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特表2022-513229フルオロポリマーハイブリッド複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】フルオロポリマーハイブリッド複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/46 20060101AFI20220131BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220131BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220131BHJP
【FI】
C08G77/46
C08J5/18 CEW
H01M10/0565
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534286
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2019085246
(87)【国際公開番号】W WO2020126975
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18306704.0
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(71)【出願人】
【識別番号】506075182
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ トリノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フラッチェ, アルベールト
(72)【発明者】
【氏名】サンタンジェレッタ, シルビア
(72)【発明者】
【氏名】バッテガッツォーレ, ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー, セゴレーヌ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J246
5H029
【Fターム(参考)】
4F071AA26
4F071AA27
4F071AB26
4F071AC12
4F071AC13
4F071AC19
4F071AE15
4F071AF37
4F071AH15
4F071BA01
4F071BA02
4F071BB06
4F071BC01
4J246AA11
4J246BA220
4J246BA22X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB260
4J246BB261
4J246BB262
4J246BB26X
4J246CA130
4J246CA13U
4J246CA13X
4J246EA12
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA132
4J246FA321
4J246FA421
4J246FA661
4J246FB081
4J246FD05
4J246FD10
4J246GB29
4J246GD03
4J246HA68
5H029AJ14
5H029AM16
5H029HJ02
(57)【要約】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質の製造方法、それから得られた高分子電解質、並びに様々な用途での、特に電気化学用途での及び光電気化学用途での前記高分子電解質及びそれから得られた膜の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質の製造方法であって、前記方法が、以下の工程:
(i)式:
4-mAY
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む、炭化水素基である)
を有する金属化合物[化合物(M)]を、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]及び液体媒体[媒体(L)]を含む電解質溶液[溶液(ES)];
- 少なくとも1種の酸触媒;及び
- 任意選択的に、水性媒体[媒体(A)]
の存在下で部分的に加水分解すること及び/又は重縮合することによって得られるプレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]
(前記プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]は、≡A-O-A≡結合及び1つ以上の残存加水分解性基Yからなる1つ以上の無機ドメインを含む)
を含む組成物を提供する工程と、次いで
(ii)前記電解質溶液(ES)を組み込んだフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質を得るために、溶融状態で少なくとも1個のヒドロキシル基を含む官能性フルオロポリマー[ポリマー(F)]のヒドロキシル基の少なくとも一部を、前記化合物(P-GM)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記化合物(M)が、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン、式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、x及びyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートからなる群から選択される官能性化合物(M)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物(M)が、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートからなる群から選択される、非官能性化合物(M)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の金属塩(S)が、Meが金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeがLi、Na、K又はCsであり、nが前記金属の原子価であり、典型的にはnが1又は2である、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、RがC、C又はCFOCFCFであるMe[N(CFSO)(RSO)]、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属塩(S)が、LiI、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCFSO、LiN(CFSO(「LiTFSI」)、LiN(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるM[N(CFSO)(RSO)]、LiAsF、LiC(CFSO、Li及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電解質溶液(ES)中の前記媒体
(L)が、少なくとも1種のイオン液体(IL)を含み、好ましくは少なくとも1種のイオン液体(IL)からなり、前記イオン液体(IL)のアニオンが、
- 式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF のテトラフルオロボレート、及び
- 式:
のオキサロボレートからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電解質溶液(ES)が、少なくとも1種のイオン液体(IL)及びLiTFSIからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸触媒が、有機酸である、好ましくはクエン酸及び又はギ酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記媒体(A)が水及びエタノールからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)の下で、前記ポリマー(F)が、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位と、式(I):
