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  • 特表-カルサイトナノ流体チャネルの製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】カルサイトナノ流体チャネルの製造
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20220201BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220201BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20220201BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220201BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220201BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220201BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220201BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01J37/20 A
B82Y40/00
H01J37/18
B82Y30/00
G01N37/00 101
G01N1/28 N
G01N1/28 U
B81C1/00
C23C16/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531739
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 US2019063996
(87)【国際公開番号】W WO2020117668
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】16/208,301
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャ,ドン キュ
(72)【発明者】
【氏名】アルオタイビ,モハメッド バドリ
(72)【発明者】
【氏名】アル エネジ,スルタン ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】アル-ユーセフ,アリ アブダラ
【テーマコード(参考)】
2G052
3C081
4K030
5C101
【Fターム(参考)】
2G052AA08
2G052AA19
2G052CA04
2G052DA09
2G052FD06
2G052GA35
3C081AA17
3C081BA23
3C081CA15
3C081CA29
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA29
3C081DA30
3C081EA27
4K030BA36
4K030BA42
4K030BA61
4K030CA04
5C101AA03
5C101FF05
(57)【要約】
ナノ流体デバイスでカルサイトチャネルを製造する方法を示す。多孔質膜が基板に取り付けられる。カルサイトは、基板に取り付けられた多孔質膜の多孔質開口部に堆積される。堆積されたカルサイトの開口部の幅は50~100ナノメートル(nm)の範囲である。多孔質膜は、基板から多孔質膜を除去するべくエッチングされ、製造されたカルサイトチャネル構造を形成する。各チャネルの幅は50~100nmの範囲である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質膜を基板に取り付けるステップと;
前記基板に取り付けられた前記多孔質膜の多孔質開口部にカルサイトを堆積させるステップであって、前記堆積されたカルサイトの開口部の幅は50~100ナノメートル(nm)の範囲である、ステップと;
製造されたカルサイトチャネル構造を形成するために、前記基板から前記多孔質膜を除去するべく前記多孔質膜をエッチングするステップであって、各チャネルは50~100nmの範囲の幅を有する、ステップと;を備える、
方法。
【請求項2】
前記多孔質膜は陽極酸化アルミニウム(AAO)膜である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質膜を前記基板に取り付けるステップは、接着剤を用いて前記多孔質膜の端部を前記基板に取り付けることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質膜の前記多孔質開口部にカルサイトを堆積させるステップは、前記カルサイトを堆積させるための原子層堆積(ALD)技術の使用を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板から前記多孔質膜を除去するべく前記多孔質膜をエッチングするステップは、クロロホルム、水酸化ナトリウム(NaOH)、フッ化水素酸、又はリン酸(HPO)の使用を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
走査型電子顕微鏡(SEM)チャンバ内に、流体を、前記ナノ流体カルサイトチップを通して注入するステップと;
