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特表2022-513371ポリデオキシヌクレオチド合成のための改変テンプレート非依存性酵素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ポリデオキシヌクレオチド合成のための改変テンプレート非依存性酵素
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/10 20060101AFI20220131BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C07K19/00
C12N15/54
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547038
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019057014
(87)【国際公開番号】W WO2020081985
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】16/165,465
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517056907
【氏名又は名称】モレキュラー アッセンブリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エフカビッチ, ジェイ. ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】タブス, ジュリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シンハ, プレム
(72)【発明者】
【氏名】ステック, ボグスロー
【テーマコード(参考)】
4B050
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD11
4B050LL10
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ポリメラーゼ(例えば、テンプレートを使用することなく、除去可能な3’-O-ブロッキング部分を含むヌクレオチドを核酸イニシエーターに結合し得る改変された末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT))を同定するための方法を包含する。本発明はさらに、上記同定されたポリメラーゼ、および所定のオリゴヌクレオチド配列のデノボ合成のために上記ポリメラーゼを使用する方法を包含する。本発明は、テンプレートの非存在下でオリゴヌクレオチドのデノボ配列決定のために使用され得る改変された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)酵素を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GGFRRアミノ酸モチーフにおいて変異を含む改変された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)であって、前記改変されたTdTは、除去可能な3’-O-ブロッキング部分を含むヌクレオチドアナログを核酸イニシエーターの3’-OHに付加し得る、改変された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
前記改変されたTdTは、天然のTdTと比較して、増大した速度で前記除去可能な3’-O-ブロッキング部分を含むヌクレオチドアナログを前記核酸イニシエーターの3’-OHに付加し得る、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項3】
前記改変されたTdTは、TGSRアミノ酸モチーフにおいて変異をさらに含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項4】
前記改変されたTdTは、N末端t-138ウシTdTおよび前記N末端に融合されたタンパク質タグ配列を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項5】
前記改変されたTdTは、N末端t-151ウシTdTおよび前記N末端に融合されたタンパク質タグ配列を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項6】
前記改変されたTdTは、N末端t-160ウシTdTおよび前記N末端に融合されたタンパク質タグ配列を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項7】
前記改変されたTdTは、除去可能な3’-O-ブロッキング部分で改変された、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミンデオキシリボヌクレオチドを付加し得る、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項8】
前記ヌクレオチドは、2’-デオキシリボヌクレオチドである、請求項7に記載の改変されたTdT。
【請求項9】
前記改変されたTdTは、除去可能な3’-O-ブロッキング部分で改変されたアデニン、シトシン、グアニン、およびウラシルリボヌクレオチドを付加し得る。請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項10】
前記除去可能な3’-O-ブロッキング部分は、3’-O-アジドメチル基を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項11】
前記除去可能な3’-O-ブロッキング部分は、3’-O-アミノ基を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項12】
前記除去可能な3’-O-ブロッキング部分は、3’-O-アリル基を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項13】
前記除去可能な3’-O-ブロッキング部分は、O-フェノキシアセチル;O-メトキシアセチル;O-アセチル;O-(p-トルエン)スルホネート;O-ホスフェート;O-ニトレート;O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル;O-テトラヒドロチオピラニル;O-[5-メチル]-テトラヒドロフラニル;O-[2-メチル,4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル;O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニル;およびO-テトラヒドロチオフラニルからなる群より選択される、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項14】
前記改変されたTdTは、3’-O-ブロックされたヌクレオチド5’-トリホスフェートを取り込み得、前記除去可能なブロッキング部分は、エステル、エーテル、カルボニトリル、ホスフェート、カーボネート、カルバメート、ヒドロキシルアミン、ボレート、ニトレート、糖、ホスホルアミド、ホスホルアミデート、フェニルスルフェネート、スルフェート、スルホンおよびアミノ酸から選択される基を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項15】
前記改変されたTdTは、約30℃の反応温度で改変されたヌクレオチドを取り込み得る、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項16】
前記改変されたTdTは、30℃~80℃の反応温度で改変されたヌクレオチドを取り込み得る、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項17】
前記改変されたTdTは、1000μMまたはこれ未満の濃度で改変されたヌクレオチドを取り込み得る、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項18】
前記改変されたTdTは、100μMまたはこれ未満の濃度で改変されたヌクレオチドを取り込み得る、請求項17に記載の改変されたTdT。
【請求項19】
前記改変されたTdTは、配列番号2、4、6、または8と少なくとも90%同一である核酸配列を含むゲノムを有する生物によって発現される、請求項1に記載の改変されたTdT。
【請求項20】
前記GGFRRモチーフは、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、またはHから選択される変異を含む、請求項1に記載の改変されたTdT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年10月19日出願の米国特許出願第16/165,465号(その内容は、本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、所望の配列を有するポリヌクレオチドの、テンプレートを使用せずにデノボ合成するための改変された酵素に関する。よって、本発明は、研究、遺伝子工学、および遺伝子治療のための種々の配列および種々の長さのポリヌクレオチドのライブラリーを作製する能力を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
