(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】低侵襲手術処置のためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20220131BHJP
A61B 17/115 20060101ALI20220131BHJP
A61B 17/128 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61B17/072
A61B17/115
A61B17/128
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547042
(86)(22)【出願日】2019-10-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 US2019057098
(87)【国際公開番号】W WO2020082052
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521165611
【氏名又は名称】ナイス サージカル ソリューションズ ピーティーイー. リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NICE SURGICAL SOLUTIONS PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハース, エリック
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB05
4C160CC02
4C160CC23
4C160CC35
4C160MM43
(57)【要約】
開放管腔に隣り合う管状組織の周りに縫合糸を適用するための縫合クリップアプライヤ。縫合クリップアプライヤは、一端に組織固定機構を有する細長い本体を含む。組織固定機構は、開位置と固定位置との間で可動の2つのアームを備える。縫合クリップアプライヤは、細長い本体の長手方向の長さに沿って取り付けられた複数の変形可能な縫合クリップを含み、各縫合クリップは、2つのアームの内部に取外し可能に配置されており、2つのアームが開位置と固定位置との間で動かされたことに応答して、開位置と固定位置との間で変形させられるように構成されている。縫合クリップアプライヤは、事前形成された調整可能な締結部、及び事前形成された調整可能な締結部から延びるループを含む一定の長さの縫合糸をさらに含み、ループは、2つのアーム間に延びる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放管腔に隣り合う管状組織の周りに縫合糸を適用するための縫合クリップアプライヤであって、
一端に組織固定機構を備える細長い本体であり、前記組織固定機構が、開位置と固定位置との間で可動の2つのアームを備える、細長い本体と、
前記細長い本体の長手方向の長さに沿って取り付けられた複数の変形可能な縫合クリップであり、該縫合クリップの各々が、前記2つのアームの内部に取外し可能に配置されており、前記2つのアームが前記開位置と前記固定位置との間で動かされることに応答して、前記開位置と前記固定位置との間で変形させられるように構成されている、縫合クリップと、
事前形成された調整可能な締結部と、前記事前形成された調整可能な締結部から延びるループとを含む一定の長さの縫合糸であり、前記ループが、前記2つのアーム間に延びる、一定の長さの縫合糸と
を具備する縫合クリップアプライヤ。
【請求項2】
複数の変形可能な前記縫合クリップの各々を前記組織固定機構の方へ長手方向に前進させるように構成された付勢要素をさらに備える、請求項1に記載の縫合クリップアプライヤ。
【請求項3】
前記付勢要素が1つ又は複数のばねを備える、請求項2に記載の縫合クリップアプライヤ。
【請求項4】
前記2つのアームが、前記細長い本体にヒンジ式に取り付けられている、請求項1に記載の縫合クリップアプライヤ。
【請求項5】
複数の変形可能な前記縫合クリップが、前記細長い本体の前記長手方向の長さに沿って取り付けられた4~20個の変形可能な縫合クリップを含む、請求項1に記載の縫合クリップアプライヤ。
【請求項6】
前記付勢要素は、変形可能な前記縫合クリップの各々が前記固定機構から解放されることに応答して、その変形可能な前記縫合クリップの各々を前記組織締付け機構の方へ自動的に前進させるように構成されている、請求項2に記載の縫合クリップアプライヤ。
【請求項7】
請求項1に記載のクリップアプライヤを使用して管状組織内で開放管腔に隣り合う縫合糸を適用する方法であって、
前記開放管腔の周りの複数の位置で一連の変形可能な縫合クリップの各々を前記管状組織に固定するように、前記組織固定機構を作動させることによって、前記一連の変形可能な縫合クリップを前記開放管腔の周りに順次取り付けるステップを含み、
前記縫合糸が、前記管状組織に取り付けられた前記一連の変形可能な縫合クリップを通って延び、前記一連の変形可能な縫合クリップを通ってループを形成する、方法。
【請求項8】
前記一連の変形可能な縫合クリップを取り付ける前に、切断要素を使用して前記管状組織を分断し、前記開放管腔を露出させるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポート切開を通って前記縫合クリップアプライヤを体腔に挿入するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記開放管腔の周りに前記縫合糸を締め付けるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
腸又は他の管状組織の周りに縫合糸を配置するための手術デバイスであって、
当該手術デバイスは、互いに反対の位置にある近位端部及び遠位端部を含む長手方向の長さを各々が有する第1のアーム及び第2のアームを備え、前記第1のアーム及び前記第2のアームのうちの少なくとも1つが、開位置と締付け位置との間で可動であり、
当該手術デバイスは縫合機構を含み、
前記縫合機構が、
前記第1のアーム内で前記長手方向の長さに沿って配置された第1の行の縫合ステープル、及び前記第2のアーム内で前記長手方向の長さに沿って配置された第2の行の縫合ステープルと、
事前形成された調整可能な締結部によって互いに結合された第1の端部領域及び第2の端部領域を含む一定の長さの縫合糸と
を備え、前記縫合糸の第1の糸通し領域が、前記第1の行の縫合ステープルを通って延び、前記縫合糸の第2の糸通し領域が、前記第2の行の縫合ステープルを通って延びる、手術デバイス。
【請求項12】
前記一定の長さの縫合糸が、第1の非糸通し領域と第1の糸通し領域との間の第1の屈曲部、及び第2の糸通し領域と第2の非糸通し領域との間の第2の屈曲部に形成されており、
前記縫合糸が当該手術デバイスから取り外されたとき、前記縫合糸は、前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部でまっすぐになるように付勢され、したがって前記縫合糸が、前記事前形成された調整可能な締結部から延びるループを形成する、請求項11に記載の手術デバイス。
【請求項13】
前記縫合糸の前記第1の糸通し領域及び前記第1の非糸通し領域が、前記第1のアームに取外し可能に結合されており、前記縫合糸の前記第2の糸通し領域及び前記第2の非糸通し領域が、前記第2のアームに取外し可能に結合されており、前記縫合糸の第1の端部及び第2の端部が、前記第1のアーム及び前記第2のアームから離れる方へ延びる、請求項12に記載の手術デバイス。
【請求項14】
押込み機構を有する縫合機構をさらに備え、
前記押込み機構が、前記縫合機構が作動させられたとき、内部部分から前記縫合ステープルを押し出すように構成されている、請求項11に記載の手術デバイス。
【請求項15】
前記第1のアーム又は前記第2のアームの長手方向の長さに沿って延びる溝を有する切断機構をさらに備え、
前記切断機構が、前記溝に可動に配置されたナイフ刃を備え、前記ナイフ刃が、前記長手方向の長さに沿って動くように構成されている、請求項11に記載の手術デバイス。
【請求項16】
前記第1のアーム又は前記第2のアームの前記長手方向の長さに沿って配置されたステープルと、前記第1のアーム又は前記第2のアームのうちの他のものの前記長手方向の長さに沿って配置されたアンビルとを有するステープリング機構をさらに備える、請求項11に記載の手術デバイス。
【請求項17】
前記切断機構が、前記縫合機構と前記ステープリング機構との間で前記長手方向の長さに沿って配置されている、請求項16に記載の手術デバイス。
【請求項18】
前記ステープリング機構、前記縫合機構、及び前記切断機構が、同時又は実質的に同時に作動させられるように構成されている、請求項17に記載の手術デバイス。
【請求項19】
請求項11に記載の手術デバイスを使用して管状組織の周りに縫合糸を適用する方法であって、
前記第1のアームと前記第2のアームとの間に前記管状組織を締め付けるステップと、
前記管状組織を分断し、以て開放管腔を作製するように、切断機構を作動させるステップと、
前記開放管腔に隣り合う前記管状組織に前記第1の行の縫合ステープル及び前記第2の行の縫合ステープルを取り付けるように、縫合機構を作動させるステップであり、前記事前形成された調整可能な締結部を含む前記縫合糸が、前記手術デバイスから取り外され、前記管状組織の周りにループを形成し、前記縫合糸の一部分が、前記縫合ステープルを通って延びる、縫合機構を作動させるステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記縫合糸の前記第1の端部及び前記第2の端部のうちの少なくとも1つを引っ張ることによって、前記管状組織の周りに前記縫合糸を締め付けるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項11に記載の手術デバイスを使用して被験者から腸標本を体内で切除する方法であって、
前記標本と健康な腸部分との間の近位切除マージンの上に前記第1のアーム及び前記第2のアームを締め付けるステップと、
前記近位切除マージンで前記腸を分断するように、切断機構を作動させるステップと、
前記標本の近位縁部部分に前記ステープルを適用することによって、前記標本の内部管腔を閉じるように、ステープリング機構を作動させるステップと、
近位腸部分の縁部部分に前記第1の行の縫合ステープル及び前記第2の行の縫合ステープルを取り付けるように、縫合機構を作動させるステップであり、前記事前形成された調整可能な締結部を含む前記縫合糸が、前記手術デバイスから取り外され、前記近位腸部分の前記縁部部分の周りにループを形成し、前記縫合糸の一部分が、前記縫合ステープルを通って延びる、縫合機構を作動させるステップと、
前記標本と健康な腸部分との間の遠位切除マージンの上に前記第1のアーム及び前記第2のアームを締め付けるステップと、
前記遠位切除マージンで前記腸を分断するように、前記切断機構を作動させるステップと、
前記標本の遠位縁部部分に前記ステープルを適用することによって、前記標本の内部管腔を閉じるように、前記ステープリング機構を作動させるステップと、
遠位腸部分の縁部部分に前記第1の行の縫合ステープル及び前記第2の行の縫合ステープルを取り付けるように、前記縫合機構を作動させるステップであり、前記事前形成された調整可能な締結部を含む前記縫合糸が、前記手術デバイスから取り外され、前記遠位腸部分の前記縁部部分の周りにループを形成し、前記縫合糸の一部分が、前記縫合ステープルを通って延びる、前記縫合機構を作動させるステップと
を含む、方法。
【請求項22】
前記切断機構を作動させるステップ、前記ステープリング機構を作動させるステップ、及び前記縫合機構を作動させるステップが、外科医による1回の作動に応答して、同時又は実質的に同時に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記被験者の直腸を通って前記標本を摘出するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記被験者の直腸を通って前記標本を摘出するステップが、前記遠位腸部分を通って把持ツールを経肛門的に挿入することと、前記把持ツールによって前記標本を把持することと、前記被験者の直腸を通って前記標本を摘出することとを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記近位腸部分と前記遠位腸部分との間の吻合を体内で形成するステップをさらに含み、
前記吻合を体内で形成するステップが、サーキュラステープラを経肛門的に挿入することと、前記遠位腸部分を通って前記サーキュラステープラを前進させることとを含み、前記サーキュラステープラが、ステープリングカートリッジと、前記ステープリングカートリッジに取外し可能に結合されたアンビル構成要素とを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
直腸の管腔円周を拡張するように構成された経直腸摘出器であって、
長手方向軸線に沿って延びる変形可能な材料を含み、外部、内部、及び前記内部への開口を画定する頂縁部を有する実質的に円筒形の本体と、
