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特表2022-513392活性分子送達のための胆汁酸及びそれらの誘導体の抱合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】活性分子送達のための胆汁酸及びそれらの誘導体の抱合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220131BHJP
   C07J 9/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K47/54
A61P35/00
A61P25/18
A61P7/06
A61P7/04
A61P21/00
A61P5/00
A61P25/28
A61P9/10 101
A61P29/00
A61K31/575
C12N15/113 Z ZNA
C07J9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547966
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 IB2019059014
(87)【国際公開番号】W WO2020084488
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】102018000009682
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521175218
【氏名又は名称】フィニーチェ-エセ.エレ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルミエーリ ベニアミーノ
(72)【発明者】
【氏名】ボヴォレンタ マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ブラゲッタ パオラ
(72)【発明者】
【氏名】カポビアンコ マッシモ ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】マルケシ エレナ
(72)【発明者】
【氏名】メディチ アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】モロン シビッラ
(72)【発明者】
【氏名】ペローネ ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】リメッシ パオラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C076CC41
4C076EE30
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA19
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZA24
4C086ZA45
4C086ZA55
4C086ZB11
4C086ZB26
4C091AA02
4C091BB01
4C091CC03
4C091CC04
4C091CC05
4C091EE01
4C091FF04
4C091GG02
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091NN04
4C091PA05
4C091PB03
4C091QQ01
4C091RR08
4C091SS04
(57)【要約】
構造(I)、(II)又は(III):
を有するオリゴヌクレオチドと胆汁酸誘導体との抱合体、その医薬組成物及びその使用を記載する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I)、(II)又は(III):
【化1】
(式中、
、R及びRは、独立してH、OH、NH、-NHC(O)R及びC(O)Rからなる群より選択され、
は、OH、NH、-NH(C1~6アルキル)SOHからなる群より選択され、
は、飽和した又は部分的に不飽和の線状又は分岐C~C31脂肪族炭化水素からなる群より選択され、
リガンドは、式(IV)又は(V):
a)-X-Y-NH(C2~10アルキル)OP(=O)(Z)O- (IV)
(式中、
Xは胆汁酸残基に結合し、結合、-NHC(O)(C2~10アルキル)C(O)及び-NH(C2~10アルキル(NHR))C(O)-からなる群より選択され、ここでRは、-H及び、
【化2】
からなる群より選択され、
Yは、結合及びNH(C2~10アルキル)OC(O)からなる群より選択され、
Zは、S及びOからなる群より選択され、
OP(=O)(Z)O-基がオリゴヌクレオチドに結合する)
又は、
b)
【化3】
(式中、ピペラジン残基がオリゴヌクレオチドに結合し、アミン残基が胆汁酸残基に結合する)
を有する)を有するオリゴヌクレオチドと胆汁酸誘導体との抱合体。
【請求項2】
がOH、NH、-NHC(O)Rからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抱合体。
【請求項3】
がOH、NH、-NHC(O)(CH(CH=CH-CHCH及び-NHC(O)(CH(CH=CH-CHCHからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抱合体。
【請求項4】
が-H及び-OHからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抱合体。
【請求項5】
がOH及び-NH(C)SOHからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抱合体。
【請求項6】
前記リガンドが、
【化4】
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抱合体。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、対象のmRNA中のスプライシング配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の抱合体。
【請求項9】
【化5】
からなる群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項10】
【化6】
からなる群より選択される、請求項8又は9に記載の抱合体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抱合体を含む医薬組成物。
【請求項12】
薬剤として使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項13】
対象のmRNAにおけるエクソンスキッピングの改善に使用される、請求項7~10のいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項14】
デュシェンヌ型ジストロフィー、バルデー-ビードル症候群、βサラセミア、癌、嚢胞性線維症、第VII因子欠乏症、家族性自律神経失調症、ファンコニ貧血、血友病A、プロピオン酸血症、網膜色素変性症、毛細血管拡張性運動失調症、先天性グリコシル化異常症、先天性副腎不全、福山型先天性ジストロフィー、成長ホルモン不応症、BH4欠損症/高フェニルアラニン血症、ハッチンソン-ギルフォードプロジェリア、皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症、メチルマロン酸尿症、乳酸アシドーシスを伴うミオパチー、筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ニーマン-ピック病C型、アッシャー症候群、無フィブリノーゲン血症、眼白子症1型、アルツハイマー病、タウオパチー、脊髄性筋萎縮症、アテローム性動脈硬化症、炎症性疾患、筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、栄養障害型表皮水疱症及び三好型ミオパチーからなる群より選択される疾患の治療に使用される、請求項7~10のいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項15】
前記疾患がデュシェンヌ型ジストロフィーであることを特徴とする、請求項14に記載の抱合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連技術の相互参照]
本特許出願は、2018年10月22日に出願されたイタリア国特許出願第102018000009682号の優先権を主張するものであり、このイタリア国特許出願の開示全体は、引用することによって本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のための胆汁酸又はそれらの誘導体とオリゴヌクレオチドとの抱合体に関する。
【背景技術】
【0003】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、男性5000人につき一例の割合で起こる、最も広く知られている致命的な遺伝性障害である。DMDは、筋肉の変性を伴い、運動機能の喪失及び早期死亡をもたらす。この疾患は、遺伝子リーディングフレームの中断及び結果として生じる機能タンパク質発現の完全な喪失を伴う、ジストロフィン遺伝子の1つ以上のエクソンの欠失に起因する。ジストロフィン遺伝子は、X染色体上に位置し、劣性である。したがって、男性のみがこの疾患を患い、女性は症状を呈しない健常な保因者となり得る。ジストロフィンは、筋肉内で筋鞘の細胞質面上に位置し、そこで細胞骨格のF-アクチンと相互作用する。さらに、このタンパク質は、ジストロフィン結合タンパク質(DAP)及びジストロフィン結合糖タンパク質(DAG)として知られる筋線維鞘タンパク質複合体と関連する。ジストロフィンの欠如は、DAPの喪失及びジストログリカンタンパク質複合体の破壊を引き起こし、この破壊により、筋鞘が筋収縮時の断裂の影響を受けやすいものとなる。
