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▶ シティー・ユニバーシティー・オブ・ホンコンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】表面修飾細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220131BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 17/02 20060101ALN20220131BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
A61K35/12
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/02
A61K31/713
A61K31/7105
A61K47/64
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
A61P37/02
A61P9/00
A61P1/00
C07K17/02
C07K16/00
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021541013
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(85)【翻訳文提出日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 SG2019050481
(87)【国際公開番号】W WO2020060496
(87)【国際公開日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】62/734,303
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/776,009
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521116532
【氏名又は名称】シティー・ユニバーシティー・オブ・ホンコン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジアハイ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ティ・グエット・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,リクン
(72)【発明者】
【氏名】ファム,チャン・ティン
(72)【発明者】
【氏名】ウスマン,ワカス・ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤジングヘ,ミグラ・カヴィシュカ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD39
4B065CA23
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZA36
4C084ZA66
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB62
4C087CA10
4C087NA13
4C087ZA36
4C087ZA66
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045FA80
(57)【要約】
本発明は、細胞外小胞の膜タンパク質に共有結合されている外因性ポリペプチドタグを含む、表面修飾細胞外小胞に関する。特定の実施形態では、タグは、ソルターゼ媒介ライゲーションによってマイクロベシクルの膜タンパク質に共有結合されている。前記細胞外小胞を調製する方法及び疾患を処置するために治療分子を積載した前記細胞外小胞を使用する方法も本明細書に開示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性ポリペプチドタグを含む細胞外小胞であって、タグが細胞外小胞の膜タンパク質に共有結合されている、細胞外小胞。
【請求項2】
タグが1つ又は複数の機能性ドメインを含み、機能性ドメインが標的部分に結合することができ、検出されることができ、及び/又は治療効果を誘導することができる、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項3】
機能性ドメインが、抗体又は抗原結合断片、好ましくはsdAbを含む、請求項2に記載の細胞外小胞。
【請求項4】
マイクロベシクル又はエキソソーム、好ましくはマイクロベシクルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞外小胞。
【請求項5】
赤血球に由来するマイクロベシクルである、請求項4に記載の細胞外小胞。
【請求項6】
カーゴを積載される、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞外小胞。
【請求項7】
カーゴが、核酸、ペプチド、タンパク質又は小分子である、請求項6に記載の細胞外小胞。
【請求項8】
カーゴが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA、長鎖RNA、siRNA、miRNA、gRNA又はプラスミドからなる群から選択される核酸である、請求項7に記載の細胞外小胞。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の1つ又は複数の細胞外小胞を含む組成物。
【請求項10】
処置の方法での使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の細胞外小胞を、処置を必要とする患者に投与することを含む、処置の方法。
【請求項12】
疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物の使用。
【請求項13】
処置の方法が、請求項1~9のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物の、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患を有する対象への投与を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の使用のための細胞外小胞又は組成物、処置の方法又は使用。
【請求項14】
対象ががんを有し、がんが任意選択で白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫から選択される、請求項13に記載の使用のための細胞外小胞又は組成物、処置の方法又は使用。
【請求項15】
タグと細胞外小胞の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で、細胞外小胞をタグ及びタンパク質リガーゼと接触させ、それによりタグ付き細胞外小胞を生成することを含む方法。
【請求項16】
(a)ペプチドと細胞外小胞の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で、細胞外小胞をペプチド及び第1のタンパク質リガーゼと接触させ、それによりペプチドタグ付き細胞外小胞を生成すること;並びに
(b)細胞外小胞に共有結合したペプチドと機能性ドメインペプチドの間の共有結合を可能にする条件下で、ペプチドタグ付き細胞外小胞を機能性ドメインペプチド及び第2のタンパク質リガーゼと接触させること
を含む、方法。
【請求項17】
第1及び第2のペプチドリガーゼが同じである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1及び第2のペプチドリガーゼが異なる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
細胞外小胞をカーゴと接触させること、及び電気穿孔して細胞外小胞でカーゴを封入することをさらに含む、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質リガーゼが、ソルターゼ又はAEP1、好ましくはソルターゼAからなる群から選択される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項15~20のいずれか一項に記載の方法によって得られた細胞外小胞。
【請求項22】
結合分子及びタンパク質リガーゼ認識部位を含むタグであって、スペーサーをさらに含んでもよく、スペーサーは結合分子及びタンパク質リガーゼ認識部位の間に配置される、タグ。
【請求項23】
請求項22に記載のタグをコードする核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外小胞、特に、排他的ではないが、表面修飾細胞外小胞に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、メッセンジャーRNA(mRNA)、長鎖非コードRNA及びCRISPR-Cas9ゲノム編集ガイドRNA(gRNA)を含むRNA治療は、高い特異性及び柔軟性で病的なヒトゲノムを標的とするプログラム可能な治療のための新興の治療法である。ウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス)、脂質トランスフェクション試薬、及び脂質ナノ粒子を含む、RNA薬送達のための一般的な媒体は、通常、免疫原性及び/又は細胞傷害性である。したがって、白血病細胞及び固形腫瘍細胞を含む、ほとんどの一次組織及びがん細胞にRNA薬を送達するための安全で有効な戦略は、依然として捉えにくい。
【0003】
細胞外小胞(EV)は、患者にRNAを送達するために適用されてきた。EVは、細胞間コミュニケーションのために体内の全ての型の細胞によって分泌される。EVは、多胞体に由来する小胞(10~100nm)であるエキソソーム、生細胞の細胞膜に由来するマイクロベシクル(100~1000nm)、及びアポトーシス細胞の細胞膜に由来するアポトーシス小体(500~5000nm)からなる。EVベースの薬物送達方法が望まれるが、EV産生には限界がある。高純度及び均質なEVを産生するため、厳密な精製方法、例えば、スクロース密度勾配超遠心分離又はサイズ排除クロマトグラフィーが必要であるが、それらは時間がかかり、スケーラブルではない。さらに、収率が非常に低いため、十分なEVを得るために10億個の細胞が必要であり、そのような数の初代細胞は通常入手できない。初代細胞の不死化は、RNA薬と一緒に発癌性DNA及びレトロトランスポゾンエレメントを移行させるリスクがある。実際、全ての有核細胞は、ある程度の遺伝子水平伝播のリスクを示し、それは、どの細胞がすでに危険なDNAを持ち、どれが持たないかを先験的に予測できないためである。したがって、有害事象を減らして患者へ核酸物質を送達するための有効な手法の必要性が残っている。
【0004】
さらに、EVベースの治療をより特異的にするため、レトロウイルス又はレンチウイルスを使用してトランスフェクト又は形質導入されるプラスミドからドナー細胞においてペプチド又は抗体を発現させ、続いて抗生物質ベース又は蛍光ベースの選択により、EVを操作し、特定の標的細胞に特異的に結合するペプチド又は抗体を持たせることができる。これらの方法は、高発現されたプラスミドがEVに組み込まれ、最終的に標的細胞へと移行されやすいため、遺伝子水平伝播の高いリスクを提起する。プラスミドの遺伝子エレメントは、発癌をもたらし得る。安定な細胞株にEVを産生させる場合、変異DNA、RNA及びタンパク質を含む豊富な発癌性因子がEVに詰め込まれ、腫瘍発生のリスクを標的細胞に送達する。一方、リボソームの欠如により、赤血球ではプラスミドが転写できないため、遺伝子操作方法は赤血球に適用できない。それは、トランスフェクト又は形質導入が難しい幹細胞及び初代細胞にも適用できない。
【0005】
近年、EVの表面のホスファチジルセリン(PS)に結合するラクトアドへリンのC1C2ドメインに融合した抗体によってEVをコーティングする新しい方法がある。この方法は、いかなる遺伝的改変もなく、抗体とのEVのコンジュゲーションを可能にする。しかしながら、C1C2は、疎水性タンパク質であり、したがって、哺乳動物細胞では面倒な精製方法及びウシ血清アルブミンを含有する緩衝液中での保存を必要とする。さらに、C1C2融合抗体とのEVのコンジュゲーションは、一時的なC1C2とPSの間の親和性結合に基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、治療又は診断目的のための安定なEVの強い必要性が残っている。本発明は、上記の検討に照らしてなされた。
M13バクテリオファージキャプシドタンパク質のソルターゼ媒介機能付与の方法が、以前に提示された(米国特許出願公開第2014/0030697 A1号)。この機能付与は、ウイルスの表面で様々な構造を可能にし、表面相互作用の創出のために活用され得る新しいウイルス表面修飾を創出するために有用である。
【0007】
赤血球の表面修飾のためのソルタグ付けの方法が、遺伝子操作された細胞の使用により以前に開発された(国際公開第2014/183071 A2号)。この方法では、ヒトCD34+前駆細胞を遺伝子操作し、赤血球膜タンパク質と目的のペプチドを含む融合タンパク質を発現させる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、表面修飾のため、ソルターゼによって認識される配列を含むペプチドに融合したII型赤血球膜貫通タンパク質を含む。
【0008】
哺乳動物細胞への薬剤のコンジュゲーションが、以前に示されている(国際公開第2014/183066 A2号)。この文献は、ソルターゼの存在下で、生細胞をソルターゼ並びにソルターゼ認識モチーフ及び薬剤を含むソルターゼ基質と接触させることによる、哺乳動物細胞へと薬剤をコンジュゲートする方法を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、細胞外小胞の表面の酵素修飾のための方法を発明した。したがって、この開示は、その表面にタグを含む修飾細胞外小胞、並びにそのような修飾細胞外小胞を作製及び使用する方法に関する。
【0010】
細胞外小胞(EV)は、それらの天然の生物的適合性、高い送達効率、低い毒性、及び低い免疫原性特性により、新興の薬物送達媒体である。EVは、通常、それらのドナー細胞の遺伝的改変によって操作されるが、遺伝子操作方法は初代細胞では非効率的であり、最終的に臨床適用に安全ではない遺伝子水平伝播のリスクを示す。ここで、本発明者らは、ペプチド、小分子、タンパク質及び抗体を含む分子の共有結合性コンジュゲーションのためのタンパク質リガーゼ酵素を使用する、EVの表面を修飾する方法を記載する。この方法は、EV操作が簡単、安全及び効率的である。それは、初代細胞由来のものを含む多くの型のEVに適用することができる。細胞外小胞は、膜由来小胞であり、したがって、膜、通常脂質二重層を含む。
【0011】
小分子、タンパク質及び核酸を含む薬物のEV媒介送達は、ほとんどのin vivoでの送達のハードルを克服するEVの天然の生物的適合性のため、魅力的なプラットフォームである。EVは、通常、非毒性であり、非免疫原性である。それらは多くの細胞型によって容易に取り込まれるが、それらが細網内皮系のマクロファージ及び単球による食作用を避けるのに役立つCD47などのいくつかの抗食作用マーカーを持ち得る。さらに、EVは、内皮結合を通って、及び血液脳関門を横切ってさえも血管外遊出することができ、したがって、それらは非常に多才な薬物担体である。3 臨床的価値のうち、EVによる送達は、腫瘍細胞が多くの化学化合物を除外するために使用することが多いP-糖タンパク質の過剰発現によって生じる多剤耐性メカニズムによって妨害されない。
【0012】
最も一般的には、この開示は、その表面にタグを有する細胞外小胞を提供する。タグは、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質であり得る。タグは、好ましくは外因性であり、通常は細胞外小胞の表面に見出されないことを意味する。タグは、細胞外小胞に共有結合され得る。例えば、タグは、細胞外小胞の膜に共有結合され得る。それは、細胞外小胞の膜内のタンパク質、例えばN末端グリシンを有する又は側鎖アミノ基、例えばアスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン及びヒスチジンを有する残基を有するタンパク質に結合され得る。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、小分子、例えばビオチン、FLAGエピトープ(FLAGタグ)、HAタグ、又はポリヒスチジン(例えば、6×Hisタグ)とコンジュゲートされ得る。いくつかの場合では、タグは、1つ又は複数のビオチン、FLAGタグ、HAタグ、又はポリヒスチジンを含み得る。これらは、タグの検出、単離又は精製を促進し得る。ペプチド又は小分子は、任意選択で、標的細胞の表面の受容体によって結合されるリガンドである。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、標的化部分又は結合部分であり得る。いくつかの場合では、標的部分又は結合部分は、抗体又は抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗原結合断片は、単一ドメイン抗体(sdAb)又は単鎖抗体(scAb)である。sdAb/scAbは、標的細胞への結合親和性を有し得る。タグは、治療分子又は実体を含み得る。タグは、標識分子又は実体を含み得る。
【0013】
細胞外小胞は、マイクロベシクル又はエキソソームであり得る。細胞外小胞は、任意の好適な細胞に由来し得るが、赤血球(RBC)に由来する細胞外小胞が特に本明細書で企図される。
【0014】
特定の態様では、本明細書に記載の細胞外小胞は、カーゴ又は複数のカーゴ分子を積載される。言い換えると、細胞外小胞は、カーゴ、例えばタンパク質、ペプチド、小分子又は核酸を封入する。カーゴは内因性又は外因性に積載され得る。カーゴは治療用であり得る。カーゴは、パクリタキセルであり得る。カーゴは、標識分子又は実体、例えば検出可能な小分子であり得る。いくつかの場合では、カーゴは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、mRNA、gRNA又はプラスミドからなる群から選択される核酸である。カーゴは、外因性であってよく、細胞外小胞が由来する細胞内では通常見出されないことを意味する。
【0015】
本明細書では、本明細書に開示する1つ又は複数の細胞外小胞を含む組成物も開示する。好ましくは、組成物中の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は実質的に全ての細胞外小胞がタグに結合される。いくつかの場合では、組成物中の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は実質的に全ての細胞外小胞が、カーゴ又は複数のカーゴ分子を封入する。
【0016】
本明細書では、医薬に使用される細胞外小胞及び細胞外小胞を含有する組成物も開示する。そのような組成物及び細胞外小胞は、処置を必要とする対象に有効量で投与され得る。対象は、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患の処置を必要とし得る又はこれらの疾患を有し得る。がんは、任意選択で、白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫から選択される。
【0017】
本明細書に開示する特定の態様では、細胞外小胞を得ること及び細胞外小胞をタグに結合することを含む方法によって得られたタグ付き細胞外小胞を提供する。タグは、好ましくは共有結合によって結合される。それは、細胞外小胞の膜の分子、例えば膜の表面の分子に結合され得る。細胞外小胞は、タンパク質リガーゼを使用してタグに結合され得る。
【0018】
さらなる態様では、がん細胞を本発明による細胞外小胞又は組成物と接触させることを含む、がん細胞の成長又は増殖を阻害する方法を提供する。本明細書では、細胞を細胞外小胞と接触させることを含むin vitroでの方法も開示する。
【0019】
本明細書では、修飾細胞外小胞を産生する方法、並びにそのような方法によって得られた細胞外小胞も開示する。最も一般的には、そのような方法は、タグと細胞外小胞の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で、細胞外小胞をタグ及びタンパク質リガーゼと接触させることを含む。そのような方法は、細胞外小胞をカーゴと接触させるステップ、及び電気穿孔して細胞外小胞でカーゴを封入するステップも含み得る。細胞外小胞は、タグとの接触の前又は後にカーゴと接触され得る。好ましくは、細胞外小胞はタグとの接触の前にカーゴと接触される。その場合では、タグ及びタンパク質リガーゼと接触される細胞外小胞は、カーゴ分子を封入する細胞外小胞、又は「積載細胞外小胞」である。修飾細胞外小胞を産生する方法は、細胞外小胞を精製、単離又は洗浄するステップをさらに含み得る。そのようなステップは、細胞外小胞がタグによってタグ付けされた後に生じるであろう。細胞外小胞を精製すること、単離すること又は洗浄することは、細胞外小胞の分画遠心法を含み得る。分画遠心法は、スクロース勾配、又は凍結スクロースクッションでの遠心分離を含み得る。好ましい態様では、タグを細胞外小胞に共有結合させるために使用されるタンパク質リガーゼは、ソルターゼ又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(AEP)及びそれらの誘導体である。好ましくは、リガーゼはソルターゼA又はその誘導体である。リガーゼは、アスパラギニルエンドペプチダーゼ1又はその誘導体であり得る。リガーゼは、タグが細胞外小胞に結合した後、好ましくは細胞外小胞から洗浄され、又はその他の形で除去される。
【0020】
本明細書に記載の方法は、タグを利用する。タグは、タンパク質リガーゼ認識配列を含むであろう。タンパク質リガーゼ認識配列は、細胞外小胞をタグ付けするために使用されるリガーゼに対応するように選択されるであろう。例えば、リガーゼがソルターゼである場合、タグはソルターゼ認識配列を含むであろう。タグは、任意選択でスペーサー又はリンカーを含み得る。スペーサー又はリンカーは、好ましくはタグの結合分子とペプチド認識部位の間に配置される。スペーサーは、可動性リンカー、例えばおよそ10以上のアミノ酸を含むペプチドリンカーであり得る。
【0021】
リンカーペプチドは、ペプチドリガーゼを使用してEVにコンジュゲートされることを可能にするC末端のリガーゼ結合部位及びsdAbへのコンジュゲーションのためにペプチドリガーゼと反応することを可能にするN末端の反応性アミノ酸残基(例えばGL)を有し得る。
【0022】
本発明は、そのような組合せがはっきりと容認できない又は明確に避けられる以外では記載される態様と好ましい特徴の組合せを含む。
