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特表2022-513321固形腫瘍を治療するための遺伝子操作しているγδ-T細胞及び遺伝子操作していないγδ-T細胞に関する組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】固形腫瘍を治療するための遺伝子操作しているγδ-T細胞及び遺伝子操作していないγδ-T細胞に関する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C07K19/00
C07K16/30
C07K14/705
C12N5/0783
C12N5/10
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/20
A61K39/00 H
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542091
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019054144
(87)【国際公開番号】W WO2020072546
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】62/739,826
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517171347
【氏名又は名称】アディセット バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サトパエフ, ダウレット カディル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン, マリッサ アン
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ, ジェーソン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジン, イフォン フランク
(72)【発明者】
【氏名】アン, ジリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコボヴィッツ, アヤ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA18
4C084DA12
4C084DA14
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA03
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明の態様は、遺伝子操作しているγδ-T細胞または遺伝子操作していないγδ-T細胞を用いて固形腫瘍を治療するための組成物及び方法を含む。いくつかの実施形態において、γδ-T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトを含む。このCARコンストラクトは、抗TryD結合ドメイン、CD8αヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、それらの組み合わせ、またはそれらの全てを含むことが可能である。このCARコンストラクトは、抗GPC3結合ドメイン、CD8αヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、それらの組み合わせ、またはそれらの全てを含むことが可能である。CARコンストラクトには、sIL15ドメインなどの分泌した一般的なガンマ鎖サイトカインをコードするドメインを含み得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離した核酸配列であって、そこにおいて前記CARが、
a.腫瘍関連抗原(TAA)ペプチド及びMHCタンパク質を含むタンパク質-ペプチド複合体に特異的に結合する結合ドメインであって、そこにおいて、前記複合体が固形腫瘍細胞の表面で発現され、任意で、そこにおいて前記結合ドメインが、HLAに制限された上で前記複合体と結合する、前記結合ドメインと、
b.CD8αヒンジドメインと、
c.CD8α膜貫通ドメインと、
d.4-1BB共刺激シグナル伝達領域及びCD27共刺激シグナル伝達領域から選択される、共刺激シグナル伝達領域と、
e.CD3ζシグナル伝達ドメインと、を含む、前記核酸配列。
【請求項2】
前記(a)~(e)が、5’から3’の順序である、請求項1に記載の単離した核酸配列。
【請求項3】
前記TAAがTyrDの隣接領域を含む、請求項1または2に記載の単離した核酸配列。
【請求項4】
前記TyrDの隣接領域が、少なくとも4、または少なくとも約4及び12以下、または約12以下のTyrDの隣接するアミノ酸、好ましくは7、8または9の、または好ましくは約7、8または9のTyrDの隣接するアミノ酸を含む、請求項3に記載の単離した核酸配列。
【請求項5】
前記TyrDの隣接領域が、TyrD369-377である、請求項4に記載の単離した核酸配列。
【請求項6】
前記TAAペプチドMHC複合体に特異的に結合する前記結合ドメインが、HLA-A2/TyrD369-377に特異的に結合する、請求項1から5のいずれか1項に記載の単離した核酸配列。
【請求項7】
前記結合ドメインが、
a.TSGMGVS(配列番号33)を含むCDRH1と、
b.HIYWDDDKRYNPSLKS(配列番号34)を含むCDRH2と、
c.KDYGSSFYAMHY(配列番号35)を含むCDRH3と、
d.KASQDIHNYIA(配列番号36)を含むCDRL1と、
e.YTSTLQP(配列番号37)を含むCDRL1と、
f.LQYDNLWT(配列番号38)を含むCDRL2と
を含む抗体によって結合されるエピトープと特異的に結合する、または前記抗体と競合する、請求項1から6のいずれか1項に記載の単離した核酸配列。
【請求項8】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離した核酸配列であって、そこにおいて前記CARが、
a.固形腫瘍細胞の表面で発現される腫瘍関連抗原(TAA)と特異的に結合する結合ドメインであって、任意で、そこにおいて前記抗原がタンパク質-ペプチド複合体であり、そこにおいて前記タンパク質がMHCタンパク質であり、そこにおいて前記結合ドメインがHLAに制限された上で前記タンパク質-ペプチド複合体と結合する、前記結合ドメインと、
b.CD8αヒンジドメインと、
c.CD8α膜貫通ドメインと、
d.4-1BB共刺激シグナル伝達領域及びCD27共刺激シグナル伝達領域から選択される、共刺激シグナル伝達領域と、
e.CD3ζシグナル伝達ドメインと、を含む、前記核酸配列。
【請求項9】
前記結合ドメインが、固形腫瘍細胞の表面で発現されるGPC3内のエピトープに特異的に結合する、請求項8に記載の単離した核酸配列。
【請求項10】
前記結合ドメインが、以下の相補性決定領域(CDR):
a.DYEMH(配列番号39)(もしくはGYTFTDYEMH(配列番号40))の配列を含むCDRH1、
b.ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号41)の配列を含むCDRH2、
c.FYSYTY(配列番号42)の配列を含むCDRH3、
d.RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号43)の配列を含むCDRL1、
e.KVSNRFS(配列番号44)の配列を含むCDRL2及び/または
f.SQNTHVPPT(配列番号45)の配列を含むCDRL3
を含む抗体と同じGPC3エピトープと結合する、及び/または前記抗体とGPC3のエピトープへの結合のために競合する、
前記CDRを含む、請求項9に記載の単離した核酸配列。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の単離した核酸配列であって、そこにおいて前記CARが、
a.配列番号1(PTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY)もしくは配列番号2(TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY)を含むCD8αヒンジドメイン、
b.配列番号3(IWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC)を含むCD8α膜貫通ドメイン及び/または
c.
(i)配列番号4(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)もしくは、
(ii)配列番号5(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)を含むCD3ζシグナル伝達ドメイン
を含む、前記核酸配列。
【請求項12】
請求項11に記載の単離した核酸配列であって、そこにおいて前記CARが、
a.配列番号6(KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL)を含む4-1BB共刺激シグナル伝達領域もしくは
b.配列番号7(QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP)を含むCD27共刺激シグナル伝達領域を含み、または、
そこにおいて、前記単離した核酸が、配列番号6を含む前記4-1BB共刺激シグナル伝達領域及び配列番号7を含む前記CD27共刺激シグナル伝達領域をコードする、前記核酸配列。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の単離した核酸配列であって、そこにおいて前記核酸が、さらに
a.分泌されたサイトカインあるいは
b.分泌された一般的なガンマ鎖インターロイキンあるいは
c.分泌されたIL-15であって、好ましくは、そこにおいて前記IL-15が、配列番号14の配列を含む、より好ましくは、そこにおいて前記IL-15が、配列番号12の分泌シグナル配列に動作可能に連結された配列番号14の配列を含む、もしくはそこにおいて前記IL-15が、配列番号26の分泌シグナル配列に動作可能に連結された配列番号14の配列を含む、前記分泌されたIL-15あるいは、
d.分泌された共通ガンマ鎖インターロイキンであって、好ましくはIL-15及び前記インターロイキンまたはインターロイキン分泌シグナルのアミノ末端のマルチシストロン性リンカー領域であり、好ましくは、そこにおいて前記マルチシストロン性リンカー領域が、配列番号15~17、25もしくは、27~30もしくはそれらの組み合わせのいずれか1つの配列を含む、または、配列番号31または32などの内部リボソーム侵入部位をコードする、前記分泌された共通ガンマ鎖インターロイキン
をコードする、前記核酸配列。
【請求項14】
請求項13に記載の単離した核酸配列であって、そこにおいて
a.前記分泌シグナルが、配列番号12もしくは配列番号26の配列、好ましくは配列番号12を含み、及び/または
b.前記sIL15ドメインが、配列番号14の配列を含み、及び/または
c.前記P2A切断配列が、配列番号15もしくは配列番号25の配列を含み、及び/または
d.前記フューリン切断配列が、配列番号16の配列を含み、及び/または
e.前記CARが、アミノからカルボキシの順序で、配列番号17、配列番号12及び配列番号14の配列を含む、
前記核酸配列。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の単離した核酸配列であって、そこにおいて
a.前記結合ドメインが、HLA-A2/TyrD369-377に特異的に結合し、前記核酸が、配列番号8または配列番号18をコードし、
b.前記結合ドメインがGPC3に特異的に結合し、前記核酸が配列番号20または22をコードする、前記核酸配列。
【請求項16】
前記核酸が、配列番号9、配列番号19、配列番号21、23または24の配列を含む、請求項15に記載の単離した核酸配列。
【請求項17】
請求項1から16に記載の先行する単離した核酸のいずれか1つによりコードされるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を含むポリペプチド。
【請求項18】
請求項17に記載のポリペプチドを含む、または請求項1から16のいずれか1項に記載のCARコンストラクトをコードする核酸を含むγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、前記ポリペプチドの結合ドメインまたは前記γδT細胞の表面上でCARをコードする
核酸を機能的に発現する、前記γδT細胞。
【請求項19】
請求項18に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、前記腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞に対して、in vitro及び/またはin vivoの細胞傷害活性を示す、前記γδT細胞。
【請求項20】
請求項19に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞の前記固形腫瘍細胞傷害活性が、CARコンストラクトを含まない対照γδT細胞において、in vitro及び/またはin vivoの固形腫瘍細胞傷害活性の生来のレベルよりも大きい、前記γδT細胞。
【請求項21】
請求項20に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、HLAクラスIの固形腫瘍細胞に対して固形腫瘍細胞傷害活性の増大を示す、前記γδT細胞。
【請求項22】
請求項19から21のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記固形腫瘍細胞傷害活性または固形腫瘍細胞傷害活性の増大が、前記固形腫瘍細胞との最初の接触後、約、少なくとも、または少なくとも約6日から180日間持続する、前記γδT細胞。
【請求項23】
請求項18から22のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、前記腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞との接触に応答して増殖する、前記γδT細胞。
【請求項24】
請求項18から22のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、前記δT細胞の表面上でCARをコードする前記核酸を機能的に発現しない対照γδT細胞と比較して、前記腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞との接触に応答して増殖が増大する、前記γδT細胞。
【請求項25】
請求項18から24のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、前記腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す前記固形腫瘍細胞を含む宿主生物中で増殖する、前記γδT細胞。
【請求項26】
請求項18から25のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞の増殖またはγδT細胞の増殖の増大が、前記固形腫瘍細胞との最初の接触後、約、少なくとも、または少なくとも約6日から180日間持続する、前記γδT細胞。
【請求項27】
請求項18から26のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、前記固形腫瘍細胞との接触後に腫瘍壊死因子アルファまたはインターフェロンガンマを含む炎症誘発性サイトカインを発現する、前記γδT細胞。
【請求項28】
請求項18から27のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて同種異系宿主に投与されたαβT細胞によって示された移植片対宿主応答と比較して、同種異系宿主に導入された場合、前記γδT細胞が示す移植片対宿主応答が、低下、実質的な低下、実質的にない、またはなくなる、前記γδT細胞。
【請求項29】
請求項18から28のいずれか1項に記載のγδT細胞であって、そこにおいて前記γδT細胞が、δ1、δ2、δ3、またはδ4γδT細胞、好ましくはδ2γδT細胞、より好ましくはδ1γδT細胞である、前記γδT細胞。
【請求項30】
請求項18から29のいずれか1項に記載の複数のγδT細胞。
【請求項31】
請求項30に記載の複数のγδT細胞であって、そこにおいて前記複数が、少なくとも約10γδT細胞、好ましくは約10γδT細胞から約1011のγδT細胞を含む、前記複数のγδT細胞。
【請求項32】
請求項30または31に記載の複数のγδT細胞であって、そこにおいて前記複数が、少なくとも60%、80%、または約60%もしくは80%から約90%もしくは95%のδ1、δ2、δ3、またはδ4γδT細胞、好ましくはδ1またはδ2γδT細胞、より好ましくはδ2γδT細胞、最も好ましくはδ1γδT細胞である組成物を含む、前記複数のγδT細胞。
【請求項33】
請求項18から29のいずれか1項に記載のγδT細胞または請求項30から32のいずれか1項に記載の複数のγδT細胞を作製する方法であって、そこにおいて前記方法が、請求項1から16のいずれか1項に記載の単離した核酸配列を含むコンストラクトでγδT細胞(複数可)をトランスフェクトすることを含む、前記方法。
【請求項34】
前記方法がレトロウイルス形質導入、好ましくはガンマレトロウイルス形質導入を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項33または34に記載の方法であって、そこにおいて前記方法がex vivoでの前記γδT細胞(複数可)の増殖を含み、そこにおいて前記ex vivoでの増殖が、前記単離した核酸配列のトランスフェクションの前及び/または後に実施される、前記方法。
【請求項36】
薬学的に受容可能な賦形剤と、請求項18から29のいずれか1項に記載のγδT細胞、または請求項30から32のいずれか1項に記載の複数のγδT細胞とを含む医薬組成物。
【請求項37】
固形腫瘍細胞を殺傷する方法であって、前記方法が、腫瘍細胞の殺傷に有効な量である、請求項18から29のいずれか1項に記載のγδT細胞、請求項30から32のいずれか1項に記載の複数のγδT細胞または請求項36に記載の医薬組成物と、前記固形腫瘍細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、そこにおいて前記方法が、治療上有効な量である、前記γδT細胞(複数可)または前記医薬組成物を、前記固形腫瘍細胞を含む宿主生物に導入することを含む、前記方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、そこにおいて前記方法が、前記固形腫瘍細胞を含む宿主生物に、治療上有効な量である、前記γδT細胞(複数可)または前記医薬組成物を導入することと、同時にまたは連続して、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法を投与することとを含む、前記方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、そこにおいて前記一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の投与方法が、前記γδT細胞(複数可)の導入と同時に、または一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の有効量を連続して投与することで、前記導入したγδT細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはその組み合わせを増大させることを含み、好ましくは、そこにおいて前記方法がIL-2を投与することを含み、より好ましくは、そこにおいて前記方法がIL-15を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、そこにおいて前記一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法が、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の有効な量を投与することで、前記γδT細胞(複数可)を導入する前及び/または導入後に、前記導入したγδT細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはその組み合わせを増大させることを含む、前記方法。
