(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】PET画像化中の自動的な動き補正
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20220131BHJP
【FI】
G01T1/161 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534308
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(85)【翻訳文提出日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 US2019043855
(87)【国際公開番号】W WO2020131162
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン,チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188KK09
4C188KK15
4C188KK24
4C188KK33
4C188KK35
4C188LL10
(57)【要約】
放射性画像化の自動動き補正の方法とシステム。本方法は、画像化期間中に検出された複数の消滅イベントを含む画像化データの第1の組を受け取ることと、画像化期間についての画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成することとを含む。4次元の立体的画像はそれぞれ標的組織を含む。複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの動き補正が決定される。4次元の立体的画像に関連する時間期間で標的組織について生成された標的追跡データを用いて、少なくとも1つの動き補正が決定される。補正された画像データは、画像化データの第1の組から生成され、補正された画像データから、画像化期間中に少なくとも1つの動き補正と標的組織を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像が生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像化期間中に検出された複数の消滅イベントを含む画像化データの第1の組を受信することと、
前記画像化期間について前記画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成することとであって、前記4次元の立体的画像はそれぞれ標的組織を含むことと、
前記複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの動き補正を決定することであって、その際、前記4次元の立体的画像と関連する時間期間にわたって標的組織について生成された標的追跡データを用いて、前記少なくとも1つの動き補正を決定することと、
前記画像化データの第1の組と前記少なくとも1つの動き補正とから補正された画像データを生成することと、
前記補正された画像データから、前記画像化期間中に前記標的組織を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像を生成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの動き補正を決定する際、
前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つの所定の時間的大きさについて、前記標的組織を含む少なくとも1つの動的画像を生成することと、
前記動的画像中の前記標的組織の位置を識別することと、
前記動的画像中の標的臓器の位置に基づいて、前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つ内の前記標的組織の位置を識別することと、
前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つ内の前記標的組織の位置に基づいて、前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つについて少なくとも1つの動き補正を生成することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動的画像内の前記標的組織の前記位置は、前記標的組織の標的追跡を用いて識別される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの動的画像は、前記画像化期間中に生成された画像化データの第2の組から生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記画像化データの第1の組は、第1の画像化モダリティによって生成され、前記画像化データの第2の組は、第2の画像化モダリティによって生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記画像化データの第1の組と前記少なくとも1つの動き補正とから前記補正された画像データを生成することは、
前記複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて、少なくとも1つの軸平面シフト値を決定することと、
