IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インサイト・コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特表-血液疾患の治療のための併用療法 図1
  • 特表-血液疾患の治療のための併用療法 図2
  • 特表-血液疾患の治療のための併用療法 図3
  • 特表-血液疾患の治療のための併用療法 図4
  • 特表-血液疾患の治療のための併用療法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】血液疾患の治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61K31/573
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/454
A61K31/4035
A61K31/519
A61K31/4155
A61K31/437
A61K31/497
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548563
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 US2019059099
(87)【国際公開番号】W WO2020092726
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/753,409
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アサド,アルバート
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC11
4C086BC22
4C086BC36
4C086CB05
4C086CB22
4C086CB26
4C086DA10
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA12
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本出願は、治療を必要とする患者における白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患の治療に関し、該治療は、該患者に対して、(a)治療有効量の選択的JAK1阻害薬、(b)治療有効量の免疫調節薬、及び(c)治療有効量のステロイドを投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患の治療方法であって、前記患者に対して、(a)治療有効量の選択的JAK1阻害薬、(b)治療有効量の免疫調節薬、及び(c)治療有効量のステロイドを投与することを含む前記方法であり、
(a)前記JAK1阻害薬は、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、
[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、
3-[1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピロリジン-3-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
3-(1-[1,3]オキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イルピロリジン-3-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[3-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
[trans-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-(4-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペラジン-1-イル)シクロブチル]アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-[(3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2R)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
4-(4-{3-[(ジメチルアミノ)メチル]-5-フルオロフェノキシ}ピペリジン-1-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]ブタンニトリル、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
{1-(cis-4-{[6-(2-ヒドロキシエチル)-2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-[(エチルアミノ)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(1S)-2-ヒドロキシ-1-メチルエチル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(2R)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(2S)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、及び
{trans-3-(4-{[4-(2-ヒドロキシエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル
から選択されるか、または上述のもののいずれかの医薬的に許容される塩であり、
(b)前記免疫調節薬は、サリドマイド、レナリドミド、アプレミラスト、リノミド、及びポマリドミドから選択されるか、または上述のもののいずれかの医薬的に許容される塩であり、
(c)前記ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロキシコルチゾン、コルチゾン、デスオキシコルチコステロン、フルドロコルチゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、パラメタゾン、トリアムシノロン、フルメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルプレドニゾロン、ハルシノニド、フルランドレノリド、メプレドニゾン、及びメドリゾンから選択されるか、または上述のもののいずれかの医薬的に許容される塩である、前記方法。
【請求項2】
前記選択的JAK1阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択的JAK1阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルのアジピン酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫調節薬が、サリドマイド、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫調節薬が、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫調節薬が、ポマリドミド、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫調節薬が、アプレミラスト、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステロイドが、メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステロイドが、デキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステロイドが、プレドニゾン、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記血液疾患が、慢性リンパ性白血病である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記血液疾患が、非ホジキンリンパ腫である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記非ホジキンリンパ腫が、B細胞関連である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血液疾患が、多発性骨髄腫である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記多発性骨髄腫が、再発性、難治性、または再発性難治性多発性骨髄腫である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記血液疾患が、多発性骨髄腫であり、前記選択的JAK1阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩であり、前記免疫調節薬が、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩であり、前記ステロイドが、メチルプレドニゾロンもしくはデキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記血液疾患が、多発性骨髄腫であり、前記選択的JAK1阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩であり、前記免疫調節薬が、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩であり、前記ステロイドが、デキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記多発性骨髄腫が、再発性、難治性、または再発性難治性多発性骨髄腫である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記選択的JAK1阻害薬が、遊離塩基基準で約200mg~約1200mgの1日量で投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫調節薬が、遊離塩基基準で約2.5mg~約25mgの1日量で投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステロイドが、遊離塩基基準で約20mg~約60mgの1日量で投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記選択的JAK1阻害薬、前記免疫調節薬、及び前記ステロイド、またはその医薬的に許容される塩の周期的投与を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記選択的JAK1阻害薬が、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で約200mg~約1200mgの1日量で投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記選択的JAK1阻害薬が、1つ以上の持続放出剤形として投与される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫調節薬が、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で約2.5mg~約25mgの1日量で投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ステロイドが、28日の治療周期において、1~28日目の間1日おきに、遊離塩基基準で約20mg~約60mgの量で投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
治療を必要とする患者における多発性骨髄腫の治療方法であって、前記患者に対して、(a){1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約200~約1200mg、(b)レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で1日量約10mg、及び(c)メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目の間1日おきに、遊離塩基基準で1日量約40mg投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
治療を必要とする患者における多発性骨髄腫の治療方法であって、前記患者に対して、(a){1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約200~約1200mg、(b)レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で1日量約10mg、及び(c)デキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約2mg~約20mg投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月31日に出願された米国仮出願第62/753,409号の利益を主張する。当該仮出願の開示は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、治療を必要とする患者における白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患の治療に関し、該治療は、該患者に対して、(a)治療有効量の選択的JAK1阻害薬、(b)治療有効量の免疫調節薬、及び(c)治療有効量のステロイドを投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
ヤヌスキナーゼ(JAK)/シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路は、特定のサイトカインを認識する30を超える膜貫通タンパク質のスーパーファミリーであるサイトカイン受容体によるシグナル伝達におけるその役割により、血液新生及び免疫応答において重要な役割を果たすものとして同定されている。(Vainchenker et al.Oncogene,2013, 32, 2601-2613)。従って、JAK/STAT経路の調節異常は、血液悪性疾患に関与する。(Vainchenker et al.Oncogene,2013, 32, 2601-2613)。
【0004】
血液疾患、例えば、多発性骨髄腫のための現在の治療法は、多くの場合、該疾患を治癒せず、ほぼすべての患者は、いずれはこれらの治療法に対して耐性を生じる。従って、患者の転帰を改善する新たな治療法に対する必要性が存在する。本出願は、この必要性等に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】ヒト多発性骨髄腫細胞株OPM2の生存におけるイタシチニブ/レナリドミド/デキサメタゾン併用療法のインビトロ分析の結果を示す。
図2】ヒト多発性骨髄腫細胞株KMS11の生存におけるイタシチニブ/レナリドミド/デキサメタゾン併用療法のインビトロ分析の結果を示す。
図3】ヒト多発性骨髄腫細胞株KMS12BMの生存におけるイタシチニブ/レナリドミド/デキサメタゾン併用療法のインビトロ分析の結果を示す。
図4】ヒト多発性骨髄腫細胞株MM1.Rの生存におけるイタシチニブ/レナリドミド/デキサメタゾン併用療法のインビトロ分析の結果を示す。
図5】ヒト多発性骨髄腫細胞株MM1.Sの生存におけるイタシチニブ/レナリドミド/デキサメタゾン併用療法のインビトロ分析の結果を示す。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、とりわけ、治療を必要とする患者における白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患の治療方法を提供し、該方法は、該患者に対して、(a)治療有効量の選択的JAK1阻害薬、(b)治療有効量の免疫調節薬、及び(c)治療有効量のステロイドを投与することを含む。
【0007】
本出願は、さらに、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患を治療するための薬剤の製造に用いる本明細書に列挙する投与量での化合物の使用を提供する。
【0008】
本出願はまた、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患の治療に用いる本明細書に列挙する投与量での化合物を提供する。
【0009】
1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明に記載する。他の特徴、目的、及び利点は、該説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「例えば(e.g.)」及び「例えば(such as)」という用語ならびにそれらの文法的に等価のものに関しては、特に明記しない限り、「これに限定されない」という句が続くものと理解される。
【0011】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうではないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0012】
本明細書で使用される、「約」という用語は、「およそ」(例えば、表示値のプラスマイナスおよそ10%)を意味する。
【0013】
本発明は、血液悪性疾患に対する薬物耐性を克服すること、及びこれらの患者の転帰を改善することが可能なさらなる治療選択肢を提供する。具体的には、本発明は、血液疾患の治療のための選択的JAK1阻害薬と、免疫調節薬、及びステロイドの併用に関する。
【0014】
従って、本明細書に提供するのは、治療を必要とする患者における白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫から選択される血液疾患の治療方法であり、該方法は、該患者に対して、(a)治療有効量の選択的JAK1阻害薬、(b)治療有効量の免疫調節薬、及び(c)治療有効量のステロイドを投与することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、該血液疾患は、慢性リンパ性白血病である。
