(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】FLT3が変異した血液のがんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220131BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20220131BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220131BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20220131BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/02
A61K31/519
A61K31/7068
A61K31/704
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N9/12
C12Q1/68
C12N15/10 200Z
C12N15/54 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542090
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019054142
(87)【国際公開番号】W WO2020072544
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】312017662
【氏名又は名称】シーティーアイ・バイオファーマ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CTI BioPharma Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バトナガー, バヴァナ
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー, シャーリン ディー.
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B050DD11
4B050LL03
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ43
4B063QR32
4B063QR72
4C084AA17
4C084AA19
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4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
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4C086EA17
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
FLT3変異を有する被験体または細胞におけるFLT3活性を阻害する方法が提供される。FLT3変異を有するものとして特定された被験体における血液のがん、例えば急性骨髄性白血病等を処置する方法も提供される。一部の実施形態は、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する有効量の治療剤を、FLT3変異を含む事前に決定された遺伝子プロファイルを有する被験体に投与するステップを含む、がんを処置する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液のがんを処置するための方法であって、
ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する有効量の治療剤を、FLT3変異を含む事前に決定された遺伝子プロファイルを有する被験体に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記FLT3変異が、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FLT3変異が、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記TKD変異が、FLT835変異である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記FLT835変異が、D835H、D835V、またはD835Yを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記FLT835変異が、D835Yを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記TKD変異が、FLT3 691変異を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記FLT3 691変異が、F691Lを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記FLT3変異が、ITD変異およびTKD変異を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記FLT3変異が、ITD-835H、ITD-835V、ITD-D835Y、またはITD-F691Lを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記FLT3変異が、ITD-835Yを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記治療剤が、パクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記薬学的に許容される塩が、クエン酸塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬学的に許容される塩が、マレイン酸塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有効量が、1日当たり約50mg~1日当たり約500mgである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
有効量の1つまたは複数のさらなる治療剤を投与するステップをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数のさらなる治療剤が、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数のさらなる治療剤が、ヌクレオシドアナログおよび挿入剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ヌクレオシドアナログが、シタラビンを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記挿入剤が、ダウノルビシンを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数のさらなる治療剤が、低メチル化剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記低メチル化剤が、デシタビンまたはアザシチジンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血液のがんが、急性骨髄性白血病を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記急性骨髄性白血病が、再発性または不応性の急性骨髄性白血病である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
急性骨髄性白血病を処置するための方法であって、
有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドを、FLT3内に事前に決定された変異を有する被験体に投与するステップ
を含み、前記変異が
i.遺伝子内タンデム重複(ITD)変異、および/または
ii.チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異
を含む、方法。
【請求項26】
前記FLT3変異が、ITD変異およびTKD変異を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記TKD変異が、FLT3 835変異である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記FLT 835変異が、D835H、D835V、またはD835Yを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記TKD変異が、FLT3 835Yを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記TKD変異が、FLT3 691変異を含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項31】
前記FLT3 691変異が、F691Lを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記薬学的に許容される塩が、クエン酸塩である、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記薬学的に許容される塩が、マレイン酸塩である、請求項25から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記有効量が、1日当たり約50mg~1日当たり約500mgである、請求項25から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記有効量が、1日当たり約200mgである、請求項25から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記有効量が、1日当たり約400mgである、請求項25から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
有効量の1つまたは複数の化学療法剤を投与するステップをさらに含む、請求項25から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数の化学療法剤が、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つまたは複数の化学療法剤が、ヌクレオシド剤および挿入剤を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ヌクレオシドアナログが、シタラビンを含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記挿入剤が、ダウノルビシンを含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項42】
前記1つまたは複数の化学療法剤が、低メチル化剤を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記低メチル化剤が、デシタビンまたはアザシチジンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記急性骨髄性白血病が、再発性または不応性の急性骨髄性白血病である、請求項25から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
血液のがんについて処置を必要とする被験体のために処置レジメンを選択する方法であって、
FLT3変異を含む、前記被験体に関する遺伝子プロファイルを受け取るステップと、
ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する治療剤を含む処置レジメンを、前記遺伝子プロファイルに基づき選択するステップと
を含む、方法。
【請求項46】
前記FLT3変異が、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記FLT3変異が、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記TKD変異が、FLT835変異である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記FLT835変異が、D835H、D835V、またはD835Yを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記FLT835変異が、D835Yを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記TKD変異が、FLT3 691変異を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記FLT3 691変異が、F691Lを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記FLT3変異が、ITD変異およびTKD変異を含む、請求項45から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記FLT3変異が、ITDおよび835H(ITD-835H)、ITDおよび835V(ITD-835V)、ITDおよび835Y(ITD-D835Y)、またはITDおよびF691L(ITD-F691L)を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記FLT3変異が、ITDおよび835Y(ITD-835Y)を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記治療剤が、パクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドである、請求項45から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記薬学的に許容される塩が、クエン酸塩である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記薬学的に許容される塩が、マレイン酸塩である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記処置レジメンが、有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドを含み、前記有効量が、1日当たり約50mg~1日当たり約500mgである、請求項45から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記有効量が、1日当たり約200mgである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記有効量が、1日当たり約400mgである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記処置レジメンが、有効量の1つまたは複数の化学療法剤を投与するステップをさらに含む、請求項45から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記1つまたは複数の化学療法剤が、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記1つまたは複数の化学療法剤が、ヌクレオシドアナログおよび挿入剤を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記ヌクレオシドアナログが、シタラビンを含む、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記挿入剤が、ダウノルビシンを含む、請求項63または64に記載の方法。
【請求項67】
前記1つまたは複数の化学療法剤が、低メチル化剤を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記低メチル化剤が、デシタビンまたはアザシチジンを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記血液のがんが、急性骨髄性白血病を含む、請求項45から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記急性骨髄性白血病が、再発性または不応性の急性骨髄性白血病である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
FLT3変異を有する細胞内のFLT3活性を阻害する方法であって、前記細胞を、有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドと接触させるステップを含む、方法。
【請求項72】
前記FLT3変異が、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記FLT3変異が、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記TKD変異が、D835Yを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記FLT3変異が、ITD変異およびTKD変異を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記FLT3変異が、ITD、D835H、D835V、D835Y、ITD-835H、ITD-835V、ITD-D835Y、またはITD-F691Lを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記FLT3変異が、ITD-D835Yを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞が、造血細胞である、請求項71から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が、急性骨髄性白血病細胞である、請求項71から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