本発明の原理を例示する実施形態及び実験は、ここで、以下の添付の図面を参照して議論する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1-1】ソルターゼ酵素を使用する、単一ドメイン抗体(sdAb)とのEVのコンジュゲーション。A.ソルターゼA、sdAb及びEVのコンジュゲーションの精製の実験ワークフロー。B.Hisタグ付きソルターゼA(18kDa)のFPLC精製前(注入)及び後(溶出液)のタンパク質のGel電気泳動解析。C.Hisタグ、Mycタグ、HAタグ、FLAGタグ及びソルターゼ結合部位LPETG(全部で20kDa)を有する抗mCherry(mC)sdAb可変重鎖(VHH)のFPLC精製前(注入)及び後(溶出液)のタンパク質のゲル電気泳動解析。D.SEMをグレーで示した、3人のドナーからのRBCEVの平均濃度及びサイズ分布(100,000×希釈)。E.86000×(右)倍率での、RBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像。スケールバー、200nm。F.ソルタグ付け反応前後のソルターゼA、sdAb及びRBCEVのHisタグのウェスタンブロット(WB)解析。
図1-2】ソルターゼ酵素を使用する、単一ドメイン抗体(sdAb)とのEVのコンジュゲーション。A.ソルターゼA、sdAb及びEVのコンジュゲーションの精製の実験ワークフロー。B.Hisタグ付きソルターゼA(18kDa)のFPLC精製前(注入)及び後(溶出液)のタンパク質のGel電気泳動解析。C.Hisタグ、Mycタグ、HAタグ、FLAGタグ及びソルターゼ結合部位LPETG(全部で20kDa)を有する抗mCherry(mC)sdAb可変重鎖(VHH)のFPLC精製前(注入)及び後(溶出液)のタンパク質のゲル電気泳動解析。D.SEMをグレーで示した、3人のドナーからのRBCEVの平均濃度及びサイズ分布(100,000×希釈)。E.86000×(右)倍率での、RBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像。スケールバー、200nm。F.ソルタグ付け反応前後のソルターゼA、sdAb及びRBCEVのHisタグのウェスタンブロット(WB)解析。
図2-1】ソルターゼ酵素を使用する、ペプチドとのEVのコンジュゲーション。A。自己認識又は「don’t eat me」シグナルのためのCD47の一部、ソルターゼ結合配列、及びビオチンタグを含有するペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット(WB)解析。B.別々に精製され、ソルターゼA反応を使用して、EGFR結合配列、ソルターゼ結合配列及びビオチンタグ(bi-YG20)を含有するYG20ペプチドとコンジュゲートした、3人の異なるドナーからのRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。ビオチンは、HRPコンジュゲートストレプトアビジンを使用して検出した。C.非コートRBCEV又はソルターゼA反応を使用してbi-YG20でコートしたRBCEVに結合するAF647コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(Strep-AF647)のAlexa-Fluor-647(AF647、APCチャネル)対前方散乱(FSC-A)のFACS解析。D.質量分析を使用して同定したRBCEVの最も豊富なタンパク質(スコア>1,000)。タンパク質相互作用はRBCで公知の相互作用に基づいて予測された。E.ビオチン-ストレプトアビジンプルダウン及び質量分析を使用して同定したビオチン化ペプチドにソルタグ付けされた膜タンパク質。質量分析(MS)スコアは、存在量及び検出の信頼度に基づき算出された。
図2-2】ソルターゼ酵素を使用する、ペプチドとのEVのコンジュゲーション。A。自己認識又は「don’t eat me」シグナルのためのCD47の一部、ソルターゼ結合配列、及びビオチンタグを含有するペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット(WB)解析。B.別々に精製され、ソルターゼA反応を使用して、EGFR結合配列、ソルターゼ結合配列及びビオチンタグ(bi-YG20)を含有するYG20ペプチドとコンジュゲートした、3人の異なるドナーからのRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。ビオチンは、HRPコンジュゲートストレプトアビジンを使用して検出した。C.非コートRBCEV又はソルターゼA反応を使用してbi-YG20でコートしたRBCEVに結合するAF647コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(Strep-AF647)のAlexa-Fluor-647(AF647、APCチャネル)対前方散乱(FSC-A)のFACS解析。D.質量分析を使用して同定したRBCEVの最も豊富なタンパク質(スコア>1,000)。タンパク質相互作用はRBCで公知の相互作用に基づいて予測された。E.ビオチン-ストレプトアビジンプルダウン及び質量分析を使用して同定したビオチン化ペプチドにソルタグ付けされた膜タンパク質。質量分析(MS)スコアは、存在量及び検出の信頼度に基づき算出された。
図3-1】EGFR陽性SKBR3乳がん細胞によるYG20-ペプチドコートEVの取り込み。A.Bのようにゲートをかけた、非コートRBC-EV又はYG20ペプチドコートRBCEVで処置した低又は高EGFR発現のSKBR3細胞のPKH26(PEチャネル)対FSC-AのFACS解析。全てのRBCEVは、PKH26で標識した。RBCEV標識実験の最後の洗浄からの上清を陰性コントロールとして使用した。B.EGFR低及びEGFR高SKBR3集団のゲーティング。EGFR発現は、FITCとコンジュゲートした抗EGFR抗体を使用して検出した。C.図3Aで決定したPKH26陽性細胞の平均パーセンテージ、±SEM(n=3回反復)。スチューデントのt検定の結果は、**P<0.01として示した。
図3-2】EGFR陽性SKBR3乳がん細胞によるYG20-ペプチドコートEVの取り込み。A.Bのようにゲートをかけた、非コートRBC-EV又はYG20ペプチドコートRBCEVで処置した低又は高EGFR発現のSKBR3細胞のPKH26(PEチャネル)対FSC-AのFACS解析。全てのRBCEVは、PKH26で標識した。RBCEV標識実験の最後の洗浄からの上清を陰性コントロールとして使用した。B.EGFR低及びEGFR高SKBR3集団のゲーティング。EGFR発現は、FITCとコンジュゲートした抗EGFR抗体を使用して検出した。C.図3Aで決定したPKH26陽性細胞の平均パーセンテージ、±SEM(n=3回反復)。スチューデントのt検定の結果は、**P<0.01として示した。
図4-1】ソルターゼ酵素を使用するペプチドとのEVのコンジュゲーション。A.OaAEP1発現ベクターで形質転換した大腸菌(E.coli)からの親和性精製及びSEC精製後のOaAPE1(49.7kDa)及びHis-Ub-OaAPE1リガーゼ(His-Ubタグを有する59.5kDa)のゲル電気泳動。B.HRPコンジュゲートストレプトアビジンによって検出した、OaAEP1リガーゼを使用してビオチン化TRNGLペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。C.非コートRBCEV又はOaAEP1リガーゼを使用してbi-TRNGLでコートしたRBCEVに結合するAF647コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(Strep-AF647)のAlexa-Fluor-647(AF647、APCチャネル)対前方散乱面積(FSC-A)のFACS解析。D.リガーゼを使用してビオチン化EGFR標的化(ET)ペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。E.ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)の段階希釈による3人の異なるドナー(D1~D3)からのbi-TR-ペプチドライゲートRBCEVにおけるビオチン検出の比較。EV当たりのペプチドの数は、段階希釈のビオチン化HRPのコピー数と比較したウェスタンブロットのバンドの強度に基づいて算出した。
図4-2】ソルターゼ酵素を使用するペプチドとのEVのコンジュゲーション。A.OaAEP1発現ベクターで形質転換した大腸菌(E.coli)からの親和性精製及びSEC精製後のOaAPE1(49.7kDa)及びHis-Ub-OaAPE1リガーゼ(His-Ubタグを有する59.5kDa)のゲル電気泳動。B.HRPコンジュゲートストレプトアビジンによって検出した、OaAEP1リガーゼを使用してビオチン化TRNGLペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。C.非コートRBCEV又はOaAEP1リガーゼを使用してbi-TRNGLでコートしたRBCEVに結合するAF647コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(Strep-AF647)のAlexa-Fluor-647(AF647、APCチャネル)対前方散乱面積(FSC-A)のFACS解析。D.リガーゼを使用してビオチン化EGFR標的化(ET)ペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。E.ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)の段階希釈による3人の異なるドナー(D1~D3)からのbi-TR-ペプチドライゲートRBCEVにおけるビオチン検出の比較。EV当たりのペプチドの数は、段階希釈のビオチン化HRPのコピー数と比較したウェスタンブロットのバンドの強度に基づいて算出した。
図4-3】ソルターゼ酵素を使用するペプチドとのEVのコンジュゲーション。A.OaAEP1発現ベクターで形質転換した大腸菌(E.coli)からの親和性精製及びSEC精製後のOaAPE1(49.7kDa)及びHis-Ub-OaAPE1リガーゼ(His-Ubタグを有する59.5kDa)のゲル電気泳動。B.HRPコンジュゲートストレプトアビジンによって検出した、OaAEP1リガーゼを使用してビオチン化TRNGLペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。C.非コートRBCEV又はOaAEP1リガーゼを使用してbi-TRNGLでコートしたRBCEVに結合するAF647コンジュゲートストレプトアビジンビーズ(Strep-AF647)のAlexa-Fluor-647(AF647、APCチャネル)対前方散乱面積(FSC-A)のFACS解析。D.リガーゼを使用してビオチン化EGFR標的化(ET)ペプチドとコンジュゲートしたRBCEVのビオチンのウェスタンブロット解析。E.ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)の段階希釈による3人の異なるドナー(D1~D3)からのbi-TR-ペプチドライゲートRBCEVにおけるビオチン検出の比較。EV当たりのペプチドの数は、段階希釈のビオチン化HRPのコピー数と比較したウェスタンブロットのバンドの強度に基づいて算出した。
図5】特異的送達の手法。RBCEVを、タンパク質リガーゼ、例えばソルターゼA又はOaAEP1を使用して、sdAb又はペプチドとコンジュゲートし、次いで治療薬、例えば細胞傷害性小分子、RNA、遺伝子治療のためのDNA、治療又は診断のためのタンパク質を積載した。ペプチド及びsdAbは、標的細胞の表面の特異的受容体に結合し、RBCEVによる薬物の送達、続いて標的細胞における治療効果をもたらす。
図6】細胞外小胞へのタグの付加。この概略図は、タンパク質リガーゼ認識配列(この代表的な例ではLPETG)を有するタグを、タンパク質リガーゼ(この代表的な例ではソルターゼA)の作用を通して細胞外小胞に付加することができる方法の代表的な例を示す。
図7】ペプチドとの白血病EVのライゲーション。A.30画分に溶出した、THP1細胞からのEVのサイズ排除クロマトグラフィー精製。EVはNanosight粒子アナライザーを使用して検出し、タンパク質濃度はBCAアッセイを使用して測定した。B.OaAEPリガーゼを使用してビオチン化TRNGLペプチドとコンジュゲートしたTHP1 EVのビオチンのウェスタンブロット解析。
図8】EGFR標的化ペプチドの特異的結合は、EGFR陽性細胞によるソルタグ付きRBCEVの取り込みを促進する。(A)FITC抗EGFR抗体によるFACSを使用して解析した、ヒト白血病(MOLM13)、乳がん(SKBR3及びCA1a)及び肺がん(H358及びHCC827)細胞におけるEGFRの発現。(B)ビオチン結合AF647ストレプトアビジンのFACS解析によって示す、3つの示した細胞株へのビオチン化コントロール(Cont)又はEGFR標的化(ET)ペプチドの結合。(C)カルセインAMで標識した及びソルターゼAを使用してCont又はETペプチドとコンジュゲートしたRBCEVで処置したH358細胞のカルセインAM蛍光のFACS解析。ヒストグラム内の色は、グラフのように同じパターンで表される。スチューデントのt検定***P<0.001。
図9】EGFR標的化ペプチドとのRBCEVのリガーゼ媒介コンジュゲーションはRBCEVの特異的な取り込みも増強する。(A)OaEAP1リガーゼを使用してCont又はETペプチドとコンジュゲートしたカルセイン-AM標識RBCEVで処置したH358細胞のカルセインAM蛍光のFACS解析。(B)EGFRへの結合と競合する、ライゲートしたRBCEVの取り込みへの、ブロッキングペプチドの効果。(C)カルセイン-AM標識で標識し、ETペプチドとコンジュゲートしたRBCEVの取り込みへの化学阻害剤、EIPA(マクロピノサイトーシスのブロッキング)、フィリピン(クラスリン媒介エンドサイトーシスのブロッキング)、ワートマニン(マンノース受容体媒介エンドサイトーシスのブロッキング)の効果。スチューデントのt検定P<0.05、***P<0.001。
図10-1】EGFR標的化RBCEVは、EGFR陽性肺がんを担持するマウスの肺に濃縮される。(A)RBCのゴースト膜又は無傷のRBCによるマウスの条件付けを、尾静脈へのDiR標識RBCEVの注射の1時間前にゴースト又はRBCの後眼窩注射によって実施した。24時間後、蛍光を臓器において観察した。(B)NSGマウスの尾静脈に100万個のH358ルシフェラーゼ細胞を注射した。3週間後、in vivo画像化システム(IVIS)を使用して肺における生物発光を検出した。肺がんを有するマウスを、後眼窩注射によってRBCで前処置した。1時間後、マウスに0.1mgのDiR標識RBCEVを注射した。8時間後、IVISを使用して臓器におけるDiR蛍光を観察した。H358ルシフェラーゼ細胞のi.v.注射後3週間の肺における生物発光シグナルによって示された肺がんを有するマウスの代表的な画像。非コートRBCEV、コントロール/ETペプチド-ライゲートRBCEV又はRBCEV洗浄のフロースルーを注射したマウスからの臓器の代表的なDiR蛍光画像。フロースルーコントロールで検出されたシグナルをひいた、平均強度と比較した各臓器の平均DiR蛍光強度。スチューデントのt検定P<0.05、**P<0.001。
図10-2】EGFR標的化RBCEVは、EGFR陽性肺がんを担持するマウスの肺に濃縮される。(A)RBCのゴースト膜又は無傷のRBCによるマウスの条件付けを、尾静脈へのDiR標識RBCEVの注射の1時間前にゴースト又はRBCの後眼窩注射によって実施した。24時間後、蛍光を臓器において観察した。(B)NSGマウスの尾静脈に100万個のH358ルシフェラーゼ細胞を注射した。3週間後、in vivo画像化システム(IVIS)を使用して肺における生物発光を検出した。肺がんを有するマウスを、後眼窩注射によってRBCで前処置した。1時間後、マウスに0.1mgのDiR標識RBCEVを注射した。8時間後、IVISを使用して臓器におけるDiR蛍光を観察した。H358ルシフェラーゼ細胞のi.v.注射後3週間の肺における生物発光シグナルによって示された肺がんを有するマウスの代表的な画像。非コートRBCEV、コントロール/ETペプチド-ライゲートRBCEV又はRBCEV洗浄のフロースルーを注射したマウスからの臓器の代表的なDiR蛍光画像。フロースルーコントロールで検出されたシグナルをひいた、平均強度と比較した各臓器の平均DiR蛍光強度。スチューデントのt検定P<0.05、**P<0.001。
図11-1】自己ペプチドとのコンジュゲーションは、RBCEVの食作用を防ぎ、循環におけるRBCEVの能力を増強する。(A)コントロール又は自己ペプチド(SP)ライゲートRBCEVで処置したMOLM13及びTHP1単球のカルセインAMのFACS解析。ヒストグラムの色は、グラフと同じように表す。(B)尾静脈への0.2mgのCFSE標識RBCEVの注射の5分後に、NSGマウスの血漿においてRBCEVを捕捉したビオチン化抗GPA抗体によって結合されたストレプトアビジンビーズのFACS解析。(C)ソルターゼAを使用してコントロールペプチド又はSPとコンジュゲートしたDiR標識RBCEVの体内分布。スチューデントのt検定***P<0.001。
図11-2】自己ペプチドとのコンジュゲーションは、RBCEVの食作用を防ぎ、循環におけるRBCEVの能力を増強する。(A)コントロール又は自己ペプチド(SP)ライゲートRBCEVで処置したMOLM13及びTHP1単球のカルセインAMのFACS解析。ヒストグラムの色は、グラフと同じように表す。(B)尾静脈への0.2mgのCFSE標識RBCEVの注射の5分後に、NSGマウスの血漿においてRBCEVを捕捉したビオチン化抗GPA抗体によって結合されたストレプトアビジンビーズのFACS解析。(C)ソルターゼAを使用してコントロールペプチド又はSPとコンジュゲートしたDiR標識RBCEVの体内分布。スチューデントのt検定***P<0.001。
図12-1】sdAbとのRBCEVのコンジュゲーションは、リンカーペプチドによって増強される。(A)Hisタグ親和性精製の前(注入)及び後(溶出液)のEGFR VHH sdAbのゲル電気泳動解析。(B)2ステップライゲーション反応のスキーム。第1のステップでは、リガーゼ結合部位を有するリンカーペプチドを、RBCEVのGLを有するタンパク質にコンジュゲートする。第2のステップでは、リンカーペプチドを、NGLを有するVHHにライゲートする。(C)OaAEP1リガーゼを使用して、EGFR標的化VHHとコンジュゲートしたRBCEVのVHH(抗VHH抗体を使用する)のウェスタンブロット解析。ライゲートしたRBCEVはSECで洗浄した。(D)4℃で1時間のインキュベーション後にHCC827細胞に結合した、非コートRBCEV又はET-VHHライゲートRBCEVのGPA(RBCEVマーカー)のFACS解析。
図12-2】sdAbとのRBCEVのコンジュゲーションは、リンカーペプチドによって増強される。(A)Hisタグ親和性精製の前(注入)及び後(溶出液)のEGFR VHH sdAbのゲル電気泳動解析。(B)2ステップライゲーション反応のスキーム。第1のステップでは、リガーゼ結合部位を有するリンカーペプチドを、RBCEVのGLを有するタンパク質にコンジュゲートする。第2のステップでは、リンカーペプチドを、NGLを有するVHHにライゲートする。(C)OaAEP1リガーゼを使用して、EGFR標的化VHHとコンジュゲートしたRBCEVのVHH(抗VHH抗体を使用する)のウェスタンブロット解析。ライゲートしたRBCEVはSECで洗浄した。(D)4℃で1時間のインキュベーション後にHCC827細胞に結合した、非コートRBCEV又はET-VHHライゲートRBCEVのGPA(RBCEVマーカー)のFACS解析。
図13】単一ドメイン抗体は、標的細胞によるRBCEVの特異的取り込みを促進する。(A)カルセインAMで標識した、及びOaAEP1リガーゼを使用して、リンカーペプチドあり又はなしで、EGFR標的化VHH sdAbとコンジュゲートしたRBCEVで処置したEGFR陽性H358細胞のカルセインAMのFACS解析。(B)カルセインAMで標識した、及びOaAEP1リガーゼを使用して、リンカーペプチドあり又はなしで、mCherry標的化VHH sdAbとコンジュゲートしたRBCEVで処置した、表面mCherryを発現するCA1a細胞のカルセインAMのFACS解析。色は、ヒストグラムと棒グラフで同じく表される。スチューデントのt検定P<0.05、**P<0.05、***P<0.001。
図14-1】EGFR標的化RBCEVを使用するRNA及び薬物の送達。(A)ET-VHHライゲートRBCEVを使用するH358細胞へのルシフェラーゼmRNAの送達。ルシフェラーゼ活性は、処置の24時間後に、H358細胞の溶解物で測定した。非コート及びmCherry-VHH-ライゲートRBCEVは陰性コントロールとして含んだ。(B)RBCEVを使用するH358腫瘍へのパクリタキセル(PTX)の送達スキーム。PTXは、超音波処理を使用してRBCEVへと積載された。積載RBCEVを洗浄し、ETペプチドとライゲートした。NSGマウスは、尾静脈にH358細胞を注射した。3週間後、腫瘍が肺で検出された場合、マウスは、3日毎に5回、RBCEV又はPTXのみで処置した。生物発光も3日毎に測定した。(C)HPLCを使用して決定した、RBCEVへのPTXの積載効率。(D)20mg/kgのPTXのみ、又はEGRF標的化ペプチドあり又はなしで当用量のPTXを積載したRBCEVで3日毎に処置したマウスの上体の生物発光シグナル。生物発光は、IVISを使用する処置の1日目から3日毎に肺領域で測定した。各条件のマウスの代表的な画像を示す。
図14-2】EGFR標的化RBCEVを使用するRNA及び薬物の送達。(A)ET-VHHライゲートRBCEVを使用するH358細胞へのルシフェラーゼmRNAの送達。ルシフェラーゼ活性は、処置の24時間後に、H358細胞の溶解物で測定した。非コート及びmCherry-VHH-ライゲートRBCEVは陰性コントロールとして含んだ。(B)RBCEVを使用するH358腫瘍へのパクリタキセル(PTX)の送達スキーム。PTXは、超音波処理を使用してRBCEVへと積載された。積載RBCEVを洗浄し、ETペプチドとライゲートした。NSGマウスは、尾静脈にH358細胞を注射した。3週間後、腫瘍が肺で検出された場合、マウスは、3日毎に5回、RBCEV又はPTXのみで処置した。生物発光も3日毎に測定した。(C)HPLCを使用して決定した、RBCEVへのPTXの積載効率。(D)20mg/kgのPTXのみ、又はEGRF標的化ペプチドあり又はなしで当用量のPTXを積載したRBCEVで3日毎に処置したマウスの上体の生物発光シグナル。生物発光は、IVISを使用する処置の1日目から3日毎に肺領域で測定した。各条件のマウスの代表的な画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の態様及び実施形態を、ここで添付の図面を参照して議論する。さらなる態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。この本文中で述べた全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本明細書では、酵素、例えばタンパク質又はタンパク質リガーゼ又はバリアントの存在下でタグを有する細胞外小胞の表面を修飾する方法を記載する。タグは、細胞外小胞が、標的特異的送達のために標的細胞に結合することを可能にする結合分子であり得る。