前記少なくとも1つの軸平面シフト値を用いて前記画像化データの第1の組のサブセットをシフトすることと、
前記シフトされたサブセットからサイノグラムを生成することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記画像化データの第1の組は、リストモード・データの組を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記4次元の立体的画像と関連した時間期間は1秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的組織は臓器である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の画像化期間中に複数の消滅イベントを含む画像化データの第1の組を生成するように構成された第1の画像化モダリティと、
コンピュータと、
を含むシステムであって、前記コンピュータは、
前記画像化データの第1の組を受信することと、
前記画像化期間について前記画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成することであって、前記4次元の立体的画像はそれぞれ標的組織を含むことと、
前記複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの動き補正を決定することであって、その際、前記4次元の立体的画像と関連する時間期間にわたって標的組織について生成された標的追跡データを用いて、前記少なくとも1つの動き補正を決定することと、
前記画像化データの第1の組と前記動きベクトルのオフセットとから補正された画像データを生成することと、
前記補正された画像データから前記画像化期間中に前記標的組織を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像を生成することと、
を行うように構成された、システム。
【請求項11】
前記コンピュータは、
前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つの所定の時間的大きさについて、前記標的組織を含む少なくとも1つの動的画像を生成することと、
前記動的画像中の前記標的組織の位置を識別することと、
前記動的画像中の前記標的組織の位置に基づいて、前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つ内の前記標的組織の位置を識別することと、
前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つ内の前記標的組織の位置に基づいて、前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つについて少なくとも1つの動き補正を生成することと、
を行うように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記動的画像中の前記標的組織の前記位置は、前記標的組織の標的追跡を用いて識別される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2の画像化期間中に画像化データの第2の組を生成するように構成された第2の画像化モダリティを含み、この際、前記少なくとも1つの動的画像は、前記画像化データの第2の組から生成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の画像化モダリティは、ポジトロン断層法(PET)の画像化モダリティである、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記コンピュータは、
前記複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの軸平面シフト値を決定し、
前記軸平面シフト値を用いて前記画像データの第1の組のサブセットをシフトさせ、前記シフトされたサブセットからサイノグラムを生成する、
ように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記コンピュータは、前記画像化データの第1の組をリストモード・データに変換するように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記4次元の立体的画像と関連した時間期間は1秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
コンピュータシステムを実行させるように構成された命令を記憶した、非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、
画像化期間中に検出された複数の消滅イベントを含む画像化データの第1の組を受信することと、
前記画像化期間について前記画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成することであって、前記4次元の立体的画像はそれぞれ標的組織を含むことと、
