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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】炎症性疾患のナノ粒子ベース療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20220131BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/175 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 47/52 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61K47/69
A61P37/02
A61P29/00
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P21/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P13/12
A61P1/04
A61P9/14
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/17
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K38/13
A61K31/175
A61K31/225
A61K31/519
A61K47/54
A61K47/52
A61K47/64
A61K47/60
A61K9/06
A61K47/32
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534232
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 EP2019085206
(87)【国際公開番号】W WO2020120787
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】1820471.9
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521257857
【氏名又は名称】ミダテク リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マカティア,マルティーナ
(72)【発明者】
【氏名】コールター,トム
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボイマン,オヌル
(72)【発明者】
【氏名】コリオス,アントニオス ジー.エー.
(72)【発明者】
【氏名】オズカン,アラズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA30
4C076AA95
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC41
4C076DD21
4C076DD50
4C076DD50Z
4C076EE09
4C076EE09A
4C076EE09P
4C076EE10
4C076EE10A
4C076EE10P
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE45
4C076EE45A
4C076EE45P
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA18
4C084DA53
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA441
4C084ZA442
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA43
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA44
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB29
4C206DB43
4C206HA26
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA05
4C206ZA44
4C206ZA68
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、金属および/または半導体を含むコア、およびコアに共有結合した複数のリガンドを含むナノ粒子を提供し、前記リガンドは、(i)炭水化物、グルタチオンまたはポリエチレングリコール部分を含む少なくとも1種の希釈リガンド、および(ii)式MTX-L-のリガンドであって、MTX-L-が、リンカーLを介して前記コアに結合されるメトトレキサートである、リガンド、を含む。ゲル製剤を含むナノ粒子の医薬組成物、および乾癬などの、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療を含む、ナノ粒子および医薬組成物の医用使用も提供される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属および/または半導体を含むコア、および
コアに共有結合した複数のリガンド、
を含むナノ粒子であって、
前記リガンドは、
(i)炭水化物、グルタチオンまたはエチレングリコール部分を含む少なくとも1種の希釈リガンド、および
(ii)式MTX-L-のリガンドであって、MTX-L-は、リンカーLを介して前記コアに結合されたメトトレキサートである、リガンド
を含む、ナノ粒子。
【請求項2】
Lが、前記メトトレキサートと前記コアとの間に2~100原子長の直鎖を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
Lが、基-(CH-および/または-(OCHCH-を含み、式中、nおよびmは、独立に1以上である、請求項1または請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
Lが、式:L-Z-L
であり、
式中、Lは、C2-C12グリコールおよび/またはC1-C12アルキル鎖を含む第1のリンカー部分を含み、Lは、C2-C12グリコールおよび/またはC1-C12アルキル鎖を含む第2のリンカー部分を含み、LおよびLは、同じであるまたは異なってよく、かつZは、LおよびLを連結する最大10個の原子の二価のリンカー基でありかつZは、少なくとも2個のヘテロ原子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
Zが、3~10員炭素芳香環、3~10員炭素環、3~10員複素環、3~10員ヘテロ芳香環、イミド、アミジン、グアニジン、1,2,3-トリアゾール、スルホキシド、スルホン、チオエステル、チオアミド、チオウレア、アミド、エステル、カルバメート、カーボネートエステルまたはウレアを含む、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
が、-(OCHCH-を含みかつLが、-(OCHCH-を含みかつpおよびqのそれぞれが、2~10の範囲の数であり、かつpおよびqが、同じであるまたは異なってよい、請求項4または請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
MTX-L-が、式:
【化1】

である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
MTX-L-が、式:
【化2】
である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
MTX-L-が、式:
【化3】
である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
MTX-L-が、式:
【化4】
である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
MTX-L-が、式:
【化5】
である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
Lが、末端硫黄原子を介して前記コアに結合される、請求項1~11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記希釈リガンドが、単糖または二糖である炭水化物を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記希釈リガンドが、ガラクトース、グルコース、マンノース、フコース、マルトース、ラクトース、ガラクトサミンおよび/またはN-アセチルグルコサミンを含む、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記希釈リガンドが、2’-チオエチル-α-D-ガラクトピラノシドまたは2’-チオエチル-β-D-グルコピラノシド含む、請求項13または請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記コアが、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Gd、Znまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される金属を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記コアが、金を含む、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記コアの直径が、1nm~5nmの範囲である、請求項1~17のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
そのリガンドを含む前記ナノ粒子の直径が、3nm~50nmの範囲である、請求項1~18のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項20】
コア当りのリガンドの総数が、20~200個の範囲である、請求項1~19のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項21】
コア当りの前記式MTX-L-のリガンドの数が、コア当たり3~100個の範囲でなどの、少なくとも3個である、請求項1~20のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項22】
コア当りの前記式MTX-L-のリガンドの数が、コア当たり5~10、10~15または15~20個の範囲でなどの、少なくとも3個である、請求項21のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項23】
次の構造:
【化6】

を有し、
コア当りのリガンドの総数が、少なくとも5個であり、かつコア当りのメトトレキサート含有リガンドの総数が、少なくとも3個である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項24】
次の構造:
【化7】


を有し、式中、nおよびmは独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、コア当りのリガンドの総数が、少なくとも5個であり、かつコア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数が、少なくとも3個である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項25】
次の構造:
【化8】


を有し、式中、nは、1~15の整数であり、コア当りのリガンドの総数が、少なくとも5個であり、かつコア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数が、少なくとも3個である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項26】
次の構造:
【化9】