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、通常は3歳の時点で認められるが、患者の約半数が歩き始める前に疾患の兆候を示す。初期症状としては、歩行又は走行の機能が既に習得されているはずの時点で歩行又は走行ができないことが挙げられ、又はこれらの能力が習得されている場合であっても、小児は反応が遅いように見え、容易に転倒する傾向がある。時間と共に、例えば歩行、走行及び階段を上るのが困難となる。腱反射が初めに低下し、その後、筋線維の喪失と並行して消失する。最後にアキレス反射が消失する。骨が希薄化し、脱灰する。平滑筋は温存されるが、心臓が影響を受け、様々なタイプの不整脈が現れる可能性がある。死亡は通常、呼吸不全、肺感染又は心不全に起因する。平均寿命は、個々の患者によって異なるのが常であるが、ここ10年間で、平均寿命は夜間の換気により顕著に延びている。
【0005】
疾患の遺伝的性質のために、遺伝子療法がDMDの治療にとって有望な選択肢である。
【0006】
ジストロフィープロセスを制限し、筋再生プロセスを増加させることを目的とするDMDの治療アプローチは多い。これまでに研究されている療法の1つは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を用いてメッセンジャーRNAのレベルで直接作用する手法であるエクソンスキッピングである。アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)は、化学的に修飾された小さなRNA分子であり、スプライシングを調節し、ジストロフィンをコードする遺伝子リーディングフレームを再構築するために使用することができる。実際に、DMDは、既に述べたように、遺伝子リーディングフレームの中断及び結果として生じる機能タンパク質発現の喪失を伴う、ジストロフィン遺伝子の1つ以上のエクソンの欠失に起因する。遺伝子リーディングフレームを維持する突然変異は、内部欠失を有するが、部分的に機能的なタンパク質の形成をもたらし、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)と呼ばれる、より軽度のジストロフィー表現型と関連する。これらのオリゴヌクレオチドの使用は、スプライシングシグナルを妨げ、DMD遺伝子のpre-mRNA中の特定のエクソンのスキッピングを誘導することで、遺伝子リーディングフレームを回復させる。これにより、部分的に機能するジストロフィンを産生させ、重度のデュシェンヌ型ジストロフィーをベッカー型筋ジストロフィーに帰属する表現型へと変換することが可能である。エクソンスキッピングの幅広い治療的適用性が確認された多くのin vivo研究が文献中に報告されている。主要な研究は、種々の突然変異を有する患者に由来する細胞培養物を用いて、中でもエクソン23のナンセンス突然変異によりジストロフィンを有しない、デュシェンヌ型のマウスモデル、特にmdxマウスのアベイラビリティを利用することによって行われている。特に、突然変異したエクソン23に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの筋肉内投与は、少なくとも3ヶ月にわたってジストロフィンの発現を回復させる。近年、AONを筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与及び経口投与した様々なin vivo研究が報告されている。
【0007】
それにもかかわらず、オリゴヌクレオチド投与の有効性を改善することができる系の探索は継続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した技術的問題を解決することである。
【0009】
特に、本発明の目的は、投与の有効性の改善を可能にするオリゴヌクレオチドの新たな抱合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の抱合体、請求項11に記載のその医薬組成物、並びに請求項12及び13に記載のその使用によって達成される。
【0011】
以下の段落は、本発明による化合物の様々な化学的部分の定義を与えるものであり、明示的に説明された定義が他により広義の定義を与えない限り、本明細書全体及び特許請求の範囲に一様に適用されることを意図するものである。
【0012】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、飽和した脂肪族炭化水素基を指す。上記用語は、線状(非分岐)鎖又は分岐鎖を含む。
【0013】
本発明によるアルキル基の非限定的な例は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル等である。
【0014】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、所望の生物活性を維持し、規制当局によって認められている、下で特定される式(I)、(II)又は(III)の化合物の塩を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、無機又は有機の酸又は塩基及び内部形成塩(salts formed internally)から調製される、本発明による化合物の任意の塩を指す。通例、上記塩は、生理学的に許容可能な陰イオン又は陽イオンを有する。
【0016】
さらに、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、置換基のタイプに応じて酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合があり、該塩は、それらが薬学的に許容可能な塩であるという条件で本発明に含まれる。
【0017】
上記塩の例としては、無機酸により形成される酸付加塩、有機酸により形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
酸性プロトンを含有する式(I)、(II)又は(III)の化合物は、適切な有機塩基及び無機塩基での処理によって、それらの治療的に活性な非毒性の塩基付加塩形態、例えば金属塩又はアミン塩へと変換することができる。
【0019】
生理学的に又は薬学的に許容可能な塩は、起源となる化合物に対してより大きな水溶解度のため、医療用途に特に適している。
【0020】
薬学的に許容可能な塩はまた、従来法を使用して、式(I)、(II)又は(III)の化合物の他の薬学的に許容可能な塩を含む他の塩から作製されてもよい。
【0021】
有機化学手法の専門家は、多くの有機化合物が溶媒と錯体を形成し得ることを理解している。該化合物は、溶媒中で反応するか、又は該化合物は、溶媒から沈殿若しくは結晶化する。これらの錯体は、「溶媒和物」として知られる。例えば、水との錯体は、「水和物」として知られる。本発明の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。式(I)の化合物を結晶化又は適切な溶媒の蒸発によって溶媒の分子と共に容易に単離し、対応する溶媒和物を得ることができる。
【0022】
式(I)、(II)又は(III)の化合物は、結晶形態で存在してもよい。幾つかの実施の形態では、式(I)、(II)又は(III)の化合物の結晶形態は、多形である。
【0023】
本発明はまた、式(I)、(II)又は(III)及び下記で説明される化合物と同一であるが、1個以上の原子が、通常自然に見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている点が異なる、同位体標識された化合物を含む。本発明の化合物及び関連の薬学的に許容可能な塩に組み込まれ得る同位体の例として、水素、炭素、窒素、及び酸素の同位体、例えばH、H、11C、13C、14C、15N、17O、18Oが挙げられる。
【0024】
上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物及び該化合物の薬学的に許容可能な塩は、本発明の範囲内に含まれる。本発明の同位体標識された化合物、例えばH、14C等の放射性同位体が組み込まれた化合物は、薬物及び/又は基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム同位体、すなわちH及び炭素14、すなわち14Cが、それらの調製の容易さ及び検出可能性から特に好ましい。同位体11Cは、陽電子放出断層撮影(PET)に特に有用である。さらに、重水素、すなわちH等のより重い同位体による置換は、より大きな代謝的安定性の結果として或る特定の治療上の利点、例えばin vivo半減期の増加又は投与必要量の減少をもたらす可能性があり、したがって状況次第で好ましい場合がある。本発明の同位体標識された式(I)の化合物は概して、図面及び/又は下記実施例に説明される手順を行うことで、非同位体標識試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬に置き換えることによって調製することができる。
【0025】
本発明に含まれる或る特定の基/置換基は、異性体として存在し得る。その結果として、幾つかの実施の形態では、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、不斉炭素原子又は場合によっては軸不斉を有する可能性があり、それに応じて(R)体、(S)体等の光学異性体の形態で存在し得る。本発明は、ラセミ体、鏡像異性体及び関連の混合物を含む上記異性体の全てを範囲内に含む。
【0026】
特に、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びラセミ体を含む関連の混合物を含む全ての立体異性体が、本発明の範囲内に含まれ、式(I)の化合物に対する一般的な言及は、別記しない限り、全ての立体異性体を含む。
【0027】
概して、本発明の化合物又は塩は、経口、非経口又は他の全ての投与方法による薬学的用途に明らかに適していない、それ自体又は水中の両方で化学的に不安定な化合物(存在する場合)が除外されると解釈する必要がある。上記化合物は、当該技術分野に精通した化学者に知られている。
【0028】
ここで、単に非限定的な例として提示される添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ジストロフィン遺伝子(DMD)のエクソン52の欠失を有する不死化ヒト筋芽細胞の細胞株の分化によって得られた筋管から抽出したRNAの濃度を示す図である。
図2】本発明の抱合体のスキッピング効率のin vitro研究の結果を示す図である。