前記複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの動き補正を決定することであって、その際、前記4次元の立体的画像と関連する時間期間にわたって標的組織について生成された標的追跡データを用いて、前記少なくとも1つの動き補正を決定することと、
前記画像化データの第1の組と前記少なくとも1つの動き補正とから補正された画像データを生成することと、
前記補正された画像データから、前記画像化期間中に、前記標的組織を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像を生成すること、
を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記コンピュータシステムは、
前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つの所定の時間的大きさについて、前記標的組織を含む少なくとも1つの動的画像を生成することと、
前記動的画像中の前記標的組織の位置を識別することと、
前記動的画像中の前記標的組織の位置に基づいて、前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つ内の前記標的組織の位置を識別することと、
前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つ内の前記標的組織の位置に基づいて、前記複数の4次元の立体的画像のうち選択された1つについて少なくとも1つの動き補正を生成すること、
を行うように命令される、請求項18に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記コンピュータシステムは、
複数の4次元の立体的画像のそれぞれについての少なくとも1つの軸平面シフト値を決定することと、
前記少なくとも1つの軸平面シフト値を用いて、前記画像化データの第1の組のサブセットをシフトすることと、
前記シフトされたサブセットからサイノグラムを生成することと、
を行うように命令される、請求項18に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本出願は、2018年12月17日に出願された米国仮出願第16/222,056号に基づく優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示内容を参照により本明細書に援用するものである。
【0002】
本開示内容の態様は、概して、放射性画像化システムに関する。より具体的には、放射性画像化システム用の動き補正に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の内部構造の2次元及び/又は3次元の画像を構成するために、飛行時間(TOF:time-of-flight)方式の放射性画像化(ニュークリア・イメージング)が用いられることがあり、例えば、TOF方式のポジトロン断層法(PET:positron-emission-tomography)が用いられることがある。TOF方式のPET (及び他のTOF方式の放射性画像化)では、一対の検出器を用いて、光子対の消滅のほぼ同時の検出を表す、符号するイベントを検出している。TOF方式のPETシステムでは、2つの光子の検出の間の時間差(例えば、TOF)を決定して、2つの検出器の間で生じた消滅イベントの起点を局所化している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々の臓器のPET画像化では、目標となる臓器について、安静時のスキャン(走査)とストレス時のスキャンの双方またはいずれかが含まれ得る。安静時のスキャンとストレス時のスキャンの双方の最中では、臓器の周期的な動きと非周期的な動きとに起因して、画像にぼけ(かすみ)が生じたり、欠陥が生じることが起こり得る。周期的な動きには、心臓の動きや、呼吸の動き等、臓器の再発的で、予想可能な動きが含まれ得る。ストレス時のスキャンの最中にしばしば起こり得る非周期的な動きには、スキャン中の患者の動きや、1つまたは複数の筋肉の緩和(例えばクリープ)や、咳等の、予期されない、突発的及び/又は非反復的な動きが含まれ得る。現行のシステムでは、非周期的な動きによって、動きのぼけまたは位置の変化に起因して、使用に不向きな(または診断に不向きな)画像をもたらす虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、様々な実施形態では、放射性画像の自動的な動き補正用の方法が開示される。本方法は、画像化期間(撮像期間)中に検出された複数の消滅イベントを含む画像化データ(撮像データ)の第1の組を受信することと、画像化期間について画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成することと、を含む。4次元の立体的画像のそれぞれは、標的(ターゲット)組織を含む。複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて少なくとも1つの動き補正が決定される。4次元の立体的画像と関連する時間期間にわたって標的臓器について生成された標的追跡データを用いて、少なくとも1つの動き補正が決定される。画像化データの第1の組と少なくとも1つの動き補正とから、補正された画像データが生成される。補正された画像データから、画像化期間中に標的組織を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像が生成される。
