(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】視神経乳頭の自動形状定量化の方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220201BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G06T1/00 290Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518516
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2019076935
(87)【国際公開番号】W WO2020070294
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509305088
【氏名又は名称】シャリテ-ウニベルジテーツメディツィン ベルリン
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】ブランド,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カダス,エラ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヤダブ,スニール ユマール
(72)【発明者】
【氏名】モタメディ,セイェダマーホセイン
(72)【発明者】
【氏名】ポール,フリードマン
【テーマコード(参考)】
4C316
5B057
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA24
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB21
5B057AA07
5B057BA02
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5B057DB03
5B057DB05
5B057DB09
5B057DC04
5B057DC05
(57)【要約】
本発明は、光コヒーレンストモグラフィーで取得した三次元画像データ(1)から視神経乳頭を自動形状定量する方法及びコンピュータプログラムに関し、a)網膜の三次元画像データ(1)、視神経乳頭の少なくとも一部を含む画像データを提供する工程(100)であって、画像データは、関連するピクセル値を有するピクセルを含む、前記工程、b)三次元画像データ(1)において、視神経乳頭の解剖学的部分を特定する工程(200、300)であって、解剖学的部分は、網膜色素上皮(RPE)部分(3)及び内境界膜(ILM)部分(2)を含む、前記工程、c)網膜色素上皮部分(3)の下部境界についてのRPEポリゴンメッシュ(30)を決定する工程であって、RPEポリゴンメッシュ(30)は、網膜色素上皮部分(3)の下部境界に沿って延びる、前記工程、d)内境界膜部分(2)のILMポリゴンメッシュ(20)を決定する工程であって、ILMポリゴンメッシュ(20)は、内境界膜部分(2)に沿って延びる、前記工程、
e)RPEポリゴンメッシュ(30)及びILMポリゴンメッシュ(20)から視神経乳頭の形態学的パラメーター(10)を決定する工程、f)視神経乳頭の形態学的パラメータ(10)及び/又はRPEポリゴンメッシュ(30)の少なくとも一部の表現及び/又はILMポリゴンメッシュ(20)の少なくとも一部の表現を表示する工程、
を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コヒーレンストモグラフィーで取得した三次元画像データ(1)から視神経乳頭を自動形状定量する方法であって、
a)網膜の三次元画像データ(1)、視神経乳頭の少なくとも一部を含む画像データを提供する工程(100)であって、画像データは、関連するピクセル値を有するピクセルを含む、前記工程、
b)三次元画像データ(1)において、視神経乳頭の解剖学的部分を特定する工程(200、300)であって、解剖学的部分は、網膜色素上皮(RPE)部分(3)及び内境界膜(ILM)部分(2)を含む、前記工程、
c)網膜色素上皮部分(3)の下部境界についてのRPEポリゴンメッシュ(30)を決定する工程であって、RPEポリゴンメッシュ(30)は、網膜色素上皮部分(3)の下部境界に沿って延びる、前記工程、
d)内境界膜部分(2)のILMポリゴンメッシュ(20)を決定する工程であって、ILMポリゴンメッシュ(20)は、内境界膜部分(2)に沿って延びる、前記工程、
e)RPEポリゴンメッシュ(30)及びILMポリゴンメッシュ(20)から視神経乳頭の形態学的パラメーター(10)を決定する工程、
f)視神経乳頭の形態学的パラメータ(10)及び/又はRPEポリゴンメッシュ(30)の少なくとも一部の表現及び/又はILMポリゴンメッシュ(20)の少なくとも一部の表現を表示する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
RPEポリゴンメッシュ(30)及びILMポリゴンメッシュ(20)は、それぞれ、頂点及び面(22、32)、及び特に端(23、33)を含み、ILMポリゴンメッシュ(20)の各面(32)について、ILMポリゴンメッシュ(20)とRPEポリゴンメッシュ(30)との間の対応が決定されるように、RPEポリゴンメッシュ(30)の対応する頂点が決定される(400)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
画像データ(1)において、ブルッフ膜(BMO)(43)の開口部が自動的に特定され、特定されたブルッフ膜開口部(43)から一式の点(40)は、ブルッフ膜開口部を表すように生成され、特に、一式の点(40)がブルッフ膜開口部領域(42)を囲む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
楕円形(41)がブルッフ膜開口部を表す点(40)に取り付けられ、楕円形(41)がブルッフ膜開口部領域(42)を囲み、楕円形(41)は、平面によって、特に画像データ(1)のAスキャン方向に直交して延びる平面によって構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
楕円形(41)がアフィン変換によって円に変換される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
RPEポリゴンメッシュ(30)についての中央RPE領域(34)及びILMポリゴンメッシュ(20)についての中央ILM領域(24)が決定され(500)、それぞれの中央領域(24、34)は、それぞれのポリゴンメッシュ(20、30)への楕円(41)の投影に対応する領域によって囲まれ、特に、投影は、画像データ(1)のAスキャン方向に沿っている、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
視神経乳頭カップ体積(7)が決定され、ILM及びRPEポリゴンメッシュ(20、30)から計算され、視神経乳頭カップ体積(7)は、RPEポリゴンメッシュ(30)の下に延びるILMポリゴンメッシュ(25)の部分によって囲まれた体積である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
視神経乳頭カップ表面(8)が、RPEポリゴンメッシュ(30)及びILMポリゴンメッシュ(20)から計算され、視神経乳頭カップ表面(8)は、RPEポリゴンメッシュ(30)の下に延びるILMポリゴンメッシュ(25)の表面部分に対応する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ILMポリゴンメッシュ(20)から内境界膜部分(2)について曲げエネルギー(6)が決定され、曲げエネルギー(6)がILMポリゴンメッシュ(20)の曲率の大きさに対応し、特に曲げエネルギー(6)が中央のILM領域(25)に対してのみ決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
RPEポリゴンメッシュ(30)及び/又はILMポリゴンメッシュ(20)が三角形分割された表面であり、特にILM三角形分割された表面(20)の各面(22)について、ILM三角形分割された表面(20)とRPE三角形分割された表面(30)との間の対応が確立されるように、RPE三角形分割された表面(30)の対応する頂点が決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