図3】A)非処理(UT)の筋管、並びにオリゴヌクレオチドPRO051又は抱合オリゴヌクレオチド9及び17で処理した筋管における、エクソン50及び54の間のジストロフィン転写産物を増幅することが可能なプライマーを用いたRT-PCR、B)DMD遺伝子のエクソン51に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって誘導されたスキッピングのパーセンテージ及び正規化された定量化、C)ジストロフィン遺伝子のエクソン52が欠失した患者に由来する不死化筋原細胞におけるジストロフィン(矢印)の免疫蛍光分析を示す図である。
図4】ジストロフィン遺伝子のエクソン2のエクソンスキッピングを示す図である。上部のグラフは、使用したアンチセンスオリゴヌクレオチドの位置及び配列を示す。ヒストグラムは、スキッピングのパーセンテージを示す。
図5】横隔膜、腓腹筋及び心臓において化合物22及び配列番号2を有するオリゴヌクレオチドを用いて得られたスキッピング値を示す図である。
図6】12週間にわたって処理したmdxマウスの筋肉内のジストロフィンタンパク質の定量化を示す図である。
図7】mdx対照マウス(mdx PBS)に対する12週間にわたってオリゴヌクレオチド22及び配列番号2で腹腔内処理したmdxマウスの体重の推移を示す図である。
図8】mdx対照マウス(mdx PBS)に対する12週間にわたってオリゴヌクレオチド22及び配列番号2で腹腔内処理したmdxマウスの運動協調性及び神経筋強度を検証するために行った試験の結果を示す図である。
図9】A)mdx対照マウス(mdx PBS)に対する化合物22及び配列番号2で処理したmdxマウスにおける線維の前脛骨中央値(median)断面積(CSA)の値、B)12週間にわたってPBS、化合物22及び配列番号2で腹腔内処理したmdxマウスにおけるヘマトキシリン-エオシンを示す画像、C)線維の総数に対する壊死線維のパーセンテージの分析を示す図である。、p<0.05;**、p<0.01;ns、有意でない。
図10】A)mdx対照マウス(PBS)に対する化合物22及び配列番号2で処理したmdxマウスにおける線維の腓腹筋中央値断面積(CSA)の値、B)12週間にわたってPBS、化合物22及び配列番号2で腹腔内処理したmdxマウスにおけるヘマトキシリン-エオシンを示す画像、C)線維の総数に対する壊死線維のパーセンテージの分析を示す図である。、p<0.05;**、p<0.01。
図11】A)mdx対照マウス(PBS)に対する化合物22及び配列番号2で処理したmdxマウスにおける線維の横隔膜中央値断面積(CSA)の値、B)12週間にわたってPBS、化合物22及び配列番号2で腹腔内処理したmdxマウスにおけるヘマトキシリン-エオシンを示す画像、C)線維の総数に対する壊死線維のパーセンテージの分析を示す図である。、p<0.05;p<0.01。
図12】12週間にわたってPBS、化合物22及び配列番号2で腹腔内処理したmdxマウスのA)前脛骨筋、B)腓腹筋及びC)横隔膜の筋線維において発現されたジストロフィン(赤色)の免疫蛍光分析の結果を示す図である。
図13】オリゴヌクレオチド22及び関連の内部標準23の等モル混合物のHPLC-MS/MS分析のクロマトグラムを示す図である。様々なチャネル。
図14】オリゴヌクレオチドSEQ ID 2及び関連の内部標準SEQ ID 1の等モル混合物のHPLC-MS/MS分析のクロマトグラムを示す図である。様々なチャネル。
図15】種々の実験においてHPLC-MS/MS法によって検査された様々な組織に無傷で見られるオリゴヌクレオチド22及びSEQ ID 2の量を示す図である。対数目盛での順序付け。
図16】種々の実験においてHPLC-MS/MS法によって検査された様々な組織に無傷で見られるオリゴヌクレオチド22及びSEQ ID 2の量を示す図である。均等目盛での順序付け。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好ましい実施形態
本発明の第1の態様によると、オリゴヌクレオチド抱合体は胆汁酸誘導体を含み、該抱合体は、構造(I)、(II)又は(III):
【化1】
(式中、
、R及びRは、独立してH、OH、NH、-NHC(O)R及びC(O)Rからなる群より選択され、
は、OH、NH、-NH(C1~6アルキル)SOHからなる群より選択され、
は、飽和した又は部分的に不飽和の線状又は分岐C~C31脂肪族炭化水素からなる群より選択され、
リガンドは、式(IV)又は(V):
a)-X-Y-NH(C2~10アルキル)OP(=O)(Z)O- (IV)
(式中、
Xは胆汁酸残基に結合し、結合、-NHC(O)(C2~10アルキル)C(O)及び-NH(C2~10アルキル(NHR))C(O)-からなる群より選択され、ここでRは、-H及び、
【化2】
からなる群より選択され、
Yは、結合及びNH(C2~10アルキル)OC(O)からなる群より選択され、
Zは、S及びOからなる群より選択され、
OP(=O)(Z)O-基がオリゴヌクレオチドに結合する)
又は、
b)
【化3】
(式中、ピペラジン残基がオリゴヌクレオチドに結合し、アミン残基が胆汁酸残基に結合する)
を有する)を有する。
【0031】
一つの実施形態では、RはOH、NH、-NHC(O)Rからなる群より選択される。好ましくは、RはOH、NH、-NHC(O)(CH(CH=CH-CHCH及び-NHC(O)(CH(CH=CH-CHCHからなる群より選択される。
【0032】
更なる実施形態では、Rは-H及び-OH、特にβOHからなる群より選択される。
【0033】
更なる実施形態では、RはOH及び-NH(C)SOHからなる群より選択される。
【0034】
リガンドは、
【化4】
からなる群より選択され得る。
【0035】
オリゴヌクレオチドは、対象のmRNA中のスプライシング配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る(表1)。
【0036】
【表1】
【0037】
オリゴヌクレオチドは、それらの3’末端を介して又は5’末端を介してリガンドに結合することができる。以下、表現:
【化5】
は、それ自体の5’末端を介してリガンドに結合した、表1に示す配列(すなわちnが1~6である)の1つを有するオリゴヌクレオチドを示す。同様に、表現:
【化6】
は、それ自体の3’末端を介してリガンドに結合した、表1に示す配列(すなわちnが1~6である)の1つを有するオリゴヌクレオチドを示す。
【0038】
好ましくは、本発明による抱合体は、
【化7】
からなる群より選択される。
【0039】
より好ましくは、抱合体は、
【化8】
からなる群より選択される。
【0040】
本発明の第2の態様によると、上記の式(I)、(II)又は(III)の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤の医薬組成物が提供される。
【0041】
当業者は、上記化合物の種類全般及び医薬組成物の製剤化に適した賦形剤に精通している。
【0042】
本発明の化合物は、通常使用される賦形剤と共に医薬組成物及び関連の単位剤形の形態とすることができ、該形態で、全て経口用の又は非経口(皮下及び静脈内を含む)投与のための注射用滅菌溶液の形態の固体、錠剤若しくは充填カプセル、又は溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル等の液体、又はそれらが充填されたカプセルとして使用することができる。
【0043】
上記医薬組成物及び関連の単位剤形は、通常の割合で成分を含むことができ、付加的な化合物又は有効成分を含むか又は含まず、上記単位剤形は、用いられる指定の1日投与量範囲に応じた任意の好適な有効量の有効成分を含有し得る。
【0044】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、薬学分野でよく知られた方法で調製され、少なくとも1つの活性化合物を含むことができる。概して、本発明の化合物は、薬学的に有効な量で投与される。実際に投与される化合物の量は通例、医師により、治療される病態、選ばれた投与方法、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重及び応答、患者の症状の重症度(gravity)等を含む関連の状況を踏まえて決定される。
【0045】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内及び経肺方法を含む様々な方法によって投与することができる。経口投与用の組成物は、多量の(in mass)液体の溶液若しくは懸濁液、又は多量の粉末の形態をとることができる。しかしながら、より一般には、組成物は正確な投与を容易にするために単位剤形で与えられる。「単位剤形」という表現は、ヒト及び他の哺乳動物用の単位剤形として適した物理的に分離した単位を指し、各単位が、好適な医薬賦形剤と併せて所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性物質を含有する。典型的な単位剤形としては、液体組成物が予め計量されたバイアル若しくはプレフィルドシリンジ、又は固体組成物の場合に丸薬、錠剤、カプセル等が挙げられる。
【0046】
経口投与に適した液体形態は、緩衝剤、懸濁剤及び分散剤、着色料、香味料(aroma)等と共に好適な水性又は非水性担体を含み得る。固体形態は、例えば以下の成分のいずれか1つ、又は同様の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン等のリガンド;デンプン又はラクトース等の賦形剤、アルギン酸、Primogel又はトウモロコシデンプン等の分散剤(disaggregating agent);ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動化剤(fluidifying agent);スクロース若しくはサッカリン等の甘味料、又はペパーミント、サリチル酸メチル若しくはオレンジ香料等の着香料。
【0047】
注射用組成物は通例、注射用滅菌生理食塩水、又はリン酸緩衝生理食塩水、又は当該技術分野で既知の他の注射用担体をベースとする。
【0048】
医薬組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、溶液、懸濁液、エマルション、粉末、坐剤の形態及び持続放出製剤とすることができる。
【0049】
