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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/24 20060101AFI20220201BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220201BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220201BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20220201BHJP
【FI】
G02B21/24
G02B21/36
G02B21/06
G02B7/28 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021509787
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(85)【翻訳文提出日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2019071582
(87)【国際公開番号】W WO2020038753
(87)【国際公開日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】18189767.9
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520493902
【氏名又は名称】ミルテニイ ビオテック ベー.ファー. ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ウール,ライナー
【テーマコード(参考)】
2H052
2H151
【Fターム(参考)】
2H052AC09
2H052AC34
2H052AD09
2H052AD18
2H052AF14
2H151AA11
2H151FA43
(57)【要約】
対物レンズ(1)と、所望の焦点位置に到達しこれを保持するために、集束動作中に集束方向zにおいて対物レンズと試料(3)との間の距離を調節するためのアクチュエータ(6)と、集束方向におけるアクチュエータのz位置を測定するための絶対z位置検出器(7)と、自動焦点光源(11)と、対物レンズ(1)の光軸から横方向オフセット距離(of)だけオフセットされる位置において対物レンズ(1)の後焦点面(14)内に光源からの自動焦点光の集束点(31)を生成するための第1の光学配置(12、13)であって、その結果として、対物レンズが、自動焦点光のコリメートされた入射ビーム(22)を生成し、この入射ビームが、対物レンズの光軸(15)に対して斜角(β)で基板上に向けられる、第1の光学配置(12、13)と、対物レンズを通って基板表面(4、5)によって反射される際に、コリメートされた入射ビームから自動焦点光のコリメートされた出射ビーム(34、35)を生成し、コリメートされた出射ビームを検出器アレイ(17)上に向けるための第2の光学配置(13、16)と、を備える顕微鏡装置が提供される。本装置は、集束動作中に検出器上のコリメートされた出射自動焦点光ビーム(34、35)の徘徊位置を検出するように構成されるセンサアレイ(17)を備える相対z位置検出器(20)であって、徘徊位置が、z方向における対物レンズと反射基板表面(4、5)との間の距離の変化を反映する、相対z位置検出器(20)と、絶対z位置検出器および相対z位置検出器からの信号に基づいてアクチュエータを制御するように構成される中央制御ユニット(8、10)であって、相対z位置検出器の信号が、焦点発見および焦点保持活動中に絶対z位置検出器を動的に再校正するために使用される、中央制御ユニット(8、10)と、をさらに備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ(1)と、
所望の焦点位置に到達してこれを保持するために、集束動作中に集束方向zにおいて前記対物レンズと試料保持基板(2、3)との間の距離を調節するためのアクチュエータ(6)と、
前記集束方向における前記アクチュエータのz位置を測定するための絶対z位置検出器(7)と、
自動焦点光源(11)と、
前記対物レンズが自動焦点光のコリメートされた入射ビーム(22)を生成し、前記入射ビーム(22)が、前記対物レンズの光軸(15)に対して斜角(β)で前記基板上に向けられるように、前記対物レンズの光軸から横方向オフセット距離(d)だけオフセットされた位置において前記対物レンズ(1)の後焦点面(14)内に前記光源からの自動焦点光の集束点(31)を生成するための第1の光学配置(12、13)と、