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R、R、Rのそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
を有する少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種のコモノマー[コモノマー(MA)]に由来する繰り返し単位とを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の下で、前記ポリマー(F)が、
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と;
(b)任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びそれらの混合物から選択されるフッ素化コモノマーと;
(c)0.05モル%~10モル%、好ましくは0.1モル%~7.5モル%、より好ましくは0.2モル%~3.0モル%の、式(I)
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R、R、Rのそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
のコモノマー(MA)と
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む組成物であって、前記組成物が、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の工程(i)に従って得られる組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られた前記高分子電解質を、圧縮成形又は押出技法によってフィルムへ加工する工程を含む高分子電解質膜の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって得られる高分子電解質膜。
【請求項15】
請求項14に記載の高分子電解質膜を含む電気化学的デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月17日出願の、欧州特許出願第18306704.0号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質の製造方法に、それから得られた高分子電解質に、並びに様々な用途での、特に電気化学用途での及び光電気化学用途での前記高分子電解質及びそれから得られた膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノレベル又は分子レベルで無機固体が有機ポリマー中に分散している、有機-無機ポリマーハイブリッドは、それらの独特の特性のため、多大な科学的、技術的及び工業的関心を集めている。
【0004】
有機-無機ポリマーハイブリッド複合材料を作り出すために、金属アルコキシドを使用するゾルゲル法が、最も有用な且つ重要な手法である。
【0005】
予め形成された有機ポリマーの存在下で、金属アルコキシドの、特にアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS))の加水分解及び重縮合の反応条件を適切に制御することによって、元の化合物と比べて特性が改善されたハイブリッドを得ることが可能である。ポリマーは、さもなければ脆い無機材料の靭性及び加工性を向上させることができ、ここで、無機ネットワークは、前記ハイブリッドの耐引掻性、機械的特性及び表面特性を向上させることができる。
【0006】
フルオロポリマーから、特にフッ化ビニリデンポリマーから出発するゾルゲル技法により製造されるハイブリッドは、当技術分野において公知である。
【0007】
例えば、国際公開第2011/121078号パンフレットは、フルオロポリマーハイブリッド有機-無機複合材料の製造方法であって、フルオロポリマーのヒドロキシル基の少なくとも一部が、溶液で又は溶融状態で式X4-mAY(Xは、炭化水素基であり、Yは、加水分解性基であり、Aは、Si、Ti及びZrから選択される金属であり、mは、1~4の整数である)の金属化合物の加水分解性基の少なくとも一部と反応させられる方法を開示している。この特許文献は、また、前記ハイブリッド有機/無機複合材料でできたフィルムが、次いで、溶媒(エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物)及び電解質(LiPF)を含む電解質溶液で膨潤させられることを述べている。それにもかかわらず、一旦フィルムがキャストされると、それを再び電解質溶液で膨潤させることは容易な作業ではなく、その結果セパレータ中に実際に浸透している電解質溶液の最終量は比較的低く、その結果として、イオン伝導性も比較的低い。
【0008】
前記欠点に直面して、国際公開第2013/160240号パンフレットは、前記液体媒体を安定して含む及び保持する、且つ、傑出したイオン伝導性を有する自立フルオロポリマーフィルムを提供するための、液体媒体の存在下でのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造を開示している。ハイブリッド有機/無機複合材料が、電気化学的及び光電気化学的デバイスにおける高分子電解質セパレータとしての使用のためである場合、それは、フルオロポリマー、式X4-mAYの金属化合物、イオン液体、溶媒、及び1つの電解質塩を含む混合物を加水分解する及び/又は重縮合する工程を含む方法によって得られ得る。結果として生じた液体混合物は、次いでキャスティングによってフィルムへ加工される。
【0009】
残念ながら、キャスティング技法によるフィルムの調製は、工業的生産プロセスにおいて望ましくないNMP、DMA及び類似のもののような有機溶媒の使用を必要とする。
【0010】
国際公開第2014/067816号パンフレットは、プレゲル化金属化合物の水溶液を形成する工程と、それを官能性フルオロポリマーと反応させる工程とを含む方法によるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の調製方法を開示している。複合材料は、典型的には、押出又は圧縮技法によってフィルムへ加工することができる、ペレットの形態で得られる。
【0011】
この方法に従って得られるフルオロポリマーフィルムの1つの欠点は、フィルム中の原子の分布が均質ではないことである。
【0012】
本出願人らは、意外にも、ハイブリッド有機/無機複合材料に基づく、傑出したイオン伝導性を示す高分子電解質を製造することが可能であること、並びに前記高分子電解質が、溶媒を使ったキャスティングを含まず、前記溶媒の使用並びにその後の溶媒の回収及び廃棄処分を回避するというさらなる利点を持った方法によって、改善された原子均質性を有するフィルムへ好適にも加工できることをここで見出した。
【発明の概要】
【0013】
したがって、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質の製造方法であって、前記方法が以下の工程:
(i)式:
4-mAY
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む、炭化水素基である)
を有する金属化合物[化合物(M)]を;
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]及び液体媒体[媒体(L)]を含む電解質溶液[溶液(ES)];
- 少なくとも1種の酸触媒;及び
- 任意選択的に、水性媒体[媒体(A)]
の存在下で;部分的に加水分解すること及び/又は重縮合することによって得られるプレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]