大部分のデノボ核酸配列は、30年より前に開発された固相ホスホルアミダイト技術を使用して合成される。その技術は、天然の(または非天然の)核酸塩基に対応するホスホルアミダイト試薬から構築される配列の連続的脱保護および合成を伴う。しかし、ホスホルアミダイト核酸合成は、長さにおいて200塩基対(bp)を超える核酸が、高率の破損および副反応を経験するという点において長さに制限がある。さらに、ホスホルアミダイト合成は、毒性の副生成物を生じ、この廃棄物の処分は、核酸合成器の利用可能性を制限し、契約オリゴ生成の費用を増大させる(オリゴヌクレオチド合成の年間需要は、300,000ガロン超もの危険な化学廃棄物(アセトニトリル、トリクロロ酢酸、トルエン、テトラヒドロフラン、およびピリジンが挙げられる)の原因であると予測される。LeProustら, Nucleic Acids Res., vol. 38(8), p.2522-2540, (2010)(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。従って、オリゴヌクレオチド合成のためのより効率的でかつ費用効果的な方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】LeProustら, Nucleic Acids Res., vol. 38(8), p.2522-2540, (2010)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明は、テンプレートの非存在下でオリゴヌクレオチドのデノボ配列決定のために使用され得る改変された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)酵素を開示する。計算によるガイダンスおよび飽和変異誘発(saturation mutagenesis)とその後のスクリーニングとの組み合わせを通じて、テンプレート非依存性ポリメラーゼを作り出して、機能的変異体を同定するための方法がまた、開示される。いくつかの実施形態において、上記改変されたTdTは、合成の間にヌクレオチドと相互作用する、GGFRRまたはTGSRモチーフにおいて変異を含む。
【0006】
得られた酵素を使用すると、デノボポリヌクレオチドをより迅速にかつより安価に合成することが可能である。よって、本発明は、特注の核酸を合成するコスト全体を劇的に低減する。特に、上記方法は、改変された3’ヒドロキシル-ブロックされたヌクレオチドを使用する段階的様式において、特注のオリゴを合成し得るテンプレート非依存性トランスフェラーゼを作り出すために使用され得る。末端基が原因で、合成は、各新たな塩基の付加に伴って一旦停止し、その際に、その末端基は、天然に存在するヌクレオチドに本質的に同一なポリヌクレオチドを残して切断される(すなわち、さらなるヌクレオチド取り込みのための基質として酵素によって認識される)。
【0007】
本発明の方法および酵素は、合成生物学において重要な前進である。なぜならその酵素は、水相、テンプレート非依存性オリゴヌクレオチド合成を可能にするからである。このような方法は、これらが、より長いポリヌクレオチドの生成を可能にすると同時に、オリゴヌクレオチド合成の間に生成される化学廃棄物を大きく低減するという点で、先行技術を超える改善を示す。さらに、上記方法は、化学的プロセスを生物学的プロセスで置き換えることから、費用が低減され、自動化合成システムの複雑性も低減される。一実施形態において、単純な5つの試薬送達システムが、段階的様式においてオリゴヌクレオチドを構築するために使用され得、未使用の試薬のリサイクルを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、Tjongら,「Amplified on-chip fluorescence detection of DNA hybridization by surface-initiated enzymatic polymerization」, Anal.Chem., 2011; 83:5153-5159(2011)の種々の時点での末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)および蛍光鎖イニシエーター5’-Cy5-dA10から構成される液相重合反応のアガロースゲルを示す。
【0009】
図2図2は、(A)切断可能な3’-O-ブロッキング基(Rによって示される)を含むヌクレオチドアナログの取り込み、および(B)3’-O-ブロッキング基を除去し、従って、次の3’-O-ブロックされたヌクレオチドアナログが取り込まれることを可能にする(ここでN=A、G、C、またはT)ことを含む、支持体に結合したイニシエーターおよび3’-O-ブロックされたヌクレオチド三リン酸を使用する、例示的な改変された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)媒介性ポリヌクレオチド合成サイクルを図示する。
【0010】
図3図3は、市販のTDTおよび核酸イニシエーターと3’-O-アジドメチル-dCTPまたは3’-O-アジドメチル-dATPとの液相反応時間経過のポリアクリルアミドゲル分析を示す。レーン1- 100bpラダーサイズの鎖、レーン2- オリゴヌクレオチド鎖、レーン3- 3’-O-アジドメチル-dCTP + TdT 15’ 反応時間、レーン4- 1時間、レーン5- 2時間、レーン6- 4時間、レーン7- 24時間、レーン8- 3’-O-アジドメチル-dATP + TdT 15’ 反応時間、レーン9- 1時間、レーン10- 2時間、レーン10- 4時間、レーン11- 24時間、レーン12- dATP + TdT 15’ 反応時間、レーン13- 1時間、レーン14- 4時間、レーン15- 24時間。
【0011】
図4図4は、3’-O-dATPアナログの計算上ドッキングした触媒的に有効な位置(青色、赤色、橙色のフレーム)を示し、その2つの活性部位金属イオン(大きな緑の球)に各々複合体化される、PDB結晶構造4129を使用するTdTの活性部位のコンピューター生成画像を示す。入ってくるdNTPの直ぐ近傍にあり、変異誘発およびスクリーニングの標的である残基が示される。
【0012】
図5図5は、選択された本明細書で記載されるとおりの3’-O-ブロックされたdNTPアナログの増大した取り込みのために選択したTdT改変体の表を示す。
【0013】
図6図6は、本明細書で記載されるように、改変されたTdTsを使用して特注のDNAオリゴマーを合成するために使用され得る例示的な3’-O-アジドメチルデオキシヌクレオチドを示す。
【0014】
図7図7は、3’-O-アジドメチルデオキシアデノシン三リン酸(3’-O-アジドメチル-dATP)を生成するための合成スキームを示す。
【0015】
図8図8は、3’-O-アジドメチルデオキシチミジン三リン酸(3’-O-アジドメチル-dTTP)を生成するための合成スキームを示す。
【0016】
図9図9は、3’-O-アジドメチルデオキシシチジン三リン酸(3’-O-アジドメチル-dCTP)を生成するための合成スキームを示す。
【0017】
図10図10は、3’-O-アジドメチルデオキシグアノシン三リン酸(3’-O-アジドメチル-dGTP)を生成するための合成スキームを示す。
【0018】
図11図11は、3’-O-メトキシメチルデオキシチミジン三リン酸(3’-O-MOM-dTTP)を生成するための合成スキームを示す。
【0019】
図12図12は、3’-O-チオメチルデオキシシチジン三リン酸(3’-O-MTM-dCTP)を生成するための合成スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、核酸アナログとともに使用され得る改変された酵素を提供することによって、ポリヌクレオチド(例えば、DNA)の合成を容易にする。開示される方法を使用すると、改変されたテンプレート非依存性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)が得られ、これは、デノボオリゴデオキシヌクレオチドの酵素媒介性合成を可能にし、それによって、遺伝子合成のための慣用的なアセンブリにおけるそれらの使用を可能にする。本発明の酵素は、固体支持体上で所定の配列のポリヌクレオチドを合成する水性ベースの酵素媒介性の方法にふさわしい。
【0021】
本発明の改変された酵素は、3’-O-ブロックされたdNTPアナログが、開始核酸をユーザー定義の配列へと伸長するために段階的方法において使用されることを可能にする(図2を参照のこと)。さらに、各ヌクレオチド伸長工程の後に、その反応物は、回収され得、固体支持体から元の試薬リザーバーへと戻ってリサイクルされ得る。その工程が一旦完了すると、その3’-O-ブロッキング基が除去され、そのサイクルが新たに開始することを可能にする。伸長-回収-脱ブロック-洗浄のnサイクルの終了時には、全長の単一鎖ポリデオキシヌクレオチドが、固体支持体から切断され、その後の使用のために単離される。種々の3’-O-ブロックされたデオキシヌクレオチドが使用され得るが、具体的な3’-O-ブロッキング基の選択は、以下によって規定される: 1)TdTによる基質利用を最大にする最小の可能なかさ高さ、および2)最短期間において最も温和で、好ましい水性条件でのブロッキング基の除去。