前記対物レンズを通って基板表面(4、5)によって反射される際に、前記コリメートされた入射ビームから自動焦点光のコリメートされた出射ビーム(34、35)を生成し、前記コリメートされた出射ビームを、複数のセンサ素子(36)を備えるセンサアレイ(17)上に向けるための第2の光学配置(13、16)と、
前記集束動作中に前記センサアレイ上の前記コリメートされた出射自動焦点光ビーム(34、35)の徘徊位置を検出するように構成される前記センサアレイ(17)を備える相対z位置検出器(20)であって、前記徘徊位置が、前記z方向における前記対物レンズと前記反射基板表面(4、5)との間の距離の変化を反映する、相対z位置検出器(20)と、
前記絶対z位置検出器および前記相対z位置検出器からの信号に基づいて前記アクチュエータを制御するように構成される中央制御ユニット(8、10)であって、前記相対z位置検出器の信号が、前記集束動作中に前記絶対z位置検出器を動的に再校正するために使用される、中央制御ユニット(8、10)と
を備える、顕微鏡装置。
【請求項2】
前記絶対z位置検出器(7)および前記アクチュエータ(6)が、z位置設定点に到達するように前記アクチュエータを制御するための駆動制御装置(8)を含む駆動フィードバック制御ループの部分を形成し、前記中央制御ユニット(10)が、前記相対z位置検出器からの前記信号に従って目標z位置として前記設定点を決定し、その設定点を前記駆動制御装置に入力するように構成される、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記中央制御ユニット(10)は、前記コリメートされた出射自動焦点光ビーム(34)が前記センサアレイ(17)上の既定のしきい値位置(37)に到達した時点を検出し、その時点における前記絶対z位置検出器(7)によって提供された絶対z位置を前記アクチュエータ(8)のしきい値z位置として決定し、前記目標z位置を、前記しきい値z位置に所与の目標距離を足したものとして決定するように構成される、請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記基板(2)が、透明であり、前記対物レンズ(1)に面する前面(4)と、試料(3)に隣接し、前記基板の厚さ(x)だけ離間される前記前面に平行の後面(5)とを含み、前記しきい値z位置が、前記対物レンズ焦点面(14)が前記基板(2)の前記前面(4)と一致する、前記アクチュエータ(8)の前記z位置に対応し、前記目標距離が、前記試料(3)内の標的深さに前記基板の前記厚さ(x)を足したものに対応する、請求項3に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記基板(2)の前記厚さ(x)が、プリセット値である、請求項4に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記中央制御ユニット(10)は、前記基板(2)の前記厚さ(x)を、前記しきい値z位置と、前記コリメートされた出射ビームが前記センサアレイ(17)上の既定の第2の位置に到達する時点において前記絶対z位置検出器(7)によって提供される第2のz位置との違いとして決定するように構成され、前記第2のz位置は、前記対物レンズ焦点面が前記基板の前記後面(5)と一致する、前記アクチュエータ(8)の前記z位置に対応する、請求項4に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記中央制御ユニット(10)は、少なくとも3つのセンサ素子(36)からの強度値の予め校正された重心が前記検出器(20)によって登録されるときに、前記絶対z位置検出器(7)によって報告される位置から前記しきい値z位置を決定するように構成される、請求項3~6のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記中央制御ユニット(10)は、各センサ素子(36)のための基線信号を獲得するように、基板(3)を使用することなしに、センサ素子(36)ごとに、前記信号を前記アクチュエータ(6)の前記z位置の関数として記録することによって、前記相対z位置検出器(20)を校正するように構成され、前記基線信号は、その後、前記基板が適所にある状態で獲得されるセンサ信号から差し引かれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記横方向オフセット距離(d)は、前記対物レンズの前記焦点面が、前記試料基板(3)の前記厚さプラス前記対物レンズの使用可能な作用範囲を通り抜けるとき、反射された前記出射自動焦点光ビーム(34、35)が、前記センサアレイの全幅にわたって動くように、前記対物レンズ(1)の焦点作用範囲、および前記センサアレイ(17)の幅に基づいて選択され、前記第1の光学配置が、好ましくは、集束素子(12)および二色性ビームスプリッタ(13)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