前記内部を通って延び、前記頂縁部に結合された任意選択的なドローストリングと、
前記実質的に円筒形の本体の前記外部の少なくとも一部分に摺動可能に結合されて前記部分を取り囲む任意選択的な外部シースと
を備え、
前記実質的に円筒形の本体が、外方へ拡張し、前記開口の円周を増大させて、以て前記直腸の前記管腔円周を拡張するように構成されている、経直腸摘出器。
【請求項27】
請求項26に記載の経直腸摘出器を使用して被験者から標本を体内で除去する方法であって、
遠位腸部分を通って前記経直腸摘出器を経肛門的に挿入するステップと、
前記遠位腸部分内の開口の周りで前記頂縁部を拡張するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
経直腸開創器を通って把持ツールを経肛門的に挿入するステップと、
前記標本を把持するステップと、
前記経直腸開創器の前記内部を通って前記標本を経肛門的に摘出するステップと
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ドローストリングを引っ張り、それにより前記頂縁部を反転させ、以て前記実質的に円筒形の本体を前記直腸から引っ張り出すことによって、前記経直腸摘出器を取り出すステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
被験者から標本を体内で切除する方法であって、
(1)腸壁から前記標本を分離するステップであり、
近位切除マージンで前記腸壁を分断し、
前記標本の近位縁部部分にステープルを適用することによって、前記標本の近位内部管腔を閉じ、
近位腸部分の縁部部分の周りに縫合糸を配置し、
遠位切除マージンで前記腸壁を分断し、
前記標本の遠位縁部部分にステープルを適用することによって、前記標本の遠位内部管腔を閉じ、
遠位腸部分の縁部部分の周りに縫合糸を配置することによって、腸壁から前記標本を分離する、ステップと、
(2)前記被験者の直腸を通って前記標本を摘出するステップと、
(3)前記近位腸部分と前記遠位腸部分との間の吻合を体内で形成するステップと
を含む、方法。
【請求項31】
ポート切開を除いて、腹壁切開を形成することを含まない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
手術デバイスを使用して前記腸壁から前記標本を分離するステップを含み、
前記手術デバイスが、
反対の位置にある近位及び遠位端部を含む長手方向の長さを各々有する第1のアーム及び第2のアームであり、前記第1のアーム及び前記第2のアームのうちの少なくとも1つが、開位置と締付け位置との間で可動である、第1のアーム及び第2のアームと、
切断要素を備える切断機構と、
事前形成された調整可能な締結部によって互いに結合された第1の端部領域及び第2の端部領域を含む一定の長さの縫合糸を備える縫合機構であり、前記縫合糸の第1の糸通し領域が、前記第1のアーム内で前記長手方向の長さに沿って配置された第1の行の縫合ステープルを通って延び、前記縫合糸の第2の糸通し領域が、前記第2のアーム内で前記長手方向の長さに沿って配置された第2の行の縫合ステープルを通って延びる、縫合機構と、
任意選択で、前記第1のアーム又は前記第2のアームの前記長手方向の長さに沿って配置されたステープル、及び前記第1のアーム又は前記第2のアームのうちの他方の前記長手方向の長さに沿って配置されたアンビルを備えるステープリング機構と
を具備する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
経直腸摘出器を使用して前記標本を摘出するステップを含み、
前記経直腸摘出器が、
長手方向軸線に沿って延びる変形可能な材料を含み、外部、内部、及び前記内部への開口を画定する頂縁部を有する実質的に円筒形の本体と、
前記内部を通って延び、前記頂縁部に結合された任意選択的なドローストリングと、
前記実質的に円筒形の本体の前記外部の少なくとも一部分に摺動可能に結合されて前記部分を取り囲む任意選択的な外部シースと
を備え、
前記実質的に円筒形の本体が、外方へ拡張し、前記開口の円周を増大させて、以て前記直腸の管腔円周を拡張するように構成される、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0002]本出願は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、2018年10月19日出願の「Devices and Methods for Minimally Invasive Surgical Procedures」という名称の米国特許仮出願第62/747,809号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
[0003]本出願は、低侵襲手術方法及びそれらの方法を実行するデバイスに関する。詳細には、本発明の実施形態は、結腸及び/又は直腸の患部の切除、並びに直腸を介した患部の摘出を実行するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0004]腸の患部の切除を必要とする手術は一般的であり、結腸直腸がん、ポリープ、憩室炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、直腸脱、子宮内膜症などを含む多数の疾患に対して実行されている。そのような処置の目的は、腸の患部を除去しながら腸の正常部分を保存し、初期吻合を実行して、腸の連続性を回復することである。腹腔鏡及びロボット手術は、典型的に低侵襲手術(MIS)と呼ばれており、直径約5mm~約12mmの範囲の腹部内の小さいポートを通ってカメラ及び機器が配置された状態で処置が実行される手法であり、開かれた又は大きい切開を形成することなく、体腔内の視覚化、アクセス及び露出、並びに手術手技を可能にする。
【0004】
[0005]MISには、従来の開腹手術に比べて、切開及び腹壁外傷の減少、術後痛の低減、オピオイド消費の低減、腸機能の早期回復、合併症の減少、入院日数の減少、並びに日常生活動作への早期回復を含めて、多くの利益がある。現在、結腸直腸MISは典型的に、低侵襲機器及びカメラのために腹壁を通って4つ又は5つのポートの配置を必要とする。たとえば、従来の腹腔鏡手術では、カメラ及び機器のサイズに応じて、直径約5~約12mmのポートを必要とする。消化管の患部を除去する必要がある場合、現在主流の腹腔鏡及びロボット技法における1つの主な欠点は、追加の腹壁切開を利用することである。この切開は典型的に、長さ5~8cmの範囲に及び、ポートの累積切開サイズが倍増する可能性がある。追加の切開により、外科医はこの切開を通って直接、患部を除去し、腸吻合のすべて又はいくつかの部分を実行することが可能になる。
【0005】
[0006]現在、ほぼすべての腹腔鏡及びロボット処置は、この追加の切開を利用して実行される。現在の慣行の圧倒的多数は、標本を除去するために自然開口部の支援による方法を利用しておらず、安全に成功する体内吻合(ICA)を実現するという難しい課題を克服しようともしていない。現在の方法は、腹壁切開を利用して、いくつかの手術ステップを実行し、吻合に向けて腸を準備する。これらのステップを実現するために、腸のうち吻合が指定された部分を、腹壁切開を通って体外へ取り出し、サーキュラステープラのアンビルを配置及び固定する。したがって、処置の腹腔鏡又はロボット部分を中断して、長さ数センチメートルの腹部切開を配置し、この切開を通って標本を体外に出す。体腔の外に出したのち、腸は切除マージンで分断され、標本が除去される。
【0006】
[0007]腸の一部分を体腔の外に持ち出すには、腸壁又は付随する血管に対して外傷又は牽引損傷が生じる可能性、特定の解剖学的状況において腸の端部が腹壁に到達することができない可能性、及び腸の内容物によって切開部が汚染される可能性を含めて、多くの欠点があり、以て手術部位の感染リスクが増大する。
【0007】
[0008]追加の経腹切開を配置及び利用することにも多数の欠点があり、処置の侵襲性が大幅に増加する。たとえば、切開の導入の結果、気腹の損失が生じ、したがって低侵襲プラットフォームが休止されるため、そのような切開の結果、処置の流れが中断する可能性がある。腹腔鏡手術の場合、カメラを待機させておく必要があり、機器を取り外さなければならない。ロボット手術では、アクセス及び露出を得るために、1つ又は複数のロボットアームを患者から完全に切り離さなければならない。また、腹壁切開の汚染、腸の牽引損傷、標本の不十分な切除、追加の処置時間、術後痛の増大、オピオイド使用の必要の増大、及び罹患率の上昇の可能性もある。
【0008】
[0009]したがって、腹壁の切開又は体腔外での腸の処置を必要とすることなく、疾患の切除、除去、及び吻合の形成を実行することができる、低侵襲結腸直腸処置を容易にする方法及びデバイスを開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[0010]本発明の実施形態は、腹腔鏡又はロボットシステムを使用する自然開口部の支援による手術などの手術で使用するための手術デバイスを提供する。
【0010】
[0011]本発明の実施形態は、開放管腔に隣り合う管状組織の周りに縫合糸を適用するための縫合クリップアプライヤを提供し、縫合クリップアプライヤは、一端に組織固定機構を備える細長い本体であり、組織固定機構が、開位置と固定位置との間で可動の2つのアームを備える、細長い本体と、細長い本体の長手方向の長さに沿って取り付けられた複数の変形可能な縫合クリップであり、各縫合クリップが、2つのアームの内部に取外し可能に配置されており、2つのアームが開位置と固定位置との間で動かされたことに応答して、開位置と固定位置との間で変形させられるように構成されている、縫合クリップとを具備する。一定の長さの縫合糸が、事前形成された調整可能な締結部、及び事前形成された調整可能な締結部から延びるループを含み、ループは、縫合クリップアプライヤの2つのアーム間に延びるように構成されている。
【0011】
[0012]特定の実施形態によれば、縫合クリップアプライヤは、変形可能な各縫合クリップを組織固定機構の方へ長手方向に前進させるように構成された付勢要素を含む。特定の実施形態によれば、付勢要素は、1つ又は複数のばねを備える。
【0012】
[0013]特定の実施形態によれば、2つのアームは、クリップアプライヤの細長い本体にヒンジ式に取り付けられている。
【0013】
[0014]特定の実施形態によれば、縫合クリップアプライヤは、細長い本体の長手方向の長さに沿って取り付けられた4~20個の変形可能な縫合クリップを含む。
【0014】
[0015]特定の実施形態によれば、付勢要素は、変形可能な縫合クリップが固定機構から解放されたことに応答して、変形可能な各縫合クリップを組織締付け機構の方へ自動的に前進させるように構成されている。
【0015】
[0016]特定の実施形態によれば、縫合クリップアプライヤを使用して管状組織内で開放管腔に隣り合う縫合糸を適用する方法は、開放管腔の周りの複数の位置で変形可能な各縫合クリップを管状組織に固定するように、組織固定機構を作動させることによって、一連の変形可能な縫合クリップを開放管腔の周りに順次取り付けるステップを含み、縫合糸は、管状組織に取り付けられた変形可能な縫合クリップを通って延び、変形可能な縫合クリップを通ってループを形成する。
【0016】
[0017]特定の実施形態によれば、この方法は、一連の変形可能な縫合クリップを取り付ける前に、切断要素(たとえば、はさみ、手術用ステープラなど)を使用して管状組織を分断し、開放管腔を露出させるステップを含む。
【0017】
[0018]特定の実施形態によれば、この方法は、開放管腔の周りに縫合糸を締め付けるステップを含む。
【0018】
[0019]本発明の実施形態は、腸又は他の管状組織の周りに縫合糸を配置するための手術デバイスを提供し、手術デバイスは、反対の位置にある近位及び遠位端部を含む長手方向の長さを各々有する第1のアーム及び第2のアームを備え、前記第1のアーム及び前記第2のアームのうちの少なくとも1つが、開位置と締付け位置との間で可動である。手術デバイスは縫合機構を含み、縫合機構は、前記第1のアーム内で長手方向の長さに沿って配置された第1の行の縫合ステープル、及び任意選択で、前記第2のアーム内で長手方向の長さに沿って配置された第2の行の縫合ステープルと、事前形成された調整可能な締結部によって互いに結合された第1及び第2の端部領域を含む一定の長さの縫合糸とを備える。縫合糸の第1の糸通し領域は、第1の行の縫合ステープルを通って延び、縫合糸の第2の糸通し領域は、第2の行の縫合ステープルを通って延びることができる。
【0019】
[0020]特定の実施形態によれば、一定の長さの縫合糸は、第1のアームの長手方向の長さに沿って延びる第1の非糸通し領域と、第2のアームの長手方向の長さに沿って延びる第2の非糸通し領域とを含み、縫合糸が手術デバイスから取り外されたとき、縫合糸は、第1及び第2の屈曲部でまっすぐになるように付勢され、したがって縫合糸は、事前形成された調整可能な締結部から延びるループを形成する。
