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特表2022-513274マイクロホンカプセル、複数のマイクロホンカプセルを備えたマイクロホン構成、およびマイクロホンアレイ較正方法
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  • 特表-マイクロホンカプセル、複数のマイクロホンカプセルを備えたマイクロホン構成、およびマイクロホンアレイ較正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】マイクロホンカプセル、複数のマイクロホンカプセルを備えたマイクロホン構成、およびマイクロホンアレイ較正方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/04 20060101AFI20220131BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20220131BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
H04R1/04 Z
H04R19/04
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534796
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019084943
(87)【国際公開番号】W WO2020126843
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018132486.3
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597038301
【氏名又は名称】ゼンハイザー・エレクトロニック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Sennheiser electronic GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5D017
5D021
5D220
【Fターム(参考)】
5D017BC19
5D021CC08
5D220BA22
(57)【要約】
コンデンサまたはエレクトレットマイクロホン用のマイクロホンカプセルは、望ましい理想的な挙動、例えば、周波数応答および位相応答からの個々の偏差を示す。特に、複数のマイクロホンカプセルが相互接続され、マイクロホンアレイを形成する場合、適切なマイクロホンカプセルを選択プロセスで見つける必要がある。これらの偏差のいくつかは、例えば、個々に適合される対応するフィルタを用いてフィルタリングすることによって電子的に補正できる。改良されたマイクロホンカプセル(200)は、マイクロホンカプセルを備えた回路基板の自動選択および自動組み立てが容易になるものであり、静電音響トランスデューサ(C)と、静電音響トランスデューサ(C)の増幅された出力信号(AS,DS)を出力する増幅器素子(Q1)と、少なくとも1つの電子メモリ素子(U1)とを備える。測定によって得られ、個々のマイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答に関するデータがそこに格納できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(G)を備えたマイクロホンカプセル(200)であって、
ハウジング内には、静電音響トランスデューサ(C)と、
静電音響トランスデューサ(C)から信号を受信し、増幅された出力信号(AS,DS)を出力する増幅器素子(Q1)を備えた第1電子回路と、
少なくとも増幅された出力信号および基準電位(GND)用の電気コネクタ(TP1,TP3)とを備え、
マイクロホンカプセルのハウジング(G)は、
少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)と、
マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答に関するデータを保存するように構成された少なくとも1つの電子メモリ素子(U1)を備えた第2電子回路とを備え、
メモリ素子(U1)は、少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)を介して読み出し可能である、マイクロホンカプセル。
【請求項2】
メモリ素子(U1)は、マイクロホンカプセルの増幅された出力信号(AS,DS)から独立して、少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)を介して書き込みおよび読み出しが可能である、請求項1に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項3】