を有し、式中、nは、1~15の整数であり、コア当りのリガンドの総数が、少なくとも5個であり、かつコア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数が、少なくとも3個である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載の複数のナノ粒子および少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬組成物が、ゲル、任意選択でヒドロゲルの形態である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ゲルが、カーボポール(登録商標)980、カーボポール(登録商標)974およびカーボポール(登録商標)ETD2020からなる群より選択される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記ゲル中でナノ粒子に結合した形態であるメトトレキサートの濃度が、0.5mg/mL~10mg/mLの範囲、任意選択で約2mg/mLである、請求項27~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記ナノ粒子コアが、金でありかつ前記ゲル中の金の濃度が、1mg/mL~20mg/mLの範囲、任意選択で約4mg/mLである、請求項27~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記組成物が、局所投与用である、請求項27~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物が、全身投与用である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項34】
医薬での使用のための請求項1~26のいずれか1項に記載のナノ粒子または請求項27~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
哺乳動物対象における炎症性疾患または自己免疫疾患の治療での使用のための請求項1~26のいずれか1項に記載のナノ粒子または請求項27~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、関節リウマチ、若年性皮膚筋炎、ループス、サルコイドーシス、クローン病、湿疹および血管炎からなる群から選択される、請求項35に記載の使用のためのナノ粒子または組成物。
【請求項37】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、皮膚障害である、請求項35に記載の使用のためのナノ粒子または組成物。
【請求項38】
前記障害が、乾癬である、請求項37に記載の使用のためのナノ粒子または組成物。
【請求項39】
前記ナノ粒子または前記組成物が、第2の抗炎症剤と同時に、順次にまたは別々に投与される、請求項35~38のいずれか1項に記載の使用のためのナノ粒子または組成物。
【請求項40】
前記第2の抗炎症剤が、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド、ジメチルフマレート、レチノイドまたは生物学的抗炎症剤を含む、請求項39に記載の使用のためのナノ粒子または組成物。
【請求項41】
前記生物学的抗炎症剤が、抗TNFα抗体、抗TNFαデコイ受容体、抗IL-17抗体または抗IL-23抗体を含む、請求項40に記載の使用のためのナノ粒子または組成物。
【請求項42】
治療を必要とする対象に請求項1~26のいずれか1項に記載のナノ粒子または請求項27~33のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物対象における炎症性疾患または自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項43】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、関節リウマチ、若年性皮膚筋炎、ループス、サルコイドーシス、クローン病、湿疹および血管炎からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、皮膚障害である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記障害が、乾癬である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ナノ粒子または前記組成物が、第2の抗炎症剤と同時に、順次にまたは別々に投与される、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の抗炎症剤が、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド、ジメチルフマレート、レチノイドまたは生物学的抗炎症剤を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記生物学的抗炎症剤が、抗TNFα抗体、抗TNFαデコイ受容体、抗IL-17抗体または抗IL-23抗体を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項36~42のいずれか1項に記載の方法での使用のための薬物の調製における請求項1~26のいずれか1項に記載のナノ粒子または請求項27~33のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項50】
請求項1~26のいずれか1項に記載のナノ粒子または請求項27~33のいずれか1項に記載の医薬組成物、
ナノ粒子または医薬組成物を入れるための容器、および
添付文書または標識、
を含む製品。
【請求項51】
前記添付文書および/または標識が、哺乳動物対象における炎症性疾患または自己免疫疾患の治療での前記ナノ粒子または医薬組成物の使用に関連する説明書、投与量および/または投与情報を提供する、請求項50に記載の製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月14日出願のGB1820471.9からの優先権を主張する。この出願の内容および要素は、本出願において参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、特に医薬としての使用のための、特定の組織型または部位への活性薬剤の送達のための担体としてのナノ粒子に関し、かつ癌を含む、炎症性、および/または自己免疫性疾患、特に乾癬などの皮膚障害の治療方法を含む。局所ゲル製剤を含む、医薬組成物、およびそれらの使用方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
本発明は、組成物および製剤、ならびに哺乳動物および特にヒトの治療のためを含む、このような組成物および製剤の製造方法ならびに投与方法に関する。
【0004】
乾癬は、世界中で1億人を越える人々(母数の約2%)に影響する慢性多因子性炎症性皮膚疾患である。疾患の正確な病因は未知であるが、それは通常、免疫系の刺激が表皮ケラチノサイトおよび皮膚性炎症の過剰増殖をもたらす、自己免疫疾患と考えられている。
【0005】
いくつかの形態の中で、尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)または局面型乾癬(plaque psoriasis)は、最もよくある乾癬で、80%の個体を冒し、赤色の盛り上がった皮膚(プラーク)および皮膚上の銀白色の鱗屑を特徴とする。疾患の重症度は、乾癬に冒された全身のパーセントに依存して、軽度(身体の3%未満)から、中等度(身体の3~10%)~重度(身体の10%を越える)で様々である。大多数(75~80%)の患者は、軽度~中程度の乾癬に罹患する。
【0006】
局所治療は通常、過剰細胞増殖を遅らせるまたは正常化する、炎症を減らすための乾癬に対する第1選択の治療である。ビタミンD類似体、副腎皮質ステロイド、レチノイド、またはUV光線療法を含む局所薬剤が、軽度乾癬に対して使用され、一方、中等度~重度乾癬の患者は、メトトレキサート、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド、ジメチルフマレートなどのフマレート、およびレチノイド、または生物学的製剤(例えば、抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ)、抗IL-17抗体(例えば、イキセキズマブ)、または抗IL-23抗体(例えば、グセルクマブ))を含む全身性薬剤で治療される。しかし、これらの治療選択は、多くの点で準最適である。全身性薬剤は、毒性などの重度副作用に関連付けられる場合があり、一方、長期UV光線療法は、発癌性に関連付けられる場合がある。大部分の患者、特に軽度~中等度の乾癬の患者にとって、局所療法は、好ましい最適治療である。しかし、現在の局所薬剤は、それらの使用に関連付けられる不十分な皮膚浸透および副作用(例えば、皮膚の菲薄化および皮膚刺激)のため準最適である。これらの課題を考慮すると、皮膚での高い薬物濃度を達成し、既存の治療薬選択に関連付けられる副作用を減らすまたは取り除く、乾癬のための、安全で効果的な局所療法の開発に関して、未充足の強い臨床的ニーズが存在する。
【0007】
葉酸類似体である、メトトレキサート(MTX)は、抗増殖剤および抗炎症剤である。これは、ジヒドロ葉酸還元酵素の作用を非可逆的に遮断することにより、DNA合成を阻害する。これは現在、経口経路または注射により乾癬用に投与される。しかし、医師によるその全身性使用は、骨髄毒性、白血球および血小板数の低減、肝損傷、下痢、胃刺激、および潰瘍性口内炎を含む重度副作用のため制限されている。MTXが表皮有糸分裂に対し抑制効果を有することを考えれば、局所投与は、乾癬に対する魅力的な治療選択であろう。しかし、乾癬用の局所MTX製剤を開発する試みは、適切な期間の間に皮膚中で充分に高い薬物濃度に到達できないことが主な理由で、それほど臨床的に成功していない。MTXの皮膚浸透は、極めて限定されている。MTXの皮膚浸透を改善するために、化学的促進剤;イオン導入法および脂質担体などの物理的方法を含む種々の手法が研究されてきた。しかし、これらの手法は、皮膚刺激問題、低薬物負荷、および限られた皮膚浸透のため、得られた成功は、限定されたものであった。
【0008】
国際公開第2014/028608号は、ナノスケールの送達装置および経皮浸透促進組成物を用いて皮膚障害を治療する方法について記載している。特に、MTX封入ゼイン殻-コアナノ粒子は、MTX溶液より高い皮膚浸透を示すと見出された。
【0009】
癌治療およびイメージングの分野では、MTX担持金ナノ粒子が報告されている。例えば、米国出願公開第2015/0231077号は、MTXを含むアミン含有分子で不動態化された金ナノ粒子について記載している。Chen et al.,Molecular Pharmaceutics,2007,Vol.4,No.5,pp.713-722は、MTXの13nmのコロイド状金ナノ粒子への吸着(スキーム1参照)およびその後のMTX-AuNPの種々の癌細胞に対する細胞傷害性効果の評価について記載している。Tran et al.,Biochemical Engineering Journal,2013,Vol.78,pp.175-180は、ワンポット合成によるメトトレキサート複合化金ナノ粒子の製造、およびその後の癌細胞に対するMTX-AuNPのインビトロ試験について記載している。
【0010】
Bessar et al.,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,2016,Vol.141,pp.141-147は、ナトリウム 3-メルカプト-1-プロパンスルホネートで官能化された水溶性金ナノ粒子(Au-3MPS)上へのMTXの非共有結合担持について記載しており、Au-3MPS@MTXが乾癬患者の局所療法として好適である可能性があることを提案している。Au-3MPSに対するMTXの担持効率は、70~80%の範囲であると評価され、急速に放出される(1時間以内に80%)。Au-3MPS@MTXは、吸収挙動を追跡するためにC57BL/6マウスの正常皮膚で局所的に使用された。Au-3MPS@MTXの皮膚浸透は、MTX単独と比較した場合より大きいことが明らかになった。乾癬皮膚の浸透は調査されず、乾癬治療薬としてのAu-3MPS@MTXの効力も評価されなかった。Fratoddi et al.,Nanomedicine:Nanotechnology,Biology and Medicine,2019,Vol.17,pp.276-286は、皮膚炎症マウスモデルにおける局所Au-3MPS@MTXの効果について記載している。
【0011】
さらなるナノ粒子送達系のための、および乾癬の治療の方法のための未充足のニーズが残されている。特に、乾癬のモデルで有効性を示す、改善されたMTX担持を示すナノ粒子およびその医薬組成物は、未充足のニーズとして残されている。本発明はこれらのニーズに対する解決策を提供し、関連する追加の利点を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0012】
概して、本発明は、乾癬などの炎症疾患または自己免疫疾患で使用される、局所投与用のゲルベース医薬組成物を含む、ナノ粒子およびその組成物に関する。本発明者らは驚くべきことに、メトトレキサート担持ナノ粒子が、本明細書でさらに記述されるように、乾癬モデルに対しインビボで有効性を示し、皮膚肥厚および炎症を低減し、さらには乾癬の発症を抑制することを見出した。重要なことに、本明細書で記載の実施例は、金ナノ粒子とメトトレキサートの間の相乗作用を示す。GNP単独で処方された(すなわち、MTX不含の)ゲルは、耳介厚の、中程度であるが有意な低減をもたらした(図4c)。本明細書で定義される本発明のMTX-GNPは、皮膚炎症モデルで加算的有効性を越える有効性を示すことが見出された。
【0013】
第1の態様では、本発明はナノ粒子を提供し、ナノ粒子は、
金属および/または半導体を含むコア、および
コアに共有結合した複数のリガンド、
を含み、上記リガンドは、
(i)炭水化物、グルタチオンまたはエチレングリコール含有部分(オリゴエチレングリコールまたは(ポリ)エチレングリコール)を含む少なくとも1種の希釈リガンド、および
(ii)式MTX-L-のリガンドであって、MTX-L-は、リンカーLを介して上記コアに結合されるメトトレキサートである、リガンド
を含む。
【0014】
リンカーLは、コアに共有結合される、チオール基などの、末端基を含む。あるいは、リンカーLは、スペーサーを介して間接的にコアに結合され、それは、次に、コアに共有結合される。
【0015】
いくつかの実施形態では、リンカーLは、メトトレキサートとコアとの間に、2~200(例えば、2~100、または5~50)原子長の直鎖を含む。直鎖は任意に、置換されてよく、側鎖を含む、および/または分岐してよい。直鎖の長さは、メトトレキサート結合部位とコアの間の最大の長さにおける原子の数である。
【0016】
いくつかの実施形態では、Lは、基-(CH-および/または-(OCHCH-を含み、式中、nおよびmは独立に、1以上である。例えば、Lは、-(OCHCH-であり得、mは、5~20の範囲の数である。
【0017】
いくつかの実施形態では、Lは式:L-Z-L
であり、Lは、C2-C12グリコールおよび/またはC1-C12またはC2-C12アルキル鎖を含む第1のリンカー部分を含み、Lは、C2-C12グリコールおよび/またはC1-C12またはC2-C12アルキル鎖を含む第2のリンカー部分を含み、LおよびLは、同じであるまたは異なってよく、Zは、LおよびLを連結する最大10個の原子の二価のリンカー基であり、Zは、少なくとも2個のヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態では、Zは、3~10員炭素芳香環、3~10員炭素環、3~10員複素環、3~10員ヘテロ芳香環、イミド、アミジン、グアニジン、1,2,3-トリアゾール、スルホキシド、スルホン、チオエステル、チオアミド、チオウレア、アミド、エステル、カルバメート、カーボネートエステルまたはウレアを含む。いくつかの実施形態では、Zは、カルボニル含有基である。いくつかの実施形態では、Zは、アミドまたはエステルを含む。好ましくは、Zは、アミドである。いくつかの実施形態では、Lは、-(OCHCH-を含み、pは、1~10の範囲、例えば、2、3、4、または5の数である。いくつかの実施形態では、Lは、-(OCHCH-を含み、qは、1~10の範囲、例えば、5、6、7、8、9または10の数である。
【0018】
いくつかの実施形態では、MTX-L-は、式:
【化1】
であり、nおよびmは独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0019】
いくつかの実施形態では、MTX-L-は、式:
【化2】
である。
【0020】
いくつかの実施形態では、MTX-L-は式:
【化3】
である。
【0021】
いくつかの実施形態では、MTX-L-は、式:
【化4】
である。
【0022】
いくつかの実施形態では、MTX-L-は、式:
【化5】
である。
【0023】
特定の実施形態では、MTX-Lは、末端チオール基を含み、
【化6】
この末端基は、例えば、下に示すように、上記コアの表面に存在する金原子に結合される:
【化7】

【0024】
MTX-L-の他のこのような実施形態としては、
【化8】
(式中、nおよびmは独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である);
【化9】
(式中、nは、1~15の整数である);および
【化10】
(式中、nは、1~15の整数である)が挙げられる。
【0025】
特定の実施形態では、MTX-L-は式:
【化11】
である。
【0026】
特定の実施形態では、MTX-Lは、末端チオール基を含み、
【化12】
この末端基は、例えば、下に示すように、上記コアの表面に存在する金原子に結合される:
【化13】