【請求項42】
請求項39から41のいずれか1項に記載の方法であって、そこにおいて前記一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法が、前記γδT細胞(複数可)を導入する前のリンパ球の枯渇化を含む、前記方法。
【請求項43】
請求項39から41のいずれか1項に記載の方法であって、そこにおいて前記一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法が、前記導入したγδT細胞(複数可)からの1種または複数種の一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の分泌を含む、前記方法。
【請求項44】
請求項38から43のいずれか1項に記載の方法であって、そこにおいて前記方法が、対照の生物と比較して、前記宿主生物のin vivo腫瘍量を減少させ、及び/または前記宿主生物の平均生存時間を増加させ、そこにおいて前記対照の生物が、前記γδT細胞(複数可)または前記医薬組成物とともに処置しない、前記方法。
【請求項45】
前記方法が、治療が必要な対象のがんを治療する方法である、請求項37から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
腫瘍細胞の殺傷に有効な量である、請求項18から29のいずれか1項に記載のγδT細胞、請求項30から32のいずれか1項に記載の複数のγδT細胞または、治療が必要な対象の固形腫瘍細胞癌を治療する薬物の製造における請求項36に記載の医薬組成物の利用。
【請求項47】
治療が必要な対象のがんを治療する方法であって、前記方法が、治療上有効量のγδT細胞を投与することを含み、そこにおいて、前記がんが、TyrDまたはGPC3の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞を含む、前記方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、そこにおいて前記方法が、γδT細胞の投与と同時に、または連続して一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
請求項47または48に記載の方法であって、そこにおいて前記方法が、前記γδT細胞の複数回投与を実施することを含み、そこにおいて前記複数回投与の間の間隔が、少なくとも約1週間、好ましくは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8または12週間、及び/または6か月または12か月に1回以下である、前記方法。
【請求項50】
請求項47から49のいずれか1項に記載の方法で用いる医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月1日出願の米国仮出願第62/739826号の優先権を主張し、その内容は、あらゆる目的のために本明細書全体に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年1月8日に作成された上記のASCIIコピーは、ADC-0006-PCT_SL.txtという名前で、サイズは48406バイトである。
【背景技術】
【0003】
養子免疫細胞療法は、基本的なリンホカイン活性化及び/または腫瘍浸潤に焦点を当てた初期から、キメラ抗原受容体(CAR)などの遺伝子操作された抗原受容体を発現させるために、これらの免疫細胞を遺伝子操作するようなごく最近の戦略まで、30年間以上、絶え間なく繰り返し受けられてきた。その中で、これらのアプローチの治癒上の可能性についていくつかのヒント及び兆候が見られていたが、まだ行うべきことが多く存在している。特に、CAR-Tリンパ球による腫瘍根絶の成功は、CAR-T細胞の持続性及びエフェクター機能に依存するが、そのどちらかが過剰になると、患者の移植片対宿主効果が誘発される可能性がある。さらに、特に固形組織には、利用可能な陽性刺激がなく、阻害性環境が存在するという問題がある。したがって、当技術分野では、有効性と安全性のバランスをとることを目的として、T細胞とNK細胞の両方、特にαβT細胞で無数の共刺激戦略を試験している。注目すべきことに、αβT細胞と比較して、γδT細胞の共刺激要件に関する現状の理解の欠如を考慮すると、γδT細胞へのこれらの様々なアプローチの任意の実際の翻訳は、よく見ても不確実である。例えば、Ribot et al.,「Searching for“signal 2”:costimulation requirements of γδ T cells」、Cell.Mol.Life Sci.(2011)68:2345-2355を参照のこと。
【0004】
したがって、細胞の特異性または選択性を改善するために、例えば移植片対宿主(GVH)効果を低減または回避することにより、細胞の安全性を改善するために、例えばエフェクター機能の抑制を回避して、固形腫瘍細胞に対する有効性を改善するためにならびに対象への投与時の細胞の活性及び/または生存を改善するために、改善された戦略が依然として必要である。そのようなニーズを満たす方法、細胞、組成物、キット及びシステムを提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離した核酸配列であって、そこにおいてCARが、腫瘍関連抗原(TAA)ペプチド及びMHCタンパク質を含むタンパク質-ペプチド複合体と特異的に結合する結合ドメインを含み、そこにおいてこの複合体は、固形腫瘍細胞の表面上で発現され、任意で、そこにおいて、この結合ドメインは、HLA制限された上で、複合体と結合する単離した核酸配列と、CD8αヒンジドメインと、CD8α膜貫通ドメインと、4-1BB共刺激シグナル伝達領域及びCD27共刺激シグナル伝達領域から選択される共刺激シグナル伝達領域と、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含む。本発明の態様は、本明細書に記載の遺伝子操作していないγδT細胞、ならびに本明細書に記載されるCARコンストラクトをコードする核酸を含む遺伝子操作しているγδT細胞をさらに含み、そこにおいてγδT細胞は、γδT細胞の表面上のCARをコードする核酸を機能的に発現する。
【0006】
本発明の態様は、本明細書に記載される通りの複数のγδT細胞をさらに含む。本発明の態様は、本明細書に記載のγδT細胞または複数のγδT細胞を作製する方法をさらに含む。本発明の態様は、本明細書に記載される、薬学的に受容可能な賦形剤及びγδT細胞または複数のγδT細胞を含む医薬組成物をさらに含む。本発明の態様は、本明細書に記載される通りの腫瘍細胞傷害に有効な量であるγδT細胞または本明細書に記載される複数のγδT細胞と、固形腫瘍細胞を接触させることをさらに含む。
【0007】
一態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離した核酸配列を提供し、そこにおいて、CARは、(a)腫瘍関連抗原(TAA)ペプチド及びMHCタンパク質を含むタンパク質―ペプチド複合体と特異的に結合する結合ドメインであって、そこにおいて、複合体が固形腫瘍細胞の表面で発現し、任意で、そこにおいて結合ドメインがHLA制限された上で複合体と結合する結合ドメインと、(b)CD8αヒンジドメインなどのヒンジドメインと、(c)CD8α膜貫通ドメインなどの膜貫通ドメインと、(d)共刺激シグナル伝達領域または共刺激シグナル伝達領域の組み合わせであって、任意で、そこにおいて、共刺激シグナル伝達領域(複数可)が、4-1BB(CD137)共刺激シグナル伝達領域及びCD27共刺激シグナル伝達領域から選択される共刺激シグナル伝達領域(複数可)と、(e)CD3ζシグナル伝達ドメインなどのシグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態において、前述のエレメント(a)~(e)は、単離した核酸のセンス鎖上に5’から3’の順でコードされている。
【0008】
いくつかの実施形態において、TAAは、TyrDの隣接領域を含む。いくつかの実施形態において、TyrDの隣接領域は、少なくとも4、または少なくとも約4及び12以下、または約12以下のTyrDの隣接するアミノ酸、好ましくは7、8または9または好ましくは約7、8または9のTyrDの隣接するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、TyrDの隣接領域は、TyrD369-377である。いくつかの実施形態において、TAAペプチドMHC複合体に特異的に結合する結合ドメインは、HLA-A2/TyrD369-377に特異的に結合する。
【0009】
いくつかの実施形態において、結合ドメインは、TSGMGVS(配列番号33)を含むCDRH1、HIYWDDKRYNPSLKS(配列番号34)を含むCDRH2、KDYGSSFYAMHY(配列番号35)を含むCDRH3、KASQDIHNYIA(配列番号36)を含むCDRL1、YTSTLQP(配列番号37)を含むCDRL1及びLQYDNLWT(配列番号38)を含むCDRL2を含む抗体に結合したエピトープと特異的に結合する、またはその抗体と競合する。
【0010】
別の態様において、結合ドメインは、固形腫瘍細胞の表面で発現する腫瘍関連抗原(TAA)と特異的に結合し、任意で、そこにおいて、この抗原は、タンパク質-ペプチド複合体であり、そこにおいて、タンパク質はMHCタンパク質であり、そこにおいて、結合ドメインは、HLAに制限された上でタンパク質-ペプチド複合体と結合し、さらに、単離した核酸配列のコードされたCARは、(b)CD8αヒンジドメインなどのヒンジドメインと、(c)CD8α膜貫通ドメインなどの膜貫通ドメインと、(d)共刺激シグナル伝達領域または共刺激シグナル伝達領域の組み合わせであって、任意で、そこにおいて、共刺激シグナル伝達領域が、4-1BB(CD137)共刺激シグナル伝達領域及びCD27共刺激シグナル伝達領域から選択される、共刺激シグナル伝達領域または共刺激シグナル伝達領域の組み合わせと、(e)CD3ζシグナル伝達ドメインなどのシグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態において、前述のエレメント(a)~(e)は、単離した核酸のセンス鎖上に5’から3’の順でコードされている。
【0011】
いくつかの実施形態において、結合ドメインは、固形腫瘍細胞の表面で発現するGPC3内のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、結合ドメインは、以下の相補性決定領域(CDR)を含む抗体と同じGPC3エピトープと結合する以下のCDRを含み、及び/または以下のCDR:DYEMH(配列番号39)(またはGYTFTDYEMH(配列番号40))の配列を含むCDRH1、ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号41)の配列を含むCDRH2、FYSYTY(配列番号42)の配列を含むCDRH3、RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号43)の配列を含むCDRL1、KVSNRFS(配列番号44)の配列を含むCDRL2及び/またはSQNTHVPPT(配列番号45)の配列を含むCDRL3を含む抗体とGPC3のエピトープに結合するために競合する。
【0012】
いずれか1つの前述の態様のいくつかの実施形態または本明細書に記載されるCARコード核酸の実施形態またはそのいずれかにおいて、コードしたCARは、配列番号1(PTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY)もしくは配列番号2(TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY)を含むCD8αヒンジドメインまたは配列番号3(IWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC)を含むCD8α膜貫通ドメイン及び/またはCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。場合によっては、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号4(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMG GKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)または配列番号5(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYD VLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)の配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、CARは、配列番号6(KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL)を含む4-1BB共刺激シグナル伝達領域または、配列番号7(QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP)を含むCD27共刺激シグナル伝達領域または、配列番号6を含む4-1BB共刺激シグナル伝達領域及び配列番号7を含むCD27共刺激シグナル伝達領域をコードする核酸配列を含む。
【0014】
前述のいずれか1つまたは本明細書に記載される通りのいくつかの実施形態において、単離した核酸は、分泌されたサイトカイン、もしくは分泌された一般的なガンマ鎖インターロイキンまたは、IL-15などの分泌された一般的なガンマ鎖インターロイキンをコードし、好ましくは、IL-15などのこの分泌された一般的なガンマ鎖インターロイキンは、分泌シグナル配列(例えば、配列番号12または26の分泌シグナル)に動作可能に連結されたインターロイキンポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、単離した核酸は、分泌されたIL-15をコードし、好ましくは、そこにおいてIL-15は、配列番号14の配列を含み、より好ましくは、そこにおいてIL-15は、配列番号12の分泌シグナル配列に動作可能に連結された14の配列を含む、またはそこにおいてIL-15は、配列番号26の分泌シグナル配列に動作可能に連結された配列番号14の配列を含む。場合によっては、分泌されたサイトカイン、一般的なガンマ鎖インターロイキン及び/またはIL-15は、結合領域、ヒンジ及び膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン及び/または共刺激エンドドメインにカルボキシ末端がコードされている。場合によっては、分泌されたサイトカイン、一般的なガンマ鎖インターロイキン及び/またはIL-15は、結合領域、ヒンジ及び膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン及び/または共刺激エンドドメインのセンス鎖3’にコードされる。
【0015】
いくつかの実施形態において、核酸は、CAR及び分泌されたサイトカイン、一般的なガンマ鎖サイトカイン、または別々のポリペプチドとしてIL-15の翻訳を容易にするように構成されたマルチシストロン性リンカー領域をコードする。いくつかの実施形態において、マルチシストロン性リンカー領域は、自己切断配列及び/または切断ポリペプチド配列をコードする。場合によっては、自己切断配列は、P2A、F2A、T2A、またはE2A自己切断配列である。場合によっては、切断配列は、フューリン切断配列である。場合によっては、切断配列(例えば、フューリン切断配列)は、自己切断配列のアミノ末端である。いくつかの実施形態において、マルチシストロン性リンカー領域は、内部リボソーム侵入部位をコードする。いくつかの実施形態において、核酸は、インターロイキンもしくはサイトカインまたはインターロイキンもしくはサイトカイン分泌シグナルに、マルチシストロン性リンカー領域のアミノ末端をコードし、好ましくは、そこにおいてこのマルチシストロン性リンカー領域は、配列番号15~17、25もしくは27~30またはそれらの組み合わせのいずれか1つの配列を含む、または例えば配列番号31もしくは32の内部リボソーム侵入部位をコードする。
【0016】
いくつかの実施形態において、分泌シグナルは、配列番号12または配列番号26の配列、好ましくは配列番号12を含み、及び/またはsIL15ドメインは、配列番号14の配列を含み、及び/またはP2A切断配列は、配列番号15または配列番号25の配列を含み、及び/またはフューリン切断配列は、配列番号16の配列を含み、及び/またはCARは、アミノからカルボキシの順序で、配列番号17、配列番号12、及び配列番号14の配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、結合ドメインは、HLA-A2/TyrD369-377に特異的に結合し、核酸は、配列番号8または配列番号18をコードする。いくつかの実施形態において、結合ドメインは、GPC3に特異的に結合し、核酸は、配列番号20または22をコードする。いくつかの実施形態において、核酸は、配列番号9、配列番号19、配列番号21、23または24の配列を含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、前述の核酸のいずれか1つによりコードされるポリペプチドの1つなどのCAR結合ドメインを含むポリペプチド、または本明細書に記載のポリペプチドを提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、例えば、前述のポリペプチドを含むまたは本明細書に記載のCARをコードする核酸を含む、γδ、T細胞を提供し、そこにおいて、細胞は、ポリペプチドの結合ドメインまたは細胞の表面上でCARをコードする核酸を機能的に発現する。いくつかの実施形態において、細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞に対して、in vitro及び/またはin vivoの細胞傷害活性を示す。いくつかの実施形態において、これらの細胞の固形腫瘍細胞傷害活性は、CARコンストラクトを含まない対照の細胞において、in vitro及び/またはin vivoの固形腫瘍細胞傷害活性の生来のレベルよりも大きい。いくつかの実施形態において、細胞は、HLAクラスI固形腫瘍細胞に対して固形腫瘍細胞傷害活性が増大する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍細胞傷害活性または固形腫瘍細胞傷害活性の増大は、固形腫瘍細胞との最初の接触後、約、少なくとも、または少なくとも約6日から180日間持続する。
【0020】
