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特表2022-513207ハイドロゲルを有する隔膜を有する複合電極、および複合電極の製造方法
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  • 特表-ハイドロゲルを有する隔膜を有する複合電極、および複合電極の製造方法 図1
  • 特表-ハイドロゲルを有する隔膜を有する複合電極、および複合電極の製造方法 図2
  • 特表-ハイドロゲルを有する隔膜を有する複合電極、および複合電極の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ハイドロゲルを有する隔膜を有する複合電極、および複合電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/403 20060101AFI20220131BHJP
   G01N 27/36 20060101ALI20220131BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
G01N27/403 371L
G01N27/36 Z
G01N27/416 353Z
G01N27/416 341Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533420
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2019084408
(87)【国際公開番号】W WO2020120467
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】102018132108.2
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519139790
【氏名又は名称】ハミルトン ボナドゥズ エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ガウプ、セオ
(57)【要約】
本発明は、被測定流体を測定するための複合電極(1)、好ましくはpHガラス電極に関するものであり、該複合電極は、作用電極(2)と、基準電極(3)と、好ましくは熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体を含む隔膜(10)と、隔膜(10)が第1の導電性流体(6)を介して基準電極(2)に電気的に接続されるように、基準電極(3)および隔膜(10)と接触する第1の導電性流体(6)とを有し、該隔膜はハイドロゲルを有する。本発明はさらに、複合電極(1)を製造する方法に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体を測定するための複合電極(1)であって、前記複合電極(1)は、作用電極(2)、基準電極(3)、隔膜(10)、および、前記基準電極(3)および前記隔膜(10)と接触する第1の導電性流体(6)とを有し、前記隔膜(10)は前記第1の導電性流体(6)を介して前記基準電極(2)に電気的に接続され、前記隔膜はハイドロゲルを有する、複合電極(1)。
【請求項2】
請求項1記載の複合電極(1)において、前記ハイドロゲルは熱可塑性ポリウレタンを有する、複合電極(1)。
【請求項3】
請求項2記載の複合電極(1)において、前記熱可塑性ポリウレタンは、モノマーA
およびモノマーB
を有するブロック共重合体である、複合電極(1)。
【請求項4】
請求項3記載の複合電極(1)において、前記モノマーAに対する前記モノマーBの質量比が、20~100、特に30~90の範囲である、複合電極(1)。
【請求項5】
請求項3または4記載の複合電極(1)において、
特に80*10g/mol~150*10g/molの範囲である、複合電極(1)。
【請求項6】
請求項1記載の複合電極(1)において、前記ハイドロゲルは、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよび/またはシリコーンをベースとしたポリマーを有する、複合電極(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の複合電極(1)において、前記ハイドロゲルは、熱可塑性エラストマーである、複合電極(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の複合電極(1)において、前記ハイドロゲルは、スマートハイドロゲルであり、特に、前記スマートハイドロゲルがイオン強度応答性および/または熱応答性である、複合電極(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の複合電極(1)であって、前記複合電極(1)は、前記第1の導電性流体(6)が配置される基準空間(20)と、前記隔膜(10)が配置され、前記隔膜(10)によって封止される開口部とを有する、複合電極(1)。
【請求項10】
請求項9記載の複合電極(1)であって、前記複合電極(1)は、外管(4)と、前記外管(5)内に配置される内管(5)とを有し、前記基準空間(20)は、前記外管(4)と前記内管(5)との間に配置され、前記開口部は、前記外管(4)と前記内管(5)との間の環状間隙である、複合電極(1)。
【請求項11】
請求項9または10記載の複合電極(1)であって、前記複合電極(1)は、前記被測定流体に対して透過性を有し、前記開口部に配置されて前記隔膜(10)を支持するプラグ(11)を有する、複合電極(1)。
【請求項12】
