(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】神経系細胞療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/30 20150101AFI20220131BHJP
C12N 5/079 20100101ALI20220131BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20220131BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20220131BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220131BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20220131BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220131BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220131BHJP
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A61L 27/52 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220131BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20220131BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20220131BHJP
A61K 38/30 20060101ALI20220131BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20220131BHJP
C12N 5/077 20100101ALN20220131BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220131BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20220131BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220131BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20220131BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220131BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K35/30
C12N5/079 ZNA
C12N5/074
A61K35/545
A61K35/28
A61K35/44
A61P25/28
A61P9/00
A61P9/10
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P27/02
A61P25/02
A61P43/00 105
A61L27/36 100
A61L27/36 300
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A61L27/38 200
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A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/16
A61L27/24
A61K45/00
A61K38/22
A61K38/30
C12N5/0775
C12N5/077
C12N5/10
C12N1/00 F
C07K19/00
C07K14/475
C07K16/00
C07K14/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021547601
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 AU2019051174
(87)【国際公開番号】W WO2020082134
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521180452
【氏名又は名称】テサラ・セラピューティクス・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ボイヤー
(72)【発明者】
【氏名】クリストス・パパディミトリウ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
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(57)【要約】
本発明は、1つ以上の神経系細胞型(例えば、ニューロン)または多能性細胞(例えば、間葉系幹細胞)の細胞集団を含む治療有効量の合成組織を投与することにより、神経系組織を再生するか、または神経障害を治療するための方法に関し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる。いくつかの好ましい実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンで架橋されたPEGヒドロゲルを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経系組織の修復を、それを必要とする対象において行う方法であって、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を前記対象に投与することを含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれている、前記方法。
【請求項2】
神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を前記対象に投与することを含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれている、前記方法。
【請求項3】
神経系組織の修復または神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られる治療有効量の合成組織を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記対象が、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、視神経疾患、脊髄損傷、末梢神経損傷、脱髄性疾患、及び外傷性脳損傷に罹患している、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、手術創を患っている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多能性細胞が間葉系幹細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記神経系細胞型が、ニューロン、神経前駆細胞、グリア細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞集団がニューロンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ニューロンが、モノアミン作動性ニューロン、カテコールアミン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性興奮性ニューロン、GABA作動性抑制性ニューロン、運動ニューロン、コリン作動性ニューロン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞集団が、ドーパミン作動性ニューロンを含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞集団が、所定の比率で興奮性及び抑制性ニューロンを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞集団が、グリア細胞を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記グリア細胞がアストロサイトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グリア細胞がミエリン形成性グリア細胞またはミクログリアである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞集団が、ニューロン及びグリア細胞を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞集団が、内皮細胞をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与前の前記細胞集団中のニューロンが:同系統の神経伝達物質の分泌、成長因子の分泌、成熟神経タンパク質マーカーの発現、神経伝達物質受容体の表面発現または細胞内局在、固有の電気的活動、及びシナプス接続性からなる群から選択される、ニューロンの成熟に関連する少なくとも1つの機能的特徴を示す、請求項8~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記投与前の前記細胞集団において、興奮性及び抑制性神経伝達の両方が示される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞集団内のニューロンが、同系統の神経伝達物質を分泌する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記同系統の神経伝達物質が、ドーパミン、アセチルコリン、またはセロトニンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞集団が、遺伝子改変細胞を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記遺伝子改変細胞が、光感受性イオンチャネル、化学遺伝学的改変タンパク質、レポータータンパク質、オプトジェネティックプローブタンパク質、成長因子、転写因子、抗体、及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の外来性タンパク質を発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞集団が、同種異系細胞を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞集団が、自己原性細胞を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞集団が、同種異系細胞と自己原性細胞の両方を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞集団が、前記モジュール式合成ヒドロゲル内に不均一に分布している、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞集団が、前記モジュール式合成ヒドロゲル内に所定の空間分布を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記所定の空間分布における異なる細胞型を、別個の層に組織化する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸、ゼラチン、チオール修飾ヒアルロン酸、アクリル化ヒアルロン酸チオール修飾コンドロイチン硫酸塩、チオール修飾ゼラチン、アクリル共重合体、フッ化ポリビニリデン、キトサン、ポリウレタンイソシアナート、ポリアルギン酸塩、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、及びポリアクリロニトリルからなる群から選択される1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料が、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、前記1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料に連結された1つ以上のペプチドまたはポリペプチドをさらに含む、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上のペプチドまたはポリペプチドが、少なくとも第1及び第2のペプチドまたはポリペプチドを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つが、酵素切断可能である、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記酵素切断可能なペプチドまたはポリペプチドが、メタロプロテアーゼ切断部位を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つが、細胞結合配列を含む、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上の連結ペプチドのうちの少なくとも1つが、変換可能な官能基を含む、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記変換可能な官能基が、マレイミド基またはチオール基である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1つ以上のペプチドまたはポリペプチドが、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を含む、請求項31~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上のペプチドまたはポリペプチドが、チオール修飾ヘパリンを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、ポリアルギン酸塩と、ヒアルロン酸、ヘパリン、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つとを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、ポリアルギン酸塩及びヒアルロン酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEGと、ヘパリン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つとを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEG及びヘパリンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記モジュール式合成ヒドロゲル中のPEGと、前記ヘパリン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