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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】抗IL‐17A抗体及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K38/20
A61P37/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P11/00
A61P37/02
A61P13/12
A61P11/06
A61P25/00
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534214
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2019124486
(87)【国際公開番号】W WO2020119707
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】201811515045.7
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521257514
【氏名又は名称】上海君▲実▼生物医▲薬▼科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519301559
【氏名又は名称】▲蘇▼州君盟生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】姚▲劍▼
(72)【発明者】
【氏名】蒙丹
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】姚盛
(72)【発明者】
【氏名】武海
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065CA44
4C084AA13
4C084BA02
4C084DA12
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA59
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB01
4C084ZB05
4C084ZB15
4C085AA14
4C085BB17
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA59
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB01
4C087ZB05
4C087ZB15
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は高親和力でIL‐17Aと特異的に結合する抗体又はその機能性フラグメントを提供する。本発明の抗体又はその機能性フラグメントをコードする核酸分子、本発明の抗体又はその機能性フラグメントを発現する発現ベクター及び宿主細胞、及び本発明の抗体又はその機能性フラグメントの生産方法を更に提供する。本発明は、本発明の抗体又はその機能性フラグメントを含む医薬組成物、及び本発明の抗体又はその機能性フラグメントを利用して免疫機能障害疾患を治療する方法を更に提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1‐24、60‐65の少なくとも1つから選ばれる相補性決定領域(CDR)を含む、ことを特徴とするIL‐17Aと特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
SEQ ID NO:1‐3、4‐6、7‐9、10‐12又は60‐62の少なくとも1つから選ばれる重鎖CDRドメイン、及び/又は、SEQ ID NO:13‐15、16‐18、19‐21、22‐24又は63‐65の少なくとも1つから選ばれる軽鎖CDRドメインを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
重鎖可変領域(VH)を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1がSEQ ID No:1、4、7、10及び60の1つから選ばれ、HCDR2がSEQ ID NO:2、5、8、11及び61の1つから選ばれ、HCDR3がSEQ ID NO:3、6、9、12及び62の1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
重鎖可変領域(VH)を含み、前記重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列が下記群A乃至群Eの何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【表101】
【請求項5】
軽鎖可変領域(VL)を含み、前記軽鎖可変領域のLCDR1がSEQ ID NO:13、16、19、22及び63の1つから選ばれ、LCDR2がSEQ ID NO:14、17、20、23及び64の1つから選ばれ、LCDR3がSEQ ID NO:15、18、21、24及び65の1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項1又は3に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
軽鎖可変領域(VL)を含み、前記軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列が下記群F乃至群Jの何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする請求項1又は4に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【表102】
【請求項7】
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、前記可変領域に含まれる6個のCDRアミノ酸配列が下記群I乃至群VIの何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【表103】
【請求項8】
重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:25、26、27、28、33、35、37及び40の1つから選ばれ、及び/又は、前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が配列番号SEQ ID NO:29、30、31、32、34、36、38、39及び41の1つから選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、前記可変領域アミノ酸配列が下記群1乃至群7の何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【表104】
【請求項10】
マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体が完全抗体であり、前記抗原結合フラグメントが単鎖抗体、Fab抗体、Fab'抗体、(Fab')2抗体、及び二重(多重)特異性抗体から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4などの任意のIgGサブタイプである、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
軽鎖(LC)及び/又は重鎖(HC)を含み、前記重鎖(HC)のアミノ酸配列がSEQ ID NO:42、44、46又は49から選ばれ、及び/又は、前記軽鎖(LC)のアミノ酸配列がSEQ ID NO:43、45、47、48又は50から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:43に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:42又は44に示され、或いは、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:45に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:44に示され、或いは、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:47又は48に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:46に示され、或いは、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:50に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:49に示される、ことを特徴とする請求項13に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする単離核酸分子、前記核酸分子を含む発現ベクター又は組換えベクター、及び前記ベクターを形質転換する宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~14の何れか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項15に記載の核酸分子、ベクター又は宿主細胞、及び薬学的に許容されるベクター又は賦形剤の組成物を備える1種類の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~14の何れか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項15に記載の核酸分子、ベクター又は宿主細胞、或いは、請求項16に記載の医薬組成物が、IL‐17Aにより誘発される疾患又は病症の治療及び/又は予防薬物の製造に利用される用途。
【請求項18】
前記薬物が、関節炎、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、慢性阻塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症又は嚢胞性線維症の治療に使用される薬物である、ことを特徴とする請求項17に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL‐17Aと特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。本発明は、更に具体的に、IL‐17Aにより誘発される生理活性を抑制する抗体及びその抗原結合フラグメント、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが使用される組成物、並びに、関連疾患を治療するための方法に関する。本発明は、更に具体的に、例えば、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、感染性肉芽腫、嚢胞性線維症、癌疾患などの自己免疫疾患及び炎症性疾患を含む免疫性病理学疾患の、抗IL‐17A抗体又はその抗原結合フラグメントによる治療に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン17(Interleukin 17,IL‐17)はCTLA‐8又はIL‐17Aとも呼ばれ、免疫系において重要な協調効果を果たしている。IL‐17族はIL‐17A、IL‐17B、IL‐17C、IL‐17D、IL‐17E、IL‐17Fの6種類を含み、6種類とも高度に保存された非常に重要な4つのシステイン残基を含むが、生物学的効果が大きな差異を示している。IL‐17AとIL‐17Fはホモロジーと生物学的機能が最も類似するが、現段階において検討が最も進められている。インビボで発現されるIL‐17Aは23個のアミノ酸からなるN端末シグナルペプチドであり、切断により成熟IL‐17Aが産生される。成熟IL‐17Aはジスルフィド結合により連結されており、一般的に、ホモ二量体の形で分泌・存在するが、IL‐17Fと連結されることでヘテロ二量体IL‐17AFが形成される場合もある。一般的に、IL‐17A又はIL‐17とはIL‐17Aホモ二量体タンパク質であり、主にヘルパーT細胞17(T helper 17,Th17)により産生されるが、例えば、γδT細胞、LTi(Lymphoid Tissue inducer cells)、ILCs(Innate Lymphoid Cells)、NKT(Natural Killer T)細胞などのその他の免疫細胞により合成・分泌されてもよい(非特許文献1)。IL‐17A発現の調節が非常に複雑である。研究によれば、サイトカインIL‐6、IL‐1β、TGFβなどの誘導により、ナイーブCD4+T細胞がTh17に分化されるが、この時、Th17細胞安定性が弱く、分泌されるIL‐17Aの量が少なく、組織損傷の効果が小さい。IL‐23が存在する場合、Th17細胞安定性の促進、IL‐17Aの継続分泌、炎症性サイトカイン(IL‐22、CSF‐2、IFN‐γ)発現の上方調節、抗炎症性サイトカイン(IL‐2、IL‐27、IL‐12)発現の下方調節などのルートにより、炎症誘発及び組織損傷が発生される(非特許文献2)。そのため、組織におけるIL‐23が異常発現される場合、組織損傷においてIL‐17Aのルートが重要な効果を果たす。
【0003】
IL‐17は一般的に定位置で分泌し、局所組織においてターゲット細胞表面におけるIL‐17受容体(IL‐17 recptor,IL‐17R)と結合して効果を果たす。IL‐17R族は、IL‐17RA、IL‐17RB、IL‐17RC、IL‐17RD、IL‐17REの5種類を含み、複数種類の細胞膜に広く発現される(非特許文献3)。IL‐17は主に非造血細胞由来の細胞(例えば、上皮細胞、間質細胞)表面におけるIL‐17RA/IL‐17RC複合体と結合して効果を果たし(非特許文献4)、細胞のサイトカイン(例えば、IL‐6、G‐CSF、GM‐CSF、IL‐10、TGF‐β、TNF‐α)、ケモカイン(IL‐8、CXCL1、MCP‐1を含む)及びプロスタグランジン(例えば、PGE2)の分泌を促進し、好中球及びマクロファージの凝集を誘導し、活性酸素(ROS)を放出して、組織損傷を引き起こす(非特許文献5)。