【0022】
このアプローチによる費用節約は、既存の産業標準として現在使用されているより低い開始スケール(すなわち、1ナノモル未満)において最終オリゴヌクレオチド生成物のより高い収量を利用することによって達成され得る。アレイベースのフォーマットへのこの酵素アプローチのさらなる適合は、より高度な並行合成によって達成可能な長いオリゴヌクレオチドの合成の費用においてなおさらに、かつより劇的な費用の低減を可能にする。さらに、本発明者らが提唱する酵素による合成プロセスは、緩衝液および塩のような水性ベースの化学物質のみを使用し、従って、既存のホスホルアミダイト法によって生じた有機性廃棄物の環境負荷を大いに低減する。
【0023】
本発明の方法は、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を改変するために使用され得るが、他の酵素が、類似の方法で改変され得る。TdTは、成功裡の開始酵素であるようである。なぜならそれは、テンプレート非依存性重合において単一鎖開始プライマーを使用する3’-伸長活性の能力があるからである。しかし、本明細書で記載される発明の前に、3’-O-ブロックされたヌクレオチドがテンプレートの非存在下で酵素によって1本鎖オリゴヌクレオチドへと取り込まれるという報告はなかった。実際に、Chang and Bollumが報告したように、3’-ヒドロキシル基の置換は、利用可能なトランスフェラーゼ酵素の完全な不活性を生じる。Chang and Bollum,「Molecular Biology of Terminal Transferase, CRC Critical Reviews in Biochemistry, vol. 21(1), p.27-52 (1986)(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。にもかかわらず、TdTが天然のdNTPs(すなわち、3’-O-ブロックされていない)とともにかつテンプレートなしで使用される場合、オリゴヌクレオチド伸長は、停止することなく継続する。このような制御されない取り込みは、図1に示される時間依存性ゲル電気泳動画像によって証明される。図1は、種々の時点での、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)および蛍光鎖イニシエーター、5’-Cy5-dA10から構成される液相重合反応のアガロースゲルを示す(Tjongら,「Amplified on-chip fluorescence detection of DNA hybridization by surface-initiated enzymatic polymerization」, Anal.Chem., 2011; 83:5153-5159(2011)(その全体において本明細書に参考として援用される)からの許可を得て改訂)。さらに、TdTは、数千ものヌクレオチドの付加を生じるほぼ定量的様式においてプライマーを伸長し得ると同時に、TdTは、効率的基質として、広く種々の改変されかつ置換されたdNTPsを受容するようである。さらに、TdTに関する機構的および構造的情報の実質的なライブラリーが、既に存在する。Delarueら, EMBQ J. 2002 ;21(3):427-39; Gougeら, J Mol Biol. 2013 Nov 15;425(22):4334-52およびRomainら, Nucleic Acids Res. 2009;37(14):4642-56(これらはともに、それらの全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0024】
TdTが、デオキシリボース糖環、ならびにプリン/ピリミジン核塩基において改変および/または置換を有する基質を使用し得ることは、公知である。例えば、TdTは、ピリミジンのC5およびプリンのC7においてかさ高い改変を受容する。Sorensenら, 「Enzymatic Ligation of Large Biomolecules to DNA」, ACS Nano 2013, 7(9):8098-104; Figeysら, Anal.Chem. 1994, 66(23):4382-3; Liら, Cytometry, 1995, 20(2): 172-80(これらは全て、それらの全体において参考として援用される)を参照のこと。場合によっては、TdTは、非ヌクレオチド三リン酸すら受容し得る。Baroneら, Nucleotides and Nucleic Acids 2001, 20(4-7): 1141-5、およびAlexandrovaら, Bioconjug Chem., 2007, 18(3):886-93(これらは全て、それらの全体において参考として援用される)を参照のこと。しかし、TdTが3’-O-ブロックされたヌクレオチドを受容し得ることは、先行技術においてほとんど証明されていない。例えば、Knappら, Chem.Eur.J., 2011, 17:2903(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。TdTの活性の欠如がKnappらの焦点ではなかったが、その著者らは、彼らが、3’-OH改変されたアナログをTdTで試験したところ、オリゴヌクレオチドへのこの比較的小さな3’-OH改変の取り込みを認めなかったことを報告した。
【0025】
天然のTdTは、非常に効率的な酵素である。TdTは、1000~10,000ヌクレオチドの長さの極めて長いホモポリデオキシヌクレオチドを重合し得ることが示された(Hoardら, J of Biol Chem, 1969 244(19):5363-73; Bollum, The Enzymes, Volume 10, New York: Academic Press; 1974. p. 141-71; Tjongら, Anal Chem, 2011, 83:5153-59(これらは全てそれらの全体において参考として援用される)を参照のこと)。全4種のヌクレオチドからなるランダム配列オリゴマーはまた、TdTによって重合されているが、注文されたポリヌクレオチドがテンプレートの非存在下で合成されているという報告は存在しない。Damianiら, Nucleic Acids Res, 1982, 10(20):6401-10(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。TdTによるポリヌクレオチドの支持体に結合させた合成は、金表面上の自己アセンブルする単層に共有結合させた150bpのイニシエーターのホモポリマー合成の報告によってさらに裏付けられる。Chowら, J Am Chem Soc 2005; 127:14122-3、およびChow and Chilikoti, Langmuir 2007, 23:11712-7(これらはともに、それらの全体において参考として援用される)を参照のこと。これらの著者らはまた、ホモポリマーの取り込みに関してdATP>dTTP≫dGTP dCTPというTdTの優先度を観察した。より近年の報告では、Tjongらは、TdTが、硝子表面に固定化したイニシエータープライマーから、長い(>1Kb)ホモポリマーssDNAの合成を媒介したことを示した。
【0026】
TdTの分配挙動は、1~1.5kb ホモポリマーの液相合成の時間経過を示す図3によって強固にされる。改変されていない(天然の)dNTPの各付加の後に、その酵素は解離し、従って、その集団における任意の鎖のランダム伸長を可能にする。このようなシステムにおける生成物の長さの分布は、1974年にBollumらによって報告されたように、ポワソン分布に倣うはずである。TdTは、終結ヌクレオチド種(すなわち、3’-O-位置がブロックされたもの)とともに使用されたので、その反応は、完了するまで進行し、生成物の長さの分布ではなく、単一ヌクレオチド付加の本質的に純粋な生成物を生じるはずである。
【0027】
それにもかかわらず、上記で記載されるように、3’-O-ブロックされたdNTPsでのヌクレオチド合成は、市販のTdTタンパク質では進行しない。この事実は、市販の組換えTdTを使用する3’-O-アジドメチルdATPおよび3’-O-アジドメチルdCTPの液相取り込み動態をモニターするために使用されるゲルシフトアッセイを示す図3によって強化される。図3におけるデータは、いずれの3’-O-改変されたdNTPアナログも、TdTの基質ではない、すなわち、陽性コントロールとしてdATPを含む反応(レーン12~15)と比較した場合に、ポリヌクレオチド伸長が存在しないことを明らかに示す。図3は、従って、市販のTdTが、改変された3’-OHを有するdNTPsを組み込むことによってオリゴマーを合成できないというさらなる証拠を追加する。
【0028】
