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特表2022-513397微孔質モレキュラーシーブ触媒の第1族金属イオン含有量
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】微孔質モレキュラーシーブ触媒の第1族金属イオン含有量
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/44 20060101AFI20220131BHJP
   C01B 39/38 20060101ALI20220131BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20220131BHJP
   C07C 5/32 20060101ALN20220131BHJP
   C07C 5/333 20060101ALN20220131BHJP
   C07C 13/10 20060101ALN20220131BHJP
   C07C 13/12 20060101ALN20220131BHJP
   C07C 13/15 20060101ALN20220131BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B01J29/44 Z
C01B39/38
B01J29/40 Z
C07C5/32
C07C5/333
C07C13/10
C07C13/12
C07C13/15
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548512
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019055544
(87)【国際公開番号】W WO2020091969
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/752,553
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル ニティッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ギルクレスト ジョセリン エー
(72)【発明者】
【氏名】イアチーノ ラリー エル
(72)【発明者】
【氏名】レヴィン ドロン
(72)【発明者】
【氏名】バオ シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】ライ ウェンイ エフ
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BA46
4G073BB45
4G073CZ13
4G073FB11
4G073FB26
4G073FC12
4G073UA01
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB11C
4G169BB12C
4G169BB14C
4G169BB15C
4G169BB16C
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC03A
4G169BC04A
4G169BC05A
4G169BC06A
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC11A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC15A
4G169BC16A
4G169BC30A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC59A
4G169BC65A
4G169BC69A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD12C
4G169BE14C
4G169CB38
4G169CB63
4G169CB65
4G169DA06
4G169DA08
4G169FC08
4G169ZA01A
4G169ZA03A
4G169ZA06A
4G169ZA08A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA12A
4G169ZA13A
4G169ZA16A
4G169ZA19A
4G169ZA22A
4G169ZB01
4G169ZB02
4G169ZB03
4G169ZB04
4G169ZB07
4G169ZC04
4G169ZC09
4G169ZD01
4G169ZD03
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC28
4H006BA71
4H006BE20
4H006DA12
4H039CA40
4H039CC10
(57)【要約】
12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケートと、第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、第10族金属又はその化合物と、任意で第11族金属又はその化合物とを含む触媒であり、第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、望ましい化学変換工程に最適化された比率で存在する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、選択で(iv)第11族金属又はその化合物とを含む触媒であって、第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、前記アルミノシリケート中のアルミニウムの1モルあたり、少なくとも1.5モルの比率で存在する、触媒。
【請求項2】
前記第1族/第2族の比率が少なくとも1.6である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
(i)12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性メタロシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、任意で(iv)第11族金属又はその化合物とを含む触媒であって、前記触媒中に存在する第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、前記メタロシリケート中のシリカの1モルあたり、少なくとも0.005モルである、触媒。
【請求項4】
存在する第1族金属及び/又は第2族金属の前記総量が、シリカの1モルあたり、少なくとも0.006モルである、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
第1族金属及び/又は第2族金属が、アルミノシリケートの合成(結晶化)中に組み込まれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