請求項10または11記載の複合電極(1)において、前記内管(5)は、閉鎖されるように設計された第1の内管長手方向端部(17)と、ガラス膜(9)とを有し、前記ガラス膜(9)と前記作用電極(2)とを接触させる第2の導電性流体(7)が、前記第2の導電性流体(7)を介して前記ガラス膜(9)が前記作用電極(2)と電気的に接続されるように前記内管(5)内に配置されている、複合電極(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の複合電極(1)であって、前記複合電極(1)がpH複合電極および/または酸化還元センサーであり、特に前記pH複合電極がpHガラス電極である、複合電極(1)。
【請求項14】
複合電極(1)を製造するための方法であって、前記方法は、
-外管(4)および前記外管(4)内に配置された内管(5)を提供する工程であって、前記外管(4)と前記内管(5)との間に基準空間(20)が配置され、前記外管(4)および/または前記内管(5)が開口部を画定する、提供する工程と、
-前記内管(5)内に作用電極(2)を、前記該外管(4)内に基準電極(3)を配置する工程と、
-乾燥状態のハイドロゲルを前記開口部に導入し、前記ハイドロゲルで前記基準空間(20)を画定する工程と、
-前記基準空間(20)に第1の導電性流体(6)を導入し、前記ハイドロゲルと前記第1の導電性流体(6)を接触させる工程であって、これにより、前記ハイドロゲルが膨潤して隔膜(10)を形成し、前記開口部を封止する、接触させる工程と、前記基準電極(3)と前記第1の導電性流体(6)を接触させる工程であって、前記隔膜(10)が前記第1の導電性流体(6)を介して基準電極(3)に電気的に接続される、接触させる工程と、
を有する、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記外管(4)は、前記隔膜(10)が配置されている領域にある第1の外管長手方向端部(15)と、第2の外管長手方向端部(18)とを有し、前記第1の導電性流体(6)は、前記第2の外管長手方向端部(18)を介して前記基準空間(20)に導入される、方法。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、前記外管(4)は、前記隔膜(10)が配置されている領域にある第1の外管長手方向端部(15)と、第2の外管長手方向端部(18)とを有し、前記方法は、
-前記基準空間(20)に前記第1の導電性流体(6)を導入する前に、前記第2の外管長手方向端部(18)を封止する工程
を有し、
前記第1の導電性流体(6)を前記基準空間(20)に導入するために、前記第1の外管長手方向端部(15)を前記第1の導電性流体(6)に浸し、前記複合電極(1)を前記第1の導電性流体(6)とともに真空容器に導入し、前記真空容器を排気した後に換気して、前記第1の導電性流体(6)が前記開口部を介して前記基準空間(20)に入るようにしている、
方法。
【請求項17】
請求項14または16記載の方法において、前記内管(5)は、閉鎖されるように設計された第1の内管長手方向端部(17)と、前記第1の内管長手方向端部(17)の領域内に配置されたガラス膜(9)とを有し、前記ガラス膜(9)と前記作用電極(2)とを接触させる第2の導電性流体(7)が、前記第2の導電性流体(7)を介して前記ガラス膜(9)が前記作用電極(2)と電気的に接続されるように前記内管(5)内に配置されている、方法。
【請求項18】
請求項14~17のいずれか1つに記載の方法において、乾燥状態の前記ハイドロゲルの前記開口部への導入時、前記ハイドロゲルは前記開口部よりも小さく、前記第1の導電性流体(6)を前記基準空間(20)に導入した後、形成された前記隔膜(10)に圧縮応力がかかる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合電極およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合電極とは、作用電極と基準電極が一つの棒の中に収められているものである。また、測定電極は作用電極と同義に用いられる。複合電極は、例えば、酸化還元センサーやpH複合電極であり、これらを用いてpH値を決定することができる。pH複合電極は、例えば、pHガラス電極とすることができる。
【0003】
基準電極は、生理食塩水に浸された金属線であることが多い。基準電極は、AgCl層で被覆された銀線を有する銀-塩化銀電極であることが多く、AgCl層を有する銀線は、KCl溶液に浸漬されている。KCl溶液は隔膜で区切られている。複合電極の動作時には、隔膜に被測定流体が接触する。隔膜は、KCl溶液と被測定流体の混合を防ぎ、KCl溶液と被測定流体の間の電荷輸送を可能にすることを特徴とする。電荷輸送を可能にするために、従来、隔膜は多孔質になっていた。しかし、多孔質構造のために隔膜の表面積が大きくなり、時間の経過とともに汚染が進行しやすいという欠点がある。汚れによって電荷の移動が困難になり、複合電極を用いた測定に誤差が生じることがある。
【0004】
加えて、KClが隔膜を介して複合電極から流出することが問題となっており、これは隔膜の外側にKClの風解が発生することで顕著になる。これにより、KCl溶液のKCl濃度が変化し、基準電極の電気化学的電位が変化する。電位が変化することで、測定にさらなる誤差が生じることになる。複合電極から流れ出るKClの質量が小さくても、それに応じて長い時間をかけて誤差のある測定が行われる。複合電極から流出するKClの質量流量を減らすために、従来は複合電極を、複合電極の外側から隔膜を湿らせる液体の中に保管する必要があった。汚染が進行し、KClの流出が進行するため、複合電極の耐用年数は限られており、その範囲内で複合電極は誤差のない測定を行うことができる。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、複合電極の耐用年数を延ばすことができ、その耐用年数内で誤差のない測定を行うことができる複合電極および複合電極の製造方法を創出することである。
【0006】