前記第2の光学配置が、二色性ビームスプリッタ(13)およびチューブレンズ(16)を備え、前記第2の光学配置の前記二色性ビームスプリッタ(13)が、前記基板表面(4、5)によって反射され、前記対物レンズ(1)によって収集される自動焦点光ビーム(34、35)を、結像ビームパス(15)から分離するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項11】
前記コリメートされた出射自動焦点光ビーム(34、35)は、少なくとも2つ、および好ましくは、3つ以下のセンサ素子(36)の上に延長し、前記センサアレイ(17)は、好ましくは、センサ素子(36)ごとに1/10000未満の相対強度変動を解消し、1msよりも良好な時間分解能を達成するように構成されるフォトダイオードアレイであり、前記センサアレイ(17)上の前記コリメートされた出射自動焦点光ビーム(34、35)の延長が、好ましくは、前記顕微鏡対物レンズ(1)の使用可能な視野のそれぞれの寸法の12~15%であり、前記センサアレイ(17)のサイズが、好ましくは、前記対物レンズ(1)の前記使用可能な視野全体を利用するように選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項12】
前記自動焦点光源(11)が、回折限界赤外光源、好ましくは、スーパールミネセントダイオードである、請求項1~11のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項13】
前記アクチュエータ(6)が、前記対物レンズ(1)と前記基板(2)との間の距離を少なくとも2mm/sの速度で前記z方向に変化させるように構成され、前記アクチュエータ(6)が、好ましくは、前記対物レンズを前記基板に対して動かすように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の顕微鏡装置を動作させる方法であって、前記中央制御ユニット(10)が、集束方向に関して前記アクチュエータ(6)の目標z位置に到達してこれを保つために使用され、前記基板(2)が、透明であり、好ましくは、試料(3)に隣接し、前面(4)と、前記基板(2)の厚さ(x)だけ離間される前記前面に平行の後面(5)とを含むガラスで作製される、方法。
【請求項15】
前記対物レンズ(1)が、空気中で使用される空気対物レンズ、または、前記基板(2)の材料の屈折率よりも小さい屈折率を有する浸漬液と共に使用される液浸対物レンズであり、前記対物レンズ(1)が油浸対物レンズである場合、前記基板の前記表面(4、5)のうちの少なくとも一方、好ましくは前記前面(4)が、自動焦点光を反射する二色性ビームスプリッタコーティングを有し、試料照明に使用される光に対して透明である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動焦点機能を含む顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動焦点機能を有する顕微鏡装置の例は、米国特許出願公開第2015/0309297(A1)号、同第20130100272(A1)号、および米国特許第9.772,549(B2)号に説明される。別の例は、“Perfect Focus System”という製品名で、日本、港区の株式会社ニコンから市販されている顕微鏡装置である。これらの既知の装置のすべてにおいて、自動焦点光は、顕微鏡対物レンズによって基板上に集束される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、比較的高速かつ正確な自動焦点機能を有する顕微鏡装置を提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1に規定されるような顕微鏡装置によって達成される。
【0005】