(前記プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]は、≡A-O-A≡結合及び1つ以上の残存加水分解性基Yからなる1つ以上の無機ドメインを含む)
を含む組成物を提供する工程と;次いで
(ii)電解質溶液(ES)を組み込んだフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質を得るために、溶融状態で少なくとも1個のヒドロキシル基を含む官能性フルオロポリマー[ポリマー(F)]のヒドロキシル基の少なくとも一部を、前記化合物(P-GM)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させる工程と
を含む方法が本発明の目的である。
【0014】
第2の目的において、本発明は、プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む組成物であって、前記組成物が上に定義されたような方法の工程(i)に従って得られる組成物を提供する。
【0015】
第3の目的において、本発明は、本発明の方法によって得られた高分子電解質を圧縮成形又は押出技法によって加工する工程を含む電気化学的デバイス用の膜の製造方法に関する。
【0016】
本発明のさらなる目的は、したがって、上で定義されたような方法によって得ることができる高分子電解質である。
【0017】
本発明の高分子電解質膜は、溶媒中のポリマーの溶液をキャストする工程を含まない方法によって得られるにもかかわらず、高い伝導性及びその構造の全体にわたって原子分布の均質性に恵まれており、こうして表面組成の著しい変動を回避し、予測できる及び効率的なイオン輸送経路を生み出す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語「プレゲル化金属化合物(P-GM)」により、電解質溶液及び酸触媒の存在下で部分的な加水分解及び/又は重縮合にかけられている、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む官能性フルオロポリマーと反応するときにケル化して高分子電解質を提供することができる金属化合物(M)を意味することを本明細書では意図する。
【0019】
式X4-mAYの金属化合物[化合物(M)]は、1つ以上の官能基を基X上及び基Y上のいずれか上に、好ましくは少なくとも1つの基X上に含むことができる。
【0020】
化合物(M)が少なくとも1つの官能基を含む場合、それは、官能性化合物(M)と称され;X及びY基のどちらも官能基を含まない場合、化合物(M)は非官能性化合物(M)と称される。
【0021】
官能性化合物(M)は、有利には、官能基を有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を提供することができ、こうしてハイブリッド複合材料の化学的性質及び特性を本来のポリマー(F)及び本来の無機相よりもさらに改質する。
【0022】
官能基の非限定的な例としては、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩若しくはハライド形態での)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩若しくはハライド形態での)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、若しくはハライド形態での)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基のような)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基を挙げることができる。
【0023】
官能基を有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質を得るという目的のためには、有利にも各A原子が、本方法の工程(i)における完全な加水分解及び/又は重縮合後に、それにもかかわらず、官能基を含む基に結合しているように、式X4-mAYの化合物(M)の基Xのいずれかが1つ以上の官能基を含むこと、及びmが1~3の整数であることが一般に好ましい。
【0024】
好ましくは、化合物(M)中のXは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む、C~C18炭化水素基から選択される。より好ましくは、化合物(M)中のXは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む、C~C12炭化水素基である。
【0025】
疎水性又はイオン伝導性の観点から官能的挙動を示すことができるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質を製造することを目的として、化合物(M)の官能基は、好ましくは、カルボン酸基(その酸、無水物、塩又はハライド形態での)、スルホン酸基(その酸、塩又はハライド形態での)、リン酸基(その酸、塩、又はハライド形態での)、アミン基、及び第四級アンモニウム基の中で選択され;カルボン酸基(その酸、無水物、塩又はハライド形態での)及びスルホン酸基(その酸、塩又はハライド形態での)が最も好ましいであろう。
【0026】
化合物(M)の加水分解性基Yの選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするという条件で、特に限定されず;前記加水分解性基は、とりわけ、ハロゲン(特に塩素原子)、ヒドロカルボキシ基、アクリロキシ基又はヒドロキシル基であることができる。
【0027】
官能性化合物(M)の例は、とりわけ、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン、式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、x及びyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0028】
非官能性化合物(M)の例は、とりわけ、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0029】
用語「金属塩(S)」により、導電性イオンを含む金属塩を意味することを本明細書では意図する。
【0030】
様々な金属塩が金属塩(S)として用いられ得る。選択される液体媒体(L)中で安定であり、可溶である金属塩が一般に使用される。
【0031】
好適な金属塩(S)の非限定的な例としては、とりわけ、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるMe[N(CFSO)(RSO)]、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meが挙げられ、ここで、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K、Csであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的にはnは、1又は2である。
【0032】
好ましい金属塩(S)は、下記:LiI、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCFSO、LiN(CFSO(「LiTFSI」)、LiN(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるM[N(CFSO)(RSO)]
LiAsF、LiC(CFSO、Li及びそれらの組み合わせから選択される。
【0033】
電解質溶液(ES)における媒体(L)は、典型的には、少なくとも1種のイオン液体(IL)を含み、好ましくはイオン液体からなる。本発明の目的のためには、用語「イオン液体」は、大気圧下で100℃よりも下の温度にて液体状態で正に帯電したカチオンと、負に帯電したアニオンとの組み合わせによって形成される化合物を意味することを意図する。
【0034】
イオン液体(IL)は、典型的には、プロトン性イオン液体(IL)及び非プロトン性イオン液体(IL)から選択される。
【0035】