被測定流体を測定するための本発明による複合電極は、作用電極と、基準電極と、隔膜と、および、隔膜が第1の導電性流体を介して基準電極に電気的に接続されるように、基準電極および隔膜に接触する第1の導電性流体とを有し、隔膜はハイドロゲルを有する。
【0007】
驚くべきことに、本発明による複合電極では、多孔質の隔膜を有する従来の複合電極よりも、隔膜を介した第1の導電性流体の流出が非常に少ないことが分かった。しかし、同時に、第1の導電性流体と被測定流体との間の電荷輸送が可能になる。細孔がないため、ハイドロゲルは、電荷輸送をより困難にする汚染の影響を受けにくい。第1の導電性流体の流出が少なく、ハイドロゲルが汚染されにくいため、複合電極の耐用年数が長く、その中で複合電極は誤差のない測定を行うことができる。また、隔膜を介して複合電極から流出する第1の導電性流体の質量流量が少ないため、複合電極を液体中に貯蔵する必要がない。さらに、ハイドロゲルは弾性があるので、温度の変動を補正することができ、その結果、複合電極は密閉状態を保つことができる。さらに、この複合電極は、ハイドロゲルを乾燥状態で複合電極の開口部に導入し、その上でハイドロゲルを第1の導電性流体と接触させ、それによってハイドロゲルが膨潤して開口部を封止するという点で、製造が容易である。第1の導電性流体とハイドロゲルの接触は、第1の導電性ハイドロゲルを複合電極に充填するのと同時に行うことができる。
【0008】
KClの流出量が少ないため、隔膜上に結晶ができない。これは、複合電極がGMP(適正製造基準)ガイドラインに適合するための前提条件である。また、複合電極、特に隔膜の機能を損なうことなく、複合電極をガンマ線で滅菌できることを示すことができた。したがって、この複合電極は、発酵槽、特に使い捨ての発酵槽での使用に適している。従来の多孔質隔膜の問題点は、被測定流体に硫化物が含まれている場合、硫化銀が析出して隔膜の孔を塞いでしまい、第1の導電性流体と被測定流体の間の電荷輸送が困難になり、その結果、誤差を伴う測定になってしまうことである。しかし、ハイドロゲルを有する隔膜の場合、硫化銀は依然として隔膜内に析出しているが、その結果、さらに導電性流体、特に水が隔膜内に拡散するようになる。その結果、隔膜は膨潤し続け、第1の導電性流体と被測定流体の間の電荷輸送が促進される。
【0009】
ハイドロゲルは、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンを有する。特に、ハイドロゲルは、本質的に熱可塑性ポリウレタンからなる。熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、モノマーA
【化1】
および、モノマーB
【化2】
を有するブロック共重合体である。
【0010】
モノマーは、いずれの場合も、左の角括弧から右の角括弧へと延びる領域によって形成される。ブロック共重合体では、モノマーAの左側に酸素原子を結合させる、または、前記左側にヒドロキシ基を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。モノマーAの右側に炭素原子を結合させる、または、前記右側に水素原子を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。モノマーBの左側に酸素原子を結合させる、または、前記左側にヒドロキシ基を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。モノマーBの右側に炭素原子を結合させる、または、前記右側に水素原子を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。ブロック共重合体は、モノマーAのブロックおよびモノマーBのブロックと、ブロック共重合体を停止するための末端基とから本質的になることができる。末端基は、前述のヒドロキシ基および/または前述の水素原子であり得る。
【0011】
モノマーAに対するモノマーBの質量比は、20~100、特に30~90の範囲であることが好ましい。
【0012】
特に80*10g/mol~150*10g/molであることが好ましい。
ここで、nはブロック共重合体のポリマー鎖の数であり、Miはポリマー鎖iのモル質量である。
【0013】
このブロック共重合体は、Lubrizol社からTecophilic(登録商標)という商品名で市販されている。一例として、Tecophilic(登録商標)TG-500および/またはTecophilic(登録商標)TG-2000が可能である。モノマーBとモノマーAの質量比は、Tecophilic(登録商標)TG-500では約40、Tecophilic(登録商標)TG-2000では約82である。
Tecophilic(登録商標)TG-500では約1.4*10g/mol、Tecophilic(登録商標)TG-2000では約8*10g/molである。
【0014】
例えば、ハイドロゲルは、ソフトコンタクトレンズに使用されるポリマーを有することもできる。例としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよび/またはシリコーンハイドロゲルが挙げられる。ハイドロゲルは、熱可塑性エラストマーであることができる。ハイドロゲルは、スマートハイドロゲルであることができる。特に、スマートハイドロゲルは、イオン強度応答性および/または熱応答性であり得る。イオン強度応答性と熱応答性の両方を有するスマートハイドロゲルの例としては、前述のTecophilic(登録商標)が挙げられる。熱応答性のあるスマートハイドロゲルの別の例としては、N-イソプロピルアクリルアミド共重合体をベースにしたポリマーがある。
【0015】