第1族金属レベル及び/又は第2族金属レベルが、前記アルミノシリケートの前記合成後の洗浄レベルによって制御される、請求項1から5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
第1族金属レベル及び/又は第2族金属レベルが、前記アルミノシリケートの前記合成後の洗液中の第1族及び/又は第2族の塩の濃度によって制御される、請求項1から6のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
第1族金属及び/又は第2族金属が、前記アルミノシリケートの合成後に、直接イオン交換又は逐次イオン交換によって組み込まれる、請求項1から7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
第1族及び/又は第2族を含有する触媒組成物が、25未満の(第10族金属の添加前及び/又は第11族金属の添加前に測定された)アルファ値を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
前記微孔質結晶性メタロシリケートが、MWW、MFI、LTL、MOR、BEA、TON、MTW、MTT、FER、MRE、MFS、MEL、DDR、EUO、及びFAUからなる群から選択されるメタロシリケート骨格型を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
前記微孔質結晶性メタロシリケートが、ゼオライトベータ、モルデナイト、ホージャサイト、ゼオライト L、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-30、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-22ファミリーの材料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルミノシリケートである、請求項1から10のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項12】
前記第1族アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、且つ/又は、前記第2族アルカリ土類金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項13】
前記第10族金属が白金であり、白金の供給源が、硝酸白金、塩化白金酸、二塩化白金、白金アミン化合物、テトラアミン白金水酸化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項14】
前記第11族金属が銅であり、銅の供給源が、硝酸銅、亜硝酸銅、酢酸銅、水酸化銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、乳酸銅、硫酸銅、リン酸銅、塩化銅、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は前記第11族金属は銀であり、且つ/又は銀の供給源は、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、水酸化銀、銀アセチルアセトナート、炭酸銀、乳酸銀、硫酸銀、リン酸銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項15】
さらにバインダーを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項16】
前記バインダーが、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルカリ金属シリケート、第13族金属シリケート、第13族金属炭化物、第13族金属窒化物、リン酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、アルミン酸塩、表面不動態化アルミナ、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒が、押出物(円柱状のもの、浅裂のもの、非対称な浅裂のもの、らせん状に浅裂のもの)、噴霧乾燥粒子、油滴粒子、混錬粒子、球状粒子、及び/又はウォッシュコートされた基材のうちの1つ又は複数の形状に形成され、前記基材は、押出物、球状粒子、発泡体、微晶及び/又はモノリスであってもよい、請求項1から16のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項18】
前記触媒は、少なくとも0.1質量%の第1族及び/又は第2族の含有量を有する、請求項17に記載の触媒。
【請求項19】
前記触媒は、非環式C5類と組み合わせられて、シクロペンタジエンを含む環式C5化合物を形成する、請求項1から18のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項20】
前記非環式C5の変換条件は、少なくとも450℃~650℃の温度を含み、非環式C5供給原料に対する任意選択のH2共供給物のモル比は、0.01~3の範囲にあり、前記非環式C5供給原料に対する任意選択の軽質炭化水素共供給物のモル比は、0.01~5の範囲にあり、前記非環式C5供給原料は反応器入口で21~689kPa-a(3psia~100psia)の範囲にある分圧を有し、前記非環式C5供給原料は、1hr-1~50hr-1の範囲にある単位時間あたりの質量空間速度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非環式C5の変換は、放射加熱式管形反応器、対流加熱式管形反応器、周期的に再加熱される固定床反応器、循環式流動床反応器、放射加熱式流動床反応器、対流加熱式流動床反応器、断熱反応器及び/又は電気加熱式反応器のうちから選択される1つ又は複数の反応器において行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒は、周期的に再活性化及び/又は再生される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
請求項21に記載の環式C5化合物から形成された物品であって、前記物品は、前記環式C5化合物と二重結合を含む化合物とのディールス-アルダー反応から得られる、物品。
【請求項24】