適切に改変すると、種々の異なる3’-O-ブロックされたdNTPアナログが、TdTによるヌクレオチドの制御された付加に適切である。改変された3’-O-ブロックされたdNTPアナログとしては、3’-O-アリル、3’-O-アジドメチル、3’-O-NH、および3’-OCHCNブロッキング基が挙げられるが、これらに限定されない。全体的に、3’-O-ブロッキング基の選択は、以下によって規定される: 1)TdTによる基質利用を最大にする最小の可能なかさ高さ(これは、動的な取り込みに影響を及ぼすようである)、および2)最短期間において最も温和な除去条件、好ましくは水性条件を有するブロッキング基。本発明とともに使用するために適した3’-O-ブロッキング基は、WO 2003/048387; WO 2004/018497; WO 1996/023807; WO 2008/037568; Hutter Dら, Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 2010, 29(11): 879-95;およびKnappら, Chem.Eur.J., 2011, 17:2903(これらは全てそれらの全体において参考として援用される)に記載される。
【0029】
マウスTdTの活性部位の計算上のモデルは、TdTが3’-O-ブロックされたdNTPsを利用しないという構造的基本を理解するために作成された。さらに、そのコンピューターモデルは、種々の改変されたdNTPsをその活性部位に「フィットさせる」ことを可能にした。図4は、PDB結晶構造4129およびAutoDock 4.2(Molecular Graphics Laboratory, Scripps Research Institute, La Jolla, CA)を使用して、-dATP(青色、赤色、マゼンタ、または橙色で示される)とマウスTdT(以下の配列番号9を参照のこと)とのドッキングを示す。
【0030】
dATPs(橙色)のホスフェート部分は、触媒金属イオン(緑色)と複合体化した状態にある一方で、αホスフェートは、結合したオリゴヌクレオチドの3’-OHによって攻撃される位置にある。図4に示されるモデルは、アミノ酸残基の選択が、3’-O-ブロックされたdNTPが存在する場合に触媒的に有効な複合体の形成に干渉するようであることを示す。Glu180またはMet192のような、最も近い残基と相互作用し得る他の残基はまた、改変の標的である。アミノ酸番号付けおよび位置は、配列番号9のマウスTdTを参照して提供されるが、その参照されたアミノ酸改変は、GGFRRまたはTGSRモチーフを含む類似の配列を有する任意のTdTに適用可能である。
【0031】
AutoDockの推定結合モードは、その3’-OHに対する改変が、2つの残基、Arg336とArg454との間の静電相互作用を変化させることを示唆する。Arg336は、活性部位の反応中心の近傍にあるが、Arg336は高度に保存されており、初期の研究から、Arg336をGlyまたはAlaで置き換えると、dNTP活性が1/10に低減することが見出された(Yang Bら J.Mol.Biol. 1994; 269(16): 11859-68)。よって、改変のための1つのモチーフは、上記の構造モデルにおいてArg 336を含むGGFRRモチーフである。
【0032】
さらに、Gly452およびSer453は、cis-ペプチド結合コンホメーションにおいて存在し(Delarueら, EMBQ J., 2002; 21(3):427-39(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、Arg336のグアニジウム基が、このコンホメーションの安定化を補助すると考えられる。Arg336によって提供される安定性は、この位置における置換が改変されたTdTタンパク質の反応性に対して負の影響を有する理由を説明する一助となり得る。場合によっては、位置336を改変することによって作り出される不安定性は、cis-ペプチド結合コンホメーションを安定化させるためにプロリン残基を使用することによって克服され得る。しかし、Arg336が、例えば、アラニンまたはグリシンで置換される場合、TGSRモチーフ全体(位置451、452、435、454)はまた、この変化を補償するように改変されなければならないこともある。例えば、TGSRモチーフは、TPSRまたはTGPRへと改変され得る。従って、TGSRモチーフは、上記の構造モデルにおけるGly452を含め、改変のために標的化された。
【0033】
他方で、TdTファミリーの配列分析は、位置454において融通され得る広い範囲のアミノ酸を示す。この分析は、位置454および周りの残基における構造上の融通性を示唆する。別の実施形態において、3’-O-ブロッキング基の立体的かさ高さを融通するArg454における置換は、Arg454におけるグリシンまたはアラニンの置換を補償するために、α14領域に対してさらなる改変を要求し得る。他の実施形態において、α11領域における他の残基に対する置換は、TGSRモチーフの改変の代わりに、またはその改変に加えてかのいずれかで、Arg336に対する置換を補償するために必要とされ得る。
【0034】
Arg336およびArg454に対する改変は、3’-O-改変されたdNTPsの結合相互作用を変化させ得るが、それはまた、3’-O-改変されたdNTPsとTdTとの改善された立体的相互作用を生じる置換を探索するために必要であり得る。3’-O-ブロックされたdNTPsの増大した基質利用を示す計算上推測された酵素改変体を試験するために、特異的アミノ酸置換を特定する合成遺伝子を、適切なプラスミドベクターにおいて生成し、細胞に導入した。発現および単離の後、タンパク質改変体を、選択された3’-O-ブロックされたdNTPアナログでのポリメラーゼ取り込みアッセイによって、活性に関してスクリーニングした。図5は、種々の合成して生成したマウスTdT改変体のスクリーニングの結果を示す。いくつかの実施形態において、単一のアミノ酸配変化が、重要であるが、他に、1個および2個のアミノ酸の組み合わせがまた、3’-O-ブロックされたdNTPsの増大した取り込みを生じる。マウスTdTのGly332、Gly333、Gly452、Thr451、Trp450、Ser453、およびQ455のような残基との相互作用は、重要である。これらの残基の各々は、代表的なdNTPの3’-OHの0.6nm以内にある。これらの残基はまた、3’-O-アジドメチルまたは3’-O-アミノオキシのような3’-ブロッキング基の特別な立体的かさ高さを許容する置換の潜在的な標的である。Glu457、Ala510、Asp509、Arg508、Lys199、Ser196、Met192、Glu180またはLeu161のような3’-OHの1.2nm以内にある残基はまた、3’-O-ブロックされたdNTPの基質利用に潜在的に干渉し得るので、Arg336およびArg454に加えて、または組み合わせにおいて、置換の標的である。目的のさらなる残基としては、Arg461およびAsn474が挙げられる。
【0035】
TGSRおよびGGFRRモチーフがここで強調されるが、隣接するアミノ酸(例えば、Thr331、Gly337、Lys338、Gly341、またはHis342)に対する改変はまた、本明細書で考察されるとおりの3’-O-ブロックされたdNTPsの増大した取り込みを提供する(単独でまたは組み合わせにおいて)ことに関して企図される。増大した取り込みの能力がある種々のインシリコモデル化TdT改変は、以下の実施例2において考察される。
【0036】
位置500~510におけるアミノ酸改変に加えて、3’-O-ブロッキング基との干渉を除去するために残基を欠失させることが必要であり得る。これらのアミノ酸は、タンパク質のC末端付近に位置し、比較的個増加されていない領域に存在することから、それらは、上記で記載される改変の代わりに、または組み合わせとのいずれかにおいて、1つずつまたはまとめて欠失され得る。ある特定の実施形態において、改変されたTdTへの残基の挿入、例えば、GGFRRもしくはTGSRモチーフまたは隣接する領域への残基の挿入は、改変されたTdTによる3’-O-ブロックされたdNTPの増大した取り込み率を可能にし得る。TdT改変は、GGFRRモチーフのPhe334残基とArg335残基(またはその置換)との間へのチロシン残基の挿入を含み得る。
【0037】
本発明の改変されたTdTは、図5において記載されるものを含む。改変されたTdTは、E180L、E180R、E180D、またはE180Kを含むGlu180に対する改変のうちの1またはこれより多くを含み得る。Met192に対する企図された改変としては、例えば、M192E、M192W、M192K、またはM192Rが挙げられる。Gln455に対する企図された改変としては、例えば、Q455Iが挙げられる。Trp450に対する企図された改変としては、例えば、W450Hが挙げられる。ARG454に対する企図された改変としては、例えば、R454I、R454K、R454A、またはR454Tが挙げられる。Arg461に対する企図された改変としては、例えば、R461Vが挙げられ、Asn474に対する改変としては、N474Rが挙げられ得る。種々の実施形態において、2またはこれより多くの改変された残基の組み合わせが使用され得る(例えば、E180D+W450H、E180K+R454A、M192K+E180K、E180K+R454I、E180D+M192E、E180D+M192E+R454T、またはE180K+W450Hのような)。