【0027】
本発明のいずれかの態様によるいくつかの実施形態では、Lは、末端硫黄原子を介してコアに結合され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、式:
[希釈リガンド][MTX-L-S]@Auであり得、sおよびtは独立に、2以上の数である。いくつかの事例では、sは20超であり得る。いくつかの事例では、tは、3超、例えば、5超、あるいは10超であり得る。本明細書で使用される場合、一般的構造の式[リガンド1][リガンド2]@Auは、その表面に結合されるuの数のリガンド1部分およびcの数のリガンド2部分を有する金ナノ粒子を定義する。
通常、ナノ粒子は、それらに結合されるメトトレキサート分子を有しない未反応リンカーリガンドを有する。従って、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、式:
[希釈リガンド][MTX-L-S][COOH-L-S]@Auまたは[希釈リガンド][MTX-L-S][NH-L-S]@Auであり得、s、tおよびuは独立に、2以上の数である。いくつかの事例では、sは、20超、例えば、30超であり得る。いくつかの事例では、tは、3超、例えば、5超、あるいは10超であり得る。いくつかの事例では、uは、10超、例えば、20超であり得る。
【0029】
本発明のいずれかの態様によるいくつかの実施形態では、上記希釈リガンドは、単糖または二糖である炭水化物を含み得る。特に、希釈リガンドは、ガラクトース、グルコース、マンノース、フコース、マルトース、ラクトース、ガラクトサミンおよび/またはN-アセチルグルコサミンを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、炭水化物含有希釈リガンドは、末端チオール基を有するC2-C15(例えば、C2-C5)アルキル鎖を介してコアに共有結合され得る。特定の実施形態では、希釈リガンドは、2’-チオエチル-α-D-ガラクトピラノシドまたは2’-チオエチル-β-D-グルコピラノシドを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、コアは、次記からなる群より選択される金属を含む:Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Gd、Znまたはこれらの任意の組み合わせ。特に、コアは、金を含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、式:
[α-ガラクトース-C2-S][MTX-L-S]@Auであり得、sおよびtは独立に、2以上の数である。いくつかの事例では、sは、20超であり得る。いくつかの事例では、tは、3超、例えば、5超、あるいは10超であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、式:
[α-ガラクトース-C2-S][MTX-L-S][COOH-L-S]@Auまたは[α-ガラクトース-C2-S][MTX-L-S][NH-L-S]@Auであり得、s、tおよびuは独立に、2以上の数である。いくつかの事例では、sは、20超、例えば、30超であり得る。いくつかの事例では、tは、3超、例えば、5超、あるいは10超であり得る。いくつかの事例では、uは、10超、例えば、20超であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、コアの直径は、1nm~5nm、例えば、2~4nmの範囲である。コアの直径は、例えば、電子顕微鏡または動的光散乱(DLS)を用いて測定し得る。
いくつかの実施形態では、リガンドを含むナノ粒子の直径は、3nm~50nm、例えば、5~20nmの範囲である。
いくつかの実施形態では、コア当りのリガンド総数は、20~200個の範囲である。
【0035】
いくつかの実施形態では、コア当りの上記式MTX-L-のリガンドの数は、少なくとも3個、例えば、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも12個、または少なくとも15個である。リガンドの数は、コア当り、5~10、10~15または15~20個の範囲であってよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、次の構造で示すようなMTX-Lおよび希釈リガンドを有する:
【化14】

【0037】
ナノ粒子サイズ、リガンドサイズ、リガンドの比率の数は、一定の縮尺で図示されていない。示されていない他のリガンドも存在し得る。いくつかの事例では、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも5個であり、コア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも5個である。好ましくは、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも10、15、または20個である。好ましくは、コア当りのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも5、10または15個である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、次の構造で示すようなMTX-Lおよび希釈リガンドを有し:
【化15】


式中、nおよびmは独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも5個であり、コア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも3個である。好ましくは、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも10、15、または20個である。好ましくは、コア当りのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも5、10または15個である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、次の構造で示すようなMTX-Lおよび希釈リガンドを有し:
【化16】


式中、nは、1~15の整数であり、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも5個であり、コア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも3個である。好ましくは、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも10、15、または20個である。好ましくは、コア当りのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも5、10または15個である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、次の構造で示すようなMTX-Lおよび希釈リガンドを有し:
【化17】