前記SEMを用いて前記ナノ流体カルサイトチップを画像化するステップと;を更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流体を前記ナノ流体カルサイトチップに通すことは、入口ライン及び出口ラインの使用を含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板はシリコン(Si)基板である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ流体カルサイトチップに透明窓を追加するステップを更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記透明窓と前記ナノ流体カルサイトチップとをケースに入れるステップを更に備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
基板と製造されたカルサイトチャネル構造を含むナノ流体カルサイトチップであって、前記製造されたカルサイトチャネル構造は、前記基板に取り付けられた多孔質膜をエッチングし前記基板から前記多孔質膜を除去することによって形成され、前記エッチングは、前記製造されたカルサイトチャネル構造を形成するために残すよう、予め前記多孔質膜に堆積されたカルサイトを残し、前記カルサイトの開口部の幅は50~100ナノメートル(nm)の範囲である、前記ナノ流体カルサイトチップと;
前記ナノ流体カルサイトチップを保持するためのSEMサンプルステージを含むSEMチャンバと;
流体が前記ナノ流体カルサイトチップを通過している間に画像を生成するために、前記ナノ流体カルサイトチップを通して電子を放出するように構成された電子ビームガンと;を備える、
システム。
【請求項12】
前記基板はシリコンを備える、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ナノ流体カルサイトチップを収容するケースを更に備える、
請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ケースはさらに、前記ナノ流体カルサイトチップに取り付けられ、前記電子が前記ナノ流体カルサイトチップを通過する前に通過する窓を収容する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記窓は、導電性で光学的に透明な材料で構成されている、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記導電性で光学的に透明な材料は、窒化ケイ素(SiN)を含む、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記流体を前記ナノ流体カルサイトチップに通すための入口ライン及び出口ラインを更に備える、
請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記多孔質膜は、AAO膜である、
請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記多孔質膜は、接着剤を用いて前記基板の端部に取り付けられる、
請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記多孔質膜の多孔質開口部に堆積したカルサイトは、ALD技術を用いて堆積されたものである、
請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2018年12月3日に出願された米国特許出願第16/208,301号の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、ナノフルイディクス(nanofluidics、ナノ流体工学)に関し、より具体的には岩石学的用途に関するものである。
【背景技術】
【0003】
油田から抽出することができる原油の量を増加させるために、強化された油(石油)回収方法が利用される。小スケール(ナノメートル又はマイクロメートルオーダーのチャネルサイズ)では、表面張力などの要因がシステムを支配し始めるという点で、流体が異なる挙動を示す可能性がある。小スケールでの流体の挙動をより良く理解することで、強化された油回収方法を改善して、根源岩(ソースロック、石油根源岩)又は貯留層からより多くの油を抽出することができる。油の抽出と回収における物理的及び化学的現象を観察し、評価し、理解するために、地下貯留層で見られる条件を再現することができるマイクロ流体モデルが開発されてきた。
【0004】
世界の石油埋蔵量の一部は、ライムストン(石灰石、石灰岩)やドロストン(苦灰岩)などの炭酸塩岩中に存在する。しかしながら、これらの岩石は、同じ地層内の領域間でも、テクスチャ、多孔性及び透過性などの特性が大きく異なる場合がある。このような違いは、油の一貫した流れを達成する上で課題を作り出す可能性がある。マイクロフルイディクス(microfluidics、微小流体工学)に関連する技術を使用して、石油物理学(petro physics)用途において、原油と種々の流体及び岩石層の相互作用(interaction、インタラクション)を特徴付けることができる。例えば、従来のカルサイト(CaCO、方解石)チャネルモデルは、エッチングされた天然のカルサイト結晶(calcite crystal)を含むことができるが、これらのモデルは典型的にはマイクロメートルのスケールである。ナノスケール(すなわち、ナノメートルオーダー)の流体は、原子スケールでの流体/流体及び流体/カルサイトの岩石の相互作用の物理的及び化学的現象を理解するのに有益であり得る。
【0005】