【0004】
例えば、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病、多発性硬化症などの自己免疫疾患は人類の健康を強く脅かしている。研究によれば、IL‐17の分泌障害が当該疾患の発病及び発展と緊密に関連している。IL‐17にターゲティングする抗体はIL‐17‐IL‐17Rシグナル経路を抑制することで、自己免疫疾患の症状を効果的に軽減させる(非特許文献6)。Novartis社により開発されたCosentyx(secukinumab)は世界初のIL‐17モノクローナル抗体であり、中度から重度までの尋常性乾癬(plaque psoriasis)を含む適応症において使用許可が得られて、大勢の乾癬患者に要な先進生物療法の選択肢を提供した。しかしながら、異なる構造、更に優れた治療効果、更に幅広い適応症範囲など異なる特性を持つ抗IL‐17抗体の開発は、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎などの自己免疫関連疾患及びIL‐17関連のその他の疾患の治療において、大きな需要及び重大な意味を示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cua DJ,Tato CM,Nature reviews.2010,10:479-489
【非特許文献2】McGeachy MJ,et al.,Nature immunology. 2009, 10:314-324
【非特許文献3】Iwakura Y,et al.,Immunity.2011;34:149-162
【非特許文献4】Ishigame H,et al.,Immunity.2009;30:108-119
【非特許文献5】Stark MA,et al.,Immunity.2005;22:285-294
【非特許文献6】Sarah L,et al.,Nat Rev Immunol.2014,14(9):585-600
【発明の概要】
【0006】
本発明は、SEQ ID NO:1‐24、60‐65の少なくとも1つから選ばれる相補性決定領域(CDR)配列を含む、ヒトIL‐17Aと特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0007】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:1‐3、4‐6、7‐9、10‐12又は60‐62の少なくとも1つから選ばれる重鎖CDRドメイン、及び/又は、SEQ ID NO:13‐15、16‐18、19‐21、22‐24又は63‐65の少なくとも1つから選ばれる軽鎖CDRドメインを含む。
【0008】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)を含むものであって、前記重鎖可変領域が、SEQ ID NO:1、4、7、10又は60から選ばれるHCDR1と、SEQ ID NO:2、5、8、11又は61から選ばれるHCDR2と、SEQ ID NO:3、6、9、12又は62から選ばれるHCDR3とを含む、ことを特徴とする。
【0009】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)を含むものであって、前記重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3アミノ酸配列が下記群A乃至群Eの何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする。
【0010】
【表A】
【0011】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VL)を含むものであって、前記軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:13、16、19、22又は63から選ばれるLCDR1と、SEQ ID NO:14、17、20、23又は64から選ばれるLCDR2と、SEQ ID NO:15、18、21、24又は65から選ばれるLCDR3とを含む、ことを特徴とする。
【0012】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VL)を含むものであって、前記軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列が下記群F乃至群Jの何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする。
【0013】
【表B】
【0014】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含むものであって、前記可変領域に含まれる6個のCDRアミノ酸配列が下記群I乃至群VIの何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする。
【0015】
【表C】
【0016】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含むものであって、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:25、26、27、28、33、35、38又は40から選ばれ、及び/又は、前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列がSEQ ID NO:29、30、31、32、34、36、38、39又は41から選ばれる、ことを特徴とする。
【0017】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含むものであって、前記可変領域アミノ酸配列が下記群1乃至群7の何れか1群から選ばれる、ことを特徴とする。
【0018】
【表D】
【0019】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖(LC)及び/又は重鎖(HC)を含むものであって、前記重鎖(HC)のアミノ酸配列が配列番号SEQ ID NO:42、44、46又は49から選ばれ、及び/又は、前記軽鎖(LC)のアミノ酸配列が配列番号SEQ ID NO:43、45、47、48又は50から選ばれる、ことを特徴とする。
【0020】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖(LC)と重鎖(HC)を含むものであって、前記軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:43に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:42又は44に示され、或いは、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:45に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:44に示され、或いは、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:47又は48に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:46に示され、或いは、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:50に示され、及び重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:49に示される、ことを特徴とする。
【0021】
一実施形態において、本発明にかかる抗体は完全抗体であり、IgGが好ましく、IgG4型が更に好ましい。
【0022】
具体的な一実施形態において、本発明にかかる抗体は1F8、2B2、2F5、ch1、ch2、ch16、hu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250である。
【0023】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、a)IL‐17Aホモ二量体及びIL‐17AFヘテロ二量体と特異的に結合すること、b)IL‐17Aとその受容体との結合を遮断すること、及び/又は、c)IL‐17Aにより誘発される生理活性を抑制すること、を特徴とする。
【0024】
一実施形態において、本発明にかかるIL‐17A、IL‐17AF又はIL‐17Fは、カニクイザル、マウス又はヒトの1種類又は複数種類から選ばれる。
【0025】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又は抗原結合フラグメントは、a)ヒトIL‐17Fホモ二量体、IL‐17Bホモ二量体、IL‐17Cホモ二量体、IL‐17Dホモ二量体、IL‐17Eホモ二量体の何れか1種類又は複数種類、及び/又は、b)カニクイザルIL‐17Fホモ二量体、マウスIL‐17Fホモ二量体の何れか1種類又は複数種類、と特異的に結合しない。
【0026】
一方、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、IL‐17Aとその受容体との結合を抑制する機能、及び/又は、IL‐17Aにより誘発される細胞シグナル伝達及び/又は生理活性を低下させる機能、を有する。
【0027】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合タンパク質は、インビトロ活性評価の際に、IL‐17Aにより誘導される上皮細胞のCXCL1分泌を抑制することができる。
【0028】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボ活性評価の際に、IL‐17Aにより誘導されるマウスインビボのCXCL1分泌を抑制することができる。
【0029】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合タンパク質は、インビボ活性評価の際に、イミキモドにより誘導される乾癬実験モデルにおいて、マウスの発病を抑制し、マウス乾癬発病の臨床評価点数及び耳の腫れ具合を明らかに低下させることができる。
【0030】
一実施形態において、本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボ評価の際に、例えば、カニクイザルAIA‐モデルなど、抗原により誘導される関節炎実験モデルにおいて、膝関節の腫れを抑制することができる。
【0031】
本発明は前記抗体又はその抗原結合フラグメントを更に提供するが、hu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250を薬物の用途とすることが好ましく、IL‐17Aにより誘発される病理学疾患を治療するための薬物の用途、及び/又は、IL‐17Aシグナル伝達を抑制することで病理学疾患を治療するための薬物の用途とすることが更に好ましい。
【0032】
具体的な一実施形態において、IL‐17Aにより誘発される病理学疾患は、例えば、関節炎、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症又は嚢胞性線維症などの炎症病症又は病状である。
【0033】
本発明はIL‐17Aにより誘発される病理学疾患の治療方法を提供するが、前記方法が前記病状を軽減させるように本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントを有効量で投与する方法を含み、hu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250抗体が好ましい。
【0034】
本発明は本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの産生方法に更に関する。当該方法は、本発明の抗体又はタンパク質の少なくとも重鎖及び/又は軽鎖可変領域をコードする単離核酸分子、或いは当該核酸を含むクローニングベクターや発現ベクター、特に、宿主細胞において、例えば、hu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250などの本発明にかかる抗体又はタンパク質の組換え産生、を含む。
【0035】
本発明は1種類又は複数種類の上記クローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞、及び本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを含むタンパク質の産生方法、具体的に例えばhu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250抗体の産生方法に更に関するが、前記方法が前記宿主細胞の培養、前記抗体又はタンパク質の精製と回収を含む。
【0036】
一実施形態において、本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントを含むタンパク質がその他の活性部分と結合される。
【0037】
一実施形態において、本発明にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントはモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであってもよいが、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体或いはその一部が好ましい。
【0038】
一方、本発明は、1種類又は複数種類の薬用の賦形剤、希釈剤又はベクターと組合せる本発明の何れか一実施形態にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントを含むタンパク質を備える医薬組成物を提供する。
【0039】
一実施形態において、前記医薬組成物は1種類又は複数種類のその他の活性成分を含む。
【0040】
具体的な一実施形態において、前記医薬組成物は凍結乾燥粉末である。その他の具体的な一実施形態において、前記医薬組成物は、本発明にかかる抗体又は分子を治療において許容される量で含む安定的な液体製剤である。