式中、nは、1~15の整数であり、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも5個であり、コア当たりのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも3個である。好ましくは、コア当りのリガンドの総数は、少なくとも10、15、または20個である。好ましくは、コア当りのメトトレキサート含有リガンドの総数は、少なくとも5、10または15個である。
【0041】
本明細書で提示される方法に加えて、2019年12月13日出願の同時係属出願第PCT/EP2019/085203号は、それにより請求されたナノ粒子およびそれらの中間体が合成され得る、さらなる方法を提供する。この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の複数のナノ粒子および少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ゲルの形態である。ゲルは、ヒドロゲルであり得る。局所投与(例えば、皮膚送達)に好適なヒドロゲルは、例えば、Li and Mooney,Nature Reviews Materials,2016,Vol.1,Article number:16071およびRehman and Zulfakar,Drug Dev Ind Pharm.,2014,Vol.40(4),pp.433-440で考察されている。これら両方の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ゲルは、カーボポール(登録商標)980、カーボポール(登録商標)974およびカーボポール(登録商標)ETD2020からなる群より選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記ゲル中のメトトレキサートの濃度は、0.5mg/mL~10mg/mLの範囲、任意選択で約2mg/mLである。メトトレキサートの濃度は、例えば、本明細書の実施例2で記載のように、HPLCにより測定され得る。本明細書で使用される場合、メトトレキサートの濃度は、ナノ粒子に共有結合したメトトレキサートまたはこれらの誘導体(例えば、MTX-(EG)-NH)の濃度であり得る。上で言及した濃度の範囲は、ゲル中の遊離メトトレキサートを除外することが特に意図される。
【0046】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、金であり、上記ゲル中の金の濃度は、1mg/mL~20mg/mLの範囲、任意選択で約4mg/mLである。
いくつかの実施形態では、組成物は、局所(例えば、皮膚)投与用である。
いくつかの実施形態では、組成物は、全身投与用(例えば、皮下注射用)である。
【0047】
第3の態様では、本発明は、医薬での使用のための、本発明の第1の態様のナノ粒子または本発明の第2の態様の医薬組成物を提供する。
【0048】
第4の態様では、本発明は、哺乳動物対象における炎症性疾患または自己免疫疾患の治療での使用のための、本発明の第1の態様のナノ粒子または本発明の第2の態様の医薬組成物を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患は、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、関節リウマチ、若年性皮膚筋炎、ループス、サルコイドーシス、クローン病、湿疹および血管炎からなる群から選択され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患は、皮膚障害である。特に、障害は、乾癬(例えば、尋常性乾癬または膿疱性乾癬、逆乾癬、おむつ部乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、口腔乾癬、もしくは脂漏性湿疹様乾癬)であり得る。いくつかの実施形態では、障害は、毛孔性紅色粃糠疹、皮膚苔癬、酒さ、円形脱毛症、皮膚リンパ腫、湿疹性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、皮膚薬物反応、結節性痒疹、または皮膚肥満細胞症)、自己免疫性水疱性皮膚障害(例えば、天疱瘡/類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、表皮水疱症)、皮膚ループス、皮膚血管炎、ベーチェット病、強皮症様皮膚疾患、好中球媒介皮膚疾患(例えば、壊疽性膿皮症、スイート症候群、化膿性汗腺炎、SAPHO症候群)、肉芽腫性皮膚疾患(例えば、環状肉芽腫、環状紅斑、結節性紅斑、サルコイドーシスまたはリポイド類壊死症から選択され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子または組成物は、第2の抗炎症剤と同時に、順次にまたは別々に投与され得る。特に、第2の抗炎症剤は、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド、ジメチルフマレート、レチノイドまたは生物学的抗炎症剤(例えば、抗TNFα抗体、抗TNFαデコイ受容体、抗IL-17抗体または抗IL-23抗体)を含み得る。
【0052】
第5の態様では、本発明は、それを必要としている対象に本発明の第1の態様のナノ粒子または本発明の第2の態様の医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物対象における炎症性疾患または自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患は、乾癬、乾癬性関節炎、強皮症、関節リウマチ、若年性皮膚筋炎、ループス、サルコイドーシス、クローン病、湿疹および血管炎からなる群から選択され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患は、皮膚障害である。特に、障害は、乾癬(例えば、尋常性乾癬または膿疱性乾癬、逆乾癬、おむつ部乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、口腔乾癬、もしくは脂漏性湿疹様乾癬)であり得る。いくつかの実施形態では、障害は、毛孔性紅色粃糠疹、皮膚苔癬、酒さ、円形脱毛症、皮膚リンパ腫、湿疹性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、皮膚薬物反応、結節性痒疹、または皮膚肥満細胞症)、自己免疫性水疱性皮膚障害(例えば、天疱瘡/類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、表皮水疱症)、皮膚ループス、皮膚血管炎、ベーチェット病、強皮症様皮膚疾患、好中球媒介皮膚疾患(例えば、壊疽性膿皮症、スイート症候群、化膿性汗腺炎、SAPHO症候群)、肉芽腫性皮膚疾患(例えば、環状肉芽腫、環状紅斑、結節性紅斑、サルコイドーシスまたはリポイド類壊死症から選択され得る。
【0055】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様の方法での使用のための薬物の調製における、本発明の第1の態様のナノ粒子または本発明の第2の態様の医薬組成物の使用を提供する。
【0056】
第7の態様では、本発明は、次記を含む製品を提供する:
本発明の第1の態様のナノ粒子または本発明の第2の態様の医薬組成物、
ナノ粒子または医薬組成物を入れるための容器、および
添付文書または標識。
【0057】
いくつかの実施形態では、添付文書および/または標識は、本発明の第5の態様の治療方法におけるナノ粒子または医薬組成物の使用に関連する説明書、投与量および/または投与情報を提供する。
【0058】
本発明のいずれかの態様では、対象は、ヒト、伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタまたは非ヒト霊長類)、飼育動物または家畜(例えば、ブタ、雌ウシ、ウマまたはヒツジ)であり得る。好ましくは、対象は、乾癬(例えば、尋常性乾癬または膿疱性乾癬、逆乾癬、おむつ部乾癬、滴状乾癬、口腔乾癬、もしくは脂漏性湿疹様乾癬)であると診断されているヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、乾癬であるまたは以前に乾癬であった可能性があるが、現在は、寛解状態にあり、本発明の使用するためのナノ粒子もしくは組成物または本発明の方法もしくは使用は、乾癬の予防的処置のため、または乾癬の再発を遅延させるまたは防止するためであり得る。
【0059】
本発明のナノ粒子または組成物は、患部への直接適用(例えば、乾癬病変への局所投与)のための、および/またはこれまで罹患していない部位または寛解状態にある部位(例えば、非炎症皮膚)への適用のためのものであり得る。
【0060】
本発明の実施形態は、以降で、限定するものではなく、一例として、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。しかし、本開示を考慮すれば、本発明の種々のさらなる態様および実施形態が当業者には自明であろう。
【0061】
記述された態様および好ましい特徴の組み合わせは、このような組み合わせが明確に許容されないまたは明示的になされるべきでないことが述べられる場合を除き、本発明は、これらの組み合わせを包含する。本発明のこれらおよびさらなる態様および実施形態は、以下で、および添付の実施例および図に関連してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本明細書ではMTX-PEG-NH-担持GNPとしても記載される、アルファガラクトースC2-SHリガンドおよびMTX-PEGNHC(O)PEG-SHリガンドを含むコロナを有する金コアナノ粒子の一般的な化学構造を示す。
図2】IMQ誘導マウスモデルにおける全身性MTX。 (a)3日間のIMQ処理と7日間の全身療法の実験スキーム。(b)(上段パネル)対照(PBS;+)、IMQ処理(■)、および全身性MTX療法(1mg/kg(▲)、2mg/kg(▼)、5mg/kg(ひしがた))を受けた動物間の耳介厚の変化。(下段パネル)4~7日目の群間の耳介厚の差異の統計分析。(c)マウスの体重変化を、治療前体重からの体重の変化%として計算し、毎日記録し(上段パネル)、7日目のプロットを行った(下段パネル)。ns=有意差なし。*=p<0.05、**=p<0.01、***=P<0.001、****=p<0.0001。
図3】IMQ誘導マウスモデルにおける全身性MTX対MTX-GNP。 (a)(上段パネル)対照(PBS;+)、IMQ処理(■)、ならびにIMQに加えて、2mg/kg MTX(▲)、5.5mg/kg Au含有GNP(▼)および2mg/kg MTXおよび5.5mg/kg Au含有MTX-GNP(ひしがた)を受けた全身療法の間の耳介厚の変化。(下段パネル)4~7日目の群間の耳介厚差異の統計分析。(b)マウスの体重変化を、治療前体重からの体重の変化%として計算し、毎日記録し(上段パネル;対象(PBS、+)、IMQ処理(■)、ならびにIMQに加えて、2mg/kg MTX(▲)、5.5mg/kg Au含有GNP(▼)および2mg/kg MTXおよび5.5mg/kg Au含有MTX-GNP(ひしがた)を受けた全身療法)、7日目のプロットを行った(下段パネル;バー、左から右へ:未処理、IMQ、MTX全身、GNP全身、MTX-GNP全身)。データを、条件毎に2~5匹のマウス、2~3の独立の実験からプールし、平均±標準偏差として表す。(c)(左から右へ):未処理、IMQ、MTX全身、GNP全身およびMTX-GNP全身治療マウス耳介中のCD45細胞の細胞数をプロットし、統計的比較を示す。ns=有意差なし、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
図4】IMQ誘導マウスモデルにおける局所MTX対MTX-GNP。 (a)3日間のIMQ処理と7日間の局所療法の実験スキーム。(b)(左から右へ)未処理、IMQ、IMQ+MTX、IMQ+GNPおよびIMQ+MTX-GNPについての8日目のマウス耳介皮膚の代表的ヘマトキシリンエオシン染色。スケールバー=200μm。(c)(上段パネル)対照(PBS;+)、IMQ処理(■)と、カーボポール980ゲル担体(●)、12.5mg/kg MTX含有カーボポール980ゲル(▲)、GNP 37.5mg/kg Au含有カーボポール980ゲル(▼)およびMTX-GNP 12.5mg/kg MTXおよび37.5mg/kg Au含有カーボポール980(ひしがた)を受ける局所療法動物の間の耳介厚の変化。(下段パネル)4~7日目の群間の耳介厚差異の統計分析。(d)マウスの体重変化を、治療前体重からの体重の変化%として計算し、毎日記録し(上段パネル;略号は(c)と同様)、7日目のプロットを行った(下段パネル;左から右へ:未処理、IMQ、担体、局所MTX 12.5mg/kg MTX、局所GNP 37.5mg/kg GNPおよび局所MTX-GNP 12.5mg/kg MTX)。データを、条件毎に2~5匹のマウス、3つの独立の実験からプールし、平均±標準偏差として表す。(e)種々の局所療法についての耳介皮膚中の免疫浸潤のフローサイトメトリー分析。種々の局所療法(左から右へ:未処理、IMQ、IMQ+局所MTX 12.5mg/kg MTX、IMQ+局所GNP 37.5mg/kg GNPおよびIMQ+局所MTX-GNP 12.5mg/kg MTX)での耳介中へのCD45+細胞集団の代表的FACSプロット。(f)(左から右へ):未処理、IMQ、MTX局所、GNP局所およびMTX-GNP局所治療マウスの耳介中のCD45細胞数を、プロットし、統計的比較を示す。ns=有意差なし、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
図5】種々の局所療法における耳介皮膚中の免疫浸潤のフローサイトメトリー分析。 (a)種々の局所療法(左から右へ:未処理、IMQ、IMQ+MTX局所、IMQ+GNP局所およびIMQ+MTX-GNP局所)での耳介中へのCD3+ CD11b+細胞集団の代表的FACSプロット。(b)耳介中のCD3細胞の定量化。(左から右へ):未処理、IMQ、IMQ+MTX局所、IMQ+GNP局所およびIMQ+MTX-GNP局所についての細胞数プロット。統計的比較を示す。(c)(左パネル)耳介中のCD11b細胞の定量化。(左から右へ):未処理、IMQ、IMQ+MTX局所、IMQ+GNP局所およびIMQ+MTX-GNP局所についての細胞数プロット。統計的比較を示す。(右パネル)(左から右へ):未処理、IMQ、IMQ+MTX局所、IMQ+GNP局所およびIMQ+MTX-GNP局所についてプロットしたCD3:CD11b細胞の比率。統計的比較を示す。(d)耳介中のCD3細胞のαβおよびγδT細胞組成物の細胞数の比較。(e)耳介中のαβCD3細胞のCD4およびCD8T細胞の細胞数の比較。(f)(上段パネル)異なる局所療法(左から右へ:未処理、IMQ、IMQ+MTX局所、IMQ+GNP局所およびIMQ+MTX-GNP局所)についての耳介中へのLy6G CD11b細胞集団の代表的FACSプロット。(下段パネル)示した治療についてのLy6G対Ly6G細胞の比較。ns=有意差なし、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
図6】種々の全身および局所療法における脾臓中の免疫細胞のフローサイトメトリー分析。 (a)示した治療法による全身(左)および局所(右)治療についての脾臓中の治療CD45細胞の細胞数。(b)示した局所治療後の脾臓中のCD3細胞の細胞数。(c)示した局所治療の脾臓中のCD11b細胞の細胞数。(d)示した局所治療後の脾臓中のCD3細胞のαβおよびγδT細胞組成物の細胞数の比較。(e)示した局所治療後の脾臓中のαβCD3細胞のCD4およびCD8T細胞組成物の細胞数の比較。(f)示した治療後の脾臓中のLy6G対Ly6G細胞の比較。ns=有意差なし、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
図7】(左から右へ)未処理、IMQ、IMQ+局所MTXゲル、IMQ+局所GNPゲルおよびIMQ+MTX-GNPゲル、の耳介についてμm単位でプロットしたアカントーシス(皮膚肥厚)。統計的比較を示す。ns=有意差なし、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
図8】AGR129異種移植ヒト皮膚マウスモデルの耳介についてμm単位でプロットしたアカントーシス(皮膚肥厚):(左から右へ)ワセリン、ドボベット、およびMTX-GNPゲル。統計的比較を示す。ns=有意差なし、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明の態様および実施形態は、以降で、添付の図面に関連して考察される。さらなる態様および実施形態は、当業者には明白である。本明細書で言及される全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
本発明の記述において、次の用語が用いられ、以下に示されるように定義されることが意図される。
【0065】
前述の記述により、または次の特許請求の範囲で、または添付図面において開示され、開示された機能を実施するための特定の形態でまたは手段の観点から表現された、または開示の結果を得るための方法または工程の特徴は、別々に、またはこのような特徴の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために使用され得る。
【0066】
本発明は、上記の例示的実施形態と共に記載されてきたが、多くの等価な修正および変形物は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。したがって、本発明の上述の例示的実施形態は、例示であり、限定するものではないと見なされる。記載された実施形態に対する種々の変更は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされ得る。
【0067】
疑義を生じないために、読者の理解の改善を目的として、本明細書で提供される何らかの理論的説明が提供される。本願発明者らは、これらの理論的説明のいずれかに束縛されることを望むものではない。
【0068】
本明細書で使用されるセクション見出しはいずれも、単に構成上の目的のためであり、記載主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0069】
後に続く特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、用語の「含む(comprise)」、ならびに「含む(include)」および「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」および「含むこと(including)」などの変形は、示した整数もしくはステップまたは整数群もしくはステップ群の包含を意味し、任意の他の整数もしくはステップまたは整数群もしくはステップ群の除外を意味しないと理解される。
【0070】
明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上別段の明確な記載がない限り、複数形の指示対象を包含することに留意されなければならない。範囲は、「約(about)」1つの特定の値から、および/または「約(about)」別の特定の値までとして本明細書で表され得る。このような範囲が表記される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約(about)」を用いて近似値として表記される場合、特定の値は、別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関する用語の「約(about)」は、任意であり、例えば、±10%を意味する。
【0071】
ナノ粒子
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」は、ナノメートルスケールを有する粒子を指し、何ら特定の形状の制限を意味することを意図しない。特に、「ナノ粒子」は、ナノスフェア、ナノチューブ、ナノボックス、ナノクラスター、ナノロッド、などを包含する。特定の実施形態では、本明細書で意図されるナノ粒子および/またはナノ粒子コアは通常、多面体または球状形状を有する。ナノ粒子またはナノ粒子コアの「直径」への言及は通常、ナノ粒子またはナノ粒子コアそれぞれの最長寸法を意味すると解釈される。実質的に多面体形状または球状形状を有するナノ粒子では、粒子を横切る最短寸法は通常、粒子を横切る最長寸法の50%以内であり、例えば、25%または10%以内であり得る。
【0072】
複数の炭水化物含有リガンドを含むナノ粒子は、例えば、国際公開第2002/032404号、同第2004/108165号、同第2005/116226号、同第2006/037979号、同第2007/015105号、同第2007/122388号、同第2005/091704号(これらそれぞれの全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載されており、このようなナノ粒子は、本発明により使用され得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「コロナ」は、層またはコーティングを指し、それはナノ粒子コアの露出表面を部分的にまたは完全に被覆し得る。コロナは、ナノ粒子のコアに共有結合した複数のリガンドを含む。したがって、コロナは、金属コアを取り囲むまたは部分的に取り囲む有機層であると見なされ得る。特定の実施形態では、コロナは、ナノ粒子のコアの不動態化を提供および/またはそれに関与する。したがって、特定の事例では、コロナは、実質的にコアを安定化するために充分に完全なコーティング層を含み得る。特定の事例では、コロナは、本発明のナノ粒子の溶解性、例えば、水溶解性を促進する。
【0074】
ナノ粒子は小さい粒子、例えば、金属または半導体原子のクラスターであり、不動化リガンドのための基材として使用され得る。
【0075】
好ましくは、ナノ粒子は、0.5~50nm、より好ましくは0.5~10nm、より好ましくは0.5~5nm、より好ましくは0.5~3nm、さらにより好ましくは0.5~2.5nmの平均直径のコアを有する。リガンドがコアに付加されると見なされる場合、好ましくは、粒子の全体平均直径は、2.0~50nm、より好ましくは3~10nmおよび最も好ましくは4~5nmである。平均直径は、当該技術分野において周知の透過型電子顕微鏡などの技術を用いて測定できる。
【0076】
コア材料は、金属または半導体であり得、2種以上の原子から形成され得る。好ましくは、コア材料は、Au、FeまたはCuから選択される金属である。ナノ粒子コアは、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/GdおよびAu/Fe/Cu/Gdを含む合金からも形成され得、かつ本発明で使用され得る。好ましいコア材料は、AuおよびFeであり、最も好ましい材料は、Auである。ナノ粒子のコアは、ナノメートル範囲のコア直径を得るために、好ましくは、約100~500個の原子、または100~2,000個の原子(例えば、金原子)を含む。他の特に有用なコア材料は、NMR活性である1種または複数の原子でドープされた、インビトロおよびインビボの両方でNMRを用いるナノ粒子の検出を可能にする。NMR活性原子の例は、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3およびランタニド+3、または量子ドットを含む。
【0077】
半導体化合物を含むナノ粒子コアは、ナノメートルスケールの半導体結晶として検出でき、かつ量子ドットとして機能でき、すなわち、それらは、光を吸収し、それにより材料中の電子をより高いエネルギー準位に励起し、その後、その材料に特徴的な周波数で光のフォトンを放出できる。半導体コア材料の例は、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウムである。硫化亜鉛などの亜鉛化合物も含まれる。
【0078】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子またはそのリガンドは、検出可能な標識を含む。標識は、ナノ粒子またはリガンドのコアの要素であり得る。標識は、ナノ粒子のその要素の固有の特性のために、または検出可能なさらなる部分と連結される、複合化されるまたは結合されることにより、検出され得る。
【0079】
メトトレキサート
以前はアメトプテリンとして知られていた、メトトレキサート(MTX)は、化学療法剤および免疫系抑制剤である。これは、種々の癌、自己免疫疾患、子宮外妊娠の治療で、および薬剤誘発性人工流産のために使用された。
MTXは、CAS番号59-05-2であり、下に示す構造を有する:
【化18】
【0080】
本明細書で使用される場合、「メトトレキサート」または「MTX」は、上記の化学式の化合物を指すのみでなく、1個または複数の官能基がリンカーLを介したナノ粒子への結合のために修飾されているMTXの誘導体も指す。特に、MTXは、例えば、上記構造中のカルボン酸基で形成されたアミドを介してリンカーLに結合され得る。
【0081】
エチレングリコール
本明細書で使用される場合、エチレングリコール含有リンカーまたは鎖は、1個または複数のエチレングリコールサブユニットが存在することを意味する。これは、-(OCHCH-または(EG)または(PEG)またはPEGまたはPEGmなどの様々な方法で示され、または表され得、式中、mは、数である。文脈が別義を指示しない限り、これらの用語は、本明細書では同じ意味で用いられる。したがって、用語の「PEG」は、より短い、例えば、PEG3またはPEG8などのオリゴマー長さの鎖のエチレングリコール単位を意味し、これらは、それぞれ、(EG)および(EG)と同じ意味を有する。
【0082】
ゲル
ゲルは、その体積全体にわたり流体により広げられた非流体コロイド状ネットワークまたはポリマーネットワークである。本発明の場合では、ゲルは、薬学的に許容可能なゲル、例えば、ヒドロゲルであり得る。特に好適な種類のヒドロゲルは、Lubrizol Corporationから入手でき、https://www.lubrizol.com/Life-Sciences/Products/Carbopol-Polymer-Productsに記載される、架橋ポリアクリル酸ポリマーのカーボポール(登録商標)ファミリーから形成されるヒドロゲルである。
【0083】
投与および治療
本発明のナノ粒子および組成物は、腸内または非経口の経路を含むいくつかの異なる経路により患者に投与され得る。非経口的投与としては、静脈内、皮膚または皮下、経鼻、筋肉内、眼内、経上皮、腹腔内および局所(皮膚、経眼、直腸、経鼻、吸入およびエアロゾルを含む)、ならびに直腸全身性経路が挙げられる。好ましい投与経路は、皮膚への局所投与による皮膚投与である。
【0084】
本発明のナノ粒子は、固体または液体組成物の形態であり得る医薬組成物として処方し得る。このような組成物は通常、何らかの担体、例えば、水、石油、動物または植物油、鉱物油または合成油などの固体担体または液体担体を含む。生理食塩水、またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれ得る。このような組成物および製剤は通常、少なくとも0.1重量%の化合物を含む。
【0085】
静脈内、皮膚または皮下注射、または痛み部位の注射の場合、有効成分は、非経口的に許容可能な水溶液または液体の形態であり、それは発熱性物質非含有であり、かつ好適なpH、張性および安定性を有する。当該技術分野において関連する技能を有する人は、例えば、生理食塩水、グリセロール、液体ポリエチレングリコールまたは油を用いて調製された分散液中の、化合物またはそれらの誘導体の溶液などを用いて、好適な溶液をうまく調製できるであろう。
【0086】
1種または複数の化合物に加えて、任意選択で別の有効成分と組み合わせて、組成物は、1個または複数の薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝液、安定化剤、等張化剤、保存剤または酸化防止剤または当業者に周知の他の物質を含んでよい。このような物質は、非毒性である必要があり、また、有効成分の効力を妨害してはならない。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば、局所投与または静脈内注射に依存し得る。
【0087】
好ましくは、医薬組成物は、予防的有効量または治療的有効量で(場合によっては、予防は治療と見なされることもある)個体に投与され、これは、個体に対する利益を示すのに十分である。通常、これは、個体に利益をもたらす治療的に有用な作用を与える。投与される化合物の実際の量、ならびに投与の速度および投与の時間的経過は、治療される状態の性質および重症度に依存する。治療薬の処方、例えば、投与量などの決定は、一般医および他の医師の管理下にあり、通常は、治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および開業医に既知の他の因子を考慮に入れる。前述の技術およびプロトコルの例は、Handbook of Pharmaceutical Additives,2nd Edition(eds.M.Ash and I.Ash),2001(Synapse Information Resources,Inc.,Endicott,New York,USA);Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th Edition,2000,pub.Lippincott,Williams & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients,2nd edition,1994で見つけることができる。一例として、組成物は、好ましくは、1kgの体重当たり、約0.01~100mgの活性化合物の投与量で、より好ましくは約0.5~10mg/(kgの体重)の活性化合物の投与量で患者に投与される。皮膚障害の治療の場合、本発明の組成物の局所投与の1つの利点は、得られるメトトレキサートの全身濃度が、メトトレキサートが全身投与された場合よりも顕著に低いことであろう。これは、メトトレキサートの毒性および他の望ましくない副作用が最小化され、または実質的に回避でき、一方でそれにもかかわらず、対象の皮膚患部で臨床的に有益なメトトレキサート濃度を達成できることを意味する。
以下は、一例として提示され、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0088】
実施例
実施例1-メトトレキサート結合金ナノ粒子(MTX-GNP)の合成
リガンドの調製および[α-Gal]22[AL]22@Au GNPの合成
アルファガラクトース-C2(α-Gal)および1-アミノ-6-メルカプトヘキサエチレングリコール(「アミノリンカー」または「AL」としても知られるSH-CH-(EG)-NH)リガンドのコロナを有する金ナノ粒子を以前に記載のように合成した(国際公開第2011/154711号、実施例1および2、および国際公開第2016/102613号、実施例1を参照されたい、これら公開特許の両方は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0089】
2-チオエチル-α-D-ガラクトシド(α-ガラクトース-C2SH 「α-Gal」)の調製
【化19】