電気コネクタ(TP1,TP2,TP3)は、マイクロホンカプセルの下面において同心円である、請求項2に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項4】
保存されたデータ(PS)は、定義された周波数(f,…,f)におけるマイクロホンカプセルの個々の伝達関数の値を表す、請求項1~3のいずれかに記載のマイクロホンカプセル。
【請求項5】
伝達関数は、周波数応答または位相応答である、請求項4に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項6】
保存されたデータは、定義された目標値からの、マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答の偏差である、請求項4または5に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項7】
静電音響トランスデューサ(C)は、エレクトレットトランスデューサである、請求項1~6のいずれかに記載のマイクロホンカプセル。
【請求項8】
メモリ素子(U1)は、デジタルの電子的に消去可能なシングルワイヤメモリ素子である、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項9】
第1電子回路は、電子的な適応、干渉保護または予備フィルタリングのための1つ以上の複数のコンポーネント(L1,L2,C1~C3)をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載のマイクロホンカプセル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の少なくとも2つのマイクロホンカプセルを備え、
該少なくとも2つのマイクロホンカプセル(610,…,610)は、相互接続されてマイクロホンアレイを形成する、マイクロホン構成(600)。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサを備えた構成ユニット(620)をさらに備え、
構成ユニットは、マイクロホンカプセル(610,…,610)の少なくとも1つのメモリ素子(U1)からデータ(M,…,M)を読み出し、読み出しデータに従って構成信号(CS,…,CS)を発生し、構成信号(620)に基づいて個々のマイクロホンカプセルのための少なくとも1つの構成フィルタ(630,…,630)を電子的に構成するように構成される、請求項10に記載のマイクロホン構成(600)。
【請求項12】
複数のマイクロホンカプセル(200)を含むマイクロホンアレイを較正する方法(700)であって、
マイクロホンカプセルの少なくとも1つについて、マイクロホンカプセルの外側に設置された回路によって、個々のマイクロホンカプセルに含まれるメモリ素子(U1)から個々の値を読み取るステップ(710)であって、該値は個々のマイクロホンカプセルの伝達関数を記述する、ステップ(710)と、
読み取られた値から補償関数を計算するステップ(720)と、
計算した補償関数に基づいて、少なくとも1つのマイクロホンカプセルのための少なくとも1つの電子フィルタを構成するステップ(730)であって、該少なくとも1つの電子フィルタは、少なくとも1つのマイクロホンカプセルの外側に設置されて、マイクロホンアレイは較正される、ステップ(730)と、を含む方法。
【請求項13】
読み取られた値は、定義された周波数におけるマイクロホンカプセルの個々の伝達関数の値を表す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
読み取られた値は、前記定義された目標値からの、マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答の偏差を表す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