網膜色素上皮部分(3)についてのRPEポリゴンメッシュ(30)を決定する前に、前記部分は、特に薄板スプライン法によって平滑化され、特に、平滑化が網膜色素上皮の下部境界に適用され、又は平滑化が網膜色素上皮の下部境界にのみ適用され、RPEポリゴンメッシュ(30)は、特に平滑化された網膜色素上皮部分の下部境界について決定される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
網膜色素上皮部分(2)の下部境界のRPEポリゴンメッシュ(30)を決定する前に、前記部分(2)は、特にブルッフ膜開口領域(42)について、特に薄板スプライン法によって補間され、RPEポリゴンメッシュ(30)は、網膜色素上皮部分の補間された下部境界について決定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
網膜色素上皮部分(2)が平面になる変換が決定され、画像データ(1)及び/又はILMポリゴンメッシュ(20)、RPEポリゴンメッシュ(30)、及び特にブルッフ膜開口部は、同じ変換によって変換される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法の工程をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コヒーレンストモグラフィーから取得された三次元画像データからの視神経乳頭の自動形状定量化のための方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
視神経乳頭(ONH)は、多くの神経変性及び自己免疫性炎症状態の影響を受ける。光コヒーレンストモグラフィーは、視神経乳頭の高解像度の三次元スキャンを取得できる。ただし、視神経乳頭の複雑な解剖学的構造及び病理学により、画像のセグメンテーションは困難な作業になる。
【0003】
この課題は、例えばUS2015/0157202A1で対処されている。US2015/0157202A1は、変形した視神経乳頭のモデリングを可能にし、視神経乳頭の形状パラメータを生成することを可能にする、光コヒーレンストモグラフィーに基づく自動視神経乳頭記述の方法を教示している。
【0004】
2つの膜が視神経乳頭領域を定義し、視神経乳頭を内眼及び外眼:内境界膜(ILM)及びブルッフ膜(BM)に対して限定する。ILMは、眼の硝子体(硝子とも呼ばれる)を網膜組織から分離し、一方、BMは、脈絡膜の最も内側の層、すなわち、眼の血管層である。BMは、脈絡膜及び網膜色素上皮(RPE)の間の膜である。BMには、視神経が伸びて視神経乳頭を形成する開口部を有する。
【0005】
ILM、RPEをセグメント化し、及びBMの開口部を特定することは、視神経乳頭のイメージングバイオマーカーを計算するための重要な出発点を提供する。
【0006】
当技術分野で知られている方法は、画像ベースの評価及びモデリング方法であり、すなわち、視神経乳頭の物理的特性のモデリング及び予測を可能にする視神経乳頭の解剖学的部分についての数学的記述は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0157202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、視神経乳頭の解剖学的特徴の物理的特性のモデリングを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1の特徴を有する方法及び請求項14に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
有利な実施形態は、下位請求項に記載されている。
以下において、例示的な実施形態の説明が、例及び図の説明によって与えられる。以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による方法の選択された処理工程を示すフロー図。
【
図2】本発明による強調表示された処理工程を伴うBスキャン。
【
図3】モーションアーティファクトを有するRPE表面及び平滑化後の同じRPE表面。
【
図4】RPE及びILMポリゴンメッシュの表現並びにブルッフ膜の開口部を表すポイント。
【
図5】ブルッフ膜の開口部及び、ブルッフ膜の開口部領域を囲むフィットした楕円を表す一式の点。
【
図6】対応する面及び頂点を決定するための投影されたILMポリゴンメッシュを有するRPEポリゴンメッシュ。
【
図7】さまざまな形態学的パラメータの視覚的表現。
【
図8】ブルッフ膜がONHの近くに見られるONHのBスキャン。
【発明を実施するための形態】
【0011】
請求項1によれば、光コヒーレンストモグラフィーで取得された三次元画像データからの視神経乳頭の自動形状定量化のための方法は、以下の工程を含む:
a)網膜の三次元画像データ(1)、視神経乳頭の少なくとも一部を含む画像データを提供する工程(100)であって、画像データは、関連するピクセル値を有するピクセルを含む、前記工程、
b)三次元画像データ(1)において、視神経乳頭の解剖学的部分を特定する工程(200、300)であって、解剖学的部分は、網膜色素上皮(RPE)部分(3)及び内境界膜(ILM)部分(2)を含む、前記工程、
c)網膜色素上皮部分(3)の下部境界についてのRPEポリゴンメッシュ(30)を決定する工程であって、RPEポリゴンメッシュ(30)は、網膜色素上皮部分(3)の下部境界に沿って延びる、前記工程、
d)内境界膜部分(2)のILMポリゴンメッシュ(20)を決定する工程であって、ILMポリゴンメッシュ(20)は、内境界膜部分(2)に沿って延びる、前記工程、
e)RPEポリゴンメッシュ(30)及びILMポリゴンメッシュ(20)から視神経乳頭の形態学的パラメーター(10)を決定する工程、
f)視神経乳頭の形態学的パラメータ(10)及び/又はRPEポリゴンメッシュ(30)の少なくとも一部の表現及び/又はILMポリゴンメッシュ(20)の少なくとも一部の表現を表示する工程。
【0012】
光コヒーレンストモグラフィー(OCT)法は、特に、Aスキャン、Bスキャン、及びCスキャンの形態で画像データを提供し、「Aスキャン」という用語は、網膜に本質的に直交する方向に向けられた一次元線スキャンを指し、「Bスキャン」という用語は、特に横方向にシフトされたAスキャンから再構成された二次元画像データを指し、「Cスキャン」という用語は、特に、複数のBスキャンから再構成された三次元画像データを指す。
【0013】
本明細書の文脈において、Aスキャンに沿った方向は特にz軸と呼ばれ、x軸及びy軸はユークリッド座標系でz軸に直交する方向に向けられる。
【0014】
したがって、特にz軸は網膜組織から硝子体に向かって、特に眼の光軸に沿って延びる。
【0015】
前記座標系に関して異なる方向に向けられた画像データ一式は、当業者によって知られているように、前記座標系と一致させることができる。
【0016】
特に画像データのピクセルは、Cスキャンの最小の画像要素を表し、つまり、ピクセルはボクセルであり得る。
【0017】
各ピクセルは、ピクセルの位置又はピクセルに含まれる特徴を決定できるように、二次元又は三次元の画像座標に関連付けることができる。
【0018】
画像データは、二次元又は三次元画像として表すことができ、画像は特にグレースケール画像である。
【0019】
特にピクセル値は、ピクセル値によって特に表される特定の数値の形でコード化された光コヒーレンストモグラフィー信号強度情報を運ぶ。
【0020】
視神経乳頭は、典型的には、様々な解剖学的構造に囲まれており、前記解剖学的構造は、しばしば、画像データのx-y平面に本質的に延びる層の形態を有する。これらの層は、視神経乳頭によって中断される。
【0021】
したがって、特に網膜色素上皮層は視神経を取り囲んでいる。ブルッフ膜の開口部は、特に、視神経が網膜色素上皮を遮る境界、網膜色素上皮層及び視神経の間に位置する。
【0022】
本発明によれば、網膜色素上皮(RPE)部分は、画像データにおいて特定され、RPE部分は、眼の網膜色素上皮の少なくとも一部を含む。
【0023】