2-ブロモエタノール(30ml)中のガラクトース(3g、16.65mmol)の懸濁液に、酸樹脂アンバーライト120-HをpH2に達するまで加える。反応物を、50~60℃で16時間撹拌する。反応混合物を、濾過し、MeOHで洗浄する。トリエチルアミンを、pH8に達するまで加える。反応の粗製物を、濃縮し、トルエンと共に3回共沸蒸留する。反応混合物を、ピリジン(75mL)およびAc2O(35mL)に溶解し、触媒量のDMAPを、0℃で加え、室温で3時間撹拌した。混合物を、AcOEtで希釈し、1.HO;2.HCl(10%) 3.NaHCO dis 4.HOで洗浄する。 有機層を集め、無水NaSO上で乾燥させる。TLC(ヘキサン:AcOEt 3:1、2回溶出)は、主要生成物(目的のもの)およびより低いRfの小量生成物を示す。生成物を、ヘキサン:酢酸エチル 6:1の混合物を溶出液として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、2-ブロモエチル-アルファガラクトシド(2)を得る。
【0090】
前の反応の生成物、2を、27mlの2-ブタノンに溶解する。この溶液に、触媒量のテトラブチルアンモニウムヨージドおよび4当量のカリウムチオアセテートを加える。得られた懸濁液を室温で2時間攪拌する。この期間中、反応物を、出発材料の消滅についてTLC(ヘキサン-AcOEt 2:1、2回溶出)により検査する。混合物を、20mlのAcOEtで希釈し、NaClの飽和溶液で洗浄する。有機相を、乾燥し、濾過し、減圧下で留去する。生成物を、ヘキサン/AcOEt 2:1→1:1で精製して、アセチルチオ-アルファガラクトシド3を得る。
【0091】
反応の新規生成物、3を、ジクロロメタン:メタノール 2:1の混合物に溶解する。この混合物に、1Nのナトリウムメトキシドの溶液(1当量)を加え、室温で1時間撹拌する。アンバーライト IR-120H樹脂を、pH5~6に達するまで加える。得られた混合物を次に、濾過し、濃縮乾固して、最終生成物(α-ガラクトース C2SH)を得る。
【0092】
アミノチオールリンカー(AL)の調製
【化20】