マイクロフルイディクス及びナノフルイディクスは、石油物理学用途におけるブライン(brine、塩水)と原油の相互作用を特徴付ける重要な方法と考えられる。原子スケールでの流体/流体及び流体/カルサイトの岩石の相互作用の物理的及び化学的現象を理解するために、ナノ流体チップ中のナノサイズのカルサイト筒状(円筒)チャネルが必要となり得る。これは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)を使用する原子スケール分析の場合であり得る。原子スケールでの流体/流体及び流体/カルサイト岩石の相互作用の物理的及び化学的現象を理解するために、ナノサイズのカルサイト筒状チャネルをナノ流体チップ中で使用することができる。電子顕微鏡(Electron Microscopy、EM)を用いてナノスケール解析を行うことができる。しかしながら、マイクロ流体チップ中の従来のカルサイトチャネルは、エッチングされた天然のカルサイト結晶で製造(作製)され、そのサイズはミクロンスケールである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ナノフルイディクスのためのカルサイトチャネルを製造する方法を記載する。本明細書で説明される主題の特定の態様は、方法として実施され得る。多孔質(porous)は、基板(substrate、基材)に取り付けられた膜である。カルサイトは基板に取り付けられた多孔質膜の多孔質開口部に堆積(沈着)している。堆積されたカルサイトの開口部の幅は、50~100ナノメートル(nm)の範囲である。多孔質膜は、基材から多孔質膜を除去するためにエッチングされ、製造されたカルサイトチャネル構造を形成する。各チャネルは、50~100nmの範囲の幅を有する。
【0007】
マイクロ流体チップ内にチャネルを製造するための従来の方法は、一般に、ガラス又はシリコンエッチング、フォトリソグラフィ、及び重合(polymerization、ポリメリゼーション)を用いる方法を含み得る。しかしながら、これらの技術が使用される場合、解像度(resolution、分解能)の問題及びこれらの製造方法の使用から典型的に生じ得る課題のために、ナノサイズの筒状チャネルを製造することは困難である可能性がある。カルサイトチャネルの製造には、天然カルサイト結晶又は薄膜ベースのチャネルのエッチングを含み得るので、より困難であり得る。本開示に記載される技術は、SEM及び遷移電子顕微鏡(Transition Electron Microscopy、TEM)といった高分解能電子顕微鏡を用いて、カルサイトとブライン又は原油との間の界面における物理的及び化学的現象を観察及び研究するために使用され得る。本技術は、ナノスケールの筒状カルサイトチャネルを製造するためのプロセスを含むことができる。ナノスケールの筒状カルサイトチャネルは、貯留岩(reservoir rock)中の実際のナノ多孔質構造を模倣できる。
【0008】
本開示で説明される方法及びシステムの利点は、以下を含むことができる。製造されたナノサイズのカルサイトパターンを使用する技術は、電子ビームリソグラフィー技術と比較して、より高速かつ効率的であり得る。この技術は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、流体/流体又は流体/カルサイトの相互作用の特徴付けを可能にし得る。これは、流体とカルサイト岩の間の界面及び多孔質構造における相互作用のより良い理解を提供することができる。この技術の使用は、高度な電子顕微鏡を用いて、より高い解像度(分解能)で流体/岩石と流体/流体の間の相互作用のより良い理解を提供することができる。この技術は、デジタル岩石物理学用途(アプリケーション)のための好ましい効果を与えることができる。これらの技術は、現場での強化された油回収プロセスを改善し最適化するのに役立ち得る。
【0009】
本明細書の主題の1つ又は複数の実施の詳細は、添付の図面及び明細書に記載されている。主題の他の特徴、態様、及び利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のいくつかの実施に係る、ナノ流体カルサイトチップの製造手順の構成要素の一例を示す概略図である。
【0011】
図2】本開示のいくつかの実施に係る、走査型電子顕微鏡(SEM)システムにおけるナノ流体カルサイトチップの一例を示す概略図である。
【0012】
図3】本開示のいくつかの実施に係る、ナノ流体カルサイトチップを製造するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【0013】
様々な図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は、ナノフルイディクスのためのカルサイトチャネルを製造する方法を記載し、当業者が1つ又は複数の特定の実施の文脈において開示された主題を製造及び使用することを可能にするために提示される。具体的には、開示された主題が原子層堆積(ALD)と走査型電子顕微鏡(SEM)におけるその場(in-situ)での特徴付けのための多孔質膜テンプレートとの組み合わせを使用することによる、カルサイトナノ流体チャネルの製造のための技術を記載する。開示された実施の様々な修正、変更、及び置換を行うことができことは、当業者には容易に明らかであろう。また、定義された一般原理は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施及び用途に適用することができる。場合によっては、説明された主題の理解を得るために必要でない詳細については、この不必要な詳細によって1つ又は複数の説明された実施を不明瞭にしないように、及びそのような詳細が当業者の技術の範囲内である限り、省略され得る。本開示は、記載された又は図示された実施に限定されることを意図するものではなく、記載された原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられることを意図している。