必要に応じて、錠剤を標準的な湿式又は乾式手法によってコーティングすることができる。幾つかの実施形態では、上記組成物又は調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有し得る。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは、明らかに変更することができ、便宜上、単位の重量のおよそ1%~およそ60%とすることができる。上記の治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、治療的に活性な剤形が得られるような量である。活性化合物は、例えば点鼻薬(liquid drops)又はスプレーによって鼻腔内投与することもできる。
【0050】
錠剤、丸薬、カプセル等はまた、トラガカントゴム、アカシアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチン等のリガンド、リン酸カルシウム等の賦形剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、及びスクロース、ラクトース又はサッカリン等の甘味料を含有していてもよい。単位剤形がカプセルである場合、上述のタイプの材料に加えて脂肪油等の液体担体を含有し得る。様々な他の材料がコーティングとして、又は投与単位の物理的形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤をシェラック、糖又はその両方でコーティングすることができる。シロップ又はエリキシルは、有効成分に加えて、甘味料としてのスクロース、保存料としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、着色料、並びにチェリー香料又はオレンジ香料等の着香料を含有し得る。胃腸管の上部を通過する際の分解を回避するために、組成物は、腸溶コーティングを有する製剤とされる。
【0051】
経肺投与用の組成物としては、式(I)の化合物又は関連の塩の粉末と、担体及び/又は好適な滑沢剤の粉末とから構成される無水粉末組成物が挙げられるが、これらに限定されない。経肺投与用の組成物は、当業者に既知の任意の無水粉末吸入器から吸入することができる。
【0052】
組成物は、プロトコルの枠組みの中で、患者の炎症及び疼痛を軽減するのに十分な投与量で投与される。幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物において、有効成分(単数又は複数)は概して、投与単位に製剤化される。投与単位は、連日投与用の投与単位1つ当たり式(I)の化合物を0.1mg~1000mg含有し得る。
【0053】
幾つかの実施形態では、特定の製剤についての有効量は、疾患、障害又は病態の重症度、以前の治療、個体の健康状態、及び薬物への応答によって異なる。幾つかの実施形態では、用量は、0.001重量%~およそ60重量%の製剤の範囲である。
【0054】
1つ以上の異なる有効成分と組み合わせて使用する場合、本発明の化合物及び他の有効成分は、各々を個別に使用する場合よりも低い用量で使用することができる。
【0055】
任意の様々な投与経路に関する製剤について、薬物の投与に関する方法及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, Gennaro et al. Eds., Mack Publishing Co., 1985、及びRemington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro AR ed. 20th Edition, 2000, Williams & Wilkins PA, USA、及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams & Wilkins Eds., 2005において、またLoyd V. Allen and Howard C. Ansel, Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 10th Edition, Lippincott Williams & Wilkins Eds., 2014において説明されている。
【0056】
経口投与される組成物又は注射用組成物について上に記載した構成成分は、単に例として提示される。
【0057】
本発明の化合物は、持続放出形態で又は持続放出薬物送達系によって投与することもできる。
【0058】
本発明の第3の態様は、薬剤として使用される、式(I)、(II)又は(III)の化合物、上で説明した医薬組成物に関する。
【0059】
特に、本発明の抱合体は、対象のmRNAにおけるエクソンスキッピングの改善に使用することができる。
【0060】
したがって、本発明の抱合体は、デュシェンヌ型ジストロフィー、バルデー-ビードル症候群、βサラセミア、癌、嚢胞性線維症、第VII因子欠乏症、家族性自律神経失調症、ファンコニ貧血、血友病A、プロピオン酸血症、網膜色素変性症、毛細血管拡張性運動失調症、先天性グリコシル化異常症、先天性副腎不全、福山型先天性ジストロフィー、成長ホルモン不応症、BH4欠損症/高フェニルアラニン血症、ハッチンソン-ギルフォードプロジェリア、皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症、メチルマロン酸尿症、乳酸アシドーシスを伴うミオパチー、筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ニーマン-ピック病C型、アッシャー症候群、無フィブリノーゲン血症、眼白子症1型、アルツハイマー病、タウオパチー、脊髄性筋萎縮症、アテローム性動脈硬化症、炎症性疾患、筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、栄養障害型表皮水疱症及び三好型ミオパチーからなる群より選択される疾患の治療に適用され得る。
【0061】
特に、オリゴヌクレオチドが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のオリゴヌクレオチドから選択される式(I)、(I)及び(III)を有する抱合体は、デュシェンヌ型ジストロフィーの治療に特に適用される。
【0062】
本発明の更なる特性が、以下の例示にすぎない幾つかの非限定的な例の記載から明らかとなる。
【実施例
【0063】
実施例1
オリゴヌクレオチドの5’末端での抱合の方法
抱合体1aの合成
【化9】
抱合体1aを、活性化UDC 31と、5’位が市販のアミンリンカーで官能基化されたオリゴヌクレオチド32(AON=配列番号1)との反応によって調製した。抱合は、DMSO/MeCNの1:1混合物中の誘導体31(10当量)及びDIPEA(40当量)の溶液を用いて固相中で3時間行う。合成規模に基づいて、流量は、再循環モードで3ml/分~15ml/分の範囲内とする。固体支持体からの除去、並びにバッファーA(0.1M酢酸ナトリウム+5%アセトニトリル)及びバッファーB(アセトニトリル)の勾配を用いた適切な逆相クロマトグラフィー精製の後に抱合体1aが得られた。最後に、抱合体1aを0.3M酢酸ナトリウム溶液からエタノールで沈殿させた。抱合効率≧85%、精製後のプロセス全体の収率75%。
【0064】
実施例2
オリゴヌクレオチドの3’末端での抱合の方法
抱合体1bの合成
実施例2a:溶液中での抱合
【化10】
オリゴヌクレオチド34(AON=配列番号1)を、固相中で修飾支持体C6 Amino Linker 300(GEのPrimer Support(商標) 5G)からDMT-ONモードで合成した。固体支持体からの除去、逆相精製及びジメトキシトリチル基の除去の後に、オリゴヌクレオチド34(DMSO中の5mM溶液)を、DIPEA(40当量)の存在下でUDCA活性化N-(UDC)スクシンイミド31(2当量)と抱合させた。4時間後に、抱合したオリゴヌクレオチド1bを逆相クロマトグラフィーによって更に精製し、エタノールから沈殿させた(抱合効率≧80%、プロセス全体の収率60%)。
【0065】
実施例2b:固相中での抱合
【化11】
抱合したオリゴヌクレオチド36を固相中でポリスチレン支持体35(下記の合成)から合成した。固体支持体からの除去及び逆相クロマトグラフィーによる精製の後に、抱合したオリゴヌクレオチド1bが得られた。
【0066】
ポリスチレン支持体35の合成
【化12】
(i)6-アミノ-1-ヘキサノール、DIPEA、DMF、(ii)DMTrCl、ピリジン、AcO、(iii)KOH、EtOH、(iv)無水コハク酸、DMAP、TEA、DCM、(v)HBTU、DIPEA、ポリスチレン支持体、ACN、DMF。
【0067】
誘導体37の合成:6-アミノ-1-ヘキサノール(1.2g、10.2mmol)及びDIPEA(0.6ml、4.1mmol)を40mlの無水DMF中の活性化UDC 31(1.0g、2.0mmol)の溶液に添加した。反応を磁気撹拌下に常温で22時間維持した後、水で希釈し、CHClで抽出した。有機相を減圧で蒸発させ、得られた残渣をトルエンと共に数回同時蒸発させ、以下の工程に使用される1.0gの粗化合物を得た。DMTr-Cl(0.50g、1.46mmol)を先で得られた粗化合物の溶液(0.48g、0.98mmol)に添加し、無水ピリジン(5mL)に溶解した。反応混合物を撹拌下に19時間維持した後、0.5mlの無水酢酸で3時間処理した。次いで、0.5mlのエタノールを添加し、混合物を更に30分間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーター(rotavapor)内で蒸発させ、得られた粗反応生成物をエタノールに再溶解し、0.1M KOH溶液で4時間処理した。次いで、混合物をリン酸緩衝液の添加によって中和し、酢酸エチルで抽出し、真空下で濃縮した。最後に、粗生成物37をフラッシュクロマトグラフィー(0.3%EtNを加えた、EtOAc:シクロヘキサン 4:1)で精製した。2工程後の収率25%。1H-NMR (400 MHz, CD3OD,選択されたデータ) δ: 7.45-7.38 (m, 2H), 7.32-7.12 (m, 7H), 6.85-6.78 (m, 4H), 4.80-4.68 (m, 1H, H-7), 3.78 (s, 6H), 3.58-3.45 (m, 1H, H-3), 3.21-3.00 (m, 4H), 1.92 (s, 3H), 0.95 (d, 3H, J 6.44), 0.92 (s, 3H), 0.71 (s, 3H). ESI-MS (ES+) m/z 858 (M+Na+).