【0006】
様々な実施形態では、システムが開示される。本システムは、第1の画像化期間中に、複数の消滅イベントを含む画像化データの第1の組を生成するように構成された第1の画像化モダリティと、画像化データの第1の組を受信して、画像化期間について画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成するように構成されたコンピュータと、を含む。4次元の立体的画像のそれぞれは、標的臓器を含む。さらに、コンピュータは、複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて、動きベクトルのオフセットを決定するように構成される。動きベクトルのオフセットは、4次元の立体的画像と関連する時間期間にわたって標的臓器について生成された標的追跡データを用いて決定される。コンピュータは、画像化データの第1の組と動きベクトルのオフセットとから補正された画像データを生成することと、補正された画像データから画像化期間中に標的臓器を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像を生成することと、を行うように構成される。
【0007】
様々な実施形態では、命令を記憶した、非一時的なコンピュータ可読媒体が開示される。本命令は、コンピュータシステムを実行させるように構成されていて、画像化期間中に検出された複数の消滅イベントを含む画像化データの第1の組を受信することと、画像化期間について画像化データから複数の4次元の立体的画像を生成することと、を含む。4次元の立体的画像は、標的臓器をそれぞれ含む。さらに、命令は、複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて動きベクトルのオフセットを決定すること(ステップ)を含む。動きベクトルのオフセットは、4次元の立体的画像と関連する時間期間にわたって標的臓器について生成された標的追跡データを用いて決定される。さらに、命令は、画像化データの第1の組と動きベクトルのオフセットとから補正された画像データを生成させることと、補正された画像データから画像化期間中に標的臓器を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像を生成させること、を含む。
【0008】
以下は、図の構成要素から明らかとなる。これら構成要素は、例示的な目的のために提供されており、必ずしも縮尺通りに描かれたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は幾つかの実施形態に係る、PET画像化システムを例示する図である。
【
図2A】
図2Aは幾つかの実施形態に係る、非周期的な動きを含む臓器の複数の静止画像を示す図である。
【
図2B】
図2Bは幾つかの実施形態に係る、
図2Aの複数の静止画像から生成された極画像を示す図である。
【
図3】
図3は幾つかの実施形態に係る、PETスキャンシステム中の静止画像についての動き補正の方法を例示する図である。
【
図4】
図4は幾つかの実施形態に係る、複数の4次元の立体的画像を生成するプロセスのフローを例示す図である。
【
図5】
図5は幾つかの実施形態に係る、標的取得プロセスを用いて識別された標的組織の4次元の立体的画像中の標的取得を例示す図である。
【
図6】
図6は幾つかの実施形態に係る、複数の4次元の立体的画像中の標的臓器の標的追跡を用いて決定された動きベクトルのオフセットを例示するチャートである。
【
図7】
図7は幾つかの実施形態に係る、補正された画像化データの生成中に画像化データに適用される複数のサイノグラム面シフト補正値を示すチャートである。
【
図8A】
図8Aはは、従来の再構成プロセスを用いて、
図6に例示した画像化期間中に収集された画像化データから生成された複数の再構成された静止画像を例示する図である。
【
図8B】
図8Bは幾つかの実施形態に係る、
図6に例示した画像化期間中に収集された画像化データから生成された複数の再構成された静止画像を例示する図である。
【
図9A】
図9Aは幾つかの実施形態に係る、臓器の非周期的な動きを含む画像化期間を有する画像化手順を示すチャートである。
【
図9B】
図9Bは従来の再構成プロセスを使用して、
図9Aに例示した画像化期間中に収集された画像化データから生成された複数の再構成された静止画像を示す図である。
【
図9C】
図9Cはは、幾つかの実施形態に係る、
図9Aに例示した画像化期間中に収集された画像化データから生成された複数の再構成された静止画像を示す図である。
【
図10A】
図10Aは幾つかの実施形態に係る、動き補正の方法を使用して生成された臓器の複数の静止画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態に関する説明は、本明細書の一部を成すと考えられる添付図面を参照して、理解されることを想定している。
【0011】