FLT3活性の前記阻害が、抗がん効果を引き起こす、請求項71から79のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パクリチニブを用いた様々な血液のがんの処置、例えばFLT3が変異した急性骨髄性白血病の処置と一般的に関連する。
【背景技術】
【0002】
急性骨髄性白血病(AML)は、遺伝的変更およびエピジェネティックな変更により特徴付けられるクローン性の造血障害であり、顆粒球分化のブロック、ならびに血液および骨髄(BM)中の白血病性芽球の蓄積を引き起こす。細胞遺伝学的にリスク階層化された療法が考案されたにもかかわらず、20%~30%のAML患者が完全寛解を達成せず、また完全寛解を達成しても、その50%を上回る患者が、その後ごく早期に疾患再発を経験する。成人におけるAMLの処置に飛躍的な進歩がみられないことから、新規の治療戦略、特に病因に関与していることが公知である分子標的を対象とする治療戦略の開発に対する必要性が重視されている。
【0003】
非ランダム染色体異常(例えば、欠損、転座)が、成人原発性AML患者全体のおよそ55%において認められる。fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)遺伝子内の変異は、AMLにおいて記載された最初の分子異常の1つであった。FLT3は、正常な骨髄前駆細胞上で発現する3型受容体チロシンキナーゼである;そしてその発現は、それら前駆体が成熟すると共に通常失われる。しかしながら、症例の少なくとも70パーセントにおいて、FLT3はAML細胞上で発現しており、またおよそ三分の一のAML患者が、25%を占める遺伝子内タンデム重複(ITD)および5%を占める点変異(TKD)を含む、FLT3の活性化変異を有し、その結果、FLT3シグナル伝達の構成的活性化を引き起こす。
【0004】
FLT3変異が存在すると、標準的AML化学療法後の無病生存が短縮するという、疾患転帰に対して予後上有害な影響を有することがよく知られている。したがって、FLT3変異を有するAML患者におけるAML応答および転帰に対する影響を評価するために、いくつかのFLT3阻害剤が、当初単剤として、次に化学療法と組み合わせて評価された。しかしながら、この「第1世代」FLT3阻害剤は、血漿タンパク質結合、細胞周期阻害、および非特異的な効果や毒性を引き起こすおそれのある多標的キナーゼ阻害が高いことによって最適ではない可能性があり、したがってこの薬剤を標準的な化学療法レジメンと組み合わせて評価することとなったが、結果はまちまちである。それにもかかわらず、FLT3変異体を含め、治療標的としてFLT3を効果的に阻害する必要性が、当技術分野においてなおも存続する。本開示は、この阻害および関連する長所を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、FLT3変異を伴う血液のがんを有する被験体または細胞を処置する方法と一般的に関連する。
【0006】
手短に述べると、一部の実施形態は、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する有効量の治療剤を、FLT3変異を含む事前に決定された遺伝子プロファイルを有する被験体に投与するステップを含む、がんを処置する方法を提供する。特定の実施形態では、FLT3変異は、遺伝子内タンデム重複変異、および/またはチロシンキナーゼドメイン変異である。特定の実施形態では、治療剤は、パクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくはN-オキシドである。
【0007】
本発明の一部の実施形態は、FLT3が変異した急性骨髄性白血病を処置する方法を提供する。1つの実施形態は、処置レジメンを選択し、そして被験体を処置する方法を提供するが、同方法は、被験体に関する遺伝子プロファイルを受け取るステップと、該遺伝子プロファイルに基づき被験体を処置するステップとを含む。ある特定の実施形態では、遺伝子プロファイルは、FLT3変異である。特定の実施形態では、FLT3変異は、遺伝子内タンデム重複変異および/またはチロシンキナーゼドメイン変異である。
【0008】
別の関連する実施形態は、FLT3変異を有する細胞においてFLT3活性を阻害する方法を提供するが、同方法は細胞を有効量のパクリチニブと接触させるステップを含む。特定の実施形態では、細胞は造血細胞および/または急性骨髄性白血病細胞である。特定の実施形態では、FLT3活性を阻害することで、抗がん効果がもたらされる。
【0009】
図中では、同一の参照番号により同様の要素が特定される。図中の要素のサイズおよび相対位置は、必ずしも正確な縮尺で描かれておらず、図の読みやすさを向上させるために、これらの要素の一部は拡大され、配置されている。さらに、描かれているような要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する情報を伝えることを意図したものではなく、図の理解を容易にするために単に選択されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、FLT3(野生型)、FLT3-ITD、FLT3-ITD F691L、FLT3-ITD D835V、FLT3-ITD D835H、FLT3 D835H、FLT3 D835V、およびFLT3 D835Yに対するパクリチニブ結合親和性の用量反応曲線を示す。
【
図2】
図2は、FLT3-ITD(左側)およびFLT3 D835Y(右側)に対するパクリチニブの阻害活性を測定するキナーゼアッセイの結果を示す。
【
図3】
図3は、GFP(+IL3)、FLT3-ITD、FLT3-ITD F691L、FLT3 D835H、FLT3 835Y、FLT3-ITD D835H、およびFLT3-ITD D835YがトランスフェクトされたBa/F3細胞に対するパクリチニブの細胞活性を示す。
【
図4】
図4は、MOLM13細胞、MV411細胞およびMOLM13-Res細胞に対するパクリチニブの細胞活性を示す。
【
図5】
図5は、FLT3-ITD F691L(左側)またはFLT3-ITD D835Y(右側)を発現するパクリチニブ処置Ba/F3細胞からの溶解物のウェスタンブロットを示す。
【
図6】
図6は、FLT3-ITD
+/-/IDH2-R140Q
+/-がダブルノックインされたマウス初代白血病細胞に対するパクリチニブおよびミドスタウリンの細胞活性を示す。
【
図7-1】
図7は、患者の人口統計およびベースライン特性を示す。
【
図7-2】
図7は、患者の人口統計およびベースライン特性を示す。
【
図8】
図8は、研究計画および患者登録を示す。患者を2つのコホートの一方に登録した。
【
図9】
図9は、研究の患者5、患者6、患者7および患者9から採取された初代芽球細胞のex vivo生存率を示す。パクリチニブIC
50値を各芽球試料(上方左側)について計算した。
【
図10】
図10は、研究の患者5、患者6および患者9から採取された初代骨髄芽球細胞のex vivo生存率を示す。細胞をパクリチニブまたはミドスタウリンの様々な用量で処置した。
【
図11】
図11は、100mgのパクリチニブを1日2回投与されたコホートA患者5名についてのパクリチニブの血漿濃度を示す。左側のパネルは、処置初日の投与の1時間、2時間、5時間および24時間後に採取された試料についての血漿濃度を示す。右のパネルは、処置サイクルの5日目および21日目に採取された処置前試料についての血漿濃度を示す。
【
図12】
図12は、100mgのパクリチニブを1日2回投与されたコホートB患者6名についてのパクリチニブの血漿濃度を示す。左側のパネルは、処置初日の投与の1時間、2時間、5時間および24時間後に採取された試料についての血漿濃度を示す。右のパネルは、処置サイクルの5日目および21日目に採取された処置前試料についての血漿濃度を示す。
【
図13】
図13は、200mgのパクリチニブを1日2回投与されたコホートB患者2名についてのパクリチニブの血漿濃度を示す。左側のパネルは、処置初日の投与の1時間、2時間、5時間および24時間後に採取された試料、ならびに処置サイクルの5日目に採取された処置前試料についての血漿濃度を示す。
【
図14】
図14は、コホートAに登録した患者5の臨床経過プロファイルを提供する。用量スケジュールがグラフの上に示されている:1~21日目にパクリチニブ、5~11日目にara-C(シタラビンとしても公知)、および5~7日目にダウノルビシン。グラフは、血小板数(左側y軸)および白血球数(右側y軸)、ならびに骨髄吸引物中に存在する芽球のパーセント(チェック模様の棒)、および末梢血試料中に存在する芽球のパーセント(黒色棒)を示す。
【
図15】
図15は、コホートAに登録した患者9の臨床経過プロファイルを提供する。用量スケジュールがグラフの上に示されている:1~21日目にパクリチニブ、5~11日目にara-C(シタラビンとしても公知)、および5~7日目にダウノルビシン。グラフは、血小板数(左側y軸)および白血球数(右側y軸)、ならびに骨髄吸引物中に存在する芽球のパーセント(チェック模様の棒)、および末梢血試料中に存在する芽球のパーセント(黒色棒)を示す。
【
図16】
図16は、研究中にパクリチニブを投与された患者の全生存についてのカプラン・マイヤー分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の説明では、ある特定の特別な詳細事項が、本発明の様々な実施形態について徹底した理解を提供するために記載されている。しかしながら、当業者は、これらの詳細事項がなくても、本発明は実践され得ることを理解するであろう。
【0012】
文脈が別途要求する場合を除き、本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、単語「~を含む(comprise)」およびその変化形、例えば「~を含む(comprises)」および「~を含むこと(comprising)」等は、非限定的、包括的な意味合いで(すなわち、「非限定的に~を含む」として)解釈されるものである。
【0013】
本説明において、濃度の範囲、パーセンテージの範囲、比の範囲、または整数の範囲は、いずれも列挙した範囲内のあらゆる整数の値、また該当する場合、別途表示されない限りその小数(例えば整数の10分の1や100分の1等)を含むものと理解される。また、任意の物理特性に関係のある、本明細書において列挙されるあらゆる数値範囲、例えばポリマーのサブユニット、サイズ、または厚さ等は、別途表示されない限り、列挙された範囲内のあらゆる整数を含むものと理解される。本明細書で使用される場合、用語「約」および「およそ」とは、別途表示されない限り、示された範囲、数値、または構造の±20%、±10%、±5%、または±1%を意味する。用語「a」および「an」とは、本明細書で使用される場合、列挙された構成成分の「1つまたは複数」を指すものと理解されるべきである。代替的用語(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか1つ、両方、または任意のその組合せを意味すると理解されるべきである。
【0014】
本明細書全体を通じて、「1つの実施形態」または「一実施形態」という場合、それは、実施形態と関連付けて記載される特定の特性、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な場所において、慣用句「1つの実施形態では」または「一実施形態では」が現れたとしても、必ずしも全て同一の実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特性、構造、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適する方式で組み合わせ可能である。
【0015】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈より別途明確に指示されない限り複数形の意味を含む。
【0016】
「医薬組成物」とは、本開示の化合物、および生物学的に活性な化合物を哺乳動物、例えばヒトに送達するための、当技術分野において一般的に許容される媒体からなる製剤を指す。そのような媒体として、その全ての薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤が挙げられる。
【0017】
「薬学的に許容される塩」は、酸および塩基の付加塩の両方を含む。
【0018】
「薬学的に許容される酸付加塩」とは、生物学的有効性および遊離塩基の特性を保持する塩を指し、そのような塩は、生物学的にまたはそれ以外でも望ましくないものではなく、そして無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、および有機酸、例えば酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、樟脳-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサルチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸(例えば、L-(+)-酒石酸)、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸等と共に形成される。
【0019】
「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、生物学的有効性および遊離酸の特性を保持する塩を指し、そのような塩は、生物学的にまたはそれ以外でも望ましくないものではない。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に添加することから調製される。無機塩基に由来する塩として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等の塩が挙げられる。好ましい無機塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩である。有機塩基に由来する塩として、天然に存在する置換アミン、環状アミンを含む、一級、二級、および三級アミン、置換アミンの塩、および塩基性イオン交換樹脂、例えばアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等が挙げられる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。
【0020】
一部の実施形態では、薬学的に許容される塩として、四級アンモニウム塩、例えば四級アミンアルキルハライドの塩(例えば、臭化メチル)等が挙げられる。
【0021】
「N-オキシド」とは、N原子の全ての原子価が、分子の残りの部分との結合により充足されているN+-O-を指す。
【0022】
「薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤」には、ヒトまたは飼育動物での使用に許容されるとして米国食品医薬品局により承認された任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤(glidant)、甘味料、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、風味増強剤(flavor enhancer)、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張化剤、溶媒、または乳化剤が含まれる。
【0023】
用語「有効量」または「治療有効量」とは、下記で定義するような、疾患処置を含む意図した適用に影響を及ぼすのに十分である、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)の化合物)の量を指す。治療有効量は、意図した処置の適用(in vivo)、または処置される被験体および疾患の状態、例えば被験体の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与方式等に依存して変化し得るが、当業者により容易に決定可能である。該用語は、標的細胞において特定の応答、例えば血小板接着および/または細胞遊走の抑制を誘発する用量にも適用される。所定の用量は、選択された具体的な化合物、順守すべき投薬レジメン、その他の化合物との併用投与の有無、投与のタイミング、投与の対象とされる組織、およびそれを搬送する物理的送達システムに応じて変化する。
【0024】
本明細書で使用する場合、「処置」または「~を処置すること」とは、治療利益および/または予防利益を含む、疾患、障害、または医学的状態に関して有益な結果または所望の結果を取得するためのアプローチを指す。治療利益とは、処置される潜在的障害の根絶または好転を意味する。また、被験体は潜在的障害によりなおも影響を受けている可能性があるものの、該被験体において改善が観察されるように、治療利益は、潜在的障害と関連する生理学的症状のうちの1つまたは複数が根絶または好転すれば達成される。ある特定の実施形態では、予防利益の場合、組成物は、特定の疾患を発症するリスクに晒されている被験体、または疾患について診断が下されないかもしれなくても、この疾患の生理学的症状のうちの1つまたは複数について訴える被験体に対して投与される。
【0025】
「治療効果」は、該用語が本明細書において使用される場合、上記したような治療利益および/または予防利益を包含する。予防上の効果には、疾患または状態の出現を遅延させまたは除去すること、疾患または状態の症状の開始を遅延させまたは除去すること、疾患または状態の進行を低速化、停止、または逆転させること、または任意のこれらの組合せが含まれる。
【0026】