前記環式C5化合物は、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、置換ノルボルネン、シクロペンタジエンのディールス-アルダー反応誘導体、環状オレフィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリシクロペンテン、不飽和ポリエステル樹脂、炭化水素樹脂粘着付与剤、配合エポキシ樹脂、ポリジシクロペンタジエン、ノルボルネン又は置換ノルボルネン又はジシクロペンタジエンのメタセシスポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記物品は、風力タービンブレード、ガラス繊維又は炭素繊維を含有する複合材、配合接着剤、エチリデンノルボルネン、EPDMゴム、アルコール、可塑剤、発泡剤、溶媒、オクタンエンハンサー、ガソリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2018年10月30日出願の、仮出願番号第62/752,553号に対する優先権を主張するものであり、この仮出願の開示は参照によって本明細書に援用される。
分野
本発明は、微孔質(microporous)モレキュラーシーブの調製に関し、特にそのようなモレキュラーシーブの第1族金属の含有量に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロペンタジエン(CPD)は、現在、液体供給水蒸気分解(liquid fed steam cracking)(つまり、ナフサ及びより重質の供給物)の副次的な副生成物である。水蒸気分解がより軽質の供給物に移行するにつれて(既存設備及び新規建築の供給物シフト)、CPDは、需要が増大する一方で、あまり生産されていない。供給不足によるCPDの高値により、可能な最終製品ポリマーは限定されている。さらなるCPDを、制約を受けない速度で、且つ潜在的に水蒸気分解からの回収よりも低コストで生産することができれば、さらなるポリマー製品を生産することができる。
ZSM-5結晶に基づく触媒などの金属含有微孔質モレキュラーシーブは、非環式C5類の環化を行うために発見された。この工程に所望される触媒は、環式C5類の収率を最大にし、供給物分子の望ましくない副生成物への損失を最小限にするものである。しかしながら、そのような触媒を最適化する必要があり、第1族金属イオン、特にナトリウム及び/又はカリウム、のレベルが重要であることが判明した。本発明者らは、望ましい微孔質モレキュラーシーブの特定の最適レベルを見い出した。
本出願は、2017年5月3日出願の米国特許出願第62/500,814に関連し、この特許文献は参照によって本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載するものは、(i)12以下の拘束指数(Constraint Index)を有する微孔質結晶性アルミノシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、任意で(iv)第11族金属又はその化合物とを含む(又は、これらからなる、又は、これらから本質的になる)触媒であり、第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、アルミノシリケート中のアルミニウムの1モルあたり、少なくとも1.5モルの比率で存在する。任意の実施形態において、第1族/第2族の比率は、少なくとも1.6、若しくは1.8、若しくは2.0、若しくは3.0であるか、又は1.5、若しくは1.6、若しくは1.8、若しくは2.0、若しくは3.0から、5.0、若しくは6.0、若しくは8.0、若しくは10.0までの範囲内にある。
また、記載するものは、(i)12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性メタロシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、任意で(iv)第11族金属又はその化合物とを含む(又は、これらからなる、又は、これらから本質的になる)触媒であり、触媒中に存在する第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、メタロシリケート中のシリカの1モルあたり、少なくとも0.005モルである。任意の実施形態において、存在する第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、シリカ1モルあたり、少なくとも0.006、若しくは0.008、若しくは0.010、若しくは0.015、若しくは0.020モルであるか、又はシリカ1モルあたり0.005、若しくは0.006、若しくは0.008、若しくは0.010、若しくは0.015、若しくは0.020モルから、シリカ1モルあたり0.05、若しくは0.06、若しくは0.07、若しくは0.08、若しくは0.09、若しくは0.10モルまでの範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【0004】
CPDを生成する工程は、多くの場合、軽質(C1~C4)副生成物の生成を最小限に抑えながらCPDを生成するために触媒系を用いて、豊富なC5供給材料から一次生成物としてCPDを生成する。C5供給材料は、未使用のC5類(原油又は天然ガスコンデンセート由来の、少量のシクロペンタン及びネオペンタン、並びに/又は2,2-ジメチルプロパンを含む、飽和化合物、主にノルマルペンタン及びイソペンタン、並びに/又はメチルブタン)であってもよいし、又は精錬工程及び化学工程:FCC、リフォーミング、水素化分解、水素化処理、コーキング、及び水蒸気分解によって生成された分解C5類(上記の骨格構造だが、様々な不飽和度のもの:アルカン、アルケン、ジアルケン、アルキン)であってもよい。反応吸熱が低減され、変換に対する熱力学的制約が改善されるので、水素含有量(つまり環式化合物、アルケン、ジアルケン)がより低いことが好ましいが、不飽和化合物は、飽和供給原料より高価である。従って、飽和C5類をCPDに変換する工程が最も所望される。
飽和非環式C5類をCPDに変換する工程は、脱水素及び環化活性に影響を与えるために、モレキュラーシーブ触媒上における金属官能性を必要とする。この金属官能性は、好ましくはアルミノシリケート結晶、好ましくはZSM-5と関連している。この触媒に用いられるZSM-5結晶は、結晶上における最終的なナトリウムレベル、結晶化条件の関数、及び結晶回収ステップ、例えば洗浄により、ナトリウム型で合成される。
【0005】
今回、ZSM-5に基づく触媒上における第1族金属、特にナトリウム、のレベルが非環式C5類の環化工程に用いられる完成した触媒の能力に影響を与えることが発見された。理論によって縛られることは望まないが、本出願人らは、アルミニウムの量を超えるナトリウムが必要とされるものと考える。これは、ナトリウムによるアルミニウム部位のタイトレーティング(titrating)が非効率であるため、ナトリウムがシラノール部位と相互作用する必要があるため、及び、又は高度に分散したPtの提供を助けるためにナトリウムがジントルイオンを形成する必要があるためである可能性がある。ナトリウムとともに、又はナトリウムの代わりに、他の第1族金属及び/又は第2族金属が含まれることが可能である。
【0006】