【0020】
[0021]特定の実施形態によれば、縫合糸の第1の糸通し領域及び第1の非糸通し領域は、第1のアームに取外し可能に結合されており、縫合糸の第2の糸通し領域及び第2の非糸通し領域は、第2のアームに取外し可能に結合されており、縫合糸の第1及び第2の端部は、第1及び第2のアームから離れる方へ延びる。
【0021】
[0022]特定の実施形態によれば、手術デバイスは、押込み機構を備える縫合機構を含み、押込み機構は、縫合機構が作動させられたとき、内部部分から縫合ステープルを押し出すように構成されている。
【0022】
[0023]特定の実施形態によれば、手術デバイスは、第1又は第2のアームの長手方向の長さに沿って延びる溝を備える切断機構を含み、切断要素は、溝に可動に配置されたナイフ刃を備え、ナイフ刃は、前記長手方向の長さに沿って動くように構成されている。
【0023】
[0024]特定の実施形態によれば、手術デバイスは、第1のアーム又は第2のアームの長手方向の長さに沿って配置されたステープルと、第1のアーム又は第2のアームのうちの他方の長手方向の長さに沿って配置されたアンビルとを有するステープリング機構を含む。
【0024】
[0025]特定の実施形態によれば、切断機構は、縫合機構とステープリング機構との間で長手方向の長さに沿って配置されている。
【0025】
[0026]特定の実施形態によれば、ステープリング機構、縫合機構、及び切断機構は、同時又は実質的に同時に作動させられるように構成されている。
【0026】
[0027]特定の実施形態によれば、上述した実施形態による手術システムを使用して管状組織の周りに縫合糸を適用する方法は、第1のアームと第2のアームとの間に管状組織を締め付けるステップと、管状組織を分断し、以て開放管腔を作製するように、切断機構を作動させるステップと、開放管腔に隣り合う管状組織に第1及び第2の行の縫合ステープルを取り付けるように、縫合機構を作動させるステップであり、事前形成された調整可能な締結部を含む縫合糸が、手術デバイスから取り外され、管状組織の周りにループを形成し、縫合糸の一部分が、縫合ステープルを通って延びる、縫合機構を作動させるステップとを含む。
【0027】
[0028]特定の実施形態によれば、この方法は、縫合糸の第1及び第2の端部のうちの1つ又は複数を引っ張ることによって、管状組織の周りに縫合糸を締め付けるステップを含む。
【0028】
[0029]手術システムを使用して被験者から腸標本を体内で切除する方法は、標本と健康な腸部分との間の近位切除マージンの上に第1のアーム及び第2のアームを締め付けるステップと、近位切除マージンで腸を分断するように、切断機構を作動させるステップと、標本の近位縁部部分にステープルを適用することによって、標本の内部管腔を閉じるように、ステープリング機構を作動させるステップと、近位腸部分の縁部部分に第1及び第2の行の縫合ステープルを取り付けるように、縫合機構を作動させるステップであり、事前形成された調整可能な締結部を含む縫合糸が、手術デバイスから取り外され、近位腸部分の縁部部分の周りにループを形成し、縫合糸の一部分が、縫合ステープルを通って延びる、縫合機構を作動させるステップとを含む。
【0029】
[0030]特定の実施形態によれば、この方法は、標本と健康な腸部分との間の遠位切除マージンの上に第1のアーム及び第2のアームを締め付けるステップと、遠位切除マージンで腸を分断するように、切断機構を作動させるステップと、標本の遠位縁部部分にステープルを適用することによって、標本の内部管腔を閉じるように、ステープリング機構を作動させるステップと、遠位腸部分の縁部部分に第1及び第2の行の縫合ステープルを取り付けるように、縫合機構を作動させるステップであり、事前形成された調整可能な締結部を含む縫合糸が、手術デバイスから取り外され、遠位腸部分の縁部部分の周りにループを形成し、縫合糸の一部分が、縫合ステープルを通って延びる、縫合機構を作動させるステップとを含む。
【0030】
[0031]特定の実施形態によれば、切断機構を作動させるステップ、ステープリング機構を作動させるステップ、及び縫合機構を作動させるステップは、外科医による1回の作動に応答して、同時又は実質的に同時に行われる。
【0031】
[0032]特定の実施形態によれば、この方法は、被験者の直腸を通って標本を摘出するステップを含む。
【0032】
[0033]特定の実施形態によれば、被験者の直腸を通って標本を摘出するステップは、遠位腸部分を通って把持ツールを経肛門的に挿入することと、把持ツールによって標本を把持することと、被験者の直腸を通って標本を摘出することとを含む。
【0033】
[0034]特定の実施形態によれば、この方法は、吻合を体内で形成するステップを含み、吻合を体内で形成するステップは、サーキュラステープラを経肛門的に挿入することと、遠位腸部分を通ってサーキュラステープラを前進させることとを含み、サーキュラステープラは、ステープリングカートリッジと、ステープリングカートリッジに取外し可能に結合されたアンビル構成要素とを備える。
【0034】
[0035]本発明の実施形態は、直腸の管腔円周を拡張するように構成された経直腸摘出器を提供し、経直腸摘出器は、長手方向軸線に沿って延びる変形可能な材料を含み、外部、内部、及び内部への開口を画定する頂縁部を有する実質的に円筒形の本体と、内部を通って延び、頂縁部に結合された任意選択的なドローストリングと、実質的に円筒形の本体の外部の少なくとも一部分に摺動可能に結合されてその部分を取り囲む任意選択的な外部シースとを備える。特定の実施形態によれば、実質的に円筒形の本体は、直腸管腔内に配置され(たとえば、腸が分断された管腔内の開口から肛門外口へ、又は肛門外口を越えて長手方向に延びる)、外方へ拡張し、以てその円周を増大させて、直腸の管腔円周を拡張するように構成されている。
【0035】
[0036]特定の実施形態によれば、経直腸摘出器を使用して被験者から標本を体内で除去する方法は、遠位腸部分を通って経直腸摘出器を経肛門的に挿入するステップと、遠位腸部分の開口の周りで頂縁部を拡張するステップとを含む。
【0036】
[0037]特定の実施形態によれば、この方法は、経直腸開創器を通って把持ツールを経肛門的に挿入するステップと、標本を把持するステップと、経直腸開創器の内部を通って標本を経肛門的に摘出するステップとを含む。
【0037】
[0038]特定の実施形態によれば、この方法は、ドローストリングを引っ張り(たとえば、頂縁部を反転させる)、以て実質的に円筒形の本体を直腸から引っ張り出すことによって、経直腸摘出器を取り出すステップを含む。
【0038】
[0039]本発明の実施形態は、被験者から標本を体内で切除する方法を提供し、この方法は、(1)腸壁から標本を分離するステップであり、近位切除マージンで腸壁を分断し、標本の近位縁部部分にステープルを適用することによって、標本の近位内部管腔を閉じ、近位腸部分の縁部部分の周りに縫合糸を配置し、遠位切除マージンで腸壁を分断し、標本の遠位縁部部分にステープルを適用することによって、標本の遠位内部管腔を閉じ、遠位腸部分の縁部部分の周りに縫合糸を配置することによって、腸壁から標本を分離するステップと、(2)被験者の直腸を通って標本を摘出するステップと、(3)近位腸部分と遠位腸部分との間の吻合を体内で形成するステップとを含む。
【0039】
[0040]特定の実施形態によれば、この方法は、ポート切開を除いて、腹壁切開を形成することを含まない。
【0040】
[0041]特定の実施形態によれば、この方法は、本明細書に記載する実施形態による手術デバイスを使用して腸壁から標本を分離するステップを含み、手術デバイスは、反対の位置にある近位及び遠位端部を含む長手方向の長さを各々有する第1のアーム及び第2のアームであり、前記第1のアーム及び前記第2のアームのうちの少なくとも1つが、開位置と締付け位置との間で可動である、第1のアーム及び第2のアームと、切断要素を備える切断機構と、事前形成された調整可能な締結部によって互いに結合された第1及び第2の端部領域を含む一定の長さの縫合糸を備える縫合機構であり、縫合糸の第1の糸通し領域が、前記第1のアーム内で長手方向の長さに沿って配置された第1の行の縫合ステープルを通って延び、縫合糸の第2の糸通し領域が、前記第2のアーム内で長手方向の長さに沿って配置された第2の行の縫合ステープルを通って延びる、縫合機構と、任意選択で、第1のアーム又は第2のアームの長手方向の長さに沿って配置されたステープル、及び第1のアーム又は第2のアームのうちの他方の長手方向の長さに沿って配置されたアンビルを備えるステープリング機構とを具備する。
【0041】
[0042]特定の実施形態によれば、この方法は、経直腸摘出器を使用して標本を摘出するステップを含み、経直腸摘出器は、長手方向軸線に沿って延びる変形可能な材料を含み、外部、内部、及び内部への開口を画定する頂縁部を有する実質的に円筒形の本体と、内部を通って延び、頂縁部に結合された任意選択的なドローストリングと、実質的に円筒形の本体の外部の少なくとも一部分に摺動可能に結合されてその部分を取り囲む任意選択的な外部シースとを備え、実質的に円筒形の本体は、外方へ拡張し、開口の円周を増大させて、以て直腸の管腔円周を拡張するように構成される。
【0042】
[0043]低侵襲手術方法及びそれらの方法を実行するデバイスの実施形態に関する上記の概要並びに以下の詳細な説明は、例示的な実施形態の添付の図面と併せて読むとよりよく理解されよう。しかし、本発明は、示されている厳密な配置及び機器に限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による手術デバイスによって近位切除マージンで分断されている腸壁の図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による近位切除マージンで分断された腸壁の図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による手術デバイスによって遠位切除マージンで分断されている腸壁の図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による近位及び遠位切除マージンで分断された腸壁の図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態による例示的なサーキュラステープラに取り付けられた例示的な直腸摘出器の図である。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による例示的なサーキュラステープラに取り付けられた例示的な直腸摘出器の図である。
【
図7】本発明の例示的な実施形態による直腸摘出器及び把持ツールの例示的な使用の図である。
【
図8】本発明の例示的な実施形態による標本の経直腸摘出の例示的な使用の図である。
【
図9】本発明の例示的な実施形態による直腸摘出器の例示的な使用の図である。
【
図10】本発明の例示的な実施形態による例示的なサーキュラステープラの図である。
【
図11】本発明の例示的な実施形態によるアンビル及びサーキュラステープラの例示的な使用の図である。
【
図12】本発明の例示的な実施形態によるサーキュラステープラのトロカールの例示的な使用の図である。
【
図13】本発明の例示的な実施形態による例示的な吻合の図である。
【
図14A】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの一実施形態の図である。
【
図14B】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの一実施形態の図である。
【
図14C】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの一実施形態の図である。
【
図15A】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの図である。
【
図15B】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの図である。
【
図15C】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの図である。
【
図16A】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスによって腸壁の周りに適用されている縫合糸の図である。
【
図16B】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスによって腸壁の周りに適用されている縫合糸の図である。
【
図17】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの上面図である。
【
図18】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの第1のアーム及び第2のアームの図である。
【
図19】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアーム内に収容された手術用ステープルの部分図である。