【0038】
以下で示されるように、大部分のTdTsは、GGFRRおよびTGSRモチーフを含む。以下の配列において、そのGGFRRおよびTGSRモチーフは、容易な参照のために太字および下線が付されている。天然の仔ウシ胸腺TdTは、適切なテンプレート非依存性ポリメラーゼを達成するための、一次構造の変更の候補である。しかし、種々の他のタンパク質が、3’-O-ブロックされたdNTPアナログとの使用に適した候補を同定するために探索され得る(ヒトおよびマウスTdTが挙げられる)。天然の仔ウシTdTに対応するアミノ酸配列は、表1において配列番号1として列挙される一方で、その核酸配列は、表2において配列番号2として列挙される。いくつかの実施形態において、3’-O-改変されたdNTPsおよびNTPsでの配列特異的デノボポリヌクレオチド合成に適合された、得られたタンパク質は、配列番号1と少なくとも85% 同一、すなわち、少なくとも90% 同一、すなわち、少なくとも93% 同一、すなわち、少なくとも95% 同一、すなわち、少なくとも97% 同一、すなわち、少なくとも98% 同一、すなわち、少なくとも99% 同一である。さらに、ウシTdTのアミノ酸配列の一部を短縮し、触媒活性をなお維持することは可能であり得る。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2-1】

【表2-2】
【0041】
さらに、組換えタンパク質の単離をより容易にするために、アフィニティーカラム(Hitrap, Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)と組み合わせて使用されるN末端Hisタグ配列を組換えタンパク質に付加することは一般的である(Boule J-Bら, Molecular Biotechnology, 1998;10:199-208(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。あるいは、Hisタグ配列を付加した酵素のN末端短縮化形態は、本発明で機能する(例えば、米国特許第7,494,797号(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。Hisタグ化ウシTdTアミノ酸配列は、以下の表3、5、および7において示される一方で、Hisタグ化ウシTdT核酸配列は、以下の表4、6、および8に示される。Hisタグは、必要とされる場合に、他の位置において操作され得る。いくつかの実施形態において、3’-O-改変されたdNTPsおよびNTPsでの配列特異的デノボポリヌクレオチド合成に適合された、得られたタンパク質は、配列番号3、5、または7と少なくとも85% 同一、すなわち、少なくとも90% 同一、すなわち、少なくとも93% 同一、すなわち、少なくとも95% 同一、すなわち、少なくとも97% 同一、すなわち、少なくとも98% 同一、すなわち、少なくとも99% 同一である。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4-1】
【表4-2】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6-1】
【表6-2】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
種々の3’-O-改変されたdNTPsおよびNTPsは、デノボ合成のために開示されるタンパク質とともに使用され得る。いくつかの実施形態において、好ましい除去可能な3’-O-ブロッキング基は、3’-O-アミノ、3’-O-アリルまたは3’-O-アジドメチルである。他の実施形態において、上記除去可能な3’-O-ブロッキング部分は、O-フェノキシアセチル;O-メトキシアセチル;O-アセチル;O-(p-トルエン)-スルホネート;O-ホスフェート;O-ニトレート;O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル;O-テトラヒドロチオピラニル;O-[5-メチル]-テトラヒドロフラニル;O-[2-メチル,4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル;O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニル;およびO-テトラヒドロチオフラニルからなる群より選択される(米国特許第8,133,669号を参照のこと)。他の実施形態において、上記除去可能なブロッキング部分は、エステル、エーテル、カルボニトリル、ホスフェート、カーボネート、カルバメート、ヒドロキシルアミン、ボレート、ニトレート、糖、ホスホルアミド、ホスホルアミデート、フェニルスルフェネート、スルフェート、スルホンおよびアミノ酸からなる群より選択される(Metzker MLら Nuc Acids Res. 1994;22(20):4259-67、米国特許第5,763,594号、同第6,232,465号、同第7,414,116号;および同第7,279,563号(これらは全て、それらの全体において参考として援用される)を参照のこと)。
【0050】
例示的な3’-O-ブロックされたdNTPアナログの合成
図6は、4つの例示的な3’-O-ブロックされたdNTPアナログ、すなわち、3’-O-アジドメチル-dATP、3’-O-アジドメチル-dCTP、3’-O-アジドメチル-dGTP、および3’-O-アジドメチル-dTTPを示す。各3’-O-アジドメチルアナログの合成は、以下に記載され、図7~12に詳述される。上記3’-O-ブロックされたdNTPアナログはまた、専門業者(例えば、Azco Biotech, Oceanside, CA)から購入され得る。対応する3’-O-ブロックされたリボヌクレオチドが、特注のRNAオリゴの作製を可能にするために類似の合成法で形成され得ることは、理解されるべきである。
【0051】
3’-O-アジドメチル-dATP: 図7を参照すると、DMSO(12ml)、酢酸(5.5ml)および無水酢酸(17.6ml)中のN-ベンゾイル-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシアデノシン(3.0g; 6.38mmol)[CNH Technologies, Woburn, MA]の溶液を調製した。その混合物を、室温において48時間撹拌した。およそ100mlの飽和NaHCO溶液を添加し、その水性層を、CHClで抽出した。その合わせた有機抽出物を、飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。その残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、1:1~1:4)によって精製して、N-ベンゾイル-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシアデノシン(図7に化合物1として示される)を白色粉末として回収した(2.4g; 71% 収率)。400mgのN-ベンゾイル-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシアデノシンを、乾燥CHCl(7ml)中に窒素下で溶解して、溶液(0.76mmol)を作製した。次いで、シクロヘキサン(400μl)、およびSOCl(155μl; 1.91mmol, 再蒸留)を添加した。その反応混合物を、0℃において2時間撹拌した。次いで、その溶媒を減圧下で、次いで、高真空ポンプ下で10分間除去した。その得られた残渣を、乾燥DMF(5ml)中に溶解し、NaN(400mg; 6.6mmol)と室温において3時間反応させた。その反応混合物を、蒸留水(50ml)中に分散させ、CHClで抽出した。その合わせた有機層を、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その残渣をMeOH(5ml)中に溶解し、NHF(300mg; 8.1mmol)とともに室温において24時間撹拌した。次いで、その溶媒を減圧下で除去した。その反応混合物を減圧下で濃縮し、水とCHClとの間で分配した。その有機層を分離し、NaSOで乾燥させた。濃縮後、その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)によって精製して、N-ベンゾイル-3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシアデノシン(化合物2;図7)を白色粉末として生成した(150mg; 48% 収率)。次いで、N-ベンゾイル-3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシアデノシン(123mg; 0.3mmol)およびプロトンスポンジ(75.8mg; 0.35mmol)を、真空デシケーター中で、Pで一晩乾燥させ、その後、トリメチルメチルホスフェート(600μl)中に溶解した。次に、新たに蒸留したPOCl(40μl; 0.35mmol)を、0℃において滴下し、その混合物を、0℃において2時間撹拌した。その後、無水DMF(2.33ml)中のトリブチルアンモニウムピロホスフェート(552mg)およびトリブチルアミン(0.55ml; 2.31mmol)の混合物を、室温において添加し、30分間撹拌した。次いで、炭酸水素トリエチルアンモニウム溶液溶液(TEAB)(0.1M; pH8.0; 15ml)を添加し、その混合物を、1時間、室温において撹拌した。その後、濃NHOH(15ml)を添加し、一晩室温において撹拌した。得られた混合物を真空下で濃縮し、その残渣を5mlの水で希釈した。次いで、その粗製混合物を、4℃において、TEABの勾配(pH8.0; 0.1~1.0M)を使用して、DEAE-Sephadex A-25上でのアニオン交換クロマトグラフィーで精製した。その粗製生成物を、逆相HPLCで精製して、3’-O-アジドメチル-dATP(図7, 化合物3)、後の合成に使用されるヌクレオチドアナログを生成した。