よって、任意の実施形態において、触媒は、(i)12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、任意で(iv)第11族金属又はその化合物とを含み、第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、アルミノシリケート中のアルミニウムの1モルあたり、少なくとも1.5モルの比率で存在する。任意の実施形態において、第1族/第2族の比率は、少なくとも1.6、若しくは1.8、若しくは2.0、若しくは3.0であるか、又は1.5、若しくは1.6、若しくは1.8、若しくは2.0、若しくは3.0から、5.0、若しくは6.0、若しくは8.0、若しくは10.0までの範囲内にある。
【0007】
別の言い方をすれば、任意の実施形態において、触媒は、(i)12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性メタロシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、任意で(iv)第11族金属又はその化合物とを含み、触媒中に存在する第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、メタロシリケート中のシリカの1モルあたり、少なくとも0.005モルである。任意の実施形態において、存在する第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、シリカ1モルあたり、少なくとも0.006、若しくは0.008、若しくは0.010、若しくは0.015、若しくは0.020モルであるか、又はシリカ1モルあたり0.005、若しくは0.006、若しくは0.008、若しくは0.010、若しくは0.015、若しくは0.020モルから、シリカ1モルあたり0.05、若しくは0.06、若しくは0.07、若しくは0.08、若しくは0.09、若しくは0.10モルまでの範囲内にある。
別の言い方をすれば、触媒は、少なくとも0.1質量%、若しくは0.2質量%の第1族及び/又は第2族の含有量、又は0.1、若しくは0.2から、0.5、若しくは0.8、若しくは1質量%までの範囲内の第1族及び/又は第2族の含有量を有する。
【0008】
本明細書で用いられる場合、「触媒」とは、化学反応、好ましくは非環式炭化水素の環式炭化水素への変換を触媒することができる固体及び/又は液体の組成物であり、少なくとも微孔質モレキュラーシーブ、特に微孔質結晶性メタロシリケートを含む。触媒はまた、1種又は複数種のバインダーを含んでもよい。商業的に実現可能な触媒として用いられるために、微孔質メタロシリケートは、いくつかのバインダー、好ましくは、化学反応及び熱による物理的変化に耐え、更に微孔質メタロシリケートに剛構造を与えることができる材料と組み合わせられる。よって、任意の実施形態において、バインダーは、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルカリ金属シリケート、第13族金属シリケート、第13族金属炭化物、第13族金属窒化物、リン酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、アルミン酸塩、表面不動態化アルミナ、及びこれらの混合物から選択される。任意の実施形態において、触媒は、押出物(円柱(筒)状のもの(cylindrical)、浅裂のもの(lobed)、非対称な浅裂のもの、らせん状に浅裂のもの)、噴霧乾燥粒子、油滴粒子、混錬粒子(mulled particle)、球状粒子、及び/又はウォッシュコートされた基材のうちの1つ又は複数の形状に形成され、基材は、押出物、球状粒子、発泡体、微晶及び/又はモノリスであってもよい。
【0009】
本明細書で用いられる場合、「族」とは、HAWLEY’S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY、Thirteenth Edition (1997年、John Wiley & Sons,Inc.)にあるような元素周期表の族を指す。
本明細書で用いられる場合、「拘束指数」とは、微孔質モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト、アルミノシリケート)が、その内部構造への異なるサイズの分子の制御されたアクセスをもたらす程度の尺度である。例えば、高度に制限されたその内部構造へのアクセス及びその内部構造からの脱出をもたらすモレキュラーシーブは、拘束指数について高い値を有し、この種のモレキュラーシーブは、通常、小さなサイズ、例えば0.5ナノメートル(5オングストローム)未満、の細孔を有する。他方で、内部モレキュラーシーブ構造への比較的自由なアクセスをもたらすモレキュラーシーブは、拘束指数について低い値を有し、通常、大きなサイズの細孔を有する。
【0010】
拘束指数の決定は、大気圧で、約1グラム以下の触媒の小さなモレキュラーシーブ触媒試料に、n-ヘキサン及び3-メチルペンタンの等質量の混合物を連続的に通すことによって行われる。ペレット又は押出物の形態にある触媒の試料を粗砂程度の粒径に粉砕してガラス管に装備する。試験前、触媒を538℃(1000°F)で空気流によって少なくとも15分間処理する。次に、触媒をヘリウムでフラッシュして、10%~60%の全転化率が得られるように、温度を288℃(550°F)~510℃(950°F)に調整する。炭化水素の混合物を、4:1のヘリウム対全炭化水素のモル比となるようにヘリウムで希釈して、1液空間速度(liquid hourly spaced velocity)(つまり、1時間あたり、触媒の1体積あたり、1体積の液体炭化水素)で、触媒に通す。稼働して20分後、流出物の試料を採取して、好都合にはガスクロマトグラフィーによって分析して、2つの炭化水素の各々について未変化のままの割合を決定する。次に、拘束指数を以下の式:拘束指数=Log10(残存するn-ヘキサンの割合)/Log10(残存する3-メチルペンタンの割合)を用いて計算する。
拘束指数は、2つの炭化水素の分解速度定数の比率に近似する。本発明に適した触媒は、およそ1~12の範囲にある拘束指数を有するものである。いくつかの典型的な触媒の拘束指数(CI)値は、エリオナイト(Erinotite)(38);ZSM-5(8.3);ZSM-11(8.7);ZSM-12(2);ZSM-38(2);ZSM-38(4.5);合成モルデナイト(0.5);REY(0.4);非晶質アルミノシリケート(0.6)である。
【0011】
本明細書で用いられる場合、モレキュラーシーブ触媒の「アルファ値」とは、その触媒の分解活性の尺度である。触媒分解活性は、ヘキサンの低沸点C1~C5炭化水素への質量パーセント転化率によって典型的には示され、一方、異性化活性は、ヘキサン異性化への質量パーセント転化率によって示される。アルファ値は、共ゲル化(co-gellation)、アルミナ10%、表面積420m2/g、ベース交換溶液中に陽イオンなし、によって得られた標準的な非晶質アルミノシリケート触媒と比較した、触媒の触媒分解活性の近似的な指標である。分解活性は、相対速度定数、すなわち単位時間あたり酸化物組成物の単位体積あたりのn-ヘキサンの転化速度として得られる。この非常に活性の高いアルミノシリケート触媒は、1としてアルファ値を有する。試験の実験条件は、触媒を538℃の一定温度に加熱し、その温度で、10~10-3秒の接触時間となるように可変流量で、ヘキサンを固体触媒上に通すことを含む。被験粒子は、30メッシュ未満、好ましくは12~28メッシュのサイズでなければならない。いくつかの典型的な触媒のアルファ値は、陽イオン交換なしのZSM-5(38)、H+交換有りのZSM-5(450);カルシウムイオンで交換された合成ホージャサイト(1.1)及びH(NH4)で交換された合成ホージャサイト(6,400)である。