個々の値を読み取るステップ(710)、補償関数を計算するステップ(720)、およびマイクロホンカプセルの外側に設置されるフィルタを構成するステップ(730)は、マイクロホンアレイの全てのマイクロホンカプセルについて実行される、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンカプセル、複数のマイクロホンカプセルを備えたマイクロホン構成、およびマイクロホン構成を較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロホンカプセルは、マイクロホンで使用されるコンポーネントであり、通常は回路基板にはんだ付けされる。コンデンサまたはエレクトレットマイクロホン用のマイクロホンカプセルは、いわゆる積み重ね(stacking)技術を用いてしばしば製造され、複数の部品がハウジング内で交互に積み重なる。しかしながら、コンポーネント許容誤差があり、その結果、各マイクロホンカプセルは、望ましい理想的な電気音響挙動、例えば、周波数応答及び/又は位相応答などから個別の偏差を有する。高品質の要求の場合、特に複数のマイクロホンカプセルがマイクロホンアレイ内で相互接続される場合、これらの偏差は、電子的に、例えば、個別に適合される対応したフィルタを用いてフィルタリングすることによって補償する必要がある。この目的のために、周波数応答及び/又は位相応答などの特性値を最初に測定する必要がある。マイクロホンカプセルを回路基板にはんだ付けした後にこの測定を行う場合、接続された回路が結果を変造することがある。はんだ付け前に測定を行うと、測定結果に応じてカプセルを選別する必要があるという問題が発生する。この選択は、エラーが発生しやすく、労力を要し、しばしば手動で行われ、回路基板にマイクロホンカプセルを機械で装備することは特に困難で高価になる。従って、労力を低く抑えるために、使用できるのはカプセルの少量、即ち、極めて小さい偏差を備えたものだけである。
【0003】
下記の文書は、ドイツ特許商標庁(DPMA)によって優先権出願に関連すると考えられている。ドイツ公開第10 2012 203 741 A1号、米国公開第2008/0219483A1号、および文献(Maxim Integrated Products, Inc.: Data Sheet for DS28E04 1-wire EEPROM, San Jose CA, USA, 19-6568; Rev 2; 1/17, 2017, https://datasheets.maximintegrated.com/en/ds/DS28E05.pdf [retrieved on 23-Sept-2019])
【0004】
米国公開第2008/0219483A1号は、マイクロホンアレイとして使用でき、2つ以上のマイクロホンカプセルと、信号処理のための電子回路と、メモリとを含む音響モジュールを開示する。マイクロホンカプセルをモジュールの中に搭載した後、これらは検査できる。検査プロセスで取得されたカプセルの較正情報および音響モジュール内のカプセルの位置偏差はメモリに保存され、フィルタを構成するための内部信号処理に提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、マイクロホンカプセルを備えた回路基板の自動組み立てを容易にする改良されたマイクロホンカプセルを提供することである。更なる目的は、マイクロホンアレイの簡素化した製造方法を提供し、対応するマイクロホンアレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るマイクロホンカプセルが、請求項1に開示されている。それは、静電音響トランスデューサと、静電音響トランスデューサの増幅またはインピーダンス変換された出力信号をそれぞれ出力する増幅器素子またはインピーダンス変換器と、少なくとも1つの電子メモリ素子とを備える。メモリ素子には、測定によって得られたデータが保存され、データは、個々のマイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答に関連している。データは、製造プロセス時および動作時に読み出し可能であり、これにより製造中のカプセルの自動選別、そして動作中のターゲット回路の自動較正の両方が可能になる。
【0007】
請求項10は、マイクロホン構成、例えば、少なくとも2つのマイクロホンカプセルを備えたアレイに関する。請求項12は、マイクロホンアレイを較正するための方法に関する。
【0008】
更なる好都合な実施形態は、従属請求項に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
更なる詳細および好都合な実施形態は、図面に示されている。
【0010】
図1】一実施形態におけるマイクロホンカプセルの回路図
図2】マイクロホンカプセルの例示的な底面図および上面図
図3】例示的なマイクロホンカプセルの断面図
図4】マイクロホンカプセルの周波数依存測定値
図5】測定セットアップ
図6】マイクロホンアレイの基本ブロック図