本発明の特に1つの目的は、ブルッフ膜に沿って延びるポリゴンメッシュを見つけることである。ただし、ブルッフ膜は通常、OCT画像では別個の構造として視認されない又は認識されないため、ブルッフ膜開口部の近くの視神経乳頭領域に特有のブルッフ膜オーバーハングがない限り、代わりに、RPEの下部境界部分が特定される。ブルッフ膜はRPE部分の下部境界に隣接しており、比較的薄いため、RPE部分の下部境界のポリゴンメッシュは、ブルッフ膜の位置及び延長を正確に表している。
【0024】
ブルッフ膜が視認できる、又は識別できる部分、例えば、視神経乳頭領域に近い膜の張り出しにおいて、RPEポリゴンメッシュはブルッフ膜に沿って伸びている。
【0025】
本明細書の文脈における「下部境界」という用語は、硝子体とは反対側を向くRPE部分の限界を指す。「下部境界」という用語は、特に硝子体とは反対側を向いているRPEの表面を指す。対照的に、RPE部分の上部境界は、硝子体に面するRPE膜の表面を指す。したがって、OCT画像データのRPE部分から2つの境界を特定できる。RPE膜は通常非常に薄く、ゆえにOCTデータでは薄い層としてのみ表されるため、「下部」及び「上部」境界という用語は、特に膜の面を指す。
【0026】
また、内境界膜(ILM)部分は、内境界膜の少なくとも一部を含む画像データにおいて特定される。
【0027】
「特定する」という用語は、特に、セグメンテーション、すなわち、特に、そこに画像化された問題の特徴を有するピクセルの抽出を指す。
【0028】
OCT画像データの解剖学的部分のセグメンテーションに関連する様々な方法がある。
【0029】
網膜色素上皮(RPE)部分及び内境界膜(ILM)部分の下部境界の特定は、特にコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって、特に完全に自動化されて容易になる。
【0030】
光コヒーレンストモグラフィー画像の信号対雑音比が比較的低いため、RPE及びILM部分の特定は、しばしばノイズの多いRPE及びILM層につながる。
【0031】
したがって、本発明の別の実施形態によれば、RPE部分及び/又はILM部分は、RPEポリゴンメッシュ及び/又はILMポリゴンメッシュがそれぞれの部分について決定される前にさらに処理される。
【0032】
そのような処理は、例えば、それぞれの部分の平滑化、補間、及び/又は反復推定を含み、後者は、特に、それぞれの部分の外れ値を繰り返し除去することによる。
【0033】
RPE部分及びILM部分が特定され、特にそれに応じて処理されると、RPE部分の下部境界に対してRPEポリゴンメッシュが決定され、ILM部分に対してILMポリゴンメッシュが決定される。それぞれのポリゴンメッシュが達成され、ポリゴンメッシュは実質的にそれぞれの部分に沿ってそしてそれぞれの部分に延びる。
【0034】
RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュは、RPE部分の下部境界、つまりそれぞれブルッフ膜及びILM部分の複雑さの少ない表現を提供する。したがって、RPEポリゴンメッシュは基本的にRPE部分(及びしたがってブルッフ膜)の下部境界に適合するが、特にポリゴン面のサイズのオーダーのスケールで逸脱する可能性がある。同じことがILM部分と対応するILMポリゴンメッシュにも当てはまる。
【0035】
RPE部分の下部境界のポリゴンメッシュ及びILM部分のポリゴンメッシュにより、ONHの重要なプロパティの物理モデリングが可能になる。
【0036】
ポリゴンメッシュは、三次元に広がる複雑な表面の近似を可能にし、この近似は、特にRPE部分又はILM部分の下にある下部境界の簡略化された表現である。ポリゴンメッシュは、物理的特性及び特性の効率的な計算、及び視神経の物理的特性のシミュレーション又は推定を可能にする。
【0037】
これは、視神経乳頭の形状を決定するだけの従来の画像ベースのセグメンテーション方法では不可能である。
【0038】
特に、伝統的なの形態計測法は、解剖学的部分の体積、サイズ、長さなどの形状パラメータを決定し、2.5次元の表面、つまりXYグリッド上のグラフ関数をもたらす層のセグメンテーションに基づいている。対照的に、本発明は、ILMの三次元多様体表面及びRPE部分の下部境界を使用して、上記の指名された形状パラメータなどの形態学的パラメータを計算することができる。
【0039】
別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュの面及び/又は端は、例えば、ばね定数又は弾性モジュールなどの物理的特性が割り当てられる。
【0040】
さらに、RPEポリゴンメッシュ及び/又はILMポリゴンメッシュ間の相互作用を確立して、視神経乳頭に作用する圧力又は変形力などの物理的特性を推定され得る。
【0041】
計算は、例えば有限要素アプローチ法により、ポリゴンメッシュでより高速かつ効率的に実行され得る。
【0042】
ポリゴンメッシュによるRPE部分及びILM部分の近似は、そのような決定されたパラメータの高精度を維持しながら、形態学的パラメータのより効率的な計算を可能にする。
【0043】
形態学的パラメータは、特に形状パラメータ、特に視神経乳頭の幾何学的及び/又は物理的特性に関連する形状パラメータである。
【0044】
形態学的パラメータが形状パラメータである場合、前記形状パラメータは、例えば、視神経乳頭の形状に関連するサイズ、形状、又は別の特性に関連する。
【0045】
形態学的パラメータの評価は、いくつかの神経変性疾患の診断の基礎となることが知られている。
【0046】
少なくとも1つの形態学的パラメータは、特に、ONHの関心領域の形状、トポロジー、体積、又はサイズに関する情報を提供する。
【0047】
形態学的パラメータ又はRPEポリゴンメッシュ又はILMポリゴンメッシュの出力は、特に、少なくとも1つの形態学的パラメータ、RPEポリゴンメッシュ及び/又はILMポリゴンメッシュの特にグラフィカル表現の表示を伴う。
【0048】
上記の実体の表示は、ディスプレイ又はビデオプロジェクターによって特に容易にされる。
【0049】
RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュからの形態学的パラメータの決定には、特に、形態学的パラメータに到達するために、それぞれのポリゴンメッシュの頂点、端、及び面の情報(位置及び方向など)を処理するコンピュータベースの操作を含む。コンピュータベースの処理には、特に、それぞれのポリゴンメッシュの有限要素解析が含まれる。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュは、視神経の領域にわたって延びる。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュはそれぞれ、頂点、面、及び特に端を含み、特にそれらからなり、ILMポリゴンメッシュの各面について、ILMポリゴンメッシュ及びRPEポリゴンメッシュの間の対応が確立されるように、RPEポリゴンメッシュの対応する頂点が決定され、特に、ポリゴンメッシュは確立された対応に基づいて互いに相対的に整列される。
【0052】
この実施形態は、RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュの間の対応を確立することを可能にし、これは、傾斜スキャンに起因する画像データも処理することを可能にする。
【0053】
この実施形態は、例えば、ONH体積の正確な計算を可能にする。
【0054】
特に、この実施形態は、そのようなONH体積を計算するために四面体の使用を可能にする。
【0055】
四面体の高さは、RPE及びILMポリゴンメッシュの対応するポイントに依存するため、この対応を確立することが重要である。
【0056】
RPEポリゴンメッシュは、ILMポリゴンメッシュとは異なる数の面と頂点を含み得る。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュの頂点は、規則的なグリッド上に、特に互いに固定の距離で、より具体的には長方形のグリッド上に配置される。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、RPE頂点は、単一の平面、特にAスキャン方向に直交する平面内、又は画像データのx-y平面内に延びる。
【0059】