【0015】
いくつかの実施では、ナノ流体チップ用のナノスケールカルサイトチャネルを製造するためにいくつかの技術を使用することができる。製造されたナノ流体チップは流体とカルサイト(CaCO)との間の物理的及び化学的相互作用を高解像度で(例えば、ナノスケールで)理解するのを助けるために使用できる。この技術はまた、炭酸塩岩石(例えば、CaCO)の実際の鉱物学(mineralogy)の状態及び相互作用をシミュレート及び観察するために使用され得る。
【0016】
図1は、本開示のいくつかの実施に係る、ナノ流体カルサイトチップの製造のための手順100の構成要素の一例を示す概略図である。手順100は、テンプレートとしての膜及びALD技術の使用の組み合わせに基づくことができる。実施によっては、この技術は以下のようなステップを含むことができる。
【0017】
ナノ流体カルサイトチップ106の底部として機能するシリコン(Si)基板102を準備することができる。Si基板102のサイズは、堆積のための多孔質膜として機能する陽極酸化アルミニウム(AAO)膜104のサイズに依存してよい。例えば、Si基板102は、AAO膜104よりもわずかに大きくすることができる。Si基板102は典型的にはSEMホルダーよりも小さく、例えば、直径が3ミリメートル(mm)よりも小さくすることができる。
【0018】
AAO膜104はシアノアクリレート接着剤などの接着剤114でSi基板102に取り付ける(例えば、上に置く)ことができる。接着剤114は、図1に示すように、AAO膜104の端部をSi基板102に固定する役割を果たすことができる。
【0019】
AAO膜104がSi基板102に取り付けられた後、AAO膜104の多孔質開口部は、ALD技術を使用して、カルサイト108で充填され得る。カルサイト108は、例えばCaCOとすることができる。AAO膜104の多孔質開口部のサイズ又は直径は、典型的には直径50~100ナノメートル(nm)の範囲であり、製造されるカルサイトチャネルのサイズを特定することができる。原子層堆積は気相から材料を堆積させるための技術であり、基板と反応するガス状の化学前駆体(precursor、プリカーサ)の交互導入のシーケンスを含む。個々のガス表面反応は半反応(half-reaction)と呼ばれる。各半反応の間、前駆体ガスを指定された時間導入することができる。これは、前駆体ガスが基板表面と完全に反応し、表面に単一層を堆積させることを可能にする。次いで、デバイスを窒素又はアルゴンなどの不活性ガスでパージして、未反応の前駆体、反応副生成物、又はその両方を除去する。次に、次の前駆体ガスを導入して別の層を堆積させ、次いで同様にパージする。プロセスは、所望の高さに達するまで、交互の前駆体ガスが層毎に堆積されるように循環する。特定の実施では、原子層堆積プロセスはカルサイト層がフォトレジストの元のコーティングと同程度又は同じ高さに達するまで継続することができる。堆積されたカルサイトは、約50~100nmの範囲の長さを有する少なくとも1つの側面を有することができる。
【0020】
ALD技術を使用してAAO膜104の多孔質開口部をカルサイトで充填した後、クロロホルムを使用してAAO膜104をエッチングすることができる。エッチングを用いてAAO膜104を除去し、製造されたカルサイトチャネル構造110のみを残し、ナノ流体カルサイトチップ106を製造することができる。エッチングに使用することができる他の材料としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、フッ化水素酸(フッ化水素(HF)の溶液)、又はオルトリン酸(又はリン酸)(HPO)を挙げることができる。
【0021】
図2は、本開示のいくつかの実施に係る、SEMシステム200内のナノ流体カルサイトチップ106の一例を示す概略図である。ナノ流体カルサイトチップ106は、例えば、(例えば、光学的に透明な)透明窓202を含むケース201(例えば、金属ケース)内にパッケージされ(収容され)得る。このパッケージはまた、入口及び出口接続部、例えば、少なくとも1つの入口ライン204及び出口ライン206を含むことができる。パッケージは、SEMシステム200の一部であるSEMチャンバ210内で使用されるSEMサンプルステージ208上に取り付けることができる、完成したナノ流体デバイスをもたらすことができる。いくつかの実施では、ケース201を導電性金属で作製することができ、窓202は窒化ケイ素(SiN)などの光学的に透明でもある導電性材料で作製することができる。導電性は窓202が電荷の蓄積を回避することを可能にでき、窓202の透明性は観察を可能にする。
【0022】
入口ライン204は、SEMチャンバ210の内部などで、ナノ流体カルサイトチップ106を通過するように流体を注入するために使用することができる。例えば、入口ライン204を、ブライン溶液をナノ流体カルサイトチップ106に導入するために使用することができる。出口ライン206は、流体が排出されることを可能にする。入口ライン204及び出口ライン206は、ナノ流体カルサイトチップ106の同じ側又は反対側に位置することができる。流体はナノ流体カルサイトチップ106を通過することができ、一方、電子ビームガン212は画像を生成するために、電子(e-)214を放出する。例えば、ナノ流体カルサイトチップ106は、SEMを使用して画像化され得る。