好ましくは、z位置アクチュエータの絶対距離測定ユニット、およびアクチュエータ自体が、z位置設定点から所与の距離だけ動くようにアクチュエータに指示するようにプログラムされ得る駆動制御装置を含む駆動フィードバック制御ループの部分を形成し、中央制御ユニットは、相対z位置検出器から獲得される情報に基づいて確立されるこの設定点から、目標z位置までの絶対距離を決定するように構成される。中央制御ユニットは、好ましくは、集束動作の過程で、コリメートされた出射自動焦点光ビームが、相対位置検出器上の既定のしきい値位置に到達する時点を検出するように構成され、したがって、アクチュエータがその目標z位置に到達するためにそこから動く必要がある絶対z位置距離を決定することができる。
【0006】
典型的には、試料に隣接する基板は、透明であり、対物レンズに面する前面と、基板の厚さだけ離間される前面に平行の後面とを含み、しきい値z位置は、対物レンズ焦点面が基板の前面と一致する、アクチュエータのz位置に対応し、目標距離は、試料内の標的深さに基板の厚さを足したものに対応する。
【0007】
基板の厚さxが十分な精度で知られている場合、値xは、中央制御ユニットによって、標的焦点面が試料内にある距離yにプリセット値として追加され得、したがってアクチュエータは、しきい値表面を通る際に距離x+yだけ動かなければならない。さもなければ、中央制御ユニットは、基板の厚さを、しきい値z位置と、コリメートされた出射ビームが検出器上の既定の第2の位置に到達する時点において絶対z位置検出器によって提供される第2のz位置との違いとして決定するように構成され得、第2のz位置は、対物レンズ焦点面が基板の後面と一致する、アクチュエータのz位置に対応する。
【0008】
好ましくは、中央制御ユニットは、相対位置検出器の少なくとも3つのセンサ素子からの強度値の重心が既定値をとるときに、焦点駆動部のz位置検出器によって報告される位置からしきい値z位置を決定するように構成される。
【0009】
提案された顕微鏡装置は、数百ミリ秒以内に所与の焦点位置を発見すること(“焦点発見”モード)、および、それを、変化する熱条件下においてナノメートル精度で維持すること(“焦点保持”モード)が可能であり得る。焦点保持の過程での再調節は、試料が対物レンズに対して相対的に素早く(例えば、10mm/sで)動かされるときにさえ、高精度で位置を保持するほどに高速であり得る。中央知能部は、2つの異なるセンサからの情報をリアルタイムで組み合わせることによって、焦点駆動部アクチュエータを制御する。低マイクロ秒時間領域内の反応時間を有する第1のアクチュエータ関連検出器(“絶対z位置検出器”として機能する)が、顕微鏡ハードウェアの座標内のアクチュエータ位置を測定する。それは、焦点駆動部のアクチュエータを有する高速フィードバックループの部分である。第2の検出器(“相対z位置検出器”として機能する)は、対物レンズによってコリメートされ、1つまたは2つの、試料に関連した界面によって反射される“自動焦点光ビーム”の試料に関連した反射を対象とする。それは、集束プロセスの過程で第1のセンサの“オンザフライ”再校正を可能にする高速反応(100ps反応時間)適応“光バリア”として機能し得る。
【0010】
例えば、アクチュエータが推定上の目標z位置に最大速度で接近するとき、それは、第2の(相対)位置検出器によって提供される光バリアを通り、対応する命令を中央知能部に出し、今度は中央知能部が、この試料に関連した情報を、第1の検出器の絶対位置情報、その時のアクチュエータのz位置と組み合わせて、アクチュエータ座標内の絶対目標z位置にする。第2の相対検出器システムの座標を用いた第1の(絶対)検出器システムのこの“オンザフライ”校正は、焦点発見動作の過程で中央知能部がフィードバックループ制御された焦点駆動部に出す制御命令の基礎を提供する。その一方で、焦点保持動作は、同種の反復的な再校正動作からなり、これによりそれらの周波数は、予期されるニーズを反映するように調節され得る。熱ドリフトが補償されなければならない場合は、1Hz以下で十分であり得、素早く動く試料が焦点に留まらなければならない場合は、5msごとの再校正が必要であり得る。再校正は、中央知能部が、相対位置検出器によって報告される強度重心のシフトを、焦点駆動部アクチュエータのための適切な移動命令へと翻訳することを意味する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において規定される。
【0012】
以後、本発明の例は、添付の図面を参照して例証される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】対物レンズの焦点面が、対物レンズに面する基板表面と一致する、本発明による自動焦点機能を有する顕微鏡装置を含むシステムの例の概略図である。
図1B図1Aと同様の図であるが、対物レンズの焦点面が、対物レンズに背を向けた基板表面と一致する、図である。
図2図1の顕微鏡装置の部分の拡大図である。