RPEポリゴンメッシュが単一平面内に延びることは、例えば、ILMポリゴンメッシュ、画像データ、ILM部分、RPE部分、並びに/又はブルッフ膜及びブルッフ膜の開口部に特に適用される対応する投影又は変換によって達成され得る。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、投影されたILMポリゴンメッシュは、RPEポリゴンメッシュ上のILMポリゴンメッシュの投影から、特にRPE-ポリゴンメッシュを構成する画像データのx-y平面への投影によって生成される。
【0061】
RPEポリゴンメッシュの頂点に対応するILMポリゴンメッシュの面、特にx-y平面のRPEポリゴンメッシュは、特に投影されたILMポリゴンメッシュを使用して決定される。
【0062】
本発明の別の実施形態によれば、画像化されたブルッフ膜(BMO)における開口部を有する三次元画像データのピクセルは、画像データにおいて自動的に特定され、ブルッフ膜開口部を含む特定されたピクセルから一式の点がブルッフ膜開口部を表すように生成され、特に点がブルッフ膜開口部領域を囲む。
【0063】
特に、RPE層が視神経乳頭によって中断されている各Bスキャンから、ブルッフ膜の開口部を表す2つのポイントが特定される。
【0064】
ブルッフ膜の開口部は、網膜の解剖学的構造である。さらに、ブルッフ膜の開口部は、重要な形態学的パラメータを決定するために使用できる。
【0065】
繰り返すが、ブルッフ膜は通常OCT画像では視認できないため、ブルッフ膜開口部の近くの視神経乳頭領域に特有のブルッフ膜オーバーハングがない限り、特にRPE部分はブルッフ膜開口部を特定するために使用される。
【0066】
本発明の別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュは、特にブルッフ膜開口部上の複数の面、特にRPEポリゴンメッシュがブルッフ膜開口部を制限する点一式によって囲まれる領域を覆うように、延びる及び/又は継続される。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、楕円形、特に楕円又は円は、ブルッフ膜開口部を表す点に適合され、楕円形は、ブルッフ膜開口部領域を囲み、楕円形は、ブルッフ膜開口部領域に特に画像データのAスキャン方向又は画像データのx-y平面に直交して延びる平面によって構成される。
【0068】
ブルッフ膜の開口領域は、楕円形で囲まれているが、体積セグメントが定義されるように、特に画像データのAスキャン方向又はz軸に沿って伸びている。体積セグメントは、特にベース領域として楕円形を有する円筒形である。
【0069】
ブルッフ膜の開口部を含む一式内の点は、三次元すべてに沿って、特にz軸又はAスキャン方向に沿って異なる座標を持つことができるが、点一式への楕円の適合は単一の平面に伸びる楕円を生成する。
【0070】
したがって、Aスキャン方向又はz軸に沿った位置は、前記楕円を点一式に適合させるための最適化方法によって決定される。最適化方法は、例えば、適合した楕円までのポイントの距離の最小二乗最小化に基づくことができる。
【0071】
楕円形は、ブルッフ膜の開口領域のノイズを除去し、その領域を単純かつ正確に表現する。楕円形、特に関連する体積セグメントは、解剖学的部分に関する関連情報を維持しながら、データのより複雑さを低減した処理及び形態学的パラメータの計算を可能にする。
【0072】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、ブルッフ膜開口部を表す調整された点一式が生成され、調整された点一式の点は楕円上に位置し、特に調整された一式の隣接する点は互いに同じ距離を有し、すなわちそれらは等距離に配置される。これにより、ブルッフ膜の開口部を表すポイントの規則的な間隔が可能になる。
【0073】
本発明の別の実施形態によれば、楕円は、アフィン変換によって円に変換される。
【0074】
したがって、特に円柱の形状を有する体積セグメントは、変換後に円形のベース領域を持つ。
【0075】
この実施形態は、少なくとも1つの形態学的パラメータなどの後続のパラメータのさらに高速な計算を可能にする。
【0076】
本発明の別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュについて、中央RPE領域が、ILMポリゴンメッシュについて中央ILM領域が決定され、それぞれの中央領域は、それぞれのポリゴンメッシュへの楕円の投影に対応する領域に囲まれ、特に、投影は画像データのAスキャン方向又はz軸に沿っている。
【0077】
中央ILM領域及び中央RPE領域は、特に少なくとも1つの形態学的パラメータの決定のために使用される。
【0078】
中央領域に由来する形態学的パラメータは、特にONH形態の関連する変化に敏感であり、つまり、ブルッフ膜開口部によって区切られたILM及びRPEのそれぞれの中央領域に由来する形態学的パラメータは、視神経乳頭の形態の反射及び比較に適している。
【0079】
これらの中央領域は、特に円筒形の体積セグメント内にある。これらの中央領域を特定すると、すべての計算、特に少なくとも1つの形態学的パラメータを決定するための計算は、画像データを参照することなく、又は画像データをさらに評価することなく、ポリゴンメッシュの中央領域で実行され得る。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、視神経乳頭カップの体積が決定され、視神経乳頭カップの体積は、ILMポリゴンメッシュ及びRPEポリゴンメッシュから計算され、視神経乳頭カップの体積は、特に補間されたRPEポリゴンメッシュの下に伸びるILMポリゴンメッシュの部分によって囲まれた体積である。
【0081】
視神経乳頭体積は、特にILMポリゴンメッシュの中央領域及びRPEポリゴンメッシュの中央領域で構成されており、計算はそれぞれの中央領域に含まれるポリゴンに対して行行われ得、計算負荷が軽減される。
【0082】
本明細書の文脈において、「RPEポリゴンメッシュの下」という用語は、RPEポリゴンメッシュよりも眼の硝子体からさらに離れて位置する領域、点、複数の点、及び/又は体積を指し、すなわち特に画像データのBスキャンの画像下部境界に近い。
【0083】
視神経乳頭カップ体積は形態学的パラメータである。
【0084】
本発明の別の実施形態によれば、視神経乳頭カップ表面は、RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュから計算され、視神経乳頭カップ表面は、RPEポリゴンメッシュの下に延びるILMポリゴンメッシュの部分に対応する。
【0085】
視神経乳頭カップ表面は形態学的パラメータである。表面の輪郭は、医療関係者が視覚的に検査できるONH異常に関する情報を提供できる。
【0086】
本発明の別の実施形態によれば、曲げエネルギーは、ILMポリゴンメッシュからの内側制限膜部分について決定され、曲げエネルギーは、ILMポリゴンメッシュの曲率の大きさに対応し、特に、曲げエネルギーは、中央のILM領域についてのみ決定される。
【0087】
特にポリゴンメッシュについて、表面の曲率を決定するためのさまざまな手段がある。ポリゴンメッシュの面は曲率を示さないが、ポリゴンメッシュの全体的な形状はそのような曲率を示す可能性がある。
【0088】
曲率の大きさに由来する曲げエネルギーは、曲率の大きさが小さい領域と比較して、曲率の大きさが大きい領域について特に大きい。
【0089】
曲げエネルギーは、ILMポリゴンメッシュの複数の部分について局所的に決定され得、例えば、色分けされたILMポリゴンメッシュ又はILMの色分けされた中央領域が表示され得、色は曲げエネルギーに関する情報を提供する。
【0090】
これにより、中央領域のILMの表面特性を迅速に分析し、容易に理解できる。
【0091】
曲げエネルギーは特に形態学的パラメータである。
【0092】
本発明の別の実施形態によれば、RPEポリゴンメッシュ及び/又はILMポリゴンメッシュは、三角形分割された表面であり、特に、ILM三角形分割された表面の各面について、RPE三角形分割された表面の対応する頂点が決定され、ILM三角形分割表面及びRPE三角形分割表面が確立される。
【0093】
三角形分割された表面は、さまざまな操作を実行でき、比較的簡単に計算できるポリゴンメッシュのクラスである。
【0094】