用語「プロトン性イオン液体(IL)」により、カチオンが1個以上のH水素イオンを含むイオン液体を意味することを本明細書では意図する。
【0036】
1個以上のH水素イオンを含むカチオンの非限定的な例としては、とりわけ、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はピペリジニウム環が挙げられ、ここで、正電荷を有する窒素原子がH水素イオンと結合している。
【0037】
用語「非プロトン性イオン液体(IL)」により、カチオンがH水素イオンを含まないイオン液体を意味することを本明細書では意図する。
【0038】
液体媒体は、典型的には、少なくとも1種のイオン液体(IL)と、任意選択的に、少なくとも1種の添加物(A)とから本質的になり、ここで、前記イオン液体(IL)は、プロトン性イオン液体(IL)、非プロトン性イオン液体(IL)及びそれらの混合物から選択される。
【0039】
イオン液体(IL)は、典型的には、カチオンとしてスルホニウムイオン又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジウム環若しくはピペリジウム環(前記環は、特に1~8個の炭素原子を持った1つ以上のアルキル基によって、任意選択的に窒素原子上で置換されており、及び、特に1~30個の炭素原子を持った1つ以上のアルキル基によって、炭素原子上で置換されている)を含むものから選択される。
【0040】
本発明の意図内で、用語「アルキル基」により、飽和炭化水素鎖又は1個以上の二重結合を有する及び1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、さらにより有利には1~8個の炭素原子を含有するものを意味する。例として、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル基を挙げることができる。
【0041】
本発明の有利な実施形態において、イオン液体(IL)のカチオンは、下記:
- 本明細書で以下の式(III)のピロリジニウム環:
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、1~8個の炭素原子を持ったアルキル基を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、またより有利には1~8個の炭素原子を持ったアルキル基を表す)、及び
- 本明細書で以下の式(IV)のピペリジニウム環:
(式中、R及びRは、それぞれ互いに独立して、1~8個の炭素原子を持ったアルキル基を表し、R~Rは、それぞれ互いに独立して、水素原子又は1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、さらにより有利には1~8個の炭素原子を持ったアルキル基を表す)
から選択される。
【0042】
本発明の特に有利な実施形態において、イオン液体(IL)のカチオンは、下記:
から選択される。
【0043】
イオン性液体(IL)は、有利には、ハライドアニオン、過フッ素化アニオン及びボレートから選択されるものをアニオンとして含むものから選択される。
【0044】
ハライドアニオンは、特に、以下のアニオン:塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物から選択される。
【0045】
本発明の特に有利な実施形態において、イオン液体(IL)のアニオンは、下記:
- 式(SOCFN-のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF-のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF-のテトラフルオロボレート、及び
- 式:
のオキサロボレートから選択される。
【0046】
電解質溶液(ES)における媒体(L)は、1種以上の添加物をさらに含み得る。
【0047】
1種以上の添加物が液体媒体中に存在する場合、好適な添加物の非限定的な例としては、とりわけ、液体媒体に可溶であるものが挙げられる。
【0048】
好ましい実施形態において、電解質溶液(ES)は、LiTFSI及び少なくとも1種のイオン液体(IL)からなる。
【0049】
電解質溶液(ES)における媒体(L)中のLiTFSIの濃度は、有利には少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0050】
電解質溶液(ES)における媒体(L)中のLiTFSIの濃度は、有利には最大でも3M、好ましくは最大でも2M、より好ましくは最大でも1Mである。
【0051】
酸触媒の選択は、特に限定されない。酸触媒は、典型的には、有機酸及び無機酸からなる群から選択される。
【0052】
酸触媒は、好ましくは、有機酸からなる群から選択される。
【0053】
非常に良好な結果は、クエン酸で及びギ酸で得られている。
【0054】
当業者は、工程(i)において使用される酸触媒の量が酸触媒それ自体の本質に強く依存することを認めるであろう。
【0055】
本発明の方法の工程(i)において使用される酸触媒の量は、したがって、金属化合物(M)の総重量を基準として有利には少なくとも0.1重量%のものであり得る。
【0056】
本発明の方法の工程(i)において使用される酸触媒の量は、有利には、金属化合物(M)の総重量を基準として最大でも40重量%のもの、好ましくは最大でも30重量%のものである。
【0057】
本発明の方法の工程(i)において、金属化合物(M)は、任意選択的に、水性媒体[媒体(A)]の存在下で部分的に加水分解され及び/又は重縮合され得る。
【0058】
用語「水性媒体」により、大気圧下に20℃で液体状態にある水を含む液体媒体を意味することを本明細書では意図する。
【0059】
水性媒体(A)は、より好ましくは水及び1種以上のアルコールからなる。媒体(A)に含まれるアルコールは、好ましくはエタノールである。
【0060】
本発明の方法の工程(i)において使用される金属化合物(M)の量は、工程(i)の反応混合物が、前記混合物中の金属化合物(M)と電解質溶液(ES)との総重量を基準として有利には少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%の前記金属化合物(M)を含むようなものである。
【0061】
本発明の一実施形態において、本方法の工程(i)は、水及び1種以上のアルコールを含む、好ましくはそれらからなる水性媒体[媒体(A)]の存在下で実施される。
【0062】
本発明の方法の工程(i)において提供される組成物中における媒体(A)の量は、特に決定的に重要であるわけではない。
【0063】
好ましい実施形態において、媒体(A)中の水の量は、本方法の工程(i)において提供される組成物の8~10重量%を表すほどであり、一方、媒体(A)中の1種以上のアルコールの量は、本方法の工程(i)において提供される組成物の6~7重量%を表すほどである。
【0064】
本発明の方法の工程(i)において、上で定義されたような金属化合物(M)の加水分解及び/又は重縮合は、通常、室温で又は100℃よりも低い温度で加熱して実施される。20℃~90℃、好ましくは20℃~70℃の温度が好ましいであろう。
【0065】
本発明の方法のこの工程(i)において、上で定義されたような金属化合物(M)の加水分解性基Yは、≡A-O-A≡結合及び1つ以上の残存加水分解性基Yからなる無機ドメインを含むプレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を生成するように水性媒体の存在下で部分的に加水分解する及び/又は重縮合することが理解される。
【0066】
本発明の方法の工程(i)において、化合物(P-GM)を含む組成物は、上で定義されたような以下の成分を、好ましくは本明細書で以下に示される順に:
- 電解質溶液[溶液(ES)]、
- 金属化合物[化合物(M)]、
- 少なくとも1種の酸触媒、及び
- 任意選択的に、水性媒体[媒体(A)]
を反応容器へ添加することによって都合よく調製される。
【0067】
当業者に認められるように、加水分解及び/又は重縮合反応は、通常、上で定義されたような金属化合物(M)の本質に応じて、とりわけ水又はアルコールであり得る、低分子量の副生成物を生成する。