図3】顕微鏡対物レンズのアクチュエータのz位置の関数としての、反射された自動焦点光のための光検出器の16個のチャネルの出力信号の例を示す図である。
図4】目標z位置へ向かう顕微鏡対物レンズの動きの間の時間の関数としての、図3の光検出器の16個のチャネルの出力信号の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1では、自動焦点機能を有する顕微鏡装置30の例が例証され、これは、試料基板2の上(倒立顕微鏡の場合)または下(正立顕微鏡の場合)に搭載された物体3を結像するための対物レンズ1と、通常は、第1の光界面4および第2の光界面5を有するカバースリップと、焦点駆動部9とを備える。焦点駆動部9は、対物レンズ1とその搭載基板2上の試料3との間の距離を変化させるためのアクチュエータ6と、アクチュエータ座標内の対物レンズ1のz位置を測定するための絶対z位置検出器7と、アクチュエータ6が、中央制御ユニットとして機能するリアルタイムシステム制御装置10によって与えられるz位置に接近するときに、アクチュエータ6の速度を制御するリアルタイム駆動制御装置8とを備える。以下において、対物レンズが、焦点位置を変更するために、試料に対して動かされるときはいつでも、同じ趣旨で、固定された対物レンズ位置に対して試料を動かすこともできる、ということを理解されたい。
【0015】
リアルタイムシステム制御装置10は、ユーザから獲得された命令をアクチュエータ6の制御装置8に直接中継することができる。自動焦点機能は、ユーザ要求-試料およびその支持基板に対する位置-を、焦点駆動部9が解釈することができる要求、具体的には、その絶対位置に関する命令へ翻訳するように、焦点駆動部9の絶対位置検出器7からの情報と相対位置検出器20からの情報との釣り合いをとることによって確立され得る。絶対および相対位置検出器からの情報のこのようなマッチングは、kHzレートで発生し得、2つの検出器システムをリアルタイムに連携させるように、等しいレートで更新される絶対位置焦点駆動部9のための命令を引き起こす。相対位置検出器20を焦点駆動部9の即時フィードバックループから外すが、代わりに、知的リアルタイムフィルタ(制御装置10によって実現される)を挿入することにより、焦点駆動部9の潜在的に危険な動きを防ぐことができる妥当性テストが可能になる。焦点駆動部9は、1gをはるかに上回る加速を呈することができ、例えば、10μsごとに読み出され得、数ミリメートルの広範な進行範囲にわたって作用する非常にロバストな(絶対)位置センサ7を保有する一方、センサアレイ17、センサエレクトロニクス18、およびリアルタイム制御装置19を備える相対位置検出器20は、限られた作用範囲のみを呈し、例えば、10倍遅いレートで読み出され、反射表面4および5それぞれにおける凸凹によって乱され得る。
【0016】
相対z位置情報は、集束素子12を使用することによりIR(赤外)レーザ11からの光を集束し(以後、“自動焦点光”とも称される)、それを、好適な二色性ビームスプリッタ13の助けを借りて、IRレーザビームの焦点(点31として例証される)が対物レンズ1の後焦点面14に落ち(例えば、焦点距離fの±10%以内)、したがって試料2に面する対物レンズ1の側にコリメートされたビーム22を作成するような様式で、顕微鏡の結像光ビーム15と結合することによって獲得され得る(ビームスプリッタ13は、図1Aおよび図1Bの紙面から外への反射によって、自動焦点光ビーム(22、34、35)を結合し、それぞれ結像光ビーム15から分離するということに留意されたい。しかしながら、簡潔性のため、ビームは、同じ平面内に留まって示される)。自動焦点光の集束円錐33の開口数(NA)は、対物レンズ1を通るコリメートされたレーザビームが、対物レンズの使用可能な視野の少なくとも6%、例えば、10~12%の直径(以後使用される場合、スポット/ビーム“直径”は、強度が1/eに低下した点間の距離である)を呈するような方式で調節される。2つの基板界面4および5からの反射光(それぞれビーム34および35として示される)は、対物レンズ1によって収集され、二色性ビームスプリッタ13によって顕微鏡結像ビームパス15から分離される。チューブレンズ16は、各々が別個のチャネルを形成する複数の検出器素子36を備える相対z位置センサ20のセンサアレイ17上に反射ビーム34および35の画像を形成する(反射表面4および5が存在することが前提で)。各センサチャネルは、好ましくは、強度値を1kHzよりも良好なレートで記録およびデジタル化すること、および∂I/I=5×10-5を下回る強度変化を解消することができる。各センサ素子36のサイズおよびセンサ素子上の自動焦点光の強度は、好ましくは、各センサ素子36が1msあたり10光子超を登録することができるように選択される。