図7】マイクロホンアレイを校正する方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、ある実施形態における本発明に係るマイクロホンカプセルの回路図100を示す。マイクロホンカプセルのハウジング内には、静電音響トランスデューサCがあり、これは、キャパシタ、増幅器素子Q1、例えば、FET(電界効果トランジスタ)と、メモリ素子U1としてその等価回路によってここに示している。静電音響トランスデューサCは、例えば、エレクトレットまたはコンデンサマイクロホンである。増幅器素子Q1は、エレクトレットマイクロホンにおいてインピーダンス変換器としても機能し、そして、例えば、1の非常に低い利得係数を有してもよい。さらに、周波数応答補正、干渉保護、適応、または予備フィルタリングのための種々のアナログコンポーネントC1~C3,L1,L2が含まれる。これらはオプション(任意)であるが、静電マイクロホンカプセルでは一般的である。例えば、C2,C3,L1,L2は、高周波干渉信号をフィルタ除去するために使用される。マイクロホンカプセルは、電気接点110を介して接続され、この例ではハウジングの底部に設置される。これらの接点は、出力信号または電源用のコネクタTP1と、メモリ素子U1用のコネクタTP2と、基準電位(通常はグランドGND)用のコネクタTP3とを含む。この例では、メモリ素子U1は4つの接続部を有し、接続部A2,B2の2つはコネクタTP2に接続され、残りの接続部A1,B1はグランドGNDに接続される。メモリ素子U1は、コネクタTP2を介してシリアル方式で書き込みおよび読み取りが可能なデジタルの電子的に消去可能なシングルワイヤ(単線)メモリ素子(1-ワイヤ-EEPROM)でもよい。したがって、コネクタTP2は、メモリ素子用の電源、クロックラインおよびデータラインとして機能する。この別個のコネクタTP2の利点は、マイクロホンカプセル内にある残りの回路とは独立して書き込みおよび読み取りが実行可能であることである。メモリ素子U1およびそのコネクタTP2を除いて、上記の回路は、マイクロホンカプセルの従来の回路でもよく、他の実施形態では、別の従来の回路で置換してもよい。
【0012】
図2は、ある実施形態におけるマイクロホンカプセル200の例示的な底面図および上面図を示す。金属製ハウジングGは、上部に開口部220を有し、そこを通って音が下方にあるダイアフラムに到達できる。下部には、コネクタTP1~TP3があり、この例では基本的に円形かつ同心である。その結果、マイクロホンカプセルは回転対称である外部形状を有し、自動組み立てを容易にする。コネクタは金属製であり、コネクタの少なくとも2つはハウジングGから絶縁される。さらに、コネクタTP1~TP3は、この例では、ハウジングに比べて、例えば、約0.5mmだけ僅かに高くおり、そのためマイクロホンカプセルを回路基板に自動的にはんだ付けするのがより容易である。
【0013】
図3は、本発明の実施形態に係る、簡略化された方法で描かれたマイクロホンカプセル300の断面図を示す。ハウジング310の上部には、音が通過して、下方にあるダイアフラム325に到達可能にする開口部220が存在する。ダイアフラム325は、金属でコーティングされ、ダイアフラムリング320上に固定される。両方ともにダイアフラムアセンブリを形成する。ダイアフラムリング320はまた、ダイアフラムとハウジングの上面310との間の距離が維持されることを確保する。ダイアフラム325と下方にあるカウンタ電極340との間の細いエアギャップ(不図示)が、両部品間に電気絶縁を提供し、ダイアフラムが振動するのを可能にする。カウンタ電極340は、例えば、接触スプリングによって、電気伝導的な方法で下部回路基板350に接続される。ダイアフラムの金属コーティングおよびカウンタ電極340は共に、音響トランスデューサとして機能する可変容量を備えたキャパシタCを形成する。回路基板は、さらなる電子部品、例えば、図1に示すように、とりわけ増幅器素子Q1とメモリ素子U1を備える。カプセルは、例えば、いわゆる積み重ね(stacking)技術を用いて製造でき、ダイアフラムアセンブリから開始して、単一部品が交互にハウジング内に積み重なる。カウンタ電極340と回路基板350との間の距離は、絶縁リング330を使用することによって維持される。しかしながら、各マイクロホンカプセルは、電気的または機械的コンポーネントの許容誤差にそれぞれ起因して、所望の理想的な周波数応答及び/又は位相応答からの個々の偏差を有する。高品質の要求の場合、特に複数のマイクロホンカプセルがマイクロホンアレイ内で相互接続される場合、これらの偏差は、少なくとも部分的に電子的に補償できる。
【0014】