【0026】
細胞外小胞
用語「細胞外小胞」は、本明細書で使用する場合、細胞から細胞外環境へと放出された小さい粒子様構造を指す。
【0027】
細胞外小胞(EV)は、直径が50nmと1000nmの間の細胞膜又はエンドソーム膜の実質的に球状の断片である。細胞外小胞は、病理学条件と生理学条件の両方の元で様々な細胞型から放出される。細胞外小胞は膜を有する。膜は、二重層膜であり得る(すなわち、脂質二重層)。膜は、細胞膜から生じ得る。したがって、細胞外小胞の膜は、それが由来する細胞と類似の組成を有し得る。本明細書に開示するいくつかの態様では、細胞外小胞は実質的に透明である。
【0028】
用語、細胞外小胞は、エキソソーム、マイクロベシクル、膜微小粒子、エクトソーム、水泡及びアポトーシス小体を包含する。細胞外小胞は、外への出芽及び分裂によって産生され得る。この産生は、天然のプロセス又は化学的に誘導若しくは増強されたプロセスであり得る。本明細書に開示するいくつかの態様では、細胞外小胞は、化学誘導によって産生されたマイクロベシクルである。
【0029】
細胞外小胞は、それらのサイズ及び形成の起源に基づいて、エキソソーム、マイクロベシクル又はアポトーシス体として分類され得る。マイクロベシクルは、本明細書に開示する本発明による細胞外小胞の特に好ましいクラスである。好ましくは、本発明の細胞外小胞は、細胞膜から放出され、エンドソーム系から生じない。
【0030】
本明細書に開示する細胞外小胞は、様々な細胞、例えば赤血球、白血球、がん細胞、幹細胞、樹状細胞、マクロファージ等に由来し得る。好ましい例では、細胞外小胞は赤血球由来であるが、いずれの供給源からの、例えば白血病細胞及び細胞株からの細胞外小胞も使用され得る。
【0031】
マイクロベシクル又は微小粒子は、細胞膜の直接外への出芽及び分裂によって生じる。マイクロベシクルは、典型的には、エキソソームより大きく、100~500nmの範囲の直径を有する。いくつかの場合では、マイクロベシクルの組成物は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するマイクロベシクルを含む。好ましくは、直径は、100~300nmである。例えば組成物、医薬組成物、薬品又は製剤中に存在するマイクロベシクルの集団は、異なる範囲の直径のマイクロベシクルを含み、マイクロベシクル試料内のマイクロベシクルの平均直径は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲であり得る。好ましくは、平均直径は100~300nmの間である。
【0032】
エキソソームの直径は、およそ30~およそ100nmの範囲である。いくつかの場合では、エキソソームの組成物は、10~200nm、10~150nm、10~120nm、10~100nm、20~150nm、20~120nm、25~110nm、25~100nm、又は30~100nmの範囲の直径を有するエキソソームを含む。好ましくは、直径は30~100nmである。例えば、組成物、医薬組成物、薬品又は製剤で提示されるエキソソームの集団は、異なる範囲の直径のエキソソームを含み、試料内のエキソソームの平均直径は、10~200nm、10~150nm、10~120nm、10~100nm、20~150nm、20~120nm、25~110nm、25~100nm、又は30~100nmの範囲であり得る。好ましくは、平均直径は30~100nmの間である。
【0033】
エキソソームは、リンパ球、樹状細胞、細胞傷害性T細胞、マスト細胞、神経、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞、及び腸上皮細胞を含む、様々な培養細胞で観察される。エキソソームは、多胞体(mutivesicular)という、細胞質の大きな嚢内に位置する、エンドソームのネットワークから生じる。これらの嚢は、細胞外環境へと放出される前に、細胞膜へと融合する。
【0034】
アポトーシス体又は小疱は、最大の細胞外小胞であり、1~5μmの範囲である。有核細胞は、核クロマチンの濃縮に始まり、膜小疱形成及び最終的なアポトーシス体を含むEVの放出のいくつかの段階を通してアポトーシスを受ける。
【0035】
好ましくは、細胞外小胞は、ヒト細胞、又はヒト起源の細胞に由来する。本発明の細胞外小胞は、小胞誘導剤と接触した細胞から誘導され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)、又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。
【0036】
赤血球細胞外小胞(RBC-EV)
本明細書に開示する特定の態様では、細胞外小胞は赤血球に由来する。赤血球は、多くの理由によりEVの良い供給源である。赤血球は無核であるため、RBC-EVは、他の供給源からのEVよりも少ない核酸を含有する。RBC-EVは、内因性DNAを含有しない。RBC-EVは、miRNA又は他のRNAを含有し得る。RBC-EVは、発癌性物質、例えば発癌性DNA又はDNA変異を含まない。
【0037】
RBC-EVは、ヘモグロビン及び/又はストマチン及び/又はフロチリン-2を含み得る。それらの色は、赤であり得る。典型的には、RBC-EVは、透過型電子顕微鏡下でドーム状(凹んだ)表面、又は「カップ形」を示す。RBC-EVは、細胞表面CD235aを持つことによって特徴付けられ得る。本発明によるRBC-EVは、直径約100~約300nmであり得る。いくつかの場合では、RBC-EVの組成物は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するRBC-EVを含む。好ましくは、直径は、100~300nmである。RBC-EVの集団は、異なる範囲の直径を有するRBC-EVを含み、RBC-EV試料内のRBC-EVの平均直径は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲であり得る。好ましくは、平均直径は100~300nmの間である。
【0038】
好ましくは、RBC-EVは、ヒト又は動物血液試料又は初代細胞に由来する赤血球又は固定化赤血球株に由来する。血液細胞は、処置される患者にマッチさせた型であってよく、したがって血液細胞は、A型、B型、AB型、O型、又はOh型血液であり得る。好ましくは、血液はO型である。血液は、Rh陽性又はRh陰性であり得る。いくつかの場合では、血液はO型及び/又はRh陰性、例えばO-型である。血液は、疾患又は障害がない、例えばHIV、鎌状赤血球貧血、マラリアがないことが確認され得る。しかしながら、任意の血液型が使用され得る。いくつかの場合では、RBC-EVは自己及び処置される患者から得られた血液試料に由来する。いくつかの場合では、RBC-EVは同種であり、処置される患者から得られた血液試料に由来しない。
【0039】
RBC-EVは、赤血球の試料から単離され得る。赤血球からEVを得るためのプロトコールは当技術分野、例えば、Daneshら、(2014年)Blood.2014 Jan 30;123(5):687~696頁で公知である。EVを得るために有用な方法は、赤血球を含む試料を提供する又は得るステップ、赤血球を誘導して細胞外小胞を産生するステップ、及び細胞外小胞を単離するステップを含み得る。試料は、全血液試料であり得る。好ましくは、赤血球以外の細胞は試料から除去され、試料の細胞成分は赤血球である。
【0040】
試料の赤血球は、濃縮され、又は全血液試料の他の成分、例えば白血球から分けられ得る。赤血球は、遠心分離によって濃縮され得る。試料は、白血球除去にかけられ得る。
赤血球を含む試料は、実質的に赤血球のみを含み得る。細胞外小胞は、赤血球を小胞誘導剤と接触させることによって赤血球から誘導され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)、又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。
【0041】
RBC-EVは、遠心分離(超遠心分離あり又はなし)、沈殿、濾過プロセス、例えばタンジェント流濾過、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって単離され得る。この方法で、RBC-EVは、RBC及び混合物の他の成分から分離され得る。
【0042】
細胞外小胞は:赤血球の試料を得ること;赤血球を小胞誘導剤と接触させること;及び誘導された細胞外小胞を単離することを含む方法によって赤血球から得ることができる。
赤血球は、低速遠心分離により、及び白血球除去フィルターを使用して、白血球及び血漿を含有する全血液試料から分離され得る。いくつかの場合では、赤血球試料は、他の細胞型、例えば白血球を含有しない。言い換えると、赤血球試料は、実質的に赤血球からなる。赤血球は、小胞誘導剤と接触させる前に、緩衝液、例えばPBSで希釈され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。小胞誘導剤は、約10nMのカルシウムイオノフォアであり得る。赤血球は、終夜、又は少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、又は12時間以上、小胞誘導剤と接触させ得る。混合物は、低速遠心分離にかけ、RBC、細胞残渣、又は他の非RBC-EV物を除去することができ、及び/又は上清を約0.45μmシリンジフィルターに通す。RBC-EVは、超遠心分離、例えばおよそ100,000×gの遠心分離によって濃縮され得る。RBC-EVは、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、又は少なくとも1時間、超遠心分離によって濃縮され得る。濃縮されたRBC-EVは、冷PBSに懸濁され得る。それらは、60%スクロースクッションに重層され得る。スクロースクッションは、凍結した60%スクロースを含み得る。スクロースクッションに重層したRBC-EVは、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間以上、100,000×gで超遠心分離にかけられ得る。好ましくは、スクロースクッションに重層したRBC-EVは、約16時間、100,000×gで超遠心分離にかけられ得る。次いで、スクロースクッション上の赤い層が回収され、それによりRBC-EVが得られる。得られたRBC-EVは、洗浄、タグ付け、及び場合により積載等の、さらなるプロセシングに供され得る。
【0043】
タグ
本発明による細胞外小胞は、それらの表面に、タグを有する。タグは、好ましくは、タンパク質又はペプチド配列である。タグは、ペプチド又はタンパク質であり得る。それは、修飾ペプチド又はタンパク質、例えば、グリコシル化又はビオチン化タンパク質若しくはペプチドであり得る。タグは、細胞外小胞に共有結合され、例えば細胞外小胞の膜タンパク質に共有結合され得る。タグは、細胞外小胞が形成された後、細胞外小胞に付加され得る。タグは、タンパク質リガーゼ認識配列である、又はタンパク質リガーゼ認識配列由来である配列を含む又はからなる配列によって細胞外小胞に結合され得る。例えば、タグは、タンパク質リガーゼ認識配列と100%配列同一性、又はタンパク質リガーゼ認識配列と約90%、約80%、約70%、約60%、約50%若しくは約40%配列同一性を含む配列によって細胞外小胞に結合され得る。アミノ酸配列はLPXTを含み得る。
【0044】
タグは、小胞の細胞外表面に提示され、したがって、細胞外環境に暴露される。本発明者らは、細胞外小胞の表面修飾がマクロファージによる細胞外小胞の取り込みを低下させ、循環における細胞外小胞の利用可能性を改善し、並びに非内因性物質又はカーゴの標的細胞への特異的送達を増強することを見出した。
【0045】
タグは、外因性分子であり得る。言い換えると、タグは、天然の小胞の外側表面に提示されない分子である。いくつかの場合では、タグは、そこから細胞外小胞が由来する細胞又は赤血球に存在しない外因性分子である。
【0046】
タグは、細胞外小胞の循環における安定性、取り込み効率及び利用可能性を増加させ得る。そのようなタグは、すでにいくらかの固有の治療特性を有する細胞外小胞、例えばそれぞれ心筋再生又はワクチン接種のための間葉系幹細胞又は樹状細胞からの細胞外小胞の効果を増強し得る。
【0047】
いくつかの場合では、タグは、体内の循環及び臓器において細胞外小胞及びカーゴを含有する細胞外小胞を提示するように作用する。ペプチド及びタンパク質は、治療分子として作用し、例えば標的細胞機能をブロッキング/活性化する、又はワクチン接種のための抗原を提示することができる。それらは、バイオマーカー検出、例えば毒性の診断のためのプローブとしても作用し得る。
【0048】
タグは、好ましくは、機能性ドメイン及びタンパク質リガーゼ認識配列を含有する。機能性ドメインは、標的部分に結合することができ、検出されることができ、又は治療効果を誘導することができることがある。機能性ドメインは、標的分子に結合することができることがある。そのような機能性ドメインを含むタグは、本明細書では、結合分子と呼ばれ得る。結合分子は、標的分子と特異的に相互作用することができるものである。結合部分を含む細胞外小胞は、標的分子を有する細胞にカーゴ又は治療剤を送達するために特に有用であり得る。好適な結合分子は、抗体及び抗原結合断片(抗体断片としても公知なことがある)、リガンド分子及び受容体分子を含む。結合分子は目的の標的に結合する。標的は、目的の細胞、例えばがん細胞と関連する、例えば細胞の表面に発現される分子であり得る。リガンドは、標的細胞の生体分子、例えば受容体分子と複合体を形成し得る。
【0049】
好適な結合分子は、抗体及び抗原結合断片を含む。断片、例えば、Fab及びFab断片は、遺伝子操作された抗体及び抗体断片として使用され得る。抗体の可変重鎖(V)及び可変軽鎖(V)ドメインは、抗原認識に関与し、事実、初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識される。さらなる確証は、げっ歯類抗体の「ヒト化」によって見出された。げっ歯類起源の可変ドメインは、ヒト起源の定常ドメインに融合させることができ、生じる抗体はげっ歯類親抗体の抗原特異性を保持する(Morrisonら(1984年)Proc.Natl.Acad.Sd.USA81、6851~6855頁)。本明細書に開示する細胞外小胞に有用な抗体又は抗原結合断片は、標的分子を認識及び/又は結合する。標的分子は、がん細胞の表面に存在するタンパク質であり得る。
【0050】
抗原特異性が、可変ドメインによって与えられ、定常ドメインとは無関係であることは、全て1つ又は複数の可変ドメインを含有する抗体断片の細菌発現を含む実験から公知である。これらの分子は、Fab様分子(Betterら(1988年)Science 240,1041頁);Fv分子(Skerraら(1988年)Science 240、1038頁);V及びVパートナードメインが可動性オリゴペプチドによって結合される単鎖Fv(ScFv)分子(Birdら(1988年)Science 242、423頁;Hustonら(1988年)Proc.Natl.Acad.Sd.USA 85、5879頁)及び単離Vドメインを含む単一ドメイン抗体(dAb)(Wardら(1989年)Nature 341、544頁)を含む。それらの特異的結合部位を保持する抗体断片の合成に含まれる技術の一般的な説明は、Winter&Milstein(1991年)Nature 349、293~299頁に見出される。本明細書で有用な抗体及び断片は、ヒト又はヒト化、マウス、ラクダ、キメラ、又は任意の他の好適な起源由来であり得る。
【0051】
「ScFv分子」によって、本発明者らは、VH及びVLパートナードメインが例えば直接、ペプチドによって又は可動性オリゴペプチドによって共有結合されている分子を意味する。Fab、Fv、ScFv及びsdAb抗体断片は全て、大腸菌で発現され、大腸菌から分泌され、したがって、大量の前記断片の容易な産生を可能にし得る。
【0052】
抗体全体、及びF(ab’)断片は「二価」である。「二価」によって、本発明者らは、前記抗体及びF(ab’)断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFv及びSdAb断片は、1つの抗原結合部位のみを有する、一価である。一価の抗体断片は、それらのサイズが小さいため、タグとして特に有用である。
【0053】
本明細書での使用のための好ましい結合分子は、sdAbである。「sdAb」により、本発明者らは、1つ、2つ又はそれ以上の単一の単量体可変抗体ドメインからなる単一ドメイン抗体を意味する。sdAb分子は、dAbと呼ばれることもある。
【0054】
いくつかの場合では、結合分子は単鎖抗体、又はscAbである。scAbは、共有結合したVH及びVLパートナードメイン(例えば、直接、ペプチドにより、又は可動性オリゴペプチドにより)及び任意選択で軽鎖定常ドメインからなる。
【0055】
他の好適な結合分子は、標的分子に親和性を有するリガンド及び受容体を含む。タグは、細胞表面受容体のリガンド、例えばEGFR結合ペプチドであり得る。例としては、ストレプトアビジン及びビオチン、アビジン及びビオチン、又は他の受容体のリガンド、例えばフィブロネクチン及びインテグリンが挙げられる。
【0056】
小サイズのビオチンは、結合分子の生物活性にわずかにしかから全く作用しない。ビオチン及びストレプトアビジンのように、ビオチン及びアビジン、並びにフィブロネクチン及びインテグリンは高親和性及び特異性でそれらの対を結合し、それらは結合分子として非常に有用である。アビジン-ビオチン複合体は、公知のタンパク質とリガンドの間の最も強い非共有結合性相互作用(Kd=10~15M)である。結合形成は速く、いったん形成されると、極端なpH、温度、有機溶媒及び他の変性剤によって影響されない。ビオチンのストレプトアビジンへの結合も強く、速く形成され、バイオテクノロジー適用に有用である。
【0057】
機能性ドメインは治療剤を含み得る又はからなり得る。治療剤は、酵素であり得る。それは、アポトーシス誘導剤又は阻害剤であり得る。
機能性ドメインは、抗原、抗体認識配列又はT細胞認識配列を含み得る。タグは、1つ又は複数の抗原性ペプチドに由来する1つ又は複数の短鎖ペプチドを含み得る。ペプチドは、抗原性ペプチドの断片であり得る。好適な抗原性ペプチドは当業者に公知である。
【0058】
機能性ドメインは、検出可能部分を含み得る又はからなり得る。検出可能部分は、蛍光標識、比色標識、フォトクロミック化合物、磁気粒子又は他の化学標識を含む。検出可能部分は、ビオチン又はHisタグであり得る。
【0059】
タグは、スペーサー又はリンカー部分を含み得る。スペーサー又はリンカーは、タグとタンパク質リガーゼ認識配列の間に配置され得る。スペーサー又はリンカーは、タグのN又はC末端に結合され得る。好ましくは、スペーサー又はリンカーは、タグの機能、例えばタグによる標的結合活性を干渉又は妨害しないように配置される。スペーサー又はリンカーは、好ましくはペプチド配列である。特定の態様では、スペーサー又はリンカーは、一連の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも11個のアミノ酸、少なくとも12個のアミノ酸、少なくとも13個のアミノ酸、少なくとも14個のアミノ酸又は少なくとも15個のアミノ酸である。好ましくは、スペーサー又はリンカーは可動性である。スペーサーは、複数のグリシン及び/又はセリンアミノ酸を含み得る。
【0060】
スペーサー及びリンカー配列は当業者に公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるChenら、Adv Drug Deliv Rev(2013年)65(10):1357~1369頁に記載される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は可動性リンカー配列であり得る。可動性リンカー配列は、リンカー配列によって結合されるアミノ酸配列の相対的運動を可能にする。可動性リンカーは、当業者に公知であり、いくつかはChenら、Adv Drug Deliv Rev(2013年)65(10):1357~1369頁で同定される。可動性リンカー配列は、高比率のグリシン及び/又はセリン残基を含むことが多い。
【0061】
いくつかの実施形態では、スペーサー又はリンカー配列は、少なくとも1つのグリシン残基及び/又は少なくとも1つのセリン残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、グリシン及びセリン残基からなる。いくつかの実施形態では、スペーサー又はリンカー配列は1~2、1~3、1~4、1~5又は1~10個のアミノ酸の長さを有する。
【0062】
本発明者らは、スペーサー又はリンカーの包括が、細胞外小胞とタグ部分の間のタンパク質リガーゼ反応の効率を改善し得ることを観察した。用語「タグ」は、本明細書で使用する場合、タグ、スペーサー、及びタンパク質リガーゼ認識配列を含むペプチドを包含し得る。
【0063】
好適なタンパク質リガーゼ認識配列は、当技術分野で公知である。タンパク質リガーゼ認識配列は、細胞外小胞をタグ付けする方法で使用されるタンパク質リガーゼによって認識される。例えば、本方法で使用されるタンパク質リガーゼがソルターゼである場合、次いでタンパク質リガーゼ認識配列はソルターゼ結合部位である。これらの場合では、配列はLPXTG(ここでXは、任意の天然に生じるアミノ酸である)、好ましくはLPETGであり得る。あるいは、酵素がAEP1である場合、タンパク質リガーゼ認識配列はNGLであり得る。タンパク質リガーゼ結合部位は、ペプチド又はタンパク質のC末端に配列され得る。
【0064】
タグは、1つ又は複数のさらなる配列をさらに含み、タグ自体の産生中、タグ付け方法中、又は続く精製のための、タグの精製又はプロセシングを助け得る。当技術分野で公知の任意の好適な配列が使用され得る。例えば、配列は、HAタグ、FLAGタグ、Mycタグ、Hisタグ(例えばポリHisタグ、又は6×Hisタグ)であり得る。
【0065】
本明細書では、細胞外小胞のタグ付けに好適なタグを産生する方法を提供する。方法は、ペプチドを操作するステップを含み得る。方法は、ペプチドを化学合成するステップを含み得る。方法は、核酸配列を操作してタグを発現するステップを含み得る。例えば、方法は、タグをコードする核酸構築物を調製するステップを含み得る。核酸構築物は、タグ及び1つ又は複数のスペーサー配列、タンパク質リガーゼ認識配列、1つ又は複数のさらなる配列を含むポリペプチドをコードし得る。例えば、核酸構築物は、タグ、スペーサー及びタンパク質リガーゼ配列を含む又はからなるポリペプチドをコードし得る。
【0066】