【0041】
一実施形態において、本発明は、前記抗体又はその抗原結合フラグメントがIL‐17Aにより誘発される何れか1種類の病理学病症の治療薬物の製造に利用される用途に関わる。
【0042】
本発明は、上記抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする単離核酸分子、上記核酸分子を含む発現ベクター又は組換えベクター、及び前記ベクターを形質転換する宿主細胞を提供する。
【0043】
本発明は、上記抗体又はその抗原結合フラグメント、上記核酸分子、ベクター又は宿主細胞、及び薬学的に許容されるベクター又は賦形剤の組成物を備える、1種類の医薬組成物を提供する。
【0044】
本発明は、上記抗体又はその抗原結合フラグメント、核酸分子、ベクター又は宿主細胞、或いは、上記医薬組成物がIL‐17Aにより誘発される疾患又は病症の治療及び/又は予防薬物の製造に利用される用途を提供する。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記薬物は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、慢性阻塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症又は嚢胞性線維症の治療に利用される薬物である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】ヒトIL‐17A‐mFc組換えタンパク質のSDS‐PAGE電気泳動図を示す。
図2】FACSにより検出される、ヒトIL‐17A‐mFcと293F細胞におけるIL‐17RAとの結合(MFIは平均蛍光強度を表す。実験群v.s対照群:7695vs308)を示す。
図3】ELISAにより検出される、IL‐17Aにより誘発されるインビボ生理活性効果のハイブリドーマ抗体による遮断を示す。ただし、ハイブリドーマ抗体がIL‐17Aにより誘導されるマウスのCXCL1発現を明らかに抑制する。
図4】ELISAにより検出される、キメラ抗体とヒトIL‐17Aとの結合効果を示す。ただし、キメラ抗体ch1、ch2、ch4、ch7、ch16とヒトIL‐17Aとの結合が高い特異性を有し、EC50がそれぞれ6.62ng/ml、5.17ng/ml、88.48ng/ml、39.96ng/mL、15.42ng/mLである。
図5】FACSにより検出される、ヒトIL‐17Aと293F細胞におけるIL‐17RAとの結合のキメラ抗体による遮断効果を示す。ただし、キメラ抗体ch1、ch2、ch7、ch16が高効率の遮断効果を有し、IC50がそれぞれ4.46μg/ml、3.145μg/ml、1.220μg/ml、1.445μg/mlである。
図6】ELISAにより検出される、ヒト化抗体とヒトIL‐17Aとの結合効果を示す。ただし、抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250とヒトIL‐17Aとの結合が高い特異性を有し、EC50がそれぞれ8.13ng/mL、8.64ng/mL、6.764ng/ml、6.102ng/mL、5.776ng/mL、6.351ng/mLである。
図7】FACSにより検出される、ヒトIL‐17Aと293F細胞におけるIL‐17RAとの結合のヒト化抗体による遮断効果を示す。ただし、抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250が高効率の遮断効果を有し、IC50がそれぞれ867.6ng/mL、780.8ng/mL、828.5ng/ml、467.4ng/mL、482.8ng/mL、577.8ng/mLである。
図8】ELISAにより検出される、IL‐17Aにより誘発される上皮細胞のCXCL1分泌のヒト化抗体による遮断効果を示す。ただし、抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250がIL‐17Aにより誘導される上皮細胞のCXCL1発現を高効率で抑制するとともに、対照抗体による遮断効果によりも強い。
図9】ELISAにより検出される、IL‐17Aにより誘発されるインビボ生理活性効果のヒト化抗体による遮断を示す。ただし、抗体hu31、hu43、hu44、hu60、hu250がIL‐17Aにより誘導されるマウスのCXCL1発現を高効率で抑制するとともに、対照抗体による遮断効果よりも強い。
図10-1】イミキモドにより誘導される乾癬マウスの臨床評価点数に対するヒト化抗体投与の影響を示す。hu31及びhu44の投与がイミキモドにより誘導されるマウス乾癬モデルのスキンスケール、硬結、赤み、腫れなどの状況を明らかに抑制し、即ち、臨床評価点数を低下させる(*P < 0.05 vs KLH)。
図10-2】イミキモドにより誘導される乾癬マウスの耳の腫れ具合に対するヒト化抗体の影響を示す。hu31及びhu44の投与が耳の腫れ具合を明らかに改善する(*P < 0.05 vs KLH, **P < 0.01 vs KLH)。
図11-1】II型コラーゲンにより誘導される雌カニクイザル体重に対するヒト化抗体の影響を示す。hu31及びhu59が関節炎による体重減少に対してある程度で改善効果を有する(**P<0.01,****P<0.0001,「G2:溶媒群」と比較;One‐way ANOVA/Dunnett)。
図11-2】II型コラーゲンにより誘導される雌カニクイザル関節炎評価点数に対するヒト化抗体の影響を示す。hu31がカニクイザル関節炎臨床評価点数の増加傾向を明らかに抑制した(***P<0.001,#P<0.05,G2:溶媒群と比較;One‐way ANOVA/Dunnett)。
図12】NIH3T3‐IL‐17細胞により誘導されるマウス関節腫れに対するヒト化抗体の効果を示す。
図13】NIH3T3‐IL‐17細胞により誘導されるマウス空気嚢型炎症に対するヒト化抗体の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明はヒトIL‐17Aと特異的に結合するとともに、IL‐17Aにより誘発される生理活性を遮断する抗体に関する。本発明は後述の明細書で更に説明された全長IgG型抗体及びその抗原結合フラグメントに関わる。
【0048】
(定義)
特に断りのない限り、本発明の実施にあたって、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生物化学、免疫学などの通常技術を採用するが、これらは本分野の技術範囲内である。
【0049】
本発明をより容易に理解できるように、技術用語を以下のように定義する。本明細書のその他の部分で明確に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語は、本発明の当業者が通常理解する意味を有する。本分野の定義及び用語について、専門者がCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を参照する。アミノ酸残基の略称は、本分野で使用される、20種類常用L‐アミノ酸の1つを表す、標準3文字及び/又は1文字コードである。
【0050】
本説明書で別途で明確に説明しない限り、本明細書(請求項を含む)で使用される単数表現は複数の意味を含む。
【0051】
IL‐17又はIL‐17Aとはインターロイキン‐17である。特に断りのない限り、前記IL‐17とは、通常、ヒトIL‐17Aである。
【0052】
インビボで発現されるIL‐17Aは23個のアミノ酸からなるN端末シグナルペプチドであり、NCBI登録番号がNP_443104.1であり、切断により成熟IL‐17Aが産生される。具体的な一実施形態において、本開示内容にかかるIL‐17Aとは成熟IL‐17Aであり、N端末シグナルペプチドを含まないが、アミノ酸配列がSEQ ID NO:66であり、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:67である。
【0053】
インビボで発現されるIL‐17Fは30個のアミノ酸からなるN端末シグナルペプチドであり、NCBI登録番号がNP_443104.1であり、切断により成熟IL‐17Fが産生される。具体的な一実施形態において、本明細書にかかるIL‐17Fとは成熟IL‐17Fであり、N端末シグナルペプチドを含まないが、アミノ酸配列がSEQ ID NO:68である。
【0054】
本明細書にかかるIL‐17AFは、当業者が理解するように、IL‐17AサブユニットとIL‐17Fサブユニットのヘテロ二量体である。
【0055】
「免疫応答」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球と上記細胞又は肝から産生する可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用を指し、該作用により、侵入病原体、病原体を感染した細胞又は組織、癌細胞又は自体免疫又は病理学的炎症の場合の正常なヒト細胞又は組織が人体から選択的に損害、破壊又は除去される。
【0056】
「シグナル伝達ルート」又は「シグナル伝達活性」とは、通常、例えば、成長因子と受容体との結合などのタンパク質間の相互作用による生物化学因果関係であり、前記関係によりシグナルが細胞の一部から細胞の他部まで伝達される。一般的に、伝達はシグナル伝達を引き起こす一連反応において、1種類又は複数種類のタンパク質における1つ又は複数のチロシン、セリン又はトレオニン残基の特定リン酸化を含む。通常、最後から二番目のプロセスが細胞核イベントを含むことから、遺伝子発現の変化が発生される。
【0057】
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントについて、用語「活性」又は「生理活性」、或いは用語「生物性質」又は「生物特徴」は相互に交換使用可能であり、エピトープ/抗原親和性及び特異性、インビボ又はインビトロにおいてIL‐17A活性を中和又は拮抗する能力、IC50、抗体のインビボ安定性及び抗体の免疫原性質を含むが、これらに限定されるものではない。本分野における周知の評定できる抗体のその他の生物学性質又は特徴は、例えば、交差反応性(即ち、通常、ターゲットペプチドの非ヒトホモログ、或いはその他のタンパク質又は組織との交差反応性)、哺乳類動物細胞におけるタンパク質の高発現レベルを保持する能力を含む。本分野における周知の技術を利用して前述した性質又は特徴を観察、測定又は評価するが、前記技術は、ELISA、FACS又はBIACOREなどのイオン共振分析、制限を受けないインビボ又はインビトロにおける中和測定、受容体結合、サイトカイン又は成長因子の産生及び/又は分泌、シグナル伝達、異なる由来(ヒト、霊長類又は何れかその他の由来)の組織断片の免疫組織化学を含むが、これらに限定されるものではない。
【0058】
「抗体」とは希望の生理活性を有する任意の形態の抗体を意味する。したがって、最も広義に使用される場合、それは、具体的には、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びキャメル化単一ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0059】
「単離抗体」とは結合化合物の精製状態を指し、且つこのような場合、当該分子が実質的にその他の生物分子、例えば、核酸、タンパク質、脂質、糖、細胞破片と成長培地などのその他の物質を含まないことを意味する。用語「単離(した)」とは、本明細書の前記結合化合物の実験又は治療への使用を明らかに干渉する量で存在しない限り、このような物質が完全に存在しない、又は水、緩衝液又は塩が存在しないことを意味するのではない。
【0060】
「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体群から得る抗体であり、即ち、天然に存在し得る少量の変異以外、この群からなる各抗体は同じである。モノクローナル抗体は高い特異性を持ち、単一の抗原エピトープに対するものである。それに対して、通常の(ポリクローナル)抗体製造物は、通常、異なるエピトープに対する大量の(又は異なるエピトープに対して特異性を有する)抗体を含む。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体群から得た抗体の特徴を示し、任意の特定の方法を通じて抗体を産生する必要があると解釈されない。
【0061】
天然に存在する場合、「全長抗体」とは4本のペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子であり、2本の重(H)鎖(全長の場合は約50‐70kDa)と2本の軽(L)鎖(全長の場合は約25kDa)がジスルフィド結合によりお互いに連結される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)と重鎖定常領域(本明細書においてCHと略される)からなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。VH領域とVL領域は、高可変性を有する相補性決定領域(CDR)と、その間に保存されるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域と、さらに細かく区分される。各VH領域又はVL領域は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ基端末からカルボキシル基端末まで配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。重鎖と軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンが宿主組織又は因子(免疫系の各細胞(例えば、エフェクター細胞)と代表的な補体系の第一成分(Clq)を含む)に対する結合を仲介することができる。
【0062】