つの合計濃度が、前記モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEG及びヒアルロン酸を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEG及びコラーゲンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記モジュール式合成ヒドロゲルがStarPEGヒドロゲルである、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが直鎖状PEGヒドロゲルである、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞集団が、前記モジュール式合成ヒドロゲルに細胞外マトリックスを分泌し、投与時に前記細胞外マトリックスの濃度が、前記モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記合成組織が、1つ以上の外来性成長因子、抗体、または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質をさらに含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記CPP融合タンパク質が、1つ以上の転写因子-CPP融合タンパク質を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の外来性成長因子、抗体または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記1つ以上の外来性成長因子が、BDNF、VEGF、IGF1、bFGF/FGF2、Ang1、Ang2、BMP2、BMP3a、BMP3b、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7(OP-1)、CTNF、EGF、EPO、aFGF/FGF1、bFGF/FGF2、G-CSF、GDF10、GDF15、GDNF、GH、GM-CSF、HB-EGF、LIF、NGF、NT-3、NT4/5、オステオポンチン、PDGFaa、PDGFbb、PDGFab、P1GF、SCF、SDF1/CXCL12、及びTGFβからなる群から選択される、請求項50または請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記CPP融合タンパク質が、1つ以上のCPP転写因子融合タンパク質を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記合成組織が、1つ以上のタイプの外来性エクソソームをさらに含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記合成組織が、前記投与前に事前定義された形状を有する構築物として提供される、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記事前定義された形状を、前記組織構築物を移植しようとする部位の形状に基づいてカスタマイズする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記合成組織を、前記対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部またはその近位に移植する、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記構築物が、3D組織印刷によって得られる、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記構築物を、3D印刷によって事前定義された形状に形成することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記合成組織を、微粒子の形態で提供する、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記微粒子が、約1μm~約2000μmの直径を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記微粒子が、約50μm~約500μmの直径を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記微粒子が、以下の特徴:細胞型、細胞型の割合、細胞型の空間分布、ヒドロゲルサブユニット材料、連結ペプチドまたはポリペプチド、外来性成長因子のうちの少なくとも1つにおいて互いに異なる、少なくとも第1及び第2の微粒子の集団を含む、請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記第1及び第2の微粒子の集団を、異なる時点または前記対象における異なる部位で投与する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記合成組織を、100Pa超の粘度を有する水性懸濁液として投与する、請求項61~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記合成組織が、1つ以上の液体処理ロボットによって生成された、請求項56~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記合成組織を、1つ以上の液体処理ロボットを使用して生成することをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記合成組織中の前記モジュール式合成ヒドロゲルを噴霧重合によって生成する、請求項67または請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記合成組織を、約2週間~約3か月間培養する、請求項1~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記合成組織を、前記対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部または近位に注入する、請求項61~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象がヒト対象である、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記合成組織を、生体適合性の二次モジュール式合成ヒドロゲル層内で投与するために提供する、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記合成組織の存在下で前記二次モジュール式合成ヒドロゲル層を生成することをさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記培養期間の終わりに、前記細胞集団が埋め込まれた前記モジュール式合成ヒドロゲルが、前記投与前に実質的に分解されている、請求項3~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
神経障害の治療または神経系組織の修復に使用するための合成組織であって、前記合成組織が、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる、前記合成組織。
【請求項77】
神経障害の治療に使用するための合成組織であって、前記合成組織が:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた、前記合成組織。
【請求項78】
神経障害を治療するための薬剤の製造における合成組織の使用であって、前記合成組織が、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる、前記合成組織の使用。
【請求項79】
神経障害を治療するための薬剤の製造における合成組織の使用であって、前記合成組織が:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた、前記合成組織の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般的に細胞療法の分野に関する。より具体的には、本明細書は、ヒト神経組織模倣構築物を生成して、in vivoで神経組織を再生し、及び/または神経学的病態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経障害は、健康に多大な負担を与える。アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病などの神経変性疾患、ならびに脳卒中は、我々の社会でますます蔓延している。実際、脳卒中は、先進国における成人の障害の主要な要因である。多くの神経障害及び神経疾患は、例えば、パーキンソン病における中脳ドーパミン作動性ニューロンの喪失など、特定の神経伝達物質の欠損をもたらすニューロンの喪失に関連している。
【0003】
神経伝達物質のレベルを回復させるための薬理学的アプローチが長年採用されてきたが(例えば、パーキンソン病でのL-DOPAの使用)、この治療法には多くの周知の欠点がある。例えば、治療濃度域が実際には時間の経過とともに狭くなるため、患者にとって治療効果のある薬剤用量を確立することが非常に困難である。実際、最終的には、そのような薬は効果を失う。したがって、神経伝達物質の欠損及び神経障害における機能の喪失を効果的に治療するための改善された方法が長年にわたって必要とされている。比較的新しいアプローチである細胞療法は、例えば、パーキンソン病を治療するための胎児ドーパミン作動性ニューロンの移植など、疾患関連細胞型の投与に基づいており、神経伝達及び機能を回復させる。しかしながら、これは有望なアプローチではあるものの、移植細胞の生存率が比較的低く、ドナー細胞の成熟及び/または接続性が欠如しており、また、宿主神経組織内の必要な部位へのドナー細胞の局在化が不十分であることを含む多くの要因によって、これまでのところ、その成功は制限されてきた。したがって、これらの欠点に対処する神経障害を治療するための改善された細胞療法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれた1つ以上の細胞型の3D培養及び成熟に基づく組織模倣構築物の投与による神経系組織の修復及び/または神経障害の治療に関する。
【0005】
したがって、一態様では、本発明は、神経系組織の修復を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、方法は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含み;細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる。
【0006】
別の態様では、本発明は、神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、方法は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含み;細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、神経系組織の修復または神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、方法は:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
ことを含むプロセスによって得られる治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む。
【0008】
一実施形態では、対象は:アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、視神経疾患、脊髄損傷、末梢神経損傷、脱髄性疾患、及び外傷性脳損傷からなる群から選択される神経障害を患っている。いくつかの実施形態では、治療しようとする対象は、手術創を患っている。
【0009】
一実施形態では、多能性細胞は間葉系幹細胞である。
【0010】
一実施形態では、神経系細胞型は、ニューロン、神経前駆細胞、グリア細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
一実施形態では、細胞集団は、ニューロンを含む。
【0012】
一実施形態では、ニューロンは、モノアミン作動性ニューロン、カテコールアミン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性興奮性ニューロン、GABA作動性抑制性ニューロン、運動ニューロン、コリン作動性ニューロン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
一実施形態では、細胞集団は、ドーパミン作動性ニューロンを含む。一実施形態では、細胞集団は、ニューロンまたはドマミン作動性ニューロンを含み、これらは、所定の比率の興奮性及び抑制性ニューロンである。
【0014】
別の実施形態では、細胞集団は、グリア細胞を含む。
【0015】
一実施形態では、グリア細胞はアストロサイトである。
【0016】
別の実施形態では、グリア細胞は、ミエリン形成性グリア細胞またはミクログリアである。
【0017】
一実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を可能にし、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、細胞集団は、ニューロン及びグリア細胞を含む。
【0018】
さらなる実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、細胞集団は、内皮細胞をさらに含む。
【0019】
一実施形態では、細胞は未成熟であるか、または投与前にインキュベーションもしくは成熟を受けていない。
【0020】
一実施形態では、細胞集団を含むモジュール式合成ヒドロゲルを、インキュベーションまたは成熟工程を行わずに投与する。
【0021】
一実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、投与前の細胞集団内のニューロンは:同系統の神経伝達物質の分泌、成長因子の分泌、成熟神経タンパク質マーカーの発現、神経伝達物質受容体の表面発現または細胞内局在、固有の電気的活動、及びシナプス接続性から選択される神経成熟に関連する少なくとも1つの機能的特徴を示す。
【0022】
一実施形態では、投与前の細胞集団において、興奮性及び抑制性神経伝達の両方が示される。
【0023】
方法の一実施形態では、細胞集団内のニューロンは、同系統の神経伝達物質を分泌する。
【0024】
一実施形態では、同系統の神経伝達物質は、ドーパミン、アセチルコリン、またはセロトニンからなる群から選択される。
【0025】
別の実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む、本明細書に記載の方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、細胞集団は、遺伝子改変細胞を含む。
【0026】