本明細書で開示するようにタグをコードする核酸も提供される。核酸は、ベクター内に含まれ得る。ベクターは、タグ、スペーサー及びタンパク質リガーゼ認識配列をコードする核酸を含み得る。ベクターは、大腸菌発現ベクターであり得る。
【0067】
タグ付け方法
本明細書では、細胞外小胞をタグ付けする方法を提供する。方法は、タグを細胞外小胞の表面に結合させることを含む。方法は、例えば共有結合により、タグを細胞外小胞に結合させることを含み得る。方法は、タグを細胞外小胞の膜に結合させることを含み得る。好ましくは、本明細書に開示するタグ付け方法は、ホスファチジルセリン(PS)に結合することが公知のラクトアドへリンのC1C2ドメインを含まない。好ましくは、タグは、小胞が由来する細胞に付加されるよりも、小胞が形成された後に細胞外小胞に付加され、その形成の間に小胞に含まれる。方法は、タンパク質リガーゼ又はそのバリアントによって細胞外小胞とタグを接触させるステップ、及びタグと細胞外小胞の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で混合物をインキュベートするステップを含み得る。条件は、切断及びタグの細胞外小胞の表面への接合を可能にする。使用される条件は使用されるリガーゼによる。
【0068】
本明細書に開示するいくつかの方法では、細胞外小胞は、単一ステップのプロセスでタグをタグ付けされる。言い換えると、タグが調製され、細胞外小胞にライゲートされる。
他の方法では、細胞外小胞は、複数ステップのプロセスでタグをタグ付けされる。そのような方法では、細胞外小胞はまずペプチドにライゲートしてペプチドタグ細胞外小胞を生成し、次いでペプチドタグ細胞外小胞が、機能性ドメイン、例えば結合部分又は標的化部分にライゲートされる。いくつかの方法では、細胞外小胞は、機能性ドメインとのライゲーションの前に、1つ又は複数のペプチドにタグ付けされる。方法は、ペプチドと細胞外小胞の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で、細胞外小胞をペプチド及び第1のタンパク質リガーゼと接触させ、それによりペプチドタグ付き細胞外小胞を生成することを含み得る。方法は、次いで、細胞外小胞に共有結合したペプチドと機能性ドメインペプチドの間の共有結合を可能にする条件下で、ペプチドタグ付き細胞外小胞を機能性ドメインペプチド及び第2のタンパク質リガーゼと接触させることを含み得る。
【0069】
これらの場合では、ペプチドは、ペプチドのいずれかの末端にリガーゼ結合部位を含み得る。リガーゼ結合部位は、リガーゼ認識部位及びリガーゼ受容部位を含み得る。ペプチドは、一方の末端にリガーゼ認識部位を、もう一方の末端にリガーゼ受容部位を含み得る。あるいは、リガーゼ結合部位は両方ともリガーゼ認識部位を含み得る。リガーゼ認識部位は、リガーゼによって認識される特定の部位であり得る。リガーゼは、リガーゼ認識部位の1つ又は複数のアミノ酸残基とリガーゼ受容部位の間の結合の形成を触媒し得る。例えば、リガーゼ認識部位はNGLを含んでよく、リガーゼ受容部位はGLを含んでよい。
【0070】
リガーゼ結合部位は、同じ又は異なるリガーゼに相当し得る。例えば、リガーゼ結合部位は両方ともソルターゼ結合部位であってよく、又は両方ともAEP1結合部位であってよい。あるいは、リガーゼ結合部位は、異なるリガーゼ、例えばソルターゼ結合部位及びAEP1結合部位に相当し得る。第1のタンパク質リガーゼは、第2のタンパク質リガーゼと同じリガーゼであってよく、又は第1及び第2のタンパク質リガーゼは異なってよい。いくつかの場合では、第1及び第2のタンパク質リガーゼはソルターゼである。いくつかの場合では、第1及び第2のタンパク質リガーゼは両方ともソルターゼAである。
【0071】
機能性ドメインペプチドは、1つ又は複数の機能性ドメイン及びリガーゼ結合部位を含み得る。リガーゼ結合部位は、リガーゼ認識部位又はリガーゼ受容部位を含み得る。好ましくは、リガーゼ結合部位はリガーゼ認識部位を含む。リガーゼ結合部位は、ペプチドのリガーゼ結合部位に相当し、それによりリガーゼはペプチドのリガーゼ結合部位と機能性ドメインペプチドのリガーゼ結合部位の間の結合を触媒し得る。
【0072】
ペプチド及び機能性ドメインペプチドは、もう1つの機能性分子配列、例えばビオチン、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ又は他の配列を含み得る。そのような方法は、連続して付加した異なる成分、例えばリンカー、1つ又は複数の機能性ドメイン、例えば検出可能タグ、結合部分又は標的化部分により、細胞外小胞にタグを構築することを含み得る。
【0073】
いくつかの場合では、方法は、各成分を別々に調製することを含む。方法は、細胞外小胞、タグ、リンカー、ペプチド及び/又はリガーゼを調製又は提供することを含み得る。方法は、タグ、細胞外小胞及びリガーゼから選択される1、2又は3個の成分を組み合わせて混合物を形成することを含み得る。混合物は、さらなる薬剤、例えば緩衝液を含有し得る。混合物は、任意の順序で成分を組み合わせることによって調製され得る。例えば、3個の成分が実質的に同時に組み合わされてよく、又は第3の薬剤の添加の前に、2つの成分の混合物が調製及び一時保存されてよい。
【0074】
混合物は、約0℃~約30℃、約4℃~約25℃、約4℃又は約25℃で、少なくとも15分間、30分間、1時間、又は2時間、又は3時間インキュベートされ得る。好ましくは、混合物は優しく攪拌される。この方法で、タンパク質リガーゼは、結合分子と細胞外小胞の表面タンパク質の間に共有結合を形成することによって細胞外小胞の表面に結合分子を接着させる。
【0075】
好ましくは、混合物のpHは酸性である。pHは、8.0又はそれ以下であり得る。pHは、8、7、6、5、4、3、2又は1より低くてよい。
方法は、混合物から修飾細胞外小胞を単離するステップを含み得る。単離は、超遠心分離、又はサイズ排除クロマトグラフィー若しくは濾過を含み得る。分画遠心分離は、生じた混合物を凍結スクロースクッションに添加すること及び遠心分離を実施することを含み得る。用語「スクロースクッション」は、遠心分離中にそれ自体で確立するスクロース勾配を指す。スクロース勾配は、約40%~約70%、約50%~約60%又は約60%、好ましくは約60%スクロースの溶液を使用することによって調製され得る。
【0076】
いくつかの場合では、タグ付き細胞外小胞は、タグにより、例えば親和性クロマトグラフィーにより単離され得る。単離は、タグペプチド、例えばHAタグ、FLAGタグ、Hisタグ又は他の配列の1つ又は複数の機能性ドメインを利用し得る。
【0077】
遠心分離後、精製した修飾細胞外小胞を回収し、任意選択で緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。次いで、遠心分離を実行して、精製した修飾細胞外小胞を回収する。方法は、1回以上の洗浄ステップを含み得る。好ましくは、方法は、2又は3回の洗浄ステップを含む。
【0078】
細胞外小胞は、積載されてもよく、積載されなくてもよい。言い換えると、細胞外小胞は、カーゴを封入し得る、又は外因性物質を含まなくてよい。いくつかの場合では、タグの結合後、細胞外小胞はカーゴを積載される。好ましくは、カーゴはタグの結合後に積載される。言い換えると、タグ付き細胞外小胞が調製される。次いで、カーゴはタグ付き細胞外小胞に積載される。
【0079】
好ましい方法は、細胞外小胞をタグと接触させることを含む。方法は、細胞外小胞及びタグをタンパク質リガーゼとさらに接触させることを含み得る。細胞外小胞及びタグは、タグの細胞外小胞への結合を誘導するために好適な条件下で接触させることができる。例えば、タグ及び小胞は、緩衝液、例えばタンパク質リガーゼ緩衝液中で接触させることができる。小胞及びタグは、タグ付けが起こるのに十分な時間接触させることができる。
【0080】
方法は、タグ付き細胞外小胞を洗浄してリガーゼを除去するステップを含み得る。
本明細書では、それらの表面にタグを有する細胞外小胞も開示し、前記細胞外小胞は本明細書に開示する方法によって得られる。この方法でタグ付けされた細胞外小胞は、タグ付き細胞から得られた細胞外小胞とは異なり、したがって最初からタグ付けされる。例えば、細胞外小胞とタグの間の結合は、組成上異なり得る。
【0081】
一実施形態では、方法は、タグを細胞外小胞の表面に結合させる。方法は、タグを細胞外小胞の膜に結合させ得る。一実施形態では、方法は、タグを細胞外小胞の表面に共有結合によって結合させる。別の実施形態では、方法は、タグを細胞外小胞の膜に共有結合によって結合させる。さらなる実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、細胞外小胞を、スペーサー又はリンカーを含有するタグに結合させる。さらなる実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、細胞外小胞を、検出されることができるか又は治療効果を誘導することができる機能性分子を含有するタグに結合させる。
【0082】
一実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、酸性条件下で実施される。いくつかの実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、細胞外小胞及びタグをタンパク質リガーゼと接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、細胞外小胞及びタグをソルターゼ酵素と接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、細胞外小胞及びタグをソルターゼAと接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、非積載細胞外小胞にタグをつける。いくつかの実施形態では、細胞外小胞をタグ付けする方法は、積載細胞外小胞にタグをつける。
【0083】
本明細書に開示する特定の方法は、医薬製品のようにタグ付き細胞外小胞を製剤化するステップを含む。これは、1つ又は複数の医薬賦形剤又は担体、例えば緩衝液又は保存剤の添加を含み得る。いくつかの場合では、方法は、凍結すること、凍結乾燥すること、又はその他の形で細胞外小胞若しくは細胞外小胞を含む組成物を保存することを含み得る。
【0084】
タグの調製
本明細書に開示する方法は、タグを調製することを含み得る。タグは、組換えタンパク質であり得る。タグの調製は、分子生物学技術、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press、1989年に記載のものを含んでよく、又はその他の形で当技術分野で公知であり得る。タグはより早く調製され、保存され得る。例えば、凍結、冷蔵、凍結乾燥又はその他の形で早く調製される。
【0085】
タグは、EVへの結合を可能にする結合部位を含有しなければならない。したがって、タグは、使用されるタンパク質リガーゼの型によって調製又は合成され、すなわちタンパク質リガーゼの相当する結合部位を含み、認識する。例えば、使用するタンパク質リガーゼがソルターゼ又はその誘導体である場合、結合分子はソルターゼ結合部位を持ち;又はタンパク質リガーゼが、OaAEP1のようにAEPである場合、結合分子はOaAEP1結合部位を持つ。特に、ソルターゼA認識配列は、LPXTG(ここでXは、任意の天然に生じるアミノ酸である)、好ましくはLPETGであり得る。ソルターゼB認識配列は、NXZTN(ここでXは、任意の天然に生じるアミノ酸である)又はNP(Q/K)(T/S)(N/G/S)(D/A)であってよく、ソルターゼC酵素は様々な局在化シグナル及びアミノ基を認識するそれらの能力のユニークな相違を実証する。
【0086】
タグは操作され、スペーサー又はリンカーを含み得る。スペーサー又はリンカーは、タグの結合分子とペプチド認識部位の間に配置され得る。スペーサーは、可動性リンカー、例えばおよそ10又はそれ以上のアミノ酸を含むペプチドリンカーであり得る。
【0087】
リンカーペプチドは、ペプチドリガーゼを使用してそれをEVにコンジュゲートさせる一端のリガーゼ結合部位(例えば、NGL)及びsdAbへのコンジュゲーションのためにそれをペプチドリガーゼに反応させる他の端の反応性アミノ酸残基(例えば、GL)を有する独立したペプチドであり得る。このリンカーペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸であるはずである。それは、検出目的のためのMycタグ、Hisタグ又はHAタグも含有し得る。それは、ポリエチレングリコール(PEG)を含有し、食作用を防ぎ得る。
【0088】
オリゴマー化を避けるため、2つのリンカーペプチドが1つの代わりに使用され得る。1つのリンカーペプチドは、そのEVへのライゲーションを可能にするC末端のNGL及びN末端でジベンゾシクロオクチン(DBCO)基をコンジュゲートしたシステインを有する。別のリンカーは、NGLによるsdAbへのそのライゲーションを可能にするN末端のGL及びアジド基(N3)を有するC末端のLysを有する。2つのペプチドがRBCEV及びsdAbに別々にライゲートされた後、それらは、DBCOとアジド基の間のクリックケミストリー反応を使用して結合され得る。
【0089】
タグは、任意選択で、検出されることができるか又は治療効果を誘導することができる機能性分子も含み得る。機能性分子は、標的分子に結合することができることがある。結合のための機能性分子を含む細胞外小胞は、カーゴ又は治療剤を、標的分子を有する細胞に送達するために特に有用であり得る。好適な機能性結合分子は、抗体及び抗原結合断片(抗体断片として公知の場合もある)、リガンド分子及び受容体分子を含む。結合分子は、目的の標的に結合するであろう。標的は、目的の細胞、例えばがん細胞と関連する、例えば表面に発現される分子であり得る。
【0090】
機能性ドメインは、治療剤を含み得る又はからなり得る。治療剤は、小分子、酵素又はアポトーシス誘導剤又は阻害剤であり得る。
機能性ドメインは、抗原、抗体認識配列又はT細胞認識配列を含み得る。タグは、1つ又は複数の抗原性ペプチドに由来する1つ又は複数の短鎖ペプチドを含み得る。ペプチドは、抗原性ペプチドの断片であり得る。好適な抗原性ペプチドは当業者に公知である。
【0091】
機能性ドメインは、検出可能部分を含み得る又はからなり得る。検出可能部分は、蛍光標識、比色標識、フォトクロミック化合物、磁気粒子又は他の化学標識を含む。検出可能部分は、ビオチン又はHisタグであり得る。
【0092】
タグの調製は、タグをコードする核酸を操作することを含み得る。核酸は、機能性ドメイン及びタンパク質リガーゼ認識配列をコードする配列を含み得る。核酸は、スペーサー又はリンカーをコードする核酸も含み得る。スペーサー又はリンカーをコードする核酸は、機能性ドメインとタンパク質リガーゼ認識配列の間に配置され得る。
【0093】
タグをコードする核酸を含むベクターも提供する。ベクターは、細胞、例えば大腸菌の培養中にタグを発現するための発現ベクターであり得る。
タンパク質発現
細胞において、ペプチド又はポリペプチド、例えば本発明によるタグ又はカーゴ分子を産生するために好適な分子生物学技術は当技術分野で周知であり、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989年に記載される。
【0094】
ペプチドは、ヌクレオチド配列から発現され得る。ヌクレオチド配列は、細胞に存在するベクター内に含有され得る、又は細胞のゲノムに組み込まれ得る。
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、外来遺伝物質を細胞へと移行させる媒体として使用されるオリゴヌクレオチド分子(DNA又はRNA)である。ベクターは、細胞における外来遺伝物質の発現のための発現ベクターであり得る。そのようなベクターは、発現される遺伝子配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結したプロモーター配列を含み得る。ベクターは、終結コドン及び発現エンハンサーも含み得る。本技術分野で公知の任意の好適なベクター、プロモーター、エンハンサー、及び終結コドンは、本発明によるベクターから植物アスパラギン酸プロテアーゼを発現させるために使用され得る。好適なベクターは、プラスミド、バイナリーベクター、ウイルスベクター及び人工染色体(例えば酵母人工染色体)を含む。
【0095】
この明細書では、用語「作動可能に連結した」は、選択されたヌクレオチド配列と制御ヌクレオチド配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)が共有結合され、このような方法で制御配列の影響又は調節下でヌクレオチド配列の発現を起こす(それにより発現カセットを形成する)ような状況を含み得る。したがって、制御配列は、制御配列がヌクレオチド配列の転写に作用することができる場合、選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結される。適当な場合、生じる転写物は、次いで所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳され得る。
【0096】
ポリペプチドの発現に好適な任意の細胞は、本発明に従ってペプチドを産生するために使用され得る。細胞は、原核生物又は真核生物であり得る。好ましくは、細胞は、真核生物細胞、例えば、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞である。いくつかの場合では、細胞は、いくつかの原核生物細胞が真核生物と同じ翻訳後修飾が可能ではないため、原核生物細胞ではない。さらに、非常に高い発現レベルが真核生物において可能であり、タンパク質は、アポトーシスタグを使用して真核生物から容易に精製され得る。特定のプラスミドも利用され、タンパク質の培地への分泌を増強する。
【0097】
目的のペプチド、例えばタグを産生する方法は、ペプチドを発現するように修飾された真核細胞の培養又は発酵を含み得る。培養又は発酵は、栄養、空気/酸素及び/又は成長因子を適切に供給したバイオリアクター内で実施され得る。分泌されたタンパク質は、細胞から培養培地/発酵ブロスを分け、タンパク質成分を抽出し、個々のタンパク質を分離して分泌されたアスパラギン酸プロテアーゼを単離することによって回収され得る。培養、発酵及び分離技術は、当業者に周知である。
【0098】
バイオリアクターは、細胞が培養され得る1つ又は複数のベッセルを含む。バイオリアクター内での培養は、リアクターへの反応物質の連続フロー、及びリアクターからの培養細胞の連続フローによって連続的に起こり得る。あるいは、培養はバッチで起こり得る。バイオリアクターは、最適な条件が培養される細胞に提供されるように、周辺条件、例えばpH、酸素、ベッセルへの又はベッセルからの流速、及びベッセル内での攪拌をモニター及び調節する。
【0099】
目的のペプチドを発現する細胞の培養後、ペプチドは好ましくは単離される。当技術分野で公知の細胞培養からのタンパク質を分離するための任意の好適な方法が使用され得る。培養から目的のタンパク質を単離するため、まず、目的のタンパク質を含有する培地から培養細胞を分離する必要があり得る。目的のタンパク質が細胞から分泌される場合、遠心分離により分泌されたタンパク質を含有する培養培地から細胞が分離され得る。目的のタンパク質を細胞内、例えば細胞の液胞内で回収する場合、遠心分離の前に、例えば超音波処置、急速凍結融解又は浸透圧溶解を使用して細胞を破壊する必要がある。遠心分離は、培養細胞、又は培養細胞の細胞残渣、並びに培養培地及び目的のタンパク質を含有する上清を含有するペレットを産生する。
【0100】
次いで、他のタンパク質及び非タンパク質成分を含有し得る上清又は培養培地から目的のタンパク質を単離することが望ましい。上清又は培養培地からタンパク質成分を分離する共通の手法は、沈殿による。異なる溶解性のタンパク質は、異なる濃度の沈殿剤、例えば硫酸アンモニウムで沈殿される。例えば、低濃度の沈殿剤では、水溶性タンパク質が抽出される。したがって、異なる漸増濃度の沈殿剤を添加することにより、異なる溶解性のタンパク質が区別され得る。続いて透析が使用され、分離されたタンパク質から硫酸アンモニウムが除去され得る。
【0101】
異なるタンパク質を区別する他の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー及びサイズクロマトグラフィーが、当技術分野で公知である。これらは、沈殿の代替として使用することができ、又は沈殿に続いて実施することができる。
【0102】
本明細書に開示する方法で有用なペプチド及びタンパク質は、精製され得る、又は精製ステップにかけられ得る。本明細書に開示する方法は、タンパク質又はペプチドを精製する1つ又は複数のステップを含み得る。例えば、タンパク質又はペプチドは、親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得る。
【0103】
目的のタンパク質が培養から単離されると、タンパク質を濃縮する必要があり得る。目的のタンパク質を濃縮する多くの方法、例えば限外濾過又は凍結乾燥が当技術分野で公知である。
【0104】
タンパク質リガーゼ
本明細書に開示するタグ付け方法は、細胞外小胞をタグに結合させるタンパク質リガーゼの使用を含み得る。タンパク質リガーゼは、トランスペプチダーゼであり得る。用語、タンパク質リガーゼ及びペプチドリガーゼは、本明細書で交換可能に使用される。本明細書に開示する方法での使用に好適なタンパク質リガーゼは、低コストで細菌、例えば大腸菌において高純度のラージスケールで産生され得る。リガーゼ媒介反応は、予測できる速度及び標的で再生できる。リガーゼは、細胞外小胞の物質的な特性を変更せず、リガーゼは洗浄によって容易に除去され得る。
【0105】
好適なタンパク質リガーゼは、細胞外小胞の表面のタグの取り込みを促進する。言い換えると、タグはリガーゼの基質として作用する。
本明細書に開示する方法で使用されるタンパク質リガーゼは、化学結合、好ましくは共有結合を形成することによって、タンパク質への基質の接合を促進することができる任意の酵素であり得る。特に、タンパク質リガーゼは、細胞外小胞の又は細胞外小胞の表面の分子へのタグの接合を促進することができる。タンパク質リガーゼの任意のバリアント、例えば、限定はされないが、アイソザイム及び異系酵素も本発明に含まれる。タンパク質のライゲート効果に影響せずにタンパク質リガーゼの構造に修飾を有するバリアントも含まれる。
【0106】
いくつかの態様では、細胞外小胞にタグを共有結合させるために使用されるタンパク質リガーゼはソルターゼ、ビオチンタンパク質リガーゼ(BPL)、ユビキチンリガーゼ、又はアスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)及びそれらの誘導体、例えばAEPキメラタンパク質、AEP断片又はAEP変異体である。好ましくは、リガーゼは、ソルターゼA又はその誘導体、例えばソルターゼAキメラタンパク質、ソルターゼA断片又はソルターゼA変異体である。リガーゼは、アスパラギニルエンドペプチダーゼ1又はその誘導体、例えばアスパラギニルエンドペプチダーゼ1キメラタンパク質、アスパラギニルエンドペプチダーゼ1断片又はアスパラギニルエンドペプチダーゼ1変異体であり得る。リガーゼは、タグが細胞外小胞に結合された後、好ましくは細胞外小胞から洗浄され、又はその他の形で除去される。