ハイドロゲルは、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。他のエラストマーとは対照的に、熱可塑性エラストマーは、フィルムに押し出され、続いて、隔膜がフィルムから打ち抜かれることができる。従来の熱可塑性プラスチックとは対照的に、熱可塑性エラストマーは室温でも弾性特性を維持する。熱可塑性エラストマーの一例として、ブロック共重合体がある。
【0016】
ハイドロゲルがスマートハイドロゲル、すなわち刺激に反応するハイドロゲルであることが好ましい。スマートハイドロゲルは、特定の環境条件に反応して顕著な体積変化を起こすことが特徴である。スマートハイドロゲルは、イオン強度応答性および/または熱応答性であることが特に好ましい。スマートハイドロゲルがイオン強度応答性を有する場合、スマートヒドロゲルはさらに膨潤し、被測定流体の塩濃度または導電率が低くなる。このようなイオン強度応答性のあるスマートハイドロゲルの一例として、前述のブロック共重合体が挙げられる。被測定流体の塩濃度が低いと、第1の導電性流体のイオンが、膨らみを増した隔膜を介して被測定流体に多く拡散するため、第1の導電性流体と被測定流体との間の拡散電位が低下し、測定精度が向上することになる。このように、イオン強度応答性を有するスマートハイドロゲルを有する複合電極は、超純水の測定に適している。なお、スマートハイドロゲルが熱応答性である場合には、温度の上昇に伴って収縮するように設計することができる。このような熱応答性のスマートハイドロゲルの一例は、前述のブロック共重合体である。スマートハイドロゲルが収縮することにより、スマートハイドロゲルが汚染されにくくなり、第1の導電性流体からのイオンの流出を抑えることができ、その結果、高温でも複合電極の耐用年数が長くなる。熱応答性のあるスマートハイドロゲルの別の例として、N-イソプロピルアクリルアミド共重合体をベースにしたポリマーがある。
【0017】
複合電極は、第1の導電性流体が配置された基準空間と、隔膜が配置され、隔膜によって密閉された開口部とを有することが好ましい。まず、ハイドロゲルを乾燥状態で開口部に導入することで、開口部を特に容易に、かつ、特に強固に隔膜で封止することができる。第1の導電性流体と接触した後、ハイドロゲルは膨潤し、その結果、開口部を封止することができる。
【0018】
複合電極は、好ましくは、外管と、外管内に配置される内管とを有し、基準空間は、外管と内管との間に配置され、開口部は、外管と内管との間の環状間隙である。ハイドロゲルは、例えば、切断および/または打ち抜きによって、容易に環状に成形することができ、その結果、環状間隙もハイドロゲルで封止することができる。
【0019】
複合電極は、被測定流体に対して透過性があり、開口部に配置されて隔膜を支持するプラグを有することが好ましい。プラグが被測定流体に対して透過性であることを保証するために、例えば、貫通孔、溝、多孔質などを有することができる。プラグは、隔膜の基準空間に面した側、および/または、隔膜の基準空間から離れた側に配置することができる。プラグを設けることで、特に、第1の導電性流体が基準空間に導入されたときに、隔膜が開口部から抜け出るのを防ぐことができる。また、プラグを用いて第1の導電性流体の流出を制御することも可能であり、例えば、貫通孔の直径および/または数を選択すること、溝のサイズを選択すること、プラグの多孔性を選択すること、および/またはプラグの寸法を選択することによって、第1の導電性流体の流出を制御することができる。
【0020】
前記内管が、閉鎖するように設計された第1の内管長手方向端部と、ガラス膜とを有し、前記ガラス膜と前記作用電極とを接触させる第2の導電性流体が、前記第2の導電性流体を介して前記ガラス膜が前記作用電極と電気的に接続されるように前記内管内に配置されていることが好ましい。
【0021】
複合電極は、好ましくは、pH複合電極および/または酸化還元センサーである。pH複合電極は、特に好ましくは、pHガラス電極である。
【0022】
第1の導電性流体は、KCl水溶液、例えば、3M KCl水溶液とすることができる。あるいは、第1の導電性流体は、高粘性の液体であってもよい。例えば、KCl水溶液、特に3M KCl水溶液は、この場合、増粘剤、特にヒドロキシエチルセルロースで増粘することができる。ヒドロキシエチルセルロースは、例えば、Natrosolという商品名で市販されている。あるいは、第1の導電性流体を強く固めることもできる。この目的のために、モノマー混合物を複合電極に導入し、重合させてポリマーを形成する。ポリマーは、例えば、WO 2005/073704 A1に記載されているように、N-アクリロイルアミノエトキシエタノールを重合して得られるポリマー、またはN-アクリロイルアミノエトキシエタノールとヒドロキシアルキルメタクリレートとを共重合して得られるポリマーであってもよい。
【0023】
隔膜の厚さは、好ましくは0.1mm~1.0mm、特に0.35mm~0.7mmの範囲とする。これらの厚さでは、KClの流出は少ないが、第1の導電性流体と被測定流体との間の電荷交換が非常に高いため、複合電極を用いて誤差のない測定を行うことができることがわかった。
【0024】
複合電極を製造するための本発明による方法は、以下の工程:-外管と、前記外管内に配置された内管とを提供する工程であって、前記外管と前記内管との間に基準空間が配置され、前記外管および/または前記内管が開口部を画定する、提供する工程と、-前記内管内に作用電極を、前記該外管内に基準電極を配置する工程と、-乾燥状態のハイドロゲルを前記開口部に導入し、前記ハイドロゲルで該基準空間を画定する工程と、-前記基準空間に第1の導電性流体を導入し、前記ハイドロゲルと第1の導電性流体を接触させる工程であって、これにより、ハイドロゲルが膨潤して隔膜を形成し、前記開口部を封止する、接触させる工程と、前記基準電極と前記第1の導電性流体を接触させる工程であって、前記隔膜が前記第1の導電性流体を介して基準電極に電気的に接続される、接触させる工程とを有する。本発明による方法では、開口部を容易に、特に強固に封止することができる。本方法によって製造された複合電極は、長い耐用年数を有し、その中で複合電極は誤差のない測定を行うことができる。内管内の作用電極と外管内の基準電極の配置は、ハイドロゲルの導入前とハイドロゲルの導入後の両方で行うことができる。