一実施形態では、遺伝子改変細胞は:光感受性イオンチャネル、化学遺伝学的改変タンパク質、レポータータンパク質、オプトジェネティックプローブタンパク質、成長因子、転写因子、抗体、及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の外来性タンパク質を発現する。
【0027】
別の実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む、本明細書に記載の方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、細胞集団は、同種異系細胞を含む。
【0028】
別の実施形態では、細胞集団は、自己原性細胞を含む。
【0029】
別の実施形態では、細胞集団は、同種異系細胞と自己原性細胞の両方を含む。
【0030】
一実施形態では、細胞集団は、モジュール式合成ヒドロゲル内に不均一に分布または埋め込まれる。
【0031】
一実施形態では、細胞集団は、モジュール式合成ヒドロゲル内で所定の空間分布を有する。
【0032】
方法または使用の一実施形態では、所定の空間分布における異なる細胞型を、別個の層に組織化する。
【0033】
別の実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、モジュール式合成ヒドロゲルは、1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料を含む。
【0034】
一実施形態では、1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸(HAL)、チオール修飾ヒアルロン酸、アクリル化ヒアルロン酸チオール修飾コンドロイチン硫酸塩、ゼラチン、チオール修飾ゼラチン、コラーゲン(COL)、アクリル共重合体、フッ化ポリビニリデン、キトサン、ポリウレタンイソシアナート、ポリアルギン酸塩、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリアクリロニトリルからなる群から選択される。
【0035】
一実施形態では、1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0036】
一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料に連結された1つ以上のペプチドまたはポリペプチドをさらに含む。
【0037】
一実施形態では、1つ以上のペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも第1及び第2のペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0038】
一実施形態では、1つ以上の連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つは、酵素切断可能である。
【0039】
例示的な一実施形態では、酵素切断可能なペプチドまたはポリペプチドは、メタロプロテアーゼ切断部位を含む。
【0040】
一実施形態では、1つ以上の連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つは、細胞結合配列を含む。
【0041】
一実施形態では、1つ以上の連結ペプチドのうちの少なくとも1つは、変換可能な官能基を含む。
【0042】
一実施形態では、変換可能な官能基は、マレイミド基またはチオール基である。
【0043】
一実施形態では、1つ以上のペプチドまたはポリペプチドは、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を含む。
【0044】
一実施形態では、1つ以上のペプチドまたはポリペプチドは、チオール修飾ヘパリンを含む。
【0045】
方法の一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEGと、ヘパリン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つとを含む。
【0046】
一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びヘパリンを含む。
【0047】
一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びヒアルロン酸を含む。
【0048】
一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びコラーゲンを含む。
【0049】
方法の一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、ポリアルギン酸塩及びヒアルロン酸を含む。
【0050】
一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲル中のPEGと、ヘパリン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つの合計濃度は、モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びヒアルロン酸を含む。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びコラーゲンを含む。
【0052】
方法の一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、StarPEGヒドロゲルである。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、直鎖状PEGヒドロゲルである。
【0053】
一実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、細胞集団は、モジュール式合成ヒドロゲルに細胞外マトリックスを分泌し、投与時、細胞外マトリックスの濃度は、モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)である。
【0054】
別の実施形態では、合成組織は、1つ以上の外来性成長因子、抗体、または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質をさらに含む。
【0055】
一実施形態では、1つ以上の外来性成長因子は、BDNF、VEGF、IGF1、bFGF/FGF2、Ang1、Ang2、BMP2、BMP3a、BMP3b、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7(OP-1)、CTNF、EGF、EPO、aFGF/FGF1、bFGF/FGF2、G-CSF、GDF10、GDF15、GDNF、GH、GM-CSF、HB-EGF、LIF、NGF、NT-3、NT4/5、オステオポンチン、PDGFaa、PDGFbb、PDGFab、P1GF、SCF、SDF1/CXCL12、及びTGFβからなる群から選択される。
【0056】
一実施形態では、CPP融合タンパク質は、1つ以上のCPP転写因子-CPP融合タンパク質を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、合成組織は、1つ以上の外来性エクソソームをさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つ以上の外来性成長因子、抗体または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質を対象に投与することをさらに含む。
【0059】
一実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、合成組織は、投与前に、事前定義された形状を有する構築物として提供される。
【0060】
一実施形態では、構築物の事前定義された形状は、組織構築物を移植しようとする部位の形状に基づいてカスタマイズされる。
【0061】
一実施形態では、合成組織は、全体にわたって同じ密度/粘度を有する均質なモジュール式合成ヒドロゲルを含む。
【0062】
一実施形態では、合成組織は、異なる密度/粘度の領域または層または勾配を有する不均一なモジュール式合成ヒドロゲルを含む。
【0063】
一実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、合成ヒドロゲル微粒子ビーズまたは約0.2μlの容量を有する他の形状内の細胞集団を含む。
【0064】
一実施形態では、合成組織構造を、対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部または近位に移植する。
【0065】
一実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、合成組織は、投与前に、事前定義された形状を有する構築物として提供され、構築物は、3D組織印刷によって得られる。
【0066】
したがって、一実施形態では、方法は、構築物を事前定義された形状に形成することをさらに含む。一実施形態では、方法は、3D印刷によって構築物を事前定義された形状に形成することをさらに含む。一実施形態では、例えば、密度、粘度などの異なる物理的特性のモジュール式合成ヒドロゲルを、不均一または均質のモジュール式合成ヒドロゲルを含む所定の形状で製造する。不均一なモジュール式合成ヒドロゲル及びそれを含む微粒子は、同じ微小組織ユニット内で、ユニット間の層、襞、勾配、嚢、領域などの形態で製造してもよい。
【0067】
別の実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、合成組織は、微粒子の形態で提供される。
【0068】
一実施形態では、微粒子は、約0.1μm~約2000μmの直径を有する。
【0069】
方法の一実施形態では、微粒子は、約0.2μm~約1000μm、または2μm~約700μm、または1.5μm~約900μmの直径を有する。
【0070】
方法の一実施形態では、微粒子は、約50μm~約500μmの直径を有する。
【0071】
方法の一実施形態では、微粒子は、以下の特徴の少なくとも1つにおいて互いに異なる、少なくとも第1及び第2の微粒子の集団を含む:細胞型、細胞型の割合、細胞型の空間分布、ヒドロゲルサブユニット材料、連結ペプチドまたはポリペプチド、外来性成長因子。
【0072】
方法のこの態様の一実施形態では、第1及び第2の微粒子の集団を、異なる時点または対象における異なる部位で投与する。
【0073】
一実施形態では、合成組織を、100Pa超の粘度を有する水性懸濁液として投与する。
【0074】
一実施形態では、合成組織を、1つ以上の液体処理ロボットによって生成した。
【0075】
一実施形態では、方法は、1つ以上の液体処理ロボットを使用して合成組織を生成することをさらに含む。
【0076】
一実施形態では、合成組織内のモジュール式合成ヒドロゲルを、噴霧重合によって生成する。
【0077】
一実施形態では、合成組織を、約2週間~約3か月間培養する。
【0078】
したがって、一実施形態では、本明細書は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む方法を提供し、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、合成組織を、約2週間~約3か月間培養する。
【0079】
方法の一実施形態では、合成組織を、対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部または近位に注入する。
【0080】
方法の一実施形態では、対象はヒト対象である。
【0081】
方法の一実施形態では、合成組織は、生体適合性の二次モジュール式合成ヒドロゲル層内で投与するために提供される。
【0082】
この態様によれば、方法は、合成組織の存在下で二次モジュール式合成ヒドロゲル層を生成することをさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、合成組織の培養期間の終わりに、細胞集団が埋め込まれたモジュール式合成ヒドロゲルは、合成組織を対象に投与する前に実質的に分解されている。
【0084】
本明細書は、神経障害の治療または神経系組織の修復に使用するための、または使用する場合の合成組織を提供し、合成組織は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含み、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる。
【0085】
関連する態様では、本明細書において、神経障害の治療に使用するための合成組織を提供し、合成組織は:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み、そして
(ii)埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた。
【0086】
同様に、本明細書は、神経障害を治療するか、または神経系組織を修復するための薬剤の製造における合成組織の使用を提供し、合成組織は、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含み、細胞集団は、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる。
【0087】
さらなる態様では、本明細書において、神経障害を治療するための薬剤の製造における合成組織の使用を提供し、合成組織は:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み、そして
(ii)埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた。
【0088】
本明細書の任意の実施形態は、特に明記しない限り、他の任意の実施形態に適用するために必要な変更を加えるものとする。例えば、当業者は、PEG系のモジュール式合成ヒドロゲルにおけるプロテアーゼ切断部位を有するペプチドの使用を理解しているであろうから、上記の他の合成ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)系モジュール式合成ヒドロゲルは、本発明の方法で使用するために等しく適用される。
【0089】
本発明は、例示のみを目的としており、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。機能的に均等な製品、組成物及び方法は、本明細書に記載のように、明らかに本発明の範囲内にある。
【0090】
本明細書全体を通して、特に明記しない限り、または文脈により別段の要求がない限り、単一の工程、物質の組成、工程の群、または物質の組成の群への言及には、それらの工程、物質の組成、工程の群、または物質の組成の群のうちの1つ及び複数(すなわち1つ以上)が包含されると解釈すべきである。