【0017】
相対位置センサ20からのデータは、焦点駆動部9の絶対位置検出器7からのデータと組み合わされ、リアルタイム顕微鏡制御装置10によって解釈され、こうしてリアルタイム顕微鏡制御装置10が、焦点駆動部9の絶対位置を、試料基板2に対するその距離に関して、常に再校正すること、および、焦点駆動部9に命令を出すことを可能にし、こうして焦点駆動部9が、ユーザが望む焦点位置を仮定し、逸脱の場合は、それを維持することを可能にする。
【0018】
以下の例では、反射ビームは、センサ素子36の幅の2~2.5倍に対応する幅を有すると仮定されるため、3つを超えるセンサ素子36を占有することは決してない。これらのセンサ素子36の各々は、1kHzよりも良好な時間分解能を有するリアルタイム検出器エレクトロニクス18によって記録され、次いで制御装置19の知的リアルタイムプロセッサによって評価される強度信号を送達する。センサアレイ17の幅全体は、対物レンズ1の使用可能な視野へ調節され、センサ素子36の数は、各素子が、∂I/I=510-5をはるかに下回る強度変化を区別することができるように選択される。
【0019】
図1Aに例証される例では、第1の光界面4(第2の光界面5よりも対物レンズ1に近い)から生じる第1の反射ビーム34(以後、“第1の反射”とも)は、対物レンズ1の焦点面が第1の界面4に到達するとすぐに、図1A内のセンサアレイ17の上縁に位置し、図3では#1~#3がラベル付けされる、センサアレイ17の3つのセンサ素子の第1の群(図1Aでは37によって示される)によって記録される。対物レンズ1の対応するz位置は、図3ではZ-1で示され、図3は、絶対位置検出器8によって検知されるようなアクチュエータ6のz位置の関数としての、反射された自動焦点光のためのセンサアレイ17のチャネルの出力信号の例を示す。
【0020】
図1Bに示されるように、対物レンズ1の焦点面が、集束プロセスの過程で、第2の光界面5まで進んだとき、最初の3つのセンサ素子(図1Bでは37によって示される)を通るのは、この界面5からの反射35であるが、第1の表面4からの反射34は、このとき、位置38においてセンサアレイの真ん中のどこかで見られる。
【0021】
対物レンズ1の焦点面が、図3ではZで示される位置に到達するときである、対物レンズ1の作用範囲の反対の端においては、第1の界面4からの反射ビーム34は、図1Bではセンサ17の下縁に位置し、図3では#14~#16がラベル付けされる最後の3つのセンサ素子39によって検出されるが、第2の表面5からの反射35は、センサアレイの真ん中(位置38)のどこかでセンサ素子によって登録される。
【0022】
典型的には、16個のセンサ素子は、Z-1からZの範囲に及ぶz位置をカバーするのに十分であり得る。上で述べたように、図3は、対物レンズ1の焦点面が、一定の速度で動き、まずz位置Z-1、すなわち、対物レンズ1に面するカバースリップ境界4、次いでz位置Z、すなわち、試料2に面する試料基板3の第2の界面5を通って動き、最終的に、対物レンズ1の作用範囲の端に対応するz位置Zに到達する間の、個々のセンサ素子36(#1~#16で示される)の予測される信号の例を概略的に表示する。
【0023】
各チャネル内の個々の信号ピーク(図3の例では、第1および第2の反射に対応する信号ピークは、それぞれ“A”および“B”で示される)として相対位置検出器20によって登録されるような、所与のセンサ素子36における、第1の反射ビーム34および第2の反射ビーム35(以後、“第2の反射”とも)の出現の間のアクチュエータ6が進行する距離“x”は、焦点駆動部9の絶対位置検出器7によって絶対的に測定され、測定された値は、試料基板(カバースリップ)3の実際の厚さに対応し、対物レンズ1の補正環を自動的に調節するために使用され得る。
【0024】
本明細書に説明される自動焦点機構は、第1の界面4からの第1の反射Aの出現を、ユーザ定義された目標焦点位置までのその経路上の新規の開始点をマークする“光バリア”として使用し得る。この光バリアは、少なくとも3つのセンサ素子36からの強度値の予め校正されたセットが相対位置検出器20によって登録されるときに当てられる。それは、リアルタイムで、および確定的に再現可能な遅延を伴って、中央システム制御装置10へ中継され、中央システム制御装置10が、第1の界面4が通った焦点駆動部9の絶対z位置を正確に知るために、相対位置センサ20からのこの情報を絶対位置検出器7からの情報と組み合わせる。
【0025】