【0068】
UDC-ヘミスクシネート38の合成:化合物37(0.58g、0.70mmol)、無水コハク酸(0.56g、5.69mmol)及びDMAP(触媒量(catal.))をピリジンに溶解し、反応が完了するまで撹拌下にて70℃で反応させた。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルに再溶解した残渣を酢酸の冷希釈溶液で洗浄した。0.62g(95%)のヘミスクシネート38(H-NMRによって推定された純度≧95%)が、無水NaSOで脱水し(anhydrified)、減圧で蒸発させた有機相から得られた。1H-NMR (400 MHz, CD3OD,選択されたデータ) δ: 7.42-7.40 (m, 2H), 7.42-7.15 (m, 7H), 6.85-6.80 (m, 4H), 4.98-4.80 (m, 2H, H-3及び-7), 3.76 (s, 6H), 3.22-3.00 (m, 4H), 2.60-2.50 (m, 4H), 1.92 (s, 3H), 0.96 (d, 3H, J 6.44), 0.94 (s, 3H), 0.69 (s 3H). ESI-MS (ES-) m/z 905 (M-H+).
【0069】
UDC-ヘミスクシネートによるアミン支持体の官能基化(化合物35):化合物38(280mg、0.30mmol)を5mlの無水MeCN(含水量<10ppm)に溶解し、減圧で濃縮した(無水条件となるように操作を少なくとも2回繰り返した)。残渣をMeCN及びDMFの1:1無水混合物に溶解し、0.1mlのDIPEAを添加した。市販のポリスチレン支持体(0.70g、アミン含有量:350μmol/g)を混合物に添加し、懸濁液を25℃のインキュベーター内で15分間静かに撹拌した。次いで、HCTU(0.30mmol)を添加し、撹拌を18時間継続した。次いで、溶液を濾過し、支持体を以下の順にCHCN×3、CHCl×3で洗浄した後、真空下にて常温で1時間、その後40℃で18時間乾燥させた。これにより得られた支持体を、試薬CAP A及びCAP Bの混合物のみからなる溶液(Sigma-Aldrich、各溶液5ml)の存在下にて再び25℃で18時間撹拌した。最後に、これを再び前述のように濾過し、洗浄し、乾燥させた。官能基化後の担持量(loading)は、240μmol/gに等しいことが測定された。
【0070】
実施例3
オリゴヌクレオチドの5’末端及び3’末端での抱合の方法
5’-UDC-AON-UDC-3’(1c)の合成
【化13】
オリゴヌクレオチド-胆汁酸抱合体39(AON=配列番号1)の合成は、抱合体1aについて既に報告したように行ったが、修飾固体支持体C6 Amino Linker 300(GEのPrimer Support(商標) 5G)から開始した。固体支持体からの除去及び逆相精製の後、得られたオリゴヌクレオチド(DMSO中の5mM溶液)をDIPEA(40当量)の存在下でN-(UDC)スクシンイミド31(2当量)と反応させた。4時間後に、抱合したオリゴヌクレオチド1cを逆相クロマトグラフィーによって更に精製し、エタノールから沈殿させた(抱合効率≧80%、プロセス全体の収率50%)。
【0071】
実施例4
胆汁酸誘導体の合成
【化14】
(ii)ギ酸アンモニウム、Pd/C、AcOEt、MeOH、(iii)無水コハク酸、DMAP、ピリジン、115℃、(iv)BocO、NaHCO、THF、HO、(v)LiOH、HO、MeOH、(vi)クロロギ酸エチル、TEA、タウリン、NaOH、HO、(vii)TFA、CHCl
【0072】
3α-NH-UDCA(28)の合成
MeOH(5mL)に溶解したPd/C(2.086mmol)をAcOEt/MeOH 1:1(10mL)中の40(1.043mmol)及びNH HCOO(10.430mmol)の溶液にゆっくりと添加した。混合物を70℃で撹拌下に維持して18時間後に、Pd/Cを濾過によって分離した。溶媒を減圧で蒸発させ、残渣をCHCl(15mL)で抽出し、ブライン(10mL)で洗浄した。溶液を無水NaSOで脱水し、減圧で濃縮して、化合物28を白色の非晶質固体として得た。収率78%。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 3.62 (s, 3H, OMe), 3.59 - 3.50 (m, 1H, 7α-H), 2.64 (bs, 1H, 3β-H), 2.37 - 2.27 (m, 1H, 23-CH2a), 2.23 - 2.13 (m, 1H, 23-CH2b), 1.99 - 0.85 (m, 30H), 0.64 (s, 3H, 18-CH3). 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ= 174.66, 70.93, 55.83, 54.93, 51.45, 51.24, 43.73, 43.65, 42.89, 40.15, 39.23, 38.36, 37.19, 35.66, 35.32, 34.11, 31.10, 31.01, 28.62, 26.93, 23.63, 21.16, 18.35, 12.11. MS (ESI, ES+): [C25H43NO3+ H]+ についての計算値406.63; 実測値406.33, 811.27 [2M+H]+, 1215.87 [3M+H]+. MS (ESI, ES-): [C25H43NO3- H]-についての計算値404.62; 実測値404.40, 805.07 [2M-H]-.
【0073】
3-ヘミスクシニル-3α-アミノ-UDCMe(30)の合成
無水コハク酸(3.390mmol)及び触媒量のDMAPをピリジン(4mL)中のアミン誘導体28(0.678mmol)の溶液に添加した。混合物を115℃に18時間維持した後、常温で冷却し、AcOEt(15mL)で希釈し、5%HCl(3.5mL)及びHO(5mL)の水溶液で洗浄した。抽出物をNaSOで脱水し、溶媒を減圧で蒸発させて、白色の非晶質固体30を得た。収率70%。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 5.66 (d, J = 7.9 Hz, 1H, NH), 3.77 - 3.67 (m, 1H, 7α-H), 3.65 (s, 3H, OMe), 3.57 - 3.41 (m, 1H, 3β-H), 2.96 (t, J = 7.1 Hz, 2H, コハク酸 CH2), 2.53 (t, J = 7.1 Hz, 2H, コハク酸 CH2), 2.40 - 2.29 (m, 1H, 23-CH2a), 2.26 - 2.16 (m, 1H, 23-CH2b), 2.07 - 0.99 (m, H), 0.94 (s, 3H, 19-CH3), 0.91 (d, J = 6.4 Hz, 3H, 21-CH3), 0.66 (s, 3H, 18-CH3). 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ= 174.72, 169.11, 168.98, 168.16, 71.37, 55.84, 55.03, 51.51, 50.43, 49.47, 43.71, 42.74, 40.17, 39.26, 36.71, 35.38, 35.28, 34.30, 34.04, 32.88, 31.09, 31.04, 28.60, 27.52, 27.04, 26.88, 25.57, 25.18, 24.49, 23.52, 21.14, 18.37, 12.11.