【0107】
いくつかの場合では、トランスペプチダーゼはソルターゼである。ソルターゼは、カルボキシル末端局在化シグナルを認識及び切断することによって表面タンパク質を修飾する原核生物に由来する酵素である。ソルターゼは多くのペプチドを結合することができ、全てはソルターゼ認識配列によってそれらのC末端に伸長され、RBC表面のN末端グリシン残基を有するタンパク質を修飾しない。
【0108】
いくつかの場合では、リガーゼはソルターゼA、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ソルターゼA(NCBI登録番号:BBA25062.1 GI:1236588748)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)ソルターゼA(NCBI登録番号:CTN13080.1 GI:906766293)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)ソルターゼA(NCBI登録番号:KSZ47989.1 GI:961372910)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)ソルターゼA(NCBI登録番号:OZN21179.1 GI:1234782246)である。あるいは、リガーゼは、公知のソルターゼA配列と100%配列同一性、又は公知のソルターゼA配列と約90%、約80%、約70%、約60%、約50%若しくは約40%配列同一性を有する酵素であり得る。さらに、タンパク質リガーゼは、ソルターゼAと同じ酵素機能を有する酵素であり得る。
【0109】
いくつかの場合では、リガーゼは、ソルターゼB、例えば、黄色ブドウ球菌ソルターゼB(NCBI登録番号:KPE24466.1 GI:929343259)、リステリア菌ソルターゼB(NCBI登録番号:KSZ47109.1 GI:961372026)、肺炎球菌ソルターゼB(NCBI登録番号:EJH14940.1 GI:395904018)、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)ソルターゼB(NCBI登録番号:AKP43679.1 GI:873321415)である。あるいは、リガーゼは、公知のソルターゼB配列と100%配列同一性、又は公知のソルターゼB配列と約90%、約80%、約70%、約60%、約50%若しくは約40%配列同一性を有する酵素であり得る。A配列。さらに、タンパク質リガーゼは、ソルターゼBと同じ酵素機能を有する酵素であり得る。
【0110】
いくつかの場合では、リガーゼは、ソルターゼC、例えば、フェシウム菌(Enterococcus faecium)ソルターゼC(NCBI登録番号:KWW64427.1 GI:984823861)、肺炎球菌ソルターゼC(NCBI登録番号:EIA07041.1 GI:379642509)、セレウス菌(Bacillus cereus)ソルターゼC(NCBI登録番号:AJG96560.1 GI:753363636)、リステリア菌ソルターゼB(NCBI登録番号:WP_075491524.1 GI:1129540689)である。あるいは、リガーゼは、公知のソルターゼC配列と100%配列同一性、又は公知のソルターゼC配列と約90%、約80%、約70%、約60%、約50%若しくは約40%配列同一性を有する酵素であり得る。A配列。さらに、タンパク質リガーゼは、ソルターゼCと同じ酵素機能を有する酵素であり得る。
【0111】
酵素がソルターゼである場合、細胞外小胞をタグ付けする方法は、ソルタグ付け法である。ソルターゼA認識配列は、LPXTG(ここでXは、任意の天然に生じるアミノ酸である)、好ましくはLPETGであり得る。ソルターゼB認識配列は、NXZTN(ここでXは、任意の天然に生じるアミノ酸である)、又はNP(Q/K)(T/S)(N/G/S)(D/A)であり得る。ソルターゼC酵素は、様々な局在化シグナル及びアミノ基を認識するそれらの能力のユニークな相違を実証する。
【0112】
いくつかの場合では、タンパク質リガーゼは、AEP1(アスパラギニルエンドペプチダーゼ1)である。それは、オルデンランディア・アフィニス(Oldenlandia affinis)OaAEP1(NCBI登録番号:ALG36105.1 GI:931255808)であり得る。それは、OaAEP1-Cys247 Alaペプチダーゼ、又はそのバリアントであり得る。それは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)アスパラギニルエンドペプチダーゼ(例えば、NCBI登録番号:Q39119.2 GI:148877260)、イネ(Oryza sativa)アスパラギニルエンドペプチダーゼ(例えば、NCBI登録番号:BAC41387.1 GI:26006022)、チヨウマメ(Clitoria ternatea)アスパラギニルエンドペプチダーゼ(例えばNCBI登録番号:ALL55653.1 GI:944204395)でもあり得る。あるいは、リガーゼは、公知のアスパラギニルエンドペプチダーゼ配列と100%配列同一性、又は公知のアスパラギニルエンドペプチダーゼ配列と約90%、約80%、約70%、約60%、約50%若しくは約40%配列同一性を有する酵素であり得る。A配列。さらに、タンパク質リガーゼは、アスパラギニルエンドペプチダーゼと同じ酵素機能を有する酵素であり得る。
【0113】
酵素がアスパラギニルエンドペプチダーゼである場合、タンパク質リガーゼ認識配列はNGLであり得る。
いくつかの場合では、タンパク質リガーゼはブテラーゼである。それは、チョウマメブテラーゼ1(例えばNCBI登録番号:6DHI_A GI:1474889693)であり得る。あるいは、リガーゼは、チョウマメブテラーゼ2であり得る。
【0114】
本明細書に開示する方法で有用なタンパク質リガーゼは、市販に入手することができる、又は大腸菌若しくは他の細菌若しくは酵母細胞培養で生成することができる。
カーゴ
本明細書に開示する細胞外小胞は、カーゴを積載され得る、又はカーゴを含有し得る。カーゴは、積み荷(load)とも呼ばれ、核酸、ペプチド、タンパク質、小分子、糖又は脂質であり得る。カーゴは、天然には生じない又は合成の分子であり得る。カーゴは、治療分子、例えば治療オリゴヌクレオチド、ペプチド、小分子、糖又は脂質であり得る。いくつかの場合では、カーゴは治療分子、例えば検出可能部分又は可視化剤でない。カーゴは、その標的細胞に送達された後に標的細胞において治療効果を発揮し得る。例えば、カーゴは、標的細胞で発現される核酸であり得る。それは、特定の遺伝子又は目的のタンパク質の発現を阻害又は増強するために作用し得る。例えば、タンパク質又は核酸を使用して、遺伝子サイレンシング又は修飾のために標的遺伝子を編集することができる。
【0115】
好ましくは、カーゴは外因性分子であり、「非内因性物質」と呼ばれることもある。言い換えると、カーゴは、細胞外小胞、又はそれが由来する細胞で天然には生じない分子である。そのようなカーゴは、好ましくは、細胞によって積載又は産生されるのではなく、小胞が形成された後に細胞外小胞へと積載され、それによりそれは細胞外小胞内にも含有される。
【0116】
いくつかの場合では、カーゴは核酸であり得る。カーゴは、RNA又はDNAであり得る。核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。カーゴは、RNAであり得る。RNAは、治療用RNAであり得る。RNAは、化学合成又はin vitroでの転写によって産生される低分子干渉RNA(siRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、ガイドRNA(gRNA)、環状RNA、マイクロRNA(miRNA)、piwiRNA(piRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、又は長鎖非コードRNA(lncRNA)であり得る。いくつかの場合では、カーゴは、例えば内因性核酸配列、例えば転写因子、miRNA又は他の内因性mRNAに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0117】
カーゴは、目的の分子をコードし得る。例えば、カーゴは、Cas9又は別のヌクレアーゼをコードするmRNAであり得る。
細胞では、アンチセンス核酸は相当するmRNAにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。細胞が二本鎖であるmRNAを翻訳しないため、アンチセンス核酸は、mRNAの翻訳を干渉する。遺伝子のin vitroでの翻訳を阻害するアンチセンス法の使用は、当技術分野で周知である(例えば、Marcus-Sakura,Anal.Biochem.1988年,172:289を参照)。さらに、DNAに直接結合するアンチセンス分子が使用され得る。アンチセンス核酸は一本鎖又は二本鎖核酸であり得る。アンチセンス核酸の非限定的な例は、siRNA(それらの誘導体又は前駆体、例えばヌクレオチド類似体を含む)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、saRNA(小型活性化RNA)及び小型核小体RNA(snoRNA)又は特定のそれらの誘導体又は前駆体を含む。アンチセンス核酸分子は、RNA干渉(RNAi)を刺激し得る。
【0118】
したがって、アンチセンス核酸カーゴは、標的遺伝子の転写を干渉し、標的mRNAの翻訳を干渉し、及び/又は標的mRNAの分解を促進し得る。いくつかの場合では、アンチセンス核酸は標的遺伝子の発現の減少を誘導することができる。
【0119】
本明細書で提供する「siRNA」、「低分子干渉RNA」、「小型RNA」、又は「RNAi」は、二本鎖RNAを形成する核酸を指し、その二本鎖RNAは、遺伝子又は標的遺伝子と同じ細胞で発現される場合、遺伝子又は標的遺伝子の発現を低減又は阻害する能力を有する。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成する核酸の相補性部分は、典型的には実質的又は完全な同一性を有する。一実施形態では、siRNA又はRNAiは、標的遺伝子と実質的又は完全な同一性を有する核酸であり、二本鎖siRNAを形成する。実施形態では、siRNAは、相補的な細胞のmRNAと干渉し、それにより相補的なmRNAの発現を干渉することによって遺伝子発現を阻害する。典型的には、核酸は、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖siRNAの各相補性配列は15~50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15~50塩基対長である)。いくつかの実施形態では、長さは20~30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20~25又は約24~29ヌクレオチド長、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド長である。
【0120】
RNAi及びsiRNAは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Danaら、Int J Biomed Sci.2017年;13(2):48~57頁に記載される。アンチセンス核酸分子は、標的核酸配列に相補的な二本鎖RNA(dsRNA)又は部分的二本鎖RNA、例えばFHR-4を含有し得る。二本鎖RNA分子は、分子内の第1のRNA部分と第2のRNA部分の間の相補性対合によって形成される。RNA配列(すなわち、一部)の長さは、通常30ヌクレオチド長より短い(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10又はそれより少ないヌクレオチド)。いくつかの実施形態では、RNA配列の長さは18~24ヌクレオチド長である。いくつかのsiRNA分子では、RNA分子の相補性の第1及び第2の部分は、ヘアピン構造の「ステム」を形成する。2つの部分は連結配列によって結合され、ヘアピン構造の「ループ」を形成し得る。連結配列は、長さが様々であってよく、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、又は13ヌクレオチド長であり得る。好適な連結配列は、当技術分野で公知である。
【0121】
本発明の方法での使用のための好適なsiRNA分子は、当技術分野で公知のスキームによって設計することができ、例えば、Elbashireら、Nature、2001年 411:494~8頁;Amarzguiouiら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2004年 316(4):1050~8頁;及びReynoldsら、Nat.Biotech.2004年、22(3):326~30頁を参照されたい。siRNA分子を作製する詳細は、いくつかの供給業者、例えばAmbion、Dharmacon、GenScript、Invitrogen及びOligoEngineのウェブサイトで見出すことができる。任意の可能なsiRNA候補の配列は、一般に、BLASTアライメントプログラムを使用して、他の核酸配列又は核酸配列の多型への任意の可能なマッチを調べることができる(国立医学図書館のインターネットウェブサイトを参照)。典型的には、多くのsiRNAが生成及びスクリーニングされ、有効な薬物候補が得られ、米国特許第7,078,196号を参照されたい。siRNAは、ベクターから発現され、及び/又は化学的若しくは合成的に産生され得る。合成RNAiは、市販の供給源、例えばInvitrogen(Carlsbad、Calif)から得ることができる。RNAiベクターは、市販の供給源、例えばInvitrogenからも得ることができる。
【0122】
核酸分子は、miRNAであり得る。用語「miRNA」は、その明白な通常の意味に従って使用され、転写後に遺伝子発現を制御することができる小さい非コードRNA分子を指す。一実施形態では、miRNAは、標的遺伝子と実質的又は完全な同一性を有する核酸である。いくつかの実施形態では、miRNAは相補的な細胞のmRNAと干渉し、それにより相補的なmRNAの発現を干渉することによって遺伝子発現を阻害する。典型的には、miRNAは、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、miRNAの各相補性配列は15~50ヌクレオチド長であり、miRNAは約15~50塩基対長である)。いくつかの場合では、核酸は合成又は組換え体である。
【0123】
本明細書に開示する核酸は、1つ又は複数の修飾、又は天然には生じないエレメント若しくは核酸を含み得る。好ましい態様では、核酸は、2’-O-メチル類似体を含む。いくつかの場合では、核酸は、3’ホスホロチオエートヌクレオチド間連結又は他のロックド核酸(LNA)を含む。いくつかの場合では、核酸は、ARCAキャップを含む。他の化学修飾核酸又はヌクレオチド、例えば、2’位の糖修飾、2’-O-メチル化、2’-フルオロ修飾、2’NH修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモの置換、又は5-ヨード-ウラシル、骨格修飾、メチル化、異常な塩基対の組合せ、例えばイソシチジン及びイソグアニジン等を使用することができる。修飾は、3’及び5’修飾、例えばキャッピングも含み得る。例えば、核酸は、PEG化され得る。
【0124】
本発明の方法で有用な核酸は、発癌性miRNA(oncomiRとしても公知)又は転写因子を標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、siRNA又はgRNAを含む。カーゴは、リボザイム又はアプタマーであり得る。いくつかの場合では、核酸はプラスミドである。
【0125】
核酸分子は、アプタマーであり得る。本明細書で使用する場合、用語「アプタマー」は、タンパク質、ペプチド、及び小分子に(例えば、高い親和性及び特異性で)結合する、オリゴヌクレオチド(例えば、短鎖オリゴヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)を指す。典型的には、アプタマーは、相補性塩基対を形成するそれらの傾向により、二次又は三次構造を規定し、したがって、多様で複雑な分子構造へと折りたたむことができることが多い。三次元構造は、アプタマー結合親和性及び特異性に必須であり、特異的な三次元の相互作用はアプタマー-標的複合体の形成を駆動する。アプタマーは、指数関数的な濃縮(例えば、Ellington AD、Szostak JW、Nature 1990年、346*:818~822頁;Tuerk C,Gold L.Science 1990年、249:505~510頁に記載のSELEX)によるリガンドの全身進化のプロセスにより、又はSOMAmer(slow off-rate modified aptamers)(Gold Lら(2010年)Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery.PLoS ONE 5(12):e15004)の開発により、無作為配列の非常に大きなライブラリーからin vitroで選択され得る。
【0126】
本明細書に記載の特定の態様では、カーゴは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、miRNA又はmRNAに相補性であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的mRNA配列と配列が相補性である少なくとも一部を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列に結合し、それにより阻害し得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列の翻訳プロセスを阻害し得る。miRNAは、がんと関連するmiRNA(Oncomir)であり得る。miRNAは、miR-125bであり得る。ASOは、配列5’-UCACAAGUUAGGGUCUCAGGGA-3’を含み得る、又はからなり得る。
【0127】
いくつかの態様では、カーゴは、遺伝子編集システムの1つ又は複数の成分である。例えば、CRISPR/Cas9遺伝子編集システム。例えば、カーゴは、特定の標的配列を認識する核酸を含み得る。カーゴは、gRNAであり得る。そのようなgRNAは、CRISPR/Cas9遺伝子編集において有用であり得る。カーゴは、Cas9 mRNA又はCas9をコードするプラスミドであり得る。他の遺伝子編集分子は、カーゴ、例えばzincフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は転写活性化因子用エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)として使用され得る。カーゴは、標的細胞において特定の核酸配列を標的化するように操作された配列を含み得る。遺伝子編集分子は、特異的にmiRNAを標的化し得る。例えば、遺伝子編集分子は、miR-125bを標的化するgRNAであり得る。gRNAは、配列5’-CCUCACAAGUUAGGGUCUCA-3’を含み得る、又はからなり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、方法は、部位特異的ヌクレアーゼ(SSN)を使用する標的遺伝子編集を用いる。SSNを使用する遺伝子編集は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Eid and Mahfouz,Exp Mol Med.2016年10月;48(10):e265に概説される。部位特異的二本鎖切断(DSB)を創出することができる酵素は、操作され、目的の標的核酸配列にDSBを導入することができる。DSBは、しばしばヌクレオチドの挿入又は欠失によって切断の2つの末端が再結合される、誤りがちな非相同末端結合(NHEJ)によって修復され得る。あるいは、DSBは、切断部位に相同な末端を有するDNA鋳型がDSBの部位に供給及び導入される、高度相同組換え修復(HDR)によって修復され得る。
【0129】
操作され、標的核酸配列特異的DSBを生成することができるSSNは、ZFN、TALEN及びクラスター化規則的間隔回文反復配列/CRISPR関連9(CRISPR/Cas9)システムを含む。
【0130】
ZFNシステムは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUmovら、Nat Rev Genet.(2010年)11(9):636~46頁に概説される。ZFNは、プログラム化可能なZinc Finger DNA結合ドメイン及びDNA切断ドメイン(例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメイン)を含む。DNA結合ドメインは、標的核酸配列に結合することができるZinc Fingerアレイをスクリーニングすることによって同定され得る。
【0131】
TALENシステムは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるMahfouzら、Plant Biotechnol J.(2014年)12(8):1006~14頁に概説される。TALENは、プログラム化可能なDNA結合TALEドメイン及びDNA切断ドメイン(例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメイン)を含む。TALEは、反復可変二残基(RVD)である各反復の12位及び13位における2つの残基以外は同一である、33~39アミノ酸の反復からなる反復ドメインを含む。各RVDは、以下の関係に従って標的DNA配列におけるヌクレオチドへの反復の結合を決定する:「HD」はCに結合し、「NI」はAに結合し、「NG」はTに結合し、「NN」又は「NK」はGに結合する(Moscou and Bogdanove、Science(2009年)326(5959):1501頁)。
【0132】