いくつかの実施形態において、細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞との接触に応答して増殖する。いくつかの実施形態において、細胞の表面上でCARをコードする核酸を機能的に発現しない、対照の細胞と比較して、細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞との接触に応答して増殖が増大する。いくつかの実施形態において、細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞を含む宿主生物において増殖する。いくつかの実施形態において、細胞の細胞増殖または細胞増殖の増大は、固形腫瘍細胞との最初の接触後、約、少なくとも、または少なくとも約6日から180日間持続する。いくつかの実施形態において、細胞は、1種または複数種の炎症誘発性サイトカインを発現し、任意で、そこにおいて、1種または複数種の炎症誘発性サイトカインは、固形腫瘍細胞との接触後に、好ましくは細胞表面でCARをコードした核酸を機能的に発現しない対照である細胞よりも多い量の腫瘍壊死因子アルファ及び/またはインターフェロンガンマを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、同種異系宿主に投与されたαβT細胞によって示される移植片対宿主応答と比較して、同種異系宿主に導入される場合、細胞で示される移植片対宿主応答が、低下、実質的な低下、実質的にない、またはなくなる。いくつかの実施形態において、同種異系宿主が投与されたαβT細胞によって示された移植片対宿主応答と比較して、同種異系宿主が導入された場合、例えば、γδ、T細胞で示される移植片対宿主応答が、低下、実質的な低下、実質的にない、またはなくなる。いくつかの実施形態において、T細胞はγT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はδT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はγδT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、δ1、δ2、δ3またはδ4T細胞であり、好ましくはδ2δT細胞、より好ましくはδ1δT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、δ1、δ2、δ3またはδ4γδT細胞であり、好ましくはδ2γδT細胞、より好ましくはδ1γδT細胞である。
【0022】
別の態様において、本発明は、例えばγδ、T細胞などの前述の細胞のいずれか1つの複数、または本明細書に記載される通りの例えばγδ、T細胞などの複数の細胞を提供する。いくつかの実施形態において、複数は、例えば、10のγδ、T細胞などの少なくとも約10の細胞、好ましくは例えばγδ、T細胞の約10の細胞から、例えば、γδ、T細胞の約1011の細胞を含む。いくつかの実施形態において、複数は、例えばγδT細胞などの少なくとも60%、80%、または約60%もしくは80%から約90%もしくは95%のδ1、δ2、δ3、またはδ4細胞、好ましくはδ1またはδ2γδT細胞、より好ましくはδ2γδT細胞、最も好ましくはδ1γδT細胞である組成物を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載される通りの例えばγδ、T細胞、または本明細書に記載される通りのγδ、T細胞などの複数の細胞などの細胞を作製する方法を提供し、そこにおいて、この方法は、本明細書に記載される通り単離した核酸配列を含むコンストラクトを有する細胞(複数可)をトランスフェクトすることを含む。場合によっては、この方法は、例えば、ガンマ、レトロウイルス形質導入を含む。場合によっては、この方法は、ex vivoでの細胞(複数可)の増殖を含み、そこにおいて、このex vivoでの増殖は、単離した核酸配列のトランスフェクションの前及び/または後に実施される。場合によっては、この方法は、ex vivoでの細胞(複数可)の増殖を含み、そこにおいて、このex vivoでの増殖は、単離した核酸配列のトランスフェクションの前及び後に実施される。場合によっては、この方法は、ex vivoでの細胞(複数可)の増殖を含み、そこにおいて、このex vivoでの増殖は、単離した核酸配列のトランスフェクションの後に実施される。いくつかの実施形態において、この方法は、トランスフェクションの約30日以内に、本明細書に記載のCARを機能的に発現する、例えばγδ、T細胞などの約10の細胞から、例えばγδ、T細胞などの約1011の細胞を作製することを含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤及び本明細書に記載される例えばγδ、T細胞(複数可)などの本明細書に記載される通りの細胞または複数の細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、固形腫瘍細胞を殺傷する方法を提供し、この方法は、腫瘍細胞殺傷に有効な量の、上述の細胞もしくは複数の細胞または医薬組成物、または本明細書に記載される通りの細胞もしくは複数の細胞または医薬組成物と、固形腫瘍細胞を接触させることを含む。場合によっては、細胞または複数の細胞は、例えば、γδ、T細胞(複数可)である。
【0026】
いくつかの実施形態において、この方法は、固形腫瘍細胞を含む宿主生物に、治療上有効な量の、例えば、γδ、T細胞(複数可)などの細胞または医薬組成物を導入することを含む。いくつかの実施形態において、方法には、固形腫瘍細胞を含む宿主生物に、治療上有効な量である、例えば、γδ、T細胞(複数可)などの細胞またはその医薬組成物を導入し、同時にまたは連続して、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法を投与することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の投与方法は、細胞(複数可)の導入と同時に、または一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の有効量を連続して投与することで、その導入した細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはその組み合わせを増大させ、好ましくは、そこにおいてこの方法はIL-2を投与することを含み、より好ましくは、そこにおいて、この方法は、IL-15を投与することを含む。いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法は、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の有効な量を投与することで、細胞(複数可)を導入する前及び/または導入後に、導入した細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはその組み合わせを増大させることを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法は、γδT細胞(複数可)を導入する前のリンパ球の枯渇化を含む。いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法は、導入した細胞(複数可)からの1種または複数種の一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の分泌を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、対照の生物と比較して、宿主生物のin vivo腫瘍量を減少させ、及び/または宿主生物の平均生存時間を増加させ、そこにおいて、対照の生物は、細胞(複数可)または医薬組成物とともに処置しない。いくつかの実施形態において、この方法は、治療が必要な対象のがんを治療する方法である。
【0029】
別の態様において、本発明は、腫瘍細胞殺傷に有効な量である、上述の細胞または、本明細書に記載の通りの細胞(例えばγδT細胞など)、複数のそのような細胞または治療が必要な対象の固形腫瘍細胞癌を治療するための薬剤を製造する際のそのような細胞を含む医薬組成物のいずれか1つの使用を提供する。別の態様において、本発明は、治療が必要な対象のがんを治療する方法を提供し、この方法は、治療上有効量の細胞を投与することを含み、そこにおいて、がんは、TyrDまたはGPC3の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、この方法は、細胞の投与と同時に、または連続して、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法を投与することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、細胞の複数回投与を実施することを含み、そこにおいて、この複数回投与の間の間隔は、少なくとも約1週間、好ましくは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8または12週間、及び/または6か月または12か月に1回以下である。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、前述の方法または本明細書に記載の方法のいずれか1つを用いるための医薬組成物を提供する。
【0032】
参照による援用
本明細書で言及される全ての出版物、特許及び特許出願は、各出版物、特許または特許出願が、参照により組み込まれるために、個別的かつ具体的に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】1つの共刺激シグナル伝達エンドドメイン(左)または2つの共刺激シグナル伝達エンドドメイン(右)を含むキメラ抗原受容体(CAR)の実施形態の概略図を示す。本明細書で用いる共刺激シグナル伝達エンドドメインは、共刺激エンドドメイン(costimulation endodomain)または共刺激エンドドメイン(costimulatory endodomain)とも呼ばれる。模範的なCARにおいて有用である模範的な共刺激シグナル伝達エンドドメインには、CD28、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、CD27、CD134(OX40)、TLR2及びそれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
図2】526及びWM266.1-Luc黒色腫細胞株に対する、本明細書に記載の遺伝子操作しているγδT細胞及び遺伝子操作していないγδT細胞のin vitro細胞毒性を示す。
図3】皮下WM266.4細胞NOD scidガンマ(NSG)マウスモデルにおける本明細書に記載のγδT細胞のin vivoでの治療有効性を示す。
図4】例えば固形腫瘍を治療するために、遺伝子操作されたγδCAR-T細胞及び遺伝子操作していないγδCAR-T細胞を製造するための製造工程を示す。
図5】対照CARコンストラクトまたはチロシナーゼポリペプチドを標的とするコンストラクトで形質導入したVδ1T細胞の細胞毒性活性を示す。
図6】可溶性IL-15(sIL15)(配列番号14)及びコドン最適化(WO2007/037780A2)sIL15などの抗グリピカン3(GPC3)とのVδ1細胞の形質導入効率を示す。
図7】様々なレベルのGPC3発現を伴う肝臓癌細胞株パネルに対する抗GPC3CARコンストラクトで形質導入していないまたは形質導入しているかのどちらかのVδ1T細胞の細胞毒性活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義:
本明細書を解釈する目的のために、下の定義を適用するが、適当と認められる場合には、単数形で用いられる用語はその複数形も含み、逆もまた同様である。説明される任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾する場合には、下記に説明する定義が優先されるものとする。別段に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0035】
本明細書で用いられる用語「約」は、量、時間的な持続期間などの測定可能な値を指す場合には、開示される方法を実施するためにその変動が適切であるように、特定値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%及びさらにいっそうより好ましくは±0.1%の変動を包含するように意図される。
【0036】
本明細書で用いられる用語「γδT細胞(ガンマデルタT細胞)」は、1つのγ鎖及び1つのδ鎖で構成される、異なるT細胞受容体(TCR)、すなわちγδTCRがそれらの表面で発現するT細胞のサブセットを指す。「γδT細胞」という用語は、ナイーブ、エフェクターメモリ、セントラルメモリ及び最終分化型γδT細胞と同様に、特に、Vδ1及びVδ2、Vδ3γδT細胞を含むがこれらに限定されないγδT細胞の全てのサブセットを含む。さらなる例として、「γδT細胞」という用語は、Vγ2、Vγ3、Vγ5、Vγ8、Vγ9、Vγ10及びVγ11γδT細胞と同様に、Vδ4、Vδ5、Vδ7及びVδ8γδT細胞を含む。いくつかの実施形態において、γδT細胞は、Vδ1、Vδ2またはVδ1及びVδ2である。遺伝子操作した及び遺伝子操作していないγδT細胞及び/またはそれらのサブタイプを作製及び用いるための組成物及び方法には、US2016/0175358、WO2017/197347、US9499788、US2018/0169147、US9907820、US2018/0125889及びUS2017/0196910に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。これらのそれぞれの内容は、この遺伝子操作した及び遺伝子操作していないγδT細胞及び/またはそれらのサブタイプを作製及び用いるための組成物及び方法などが、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。本出願はさらに、任意で機能性TCRを形成するために第2のポリペプチドと組み合わせて、1つのγ鎖または1つのδ鎖を発現するT細胞、または他の遺伝子操作された白血球もしくはリンパ球について考察する。1つのγ鎖または1つのδ鎖を発現するこのような遺伝子操作された白血球またはリンパ球は、本方法において用いられてもよく、または本明細書に記載の組成物中に存在してもよい。
【0037】
本明細書で用いる用語「Tリンパ球」または「T細胞」は、CD3(CD3+)及びT細胞受容体(TCR+)を発現する、または発現した免疫細胞を指す。T細胞は細胞性免疫において中心的な役割を果たす。CD3及びTCRを「発現した」T細胞は、CD3及び/またはTCR細胞表面の発現を排除するように遺伝子操作されている。
【0038】
本明細書で用いる用語「TCR」または「T細胞受容体」は、アルファ-ベータもしくはガンマ-デルタ受容体またはそれらの組み合わせを形成する二量体異種細胞表面シグナル伝達タンパク質を指す。αβTCRは、MHC分子により提示される抗原を認識するが、γδTCRはMHCの提示とは独立して抗原を認識することが可能である。
【0039】
「MHC」(主要組織適合遺伝子複合体)という用語は、細胞表面の抗原提示タンパク質をコードする遺伝子のサブセットを指す。ヒトの場合、これらの遺伝子はヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と言う。本明細書では、略語MHCまたはHLAは、区別なく用いられる。
【0040】
本明細書で用いる「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激されたT細胞の状態を指す。活性化は、誘導されたサイトカイン産生及び検出可能なエフェクター機能と関連している可能性もある。「活性化T細胞」という用語は、中でも、細胞分裂を起こしているT細胞を指す。
【0041】
本明細書で用いる用語「抗体」は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然由来または組換え源由来の無処置の免疫グロブリンであり得て、さらに無処置の免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。典型的には、抗体は免疫グロブリン分子の四量体である。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab及びF(ab)、ならびに一本鎖抗体及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る(Harlow et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883;Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0042】
「抗体フラグメント」という用語は、無処置の抗体の一部を指し、無処置の抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント、線状抗体、scFv抗体及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で用いる「抗体重鎖」は、自然に存在するコンフォメーションで抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうち大きい方を指す。
【0044】
本明細書で用いる「抗体軽鎖」は、自然に存在するコンフォメーションで抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうち小さい方を指す。κ及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0045】
本明細書で用いる用語「合成抗体」は、例えば、本明細書に記載される通りバクテリオファージにより発現される抗体のように組換えDNA技術を用いて作製される抗体を意味する。また、この用語は、抗体をコードするDNA分子を合成することで作製され、そのDNA分子は抗体タンパク質または抗体を指定するアミノ酸配列を発現する抗体を意味すると解釈されるべきであり、そこにおいて、DNAまたはアミノ酸配列は、利用可能で、当技術分野で周知の合成DNAまたはアミノ酸配列技術を用いて得られる。
【0046】
本明細書で用いる用語「抗原」または「Ag」は、免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生もしくは特定の免疫適格細胞の活性化のどちらか、またはその両方を含み得る。当業者は、タンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として役立ち得ることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えまたはゲノムDNAに由来し得る。したがって、熟練者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、本明細書で用いられる用語「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によりのみコードされる必要がないことを理解するであろう。本発明が、これに限定されないが、1種以上の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含み、さらにこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発させるために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明らかである。さらに、熟練者は、抗原が「遺伝子」によりコードされる必要が全くないことを理解するであろう。抗原が産生される、合成される、または生体試料由来であり得ることは容易に明らかである。このような生体試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0047】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することが可能な、任意のタンパク質決定因子、脂質または炭水化物決定因子を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸、脂質または糖側鎖などの分子の活性表面群からなり、通常、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。平衡解離定数(K)が10-6~10-12Mの範囲にある場合、抗体は抗原に特異的に結合すると言われている。
【0048】
