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特表2022-513379AOAHを過剰発現する遺伝子組換え間葉系幹細胞及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】AOAHを過剰発現する遺伝子組換え間葉系幹細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220131BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20220131BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/28
A61P29/00
A61P31/04
A61P43/00 107
C12N5/0775
C12N15/55
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547607
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 CA2019051526
(87)【国際公開番号】W WO2020087160
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/752,000
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505357317
【氏名又は名称】オタワ ホスピタル リサーチ インスティチュート
(71)【出願人】
【識別番号】511266520
【氏名又は名称】ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】メイ シャーリー エイチ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン マリア
(72)【発明者】
【氏名】ロウ ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】リー チャン ジャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA31
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB65
4C087ZB11
4C087ZB22
4C087ZB35
4C087ZC19
(57)【要約】
アシルオキシアシルヒドロラーゼ(AOAH)ポリペプチドを過剰発現する遺伝子改
変された間葉系幹細胞(MSC)、例えば、AOAHポリペプチドをコード化する組換
え核酸を含むMSCを記載する。MSCは、関心対象の第二ポリペプチド、例えば、ア
ンジオポエチン-1(ANGPT1)をさらに過剰発現し得る。遺伝子改変されたMS
Cを含む医薬組成物も記載する。そのような遺伝子改変されたMSC及び/又は薬剤と
してこれを含む医薬組成物の、例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS)又は敗血症
の治療のための使用も記載する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシルオキシアシルヒドロラーゼ(AOAH)ポリペプチドを過剰発現するように遺伝子組換えされた、間葉系幹細胞(MSC)。
【請求項2】
前記MSCが組換えAOAHポリペプチドを発現する、請求項1に記載のMSC。
【請求項3】
前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基35~575のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のMSC。
【請求項4】
前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基35~575の前記アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のMSC。
【請求項5】
前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基35~575の前記アミノ酸配列を含む、請求項4に記載のMSC。
【請求項6】
前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基24~575のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のMSC。
【請求項7】
前記MSCが、第一プロモータ又はプロモータ/エンハンサ組み合わせに機能的に連結されたAOAHポリペプチドコード化領域を含む第一外因性核酸を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項8】
前記プロモータが、サイトメガロウイルス(CMV)又は伸長因子-1(EF1)プロモータである、請求項7に記載のMSC。
【請求項9】
前記プロモータ/エンハンサ組み合わせがCMVプロモータ/エンハンサ組み合わせである、請求項7に記載のMSC。
【請求項10】
前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号1のヌクレオチド7~1734と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項11】
前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号1のヌクレオチド7~1734と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載のMSC。
【請求項12】
前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号1のヌクレオチド7~1734の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のMSC。
【請求項13】
前記MSCが、アンジオポエチン-1(ANGPT1)ポリペプチドを過剰発現するように遺伝子組換えされている、請求項1~12のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項14】
前記MSCが組換えANGPT1ポリペプチドを発現する、請求項13に記載のMSC。
【請求項15】
前記組換えANGPT1ポリペプチドが、配列番号7の残基16~498のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のMSC。
【請求項16】
前記組換えANGPT1ポリペプチドが、配列番号7の残基16~498のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15に記載のMSC。
【請求項17】
前記組換えANGPT1ポリペプチドが、配列番号7の残基16~498のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のMSC。
【請求項18】
前記MSCが、第二プロモータ又はプロモータ/エンハンサ組み合わせに機能的に連結されたANGPT1ポリペプチドコード化領域を含む第二外因性核酸を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項19】
前記第二プロモータがCMV又はEF1プロモータである、請求項18に記載のMSC。
【請求項20】
前記第二プロモータ/エンハンサ組み合わせが、CMVプロモータ/エンハンサ組み合わせである、請求項18に記載のMSC。
【請求項21】
前記ANGPT1ポリペプチドコード化領域が、配列番号3のヌクレオチド7~1503と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項22】
前記ANGPT1ポリペプチドコード化領域が、配列番号3のヌクレオチド7~1503と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項21に記載のMSC。
【請求項23】
前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号3のヌクレオチド7~1503のヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載のMSC。
【請求項24】
前記第一及び/又は第二外因性核酸がベクター又はプラスミド中に含まれる、請求項7~23のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項25】
前記第一及び第二外因性核酸が同じベクター又はプラスミド中に含まれる、請求項24に記載のMSC。
【請求項26】
薬剤として使用するための、請求項1~25のいずれか一項に記載のMSC。
【請求項27】
前記薬剤が、対象における全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防又は治療用である、請求項26に記載の使用のためのMSC。
【請求項28】
前記SIRSが敗血症によって引き起こされる、請求項27に記載の使用のためのMSC。
【請求項29】
前記対象がヒトである、請求項27または28に記載の使用のためのMSC。
【請求項30】
前記MSCが前記対象に関して同種異系である、請求項27~29のいずれか一項に記載の使用のためのMSC。
【請求項31】
前記MSCが前記対象に関して自家性である、請求項27~29のいずれか一項に記載の使用のためのMSC。
【請求項32】
全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防または治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量の請求項1~25のいずれか一項に記載のMSCを投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記SIRSが敗血症によって引き起こされる、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記対象がヒトである、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記MSCが前記対象に関して同種異系である、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記MSCが前記対象に関して自家性である、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
対象における全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防又は治療するための請求項1~25のいずれか一項に記載のMSCの使用。
【請求項38】
対象における全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防又は治療するための薬剤の製造のための、請求項1~25のいずれか一項に記載のMSCの使用。
【請求項39】
前記SIRSが敗血症によって引き起こされる、請求項37又は38に記載の使用。
【請求項40】
前記対象がヒトである、請求項37~39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記MSCが、前記対象に対して同種異系である、請求項37~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記MSCが前記対象に関して自家性である、請求項37~40のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる、2018年10月29日に出願された米国仮特許出願番号62/752,000の恩恵を主張する。
【0002】
本開示は、概して、炎症性疾患、例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症状(MODS)、敗血性ショック及び敗血症の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、多臓器機能不全をもたらす、全身性炎症に関連する重篤な状態であり;急性肺損傷(ALI)は、最も一般的な最早期臓器不全である。SIRSは様々な病原性事象の結果として起こる可能性があり、敗血症症候群が最も一般的かつ致命的な原因である。
【0004】