用語「同時投与」、「~と併用投与される」、およびその文法的に同等の用語は、本明細書で使用する場合、2つまたはそれより多くの薬剤を、両薬剤および/またはその代謝物が被験体中に同時に存在するように、ヒトを含む動物に投与することを包含する。同時投与には、別々の組成物を同時投与すること、別々の組成物を異なる時間において投与すること、または両薬剤が存在する組成物として投与することが含まれる。
【0027】
「化学療法剤」とは、悪性細胞を選択的に殺傷し、またはその分裂をブロックするのに有用な任意の薬剤を指す。抗がん剤の1つのクラスが化学療法剤に該当する。「化学療法」は、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮的、バッカル、もしくは吸入を含む様々な方法により、または坐剤の形態で、1つもしくは複数の化学療法薬および/またはその他の薬剤をがん患者に投与することを意味する。
【0028】
「7+3」または「7+3」処置は、7日間のシタラビン投与、および3日間のアントラサイクリン抗生物質またはアントラセンジオン、例えばダウノルビシン等を含む化学療法コースを意味し得る。
【0029】
「放射線療法」とは、慣例的な方法および専門家にとって公知の組成物を使用して、被験体を放射線放出体、例えばアルファ粒子放射性核種(例えば、アクチニウムおよびトリウム放射性核種)、低線エネルギー付与(LET)放射線放出体(すなわち、ベータ放射体)、変換電子放出体(例えば、ストロンチウム89およびサマリウム153-EDTMP、またはX線、ガンマ線、およびニュートロンを含む高エネルギー照射等に曝露することを意味する。例示的な放射線療法として、外部ビーム療法、内部放射線療法、インプラント照射、定位的放射線手術、全身放射線療法、放射線療法、および永続性または一過性の組織内近接照射療法が挙げられる。本発明の細胞コンディショナーとして使用される好適な放射線源には、固体と液体の両方が含まれる。非限定的な例を挙げるならば、放射線源は、放射性核種、例えば固体源としてI125、I131、Yb169、Ir192等、固体源としてI125、または光子、ベータ粒子、ガンマ線、もしくはその他の療法用放射線を放出するその他の放射性核種であり得る。放射性物質は、放射性核種(複数可)の任意の溶液、例えばI125もしくはI131の溶液から作成される液体でもあり得、または放射性の液体は、固体放射性核種、例えばAu198、Y90等の小粒子を含有する好適な液体からなるスラリーを使用して製造可能である。さらに、放射性核種(複数可)は、ゲルまたは放射性ミクロスフェアとして具体化され得る。
【0030】
「寛解」は、がんの徴候および/または症状の部分的なまたは完全な喪失を意味し得る。寛解の種類として、形態学的完全寛解、形態学的な白血病のない状態、細胞遺伝学的完全寛解、または血液学的回復が不完全な完全寛解が挙げられる。AMLの寛解は、骨髄吸引物中の芽球が5%未満、血液試料1マイクロリッター当たり1,000個、またはそれよりも多くの好中球、血液試料1マイクロリッター当たり100,000個、またはそれよりも多くの血小板、髄外疾患の不在、またはその組合せとして定義され得る。特定の実施形態では、寛解は、骨髄吸引物中の芽球が5%未満として定義され得る。
【0031】
「被験体」とは、動物、例えば哺乳動物等、例えばヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒト治療および獣医学適用の両方において有用であり得る。一部の実施形態では、被験体は哺乳動物であり、また一部の実施形態では、被験体はヒトである。
【0032】
「哺乳動物」には、ヒト、ならびに飼育動物、例えば実験動物および家庭用ペット等(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)、および非飼育動物、例えば野生生物等の両方が含まれる。
【0033】
用語「in vivo」とは、被験体の身体内で実施される事象を指す。
【0034】
用語「in vitro」とは、被験体の身体外で実施される事象を指す。
【0035】
用語「遺伝子」は、コード配列だけでなく、制御領域、例えばプロモーター、エンハンサー、および終止領域等も含み得る。該用語は、全てのイントロン、および選択的スプライシング部位に起因するバリアントと共に、mRNA転写物からスプライシングされたその他のDNA配列をさらに含み得る。特定のタンパク質をコードする遺伝子配列は、特定のタンパク質の発現を指令するDNAまたはRNAであり得る。この核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列、または特定のタンパク質に翻訳されるRNA配列であり得る。核酸配列には、完全長核酸配列のほか、完全長タンパク質に由来する非完全長配列の両方が含まれる。
【0036】
「FLT3」は、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)酵素をコードする遺伝子を意味する場合があり、および/またはコードされた酵素(UniProt ID:P36888)を意味する場合もある。FLT3遺伝子(NCBI参照配列番号:NP_004110.2)は、染色体13q12上に存在する。FLT3の発現は骨髄前駆細胞によるが、発現は、前駆体の成熟期間中に通常は失われる。しかしながら、FLT3は、急性骨髄性白血病細胞上で、多くの場合、異常発現する。さらに、FLT3に対するある特定の変異は、酵素の構成的活性化を引き起こすおそれがあり、そしてFLT3に対する活性化変異は、がん細胞表現型、例えば増殖および生存の増強等と関連した。急性骨髄性白血病患者のおよそ三分の一が、FLT3遺伝子に対する変異を有し、そしてその約25%が遺伝子内タンデム重複であり、また約5%が点変異、例えばチロシンキナーゼドメインに対する変異等である。
【0037】
「JAK2」とは、ヤヌスキナーゼ2(UniProt ID:O60674)を指し、非受容体チロシンキナーゼである。JAK2は、転写タンパク質のシグナルトランスジューサーおよびアクチベーター(STAT)と共に、JAK/STAT経路に関与しており、多くの細胞プロセス、例えば免疫および増殖等を制御する。JAK/STAT経路の異常な活性化が、多くの血液のがん、例えば急性骨髄性白血病等に存在する。例えば、JAK2に対するV617F変異は構成的に活性化しており、また血液学的がんと関連する。理論に束縛されないが、FLT3およびJAK2に対して阻害活性を有する治療剤を用いて、FLT3変異を有する被験体を処置することは、例えばJAK2/STAT経路駆動型の薬物耐性を予防するのに有用であり得る。
【0038】
「遺伝子内タンデム重複変異」(「ITD変異」)は、アミノ酸の配列がFLT3の膜近傍ドメイン内でタンデムに重複する原因となるFLT3遺伝子変異を意味し得る。FLT3の膜近傍ドメインは、FLT3遺伝子の膜貫通ドメインと第1のチロシンキナーゼドメインの間に、FLT3のアミノ酸569~610において配置される。ある特定の実施形態では、ITD変異は、例えば少なくとも3つのヌクレオチド、または多くてもヌクレオチド1500個程度のタンデム重複であり得、膜近傍ドメイン内に完全に含まれ、または少なくともそれと部分的にオーバーラップする。FLT3内の遺伝子内タンデム重複を検出する例示的な方法は、例えば、Spencer et al., J Mol Diagn. 2013 Jan;15(1):81-93に見出され得る。式(I)の化合物、例えばパクリチニブ等は、例えば、内因性および後天的薬物耐性の可能性、例えば二次チロシンキナーゼドメイン変異(TKD)の出現等を低下させる可能性があるので、ITD+AMLを処置するのに有用であり得る。
【0039】
「チロシンキナーゼドメイン変異」または「TKD変異」は、FLT3遺伝子のチロシンキナーゼドメイン1(AA610-710をコードする)またはチロシンキナーゼドメイン2(AA778-943をコードする)内の変異を意味し得る。TKD変異は、FLT3の構成的自己リン酸化および活性化を引き起こすおそれがある。すでに特徴付けされたTKD変異の例として、A680、F691、D835、およびI836、S840、N841、およびY842に対する非同義的変異が挙げられる(Bacher et al., Blood 2008 111:2527-2537、およびNguyen, et al., Oncotarget. 2017 Feb 14; 8(7): 10931-10944を参照)。これらの部位に対する特異的TKD変異の例として、D835Y、D835H、D835V、D835E、D835A、D835S、D835N、およびΔ836、I836S、I836L、I836T、S840Gが挙げられる。Nguyenらにより報告されるように、多くのチロシンキナーゼ阻害剤が、様々なTKD変異体に対して無効である(Nguyen, et al., Oncotarget. 2017 Feb 14; 8(7): 10931-10944)。驚くべきことに、本明細書の実施例に示すように、パクリチニブは様々なTKD変異体と効果的に結合し、かつそれを阻害する。ある特定の実施形態では、TKD変異は、FLT3のチロシンキナーゼドメイン内の非同義置換変異または非フレームシフトインデルである。特定の実施形態では、変異は、エクソン17および/またはエクソン20にある。TKD変異は、例えばディープアンプリコンシークエンシング、または当技術分野において公知の別のシークエンシング法により同定され得る。
【0040】
治療剤
様々な実施形態が、有効量の治療剤を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、治療剤は、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する薬剤である。理論に束縛されないが、JAK2およびFLT3に対して阻害活性を有する薬剤は、FLT3が変異したがんを処置するのに有用であり得るが、その理由は、例えば内因性および後天的薬物耐性、例えば選択的シグナル伝達経路(例えば、JAK/STAT)の活性化等の可能性を低下させ得るためである。
【0041】
特定の実施形態では、治療剤は、
構造:
【化1】
を有する、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはN-オキシドであり、
式中、
R
1およびR
2は、Hであり、
Z
2は、-N(H)-であり、
Ar
1は、
【化2】
(式中、R
10はメトキシまたはフッ素であり;
kは0または1から選択される整数である)
からなる群より選択され、
Ar
2は、式
【化3】
(式中、R
11はHであり、または
【化4-1】
【化4-2】
からなる群より選択される)
の基であり、
Lは、式:
-X
1-Y-X
2-
の基である(式中、X
1はAr
1に連結しており、かつX
2はAr
2に連結しており、式中X
1、X
2、およびYは、基Lが直鎖内に5~15個の原子を有するように選択され、
X
1は、
(a)-OCH
2-
(b)-OCH
2CH
2-、および
(c)-CH
2OCH
2-
からなる群より選択され、
X
2は、
(a)-CH
2O-、
(b)-CH
2CH
2O-、および
(c)-CH
2OCH
2-
からなる群より選択され、
Yは、式-CR
a=CR
b-の基であり、式中R
aおよびR
bはHである)。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、11-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-14,19-ジオキサ-5,7,26-トリアザテトラシクロ[19.3.1.1
2,6.1
8,12]ヘプタコサ-1(25),2(26),3,5,8,10,12(27),16,21,23-デカエン(パクリチニブ)、またはその薬学的に許容される塩もしくはN-オキシド、例えばそのクエン酸塩またはマレイン酸塩等である。ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、9E-15-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-7,12,25-トリオキサ-19,21,24-トリアザ-テトラシクロ[18.3.1.1(2,5).1(14,18)]ヘキサコサ-1(24),2,4,9,14,16,18(26),20,22-ノナエン、またはその薬学的に許容される塩またはN-オキシド、例えばそのクエン酸塩またはマレイン酸塩等である。
【0042】
医薬組成物
その他の実施形態は医薬組成物と関連する。医薬組成物は、式(I)の化合物および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、その薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
【0043】
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は経口カプセルを含む。その他の実施形態では、医薬組成物は注射のために製剤化される。一部のより特別な実施形態では、担体または賦形剤は、セルロース、ラクトース、カルボキシメチルセルロース、およびステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される。
【0044】
なおもより多くの実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および追加の治療剤(例えば、化学療法剤)を含む。そのような追加の治療剤の非限定的な例は上記されている。
【0045】
好適な投与経路として、経口、静脈内、直腸、エアゾール、非経口、眼科的、肺、経粘膜的、経皮的、膣、耳、鼻、および局所的投与が挙げられる。それに加えて、例として、非経口送達として、筋肉内、皮下、静脈内、髄内の注射のほか、髄腔内、直接脳室内、腹腔内、リンパ内、および鼻腔内の注射が挙げられる。特定の実施形態では、式(I)の化合物は経口的に投与される。
【0046】
ある特定の実施形態による式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、幅広い投薬量範囲にわたり有効である。例えば、ヒト成人の処置では、0.01~2000mg、1日当たり1~1000mg、1日当たり50~500mg、および1日当たり200~400mgの投薬量が、一部の実施形態で使用される投薬量の例である。例示的な投薬量は、1日当たり約50~約500mgであり、または1日当たり約200mgである。様々な実施形態では、投薬量は、1日当たり50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mgである。正確な投薬量は、投与経路、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が投与される形態、処置される被験体、処置される被験体の体重、および担当医師の選好や経験に依存する。
【0047】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、単回用量で投与される。そのような投与は、薬剤を迅速に導入するために、注射、例えば静脈内注射により得る。しかしながら、その他の経路も適宜用いられる。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の単回用量は、急性状態の処置にも使用され得る。
【0048】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、複数回用量で投与される。一部の実施形態では、投薬は、1日当たり約1回、2回、3回、4回、5回、6回、または6回より多い回数である。その他の実施形態では、投薬は、1カ月に約1回、2週間毎に1回、1週間に1回、または2日に1回である。別の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1日約1回~1日約4回投与される。ある特定の実施形態では、式(I)の化合物および追加の治療剤が別個に投与される。別の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与は、約1カ月未満、約3週間未満、または約2週間未満継続する。ある特定の実施形態では、追加の治療剤が、約1カ月未満、約3週間未満、約2週間未満、または約1週間未満投与される。さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の投与は、約6、10、14、28日、2カ月、6カ月、または1年を超えて継続する。一部のケースでは、連続投薬は、必要である限り達成および維持される。
【0049】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与は、必要または得策である限り、継続し得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1、2、3、4、5、6、7、14、または28日を超えて投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、28、14、7、6、5、4、3、2、または1日未満投与される。一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、例えば慢性的な影響を処置するために、継続的に慢性的に投与される。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、処置サイクル(例えば、21日もしくは28日処置サイクル)の1~21日目;処置サイクル(例えば、21もしくは28日処置サイクル)の8~21日目;または28日処置サイクルの5~28日目において毎日投与され得る(例えば、1日2回)。
【0050】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、複数の投薬量で投与される。化合物の薬物動態における被験体間変動に起因して、投薬レジメンの個別化が最適な療法にとって必要であることが当技術分野において公知である。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩のための投薬は、本開示に照らして慣例的な実験法により見出され得る。