本明細書で用いる用語「キメラ抗原受容体(CAR)」は、例えば、人工T細胞受容体、T体、一本鎖免疫受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体を指す場合があり、また特定の免疫エフェクター細胞に人工的な特異性を移植する、遺伝子操作された受容体を包含する。CARは、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に付与するために用いられてもよく、それにより、例えば、養子細胞療法で用いるために、多数の特異的T細胞を産生させることが可能である。特定の実施形態において、CARは、例えば、腫瘍関連抗原に対する細胞の特異性を方向付ける。いくつかの実施形態において、CARは、細胞内活性化ドメイン(標的の腫瘍細胞などの標的細胞と標的部分の結合時にT細胞を活性化させることが可能になる)、膜貫通ドメイン及び長さが変化し得る細胞外ドメインを含み、さらに疾病または疾患に関連する、例えば腫瘍-抗原結合領域を含む。特定の態様において、CARは、CD3-ゼータ膜貫通ドメイン及びエンドドメインに融合した、モノクローナル抗体由来の一本鎖可変フラグメント(scFv)の融合を含む。他のCARデザインの特異性は、受容体のリガンド(ペプチドなど)またはデクチンなどのパターン認識受容体に由来する場合がある。特定の場合において、抗原認識ドメインの間隔を変えて、活性化誘導細胞死を減らすことが可能である。特定の場合において、CARは、CD3ζ、FcR、CD27、CD28、CD137、DAP10/12及び/またはOX40、ICOS、TLR(例えば、TLR2)などのような共刺激シグナル伝達を追加するためのドメインを含む。場合によっては、分子は、共刺激分子、イメージング(例えば、陽電子放出断層撮影)用のレポーター遺伝子、プロドラッグを付加する際に、T細胞を条件付きで切除する遺伝子産物、ホーミング受容体、ケモカイン、ケモカイン受容体、サイトカイン及びサイトカイン受容体などのCARと共に共発現され得る。さらに、当業者は、共刺激ドメインが遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によりのみコードされる必要がないことを理解するであろう。本発明が、これに限定されないが、1種以上の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含み、さらにこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発させるために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明らかである。
【0049】
本明細書で用いる用語「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の増加または、がん状態に関連する様々な生理的症状の改善により、明らかになり得る生物学的効果を指す。また、「抗腫瘍効果」は、そもそも腫瘍の発生を予防する本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞及び抗体の能力によって明らかにされ得る。
【0050】
「自己抗原」という用語は、本発明では、免疫系により異物であると誤って認識される任意の自己抗原を意味する。自己抗原は、細胞タンパク質、リン酸化タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、細胞表面受容体を含む糖タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で用いる用語「自己由来」は、後に再導入される個体と同じ個体に由来する任意の材料を指すように意図される。
【0052】
本明細書で用いる用語「同種異系」は、後に同じ種の別の動物に導入される、動物に由来する任意の材料を指すように意図される。
【0053】
「治療上有効な量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医に求められている、組織、系または対象の生物学的または医学的応答を誘発する、組成物の量を指す。「治療上有効な量」という用語は、投与された場合に、治療中の疾患または疾病(例えば、固形癌)の兆候または症状について、その発症を予防するため、またはその兆候もしくは症状の1つもしくは複数をある程度緩和するために十分な組成物の量を含む。治療上有効な量は、組成物、疾病及びその重症度ならびに治療される対象の年齢、体重などに依存して変化する。
【0054】
本明細書で用いる用語である、疾病を「治療する」とは、対象が経験する疾病または疾患の少なくとも1つの兆候または症状について、頻度または重症度を低下させることを意味する。
【0055】
1種または複数種の治療薬と「併用した場合の」投与は、同時(併用)及び任意の順序の連続した投与を含む。
【0056】
本明細書で用いる用語「薬学的に受容可能な」は、化合物の生物学的活性または特性を抑制せず、かつ比較的無毒性である塩、担体または希釈剤などの材料を指すが、これらに限定されない。換言すれば、この材料は、所望されない生物学的効果を引き起こすこと、またはそれが含まれる組成物の構成成分のいずれとも有害な形で作用することもなく、個体に投与され得る。
【0057】
「コードする」は、ヌクレオチドの定義される配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)またはアミノ酸の定義された配列のどちらかを有する生物学的方法で、他のポリマー及び高分子を合成するためのテンプレートとしての役割を果たすための遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性と、それから得られる生物学的特性とを指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を作製する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。mRNAの配列と同一で、通常、配列表で提供されるヌクレオチド配列であるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると言うことが可能である。
【0058】
「単離した」とは、自然状態から変化または除去したことを意味する。例えば、生きている動物中に自然に存在する核酸またはペプチドは「単離」されないが、その自然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離」される。単離した核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、または、例えば、宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0059】
特に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、相互の縮重バージョンでありかつ同じアミノ酸配列をコードする全ヌクレオチド配列を含む。タンパク質及びRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含み得る。
【0060】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書では区別なく用いられ、本明細書に記載の方法に従順な任意の動物を指す。特定の非限定的実施形態において、患者、対象または個体は、ヒトである。
【0061】
抗体に関して、本明細書で用いられる用語「特異的に結合する」は、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識または結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種から得た抗原に特異的に結合する抗体は、1種または複数種の種から得たその抗原とも結合し得る。しかし、そのような異種間の反応性は、それ自体が特性に応じた抗体の分類を変えるものではない。別の例において、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の様々な対立遺伝子と結合し得る。しかし、このような交差反応性は、それ自体が特性に応じた抗体の分類を変えるものではない。場合によっては、「特異的結合(specific binding)」または「特異的に結合すること(specifically binding)」という用語は、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して用いられ得るが、この相互作用は、化学種の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する、例えば、抗体は、通常タンパク質というよりは特定のタンパク質構造を認識及び結合することを意味する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識した「A」及び抗体を含む反応において、エピトープA(または、遊離の非標識のA)を含む分子が存在すると、抗体に結合する標識Aの量は減少する。
【0062】
いくつかの実施形態において、特異的結合は、少なくとも約1x10-8M以下の平衡解離定数によって特徴付けられ得る(例えば、Kが小さいほど結合は強くなる)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが含まれる。さらに、第1の抗原及び1種もしくは複数種の付加的抗原に結合する多重特異性抗体、または抗原の2つの異なる領域に結合する二重特異性抗体は、それにもかかわらず、本明細書で使用される「特異的に結合する」抗体と見なされる。
【0063】
固形腫瘍は、少なくとも約10または少なくとも約100の腫瘍細胞の腫瘍塊を含む腫瘍である。固形腫瘍には、軟部組織腫瘍、原発性固形腫瘍、または転移性病変が含まれる。
【0064】
固形腫瘍の例には、例えば、肝臓、肺、乳房、リンパ、胃腸(結腸など)、尿生殖路(腎臓、尿路上皮細胞など)、前立腺及び咽頭などに影響を及ぼすものなどの様々な臓器系の肉腫、腺癌及び細胞癌を含む。腺癌には、ほとんどの結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺の非小細胞癌、小腸癌及び食道癌などの悪性腫瘍が含まれる。一実施形態において、がんは、進行期黒色腫などの黒色腫である。前述のがんの転移性病変も、本発明の方法及び組成物を用いて治療または予防することが可能である。治療され得る他のがんの例には、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎皮質癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎臓癌または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸椎腫瘍、脳幹膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類上皮癌、扁平細胞癌、アスベストに起因するものを含む環境に起因するがん及びこれらのがんの組み合わせが含まれる。好ましい実施形態において、固形腫瘍細胞は、TyrDまたはそのフラグメントを発現、または過剰発現する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍細胞は、TyrDフラグメントを含むHLA:ペプチド複合体を発現または過剰発現する。いくつかの実施形態において、TyrDフラグメントは、TyrD369-377である。いくつかの実施形態において、HLAは、HLA-A2などのクラスIのHLAである。いくつかの実施形態において、固形腫瘍細胞は、HLA-A2/TyrD369-377を発現または過剰発現する。
【0065】
いくつかの実施形態において、固形腫瘍細胞は、グリピカン3(GPC3)を発現または過剰発現する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍細胞は、US7919086、WO2014/180306、WO2018/019772、WO2016/049459、WO2003/000883、WO2006/046751、WO2007/047291、WO2016/086813、WO2016/047722、WO2016/036973、Cancer Res.2008;68:9832-9838、Proc Natl Acad Sci USA.2013 Mar 19;110(12):E1083-91で記載の抗GPC3抗体、T細胞受容体またはキメラ抗原受容体により特異的に結合されるGPC3のエピトープを発現または過剰発現するが、これらのそれぞれの内容は、あらゆる目的のために、全体が特に結合ドメイン、抗体、抗体フラグメント、相補性決定領域、この相補性決定領域を含むポリペプチド、この相補性決定領域をコードする核酸及びエピトープ特異性、ならびにそこに記載されているエピトープ特異性を決定するためのアッセイが参照により組み込まれる。いくつかの実施形態において、固形腫瘍細胞は、抗GPC3抗体GC33によって特異的に結合されるグリピカン3のエピトープを発現または過剰発現する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍は、GPC3フラグメントを含むHLA:ペプチド複合体を発現または過剰発現する。いくつかの実施形態において、HLAは、HLA-A2などのクラスIのHLAである。いくつかの実施形態において、固形腫瘍は、GPC3144-152ペプチドを含むHLA:ペプチド複合体を発現または過剰発現する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍は、GPC3298-306ペプチドを含むHLA:ペプチド複合体を発現または過剰発現する。Oncoimmunology.2012 Nov 1;1(8):1448-1450を参照のこと。
【0066】
「発現カセット」は、発現される転写物またはポリペプチドをコードする核酸に操作可能に連結された発現制御配列を含む核酸を指す。発現カセットは、発現に十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞により、またはin vitro発現システムにおいて供給され得る。発現カセットは、コスミド、プラスミド(例えば、リポソーム中のネイキッドもしくはリポソームに含まれるもの)、またはウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などのベクターの構成成分であり得る。発現カセットは、γδT細胞などの宿主細胞に存在し得る。
【0067】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、全ての可能な部分範囲を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1から6などの範囲の記述は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの部分範囲、ならびに、1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6などの範囲内の個々の数字を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0068】
キメラ抗原受容体コンストラクト:
本発明の態様には、CARをコードする核酸、ならびにそのような核酸を含むコンストラクト及びベクターが含まれる。場合によっては、核酸は、例えば、異種性の、発現カセットの構成成分である。いくつかの実施形態において、核酸は、例えば、異種性の、レトロウイルスベクターの構成成分である。いくつかの実施形態において、核酸は、例えば異種性の、αβまたはγδT細胞、好ましくは、γδT細胞の構成成分である。いくつかの実施形態において、核酸は、例えば異種性の、γT細胞及び/またはδT細胞の構成成分である。いくつかの実施形態において、核酸は、例えば異種性の、αT細胞及び/またはβT細胞の構成成分である。
【0069】
本明細書に記載されているのは、固形腫瘍細胞の表面で発現される腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合するCAR結合ドメインをコードする核酸である。模範的なTAAは、チロシナーゼ(TyrD)またはそのペプチドフラグメントである。場合によっては、TAAはグリピカン3またはそのペプチドフラグメントである。場合によっては、TAAはクラスIのHLA分子などのHLA分子に結合したペプチドである。クラスIのHLA分子(本明細書ではHLA制限チロシナーゼエピトープ、HLA制限チロシナーゼエピトープ及びMHC制限チロシナーゼ抗原とも互換的に呼ぶ)に結合するチロシナーゼペプチドは、チロシナーゼ酵素(Genebank Accession No:NP_000363.1)由来であり、通常は8~10のアミノ酸の長さで、HLA分子中の対応する結合ポケットと相互作用する2または3のアンカー残基を介して重鎖α1~α2の溝に結合する。
【0070】
チロシナーゼは、膜に結合するN-結合型糖タンパク質であり、メラニン合成の重要な酵素である。これは、全ての正常なメラノサイト及びほぼ全ての黒色腫の腫瘍試料で発現する(H.Takeuchi,et al.,2003;S.Reinke,et al.,2005)。この酵素に由来するペプチドは、MHCクラスI分子に提示され、黒色腫患者の自己由来の細胞溶解性Tリンパ球によって認識される[T.Wolfel,et al.,1994;Brichard,et al.,1993;Renkvist et al,Cancer immunology immunotherapy 2001 50:3-15;Novellino L,et al.,March 2004 update.Cancer Immunol Immunotherapy.54:187-207,2005]。腫瘍関連抗原(TAA)に由来する別の腫瘍チロシナーゼHLA制限ペプチドは、Istituto Nazionale per lo Studio e la Cura dei TumoriのWebサイト(www.istitutotumori.mi.it)で確認が可能である。
【0071】
MHCクラスI制限チロシナーゼの抗原ペプチドの非限定的な例は、WO2008/120202で提供されており、WO2008/120202の表139などのその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。本発明のいくつかの実施形態によれば、チロシナーゼ抗原ペプチドは、TyrD369-377ペプチドである。TyrD内のエピトープであるTyrDに特異的に結合する結合ドメインは、HLA(クラスIのHLAなど)に制限された上で結合するものを含むがこれらに限定されず、WO2016/199140、WO2016/199141、US9688739、同時係属出願中のPCT/IB2017/053539で記載されているものを含むが、これらに限定されない。このそれぞれの内容は、例えば、HLA制限またはHLA非依存で、TyrDまたはTyrD内のエピトープに特異的に結合する結合ドメインを同定、作製及び用いるための組成物及び方法を含むがこれらに限定されない全体が、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0072】
クラスIのHLA分子(本明細書ではHLA制限GPC3エピトープ、HLA制限GPC3エピトープ及びMHC制限GPC3抗原とも互換的に呼ぶ)に結合するGPC3ペプチドは、グリピカン3タンパク質(Genebank Accession No:NM_001164617.2)由来であり、通常は8~10のアミノ酸の長さで、HLA分子中の対応する結合ポケットと相互作用する2または3のアンカー残基を介して重鎖α1~α2の溝に結合する。
【0073】
本明細書で使用される場合、TyrDに特異的に結合する、及び/またはTyrD内のエピトープに特異的に結合する、結合ドメイン、CAR、またはCAR T細胞には、TyrDペプチドフラグメントに特異的に結合する結合ドメイン、CAR、またはCAR T細胞が含まれるが、これらに限定されない。TyrDペプチドフラグメントに特異的に結合する結合ドメイン、CAR、またはCAR T細胞は、HLA制限された上で参照のTyrDペプチドフラグメントに特異的に結合することが可能である。同様に、本明細書で使用される場合、細胞の表面でTyrDを発現する細胞は、ペプチド:HLA複合体などの細胞の表面でTyrDペプチドフラグメントを発現または過剰発現する細胞を含む。
【0074】