【0012】
従って、本発明の触媒及び該触媒を形成する方法は、更に幾つかの特徴によって記述することができる。例えば、任意の実施形態において、第1族金属及び/又は第2族金属は、アルミノシリケートの合成(結晶化)中に組み込まれる。また、任意の実施形態において、第1族金属レベル及び/又は第2族金属レベルは、アルミノシリケートの合成後の洗浄レベルによって制御される。これは、フィルタ上における洗浄によって結晶性固体を水で洗い流すこと、及び/又はスラリーを形成して、ディスソルベート(dissolvate)をデカントすること、並びに他の既知の手段などの当該技術分野において知られているように、これらのステップを長時間又は短時間にわたって実施することによって、及び水又は水溶液の量を増減することで行われ得る。例えば、任意の実施形態において、第1族金属レベル及び/又は第2族金属レベルは、アルミノシリケートの合成後の洗液中の第1族及び/又は第2族の塩の濃度によって制御される。
任意の実施形態において、第1族金属及び/又は第2族金属はアルミノシリケートの合成後に、直接イオン交換又は逐次イオン交換によって組み込まれる。
【0013】
任意の実施形態において、第1族及び/又は第2族を含有する触媒組成物は、25未満、又は22未満、又は20未満、又は18未満、又は16未満、又は12未満、又は10未満の(第10族金属の添加前、及び/又は第11族金属の添加前に測定された)アルファ値を有する。
非環式炭化水素、特にC4~C10炭化水素の、C4~C10環式炭化水素への変換を触媒することができる、ほとんど任意の型の微孔質結晶性メタロシリケートが本明細書において望ましい。任意の実施形態において、本明細書に記載する微孔質結晶性メタロシリケートは、MWW、MFI、LTL、MOR、BEA、TON、MTW、MTT、FER、MRE、MFS、MEL、DDR、EUO、及びFAUからなる群から選択されるメタロシリケート骨格型を含む。
【0014】
任意の実施形態において、微孔質結晶性メタロシリケートは、ゼオライトベータ、モルデナイト、ホージャサイト、ゼオライトL、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-30、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-22ファミリーの材料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルミノシリケートである。
1つ又は複数の実施形態において、多孔質結晶性メタロシリケートは、25を超える、若しくは50を超える、若しくは100を超える、若しくは400を超える、若しくは1,000を超える、又は25~2,000、若しくは50~1,500、若しくは100~1,200、若しくは200~1000、若しくは300~1000、若しくは400~800の範囲にある、SiO2/Al23モル比を有する結晶性アルミノシリケートである。
この明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、第1族、第2族、並びに第10族及び第11族の元素を参照する。任意の実施形態において、第1族アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、且つ/又は、第2族アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
任意の実施形態において、第10族金属は白金であり、白金の供給源(source)は、硝酸白金、塩化白金酸、二塩化白金、白金アミン化合物、テトラアミン白金水酸化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
任意の実施形態において、第11族金属は銅であり、銅の供給源は、硝酸銅、亜硝酸銅、酢酸銅、水酸化銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、乳酸銅、硫酸銅、リン酸銅、塩化銅、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、並びに/又は第11族金属は銀であり、且つ/又は銀の供給源は、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、水酸化銀、銀アセチルアセトナート、炭酸銀、乳酸銀、硫酸銀、リン酸銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
既に述べたように、本発明の触媒はまた、バインダーを含んでもよい。任意の実施形態において、バインダーは、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルカリ金属シリケート、第13族金属シリケート、第13族金属炭化物、第13族金属窒化物、リン酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、アルミン酸塩、表面不動態化アルミナ、及びこれらの組み合わせから選択される。任意の実施形態において、触媒は、押出物(円柱状のもの、浅裂のもの、非対称な浅裂のもの、らせん状に浅裂のもの)、噴霧乾燥粒子、油滴粒子、混錬粒子、球状粒子、及び/又はウォッシュコートされた基材のうちの1つ又は複数の形状に形成され、基材は、押出物、球状粒子、発泡体、微晶及び/又はモノリスであってもよい。
【0016】
本発明の触媒は、非環式炭化水素、特にC4~C10炭化水素の、C4~C10環式炭化水素への変換など、多くの型の触媒作用に有用である。任意の実施形態において、本明細書に記載する触媒は、非環式C5類と組み合わせられて、シクロペンタジエンを含む環式C5化合物を形成する。任意の実施形態において、非環式C5変換条件は、少なくとも450℃~650℃の温度を含み、非環式C5供給原料に対する任意選択のH2共供給物(co-feed)のモル比は、0.01~3の範囲にあり、非環式C5供給原料に対する任意選択の軽質炭化水素共供給物のモル比は、0.01~5の範囲にあり、非環式C5供給原料は反応器入口で21~689kPa-a(3psia~100psia)の範囲にある分圧を有し、非環式C5供給原料は、1hr-1~50hr-1の範囲にある単位時間あたりの質量空間速度(weight hourly space velocity)を有する。