抗体(「親抗体」)の「抗原結合フラグメント」は抗体のフラグメント又は誘導体を含むが、通常、親抗体の抗原結合領域又は可変領域(例えば、1種類又は複数種類のCDR)の少なくとも1つのフラグメントを含み、親抗体の少なくとも1つの結合特異性を保持している。抗体結合フラグメントの実例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント、二重抗体、線形抗体、sc‐Fvなどの一本鎖抗体分子、抗体フラグメントから形成されるナノ抗体(nanobody)、及び多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。抗原結合活性がモル濃度で示される場合、結合フラグメント又は誘導体は、通常、その抗原結合活性の少なくとも10%を保持する。結合フラグメント又は誘導体が親抗体の抗原結合親和力の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、100%又はより高い親和力を保持することは好ましい。抗体の抗原結合フラグメントは、その生理活性を明らかに変えない保存又は非保存アミノ酸置換(抗体の「保存バリアント」又は「機能性保存バリアント」をいう)を含むことが期待される。用語「結合化合物」とは抗体及びその結合フラグメントの両者を指す。
【0063】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体とは、抗体のVHとVLドメインを含む抗体フラグメントを指し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。Fvポリペプチドは一般にはVHとVLドメインの間のポリペプチドリンガーをさらに含み、それにより、scFvは抗原結合用の希望の構造を形成できる。
【0064】
「ドメイン抗体」とは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域だけを含有する免疫機能性免疫グロブリンフラグメントである。幾つかの場合、2個以上のVH領域はペプチドリンガーと共有結合して二価ドメイン抗体を形成する。二価ドメイン抗体の2個のVH領域は、同じ又は異なる抗原にターゲティングできる。
【0065】
「二価抗体」とは2個の抗原結合部位を含む。幾つかの場合、2個の結合部位は同じ抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は二重特異性であってもよい。
【0066】
「二重抗体」とは、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、前記フラグメントは、同一ポリペプチド鎖(VH-VL又はVL-VH)において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖の2個のドメインの間のペアリングが不可能になるほど短いリンガーを使用することにより、該ドメインと別の鎖の相補ドメインがペアリングさせられて2個の抗原結合部位を産生する。
【0067】
「キメラ抗体」とは、第1の抗体の可変ドメインと第2の抗体の定常ドメインとを有する抗体であり、第1の抗体と第2の抗体は異なる種に由来する。通常、可変ドメインは、齧歯動物などの実験動物から入手する抗体(「親抗体」)であり、定常ドメイン配列はヒト抗体から入手し、それにより、親齧歯動物抗体に比べて、得たキメラ抗体は、ヒト受検者において不良免疫応答を誘導する可能性が低くなる。
【0068】
「ヒト化抗体」とは、ヒトと非ヒト(例えばマウス、ラット)抗体に由来する配列を含有する抗体の形態である。一般には、ヒト化抗体は、実質的にすべての少なくとも1個、通常、2個の可変ドメインを含み、ここで、すべて又は実質的にすべての超可変領域は、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に相当し、すべて又は実質的にすべてのフレームワーク(FR)領域は、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。ヒト化抗体は、任意に少なくとも一部のヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)を含む。
【0069】
「完全ヒト抗体」とはヒト免疫グロブリンタンパク質配列だけ含む抗体である。例えば、マウス、マウス細胞又はマウス細胞由来のハイブリドーマに産生される場合、完全ヒト抗体がマウス糖鎖を含んでもよい。同様に、「マウス抗体」とはマウス免疫グロブリン配列だけ含む抗体である。或いは、ラット、ラット細胞又はラット細胞由来のハイブリドーマに産生される場合、完全ヒト抗体がラット糖鎖を含んでもよい。同様に、「ラット抗体」とはラット免疫グロブリン配列だけ含む抗体である。
【0070】
「アイソタイプ」とは重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体種類(例えば、IgM、IgE、IgG1又はIgG4などのIgG)である。アイソタイプはこれらの種類の1つの修飾形態を更に含むが、例えば、効果副機能又はFc受容体に対する結合の増強又は低減など、Fc機能を変更するように修飾が産生された。
【0071】
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」とはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)及びその単鎖又は二本鎖形態のポリマーである。明確な制限がない限り、用語は、参照核酸と類似する結合性質を有し、天然に存在するヌクレオチドと類似する形態で代謝される、既知天然ヌクレオチドの類似物を含有する核酸を含む。(Karikoなどに所有されるアメリカ特許No.8,278,036を参照。これらは、ウリジンがシュードウリジンで代用されるmRNA分子、前記mRNA分子の合成方法、及びインビボで治療性タンパク質の送達に利用される方法が開示された)。例えば、Karikoなどに所有されるアメリカ特許No.8,278,036及びModerna社に所有される出願W02013/090186A1により開示された方法など、修飾されたmRNAの方法を使用してもよい。特に断りのない限り、特定の核酸配列は、その保存・修飾されたバリアント(例えば、縮重コドンの置換)、対立遺伝子、オーソログ、SNP、相補配列、及び明確に指定された配列、を更に含蓄する。具体的に、縮重コドンの置換は、その1つ又は複数の選択的(又は全部)コドンの3番目がミックス塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列の生成により実現される(Batzerなど、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaなど、J. Biol. Chem. 260:2605‐2608(1985);Rossoliniなど、Mol. Cell. Probes 8:91‐98(1994))。
【0072】
「構築体」とは任意の組換えポリヌクレオチド分子(例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製ポリヌクレオチド分子、バクテリオファージ、直線状又は環状の単鎖又は二本鎖DNA又はRNAポリヌクレオチド分子)であり、任意の由来により誘導され、ゲノムと整合又は自律複製可能であり、機能操作の方式で1つ又は複数のポリヌクレオチド分子と連結される(即ち、操作可能で連結される)ように構成する。組換え構築体は、通常、転写開始調節配列と操作可能で連結される本発明のポリヌクレオチドを含むが、これらの配列が宿主細胞におけるポリヌクレオチドの転写を誘導する。特異的及び非特異的(即ち、内因性)プロモーターの両者を使用して本発明の核酸の発現を誘導する。
【0073】
「ベクター」とは任意の組換えポリヌクレオチド構築体であり、当該構築体が形質転換の目的として利用されてもよい(即ち、ヘテロDNAを宿主細胞に導入する)。ベクターの1種類は「プラスミド」であり、環状二本鎖DNA環であり、その他のDNAセグメントを当該環に連結してもよい。ベクターのもう1種類はウイルスベクターであり、その他のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結してもよい。幾つかのベクターが導入先の宿主細胞において自律複製できる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーマル哺乳類動物ベクター)。宿主細胞に導入された場合、その他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳類動物ベクター)が宿主細胞のゲノムに整合されるため、宿主ゲノムと一緒に複製する。また、幾つかのベクターが操作的に連結される遺伝子の発現を誘導できる。本明細書ではこれらのベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。
【0074】
本明細書で使用される用語「発現ベクター」とは、宿主細胞に形質転換、トランスフェクション又は伝達される際に、標的遺伝子を複製及び発現できる核酸分子である。発現ベクターは、ベクター維持及び必要な場合に宿主において増幅ができるように、1つ又は複数の表現型選択マーカー及び複製開始点を含む。
【0075】
本明細書で使用される用語「IL‐17A拮抗剤」又は「IL‐17A遮断分子」とは、IL‐17Rにより誘導されるIL‐17Aのシグナル伝達活性を抑制することで、IL‐17A活性を低下・中和させる抗体又はその抗原結合タンパク質を意味する。それは、例えば、ヒト細胞のIL‐17AによるCXCL1産生測定などのヒト細胞測定において表示される。これらの測定は下記の実施例において更に具体的に説明された。
【0076】
文脈から別に明確に規定しない限り、細胞又は受容体について使用される「活性化」、「刺激」と「処理」、例えば細胞又は受容体について使用されるリガンド活性化、刺激又は処理は同じ定義を有する。「リガンド」は天然リガンドと合成リガンド、例えばサイトカイン、サイトカインバリアント、アナログ、変異タンパク質、及び抗体由来の結合化合物を含む。「リガンド」は、小分子、例えばサイトカインのペプチド模倣物や抗体のペプチド模倣物も含む。「活性化」は内部メカニズム及び外部や環境の要因により調整された細胞の活性化を指す。「応答/反応」、例えば細胞、組織、器官又は生体の応答は、生化学又は生理学的行動(例えば生物学的区画内の濃度、密度、接着又は移動、遺伝子発現速度又は分化状態)の変化を含み、ここで、変化は、活性化、刺激又は処理に関連するか、又は例えば遺伝子プログラミングなどの内部メカニズムに関連する。
【0077】
本明細書で使用される任意の疾患又は病症の用語「治療」又は「療治」とは、一実施形態において疾患又は病症の改善(即ち、疾患の発展又はその臨床症状の少なくとも1つの軽減、阻止又は減少)を意味する。別の一実施形態において、「治療」又は「療治」とは、患者が認識できない物理パラメータを含む少なくとも1つの身体パラメータの軽減又は改善を指す。別の一実施形態において、「治療」又は「療治」とは、身体(例えば、認識できる症状の安定)、生理(例えば、身体パラメータの安定)、又は両方において疾患又は病症を調製することを指す。本明細書で明確に説明しない限り、疾患の治療及び/又は予防を評価する方法は本分野において通常既知である。
【0078】
「受検者」とは任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」とは、例えば、非ヒト霊長類動物、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類動物、爬虫類動物など、哺乳類動物及び非哺乳類動物の全ての脊椎動物を含む。本明細書で使用される用語「cyno」又は「カニクイザル」とはカニクイザルを指す。
【0079】
「治療有効量」、「治療有効用量」及び「有効量」とは、本発明のIL‐17A抗体又はその抗原結合フラグメントを単独で又はその他の治療薬物との組合せで細胞、組織又は受検者に投与する場合、1種類又は複数種類の疾患又は病状の症状或いは当該疾患又は病状の発展を有効的に予防又は改善する量を指す。治療有効用量は、例えば、関連医学病状を治療、完治、予防又は改善する量、或いはこれらの病状の治療、完治、予防又は改善のスピードを向上させる量など、症状改善に十分な抗体又はその抗原結合フラグメントの量を指す。個体に活性成分を単独で投与する場合、治療有効用量とは当該成分の量だけである。組合せで投与する場合、組合せ投与、逐次投与又は同時投与にも関わらず、治療有効用量とは治療効果が出る活性成分の合計量である。治療剤の有効量は、診断標準又はパラメータを少なくとも10%向上させるが、少なくとも20%が通常であり、少なくとも約30%が好ましく、少なくとも40%が更に好ましく、少なくとも50%が最も好ましい。
【0080】
(抗体の産生)
抗体を産生するための任意の適切な方法で本発明の抗体を産生してもよい。任意の適切な形態のヒトIL‐17Aが抗体を産生するための免疫原(抗原)としてもよい。非限定的に例示することで、任意のヒトIL‐17Aアイソタイプ又はそのフラグメントが免疫原としてもよい。実例は、本明細書にかかる天然の成熟型ヒトIL‐17A(アミノ酸配列がSEQ ID No:66である)を含むが、これらに限定されない。
【0081】
好適な一実施形態において、マウス由来のモノクローナル抗ヒトIL‐17A抗体を産生するためのハイブリドーマ細胞は、本分野における周知の方法により産生してもよい。これらの方法は、最初にKohlerなど(1975)(Nature 256:495‐497)により検討されたハイブリドーマ技術を含むが、これらに限定されない。標準形態に応じて、マウス膵臓細胞を分離して、PEG又は電気的融合によりマウス骨髄腫細胞系と融合することが好ましい。それから、得られたハイブリドーマから、抗原特異性抗体を産生するためのハイブリドーマを選定してもよい。例えば、50%PEGの前提で、免疫マウス由来の膵臓リンパ球の単細胞懸濁液と1/6数のマウス骨髄腫細胞SP20(ATCC)を融合してもよい。細胞を約2×105個の細胞/mLで平底マイクロタイタープレートに接種してから、20%ウシ胎児血清を含む完全合成培地及び1×HAT(Sigma;融合後24時間HATを添加)の選択培地で2週間インキュベートする。2週間後、HATの代用としてHTを使用する培地で細胞を培養する。その後、ELISAにより抗ヒトIL‐17AモノクローナルIgG抗体に対して各ウェルを選定する。ハイブリドーマの大量成長が発見された場合、通常、10‐14日間後に培地を観察する。抗体が分泌されるハイブリドーマを再接種、再選定するが、依然としてヒトIgG陽性であれば、限界希釈により抗ヒトIL‐17Aモノクローナル抗体ハイブリドーマに対してサブクローンを少なくとも2回行う。その後、組織培地で少量の特徴付け用抗体を産生するように、安定的なサブクローンのインビトロ培養を行う。