【0051】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物に製剤化される。特別な実施形態では、医薬組成物は、賦形剤および/または活性化合物を薬学的に使用可能である調製物に処理するのを促進する助剤を含む、1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して、従来方式で製剤化される。ふさわしい製剤化は、選択される投与経路に依存する。任意の薬学的に許容される技術、担体、希釈剤、および賦形剤が、本明細書に記載される医薬組成物を製剤化するのに適切に使用される。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999)。
【0052】
ある特定の実施形態では、記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、併用療法と同様に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩がその他の有効成分(例えば、追加の治療剤)と混合されている医薬組成物として投与される。下記の併用療法セクションにおいて、および本開示全体を通じて記述される全ての活性物質(active)の組合せが本明細書に包含される。
【0053】
医薬組成物とは、本明細書で使用される場合、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、その他の化学成分、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤等との混合物を指す。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の被験体への投与を容易にする。一部の実施形態では、本明細書に提示される処置または使用の方法を実践するのに、本明細書に提示される治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が、処置されるべき疾患、障害、または医学的状態を有する哺乳動物に、医薬組成物として投与される。特別な実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある特定の実施形態では、治療有効量は、疾患の重症度、被験体の年齢や相対的健康、使用される化合物の効力、およびその他の要因に応じて変化する。本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が、単独で、または混合物の構成成分として1つまたは複数の治療剤と組み合わせて使用される。
【0054】
一部の実施形態では、被験体(例えば、ヒト)は、18歳よりも年長である。一部の実施形態では、被験体(例えば、ヒト)は、3カ月以上または6カ月以上の平均余命を有しており、妊娠していない、または妊娠し得ない、受入れ可能な肝臓機能(例えば、ビリルビン≦2.0mg/dL、ジルベール病による場合を除く)を有し、受入れ可能な腎機能(例えば、クレアチンクリアランス計算値≧50mL/分)を有し、受入れ可能な心機能(NYHAうっ血性心不全クラスIIもしくはそれより良好、および/または心臓駆出率(LVEF)≧50%)を有し、または任意のこれらの組合せを有する。
【0055】
一部の実施形態では、本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、経口投与用として製剤化される。本明細書に記載される化合物は、活性化合物(すなわち、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および必要に応じて追加の治療剤)を、例えば薬学的に許容される担体または賦形剤と組み合わせることにより製剤化される。様々な実施形態では、本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、例として錠剤、粉末、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁物等を含む経口剤形で製剤化される。
【0056】
ある特定の実施形態では、経口で使用するための医薬製剤は、1つまたは複数の固体賦形剤を、本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と混合し、必要に応じて得られた混合物を粉砕し、そして所望の場合には好適な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣錠コアを取得することにより取得される。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖等;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等;またはその他、例えばポリビニルピロリドン(PVPもしくはポビドン)もしくはリン酸カルシウム等である。特別な実施形態では、崩壊剤が必要に応じて添加される。崩壊剤には、例として、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム等が含まれる。
【0057】
1つの実施形態では、剤形、例えば糖衣錠コアおよび錠剤等が、1つまたは複数の好適なコーティングと共に提供される。特別な実施形態では、濃縮糖溶液が、剤形をコーティングするのに使用される。糖溶液は、追加の構成成分、例として、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物等を必要に応じて含有する。染料および/または顔料も、必要に応じて識別目的でコーティングに添加される。さらに、染料および/または顔料が、異なる組合せの活性化合物用量(すなわち、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および必要に応じて追加の治療剤)を特徴付けるために、必要に応じて利用される。
【0058】
特定の実施形態では、本明細書に記載される治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、その他の経口剤形に製剤化される。経口剤形として、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトール等からなる軟質密封カプセルが挙げられる。特別な実施形態では、プッシュフィットカプセルは、1つまたは複数の充填剤と混合した有効成分を含有する。充填剤には、例として、ラクトース、バインダー、例えばデンプン等、および/または滑沢剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム等、および必要に応じて、安定剤が含まれる。その他の実施形態では、軟質カプセルは、好適な液体に溶解または懸濁した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する。好適な液体には、例として、1つもしくは複数の脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールが含まれる。それに加えて、安定剤が、必要に応じて添加される。
【0059】
その他の実施形態では、本明細書に記載される治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が、バッカルまたは舌下投与用として製剤化される。バッカルまたは舌下投与に適する製剤には、例として、錠剤、ロゼンジ、またはゲルが含まれる。なおも別の実施形態では、本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、ボーラス注射または連続注入に適する製剤を含む、非経口注射用として製剤化される。特別な実施形態では、注射用の製剤は、単位剤形(例えば、アンプル)で、または複数回用量容器として提供される。防腐剤は、注射用製剤に必要に応じて添加される。なおも別の実施形態では、医薬組成物は、非経口注射に適する形態で、滅菌の懸濁物、溶液、または油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中のエマルジョンとして製剤化される。非経口注射用製剤は、調合剤(formulatory agent)、例えば懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤等を必要に応じて含有する。特別な実施形態では、非経口投与用の医薬製剤は、水溶性の形態の活性化合物の水溶液を含む。追加の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の懸濁物が、油性注射用懸濁物として適宜調製される。本明細書に記載される医薬組成物で使用される好適な親油性溶媒またはビヒクルには、例として、脂肪油、例えばゴマ油等、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソーム等が含まれる。ある特定の特別な実施形態では、水性注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等を含有する。必要に応じて、懸濁物は、好適な安定剤、または化合物の溶解度を増加させて高度に濃縮された溶液の調製を可能にする作用物質を含有する。あるいは、その他の実施形態では、有効成分(複数可)(すなわち、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および必要に応じて追加の治療剤)は、使用する前に、好適なビヒクル、例えば滅菌発熱物質不含蒸留水を用いて構成するように粉末の形態である。
【0060】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用可能である調製物に処理するのを促進する、1つもしくは複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を使用して、任意の従来方式で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。任意の薬学的に許容される技術、担体、および賦形剤が、好適として必要に応じて使用される。式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、例として、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、捕捉、または圧縮プロセスによるなどして、従来方式で製造される。
【0061】
さらに、本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、非溶媒和の形態、ならびに薬学的に許容される溶媒、例えば水、エタノール等を伴う溶媒和の形態を包含する。本明細書に提示される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の溶媒和した形態も、本明細書において開示されるものと考えられる。それに加えて、医薬組成物は、その他の薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤等、溶解促進剤、浸透圧を制御するための塩、緩衝液、および/またはその他の治療上有用な物質を必要に応じて含む。
【0062】
本明細書に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を調製する方法は、固体、半固体、または液体を形成するために、1つまたは複数の不活性な、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を製剤化するステップを含む。固体組成物として、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤、および坐剤が挙げられる。液体組成物として、式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩が溶解している溶液、化合物を含むエマルジョン、または本明細書に開示されるような式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含むリポソーム、ミセル、もしくはナノ粒子を含有する溶液が挙げられる。半固体組成物として、ゲル、懸濁物、およびクリームが挙げられる。本明細書に記載される医薬組成物の形態として、液体の溶液もしくは懸濁物、使用前の溶液もしくは液体中の懸濁物に適する固体形態、またはエマルジョンが挙げられる。これらの組成物は、微量の非毒性の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤等も必要に応じて含有する。
【0063】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、例証的には、薬剤が、溶液状態、懸濁状態、またはその両方で存在する液体の形態を取る。一般的に、組成物が溶液または懸濁物として投与されるとき、治療剤(例えば、式(I)の化合物)の第1の部分が溶液中に存在し、そして治療剤(例えば、式(I)の化合物)の第2の部分は、液体マトリックス中に微粒子形態、懸濁状態で存在する。一部の実施形態では、液体組成物にはゲル製剤が含まれる。その他の実施形態では、液体組成物は水性である。
【0064】
特定の実施形態では、水性懸濁物は、懸濁化剤として1つまたは複数のポリマーを含有する。有用なポリマーとして、水溶性ポリマー、例えばセルロース性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等、および水不溶性ポリマー、例えば架橋カルボキシル含有ポリマー等が挙げられる。本明細書に記載されるある特定の医薬組成物は、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウム、およびデキストランから選択される粘膜接着性ポリマーを含む。
【0065】
有用な医薬組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の溶解度を補助するために、必要に応じて可溶化剤も含む。用語「可溶化剤」には、薬剤のミセル溶液または真正溶液の形成を引き起こす作用物質が一般的に含まれる。ある特定の受入れ可能な非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80は、可溶化剤として有用である(同様に、眼科的に許容されるグリコール、ポリグリコール、例えばポリエチレングリコール400、およびグリコールエーテルも有用であり得る)。
【0066】
さらに、医薬組成物は、酸、例えば酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、および塩酸等;塩基、例えば水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、およびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタン等;ならびに緩衝液、例えばクエン酸/デキストロース、重炭酸ナトリウム、および塩化アンモニウム等を含む、1つまたは複数のpH調整剤または緩衝化剤を必要に応じて含む。そのような酸、塩基、および緩衝液は、組成物のpHを許容範囲内に維持するのに必要とされる量で含まれる。
【0067】
さらに、組成物は、組成物の質量オスモル濃度を許容範囲中に収めるために必要とされる量で、1つまたは複数の塩も必要に応じて含む。そのような塩として、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウム陽イオンと、塩化物、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、重炭酸、硫酸、チオ硫酸、または亜硫酸水素陰イオンとを有する塩が挙げられる;好適な塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0068】
その他の医薬組成物は、微生物の活動を阻害するための1つまたは複数の防腐剤を必要に応じて含む。好適な防腐剤として、水銀含有物質、例えばメルフェンおよびチオメルサール等;安定化二酸化塩素;ならびに四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
【0069】
なおもその他の組成物は、物理的安定性の強化またはその他を目的として1つまたは複数の界面活性剤を含む。好適な非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えばポリオキシエチレン(60)水素化ひまし油;ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。
【0070】
なおもその他の組成物は、必要な場合には、化学安定性を強化するための1つまたは複数の酸化防止剤を含む。好適な酸化防止剤には、例として、アスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムが含まれる。
【0071】
ある特定の実施形態では、水性懸濁組成物は、単回用量の再閉鎖不能な容器内にパッケージングされる。あるいは、複数用量の再閉鎖可能な容器が使用され、この場合、組成物中に防腐剤を含むのが一般的である。
【0072】
代替的実施形態では、疎水性医薬化合物用のその他の送達システムが採用される。リポソームおよびエマルジョンは、本明細書において有用な送達ビヒクルまたは担体の例である。ある特定の実施形態では、有機溶媒、例えばN-メチルピロリドン等も採用される。追加の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、徐放システム、例えば治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックス等を使用して送達される。様々な徐放性材料が本明細書において有用である。一部の実施形態では、徐放性カプセルが、数週間から最大100日にわたり化合物を放出する。治療用試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質を安定化させるための追加の戦略が採用される。