任意の実施形態において、非環式C5の変換は、放射加熱式(radiantly heated)管形反応器、対流加熱式(convectively heated)管形反応器、周期的に再加熱される(cyclically reheated)固定床反応器、循環式(circulating)流動床反応器、放射加熱式流動床反応器、対流加熱式流動床反応器、断熱反応器及び/又は電気加熱式(electrically heated)反応器のうちから選択される1つ又は複数の反応器において行われる。
任意の実施形態において、触媒は、周期的に再活性化(rejuvenate)及び/又は再生される。これは、触媒の触媒機能とは別個の槽において行われてもよいし、又は非環式C5類の環式C5化合物への変換などの触媒の主要触媒機能と同一の槽において行われてもよい。
【0017】
従って、再活性化サイクルは、典型的には触媒組成物から漸増的に堆積したコークス物質の少なくとも一部を除去することによって有利に実施され、回復又は実質的に回復した触媒活性を有する再活性化触媒を生成する。好ましくは、再活性化触媒は、失活する前の触媒の活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%まで回復した活性を有する。再活性化触媒はまた、回復又は実質的に回復した触媒選択性、例えば、失活する前の触媒の選択性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%まで回復した選択性を好ましくは有する。本明細書で用いられる場合、「漸増的に堆積したコークス」とは、変換サイクル中に触媒上に堆積するコークスの量を指す。典型的には、触媒組成物が、1質量%を超える(>1 wt%)漸増的に堆積したコークス、例えば、5質量%を超える(>5 wt%)漸増的に堆積したコークス、又は10質量%を超える(>10 wt%)漸増的に堆積したコークスを含む場合に、再活性化サイクルが用いられる。これは、2017年5月2日出願の米国特許出願第62/500,795において、より詳細に記載されており、この特許文献は参照によって本明細書に援用される。
【0018】
物品は、本明細書に記載された、あるいはペンテン及び/又はペンタジエンと組み合わされた、環式C5化合物から、形成することができる。任意の実施形態において、物品は、環式C5化合物と二重結合を含む化合物とのディールス-アルダー反応から得られる。任意の実施形態において、環式C5化合物は、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、置換ノルボルネン、シクロペンタジエンのディールス-アルダー反応誘導体、環状オレフィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリシクロペンテン、不飽和ポリエステル樹脂、炭化水素樹脂粘着付与剤、配合エポキシ樹脂、ポリジシクロペンタジエン、ノルボルネン又は置換ノルボルネン又はジシクロペンタジエンのメタセシスポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。任意の実施形態において、物品は、風力タービンブレード、ガラス繊維又は炭素繊維を含有する複合材、配合接着剤、エチリデンノルボルネン、エチレン-プロピレン-ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アルコール、可塑剤、発泡剤(blowing agent)、溶媒、オクタンエンハンサー(octane enhancer)、ガソリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【実施例
【0019】
実施例1: ZSM-5の合成
22%の固形物を有する混合物を、52,800gの脱イオン(DI)水、3,600gの50%NaOH溶液、156gの43%アルミン酸ナトリウム溶液、4,380gのn-プロピルアミン100%溶液、120gのZSM-5種晶、及び19,140gのUltrasil(商標)シリカから調製し、30ガロン(gal)のペール容器中で混合し、混合後、次いで30ガロンのオートクレーブに装填した。この混合物は、以下のモル組成を有した(各成分は±5%以下で測定):
SiO2/Al23 470
2O/SiO2 10.73
OH/SiO2 0.16
Na/SiO2 0.16
n-PA/Si 0.25
この混合物を混合して、99℃(210°F)、150rpmで、48時間反応させた。生じた反応スラリーを30ガロンのペール容器に放出して貯蔵した。過剰なn-プロピルアミンを除去するためのフラッシングは行わなかった。次に、反応スラリーをフロックに凝集させ(flocced)、洗浄/ろ過して、使用のために乾燥させた。合成したままの物質のXRDパターンは、ZSM-5トポロジーの典型的な純粋相を示した。合成したままの物質のSEMは、この物質が0.5~1.5マイクロメートル(ミクロン)の入り混じったサイズを有する明瞭な結晶の混合物から構成されていたことを示した。生じたZSM-5結晶は、0.57質量%(%固形物について補正後0.66質量%)のNa含有量及び3.67のNa/Al比を有した。ゼオライトは5~10のアルファ値、及び3~5の拘束指数を有する。
【0020】
実施例2: ZSM-5の合成
22%の固形物を有する混合物を、8,800gのDI水、600gの50%NaOH溶液、26gの43%アルミン酸ナトリウム溶液、730gのn-プロピルアミン100%溶液、40gのZSM-5種晶、及び3,190gのUltrasilシリカから調製し、5ガロンのペール容器中で混合し、混合後、次いで5ガロンのオートクレーブに装填した。この混合物は、以下のモル組成を有した(各成分は±5%以下で測定):
SiO2/Al23 470
2O/SiO2 10.73
OH/SiO2 0.16
Na/SiO2 0.16
n-PA/Si 0.25
この混合物を混合して、110℃(230°F)、350rpmで、48時間反応させた。生じた反応スラリーを5ガロンのペール容器に放出して貯蔵した。過剰なn-プロピルアミンを除去するためのフラッシングは行わなかった。次に、反応スラリーをフロックに凝集させ、洗浄/ろ過して、使用のために乾燥させた。合成したままの物質のXRDパターンは、ZSM-5トポロジーの典型的な純粋相を示した。合成したままの物質のSEMは、この物質が0.3マイクロメートル(ミクロン)のサイズを有する明瞭な結晶の混合物から構成されていたことを示した。生じたZSM-5結晶は、0.18質量%(固形物の補正ありで0.2)のNa含有量及び1.03のNa/Al比を有した。ゼオライトは5~10のアルファ値、及び3~5の拘束指数を有する。
【0021】
実施例3: ZSM-5の合成
DI水、50%NaOH溶液、43%アルミン酸ナトリウム溶液、n-プロピル基アミン100%溶液、ZSM-5種晶、及びUltrasilシリカを含有する、20%の固形物を有した混合物をオートクレーブに装填した。反応混合物は、以下のモル組成を有した(各成分は±5%以下で測定):
SiO2/Al23 470