【0052】
3’-O-アジドメチル-dTTP: 酢酸(4.8ml)および無水酢酸(15.4ml)を、DMSO中の5’-O-(tertブチルジメチルシリル)チミジン(2.0g; 5.6mmol)[CNH Technologies, Woburn, MA]の撹拌溶液に添加した。その反応混合物を、室温において48時間撹拌した。飽和NaHCO溶液(100ml)を添加し、その水性層を酢酸エチルで抽出した(3×100ml)。その合わせた有機抽出物を、NaHCOの飽和溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。濃縮後、その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)チミジン(図8; 化合物4)を白色粉末として生成した(1.75g; 75% 収率)。次いで、およそ1グラムの3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)チミジンを、乾燥CHCl(10ml)中に窒素下で溶解した。この混合物に、シクロヘキサン(1.33ml)およびSOCl(284m1; 3.5mmol, 再蒸留)を添加した。次いで、その得られた混合物を、0℃において1.5時間撹拌した。次いで、その溶媒を減圧下で、次いで、高真空下で10分間除去した。その残渣を乾燥DMF(5ml)中に溶解し、NaN(926mg; 15.4mmol)と室温において3時間反応させた。次に、その反応混合物を、蒸留水(50ml)中に分散させ、CHClで抽出した(3×50ml)。その合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その残渣をMeOH(5ml)中に溶解し、NHF(600mg; 16.2mmol)と室温において24時間反応させた。その反応混合物を減圧下で濃縮し、水とCHClとの間で分配した。次いで、その有機層を分離し、NaSOで乾燥させた。濃縮後、その残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、3’-O-(アジドメチル)チミジン(図8, 化合物5)を白色粉末として生成した(550mg; 71% 収率)。次に、その3’-O-(アジドメチル)チミジンおよびプロトンスポンジ(0.35mmol)を、真空デシケーター中で、Pで一晩乾燥させ、その後、トリメチルメチルホスフェート(600μl)中に溶解した。次に、新たに蒸留したPOCl(40μl; 0.35mmol)を0℃において滴下し、その混合物を0℃において2時間撹拌した。その後、無水DMF(2.33ml)中のトリブチルアンモニウムピロホスフェート(552mg)およびトリブチルアミン(0.55ml; 2.31mmol)の混合物を、室温において添加し、30分間撹拌した。次いで、炭酸水素トリエチルアンモニウム溶液(TEAB)(0.1M; pH8.0; 15ml)を添加し、その混合物を1時間、室温において撹拌した。その後、濃NHOH(15ml)を添加し、一晩室温において撹拌した。その得られた混合物を真空下で濃縮し、その残渣を5mlの水で希釈した。次いで、その粗製混合物を、4℃において、TEABの勾配(pH8.0; 0.1~1.0M)を使用して、DEAE-Sephadex A-25上でのアニオン交換クロマトグラフィーで精製した。その粗製生成物を、逆相HPLCで精製して、3’-O-アジドメチル-dTTP(図8, 化合物6)、後の合成に使用されるヌクレオチドアナログを生成した。
【0053】
3’-O-アジドメチル-dCTP: 3.5グラムのN-ベンゾイル-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシシチジン[CNH Technologies, Woburn, MA]を、14.7mlのDMSOに添加して、7.65mmol 溶液を生成した。この溶液に、酢酸(6.7ml)および無水酢酸(21.6ml)を添加し、その反応混合物を室温において48時間撹拌した。次いで、飽和NaHCO溶液(100ml)を添加し、その水性層をCHClで抽出した(3×100ml)。その合わせた有機抽出物をNaHCOの飽和溶液で洗浄し、次いで、NaSOで乾燥させた。濃縮後、その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、N-ベンゾイル-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシシチジン(図9; 化合物7)を白色粉末として生成した(2.9g; 73% 収率)。8mlのCHCl中に、N-ベンゾイル-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシシチジン(558mg; 1.04mmol)を溶解し、次いで、シクロヘキサン(560m1)およびSOCl(220ml; 2.7mmol)を添加した。その反応混合物を0℃において1時間撹拌した。次いで、その揮発物を減圧下で除去した。その残留する残渣を、乾燥DMF(5ml)中に溶解し、NaN(400mg; 6.6mmol)と室温において2時間反応させた。その反応混合物を蒸留水(50ml)中に分散させ、CHClで抽出した(3×50ml)。その合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その残渣をMeOH(5ml)中に溶解し、NHF(600mg; 16.2mmol)と室温において24時間反応させた。その溶媒を減圧下で除去した。その得られた残渣を、水(50ml)の中に懸濁し、CHClで抽出した(3×50ml)。その合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、N-ベンゾイル-3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシシチジン(図9, 化合物8)を白色粉末として生成した(200mg; 50% 収率)。次に、そのN-ベンゾイル-3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシシチジンおよびプロトンスポンジ(0.35mmol)を真空デシケーター中で、P2Osで一晩乾燥させ、その後、トリメチルメチルホスフェート(600μl)中に溶解した。次いで、新たに蒸留したPOCl(40μl; 0.35mmol)を0℃において滴下し、その混合物を0℃において2時間撹拌した。その後、無水DMF(2.33ml)中のトリブチルアンモニウムピロホスフェート(552mg)およびトリブチルアミン(0.55ml; 2.31mmol)の混合物を室温において添加し、30分間撹拌した。次いで、炭酸水素トリエチルアンモニウム溶液(TEAB)(0.1M; pH8.0; 15ml)を添加し、その混合物を1時間、室温において撹拌した。その後、濃NHOH(15ml)を添加し、一晩室温において撹拌した。その得られた混合物を真空下で濃縮し、その残渣を5mlの水で希釈した。次いで、その粗製混合物を、4℃において、TEABの勾配(pH8.0; 0.1~1.0M)を使用して、DEAE-Sephadex A-25上でのアニオン交換クロマトグラフィーで精製した。その粗製生成物を、逆相HPLCで精製して、3’-O-アジドメチル-dCTP(図9, 化合物9)、後の合成に使用されるヌクレオチドアナログを生成した。
【0054】