本明細書で使用される場合、GPC3に特異的に結合する、及び/またはGPC3内のエピトープに特異的に結合する結合ドメイン、CAR、またはCAR T細胞には、GPC3ペプチドフラグメントに特異的に結合する結合ドメイン、CAR、またはCAR T細胞が含まれるが、これらに限定されない。GPC3ペプチドフラグメントに特異的に結合する結合ドメイン、CAR、またはCAR T細胞は、HLA制限された上で参照のGPC3ペプチドフラグメントに特異的に結合することが可能である。同様に、本明細書で使用される場合、細胞の表面でTyrDを発現する細胞は、ペプチド:HLA複合体などの細胞の表面でGPC3ペプチドフラグメントを発現または過剰発現する細胞を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、結合ドメインは、細胞の表面上で完全長の機能的ポリペプチドで発現されるように抗原に結合する。いくつかの実施形態において、結合ドメインは、MHC:抗原複合体において提示されるように、抗原に結合する。いくつかの実施形態において、結合ドメインは、HLAに制限された上で抗原に結合する。MHC:抗原複合体に対して特異性を示す結合ドメインは、例えば、WO/2016/199140及びWO/2016/199141に記載されている。
【0076】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、TSGMGVS(配列番号33)を含むCDRH1、HIYWDDKRYNPSLKS(配列番号34)を含むCDRH2、KDYGSSFYAMHY(配列番号35)を含むCDRH3、KASQDIHNYIA(配列番号36)を含むCDRL1、YTSTLQP(配列番号37)を含むCDRL1、及び/またはLQYDNLWT(配列番号38)を含むCDRL2を有する抗TyrD結合ドメインをコードする。
【0077】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、DYEMH(配列番号39)(またはGYTFTDYEMH(配列番号40))を含むCDRH1、ALDPKTGDTAYSQKFKG(配列番号41)を含むCDRH2、FYSYTY(配列番号42)を含むCDRH3、RSSQSLVHSNRNTYLH(配列番号43)を含むCDRL1、KVSNRFS(配列番号44)を含むCDRL2、及び/またはSQNTHVPPT(配列番号45)を含むCDRL3を有する抗GPC3結合ドメインをコードする。
【0078】
本開示は、本明細書で提供される配列と結合するために競合する抗TyrD結合ドメインまたは抗GPC3結合ドメインについても考察する。既知の方法を用いることにより、抗TyrD結合ドメインが、参照抗体もしくは結合ドメインと同じエピトープに結合する、またはその参照抗体もしくは結合ドメインと結合するために競合するかどうかを決定することが可能である。例えば、試験抗体が参照結合ドメインと同じエピトープに結合するかどうかを決定するためには、参照結合ドメインを飽和条件下でTyrDに結合させることで可能になる。次に、TyrD分子に結合する試験結合ドメインの能力を評価することが可能である。この試験する結合ドメインが、参照結合ドメインとの飽和結合に続いてTyrDに結合することが可能である場合、この試験結合ドメインは、参照結合ドメインとは異なるエピトープに結合すると結論付けられる。一方で、試験結合ドメインが、参照結合ドメインとの飽和結合に続いてTyrDに結合できない場合、この試験結合ドメインは、参照結合ドメインにより結合されるエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0079】
結合ドメインが、参照結合ドメインと結合するために競合する場合、上述した結合方法論は、2つの方向で実施される。第1の方向では、参照結合ドメインを飽和条件下でTyrDに結合させ、続いてTyrD分子への試験結合ドメインの結合を評価する。第2の方向では、試験結合ドメインを飽和条件下でTyrD分子に結合させ、続いてTyrD分子への参照結合ドメインの結合を評価する。両方の方向において、第1の(飽和)結合ドメインのみがTyrD分子に結合可能である場合は、試験結合ドメイン及び参照結合ドメインは、TyrDへの結合のために競合すると結論付けられる。当業者により理解されるように、参照結合ドメインと結合するために競合する結合ドメインは、必ずしも参照結合ドメインと同一のエピトープに結合し得るとは限らないが、重複するまたは隣接するエピトープに結合することにより参照結合ドメインの結合を立体的に遮断し得る。抗TyrD結合ドメインとの競合及びエピトープ結合を決定するための上述した方法は、同様に、抗TyrD結合ドメインに適用され得る。
【0080】
2つの結合ドメインが、それぞれが抗原への他方の結合を競争的に阻害(ブロック)する場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。つまり、1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰な一方の結合ドメインは、競合的結合アッセイで測定される通り、他方の結合を少なくとも50%、例えば75%、90%、さらには99%阻害する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990 50:1495-1502を参照のこと)。その代わりに、一方の結合ドメインの結合を減少または排除する抗原の本質的に全てのアミノ酸変異が他方の結合を減少または排除する場合、2つの結合ドメインは同じエピトープを有する。一方の結合ドメインの結合を減少または排除するいくつかのアミノ酸変異が、他方の結合を減少または排除する場合、2つの結合ドメインは重複したエピトープを有する。
【0081】
さらに日常的な実験(例えば、ペプチド変異及び結合分析)を実施することで、観察された試験結合ドメインの結合の欠如が、実際に参照結合ドメインと同じエピトープへの結合によるものであるか、または立体的障害(または他の現象)が、観察された結合の欠如の原因であるかどうかを確かめることが可能である。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当技術分野で利用可能な他の任意の定量的または定性的結合アッセイを用いて実施され得る。
【0082】
本開示は、CDRまたはフレームワーク領域において、本明細書で提供される配列に対して「実質的同一性」または「実質的類似性」を有する抗体及びCARを提供する。用語「実質的同一性」または「実質的に同一」は、核酸またはそのフラグメントを指す場合、他の核酸(または他の核酸の相補鎖)と至適に整列させた場合、以下で述べるようにFASTA、BLASTまたはGAPなどの任意の既知の配列同一性のアルゴリズムにより測定される通り、ヌクレオチド配列の同一性が、例えば、ヌクレオチド塩基の少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%存在することを示す。参照核酸分子と実質的同一性を有する核酸分子は、特定の例において、参照核酸分子によりコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0083】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的類似性」または「実質的類似の」は、デフォルトのギャップウエイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITなどにより至適に整列させた場合、2つのペプチド配列が少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を共有していることを意味する。いくつかの態様において、同一ではない残基の位置は、保存的なアミノ酸の置換により異なる。「保存的なアミノ酸の置換」とは、アミノ酸残基が、類似した化学特性(電荷または疎水性など)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換されることである。概して、保存的なアミノ酸の置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つまたは複数のアミノ酸配列が、保存的置換により互いに異なる場合、同一性のパーセントまたは程度は、置換の保存的な性質により修復するように上方調整されてもよい。この調整を行う方法は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照のこと。そしてこれは、本明細書に参照により組み込まれる。類似の化学特性の側鎖を有するアミノ酸基の例には、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン、3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン、5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン及びヒスチジン、6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸ならびに7)硫黄含有側鎖:システインとメチオニンが含まれる。好ましい保存的なアミノ酸の置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタメート-アスパルテート及びアスパラギン-グルタミンである。その代わりに、保存的な置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443 45で開示されている、PAM250対数尤度行列に正の値を有する任意の変化であり、参照により本明細書に組み込まれる。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度行列で負でない値を有する任意の変化である。
【0084】
ポリペプチドの配列同一性及び/または類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的なアミノ酸の置換を含む種々の置換、削除及びその他の修飾に割り当てられた類似性を測定する際に用いる、類似する配列をマッチングさせる。例えば、GCGソフトウェアはデフォルトのパラメータを用いられ得るGAP及びBESTFITなどのプログラムを含み、生命体の様々な種の相同的ポリペプチドなどの近縁種であるポリペプチドの間または、野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を測定する。例えば、GCG Version6.1を参照のこと。ポリペプチド配列は、デフォルトのまたは推奨のパラメータ、つまりGCG Version6.1のプログラムでFASTAを用いても比較され得る。FASTA(FASTA2及びFASTA3など)は、クエリ配列と検索配列と間の最適なオーバーラップ領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000)上記)。配列は、ギャップ開始ペナルティが12、ギャップ拡張ペナルティが2、BLOSUM行列が62のアフィンギャップ検索を用いてSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムを用いて比較し得る。様々な生命体から得た大量の配列を含むデータベースと、本明細書に開示される配列を比較する場合、他の好ましいアルゴリズムは、デフォルトのパラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及び(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402を参照のこと。この各内容は、参照により組み込まれる。
【0085】
本明細書では、1つまたは複数の置換(保存的な置換など)を有する本明細書で開示されたHCVR、LCVR及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗TyrD CARまたは抗GPC3CARを提供する。例えば、本開示は、本明細書で開示されたHCVR、LCVR及び/またはCDR(例えばHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2またはLCDR3)アミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下または1のアミノ酸置換を備えたHCVR、LCVR及び/またはCDRアミノ酸配列を有する抗TyrD CARを含む。例えば、抗TyrD CARは、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDR(例えば、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2またはLCDR3)アミノ酸配列のいずれかと比べて、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1のアミノ酸置換(保存的なアミノ酸の置換など)を含み得る。
【0086】
同様に、本開示は、本明細書で開示されたHCVR、LCVR及び/またはCDR(例えばHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2またはLCDR3)アミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下または1のアミノ酸置換を備えたHCVR、LCVR及び/またはCDRアミノ酸配列を有する抗GPC3CARを含む。例えば、抗GPC3CARは、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDR(例えば、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2またはLCDR3)アミノ酸配列のいずれかと比べて、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1のアミノ酸置換(保存的なアミノ酸の置換など)を含み得る。
【0087】
本明細書に記載の模範的な結合ドメインは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端の順に、重鎖領域とそれに続く軽鎖領域(VH-VL)を含む。結合ドメインにおけるVH領域及びVL領域の特定の順序が明示的または暗黙的に説明されている場合、本開示は、例えば、scFVまたはscFv結合ドメインを含むCARにおいてVH及びVL領域の順番が反転している代替の実施形態を記述しているようにも理解される。したがって、VH-VLの順序の説明は、例えば、scFVまたはscFv結合ドメインを含むCARにおける代替のVL-VHの順序も説明するものである。さらに、VL-VHの順序の説明は、例えば、scFVまたはscFv結合ドメインを含むCARにおける代替のVH-VLの順序も説明するものである。
【0088】
概して、本明細書に記載のCARをコードする核酸は、結合ドメインを膜貫通ドメインに連結させるペプチドリンカーをコードする細胞外リンカー部を含む。模範的なリンカー部分には、CD8αヒンジドメインをコードするリンカー部分、例えば、配列番号1(PTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY)または配列番号2(TTTPAPRP PTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY)が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、ペプチドリンカーをコードする領域(例えば、CD8αヒンジドメイン)は、結合ドメインをコードする領域の3’及び膜貫通ドメインをコードする領域の5’である。
【0089】
本明細書に記載のCARをコードする核酸は、膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、細胞外抗原結合ドメイン、例えばヒンジを、1種または複数種の細胞内シグナル伝達成分に連結することが可能である。例えば、膜貫通ドメインは、抗原結合ドメイン、例えばヒンジを、CD3ζシグナル伝達ドメイン及び任意に1つまたは2つの共刺激エンドドメインと連結することが可能である。模範的な膜貫通ドメインには、CD8α膜貫通ドメイン、例えば、配列番号3(IWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC)が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、膜貫通ドメイン(例えば、CD8α膜貫通ドメイン)をコードする領域は、ペプチドリンカー(例えば、CD8αヒンジドメイン)をコードする領域の3’であり、1つまたは複数の細胞質ドメインをコードする領域の5’である。
【0090】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、1種または複数種の細胞質ドメインを含む細胞質領域をコードする。細胞質領域をコードする領域は、典型的には、膜貫通ドメインをコードする領域の3’である。細胞質ドメインは、典型的には、γδT細胞増殖、細胞毒性活性及び/または炎症誘発性サイトカイン発現(例えば、TNF-αまたはIFNγ)の活性化シグナルを提供するシグナル伝達ドメインである。模範的な細胞質ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態において、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号4(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGR REEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号5(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDV LDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、細胞質領域は、例えば配列番号4及び5からそれぞれ独立して選択された、複数(例えば、2、3、4、5、または6)のCD3ζシグナル伝達ドメインなどの複数(例えば、2、3、4、5、または6)のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞質領域は、複数(例えば、2、3、4、5、または6)の非CD3ζシグナル伝達ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞質領域は、非CD3ζシグナル伝達ドメイン及び複数の(例えば、2、3、4、5、または6)CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。代用または追加のシグナル伝達ドメインが含まれるが、これに限定されない。
【0091】
細胞質領域は、1種または複数種の共刺激エンドドメインを含み得る。1種または複数種の共刺激エンドドメインをコードする領域は、シグナル伝達ドメインをコードする領域の5’または3’であり得る。いくつかの実施形態において、1種または複数種の共刺激エンドドメインをコードする領域は、シグナル伝達ドメインをコードする領域の5’であり得る。いくつかの実施形態において、1種または複数種の共刺激エンドドメインをコードする領域は、シグナル伝達ドメインの領域の5’であり、1種または複数種の共刺激エンドドメインをコードする付加的な領域は、シグナル伝達ドメインの3’である。模範的な共刺激エンドドメインには、CD28、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、CD27、CD134(OX40)及びTLR2共刺激エンドドメインならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のγδ-T細胞の増殖、持続性及び/または細胞毒性活性を増加させるために、追加のシグナル伝達様式を含むことが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、CARコンストラクトは、単離した核酸の3’末端で可溶性の一般的なガンマ鎖サイトカインをコードすることが可能である。一般的なガンマ鎖サイトカインコード領域は、T2Aリンカーコード領域を介してCARコンストラクトの5’部に連結することができ、その結果、一般的なガンマ鎖サイトカインは、CARポリペプチドから切断され、細胞によって分泌される。
【0093】