【0016】
いくつかの実施形態では、該血液疾患は、非ホジキンリンパ腫である。さらなる実施形態では、該非ホジキンリンパ腫は、B細胞関連である。
【0017】
いくつかの実施形態では、該血液疾患は、多発性骨髄腫である。さらなる実施形態では、該多発性骨髄腫は、再発性、難治性、または再発性難治性多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、該多発性骨髄腫は、難治性であり、この場合、該疾患は、治療中に(すなわち、該多発性骨髄腫の患者が治療を受けている間)及び/または治療終了から8週間以内に(すなわち、該多発性骨髄腫の患者が最後の治療投与を受けた後8週間以内に)進行する。いくつかの実施形態では、該多発性骨髄腫は、再発性であり、この場合、該疾患は、治療終了から8週間後からの期間に(すなわち、該多発性骨髄腫の患者が最後の治療投与を受けた後8週間を超えて)進行する。
【0018】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬、該免疫調節薬、及び該ステロイドは、同時に、連続して、周期的投与スケジュール(周期的投与)の一環として、またはそれらの任意の組み合わせで投与され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬、該免疫調節薬、及び該ステロイドの各々は、周期的投与スケジュールの一環として投与される。すなわち、周期(例えば、28日)中に、該選択的JAK1阻害薬、該免疫調節薬、及び該ステロイドの各々が投与されるが、該期間内に、該選択的JAK1阻害薬、該免疫調節薬、及び該ステロイドのうちの1つまたは2つのみが投与される日が1日以上存在する。例えば、28日の治療周期では、該選択的JAK1阻害薬は、1~28日目に投与され、該免疫調節薬は1~21日目に投与され、該ステロイドは、1~28日目に投与される。いくつかの実施形態では、該化合物の1つ以上は、該周期を通して毎日投与される場合もあれば、1日おきに投与される場合もある。
【0020】
I.JAK1選択的阻害薬
本明細書に記載の方法は、選択的JAK1阻害薬を使用する。選択的JAK1阻害薬は、他のヤヌスキナーゼより優先的にJAK1活性を阻害する化合物である。JAK1は、いくつかのサイトカイン及び成長因子シグナル伝達経路において中心的役割を果たし、調節異常の場合、病態をもたらす場合もあれば、病態の一因となる場合もある。例えば、IL-6のレベルは、関節リウマチ、すなわち、それが有害作用を有することが示唆される疾患では上昇している(Fonesca,et al.,Autoimmunity Reviews,8:538-42, 2009)。IL-6は、少なくとも一部は、JAK1を介してシグナル伝達するため、IL-6は、間接的に、JAK1阻害を介して潜在的な臨床的利益をもたらす可能性がある(Guschin,et al.Embo J 14:1421, 1995、Smolen,et al.Lancet 371:987, 2008)。さらに、一部のがんでは、JAK1は、構成的な望ましくない腫瘍細胞の増殖及び生存をもたらすように変異している(Mullighan,Proc Natl Acad Sci USA.106:9414-8, 2009、Flex,J Exp Med.205:751-8, 2008)。他の自己免疫疾患及びがんでは、JAK1を活性化する炎症性サイトカインの全身レベルの上昇もまた、該疾患及び/または随伴症状の一因となり得る。従って、かかる疾患を有する患者は、JAK1を阻害することで利益を得る可能性がある。JAK1の選択的阻害薬は、有効であると同時に、他のJAKキナーゼの不必要かつ潜在的に望ましくない阻害の影響を回避する。
【0021】
選択的JAK1阻害薬と他の薬物、例えば、サリドマイドまたはその誘導体、例えば、レナリドミド及びステロイドの併用により、相乗的抗がん効果がもたらされ得る。
【0022】
本明細書に記載の選択的JAK1阻害薬、またはその医薬的に許容される塩は、JAK2、JAK3、及びTYK2の1つ以上より優先的にJAK1を阻害する。いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、JAK2より優先的にJAK1を阻害する(例えば、JAK2/JAK1のIC50比>1を有する)。いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬または塩は、JAK1に対してJAK2より約10倍選択的である。いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬または塩は、IC50を1mMのATPで測定することにより計算して、JAK1に対してJAK2より約3倍、約5倍、約10倍、約15倍、または約20倍選択的である(例えば、実施例A参照)。
【0023】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、表1の化合物、またはその医薬的に許容される塩である。1mMのATPにて実施例Aの方法で得た該IC50値を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
+は、<10nMを意味する(アッセイ条件については実施例A参照)
++は、≦100nMを意味する(アッセイ条件については実施例A参照)
+++は、≦300nMを意味する(アッセイ条件については実施例A参照)
エナンチオマー1に関するデータ
エナンチオマー2に関するデータ
【0024】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩である。
【0025】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルのアジピン酸塩である。
【0026】
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル及びそのアジピン酸塩の合成及び調製は、例えば、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2012年9月6日に出願された米国特許公開第2013/0060026号、及び2014年3月5日に出願された米国特許公開第2014/0256941号に見出すことができる。該公開の各々は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0027】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその医薬的に許容される塩である。
【0028】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドのリン酸塩である。
【0029】
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド及びそのリン酸塩の合成及び調製は、例えば、2014年5月16日に出願された米国特許公開第US2014/0343030号に見出すことができる。該公開は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩である。
【0031】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルの一水和物である。
【0032】
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルの合成ならびにその無水及び一水和物形態の特性は、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号及び2015年4月29日に出願された米国特許公開第2015/0344497号に記載されており、その各々は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0033】
いくつかの実施形態では、表1の化合物は、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、2010年5月21日に出願された米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日に出願された米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日に出願された米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日に出願された米国特許公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に出願された米国特許公開第2014/0005166号に記載の合成手順によって調製される。該公開の各々は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、選択的JAK1阻害薬は、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、2010年5月21日に出願された米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日に出願された米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日に出願された米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日に出願された米国特許公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に出願された米国特許公開第2014/0005166号の化合物、またはそれらの医薬的に許容される塩から選択される。該公開の各々は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、式I