3’-O-アジドメチル-dGTP: 乾燥DMSO(21ml)中のN-イソブチリル-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシグアノシン(5g; 11.0mmol)[CNH Technologies, Woburn, MA]の撹拌溶液に、酢酸(10ml)および無水酢酸(32ml)を添加した。その反応混合物を室温において48時間撹拌した。飽和NaHCO溶液(100ml)を添加し、その水性層を酢酸エチルで抽出した(3×100ml)。その合わせた有機抽出物を飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。濃縮後、その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)によって精製して、N-イソブチリル-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシグアノシン(図10, 化合物10)を白色粉末として生成した(3.9g; 69% 収率)。1グラムのN-イソブチリル-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシグアノシンを、その後、乾燥ピリジン(22ml; 2.0mmol)に、ジフェニルカルバモイルクロリド(677mg; 2.92mmol)およびDIEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン;SIGMA)(1.02ml; 5.9mmol)とともに添加した。その反応混合物を、窒素雰囲気下で室温において3時間撹拌した。その溶媒を高真空下で除去した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、N-イソブチリル-O-(ジフェニルカルバモイル)-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシグアノシン(図10, 化合物11)を生成したところ、これは、黄色が買った粉末として出現した(1.09g; 80% 収率)。次いで、N-イソブチリル-O-(ジフェニルカルバモイル)-3’-O-(メチルチオメチル)-5’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-2’-デオキシグアノシンを、乾燥CHCl(1.1mmol)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃において1.5時間撹拌した。その溶媒を、減圧下で、次いで、高真空下で10分間除去した。その得られた残渣を乾燥DMF(5ml)中に溶解し、NaN(600mg; 10mmol)と室温において3時間反応させた。次いで、その反応混合物を蒸留水(50ml)中に分散させ、CHClで抽出した(3×50ml)。その合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その得られた残渣をMeOH(5ml)中に溶解し、NHF(500mg; 13.5mmol)と室温において24時間反応させた。その溶媒を減圧下で除去した。その残渣を水(50ml)の中に懸濁し、CHClで抽出した(3×50ml)。その合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、N-イソブチリル-O-(ジフェニルカルバモイル)-3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアノシン(図10, 化合物12)を白色粉末として生成した(230mg; 36% 収率)。最後に、そのN-イソブチリル-O-(ジフェニルカルバモイル)-3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアノシンおよびプロトンスポンジ(0.35mmol)を、真空デシケーター中で、P2Osで一晩乾燥させ、その後、トリメチルメチルホスフェート(600μl)中に溶解した。次いで、新たに蒸留したPOCl(40μl; 0.35mmol)を0℃において滴下し、その混合物を0℃において2時間撹拌した。その後、無水DMF(2.33ml)中のトリブチルアンモニウムピロホスフェート(552mg)およびトリブチルアミン(0.55ml; 2.31mmol)の混合物を室温において添加し、30分間撹拌した。次いで、炭酸水素トリエチルアンモニウム溶液(TEAB)(0.1M; pH8.0; 15ml)を添加し、その混合物1時間、室温において撹拌した。その後、濃NHOH(15ml)を添加し、一晩室温において撹拌した。その得られた混合物を真空下で濃縮し、その残渣を5mlの水で希釈した。次いで、その粗製混合物を、4℃において、TEABの勾配(pH8.0; 0.1~1.0M)を使用して、DEAE-Sephadex A-25上でのアニオン交換クロマトグラフィーで精製した。その粗製生成物を、逆相HPLCで精製して、3’-O-アジドメチル-dGTP(図10, 化合物13)、後の合成に使用されるヌクレオチドアナログを生成した。
【0055】
図2に関して記載されるように、3’-O-ブロックされたdNTPまたは3’-O-ブロックされたrNTPが一旦添加されたら、さらなるdNTPsまたはrNTPsが添加され得るように、ブロッキング基を除去することは必要である。いくつかの実施形態において、その3’-O-ブロッキング基を、高温の中性の水性溶液中のパラジウム触媒、pH2までの塩酸、還元剤(例えば、メルカプトエタノール)で、またはトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィンの添加によって除去し得る。例えば、米国特許第6,664,079号; Mengら, J.Org.Chem.. 2006, 71(81):3248-52; Biら, J.Amer.Chem.Soc. 2006: 2542-2543、米国特許第7,279,563号、および米国特許第7,414,116号(これらは全て、それらの全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。他の実施形態において、3’-置換基は、UV照射によって除去され得る(例えば、WO 92/10587(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。いくつかの実施形態において、3’-O-ブロッキング基の除去は、化学的切断を含まないが、アルカリホスファターゼのような切断酵素を使用する。
【0056】
3’-O-メトキシメチル-dTTP: 5’-O-ベンゾイルチミジン(173mg, 0.5mmol, 1当量)を、10mLのジクロロメタン中、アルゴン下で周囲温度において溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(128mg, 1mmol, 2当量)を添加し、続いて、メトキシメチルブロミド(124mg、1mmol、2当量)を添加した。その混合物を周囲温度において18時間撹拌した。その混合物を10mL ジクロロメタンで希釈し、これを、20mLの5% 水性HCl、およびブラインで連続して洗浄した。その有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、エバポレートした。5’-O-ベンゾイル-3’-O-メトキシメチルチミジン(50mg, 0.13mmol)を5mLの濃水酸化アンモニウム中に周囲温度において溶解した。その混合物を周囲温度において一晩撹拌した。その混合物を希釈し、10mL 部分のジクロロメタンで3回抽出した。その合わせた抽出物をブラインで洗浄した。その有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、エバポレートした。3’-O-メトキシメチルチミジン(23mg, 0.08mmol)を、ピリジン(1.5mL×3)と共エバポレートし、一晩高真空下で乾燥させた。そのヌクレオシドを、1.5mLのトリメチルホスフェートおよび0.6mL 乾燥ピリジンの混合物中に、Ar下で溶解した。その混合物を、アイスバスの中で冷却し、10μLのPOClの第1のアリコートを滴下した。5分後に、10μLの第2のアリコートを添加した。その混合物をさらに30分間撹拌した。乾燥DMF(1.25mL)中のTBAリン酸塩の溶液を、バイアルに入れてAr下でアイスバスの中で冷却した。これを、rxn混合物に10秒間かけて滴下した。直ぐに、予め秤量しておいた固体プロトンスポンジ(21mg, 1.25当量)を、固体として一度に添加した。その混合物を、この添加の後に25分間撹拌し、5mLの冷TEAB緩衝液でクエンチした。その混合物をアイスバスの中で10分間撹拌し、次いで、FPLC分離のために小さなRBフラスコに移した。最終分離を、0.1mM ギ酸を含む水/アセトニトリル勾配を使用して逆相HPLCによって達成した。
【0057】
3’-O-メチルチオメチル-dCTP: 25mLのメタノール中のデオキシシチジン(1g, 4.4mmol)の懸濁物に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(1.75mL, 13.2mmol)を添加した。その混合物を一晩周囲温度において撹拌した。その反応混合物をエバポレートし、その残渣を、溶離液としてDCM/メタノール勾配を使用してフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。N6-ホルムアミジノ-5’-O-ベンゾイルデオキシ-3’-O-メチルチオメチルデオキシシチジン(250mg, 0.41mmol)を、10mLのメタノールおよび10mLの水性濃水酸化アンモニウム中に溶解した。その混合物を周囲温度において18時間撹拌し、次いで、減圧下でエバポレートした。その残渣を、カラムクロマトグラフィー(DCM/メタノール 98:2~90:10)によって精製して、170mg(93%)の所望のヌクレオシドをわずかに黄色の固体として得た。25mL バイアル中の3’-O-メチルチオメチルデオキシシチジン(25.0mg, 0.09mmol)を、無水ピリジンと共エバポレートし(3×lmL)、週末にわたって乾燥させた。トリメチルホスフェート(0.7mL)を添加して、そのヌクレオシドを溶解し、アイスバスの中で0℃へと冷却した。塩化ホスホリル(28μL, 0.3mmol)をゆっくりと添加し(12μL、5分後に8μL、30分後に8μL)、その反応物を2時間、0℃において撹拌した。ピロリン酸水素ジ(テトラブチルアンモニウム)を無水DMF(1mL)中に溶解し、この混合物を0℃へと冷却し、その反応混合物に添加した。プロトンスポンジ(9.2mg, 0.04mmol)を添加し、その反応物を0℃において2時間撹拌した。その反応混合物に、1M 炭酸水素トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)(2mL)を添加し、その混合物を1時間撹拌した。次いで、その混合物を丸底フラスコに移し、50mL×3のmiliQ水を添加し、混合物を乾燥するまで濃縮した。その残渣をmiliQ水(11mL)中に溶解し、AKTA FPLCへと室温において載せた。そのトリホスフェートを含む画分(F48~F52)を、減圧下で40℃においてエバポレートし、次いで、その残渣を凍結乾燥した。そのトリホスフェートを乾燥させて、所望のトリホスフェート(12mg, 16.5%)を得た。