【0091】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって、及び添付の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】合成組織の生成及び投与の例示的、非限定的な実施形態における工程の概略図。(1)所望の割合の1つ以上の神経系細胞型(例えば、ドーパミン作動性ニューロン)の集団を生理学的緩衝液に再懸濁し;(2)細胞集団を、複数のマレイミド基(HEP-マレイミド)を含むグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)などの官能化(反応性)生体高分子と混合し;(3)StarPEG-メタロプロテアーゼ切断部位ペプチド(MMP)などの反応性チオール基(例えば、システイン残基)を含む少なくとも1つの生体切断可能なペプチドに結合した合成ポリマーを、HEP-マレイミド、細胞混合物と混合する。Star-PEG結合ペプチド(複数可)のチオール基は、生理学的条件下でマイケル付加を介してHEP-マレイミドのマレイミド基(複数可)と急速に反応し、ヒドロゲルの集合及びヒドロゲルマトリックス内への細胞の埋め込みをもたらす。
図2も参照されたい。任意選択で、細胞結合配列(例えば、RGDモチーフ)を含むペプチドを用いて機能を付与し、Star-PEGまたはHEP-マレイミドは、ゲルマトリックス内の細胞接着及び運動性を促進する。任意選択で、細胞HEP-マレイミドとStarPEG-ペプチドの混合を、液体処理ロボットを使用して自動化し、(4)「SBM」とも呼ばれる、所望のサイズ(例えば、250μm)の合成脳微小組織ビーズ(別名「微粒子」)を迅速に生成し;(5)SBMを、所望のフォーマットで、及び適切な培地中で、細胞培養容器に播種し;(6)SBMの長期培養により、細胞分化、機能的成熟(例えば、同系統の神経伝達物質の分泌及びシナプス形成)を促進する。さらに、長期間にわたる、標的結合ペプチドの細胞性メタロプロテアーゼ切断及び細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の分泌により、SBM内の組織模倣環境の生成を促進し;(7)所望の培養/成熟期間の後、SBMを、適切な生理学的緩衝液中で、投与用の製剤中にプールする。任意選択で、プールしたSBMを、低粘度の二次ヒドロゲル層に埋め込み、これにより、投与後のSBMの分散を低減し、SBMと周囲の宿主神経系組織との統合を促進し;(8)合成組織、例えばSBMを、神経学的病態(例えば、パーキンソン病)を患っている対象の損傷部位または細胞欠損部位で、注射器またはカテーテルを介して、所望の細胞数及び投与しようとする合成組織の体積に応じた所望の用量で、頭蓋内注射する。
【
図2】概略図:(A)PEGアーキテクチャの例示的、非限定的なリスト。各PEGアームの端にある「R」は、ペプチド及び/または反応性(生体)分子による機能の付与を示す;(B)合成組織生成の例示的な実施形態であり、細胞(任意選択で、成長因子または他のペプチドと組み合わせて)を、ヒアルロン酸またはコラーゲンなどのマレイミド官能化グリコサミノグリカンである二官能性PEGの架橋によって形成されるヒドロゲルに埋め込む。
【
図3】「SBM」とも呼ばれる、所望のサイズ(例えば、250μm)の合成脳微小組織ビーズ(別名「微粒子」)由来の機能的な合成ヒト脳組織の明視野画像;適切な培地中で細胞培養容器に播種し;本明細書に記載の方法を使用して製造される;(A)ヒトニューロンから構成され、記載の方法を使用して製造した合成ヒト脳組織;(B)(A)で示された長方形の関心領域に囲まれた合成ヒト脳組織の拡大図。「i」と記された矢印は、この図に示される組織の細胞ビルディングブロックであるヒトニューロンの例を指す。矢印「ii」は、実際のヒト脳組織層を暗示する合成ヒト脳組織構造の層を示す。「iii」と記された曲線は、合成ヒト脳組織の「襞」を強調しており、これは天然のヒト脳組織で観察される天然の襞を連想させる。(C)高倍率では、個々のニューロン及びプロセス(4つの矢印のセットで示される)が観察され、これらは、説明のように、培養中に合成ヒト脳組織内で相互接続されたヒトニューロンのネットワークを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0093】
一般的な技術及び定義
特に明記しない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、細胞生物学、分子遺伝学、神経科学、免疫学、薬理学、タンパク質化学、及び生化学の)に一般的に理解されている意味と同じ意味を有するものと解するべきである。
【0094】
特に明記しない限り、本発明で利用する細胞培養技術及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996),及びF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988,現在までのすべての更新を含む),Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988),ならびにJ.E. Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在までのすべての更新を含む)などの情報源において、文献全体に記載され、説明されている。
【0095】
本明細書中で使用する場合、そうではないと述べられない限り、約という用語は、指定する値の±10%、より好ましくは±5%を指す。
【0096】
本明細書全体を通して、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載する要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を含むが、他の要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を除外しないことを意味するものと理解される。
【0097】
本出願で使用する場合、用語「または」は、排他的「または」ではなく、包括的「または」を意味することを意図している。すなわち、特に明記されていない限り、または文脈から明らかでない限り、「Xは、AまたはBを使用する」は、自然な包括的順列のいずれかを意味することを意図している。すなわち、XがAを使用するか;XがBを使用するか;または、XがAとBの両方を使用する場合、前述の場合のいずれかの下で「Xは、AまたはBを使用する」が満たされる。さらに、A及びBのうちの少なくとも1つ、及び/または同様の文言は、一般的に、AもしくはB、またはAとBの両方を意味する。さらに、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」及び「an」は、特に明記されていない限り、または文脈から明確に単数形が指定されている場合を除き、「1つ以上」を意味するものと一般的に解釈され得る。
【0098】
本明細書中で使用する場合、用語「ヒドロゲルサブユニット材料」とは、生体適合性であり、誘導及び/または架橋してヒドロゲルを形成することができる不活性合成ポリマー(例えば、PEG及び/またはPVA)を指す。
【0099】
本明細書中で使用する場合、用語「モジュール式合成ヒドロゲル」とは:(a)共有結合または非共有結合を形成するために複数の官能基を付加するように誘導されたポリマー足場;及び(b)それを架橋するために、共有結合または非共有結合を、他のペプチド(例えば、細胞接着ペプチド)、及びポリマー足場と形成することができる複数の官能基で誘導された連結ペプチドまたはポリペプチド(例えば、ヘパリンなどのグリコサミノグリカン)を含有するヒドロゲルを指す。
【0100】
本明細書中で使用する場合、用語「合成組織」または「合成脳微小組織(SBM)」とは、モジュール式合成ヒドロゲルに埋め込まれた細胞の集団を含む3D構築物を指す。
【0101】
本明細書中で使用する場合、用語「ペプチド」とは、2~約50アミノ酸(例えば、長さが、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、または45アミノ酸)の範囲のアミノ酸のポリマーを指す。ペプチドという用語には、未修飾ペプチド、リン酸化ペプチド(例えば、ホスホペプチド)、及び他の方法で化学的に誘導されたペプチドの両方が包含されるが、ペプチド模倣物は含まれない。
【0102】
本明細書中で使用する用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、一般的に長さが約50アミノ酸より長く、通常、特徴的な二次構造及び三次構造を有するアミノ酸のポリマーを指す。
【0103】
当業者であれば理解するように、本明細書に記載の合成組織は、治療有効量で投与されるであろう。本明細書中で使用する用語「有効量」または「治療有効量」とは、治療しようとする疾患または病態の1つ以上の症状がある程度緩和される、投与しようとする合成組織の十分な量を指す。結果は、神経障害の徴候、症状、もしくは病因の軽減及び/または緩和、または生体系の任意の他の望ましい変化であり得る。例えば、治療的使用の「有効量」とは、過度の有害な副作用を伴わずに疾患症状を臨床的に有意に軽減させるために必要な合成組織の量である。個々の場合の適切な「有効量」は、用量漸増試験などの技術を使用して決定してもよい。用語「治療有効量」には、例えば、予防有効量が含まれる。合成組織の「有効量」とは、過度の有害な副作用を伴わずに所望の治療的改善を達成するのに有効な量である。「有効量」または「治療有効量」は、対象の年齢及び全身状態、治療しようとする病態、治療しようとする病態の重症度、ならびに処方する医師の判断を含むがこれらに限定されない多くの要因の変動により、対象ごとに様々に異なり得ることが理解される。ほんの一例として、治療有効量は、用量漸増臨床試験を含むがこれに限定されない日常的な実験によって決定され得る。
【0104】
本明細書中で使用する用語「小分子治療薬」とは、2000ダルトン未満の分子量を有し、ヒトでの治療的使用が承認されている薬剤を指す。
【0105】
本明細書中で使用する場合、用語「治療する」または「治療」とは、(i)請求される方法(例えば、薬物の自己投与)に従って対象に自己治療を指示するか、または(ii)請求される方法に従って対象を治療するように第三者に指示する、任意の形式の指示を提供することによる、医療専門家による対象の直接治療(例えば、対象に治療薬を投与することによる)、または少なくとも1人の当事者(例えば、医師、看護師、薬剤師、または医薬品営業担当者)によって行われる間接治療の両方を指す。用語「治療する」または「治療」の意味には、例えば、疾患の進行を予防または遅延させるのに十分に早い疾患段階で治療薬を投与することによる、治療しようとする疾患の予防または軽減も包含される。
【0106】
治療方法
本明細書に記載のいくつかの方法は、(a)1つ以上の神経系細胞型(例えば、ニューロン、神経前駆細胞、アストロサイト)または(b)多能性細胞のいずれかを含む細胞集団を含む治療有効量の生体適合性の合成組織を投与することにより、必要とする対象において神経系組織を修復することを含み、その場合、細胞集団は、モジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる。本明細書に記載の方法はまた、上記の合成組織を投与することにより、神経障害を治療することを含む。モジュール式の合成ヒドロゲルをex vivoで使用して、ヒドロゲルマトリックス内の細胞の機能的成熟及び接続性を促進することにより、神経系の修復を促進させる。特に、本明細書に記載のように、ヒドロゲルマトリックスを、細胞切断可能なペプチドと部分的に架橋し、それにより、培養において成熟細胞集団によってマトリックスを漸進的に再構成し、細胞外マトリックスを沈着させて組織模倣環境を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態では、対象における神経系組織の修復方法、または神経障害の治療方法は:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られる治療有効量の合成組織を対象に投与することを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、培養期間に続いて、細胞集団が埋め込まれたモジュール式合成ヒドロゲルは、投与前に実質的に分解されている。いくつかの実施形態では、合成組織を対象に投与する前に、約10%(質量で)~実質的にすべてのモジュール式合成ヒドロゲルが分解され、例えば、合成組織を投与する前に、合成ヒドロゲルの約10%(質量で)~15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または異なる割合~実質的にすべてのモジュール式合成ヒドロゲルが分解されている。
【0109】
理論に拘泥するものではないが、そのような合成組織の使用は、以前の細胞療法または外植片アプローチと比較して、構成細胞の宿主神経系組織への局在化及び機能的統合を大いに促進すると考えられる。さらに、いくつかの場合では、この統合は、埋め込まれた細胞集団による細胞外マトリックスタンパク質の分泌と並行して、埋め込まれた細胞集団によるモジュール式合成ヒドロゲルの分解によって促進され得る。
【0110】
神経系の修復は、例えば、外傷(例えば、頭部外傷)、手術創(例えば、脳腫瘍の除去)、及び医療装置(例えば、迷走神経刺激装置)の移植によって必要とされ得る。
【0111】
本発明の方法による治療に適した神経障害の例として、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、視神経疾患、脊髄損傷、末梢神経損傷、脱髄性疾患、外傷性脳損傷、運動失調、または前頭側頭型認知症が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、治療しようとする対象は、パーキンソン病に罹患しているヒト対象である。
【0112】
いくつかの実施形態では、治療しようとする対象は、神経系組織(例えば、脳または脊髄組織)で発生する手術創を患っているか、または外科手術の合併症に関連する他の損傷に罹患している。
【0113】
上記の各病態の症状、診断試験、及び予後試験は当技術分野で公知である。例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine(c).,”19th ed.,Vols 1 & 2,2015,The McGraw-Hill Companies,Incを参照されたい。
【0114】
本明細書中で使用する場合、用語「対象」とは、任意の動物であり得る。例示的な対象として、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、マカク、ツパイ、チンパンジー)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0115】
いくつかの動物モデルは、前述の神経障害のいずれかを治療するための、本明細書に記載の合成組織の治療有効量の範囲を確立するのに有用である。例えば、パーキンソン病(Blesa et al.,2014)、脳卒中(McCabe et al.,2018)、アルツハイマー病(Gotz et al.,2018)、及び外傷性脳損傷(Hadjigeorgiou et al.,2017)の多くの動物モデルが確立されている。
【0116】