このために、例えば、カプセルの特性値、例えば、周波数応答が測定される。変形例では、理想的な曲線に対する偏差を決定することも可能である。図4は、マイクロホンカプセルの周波数依存の測定値を例示しており、実際の測定値の曲線Kは、周波数fにおいてdの量だけ理想的な曲線Kから逸脱している。測定が行われた他の周波数f,f~fの場合、偏差は非常に小さく、即ち、閾値または測定許容値を下回っており、無視できる。一実施形態では、例えば、異なる周波数での絶対値及び/又は位相など、決定された測定値は、メモリ素子U1に保存される。他の実施形態では、理想曲線Kに対する測定値の偏差dは、メモリ素子U1に保存される。この変形例は、偏差および保存される数値がより小さく、少ない保存場所で済むという利点がある。測定および保管は、好ましくはカプセルをはんだ付けする前に行われるが、原理上はその後で行ってもよい。メモリ素子U1は、電子的に消去可能なシングルワイヤメモリ素子、例えば、型番DS28E05の1-ワイヤ-EEPROMなどでもよく、それぞれ112バイトまたは1kビットの保存容量を備え、回路基板上に1~3mmの面積だけを要する。また、複数のこれらメモリ素子を使用したり、より高い保存容量を持つ他のメモリ素子を使用することが可能であり、より多くのデータが保存でき、より正確な補正が可能になる。ある実施形態では、非個別データ、例えば、モデルコード、製造日、バッチ番号などを追加的にメモリ素子に保存可能である。
【0015】
本発明に係るマイクロホンカプセルの利点が、各被検査物がそれと共にその個々の特性値を永久的に有することであり、そのため簡単な方法で製造時のカプセルの選別、そして動作時のターゲット回路の較正がより簡単に可能になる点である。特に、ターゲット回路を較正するための測定がさらに必要とされない。手動調整および手動選別は、常に増加した生産努力を意味するため、本発明は、マイクロホンカプセルを含むデバイスまたはモジュールの生産及び/又は較正を簡素化する。単一のマイクロホンカプセルの測定は行われるため、追加の作業は必要ではない。カプセルが回路基板にはんだ付けされ、回路が動作状態になると、プロセッサが、初期化フェーズでメモリ素子U1に保存された値を取得し、それらを使用して、マイクロホンカプセルごとに、対応する補正回路を個別に構成できる。例えば、図4に示すような測定曲線Kを有するマイクロホンカプセルの場合、周波数fでの周波数応答をdの量だけ上昇させる補正フィルタが構成でき、その結果、本質的に理想的な曲線Kが得られる。既知の手法と比較して、較正は、完全に自動的に、かなりより容易かつ迅速に実行できる。
【0016】
図5では、特性値を取得し、それらをマイクロホンカプセルに保存するための測定セットアップが概略的に示される。図5a)は、アナログマイクロホンカプセル200用のいわゆるカップリング測定を伴う測定セットアップを例示的に示す。閉じた空間500の中には、ラウドスピーカLSおよび測定対象のマイクロホンカプセル200(音響トランスデューサC、増幅器素子Q1およびメモリ素子U1を含む)がある。例えば、図1のような更なる電子コンポーネントもそこに存在してもよいが、図5には示していない。ラウドスピーカLSは、様々な周波数で音響シーケンスを放出し、それぞれがマイクロホンカプセル200で正確に定義された音圧レベルを発生する。これは、マイクロホンカプセル200によって出力用の電気信号に変換される。例えば、対応して構成されるコンピュータなどのプログラミングデバイス510は、マイクロホンカプセルのアナログ出力信号ASを取得し、それをアナログ-デジタル変換器ADCでデジタル信号に変換する。プロセッサDSPは、デジタル信号を、保存された理想的な曲線と比較し、差分値を決定する。代替として、差分値は、原理上は、アナログ信号からも取得してデジタル化できます。一実施形態では、これらの差分値は、プログラミング信号PSとしてメモリ素子U1に書き込まれ、他の実施形態では、カプセルの個々の特性を表現するのは、測定値自体またはそれらから生成される他の値である。保存された値は、例えば、書き込みプロセスが成功し、メモリ素子が正しく機能することを確認するために、再び読み出してもよい。値のフォーマットおよび書き込みプロセス、そして可能性のある検証のために書き込んだ値の読み取りプロセスは、プロセッサDSPによって、またはこのプロセッサに接続された別のマイクロコントローラμCによって直接実行してもよい。メモリ素子U1がシングルワイヤメモリ素子である場合、この目的のために提供されるシリアルプロトコルが書き込みまたは読み取りにそれぞれ使用できる。
【0017】
図5b)は、デジタルマイクロホンカプセル200’用の類似した測定セットアップを例示的に示す。アナログ-デジタル変換器ADC’は、マイクロホンカプセル200’内に配置され、その出力信号DSは、デジタル信号である。この場合、図5a)のようなアナログ入力の代わりに、プログラミングデバイス510’のデジタル入力が使用できる。
【0018】