本発明の別の実施形態によれば、網膜色素上皮部分の下部境界のRPEポリゴンメッシュを決定する前に、RPE部分は、特に薄板スプライン法によって平滑化され、RPEポリゴンメッシュは、平滑化された網膜色素上皮部分の下部境界について決定される。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、網膜色素上皮部分の下部境界のRPEポリゴンメッシュを決定する前に、RPE部分は、特に薄板スプライン法によって、特にブルッフ膜開口領域について、補間され、RPEポリゴンメッシュは、補間された網膜色素上皮部分の下部境界に対して決定される。
【0096】
補間されたRPEポリゴンメッシュは視神経乳頭の体積又は表面の明確な上部境界を提供するため、この補間は、例えば視神経乳頭カップの体積及び表面の正確な決定を可能にする。
【0097】
本発明の別の実施形態によれば、網膜色素上皮部分が平面になる変換が決定され、画像データ及び/又はILMポリゴンメッシュ、RPEポリゴンメッシュ、特にブルッフ膜開口部が同じ変換によって変換される。
【0098】
画像データ及び関連するポリゴンメッシュを変換するこのプロセスは、体積フラット化とも呼ばれる。体積のフラット化により、後続の処理工程の計算の複雑さが軽減される。
【0099】
本発明による問題は、請求項14に記載のコンピュータプログラムによってさらに解決される。
【0100】
「プロセッサ」又は「コンピュータ」又はそのシステムという用語は、本明細書では、メモリや通信ポートなどの追加要素で構成される可能性がある、汎用プロセッサ又はマイクロプロセッサ、RISCプロセッサ、又はDSPなどの通常の当技術分野の文脈として使用される。任意に又は追加で、「プロセッサ」又は「コンピュータ」という用語又はその派生語は、提供又は組み込まれたプログラムを実行することができ、及び/又は、入力ポートや出力ポートなどデータ記憶装置及び/又は他の装置を制御及び/又はアクセスすることができる装置を示す。「プロセッサ」又は「コンピュータ」という用語は、接続されている、及び/又は連結されている、及び/又は他の方法で通信し、メモリなどの1つ以上の他のリソースを共有する可能性がある複数のプロセッサ又はコンピュータも示す。
【0101】
本発明の別の態様によれば、本発明による方法は、患者の健康な眼を、特発性頭蓋内高血圧症(IIH)、多発性硬化症(MS)及び/又は神経脊髄炎スペクラム障害(NMOSD)などの自己免疫性中枢神経系障害、及び/又は視神経炎(ON)の病歴から、視神経を損傷して神経軸索変性を引き起こす炎症性視神経障害に罹患している患者の眼から区別するための診断補助として使用され得る。
【0102】
本発明は、全自動3D、すなわち視神経乳頭(ONH)領域の三次元形状分析に関する。いくつかの実施形態によれば、ONHを特徴付ける新規の三次元形状パラメータを計算し、ONHの様々な形状の異なる側面を説明するロバストで信頼性の高い三次元形態パラメータを提供することが可能である。
【0103】
以下において、ILM表面及びRPE表面の前処理、及びそれらの間の対応を含む、いくつかの三次元形態、特にONHの形状パラメータを計算する手順を示す。
【0104】
図1は、フロー図を示しており、OCT体積スキャンは方法の入力である。つまり、方法に提供される画像データ100はOCT体積スキャンを含む。
【0105】
次に、ブルッフ膜を表すRPE表面が、ブルッフ膜開口部(BMO)点とともにセグメント化される200。「RPE表面」という用語は、RPE部分の下部境界を表す「RPEポリゴンメッシュ」という用語と同じ意味で使用される。
【0106】
本明細書の文脈では、RPEの下部境界はブルッフ膜層と同じであることに注意されたい。
【0107】
後続の又は並行する工程において、本明細書の文脈ではILMポリゴンメッシュとも呼ばれるILM表面は、画像データから決定される300。
【0108】
RPEポリゴンメッシュ、ILMポリゴンメッシュ、ブルッフ膜開口部で表されるこれら3つの解剖学的部分は、ONHの三次元形状を表すために使用され得、ONHのさらなる形状分析の入力として機能する。
【0109】
ILMポリゴンメッシュの各面について、RPEポリゴンメッシュの対応する頂点と決定される400。さらに、BMO点で囲まれた領域によって、両方のポリゴンメッシュについての中央領域が決定され500、少なくとも1つの形態パラメータが推定され、方法のユーザーに表示され得る。
【0110】
ILM及びRPE表面は、それぞれ
M
ilm
及び
M
rpe
として表され、BMO点はPで表される。この例では、ILM及びRPE表面は、三角形分割された多様体表面、つまり特定のポリゴンメッシュであり、次のように頂点及び面(三角形)の一式で記載される:
【数1】
【0111】
ILM表面及びRPE表面は、頂点の数及び三角形の数が異なり得る。
n
ilm
及び
m
ilm
は、ILM表面の頂点及び面の数を表す。同様に、
n
rpe
及び
m
rpe
は、それぞれ
V
rpe
及び
F
rpe
のサイズを示す。BMO点は次のように表される:
【数2】
n
p
はBMO点の数である。
【0112】
ONHスキャンの体積スキャンは、視神経乳頭を15°×15°のスキャン角度及びBスキャンあたり384Aスキャンの解像度で焦点を合わせ、145Bスキャンのカスタムプロトコルを使用して、スペクトルドメインOCT(Heidelberg Spectralis SDOCT、Heidelberg Engineering、ドイツ)で取得され得る。x方向の空間分解能は約12.6μm、軸方向の空間分解能は約3.9μm、2つのBスキャン間の距離は約33.5μmである。
【0113】
図2は、単一のBスキャンを使用して例示されたブルッフ膜表面及びBMO点の検出を示している。
図2(a)は、元の画像データの1つのBスキャンを示している(灰色の矢印は血管及びそれらが生成するシャドウアーティファクトを示し、区切られた領域はONHディスクの一部である。
図2(b)は、平滑化及び強度正規化を適用した後の同じBスキャンを示している。
図2(c)は、外れ値を削除した後の近似ISOSジャンクション点(点線)を示している。計算の慣例として、この工程で検出された外れ値は、軸(z)方向に座標が1と等しくなるように設定されている。
図2(d)は、RPE部分の近似された上部境界、つまり上部境界RPE点(点線)を使用した同じBスキャンを示している。
図2(e)は、RPE部分30の平滑化及び補間された下部境界(点線)を使用した同じBスキャンを示している。
図2(f)は、特定されたBMO点40(白い点)を使用した同じBスキャンを示している。血管が存在する場合でも、BMO点40は検出される。384ピクセルは約4402.80μmを表し、226ピクセルは約881.40μmを表す。
【0114】
以下において、ブルッフ膜44についてのRPEポリゴンメッシュ30を生成するための詳細な例を示す。
【0115】
RPEの下部境界を決定する
ブルッフ膜44は網膜の終末を表すため、形態計測計算における重要なパラメータである。この例によれば、RPEポリゴンメッシュ30は、ブルッフ膜を表すように決定される。ブルッフ膜をセグメント化する1つの方法は、[1]で説明されている。OCTからの画像データで一般的に使用されるいくつかの前処理工程が実行される。I(qxy)をピクセルqxyの強度と考えたし。第1の工程において、ガウス平滑化フィルター(σ=5ピクセル等方性、カーネルサイズ=(10μm×14μm))が各Bスキャンに個別に適用される。ガウスフィルターによる平滑化は、ほとんどのOCTデータに存在するスペックルノイズを低減するだけでなく、2つの最も高強度の層、つまり網膜神経線維層(RNFL)及びRPEの近似も容易になる。
【0116】
第2の工程において、画像データのさまざまな強度に対処するために、各スライスでコントラストの再スケーリング(Bスキャン)が実行される。コントラストの不均一性は、異なる照明の領域を持つBスキャンの形で、又は非常に異なる強度範囲の同じ体積の複数のBスキャンとして発生する可能性がある。具体的には、ヒストグラムベースの振幅正規化方法[2]を使用して、サンプリングされた列(Aスキャン)が配置されているBスキャンのヒストグラムで、最初の66パーセンタイルを低カットオフとして使用し、99パーセンタイルを高カットオフとして使用して、元の画像の信号をピクセル値[0;1]間で線形にマッピングする。
【0117】
図2(b)は、上記の手順に従って平滑化及び正規化された体積データのBスキャンを示している。