本開示内容の様々な実施形態は、非周期的な動きを含むデータの組(セット)から、診断用のPET画像を生成することに関する上記課題に対処する。幾つかの実施形態では、所定の画像化期間について画像化データから、複数の4次元の立体的画像(容積測定画像)を生成する。4次元の立体的画像のそれぞれは、標的組織を含むものとする。複数の4次元の立体的画像のそれぞれについて、動きベクトルのオフセットが決定される。動きベクトルのオフセットは、4次元の立体的画像に関連した時間期間にわたって、標的組織について生成された標的追跡データを用いて決定される。画像化データの第1の組から補正された画像化データが生成されて、補正された画像化データから、動きベクトルのオフセットと、画像化期間中の標的組織を含む少なくとも1つの静止的な再構成画像とが生成される。
【0012】
図1を参照すると、放射性画像化検出器100の実施形態の一例が示されている。放射性画像化検出器100は、第1のガントリ(構台)116a内に設けられた少なくとも第1のモダリティ(様相性)112用のスキャナを含む。第1のモダリティ112は、複数の検出器50を含むが、これらは、消滅光子、ガンマ線、及び/又は他の放射性画像化イベントを検出するように構成されている。様々な実施形態では、第1のモダリティ112は、PET検出器である。患者117は、移動可能な患者用ベッド118上に横たわるが、このベッドはガントリの間を移動可能となっている。幾つかの実施形態では、放射性画像化検出器100は、第2のガントリ116b内に設けられた第2の画像化モダリティ114用のスキャナを含む。第2の画像化モダリティ114は、任意の適当な画像化モダリティであってもよく、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)及び/又は他の任意の適当な画像化モダリティでもよい。
【0013】
第1モダリティ112からのスキャンデータ(走査データ)は、1つ又は複数のコンピュータ用データベース140に記憶されて、コンピュータ130の1つ又は複数のコンピュータ用プロセッサ150によって処理される。
図1に示したコンピュータ130は、例示に過ぎず、このコンピュータ130は、1つ又は複数の別個の計算装置を含み得る。画像化データの組は、第1のモダリティ112によって提供することができ、及び/又は、別のデータの組として提供することができ、例えば、コンピュータ130と接続されたメモリ(記憶装置)から提供されてもよい。コンピュータ130は、複数の検出器50のうちの1つから受け取った信号を処理するために、1つまたは複数の処理用の電子機器を含むことができる。
【0014】
図2Aを参照すると、心臓等の標的臓器202についての複数の静止画像200a~200eが示されている。複数の静止画像200a~200eは、所定の画像化期間中に生成されるが、例えば、放射性画像化検出器100を用いて生成される。PET画像化の手順の間、患者の動き、嫌がること、及び/又は生理学的反応によって、データ中に非周期的な動きがもたらされる可能性がある。非周期的な動きが存在する場合、相当なアーチファクト及び/又は動きのぼけが生じる可能性がある。例えば、複数の静止画像200a~200eは、画像化中の患者の非周期的な動きからもたらされる相当な動きのぼけを含む。
図2Bに示すように、複数の静止画像200a~200eから生成された標的臓器202の極画像204には、非周期的な動きの結果として、相当なアーチファクト206a~206bが含まれている。非周期的な動きのため、診断に不向きな品質の静止画像200a~200eと極画像204がもたらされている。すなわち、画像200a~200e、204は、標的臓器202中の欠陥または他の問題の診断には使用できない。その結果、患者に対して追加の診断画像化を行わなくてはならず、さらなる放射線と不快さに患者が曝される必要性が生じている。
【0015】
幾つかの実施形態では、非周期的な動きによってもたらされる動きのぼけ及び/又はアーチファクトを補正するために、PET画像化データに対して動き補正用のシステムと方法が適用される。
図3を参照すると、幾つかの実施形態における、PET画像に対する非周期的な動きの補正の方法を示すフローチャート300が例示されている。本方法300は、診断画像の再構成中に、心臓等の標的臓器204の位置を識別して、追跡するように構成されており、非周期的な動きと関連アーチファクトの除去及び/又は最小化を可能にしている。本方法300によって、例えば、
図2Aの静止画像200a~200eに関連するPET画像データ等の、従来の診断に不向きな画像を生成させていた画像化データから、診断に向く画像を生成することを可能にする。
【0016】
ステップ302では、例えば、コンピュータ130等のシステムによって、PET画像化データが受信される。画像化データは、放射性画像化手順中に、第1のモダリティ112等の画像化モダリティによって検出された、各検出イベントに関するPET画像データを含み得る。幾つかの実施形態では、画像化データが生成されると、リアルタイムでシステムに提供される(例えば、画像化モダリティからシステムへと直ちに提供される)。他の実施形態では、画像化期間中に画像化モダリティによって画像化データが生成されると、その後の画像生成期間中にシステムによって処理されてもよい。幾つかの実施形態では、画像データは、リストモードのフォーマットで提供される。なお、画像データは、システムによって可読可能な任意のフォーマットで提供されて、リストモードのフォーマットに変換可能なことを理解されたい。
【0017】
ステップ304では、リストモード・データ402から直接的に複数の立体的画像が生成される。例えば、
