変異を呼び出すべきである。これらの分析方法ならびに閾値は、必要に応じて、機械学習によって行うことができる。
【0077】
しかしながら、配列分析ステップが実装されると、使用される閾値またはカットオフ自体は、データが蓄積されるおよび/または他の因子に応じて、各変異について増加または減少させることができる。例えば、閾値および/またはカットオフ自体は、上述のものと類似の因子を使用して増加または減少させることができる。例えば、閾値および/またはカットオフは、癌患者における特定の遺伝的変異の予期される頻度(この場合、閾値および/またはカットオフは、より一般的な突然変異においてより低くなり得る)、試料が得られた患者の癌の種類(この場合、閾値および/またはカットオフは、非小細胞肺癌などの目的の癌に関連する突然変異においてより低くなり得る)、試料が得られた患者の治療歴(この場合、閾値および/またはカットオフは、治療に対する耐性に関連する遺伝的変異においてより低くなり得る)、遺伝的変異の臨床的有意性(この場合、閾値および/またはカットオフは、癌の治療に関連する遺伝的変異においてより低くなり得る)、患者が受けたこれまでの試験(この場合、閾値および/またはカットオフは、患者において既に同定されている遺伝的変異においてより低くなり得る)、変異のエラープロファイル(この場合、閾値および/またはカットオフは、より低いエラー率を有する遺伝的変異においてより低くなり得る)、試料中に見出される他の遺伝的変異(この場合、閾値および/またはカットオフは、試料中で一般的には共に見出されない遺伝的変異においてより低くなり得る)、ならびに/または配列決定の全体的なエラー率に基づいて増加または減少させることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、試料はcfDNAであってもよく、本方法は、(RT-PCRを介して)同じ対象からのcfRNAを使用して増幅された同じ領域の少なくともいくつかを配列決定することをさらに含んでもよい。これは、同じアンプリコンまたは異なるアンプリコンのいずれかを使用して実施することができる。この実装において、本方法は、cfDNAを使用して呼び出される遺伝的変異と、cfRNAを使用して呼び出される遺伝的変異とを比較することを含み得る。両方の試料において変異が同定される場合、それはより高い信頼性を有する遺伝的変異であると同定され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、試料はcfDNAであってもよく、本方法は、同じ対象からの白血球DNAから増幅された同じアンプリコンのうちの少なくともいくつかを配列決定することをさらに含んでもよい。これらの実施形態において、方法は、cfDNAを使用して呼び出される遺伝的変異と、白血球DNAを使用して呼び出される遺伝的変異とを比較することを含み得る。両方の試料において変異が同定される場合、それはより低い信頼性を有する、または信頼性を有さない遺伝的変異であると同定され得る。この実施形態は、未確定の潜在能を持つクローン造血(CHIP)に起因する可能性があり得るか(一般に、Funari et al,Blood 2016 128:3176およびHeuser et al,Dtsch Arztebl Int.2016 113:317-322を参照されたい)、または例えば、生殖細胞株変異体であり得る変異体を同定する方法を提供する。
【0080】
代替の実施形態において、方法は、変異を増幅する複製PCR反応の数を変化させることなく、特定の配列変異の閾値および/またはカットオフを増加または減少させることによって実施され得る。これらの実施形態は、(a)多重PCR反応において適合する複数のプライマー対を得ることと、(b)少なくとも2つの多重PCR反応を設定することであって、各々、同じ試料の異なる部分を含有し、異なる反応が同じプライマーを含有する、設定することと、(c)複数の複製アンプリコンを生成するために、多重PCR反応を熱循環させることと、(d)配列リードを生成するために、アンプリコンを配列決定することと、(e)選択された配列変異についてのスコアを生成するために、選択された配列変異について複製アンプリコンからの配列リードを分析することであって、スコアが、i.カットオフを上回る頻度を有する配列変異を含む複製アンプリコンの数に基づいている、またはii.複製にわたる配列変異のために組み合わせられた証拠の強度を示す、分析することと、(f)スコアに基づいて遺伝的変異として配列変異を呼び出すことであって、各選択された配列変位に使用されるスコアおよび/またはカットオフは、部分的に、i.遺伝的変異の予期される頻度、ii.試料が得られた患者の癌の種類、iii.試料が得られた患者の治療歴、iv.