いくつかの実施形態では、合成組織の治療有効量には、約1×105細胞~約1×109細胞、例えば、3×105、4×105、5×105、7×105、1×106、3×106、5×106、8×106、1×107、2×107、3×107、4×107、5×107、7×107、1×108、2×108、3×108、5×108、7×108の細胞(例えば、ニューロン及びグリア細胞)総数、または約1×105細胞~約1×109細胞までの異なる細胞総数が含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織の治療有効量には、約5×105細胞~約1×107細胞、例えば、3×105、4×105、5×105、7×105、1×106、3×106、5×106、8×106、または約5×105細胞~約1×107細胞までの異なる細胞数が含まれる。
【0118】
いくつかの実施形態では、合成組織を提供する際の総投与量は、約0.2μl~約1000μlの範囲であり、例えば、0.2μl、2μl、5μl、7μl、10μl、12μl、20μl、25μl、35μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、700μl、800μl、または約0.2μl~約1000μlまでの異なる総投与量である。
【0119】
いくつかの実施形態では、合成組織を、複数回の投与で、同時に(または短時間の間に)または適切な間隔で、例えば、約1日~約7(7)年の期間にわたって、2回、3回、4回、またはそれ以上の回数で投与する。
【0120】
個々の治療計画に関する変数の数が多く、これらの推奨値から大きく逸脱することが珍しくないため、前述の範囲は単に示唆的なものに過ぎない。そのような用量は、治療しようとする神経学的病態、神経系組織内の投与部位の数、投与しようとする細胞型、及び本明細書に記載の合成組織において利用するモジュール式合成ヒドロゲルの特性に限定されない、いくつかの変数に応じて変更してもよい。
【0121】
好ましい実施形態では、合成組織の投与は、中枢または末梢神経系部位への局所投与経路を介して行う。いくつかの実施形態では、合成組織構築物を、対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部または近位に埋め込む。
【0122】
いくつかの実施形態では、治療しようとする対象に、本明細書に記載の合成組織を投与することに加えて、本明細書に記載の1つ以上の外来性成長因子、抗体または細胞透過性(CPP)融合タンパク質も投与する。
【0123】
治療方法で使用するための合成組織
本明細書に記載の方法で使用するための合成組織は、モジュール式合成ヒドロゲル内で、3Dで培養した、1つ以上の神経系細胞型、または多能性細胞の集団を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、使用しようとするモジュール式合成ヒドロゲルは、神経系細胞型を含む。そのようなモジュール式合成ヒドロゲル内での培養に適した神経系細胞型として、ニューロン、神経前駆細胞、グリア細胞、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、合成組織は、ニューロンを含む。
【0125】
治療しようとする特定の病態に応じて、適切なタイプのニューロンとして、モノアミン作動性ニューロン、カテコールアミン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性興奮性ニューロン、GABA作動性抑制性ニューロン、運動ニューロン、コリン作動性ニューロン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、特に治療しようとする対象がパーキンソン病に罹患している場合、合成組織内の細胞集団は、A9サブタイプの腹側中脳ドーパミン作動性ニューロンを含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、興奮性ニューロン(例えば、グルタミン酸作動性ニューロン)及び抑制性ニューロン(例えば、GABA作動性ニューロン)の両方を含む。理論に拘泥することを望むものではないが、本明細書に記載の合成組織における興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの両方を存在させることにより、興奮性または抑制性ニューロンのみを含む回路と比較して、より生理学的な活性レベル及び活性パターンを示す機能回路の形成が促進されると考えられる。興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの両方が細胞集団に含まれるいくつかの実施形態では、それらは、所定の比率で合成組織内に提供される。いくつかの実施形態では、抑制性ニューロンと興奮性ニューロンの比率は、約1:20~約1:1、例えば、1:12、1:8、1:5、1:3、1:2、または約1:20~約1:1までの抑制性ニューロンと興奮性ニューロンの異なる比率である。いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織における抑制性ニューロンと興奮性ニューロンの比率は、約1:5である。
【0126】
いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルに、多能性神経前駆細胞(NPC)を含むか、またはそれらからなる細胞集団を播種する。いくつかの実施形態では、NPCを、投与前にモジュール式合成ヒドロゲル中で培養して、ニューロン、アストロサイト、またはそれらの組み合わせへの分化を促進する。他の実施形態では、NPCを、モジュール式合成ヒドロゲル内で増殖させることができ、また、NPCは、合成組織の投与後にin vivoでNPCの分化が生じ得るように、投与前に合成組織に存在させる一般的な細胞型である。
【0127】
本明細書に記載の投与用の合成組織に含めるための細胞は、例えば、胎児組織または成体組織を含む様々な供給源から一次細胞として得ることができる。あるいは、そのような細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞などの多能性または多分化能性細胞型の分化によって間接的に得ることができる。他の実施形態では、分化した細胞はまた、体細胞の直接的な系統の再プログラミングによって得ることができる。
【0128】
他の実施形態では、合成組織はグリア細胞を含む。グリア細胞の適切なタイプとして、アストロサイト、ミエリン形成性グリア細胞(例えば、オリゴデンドロサイト及びシュワン細胞)、またはミクログリアが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織中の細胞集団は、ミエリン形成性グリア細胞を含む。いくつかの実施形態では、ミエリン形成性グリア細胞を含む合成組織を、脊髄損傷または外傷性脳損傷を患っている対象に投与する。
【0129】
いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織内の細胞集団は、ニューロン及びグリア細胞の両方を含む。いくつかの実施形態では、合成組織は、ニューロン及びグリア細胞を所定の比率で含む。グリア細胞とニューロンの適切な比率は、約7:1~約1:5の範囲であり、例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3または約7:1~約1:5までの異なる比率のグリア細胞とニューロンである。
【0130】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、内皮細胞をさらに含む。理論に拘泥することを望むものではないが、内皮細胞を含めることにより、合成組織における血管新生が促進され、それにより、in vivoで移植した場合にその生存が促進され得ると考えられる。
【0131】
必要な系統/細胞型マーカーを有する細胞の細胞分離は、例えば、フローサイトメトリー、蛍光標識細胞分取(FACS)、または好ましくは、特定の抗体と結合させたマイクロビーズを使用する磁気細胞分離によって達成することができる。例えば、1つ以上の特異的抗体、例えば、抗CD56抗体を含む磁気ビーズ(例えば、直径約0.5~100μm)に結合する能力に基づいて粒子を分離する方法である磁気活性化細胞分離(MACS)技術を使用して細胞を単離してもよい。磁気細胞分離は、例えば、AUTOMACS(商標)セパレーター(Miltenyi)を使用して実施し、自動化することができる。特定の細胞表面分子またはハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合付加を含む、様々な有用な修飾を磁性ミクロスフェアに対して実施することができる。次いで、ビーズを細胞と混合して結合させる。次いで、細胞を磁場に通して、特定の細胞表面マーカーを有する細胞を分離する。一実施形態では、次いで、これらの細胞を単離し、追加的な細胞表面マーカーに対する抗体に結合させた磁気ビーズと再混合することができる。再び磁場に細胞を通過させ、両方の抗体に結合した細胞を単離する。
【0132】
投与しようとする合成組織中の細胞集団にニューロンが含まれるいくつかの好ましい実施形態では、合成組織を、ニューロンの成熟に関連する1つ以上の機能的特徴を示すための条件下で、十分な期間培養する。そのような機能的特徴には、同系統の神経伝達物質の分泌、成長因子の分泌、成熟神経タンパク質マーカーの発現、神経伝達物質受容体の表面発現または細胞内局在、固有の電気的活動、及びシナプス接続性が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
例えば、成熟したA9成熟中脳ドーパミン作動性ニューロンを、ドーパミンの分泌、チロシンヒドロキシラーゼの発現、ドーパミントランスポーター(DAT)の発現、転写因子FOXA2の発現、Gタンパク質調節カリウムチャネルGIRK2の発現、転写因子Nurr1、及び転写因子LMX1Bの発現についてアッセイすることができる。
【0134】
グルタミン酸作動性ニューロンは、グルタミン酸トランスポーター(vGlut)トランスポーター、NMDA受容体、AMPA受容体、及びグルタミナーゼの発現をアッセイすることによって特徴付けることができる。GABA作動性ニューロンは、GABAトランスポーター、GABA受容体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(例えば、GAD65またはGAD67)の発現をアッセイすることによって特徴付けることができる。
【0135】
運動ニューロンの同一性は、転写因子HB9及び/またはコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の発現をアッセイすることによって確認することができる。
【0136】
電気生理学的成熟は、一般的に、培養期間中の膜電位の漸進的な増加、細胞形状及び関連する樹状突起の複雑さの増加を反映する入力抵抗の減少、誘発電位及び自発性活動電位の発生、ならびに自発性シナプス活動、例えば、AMPA及び/またはNMDA受容体を介した興奮性シナプス後電流、及び/または抑制性シナプス後電流の存在を特徴とする。いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織は、興奮性及び抑制性神経伝達の両方が存在することを特徴とする。
【0137】
特定のタイプのニューロン(例えば、ドーパミン作動性ニューロン)を投与するいくつかの好ましい実施形態では、細胞が投与に適していることを確認する前に、同系統の神経伝達物質のシナプス放出を行うニューロンの能力を評価することができる。例えば、培養したドーパミン作動性ニューロンからのドーパミンの放出、またはコリン作動性ニューロンからのアセチルコリンの放出を、いくつかの標準的な技術のいずれか、例えば、ELISAによって評価することができる。いくつかの実施形態では、合成組織は、同系統の神経伝達物質を分泌するニューロンを含む。いくつかの実施形態では、合成組織内に投与されるニューロンは、ドーパミン、アセチルコリン、またはセロトニンを分泌する。
【0138】
いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織に、最初に、多能性神経前駆細胞(NPC)を含むか、またはそれらからなる細胞集団を播種する。いくつかの実施形態では、NPCを、投与前にモジュール式合成ヒドロゲル中で培養して、ニューロン、アストロサイト、またはそれらの組み合わせへの分化を促進する。他の実施形態では、NPCを、モジュール式合成ヒドロゲル内で増殖させることができ、また、NPCは、合成組織の投与後にin vivoでNPCの分化が生じ得るという観点で、投与前に合成組織に存在させる一般的な細胞型である。
【0139】
他の実施形態では、合成組織に含まれる細胞集団には、多能性細胞が含まれる。適切な多能性細胞として、間葉系幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
いくつかの実施形態では、上記のモジュール式合成ヒドロゲル及び細胞集団を含む合成組織を、製造直後に、または細胞の成熟/増殖/分化を可能にするための培養期間を設けずに投与する。
【0141】
いくつかの実施形態では、上記のモジュール式合成ヒドロゲル及び細胞集団を含む合成組織の最初の形成後、得られた合成組織を一定期間培養して、埋め込まれた集団中の細胞が分化、成熟、及び/または増殖できるようにする。いくつかの実施形態では、培養期間は、約7日~約120日、例えば、14日、21日、28日、40日、50日、60日、70日、80日、または約7日~約90日までの異なる細胞培養期間である。いくつかの好ましい実施形態では、合成組織を、約14日~約60日培養する。当業者であれば、合成組織の投与前の適切な培養期間が、初期細胞集団に存在する神経系細胞、所望のニューロン成熟のレベル、及び合成組織内で細胞が増殖することを可能にする必要性を含むがこれらに限定されない多くの要因に基づいて決定されるであろうことを理解するであろう。例えば、初期(播種)細胞集団に、ex vivoで分化させようとするNPCが主に含まれている場合、NPCは通常、分化したニューロンを得るために長い培養期間を経る必要があるため、必要な培養期間は事前に分化させた細胞を播種する場合よりも長くなり、アストロサイトの場合はさらに長くなる。ニューロンの分化及びNPCのパターン化のための、特にヒト細胞についての多くのプロトコールが知られている。例えば、Studer et al.(2012),Shi et al.(2012);及びグリア分化については、例えば、Santos et al.(2017)を参照されたい。
【0142】
いくつかの実施形態では、合成組織内の細胞集団は、遺伝子改変細胞を含む。いくつかの実施形態では、そのような遺伝子改変細胞は、1つ以上の光感受性イオンチャネル、化学遺伝学的改変タンパク質、レポータータンパク質、オプトジェネティックプローブタンパク質、成長因子、転写因子、抗体、ならびに炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインなどのサイトカインを含むがこれらに限定されない1つ以上の外来性タンパク質を発現する。他の実施形態では、遺伝子改変細胞は、例えば、エクソソームmRNA及び非コードRNA(例えば、miRNA)を含む外来性RNAを発現する。
【0143】
いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織中の細胞集団は、治療しようとする対象に関して同種異系である細胞を含む。他の実施形態では、合成組織中の細胞集団は、自己原性細胞を含む。さらに他の実施形態では、細胞集団は、自己原性細胞と同種異系細胞の両方を含む。