【0073】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、1つまたは複数の酸化防止剤、金属キレート剤、チオール含有化合物、および/またはその他の一般的な安定化剤を含む。そのような安定化剤の例として、(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)約0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ポリ硫酸ペントサンおよびその他のヘパリン類似物質、(m)二価陽イオン、例えばマグネシウムおよび亜鉛等;または(n)その組合せが挙げられる。
【0074】
一部の実施形態では、医薬組成物に提供される式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、約100%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、約0.01%、約0.009%、約0.008%、約0.007%、約0.006%、約0.005%、約0.004%、約0.003%、約0.002%、約0.001%、約0.0009%、約0.0008%、約0.0007%、約0.0006%、約0.0005%、約0.0004%、約0.0003%、約0.0002%、または約0.0001%(w/w、w/v、またはv/v)未満である。
【0075】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、およそ0.0001%~およそ50%、およそ0.001%~およそ40%、およそ0.01%~およそ30%、およそ0.02%~およそ29%、およそ0.03%~およそ28%、およそ0.04%~およそ27%、およそ0.05%~およそ26%、およそ0.06%~およそ25%、およそ0.07%~およそ24%、およそ0.08%~およそ23%、およそ0.09%~およそ22%、およそ0.1%~およそ21%、およそ0.2%~およそ20%、およそ0.3%~およそ19%、およそ0.4%~およそ18%、およそ0.5%~およそ17%、およそ0.6%~およそ16%、およそ0.7%~およそ15%、およそ0.8%~およそ14%、およそ0.9%~およそ12%、およそ1%~およそ10%(w/w、w/v、またはv/v)の範囲内である。
【0076】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、およそ0.001%~およそ10%、およそ0.01%~およそ5%、およそ0.02%~およそ4.5%、およそ0.03%~およそ4%、およそ0.04%~およそ3.5%、およそ0.05%~およそ3%、およそ0.06%~およそ2.5%、およそ0.07%~およそ2%、およそ0.08%~およそ1.5%、およそ0.09%~およそ1%、およそ0.1%~およそ0.9%(w/w、w/v、またはv/v)の範囲内である。
【0077】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の量は、約10g、約9.5g、約9.0g、約8.5g、約8.0g、約7.5g、約7.0g、約6.5g、約6.0g、約5.5g、約5.0g、約4.5g、約4.0g、約3.5g、約3.0g、約2.5g、約2.0g、約1.5g、約1.0g、約0.95g、約0.9g、約0.85g、約0.8g、約0.75g、約0.7g、約0.65g、約0.6g、約0.55g、約0.5g、約0.45g、約0.4g、約0.35g、約0.3g、約0.25g、約0.2g、約0.15g、約0.1g、約0.09g、約0.08g、約0.07g、約0.06g、約0.05g、約0.04g、約0.03g、約0.02g、約0.01g、約0.009g、約0.008g、約0.007g、約0.006g、約0.005g、約0.004g、約0.003g、約0.002g、約0.001g、約0.0009g、約0.0008g、約0.0007g、約0.0006g、約0.0005g、約0.0004g、約0.0003g、約0.0002g、もしくは約0.0001gに等しい、またはそれ未満である。
【0078】
方法
本明細書で開示されるある特定の方法は、事前に決定された変異を有する被験体を処置する方法、および/または処置レジメンを選択する方法、および遺伝的変異プロファイルに基づく処置方法を提供する。つまり、本開示は、処置レジメンを選択する方法および処置方法を提供する。
【0079】
本発明の第1の実施形態は、血液のがんを処置する方法であって、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する有効量の治療剤を、FLT3変異を含む事前に決定された遺伝子プロファイルを有する被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0080】
そのような遺伝子プロファイルは、任意の適切な方法(例えば、マイクロアレイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)など)で生成され得る。
【0081】
第1の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、試料中に存在する細胞の少なくとも1つのサブセット(例えば、血液試料細胞または骨髄初代芽球細胞などの、細胞の少なくとも0.1%または少なくとも1%)に存在する。
【0082】
第1の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異である。ITD変異は、FLT3の膜近傍ドメイン内のいずれのタンデム重複であってもよい。
【0083】
第1の実施形態のある特定の態様では、活性化FLT3変異は、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異である。特定の実施形態では、TKD変異は、FLT835変異、例えば、D835H、D835V、またはD835Yである。特定の実施形態では、TKD変異は、FLT3 691変異、例えば、F691Lを含む。
【0084】
第1の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、ITD変異およびTKD変異、例えば、ITD-835H、ITD-835V、ITD-D835Y、またはITD-F691Lである。
【0085】
方法は、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤を投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、治療剤は、パクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグもしくはN-オキシドである。特定の実施形態では、治療剤は、パクリチニブのクエン酸塩またはマレイン酸塩である。
【0086】
第1の実施形態のある特定の態様は、有効量のパクリチニブを投与するステップを含む。パクリチニブは、広い投薬量範囲にわたって有効であり得る。ある特定の実施形態では、有効量は、0.01~2000mg、1日当たり1~1000mg、1日当たり50~500mg、または1日当たり200~400mgの範囲である。特定の実施形態では、有効量は、1日当たり約50mg~1日当たり約500mgの間の範囲であり、または1日当たり約200mgである。様々な実施形態では、有効量は、1日当たり50、100、150、200、250、300、350、400、450または500mgである。特定の実施形態では、有効量は、1日当たり約200mgである。特定の実施形態では、有効量は、1日当たり約400mgである。
【0087】
第1の実施形態の一部の態様は、相乗的または相加的治療効果を提供するために1つまたは複数のさらなる治療剤、例えば、化学療法剤、治療用抗体、および放射線処置を投与するステップを含む。
【0088】
第1の実施形態のある特定の態様は、有効量の1つまたは複数の化学療法剤を投与するステップを含む。多くの化学療法剤が当技術分野において現在公知であり、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤と組み合わせてそれらを使用することができる。一部の実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬(例えば、ヌクレオシドアナログ)、挿入剤、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質、抗ホルモン薬、血管新生阻害剤、低メチル化剤、および抗アンドロゲン薬からなる群より選択される。
【0089】
JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤と組み合わせて第1の実施形態の態様で使用することができる治療剤の非限定的な例は、化学療法剤、細胞傷害剤、および非ペプチド小分子、例えば、Gleevec(登録商標)(イマチニブメシル酸塩)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、カソデックス(ビカルタミド)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)およびアドリアマイシン、ならびに多くの化学療法剤である。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパおよびウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(登録商標)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;副腎皮質ホルモン合成阻害薬(anti-adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.RTM.;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0090】
第1の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む。他の実施形態では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、ヌクレオシドアナログおよび挿入剤を含む。
【0091】
ヌクレオシドアナログは、DNAまたはRNA合成を妨げることにより機能し、プリンアナログおよびピリミジンアナログを含む。実施形態では、ヌクレオシドアナログは、プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンであることもあり、またはピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン(例えば、Ara-C)、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビンもしくはフロクスウリジンであることもある。特定の実施形態では、ヌクレオシドアナログは、シタラビンを含む。
【0092】
挿入剤は、DNAの塩基対同士を結合することができる分子である。実施形態では、挿入剤は、ドキソルビシン、ダウノルビシン(ダウノマイシンとしても公知)、またはダクチノマイシンである。特定の実施形態では、挿入剤は、ダウノルビシンである。
【0093】
第1の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、低メチル化剤を含む。低メチル化剤は、例えばDNAメチルトランスフェラーゼを阻害することにより、DNAメチル化を阻害する分子である。特定の実施形態では、低メチル化剤は、デシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても公知)またはアザシチジンを含む。デシタビンは、例えば、再発性もしくは不応性のAMLを有する患者に、および/またはより強力な治療レジメンに不適格である患者に投与することができる。例えば、28日処置サイクルの第1~10日目に、24時間ごとに4回、20mg/m2で、デシタビンを投与することができる。
【0094】
1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて使用される場合、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤は、第2の薬剤と同時にまたは別々に投与される。組み合わせてのこの投与は、2つの薬剤の同じ剤形での同時投与、別々の剤形での同時投与、および別々の投与を含むことができる。一部の実施形態では、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤、ならびに上記の薬剤のいずれか(例えば、シタラビン、ダウノルビシンおよび/またはデシタビン)を同時に投与することができ、両方の薬剤は別々の製剤中に存在する。別の代替形態では、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤を投与した直後に、上記の薬剤のいずれかを投与することができ、または逆でもよい。この別々の投与プロトコールの一部の実施形態では、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤、ならびに上記の薬剤のいずれかは、数分空けて、または数時間空けて、数日空けて投与される。
【0095】
本明細書に記載の第1の実施形態のある特定の態様は、血液のがん、例えば、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫を処置するステップを含み得る。一部の特定の実施形態では、血液のがんは、CLL、SLL、または両方である。一部の特定の実施形態では、血液のがんは、急性骨髄性白血病(AML)である。特定の実施形態では、AMLは、新たに診断されたAMLであることもあり、または再発性もしくは不応性のAML(すなわち、最初の処置後に寛解にならないAML)であることもある。ある特定の特別な実施形態では、急性骨髄性白血病は、再発性または不応性の急性骨髄性白血病である。
【0096】
本発明の第2の実施形態は、急性骨髄性白血病を処置する方法であって、有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドを、FLT3内に事前に決定された変異を有する被験体に投与するステップを含み、変異が、(i)遺伝子内タンデム重複(ITD)変異、および/またはチロシンキナーゼドメイン(TKD)変異を含む、方法を提供する。
【0097】
事前に決定された変異は、任意の適切な方法(例えば、マイクロアレイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)など)を使用して被験体からの試料をアッセイすることにより同定することができる。ある特定の実施形態では、事前に決定された変異は、処置前の被験体から採取された試料において同定される。
【0098】
第2の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、試料中に存在する細胞の少なくとも1つのサブセット(例えば、血液試料細胞または骨髄初代芽球細胞などの、細胞の少なくとも0.1%または少なくとも1%)に存在する。
【0099】
第2の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異である。ITD変異は、FLT3の膜近傍ドメイン内のいずれのタンデム重複であってもよい。
【0100】
第2の実施形態のある特定の態様では、活性化FLT3変異は、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異である。特定の実施形態では、TKD変異は、FLT835変異、例えば、D835H、D835V、またはD835Yである。特定の実施形態では、TKD変異は、FLT3 691変異、例えば、F691Lを含む。
【0101】
第2の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、ITD変異およびTKD変異、例えば、ITD-835H、ITD-835V、ITD-D835Y、またはITD-F691Lである。
【0102】
第2の実施形態の態様は、パクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドを投与するステップを含み得る。特定の実施形態では、薬学的に許容される塩は、クエン酸塩またはマレイン酸塩である。
【0103】
第2の実施形態のある特定の態様は、有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドを投与するステップを含む。パクリチニブは、広い投薬量範囲にわたって有効であり得る。ある特定の実施形態では、有効量は、0.01~2000mg、1日当たり1~1000mg、1日当たり50~500mg、または1日当たり200~400mgの範囲である。特定の実施形態では、有効量は、1日当たり約50mg~1日当たり約500mgの間の範囲であり、または1日当たり約200mgである。様々な実施形態では、有効量は、1日当たり50、100、150、200、250、300、350、400、450または500mgである。
【0104】
第2の実施形態の一部の態様は、相乗的または相加的治療効果を提供するために1つまたは複数のさらなる治療剤、例えば、化学療法剤、治療用抗体、および放射線処置を投与するステップを含む方法を提供する。
【0105】