【0025】
外管は、隔膜が配置されている領域にある第1の外管長手方向端部と、第1の導電性流体が基準空間に導入される第2の外管長手方向端部とを有することが好ましい。
【0026】
あるいは、外管が、隔膜が配置されている領域にある第1の外管長手方向端部と、第2の外管長手方向端部とを有することが好ましく、この方法は、以下の工程:前記第1の導電性流体を前記基準空間に導入する前に、前記第2の外管長手方向端部を封止する工程を有し、第1の導電性流体を基準空間に導入するために、第1の外管長手方向端部を第1の導電性流体に浸漬し、複合電極を第1の導電性流体とともに真空容器に導入し、真空容器を排気した後に換気して、第1の導電性流体が開口部を介して基準空間に入るようにする。これは、基準空間を充填するための簡単な方法である。また、複数の複合電極を同時に第1の導電性流体に浸し、真空容器を排気および換気するために、複合電極を真空容器内に導入することが可能である。その結果、第1の導電性流体を複数の複合電極に同時に導入することができ、この方法を費用対効果の高いものにする。特に、真空容器が50mbar~100mbar、特に80mbarの圧力まで排気されることが好ましい。
【0027】
前記内管が、閉鎖されるように設計された第1の内管長手方向端部と、前記第1の内管長手方向端部の領域に配置されるガラス膜とを有し、前記ガラス膜と前記作用電極とを接触させる第2の導電性流体が、前記ガラス膜が前記第2の導電性流体を介して前記作用電極に電気的に接続されるように前記内管内に配置されていることが好ましい。特に好ましくは、第1の内管長手方向端部は、第1の外管長手方向端部の領域に配置される。
【0028】
乾燥状態のハイドロゲルを開口部に導入する際には、ハイドロゲルが開口部よりも小さくなるように選択し、第1の導電性流体を基準空間に導入した後には、形成された隔膜に圧縮応力がかかるようにすることが好ましい。その結果、開口部を特に強固に封止することができる。圧縮応力を確実に発生させるために、当業者であれば、乾燥状態で開口部よりも小さい様々なサイズのハイドロゲルを用いて予備試験を行い、第1の導電性流体に接触させて膨潤させることができる。膨潤後、膨潤状態のハイドロゲルのサイズを決定し、様々なサイズのハイドロゲルのうち、膨潤状態で開口部よりも大きいもののみを隔膜に適したものとする。様々なサイズのハイドロゲルの中から、膨潤状態で開口部より10%~100%大きいもの、特に30%~50%大きいものを選択することが可能である。ハイドロゲルの膨潤度Qは、115%~1000%、特に150%~800%、特に180%~350%の範囲とすることができる。膨潤度Qは、Q=(V-V)/Vと定義され、Vは乾燥状態のハイドロゲルの体積であり、Vは第1の導電性流体で膨潤した状態のハイドロゲルの体積である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下では、添付の模式図を用いて本発明をより詳細に説明する。
図1図1は、複合電極の縦断面図である。
図2図2は、カリウムの流出がさまざまな複合電極についてプロットされたプロットを示している。
図3図3は、カリウムの流出がさまざまな複合電極と2つの異なる温度についてプロットされたプロットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
複合電極1は、pH複合電極および/または酸化還元センサーとすることができる。pH複合電極は、pHガラス電極とすることができる。
【0031】
図1からわかるように、複合電極1は、作用電極2と、基準電極3と、隔膜10と、被測定流体を測定するための第1の導電性流体6とを有している。第1の導電性流体は、隔膜10が第1の導電性流体6を介して基準電極2に電気的に接続されるように、基準電極3および隔膜10と接触している。複合電極1の動作において測定を行うためには、隔膜10の第1の導電性流体6と反対側を向く面を被測定流体に接触させる必要がある。隔膜10は、第1の導電性流体6と被測定流体との相互混合を防止する一方で、第1の導電性流体6と被測定流体との間の電荷輸送を可能にすることを特徴とする。さらに、複合電極1は、ガラス膜9と、ガラス膜9と作用電極2とを電気的に接続する第2の導電性流体7とを有している。第1の導電性流体6と第2の導電性流体7とは、互いに電気的に絶縁されている。被測定流体の測定は、ガラス膜9の第2の導電性流体8とは反対側を向く面にも被測定流体を接触させ、作用電極2と基準電極3との間の電気電圧を測定する。
【0032】
本発明によれば、隔膜10は、ハイドロゲルを有する。また、隔膜10は、本質的にハイドロゲルからなることができる。
【0033】
ハイドロゲルは、熱可塑性ポリウレタンを有することができる。熱可塑性ポリウレタンは、モノマーA
【化3】
および、モノマーB
【化4】
を有するブロック共重合体であり得る。
【0034】
モノマーは、いずれの場合も、左の角括弧から右の角括弧へと延びる領域によって形成される。ブロック共重合体では、モノマーAの左側に酸素原子を結合させる、または、前記左側にヒドロキシ基を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。モノマーAの右側に炭素原子を結合させる、または、前記右側に水素原子を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。モノマーBの左側に酸素原子を結合させる、または、前記左側にヒドロキシ基を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。モノマーBの右側に炭素原子を結合させる、または、前記右側に水素原子を結合させて、ブロック共重合体を停止させることができる。ブロック共重合体は、モノマーAのブロックおよびモノマーBのブロックと、ブロック共重合体を停止するための末端基とから本質的になることができる。末端基は、前述のヒドロキシ基および/または前述の水素原子であり得る。