図4に示すように、リストモード・データ402は、複数のデータ・ポイントを含み、それぞれ、第1の検出器識別子(A)、第2の検出器識別子(B)、および飛行時間(TOF)を含み、従って、{(A
1、B
1、TOF
1);(A
2、B
2、TOF
2)・・・(A
n,B
n、TOF
n)}を含む。第1の検出器識別子(A)と第2の検出器識別子(B)は、それぞれ消滅イベントを検出する検出器404a、404bに対応する。検出器識別子とTOFを使用して、システム(コンピュータ130等)は、消滅イベントに関する位置406、またはボクセル(体積)を識別する。システムは、所定の診断期間にわたって、リストモード・データ402中の各消滅イベントを含む静止的な立体的画像を生成し、例えば、4次元の立体的画像408a、408b(又はフレーム)を生成する。各4次元の立体的画像408a、408bは、それぞれ、空間的な3次元(x、y、z)を含むとともに、所定の診断期間から選択された所定の時間期間に対応する時間的な次元(t)とを含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、時間的な次元tは、1秒の増加する間隔を含むが、より短い及び/又はより長い時間的な大きさを選択できることを理解されたい。例えば、幾つかの実施態様では、第1番目の4次元の立体的画像が、第1番目の時間(例えば、0~1秒)の間に生成され、第2番目の4次元の立体的画像が、第2番目の時間(例えば、1~2秒)の間に生成され、さらに、第n番目の4次元の立体的画像が、第n番目の時間(例えば、(n~1)~n秒)の間に生成される。幾つかの実施形態では、生成される立体的画像の総数は、時間的な次元の増分t、例えば、1秒、2秒、0.5秒等、で割った総合的な画像化期間(ttotal)に等しい。所定の診断期間は、画像化手順の全体及び/又は画像化手順の一部を含むことができ、トレーサが標的組織に分配される前の摂取及び/又は拡散期間等の非診断的画像化を除くものとする。
【0019】
ステップ306では、所定の診断期間中に、標的組織の動的画像が生成される。単一の連続的な動的画像が、所定の診断期間全体で生成されるか、及び/又は、所定の診断期間の一部について複数の動的画像が生成され得る。幾つかの実施形態では、動的画像は、CT画像化モダリティ等の第2の画像化モダリティ114によって生成される画像化データを用いて生成される。画像化データの第2の組は、PET画像化データの組と同時に生成される。標的組織の位置は、1つまたは複数の既知の標的識別処理を用いて、動的画像中で識別される。例えば、様々な実施形態では、標的組織の識別は、取得用の整合フィルタと追跡用の正規化相互相関を用いて、臓器を探知してもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、標的組織の中心が動的画像中で識別される。
【0020】
ステップ308では、選択された4次元の立体的画像408a、408bの時間的次元tに対応する動的画像(または動的画像の一部)から生成された標的追跡データを用いて、4次元の立体的画像408a、408bの各々について動きベクトルが生成される。例えば、幾つかの実施形態では、
図5に例示するように、4次元の立体的画像408bのそれぞれ内で、標的組織410及び/又は標的組織410の中心点412を識別するために、動的画像からの動きと位置の情報が使用される。本実施形態は、標的組織410の並進的な追跡を含むように図示されて、論じられている。しかしながら、動きベクトルを生成するために、任意の種類の動きを追跡することができ、例えば、並進的、回転的、斜め(スキュー)、非剛体的変換等を使用できることが理解されたい。
【0021】
動的画像から生成された動きと位置の情報は、複数の立体的画像内の各画像に参照されて、リストモード・データの組402内で選択された診断期間について動きベクトルの組が生成される。
図6は、リストモード・データ402についての動きベクトルのオフセット418を例示するチャート416である。オフセット418の大きさが大きいほど、対応する4次元の立体的画像408bの時間期間t中の標的組織410の非周期的な動きが大きくなる。幾つかの実施形態では、追跡(トレーサ)分子の摂取と拡散とに対応するリストモード・データ402の非診断部分422は無視される(例えば、診断用画像化には使用されない)。ただし、摂取及び/又は拡散の期間を含む、追加の標的の追跡及び/又は診断の手順が実施可能なことを理解されたい。例えば、心臓のスキャンの初期段階では、標的臓器(すなわち標的組織)のシグネチャが変化する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態に従って、標的組織の変化を通じた動き追跡について追跡して、動き補正を適用してもよい。
【0022】
ステップ310では、動きベクトルのオフセット418に対応する軸平面シフト(又は他の動き補正シフト)を含む補正データが、リストモード・データ402について生成される。幾つかの実施形態では、平面シフトは、z軸等の所定の軸上での離散シフト値に対応する。