【
図20】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアームの斜視図である。
【
図21】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアームの横断面側面図である。
【
図22】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの部分図である。
【
図23】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの横断面側面図である。
【
図24】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアームの図である。
【
図25】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアームの部分上面図である。
【
図26】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスの部分図である。
【
図27】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアームの上面図である。
【
図28】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術デバイスのアーム内に収容された縫合ステープルの部分図である。
【
図29A】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術用クリップアプライヤの斜視図である。
【
図29B】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術用クリップアプライヤの斜視図である。
【
図30A】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術用クリップアプライヤ及び縫合糸の斜視図である。
【
図30B】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術用クリップアプライヤ及び縫合糸の斜視図である。
【
図30C】本発明の例示的な実施形態による例示的な手術用クリップアプライヤ及び縫合糸の斜視図である。
【
図31A】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【
図31B】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【
図31C】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【
図31D】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【
図31E】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【
図31F】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【
図31G】本発明の例示的な実施形態による腸壁の開放管腔の周りに縫合糸及び縫合クリップを適用している例示的な縫合クリップアプライヤの図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[0076]本発明の実施形態は、管状組織の一部の体内切除のための低侵襲方法、及びそれらの方法を実行するデバイスに関する。特に、本発明の実施形態は、結腸直腸切除を実行する低侵襲方法に関する。たとえば、本発明の実施形態は、腹腔鏡又はロボット用のポートのために必要な切開を除いて、腹壁切開を必要としない、結腸及び/又は直腸の一部の体内切除、結腸/直腸を介した一部の摘出、並びに体内吻合(ICA)の形成のためのデバイス及び方法に関する。
【0045】
[0077]本発明の実施形態は、事前形成された調整可能な締結部(たとえば、事前形成された結び目)を有する縫合糸(たとえば、以下に論じる巾着縫合糸)を腸壁に適用し、それにより腹腔鏡又はロボットによって巾着縫合式に縫合糸を適用して手術中に結び目を結ぶ必要なく、縫合を締め付けて閉じることを可能にするデバイスを使用することによって、ICAを容易にする。本発明の実施形態はまた、外科医による1回の作動に応答して、任意選択で同じ時間に、たとえば同時に、分断された腸壁の一方の側に巾着縫合糸を適用し、他方の側に閉じたステープルラインを適用するデバイスを使用することによって、ICAを容易にする。従来の方法は、非常に高度な技術を要する時間のかかる手技である腹腔鏡又はロボットによる体内縫合を除いて、腸に巾着縫合糸を配置する実行可能な方法を提供しない。
【0046】
[0078]特定の実施形態によれば、自然開口部からの経直腸標本摘出は、摘出プロセス中の直腸壁への損傷又は腸内容物の分散を抑える、安全な挿入及び除去のために設計された自己拡張型の直腸開創器を使用することによって容易になる。本明細書に開示する方法の実施形態はまた、直腸管腔を自然開口部として用いることによって、サーキュラステープラのアンビルの体内配置を可能にする。特定の実施形態によれば、本明細書に開示する方法及びデバイスの結果、腹腔鏡又はロボット用のポートに必要とされるものを除いて、いかなる腹部切開も必要とすることなく、切除、標本摘出、及びICAの作製が行われ、切除及び吻合のすべてのステップは体内で実行される。
【0047】
[0079]本明細書では、「切除」とは、管状組織の一部、たとえば結腸及び/又は直腸の一部など、構造又は構造の一部の外科的除去又は摘出を指す。たとえば、本明細書に記載する方法は、腸(intestine)又は腸(bowel)の患部又は欠陥部(たとえば、結腸及び/又は直腸の患部又は欠陥部)の除去又は摘出に関する。
【0048】
[0080]本明細書では、「標本」とは、外科的に除去された又は外科的に除去されることが意図された構造又は構造の一部を指す。たとえば、本明細書に記載する手術方法は、腸(intestine)又は腸(bowel)の患部又は欠陥部(たとえば、結腸及び/又は直腸の患部又は欠陥部)の除去を含むことができ、この患部又は欠陥部も標本と呼ばれる。本明細書では、腸(intestine)、腸(bowel)、結腸、及び直腸は、管腔を有する「管状組織」の非限定的な例である。いくつかの場合、標本は、がん、ポリープ、憩室炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、子宮内膜症、虚血性大腸炎、直腸脱、腫瘍などの標本に影響を及ぼす疾患又は症状のため、罹患している及び/又は欠陥があると考えることができる。
【0049】
[0081]本明細書では、「体内」で実行される手術ステップとは、体腔内で行われるステップを指し、「体外」で実行される手術ステップとは、体腔外で行われるステップを指す。
【0050】
[0082]本明細書では、「縫合糸」とは、手術処置で使用するのに好適な材料の可撓性の撚糸又は糸などの一定の長さの可撓性材料(たとえば、糸材)を指す。縫合糸は、腸壁内で開放管腔の縁部の周りに配置され、複数の締結具(たとえば、縫合ステープル又は縫合クリップ)を使用して腸に締結される巾着縫合糸とすることができ、縫合糸がきつく引っ張られると、腸開口が閉じる。縫合糸材料は、組織を確実に保持するのに十分な強さ及び結び目を作るのに十分な可撓性を有することができる。縫合糸は、当技術分野で知られている多数の材料から作ることができる。
【0051】
[0083]本明細書では、事前形成された調整可能な締結部とは、縫合糸の少なくとも2つの領域を締結機構によってともにつなぎ合わせた部分を指し、縫合糸のループは締結機構から延び(ループは、管状組織を取り巻くように構成される)、締結機構は、ループの長さ又は直径を減少させることによって、縫合糸のループを管状組織の周りに締め付ける(たとえば、
図12に示すように、吻合を実行するとき、ループを腸の周りに締め付けて腸から延びるトロカール又はアンビルシャフトの周りで腸管腔を閉じる)ように調整することができる。言い換えると、縫合糸ループは、組織縁部を互いに引き寄せるように(たとえば、巾着縫合)、管状組織の周りに締め付けられる。「取り巻く」及び「直径」という用語は、縫合糸によって形成されたループに関連して使用され、ループは必ずしも円形ではなく、管状組織の周りにループを配置することを可能にする任意の形状(たとえば、実質的に円形、実質的に卵形、実質的に涙形など)とすることができる。一実施形態(たとえば、
図2~
図4に示す)によれば、事前形成された調整可能な締結部は、事前形成された調整可能な結び目を含むことができ、その結び目によって縫合糸の2つの領域がともにつなぎ合わされており、外科医は、縫合糸のループを腸壁の周りに締め付けるように結び目を調整することができる。別法として、事前形成された調整可能な締結部を結び目のないものにすることができ、たとえば、リング又は自己ロッククリップなどのコネクタによって、縫合糸の2つの領域をともにつなぎ合わせることができ、コネクタから延びる縫合糸のループを締め付けるようにコネクタを調整することができることが企図される。外科医は、任意の好適な方法(たとえば、巾着縫合糸を締め付けるための当技術分野で知られている任意の好適な方法)によって、縫合糸ループを管状組織の周りに締め付けることができる。たとえば、外科医は、事前形成された調整可能な締結部から延びる縫合糸の1つ若しくは複数の端部を引っ張ること、及び/又は事前形成された調整可能な締結部を前方へ押しながら、1つ若しくは複数の端部をきつく引っ張り若しくは保持すること、及び/又は1つ若しくは複数の端部をきつく保持しながら、事前形成された調整可能な締結部が縫合糸に沿って摺動することを可能にすることができ、以てループを管状組織の周りに締め付けることができる。
【0052】
[0084]本明細書では、「ポート」は、「ポート切開」と区別なく使用され、腹腔鏡及び/又はロボット機器を体腔内へ配置するために構成された切開を指す。ポート切開は、手術中に腸の一部(たとえば、結腸及び/又は直腸の一部)が体腔から体外に出される切開を含まず、したがって腸の一部(たとえば、切除された腸の一部)が被験者の体から摘出される切開を含まない。
【0053】
[0085]腹腔鏡及びロボット手術は、典型的に低侵襲手術(MIS)と呼ばれており、約5mm~約12mmの範囲とすることができる小さいポート切開を通ってカメラ及び機器が配置された状態で処置が実行される手法であり、体腔内(体内)での視覚化及び手術手技を容易にする。切除及び吻合を伴う特定の従来のタイプの腹腔鏡及びロボット手術は、体内及び体外の両方のステップを含み、たとえば、手術の腹腔鏡又はロボット部分が休止され、したがってポート切開でない追加の切開(又は既存のポート切開を延ばして大きい切開が作製されることもある)を通って体から腸の一部を体外に出すことが可能になり、次いで手術のそれらのステップ(たとえば、切除及び/又は吻合のステップ)が体外で実行される。本発明の特定の実施形態によれば、切除及び吻合のすべてのステップは、体内で実行され、体外で実行される切除又は吻合ステップはない。
【0054】
[0086]一実施形態によれば、結腸直腸MISを実行することは、低侵襲機器及びカメラのために腹壁を通って様々な数のポートを配置することを含むが、最も一般的には4つ又は5つのポートを配置することを含む。たとえば、腹腔鏡手術は、カメラ及び機器のサイズに応じて、直径約5~約12mmのポートを配置することを含むことができる。一実施形態によれば、da Vinci Xiロボットプラットフォームは、カメラ及びロボット機器のために3つの直径8mmのポート、ステープリングデバイスのために1つの直径12mmのポート、及び臨床支援のために1つの直径5mmの付属ポートを利用する。腹腔鏡であるかロボットであるかにかかわらず、すべてのポート切開の累積長さ/直径は、約40mmとすることができる。小さいサイズ及び最小の腹壁外傷のため、これらのポートだけで、腹壁外傷、術後痛が最小になり、ポート部ヘルニアのリスクが非常に低くなる。本明細書では、切開の長さ、直径、又はサイズとは、ポートの最長の寸法(たとえば、長さ又は幅)を指し、皮膚切開は、約2mm長くすることができる。
【0055】
[0087]各ポート切開は、長さ約15mm以下、又は約12mm以下、又は約10mm以下とすることができる。たとえば、1つのポート切開は、約5mmのサイズとすることができ、別のポート切開は、ロボットステープラの配置を可能にするために約12mmのサイズであり、3つの他のポートは約8mmのサイズである。一実施形態によれば、3つ~6つのポート切開、たとえば5つのポート切開が作られる。すべてのポート切開の合計の長さは、約45mm以下、又は約40mm以下、又は約35mm以下とすることができる。
【0056】