CRISPRは、クラスター化規則的間隔短鎖回文反復配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)の略語である。用語は、これらの配列の起源及び機能が分かっていない場合、及びそれらが原核生物起源であると考えられる場合、まず使用される。CRISPRは、回文配列リピート(ヌクレオチドの配列が両方向で同じである)において短い反復の塩基配列を含有するDNAのセグメントである。各反復は、ウイルス又はプラスミドからの外来DNAの事前の挿入からのスペーサーDNAの短いセグメントが続く。Cas(CRISPR関連)遺伝子の小さいクラスターは、CRISPR配列の隣に位置する。スペーサー配列を持つRNAは、Cas(CRISPR関連)タンパク質が外来病原性DNAを認識及び切断するのを助ける。他のRNAガイドCasタンパク質は外来RNAを切断する。CRISPR/Casシステムの簡単なバージョン、CRISPR/Cas9は、改変されゲノムを編集する。Cas9ヌクレアーゼ及び全身ガイドRNA(gRNA)を細胞に送達することにより、細胞のゲノムは所望の位置で切断され、既存の遺伝子の除去及び/又は新しい遺伝子の追加を可能にする。CRISPR/Casシステムは2つのクラスに分けられる。クラス1システムは、複数のCasタンパク質の複合体を使用し、外来核酸を分解する。クラス2システムは、同じ目的のために単一の大きなCasタンパク質を使用する。クラス1は、I型、III型、及びIV型に分けられる;クラス2は、II型、V型、及びVI型に分けられる。CRISPRゲノム編集はII型CRISPRシステムを使用する。
【0133】
いくつかの態様では、EVは、CRISPR関連カーゴを積載される。言い換えると、EVは、遺伝子編集、例えば治療遺伝子編集を含む方法で有用である。いくつかの場合では、EVはin vitro遺伝子編集に有用である。
【0134】
カーゴはガイドRNAであり得る。ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含み得る。crRNAは、活性型複合体を形成するtracrRNAに結合する領域と一緒に宿主DNAの正確な部分に位置するガイドRNAを含有する。tracrRNAはcrRNAに結合し、活性型複合体を形成する。gRNAは、tracrRNAとcrRNAの両方を結合させ、それにより活性型複合体をコードする。gRNAは、複数のcrRNA及びtracrRNAを含み得る。gRNAは、目的の配列又は遺伝子に結合するように設計され得る。gRNAは、切断のための遺伝子を標的化し得る。任意選択で、DNA修復鋳型の任意選択の部分が含まれる。修復鋳型は、非相同末端結合(NHEJ)又は相同修復(HDR)のいずれかで利用され得る。
【0135】
カーゴは、ヌクレアーゼ、例えばCas9ヌクレアーゼであり得る。ヌクレアーゼは、その活性化形態がDNAを修飾することができるタンパク質である。ヌクレアーゼバリアントは、一本鎖ニック、二本鎖切断、DNA結合又は他の異なる機能が可能である。ヌクレアーゼは、DNA部位を認識し、部位特異的DNA編集を可能にする。
【0136】
gRNA及びヌクレアーゼは、プラスミドにコードされ得る。言い換えると、EVカーゴは、gRNAとヌクレアーゼの両方をコードするプラスミドを含み得る。いくつかの場合では、EVはgRNAを含有し、別のEVはヌクレアーゼを含有又はコードする。いくつかの場合では、EVは、gRNAをコードするプラスミド、及びヌクレアーゼをコードするプラスミドを含有する。したがって、いくつかの態様では、組成物はEVを含んで提供され、EVの部分はCas9などのヌクレアーゼを含み又はコードし、EVの部分はgRNAを含む又はコードする。いくつかの場合では、gRNAを含む又はコードするEVを含有する組成物及びヌクレアーゼをコードする又は含有するEVを含有する組成物は、同時投与される。いくつかの場合では、組成物はEVを含み、EVはgRNAとヌクレアーゼの両方をコードするオリゴヌクレオチドを含有する。
【0137】
CRISPR/Cas9及び関連システム、例えばCRISPR/Cpf1、CRISPR/C2c1、CRISPR/C2c2及びCRISPR/C2c3は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるNakadeら、Bioengineered(2017年)8(3):265~273頁に概説される。これらのシステムは、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1等)及び一本鎖ガイドRNA(sgRNA)分子を含む。sgRNAは操作され、目的の核酸配列にエンドヌクレアーゼ活性を標的化することができる。
【0138】
いくつかの場合では、核酸は、1つ又は複数の脱分化因子、例えば、「Yamanaka因子」、Oct4、Sox2、Klf4及びMycをコードする1つ又は複数の核酸をコード又は標的化する。
【0139】
いくつかの場合では、カーゴはペプチド又はタンパク質である。それは組換えペプチド又はタンパク質であり得る。好適なペプチド又はタンパク質は、酵素、例えば遺伝子編集酵素、例えばCas9、ZFN、又はTALENを含む。
【0140】
好適な小分子は、細胞傷害性試薬及びキナーゼ阻害剤を含む。小分子は、蛍光プローブ及び/又は金属を含み得る。例えば、カーゴは、超常磁性粒子、例えば酸化鉄粒子を含み得る。カーゴは、超小型超常磁性酸化鉄粒子、例えば酸化鉄ナノ粒子であり得る。
【0141】
いくつかの場合では、カーゴは検出可能部分、例えば蛍光デキストランである。カーゴは、放射活性に標識され得る。
カーゴは、電気穿孔によって細胞外小胞に積載され得る。電気穿孔、又は電気透過(electropermeabilization)は、細胞膜の透過性を増加させるために電界が細胞に適用される微生物学技術であり、化学物質、薬物、又はDNAを細胞に導入することを可能にする。言い換えると、細胞外小胞は、電気穿孔によりカーゴの封入を誘導又は強制され得る。したがって、本明細書に開示する方法は、カーゴ分子の存在下で細胞外小胞を電気穿孔するステップ、又は細胞外小胞とカーゴ分子の混合物を電気穿孔するステップを含み得る。
【0142】
本明細書に開示する他の方法では、カーゴは、超音波処理、超音波、リポフェクション、又は低張性透析によって細胞外小胞へと積載される。
カーゴは、細胞外小胞がタグ付けされる前又は後に、細胞外小胞に積載され得る。
【0143】
組成物
本明細書では細胞外小胞を含む組成物を開示する。
組成物は、mlあたり10~1014個の間の粒子を含み得る。組成物は、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも1010個の粒子、mlあたり少なくとも1011個の粒子、mlあたり少なくとも1012個の粒子、mlあたり少なくとも1013個の粒子又はmlあたり少なくとも1014個の粒子を含み得る。
【0144】
組成物は、実質的に相同な大きさを有する細胞外小胞を含み得る。例えば、細胞外小胞は、100~500nmの範囲の直径を有し得る。いくつかの場合では、マイクロベシクルの組成物は、50~1000nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するマイクロベシクルを含む。好ましくは、直径は、100~300nmである。いくつかの組成物では、マイクロベシクルの平均直径は、100~300nm、好ましくは150~250nm、好ましくは約200nmである。
【0145】
タグは組成物の実質的に全ての細胞外小胞に結合されることが望ましいが、本明細書に開示する組成物は、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%の細胞外小胞がタグを含む、細胞外小胞を含み得る。好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%の細胞外小胞がタグを含む。いくつかの場合では、組成物内の異なる細胞外小胞は、異なるタグを含む。いくつかの場合では、細胞外小胞は同じ、又は実質的に同じタグを含む。
【0146】
いくつかの組成物では、タグを含むことに加えて、細胞外小胞がカーゴを含有する。そのような組成物中でカーゴは、組成物中の実質的に全ての細胞外小胞へと封入されることが望ましいが、本明細書に開示する組成物は、細胞外小胞の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも97%がカーゴを含有する、細胞外小胞を含み得る。好ましくは、細胞外小胞の少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも97%がカーゴを含有する。いくつかの場合では、組成物中の異なる細胞外小胞は異なるカーゴを含有する。いくつかの場合では、細胞外小胞は、同じ、又は実質的に同じカーゴ分子を含有する。
【0147】
組成物は、医薬組成物であり得る。組成物は、1つ又は複数の細胞外小胞、及び任意選択により薬学的に許容される担体を含み得る。医薬組成物は、投与の特定の経路による投与のために製剤化され得る。例えば、医薬組成物は、静脈内、腫瘍内、腹腔内、皮内、皮下、鼻腔内又は他の投与経路のために製剤化され得る。
【0148】
組成物は緩衝溶液を含み得る。組成物は、保存化合物を含み得る。組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。
処置の方法及び細胞外小胞の使用
本明細書に開示する細胞外小胞は、処置の方法に有用である。特に、方法は、標的遺伝子と関連する障害を患う対象を処置するために有用であり、方法は、有効量の修飾した細胞外小胞を前記対象に投与するステップを含み、修飾した細胞外小胞はその表面に結合する分子を含み、標的細胞において標的遺伝子と相互作用するための非内因性物質を封入する。非内因性物質は、前記処置のための核酸であり得る。
【0149】
本明細書に開示する細胞外小胞は、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患の処置のために特に有用である。いくつかの場合では、障害は、サラセミア、鎌状赤血球貧血、又は遺伝的代謝障害から選択される遺伝的障害である。いくつかの場合では、細胞外小胞は、肝臓、骨髄、肺、脾臓、脳、膵臓、胃又は腸の障害の処置に有用である。
【0150】
特定の態様では、細胞外小胞は、がんの処置に有用である。本明細書に開示する細胞外小胞は、がん細胞の成長又は増殖を阻害するために有用であり得る。がんは、液体又は血液のがん、例えば白血病、リンパ腫又は骨髄腫であり得る。他の場合では、がんは、固形がん、例えば乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫であり得る。いくつかの場合では、がんは、肝臓、骨髄、肺、脾臓、脳、膵臓、胃又は腸に局在する。
【0151】
障害に応じて標的細胞が処置される。例えば、標的細胞は、乳がん細胞、結腸直腸がん細胞、肺がん細胞、腎臓がん細胞等であり得る。カーゴは、標的遺伝子の発現を阻害又は増強する、又は特定の遺伝子をサイレンスにする遺伝子編集を実施するための核酸であり得る。
【0152】
本明細書に記載の細胞外小胞及び組成物は、限定はされないが、全身、腫瘍内、腹腔内、非経口、静脈内、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、経口及び鼻腔内を含む、多くの経路によって投与、又は投与のために製剤化され得る。好ましくは、細胞外小胞は、腫瘍内、腹腔内又は静脈内から選択される経路によって投与される。医薬及び組成物は、液体又は固体形態で製剤化され得る。液体製剤は、ヒト又は動物の体の選択された領域への注射による投与のために製剤化され得る。
【0153】
細胞外小胞は、処置される細胞又は組織の表面の分子に結合するタグを含み得る。タグは、処置される細胞又は組織に特異的に結合し得る。細胞外小胞は、治療用カーゴを含み得る。治療カーゴは、標的細胞において標的遺伝子と相互作用するための非内因性物質であり得る。
【0154】
投与は、好ましくは、「治療有効量」であり、これは個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、並びに投与の速さ及び時間経過は、処置される疾患の性質及び重症度による。処置の処方、例えば投与量等の決定は、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達の部位、投与の方法及び医師には公知の他の因子を考慮する。上述の技術及びプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、20th Edition、2000年、pub.Lippincott、Williams & Wilkinsに見出される。
【0155】
細胞外小胞は、単独で、又は処置される状態に応じて同時若しくは順に他の処置と組み合わせて投与され得る。
本明細書に記載のようにカーゴを積載された細胞外小胞は、カーゴを標的細胞に送達するために使用され得る。いくつかの場合では、方法は、in vitroでの方法である。特に好ましいin vitroでの方法では、カーゴは標識する分子又はプラスミドである。
【0156】
処置される対象は、任意の動物又はヒトであり得る。対象は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。対象は、非ヒト哺乳動物であり得るが、より好ましくはヒトである。対象は男性又は女性であり得る。対象は患者であり得る。治療使用は、ヒト又は動物(家畜への使用)であり得る。
【0157】
キット
本明細書では、細胞外小胞を含む、又は細胞外小胞のタグ付けでの使用のためのキットも開示する。キットは、1つ又は複数の細胞外小胞、タグ又はタグをコードする核酸、例えば細胞培養においてタグを発現する発現ベクター、カーゴ又は細胞外小胞の封入のための非内因性分子、タンパク質リガーゼ及び任意選択でタンパク質リガーゼ緩衝液から選択される1つ又は複数の成分を含み得る。
【0158】
それらの特異的形態又は開示した機能を実施する手段、又は開示した結果を得るための方法若しくはプロセスの面から表された、前述の説明、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示した特徴は、必要に応じて、別々に又はそのような特徴の任意の組合せで、それらの多様な形態で本発明を実現するために利用され得る。
【0159】
本発明は上記の例示的な実施形態と併せて記載されるが、この開示を与えられた場合、多くの同等の改変及びバリエーションが当業者には明らかであろう。したがって、上に記載した本発明の例示的な実施形態は、例であり、限定ではないと考えられる。記載した実施形態への様々な変更が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施され得る。
【0160】
いずれの疑念も避けるため、本明細書に提供する任意の理論的な説明が読み手の理解を改善する目的のために提供される。本発明者らは、これらのいずれの理論的な説明に縛られることを望まない。
【0161】
本明細書で使用するいずれの節の見出しも、構成目的のためだけであり、記載される主題を制限すると解釈されない。
特許請求の範囲を含む、この明細書を通して、他に文脈を必要としない限り、用語「含む(comprise)」及び「含む(include)」、並びにバリエーション、例えば「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、及び「含む(including)」は、言及した整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群の包括を伴うが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の除外ではないと理解されるであろう。
【0162】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がはっきりと他に示さない限り、複数の参照を含むことに注意しなければならない。範囲は、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までとして本明細書で表され得る。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用により、値がおよそとして表される場合、特定の値は別の実施形態を形成すると理解されるであろう。用語「約」は、数値に関して、任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【実施例
【0163】
実施例1
治療的送達のため、多くの研究グループががん細胞株及び幹細胞からEVを産生することを試みたが、ラージスケールの細胞培養により非常にコストがかかる。さらに、がん及び幹細胞からのEVは、がんの成長を促進する発癌性タンパク質又は成長因子を含有し得る。血漿及び血液細胞からのEVは、がん治療により安全である。本発明者らは、近年、赤血球(RBC)からのEVのラージスケール精製及び急性骨髄性白血病(AML)及び三種陰性乳がん(TNBC)を含むがんに対する遺伝子治療のためのこれらのEVへのRNAの取り込みのための強固な方法を開発した。本発明者らは、RBCEVがAMLとTNBC細胞の両方によって非常によく取り込まれ、市販のトランスフェクション試薬よりも低い毒性で、良いトランスフェクション効率を与えることを示した。本発明者らは、発癌性miR-125bを阻害し、AML及びTNBCの進行を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をRBCEVが送達する、in vivoでのRBCEVの取り込みも観察した。RBCEVは、白血病細胞におけるゲノム編集のためのCas9 mRNA及びgRNAを送達するためにも使用される。このプラットフォームは、がんに対する遺伝子治療に非常に有望である。
【0164】
EVベースの治療をより特異的にするため、EVは、特定の標的細胞に特異的に結合するペプチド又は抗体を持つように操作されることが多い。通常、これらのペプチド又は抗体は、レトロウイルス又はレンチウイルスを使用してトランスフェクト又は形質導入後、抗生物質ベース又は蛍光ベースで選択されるプラスミドからドナー細胞において発現される。これらの方法は、高発現されたプラスミドがEVに組み込まれ、最終的に標的細胞へと移行されやすいため、遺伝子水平伝播の高いリスクを提起する。プラスミドの遺伝子エレメントは、発癌をもたらし得る。安定な細胞株にEVを産生させる場合、変異DNA、RNA及びタンパク質を含む豊富な発癌性因子がEVに詰め込まれ、腫瘍発生のリスクを標的細胞に送達する。一方、リボソームの欠如により、RBCではプラスミドが転写できないため、遺伝子操作方法はRBCに適用できない。それは、トランスフェクト又は形質導入が難しい幹細胞及び初代細胞にも適用できない。
【0165】
近年、EVの表面のフォスファチジルセリン(PS)に結合するラクトアドへリンのC1C2ドメインに融合した抗体でEVをコーティングするための新しい方法がある。この方法は、いかなる遺伝的改変もなく、抗体とのEVのコンジュゲーションを可能にする。しかしながら、C1C2は疎水性タンパク質であり、哺乳動物細胞における面倒な精製方法及びウシ血清アルブミン含有緩衝液中での保存を必要とする。さらに、C1C2融合抗体とのEVのコンジュゲーションは、一時的なC1C2とPSの間の親和性結合に基づく。標的化又は治療タンパク質とのEVの安定及び永続的なコンジュゲーションを得るため、本発明者らは、化学又は酵素反応を使用して共有結合を生成するコンジュゲーション方法を必要とする。
【0166】
本発明者らは、先に、トランスペプチダーゼソルターゼを使用して、ペプチド及びヒト、ラクダ又は軟骨魚類に由来する単一免疫グロブリンドメインを有するタンパク質である単一ドメイン抗体(sdAb)を、RBC表面タンパク質のソルターゼ認識モチーフを操作したRBCの表面に共有結合させた。より最近の研究では、ソルターゼは多くのペプチドを結合することができ、全てはソルターゼ認識配列によってそれらのC末端に伸長され、RBC表面のN末端グリシン残基を有するタンパク質を修飾しないことを明らかにした。したがって、ソルターゼは、細胞表面のN末端グリシンを有する天然のタンパク質を、C末端ソルターゼタグを持つタンパク質又はペプチドと共有結合によりライゲートすることができる。本発明者らは、RBCEVの表面のN末端グリシン及び/又は側鎖アミノ基を有する天然のタンパク質が、ソルターゼの基質として作用し得ると仮定した。したがって、本発明者らはソルターゼ及び同様のタンパク質リガーゼ酵素を使用して、RBCEVをペプチド、小分子、タンパク質及びsdAbでコートすることができる。
【0167】
ここで、本発明者らは、ソルターゼAを使用するEV表面の酵素修飾の方法を記載する。ソルターゼ結合部位を含有する小分子(例えば、ビオチン)及びsdAbとコンジュゲートしたペプチドは、安定な共有結合によってEV表面のタンパク質に結合される。これは、治療目的のため、特定の細胞型へのEVの標的化送達を可能にする。
【0168】
結果
ソルターゼAを使用するsdAbとのEVのコンジュゲーション
本発明者らは、各成分の精製、ソルタグ付け反応及びEVのソルタグ付きタンパク質の検出を含む、ペプチド及びsdAbとのEVのコンジュゲーションの簡単なワークフローを開発した(図1A)。ソルターゼAは、大腸菌においてHisタグと共に発現させ、約100%の純度で1Lの細菌培養から約27mgのタンパク質に親和性及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した(図1B)。同様に、mCherry(mC-sdAb)に特異的なsdAbは、大腸菌においてHisタグ、FLAGタグ、HAタグ及びsortase結合部位(LPETG)と共に発現させ、1Lの培養から8mgの純粋なタンパク質の収率で、ソルターゼAと同じプロトコールを使用して精製した。15個又はそれ以上のアミノ酸をVHHとソルターゼ結合部位の間に挿入し、ソルターゼへのソルターゼ結合部位の到達可能性及び可動性を増加した。sdAbは、精製後、明確な20kDaの単一バンドとして現れた(図1C)。
【0169】
RBCEVは、カルシウムイオノフォアを使用するEV放出の刺激、細胞及び残渣を除去する分画遠心分離、並びに1回のスクロースクッションを含む3回の超遠心分離を含む、本発明者らが確立したプロトコールに従って精製した。Nanosight解析は、複数のドナーから精製したRBCEVが、100~300nmの範囲の直径で非常に一貫していることを実証した(図1D)。EVは、透過型電子顕微鏡下では、典型的なカップ形であり、タンパク質凝集のない、明確な二重層膜小胞として現れた(図1E)。
【0170】
ウェスタンブロット解析のために抗Hisタグ抗体(VHHにも結合する)を使用して、本発明者らは、ソルターゼA及びmC-sdAbをそれぞれ18kDa及び20kDaのバンドとして見出した(図1F)。驚くべきことに、ソルターゼA及びmC-sdAbとのRBCEVのインキュベート後、本発明者らは、ソルターゼAのみ又はmC-sdAbのみとのRBCEVのインキュベーション後にはなかった約40kDa及び70kDaのさらなるバンドを観察した。ソルタグ付け反応後に現れた新しいバンドは、ソルターゼAによるmC-sdAbとRBCEVのタンパク質の会合を示す。この会合は、変性条件下で安定であり、mC-sdAbがRBCEVのタンパク質にソルタグ付け反応によって生成された共有結合によって結合することを示している。
【0171】
ソルターゼAを使用するペプチドとのEVのコンジュゲーション