図7を参照すると、リストモード・データ402から補正データの生成中に、リストモード・データ402に適用される複数の離散シフト452を示すチャート450である。例えば、幾つかの実施形態では、グループ化および再構成の間にボクセル(体積要素)の位置を補正するために、時間期間t内の1つまたは複数のボクセルに対して、離散シフト値が適用されている。幾つかの実施形態では、補正されたデータは、画像化期間中の所定の診断部分420のみを用いて生成される。幾つかの実施形態では、補正された画像化データの生成の前に、リストモード・データ402の前処理を適用することができ、例えば、ランダム同時計数に関する補正、散乱光子の推定および減算、検出器のむだ時間の補正、及び/又は検出器の感度の補正等を適用してもよい。
【0023】
ステップ312では、補正された画像化データから1つ又は複数の再構成された静止画像が生成される。補正された画像化データからPET診断画像を生成するための既知の方法に従って、再構成を生成することができ、例えば、フィルタ逆投影、統計的尤度に基づくアプローチ(例えば、Shepp-Vargi構成)、ベイジアン構成及び/又は補正された画像化データから静止的なPET再構成画像を生成する任意の他の適当な方法に従ってもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、本方法300によって、
図2Bに例示したアーチファクト206a~206b等のアーチファクトの除去をもたらして、従来の診断に不向きなリストモード・データ402からの診断に向く品質を有する再構成された画像の生成を可能にする。例えば、リストモード・データ402は、例えば、
図6のボックス440で強調表示されるような、相当な非周期的な動きを含み得る。
図8Aを参照すると、従来の方法を使用して、リストモード・データ402から生成された標的組織510aの複数の静止画像502a~502cが例示されている。
図8Aに例示するように、静止画像502a~502cは、相当な動きのぶれとアーチファクトを有しており、その結果、その画像が診断に不向きな品質であって、患者の診断に用いることができない。
図8Bを参照すると、
図3から
図7を参照して論じてきた動き補正の方法100を使用して、リストモード・データ402から生成された標的組織510bの再構成が例示されている。
図8Bから理解できるように、動き補正を行っていないデータを用いて生成された静止画像502a~502cと比較して、各静止画像504a~504cでは、動きのぶれとアーチファクが除去及び/又は最小化されている。動き補正された静止画像504a~504cは、診断に向く品質を有しており、患者の診断に用いることができる。
【0025】
図9Aを参照すると、同様に、例えば、ボックス519によって強調表示されるように、診断期間420a中に非周期的な臓器のクリープまたは動きを含むリストモードPETデータについての動きベクトルのオフセット518を例示するチャート516である。画像化期間中に、1つ又は複数の筋肉が弛緩することによって、臓器のクリープが生じている。1つ又は複数の筋肉が弛緩すると、患者の内部の臓器の位置がずれる。この動きは非周期的であり、画像化中に臓器の位置の変化に起因して再構成画像の歪みをもたらす。
図9Bを参照すると、従来の方法を使用して、
図9Aに関連するリストモード・データからの従来の再構成によって生成された標的組織520aの複数の静止画像522a~522cが例示されている。
図9Bに例示するように、従来の再構成では、標的組織520aの臓器のクリープに起因して、アーチファクトを有する静止画像が生成されていた。画像は診断に向く品質を有しているものの、画像522a~522c内のアーチファクトによって、間違った又は欠落した診断がもたらされる虞があった。
図9Cを参照すると、本明細書に開示される方法に従って、チャート516のリストモードPETデータから生成された標的組織520bの複数の静止画像524a~524cが例示されている。
図9Cに例示するように、従来の静止画像522a~522cのアーチファクトは除去されていて、従来の静止画像522a~522cと比較して、標的組織520bの縁(エッジ)がより定義されていて、画像524a~524cの診断品質はより増加されている。
【0026】
図10Aと
図10Bを参照すると、
図2A及び
図2Bのスキャンデータのそれぞれについて、本明細書に開示された動き補正方法を行った後を示す図である。
図10Bに例示するように、複数の動き補正された静止画像208a~208eから生成された極画像210には、元の極画像204に含まれた欠陥206a~206bのいずれも含まれていない。本明細書に開示される方法とシステムを適用することによって、伝統的に診断に不向きな画像のみを生成したデータから、診断に向く画像208a~208e、210を生成することができる。
【0027】
上記装置と方法は、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されない。加えて、各装置及と方法の構成要素は、独立して実装されて、本明細書に記載される他の構成要素や方法から分離されてもよい。
【0028】
以上、本実施形態の説明は、当業者が開示内容を実施可能にするために提供されている。各実施形態の様々な変更は、当業者にはすぐに明らかになるだろう。また、本明細書に定義された一般的な原理は、発明的技術を用いることなく、他の実施形態に適用されてもよい。本開示内容は、本明細書に開示された実施形態に限定されることを意図しておらず、本明細書に開示された技術思想と新規な特徴に対応する最も広い範囲に適用可能なことを意図している。
【国際調査報告】