【0074】
3-ヘミスクシニル-3α-アミノ-TUDCA(29)の合成
BocO(2.4mmol)を、THF(5mL)及びNaHCO(飽和溶液、5mL)に溶解した化合物28(1.19mmol)の溶液に添加し、溶液を磁気撹拌下に18時間置いた。残渣を水で希釈し、AcOEt(2×10mL)で抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧で蒸発させた。これにより得られた固体をLiOH及びMeOHの水溶液に再溶解した。撹拌下で48時間後に、メタノールを除去し、5%HCl水溶液を添加して溶液をpH3にした。得られた溶液をEtOAc(2×10mL)で抽出し、再び合わせ、NaSOで脱水した有機相を濾過し、減圧で濃縮した。これにより得られた粗残渣を単離せず、THF(5mL)に直接溶解し、0℃でトリエチルアミン(1.3mmol)及びクロロギ酸エチル(1.3mmol)と反応させた。常温で2時間後に、NaOH/HO(1.43mmol)中のタウリン(1.3mmol)の溶液を添加した。反応を撹拌下に常温で12時間維持した後、5%HClでpH1まで酸性化した。次いで、THFを真空下で蒸発させ、水に溶解した混合物をEtOAcで抽出した。次いで、水相をn-ブタノールで抽出し、減圧で濃縮し、白色の非晶質固体41を得た。ジクロロメタンに溶解した41を、Bocが完全に除去されるまでTFAと反応させた(24時間)。次いで、混合物を減圧で濃縮し、得られた固体を、化合物30について前述したように無水コハク酸と反応させて、固体29を得た(5工程後の収率15%)。
MS (ESI, ES-): [C30H50N2O8S - H]-についての計算値597.80; 実測値597.47.
【0075】
誘導体リジンビス-ウルソデオキシコール酸アミド(27)の合成
【化15】
(i)リジンOMe、DIPEA、(ii)NaOH、HO、MeOH
L-リジンメチルエステルジヒドロクロリド(0.899mmol)及びDIPEA(4.494mmol、785μL)を、0℃でCHCl(20mL)中の31(2.247mmol)の溶液に添加した。混合物を撹拌下に25℃で18時間維持した後、10mlの5%HCl水溶液を添加した。反応環境から沈殿した白色の固体42を濾過し、メタノールに再溶解し、更に精製することなく以下の工程に使用した。収率95%。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 8.14 (d, J = 7.5 Hz, 1H, NHCH), 7.78 (t, J = 5.6 Hz, 1H, NHCH2), 4.47 (t, J = 3.8 Hz, 2H, 2OH), 4.19 - 4.09 (m, 1H, NHCH), 3.88 (d, J = 6.8 Hz, 1H, OH), 3.60 (s, 3H, OMe), 3.33 - 3.22 (m, 4H, 3β-, 3'β-, 7α-及び7'α-H di UDC), 3.16 (d, J = 4.7 Hz, 1H, OH), 3.05 - 2.94 (m, 2H, NHCH2), 2.28 - 0.84 (m, 68H), 0.61 (d, J = 3.2 Hz, 6H, 18-及び18'-CH3di UDC). 13C-NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ = 172.77, 172.30, 69.58, 69.33, 55.76, 54.60, 51.69, 51.56, 48.47, 42.95, 42.88, 42.05, 38.61, 38.11, 37.77, 37.60, 37.15, 34.86, 34.71, 33.64, 32.36, 31.92, 31.58, 31.43, 30.28, 30.13, 28.56, 28.08, 26.61, 24.77, 23.21, 22.62, 20.74, 18.36, 11.91. MS (ESI, ES+): [C55H92N2O8 + H]+についての計算値910.36; 実測値909.53, 1818.87 [2M+H]+; [C55H92N2O8 + Na]+についての計算値931.33; 実測値931.80, 1840.93 [2M+Na]+. MS (ESI, ES-): [C55H92N2O8+ Cl]-についての計算値943.79; 実測値943.53.
【0076】
NHOH(7mL)をMeOH(7mL)中の42(0.649mmol)の溶液に添加し、混合物を撹拌下に60℃で36時間維持した。次いで、溶媒を減圧で除去し、5%HCl水溶液を添加し、沈殿した固体をブフナー漏斗(Buechner)で濾過し、80℃の炉内で24時間乾燥させた。白色の非晶質固体27が79%の収率で得られた。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.94 (d, J = 7.4 Hz, 1H, NHCH), 7.75 (t, J = 8.2 Hz, 1H, NHCH2), 7.27 (s, 1H), 6.93 (s, 1H), 4.50 (s, 2H, 2OH), 4.19 - 4.03 (m, 1H, NHCH), 3.90 (d, J = 6.3 Hz, 1H, OH), 3.41 - 3.21 (m, 4H, 3β-, 3'β-, 7α-及び7'α-H di UDC), 3.16 (s, 1H, OH), 2.98 (bs, 2H, NHCH2), 2.24 - 0.80 (m, 68H), 0.60 (d, J = 1.1 Hz, 6H, 18-及び18'-CH3 di UDC). 13C-NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ = 173.96, 173.85, 172.56, 172.42, 69.66, 69.40, 55.82, 54.64, 52.07, 51.68, 43.02, 42.93, 42.10, 38.69, 38.05, 37.95, 37.64, 37.18, 35.06, 34.94, 34.75, 33.69, 32.42, 32.26, 32.13, 31.63, 31.54, 30.60, 30.16, 28.75, 28.66, 28.15, 26.66, 23.26, 22.76, 22.71, 20.80, 18.43, 11.97. MS (ESI, ES+): [C54H90N2O8 + H]+についての計算値896.33; 実測値895.47, 1789.80 [2M+H]+; [C54H90N2O8 + Na]+についての計算値917.30; 実測値917.67, 1811.87 [2M+Na]+. MS (ESI, ES-): [C54H90N2O8- H]-についての計算値894.31; 実測値893.67, 1788.73 [2M-H]-.