【0023】
SEMチャンバ210内のナノ流体カルサイトチップ106の使用は、ナノスケールレベル又は原子スケールレベルでの流体/岩石の相互作用を観察することを可能にし得る。また、製造されたナノスケールカルサイトチャネルは、多孔質構造内部の流体/カルサイトの相互作用の理解に有用な情報を提供することができる。この情報は、より高い(例えば、原子スケールに近づく)解像度で流体とカルサイトとの間の物理的及び化学的相互作用を理解するために、及び現場での油回収プロセスを最適化するのを助けるために使用することができる。
【0024】
図3は、本開示のいくつかの実施に係る、ナノ流体カルサイトチップ106を製造するための例示的な方法300を示すフローチャートである。ナノ流体カルサイトチップ106のサイズ及び形状は、例えば、SEMサンプルステージ208のサイズで機能するサイズであると特定され得る。
【0025】
302において、多孔質膜が基板に取り付けられる。例えば、図1を参照すると、基板はSi基板102とすることができ、多孔質膜はAAO膜104とすることができる。いくつかの実施では、基板の厚さはナノ流体デバイス内のカルサイトチャネルの所望の高さに等しくすることができる。AAO膜104のSi基板102への取り付けは、AAO膜104の端部をSi基板102に接合するために使用される接着剤114(例えば、シアノアクリレート接着剤)を使用して達成することができる。
【0026】
304において、カルサイトが基板に取り付けられた多孔質膜の多孔質開口部に堆積される。一例として、AAO膜104の多孔質開口部は、ALD技術を使用してカルサイト108で満たされ得る。堆積されたカルサイトの開口部の幅は、例えば50~100nmの範囲とすることができる。
【0027】
306において、製造されたカルサイトチャネル構造を形成するために、多孔質膜をエッチングして基板から多孔質膜を除去する。ここで、各チャネルは、50~100nmの範囲の幅を有する。例えば、製造されたカルサイトチャネル構造110を含むナノ流体カルサイトチップ106は、AAO膜104をエッチングすることによって製造され得る。エッチングは基板102からAAO膜104を除去し、堆積されたカルサイトをSi基板102上に残すことができる。製造されたカルサイトチャネル構造110のチャネルの幅は、例えば50~100nmであり得る。
【0028】
主題の説明された実施は、単独で又は組み合わせて、1つ又は複数の特徴を含むことができる。
【0029】
例えば、第1の実施において、方法は以下のステップを含む。すなわち、多孔質膜が基板に取り付けるステップ。基板に取り付けられた多孔質膜の多孔質開口部にカルサイトが堆積されるステップ。堆積されたカルサイトの開口部の幅は50~100ナノメートル(nm)の範囲である。製造されたカルサイトチャネル構造を形成するために、基板から多孔質膜を除去するべく多孔質膜をエッチングするステップ。各チャネルは50~100nmの範囲の幅を有する。
【0030】
前述及び他の説明された実施は、それぞれ、任意選択で、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0031】
第1の特徴は、以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、多孔質膜が陽極酸化アルミニウム(AAO)膜である。
【0032】
第2の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、多孔質膜を基板に取り付けるステップは、多孔質膜の縁部を基板に取り付けるために接着剤の使用を含む。
【0033】
第3の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、多孔質膜の多孔質開口部にカルサイトが堆積されるステップは、カルサイトを堆積させるための原子層堆積(ALD)技術の使用を含む。
【0034】
第4の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、基板から多孔質膜を除去するべく多孔質膜をエッチングするステップは、クロロホルム、水酸化ナトリウム(NaOH)、フッ化水素酸、又はリン酸(HPO)の使用を含む。
【0035】
第5の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、走査型電子顕微鏡(SEM)チャンバ内に、ナノ流体カルサイトチップを通して流体を注入するステップと、SEMを使用してナノ流体カルサイトチップを画像化するステップとをさらに含む。
【0036】
第6の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、ナノ流体カルサイトチップに流体を通すことが、入口ライン及び出口ラインの使用を含む。
【0037】
第7の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、基板がシリコン(Si)基板である。
【0038】
第8の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、ナノ流体カルサイトチップに透明窓を追加するステップをさらに含む。
【0039】
第9の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、透明窓及びナノ流体カルサイトチップをケース内に入れるステップをさらに含む。