本発明に係るマイクロホンカプセルは、特にマイクロホンアレイ用に好都合に使用ができ、このことは、各マイクロホンカプセルが、大きさ(即ち、絶対値)および位相に関して極めて小さい許容誤差で理想値に到達することを要求する。例えば、広い周波数範囲、例えば、400Hz~8kHzに渡って+/-1dBの感度許容誤差が要求されることがある。製造プロセス時にマイクロホンカプセルを手動で選択する代わりに、マイクロホンカプセルをはんだ付けする前に、プロセッサが各カプセルから測定値を読み出すことによってカプセルは自動的に選別でき、例えば、測定値がある指定された限度内にあるこれらのカプセルだけを使用することが可能である。代替または追加として、デバイスに含まれるプロセッサが、はんだ付けおよび試運転後に個々のカプセルの値を読み出して、それらを使用して、個々のカプセルについて個別に適応補正フィルタを構成できる。従って、本発明に係る較正は、コンポーネント、特にマイクロホンカプセルの極めて費用のかかる選択を置き換えでき、製造プロセスを容易にできる。さらに、例えば、アレイ内の単一のマイクロホンカプセルは、後で交換できる。それは、接続された回路が、新しいマイクロホンカプセルに自動的に適応できるためである。
【0019】
図6は、本発明の一実施形態における、マイクロホンアレイの原理ブロック図600を示す。マイクロホンアレイは、本発明に係る複数のマイクロホンカプセル610,…,610を備え、その出力信号DS,…,DSは、共通の出力信号MASに組み合わさる。この目的のために、それらは、組合せブロック640において、例えば、指向性効果を達成するために、それらを遅延および重ね合わせることによって、既知の方法で共に処理される。しかし、その前に、個々のマイクロホンカプセルの出力信号DS,…,DSは、補正フィルタ630,…,630で個別に補正される。補正フィルタは、個々のマイクロホンカプセルに対応して構成される。この目的のために、構成ユニット620は、各マイクロホンカプセルから保存された値M,…,Mを読みだして、これらを使用して構成データCS,…,CSを計算し、そしてそれを使用して補正フィルタ630,…,630を構成する。補正フィルタの出力信号FS,…,FSは、理想的なマイクロホンカプセルの出力信号に本質的に対応し、従って、従来の組み合わせブロック640によって処理されて、高品質の出力信号MASを得ることができる。マイクロホンカプセルと補正フィルタの間、及び/又は、補正フィルタと組合せユニットの間には、更なる電子コンポーネントが存在してもよく、これらはここには図示していない。
【0020】
構成ユニット620、補正フィルタ630、および組み合わせユニット640は、1つ以上の適切に構成されたプロセッサによって実装できる。通常、マイクロホンアレイの製造時に、2つ以上のマイクロホンカプセル610,…,610が共通の回路基板にはんだ付けされ、その上にプロセッサおよび可能性として更なる電子コンポーネントが存在してもよい。一実施形態では、2つ以上のマイクロホンカプセル610,…,610は、構成ユニットに接続するための共通のシリアルバスを共有して、それらの測定値M,…,Mを次々に読み出してもよい。本発明に係るマイクロホンカプセル610,…,610は、上述のように、回路基板の自動製造およびマイクロホンカプセルの自動較正を可能にする。
【0021】
一実施形態では、本発明は、複数のマイクロホンカプセル200を含むマイクロホンアレイを較正する方法に関する。図7は、こうした方法700のフローチャートを示す。第1ステップ710において、マイクロホンカプセルの少なくとも1つについての個々の値は、個々のマイクロホンカプセルに含まれるメモリ素子U1から読み出される。上述のように、値は、個々のマイクロホンカプセルの個々の伝達関数を記述できる。さらに、このステップで複数のマイクロホンカプセルの値を順次読み出すことも可能である。次のステップでは、マイクロホンカプセルごとの補償関数が読み取り値から計算され(720)、計算した補償関数に基づいて、少なくとも1つの電子補正回路、例えば、電子フィルタが、個々のマイクロホンカプセルのために構成される(730)。これは、例えば、フィルタのパラメータを設定し変更することと、特定のフィルタなどを選択することを含んでもよい。このようにマイクロホンアレイは自動的に較正される。この方法はまた、アレイに搭載されていない単一のマイクロホンカプセルを較正するためにも使用でき、例えば、ノイズ補償(ANC、アクティブノイズキャンセル)に使用されるマイクロホンカプセルの位相調整を実行するである。
【0022】
一実施形態では、アレイ内の少なくとも2つのマイクロホンカプセルの各々について別個の電子フィルタが計算され構成される。一実施形態では、電子フィルタは、2つ以上のマイクロホンカプセルについて一緒に計算され構成される。
【0023】
本発明に係るマイクロホンカプセルにおいて、そこに含まれる回路基板は、それ自体の較正データのキャリアになる。従って、「自己較正」カプセルと見なしてもよい。1つの利点は、少量の保存データ(例えば、1キロビット)だけで有意な補正が既に実行できる点である。他の利点は、ターゲットデバイス(即ち、マイクロホンカプセルが設置されるデバイス)が、既知のターゲット曲線に基づいて、カプセルの実際の周波数応答および感度を柔軟に制御できる点である。このようにしてターゲットデバイスの特性は、幅広い範囲で自動的に調整できる。