[0088]本発明は、被験者の腸に影響を及ぼす疾患又は症状を治療する方法を提供することができ、この方法は、本明細書に記載する手術方法及び/又はデバイスの実施形態の1つ又は複数を使用することを含む。たとえば、本発明の手術方法及びデバイスを使用して、良性の症状を治療することができる。別法として、本発明の手術方法及びデバイスを使用して、悪性の症状を治療することができる。本明細書に記載する手術方法及び/又はデバイスの実施形態を使用して治療することができる疾患又は症状の非限定的な例には、がん(たとえば、結腸がん又は直腸がんなどの大腸がん)、ポリープ、憩室炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、子宮内膜症、虚血性大腸炎、及び直腸脱が含まれる。
【0057】
[0089]特定の実施形態によれば、本発明の手術方法は、腹腔鏡によって実行される。追加の実施形態によれば、本発明の手術方法は、ロボットによって実行される。本明細書に記載するように、標本を切除するステップ、直腸を介して標本を除去するステップ、及び吻合を実行するステップは、体内で実行され、いかなるステップも体外で実行されないため、この方法の実施形態は、ポート切開を除いて、いかなる腹壁切開を作製することも含まない。
【0058】
[0090]
図1~
図13を参照すると、本明細書に記載する方法の実施形態は、中心管腔105を有する腸又は管状組織107から標本300(たとえば、結腸及び/又は直腸の患部又は欠陥部などの腸の患部又は欠陥部)を除去することと、除去を意図しない腸の正常な、罹患していない、又は「健康」な部分を保存することと、腸の連続性を回復するために吻合を実行することとを含む。除去されない腸又は管状組織107の正常部分を、近位腸部分302及び遠位腸部分304と呼ぶ。標本300の切除後、近位腸部分302及び遠位腸部分304をともにつなぎ合わせて、吻合322を形成することができ、したがって近位腸部分302の近位内部管腔306と遠位腸部分304の遠位内部管腔308との間に連続性が得られる。
【0059】
[0091]一実施形態によれば、被験者から標本300(たとえば、結腸及び/又は直腸の患部又は欠陥部などの腸の患部又は欠陥部)を体内で切除する方法は、標本300を体内で切除することと、被験者の直腸を介して標本300を摘出することと、近位腸部分302と遠位腸部分304との間の吻合322を体内で形成することとを含む。標本300を切除することは、腸壁212を近位切除マージン312で(たとえば、管腔を横方向に横切って)分断し、以て標本300を近位腸部分302から分離し、腸壁212を遠位切除マージン314で(たとえば、管腔を横方向に横切って)分断し、以て標本300を遠位腸部分304から分離することによって、標本300を腸から分離することを含むことができる。腸壁212を近位切除マージン312及び遠位切除マージン314で分断することは、任意の順序で実行することができ、たとえば、腸壁212を近位切除マージン312で分断し、次に遠位切除マージン314で分断することができ、又は腸壁212を遠位切除マージン314で分断し、次に近位切除マージン312で分断することができる。
【0060】
[0092]
図1~
図13を参照すると、この方法は、腸壁212を近位切除マージン312で(たとえば、管腔を横方向に横切って)分断し、以て標本300を近位腸部分302から分離することによって、標本300を近位腸部分302から分離することと、任意選択で標本300の近位縁部部分310にステープル114を適用することによって、標本300の近位内部管腔324を閉じることと、近位腸部分302の縁部部分316(開放管腔に隣り合う縁部部分)の周りに縫合糸118を配置することとを含むことができる。(1)腸壁212を近位切除マージン312で分断し、以て標本300を近位腸部分302から分離するステップ、(2)標本300の近位縁部部分310にステープル114を適用することによって、標本300の近位内部管腔324を閉じるステップ、及び(3)近位腸部分302の縁部部分316の周りに縫合糸118を配置するステップは、同時又は実質的に同時に実行することができる。
【0061】
[0093]たとえば
図1~
図6に示す実施形態によれば、この方法は、腸壁212を遠位切除マージン314で(たとえば、管腔を横方向に横切って)分断し、以て標本300を遠位腸部分304から分離することによって、標本300を遠位腸部分304から分離することと、任意選択で標本300の遠位縁部部分318にステープル114を適用することによって、標本300の遠位内部管腔326を閉じることと、遠位内部管腔308に隣り合う遠位腸部分304の縁部部分320の周りに縫合糸118を配置することとを含む。(1)腸壁212を遠位切除マージン314で分断し、以て標本300を遠位腸部分304から分離するステップ、(2)標本の遠位縁部部分318にステープル114を適用することによって、標本300の遠位内部管腔308を閉じるステップ、及び(3)遠位腸部分304の縁部部分320の周りに縫合糸118を配置するステップは、同時又は実質的に同時に実行することができる。
【0062】
[0094]特定の実施形態によれば、手術機器102は、外科医によって作動させられるとき、ステープル114及び縫合糸118を同時に(たとえば、1回の動きで)適用するように構成される。手術機器102は、以下でさらに詳細に開示するように、遠位切除マージン314で腸壁を分断すること、標本300の遠位縁部部分318にステープル114を適用することによって、標本300の遠位内部管腔326を閉じること、及び遠位腸部分304の縁部部分320の周りに縫合糸118を配置することを、同時又は実質的に同時に行う、切断機構176、ステープリング機構174、及び縫合機構172を備えることができる。特定の実施形態によれば、手術機器102の縫合機構172は、事前形成された調整可能な締結部(たとえば、事前形成された引き結びなどの事前形成された結び目)を有する縫合糸を含む。
【0063】
[0095]
図6~
図9を参照すると、標本300を正常又は「健康」な腸から分離し、任意選択でその近位縁部部分310及び遠位縁部部分318にステープルで留めて、その近位内部管腔324及び遠位内部管腔326を閉じた後、この方法は、被験者の直腸を介して標本300を摘出することをさらに含むことができる。特定の実施形態によれば、被験者の直腸を通って標本300を摘出することは、遠位腸部分304を通って把持ツール210を経肛門的に挿入することと、把持ツール210によって標本300を把持することと、被験者の直腸を通って標本300を摘出することとを含む。一実施形態によれば、この方法は、遠位腸部分304を通って経直腸開創器328を経肛門的に挿入し、次に経直腸開創器328を通って把持ツール210を挿入することを含む。
【0064】
[0096]一実施形態では、自己拡張型の経直腸開創器328を使用して、標本300(たとえば、切除された腸の一部)を経直腸的に除去する。経直腸開創器328は、本明細書に記載する手術方法の実施形態によって使用することができる。経直腸開創器328は、被験者の直腸内に配置されて、腸壁を実質的に均一に拡張し(すなわち、直腸管腔の円周を増大させる)、直腸を通って把持デバイス210を挿入する際の腸壁の引裂け又は他の外傷を防止又は低減し、標本300が直腸を通って除去されるときの汚染を防止又は低減するように構成することができる。
【0065】
[0097]一実施形態によれば、経直腸開創器328は、長手方向軸線に沿って延びる変形可能な材料を含む実質的に円筒形の本体を備える。実質的に円筒形の本体は、外部、内部通路202、及び内部通路への開口を画定する頂縁部204を有する。頂縁部204は、腸壁をたとえば遠位切除マージン314で分断することによって露出された腸の管腔へ、開口の周りに拡張するように構成される。一実施形態によれば、ドローストリング206が内部通路202を通って延び、頂縁部204に結合される。経直腸開創器328が被験者の腸管腔に配置されたとき、実質的に円筒形の本体は、実質的に円筒形の本体の外部が腸の内壁に接触した状態で、たとえば腸管腔の露出した開口から肛門外口まで、又は肛門外口を越えて、腸管腔の距離に沿って長手方向に延びる。自己拡張によって、経直腸開創器328は、腸管腔をその距離に沿って拡張して管腔を保護し、したがって把持機器210は、内部通路202を通って経肛門的に安全に挿入されて、標本300を把持することができ、標本300は、腸管腔に接触することなく、経肛門的に安全に除去することができる。特定の実施形態によれば、実質的に円筒形の本体は、頂縁部とは反対の位置にある端部に下縁部(図示せず)を備えており、下縁部もまた、内部通路202への開口を画定する。下縁部は、肛門外口の外側に残るように構成することができる。
【0066】
[0098]一実施形態によれば、経直腸開創器328は、直腸を介して挿入可能な挿入機器に取外し可能に結合されており、たとえば挿入機器は、サーキュラステープラなどの従来の手術機器とすることができる。挿入機器は、経直腸開創器328が直腸内に配置された後、経直腸開創器328から摺動可能に取り出す(直腸から経肛門的に取り出す)ことができる。この方法は、経直腸開創器328を通って把持ツール210及び任意選択で内視鏡バッグ又はエンドキャッチを経肛門的に挿入することと、標本300を把持することと、任意選択で経直腸的に挿入されたエンドバッグを通って標本300を配置することと、経直腸開創器328の内部を通って標本300を経肛門的に摘出することとをさらに含むことができる。この方法は、ドローストリング206を引っ張り、以て実質的に円筒形の本体を直腸から引っ張り出すことによって、経直腸開創器328を取り出すことをさらに含むことができる。
【0067】
[0099]一実施形態によれば、挿入機器は、実質的に円筒形の本体の外部の少なくとも一部分に摺動可能に結合されてその部分を取り囲む外部シース208を備える。実質的に円筒形の本体の材料は、自己拡張性である(たとえば、外部シースが取り出されるときに外方へ拡張するように付勢される)。したがって実質的に円筒形の本体は、たとえば外部シース208が頂縁部204から離れる方へ長手方向に摺動可能に動かされるとき、外方へ拡張し、その内部通路の円周を増大させて、以て直腸の管腔円周を拡張するように構成される。
【0068】
[00100]一実施形態によれば、経直腸開創器328は、サーキュラステープラ330(たとえば、
図10)に取外し可能に結合されており、サーキュラステープラ330は、ステープリングカートリッジと、ステープリングカートリッジに取外し可能に結合されたアンビル構成要素336とを備える。頂縁部204は、経直腸開創器328をサーキュラステープラに取外し可能に固定するように構成された複数のノッチを備えるリム又は拡張可能なリング状の構造を含むことができる。
【0069】
[00101]一実施形態によれば、経直腸開創器328を使用して被験者から標本300を体内で切除する方法は、遠位腸部分304を通って経直腸開創器328を経肛門的に挿入すること(たとえば、腸を遠位切除マージン314で分断して管腔に開口を露出させた後)と、経直腸開創器328の頂縁部204が遠位腸部分304内の管腔308への開口を取り囲むように、腸の管腔に経直腸開創器328を配置することとを含む。
【0070】
[00102]
図9~
図10を参照すると、標本300が被験者から摘出された後、この方法は、近位腸部分302と遠位腸部分304との間の吻合322を体内で形成することをさらに含むことができる。吻合322を体内で形成することは、サーキュラステープラ330を使用することによって実行することができる。様々なサーキュラステープラが当技術分野で知られており、本発明による使用に好適である。特定の実施形態によれば、サーキュラステープラ330は、外科医によって利用される操作及び調整機構を有する細長いシャフトと、細長いシャフトに取り付けられたステープリング機構334とを含む。ステープリング機構334は、ヘッドユニットとも呼ばれるステープリングカートリッジ338を含み、ステープリングカートリッジ338は、実質的に同心円状の円形アレイで構成することができる複数のステープルを含む。カートリッジ内では、軸線方向に進むように、実質的に円形又は卵形のナイフをステープルの内部に同心円状に取り付けることができる。カートリッジの中心から、可動のトロカールシャフト332が軸線方向に延びており、トロカールシャフト332は、トロカールシャフト332に取外し可能に結合されたアンビル構成要素336を有するように適合される。アンビル構成要素336は、ステープルがアンビル構成要素336内へ動かされるときにステープルの端部を形成するように構成される。ステープルカートリッジ338の遠位面とアンビル構成要素336との間の距離は通常、トロカール332の軸線方向の動きを制御するためにステープラシャフトに取り付けられた調整機構によって制御される。作動機構が外科医によって起動させられると、ステープルカートリッジ338とアンビル336との間に締め付けられた組織がステープルで留められて切断され、以て縫合ステープル及びステープルを摘出し、したがって被験者から取り出すことができる。
【0071】
[00103]
図11~