【0035】
モノマーAに対するモノマーBの質量比は、20~100、特に30~90の範囲であることができる。
【0036】
特に80*10g/mol~150*10g/molであることが好ましい。
ここで、nはブロック共重合体のポリマー鎖の数であり、Miはポリマー鎖iのモル質量である。
【0037】
このブロック共重合体は、Lubrizol社からTecophilic(登録商標)という商品名で市販されている。一例として、Tecophilic(登録商標)TG-500および/またはTecophilic(登録商標)TG-2000が可能である。モノマーBとモノマーAの質量比は、Tecophilic(登録商標)TG-500では約40、Tecophilic(登録商標)TG-2000では約82である。
Tecophilic(登録商標)TG-500では約1.4*10g/mol、Tecophilic(登録商標)TG-2000では約8*10g/molである。
【0038】
例えば、ハイドロゲルは、ソフトコンタクトレンズに使用されるポリマーを有することもできる。例としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよび/またはシリコーンハイドロゲルが挙げられる。ハイドロゲルは、熱可塑性エラストマーであることができる。ハイドロゲルは、スマートハイドロゲルであることができる。特に、スマートハイドロゲルは、イオン強度応答性および/または熱応答性であり得る。イオン強度応答性と熱応答性の両方を有するスマートハイドロゲルの例としては、前述のTecophilic(登録商標)が挙げられる。熱応答性のあるスマートハイドロゲルの別の例としては、N-イソプロピルアクリルアミド共重合体をベースにしたポリマーがある。
【0039】
隔膜10の厚さは、0.1mm~1.0mm、特に0.35mm~0.7mmの範囲であり得る。
【0040】
図1から分かるように、複合電極1は、外管4と、外管5の中に配置される内管5とを有する。外管4と内管5の間には、第1の導電性流体6が配置される基準空間20が配置されている。また、複合電極1は、外管4と内管5との間に配置された環状間隙状の開口部を有している。隔膜10は、開口部に配置され、開口部を封止する。
【0041】
図1は、外管4が第1の外管長手方向端部15を有し、内管5が第1の内管長手方向端部17を有し、第1の内管長手方向端部17が第1の外管長手方向端部15の領域に配置されていることを示したものである。また、第1の外管長手方向端部15の領域には隔膜10が配置され、第1の内管長手方向端部17の領域にはガラス膜9が配置されている。
【0042】
内管5は、第1の内管長手方向端部17とは反対側を向いて配置された第2の内管長手方向端部16を有する。第1の内管長手方向端部17と第2の内管長手方向端部16との間には、内管5内に、第2の導電性流体7が配置される内管空間19が配置されている。さらに、内管5は、その第1の内管長手方向端部17に貯蔵容器8を有することができ、その内部は内管空間19の一部を形成し、内管5の他の部分よりも大きな内部断面を有しているので、貯蔵容器8がない場合よりも多量の第2の導電性流体7を内管5内に導入することができる。なお、隔膜10の厚さは、第1の内管長手方向端部17から第2の内管長手方向端部16に向かう方向における隔膜10の範囲である。
【0043】
図1による複合電極1がpHガラス電極である場合、第2の導電性流体7は、内部緩衝液とすることができる。内部緩衝液は、KCl水溶液を有することができる。緩衝剤としては、例えば、酢酸緩衝剤および/またはリン酸緩衝剤を用いることができる。導電性流体6は、水溶液、特にKCl水溶液を有することができる。第1の電気伝導性流体のKCl濃度は、3mol/lであることが考えられる。第1の導電性流体6は、KCl水溶液からなるか、KCl水溶液を増粘剤、特にヒドロキシエチルセルロースで増粘するか、またはKCl水溶液を重合モノマー混合物と混合することができる。重合モノマー混合物は、例えば、WO 2005/073704 A1に記載されているように、N-アクリロイルアミノエトキシエタノールの重合、またはN-アクリロイルアミノエトキシエタノールとヒドロキシアルキルメタクリレートとの共重合によって得られるポリマーとすることができる。
【0044】
作用電極2と基準電極3はそれぞれ、銀-塩化銀電極とすることができる。そして、pHガラス電極は、以下の電気化学系列を有し得る:Ag(s)|AgCl(s)|K+(aq)Cl-(aq)||ガラス膜9||被測定流体||隔膜10|||K+(aq)Cl-(aq)||AgCl(s)||Ag(s)。これで、2つのAg(s)素子の間の電気電圧を測定することができる。測定された電圧に基づいて、被測定流体のpH値について結論を出すことができる。
【0045】
複合電極1は、基準空間20とは反対側を向く隔膜10の側の環状間隙に配置され、隔膜10を支持するプラグ11を備えることができる。プラグ11は、被測定流体に対して透過性を有する。この目的のために、プラグ11は、1つまたは複数のプラグ貫通孔を有し、溝を有し、および/またはプラグ11は多孔質であることができる。
【0046】
図1から分かるように、複合電極1は、内管5に導入されて内管空間19を密閉するシール21を備えることができる。したがって、第2の導電性流体は、第1の内管長手方向端部17とシール21との間に配置される。シール21は、接着剤、特にシリコーン接着剤とすることができる。
【0047】