【0024】
原理上、本発明は、追加のメモリ素子のためのスペースを提供し、許容誤差に起因して電子的に補正できる目標特性からの偏差を示す他のコンポーネントまたはモジュールのためにも使用できる。メモリ素子はまた、上述したシングルワイヤメモリ素子より複雑でもよく、そのためより多くのデータを保存できる。メモリ素子は、より多くの接続部を使用してもよく、上記の例のように、回路の残部から電気的に分離してもよい。保存されるデータは、個々のコンポーネントまたは個々のモジュールの個々の値である。それは、上述のように、測定値または、目標値からの測定値の偏差、または分類を表す値(例えば、0~1%、1~2%、2~3%などの偏差)でもよい。データは、生産時の選択プロセスを容易にし、及び/又は、完成製品の自動較正を可能にできる。
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(G)を備えたマイクロホンカプセル(200)であって、
ハウジング内には、静電音響トランスデューサ(C)と、
静電音響トランスデューサ(C)から信号を受信し、増幅された出力信号(AS,DS)を出力する増幅器素子(Q1)を備え、該増幅器素子(Q1)は回路基板(350)上に配置される、第1電子回路と、
少なくとも増幅された出力信号および基準電位(GND)用の電気コネクタ(TP1,TP3)とを備え、
マイクロホンカプセルのハウジング(G)は、
少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)と、
マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答に関するデータを保存するように構成された少なくとも1つの電子メモリ素子(U1)を備えた第2電子回路とを備え、
メモリ素子(U1)は、増幅器素子(Q1)と同じ回路基板(350)上に配置され、メモリ素子(U1)は、少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)を介して読み出し可能である、マイクロホンカプセル。
【請求項2】
メモリ素子(U1)は、マイクロホンカプセルの増幅された出力信号(AS,DS)から独立して、少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)を介して書き込みおよび読み出しが可能である、請求項1に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項3】
電気コネクタ(TP1,TP2,TP3)は、マイクロホンカプセルの下面において同心円である、請求項2に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項4】
保存されたデータ(PS)は、定義された周波数(f,…,f)におけるマイクロホンカプセルの個々の伝達関数の値を表す、請求項に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項5】
伝達関数は、周波数応答または位相応答である、請求項4に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項6】
保存されたデータは、定義された目標値からの、マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答の偏差である、請求項に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項7】
静電音響トランスデューサ(C)は、積み重ね技術を用いて製造され、ダイアフラムアセンブリを含むエレクトレットトランスデューサであり、該ダイアフラムアセンブリは、金属コーティングされたダイアフラム(325)およびダイアフラムリング(320)を含む、請求項に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項8】
メモリ素子(U1)は、該少なくとも1つの追加の電気コネクタ(TP2)および基準電位(GND)のみに接続された、デジタルの電子的に消去可能なシングルワイヤメモリ素子である、請求項に記載のマイクロホンカプセル。
【請求項9】
第1電子回路は、電子的な適応、干渉保護または予備フィルタリングのための1つ以上の複数のコンポーネント(L1,L2,C1~C3)をさらに含み、該追加のコンポーネントも前記回路基板(350)上に配置される、請求項記載のマイクロホンカプセル。
【請求項10】
請求項に記載の少なくとも2つのマイクロホンカプセルを備え、