【化1】
の化合物またはその医薬的に許容される塩であり、式中、
Xは、NまたはCHであり、
Lは、C(=O)またはC(=O)NHであり、
Aは、フェニル、ピリジニル、またはピリミジニルであり、その各々は、任意に、1個または2個の独立して選択されるR基で置換され、
各Rは、独立して、フルオロ、またはトリフルオロメチルである。
【0036】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩である。
【0037】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、またはその医薬的に許容される塩である。
【0038】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩である。
【0039】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、式II
【化2】
の化合物またはその医薬的に許容される塩であり、式中、
は、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、またはC3-6シクロアルキル-C1-3アルキルであり、ここで、該C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、及びC3-6シクロアルキル-C1-3アルキルは、各々任意に、フルオロ、-CF、及びメチルから独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換され、
は、Hまたはメチルであり、
は、H、F、またはClであり、
は、HまたはFであり、
は、HまたはFであり、
は、HまたはFであり、
は、Hまたはメチルであり、
は、Hまたはメチルであり、
10は、Hまたはメチルであり、
11は、Hまたはメチルである。
【0040】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその医薬的に許容される塩である。
【0041】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、式III
【化3】
の化合物、またはその医薬的に許容される塩であり、式中、
Cyは、テトラヒドロ-2H-ピラン環であり、これは、任意に、CN、OH、F、Cl、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、シアノ-C1-3アルキル、HO-C1-3アルキル、アミノ、C1-3アルキルアミノ、及びジ(C1-3アルキル)アミノから独立して選択される1個または2個の基で置換され、ここで、該C1-3アルキル及びジ(C1-3アルキル)アミノは、任意に、F、Cl、C1-3アルキルアミノスルホニル、及びC1-3アルキルスルホニルから独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換され、
12は、-CH-OH、-CH(CH)-OH、または-CH-NHSOCHである。
【0042】
いくつかの実施形態では、式IIIの化合物は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩である。
【0043】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、約1mg~約2000mg、約10mg~約2000mg、または約100mg~約2000mgの1日量で投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、遊離塩基基準で約100mg~約1200mgの1日量で投与される。従って、いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、遊離塩基基準で約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、約1050mg、約1075mg、約1100mg、約1125mg、約1150mg、約1175mg、または約1200mgの1日量で投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、遊離塩基基準で約200mg~約1200mgの1日量で投与される。いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で約200mg~約1200mgの1日量で投与される。約200mg~約1200mgの1日量は、1日2回、例えば、約100mg~約600mgの分割用量で投与することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、遊離塩基基準で約100mg~約600mgの1日量で投与される。
【0047】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で約100mg~約600mgの1日量で投与される。
【0048】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、1日1回投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬は、1日2回投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬の用量は、1つ以上の持続放出剤形として投与される。選択的JAK1阻害薬{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩(表1、化合物1)の持続放出剤形は、2014年8月6日に出願された米国公開第2015-0065484号に見出すことができ、該公開は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、該選択的JAK1阻害薬の用量は、1つ以上の即時放出型剤形として投与される。
【0052】
II.免疫調節薬
本明細書に提供する方法は、さらに、治療有効量の免疫調節薬を投与することを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、サリドマイド、レナリドミド、アプレミラスト、リノミド、及びポマリドミドから選択されるか、またはその医薬的に許容される塩である。
【0054】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、サリドマイド、レナリドミド、及びポマリドミドから選択されるか、またはその医薬的に許容される塩である。
【0055】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、サリドマイド、またはその医薬的に許容される塩である。
【0056】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩である。さらなる実施形態では、該免疫調節薬は、レナリドミドである。
【0057】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、ポマリドミド、またはその医薬的に許容される塩である。
【0058】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、アプレミラスト、またはその医薬的に許容される塩である。
【0059】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、遊離塩基基準で約2.5mg~約25mgの1日量で投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約2.5mg~約25mgの1日量で投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で約2.5mg~約25mgの1日量で投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、遊離塩基基準で約5mg~約15mgの1日量で投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約5mg~約15mgの1日量で投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で約5mg~約15mgの1日量で投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、遊離塩基基準で約10mgの1日量で投与される。