2つのz位置検出器7および20によるこのz位置比較は、中央システム制御装置10が、ユーザ要求の最終目的地を絶対的に決定し、それを焦点駆動部9へと、焦点駆動部9が所望の目標値を受け入れるのに間に合うように中継することを可能にする。これが必要な精度で作用するためには、検出器および制御エレクトロニクスは、10kHz~100kHz以内の帯域幅だけでなく、再現可能に決定論的な反応時間および遅延も呈さなければならない。
【0026】
所望の最終z目的地が第2の界面5である場合、中央システム制御装置10は、焦点駆動部9の絶対位置を、それがZ-1を通る瞬間に読み出し、基板厚さ値xを追加し、新しく規定された絶対位置Z-1+xを目指す。第2の界面5を越えた目標z位置が要求される場合、焦点駆動部9は、それに応じてリアルタイムでプログラムされ、すなわち、それは、Z-1+x+yへ進むための情報を獲得し、yは、試料2内への要求された距離である。
【0027】
基板2の厚さxがまだ分かっていない場合、自動焦点システムは、その既知の基板タイプ(例えば、カバースリップは、通常、170μmの厚さを有する)に基づいて条件付き推定を行う場合があり、X-1+170μmを目指し、これにより位置X-1はここでも、光バリアを通るときに決定され、次いで、測定された第2の反射Bに基づいて第2のステップにおいてその推定上の位置を補正する。そのような第2の反射Bが利用可能でない場合、ユーザは、自ら手動で微調整を実施しなければならず、自動焦点システムは、それを、同じ試料および試料基板を使用した将来のタスクのために記憶する。標準カバースリップ厚さが、通常、数マイクロメータしか変動しないことを考えると、この微調整は、通常、小さいものにすぎない。
【0028】
好ましくは、焦点駆動部は、100μsを超えない相対位置検出器20の反応時間、および5ms以下の、相対位置検出器20からデータを獲得することと焦点駆動部9に再プログラミング命令を出すこととの間の、中央システム制御装置10の不感時間を伴って、試料3に接近することにおいて2mm/sを超える速度を可能にしなければならない。
【0029】
図4は、集束プロセスのための時間の関数としての、個々のセンサ素子36の強度量の例を表示し、これによりT-1において位置Z-1に到達することは、焦点駆動部9にZ=Z-1+xを指示する新規の位置命令を引き起こす。Tにおいて、目標位置Zに到達する。第2の界面5からの反射Bが存在すると仮定すると、対応する3つのセンサチャネルは、強度値の予期された3点セットを示す。図4の例では、時間T(目標位置Zに到達した)においてセンサアレイ17の検出器素子#1~#3は、第2の反射B(第2の界面5に由来する)の位置を測定する一方、センサ素子#8~#10によって記録される強度値の3点セットは、第1の反射A、すなわち、第1の界面4によって反射される光から生じる。図4内の破線は、位置Z-1から位置Zへ動く間の、時間の関数としての対物レンズ/焦点駆動部のz位置を示す。
【0030】
“焦点保持”動作の過程でのz位置補正は、同じ手順を用いる。センサ17の任意の3つのセンサ素子によって測定される十分に検出可能な反射(好ましくは、第1の界面4からの反射A)は、“保持位置”の基準として使用され、この位置からの逸脱は、好ましくは、少なくとも1kHzの帯域幅で登録され、評価され、好ましくは5ms以内に、相対検出器20によって測定されるような相対位置に対する絶対検出器7の再校正をもたらし、こうして焦点駆動部9の対応するz位置補正を可能にする。
【0031】
すでに上で述べたように、IRレーザ11からの光は、対物レンズ1の後焦点面14内へ集束され、この焦点は、対物レンズ1によるコリメーションが、対物レンズ1の中心軸に対して角度βだけ傾けられるビーム22を生み出すように、中心から、すなわち、対物レンズの光軸から、値dだけオフセットされる。対物レンズと界面4との間の媒体23の屈折率が空気の屈折率に対応する限りは、条件sinβ=d/fが当てはまる。浸漬液が使用されている場合、適切な補正が行われなければならない。試料に関連した界面からの逆反射は、“-β”の角度で対物レンズ1によって収集され、好適なチューブレンズ16の助けを借りてセンサ17上に結像される。最大感度の場合、センサ17は、対物レンズ1の使用可能な視野に広がらなければならず、反射の1/e直径は、その範囲のおよそ12~15%を構成しなければならない。通常、16個のセンサ素子からなるセンサアレイ17で十分である。より細かい間隔は、各センサ素子によって検出される信号を低減させ、したがって信号対雑音比を減らす。10kHz帯域幅で510-5という小さいΔI/Iの変化を区別することができることは、1秒あたり41012の検出光子という高い光電流を必要とし、この条件は、信号があまり多くのセンサ素子に広がり過ぎないことを必要とする。
【0032】