さらに、複合電極1は、外管4と内管5との間の環状間隙において、第1の外管長手方向端部15とは反対側を向いて配置された第2の外管長手方向端部18の領域に配置され、基準空間20を密閉する封止リング14を有することができる。このようにして、第1の導電性流体6は、隔膜10と封止リング14との間に配置されている。
【0048】
図1から分かるように、複合電極1は、その第2の外管長手方向端部18で外管4を囲むヘッド部12を有することができる。さらに、ヘッド部12は、第2の外管長手方向端部18から突出している。ヘッド部12は、その内部に、埋め込み用樹脂13が充填された中空の空間を有している。封止リング14およびシール21に加えて、埋め込み用樹脂13は、追加のシールとして機能する。埋め込み用樹脂13は、シリコーン接着剤とすることができる。
【0049】
複合電極1の製造方法は、以下のようにして行うことができる:
-外管4および内管5を提供する工程と、外管4内に内管5を配置する工程であって、外管4と内管5の間に基準空間20が配置され、外管4と内管5の間に配置され、環状間隙の形状を有する開口部を外管4と内管5が画定する、工程;
-内管5内に作用電極2を、基準空間20内に基準電極3を配置する工程;
-第2の導電性流体7を内管5内に配置する工程であって、第2の導電性流体7がガラス膜9と作用電極2に接触することで、ガラス膜9が第2の導電性流体7を介して前記作用電極2に電気的に接続される、工程;
-乾燥状態のハイドロゲルを開口部に導入し、ハイドロゲルで基準空間20を画定する工程;
-基準空間20に第1の導電性流体6を導入する工程であって、それによってハイドロゲルに第1の導電性流体6を接触させ、その結果、ハイドロゲルが膨潤して隔膜10が形成され、開口部が封止される、工程と、隔膜10が第1の導電性流体6を介して基準電極3に電気的に接続されるように、基準電極3に第1の導電性流体6を接触させる工程。
【0050】
第2の導電性流体7が内管5から漏れるのを防ぐために、この方法は:
-シール21によって、および/または、ヘッド部12と埋め込み用樹脂13によって、第2の内管長手方向端部16を封止する工程
を有することができる。
【0051】
第1の導電性流体を基準空間20に導入するために、第1の代替案は以下のアプローチ:
-第1の導電性流体6を、第2の外管長手方向端部18を介して基準空間20に導入する工程
を提供する。
【0052】
第1の導電性流体6が第2の外管長手方向端部18を介して基準空間20から漏れることを防止するために、本方法は、基準空間20への第1の導電性流体の導入後:
-封止リング14によって、および/またはヘッド部12と埋め込み用樹脂13によって、第2の外管長手方向端部18を封止する工程
を有する。
【0053】
第1の導電性流体を基準空間20に導入するために、第2の代替案は以下のアプローチ:
-基準空間20に第1の導電性流体6を導入する前に、第2の外管長手方向端部18を封止する工程
を提供し、第1の導電性流体6を基準空間20に導入するために、第1の外管長手方向端部15を第1の導電性流体6に浸し、複合電極1を第1の導電性流体6とともに真空容器に導入し、真空容器を排気した後に換気して、第1の導電性流体6が開口部を介して基準空間20に入るようにしている。第2の外管長手方向端部18の封止は、封止リング14によって、および/または、ヘッド部12および埋め込み用樹脂13によって行うことができる。真空容器は、50mbar~100mbar、特に80mbarの圧力まで真空にすることができる。
【0054】
乾燥状態のハイドロゲルを開口部に導入するために、以下のアプローチを用いることができる:第1の代替案では、まず内管5を外管4内に配置し、その後、ハイドロゲルを開口部に導入する。第2の代替案では、ハイドロゲルが最初に内管5の周りに配置され、内管5がハイドロゲルとともに、その後、外管4内に配置される。第3の代替案では、ハイドロゲルが最初に外管4内に配置され、その後、内管4が外管内に導入される。
【0055】
乾燥状態のハイドロゲルの開口部への導入時、ハイドロゲルは開口部よりも小さく、第1の導電性流体を基準空間に導入した後、形成された隔膜には圧縮応力が発生することができる。圧縮応力を確実に発生させるために、当業者であれば、乾燥状態で開口部よりも小さい様々なサイズのハイドロゲルを用いて予備試験を行い、第1の導電性流体に接触させて膨潤させることができる。膨潤後、膨潤状態のハイドロゲルのサイズを決定し、様々なサイズのハイドロゲルのうち、膨潤状態で開口部よりも大きいもののみを隔膜に適したものとする。様々なサイズのハイドロゲルの中から、膨潤状態で開口部より10%~100%大きいもの、特に30%~50%大きいものを選択することが可能である。ハイドロゲルの膨潤度Qは、115%~1000%、特に150%~800%、特に180%~350%の範囲とすることができる。膨潤度Qは、Q=(V-V)/Vと定義され、Vは乾燥状態のハイドロゲルの体積であり、Vは第1の導電性流体で膨潤した状態のハイドロゲルの体積である。
【0056】
16個の複合電極1を設置し、拡散電位、参照抵抗、流出量について調べた。拡散電位と参照抵抗の結果を表1~表3に、流出量の結果を表4にまとめた。複合電極のうち12個(表中、0b、0c、1a、1b、1c、3a、3b、3c、4a、4b、4c、5aで示される)は、いわゆるT型の複合電極1であり、4個(表中、2a、2b、2c、6aで示される)は、いわゆるP型の複合電極1である。T型の複合電極1の場合、基準空間20の容積は約3.5mlであり、P型の複合電極の場合、基準空間20の容積は約7mlである。表1~表3からわかるように、厚さが0.35mm、2×0.35mm=0.7mm(すなわち、ハイドロゲルを2層重ねて配置した)、0.50mm、0.55mmの隔膜を使用した。ハイドロゲルには、Tecophilic(登録商標)TG-500とTecophilic(登録商標)TG-2000を使用した。第1の導電性流体6には、KCl水溶液、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロースを有する混合物を用いた。表1による複合電極1は、プラグ11を有している。真空容器内の16個の複合電極すべてに第1の導電性流体6を充填することは容易に可能であった。