図13を参照すると、この方法は、アンビル構成要素336をステープリングカートリッジ338から取り外すことと、アンビル構成要素336の周りで近位腸部分302の縁部部分316を閉じることと、ステープリングカートリッジ330の周りで遠位腸部分304の縁部部分320を閉じることとをさらに含むことができる。アンビル構成要素336の周りで近位腸部分302の縁部部分316を閉じることは、アンビル構成要素336から軸線方向に延びるシャフト342の周りで縫合糸340を締め付けることを含むことができ、ステープリングカートリッジ330の周りで遠位腸部分302の縁部部分320を閉じることは、ステープリングカートリッジ330から軸線方向に延びるシャフトの周りで縫合糸344を締め付けることを含む。次いでアンビル構成要素336及びステープリングカートリッジ330を互いに結合し、サーキュラステープラを作動させて、近位腸部分302と遠位腸部分304との間に吻合322を形成し、以て近位腸部分302の近位内部管腔306と遠位腸部分304の遠位内部管腔308との間に連続性を提供する。外科医がステープラを起動させると、ステープルは2つの腸端部を互いに取り付け、ステープルの内部に同心円状に取り付けられたステープラ内のナイフ(たとえば、実質的に円形のナイフ)が、縫合ステープル及び縫合糸を取り囲む組織を分断して摘出し、縫合ステープル及び縫合糸を含む摘出された組織は、ステープラのチャンバ内に配置され、外科医がそれを取り出す。
【0072】
[00104]一実施形態によれば、手術デバイス102を使用して管状組織の周りに縫合糸118を適用する(たとえば、腹腔鏡又はロボットによる)方法は、ポート切開を介して手術デバイスを体腔に挿入することと、第1のアーム104と第2のアーム106との間に管状組織を締め付けることと、管状組織を分断し、以て開放管腔を作製するように、切断機構176を作動させることと、開放管腔に隣り合う管状組織に第1及び第2の行の縫合ステープル120を取り付けるように、縫合機構172を作動させることであり、事前形成された調整可能な締結部122を含む縫合糸118が、手術デバイス102から取り外され、管状組織の周りにループを形成し、縫合糸118の一部分が、縫合ステープル120を通って延びる、縫合機構172を作動させることとを含む。本明細書に記載するように、縫合糸118は、手術デバイス102から取り外されるとき、又は手術デバイス102から取り外された後、ループを形成する。たとえば、縫合ステープル120が管状組織に取り付けられた後、第1のアーム104及び第2のアーム106が開かれた後(たとえば、外科医がデバイスを腸壁から離れる方へ引っ張ったとき)、縫合糸118は、手術デバイス102から自動的に取り外すことができ、又は手術デバイス102から「落下」することができる。本明細書に記載するように、切断機構176を作動させるステップ及び縫合機構172を作動させるステップは、たとえば外科医による1回の作動に応答して、同時又は実質的に同時に行うことができる。この方法は、縫合糸118の第1の端部130及び第2の端部132のうちの1つ又は複数を引っ張り、以て事前形成された調整可能な締結部122を摺動させてループを閉じることによって、管状組織の周りに縫合糸118を締め付けることをさらに含むことができる。
【0073】
[00105]一実施形態によれば、手術デバイス102を使用して被験者から腸標本を体内で切除する(たとえば、腹腔鏡又はロボットによる)方法は、ポート切開を介して手術デバイスを体腔に挿入することと、標本300と健康な腸部分との間の近位切除マージンの上に第1のアーム104及び第2のアーム106を締め付けることと、近位切除マージン312で腸を分断するように、切断機構176を作動させることと、標本300の近位縁部部分310にステープル114を適用することによって、標本300の内部管腔324を閉じるように、ステープリング機構174を作動させることと、近位腸部分302の縁部部分316に第1及び第2の行の縫合ステープル120を取り付けるように、縫合機構172を作動させることであり、事前形成された調整可能な締結部120を含む縫合糸118が、手術デバイス120から取り外され、近位腸部分302の縁部部分316の周りにループを形成し、縫合糸118の一部分が、縫合ステープル120を通って延びる、縫合機構172を作動させることと、標本300と健康な腸部分との間の遠位切除マージン314の上に第1のアーム104及び第2のアーム106を締め付けることと、遠位切除マージン314で腸を分断するように、切断機構176を作動させることと、標本300の遠位縁部部分にステープル114を適用することによって、標本300の内部管腔324を閉じるように、ステープリング機構174を作動させることと、遠位腸部分304の縁部部分320に第1及び第2の行の縫合ステープル120を取り付けるように、縫合機構172を作動させることであり、事前形成された調整可能な締結部122を含む縫合糸118が、手術デバイス102から取り外され、遠位腸部分304の縁部部分320の周りにループを形成し、縫合糸118の一部分が、縫合ステープル120を通って延びる、縫合機構172を作動させることとを含む。本明細書に記載するように、切断機構176を作動させること、ステープリング機構174を作動させること、及び縫合機構172を作動させることは、外科医による1回の作動に応答して、同時又は実質的に同時に行われる。
【0074】
[00106]
図1及び
図14~
図26を参照すると、手術デバイス102は、外科医によって作動させられるとき、ステープル114及び縫合糸118を同時に(たとえば、1回の動きで)適用するように構成することができる。手術機器102は、近位切除マージン312で腸壁212を分断すること、標本の近位縁部部分310にステープル114を適用することによって、標本300の近位内部管腔324を閉じること、及び近位腸部分302の縁部部分316の周りに縫合糸118を配置することを、同時又は実質的に同時に行う、切断機構176、ステープリング機構174、及び縫合機構172を備えることができる。特定の実施形態によれば、手術機器102の縫合機構172は、事前形成された調整可能な締結部122(たとえば、事前形成された引き結びなどの事前形成された結び目)を有する縫合糸を含む。
【0075】
[00107]手術デバイス102は、管状組織(たとえば、結腸又は直腸などの腸)の周りに縫合糸を配置する縫合機構172を備えることができる。特定の実施形態によれば、事前形成された調整可能な締結部(たとえば、事前形成された引き結びなどの事前形成された結び目)を含む一定の長さの縫合糸が、手術デバイスに取外し可能に結合される。一実施形態によれば、縫合糸は巾着縫合糸である。事前形成された調整可能な締結部を縫合糸の一部として含むことによって、外科医は、縫合糸が管状組織の周り(たとえば、腸壁の周り)に配置された後、縫合糸に結び目を結ぶ必要がない。特定の実施形態によれば、事前形成された調整可能な締結部を含む一定の長さの縫合糸は、「折曲げ」又は「屈曲」位置で機器内に保持され、機器から取り外されると、縫合糸は、腸又は他の管状組織を取り囲むループ(事前形成された調整可能な締結部から延びるループ)に「広がる」。したがって、縫合糸が管状組織の周りに配置された後、外科医は、たとえば事前形成された調整可能な締結部(たとえば、事前形成された結び目)から延びる縫合糸の端部を引っ張ることによって、縫合糸を締め付けることができる。本明細書に記載するように、手術デバイスは、縫合機構172に加えて、切断機構176及び/又はステープリング機構174を含むことができる。
【0076】
[00108]本発明の一実施形態によれば、手術デバイス102は、作動機構(図示せず)に接続され(たとえば、機械的及び/又は電気的及び/又はコンピュータを介して遠隔など)、これは、作動機構が手術デバイス102と通信しており、したがってたとえば機械的及び/又は電気的及び/又は遠隔手段を介して手術デバイス102を作動させることができることを意味する。手術デバイス102及び作動機構は、腹腔鏡及び/又はロボット手術システムなどの手術システムの一部を形成することができる。作動機構は、手術デバイスを制御して作動させるために、外科医によって使用され、たとえば外科医は、ボタンを押下すること又はトリガを引っ張ることなどによって、1回の動きで手術デバイス102を作動させることができる。手術処置中、手術デバイス102は、被験者の体腔に(たとえば、ポート切開又は自然開口部を通って)配置することができ、作動機構は、体腔外に残り、外科医によって制御可能である(たとえば、作動機構は、外科医が手術野を見て内視鏡機器の動きを制御することを可能にするロボットシステム内の制御センターの一部とすることができる)。たとえば、
図1に示すように、手術デバイス102は、da Vinci手術システムなどの腹腔鏡又はロボット手術システムの一部を形成するアーム148に結合することができる。作動機構は、外科医によって把持されるハンドル部分を備えることができる。
【0077】
[00109]
図1及び
図14~
図28を参照すると、手術デバイス102は、反対の位置にある近位端部154、156及び遠位端部155、157を含む長手方向の長さを各々有する第1のアーム104及び第2のアーム106を備える。第1のアーム104及び第2のアーム106は、開位置(たとえば、
図14A)と締付け位置(たとえば、
図15A)との間で可動である。第1のアーム104及び第2のアーム106のうちの少なくとも1つは、開位置と締付け位置との間で可動である。第1のアーム104及び第2のアーム106は、締付け位置で、管状組織107の上に、たとえば腸の上に閉じることができる。特定の実施形態によれば、第1のアーム104及び第2のアーム106は、近位端部154、156で第1のアーム104及び第2のアーム106を互いにヒンジ式に取り付けるヒンジ機構152を有する。第1のアーム104及び第2のアーム106は、近位端部154、156で互いに結合された単一の一体ユニットとして形成することができ、又は第1のアーム104及び第2のアーム106は、次いで互いに結合される別個のユニットとして形成することができる。第1のアーム104及び第2のアーム106が締付け位置にあるとき、手術デバイス102は、体腔内に配置するためにポート切開を通り抜けるのに十分に小さい寸法を有することができる。互いに締め付けられた第1のアーム104及び第2のアーム106の全高は、約12mm未満、約12mm~約15mm、又は約15mm超とすることができる。
【0078】
[00110]
図14~
図24を参照すると、手術デバイス102は、縫合機構172を含むことができ、縫合機構172は、縫合ステープル120を通って延びる一定の長さの縫合糸118(たとえば、巾着縫合糸)を備える。一実施形態によれば、たとえば
図17に示すように、第1の行の縫合ステープル120が、第1のアーム104内で長手方向の長さに沿って配置され、第2の行の縫合ステープル120が、第2のアーム104内で長手方向の長さに沿って配置される。一定の長さの縫合糸118は、第1の端部領域130及び第2の端部領域132を含み、第1の端部領域130及び第2の端部領域132は、それぞれ反対の位置にある第1及び第2の端部を含む。特定の実施形態によれば、第1の端部領域130及び第2の端部領域132は、事前形成された調整可能な締結部122(たとえば、事前形成された引き結びなどの事前形成された結び目)によって互いに結合され、縫合糸の第1の糸通し領域134が、第1のアーム104内の第1の行の縫合ステープル120を通って延び、縫合糸の第2の糸通し領域136が、第2のアーム106内の第2の行の縫合ステープル120を通って延びる。一実施形態では、一定の長さの縫合糸118は、第1のアーム104の長手方向の長さに沿って延びる第1の非糸通し領域138と、第2のアーム106の長手方向の長さに沿って延びる第2の非糸通し領域140とをさらに含む。一実施形態によれば、縫合糸の第1の糸通し領域134及び第1の非糸通し領域138は、第1のアーム104に取外し可能に結合され、縫合糸の第2の糸通し領域136及び第2の非糸通し領域140は、第2のアーム106に取外し可能に結合され、結び目によって互いに結合された縫合糸の第1の端部130及び第2の端部132は、第1のアーム104及び第2のアーム106から離れる方へ延びる。
【0079】
[00111]特定の実施形態によれば、一定の長さの縫合糸118は、第1の非糸通し領域138と第1の糸通し領域134との間の第1の屈曲部142、及び第2の糸通し領域136と第2の非糸通し領域140との間の第2の屈曲部144に形成される。一実施形態によれば、第1の屈曲部142及び第2の屈曲部144の各々は約180度であり、したがって第1のアーム104内で、縫合糸118の第1の非糸通し領域138は、縫合糸118の第1の糸通し領域134に実質的に平行であり、第2のアーム106内で、縫合糸118の第2の非糸通し領域140は、縫合糸118の第2の糸通し領域136に実質的に平行である。
【0080】
[00112]縫合糸118は、手術デバイス102から取り外された後、第1の屈曲部142及び第2の屈曲部144でまっすぐになるように付勢され、したがって事前形成された調整可能な締結部から延びるループ(たとえば、実質的に円形又は卵形のループ)を形成するように構成される。たとえば、縫合糸118は、手術デバイス102において「折曲げ」位置で保持することができ(すなわち、第1の屈曲部142及び第2の屈曲部144で折り曲げられる)、手術デバイス102から取り外されたとき、縫合糸118は、事前形成された調整可能な締結部122から延びて腸又は他の管状組織107を取り巻き又は取り囲むループ146に「広がる」又はまっすぐになる。たとえば