【0144】
当業者には理解されているように、神経系の細胞集団は、特定の空間パターン及び/または回路に分布していることが多くの場合に見出される。例えば、哺乳類の新皮質は、その機能の根底にある細胞型及び接続性の特有の比率を有する6つの層に分割される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる細胞集団は、モジュール式合成ヒドロゲルのボリューム内に不均一に分布している。細胞集団が不均一に分布するいくつかの実施形態では、細胞集団は、所定の空間分布を有する。そのような所定の空間分布の例として、異なる細胞型または異なる割合の細胞型及び/または接続性を有する細胞の層、クラスター、または同心球が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、合成組織は、移植による投与の前に、事前定義された形状を有する構築物として提供される。いくつかの好ましい実施形態では、方法が、事前定義された形状を有する合成組織を利用する場合、事前定義された形状を、合成組織構築物を移植する宿主組織内の部位の形状に基づいてカスタマイズする。いくつかの実施形態では、合成組織構築物の事前定義された形状は、3D組織印刷によって得られた。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、合成組織構築物の3D組織印刷の工程を含む。
【0145】
他の実施形態では、合成組織を、本明細書では「合成脳微小組織ビーズ」(SBM)とも呼ばれる合成組織微粒子の形態で提供する。いくつかの実施形態では、そのような組織微粒子は、約1μm~約2000μmの直径を有し、例えば、1.5μm、10μm、20μm、30μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、1000μm、1200μm、1500μm、1700μm、または約1μm~約2000μmまでの異なる直径である。
【0146】
投与しようとする合成組織を組織微粒子の形態で提供するいくつかの実施形態では、そのような組織微粒子は、以下の特徴の少なくとも1つにおいて互いに異なる少なくとも2つの異なる微粒子の集団を含む:細胞型、細胞型の割合、細胞型の空間分布、ヒドロゲルサブユニット材料、連結ペプチドまたはポリペプチド、外来性成長因子。いくつかの実施形態では、多様な特徴を有する組織微粒子のそのような複数の集団を、一緒に投与する。他の実施形態では、組織微粒子の複数の集団を、互いに異なる時点で、例えば、約1日~約2か月の時間間隔で、例えば、3日、7日、14日、21日、1か月、40日、50日、または約1日~約2か月までの異なる時間間隔で投与する。
【0147】
投与の特定の部位、所望の局在化、及び治療しようとする神経学的病態に応じて、いくつかの実施形態では、合成組織微粒子を、100Pa超、例えば、約120Pa~約700Pa、例えば、150Pa、200Pa、300Pa、400Pa、500Pa、550Pa、600Pa、または約120Pa~約700Paまでの異なる粘度レベルの粘度を有する水性懸濁液として投与する。
【0148】
いくつかの実施形態では、合成組織を、生体適合性の二次モジュール式合成ヒドロゲル層内で投与するために提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、投与しようとする合成組織の周りに二次モジュール式合成ヒドロゲルを形成する工程も含む。一般的には、二次モジュール式合成ヒドロゲル層は、それが包含する合成組織よりも粘度が低いであろう。理論に拘泥することを望むものではないが、二次モジュール式合成ヒドロゲル層は、組織投与部位から離れる細胞の分散を低減し、投与する合成組織を周囲の宿主神経系組織内へ統合させることを促進することができると考えられる。
【0149】
モジュール式合成ヒドロゲル
本明細書に記載の方法は、本明細書で言及されるように、細胞外マトリックス(ECM)に触発されたポリマーヒドロゲルであるモジュール式合成ヒドロゲルの利点を利用しており、この方法は、不活性な合成ヒドロゲルポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)を、細胞接着性及び/または細胞分解性ペプチドクロスリンカー、及び多官能化連結ポリペプチド(例えば、マレイミド誘導体化グリコサミノグリカン)と組み合わせて、モジュール式合成ヒドロゲルを形成する。そのようなヒドロゲルは、例えば、Tsurkan et al.(2013)に記載されているように、複数の機能性成分の反応性及び特異性、ならびにポリマーネットワーク特性(例えば、剛性)に対する正確かつ独立した制御を提供する。そのようなヒドロゲルの重要な利点は、本明細書に記載の方法で使用する細胞に適切な接着性基質を最初に提供する一方で、ヒドロゲル足場内の連結ペプチドの少なくとも一部の漸進的な切断を可能にすることである。したがって、時間の経過とともに、細胞から分泌され、モジュール式ヒドロゲルに沈着したECMは、モジュール式合成ヒドロゲルの組織模倣3Dネットワーク特性を強化して、埋め込まれた細胞集団の分化及び機能的成熟を促進する。
【0150】
ヒドロゲルサブユニット材料
不活性な合成ヒドロゲルポリマーの生成に適したヒドロゲルサブユニット材料として、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸、ゼラチン、チオール修飾ヒアルロン酸、アクリル化ヒアルロン酸チオール修飾コンドロイチン硫酸塩、チオール修飾ゼラチン、アクリル共重合体、フッ化ポリビニリデン、キトサン、ポリウレタンイソシアナート、ポリアルギン酸塩、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、及びポリアクリロニトリルのうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲル中のヒドロゲルサブユニット材料は、マルチアーム(別名「star」)ポリマーを含む。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲル中のヒドロゲルサブユニット材料は、直鎖状、二官能性、Y字型、またはフォーク型のポリマーのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲル中のヒドロゲルサブユニット材料は、PEGを含む。いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、starPEGを含む。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、直鎖状PEGを含む。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルのヒドロゲルサブユニット材料は、ヒアルロン酸を含む。
【0151】
一般的に、本明細書に記載の方法で使用するモジュール式合成ヒドロゲルの生成に使用するヒドロゲルサブユニット材料を、Tsurkan et al.(2013)に記載されているように、マレイミド基または他の官能基で官能化し、穏やかな条件下でマイケル付加により、末端チオール基を介して1つ以上の第1の連結ペプチドと複合体化することができる。得られたヒドロゲルポリマー-ペプチド複合体は、第1の連結ペプチドのチオール含有システイン基を介して、マレイミド官能化グリコサミノグリカン(GAG)(例えば、マレイミド-ヘパリン)などのマレイミド官能化した第2の連結ペプチドまたはポリペプチドとさらに反応させることができる。
【0152】
ペプチド及びポリペプチドの連結
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するモジュール式合成ヒドロゲルは、1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料(例えば、PEG)に連結された1つ以上のペプチドまたはポリペプチド(「連結ペプチド」)を含む。そのようなペプチドは、チオール含有システイン基を介してマレイミドまたは同様の官能基と反応して、当技術分野で公知のマレイミドで誘導体化されたヒドロゲル足場材料またはペプチド上に共有結合を形成するそれらの能力によって架橋機能を提供する。さらに、そのようなペプチドは、任意選択で、細胞接着及びプロテアーゼ切断部位などの他の機能性を含む。
【0153】
したがって、いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、1つ以上の構成ヒドロゲルサブユニット材料に連結された1つ以上のペプチドを含む。いくつかの好ましい実施形態では、1つ以上の連結ペプチドは、少なくとも第1及び第2のペプチドまたはポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つは、酵素切断可能である。いくつかの実施形態では、連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つは、メタロプロテアーゼによって切断可能である。いくつかの実施形態では、第1の連結ペプチドは、以下のメタロプロテアーゼ切断認識配列を含む:
GPQGIWGQGGCG(配列番号1)
【0154】
他の適切な酵素切断認識配列は当技術分野で公知である。理論に拘泥することを望むものではないが、架橋ペプチドの細胞媒介酵素切断を可能にする配列を含めることにより、常在細胞による、よりin vivo様の細胞外マトリックス形成を促進し、それらの分化または成熟を促進すると考えられる。
【0155】
いくつかの実施形態では、連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つは、細胞結合配列を含む。適切な細胞結合配列として、ラミニン由来細胞結合配列及びRGDモチーフペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞結合配列は、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含む:
SIKVAVGWCG(配列番号2)
YIGSRGCG(配列番号3)
【0156】
いくつかの実施形態では、連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つは、マレイミド基またはチオール基などの変換可能な官能基を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、連結ペプチドのうちの少なくとも1つは、グリコサミノグリカン(GAG)である。いくつかの好ましい実施形態では、GAGは、ヘパリンまたはヘパリン誘導体(例えば、チオール修飾ヘパリン)である。位置選択的官能化を含む、マレイミドまたはチオールなどの反応性基による連結ペプチド及びポリペプチドの官能化は、例えば、Tsurkan et al.(2013)に記載されているように、当技術分野で公知である。
【0158】
いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びヘパリンを含む。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びコラーゲンを含む。他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG及びヒアルロン酸を含む。さらに他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、PEG、ならびにヘパリン、コラーゲン、及びヒアルロン酸の組み合わせを含む。
【0159】
他の実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲルは、ポリアルギン酸塩と、ヒアルロン酸、ヘパリン、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つとを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、モジュール式合成ヒドロゲル中のPEG及びヘパリン、コラーゲン、及び/またはヒアルロン酸の合計濃度は、モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)であり、例えば、0.1%、0.2%、0.4%、0.5%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%の濃度または約0.05%~約98%までの異なる濃度(w/w)である。モジュール式合成ヒドロゲルがstarPEG(またはペプチド結合ヘパリン)及びヘパリン(またはペプチド結合ヘパリン)を含むいくつかの好ましい実施形態では、ヘパリンに対するstarPEGのモル比は、約0.5~約1.5、例えば、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1.0、1.2、1.2、1.3または約0.5~約1.5までのヘパリンに対するstarPEGの異なるモル比である。好ましい一実施形態では、ヘパリンに対するstarPEGのモル比は、約0.75~1.0である。
【0161】
当業者であれば、モジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ、培養される細胞、特に酵素切断可能な連結ペプチドで機能化された細胞が、細胞外マトリックスを経時的に分泌し、これが所与の培養期間にわたって総合成ヒドロゲル質量の割合の増加に寄与することを理解するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、細胞外マトリックスの濃度は、モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)の範囲であり、例えば、0.1%、0.2%、0.4%、0.5%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%または約0.05%~約98%までの異なる濃度(w/w)である。
【0162】
モジュール式合成ヒドロゲルから放出するための任意選択の薬剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するモジュール式合成ヒドロゲルは、埋め込まれた細胞のための生物模倣型足場としてだけでなく、成長因子、抗体、サイトカイン、または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質の放出、例えば制御放出のための担体として作用する。
【0163】