20mlの無水THF中のPPh(3g、11.4mmol)の溶液に、DIAC(2.3g、11.4mmol)を加える。混合物を、白色生成物が出現するまで0℃で15分間撹拌する。この混合物に、乾燥THF(20mL)中のヘキサエチレングリコール(1.45ml、5.7mmol)およびHSAc(610μl、8.55mmol)の溶液を滴加する(滴加漏斗)。15分後、生成物が、TLC上にRf0.2で出現し始める。溶液を、蒸発装置中で濃縮する。反応粗製物を、50mlのジクロロメタンに溶解し、KCOの10%溶液で洗浄する。有機相を、無水NaSO上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。溶出液としてAcOEt:ヘキサン 1:1、AcOEt、および最終的にDCM:MeOH 4:1を用いる粗製生物のフラッシュクロマトグラフィーは、アセチルチオ-ヘキサエチレングリコール誘導体を与えた。
【0093】
反応生成物を、5mlのDMFに溶解し、PPh(2.25g、8.55mmol)、NaN(0.741g、11.4mmol)およびBrClC(0.845ml、8.55mmol)を加え、溶液を続いて、室温で40分間撹拌する。得られた生成物は、TLC(DCM:MeOH 25:1)を実施すると、出発生成物より高いRfを有する。反応混合物を、100mlのジエチルエーテルで希釈し、HOで3回洗浄する。有機相を、無水NaSO上で乾燥し、濾過し、減圧下で留去する。生成物を、溶出液の混合物、DMC/MeOH 200:1およびDCM/MeOH 40:1を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、アジド-アセチルチオ-ヘキサエチレングリコール誘導体を得る。
【0094】
トリフェニルホスフィンオキシドを除去するために、反応生成物を、10mlのTHFに溶解し、0.5gのMgClを、この溶液に加える。反応物を、白色沈殿物が出現するまで80℃で2時間撹拌し、その後、セライトを通して濾過する。
【0095】
生成物を、エタノール:HO 3:1の混合物に溶解し、Znダスト(0.45g、6.84mmol)およびNHCl(0.6g、11.4mmol)を加える。反応物を、TLC(DCM/MeOH 25:1)により出発材料の存在が検出されなくなるまで、1時間、還流下攪拌した。反応物を、セライトを通して濾過し、溶媒を、留去する。粗製反応生成物を、AcOEtで希釈し、5mlのHOで抽出する。水相を、蒸発乾固させて、アミノチオール-ヘキサエチレングリコール生成物を得る。
【0096】
[α-Gal]22[AL]22@Au GNPの合成
アルファガラクトースC2誘導体3およびヘキサエチレングリコールアミンリンカー6を、Midatech Bioguneストックから採取した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、HAuCl、NaBHを、Sigma-Aldrich Chemical Companyから購入した。イミダゾール-4-酢酸・一塩酸塩を、Alfa Aesarから購入した。カンパニーハイクオリティMeOHおよびナノピュア水(18.1mΩ)を、全実験および溶液に使用した。
【化21】


MeOH(49mL)中の1:1の比(0.58mmol、3当量)でのアミンメルカプトヘキサエチレングリコールリンカー6およびアルファガラクトースリガンド3の混合物に、金塩(7.86mL、0.19mmol、0.025M)の水溶液を加えた。反応物を、30秒間攪拌した後、NaBHの水溶液(1N)を、数回に分けて添加した(4.32mL、4.32mmol)。反応物を、900rpmで100分間震盪した。この時間の後で、懸濁液を、14000rpmで1分間遠心分離した。上清を、除去し、沈殿物を、2mLの水に溶解した。次に、2mLの懸濁液を、2つのフィルター(Amicon、10KDa、4mL)に導入し、4500gで5分間遠心分離した。フィルター中の残留物を、水でさらに2回洗浄した。最終残留物を、80mLの水に溶解した。
【0097】
メトトレキサートによる[α-Gal]22[AL]22@Au GNPの官能化
上述のように調製した[α-Gal]22[AL]22@Auナノ粒子のメトトレキサートによる官能化を、下記のスキームに従い室温でジメチルスルホキシド(DMSO)中で、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて実施した:
【化22】
【0098】
【表1】

【0099】
手順
ナノ粒子を、遠心分離により濃縮し、DMSO(3.62mL)で集めて約8000ppmの金濃度を得た。
【0100】
薬物活性化
DMSO中のMTX(0.1M)の溶液に、EDC(38.4μL;0.5M)を加え、混合物を約5分間撹拌した。その後、NHS(19.2μL;1.0M)を加え、混合物を、室温で30分間活性化した。
【0101】
薬物官能化
[α-Gal]22[AL]22@Au GNP(750μL)を、前に活性化した溶液に加え、カップリング系を、暗所で室温にて一晩インキュベートした。
【0102】
精製
ナノ粒子を、NaOH 0.1Mを溶出液として用いて遠心分離(4500rpm、10分)により精製した。含有物を、500μLのHO(12.00μg/μL)中に集め、さらなる分析のために貯蔵した。
【0103】
分析
金含量を、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により、サイズを、動的光散乱(DLS)により、静電荷を、ゼータ電位により、および構造を、H NMRにより評価した。
DLSサイズは、5.15nmに主ピークを示した。しかし、1.61nmの副次的ピークも同様に観察され、ナノ粒子の2つの集団を示した。微分型遠心沈降(DCS)分析は、3.0nmおよび8.0nmのサイズを有する2つのナノ粒子集団の存在を確証した。
ゼータ電位は、-51.1mV(すなわち、負に帯電)であることが明らかになった。
上記手順を、異なる当量のMTXを用いて反復した。それぞれの場合で、ナノ粒子当りのMTXの最終担持を、H NMR分析により決定した。2当量/GNP~最大で約5当量/GNPのMTX担持を得た。
【0104】
結論
上記結果は、10nm未満のサイズと最大5当量のGNP当りのMTXを有する[α-Gal]-[MTX-AL]@Au GNPの合成の成功を実証した。しかし、ばらつきが、GNPサイズとゼータ電位のバッチ間で観察された。メトトレキサートは、正に帯電したGNP上のアミン基への結合能力の変動に繋がり得る、2つの潜在的カルボキシレート結合部位を有する(すなわち、生じ得るMTXの二重EDC活性化が、不均一な生成物を説明し得る)。
【0105】
実施例2-修飾メトトレキサート結合金ナノ粒子(MTX-GNP)の合成
本発明者らは、GNP当りのMTX担持を増大させること、および実施例1で観察されたMTX上のカルボキシル基に起因する変動を低減することを目標とした。
この目的のために、2018年12月18日出願の同時係属出願GB1820470.1に記載のように(この出願の実施例2を参照、この出願は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)、(EG)NHリンカーを有する修飾メトトレキサートを、合成した。
【化23】

【0106】
リンカーを有するメトトレキサート誘導体の化学名は、4-[(3-{2-[2-(3-アミノプロポキシ)エトキシ]エトキシ}プロピル)カルバモイル]-2-[(4-{[(2,4-ジアミノプテリジン-6-イル)メチル](メチル)アミノ}フェニル)ホルムアミド]ブタン酸である。メトトレキサート誘導体を、次の反応スキームに従い調製した:
【化24】

この実験の目的は、GNP当り12当量超のMTXPEGNH(MTX-(EG)-NHとしても知られる)担持を有する50mgのGNPを合成することであった。
【0107】
ベースのGNP粒子は、([α-GalC2]52%[HSPEGCOOH]48%@Au)であり、カップリングを、EDC/NHS法を用いて実施した。実施例1の正に帯電したALとは対照的に、この実施例では、ベースGNPは、α-Gal-C2リガンドに加えて、カルボン酸末端官能基(負に帯電)を有するPEG(すなわち、(EG)含有)リガンドを有する。ベースGNP[α-GalC2]52%[HSPEGCOOH]48%@Auを、基本的に国際公開第2017/017063号(この公開特許の実施例5を参照)に記載のように合成した。この公開特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
試薬
【表2】
【0109】
反応スキーム
【化25】


溶媒:1)EDC/NHS活性化用の90%DMSO;
2)MTXPEGNHカップリング用のHEPES緩衝液(pH=7.83)
【0110】
EDC/NHS活性化
38.12mgのEDCを、最初に3.31mLのDMSOに溶解し、その後、この60mMのEDC DMSOストックの3.16mLを、43.67mgのNHSと混合して、EDC(60mM)/NHS(120mM)の最終DMSOストックを得た。
11mLの90%DMSO GNP溶液(60mg Au)を、500rpmで撹拌し続けた後、2.79mLのEDC/NHS DMSOストックを、滴加した。反応混合物を、2時間室温にて500rpmで撹拌し続けた([Au]≒4.35mg/mL)。
【0111】
2時間の活性化後に、GNP-NHS DMSO溶液を、遠心分離(4300rpm、8分)により8x15mLのAmiconチューブ(10K)中で濃縮した。GNP最終濃度は、約12mLであった。
【0112】
MTXPEGNHカップリング:
MTXPEGNH(NP当り60当量):(60mg Au/196.97)÷100x60x656.75=120mg
120mgのMTXPEGNHを最初に、20mLのヘペス緩衝液(pH=7.83)に溶解し、次にこれを、250mLの丸底フラスコに移した。室温(約22℃)にて600rpmで撹拌しながら、12mLの濃縮GNP-NHS溶液を、滴加した。その後、20mLのヘペス緩衝液を、この混合物に加えた。反応混合物を、室温(約22℃)にて600rpmで一晩撹拌した([Au]=1.15g/L)。
【0113】
翌朝、反応溶液混合物を、15mLのAmiconチューブ(10K)中で濃縮し、ミリQ水で洗浄することにより精製した(x8、4300rpm、8分/洗浄)。濃縮溶液を次に、13.3Gで5分間(x2)遠心分離して、全ての大きなサイズの粒子を溶液から除去した。最終濃縮GNP溶液を、ミリQ水で希釈して、11mLの最終体積を得た。
【0114】
【表3】