図16A及び
図16Bに示すように、事前形成された調整可能な締結部122を含む縫合糸の端部領域130、132は、第1のアーム104及び第2のアーム106から取り外された後、腸壁の反対側へ動かされる(
図16Aに矢印「A」によって示す)。たとえば、第1のアーム104及び第2のアーム106から取り外された後、縫合糸118は、腸若しくは他の管状組織107を取り囲むように(たとえば、手術デバイスから取り外された後に開放管腔の周りを回ることによる)、自動的に広がることができ、又は外科医によって、たとえば手術ツールを利用して縫合糸118を把持し、開放管腔に隣り合う管状組織107の縁部部分の周りに配置することによって、縫合糸118を広げることができる。一実施形態によれば、縫合糸118の中心屈曲部139及び糸通し領域134、136は、縫合ステープル120が腸壁に適用された後、腸壁の実質的に定位置に留まるが、端部130、132及び事前形成された調整可能な締結部122を含む非糸通し領域は、開放管腔の周りで動かされ、したがって縫合糸ループが腸壁を取り囲むとき、事前形成された調整可能な締結部(たとえば、結び目)122は、糸通し領域134、136間に配置された中心屈曲部139から、管状組織107の反対側にくる。
【0081】
[00113]
図16A~
図18を参照すると、一定の長さの縫合糸118は、反対の位置にある第1の端部131、第2の端部133、第1の端部領域130、及び第2の端部領域132を含むことができる。縫合糸118の第1の端部領域130は、第1の端部131から事前形成された調整可能な締結部122へ、次いで第1のアーム104の近位端部154へ延びることができ、次いで縫合糸118の第1の非糸通し領域138は、第1のアーム104の近位端部154から第1のアーム104の遠位端部の方へ延び、次いで縫合糸118は、第1のアーム104の遠位端155に隣り合う第1の屈曲部142を形成し、次いで縫合糸118の第1の糸通し領域134は、第1の行の縫合ステープル120を通って第1のアーム104の近位端部154の方へ延び、次いで縫合糸118は、第1のアーム104及び第2のアーム106の近位端部154、156間に延びる中心屈曲部139を形成し、次いで縫合糸118の第2の糸通し領域136は、第2の行の縫合ステープル120を通って第2のアーム106の遠位端157の方へ延び、次いで縫合糸118は、第2のアーム106の遠位端部157に隣り合う第2の屈曲部144を形成し、次いで縫合糸118の第2の非糸通し領域140は、第2のアーム106の近位端部156の方へ延び、次いで第2の端部領域132は、事前形成された調整可能な締結部122へ、次いで第2の端部133へ延びる。
【0082】
[00114]
図19~
図22を参照すると、各縫合ステープル120は開口127を含むことができ、縫合糸118は開口127を通って延びる。手術デバイス102の縫合機構172は、縫合ステープル120を収容するための内部部分141と、縫合ステープル120を内部部分141から出すことを可能にするための1つ又は複数のスロット143とを備えることができる。手術デバイス102はまた、縫合機構172が作動させられたとき、縫合ステープルを内部部分141から押し出すように構成された押込み機構129を備えることができ、たとえば押込み機構129は、各縫合ステープルの下に配置された1つ又は複数の突起を備えることができる。押込み機構129の異なる実施形態が、
図21及び
図22に示されている。特定の実施形態によれば、縫合ステープル120は、管状組織の外層(複数可)に部分的にのみ貫入するように構成され、たとえば腸壁のすべての層を貫通するように構成されていない(標本をステープルで留めて閉じるように構成された本明細書に記載する手術用ステープル114(たとえば、
図22~
図24)とは異なる)。一実施形態では、縫合ステープル120は、縫合ステープル120を通って延びる縫合糸118を組織の周りで定位置に保持することができるのに十分な深さまで管状組織に貫入する。特定の実施形態によれば、縫合ステープル120は縫合ステープルカートリッジ内に収容されており、縫合ステープルカートリッジは使い捨てとすることができる。たとえば、使い捨ての縫合ステープルカートリッジは、手術デバイス102の各アーム104、106に取外し可能に結合することができ(たとえば、手術中の使用前に縫合ステープルカートリッジをアーム内へ嵌めることによる)、次いで手術後、縫合ステープル120が配備された後に各アームから取り外すことができる。別法として、各アーム104、106を使い捨てとすることもでき、アーム104、106は、縫合ステープル120によって事前に装填されており、手術後に廃棄される。
【0083】
[00115]
図19に示す実施形態によれば、各縫合ステープル118は、細長いアーム125を備えたステープル本体161を有し、アーム125は、アームの中心に開口127を画定するループ119を含む。ループ119は、縫合糸を受け取るための開口127又ははと目を提供する。縫合ステープル本体161は、アーム125の両側に延びる1対の脚部121、123を有することができる。縫合ステープル120の代替実施形態も考えられ、縫合糸118は、他の手段によって縫合ステープル120に通される。
【0084】
[00116]
図24を参照すると、本発明の手術デバイス102は、縫合機構172及び切断機構176を含むことができる。切断機構176は、管状組織を横方向に切断し(たとえば、切除マージンで腸壁を横方向に切断する)、以て開放管腔を露出させるように構成された切断要素153を備える。切断機構176は、たとえば、第1のアーム104及び/又は第2のアーム106の長手方向の長さに沿って延びる溝155を備えることができ、切断要素153は、溝155に可動に配置されたナイフ刃を備えており、ナイフ刃は、長手方向の長さに沿って動くように構成される。手術デバイス102は、外科医による1回の作動又は動きによって、縫合機構172及び切断機構176を同時又は実質的に同時に作動させることができるように、たとえば切断要素153が管状組織を切断するのと同じ時間、直前、又は直後に、縫合ステープル120が管状組織に押し込まれるように構成することができる。
【0085】
[00117]
図22を参照すると、第1のアーム104及び第2のアーム106の各々は、縫合ステープル120の下、たとえば縫合ステープル120を押すように構成された押込み機構129の下に配置されたそり又は摺動要素151を備える。そり又は摺動要素151の実施形態は、
図22及び
図24に示されている。そり151は、押込み機構129の各突起の下を摺動するように構成された複数の突起(たとえば、傾斜した突起)を備えることができる。外科医によって作動させられるとき(たとえば、作動機構からの電気信号に応答して)、摺動要素151は、各アーム104、106を横切って長手方向に摺動し、縫合ステープル120の下、たとえば押込み機構129の下を摺動するとき、縫合ステープル120を管状組織に押し込むように構成される。摺動要素151は、第1のアーム104及び/又は第2のアーム106内で切断要素153(たとえば、ナイフ刃)に結合することができ、したがって摺動要素151がアーム(複数可)104、106を横切って動くにつれて、切断要素153は組織を薄く切る。
【0086】
[00118]特定の実施形態によれば、本発明の手術デバイス102は、縫合機構172、切断機構176、及びステープリング機構174を含む。たとえば、切断及びステープリング機構174を備える手術用ステープラが、本発明の縫合機構172を含むこともできる。一実施形態によれば、手術デバイス102の第1のアーム104及び第2のアーム106は、長手方向軸線108に沿って延び、縫合機構172及びステープリング機構174は各々、長手方向軸線108の互いに反対側に沿って配置される(たとえば、手術デバイスの縫合側112及びステープリング側110と呼ぶことができる)。一実施形態では、切断機構176は、縫合機構172とステープリング機構174との間の長手方向の長さに沿って(たとえば、実質的に長手方向軸線108に沿って)配置される。本明細書に論じるように、外科医による1回の作動又は動きによって、ステープリング機構174、縫合機構172、及び切断機構176を同時又は実質的に同時に作動させるように、たとえば切断要素が管状組織を切断するのと同じ時間、直前、又は直後に、ステープル114(すなわち、組織をステープルで留めて閉じるように構成された手術用ステープル)及び縫合ステープル120が管状組織に押し込まれるように構成することができる。
【0087】
[00119]
図22~
図28を参照すると、ステープリング機構174は、ステープル114を収容するための内部部分128と、ステープル114を内部部分128から出すことを可能にするための複数のステープルスロット135とを備えることができる。ステープリング機構174は、ステープリング機構174が作動させられたとき、たとえば摺動要素151が押込み機構117の下を摺動するとき、ステープル114をアンビル116の方へ押し込むように構成された押込み機構117を備えることができる。たとえば押込み機構117は、各ステープル114の下に配置された1つ又は複数の突起を備えることができる。ステープル114は、第1のアーム104及び第2のアーム106が締付け位置にあるときにアンビル116に接触するように構成される。特定の実施形態によれば、ステープル114は、管状組織を完全に貫通し、たとえば腸壁のすべての層を貫通し、アンビル116に接触するように構成される。ステープル114は、互いに実質的に平行な複数の行(たとえば、2つの行、3つの行、4つの行、又は5つの行)で配置することができる。たとえば3つの行のステープルが、
図20、
図25、及び
図27~
図28に示されている。特定の実施形態によれば、ステープル114はステープルカートリッジ内に収容されており、ステープルカートリッジは使い捨てとすることができる。たとえば、使い捨てのステープルカートリッジは、手術デバイス102のアームに取外し可能に結合することができ(たとえば、手術中の使用前にステープルカートリッジをアーム内へ嵌めることによる)、次いで手術後、ステープル114が配備された後にアームから取り外すことができる。別法として、各アーム104、106を使い捨てとすることもでき、1つのアームがアンビル116を含み、1つのアームがステープル114によって事前に装填されており、これらのアームは手術後に廃棄される。
【0088】
[00120]一実施形態によれば、1つ又は複数の使い捨てのカートリッジが、縫合ステープル118及び手術用ステープル114を含み、使い捨てのカートリッジ(複数可)は、使用前にアーム102、104に取外し可能に結合される(たとえば、アーム102、104の内部部分128、141内へ嵌めることによる)。そり又は摺動要素151が、縫合ステープル及び手術用ステープルを含む使い捨てのカートリッジ(複数可)の一部を形成することができる。切断要素153が、使い捨てのカートリッジの一部を形成することができ、又は別法として、手術デバイスのアーム102若しくは104の一部を形成することができる。たとえば、使い捨てのカートリッジ(複数可)は、アーム102、104に取外し可能に結合されたとき、ナイフ刃を受け取るように構成された1つ又は複数の溝を備えることができる。
【0089】
[00121]
図29A~
図31Gを参照すると、開放管腔434に隣り合う管状組織407の周りに縫合糸418(たとえば、巾着縫合糸)を適用するための縫合クリップアプライヤ400を使用することができる。縫合糸418を適用する前に、管状組織は、開放管腔を露出させる任意の知られている方法によって、たとえば手術用ステープラ、はさみなどによって分断される。たとえば、管状組織は、近位及び/又は遠位切除マージンで分断することができる。縫合クリップアプライヤ400は、本明細書に記載する手術方法(たとえば、腹腔鏡又はロボットによる方法)によって使用することができる。たとえば、従来の切断機構(たとえば、手術用ナイフ、手術用はさみ、手術用ステープラなど)を使用して組織を横方向に分断し、開放管腔を露出させた後、ポート切開を介して縫合クリップアプライヤ400を体腔に挿入し、縫合クリップアプライヤ400を使用して管状組織の開放管腔の周りに縫合糸を取り付けることができる。
【0090】
[00122]
図29A~
図30Cを参照すると、事前形成された調整可能な締結部422(たとえば、事前形成された引き結びなどの事前形成された結び目)を含む一定の長さの縫合糸418(たとえば、巾着縫合糸)が、縫合クリップアプライヤ400に取外し可能に結合される。これにより、手術中に巾着縫合糸を配置し又は結び目を結ぶ必要なく、縫合糸418を締め付けて閉じることが可能になる。本明細書に記載する縫合クリップ及び縫合ステープルはどちらも、管状組織の周りで縫合糸を定位置に保持するための締結具として利用され、たとえば縫合糸を縫合クリップ又は縫合ステープルに通すことができる。特定の実施形態によれば、縫合クリップ406は、管状組織の外層(複数可)に部分的にのみ貫入するように構成することができ、又は腸壁のすべての層を貫通するように構成することができる(標本をステープルで留めて閉じるように構成された本明細書に記載する手術用ステープル114と同様)。一実施形態では、縫合クリップ406は、巾着縫合糸を閉じて管状組織を閉位置へ引き込みながら、縫合クリップ406を通って延びる縫合糸418を組織の周りで定位置に保持することができるのに十分な深さまで管状組織に貫入する。