遺伝的変異の臨床的有意性、v.試料が得られた患者が受けたこれまでの試験、vi.遺伝的変異のエラープロファイル、vi.試料中に見出された他の遺伝的変異、および/またはvii配列決定の全体的なエラー率、またはこれらの任意の組み合わせに基づいている、呼び出すことと、を含み得る。この代替方法がどのように実施され得るかの詳細は、本開示の他の部分から適合され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、本方法は、試料中に遺伝的変異があるかどうか、遺伝的変異の種類、および/または遺伝的変異によって引き起こされるアミノ酸置換を示す報告書を提供することを含み得る。いくつかの実施形態において、報告書は、試料中で同定される遺伝的変異に関連する癌に対する承認された(例えば、FDA承認された)療法をさらに列記し得る。この情報は、疾患(例えば、患者が癌を有するかどうか)および/または医師によってなされた治療法の決定を診断するのに役立ち得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、報告書は、電子的形態であってもよく、本方法は、報告書を遠隔場所に、例えば、医師または他の医療専門家に転送して、好適な行動経過を同定する、例えば、対象を診断する、または対象に好適な療法を同定するのを支援することを含む。報告書は、例えば、対象が療法の影響を受けやすいかどうかを判定するために、他の指標とともに使用されてもよい。
【0083】
任意の実施形態において、報告書は、「遠隔場所」に転送することができ、「遠隔場所」は、配列が分析される場所以外の場所を意味する。例えば、遠隔場所は、同じ都市内の別の場所(例えば、オフィス、研究室など)、異なる都市内の別の場所、異なる州内の別の場所、異なる国内の別の場所などであり得る。したがって、ある項目が別の項目から「遠隔」であると示される場合、意味するのは、2つの項目が、同じ部屋にあるが、離れている、または少なくとも異なる部屋もしくは異なる建物にあることができ、少なくとも1マイル、10マイル、または少なくとも100マイル離れていることができることである。「通信」情報は、好適な通信チャネル(例えば、プライベートまたはパブリックネットワーク)を介して電気信号としてその情報を表すデータを送信することを指す。項目を「転送する」とは、その項目を物理的に輸送するか否かにかかわらず(それが可能な場合)、その項目をある場所から次の場所に取得する任意の手段を指し、少なくともデータの場合、データを運ぶ媒体を物理的に輸送するか、またはデータを通信することを含む。通信媒体の例は、無線または赤外線送信チャネル、ならびに別のコンピュータまたはネットワークデバイスへのネットワーク接続、ならびに電子メール送信およびウェブサイトに記録された情報などを含むインターネットを含む。ある特定の実施形態において、報告書は、MDまたは他の適格な医療専門家によって分析され得、配列の分析の結果に基づいた報告書は、試料が得られた患者に転送され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、生物学的試料は、患者から得られ得、試料は、方法を使用して分析され得る。特定の実施形態において、本方法は、ゲノム遺伝子座の野生型コピーおよびゲノム遺伝子座の変異体コピーの両方を含有する生物学的試料中にあるゲノム遺伝子座の変異体コピーの量を同定および/または推定するために採用され得、変異体コピーは、ゲノム遺伝子座の野生型コピーに対して配列変異を有する。この実施例において、試料は、ゲノム遺伝子座の変異体コピーよりも少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1,000倍、少なくとも5,000倍、または少なくとも10,000倍)多くのゲノム遺伝子座の野生型コピーを含有してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、本方法は、ショットガンによる濃縮されていない/増幅されていない試料のショットガン配列決定、または全エクソンの配列決定を伴わない。むしろ、配列決定は、AKT1、ALK、BRAF、CCND1、CDKN2A、CTNNB1、EGFR、ERBB2、ESR1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、GATA3、GNA11、GNAQ、GNAS、HRAS、IDH1、IDH2、KIT、KRAS、MAP2K1、MET、MYC、NFE2L2、NRAS、NTRK1、NTRK3、PDGFRA、PIK3CA、PPP2R1A、PTEN、ROS1、STK11、TP53、およびU2AF1のコード配列、ならびに他の遺伝子のコード配列、または非小細胞肺癌に関連する突然変異に焦点を当てて、最大200、例えば、最大100または最大50個の遺伝子のコード配列の少なくとも一部を標的にするより大きな配列決定努力の一部として行われ得る。