MTXPEGNH含量を、下記の試料調製を行いAgilent HPLCにより評価した:8μgのAuを、0.2MのTCEPで希釈して、40μLの最終体積を得た([Au]=0.2g/L)後、37℃でインキュベートし、600rpmで1時間撹拌した。インキュベーション後に、40μLのミリQ水を加えて、80μLの最終総体積([Au]=0.1g/L)を得た。この溶液を、HPLCにより分析した(20μL注入→2μg Au)。MTXPEGNHの標準のために:4μLの2g/L MTXPEGNHストック水溶液および36μLの0.2M TCEPを、37℃でインキュベートし、600rpmで1時間撹拌した。これに、160μLのミリQ水を加えた(総体積=200μL [MTXPEGNH]=0.04g/L)。この溶液を、HPLCにより分析した(10μL注入→0.4μg、20μL→0.8μgおよび30μL→1.2μg)。
【0115】
検量線を、生成した(比色分析による金の定量化時に黄色MTXPEGNH化合物の効果を考慮し、それにより金濃度を修正する)。MTXPEGNH担持は、GNP当り16.7当量であると決定され、97.4%の組み込みであった。
【0116】
まとめると、このMTXPEGNH粒子のバッチは、次の特性を有した:小サイズの単一サイズ集団(5.678nm)、負のゼータ電位(-22.8mV)、520nmにプラズモンバンドなし、GNP上のMTXPEGNH組み込みは97.4%であり、および最終粒子の担持はGNP当り16.7当量であった。一致した結果が、異なる反応器サイズ(50mおよび100mg Au)のバッチ間でも認められた。これらの結果は、実施例1で得られた結果と比べて遜色がない。特に、修飾MTX(MTXPEGNH)は、顕著に高い担持(16.7当量対約5当量のMTX)、高添加量効率(97.4%)および単一サイズ集団を促進した。特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、GNPのPEGCOOHリガンドへのMTXPEGNHのカップリングは、実施例1で記載のMTX上の複数のカルボキシル部位の問題を回避し、およびこれは、単一粒度分布/集団(実施例2)と2つのサイズ分布/集団(実施例1)の間の観察された差異を説明し得ると考えている。さらに、ここで測定された97.4%の担持効率は、Bessar et al.,2016で報告された一番高い担持効率の83±2%よりもさらに顕著に高い。Bessar et al.,2016の担持は、GNP当りのMTX当量の観点から報告されていない。しかし、Bessar et al.,2016の合成で使用されたMTX薬物に対するAu-3MPSの重量比は、5:1(すなわち、GNPの過剰)であった。結論として、[α-GalC2][MTXPEGNH-CO-PEG]@Au GNPは、高いMTX担持および皮膚浸透のための好適な物理学的性質を示す。
【0117】
実施例3-[α-GalC2][MTXPEGNH-CO-PEG]@Au GNPのヒドロゲルへの製剤化。
現在利用可能なメトトレキサートの市販の局所製剤は、生理学的pH(pH6)で解離型である、薬物の水溶性に主に起因して、角質層を介する浸透が不十分である。炭水化物リガンドを含むコロナを有する本明細書で開示のGNPの超小寸法(<5nm)は、好適な正味表面電荷を可能にし、無処理の皮膚を横切るメトトレキサートの浸透能力を高める可能性を提供し得る。
【0118】
最近、局所金ナノ粒子クリーム製剤が、メトトレキサート複合化GNPの予備試験で不十分な経皮吸着を示すと、Bessar et al.2016により報告された。ヒドロゲルはまた、それらが製剤からの薬物送達のより大きな柔軟性および制御を可能にし得る単一相担体を提供するので、局所ナノ粒子製剤の開発にも適用されてきた。加えて、ヒドロゲルは、薬物と製剤基剤の間の高親和性が効率的な皮膚内への薬物移行を損なう市販の軟膏に比べて、皮膚上に残留製剤を残さない急速蒸発の利点を提供する。従って、カーボポールヒドロゲルを、GNPベース局所製剤の開発のために選択した。
【0119】
次のポリマー(Lubrizol Corporation)を、評価した:カーボポール(登録商標)ETD2020(C10-30アルキルアクリレート架橋ポリマー)、カーボポール(登録商標)980NFポリマーおよびカーボポール(登録商標)974P NFポリマー。ゲルを、1~3%w/vのカーボポールポリマー(w/v)を一定混合により精製水中に分散させ、5時間にわたり水和させることにより調製した。ゲルの調製中にロッカー上で溶液をゆっくり撹拌することにより、空気の閉じ込めを回避するように注意した。5時間後に、ゲルのpHを、pHを中和するためにトリエタノールアミン(Sigma-Aldrich、ロット#STBF616V)を用いてpHをpH7.4に調節し、溶液をゲルに変化させた(トリエタノールアミンは、本明細書ではトリエチルアミンに対する好適な代替物と考えられる)。2%のカーボポール(登録商標)980ゲルは、透明で均質なゲルを生成することがわかったが、ETD2020ゲルは、均一にするのがより困難であった。従って、金グリコナノ粒子のヒドロゲルへの製剤化を、カーボポール(登録商標)980NFポリマーにより進めた。
【0120】
MTXPEGNH担持GNPを、基本的に実施例2に記載のように調製した。メトトレキサート-GNPヒドロゲルの製造のために、2%w/vカーボポール(登録商標)980を最初に、一定混合しながら5時間分散させた。MTX-PEG-NH-担持GNPを、5000rpmで10分間の遠心分離によりAmicon遠心濾過チューブ(10K分画分子量膜)を用いて濃縮した。2%カーボポール(登録商標)980溶液への添加の前に、MTX-PEG-NH-担持GNPを、pH2.6に調節した。酸性MTX-PEG-NH-担持GNPを次に、2%カーボポール(登録商標)980溶液に添加した。しかし、ナノ粒子は、カーボポール(登録商標)980溶液中で急速に沈殿することが観察された。プレーンメトトレキサート薬物ゲルを、水中にMTX-PEG-NHを水中に溶解すること、およびpHをpH4.5に調節することにより調製した。MTX-PEG-NH溶液を、以前に作製した2%カーボポール(登録商標)980溶液に加えた。しかし、小量の黄色沈殿も観察された。
【0121】
金ナノ粒子をカーボポール(登録商標)980ゲル中に製剤化する方法を、対照[α-Gal][PEGCOOH]@Au GNPを用いて、pHの影響およびナノ粒子の添加速度を試験することにより最適化した。沈殿物のない均質のナノ粒子ゲルが、[α-Gal][PEGCOOH]@Au GNPを一定混合しながら滴加する前に、カーボポール(登録商標)980溶液のpHをpH7.4に調節した場合に得られた。同様に、メトトレキサートゲル(ナノ粒子のない)についても、沈殿物のない均質の黄色ゲルが、修飾メトトレキサートの滴加の前にカーボポール(登録商標)980溶液のpHをpH7.4に調節した場合に得られた。ゲルを全て、4℃で貯蔵した。
【0122】
メトトレキサート-GNPヒドロゲルの製造のために、2%w/vカーボポール(登録商標)980を、一定混合しながら5時間分散させた。カーボポール(登録商標)980溶液のpHを、7.4に調節して明確なゲルを生成した。MTX-PEG-NH-担持GNPを、Amicon遠心濾過チューブを用いて濃縮した後、2%カーボポール(登録商標)980ゲルに添加した。得られたMTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲルは、均質褐色ゲルであり、MTX-PEG-NH-担持GNPの沈殿はゲル中で観察されなかった。[α-Gal-C2][PEGCOOH]@Au GNPを用いて、対照GNP(薬物なし)ゲルも同様に調製し、褐色の均質ゲルを生成することが分かった。プレーンメトトレキサート薬物ゲルを、pH7.4に調節したカーボポール(登録商標)980ゲル(2%)に、水中に溶解したMTX-PEG-NHを添加することにより調製した。メトトレキサートは、容易に取り込まれ、黄色で均質のヒドロゲルを生成し、メトトレキサート誘導体の沈殿が観察されないことが明らかになった。
【0123】
MTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲル中のMTX-PEG-NHの濃度は、0.18~0.2%(w/w)の範囲であった。
以前に報告された局所製剤中のMTX濃度は通常、0.25%~0.5%の範囲である(例えば、Lakshmi et al.,Indian J Dermatol Venereol Leprol,2007,Vol.73,pp.157-161 and Jabur et al.,J Fac Med Baghdad,2010,Vol.52,No.1,pp.32-36を参照のこと)。
【0124】
GNP(+/-MTX-PEG-NH)ヒドロゲル製剤ならびにMTX-PEG-NHヒドロゲル(すなわち、GNPなし)およびカーボポール(登録商標)980ヒドロゲル製剤を、インビボ試験に使用して、イミキモド誘導乾癬様炎症マウスモデルでのメトトレキサートの炎症性皮膚中への送達の促進における局所適用GNP(+/-MTX-PEG-NH)ヒドロゲル製剤の有効性を決定した(下記実施例4参照)。
【0125】
実施例4-イミキモド(IMQ)誘導乾癬マウスモデルでのMTX-PEG-NH-担持GNPの試験
この試験の目的は、イミキモド(IMQ)誘導乾癬マウスモデル(IMQが3連続日にわたりマウスの耳介に適用される(図2(a)))を用いて、高められた皮膚浸透性を有するMTX-GNPゲル製剤(実施例2および3に記載のようにヒドロゲルとして処方されたMTX-PEG-NH-担持GNP)の治療効力を評価することであった。臨床的有効性およびインビボ耐容性を、全身投与(皮下注射)および局所投与の両方の場合について、関連対照に対し評価した。
【0126】
最初に、我々は、用量漸増設定を用いて、MTXに対するマウスの耐性を評価した(図2b)。MTX(5mg/kgを毎日)による臨床的に効果的な治療は、動物の構成を損ない、療法中を通して制御不能な連続的減量をもたらすことがわかった(図2c)。他方で、耐容量の薬物(2mg/kgを毎日)は、有意な炎症制御を示さず、IMQ単独の対照群と同等の耳介厚測定値をもたらす(図2b)。これらの結果は、乾癬の療法としての遊離MTXの全身投与の欠点を明確にする。
【0127】
遊離薬物として投与された場合効果的でなかったが耐容可能であった、同じ2mg/kg投与量のMTXを含むMTX-PEG-NH-担持GNPの皮下全身投与は、IMQ誘導炎症を有意に回復し、GNPの加算的抗炎症薬作用を示した(図3c参照)。MTX-PEG-NH-担持GNPによる治療レジメンは、肝臓酵素測定(データは示さず)および毎日の体重監視により評価して、顕著な全身毒性をもたらさなかった(図3b)。これらの結果は意外にも、MTX-PEG-NH-担持GNPは、全身投与された場合でも、MTX単独に比べて改善された有効性および耐容性を示すことを示す。
【0128】
局所MTX-PEG-NH-担持GNPを、IMQモデルにおけるMTXの全身投与に対する臨床的有効性および最適耐性の事前評価に基づいて、ヒドロゲルとして製剤化した(実施例3)。局所実験のスキームを、図4aに示す。ゲルベースMTX-PEG-NH GNPの毎日の局所投与は、IMQ誘導耳介炎症を劇的に低減した(図4b)。3日間のIMQ処理は、激しい耳介の肥厚化をもたらし、これは、局所ゲルベースMTX-PEG-NH-担持GNP療法により有意に防止された(図4c)。