【0077】
実施例5
胆汁酸-脂肪酸抱合体24及び25の合成
【化16】
(i)DIPEA、DMF、(ii)NaOH、HO、MeOH
【0078】
DH-UDC(25)の合成
アミノ-UDC 28(1.752mmol)及びDIPEA(3.504mmol、491μL)をDMF(10mL)中の43(1.752mmol)の溶液に添加した。25℃で18時間撹拌した後、10mlの5%HClを混合物に添加し、これを続いてCHCl(30mL)で抽出した。有機相をNaHCO(3×10mL)で更に洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水し、真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(AcOEt/シクロヘキサン 1:1)により、黄色の非晶質固体が49%の収率で単離された。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 5.46 - 5.23 (m, 12H), 3.71 (bs, 1H, 3β-H), 3.66 (s, 3H, OMe), 3.57 - 3.48 (m, 1H, 7α-H), 2.89 - 2.73 (m, 10H, =CH-CH2-CH=), 2.45 - 2.29 (m, 3H), 2.26 - 2.14 (m, 3H), 2.12 - 0.83 (m, 35H), 0.67 (s, 3H, 18-CH3). 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ= 174.72, 171.43, 132.04, 129.23, 128.56, 128.26, 128.06, 127.84, 126.97, 71.34, 55.84, 54.99, 51.54, 49.14, 43.73, 42.76, 40.15, 39.28, 36.66, 35.43, 35.26, 34.63, 34.05, 31.06, 31.01, 28.60, 27.81, 26.87, 25.63, 25.54, 24.89, 23.55, 21.13, 20.56, 18.37, 14.29, 12.11. MS (ESI, ES+): [2・C47H73NO4 + 3H]3+についての計算値478.41; 実測値479.50; [2・C47H73NO4+ 3Na]3+についての計算値500.39; 実測値503.37。次いで、得られた固体を、化合物27について記載したように加水分解して、酸25を得た。
【0079】
実施例6
本発明の抱合体のスキッピング効率のin vitro研究
ジストロフィン遺伝子(DMD)のエクソン52の欠失を有する患者に由来する不死化ヒト筋芽細胞の細胞株の分化により得られた筋管を、図1に示す各々の分子の濃縮溶液で処理した(PRO051=配列番号1、PMO=配列番号6、化合物21、化合物9、化合物12、化合物15、化合物14及びnt=非処理)。処理は、48ウェルプレートにおいてトランスフェクタントの非存在下で行い、各ウェルにおいて50μMの最終濃度を得た。72時間後に、RNAの抽出のために細胞を採取し、RNAの濃度を図1に報告する。
【0080】
200ngの各RNAを、28サイクルのRT-PCRでエクソン50に相補的なプライマー(Ex50F)及びエクソン54に相補的なプライマー(Ex54R)を用いた連続増幅によって逆転写した(retrotranscribed)。
【0081】
次いで、1μlのRT-PCR産物をBioanalyser 2100 Agilentによって分析し、エクソン52の欠失転写産物(対照)及びアンチセンスオリゴヌクレオチドによって誘導されるエクソン51のスキッピングによる転写産物に対して生成物を定量化した。
【0082】
各化合物についてのスキッピング効率を図2に報告する。
【0083】
図2のグラフに報告したアンチセンスオリゴヌクレオチドの全ての抱合体がPRO051(配列番号1)よりも大きなスキッピング有効性を示す。特に、配列番号1をUDCA(化合物9、14)又はその3-アミノ誘導体(化合物15)と抱合させた全ての化合物が40%を超えるスキッピング効率を示す。
【0084】
UDCAと抱合させた新たなアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性のin vitro及びin vivo研究
リーディングフレームを中断する、ジストロフィン遺伝子(DMD)のエクソン52の欠失を有する患者に由来する不死化ヒト筋芽細胞の細胞株の分化により得られた筋管を、DMD遺伝子のエクソン51に相補的な配列番号1のアンチセンスオリゴヌクレオチドの以下の抱合体:化合物9、17及びPRO051(配列番号1)の100μM溶液2μlで処理した。
【0085】
Turbofectトランスフェクタントを用いて24ウェルプレート内で処理を行い、細胞をRNAの抽出又は免疫蛍光分析のそれぞれ48時間後又は5日後に採取した。
【0086】
RNAを定量化し、28サイクルのRT-PCRでエクソン50に相補的なプライマー(Ex50F)及びエクソン54に相補的なプライマー(Ex54R)を用いた連続増幅によって逆転写した(図5A)。1μlのRT-PCR産物を続いてBioanalyser 2100 Agilentによって分析し、エクソン52の欠失転写産物(対照)及びアンチセンスオリゴヌクレオチドによって誘導されるエクソン51のスキッピングによる転写産物に対して生成物を定量化した。
【0087】
免疫蛍光分析のために、筋芽細胞を適切なプレートにおいて各々のアンチセンスオリゴヌクレオチドの100μM溶液4μlで5日間処理した後、固定し、抗体NCL-DYS2及びDAPIで標識した。
【0088】
ジストロフィン転写産物の分析から、抱合したアンチセンスオリゴヌクレオチド(化合物9及び17)がどちらもエクソンスキッピングの誘導においてPRO051よりも効果的であることが見出された(図3A)。実際に、非処理細胞中のジストロフィン転写産物の合計に対するエクソン51の自然欠損転写産物の量を1に設定することによって、PRO051(8.33±0.53%)、5’に抱合させたアンチセンス(化合物9)(63.75±13.77%)及び3’に抱合させたアンチセンス(化合物17)(49±1.41%)で処理した細胞におけるスキッピングを定量化することが可能であった(図3B、左側のヒストグラム)。
【0089】
したがって、アンチセンス抱合体は、オリゴヌクレオチドPRO051と比較して7.65倍(化合物9)及び5.88倍(化合物17)のスキッピングの増加を誘導した。
【0090】
免疫蛍光分析から、抱合したアンチセンスオリゴヌクレオチド(化合物9及び17)で処理した筋管のみにおいてジストロフィンの発現の回復及び筋鞘での正確な局在化が示された(図3C)。
【0091】
ジストロフィン遺伝子のエクソン2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの以下の抱合体(図4)を対照細胞株においても試験した:
化合物19、20、配列番号4(図4にLongとして示される)及び配列番号5(図4にH2Aとして示される)。
【0092】
転写産物の分析から、オリゴヌクレオチド配列番号5の41%及び化合物20の73%、オリゴヌクレオチド配列番号4の50%及び化合物19の83%のパーセンテージでのエクソン2のスキッピングが示された(図4、ヒストグラム)。
【0093】
UDCAと抱合させたアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性をin vivoで試験するために、オリゴヌクレオチド22及び配列番号2を、2ヶ月の雄性マウスC57BL/10ScSn-Dmdmdx/Jに12週間にわたって1週間に1回の投与のレジームにより200mg/kgの用量で腹腔内注射した。PBSを注射したマウスを対照として使用した。
【0094】
処理の間、マウスを疼痛又は不調の任意の症状について常にモニタリングし、それらの体重を週2回記録した。実験中、マウスは不調又は病気のいかなる兆候も示さなかった。それどころか、実験中に記録されたマウスの体重推移を報告する図9から明らかであるように、マウスは好調であった。
【0095】
運動協調性及び神経筋強度を、TreatNMD DMD_M.2.1.005ガイドラインに従う四肢ハンギング試験によってモニタリングした。簡潔に述べると、マウスを格子上に置き、これをひっくり返して、動物が落ちるまでに経過する時間(秒)を記録するプロトコルを確立する。この試験を実験中の種々の時点で行い、各マウスについて1時間空けて2回記録した。最後に、各時間を体重に対して正規化し、2回のうちで長い方を検討した(最大保持インパルス(Maximum holding impulse)、g×秒)。化合物22で処理したマウスは、処理の初めから8週目まで、他の実験条件に対して神経筋強度の興味深い改善傾向を示した(図8)。
【0096】