【0068】
そのようにして得られたプレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む組成物は、したがって典型的には、上で定義されたような金属化合物(M)の加水分解及び/又は重縮合によって一般に生成する1種以上のアルコールを低分子量副生成物としてさらに含む。
【0069】
電解質溶液(ES)は、典型的には、電解質溶液を提供するように金属塩(S)を液体媒体(L)に溶解させることによって調製され、ここで、塩の濃度は、有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mのもの、及び最大でも1M、好ましくは0.75M、より好ましくは0.5Mのものである。
【0070】
第2の目的において、本発明は、プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む組成物であって、前記組成物が上で定義されたような方法の工程(i)に従って得られる組成物を提供する。
【0071】
本発明の方法の工程(ii)において、化合物(P-GM)は、溶融状態で官能性フルオロポリマー[ポリマー(F)]と反応させられる。
【0072】
用語「少なくとも1個のヒドロキシル基を含む官能性フルオロポリマー[ポリマー(F)]」によって、少なくとも1種のフッ素化モノマーと少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種のコモノマー[コモノマー(MA)]とに由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマーを意味することを本明細書では意図する。
【0073】
用語「少なくとも1種のコモノマー(MA)」は、ポリマー(F)が、上で定義されたような1種又は2種以上のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解されている。本文の残りにおいて、表現「コモノマー(MA)」は、本発明の目的のためには、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1種又は2種以上のコモノマーの両方を意味する。
【0074】
コモノマー(MA)は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むフッ素化モノマー及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む含水素モノマーからなる群から選択され得る。
【0075】
用語「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が、1種又は2種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1種又は2種以上のフッ素化モノマーの両方を意味する。
【0076】
用語「フッ素化モノマー」により、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0077】
用語「含水素モノマー」により、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0078】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の、上で定義されたような少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0079】
ポリマー(F)は、好ましくは最大でも20モル%、より好ましくは最大でも15モル%、さらにより好ましくは最大でも10モル%、最も好ましくは最大でも3モル%の、上で定義されたような少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0080】
ポリマー(F)中のコモノマー(MA)繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけNMR法を挙げることができる。
【0081】
コモノマー(MA)は、典型的には、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む含水素モノマーからなる群から選択される。
【0082】
コモノマー(MA)は、好ましくは式(I)の(メタ)アクリルモノマー又は式(II)のビニルエーテルモノマー
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R、R及びRのそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、水素原子又は少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
からなる群から選択される。
【0083】
コモノマー(MA)は、さらにより好ましくは式(I-A):
(式中、R’、R’及びR’は水素原子であり、R’OHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
に従う。
【0084】
好適なコモノマー(MA)の非限定的な例としては、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0085】
コモノマー(MA)は、より好ましくは、下記:
- 式
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のどちらかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
及びそれらの混合物
の中で選択される。
【0086】
コモノマー(MA)は、さらにより好ましくはHPA及び/又はHEAである。
【0087】
ポリマー(F)は、非晶性であっても半結晶性であってもよい。
【0088】
用語「非晶性」は、ASTM D-3418-08に従って測定されるように、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0089】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0090】
ポリマー(F)は、好ましくは半結晶性である。
【0091】
ポリマー(F)は、とりわけ、0.03~0.20l/gに含まれる、好ましくは0.03~0.15l/gに含まれる、より好ましくは0.08~0.12l/gに含まれる、N,N-ジメチルホルムアミド中で25℃にて測定される、固有粘度を有する。
【0092】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、下記:
- テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロペンなどの、C~Cパーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレンなどの、C~C含水素フルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである)に従うパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレンのような、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである)に従う(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C~C12アルキル、又はC~C12オキシアルキル、又はパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルのような、1個以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキルである);