【実施例
【0058】
実施例1: タンパク質改変
マウス(mur)TdT改変体は、380aaの合成遺伝子に由来した。この骨格は、WTマウスTdTの短縮化バージョンであり、ET配列のアミノ酸XXで出発し、アミノ酸XXXで終了する触媒コアを表す。化学合成したTdT構築物を、N末端6×ヒスチジンタグおよびエンテロキナーゼ切断部位を特徴とするpRSET A細菌発現ベクター(ThermoFisher Scientific GeneArt Gene Synthesis)にクローニングした。合成TdTプラスミドを、100μg/ml カルベニシリンを含むLBアガープレート上にプレートしたDH5α細胞(Biopioneer)において維持した。発現のために、そのpRSET A-マウスTdTプラスミドを、プラスミドおよび細胞を氷上で20分間インキュベートし、続いて、42℃において30秒間のヒートショック、続いて、SOC培地の添加および37℃において30~60分間振盪しながらのインキュベーションによって、BL21(DE3) pLysS細胞(Thermo-Fisher)へと形質転換した。SOC培地を細胞に添加した後に、全体の容積(代表的には60μl)を、100μg/mL カルベニシリン+34μg/mL クロラムフェニコールを含むLBアガープレート上にプレートした。
【0059】
10mL培養物(24ウェルプレート, Corning)からの細胞を、遠心分離(3000×g, 15分間)によって採取し、次いで、リゾチーム、プロテアーゼインヒビター、および100mM NaClを含むB-PER溶解緩衝液(Thermo-Fisher)中で溶解した。ペレットをTBS緩衝液中に1×60分間浸し、精製のために上清を集めた。その上清を、24ウェルプレート中の50μL Ni-NTAビーズ(GE Life Sciences)スラリーに30分間結合させた。次いで、そのビーズスラリーを、3×50mM Tris-HCl(pH8)、500mM NaCl(500μL)で洗浄し、続いて、4×50mM Tris-HCl(pH8)、500mM NaCl、50mM イミダゾール(200μL)で洗浄した。次いで、50mM Tris-HCl(pH8)、500mM NaCl、300mM イミダゾール(50μL)で、次いで、50mM Tris-HCl(pH8)、500mM NaCl、300mM イミダゾール(130μL)で、最後に、50mM Tris-HCl(pH8)、500mM NaCl、1M イミダゾール(50μL)で処理することによって、タンパク質を回収した。
【0060】
回収した画分を、2.5μl サンプルを取り出し、8% NuPageゲル(Thermo-Fisher)上で200V、50分間、変性条件で泳動することによって分析した。クーマシーブルーでゲル染色した。その溶離したタンパク質を、7.5 MWCO脱塩カラム(Thermo-Fisher)を使用して緩衝液交換し、-80℃において貯蔵した(貯蔵緩衝液=20mM Tris-HCl(pH6.8)、50mM NaOAc; 0.01% Triton X-100および10% グリセロール)。
【0061】
活性スクリーニング:
TdT活性スクリーニングを、種々の3’-O-ブロックされたdNTPアナログおよびビオチン化オリゴヌクレオチドを使用するdNTPポリメラーゼ伸長反応を介して行った:
5Bios G/TAATAATAATAATAATAATAATAATAATAATAATAATTTTTT(ChemGenes Corporation)
【0062】
反応を、代表的には、96ウェルプレートの中で提供した。反応を、以下の構成要素の最終濃度を有するマスターミックスを作製することによって行った: 0.2U PPase(Thermo-Fisher)、10pmolのオリゴヌクレオチド、75μM dNTP(以下を参照のこと)、1×TdT反応緩衝液(ThermO-Fisherの5×)を最終容積10μlになるまで。反応を、規定の容積(代表的には2μl)のTdT改変体を異なるウェルに添加し、その反応ミックスを37℃において5分および60分の時点にわたってインキュベートすることによって開始した。10μl アリコートを除去し、5μlの250mM EDTAを添加することによって反応を終結させた。
試験したdNTPs:
3’-O-アジドメチル-dTTP(上記を参照のこと)
3’-O-アジドメチル-dATP(上記を参照のこと)
3’-O-アジドメチル-dGTP(上記を参照のこと)
3’-O-MOM-dTTP(上記を参照のこと)
3’-O-MTM-dCTP(上記を参照のこと)
3’-アミノオキシ-dTTP(Firebird BioMolecular Sciences EEC)
3’-アミノオキシ-d ATP(Firebird BioMolecular Sciences LLC)
3’-アミノオキシ-dGTP(Firebird BioMolecular Sciences EEC)
3’-O-メチル-dATP(TriLink BioTechnologies LLC)
3’-O-メチル-dGTP(TriLink BioTechnologies LLC)
3’-O-メチル-dCTP(TriLink BioTechnologies LLC)
【0063】
そのクエンチした反応ミックス中のビオチン化オリゴを、ストレプトアビジンビーズ(0.77μm, Spherotech)に結合させた。次いで、そのビーズをフィルタープレート(Pall Corporation)に移し、水で数回洗浄した。そのオリゴヌクレオチドを、そのプレートを切断緩衝液(メタノール中の10% ジイソプロピル-アミン)とともに50℃において30分間インキュベートし、続いて、水中で溶離することによって、その固体支持体から切断した。その溶離したサンプルを乾燥させ、オリゴヌクレオチドサイズ分け標準(出発の42-マーオリゴヌクレオチドよりおよそ15~20塩基小さいかまたは大きい2つのオリゴヌクレオチド(ChemGenes Corporation))を含む30μl 水中に溶解した。次いで、オリゴヌクレオチドを、Capillary Gel Electrophoresis(Oligo Pro II, Advanced Analytical Technologies Inc.)によって伸長効率に関して分析した。
【0064】
実施例2: インシリコモデル化
GGFRRおよびTGSRモチーフ、ならびに上記で考察した隣接するアミノ酸に対するいくつかのアミノ酸改変を、インシリコでモデル化して、上記で記載されるとおりの3’-O-ブロックされたdNTPアナログの増大した取り込みの能力のある改変を決定した。一重、二重、および三重のアミノ酸置換、ならびにアミノ酸挿入をモデル化した。以下の表10は、増大した取り込みを誘発することが見出された改変を示す。アミノ酸位置を、マウスTdTに言及して提供するが、任意のTdTの保存された配列に適用可能である。表10における行は、GGFRRモチーフにおけるかまたはそのモチーフに隣接する1またはこれより多くのアミノ酸に対する塩基改変を記載する。列は、他のアミノ酸(TGSRモチーフにおけるかまたはそのモチーフに隣接するもの)に対する改変のさらなる組み合わせを含む。
【0065】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【0066】
援用の表示
他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、学術雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ)への言及および引用は、本開示全体を通じて行われている。全てのこのような文書は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0067】
均等物
本発明の種々の改変およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書に示され、記載されるものに加えて、本明細書で引用される科学文献および特許文献への言及を含めて、本文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合され得る、重要な情報、説明およびガイダンスを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】