図2(a)は、元のグレー値を持つ同じBスキャンを示している。
【0118】
上部境界RPE近似
RPE部分3の上部境界を概算するために、最初にILM部分2をセグメンテーション方法の上部境界として概算する。各Aスキャンで、平滑化及び正規化された体積データの上部から最初のピクセル(つまり、硝子体51が配置されている側(
図2を参照))、
I
SN
が選択され、これは、Aスキャンを含むBスキャンの最大値の1/3よりも大きい値である。これにより、
ILM
init
で示されるILMの初期推定点の一式が提供される。次に、RPEの上部境界が概算される。最初に、画像導関数、Sobelカーネルを使用した各Bスキャン(垂直勾配)の∇
I
SN
が計算される。各Aスキャンに沿って、
ILM
init
一式から開始して、RPEの上部境界近似のいくつかの中間工程が実行される。内側及び外側セグメントの接合領域(ISOS)は、
図2(c)に示すように、点pの最初の一式を見つけることによって決定される。
【数3】
【0119】
一式p
xyから開始して、RPEの上部境界は概算される。
【数4】
IS/OSより下の点のみが考慮される。
【数5】
【0120】
この段階での入力は、各BスキャンのRPEの上部境界に属する点のリストである。このリストは、RPEの上部境界に正しく配置された点の中に、特に血管によって投影された影の存在下、及び視神経乳頭の領域にあるいくつかの外れ値も含む。各Bスキャンの上部又は下部3分の1にある外れ値を除去するために、RPEの上部境界を反映する上部RPE点からなる線の勾配が決定され得、上記の上部RPE点の平均値は正しい上位RPE点に属する可能性が最も高い座標から計算され得る。これらの座標は、外れ値間の勾配線の最大部分からのRPE境界点を表す(勾配内の外れ値は>40μmとみなされる)。次に、最初のシード点が平均値に最も近いものとして検出される。このシード
q
seed
から開始して、外れ値は
RPE
upper
(||
q
see
-
q
new
||>70μmの点)から繰り返し削除される。同様に、Bスキャンの最後の3分の1からの外れ値が削除される。1つのBスキャンの結果の点一式は、
図2(d)の白い点で示されている。
RPE
upper
から削除された点は、ONH領域及びBMO領域を概算する。ILMは非常に複雑なトポロジーを持つ可能性があるが、この領域には他の網膜層がないことに注意されたい。楕円をその輪郭に適合させることにより、除去された
RPE
upper
部からONHのマスク
A
ONH
が作成される。
【0121】
RPE下部境界検出
RPEの下部境界は、RPE
lower
で示され、ブルッフ膜と同じである。RPE
upper
より下で最大の負の勾配があり、RPE
upper
に最も近い点がRPEの下部境界として選択される(つまり、複数の最小点が同様の値を持つ場合、対応するRPE
upper
までの距離が最小の点が選択される)。最大勾配値のみの使用は、各表面に沿ったスプリアス点の原因となる。
【0122】
これらのエラーの修正は、高度な平滑化パラメータを持つ三次元平滑化スプラインを適用することによって行われる。血管が存在する場合、RPEの座標が欠落している大きな領域が発生する可能性があり、三次元スプラインが目的の滑らかな輪郭からの逸脱を示す可能性があることに注意されたい。
【0123】
最後に、連続するBスキャンでのモーションアーティファクトだけでなく、網膜の自然な曲率も考慮するために、効率的な2段階の薄板スプライン適合(TPS)プロセスが実行され、これは[3]によって提案されたアプローチを改善し、[4]の研究で提示された直交スキャンを利用しない。最初に、TPS最小二乗近似が実行される。使用される制御点の数は、各軸方向の寸法に沿った表面のサイズによって決まる。この段階では、スロースキャン方向にそれぞれ25%、15%に設定されており、制御点は各方向に均等に分散されている。これは、TPSを0.85に設定された平滑化パラメータα(c.f.[5])と組み合わせて、特に遅軸に沿ったモーションアーティファクトの影響を受けずに網膜の曲率を維持するより平滑化された表面を作成できる。特にα=[0.70;0.85]の値は一貫した結果を提供する。TPS表面の10×10グリッド点の局所において重複しない近傍の平均+標準偏差として定義された元の表面の極端なグリッド点が削除される。次に、同様の実際のTPS適合が適用される。この第2の工程におけるパラメータの選択は、前の段階の外れ値が削除されているという事実に強く影響される。特に、グリッド点の場合、平滑化パラメータ0.45で、低速スキャン方向において20%、高速スキャン方向において10%が使用される。α=[0.30;0.50]で一貫した結果が得られた。戦略は、特に血管が存在するとき、又は近似されたONH領域のすぐ近くでは、検出された
RPE
lower
点の位置に存在するアーティファクトを平滑化しながら、グリッド点のデータに近いTPSを取得することである。両方の段階は、
A
ONH
を含めずに
RPE
lower
で実行される。
図3(a)は、Bスキャンの中間方向に典型的なアーティファクトがある元のRPE表面を示している。これらは、元の表面の形状を維持しながら、TPSアプローチを適用した後に修正される。結果を
図3(b)に示す。
【0124】
TPSを実行した後のRPE下部境界3、つまりブルッフ膜の結果を
図2(e)に示す。
【0125】
ILM表面も決定されると、RPEポリゴンメッシュ及びILMポリゴンメッシュの間の対応が確立される。さらなる分析について、これら2つの表面間の対応する点を見つける必要がある。このプロセスを以下に示す。ILM表面の各面(
f
i
∈
F
ilm
|
i=0、…、
m
ilm
-1)に対応するRPE表面の頂点が計算される。一般に、ここで関数グラフとして表されるRPE表面:
M
rpe
:
R
2
→
Rは、ILMと比較して構造が複雑ではない。OCTスキャナーにおいては、Aスキャンの数(x方向)及びBスキャンの数(y方向)が固定されており、RPEグラフ関数のドメインとして通常のXYグリッドが作成される。したがって、RPE表面の各頂点のインデックスは、x線(垂直線)及びy線(水平線)の数と、それぞれ
ε
x
及び
ε
y
で表される両方向のサンプリングサイズを使用して計算できる。x線及びy線の数は、次の式を使用して計算される:
【数6】
x
max
、
x
min
、
y
max
、及び
y
min
は、x方向及びy方向のRPE表面の境界値である。各面
f
i
∈
F
ilm
について、XY平面上のRPE表面の頂点が計算され、これは、体積スキャンでの対応するAスキャン及びBスキャンの位置を概算する。
c
i
が面
f
i
の図心を表すと考えてみる。
xインデックス(
i
x
)、yインデックス(
i
y
)、及び頂点(
i)インデックスは、次の式を使用して、面
f
i
のRPE表面のx線及びy線を使用して計算される:
【数7】
[…]は天井関数を表し、iはRPE表面の対応する頂点を表す。正確な計算のために、RPE表面の頂点iの近傍が確認され、対応する頂点は次のように計算される。
【0126】
【数8】
Ω
iは頂点iの(XY平面での)3x3の近傍を表す。
最後に、以下の一式を取得する。
【数9】
これは、
F
ilm
の各面に対応するRPE表面頂点の一式を表す。対応計算の視覚的表現は
図6に示され、RPEの通常のXYグリッドが青で示され、投影されたILMの頂点及び端が赤で描かれている。
【0127】
BMO点の計算
BMOは、ブルッフ膜(BM)層、つまりRPEの下部境界の終端であり、ONH定量化のための安定したゼロ参照平面として機能する。したがって、BMOはONH形態学的パラメータの検出における重要なパラメータである。BMO検出における課題は、特に血管によって引き起こされる影、又はBMと同様の構造であるエルシング(Elsching)50の境界組織の存在下で、これらの点40を正しく特定することである。BMO点40は、当該技術分野で知られているように、XY平面における二次元投影画像を使用せずに、三次元画像データ内で直接セグメント化される。
【0128】
BMOを決定するために、画像データは平坦化される。この工程は、体積における選択された境界が平坦になるように、すべてのAスキャンを変換することを指す。この例では、網膜は平滑化されたRPE
lower
に整列されている。整列は、体積削減プロセスだけでなく他の組織からのBMOの区別を容易にする。