入射レーザビーム22が対物レンズ1の光軸15に平行に光学システムに入っていた場合、第1の反射界面4からの反射ビーム34は、中心対称の検出器17の真ん中に遭遇し、それは、基板3内へ、および試料2内へより深く集束するとき、一方の側にシフトすることになる。相対z位置を測定するのに利用可能な全視野を利用するためには、入射ビーム22を、第1の界面4からの反射ビーム34が真ん中近くでセンサアレイ17に遭遇するような程度まで傾けなければならないが、第2の界面5からの第2の反射ビーム35は、対物レンズ1の焦点面が試料界面5に接近するとき、センサ17の最初のいくつかの素子によって登録される。前者(34)は、対物レンズが試料3内の対物レンズ1の作用空間を出るときに、センサ17のアレイの他方の端に遭遇する。
【0033】
自動焦点システムの静的および動的校正が存在する。システム依存であり、1回実行される必要がある静的校正は、2ステップで実施される。まず、焦点駆動部9が、その(絶対)作用空間の一方の端から、いかなる試料基板3もビーム内に存在することなく、動かされる。センサ素子ごとの、結果として生じるゼロ線は、光学システム内からのすべての反射を含み、これらの反射は、システム定数として記憶され、全自動焦点手順の間リアルタイムで差し引かれる。
【0034】
次に、同じ手順が、両側にマークが付いている典型的なガラス基板3(カバースリップ)の存在下で実行される。顕微鏡が表面4上のマークの鮮明な画像を示すときである、対物レンズ1の焦点面が第1の界面4の平面と一致するとき、反射ビームは、センサアレイ17の一方の端の近くの3つのセンサ素子38の上、例えば、センサ素子#1~#3の上に分散される。これらの3つの強度値の重心は、記憶され、すべての後続の集束手順のための“光バリア”とされる。次に、対物レンズ1の焦点面は、基板3の他方の表面5が鮮明であり、焦点が合うまで動かされる。第1の反射34はこのとき、センサアレイ17の真ん中近くの3つのセンサ素子(38)の方へ動いているが、第2の反射35は、素子の最初の4分の1のところ(位置37)に現れる。基板3の厚さxである、2つの表面4および5の間の実際の“z距離”は、第1の反射34の出現と第1のセンサ素子37上の第2の反射35との間の、絶対z位置センサ7によって測定される距離に由来する。第1の位置と第2の位置との間での表面4からの反射の形状の変化は、第2の界面5を越えた試料3内の焦点位置へ外挿され得る。ピークAとピークBとの間の距離は、例えば、ピークAの重心とピークBの重心との間の距離に対応する。
【0035】
動的校正は、自動焦点機能が要求されるときである、すべての実験の過程で発生する。目的が、長期実験の過程で熱ドリフトを補償することであるとき、相対センサ20に対して絶対センサ7を数秒ごとに再校正するだけで十分であり得る。しかしながら、目的が、素早く動く試料に常に焦点を保つことであるとき、ミリ秒ごとに再校正して、同様の速度で新規の位置命令を焦点駆動部9に出す必要があり得る。
【0036】
上で説明した手順は、光学的に検出可能な界面4および5が存在することを必要とし、界面のうちの少なくとも一方は、基板2自体の屈折率とは異なる屈折率を呈する媒体から基板2を分離する必要がある。例えば、浸漬媒体が空気(屈折率n=1)または水(n=1.33)であり、支持媒体がガラス(n=1.51)である場合がこれに当てはまる。浸漬液の屈折率(n=1.51)がガラスの屈折率と等しい油浸対物レンズでは、2つの界面4および5のうちの一方は、結像に使用されるすべての光を透過するが、自動焦点光源11からの光22を反射する層で被覆され得る。この場合、選択界面は、好ましくは、第1の界面4であるが、それは、第1の界面4からの反射34は形状において高度に再現性がある一方で、第2の界面5からの反射は、それに付着される試料3によって歪められ得るためである。1つのみの反射表面/界面のみが利用可能である場合、基板の厚さx(すなわち、界面4および5の間の距離)は、実験的に決定することができないため、ユーザは、観察下で第2の界面5の推定上の位置を補正しなければならない。この補正値は、そこから、第1の界面4の測定された絶対z位置と一緒に、焦点駆動部9がそこから所与の焦点位置に到達するためにどれくらい遠くまで動かなければならないかを決定するために利用され得る。第2の反射界面5が利用可能であったとしても、対物レンズに近い方の界面である第1の界面4を基準として使用することが有利であるが、それは、第1の界面4がクリーンな反射34をもたらす一方で、第2の界面5(基板2と試料3との間の界面)からの反射35が、一貫して均質な反射表面を常に構成しない場合があるためである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】