2O/SiO2 12.3
OH/SiO2 0.16
Na/SiO2 0.16
n-PA/Si 0.25
この混合物を混合して、110℃(220°F)、75rpmで、約40時間反応させた。結晶化の完了後、母液中の残留n-プロピルアミンを116℃(240°F)でのフラッシングによって除去した。次に生じたスラリーをデカンターに移して、フロックに凝集させ、デカントした。次に、フロックに凝集したスラリーをろ過し、洗浄し、乾燥させた。合成したままの物質のXRDパターンは、ZSM-5トポロジーの典型的な純粋相を示した。合成したままの物質のSEMは、この物質が0.5マイクロメートル(ミクロン)のサイズを有する明瞭な結晶の混合物から構成されていたことを示した。生じたZSM-5結晶は、%固形物の補正ありで約0.49質量%のNa含有量、約2.54のNa/Al(モル比)、及び1.84質量%の炭素含有量を有した。ゼオライトは5~10のアルファ値、及び3~5の拘束指数を有する。
【0022】
実施例4: ZSM-5におけるPtの含浸
実施例1で調製したZSM-5結晶の試料を窒素中、482℃(900°F)で9時間か焼した。次に、雰囲気を、1.1%、2.1%、4.2%及び8.4%の酸素に4段階で増大させて徐々に変更した。各段階は、その後30分間保持した。温度を538℃(1000°F)に上昇させ、酸素含有量を16.8%に増大させ、材料を538℃(1000°F)で6時間保持した。含浸した押出物は触媒を生じる。冷却後、インシピエントウェットネス含浸(incipient wetness impregnation)により、硝酸テトラアミン白金の水溶液を用いて、XRFによる測定で0.50質量%のPtを添加した。この触媒を空気中、121℃(250°F)で乾燥させ、次に、空気中、350℃(660°F)で3時間にわたってか焼した。
【0023】
実施例5: ZSM-5におけるPtの含浸
実施例2で調製したZSM-5結晶の試料を482℃(900°F)の窒素中で9時間か焼した。次に、雰囲気を、1.1%、2.1%、4.2%及び8.4%の酸素に4段階で増大させて徐々に変更した。各段階は、その後30分間保持した。温度を538℃(1000°F)に上昇させ、酸素含有量を16.8%に増大させ、材料を538℃(1000°F)で6時間保持した。含浸した押出物は触媒を生じる。冷却後、インシピエントウェットネス含浸により、硝酸テトラアミン白金の水溶液を用いて、XRFによる測定で0.49質量%のPtを添加した。この触媒を空気中、121℃(250°F)で乾燥させ、次に、空気中、350℃(660°F)で3時間にわたってか焼した。
【0024】
実施例6: 40:60のZSM-5:SiO2押出物の調製
実施例3で調製したZSM-5結晶の試料を用いて、40質量%ZSM-5:60質量%シリカの押出物を調製した。40質量部のゼオライトを60質量部のシリカと混錬した。シリカは、Ultrasilシリカ及びLudox Hs-40によって等しく供給した。十分な水を添加して、58質量%の固形物の混錬混合物(mull mix)を生成した。材料を1.3ミリメートル(1/20インチ)の円柱に押し出し、次に121℃(250°F)で一晩乾燥させた。乾燥後、押出物を空気中、650℃で45分間か焼した。
【0025】
実施例7: ナトリウムを低減したZSM-5:SiO2押出物の調製
実施例6で調製した押出物の試料を様々な濃度の硝酸アンモニウムによって室温で1時間にわたって交換し、続いてDI水で洗浄し、121℃(250°F)で乾燥させ、次いで空気中、538℃(1000°F)で1時間か焼した。か焼した試料を、ICPを用いて、ナトリウム含有量について分析した。表1は本明細書における実施例を要約している。
【表1】
【0026】
実施例8: 40:60のZSM-5:SiO2押出物におけるPtの含浸
白金テトラアミン水酸化物を用いて、ZSM-5結晶の質量に基づいて0.5%Pt(押出物の質量に基づいて0.2%Pt)となるように、実施例6及び7で調製した押出物の試料にPtを含浸させた。含浸した押出物は触媒を生じる。含浸後、試料を121℃(250°F)で乾燥させ、次いで475℃で4時間か焼した。
【0027】
実施例9:n-ペンタンの変換
実施例4及び5で調製した触媒の試料を、n-ペンタンのCPDへの変換における性能について評価した。触媒(0.25gの20~40メッシュに粉砕及び篩分けしたもの)を、SiC(8g、40~60メッシュ)と物理的に混合し、内径(ID)0.71センチメートル(0.28インチ)、長さ46センチメートル(18インチ)のステンレス鋼反応器に装填した。触媒床は石英ウールで適所に保持し、反応器の空隙は金属インサートで充填した。反応器をユニット上に搭載し、圧力試験を行って、確実に漏れがないようにした。触媒をヘリウム下(200mL/分、20995kPa-g(ゲージ圧)(3045psig)、250℃)で1時間乾燥させ、次いでH2下(200mL/分、310kPa-g(45psig)、500℃)で4時間還元した。次に、この触媒を、n-ペンタン、H2及び残量のヘリウムの供給物を用いて、34.5kPa-a(絶対圧)(5.0psia)のC512、1.0モルのH2:C512及び310kPa-g(45psig)の全圧で、性能について試験した。触媒は、最初に550℃、単位時間あたりの質量空間速度(WHSV)=15h-1で8時間にわたって脱エッジングを行い(de-edged)、その後、575℃、WHSV=30h-1で試験した。
稼働して15時間(脱エッジングの終了後の7時間)で測定した環式C5生成物(CPD、シクロペンテン及びシクロペンタン)の平均収率(C%)は、実施例4(Na/Al=3.65)及び実施例5(Na/Al=1.03)の触媒について、それぞれ32%及び19%であった。
【0028】
実施例10:n-ペンタンの変換
実施例6及び7で調製した触媒の試料を、n-ペンタンのCPDへの変換における性能について評価した。触媒(0.625gの20~40メッシュに粉砕及び篩分けしたもの)を、高純度SiC(40~60メッシュ)と物理的に混合し、内径9ミリメートル、外径(OD)13ミリメートル、長さ48センチメートル(19インチ)の石英反応器に装填した。触媒床の全長が15センチメートル(6インチ)になるように、SiCの量を調節した。触媒床は石英ウールで適所に保持し、反応器の空隙は粗いSiC粒子で充填した。反応器をユニット上に搭載し、圧力試験を行って、確実に漏れがないようにした。触媒をヘリウム下(145mL/分、207kPa-g(30psig)、250℃)で1時間乾燥させ、次いでH2下(270mL/分、207kPa-g(30psig)、500℃)で4時間還元した。次に、この触媒を、n-ペンタン、H2及び残量のヘリウムの供給物を用いて、22.8kPa-a(3.3psia)のC512、1.0モルのH2:C512及び207kPa-g(30psig)の全圧で、性能について試験した。触媒は、575℃、n-ペンタンのWHSV=15h-1で試験した。稼働して16時間で測定された環式C5生成物(CPD、シクロペンテン及びシクロペンタン)の平均収率を表2に示す。