第2の実施形態のある特定の態様は、有効量の1つまたは複数の化学療法剤を投与するステップをさらに含む。多くの化学療法剤が当技術分野において現在公知であり、またパクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、またはN-オキシドと組み合わせて使用可能である。一部の実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬(例えば、ヌクレオシドアナログ)、挿入剤、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾因子、抗ホルモン剤、血管新生阻害剤、低メチル化剤、および抗アンドロゲンからなる群より選択される。
【0106】
パクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、またはN-オキシドと組み合わせて、第2の実施形態の一部の態様で使用することができる化学療法剤の非限定的な例は、化学療法剤、細胞傷害剤、および非ペプチド小分子、例えばGleevec(登録商標)(イマチニブメシル酸塩)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、カソデックス(ビカルタミド)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)およびアドリアマイシン、ならびに多くの化学療法剤である。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパおよびウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルメラミン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(登録商標)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;副腎皮質ホルモン合成阻害薬、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.RTM.;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0107】
第2の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む。その他の実施形態では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、ヌクレオシドアナログおよび挿入剤を含む。複数の実施形態において、ヌクレオシドアナログは、プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等;またはピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン(例えば、Ara-C)、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、またはフロクスウリジン等であり得る。特定の実施形態では、ヌクレオシドアナログはシタラビンを含む。
【0108】
第2の実施形態の複数の態様において、挿入剤は、ドキソルビシン、ダウノルビシン(ダウノマイシンとしても公知)、またはダクチノマイシンである。特定の実施形態では、挿入剤はダウノルビシンである。
【0109】
第2の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、低メチル化剤を含む。特定の実施形態では、低メチル化剤は、デシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても公知)またはアザシチジンを含む。デシタビンは、例えば再発性もしくは不応性のAMLを有する患者、および/またはより強力な治療レジメンに対して不適格である患者に対して投与され得る。デシタビンは、例えば20mg/m2において、24時間毎に4回、28日処置サイクルの1~10日目に投与され得る。
【0110】
1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて使用されるとき、第2の実施形態の複数の態様において、パクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドが、第2の薬剤と同時または別個に投与される。この併用投与は、同一剤形での2つの薬剤の同時投与、別々の剤形での同時投与、および別々の投与を含み得る。一部の実施形態では、パクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシド、および上記薬剤(例えば、シタラビン、ダウノルビシン、および/またはデシタビン)のいずれかは同時に投与可能であり、その場合、両薬剤は別々の製剤中に存在する。別の代替的形態では、パクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドを投与した直後に上記薬剤のいずれかを投与することができ、または逆でもよい。別々の投与プロトコールの一部の実施形態では、パクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシド、および上記薬剤のいずれかは、数分間の間隔、または数時間の間隔、または数日間の間隔を置いて投与される。
【0111】
本明細書に記載される第2の実施形態の複数の態様は、急性骨髄性白血病(AML)を処置するステップを含み得る。特別な実施形態では、AMLは、新たに診断されたAML、または再発性もしくは不応性のAML(すなわち、最初の処置後に寛解にならないAML)であり得る。ある特定の特別な実施形態では、急性骨髄性白血病は、再発性または不応性の急性骨髄性白血病である。
【0112】
本発明の第3の実施形態は、血液のがんについて処置を必要とする被験体のために処置レジメンを選択する方法であって、(i)FLT3変異を含む、被験体に関する遺伝子プロファイルを受け取るステップと、(ii)ヤヌスキナーゼ2(JAK2)およびfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)に対して阻害活性を有する治療剤を含む処置レジメンを、遺伝子プロファイルに基づき選択するステップとを含む方法を提供する。
【0113】
そのような遺伝子プロファイルは、任意の適する方式で生成され得る(例えば、マイクロアレイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)等)。
【0114】
第3の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異である。ITD変異は、FLT3の膜近傍ドメイン内の任意のタンデム重複であり得る。
【0115】
第3の実施形態のある特定の態様では、活性化FLT3変異は、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異である。特定の実施形態では、TKD変異は、FLT835変異、例えばD835H、D835V、またはD835Y等である。特定の実施形態では、TKD変異は、FLT3 691変異、例えばF691L等を含む。
【0116】
第3の実施形態のある特定の態様では、FLT3変異は、ITD変異およびTKD変異を含む。特定の実施形態では、FLT3変異は、ITD-835H、ITD-835V、ITD-D835Y、またはITD-F691Lを含む。
【0117】
第3の実施形態の複数の態様における処置レジメンは、JAK2およびFLT3に対して阻害活性を有する治療剤を含み得る。ある特定の実施形態では、治療剤は、パクリチニブまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドである。特定の実施形態では、薬学的に許容される塩は、クエン酸塩またはマレイン酸塩である。
【0118】
第3の実施形態のある特定の態様では、処置レジメンは、有効量の治療剤、例えばパクリチニブを投与するステップを含む。パクリチニブは、幅広い投薬量範囲にわたり有効であり得る。ある特定の実施形態では、有効量は、0.01~2000mg、1日当たり1~1000mg、1日当たり50~500mg、または1日当たり200~400mgの範囲である。特定の実施形態では、有効量は、1日当たり約50mg~1日当たり約500mgの範囲であり、または1日当たり約200mgである。様々な実施形態では、有効量は、1日当たり50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mgである。
【0119】
第3の実施形態の一部の態様では、処置レジメンは、相乗的または相加的治療効果を提供するために、JAK2およびFLT3に対して阻害活性を有する治療剤、ならびに1つまたは複数のさらなる治療剤、例えば化学療法剤、治療抗体等、および放射線処置を含む。
【0120】
第3の実施形態のある特定の態様は、処置レジメンは、JAK2およびFLT3に対して阻害活性を有する治療剤、ならびに1つまたは複数の化学療法剤を投与するステップを含む。多くの化学療法剤が、当技術分野において現在公知であり、またJAK2およびFLT3に対して阻害活性を有する治療剤と組み合わせて使用可能である。一部の実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬(例えば、ヌクレオシドアナログ)、挿入剤、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾因子、抗ホルモン剤、血管新生阻害剤、低メチル化剤、および抗アンドロゲンからなる群より選択される。
【0121】
JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤と組み合わせて第3の実施形態の態様で使用することができる治療剤の非限定的な例は、化学療法剤、細胞傷害剤、および非ペプチド小分子、例えば、Gleevec(登録商標)(イマチニブメシル酸塩)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、カソデックス(ビカルタミド)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)およびアドリアマイシン、ならびに多くの化学療法剤である。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパおよびウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルメラミン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(登録商標)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;副腎皮質ホルモン合成阻害薬、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.RTM.;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0122】
第3の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む。複数の実施形態では、ヌクレオシドアナログは、プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等;またはピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン(例えば、Ara-C)、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、またはフロクスウリジン等であり得る。特定の実施形態では、ヌクレオシドアナログはシタラビンを含む。
【0123】
第3の実施形態の複数の態様において、挿入剤は、ドキソルビシン、ダウノルビシン(ダウノマイシンとしても公知)、またはダクチノマイシンである。特定の実施形態では、挿入剤はダウノルビシンである。
【0124】
第3の実施形態のその他の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、ヌクレオシドアナログまたは挿入剤を含む。例えば、シタラビンおよびダウノルビシンを用いた処置は、AMLに対する一般的な化学療法レジメンである。特定の実施形態では、シタラビンおよびダウノルビシンは、「7+3」(または「3+7」)レジメンとして投与される。「7+3」レジメンの場合、ダウノルビシンは、ドキソルビシン、イダルビシン、またはミトキサントロンに置き換えられ得る。「7+3」レジメンの場合、ダウノルビシンは、例えば60mg/m2において、24時間毎に4回、21日処置サイクルの1~3日目に投与され得、シタラビンは、例えば100g/m2において、24時間毎に4回、21日処置サイクルの1~7日目に投与され得る。
【0125】
第3の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、FLT3が変異したがん細胞に対して活性を有するさらなる治療剤を含む。特定の実施形態では、さらなる治療剤はミドスタウリンを含む。
【0126】
第3の実施形態の一部の態様では、1つまたは複数のさらなる治療剤は、低メチル化剤を含む。特定の実施形態では、低メチル化剤は、デシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても公知)またはアザシチジンを含む。デシタビンは、例えば再発性もしくは不応性のAMLを有する患者、および/またはより強力な治療レジメンに対して不適格である患者に対して投与され得る。デシタビンは、例えば、20mg/m2において、24時間毎に4回、28日処置サイクルの1~10日目に投与され得る。
【0127】
1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて使用される場合、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤は、第2の薬剤と同時にまたは別々に投与される。組み合わせてのこの投与は、2つの薬剤の同じ剤形での同時投与、別々の剤形での同時投与、および別々の投与を含むことができる。一部の実施形態では、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤、ならびに上記の薬剤のいずれか(例えば、シタラビン、ダウノルビシンおよび/またはデシタビン)を同時に投与することができ、両方の薬剤は別々の製剤中に存在する。別の代替形態では、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤を投与した直後に、上記の薬剤のいずれかを投与することができ、または逆でもよい。この別々の投与プロトコールの一部の実施形態では、JAK2およびFLT3に対する阻害活性を有する治療剤、ならびに上記の薬剤のいずれかは、数分空けて、または数時間空けて、数日空けて投与される。
【0128】
本明細書に記載される第3の実施形態の複数の態様は、血液のがん、例えば多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫等を処置するステップを含み得る。一部の特別な実施形態では、血液のがんは、CLL、SLL、またはその両方である。一部の特別な実施形態では、血液のがんは、急性骨髄性白血病(AML)である。特定の実施形態では、AMLは、新たに診断されたAML、または再発性もしくは不応性のAML(すなわち、最初の処置後に寛解にならないAML)であり得る。ある特定の特別な実施形態では、急性骨髄性白血病は、再発性または不応性の急性骨髄性白血病である。
【0129】
本発明の第4の実施形態は、細胞を、有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドと接触させるステップを含む、FLT3変異を有する細胞においてFLT3活性を阻害する方法を提供する。
【0130】
そのような遺伝子プロファイルは、任意の適する方式で生成され得る(例えば、マイクロアレイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)等)。
【0131】
第4の実施形態の一部の態様では、FLT3変異は、遺伝子内タンデム重複(ITD)変異を含む。ITD変異は、FLT3の膜近傍ドメイン内の任意のタンデム重複であり得る。一部の実施形態では、FLT3変異は、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異を含む。一部の特別な実施形態では、FLT3変異は、ITD変異およびTKD変異を含む。特定の実施形態では、FLT3変異は、ITD、D835H、D835V、D835Y、ITD-835H、ITD-835V、ITD-D835Y、またはITD-F691Lである。
【0132】
細胞を、有効量のパクリチニブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはN-オキシドと接触させるステップは、in vitroまたはin vivoで実施され得る。
【0133】
第4の実施形態の一部の態様では、FLT3変異を有する細胞においてFLT3活性を阻害するパクリチニブの有効量は、約10nM~1,000nM、約50nM~約800nM、または約100nM~約500nMである。
【0134】
第4の実施形態の複数の態様において、パクリチニブは、500nM未満、400nM未満、300nM未満、200nM未満、100nM未満、または50nM未満のIC50値で、FLT3変異を有する細胞においてFLT3活性を阻害し得る。
【0135】
第4の実施形態の複数の態様では、パクリチニブは、100nM未満、50nM未満、または20nM未満の結合親和性(Kdとして表される)で、変異したFLT3と結合し得る。
【0136】
第4の実施形態の一部の態様では、細胞は造血細胞である。特定の実施形態では、細胞は、急性骨髄性白血病細胞である。
【0137】