代替の実施形態において、本方法は、乳癌、黒色腫、腎臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膵臓癌、白血病、結腸直腸癌、前立腺癌、中皮腫、神経膠腫、髄芽腫、多細胞血症、リンパ腫、肉腫、または多発性骨髄腫と関連付けられ得る、例えば、PIK3CA、NRAS、KRAS、JAK2、HRAS、FGFR3、FGFR1、EGFR、CDK4、BRAF、RET、PGDFRA、KIT、またはERBB2における発癌変異を検出するために使用され得る(例えば、Chial 2008 Proto-oncogenes to oncogenes to cancer.Nature Education 1:1を参照されたい)。
【0086】
いくつかの実施形態において、試料は、第1の場所、例えば、病院または医師のオフィスなどの臨床環境において患者から収集され得、試料は、第2の場所、例えば、試料が処理され、上記の方法が実施されて、報告書を生成する実験室に転送され得る。本明細書に記載の「報告書」は、試料中の少数の変異体(複数可)の存在および/または量を示し得る試験結果を提供する報告要素を含む、電子的または有形の文書である。生成されると、報告書は、臨床決定の一部として、医療専門家(例えば、臨床医、臨床検査技師、または腫瘍学者、外科医、病理学者、もしくはウイルス学者などの医師)によって解釈され得る別の場所(第1の場所と同じ場所であってもよい)に転送され得る。
【0087】
この方法によって同定される遺伝的変異は、診断的、予後的、または治療的であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療法の決定を導くために使用してもよい。これらの実施形態において、本方法は、上記の方法を実施すること、または実施したこと、および作用可能な治療が同定される場合に患者に治療を投与することを含む治療方法であり得る。作用可能な突然変異には、EGFRおよびBRAFの活性化突然変異、例えば、EGFRにおけるG719X、エクソン19欠失、V765A、T783A、V774A、S784P、L858R、S768I、およびL861X、ならびにBRAFにおけるV600E;L601G;K601E;L597V/Q/R、およびG469V/S/R/E/Aが含まれるが、これらに限定されない。作用可能な突然変異はまた、ALKおよびROS1における再配列、例えば、EML4-ALK、TFG-ALK、STRN-ALK、KIF5B-ALK、CD74-ROS1、SLC34A2-ROS1、SDC4-ROS1、およびEZR-ROS1融合物も含む。例えば、エルロチニブ(Tarceva)、アファチニブ(Gilotrif)、ゲフィチニブ(Iressa)、またはオシメルチニブ(Tagrisso)は、EGFRにおける活性化突然変異を有する患者に投与してもよく、クリゾチニブ(Xalkori)、セリチニブ(Zykadia)、アレクチニブ(Alecensa)、またはブリガチニブ(Alunbrig)は、ALK融合物を有する患者に投与してもよく、クリゾチニブ(Xalkori)、エンテクチニブ(RXDX-101)、ロラチニブ(PF-06463922)、クリゾチニブ(Xalkori)、エンテクチニブ(RXDX-101)、ロルラチニブ(PF-06463922)、ロポトレクチニブ(TPX-0005)、DS-6051b、セリチニブ、エンサルチニブ、またはカボザンチニブは、ROS1融合物を有する患者に投与してもよく、ダブラフェニブ(Tafinlar)またはトラメチニブ(Mekinist)は、BRAFにおける活性化突然変異を有する患者に投与してもよい。免疫チェックポイント阻害剤による患者の治療を誘導するために使用することができる突然変異を含む、多くの他の作用可能な突然変異もまた知られている。
【0089】
他の実施形態において、本方法は、治療をモニタリングするために使用してもよい。例えば、本方法は、本方法を使用して第1の時点で得られた試料を分析することと、本方法によって第2の時点で得られた試料を分析することと、結果を比較することと、すなわち、試料中でどの変異が呼び出されるかおよびその対立遺伝子頻度を比較することと、を含んでもよい。第1および第2の時点は、治療前および治療後であっても、治療後の2つの時点であってもよい。例えば、ある時点から得られた結果を別の時点から得られた結果と比較することによって、本方法は、治療の経過中に現れた新しい変異(例えば、突然変異)を同定するか、または治療の経過中に以前に同定された変異が対象にもはや存在しないかどうかを判定するために使用することができる。