【0129】
大まかなONH領域の終点である
A
ONH
は、BMO点検出の開始点を提供する。各Bスキャンで、開始点は、次の条件を満たす場合、新しいBMO点候補で更新される。1)2DMorletフィルター処理された画像において最小値がある、2)d(
p
new
、
p
BMO-seed
)<30μm、及び3)エルシングの組織を含むことを避けるために、5ボクセルの隣接領域における曲率はほぼゼロである。1つのBスキャンの左右の部分で検出されたBMO点がオーバーラップする場合、
A
ONH
によって以前に定義されたBMOの開始領域又は終了領域がそれに応じて更新される。ペア(左及び右)で検出されたBMO点の例を
図2(f)に示す。
【0130】
図5(a)に示すように、ONHの周囲の血管、ノイズ成分、及び三次元OCTスキャンパターンのために、BMO点は不均一でノイズが多くなる。これらのアーティファクトを削除するために、楕円がBMO点に適合される。ONH形状分析のもう1つの重要なパラメータは、BMO点の中心である。これは、すべてのBMO点の重心として計算される。
図5は、楕円の適合はノイズを除去するだけでなく、データ点を均一に増加もさせることを示している。
【0131】
ONH形状分析について、BMO点は視神経乳頭のマージンを表すため、BMO点の内側の領域は特に重要である。この領域をセグメント化するために、
R
2
におけるBMO点の楕円表現、つまり適合した楕円が、BMO点の重心とともに使用される。
【0132】
次に、両方の表面の中心のインデックスを次のように計算できる。
【数10】
【0133】
ILM及びRPE表面のBMO領域を計算するために、楕円はアフィン変換を使用して円に変換される。
この変換により、BMO領域の計算の複雑さが軽減され、特にコンピュータプログラムとして実装された場合に、方法の速度が向上する。ここで、BMO点の円形表現を使用することにより、RPE表面及びILM表面の両方のBMO領域が次のように計算される。
【数11】
それぞれの領域の計算は、ディスク成長法を使用して行われる。
【0134】
画像データのこれらの処理工程により、ILMポリゴンメッシュの中央領域、RPEポリゴンメッシュの中央領域、及びBMO開口領域が決定される。
【0135】
形態学的パラメータの決定10
ONHカップ体積7
ONHカップは、
図7(a)及び(b)に示されるように、ILM表面20のセグメント、すなわちILMポリゴンメッシュ20、特にRPE表面30の下に延びる中央ILM領域25として定義される。カップはすべてのONH体積スキャンに存在するわけではないことに注意されたい。例えば、膨張したONHの場合、ILM表面は常にRPE表面より上にある。ONHカップの存在を検出するには、各面
f
i
∈
F
ilm
について、その図心
c
i
を計算する。上記のように、ILMの各面
f
i
は、RPEにおける対応する頂点
v
i
∈Cがある。
同様に、以下のカップ領域を計算することができる。
【数12】
Ω
cupは、RPE表面の下にあるILMの面(三角形)で構成される。
図7(b)からわかるように、カップ領域も適切な面の法線方向を持つ多様体表面である。カップの体積を正確に計算するために、領域の各三角形の面の法線情報を使用できる。
【0136】
カップの体積は、次の式を使用して計算される。
【数13】
A
i
は三角形の面積を表し、これは、ILM表面の面
f
i
をXY平面に投影したものであり、
h
i
はRPE表面に対する高さである。これらの変数は次のように定義される。
【数14】
2つの端間の外積は、対応する面の方向を処理し、複雑なトポロジー領域でも正確な体積計算を可能にする。
【0137】
中央ONH厚さ(CONHT):
CONHTは、
図7(c)に示すように、ILMの中心及びRPEの表面の間の高さの差として定義される。
【0138】
BMO領域体積:
BMO領域体積は、セグメント化されたILM及びRPE表面を使用して計算される。カップ体積はBMO領域体積から分離されているため、カップ体積が存在する場合は含まれない。次に、BMO領域の体積は次のように計算できる。
【数15】
ONHカップ体積と同様に、BMO領域体積は、同様の式を使用して決定される。
【数16】
A
i
は、一式Ω
bmoに属する面
f
i
の面積である。
【0139】
同様に、h
i
もRPE表面の対応する頂点を使用して計算される。
【0140】
ONH総体積:
ONHカップ及びBMO領域体積と同様に、ONH総体積もILM及びRPE表面を使用して計算される。
図9(a)に示すように、総体積は、ILM表面及びRPE表面のそれぞれ
v
ilmc
及び
v
rpec
を中心とする半径1.5mmの円形領域から計算される。ILM及びRPE表面の円形領域は、次の方程式を使用して計算される。
【数17】
次に、総体積領域Ω
tvが以下を使用して計算される:
【数18】
図9(b)に示すように、ILM表面の総体積領域をΩ
tvで表す。これは、総体積の計算にさらに使用される。
【数19】
A
i
は面
f
i
∈Ω
tvの面積、
h
i
はRPE表面の頂点に対応する高さw.r.tである。
【0141】
ONH環状領域体積:
ONH環状領域は、ONH外側領域を表し、
図9(c)を参照されたい。ILM表面では、この領域は次の方程式を使用して計算される。
【数20】
Ω
avは、ONHの環状領域に属するすべてのILM表面面で構成される。環状領域の体積は、ILM及びRPEの表面の対応を使用して計算される。
【数21】
【0142】
環状領域体積は、さまざまなコホートでONH体積の外側領域の変化を確認するのに役立つ。
【0143】
曲げエネルギー6:
BMO領域内のILM表面の粗さは重要なパラメータであり、一般にマニホールド表面の曲げエネルギーとして知られている。曲げエネルギーは、曲率の観点で表面の公平性を測定する。一般に、ILM表面の外側の領域は、非常に複雑なトポロジー構造を持つBMOの内側の領域とは異なり、非常に滑らかで平坦である。本明細書では、要素ベースの法線投票テンソル(ENVT)を使用してBMO領域内の曲げエネルギーを定義する。ENVTは方向情報(面法線)を利用して、各面
f
i
∈Ω
bmoで形状解析演算子を計算し、及び以下で定義される:
【数22】
a
j
という用語は、面
f
i
の面積である。ILM表面の不規則なサンプリングに対するロバスト性を保証するために、上記の式は、対応する面積
a
j
によって重み付けされる。ENVT、M
iは対称で正の半定値行列であるため、スペクトル成分に分解できる。
【数23】
対応する固有ベクトルはe
kで表される。
これらの固有値の異方性特性を使用して、次の式を使用してBMO領域内の曲げエネルギーを定義する。
【数24】
図7(d)は、曲げエネルギーに基づいてBMO領域の各面がどのように色付けされるかを示している。色は白(平らな領域)から暗い(シャープな特徴)まで増減される。
【0144】
BMO-MRW:
BMO-MRWは、有効な代替構造手段として[6]によって提案されている。BMO点及びILM表面間の最小距離を計算する。
avg
mrw
で表される平均BMO-MRWは、次のように計算される。
【数25】
【0145】
BMO-MRW表面積:
BMO-MRW表面積BMO-MRAは、すべてのBMO-MRWによって定義された領域全体を取得することによって計算される。楕円に適合したBMO点
P
2D
及び
Pからのz座標が組み合わされ、次のように表される。
【数26】
【0146】
【数27】
クワッド表面は、点一式
P
e
及び
P
mrw
を使用して、両方の点一式の対応する頂点間に端を導入し、隣接する点を接続することによって作成される。MRD表面のクワッド要素の数は、各点一式の点の数に等しく、
Q={
q
i
│i=0、…、
n
p
-1}として表される。MRW-MRAは次のように計算される。
【数28】
a
qi
はクワッド
q
i
の面積を表す。
【0147】
BMO面積:
図5に示すように、BMO面積(BMOA)は、BMO点にフィットした楕円の下の領域を表し、円錐曲線を使用して計算される。
【数29】
r
1及びr
2は、近似された楕円の長軸及び短軸である。
【0148】
実験及び結果
本発明による方法を評価するために、反復測定信頼性試験を実施し、健康な対象のONH形状を調査し、ONHに腫れ及び萎縮の形で影響を与えることが知られている疾患を有する患者における違いを方法が検出できるかどうかを決定するために試験した。