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えばCF、C、C又は-C-O-CFのような、1個以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル、又はC~C12オキシアルキル、又は1個以上のエーテル基を有する(パー)フルオロオキシアルキルであり、及びYは、カルボン酸若しくはスルホン酸基をその酸、酸ハロゲン化物若しくは塩形態で含む)に従う官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- フルオロジオキソール、特にパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0093】
好適な含水素モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、エチレン、プロピレンなどの非フッ素化モノマー、酢酸ビニルなどのビニルモノマー、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルのような、アクリルモノマー、並びにスチレン及びpメチルスチレンのような、スチレンモノマーが挙げられる。
【0094】
ポリマー(F)は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する、好ましくは25モル%超、好ましくは30モル%超、より好ましくは40モル%超の繰り返し単位を含む。
【0095】
ポリマー(F)は、好ましくは1モル%超、好ましくは5モル%超、より好ましくは10モル%超の、コモノマー(MA)とは異なる少なくとも1種の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0096】
フッ素化モノマーは、1つ以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含むことができる。フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フルオロモノマーと称される。フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0097】
フッ素化モノマーが、例えばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの、水素含有フッ素化モノマーである場合、本発明の水素含有フルオロポリマーは、上で定義されたような少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位に加えて、前記水素含有フッ素化モノマーのみに由来する繰り返し単位を含むポリマーであることができるか、あるいは、上で定義されたような少なくとも1種のコモノマー(MA)、前記水素含有フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位及び少なくとも1種の他のモノマーに由来する繰り返し単位を含むコポリマーであることができる。
【0098】
フッ素化モノマーが、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどの、パー(ハロ)フルオロモノマーである場合、本発明の水素含有フルオロポリマーは、上で定義されたような少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位、前記パー(ハロ)フルオロモノマーに由来する繰り返し単位及び前記コモノマー(MA)とは異なる少なくとも1種の他の含水素モノマー、例えば、エチレン、プロピレン、ビニルエーテル、アクリルモノマーなどに由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0099】
好ましいポリマー(F)は、フッ素化モノマーがフッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択されるものである。
【0100】
ポリマー(F)は、好ましくは:
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と;
(b)任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びそれらの混合物から選択されるフッ素化コモノマーと;
(c)0.05モル%~10モル%、好ましくは0.1モル%~7.5モル%、より好ましくは0.2モル%~3.0モル%の、上で定義されたような式(I)を有するコモノマー(MA)と
を含む。
【0101】
本発明の方法の工程(ii)において、官能性フルオロポリマー[ポリマー(F)]と、プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む混合物とは、ポリマー(F)の融点に応じて、典型的には100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃の温度で、溶融状態で反応する。
【0102】
本発明の方法のこの工程(ii)において、官能性フルオロポリマー[ポリマー(F)]のヒドロキシル基の少なくとも一部と、プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]の残存加水分解性基Yの少なくとも一部とは、ポリマー(F)の鎖からなる有機ドメインと、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインとからなるフルオロポリマーハイブリッド複合材料を生成するように反応し、こうして電解質溶液(ES)を既に含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質を提供することが理解される。
【0103】
本発明の方法から得られる高分子電解質中に含まれるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、有利には0.01~60重量%、好ましくは0.1~40重量%の、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインを含む。
【0104】
本発明の方法の工程(ii)において、ポリマー(F)と、プレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む組成物とは、典型的には溶融加工技法を用いて溶融状態で反応させられる。
【0105】
本方法の工程(ii)において用いられる好ましい溶融加工技法は、一般に100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃に含まれる温度での押出である。
【0106】
本発明の方法の工程(ii)における反応は、通常、二軸スクリュー押出機において行われる。過剰の反応熱は、一般にバレル壁を通って放熱される。
【0107】
ポリマー(F)は、好ましくは、前記ポリマー(F)とプレゲル化金属化合物[化合物(P-GM)]を含む前記組成物との総重量を基準として15重量%~99.99重量%、好ましくは20重量%~50重量%に含まれる量で二軸スクリュー押出機へ供給される。
【0108】
本発明の方法によって得られる高分子電解質は、典型的には押出によって又は圧縮成形によって膜へ都合よく加工することができる。
【0109】
本発明の目的のためには、用語「膜」は、それと接触する化学種の透過を抑える不連続の、一般に薄い界面を意味することを意図する。この界面は、均質であっても、すなわち、構造が完全に一様(稠密な膜)であってもよく、又はそれは、例えば、有限の寸法の空隙、細孔若しくは穴を含有する、化学的に又は物理的に不均質(多孔質膜)であってもよい。
【0110】
第3の目的において、本発明は、本発明の方法によって得られた高分子電解質を、伝統的な圧縮成形又は押出技法によって加工する工程を含む、電気化学的デバイス用の膜の製造方法に関する。
【0111】
本発明の1つの好ましい実施形態において,本方法の工程(ii)は、押出機において実施され、溶融状態で反応の終わりに得られた高分子電解質は、フラットダイを備えた押出機を用いることによるフィルム押出によって膜へ直接加工される。
【0112】
本発明のさらなる目的は、したがって、上で定義されたような方法によって得ることができる高分子電解質膜である。
【0113】