敗血症は、米国で毎年100万人超が冒され、敗血症が原因で死亡するリスクは30%に達し、重篤な敗血症では50%に達し、敗血性ショックでは80%にも達する。敗血症の治療は、米国の病院で治療される最も費用のかかる状態とされ、2011年で200億ドルを上回る費用がかかる(Torio et al.,Healthcare Cost and Utilization Project(HCUP)Statistical Brief,#160,2013,1-12)。毎年258000人以上の命が失われており、敗血症は米国において心臓病、がんに次いで死因の3位にランク付けされている。その後、生存者は、切断、不安、記憶喪失、慢性疼痛及び倦怠感、並びに認知機能を含む敗血症後の長期的影響に直面することが多い。
【0005】
敗血症は、免疫系と細菌及び細菌壁細分との相互作用の結果としての炎症メディエータの過剰産生に起因する。リポ多糖(LPS)は、エンドトキシンやグラム陰性菌の主な外膜成分としても知られるが、有害な免疫応答を引き起こすことが知られる原因物質の一つである。
【0006】
血液中の細菌の散在はサイトカインストームともたらし、これは、通常は血液による感染症を制御するように機能する健常な免疫系を患者にとって不利益なものに変えてしまう。
【0007】
細菌性敗血症の制御戦略としての抗生物質の使用にもかかわらず、近年、血流の細菌単離株による抗生物質耐性が上昇しているため、敗血症、その症状及び病状の治療及び管理のための新規化合物、療法、及びレジメに対する喫緊の必要性が強調されている。
【0008】
本明細書は、いくつかの文書に言及しており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
本開示は以下の項目1~42を提供する:
1.アシルオキシアシルヒドロラーゼ(AOAH)ポリペプチドを過剰発現するように遺伝子組換えされた間葉系幹細胞(MSC)。
【0010】
2.前記MSCが組換えAOAHポリペプチドを発現する、項目1に記載のMSC。
【0011】
3.前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基35~575のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、項目2に記載のMSC。
【0012】
4.前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基35~575のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目3に記載のMSC。
【0013】
5.前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基35~575のアミノ酸配列を含む、項目4に記載のMSC。
【0014】
6.前記組換えAOAHポリペプチドが、配列番号5の残基24~575のアミノ酸配列を含む、項目5に記載のMSC。
【0015】
7.前記MSCが、第一プロモータ又はプロモータ/エンハンサ組み合わせに機能的に連結されたAOAHポリペプチドコード化領域を含む第一外因性核酸を含む、項目2~6のいずれか一項に記載のMSC。
【0016】
8.前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)又は伸長因子-1(EF1)プロモータである、項目7に記載のMSC。
【0017】
9.前記プロモータ/エンハンサ組み合わせが、CMVプロモータ/エンハンサ組み合わせである、項目7に記載のMSC。
【0018】
10.前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号1のヌクレオチド7~1734と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目7~9のいずれか一項に記載のMSC。
【0019】
11.前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号1のヌクレオチド7~1734と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目10に記載のMSC。
【0020】
12.前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号1のヌクレオチド7~1734のヌクレオチド配列を含む、項目11に記載のMSC。
【0021】
13.前記MSCが、アンジオポエチン-1(ANGPT1)ポリペプチドを過剰発現するように遺伝子組換えされている、項目1~12のいずれか一項に記載のMSC。
【0022】
14.前記MSCが組換えANGPT1ポリペプチドを発現する、項目13に記載のMSC。
【0023】
15.前記組換えANGPT1ポリペプチドが、配列番号7の残基16~498のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、項目14に記載のMSC。
【0024】
16.前記組換えANGPT1ポリペプチドが、配列番号7の残基16~498のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目15に記載のMSC。
【0025】
17.前記組換えANGPT1ポリペプチドが、配列番号7の残基16~498のアミノ酸配列を含む、項目16に記載のMSC。
【0026】
18.前記MSCが、第二プロモータ又はプロモータ/エンハンサ組み合わせに機能的に連結されたANGPT1ポリペプチドコード化領域を含む第二外因性核酸を含む、項目13~17のいずれか一項に記載のMSC。
【0027】
19.前記第二プロモータがCMV又はEF1プロモータである、項目18に記載のMSC。
【0028】
20.前記第二プロモータ/エンハンサ組み合わせが、CMVプロモータ/エンハンサ組み合わせである、項目18に記載のMSC。
【0029】
21.前記ANGPT1ポリペプチドコード化領域が、配列番号3のヌクレオチド7~1503と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目18~20のいずれか一項に記載のMSC。
【0030】
22.前記ANGPT1ポリペプチドコード化領域が、配列番号3のヌクレオチド7~1503と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目21に記載のMSC。
【0031】
23.前記AOAHポリペプチドコード化領域が、配列番号3のヌクレオチド7~1503のヌクレオチド配列を含む、項目22に記載のMSC。
【0032】
24.前記第一及び/又は第二外因性核酸がベクター又はプラスミド中に含まれる、項目7~23のいずれか一項に記載のMSC。
【0033】
25.前記第一及び第二外因性核酸が同じベクター又はプラスミド中に含まれる、項目24に記載のMSC。
【0034】
26.薬剤として使用するための、項目1~25のいずれか一項に記載のMSC。
【0035】
27.前記薬剤が、対象における全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防又は治療用である、項目26に記載の使用のためのMSC。
【0036】
28.前記SIRSが敗血症によって引き起こされる、項目27に記載の使用のためのMSC。
【0037】
29.前記対象がヒトである、項目27または28に記載の使用のためのMSC。
【0038】
30.前記MSCが前記対象に関して同種異系である、項目27~29のいずれか一項に記載の使用のためのMSC。
【0039】
31.前記MSCが前記対象に関して自家性である、項目27~29のいずれか一項に記載の使用のためのMSC。
【0040】
32.全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防または治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、有効量の項目1~25のいずれか一項に記載のMSCを投与することを含む、方法。
【0041】
33.前記SIRSが敗血症によって引き起こされる、項目32に記載の使用。
【0042】
34.前記対象がヒトである、項目32または33に記載の方法。
【0043】
35.前記MSCが前記対象に関して同種異系である、項目32~34のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
36.前記MSCが前記対象に関して自家性である、項目32~34のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
37.対象における全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防又は治療するための項目1~25のいずれか一項に記載のMSCの使用。
【0046】
38.対象における全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防又は治療するための薬剤の製造のための項目1~25のいずれか一項に記載のMSCの使用。
【0047】
39.前記SIRSが敗血症によって引き起こされる、項目37又は38に記載の使用。
【0048】
40.前記対象がヒトである、請求項37~39のいずれか一項に記載の使用。
【0049】
41.前記MSCが前記対象に関して同種異系である、項目37~40のいずれか一項に記載の使用。
【0050】
42.前記MSCが前記対象に関して自家性である、項目37~40のいずれか一項に記載の使用。
【0051】
本開示の他の目的、利点、および特徴は、添付の図面を参照して単なる例として与えられた、その特定の実施形態の以下の非限定的な説明を読むと、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
添付の図面において:
図1A図1Aは、EF-1プロモータの制御下でのAOAHコーディング配列を含むプラスミド(#2)の構造を示す。
図1B図1Bは、CMVプロモータの制御下でのAOAHコーディング配列を含むプラスミド(#3)の構造を示す。
図1C図1Cは、CMVプロモータ及びCMVエンハンサの制御下でのAOAHコーディング配列を含むプラスミド(#1)の構造を示す。
図2図2は、プラスミド#1(黒色バー)(ii)プラスミド#2(暗灰色バー)及び(iii)プラスミド#3(淡灰色バー)でトランスフェクトされたMSCによるAOAHの発現を示すグラフである。発現は、細胞溶解物に関するウェスタンブロットにより測定し、発現は、βアクチン発現に基づいて正規化した。
図3A図3A及び3Bは、プラスミド#1でトランスフェクトし、トランスフェクション後24時間、48時間及び72時間に収集したMSCにおける、総内部AOAH発現(図3A)及び総AOAH発現に対する成熟AOAHの割合(図3B)を示すグラフである。発現は、細胞溶解物に関するウェスタンブロットにより測定し、発現は、βアクチン発現に基づいて正規化した。
図3B】同上。
図3C図3Cは、プラスミド#1でトランスフェクトし、トランスフェクション後24時間、48時間及び72時間に収集した培養培地におけるAOAHのレベルを示すグラフである。発現はELISAにより測定した。
図4A図4Aは、本研究で使用したエンドトキシン誘発性敗血症動物モデルの概略図である。内毒素血症をLPSの腹腔内注射によってマウスにおいて誘発させ、マウスをAOAHでトランスフェクトされたMSC(NT002)、トランスフェクトされていないMSC又はビヒクルでLPS注射後1時間に処置した。LPS注射後20時間に、マウスから血漿を採取して、炎症誘発性サイトカインまたはケモカインの血漿レベルを測定した。
図4B図4B~4Iは、NT002(n=8)、トランスフェクトされていないMSC(n=8)又はビヒクル(n=7)で処置されたマウスの血漿におけるLPS注射後20時間での炎症誘発性サイトカイン又はケモカインIL-6(図4B)、IL-10(図4C)、IL-12(図4D)、MIP-1a(図4E)、エオタキシン(図4F)、G-CSF(図4G)、KC(図4H)及びMCP-1(図4I)のレベルを示すグラフである。*P<0.05;**P<0.01(一元配置ANOVA試験)。
図4C】同上。
図4D】同上。
図4E】同上。
図4F】同上。
図4G】同上。
図4H】同上。
図4I】同上。
図5A図5Aは、本研究で使用した大腸菌誘発性敗血症動物モデルの概略図である。大腸菌を腹腔内注射によってマウスにおいて誘発させ、マウスをNT002(又はビヒクル)で細菌注射後1時間に処置した。動物の健康状態を5日間評価して、生存率を決定した。
図5B図5Bは、大腸菌に感染させ、NT002又はビヒクルで処置したマウスの生存率を示す。シャムマウス(敗血症なし)には対象としてビヒクル治療を施した。*P<0.05(ログランク検定)。
図6A図6Aは、AOAHコーディング配列とANGPT1コーディング配列とを含むプラスミド#4の構造を示す。
図6B図6Bは、本明細書中に記載する研究で使用した、ヒトAOAHをコード化する核酸のコドン最適化配列を示す(配列番号1)。コーディング配列を太字で示し、最初の6つのヌクレオチドはKozak配列であり、最後の3つのヌクレオチドは終止コドンに相当する。