【0082】
好適な一実施形態において、本発明で得られたモノクローナルハイブリドーマ細胞は1F8、2F5、2B2であり、その分泌される抗体がIL‐17Aと高特異的に結合し、IL‐17AとIL‐17RAとの結合を遮断し、IL‐17Aにより誘発される生理活性、例えばCXCL1分泌を抑制する。
【0083】
好適な一実施形態において、本発明は、縮重プライマーPCRに基づく方法により、候補ハイブリドーマ細胞1F8、2F5、2B2で発現された免疫グロブリン可変領域のDNA配列を測定した。ハイブリドーマ細胞1F8は2種類の抗体軽鎖遺伝子及び1種類の抗体重鎖遺伝子を有するが、2F5は2種類の抗体重鎖遺伝子及び1種類の抗体軽鎖遺伝子を有する。そのため、1F8、2F5により分泌される抗体は2種類の混合完全抗体を含有するが、本明細書では、1F8により分泌される抗体を1F8‐1及び1F8‐2と、2F5により分泌される抗体を2F5‐1及び2F5‐2と呼ぶ。
【0084】

【表1】
【0085】
齧歯動物(例えばマウス)由来の抗体はインビボで治療薬物として利用される場合、不必要な抗体免疫原性を引き起こし、繰返し使用により人体の治療性抗体に対する免疫応答が発生されるが、これらの免疫応答により少なくとも治療効果の喪失、最悪の場合潜在的に致命的なアナフィラキシーが発生される。齧歯動物抗体の免疫原性を低減させる方法の1つはキメラ抗体の産生を含むが、この場合、マウス可変領域とヒト定常領域を融合する(Liuなど(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439‐43)。しかしながら、キメラ抗体における完全齧歯動物可変領域の保留が患者において依然として有害な免疫原性を引き起こす。齧歯動物の可変ドメインの相補性決定領域(CDR)ループをヒトのフレームワークに移植する(即ちヒト化)ことは、齧歯動物配列を最低に低減させることに更に用いられる(Jonesなど(1986)Nature 321:522;Verhoeyenなど(1988)Science 239:1534)。
【0086】
幾つかの実施形態において、本発明のキメラ又はヒト化抗体は、前記製造されたマウスモノクローナルハイブリドーマ抗体の配列に基づいて製造した。重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、標的マウスハイブリドーマから得られるが、非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように、標準分子生物学技術を利用して工程改良を行う。
【0087】
幾つかの実施形態において、本発明にかかるキメラ抗体は、本分野における既知の方法を利用して、ハイブリドーマ由来の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域とヒトIgG定常領域を有効的に連結して(例えばCabillyなどに所有されるアメリカ特許No.4,816,567を参照)、キメラ型重鎖及びキメラ型軽鎖を得る。ヒトIgGは例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の任意のサブタイプから選ばれるが、IgG4が好ましい。
【0088】
具体的な一実施形態において、本発明のキメラ抗体は、1種類のキメラ型軽鎖及び1種類のキメラ型重鎖の発現プラスミドの「混合及びマッピング」により発現細胞にトランスフェクションして得られたものであり、これらの「混合及びマッピング」により得られた抗体とIL‐17Aとの結合が上記結合測定及びその他の通常結合測定(例えば、ELISA)により測定するが、好適なch1、ch2、ch4、ch7、ch16が最適な結合及び遮断活性を有し、その可変領域アミノ酸配列が表2に示される。
【0089】
【表2】
【0090】
本発明にかかる抗体の可変領域CDRの精確なアミノ酸配列の境界は、Kabatなど(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」番号案)によって説明されるKabat案、及びLefranc M.‐P.などによって説明されるIMGT案(1999 Nucleic Acids Research,27,209‐212)を含む、大量な周知の実施形態の何れか1つで決定される。幾つかの実施形態において、本発明の好適なマウス抗体可変領域のCDRの具体的な定義案及びアミノ酸配列は表3に示される。
【0091】
【表3】
【0092】
幾つかの実施形態において、本発明にかかるヒト化抗体は、本分野における既知の方法を利用してマウスCDR領域をヒト生殖細胞系フレームワーク領域に挿入してもよい。Winterなどのアメリカ特許No.5,225,539及びQueenなどのアメリカ特許No.5,530,101;5,585,089; 5,693,762; 6,180,370を参照する。簡単に言えば、出願者はNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)サイトのヒト免疫グロブリン遺伝子データベースから、マウス抗体可変領域のcDNA配列と高い相同性を有するヒト生殖細胞系IgG遺伝子を検索して、原則的に選定されたCDRグラフティングによりヒト化が実現される。しかしながら、CDRループを交換しても、開始抗体と相同な結合性質を有する抗体を均一に産生することができない。ヒト化抗体では、抗原結合の親和力を維持するために、フレームワーク残基(FR)(CDRループのサポートに関わる残基)を変える必要がある場合は多い。Kabatなど(1991) J. Immunol. 147:1709。簡単に言えば、ヒト化改変の過程には、以下のステップを含む。A.各候補抗体の遺伝子配列とヒト胚性抗体の遺伝子配列とを比較し、相同性の高い配列を探す。B.HLAーDR親和性を分析して調べて、親和力の低いヒト胚性フレームワーク配列を選択する。C.コンピュータシミュレーション技術を利用して、分子ドッキングにより可変領域及びその周辺のフレームワークアミノ酸配列を分析し、その空間的な結合方式を調べる。静電力、ファンデルワールス力、親疎水性やエントロピー値を計算することで、各候補抗体の遺伝子配列のうち、IL‐17Aと作用して空間フレームワークをメンテナンスする重要な単一のアミノ酸を分析し、それを、選択されたヒト胚性遺伝子フレームワークにグラフトし、これに基づいて、保留しなければならないフレームワーク領域のアミノ酸の部位をマークし、ヒト化抗体を合成した。
【0093】
幾つかの実施形態において、本発明で得られた好適なヒト化抗体はhu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250である。
ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250可変領域及びそれに対応するCDRアミノ酸配列は表4に示される。
【0094】
【表4】
【0095】
ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250の軽/重鎖アミノ酸及びヌクレオチド配列は表5に示される。
【0096】
【表5】
【0097】
本発明のその他の抗体は、アミノ酸の欠失、挿入又は置換突然変異を行ったが、上記抗体(特に、上記配列で説明されたCDR領域)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を備える抗体を含む。幾つかの実施形態において、本発明の抗体はhu31、hu43、hu44、hu59、hu60、hu250の何れか1つの突然変異体であり、前記突然変異体が突然変異アミノ酸配列を含み、前記突然変異アミノ酸配列において、上記配列で説明されたCDR領域と比較する場合、CDR領域におけるアミノ酸の欠失、挿入又は置換を行ったアミノ酸突然変異が1、2、3、4又は5個超えない。
【0098】
本発明の抗体をコードするその他の核酸は、ヌクレオチドの欠失、挿入又は置換突然変異を行ったが、前述した前記配列で説明されたCDR対応コード領域と少なくとも60、70、80、90、95又は100%の同一性を有する核酸を含む。
【0099】
(抗体発現)
幾つかの実施形態において、本発明は1種類又は複数種類の発現ベクター又は発現ベクターの宿主細胞、及び本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの産生方法に関するが、前記方法が前記宿主細胞の培養、前記抗体又は抗原結合フラグメントの精製と回収を含む。
【0100】
例えば、本分野における周知の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション方法の組合せ(例えば、Morrison, S. 1985, Science 229:1202)を利用して宿主発現細胞において本発明の抗体を産生する。例えば、抗体又はその抗体フラグメントを発現するために、コード部分又は全長軽鎖及び重鎖のDNAが標準分子生物学又は生物化学技術(例えば、DNA化学合成、PCR増幅、又は発現標的抗体を利用するハイブリドーマのcDNAクローン)により得られるが、前記遺伝子が転写及び翻訳制御配列と有効的に連結されるように、前記DNAを発現ベクターに挿入する。本明細書では、用語「有効的に連結される」とは、ベクターにおける転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳調製の予定機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターと連結されることを意味する。使用される発現宿主細胞と共存できる発現ベクター及び発現調節配列を選択する。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子を異なるベクターに挿入してもよいが、或いは、より一般的に、2つの遺伝子を同じ発現ベクターに挿入してもよい。標準方法により抗体遺伝子を発現ベクターに挿入する(例えば、抗体遺伝子フラグメントとベクターで相補する制限部位とを連結する、或いは、制限部位が存在しない場合、ブラントエンドと連結する)。本明細書にかかる抗体の軽鎖及び重鎖可変領域を利用して任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を生成するが、これらを希望アイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域がコードされた発現ベクターに挿入することで、VHセグメントとベクターにおけるCHセグメントが有効的に連結され、VLセグメントとベクターにおけるCLセグメントが有効的に連結される。及び/又は、組換え発現ベクターがシグナルペプチド(リーダー配列とも呼ぶ)を選択的にコードしてもよいが、抗体鎖が宿主細胞から分泌されることに繋がる。シグナルペプチドと抗体鎖遺伝子のアミノ基端末が同じリーディングフレームに連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングしてもよい。シグナルペプチドが免疫グロブリンシグナルペプチドとヘテロシグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリン由来のシグナルペプチド)のどちらでもよい。
【0101】
本発明の組換え抗体を発現するための哺乳類動物宿主細胞は、米国タイプカルチャーコレクション(ATCC)により得られる大量の不死化細胞系を含む。特に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2/O細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞、A549細胞、293T細胞及び大量のその他の細胞系を含む。哺乳類動物宿主細胞は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、ハムスターの細胞を含む。どの細胞系が高発現レベルを有するかについて測定することで、特に好ましい細胞系を選択する。
【0102】
重鎖又は抗原結合フラグメント又はそのフラグメント、軽鎖及び/又はその抗原結合フラグメントをコードする組換え発現ベクターを哺乳類動物宿主細胞に導入する場合、抗体が宿主細胞で発現される、又は更に好ましい抗体が宿主細胞の成長培地に分泌することで抗体が産生されるように、宿主細胞を十分な一定時間で培養する。標準タンパク質精製方法により培地から抗体を回収する。
【0103】
異なる細胞系で発現される、又は遺伝子組換え動物で発現される抗体同士が異なるグリコシル化を示す可能性がある。しかしながら、抗体のグリコシル化にも関わらず、本明細書で提供される核酸分子によりコードされる、又は本明細書で提供されるアミノ酸配列を含む、全ての抗体が本発明の構成部分である。同様に、幾つかの実施形態において、非ロックウィードグリコシル化抗体の糖構造が天然ヒト血清IgGの一般的な成分であるため、通常、インビトロ及びインビボにおいてそのロックウィードグリコシル化対応物より更に強力な効果を持つとともに、免疫原性である可能性がないことから、非ロックウィードグリコシル化抗体が優位性を持つ。
【0104】
(医薬用途)
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントはインビトロ及びインビボにおいて診断及び治療用途を持つ。好ましくは、ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250抗体がIL‐17Aに関連する疾患の治療に適用される。
【0105】
一方、本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボ活性評価の際に、イミキモドにより誘導される乾癬実験モデルにおいて、マウスの発病を抑制し、マウス乾癬発病の臨床評価点数及び耳の腫れ具合を明らかに低下させることができる。
【0106】
具体的な一実施形態において、イミキモドにより誘導される乾癬実験モデルにおいて、ヒト化抗体hu31及びhu44が、マウスの発病を明らかに抑制し、マウス乾癬発病の臨床評価点数及び耳の腫れ具合を明らかに低下させることができる。
【0107】