【0149】
反復測定の信頼性を推定するために、10人の健康な対象から各眼を3回反復スキャンした。これらの対象は、それぞれ1週間の時間枠内で測定され、次の週に再度測定された。表1に、再現性の結果を示す。本発明による方法は、提示されたすべてのパラメータで高いスコアを示し、CONHTについて0.905の最も低いクラス内相関係数(ICC)、Vcupについて最高の0.998である。ICC及び信頼区間は、一元配置分散分析からの分散成分を使用して推定された。
【0150】
本発明による方法はまた、同じデバイスの他のいくつかのスキャンプロトコル(73個のBスキャン、15°×15°のスキャン角度、及びBスキャンあたり384個のAスキャンの解像度を備えたONHキューブ、x方向空間分解能は約12.6μm、軸方向は約3.9μm、2つのBスキャン間の距離は約61μm、24個のBスキャン、15°×15°のスキャン角度、Bスキャン768個のAスキャン解像度を備えたNHスタースキャン、x方向空間分解能は約5.36μm、軸方向は約3.9μm)、及び、200×200×1024ボクセルで6×6×2mm3の領域をカバーするCirrusHDOCT(Carl Zeiss Meditec、ダブリン、カリフォルニア州)を使用して取得された体積ONH中心プロトコルで試験され、良好な結果が得られた。
【0151】
BMO検出が検証され、及びRPEセグメンテーションが確認された。再現性テストで使用されたものから5つのスキャンが無作為に選択された。経験豊富な採点者が手動でBMO点を選択した。これにより、自動的に検出された数に対応する手動で選択されたBMO点を使用した合計488回のBスキャンがもたらされた。
【0152】
【0153】
表1:3Dパラメータの再現性テスト。略語:ICC-クラス内相関係数、LCI-95%信頼区間の下限及びUCI-95%信頼区間の上限。
【0154】
さらに、x軸だけで得なく軸方向(z軸)の平均符号付きエラー及び符号なしエラーを比較した。自動化された方法で視神経乳頭の中心に近いBMOが特定された場合、x方向の距離の符号は正であった。同様に、自動BMOが手動BMOの下にある場合、z方向の距離の符号は正であった。結果を表2に示す。
【0155】
【0156】
表2:自動(提案)セグメンテーション及び手動セグメンテーションの間のx軸、及びz軸のピクセル及びμmでの平均符号なし及び符号付きエラー。
【0157】
臨床評価
このセクションにおいて、248個のOCTスキャンについての本発明による方法の結果が、3つのグループ、71個の健康な対照眼(HC)、特発性頭蓋内高血圧症(IIH)に罹患している患者の31の眼から提示される。ONH(鬱血乳頭)。また、自己免疫性中枢神経系障害(多発性硬化症(MS)及び神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD))及び視神経を損傷して神経軸索変性を引き起こす炎症性視神経障害である視神経炎(ON)の病歴を有する患者の146個の眼も含めた。
【0158】
IIH患者において、ONH量が増加し、脳脊髄液(CSF)圧と相関することが示された。縦断的分析により、OCTによって測定されたONH量は、最初の腰椎穿後刺及びアセタゾラミド治療の開始後に減少したことが明らかになった。さらに、ONH量の増加は、IIH患者の視力低下と関連しており、パラメータの潜在的な臨床的関連性を示した。
【0159】
ONは、いずれかの脱髄事象の既往歴のない、MSの最も一般的な初期臨床症状の1つである。病気の経過中、急性ONはMS患者の50%、70%に影響を及ぼす。ONの急性期における浮腫による最初の腫れの後、網膜神経線維層(RNFL)の厚さは次の6か月で減少した。視神経炎(ON)は、55%の患者で最初のNMOSD関連の臨床事象であり、視神経及び網膜に深刻な構造的損傷を引き起こし、その結果、機能障害を引き起こす。NMOSDにおけるONの再発は、pRNFLを大幅に薄し、神経節細胞層及び内網状層(GCIP)の組み合わせを引き起こす。
【0160】
表3に提示された結果は、本発明による方法が首尾よく差異を捕捉することを実証している。群間の違いを示さない唯一のパラメータは、曲げエネルギー、Ebである。IIHの影響を受けた眼において、BMO内のONH形状がより滑らかな凸形状になると予想されていたが、データは依然として非常に不均一である。したがって、曲げエネルギーは、データのこの極端な変動を反映している。
【0161】
特にBMO内では、1つのONHから別のONHへのトポロジーが非常に異なる場合がある。
【0162】
【0163】
表3:HC及び患者群に対して定義されたすべての3Dパラメータの分析。最後の列は、2つのグループ間のGEE分析を示している。略語:HC-健康な対照、SD-標準偏差、最小-最小値、最大-最大値、GEE-眼間/対象内依存性を考慮した一般化推定方程式モデル分析、p-p値。
【0164】
図8では、OCTスキャンでブルッフ膜がどの領域に見られるかが例示されている。視神経乳頭の近くで、RPE部分3が終了し、RPE3の続きとしてブルッフ膜44(白いバーで下線が引かれている)が視認できる。ブルッフ膜44の終点で、ブルッフ膜開口部43が本発明による方法によっても特定することができることが視認できる。
【0165】
さらに、エルシング50の境界組織もこのOCTスキャンで視認できる。硝子体51もこのOCTスキャンで示される。
【0166】
実行のためにコンピュータに実装できる提案された方法で、いくつかの形態学的パラメータ、特に視神経乳頭を特徴付ける新しい形態学的パラメータを提供する曲げエネルギーを効率的かつ正確に決定することが可能である。
【0167】
参照
[1]E.M.Kadas,F.Kaufhold,C.Schulz,et al.,3D Optic Nerve Head Segmentation in Idiopathic Intracranial Hypertension,262-267.Springer Berlin Heidelberg,Berlin,Heidelberg(2012).
[2]C.-L.Chen,H.Ishikawa,G.Wollstein,et al.,“Individual a-scan signal normalization between two spectral domain optical coherence tomography devices,”Investigative Ophthalmology&Visual Science54(5),3463-3471(2013).
[3]M.K.Garvin,M.D.Abramoff,R.Kardon,et al.,“Intraretinal layer segmentation of macular optical coherence tomography images using optimal 3d graph search,”IEEE Transactions on Medical Imaging27,1495-1505(2008).
[4]B.J.Antony,A Combined Machine-learning and Graph-based Framework for the 3-d Automated Segmentation of Retinal Structures in Sd-oct Images.PhD thesis,Iowa City,IA,USA(2013).AAI3608177.
[5]K.Rohr,H.S.Stiehl,R.Sprengel,et al.,Point-based elastic registration of medical image data using approximating thin-plate splines,297-306.Springer Berlin Heidelberg,Berlin,Heidelberg(1996).
[6]A.S.C.Reis,N.O’Leary,H.Yang,et al.,“Influence of clinically invisible,but optical coherence tomography detected,optic disc margin anatomy on neuroretinal rim evaluation,”Investigative Ophthalmology&Visual Science 53(4),1852-1860(2012).
【国際調査報告】