したがって、いくつかの実施形態では、投与しようとする合成組織はまた、1つ以上の外来性成長因子、抗体または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質を含む。成長因子には、成長因子もしくは成長因子様分子、または分化/脱分化を誘導する分子が含まれることは、当技術分野で公知である。上記の合成組織に含めるのに適した外来性成長因子として、BDNF、VEGF、IGF1、bFGF/FGF2、Ang1、Ang2、BMP2、BMP3a、BMP3b、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7(OP-1)、CTNF、EGF、EPO、aFGF/FGF1、bFGF/FGF2、G-CSF、GDF10、GDF15、GDNF、GH、GM-CSF、HB-EGF、LIF、NGF、NT-3、NT4/5、オステオポンチン、PDGFaa、PDGFbb、PDGFab、P1GF、SCF、SDF1/CXCL12、及びTGFβのうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。適切な抗体として、αシヌクレイン、Aβオリゴマー、タウオリゴマー、フィブリン、及びToll様受容体(TLR)4のいずれかに対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。適切なサイトカインとして、脳内の炎症を抑制することが示されているサイトカイン、例えば、IL-10、IL-4、IL-6、IL-11、IL-1α、IL-1β、IL-18及びIL-13が挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
いくつかの実施形態では、合成組織は、CPP転写因子融合タンパク質を含む。特に興味深いのは、細胞をある系統から別の系統に変換する、例えばグリア細胞をニューロンに変換することができるCPP転写因子である。例えば、Hu et al.(2014),Xu et al.(2017)を参照されたい。適切なCPP転写因子として、Ascl1、Brn2、Nurr1、Foxa2、Ngn2、Lmx1a、Pitx3、及びOtx2のうちの1つ以上のCPP融合体が挙げられる。CPP融合タンパク質の生成に使用するのに適した様々なCPPは、例えば、Peraro et al.(2018)及びKaitsuka et al.(2015)に記載されているように当技術分野で公知である。
【0165】
他の実施形態では、合成組織はまた、1つ以上のタイプの外来性エクソソームを含む。様々な神経学的病態の治療に適したタイプの外来性エクソソームの例が、当技術分野で例示されている。例えば、Xia et al.(2019)を参照されたい。
【0166】
モジュール式合成ヒドロゲルの生成
図3に示すように、複合体化システイン末端star-PEG及びヘパリン-マレイミド複合体などのヒドロゲル前駆体分子を、PBSまたは他の適切な溶液/緩衝液に溶解し、低温または氷上で保存する。冷却した溶液を合わせ、ゲル形成が進行できるように穏やかに混合する。ゲル形成は、数秒~数分以内に生じ得る。前駆体出発溶液の濃度を必要に応じて調整し、望ましい固形分を維持することができる。開始溶液、混合、及びその後の処理/分配工程は、手動、半自動または完全自動の手順で達成してもよい。ロボットは、例えば、複数の工程を非常に少量で正確に実行するため、噴霧重合及び3D印刷用途に、そして溶液/ゲルの無菌性を維持するために有用であることが理解されよう。特に、例えば、離散量の出発物質を分配、結合、及び混合及び/または分布させることができる液体処理ロボット機器を使用して、反応を実施してもよい。本明細書に記載のように、追加的な材料として、細胞及び生物学的に活性な分子、例えば、成長因子、抗体、小分子、細胞透過性ペプチドなどが挙げられる。細胞生存率は、当技術分野で公知の細胞生存率の最適条件を確保することによって維持される。この点に関して日常的に考慮される要因には、pH、温度、ガス交換要因、濃度及び使用する特定の培地が含まれる。
【0167】
細胞集団は、単離後、所望の成熟状態に応じて選択される時間及び条件下で培養してもよい。例えば、細胞を、24時間未満、または最大約4~6か月間培養してもよい。いくつかの実施形態では、マイクロビーズ製造前に細胞を培養しない。異なる細胞型または成熟/分化の異なる段階にある細胞型の混合物を、一緒にまたは別々に培養してもよい。合成組織が形成されると、用途に応じて、さらなる培養/成熟プロトコールを実行することができる。
【0168】
一実施形態では、細胞集団を含む合成組織を、形成される繊細な組織に損傷を与えることなく投与することができるようにするために、それらを非常に小さい体積に製造する。合成組織は、約0.2μlの体積の微粒子を含むマイクロビーズ/微粒子の形態で生成することができる。個々の微粒子を、別々に、または同じもしくは異なる組成/形状/サイズの他の微粒子と一緒に培養してもよい。
【0169】
例えば、細胞集団を含む微粒子を、組織培養プレートの底部または他の適切な表面に直接投入してもよい。
【実施例】
【0170】
実施例1-パーキンソン病の治療のための合成脳微小組織(SBM)の調製及び使用
ヒト胎児アストロサイト及び中脳ドーパミン作動性ニューロンを、単離後に培養する。合成脳微小組織を調製する前に、培養した細胞を製造元の指示に従ってAccutase(登録商標)(Invitrogen)で処理して単一細胞懸濁液を得、細胞分離培地であるNeurobasal(商標)培地に回収し、160~180(170)×gで10分間遠心分離する。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1mlあたり8×10
6細胞の濃度で再懸濁し、細胞-PBS溶液を得る。次いで、細胞-PBS溶液を、1:1(v/v)比でPBS-ヘパリン溶液(「細胞-HEP」溶液)及び任意選択で追加の成分(例えば、サイトカイン、成長因子、0.01nM~10000mMの濃度の小分子など)と混合する。PBS-ヘパリン溶液中のヘパリン分子は、Tsurkan et al.(2013)に記載され、
図2に概略的に示されているように、分子量15,000g/molの6つのマレイミド基(HEP-HM6)で官能化する。架橋溶液は、各アーム上で酵素切断可能なペプチド配列で官能化された4つのアーム(「starPEG」)(総分子量15,500g/mol)をPBSに溶解することによって得られる(「StarPEG複合体溶液」)。starPEG結合ペプチド内のチオール含有システイン残基は、HEP-HM6複合体上のマレイミド基とのマイケル付加による反応に利用することができる。ヒドロゲル架橋は、細胞-HEP-HM6溶液をStarPEG複合体溶液と混合することによって開始される。ヒドロゲルマトリックス成分(StarPEG複合体及びHEP-HM6)は、約0.75対1のstarPEG-複合体:HEP-HM6(架橋度0.75に対応)のモル比で組み合わせる。
【0171】
結果として形成される微小組織では、固形物の総含有量は約4%(細胞を除く)であるべきである。上記のプロトコールに基づいて、0.2μl(0.2マイクロリットル)の容量の微小組織を以下の手順に従って形成する。
1. IP由来ヒト中脳ドーパミン作動性ニューロンとヒトiPS由来アストロサイトを30:70の比率で、PBSに2×106/mlで再懸濁する。
2. 0.0448mgのHEP-HM6を5μlのPBSに溶解する。
3. 0.0347mgのStarPEG-MMP複合体を10μlのPBSに溶解した。
4. 溶液を混合し、液体処理ロボットを使用して、疎水性表面(パラフィルムなど)におよそ20,000×0.2μlの液滴をすばやく配列させる。ヒドロゲルの形成はおよそ40秒で完了する。
5. ヒドロゲルマイクロビーズを個別に384ウェル培養プレートに入れる。各ウェルは、1%の成長因子培地(SRL、カタログ番号1852)、及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン溶液(SRL、カタログ番号0503)を添加した20μlの培養液(ScienCell Research Laboratories、カタログ番号1801)を含んでいる。細胞に対し、1日おきに栄養供給/培地交換する。
6. マイクロビーズを、37℃、5%CO2 95%空気で21日間培養する。
7. 培養期間、及びヒドロゲル合成マトリックスの進行性の細胞媒介性分解の後、結果として生じる「合成脳微小組織ビーズ」(「SBM」)は、いくつかの特有の特徴を生じる:細胞から分泌された約70%(重量で)の細胞外マトリックスの組成物;約100Pa~約700Paの剛性;200超のネットワークが存在し、各ネットワークには少なくとも3つの相互接続されたニューロンが含まれ、5つを上回るブランチ(他のネットワークとの接続)がある。
8. SBMをプールし、starPEG-MMP複合体及びHEP-HM6の溶液と、1:1(v/v)の比率で混合し、これにより、20μl(10μlのSBMと10μlのstarPEG-MMP-HEP-HM6溶液)の総量で、架橋比=0.2の二次合成ヒドロゲル層を形成する。二次ヒドロゲル層は、いったん組織に導入された成分SBMの局所化に役立ち、また、移植したSBMの細胞と周囲組織の細胞との間に生じる接続性及び相互作用のための適切な界面基質を提供し、それにより、宿主の脳へのSBMの長期的な機能的統合を促進する。
9. 次いで、プールしたSBM-二次ヒドロゲルを医療器具(例えば、マイクロシリンジ)のリザーバーにロードし、麻酔した(6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)ラットの黒質に約0.2μl/分の速度で、およそ2μlのSBM-ヒドロゲルを定位投与によって送達する(Duty and Jenner,2011)。
【0172】
実験計画及び評価する特定のエンドポイント
【表1】
【0173】
実施例2-脳卒中の治療のための合成脳微小組織(SBM)の調製及び使用
ヒト胎児アストロサイトを、単離後に培養する。合成脳微小組織を調製する前に、培養細胞を製造元の指示に従ってAccutase(登録商標)(Invitrogen)で処理して単一細胞懸濁液を得、細胞分離培地であるNeurobasal(登録商標)培地に回収し、160~180×gで10分間遠心分離する。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1mlあたり8×106細胞の濃度で再懸濁し、細胞-PBS溶液を得る。次いで、細胞-PBS溶液をPBS-ヒアルロン酸(HAL)溶液と1:1(v/v)の比率で混合し(「細胞-HAL」溶液)、任意選択で追加の成分(サイトカイン、成長因子、または小分子)を加える。PBS-HAL溶液中のHAL分子は、分子量17,000g/molの8つのマレイミド基(HAL-HM8)で官能化される。架橋溶液は、両端が酵素切断可能なペプチド配列で官能化された直鎖状PEG(「LPEG」)(総分子量17,000g/mol)をPBS(「LPEG複合体溶液」)に溶解することによって得られる。PEG結合ペプチド内のチオール含有システイン残基は、HAL-HM8複合体上のマレイミド基とのマイケル付加による反応に利用することができる。ヒドロゲル架橋は、細胞-HAL-HM8溶液をPEGと混合することによって開始する。ヒドロゲルマトリックス成分(LPEG複合体及びHAL-HM8)を、約1~2のPEG複合体(複数可):HAL-HM8モル比で組み合わせる。
【0174】
結果として形成される微小組織では、固形物の総含有量は約4%(細胞を除く)であるべきである。上記のプロトコールに基づいて、0.2μlの容量の微小組織を、以下の手順に従って形成させる:
1. hiPSC由来ヒト神経前駆細胞(NPC)とhiPSC由来アストロサイトを30:70の比率でPBSに2×106/mlで再懸濁する。
2. 0.5mgのHAL-HM8を10μlのPBSに溶解する。
3. 0.5mgのLPEG-MMP複合体を10μlのPBSに溶解した。
4. 溶液を一緒に混合し、液体処理ロボットを使用して、疎水性の表面(例えば、パラフィルム)におよそ20,000×0.2μlの液滴をすばやく配列させる。ヒドロゲルの形成はおよそ40秒で完了する。
5. ヒドロゲルマイクロビーズを個別に384ウェル培養プレートに入れる。各ウェルは、1%の成長因子培地(SRL、カタログ番号1852)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン溶液(SRL、カタログ番号0503))を添加した20μlの培養液(SRL、カタログ番号1801)を含んでいる。細胞に対し、1日おきに栄養供給/培地交換する。
6. マイクロビーズを、37℃、5%CO2 95%空気で30日間培養する。
7. 培養期間、及びヒドロゲル合成マトリックスの進行性の細胞媒介性分解の後、結果として生じる「合成脳微小組織ビーズ」(「SBM」)は、いくつかの特有の特徴を生じる:細胞から分泌された約70%(重量で)の細胞外マトリックスの組成物;約100Pa~約3000Paの剛性;200超のネットワークが存在し、各ネットワークには5つを上回るブランチ(他のネットワークとの接続)がある;及び12,000超の固有の神経突起。
8. SBMをプールし、LPEG-MMP複合体及びHAL-HM8の溶液と1:1(v/v)の比率で混合し、これにより、20μl(10μlのSBM及び10μlのLPEG-MMP-HAL-HM8溶液)の総量で、架橋比=0.2の二次合成ヒドロゲル層を形成する。二次ヒドロゲル層は、in vivoで組織に導入される成分SBMの局在化に役立ち、また、適切な界面基質を提供して移植したSBMの細胞と周囲組織の宿主細胞との間の接続性及び相互作用を確立し、それにより、SBMの宿主脳への長期的な機能的統合を促進する。
9. 次いで、プールしたSBM-二次ヒドロゲルを医療用注射器具(例えば、マイクロシリンジ)のリザーバーにロードし、例えば、(Yu et al.,2015)の光血栓性脳卒中モデルに記載されているように、虚血性脳卒中を誘発させた麻酔マウスの皮質に、およそ2μlのSBM-ヒドロゲルを定位投与によって送達する。
10. 光誘発性虚血性血栓の周囲に生成された壊死性脳領域に、SBM-ヒドロゲルを注入する。
【0175】
実験計画及び評価する特定のエンドポイントの要約表
【表2】
【0176】
当業者であれば、広く記載されている本発明の精神または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示すように、本発明に対して多数の変形及び/または修正を行い得ることを理解するであろう。したがって、本実施形態は、すべての点において例示的なものに過ぎず、限定するものではないとみなされるべきである。
【0177】
本出願は、2018年10月26日に出願されたAU2018904068の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【0178】
本明細書中で引用するすべての刊行物は、その全体が参照により本明細書に援用される。URLまたは他のそのような識別子もしくはアドレスへの参照が作成される場合、そのような識別子は変更される可能性があり、またインターネット上の特定の情報は移り変わる可能性があるものの、インターネット検索によって同等の情報を見出し得ることを理解されたい。その参照は、そのような情報の入手可能性及び一般への普及を証明するものである。
【0179】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などの議論は、本発明の内容を提供することのみを目的としている。これらの事項のいずれかまたはすべてが、先行技術の基礎の一部を形成すること、または本発明に関連する分野において本出願の各請求項の優先日より前に存在していた一般的な知識であったことを認めるものとみなされるべきではない。
参考文献
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Yu et al.(2015),J Neurosci Methods,239:100-7.