一方、本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボ評価の際に、例えば、カニクイザルAIA‐モデルなど、抗原により誘導される関節炎実験モデルにおいて、膝関節の腫れを抑制することができる。
【0108】
具体的な一実施形態において、カニクイザルAIA‐モデルにおいて、ヒト化抗体hu31がカニクイザル関節炎臨床評価点数の増加傾向を明らかに抑制する。
【0109】
一方、本発明はIL‐17Aにより誘発される病理学疾患の治療方法を提供するが、前記方法が前記病症を軽減させるように本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントを有効量で投与する方法を含み、hu31、hu43、hu44、hu59、hu60又はhu250抗体が特に好ましい。
【0110】
一実施形態において、本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントを含むタンパク質がその他の活性部分と結合される。
【0111】
一実施形態において、本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントを含むタンパク質はモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであってもよいが、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体或いはその一部が好ましい。
【0112】
一方、本発明は、1種類又は複数種類の薬用の賦形剤、希釈剤又はベクターと組合せる本発明の実施形態にかかる抗体又はその抗原結合フラグメントを含むタンパク質を備える医薬組成物を提供する。
【0113】
実施形態において、前記医薬組成物は1種類又は複数種類のその他の活性成分を含む。
具体的な一実施形態において、前記医薬組成物は凍結乾燥粉末である。その他の具体的な一実施形態において、前記医薬組成物は、本発明にかかる抗体又は分子を治療において許容される量で含む安定的な液体製剤である。
【0114】
具体的に、本発明はIL‐17Aに関連する疾患及び/又は自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療方法を提供する。幾つかの実施形態において、前記方法は必要とされる受検者に本発明にかかる単離抗体又はその抗原結合フラグメントを投与するステップを備える。
本発明は、細胞を本発明の抗体が治療有効用量で含まれる組成物と接触させることで、ターゲット細胞又は組織においてIL‐17A又はIL‐17AFにより誘導されるシグナル伝達応答を軽減又は抑制する方法を更に提供する。
【0115】
本発明では、用語「IL‐17Aにより誘発される疾患」又は「IL‐17Aに関連する疾患」は、疾患又は医学病状においてIL‐17A又はIL‐17AFにより作用される(直接的や間接的にも関わらず)全ての疾患及び病状を含むが、疾患又は病状の原因、発展、進展、持続又は病理学を含む。そのため、これらの用語は、異常IL‐17A又はIL‐17AF水準に関連する又は異常IL‐17A又はIL‐17AF水準を特徴とする病状、及び/又は、ターゲット細胞又は組織においてIL‐17A/AFにより誘導される活性(例えばCXCL1)を軽減又は抑制することで治療する疾患又は病状を含む。これらの疾患又は病状は、例えば、関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、多発性硬化症又は乾癬などの、炎症病状及び自己免疫疾患を含む。これらの疾患は、アナフィラキシー及びアレルギー病症、ハイパーセンシティビティー、慢性阻塞性肺疾患、嚢胞性線維症及び器官又は組織移植片拒絶反応を更に含む。
【0116】
本発明で使用される「抑制」、「治療」又は「処理」は病症に関連する症状の発展遅延及び/又はこれらの病症症状の重症度の軽減を含む。これらの用語は、現段階で制御できない又は有害な症状の改善、その他の症状の予防、及びこれらの症状の根本原因の改善又は予防を含む。そのため、これらの用語は、病症、疾患又は症状が既に現れた脊椎動物受検者、又はこれらの病症、疾患又は症状が現れる可能性のある脊椎動物受検者に、有益な結果を提供することを意味する。
【0117】
本発明で使用される用語「治療有効量」、「治療有効用量」及び「有効量」とは、本発明のIL‐17結合化合物を単独で又はその他の治療薬物との組合せで細胞、組織又は受検者に投与する場合、1種類又は複数種類の疾患又は病状の症状或いは当該疾患又は病状の発展を有効的に予防又は改善する量を指す。治療有効用量は、例えば、関連医学病状を治療、完治、予防又は改善する量、或いはこれらの病状の治療、完治、予防又は改善のスピードを向上させる量など、症状改善に繋がるには十分な結合化合物の量を指す。個体に活性成分を単独で投与する場合、治療有効用量とは当該成分の量だけである。組合せで投与する場合、組合せ投与、逐次投与又は同時投与にも関わらず、治療有効用量とは治療効果が出る活性成分の合計量である。治療剤の有効量は、診断標準又はパラメータを少なくとも10%向上させるが、少なくとも20%が通常であり、少なくとも約30%が好ましく、少なくとも40%が更に好ましく、少なくとも50%が最も好ましい。
【0118】
(関節リウマチ(RA))
RAは滑膜性関節の炎症を特徴とする進行型全身疾患であり、約0.5%の世界人口に影響を与える。Emery(2006)BMJ332:152‐155を参照する。関節炎症により奇形、痛み、硬直及び腫れが発生され、最終的に関節の不可逆的退化が発生される。影響を受ける関節は膝、肘、首及び手足関節を含む。一般的な治療は、NSAIDを利用して症状を軽減させてから、例えば、金、ペニシラミン、スルファサラジン及びメトトレキサートなどの疾患を軽減させる抗リウマチ薬(DMRD)を投与する方法を含む。近年、レミケード、ヒュミラ、ゴリムマブなどのモノクローナル抗体、及び例えば、エタネルセプトなどの受容体融合タンパク質など、TNF‐α抑制剤による治療という進展が見られている。これらのTNF‐α抑制剤による治療は疾患による構造損害を明らかに低下させる。
【0119】
本発明の抗IL‐17A抗体は、この治療を必要とされる受検者のRAの治療に適用できる。本発明の抗IL‐17A抗体は、例えば、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸エチル、NSAID又はTNF‐α抑制剤などによるRAのその他の治療との組合せで適用できる。
【0120】
(乾癬)
皮膚は生体内環境と外部環境との重要なスクリーンであり、潜在的な有害抗原との接触を防止する。抗原/病原体が侵入する場合、皮膚接触部のT細胞、多形核細胞、マクロファージなど局所に浸潤するとともに、炎症反応を起こして抗原を排除する(例えば、WilliamsとKupper,(1996) Life Sci.,58:1485‐1507を参照する)。通常、病原体によるこの炎症反応は厳しく監視されているが、病原体が排除されると同時に停止される。外部刺激と適切な制御がない場合にこの炎症反応が発生され、皮膚炎症が出る場合もある。本発明は皮膚炎症の治療及び診断の方法を提供する。皮膚炎症(上記細胞の浸潤及びこれらの細胞から分泌されるサイトカインによる結果)は、例えば、瘢痕性類天疱瘡、強皮症、化膿性汗腺炎、中毒性表皮壊死症、にきび、骨炎、移植片対宿主病(GVHD)、壊疽性膿皮症(pyroderma gangrenosum)、ベーチェット病(Behcet's Syndrome)などの幾つかの炎症病症を含む(例えば、WilliamsとGriffiths,(2002) Clin. Exp. Dermatol.,27:585‐590を参照する)。最もよく見られる皮膚炎症は乾癬である。
【0121】
乾癬はT細胞により誘発される角質による細胞の急速増殖及び炎症細胞浸潤を特徴とする。当該疾患は、慢性斑病変、発疹及び膿疱病変など、明確に重なる幾つかの臨床表現型を含む(例えば、Gudjonssonなど、(2004)Clin Exp. Immunol. 135:1‐8を参照する)。乾癬患者の約10%は関節炎が発生される。当該疾患は複雑で強い遺伝的要素を有し、一卵性双生児において60%の一致性を持つ。
【0122】
代表的な乾癬病変は、厚いグレーの鱗屑に覆われる、明確な境界を持つ赤斑である。正常の皮膚と比較すれば、乾癬組織の炎症と急速増殖が異なる組織学、抗原、サイトカインの概況と関わる。乾癬に関連するサイトカインは、TNF‐α、IL‐19、IL‐18、IL‐15、IL‐12、IL‐7、IFN‐γ、IL‐17A、IL‐23である(Gudjonssonなど、同上を参照する)。
【0123】
単独で又はその他の作用剤との組合せで使用される本発明の抗IL‐17A抗体は、乾癬突発の予防、治療、診断及び予測にも適用できる。
【0124】
本発明のIL‐17A抗体の医薬組成物又は無菌組成物を製造するために、抗体と薬学的に許容されるベクター又は賦形剤とを混合する。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences and U. S. Pharmacopeia:National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, PA(1984)を参照する。
【0125】
許容されるベクター、賦形剤又は安定剤と混合することで、例えば、凍結乾燥粉末、ペースト、水溶液又は懸濁液などの剤形の治療剤及び診断剤を製造する。一実施形態において、本発明のIL‐17A抗体を酢酸ナトリウム溶液(pH 5‐6)で適切な濃度まで希釈させて、浸透圧が利用できるようにNaCl又はショ糖を入れる。安定性を向上させるように、その他の物質(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)を入れてもよい。
【0126】
投与態様は、治療用抗体の血清又は組織回転率、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性及び生物学的マトリックスにおける標的細胞のアクセス可能性を含む幾つかの因素によるものである。好ましい投与態様では、十分な治療用抗体を送達することで、不良な副作用を最低にしながらターゲット疾患の状態を改善する。したがって、送達する生物学的薬剤(biologic)の量は、部分的には具体的な治療用抗体と治療対象の病状の重症度により決まる。適切な用量の治療性抗体の選択に関するガイドラインを得ることができる。例えば、臨床医は、治療に影響を与える、本分野における既知又は推定のパラメータ又は要素を利用して、適切な用量を決める。要するに、最適用量より僅か少ない用量から、任意のマイナス副作用に対して必要とされる効果又は最適効果を得るまで、用量を少ない増加量で増加させる。重要な診断方法は、例えば、炎症症状又は産生される炎症サイトカインレベルの診断方法を含む。試薬に対する炎症、自己免疫又は増殖応答を最低まで低下させるように、使用可能な好適な生物学的薬剤が標的治療の動物と同じ種から由来する。例えば、ヒト受検者の場合、キメラ、ヒト化及び完全ヒト抗体が好ましい。
【0127】
本発明は説明される特定の実施形態の全ての組合せを含む。本発明の更なる実施形態及び適用可能な完全範囲は、下記に提供される具体的な説明により明らかになる。しかしながら、本発明の好適な実施形態を具体的に説明及び特定の実施例で指示したが、本発明の趣旨及び範囲内にある各変更及び補正がこれらの具体的な説明により当業者にとって明らかになるため、説明の形だけでこれらの説明及び実施例を提供する。全ての目的から、前言を含む本明細書で引用される全ての開示物、特許及び出願は引用の形で本明細書に添加される。
【実施例
【0128】
<実施例1. 組換えタンパク質ヒトIL‐17A‐mFc>
Sino Biological Inc.から全長ヒトIL‐17AをコードするcDNA配列(NCBI登録番号:NP_002181.1)のプラスミドHG12047‐Gを購入して、通常のPCR技術によりヒトIL‐17A成熟フラグメント(NCBI登録番号NP_002181.1の24‐155番目アミノ酸、アミノ酸配列がSEQ ID NO:66であり、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:67である)を増幅させた。増幅されたフラグメントをBSPQIによりダイジェストしてから、自己構築された真核発現プラスミド系(MXT1‐Fc、マウスIgG重鎖を含むFc領域)にクローニングすることで、組換え融合タンパク質発現プラスミドIL‐17A‐mFcを産生した。正確と評定されたプラスミドを通常技術により発現細胞293Fにトランスフェクションして、ヒトIL‐17A‐mFc組換えタンパク質を発現及び精製して得た。図1はヒトIL‐17A‐mFc組換えタンパク質のSDS‐PAGE電気泳動図を示す。
【0129】
<実施例2. ヒトIL‐17RAを発現する293F安定発現細胞株の構築>
Sino Biological Inc.からヒト全長IL‐17RAをコードするcDNA配列を含有するプラスミドHG10895‐Gを購入して、通常のPCRにより全長ヒトIL‐17RAをコードするDNA配列(SEQ ID NO:No:69)を増幅させた。増幅されたフラグメントを通常のクローン技術により自己構築された真核発現プラスミド系(HXP)にクローニングするが、その中にピューロマイシン選定系が含まれる。構築されたIL‐17RA組換え発現プラスミドを293F(ATCC)細胞にトランスフェクションした。24hトランスフェクションした後、293FIL‐17RA安定発現細胞株バンクが形成されるまで、ピューロマイシン(2μg/ml)により選定した。例えば、限界希釈法などの通常方法によりモノクローナルを分離し、96ウェルプレートに0.8個の細胞/ウェルでプレーティングして、15日間後、IL‐17RA‐293Fモノクローナルを選別して継代を行い、293FIL‐17RA安定発現細胞株を形成した。FACSなどにより全てのクローナルを分析選定し、トップ級の発現クローナルを選択して、ハイブリドーマモノクローナル抗体を選定するようにFACS結合検定に、又は機能性検定に利用する。
【0130】
<実施例3. 組換えタンパク質IL‐17A‐mFcと293FIL‐17RA安定発現細胞株との結合>