【0091】
[00123]縫合クリップアプライヤ400は、細長い本体402を備えることができ、本体402は、縫合クリップ406を組織へ送達するように構成された組織固定機構404を本体402の一端に備える。縫合クリップアプライヤ400は、ポート切開を通って直接挿入し、筐体内に配置して、腹腔鏡機器の一部として使用することができ、又は筐体内へ配置して、ロボット機器、たとえばda Vinciの一部として使用することができる。組織固定機構404は、2つのアーム452、454を備えることができ、アーム452、454は、アーム452、454がそれぞれ拡張及び収縮するとき、開位置(たとえば、
図29Aに示す)と、閉又は固定位置(たとえば、
図29Bに示す)との間で可動である。たとえば、2つのアーム452、454は、単一の一体ユニットの一部とすることができ、又は細長い本体にヒンジ式に接続された別個に形成されたアームとすることができる。縫合クリップアプライヤ400は、細長い本体402の長手方向の長さに沿って取り付けられた複数の変形可能な縫合クリップ406をさらに備える。一実施形態によれば、縫合クリップアプライヤ400は、縫合クリップ406の配置前はポート又は筐体を通って挿入するために閉/固定位置にあり、2つのアーム452、454が腸壁の開縁部を横切って延びる開位置へ拡張するように構成される。
【0092】
[00124]一実施形態によれば、変形可能な各縫合クリップ406は、管状組織に貫入するように構成された2つの脚部426、428を有し、たとえば各縫合クリップ406は、2つの端部が管状組織に貫入するように構成された状態で湾曲した形状とすることができる。各縫合クリップ406は、2つのアーム452、454の内部408に取外し可能に配置され、2つのアーム452、454が開位置と固定位置との間で動かされることに応答して、開位置と固定位置との間で変形するように構成することができる。細長い本体402に沿って、開放管腔の周りに縫合糸を配置するのに好適な任意の数の変形可能な縫合クリップ406を含むことができる。たとえば、4~20個の縫合クリップ406、6~20個の縫合クリップ406、8~20個の縫合クリップ406、6~15個の縫合クリップ406、8~15個の縫合クリップ406、6~12個の縫合クリップ406、8~12個の縫合クリップ406、又は6~10個の縫合クリップ406を、細長い本体402の長手方向の長さに沿って取り付けることができる。一定の長さの縫合糸418は、事前形成された調整可能な締結部(たとえば、事前形成された引き結びなどの事前形成された結び目)422と、事前形成された調整可能な締結部422から延びるループ424とを含み、ループの内部は、固定機構404の2つのアーム452、454間に延びる。変形可能な縫合クリップ406が動作可能位置にある(すなわち、固定機構404の2つのアーム452、454の内部に配置された)とき、ループの内部は、縫合クリップ406の2つの脚部426、428間に延びる。
【0093】
[00125]一実施形態によれば、縫合クリップアプライヤ400は、変形可能な各縫合クリップ406を組織固定機構404の方へ長手方向に前進させるように構成された1つ又は複数の付勢要素430を備える。たとえば、付勢要素430は、1つ又は複数のばねを備えることができる。付勢要素430は、変形可能な縫合クリップ406が固定機構404から解放されたことに応答して、変形可能な各縫合クリップ406を組織締付け機構404の方へ自動的に前進させるように構成することができる。ばねシステム、プーリシステム、及び/又は他の機械システムなど、縫合クリップ406を前進させるための他の構成を使用することもできる。
【0094】
[00126]一実施形態によれば、縫合クリップアプライヤ400を備える縫合システムを作動機構に接続することができ(たとえば、機械的及び/又は電気的及び/又はコンピュータを介して遠隔)、これは、作動機構が縫合クリップアプライヤ400と通信しており、したがってたとえば外科医制御可能な機械的及び/又は電気的及び/又は遠隔手段を介して、各縫合クリップ406を組織に取り付けるように、縫合クリップアプライヤ400を作動させることができることを意味する。
【0095】
[00127]クリップアプライヤを使用して管状組織内で開放管腔に隣り合う縫合糸を適用する方法の一実施形態が、
図31A~
図31Gに示されている。特定の実施形態によれば、この方法は、開放管腔434に隣り合う第1の位置で第1の変形可能な縫合クリップ432を管状組織に固定するように(すなわち、開放管腔の縁部の周りで組織にクリップを挿入するように)、組織固定機構404を作動させることを含み、縫合糸ループ418の一部分は、第1の変形可能な縫合クリップ432を通って(管状組織と縫合クリップとの間)に延びる。組織固定機構404は、第1の縫合クリップ432が組織に適用された後に開かれ、第2の位置へ動かされる。後続の各位置(第1、第2、第3、第4、第5など)は、管状組織の周りに順次配置され、したがって第1の位置が第2の位置に隣り合い、第2の位置に第3の位置が隣り合い、第3の位置に第4の位置が隣り合い、以下同様である。第1のクリップ432は第1の位置で適用され、第2のクリップ436は第2の位置で適用され、第3のクリップは第3の位置で適用され、以下同様である。
【0096】
[00128]第1の縫合クリップ432が第1の位置で組織に取り付けられた後、第2の縫合クリップ436が、付勢要素430によって固定機構404のアーム452、454の内部の動作可能位置へ前進させられる。次の縫合クリップの前進は、自動的に、又は外科医による作動に応答して行うことができる。組織固定機構404は、第2の位置で第2の変形可能な縫合クリップ436を管状組織に固定するように起動され、縫合糸ループ418の一部分は、第1の縫合クリップ432及び第2の縫合クリップ436を通って(管状組織と縫合クリップとの間に)延びる。このプロセスを継続し、開放管腔の周りの複数の位置で変形可能な各縫合クリップ406を管状組織に固定するように、組織固定機構404を作動させることによって、開放管腔の周りに一連の変形可能な縫合クリップ406(たとえば、4~20個の縫合クリップ406、6~20個の縫合クリップ406、8~20個の縫合クリップ406、6~15個の縫合クリップ406、8~15個の縫合クリップ406、6~12個の縫合クリップ406、8~12個の縫合クリップ406、6~10個の縫合クリップ406)を順次取り付ける。縫合クリップ406が組織に適用された後、縫合糸418は、事前形成された調整可能な締結部422から管状組織に取り付けられた変形可能な縫合クリップ406を通って(管状組織と縫合クリップ406との間に)延びるループを形成する。縫合糸418は、たとえば自動的に、又は外科医による作動に応答して、縫合クリップアプライヤ400から取り外される。次いで、本明細書に記載する実施形態によって(たとえば、縫合糸の端部を引っ張ることなどによる)、縫合糸418を締め付け、管腔を引き寄せて閉じることができる。
【0097】
[00129]以下の実施例は、本明細書に開示する方法の実施形態についてさらに説明する。
【実施例】
【0098】
[00130]本明細書に包含する実施形態について、以下の実施例を参照して次に説明する。実施例は、説明のみを目的として提供されるものであり、本明細書に包含する開示は、この実施例に限定されると解釈されるべきではなく、本明細書に提供する教示を受けて明らかになるあらゆる変形例を包含すると解釈されるべきである。
【0099】
[00131]実施例1:経直腸摘出を伴う自然開口部の体内吻合。
【0100】
[00132]経直腸摘出を伴う腸の分断及び自然開口部の体内吻合の以下の方法は、ロボットプラットフォーム向けに設計された段階的な手法で、腹壁切開を使用することなく実行される(ポート切開のみが使用される)。以下のステップは、腸の患部を動くようにし、この部分の腸間膜を分断した後に実行される。
【0101】
[00133]ステップ1:手術デバイス102(本明細書に記載する縫合機構172(
図22)、切断機構176(
図22及び
図26)、及びステープリング機構174(
図26)を有する)が、提案された近位切除マージン312(
図1)で腸壁を横切って配置され、標本300側にわたって閉じた線形のステープルラインを配備し、引き結び122を有する巾着縫合糸を近位腸部分302に取り付ける(
図2)。代替として、腸は、任意の知られている方法によって分断され、本明細書に記載する縫合クリップアプライヤ400を使用して、開いた近位腸部分302に巾着縫合糸を適用する。
【0102】
[00134]ステップ2:手術デバイス102は、提案された遠位切除マージン314(
図3)で腸壁を横切って配置され、標本300側にわたって閉じた線形のステープルラインを配備し、引き結び122を有する巾着縫合糸を遠位腸部分304に取り付ける(
図4)。代替として、腸は、任意の知られている方法によって分断され、本明細書に記載する縫合クリップアプライヤ400を使用して、開いた遠位腸側に巾着縫合糸を適用する。
【0103】
[00135]ステップ3:次いでサーキュラステープラ(
図5)の支援によって、直腸の自然開口部を通って、自己拡張型の経直腸開創器328が導入され、配備される(
図6)。完全に拡張した後、経直腸開創器328は、標本300が摘出される間に、直腸の断端を広げて腸壁を保護する働きをする。
【0104】
[00136]ステップ4:経直腸開創器328を通って把持ツール210又は他の把持鉗子又はエンドバッグが配置され、標本300を把持する(
図7)。標本300は、経直腸開創器328を通って経直腸的に摘出される(
図8)。次いで経直腸開創器328は、ドローストリングの支援によって取り出される(
図9)。
【0105】
[00137]ステップ5:アンビル336がヘッド構成要素に接続された状態で、円形の吻合ステープラ334が肛門を介して遠位腸部分304内へ挿入される。アンビル336は前方に押されて、遠位腸部分304の内部管腔308を通って腹腔に入る(
図10)。
【0106】
[00138]ステップ6:アンビル336は取り外され、近位腸部分302の内部管腔306に挿入される。引き結びを介して巾着縫合糸を締め付けて固定することによって、腸壁組織316がアンビル336のシャフト内へ引き込まれる(
図11)。
【0107】
[00139]ステップ7:引き結びの支援によって巾着縫合糸を締め付けて固定することによって、遠位腸縁部320の開端部が中心トロカールシャフト332の周りでヘッド構成要素内へ引き込まれる(
図12)。
【0108】
[00140]ステップ8:吻合322が形成される。アンビル336は、ヘッド構成要素の方へ引っ張られる。次いでサーキュラステープラ334を閉じて、アンビル336を所望の位置までヘッドに結合する。次いで、巾着縫合糸とともにステープラデバイスに引き込まれた近位腸部分302及び遠位腸部分304の端部を切断することによって、ステープルで留められた円形の吻合322が作られる(
図13)。
【0109】
[00141]本発明の広い概念から逸脱することなく、図示及び上述した例示的な実施形態に変更を加えることができることが、当業者には理解されよう。したがって本発明は、図示及び説明した例示的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内で修正形態も包含することが意図されることが理解されよう。たとえば、例示的な実施形態の具体的な特徴は、特許請求される発明の一部であっても又はなくてもよく、開示する実施形態の様々な特徴を組み合わせることができる。本明細書に特に記載しない限り、「a」、「an」、及び「the」という用語は、1つの要素に限定されるものではなく、「少なくとも1つ」を意味すると読まれるべきである。
【0110】
[00142]明瞭にする目的で、本発明の明確な理解にとって重要な要素に重点をおきながら、本発明の一部分を構成し得ることが当業者には理解される他の要素を除外するように、本発明の図及び説明の少なくとも一部が簡略化されていることを理解されたい。そのような他の要素は当技術分野でよく知られており、本発明のさらなる理解を必ずしも容易にしないため、そのような要素の説明は本明細書に提供されない。
【0111】
[00143]さらに、本発明の方法が本明細書に述べるステップの特定の順序に依拠しない範囲で、ステップの特定の順序は、特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきでない。本発明の方法を対象とする特許請求の範囲は、記載の順序でのそれらのステップの実行に限定されるべきではなく、本発明の精神及び範囲内で、ステップは変更されても及びそのままでもよいことが、当業者には容易に理解されよう。
【国際調査報告】