該少なくとも2つのマイクロホンカプセル(610,…,610)は、相互接続されてマイクロホンアレイを形成する、マイクロホン構成(600)。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサを備えた構成ユニット(620)をさらに備え、
構成ユニットは、マイクロホンカプセル(610,…,610)の少なくとも1つのメモリ素子(U1)から、マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答に関するデータ(M,…,M)を読み出し、読み出しデータに従って構成信号(CS,…,CS)を発生し、構成信号(620)に基づいて個々のマイクロホンカプセルのための少なくとも1つの構成フィルタ(630,…,630)を電子的に構成するように構成される、請求項10に記載のマイクロホン構成(600)。
【請求項12】
該少なくとも2つのマイクロホンカプセルの各々は、別個に交換可能である、請求項10に記載のマイクロホン構成(600)。
【請求項13】
複数のマイクロホンカプセル(200)を含むマイクロホンアレイを較正する方法(700)であって、
前記マイクロホンカプセル(200)の少なくとも1つを代用マイクロホンカプセル(200)と交換するステップであって、該代用マイクロホンカプセルは、ハウジング(G)、静電トランスデューサ(C )、増幅器素子(Q1)およびメモリ素子(U1)を含み、増幅器素子(Q1)およびメモリ素子(U1)の両方はハウジング(G)内に回路基板(350)上に配置される、ステップと、
代用マイクロホンカプセルの外側に設置された回路によって、代用マイクロホンカプセルに含まれるメモリ素子(U1)から個々の値を読み取るステップ(710)であって、該値は代用マイクロホンカプセルの伝達関数を記述する、ステップ(710)と、
読み取られた値から補償関数を計算するステップ(720)と、
計算した補償関数に基づいて、代用マイクロホンカプセルのための少なくとも1つの電子フィルタを構成するステップ(730)であって、該少なくとも1つの電子フィルタは、代用マイクロホンカプセルの外側に設置されて、マイクロホンアレイは較正される、ステップ(730)と、を含む方法。
【請求項14】
読み取られた値は、定義された周波数におけるマイクロホンカプセルの個々の伝達関数の値を表す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
読み取られた値は、前記定義された目標値からの、代用マイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答の偏差を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
個々の値を読み取るステップ(710)、補償関数を計算するステップ(720)、およびマイクロホンカプセルの外側に設置されるフィルタを構成するステップ(730)は、マイクロホンアレイの全てのマイクロホンカプセルについて実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
相互接続されてマイクロホンアレイを形成する、少なくとも2つの個々に置換可能なマイクロホンカプセル(610 ,…,610 )と、
少なくとも1つのプロセッサを備えた構成ユニット(620)とを備え、
マイクロホンカプセルはそれぞれ、ハウジング(G)および、ハウジング(G)内に、個別のマイクロホンカプセルの個々の周波数応答または位相応答に関するデータ(M ,…,M )を保存している少なくとも1つのメモリ素子(U1)を含む電子回路を備え、
マイクロホンカプセルはそれぞれ、個別のメモリ素子(U1)を読み出すように構成された別個のコネクタ(TP2)を備え、
構成ユニットは、該少なくとも2つのマイクロホンカプセルの各々について構成可能な補正フィルタ(630 ,…,630 )を含み、
構成ユニットは、マイクロホンカプセル(610 ,…,610 )の少なくとも1つのメモリ素子(U1)に保存されたデータ(M ,…,M )を読み出し、読み出しデータから構成信号(CS ,…,CS )を発生し、個々のマイクロホンカプセルのための対応する構成可能な補正フィルタ(630 ,…,630 )を電子的に構成するように構成され、これにより少なくとも2つのマイクロホンカプセル(610 ,…,610 )を相互接続してマイクロホンアレイを形成することが可能になり、
構成可能な補正フィルタの出力信号(FS 、…,FS は、遅延して重ね合わせられて、マイクロホンアレイの指向性を取得する、マイクロホン構成(600)。
【請求項18】
該少なくとも2つのマイクロホンカプセルの各々は、個別のハウジング(G)内に、金属コーティングされたダイアフラム(325)およびダイアフラムリング(320)を含むダイアフラムアセンブリを備える、請求項17に記載のマイクロホン構成(600)。
【国際調査報告】