【0066】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約10mgの1日量で投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、該免疫調節薬は、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で約10mgの1日量で投与される。
【0068】
III.ステロイド
本明細書に提供する方法は、さらに、治療有効量のステロイドを投与することを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロキシコルチゾン、コルチゾン、デスオキシコルチコステロン、フルドロコルチゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、パラメタゾン、トリアムシノロン、フルメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルプレドニゾロン、ハルシノニド、フルランドレノリド、メプレドニゾン、及びメドリゾンからなる群から選択されるか、または上述のもののいずれかの医薬的に許容される塩である。
【0070】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩である。
【0071】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、デキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩である。
【0072】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、プレドニゾン、またはその医薬的に許容される塩である。
【0073】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、遊離塩基基準で約2mg~約100mgの1日量で投与される。
【0074】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約10mg~約100mgの1日量で投与される。
【0075】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約20mg~約60mgの1日量で投与される。
【0076】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約40mgの1日量で投与される。
【0077】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、デキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩であり、遊離塩基基準で約2mg~約20mgの1日量で投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で約20mg~約60mgの1日量で投与される。
【0079】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で約2mg~約20mgの1日量で投与される。
【0080】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、28日の治療周期において、1~28日目の間1日おきに、遊離塩基基準で約20mg~約60mgの1日量で投与される。
【0081】
いくつかの実施形態では、該ステロイドは、28日の治療周期において、1~28日目の間1日おきに、遊離塩基基準で約2mg~約20mgの1日量で投与される。
【0082】
本明細書に記載の実施形態は、該実施形態が、多項従属請求項であるかのように、任意の適切な組み合わせで組み合わされることが意図される(例えば、該選択的JAK1阻害薬及びその用量に関連する実施形態、該免疫調節薬及びその用量に関連する実施形態、該ステロイド及びその用量に関連する実施形態、本明細書に開示する化合物の任意の塩形態に関連する実施形態、個々の血液疾患のタイプに関連する実施形態、ならびに組成物及び/または投与に関連する実施形態は、任意の組み合わせで組み合わせることができる)。
【0083】
例えば、本明細書に提供するのは、治療を必要とする患者における多発性骨髄腫の治療方法であり、該方法は、該患者に対して、(a){1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約200~約1200mg、(b)レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で1日量約10mg、及び(c)メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目の間1日おきに、遊離塩基基準で1日量約40mg投与することを含む。
【0084】
同様に本明細書に提供するのは、治療を必要とする患者における多発性骨髄腫の治療方法であり、該方法は、該患者に対して、(a){1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約200~約1200mg、(b)レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で1日量約10mg、及び(c)メチルプレドニゾロン、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約40mg投与することを含む。
【0085】
別の例として、本明細書に提供するのは、治療を必要とする患者における多発性骨髄腫の治療方法であり、該方法は、該患者に対して、(a){1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約200~約1200mg、(b)レナリドミド、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~21日目に、遊離塩基基準で1日量約10mg、及び(c)デキサメタゾン、またはその医薬的に許容される塩を、28日の治療周期において、1~28日目に、遊離塩基基準で1日量約2mg~約20mg投与することを含む。
【0086】
すべての可能な組み合わせは、単に簡潔にするために、本明細書では個別に記載されていない。
【0087】
本明細書に記載の化合物は、非対称であり得る(例えば、1つ以上の立体中心を有する)。すべての立体異性体、例えば、エナンチオマー及びジアステレオマーは、別段の指示がない限り、対象とされる。非対称に置換された炭素原子を含む化合物は、光学活性体に単離される場合もラセミ体に単離される場合もある。光学不活性出発物質から光学活性体を調製する方法は、当技術分野で既知であり、例えば、ラセミ混合物の分割による、または立体選択的合成による。オレフィン、C=N二重結合等の多くの幾何異性体もまた、本明細書に記載の化合物に存在する場合があり、すべてのかかる安定異性体が、本発明に企図される。本発明の化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載されており、異性体混合物として単離される場合も別々の異性体として単離される場合もある。
【0088】
いくつかの実施形態では、該化合物は、(R)配置を有する。いくつかの実施形態では、該化合物は、(S)配置を有する。
【0089】
化合物のラセミ混合物の分割は、当技術分野で既知の多くの方法のいずれかによって行うことができる。例示的な方法としては、光学活性な塩形成有機酸であるキラル分割酸を使用した分別再結晶が挙げられる。分別再結晶法に適した分割剤は、例えば、光学活性酸、例えば、D及びL型の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸または様々な光学活性カンファースルホン酸、例えば、β-カンファースルホン酸である。分別結晶法に適した他の分割剤としては、立体異性体として純粋な形態のα-メチルベンジルアミン(例えば、S及びR型、またはジアステレオマーとして純粋な形態)、2-フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N-メチルエフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0090】
ラセミ混合物の分割はまた、光学活性分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を充填したカラムでの溶出によって行うこともできる。適切な溶出溶媒組成は、当業者によって特定され得る。
【0091】
本明細書に記載の化合物は、互変異性型も含む。互変異性型は、単結合と隣接する二重結合の交換と同時のプロトン移動から生じる。互変異性型は、同じ実験式及び全電荷を有する異性体のプロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体を含む。プロトトロピック互変異性体の例としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対、ならびにヘテロ環系の2つ以上の位置をプロトンが占めることができる環状型、例えば、1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、ならびに1H-及び2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性型は、平衡状態である場合もあれば、適切な置換によって1つの型に立体的に固定される場合もある。