図6C図6Cは、本明細書中に記載する研究で使用した、ヒトANGPT1をコード化する核酸の配列を示す(配列番号3)。コーディング配列を太字で示し、最初の6つのヌクレオチドはKozak配列であり、最後の3つのヌクレオチドは終止コドンに相当する。
図6D図6Dは、大腸菌に感染させ、NT003(AOAH/ANGPT1でトランスフェクトされたMSC)又はビヒクルで処置したマウスの生存率を示す。
図7A図7Aは、本研究で使用した盲腸結紮穿刺(CLP)で誘発させた敗血症動物モデルの概略図である。敗血症が誘発されたら、マウスをNT003(AOAH/ANGPT1でトランスフェクトされたMSC)又はビヒクルでCLP後6時間に処置した。シャムマウス(敗血症なし)には対象としてビヒクル治療を施した。動物の健康状態を5日間評価して、生存率を決定した。
図7B図7Bは、NT003、又はビヒクルで処置したCLPマウスの総合生存データを示す。
図8A図8Aは、ヒトAOAHのアミノ酸配列(イソ型1、UniProtKB受入番号P28039、配列番号5)を示し、シグナルペプチド配列は下線(残基1~23)、プロペプチド配列(残基24~34)はイタリック体、成熟形態の配列(残基35~575)は太字で示す。
図8B図8Bは、ヒトAOAHをコード化するcDNAのヌクレオチド配列(イソ型1、NCBI基準配列:NM_001637.3、配列番号6)を示し、コーディング配列は太字で示されている。
図9A図9Aは、ヒトANGPT1のアミノ酸配列(イソ型1、UniProtKB受入番号Q15389-1、配列番号7)を示し、シグナルペプチド配列は下線(残基1~15)、成熟形態の配列(残基16~498)は太字で示されている。
図9B図9B及び9Cは、ヒトANGPT1をコード化するcDNAのヌクレオチド配列(イソ型1、NCBI基準配列:NM_001146.4、配列番号8)を示し、コーディング配列は太字で示されている。
図9C】同上。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書中で別段の記載がないか、又は文脈により明らかに矛盾していない限り、技術を説明する文脈での(特に以下の特許請求の範囲での)「a」および「an」および「the」という語、及び同様の指示対象の使用は、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。
【0054】
「含む」、「有する」、「包含する」、及び「含有する」という語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、これらに限定されるものではない」ことを意味する)として解釈されるべきである。
【0055】
本明細書中に記載するすべての方法は、本明細書中で別段の記載が無い限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0056】
本明細書中で提示されるありとあらゆる例、または例示的言語(「例えば」、「など」の使用は、単に、請求された技術の実施形態をより良好に説明することを意図し、別段の請求のない限り、範囲に制限を課さない。
【0057】
明細書中のいかなる文言も、請求される技術の実施形態の実施に不可欠であるとして、請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0058】
本明細書において、「約」という語は、その通常の意味を有する。「約」という語は、値が、その値を決定するために採用される装置若しくは方法に固有の誤差の変動を含むことを示すか、又は記載された値に近い値、例えば、記載された値(若しくは値の範囲)の10%以内を含むために使用される。
【0059】
本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各々の別個の値を個々に言及する簡便な方法としての役割を果たすことを意図するだけであり、各々の別個の値は、本明細書中で個別に記載されているかのように明細書中に組み込まれる。範囲内の値のすべてのサブセットも、本明細書中で個別に記載されているかのように明細書中に組み込まれる。
【0060】
本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群若しくは代替物のリストに関して記載されている場合、当業者は、本開示がそれによって、マーカッシュ群若しくは代替物のリストの任意の個々のメンバー、又はメンバーのサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0061】
特に別段の定めのない限り、本明細書中で使用するすべての科学技術用語は、当該技術分野(例えば、幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有すると解釈される。
【0062】
別段の指示がない限り、本開示で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在に至るまでのすべての更新を含む),Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在に至るまでのすべての更新を含む)などの文献で記載され説明されている。
【0063】
本明細書中で記載する研究では、関心対象のある特定のタンパク質を過剰発現するように遺伝子組換えされた間葉系幹細胞(MSC)の調製が記載されている。さらに具体的には、アシルオキシアシルヒドロラーゼ(AOAH)ポリペプチド、並びにAOAH及びアンジオポエチン-1(ANGPT1)の両方を過剰発現するように遺伝子組換えされたMSCは、炎症を低減し、SIRS/敗血症のネズミモデルにおける生存を改善することが示された。結果は、AOAHを単独又はANGPT1との組み合わせで過剰発現するように遺伝子組換えされたMSCがヒトにおけるSIRS/敗血症の予防又は治療に有用であり得ることの証拠を提供する。
【0064】
第一の態様において、本開示は、アシルオキシアシルヒドロラーゼ(AOAH)ポリペプチドを過剰発現するように遺伝子改変された間葉系幹細胞(MSC)に関する。
【0065】
アシルオキシアシルヒドロラーゼ(AOAH、EC3.1.1.77)は、ヒトにおける575のアミノ酸のタンパク質(UniProtKB受入番号P28039、図8A、配列番号5)であり、これは、23のアミノ酸のアミノ末端シグナルペプチド並びに11のアミノ酸のプロペプチド(残基24~34)を含む。これは、残基35~156を含む小サブユニットと残基157~575を含む大サブユニットの二つのジスルフィド結合したサブユニットを含む。AOAHは、主に、単球-マクロファージ、好中球、樹状細胞、及び腎皮質上皮細胞によって産生され、グラム陰性菌リポ多糖(LPS)中に存在する脂質Aから二級(アシルオキシアシル結合)脂肪酸アシルを選択的に除去する。その活性部位は、Gly-Asp-Ser-(Leu)[GDS(L)]モチーフ中にある位置263のセリンである。残基61、173、345及び379の突然変異は、酵素活性に対して影響を及ぼさないが、酵素活性は、残基263、372及び419での突然変異によって減少または消失することが示されている。
【0066】
一実施形態において、MSCは、第二ポリペプチド、好ましくはSIRS/敗血症の治療に有用であり得るポリペプチドを過剰発現するように、さらに遺伝子組換えされる。一実施形態において、第二ポリペプチドはアンジオポエチン-1(ANGPT1)ポリペプチドである。
【0067】
アンジオポエチン-1(ANGPT1)は、ヒトにおける498のアミノ酸のタンパク質(UniProtKB受入番号Q15389、図9A、配列番号7)であり、これは、15のアミノ酸のアミノ末端シグナルペプチドを含む。これは、残基81~119を含むスーパークラスタリングドメインと、ANGPT1オリゴマー化に関与する残基153~261を含む中央コイル状ドメインと、その標的レセプタとの結合に関与する残基277~497を含むフィブリノゲンC末端ドメインと、を含む。この分泌された糖タンパク質は、その二量体化及びチロシンリン酸化を誘導することにより、内皮細胞でほぼ排他的に発現される、TEK/TIE2レセプタチロシンキナーゼ(CD202B)と結合して活性化する。位置119の突然変異(A119S)は、そのレセプタの結合能を低減することが示されている。位置249の突然変異(K249R)は、原発先天緑内障(PCG)(ANGPT/TEKシグナリングにおける欠陥に関連)の対象において検出され、その生物学的活性を低減すると考えられる。五つのC末端アミノ酸の欠失(R494*)は、タンパク質を不安定化させることが予想される(Thomson et al.,J Clin Invest.2017 Dec 1;127(12):4421-4436)。
【0068】
「過剰発現」という語は、本明細書中で使用する場合、遺伝子改変されたMSCにおけるAOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の発現レベルが、遺伝子改変を含まない対応するMSCにおけるAOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の発現レベルよりも高いことを意味する。一実施形態において、遺伝子改変されたMSCにおけるAOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の発現レベルは、遺伝子改変を含まない対応するMSCにおけるAOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の発現レベルよりも少なくとも20%、50%、100%(2倍)、200%(3倍)、300%(4倍)、400%(5倍)、900%(10倍)、20倍、又は50倍又は100倍高い。
【0069】
一実施形態において、AOAHタンパク質及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の過剰発現は、MSCにおける内因性AOAH遺伝子及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化する遺伝子の発現を増大させることによって達成される。これは、例えば、内因性AOAH遺伝子及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化する遺伝子と転写関係にある(すなわち機能的に連結された)好適なプロモータ(複数可)及び/又は転写調節(例えば、エンハンサ)配列を導入することによって達成することができる。あるいは、これは、内因性AOAH遺伝子及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化する遺伝子の発現を阻害する転写リプレッサ配列を切除/不活性化することによって達成することができる。MSCにおける内因性AOAH遺伝子の過剰発現を誘導するためのプロモータ(複数可)及び/又は転写調節(例えば、エンハンサ)配列の導入及び転写リプレッサ配列の切除/不活性化は、ゲノム編集技術を使用して達成することができる。ゲノム編集技術は、人工的に操作されたヌクレアーゼを用いてゲノムにおけるDNAの挿入、置換、又は除去によって標的細胞における遺伝子発現を改変することができる。そのようなヌクレアーゼの例には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZPN)(Gommans et al.,J.Mol Biol,354(3):507-519(2005))、転写アクチベータ様エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)(Zhang et al.,Nature Biotechnol,29:149-153(2011))、CRISPR/Cas系(Cheng et al.,Cell Res.,23:1163-71)(2013))、及び操作されたメガヌクレアーゼ(Riviere et al.,Gene Ther.,21(5):529-32(2014))が含まれ得る。ヌクレアーゼは、ゲノムにおける標的位置で特定の二本鎖切断(DSB)を創出し、細胞における内因性メカニズムを使用して、相同組換え(HR)及び非相同末端結合(NHEJ)によって誘導された切断を修復する。そのような技術を使用して、MSCにおける内因性AOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化する内因性遺伝子の過剰発現を達成することができる。
【0070】