FACS実験により組換えタンパク質IL‐17A‐mFcと293F細胞におけるIL‐17RAとの結合特異性を検出した。簡単に言えば、細胞(293FIL‐17RA安定発現細胞株)を1×106/mlの細胞懸濁液に製造し、96ウェルプレートに20μl/ウェル(実際に2×104個の細胞/ウェル)で入れ、組換えタンパク質IL‐17A‐mFc(3μg/ml、20μl/ウェル;実験群)又は1%BSA(20μl/ウェル;陰性対照群)と細胞懸濁液を混合して、37℃で30分間インキュベートし、FACS緩衝液で3回溶出してから、抗マウスIgG(1:200)を入れて、室温で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で3回溶出してから、フローサイトメトリーにより検出して、各群の平均蛍光強度値(MFI)を比較した。図2に示されるように、組換えタンパク質IL‐17A‐mFcは293F細胞におけるIL‐17RAと特異的に結合することができる。
【0131】
<実施例4. ハイブリドーマ抗体の製造及び選定>
標準分子生物学技術を利用してハイブリドーマ抗体を産生した。簡単に言えば、HumanZymeから購入した天然ヒトIL‐17Aタンパク質を抗原として等量の免疫アジュバントと混合して、6週齢雌FVBマウスを5匹取り、免疫を行った。最初に免疫を行った後、1週間おきにブースト免疫を1回行い、免疫を合計7回行った。最後にブースト免疫を1回行った後、血清における抗IL‐17A抗体滴定濃度の高いマウスを選択して、細胞融合実験を実施した。標準ハイブリドーマ技術を利用して、膵臓細胞の分離及びマウス骨髄腫細胞系SP2/0細胞(ATCC)との融合を行った。融合細胞をHATが含まれるRPMI‐1640完全合成培地に再懸濁させ、腹膜細胞フィーダーレイヤーを有するウェルにプレーティングした。
【0132】
最初に希望される抗体/抗原結合の特徴(例えば、IL‐17Aに対する結合親和力、IL‐17Aとその受容体との結合を遮断する能力、種交差反応、及びインビトロ測定においてIL‐17Aにより誘発される生物学的効果を遮断する能力)に基づき、モノクローナルハイブリドーマから分泌された上澄みを評定したが、ハイブリドーマ1F8、2B2、2F5、2F2、2H1及び2H5から分泌された上澄み抗体を更なる特徴付けに利用した。
【0133】
<実施例5. ハイブリドーマ抗体の、インビボにおけるIL‐17A生理活性に対する遮断作用>
大量の研究によれば、インビボにおいてIL‐17AがサイトカインCXCL1発現及び放出を促進するため、ELISAによりマウス血清におけるCXCL1発現の変化を定量的に検出して、IL‐17Aにより誘発される、マウスインビボにおける生理活性に対するハイブリドーマ抗体の影響を判断することができる。簡単に言えば、10週齢雌Balb/cマウスを40匹選択し、5匹/群で8群分けた。投与4日前に、血清を集め、CXCL1発現量を検出して基準値とした。投与当日に、候補ハイブリドーマ抗体、生理食塩水(cntrol)又は参照抗体mAb317(商業抗IL‐17A抗体、R&Dから購入)薬物を心筋内注射により1mg/kg用量で投与した。投与1時間後、天然型のヒトIL‐17A(HumanZyme)を皮下注射により150μg/kg投与量で投与した。ヒトIL‐17Aの注射2時間後、血清を集め、血液におけるCXCL1濃度を検出し、基準値と比較してから、各群の投与前後のCXCL1濃度変化倍数(平均値±標準誤差(mean ±SEM))を算出した。各抗体群と対照群の比較分析はStudent's‐t testにより行い、P<0.05で有意差と見なされ、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
【0134】
図3に示されるように、実施例4により得られたハイブリドーマ抗体と商業抗体mAb317が共に、IL‐17Aにより誘導される、マウスインビボにおけるCXCL1発現を明らかに抑制できる。
【0135】
<実施例6. 候補抗体可変領域配列の取得>
縮重プライマーPCRに基づく方法により、ハイブリドーマ1F8、2B2及び2F5で発現された抗体可変領域のDNA配列を測定した。簡単に言えば、ハイブリドーマ細胞株1F8、2B2及び2F5をそれぞれ拡大培養して、細胞を1000rpmで遠心分離して集め、Trizolにより総RNAを抽出した。これをテンプレートとして、第1の鎖cDNAを合成した後、第1の鎖cDNAを後続のテンプレートとしてPCRにより対応する可変領域配列を増幅し、使用されるPCRプライマーはIg-プライマー群に基づくものである。PCR産物を回収精製し、シークエンシング分析を行ってから、候補ハイブリドーマ抗体重鎖及び軽鎖可変領域配列を得た。ハイブリドーマ細胞1F8は2種類の抗体軽鎖可変領域遺伝子配列及び1種類の抗体重鎖可変領域遺伝子配列を有し、2F5は2種類の抗体重鎖可変領域遺伝子配列及び1種類の抗体軽鎖可変領域遺伝子配列を有する。そのため、1F8、2F5により分泌される抗体は2種類の混合完全抗体を含有するが、1F8により分泌される抗体を1F8‐1及び1F8‐2と、2F5により分泌される抗体を2F5‐1及び2F5‐2と呼ぶ。
【0136】
1F8、2F5、2B2で発現された抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列が表1(明細書の具体的な説明)に示される。
【0137】
<実施例7. キメラ抗体組換え発現ベクターの構築>
ヒト血細胞(北京血液研究所)からヒトIgG4重鎖定常領域Fcフラグメント及び軽鎖κ定常領域をクローニングして、pCDNA3.1プラスミドに連結して改変を行った。上記重鎖及び軽鎖可変領域配列フラグメントがGenscript社により合成されるが、重鎖をBspq Iによりダイジェストし、軽鎖をBspq Iによりダイジェストした後、対応の改変されたpCDNA3.1プラスミドに連結し、シークエンシングによりIgG4キメラ型の重鎖(ch‐HC)又は軽鎖(ch‐LC)の発現プラスミドを決める。上記異なるキメラ型重鎖及び軽鎖の発現プラスミドを混合・ペアリングし、発現細胞にトランスフェクションして、番号ch1からch16まで(表6を参照)16種類のキメラ抗体を得た。後続の実験材料の全てはこのプラスミドを発現細胞にトランスフェクションしてから抽出して得た。
【0138】
【表6】
【0139】
<実施例8. キメラ抗体とヒトIL‐17Aとの結合特異性>
通常のELISA検出方法によりキメラ抗体とヒトIL‐17Aとの結合特異性を検出した。即ち、0.5μg/mlのヒトIL‐17A‐mFcを96ウェルELISAプレートにコーティングして、37℃の恒温で60‐90分間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を捨てて、洗浄緩衝液で3回洗浄し、2% BSAを含有するPBS溶液を加えて60分間ブロックした。洗浄緩衝液で3回洗浄してから、異なる濃度のキメラ抗体希釈液を入れ、37℃で60分間インキュベートした。次に、洗浄緩衝液で3回洗浄してから、1:10000倍で希釈させたビオチン‐抗IgG4を入れ、37℃で1時間インキュベートした。次に、洗浄緩衝液で3回洗浄してから、洗浄緩衝液により1:10000倍で希釈させたHRP‐Strepを入れ、室温で1時間インキュベートした。次に、洗浄緩衝液で3回洗浄してから、100μl TMB基質溶液を入れて顕色させ、室温で30分間反応させた。次に、100μl 2Mの塩酸溶液で反応を終了して450nmにおいて吸光度を読取った。
【0140】
図4に示されるように、キメラ抗体ch1、ch2、ch4、ch7及びch16とヒトIL‐17Aとの結合が高い特異性を有し、EC50がそれぞれ6.62ng/mL、5.17ng/mL、88.48ng/ml、39.96ng/mL、15.42ng/mLである。
【0141】
<実施例9. ヒトIL‐17AとIL‐17RAとの結合のキメラ抗体による遮断効果>
細胞に基づく競争力を持つフローサイトメトリー(FACS)により、IL‐17Aと細胞におけるIL‐17RAとの結合のキメラ抗体による遮断効果を測定・検出した。簡単に言えば、異なる濃度のキメラ抗体希釈液(10μg/mlから開始、3倍で滴定)と事前にビオチン標識を実施した実施例1で得たヒトIL‐17A‐mFC(3μg/ml)とを混合して、室温で30分間インキュベートした。その後、混合物と細胞懸濁液(実施例2で得た293FIL‐17RA安定発現細胞株、1.5×105細胞/ウェル)を37℃で15分間インキュベートした。次に、PBSで3回溶出してから、5μg/mlの抗マウスIgGを入れ、室温で30分間インキュベートした。PBSで3回溶出してから、フローサイトメトリーによりIL‐17Aと293F細胞表面におけるIL‐17RAとの結合のキメラ抗体による抑制効果を検出した。
【0142】
図5に示されるように、キメラ抗体ch1、ch2、ch7及びch16がヒトIL‐17と293F細胞表面におけるIL‐17RAとの結合の抑制効果を示した。実験結果によれば、ch1及びch16を選択してヒト化改変を行い続けた。
【0143】
<実施例10. 抗体のヒト化改変>
抗体のヒト化について、まず、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)サイトのヒト免疫グロブリン遺伝子データベースから、マウス抗体可変領域のcDNA配列と高い相同性を有するヒト生殖細胞系IgG遺伝子を検索した。更にKabat番号系又はIMGT番号系により可変領域CDRのアミノ酸配列及びその精確な境界を定義した。原則的にマウス抗体可変領域と高い相同性を有するヒトIGVH及びIGVkをヒト化テンプレートとして選択して、CDRグラフティングによりヒト化を実施した。簡単に言えば、ヒト化改変の過程には、以下のステップを含む。A.各候補抗体の遺伝子配列とヒト胚性抗体の遺伝子配列とを比較し、相同性の高い配列を探す。B.HLA-DR親和性を分析して調べて、親和力の低いヒト胚性フレームワーク配列を選択する。C.コンピュータシミュレーション技術を利用して、分子ドッキングにより可変領域及びその周辺のフレームワークアミノ酸配列を分析し、その空間的な結合方式を調べる。静電力、ファンデルワールス力、親疎水性やエントロピー値を計算することで、各候補抗体の遺伝子配列のうち、IL‐17Aと作用して空間フレームワークをメンテナンスする重要な単一のアミノ酸を分析し、それを、選択されたヒト胚性遺伝子フレームワークにグラフトし、これに基づいて、保留しなければならないフレームワーク領域のアミノ酸の部位をマークし、ヒト化抗体を合成した。
【0144】
マウス抗体可変領域CDR定義案及びそのアミノ酸配列は本開示内容の具体的な説明部分の表3を参照する。
【0145】
前述実験により選定した結果によれば、キメラ抗体ch1及びch16を選択してヒト化改変を行い続けた。一連の抗体/抗原結合の特徴(例えば、IL‐17Aに対する結合親和力、IL‐17Aとその受容体との結合を遮断する能力)を仮選定してから、ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60及びhu250を選択して後続の検証を行い続けた。
【0146】
ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60及びhu250可変領域及びそのCDRアミノ酸配列は本開示内容の具体的な説明部分の表4を参照する。
【0147】
<実施例11. ヒト化抗体とヒトIL‐17Aとの結合特異性>
通常のELISA検出方法によりヒト化抗体とヒトIL‐17Aとの結合特異性を検出したが、実験方法とステップは実施例8を参照する。図6に示されるように、ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60及びhu250がIL‐17Aと特異的に結合した。EC50がそれぞれ8.13ng/mL、8.64ng/mL、6.76ng/ml、6.10ng/mL、5.78ng/mL及び6.35ng/mLである。
【0148】
<実施例12. ヒトIL‐17AとIL‐17RAとの結合のヒト化抗体による遮断効果>
細胞に基づく競争力を持つフローサイトメトリー(FACS)により、IL‐17Aと細胞におけるIL‐17RAとの結合のキメラ抗体による遮断効果を測定・検出したが、実験方法とステップは実施例9を参照する。図7に示されるように、ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu59、hu60及びhu250がIL‐17Aと細胞におけるIL‐17RAとの特異的な結合を明らかに抑制した。IC50がそれぞれ867.6ng/mL、780.8ng/mL、828.5ng/ml、467.4ng/mL、482.8ng/mL及び577.8ng/mLである。
【0149】
<実施例13. IL‐17Aにより誘導される上皮細胞のCXCL1発現のヒト化抗体による拮抗>
IL‐17Aが複数種類の上皮細胞及びその他の細胞から分泌されるサイトカインCXCL1発現及び放出を刺激し、ELISAにより細胞上澄みにおけるCXCL1発現量の変化を定量的に検出して、IL‐17Aに誘発される、細胞における生理活性に対するヒト化抗体の影響を判断することができる。
【0150】
標準技術を利用して組織培養物により処理されたフラスコにある培養/測定培地においてHT‐29細胞(ヒト結腸直腸腺癌の上皮細胞、ATCC)を維持した。HT‐29が測定当日に50‐80%合流となるように、組織培養フラスコで成長する。測定当日にPBSで細胞を洗浄し、トリプシン+EDTAで培養フラスコから細胞を分離して、細胞懸濁液を製造した。ヒト化抗体hu31、hu59、hu60、hu250又は参照抗体(Secukinumab,Novartis)希釈液(開始濃度55μg/ml、3倍濃度勾配で希釈)を取り、ヒトIL‐17A(1μg/ml)と混合し、96ウェルプレートにプレーティングして、1hインキュベートした。各ウェルに100μl(2×104個)HT‐29細胞(ATCC、ヒト結腸直腸腺癌の上皮細胞)懸濁液を入れ、37℃、7% CO2で48h培養した。500×g、5min遠心分離し、培養上澄みを新しい96ウェルプレートに移動して、ELISA試薬キットによりCXCL1の発現を検出した。
【0151】
図8に示されるように、参照抗体Secukinumabと比較すれば、ヒト化抗体hu31、hu59、hu60及びhu250が上皮細胞のCXCL1放出のIL‐17Aによる刺激に対してより強い拮抗作用を有する。
【0152】
<実施例14.IL-17Aにより誘導されるマウスのCXCL1発現のヒト化抗体による拮抗>