【0040】
第2の実施において、システムは以下のものを含む。ナノ流体カルサイトチップは、基板及び製造されたカルサイトチャネル構造を含む。製造されたカルサイトチャネル構造は、基板に取り付けられた多孔質膜をエッチングして基板から多孔質膜を除去することによって製造される。エッチングは製造されたカルサイトチャネル構造を形成するために残るよう、予め多孔質膜中に堆積されたカルサイトを残す。カルサイトの開口部の幅は50~100ナノメートル(nm)の範囲である。SEMチャンバは、ナノ流体カルサイトチップを保持するためのSEMサンプルステージを含む。電子ビームガンはナノ流体カルサイトチップを通して電子を放出し、流体がナノ流体カルサイトチップを通過している間に画像を生成するように構成される。
【0041】
前述及び他の説明された実施は、それぞれ、任意選択で、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0042】
第1の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、基板がシリコンを含む。
【0043】
第2の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、ナノ流体カルサイトチップを収容するケースをさらに含む。
【0044】
第3の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、ケースは、ナノ流体カルサイトチップに取り付けられ、電子がナノ流体カルサイトチップを通過する前に通過する窓をさらに収容する。
【0045】
第4の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、窓は、導電性で光学的に透明な材料を含む。
【0046】
第5の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、導電性で光学的に透明な材料は、窒化ケイ素(SiN)を含む。
【0047】
第6の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、ナノ流体カルサイトチップを通って流体を注入するための入口ライン及び出口ラインをさらに含む。
【0048】
第7の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、多孔質膜がAAO膜である。
【0049】
第8の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、多孔質膜は接着剤を用いて基板の端部に取り付けられる。
【0050】
第9の特徴は、前述の又は以下の特徴のいずれかと組み合わせることができ、多孔質膜の多孔質開口部に堆積されたカルサイトは、ALD技術を用いて堆積されたものである。
【0051】
本明細書は多くの具体的な実施の詳細を含むが、これらはいくつかの実施の範囲又は特許請求され得る範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の実施に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。個別の実施のコンテキストで本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施として、あるいは組み合わせて実施することができる。逆に、単一の実施のコンテキストで説明される様々な特徴は、複数の実施で、別個に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、前述の特徴は、特定の組み合わせで動作するものとして説明されてもよく、そのようなものとして最初に特許請求されてもよいが、特許請求された組み合わせからの1つ又は複数の特徴は、場合によってはその組み合わせから切り離されてもよく、特許請求された組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に向けられてもよい。
【0052】
主題の特定の実施は既に説明されている。説明された実施の他の実施、変更、及び置換は当業者に明らかであるように、以下の特許請求の範囲の範囲内である。動作は特定の順序で図面又は特許請求の範囲に示されているが、これは望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序で、又は連続的な順序で実行されること、又は示されたすべての動作が実行されること(いくつかの動作がオプションと見なされ得る)を必要とするものとして理解されるべきではない。
【0053】
さらに、前述の実施における様々なシステムモジュール及び構成要素の分離又は統合は、すべての実施においてそのような分離又は統合を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明されるプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に統合されるか、又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。
【0054】
したがって、前述の例示的な実施は、本開示を定義又は制約しない。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の変更、置換、及び変更も可能である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】