第一核酸配列が第二核酸配列と機能的関係にされる場合に、当該第一核酸配列は当該第二核酸配列と「機能的に連結される」。例えば、プロモータがコーディング配列の転写又は発現に影響を及ぼすならば、当該プロモータは当該コーディング配列に機能的に連結されている。概して、機能的に連結されたDNA配列は近接しており、二つのタンパク質コーディング領域を結合させるために必要ならば、リーディングフレーム内にある。しかしながら、例えば、エンハンサは概して、プロモータから数キロベース隔てられている場合に機能し、イントロン配列は様々な長さのものであり得るので、一部の核酸は機能的に連結されているが、近接してない可能性がある。「転写調節配列」又は「転写調節エレメント」は、それらが機能的に連結されているタンパク質コーディング配列の転写を誘導又は制御するDNA配列、例えば、開始及び終止シグナル、エンハンサ、及びプロモータ、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナルなどを指す一般名称である。
【0071】
別の実施形態では、AOAHタンパク質及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の過剰発現は、MSCにおける組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチド及び/又は組換え第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)の発現を誘導することによって達成される。したがって、他の態様では、本開示は、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドを含むか又は過剰発現する遺伝子改変されたMSCに関する。一実施形態において、遺伝子改変されたMSCは、組換え(すなわち、外因性)第二ポリペプチド、好ましくはANGPT1をさらに含むか又は過剰発現する。
【0072】
「組換え体」という語は、何かが組換えられたことを意味するので、核酸に関して言及される場合、この語は、分子生物学的技術によって結合または産生される核酸配列から構成される分子をさす。「組換え体」という語は、タンパク質又はポリペプチドに関して言及される場合、例えば、分子生物学的技術によって創出された組換え核酸構築物(この合成核酸構築物が細胞のゲノム中に組み込まれているか否かにかかわらず)から発現される、細胞の天然のゲノムから合成されない、タンパク質又はポリペプチド分子を指す。組換え核酸構築物は、自然界ではライゲートされないか、又は自然界では異なる位置でライゲートされる核酸配列に対してライゲートされているか、又はライゲートされるように操作される、ヌクレオチド配列を含み得る。したがって、核酸構築物を「組換え体」と呼ぶことは、核酸分子が遺伝子工学を使用して、すなわち、ヒトの介入によって操作されたことを示す。組換え核酸構築物は、例えば、形質転換(例えば、形質導入又はトランスフェクション)によって宿主細胞に購入することができる。そのような組換え核酸構築物は、単離され宿主種の細胞に再導入された、同じ宿主細胞種又は異なる宿主細胞種から誘導される配列を含み得る。組換え核酸構築物配列は、宿主細胞の本来の形質転換の結果として、又はその後の組換え及び/又は修復事象の結果として、宿主細胞ゲノムに組み込まれるようになる可能性がある。
【0073】
一実施形態において、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、図8A/配列番号5(残基35~575)に示す成熟天然ヒトAOAHのアミノ酸配列と少なくとも50、60又は70%同一であり、天然ヒトAOAHの酵素活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。実施形態において、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、図8A/配列番号5(残基35~575)に示す成熟天然ヒトAOAHのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり、天然ヒトAOAHの酵素活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。一実施形態において、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、図8A/配列番号5(残基24~575)に示す天然ヒトAOAH前駆体のアミノ酸配列と少なくとも50、60又は70%同一であり、天然ヒトAOAHの酵素活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。実施形態において、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、図8A/配列番号5(残基24~575)に示す天然ヒトAOAH前駆体のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり、天然ヒトAOAHの酵素活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。一実施形態において、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、図8A/配列番号5(残基1~575)に示す完全長天然ヒトAOAHのアミノ酸配列と少なくとも50、60又は70%同一であり、天然ヒトAOAHの酵素活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。実施形態において、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、図8A/配列番号5(残基1~575)に示す完全長天然ヒトAOAHのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり、天然ヒトAOAHの酵素活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。
【0074】
したがって、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドは、天然ヒトAOAHタンパク質(完全長、前駆体又は成熟形態)又は酵素活性を著しく妨害しないアミノ酸欠失、置換及び/若しくは付加を含むその酵素活性変異体であり得る。一実施形態において、変異体は、天然ヒトAOAHの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である酵素活性を示す。一実施形態において、変異体は、Gly-Asp-Ser-(Leu)[GDS(L)]モチーフ中に突然変異を含まない。一実施形態において、変異体は、完全長天然ヒトAOAHの残基263、372又は419に対応する位置で突然変異を含まない。一実施形態において、変異体は一つ以上の保存的置換を含む。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野では公知であり、ある特定の物理的及び又は化学的特性を有する一つのアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されているアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性アミノ酸に置換された酸性アミノ酸(例えば、AspからGluへ、又はその逆)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、別の塩基性アミノ酸に置換された塩基性アミノ酸(Lys、Argなど)、極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された極性側鎖を有する別の塩基性アミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)であり得る。別の実施形態では、変異体は、天然AOAHタンパク質又は少なくとも一つの非保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、変異体の酵素活性を増強するので、天然AOAHタンパク質又はポリペプチドと比べて変異体の酵素活性が増加する。
【0075】
一実施形態において、MSCは、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチドをコード化する組換え核酸によって形質転換される。したがって、他の態様において、本開示は、AOAHポリペプチドをコード化する組換え(すなわち、外因性)核酸を含む遺伝子改変されたMSCに関する。
【0076】
一実施形態において、組換え(すなわち、外因性)ANGPT1ポリペプチドは、図9A/配列番号7(残基16~498)に示す成熟天然ヒトANGPT1のアミノ酸配列に対して少なくとも50、60又は70%同一であり、天然ヒトANGPT1の生物学的活性、例えば、TEK/TIE2レセプタと結合し活性化する能力を示す配列を含むかまたはこの配列からなる。実施形態において、組換え(すなわち、外因性)ANGPT1ポリペプチドは、図9A/配列番号7(残基16~498)に示す成熟天然ヒトANGPT1のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり、天然ヒトANGPT1の生物学的活性を示す配列を含むか又は配列からなる。一実施形態において、組換え(すなわち、外因性)ANGPT1ポリペプチドは、図9A/配列番号7(残基1~498)に示す完全長天然ヒトANGPT1のアミノ酸配列と少なくとも又は70%同一であり、天然ヒトANGPT1の生物学的活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。実施形態において、組換え(すなわち、外因性)ANGPT1ポリペプチドは、図9A/配列番号7(残基1~498)に示す完全長天然ヒトANGPT1のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり、天然ヒトANGPT1の生物学的活性を示す配列を含むか、又は配列からなる。
【0077】
したがって、組換え(すなわち、外因性)ANGPT1ポリペプチドは、天然ヒトANGPT1タンパク質(完全長若しくは成熟形態)又は生物学的活性を著しく妨害しないアミノ酸欠失、置換及び/又は付加を含むその生物学的に活性な変異体であり得る。一実施形態において、変異体は、天然ヒトANGPT1の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である生物学的活性を示す。一実施形態において、変異体は、ANGPT1オリゴマー化に関与する領域において突然変異、例えば、スーパークラスタリングドメイン(残基81~119)又は中央コイル状ドメイン(残基153~261)において突然変異を含まない。別の実施形態では、変異体は、フィブリノゲンC末端ドメイン(残基277~497)において突然変異を含まない。さらなる実施形態では、変異体は、位置119(例えば、A119S)及び/又は位置249(例えば、K249R)の突然変異を含まない。別の実施形態では、変異体は五つのC末端アミノ酸の欠失を含まない。
【0078】
一実施形態において、変異体は、AOAHについて前記定義の一つ以上の保存的置換を含む。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、変異体の生物学的活性を増強するので、変異体の生物学的活性は、天然ANGPT1タンパク質又はポリペプチドと比べて増加する。
【0079】
一実施形態において、MSCは、組換え(すなわち、外因性)ANGPT1ポリペプチドをコード化する組換え核酸によって形質転換される。したがって、他の態様において、本開示は、ANGPT1ポリペプチドをコード化する組換え(すなわち、外因性)核酸を含む遺伝子改変されたMSCに関する。
【0080】
本明細書中で使用する場合、「核酸」は、DNA、RNA及びハイブリッド又はその修飾変異体を含むが、これらに限定されない任意の核酸分子を意味する。「外因性」又は「組換え」核酸は、細胞に導入された任意の核酸に関し、これは、細胞の「元の」又は「天然の」ゲノムの成分ではない。外因性核酸は、組み込まれていても、組み込まれていなくてもよく、又は安定にトランスフェクトされた核酸に関する。
【0081】
組換え核酸は、組換え(すなわち、外因性)AOAHポリペプチド及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化するヌクレオチド配列を含むDNA又はmRNA分子であり得る。組換え核酸を細胞に導入する方法は、当該技術分野で周知である。かかる方法の例としては、核酸での細胞形質転換を促進できる脂質、タンパク質、粒子、又は他の分子の使用、エレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、MSCはまた、例えば遺伝子銃により、AOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化する核酸とインビボで接触させることもできる。
【0082】