本発明者らは、RBCEVがペプチドによってソルタグ付けされ得るかどうかさらに試験した。本発明者らは、マクロファージによる食作用を避ける「don’t eat me」シグナルであるCD47由来であるため、「自己ペプチド」として公知のペプチドのC末端にソルターゼA結合部位を付加した。10このペプチドは、N末端にビオチンタグも有する。HRPコンジュゲートストレプトアビジンを使用するウェスタンブロット解析では、本発明者らは、そのペプチドが単独で積載された場合にはそのサイズの小ささ(2.4kDa)により検出できなかったが、RBCEVをペプチド及びソルターゼAとインキュベートした場合、ソルターゼプラスペプチドのサイズに相当する約20kDaの太いバンドを観察し、これはソルタグ付け反応の中間産物であるはずである(図2A)。さらに、本発明者らは、ペプチド及びソルターゼAとインキュベートしたRBCEVでは25kDa~75kDaの範囲の複数のバンドを観察した(図2A)。これらのバンドは、ビオチン化ペプチドでソルタグ付けされたRBCEVの表面のタンパク質であるはずである。同様に、本発明者らは、多くの型の固形がんで高発現される表面タンパク質である上皮成長因子受容体(EGFR)へのその結合が周知である別のペプチドにソルターゼ結合部位を付加した。11ビオチンタグも、化学合成によってペプチドのN末端に付加した(以降、bi-YG20ペプチドと呼ぶ)。本発明者らは、3人のドナーから独立して精製したRBCEVの3つの異なるバッチにYG20ペプチドをソルタグ付けし、第3の試料の1つの追加のバンド以外、3つの試料においてソルタグ付きタンパク質の同様のバンドを見出した。この観察は、一貫してソルターゼAと反応するN末端のグリシン残基を含有する全てのドナーからの表面RBCEVのいくつかの豊富なタンパク質を示した。
【0172】
ソルタグ付けの効率を評価するため、本発明者らは、bi-YG20コートEVをラテックスビーズとインキュベートし、ビーズをAlexa Fluor647(AF647)コンジュゲートストレプトアビジンで染色した。FACS解析は、96%のビーズがAF647陽性であることを実証し、ほとんどのEVがビオチン化ペプチドをうまくコンジュゲートされたことを示している(図2C)。
【0173】
質量分析を使用して、本発明者らは、RBCEVで非常に豊富であり、RBCにおけるそれらの発現も公知の12個の膜タンパク質を含む、ほぼ20個のタンパク質を同定した(図2D)。ソルターゼAと反応する膜タンパク質を同定するため、本発明者らはストレプトアビジンビーズを使用して、ビオチン化ペプチドとコンジュゲートしたRBCEV膜溶解物中のタンパク質をプルダウンした。本発明者らは、ビオチン-ストレプトアビジン複合体に濃縮された、STOM、GLUT1及びMPP1を含む3個のタンパク質を同定した(図2E)。これらのタンパク質は、ウェスタンブロットを使用して観察されたいくつかのタンパク質と同様の分子量(31.9、54.4及び52.5kDa)を有し、それらはRBCEVで検出された豊富なタンパク質であり、したがってそれらはソルターゼAと反応するタンパク質である可能性が高い。
【0174】
EGFR結合ペプチドによるEVのソルタグ付けはEGFR陽性乳がん細胞によるEVの取り込みを促進する
乳がん細胞によるEVの取り込みを試験するため、本発明者らはRBCEVを蛍光膜色素であるPKH26で標識し、上記のようにbi-YG20ペプチドで標識したRBCEVをソルタグ付けした。標識及びソルタグ付きRBCEVを、1回のスクロースクッションを含む2回の超遠心分離によって広範に洗浄した。本発明者らは、SKBR3細胞を最適以下の用量の標識RBCEV(99%の取り込みを示したMOLM13細胞で使用した半分)とインキュベートし、インキュベーションの24時間後の細胞においてPHK26蛍光を解析した(図3A)。蛍光バックグラウンドは、標識RBCEVの最後の洗浄の上清に基づいて決定した。EGFRの発現が取り込みに重要であるかどうか試験するため、本発明者らは、細胞をFITCとコンジュゲートした抗EGFR抗体でも染色し、SKBR3細胞の2つの集団:EGFR発現の低いもの及びEGFR発現の高いものにゲートをかけた(図3B)。結果として、PKH26陽性細胞のパーセンテージは、EGFR集団とEGFR集団の両方において、非コートのRBCEVによる処置と比較して、bi-YG20コートRBCEVで処置したSKBR3細胞で著しく高かった(図3A、3C)。EGFRのより高い発現も、bi-YG20コートRBCEVの取り込みに著しい差をもたらした(図3A、3C)。したがって、YG20ペプチドとのRBCEVのコンジュゲーションは、EGFR陽性乳がん細胞によるEVの特異的な取り込みを促進した。
【0175】
OaAEP1リガーゼを使用するペプチドとのRBCEVのコンジュゲーション
本発明者らは、TRNGL配列を担持するペプチドとRBCEVのコンジュゲーションのためのタンパク質リガーゼであるOaAEP1をさらに試験した。ここで、本発明者らは、速い触媒動態を示す、Cys247Ala改変を有するOaAEP1のバリアントを使用した。12本発明者らは、親和性クロマトグラフィー及びSECを使用してOaAEP1を精製し、His-Ubタグあり及びなしの純粋な酵素を得た(図4A)。酵素をRBCEV及び/又はOaAEP1結合配列「NGL」を含有するペプチドとインキュベートした。ペプチドとのRBCEVの反応は、ライゲートしたRBCEVを3回の広範な洗浄にかけた後でさえも、HRPコンジュゲートストレプトアビジンで検出される、35kDaから約55kDa~200kDaの範囲の複数のタンパク質のバンドをもたらした(図4B)。これらのバンドは、おそらくOaAEP1リガーゼがC末端にグリシンとロイシン(GL)の両方を有するタンパク質のみに作用するため、ソルタグ付け反応から現れるバンドとは異なる。FACS解析を使用して、本発明者らは、RBCEVコンジュゲーションの効率が、bi-TRNGLペプチドとのライゲーション反応後にビオチンを有すると考えられるRBCEVのパーセンテージとして99.3%であることを見出した(図4C)。本発明者らは、リガーゼ結合部位(NGL)を含有するビオチン化EGFR標的化ペプチドとのRBCEVのライゲーションをさらに試験した。本発明者らのウェスタンブロット解析は、ライゲーション及び3回の洗浄後、30~45kDaの突出したバンドを明らかにした(図4D)。
【0176】
RBCEVにライゲートしたペプチドの数を定量するため、本発明者らは、段階希釈のビオチン化HRPとライゲートしたRBCEVタンパク質からのビオチンシグナルの強度を比較した。この比較は、3人の異なる血液ドナーからのRBCEVの平均として、各RBCEVにライゲートした約380コピーのTRペプチドがあることを示した(図4E)。
【0177】
これらのデータは、標的細胞型、例えばがん処置のための腫瘍細胞によるEVの特異的な取り込みを媒介するタグとして、sdAb及びペプチドとのEVのコンジュゲーションのための新しいアプローチを実証した。このアプローチは、副反応を減らして、治療分子、例えば遺伝子治療のためのRNA及びDNA、酵素置換療法又はワクチン接種のためのタンパク質、がん処置のための細胞傷害性小分子等の特異的送達を促進し得る(図5~6)。さらに、EVの表面にコートしたペプチド及び抗体は、診断及び治療に直接適用することもできる。
【0178】
OaAEP1リガーゼを使用するペプチドとの白血病EVのライゲーション
他の型のEVを修飾するOaAEP1リガーゼの適用を検証するため、本発明者らは、白血病THP1細胞からEVを単離した。THP1細胞は、10%EVフリーのFBSを含有する培地で培養し、終夜カルシウムイオノフォアで処置し、培養上清を増加した速度で複数回遠心分離して細胞及び残渣を除去した。THP1 EVは、スクロースクッションによる超遠心分離を使用して単離し、次いでさらに血清タンパク質の完全除去のためにSECカラムに通した(図7A)。RBCEVに最適化した同じライゲーションプロトコールを使用して、本発明者らはTHP1 EVをビオチン化TRNGLペプチドにライゲートし、25~75kDaの複数のライゲートしたタンパク質のバンドを生じた(図7B)。このパターンは、THP1 EVがそれらの膜にN末端GLを有する異なるタンパク質を提示し得るため、RBCEVのライゲートしたタンパク質のバンドとは異なる。
【0179】
EGFR結合ペプチドによるEVのソルタグ付けは、EGFR陽性肺がん細胞によるEVの取り込みを促進する
本発明者らは、5個の異なるヒト細胞株におけるEGFRの発現をさらに調べ、EGFRがMOLM13で陰性であり、乳がんSKBR3及びCA1a細胞、肺がんH358及びHCC827細胞を含む固形がん細胞で豊富であることを見出した(図8A)。ビオチン-ストレプトアビジンのFACS解析を使用して、本発明者らは、ストレプトアビジンのみのコントロールと比較して、ビオチン化EGFR標的化ペプチドは肺がんH358及びHCC827細胞の表面に結合するが、MOLM13細胞には結合しないことを見出した(図8B)。スクランブル化配列を有するビオチン化コントロールペプチドは、いずれの試験細胞株にも結合しなかった。
【0180】
細胞によるRBCEVの取り込みを試験するため、本発明者らは、蛍光色素であるカルセインAMでRBCEVを標識し、上記のようにビオチン化EGFR標的化ペプチドで標識RBCEVをソルタグ付けした。標識及びソルタグ付けしたRBCEVを、SEC及び2回の遠心分離によって広範に洗浄した。本発明者らはH358細胞を最適以下の用量の標識RBCEVとインキュベートし、インキュベーションの2時間後に細胞のカルセインAM蛍光を解析した(図8C)。蛍光バックグラウンドは、標識RBCEVの最後の洗浄の上清(フロースルー)に基づいて決定した。結果として、カルセインAM陽性細胞のパーセンテージは、コントロールペプチドコートRBCEVによる処置と比較して、EGFR標的化ペプチドコートRBCEVで処置したH358細胞で著しく高かった(図8C)。したがって、EGFR標的化ペプチドとのRBCEVのコンジュゲーションは、EGFR陽性肺がん細胞によるEVの特異的取り込みを促進した。
【0181】
EGFR標的化ペプチドとのRBCEVのリガーゼ媒介コンジュゲーションは、クラスリン媒介エンドサイトーシスによるRBCEVの特異的取り込みを増強する
本発明者らは、ソルターゼAの代わりにOaEAP1リガーゼを使用して上記の実験を繰り返した。予測されたように、H358細胞によるRBCEVの取り込みは、コントロールペプチドと比較して、EGFR標的化ペプチドのライゲーションにより著しく増加した(図9A)。取り込みの特異性を調べるため、本発明者らは、高濃度の遊離EGFR標的化ペプチドを、EGFR標的化ペプチドライゲートRBCEVとのH358細胞のインキュベーションに添加した。遊離ペプチドは、EGFRへの結合を競合するため、RBCEVのライゲートEGFR標的化ペプチドの効果をブロックし(図9B)、EGFR標的化ペプチドライゲートRBCEVの増加はEGFR結合を必要とすることを示す。
【0182】
RBCEV取り込みの経路を同定するため、本発明者らは、3つの異なるエンドサイトーシス阻害剤を、EGFR標的化ペプチドライゲートRBCEVとのH358細胞のインキュベーションに添加した。結果として、クラスリン媒介エンドサイトーシスをブロックするフィリピンのみが、ETライゲートRBCEVの取り込みを低下させることができた(図9C)。したがって、EGFR標的化ペプチドライゲートRBCEVの取り込みは、クラスリン媒介エンドサイトーシスによって媒介された。
【0183】
EGFR標的化ペプチドとのRBCEVのコンジュゲーションは、EGFR陽性肺腫瘍におけるRBCEVの濃縮をもたらす
RBCEVは通常、Kupffer細胞による取り込みにより肝臓に蓄積するため、本発明者らは、RBCEVの注射の前にヒトRBC又はRBCゴースト(RBCの膜)の投与によりマウスを前処置することによってRBCEVの急速なクリアランスを防ぐことを考えた(図10A)。本発明者らは、肝臓におけるRBCEVの取り込みの低減、並びに肺及び脾臓におけるRBCEVの取り込みの増加が、RBCはRBCゴーストよりも優れていることを観察した。肺がんのin vivoモデルを生成するため、本発明者らは、ルシフェラーゼ標識H358細胞をNSGマウスの尾静脈に注射した(図10B)。3週間後、腫瘍細胞が肺で検出されると、本発明者らは、マウスをDiR標識RBCEVで処置し、蛍光画像化を使用してEVの体内分布を観察した。腫瘍細胞の生物発光は、H358ルシフェラーゼ細胞の注射の3週間後にNSGマウスの肺で一貫して検出されたが、時折尾静脈注射からの残存細胞による尾を除いて他の臓器でシグナルは検出されなかった。RBCEVを、コントロールペプチド又はEGFR標的化ペプチドとコンジュゲートし、次いでDiR蛍光色素で標識し、SEC及び遠心分離を使用して広範に洗浄した。非コート又はコートRBCEVは、ヘモグロビンアッセイを使用して定量し、前処置したマウスの尾静脈に均等に注射した。EV洗浄のフロースルーを使用して蛍光バックグラウンドを決定した。RBCEV注射の8時間後、本発明者らは、脾臓、肝臓、肺及び骨への非コートRBCEVの分布を観察した(図10B)。ペプチドコートRBCEVは同じ臓器での取り込みを示した。しかしながら、EGFR標的化ペプチドライゲートRBCEVの蓄積は、コントロールライゲートRBCEVと比較して、肺で著しく増加し、肝臓で減少した(図10B)。これらのデータは、EGFR標的化ペプチドが、EGFRを発現する肺腫瘍へとRBCEVを駆動したことを示す。
【0184】
自己ペプチドとのコンジュゲーションは、RBCEVの食作用を防ぎ、循環におけるRBCEVの利用可能性を増強する
図2Aと同様に、本発明者らは、RBCEVを自己ペプチドとコンジュゲートしたが、ソルターゼAの代わりにOaAEP1リガーゼを使用した。興味深いことに、自己ペプチドとのライゲーションは、単球MOLM13及びTHP1細胞によるRBCEVの取り込みを著しく低下させた(図11A~B)。
【0185】
本発明者らは、自己ペプチドコートRBCEVをCFSEでさらに標識し、それらをNSGマウスの尾静脈に注射した。5分後、本発明者らは、抗GPA抗体でコートした磁気ビーズを使用して血液からRBCEVを捕捉した(図8B)。GPAがヒトRBCEVのマーカーであるが、マウスRBCEVのマーカーではないため、本発明者らは、注射したヒトRBCEVを精製し、マウスEVからそれらを分離することを考えた。RBCEVは、磁気ビーズからのCFSE蛍光シグナルのFACS解析に基づいて定量した。解析は、注射したマウスの循環において、自己ペプチドライゲートRBCEVがコントロールペプチドライゲートRBCEVよりもずっと豊富であることを明らかにした(図8B)。さらに、本発明者らは、DiR標識自己ペプチドライゲートRBCEVも尾静脈に注射し、肝臓、脾臓、肺、骨及び腎臓を含む複数の臓器でのRBCEVの体内分布の増強を観察した(図8C)。これらのデータは、自己ペプチドとのコンジュゲーションを、RBCEVの循環及び体内分布を増加させるために使用することができることを示す。
【0186】
生体栄養性の単一ドメイン抗体とのRBCEVのコンジュゲーションはリンカーペプチドを必要とする
本発明者らは、sdAbは特異性が高く、それらが1つのポリペプチドのみを有するために修飾が容易であることが公知であるため、RBCEVの標的化送達をガイドするsdAbを使用することを考えた。図1に示したmCherry sdAbに加えて、本発明者らは、Hisタグ、FLAGタグ、HAタグ及びリガーゼ結合部位を有する、EGFRに特異的な別のラクダ類のsdAb(VHHとも呼ばれる)を産生した(図12A)。精製したEGFR VHHは、およそ37kDaであった。これは生体栄養性の抗体であり、典型的なsdAbよりも大きい。それは、EGFRの2つの高親和性結合部位を有する。
【0187】
EGFR VHHをRBCEVに直接ライゲート試みの複数回の失敗の後(おそらく、VHHのサイズが大きいことによる)、本発明者らは、リンカーペプチドを設計し、VHHとRBCEVの間に架橋を作製した(図12B)。このリンカーペプチドは、中央のMycタグ、N末端の「GL」及びC末端の「NGL」から構成される。「NGL」配列は、RBCEVへのペプチドのライゲーションを促進する。「GL」配列は、続いて、「NGL」によるVHHへのリンカーペプチドのライゲーションを可能にする。本発明者らは、複数のコントロールとのライゲーション反応を実施した。抗VHHウェスタンブロッティングを使用して、本発明者らは、37kDaのバンドとして遊離VHHを観察した(図12C)。VHHへのOaAEP1リガーゼの添加は、2つの追加のバンドをもたらし、おそらくVHHの起こり得る切断及びオリゴマー化による。RBCEVを、リンカーペプチドの付加あり又はなしでVHHにライゲートし、SEC及び4回の遠心分離を使用して広範に洗浄した。リンカーペプチドを含むRBCEVへの2ステップVHHライゲーションにおいて、45kDaと60kDaの間のいくつかのタンパク質のバンドが抗VHH抗体によって検出された(図12C)。これらのバンドは、リガーゼのみとのVHHのインキュベーションによって現れるものとは異なった。リンカーペプチドなしで、RBCEVとのVHHのライゲーションではバンドは観察されなかった。データは、RBCEVへのEGFR VHHのライゲーションがリンカーペプチドの付加を必要とすることを示す。
【0188】
EGFR VHHコンジュゲーションの結果として、本発明者らは、細胞の表面のGPAのFACS解析に基づき、非コートRBCEVと比較して、EGFR陽性HCC827細胞へのRBCEVの結合の増加を観察した(図12D)。
【0189】
単一ドメイン抗体とのRBCEVのコンジュゲーションは、標的細胞によるRBCEVの特異的取り込みを促進する
RBCEVの取り込みへのVHHコンジュゲーションの効果を試験するため、本発明者らはカルセインAMでVHHコートRBCEVを標識し、SECを使用してそれらを洗浄した。カルセインAMのFACS解析は、H358細胞によるRBCEVの取り込みが、RBCEVがリンカーペプチド及びEGFR標的化VHHと2ステップでライゲートされた場合にのみ増加したことを示した(図13A)。同様に、本発明者らは、RBCEVへのmCherry標的化VHHのライゲーション及びmCherryタンパク質の表面発現を有するCA1a細胞によるそれらの取り込みを試験した。CA1a-SmCherry細胞によるRBCEVの取り込みは、リンカーペプチド及びmCherry VHHにライゲートしたRBCEVでのみ増加した(図10B)。VHHライゲーションにおけるリンカーペプチドの欠如は、いずれの取り込みの増強ももたらさなかった。したがって、リンカーペプチドは、RBCEVへのVHHライゲーションに必要である。
【0190】
sdAbライゲートRBCEVを使用するRNA及び薬物の送達
本発明者らは、以前に、RBCEVがASO、gRNA又はmRNAをがん細胞に送達するために使用され得ることを示した。ここで、本発明者らは、ライゲーション反応とRNA積載実験を組み合わせた。本発明者らは、RBCEVがまずコンジュゲートされ、遠心分離を使用して2回洗浄され、続いてEVトランスフェクション試薬、例えばExoFect(System Bioscience)を使用してRNAを積載される必要があることを見出した。したがって、本発明者らはEGFR VHH又はmCherry VHHをRBCEVにライゲートし、それらにルシフェラーゼmRNAを積載した(図14A)。EGFRを発現するがmCherryは発現しないH358細胞をこれらのRBCEVによって処置し、24時間後にルシフェラーゼ活性を比較した。全てのRBCEV処置細胞が未処置コントロールよりも高いルシフェラーゼシグナルを示したが、非コートRBCEV又はmCherry VHHとライゲートしたRBCEVによる処置の後よりも、EGFR VHHとライゲートしたRBCEVは、H358細胞において2倍高いルシフェラーゼ活性をもたらした(図14A)。したがって、RBCEVは、EGFR VHHとのそれらのコンジュゲーション時に増加した効率でルシフェラーゼmRNAをH358細胞に送達できた。
【0191】
本発明者らは、肺がん処置のために一般に使用される化学療法剤であるパクリタキセル(PTX)を、超音波処理を使用してRBCEVへと積載するプロトコールも最適化した(図14B)。薬物積載RBCEVを徹底的に洗浄し、上記のようにEGFR標的化ペプチドとライゲートした。修飾RBCEVを、H358肺がんを担持するNSGマウスに3日毎に、コントロールとして使用したPTXのみと同じ用量で注射した。PTXの濃度は、HPLCを使用して決定した。平均約6%のPTXをRBCEVに積載し、未結合のPTXを洗い流した(図14C)。腫瘍の生物発光画像は、EGFR標的化RBCEVが、PTXのみ又は非コートPTX積載RBCEVと比較して、腫瘍抑制へのPTXの効果を増強したことを示した(図14D)。これらのデータは、抗がん剤の標的化送達が、標的腫瘍細胞における薬物の蓄積を増加させることによって処置の有効性を増加させることができることを示す。
【0192】
実施例2:方法
EVの精製
血液試料は、インフォームドコンセントを行った香港の健康なドナーから、赤十字社によって得た。ヒト血液試料による全ての実験は、香港城市大学ヒト対象倫理委員会のガイドライン及び認可に従って実施した。RBCは、遠心分離(1000×gで8分間、4℃)を使用して血漿から分離し、PBSで3回洗浄し(1000×gで8分間、4℃)、白血球を遠心分離又は白血球除去フィルター(Terumo Japan又はNigale、China)を使用して除去した。単離したRBCは、Nigale緩衝液(0.2g/lのクエン酸、1.5g/lのクエン酸ナトリウム、7.93g/lのグルコース、0.94g/lのリン酸二水素ナトリウム、0.14g/lのアデニン、4.97g/lの塩化ナトリウム、14.57g/lのマンニトール)中に回収し、0.1mg/mlの塩化カルシウムを含有するPBSで3倍希釈し、10mMのカルシウムイオノフォア(Sigma Aldrich)で終夜処置した(カルシウムイオノフォアの最終濃度は10μMであった)。EVを精製するため、RBC及び細胞残渣は、600×gで20分間、1600×gで15分間、3260×gで15分間、及び10,000×gで30分間、4℃での遠心分離によって除去された。上清を0.45μmのシリンジフィルターに通した。EVは、TY70Tiローター(Beckman Coulter、USA)を用いる、100,000×g又は50,000×gで70分間、4℃での超遠心分離を使用して濃縮した。EVは、冷PBSに再懸濁した。標識のため、半分のEVを20μMのPKH26(Sigma Aldrich、USA)と混合した。標識又は非標識EVを、2mlの凍結60%スクロースクッション上に重層し、SW41Tiローター(Beckman Coulter)を使用して、100,000×g又は50,000×gで16時間、4℃でブレーキ速度を落として遠心分離した。EVの赤い層(スクロース上)を回収し、TY70Tiローター(Beckman Coulter)で、100,000×g又は50,000×gで70分間、4℃での超遠心分離を使用して、冷PBSで1回(非標識EV)又は2回(標識EV)洗浄した。注目すべきは、RBCEVの高い収率のため、100,000×gの超遠心分離を使用した。EVを優しく扱おうとする場合には、50,000×gを使用した。全ての超遠心分離実験は、Beckman XE-90超遠心分離機(Beckman Coulter)で実施した。精製したRBCEVは、-80℃で、4%のトレハロースを含有するPBS中に保存した。EVの濃度及びサイズ分布は、Nanosight Tracking Analysis NS300システム(Malvem、UK)を使用して定量した。EVのタンパク質含量は、ビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ)を使用して定量した。EVの透過型電子顕微鏡解析では、EVは、等量の4%パラホルムアルデヒドを添加することによって銅グリッド(200メッシュ、ホルムバール炭素膜でコートした)に固定した。PBSによる洗浄後、4%の酢酸ウラニルをEVの化学染色のために添加し、Tecnai12 Bio TWIN透過型電子顕微鏡(FEI/Philips、USA)を使用して画像を捕捉した。RBCEVのヘモグロビン含量は、ヘモグロビン定量キット(Abcam)を使用して定量した。