【0057】
拡散電位UDIFF複合電極1を外部の基準電極に対して測定することにより決定された。参照抵抗RREF基準電極3と被測定流体との間の抵抗を測定することにより決定された。測定は、被測定流体として、3M KCl水溶液、pH4の緩衝液、pH7の緩衝液、pH10の緩衝液を用いて行った。拡散電位UDIFFおよび参照抵抗RREFは、水洗後1日目(表1~表3の3~5列目の左の測定値)および30分後(表1~表3の3~5列目の右の測定値)に測定した。測定は、表1の緩衝液と比較して、1:10(表2参照)および1:100(表3参照)の割合で希釈された緩衝液で繰り返し行った。なお、表2および表3中の「und.」は、KCl溶液を希釈しなかったことを示す。
【0058】
表1~3の4列目は、4つの異なる溶液で測定した拡散電位の最大電圧差ΔUDIFFを示す(表1~3のそれぞれ対応する3列目を参照)。良好な電極は、最大でも3mVの最大電圧差ΔUDIFFを有する。最大電圧差ΔUDIFFが3mVであるため、複合電極の測定精度が高くなる。表1~表3からわかるように、30分の測定期間を経て、16個の複合電極すべてがこの基準を満たしている。さらに、参照抵抗UREFは50kOhmを超えてはならないが、表1~3によれば、これもすべての電極で満たされている。基準抵抗が50kOhmよりも高くないので、作用電極と測定電極との間の電圧を測定するように設計された電子機器を測定するための要件はあまり高くない。さらに、複合電極1は、30分の測定期間の後に最大量が3mVである低い拡散電位UDIFFのみを有する。
【0059】
基準空間20からのカリウムの流出を測定するために、複合電極1を脱イオン水に7日間保存し、隔膜10が脱イオン水に接触するようにした。そして、脱イオン水に含まれるカリウムの量を、質量分析(表4の3列目、この場合のICP-MSは、誘導結合プラズマ-質量分析を意味する)によって測定した。さらに、脱イオン水に含まれるカリウムの量は、導電率測定(表4の4列目、この場合のconv.via cond.は導電率を介して変換されることを意味する)によって決定され、導電率測定は3列目の測定データを用いて較正された。表4の3列目と4列目には、1日あたりのカリウム流出量が示されている。図2では、1日あたりのカリウム流出量(mg)を、それぞれの複合電極1に対してプロットしている。TはT型、PはP型、TG500はTecophilic(登録商標)TG-500、TG2000はTecophilic(登録商標)TG-2000、後続の数字は隔膜の厚さ10を10-2mmで示す。また、後続の文字は、構造的に同一の複合電極1を示し、表1~表4の第1列の文字と同一である。表4および図2は、複合電極1のうち2つ(T-TG500-35-BおよびP-TG500-35-C)のみが、1日あたり0.5mgを超えるカリウム流出を有することを示している。これは、横隔膜10を開口部に導入する際に誤って少し破損したという事実によると説明できる。また、カリウムの流出量は、隔膜10の厚さが増すにつれて減少することが分かる。
【0060】
図3は、さらなる複合電極1のカリウム流出を示しており、さらなる複合電極1はM型の複合電極1である。M型の複合電極1の1つは、多孔質セラミックの隔膜を有する従来の複合電極である(図3では「セラミック」と表示)。図3では、カリウムの流出量(mg/日)をそれぞれの複合電極1に対してプロットしている。MはM型、TG500はTecophilic(登録商標)TG-500、TG2000はTecophilic(登録商標)TG-2000を意味し、後続の数字は隔膜の厚さ10を10-2mmで表している。後続の文字は、構造的に同一の複合電極1を示す。M型の複合電極1は、T型の複合電極1およびP型の複合電極1と比較して、M型の複合電極1では、内管5の外径および外管4の内径がT型の複合電極1およびP型の複合電極1よりも短くなっている点が異なる。M型複合電極1のそれぞれについて、脱イオン水の温度が21℃(左バー)および37℃(右バー)のときのカリウム流出量を測定した。それぞれのカリウム流出量はバーの下に示されており、数字が大きい方が37℃でのカリウム流出量である。図3から、Tecophilic(登録商標)隔膜を使用した場合のカリウム流出量は、多孔質セラミック隔膜を使用した場合よりも少ないことがわかる。
【0061】
また、真空容器内の基準空間20に3MのKCl水溶液を充填することも可能であることを示すことができた。また、真空容器内の基準空間20に固体電解質を導入することも可能であることを示すことができた。この目的のために、基準空間20はモノマー混合物で満たされ、このモノマー混合物は続いて重合されて固体電解質を形成する。固体電解質は、例えば、WO 2005/073704 A1に記載されているように、N-アクリロイルアミノエトキシエタノールを重合することによって、またはN-アクリロイルアミノエトキシエタノールとヒドロキシアルキルメタクリレートとを共重合することによって得られるポリマーとすることができる。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
参照記号の一覧
1 複合電極
2 作用電極
3 基準電極
4 外管
5 内管
6 第1の導電性流体
7 第2の導電性流体
8 貯蔵容器
9 ガラス膜
10 隔膜
11 プラグ
12 ヘッド部
13 埋め込み用樹脂
14 封止リング
15 第1の外管長手方向端部
16 第2の内管長手方向端部
17 第1の内管長手方向端部
18 第2の外管長手方向端部
19 内管空間
20 参照空間
21 シール
図1
図2
図3
【国際調査報告】