いくつかの実施形態において、コンストラクトは、少なくとも1種の4-1BB共刺激エンドドメインと、任意で、4-1BB、ICOS、CD28及びCD27共刺激エンドドメインから選択される第2の共刺激エンドドメインとをコードする。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、少なくとも2種の4-1BB共刺激エンドドメインあるいは4-1BB、ICOS、CD28及びCD27から選択される1、2、3、もしくは4またはそれ以上の共刺激エンドドメインと組み合わせた2種の4-1BB共刺激エンドドメインをコードする。いくつかの実施形態において、4-1BB共刺激エンドドメインは、配列番号6(KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTT QEEDGCSCRFPEEEEGGCEL)を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、コンストラクトは、1種のCD27共刺激エンドドメインと、任意で、4-1BB、ICOS、CD28及びCD27共刺激エンドドメインから選択される第2の共刺激エンドドメインとをコードする。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、CD27共刺激エンドドメイン及び4-1BB共刺激エンドドメインをコードする。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、2種のCD27共刺激エンドドメインをコードする。いくつかの実施形態において、CD27共刺激エンドドメインは、配列番号7(QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQED YRKPEPACSP)を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、コンストラクトは、T細胞(CAR-T細胞など)の活性化、細胞毒性及び/または持続性を支持するサイトカインなどのC末端ポリペプチドの分泌を促進するように動作可能に連結された分泌シグナル、例えば、配列番号12(MALPVTALLLPLALLLHAARP)をコードする。いくつかの実施形態において、分泌シグナルは、配列番号26(MRISKPHLRSISIQKYLCLLNSHFLTEAGIHVFILGCFSAGLPKTEA)の分泌シグナルである。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、IL-15などの一般的なガンマ鎖サイトカインまたはその活性フラグメント、例えば、配列番号14(NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYT ESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS)の分泌を促進するように動作可能に連結された、配列番号12などの分泌シグナルをコードする。sIL15をコードするコドン最適化核酸配列を含む、他のIL-15配列は、WO2007/037780に開示されている。模範的な一般的なガンマ鎖サイトカインには、IL-2及びIL-15が含まれる。いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカインは、IL-2、IL-7及びIL-15から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態において、コンストラクトは、1種または複数種のマルチシストロン性リンカー領域を、例えば、シグナル伝達ドメイン及び/または共刺激エンドドメインと、サイトカインの分泌を促進するように動作可能に連結された分泌シグナルとの間でコードする。マルチシストロン性リンカー領域は、単一の転写産物からの複数の別個のポリペプチドの生成を容易にするポリペプチド配列またはRNA配列の領域である。いくつかの実施形態において、マルチシストロン性リンカー領域は、切断配列をコードする。好適な切断配列には、P2A、F2A、E2A、もしくはT2A切断配列などの自己切断配列及び/またはフューリンなどの内因性プロテアーゼにより切断される配列が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態において、切断配列はP2A切断配列である。いくつかの実施形態において、切断配列はフューリン切断配列である。いくつかの実施形態において、切断配列はP2A及びフューリン切断配列である。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号15(SGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP)のP2A切断配列である。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号16(RAKR)のフューリン切断配列である。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号17(RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENP GP)のP2A+フューリン切断配列である。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号25(GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP)のP2A切断配列である。
【0098】
いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号27(ATNFSLLKQAGDVEENPGP)のP2A切断配列であるまたはそのP2A切断配列を含む。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号28(VKQTLNNFDLLKLAGDVESNPGP)のF2A切断配列であるまたはそのF2A切断配列を含む。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号29(QCTNYALLKLAGDVESNPGP)のE2A切断配列であるまたはそのE2A切断配列を含む。いくつかの実施形態において、切断配列は配列番号30(EGRSLLTCGDVEENPGP)のT2A切断配列であるまたはそのT2A切断配列を含む。ある態様において、複数の自己切断配列は、シグナル伝達及び/または共刺激ドメインのカルボキシ末端、ならびにコードされた分泌サイトカイン(例えば、IL-15などの一般的なガンマ鎖サイトカイン)のアミノ末端をコードされ得て、そこにおいて、複数の自己切断配列は、好ましくはP2A切断配列、T2A切断配列、E2A切断配列及びF2A切断配列からなる群から独立して選択される。ある態様において、1種または複数種の自己切断配列と、内因性プロテアーゼにより切断された1種または複数種の配列は、本明細書に記載のコンストラクトでコードされる。特定の実施形態においては、内因性プロテアーゼ認識部位は、自己切断配列のアミノ末端にコードされる。
【0099】
いくつかの実施形態において、マルチシストロン性リンカー領域は、内部リボソーム侵入部位をコードする。模範的な内部リボソーム侵入部位は、配列番号31(CTAACGTTACTGGCCGAAGCCGCTTGGAATAAGGCCGGTGTGCGTTTGTCTATATGTTATTTTCCACCATATTGCCGTCTTTTGGCAATGTGAGGGCCCGGAAACCTGGCCCTGTCTTCTTGACGAGCATTCCTAGGGGTCTTTCCCCTCTCGCCAAAGGAATGCAAGGTCTGTTGAATGTCGTGAAGGAAGCAGTTCCTCTGGAAGCTTCTTGAAGACAAACAACGTCTGTAGCGACCCTTTGCAGGCAGCGGAACCCCCCACCTGGCGACAGGTGCCTCTGCGGCCAAAAGCCACGTGTATAAGATACACCTGCAAAGGCGGCACAACCCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGGATAGTTGTGGAAAGAGTCAAATGGCTCTCCTCAAGCGTATTCAACAAGGGGCTGAAGGATGCCCAGAAGGTACCCCATTGTATGGGATCTGATCTGGGGCCTCGGTGCACATGCTTTACATGTGTTTAGTCGAGGTTAAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTTGAAAAACACGATGATA)によりコードされる。
【0100】
別の模範的な内部リボソーム侵入部位は、配列番号32(AGCAGGTTTCCCCAACTGACACAAAACGTGCAACTTGAAACTCCGCCTGGTCTTTCCAGGTCTAGAGGGGTAACACTTTGTACTGCGTTTGGCTCCACGCTCGATCCACTGGCGAGTGTTAGTAACAGCACTGTTGCTTCGTAGCGGAGCATGACGGCCGTGGGAACTCCTCCTTGGTAACAAGGACCCACGGGGCCAAAAGCCACGCCCACACGGGCCCGTCATGTGTGCAACCCCAGCACGGCGACTTTACTGCGAAACCCACTTTAAAGTGACATTGAAACTGGTACCCACACACTGGTGACAGGCTAAGGATGCCCTTCAGGTACCCCGAGGTAACACGCGACACTCGGGATCTGAGAAGGGGACTGGGGCTTCTATAAAAGCGCTCGGTTTAAAAAGCTTCTATGCCTGAATAGGTGACCGGAGGTCGGCACCTTTCCTTTGCAATTACTGACCAC)によりコードされる。
【0101】
さらに好適な内部リボソーム侵入部位には、Nucleic Acids Res.2010 Jan;38(Database issue):D131-6.doi:10.1093/nar/gkp981 Epub 2009 Nov 16に記載されているもの、iresite.orgに記載されているもの、WO2018/215787に記載されているもの、GenBank accession No.KP019382.1に記載されている配列及びGenBank accession No.LT727339.1に記載されているIRESエレメントが含まれるがこれらに限定されず、これらの内容は、あらゆる目的のために、その全体が特に、本明細書に記載の内部リボソーム侵入部位及びその使用が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
切断自己切断及びIRESエレメントなどの付加的マルチシストロン性リンカー領域は、US2018/0360992及びUS8865467に開示されている。
【0103】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、配列番号8(MSVPTQVLGLLLLWLTDARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDIHNYIAWYQQKPGKAPKLLIHYTSTLQPGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCLQYDNLWTFGQGTKVEIKRGGGGSGGGGSGGGGQITLKESGPTLVKPTQTLTLTCTFSGFSLSTSGMGVSWIRQPPGKALEWLAHIYWDDDKRYNPSLKSRLTITKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCARKDYGSSFYAMHYWGQGTLVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR)、hD11抗TyrD結合ドメイン(抗TyrD369-377)、CD8αヒンジ及び膜貫通領域、4-1BB共刺激エンドドメインならびにCD3ζシグナル伝達ドメインを含むhD11-CD8-BBzポリペプチドをコードする。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗TyrD369-377-CD8-BBzポリペプチドをコードする単離した核酸は、配列番号:9(ATGTCCGTGCCTACCCAGGTGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCAAGGCGAGTCAGGACATTCACAACTATATAGCTTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCCACTATACATCCACTTTGCAACCAGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGAAGTGGATCTGGGACAGATTTTACTTTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATATTGCAACATATTACTGTCTACAGTATGATAATCTCTGGACGTTCGGTCAAGGCACCAAGGTGGAAATCAAACGGGGTGGAGGTGGATCTGGAGGAGGAGGATCCGGTGGAGGAGGTCAGATCACCTTGAAGGAGTCTGGTCCTACGCTGGTGAAACCCACACAGACCCTCACGCTGACCTGCACCTTCTCTGGGTTCTCACTCAGCACTAGTGGAATGGGTGTGTCCTGGATCCGTCAGCCCCCAGGAAAGGCCCTGGAGTGGCTTGCACACATTTATTGGGATGATGATAAGCGCTACAACCCATCTCTGAAGAGCAGGCTCACCATCACCAAGGACACCTCCAAAAACCAGGTGGTCCTTACAATGACCAACATGGACCCTGTGGACACAGCCACATATTACTGTGCACGAAAGGACTACGGTAGTAGCTTCTATGCTATGCACTACTGGGGTCAAGGAACCCTAGTCACCGTGTCGAGTACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGCAGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAA)の配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、CD8αヒンジ領域をコードするコドン最適化配列を含む。模範的なコドン最適化CD8αヒンジ領域核酸配列には、配列番号10(ACCACCACCCCTGCACCAAGGCCCCCGACTCCCGCGCCCACCATCGCGTCACA GCCTCTTAGCCTGCGACCGGAAGCATGCAGACCAGCTGCCGGGGGGGCCGTGCATACGAGAGGTTTGGACTTCGCCTGCGAT)が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、CD8αヒンジ領域は、以下の配列番号11(ACCACGACGCCAGCG CCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGAT)によりコードされる。
【0106】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、配列番号18(MSVPTQVLGLLLLWLTDARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDIHNYIAWYQQKPGKAPKLLIHYTSTLQPGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCLQYDNLWTFGQGTKVEIKRGGGGSGGGGSGGGGQITLKESGPTLVKPTQTLTLTCTFSGFSLSTSGMGVSWIRQPPGKALEWLAHIYWDDDKRYNPSLKSRLTITKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCARKDYGSSFYAMHYWGQGTLVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRRAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMALPVTALLLPLALLLHAARPNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS*)、抗TyrD hD11(抗TyrD369-377)結合ドメイン、CD8αヒンジ及び膜貫通領域、4-1BB共刺激エンドドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、フューリン-P2A切断配列ならびにIL-15ドメインに動作可能に連結された分泌シグナルを含むhD11-CD8-BBz-sIL15ポリペプチドをコードする。
【0107】
いくつかの実施形態において、hD11-CD8-BBz-sIL15ポリペプチドをコードする単離した核酸は、配列番号19(ATGTCCGTGCCTACCCAG GTGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCAAGGCGAGTCAGGACATTCACAACTATATAGCTTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCCACTATACATCCACTTTGCAACCAGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGAAGTGGATCTGGGACAGATTTTACTTTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATATTGCAACATATTACTGTCTACAGTATGATAATCTCTGGACGTTCGGTCAAGGCACCAAGGTGGAAATCAAACGGGGTGGAGGTGGATCTGGAGGAGGAGGATCCGGTGGAGGAGGTCAGATCACCTTGAAGGAGTCTGGTCCTACGCTGGTGAAACCCACACAGACCCTCACGCTGACCTGCACCTTCTCTGGGTTCTCACTCAGCACTAGTGGAATGGGTGTGTCCTGGATCCGTCAGCCCCCAGGAAAGGCCCTGGAGTGGCTTGCACACATTTATTGGGATGATGATAAGCGCTACAACCCATCTCTGAAGAGCAGGCTCACCATCACCAAGGACACCTCCAAAAACCAGGTGGTCCTTACAATGACCAACATGGACCCTGTGGACACAGCCACATATTACTGTGCACGAAAGGACTACGGTAGTAGCTTCTATGCTATGCACTACTGGGGTCAAGGAACCCTAGTCACCGTGTCGAGTACCACCACCCCTGCACCAAGGCCCCCGACTCCCGCGCCCACCATCGCGTCACAGCCTCTTAGCCTGCGACCGGAAGCATGCAGACCAGCTGCCGGGGGGGCCGTGCATACGAGAGGTTTGGACTTCGCCTGCGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGCAGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCCGCGCGAAGCGATCAGGCAGCGGGGCGACAAATTTCAGCCTTCTGAAACAAGCAGGCGACGTGGAAGAAAACCCCGGTCCAATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGAACTGGGTGAATGTAATAAGTGATTTGAAAAAAATTGAAGATCTTATTCAATCTATGCATATTGATGCTACTTTATATACGGAAAGTGATGTTCACCCCAGTTGCAAAGTAACAGCAATGAAGTGCTTTCTCTTGGAGTTACAAGTTATTTCACTTGAGTCCGGAGATGCAAGTATTCATGATACAGTAGAAAATCTGATCATCCTAGCAAACAACAGTTTGTCTTCTAATGGGAATGTAACAGAATCTGGATGCAAAGAATGTGAGGAACTGGAGGAAAAAAATATTAAAGAATTTTTGCAGAGTTTTGTACATATTGTCCAAATGTTCATCAACACTTCTTGA)の配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、配列番号20(MSVPTQVLGLLLLWLTDARCQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYEMHWVRQAPGQGLEWMGALDPKTGDTAYSQKFKGRVTLTADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCTRFYSYTYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGDVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHSNRNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHVPPTFGQGTKLEIKTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*)、GC33抗GPC3結合ドメイン、CD8αヒンジ及び膜貫通領域、4-1BB共刺激エンドドメインならびにCD3ζシグナル伝達ドメインを含むポリペプチドをコードする。