【0092】
本明細書に記載の化合物は、同位体標識された本開示の化合物も含み得る。「同位体」または「放射性標識」化合物とは、1つ以上の原子が、通常天然に見られる(すなわち、天然に存在する)原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子と交換または置換されている本開示の化合物である。本開示の化合物に組み込まれ得る適切な放射性核種としては、H(重水素の代わりにDとしても表される)、H(三重水素の代わりにTとしても表される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本開示の化合物中の1つ以上の水素原子は、重水素原子と交換され得る(例えば、式(I)、(II)、もしくは(III)のC1-6アルキル基または表1の化合物の1つ以上の水素原子を、任意に、重水素原子で置換することができる。例えば、-CHに対して-CDが代替される)。
【0093】
本明細書で使用される、「化合物」という用語は、その名称が特定の立体異性体を示さない限り、描写された構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意味する。本明細書では、特別の定めのない限り、1つの特定の互変異性型として名称または構造で特定される化合物は、他の互変異性型を含むことが意図されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物、またはそれらの塩は、実質的に単離される。「実質的に単離される」とは、該化合物が、それが生じたまたは検出された環境から少なくとも部分的にまたは実質的に分離されることを意味する。部分的分離としては、例えば、本明細書に記載の化合物が濃縮された組成物を挙げることができる。実質的分離としては、本明細書に記載の化合物、またはそれらの塩を、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%含む組成物を挙げることができる。化合物及びそれらの塩を単離する方法は、当技術分野では通常のものである。
【0095】
すべての化合物、及びそれらの医薬的に許容される塩は、他の物質、例えば、水及び溶媒とともに見出される(例えば、水和物及び溶媒和物)場合もあれば、単離される場合もある。固体状態の場合、本明細書に記載の化合物及びそれらの塩は、様々な形態で存在する可能性があり、例えば、水和物を含めた溶媒和物の形態をとる可能性がある。該化合物は、任意の固体形態、例えば、多形体または溶媒和物で存在する可能性があるため、別段の明確な指示がない限り、本明細書における化合物及びそれらの塩への言及は、該化合物の任意の固体形態を包含すると理解されたい。
【0096】
「医薬的に許容される」という句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して用いるのに適切な、合理的なリスク・ベネフィット比に見合った化合物、物質、組成物及び/または剤形を指すために使用される。
【0097】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物の医薬的に許容される塩を含む。「医薬的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の誘導体を指し、この場合、親化合物は、存在する酸または塩基部分をその塩形態に変換することにより修飾されている。医薬的に許容される塩の例としては、アミン等の塩基性残基の鉱酸または有機酸塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリまたは有機塩等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬的に許容される塩としては、例えば、非毒性無機または有機酸から形成される親化合物の非毒性塩が挙げられる。本発明の医薬的に許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的手法によって合成することができる。一般に、かかる塩は、これら化合物の遊離酸または塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水もしくは有機溶媒、またはこれら二者の混合物中で反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、もしくはブタノール)またはアセトニトリル(MeCN)等の非水溶媒が好ましい。適切な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,1985),p.1418,Berge et al.,J.Pharm.Sci.,1977, 66(1),1-19、及びStahl et al.,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Wiley,2002)に見出される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、N-オキシド形態を含む。
【0098】
同義で使用される「個体」または「患者」という用語は、哺乳類を含めた任意の動物、好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、及び最も好ましくは、ヒトを指す。
【0099】
「治療有効量」という句は、研究者、獣医、医師または他の臨床医が求める、組織、系、動物、個体またはヒトでの生物学的または医薬的反応を引き出す活性化合物または医薬品の量を指す。
【0100】
「治療すること」または「治療」という用語は、(1)疾患の抑制、例えば、疾患、状態または障害の病変または症状を経験しているまたは表している個体における該疾患、状態または障害の抑制(すなわち、該病変及び/または症状のさらなる発展の停止)ならびに(2)疾患の改善、例えば、疾患、状態または障害の病変または症状を経験しているまたは表している個体における該疾患、状態または障害の改善(すなわち、該病変及び/または症状の改善)、例えば、疾患の重症度の改善のうちの1つ以上を指す。1つの実施形態では、治療することまたは治療には、疾患の発症のリスクの防止または低減、例えば、疾患、状態または障害に罹患しやすい可能性があるが、該疾患の病変または症状をまだ経験することも表すこともしていない個体において、該疾患、状態または障害を発症するリスクの防止または低減が含まれる。
【0101】
さらなる組み合わせ
細胞の増殖及び生存は、複数のシグナル伝達経路によって影響され得る。従って、かかる状態を治療するために、活性を調節するキナーゼに対して異なる選好を示す異なるキナーゼ阻害剤を組み合わせることが有用である。複数のシグナル伝達経路(または所与のシグナル伝達経路に関与する複数の生体分子)を標的とすることで、細胞集団で生じる薬物耐性の可能性を低減する場合、及び/または治療の毒性を低減する場合がある。
【0102】
従って、該方法は、さらに1つ以上の他のキナーゼ阻害剤を投与することを含むことができる。例えば、本発明の化合物は、がんの治療のための以下のキナーゼに対する1つ以上の阻害剤と組み合わせることができる:Akt1、Akt2、Akt3、TGF-βR、PKA、PKG、PKC、CaM-キナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、MEKK、ERK、MAPK、mTOR、EGFR、HER2、HER3、HER4、INS-R、IGF-1R、IR-R、PDGFαR、PDGFβR、CSFIR、KIT、FLK-II、KDR/FLK-1、FLK-4、flt-1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、c-Met、Ron、Sea、TRKA、TRKB、TRKC、FLT3、VEGFR/Flt2、Flt4、EphA1、EphA2、EphA3、EphB2、EphB4、Tie2、Src、Fyn、Lck、Fgr、Btk、Fak、SYK、FRK、JAK、ABL、ALK及びB-Raf。さらに、本明細書に記載のPim阻害剤は、PIK3/Akt/mTORシグナル伝達経路に関連するキナーゼ、例えば、PI3K、Akt(Akt1、Akt2及びAkt3を含む)及びmTORキナーゼの阻害剤と組み合わせることができる。
【0103】