第4の実施形態の一部の態様では、FLT3活性を阻害することで、抗がん効果がもたらされる。抗がん効果を引き起こす薬剤は、例えばがん細胞に対して増殖の低下または細胞毒性の低下を選択的に引き起こすことができるが、健康な非がん性細胞では引き起こさない。抗がん効果は、例えば、細胞を有効量の化合物と接触させた後、がん細胞数の統計的に有意な低下(例えば、少なくとも20%の低下、少なくとも25%の低下、少なくとも30%の低下、少なくとも35%の低下、少なくとも40%の低下、少なくとも45%の低下、または少なくとも50%の低下)であり得るが、非がん細胞においてはより少ない低下(または無低下)であり得る。非がん細胞は、対照細胞に関連する種類、例えば非がん性骨髄細胞等であり得る。
【0138】
下記に提供される実施例は、FLT3の変異を有する被験体または細胞を処置するためにパクリチニブなどの式(I)の化合物を使用する方法をさらに例証し、例示する。本開示の範囲は、いかなる点においても以下の実施例の範囲により限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0139】
(実施例1)
急性骨髄性白血病およびFLT3変異を有する患者におけるパクリチニブおよび化学療法の研究
これは、FLT3変異(ITDまたはTKD)を有する成人AML患者におけるパクリチニブおよび化学療法を評価する研究である。患者試料をFLT3変異(ITDおよび/またはTKD)の存在についてスクリーニングする。FLT3変異(ITDおよび/またはTKD)を有する成人AML患者を以下のような2つの異なるコホートに入れる:
・コホートA:パクリチニブとシタラビンおよびダウノルビシン(「7+3」)を使用する強力な療法の組み合わせを受ける、FLT3変異を有する適合未処置AML患者(>18歳、コア結合因子陰性)。
・コホートB:パクリチニブとデシタビンを用いるより低強度の療法の組み合わせを受ける、AML未処置であり、FLT3変異を有する、医師の意見により強力な化学療法の候補と見なされない>60歳の不適合患者、またはFLT3変異および再発性もしくは不応性の疾患を有する任意のAML患者。
【0140】
処置計画
コホートA:強力な療法および≧18歳に適合する未処置AML患者に対してパクリチニブとシタラビンおよびダウノルビシン(7+3)
コホートB:強力な療法に不適合である>60歳の未処置AML患者または再発性もしくは不応性の疾患を有するAML患者に対してパクリチニブとデシタビン
【0141】
AML未処置であり、FLT3変異が存在する、≧18歳の患者は、コホートAのみに登録することができる。強力な化学療法の候補でない>60歳の未処置AML患者および再発性または不応性のFLT3変異AMLを有する患者は、コホートBに登録することができる。続発性AMLまたは治療関連疾患(t-AML)を有する患者は、適格である。
【0142】
薬物投与。パクリチニブを、本体が灰色でキャップが赤色のサイズ#0硬ゼラチンカプセルとして経口投与用に調製する。カプセルは、100mgパクリチニブ(遊離塩基)と次の不活性成分を含有する:微結晶性セルロースNF、ポリエチレングリコール8000(PEG8000)NF、およびステアリン酸マグネシウムNF。カプセルゼラチンは、ウシ由来のものとなる。
【0143】
コホートAには入院患者として、およびコホートBには主治医の判断に従って入院患者または外来患者として、処置を投与する。
【0144】
コホートA:強力な療法および≧18歳に適合する未処置AML患者に対してパクリチニブとシタラビンおよびダウノルビシン(7+3)。
【表1】
【0145】
コホートAの患者には、1日当たり200mg、1日当たり300mg、または1日当たり400mgのいずれかの経口用量で28日導入サイクルの1日目から4日目までおよび8日目から21日目までパクリチニブを、100g/m2の用量で28日導入サイクルの5日目から11日目まで24時間ごとに静脈内シタラビンを、および60mg/m2の用量で28日導入サイクルの5日目から7日目まで24時間ごとに静脈内ダウノルビシンを投与する。
【0146】
パクリチニブ処置の初日、パクリチニブの2回目(例えば、夕方)用量を保留して24時間血漿PK研究を行う。1日2回パクリチニブ投与は、2日目に開始する。骨髄吸引および生検を計数回復(count recovery)(ANC>1000/μL、血小板>100,000/μL)時に、または35日目までに(どちらか早い方の時点)、行う。患者は、1~7日目にシタラビン、1~3日目にダウノルビシン、および4~25日目にパクリチニブ(200mg/日)を投与されるが、持続性疾患を有する患者は、上記と同じ用量で第2の導入サイクルを投与されてもよい。2導入後に完全寛解(CR)を達成する患者またはCRを達成することができない患者は研究から除外し、示されるように地固め/救助化学療法を受ける。
【0147】
コホートAのモニタリングおよび疾患奏効の評価:処置の前に、および計数回復(ANC>1,000/μL、血小板数≧100,000/μL)時にまたは35日目までに(どちらか早い方の時点)、骨髄(BM)吸引および生検を行う必要がある。CR/CRiを達成する患者を、適格な場合、主治医の自由裁量で同種造血幹細胞移植または追加の化学療法コース(高用量シタラビン)のために評価する。
【0148】
コホートB:強力な療法に不適合である>60歳の未処置AML患者または再発性もしくは不応性の疾患を有するAML患者に対してパクリチニブとデシタビン。
【表2】
【0149】
コホートBの患者には、1日当たり200mg、1日当たり300mgまたは1日当たり400mgのいずれかの用量で第1の28日導入サイクルの1日目から21日目までパクリチニブを、および20mg/m2の用量で第1の28日導入サイクルの5日目から14日まで24時間ごとにデシタビンの連続静脈内注入を受ける。
【0150】
導入サイクル2~4(必要に応じて):患者は、28日サイクルを最大4サイクルまで受けることができる。導入サイクル2~4の用量は、第1の導入と同じとなるが、しかしながら、両方の薬物がサイクル2~4の1日目に一緒に始まる(パクリチニブ単独での4日導入期(lead-in phase)がない)。
【0151】
維持(骨髄中で検出される芽球<5%):CRを達成する患者は、移植評価を進める(適切な場合)。移植不適格患者には1~5日目に毎日1時間にわたってのデシタビン20mg/m2 IVおよび1~21日目にパクリチニブという維持コースを受ける。疾患進行まで、またはさらなる治療の中止を正当化する許容し難い毒性の発生まで、サイクルを28日ごとに繰り返す。デシタビンの後続のサイクルは、骨髄抑制に基づいて用量を4または3日のデシタビン/サイクルに低減させることができる。寛解を維持する患者の場合、パクリチニブを最大で2年間まで継続することができる。
【0152】
コホートBのモニタリングおよび疾患奏効の評価:導入および維持のサイクルを4週間(28日)と定義する。処置が2週間を超えて遅れた場合、患者が末梢血中に循環芽球を有さない限り、反復した骨髄(BM)吸引および生検を行う必要がある。処置の前に、および計数回復(ANC>1,000/μL、血小板数≧100,000/μL)時にまたは32日目までに(導入サイクル1のみ)、骨髄(BM)吸引および生検を行う必要がある。導入サイクル2から4までについては、各サイクルの終了時に末梢血中に循環芽球がある患者にはBM吸引および生検を行う必要がないが、汎血球減少を有し、芽球のない患者は、奏効について評価するべきである。維持中には、主治医の自由裁量で骨髄抑制または疾患再発の証拠がある患者にのみBM検査を指示する。
【0153】
処置は、1~2サイクルの導入療法(コホートA)または最大4サイクルまでの導入サイクル(コホートB)からなる。コホートBの患者は、寛解を達成した後、疾患奏効を喪失するまで、維持療法を継続する。
【0154】
処置サイクル中およびその後、患者を疾患奏効について評価する。
【0155】
疾患奏効評価基準:
形態学的完全寛解(形態学的CR)
形態学的CRは、以下の全てを必要とする:
・骨髄吸引物中の芽球<5%。
・好中球>1,000/μL。
・血小板>100,000/μL。
・髄外疾患なし。
・アウエル小体を有する芽球の検出なし。
・循環芽球なし(稀は許容され得る)/フローサイトメトリーにより処置前芽球表現型の証拠(すなわち、CD34、CD7共発現)なし。
【0156】
形態学的な白血病のない状態(MLFS)
MLFSは、以下の全てを必要とする:
・骨髄小片および少なくとも200の有核細胞数を有する骨髄吸引物試料中の芽球<5%
・アウエル小体の存続を伴う芽球なし
・髄外疾患なし。
【0157】
細胞遺伝学的完全寛解(CRc)
CRcは、以下の全てを必要とする:
・骨髄吸引物中の芽球<5%。
・好中球>1,000/μL。
・血小板>100,000/μL。
・髄外疾患なし。
・アウエル小体を有する芽球の検出なし。
・循環芽球なし(稀は許容され得る)/フローサイトメトリーにより処置前芽球表現型の証拠(すなわち、CD34、CD7共発現)なし。
・正常核型への復帰
【0158】
血球数の回復が不完全な形態学的CR(CRi)
CRiは、以下の全てを必要とする:
・骨髄吸引物中の芽球<5%。
・好中球<1,000/μL。
・血小板<100,000/μL。
・髄外疾患なし。
・アウエル小体を有する芽球の検出なし。
・循環芽球なし(稀は許容され得る)/フローサイトメトリーにより処置前芽球表現型の証拠(すなわち、CD34、CD7共発現)なし。
【0159】
部分寛解(PR)
PRは、以下の全てを必要とする:
・BM芽球を除くCRの全ての基準を満たす
・5~25%の範囲に至る骨髄吸引物中の芽球の50%を超える減少を有さなければならない。
・好中球>1,000/μL。
・血小板>100,000/μL。
・髄外疾患なし。
【0160】
進行性疾患(PD)
PRは、以下の全てを必要とする:
・少なくとも50%のレベルに至る骨髄芽球の>50%増加および/または少なくとも50%のレベルに至る末梢血芽球のパーセンテージ倍増の存在。
【0161】
安定病態(SD):CRの基準も、CRiの基準も、PRの基準も、疾患進行の基準も満たさない
【0162】
(実施例2)
FLT3変異細胞に対するパクリチニブの前臨床活性
前臨床研究のために、KdELECTアッセイを使用して、FLT3野生型、ITD、ならびに残基F691およびD835におけるTKD変異体キナーゼに対する薬物結合親和性を評価した。薬物およびDMSO対照を0.003~30,000nMの濃度範囲で試験した。ヒルの式と、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムでの非線形二乗当てはめ(non-linear square fit)とを使用して、標準用量反応曲線を用いて、結合定数(Kd)を計算した。
図1は、様々なFLT3バリアントに対するパクリチニブの結合親和性を示す。Kdとして表されているFLT3野生型および全てのFLT3変異体に対する結合親和性は、FLT3 WT(1.9nM)、ITD(8.2nM)、D835H(14nM)、D835V(0.87nM)、D835Y(8.5nM)、ITD/D835Y(0.69nM)、およびITD/F691L(17nM)であった。
【0163】
HotSpotキナーゼアッセイを使用して、ITDおよびD835Y変異体FLT3に対するキナーゼ阻害活性を評価した。薬物および対照を2.5~50,000nMの濃度範囲で試験した。DMSO対照を基準にして酵素的活性を測定し、標準的な用量応答とヒルの式を使用してIC
50を計算した。キナーゼアッセイでは、パクリチニブは、FLT3 ITDおよびD835Yをそれぞれ9nMおよび3.1nMのIC
50値で阻害した(
図2を参照されたい)。
【0164】
成長阻害に対するパクリチニブの効果を、FLT3-ITDおよびTKD変異体をトランスフェクトしたマウスインターロイキン-3依存性プロB細胞であるBa/F3である、FLT3-ITD
+AML細胞系(MOLM13およびMV4-11)およびFLT3-ITD/D835Y AML細胞(MOLM13-Res)において、薬物処置の72時間後に評価した。MOLM13は、FLT3の膜近傍ドメインに21塩基対遺伝子内タンデム重複を有し、MV4-11は、FLT3の膜近傍ドメインに30塩基対遺伝子内タンデム重複を有する(Carson et al., Blood 2013 122:1382)。パクリチニブについての、ベクター対照(VC)または異なるFLT3変異体をトランスフェクトしたBa/F3細胞における活性、ならびに3つのFLT3-ITD
+AML細胞系におけるパクリチニブおよびミドスタウリンについての活性を、Zimmerman, E.I., et al. Blood 122, 3607-3615 (2013);およびJarusiewicz, J.A., et al. ACS Omega 2, 1985-2009 (2017)に以前に記載されたようなMTTアッセイ(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)を使用して評価した。結果は、各濃度(3~6反復で行った)でDMSO処置対照細胞に対する平均パーセンテージとして測定した。
図3に示すように、パクリチニブは、GPFをトランスフェクトしたBa/F3の生存率を阻害し(2つの独立した実験の平均IC
50、824nM)、活性は、次の異なるFLT3変異体を発現する全ての細胞に対して、より強かった:FLT3-ITD(133nM)、D835H(97nM)、D835Y(300nM)、ITD/D835H(306nM)、ITD/D835Y(434nM)、およびITD/F691L(291nM)。
図4に示すように、FLT3-ITD
+AML細胞系では、パクリチニブは、MOLM13、MOLM13-ResおよびMV4-11細胞においてそれぞれ73nM、173nMおよび33nMの平均IC
50値で活性を有した。
【0165】
次に、Ba/F3細胞におけるFLT3シグナル伝達の阻害をウェスタンブロット解析により決定した。細胞をパクリチニブまたはDMSOで4時間処置し、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を追加補充したRIPA緩衝液で溶解した。抗FLT3抗体(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)を用いて、一晩、免疫沈降を行った。翌日、Dynabeads(ThermoFisher、Waltham、MA)を添加し、4時間インキュベートした。次いで、製造業者の指示に従って試料を調製した。溶出溶解物または全細胞溶解物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、PVDF膜に転写し、その後、示されている一次抗体:FLT3、ホスホ-FLT3、STAT5、およびホスホ-STAT5(Cell Signaling Technologiy、Danvers、MA)を使用して、ウェスタンブロット解析を行った。
図5から分かるように、ITD/D835YまたはITD/F691L変異体を発現するパクリチニブ処置Ba/F3細胞からの溶解物のウェスタンブロット解析は、0.25~1uMでホスホ-FLT3およびホスホ-STAT5の阻害を示した。
【0166】
IDH2の変異は、一般に、AMLではFLT3変異と同時に発生する。それ故、IDH2およびFLT3変異を保有する細胞の生存率を試験した。AMLにおいて同時に発生する変異であるFLT3-ITD
+/-/IDH2-R140Q
+/-のダブルノックインを有するマウス初代白血病細胞では、パクリチニブは、8.7μMのIC
50値で細胞生存率を阻害し、一方、ミドスタウリンは、10.7μMのIC
50値を有した(
図6)。
【0167】
以前の報告により、パクリチニブは細胞系、初代細胞、および細胞系異種移植片においてデノボFLT3-ITD+AMLモデルに対して活性であることが示されている8。そのため、パクリチニブの抗白血病活性をFLT3-ITD+AMLの薬物耐性の様々なモデルにおいて評価した。結合およびキナーゼアッセイでは、パクリチニブは、FLT3-ITDと比較してFLT3 TKD変異体に対する活性を保持した。FLT3変異体タンパク質を発現するBa/F3細胞では、パクリチニブの感受性は、ITDまたはTKD変異体と二重ITD/TKD変異体との間で同様のままであり、ホスホ-FLT3、およびその下流媒介因子であるホスホSTAT5を阻害した。さらに、MOLM13-Res(ITD/D835Y+)AML細胞では、パクリチニブIC50値は、親MOLM13(ITD+)細胞におけるものと比較して大きなシフトを示さなかった。これは、TKD変異体を有するAML細胞において高度に耐性となる、II型FLT3阻害剤であるソラフェニブおよびキザルチニブとは対照的である。AML患者におけるFLT3-ITDと追加の変異の高頻度の同時発生を考えると、パクリチニブが、IDH2-R140Q変異とともにFLT3-ITDを保有するマウス初代白血病細胞に対してミドスタウリンと同様の活性を有したことは、強調するに値する。まとめると、パクリチニブのこのin vitro評価は、パクリチニブにはFLT3阻害剤耐性型のFLT3-ITD+AMLに対して活性を有するI型阻害剤特性があることを示す。加えて、これらの結果は、パクリチニブが、様々なTKD変異体などの様々なFLT3変異体を阻害することができることを示す。
【0168】
(実施例3)
FLT3-ITD+AMLにおけるパクリチニブおよび化学療法の臨床研究
第I相研究の概要。第I相研究では、パクリチニブの用量(100mg BIDまたは200mg BID)を3+3デザインに従って漸増させ、7+3レジメンでシタラビンおよびダウノルビシン(コホートA)を、または次のスケジュールでデシタビン(コホートB)を投与した:1~21日目にパクリチニブ、5~11日目にシタラビン、5~7日目にダウノルビシン、および5~14日目にデシタビン。患者5名をコホートAに登録し、患者8名をコホートBに登録した。パクリチニブ薬物動態研究のための血漿試料を1および21日目の処置前におよびパクリチニブ投与後1、2、3、5、24時間の時点で採取し、処置前試料を5日目に採取した。妥当性が確認されているLC/MS-MS生物分析アッセイを使用して、血漿中のパクリチニブを定量した。パクリチニブのex vivo感受性(N=4)、ならびにディープアンプリコンシークエンシングによるFLT3エクソン17およびエクソン20のTKD変異の解析(N=13)を、処置前骨髄初代芽球試料で行った。
【0169】