一実施形態において、AOAHをコード化する組換え核酸は、図8B/配列番号6に示すヒトAOAHの完全長、前駆体又は成熟形態をコード化するヌクレオチド配列に対して少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含む。実施形態において、AOAHをコード化する組換え核酸は、図8B/配列番号6に示すヒトAOAHの完全長、前駆体又は成熟形態をコード化するヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態において、AOAHをコード化する組換え核酸は、図8B/配列番号6に示すヒトAOAHの完全長、前駆体又は成熟形態をコード化するヌクレオチド配列を含む。
【0083】
一実施形態において、AOAHをコード化する核酸は、ヒトAOAHをコード化するコドン最適化ヌクレオチド配列を含む。特定の理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を増大させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、同じアミノ酸をコード化するが、細胞内でより容易に利用可能であるtRNAによって翻訳できる別のコドンに天然コドンを置換することを含み得、したがって、翻訳効率が増大する。ヌクレオチド配列の最適化はまた、翻訳を妨害する二次mRNA構造を減少させ、したがって翻訳効率を増大させることができる。これに関して、AOAHをコード化する核酸は、図6B/配列番号1で示すコドン最適化ヌクレオチド配列(ヌクレオチド7~1734)、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%を有する配列を含み得る。
【0084】
一実施形態において、ANGPT1をコード化する組換え核酸は、図9B~9C/配列番号8に示すヒトANGPT1の完全長、前駆体又は成熟形態をコード化するヌクレオチド配列に対して少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含む。実施形態において、組換え核酸は、図9B~9C/配列番号8に示すヒトANGPT1の完全長、前駆体又は成熟形態をコード化するヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0085】
一実施形態において、ANGPT1をコード化する核酸は、ヒトANGPT1をコード化するコドン最適化ヌクレオチド配列を含む。
【0086】
コドン最適化核酸を合成するための方法、ツール、プラットフォーム及びサービスは当該技術分野で周知であり、例えば、GenScript製のOptimumGene(商標)プラットフォーム、Integrated DNA Technologies製のCodon Optimization Tool、ThermoFisher Scientific製のGeneOptimizer(商標)プラットフォーム、NCBI製のOPTIMIZER(Nucleic Acids Res.2007 Jul;35(Web Server issue):W126?W131)、Codon Optimization OnLine(COOL)(Bioinformatics,Volume 30,Issue 15,1 August 2014,Pages 2210-2212)などである。
【0087】
一実施形態において、組換え核酸は、ベクター又はプラスミド、すなわち、組換え発現ベクター又はプラスミド中に存在する。したがって、別の態様において、本開示は、本明細書中で記載するAOAHポリペプチドをコード化する核酸を含む組換え発現ベクターを含む遺伝子改変されたMSCに関する。一実施形態において、遺伝子組換えされたMSCは、本明細書中で記載するANGPT1ポリペプチドをコード化する核酸を含む組換え発現ベクターをさらに含む。一実施形態において、AOAH及びANGPT1をコード化する核酸は、異なる組換え発現ベクター中に存在する。別の実施形態において、AOAH及びANGPT1をコード化する核酸は、同じ組換え発現ベクター中に存在する。
【0088】
組換え発現ベクター又はプラスミドは、前述のような組換え核酸を含む任意の好適な組換え発現ベクター又はプラスミドであり得る。好適なベクターには、当該技術分野で周知の、MCSにおける関心対象の遺伝子の発現のために設計されたものが含まれる。一実施形態において、組換え発現ベクター又はプラスミドはミニプラスミドである。ミニプラスミドは、哺乳動物細胞の遺伝子改変のための導入遺伝子キャリアとして使用される、全ての原核ベクター部分が除去された(すなわち、細菌DNA配列を含まない)小さな(約4kb)円形プラスミド誘導体である。ミニプラスミド及びその使用は、例えば、Minicircle and Miniplasmid DNA Vectors:The Future of Nonviral and Viral Gene Transfer,by Dr.Martin Schleef(editor),May 2013,Wiley-Blackwell,258 pagesに記載されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、組換え発現ベクターはウイルスベクターである。遺伝子組換えされたウイルスは、MSCを含む幹細胞中への遺伝子の送達のために広く適用されてきた。本明細書中で記載するMSCの遺伝子改変のための好ましいウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、特にγレトロウイルスベクターに関する。γレトロウイルス(哺乳動物C型レトロウイルスと称する場合もある)は、レンチウイルスクレードに対する姉妹属であり、レトロウイルス科のオルソレトロウイルス亜科のメンバーである。ネズミ白血病ウイルス(MLV又はMuLV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、異種指向性ネズミ白血病ウイルス関連ウイルス(XMRV)及びテナガザル白血病ウイルス(GALV)は、γレトロウイルス属のメンバーである。当業者は、MSCの遺伝子改変におけるγレトロウイルスの利用に必要な技術を承知している。例えば、Maetzig et al.(Gamma retroviral vectors:biology,technology and application,2001,Viruses 3(6):677-713)に記載されているベクター又は類似のベクターを採用することができる。例えば、ネズミ白血病ウイルス(MLV)、単純γレトロウイルスは、γレトロウイルス修飾MSCの創出、及び対象に送達後の前記MSCからの治療用導入遺伝子の発現の観点から遺伝子治療の効率的なビヒクルに変換することができる。遺伝子組換えされたウイルスは、幹細胞中への遺伝子の送達のために広く適用されてきた。アデノウイルスを適用してもよいし、又はRNAウイルス、例えば、レンチウイルス、又は他のレトロウイルスを適用してもよい。アデノウイルスは、遺伝子導入細胞工学のための一連のベクターを生成するために使用されてきた。アデノウイルスベクターの初期の世代は、4kbのクローニング能を有するベクターを生成するE1遺伝子(ウイルス複製に必要)を欠失させることで産生された。E3のさらなる欠失(宿主免疫応答の原因となる)により、8kbのクローニング能が可能になった。E2及び/又はE4欠失を含むさらなる世代が産生されてきた。レンチウイルスは、ウイルスのレトロウイルス科のメンバーである(M.Scherr et al.,Curr Gene Ther.2002 Feb;2(1):45-55)。レンチウイルスベクターは、LTR及びシス作用性パッケージングシグナルを除く全ウイルス配列の欠失によって生成される。結果として得られるベクターは約8kbのクローニング能を有する。これらのウイルスをレトロウイルスベクターから区別する一つの特徴は、分裂細胞及び非分裂細胞並びに最終分化細胞を形質導入するそれらの能力である。
【0090】
組換え発現ベクター又はプラスミドは、調節配列、例えば、転写及び翻訳開始及び終止コドンを含み得、これらは、必要に応じて、ベクターがDNAベースであるか又はRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主(例えば、ヒトなどの動物)の種類に特異的である。組換え発現ベクター又はプラスミドは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主の選択を可能にする、一つ以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子には、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性、原栄養性を提供する栄養要求性宿主における相補性などが含まれる。組換え発現ベクターの好適なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシンG418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子などが挙げられる。組換え発現ベクター又はプラスミドは、AOAH及び/又は第二ポリペプチド(例えば、ANGPT1)をコード化する核酸に機能的に連結された、MSCにおいて機能的な、天然又は規範的プロモータを含み得る。プロモータの選択、例えば、強い、弱い、誘導可能、組織特異的、発生特異的などは、当業者の通常の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモータと組み合わせることも、当業者の技術範囲内である。プロモータは、非ウイルスプロモータ又はウイルスプロモータ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、SV40プロモータ、RSVプロモータ、又はネズミ幹細胞ウイルスの長い末端反復で見いだされるプロモータであり得る。プロモータは、転写因子、例えば、イニシエータ(INR)、モチーフ10エレメント(MTE)及び下流プロモータエレメント(DPE)モチーフの結合を増強する様々なモチーフを含み得る(例えば、Martinez,Transcription.2012;3(6):295-299)。組換え発現ベクターは、一時的発現、安定な発現のいずれか、又は両方について設計することができる。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導的発現のために作製することができる。本開示の関連で有用なベクターは、「裸の」核酸ベクター(すなわち、それらをカプセル化するタンパク質、糖、及び/若しくは脂質をほとんど又は全く有さないベクター)、又は他の分子と複合体形成するベクターであり得る。ベクターと好適に組み合わせることができる他の分子としては、限定されるものではないが、ウイルスコート、カチオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び標的部分、例えば、リガンド、レセプタ、又は細胞分子を標的とする抗体が挙げられる。
【0091】
任意の所与の遺伝子送達法は、本開示に包含され、好ましくは上述のウイルス又は非ウイルスベクター、並びにトランスフェクションの生物学的又は化学的方法に関する。方法は、使用するシステムにおいて安定な遺伝子発現又は一時的遺伝子発現のいずれかを産生することができる。非ウイルス法には、上述のように、従来型プラスミド導入及びゲノム編集技術の使用による標的化遺伝子組込みの適用が含まれる。これらは、効率的であり、多くの場合、組込みに際して部位特異的であるという利点を有するベクター形質転換用アプローチである。ベクターを細胞に導入するための物理的方法は、当業者には公知である。一例はエレクトロポレーションに関し、これは、そのキャパシタンスを克服することにより膜中に一時的な孔を創出する、短い高圧パルスの使用に依存する。この方法の一つの利点は、ほとんどの細胞の種類において安定な遺伝子発現及び一時的な遺伝子発現の両方に利用できることである。別の方法は、リポソーム、タンパク質形質導入ドメイン又は細胞中への核酸移行を促進する他の好適な試薬の使用に関する。適切な方法は当業者に公知であり、本開示の実施形態を限定することを意図するものではない。
【0092】
間葉系幹細胞(MSC、間葉系間質細胞とも称する)は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛嚢、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靱帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜において見いだされる細胞である。MSCは、中胚葉、内肺葉、及び外肺葉などの異なる生殖細胞系に分化することができる。したがって、MSCは、脂肪、骨、軟骨、弾性、筋肉、及び線維性結合組織を含むが、これらに限定されない多数の細胞型に分化することができる。MSCが入いる特定の系統に関与する分化経路は、機械的影響及び/又は内因性生物活性因子、例えば、成長因子、サイトカイン、及び/又は宿主組織によって確立された局所微小環境条件を含む様々な影響に依存する。したがって、MSCは非造血前駆細胞であり、これは分裂して娘細胞を産生し、これはやがて不可逆的に分化して表現型細胞を産生する幹細胞又は前駆細胞のいずれかである。MSCの例としては、間葉系前駆細胞(MPC)が挙げられる。