最後の処理の翌週にマウスを屠殺して、心臓、横隔膜、腓腹筋及び前脛骨筋のサンプルを採取した。筋肉を切断及び断片化して、組織学的分析、免疫蛍光分析、LC/MS/MSによる定量化、転写産物の分析及びタンパク質の定量化を行った。
【0097】
組織学的分析
前脛骨筋、腓腹筋及び横隔膜筋に対して行った組織学的分析は、異なる結果をもたらした。
【0098】
図11A及び図11Bから明らかであるように、前脛骨筋に対して行った分析により、mdx対照マウスと比較して化合物22で処理したmdxマウスにおける線維の平均断面積(CSA)の減少が強調された。しかしながら、線維症又は細胞浸潤の点での差は生じなかったが、配列番号2で処理したmdxマウスは、他の実験条件と比較して壊死線維のパーセンテージの増加傾向を示した(図9C)。
【0099】
腓腹筋の切片に対する組織学的分析により、対照マウスと比較して化合物22で処理したmdxマウスにおける線維の平均断面積の増加、細胞浸潤の低減及び変性筋線維の数の減少が強調された(図10A~C)。
【0100】
驚くべきことに、化合物22での処理から最大の利益を得た、すなわちmdxマウスにおいて最も影響を受けた筋肉は横隔膜であった。処理は線維の平均断面積の増加、細胞浸潤及び変性線維のパーセンテージの減少をもたらした(図11A~C)。
【0101】
免疫蛍光
ジストロフィンについての免疫蛍光分析により、mdx対照マウスと比較して抱合体22で処理したmdxマウスの前脛骨筋及び腓腹筋の切片中に散在する幾つかの陽性線維の存在が明らかとなった。しかしながら、組織学的レベルでの改善の確認によると、抱合体22で処理したmdxマウスの横隔膜筋線維において、より大幅にジストロフィンが産生及び発現される(図12A~C)。
【0102】
LC/MS/MSによる定量化
マウス細胞抽出物(肝臓、腎臓、腓腹筋、脛骨筋、横隔膜及び心臓)中のオリゴヌクレオチドの定量化のために設計された分析を、Thermo Ultimate 3000 HPLCに接続したThermo TSQ Quantum Access Max分光計を用いて行った。
【0103】
細胞組織は、プロテイナーゼKで消化し、UVランプ下で10分間滅菌した後、凍結した5%組織細胞ホモジネート(50mg/mL)の形態で使用した。サンプルは、使用するまで-20℃で維持した。
【0104】
特に、化合物22、23、SEQ ID 1及びSEQ ID 2を研究した。
【0105】
標準として使用した純粋なオリゴヌクレオチドは、-20℃にて固体形態で維持した。これらから、希釈標準溶液(work solutions)を5.0OD/mLの濃度で調製し、260nmで定量化し、4℃で最長6ヶ月間維持した(定期的にUV及びMSを制御した)。
【0106】
抽出方法
800μLのサンプルを凍結乾燥し、内部標準(IS)及び水性TEABを含有する200μLの水に溶解した。再構成溶液を2つのSPEカートリッジ(Oasis LHB 10mg)でクロマトグラフィーにかけ、既知のプロトコル(Nature medicine 2015, 21, 270-279)を用いて溶出させた。抽出画分を凍結乾燥し、HPLC-MS/MS分析のために200μLの溶液Aに再溶解した。
【0107】
HPLCプロトコル
組織抽出物及び水性サンプルをX-Terra MS C18 2.5μm、4.6×50mmカラムで分析した。使用した溶離液:溶液A 水中の100mMヘキサフルオロプロパノール、8.6mMトリエチルアミン;溶液B MeOH。流量 0.5mL/分、勾配:0分~3分 100%のA;3分~15分 20%のA、80%のBまでの線形変化;15分~18分 20%のA、80%のB;18分~20分 100%のAまでの線形変化、22分又は24分 ストローク終了。
【0108】
ストロークの間に、UVシグナルを200nm及び600nmで記録し、PDAシグナルを200nm~350nmで記録した。通常は30μLのサンプルを注入した。
【0109】
MS/MS法
抱合体23を抱合体22の分析のISとし、配列番号1をオリゴヌクレオチド配列番号2の定量化のISとした。各化合物について、最も強いイオンを生じる前駆体→誘導体の断片化(通常は8つの電荷を有する前駆体に由来するもの)を特定した(断片化B)。
【0110】
使用した断片化:(遷移)
22-A 837.278→335.28+374.42
22-B 942.060→334.23+375.53
22-C 先の2つの和
SI-A 827.77→335.31+374.37
SI-B 931.38→335.27+374.33
SI-C 先の2つの和
【0111】
一例として、各々2.08μg/mlに相当する0.05OD/mLでの抱合体22及び23の混合物に対する以下の分析を報告する(図15)。
【0112】
SEQ ID 2及びSEQ ID 1(SI)の組についても同様:図14
【0113】
この場合、使用した遷移は以下の通りである:
SEQ ID 2-N A 859.5→334.3+373.9
SEQ ID 2-N B 764.0→334.5+375.7
SEQ ID 2-N C 先の2つの和
SI-A 870.83→334.6+373.9
SI-B 774.23→334.7+373.9
SI-C 先の2つの和
【0114】
定量化
異なるバッチに属するサンプルを共に立て続けに分析した。分析シーケンスは、巻込み現象の欠如を検証するための多数の水サンプル及び少なくとも1回の完全較正シーケンスを含む。各シーケンスについて幾つかのサンプルの分析を繰り返し、分析再現性を検証する。定量化は、Thermo LC Quanソフトウェアを用いて相対シグナルの面積を自動的に積分することによって得られ、潜在的な干渉又は偶然誤差を調べるために目視検査する。ソフトウェアにより、標的オリゴヌクレオチドの事前選択した遷移の面積と標準のものについての面積との比率を算出し、添加した内部標準の量をベースとして与えられるパラメーターに基づいて結果をmg/g(組織)に変換する検量線(通常は直線)に移す。
【0115】
2つの異なる遷移及び幾つかのイオンの収集の存在は、多数の対照を分析基準で得ることを可能にする。各分析において、用いた方法の正確さを検証するために、PBSのみで処理した水性サンプル又は細胞抽出物に由来する品質標準(オリゴヌクレオチド間の既知の比率を有する)を添加する。
【0116】
抱合体を特に多く含むサンプルでは、連続分析を潜在的な識別可能なイオン、特に使用した抱合体の断片化に由来するイオンを探索するフルスキャンモードで行った。分析した全てのサンプルで1つ、2つ又は3つの塩基が3’末端から失われた5’UDCが相当量見られた。標準及び統合手順の非存在下で、無傷の抱合体と比較した、観察されたイオンの強度に基づいて上記化合物を定量化した。
【0117】
検証
分析を、既知量のオリゴヌクレオチドを添加したPBSのみで処理したマウス細胞サンプルの同様の抽出物を分析することによって検証した(convalidated)。上記対照サンプル(QC)の分析によって測定された量は、期待値の5%の範囲内であった。
【0118】
細胞含有量
野生型(WT)又は遺伝子改変(MDX)マウスにおいて処理の4週目、7週目及び12週目に様々な組織で見られる無傷サンプルの量を以下の表3並びに図15及び図16にまとめる。
【0119】
【表2】
【0120】
エクソンスキッピングを、完全な転写産物に相当する1098塩基対及びエクソン23を有しない転写産物に相当する885塩基対の断片を増幅することが可能な、マウスジストロフィン転写産物のエクソン20及び26に相補的なプライマーを用いて行われるRT-PCRによって評価した(図5A)。
【0121】
心臓を除く分析した全ての筋肉において、化合物22での処理は、配列番号2のオリゴヌクレオチドよりも高いスキッピングレベルを誘導し、最も高いスキッピングレベルが横隔膜で特定された(図5B)。
【0122】
ウエスタンブロットによるジストロフィンの半定量分析のために採取した筋肉をRIPAバッファー及びプロテアーゼ阻害剤中でホモジナイズし、続いて定量化した。30μgのタンパク質を、50mM DTTを添加したNuPage LDS 4×バッファーと混合し、85℃で2分間加熱した後、Novex 3%~8% Tris-Acetateゲル上にロードし、150Vで70分間泳動した。次いで、タンパク質を、iBLOTシステムを用いて70Vで7分間、PVDF膜に転写し、ジストロフィンのカルボキシ末端領域に対する抗体(NCL-DYS2)及びローディング対照としてのα-アクチニンに対する抗体にハイブリダイズさせた。ウエスタンブロットによるタンパク質の定量化により、全ての処理における産生されたジストロフィンの増加及び化合物22で処理したマウスにおける量の増加が強調された(図6)。
【0123】
心臓を除く分析した全ての筋肉の処理は、対照マウス(PBSを注射した)では全く見られないジストロフィン発現の再開を示した。22での処理は、非抱合オリゴヌクレオチド配列番号2よりも多くのジストロフィンの発現を回復させた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2022513392000001.app
【国際調査報告】