本発明の膜は、典型的には5μm~500μm、好ましくは10μm~250μm、より好ましくは15μm~50μmに含まれる厚さを有する。
【0114】
本発明の高分子電解質膜は、電気化学的及び光電気化学的デバイスにおける高分子電解質セパレータとして有利に使用することができる。
【0115】
好適な電気化学的デバイスの非限定的な例としては、とりわけ、二次電池、特にリチウムイオン電池及びリチウム-硫黄電池、並びにキャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0116】
本発明は、さらに、高分子電解質セパレータとして上で定義されたような本発明の高分子電解質膜を含む金属イオン二次電池に関する。
【0117】
金属イオン二次電池は、一般に、負極(カソード)と、上で定義されたような本発明の高分子電解質膜と正極(アノード)とを組み立てることによって形成される。
【0118】
金属イオン二次電池は、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類二次電池、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0119】
好適な光電気化学デバイスの非限定的な例としては、とりわけ、色素増感太陽電池、フォトクロミックデバイス及びエレクトロクロミックデバイスが挙げられる。
【0120】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0121】
本発明は以下の実施例に関連してこれから説明されるが、その目的は、単に例示的であり、本発明を限定するものではない。
【0122】
原材料
ポリマーFA:0.7モル%のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を含むVDF/HEAコポリマー。
ポリマーFB:25℃にてDMF中で0.11l/gの固有粘度を有するVDF/HEA(0.4モル%)/HFP(2.5モル%)コポリマー。
Aldrich Chemistryから液体として商業的に入手可能なテトラエチルオルトシリケート(TEOS)純度99%超。
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)。
イオン液体(IL):式:
のN-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pyr13TFSI)。
クエン酸:Sigma Aldrichから結晶として商業的に入手可能、純度99%。
ES:Pyr13TFSI中の0.5MのLiTFSI。
【0123】
イオン伝導率(σ)の測定
高分子電解質膜を、1/2インチのステンレス鋼Swagelokセルプロトタイプに入れる。高分子電解質膜の抵抗を25℃で測定し、イオン伝導率(σ)を、次の方程式:
(式中、dは、フィルムの厚さであり、Rは、バルク抵抗であり、Sは、ステンレス鋼電極の面積である)
を用いて得た。
【0124】
ポリマー(F)の固有粘度の測定(25℃でDMF)
固有粘度[η](dl/g)は、Ubbelhode粘度計において、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でジメチルホルムアミドに溶解させることによって得られた溶液の、25℃における、滴下時間に基づいて、以下の方程式
(式中、cは、g/dl単位でのポリマー濃度であり;
ηrは、相対粘度、すなわち、試料溶液の滴下時間と、溶媒の滴下時間との間の比であり;ηspは、比粘度、すなわち、η-1であり;Γは、ポリマー(F)については3に相当する、実験因子である)
を用いて決定した。
【0125】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料中のSiO含量の測定
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物中のSiOの量は、走査電子顕微鏡法(SEM)から得られた顕微鏡写真に関してケイ素(Si)及びフッ素(F)元素のエネルギー分散型分光法(EDS)分析によって測定した。SiO含量は、以下の方程式(1)を用いることによって決定した:
SiO[%]=[[SiO]/([SiO]+[F])]×100 (1)。
ここで、方程式(1)の[SiO]及び[F]は、それぞれ、以下の方程式(2)及び(3):
[SiO]=([SiEDS]×60)/28) (2)
[F]=([FEDS]×64)/38) (3)
(式中:
- SiEDS及びFEDSは、EDSにより得られたSi及びFの重量%であり、
- 60は、SiOの分子量であり、
- 28は、Siの原子量であり、
- 64は、CH=CFの分子量であり、
- 38は、2個のF元素の原子量である)
を用いて計算する。
【0126】
SEM-EDSによる膜のモルフォロジの測定
膜検体のモルフォロジは、LEO-1450VP Scanning Electron Microscope(走査電子顕微鏡)(ビーム電圧:20kV;作動距離:15mm)を用いて検討した。液体窒素中での脆い破砕から得られた膜検体横断面を、導電性接着テープでスタブ上に留め、金でスパッタした。X線プローブ(INCA Energy Oxford,Cu-Kα X線源、k=1.540562Å)を利用して元素分析(EDS)を行った。EDS分析は、約20×20μmの面積に関して2500×の倍率で行った。
【0127】
ポリマーFAの調製
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、48204gの脱塩水及び20.2gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順次導入した。反応器をガス抜きし、窒素で1バールまで加圧し、次いで、10.8gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマー及び127.7gのジエチルカーボネート(DEC)、続いて204gの、イソドデカン中のt-アミルパーピバレート開始剤の75重量%溶液、及び25187gのフッ化ビニリデン(VDF)モノマーを反応器に導入した。反応器を、次いで110バールの最終圧力まで52℃に徐々に加熱した。温度を全試行の全体にわたって52℃で一定に維持した。圧力を、合計16.5kgまでHEAモノマーの19.9g/l水溶液を供給することによって全試行の全体にわたって110バールで一定に維持し、次いで圧力が低下し始めた。大気圧に達するまで懸濁液を脱ガスすることによって、重合実験を止めた。そのようにして得られたポリマーを、次いで回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。コモノマーのおよそ75%の転化率が得られた。
【0128】
ポリマーFBの調製
250rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、50.2kgの脱塩水並びに一対の懸濁化剤としての3.80gのMETHOCEL(登録商標)K100GR及び15.21gのAlkox(登録商標)E45を順次導入した。反応器を、数回の20℃での減圧(30mmHg)と窒素のパージとでパージした。次いで、187.3gの、イソドデカン中のt-アミルパーピバレート開始剤の75重量%溶液。撹拌の速度を300rpmに高めた。最後に、16.3gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び2555gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入し、引き続き22.8kgのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を55℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中188gのHEAを含有する16.96kgの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力が低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱ガスすることによって重合を止めた。コモノマーのおよそ81%転化率が得られた。そのようにして得られたポリマーを、次いで回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0129】