【表2】
【0029】
流動化可能な粒子
上記で検討したものなどの、しかしこれらに限定されないゼオライト結晶を流動化可能な粒子に形成できることが予想される。そのような材料は、ナトリウムゼオライト結晶を解凝集することによって形成することができる。次に、ナトリウムゼオライト結晶を、シリカ、アルミナ、チタニア又はジルコニアなどの無機材料とカオリン及びベントナイトなどの粘土との混合物であり得るマトリックス材と混合して、水性スラリーを形成することができる。マトリックスを解膠させることができる。バインダー中のアルミナの表面酸性度を、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はリン供給源を噴霧乾燥スラリーに添加することによって、最小化するか、又は制御する。このスラリーを噴霧乾燥などによって乾燥させ、次に、か焼して、例えば、直径200マイクロメートル(ミクロン)未満の流動性粉体を形成することができる。任意で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の供給源を用いた含浸などによる後処理によって、アルミナの酸性度を制御することができる。次に、流動化可能な粒子は、白金、白金及び銀、又は白金及び銅などの所望の金属の供給源とともに処置して、金属を含有する、調合されたナトリウム型ZSM-5を形成する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、触媒について「~から本質的になる」とは、触媒が、名前の挙げられてない少量の成分を含む可能性はあるが、非環状アルカンの環状アルカンへの変換に関して、最終生産物又は全体の割合の±1、2又は5質量%など分析的に有意な程度に、その触媒活性に影響を及ぼすであろう、名前の挙げられていない、任意の他の成分を含有しないか、又はそのような他の必須のか焼ステップから作られていないことを意味する。
【0031】
本明細書に記載したすべての文書は、任意の優先権書類及び/又は試験手順書も含めて、それらの文書がこの文書と矛盾しない範囲で、このような慣例が許容されているすべての管轄のために、参照によって本明細書に援用される。前述の一般的な記載及び特定の実施形態から明らかなように、本発明の形態が例示され、記載されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)12以下の拘束指数を有する微孔質結晶性アルミノシリケート又はメタロシリケートと、(ii)第1族アルカリ金属若しくはその化合物、及び/又は第2族アルカリ土類金属若しくはその化合物と、(iii)第10族金属又はその化合物と、選択で(iv)第11族金属又はその化合物とを含む触媒であって、
第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、前記アルミノシリケート中のアルミニウムの1モルあたり、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも1.6モルの比率で存在する、或いは、前記触媒中に存在する第1族金属及び/又は第2族金属の総量は、前記メタロシリケート中のシリカの1モルあたり、少なくとも0.005モルである、触媒。
【請求項2】
存在する第1族金属及び/又は第2族金属の前記総量が、シリカの1モルあたり、少なくとも0.006モルである、請求項に記載の触媒。
【請求項3】
第1族金属及び/又は第2族金属が、アルミノシリケートの合成(結晶化)中に組み込まれる、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項4】
第1族金属及び/又は第2族金属が、前記アルミノシリケートの合成後に、直接イオン交換又は逐次イオン交換によって組み込まれる、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
第1族及び/又は第2族を含有する触媒組成物が、25未満の(第10族金属の添加前及び/又は第11族金属の添加前に測定された)アルファ値を有する、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記微孔質結晶性メタロシリケートが、MWW、MFI、LTL、MOR、BEA、TON、MTW、MTT、FER、MRE、MFS、MEL、DDR、EUO、及びFAUからなる群から選択されるメタロシリケート骨格型を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記微孔質結晶性メタロシリケートが、ゼオライトベータ、モルデナイト、ホージャサイト、ゼオライト L、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-30、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-22ファミリーの材料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルミノシリケートである、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
前記第1族アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、且つ/又は、前記第2族アルカリ土類金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第10族金属が白金であり、白金の供給源が、硝酸白金、塩化白金酸、二塩化白金、白金アミン化合物、テトラアミン白金水酸化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
前記第11族金属が銅であり、銅の供給源が、硝酸銅、亜硝酸銅、酢酸銅、水酸化銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、乳酸銅、硫酸銅、リン酸銅、塩化銅、又はこれらの組み合わせであり、並びに/又は前記第11族金属は銀であり、銀の供給源は、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、水酸化銀、銀アセチルアセトナート、炭酸銀、乳酸銀、硫酸銀、リン酸銀、又はこれらの組み合わせである、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
さらにバインダーを含前記バインダーが、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルカリ金属シリケート、第13族金属シリケート、第13族金属炭化物、第13族金属窒化物、リン酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、アルミン酸塩、表面不動態化アルミナ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1からのいずれか1項に記載の触媒。
【国際調査報告】