【0109】
いくつかの実施形態において、GC33-CD8-BBzポリペプチドをコードする単離した核酸は、配列番号21(ATGTCCGTGCCTACCCAGG TGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCCAAGTGCAGCTGGTCCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAAAAGCCTGGCGCCAGCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCTACACCTTCACCGACTACGAGATGCACTGGGTGCGGCAGGCCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGCGCTCTGGACCCCAAGACCGGCGACACCGCTTATAGCCAGAAGTTCAAGGGCAGAGTGACCCTGACAGCTGATAAGAGCACAAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGACCAGCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCACCAGATTCTACAGCTACACCTACTGGGGCCAGGGGACCCTGGTGACAGTGTCTAGCGGTGGAGGTGGATCTGGAGGAGGAGGATCCGGTGGAGGAGGTGATGTGGTGATGACCCAGAGCCCTCTGAGCCTGCCTGTGACCCCTGGAGAGCCTGCCAGCATCAGCTGCAGAAGCAGCCAATCTCTGGTGCACAGCAACCGGAACACATACCTGCACTGGTACCTGCAGAAACCTGGCCAGAGCCCCCAGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACAGATTCAGCGGCGTGCCTGATAGATTCAGCGGATCTGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGAAGATCTCTAGAGTGGAAGCCGAGGACGTGGGCGTGTACTACTGCAGCCAGAACACCCACGTGCCCCCCACCTTCGGCCAGGGCACAAAGCTGGAAATCAAGACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGCAGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAA)の配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、配列番号22(MSVPTQVLGLLLLWLTDARCQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYEMHWVRQAPGQGLEWMGALDPKTGDTAYSQKFKGRVTLTADKSTSTAYMELSSLTSEDTAVYYCTRFYSYTYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGDVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHSNRNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHVPPTFGQGTKLEIKTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMALPVTALLLPLALLLHAARPNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS*)、GC33抗GPC3結合ドメイン、CD8αヒンジ及び膜貫通領域、4-1BB共刺激エンドドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、フューリン及びP2A切断領域ならびにIL15ドメインに動作可能に連結された分泌シグナルを含むポリペプチドをコードする。
【0111】
いくつかの実施形態において、GC33-CD8-BBz-sIL15ポリペプチドをコードする単離した核酸は、配列番号23(ATGTCCGTGCCTACCCAGGTGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCCAAGTGCAGCTGGTCCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAAAAGCCTGGCGCCAGCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCTACACCTTCACCGACTACGAGATGCACTGGGTGCGGCAGGCCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGCGCTCTGGACCCCAAGACCGGCGACACCGCTTATAGCCAGAAGTTCAAGGGCAGAGTGACCCTGACAGCTGATAAGAGCACAAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGACCAGCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCACCAGATTCTACAGCTACACCTACTGGGGCCAGGGGACCCTGGTGACAGTGTCTAGCGGTGGAGGTGGATCTGGAGGAGGAGGATCCGGTGGAGGAGGTGATGTGGTGATGACCCAGAGCCCTCTGAGCCTGCCTGTGACCCCTGGAGAGCCTGCCAGCATCAGCTGCAGAAGCAGCCAATCTCTGGTGCACAGCAACCGGAACACATACCTGCACTGGTACCTGCAGAAACCTGGCCAGAGCCCCCAGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACAGATTCAGCGGCGTGCCTGATAGATTCAGCGGATCTGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGAAGATCTCTAGAGTGGAAGCCGAGGACGTGGGCGTGTACTACTGCAGCCAGAACACCCACGTGCCCCCCACCTTCGGCCAGGGCACAAAGCTGGAAATCAAGACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGCAGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCGGTAGCGGGGCTACGAACTTCTCCCTTCTTAAACAAGCGGGAGACGTGGAAGAAAATCCCGGACCTATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGAACTGGGTGAATGTAATAAGTGATTTGAAAAAAATTGAAGATCTTATTCAATCTATGCATATTGATGCTACTTTATATACGGAAAGTGATGTTCACCCCAGTTGCAAAGTAACAGCAATGAAGTGCTTTCTCTTGGAGTTACAAGTTATTTCACTTGAGTCCGGAGATGCAAGTATTCATGATACAGTAGAAAATCTGATCATCCTAGCAAACAACAGTTTGTCTTCTAATGGGAATGTAACAGAATCTGGATGCAAAGAATGTGAGGAACTGGAGGAAAAAAATATTAAAGAATTTTTGCAGAGTTTTGTACATATTGTCCAAATGTTCATCAACACTTCTTGA)の配列を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、GC33-CD8-BBz-sIL15ポリペプチドをコードする単離した核酸は、配列番号24(ATGTCCGTGCCTACCCAGGTGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCCAAGTGCAGCTGGTCCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAAAAGCCTGGCGCCAGCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCTACACCTTCACCGACTACGAGATGCACTGGGTGCGGCAGGCCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGCGCTCTGGACCCCAAGACCGGCGACACCGCTTATAGCCAGAAGTTCAAGGGCAGAGTGACCCTGACAGCTGATAAGAGCACAAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGACCAGCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCACCAGATTCTACAGCTACACCTACTGGGGCCAGGGGACCCTGGTGACAGTGTCTAGCGGTGGAGGTGGATCTGGAGGAGGAGGATCCGGTGGAGGAGGTGATGTGGTGATGACCCAGAGCCCTCTGAGCCTGCCTGTGACCCCTGGAGAGCCTGCCAGCATCAGCTGCAGAAGCAGCCAATCTCTGGTGCACAGCAACCGGAACACATACCTGCACTGGTACCTGCAGAAACCTGGCCAGAGCCCCCAGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACAGATTCAGCGGCGTGCCTGATAGATTCAGCGGATCTGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGAAGATCTCTAGAGTGGAAGCCGAGGACGTGGGCGTGTACTACTGCAGCCAGAACACCCACGTGCCCCCCACCTTCGGCCAGGGCACAAAGCTGGAAATCAAGACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGCAGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCGGTAGCGGGGCTACGAACTTCTCCCTTCTTAAACAAGCGGGAGACGTGGAAGAAAATCCCGGACCTATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGAACTGGGTGAATGTGATCAGCGATCTGAAGAAGATCGAGGATCTGATCCAGTCCATGCACATCGATGCCACCCTGTATACCGAGAGCGATGTGCACCCCAGCTGCAAGGTGACCGCCATGAAGTGCTTTCTGCTGGAGCTGCAGGTGATCTCCCTGGAGTCCGGAGATGCCAGCATCCACGATACCGTGGAGAATCTGATCATCCTGGCCAACAACAGCCTGTCCTCCAATGGCAATGTGACCGAGTCGGGATGCAAGGAGTGCGAGGAGCTGGAGGAGAAGAATATCAAGGAGTTTCTGCAGAGCTTTGTACATATTGTCCAAATGTTCATCAACACTTCTTGA)の配列を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、単離した核酸は、直鎖状核酸である。いくつかの実施形態において、単離した核酸は、プラスミドベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター(ガンマレトロウイルスベクターなど)、またはレンチウイルスベクターなどのベクターである。いくつかの実施形態において、単離した核酸、または例えば、結合ドメイン膜貫通ドメイン及び1種または複数種のシグナル伝達及び/または共刺激エンドドメインを含む、単離した核酸の連続した一部は、宿主γδT細胞などの宿主細胞のゲノムに組み込まれる。模範的な実施形態において、単離した核酸はレトロウイルスベクターである。
【0114】
γδT細胞:
本発明の態様は、本明細書に記載の単離した核酸を機能的に発現し、それによりγδT細胞の表面でCARを発現するγδT細胞を含む。
【0115】
本発明の態様は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す固形腫瘍細胞に対してin vitroまたはin vivoの細胞毒性活性を有するγδT細胞を代用的または追加的に含み得る。場合によっては、細胞毒性活性は生来の活性である。場合によっては、細胞毒性は、固形腫瘍細胞の表面で発現するTAAに特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約25%)、または完全にある。場合によっては、このγδT細胞において、γδT細胞の固形腫瘍細胞傷害活性が、対照γδT細胞におけるin vitro及び/またはin vivoの固形腫瘍細胞傷害活性の生来のレベルより大きいことを示す。場合によっては、対照γδT細胞はCARコンストラクトを含まない。場合によっては、対照γδT細胞は、本明細書に記載の結合ドメイン、本明細書に記載のヒンジ領域、本明細書に記載の膜貫通ドメイン、本明細書に記載のシグナル伝達ドメイン及び/または本明細書に記載の共刺激エンドドメインを欠くCARコンストラクトを含む。
【0116】
場合によっては、細胞毒性は、TyrDまたは、TyrD369-377などのTyrD内のエピトープに特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約25%)、または完全にある。場合によっては、細胞毒性は、HLAに制限された(例えばクラスIのHLAに制限された)上で、TyrD、またはTyrD369-377などのTyrD内のエピトープに特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約25%)、または完全にある。場合によっては、細胞毒性は、HLA-A2/TyrD369-377に特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約25%)、または完全にある。場合によっては、γδT細胞は、TyrDまたはそのペプチドフラグメントと特異的に結合する、本明細書に記載の単離した核酸によりコードされるCARを機能的に発現する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のγδT細胞は、HLAに制限された(例えば、HLAクラスIに制限された)細胞毒性を示し得る。他の実施形態においては、ほとんど(>50%)、実質的に全て(>90%)、または全ての細胞毒性活性は、HLAに制限(例えば、HLAクラスIに制限)されない。HLAに制限される細胞毒性活性は、HLA(例えば、HLAクラスI)(null)腫瘍細胞株に対するin vitro細胞毒性を、HLA+(例えば、HLAクラスI+)腫瘍細胞株に対するin vitro細胞毒性と比較することにより評価することが可能である。いくつかの実施形態において、HLAに制限される細胞毒性活性は、T細胞受容体様結合ドメインの使用により、少なくとも部分的に、有意に(>25%)、または完全に提供される。結合ドメインのようなT細胞受容体は、MHC分子と複合体の中の細胞の表面に提示されたときに抗原を特異的に認識する結合ドメインである。T細胞受容体様結合ドメインは、例えば、WO2016/199141にさらに記載されている。
【0118】
本明細書に記載のγδT細胞は、強力及び/または持続的な固形腫瘍細胞傷害活性を示すことが可能である。場合によっては、固形腫瘍細胞傷害活性は、固形腫瘍細胞との最初の接触から少なくとも約6日から120日間、または少なくとも約6日から180日間持続する可能性がある。場合によっては、本明細書に記載のγδT細胞またはその子孫の固形腫瘍細胞傷害活性は、固形腫瘍細胞との最初の接触からまたは本明細書に記載のγδT細胞の投与から、少なくとも約6日から120日、または少なくとも約6日から180日間持続することが可能である。この持続的な固形腫瘍細胞傷害活性は、in vitro、in vivo、またはin vitroとin vivoの両方で示され得る。
【0119】
本発明の態様は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現または過剰発現を示す細胞との接触に応じて増殖するγδT細胞を代用的または追加的に含み得る。腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現を示す細胞は、正常な内皮細胞などの正常な細胞であってもよい。腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現または過剰発現を示す細胞は、固形腫瘍細胞であってもよい。場合によっては、増殖は生来の活性である。場合によっては、増殖は、細胞の表面で発現するTAAに特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約20%もしくは>約25%)、または完全にある。場合によっては、γδT細胞は、対照γδT細胞と比較して、in vitro及び/またはin vivoのより高いレベルの増殖を示す。場合によっては、対照γδT細胞はCARコンストラクトを含まない。場合によっては、対照γδT細胞は、本明細書に記載の結合ドメイン、本明細書に記載のヒンジ領域、本明細書に記載の膜貫通ドメイン、本明細書に記載のシグナル伝達ドメイン及び/または本明細書に記載の共刺激エンドドメインを欠くCARコンストラクトを含む。
【0120】
場合によっては、増殖は、TyrDまたはTyrD内のエピトープに特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約20%もしくは>約25%)、または完全にある。場合によっては、TyrDの細胞表面発現を示す細胞との接触に応答して増殖を示すγδT細胞は、本明細書に記載の単離した核酸によりコードされるTyrD特異的CARを機能的に発現する。
【0121】