実施例1:ポリマーFAを使った高分子電解質の製造
工程(i):プレゲル化金属化合物の調製
適度の速度で動作する磁気式撹拌機を備えた50mlビーカーに、以下の原料を順次導入した:
- ES:13.68g
- TEOS:6.62g
- 水:2.30g(モル比TEOS:HO=1:4)
- エタノール:1.66g(重量比TEOS:EtOH=4:1)
- クエン酸:0.089g(TEOS+HOの1重量%)。
【0130】
各バッチにおいて生成するSiOの理論量は、1.89g(出発TEOS、水、エタノール成分の17.91%)であった;プレゲル化金属化合物組成物を、プロセス全体中に激しい撹拌下に維持した。
【0131】
工程(ii)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質の調製:
工程(i)において得られた溶液とポリマーFA(8.4g)とを、ミニ押出機の供給ホッパーへ導入し、共回転二軸スクリューマイクロ押出機DSM Xplore 15ml Microcompounderを用いて溶融ブレンドした。マイクロ押出機は、2つの取り外し可能な、円錐型混合スクリューを含有する分割可能な流体密封混合区画によって形成されている。滞留時間を2分に固定した。スクリュー速度を、それぞれ、供給用には50rpm、混合用には100rpmに固定した。加熱温度を180℃に設定した。2分の混合の終わりに、ノズルを通して材料を押し出した。
【0132】
そのようにして得られた高分子電解質の成分の量は、次の通りであった:
- SiO:8重量%;
- ポリマーFA:35重量%;
- ES:57重量%。
【0133】
実施例2-比較-:ポリマーFAを使ったフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を、国際公開第2014/067816号パンフレットに開示された方法であって、ポリマーFAが押し出され、電解質溶液の不在下に金属化合物と反応し、ポリマーFA/SiO複合材料75/25重量%をもたらす方法に従って調製した。複合材料をペレットの形態で得た。10.08gの前記ペレットを、13.92gのESと共にミニ押出機の供給ホッパーへ装入し、180℃に保った。2分後に、生成物を排出させた。押出から生じた生成物は、いくらかの透明部分と、いくらかの不透明部分とを有した。押出物は、溶融物の甚だしい稠度を示さなかった。
【0134】
実施例3:ポリマーFBを使った高分子電解質の製造
工程(i):プレゲル化金属化合物の調製
工程(i)は、上の実施例1に記載されたように実施した。
【0135】
工程(ii)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質の調製:
工程(ii)を、二軸共回転噛み合い押出機(18mmのスクリュー直径D及び720mmのスクリュー長(40D)を有するLeistritz 18 ZSE 18 HP)において実施した。押出機は、メインフィーダー、第2フィーダー及び脱ガスユニットを備えていた。バレルは、所望の温度プロファイルを設定することを可能にする、8つの温度制御ゾーン及び1つの冷却ゾーン(メインフィーダーでの)から構成された。溶融ポリマーは、3mm厚さ及び15mm長さのフラットプロファイルからなる、ダイから外へ出た。押出物を空気中で冷却した。
【0136】
ポリマーFBを、メインホッパーから押出機へ供給した。同時に、工程(i)において得られたプレゲルをブロックゾーン3(270~360mm)に配置された第2ホッパーによって押出機へ供給した。この工程のためのスクリュープロファイルは、ピッチの正規低下ありの搬送要素の領域(ゾーン0~1)、次いで3つの混練要素及び1つの逆流要素によって構成される混練ブロック(ゾーン2)、次いで長い搬送ゾーン(ゾーン3~4);このシリーズの要素の後に、5つの混練ブロック(ゾーン5~6)からなった。
【0137】
最後に、5つの搬送要素及び脱ガスユニットが、ダイ出口の前に位置した(ゾーン6~8)。使用された温度プロファイルを、本明細書で下の表1に報告する。押出機回転速度は350rpmであった。
【0138】
【0139】
材料は、引っ張ることができる溶融強度で、連続的で、自立性であるように見える。
【0140】
実施例4:ポリマーFBを使った高分子電解質の製造
工程(i):プレゲル化金属化合物の調製
適度の速度で動作する磁気式撹拌機を備えた50mlビーカーに、以下の原料を順次導入した:
- ES:13.68g
- TEOS:6.62g
- ギ酸:1.83g(TEOSの27重量%)。
【0141】
プレゲル化金属化合物組成物を、プロセスの全体中、激しい撹拌下に維持した。
【0142】
工程(ii)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質の調製:
工程(ii)は、実施例3の工程(ii)におけるように実施した。
【0143】
そのようにして得られた高分子電解質の成分の量は、次の通りであった:
- SiO:8重量%;
- ポリマーFB:35重量%;
- ES:57重量%。
【0144】
実施例5-膜の製造
実施例1、2、3及び4の下で詳述されたような方法から得られた押出物を、150℃の加熱温度及び10MPaの圧力で3分間ホット圧縮成形プレスにおいて圧縮成形することによって加工し、60×60×0.2mm膜検体を得た。次いで、試料をここで、プロセスの後処理の一環として120℃で120分間維持した。
【0145】
実施例6-実施例5において得られた試料の元素分析
表2に、実施例5において得られた試料の元素分析を報告する。
【0146】
【0147】
本発明の高分子電解質は、かなり一様な膜を与える。膜中の原子は、フィルム中にうまく分布している。それに対して、比較例2の押出物を使って得られた試料は、元素のいくつかが一様に存在しないエリアを示す。
【0148】
実施例7-実施例5において得られた試料のイオン伝導率
表3に、実施例5において得られた試料のイオン伝導率を報告する。
【0149】
【0150】
本発明による高分子電解質は、それらを、Liイオン電池でのセパレータにおけるなどの、電池用途での使用にとって好適にするイオン伝導率を示す。
【0151】
実施例8:フィルム押出によるポリマーFBを使った高分子電解質の膜の製造
工程(i):プレゲル化金属化合物の調製
工程(i)は、上の実施例1に記載されたように実施した。
【0152】
工程(ii)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質の調製:
工程(ii)は、実施例3におけるように実施したが、反応の終わりに、溶融ポリマーは、1mm厚さ及び40mm長さのフラットプロファイルからなる、ダイから外へ出た。押出物フィルムを、100~500umのギャップを持った直径100mm及び幅100mmの2つのシリンダーの間で伸ばした。押出物を空気中で冷却した。
【0153】
実施例9:フィルム押出によるポリマーFBを使った高分子電解質の膜の製造
工程(i):プレゲル化金属化合物の調製
工程(i)は、上の実施例4に記載されたように実施した。
【0154】
工程(ii)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質の調製:
工程(ii)は、実施例8に記載されたように実施した。
【0155】
実施例10-実施例8及び9において得られた試料の元素分析
表4に、実施例8及び9において得られた試料の元素分析を報告する。
【0156】
【0157】
本発明の高分子電解質は、かなり一様な膜を与える。膜中の原子は、フィルム中にうまく分布している。
【0158】
実施例11 実施例8及び9において得られた試料のイオン伝導率
表5に、実施例8及び9において得られた試料のイオン伝導率を報告する。
【0159】
【0160】
本発明による高分子電解質膜は、それらを、Liイオン電池でのセパレータにおけるなどの、電池用途での使用にとって好適にするイオン伝導率を示す。
【国際調査報告】