【0093】
MSCは患者への投与後に免疫回避特性を示すことが知られている。MSCは、同種異系ドナー材料の移植の場合、有益な免疫調節効果を示すことが示されており(Le Blanc et al.,Lancet 2004:363,p.1439)、それにより、潜在的に病原性の同種反応性及び拒絶反応を低減する。MSCの治療的送達は全身注射により実施することができ、それに続いて損傷部位へのMSCホーミング及び損傷部位内の生着が起こる(Kidd et al.,Stem Cells 2009:27,p.2614)。
【0094】
いくつかの態様では、MSCは子孫細胞(増殖細胞とも称し得る)であり得る。子孫細胞は、幹細胞のインビトロ培養から産生することができる。本開示の増殖細胞は、培養条件(培養培地中の刺激因子の数及び/又は種類を含む)、継代数などに応じて多種多様な表現型を有し得る。ある特定の実施形態において、子孫細胞は、親集団から約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10継代後に得られる。しかしながら、子孫細胞は、親集団から任意の数の継代後に得ることができる。また、子孫細胞は好適な培養培地中で培養することによって得ることができる。
【0095】
一実施形態において、子孫細胞は、国際公開第2006/032092号で記載されるように多能性増殖MSC子孫(MEMP)である。子孫が誘導され得るMSCの濃縮集団を調製する方法は、国際公開第01/04268号及び国際公開第2004/085630号で記載されている。インビトロでは、MSCが完全に純粋な調製物として存在することはまれであり、概して、組織特異的関与細胞(TSCC)である他の細胞と共に存在する。国際公開第01/04268号は、そのような細胞を骨髄から約0.1%~90%の純度レベルで収集することについて言及している。子孫が由来するMSCを含む集団は、組織源から直接収集してもよいし、又はエクスビボですでに増殖された集団であってもよい。
【0096】
例えば、子孫は、実質的に精製されたMSCの収集された未増殖の集団であって、それらが存在する集団の総細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80又は95%を含む集団から得ることができる。このレベルは、例えば、CD29、CD44、CD90、CD49a-f、CD51、CD73(SH3)、CD105(SH2)、CD106、CD166、及びStro-1などのMSC上で典型的に発現される少なくとも一つのマーカーについて陽性である、並びに/又はCD45、CD34、CD14若しくはCD11b、CD79a若しくはCD19及びHLA-DRなどのマーカーについて陰性である、細胞を選択することによって達成することができる。
【0097】
例えば、子孫は、実質的に精製されたMSCの収集された未増殖の集団であって、それらが存在する集団の全細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80又は95%を含む集団から得ることができる。このレベルは、例えば、CD29、CD44、CD90、CD49a-f、CD51、CD73(SH3)、CD105(SH2)、CD106、CD166、及びStro-1から選択される少なくとも一つのマーカーについて陽性である細胞を選択することによって達成することができる。
【0098】
MSC出発集団は、国際公開第01/04268号又は国際公開第2004/085630号で記載されている任意の一つ以上の組織タイプ、すなわち、骨髄、歯髄細胞、脂肪組織及び皮膚、またはおそらくはさらに広く、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛嚢、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靱帯、骨髄、腱、及び骨格筋由来であってもよい。
【0099】
MEMPSは、マーカーStro-1について陽性であり、マーカーアルカリホスファターゼ(ALP)について陰性であるという点で、新たに収集されたMSCから識別することができる。これに対して、新たに単離されたMSCはStro-1及びALPの両方について陽性である。本発明の好ましい実施形態において、投与された細胞の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%が表現型Stro-1+、ALP-を有する。
【0100】
所与のマーカーに対して「陽性」(「+」)である細胞とは、マーカーが細胞表面上に存在する程度に応じて、そのマーカーの低い(lo若しくはdim)又は高い(bright、bri)エクスプレッサであり得ることを意味し、この語は、細胞のカラーソーティングプロセスで使用される蛍光又は他の色の強度に関する。lo(又はdim若しくはdull)とbriとの識別は、選別される特定の細胞集団に関して使用されるマーカーの関連で理解されるであろう。細胞が所与のマーカーについて「陰性」(又は「-」)であるとは、当該マーカーがその細胞によって全く発現されないことを意味するものではない。マーカーは、相対的に非常に低いレベルでその細胞によって発現され、検出可能に標識された場合、非常に低いシグナルを生成することを意味する。
【0101】
一実施形態において、細胞を、SIRS若しくは敗血症の患者、又はSIRS若しくは敗血症に罹患していない対象から採取し、AOAH(及び任意選択的にANGPT1などの第二ポリペプチド)を過剰発現するように遺伝子改変し、そして任意選択的に、標準的技術を使用してインビトロで培養し、治療を必要とする患者に対して、自己移植又は同種異系移植として投与する。別の実施形態では、一つ以上の確立されたヒト細胞株の細胞を使用する。本開示の別の有用な実施形態では、非ヒト動物(又は患者がヒトでない場合、別の種由来)の細胞を使用する。
【0102】
本技術は、限定されるものではないが、非ヒト霊長類細胞、有蹄類、イヌ、ネコ、ウサギ目、げっ歯類、鳥類、及び魚類細胞を含む任意の非ヒト動物種からの細胞を使用して実施することができる。本開示を実施することができる霊長類細胞としては、限定されるものではないが、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、及び任意の他の新又は旧世界ザルの細胞が挙げられる。本開示を実施することができる有蹄類細胞としては、限定されるものではないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、バッファロー及びバイソンの細胞が挙げられる。本開示を実施することができるげっ歯類細胞としては、限定されるものではないが、マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びアレチネズミ細胞が挙げられる。本開示を実施することができるウサギ目種の例としては、飼いならされたウサギ、ジャックウサギ、ノウサギ、ワタオウサギ、カンジキウサギ、及びナキウサギが挙げられる。ニワトリ(Gallus gattus)は、本開示を実施することができる鳥類種の一例である。
【0103】
MSCは使用まで貯蔵することができる。真核細胞、特に哺乳動物細胞の保存及び貯蔵のための方法及びプロトコルは当該技術分野において周知である(例えば、Pollard,J.W.and Walker,J.M.(1997)Basic Cell Culture Protocols,Second Edition,Humana Press, Totowa,N.J.;Freshney,R.I.(2000)Culture of Animal Cells,Fourth Edition,Wiley-Liss,Hoboken,N.J.を参照)。単離された幹細胞、例えば、間葉系幹/前駆細胞、又はその子孫の生物学的活性を維持する任意の方法を、本開示と関連して利用することができる。好ましい一実施形態において、細胞は、凍結保存を使用することによって維持・貯蔵される。
【0104】
MSCは様々な技術を用いて得ることができる。例えば、細胞-抗体複合体に関連する特性、又は抗体に結合させた標識を参照することによって細胞を物理的に分離する多くの細胞選別技術を使用することができる。この標識は、磁性粒子又は蛍光分子であり得る。抗体は、それらの密度によって分離可能な、複数の細胞の凝集体を形成するように架橋することができる。別法として、抗体は、所望の細胞が付着する静止マトリックスに結合させることができる。
【0105】
「培養培地」は、本明細書中で使用する場合、(a)MSCの有無を問わず、アミノ酸、グルコース、及び様々な塩などの、MSCを培養するために使用される典型的な成分を含む培養培地、並びに(b)培養中にMSCから放出される成分を含む組成物を含む、培養培地から単離される組成物を包含する。培養培地は、固体、液体、気体、又は相及び材料の混合物である成分を含み得る。培養培地成分には、限定されるものではないが、寒天、アガロース、ゼラチン及びコラーゲンマトリックスが含まれる。「培養培地」は、細胞とまだ接触していない場合でも、細胞培養での使用が意図される材料を含む。例えば、細菌培養のために調製された栄養分に富んだ液体は培養培地であり得る。
【0106】
一実施形態では、MSCは、培養/増殖中又は培養/増殖後(及び対象における投与/使用前)に一つ以上の薬剤と接触又は曝露されて、所望の特性を付与し、例えば、抗炎症メディエータの発現/分泌を誘導する、及び/又は炎症誘発性メディエータの発現/分泌を阻害する。例えば、低濃度プロスタサイクリン(例えば、トレプロスチニル)、例えば、約10μg/mLのトレプロスチニルに曝露されたMSCは、MSCによる、IL-10、IL-13、IDO、iNOS、HLA及びTGFβなどのある特定の抗炎症メディエータの分泌の増強、並びにTNFα及びIL-4などの炎症誘発性メディエータの分泌の低減を呈することが示されている(例えば、国際公開第2018/080990号を参照)。一つ以上の薬剤に対するそのような曝露は、所望の効果を誘導するために好適な任意の時間、例えば、少なくとも6、12、18、24、36又は48時間であってよい。
【0107】
別の態様において、本開示は、薬剤として使用するための、本明細書中に記載する遺伝子改変されたMSC、又はこれを含む医薬組成物に関する。一実施形態において、薬剤は、対象における、SIRS、例えば敗血症によって引き起こされるSIRSの予防又は治療用である。本開示はまた、全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防又は治療するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書中に記載する遺伝子改変されたMSC、又はこれを含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。本開示はまた、本明細書中に記載する遺伝子改変されたMSC、又はこれを含む医薬組成物の使用であって、対象におけるSIRSを予防又は治療するための使用に関する。本開示はまた、本明細書中に記載する遺伝子改変されたMSC、又はこれを含む医薬組成物の使用であって、対象におけるSIRSを予防又は治療するための薬剤を製造するための使用に関する。
【0108】
本明細書中で使用する場合、「治療(treating、treat又はtreatment)」という語は、疾患若しくは状態又はその一つ以上の症状を、当該疾患又は状態が「治癒された」若しくは「治った」とみなされるか否かにかかわらず、またすべての症状が解消したか否かにかかわらず、排除、改善、緩和、又は軽減することを含む。この語はまた、疾患若しくは状態またはその一つ以上の症状の進行を低減又は防止すること、疾患若しくは状態またはその一つ以上の症状の根本的なメカニズムを妨害または防止すること、並びに任意の治療的及び/又は予防的利益を達成することも含む。
【0109】
本明細書中で使用する場合、「予防(preventing、prevent又はprevention)」という語は、対象(例えば、SIRS/敗血症に罹患するリスクのある対象)における疾患若しくは状態またはその一つ以上の症状の発生及び/若しくは重篤度を、未処置の対照対象と比べて低減すること、又は対象(例えば、SIRS/敗血症に罹患するリスクのある対象)における疾患若しくは状態の一つ以上の症状の開始を未処置対照対象と比べて遅らせることを含む。
【0110】
「全身性炎症反応症候群」又は「SIRS」という語は、感染、外傷、火傷、膵炎、又は様々な他の損傷などの障害に反応した全身性炎症に関連する状態であって、多臓器機能不全をもたらす状態を指し;急性肺損傷(ALI)は最も一般的な最早期臓器不全である。SIRSは様々な病原性事象の結果として起こる可能性があり、敗血症症候群が最も一般的かつ致命的な原因である。SIRSは、発熱又は低体温症、頻脈、頻呼吸及び血中白血球数の変化を含む二つ以上の症状によって特定される。