本明細書に記載のγδT細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現または過剰発現を示す細胞を含む宿主生物において強力及び/または持続的な増殖を示すことが可能である。場合によっては、増殖は、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現または過剰発現を示す細胞との最初の接触から、またはγδT細胞の宿主生物への投与日から、少なくとも約6日から120日間、または少なくとも約6日から180日間持続し得る。場合によっては、腫瘍関連抗原(TAA)の細胞表面発現または過剰発現を示す細胞を含む宿主生物における、本明細書に記載のγδT細胞またはその子孫の増殖は、細胞との最初の接触から、またはγδT細胞の宿主生物への最初の投与日から、少なくとも約6日から120日間、または少なくとも約6日から180日間持続し得る。場合によっては、宿主生物中の増殖は、TyrDまたはTyrD内のエピトープに特異的に結合する結合ドメインを有するCARコンストラクトの存在に起因して、少なくとも部分的に、有意に(>約20%もしくは>約25%)、または完全にある。場合によっては、TyrDの細胞表面発現を示す細胞を含む宿主生物中の増殖を示すγδT細胞は、本明細書に記載の単離した核酸によりコードされるTyrD特異的CARを機能的に発現する。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のγδT細胞は、細胞表面のTyrDまたはそのペプチドフラグメントを発現または過剰発現する細胞との接触後に、腫瘍壊死因子アルファまたはインターフェロンガンマなどの炎症誘発性サイトカインを発現、または持続的に発現する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のγδT細胞は、例えば、細胞表面のTyrDまたはそのペプチドフラグメントを発現または過剰発現する細胞を含む宿主生物中などの、細胞表面のTyrDまたはそのペプチドフラグメントを発現または過剰発現する細胞との接触後に、腫瘍壊死因子アルファまたはインターフェロンガンマなどの炎症誘発性サイトカインを発現、または持続的に発現する。
【0123】
いくつかの実施形態において、γδT細胞またはγδT細胞を含む医薬組成物は、同種異系宿主に導入されたときに、移植片対宿主応答を実質的に示さない、または示さない。いくつかの実施形態において、γδT細胞またはγδT細胞を含む医薬組成物は、同種異系宿主に導入されたときに、移植片対宿主応答を臨床的に受容可能なレベルで示す。いくつかの実施形態において、臨床的に受容可能なレベルとは、治療上有効な治療を達成するためにγδT細胞治療の中止を必要としない移植片対宿主応答の量である。いくつかの実施形態において、移植片対宿主応答(GvHD)の臨床的に受容可能なレベルは、適用可能なIBMTR評価尺度により、グレードCよりも重症度が低い急性応答である。急性移植片対宿主反応の重症度は、皮膚、肝臓及び消化管の関与の程度を評価することで決定される。個々の臓器の病変のステージが組み合わされて、予後的意義を有する全体的なグレードが作製される。グレードI(A)GvHDは軽度の疾病、グレードII(B)GvHDは中等度、グレードIII(C)は重度、グレードIV(D)は生命を脅かすものと見なす。IBMTRグレーディングシステムでは、急性GvHDの重症度を次のように定義している(Rowlings et al.,Br J Haematol 1997;97:855):
●グレードA-肝臓や胃腸の病変がなく、ステージ1の皮膚病変のみ(体の<25%の斑状丘疹状皮疹)
●グレードB-ステージ2の皮膚病変、ステージ1から2の腸または肝臓の病変
●グレードC-任意の臓器系のステージ3の病変(全身性紅皮症、ビリルビン6.1~15.0mg/dL、下痢1500~2000mL/日)
●グレードD-任意の臓器系のステージ4の病変(水疱の形成を伴う全身性紅皮症、ビリルビン>15mg/dL、下痢>2000mL/日または疼痛またはイレウス)。
Schoemans et al.,Bone Marrow Transplantation volume 53,pages1401-1415(2018)の表1及び表2も参照のこと。また、これは急性GvHDを評価及びグレーディングするための基準も開示している。
【0124】
いくつかの実施形態において、γδT細胞、またはγδT細胞を含む医薬組成物は、同種異系宿主に投与された、対照αβT細胞または対照αβT細胞を含む対照医薬組成物により示された移植片対宿主応答と比較して、同種異系宿主に導入された場合、移植片対宿主応答の減少または実質的な減少を示す。場合によっては、対照αβT細胞は、同種異系の遺伝子操作していない対照αβT細胞である。場合によっては、対照αβT細胞は、CARを含まない、または参照γδT細胞と同じCARを含まない。
【0125】
本明細書に記載のγδT細胞は、δ1、δ2、δ3もしくはδ4γδT細胞、またはそれらの組み合わせであり得る。場合によっては、γδT細胞は、ほとんど(>50%)、実質的に(>90%)、本質的に全て、または完全にδ2γδT細胞である。場合によっては、γδT細胞は、ほとんど(>50%)、実質的に(>90%)、本質的に全て、または完全にδ1γδT細胞である。
【0126】
γδT細胞は、同種異系または自己由来ドナーから入手可能である。γδT細胞は、ex vivoで、部分的または完全的に精製または精製されないかつ増幅され得る。ex vivoの増殖のための方法及び組成物には、WO2017/197347に記載のものが含まれるが、これに限定されない。この増殖は、CARコンストラクトがγδT細胞(複数可)に導入される前もしくは後、または前後に実施され得る。
【0127】
本明細書に記載のγδT細胞は、養子細胞移植で用いるために、例えば、凍結保存して保存され得る。
【0128】
腫瘍細胞を阻害または殺傷する方法
固形腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を有する、1種もしくは複数種の遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物を、任意の順序でまたは同時に対象に投与し得る。同時に投与される場合、本発明の複数の遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物は、静脈内注射などの単一の統一された形態で、または複数の静脈内注入、皮下注射または錠剤などの複数の形態で提供され得る。本発明の遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作されたγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物は、単一のパッケージまたは複数のパッケージに一緒にまたは別々に包装され得る。本発明の遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作されたγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物の1つまたはその全ては、複数の用量で与えられ得る。同時に投与されない場合、複数の投与間のタイミングは、約1週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または約1年まで変化し得る。場合によっては、本発明の遺伝子操作していない濃縮されたγδT細胞集団、遺伝子操作した濃縮されたγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物は、対象への投与後にin vivoで、対象の体内で増殖し得る。1種または複数種の遺伝子操作していないγδT細胞集団、1種または複数種の遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物を凍結して、同じ細胞調製物での複数の処置をするための細胞を提供することが可能である。本開示の1種または複数種の遺伝子操作していないγδT細胞集団、1種または複数種の遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物ならびにそれを含む医薬組成物は、キットとして包装され得る。キットは、遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物ならびにそれを含む組成物の使用に関する指示(書面による指示など)を含み得る。
【0129】
場合によっては、固形癌を治療する方法は、遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物の治療上有効な量を対象に投与することを含み、そこにおいて、投与することで、固形癌を治療する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物の治療上有効な量は、少なくとも約10秒、30秒、1分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または1年投与される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物の治療上有効な量は、少なくとも1週間投与される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物の治療上有効な量は、少なくとも2週間投与される。
【0130】
本明細書に記載の遺伝子操作していないγδT細胞集団、遺伝子操作したγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物は、疾病もしくは症状の発生前、発生中もしくは発生後に投与することが可能であり、γδT細胞集団を含む医薬組成物を投与するタイミングは変化し得る。例えば、γδT細胞集団は、予防薬として用いることが可能であり、疾病もしくは症状が発生する可能性を低減するために、症状または疾病の傾向が見られる対象に連続的に投与することが可能である。初回投与は、本明細書に記載の任意の製剤を用いる本明細書に記載の任意の経路によるなどの実用的な任意の経路を介して行われ得る。いくらかの実施例において、本開示のγδT細胞集団の投与は、静脈内投与である。γδT細胞集団の1回または複数回の投与量は、固形癌の発症後、実行可能になり次第すぐと、例えば、約24時間から約48時間、約48時間から約1週間、約1週間から約2週間、約2週間から約1か月、約1か月から約3か月の免疫病を治療するために必要な時間の間投与され得る。いくつかの実施形態において、γδT細胞集団の1回または複数回の投与量は、がんの発症後と、他の治療の前後とに何年も投与され得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、γδT細胞集団は、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法で同時にまたは連続して投与される。本明細書で使用される「一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の方法」は、少なくとも1つの一般的なガンマ鎖サイトカインのレベルが対象において上昇するように、対象の生理的状態を変化させる方法または方法の組み合わせを指す。いくつかの実施形態において、この方法は、IL-2、IL-7及びIL-15からなる群から選択される1種以上の一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)のレベルを上昇させ、好ましくは、そこにおいて、この方法は対象におけるIL-15のレベルを上昇させる。いくつかの実施形態において、この方法はリンパ球の枯渇化を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、対象に1種または複数種の一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を投与することを含む。場合によっては、IL-2、IL-7及び/またはIL-15、好ましくはIL-15が投与される。いくつかの実施形態において、この方法は、投与されたγδT細胞などから、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を分泌することを含む。場合によっては、IL-2、IL-7及び/またはIL-15、好ましくはIL-15が分泌される。
【0132】
いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の投与方法は、γδT細胞(複数可)を導入する前のリンパ球の枯渇化を含む。いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の投与方法は、γδT細胞(複数可)の導入と同時に、または一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の有効量を連続して投与することで、その導入したγδT細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはその組み合わせを増大させることを含み、好ましくは、そこにおいてこの方法は、IL-2またはその1種もしくは複数種のミメティックを投与することを含み、より好ましくは、そこにおいてこの方法は、IL-15またはその1種もしくは複数種のミメティックを投与することを含む。一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の投与量は、γδT細胞(複数可)を導入する前及び/または導入後に、導入したγδT細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはその組み合わせを増大し得る。IL-15の模範的な量には、24時間ごとに0.01~10μg/kg/用量の間が含まれるがこれに限定されない。IL-2の模範的な量には、8~48時間ごとに約3×10と約22×10ユニットが含まれるが、これらに限定されない。例えば、RCCでのIL2の投薬計画は、最大14回の投与で15分間にわたって注入される600,000国際単位/kg(0.037mg/kg)静注、8時間おきである。
【0133】
いくつかの実施形態において、一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)を上昇させる1つまたは複数の投与方法は、γδT細胞(複数可)の投与前と、γδT細胞(複数可)の導入との同時の投与前と、またはその導入したγδT細胞(複数可)の増殖、細胞毒性活性、持続性、またはそれらの組み合わせを増大させるために有効な一般的なガンマ鎖サイトカイン(複数可)の連続した投与前とのリンパ球の枯渇化を含む。
【実施例
【0134】
実施例1
1x10/mLのヒトPBMCを、24ウェルプレート(Costar)に、IL-2(100U/mL)存在下で5日間、プレコートした抗Vδ1抗体D1-08またはD1-35でプレコートし、改変した培養培地で活性化させた。5日目に、細胞培養物を、レトロネクチンの存在下で抗TyrDキメラ抗原受容体(配列番号8)をコードするγ-レトロウイルスコンストラクトで形質導入させた。6日目に、細胞を改変した培養培地に戻し、必要に応じてフィーディング及びIL-2の補充によりさらに増殖させた。17、18、または19日目に細胞を回収し、AutoMACS(登録商標)キット(Miltenyi Biotec)を用いて、残存するαβT細胞を枯渇させた。γδ細胞集団の純度と形質導入効率を、FACSにより評価した。並行して、形質導入していない細胞培養物を、レトロウイルスの上清を添加することなく、同じ方法で増殖させた。図2に示す通り、形質導入していない増殖Vδ1細胞は、チロシナーゼを発現し、Tyr369-377ペプチドを提示することが知られている、526及びWM266.1-Luc黒色腫細胞株に対してある程度の細胞毒性を誘発した。この細胞毒性は、抗TyrD CARの導入によって増強された。細胞毒性は、示したE/T比で18時間共培養した後に、発光基質D-ルシフェリン(Perkin Elmer)を添加後、96ウェルプレートで全発光測定により測定した。
【0135】
実施例2
WM266.4-Luc細胞(動物あたり4x10)をNSGマウス(Jackson Labs)に皮下移植した。腫瘍が100~200mmのサイズに達したら、動物を6x10の抗TyrD CAR+Vδ1細胞で治療した。動物には、試験が終わるまで週に3回、IL-2(60000U/用量)を同時に投与した。結果を図3に示す。図3に示す通り、抗TyrD CAR+Vδ1細胞を投与された動物は、腫瘍量の強力な制御を示した。
【0136】
実施例3
Tyr CARコンストラクトを上述の通りにVδ1T細胞に導入して、細胞を増殖させ、WM266.4-Luc細胞に対する細胞毒性アッセイで試験した。対照、非TyrD標的CARコンストラクトを対照として用いた。結果は図5に示すが、抗TyrD CARコンストラクトによってもたらされる細胞毒性が増大している。
【0137】
実施例4
IL-2(100U/mL)存在下で5日間抗Vδ1抗体D1-08またはD1-35でプレコートした24ウェルプレート(Costar)で、成長培地中の1x10/mLのヒトPBMCを活性化させた。5日目に、細胞培養物は、レトロネクチンの存在下で、抗GPC3キメラ抗原受容体(配列番号20(GC33CAR)または配列番号22(GC33CAR+sIL15及びGC33CAR+CO sIL15))をコードするγ-レトロウイルスコンストラクトで形質導入させた。GC33CARは、配列番号21の核酸配列によってコードされる。GC33CAR+sIL15は、配列番号23の核酸配列によってコードされ、GC33CAR+CO sIL15は、コドン最適化されたsIL15コード領域を含み、配列番号24の核酸配列によってコードされる。6日目に、細胞を成長培地に戻し、必要に応じてフィーディング及びIL-2の補充によりさらに増殖させた。17、18、または19日目に細胞を回収し、AutoMACS(登録商標)キット(Miltenyi Biotec)を用いて、残存するαβT細胞を枯渇させた。γδ細胞集団の純度と形質導入効率を、FACSにより評価した(図6)。手短に言えば、CAR-T細胞は、1μg/mLの可溶性遺伝子組換えビオチン化GPC3(R&D Systems)で細胞をインキュベートすることにより染色した。結合の検出は、ストレプトアビジン-PEを製造元が推奨する1:500の希釈率で用いて実施した。
【0138】
並行して、形質導入していない細胞培養物を、レトロウイルスの上清を添加することなく、同じ方法で増殖させた。増殖した細胞を、GPC3陽性(HepG2、Hep3B、PLC/PRF/5)のin vitro細胞毒性アッセイで試験した。図7に示す通り、形質導入していない増殖Vδ1細胞は、GPC3を発現することが知られている、肝臓癌に対してある程度の細胞毒性を誘発する。この細胞毒性は、タンデムに発現するように遺伝子操作したsIL15サイトカインの有無にかかわらず、GPC3CARの導入によって強化される。細胞毒性は、示したE/T比で18時間共培養した後に、発光基質D-ルシフェリン(Perkin Elmer)を添加後、96ウェルプレートで全発光測定により測定した。
【0139】
前述は本発明の原理を単に例示したものに過ぎない。当業者であれば、本明細書では明示的に説明または図示していないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案することが可能であろうことが理解されよう。さらに、本明細書中に列挙した全ての実施例及び条件付き言語は、主に、本発明の原理及び本技術を促進するために本発明者らが寄与する概念への読者の理解を支援することを意図したものであり、そのような具体的に列挙した実施例及び条件に限定されるものではないと解釈すべきである。さらに、本発明の原理、態様及びそれらの特定の実施例を列挙する本明細書中の全ての記述は、その構造的等価物と機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような均等物は、現在公知の等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち構造にかかわらず同じ機能を発揮するように開発された任意の要素を含むことが意図されている。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示し、記載した模範的な態様に限定されることを意図されてはいない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲により具体化される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022513321000001.app
【国際調査報告】