該方法は、さらに、他の治療法、例えば、化学療法、放射線、または外科手術と組み合わせて使用することができる。該化合物は、1つ以上の抗がん剤、例えば、化学療法薬と組み合わせて投与することができる。例示的な化学療法薬としては、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾムビ(bortezombi)、ボルテゾミブ、ブスルファン静注、ブスルファン経口、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルテパリンナトリウム、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンディフティトックス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロンプロピオネート、エクリズマブ、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシドフォスフェート、エトポシド、エキセメスタン、フェンタニルシトレート、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリンアセテート、ヒストレリンアセテート、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシレート、インターフェロンアルファ2a、イリノテカン、ラパチニブジトシレート、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリドアセテート、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロールアセテート、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロンフェンプロピオネート、ネララビン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スニチニブマレエート、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、及びゾレドロネートのうちのいずれかが挙げられる。
【0104】
該方法は、さらに、1つ以上の抗炎症薬、ステロイド、免疫抑制剤、または治療用抗体と組み合わせて使用することができる。
【0105】
複数の医薬品が患者に投与される場合、それらは、同時に投与される場合も、連続して投与される場合も、組み合わせて投与される場合もある(例えば、3剤以上の場合)。
【0106】
組成物
該化合物は、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、医薬分野で周知の方法で調製することができ、局所治療が適応されるか全身的治療が適応されるかに応じて、及び治療される領域に応じて、様々な経路で投与することができる。投与は、局所(経皮、表皮、点眼、ならびに鼻腔内、膣内及び直腸送達を含めた粘膜に対するもの等)、経肺(例えば、ネブライザーによるものを含めた散剤もしくはエアゾール剤の吸入もしくは吹送によるもの、気管内または鼻腔内)、経口あるいは非経口でよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋内または注射もしくは注入、あるいは頭蓋内、例えば、髄腔内または脳室内投与が挙げられる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であってもよいし、例えば、連続潅流ポンプによる投与でもよい。局所投与用の医薬組成物及び製剤としては、経皮パッチ、軟膏剤、ローション剤、クリーム、ゲル剤、滴剤、座剤、噴霧剤、液剤及び散剤が挙げられ得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等が必要または望ましい場合がある。
【0107】
該医薬組成物は、活性成分として、該化合物、またはその医薬的に許容される塩を、1つ以上の医薬的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて含むことができる。いくつかの実施形態では、該組成物は、局所投与に適する。該組成物の製造の際には、該活性成分は、通常、賦形剤と混合されるか、賦形剤で希釈されるか、または、例えば、カプセル、サッシェ、紙もしくはその他の容器の形態の担体に封入される。該賦形剤が希釈剤としての役割を果たす場合、該賦形剤は、固体物質でも、半固体物質でも、液体物質でもよく、これが、該活性成分のビヒクル、担体または媒体として機能する。従って、該組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サッシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体として、または液体媒体中)、例えば、活性化合物を最大10重量%含む軟膏剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、座剤、滅菌注射液及び滅菌包装散剤の形態であることができる。
【0108】
製剤を調製する際には、他の成分と混合する前に、該活性化合物を粉砕し、適切な粒径にしてもよい。該活性化合物が実質的に不溶性である場合は、これを200メッシュ未満の粒径まで粉砕することができる。該活性化合物が実質的に水溶性である場合は、粉砕によって粒径を調節し、該製剤中での実質的に均一な分布、例えば、約40メッシュを得ることができる。
【0109】
該化合物を、既知の粉砕手順、例えば、湿式粉砕を使用して粉砕し、錠剤の形成及び他の製剤のタイプに適切な粒径を得てもよい。本発明の化合物の微粉化(ナノ粒子)調製物は、当技術分野で既知の工程によって調製することができる。例えば、WO2002/000196を参照されたい。
【0110】
適切な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが挙げられる。該製剤は、さらに、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、保存剤、例えば、安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル、ならびに甘味剤及び矯味矯臭剤を含むことができる。本発明の組成物は、当技術分野で既知の手順を用いることによって、患者への投与後に、該活性成分が即時、持続または遅延放出されるように製剤化され得る。
【0111】
該医薬組成物を製剤化するのに使用される成分は、高純度のものであり、潜在的に有害な混入物質を実質的に含まない(例えば、少なくとも国の食品グレード、一般には少なくとも分析グレード、より典型的には、少なくとも医薬品グレード)。特にヒトの摂取の場合、該組成物は、好ましくは、米国食品医薬品局の適用される規則において定義される適正製造基準に基づいて製造または製剤化される。例えば、適切な製剤は、無菌であり、及び/または実質的に等張であり、及び/または米国食品医薬品局の適正製造基準のすべての規則に完全準拠し得る。
【0112】
該活性化合物は、広い用量域にわたって有効である可能性があり、一般には、治療有効量で投与される。しかしながら、実際に投与される該化合物の量は、通常は、治療される状態、選択された投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重及び反応、患者の症状の重症度等を含めた関連する状況に応じて、医師によって判断されることが理解されよう。
【0113】
本発明の化合物の治療用量は、例えば、該治療がなされる特定の使用、該化合物の投与方法、該患者の健康及び状態、ならびに処方医師の判断に応じて変化し得る。医薬組成物における本発明の化合物の割合または濃度は、用量、化学的特性(例えば、疎水性)、及び投与経路を含めたいくつかの要因に応じて変化し得る。
【0114】
錠剤等の固体組成物を調製する場合、主活性成分を医薬品賦形剤と混合して、本発明の化合物の均一混合物を含む固体予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均一と呼ぶ場合、該活性成分は、通常、該組成物全体にわたって均等に分散されているため、該組成物は、錠剤、丸剤及びカプセル剤等の有効性が等しい単位剤形に容易にさらに分割することができる。この固体予備処方をその後、例えば、約0.1~約1000mgの本発明の活性成分を含む上記のタイプの単位剤形にさらに分割する。
【0115】
本発明の錠剤または丸剤は、持続性作用の利点を提供する剤形を得るため、コーティングされる場合もあれば、配合される場合もある。例えば、該錠剤または丸剤は、内側の投与成分及び外側の投与成分を含むことができ、後者が前者の外皮の形態である。これら2成分は、胃での崩壊に耐え、内側の成分が無傷で十二指腸に入るようにするか、またはその放出が遅延されるようにする働きをする腸溶性の層によって分けることができる。様々な材料をかかる腸溶性の層またはコーティングに使用することができ、かかる材料としては、いくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコール及び酢酸セルロース等の材料との混合物が挙げられる。
【0116】
本発明の化合物及び組成物が組み込まれ得る、経口投与または注射による投与用の液体形態としては、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、及び食用油、例えば、綿実油、ゴマ油、ヤシ油、または落花生油で風味付けされたエマルション、ならびにエリキシル剤及び同様の医薬品ビヒクルが挙げられる。
【0117】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、投与の目的、例えば、予防または治療、患者の状態、投与方法等に応じて変化する。治療的適応では、組成物は、すでに疾患に罹患している患者に対して、該疾患及びその合併症の症状を治癒または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与することができる。有効量は、治療される病状、ならびに疾患の重症度、患者の年齢、体重及び全身状態等の要因に応じた担当医の判断に依存する。
【0118】