【0111】
一実施形態において、SIRSは、敗血症に関連するか、又は敗血症よって引き起こされる。「敗血症」という語は、感染性(例えば、ウイルス性、細菌性及び/又は真菌性)の病因を有し得る多くの疾患、状態及び/又は症候群に適用される。これは、敗血症(多くの場合、「感染過程に反応するSIRS」と定義される)、重度の敗血症(敗血症によって誘発される臓器機能不全又は組織低灌流(それ自体、低血圧、乳酸塩の上昇又は尿量の減少として現れる可能性がある)及び敗血性ショック(重度の敗血症に加えて、例えば、静脈内輸液の投与にもかかわらず、持続的な低血圧)を伴う敗血症を包含する。
【0112】
「敗血症」という語は、最も多くの場合、「細菌性敗血症」に起因する疾患、状態及び/又は症候群に適用される。細菌性敗血症は、血液中の細菌の存在に起因する可能性があり、「細菌血症」又は「敗血症(septicemia)」と称される場合がある。「敗血症」という語は、細菌成分、例えば、LPS、毒素及び/又は膜フラグメントの血液中の存在が引き起こす又は寄与する疾患及び/又は状態も包含し得る。この種類の成分は、他の組織及び/又は臓器中に存在する一次感染、例えば、肺、脳、皮膚、尿路、骨盤及び/又は腹部に存在する感染に由来する可能性がある。敗血症は、非常に重篤な状態である可能性があり、場合によっては多臓器不全や死に至る可能性がある。敗血症の各種類に関連する数多くの病状及び/又は症状がある可能性があり、これらを以下、まとめて、「敗血症関連病状」と呼ぶ。例えば、敗血症関連病状には、例えば、発熱、心拍数の増加、呼吸数の増加及び/又は低血圧が含まれる可能性がある。敗血症の病理並びに症状及びそれに関連する結果の多くを支持する主なメカニズムは、悪化、過度及び/又は不適切な宿主免疫応答である。この悪化した免疫応答(感染に対する身体の応答)は、宿主組織損傷及び/又は臓器損傷/不全に至る。悪化又は不適切な免疫応答には、生来の免疫応答の異常調節並びにある特定の凝集促進(pro-coagulation)サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターロイキン-1(IL-1)及びインターロイキン-6(IL-6)を含む)の産生及び/又は過剰産生が含まれ得る。
【0113】
一実施形態において、治療は、SIRS又は敗血症の一つ以上の症状を低減する。一実施形態において、治療は、一つ以上の炎症誘発性サイトカイン、例えば、IL-6、IL-10、IL-12、MIP-1α(CCL3)、エオタキシン、G-CSF、KC及び/又はMCP-1の対象におけるレベル(例えば、血漿レベル)を低減する。さらなる実施形態において、治療は、IL-10、MIP-1α、及びMCP-1の少なくとも一つのレベル(例えば、血漿レベル)を低減し、好ましくは、治療は、IL-10、MIP-1α、及びMCP-1のレベル(例えば、血漿レベル)を低減する。
【0114】
本明細書中で使用する場合、「対象」(本明細書中では「患者」とも称する)という語には、温血動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物が含まれる。好ましい実施形態において、対象は霊長類である。なお一層好ましい実施形態において、対象はヒトである。一実施形態において、対象はSIRS又は敗血症の一つ以上の症状を有する。別の実施形態では、対象はSIRS又は敗血症を発症するリスクがある。
【0115】
一実施形態において、本明細書中で記載する遺伝子操作されたMSCは組成物、好ましくは医薬組成物中に存在する。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書中で記載する遺伝子操作されたMSCを含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、医薬組成物は、治療有効量の本明細書中で記載する遺伝子操作されたMSCを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも一つの薬剤的に許容される担体又は賦形剤をさらに含む。「薬剤的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適し、妥当なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は投与形態を指す。「薬剤的に許容される担体又は賦形剤」という表現は、本明細書中で使用される場合、薬剤的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体フィラー、希釈剤、賦形剤、又は溶媒封入材料を意味する。
【0117】
薬剤的に許容される担体又は賦形剤としては、生理食塩水、水性緩衝液、溶媒及び/又は分散媒が挙げられる。そのような担体又は賦形剤の使用は、当該技術分野で周知である。溶液は、好ましくは、注射可能である程度まで無菌かつ流動性である。好ましくは、溶液は、製造及び貯蔵条件下で安定であり、防腐剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用により、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して貯蔵され保存される。
【0118】
薬剤的に許容される担体又は賦形剤としての機能を果たし得る材料及び溶液の数例としては:糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;セルロース、及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテート;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;潤滑剤、例えば、カカオ脂及び坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ酸無水物;酸化防止剤;抗菌剤;並びに製剤処方で採用される他の非毒性相溶性物質が挙げられる。
【0119】
本開示の方法に有用な医薬組成物は、ポリマー担体又は細胞外マトリックスを含み得る。様々な生物学的又は合成固体マトリックス材料(例えば、固体支持マトリックス、生物学的接着剤又はドレッシング、及び生物学的/医用スカフォールド)は本開示における使用に好適である。マトリックス材料は好ましくはインビボ用途での使用に医学的に許容可能である。そのような医学的に許容可能及び/又は生物学的若しくは生理学的に許容可能または適合性の材料の非限定例としては、限定されるものではないが、吸収性及び/又は非吸収性固体マトリックス材料、例えば、小腸粘膜下層(SIS)、例えば、ブタ由来(及び他のSIS源);架橋又は非架橋アルギネート、ヒドロコロイド、フォーム、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ、ポリグリコール酸(PGA)メッシュ、ポリグラクチン(PGL)メッシュ、フリース、フォームドレッシング、生体接着剤(例えば、フィブリン接着剤及びフィブリンゲル)及び一つ以上の層における死んだ脱皮(de-epidermized)皮膚等価物が挙げられる。
【0120】
好適なポリマー担体には、合成又は天然ポリマー、並びにポリマー溶液で形成された多孔質メッシュ又はスポンジが含まれる。マトリックスの一形態は、ポリマーメッシュ又はスポンジであり;他のものはポリマーヒドロゲルである。使用できる天然ポリマーには、タンパク質、例えば、コラーゲン、アルブミン、及びフィブリン;並びに多糖類、例えば、アルギネート及びヒアルロン酸のポリマーが含まれる。合成ポリマーには、生分解性及び非生分解性ポリマーの両方が含まれる。生分解性ポリマーの例としては、ヒドロキシ酸のポリマー、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、及びポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、およびその組み合わせが挙げられる。非生分解性ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレンビニルアセテート、及びポリビニルアルコールが挙げられる。
【0121】
展性のある、イオン性又は共有結合で架橋されたヒドロゲルを形成できるポリマーを使用して、細胞を封入する。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然又は合成)が、共有、イオン、又は水素結合によって架橋される場合に形成されて、水分子をトラップしてゲルを形成する三次元開放格子(open-lattice)構造を創出する物質である。
【0122】
ヒドロゲルを形成するために使用できる材料の例としては、多糖類、例えば、アルギネート、ポリホスファジン、及びポリアクリレートが挙げられ、これらは、イオンによって架橋しているか、又はブロックコポリマー、例えば、Pluronics(商標)又はTetronics(商標)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーであり、それぞれ温度又はpHによって架橋している。他の材料としては、タンパク質、例えば、フィブリン、ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸及びコラーゲンが挙げられる。
【0123】
概して、これらのポリマーは、荷電側基、若しくはその一価イオン性塩を有する水溶液、例えば、水、緩衝塩溶液、又はアルコール水溶液中に少なくとも部分的に可溶性である。カチオンと反応することができる酸性側基を有するポリマーの例は、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸及びメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、並びにスルホン化ポリマー、例えば、スルホン化ポリスチレンである。アクリル酸又はメタクリル酸とビニルエーテルモノマー又はポリマーとの反応によって形成される酸性側基を有するコポリマーも使用することができる。酸性基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ素化)アルコール基、フェノール性OH基、及び酸性OH基である。アニオンと反応することができる塩基性側基を有するポリマーの例は、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、及びいくつかのイミノ置換ポリホスファゼンである。ポリマーのアンモニウム又は第四級塩はまた、骨格窒素又はペンダントイミノ基から形成することもできる。塩基性側基の例はアミノ及びイミノ基である。
【0124】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも一つのさらなる治療薬を含み得る。例えば、組成物は、炎症若しくは疼痛の治療を助けるための鎮痛剤、又は組成物で処置された部位の感染を予防するための抗感染症薬を含み得る。さらに具体的には、有用な治療薬の非限定例には、以下の治療カテゴリーが含まれる:鎮痛剤、例えば、非ステロイド系抗炎症薬、オピエートアゴニスト及びサリチレート;抗感染症薬、例えば、抗寄生虫薬、抗嫌気性薬、抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、様々なβ-ラクタム系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、キノロン系抗生物質、スルホンアミド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、抗マイコバクテリア、抗結核抗マイコバクテリア、抗原虫薬、抗マラリア抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗線虫殺虫剤、抗炎症薬、コルチコステロイド抗炎症薬、抗掻痒剤/局所麻酔薬、局所抗感染薬、抗真菌局所抗感染薬、抗ウイルス局所抗感染薬;電解腎臓薬(electrolytic and renal agent)、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、利尿剤、炭酸脱水素酵素阻害利尿剤、ループ利尿剤、浸透圧利尿剤、カリウム保持性利尿剤、チアジド利尿剤、電解質置換、及び尿酸排泄薬;酵素、例えば、膵酵素及び血栓溶解酵素;胃腸薬、例えば、止瀉薬、胃腸抗炎症薬、胃腸抗炎症薬、制酸抗潰瘍薬、胃酸ポンプ阻害薬抗潰瘍薬、胃粘膜抗潰瘍薬、H2-ブロッカー抗潰瘍薬、胆石破砕薬(cholelitholytic agent)、消化薬、催吐薬、便秘薬及び便軟化剤、並びに運動促進薬;全身麻酔薬、例えば、吸入麻酔薬、ハロゲン化吸入麻酔薬、静脈麻酔薬、バルビツレート静脈麻酔薬、ベンゾジアゼピン静脈麻酔薬、及びオピエートアゴニスト静脈麻酔薬;ホルモン及びホルモン修飾薬、例えば、堕胎薬。副腎薬、コルチコステロイド副腎薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン、免疫生物学的薬物、例えば、イムノグロブリン、免疫抑制薬、トキソイド及びワクチン;局所麻酔薬、例えば、アミド局所麻酔薬及びエステル局所麻酔薬;コルチコステロイド抗炎症薬、金化合物抗炎症薬、免疫抑制性抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、サリチレート抗炎症薬、ミネラルをはじめとする抗炎症薬;並びにビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンK。