実施例5と同様に、マウス血清CXCL1レベルの変化を検出することで、IL‐17Aにより誘発される、インビボにおける生理活性のヒト化抗体による影響を判断した。簡単に言えば、10週齢雌Balb/cマウスを40匹選択し、5匹/群で8群分けた。投与4日前に、血清を集め、CXCL1発現量を検出して基準値とした。投与当日に、候補抗体(ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu60及びhu250)及び対照群IgG4アイソタイプ(hlgG)をそれぞれ心筋内注射により1mg/kgで投与した。投与1時間後、ヒトIL‐17Aを皮下注射により150μg/kg投与量で投与した。ヒトIL‐17Aの注射2時間後、血清を集め、血液におけるCXCL1濃度を検出し、基準値と比較してから、各群の投与前後のCXCL1濃度変化倍数(平均値±標準誤差(mean ± SEM))を算出した。候補抗体と対照群IgG4アイソタイプの比較分析はStudent's‐t testにより行い、P<0.05で有意差と見なされ、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
【0153】
図9に示されるように、対照群IgG4アイソタイプと比較すれば、候補ヒト化抗体hu31、hu43、hu44、hu60及びhu250がマウスインビボにおけるCXCL1放出のIL‐17Aによる刺激に対してより強い拮抗作用を有する。
【0154】
<実施例15. イミキモドにより誘導されるマウス乾癬モデルにおけるヒト化抗体による改善の治療効果研究>
マウス耳介後ろ皮膚にイミキモドを塗り、乾癬の病理学的特徴を誘導し、即ち、ケラチン生成細胞の過形成、炎症細胞の凝集、真皮乳頭層血管の過形成などを発生させて、乾癬マウスモデルを構築した。臨床評価点数、耳の腫れ具合などを指標として乾癬マウスに対する薬物の治療効果を判断した。
【0155】
15.1 実験方法
6‐8週齢C57BL/6雌マウス(南京大学模式動物研究所から購入、動物合格証明書番号201605578)を48匹取り、背部を脱毛し、偽手術群を除いて、2日後感作した。感作2日前に、ランダムで5群分けた(1群あたり8匹)。I群が偽手術群で、II群がPBS群で、III群がKLH対照群(同型IgG)で、KLHを投与し、IV群がhu31群で、V群がhu43投与群で、VI群がhu44投与群である。各群の投与量が50mg/kgである。上記各群は、群分け0日目及び3日目で腹腔内注射により薬物を1回投与した。感作当日(day 1)に、II‐VI群マウスの右耳及び背部の皮膚に約62.5mgのイミキモドクリーム(アルダーラ、5%、3M Health Care Limited)を塗り、連続4日間塗った。
【0156】
15.2 評価方法
感作当日から毎日にスパイラルマイクロメータによりマウス右耳の厚みを測定し、day 1右耳の厚みを対照として、マウス耳の腫れ厚み数値を算出した。そして、毎日にマウスの体重を量り、スキンスケール、硬結、赤斑具合を観察して、点数で評価した。0点、発病しない;1点、軽度;2点、中度;3点、重度;4点、非常に重度という4ランク点数評価法を採用する。平均値±標準誤差(mean±SEM)で結果を示す。まず、一元配置分散分析(ANOVA)を利用するが、差異が現れた後に、両群間の比較はStudent's‐t testにより行い、P<0.05で有意差と見なされる。
【0157】
図10‐1に示されるように、本発明のヒト化抗体を投与することで、イミキモドにより誘導されるマウス乾癬モデルのスキンスケール、硬結、赤み、腫れなどの症状を明らかに抑制でき、即ち、点数評価値が小さい。
【0158】
図10‐2に示されるように、感作当日からマウス右耳にイミキモドクリームを塗り、その右耳に重度の腫れが現れ、耳の厚みが増加するが、本発明のヒト化抗体は耳の腫れ具合を明らかに改善できる。
【0159】
イミキモドにより誘導されるマウス乾癬モデルにおいて、本発明のヒト化抗体は、マウスの発病を明らかに抑制できるが、表現型がマウス臨床評価点数及び耳の腫れ具合の低下である。
【0160】
<実施例16. II型コラーゲンにより誘導される雌カニクイザル関節炎のヒト化抗体による改善の治療効果研究>
II型コラーゲンにより誘導される関節炎は関節リウマチ(RA)研究において広く使われる動物モデルであり、ヒトRAと同じ組織病理学的特徴を有し、小関節の炎症と軟骨及び骨の進行型侵食を特徴とする。ヒト/ヒト化の生体高分子が抗体を含み、常にカニクイザルインビボにおける抗原と更に優れた交差反応を有するため、カニクイザル関節炎モデルは、本発明にかかるヒト化抗体IL‐17Aの抗リウマチ効果を検出するための1種類の有効系である。本実験はカニクイザル関節リウマチモデルにおいて候補抗体の薬物効果を評価するものである。
【0161】
16.1 実験方法
II型ウシコラーゲン(CII、四川大学)を酢酸(ロット番号10000218;国薬;上海;中国)に溶解させ、4℃冷蔵庫に入れ、一晩攪拌した。その後、等体積の完全型フロイントアジュバント(ロット番号:F5881、Sigma‐Aldrich、アメリカ)によりコラーゲンを乳化するが、コラーゲン乳剤の最終濃度が2mg/mlである。0日目に、ZOLETIL(1.5‐5mg/kg、i.m)により動物を麻酔し、背部及び尾の付け根部にコラーゲン乳剤を複数の部位で接種し、免疫を実施する際に、必要に応じて、1.5%‐5%のイソフルランで麻酔を維持する。3週間後(21日目)にコラーゲンを1回目と同じ方法でもう1回注射した。本実験は4群分けた。G1が正常動物群で、関節炎の誘導を行わず、G2が溶媒対照群で、G3が抗体hu31投与群で、G4が抗体hu59投与群である。臨床評価点数が臨床評価点数最大値の5%(192×5%≒10)になる動物が現れた場合、先に指定点数になるものから各実験群に分配し、条件を満たした全ての動物を順番に各群に分配するまでこのように繰返した。群に分配してから投与を開始し、1回当たり7.5mg/kgで週に1回投与するが、輸液ポンプ(infusion bump)により30分間輸液し続けて、5週間続けた。
【0162】
16.2 評価方法
体重測定:免疫実施1日前に、動物の体重を測定するが、その後、実験が終了するまで体重を週に1回測定した。
関節炎評価点数:0日目及び21日目にサル四肢の関節炎の炎症程度について点数で評価し、21日後に実験が終了するまで週に1回点数で評価した(早期発病した場合、関節炎を週に1回点数で評価する時期をそれに応じて前倒し)。点数で評価する標準は表2に示される。各手足の下記15個関節について点数で評価した。5個中手指節関節(MCP)と、4個近位指節間関節(PIP)と、5個遠位指節間関節(DIP)と、1個手首関節又は足首関節である。そして、四肢の膝/肘関節の発病程度を評価した。各関節の合計評価点数はこの動物の関節炎評価点数であり、最大点数が192(16×3×4)である。関節炎の評価点数標準:0点、正常;1点、軽度関節炎、軽度の発病であるが、明らかに識別できる;2点、中度腫れ;3点、重度関節炎、重度腫れ又は明らかな関節変形がある。
【0163】
実験データは平均値±標準誤差(mean ± S.E.M)で表す。溶媒対照群、参照薬物群、測定薬物群の各パラメータの差について統計的分析を行い、p<0.05で統計学的に有意差があると見なされる(One‐way ANOVA/Dunnett)。
【0164】
図11‐1に示されるように、正常カニクイザル(G1)の体重が安定的であり、関節炎誘導後カニクイザルについて、溶媒処理群(G2)のカニクイザルの平均体重が減少し続けるが、それに対して、受検抗体hu31及びhu59によりこの減少傾向が抑えられた。そのため、本実験条件において、hu31及びhu59が関節炎による体重減少に対してある程度で改善効果を有する(**P<0.01、****P<0.0001、「G2:溶媒群」と比較;One‐way ANOVA/Dunnett)。
【0165】
図11‐2に示されるように、動物を群に入れた後、正常対照の動物関節炎臨床評価点数が0で保持され、モデル‐溶媒群(G2)の動物関節炎評価点数が漸進的に増加し、受検抗体hu31及びhu59により動物関節炎臨床評価点数の増加傾向が明らかに抑制された。そのため、受検抗体hu31及びhu59が関節炎病状の漸進的な発展の抑制効果を有し、受検抗体hu31によりカニクイザル関節炎臨床評価点数の増加傾向が明らかに抑制された(***P<0.001、#P<0.05、G2:溶媒群と比較;One‐way ANOVA/Dunnett)。
【0166】
<実施例17. NIH3T3‐IL‐17細胞により誘導されるマウス関節腫れに対するヒト化抗体の効果>
1. 動物:C57BL/6、雌、6‐8週齢、北京維通利華実験動物技術有限公司。
2. 細胞:NIH3T3細胞、ヒトIL‐17を発現するNIH3T3細胞。
3. 群分け及び投与案:
NIH3T3群;
NIH3T3‐IL‐17 + 対照IgG抗体群(30mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17 + 受検抗体高用量投与群(抗体hu31、3mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17 + 受検抗体中用量投与群(抗体hu31、10mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17 + 受検抗体低用量投与群(抗体hu31、30mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17 + 陽性薬投与群(cosentyx、10mg/kg)。
【0167】
4. モデリング及び投与:
NIH3T3‐IL‐17細胞及びNIH3T3対照細胞(2.5×105個/匹、1匹あたりの注射体積25μL)を各群マウスの右足首関節の関節腔にそれぞれ注射した。
モデル選定1日前に腹腔内注射により抗体hu31(3、10、30mg/kg)及びcosentyx(10mg/kg)を与えて、投与に関与するが、3日間1回でマウス関節炎モデルに対する抗体hu31注射液の影響を考察した。
5. 検出:
ノギスによりマウス足首関節厚みを測定し、腫れ具合を算出した。
【0168】
6. 実験結果:
図12に示されるように、マウス足首関節腔にhIL‐17を安定発現するNIH3T3細胞を注射し、翌日にマウス足首関節の重度腫れを観察できた。
【0169】
マウス足首関節の厚みから腫れ抑制率を算出するが、計算式は、抑制率(%)=(NIH3T3‐IL‐17群足首関節厚み-投与群足首関節厚み)/(NIH3‐IL‐17群足首関節厚み-NIH3T3群足首関節厚み)×100、である。結果によれば、投与翌日から試験が終了するまで、マウス足首関節腫れに対する各用量薬物群の抑制効果を観察できたが、投与後6日目に抑制効率が最大となった。10日目に、抗体hu31(3、10、30mg/kg)各群の抑制率がそれぞれ49.4%、65.9%、74.1%である。cosentyx(10mg/kg)腫れの抑制率が67.1%である。各群の異なる日数の平均抑制率を算出した結果によれば、3、10、30mg/kg各群の平均抑制率がそれぞれ45.2%、57.0%、73.9%である。cosentyx(10mg/kg)腫れの抑制率が60.4%である。実験結果によれば、抗体hu31がIL‐17により誘導されるマウス関節足首腫れを用量に依存して抑制できるが、10mg/kgの効果が陽性対照薬物cosentyx(10mg/kg)に相当する。30mg/kgの効果が陽性対照薬物cosentyx(10mg/kg)より優れる。
【0170】
<実施例18. NIH3T3‐IL‐17細胞により誘導されるマウス空気嚢型炎症に対するヒト化抗体の効果>
1. 動物:C57BL/6、雄、6‐8週齢、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入。
2. 細胞:NIH3T3細胞、ヒトIL‐17を発現するNIH3T3細胞。
3. 試薬:Gr1‐FITC抗体、Biolegend社
4. 群分け及び投与案:
NIH3T3細胞群
NIH3T3‐IL‐17細胞群 + 対照IgG抗体群(30mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17細胞群 + 受検抗体高用量投与群(抗体hu31、30mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17細胞群 + 受検抗体中用量投与群(抗体hu31、10mg/kg);
NIH3T3‐IL‐17細胞群 + 受検抗体低用量投与群(抗体hu31、3mg/kg);
投与ルート:腹腔内注射。
【0171】
5. モデリング:
空気嚢:それぞれ0日目及び3日目にマウス背部に2.5ml空気を注射した。5日目から細胞を空気嚢に注入した。マウス1匹あたり注射された細胞数が2×105個/500μl PBSである。1群あたりマウス8匹。
【0172】
6. 検出:
白血球の空気嚢への移動から洗浄液の総細胞数を算出し、フローサイトメトリーによりGr1+細胞の比率を測定し、好中球数を算出した。
好中球数=総細胞数×Gr1+細胞の比率
【0173】
7. 実験結果
図13に示されるように、マウス背部の空気嚢にhIL‐17Aを安定発現するNIH‐3T3細胞を注射し、浸潤された総細胞数から見ると、NIH3T3細胞群と比較すれば、NIH3T3‐IL‐17細胞群の空気嚢における浸潤された白血球数が明らかに増加し、Grl+細胞の比率及び数も増加するが、モデル選定が成功した。モデリング当日に腹腔内注射により抗体hu31(用量がそれぞれ3、l0、30mg/kg)を与えて、投与に関与する。浸潤された総細胞数及びGrl+細胞数から抑制率を算出するが、計算式は、抑制率(%)=(NIH3T3‐IL‐17‐IgG群細胞数-投与群細胞数)/(NIH3T3‐IL‐17‐IgG群細胞数-NIH3T3細胞数)×100、である。結果によれば、抗体hu31(3、10、30mg/kg)各群の浸潤細胞総数の抑制率がそれぞれ50.0%、56.7%、78.3%である。Grl+細胞数の抑制率を算出した結果によれば、抗体hu31(3、10、30mg/kg)各群の平均Grl+細胞の抑制率がそれぞれ59.1%、54.5%、81.8%であり、抗体hu31がIL‐17により誘導されるマウス総細胞及び炎症細胞の浸潤を用量に依存して抑制できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】