患者に投与される組成物は、上記の医薬組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌される場合もあれば、滅菌濾過される場合もある。水溶液は、そのままで使用するために包装される場合もあれば、凍結乾燥される場合もあり、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌水性担体と混合される。該化合物の調製物のpHは、通常、3~11、より好ましくは、5~9、最も好ましくは、7~8である。ある特定の上記の賦形剤、担体または安定剤を使用することで、医薬品の塩が形成されることが理解されよう。
【0119】
キット
本出願はまた、有用な医薬品キットも含み、これには、治療有効量の該化合物、またはその実施形態のいずれかを含む医薬組成物を含む1つ以上の容器が含まれる。当業者には容易に分かるように、かかるキットはさらに、様々な従来の医薬品キットの成分の1つ以上、例えば、1つ以上の医薬的に許容される担体を含む容器、追加の容器等を含むことができる。成分の投与量、投与のためのガイドライン、及び/または成分を混合するためのガイドラインを示す使用説明書を、挿入物またはラベルとして、該キットに含めることもできる。
【0120】
本発明を具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示の目的で示すものであり、本発明をいかなる方法によっても限定することを意図していない。当業者には、本質的に同じ結果を得るために変更または修正され得る様々な重要ではないパラメータが容易に認識されよう。
【実施例
【0121】
実施例A:インビトロJAKキナーゼアッセイ
血液疾患または障害を治療するために免疫調節薬及びステロイドと組み合わせて使用することができる選択的JAK1阻害薬を、Park et al.,Analytical Biochemistry 1999, 269, 94-104に記載の以下のインビトロアッセイに従い、JAK標的の阻害活性について調べた。N末端にHisタグを有するヒトJAK1(a.a.837-1142)、JAK2(a.a.828-1132)及びJAK3(a.a.781-1124)の触媒ドメインを、昆虫細胞中でバキュロウイルスを使用して発現させ、精製する。JAK1、JAK2、またはJAK3の触媒活性を、ビオチン化ペプチドのリン酸化を測定することでアッセイした。このリン酸化ペプチドは、均一系時間分解蛍光(HTRF)によって検出した。化合物のIC50は、各キナーゼについて、酵素、ATP及び500nMのペプチドを、100mMのNaCl、5mMのDTT、及び0.1mg/mL(0.01%)のBSAとともに含む50mMのTris(pH7.8)緩衝液を含む40μLの反応物中で測定した。1mMのIC50測定の場合、反応物中のATP濃度は1mMである。反応は、室温で1時間行い、その後、45mMのEDTA、300nMのSA-APC、6nMのEu-Py20を含むアッセイ緩衝液(Perkin Elmer,Boston,MA)20μLで停止させた。ユーロピウム標識抗体への結合を40分行い、HTRFシグナルをFusionプレートリーダー(Perkin Elmer,Boston,MA)で測定した。表1の化合物をこのアッセイで調べたところ、表1のIC50値を有することが分かった。
【0122】
実施例1:多発性骨髄腫を治療するためのJAK1選択的阻害薬の臨床研究
I.デザイン:
・シングルアーム
・第2相
・3剤併用:イタシチニブ(化合物1、表1)、ステロイド(メチルプレドニゾロンまたはデキサメタゾン)、及びレナリドミド
II.主要目的:
・ORR(CR+VGPR+PR)。ORR(奏効率)は、部分奏効(PR)、最良部分奏効(VGPR)、または完全奏効(CR)を有する治験参加者のパーセンテージとして定義され、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準を用い、各4週間または28日間の治療周期後に特定する。
III.主要エンドポイント
・IMWG基準尺度
IV.副次的エンドポイント:
・全生存期間(OS)
・無増悪生存期間(PFR)
・奏効までの期間(TTR):治療の開始からPR、VGPRまたはCRの最初のエビデンスまでの期間として定義される
・奏効持続期間(DOR):奏効例に関して、奏効の開始から奏効の喪失までが測定される
・イタシチニブ+レナリドミド+ステロイドの組み合わせの安全性及び忍容性
・ベースラインから、変数が測定される各来院までの血清及び尿中のMタンパク質レベルの変化及び変化率
・生活の質(QOL)/症状の尺度
V.探索的エンドポイント
・臨床的有用性(CR+VGPR+PR+MR)、ここで、MRは最小奏効であり:PRの基準のすべてではなく一部を満たす患者
VI.選択基準:
・iMID及びプロテアソームを含めた治療の3ライン以上からの(4番目のライン)再発性/難治性多発性骨髄腫(RRMM)。患者は、最後の治療投与から8週間を超えて進行した場合に再発したと見なされる。患者は、治療を受けている最中に、または最後の治療投与から8週間以内に進行した場合は難治性である
・測定可能病変が認められるMMを現在有する。具体的には、患者は、血清電気泳動で、少なくとも0.5g/dLのモノクローナル免疫グロブリンスパイク、及び/または少なくとも200mg/24時間の尿中のモノクローナルタンパク質レベルを示す。測定可能な血清及び尿中Mタンパク質レベルを示さない患者については、無血清軽鎖アッセイ(SFLC)>100mgLを含めるか、または異常なSFLC比を使用することができる。
VII.除外基準:
・プレドニゾンまたは同等のもの20mg/日を超えるコルチコステロイドを治験薬から3週間以内に受けている。治療の開始時のステロイド投与の強度が、治験前のステロイドの投与によって変化しないようにするため。
VIII.治験治療:
・イタシチニブ(各周期1~28日目に100mg~600mgBID)、レナリドミド(各周期1~21日目に10mgQD)、ステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MP)[各周期1~28日目の間に40mgQOD(1日おき)もしくはQD]またはデキサメタゾン[各周期1~28日目に2mg~20mgQODもしくはQD])。
・イタシチニブ(各周期1~28日目に100mg~600mgQD)、レナリドミド(各周期1~21日目に10mgQD)、ステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MP)[各周期1~28日目の間に40mgQOD(1日おき)もしくはQD]またはデキサメタゾン[各周期1~28日目に2mg~20mgQODもしくはQD])。
・QODは1日おきであり、QDは1日1回であり、及びBIDは1日2回である
IX.症例数
・N=およそ87
・ORRが15%を超えるという仮説は、正確な二項分布を使用し、片側第一種過誤≦0.025を用いて検定する。87名の治験参加者では、この検定は、30%のORRに対する帰無仮説を棄却するために、正確な第一種過誤0.0167で90.7%の検定力を有する。
X.治療期間
・6ヶ月、28日周期、生存に関する追跡を行う。
【0123】
実施例2.多発性骨髄腫細胞株の生存におけるイタシチニブ、レナリドミド、デキサメタゾン併用療法のインビトロ分析
ヒト多発性骨髄腫細胞株KMS12BM、OPM2(DSMZ)、MM1.R、MM1.S(ATCC)及びKMS11(JCRB)を、白色96ウェルプレート(Greiner Bio One)で、10細胞にて100μLの培地に播種した。デキサメタゾン(Sigma)、レナリドミド(Chemscene)、イタシチニブの組み合わせ、またはDMSO対照を次いで加えた。用量は、これらの薬剤に対する各細胞株の感受性を検出するように設計したパイロット試験に基づいて選択した。各用量の組み合わせを三連で行った。72時間後、Cell Titer Glo(Promega)アッセイを製造業者のプロトコルの通りに行い、細胞の生存を評価した。
【0124】
図1~5に示す通り、DMSO処理対照と比較した場合に生存に変化がないことでも分かるように、調べたこれら細胞株の中に単剤としてのイタシチニブに感受性のあるものはなかった。これらの細胞株の各々は、レナリドミド/デキサメタゾンの組み合わせに対する感受性が異なった。図1~5に示すように、少なくとも1つの用量のレナリドミド/デキサメタゾンで調べた各細胞株において、イタシチニブをレナリドミド/デキサメタゾンの組み合わせに加えることで、生存が有意に減少した。統計分析は、Prism Graphpadソフトウェアを使用して行った。P値は、対応のないt検定から計算した。p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。観察された生存の減少は、イタシチニブとレナリドミド/デキサメタゾンの組み合わせが、調べた細胞株において相乗的であることを示した。
【0125】
本明細書に記載のものに加えて、本発明の様々な修正は、上記の説明から当業者には明らかであろう。かかる修正もまた、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。すべての特許、特許出願、及び刊行物を含むがこれらに限定されない本出願に引用される各参考文献は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】