【0125】
本開示の一実施形態によると、組成物は、SIRS又は敗血症用の少なくとも一つの他の医薬と同時投与することができる。例えば、医薬組成物は、例えば、抗生物質、静脈内輸液、コルチコステロイド、インスリン、鎮痛剤、鎮静剤、及び/又は昇圧剤と同時投与することができる。本開示の予防/治療薬及び/又は組成物の組み合わせは、任意の従来型投与形態で(例えば、連続して、同時、又は異なる時間に)投与又は同時投与することができる。本開示の文脈での同時投与とは、改善された臨床転帰を達成するための協調治療の過程での複数の治療薬の投与を指す。そのような同時投与はまた、同じ領域にある、すなわち、重複した時間で起こる可能性がある。例えば、第一薬剤は、第二の活性剤の投与前、投与と同時、投与前後、又は投与後に、患者に投与することができる。薬剤は、一実施形態では、単一の組成物で組み合わせ/処方することができ、したがって、同時に投与することができる。
【0126】
本開示の方法に有用な組成物は、細胞培養成分、例えば、アミノ酸、金属、補酵素因子、並びに他の細胞の小集団を含む培養培地を含み得、例えば、その一部は、幹細胞のその後の分化によって生じる可能性がある。
【0127】
本開示の方法に有用な組成物は、例えば、培養培地から対象細胞を沈降させ、所望の溶液又は材料中に再懸濁させることによって調製することができる。細胞は、例えば、遠心分離、ろ過、限外ろ過などによって培養培地から沈降させ、及び/又は交換することができる。
【0128】
当業者は、組成物中の、本開示の方法で投与されるMSC及び任意の担体(複数可)の量を容易に決定することができる。もちろん、動物又はヒトに投与される任意の組成物、及び任意の特定の投与方法について、したがって毒性を、例えば好適な動物モデル、例えばマウスなどのげっ歯類における致死量(LD)及びLD50を決定することによって;また、好適な反応を引き起こす、組成物(複数可)の投与量、その中の成分の濃度及び組成物(複数可)の投与のタイミングを決定することが好ましい。そのような決定は、当業者の知識、本開示、及び本明細書中で引用される文書から、不必要な実験を必要としない。そして、連続投与の時間は、不必要な実験なしで確認することができる。
【0129】
一実施形態において、以下の量及び範囲の量のMSCを対象に投与する:(i)約1×102~約1×108細胞/kg体重;(ii)約1×103~約1×107細胞/kg体重;(iii)約1×104~約1×106細胞/kg体重;(iv)約1×104~約1×105細胞/kg体重;(v)約1×105~約1×106細胞/kg体重;(vi)約5×104~約0.5×105細胞/kg体重;(vii)約1×103細胞/kg体重;(viii)約1×104細胞/kg体重;(ix)約5×104細胞/kg体重;(x)約1×105細胞/kg体重;(xi)約5×105細胞/kg体重;(xii)約1×106細胞/kg体重;及び(xiii)約1×107細胞/kg体重。想定されるヒト体重には、限定されるものではないが、約5kg、10kg、15kg、30kg、50kg、約60kg;約70kg;約80kg、約90kg;約100kg、約120kg及び約150kgが含まれる。MSCは、ボーラス形態、すなわち、短期間での全細胞の注射で投与することができるか、又は少数の細胞の長時間にわたる連続投与(例えば、注入)によって、若しくは限定されたサイズのボーラスを長時間にわたり数回投与することによって、達成することができる。
【0130】
本開示の方法に有用な組成物は、とりわけ、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、子宮内注射又は非経口投与を含む局所投与によって投与することができる。本明細書中で記載する治療用組成物(例えば、医薬組成物)を投与する場合、概して、注射可能な単位投与形態(溶液、懸濁液、エマルション)で処方される。
【0131】
本開示の実施形態を実施するための態様
本開示を以下の非限定的実施例でさらに詳細に説明する。
【0132】
実施例1:MSCにおけるAOAH発現のためのプラスミドの構築
材料:AOAH遺伝子はGenScriptによって合成され、制限エンドヌクレアーゼNheI、SalI、BamHI、及びEcoRIはNew England Biolabsから購入し、T4 DNA LigaseはNew England Biolabsから購入した。
【0133】
方法:AOAH遺伝子を合成した後、遺伝子配列を遺伝子シーケンシングによってチェックした。次いで、標的遺伝子を制限エンドヌクレアーゼによって37℃で2時間切断し、T4 DNA Ligaseを使用し、16℃で一晩インキュベートすることによって、親クローニングベクターに挿入した。親AOAHプラスミドを増幅及びミニプラスミド調製のためにコンピテント大腸菌に形質転換した。
【0134】
三つの異なるプラスミド、すなわち、EF-1プロモータの制御下のAOAHコーディング配列を含むプラスミド(プラスミド#2、図1A)、CMVプロモータの制御下のAOAHコーディング配列を含むプラスミド(プラスミド#3、図1B)、及びCMVプロモータ/エンハンサの制御下のAOAHコーディング配列を含む別のプラスミド(プラスミド#1、図1C)を構築し、MSCにおけるAOAHの発現について試験した。MCSを異なるプラスミドでトランスフェクトし、AOAHの細胞内発現レベルをウェスタンブロットにより細胞溶解物に関して測定した。図2に示した結果から、プラスミド#1でトランスフェクトしたMCSが、プラスミド#2及びプラスミド#3でトランスフェクトしたMCSよりも、それぞれ、3.6倍及び6.2倍高いレベルでAOAHを発現することがわかる。したがって、プラスミド#1を選択して次の実験を実施した。
【0135】
実施例2:MSCにおけるAOAHの発現及び分泌
材料:抗AOAH抗体はThermoFisherから購入し、抗AOAH ELISAキットはMyBioSourceから購入した。
【0136】
方法:MSCを10,000/cm2の密度でT75フラスコ中に蒔いた。播種後16~20時間に、細胞をプラスミド#1(約1μg/100,000細胞)でトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を24時間培養した。40μgの細胞溶解物をウェスタンブロットに使用した。培養培地を収集し、ELISAによって分析した。
【0137】
MSC中のAOAHの過剰発現の期間を決定するために、プラスミド#1をMSCにトランスフェクトし、トランスフェクション後24時間、48時間、及び72時間で収集した細胞溶解物に関してウェスタンブロットを実施した。細胞内AOAH(前駆体及び成熟形態)の総レベルはトランスフェクション後24時間と比べて72時間で若干低いことが分かった(図3A)。しかしながら、AOAHの成熟形態の割合(総AOAHと比較)は、トランスフェクション後24時間と比較して72時間でより高かった(約45%対約24%、図3B)。したがって、プラスミド#1でのMSCのトランスフェクションによって、これらの細胞における成熟AOAHの持続的発現がもたらされる。図3Cに提示した結果は、プラスミド#1でトランスフェクトされたMSCの培養培地中のAOAHレベルで24時間から72時間まで徐々に漸進的な増加を示す。
【0138】
実施例3:敗血症のネズミモデルにおけるAOAHをコード化するプラスミド#1でトランスフェクトされたMSCの投与の効果
材料:10週令のC57BL/6メスマウスをCharles Riverから購入した。LPSをSigmaから購入し、Plasma-Lyte AをBaxterから購入し、ヒトアルブミンをSigmaから購入し、マウスサイトカインBio-PlexキットをBio-Radから購入した。Bio-Plex(商標)200システム及びBio-Plex Pro(商標)II Wash StationをBio-Radから購入した。
【0139】
方法:敗血症をエンドトキシン(LPS)又は病原性大腸菌のいずれかで誘発させた。LPSを滅菌生理食塩水で希釈し、マウスに15mg/kgの用量で腹腔内注射した。凍結保存された病原性大腸菌を滅菌生理食塩水で希釈し、マウスに1.2x106CFU/マウスの用量で腹腔内注射した。IP注射後1時間、細胞を250,000細胞/マウスの用量で頸静脈内注射によって送達した。エンドトキシン誘発性敗血症研究では、LPS注射の20時間後に、各マウスから500μlの血液を、50μlの50mM EDTAをあらかじめ充填した注射器で採取した。注射針を注射器から取り外し、血液を静かに微小遠心管(microfuge tube)中に放出させた。血液を1700xgで10分間4℃にて遠心分離した。上部血漿層を新しい微小遠心管に移し、11,000xgで5分間4℃にて遠心分離して、任意の残留汚染デブリ/血小板を除去した。遠心分離後に血漿を新しい微小遠心管に移し、-80℃で凍結して、保存又はサイトカインレベルを決定した。サイトカインレベルは、製造業者のプロトコルにしたがってBio-Plexによって決定した。
【0140】
プラスミド#1でトランスフェクトされたMSCが、敗血症のネズミモデルであるLPS誘発性内毒素血症における炎症を低減できるか否かを試験した。内毒素血症を、LPSの腹腔内注射によって誘発させ、マウスをLPS注射後1時間にNT002、トランスフェクトされていないMSC又は生理食塩水ビヒクルで処置した。いくつかの炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの血漿レベルをLPS注射後20時間で評価した。図4B~4Iに示す結果は、NT002の投与が、LPS注射によって誘発された、ある特定の炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの血漿レベルの増加を弱め、したがってAOAHを過剰発現するMSCの投与が、敗血症によって誘発される全身性炎症反応症候群(SIRS)を処置またはその重篤度を低減するのに有用であり得ることを示す証拠を提供する。
【0141】
病原性大腸菌誘発性敗血症の研究では、動物を細菌接種後5日間観察して、生存率を決定した(図5A)。図5Bに示す結果は、NT002の投与がマウスを病原性大腸菌接種によって誘発される高い死亡率(約50%)から保護することを示す。
【0142】
実施例4:敗血症のネズミモデルにおけるAOAH及びANGPT1を過剰発現するMSCの投与効果
MSCは、hAOAHをコード化するコドン最適化配列(図6B)とhANGPT1をコード化する配列(図6C)とを含むプラスミド#4(図6A)でトランスフェクトして、AOAH及びANGPT1の過剰発現を誘導した。AOAH及びANGPT1(NT003)を過剰発現するこれらのMSCの効果を上述の病原性大腸菌誘発性敗血症モデル、並びに盲腸結紮穿刺(CLP)誘発性敗血症モデル(図7A)において評価した。マウスをNT003又はビヒクルでCLP後6時間に処置し、CLPの5日後に生存率を測定した。図6Dに示す結果から、ビヒクルではなくNT003で処置されたマウスが、病原性大腸菌誘発性敗血症によって引き起こされる死から保護されたことが分かる。NT003処置は、図7Bに示すように、ビヒクルと比べてCLP誘発性敗血症モデルにおいて生存率を有意に改善することも示された。
【0143】
本技術は、本願で記載する特定の実施形態に関して限定されるものではなく、これらは本技術の個々の態様の一つの例示であるものとする。当業者には明らかであるように、本技術の多くの修飾及び変形をその主旨及び範囲から逸脱することなくなすことができる。本明細書中に列挙したものに加えて、本技術の範囲内で機能的に同等の試薬及び方法は、前述の記載から当業者には明らかであろう。そのような修飾及び変更は本技術の範囲内に含まれることが意図される。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物又は生物学的システムに限定されず、これはもちろん変化し得ることを理解されたい。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
【配列表】
2022513379000001.app
【国際調査報告】