患者集団。未処置AML(急性前骨髄球性白血病を除く)の組織学的に確認された診断を有する>18歳の患者、またはFLT3変異の存在を伴う再発性もしくは不応性のAML(コホートBのみ)、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)ステータス<2、を有する患者は、登録に適格であった。患者は、ジルベール病に起因する場合を除いて2.0mg/dLまたはそれ未満の総ビリルビン、正常値の上限の2.5倍またはそれ未満のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ、コッククロフト・ゴールトによる50mL/分またはそれを超えるクレアチニンクリアランス、ニューヨーク心臓協会(NYHA)うっ血性心不全(CHF)クラスIIまたはそれより良好、ならびに50%またはそれを超える左室駆出率と定義された、適切な臓器機能を有さなければならなかった。共存疾病を呈する場合、患者の平均余命は、6カ月より長くなければならなかった。患者の人口統計およびベースライン特性を
図7に示す。
【0170】
除外基準は、(inv(16),t(8;21))を伴うコア結合因子AMLを有する患者;これらに限定されないが、症候性CHF、不安定狭心症、6カ月以内の心筋梗塞、管理されていない重症心室性不整脈、または急性虚血もしくは活動性の伝導系異常についての心電図の証拠を含む管理されていない併発疾患を有する患者;妊娠しているまたは授乳中の女性;450msより上のベースラインQTc、またはQTc間隔を延長する医薬を投与されている患者;処置の1週間前に強力なチトクロムP450 3A4(CYP3A4)阻害剤を投与された患者;および強力な併用CYP3A4誘導薬の使用を含んだ。追加の除外基準は、いずれかの他の治験薬を投与されているまたは他の治験薬を登録の14日以内に投与された患者;消化管の有意な低減または閉塞を有する患者;参加を妨げ得る重篤な医学的精神疾患を有する患者;研究に入る前2週間以内に化学療法または放射線療法または大手術を受けた患者;活動性中枢神経系悪性疾患を有する患者;血小板同種免疫の病歴を有する患者;治癒的に処置された基底細胞もしくは扁平上皮細胞皮膚がん、子宮頸部上皮内癌、前立腺特異抗原陰性の臓器限局性のもしくは処置された非転移性前立腺がん、外科的完全切除後の非浸潤性乳癌(in situ breast carcinoma)、または表在性移行細胞膀胱癌以外の、他の悪性疾患を過去3年以内に有した患者;およびカプセルまたは錠剤を嚥下することができない患者;既知の活動性HIVまたはA、BもしくはC型肝炎ウイルス感染を含んだ。
【0171】
処置計画。患者を2つのコホートの一方で並行して処置した(
図8)。強力な化学療法に適格であった適合患者をコホートAに割り当て、1~4日目および8~21日目にパクリチニブ、5~11日目にシタラビン100mg/m
2、ならびに5~7日目にダウノルビシン60mg/m
2を投与した。強力な療法に不適合と見なされた>60歳の患者および再発性/不応性の疾患を有する患者をコホートBに割り当てて、1~21日目にパクリチニブ、および5~14日目にデシタビン20mg/m
2を投与した。最初に、患者を1日2回パクリチニブ200mg(用量レベル1)で処置した。しかし、安全性の懸念から、パクリチニブは、アメリカ食品医薬品局により一時的に臨床試験が完全に差し止められた。臨床試験差し止め時に、患者2名はコホートBに登録済みであった。差し止めが解除され次第、研究デザインを標準3+3用量漸増デザインに変更するようにプロトコールを修正した。修正後、用量レベル1で処置する患者に1日当たりパクリチニブ200mg(1日2回経口で100mg)を投与した。用量レベル2の患者には1日当たり300mg(朝に200mgおよび夕方に100mg)を投与し、用量レベル3の患者には1日当たり400mg(1日2回200mg)のパクリチニブを投与した。処置は、1~2サイクルの導入療法(コホートA)または最大4サイクルまでの導入サイクル(コホートB)からなった。完全寛解(CR)を達成したコホートAの患者を、臨床医の自由裁量で造血幹細胞移植または追加の化学療法コースのために評価した。CRを達成したコホートBの患者は、適格であった場合、移植、またはデシタビンおよびパクリチニブの5日維持コースを進めることができた。血液および血液製剤、抗生物質ならびに制吐薬の輸注を適宜含む、十分な支持療法を、患者に施した。
【0172】
安全性評価。この研究は、毒性を特徴付けるために、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events version 4.03を利用した。用量制限毒性(DLT)を第1のコースで評価し、DLTは、脱毛症を除く、活動性白血病に起因しないあらゆるグレード≧3の非血液学的毒性;カテーテル関連静脈血栓症(line associated venous thrombosis);予想外に合併した骨髄抑制に起因しない感染;グレード3の疲労、食欲不振、便秘;経管栄養法も完全非経口栄養も入院も必要としないグレード3の悪心もしくは嘔吐;または5日以内にグレード1またはベースラインへと消散するグレード3またはそれより高度なトランスアミナーゼを含んだ。血液学的DLTは、骨髄中の芽球が<5%、骨髄異形成変化が非存在、および/または骨髄におけるフローサイトメトリーによる疾患の証拠が非存在である患者において、32日目までに好中球数を回復すること(ANC>500/μL)ができないことを含んだ。芽球>5%である患者については、これらをDLTと見なさなかった。臨床的に有意な出血があるグレード4血小板減少もDLTと見なした。最大耐用量(MTD)は、ある用量レベルの患者6名のうちの1名またはそれ未満がDLTを経験した用量レベルと定義した。
【0173】
患者特性。2014年12月~2017年1月の間に患者5名がコホートAに登録し、患者8名がコホートBに登録した。患者8名(62%)は、未処置AMLと新たに診断され、患者5名(38%)は、再発性/不応性のAMLを有した。臨床的奏効の評価は、Cheson, B.D., et al. J Clin Oncol 21, 4642-4649 (2003)で発表された国際ワーキンググループ基準に従って行った。処置に対する骨髄の反応は、形態学的研究およびフローサイトメトリー研究により評価した。
【0174】
変異解析。FLT3エクソン17およびエクソン20の変異の解析を、少し改良を加えた、Baker, S.D., et al. Clin Cancer Res 19, 5758-5768 (2013)により以前に記載されたディープアンプリコンシークエンシングにより行った。手短に述べると、FLT3エクソン17を、フォワードプライマー5’-TGAACGCAACAGCTTATGGA3’およびリバースプライマー5’-CCATGAAGCCCTGAGATTTG-3’(配列番号1)を使用してgDNAから増幅させた。FLT3エクソン20を、フォワードプライマー5’-TTCCATCACCGGTACCTCCTA-3’(配列番号2)およびリバースプライマー5’-CCTGAAGCTGCAGAAAAACC-3’(配列番号3)を使用して増幅させた。QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen)を使用してPCRアンプリコンを精製し、Invitrogen Quibit 3 FluorometerおよびQubit dsDNA BR Assay Kitを使用してDNA濃度を決定した。各エクソンからの0.1ng投入DNAを断片化し、アダプターでタグ付けし、Nextera XT DNA Sample Preparation Kitを製造業者の指示(Illumina)に従って使用してライブラリーを調製した。製造業者のプロトコールを使用してライブラリーを正規化し、プールし、次いで、150bpペアエンドリードでIllumina MiSeq System(Illumina)を用いてシークエンシングした。画像解析および塩基コールは、MiSeq Control Softwareバージョン1.5.15.1または2.2およびReal Time Analysisバージョン1.13.148または1.17.28を使用して行った。アダプター配列を除去した後、少なくとも50ヌクレオチドを有する高品質リード(Phred様スコアQ30またはそれより上)をヒトFLT3参照配列(UCSC hg19)とアラインメントした。CLC Genomics Workbench v11(CLCBio)を使用して変異を検出し、Integrative genomics(IVG;Broad Institute)を使用して変異の頻度を決定した。対応する置換を有する低頻度対立遺伝子の検出についてのプラットフォーム感度を表す最大シークエンシング誤り率からの99.9%信頼区画の上限の閾値を用いて、各ゲノム位置における変異検出の最小頻度を設定した。表3は、検出されたFLT3エクソン17変異を示し、表4は、検出されたFLT3エクソン20変異を示す。
【表3】
【表4】
【0175】
全ての患者は、FLT3-ITD変異について陽性であった。患者1名(患者9)は、ベースラインFLT3 D835Y変異(VAF、2.3%)を有した(表4を参照されたい)。
【0176】
FLT3-ITDと同時に発生するさらなる変異を、OSU Department of Pathologyにおける標的化遺伝子パネルを使用して決定した。血液白血球または骨髄もしくは組織から単離したゲノムDNAを、MiSeq Illuminaプラットフォームを使用するデジタル液滴PCR法(Thunderbolt panel、Raindance Technologies)を使用してプロファイリングした。49遺伝子の新生物関連バリアントの解析は、hg19、NextGENeソフトウェアおよびGenomOncologyプラットフォームの利用を含み、病理学者が解釈した。他の同時発生変異がベースラインで存在した。これらは、NPM1、IDH2およびTET2、ならびに他の変異を含む(表5)。
【表5】
【0177】
次に、パクリチニブのex vivo活性を、この研究の患者3名からの初代芽球試料を用いて試験した。スクリーニング中に収集した処置前骨髄芽球試料を、DMSOで、またはPeproTechからの10%FBS、hFLT3リガンド(10ng/mL)、hIL3(10ng/mL)、hGM-CSF(10ng/mL)およびhSCF(10ng/mL)を追加補充したRPMI中の漸増濃度のパクリチニブもしくはミドスタウリンで、72時間、処置した。未処置ウェルにおける生存率をトリパンブルーにより24時間ごとにモニターした。72時間の時点、または生存率が50%もしくはそれ未満に達したときのどちらか早い方の時点で用量反応を測定した。CellTiter-Gloアッセイ(Promega)を製造業者の指示に従って使用して用量反応に対する芽球生存率を測定した(3~6反復で行った)。
図9から分かるように、パクリチニブは、1.9~8.6μMの範囲のIC
50値で初代芽球試料のex vivo成長を阻害した。患者由来の初代芽球試料を用いてパクリチニブの活性をミドスタウリンと比較して試験もした。
図10に示すように、パクリチニブは、患者試料の生存率を152~302nMの範囲のIC
50値で阻害したが、ミドスタウリンは、同じ試料において250~470nMの範囲のIC
50値で阻害した。これらの結果は、パクリチニブがこれらの試料に対して現行の標準療法ミドスタウリンと比較して同様ないしわずかに良好な活性を有することを実証する。IDH2とASXL1の同時発生変異を有する患者5および9の芽球試料では、パクリチニブは、ミドスタウリンのものと比較して1.6分の1および3分の1のIC
50値をそれぞれ有した。
【0178】
薬物動態研究。パクリチニブの血漿薬物動態研究のための一連の血液試料を1および21日目の処置前におよびパクリチニブ投与後1、2、3、5、24時間の時点に採取し、血液および骨髄の用量前試料を5日目に採取した。オハイオ州立大学(OSU)Comprehensive Cancer Center Pharmacoanalytical Shared Resourceにおいて、妥当性が確認されているLC/MS-MSアッセイを使用して、血漿および骨髄溶解物中のパクリチニブを定量した。骨髄濃度をBCAアッセイ(Thermo Scientific、Rockford、IL)に基づいて各試料からのタンパク質の量に正規化した。ヒト細胞の総湿潤重量の20%がタンパク質であると仮定し、組織の密度を、Wisniewski, J.R., et al.. J Proteome Res 14, 4005-4018 (2015)において報告された濃度に基づいてパクリチニブの骨髄組織濃度の計算のために1g/mLと仮定した。
【0179】
患者13名全てが血漿薬物動態研究を完了し、パクリチニブ骨髄濃度を患者4名において測定した。1、5および21日目のパクリチニブ濃度を表6に要約する。
【表6】
【0180】
1日目の平均±標準偏差血漿濃度は、100mg1日2回用量レベルで、コホートAとコホートBの両方において、薬物投与後5時間の時点(それぞれ、3.7±1.1μg/mLおよび4.0±3.1μg/mL)および24時間の時点(それぞれ、6.8±2.5μg/mLおよび6.5μg/mL)で同様であった。21日目に最大定常状態濃度に達した(コホートAとコホートBの両方合わせて、9.6±4.7μg/mL)。骨髄試料中のパクリチニブ濃度は、対応する血漿濃度と同様であった。
【0181】
処置コホートを問わず、100mg1日2回で達成されたパクリチニブ血漿濃度は、Al-Fayoumi, S., et al. EHA (2017);およびVerstovsek, S., et al. Journal of hematology & oncology 9, 137 (2016)において報告されたような骨髄線維症を有する患者のコホートにおいて200mgを1日1回または1日2回投与された者と同様であった。これは、100mg BIDを超えるさらなる用量漸増がFLT3-ITD+AMLでは必要ない可能性があることを示唆している。パクリチニブの骨髄濃度を各コホートからの患者2名において測定した。骨髄におけるパクリチニブ曝露は、各患者における血漿のものと同様であった。これは、パクリチニブが作用部位によく蓄積したことを示す。
【0182】
全体として、コホートAの患者2名はCRを達成し、コホートBの患者1名がMLFSを達成した。CRに達した患者2名は、同種幹細胞移植を受けることができた。これらの患者2名のうちの1名(患者9)は、少数のベースラインFLT3 TKD D835Yクローンを有した。CRを達成したコホートAの患者2名は、単独での標準的な7+3導入でCRを達成した可能性があるが、患者9の末梢血芽球のパーセンテージが、シタラビンおよびダウノルビシンを投与しない最初の5日のパクリチニブ療法の後に35%低下したことは、注目に値する。
【0183】
多くの患者が他の同時発生変異をベースラインで有した。CRを達成した患者5と患者9の両方は、FLT3-ITD+AMLにおけるより良好な予後に関連するNPM1変異を有した。しかし、単独のNPM1変異を有した患者9は、処置前から治療5日目への彼らの芽球数低減により示される最初の5日間のパクリチニブ単剤療法に応答したが、IDH2変異も有した患者5は応答しなかった。
【0184】
患者13名のうち、全ての患者を毒性について評価することができ、患者10名を奏効について評価することができた。コホートAの患者1名は、早期死亡のため処置奏効について評価することができず、コホートBの患者2名は、治療の早期中止のため奏効について評価することができなかった。コホートAの評価可能な患者4名のうち、患者2名(5および9)は完全寛解を達成し、患者2名は、安定病態を示した。コホートBでは、患者2名が安定病態を示し、患者1名は、形態学的な白血病のない状態を達成した。ベースラインでFLT3 D835Y変異のある少数のクローン(3%)を有した患者1名は、完全寛解を達成した。
図11は、100mgを1日2回投与されたコホートAの患者5名からの血漿中のパクリチニブについての臨床PKプロファイルを示す。
図12は、100mgを1日2回投与されたコホートBの患者6名からの血漿中のパクリチニブについての臨床PKプロファイルを示す。
図13は、200mgを1日2回投与されたコホートB患者2名からの血漿中のパクリチニブについての臨床PKプロファイルを示す。パクリチニブ血漿曝露パラメーター(C
maxおよびC
min)を下記の表3に要約する。
【0185】
図14は、患者9の臨床経過を示し、
図15は、患者9の臨床経過を示す。CRを達成した患者9は、ベースラインでFLT3 D835Y変異のある少数のクローンを有した。コホートBにおいて、患者1名は、形態学的な白血病のない状態を達成し、患者5名は、安定病態を示した。両方のコホートにおける生存中央値は、292日(95%CI:36~580)であり、CRまたは形態学的な白血病のない状態(MLFS)として定義される奏功率は、23.1%(95%CI:5.0~53.8%)であった。パクリチニブを投与された患者の全生存についてのカプラン・マイヤー分析を
図16に示す。
【0186】
結論として、パクリチニブは、強力なまたは強力ではない化学療法と組み合わせて1日2回100mgの用量で比較的忍容性良好であり、新たに診断されたおよび再発性/不応性のFLT3-ITD+AMLを有する患者において予備的活性を実証した。
【0187】
2018年10月1日に出願した米国特許仮出願第62/739,802号および2019年4月24日に出願した米国特許仮特許仮出願62/838,239号を含むがこれらに限定されない、本明細書または添付の出願データシートにおいて言及する米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公表文献の全ては、本明細書と矛盾しない範囲で、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0188】
本発明の特定の実施形態を、例証を目的として本明細書に記載したが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることができることは、上述のことから理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】