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2020-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経系組織の修復を、それを必要とする対象において行う方法であって、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を前記対象に投与することを含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれている、前記方法。
【請求項2】
神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含む治療有効量の合成組織を前記対象に投与することを含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれている、前記方法。
【請求項3】
神経系組織の修復または神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られる治療有効量の合成組織を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記対象が、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、視神経疾患、脊髄損傷、末梢神経損傷、脱髄性疾患、及び外傷性脳損傷に罹患している、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、手術創を患っている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多能性細胞が間葉系幹細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記神経系細胞型が、ニューロン、神経前駆細胞、グリア細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞集団がニューロンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ニューロンが、モノアミン作動性ニューロン、カテコールアミン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性興奮性ニューロン、GABA作動性抑制性ニューロン、運動ニューロン、コリン作動性ニューロン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞集団が、ドーパミン作動性ニューロンを含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞集団が、所定の比率で興奮性及び抑制性ニューロンを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞集団が、グリア細胞を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記グリア細胞がアストロサイトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グリア細胞がミエリン形成性グリア細胞またはミクログリアである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞集団が、ニューロン及びグリア細胞を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞集団が、内皮細胞をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与前の前記細胞集団中のニューロンが:同系統の神経伝達物質の分泌、成長因子の分泌、成熟神経タンパク質マーカーの発現、神経伝達物質受容体の表面発現または細胞内局在、固有の電気的活動、及びシナプス接続性からなる群から選択される、ニューロンの成熟に関連する少なくとも1つの機能的特徴を示す、請求項8~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記投与前の前記細胞集団において、興奮性及び抑制性神経伝達の両方が示される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞集団内のニューロンが、同系統の神経伝達物質を分泌する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記同系統の神経伝達物質が、ドーパミン、アセチルコリン、またはセロトニンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞集団が、遺伝子改変細胞を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記遺伝子改変細胞が、光感受性イオンチャネル、化学遺伝学的改変タンパク質、レポータータンパク質、オプトジェネティックプローブタンパク質、成長因子、転写因子、抗体、及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の外来性タンパク質を発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞集団が、同種異系細胞を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞集団が、自己原性細胞を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞集団が、同種異系細胞と自己原性細胞の両方を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞集団が、前記モジュール式合成ヒドロゲル内に不均一に分布している、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞集団が、前記モジュール式合成ヒドロゲル内に所定の空間分布を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記所定の空間分布における異なる細胞型を、別個の層に組織化する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸、ゼラチン、チオール修飾ヒアルロン酸、アクリル化ヒアルロン酸チオール修飾コンドロイチン硫酸塩、チオール修飾ゼラチン、アクリル共重合体、フッ化ポリビニリデン、キトサン、ポリウレタンイソシアナート、ポリアルギン酸塩、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、及びポリアクリロニトリルからなる群から選択される1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料が、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、前記1つ以上のヒドロゲルサブユニット材料に連結された1つ以上のペプチドまたはポリペプチドをさらに含む、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上のペプチドまたはポリペプチドが、少なくとも第1及び第2のペプチドまたはポリペプチドを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つが、酵素切断可能である、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記酵素切断可能なペプチドまたはポリペプチドが、メタロプロテアーゼ切断部位を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の連結ペプチドまたはポリペプチドのうちの少なくとも1つが、細胞結合配列を含む、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上の連結ペプチドのうちの少なくとも1つが、変換可能な官能基を含む、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記変換可能な官能基が、マレイミド基またはチオール基である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1つ以上のペプチドまたはポリペプチドが、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を含む、請求項31~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上のペプチドまたはポリペプチドが、チオール修飾ヘパリンを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、ポリアルギン酸塩と、ヒアルロン酸、ヘパリン、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つとを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、ポリアルギン酸塩及びヒアルロン酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEGと、ヘパリン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つとを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEG及びヘパリンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記モジュール式合成ヒドロゲル中のPEGと、前記ヘパリン、ヒアルロン酸、及びコラーゲンのうちの少なくとも1つの合計濃度が、前記モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEG及びヒアルロン酸を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが、PEG及びコラーゲンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記モジュール式合成ヒドロゲルがStarPEGヒドロゲルである、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記モジュール式合成ヒドロゲルが直鎖状PEGヒドロゲルである、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞集団が、前記モジュール式合成ヒドロゲルに細胞外マトリックスを分泌し、投与時に前記細胞外マトリックスの濃度が、前記モジュール式合成ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.05%(w/w)~約98%(w/w)である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記合成組織が、1つ以上の外来性成長因子、抗体、または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質をさらに含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記CPP融合タンパク質が、1つ以上の転写因子-CPP融合タンパク質を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の外来性成長因子、抗体または細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記1つ以上の外来性成長因子が、BDNF、VEGF、IGF1、bFGF/FGF2、Ang1、Ang2、BMP2、BMP3a、BMP3b、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7(OP-1)、CTNF、EGF、EPO、aFGF/FGF1、bFGF/FGF2、G-CSF、GDF10、GDF15、GDNF、GH、GM-CSF、HB-EGF、LIF、NGF、NT-3、NT4/5、オステオポンチン、PDGFaa、PDGFbb、PDGFab、P1GF、SCF、SDF1/CXCL12、及びTGFβからなる群から選択される、請求項50または請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記CPP融合タンパク質が、1つ以上のCPP転写因子融合タンパク質を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記合成組織が、1つ以上のタイプの外来性エクソソームをさらに含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記合成組織が、前記投与前に事前定義された形状を有する構築物として提供される、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記事前定義された形状を、前記組織構築物を移植しようとする部位の形状に基づいてカスタマイズする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記合成組織を、前記対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部またはその近位に移植する、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記構築物が、3D組織印刷によって得られる、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記構築物を、3D印刷によって事前定義された形状に形成することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記合成組織を、微粒子の形態で提供する、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記微粒子が、約1μm~約2000μmの直径を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記微粒子が、約50μm~約500μmの直径を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記微粒子が、以下の特徴:細胞型、細胞型の割合、細胞型の空間分布、ヒドロゲルサブユニット材料、連結ペプチドまたはポリペプチド、外来性成長因子のうちの少なくとも1つにおいて互いに異なる、少なくとも第1及び第2の微粒子の集団を含む、請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記第1及び第2の微粒子の集団を、異なる時点または前記対象における異なる部位で投与する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記合成組織を、100Pa超の粘度を有する水性懸濁液として投与する、請求項61~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記合成組織が、1つ以上の液体処理ロボットによって生成された、請求項56~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記合成組織を、1つ以上の液体処理ロボットを使用して生成することをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記合成組織中の前記モジュール式合成ヒドロゲルを噴霧重合によって生成する、請求項67または請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記合成組織を、約2週間~約3か月間培養する、請求項1~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記合成組織を、前記対象の脳、脊髄、視神経、または末梢神経の内部または近位に注入する、請求項61~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象がヒト対象である、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記合成組織を、生体適合性の二次モジュール式合成ヒドロゲル層内で投与するために提供する、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記合成組織の存在下で前記二次モジュール式合成ヒドロゲル層を生成することをさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記培養期間の終わりに、前記細胞集団が埋め込まれた前記モジュール式合成ヒドロゲルが、前記投与前に実質的に分解されている、請求項3~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
神経障害の治療または神経系組織の修復に使用するための合成組織であって、前記合成組織が、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる、前記合成組織。
【請求項77】
神経障害の治療に使用するための合成組織であって、前記合成組織が:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた、前記合成組織。
【請求項78】
神経障害を治療するための薬剤の製造における合成組織の使用であって、前記合成組織が、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を含み、前記細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれる、前記合成組織の使用。
【請求項79】
神経障害を治療するための薬剤の製造における合成組織の使用であって、前記合成組織が:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団をモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた、前記合成組織の使用。
【請求項80】
神経系組織の修復を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含むヒト細胞集団を含む治療有効量の合成組織を前記ヒト対象に投与することを含み、前記ヒト細胞集団を、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込み;前記合成組織を微粒子の形態で提供する、前記方法。
【請求項81】
ヒト対象における神経障害を治療するための、または神経系組織を修復するための薬剤の製造における合成組織の使用であって、前記合成組織が、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含むヒト細胞集団を含み、前記ヒト細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ;前記合成組織が、微粒子の形態で提供される、前記合成組織の使用。
【請求項82】
ヒト対象における神経障害の治療または神経系組織の修復に使用するための合成組織であって、前記合成組織が、(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含むヒト細胞集団を含み、前記ヒト細胞集団が、生体適合性のモジュール式合成ヒドロゲル内に埋め込まれ;前記合成組織が、微粒子の形態で提供される、前記合成組織。
【請求項83】
神経障害を治療するための薬剤の製造における合成組織の使用であって、前記合成組織が:
(i)(a)1つ以上の神経系細胞型、または(b)多能性細胞を含む細胞集団を、微粒子の形態でモジュール式合成ヒドロゲルに埋め込み;そして
(ii)前記埋め込まれた細胞集団を一定期間培養する
工程を含むプロセスによって得られた、前記合成組織の使用。
【国際調査報告】