MTX-PEG-NH-担持GNPゲルと同じ合成条件下で調製された、ゲルベースMTX-PEG-NH製剤は、IMQ誘導耳介厚に影響を与えなかった(図4c)。MTX-PEG-NHゲル製剤の効果の相対的欠如はおそらく、以前に記載されたMTXの親水性および不十分な皮膚浸透に起因するものであろう。興味深いことに、GNP単独で処方されたゲル(すなわち、MTX不含のゲル)もまた、耳介厚の中程度であるが有意な低減をもたらし(図4c)、これは、おそらく、GNPの報告された抗炎症薬効果によるものであろう(Shukla,R.et al.Langmuir 21,10644-10654,doi:10.1021/la0513712(2005),Tsai,C.Y.et al.J Immunol 188,68-76,doi:10.4049/jimmunol.1100344(2012)およびMoyano,D.F.et al.Chem 1,320-327,doi:10.1016/j.chempr.2016.07.007(2016))。
【0129】
明確な組織学的差異が、局所MTX-PEG-NH-担持GNPゲル療法対MTX-PEG-NHゲルまたはGNPゲル療法単独を受けたIMQ処理耳介および対照で観察された(図4b)。MTX-PEG-NH-担持GNPゲルの局所投与は、肝臓酵素測定(データは示さず)および毎日の体重監視により評価して、動物で耐容性良好であり、かつ顕著な全身毒性は、観察されなかった(図4d)。
従って、これらの結果は、MTX-PEG-NH-担持GNPゲルによる限局性局所療法は、最小限度から動物の健康との干渉がない程度まで、IMQ誘導炎症の影響を弱めることができることを示す。
【0130】
さらなる分析を、蛍光標識細胞分取(FACS)分析を用いて上述の療法を受けるマウスのIMQ処理耳介中の炎症性環境で行った。MTX-PEG-NH-担持GNPゲルによる局所療法を受けるマウスは、IMQ単独群と比較して、少ない数のCD45細胞により示される、耳介中への浸潤性免疫細胞数の有意な低減を示した。全ての他の試験した局所療法(IMQ+MTX、IMQ+GNP)は、IMQ単独群と同等の免疫浸潤を有した(図4および5)。特に、MTX-PEG-NH-担持GNPゲル治療群は、CD11bとCD3T細胞の間のバランスの回復を示した(図5c)。より詳細なFACS分析を実施して、獲得免疫および自然免疫のキープレーヤーに対するMTX-PEG-NH-担持GNPゲルによる局所療法の乾癬炎症の影響を特定した。我々は、MTX-PEG-NH-担持GNPゲルによる限局性局所治療は、皮膚のγδT細胞およびLy6G好中球を実質的に除去でき、CD4αβT細胞を著しく制限し、一方でCD8T細胞は、影響を受けないで残されることを示した(図5dおよびe)。脾臓中の免疫集団に対する明らかな全身的な作用は、観察されなかった(図6)。
【0131】
結論
この結果は、本発明のMTX担持GNP製剤は、局所投与の場合、皮膚浸透性であり、皮膚炎症を軽減することを示す。局所MTX-GNPゲル製剤は、イミキモド誘導炎症を克服でき、その炎症をベースライン近くに低減し、好中球をベースライン相当に減らす。さらに、限局性MTX-GNP適用は、動物で耐容性良好であり、高投与量で動物の健康を不可逆的に損なう全身性MTX投与とは異なる。γδT細胞、好中球およびCD4αβT細胞を含む乾癬のキープレーヤーは、MTX-GNP治療群中の未処理対照に比べて、顕著に増殖しない。その強力な抗炎症能力および耐容性を考慮すると、MTX-PEG-NH-担持GNPを含む、ゲルベースMTX-GNPは、乾癬およびさらにはより広範な炎症性の皮膚疾患に対する、非ステロイド性局所治療薬の代替薬としての魅力的な選択肢を提供する可能性がある。実際に、発明者らは、次の皮膚障害を、本発明のナノ粒子製剤による治療から恩恵を受けることが期待される傷害と考えている:乾癬(例えば、尋常性乾癬または膿疱性乾癬、逆乾癬、おむつ部乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、口腔乾癬、もしくは脂漏性湿疹様乾癬)。いくつかの実施形態では、障害は、毛孔性紅色粃糠疹、皮膚苔癬、酒さ、円形脱毛症、皮膚リンパ腫、湿疹性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、皮膚薬物反応、結節性痒疹、または皮膚肥満細胞症)、自己免疫性水疱性皮膚障害(例えば、天疱瘡/類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、表皮水疱症)、皮膚ループス、皮膚血管炎、ベーチェット病、強皮症様皮膚疾患、好中球媒介皮膚疾患(例えば、壊疽性膿皮症、スイート症候群、化膿性汗腺炎、SAPHO症候群)、肉芽腫性皮膚疾患(例えば、環状肉芽腫、環状紅斑、結節性紅斑、サルコイドーシスまたはリポイド類壊死症)から選択され得る。
【0132】
実施例5-異種移植ヒト皮膚AGR129マウスモデルでのMTX-PEG-NH-担持GNPカーボポールヒドロゲルとドボベットゲル(乾癬局所標準治療)の比較。
Boyman et al.,J.Exp.Med.,2004,Vol.199,No.5,pp.731-736は、無症状の乾癬前ヒト皮膚がAGR129マウスに移植された場合に皮膚病変が自然発症的に発症した、I型およびII型インターフェロン受容体を欠き、かつ組替え活性化遺伝子2のための、動物モデルについて記載している。生着時に、乾癬前皮膚中の常在性ヒトT細胞は、局所増殖を受ける。T細胞増殖は、T細胞の遮断が乾癬発生の抑制に繋がるため、乾癬表現型の発生にとって重要であった。腫瘍壊死因子αは、局所T細胞増殖およびそれに続く疾患発症の重要な制御因子であった。Boyman et al.,2004のAGR129マウスモデルは、潜在的乾癬療法の研究のために、極めて適切な系である。特に、このモデルは、試験化合物の乾癬の発症を抑制する能力を含む、ヒト皮膚に対する効果を試験するための手段を提供し、従って、実施例4で記載されるイミキモド処理マウスモデルに対する追加の関連する特徴を提供する。
【0133】
方法
非症候性皮膚のケラトーム生検材料を、ヒト乾癬患者から得た。皮膚試料(1cm)を次に、AGR129マウスの剪毛した背中に移植した。AGR129マウスは、I型(A)および2型(G)インターフェロン受容体を欠いており、それらはまた、RAG-2KO(R)でもある。したがって、それらは、TおよびB細胞を欠き、NK細胞は非機能性である。この特殊な背景は、移植片の受け入れを保証する。
【0134】
移植された非病変皮膚を、4~6週以内に乾癬表現型に進行させた。本発明の試験の1つの目的は、この発症を阻止するMTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲル局所製剤の乾癬表現型の能力を調査すること、ならびにβ-メタゾンおよびカルシポトリオールを含む標準局所治療薬ドボベットゲルと比較して、MTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲルがどのように機能するかを知ることであった。MTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲル治療群に加えて、ワセリンおよびドボベットゲル対照群を、含めた。
【0135】
毎日の局所治療を、移植を移植の21日後に開始し、2週間にわたり実施した。10~12匹のマウスに、実験当たり移植した。動物を、35日目に屠殺した。移植片の免疫組成を、組織学およびFACSにより測定した。
【0136】
結果
最大表皮厚さ(アカントーシス)を、角質層と生存可能表皮(顆粒層または有棘層)の移行部から、乳頭間隆起の最深部まで測定した(参照により本明細書に組み込まれる、Fraki et al.,Journal of Investigative Dermatology,1983,Vol.80,No.6,Suppl.1,pp.31s-35sの図1に示されるように)。測定を、ImageScopeプログラムを使用して行った。10個の網状組織を測定し、平均値を、表皮厚さとしてマイクロメートル単位で表した(図8)。
【0137】
図8に示すように、MTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲルについての結果は、極めて再現性が良く、MTX-PEG-NH-担持GNPヒドロゲルが、ワセリン対照(P<0.0001)およびドボベット(P<0.05)の両方に比べて乾癬の発症を抑制したことを示したことが明らかになった。これらの結果は、従って、ヒト乾癬前皮膚を用いた高性能インビボモデルにおける乾癬の発症または進展を有意に抑制する、本発明のMTX担持ナノ粒子の能力の証拠を示す。
【0138】
本明細書で引用される全ての参考文献は、それぞれ個別の刊行物または特許または特許出願が具体的に、個別にその全体が参照によって組み込まれることが示された場合と同程度にそれらの全体があらゆる目的において参照によって本明細書に組み込まれる。
【0139】
本明細書で記載の特定の実施形態は、限定するためではなく、一例として提供されている。本明細書のいずれのサブタイトルも便宜上の理由のみの目的で挿入されており、多少なりとも本開示を限定するものと解釈されるべきではない。

図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7
図8
【国際調査報告】