本方法は、治療の過程中に任意の突然変異の対立遺伝子頻度が変化(増加または減少)したかどうかを判定するために使用することができる。治療法に対する患者の応答は、突然変異の対立遺伝子頻度または突然変異の存在下でのいずれかの変化を検出することによってモニタリングすることができる。複数の突然変異が存在する場合、対立遺伝子頻度および対立遺伝子頻度変化は、異なる突然変異を組み合わせることによって判定することができ、それらを等しくまたは代替的に、例えば、可能性の高いクローン性、臨床的有意性、生殖細胞株またはCHIPとは対照的に癌内で体細胞変化である確率およびアクション可能性に基づいて重み付けすることができる。患者が治療法に応答する可能性が高いと判定された場合、患者はその治療法を継続してもよく、応答しない可能性が高いと判定された場合、代替療法に変更することができる。
【0090】
この方法はまた、対象が無疾患であるか、または疾患が再発しているかどうかを判定するためにも使用してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、本方法は、最小限の残存疾患の分析のために使用してもよい。これらの実施形態において、本方法で使用されるプライマー対は、腫瘍物質、より早い時点でのcfDNA、または別の好適な試料の配列決定のいずれかを介して、患者の腫瘍において以前に同定された変異を含有する配列を増幅するように設計され得る。各プライマー対を含有する反応の数は、例えば、変異体がドライバー突然変異であると予測されるかどうか、変異体が癌において同定された信頼性、変異体が癌においてクローンまたはサブクローンであると予期されるかどうか、変異体が、典型的には配列にノイズがある塩基に位置するかどうか、変異体が、多かれ少なかれ断片化されると予測されるゲノム領域(例えば、オープンクロマチンまたはクローズドクロマチン)にあるかどうか、変異体が、CHIPまたは生殖細胞株変化ではなく癌内に存在する体細胞変化であるという信頼度、変異体の種類が点変異またはインデルである場合、および短いまたは長い場合にインデルである場合に応じて変化し得る。いくつかの実施形態において、各変異体を呼び出すための閾値は、例えば、変異体がドライバー突然変異であると予測されるかどうか、変異体が癌においてクローン型またはサブクローン型であると予測されるかどうか、変異体が典型的に配列にノイズがある塩基に位置するかどうかに基づいて増加または減少され得る。いくつかの実施形態において、全ての患者特異的変異に対する証拠を組み合わせて、患者が依然として残存疾患を有するか、または無疾患であり得るかどうかを判定することができる。各変異体の重要性は、上記のように調整することができる。
【0092】
容易に理解されるように、方法の多くのステップ、例えば、配列処理ステップ、および遺伝的変異を示す報告書の生成は、コンピュータ上に実装され得る。したがって、いくつかの実施形態において、本方法は、配列リードの分析に基づいて患者が遺伝的変異を有するかどうかの可能性を計算するアルゴリズムを実行することと、その可能性を出力することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、この方法は、配列をコンピュータに入力することと、入力測定値を使用して可能性を計算することができるアルゴリズムを実行することと、を含み得る。
【0093】
明らかであろうように、記載される計算ステップは、コンピュータ実装され得、したがって、ステップを実施するための命令は、好適な物理コンピュータ可読記憶媒体に記録され得るプログラミングとして記載され得る。配列決定リードは、計算的に分析され得る。
【0094】
本明細書に記載の方法の任意の実施形態は、亜硫酸水素塩処理DNAの分析に適合され得る。例えば、本方法は、遺伝的変異ではなく、亜硫酸水素塩配列決定を通じてエピジェネティック変異を検出するように適合され得る。そのような実施形態において、亜硫酸水素塩処理DNAを複製して分析し得る。PCRプライマーは、対象となるCpG含有部位の範囲を増幅するように設計され得る。異なるCpG部位を含有する各アンプリコンについての複製物の数は、特定のCpG部位が対象となる試料中で過メチル化または低メチル化されると予期される頻度、かかる低メチル化または高メチル化の有意性、および特定のCpG部位を読み取るときに予期されるノイズレベルなどの多くの基準に基づいて優先され得る。再び、変異体呼び出しと同様に、CpG部位をメチル化または非メチル化のいずれかと呼び出し、DNAメチル化の程度を判定するために、これらのような因子に基づいて各CpG部位について閾値およびカットオフを調整することもできる。
【国際調査報告】