【0193】
THP1細胞からの白血病EVの精製
THP1細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、USA)から得て、10%ウシ胎仔血清(Biosera、USA)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ThermoFisher Scientific、USA)を含むRPMI(ThermoFisher Scientific)中で維持した。EVフリーのFBSを作製するため、EVは、110,000×gで18時間、4℃での超遠心分離を使用してFBSから除去された。THP1細胞は、EVフリーFBS及び0.2μMのカルシウムイオノフォアを含む上記の培地中、10個の細胞/mlで48時間培養した。培養上清は、処置したTHP1細胞の5つのフラスコから回収した。細胞及び残渣は、300×gで10分間、400×gで15分間、900×gで15分間、4℃での遠心分離によって除去された。上清を0.45μmのフィルターにさらに通し、2mlの凍結60%スクロース上に重層し、SW32ローターを用いる、100,000×gで90分間、4℃での超遠心分離を使用して濃縮した。EVを界面から回収し、冷PBSで1:1に希釈し、SW41ローター中で2mlの凍結60%スクロースクッション上に重層し、100,000×gで12時間、4℃でブレーキ速度を落として遠心分離した(Beckman Coulter)。EVの赤い層(スクロース上)を回収し、TY70Tiローター(Beckman Coulter)で、100,000×gで70分間、4℃での超遠心分離を使用して、冷PBSで1回(非標識EV)又は2回(標識EV)洗浄した。500μlのEVを界面から回収し、qEV SECカラム(Izon)に添加した。500μlの溶出液を各フラクションで回収した。EV及びタンパク質の濃度は、Nanosightアナライザー及びBCAアッセイを使用して30画分で測定した。ライゲーションのため、画分7~11からのEVを組み合わせ、100kDaカットオフのAmicon-15フィルターで、15,000×gで20分間、遠心分離を使用して濃縮した。
【0194】
ペプチド及びsdAb設計
ビオチン化自己ペプチド(ビオチン-GNYTCEVTELTREGETIIELK-GGGGS-LPETGGG)、Bi-YG20ペプチド(ビオチン-YHWYGYTPQNVIGLPETGGG、ソルターゼ結合部位は下線を引いた)及びビオチン-TRNGL及び表1に列挙した他のペプチドは、96/102ウェルの自動ペプチド合成機を使用して合成し、高速液体クロマトグラフィー(GL Biochem Ltd.、Shanghai、China)によって精製した。C末端にさらなるソルターゼ結合部位(LPETG)又はリガーゼ結合部位(NGL)、HAタグ及びFLAGタグを持つ抗mCherry sdAb(387bp)の可変重鎖(VHH)配列は、Fridyらから得た。Mycタグ、トロンビン切断部位及び6Hisタグも、VHHのN末端に付加した。6His-SSG-トロンビン切断部位-Myc-VHH-GSG-HA-GSG-LPETGGG-Flagの全配列(555bp、20kDa、イタリック体はリンカーを示す)を合成し、pET32(a+)プラスミドに、Guangzhou IGE Biotechnology Ltd(China)によるT7プロモーターに続いて挿入した。生体栄養性のEGFR-VHH配列は、Rooversら(International journal of cancer、2011年、129(8)、2013~2024頁)から得て、上記のように8 Hisタグ、FLAGタグ及びリガーゼ結合部位とこの順:8His-GSG-VHH-GSG-FLAG-NGLでpET32(a+)プラスミドへとクローニングした。
【0195】
【表1】
【0196】
タンパク質の発現及び精製
コンピテントBL21(DE3)大腸菌をpET30b-7M-SrtAプラスミド(Addgene 51140)で形質転換し、カナマイシン(Sigma)を含むアガープレートに撒き、OaAEP1-Cys247Alaプラスミド(Dr.Bin Wu、Nanyang Technology Universityによって提供された)又はpET32(a+)-VHHプラスミド(特定のVHH配列でクローニング)で形質転換してアンピシリンを含むアガープレートに撒き、37℃で終夜インキュベートした。各プレートから単一コロニーを選択し、37℃で終夜、振盪しながらLysogenyブロス(LB)中で培養した。タンパク質発現は、LB中0.5mMのイソプロピルβ-D-1チオガラクトピラノシド(IPTG)によって、25℃で16時間、振盪しながら誘導した。培養を回収し、6,000×gで15分間、4℃にて遠心分離した。上清を除去し、ペレットを50mLの結合緩衝液(500mMのNaCl、25mMのTris-HCl、1mMのフッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)、5%グリセロール)中に再懸濁し、50mLの遠心チューブに移し、再び遠心分離した。
【0197】
細菌は、高圧ホモジナイザー(1000psi)を使用して4~6回溶解した。細胞溶解物は、8000rpmで60分間、4℃にて遠心分離した。上清を回収して、0.45μm膜(Millipore)を通して濾過した。タンパク質は、NGC-QUEST-10高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)システム(BioRad)を使用して精製した。簡単に言うと、試料は、結合緩衝液によって平衡化した5mL-Ni-荷電カートリッジ(BioRad)へと積載した。カラムは、3%溶出緩衝液(500mM NaCl、25mM Tris-HCl、1mM イミダゾール、1mM PMSF及び5%グリセロール)で洗浄し、次いで8%~50%の溶出緩衝液に溶出した。流速は、3ml/分で一定に保った。タンパク質がUV280のピークとして現れると、2mlの画分を回収した。タンパク質は、スウィングバケツローターで遠心分離フィルター(Millipore)及び4000×gの遠心分離を使用して濃縮し、0.22μm膜を通して濾過した。タンパク質は、低イオン強度緩衝液(150mM NaCl、50mM Tris-HCl)中、0.5ml/分でのFPLCシステムのHiLoad16/600 Superdex 200pgサイズ排除クロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)を使用してさらに精製した。標的タンパク質は、適切なUV280のピークで回収し、ゲル電気泳動を使用してクマシーブルー染色により確認した。OaAEP1リガーゼ活性化のため、1mM EDTA及び0.5mM Tris 1mM EDTA及び0.5mM Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩から構成される緩衝液を未成熟タンパク質に添加し、溶液のpHを氷酢酸で4に合わせた。タンパク質のプールを37℃で5時間インキュベートした。このpHでのタンパク質の沈殿は、遠心分離による夾雑タンパク質のバルクの除去を可能にした。活性化タンパク質は、10kDaカットオフ濃縮機を使用して超遠心分離によって濃縮し、-80℃で保存した。
【0198】
LPETG配列を担持する抗体及びペプチドによるEVのソルタグ付け
600pmolのソルターゼAを2.75μmolのsdAb又は21μmolのペプチドと1×ソルターゼ緩衝液(50mM TrisHCl pH7.5、150mM NaCl)中で混合し、氷上に30分間置いた。続いて、8×1011個のEV(約50μgのEVタンパク質)を、総容積125μl中、4μMのソルターゼA(約10μg)及び20μMのVHH-LPETG(約50μg)の最終濃度になるようにソルターゼ混合物に添加した。反応は、4℃で60分間、回転シェイカーで優しく攪拌しながら(20rpm)インキュベートした。コンジュゲートしたEVを、2mlの凍結60%スクロースクッションに添加し、SW41Tiローター(Beckman Coulter)を使用して、100,000×gで16時間、4℃でブレーキ速度を落として遠心分離した。EVの赤い層(スクロース上)を回収し、70Tiローター(Beckman Coulter)で、100,000×gで70分間、4℃での超遠心分離を使用して、16mlの冷PBSで1回洗浄した。
【0199】
OaAEP1 Cys247Alaタンパク質リガーゼを使用する、TRNGL配列を担持するペプチドによるEVのコーティング
全ての20μlの反応混合物は、PBS緩衝液中に3μlのRBCEV(0.72×1011個の粒子/μl、RBCEV中100μgのヘモグロビンと等価)、2.5~10μlの1mMペプチド及び5μlの10μMリガーゼを含有し、pHは7~7.4(pH7.0が最適)、リガーゼ(1μM)及びペプチド(50~500μM)の最終濃度にした。反応は、室温で30分間、回転シェイカーで優しく攪拌しながら(30rpm)インキュベートした。反応をスケールアップする場合、より長いインキュベーション時間、例えば1~2mgのRBCEV(ヘモグロビン定量に基づく)のライゲーションに3時間が必要であった。
【0200】
蛍光色素によるコートRBCEVの標識
ペプチド又はsdAbによってコートしたRBCEVは、21,000×gで15分間、4℃での遠心分離によって、PBSで1回洗浄した。洗浄したRBCEVを、10μMのカルセインAMと室温で20分間、又は20μMのCFSEと37℃で1時間又は2μMのDiRと室温で15分間インキュベートした。標識したRBCEVは、すぐにSECカラム(Izon)に積載し、PBSで溶出した。画分7~10(ピンク~赤色)を回収し、21,000×gで15分間、4℃での遠心分離によって3回洗浄した。
【0201】
RBCEVへのRNA及び薬物の積載
ライゲートしたRBCEVは、RNAの積載の前に、21,000×gで15分間、4℃で、PBSで3回洗浄した。30分間、トランスフェクション試薬を使用して、9μgのルシフェラーゼmRNA(Trilink)を50μgのRBCEVに積載した。次いで、EVを21,000×gでの遠心分離によってPBSで3回洗浄した。
【0202】
薬物積載のため、非コートRBCEVを1mlのPBS中200μgのPTXと、37℃で15分間インキュベートした。混合物は、4℃で12分間、Bioruptor(Biogenode)を使用して超音波処理し、次いで37℃で1時間回復した。積載RBCEVは、21,000×gで15分間、PBSで洗浄し、ヘモグロビンアッセイを使用して定量し、上記のようにペプチドでコートした。コートRBCEVは、上記のようにSECを使用して再精製した。RBCEVに積載したPTXを測定するため、積載RBCEVのアリコットを21,000×gで15分間遠心分離した。ペレットを75℃で乾燥し、アセトニトリルに再懸濁し、21,000×gで10分間遠心分離した。上清は、0.22μmフィルターを通し、HPLCを使用して解析した。
【0203】
ウェスタンブロット解析
コンジュゲートしたEVは、プロテアーゼインヒビター(Biotool)を補足したRIPA緩衝液と氷上で5分間インキュベートした。30μgのタンパク質溶解物は、10%ポリアクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロース膜(GE Healthcare)に移した。PM5100 ExcelBand(商標)3色広範囲タンパク質ラダー(SmoBio、Taiwan)を試料の両側にロードした。膜は、0.1% Tween-20(TBST)を含有するTris緩衝生理食塩水中5%の脱脂乳で、室温で1時間ブロックし、一次抗体と4℃で終夜インキュベートした:マウス抗His/VHH(Genescript、1:1000希釈)、マウス抗FLAG(Sigma、1:500希釈)。ブロットはTBSTで3回洗浄し、次いでHRPコンジュゲート抗マウス二次抗体(Jackson ImmunoResearch、1:10000希釈)と室温で1時間インキュベートした。ビオチン化ペプチド検出のため、ブロットはいずれの抗体ともインキュベートしなかったが、HRPコンジュゲートストレプトアビジン(Thermo Fisher、1:4000希釈)と直接インキュベートした。ブロットは、Azure Biosystemsゲルドキュメンテーションシステムを使用して画像化した。
【0204】
ペプチド又はsdAbコートEVによるがん細胞の処置
ヒト乳がんSKBR3細胞、ヒト肺がんH358及びHCC827細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、USA)から得た。ヒト乳がんMCF10CA1a(CA1a)は、Kamanosがん研究所(Wayne State University、USA)から得た。急性骨髄性白血病MOLM13及びTHP1細胞は、微生物培養細胞のDSMZコレクション(Braunschweig、Germany)から得た。全ての固形がん及び白血病細胞は、10%ウシ胎仔血清(Biosera、USA)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ThermoFisher Scientific、USA)を含むそれぞれDMEM又はRPMI(ThermoFisher Scientific)中で維持した。EVの取り込みを試験するため、100,000個のSKBR3細胞を、6×1011個のPKH26標識非コート又はYG20コートEVと、24ウェルプレートのウェル当たり500μlの増殖培地中で24時間インキュベートした。より短い取り込みアッセイでは、H358、HCC827、MOLM13及びTHP1細胞を、カルセインAM標識RBCEVと、37℃で1~2時間インキュベートした。EV取り込みの経路を同定するため、本発明者らは、25~100μM EIPA、5~20μg/mlフィリピン、0.25~1μMワートマニンを添加した。EV結合アッセイでは、HCC827細胞を非標識のRBCEVと4℃で1時間インキュベートした。
【0205】
フローサイトメトリー解析
RBCEV処置したSKBR3又は他の細胞は、PBSで2回洗浄し、100μlのFACS緩衝液(0.5%ウシ胎仔血清を含有するPBS)中に再懸濁した。細胞は、3μlのFITCコンジュゲートEGFR抗体(Biolegend)と氷上で15分間、暗所でインキュベートし、1mlのFACS緩衝液で2回洗浄した。ペプチドコート効率を定量するため、100μgのbi-YG20コート又はbi-TRNGLコートRBCEV又は非コートRBCEV(陰性コントロールとして)を、シェイカー上で4℃にて2.5μgのラテックスビーズ(Thermo Fisher Scientific)と終夜インキュベートし、PBSで3回洗浄し、Alexa Fluor647(AF647)とコンジュゲートした1μlのストレプトアビジンを含有する100μlのFACS緩衝液中に再懸濁し、15分間氷上でインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した。FACS緩衝液中のラテックスビーズ又は細胞のフローサイトメトリーは、CytoFLEX-Sサイトメーター(Beckman Coulter)を使用して実施し、Flowjo V10(Flowjo、USA)を使用して解析した。ビーズ又は細胞は、最初にFSC-A及びSSC-Aに基づいてゲートをかけ、残渣及び死細胞(低FSC-A)を除外した。細胞は、FSC-幅対FSC-高さに基づいてさらにゲートをかけ、ダブレット及び凝集体を除外した。続いて、非染色/未処置の陰性コントロールでは無視できるシグナルを示す集団として、蛍光陽性ビーズ又は細胞を適切な蛍光チャネル:PKH26はPE、AF647はAPCでゲートにかけた。
【0206】
in vivoがんモデルの生成及びRBCEVによる処置
H358細胞は、レンチウイルスベクター(pLV-Fluc-mCherry-Puro)で形質導入し、ピューロマイシンで選択して、安定な細胞株を作製した。100万個のH358-luc細胞を、NSGマウス(6~7週齢)の尾静脈に注射した。3週間後、肺における生物発光を、D-ルシフェリンの注射後にIVIS LuminaII(Pekin Elmer)を使用して検出した。同等の生物発光シグナルを示すマウスは、0.5~5×10個のヒトRBC(ドナーからの回収後1~7日)又は同じRBC数のゴーストで、後眼窩注射を介して前処置した。
【0207】
1時間後、体内分布実験のため、コントロール又はEGFR標的化ペプチドとライゲートした100μgのDiR標識RBCEVをマウスの尾静脈に注射した。8時間後、マウスを屠殺し、すぐに臓器でのDiR蛍光を測定した。薬物処置のため、3日毎に、RBCの前処置の1時間後、20mg/kgのパクリタキセル(PTX)単独又はEGFRペプチドライゲーションあり又はなしでのRBCEV中の等量のPTXをマウスにi.v.注射した。同じ量の非積載RBCEVを陰性コントロールとして使用した。
【0208】
循環におけるRBCEVの定量
500μgのCFSE標識ペプチドライゲートRBCEVを、NSGマウスの尾静脈に注射した。5分後、100μlの血液を目から回収した。血液細胞を除去し、20μlの血漿を5μlのビオチン化GPA抗体と、優しく回転しながら室温で2時間インキュベー。次いで、混合物を20μlのストレプトアビジンビーズと室温で1時間インキュベートした。ビーズは3回洗浄し、CFSEの解析のため、500μlのFACS緩衝液中に再懸濁した。
【0209】
参考文献
本発明をより完全に記載及び開示し、本発明が関係する技術を言及するため、多くの論文を上記に引用した。これらの参考文献の完全な引用は以下に示す。これらの参考文献のそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる
【0210】
【表2】
【0211】
標準的な分子生物学技術に関しては、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3ed. 2001年,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13
図14-1】
図14-2】
【手続補正書】
【提出日】2020-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性ポリペプチドタグを含む赤血球細胞外小胞(RBCEV)であって、タグが細胞外小胞の天然の膜タンパク質に共有結合されている、RBCEV。
【請求項2】
タグが1つ又は複数の機能性ドメインを含み、機能性ドメインが標的部分に結合することができ、検出されることができ、及び/又は治療効果を誘導することができる、請求項1に記載のRBCEV。
【請求項3】
機能性ドメインが、抗体又は抗原結合断片、好ましくはsdAbを含む、請求項2に記載のRBCEV。
【請求項4】
マイクロベシクル又はエキソソーム、好ましくはマイクロベシクルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のRBCEV。
【請求項5】
カーゴを積載される、請求項1~4のいずれか一項に記載のRBCEV。
【請求項6】
カーゴが、核酸、ペプチド、タンパク質又は小分子である、請求項5に記載のRBCEV。
【請求項7】
カーゴが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA、長鎖RNA、siRNA、miRNA、gRNA又はプラスミドからなる群から選択される核酸である、請求項6に記載のRBCEV。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の1つ又は複数のRBCEVを含む組成物。
【請求項9】
処置の方法での使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載のRBCEV又は組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のRBCEVを、処置を必要とする患者に投与することを含む、処置の方法。
【請求項11】
疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載のRBCEV又は組成物の使用。
【請求項12】
処置の方法が、請求項1~8のいずれか一項に記載のRBCEV又は組成物の、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患を有する対象への投与を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のためのRBCEV又は組成物、処置の方法又は使用。
【請求項13】
対象ががんを有し、がんが任意選択で白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫から選択される、請求項12に記載の使用のためのRBCEV又は組成物、処置の方法又は使用。
【請求項14】
タグと細胞外小胞の天然の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で、RBCEVをタグ及びタンパク質リガーゼと接触させ、それによりタグ付きRBCEVを生成することを含む方法。
【請求項15】
(a)ペプチドと細胞外小胞の天然の表面タンパク質の間の共有結合を可能にする条件下で、RBCEVをペプチド及び第1のタンパク質リガーゼと接触させ、それによりペプチドタグ付きRBCEVを生成すること;並びに
(b)RBCEVに共有結合したペプチドと機能性ドメインペプチドの間の共有結合を可能にする条件下で、ペプチドタグ付きRBCEVを機能性ドメインペプチド及び第2のタンパク質リガーゼと接触させること
を含む、方法。
【請求項16】
第1及び第2のペプチドリガーゼが同じである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1及び第2のペプチドリガーゼが異なる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
RBCEVをカーゴと接触させること、及び電気穿孔してRBCEVでカーゴを封入することをさらに含む、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項19】
タンパク質リガーゼが、ソルターゼ又はAEP1、好ましくはソルターゼAからなる群から選択される、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項14~19のいずれか一項に記載の方法によって得られたRBCEV。
【国際調査報告】